2022年8月29日 薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会 議事録

日時

令和4年8月29日(月)16:00~

出席者

出席委員(10名)五十音順

 (注)◎部会長 ○部会長代理 
 

欠席委員(1名)五十音順

行政機関出席者
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  小野原光康(監視指導・麻薬対策課薬物取締調整官) 他

議事

○調整官 定刻となりましたので、ただいまから令和4年度第2回薬事・食品衛生審議会指定薬物部会を開催させていただきます。委員の先生方には大変御多用なところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
 はじめに、人事異動について報告させていただきます。6月28日付けで医薬・生活衛生局長に八神が、監視指導室長に木村が着任しております。本日、医薬・生活衛生局長、監視指導・麻薬対策課長、監視指導室長は、所用で欠席させていただきます。本日は、対面とWebのハイブリッド形式で開催しており、関野部会長、北中委員、高野委員、舩田委員には会場にお越しいただいております。現在のところ当部会の委員数11名のうち、松本委員は御欠席のため、10名の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 部会を開始する前に、本部会の公開・非公開の取扱いについて御説明いたします。審議会総会における議論の結果、会議を公開することにより、委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると判断されたことから、非公開とさせていただきます。
 また、会議の議事録の公開については、発言者氏名を公にすることで、発言者等に対し外部からの圧力や干渉、危害が及ぶおそれが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとされておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。それでは、以後の議事進行は関野部会長にお願いいたします。
○関野部会長 それでは、本日の部会の資料の確認及び注意点について、事務局よりお願いいたします。
○事務局 本日の資料の確認をさせていただきます。会場にお越しいただいている委員はタブレット、Webで御参加いただいている委員は紙資料、若しくはメールでお送りした電子媒体の御確認をお願いいたします。本日は部会資料が1~3まであり、そのうちNo.2が2-1~2-3までとなっております。あと、参考文献が1~14まで、参考資料が1~3までとなっております。また追加資料として、会場にお越しいただいている委員の机上には追加資料を配付しており、Webの委員については先週の金曜日の夕方頃、メールで送らせていただきましたので、そちらも御確認いただけますと幸いです。何か御不明な点がありましたら、事務局までお申し付けください。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。本日の議題は、「指定薬物の指定について」です。それでは審議に入りたいと思います。審議物質について、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 まず、資料1は各物質の名称、通称名、構造式を記載した資料となっております。資料2は御審議いただく物質の他、構造が類似する指定薬物や麻薬等について一覧表にまとめたものです。また、資料3が国内外の基礎研究や動物実験結果等について、中枢神経系への影響を中心に取りまとめたものです。
 まず、カンナビノイド系である物質1について説明いたします。資料2-1を御覧ください。資料2-1はカンナビノイド系である物質1、通称名CUMYL-CBMINACA及びこれに構造が類似する指定薬物について、カンナビノイド受容体に対する影響、中枢神経系への作用等をまとめております。CUMYL-CBMINACAは、カンナビノイド受容体に対するアゴニスト活性を有しており、過去に指定した指定薬物と同種の作用を有することを確認しております。資料2-1は以上です。
 続いて、資料3について説明をさせていただきます。資料3の1ページを御覧ください。こちらはCUMYL-CBMINACAの構造式を記載しておりますが、指定薬物であるCUMYL-CBMICAと構造が類似する化合物となっております。続いて2ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにCUMYL-CBMINACAを15mg添加したマーシュマローリーフ0.25gを燃焼させ、マウスを薬物にばく露させ、燃焼後15分、30分、60分後の行動及び中枢・自律神経症状について観察された症状を記載しております。また、3ページと4ページの表1~3に、CUMYL-CBMINACAに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せております。数値は、各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、観察された特徴的な症状を示した写真を、次の5ページに載せております。
 ここで写真と併せて、実際の動画も御確認ください。画面を共有させていただきます。こちらがばく露開始後3分及び10分経過後のマウスです。激しく飛び跳ねるも力なく網にもたれかかる、呼吸も荒く転倒も見られ、その後仰向けに倒れ、口を開けての荒い呼吸が確認されております。続いて、ばく露終了後約21分経過したマウスです。寄り掛かって、力なく静止状態。後肢に指間離開が見られております。
 3つ目はカタレプシー試験の結果です。ばく露終了後約60分経過後、カタレプシー試験陽性が確認されたマウスの様子です。カタレプシー試験の結果は、資料3の6ページの(2)に記載しております。燃焼終了後15分で5匹全てが陽性、30分では4匹が陽性、1匹が陰性、60分では1匹が陽性、4匹が陰性という結果でした。動画は以上です。
 続いて資料3の6ページの(3)、ヒトカンナビノイド受容体機能評価を御覧ください。こちらがCB1及びCB2受容体に対するアゴニスト活性EC50を算出した結果を載せております。CB1受容体は9.64×10-9mol/Lで、CB2受容体は4.95×10-8mol/Lでした。これらの結果から、カンナビノイド受容体に対するアゴニスト活性があることが報告されております。
 以上から、CUMYL-CBMINACAは中枢神経に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高い」と考えております。
 続いて、同じページの(4)です。海外での流通状況については、2020年にドイツ、カナダ、スウェーデンにおいて流通が確認されております。
 また、(5)海外での規制状況については、スウェーデン、フィンランド、ドイツ、セルビアで規制されていることを確認しております。物質1は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 それでは、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。最初に流通実態について□□委員、お願いいたします。
○□□委員 本化合物について、□□□□での検出はありませんでした。以上です。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きたいと思います。御意見、よろしくお願いいたします。Webで御参加の先生方は挙手の際にはミュートを外してください。特にありませんか。会場の先生方もよろしいですか。
 御意見がないようですので、審議をまとめます。ただいま御審議いただいた1物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。では、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 続いて、LSDアナログである物質2について説明をいたします。まず、資料2-2を御覧ください。資料2-2は、LSDアナログである物質2通称名LSZ並びにこれらに構造が類似する麻薬、指定薬物について、自発運動への影響、オピオイド受容体に対する影響、マイクロダイアリシスのデータ等をまとめたものです。LSZは、マイクロダイアリシス試験ではモノアミンを有意に増加させており、オピオイド受容体への影響も、過去に指定した指定薬物と同程度有することを確認しております。資料2-2の説明は以上です。
 続いて、資料3の7ページを御覧ください。こちらにLSZの構造式等を記載しております。麻薬であるLSD又は指定薬物である1P-LSDに構造が類似する化合物となっております。
 続いて8ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。こちらはマウスにLSZを1.1mg/kg、11.0mg/kg、27.5mg/kgで腹腔内投与し、投与後30分、60分、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しております。また、9、10ページの表1~3に、LSZに関する行動及び中枢・自律神経症状観察における評価値を載せております。数値は、各群マウス5匹のスコアの平均値です。観察された特徴的な症状を示した写真を、11、12ページに載せております。
 ここで写真と併せて、実際の動画も御確認ください。
 こちらは1つ目です。1.1mg/kg投与群の投与後約7分を経過したマウスですが、挙尾反応や後肢指間離開、ひきつけ、後ずさり歩行が確認されております。こちらが11.0mg/kg投与群の投与後約10分を経過したマウスで、ひきつけ及び後ずさり歩行が確認されております。次の動画は、27.5mg/kg投与群の投与後約13分経過したマウスです。こちらもひきつけ及び後ずさり歩行が確認されております。
 こちらが、1.1mg/kg投与群の投与後約30分を経過したマウスです。最初に伏臥位姿勢で静止しているのが確認されております。その次の動画は11.0mg/kg投与群で、投与後約1時間を経過したマウスです。こちらも伏臥位姿勢で静止した状態になっております。最後の動画は27.5mg/kg投与群で、投与後約1時間を経過したマウスです。こちらは伏臥位姿勢での静止、頭部のけいれんが確認されております。動画は以上です。
 資料3に戻って13ページの(2)自発運動における運動量の測定を御覧ください。こちらはマウスにLSZを11.0mg/kg腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定しております。各群マウス4匹を使用し、総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数、総移動距離について測定したところ、総運動量、大きい運動量及び総移動距離は、投与後10~30分では対照群と比べて有意に減少し、立ち上がり回数は投与後10~40分で有意に減少しております。
 続いて14ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時的変化を御覧ください。LSZ約33mg/kg腹腔内投与群を5匹、コントロール群を6匹用いて、モノアミンの増加率の有意差をウェルチのt検定で求めたところ、ノルアドレナリンに対して増加作用、セロトニン、ドパミンに対して減少作用が確認されております。
 続いて、15ページの(4)ヒトセロトニン受容体に対するアゴニスト活性で、EC50を算出した結果を御覧ください。LSZのヒトセロトニン5-HT2A受容体に対するEC50は9.56×10-8mol/Lで、5-HT2C受容体に対するEC50は1.16×10-7mol/Lでした。
 続いて、16ページの(5)首振り反応試験についての結果を御覧ください。マウスにLSZを0.11mg/kg、0.33mg/kg、1.0mg/kgを腹腔内投与し、5分当たりの首振り反応数の経時変化と累積首振り反応数を測定した結果、経時変化は、0.11mg/kg投与群、及び0.33mg/kg投与群は、5~10分まで首振り回数が増加し、以降は30分まで減少しております。1.0mg/kg投与群は、0~5分まで首振り回数が増加し、15分まで減少、30分まで持続しております。累積首振り回数は、試料投与量が増加するに従って増加する傾向が認められております。
 以上から、LSZは中枢神経系に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高い」と考えております。
 続いて17ページの(6)海外での流通状況については、2013年以降に、資料に記載の国々において流通が確認されております。
 最後に、(7)海外の規制状況については、スウェーデンとフィンランドで規制されていることを確認しております。物質2については以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○関野部会長 ありがとうございます。それでは委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。最初に流通実態について、□□委員お願いします。
○□□委員 本化合物につきまして、□□□□□□□□におきまして検出事例があります。まず、2021年4月に2件、2021年5月に5件、2021年8月、2021年12月、2022年2月、2022年3月にそれぞれ1件ずつ検出事例がありまして、それぞれ白色の紙片として検出されています。以上です。
○関野部会長 それでは、委員の先生方に御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。何か御質問はございますか。行動実験では、はっきりとした結果が出ています。受容体のところが、ほかはドパミンの取り込みを調べているのに対し、これはセロトニンだけで、少しデータがばらついていますが、問題ないでしょうか。
 それでは、御意見がないようですので、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました1物質は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。それでは指定いたします。ありがとうございました。
 それでは、引き続き事務局より説明をお願いします。
○事務局 では、続きましてカチノン系である物質3について説明をいたします。まず、資料2-3を御覧ください。資料2-3はカチノン系である物質3通称名4-fluoro-3-methyl-α-PVP並びにこれらに構造が類似する麻薬、指定薬物について、自発運動への影響、モノアミントランスポーターへの影響等のデータをまとめています。4-fluoro-3-methyl-α-PVPは、マイクロダイアリシス試験ではモノアミンを有意に増加させており、モノアミントランスポーターへの影響も過去に指定した指定薬物と同程度有していることを確認しています。資料2-3の説明は以上です。
 それでは資料3の18ページを御覧ください。資料3の18ページには4-fluoro-3-methyl-α-PVPの構造式を記載していますが、麻薬であるα-PVPに構造が類似する化合物です。
 続いて19ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスに4-fluoro-3-methyl-α-PVPを2mg/kg、20mg/kg、100mg/kgで経口投与し、投与後30分、60分、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、用量ごとに観察された症状を記載しています。
 また、20ページ、21ページの表1~3に、行動及び中枢・自律神経症状観察における平均評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値です。また、観察された特徴的な症状を示した写真を資料の22ページに載せています。
 ここで写真と併せて実際の動画も御確認ください。まず1つ目の動画ですが、100mg/kg投与群の投与後約1時間経過したマウスで、壁や餌箱に寄り掛かり、あるいはぶら下がって、忙しい行動が確認されています。続いて2つ目の動画ですが、こちらは投与後約2時間経過したマウスで、飛び跳ねるなど忙しい行動、掻痒感様作用が確認されています。動画は以上です。
 資料3に戻っていただいて、23ページの(2)自発運動における運動量の測定結果についてを御覧ください。こちらはマウスに4-fluoro-3-methyl-α-PVPを20mg/kgで経口投与し、投与後3時間までの10分ごとの総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数、総移動距離について測定したところ、下の図のとおり総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数及び総移動距離は、投与後20分では対照群と比べて有意に増加し、それ以外は測定期間を通して対照群と比べて有意な差を示しませんでした。
 続いて24ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。4-fluoro-3-methyl-α-PVP約24mg/kg経口投与群を6匹、コントロール群を6匹用いて、マウス線条体内神経シナプス間隙のモノアミンの増加率の有意差を、ウェルチのt検定で求めたところ、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンいずれに対しても増加作用が確認されています。
 続いて、25ページ、26ページの(4)モノアミントランスポーターに対する機能影響評価を御覧ください。4-fluoro-3-methyl-α-PVPのモノアミントランスポーターに対する阻害作用の評価のため、ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニントランスポーターに対するIC50を算出しています。結果は25ページの下の表及び26ページの図のとおりでして、ノルアドレナリントランスポーターについては、4-fluoro-3-methyl-α-PVPのIC50が6.9×10-7Mでコカイン塩酸塩のIC50の0.20倍であり、ドパミントランスポーターについてはIC50が6.1×10-7Mで、コカイン塩酸塩のIC50の0.44倍。セロトニントランスポーターについてはIC50が2.8×10-5Mでコカイン塩酸塩のIC50の約7.4倍でした。
 続いて、27ページの(5)ヒトセロトニン受容体に対するアゴニスト活性EC50を算出した結果を御覧ください。4-fluoro-3-methyl-α-PVPのヒトセロトニン5-HT2A及び5-HT2C受容体に対するアゴニスト活性は、いずれもEC50を求めることができませんでした。
 以上から、4-fluoro-3-methyl-α-PVPは中枢神経に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する「中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高い」と考えています。
 続いて、27ページ(6)海外での流通状況につきましては、2020年、2021年に資料に記載の国において流通が確認されています。
 最後に、(7)海外での規制状況につきましては、フィンランド、シンガポールで規制されていることを確認しています。物質3については以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。
○関野部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。最初に流通実態について、□□委員お願いします。
○□□委員 本化合物につきまして、検出事例が1件あります。2020年10月に白色粉末として検出されています。以上です。 
○関野部会長 ほかに御意見はありますでしょうか。セロトニンのアゴニストの活性がやや見えていないということですが、これについて何かコメントはありますでしょうか。特にはありませんか。よろしいでしょうか。
 それでは御意見がないようですので、審議をまとめます。
 ただいま御審議いただいた物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは事務局から追加資料について説明をお願いします。
○事務局 追加資料につきましては、本日会場にお越しの委員におかれましては机上に配付していまして、Webで参加の委員につきましては、事前にに送らせていただいていますが、画面も共有させていただきますので、画面も併せて御確認いただければと思います。
 では、資料について説明をいたします。
 「立体異性体のある物質の指定について」という資料を先日配付しています。まず、1.経緯を御覧ください。こちらの薬事・食品衛生審議会薬事分科会にて、指定薬物部会における審議の結果及び指定状況についての報告を行っておりますところ、分科会委員から、指定薬物の指定に関して、以下のような御意見がありました。
 例えばLSDにつきましては、資料の2ページ目に構造式を記載していますが、LSDはこちらの資料にありますとおり、左上の構造式のものを指していまして、ほかに3つの異性体が存在していることが知られています。
 このように自然界において、LSDのような特定の立体構造を有している物質の場合、既に指定薬物として指定されている1cP-LSDや今回御審議いただいたLSZといったLSDアナログにおいては、天然物であるLSDをベースに化学合成されるものが多く、天然物由来の部位の立体異性体を合成することは難しいのではないかということで、こちらが2ページ目の構造式です。赤丸で囲った部分が立体の異なるところでして、特にこちらの下の丸のほう、Hと書いてあるところが難しいのではないかといった御指摘を頂いています。
 また、天然物から合成された物質の立体異性体を含めて規制する場合、分析用標準品の整備が行えるのか疑問がある。LSDで申し上げると、LSDを平面で指定するのであれば、そのほかの3つの異性体についても整備する必要があるのではないか。
 これらを踏まえて、活性があるもののみを正確に立体を特定した上で、指定薬物として指定することが適切ではないかといった御指摘を頂いています。
○関野部会長 ここまでよろしいでしょうか。
○事務局 では、続けさせていただきます。続いて、御指摘に対する今後の方針について御確認いただくに当たりまして、指定薬物の指定の考え方について御説明します。2番のこれまでの指定薬物の指定における考え方を御覧ください。指定薬物は中枢神経系への作用を有する蓋然性が高く、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがあるものとされているため、これまで指定薬物部会では、指定薬物として指定することにより、国内での流通を抑制し、保健衛生上の危害拡大を防止する観点から、立体を特定することなく幅広く指定ができるよう、平面の化学構造で指定しています。
 一方、日本薬局方では、立体構造を特定した名称に添えて「及び鏡像異性体」との記載を行っておりますが、これは1:1の割合で混在したラセミ体を意味しているものでして、御審議いただいている指定薬物に関しましては、立体異性体の混合比が不明であることから、どのような割合であっても指定薬物に含めることができるよう、現在のような平面構造での化学名称をつけています。
 なお、麻薬・向精神薬に指定する際は、麻向法において、麻薬・向精神薬として既に指定されているものと同種の有害作用があるものと定義されており、指定に際しては有害性があるもののみを指定することとしているため、立体を特定した名称をつけています。
 以上を踏まえまして、事務局としての方針案について御説明します。3.今後の方針(案)を御覧ください。分科会委員から御指摘いただいた点につきましては、次のように考えています。まず1つ目ですが、御指摘のとおり、天然の構造から合成された指定薬物に関しては、当該指定薬物を含む製品中に主成分として含まれていることは事実であるものの、主成分の異性体もラセミ化により一部含まれているとの報告があります。
 また、2つ目ですが、今回御審議いただいた物質「LSZ」に関しては、毒性試験においてLSDの構造を有するものが使用されていまして、その他の異性体についての情報はありませんが、LSD及びその異性体に関しては、裏面の2ページにお示ししていますとおり、LSDと一部の立体異性体との活性の比較が行われたという報告がなされていまして、この報告によりますと、LSDと比較して、弱いながらも活性があるとされています。
 このため、LSZの異性体についても毒性がないとは言えないと考えています。また、同様に、特定の立体異性体に精神毒性がないことが確認されていない限り、中枢神経作用を有する蓋然性は否定できないものと考えています。
 以上を踏まえまして、今後の指定薬物の指定に際しても、2のこれまでの考え方にありますとおり、指定薬物の定義を踏まえますと、特定の立体異性体に精神毒性がないことが確認されていない限り、中枢神経への作用を有する蓋然性が高いと判断し、平面にて指定を行っていきたいと考えています。
 なお、天然において特定の立体構造を有している物質をベースに合成される指定薬物に関しては、可能な限り指定の際に発出する施行通知等において、流通状況についての情報も併せて共有することを検討しております。以上です。よろしくお願いいたします。
○関野部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。一応、これは分科会において、このような御指摘が複数回ありました。長い間、平面で公表してきて、指定薬物として官報に記載していくわけですが、そのときに、立体異性体まで含めた形で全部記載するということは少し難しいこともあります。それなので、平面の名称はそのまま継続したいという立場となります。ただし、どういう物質について毒性試験をしたのかということは資料の中では明記したほうがいいのではないかということで、「可能な限り指定の際に発出する施行通知において」とありますように、今後は発出する指定の施行通知において、立体構造を明記した形で情報を共有し、流通状況等の情報についても併せて共有するとして、委員の御指摘に対して対応するという提案です。
 そのことについて、委員の皆様に情報を共有して御意見を伺い、指定薬物部会としての方針ということで委員の先生に回答をお返ししたいと考えております。しかし、現在はまだ先生方に御意見を伺って議論していただく段階です。例えば、今、どういうところが論点になっているのかが分かりにくいなどでも結構ですので、御意見、御質問などがありましたら、賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。
○□□委員 よろしいですか。
○関野部会長 □□先生、よろしくお願いいたします。
○□□委員 □□です。先ほど、この方針案に関しては、私自身はよいかなと思ったのですが、ある立体異性体に活性がないということが確認されない限りとおっしゃっていましたが、活性がないというのは、どの辺りの数字をもって活性がないと一般的に言われるのですか。
 例えば、この2/2ページ目の、ED50の一番下は20μMと書いてあります。これは薬効本体と比べると活性は非常に弱いのかなと思うのですが、一般的に、これでも活性があるというのかどうか専門の先生に御意見を頂ければと思います。以上です。
○関野部会長 これは活性があるという形になると思いますが、事務局からよろしいですか。
○事務局 20μMが弱いといえるかどうかですね。
○関野部会長 弱いのは確かですね。□□先生、何か御意見がございますか。
○□□委員 提供していただいているデータは結合実験の値です。いわゆるアゴニスト活性かどうかといいますと、この値をもって推測するのは難しいと思います。しかしながら、結合する度合で言いますと、一番大きな値でも20μMという値ですので、ED50高濃度においては一定の効果が出てくる可能性があると考えられます。
○□□委員 ありがとうございます。
○関野部会長 それでは、活性ありという判断でいいということですか。
○□□委員 活性というのが、本値は結合する度合ですので、いわゆるアゴニストとしての作用があるかどうかは、実際の実験で検討する必要があります。
○関野部会長 それと、今の事務局案の「精神毒性がないことが確認されていない限り、蓋然性が高い」という所は言い回し的に少し分かりにくいのかもしれません。完全に精神毒性がないということを確認されることがあれば確実に外すけれども、それが確認されていないのだから、蓋然性があるものの中に入れますよということでいいわけですね。
 しかし、実は、確実になにもないことを証明する実験というのはあり得ない、つまり、科学的にはそのような証明の仕方をすることは非常に難しいと思うので、やはり、類似化合物は包括指定もしているように、全くないとは言い切れないと、申し上げなければいけないかもしれません。指定薬物の指定には迅速性も要求されますし、流通が確認されたり、このような審議が行われたときには、迅速に規制をかけなくてはいけないという目的もあるので、そういうところも踏まえ、このまま平面にて指定したいと、そういうことで理解しております。それでよろしいでしょうか。
○事務局 はい。
○関野部会長 分かりにくい所があれば、文章を直すなどいたします。以上の点を含めて何か御意見はありますか。□□先生、お願いします。
○□□委員 非常に分かりやすい方針案で、私自身は今の方針案は賛成でございます。1点、申し上げたいことがあります。蓋然性の作用が立体構造の違いによって確認されない限りにおいては、分かるまでは包括的に指定をしておくというイメージを持っているのですが、これは、あくまで前提として、立体構造が仮に違っていても、作用の方向性が皆同じベクトルを向いていることが前提だと思うのです。つまり、人に対して悪い作用の程度がどの程度かという切り口でしか言っていないと思うのです。
 というのは、もし、立体構造が違うということだけで、そういう例があるのかどうか知らないのですが、片や、依存があって、とても困る作用なのだけれども、立体構造が違えば医薬品になるという観点がもしあったとすれば、それは、この指定が正しいのかどうかちょっと分からないからです。一旦、そういう規制をかけてしまうと、今度はそれを医薬品として使えるということが万が一分かった場合には、それを外すのが簡単なことなのかどうかが少し疑問です。
 実は、同じような議論で、以前、大麻の類似化合物で、国際会議でisomerをどう扱うかということがありまして、この方針案と似たような考え方を当初たたき台として出したのですが、今のことが、薬理学者の各国の先生からの意見として出ました。結局、その部分がはっきり分からない以上、議論を先に進めることはできないということで流れてしまった経緯があります。その1点だけ気になっていますが、考え方としては基本的には賛成です。以上です。
○関野部会長 ありがとうございます。事務局からコメントがありましたらお願いいたします。
○事務局 先ほど御指摘がありました、医薬品等で後々用途が分かったとき等の対応ですが、まず、1つ目としまして、指定するに当たり、事前に何かしら、産業用ですとか医療で用途があるかどうかは確認しております。その場合、それが確認されている場合においては、省令で、その用途に関しては、その所持や使用等を認めるという規定が別途あります。後々、見つかった場合に関しては、恐らく同様の対応になるかと思われます。事務局からは以上です。
○関野部会長 ありがとうございます。先生方、ほかに御意見はありますでしょうか。
○□□委員 □□ですが、よろしいでしょうか。
○関野部会長 はい、お願いいたします。
○□□委員 今回の方針案に賛成なのですが、確認したいのは、今回の方針は、まず広く指定しておいて、麻薬とするときにはしっかり特定するということで、指定の段階では迅速にということかと思うのですが、分科会での御指摘というのは、その迅速さが損なわれる可能性があっても特定したほうがいいという御意見が出たということなのでしょうか。
○関野部会長 私が個人的に意見を聞いた限りでは、特にそこまでは言及された質問ではありませんでした。
○□□委員 麻薬とかでは特定されているから、指定のときも物質を特定したほうがいいのではないかというレベルでの御指摘だったということでしょうか。
○関野部会長 恐らくそういうことだと想像しております。
○□□委員 そうだとすると、やはり指定の段階では迅速性が求められると思いますので、今の方針がよろしいのではないかと思いました。
 それから、先ほど審議したLSZの件なのですが、これは結構前から流通されていたようです。今回指定することに対して異論は全くないのですが、今回まで遅くなったのは、もしかして、今議論になっている件があったから、今になったということがあるのでしょうか。
○事務局 事務局です。そういったわけではありません。動物実験等のデータを収集しておりまして、準備が整った段階で、今回、可能な限り迅速にはさせていただいたところではあります。
○□□委員 分かりました。ありがとうございます。
○関野部会長 事務局から何か追加はありますか。大丈夫ですか。
○事務局 はい。
○関野部会長 先生方、十分に議論をしていただけたと判断してよろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、最終的に、この事務局案でよろしいでしょうか。特に修正することもなく賛成していただきましたが、念のため、挙手をお願いいたします。委員の方が全員一致ということで、賛成していただきありがとうございます。
 また、議論していただきありがとうございました。
 それでは、審議をまとめさせていただきます。立体異性体のある物質を指定する場合の方針は、案のとおりで異議なしと先生方から御判断いただきました。ありがとうございました。
 それでは、事務局から今後のスケジュールについて説明をお願いいたします。
○事務局 今後のスケジュール等について説明いたします。本日、御審議いただいた3物質につきましては、次回開催の薬事分科会で報告させていただく予定です。また、本日の結果を受け、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進めていく予定です。
 また、本日御審議いただいた物質に関する、いわゆる正規用途については、今のところ確認されておりません。いずれにしましても、可能な限り適正使用に支障を来たさないように対応をしてまいります。以上です。
○関野部会長 ありがとうございました。以上で本日の議題は全て終了いたしました。事務局から次回の予定について連絡をお願いいたします。
○事務局 次回の部会の日程については、正式に決まり次第、また連絡させていただきます。以上です。
○関野部会長 それでは、これをもちまして、令和4年度第2回指定薬物部会を閉会いたします。先生方、ありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、公開することにより、委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障をおよぼすおそれがあるため、非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

監視指導・麻薬対策課 課長補佐 竹内(2779)