第9回雇用保険制度研究会 議事録

日時

令和5年5月12日(金)16:00~18:00

場所

厚生労働省12階職業安定局安定第1会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館)

議事

議事内容
○尾田雇用保険課長 それでは、定刻になりましたので、第9回「雇用保険制度研究会」を開催いたします。
 報道陣の皆様の頭撮りはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に移りたいと思います。本日の議題は「中間整理(案)について」です。
 まず、資料につきまして事務局より御説明いたします。
○山口調査官 それでは、資料の御説明をさしあげます。資料1を御覧いただければと思います。前回の研究会の中で中間整理(案)について御議論いただいた結果を反映させた資料ということになっております。
 まず、4ページを御覧いただければと思います。(2)「雇用保険制度を構成する考え方、構造」という項目立てになっている部分ですけれども、この中に「失業」という保険事故に対する給付に関する記述と、そうでないものが混在しておりましたので、そこが分かりやすくなるように、「失業」という保険事故に対する給付という項目立てをしております。
 次に、5ページでございますけれども、(ロ)「失業」という保険事故の特殊性というところの記述を大きく書き換えてございます。
 まず、「失業」の発生ということにつきましては、事前に一定の推定を行うことが困難ということを記載した上で、一方で、失業の発生はその時々のマクロ経済情勢の影響を受けており、好況時・不況時といった一定の時間経過の中でリスクが分散されているとも考えられる。また、労働契約の終了や定年、自己都合離職のように、被保険者個人が事前に失業の発生の推定を行うことができる場合もあるとしております。
 さらに、失業状態からの脱却は、求職者個人の意思や努力にも一定程度依存しており、失業給付が受給できるために失業状態から積極的に脱却しようとしないモラルハザードを招くおそれがあるということを追記してございます。
 次に、6ページを御覧いただければと思います。今度は、失業以外の保険事故に対する給付・附帯事業というふうに項目立てをしております。
 まず、失業以外の保険事故に対する給付といたしまして、各給付の趣旨を記載しております。
 まず、教育訓練給付でございますけれども、「労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合」を保険事故として、訓練に必要な費用等の一部を支給するとしています。
 次に、雇用継続給付でございますが、こちらは「雇用の継続が困難となる状態」を、そのまま放置すればさらに深刻な保険事故である失業に結びつきかねないことから、「失業」に準じた職業生活上の事故と捉えて、職業生活の円滑な継続を援助、促進するための給付としてつくられたということを書いております。
 育児休業給付につきましては、当初は雇用継続給付の一種として創設されましたけれども、令和2年の雇用保険法改正によりまして、区分経理により給付と負担の関係を明確化して雇用保険財政を安定的に運営していく観点から、「子を養育するために休業した労働者の雇用と生活の安定を図る」給付として、雇用継続給付とは異なる給付体系に位置付けられていると記載しております。
 次に、雇用保険二事業に関する記述がないという御指摘があったことを踏まえまして、附帯事業としての雇用保険二事業という項目を立てております。
 二事業でございますが、「失業保険」が「雇用保険」となった際に、保険給付で失業中の生活保障を行うのみならず、新しい経済社会への動向に対応して、労働者にとって望ましい雇用の状態を確保するために、附帯事業として創設されたものでございます。
 この二事業は、雇調金などの雇用安定事業と、訓練などを行います能力開発事業から構成されておりまして、各種雇用対策を実施することによって、失業の予防や再就職を促進し、失業等給付の抑制を図るものとして実施されていると記載してございます。
 次に、7ページでございます。財源構成に関する記述がないという御指摘があったことを踏まえて、3財政構造という項目を立てております。
 雇用保険は社会保険方式をとっておりますので、保険料を財源として運営するということが基本になりますが、雇用保険の保険事故である失業については、政府の経済政策、産業政策、雇用政策と無縁ではなく、政府もその責任の一端を担うとの考え方から、一部の給付については税財源である一般会計により国庫負担が行われております。
 また、二事業につきましては、事業の対象とする雇用上の諸問題が雇用賃金慣行その他の企業の行動に起因するところが多く、事業の実施によって企業が一定の利益を受けることに鑑みて、使用者のみが負担する保険料を財源として運営されております。すなわち、保険料を負担する事業主の共同連帯によって対応していくことがふさわしい事項が、二事業による施策の対象となるとしております。
 次に、10ページを御覧いただければと思います。こちら、前回の議論等を踏まえて追記したところでございますが、1の社会保険方式でセーフティネットを整備することの意義というところで、最初のポツの表現を少し変更してございます。こちらにつきましては、社会保険方式というのは、保険料納付額に見合った給付が行われるということになりますけれども、民間保険とは異なりまして社会保険でございますので、保険原理を扶助原理で修正するということもあり得るという御指摘をいただいておりまして、保険料納付額が少ないということが、当然に給付水準を下げることにはつながらないという観点から、「その」というのは給付と負担の関係でございますが、その対応関係を厳格に適用するならばという留保を記載する形で表現を補っております。
 それから、2つ目のポツ、3つ目のポツは、前回の御議論で新たにいただいた御意見を追記したものでございますが、平時においては社会保険方式によるセーフティネットの意義ということをよく認識すべきであるという御意見でございまして、保険料に比べて国庫負担の比率が高まると、福祉の側面が強くなって、給付の受給要件として所得制限が課されるという可能性が高まってくる。そうした制約なく相応の水準の給付が受給できるのは、社会保険方式によるところが大きいとしています。
 また、求職者支援制度につきましても、現状は雇用保険の附帯事業となっておりますが、社会保険方式の延長線上にあるからこそ利用しやすい給付が実現できているという考え方もある。他方で、雇用保険料で運営されながら保険料を払っていない方に給付しているという意味で、社会保険方式の原則から外れており、雇用保険の附帯事業という位置付けがそもそも適当なのか、議論していく必要があるとしております。
 また、保険料と国庫負担の比率の議論に関連いたしまして、国庫負担への過度の依存は望ましくないものの、国庫負担により制度の持続可能性や制度間のバランスを図るという意味では、社会保険の中で国庫負担を活用すること自体は問題ないのではないかという御意見がございましたので、追記しております。
 また、このパラグラフの一番下のポツになりますけれども、仮に雇用保険の適用範囲が広がれば、一般論としては第二のセーフティネットの範囲は狭くなる関係にあるという御意見の関連ということで、より重要なこととして、新たに雇用保険の適用対象となった方が、結局給付を受けられなくなる、もしくは受けられても給付水準が低くなるといった状況になると、適用拡大したことでかえってセーフティネットの空白地帯が生じるおそれがあるので、切れ目のないセーフティネットの制度設計に留意すべきとしております。
 次に、12ページでございますが、最初のポツのところ、表現が不適切であった部分を修正しております。現行の適用基準では、週所定労働時間20時間で働くパートの方も適用対象となっていて、こういう方々が生計を維持しているとは言いづらいのではないかという記載にしてございます。
 次は、13ページでございます。適用拡大ということをすることによる現行の適用対象労働者への影響というパラグラフでございますけれども、新たな御意見を3つ追記してございます。
 まず、適用対象労働者を拡大していくことになると、働き方に中立的な制度になることから、各労働者に対してそれぞれが失った賃金を補塡していくといった性格が強くなっていくのではないか。この際に、適用基準を収入だけで判断するということも考えられるけれども、そうすると、失業認定基準も同じく収入で判断するとなると、失業ではなく労働条件の不利益変更などで賃金が減少して、失業認定基準の収入額を下回ったときまで「失業」と扱うのは妥当でないと考えられる。そう考えると、失業認定の判断に当たっても労働時間も加味して判断せざるを得なくなるのではないか。失業認定基準と適用基準が必ずしも一致する必要はなくて、各労働者の所定労働時間を基準として失業状態を判断していくことになるのではないかという御意見を追記してございます。
 また、一つの保険制度の中に、複数の失業認定基準を持つ被保険者群が存在するということは、以前設けられていた短時間労働被保険者区分のように、一般被保険者とは区分した形で特別の被保険者類型というものを設けた上で、労働者がどちらの区分に属して勤務していたかという実績を、区分間を移動した場合にはその状況も含めて企業側が管理・把握するとともに、給付の支給判断の際にハローワークもそれを確認する必要が生じます。これには大きなコストが伴って、しかも短時間労働被保険者区分というのは、現在、一般被保険者区分に統合されているといった経緯にも留意する必要があるとしております。
 3点目でございますけれども、現行制度では基本手当日額の算定基礎となる賃金日額について、下限額は算定賃金と連動して決めておりますが、これは失業中の生活保障にふさわしい給付水準という考え方に基づくと思われるものの、適用対象労働者を拡大すると保険給付の考え方が変わって、下限額設定の現行の考え方を維持することが困難になるのではないか。また、上限額に関連して、毎月勤労統計調査によって自動的に現状、改定されておりますけれども、統計というのは一般的に後から修正することもあり得るというものであって、それに応じて給付額も修正するとかなりのコストが生じる点は見直す必要があるのではないかとしております。
 次の項目の最後のポツ、14ページですけれども、前回出た御意見を追記してございます。教育訓練給付や育児休業給付のように保険給付になじまないと考えられるものについて、それぞれの目的に合致する支援の枠組みを個別の制度として作っていくことも考えられるけれども、かえってそうすることで現状と比べて財政上の安定性を欠いたり、運営行政コストが増加したりする可能性もあり、現実的な実現可能性を検討・検証することは今後の課題であるといった御指摘を盛り込んでいます。
 次に、15ページでございます。これは、もともとの記述が不正確であった部分を正確に書いた部分でありますけれども、先行研究によると、仕事を探す期間と定着率の関係については、仕事を探す期間が長ければ定着率が高まるとする報告、逆に低下するという報告、両者にはあまり関係がないとする報告があって、一貫した結果は得られていないというふうに表現を適正化してございます。
 それから、16ページでございます。給付制限期間に関する新たな御意見を追記しております。転職活動の際に、前職を離職する前に転職先を既に決めているような労働者については、給付制限期間短縮による転職促進効果はそれほど期待できない。
 諸外国の失業給付における自己都合離職の取扱いを見ても、自ら保険事故を起こした自己都合離職の場合は給付しないか給付制限期間を設けていて、この期間を撤廃するということには慎重であるべきではないかという御意見でございます。
 また、このパラグラフの一番下のポツになりますけれども、転職を望む方を支援するということであれば、失業状態に陥ることを想定して給付制限期間を短縮・撤廃するよりも、失業状態を経ない労働移動を実現するために、在職中から就職支援を強化するほうが本筋ではないかという御意見をいただいておりますので、記載してございます。
 次に、17ページでございます。失業認定の在り方ということで、オンライン化を含めて議論した部分ですけれども、最初のポツのところで、まずモラルハザードということが具体的に何を差しているのかということの言葉を補ってございます。失業給付が受給できるために失業状態から積極的に脱却しようとしないということをモラルハザードと言っておりますので、その旨、記載しております。また、保険制度の適切な運営という観点からオンラインによる失業認定をどう考えるかを検討すべきという御指摘がありましたので、盛り込んでおります。
 それから、次の失業認定と職業相談の連携という部分でございますが、諸外国の例を見ても、初回の職業相談は対面で実施しており、対面には重要な意義があると考えられるということ。また、オンラインによるメリット、デメリット、双方を検討すべきであるという御意見も盛り込んでおります。
 次に、18ページでございますけれども、オンライン化に対応したハローワークの体制整備という部分につきまして、特に常勤職員を中心に負担がかかっているということを踏まえて、常勤職員数の増加を検討すべきではないかという書き方にしております。
 次が、20ページでございます。育児休業給付のうち、時短給付に関連するところの御意見でございますけれども、ひとり親世帯といったことも念頭に置きながら、夫と妻が時短勤務をするケースを1つの例示という形の記載にしております。また、育児休業からの早期復職や、育児休業を取得せずに育児のために時短勤務するような柔軟な働き方を推進する観点からも、時短勤務を選択した場合の給付の創設が考えられるのではないかということを、はっきり書くべきであるという御意見を踏まえて追記してございます。
 それから、その下の雇用保険のシステムで対応すべきかという部分の最初のポツでございますけれども、家族政策として捉えるということと、それを一般会計で賄うべきというところの間をつなぐロジックの補完が必要であるという御指摘を踏まえまして、こどもが生まれて成長していくことは、社会にとっても利便をもたらすある種の公共財として人口政策・産業政策といった側面もあるのでといった旨を追記してございます。
 それから、22ページの「おわりに」の部分でございます。雇用保険制度の趣旨・目的を整理していく中で、他の社会保障制度や政策との関係性にも目を配るべきであるといった旨を追記しております。
 また、その下のポツになりますけれども、今後、雇用政策的な色彩を強めていくのか、それとも制度をスリム化していくのかという議論の流れの中で、雇用保険制度全体を均質にスリム化するのではなく、基本的・根幹的な給付は現状を維持したまま追加的・派生的給付は充実させていく、もしくは逆のやり方もあるといったように、給付ごとにめり張りを付けるといった方向性もあり得るという旨を追記してございます。
 それから、23ページでございますけれども、EBPMに関連した記載でございますが、雇用保険にとって追加的・派生的な目的を有する給付については、必ずしも保険給付という形式で実施する必然性があるのかという意味で、政策目的を達成する手段としての適切性をより強く問われることになり、その適切性を検証するための手段としてEBPMによる効果検証の要請がより高まると考えられるという点。
 また、EBPMによる効果検証は重要ですけれども、業務統計や行政記録情報へのアクセスが難しいといった課題もあるので、業務統計の公開や公開手続の簡素化によって、研究者が研究しやすい環境を整備し、政策立案のための良質なエビデンスを収集することも重要ということを記載しております。
 それから、最後になりますけれども、国民にこの議論を共有していくということの意義。なぜそうしたことが必要かという部分を少し追記しております。どのように制度が運営されるかは、国民生活に直結し、企業活動にも影響を及ぼす。適切な財政運営がなされているかという点は、財政民主主義の観点からも議論が必要となるといった旨を記載しております。
 こちらの修正内容を全て溶け込ませたものが資料2となります。
 事務局からの御説明は以上でございます。
○尾田雇用保険課長 今ほどの事務局からの説明につきまして、それでは委員の皆様から御意見、御質問、もしくはこれまでの研究会における議論を振り返っての所感など、御発言をお願いできればと考えております。今回も名簿の五十音順でお願いしたいと考えておりまして、酒井先生から順次、御発言をお願いしたいと思います。
 それでは、酒井先生、お願いできますでしょうか。
○酒井委員 前回の議論を踏まえて、この整理(案)に反映してくださり、ありがとうございました。一段と分かりやすくなったと考えており、もう完成度が高いものとなっておりますので、特に申し上げるものはないと言いたいところですけれども、細かい点に関して、事務局としての見解を伺いたい箇所が1か所だけございまして質問させていただきたく思います。この中間整理(案)の13ページ目の2ポツ目、3ポツ目ですが、失業認定基準と適用基準が異なり得るというケース。
 私の報告の中でも、適用基準と失業認定基準が一致する限りにおいては、例えば適用拡大した場合に部分失業とかが対応しにくくなるのではないかといった議論をさせてもらったのですけれども、それに対して、適用基準と失業認定基準が異なる場合はどうなるのかという意見がございました。その文脈の中で、かつての短時間労働被保険者区分といった話が出てきたかと理解しているのですけれども、ちょっと確認させていただきたいのは、短時間労働被保険者の区分があった場合に、例えば一般被保険者から労働時間が短くなって短時間被保険者に変わった場合に、その時点で給付が出るという理解でよろしいのでしょうか。これは、私が理解していないので、教えてくださいという意味です。
 その上で、適用基準と失業認定基準が異なり得るというか、異なるような形で制度を運営するとしたら、かつての短時間労働被保険者区分のように区分分けしたような形で運営するしかないというか、現状ではそういうふうな制度整備しか考えられないと捉えてよろしいのかというところを、確認させていただきたく思います。
 これが細かい点の確認なのですけれども、その上で全体に関して少しだけ意見を述べさせていただきたいのですけれども、今回の中間整理(案)は、これまでの議論、委員から出た意見を取りまとめたものということで、非常に多様な意見が示されていると思います。それらの意見は、決して全て見解が一致しているものばかりではなかったかと思います。ですので、この中間整理(案)というのは、本当に様々な考え方があり得るのだということを示したものだと理解しているわけです。そうすると、この中間整理(案)が出た後、検討すべきことというのは、それぞれの意見にどれぐらいフィージビリティがあるのか、どれくらい本当に実現可能なのかというところを精緻に検討していくことが必要なのかなと思っております。
 あと、それに加えて、もう一点重要なことは、そういったことに関して、これはもちろん中間整理(案)の一番最後に強調されているところですけれども、国民に理解してもらうためにどういったプロセスを経ていくか。そこの検討も重要なのかなという気がしております。こういったことは基本的に労政審の部会で議論されますけれども、雇用保険制度の適用にしてももしそれを変えていくということであれば、これはすごく根幹的な議論というか、雇用保険制度を大きく変えていくことになるので、開かれた議論が必要なのではないか。そのプロセスの検討というのも、今後必要なのではないかと思いました。
 私からは以上です。
○尾田雇用保険課長 酒井先生、ありがとうございました。
○山口調査官 御質問に関する点でございますけれども、短時間労働被保険者の時代の運用の話でございますが、一般から短時間労働被保険者になったということは、労働時間が短くなったというケースのことかと思いますけれども、その場合、一般被保険者としては離職したと擬制いたしますが、直ちに短時間労働被保険者になるということでありますので、給付の受給ということは生じず、短時間労働被保険者として勤務を続けるという形になっております。
 適用基準と失業認定基準が異なる形で運用するとしたら、こういう区分を分けた上でやるしかないのかという点につきましては、これが1つの前例といいますか、1つのやり方ということで理解しております。実際、何時間を下回ったら給付が出るのか、また、どういった給付が出るのかということが、それぞれ区分ごとに違うということでありましたら、どこの区分として受給要件を満たしているかということをどうしても確認する必要が生じますので、こういった区分ごとに運用していくといった形にならざるを得ないのではないかというふうに現時点では考えております。
○尾田雇用保険課長 酒井先生、説明としては以上になりますが、よろしいでしょうか。
○酒井委員 短時間被保険者制度の区分というのが、失業認定基準と適用基準が異なっているケースとは若干腑に落ちない部分もあるのですけれども、だからこそ、今後よく検討していく必要があるのかなと現時点では感じております。ありがとうございました。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございました。
 それでは、佐々木先生、お願いできますでしょうか。
○佐々木委員 佐々木です。
 中間(案)をまとめていただき、どうもありがとうございました。私が修正依頼した箇所も適切に修正されておりますので、特にこの中間(案)について意見はありません。
 例えば14ページの、教育訓練給付や育児休業給付のような目的に合致する支援の枠組みを個別の制度として作っていくことも考えられますが、そうすることによって、現状と比べて財政上の安定性を欠いたり、運営行政コストが増加したりする可能性もあると述べており、今後の課題と書かれております。先ほど、酒井先生がおっしゃったように、いろいろな意見が出されて、これが今度、実現可能なのかを検討する際には、具体的に運営行政コストがどれぐらい必要なのか、どういう項目がコストとして該当し、そしていくらかかるのかという具体的な案、具体的なコストを算出していくことが今後重要と思います。
 ここでは、ざっくりとコストを考えなきゃ駄目だねという程度で終わっているのですが、今後、もっと具体的なコスト・アンド・ベネフィットを考慮することが必要なのかなと思いました。
 次に、これはちょっと細かいところですけれども、モラルハザードの定義に関することです。失業給付が受給できるために、失業状態から積極的に脱却しようとしないことがモラルハザードと解釈しております。正確に言うと、積極的に脱却しようと努力しているかどうかが、第三者から観察されないことが原因で生じるのがモラルハザードです。重要な点は情報の非対称性であって、失業者が一生懸命努力して失業状態から脱却しようとしていないから失業状態が長いのか、それとも景気の悪化などの他の要因によって失業状態が長いのかが、第三者から見て判別できないからこそ、失業者はコストである努力を払おうとしないわけです。
 あと、所感についてですけれども、今回、こういう形で研究会に参加させていただいて、一言で言いますと非常に勉強になりました。雇用保険体系については、ざっくりとしかあまり理解していなかったなということをつくづく感じました。今回、体系的に一つ一つのトピックを取り上げて皆様と議論を交わすというのは、私にとって非常に有益でありましたし、非常に勉強になりました。特に、第7回ぐらいの適用の話は非常に難しくて、一番勉強になったかなと感じています。
 私から、以上でございます。
○尾田雇用保険課長 佐々木先生、ありがとうございました。
 続きまして、土岐先生、お願いできますでしょうか。
○土岐委員 御説明ありがとうございました。中間整理(案)の取りまとめもありがとうございます。
 私から前回申し上げたことは反映していただいておりまして、特に新しくつけ加えることはないのですけれども、1つ、形式面で、ぱらぱらめくっていたときに気づいたのですが、見え消しの資料だと資料1の12ページで、そこはちゃんとなっているのですけれども、溶け込ませた後の資料2の11ページの最終行のところ、「収入で線引きすることも考えられる」の○は、多分、ここで1回改行なのかなと思います。修正がされているほうで見ると改行が入っていたと思うので、これをつけ加えさせていただきます。
 最後に、所感というか、感想めいたことになるのですけれども、先ほど先生方お二人からもお話がありましたけれども、多分、今後のことを考える上では、いろいろ選択肢があり得ると。アプリオリにこうだからこうと決まるものではないので、できるだけ何でそういう選択を取ったのかということをきちんと説明できるようにしながら考えていくことが大事だろうということが1つございます。
 それから、私もこの種の研究会に参加させていただくのは初めてで、非常に勉強になりました。雇用保険制度の給付を一通り検討してきて思いますのは、これもそう簡単に結論が出る話ではないのですけれども、きっちり制度の根幹が何であるかということを考えながら、そこから最低限やらなければいけないこと。それから、最低限実施しなければいけないわけではないけれども、実施することが適切であるもの。それから、そもそも実施すべきことが適切でないものとしっかり区分けしながら考えていかなければいけないのかなということですね。
 それから、制度の根幹に位置づけるべきものは何かということも、働き方の多様化であったり、労働市場の変化によって、どんどん変化していくということがあるので、昔の議論であったり、縛りつけられる形ではなくて、不断に見直しをしながら考えていかなければいけないのだろうなということを改めて感じました。私自身も引き続き考えてまいりたいと存じます。
 すみません、ありがとうございます。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございました。
 続きまして、水島先生、お願いできますでしょうか。
○水島委員 山口さん、御説明ありがとうございました。また、事務局におかれましては、前回の研究会から短い期間で修正の最終調整を行っていただき、ありがとうございました。委員の皆様の多様な意見を反映いただいた、すばらしい中間整理(案)になっていると思います。
 細かいことで大変申し訳ないのですけれども、2点、気になった箇所があります。
 1つは、15ページの(イ)の最後の○の、上から2行目、「日本のように給付制限の無い失業扶助制度が存在しない状態で」とあります。この給付制限は、文脈から、給付日数に制限がないという意味と理解したのですが、もしそうであるならば、雇用保険で給付制限は別の意味でも用いられますので、「給付制限の無い」という文言を削除してはどうかと思いました。失業扶助制度が無いことを述べているだけのように思いますので、「給付制限の無い」という文言を削除しても内容に影響しないと考えます。
 もう1か所は、16ページ(ハ)の冒頭の、「かけこみ就職を防ぐため」です。趣旨はもちろん理解していますけれども、これを、失業給付が切れた時点で見た場合、失業を続けずにかけこみ就職をすることは、むしろ必要な行動ですので、少し表現の工夫が必要と思いました。要は、かけこみ就職自体を防ぐというより、そうした事態にならないようにということだと思います。ですから、「早期に就職するため」といった文言追加が考えられると思いました。
 いずれも内容に影響するものではございませんが、すみません、申し上げさせていただきました。
 この研究会に対する所感ですけれども、本研究会では約1年間、雇用保険制度について再確認し、検討し、様々な議論をさせていただきました。毎回、豊富な資料を準備いただき、臨時委員の先生方を含め、多くのプレゼンの機会を設定いただき、さらには現地視察をアレンジいただいた事務局の皆様に心から御礼申し上げます。そして、事務局の皆様が的確に、計画的に御準備いただいたおかげで、われわれ委員も意見も出しやすく、議論が深まったと思います。
 ハローワーク梅田の現地視察で、失業認定や職業紹介、職業相談の現場を見ることができたのは、貴重な機会でしたし、本当に多数の質問にもお答えいただきました。ハローワーク梅田の皆様、そして同席いただきました大阪労働局の皆様にも感謝申し上げます。
 そして、本当にすばらしい経済学者、法学者の先生方の御意見を直接伺い、また直接質問できたことは大変有意義でしたし、非常に勉強になりました。先生方にも御礼申し上げます。
 この研究会は、他の審議会の場などとは異なり、政策の方針が決まった上での制度設計の議論をするとか、あるいは政策の方針を決めるための議論とか、そういうものではなく、政策の方針とは、いわば少し距離を置いて自由に意見を述べさせていただけたように思います。恐らく、他の先生方もそうであったと思いますが、だからこそ、経済学者、法学者の先生のお考え、御意見をアカデミックに伺うことができましたし、雇用保険制度の根幹、また本質的な役割について再確認・再検討ができました。このような機会をいただいたことに本当に感謝します。
 また、委員の先生方、そして事務局の皆様の多大な御尽力によりまして、この中間整理が取りまとめられたことに敬意を述べるとともに、この中間整理が様々な場で議論の役に立つことを強く期待いたします。
 これは中間整理ですので、まだこの先があると期待しています。さらに議論の機会があれば、私自身、うれしく思います。本当にありがとうございました。
○尾田雇用保険課長 水島先生、ありがとうございました。
 続きまして、山川先生、お願いできますでしょうか。
○山川委員 中間整理(案)を適切に取りまとめていただきまして、大変ありがとうございます。私としては、特段、今回追加すべきことはありません。
 この中間整理(案)と研究会の議論全体を通じて考えたといいますか、この問題を考えるときの大きな視点は2つあるような気がしまして、1つは、保険システムとしての雇用保険制度の特殊性ということです。つまり、労災とか医療とか、いろいろな保険制度が社会労働保険にあるのですけれども、その中で雇用保険はやや特殊で、特に保険事故をどう考えるかということがあるような気がしまして、これはいわば内在的な観点として、雇用保険の保険システムとしての特殊性というものが1つ浮かび上がったように思います。
 前回、禅問答的なことを申し上げましたけれども、大学時代に、たしかカール・ポパーですか、社会科学は、社会統制という言葉はあまり好きじゃないですけれども、要するに社会統制はソーシャルエンジニアリングだという話がありまして、多分、雇用保険も含めて保険システムというのは、1つの物理法則のようなものではなくて、ある種の社会統制の技術ということになるのではないかということを感じた次第です。そこで、事項に応じた保険システムの特殊性を考えるということが必要ではないかと思いました。
 もう一つは、外在的と言っていいかどうか分かりませんけれども、労働政策とか社会保障政策、さらに経済政策における雇用保険制度の役割は何かということで、これが今、非常に問われている部分ではないかと思います。この辺りは、財政とか、フィージビリティの問題とか、それから政治的な、政治的なというのは、民主主義のことを考えると、別に政治的な要素が入っていけないということは全くないわけですけれども、そういう要素もいろいろ考えながら検討すべきだということがあるのではないかと思いました。いずれにしても、その際にもこのような検討は非常に重要ですし、必要になることだと思いますので、非常にいい機会であったと私は思っております。
 以上です。
○尾田雇用保険課長 山川先生、ありがとうございました。
 それでは、渡邊先生、お願いできますでしょうか。
○渡邊委員 中間整理(案)の取りまとめ、どうもありがとうございました。短時間にもかかわらず、とてもすばらしい出来ではないかと思っております。
 私のほうからは、簡単にこの研究会に参加させていただきました所感を述べさせていただきたいと思います。研究会で議論してきました内容というのが、今回、この中間整理(案)としてまとめられたのですが、これからさらに議論・整理を深めていかなければならない点というのが、一定程度、これによって明らかになったと思っております。そのような点については、個人的には、一研究者として真摯に今後、取り組んでまいりたいと思っています。
 また、実際に今後、どのような形で雇用保険制度の整備というものが進んでいくかといった点については、まだよく分かっておりませんが、その整備をしていくに当たりまして、今回の中間整理(案)の最後にも記載がございますように、その制度の果たしている役割というものが、国民に広く共有されて理解とか納得を得られることが非常に重要だと考えております。人々の働き方というのも多様化しておりますし、社会のありようも変化してきております。それらの変化に対応しつつ、国民生活の安定というところで制度というものがきちんと成り立つようなことを願っております。
 最後に、これまでの研究会において、この雇用保険制度の抱える問題点とか課題について、委員の皆様の御意見を広く伺うことができ、そして議論に参加する機会を賜りましたこと、改めて感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 以上でございます。
○尾田雇用保険課長 渡邊先生、ありがとうございました。
 皆様から一通り御意見をいただきましたが、追加で他にこの場で御発言を希望される先生はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、本日、委員の皆様から中間整理(案)につきまして、様々な御意見等いただきましたが、基本的な方向性につきましては、本日の案におおむね御了解いただけたのではないかと思っております。本日いただいた御意見も反映させた最終的な中間整理につきましては、山川座長と事務局で相談させていただきまして、追ってプレスにて公表することにさせていただきたいと思っておりますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○尾田雇用保険課長 ありがとうございます。それでは、そのような形にさせていただきたいと思っております。
 それでは、ここで田中職業安定局長より御挨拶をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○田中職業安定局長 職業安定局長の田中でございます。中間整理の取りまとめに当たりまして、一言お礼を申し上げたいと存じます。
 本研究会におきまして、昨年5月から本日を含めて、実に9回にわたって、また現場視察も含めて大変熱心な御議論をいただき、本日の中間整理の取りまとめに至りましたこと、本当に先生方の御尽力、また御参画に心から御礼を申し上げます。
 雇用保険制度は、長年、私ども、運営してきておりますけれども、時々の社会経済情勢の変化に密接に結びついている制度でありまして、時代の要請に応じて累次の制度改正を重ねてまいりました。一方で、その時代の変化にかかわらず、雇用保険制度の目指している基本的な思想・理念といったものをしっかりと押さえた上で、時々の具体的な制度設計をしていかなければならない。
 それが、変化の中でも、制度としてのしっかりとした継続的な安定した運営につながるのではないかと思いますし、今回、まさにかなりしっかりとした形で、1年間にわたり、その基本的な部分について、実際の運用なども把握しながら御議論いただいた。その考え方、これはもちろん様々な捉え方がありますし、多様な見方がある中で、今回のような形で取りまとめることができたということは、本当にありがたい、貴重な機会であり、貴重な御報告ではないかと思っております。
 雇用保険制度、振り返りますと、平成に入ってからかなり大きく中身が変わってきております。適用の問題にしても、週33時間から22時間、20時間へと平成の初めに大きく拡大しました。その後は、給付の面でも、平成6年には育児休業給付、高年齢継続給付、10年には教育訓練給付といった形で、様々な給付を付加して、雇用の総合的なセーフティネットとしての性質を高めてまいりました。
 さらに、二事業につきましては、附帯事業ではありますけれども、我が国の雇用政策のまさに中心的役割を担うということになってきまして、実際にリーマンショック、それから今回のコロナ禍においては、雇調金制度の弾力的運用も通じまして、雇用のセーフティネットとしての役割を果たすということになってまいりました。
 ただ、雇用保険制度は、その基本的な設計が典型的な正社員を前提として、その就職・離職というところをモデルにしながら、若干の多様性への対応という形でやってまいりましたけれども、今後の働き方の多様化、働く意識の変化を考えますと、その点について、より具体的な検討を進めていく必要があるのではないかと思います。引き続き、基本的な思想をしっかりと押さえて、足らざる部分をもう少し検討・整理しながら、こうした新たな時代の雇用のセーフティネットとして、どのように再整備をしていくかということ、こういった未来に向かっての視点もしっかりと持って対応していきたいと思います。
 ただ、多様性の対応については、言葉にするのは容易なのであり、今回もいろいろ議論していただきましたけれども、技術的な側面も含めて大変難しい部分がございます。就業状態・失業状態の二分法を前提に適用・給付ということを行ってきた制度ではありますけれども、それではなかなか対応できない。短時間就業とか部分就業といった概念も、制度上、取り扱うことがだんだん必要になってくるのではないかということ。また、そういう制度論だけではなくて、実務的にもかなりの困難性・複雑性を伴う世界が待っているような気もいたします。
 一方で、制度として、先ほどありましたけれども、国民の皆さんに理解していただき、分かりやすい制度にもしないといけないということで、二兎を追うことになります。制度運営の責任を持つ役所として、そこをよく考えながら対応していきたいと思います。
 先生方、今日も大変重要な点について御指摘をいただきました。被保険者区分と失業認定の関係は、旧来から必ずしも明確なところではありません。ただ、先ほど申し上げましたように、部分就業とか、そういったものを取り扱う場合には、かなりしっかりと議論しないといけないことではないかと思います。
 それから、総合的なセーフティネットとしての機能を雇用保険制度が高める一方で、そこに入らない部分については、今、求職者支援制度など、個別の第2のセーフティネットで対応してまいりました。雇用のセーフティネットは雇用保険制度だけではありませんので、セーフティネット全体の中での総合的な雇用保険制度の在り方、適用範囲といったものをきちんと議論していかないといけないだろうと思っております。
 いずれにしましても、雇用保険制度が単独で存在しているわけではなく、様々な政策あるいは制度、環境の中で生きた制度として取り扱っていかないといけない、進展させていかないといけないという部分があります。今回いただいた中間整理の内容をしっかり受け止めて、どのような状況にあっても雇用保険制度の本質や立ち返るべき視点を見失わないように、今後の制度運営に生かしていきたいと思います。
 最後になりますけれども、改めて今回の精力的な御議論に感謝申し上げるとともに、今後もさらにこの議論を深めていくためのお力添えを委員の皆様にはお願いさせていただき、私の御礼の御挨拶といたします。大変ありがとうございました。
○尾田雇用保険課長 田中局長より御挨拶申し上げました。
 それでは、これまでの議論を踏まえまして、山川座長、恐縮ですけれども、総括的な御発言をお願いできればと思っております。お願いいたします。
○山川座長 ありがとうございます。先ほど追加の発言はないと言いましても、お礼を申し上げておりませんでしたので、そういう観点から少しだけ申し上げたいと思います。
 今、新しいことを考えるべき時代なのですけれども、つくづく新しいことを考えるときほど根本に遡ることが必要だということを実感した次第です。その意味では、実態とか歴史を遡って検討することを、しかも、ある程度長い時間、研究会を設置していただいたということは大変ありがたかったと思います。
 また、議論の中でも、委員の皆さんから非常に充実した議論をいただきました。また、水島先生も先ほどおっしゃられたように、ゲストスピーカーの方からも非常に有益なお話をいただきましたので、ぜひお礼をお伝えしてほしいと思います。
 それから、これも想像なのですけれども、事務局の皆さんが非常に立派な、しかも有益な資料、雇用保険でこれまでの資料、基礎的・根本的なものから歴史的なことまで、実態まで踏まえた資料というのは、正直、見たことがありません。ということで、大変お礼を申し上げたいと思います。また、想像ですけれども、事務局の皆さんも、この研究会の準備をしていて、楽しかったのではないか、充実していたのではないかと思います。お役所の中でも、こういう基礎的なことを考えるということは、私個人としては大変重要だと思っておりますし、先ほどの田中局長の御挨拶も大変熱が入っている私は感じたところで、力の入れ方が非常に分かったということがございます。
 いろいろ難しい点もあろうかと思いますけれども、今後ともよろしくお願いいたします。どうも皆様、ありがとうございました。
○尾田雇用保険課長 山川座長、ありがとうございました。
 今回の研究会につきましては、私ども事務局といたしましても、先生方の貴重な御意見をいただいて、雇用保険制度の役割・現状について振り返る貴重な経験となりました。本当にありがとうございました。
 本日は、誠に活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。これをもちまして本日の研究会は終了させていただきます。委員の皆様におかれましては、9回にわたり御議論いただきまして誠にありがとうございました。