第153回労働政策審議会安全衛生分科会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

日時

令和5年3月28日(火)13:00~15:00

場所

対面及びオンラインにより開催
(AP虎ノ門)
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

会場

公益代表委員
労働者代表委員
使用者代表委員
(五十音順、敬称略)
事務局

オンライン

公益代表委員
労働者代表委員
 
使用者代表委員
(五十音順、敬称略)

議題

  1. (1)有機溶剤中毒予防規則等の一部を改正する省令案等について(諮問及び報告)
    (有害物の有害性等の掲示関係)
  2. (2)労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の一部を改正する省令案について(諮問)
    (化学物質の含有量通知及び第三管理区分場所の測定関係)
  3. (3)作業環境測定基準及び第三管理区分に区分された場所に係る有機溶剤等の濃度の測定の方法等の一部を改正する告示について(報告)
  4. (4)労働安全衛生規則第五百七十七条の二第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める物及び厚生労働大臣が定める濃度の基準等について(報告)
    (化学物質による健康障害防止のための濃度の基準関係)
  5. (5)石綿障害予防規則の改正に伴う関連告示の改正について(報告)
    (工作物に関する石綿事前調査者関係)
  6. (6)事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP指針)の改正について(報告)
  7. (7)デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン及びデジタル原則を踏まえたアナログ規制の見直しに係る工程表を踏まえた対応等の報告について(報告)

議事

議事内容
○城内分科会長 定刻となりましたので、ただいまより、「第153回労働政策審議会安全衛生分科会」を開催いたします。本日は、公益代表委員の山口委員、労働者代表委員の勝野委員と佐々木委員が欠席しております。本日は、対面及びオンラインの併用により開催することとしていますので、御承知おきください。カメラ撮影等については、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いします。なお、本日は議題が多いため、円滑な議事に御協力をくださるよう、よろしくお願いいたします。まず、事務局からオンラインによるZoomの操作方法等について説明をお願いします。
○計画課長 はい、事務局です。オンライン参加の委員の方々に、Zoomの操作方法について御説明をさせていただきます。ハウリング防止のため、御発言されないときには、マイクをオフに設定をよろしくお願いいたします。また、御発言される場合には、御発言がある旨をチャットに書き込み、分科会長から指名されましたら、マイクをオンに設定の上、氏名をおっしゃってから御発言をよろしくお願いいたします。このほか、進行中、通信トラブルなどの不具合が生じましたら、チャット等に書き込みをしていただきまして、また事務局へメール等でも御連絡いただければと思っております。よろしくお願いいたします。以上となります。
○城内分科会長 それでは、議事に入ります。議題(1)「有機溶剤中毒予防規則等の一部を改正する省令案等について(諮問及び報告)」に関して、事務局から説明をお願いします。
○化学物質対策課長 化学物質対策課長です。私から、資料1-2を用いまして御説明をさせていただきます。
 有機溶剤中毒予防規則等の一部を改正する省令案です。1ページめくっていただきますと、改正の趣旨ですけれども、令和4年に個人事業主の方に対する規制の強化の一環といたしまして、有害物の有害性、こちらについては有効な保護具を使用する旨についても含まれますけれども、これに関する掲示義務の対象の拡大を行ったところです。
 一方で、そのときに、特定化学物質障害予防規則(特化則)においては、この有害性等の掲示の対象物について特別管理物質、これは発がん性があるということで30年間の記録の保存が義務付けられている物質ですが、そちらに限定をされていて、その他の特化物については掲示の拡大が行われていなかったという実態がございます。こういったものを踏まえまして、もともとの改正の趣旨であります全ての有害性物質について掲示の対象とするという趣旨から、全ての特定化学物質について掲示の対象とする、という改正を予定してございます。
 次のページを見ていただきますと、左側が令和5年4月から適用になる状態になっておりますが、ちょうど白抜きになっている部分が特別管理物質以外の特定化学物質、31物質でございまして、こちらについては掲示の義務がないという形になっております。また、保護具を使用することが義務付けられている部分についても掲示の義務が掛かっていないという状態になっておりますので、右側にありますように、この青い部分を付け加える形で全ての特化物について有害物の掲示、それから保護具の掲示、こういったものを義務付けるという趣旨です。
 ページを戻っていただきまして、もう1つ改正がございまして、有機溶剤中毒予防規則(有機則)ですけれども、こちらで掲示方法について大臣告示で定めてございました。こちらについては最新のデジタル技術等を活用するために、掲示の方法を細かく限定する必要がなくなったということもございますので、こちらの改正を行いまして、この告示の根拠規定である条文を削除するという予定です。なお、このような細かな掲示方法についての告示が定められているのは有機則だけですので、有機則だけの対応とさせていただく予定です。公布日ですが、4月の下旬を予定してございます。それから、施行については令和5年10月1日を予定してございます。それから、先ほどの有機則の改正については、公布日をもって施行するということを予定してございます。説明は以上です。
○城内分科会長 本件について質問、意見等のある方は、御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いいたします。袈裟丸委員、お願いいたします。
○袈裟丸委員 御説明ありがとうございました。改正の趣旨について理解いたしました。労働災害防止の観点から、適切な掲示がなされ、個人事業者等も含めた作業従事者にしっかり必要な情報が伝わるよう、事業者と連携のもと、改正内容に関する丁寧な周知を改めてお願いしたいと思います。以上です。
○城内分科会長 熊崎委員、お願いいたします。
○熊崎委員 横浜国立大学の熊崎です。御説明、ありがとうございました。今回、掲示の方法を細かく限定しないということは、昨今の職場の環境から合理的と思います。この文脈ですとデジタル技術を積極的に活用するということが推奨されるように見えますが、可燃性雰囲気下の中での電子機器の利用は爆発のリスクを考慮する必要がありますので、状況に応じた利用を注意喚起と共にご説明いただければと思います。以上です。
○城内分科会長 そのほか、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、「有機溶剤中毒予防規則等の一部を改正する省令案等について(諮問及び報告)」については妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、事務局で答申の手続をお願いします。
 次に、議題(2)「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の一部を改正する省令案について(諮問)」に関して、事務局から説明をお願いします。
○化学物質対策課長 続きまして、化学物質対策課長の安井です。また私から、資料2-2によりまして御説明をさせていただきます。
 こちらについては、2つの改正内容がございますが、まず1つ目、1ページめくっていただきますと、化学物質の含有量の通知関係ということです。3ページ目ですが、こちらの「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令」については、昨年の5月に公布されました新たな化学物質の管理に関して定める省令です。この中で、SDSなどによる含有量の通知について、重量パーセントを通知しなければならない、そういった記載があったところです。こちらについて、ちょっと複雑ですので、4ページ目に条文がございますので、こちらで御説明させていただきます。ちょっと小さくて恐縮です。
 まず、労働安全衛生法第57条の2において、成分及びその含有量というものを譲渡等する場合には通知しなければいけないということになってございます。これを受けまして、労働安全衛生規則の第34条の2の6、こちらのほうで、重量パーセントで通知しなければならないのですけれども、10%未満の端数を切り捨てた数字と当該数字を切り上げた数字、いわゆる10%刻みの範囲で行うことができるというのが現在施行されている省令です。こちらを先だっての改正で、令和6年4月1日施行の予定でございましたが、下線の部分、10%刻みですることができるという所を削除した上で、施行通達で運用を定めておりまして、一番下のほうにありますイ、下線を引いてある所ですが、成分及びその含有量が営業上の秘密に該当する場合については、SDS等にはその旨を記載の上、成分やその含有量の記載を省略し、秘密保持契約その他事業者間で合意した情報伝達の方法により別途通知することが可能である、そういった解釈を示したところです。
 3ページ目に戻っていただきますと、こちらについて、施行を待っているところですが、化学物質の最終製品を作るメーカー、特にB to Cといいましょうか、非常に多数の物品を販売している所については、まず1つ1つ守秘義務契約を結ぶのは現実的に非常に難しいということと、守秘義務契約を結んだ上で、いずれにせよ、最終製品の含有量をありのまま重量パーセントで開示しなければならないという規定になっている。これについては、最終製品については含有量というのは非常に営業上の秘密となっておりまして、それが開示されることで非常に安易に模倣品を作られてしまって、価格競争などで負けてしまう、非常に企業価値を損う、そういった御意見が寄せられたところです。こちらについて再度検討を行いまして、法の規定の範囲内で営業上の秘密を保持しつつ、リスクアセスメントに必要な情報を通知する方法を検討したところです。
 改正の概要ですが、最初の3行に物質が列記されております。これはいわゆる特別規則の適用のある物質については重量パーセントを通知する。ただし、これ以外のものについては、当該物の成分の含有量について重量パーセントを通知をすることにより、事業者の財産上の利益を不当に害するおそれがあるものについては、その旨を明らかにした上で、重量パーセントの通知をいわゆる10%刻みとすることができる。この場合は、譲渡先の事業者から求めがあるときは、成分の含有量に係る秘密が保全されることを条件に、リスクアセスメント自身に必要な範囲内において、当該成分の含有量について、より詳細な内容を通知しなければならない、という形にしてございます。こういったことによりまして、リスクアセスメントの実施に支障のない範囲で、また、リスクアセスメントを必ずしもしないような事業者に売却する場合には、重量パーセントの開示をする必要はない。そういった形を取ることで営業上の秘密を保持しつつ、リスクアセスメントに支障がないような形で実施できるということを意図しているところです。
 施行日については、公布日になってございますけれども、この公布日というのは未施行の条文の新旧対照表を改正する日でございまして、改正された新旧対照表が施行されるのは令和6年4月1日になりますので、この改正が実際に効果を有するのは令和6年4月1日ということになるところです。こちらが1点目です。
 2点目ですが、5ページ目です。こちらは改善が困難とされた第三管理区分場所の測定関係です。7ページ目です。こちらは昨年の5月に改正されました、新たな化学物質管理に関する省令改正の一部に第三管理区分、これは作業環境測定の結果、作業環境における化学物質の濃度が基準値を恒常的に超えている状態ということですけれども、そういった場合について、作業環境管理専門家が、作業環境の改善が困難であると判断した場合については、6か月ごとに1回、個人サンプリング測定等によって有機溶剤の濃度の測定を行って、それに基づいて労働者に有効な呼吸用保護具を使用させるということが義務付けられたところです。
 一方で、この測定を行っている状態について、6月以内に1回、作業環境測定を行うという義務が課せられておりまして、それについては現在、両方が課せられている状態となっているということです。こちらの第三管理区分場所は、専門家の判断によって改善措置を実施しても改善が困難な場所であるということと、6月に1回、呼吸用保護具の選択のための測定を行って、呼吸用保護具の有効性を担保しているということから、重ねて6月以内ごとに作業環境測定を義務付けなくても有効なばく露防止対策を実施することが可能であるというように考えてございます。
 このため、2種類の測定義務の重複による現場の混乱を防ぐため、必ずしも6か月に1回とは限らず、ずれている場合もあって、例えば3か月に1回ずつやらなければいけないなど、測定方法の内容も異なるということですので、現場の混乱を防ぐために呼吸用保護具選択のための測定を行っている場所については、作業環境測定を実施することは要しない、という改正を行う予定です。こちらについても、公布日に施行の予定ですけれども、こちらが実際に施行されるのは令和6年4月1日という予定です。説明は以上です。
○城内分科会長 本件について質問、意見等のある方は、御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いいたします。佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員 1つ目の化学物質の含有量通知について申し上げます。化学物質を取り扱う作業者がばく露せず、安全に、安心して作業をするために、必要な情報がきちんと伝わることが重要と考えております。今回の省令改正にあります営業上の秘密のために詳細な成分表示が省略される場合においても、危険・有害物含有の有無、必要とされる保護具、また、どのような対策が必要なのか判断できる情報がSDSに適切に記載されるよう、引き続き政府としての取組を行っていただきたいことを、労働側の意見として申し上げておきたいと思います。以上です。
○城内分科会長 そのほか、御発言はございませんでしょうか。事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 佐藤委員からの御意見ですけれども、御指摘、ありがとうございます。保護具でありますとか有害性の通知については、SDSにきちんと記載するというところについては引き続き指導してまいりたいと思います。
 リスクアセスメントについては、含有量が蒸気圧等によって空気中の濃度とは必ずしも一致しないということですので、リスクアセスメントを行う場合には、もともと含有量というのはある意味目安で使われているものですので、そういった観点で実際のリスクアセスメントに支障がないように、必要な情報が伝わるように事業者の求めていきたいというように考えているところです。
○城内分科会長 そのほか、御発言はありませんでしょうか。はい、ありがとうございます。それでは、「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の一部を改正する省令案」については妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、事務局で答申の手続をお願いします。
 次に、議題(3)「作業環境測定基準及び第三管理区分に区分された場所に係る有機溶剤等の濃度の測定の方法等の一部を改正する告示について(報告)」に関して、事務局から説明をお願いします。
○環境改善室長 本件については、資料3に沿って化学物質対策課環境改善室から説明させていただきます。作業環境測定基準及び第三管理区分に区分された場所に係る有機溶剤等の濃度の測定方法等の一部を改正する告示案について(報告)です。個人サンプリング法の対象拡大を行うこととするものです。
 資料の2ページを御覧ください。個人サンプリング法については、もともと定点測定のみであった作業環境測定の中に、下の絵のように、労働者の呼吸域の濃度をより適切に測定するという観点から、新たに導入されたものです。また、第三管理区分に区分された場所に係る有機溶剤等の濃度の測定については、令和4年5月に公布したあり方検討会報告書に基づく省令改正において、呼吸用保護具選定のための測定として、原則個人サンプリング法又は個人ばく露測定としており、昨年11月30日に具体的な内容を告示したところです。これらについて対象物質の拡大を行うため、化学物質管理に係る専門家検討会での検討結果を受け、改正を行うこととしたものです。
 3ページを御覧ください。具体的な内容です。作業環境測定基準の改正案として、①有機溶剤と②特別有機溶剤については、これまでは塗装作業等を行う作業場に限定しておりましたが、今後は全ての作業場に拡大すること、③は、②以外の特定化学物質については15物質を追加すること、⑤の粉じんについても、遊離けい酸の含有率が極めて高いものを除き、個人サンプリング法の対象拡大とすることとしました。また、第三管理区分に区分された場所に係る有機溶剤等の濃度の測定方法等の一部を改正する告示についても、これに合わせて個人サンプリング法等の対象を拡大することとします。
 4、告示日ですが、令和5年3月下旬予定で、「作業環境測定基準の一部を改正する告示について」に係る部分の適用日については、作業環境測定機関の準備も考慮し、令和5年10月1日とし、「第三管理区分に区分された場所に係る有機溶剤等の濃度の測定方法等の一部を改正する告示」に係る部分の適用日は、省令の施行に合わせて、令和6年4月1日とします。事務局からは以上です。
○城内分科会長 本件について質問、意見等のある方は、御発言のある旨、チャットに書き込みをお願いします。御発言等はありませんか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、事務局から説明のあった方針で進めていただくことにしたいと思います。
 次に、議題(4)「労働安全衛生規則第五百七十七条の二第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める物及び厚生労働大臣が定める濃度の基準等について(報告)」に関して、事務局から説明をお願いします。
○化学物質評価室長 では、資料4を御覧ください。労働者が実際にばく露を受ける化学物質の濃度についての基準値を定める告示案の報告です。
 次のページをお願いします。◆の上の部分です。リスクアセスメント対象物というのは、化学物質のうち、表示とSDSなどで危険性・有害性の情報を提供する義務がある物質です。こういったリスクアセスメント対象物について、濃度基準値を決めることとしております。さらに、その下の◆です。厚生労働大臣が定める濃度基準値以下としなければならないというように、法令で定められております。
 次のページを御覧ください。数多くの化学物質について、有害性を記した一次文献に基づいて、濃度基準値案の検討を頂くために、右側に名前が掲載されている先生方に審議をお願いしておりました。
 次のページをお願いいたします。告示の概要です。まず、厚生労働大臣が定める化学物質の名前です。次に、厚生労働大臣が定める濃度の基準、数字です。今年度は118物質を御審議いただき、67物質について濃度基準値を定めております。定められなかった理由としては、測定法・分析法がないものについては測定法・分析法の開発をしつつ、将来、濃度基準値の検討をすることとしております。また、その化学物質自体の有害性のデータや一次文献がないものについても、濃度基準値を定めることができませんでした。最新の有害性の情報、一次文献が入手できることが分かっている物質については来年度以降、先回しとしております。さらに、発がん性があると分かっている化学物質については、ここまでという目印的な線引きができませんので、濃度基準値を定めないということで、67物質に濃度基準値を定めることとしております。
 11ページをお願いします。これが告示の別表です。物の種類、化学物質の名前、8時間濃度基準値、短時間濃度基準値の欄です。化学物質の隣に濃度基準値が2種類ありますが、長時間化学物質のばく露を受けることで有害性が生じる物質については、8時間濃度基準値が定められるという内容です。逆に、短時間で有害性の症状が出るような化学物質については、短時間濃度基準値が定められます。ですから、左側の一番上のアクリル酸エチルであれば、長期間のばく露で有害性の症状が出るという一次文献がありますので、2ppmという8時間濃度基準値となります。逆に、上から3行目のアクロレインは、短時間で有害性の症状が出ることが分かっておりますので、0.1ppmという短時間濃度基準値となります。
 アクロレインの所に赤い※が付いているのは、短時間のうちでもごく短い時間、本当に瞬間的に有害性の症状が出るという根拠がありますので、絶対にその値を超えてはいけない、それから、上がないということで天井値という考え方を示すために、赤い※を付けております。右側の欄の真ん中辺りを御覧ください。エチリデンノルボルネンという化学物質があります。これは長時間でも短時間でも有害性の症状が出ますので、2種類の濃度基準値が定められております。ここで2ppmと4ppmとありますが、一般的に短時間濃度基準値のほうが8時間濃度基準値より高い値が設定される傾向があります。
 4ページに戻ってください。4ページの真ん中より下の所に、2つ目の◆があります。8時間濃度基準値のほうは、実際に測定したデータから得られる8時間時間加重平均値と比較していただきます。短時間濃度基準値のほうは、15分間時間加重平均値という測定結果と比較していただいて、各々濃度基準値を超えてはならないとなっております。
 ここでは「時間加重平均値」という言葉を使っておりますが、次のページを御覧ください。右側のグラフに、薄く色付けしてある長方形があります。均一にばく露するということで濃度基準値を定めておりますが、実際の事業所では濃度が高くなったり低くなったりするような、山や谷があると想定されます。ですから、高いピークを狙って短い時間で測定する。逆に、ピークが低くなるところは測定時間を長くして測っていただくというように、測定時間に違いを付けて、実際の濃度を測っていただくことが適切だと思われます。そのために得られた測定結果に、測定した時間の重みを付けて平均値を出していただき、その値を濃度基準値と比較していただくこととしております。計算例として、下に式が載っております。2時間、2時間、4時間というように区切って測った結果に、時間を加重して平均値を求める値となっております。
 続いて6ページを御覧ください。ここから3つほど、努力義務を設けております。均一なばく露を受けるという前提で濃度基準値を作っているのですけれども、どうしてもピークが高くなったり低くなったりということがありますので、極端に高いピークとならないように、また、そのピークの数が多くなると濃度基準値の総和と言いますか、面積を超えてしまうおそれがあるので、努力義務を掛けることとしております。最初が①、8時間濃度基準値と短時間濃度基準値の両方が定められている物質です。これについては15分間時間加重平均値が8時間濃度基準値を超え、かつ短時間濃度基準値以下の場合にあって、ばく露の回数、ピークの山が労働時間中に4回を超えない、更にピークの間を1時間以上空けてくださいという努力義務を掛けることとしております。②が、8時間濃度基準値だけが定められている物質です。その場合、測定した結果から得られる15分間時間加重平均値が8時間濃度基準値を超える場合にあっては、8時間濃度基準値の3倍を超えないようにしてください、という努力義務を掛けることとしております。
 7ページを御覧ください。極めて短い時間で有害性の症状が出る場合には、その値を絶対に超えない、その上はないですよということで、天井値という考え方を先ほど御説明いたしましたが、この天井値についての努力義務です。いかなる短時間のばく露におけるものであるかを問わず、短時間濃度基準値を超えないようにしてくださいという努力義務となっております。これは連続して測定することが困難、技術的な限界がありますので、努力義務としております。
 8ページを御覧ください。8ページは、混合物についての努力義務です。有害性の種類及び当該有害性が影響を及ぼす臓器が同一とか、同じ臓器をターゲットとして有害性の症状が出るような物質を、2種類以上混合して使った場合です。この場合は、それぞれの濃度基準値と測定結果から得られた8時間時間加重平均値を用いて、上から4行目にあるC=C1/L1という式に当てはめて、それぞれの全体に寄与する測定結果を足していただいて、その総和が1を超えないようにしてくださいという努力義務を掛けることとしております。濃度基準値は来月の下旬に告示、適用は約1年後の令和6年4月1日と考えております。
 濃度基準値の告示は、物質名と数字で示される基準値しか出てきませんので、実際に現場での測定の仕方は、技術的な要件を定めたものとして9ページを御覧ください。今回、タイトルにあるような技術上の指針を新たに設けることとしております。ここでいろいろな文章が書いてあるのですが、真ん中より少し下の所に※の注意書きがあります。発がん性物質については、濃度基準値を定めることができないと最初のほうで御説明申し上げました。ですから、告示を御覧になっても、発がん性物質の名前すら出てきません。そうすると、非常に大きな誤解を受けてしまいますので、発がん性物質は濃度基準値を決めることができない物質であると。そういったものについては、逆にばく露される程度を最小限度にしてくださいといった注意書きを、技術上の指針に盛り込むこととしております。
 10ページを御覧ください。これは技術上の指針に付けるフローチャートで、実際に事業者が現場で行っていただくことをまとめたものです。上から2つ目の四角に、「初期調査」とあります。数理モデル、CREATE-SIMPLEなどを使って、ばく露を見積もっていただきます。その見積もられたリスクに応じて、確認をするための測定を行ったり、リスクの低減措置を図っていただくということを想定しております。
 9ページに戻ってください。この資料の上から4行目に、化学物質リスクアセスメント指針というのがあります。リスクアセスメントの考え方、やり方をまとめた指針があるのですけれども、今回、技術上の指針を作ることに当たって、そういった考え方を取り込むような改正も行う予定としております。技術上の指針と化学物質リスクアセスメント指針についても、来月の下旬に公示、適用日は濃度基準値と合わせ、約1年後の令和6年4月1日と考えております。説明は以上です。
○城内分科会長 本件について質問、意見等のある方は、御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いします。山脇委員、お願いいたします。
○山脇委員 今般の告示で67物質について濃度基準値や測定方法が定められるということと、今後、これに基づいて取組が進められるという点については労働災害防止に資するものと考えています。事業者等の連携の下、しっかりと周知をお願いしたいと思います。
 その上で、今回の指定は、67物質にとどまっています。検討会の報告書における令和4年度の濃度基準値の候補は118ですので、引き続き再検討とされた物質もありますし、更に令和5年度以降、順次追加が予定されている物質もあります。最新の知見を反映した上で、適切な濃度基準値の設定に向けて対応をお願いしたいと思います。
 また、先ほど御説明を頂いた、発がん性が明確な物質について、改めて申し述べておきたいと思います。発がん性が明確な物質は濃度基準値を設定しないということにしていますが、濃度基準値を設定しないことで安全な物質であるという誤解が生ずることは、決してあってはならないと思います。安全な閾値が設定できない物質であることについては、特に丁寧な周知に努めていただきたいと思います。
 最後、これは一般論ということになりますけれども、化学物質を取り扱う事業所においては労働災害防止の観点から、適切に作業環境測定や個人ばく露測定を実施し、かつ、より低いばく露値となるように、対策を講じていただくことが重要です。政府としても引き続き事業者に対する必要な支援を行っていただくとともに、しっかりと指導監督をお願いしたいということを、最後に申し添えたいと思います。以上です。
○城内分科会長 そのほかに御発言はありませんか。事務局からはよろしいですか。
○化学物質対策課長 私から回答させていただきます。発がん性物質については、正に御指摘のとおり、長期的な健康影響を発生しない安全な閾値が定められないという趣旨ですので、濃度基準値が設定されている物質より安全であるという誤解が生じるおそれがないように、発がん性を理由として濃度基準値を設定できない物質は、技術上の指針で個別物質名をリストアップする予定です。こういったものについては、当該物質によるばく露を最低限度とすることを強く求める予定です。また、最後に作業環境測定を行ってばく露を低くしていきたいという御発言がありましたが、今回、濃度基準値を定める物質は作業環境測定が義務付けられていない物質なので、先ほど佐藤が御説明したように、基本的には個人ばく露測定のほうでばく露を把握しながら、それを適切管理していく予定です。以上です。
○城内分科会長 出口委員、お願いいたします。
○出口委員 出口です。御説明、ありがとうございます。資料4を見ますと、「屋内作業場において」と記載があります。これら屋内作業場と定義されるのは、金属アーク溶接等作業について「健康障害防止措置」が義務付けられた際に、「屋内作業場」に定義された「作業場の建屋の側面半分以上にわたって、壁、羽目板、その他の遮蔽物が設けられている場所」、2つ目が「ガス、蒸気又は粉じんがその内部に滞留するおそれがある場所」これらの判断でよろしいでしょうか。また、同じ場所で繰り返し作業を行わない場合は、測定の対象外と考えてよろしいでしょうか。この2点についてお伺いします。
○城内分科会長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 まず、屋内作業場の定義については、基本的に同じ考え方です。溶接仕様はちょっと違う性質がありますので、2つ目のガスが充満しないことなどについては、物質によって若干違うところがあるとは思いますが、基本的な考え方は同じです。
 それから、同じ場所で繰り返すかどうかということについては、溶接ヒュームはそのような規制となっておりますけれども、こちらはそのような規制になっておりません。もう1つ溶接ヒュームとの違いは、溶接ヒュームでは必ず1回は個人ばく露測定を行わなければいけないということになっておりますが、こちらは10ページのフローチャートにあるように、初期調査の数理モデルで、例えばばく露が濃度基準値の半分より小さいことが分かった場合は、そもそも測定を行う必要がないという取扱いを想定しております。ですから、そういった点は溶接ヒュームとは異なるということです。
○城内分科会長 よろしいでしょうか。
○出口委員 はい、分かりました。
○城内分科会長 そのほかに御発言はありますか。増田委員、お願いします。
○増田委員 御説明、ありがとうございました。1点質問させてください。今、共有している資料4の10ページのフローチャートの「リスクの見積もり」が、対策実施上の肝になるのではないかと思いました。そのリスクの見積もりが適切に行われていることは、どのように担保するのかを確認させていただけたらと思います。先ほどのやり取りを伺って、数理モデルでこのようなことが明らかであればという御説明がありましたが、その理解でよろしいかどうか、念のために確認させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○城内分科会長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 先ほど御説明したとおり、初期調査で数理モデルなどで基準値が設定されている物質については、濃度基準値の2分の1を超えない場合は、その後に確認するような測定は求められないということです。濃度基準値が定められない物質については、何かと比較するのは難しいという状態なので、こちらはリスクアセスメントをやった結果、ある程度以上のリスクがある場合について、ばく露対策のために必要がある場合は測定を行うという形になってくるところです。
○増田委員 ありがとうございます。その辺りの実施要領として、何か目安になるものが示されるということでよろしいでしょうか。
○化学物質対策課長 技術上の指針というところで、できるだけ詳しく、測定を行う必要がある場合はこういうところであるというのをお示ししたいと考えております。
○増田委員 分かりました。ありがとうございました。
○城内分科会長 そのほかに御発言はありますか。ありがとうございます。それでは、事務局から説明いただいた方針で進めてもらいたいと思います。出口委員、挙手がありますが、何か御発言はありますか。
○出口委員 すいません。1回目のものがそちらに伝わっていないのかと思って押しました。
 
○城内分科会長 ありがとうございます。次に、議題(5)「石綿障害予防規則の改正に伴う関連告示の改正について(報告)」に関して、事務局から説明をお願いします。
○化学物質対策課長 はい、化学物質対策課長の安井です。私から、資料5について御説明をさせていただきます。こちらは、石綿障害予防規則の改正に伴う関連告示の改正ということです。
 3ページです。石綿障害予防規則、石綿則においては、建築物等の解体又は改修を行う際に、石綿の使用の有無について、あらかじめ事前調査を行わなければいけないことを規定しております。今般、今年1月に公布されました石綿則の一部を改正する省令により、工作物による事前調査についても、一部の場合を除いて、適切に当該調査を実施するために必要な知識を有する者として、厚生労働大臣が定める者に行わせなければならないという改正を行ったところです。今回の改正は、この厚生労働大臣が定める者ということに関する告示です。改正の概要については、非常に細かくて見にくいので、次のページを御覧ください。こちらで整理しております。一番左にありますが、特定工作物、こちらは石綿の使用のおそれが高いものとして厚生労働大臣が定めているもので、一番上の欄にあります、炉設備や電気設備、配管設備といったものがございます。こういったものについては、内容が非常に特殊ということもありますので、工作物のための石綿事前調査者というものを新設し、この方に事前調査を行うことを義務付けるという予定です。
 一方、真ん中の段ですが、建築物一体設備等と書いております。煙突やトンネルの天井板、工作物ではありますが、建築物とは事実上一体になっているものについては、新設する工作物石綿事前調査者以外にも、建築物に関係する事前調査者の資格をお持ちの方でも調査できるようにするという予定です。
 それから、もう1つ真ん中に「観光用エレベーター昇降路の囲い」とあります。こちらは、今回の改正に合わせ、新たに特定工作物に指定をするということです。こちらは検討会で検討している中で、こういった観光用エレベーターというのは、いわゆる建物から切り離されて、例えば歩道橋の横に立っているようなエレベーターがございますが、こういったものの古いものについては石綿の吹き付けがあるということがありましたので、その旨を追加しております。
 それから、一番下の段が、その他工作物です。こちらについては、石綿の使用のおそれが高くないわけですので、一義的には事前調査者に資格者を要しないということにする予定ですが、塗料その他、石綿が使用されている材料を除去する作業、例えば塗料をはがす、あるいはモルタルをはがすといったものについては、その塗料に石綿が入っているかどうかというのを調べるのには専門知識が必要ですので、こういったものについては新設する工作物の調査者か建築の調査者、いずれかに調査をしていただくことを義務付ける予定です。3ページにお戻りください。こちらについては、適用期日としては令和8年1月1日ということで、それまでの間に、この新しい調査者の養成を行っていく予定です。
 続きまして、6ページです。こちらは、先ほど申しました調査者を養成するための講習に関する規程です。この規程は、厚生労働省、国土交通省及び環境省が定めている告示で、いわゆる三省告示と言われているもので、平成30年に制定されたものです。こちらについて、従来、建築物に関する調査者の講習内容を定めておりますが、ここに工作物における調査者の養成のための講習に関する規程を追加するということです。こちらの内容については改正の概要の中にありますが、工作物石綿事前調査者を新たに規定し、そのための必要な講習として、工作物石綿事前調査者講習というのを新設し、それに関する講習の内容、講師の要件、講習事務に関する事項を定めるということです。
 次のページが、実際にどういうカリキュラムかというところです。ここにありますカリキュラムで、基礎知識が2時間、図面調査が4時間、現場調査が4時間、調査報告書の作成については1時間、これは全て座学ですが、これをやっていただく予定にしております。全体の長さとしては、建築と時間の長さは同じという予定です。こちらについては、6ページにお戻りください。適用期日については、告示で即日施行し、できるだけ早い段階で講習機関の登録を行っていただき、講習を開始していただき、先ほどの施行期日であります令和8年8月1日までに必要な調査者を養成するという予定です。私の説明は以上です。
○城内分科会長 本件について質問、意見等のある方は、御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いいたします。出口委員、お願いします。
○出口委員 はい、出口です。よろしくお願いします。特に異論はございませんが、工作物の石綿事前調査者の必要人数を、政府ではどの程度見込まれているのでしょうか。また、建築物石綿含有建材調査者講習と同様に、登録講習機関による講習と提言されておりますが、厚生労働省のホームページには、令和5年3月17日時点で登録講習機関数が116機関となっております。今後この登録講習機関が増える予定等はあるのでしょうか。お伺いいたします。
○城内分科会長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 ありがとうございます。1点目の工作物に関する事前調査者の必要人数については、推定ですが、大体6万人~8万人程度必要ではないかという見積もりをしており、こちらは検討会の報告書に掲載されております。
 登録講習機関については、現在116機関です。この166というのは建築の関係の登録機関ということですので、今後工作物を行う場合には新たに登録をしていただくという必要がありますので、既に建築を取っている方が新たに工作物の登録をする場合もありますし、今まで建築をやっていなかった機関が工作物だけやるという登録のパターンもあると思いますので、どういった形で増えていくのかは見えないところはありますが、いずれにせよ、必要な登録機関の登録は順調に進むように働き掛けてまいりたいところです。以上です。
○出口委員 ありがとうございます。必要人数が満たされるように、よろしくお願いいたします。
○城内分科会長 ありがとうございます。そのほか、御発言はありますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、事務局から説明いただいた方針で進めていただくことにしたいと思います。
 次に、議題(6)「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP指針)の改正について(報告)」に関して、事務局から説明をお願いします。
○産業保健支援室長 THP指針の改正について、資料6で御説明したいと思います。1枚目をお開きください。下の点線で囲まれた部分にありますが、昨年、安全課と共同で開催をさせていただいた転倒・腰痛予防の検討会の中で、特に加齢に伴う体力、筋力や認知機能の低下というのが、この転倒などの原因になっているということで、こういった自身の心身の状況や健康状況をきちんと把握するということで、ロコモ度や骨密度といったことの見える化が必要なのだという提言を頂いています。
 それから、高齢者の災害の防止については既にエイジフレンドリーガイドラインというものも定められており、このガイドラインとTHP指針とでうまく調和をして、連携をして取り組んでいくことが大事だろうということで、今回、まずこの視点での改正をさせていただくのが、この1枚目です。上の青の所で書いてありますように、主に①~④までということで、フレイル、ロコモティブシンドロームの予防に取り組むことが重要。これは、既にエイジフレンドリーガイドラインにも書いてありますが、このTHP指針にもきちんと、そういうことを明示しました。それから、エイジフレンドリーガイドラインに基づく対応が重要であるということ。3つ目に、今回御提言いただいた内容に関係しますが、身体機能のセルフチェックやフレイルチェック、ロコモ度テストなどを活用し、体力の状況を客観的に把握することが考えられるのだということ。それから、この高齢者の関係では、市町村や地域包括支援センターが介護予防という観点で様々なサービスをやっておりますので、そういったところも活用していくことが大事なのではないかということで、この4点を今回の改正の指針のポイントとさせていただいております。
 次の2ページが、もう1つの観点での改正です。こちらも下の点線で囲まれた所に書いてありますが、これは保険局と連携し検討していたものですが、健康保険法の改正で40歳未満の健診データも事業者から保険者に共有し、それを健康づくりに活用していく仕組みになってはいますが、これがなかなか進まないということで、このコラボヘルスの取組をどういうふうに進めていけるのかということの検討をした検討会です。そこで提言として出されたものが、この40歳未満の方についてもコラボヘルスを推進していくことが大事だということ。
 あとは、保険者でやっておりますが、事業所の健康状況の診断をするとか、スコアリングレポートとか、事業所が同じ業種や地域の中でどういう立ち位置にあるかということを、保険者が様々なデータを持っておりますので、それを分析して、それを事業者に戻す。それを活用して事業者が健康づくりの活動を進めるという連携が今広がりつつありますので、そういったことも含めての連携した取組。
 それから、事業主と保険者とのデータの連携ということで言うと、やはり電子的な保存や管理が非常に重要になってくるということで、その3つの提言を頂いており、それを踏まえて、上の青い部分にもありますように、コラボヘルスの積極的な推進が大事だということと、②には今御説明した、保険者との連携した取組が大事だということ、電子的な記録・保存が適切だということで、今回改正をさせていただいております。適用日は、4月1日で考えております。私からの説明は以上になります。
○城内分科会長 本件について質問、意見等のある方は、御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いいたします。門﨑委員、お願いいたします。
○門﨑委員 御説明ありがとうございました。今回の指針の改正は、転倒防止・腰痛予防対策、事業主の健康情報の活用促進という重要課題に関する、検討会内容を踏まえたものであると認識しています。その上で、改正のポイントの2点目の、事業者と医療保険者との連携の強化における健康情報の活用促進に関してです。労働者の健診情報については、あくまで労働者の健康確保に必要な範囲で利用されるべきであり、個人情報の取扱いについては、細心の注意を払うよう、改めて周知徹底していただきたいと考えております。以上です。
○城内分科会長 そのほか、御発言はありますでしょうか。よろしいでしょうか。事務局からは、よろしいですか。ありがとうございます。それでは、事務局から説明いただいた方針で進めていただくこととしたいと思います。
 次に、議題(7)「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン及びデジタル原則を踏まえたアナログ規制の見直しに係る工程表を踏まえた対応等の報告について(報告)」に関して、事務局から説明をお願いします。
○計画課長 計画課長の松下です。私のほうから、資料7の御説明をいたします。資料7の1ページ目を御覧ください。政府においては、デジタル改革等に係る横断的課題を一体的に検討し、実行していくために、令和3年になりますが、総理をトップとするデジタル臨時行政調査会を設置しております。この調査会では、様々な役所が持つ規制であったり制度といったものが、現代のデジタル時代に即したものになっているかどうかといった観点から判断をし、必要に応じてそうした規制の見直しを行っている、そうした調査会となっております。
 2ページ目を御覧いただきたいと思います。具体的には、調査会において見直し・検討を行っているものを2ページ目に示しているものです。先ほども申し上げました調査会においては、役所が所管する法令等で規定をしております、例えば目視での規制であったり、その作業場所に常駐するといった常駐の規制であったりといった、これをアナログ規制という言い方をしておりますけれども、こうした規制について、それぞれの法令等で規制されているものを、7つに類型化した上で、点検・見直しを行ってきております。点検・見直しを行った上で、昨年12月になりますが、規制の見直しに向けた工程表が策定されたところです。
 3ページ目以降ですが、こうした規制の見直しの中で、労働安全衛生法における各種規定についても、点検・見直しが求められました。特に常駐規制に関連する部分で、作業主任者の職務の実施に関して大きく議論されているところです。この3ページ目については、デジタル庁で作成した常駐・専任規制に関する更に具体的な類型化、フェーズ分けした資料となっています。
 4ページ目、5ページ目ですが、これは先ほど申し上げた昨年12月に策定された工程表のうち、作業主任者に関する部分を抜粋したものを添付しています。この作業主任者に関する検討の中で、河野デジタル担当大臣と岡田規制改革担当大臣、それと加藤厚生労働大臣、三者で会合が持たれて、作業主任者が職務を行う場所に係る考え方について、整理が行われたという状況になっています。この三大臣間での会合の結果、整理された作業主任者の職務場所に関する考え方については、6ページですが、加藤大臣が会見時にその考え方について発言をしておりますので、そのときの発言概要を添付しています。具体的には下線部分を御覧いただきたいと思いますが、加藤大臣のほうから「作業主任者は、自ら作業しながら他の作業者の監視・指示を行っているものであるため、作業場所から離れた場所でこれを行うことは、現時点で想定はできません」と、こうした言及があった上で、更に続いて「信頼性の高い技術により作業そのものを遠隔で行えるような状況が実現するのであれば、作業主任者の現場配置も不要となることを検討していくことでは合意をした」という発言をしています。
 先ほど申し上げましたとおり、作業主任者の職務場所に関する考え方は以上のとおりという形になっています。なお、この考え方については、6ページの一番下に書いてありますが、今年の2月に都道府県労働局宛てに通知を発出しているところです。以上、デジタル臨時調査会関係のアナログ規制の見直しに関する政府部内の対応について御報告を申し上げました。以上です。
○城内分科会長 本件について、質問、意見等のある方は、御発言がある旨、チャットに書き込みをお願いいたします。鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御説明ありがとうございます。6ページ目に、作業主任者の常駐規制の見直しに関する通達の内容をお示しいただきました。信頼性の高い技術により、作業そのものを遠隔で行えるような状況が実現すれば、作業主任者の現場配置は不要とすることを検討する。このように理解していますが、作業自体が遠隔化されて現場に誰もいないのであれば、作業主任者の常駐が不要になるのは、当然の帰結に思えます。
 現場作業のデジタル革新を早急に進めることは、人手不足の影響を軽減するだけでなく、効率的な労働災害防止活動を実施する観点からも重要だと思います。作業主任者の職務の中には、当該作業を直接指揮するほかにも、例えば機械・安全装置の点検や、安全装置の使用状況の監視といった内容も含まれると理解しています。このような職務については、例えば現場に設置したWebカメラを用いて作業主任者が遠隔から実施する余地もあるように思います。
 作業自体の遠隔化が実現する前の段階においても、作業主任者の職務を分解しながら、デジタル技術を活用できる職務が一部でもあれば、積極的な見直しを御検討いただければと思います。その上で、作業に従事する労働者の直接の指揮や、機械・安全装置の異常時の必要な措置といった職務についても、技術革新の今後の動向を注視し、遠隔での実施の可能性を検討し、作業主任者の常駐規制を見直すことができないか、不断の見直しに努めていただければと思います。以上です。
○城内分科会長 そのほか御発言はありますか。中村委員、お願いします。
○中村委員 デジタル化の進展を踏まえた規制の見直しそのものについては、否定するものではありませんが、作業主任者をはじめとする常駐・専任規制というのは、この間、危険有害性に鑑み、労働災害防止の観点から、現行の規制が設けられたものと思っています。こうした観点から、安易に規制緩和につながるような議論を行うことに対しては慎重であるべきというのが、労働者側の基本的な考え方です。その上で、今般発出された指針は、現場の取扱いに何ら変更を生ずるものではなく、将来に向けて、技術革新等により作業の遠隔化が図られた際には、作業主任者を現場配置する必要がなくなる可能性について指摘したものと受け止めています。私も作業主任者を幾つか実際に現場で見てきている経験がありますが、デジタル技術の革新によって、これがきちんと担保されるのかは現段階では少し想定できません。かなり先になるのではないかと思っているのが正直なところです。
 また、資料の4ページ、5ページに記載の「作業主任者の常駐」は、それぞれ類型1に分類されていますけれども、3ページを見てみますと「類型1」は「主としてモノのチェック等」に分類されています。作業主任者が類型1に整理されることには違和感を覚えます。作業主任者は、やはり労働災害防止を目的に設置されたものですので、本来、3ページで言えば類型3の、「主として人への対応」に分類されるべきではないかと思っていますので、この点については見解を伺いたいと思います。以上です。
○城内分科会長 では、事務局からお願いします。
○計画課長 はい、御意見等ありがとうございました。まず、中村委員のほうから御発言のあった点について、回答させていただきます。資料7の4~5ページの類型化の関係ですが、これは今般、デジタル庁とのやり取りの中で、厚労省としては、デジタル庁に対し、ここの部分の類型化の整理については、作業主任者の規定は類型3と、先ほどお話がありましたけれども、主として人への対応ではないのかという話を先方に何度か投げ掛けをさせていただいています。
 最終的には、ここの資料に提出しているとおり、デジタル庁の整理として類型1という形になったものです。これについてはいろいろ厚労省として、申し上げるべきところは申し上げているつもりではあるのですが、最終的に類型1という形になっているということです。今後についてもデジタル庁等関係者に対してはこうした発言、主張を続けていきたいと思っています。併せて話がありました作業主任者の今後の検討の対応についても、少し申し上げたいと思います。
 作業主任者については、安衛法においては危険・有害な作業について労働者の生命・身体を守るという観点から、労働者の指揮その他の事項を行わせるために作業主任者の選任を法律で義務付けています。厚労省としても、先ほどの中村委員からの御指摘がありましたように、必要な安全水準を満たすことが担保されないまま、安易に規制を緩和するということは行われるべきではないと考えています。
 他方で、これは鈴木委員からの発言につながる部分もあるかと思いますが、一方で厚労省も政府の一員として、デジタル改革、規制改革についてしっかり対応していかなければいけない、進めていかなければいけないという立場があります。現にデジタル技術の進展により、信頼性の高い制御装置を有するボイラーの中には、現時点においても作業を遠隔で行うことができるという仕組みもございます。
 こうした取組を行っているということですが、現状、今申し上げましたような、ボイラーに係るものを除いては、同様の信頼性の高い技術の存在というのは、厚労省としては承知をしていないというところです。緩和に向けた動きは特段ないものと考えているところです。我々としましては労働者の健康・安全を確保するという観点から、この作業主任者についての取組を進めていかなければいけないということを、考えているところです。
 鈴木委員のほうから、作業主任者の職務の中で、常駐規定の見直しに係る進められるものについては、どんどん進めていくべきではないかというような話がありました。今回、通達の中でも示させていただいていますが、作業主任者の職務の中においては、作業計画の策定といったものもあります。こうした現場以外の場所で実施できるものについては、作業主任者が現場で実施する必要性はないといったことについても、今回の通達の中で示させていただいています。
 いずれにしても、先ほど申し上げましたように、大臣からの発言があったように、安全性が担保された形で技術が今後出てくれば、我々としてもしっかり検討していかなければいけないということを、今回表明をさせていただいていますので、そうした健康と安全面の確保ということと、デジタル化の推進といった観点での取組を、バランスを取りながらしっかり検討を進めていかなければいけないということです。私のほうからは以上です。
○城内分科会長 そのほか、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。及川委員、お願いします。
○及川委員 はい、中央会の及川です。こうした高い信頼性のある技術が出てくるように、厚生労働省としても技術促進ができる環境整備を是非していただきたいと思います。人間が目視できる所というのも限られていますし、また、見落としがちだというのもあります。こういったものが信頼性の高い技術でカバーできるようになれば、大変人手不足の中で現場を支える中小企業としては、大変有り難いと思っています。特に人材養成、人材育成については、厚生労働省がしっかりやっていただく分野だと思いますので、こういったデジタル化に伴う信頼性の高い技術に関する人材育成も、今から準備をしていただきますよう、お願い申し上げます。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。そのほか、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、今頂いた御意見も参考に、事務局で御説明いただいた方針で進めていただきたいと思います。
 これで全ての議題を終了しました。本日も熱心に御議論いただき、ありがとうございました。最後に、労働政策審議会安全衛生分科会の委員の任期は1期2年となっておりまして、通算して5期10年までとなっています。この度、令和5年4月26日をもって、10年の任期満了に伴い退任される委員がいらっしゃいます。公益代表委員では、水島委員、山口委員、それと私も該当します。また、労働者代表委員では、勝野委員、使用者代表委員では、中村委員が退任されます。現時点では、4月26日までの間に次回の安全衛生分科会を開催する予定はありませんので、退任される委員の中で御挨拶を頂ける方がいらっしゃればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。いらっしゃいませんでしょうか。それでは、本日欠席されている山口委員より、事前に退任の挨拶を頂いていますので、事務局から代読をお願いします。
○計画課長 はい、事務局です。今、分科会長からお話がありましたように、山口委員より、本日欠席ということで、御退任の挨拶のメッセージを頂いていますので、私のほうから代読をさせていただきます。
 労災保険情報センターの山口です。10年間、安全衛生分科会の公益の委員を務めさせていただきました。就任直後はストレスチェック制度の仕切り直しの議論の真っただ中であり、労使の意見にいまだ隔たりが残っていたところで、公益の立場で制度の重要性について意見を述べたのが最初だったと記憶しています。最後は14次労働災害防止計画が大きな議論でしたが、科学的根拠、すなわちエビデンスに基づいた議論が当たり前となり、アウトカムを中心に据えた議論が積極的に進められていることに、とても心強いものを感じました。経済が思うように上昇気流に乗らない昨今、これからは効率性も議論の中に取り入れられていくのかな、などと未来の分科会についても密かに楽しみにしています。委員の皆様、厚生労働省の皆様、ありがとうございました。以上です。
○城内分科会長 ありがとうございました。では、私から最後に一言、感謝申し上げたいと思います。この10年、ストレスチェック制度、それから36協定の上限規制、化学物質の自律的な管理への転換等、大きな改革があったと思っています。さらに、14次防では新たな安全衛生の方向性が示されたのではないかと考えています。このような変革期において、分科会で議論への参加ができたことは、非常に貴重であり光栄であったと思っています。改めて委員の皆様、事務局の皆様に感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして、美濃安全衛生部長からの御挨拶をお願いいたします。
○安全衛生部長 安全衛生部長の美濃です。城内分科会長をはじめといたしまして、この度、任期満了を迎えられます5名の委員の皆様には、本当に長きにわたりまして労働政策審議会安全衛生分科会に御参画を賜りまして、誠にありがとうございました。改めまして、深く感謝申し上げる次第です。今後とも引き続き御指導、御鞭撻を賜りますよう、お願いを申し上げまして、御礼の言葉とさせていただきます。誠にありがとうございました。
○城内分科会長 ありがとうございました。それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。本日はお忙しい中、ありがとうございました。