第4回新しい時代の働き方に関する研究会 議事概要

労働基準局労働条件政策課

日時

令和5年4月21日(金)16:00~18:00

場所

航空会館501+502号室

議題

企業からのヒアリング

議事概要

議事内容
1 A社(製造業/従業員数 約7000名)
 
○一人一人が持てる仕事能力を最大限に発揮し、個々人の総和が強い組織をつくり出し、事業戦略や組織目標が実現され、個々人と会社の成長を生み出している状態を2030年のありたい姿として設定している。
○経営人財の育成については、グローバルリーダー候補となるような人財を全世界、各カンパニー、各地域で見つけ出し、計画的に育成していくことをグローバルで統一して取り組んでいる。グループ経営上極めて重要なグローバルトップポジションを定め、それぞれについて後継者候補をリストアップしている。また、各部門の重要なポジションについても、後継者計画を策定し、この中で特に優秀な人材については、グローバルリーダーの候補者予備軍としてリスト化している。
○グローバルトップポジション毎の経験要件を定め、後継者計画のリストにある人たちにどういう順番でどういう経験をさせていくかというようなことを議論している。
○育成の中核はストレッチアサインメントによる成長。それを補うものとしてグループ・各地域ベースで研修プログラムを用意して行っている。
○従業員エンゲージメントは、「意欲高く働く個人」と「より良い組織風土を醸成する会社」が一体となってともに成長し、貢献し合う関係と位置づけ、2005年から調査を実施。
○エンゲージメント調査の結果は、グローバル全体で見ると、日本法人が低い傾向にある。
○エンゲージメント調査の結果が出た後は、それぞれの部門で結果を持ち帰り、何が悪かったのか、何が良かったのか、どういうことをやったらもっと良くなるのかというのを、小グループで率直に議論をし、それぞれの部門で対策を打っている。
○ジョブグレード制を取り入れており、一定のジョブサイズ以上についてはグローバルで本社、コーポレートトップの承認マターという形で運営をしている。
○従来、報酬については慣習としてある程度定まった方法で運営していたが、グローバルでの報酬ポリシーを策定した。ベンチマークの手法や報酬構成、決裁権限の考え方を整理している。基本的には雇用地主義で報酬を決めている。
○ダイバーシティについては、昨年ダイバーシティ・カウンシルを設置し、グローバル、グループ全体で目標設定をして取り組んでいる。執行役員の個人目標などにもダイバーシティに関する項目を設定するなど、女性役員、執行役員数の目標などを外に対しても発表して取り組むようにしている。
○ダイバーシティ人財の雇用の上での課題としては、女性技術者の比率向上が課題となっている。
○グローバル人財の採用という意味では、報酬水準の問題もある。一部のポジションでは従来の報酬体系の中では吸収し切れなくなっており、幾つかの特定のポジションについては特例的な措置をせざるを得ない状況。よりジョブ型的な取扱いが強くなっている。
○足元の日本での課題として捉えている1つは、コロナ禍により、リモート勤務など新しい働き方へ意識が変化してきたということ。今まで在宅勤務制度はあまり利用されていなかったが、現在はかなり在宅勤務の利用率が高くなっている。
○一方、工場の製造現場ではコロナ禍でもほぼ100%出社ということもあり、今回のエンゲージメント調査でも工場の技能職メンバーのエンゲージメントのスコアは顕著に悪化した。待遇の格差については、労働環境の整備や、手当等の支給によって改善に努めている。
○もう一つ課題として捉えていることはキャリア意識の変化への対応。配属勤務地や転勤が退職の理由になる時代になっており、丁寧な事前のコミュニケーションや配慮はしていても、現実問題として人繰りに苦慮する場合が出てきている。
○キャリア自律という考え方をする社員も増えてきている。もともと従業員がトリガーを引く異動の制度として人財公募や職務エントリーという仕組みがあったが、これに加えて2年前から社内副業制度というものを入れた。これは自分の時間のうちの2割を社内の別の仕事に割り当てることができるという仕組み。最初はトライアルで始めたが好評だったため今年から公式化。
○転勤を前提としたキャリアデベロップメントに対して、否定的な見方をする学生の数が増えてきおり、初任の拠点の場所が内定辞退の理由になってきている。
○もともとキャリア採用は非常に少なかったが、ここ3年はキャリア採用のほうが多くなっている。
○製造業の勤務形態の問題として、三交代勤務そのものが忌避されるようになってきていて、高卒等の確保が難しくなっている。
○60才以上の雇用形態については、65歳定年制、原則60歳で役職定年、ポストオフとなっている。価値観が多様化していく中で、年齢で切ってしまうのもどうかということで、方向性としては段階的にポストオフそのものを廃止し、65歳まで同一の制度を維持。一方、会社側とニーズが合えば短時間勤務や負荷の軽い業務への雇用形態の変更などもできるような形にしていこうとしている。適材適所が徹底出来る仕組みを考えることが課題。
○トップマネジメント層が、各拠点の様座な階層の社員と直接、会社の方向性や戦略を自分の言葉で語るなど、現場とのコミュニケーションや対話を重視するようになってから業績も右肩上がりとなった。
○今の経営人財の要件の中に海外での経験や複数事業の経験が入っており、ここは譲らないポイントだと考えている。本社でしか勤めたことがないという人をそういうポジションに上げていくということはあまり考えにくい。
○絶対転勤したくない人はスペシャリストとしてのキャリアは描けると思が、ジェネラルなマネジメントポジション、グループ全体を引っ張っていくようなリーダーシップポジションという意味では難しい。
 
2 B社(情報通信業/従業員数 約50名)
 
○全国各地の社員がリモートワークを行っているため、通勤しない働き方を実現している。また、一人一人がセルフマネジメントで働いていくことを前提とした、管理のない会社経営を行っている。
○オフィスは社員同士のコミュニケーションのために必要だと考えている。コミュニケーションのためであれば、フィジカルである必要はないため、物理的なオフィスを辞め、バーチャルワールドにオフィスを作り、ログインするだけで出社できる仕組みをつくった。
○個人で働いているふうに思われがちだが、チームワークやコミュニケーションを大事にして働いている。チームに必要なのは時空であり、時間と空間が同じ場所にいること。チームを作る際の空間は、フィジカルではなくバーチャルでもいいのではないかと考えており、それを提供するのが仮想オフィスだと考えている。
○リモートワークを行う際は、申請も理由も不要。いつでも誰でもリモートワークをし、全員が離れて働くことが日常となっている。
○勤怠管理に関しては、コンピューターでバーチャルオフィスに出社した際に、自動的に勤怠状況を記録する仕組みになっている。リモートワークで働かなさ過ぎということを不安視される声が多いが、そんなことはなく、どちらかというと働き過ぎが心配なので、記録が残る仕組みにしている。
○健康管理に関しては、健康診断を受診し、過重労働にならないよう、マネジメントが必要な人には管理職が見ることにしている。
○リモートワークが出来る前提として、コンピューターパソコンで仕事をするというのが大前提にある。
○繰り返しがない仕事をしているため、徹底的なマネジメントをして管理をして仕事をさせるというよりは、セルフマネジメントのほうがよい。セルフマネジメントの人たちがどこで働くとかは、これもセルフマネジメントいうことで働く場所も自由にさせている。
○「働きがい」と「働きやすさ」は全く違うものだと考えている。「働きやすさ」がある状態をどうやったらつくれるのかということを追求した結果、リモートワークに取り組んできた。
○リアルと仮想オフィス、どちらが良いか社内アンケートをとった結果、状況把握や情報の伝達は圧倒的にバーチャルのほうがいいという声が多く、一方で「雑談・相談」「ちょっとした声がけ」はバーチャルもリアルも遜色なく出来ている結果となった。
○コミュニケーションをしやすくするためには、リアルで会うことが大事だと考えている。そのため、社員の数人が集まって3か月から半年に1回合宿をしてみんなで集まって仕事をする、疑似オフィス体験を行っている。リアルで集まることで、お互いのことを知れたりして、オンラインになってもコミュニケーションが取りやすくなる。
○人材育成については、完全リモートワークではなくなってきている。リモートワークだと自由に働くことが出来る一方、誰ともコミュニケーションを取れない。仕事中はバーチャルで会話できるけれども、終わった後は1人になってしまう状況は辛いと考え、若手社員のために物理的なオフィスを作った。
 
 
(以上)