2022年12月2日 薬事・食品衛生審議会 血液事業部会 議事録

日時

令和4年12月2日(金)16:00~

出席者

出席委員(20名)五十音順

 (注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(1名)
日本赤十字社 血液事業本部
行政機関出席者
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  渡辺顕一郎(血液対策課長) 他

議事

○渡辺血液対策課長 ただいまから、薬事・食品衛生審議会薬事分科会令和4年度第1回血液事業部会を開催させていただきます。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。本日は、お忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。この度、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。
 続きまして、委員の出欠状況についてお知らせいたします。野村委員から御欠席との連絡を頂いております。岡田委員、長村委員は遅れて参加されるということです。なお、本日の部会は、現時点で委員21名中18名の御出席を頂き、定足数に達しましたので、薬事・食品衛生審議会令第9条により、本部会が成立しましたことを御報告申し上げます。
 次に、今般、委員の交代がございました。人見嘉哲委員が新たに委員に就任されましたので、御紹介いたします。人見委員、一言御挨拶いただけますでしょうか。
○人見委員 新たにお役目を拝命いたしました、北海道庁技監の人見と申します。是非よろしくお願いいたします。
○渡辺血液対策課長 よろしくお願いいたします。また、三谷絹子委員が新たに委員に就任されましたので、御紹介いたします。三谷委員、一言御挨拶いただけますでしょうか。
○三谷委員 獨協医科大学の三谷でございます。今回より、血液事業部会の委員を拝命いたしました。数年ぶりのカムバックでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○渡辺血液対策課長 どうぞよろしくお願いいたします。本日は、日本赤十字社血液事業本部から、佐竹正博中央血液研究所長、前野節夫副本部長、皆川信也経営企画部次長、松田由浩経営企画部次長、後藤直子技術部次長にお越しいただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、事務局に人事異動がございましたので、御報告いたします。血液対策課課長補佐の仲島昌司です。同じく課長補佐の有田創です。需給専門官の吉田浩介です。この3名が新しく加わりました。よろしくお願いいたします。
 続きまして、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。
また、薬事分科会審議参加規程に基づき、各委員の利益相反の確認を行いましたところ、岡田委員、松下委員、三谷委員から、関連企業より一定額の寄附金・契約金などの受取の報告を頂いておりますので、御報告いたします。
 議題1に関しては、岡田委員、松下委員につきましては、意見を述べていただくことは可能ですが、議決には加わらないこととさせていただきます。ほかの委員については、対象年度における寄附金・契約金等の受取の実績なし、又は50万円以下の受取であることから、特段の措置はございません。
 議題2に関しては、松下委員につきましては、本規程に基づきロビーで待機していただくこととなります。また、岡田委員、三谷委員につきましては、意見を述べていただくことは可能ですが、議決には加わらないこととさせていただきます。ほかの委員については、対象年度における寄附金・契約金等の受取の実績なし、又は50万円以下の受取であることから、特段の措置はございません。
これらの申告については、ホームページで公開させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
 議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いいたします。タブレット上にマル1議事次第からマル6資料3までのPDFファイルが表示されているか、御確認ください。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。タブレットの使用方法については、お手元の「ペーパーレス審議会タブレット操作説明書」を御覧いただき、御不明な点がございましたら、事務局までお声掛けください。
 本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる場合がございます。審議の進行方法について御説明いたします。審議中に御意見、御質問されたい委員におかれましては、まず御自身のお名前と、発言したい旨を御発言いただきますようお願いいたします。その後、部会長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、御発言ください。ノイズを減らすため、御発言が終わりましたら、マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度、皆様の発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は部会長からお願いする場合があります。その際、記入されたメッセージに応じて、部会長より発言者を御指名いただきます。また、本日のWeb会議に際し、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてはマスクを着用したまま説明させていただく場合がありますので、御了承ください。
 まもなく議事に入りますので、カメラの頭撮りはここまででお願いいたします。この後の進行については、半田部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○半田部会長 皆様、こんにちは。本日用意された議題は3題で、最初の1題目が議決を要する案件でございます。
議題1「令和5年度の献血の推進に関する計画(案)について」です。本日は当該計画案について、11月30日付けで厚生労働大臣から薬事分科会に諮問がなされておりますので、本部会で審議させていただきたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
○仲島課長補佐 議題1「令和5年度の献血の推進に関する計画(案)について」、説明させていただきます。資料1-1から資料1-2を用いて御説明いたします。まず、資料1-1の1ページを御覧ください。「令和5年度の献血の推進に関する計画(案)について(概要)」としております。1.は趣旨です。安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律、いわゆる血液法ですが、第10条第1項の規定に基づき、厚生労働大臣は、毎年、翌年度の献血の推進に関する計画を定めることとされております。このため、今般、令和5年度の献血推進に関する計画を定めるものです。
 2.は内容です。血液法第10条第2項で、計画に記載する項目が定められております。第1として、当該年度、令和5年度ですが、献血により確保すべき血液の目標量、第2が献血に関する普及啓発と目標量を確保するために必要な措置に関する事項、第3がその他献血推進に関する重要事項です。
 今回、令和5年度の献血の推進計画を定めるに当たって、トピックスとしては、第2の事項、普及啓発に関する事項において、献血セミナー等をきっかけとして献血に関心を持った献血未経験者に、採血事業者が提供するラブラッドへの登録の働きかけについて、追記させていただきました。今まで、たくさん普及啓発を実施してきましたが、若年層の行動変容については、ちょっとしたきっかけから興味を持っていただくことが大切だと思っております。その興味に対して、簡単に接することができることがよいのではないかと思っております。このラブラッドについては、今回スマートフォンアプリになりまして、普及啓発を進めたい若年層の方々は特にスマートフォンを使われていると思いますが、今までの普及啓発活動を通して興味を持たれた未経験者の方が、その取組を加速させるために役立つのではないかと追加させていただきました。今回、皆様方に御審議いただきまして、お認めいただけましたら、来年の2月下旬に告示し、4月1日から適用となります。
 資料の説明を先に進めます。4ページを御覧ください。諮問書がございます。その後に、計画を添付しております。さらに、15ページから新旧対照表を御用意しております。この新旧対照表を用いて御説明いたします。
 左側が令和5年度の推進計画(案)です。下線部が改正部分です。第1の令和5年度に献血により確保すべき血液の目標量ですが、献血により確保すべき血液の目標量は、赤血球製剤が昨年度より1万L多い52万L、血漿製剤が1万L少ない25万L、血小板製剤は昨年と同様の17万Lの見込みとなっております。また、確保すべき原料血漿の確保量を勘案すると、全血採血による135万L、成分採血による85万L、その内訳として、血漿成分採血が54万L、血小板成分採血が31万L、合計で220万Lの血液を、献血により確保する必要がございます。
 主な増減として、少子高齢化の影響で、高齢者の医療として赤血球製剤の需要が増えてきていることから、全血採血による量が増えていること。また、医療技術の進展により、血漿製剤の減少需要があるということで、血漿成分採血へ影響しているものと聞いているところです。
 17ページを御覧ください。第2の「献血推進のための施策」の「(1)普及啓発活動の実施」です。全国的なキャンペーンの実施になりますが、「愛の血液助け合い運動」の行事として、来年度は千葉県において実施予定としております。20ページを御覧ください。「(ウ)献血セミナー等の実施」になります。下線部が、先ほど御説明したラブラッドの働きかけについて追記した部分です。
その他になりますが、「第3 その他献血推進に関する重要事項」で、引き続き同様の取組を記載しております。
4の献血推進についても、国や採血事業者だけではなく、地方自治体や協力いただいているボランティア団体等の皆様の御協力なくしてはできないものと認識しておりますので、引き続き記載させていただいているところです。資料1-1は以上です。
 続いて、資料1-2を御覧ください。令和5年度の推進計画に対する意見募集の結果について御紹介いたします。今回、当該計画の審議前、11月15日から11月29日まで募集したところ、5件の提案がございました。うち1件については、今回の献血推進計画に直接関係のない事項でしたので、4件について御紹介させていただきます。
 まず、1番になりますが、献血の際の血液が偽陽性であり、それ以降は献血が受けられないことになりましたが、地域の健康診断では陰性だったというものです。その今後についての意見でした。献血推進計画の血液製剤の安全性を向上させるための対策の措置に関する御意見で、善意の献血者の協力を得てというところです。難しい問題ですが、日赤と調整させていただいて、回答を今後考えていきたいと考えているところです。
 同様に血液製剤の安全性の向上としては、3番に問診等の虚偽記載への対応、静脈認証等の提案等もございました。導入等について、その可能性等も今後日赤と調整して、検討、回答をしていくことになると考えています。
 2番目、3番目に、キャンペーン等での記念品等の転売に対する提案もございました。善意で行われている献血ですので、それを換金していると思われるような行為でもあると考えております。この件についても、日赤とともに検討させていただいて、対応を考えていきたいというところです。
 このほか、企業等における献血への取組の推進として、そもそも献血は社会貢献であって、ボランティア活動であるということで、ボランティア休暇を導入するよう働き掛けて、官民併せての推進とする提案等もなされております。こちらについては、厚生労働省の関係部局の所掌となっております。適切な機会に、こちらの件について情報提供させていただければと考えております。
 このほか、採血所の環境整備や献血の推進に際して考慮すべき事項として、血液検査の健康管理サービスの充実、献血者の意思を尊重した採血の実施等に関する提案がございました。これらについても、貴重な御意見ですので、日本赤十字社とともに検討させていただいて、誠意をもって回答させていただければと考えているところです。
説明は以上になります。御審議よろしくお願いいたします。
○半田部会長 ただいまの説明について、委員の方々から御意見、御質問等はございますでしょうか。
○高橋委員 パブリックコメントの話についてです。回答案が出されていて、どのように反映させるかを今後検討されるとのお話でした。どういう形で、その検討結果をお示しになる御予定なのでしょうか。パブコメの対応と、その後の検討の対応とがよく分かりませんでした。お教えいただければ有り難いと思います。
○半田部会長 事務局からお答えいただけますか。
○仲島課長補佐 まず、検討の段階は表に出ることはないと思うのですが、最終的には決裁等をとらせていただいて、厚生労働省のホームページで公表させていただいて、そういう意見があったことに対する御回答を周知させていただくことになっております。
○高橋委員 重ねてですが、本日頂いたものは、パブコメに対する正式な回答ではないということでしょうか。
○仲島課長補佐 こういうパブコメがあったという御紹介ということでして、回答と言うより、今後こういう形で検討させていただきたいという方向性を御説明しているところです。
○高橋委員 正式な回答ではないということであり、回答の方向性をお示しいただいたということですね。分かりました。では、そういう取扱いでよろしくお願いします。
○半田部会長 追加なのですが、そうすると、この意見というのは、将来の計画(案)には反映される可能性が出てくるということですか。高橋委員の趣旨もそうだと思うのですが、どういう形で将来に反映されるのでしょうか。今回は、当然無理だということだと思うのですが、いかがでしょうか。
○仲島課長補佐 この頂いたパブリックコメントに対しては、実施可能か否かのところは検討することになってくると思います。それで実施可能ということであれば、そこは実施していくということで、後々反映されてくるものもあるのではないかと考えているところです。
○半田部会長 ほかに委員の方々、御質問あるいは御意見等はいかがでしょうか。
○岡田委員 パブコメの1番ですが、偽陽性であるから献血を受け付けないということが書いてあるのですが、偽陽性ということで献血者に検査結果を伝えるのでしょうか。
○半田部会長 今の岡田委員からの御質問については、日本赤十字社からお答えいただけますか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 御存じのように、偽陽性なのか陽性なのかというのは最後まで分からないことです。ですので、通知を差し上げる際には偽陽性の可能性もありますが、まれながら可能性としては陽性ということもあるということを追記してお知らせしております。
○岡田委員 分かりました。
○半田部会長 ほかに何かございますか。
○武田委員 今、事務局からも御説明がありましたが、この回答案は最終的な回答ではないということで承りました。もう少し詳しくと言うか、特に1番の方については、偽陽性なのかどうなのかという難しい面もはらんでいるかと思いますので、もう少し丁寧に御回答していただきたいと思います。全体にわたってですが、きちんと皆さんの御意見を踏まえて、できるところと難しいところと、そういったことを理由を含めて回答いただきたいと思います。
○半田部会長 薄井委員、どうぞ。
○薄井委員 計画書の15ページの御説明について、キャッチアップできなかったのでもう一度お願いしたいと思います。表の第1の令和5年度の献血確保の目標量ですが、先ほどの御説明ですと、血漿成分については、医療技術が進んできているので、令和4年度の62万Lから54万L、赤血球については全血採血は高齢者の赤血球のニーズが高いから、2万L増やして135万Lというように御説明があったのですが、成分採血は、令和5年度は93万Lが85万Lとかなり低く設定されています。この点について、どうしてこのようになるのかもう少し教えていただけますか。
○半田部会長 成分採血が93万Lから85万Lに低下しているということ、全血が2万L増えています。その理由は何かという御質問です。
○日本赤十字社前野副本部長 血漿成分献血については、原料血漿として採血させていただく部分と、輸血用の成分由来の血漿ということで採血させていただく場合がございます。来年度の原料血漿の確保量が220万Lということで、多少、成分献血の御協力がなくても届けられるということと、原料血漿については、輸血用血液製剤の部分からも原料血漿に回せる部分がございます。赤血球製剤が多少供給が伸びること、一方で、輸血用に使われる血漿製剤の需要見込みが下がるということですので、全体として成分献血で確保すべき血漿量が下がってきますので、この量の減少ということになってございます。
○薄井委員 ありがとうございました。
○半田部会長 ほかに委員の方から御発言はありますでしょうか。当該計画(案)については毎年更新していまして、ほとんどがマイナーチェンジで、今回はラブラッドをスマホベースで登録できるというのが、一番の目玉かと思います。いかがでしょうか。ほかによろしいでしょうか。
 それでは、本議案は議決を要します。当該献血推進計画(案)について、適当であると認める旨、ここで議決をさせていただきたいと思います。なお、岡田委員、松下委員は、議決には加わることはできません。委員の皆様、当該計画(案)について、お認めいただけますでしょうか。
 異議なしということで、当該計画(案)は当部会で承認されました。本件については、薬事分科会における確認事項に基づきまして、当部会の議決をもって、令和5年度の献血推進計画(案)について適当であると認めて、薬事分科会に報告することといたします。なお、その他の取扱いについては、私に御一任いただくということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。また、先ほど幾つか御意見いただきましたが、パブリックコメントに寄せられた意見の回答については、本日、皆様から意見を頂きました。非常に貴重なものだと思います。事務局においては、今後の対応をよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
 議題2に進めさせていただきます。「令和5年度の血液製剤の安定供給に関する計画(需給計画)(案)について」です。松下委員は御退席をお願いいたします。
本日は、令和5年度の計画(案)について、11月24日付けで厚生労働大臣から諮問がなされておりますので、令和3年度需給計画の実施状況の報告を聴取した上で、令和5年度の需給計画(案)についての御意見を頂きたいと思います。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○吉田需給専門官 議題2「令和5年度の血液製剤の安定供給に関する計画(需給計画)(案)について」、説明いたします。資料2を御覧ください。
1ページ、計画についての概要です。「1.趣旨」ですが、血液法第26条第1項において、厚生労働大臣は、毎年度、翌年度の需給計画を定めるものとされております。今般、令和5年度の計画を定めるというものです。「2.内容」ですが、血液法第26条第2項に定める五つの事項について、来年度の計画を定めるものです。第1は、当該年度に必要と見込まれる血液製剤の種類及び量。第2は、当該年度に国内において製造され、又は輸入されるべき血液製剤の種類及び量の目標。第3は、当該年度に確保されるべき原料血漿の種類及び量の目標。第4は、当該年度に原料血漿から製造されるべき血液製剤の種類及び量の目標。第5は、その他原料血漿の有効利用に関する重要事項になります。「3.根拠法令」は、2、3ページに参考として載せておりますので、適宜御覧ください。今後の予定ですが、本日の令和5年度の需給計画(案)についての御意見を踏まえ、次回血液事業部会に再度お諮りして、「4.告示日等」に記載したとおり、来年3月下旬に告示し、4月から適用を予定しております。
 4ページ、血液法第27条第4項の規定に基づき、令和3年度の需給計画実施状況について報告させていただきます。製剤ごとの需給状況については、資料の6ページを御覧ください。各製剤の製造・輸入量の実績をマル1の欄に、そのうち国産原料から製造された量をマル2の欄に、供給量をマル3の欄に示しており、各欄の下段が需給計画で定めた量、上段が実績で、実績の右側の括弧内に達成率を表示しております。
 4ページに戻ります。まず、マル1欄の各製剤又は輸入の実績では、アルブミン、血液凝固第VIII因子、血液凝固第IX因子など、10製剤でほぼ目標を達成又は目標量を上回って製造・輸入されております。マル2欄の国産原料からの製造の実績では、11製剤中アルブミンなど3製剤で目標達成し製造されており、他は目標を下回っております。マル3の供給の実績ですが、18製剤のうち8製剤が見込み量を上回り、アルブミンなど10製剤でほぼ目標どおりに供給されました。全体を通して令和3年度は、一部の製剤では製造や供給などで目標を下回った製剤もありますが、医療需要に応じ安定供給されており、特に問題は生じませんでした。
 5ページ、4.の原料血漿の確保実績です。目標122.3万Lに対して、124.8万Lを確保となっております。日本赤十字社において、目標を上回る確保をしていただきました。5.の血液製剤の製造販売業者への原料血漿配分量は、各社に対して計画どおり配分となりました。配分総量は123.5万Lです。
 7ページ、令和4年度需給計画の上半期(4月~9月)の実施状況の報告です。製剤ごとの需給状況については、9ページの別表を御覧ください。9ページ別表のマル1製造・輸入量、別表のマル2国内献血由来の血液製剤の製造の実績、別表のマル3供給量について、一部の製剤で目標を下回っている製剤もありますが、市場欠品は生じておらず、医療需要に応じ安定供給されており、問題は生じておりません。また、別表のマル4輸出量は、令和4年度需給計画から輸出計画があがったことから、記載しております。上半期の輸出実績はありませんでした。
 7ページ4.の原料血漿確保実績については、目標125.3万Lに対し、上半期で63万Lを確保しており、達成率は50.3%となっております。8ページ5.の原料血漿の配分ですが、9月までの確保状況から、今年度も計画どおり配分できるものと見込まれます。
 10ページ、「血漿分画製剤の自給率の推移」を御覧ください。主な血漿分画製剤の自給率の推移を表しております。血液凝固第VIII因子製剤の国内自給率は、遺伝子組換え製剤を除き、平成6年以降、国内自給率100%を達成しております。免疫グロブリン製剤の国内自給率は、令和3年度が86.0%で、国内自給率は若干低下しております。令和元年度に国内献血由来の製剤が供給不足になり、輸入製剤を増やした影響が続いていると思われます。アルブミン製剤の国内自給率は、令和3年度は64.9%です。平成19年度をピークに低下から横ばいの状況が続いております。
次ページ以降は、主要3製剤の供給量の推移です。11ページ、アルブミン製剤の供給量の推移です。供給量の数値ですが、令和3年度は実績値、令和4年度は上半期供給実績を事務局で1年分に換算した数値です。令和5年度は、各社からの供給見込みを集計した数値です。以降のページも同様です。アルブミン製剤については、年々供給量が減少しておりましたが、近年は横ばいです。令和3年度はやや上昇し、要因として、肝硬変診療ガイドライン2020の改訂第3版に、「肝硬変に伴う難治性腹水」に対する治療にアルブミン製剤が推奨されたことなどの影響があるのではと聞いております。令和5年度の見込みが増えているのは、令和4年度より基礎的医薬品になり、薬価がそろったことで、需要増を各社が見込んでいると考えられます。
 12ページ、グロブリン製剤の供給量の推移です。グロブリン製剤に関しては、近年、供給量が増加傾向にあります。令和2年度は令和元年度と比べて若干減少しましたが、令和3年度は上昇しました。令和2年度に新型コロナウイルス感染症対策の影響で一部感染症の需要が減った影響が、令和3年度には解消され、医療需要に見合う供給がなされたものと考えます。
 13ページ、血液凝固第VIII因子製剤の供給量の推移です。平成30年度をピークに、令和元年度以降は減少傾向に転じております。これについては、過去の部会でも話題にあがりましたが、14ページの抗体医薬品への需要シフトの影響が大きいのではと考えます。
 15ページを御覧ください。令和5年度の需給計画(案)についてです。こちらのページは諮問書になります。16ページの令和5年度の需給計画(案)ですが、令和4年度計画からの主な変更点は、原料血漿の確保、配分量や供給見込量などの数値部分になります。
 17ページ、血液法第26条第2項に規定されている本計画で定めることとされている事項について、第1から順に記載しております。第1の「令和5年度に必要と見込まれる血液製剤の種類及び量」は、20ページの別表(ア)欄に、第2の「令和5年度に国内において製造され、又は輸入されるべき血液製剤の種類及び量の目標」は、20ページの(イ)欄に、第4の令和5年度の国内原料血漿から製造されるべき血液製剤の種類及び量の目標は、20ページの(ウ)欄に、第5の2「令和5年度に輸出すると見込まれる血液製剤の種類及び量」は、20ページの(エ)に、それぞれお示ししております。これら「需要見込」や「目標量」に関しては、血液法に基づき、製造販売業者から報告される届出や、近年の供給実績も勘案して、安定的に供給されるよう算出したものです。
 20ページ、参考として、右から2列目に令和4年度末の在庫見込量の報告を記載しております。この在庫見込量と(イ)製造・輸入目標量を加え、(エ)の輸出量を差し引いたものが、一番右端の供給可能量になっております。この供給可能量が(ア)の需要見込よりも多ければ、安定供給が可能になることになります。供給可能量と(ア)の需要見込を比較したところ、全ての製品において供給可能量が需要見込を上回っている、あるいは同量となっておりますので、令和5年度においては、供給に支障は生じないものと考えております。
 17ページに戻ります。第3「令和5年度に確保されるべき原料血漿の量の目標」ですが、120万Lを目標量としております。
 18ページ、第5「その他原料血漿の有効利用に関する重要事項」の「1 原料血漿の配分」ですが、原料血漿の種類ごとの標準価格については、次回の血液事業部会で御審議いただくことになりますので、今回は空欄とさせていただきます。
 2ですが、令和5年度に採血事業者である日本赤十字社から製造販売業者へ配分される原料血漿の種類ごとの配分見込量です。最近の需要の動向や在庫状況などを勘案して配分しているため、年度毎に配分量の変動はありますが、全体としては血液製剤の安定供給に必要な量の配分が可能となるよう調整しております。令和5年度は、合計120万Lの配分を計画しております。なお、(1)武田薬品工業株式会社についてですが、令和4年10月1日より、日本製薬株式会社は吸収分割により、武田薬品工業株式会社に権利義務が承継されたので、令和4年度計画では日本製薬株式会社と記載しておりましたが、令和5年度計画より武田薬品工業株式会社に変更しております。
 19ページ、「その他原料血漿の有効利用に関する重要事項」の「2 令和5年度に輸出すると見込まれる血液製剤の種類及び量」は、先ほども触れさせていただきましたが、令和5年度の輸出見込みは、血液凝固第VIII因子製剤、血液凝固第IX因子製剤が20ページの別表(エ)に示すとおりの輸出量となっております。なお、令和4年度計画から引き続き、血液凝固第VIII因子製剤は日本血液製剤機構がクロスエイトMCを世界血友病連盟への寄附を見込み、血液凝固第IX因子製剤はKMバイオロジクス社がノバクトMの輸出販売を見込んでいるとのことです。
 21ページ、令和5年度の原料血漿確保目標量(案)は、120万Lとしております。2.でお示ししている令和5年度の原料血漿配分量は、凝固因子製剤用は合計23.5万L、その他の分画製剤用は合計96.5万Lで、合計は120万Lとなっております。確保目標量と配分量が同量となっております。
資料2の説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。
○半田部会長 それでは、質疑応答に移ります。委員の皆様、何か御質問あるいは御意見はありますか。いかがですか。
○岡田委員 埼玉医大の岡田です。アルブミンの国内自給が60%台ですが、血漿量から計算しますと、国内の血漿で全て賄えるというお話を数年前にお聞きしたのですが、それが実際できていないというのは、販売能力の差で、製造しても売れない所は製造をある程度で抑えているということで、ペーストをメーカー間で融通すればかなり自給が高まるというお話を聞いていたのですが、今、進捗状況はいかがですか。
○半田部会長 いかがですか。これは事務局からお願いします。
○吉田需給専門官 先ほど先生がお話した件に関しては、国内3者で構成する検討会で検討させていただいている最中です。また、以前の運営委員会等で報告したときに、製造能力が満たされているというお話ではありましたが、今般、再度製造能力のキャパの調べを現在やっている最中で、今後それはまとまりましたら、運営委員会及び本部会等で報告できればと考えております。以上です。
○岡田委員 各社の間でペーストをやり取りすると、製造条件が違ったりとかして、ペーストを受け入れても、最終製品にするのに結構検討事項が多いと思いますが、例えば、委託製造ではありませんが、製造能力があっても余り売れないから製造を抑えているような所が製造して、販売能力が高い所に販売してもらうということにすると、そういうペーストの差の懸念はなくなるので、スムーズに供給できるようになると思うのですが、いかがですか。
○吉田需給専門官 先生にお話いただいた件に関しては、国内3者で構成する検討会でも是非お話させていただいて、今後検討させていただきたいと思います。
○岡田委員 どうもありがとうございます。
もう一つよろしいですか。今、血漿分画製剤の国内自給を考えるときに、原料血漿をある程度増やさないといけないのですが、現行の成分採血で、循環血液量から計算して、最大12%の血漿を頂くのですが、600ccという上限がついているのです。今、日本人の体格が非常に良くなっていて、80kg、90kgあるような方が結構多くなっていますので、循環血液量の12%で計算しますと、600cc以上採血できると思うので、トータルで血漿が多く採れると思うのですが、600ccで抑えているのは、例えば、機械の都合とかハード面の改造をしないと対応できないから600ccで抑えているのか、それとも、以前から600ccなので600ccにしているのか、どうなのでしょうか。例えば、ハード面で壁がなければ、600ccという上限を撤廃して、体重が多くて循環血液量が多い方からはもっと採ってもいいと思うのですが、いかがでしょうか。これは日本赤十字社の方にお答えをお願いします。
○半田部会長 採血、採漿の基準ですね。日本赤十字社、いかがでしょうか。
○日本赤十字社前野副本部長 岡田委員の御質問に対して、私から回答させていただきます。体外血液循環量別の採血については、省令で定められておりまして、今現在、600mgが一番多い量ということになっております。
○半田部会長 ですから、もちろんこれは基準を変える場合には、当然、安全性なども含めてまた考えていくということで、現状はそのように定められているということでよろしいわけですね。岡田委員、よろしいですか。
○岡田委員 分かりました。
○半田部会長 委員の皆さん、ほかにいかがですか。
○武田委員 今、岡田委員からもありました国内自給ですが、そもそも血液法の中で基本理念として国内自給を基本とするということがうたわれていて、かつ、国内自給の責務は国にあると明記されています。製造能力のお話もあったのですが、アルブミンについては、今、基礎的医薬品にするなどして、国内自給率を高めようという施策もされているところかとは思います。ただ、今日いただいた資料を見ても、まだ上がってきていないというか、施策に対して国内自給が進んでいないのかなと感じるところもあります。やはりこれは国の責務として、きちんと国内自給を進めていくのだと。多分これは、血液対策課だけでやっていくというのは非常に難しいところで、ものによっては部局を越えて、国としてどうやって国内自給を高めていくのかというところをやっていただかないと進んでいかないのではないかと考えています。是非そうした取組を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○半田部会長 いかがですか。
○吉田需給専門官 先生のおっしゃられるとおり、国内自給が進んでいない製剤というのはたくさんありますので、この辺も、製造能力とかの問題はありますがそこは企業とも相談しつつ、国としてまた別途できるような施策も検討していければと考えております。以上です。
○半田部会長 大変貴重な御意見だと思います。
○濱口部会長代理 先ほどの岡田委員からの御意見に関してですが、実は、採血量を増やせないかという検討は、厚生労働科研費の中の採血事業研究班という所で検討を始めた状況です。ただ、その後コロナ感染が起こったために、そのミッションが少し変更されて、コロナに関連する様々な採血に関する取り決めを優先させたという状況です。現在、大隈先生が班長をされていますので、この件については引き続き検討していくということでいいのかなと思っております。ただ、以前400mLを600mLに増やしたときにも、臨床試験を行って、安全性の評価などを十分にやられたという記録が残っておりますので、それに類した形での試験を行った上で、量が増やすことが可能かということを諮っていくべきかと考えております。以上です。
○半田部会長 濱口委員、ありがとうございました。ほかにいかがですか。需給計画(案)について、よろしいですか。それでは、事務局におかれましては、本議題は次回の血液事業部会において継続審議となりますので、本日いただいた御意見を踏まえて、恒例ですが、原料血漿の配分価格と合わせて修正案の準備をよろしくお願いします。
 それでは、議題3に入ります。ロビーの松下委員をお呼びいただけますか。それでは議題3「その他」ということで、日本赤十字社からの説明をお願いします。
○日本赤十字社後藤技術部次長 議題3について、日赤の後藤から説明いたします。血小板製剤の輸血による細菌感染が疑われた事例がありました。資料3を1から順に説明しますので、御覧ください。
まず最初に経緯です。令和4年11月7日に医療機関から、血小板製剤による細菌感染が疑われる症例が2症例報告され、いずれも患者血液培養の結果、Morganella morganiiが検出されたと報告がありました。当該製剤は、同一供血者からの同一採血により製造された分割製剤でした。その後、当該製剤の培養検査で、Morganella morganiiが検出されたこと、1症例は死亡されたことが判明しております。重大な事例であることから、血液事業部会で報告することといたしました。
 続いて2番の事例の紹介です。まず、事例1の患者は70代男性で、悪性腫瘍でした。併存疾患のため、手術前に血小板輸血が必要な状況でした。経過です。血小板製剤の輸血当日、投与前の体温は37.2℃でした。投与開始後50分で、頭痛、吐き気、咳嗽があり、アレルギー症状が疑われ輸血を中止しました。その時点で1パック10単位製剤200mLのうち40mL程度を輸血していました。予定していた手術は中止となりました。血小板製剤の投与翌日にICUに転棟され、血液培養検体を採取し、血培を実施されました。血小板製剤の投与二日後に、血液培養検体よりMorganella morganiiが同定され、メロペネム水和物の投与を開始されました。医療機関においては、当該製剤の残余内容の培養検体からも、Morganella morganiiを同定されました。両者の抗菌薬感受性結果より、同一の菌株であると考えられたとの見解を頂きました。
 事例2です。患者は70代の男性で、狭心症に対し緊急手術目的に前医より転院された方です。2種類の抗血小板薬を内服中であり、中止できない状況で冠動脈バイパス術を実施となりました。経過です。手術及び輸血の当日は、手術部位感染予防のため、セファゾリンナトリウム2gを投与されました。術中の輸血前は、体温35.9℃、血圧86/84mmHg、SpOは97%でした。術中、血小板製剤は全量投与されました。術中の輸血後は、体温35.8℃、血圧61/45mmHg、脈拍103回/分、SpOは98%でした。術後1日目、ICU入室直後より血圧の急激な低下があり、多臓器障害が出現しました。血液培養検体採取とともに、メロペネム水和物、バンコマイシン塩酸塩の投与を開始しました。術後二日目、ECMOが装着されました。血液培養検体より、Morganella morganiiを同定されています。術後三日目に敗血症性ショックにて死亡されました。医療機関において、当該製剤セグメントチューブ内容の培養検体からもMorganella morganiiを同定されており、両者の抗菌薬感受性結果より、同一の菌株であると考えられたとの見解を頂きました。
 続いて3.、輸血やその後の検査の状況です。輸血された血液製剤については、血小板製剤はいずれも採血三日目に医療機関へ供給され、四日目に輸血されました。医療機関から輸血後感染症疑い事例として血液センターに報告され、医薬情報担当者が製造所に確認したところ、それぞれの事例に使用された血小板製剤は同一供血者からの同一採血により製造されていました。事例1の血小板製剤の残余は、調査用検体として日赤で確保済みです。事例2の血小板製剤のバッグは、医療機関において廃棄されていることを確認しました。当該製剤と同一供血者から製造された1本の原料血漿は、日赤で確保済みです。当該製剤の製造記録に異常は認められませんでした。また、血液センター供給部門から出庫する際の外観にも異常はありませんでした。
 検体検査等の状況です。まず、投与を中止した事例1の当該製剤の試験結果は、細菌分離・同定試験が陽性、Morganella morganiiを同定されました。エンドトキシン定量試験は2,000pg/mL以上でした。カットオフ値は1.0pg/mLです。次に、当該製剤から検出された菌株と患者由来の菌株、これは事例1、事例2の両方ですが、これの相同性については、パルスフィールドゲル電気泳動法による遺伝子型検査を実施中です。また、同一採血番号の原料血漿の試験結果は、無菌試験が検査中となっておりましたが、本日ここに来る直前に陰性という結果を得ております。エンドトキシン定量試験は、0.8pg/mL以下とカットオフ値以下でした。
 続いて供血者の状況です。供血歴70回以上の複数回供血者であり、当該供血以降には供血されておりません。また、当該供血者が令和4年に供血した血液による輸血副作用等は報告されていないことから、当該供血者由来のほかの製剤の回収や調査は実施いたしません。当該供血の2週間後に、調査用の全血検体の採取に御協力を頂きました。調査用の試験は無菌試験が実施中で、エンドトキシン定量試験は0.8pg/mL以下とカットオフ値以下でした。
 4.担当医及び医療機関の見解ですが、事例1の担当医の見解は「副作用の程度は重篤であり、本剤との関連性はある。」と頂いております。医療機関の見解としては、「当該血小板製剤と患者血液の両方よりM. morganiiが検出されていることから、M. morganiiに汚染された血小板製剤による有害事象(敗血症)である。血小板製剤の投与前の外観確認は、輸血部および当該病棟でそれぞれ適切に行われ、異常を認めなかった。よって、投与前に血小板製剤の汚染を疑うことは不可能であった。また、投与後症状を認めた後の診療は迅速かつ適切に行われた。」と頂いております。
 事例2の担当医の見解は、「副作用の程度は重篤であり、本剤との関連性および、副作用と死亡の関連性はある。輸血内の細菌が原因で敗血症性ショックとなり、それによる多臓器不全で死亡したと考えられる。」と頂いております。医療機関の見解としては、「M. morganiiによる敗血症以外に死因となる病態は考えられない。当該血小板製剤と患者血液の両方よりM. morganiiが検出されていることから、M. morganiiに汚染された血小板製剤による有害事象(敗血症)である。血小板製剤の投与前の外観確認は、輸血部および手術室でそれぞれ適切に行われ、異常を認めなかった。よって、投与前に血小板製剤の汚染を疑うことは不可能であった。また、敗血症、多臓器不全への診療は迅速かつ適切に行われた。」と頂いております。
 続いて、これまでの細菌混入対策や今後について説明いたします。日本赤十字社でこれまで行ってきた血小板製剤への細菌混入対策は、主に七つあります。
まず、献血時の問診です。医師による問診・検診によって、細菌感染症の可能性のある者を採血不可としています。対象となるのは、熱がある、急性疾患に罹患している、体調不良、発熱を伴う激しい下痢、歯科治療中、抗生物質服用中、上皮化していない創傷、化膿性の皮膚疾患等です。
 続いて、皮膚消毒です。穿刺部位は、アトピーや瘢痕の部位を避け、慎重に選択し、アルコール綿を替えつつ2回十分に消毒した後、さらにポビドンヨード・アルコール液で消毒しています。この消毒手技については、採血に携わる看護師は定期的に教育訓練を受けております。
 初流血除去です。皮膚の深層や毛嚢に生息している細菌は、皮膚消毒で消毒しきれない場合があり、これらの細菌は穿刺後流出してくる採血血液の最初の方に集中します。そのため、最初の25mLは別の小バッグに取り分けて、その後、輸血用血液製剤等のバッグに採血を開始する方法を2006年に導入いたしました。この方法により、細菌の混入が70%減少することが示されています。
 白血球除去です。腸管などから血液中に入ったサルモネラ菌やエルシニア菌などは、血液中の白血球に貪食された後も、白血球の中で生き続けることがあります。日本赤十字社では採血した全ての血液から、白血球の99.95%以上を除去する対策を2007年に導入いたしました。
 血小板製剤の有効期間の短期設定については、これまでの1~4の手段を講じても、ある頻度で献血者から採血血液に細菌が混入することは避けられません。そのため、細菌増殖を考慮して、日本の血小板製剤は有効期間を、採血日を含め四日間と短く設定しています。
 外観確認についてです。細菌が増殖した血小板製剤は、細菌の種類によりますが、凝固物などの発生で外観に変化を来すことがあります。血小板製剤の製造工程における外観確認に加え、血液センターから医療機関への供給時にも外観を確認し、異常のあるものは出庫を止めています。供給先の医療機関においても、輸血直前の外観確認の実施をお願いしています。
 医療機関への情報提供については、輸血中の患者状態の確認や輸血後の患者のフォローの重要性、また、輸血による細菌感染リスクについて情報提供や注意喚起を行ってまいりました。
 血小板製剤への細菌混入リスクについては、初流血除去の細菌混入防止効果を評価するためのデータがありますので、お示しいたします。評価した検体は、初流血除去・保存前白血球除去導入後の期限切れ血小板で、評価したのは2006年12月~2008年3月です。評価の方法は、期限切れとなった血小板製剤を20~25℃で採血六日目まで保存し、好気的・嫌気的条件それぞれで10mLを全自動血液培養装置(BacT/ALERT)により最長七日間培養いたしました。評価結果ですが、2万1,783本培養を実施し、陽性となったのは11本でした。そのうち7本がアクネ菌で、それ以外の病原性のあるような細菌は、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、G群レンサ球菌、大腸菌の4種類でした。この結果から、約5,400本に1本の陽性率であることが分かりました。なお、初流血除去導入前の陽性率は、2万1,786本培養し36本陽性と、0.17%であったことから、初流血除去の細菌混入低減効果はあったと考えられます。
 続いて、輸血後細菌感染症の特定例と安全対策の推移をお示ししました。先ほどお示しした細菌混入に係る安全対策を導入した2007年以降、輸血後細菌感染症は21例発生しており、全て血小板製剤によるものです。製剤から検出された菌はレンサ球菌が7例、黄色ブドウ球菌が5例、大腸菌が4例、その他が5例でした。受血者の原疾患の内訳は、白血病等が10例、血液疾患が5例、リンパ腫が4例、新生物が2例でした。
 次に、諸外国の取組、細菌スクリーニングの導入に係る経緯と課題についてです。諸外国においては血小板製剤の有効期間は、多くは採血後六日までと、日本の四日よりも長く設定されていました。米国やカナダでは、輸血後細菌感染症を防止するため、2000年代の初めから、採血後24時間以内に血小板製剤の一部を採取して細菌培養試験を実施し、培養陰性のものを医療機関に納品していましたが、このような対策を講じていても、輸血後細菌感染が血小板製剤100万本あたり10件程度発生しておりました。英国では、細菌培養試験の導入前は米国等と同程度の輸血後細菌感染症が発生していましたが、2011年に、血小板製剤を採血後36時間以上待機させた後、混入した細菌が十分増殖してから約20mLをサンプリングし、嫌気・好気培養を実施する、培養6時間で判定して、細菌の増殖が認められなかった製剤を医療機関に納品するという改良培養法により細菌スクリーニングを導入し、2017年に、この方法の効果は高く、2011年~2015年の5年間で細菌感染が1例のみとなったことを報告しました。英国の報告を受け、カナダ、米国、オーストラリアなどで、この改良培養法に変更が進められております。
 日本赤十字社においても、2017年の細菌感染事例を受け、更なる安全対策を検討する過程において、血小板製剤の有効期間を短く設定する日本の安全対策よりも、有効期間を延ばして改良培養法を導入した方が、血小板製剤輸血後の細菌感染リスクを低く抑える可能性があることが分かってきました。日本赤十字社では、この改良培養法を参考に、有効期間を六日間に延長すると同時に、採血後40時間以上待機後にサンプリングし、嫌気・好気培養を実施、6時間で判定し、陰性のものを製造所から各血液センターへ送付し、更に培養24時間後陰性であることを確認し、医療機関へ供給する方式による細菌スクリーニングの導入を目指し、様々な課題、主なものは判定結果が2段階になることによる基幹システムの大改修であったり、停電等により培養機器の検査が止まらないようにするための工事等ですが、これらの解決に向けた検討を進めてまいりました。
 今後の予定です。現在、有効期間を延長するための承認申請、スクリーニング方法や実運用に係る検討、施設設備や実施体制の整備等を準備し、2023年8月申請、1年後の承認を踏まえて、2025年1月供給開始を目標に計画しており、早期導入に向けて厚生労働省や医薬品医療機器総合機構とも相談を進めてまいりたいと存じます。私からは以上です。
○半田部会長 ありがとうございました。この事例につきましては第一報ということで、まだ調査中でございます。事例はこれ以外に感染の拡大はないということが、今、日本赤十字社で報告されています。今後の対応について、まだ確定するまでにはないということで、引き続き精査をよろしくお願いしたいと思います。ただいまの御説明について、委員の方から、何か御意見や御質問はございますか。いかがでしょうか。松下先生、どうぞ。
○松下委員 どちらかの事例でバッグが廃棄されているのですが、その時点では血小板輸血の副反応だと思わなかったということですか。
○半田部会長 後藤次長、どうぞ。
○日本赤十字社後藤技術部次長 日赤からお答えいたします。バッグの廃棄理由については、特にお聞きしておりません。副作用については、今回はここに示したとおりのところまでの情報しか公開できないということになっております。
○松下委員 それと、Morganellaの抗菌薬のスペクトラムを測定されたということですけれども、当然セファゾリンはこの菌に当たっていないということでいいですね。
○半田部会長 佐竹所長、どうぞ。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 日赤の佐竹です。大変アンラッキーなことでありますが、投与されていたセファゾリンに対しては、ほとんどのMorganella morganiiが耐性を示すということが知られております。
○松下委員 ディスクでの結果とかはありますか。
○半田部会長 ディスクの結果ですか。
○松下委員 はい。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 ディスクによる抗生剤の感受性のことでしょうか。
○松下委員 そうです。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 それは我々の手元にありませんが、恐らく病院の方で、バクテリアの同定の一助にしていると考えられます。
○松下委員 病院の方で、一応検討されたということですね。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 はい。恐らくそのような機器を使うのが一番短時間にできますので、それでやられたと思われます。
○半田部会長 それで同一のものであるということが一応、ある程度可能性が非常に高いということだったわけですね。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 はい、そうです。
○半田部会長 松下委員、いかがですか。よろしいですか。
○松下委員 術前にセファゾリンを点滴するのは、プラクティスとしてはかなりしっかりしているのですが、この場合には全く有効ではなかったということですよね。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 はい、おっしゃるとおりです。ただ、かなり迅速にメロペネムに替えられておりまして、こちらはかなり感受性があるということが知られております。
○松下委員 それと、事例1の方は、現在どのような健康状態なのでしょうか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 先ほども後藤から申しましたように、これは緊急の報告でありまして、以上の報告は医療機関の了解の下に頂いておりますので、それ以上について、我々は現在のところ情報は得ておりません。
○松下委員 分かりました。
○半田部会長 ほかの委員の皆様はいかがでしょうか。
○岡田委員 埼玉医大の岡田です。この2症例とも、大変重篤な感染になってしまったのですが、例えば、これは外観試験は異常はなかったということなのですけれども、輸血したときの落ちが悪かったとか、そういう報告は上がってきているのでしょうか。
○半田部会長 佐竹所長、どうぞ。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 日赤の佐竹です。これもあったかどうかという情報はありませんが、記載から見ると、その辺は特に気が付くほどのものはなかったと考えられます。
○岡田委員 Morganellaというのは腸内細菌でそこらじゅうにいるのですけれども、今まで血小板、例えば実際にヒトに投与して敗血症になったというのが以前データがありましたけれども、その中にはMorganellaはなかったのですが、日本赤十字社が、いわゆるバッグの異常ということで回収して、細菌培養をやったりして、それでMorganellaを検出した例はあるのでしょうか。
○半田部会長 佐竹所長、どうぞ。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 我々はこれまで非常に多くの培養をしていますけれども、Morganella morganiiが検出されたことは1度もありません。海外におきましても、この細菌による血小板製剤の汚染、それによる敗血症等の事例は、文献上は、海外で1例、国内で1例の報告がございます。
○岡田委員 非常に珍しい。
○半田部会長 ありがとうございました。長村先生、どうぞ。
○長村委員 2004年に日本輸血学会の症例で、血小板輸血後に敗血症性ショックを呈したMorganella morganii菌による感染症ということで論文がありまして、これも心臓外科の症例で、最初にセファゾリンが投与されて、その後替えられたけれども亡くなったという症例が1例ありました。ほとんど同じような感じかなということで、今回の例も2施設で同じように外観確認はスルーしたというか、確認して投与されているので、限界かなというところで、次に早期に進めていただければと思いました。
○半田部会長 貴重なコメントをありがとうございました。ほかに、濱口委員、どうぞ。
○濱口部会長代理 この事例のことではなくて、最後に日赤の方での今後の対応のところで、血小板検査の話をされたのですが、そのことに関してコメントです。
この細菌感染の場合は、三日目、四日目のところでの血小板製剤が原因となっていることが多いのかなと感じております。ですので、できれば少し短縮していく方向というのが、有効期限を短くするというのも、一つの方向なのかなと思います。
 細菌検査を導入することによって、有効期限を更に長くして六日にすると、細菌感染に関しては、一定の有効性はあるのかなと思いますが、一方で少し心配しているのは、血小板を長期にわたって有効期限を置いてしまうことによるデメリットも併せて考えていただきたいと思います。例えばですが、いろいろなアレルギー反応というのは、多分、有効期限を長くしてしまうと、その分そこが高くなってくる可能性もあるかなと思っておりますので、有効期限を延ばすということに関してのデメリットというのを十分に把握できれば、その有効性と安全性という観点からは、もう少しこの検査の導入に関して、あらかじめのデータをとっていくことも可能かもしれないと思いました。以上です。
○半田部会長 貴重な御意見ありがとうございます。何か日本赤十字社の方で、今の濱口委員の。はい、どうぞ。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 ありがとうございます。全くおっしゃるとおりです。この培養法というものは、一応検査はする。ただ、培養法を入れれば、必然的に有効期限を延ばさざるを得ない。非常に両方を立たせることは難しいことです。したがいまして、この培養法というものは、先ほどもありましたように、2000年から欧米で始まったものでありますけれども、我々としては、少なくともデータ上は、日本の方がずっと症例数も発生数も少ないので、これまで有効期限の短い方策で対処してまいりましたが、イギリスのこのデータが出たところで、ようやく、それであっても改良した培養をすればリスクは下がる可能性があるというデータが出たのが、これが初めてでございます。ですので、もちろん2011年からイギリスではこれが始められていたわけではありますけれども、非常にその判断は、我々は慎重にいたしました。
 というのは、イギリスの輸血のスケールというのは、日本の半分以下、40%ぐらいですので、たった1年のデータを見ただけでは本当は分からない。例えば日本でも、このような感染は昨年は全くゼロだったのです。ですので、年間にゼロか1か2かというところで、どちらが多いかということを比較するのは非常に困難なことでした。ですので、イギリスの2011年からのものを我々は非常に注目していて、ようやく2017年になって、そのデータが日本と比較できるところに達したところで、我々もこのデータだったら、やはりイギリスのものの方が安全性が高いのだろうという判断になって、そちらを選んだということです。
 ですので、濱口先生がおっしゃるように、安全性の面からどちらかというのは、そういったデータに基づいて判断したということ。またもう一つは、判断の中で一番大きな問題は、我々、日本の医療では非常に新鮮な血小板の輸血で医療をしてきていますので、それが四日目、五日目、これから言えば五日目、六日目になりますが、そういった長期に保存された血小板に変わることで、どれだけ血小板の機能が変わるか、そこは非常に難しいところです。ただ、これにつきましても、欧米では昔から五日目、六日前のもので輸血していて、特に問題はなかったので、恐らく大丈夫だろうと我々は考えております。
 それから、指摘がありました副作用の出現頻度、これももちろん大きな問題ですので、その辺のものを全ていろいろ考えた上での、こちらの方の選択ということになりました。ただ、やはり年間本当に1例、2例起こることの比較ですので、これからも長期にこれらの数を見ていって、慎重にその評価をしていく必要があると考えております。
○半田部会長 ありがとうございました。それでは、田野﨑委員。
○田野﨑委員 慶應大学の田野﨑です。今の濱口委員からの御説明、質問と少しダブりますけれども、十分に日赤では御検討いただいたということではありますが、培養系において、まず培養で漏れるような菌種がないのか。それから、増殖が遅い場合には、そういうような菌種で何か漏れる可能性はないのかということが一つ。そして、病原体低減化技術の導入については御検討されていないのかということについて伺えればと思いました。
○半田部会長 2点、よろしくお願いします。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所長 まず、このような培養法で漏れるものはないかどうかということですが、漏れるものは当然出てまいります。ただ、臨床的に問題となるバクテリアは、ほとんどこれは捕まることが、イギリスからの報告で分かっております。ですので、例えば漏れるものの代表的なものは、昔の名前で言えば、Propionibacterium acnesですが、そのような菌、それから、そうでなくても、Acinetobacterとかそういった環境菌につきましては、24時間以後にようやく陽性になる場合があることが分かっていますが、これまでの報告では、臨床的に意味のある細菌はほとんど全て、24時間の培養で捕まっているというのが、これまでのデータで出ております。
 それから、低減化につきましては、もちろん日赤も、以前よりもこれについて評価していますけれども、今般低減化につきましても非常に多くのハードルがあることがありますが、やはり、採血体制、その規格等について、即、これを入れることはなかなか難しいことが分かっております。したがいまして、もちろん我々、将来の目標としてこれも頭に入れておりますけれども、迅速に現在の血小板を替えることなく入れられる、導入できる方法として細菌の培養法を検討したということです。
○半田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。ほかに委員の方々、今回の症例、事例に関していかがでしょうか。よろしいでしょうか。繰り返しになりますけれども、調査中の事案であるということで、したがって、今後の調査の結果等々も御報告いただくということ。そして、それとともに、今後の血小板製剤の安全対策についても、どうか、引き続き御検討願えればと思います。
 本日は、こちらで用意した議題は以上でございますが、委員の皆様、何かほかにありますか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、事務局に議事進行を戻したいと思います。よろしくお願いします。
○渡辺血液対策課長 事務局でございます。半田部会長におかれましては、議事進行をしていただきまして、ありがとうございました。それから、委員の皆様方におかれましても、お忙しいところ、このような時間を頂戴しまして、心から感謝しております。
特に議題3につきましては、日本赤十字社の皆様に、第一報としまして、定例の報告とは別に御報告いただくことになりました。日本赤十字社におかれましては、医療機関の方々と丁寧なやり取りをしていただいて、こうした情報をまとめていただいたと承知しておりますし、医療機関の皆様には、大変な状況にあられる患者さん、それから、御遺族の方々と向き合い、製剤の安全性を議論するための情報を提供いただいたものと伺っております。改めまして感謝する次第でございます。
 それでは、予定していた議題は終了いたしました。次回の日程につきましては、別途、御連絡を差し上げたいと思います。今日は、長時間にわたり御議論いただきまして、ありがとうございました。これで血液事業部会を終了させていただきます。
( 了 )
備考
本部会は、公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

血液対策課 課長補佐 菅原(2909)