第23回社会保障審議会人口部会 議事録

1.日時

令和5年4月26日(水)15:00~17:00

2.場所

オンライン開催(厚生労働省内会議室)

3.出席者

委員 ※50音順
石川委員、稲葉委員、小野委員、金子委員、川崎委員、黒須委員、小西委員、駒村委員、榊原委員、津谷委員、山田委員

4.議題

日本の将来推計人口(令和5年推計)

5.議事

○三好参事官 定刻になりましたので、ただいまより第23回「社会保障審議会人口部会」を開会いたします。
 委員の皆様方におかれましては、御多忙の折、御出席いただきありがとうございます。
 開催に先立ちまして、事務的な御連絡を申し上げます。本日も前回に続きオンラインによる開催とさせていただきました。質疑に当たっては御不便があろうかと思いますが、よろしくお願いいたします。
 オンライン会議における発言方法について確認いたします。画面の下にマイクのアイコンが出ておるかと思います。今はミュートにしていただいていると思います。会議の進行中は委員の皆様のマイクを基本的にミュートとさせていただいておりますけれども、御発言をされる際は手を挙げるボタンをクリックしていただき、部会長の御指名を受けてからマイクのミュートを解除して御発言をいただくようお願いいたします。御発言終了後は、再度マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。音声に不具合等がございましたら、事務局宛てにチャットにてお知らせください。
 なお、会議は動画配信システムのライブ配信により一般公開する形としております。
 次に、本日の委員の出欠状況です。本日は西郷委員、富田委員から欠席の御連絡をいただいております。
 続きまして、お手元の資料を御確認いただきたいと思います。事前に資料を送付させていただいておりますので、お手元に御準備ください。
 本日の資料は議事次第のほか、資料1、日本の将来推計人口(令和5年推計)の結果の概要、資料2、同じく日本の将来推計人口(令和5年推計)の推計手法と仮定設定、資料3として、同じく日本の将来推計人口(令和5年推計)の推計結果の概要、この3種類となっております。皆様、お手元に資料を御用意ください。
 それでは以降、津谷部会長に進行をお願いしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○津谷部会長 御紹介に預かりました部会長の津谷でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、早速議題に入りたいと思います。議事概要に示されております「日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要」について、国立社会保障・人口問題研究所の岩澤部長より御説明をお願いいたします。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) 国立社会保障・人口問題研究所の岩澤でございます。
 最初に、推計手法と仮定設定の資料に沿って説明させていただきたいと思います。
 本日は、前半で令和5年推計の推計手法について説明しまして、後半で資料を変えまして、将来推計の結果の概要についてお話ししたいと思います。
 まず、今回の推計公表に至るまでに、令和3年6月以降、4回にわたる人口部会が開催されました。委員の皆様には大変御協力をいただきましてどうもありがとうございます。その中で、推計の考え方や用いる手法の計画を説明しまして、様々な観点で御質問や御意見をいただきました。これらを踏まえまして、今般推計が取りまとめられまして、公表に至ったということでございます。
 最初に、短い時間ですけれども、将来推計人口の基本的方法と考え方を簡単に振り返りたいと思います。将来推計人口というものは様々な公的な分野で活用されることになりますので、我々としては客観性、中立性、専門性、説明責任を重視してやっております。このポピュレーションプロジェクション、すなわち人口投影という考え方については、人口動向について人口学的データの過去から現在に至る傾向、趨勢、こういうものを将来に投影しまして、その帰結としての人口の姿を科学的に描いたものです。まさに様々な分野の将来計画に利用されるので、できるだけあり得る蓋然性の高い結果を得ることを目指しています。そのために精度の高い最新のデータを使います。
 一方で、未来に起こることを予言することは科学的にできません。そこで、最善の策として我々はどのように推計を行ったのか、どのような根拠に基づいて行ったのかについて全て説明できるように努めているところです。
 将来人口推計の方法については、日本では詳細なデータがそろっているために、国際的にも標準的に使われるコーホート要因法というものを用いております。コーホート要因法は出生、死亡、移動等の人口の変動要因の動向を仮定して、コーホートごとに将来人口を推計する方法です。ここでは推計の仕組みを示していますが、翌年のXプラス1歳の人口というものは、X歳の人口から始まりまして、生残率と国際人口移動、それから、0歳の人口をこれに加えて、出生率の仮定によって人口を引いたり足したりということで推計いたします。
 このように、将来推計人口は基本的に人口学的変数のみを用いて行われますが、社会経済要因についても当然人口とは相互に関係がありますし、また、出生行動や死亡、国際人口移動にも影響がございます。ただし、こうした人の社会経済の影響は、人口学的変数の過去の趨勢に既に反映されていると考えまして、将来の人口動態を人口学的変数の趨勢のみを用いて投影しております。
 これは出生仮定に関する例ですけれども、初婚年齢とか、夫婦完結出生子ども数といった趨勢には様々な社会経済環境の変化、例えば就業環境ですとか、子育て環境の変化といったものがありますけれども、そういうものの趨勢が既に反映されていると考えます。
 そして、社会経済状況の見通しや政策効果を将来人口推計に反映するということをしないわけですけれども、以下のような観点で使っておりません。どういうものかと申しますと、出生、死亡、移動などの人口変動要因と関連する社会経済要因というのは極めて多岐にわたりまして、個々の関係を定量的に特定することが難しいだけでなく、それらの相互関係を全て把握するということは、科学的には不可能だということになります。
 また、将来推計人口というのは数十年に及ぶ長期の推計になります。将来の社会経済状況をそのような長期間にわたって見通すということ自体が困難であり、投影に基づく人口推計よりも不確実性が大きくなってしまうという問題があります。
 政策効果についても人口統計指標との関係を定量的に高い精度で推計して、推計に反映させるということがなかなか困難だということがあります。諸外国においても公的機関によって行われる将来人口推計が社会経済状況の見通しや政策効果を取り入れているという例はありませんで、人口統計データに基づき、人口投影の考え方で行っていくというものが標準的であるといえます。
 ここでは、以上で申し上げました人口推計の役割と仕組みについてまとめさせていただきました。
 それでは、令和5年推計の手法と仮定設定の説明に移りたいと思います。基本推計については推計期間を50年、日本における外国人を含む2020年の国勢調査の男女年齢各歳別総人口を基準人口としております。
 こちらが出生、死亡、国際人口移動について設定する仮定の種類となりますが、前回の平成29年推計からの変更はなく、同じものとなっております。
 それでは、出生の仮定設定に移りたいと思います。出生仮定については日本人人口、それから、外国人人口別に出生率というものを把握し、将来に投影します。外国人の年齢別出生率や外国人女性から日本国籍児が生まれる割合を使うのですけれども、こちらは直近の状況で固定しております。推計時点で15歳である2005年生まれの日本人女性を参照コーホートと定めまして、この女性に対し、要因別投影法で出生力水準を決定し、これが長期の出生率仮定となります。出生の年齢パターンについては、拡張リー・カーター・モデルというものを開発して採用しました。
 長期の将来仮定の水準に寄与するのは、コーホートで見たときの直近までの趨勢となります。ここではコーホートの年齢別出生率を前回推計の中位仮定、これが実線となりますけれども、これと今回、まだコロナの影響を受けていない2020年までの実績と重ねてみたものです。実績のほうはマーカーがついたものになります。これを見ますと、20代前半ですとか20代後半、こうしたところで前回推計の中位仮定の水準を直近で下回ってきているのが分かります。このような直近の動きが今回長期の仮定に反映されることになります。
 こちらは先ほど年齢別で示した出生率を累積したコーホートの累積出生率、ここに50歳とか35歳と書いてありますけれども、そこまで積み上げた出生率になります。おおむね前回の中位仮定に沿っているわけですけれども、先ほど示したように1990年生まれ以降の20代、30代でわずかに前回の中位仮定を下回り始めているのが分かります。これによって今回の長期的水準も下方改定になります。
 まず、長期の出生率水準について、参照コーホートである2005年生まれの女性の出生率を要因別投影法によって設定した仮定について御説明したいと思います。
 コーホート合計特殊出生率はここにあるように4つの要素、50歳時の未婚者割合、期待夫婦完結出生児数、結婚出生力変動係数、離死別再婚効果係数というもので構成されると考えます。これらの要因の実績データを国勢調査、人口動態統計、出生動向基本調査から見まして将来に投影します。
 各要素の将来投影の結果を順番にここで示しているのですけれども、まず、初婚についてはコロナの影響が出ていない2019年までの実績データを使って直近の水準のハザード、これは未婚者から初婚が発生する勢いのようなものなのですけれども、これを年齢別に見た年齢別ハザードというのがあるのですけれども、これを将来一定として求めました。その結果、参照コーホートである2005年生まれの女性の50歳時の未婚者割合というのが19.1%、そして、平均初婚年齢は28.6歳と推計されました。
 こちらは推計された年齢別初婚率に、今度はこれらの初婚年齢別出生確率というものを重みとして掛けますと、期待夫婦完結出生児数というものを出すことができます。今回はこの出生確率については第16回出生動向基本調査から得られました出生仮定がほぼ完了して、かつ一番新しい世代である1965年から74年生まれの実績を投影に用いています。
 こちらは左の初婚の年齢パターン及び真ん中に初婚年齢別出生確率が出ていますけれども、これにより各コーホートの期待夫婦完結出生児数を算出することができます。さらに一番右の結婚出生力変動係数を掛けることによって、実際の夫婦完結出生児数が算出されます。その結果である夫婦完結出生児数が、ここに青いラインで示されたものになるのですけれども、最終的なレベルは1.71となりました。前回中位仮定は2000年生まれで1.79人でしたので、1.79から1.71に下方改定されたということになります。
 また、この離死別再婚効果係数は配偶関係別構造の将来推計というものを別途やりまして、これと配偶関係別完結出生児数というものを出生動向基本調査から得まして、これを組み合わせることで求めるのですけれども、今回は0.966という数字になりました。
 参照コーホートの水準を決める要素の投影は、ここに最終的に示したものになります。これを使って、右下に各要素から算定されたコーホートの合計特殊出生率の推移が示されています。ここにある表の赤枠で囲ったところが中位仮定における参照コーホートの各要素指標と出生順位別の分布となります。中位仮定では19.1%の女性が50歳時点で未婚ということになりますし、下のパネルを見ますと、無子の割合が33.4%となっています。およそ3分の1の女性が生涯子どもを持たないというようなライフコースを想定しているということになります。
 こちらは参考として前回の参照コーホート、2000年生まれの仮定値を示しています。ライフコース指標の仮定が前回と今回でどのように変わったかということを比較することができます。
 こちらが今回設定された中位仮定のコーホート合計特殊出生率と前回推計の高中低の仮定を重ねたものです。実績を反映して1980年代前半までというのは一度上昇しています。これは実績からもこういう上昇が見られているのですけれども、その後は低下をして、前回の中位仮定1.40から今回1.29に低下しています。
 こちらは前回もお示ししたのですけれども、前回2000年生まれで設定した仮定値に比べてどうなったかというのを示したもので、平均初婚年齢は変わりませんが、50歳時未婚者割合がわずかに上昇し、夫婦完結出生児数も低下したという仮定になっております。
 このように算定式でコーホートの合計特殊出生率の推移が設定されましたら、今度は3番目の工程である年齢別パターンの推計を行います。
 年齢別出生率の推計に用いるのは、前回の部会で御説明いたしましたコーホートの出生ハザードを対象とした拡張リー・カーター・モデルです。順位別出生率水準の統制を可能にし、また、特異値分解の第3成分までを利用することで、年齢別パターンを柔軟に再現できるようにしました。
 年齢別対数ハザードの特異値分解をすることによって、年齢別対数ハザードの平均、平均パターン、それから、年齢変化を表すbx、そしてコーホートの変化を表す3種類のktというものが得られます。このktを将来に投影することにより、パラメーターを得て、年齢別出生率を構築し、実績のない部分の将来仮定値を得ることになります。
 中位仮定が設定できましたら、今度は高位と低位仮定を設定します。初婚率、夫婦出生力変動係数について先行する世代の行動に戻る、あるいは変化が止まるといった仮定を置いて、まず、高位仮定をつくります。低位仮定は高位と中位との乖離幅を利用して設定しました。この方法によって、中位と同様に参照コーホート算定式の各要素が高位仮定と低位仮定についても設定することができます。
 高位仮定では50歳時未婚者割合は13.4%、夫婦の完結出生児数は1.91人と仮定されます。
 一方、低位仮定では50歳時未婚者割合が25.6%、夫婦の完結出生児数は1.54となり、生涯無子という人の割合が42%と、4割以上の女性が子どもを持たないという想定になっております。
 出生の最後に、2020年以降に日本で経験された新型コロナ感染拡大に関わる部分について説明します。ここまでの将来投影は新型コロナ感染拡大の時期の実績を使わない、その影響を受けない2019年までの状況を投影に用いておりました。ここで示しているコーホート合計特殊出生率、そして、右の期間の合計特殊出生率は、いずれも新型コロナ感染拡大の実績を用いずに推定されたものになります。
 しかしながら、ここに合計初婚率と出生順位別出生率の2021年までの実績を足したものを示していますけれども、左側の黒い丸の線を見ていただくと、これが合計初婚率ですけれども、2020年、そして、2021年と大きく落ち込んでいることが分かります。出生のほうはコロナ前から少し下がっているところがあって、こちらは長期の仮定に組み入れられているのですけれども、2021年以降の少しコロナの影響を受けているような出生についても組み入れていくことが必要になるわけです。
 その方法なのですけれども、今回以下のような分析を行いました。第一子というのは、おおむねそれまでに初婚をした人から生まれます。また、第二子は、それまでに第一子を産んだ人から生まれます。したがって、一子はそれまでに初婚した人の累計、あるいは二子はそれまでに一子を産んだ人の累計と、ある程度相関があることが予想されます。
 ただし、同じ過去に初婚をした人でも、1年前に初婚した人のほうが、10年前に初婚した人よりも当該年に一子を生む可能性は高いと考えられます。そこで、結婚後何年たったのか、前子を何年前に産んだのかによって出生率の水準が異なることを考慮した有効リスク人口というものを考えてみまして、次子の出生との関係を推定してみました。有効リスク人口は式の中の赤字で示したEという部分になります。有効リスク人口と次子の出生数との関係を単回帰モデルで示してみますと、ここのグラフに書いて出ていますけれども、第一子の場合は決定係数が0.96と極めて高い相関を示しています。
 上段の左にあるのが、前事象から何年後にどのくらいの次子が生まれているかというものを示したもので、これは出生動向基本調査から計算して求めております。これは有効リスク人口を求める際の重みのような役割を果たすことになります。右がそれを使って次子のリスク人口というものを実際に示したものなのですけれども、破線はコロナがなかった場合に想定されるもので、実線がコロナの実績を含めて推計してみたリスク人口になります。そうしますと、コロナがあった場合は時間を置いて順番に最初に一子のリスク人口、次に二子のリスク人口という形で落ち込みが起きていることが分かります。
 赤線を見ますと、初婚は2020~2022年に大きく落ち込んでいるため、第一子を産むべき人口というのが10年間ほどにわたって少なくなるということが分かります。それに少し遅れて、青い線である第二子のリスク人口が落ち込んでいるわけです。
 このリスク人口から出生数を予測すると、コロナがなかった場合とコロナがあった場合で出生数の推計ができるわけですけれども、この差分というものはコロナの縮減効果とみなして推計に利用しました。
 最終的に推計された中位の期間合計特殊出生率について、出生順位別、それから、右に順位合計というものを示しましたけれども、破線がコロナの影響を使わないで推計した場合、実線がコロナの影響を実績として使って推計した場合になります。
 コロナの縮減効果がコーホートの年齢別出生率にもどのような影響を与えるかというのを見ていきたいと思うのですけれども、例えば1995年コーホートで示していますが、第一子は30代前半にかけて、第二子は30代後半にかけて、そして、第三子は30代後半に縮減効果が影響しているということが分かります。
 こちらは期間合計特殊出生率、そして、コーホートの合計特殊出生率について、コロナの影響の有無別に示したものです。右がコーホート合計特殊出生率の推移です。この太い青で示した線がコロナの実績を含めた場合の水準で、1990年代後半生まれの世代でコロナの影響が大きいということが分かります。ただし、2005年のコーホート、つまり2020年に15歳だった女性にはコロナが終わってから出生過程に入るということで、コロナの影響はないと仮定しています。
 こちらがコーホートごとの指標を示したものですけれども、1975~2000年生まれまでについては、コーホート合計特殊出生率の下に括弧内の数値が入っているのですけれども、これがコロナの影響を加味した数値ということになります。2000年生まれ、つまり現在20代前半の女性の場合は、合計特殊出生率はコロナ効果がなかった場合のモデル値は1.30なのですけれども、コロナの影響を受けることによって1.23と仮定されています。
 なお、毎年厚労省から公表される合計特殊出生率が概数として発表されますけれども、この場合は、我々の推計で使った出生率と違いまして、分子に日本人の出生数の中に、外国人の女性が産んだ日本国籍児が含まれます。この定義で、もう一度合計特殊出生率を算出したものが右側に示したグラフなのですけれども、今回の推計で外国人女性が少し増加する結果になりますので、外国人女性から産まれる日本国籍児が増えるために、分子に寄与することで合計特殊出生率は2070年に向けて上昇していくことになります。2070年は中位仮定の日本人女性に限定したものは1.29なのですけれども、人口動態調査の定義に直しますと、1.36ということになります。
 こちらは各指標実績及び中位、高位、低位仮定について示しています。2070年の合計特殊出生率は中位で、前回の最終レベルである1.44から低下して1.36、高位では1.64、低位では1.13となります。こちらは人口動態調査の定義に基づいたものになります。
 出生の最後に、日本における外国人の女性の出生率仮定についてなのですけれども、実績を見ますと、外国人女性の出生率は日本人女性よりも低くて、2016~2020年の平均を取りますと、合計特殊出生率0.94ということで1.0を下回っております。今回の推計ではこれを将来一定として中位仮定に用い、日本人女性の高中低の比率を適用して、高位と低位というものを設定しました。
 ちなみにこちらは参考までに諸外国について本国生まれと外国生まれの別に出生率を調べてみたものなのですけれども、外国生まれの出生率は一般に本国生まれよりも高いという傾向があります。しかし、日本についての実績は、日本人の女性の合計特殊出生率が1.4前後であるのに対して、外国人女性の合計特殊出生率1.0と低い特徴を示しています。これは日本に入国する外国人の多くが就労目的や有配偶率が低いといったこともあり、低いという形で出ているわけです。
 黄色い線は総人口に占める外国人割合も出しているのですけれども、欧州の国は日本よりも大体高くて、欧州の10か国平均だと17.2%程度、日本は現在2.2%ということで、この辺の諸外国においては外国人女性の出生率が高いということ、それから、外国人割合も高いということで出生率が高い。その点では、日本は外国人が増えてきても外国人女性の出生率が低いので、そういう意味でプラスには寄与しないという特徴があります。
 では、死亡仮定の説明に入ります。死亡はデータが5年分更新されまして、方法論については前回と同じく修正リー・カーター・モデルというものを採用しております。
 死亡仮定については先に結果をお示ししますと、こちらは平均寿命を実績及び過去数回の将来推計について入れたものを出しております。前回の平成29年推計を見ますと、実績値に対して男性の平均寿命がやや過小となっていましたが、今回の推計では死亡率低下が促進され、寿命が延びていくという仮定になっています。女性は平成29年推計と実績値がおおむね一致して推移していますので、この傾向に沿う仮定となっています。
 こちらが前回の部会でも説明しましたが、死亡率の推計に用いましたリー・カーター・モデルとなります。
 こちらが新推計におけるパラメーターの投影結果ですけれども、左に平均パターンのaxというものと、年齢ごとの変化のdxが示され、右には死亡指数の年次変化を示しましたktの実績値と将来投影が示されています。
 こちらも前回説明いたしておりますが、日本のデータに当てはめるためには高齢死亡率の改善度合いというものを表現する必要がありまして、線形差分モデルを取り入れております。そして、こちらは年齢シフトの度合いというものを表現する線形差分モデルのstとgtという変数の投影ですけれども、最終的には先ほどのktという動きと連動するように考えられますので、ktの動きと連動してstとgt、高齢シフトをつくるための変数を投影しております。
 こちらは今回足下で新型コロナ感染拡大があったため、その影響を示しておきたいと思います。新型コロナが広がった2020年の死亡率というのはやや低く、逆に2021年がやや高いということになっています。これらの図は月別の死亡数を年次別に示しているわけですけれども、2022年は2月、3月、それから、8月、9月及び12月において前年よりも死亡数が顕著に増加しておりました。COVID-19による死亡というものについて、厚生労働省がオープンデータということで公表しておりまして、そこから得たものを使いまして、年間の死亡数を推計して、これを基に2022年の将来生命表を作成しています。
 2023年以降は、コロナ禍以前の死亡改善パターンに戻るということで、そういう仮定において死亡モデルから推計された死亡率というものを用いています。
 こちらが改めて最終的に仮定された高位、中位、低位仮定に基づく平均寿命の推移です。2021年は実績、2022年は実績見込みに基づく仮定値を外挿して、2023年からモデル値に移行しています。2070年時点では女性も男性も死亡率は改善しておりまして、特に男性の改善がやや大きいということが分かります。
 こちらは足下までの死亡に関する3つの側面の動向を踏まえて、今回の仮定値がどういうものかという考え方をまとめたものです。死亡の全体水準は速度が緩やかになりつつも改善が続いておりまして、高齢死亡率の改善も緩やかになりつつも続いております。そして、寿命の男女差に関しては横ばい傾向が続くと考えております。
 最後に、国際人口移動の仮定です。国際人口移動の仮定設定は日本人の国際人口移動と外国人の国際人口移動に分けて行います。そのほか、日本人、外国人間の国籍異動というものも見込んでおります。なお、日本人も外国人も滞在期間が3か月以内という人は除いて国際人口移動として分析しております。
 こちらも前回の部会でお示ししましたが、国際人口移動の現状についての考え方をまとめたものです。では、今回の仮定設定の背景にある足下の状況を説明します。
 まず、日本人の国際人口移動については、おおむねこれまでの出国超過という傾向があるのですけれども、前回の推計時点よりも全般的に出国超過の傾向が弱まっているという状況になっております。一方、こちらは年齢別のパターンですけれども、こちらも安定的に推移しておりまして、近年の平均的男女・年齢別入国超過率というものが今後も継続するということで仮定設定を行いました。
 こちらは外国人の国際人口移動の話になります。外国人のここでは新規入国者数と、それから、日本に再入国しないということを想定できる帰国者についてのトレンドというものを示しています。新型コロナ感染の直前までは両者とも増加傾向にあったことが分かります。しかも両者の差というものが拡大しているわけです。これが近年の外国人の入国超過数の増加傾向として現れています。
 このように、新規入国者数と帰国者数との乖離、そういうもので出てくる拡大を背景として、外国人の入国超過数の仮定は、実際に入国超過数というものが、このように直近で増えてきているというものを織り込みまして、直近の平均的水準である16万4,000人という水準を設定しました。前回は7万人程度でしたので、そこから大きく増えているということになります。なお、2040年までこの数字が毎年入国超過数として加わっていくわけですけれども、2041年以降、つまり推計時点から20年たった以降は、現在総人口も減少が続いているところですので、ここからは入国超過率が一定として、日本人の総人口が減るのと連動して、入国超過の数も少しずつ減っていくという仮定になっています。
 こちらが入国超過数、16万人入ってきた人たちがどういう年齢分布になるのかというものを仮定したものですけれども、こちらも過去の実績を使いまして平均的なパターンを出して、これを今後一定としております。
 日本人と外国人間の国籍異動についても、今度は外国人人口を分母とした国籍異動率というものを求めまして、こちらを一定としております。
 最後、今回は推計の実施期間が1年遅れるといったことがありましたし、コロナ禍でいろいろ足下が起きているということもありましたので、投影にどの期間の実績データを用い、どの期間の実績値を仮定値として外挿したかをまとめたものをつけました。
 初婚や外国人の国際人口移動は2020年から新型コロナのことがありまして、大きく影響を受けていますので投影からは除外しております。また、2021年は実績値を仮定値として外挿して、2022年も月別のデータなど、なるべく実績に近いものを利用して仮定値として使うということをしております。
 以上で手法の説明は終わるのですけれども、引き続きこれによってどういう推計になったかという結果の説明に移りたいと思います。
 もう一つの推計結果の概要というスライドに沿って説明したいのですが、前半の仮定値の部分は今御説明したものと重なりますので、13ページに飛ばさせていただきます。このページに今回の推計結果の要約を書かせていただきました。それを見ますと、総人口は50年後に現在の7割に減少し、65歳以上人口はおよそ4割を占める社会になります。前回推計よりも出生率は低下するものの平均寿命は延伸し、外国人の入国超過増により人口減少の進行はわずかに緩和と書いておきました。ただし、人口減少という基調自体は変わっていないということは理解する必要がございます。
 こちらは今回の推計結果のポイントとなるような数値を前回との比較も含めてまとめたものです。たくさん数がございますので今から個別に御説明したいと思います。
 こちらは出生中位、死亡中位の結果についてポイントとなるような人口状況というものを年表の形で示したものです。括弧内に小さく前回推計で同事象が何年次にあったかということを書いていますので、人口の量だけではなくタイミングの観点で前回推計からの変化というものを確認することができます。例えば総人口が1億人を下回る年次は前回推計が2053年だったのですけれども、今回は2056年と3年後ろ倒しになっていますし、65歳以上人口のピークも2042年が2043年となりました。また、そういう意味では2040年代、日本は死亡数がピークを迎え、出生数が70万件を切り、総人口は1億1,000万人を下回ると推計されています。
 こちらが推計結果を要約したもので、この結果の概要は冊子の13ページに出ているものになります。
 それでは、総人口の推移について説明いたします。ここに総人口の推移の特徴をまとめているのですけれども、グラフをお示ししながらお話ししたいと思います。
 総人口は出生中位、死亡中位の場合、2020年国勢調査により1億2,615万人が2070年には8,700万人に減少すると推計されています。前回推計と2065年時点で比較しますと、総人口は8,808万人が9,159万人ということで少し増えるということです。1億人を下回る時期というのが先ほども申し上げましたが2053年から2056年になるということです。
 こちらは出生・死亡仮定というものを3種類ずつ組み合わせて9種類の推計がありますので、こちらを重ねて示したものなのですけれども、最も少ない組み合わせで7,800万、最も多い組み合わせで9,700万と、2,000万人ほどの開きが出てくるということになります。そして、人口が最も多い出生高位、死亡低位の仮定においても総人口というのは減少していくということが分かります。
 新推計では前回集計よりも将来の総人口がやや増加しますが、こうした推計結果の要因を少し示してみたいと思います。要因分解として、具体的な数値をここに出していますが、基本的には0~14歳の人口が減少しているのですけれども、こちらには出生仮定がマイナスに寄与しております。ただ、そのほかいずれの年齢層においても、外国人の国際人口移動仮定がプラスになったことで、そちらが人口の増加に寄与しております。
 では、年齢構造に移りたいと思います。ここでは年齢構造、特に高齢者である65歳以上人口に関わる結果を示しています。こちらもグラフを見ながら説明したいと思いますけれども、左の図が人口、右の図が総人口に占める割合を示しています。左グラフの赤線、65歳以上の人口のピークというのが前回は2042年で3,935万人でしたけれども、今回は2043年で3,953万人に少し先送りされております。
 右グラフの赤線で示した総人口に占める65歳以上人口の割合です。2020年は28.6%だったのですけれども、2070年には38.7%へ上昇します。前回推計と2065年時点で比較しますと、65歳以上人口割合はともに38.4%ということであまり変化がございません。ちなみに現在7,000万人を超えます15~64歳人口は2070年には4,500万人まで減少します。
 ちなみに日本人人口に限定した結果も推計しているのですけれども、こちらですと2070年、15~64歳人口というのが3,860万人、高齢化率は40.9%となっています。
 こちらは2070年の65歳以上人口の割合を出生高位仮定と低位仮定も加えて示したものですけれども、高位仮定の場合は35.3%、低位仮定の場合は42.0%となります。それから、15~64歳人口に対する65歳以上人口の相対的な大きさを示した老年従属人口指数という指標があるのですけれども、これが右に示したもので、2020年現在の48.0から2070年には74.2に上昇するということが分かります。
 こちらは人口ピラミッドを2020年、2045年、2070年で示したものです。70代より下では若い世代ほど少ないという構造になることが分かります。
 それから、総人口の平均年齢、人口を二分する中位数年齢という指標があるのですけれども、こちらを示したものです。2020年時点で平均年齢というのは47.6歳、中位数年齢は48.5歳なのですけれども、いずれも今後上昇を続けまして、2070年平均年齢は54歳、中位数年齢は56.6歳となります。
 人口動態数です。出生数は日本における外国人も含む総人口出生数と日本国籍を持って生まれてくる出生数があるのですけれども、いずれも減少傾向となります。総人口出生数は2022年に80万件を下回る見込みとなっていますが、中位推計の場合、2043年に70万件を下回るという見込みになっています。ちなみに日本人の出生数が70万件を下回るのは2038年となっております。
 こちらは今回の出生数が2030年代まで低迷する背景を示したものなのですけれども、新型コロナ感染期の初婚減や出生減を反映する前と反映した後の推移を比較しております。赤の破線で示したように、コロナ禍の実績を使わずに推計した場合は80万件を維持した可能性というのもあったわけですけれども、コロナによる実績を入れて推計したことによって80万件を下回ったまま2030年を迎えそうだということになります。また、この時期に生まれた出生数が少ないため、この世代が親になる2055年頃にも、人口学ではエコー効果と呼びますけれども、出生数がもう一度減少することが見込まれております。
 日本における死亡数の推移ですけれども、足下では新型コロナの影響を受けての実績値を外挿しておりますので少し変動があるのですけれども、今後は増加を続けまして、2040年に160万でピークを迎えます。
 国際人口移動については、左に日本人、右に外国人を示しています。日本人の入国超過数は、ほぼ出入国が均衡している状況が続きます。外国人人口については、2040年までは年間16万4,000人の入国超過が続き、2041年からは総人口の減少に伴い減少していきます。なお、2021年までは新型コロナの影響があって入国超過数がマイナスでしたけれども、2022年、実績などがいろいろ出てきておりますが、2019年の水準に近いものになるということが見込まれております。
 令和5年推計では出生・死亡仮定を変えた9本の基本推計というものを出しておりますが、それ以外に、長期参考推計、それから、日本人に限定したもの、条件付推計を行っておりますので、少しその内容についても御紹介したいと思います。
 こちらは100年間、2070年時点の仮定値をその後固定して推計を続けたものなのですけれども、2120年、出生低位で3,600万、出生高位で7,100万と3,500万人ほどの幅が示されました。
 出生中位、死亡中位による年齢3区分別人口の推移がこちらに示されていますけれども、現在7,000万人を超える15~64歳人口が2120年には3,000万人を下回るという推計になっております。
 ここからは条件付推計です。こちらは前回推計でも同じようなものをやったのですけれども、出生率と外国人の国際人口移動の仮定、これは変動幅が大きいということもありまして、こちらは機械的に変化した場合の条件付推計というものを行っています。出生率の条件については、合計特殊出生率が2070年、1.00~2.20まで刻んだものを用意して、そちらを使った推計を行いました。それから、外国人の入国超過数については、基本推計では毎年16.4万人としていますけれども、これを0~100万人まで幾つかの条件をつくって、同じく2040年までそれを入れて、2041年から率で変えるという推計で行っております。
 こちらが出生率に関する条件付推計の結果ですけれども、左側に総人口の推移、右側に65歳以上の割合を示しました。例えば出生率が1.80という場合の総人口というのは減少が続きますが、高齢化率は低下するといったことがここから分かります。
 こちらは外国人の入国超過について、グレーのラインですけれども、例えば毎年75万人の入国超過がありますと、現在の人口規模がある程度維持できるといったことが分かります。
 また、ここでは示しておりませんが、足下で2.2%の外国人人口というのが今の日本の人口の割合です。基本推計では2070年に10.8%ぐらいに達しますけれども、例えば前回推計の入国超過数の仮定6.9万人を用いた条件付推計でやってみますと6.1%にとどまって、逆に25万人まで入国超過数が毎年あると仮定すると、2070年に25.1%に達するといった感応度というものが分かります。
 こちらが条件付推計における条件を変えたときに、それぞれ人口とか65歳以上の人口の割合がどうなるかというのを比較したものです。
 最後に、令和5年推計の出生中位、死亡中位推計における仮定設定及び主な結果をまとめてみたいと思います。長期の出生率仮定は1.44~1.36ぐらいの人口動態調査と同定義のものですけれども、こちらに下方改定されました。2020年代は新型コロナ感染拡大の影響を受けて1.2台で推移するとなっています。
 長期の平均寿命は、前回仮定からわずかに伸長しまして男性は85年が86年、女性は91年が92年となります。
 国際人口移動は、日本人は出国超過傾向がわずかに緩和し、外国人については入国超過数が増加するとしました。年間7万人程度だったものが16万人に上方改定されました。
 総人口は50年後に現在の7割になり、それから、65歳以上人口も4割を占めることになります。前回推計との比較では、前回よりも出生率が低下するものの平均寿命は延伸し、外国人の入国超過増がありまして、人口減少の基調は変わらないのですけれども、人口減少の進行のスピードはわずかに緩和されるということになりました。
 総人口が1億人を下回る時期が2053年が2056年に、15~64歳人口が7,000万人を下回る時期が2029年が2032年に、それぞれ少し先送りをされております。
 日本人の出生数は足下の2020年に84万件、それから、死亡数は137万件でした。出生数は2038年に70万件を下回り、死亡数は2040年に165万件でピークを迎えると推計されています。
 以上で令和5年推計の結果の概要の説明を終わります。
○津谷部会長 岩澤部長、御説明ありがとうございました。大変具体的かつ丁寧な御説明であったと思います。
 それでは、委員の皆様から、ただいま御説明のありました内容について、御質問・御意見がございましたらお願いしたいと思いますが、その際に一つお願いがございます。岩澤部長は御説明で資料2と資料3という2種類の資料をお使いになりました。資料2が推計手法と仮定設計について、内容は一部かぶっておりますが、資料3は推計結果の概要についてです。御質問・御意見を述べられる際には、どちらの資料の何ページであるかということを、まずお示しいただいてから、御質問・御意見をお受けしたいと思います。それではお願いいたします。
 黒須委員、お願いいたします。
○黒須委員 黒須です。こんにちは。今の説明を聞きまして、本当に大変な作業を細かく丁寧にされて、また、その説明もとても分かりやすくてありがとうございました。
 私から2つほど、基本的なことかもしれませんけれども、聞き逃したことも含めて確認をさせていただきたいと思います。
 まず、1つ目が資料2のスライドの45と47の関係をもう一度確認させていただきたいのですが、スライドの45のほうで外国人女性の子どもというお話があって、それが人口動態のほうでは入れ込まれているということで示されたということでしょうか。それに対して、スライドの47は外国人女性が産んだ子どもということで、外国人の合計特殊出生率というのがありまして、推計のほうにはこちらのほうが使われているということなのでしょうか。45と47の違いを確認させていただきたいというのが1つ目です。
○津谷部会長 それでは、岩澤部長、お答えをお願いいたします。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) 黒須委員、どうもありがとうございます。
 ここは大変分かりにくいところの一つでございまして、もう一度説明させていただきたいです。スライドの45に式が出ていますので、こちらを使って説明させていただきたいのですけれども、まず、将来推計人口の作業についてはどのように行うかというと、日本人女性を分母にして分子は日本人女性が産んだ子供数、もちろん日本国籍になるのですけれども、そういう指標で日本人について推計を行います。その出生率を日本人に掛けることによって出生数を出します。外国人については外国人女性を分母にして、外国人から生まれた出生数というものを分子にした外国人出生率というものを出して、それを外国人の人口に掛けることによって、外国人女性から生まれる出生数を出します。
 ただし、そのときに、今度は外国人女性から生まれた子どもを分けます。どのように分けるかといいますと、一つは、外国人女性なのですけれども、子どものお父さんが日本人の場合は、その子どもを日本国籍児とします。今度は、外国人女性のパートナーが外国人の場合外国籍の子どもとします。その割合は実績から求めます。
 そうしますと、子どもが3種類できるのです。日本人女性から生まれた日本国籍児、外国人女性から生まれた日本国籍児、外国人女性から生まれた外国籍の子どもと、子どもが3種類になります。この3種類のうちの最初の2つ、日本人女性が産んだ日本国籍児と外国人女性が産んだ日本国籍児を合わせたものが分子になるものが一般に使われている合計特殊出生率になります。推計については日本人女性が産んだ日本国籍児だけを日本人の出生率としているのですけれども、人口動態統計と比較できるよう定義を合わせて表示するために、こういう指標をもう一つつくって提示しているということになります。
○黒須委員 分かりました。ありがとうございます。
 もう一つよろしいでしょうか。
○津谷部会長 一言申し添えますと、我が国には戸籍法というものがあり、原則として、子どもの母親が日本国籍を持っていなくとも、パートナーが日本国籍を持っていると、産まれてきたお子さんは日本国籍を有することができます。我が国の人口動態統計は戸籍法を基に運用されているため、このようなことが起きます。例えば、皆様が通常御覧になる合計特殊出生率のデータと今回の将来推計が用いた出生データの違いについて、誤解のないようにという配慮から、大変手間のかかる詳細な推計だったと思いますけれども、このような作業をやっていただいたということだと思います。
 黒須委員、2つ目の御質問をどうぞ。
○黒須委員 よく分かりました。ありがとうございます。
 2つ目として、今度は資料3の推計結果のほうなのですが、ざっくりとした質問なのですけれども、全体として現在の7割になる話、それから、65歳以上が4割になる話がありました。人口減少がわずかに緩和というような発言があったと思うのですけれども、このまとめというのは中位推計からの御発言ということでよいのでしょうか。
 あと、その関連として、例えばそれぞれに中位、高位、低位のいろいろな推計がされているのと、最後のほうに例えばスライドの20から9種類の仮定を設けてされていて、これも何かすごい作業だなと思ったのですけれども、これだと例えば2070年に2,000万も変わってくるというような推移の違いが出てきます。私の質問は、中位をベースに報告、まとめを言われているのかということと、条件付推計は物すごい幅があって、これをどのように、教育的にはすごく効果がある面白い見方かなと思うのですけれども、政策的提言としてはどのように使われることになるのかなと思いました。
 以上、質問です。ありがとうございます。
○津谷部会長 岩澤部長、いかがでございましょうか。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) 基本的に何も表示がなく示す場合は出生中位、死亡中位の説明になっています。全部を入れてしまうと、かえって分かりにくいかなということで、例えば死亡は高位ですとか、出生が高位、死亡は中位ですというようなときは、そういう仮定を添えて言いますので、基本的には何も説明がなく今回の推計がといった場合は、両方の中位というものを前提にしていることになります。
 そうすると、前回の死亡中位・出生中位と今回の死亡中位・出生中位の比較というときも、特に言及なく前回と今回比較した場合は中位のイメージになります。これがいろいろな社会計画の中でも、それを中位として使われることがあるということで、我々も一番それが使われることが多いということを認識して出しているところです。
 幅に関しては、中位のみを説明することが多いのですけれども、実際には、このように仮定が変わってくることで幅が出てくることも大変重要な情報で、我々としてはこちらも含めて9本を基本推計と説明しておりますので、いろいろな計画を立てるときには、一番低い場合、高い場合、それで皆さんが使われるいろいろな推計結果がどのぐらい変わるかというのは、ぜひそこで試していただきたいなと思っているところです。
 この基本推計の9本というのは、基本的に推計の中なのですけれども、条件付推計に関しては、もう少し感応度といいますか、推計の仮定値のインパクトがどのぐらいなのかというのを見る、あるいは少しあり得ないかもしれないけれども、もしこんなことになったらどのぐらいになるかというのを調べるという意味で、もう少し使い方が幅広くなっていくと思います。これは計画というよりは推計の仕組みとか、仮定値の意味を、ご理解いただくために使う推計ということで、使われ方が違うと思います。
○黒須委員 ありがとうございました。
○津谷部会長 よろしいでしょうか。
 通常、将来人口推計では、死亡率と出生率については、medium variantと呼ばれる中位値、つまり死亡中位と出生中位のコンビネーションを用います。とはいえ、推計の設定には幅をつけて、ミディアムを中心としてハイとロー、つまり高位値と低位値が設定されますので、死亡率と出生率のそれぞれについて3通りの設定が設けられ、その結果、3×3の全部で9通りの推計が行われます。しかし、アメリカ合衆国やオーストラリアのように、国際人口移動が多い国では、国際人口移動についても3通りの設定値を設けますので、全部で27通りの推計が行われます。ただ、コンビネーションとしてありそうでないものについては、推計結果が公表されないこともあるようです。このように、将来推計のための人口動態率の仮定設定は複雑な作業です。我が国の場合は9通りのコンビネーションがあるということで、ここでは重要な点について御説明いただいたということだと思います。ありがとうございました。
 それでは次に、石川委員、お願いいたします。
○石川委員 私からは一つが意見というかコメント、もう一つ質問があります。
 最初のコメントは資料3のスライドの40番です。コメントというか感想で恐縮ですけれども、日本の人口減少が始まってから、その減少を食い止めるために、あるいはそれを緩和するために、いろいろな政策的な努力がされてきました。具体的には出生数の増加、あるいは国際人口移動、外国人の受け入れ拡大が考えられるわけですが、特に後者の外国人の拡大は直接的な影響が大変大きいのでどうなるかと思って、私は大変注意深く今回の推計作業に興味を持ってまいりました。
 結果として、図に示されているこのスライドの左の図、総人口の将来見通し、これは大変興味深く感じているのですが、前回の1年間の外国人の転入超過が7万人から今回16万4,000人に増やして、それ以外の条件付推計の結果もここに出ています。16万人に増えるという仮定で推計を行った結果、今までの減少ペースが少し緩くなるということは予想されていたわけですけれども、減少のペースが大きく緩和されるということではないということを改めて思いました。
 かなり非現実的な推計になると思いますが、この図で見ますと、75万人の転入超過だと、ほとんど安定的な人口になりますけれども、その下の50万人の転入超過だと、今回の推計よりもかなり減少のペースは緩くなることがはっきり分かります。それ以外のケースについても示されていて、この図は人口減少に対するいろいろな対策を考える上で、外国人の受け入れをどう考えるかということを議論するときの基礎的な資料となると考えられますので、これは大変いい図だと思います。この感想を述べたかったのです。大変な作業をしてここに到達されていると思いますので、本当に感謝を申し上げたいと思います。
 もう一つは質問です。今のお話で触れられていたにもかかわらず、私が聞き逃したかも分かりません。2070年までの推計で行われていますけれども、その最後の時点の2070年では、日本の総人口に占める外国人の比率は何%ぐらいになるでしょうか。それを教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。
○津谷部会長 岩澤部長、お答えをお願いいたします。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) 総人口から日本人を除いた外国人の分の人口の割合については10.8%という数字になっております。現在が2.2%ということです。
○石川委員 私からは以上で結構です。ありがとうございました。
○津谷部会長 ありがとうございました。
 次に、川崎委員、お願いいたします。
○川崎委員 ありがとうございます。川崎です。
 今、石川委員がお尋ねになったことと全く同じポイントを私も興味を持ってお尋ねしようと思っておりましたが、今のお答えで大変状況もよく分かりました。石川委員も今おっしゃったとおり、この図は、今後の日本の外国人政策を考える上で大変重要なのだろうと思います。その意味で、今のお答えでいただきました外国人比率が10.8%というのが、現在は恐らく3%ぐらいかと思いますが、このようなプロジェクションが実現したとすれば、日本社会は変わるのだろうなということも感じました。
 ということで、質問ということは特にありませんけれども、このシミュレーションでは、どれぐらい外国人の入国超過が毎年起これば、どれぐらい総人口が変わるかということ以上に大事なのが、外国人のパーセンテージがどれぐらい変わるかということではないかなと思いました。その意味で、この図だけではなく、この背景にあるデータをもう少しプロジェクションの結果として見させていただければありがたいと思って感想を申し上げました。いずれにしましても、大変緻密な分析をしていただきまして、本当にありがとうございました。
 以上、感想のみです。
○津谷部会長 川崎委員、ありがとうございました。
 同じような御関心をお持ちということでした。外国人が日本の総人口に占める割合は、2070年には2020年の5倍弱になると予想されるということで、今後50年間の外国人人口の推移は大変重要になると思います。
 それでは、駒村委員、お願いいたします。
○駒村委員 社人研におかれましては大変難しい作業をどうもありがとうございました。客観性、中立性、それから、説明責任、透明性ということで、いろいろ工夫されたものだと思っております。
 私も外国人の部分について御質問をさせていただきたいと思います。出生数が毎年80万人を切るような状態になると、毎年新たに入ってくる方が、従来よりも10万人近く多く予測するというのは、かなりインパクトがあるのだなというのがよく分かりました。今まで先生方が議論された内容でございます。これは投影でございますので、こうなるとか、こうするということではなくて、現時点の未来はこうなるのだろうという意味であると思いますので、ただ、それでも政策的な問題をいろいろ考えていく重要な手がかりになると思います。
 その上で、聞きそびれたことかもしれませんので教えてもらいたいのですけれども、外国人の流入の16.4万人、これが2040年まで一定とするというのが、資料2の63及び資料3の39の議論であったかと思います。外国人の流入に関しての前提です。それ以降は、人口に対する一定の割合で調整するというお話だったのですけれども、2040年まで一定にしたという根拠は一体何だったのだろうかということを教えていただきたいなと思いました。
 2番目は、これも先ほどの議論と同じなのですけれども、人口ピラミッドに与える影響というのでしょうか、外国人の流入は各年齢層に与える影響がどう変化していくのか。これは資料2の64と65で、フローで動きを出しているので、これで考えてくれと、これはバックデータだということだと思うのですけれども、やはり人数をデータとしては公表していただきたいなと思います。
 関連して、将来、次のステップで恐らく地域別人口を推計していくことになるだろうと思うのですけれども、このときに外国人の扱いはどうするのかなということです。
 この3点、よろしくお願いいたします。以上です。
○津谷部会長 外国人人口について、入国される方のみならず、既にわが国に居住する外国人人口も重要ということで、御質問が3点出ております。
 岩澤部長、可能な範囲でお答えと御説明をお願いいたします。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) 最初の質問が、2040年まで一定で入れて、そこから率にしていることですけれども、これまでの推計でも推計時点から20年間というのが、特に国際人口移動に関しては、出生とか死亡みたいに年齢パターンみたいなものが生物学的に決まっているものとまた違って、社会経済の見通しですので、ある程度見通せる期間として20年間を使ってきました。これまでも毎回推計時点から20年まで、ある程度の数の見通しというのをつけまして、そこから総人口に比例して入ってくるという考え方で来ています。20年の意味というのは、社会経済として見通せるものとして我々が考えた期間ということです。
 2点目、これまで我々は総人口というのがベースの推計で、日本人は参考に出していますが、やはり外国人自体の変化を見ていきたいというニーズも高まってきていると思いますので、こちらについてはこれから報告書という形でもう少し分析を加えたようなものを作っていく際に、少しそういうものも何かできるようなデータを作っていくことを検討していきたいと思っております。できるだけこういう情報を活用できるようなものとしてやっていきたいと思いますので、御助言をどうもありがとうございます。
 地域推計については担当が違いますので、とりあえず全国の総人口を引き渡して、それで推計作業に入っていくと思いますので、その実態が公表になったときに、どういう考え方になるかというのを説明させていただくことになるかと思います。
 以上でございます。
○津谷部会長 岩澤部長、ありがとうございました。
 駒村委員、いかがでございましょうか。
○駒村委員 ありがとうございます。
 外国人の動向というのは大変重要データに多分なると思います。ぜひとも分かりやすい情報発信を引き続きお願いしたいと思います。
○津谷部会長 ありがとうございました。
 地域人口推計では国内人口移動も考慮しなくてはなりません。さらにそれに加えて、日本人人口と外国人人口を区別して推計するとなると、非常に複雑な作業になります。このためには、手法やモデルの精緻化も必要になると思います。大変だと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、小野委員、お願いいたします。
○小野委員 私も仮定の設定方法であるとか御説明の内容とか、さらにはお示しいただいた様々な結果につきまして、十分な御検討と御対応をされまして、そのことに関しては非常に感謝を申し上げたいと思います。
 私からは簡単な確認を一つだけですけれども、資料2の42ページの出生率に関するコロナ禍の影響のところになります。この図を見ていますと、コロナ禍で減少した婚姻とか出産については、その後の反動を想定していないように見えるのですが、そのような理解でよろしいでしょうかという質問です。
 以上です。
○津谷部会長 岩澤部長、お答えをお願いいたします。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) コロナのこういう状況というのは我々も今まで経験したことがなく、また、世界を見ても推計に関して先行研究があるということもあまりなくて、本当に議論をしながら進めていた感じです。例えば丙午のように1年どんと落ちたときは翌年その分の反動があるとか、そういうこともまずは検討したのですけれども、今回、結婚が3年にわたってあまり戻らないという状況になっている中、もし、少しでもそれを埋め合わせるような上昇が見られたら、そういうことをまた想定したと思うのですけれども、今のところ全く兆候がない中で反動が起きるという仮定を置くというのも、投影という観点からは強すぎると考えまして、そういう状況については高位仮定のようなところで表現するとしました。
 今回についてはコロナで失った部分については、とりあえず失っているのですけれども、ただ、2023年からは結婚が元に戻るという仮定を置いております。こういう低迷したまま続くというのではなくて、そこで一応戻る。ただ、逸失した結婚を完全に取り返すというところまでは仮定を置いていないということになっております。
○津谷部会長 ありがとうございました。
 小野委員、よろしいでしょうか。
○小野委員 十分了解しました。ありがとうございました。
○津谷部会長 ありがとうございます。
 それでは、榊原委員、お願いいたします。
○榊原委員 岩澤部長、丁寧な御説明をありがとうございました。
 今回は外国人についてのデータ、それから、分析も非常に細かく丁寧にしていただいていて、大変示唆に富んだ分析がされているなと思いました。
 私のほうから2点質問、それから、感想を一つ申し上げたいと思います。
 質問のほうが資料2の48のスライドになります。このスライドが諸外国における本国生まれ・外国生まれ別に見た合計特殊出生率及び外国生まれ人口の割合というデータです。これが日本とデンマークもそうなのかもしれないですけれども、非常に諸外国と日本の状況が顕著に違っていて、日本にいる外国人の方の出生率が著しく低い。これは一体どういうような事情で、日本ではこういうことになっているのかということを、もし何か把握なさっているのだったら教えていただきたいというのが1つ目の質問になります。例えば技能実習生のような方たちが妊娠すれば、すぐ本国に帰されてしまったり、出産が日本では許されないと考えて中絶をしていたりというような産み控えが起きてしまうような労働環境にあるからということも含まれているのかどうなのか、分かる範囲で教えていただければと思いました。
 もう一つが、同じ資料2の61のスライドになります。これは国際人口移動の仮定設定で、日本人の男女別の出入国の超過の具合を年代も分かるように見せてくださって、大変興味深いデータなのですけれども、明らかに同じ年代でも女性のほうが日本から出て行く人口が多い。これが前回のときの調査と今回とトレンド自体が変わらない。こうした若い女性のほうが若い男性よりも多く流出するという傾向は、日本だけではなく諸外国でも見られるようなものなのか、日本にかなり特有な現象なのか、もし、お手元の情報等で分かれば教えていただきたいなと思いました。というのも、私が接するいろいろな情報の中でも、若い日本女性が外国に活路を見出そうとするというか、就労の活躍の機会、また、出産・育児のしやすさということで外国に移住を考える人がどうも増えているのではないかというような話を見聞きするので伺いたくなったということです。
 3つ目が感想になります。資料3の14ページ、将来推計人口の今後の概要をまとめていただいてあるデータです。このスライドの左の下のほうのところに0~14歳人口が、今、総人口に占める日本の子供人口というのは確か11%だったと思うのですけれども、今回の推計によりますと、9%になるということです。総人口が増えるか減るかとか、高齢化率がどうかということは日本でも多く議論されるのですけれども、総人口に占める子供の割合がここまで減るというのは、これは世界で最も少ないということだと思います。
 既に日本の11%という子ども人口の割合は世界で最も少ないと確か社人研は指摘されておられましたから、それをさらに上回った9%というのは、ひょっとしたら、もう人類最先端と言ってもいいぐらいの子ども人口の少なさなのではないか。これは出生率が下がっているという意味の少子化ではなくて、人口全体、社会全体に占める子どもの割合が異常に少ない。これまで恐らく人類で経験したことがないぐらいの子どもの少なさという意味の超少子化の社会にこれから入っていくことが、ここで予想されているということについても、今、私たちが社会、国を挙げて議論している少子化の中で、もう少しきちんと着目し、議論する必要がある部分なのかなと、そういう示唆をいただいたと思いました。
 既に超高齢化と超少子化が進んでいる過疎の地域では、保育園も幼稚園も小学校もどんどんなくなって、子どもの成育していくための環境がどんどん劣化している。離島などでは高校からないので、親元を離れて遠くに行かなくてはいけないということが起きている。これが全国で子どもの周りで大きな環境変化としてこれから起きていくということを示唆されているのだとしたら、非常に大きなことであり深刻なことであると思いました。貴重ないろいろな示唆をありがとうございました。
 私からは以上です。
○津谷部会長 ありがとうございました。
 岩澤部長、お答えやお考えがありましたら、お願いいたします。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) どうもありがとうございました。
 最初の2点については、この推計結果というよりも国際人口移動に関する実態についての御質問だったかと思いますので、こちらを専門に研究をしております是川のほうから御紹介できることがあればお願いします。
○津谷部会長 是川部長、お願いいたします。
○是川国際関係部長(社人研) 国際関係部長の是川と申します。どうぞよろしくお願いします。
 1点目の御質問、資料2の48ページ、諸外国における本国生まれ・外国生まれ別に見た出生率というところです。日本は確かに御指摘のとおり、外国生まれ、外国人女性のほうが出生率が低いという結果になっております。それ以外のヨーロッパの国々については、その関係が逆になっている。こうした違いの背景として考えられる点は2つほどあるかと思います。
 まず1点目は、ヨーロッパの場合、外国人女性の多くの出身地がアフリカ大陸及び中東地域であるケースが多いということです。日本の場合はアジア諸国からいらしている方が最も多くなっております。それぞれの出身地の出生力が大分違いまして、アフリカや中東地域、西アジアは非常に高いのですが、アジアはどこも2を超えるようなところというのは南アジアのほうに行かなければない。東南アジアに関して言えば1.4といった水準です。そういったこともありまして、もともとの出生率が大分違うという点がまず1点ございます。
 2点目といたしましては、日本の場合、これらのヨーロッパの国々と違いまして、来日する外国人の在留資格、ビザの種類が留学や就労など何らかの活動を目的としていらっしゃる方がほとんどを占めております。これは女性についても同様でして、そういたしますと、修学期間中や就労期間中というのは家族形成や出産ということはどうしても低調になるということがございます。一方、ヨーロッパの場合は難民や家族呼び寄せ、国際結婚などの形で入ってくる女性が非常に多いので、そもそも家族形成や出産というのが目的というか、移動の主たる理由になっている方が非常に多いです。そういったこともございまして、日本の場合、外国人女性の出生力が低いという結果になっているものと考えられます。
 質問の2点目が、日本人男女の出国傾向についての御質問であったと思います。こちらは女性のほうが男性よりも、特に20歳前後のところで大きな出国超過の傾向を示しております。一般論として申し上げまして、いずれの国でも女性のほうが出国超過が高い傾向がございます。その要因の一つとしては、国際結婚やそのほか結婚に伴う移動の場合、男性の場合はどうしても出身地で働くケースというのが多いのですが、女性の場合は夫の暮らしている国に移住するケースが多いということがございます。そういったことでして、留学や就労といったことに加えて、結婚の要因が加わる分、女性は出国超過の傾向が出やすいことがございます。また、こうした傾向自体、日本では割と長く続いておりまして、特に足下に限ったことではないと考えております。
 また、日本人の出国傾向全般を見てまいりますと、資料2のスライド60のほうに日本人の入国超過率の推移というデータを示しております。こちらは男女それぞれ総人口に対する入国超過率をお示ししておりますが、実はコロナが始まる直前、2019年までの段階で過去50年ほど振り返って、日本人男女とも最も出国傾向が弱まっている時期でございました。コロナによってこれがさらに縮小したのですが、最新の2022年のデータを見ましても、特にこうした傾向に変化は見られておりません。そういった意味で、個別には様々な理由で海外へ行かれる方が多いと思うのですが、全体として数値として確認する限りでは、日本人の出国傾向が強まっているということは、男女ともないといえるかと思います。
 以上です。
○津谷部会長 ありがとうございました。
 榊原委員、よろしいでしょうか。
○榊原委員 ありがとうございました。
○津谷部会長 先ほどの榊原委員のコメントに一言申し添えますと、15歳未満の年少人口は減少を続けており、これからもしばらく減少は続いていくと思われます。この年少人口の継続的な減少は、15年後、20年後には、産み盛りの年齢の女性人口の減少につながっていきます。この減少は80年代から続いていますが、今後さらに出産のピーク年齢の女性人口の減少は大きくなっていくであろうと予想されます。これは我が国にとって、社会的にも政策的にも大きな意味を持つと思います。
 次に、小西委員、お願いいたします。
○小西委員 御説明ありがとうございました。
 私からは質問を一つ、コメントを2つ申し上げたいと思います。
 まず、質問ですが、資料2の66ページについてお伺いします。出生については2020年は投影には用いず仮定値には反映、婚姻は2020年は投影には用いないが仮定値には反映、一方、2020年については投影にも用いたということで、婚姻については2020年既に影響が出ていて、出生についてはまだそこまで出ていなかったためと理解いたしました。死亡については、なぜ2020年は投影にも用いたかということを教えていただきたかったのでお聞きしました。
○津谷部会長 岩澤部長、まず、御質問にお答えいただけますでしょうか。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) 質問としては死亡をなぜ用いたかということですね。出生についてはコロナの影響というのは、2020年はほぼなかったということなのですけれども、死亡についても日本は第1波というか、最初のときはあまり超過死亡がはっきりしていなかったので、そのまま通常の傾向として用いたということになります。
○小西委員 分かりました。どちらかというと、死亡率が下がったという御説明だったのですが、それは程度が少ないので、通常どおりと考えて差し支えないだろうということでよろしいのでしょうか。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) そのとおりです。
○津谷部会長 小西委員、では次にコメントをお願いいたします。
○小西委員 まず1つ目は、資料2の39ページにありました有効リスク人口を使った推計方法ですけれども、これは非常にすばらしい方法だなと思いました。コロナの後のことは分からないのですけれども、それでもこのような方法を使えば、もっともらしい推計ができるのだということを理解しました。ありがとうございました。非常にいい方法だと思います。
 もう一つのコメントですけれども、先生方も先ほど指摘されていました外国人の入国超過についてです。資料3のスライドの41枚目になるかと思います。入国超過の年齢分布はずっと同じと仮定して推計されているということで、若い人たちがずっと継続して入ってくるという仮定の下での推計かと理解しております。推計そのものはもちろんそれで全く問題ございませんが、現実を見ますと、世界全体で出生率が低下して、若い人の割合が減ってくるということですので、恐らく現実的には入ってくる人たちの年齢が上がるということが起こるのだろうなと思って聞いておりました。いずれにしても、そういった議論の土台となるものがこの推計ですので、非常に有用なデータだと思います。ありがとうございました。
○津谷部会長 小西委員、ありがとうございました。
 小西委員の2点目のコメントについて、岩澤部長、何かお考えや御意見がございましたら、お願いいたします。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) 2点目は、年齢がもしかしたら高齢化するのではないかということですね。日本という国に、実は外国人というのは本当に世界から来ておりまして、日本は今、アジアからたくさん来ているのですけれども、そういうアジアの規模の人口を考えますと、日本に来ている人口というのは、ある意味で本当に少ないというような認識を持っております。ですから、アジアの人口構造が変わったことが入ってくる人に直接与えるというのもちょっと強い仮定といいますか、そこは未知といいますか、そこは連動しないこともあると考えます。例えばアジアが少子化だとして、もっと入ってくるかもしれないとか、そういうのは少し幅広に考えていく必要があるかなと思っております。今回の仮定はシンプルに置いておりますけれども、いろいろな可能性があるということを研究ベースで見ていきたいなと思っております。
○津谷部会長 是川部長、何か付け加えることはごさいませんか。大丈夫でしょうか。
 小西委員、よろしいでしょうか。
○小西委員 ありがとうございました。
○津谷部会長 それでは次に、山田委員、お願いいたします。
○山田委員 客観性、中立性に配慮した緻密な推計と非常に分かりやすい御説明をありがとうございました。
 私のほうからは2点教えていただきたいことがございまして、いずれも資料2の38枚目のスライドと39枚目のスライドに関することです。これはほかの先生方からもいろいろと御質問があった点ではあります。
 1つ目の質問は、ここでのコロナウイルス感染拡大期の初婚減、出生減についてなのですけれども、その前から初婚率の低下傾向等が見られるかと思います。これについて、既に前の会までにどこかで説明を聞き漏らしていたら大変恐縮ですけれども、どういうような要因が考えられるのかということが1点目です。
 2点目については、スライドの39枚目以降の推計、私も大変興味深く拝見しました。こうやって短期的な効果が捉えられるのだなということで勉強になりました。それに関連して、初婚が遅れたりする、もしくは出生が遅れたりすると、生物学的な理由によって出生率というのも多分やや低下するのではないかと思うのですけれども、その影響がもしあるとすれば、どれくらいの大きさになるのか、あるいはこういうことに関しては、これから研究ベースでということになるかもしれませんけれども、その点についてもお分かりになる範囲で御説明いただければと思います。
 以上2点です。よろしくお願いいたします。
○津谷部会長 ありがとうございました。
 岩澤部長、山田委員より御質問が2点ございましたが、いかがでございましょうか。最初の御質問は、初婚率はコロナの前から下がってきているのではないかということですが。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) まず、コロナ前については資料2の16ページに年齢別の動きを出しています。やはり20代が落ちてきているということは、結婚に対する考え方みたいなものがちょっと変わってきたのかなと思います。2021年に出生動向基本調査をやりましたけれども、そこでも少し考え方みたいなところが変わってきて、これは2021年ということで、コロナのような特別なときにやったということもあったのですけれども、データを見ますと、もう少し前から出てきているともいえます。
 ただ、この2018、2019年の見方が少し難しいところがありまして、やはり2019年に令和の改元がございまして、2019年の5月に結婚したいという人がそれなりにいらっしゃったのです。そうすると、2018年は結婚しないでちょっと待っていて、2019年に結婚したというような人もいまして、この辺りのこの動きが通常の動きなのか、そういうことも含めて解釈が難しいところもあります。なので、なかなか明確には答えられていないというところです。ただ、推計には低下の部分を見込んでいるということになります。
 もう一つの晩婚化に関しては、資料2の22ページの出生動向を使いまして、初婚年齢別に子どもを最終的にどのぐらい産むかというのを出しているのですけれども、やはり20代ぐらいですと、多少晩婚化しても産む子ども数は変わらないのですが、やはり30代といったところで急激に低下します。この辺りで2~3年ずれるというのは大きな影響があると考えておりまして、例えばコロナで待っていた人が、遅れれば遅れるほど、本来2人ぐらい欲しかった人が1人で終わってしまうとか、そういうことは出てくるということで、年齢のパターンについては、我々も大変インパクトが大きいということで注視しております。
○津谷部会長 ありがとうございました。
 山田委員、よろしいでしょうか。
○山田委員 ありがとうございます。
○津谷部会長 それでは、そのほかに御意見・御質問はございませんでしょうか。
 金子委員、お願いいたします。
○金子委員 先ほどの出生力のリバウンドの話です。今回、新しくコロナの影響の分析のために取り入れた有効リスク人口とハザードに分けて測定をして傾向を見るというやり方なのですけれども、これを使いますと、リバウンドに関しては、ある程度自動的に反映されるのではないかと思うのです。結局初婚が発生しない、出生が発生しないとした場合に、本来だったら初婚したかもしれないけれども、初婚しなかった、あるいは第一子を出生しなかったという人口が残ります。ですから、それを推計の基として使っているのであれば、ある程度はリバウンドが反映されていると見ることもできるのかなというところで、その辺のお答えを聞きたいということと、聞いた後に少し感想を述べたいと思っております。いかがでしょうか。
○津谷部会長 岩澤部長、お答えをお願いいたします。
○岩澤人口動向研究部長(社人研) 実は今回、コロナの影響についてはハザードで入れるところまでのデータ整備というのはできておらず、率で入れておりますので、残念ながらといいますか、そこのリバウンドまで、ハザードですと遅くなった分が後で反映されるところがあるのですけれども、今回、率で入れておりますので、やはり失われた部分というのがそのまま失われていく。結婚が数十万件落ちた部分を反映して、出生が何十万件減るというような仮定になっています。
 ここの辺りは今回、一番シンプルにできるという形でやっているのですけれども、やはりハザードでどうなっているか、これは実際に今後データが作られていきますので、そのときに一体どんなことが起きて、遅れた人がいつどういう動きしたかというのは、ぜひ実績を見ていくことで、次回の推計につなげていきたいなと思っております。どうもありがとうございました。
○津谷部会長 ありがとうございました。
 金子委員、よろしいでしょうか。
○金子委員 いずれにしろ、有効リスク人口という方法論を採用して、リバウンドの分析にも使えるということですから、今後大いに役立てていただきたいと思います。
 それから、全体的な感想を簡単に申し上げると、非常にこのコロナの影響が残っている中で難しい推計だったというのはすごく思います。それにもかかわらず、全体として非常に妥当性の高い内容になっているというような感想を持ちました。
 長期的な見通しに関しては、基本的に従来からの見通しを踏襲していって非常に安定的な感じがしますし、それに対して、ここ5~6年の新しい時代を非常によく反映させている。具体的には若年出生率の新たな低下傾向です。こういったものをコロナ禍の中長期の影響も含めて精緻に定量化して反映させているなというところは、非常に感心いたしました。
 それから、国際人口移動の外国人の転入の増加傾向も最近の状況をよく、コロナの影響を除いて導入していると思います。とにかく担当した社人研の皆さんには、お疲れさまと申し上げたいと思います。
 以上です。
○津谷部会長 金子委員から、いろいろと有用な御示唆をいただいたと思います。そのほか、何かございませんか。よろしいでしょうか。
 コロナ禍は3年続いており、今後完全に終わること、つまり終息はないかもしれませんが、収まるほうの収束については、今、一応小康状態が続いております。けれども、今後のことは分かりません。パンデミックが3年続いたことは未曾有のことであり、どこの国も経験したことのないことですので、今後の人口指標の推移を注意深く見守って、次回の将来人口推計に生かしていただきたいと思います。その際、今回いただいた委員の皆様の御知見や御意見もぜひ参考にしていただき、将来人口推計作業へのご尽力をお願いしたいと思います。
 現在、時刻も午後5時を少し過ぎております。委員の皆様から多くの御質問・御意見をいただきました。有用な御質問や御示唆をいただき、ありがとうございました。心より御礼を申し上げます。
 予定の時間を若干過ぎましたので、今回の部会審議はこれまでとさせていただきたいと思います。本日は審議への御参加・御協力、本当にありがとうございました。部会はこれで終了いたします。