2022年10月3日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録

日時

令和4年10月3日(月)14:00~

出席者

出席委員(20名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理
 他参考人2名出席

欠席委員(3名)五十音順
行政機関出席者
  • 八神敦雄(医薬・生活衛生局長)
  • 山本史 (大臣官房審議官)
  • 中山智紀(医療機器審査管理課長)
  • 中井清人(医薬安全対策課長)
  • 鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
  • 池田三恵(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) 他

議事

○医療機器審査管理課長 それでは、Webでの先生方も皆さんつながっている状況ですので、皆さんおそろいということで、部会を始めさせていただきたいと思います。
私は医療機器審査管理課長の中山です。どうぞよろしくお願いいたします。委員の先生方におかれましては、御多用の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日の委員の出欠状況について、
 
御報告いたします。現時点で、医療機器・体外診断薬部会委員23名のうち、20名の先生に御出席いただいておりまして、1名、松宮先生は遅刻をされて参加いただくことになっていますので、最終的には21名の先生に御出席いただくことになります。薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしていることを御報告したいと思います。また、12名の委員におかれましては、Webシステムにて出席いただいている状況です。
 次に、本日の審議に参考人としてお越しいただいている先生方を御紹介させていただきたいと思います。議題2について、埼玉医科大学形成外科・美容外科教授の市岡滋先生、議題3については、国立大学法人東北大学環境・安全推進センター教授の黒澤一先生に御参加いただいております。なお、議題2の市岡先生については、Webシステムにて御出席いただくことになっております。
 続きまして、議事に入る前に、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、御報告させていただきます。薬事分科会規程第11条におきましては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない。」と規定されております。今回、全ての委員の皆様から、この規定に適合している旨を御申告いただいておりますので、報告させていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただき、御負担をおかけしておりますが、引き続き御理解、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 次に、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて、事務局から説明いたします。
○事務局 事務局です。本日の議題の公開・非公開の取扱いについて、説明いたします。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、部会の議題1については会議を公開で行い、議題2以降の議題については医療機器の承認審査等に関する議題であり、企業情報に関する内容などが含まれるため、非公開といたします。
 それでは続いて、配布資料の確認をさせていただきます。会場の皆様のお手元には資料が格納されたタブレットのほか、議事次第及び座席表を紙でお配りしております。また、Webにて御参加される委員の先生方におかれましては、事前に郵送、若しくはメールにてお配りした資料1~6をお手元に御用意ください。
 タブレットの操作について御不明点等がありましたら、お近くの事務局員までお声がけいただければと思います。また、会場で御参加される委員の先生方におかれましては、マイクに近づいてお話いただきますようお願いいたします。
 次に、Web会議で御参加される委員の先生方へ、注意事項を説明いたします。審議中はマイクミュートでお願いいたします。御発言される際には、画面右下の顔のマークのアイコンをクリックして、手のマークを押して挙手いただき、部会長から指名された後に、マイクミュートを解除し、お名前をおっしゃっていただいた後に御発言いただきますようお願いいたします。また、接続トラブルが発生した場合は、チャット欄を御利用いただくか、事前にお送りした事務局連絡先まで御一報いただければと思います。
○医療機器審査管理課長 事務局からは以上です。以後の進行については、荒井部会長、よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 それでは、よろしくお願いいたします。ここまでの事務局からの説明について、何か御質問等ございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、これから議題に入らせていただきます。今日は、今、御説明がありました議題1が報告事項で、議題2~4までが審議事項となっております。
 それでは、議題1を始めさせていただきます。「医療機器の認証基準及び承認基準の制定及び改正について」です。事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 事務局より議題1「医療機器の認証基準及び承認基準の制定及び改正について」を資料1-1に基づき御報告いたします。
なお、事前にお送りした紙媒体を御覧になっている委員各位におかれましては、送付後の一部修正や映写の都合上、ページ番号のずれが生じておりますので、適宜映写画面又はお送りした電子媒体を御確認いただきますようお願いいたします。
 それでは、資料1-1、1ページを御覧ください。今回、認証基準として、制定1件、改正2件を、承認基準として改正3件を行います。
 ページ2を御覧ください。口外汎用歯科X線診断装置の認証基準の改正についてですが、近年、撮影者が手で保持したままX線を照射する「手持ち撮影」を行う、右下にお示しするような機器が流通するようになりましたので、これら製品の技術的要求事項の必要性が認識され、令和3年5月に口内法撮影に用いるX線装置に関わるIEC規格が改正されたことに伴い、評価項目として「手持ち撮影」を意図する装置の基準を定めるものです。
 次に、ページ3を御覧ください。核医学診断用ポジトロンCT装置の認証基準の改正について、御説明いたします。本基準におきましては、乳房専用PET装置を適用範囲に追加する改正を令和元年6月17日に告示いたしました。その際、「全身用PET装置」を示す表現として、「全身の検査を行うために」という文言を追記したため、これまで認証基準の適用範囲としていた「「全身用PET装置」を用いた局所検査」が本基準の適用範囲外と解釈される可能性があることから、文言を記載整備し、適用範囲を明確化いたします。
 続いてページ4を御覧ください。白内障・硝子体手術装置用各種プローブの認証基準の制定についてです。白内障・硝子体手術においては、「白内障・硝子体手術装置」が用いられておりますが、その構成品として、眼内の灌流等を行うプローブや眼内の照明装置、眼内に手術器具を挿入するための穴を保持する器具などがあり、それらの構成品を個別に流通できるよう、それぞれ医療機器として対応する一般的名称と認証基準を新設いたします。一般的名称については、議題4にて御説明いたします。
 続いて、ページ5を御覧ください。血液透析器、血液透析濾過器、血液濾過器及び血液濃縮器の承認基準の改正についてです。本基準はJIS T3250を引用しており、引用している当該JISの改正に伴い本承認基準を改正するものです。
 最後に、ページ6を御覧ください。歯科用インプラントの承認基準の改正についてです。歯科用インプラントは、骨に埋植される歯科用インプラントフィクスチャや歯科用インプラントアバットメント等で主として構成され、そのうち、歯科用インプラントフィクスチャの表面処理として「ハイドロキシアパタイトコーティング」を施した製品があることから、基準の適用対象となる表面処理に追加するとともに、そのコーティング方法やコーティング膜厚などの物理的・化学的要求事項を追加いたします。
 以上、御説明させていただきました認証基準の制定・改正及び承認基準の改正について、パブコメを既に実施しており、意見は特にありませんでした。御説明は以上となります。どうぞよろしくお願いいたします。
○荒井部会長 ありがとうございます。今、御説明いただいたように、六つの基準について、はじめの三つは認証の基準。後半の三つは承認の基準です。何か御質問、御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。特に御意見がなければ、これで議題1を終了させていただきます。
○医療機器審査管理課長 それでは、以降の議論は非公開とさせていただきますので、傍聴の方はもういないですか、いないと思いますが、準備が整い次第、非公開案件の議題の審議等を開始したいと思います。
○荒井部会長 それでは準備が整ったようですので、部会を再開させていただきます。最初に、この後の審議に関して事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 本日の審議事項に関する、競合品目・競合企業について御報告させていただきます。資料5「競合品目・競合企業リスト」をお開きください。
 1ページに「オートロジェル システム」について、2ページに「Zephyr気管支バルブシステム」について、そのほか、3ページ以降に一般的名称に係る影響企業のリストがありますので、必要に応じて御覧ください。
 本日の審議事項に関する競合企業として、資料5に示す企業について、委員の皆様から寄附金・契約金等の受取状況をお伺いしたところ、薬事分科会審議参加規程第13条より、議決に参加できない委員は、議題2において、河野委員が該当しております。
○医療機器審査管理課長 以上、報告いたします。以降の進行につきましても、荒井部会長、よろしくお願いします。
○荒井部会長 よろしくお願いいたします。今の説明について、特に御意見はございませんね。よろしいですか。
それでは、議題2を始めさせていただきます。議題2です。「医療機器「オートロジェル システム」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の要否について」に入ります。先ほど御紹介いただきましたように、本議題については、参考人として市岡滋先生に御出席いただいております。それでは、事務局から説明をお願いします
○事務局 ありがとうございます。議題2につきまして、事務局より御説明いたします。まず、タブレットから資料2-2のファイルをお開きください。本議題では、医療機器「オートロジェル システム」の高度管理医療機器、管理医療機器、又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、並びに使用成績評価の要否について、御審議を頂きます。
 資料2-2の1ページを御覧ください。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器に対しては、部会の御意見を聞いて、新たに一般的名称を新設することになります。
今回、本品目の「オートロジェル システム」に対応いたしまして、新設を予定する一般的名称は「多血小板血漿ゲル調製キット」でございます。定義は「多血小板血漿ゲルの調製を目的として、分離・採取を行う採血管及び採血針、多血小板血漿をゲル化するための薬剤等から成るキットをいう。本品は単回使用である。調製された多血小板血漿ゲルは創傷治療の促進等に用いる。」としております。
本品は、クラスIII、高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、不要と考えております。
1ページの下の「参考」のところですが、本品に類似の一般的名称のあるものとして、「血液成分分離キット」「血液成分分離用装置」「自家皮膚細胞移植用キット」などがございます。一般的名称の新設に関する説明は以上となります。
 また、本品の承認にあたり、「ウシトロンビンを含有する医療機器」を生物由来製品として指定することを予定しております。
薬機法第2条第10項におきまして、「生物由来製品」とは、「人その他の生物(植物を除く。)に由来するものを原料又は材料として製造される医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器のうち、保健衛生上特別の注意を要するものとして、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの」とされております。
具体的な考え方につきましては、当日配布資料1として準備している平成26年発出の通知にて示しており、「生物由来製品」は2ページの(2)にありますとおり、ヒト又は動物に由来する原料等を用いる医薬品、医療機器等であって、マル1製造工程による管理の内容又は投与経路からみて、明らかに感染症の発症リスクが低いもの、マル2病原性微生物を使用せず、明らかに感染症の発症リスクが低いもの、マル3人獣共通感染症の原因となる蓋然性の低い動物種を原料等としたもの、とされております。
また、現在、生物由来製品として指定されている医療機器につきましては、同じ当日配布資料1の最終ページの告示別表を御参照ください。
 次に、審議品目及び審査の概要につきまして、医薬品医療機器総合機構から説明をいたします。
○医薬品医療機器総合機構 医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。資料2-1、通し番号1/1400ページ、専門協議委員一覧を御覧ください。本審査にあたりまして、こちらの3名の専門委員から御意見を頂きました。また、事前に配布しました審査報告書に訂正がありますので、当日配付資料3、通し番号1/3ページの新旧対照表にてお示しいたします。なお、訂正の1、2、5及び6は、使用上の注意や警告の記載について対応を求めた審査の内容自体は相違なく、資料構成の変更のみに伴う対応です。本件、深くお詫び申し上げます。
 それでは、審査報告書に基づき御説明いたします。はじめに、本品の概要を御説明いたします。審査報告書の6ページ、通し番号7/1400ページ、1行目の「1.審議品目の概要」を御覧ください。本品「オートロジェル システム」は、既存治療が奏効しない創傷に対する、治癒の促進又は創傷の被覆を目的に使用する自己多血小板血漿ゲルを調製するために使用するキットです。以降、自己多血小板血漿を「PRP」と略します。本品は、採血管、採血針並びに液状のPRPをゲル状にするための薬剤であるアスコルビン酸、塩化カルシウム及びウシトロンビンで構成されます。
 次に、開発の経緯を御説明いたします。審査報告書7ページ、通し番号8/1400ページ、3行目の「(1)開発の経緯」を御覧ください。創傷治癒においては、損傷した組織が生体内の細胞増殖を主体とした組織反応によって再生又は修復する過程において、増殖因子が肉芽形成や上皮化の促進効果に関与します。PRPは血液を遠心分離して得られる血小板を豊富に含んだ血漿です。血小板には、α顆粒と呼ばれる顆粒状構造物があり、その中には血小板由来成長因子等の創傷治癒を促進させる増殖因子が含まれているため、PRPは、慢性創傷に対する治療効果が期待されています。本品は、遠心力で調製した液状のPRPを滅菌シャーレ等に移した後、PRPに薬剤を混合することでフィブリンマトリクス基材を形成し、液状のPRPをゲル状へと変化させます。PRPゲルは、液状のPRPよりも粘性が高く、創面にとどまりやすいため、被覆効果による創面の湿潤環境の維持及び血小板由来成長因子等と創傷組織の接触が、液状のPRPよりも容易になることが期待されます。
 次に本品の評価について御説明いたしますが、非臨床試験は、特段の問題は認められなかったため、臨床評価について御説明いたします。審査報告書18ページ、通し番号19/1400ページの表7を御覧ください。本申請における臨床評価資料としては、国内治験の成績が提出され、治験機器を使用した場合の創傷治療の有用性が評価されました。「対象」の欄に記載のとおり、国内治験では既存治療が奏効しない糖尿病性潰瘍を有する患者が試験の対象とされました。また、審査報告書19ページ、通し番号20/1400ページの「創傷の大きさ」のとおり、創傷は、面積で1㎠以上25㎠以下、深さは最小0.2cm最大1.5cmに限定されました。解析集団は、Full Analysis Setと安全性解析集団は同一であり54例、Per Protocol Setは47例でした。
 同ページの「PRPゲル使用方法」の欄に記載のとおり、被験者にはPRPゲルが24時間以上継続して塗布され、24時間以上のPRPゲル塗布後は、次回PRPゲルを使用するまで保存的治療が実施されました。
 次に、国内治験の評価について御説明いたします。審査報告書20ページ、通し番号21/1400ページ上段の「主要評価項目」の欄を御覧ください。国内治験で主要評価項目は、最終評価時の創半径縮小率が50%以上となった有効例の割合、達成基準は有効例の割合が60%以上と設定されました。結果としては、有効性解析集団であるPPS群では47例中38例が有効例で、有効例の割合が80.9%であり、達成基準を満たしました。
 次に、副次評価項目について御説明いたします。同ページの「副次評価項目」の欄を御覧ください。有効性に関する副次評価項目としては、創傷面積、創傷体積及び創傷の直径においては、主要評価項目である創半径縮小率と同様に縮小傾向を示しました。その他の結果についても御説明いたしますので、審査報告書24ページ、通し番号25/1400ページ、18行目を御覧ください。創傷スコアは、PPSを対象に滲出液、炎症・感染、肉芽組織及び壊死組織の四つの観点で評価され、全項目において治療前と比較し、最終評価時に改善したことが示されました。
 次に、二次治癒又は比較的簡単な手術手技による閉鎖が可能と判断されるまでの期間について御説明いたします。審査報告書25ページ、通し番号26/1400ページ、5行目を御覧ください。PPS群を対象に、評価した最終評価時点で二次治癒による閉鎖が可能と判断された症例の割合は、医師評価で57.4%、第三者評価で59,6%であり、比較的簡単な手術手技による閉鎖が可能と判断された症例の割合は、医師評価で68.1%、第三者評価で72.3%でした。
 最後に、安全性に関する副次評価項目として有害事象及び不具合の発現について御説明いたします。審査報告書26ページ、通し番号27/1400ページ、13行目を御覧ください。国内治験においては32例に59件の有害事象が発現し、有害事象発現率は59.3%でしたが、いずれの有害事象においても本品との因果関係が否定されました。また、不具合としては3件発現しましたが、各不具合によって発現する有害事象はありませんでした。
 以上の国内治験を踏まえた審査の論点に関する機構の見解を、審査報告書28ページ、通し番号29/1400ページ、25行目からの記載で御説明いたします。一つ目の論点は、国内治験を多施設共同非盲検非対照試験で実施することについてです。機構は、本品を使用した創傷治療は、既存治療が奏効しない患者のみに対して実施されるものであり、既存治療の代替又は併用を意図しないことから、国内治験を既存治療との比較対照試験として実施しないことはやむを得ないと判断しました。
 二つ目の論点は、本品の有効性及び安全性についてです。審査報告書29ページ、通し番号30/1400ページ、8行目を御覧ください。有効性に関して機構は、創半径縮小率が50%に達しなかった9例について、未達成の理由を申請者に確認しました。その結果、創半径縮小率50%に達しなかった理由は不明でしたが、創傷スコアの最終評価時の肉芽組織においては回復傾向にあったことが確認され、一方で、滲出液、炎症・感染及び壊死組織の悪化は確認できませんでした。以上より、機構は、当該9例においても治験機器を使用した治療が無効であったとは言えないと考えました。
 次に、本品を使用した治療の臨床的意義について御説明いたします。審査報告書30ページ、通し番号31/1400ページ、4行目を御覧ください。国内治験の主要評価項目とトラフェルミンの臨床試験の創面積縮小率75%以上の有効例の割合を比較すると、国内治験の成績は、トラフェルミンの成績を僅かに下回りました。申請者は、試験プロトコルが異なることから直接的に両試験を比較できないが、国内治験における有効例の割合はトラフェルミンの臨床試験の成績から大きく乖離しないと考えられることから、治験機器を使用した創傷治療の有効性は臨床的に意義があると説明しました。
 また、同ページ18行目を御覧ください。申請者は、トラフェルミンの治療歴有り群と治療歴無し群で有効例の割合、創傷面積縮小率及び閉鎖例の割合を比較した結果、トラフェルミンの治療歴が国内治験の成績に与えた影響は大きくないことが示唆されたと説明しました。
 以上の申請者の説明を踏まえて機構は、国内治験で得られた成績から、既存治療が奏効しない糖尿病性潰瘍患者に対する本品を使用した治療の臨床的意義が示されたと判断しました。
 次に安全性についてですが、審査報告書31ページ、通し番号32/1400ページ、26行目から記載のとおり、国内治験の安全性評価においては、治験機器との因果関係が否定できない有害事象及び被験者に影響を及ぼす不具合は発現せず、また、海外類似医療機器の臨床成績においても同様に機器に関連する有害事象は確認されなかったことから、本品の安全性は確保されていると考えました。
 三つ目の論点は、使用目的又は効果についてです。審査報告書32ページ、通し番号33/1400ページ、5行目からの記載を御覧ください。機構は、申請時の使用目的又は効果に記載された「既存治療が不適応な創傷」との適応疾患の表現の適切性を論点としました。
1)に記載のとおり、国内治験の評価から、本品の適応対象を既存治療が奏効しないことに限定する必要がありますが、国内治験の結果は既存治療に影響を受けていなかったため、既存治療の範囲を薬物治療又は保存的治療に限定することは不要と考えました。また、2)に記載のとおり、「不適応な」旨の表現は、必ずしも既存治療を実施しなくとも本品を使用可能とすると、誤解を招く可能性が考えられるため、「奏効しない」が適応対象の表現として適切であると考えました。さらに、3)に記載のとおり、国内治験の対象疾患の「既存治療が奏効しない糖尿病性潰瘍」がその他の創傷よりも難治性が高いため、国内治験において評価されていない創傷であっても、既存治療が奏効しない場合は、本品の適応疾患とすることは受入れ可能と考えました。
 以上より、機構は、専門協議における議論も踏まえ、申請時の使用目的又は効果から、「既存治療が奏効しない創傷に対する、自己多血小板血漿ゲルを用いた創傷治癒の促進」に修正することが適当と判断しました。
 最後の論点は、製造販売後安全対策についてです。まずは、本品の適正使用について御説明いたします。審査報告書33ページ、通し番号34/1400ページ、12行目を御覧ください。機構は、適正使用指針を検討・公表するよう関連学会に依頼する申請者の方針は差し支えないと判断しますが、国内治験を参考に、適正使用指針において、「既存治療が奏効しない創傷」の定義など33ページから34ページに記載されているマル1からマル3の項目も情報提供する必要性があると考えました。また、適正使用指針の公表は、創傷治療に関連する複数の学会にも依頼することを申請者に求め、同意を得ました。
なお、機構は、国内治験及び海外類似医療機器の臨床成績において、機器に起因する有害事象が確認されておらず、また、本邦で承認されているPRP分離機器においても安全性について懸念するような情報がないため、本品には特段の承認条件の付与及び市販後使用成績調査は不要と判断しました。
 以上の審査を踏まえ、機構は、36ページ、通し番号37/1400ページ、22行目から記載している使用目的にて、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。本品は、ウシトロンビンを構成品に含むため、生物由来製品に該当します。なお、薬事分科会では報告を予定しております。
機構からの報告は以上でございます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 ありがとうございました。それでは、はじめに、参考人として御参加いただいている市岡先生から追加の御発言を頂けますでしょうか。
○市岡参考人 はい、聞こえますでしょうか。
○荒井部会長 はい、よく聞こえます。
○市岡参考人 埼玉医大形成外科の市岡です。もともと、PRP療法というのは昔からいろいろな所で行われていて、例えば、美容外科においてPRPを皮膚に注入してシワを伸ばすなどという使い方もされています。現時点でPRP療法そのものは保険収載になっていて、各所で難治性創傷に対してされているのですけれども、これは単に、患者さんの自己の血液を分離して血小板を取り出すというだけのもので、患者さんの血液のある成分を戻すだけのものです。今回のものは、それを更に効果的にするようにゲル状にして、例えば軟膏とか、外用剤のようにそこに貼りつけて、長時間作用させて創傷治癒を促進するというものです。今行われているPRP療法よりは確実に効くと思われますし、以前の、現在保険収載されているPRP療法というのは、先進医療からそのまま保険になったもので、これほど治験のように効果が示されたものではありませんので、今後我々難治性創傷の治療の領域においては有用であると考えます。
○荒井部会長 ありがとうございます。それでは委員の方から御質問、御意見いかがでしょうか。北澤委員が手を挙げておられます。北澤委員、どうぞ。
○北澤委員 北澤です。ちょっと確認したいことがあって手を挙げさせていただきました。よろしくお願いします。審査報告書31ページの25行目から、「安全性」の所で、「治験機器との因果関係が否定できない有害事象及び被験者に重大な影響を及ぼす不具合は発現しなかった」と書かれています。ですが、審査報告書21ページの「患者背景」の所で、中止例の中に「有害事象により、治験責任(分担)医師が中止と判断した場合」というのが2例あったと書かれています。つまり、有害事象でもうこの治験は続けられないと医師の方が判断した人が2人いたということではないかと私は理解しました。その2人がどんな有害事象だったのかと思って、審査報告書27ページの表14を見たのですけれども、数が書いてあるのですけれども、中止に至った2人がどんな有害事象でどのぐらいひどかったのかというのがこの表から分からなくて、その辺りをちょっと確認したいと思って質問いたしました。よろしくお願いします。
○荒井部会長 はい、ありがとうございます。いかがでしょう、どうぞ。
○医薬品医療機器総合機構 それでは機構から御説明します。まず、一番はじめにお伝えしたかったのは、この中止をされた2名の方は、創傷の不具合によって中止を受けたわけではなく、もともとの基礎疾患によって中止がされた患者さんになります。したがって、PRPゲルを使ったことによっての有害事象の発現ではなかったという判断から、中止はされているのですが、本品を使用したときの注意事項には当たらないと判断した次第です。お答えになっていますでしょうか。
○北澤委員 では、この2人が中止になった理由は、表14の中には含まれていないということなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 表14にも含まれています。ただし、ちょっとお待ちください。すみません、では表14から御説明します。これは一応治験のときに起こった有害事象全てが記載されています。それは今回のPRPゲルを使用した箇所に関係しないものも全て含まれています。今回治療に当たって行ったのは、確かまず。すみません、ちょっと調べるのに時間を頂いてもよろしいでしょうか。
○荒井部会長 ではちょっと調べていただきましょう。北澤委員、ちょっとお待ちください。いろいろ手を挙げていただいています。大隈委員お願いします。
○大隈委員 関西医大の大隈です。少し質問させていただきたいのですけれども、先ほど説明がなかったように思いましたが、このゲルは濃縮されているのですけれども、濃縮率が○○○倍ぐらいだったと思います。○○倍というのは、それほど濃縮率としては高くないかなと思うのですが、この濃縮率というのが、何かしら検討されてこの倍率になっているのか、○○倍ということで十分有効性が担保されていて問題ないという判断なのか、そこをちょっと教えていただけないでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 すみません、機構からお答えします。まず、今回の創傷PRPについては、全血に比べて濃縮がされているというのが目標値になっています。あとその効果については、国内治験で示されているとおり、治療効果があったと判断しています。
○大隈委員 では、○○という数値に関しては、特段の深い意味があるわけではないということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、おっしゃるとおりです。
○荒井部会長 よろしいでしょうか。
○大隈委員 それで十分有効性が担保されているなら、承知しました。
○荒井部会長 先ほどのはまだですね。では、ちょっと保留で、分かったら教えてください。ほかに永井委員が手を挙げておられます。永井先生、どうぞ。
○永井委員 私からも確認ですが、これは8週間でしか見ていないのですが、承認条件としては8週間以上使ってもOKで、あえて8週間と書いていないということですか。
○医薬品医療機器総合機構 機構から答えさせていただきます。今回は8週間を見るということで、創傷治癒の傾向が見られるかどうかというところを確認している状況で、その後8週以上使ったとしても、特に安全性について問題があるわけではありませんので、使用は限定しておりません。
○永井委員 ありがとうございます。
○荒井部会長 もう一人、小西委員が手を挙げておられます。どうぞ。
○小西委員 小西でございます。ちょっと臨床試験全体像をお聞きしたいのですけれども、先ほど参考人の先生が、以前からPRP療法というのはあったとおっしゃっていたので、本来であれば従来のPRP法に比べてこれが非常にいいというのを比べるべきではないかという気がしたのですけれども、その点の全体像の臨床試験についてお聞きします。よろしくお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 機構から答えさせていただきます。まず、今回の国内治験の背景から御説明します。国内治験の前に海外に類似医療機器がありまして、本品そのものではありませんが、構成品については、種類は全て同じです。採血管、採血針、それからアスコルビン酸と塩化カルシウムとトロンビンを含むというのは同じ品目になりますが、それにつきましては、既に海外で使われていることと、あとは海外での市販後安全調査であるとか使用成績調査であるとか、そういったものがありまして、ある程度PRPを使用したときの効果というのは評価がされている状況でした。ところが、今回申請者が示した、既存治療が奏効しない創傷というのを評価するとなっていったときに、これを特化して評価した試験というのがこれまでなかった状況にあります。ですので、国内治験においては、海外で示された評価プラスアルファとして、既存治療に奏効しない創傷に対しての評価を行ったということがあります。ですので、液状のPRPを対象にして国内治験をすることは不要と判断した次第です。
○荒井部会長 小西委員、よろしいでしょうか。
○小西委員 はい、分かりました。
○荒井部会長 もうお一人、清水委員が手を挙げておられます。清水委員、どうぞ。
○清水委員 清水です。20ページの主要評価項目と副次評価項目について確認があります。主に画像処理の観点からの確認なのですが、○○○○○○○○○○○○○○○○○○と書いてあります。○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○となります。アナログからデジタルへの変換、スキャナはどのようなものを使われて、例えばDPIというのはどのぐらいに設定されたのか、教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えします。その画像が今回創傷の患者さんから○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○評価がされています。申し訳ありませんが、どの程度の解像度だったのかというところについては、我々は把握していませんが、ただし、今回創半径縮小率というのを有効評価項目として挙げているのですけれども、それを算出するには十分なBTMで評価されていると判断しましたので、特にどのようにデジタル化したかというところについては、今回の国内治験の成績には大きく影響しないと判断しています。以上です。
○清水委員 十分検討された上で多分DPI等の、例えば1インチ当たり何ドットサンプリングするかというのは決められたと思いますが、例えば創傷のサイズが、今回は大体どのぐらいの平均的なサイズでしょうか。それが非常に小さいと、かなり細かいサンプリングをしないと、この評価値自身に影響が出てくる可能性もありますが、大きさの平均値がもしお分かりでしたら教えていただけますか。
○医薬品医療機器総合機構 大きさというのは、ちなみに意図として教えていただけますか。面積でしょうか、それとも。面積でよろしいですか。
○清水委員 どちらでも構いません。面積でも直径でも。何か分かるものがあれば。
○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えします。面積につきまして評価した内容があります。審査報告書23ページの下段になります。「マル1創傷面積及び最終評価時の創傷面積縮小率」というのがあります。PPSでは、創傷の面積つまり治療前の創傷面積ですけれども、3.05±2.76㎠であったという記録が残っています。
 また、今回有効性の評価項目を創半径縮小率に決定した背景もありますので、そちらも御説明します。これまでの創傷の評価においては、創傷面積、それから創傷体積が評価項目になることが多くありましたが、この指標については、形状によってしまう評価になります。ですので、今回はその形状によらない指標として、創半径を求め、その縮小率を評価したというのが国内治験の背景としてあります。確かに一般的には解像度によって影響が出てくるかもしれないという疑問があるのも分かりますが、この評価においては、その点については影響はなかったと判断します。以上です。
○清水委員 ちなみに最小、一番小さくなった場合というのはどのぐらいまで創傷の面積が小さくなっていますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 その最小というのは、8週間でということでしょうか。
○清水委員 はい。
○医薬品医療機器総合機構 既に上皮化もしていますので、総面積が縮小したかどうかというと、上皮化されているので創傷としてはなくなったというのが正しい回答かと思います。
○清水委員 非常に小さくなった場合に計測が難しくなりますので、ちょっとその辺りどのようにされたのかと思って伺いました。面積の算出の仕方なのですが、面積というのは○○○の上で、例えば創傷の中に含まれる画素数をカウントされたのか、それともそれ以外の方法で面積を近似値されたのか教えていただけますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 一応そのイメージ図が申請者から提示されていますので、まずそちらを御説明します。ページ番号が177/1400ページを御覧ください。黒いページでは107ページです。資料が多くて申し訳ありません。
○荒井部会長 どうぞ。緑の177/1400ですね。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。そこにイメージ図を示していますが、このようなグリッドを設けて、それで面積を一応把握しているという状況でして、あと○○○についても、データの取り込みから、その後に操作者が操作をしたということもないと思いますので、恐らく画素数がそのまま創面積になっていくと思います。
○清水委員 今グリッドが見えているのですが、画像としての画素とこのグリッドの関係というのはどうなっているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 すみません、意図をもう少しお聞きしてもいいですか。関係とは。
○清水委員 画像は、細かい画素と呼ばれているものから成りますが、この画像を見ますと、その格子状のグリッドが見えます。先ほどの面積というのはこのグリッドを使って、このグリッドが例えば何個あるという形で出されたのか、それとも更に細かい画像を構成している画素の数をカウントして面積を算出されているのか。すみません、ちょっと細かい点で恐縮なのですが、創傷が小さくなればなるほど、どういうふうに計測したかというのがその数値に影響を与えると懸念されますので、それで念のためお伺いしています。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。こちらのソフトウエアについてなのですけれども、画素を計算して面積を出すものだと思いますので、このグリッドについてはその目安で、基本的には画素を計測して面積にしていると判断しています。
○清水委員 分かりました。最初のスキャナのときのDPIが十分高ければ、正しい値が出ていると理解できました。
 あともう一点、すみません。これも細かい点なのですが、体積を出されているということなのですが、体積の場合ですと、奥行、深さ情報が必要なのですが、これはどうやって計測をされているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えいたします。深さ方向は最も深い値を採用して計算しています。一応半楕円というか球状のものに近似して計算しています。
○清水委員 球状のものに近似するというのはどういう手順になりますか。
○医薬品医療機器総合機構 面積は先ほど申し上げたような形で計測がされます。その後、最も深い深さのものを算出式に代入して面積を求めているということになります。
○清水委員 分かりました。最大の深さを使って体積を近似されて、それを使って評価、あるいはそこから球近似相当径ですか、そういうものを出されている。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおりです。
○清水委員 分かりました。私からは以上です。
○荒井部会長 もうお一人、山上委員が手を挙げておられます。山上委員、どうぞ。
○山上委員 簡単な基本的なことなのですけれども、ウシの血液由来成分のものを使っていますけれども、安全性の担保は普通に売られているものを使えばそれで大丈夫なようなものなのでしょうか。それとも御自分たちで何か工夫されているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えします。本品におけるウシトロンビンについては、審査報告書の黒の文字で6ページ、緑の文字だと7/1400ページに記載がありますが、トロンビンについては他社品の「トロンビン経口・外用剤5千「F」」を構成品として含めています。一応このトロンビンの安全性について、他社品で評価されている安全性をそのまま踏襲しているという形になります。また、本品で使用しているトロンビンの量というには、この他社品の、承認をされている用法・用量の範囲内にありますので、そういった観点からも安全性は確保されていると、申請者から説明を受けています。
○山上委員 ありがとうございました。
○荒井部会長 北澤委員の御質問に対する答えは用意できましたか。どうぞ。
○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えします。中止例となりました2件の有害事象ですけれども、中足骨の骨折及び骨髄炎でした。大変お待たせして申し訳ございませんでした。
○荒井部会長 骨髄炎と中足骨の骨折なので、このゲルとは直接の関係はないという判断が下されたということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、おっしゃるとおりです。
○荒井部会長 北澤委員、よろしいでしょうか。
○北澤委員 はい、ありがとうございます。それが表14にも書いてあったのでしたか。それは書いていないのですか。
○医薬品医療機器総合機構 記載はございます。
○北澤委員 足の骨折という所ですね、違いますか。
○医薬品医療機器総合機構 いや、感染の所に。上から。
○北澤委員 骨髄炎、分かりました。中止に至るまでのことだと書いてあったので、かなり重いものなのかと思って質問しました。できれば、そういった重さというのですか、重大さについても表14に記載があればよかったと思いました。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 すみません、ありがとうございました。
○荒井部会長 ありがとうございます。私から一ついいですか。既存治療を4週間行って、それが効かない場合にという設定ですから、この臨床試験ではしようがないのですが、臨床的には、現場の専門の先生が御覧になって、既存治療では到底うまくはいかないだろうと判断されるような症例にも4週間待たなくてはいけないのか、その辺に関して何か議論はありましたか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。まず、今回のスクリーニング期については、4週間というように毎度設けておりますが、今回の国内治験にリクルートされる前に、既に4週間以上奏効しないというのがはっきり分かっていた場合には、特にこのスクリーニング期は不要と判断したという状況でして、全ての患者さんが4週間以上の既存治療が奏効しないことは確認されているという状況です。この4週間という話なのですが、先ほど参考人の市岡先生からもお話がありましたが、難治性潰瘍に対するPRPの保険についてです。これについてもトラフェルミンとNPWTという処置があるのですが、そちらを4週間以上奏効しても効果がない患者さんをリクルートするというガイドラインになっておりますので、本品において特に厳しい規定を設けたという状況ではありません。
○荒井部会長 なるほど。ありがとうございます。宮川委員が手を挙げておられます。どうぞ。
○宮川委員 宮川です。ちょっと教えていただきたいのですが、糖尿病性潰瘍と書いてありますけれども、原疾患である糖尿病のコントロールはどうだったのか。つまり、治療していて、A1Cも含めてですが、ある程度低レベルにコントロールされてきている途中でなったのか、それとも、そういう初期の糖尿病なのか。これは、足の病変が出ているので、かなり進行していると思うのですが、そのグレードはどうだったのか。それがいろいろな値に違いが出てくるのかどうか。このばらつきとか、そういうものについて教えていただきたいのです。つまり、糖尿病のコントロールができていれば、こういうものを起こしにくいし、試験の途中から糖尿病のコントロールが十分されていると、この創傷の治癒もよくなってくるということはあるのですが、それに対してはどうだったのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。まず、糖尿病性潰瘍の治療については、標準的に行われているものを。
○宮川委員 糖尿病性潰瘍の治療ではなくて、糖尿病そのものの、本体の治療です。
○医薬品医療機器総合機構 糖尿病の治療ですね。
○宮川委員 それがバラバラであれば、意味がないはずなのですがいかがでしょうか。原病である糖尿病そのもののコントロールに関して何も記載がないのですがいかがでしょうか。糖尿病によって血流が悪くなって、血管障害を起こしてこういうことになるわけですが、そのコントロールの状況はどうだったのかが問題です。さらに罹病期間がどうだったのか。そういうことがかなり効いてくるはずなのですけれども、それはどこに記載されて、どのように解析されているのかお聞きします。
○医薬品医療機器総合機構 機構からお答えいたします。まず、糖尿病に対する治療についての詳しい解析というのは行われておりません。明らかに糖尿病性潰瘍が既存治療に奏効しなかったかどうかで判断されております。
○宮川委員 それは非常におかしい話で、糖尿病性潰瘍というのは、糖尿病があるから潰瘍になったので、そのグレードとか罹病期間、血管病変、いろいろな血流の不分布、病変部にはいろいろなことが起こっているわけです。それから、易感染性もありますし、そういうことがどのようにこれの治療に効いてくるのかというのは、実際にそれがなければ分からないはずなのですが、なぜそれがしっかりと指摘されていないのか。
○市岡参考人 埼玉医大の市岡から、発言させていただいていいですか。
○荒井部会長 どうぞ。
○市岡参考人 詳しくは覚えていませんが、通常このような治験をするときには、HbA1cの除外基準があると思ったのですが、機構、そこはどうでしたか。例えば、A1cは少なくとも幾つ以下でなければいけないというのを決めることが普通なのですが。
○医薬品医療機器総合機構 少し調べるので、お時間を頂いてもよろしいでしょうか。
○宮川委員 はい。それから、このときに、途中で糖尿病本体の治療が変わっていっては困るわけです。この中に低血糖と書いた2例、ということは、経過の中で低血糖があったということは、治療が変わっているのか、変わっていたら意味のない試験なのです。その辺の所に関しても教えていただけますか。
○荒井部会長 ちょっと今調べていただいて。もういいですか。
○医薬品医療機器総合機構 少しお時間頂けますか。
○荒井部会長 そのほか、委員の方から御意見はいかがでしょうか。
○宮川委員 もう一つ、すみません。
○荒井部会長 はい。
○宮川委員 先ほどお尋ねになっていたのですが、深さというのは推定、つまり、最初のときの深さを一定にして、それから今度、潰瘍面積というか、表面の縮小の度合によって同じように縮小していくということがあるのですが、本当にそのようなことを推定していいのかどうか。潰瘍のときには深さというものの方が重要な規定因子になるのではないかと考えます。もちろん表面もそうですが、大きければ大きいほど問題なのですけれども、深さというのは薬のいろいろな浸透度、それから治療の奏効度にかなり効いてくるのです。それを、あえて推定にしたというのがよく分からないので、本来からすれば、深さの方をある程度規定して、しっかり見ていくということが重要かと考えます。それによって、その面積がどうだったのかということをある程度補助にしていくというのが潰瘍の所はかなり重要です。そうでなかったら潰瘍として意味がないというか、治癒の意味がよく分からないはずなのです。面積を先に規定して深さをそこに随伴として入れるという、そういうちょっと乱暴な形だったのかなという気がするのですが、いかがなものかなと。
○荒井部会長 今の宮川委員の御発言は、「最初に計測した深さをそのまま使っているのは具合が悪いのではないか」という御質問かと思いますが、深さの計測は後の方でも測定し直しているのですか。
○医薬品医療機器総合機構 そうです。
○荒井部会長 そこは、多分している。
○医薬品医療機器総合機構 はい。一応、副次評価項目という形でやっていて、正直申し上げますと、やはり体積ないしは面積を評価項目にしていくと、形状によって成績にかなりばらつきが出てきてしまいます。あとは、治っているように見えて実は治っていないとかいう話が出てくる。つまり、形状要因が多いということですので、今回、副次評価項目では。
○宮川委員 そうですね。形状要因というのは、結局は深さによって変わるわけですよね。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおりです。
○宮川委員 面積ではなくて、深さの方を本当は規定しているのです。
○医薬品医療機器総合機構 はい。ですので。
○宮川委員 形状要因というのは、全て深さなのです。だから、どうして深さの方を先に規定しないのかと。形状要因というのは、結局はいろいろな面積、楕円になっていたりとか三角形になっていたりとか、広がりがあって先が細いとか、くちばしのようになっているとか、いろいろなことによって形状要因が出ると考えます。だからこそ深さを先に規定するのかなと思ったのですが、深さを先に規定しないのは、潰瘍としてどういう治癒因子になっているのかなと思ったのでお聞きいたしました。
○医薬品医療機器総合機構 分かりました。ありがとうございます。一応、規定というのは、まず患者さんのリクルートについての話としてもよろしかったでしょうか。一応、深さについては、どのような患者さんがというのは規定しており。
○宮川委員 治癒の所に関して、治癒していく過程というのは、結局は深さの方が重要な規定因子になっていくのではないかと思ったので、ちょっとお聞きしました。最初の方の基準というよりは、治癒過程において深さがどのように変化していくかということの方が重要ではないかと思ったので、ちょっとお聞きしたわけです。
○荒井部会長 今の宮川委員の御発言は、「評価にあたって、深さの要因をセカンダリーにしているが、本当はそちらが大事ではないか」という御意見だと理解いたしました。そうですよね。ただ、そこに関しては、この臨床試験で面積あるいは半径を使っていること自体が全くおかしいという話になってしまい、根本から話が覆ってしまいます。大切な点ですが、この点については、一応御理解いただいたということでよろしいですか。
○宮川委員 はい。すみません。
○荒井部会長 先ほどの糖尿病の疾患のことに関してのA1cとか、あるいは治療の状況、それから、低血糖が2例出ているという御指摘がありましたけれども、その辺の、いわゆる糖尿病原病の管理のことに関して、何か情報は見付かりましたか。
○医薬品医療機器総合機構 まず、選択基準について、HbA1cが10%以下の患者というのが規定としてはあります。
○宮川委員 もちろん、その試験期間は、糖尿の治療は原則変えていないということで了解してよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 それで、実際にHbA1cがどの程度とかというのも記録があります。平均で6.81でした。
○宮川委員 この中で治療が変わっていなければいいのです。試験中、治療が変わったのか変わっていないのか、原疾患のことが何も触れられていないので、臨床上どのように考えたらいいのか、教えていただければと思います。
○荒井部会長 ありがとうございます。先ほど冒頭の説明にはなかったのですが、今のお話だと平均値のデータが存在するということですね。よろしいでしょうか。
○宮川委員 試験中は、糖尿病の治療は全然変わっていないと理解してよろしいのですね。
○医薬品医療機器総合機構 そうですね。
○宮川委員 もちろん当然なのでしょうけれども、それがなければ非常におかしい話なので。
○医薬品医療機器総合機構 それが変わってしまうのは、そうですね。
○宮川委員 記載がない理由が分からないのです。
○医薬品医療機器総合機構 糖尿病の治療コントロールがどのようであったのかについては、全部解析されているわけではなかったのが事実ですが、臨床検査値においては、調査機関を通して大きな変更がなかったことは確認されております。
○荒井部会長 あと、実はお一人、河野委員が手を挙げておられます。河野委員、どうぞ。
○河野委員 河野です。この議題は、議決には参加できないので静かに聞いていたのですが、いろいろな先生方が御指摘されているように、この臨床試験、治験ですね、ワンアームの試験で、じっくり話を聞いていると、この試験は一体何を見ているのかさっぱり分からなくなってきました。15施設で74例がエントリーしていて、そのときの条件が、4週間既存治療が無効だったものと18ページに書いてあるのですが、「既存治療の定義」が、このうちどれかをやって治らなかったものはどれでもエントリーしていいということですか。一定のものではなくて、ここに羅列してある全てのもののどれかをやっていればエントリーできると。しかも、それは身体のどこの部分のでもよくて、深さもここに書いてあるとおり、先ほど御指摘がありましたけれども、非常にいろいろなもので、大きさも1㎠でもいいし25㎠でもいいし、その間ならいいと。4週間、誰かが確実にやったのではなくて、誰かがこのうちのどれかをやったということが言えればエントリーしていいというと、一体この成績は何と比べるのが妥当なのかと。しかも、コントロールが全くないので、ちょっと理解できなくなってしまいました。コントロールが置けない理由とか、機構の方が先ほどおっしゃったのですが、この結果は本来何と比べるべきだったのかというか、PRPの効果を調べるのであれば基剤と比べるとか、何らかのものがないと、製剤の全血から、たかだか○○倍濃くなった血小板の効果がこの効果だというのは、余りにも根拠としてお粗末ではないかという印象がいたしました。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 機構から答えさせていただきます。まず、既存治療については、この表にあるいずれかをやっていて奏効しなかった患者さんということになります。対照を置かなかった理由については、御説明したとおり既存治療が奏効しないというところでしておりますので、対照を置けなかったという判断をしております。
○荒井部会長 今の河野委員の御質問に関する答えとして、機構としてはそれ以上お答えできないと思います。では、今の点に関して、この治験が一体どういうことを明らかにしているのかという点について、市岡先生、御意見いただけますか。
○市岡参考人 正に医療機器で創傷をやるときには、ほとんどこのパターンで問題になるのですが、今まで医療機器で、創傷で認められたものは、ほぼワンアームで評価しています。厳密にするのであれば、プラセボを置いてRCTを要望されるのですが、医療機器ではなかなかプラセボを置きにくいので、致し方なくワンアームでする場合には既存の治療で4週間治癒しない難治性創傷を対象とするのが一般的になっています。ただ、今回の機器では外用剤の中では最も強力と目されているトラフェルミン(フィブラストスプレー)と比べて非劣性が示されており、これをもって既存の治療よりは効くのかなという印象を持った次第です。御指摘されたことは常々、我々創傷の専門家は感じてやっているところです。以上です。
○荒井部会長 市岡先生、ありがとうございます。河野委員、いかがですか。
○河野委員 分かりました。けちを付けているわけではなくて、この試験は全部事前に、例えば2週間なり4週間なりトラフェルミンを投与するとしてベースをそろえてしまえば、今みたいな疑問は出ないのかなと思ってコメントさせていただきました。ありがとうございました。
○荒井部会長 ありがとうございます。正にここも、今、市岡先生がおっしゃいましたが、医薬品と異なる医療機器の微妙な状況の所がこの試験の形に結構表れているように思います。結果としては、臨床現場の状況とか、これまでの経緯も踏まえると、しようがないのではないかという御意見だと伺いました。
○宮川委員 部会長、一言だけよろしいですか。
○荒井部会長 どうぞ。
○宮川委員 本当に苦渋しているなというのは分かるのですが、結局、糖尿病性潰瘍というのは、ベースの血流状態によって変わってくると考えます。それも、解剖学的にも変わってくるので、やはり部位というのはある程度そろえなければいけないです。足病変といっても様々な足の所で、踵なのか指先の方になってくるのか、そういうことも全くここに書いていないので比べようがないなと考えます。多分、苦渋の選択があるのかもしれませんが、試験としてはラフではないかなという印象を持たざるを得ないということだろうと思います。
○荒井部会長 ありがとうございます。そのほか、御意見はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 ちょっと一つだけ。
○荒井部会長 どうぞ。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございました。このような試験は多くあると思いますので、頂いた御意見については、今後の臨床試験の考え方についても踏襲して考えていきたいと思います。ありがとうございます。
○荒井部会長 ありがとうございます。私も最後に、機構に少し。今後この辺、治験をやるときに、デザインとかあるいはプライマリーエンドポイントなどについては、当然相談があるわけですが、今回、正にこれらについて種々の御指摘があったということです。確かに機器独特の難しい部分もあり、何でもかんでも医薬品と同じように厳しくやればいいというわけでないことは十分に承知していますが、それでもここで頂いた御意見は非常に貴重なものだと思います。是非、参考にして今後の検討に繋げていただければと思います。
 委員の方々、そのほか御意見はよろしいでしょうか。大変、貴重な多くの御意見を頂きました。特にありませんでしたら、議決に入らせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、一般的名称「多血小板血漿ゲル調製キット」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
次に、今度は医療機器です。医療機器「オートロジェル システム」について、本部会として承認を与えて差し支えないものとし、生物由来製品としては指定し、特定生物由来製品としては指定しないということでよろしいでしょうか。また、使用成績評価は不要としてよろしいでしょうか。よろしいですか。御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。
本件は、分科会にて報告させていただきます。それでは、これで議題2を終了いたします。市岡先生、どうも長時間ありがとうございました。
○市岡参考人 ありがとうございました。
○荒井部会長 それでは、議題3に進ませていただきます。「医療機器「Zephyr気管支バルブシステム」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の要否について」、始めさせていただきます。本議題については、黒澤一先生に御出席いただいております。長時間お待たせして申し訳ありません。それでは、事務局から説明をお願いします。
○事務局 議題3について、事務局より説明いたします。資料3-2のファイルをお開きください。本議題では、医療機器「Zephyr気管支バルブシステム」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、並びに使用成績評価の要否について、御審議をお願いいたします。
 ファイル1ページを御覧ください。今回、「Zephyr気管支バルブシステム」に対応して、新設を予定する一般的名称は、「気管支用バルブ」です。定義は、「肺に流入する気流及び肺から排出される気流を制御するために気管支内腔に留置される単回使用の一方向弁をいう。通常、一方向弁及びそれを留置するために用いられるデリバリーカテーテル等から構成される。」としております。
 本品は、クラスIII、高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、不要と考えております。一般的名称の新設に関する説明は以上となります。
次に、審議品目及び審査の概要について、機構から説明をいたします。
○医薬品医療機器総合機構 医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。資料3-1をお開きください。資料3-1の冒頭、本品目の専門協議委員一覧を御覧ください。本審査にあたり、資料にお示しする4名の専門委員の御意見を頂きました。
はじめに、品目概要を御説明いたします。資料3-1、審査報告書6ページ、緑色の通し番号7/379ページを御覧ください。本品は、高度な肺気腫及び過膨張を伴う重症COPD患者の肺容量減量術に使用される気管支バルブです。ニチノール製の自己拡張型リテーナー及びシリコーン膜から構成される一方向弁であり、気管支鏡を通じ、専用のカテーテルを用いて気管支に留置されます。バルブは、留置対象となる気管支内径の大きさに応じた2種類、気管支に密着する「リテーナーシール部」と呼ばれる部位の長さが異なる2種類の、計4種類の製品バリエーションを有します。本品は、現在審査中の「Chartis肺機能評価システム(カテーテル)」及び「Chartis肺機能評価システム(コンソール)」を用いて、肺葉間の側副換気がない肺葉を対象に使用されます。
 次に、開発の経緯を御説明します。審査報告書7ページ下段の「開発の経緯及び外国における使用状況等に関する資料」を御覧ください。本邦におけるCOPDの治療は、禁煙指導、薬物療法、呼吸リハビリテーション、酸素療法、換気補助療法等が行われています。このような最大限の内科的治療にもかかわらず、十分な治療効果が見られない場合や、呼吸困難で日常生活に大きな支障がある場合には、これまで外科的肺容量減量術(以降「LVRS」)と呼ばれる、外科的に肺組織の一部を切除する治療の実施が検討されています。しかしながら、LVRSは外科的手技で侵襲度が高い手術であり、海外で実施された大規模スタディの結果を踏まえ、本邦のガイドラインでは、重症例では術後死亡率が高く、LVRSを行うべきではないとの警告が示されました。よって、現在はLVRSの実施件数は極めて少ない状況であり、適用可能な患者は極めて限定的です。
 本品は、重症肺気腫患者に対する肺容量減量術を、経内視鏡的に可能とするデバイスであることから、これまでLVRSの対象となった患者にとって、非外科的療法の次の治療選択肢となります。本品は、最大限の非外科的治療が既に行われているにもかかわらず、日常生活に支障のある症状を有する重症肺気腫患者に使用する製品として開発されました。
 続きまして、審査報告書8~9ページ「外国における使用状況」を御覧ください。本品は欧州で2003年9月、米国で2018年6月に許認可を取得しており、2021年9月時点で約○○個の販売実績があります。
 続いて、本品の非臨床試験についてですが、こちらは特段の問題は認められませんでしたので、臨床試験成績について御説明します。
 審査報告書14ページ、中段「ヘ. 臨床試験の試験成績に関する資料又はこれに代替するものとして厚生労働大臣が認める資料」の項目を御覧ください。本品に関する臨床試験成績として、LIBERATE試験及びIMPACT試験の成績が提出されました。
LIBERATE試験は、不均一な気腫性病変を有し、本品を用いた気管支鏡的肺容量減量術の有効性及び安全性について、標準治療を受けた被験者を対照として比較検証することを目的に、米国、欧州を含む24施設で実施されました。
 まず、LIBERATE試験成績の概要について御説明します。審査報告書19ページ、表9を御覧ください。主要有効性評価項目は、肺機能の改善を確認するための指標として「手技後1年時点で、FEV1が15%以上改善した被験者の割合」と設定されました。FEV1とは、深く息を吸った後、1秒間に努力的に吐き出される空気の量であり、COPDの重症度の指標となります。LIBERATE試験の結果、主要評価項目を満たした患者は、本品群47.7%、対照群16.8%であり、FEV1が15%以上改善の閾値を満たした被験者の割合は本品群の方が有意に高く、事前に設定された達成基準を満たしました。
 安全性評価項目については、審査報告書20ページを御覧ください。安全性評価項目として、本試験における不具合及び有害事象について、短期の治療期間として手技から45日まで、及び長期的な期間として手技後46日目から1年後のフォローアップ来院までの期間として収集されました。短期の治療期間、本品群では106例に合計352件の有害事象が報告され、対照群では25例に合計35件の有害事象が報告されました。長期的な期間では、本品群では110例に合計326件の有害事象が報告され、対照群では51例に合計144件の有害事象が報告されました。
 次は、IMPACT試験について説明します。審査報告書29ページ、表23を御覧ください。IMPACT試験は、標的肺葉と隣接肺葉の破壊スコア差が15ポイント未満の病変が均一な重症肺気腫患者に、本品を用いた気管支鏡的肺容量減量術の安全性及び有効性について、標準治療が行われた患者を対照として比較することを目的に、欧州9施設で実施された試験です。
 主要評価項目である「ベースラインから3か月後のFEV1の平均変化率」は、本品群では15.3%増加、対照群では3.4%減少しました。ベースラインから3か月後のFEV1の変化における平均群間差は18.8±22.1ポイントであり、FEV1の平均変化率は本品群の方が有意に高く、事前に設定された達成基準を満たしました。
 安全性評価項目については、審査報告書30ページ、緑色のページ31ページを御覧ください。安全性評価項目は、短期としてバルブの留置手技日から30日後まで、及び長期として手技施行31日後から6か月後までの期間の不具合・有害事象が収集されました。安全性評価期間6か月の期間における呼吸器関連の有害事象は、本品群で36例111件、対照群で32例54件認められました。呼吸器以外の有害事象の総発現件数は、本品群で22例36件、対照群で10例14件認められ、本品群の方が対照群よりも多い結果でした。
以降の論点については、LIBERATE試験を中心に御説明します。
次に、本品の審査における主な四つの論点について御説明します。はじめに、海外で実施された本臨床試験の試験成績を用いて、本邦における本品の有効性及び安全性を評価することについてです。審査報告書35ページ、緑色のページ36ページ、中段を御覧ください。機構は、1)COPDの診断及び治療の国内外差については、海外のガイドラインと日本のガイドラインに、本品の評価に影響を与えるような違いはないこと、2)解剖学的な民族差について、体格差を考慮し、日本人の気管支が小さい可能性があることを考慮する必要があるものの、本品には長さ及び径の異なる四つのサイズバリエーションがあり、気管支長及び径に応じて適切なサイズが選択可能であると考えられること、3)患者集団について、本品は、薬物療法や非外科的療法を行っても呼吸困難が生じており、肺過膨張がある重症肺気腫患者であることから、患者背景及び治療背景は大きく変わるものではないと考えられること、4)本品使用時に必要とされる技能は気管支鏡手技であり、気管支鏡を扱う医師にとって特段難しいものではなく、気管支鏡手技を実施している医師が、後述の本品のトレーニングを受けた後に実施するのであれば、手技に係る特段の懸念はないと考えられること等から、国内臨床試験を実施せずとも、日本人患者集団における本品の評価を行うことは可能と判断しました。
 論点の二つ目として、本品の有効性についてです。審査報告書36ページ、緑色のページ37ページを御覧ください。LIBERATE試験では、バルブ留置1年後においてFEV1が15%以上改善した被験者の割合が、既存治療を継続した対照群に比べ有意に大きく、事前に定めた基準を達成しました。また、副次評価項目として設定された、COPDに関連したQOL質問票であるSGRQスコア及び6分間歩行の改善量が、本品群で有意に大きいことが示されました。バルブ留置により治療対象となった肺葉の容量が減少していることについては、HRCTにより示されました。以上より、機構はLIBERATE試験の試験成績から、バルブ留置後1年間の有効性は確認できたと考えます。
また、LIBERATE試験の長期成績では、バルブ留置後4年までの成績が提出されており、4年までにおいても平均値ではベースライン時よりも高いFEV1が得られており、有効性が継続して得られていると考えます。なお、LIBERATE試験はフォローアップ中であるため、引き続き経年データを確認し、長期的な有効性を確認する必要があると考え承認条件を付すこととしました。
 続いて、三つ目の論点は、本品の安全性についてです。LIBERATE試験及びIMPACT試験で発現した重篤な有害事象のうち、本品治療により早期に増加し複数例に認められた気胸について御説明します。
審査報告書38ページ、緑色のページ39ページの表32を御覧ください。LIBERATE試験では、表にお示しする計46例の気胸が発生し、うち3例は死亡症例でした。後遺症は2例あり、胸水の貯留と低酸素血症でした。気胸が発生する原理については、本品の留置により、標的肺葉の容量が減少し、胸腔内にスペースが生じ、同側肺葉がそのスペースを埋めるように急速に膨張するため、肺葉組織の弾性限界を超えて気管支肺胞瘻が形成されることにより気胸が発生する可能性が高いと考えられます。
本品の原理として気胸の発生を抑えることは難しく、標的肺葉等から発生を予測することも困難です。したがって、本邦で本品を使用する際には、重篤な気胸が発生し得ることについて適切な情報提供を行うとともに、発生した気胸に対しては可能な限り適切な処置ができるような措置をとる必要があると考えます。LIBERATE試験での気胸による死亡3件のうち、1件は入院中であっても緊張性気胸となり救命できていないこと、別の1件は院外で緊張性気胸を認めて救急搬送されていることを踏まえると、本品の留置及び留置後の患者管理は、呼吸循環管理及び胸腔ドレナージを含めた緊急処置の提供体制が整った施設で行われる必要があります。また、気胸の重症度や病態によっては、胸膜癒着術、気管支充填術、その他外科処置も必要になる可能性があることから、気胸に対する外科処置にも対応が可能な施設を考慮する必要があると考えます。
 気胸を含めた有害事象のリスクを踏まえると、本品を必要とする患者を適切に判断可能な医師により適応判断が行われ、手技中及び手技後に予想される有害事象を熟知した医師による治療手技が行われ、想定される有害事象に対して適切な処置が提供可能な体制が整った医療機関で使用される必要があると考え、後述する適正使用指針の策定が必須であると考え、機構はこれを承認条件として付すことが妥当と判断しました。
 四つ目の論点は、市販後の安全対策及び使用成績評価についてです。審査報告書44ページ、緑色のページ45ページを御覧ください。申請者は、本品の使用者に対し、表35にお示しするトレーニングを実施することを予定しています。トレーニング内容については、日本呼吸器内視鏡学会等の関連学会と協力して取りまとめ、さらに、同学会とともに本品に関する適正使用指針を作成予定です。
機構は、本品は、重症化又は死亡に至るリスクを有するものであることから、対象患者については、最大限の非外科的治療が行われているにもかかわらず、日常生活に支障がある症状を有する患者に使用するよう、適正使用指針に規定する必要があると考えます。
 続いて、使用成績評価についてです。審査報告書44ページ下段から45ページ、ト項及び表36「使用成績調査計画書(案)」を御覧ください。機構は、本品の臨床試験は海外のみで行われていること、及び本邦では重症肺気腫に対する気管支用バルブはこれまでに承認されておらず、LIBERATE試験及びIMPACT試験で見られたような有害事象に対するリスク管理及び有害事象への対応が、本邦の医療環境下において問題なく実施されるかについては、使用成績調査により情報を収集し確認する必要があると考え、使用成績評価に関する承認条件を付すことが妥当と判断いたしました。
 使用成績調査は、販売開始から一定症例数に達するまでは全例を調査対象とした上で、先ほど御説明した、気胸の発生率がLIBERATE試験と同等かどうか確認できるように、LIBERATE試験と同様の内容とすることとしました。
以上の審査を踏まえ、機構は本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。また、本品は使用成績評価の対象に指定し、使用成績評価の調査期間を6年とすることが妥当と判断しました。生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断しました。なお、薬事分科会では報告を予定しております。
機構からの報告は以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。
○荒井部会長 ありがとうございました。はじめに、参考人としてお越しいただいている黒澤先生、追加の御意見を頂けますか。
○黒澤参考人 東北大学の黒澤でございます。私はCOPDに関しては、日本呼吸器学会のCOPDに関するガイドラインの第5版の作成委員長をしております。今回、2022年のガイドライン第6版が出ましたが、そのときにも責任編集委員をさせていただきました。COPDの治療は、一般的に薬物治療がよくなっています。以前と比べると薬剤の効果が非常にいいということで、薬物治療が中心です。ただし、東北大学で1990年代に、今、御紹介があったLVRSという外科療法をやってものすごく効いたと。1990年代は余り効果のある薬がなかったということもあり、手術療法の効果の劇的なところがすごく印象に残っています。1990年代は、COPD治療がすごいブームになり、LVRSが一世を風靡したような形になっています。ところが、危険であるなどエビデンスの点で急速に手術されなくなり、代わりにすごく効くお薬が出てきたということです。非常に効く機序がある。つまり、COPDで膨張した部分を、そこが肺の中ですごい占拠病変になっているものですから、それを除けばすごく楽になることが手術療法をして分かってしまったものですから、そこの治療をどうするかということで、こういうバルブなどを、気管支から治療して、そこの体積を減らそうというような治療法が出てきました。このバルブもその一つです。やはり、外科の手術はもともと呼吸機能の低い患者さんにはハードルの高い治療になりますので、それが気管支鏡の操作でできるのは、治療選択という面では、治療する側にとってはすごく助かるものではないかと思います。
 LIBERATE試験を見ると、気胸が起きるということになっていますので、誰でもやっていいという治療ではないと思います。大きな病院で重症の患者さんに対応できる所では、非常に有力な治療として認めていただけると有り難いと思います。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。それでは、委員の方々から御質問、御意見をお願いいたします。小西委員が手を挙げていらっしゃいます。小西委員、どうぞ。
○小西委員 大変興味深くお聞きいたしました。最初に少し教えていただきたいのですが、バルブを入れた後に順調にいった場合のナチュラルヒストリーといいますか、その後の経過について教えていただけますか。直ちに、膨張した肺の部分がほとんどゼロになってしまって、いきなり適応し始めるということなのでしょうか。やはり、部位が何箇所かある場合はこの治療は使いにくいのかと思うのですが、適応についても教えていただけたら有り難いと思います。よろしくお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。機構からお答えいたします。まず、本品留置後の症状や肺葉の経過についてです。まず、本品を植え込んで三日程度の時点で気胸が発生していることを踏まえると、その時点で、既に本品が留置された肺葉の減量自体は始まっていると見込まれます。
 治療対象となる肺葉についてです。LIBERATE試験では、事前に規定されております。まず、一番肺葉の破壊スコアが高い肺葉、つまり、肺葉単位で治療を計画するのですが、一番悪い肺葉を対象として手術することを検討します。その際、先ほどの説明に出てきましたChartisカテーテルがございます。こちらを使用して側副換気、つまり、隣り合う肺葉との空気の流入の有無を確認します。流入を確認して、流入がない場合には、その肺葉を潰しにかかる。流入がある場合には、バルブを埋め込んでも隣の肺葉から空気が流れ込んでしまうことになりますので、その肺葉にバルブを留置しても余り効果がないということで、また別の次に悪い肺葉を対象として側副換気があるかという検討をします。そのような順序で治療対象の肺葉を決定いたします。お答えになっているでしょうか。
○小西委員 よく分かりました。バルブを入れた肺葉が、最終的にはほとんど縮んでしまい体積がゼロになっていくというふうに考えてよろしいのでしょうか。それが完成するのが、1、2週間ぐらいなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。最終的に植え込んだバルブの先にある肺葉は全て潰れた状態、容量がない状態です。大体、その程度での容量の減少が見られ、それ以降継続するというふうに考えております。
○小西委員 分かりました。ありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 先生、補足いたします。
○荒井部会長 お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 この試験では、呼吸機能は3か月ごとぐらいに取っております。確か、3か月又は6か月ぐらいでピークになっています。ナチュラルヒストリーで下がってきますので下降の所には入っているのですが、ちょうど1年のポイントでもベースラインからは上がっている評価です。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。永井委員が手を挙げておられます。永井委員、どうぞ。
○永井委員 ありがとうございます。二つあります。一つは大きめのところで、二つの治験についてです。LIBERATE試験とIMPACT試験は、両方とも一方向クロスオーバー試験というデザインになっていますが、提示されているのはクロスオーバーする前のデータだけです。コントロール群になった人にこの機器を使うという、ひっくり返す前のデータしか記載されていません。これを見ると、クロスオーバーの前に比較は終わっていて、むしろ、コントロール群にレスキュー的にこの機器を使ったという印象を受けます。もしそうならば、一方向クロスオーバー試験、という立て付けはどうなのでしょうか。もしクロスオーバーだというのなら、クロスオーバーした後、つまり、対照群にこの機器を適応した後のデータも一緒に提示されて然るべきではないかと思いました。後で、コメントを頂ければと思います。
○荒井部会長 永井先生、そこは結構重いところだと思います。今の永井先生の御意見は、後治療の規定なしというところで打ち切ってしまえばワンアームで済む試験で終わるはずのところが、特にクロスオーバーという表現を使っていることに関して、どうでしょうかということです。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただきありがとうございます。まず、おっしゃるとおり、今回のLIBERATE試験の評価をするタイミングとしては、本品群は本品を植え込んで12か月後、対照群はクロスオーバーをする前、まず、標準治療を続けて12か月たった時点のFEV1を比較しております。対照群のうち、希望した患者さんについては、12か月たった時点でバルブの留置を検討するという治療が行われました。
 クロスオーバーした後の成績です。お手元の資料3-1、緑色の数字292/379、293/379ページを御覧ください。今、画面に映っております。こちらが、クロスオーバーした患者のベースラインから12か月後までの治療の成績です。緑色の棒グラフが標準治療を続けたときのFEV1、バルブを留置した後の成績が黄色です。症状の経過は、経年的にFEV1は落ちていくということで、バルブの留置をした時点で、もともとのFEV1より悪くなっている患者さんに留置を検討するということになりましたが、その時点で、バルブを留置することによってFEV1が少し良くなることを確認しております。
○荒井部会長 永井先生、いかがでしょうか。
○永井委員 途中で音声が一部途切れてしまったのですが、大体、分かりました。データがあることは分かりましたが、審査報告書では、クロスオーバー後のデータは言及しなくてよいものなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。使用評価に直接関わっておりませんでしたので、審査報告書には載せておりません。ただ、治験のデータとしては入っておりますので、当然、そこは評価の範囲に入っております。
○荒井部会長 永井先生、どうぞ。
○永井委員 審査資料にはなっているけれども、審査報告書にはあえて記載する必要はないということなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 報告書にはあえて記載しませんでした。
○荒井部会長 試験の名称と報告内容に齟齬があるというか、先ほど、永井委員に御指摘いただいたところだと思います。永井先生、もう一つの御質問をお願いいたします。
○永井委員 もう一つは簡単なものです。二つの治験で、本品群で、周術期、術後にCOPDの増悪というのが多くあります。具体的にどういう定義で増悪としたのでしょうか。もともとCOPDですし、FEV1が悪くなれば増悪としているのか。どういう定義であったのか教えていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 通常、COPDの増悪では、通常治療に加えて追加の治療が必要になった患者さんという定義になるかと思います。
○永井委員 分かりました。ありがとうございます。
○荒井部会長 梅津先生、どうぞ。
○梅津委員 エンジニアリングの視点から質問させてください。今日、私が会議場に来た理由は、是非とも実物を見てみたいと思ったからです。見てみたら思いの外、非常に小さくしっかり作ってあると感じました。そこで質問です。弁と聞くと、私はいつも心臓の人工弁と比較してしまうのですが、今回の弁の耐久性がどういう形で担保されているのでしょうか。一般には、加速耐久試験があるのですが、人の体の中に入れたら、こういう材料はどんどん変性します。実は世の中には心臓代用弁でシリコーン製のものはないのです。なぜかというと、体の中に長期間入れておくと、滲出液などの影響で材料自身が硬くなったり亀裂が発生したりします。これはカテーテルによって簡単に取り出せるのですか。まず、そこをお聞きしたいと思いました。先ほどのLIBERATE試験のデータを見ると、気胸の場合は僅か数日で取り出すことはあるようですが、実際に本弁を1年や4年後に取り出したことはあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。まず、簡単に取り出せるかどうかです。取り出すことは可能です。気管支鏡を通して鉗子を持っていき、つまんで出すと簡単に抜けます。
○梅津委員 その辺りは、心臓の弁とは大分違うということですか。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおりです。心臓の弁では、だんだん癒着というか、体内に取り込まれていく形になると思います。本品はそういうことは余りないようで、結構長い間置いておいても、痰が詰まったりすることは少しあるようですが、生体に取り込まれていくような反応はないというふうに伺っております。
○梅津委員 大変安心いたしました。ありがとうございました。
○荒井部会長 そのほかに御意見はございますか。一色先生、どうぞ。
○一色部会長代理 この製品は、日本での治験はなしということだと思います。今まで日本人に入れられた実績はありますか。もしあれば、どのくらいあるのでしょうか。あと、イメージ的に1秒率が良くなるという数字なのですが、実際の臨床で症状がどういうふうに良くなるのかというイメージが具体的でなかったので、先生の方からでも御解説いただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 まず、この製品が日本人に入っていることがあるかという点についてです。これは日本では治験が行われておりませんので、この製品についてはございません。ただ、他社の製品ですが、その辺りはこの審議会では申し上げられません。この製品については、日本人での実績はございません。
○荒井部会長 あと、1秒率は。実際の臨床的な判断については、黒澤先生に伺ったほうがいいでしょうか。黒澤先生、よろしいでしょうか。お願いします。
○黒澤参考人 COPDの悪い状態は、例えば、動いたときに息が切れるのが基本です。動いたときにというのは、甚だしい場合にはこうしてしゃべっている間も息苦しい、それから、典型的には歩くときに息切れする、それから坂道を歩くときに息切れするというようなことになります。
 一旦良くなると、息切れを感じずに歩ける距離が長くなる。それから、一番ひどい人では、話していても息切れするのですが、安静にしていれば全然苦しくなくなるなど、日常生活上苦しいことの足かせが取れると、いろいろなことができるようになったり。我々はリハビリテーションもやりましたので、布団の上げ下げができるようになったなど、そういう日常生活が少し良くなってくるというような感じがあります。あと、運動というか、旅行ができるようになった。それから、風邪を引かなくなった。それは運動して健康になるということかもしれませんが、状態が良くなることによって副次的な効果もすごく出てまいります。
○荒井部会長 よろしいでしょうか。そのほかに何かございますか。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 教えていただきたいのですが、33ページで、LIBERATE試験において治療した肺葉ごとの気胸の発現率と書いてあります。もともとLIBERATE試験で行われている数は、各肺葉の状況によって違いますよね。LIBERATEで一番多いのは左の上葉が66.4%です。それが効いてくるのか効いてこないのか。肺葉ごとの気胸の発現率は、どういう形で表として出ているのか。そして、実際に平均で3.9個入れているわけですが、それはどのように結び付いているのか。気胸の発生率は、もともとブラやブレブなどを含めて上葉の方が多いわけです。そうなってくると、それが効いてくるのか。もちろん、原因のところで患者さんの中の問題なのか、手技の問題なのか、個数の問題なのか、やった例数によって効いているのか、これは何が規定されているのかよく分かりませんでした。教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。まず、治療した肺葉と気胸の発生についてです。どの肺葉を治療したかによって発現率が高い肺葉、ここだと発現しやすいみたいなところは特段見受けられませんでした。
 バルブの留置個数についてです。留置個数が多いほど発生しやすいということはありません。原理的にも個数が多いから潰す肺葉が多いというわけではなく、一つの肺葉を潰すために必要な個数を入れるという考えです。個数と気胸の発生率に対しては、余り関係性は見受けられませんでした。
○宮川委員 そうすると、上葉などということに特にこだわらなくていい。もともと手術の場合には非上葉優位などの形で規定されていますが、バルブに関しては余り関係ないということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおりです。LVRSでは上葉優位の患者がというようなことがあるのですが、バルブについてはどこが優位な患者が対象というわけではなく、どの肺葉でも一定の有効性と気胸の発生率も同じ程度のものという結果です。
○宮川委員 そういう意味では、術前に予想するのは難しいと考えていいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおりです。この患者さんはこの肺葉だから危ないかもしれないということは現状では考えにくい、分からない状況です。
○宮川委員 ありがとうございます。
○荒井部会長 よろしいでしょうか。そのほかに、委員から御質問、御意見はよろしいでしょうか。北澤委員が手を挙げていらっしゃいます。北澤委員、どうぞ。
○北澤委員 今回は外国で行われた臨床試験の成績で評価するということになっていて、日本人でこの製品を使ったことはまだないというお話でした。先ほど、先生から最近は薬物療法も良くなってきているというお話もありました。実際にこの製品が日本で使われるようになると、大体、幾つぐらいの方に使われるようになるのか。二つの臨床試験では、被験者の平均は大体60代前半ぐらいで比較的若い方かと思いました。現実の日本の臨床に照らして考えると、どのような方に使われることになりそうなのかを教えていただきたいと思います。お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。まず、機構から御説明いたします。おっしゃるとおり、LIBERATE試験、IMPACT試験では被験者の平均が60歳程度です。LIBERATE試験では、除外基準として75歳以上の方は除外されておりましたので、上限としては、75歳以上は入らない試験です。
 一方、おっしゃるとおり、日本人のCOPD患者は少し高齢の患者さんが含まれる可能性が高いというふうに考えております。高齢の患者さんの有効性についてはどうかという点ですが、日本では使用実績はありませんが、IMPACT試験では1例80歳の患者さんが、海外の使用実績では、少数例ですが80歳以上の患者さんに使用されている状況はございます。そういう患者さんでも有効性が確認できていること、あと、単純に年齢で区切るのではなく、高齢になっても運動耐容能が一定程度ある、FEV1のベースラインの値がどうかというところで適応するかどうかを判断すると、一定程度の有効性は見込めるのではないかというふうに考えております。
 国内のCOPDの患者背景については、黒澤先生、お願いできますでしょうか。
○黒澤参考人 むしろ、これは若い方でも年を取った方でも。もちろん、若い方で重症で本当は手術したいという人に、このバルブを使うこともあると思います。それから、お年寄りの方で、今まで手術が心配でできなかったのに、この治療法があるということで使う場合もあると思います。数的には、日本では70歳以降の患者さんがメインになります。それから、これから高齢化社会といいますか、80代でも元気な方は元気ですので、もしかすると80代にも適応されていくような動きになるのかもしれませんが、メインは70代ではないかと思います。
○荒井部会長 ありがとうございます。三村委員が手を挙げておられます。どうぞ。
○三村委員 1点だけ教えてください。気胸が最も懸念される合併症ではあるのですが、気胸が起きた際にチェストチューブを入れると思います。気胸を来した患者さんに、バルブを抜去する必要がある、そういう必要性はないということについて、何か提案はありますか。
○医薬品医療機器総合機構 最初の所が聞き取れませんでした。もう一度お願いできるでしょうか。
○荒井部会長 三村委員、ミュートになっています。
○三村委員 失礼しました。端的に申し上げると、気胸が起きた際にバルブの抜去は必要となるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。バルブの抜去は検討する必要があると考えております。LIBERATE試験の中でも、気胸が発生したのでバルブを全部抜去する対応が行われております。
○三村委員 ありがとうございます。
○荒井部会長 そのほか、委員の方から御意見、御質問はよろしいでしょうか。それでは、特に御意見がないようですので、議決に入りたいと思います。よろしいでしょうか。
まず、一般的名称「気管支用バルブ」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないということでよろしいでしょうか。
次は品目です。医療機器「Zephyr気管支バルブシステム」について、本部会として、承認を与えて差し支えないものとし、生物由来製品及び特定生物由来製品として指定しないということでよろしいでしょうか。また、使用成績評価を6年として指定することでよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。
本件は、分科会にて報告をさせていただきます。それでは、これで議題3を終了いたします。黒澤先生、どうもありがとうございました。
 それでは議題4「医療機器の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否について」を始めさせていただきます。事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 議題4について、事務局より御説明いたします。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器があり、新たに一般的名称を新設する際には、「高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器への指定」及び「特定保守管理医療機器の指定の要否」について、御審議いただいております。今回は、医療機器の承認等に際し、審議品目のほか新設が必要と考えられる一般的名称が8名称ございます。
まず、名称を付そうとする品目のうち、同様の背景を有する4名称の概要を御説明いたします。資料4(参考)のファイルを御覧ください。表にお示ししている4名称については、現在「白内障・硝子体手術装置」の付属品として流通している製品に対する一般的名称(案)になります。これらは概念図にお示しするような形で使用されており、資料の下部において、各名称に対する代表的な製品の外観図をお示ししておりますので、適宜御参照ください。
これらの品目に付そうとする新設予定の一般的名称について、資料4に基づき御説明しますので、資料4のファイルをお開きください。まず、ページ1を御覧ください。名称は「眼科用灌流・吸引ユニット用単回使用眼内プローブ」で、定義は「眼科手術を行う際に、眼内に挿入し、灌流及び/又は吸引に用いる眼内プローブをいう。例えば、灌流・吸引用のチューブ、眼内廃液等を貯留する集液カートリッジ、空気灌流用のエアフィルター、チューブラインに組み込まれる活栓等を付属品として含む場合がある。なお、本品は単回使用である。」となります。本品は、クラスIIの管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、不要と考えております。
 次に、ページ4を御覧ください。新設予定の一般的名称は「単回使用眼科用トロカール類」です。本名称の定義は「眼科手術において、眼球壁に作業用チャンネルを作製し、維持するための機器及び機器の組合せである。この作業用チャンネルを通じて、灌流、眼内照明、硝子体切除などが行われる。例えば、眼球壁穿刺用のトロカールブレード及びブレード抜去後に作業用チャンネルとなるトロカールカニューレの組合せがあり、作業用チャンネルを一時的に閉塞するクロージャーバルブ若しくはプラグ、クロージャーバルブを開放するベント又はガス若しくは液体の供給用のインフュージョンカニューレを含むものもある。なお、本品は単回使用である。」となります。本品は、クラスIIの管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、不要と考えております。
 次に、ページ7を御覧ください。新設予定の一般的名称は「単回使用眼内照明プローブ」です。本名称の定義は「眼科手術を行う際に、眼内に挿入し、照明するために用いる眼内プローブをいう。例えば、先端部にピック等を備えるものもある。なお、本品は単回使用である。」です。本品は、クラスIIの管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、不要と考えております。
 次に、ページ9を御覧ください。新設予定の一般的名称は「再使用可能な眼内照明プローブ」です。本名称の定義は「眼科手術を行う際に、眼内に挿入し、照明するために用いる眼内プローブをいう。なお、本品は再使用可能である。」です。本品は、クラスIの一般医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、不要と考えております。
以上が、白内障・硝子体手術装置の構成品に対する一般的名称になります。残り4名称についても順次御説明いたします。
 ページ11を御覧ください。新設予定の一般的名称は「静脈用ステント」です。こちらは、以前の部会で、優先審査品目対象となる旨御報告させていただいた品目に付される予定の一般的名称となっております。具体的な品目の内容については、次回の部会で御審議いただくことを予定しております。本名称の定義としては「拡張して中心循環系以外の静脈の内側に留まる支持構造で、その開存性を維持するために用いるステントをいう。例えば、ステントはカテーテルによって閉塞部に送達することができ、バルーンカテーテルの膨張、又は自己拡張により、ステントは拡張して血管を支持する。カテーテルを抜去すると、ステントは永久インプラントとしてその位置に留まる。金属、ポリマー又は他の物質を原材料とする。一定の長さの連続チューブ状のものもあれば、チューブ型の足場構造のものもある」となります。本品は、クラスIIIの高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、不要と考えております。
 続いて、ページ15を御覧ください。新設予定の一般的名称は「光ファイバレーザ」です。本名称の定義は「外科処置等に用いるレーザで、レーザ光を生成するための光共振器に希土類元素等が添加された光ファイバを利用するものをいう。」です。本品は、クラスIIIの高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、必要と考えております。
 次に、ページ18を御覧ください。新設予定の一般的名称は「患部観察用カメラ」です。本名称の定義は「体表面または自然開口部近傍の患部の情報をモニターに映し出し、診療及び患者への説明等に使用する装置をいう。」となります。本品は、クラスIの一般医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、不要と考えております。
 最後になりますが、ページ20を御覧ください。新設予定の一般的名称は「ガイドワイヤ自動シェイピング装置」です。本名称の定義は「ガイドワイヤを体内に挿入する手技において、ガイドワイヤ先端の形状成形を自動的に行う装置をいう。」となります。本品は、クラスIの一般医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、不要と考えております。
以上となります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 ありがとうございます。八つございます。結構数は多いのですが、委員の方々から御質問、御意見等いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
一応議決を行いますが、一つずつ順番に行かせていただきます。今説明いただいた順番で進めたいと思います。
「眼科用灌流・吸引ユニット用単回使用眼内プローブ」を管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
次にいきます。「単回使用眼科用トロカール類」を管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
「単回使用眼内照明プローブ」を管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
四つ目です。「再使用可能な眼内照明プローブ」を一般医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
次です。「静脈用ステント」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
次です。「光ファイバレーザ」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定するということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
次に、「患部観察用カメラ」を一般医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定しないということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
最後です。「ガイドワイヤ自動シェイピング装置」を一般医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
全て御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件は分科会にて文書報告をさせていただきます。これで議題4を終了いたします。
 本日の議題は以上になりますけれども、事務局から何かございますでしょうか。
○医療機器審査管理課長 委員の先生方におかれましては、本日、どうもありがとうございました。また、次回の部会につきましては、11月21日(月)の14時からということで予定しております。詳細につきましては、後日メールなどで御連絡させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。連絡は以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。申し訳ございません。今日も少し時間が延びてしまいましたが、大変有意義な御検討を頂けたかと思っています。それでは、これをもちまして、本日の医療機器・体外診断薬部会を閉会させていただきます。長時間、どうもありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、一部非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医療機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室長 高畑(内線4226)