2023年5月12日 第51回労働政策審議会 議事録

1.日時

令和5年5月12日(金)10:00~12:00

2.場所

厚生労働省省議室(9階)

3.出席者

公益代表委員
 ・清家会長  ・小畑委員  ・守島委員
 ・荒木委員  ・髙田委員  ・山川委員
 ・奥宮委員  ・武石委員  
労働者代表委員
 ・安藤委員  ・清水委員  ・難波委員  
 ・石川委員  ・永井委員  ・安河内委員
 ・酒向委員  ・中川委員  ・山中委員
使用者代表委員
 ・川崎委員  ・野村委員  
 ・小松委員  ・藤原委員  
 ・西周委員  ・矢口委員
事務局            
 ・小林厚生労働審議官   ・奈尾人材開発統括官
 ・山田大臣官房長     ・中村国際課長
 ・安藤会計管理官     ・中村政策統括官(総合政策担当)
 ・鈴木労働基準局長      ・田中政策立案総括審議官
 ・田中職業安定局長    ・蒔苗政策統括官付参事官
 ・村山雇用環境・均等局長

4.議題

  1. (1)会長選挙
  2. (2)令和5年度労働行政関係予算の主要施策について
  3. (3)分科会及び部会等における審議状況、法案の国会審議状況について
  4. (4)労働政策基本部会報告書について
  5. (5)その他

5.議事

議事内容

○蒔苗政策統括官付参事官 定刻より若干早いですけれども、委員の方は全員そろいましたので、ただいまから第51回「労働政策審議会」を開催したいと思います。
 皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 事務局の参事官の蒔苗と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、本年4月27日付けで委員改選がありました関係で、会長が決まるまでの間は、私のほうで議事を進行させていただきます。
 本来であれば、本日は、政務からの御挨拶を予定しておりましたが、国会対応が入ってしまいまして出席がかないませんので、厚生労働審議官の小林から御挨拶申し上げたいと思います。
 よろしくお願いします。
○小林厚生労働審議官 本日は、お忙しい中、第51回労働政策審議会にお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、今、話がございましたように、第12期の労働政策審議会の委員の皆様による初めての会合でございます。
 厚生労働省におきましては、目下の物価上昇に対応するとともに、賃上げが人材を引きつけ、人材への投資が能力向上をもたらし、企業の生産性が向上することでさらなる賃上げにつながるという好循環による持続的な賃上げの実現を目指しまして、関係省庁と連携し、様々な支援等の取組を進めているところでございます。
 また、本日、御紹介申し上げますが、令和5年度予算におきましては、国民の命・雇用・暮らしを守る万全の対応を行うとともに、全世代型社会保障の構築を推進し、未来を切り開く「新しい資本主義」を実現することに重点を置きまして、労働政策におきましては、成長と分配の好循環に向けた「人への投資」を柱に、賃上げ・人材活性化・労働市場強化のための雇用・労働総合政策パッケージ、多様な人材の活躍促進、多様な働き方への支援などに取り組むこととしているところでございます。
 また、去る4月22日から、岡山県倉敷で、2日間、G7の労働雇用大臣会合が開催されました。各国が直面するデジタル化やグリーン化による産業構造の変化や人手不足への対応等の課題に対しまして、議長国として、精力的に取り組んだところでございます。
 本日は、そうした取組について御報告を申し上げますとともに、委員の皆様方から幅広い御意見をいただければと考えております。
 国民一人一人が豊かさを実感できる社会を構築するための労働政策の策定・実施には、現場を熟知された労使の皆様の御参画をいただき、議論を深めていただくことが非常に重要であると認識をしております。このたび、3名の新しい委員をお迎えいたします。委員の皆様方におかれましては、公労使の3者で構成された本審議会におきまして、幅広い御見識と豊かな御経験に基づき、活発な御議論をいただきますようお願い申し上げます。皆様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
○蒔苗政策統括官付参事官 ありがとうございました。
 それでは、カメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。御協力をよろしくお願いいたします。
○蒔苗政策統括官付参事官 本日の資料につきましては、お手元のタブレットで御覧いただきます。
 また、不具合等に備えまして、机上に紙の資料も御用意しておりますが、御不要の場合は事務局までお申しつけいただければと思います。
 また、今日は、オンライン参加の委員の方々がいらっしゃいますので、オンライン参加の方々におかれましては、原則として、カメラはオン、マイクはミュートでお願いいたします。御発言いただく際は、挙手ボタンを押していただきまして、指名があるまでお待ちください。指名後、マイクのミュートを解除して、御発言いただければと思います。発言が終わりましたら、マイクをミュートに戻し、再度挙手ボタンを押して、挙手の状態を解除いただければと思います。また、音声トラブル等がございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、もしくは、事前にお知らせしております電話番号まで御連絡をお願いいたします。なお、通信遮断などが生じた場合には、進行を一時中断する場合もございますので、あらかじめ御承知おきいただければと思います。
 議事に入ります前に、新たに委員に就任された方々を御紹介したいと思います。
 資料1、労働政策審議会の委員名簿を御覧いただければと思います。
 第12期から新たに就任された委員の方々を御紹介いたします。
 まずは、公益代表委員の聖マリアンナ医科大学予防医学教室主任教授の髙田委員でございます。
○髙田委員 髙田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○蒔苗政策統括官付参事官 続きまして、使用者代表委員のうち2名の方々でございますが、本日は、あいにく御欠席でございますので、私からお名前だけ御紹介させていただきます。
 お1人は、株式会社小松製作所取締役会長の大橋委員でございます。
 もう一方は、大和ハウス工業株式会社代表取締役社長CEOの芳井委員でございます。
 よろしくお願いいたします。
 なお、本日は、中窪委員、山本委員、則松委員、井上委員、内田委員、大橋委員、芳井委員におかれましては、所用により、御欠席となってございます。
 また、机の上に、労働政策審議会令、運営規程、労働政策審議会分科会の委員名簿をお配りしておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 まずは、第1の議題が「会長選挙」でございます。
 労働政策審議会の会長につきましては、審議会令によりまして「公益を代表する委員のうちから、委員が選挙する」という規定になってございまして、委員の皆様に選んでいただくことになってございます。いかがお取り計らいいたしましょうか。
 山川委員、お願いいたします。
○山川委員 清家委員に今期も引き続きお願いしてはいかがでしょうか。
○蒔苗政策統括官付参事官 ありがとうございます。
 ただいま、清家委員に会長をという御推薦がございましたけれども、清家委員に会長に御就任いただくことでよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○蒔苗政策統括官付参事官 ありがとうございます。
 オンラインの方も含めて御了承ということで、清家委員に会長に御就任いただくことといたします。
 以後の議事の進行につきましては、清家会長にお願いしたいと思います。
○清家会長 ただいま会長に選任されましたので、これからの議事の司会をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、労働政策審議会令におきましては、私から会長代理の方を指名することになっております。
 会長代理につきましては、恐縮でございますけれども、守島委員にお願いしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
○守島委員 かしこまりました。
○清家会長 それでは、次の議題に移ります。
 議題2「令和5年度労働行政関係予算の主要施策について」、議題3「分科会及び部会等における審議状況、法案の国会審議状況について」につきまして、事務局から、順に御説明をお願いします。
○安藤会計管理官 大臣官房会計課でございます。
 私から、資料2「令和5年度労働行政関係予算の主要施策について」を説明させていただきたいと思います。
 1枚おめくりいただきまして、「令和5年度厚生労働省予算における重点事項」という形で用意させていただいております。令和5年度予算でございますけれども、昨年の12月23日に政府案を決定いたしまして、本年、衆参の国会の御審議を経まして、3月28日に成立しております。1つ目の柱が「コロナ禍からの経済社会活動の回復を支える保健・医療・介護の構築」、2つ目の柱といたしまして「成長と分配の好循環に向けた「人への投資」」、3本目の柱としては「安心できる暮らしと包摂社会の実現」という形で、国民の命・雇用・暮らしを支える3本柱で構成されております。なお、1ページ目の下に、「令和4年度第二次補正予算での主な対応」という形で書かせていただいておりますが、令和4年度第二次補正につきましては、昨年11月8日に閣議決定をいたしまして、こちらも、衆参の国会の御審議を経まして、昨年12月2日に成立しております。労働関係で申しますと、2つ目の括弧のところにありますが、賃上げ、人への投資、成長分野への労働移動等、業務改善助成金の拡充という形で、掲載させていただいております。
 それでは、具体的に令和5年度の雇用労働関係の予算について御説明申し上げたいと思います。2ページ、3ページ目でございます。3つの柱、1つ目が「賃上げ・人材活性化・労働市場強化」雇用・労働総合政策パッケージ、2つ目の柱が多様な人材の活躍促進、3本目の柱が多様な働き方への支援という形で構成されております。まず、1点目の雇用・労働総合政策パッケージから御説明申し上げます。こちらにつきましては、最初に、賃上げ支援という形で、業務改善助成金、キャリアアップ助成金、同一労働同一賃金の徹底といったものについて所要の金額を積ませていただいております。2点目といたしましては、人材の育成・活性化で、人材開発支援助成金の拡充、産業雇用安定助成金による支援、教育訓練給付による充実・拡充といったメニューを掲げております。3点目は、賃金上昇を伴う労働移動の円滑化で、労働移動支援助成金、公的職業訓練のデジタルの重点化によるデジタル人材の育成、右に飛びまして、矢羽根の2つ目、ハローワークにおけます人材確保対策におけます就職支援の強化といったメニューを掲げているところでございます。2つ目の柱、多様な人材の活躍促進で、女性、高齢者、障害者、外国人、就職氷河期世代、若年者・新規学卒者支援をメニューとして掲げております。こちらの内容につきましては、それぞれ、必要な助成金や、行政内部、例えば、ハローワークの体制の確保に必要な所要の金額を積んでおるところでございます。3点目の柱、多様な働き方への支援という形で、こちらも3点の小項目がございます。1つ目が、多様な働き方の実現で、テレワークの導入・定着促進、3つ目の矢羽根で、育児休業、介護休業の取得支援に向けた経費といったものを積んでおります。次に、働き方改革の推進、ハラスメント対策ということで、1つ目の矢羽根でございますが、時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務への労働時間短縮等への支援や、最後の矢羽根でございますけれども、ハラスメント対策について必要な経費を掲げております。最後に、非正規雇用労働者への支援、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、働く方の相談支援の充実、働く環境改善という形で、キャリアアップ助成金、求職者支援制度といったメニューを掲げているところでございます。なお、こちらの米印につきましては、5年で1兆円という形で政府として取り組んでおります人への投資パッケージの厚生労働省関連事業分という形になっております。以降、説明は割愛いたしますが、主要施策集という形でそれぞれの施策の概要等をつけておりますので、お時間のあるときに御確認いただければと思います。以上、駆け足ではございましたが、主なポイントについて御説明させていただきました。
 厚生労働省といたしましても、引き続き、財政当局とも調整し、必要な予算額の確保に努めてまいりたいと思っております。今後とも、委員の皆様には、引き続き、御支援、御協力をよろしくお願いいたします。
 私からは、以上でございます。
○鈴木労働基準局長 続きまして、労働基準局でございます。
 私からは、資料3-1に沿いまして、労働基準局の関係の分科会などにおけます主な審議状況につきまして、御報告申し上げます。
 まず、労働条件分科会について御説明いたします。資料の3ページ目、上から1つ目の丸です。自動車運転者の拘束時間の削減等を内容とする告示の改正を行ったところでございます。続いて、上から2つ目の丸でございますが、使用者が労働者の同意を得た場合に、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金支払いを可能とする省令案、いわゆるデジタル払いについて、御審議をいただいたところでございます。上から3つ目の丸でございます。無期転換ルールや労働契約関係の明確化に係る労働条件明示事項を追加しまして、裁量労働制について専門業務型裁量労働制への本人同意を導入する省令案などにつきまして、御審議いただいたところでございます。
 安全衛生分科会につきましては、資料の4ページ目、上から3つ目の丸から、飛びますが、6ページ目の最後の丸にかけて、縷々書いてございますけれども、各種法令案に関します御審議や、6ページの最後の丸でございますが、5年間の計画でございますが、令和5年度から開始されております第14次労働災害防止計画についても、御審議いただいたところでございます。
 このほかの分科会や部会につきましては、関係法令の審議をしており、開催実績につきましては、7ページ目に記載しているところでございます。
 労働基準局からは、以上でございます。
○田中職業安定局長 続きまして、職業安定局でございます。
 職業安定局所管の分科会における審議状況については、資料3-2でございます。時間の都合上、主な法令改正の内容、新型コロナウイルス感染症への対応に関する事項のみ、御説明させていただきます。
 初めに、主な法令改正の内容についてございます。まず、55ページの別紙1-1、駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律につきましては、我が国をめぐる国際環境等に鑑み、有効期限を5年延長することといたしました。また、こちらは、資料4のとおり、令和5年2月3日に第211回通常国会に提出され、3月30日に成立し、翌日に公布されましたので、御報告申し上げます。
 次に、別紙2、57ページ、障害者の雇用の促進等に関する法律施行令及び身体障害者補助犬法施行令の一部を改正する政令については、障害者の雇用の促進等に関する法律において少なくとも5年ごとに設定することとされているところ、令和5年度からの雇用率を設定するものでございます。
 次に、新型コロナウイルス感染症への対応に関する事項について、御説明いたします。通しページの49ページ、3つ目の丸、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令と、通し番号の50ページ、1つ目の丸、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律施行規則の一部を改正する省令、3つ目の丸、職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則の一部を改正する省令、同ページ、4つ目の丸、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則の一部を改正する省令についてでございます。まず、1つ目につきましては、雇用調整助成金制度の特例措置を縮減して通常制度に移行することについて、2つ目の丸は、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金につきまして、その対象となる休業期間の延長や給付率の縮減等について、3つ目は、求職者支援訓練の訓練期間等の認定基準における特例措置の延長や職業訓練受講給付金の支給要件の緩和等について、4つ目については、ワクチン接種会場及び臨時の医療施設への看護師等の労働者派遣を可能とする特例措置の廃止について、職業安定分科会において、御議論いただいたものでございます。
 そのほか、通しページの52ページ、2つ目の丸、2022年度の年度目標に係る中間評価について、職業安定分科会については、別紙12-1にて、障害者雇用分科会については、別紙12-2にて、具体的な数値状況、評価の動向が記載されておりますので、御参照いただければと存じます。
 職業安定局関係は、以上でございます。
○村山雇用環境・均等局長 続きまして、雇用環境・均等局関係の状況についてでございます。
 資料3-3、通しページで申しますと239ページにお進みいただきたいと思います。雇用環境・均等分科会関係における主な審議状況について、御説明いたします。そのページの一番下、6つ目の丸でございますが、小学校休業等対応助成金につきましては、1月23日の分科会において、3月末で廃止し、令和5年度は別の助成金に切り替える方針について御議論いただいた上で、次の240ページの一番上の丸にあるとおり、3月20日の分科会において、関連する省令案を諮問し、おおむね妥当との御答申をいただきました。
 さらに、240ページの3つ目の丸でございますが、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案が本年2月に閣議決定されたことを受け、3月20日の分科会で、同法案の内容について報告を行っております。なお、本法案については、本通常国会で全会一致で可決され、本日、5月12日、公布されております。引き続き、関係省庁と連携しながら、フリーランスの方々が安心して働ける環境整備に取り組んでまいります。
 続いて、勤労者生活分科会関係でございます。241ページの1つ目と2つ目の丸になりますが、中小事業主が行う事業に従事する者等の労働災害等に係る共済事業に関する法律の政省令、告示案について、御議論いただいた上で、諮問し、妥当との御答申をいただきました。最後に、中小企業退職金共済部会関係でございます。241ページの下から2つ目と3つ目の丸になりますが、一般の中小企業退職金共済制度の財政検証について取りまとめを行いますとともに、勤労者退職金共済機構の第5期中期目標について、報告を行っております。
 雇用環境・均等行政関係の説明は、以上でございます。
○奈尾人材開発統括官 続きまして、人材開発統括官関係の審議状況を御説明いたします。
 人材開発統括官でございます。
 資料3-4、通しページの463ページを御覧ください。人材開発統括官所管の分科会における審議状況でございます。主なものについて、概略を御説明いたします。まず、1つ目、雇用保険法施行規則改正ですが、人材開発支援助成金におきまして、令和4年10月28日に閣議決定されました総合経済対策に基づきまして、人への投資促進コース助成金の助成内容の拡充を行うとともに、事業展開等リスキリング支援コース助成金を創設することとしたものでございます。3つ目の丸ですが、令和4年6月に閣議決定されたデジタル田園都市国家構想基本方針におきまして、職業訓練のデジタル分野の重点化等により、令和8年度末までに政府全体で230万人のデジタル推進人材を育成するとされております。これを踏まえまして、一定の条件を満たす求職者支援訓練を実施したデジタル分野の職業訓練実施機関に対する認定職業訓練実施奨励金の支給額を上乗せ等することとしたものでございます。4つ目の雇用保険法施行規則改正です。こちらも人材開発支援助成金でありますが、人材開発支援コース助成金及び特別育成訓練コース助成金を統合いたしまして、コースの名称を「人材育成支援コース助成金」に変更したほか、人への投資の支援策等の拡充に伴いまして、人への投資促進コース助成金の支給期限を令和7年3月31日から令和9年3月31日に延長したものであります。また、企業の付加価値の向上を労働者に賃上げとして還元し、さらなる雇用の安定を実現するため、生産性要件を賃上げに係る要件に切り替えるなどしたものであります。
 次のページの一番上の丸でありますが、コロナ禍における雇用失業情勢等を踏まえた求職者支援訓練における令和5年3月31日までを期限とする訓練期間の認定基準等に関する特例措置につきまして、令和6年3月31日まで延長等することとしたものであります。最後の丸でありますが、監理団体審査部会でありまして、技能実習制度の監理団体の許可について、4回にわたり、御審議をいただいております。
 人材開発統括関係は、以上でございます。
○中村政策統括官(総合政策担当) 続きまして、総合政策担当の政策統括官でございます。
 資料で申し上げると、最後のページを御覧いただければと思います。ページ数で申し上げると、593ページとなります。ここで、労働政策基本部会の審議状況について資料をおつけしてございますけれども、労働政策基本部会におきましては、労働政策の中長期的な課題につきまして、昨年の2月から、議論を行ってまいりました。資料にも書いてございますけれども、委員の先生方、有識者、企業等からのヒアリングを経て、報告書の取りまとめに向けた議論を実施し、本年4月26日に、報告書を公表したところでございます。報告書の内容につきましては、この後、別途お時間をいただきまして、次の議題4のところで御説明申し上げる予定でございますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 なお、本日、参考資料3「「こども・子育て施策の強化について(試案)」について」という資料をお配りしております。また、参考資料4「G7倉敷労働雇用大臣会合について」という資料もお配りしてございます。参考資料3につきましては、雇用環境・均等局の村山局長から、参考資料4につきましては、国際課の中村課長から、御説明をお願いします。
○村山雇用環境・均等局長 今会長から御指示のありました参考資料3でございます。
 本年1月の少子化対策に関する総理の指示、具体的には、1点目として、児童手当など経済的支援の充実、2点目として、全ての子育て家庭を対象としたサービスの拡充、3点目といたしまして、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実という3つの方向性に沿った具体的たたき台を3月末までに取りまとめることという指示がございました。これを受けて、担当の小倉大臣の下に関係府省会議が設けられ、有識者からのヒアリングや政策に関する議論などを進めたところでございます。この関係府省会議には、厚生労働省からも、中村政策統括官や田中職業安定局長とともに、私も参画してきたところでございます。そうした経過を踏まえて、3月31日に、「こども・子育て政策の強化について(試案)」が取りまとめられておりますので、その試案のうち、労働行政関係部分について、御報告させていただきます。
 参考資料3の表紙からしばらく進んでいただいて、右下、1ページ目でございます。中段の3.共働き・共育ての推進です。男性育休の取得促進のため、制度面の対応として、男性の育休取得率について、現行の政府目標を大幅に引き上げる野心的な目標を掲げていること、次世代育成支援対策推進法の事業主行動計画に男性の育休取得を含めた育児参加や育休からの円滑な職場復帰支援等に関する目標・行動を義務づけることなどが記載されているところでございます。
 また、給付面の対応として、この資料の2ページ目にございますとおり、育児休業給付について、産後パパ育休や女性の産休後の育休の一定期間に係る給付率を手取りで10割相当に引き上げること、周囲の社員への応援手当など、育休を支える体制整備を行う中小企業に対する助成制度を大幅に強化すること等について、記載がございます。続きまして、(2)育児期を通じた柔軟な働き方の推進といたしまして、子供が3歳以降小学校就学前までの場合において、短時間勤務、テレワーク等の柔軟な働き方を職場に導入するための制度の検討、子供が2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合の給付の創設、子の看護休暇について、対象となる子供の年齢や休暇取得事由の範囲などの検討等について、記載がございます。さらに、(3)多様な働き方と子育て支援の両立支援として、現在雇用保険が適用されていない週所定労働時間20時間未満の労働者について、雇用保険の適用拡大に向けた検討等を進めることについて記載がございます。その上で、「おわりに」として、今後の進め方について書かれているところでございます。
 記載の内容については、以上となります。必要な政策強化の内容等につきましては、先ほどの「おわりに」にございますように、総理を議長とし、厚生労働大臣を含む関係閣僚や労使団体のトップ等を構成員とするこども未来戦略会議において、現在、検討を深めているところでございます。
 私からの説明は、以上でございます。
○中村国際課長 国際課長でございます。
 参考資料4を御覧ください。G7の広島サミットが5月19日から開かれますが、関連閣僚会議の一つとして、倉敷市で労働雇用大臣会合を開催いたしました。労使にも御参画いただきまして、加藤大臣が議長を務められました。議題を右手に書いておりますが、「人への投資」といたしました。G7各国で、人口減少、デジタル化、人手不足といった共通の課題がございます中で、副議題を幾つか設けまして、ポストコロナの労働市場政策、デジタル化/グリーン化と人への投資、包摂的な労働市場、ワーク・エンゲージメントやディーセント・ワーク、このような副議題で議論を進めました。労使からもインプットをいただきまして、共同声明の御提示、個別の御発言、インプットを頂戴いたしております。
 その結果としまして、2ページを御覧いただきまして、各国大臣によりますG7の大臣宣言を取りまとめました。総括のポイントだけ簡単に御説明申し上げますと、「ポイント(総括)」でございますけれども、人への投資の中心となるリスキリングは、これまでG7の世界では、取り残される方がないように、支援としてのみ捉えてまいりました。これを、今般、日本の議長国の機会に、生産性向上や賃上げにつながるものでもあるので、経費というだけではなくて投資であるという理解をG7の共通認識として確認いたしまして、これによって、誰にとっても公正な形で新しい社会への移行に取り組んでいけること、取り残すことなく人への投資を行っていくことを合意いたしました。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、ここから、委員の皆様方から御意見を承りたいと思います。円滑な議事進行のため、事務局からの回答は簡潔にお願いいたします。
 それでは、御意見があります方で、オンラインで御出席の方は、挙手ボタンを押していただければと存じます。また、会場にお見えいただいております方は、御自分の名前の札を立てていただければ、御発言の御希望があると分かりますので、よろしくお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 清水委員、よろしくお願いいたします。
○清水委員 
 資料2、2ページ、3ページの冒頭部分になりますが、令和5年度の予算、成長と分配の好循環に向けた人への投資における労働移動を軸とした施策に関して、意見を述べたいと思います。この間、様々な場面で労働移動の推進がうたわれています。成長分野への労働移動を否定するものではありませんが、労働移動にあたっては、労働者の意思が尊重されることが大前提であることは言うまでもありません。その上で、労働者にとって魅力的な労働条件や雇用の安定が展望できる産業であれば、労働者自らが移動を選択することも想定されます。今、我が国に必要なのは、日本・海外を問わず、高度人材を獲得できるような魅力的な産業政策であり、誰もがスキルを高めてその産業に労働移動をしたくなる産業・業種を育成することです。そうした目標なしに労働移動を促進しても成果は上がらないのではないでしょうか。目指すべき産業政策の未来像を示しつつ、魅力的な産業づくりに向けた環境整備に重きを置くべきだと思います。
 また、いわゆるDXの推進等を担う専門人材の確保が課題に挙げられていますが、専門人材は、企業の責任の下、自社のビジョンを示しつつ、内部において育成・確保を図ることを基本に据えるべきではす。そのためには、雇用形態等にかかわらず、全ての労働者へのリスキリングを含む能力開発を行うとともに、人材定着の観点から、適切に評価、処遇をした上で、再配置をすることが重要です。こうした企業の継続的な取組による内部人材の育成が、結果的に、企業の持続的な発展や労働者の雇用の安定につながるものと考えます。
 なお、労働移動を促進する観点から、解雇規制など労働法制の緩和につながる議論がされることがないよう、改めて強く申し上げます。
 私からの発言は、以上でございます。
○清家会長 ありがとうございます。
 それでは、小松委員、よろしくお願いいたします。
○小松委員 ありがとうございます。
 私からは、人手不足対策と人材確保支援について、2点、申し上げます。
 1点目は、中小企業の人手不足への対策です。今年2月の日商・東商の調査でも、およそ3社に2社が人手不足を訴えており、人手獲得競争がますます激化しています。地方を含む中小企業において、ハローワークへの期待は高く、求人企業・求職者の双方に対し、仕事の切り出しや条件の見直しなど、さらに一歩踏み込んだ働きかけによるマッチング機能の強化をお願いします。多様で柔軟な働き方を志向する求職者に選ばれるよう、中小企業が自己変革に挑戦していく必要もあります。しかし、同時に、人数が少ない分、社員一人一人の存在感や役割が大きい中小企業においては、業務に対する一体感、社員の業務バランスが崩れやすいことも懸念されます。厚労省におかれましては、引き続き、中小企業における働き方改革推進への支援をお願いいたします。また、男性を含む育休の取得推進は重要と理解しておりますが、弊社のようなものづくり企業では、製品の質を担保する必要があり、技術者を社外の人材で代替することは極めて困難です。先ほどもありましたけれども、産後パパ育休や育児休業など、分割して取得できるよう、制度が拡充し、見直されてきてはいますが、その効果についても検証の必要があります。社内の人材育成やさらなる運営体制の見直しなど、引き続き支援の充実に取り組んでいただきますようお願いいたします。
 2点目は、賃上げについてです。今年度は、物価高騰もあり、中小企業にも賃上げに取り組む姿勢が見られます。労働分配率が高く、賃上げ原資が乏しい中で、次年度以降も中小企業の自発的な賃上げの流れを持続していくためには、生産性の向上と取引の適正化が不可欠です。サプライチェーン全体で労務費を含む価格転嫁を進めるとともに、企業が付加価値を高めるための新たなチャレンジに取り組めるよう、在職者も含めた公的職業訓練の拡充による人材育成の強化をお願いいたします。なお、能力開発の財源である雇用保険二事業会計はコロナ禍で枯渇しており、早期の財源安定化に向けた道筋を示すべきと考えます。
 私からは、以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、中川委員、よろしくお願いします。
○中川委員 ありがとうございます。
 私からは、資料2の7ページ、令和5年度予算の業務改善助成金について、意見・要望を申し上げます。最低賃金の引上げに向けた環境整備を目的とした業務改善助成金は、昨年度当初予算の12億円に対し、物価高克服に向けた総合経済対策において、助成上限額を引き上げ、対象経費や対象事業場を拡大したことに伴い、二次補正予算に100億円が計上されました。昨年12月12日に申請が開始されましたが、速報値で7,205件と過去最高の申請件数になったと承知しております。九州においても、大分県では200件以上、私が働き暮らす宮崎県では70件以上と、前年の49件を大きく上回る申請件数だときいています。申請実績の増加から、少なくとも当助成金の需要と認知が従前よりは高まっていると考えられます。一方で、要件緩和の効果をしっかりと検証すべきではないかと考えます。とりわけ、地域別最低賃金が低いCランク、九州は7県がCランクに位置しておりますけれども、そういった地域での当助成金の活用実態、助成率の引上げによる影響を把握するためにも、47都道府県別での集計と分析をお願いします。活用の広がりをさらに高めていくためにも周知徹底にぜひとも努めていただきたいと思います。併せて、申請手続については、申請者の負担軽減に向けてさらなる工夫ができないか、検討を進めていただくようお願いします。その上で、対象事業所のさらなる拡大の検討、具体的には、事業所内最低賃金と地域別最低賃金の差額30円以内という部分を、本年10月の金額改正時に大幅な引上げが実現した場合にも十分対応できるような要件とすべきではないかと考えます。最低賃金法は国民の命・雇用・暮らしを支えるまさにセーフティーネットであると考えています。
 以上、要望といたします。
○清家会長 ありがとうございます。
 それでは、オンラインから御発言を希望されております、川﨑委員、よろしくお願いいたします。
○川﨑委員 川﨑です。ありがとうございます。
 私からは、男性の育児休業の取得促進の項目について、発言させていただければと思っております。男性の育児休業を取得しやすい環境を整備していくということで進んでいくと理解しているわけですけれども、男性の育児休業の取得率がまだ13.97%と低いことが現状と認識しています。こうした中、今回、岸田総理からも、かなりチャレンジングな目標ということで、男性の育児休業の取得率の目標で、2025年に50%、環境面でさらに助成されるということで引上げをしていくといったことが表明されたと承知しております。少子化対策にとどまらず、女性の活躍を促進していく意味合いにおきましても、企業に期待される役割は非常に大きいと認識しておりますし、政府目標を早期に達成するような勢いで取り組んでいく必要があると考えています。男性の育児休業の取得促進につきまして、企業は、現在、経営トップからのメッセージの発信、また、柔軟な就労を支援するような制度の構築、意識面ではアンコンシャス・バイアスに気づく機会の提供を通しまして、意識改革にも取り組んでまいろうと考えているところです。今年度の予算を見ますと、中小企業に対する各種支援事業や助成金が盛り込まれていますが、いずれも前年度並みの予算額になっております。2025年に50%という政府目標を達成していくに当たりましては、その実効性を検証しながら、強力な支援を継続していっていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。また、3月31日には、小倉大臣が参考資料3のところでも御説明がありましたこども・子育て政策の強化についての試案を発表し、育児・介護休業法における短時間勤務など、柔軟な働き方に関する制度や子供の看護休暇の制度を見直すことの御提案があったと認識しておりますが、制度の検討に当たって考慮していただきたいことについて、述べたいと思います。
 1つ目になりますけれども、制度を拡大していくことによりまして、現状の家事・育児がまだ女性に偏っているという実態がございますけれども、こういった実態が固定化していくことがないように御配慮いただきたいと思っております。
 2点目ですけれども、両立の支援の措置は、各社が業種や業態に応じてそれぞれで実施していくということがありますので、そちらにつきましても御配慮いただきたいと思っています。
 また、3点目になりますけれども、中小企業におきましては、相対的に取組が遅れがちであるといったことがあります。
 述べましたこの3つの点につきまして、御配慮いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 私からは、以上となります。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、安河内委員、よろしくお願いいたします。
○安河内委員 
 私からは、該当資料はございませんけれども、担保法制見直しに伴う労働債権の保護について発言させていただきます。現在、政府におきまして、スタートアップや事業継承等における企業資金調達のしやすさを確保する観点から、担保法制の見直しの議論が行われており、その内容については労働条件分科会にも報告されているとお聞きしております。動産・債権を担保とする譲渡担保のルールの明確化や企業の総財産を担保とする事業成長担保制度の導入などが議論されていますが、これらが実際に法制化され、担保取引が活発化しますと、現在でも課題となっている倒産時の労働債権の確保が一層困難になることが懸念されます。事業成長担保制度については、労働契約を含む企業の総財産を担保の対象とするとされており、現在、金融庁において法制化に向けた作業が進められているものと思われます。厚生労働省としましても、事業成長担保制度が労働者にマイナスの影響を及ぼすものとならないよう注視するとともに、金融庁との連携を図っていただきたいと思います。労働側としては、かねてより、倒産や事業再編時における労働債権や労働者保護の脆弱性については問題意識を持っています。厚生労働省においては、労働者保護ルールの法整備に向けて、速やかに検討に着手をしていただきたいと思います。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、野村委員、よろしくお願いします。
○野村委員 全国中小企業団体中央会の野村でございます。
 私からは、3点、意見を述べさせていただきます。
 1点目が、人への投資に関してです。まず、岸田総理が5年間で1兆円に拡充して実施すると言われております人への投資パッケージに関しまして、厚生労働省では、令和5年度当初予算としまして、1500億円を超える予算を措置していただきましたことに、感謝を申し上げます。中小企業では、規模が小さくなるほど一人一人が多様な役割を担うこととなります。それだけに、一人一人の従業員のスキルアップが企業にとりまして大きな力となってまいります。助成金などを上手に活用しながら、人材育成に積極的に取り組んでいくことが必要になってまいります。しかし、懸念は、スキルアップした従業員が、よりよい条件の職場を求めて、自社から流出してしまうことです。人材不足の中小企業にとりまして、優秀な人材が流出してしまうことは大きな痛手になってまいります。それだけに、国が、人材育成、労働移動を一体化して進められるのであれば、中小企業の労働環境の整備と人材確保の支援策をしっかりと充実していただきますようによろしくお願いいたします。
 2点目ですが、こども・子育て政策の強化についての試案に関してです。次世代を担いますこども・子育て世代を社会全体で支えていくことは、大変重要であると感じております。中小企業が働き方改革を進めるための両親での育休取得などの環境整備につきまして、企業に対する一層の周知や育児休業者・短時間勤務者の代替人員の配置などに対する支援策を充実していただきますようお願いいたします。また、今年度に予定されております育休給付金の増額について、財源は雇用保険制度でありますが、新たな給付制度も検討されているようです。この新たな給付制度の財源につきまして、事業主の負担を上乗せする形での社会保険料や子ども・子育て事業主拠出金などに頼ることなく、一般会計から手当をしていただくことを、一つ、検討していただきたいと思います。特に雇用保険制度ですが、雇用調整助成金につきましては、おかげさまで大規模な支給をしていただきました。その影響で、財源は枯渇しております。やむなく雇用保険料の引上げがなされておりますが、これ以上の上乗せになりますと、中小規模事業者にとりましては、大きな痛手、厳しい状況となりますので、その点につきましても、一つ、理解いただきますようお願い申し上げます。
 最後に、3点目ですが、外国人の調査に関してです。今年実施される予定になっております外国人の雇用に関わる統計調査は、我が国の外国人労働者の雇用実態を知る上でとても重要であると感じております。現在の調査の進捗について、教えていただくようお願いいたします。また、技能実習制度の適正化に向けた調査事業に関しまして、先日、有識者会議において、技能実習制度と特定技能制度につきまして、中間整理がなされました。この制度の在り方が変わろうとする転換期において、今後の制度の検討材料になっていくのでしょうか。この調査研究事業につきましては非常に注目しておりますので、調査内容、分析結果、調査結果につきましても、随時情報提供をしていただきますようお願い申し上げます。
 私からは、以上、3点でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○清家会長 ありがとうございます。
 これからもまた引き続き御希望の委員の皆様方に御発言をいただきますが、まずは、ここまでのところで、事務局から、お答えいただけることがございましたら、お願いいたします。
 基準局長。
○鈴木労働基準局長 労働基準局から、2点、御質問がありましたので、お答え申し上げます。
 まず、中川委員から、業務改善助成金についての御発言がございました。委員の御指摘のとおり、業務改善助成金の申請件数は、令和4年度速報値で7,205件と、前年の5,047件から42.8%増加いたしまして、過去最高となりました。今後、件数が確定次第、委員が御指摘の都道府県別の実績などにつきましても把握してまいりたいと考えてございます。また、積極的な周知広報に引き続き取り組んでまいりますとともに、より使いやすい制度となりますよう、さらなる拡充等につきましても検討してまいりたいと考えてございます。
 続きまして、安河内委員から、担保法制の見直しについて御発言がございました。事業成長担保制度につきましては、現在、金融庁において法制化に向けた検討が行われておりまして、厚生労働省としましては、金融庁と連携して、労働関係法令を所管する立場から、対応を検討してまいりたいと考えてございます。また、事業譲渡等に関わります労働者の保護につきましては、会社等が留意すべき事項について、事業譲渡等指針においてお示ししているところでございますけれども、引き続き、当該指針を適切に運用するとともに、周知などをしながら、組織編成に関連した労働問題に対応してまいりたいと考えてございます。
 基準局からは、以上でございます。
○清家会長 職業安定局長、お願いいたします。
○田中職業安定局長 職業安定局でございます。
 まず、清水委員から、労働移動に関する政策についての御意見がございました。今後、労働力供給制約が厳しい状況が進んでいく中で、意欲ある個人が能力を最大限に発揮していくことを推進していく、支援していくことは、非常に重要なことであります。企業内部でのキャリアアップ・スキルアップに加えて、御本人の意思に基づいて円滑な労働移動をしていくことも重要でございます。そのことが構造的な賃上げにつながる好循環を生み出す鍵となると考えております。このため、希望する労働者が、しっかりとスキルアップを図るとともに、主体的に安心して労働移動ができるよう、できれば賃金が上がるという形で労働移動ができるように、産業政策とも一体となりまして、関係省庁と連携しながら支援をしていきたいと考えております。厚生労働省では、本年度予算において、労働移動に関する助成金につきましては、転職前より高い賃金で離職者を早期に雇い入れる企業に対する支援や新規事業に従事する労働者のリスキリングへの企業を通じた支援、さらには、労働者等が主体的に教育訓練を修了した場合の費用の一部を支給する教育訓練給付の対象講座の拡充などを盛り込むとともに、引き続き、職業情報提供サイト、job tagの整備など、就職や転職に資する情報提供の充実等に取り組むことを通じまして、円滑な労働移動に向けた支援を進めてまいりたいと考えております。なお、解雇ルールにつきましては、金銭を支払えば自由に解雇できるという制度を導入することは考えておりませんが、解雇の金銭救済制度について、引き続き、労政審の場などにおいて、労使の御意見を伺いながら、丁寧に検討してまいりたいと考えております。
 小松委員から御指摘いただきました、人手不足対策、働き方改革支援について、御説明いたします。我が国では、人手不足感が強まっておりまして、特に中小企業ではその傾向が顕著に出てきております。厚生労働省としては、ハローワークにおいて、求職者のニーズの把握やそれに基づく求人条件の見直しのアドバイスなど、きめ細かな求人・求職のマッチング支援を行うとともに、労働時間相談・支援班、働き方改革推進支援センターによる、フレックスタイム制などの導入・運用についての支援や、テレワークの導入に取り組む中小企業への人材確保等支援助成金による機器等導入支援などによって、働き方改革の支援に取り組んでおります。引き続き、これらの取組を通じて、人手不足対策や働き方改革支援に取り組んでまいりたいと考えております。
 野村委員から、まず、育児休業給付の点について御指摘をいただきました。3月31日に取りまとめられたこども・子育て政策の強化についての試案では、出生後一定期間内に両親ともに育児休業を取得することを促進するため、育児休業給付の給付率を手取りで10割相当へと引き上げるといった内容が盛り込まれております。現在、総理の下に置かれるこども未来戦略会議において、必要な政策・強化の内容等が検討されておりますが、厚生労働省としても、この会議の議論を踏まえつつ、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。当然のことながら、労働政策に関する事項につきましては、労働政策審議会の御意見をしっかり承ってまいりたいと考えております。
 次に、野村委員から、2点目として、外国人の雇用に係る統計調査について、御指摘がございました。外国人労働者を雇用する事業所における外国人労働者の雇用形態、賃金などの雇用管理の状況、当該事業所の外国人労働者の学歴、入職経路、前職に関する事項などについて、その実態等を産業別・規模別・在留資格別などで明らかにするために、外国人雇用実態調査を、本年度から実施することとしております。この調査は、統計法に基づく一般統計調査として、昨年度、総務省の承認を得ました。現在、今年度秋頃の調査実施に向けて準備を進めておりまして、調査実施から1年以内には結果を公表したいと考えております。調査の実施に向けて、今後、ハローワークで行う各種のセミナーや事業所訪問等の機会を捉えて、調査の周知、協力依頼を行っていく予定であります。外国人雇用をしていただいている事業所の皆様には、この統計調査について一定のお手数をおかけするかと思いますけれども、今後の外国人労働者の雇用政策をしっかりと統計的な根拠をもって推進していくために必要な調査と考えておりますので、ぜひ御協力をお願いしたいと考えております。
○清家会長 それでは、雇用環境・均等局長、お願いいたします。
○村山雇用環境・均等局長 雇用環境・均等局関係でございます。
 まず、小松委員から、令和3年に改正された育児・介護休業法に基づきます産後パパ育休や育児休業の分割取得などの具体的な施行状況について、しっかり把握・分析するようにという御指摘をいただきました。現在、労働局におけるヒアリング、さらに、昨年度実施しました雇用均等基本調査について集計作業を進めているところでございまして、集計を速やかに行って、公表いたしますとともに、今後、その成果もしっかりと分析して、施策への反映を行ってまいりたいと考えております。
 また、小松委員、野村委員から、中小企業の両立支援策に関する支援について、御指摘をいただきました。現在、中小企業の皆様方に対しましては、男性が育児休業を取得しやすい雇用環境整備、年間で約2.6万件御利用いただいておりますが、育児休業取得者の業務を代替する労働者の確保等に関する取組に対する両立支援等助成金の支給、あるいは、労務管理の専門家を両立支援プランナーとして中小企業の皆様の元に派遣して行う個別の相談支援事業などに努めているところでございます。さらに、こども・子育て政策の強化に関する試案におきましては、現行の助成制度に加えまして、周囲の社員への応援手当など、育休を支える体制整備を行う中小企業の皆様に対する助成措置を大幅に強化することが、先ほども御説明したとおり盛り込まれているところでございまして、本日いただきました御意見も踏まえ、必要な予算確保も含め、具体的な内容についてしっかり検討してまいりたいと考えております。
 また、川﨑委員からは、ただいまお答え申し上げました中小企業に対する支援策の件と併せまして、3つの基本的な考え方、制度の拡大によって家事・育児が女性に偏っている実態を固定化させないこと、両立支援措置については業種・業態に応じてそれぞれ実施されており、多様性があること、中小企業への対応が大切であるという大変重要な御指摘をいただきました。いずれも誠におっしゃるとおりであると考えているとこでございます。先ほどの試案の説明でも申し上げましたとおり、共働き・共育てという政府全体として打ち出しているキーワードでも御理解いただけますように、今後、取組の加速の中に当たりましては、男女ともに希望に応じたキャリアと育児の両立が可能になるという観点から、各社の実情に応じ、また、中小企業への支援の視点を忘れずに、労使の取組をしっかり推進していくことに配慮しながら検討を進めてまいりたい、その際には労使の御意見を十分に伺ってまいりたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
 私からは、以上でございます。
○清家会長 ありがとうございます。
 それでは、人材開発統括官お願いいたします。
○奈尾人材開発統括官 人材開発関係でございます。
 まず、小松委員から、人材育成に関する御意見をいただいたところでございます。中小企業の人材育成支援につきましては、人材開発支援助成金による支援のほか、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構におきまして、生産性向上人材育成支援センターを全国87か所で展開しております。これは、在職者訓練に加えて、中小企業に対して、相談・助言から、人材育成のプランの提案、訓練の実施まで、一貫して支援するものでございます。今期の独法の中期目標におきましては、支援事業所数を前期の中期目標に比べて40%増という目標を掲げておりまして、中小企業の人材支援をしっかり支援してまいりたいと考えております。また、関連して、能力開発事業についての財源に関する御指摘がございました。労働移動の円滑化や人への投資の支援強化に万全を期するとともに、雇用のセーフティーネットとしての役割を十分果たすためにも、雇用保険二事業における借入金の返済、控除の在り方の検討を含めて、雇用保険財政の早期再建に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、野村委員から、当局の関係で、2点、御指摘いただきました。まず、人への投資における中小企業の支援に関する御指摘でございます。企業における人材育成への投資は、従業員の離転職に必ずつながるとは言えないと認識しております。昨年6月に、労使が参画する労働政策審議会人材開発分科会で、職場における学び・学び直し促進ガイドラインが、数回にわたる議論の末、取りまとめられたものですけれども、この中で中小企業の強みを生かした人材開発という項がありますが、ここでは、学び・学び直しの促進は、労働者のエンゲージメントや職場満足度の維持・向上のほか、求職者・顧客を含む人から選ばれる会社へとつながる可能性を切り開くという記載がございます。厚生労働省としても、こうした認識の下で、人材育成支援策を展開してまいりたいと思っております。御指摘の中小企業の労働環境の整備や人材確保のための支援についての重要性は認識しておりまして、厚生労働省といたしましては、雇用管理改善、生産性向上等に取り組んだ事業主等への支援、ハローワークを通じたきめ細かな求人・求職のマッチング支援などを進めてまいりたいと考えております。
 次に、技能実習制度適正化に向けた調査研究事業に関する御意見をいただいたところでございます。技能実習制度の見直しの検討に当たりましては、現行制度における監理団体、実習実施者における実習の実施状況や送り出し機関との関係性等を把握することが重要と考えております。労働政策研究・研修機構等の調査と相まって、そうした実態等の把握に努めてまいりたいと思っております。こうした調査で明らかになったデータ等につきましては、可能な限り、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議の場などにおきましても明らかにしていきたいと考えております。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、引き続き、委員の皆様から御意見を頂戴いたします。
 オンラインから発言を希望されております、石川委員、よろしくお願いいたします。
○石川委員 
 私からは、3点、意見を述べさせていただきます。
 まず、無期転換ルールに関する見直しは、全体としては有期契約労働者の雇用安定には資する内容ですけれども、無期転換申込みを理由とする不利益取扱いの禁止の法制化などは、残念ながら、盛り込まれませんでした。希望する労働者が確実に無期転換をできるよう、制度の濫用防止に向けた周知などを強化しつつ、無期転換ルールのさらなる活用推進を進めていただきたいと思います。また、私どもの企業もそうですが、無期転換労働者の大半は、有期契約のときの処遇と変わらないまま無期に転換しているケースが多くあると聞いております。今回のこの制度によって無期契約の中でも処遇の差異が固定化することのないよう、均等・均衡待遇の実現に向けた取組をぜひとも推進していただきたいと思います。
 2点目は、裁量労働制に関してです。専門業務型における本人同意への切替えや健康・福祉確保措置の強化などは、労働者の健康確保に資するものであり、来年の施行に向け、しっかりと実効性が確保されるよう促していただきたいと思います。また、残念ながら、専門業務型の対象業務が一部追加をされましたが、既存の対象業務も含め、不適切な運用がなされないよう、業務の明確化と労使の正しい理解に向けた周知徹底、厳格な指導監督をお願いしたいと思います。
 最後に、2024年問題とマスコミからも注目をされている時間外労働上限規制の適用猶予業種への適用が、いよいよ来年4月から始まります。自動車運転者、医師、建設業などに上限規制が適用されますが、これらの業種において長時間労働が是正されるよう、規制の実効性確保と監督指導の徹底を改めてお願いしたいと思います。また、今年4月から、中小企業にも月60時間超の割増賃金率50%が適用されていますが、労働者の健康確保の観点から、確実な履行確保が必要です。そもそも長時間労働による残業代に頼らなくても十分生活ができるよう、賃金水準自体の引上げが重要であることを改めて強調しておきたいと思います。
 私からは、以上です。ありがとうございました。
○清家会長 ありがとうございます。
 それでは、矢口委員、よろしくお願いいたします。
○矢口委員 どうもありがとうございます。
 私からは、2点、申し上げようと思ったのですが、2点目の仕事と育児の両立については、さきの質疑応答で取り上げられまして、適切な回答がいただけましたので、もう1点について申し上げたいと思います。
 外国人の受入れについてです。人手不足が深刻化する中、外国人材への期待はさらに高まっております。現在、技能実習・特定技能の両制度の見直しが議論されておりますけれども、人権尊重を大前提に、より広い産業で、より多くの外国人材が、より長期にわたり活躍できるような、受入企業・外国人材双方にとってよりよい制度へ改善されることを望んでおります。国際的にも優秀な人材の奪い合いとなっておりますので、日本が外国人材から選ばれる国となるということが非常に大事だと思います。したがって、日本語教育を含む生活面での支援とともに、安心して就労できる環境整備を進める必要があると思います。技能実習制度が廃止され、後継制度に変わった場合にも、厚生労働省が所管する外国人技能実習機構が行っている監理団体や受入企業への支援の重要性はますます高まっていると考えております。予算・人員を含む体制の拡充と支援内容の充実をぜひお願いしたいと申し上げておきたいと思います。
 私からは、以上であります。ありがとうございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、山中委員、よろしくお願いいたします。
○山中委員 
 私からは、第4次の男女雇用機会均等対策基本方針の改定について、意見を述べさせていただきます。男女雇用機会均等法が施行されて35年余りが経過し、この間、育介法、次世代法、女性活躍推進法なども整備され、性別を理由とした差別的取扱いが許されないことの周知をはじめ、女性が就業を継続しやすい職場環境の整備、社会の意識改革につながってきたものと認識しています。しかしながら、日本はジェンダーギャップ指数では146か国中116位と依然として低位にとどまっており、特に女性の政治及び経済への参画が進んでいないと指摘されています。今回の男女雇用機会均等対策基本方針の具体的施策を可及的速やか、かつ着実に実行することが大変重要だと思っています。一昨日、シンガポール労組と意見交換をしたのですが、シンガポールでは、ジェンダーギャップ指数49位と、アジアでは上位のほうにあります。常に政労使の3者協議で議論を進め、着実な施策を実行しています。日本においても、この間、遅れている取組を確実に実行していくことが大変重要だと考えています。特に、女性の就業率は上がっていますが、雇用の内訳をみると、正規雇用から非正規雇用に変わるというL字カーブが問題となっています。その背景の一つには、育児や家事の中心的役割を担うのが女性であるという性別役割分担意識があると思います。真に男女が共に働きやすい社会を構築するためには、具体的施策に取り組むと同時に、職場社会における性別役割分担意識の払拭にも努めていく必要があると思います。
 私からは、以上です。
○清家会長 ありがとうございます。
 それでは、オンラインで発言を希望されております難波委員、よろしくお願いいたします。
○難波委員 
 私からは、参考資料3で御説明いただいたこども・子育てについて、意見を申し上げます。試案では、こども・子育て関連の具体的な施策の方向性が示されていますが、育児期に限定せず、あらゆるライフステージにおいても、まずはワーク・ライフ・バランスを保つことができる職場環境の整備が必要であると思います。とりわけ、育児と仕事の両立については、育児休業、休業時の経済的支援、通院のための休暇等、制度面の整備と併せて、長時間労働を前提としている現在の男性中心型労働慣行の是正、性別役割分担意識からの脱却、企業経営者等々の意識改革なども不可欠だと思います。試案では、育児休業給付費の引上げや時短勤務を選択した者への新たな給付などについての言及はありますが、必要とする財源の具体的な確保策が明示されていません。これらの目的に即した財源の在り方に加えて、例えば、正規雇用での時短勤務を選択せずに転職して非正規雇用を選択した人など、今般の給付対象とならない人との公平性の観点なども含めて、労働政策審議会において、今後、丁寧な議論を重ねて結論を得るべきと考えています。
 ありがとうございました。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、藤原委員、よろしくお願いいたします。
○藤原委員 ありがとうございます。経団連の藤原でございます。
 まず、1点目は、雇用保険財政について申し上げたいと思います。先ほどから議論がありますように、我が国の持続的な経済成長を実現していくためには、産業構造の変革とそれに伴う成長分野・産業への円滑な労働移動の推進が不可欠だと考えております。現在のセーフティーネットを雇用維持型から労働移動推進型へと移していくことが大事だと思います。その際に、働き手の方が安心して能力開発やスキルアップを図り、自身の能力や希望に応じた労働移動を可能にする政策の立案と実行の速やかな検討をぜひお願いしたいと思います。その一方で、雇用保険二事業に関わる雇用安定資金は、失業給付の積立金から累計で3兆円以上の借入れをした上で、2020年度から3年連続して残高ゼロという状況になっております。もし再び今回のコロナ禍のような有事が起きた際には対応ができないということで、極めて危険な状況にあると思います。この4月から雇調金の特例措置が通常制度に移行したことを受けて、令和6年度末までを目途とされている積立金への返済の在り方の議論を進めていただくとともに、雇用保険財政再建に向けた道筋を早期に明確化していただくよう、強く要望いたします。また、先ほど、こども・子育ての関連で、出生時育休給付の拡充や時短労働者向けの給付の新設という話題が出ました。これらもさらなる財源が必要になります。先ほど申し上げましたように、雇用保険財政は極めて危機的な状況にございます。少子化対策については、特定の財源にこだわることなく、一般財源の投入も含めた幅広い議論が必要だと考えております。
 もう1点、解雇無効時の金銭救済制度の創設について厚労省事務局から御説明がありました。私どもとしては、この制度は紛争解決に向けた時間的・金銭的な予見可能性を高めて労働者保護に資する新たな選択肢になり得ると考えております。現在、厚労省において、解雇や紛争の実態把握に取り組んでいると伺っておりますけれども、制度の創設に向けて議論が早期に再開されることを期待しております。
 以上でございます。ありがとうございました。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、安藤委員、よろしくお願いいたします。
○安藤委員 私からは、曖昧な雇用について、申し上げます。4月28日に、いわゆるフリーランス新法が成立いたしました。連合が行った調査では、不当に低い報酬や支払いの遅延、さらには不払いなどのトラブルが多く発生しているという結果が明らかになっている中で、新法は取引の適正化や就業環境の整備に資するものと考えています。その一方で、支払われる報酬額の決定やハラスメントに係る必要な措置、育児・介護等との両立への配慮などは、委託事業者に委ねられており、実効性の確保が課題です。本法律は、厚労省も共管であり、ガイドラインの策定、フリーランスからの相談体制整備に関し、法律の実効性確保という観点から、労働政策審議会において十分な検討を行うべきであると考えています。また、フリーランスの中には、労働者に近い働き方であるにもかかわらず、曖昧な雇用として請負契約で就業している者も少なくありません。こうした多様な働き方が増えていることを踏まえれば、1985年の労働基準法研究会報告以降検討されていない「労働者性の判断基準」の見直しは、必須だと考えています。成立したフリーランス新法の附帯決議では、就業実態などを踏まえ、労働者性の判断基準の枠組みが適切かどうかについて不断に確認・検討し、必要な措置を講ずることとされていますので、厚労省として、法の施行状況や就業実態の把握をしっかり行い、労働者性の判断基準の見直し、拡充を図っていただきたいと思います。
 以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、永井委員、よろしくお願いいたします。
○永井委員 
 私からは、キャリアアップ支援等につきまして、特に短時間就労や有期雇用で働く女性の視点から、意見を述べます。安定した雇用と処遇を確保するためには、教育訓練を受け、キャリアアップしていくことが非常に重要だと考えております。一方で、非正規で働く女性を対象に実施した連合の調査では、研修などを正規雇用同様に利用できる非正規の方は、労働組合のない職場では、2割を下回っているという結果が出ています。雇用形態にかかわらずキャリアアップを希望する全ての労働者が等しく機会を得られるよう、特に短時間就労や有期雇用の方につきましては、キャリアアップ助成金等の積極的な周知・発信と労働局における丁寧な相談支援をお願いします。
 関連して、リスキリングについても述べたいと思います。リスキリングは、労働者の雇用安定・処遇改善に資するよう、社会変化や働き方の変化などを踏まえ、新たな業務の知識やスキルの習得を目的に行うものと認識しており、成長分野への労働移動に向けた手段のみを意味するものではありません。教育訓練の実施主体である企業の意欲をそぐことや、新たなリストラの手段とされることがないよう、適切な周知・支援をお願いします。
 最後に、前回のこの審議会で、私から、年収の壁による就労調整に関連して述べました。労働者や使用者に対する税や社会保険の仕組みの周知徹底を要請したところ、前向きな回答をいただいたものと理解しております。引き続き、労働行政の立場からも、この問題につきましての後押しをお願いします。
 以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、オンラインから発言を希望されております酒向委員、よろしくお願いいたします。
○酒向委員 
 私からは、大きく2点について、発言いたします。
 1点目は、外国人労働者についてです。4月28日に、有識者会議における検討の中間報告が取りまとめられました。この中間報告では、技能実習制度を抜本的に見直した新たな制度の創設等を含む両制度の適正化に向けた方向性が示されていますが、具体的な方策につきましては、この秋に予定される最終報告の取りまとめに向け、引き続き議論されるものと認識しています。この中間報告で示されました新たな制度は国内の人材育成を目的の一つとすることが示されていますが、受入企業の教育体制の整備をはじめ、日本人と同等の賃金水準の確保等がなされなければ、安易かつなし崩し的な低賃金労働者の受入制度となる懸念があります。新たな制度の実効性の確保及び労働者保護の観点から、厚生労働省が担う役割は非常に大きいと考えています。先ほど実態調査の話もありましたが、最終報告書の取りまとめに向けては、全ての労働者が安心して働ける制度となるよう、現行の両制度の課題の検証・把握等を行うとともに、関係省庁との連携や予算確保を含め、厚生労働省としてもしっかりと取り組んでいただきたいと思います。 
 続いて、2点目ですが、解雇の金銭解決についてです。冒頭、連合の清水事務局長から述べていただいておりますが、先ほど使用者側の委員からも御発言がございましたので、重ねて労働者の観点から発言をさせていただきます。一旦金銭解決制度が導入されますと、結果として、無効解雇を正当化し、安易な解雇の促進につながりかねません。また、個別事案に即して当事者の納得を重視して行われている現行の労働審判などの紛争解決システムにも負の影響を与える懸念が大きいと考えております。労働者の雇用の安定に悪影響を及ぼしかねないこの解雇の金銭解決制度については、労働側としては、全く必要がない制度と考えています。
 私からの説明は、以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、ここまでの御意見につきまして、事務局側からできるだけ簡潔にお答えいただければと思います。
 それでは、労働基準局長、よろしくお願いいたします。
○鈴木労働基準局長 基準局でございます。
 まず、石川委員から、労働契約、裁量労働制、長時間労働是正についての御発言がございました。まず、無期転換ルールにつきましては、その趣旨・目的をしっかりと踏まえまして、法令の履行確保だけではなくて、無期転換権の行使に伴う不利益取扱いなどが法律の趣旨に反することの周知を行いますとともに、御指摘いただきましたキャリアアップの支援や同一労働同一賃金の取組などを進めることにつきまして、無期転換ルールの趣旨・目的でございます雇用の安定などが適切に実現されるよう取り組んでまいりたいと考えてございます。続きまして、裁量労働制につきましては、改正省令などが令和6年4月に施行されることを踏まえまして、裁量労働制導入事業場に対しまして、改正内容についての周知徹底を行いますとともに、引き続き、不適正な運用の疑いがある事業場に対する監督指導などを実施し、適切な履行確保に努めてまいりたいと考えてございます。また、令和6年4月の適用猶予業種に対します時間外労働の上限規制の適用につきましては、適用猶予業種などが適切に対応できるよう、まずは説明会等を通じて周知を行っているところでございますけれども、施行後におきましては、規制の実効性が担保されるよう、しっかりと監督指導を行ってまいりたいと考えてございます。また、本年4月から中小企業にも適用されております月60時間を超える時間外労働に対しましての5割以上の割増賃金率につきましても、確実な履行が図られるよう、監督指導を実施しているところでございますが、引き続き徹底してまいりたいと考えてございます。また、賃金水準の引上げについては、先ほど申し上げたとおり、業務改善助成金などによりまして、賃上げしやすい環境整備に引き続き取り組んでまいりたいと考えてございます。
 続きまして、安藤委員からのフリーランスの方の労働者性の話があったかと思いますけれども、労働者性の判断基準につきましては、令和3年3月に策定いたしました、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインによりまして周知を図っておりますけれども、今後、ガイドラインの運用状況や裁判例等の動向、労働者の働き方の変化等の状況を注視しながら、現行の判断基準の枠組みが適切なものとなっているのか否か、丁寧に確認してまいりたい、不断に確認してまいりたいと考えてございます。
 永井委員から、年収の壁の御発言がありました。これについては、現在、厚生部局で検討しているところでございますけれども、前回も申し上げましたとおり、税・社会保障制度の正確な理解の普及に向けまして、引き続き周知に努めてまいりたいと考えてございます。
 解雇ルール、金銭解決につきまして、藤原委員、酒向委員、それぞれのお立場から御発言がございましたけれども、これにつきましても、労働条件分科会で様々な御意見がございます。また、分科会長からもいろいろな宿題が出されておりまして、こういったものが用意でき次第、また丁寧に検討してまいりたいと考えてございます。
○清家会長 職業安定局長、お願いいたします。
○田中職業安定局長 職業安定局関係につきましては、まず、難波委員から、今回のこども・子育ての試案に含まれる育児関係の給付に係る財源の確保などについての御指摘がございました。今回のこども・子育ての試案で提案されている内容につきましては、現在、総理の下に置かれるこども未来戦略会議において、具体的な内容に加えて、予算、財源の在り方についても検討をされていると承知しております。厚労省としては、その検討状況も踏まえながら、労働政策として必要な対応につきましては、今後、労働政策審議会の場において労使の皆様に御議論いただきながら、しっかりと検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
 次に、藤原委員から、雇用のセーフティーネットの在り方、雇用保険財政の再建について、御指摘がございました。コロナ禍におきましては、雇調金の特例措置等を講ずることで雇用の維持に向けた支援を行いまして、雇用と暮らしの安定に貢献をしてきたと考えておりますけれども、コロナ禍での緊急的な施策が長期化したことによりまして有効な人材活用が進まなかったのではないかなどの指摘もありまして、今後は、この特例措置の効果や施策の通常政策への移行の在り方などについて検証していく必要があると考えております。また、今後の産業構造の変化に対応したさらなる人材活用の方策については、先ほど清水委員にもお答えしたような様々な前向きな施策を令和5年度予算に盛り込んで推進をしているところでございます。雇用保険の財政につきましては、コロナ禍における雇調金の特例措置等による支出の増加によって、極めて厳しい状況にあると認識しております。その中でも、労働移動の円滑化や人への投資の支援強化に万全を期す必要がありますし、先ほど御指摘のありました育児休業給付につきましては、現在の制度においても支給額が年々増加しておりまして、それへの対応が必要です。また、もちろんのことですが、雇用保険制度の最も重要な役割であります、来るべき、今後予想される雇用危機の際の必要な対応といったものを含めまして、雇用の総合的なセーフティーネットとしての役割を今後とも十分果たしていく必要があると考えております。雇用保険二事業における借入金の返済・控除の在り方などについても御指摘がありましたけれども、その点も含め、雇用保険財政の早期再建に向けて、しっかりと検討して、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
○清家会長 それでは、雇用環境・均等局長、お願いいたします。
○村山雇用環境・均等局長 雇用環境・均等局関係でございます。
 初めに、山中委員から、性別役割分担意識の問題を含めて、様々な御指摘をいただきました。御指摘いただいた男女雇用機会均等対策基本方針につきましては、先ほど委員の御指摘にございましたとおり、現在、雇用環境・均等分科会において改定案を御議論いただいているところでございまして、労使の意見を十分踏まえながら、取りまとまり次第、基本方針に基づいて、着実に施策を実行してまいりたいと考えているところでございます。その中におきましても、御指摘のとおり、職場や社会全体における固定的な性的役割分担意識の解消は重要な課題であると考えているところでございます。今年度、アンコンシャス・バイアスの解消に向けたセミナーの実施など、こうした対策の強化にも努めているところですけれども、さらに関係府省とも連携を図りながら、社会全体におけるこうした意識の改革に向けてしっかり取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
 安藤委員から、フリーランス取引適正化法の関係について、御指摘をいただきました。本法の実効性を確保するためには、御指摘のとおり、これは特に新法でございますので、発注事業者を含め、対象となる方々に法の趣旨や内容を十分に周知し、理解が行き渡るようにしていくことが重要であると考えております。このため、今後、本法に規定する措置の具体的な指針等を分かりやすくお示しいたしますとともに、関係の団体等を通じた周知、関係者への説明会、パンフレットの配付等々、その他様々な方法で周知に努めてまいりたいと考えております。また、フリーランスの方々からの相談へも十分対応できるようにという点に関しましては、御指摘にもございました、弁護士の皆さんが無料で相談に応じるフリーランス・トラブル110番を含めた相談体制を設けておりまして、これは今般の法律で国が講ずる措置と法律上も定められたことも踏まえ、その充実・整備を図ってまいりたいと考えているところでございます。その上で、本法に基づく政省令や指針の策定の今後のプロセスについて、御指摘がございました。審議会の経過報告でも申し上げましたとおり、本法については、昨年段階から、逐次、労政審の関係分科会に報告しつつ検討してまいったところでございますが、今後、政省令や指針等の策定に当たりましては、衆・参での附帯決議も踏まえ、本法の対象となるフリーランス関係団体、労使団体の皆様方に参画いただきつつ、検討をしていかねばならないと考えているところでございます。労働政策審議会との関係も含め、どのような具体的な検討の持ち方をしていくのかということにつきましては、労使の意見を十分に伺いながら、今後、しっかり検討してまいりたいと考えております。
 永井委員から、非正規雇用労働者の方々のキャリア支援等々の点について、御指摘をいただきました。まず、非正規雇用労働者の方も含めて、生活にお困りの方については、無料の職業訓練と月10万円の給付金を支給する求職者支援制度のほか、ハローワークにおいて個々の求職者の状況に応じたきめ細かな就職支援の実施などに取り組んでおり、こうしたことは、まず、ベースとなる取組として、しっかり対応していきたいと考えております。その上で、必要な学び直しや職業訓練等の機会を提供することによって、非正規雇用労働者の方が希望する再就職あるいは正社員化やステップアップなどの実現につなげていくことは大変重要なことであると考えております。現在、人への投資パッケージとして、人材開発支援助成金の特定の訓練を修了後に、非正規雇用労働者から正社員に転換させた事業主に対しまして、キャリアアップ助成金の加算措置を設けることによって、訓練を通じた正社員転換に向けた支援を強力に進めているところでございます。こうした助成金制度が効果的に活用されるように、事業主に対する周知徹底を図りますとともに、労働局において丁寧な相談支援を行いまして、非正規雇用で働かれる皆様方の希望に応じた働き方の転換、また、キャリアアップに向けて、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。
 よろしくお願いいたします。
○清家会長 それでは、人材開発統括官、お願いいたします。
○奈尾人材開発統括官 人材開発統括関係は、大きく2点、御指摘いただいたところでございます。
 まず、1点、技能実習制度等の見直しにつきまして、矢口委員と酒向委員から、御意見をいただいたところであります。御指摘の技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議におきましては、昨日、中間報告書が取りまとめられたところであります。その中では、外国人との共生社会の実現を念頭に、その人権に配慮しつつ、日本の産業、経済並びに地域社会を共に支える一員として、外国人の適正な受入れを図ることによりまして、日本で働く外国人が能力を最大限に発揮できる、多様性に富んだ、活力ある社会を実現するとともに、我が国の深刻な人手不足の緩和にも寄与するものとする必要があるとされております。その上で、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度を創設するという方向が示されております。賃金等の待遇面、実効的な技能の習得・評価、日本語教育支援等の環境整備、外国人技能実習機構の体制整備、業所管官庁との取組の強化といったことにつきましても、最終報告に向けて、今後、さらに議論をいただくことになっております。厚生労働省といたしましては、有識者会議の議論を踏まえつつ、関係省庁と連携しながら、しっかり検討を行ってまいりたいと考えております。
 次に、2点目でありますが、永井委員から、リスキリングに関する御意見をいただいたところでございます。人口動態の変化やDX・GXといった構造変化に直面する働く方々や企業が、これに柔軟かつ力強く対応できるよう、政府としてリスキリングやキャリア形成支援など、幅広く、必要な促進について、支援を強化しているとこでございます。人への投資は、社外への転職を意味する労働移動のみを目指すのではなく、希望する誰もが、ライフステージのあらゆる場面で主体的に能力向上に取り組み、キャリアを形成することができる環境の実現に向けまして、整備を進めてまいりたいと考えております。
○清家会長 ありがとうございました。
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、厚生労働省におかれましては、本年度の予算の執行、年末の予算編成や今後の政策立案において、委員の皆様の御意見を踏まえ、取り組んでいただきたいと思います。
 少し時間も押して恐縮でございますが、本日は、もう1つ、議題がございまして、議題4「労働政策基本部会報告書について」でございます。この審議会の下に設置された労働政策基本部会において、4月に報告書が取りまとめられましたので、これについて、まず、事務局から短く御説明いただき、その後、部会長であります守島委員より、御発言をお願いしたいと思います。
 まず、事務局から、お願いいたします。
○蒔苗政策統括官付参事官 事務局の蒔苗でございます。
 私から、資料5に基づきまして、簡潔に御説明を申し上げたいと思います。
 資料5をおめくりいただきまして、5-1に基本部会の「設置趣旨」と書いてございます。今日、御議論がございますように、各分科会・部会では、いわゆる各所掌に沿った検討が進んでいるわけでありますが、これらをまたがるような課題はなかなか労政審全体の中で議論されにくい、あるいは、中長期の課題が議論されにくいという指摘を受けまして、平成29年7月から、この本審の下に設置された部会でございます。今回が3回目の報告書になります。メンバーの方は、そこにございますように、本日御出席の守島部会長をはじめ、たくさんの方に御議論いただいてございます。内容でございます。まず、現状認識といたしまして、AI等の技術革新の急速な進展やグローバル化で、産業構造の変化がこれまで以上にない大きさとスピードで、しかも不連続に変化するという現状認識に立ってございます。また、人口減少も進んでおりますので、一人一人の労働者が貴重な存在となりまして、今後は、女性・高齢者をはじめとする全員参加型のダイバーシティ社会を実現していくことが重要という点でございます。3点目は、足元の状況でございまして、人手不足が常態化する中におきまして、キャリアスキル志向の高い若者の希望とのミスマッチ、あるいは、育児・介護の休業によりまして転勤を望まれない社員の方も増えてまいりましたので、社内での従来のようなキャリア形成が難しいなど、いわゆる内部労働市場の機能低下が目立ってきているという認識に立ってございます。
 1枚おめくりいただきまして、5-2からが内容でございます。大きく3点、今回はございます。リスキリングに関しましては、企業が成長していくためには、人材投資・人材育成が重要ということで、今後は、若者の意識の変化も踏まえて、一人一人のキャリア志向を大切にしながら、個人の能力や個性を丁寧に把握する高解像度な人事評価・育成が必要、リスキリングに当たっては、中高年の方もリスキリングの対象であるということでございます。2点目は、リスキリングに当たって、企業・労働者はそれぞれどういう考えで臨むべきか、ということを整理してございます。まず、企業に関しましては、経営戦略として、変化に対応する必要性、どう変わりたいのか、そのために社員にどういった能力や技術が必要なのかを具体的に労働者に説明することが必要というものでございます。一方、労働者側としましては、リスキリングに取り組むに当たりまして、なぜ学ぶのか、学んだ上で自分がどんな仕事ができるようになるかといった目的意識を持ちながら取り組むことが重要と指摘してございます。2点目、人事制度でございます。ジョブ型人事の動きがございます。これについて、整理してございます。いわゆるジョブ型雇用につきましては、職務が雇用契約に明記・限定される欧米ではブルーカラーを中心に使われてまいりましたけれども、近年、日本におきましては、ホワイトカラーを中心とした職務と処遇の明確化といった観点から、導入の動きがございます。今回、何社か、部会の中、あるいは事務局がヒアリングを行った結果、下にございますように、ジョブ型人事制度を導入している企業でありましても、採用人事や配置につきましては、いわゆる従来の欧米のジョブ型雇用とは違いまして、これからも新卒採用を続けつつ、潜在能力重視の採用、あるいは、入社後も一定期間一人前になるまで研修を行うというところは変わってございませんでした。2点目は、本人希望による公募制を行いつつも、最終的な人事異動の権限は会社に残るということで、いわゆる従来のメンバーシップ型人事とジョブ型人事の間で、バリエーション、各社で差がございました。今後につきましては、各社において、人事戦略・経営戦略ではありますので、最もふさわしい人事制度が労使の間で話し合われていくのだろうと考えてございます。
 3点目、2ページ目の労働移動でございます。こちらにつきましては、労働移動は、よりよい条件の仕事に就くチャンスでもあるので、ポジティブに捉えつつ、制度面での中立的な取組が必要ということや、今後につきましては、いわゆる外部労働市場の機能も活性化しながら、併せて、内部労働市場も改革していく、社内公募、マッチング、あるいは、本人希望を考慮した人事異動等が重要ということで、希望する方が内部と外部を行き来できるシームレスな労働市場を整備していくことが重要という指摘がございます。これらの方向性につきまして、労働政策としてどう受けていくかという点でございます。企業に求められる対応といたしましては、先ほども御説明したように、リスキリングの必要性を明確にした上で、社員に動機づけや環境整備を行うことが必要ということと、中間管理職のマネジメント業務は大きく変化しておりまして、こちらに対するケアが必要という指摘がございます。2点目、労働者の側に求められる対応といたしましては、短期間で多くの変化が起こりますので、過剰に変化を恐れるのではなくて、変化を前向きに捉えながら、自らが自律的にキャリア形成や学びを深めていくことが必要という指摘がございます。
 次のページは、労働政策におきましてそれをどう受けるかという対応でございます。3ページ目、前半で出てまいりましたように、女性・高齢者などの働き方に中立的な税・社会保障制度の構築や雇用によらない働き方などのセーフティーネットのこと、あるいは、そこに書いてございますような、自発的に労働移動を行う労働者の参考となるような取組を強化することによって、転職しやすい労働市場を整備する。最後、今は、労働政策の大きな転換点にございまして、従来の安全・安心という対応に加えまして、労働市場のセーフティーネットを整備しつつ、スキルアップ向上を目指すことを重視していくべきというものでございます。また、社会全体についても、ここに記載しているようなことが重要というものでございます。これらの内容につきまして、労使において課題の共有がなされまして、関係分科会・部会におきまして速やかに必要な施策が検討されることを求めたいというものでございます。
 私からは、以上でございます。
○清家会長 ありがとうございました。
 続きまして、本報告書を取りまとめていただきました労働政策基本部会の部会長をお務めでございます守島委員より、お願いいたします。
○守島委員 ありがとうございます。
 時間も押していますので、あまり長くは話さないつもりですけれども、この報告書は、確かに労働政策の基本的な指針を出していくという面もあるのですけれども、もう1つ重要なことが、この報告書を通じて、労働政策、労働問題に関わっている様々な人たち、企業、労働組合、働く人たちに対して、メッセージをある程度出していきたいという意図があって、今回、報告書をまとめさせていただきました。
 企業に対しては、今、企業のいろいろな形での人事革新や考え方の変革をやっていらっしゃると思うのですけれども、その中で一番大切なことは、実は働く人たちの幸せというか、はやりの言葉で言えばウェルビーイングなのだということを、ぜひもう一回肝に銘じた形で、ジョブ型もそうですけれども、いろいろな改革を進めていただきたいという意見がありました。
 労働組合に対しては、先ほど参事官からもありましたけれども、労働者を守ることはもちろん大切なのですけれども、その守るという意味をもう一回考えなくてはいけない時期にだんだん入ってきたのではないかと、能力アップをして自主的な労働移動をしていくとか、そういうことも働く人を守るという意味の中に入ってくるのではないかという気が私は前からしておりまして、そういうメッセージを出したいと思っておりました。
 3番目、一番この報告書の中で強いメッセージを出したかったのは、働く人たちに、もっと自律して、自分でいろいろなことを考えて、スキルアップをしたり、労働移動をしたりということを考えていく、もしくは、今のポジションでずっとやっていきたいということであれば、そのために何ができるかということも含めて、もっと自分の自主的・自律的な働き方をやっていかないと、これからの時代にはだんだん取り残されることになるんだよということを、メッセージとして出したかったように思います。
 したがって、労働政策の基本指針ではあるのですけれども、もう1つは、それぞれに関与されている参加者の方々に対して、新しい方向性を見て進んでいかないといけないよというメッセージを出したかったという意図が、座長としては、ありました。審議会の中でもいろいろと面白い議論があったのですけれども、そこまで言っていると長くなってしまうので、今日はこれで終わりにしたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○清家会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見等がございましたら、よろしくお願いいたします。
 それでは、西周委員、よろしくお願いいたします。
○西周委員 御説明をありがとうございました。
 まずは、取りまとめに御尽力された部会委員と事務局の皆様に敬意を表したいと思います。
 私からは、報告書の14ページ、4.今後の労働政策の方向性に関連して、申し上げます。持続的な経済成長を実現するには、成長産業・分野への円滑な労働移動を通じて、我が国全体の生産性を高めていくことが不可欠であり、企業、労働者、政府、社会全体、それぞれに求められる対応を記した報告書の内容は、非常に共感できるところでございます。とりわけ、14ページの企業に求められる対応で記載されているように、経営者やマネジャー、現場労働者の全てのレベルで、リスキリングを含めた能力開発に主体的に取り組んでいくための動機づけと環境整備が必要と考えております。各企業においては、働き手の主体的なキャリア形成と継続的な能力開発とスキルアップに向けて、能力開発プログラムの提供や経済面での支援、学習時間の確保に向けた休暇・休職制度の導入・拡充など、様々な面から、働き手をサポートするために、労使で話し合い、自社に適した支援策の検討・実施を図っていると承知しております。政府におかれましては、こうした企業労使の主体的な取組を後押しする施策の実施や環境整備をぜひお願いいたしたいと思います。
 私からは、以上です。
○清家会長 ありがとうございました。
 矢口委員、よろしくお願いいたします。
○矢口委員 報告書の取りまとめ、ありがとうございました。
 私からは、社会経済環境が大きく変わる中で、今回、このような中長期的な労働政策の方向性をご検討いただいたということが、非常に大きな意義があると申し上げたいと思います。今後、具体的な政策を検討するに当たって、地方を含めて雇用の7割を支えているのは中小企業だという点はぜひ踏まえて議論していただければありがたいと思います。
 この中で大きく取り上げられているリスキリングの問題ですけれども、個人へのリスキリングの支援などにより、円滑な労働移動を進めるということは、非常に重要なポイントだと思います。ただ、その捉え方なのですけれども、まずは、我々としては、個々の企業が、新たな事業展開や技術開発に挑んで、そのために必要な知識・技術を、社員が学び、身につけていくこと、それによって、収益を拡大し、賃金上昇の好循環を生み出していくということが、一つの大事な視点、基本ではないかと思います。したがって、このリスキリングの支援に当たっては、企業経由の支援と個人への直接の支援のバランスをよく取った形で検討していただきたいということを申し上げたいと思います。
 もう1つ、先ほど労働者代表の委員の方からもお話がありましたけれども、いわゆる103万円と130万円の壁のことです。我々の会員企業の中で、この問題による就労調整の影響が人手不足の環境の中で非常に深刻になっているという声が、かなり上がってきております。したがって、女性や高齢者などの働き方に中立的な税制・社会保障制度の実現をぜひ検討していただきたいと思います。
 以上であります。ありがとうございます。
○清家会長 ありがとうございます。
 酒向委員、よろしくお願いいたします。
○酒向委員 
 この報告書については、社会変化などに対応するための能力開発、人材育成の推進、人事制度の在り方などに関する労働政策の方向性が示されています。報告書では、非正規を含めた全ての労働者へのリスキリングを含む能力開発の推進や中小企業の能力開発を後押しするための支援の充実が示されたことは大変重要なことだと考えています。労働者個人への支援のみならず、企業が責任を持って労働者の能力開発を実施するための支援の維持・拡充を引き続きお願いします。また、人事制度の在り方については、「ジョブ型人事制度」と「労働移動」の推進が重要だと記載されていますが、このジョブ型人事制度は、労使慣行や職場の実態などを踏まえて、労使の主体的な判断により導入の可否を検討すべきだと考えます。特に、働き方や労働者のニーズ等が多様化する中においては、今まで以上に労使での建設的なコミュニケーションが重要であり、労働組合を中心とした集団的労使関係を土台とすることが不可欠であることを申し添えておきます。また、労働移動については、労働者本人の意思を大前提として、労働者にとって魅力的な産業づくりがなされた結果、生じるものだと思います。既存産業を含めた人材の定着という観点も重要です。今後の労働政策については、「労働市場のセーフティーネットを整備しつつ、労働者のスキルアップ・向上を目指すことを重視する」とされていますが、今後、いかに社会環境が変化しようとも、働く者の「雇用の安定」と「安全・安心」の重要性は何ら変わるものではありません。このような考え方を労働政策の基本に据え、政労使がそれぞれの役割と責任において取組を進めていくことが重要だと考えます。
 先ほど、守島座長から、労働界に対して大変力強い応援のメッセージをいただいたと捉えております。おっしゃっていただいたように、私どもも、労働者の能力を高めて働くこと、エンゲージメントを高めていくことは重要だと捉えておりますので、そういった観点でこのような報告を取りまとめていただいたことは非常に有意義だと思っております。これを踏まえて、我々としても、労働組合としての労働者保護の在り方についても、しっかりと考えていきたいなと感じました。ありがとうございました。
○清家会長 ありがとうございました。
 ほかには、よろしゅうございましょうか。
 ありがとうございます。
 これは、決議事項でございます。本報告書について、労働政策審議会令第9条に基づきまして、これを労働政策審議会として了承するということでよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
○清家会長 ありがとうございます。
 それでは、そのようにさせていただきます。
 なお、本報告書につきましては、各分科会にも関係する様々な提言がなされておりますので、各分科会での議論にもお役立ていただければと考えております。
 以上をもちまして、本日予定しておりました議事は全て終了いたしました。
 最後に、この際、何か御意見や御質問等がございましたら、御発言をお願いいたします。
 清水委員、どうぞ。
○清水委員
 今日の議論の中で、外国人材の今後の在り方も含めた技能実習制度の見直しや、雇用保険財政の安定、中小企業支援など、多岐にわたる発言がありましたので、それらについては厚生労働省の皆様にも一層の取り組みを進めていただきますよう、改めて発言させていただきます。よろしくお願いいたします。
○清家会長 ありがとうございます。
 ほかにはよろしゅうございますか。
 それでは、本日の会議は以上で終了といたします。
 本日は、お忙しいところ、ありがとうございました。

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