第10回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

日時

令和5年3月29日(水)14:00~

場所

厚生労働省専用22~24会議室

議題

  1. (1)フリーディスカッション(論点1及び論点3関係)
  2. (2)その他

議事

議事内容
○船井安全課長補佐 本日は、大変お忙しい中御出席いただき、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより、第10回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会を開催いたします。本検討会は会議の資料及び議事録は原則公開ですが、カメラ撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 本日は小野委員、鹿野委員、日下部委員、鈴木委員、高山委員、出口委員、三柴委員、森委員の8名がオンラインでの参加となっております。それでは、以降の議事進行については、土橋座長にお願いいたします。
○土橋座長 皆様、よろしくお願いいたします。前回の検討会では、論点1及び論点3について、これまでの議論やヒアリングを通じて関係団体の皆様からお聞きした実態を踏まえて、事務局が整理した論点整理に基づいてフリーディスカッションを行っていただきました。今回は論点1及び論点3について、前回までの議論を踏まえて事務局が整理した資料を基に議論を行っていただくことを予定しております。それでは議事に入る前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○船井安全課長補佐 お手元に配布しております資料ですが、1枚目が表裏の議事次第です。そのあとに資料1「第8回及び第9回検討会における主な意見(論点1関係)」。資料2、資料3が、これまでも出させていただいた形式のパワーポイントの資料で、論点1と論点3の関係の論点整理で、前回の議論を踏まえて修正したものになっております。参考資料1が開催要綱、参考資料2が「これまでの議論を踏まえた対策の検討に当たって」というポンチ絵です。もし欠落しているものがありましたら、挙手を頂き、事務局から資料をお持ちいたしますので、よろしくお願いいたします。
○土橋座長 よろしいでしょうか。それでは議事に入ります。議事の1番目はフリーディスカッションとなっております。論点1と論点3に関して、それぞれ御議論いただきたいと思います。まずは論点1について、前回の議論を踏まえて事務局において整理した資料に基づいて議論を進めていきます。それでは議論に先立ち、事務局から資料説明をお願いいたします。
○船井安全課長補佐 論点1については、資料1と資料2を用いて説明いたします。その後、御議論を頂ければと思います。まず資料1は、第8回及び第9回検討会における主な意見を、論点1の関係でまとめております。黒字で書いてある部分が、前回の資料としても出しました、第8回の検討会で出た主な意見をカテゴリー別に並べたものです。それに対して第9回で出た意見については、今回赤字で追記するような形で記載しております。今回追加した所だけかいつまんで説明いたしますと、3ページ目の業務上災害の報告については、たくさんの意見が出ております。報告対象や報告主体、報告内容、罰則の観点で、複数の意見が出ております。個々の意見については、説明は割愛いたします。
 5ページ目は、個人事業者等自身による措置やその実行性を確保するための仕組みです。立入禁止等の措置の遵守の所の赤字の部分です。工場等で働く場合の構内のルールに関することや、第8回にも御意見を頂いておりましたが、周知した事項を守らないと作業に従事させないといったような措置の必要性についての御議論がありました。次のページは安全衛生教育の受講、危険有害業務に係る健康診断の受診です。建設業の場合ですと、現場を転々として短期間稼働する個人事業者の健診や教育の扱いについての意見がありました。
 7ページ目は、混在作業場所における連絡調整です。混在に伴う災害の防止については、現場又は混在の態様は多種多様ですので、文字どおりの「連絡をして調整する」という方法に限定せず実効ある対策の検討が必要ではないかという御意見も頂いております。
 次のページの(4)は、発注者以外の災害原因となるリスクを生み出す者による措置のあり方です。これは陸運関係でいいますと、着荷主の事業場において、着荷主が持っているフォークリフトを用いた作業を求められるようなこともあるという実態。また、ECのデリバリーに関する個人事業者の方は、なかなか安全衛生に関する取組も十分ではなく、何時から働いて何時に終わっているのかという把握も難しいというような御指摘もありました。
 9ページ目は、今後の論点として議論が予定されている論点2の関係です。建設現場において法令に定められた状況だけでなく、いろいろな自主的な取組もやっているので、罰則を背景にした取組を前提にした、強制すればよいという考えでは実態にそぐわないというような御意見もありました。
 こうした御意見があったことを踏まえ、資料2の4ページ目を見ていただきますと、災害報告の部分ですが、今説明しましたように、これまでの議論を踏まえて、報告主体や報告対象、また、罰則等を別紙マル1として、出た議論を踏まえて再整理をしております。
 6ページの別紙マル1ということで、業務上災害の報告について、これまでの議論を踏まえた再整理として示しております。これまでの議論を踏まえますと、個人事業者等の業務上災害の実態を把握することは重要であると。そのために、新たな仕組みづくりが必要であるということについては、皆様合意されていると思います。その際の制度設計や報告者の負担など、いろいろな観点について御議論を頂きました。
 事務局としては、実態把握や再発防止の観点から、最低限必要となるような範囲の災害について、雇用関係や請負関係にない方の災害を、場合によっては報告していただくという特殊性も踏まえて、円滑な報告の仕組みをつくろうという観点から、まずは以下のような内容としてはどうかということで赤字の部分を整理いたしました。報告対象ですが、事業場又はその附属建設物内、「事業場等」と申し上げますが、その中で発生した個人事業者等の死亡又は重度な負傷を伴う事故という形で整理をしたいと思っています。また、その詳細については、今後この検討会でも御議論いただき、別途通知等でお示しいたします。それから、この対象には、基本的には脳心・精神のような事案については対象にしないという形にしたいと思っています。この部分については、論点3で議論をさせていただきます。
 報告主体については、この報告対象も踏まえ、災害発生場所を管理する事業者の方にお願いしたいと。ただ、この災害発生場所を管理する事業者というのは、今申し上げたように効率的に災害を把握するという観点で、この場所を捉えてそこを管理する方に報告義務を課すものですので、必ずしも報告した災害全てについてリスク管理が可能というわけでもないので、全責任をこの方が負うことではないということには御留意を頂ければと思います。
 また、このように対象を限定しておりますが、その対象に掲げるもの以外の個人事業者等の業務上災害、例えば事業場の外で発生したものや、そこまで重篤ではないものについても、個人事業者自身や仕事の注文者、若しくは個人事業者が加入する特別加入等の団体が、可能な範囲で行政に対して情報提供するというような仕組みにしたいと。それによって、幅広に災害を把握できればと思っております。それから、報告事項については、個人事業者等の業務上災害の概要を把握するために必要な項目ということで、負担にも配慮して考えたいと思っております。
 7ページ目は、個人事業者等自身による措置や、その実行性を確保するための仕組みのあり方です。こちらについても、いろいろな案が出て御議論を頂きました。それを踏まえて、別紙マル2として8ページ目に整理をしております。この観点は2つあり、1つは安衛法第22条に基づく省令の改正です。これは最高裁判決を踏まえて既に改正をして、この4月から施行されるわけですが、その関係では2つのことを新たに事業者に義務付けております。1つ目は、立入禁止等の措置です。これは労働者に限定せず、ある場所で作業をする方に対しては、立入禁止、若しくはその場所で飲食等を禁止するという措置を新たに義務付けました。その立入禁止措置が講じられた場所において、労働者であれば罰則付きでそれに従わなければいけないという規定があったのですが、今回新たに義務付けられた個人事業者については、罰則がない形での遵守義務があると。これを、同じ水準を享受するのであれば、同じ罰則付きにすべきではないかというのが1点目です。
 ただ、ここで注意していただきたいのは、今回この議論の対象としているのは、あくまでも安衛法第22条に基づく改正省令の関係で、22条以外の部分については正にこの検討会で今後議論いたしますので、その部分は対象外で、既に措置したものが対象になるということです。
 次の点は、保護具や作業方法の周知に関する規定についてです。こちらについても、単なる周知では不十分で、しっかり措置まで求めるとか、周知した結果が実施されていなかった場合には作業に従事させないというような義務を課すべきだといった議論もありました。いずれにしても、それは実行性を確保するという観点からの御提案だと理解しております。では、実行性を確保するために、指揮命令関係がない、雇用関係にない人たちにどうやってやっていただくかという視点から考えたのが、マル1マル2です。1点目は、事業者は周知した内容が徹底されるように、個人事業者に対して必要な指導等を行うことを通達等で明確化してはどうかと。この場合、指揮命令関係がありませんので、その指示・指導をしたのが指揮命令になって偽装請負になるのではないかという懸念も別の論点で示されておりましたので、その論点と合わせて、どういう範囲が大丈夫なのかというのは明確化することが必要ではないかということです。
 2点目はマル1の裏返しですが、個人事業者等は事業者から周知された事項をしっかり守る必要があると。これを法令や通達で定めてはどうかと考えております。※にありますが、労働者であれば労働安全衛生法第4条という規定があり、労働災害防止上必要な事項は守ってくださいということを包括的な規定として求めておりますので、これと同じような形で個人事業者等についても御自身の災害防止のために守るべきことを守ってくださいというような包括規定を置くことについても検討いただければと思います。
 9ページ目です。赤字の箇所は、いろいろ御議論いただく中で表現が分かりにくかったり、求めている内容が適切に表現できていない部分がありましたので、修正しております。中身については特に論点を変えたわけではありませんので、飛ばします。
 10ページ目は、緑色の四角の部分ですが、記載が分かりにくかったので、より求めていることが明確になるように追記いたしました。それから、混在作業の混在対象に、労働者以外の個人事業者等が含まれていることが条文上明確でないという論点ですので、では、混在に個人事業者以外の方が関わっていた災害事例にはどういうものがあるのかという御指摘がありましたので、幾つか事例をピックアップいたしました。事例1~5までです。
 13ページ目です。現場において安全上の指示をするときに、それが指揮命令と捉えられて、偽装請負になってしまうのではないかということで、現場では躊躇している実態があるという御指摘を踏まえた論点です。現時点で、では、どういう指示・指導が指揮命令に間違われるのかという具体例を事務局では十分持ち合わせておりません。この検討、峻別に当たっては、主要な業種の元方事業者に現場において指揮命令に該当する可能性があるということで、その指導・指示を躊躇してしまったものにどういうものがあるのかをきちんと収集をして、実態に即したような整理を行いたいと考えております。
 14ページ目は、混在作業における連絡・調整に関する措置です。これについても、別紙3で論点を整理しております。ここでの混在というのは、大きく分けてマル1マル2と分かれております。マル1が、建設業や造船業、製造業のように、一定の業種の中における混在作業を防止するために、ここに掲げているような業種以外に追加すべき業種はないかという観点でした。マル2は業種の枠を超えたような混在も実際にあり、そういった部分についてどうするかという観点です。これは、いろいろ御議論いただく中で、また、業界団体からヒアリングをさせていただく中で、15ページ目のように整理をしております。この連絡・調整というのは、混在の実態があれば業種にかかわらず実施すべきものではないかという御指摘や、第30条等に基づく対象業種の拡大は、よく実態を踏まえて慎重に検討すべきだという御意見もありました。
 また、業種という観点でいうと、建設業や造船業、製造業以外に混在が想定されるような重層請負がある業種にどのようなものがあるだろうかと考えたときに、陸上荷物運送事業のような業種が思い浮かんだわけです。この部分について業界団体からのヒアリングをしていく中で、実際に混在が起きているのは重層請負の業者同士の混在ではなくて、荷物を運んだ先の着荷主の事業場における着荷主の作業との混在が非常に問題で、災害の多くを占めているというお話がありました。こういうことも踏まえて、業種や請負という切り口だけで考えるのではなくて、もう少し実際に混在が生じているような、災害発生が懸念される作業に着目することが、より実態に即しているのではないかと考えました。ですので、この請負契約の有無や混在の頻度、業種という切り口でなかなか捉えられない混在作業における連絡・調整について、赤字に書いてありますように、何らかの作業が行われる「一の場所」において、ほかの者によって荷の搬入、搬出作業や機械のメンテナンス作業、建設工事などが混在して行われる場所という単位を捉えて、その場所を管理する方に措置を求めていきたいと思っております。
 具体的な措置内容については、混在の対応も非常に複雑でいろいろなパターンがありますので、この検討会でも御議論を頂いていたような、建設業や製造業で既に示しております元方管理指針といったガイドラインも参考にしながら、いわば混在作業の指針のようなものを示し、円滑に進めていってはどうかと。なお、建設業や製造業、造船業については、既に業種に着目した統括管理がなされていると。その際に、業種をまたがる人が更に混在の中に入ってくるときに、統括管理の中に組み込んで実態として管理していただいているという実態もあります。そういうことを既にやられている場合には、今回の措置を重ねてやっていただく必要は当然ないというようなことも、明確化してはどうかと思っております。
 次のページに、参考になるような事例も挙げております。17ページは文言修正ですので、飛ばします。18ページは、安衛法第31条や31条の2といったような、いわば特別の規制について、いろいろなものがあります。これについても、規制対象となっている物、規制対象となっている建物等について、実態を踏まえて拡大することについて検討してはどうか、追加することについて検討すべきではないかということでした。条文を並べてごっちゃにして議論していても、なかなかイメージが湧かないということで、19ページにありますように、それぞれの条文で規制している対象が異なりますので、20ページ以降に別紙マル4として、それぞれの条文が何を目的として何を規定しているのか、これについてどういう論点をやるべきなのかを個別に整理いたしました。
 20ページ目の別紙マル4-1ですが、第31条に基づく措置です。これは、特定事業、建設業、造船業の注文者のうち最も先次にいる方に対する措置です。例えば、足場やクレーン、局排装置といった、建設現場や造船現場で皆が使用するようなハードの設備について、きちんとしっかり安全基準を満たしたものにしてくださいと。これを、注文者のうち一番トップにいる人に求めている措置です。この法律条文の元の条文が、労働者の労働災害を防止するためといった書き方になっていて、実際、個人事業者等も足場の上に乗ることもありますが、このような書き方になっていたと。こういう限定を付けておく必要はないのではないかということが、論点になります。あとは、業種拡大や対象物の拡大の部分については、現時点でこういったようなことが問題になっているとか災害が起きているといったことは特にありませんので、論点としてはこの部分でいいのではないかと思っております。
 21ページ目は、化学設備や特定化学設備を分解したり清掃したりする際の措置です。要するに、中にどんな物質が入っていたか分からないで、いきなり飛び込んで被災してしまうことがないように、中にどういうものが入っていたかを書面にして通知をして、請負が重層になるごとにきちんと伝達をしていくというような仕組みがありました。これについても、対象が労働者限定になっておりますので、これを限定しておく必要はないのではないかという観点です。
 次の第31条の3についても、これも建設業特有の独特な規制ですが、くい打ち機や移動式クレーン、車両系建設機械といった機械を用いてチーム作業を、「特定作業」と法律上言っていますが、複数の事業者がチームを組んで作業をやるような場合、立入禁止区域や作業の指示系統、作業内容をきちんと連絡・調整してくださいという規定があります。これについても、労働者限定になっているわけですが、実際、そのチームの中に個人事業者等が入ることもありますので、この限定をかけておく必要はないのではないかということです。
 続いて第33条の関係です。これはリースに着目した規制で、ある機械を貸す側、借りる側、その機械を操作する側、この3者について、それぞれ必要な事項を求めております。これも、労働者限定になっているという問題に加えて、対象の機械が移動式クレーンと車両系建設機械と不整地運搬車、高所作業車の4つに限定されているわけで、これら以外に対象にすべき設備は本当にないのであろうかと。例えばフォークリフトやショベルローダー、フォークローダーといったような不整地運搬車の仲間である機械も法令上はあるのですが、こういう機械がリースされていないかというとそういうわけではなくて、危険ではないかというとそういうわけでもありませんので、対象に追加する必要が本当にないのかと。対象に追加するのであれば、関係者に求める措置も追加することがあるのか、ないのかといったことを御議論いただければと思います。
 25ページです。第34条の関係は、建築物貸与者の措置ということで、1つの建築物を誰かに貸す場合、1人の人に丸々貸す場合はいいのですが、複数の人に貸す場合については、例えば建物で共用の避難用出入口の保持や警報設備の統一など、なかなか借りた個々の事業者ではどうしようもないことがあるわけで、これを建物所有者、貸与する側がしっかりやろうという条文になっております。これも労働者限定となっております。そのほか、用途が事務所と工場に限定されており、その2つしかないと。実際の災害の事例なども見ますと、運送業の着荷主としては事務所や工場だけではなくて、スーパーマーケットのバックヤードや倉庫といった場面での災害も実際に起きているので、追加する必要が本当にないのか。また、措置についても、建物のハード面の措置として非常に限定的な事項が定められているのですが、実際、作業場となる場合の通路の保持や墜落危険箇所の防護や、今省令で定められている事項以外に追加するべき事項はないのかという観点もあります。後ろに参考となる災害事例も付けさせていただきました。
 (4)については、真ん中の赤字ですが、発注者以外の災害原因となるリスクを生み出す者に対するいろいろな周知については、別途検討されているフリーランス新法をはじめとしたフリーランスに関する施策とも連携して、幅広なチャンネルを用いていろいろな関係者に周知していくことが重要ではないかという御指摘がありました。支援の部分については、特段変更しておりません。駆け足でしたが、論点1の関係は以上です。
○土橋座長 説明ありがとうございました。それでは、ただいまの資料に基づいて御議論いただきたいと思います。御発言いただく際は、資料番号と該当部分を明示してくださいますよう、お願いいたします。オンラインの方は、システムで挙手をお願いします。御意見いかがでしょうか。それでは、本多委員、お願いします。
○本多参集者 日建連の本多でございますが、資料2の4ページについて3点、それから8ページ、9ページまで数点ずつ御意見を申し上げたいと思います。まず、全体的にですが、今回の修正案につきましては、様々な御意見を真摯に御検討いただき、非常に納得できる部分は多々あるかとは考えています。その中で、4ページについて3点ほど申し述べたいと思います。まず1つ目は、死亡又は重度な負傷を伴う事故の範囲の詳細については別途通達等で示すとされておりますが、現実面での混乱を避けるためにも、検討会におきまして、あらかじめ重度な負傷を伴う事故の範囲を検討することが必要ではないかと思います。
 2つ目は、個人事業者等が死亡又は重度な負傷を負うのは脳心、あるいは精神事案を除けば、ほとんどが小規模災害、小規模零細な建設現場であると想定されますので、改正内容を周知徹底させるためには、相当な期間を要すると思われます。そういう意味では、当面は罰則が適用されない訓示規定とするか、あるいは施行までの猶予期間を一般的な場合よりも長期間とすることが求められると思います。
 3つ目は、個人事業者等が元請となっていたり、単独作業中に被災する事案が多いので、報告事項の全部又は一部を把握していない場合には、その限りにおいては作業場所を管理する事業者に報告義務が生じない例外規定を設けることも1つの案だと思っております。
 次に、8ページの保護具の使用や作業方法の遵守についてです。法第22条以外の条文に基づく省令における立入禁止等に関する条文の所につきましては、その改正の要否も含め、引き続き議論するとされております。この辺は是非とも、個々の条文について具体的に検討をさせていただければと思っております。また、保護具や作業方法の周知に関する規定ですが、ここは個人事業者に対して必要な指導等を行う義務を課すとされ、かつ必要な指導等の範囲は別途検討して通達で示すとされております。しかしながら、現時点ではまだ事業者に対して周知義務が課せられることが決まっていないと思っております。そういう意味で、事業者に対して周知義務が課せられるのか、また、周知義務が課せられた場合であっても、どのような事項を周知する義務があるか、あるとされるのかについて、ある程度明確になった時点で実行性の確保をするためにも、現場の実態を踏まえながら改めて議論を行うことが必要かと考えます。
 次に、9ページの安全衛生教育の受講、危険有害業務に係る健康診断の受診等の所です。この個人事業者等につきましては、先ほどの資料にもありましたが、様々な現場を転々としながら短期間ずつ稼働する場合が非常に多うございます。そこで、注文者に対して、個人事業者等に対する教育・健診等に関する情報提供や、受講・受診期間について配慮を求めることを、短期間しか稼働しない場合についてまで義務付けることについては、現実的ではないと考えます。また、安衛則に規定されております危険有害業務に係る健康診断のほとんどは、いわゆる常時性を要件としております。これも、これまでも御説明した内容であります。一般的な建設事業者では、個人事業者等の稼働状況を把握することが困難な場合が多いと考えられますために、危険有害業務に係る健康診断に係る配慮は通達に基づく行政指導にとどめるべきではないかと考えます。
 14ページ、15ページの建設業、造船業及び製造業以外の業種の混在作業場所における連絡調整でございます。これについて措置義務の主体は、一の場所を管理する者とし、法第30条に基づく連絡調整等を参考に、具体的な措置内容をガイドライン等で示すとされております。ここで安衛則ではなく、ガイドラインに規定し行政指導を行うということであれば、問題はないと考えます。御提示のとおり、事情が異なる様々なケースに対応するには、法令ではなく、ガイドラインが適切であることを改めて申し上げたいと思います。以上でございます。
○土橋座長 はい、御意見ありがとうございました。事務局から、お願いします。
○船井安全課長補佐 事務局から、幾つか御回答させていただきたいと思います。頂いた御意見のほとんどは御指摘のとおりで、例えばですが、災害報告の範囲については、この検討会でしっかり議論をしてということも含めて、そのとおりでございます。正に、しっかりやりたいと思います。
 その上で、1個誤解があったかなというふうに感じましたのが、8ページの所で、必要な指導の範囲は別途検討するという部分について、事業者に対してまだ周知義務が課せられていない部分について、課せられるかどうか議論して、課せられるとすればどういうものか改めて議論をというお話だったと思います。ここでまず書いてありますのは、まず基本的には、22条の関係で既に周知義務が課されたものについて対象にしていて、保護具や作業方法について周知が課されている、それはまず確定している。では、周知が課されたものについて、「周知だけでいいのですか」という部分が大分この検討会での議論がございましたので、法令上の義務としては周知し、その上で、これはガイドライン、通達等でお願いするべき事項として、周知したものについてもしっかりやってくださいということを個人事業者さんに対して指導等を行うと。これは、ガイドライン事項としてお願いしたいと思います。
 まだ論点2で議論できていない安全関係の部分については、これはまだ先の話で、もし仮に義務が入るのだったら同じような形でということです。ここの指導等の内容について、何か具体的に示して何か足かせを課すということではなく、周知した事項を守ってくださいというのは非常に簡単なことですが、それをやるときに、どういう言い方をすると指揮命令になってしまって偽装請負になってしまうかということを別の論点で整理したいと思っており、こういう言い方をするのであれば、それは安全上の指示なので指揮命令ではないのですよねというのが明確にできると、事業者さんとしても躊躇せず、堂々と言えると思うのです。そういうことを別の論点で整理したいということでございます。
 あとは、教育や研修の部分について、何か配慮するということを義務付けるということではなくて、「きちんと健診を受けていますか、もし受けていないのだったら我々はこういうのをやるので、費用は負担になりますが一緒にどうですか」というのを何らかの形でアナウンスするとか、また、教育についても、「こういう作業があるけども特別教育を受けた経験はありますか、もし受けていないのだったら、きちんと受けてくださいね」という確認と周知というところがメインになるかと思いますので、御理解いただければと思います。
○本多参集者 ありがとうございます。
○土橋座長 オンラインから3件ほど来ていますので、まずは鈴木委員、お願いします。
○鈴木参集者 経団連の鈴木です。御指名ありがとうございます。私からは、資料2の6ページ、別紙マル1の業務上災害の報告について発言をさせていただければと思います。事務局からお示しいただいた修正案は、例えば報告対象について、原則として脳・心臓疾患や精神障害の事案を除くなど、これまでの私の発言も一部お酌み取りいただき感謝しています。とはいえ、やはり報告主体は個人事業者自身とするのが適切ではないかと考えています。これまでの検討会の発言と重複する部分もあろうかと思いますが、事業場を管理する事業者、今回の資料では災害発生場所を管理する事業者という表現になっていますが、このような方々が報告をすることが困難あるいは適切ではない理由を3点申し述べたいと思います。
 1点目は、単独では報告が難しいということです。業種・業態によって状況は異なると思いますが、事業場を管理する事業者が個人事業者と請負契約を直接締結しているとは限りません。事業場にどのような個人事業者が入り、どのような作業を行っているか把握できていないケースも少なくないと会員企業からも聞くところです。報告事項を業務上災害の概要を把握するために必要な項目に絞ったとしても、被災した個人事業者を特定して被災状況や災害発生原因を聞き取るなど、個人情報を含む情報の取得に要する負担は小さくないと考えます。
 2点目は、現行の運用実態の否定につながりかねないという懸念です。前回の検討会でも御紹介しましたように、一部の業界では事業者が契約関係にある個人事業者の被災状況を聞き取り、自社の労働者と同様に報告するケースもあると聞いています。報告主体を事業場を管理する事業者とした場合、既に機能している運用実態の否定につながりかねないことを懸念するところです。
 3点目は、報告主体となる事業者が、個人事業者の災害防止責任を問われかねないことへの懸念です。過去の検討会におきましても、報告する事業者が災害防止策を考えるような体系の必要性に言及するコメントもあったところです。事務局案では、施設や設備に起因する災害のみならず、不安全行動に基づく災害も報告対象となっていますが、事業場を管理する事業者が、このような災害も含めて防止する措置が義務化される、この将来的な懸念、その端緒となるということを懸念する次第です。
 以上により、報告主体は原則として個人事業者本人とすることが適当と考えています。以上です。
○土橋座長 事務局から、お願いします。
○船井安全課長補佐 御指摘ありがとうございました。3点御指摘いただきました。また、この点につきましては、次回以降も議論を深めさせていただければと思います。現時点で、私どもでこの資料を作るに当たり想定していた事項で、一部お答えになればということで御回答いたします。
 まず1点目の、なかなか把握が難しい部分があるというところについては、御指摘のとおりだと思いますが、2点目と関係してくるのかなと思っております。例えば災害発生場所を管理する事業者といったときに、ある工場を想定しますと。そこには工場の管理者がいるわけですが、その工場の中で例えば、建設工事若しくは改修工事のようなものがその一角で行われていたと。そこの工事の関係者の1人に個人事業者の方がいて、そこで被災したという事案があったときに、では、その災害を誰が報告するのか。工場を管理している工場主さんが報告するのか、若しくは工場の中で行われている建設作業現場を管理している建設業者さんがやるのか。そこは、恐らく後者のほうが、災害の把握可能性、実態に適したものを報告できるという観点でいえば適しているのではないかなと思います。今回お出しした資料では、まだそこら辺の詳細が詰め切れておりませんので、次回以降、議論させていただきたいと思います。
 3点目の災害責任の部分ですが、災害発生場所を管理する方に報告を出していただくというのは、まず効率的に、なるべく幅広い災害をカバーするという観点で、そういうものを設定させていただいておりますので、必ずしもその場所で起きた全ての災害について責任を負うべきだということを言っているものではありません。資料にも、注書きでその旨を書いておるのですが、この点は施行をするに当たりましても、十分趣旨が伝わるようにしたいと思っております。脳心・精神に限らず、不安全行動や、その場所を管理しているからといって、どうしようもない災害は実際あると思いますので、そういった例示も含めて誤解がないようにしたいと思います。
 以上申し上げました点も含めて、次回以降、より詳細に議論を深めさせていただければと思います。以上です。
○土橋座長 よろしいでしょうか。それでは、引き続きオンラインの出口委員、お願いします。
○出口参集者 出口です。よろしくお願いします。先ほど発言がありました本多委員、鈴木委員と同様の内容になると思いますが、お二方の御意見に賛同いたします。検討会の方向性につきましては、個別の論点で意見が異なる点もありますが、参集者の皆さんがおっしゃることはおおむね理解、認識しております。ただ、現場で起きている問題だけに対応しているわけでもなく、後追いではないと建設業では認識しています。再発防止に注力している部分も過去にはありましたが、現在ではICTの活用等により、より戦略的な展開を講じております。今後どうなるべきか議論をしながら、リスクの発生や管理可能性に着目して、関係者にも相応の役割を担ってもらう方向性で検討していくことに異論はありません。
 業種・種別の特性を踏まえた検討と、「検討に当たって留意すべき点について」ですが、特に検討会の下に必ずワーキングの設置を求めているわけではなく、前回の資料に記載がありました追加ヒアリングや、3月16日に参集者を中心とした建設業団体との意見交換等の調整を実施していただいたように、関係団体との調整を丁寧に図っていただく方向性で異論はありません。また、このような意見交換等の調整の場をもつことが課題への対応、将来的な検討課題の把握につながっていくと考えておりますので、継続して丁寧な調整をお願いいたします。
 その中で、同じような発言になるのですが、別紙マル1の「業務上災害の報告」について、この報告対象は、死亡は明確ですが、重度な負傷とはどのような範囲で、お考えでしょうか。また、報告主体が、災害発生場所、事業場等を管理し、事業者の義務となっておりますが、これらは論点にあった建設業であれば、元方事業者ということでしょうか、それとも、先ほど御説明にあったように、詳細な部分については議論して進めていくという形で認識してよろしいのでしょうか。2点をお伺いいたします。
○土橋座長 事務局からお願いします。
○船井安全課長補佐 御質問、ありがとうございました。まず1点目ですが、死亡報告対象ですね。死亡以外の重度なという部分ですが、これは正に今後、この検討会で詳細を議論させていただきたいと思います。まず、1つのスタート地点として、労働者死傷病報告であれば、休業災害、詳細に報告を求めているものとして、休業4日以上の災害というのがあります。そこは1つのスタート地点としては考えられますが、それより厳しくなることは当然ないという前提ではあります。ただ、休業1か月とかなのか、若しくは、我々はよく労災の等級を使うのですが、そういうメルクマールで災害の重篤度を測るのか。ただ、それは報告時点ではなかなか確定しませんので、どういうメルクマールで、報告の時点でこれは対象になる、ならないというのがぱっと分かるかは、これから皆様のお知恵も借りながら議論していきたいと思います。
 2点目の報告主体につきましては、建設業の場合でいえば、その建設作業場を管理している方ということで、元方事業者を想定しております。仮にそうではないことが、実態把握、報告の観点で、より適しているということがありましたら、また次回以降、御議論させていただければ有難いと思います。以上でございます。
○土橋座長 それでは、オンラインの三柴委員、お願いします。
○三柴参集者 まず、冒頭に申し上げたいのは、安全衛生だから労災防止という結果を重視するということで、議論の当初に、労働者性についての議論は外すことにしたわけです。だからこそ、それだけ結果志向で、どうすれば労災が防げるかという観点で個別の議論を展開しなければいけないということが1つです。それから、前に御紹介した海外の例も参照すべきだとは思います。厳しい国のハードルをそのまま日本に持ってくるのがいいとは私も思っていないのですが、その定めに参考になる点は多いと思います。海外では厳しく定めているけれども、日本ではガイドラインということはあっていいと思います。結局、民事責任に反映されるので、意味はあると思います。
 以上が総論で、その上でちょっと個別の話ですけども、まず、スライド4枚目、あるいは9枚目にも関わるのですが、報告の部分ですね。ここについては、基本的には事務局案に賛成です。一方で、実行可能性は考えなくてはいけなくて、もし、本当に思いっきり重篤な災害のみに対象を限定して、あと、精神も外し、それから、軽微なものについては業界団体等の自主性に委ねるような形にして終わると、恐らく報告が乏しく、数字が出てこないことになりかねないかと思います。
 だから、重篤の部分についてはしっかりとエンフォースすることと、それから、業界団体等に委ねる部分については、縷々申し上げるように、業界団体等が安全管理を担っていくのだと。そのため、必要な情報は取って、PDCAをしていくというふうに持っていかなければいけないだろうと思います。逆に言えば、そういうことができる団体等には一定のメリットを提供することもあっていいと思います。だから、そこは共同規制ですね。厳しい規制と、それから、自主性を重んじる規制と両方、両にらみでやっていく方法が、ここでも徹底されるべきかと思います。更に言えば、要するに、労災を防ぐための報告がそのまま法的な責任に結び付くことがないように、そこは通達で書いていただくのがいいのではないかと思います。
 次に、保護具の点、スライド7枚目です。化学物質管理についての昨今の政策でも示されているように、保護具というのはデフォルト、政策上も実際の労災防止上も基本中の基本になる部分だと思います。今回、とにかく個人事業者等の労災も防いでいくこととして、その実行策を議論しているわけですので、ここは確実に確保すべきだろうと思います。現在の事務局案に基本は賛成なのですが、実際、指導をしても言うことを聞かないと、何度言っても聞いてくれないというような個人事業者等に対しては、注文者側で、だったら働かせないというような間接強制があってもいいのではないかと思いますし、現に、現状でもそこまでしないと、民事上は責任を負うと思います。
 最後に、スライド9枚目に関わります。ここで改めて海外の制度の例も参考にするならば、注文者がやるべきことをやるという姿勢はもう少し進めないといけないと思っていまして、要するに、注文する条件設定ですね。これは日本の制度は余りやってこなかったわけだけども、受注する側がきちっと講習を受け、知識を持つことを、注文者、発注者側がもう少し確認していくと。その方向付けは必要だと思います。だから、事務局案も、それはお願いベースでということから始める考えだと思いますが、そこはもう少し厳しくしてもいいのではないかと私は思います。以上です。ありがとうございました。
○土橋座長 御意見、ありがとうございました。会場からございますか。では中村委員、どうぞ。
○中村参集者 私は、御説明いただいた案に基本的に賛成です。その中で確認させていただきたいのは、単なる言葉の綾なのかもしれないのだけれども、例えば7ページ目などに、「労働者以外の者に対しても、労働者と同様の遵守義務を設ける」とありまして、「労働者以外の者に対しても」というのは、個人事業主に当たるという意味で理解していいのでしょうか。
○船井安全課長補佐 今御質問いただいたのは、7ページ目の一番上の黄色の所でしょうか。
○中村参集者 そうです。
○船井安全課長補佐 これは個人事業者に限定されませんでして、労働安全衛生法第22条に基づいて、最高裁判決を踏まえて改正した省令の中で、立入禁止関係については、必ずしも請け負わせた作業者だけではなくて、ある場所の近くにいる、そこで何らかの作業をしている、要は請負関係でも何でもない出入りの業者とか、そこで何らかの作業に従事する者というのが対象に入ってきますので、労働者以外でそこで作業に従事する者、すなわち個人事業者も入れば、出入りの業者も入るということです。
○中村参集者 分かりました。私が言った意味は、その作業場の安全管理ということを考えると、例えば当該事業所の中の労働者に対して課していることと同じようなことを、その他の人もきちんと従ってもらわなければいけないという意味で、この言葉が出てきたのだろうと思ったのです。同じ文章があちこちに出ているので、確認させていただきました。なぜ確認したかという意味は、これは個人事業主の案だったので、そういう確認をさせていただきました。趣旨は、その作業場にいる人には同じような条件で守られるように指導してほしいという意味での意見です。
 2点目です。9ページに教育のことがあったと思います。教育については、私は、個人事業主の安全をどう担保するかということが、今回の討議の基本にあると思うのです。そのときに、仮に請負期間が短いとしても、それはその事業主がと言うよりも、例えば公的機関も含めて、個人事業主に何らかの教育をするということを含めて、この9ページの文章があるように理解したのですが、それでは理解しすぎでしょうか。
 具体的なことを言いますと、今、市原市は、市で働く中小の事業者に対して、安全教育を市としてしなければいけないのではないかということを言っております。そういうことを含めて、この文章は単に雇うほうの事業主だけを相手にしているのではなくて、この個人事業主の安全を守るために、こういう教育を考えていかなければいけないという意味ではないかと思ったのですが、それは間違いでしょうか。
○船井安全課長補佐 間違いではございません。まず、個人事業者がある作業場に入ってきて、危険有害な作業をします。それに伴って、御自身が被災されてもいけません。若しくは、教育をしていないことで、危険有害作業を共同してやる、若しくは隣接してやる労働者に危害を及ぼしてはいけない。この2つをカバーしなければいけないと思っています。
 まず第1に重要なのは、個人事業者自身がしっかりと必要な教育を受けていただくことです。それを実現するために、その場所なりを管理する、若しくは仕事を注文する注文者が、それがなされるように配慮をしていただく。この2つが重要だと思います。今、先生がおっしゃったのは、個人事業者自身がしっかりと教育を受ける義務を果たす際に、何らかの支援といった部分が必要なのだろうなということなのではないかと思いました。ただ、その支援の部分についても、危険有害な業務の教育を義務化すると、その義務の部分について、どういう支援ができるのか、果たして支援ができるのかという部分がありますし、義務の部分は義務として、そうではない部分は幅広な支援をと、そこら辺は今後、運用段階に向けてよく整理していきたいと思います。
○中村参集者 分かりました。全部発注者に課してしまうと守られないこともあるので、もう少し広く捉えていただけたほうがいいと思って、個人事業主の安全確保という意味で言いました。
 もう一点です。13ページの所で、今日御説明いただいたので大変有り難いと思って聞いていました。何かと言うと、個人事業主の安全指導と偽装請負との関係については、どこまでやったらこれが安全指導の範疇であるかを具体的にやっていくとおっしゃったので、雇う立場から言うと、そこをしっかりと明確にしてほしいということは強い要望だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。説明を聞いていて納得いたしました。
○土橋座長 オンラインから鹿野委員、お願いいたします。
○鹿野参集者 1つ質問いたします。資料2の6ページについてです。どういう方向性を支持するかということはひとまず措いて、言わば法技術的な観点からの質問です。ここで報告対象については限定しているけれども、それ以外についても、可能な範囲で関係者に報告をさせるようにするのだというような御説明がありましたし、そのことが下のほうの※の所に記載されていることの趣旨として聞いておりました。その意味についての確認なのですが、義務としての報告対象や報告主体については限定するけれども、それ以外の情報収集については、例えば努力義務規定とか訓示規定などを設けるというようなイメージなのでしょうか。
 もう1つ付随的な質問としては、仮にそうであるとすると、それが行政との関係でどの程度の実効性が上がるのかということについて、お聞かせください。私自身が民事法を専門としておりますので、その点について行政との関係で、義務以外の形でどういう措置を設ければ、どのように効果が上がるのかというところについて、必ずしも十分に把握していないところがありますので質問させていただきました。よろしくお願いします。
○船井安全課長補佐 この部分については、※で書いてあるとおりなのですが、報告を求めるという形ではなくて情報提供していただくという形にしておりまして、報告とは一線を画していると御理解いただければと思います。
 報告対象、報告主体をきっちりと定めて、きっちり出していただくもの、これは限定的になるわけですが、そうではないものについて、例えば実際に働いておられる個人事業者の立場としては、こういう災害も起きているということを行政として把握して、場合によってはアクションを起こしてほしいというような意向もあるかもしれません。若しくは、ちゃんと報告すべきものなのに、労災隠し的な形でやられてしまうのは看過できないといったようなことを考える個人事業者もいらっしゃると。そういった方が、法令になるのか通達になるのかというのは今後の議論だと思いますけれども、行政が定めたルールにのっとって情報提供できるという道を開いておくということは、非常に重要なのではないかと思います。
 そういう仕組みを用いて、どれぐらいカバーして、どれぐらいの件数を把握できるかというのは、未知数な部分はあると思うのですが、漏れなくというのは難しいかなとは理解しているところです。お答えになっているか分からないのですが、現時点で考えているのは、そういったところでございます。
○鹿野参集者 「報告」と「情報提供」で言葉が分けられていることは分かりましたが、むしろ先ほどは、その具体的な手法と、どの程度効果が上がるのかということについて質問をさせていただきました。この点についても、ある程度のお答えは頂いたものと理解しました。ありがとうございます。
○土橋座長 小野委員、発言をお願いします。
○小野参集者 資料2の25ページについてです。先ほども説明があったのですが、物流、運送事業にとっては、実際の現場は様々な諸業によって成り立っていますので、建築物貸与者について規制対象が限られているのは問題があると思います。是非とも、事務所、工場に加えて、例えば運送で言えば物流センターや倉庫、あるいは自動車ターミナル、車庫、駐車場といった、幅広い賃貸物件があるので、そういった所も含められるような表現を考えていただきたいと思います。
○土橋座長 山脇委員、お願いします。
○山脇参集者 まず1点、総論的に発言させていただきます。これまでも申し上げましたが、本検討会は労働安全衛生に関わる規制のあり方を含む対応策を検討していく場ですので、具体的にどの案を選択していくのかについては、先ほど三柴先生からもお話いただいた海外の知見も含めて、法的な見地からしっかり示していただきたいと思います。この点、今後、どのように進めるお考えのか、現段階での事務局の見解を聞きたいと思います。
 次に、各論について発言いたします。
まず、業務上災害の報告について。6ページに事務局の修正案をお示しいただいております。私としては、事業場を管理する事業者に義務付けるという方向性については、賛成の立場です。その上で、何点か申し上げます。
 まず1つは、報告対象についてです。死亡又は重度な負傷を伴う事故の詳細は別途示すとされていますが、私としては、労働者死亡・傷病報告と同様に、休業4日以上を基本に検討してはどうかと考えています。
 2点目は報告主体について。死亡又は重度な負傷を伴う事故の場合であっても、個人事業者自身、又は各種団体からも任意に報告を行えるようにすべきと考えています。
 続いて、報告事項について。必要な項目を選定となっておりますが、項目についても死傷病報告と同程度とすることを基本に検討してはどうかと考えています。
 最後は、罰則の適用について。今回示された案には記載されておりませんが、これまで一定の免責事項を設けた上で罰則を設けるべきと発言してきたところですし、前回、公益の先生からも、この点は御賛同いただいたものと承知しております。罰則適用の取り扱いについて、事務局から見解を頂きたいと思います。
 併せて、今回の案では触れられていませんが、個人事業者の就業状況の把握について。災害報告のみならず、事前に事業場において、個人事業者の就業状況を確認しておき、行政として監督指導にいかすことで、労災の未然防止に努めていくということが本来のあり方ではないかと思っています。個人事業者の就業状況に関して、行政への報告を義務化する、あるいはそれが難しいとしても、記録として残すということを別途検討しておく必要もあるのではないでしょうか。
 それから、保護具の使用について。三柴先生からも、させない措置、いわゆる間接規のも選択肢ではないかというご発言がありました。これまでも私から同様の趣旨で申し上げてきたところです。
 そうした中で、今回示されたマル1において、必要な支援を行うとしていただいたことについては、これまでより一歩前進と受け止めております。ただ一方で、通達止まりにした場合に、当然、罰則の適用はできないと思います。適切な指導を行っていない事業者に対して、行政として、どのように指導監督を行うのか。また、通達止まりだと実効性の確保について疑問な点もありますので、更なる対策が必要だと思います。
 また、マル1は、事業者に対しては通達止まりなのに対して、マル2は、個人事業者に対して法令で対応すると記載されており、両者のバランスという観点で疑問があります。個人事業者に対して規制を設けることで、ある意味で請負のほうが事業者にとってのリスクが低いというような間違った誤解が生じ、いわゆる偽装請負、偽装雇用の呼び水になってしまうのではないかと懸念するところです。この点は強調しておきたいと思います。
 続いて、15ページの混在作業の関係です。こちらはリード文で考え方を具体的に列挙していただいているので、わかりやすいと思っています。本来であれば、混在の実態があれば、業種にかかわらず実施をするのが望ましいという考え方に変わりはありませんが、今まで、こうした連絡調整が法的に何ら規制されていなかったということを踏まえると、まずはここに示されている考え方で取組を進め、その後、検証を行った上で、拡大することも選択肢にしていくということであるならば、この案については賛成できると考えています。
 つぎに20ページからの災害事例と拡大すべき対象の範囲です。まず、1~5ですが、記載にあるとおり、労働者に限定する必要はないと思いますので、事務局案に賛成です。
 その上で、23ページの4の規制対象にされている機械、あるいは規制対象とすべき場所については、災害事例の分析を基に、対象の選定を進めるべきと考えております。具体的には、23ページあるいは25ページに、参考としてスーパーマーケットのバックヤード、倉庫、あるいは車両系の荷役運搬機械が記載されておりますが、これらでは実際に事故が起きていることを踏まえれば、少なくとも規制の対象に加えるべきと考えます。
○土橋座長 幾つか質問がありましたので、事務局からお願いいたします。
○船井安全課長補佐 数が多かったので、漏れがあったら御指摘ください。
 まず、1点目ですが、個々の論点について法的整合性、若しくは海外の法規制との並びであるとか参照といったところも含めて、三柴先生をはじめ、法律の専門家の確認をということですが、これについては、頂いた御意見も踏まえて、今後しっかり対応していきたいと思います。まずもって、別途御指摘のあった、いろいろ出た案の中から、なぜこういう案を事務局として提示したのかという部分については、補強可能な部分があれば、書き足りない部分がありましたら、もう少し丁寧に書きたいと思いますので、まずはそこからスタートさせていただければと思います。
 災害報告の部分については、個人事業者自身とか団体が、要は報告義務の対象になっている部分についても任意で情報提供できるのかという部分ですが、そこまで考えが及んでおりませんでした。基本的には情報提供できるというようにすべきかなと感じております。
 罰則の部分については、現時点で事務局としましては、ここに罰則を付ける、罰則を付けないというのはあえて書いておりませんで、そこも含めて御議論いただければとは思いますが、指揮命令関係にもなくて、出入りの人の部分も報告しなければいけないというような特殊性を踏まえると、なかなか難しい部分はあるのかなとは思っております。
 就業状況についての報告義務等の観点です。事務局の考えとしましては、基本的には個人事業者が労働者と同じ場所で、同じような作業をやっている場面を捉えて、対策をお願いしていくということがメインになると思います。それは、現在やっている事業場に対する立入調査の場面において、事業者にいろいろ聞く中で、個人事業者が事業場に入ってきて作業をしている状況があるかを確認して、その上で「いる」ということであれば、新たにこういう義務が入った、若しくは今後検討しているものが法令若しくはガイドラインに位置付けられれば、こういうことをやらなければいけないということで、法令に基づくものはしっかり履行を確保して、ガイドラインのものについても、状況も踏まえてしっかりと指導、要請をしていく形になろうかと思います。したがいまして、全体的な状況の把握というよりも、実際に立ち入ったところで、そういった実態があるかどうかというのは丁寧に把握して、しっかりと手を打っていくということかなと思っています。
 あとは、周知の部分です。させない義務の部分です。実効性を確保できるのかという部分と、個人事業者のほうは法令で対応するので、事業者のほうとバランスを欠いているのではないかということですが、我々の考えとしては、バランスという観点で言いますと、労働者と個人事業者のバランスという意味で、労働者については、労働災害を防止するための必要な措置、若しくは協力ということが安衛法の第4条に書かれておりますので、それとのバランスで、同じようなものを個人事業者の労働者的側面についてはしっかり求めていくのが、バランスとしてはいいのかなと。その上で、個人事業者が労働者として保護される労働者的な側面と、あくまでも個人事業者ですので、自分自身でしっかりとやっていただくということもありますので、そういったこともよく踏まえながら、そういう面に応じて、何をどう役割分担していくかというのを、納得性がある形でお示ししていくということが、今後議論を詰めていく上で重要になってくるかなと思っております。
 頂いた御指摘については、真摯に受け止めさせていただきまして、今後の検討に役立てていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○土橋座長 ほかに御発言はございますか。田久委員、お願いします。
○田久参集者 今出された意見も含めて、今日出された事務局修正案については、総論としては、この方向で是非進めていただきたいと思っています。
 その中で、先ほど来あるように、6ページの災害の報告の関係です。1つは、山脇委員が言われたように休業4日。通常、労働者に求められているものの位置付けというのは、その方向性のほうがいいのかなというのは、私自身も感じるところです。
 また、個人事業主が加入する業種・職種別の団体、ここから情報提供するということはあるのですが、1つは、特別加入団体は安全措置をしなくてはならないという義務がありますので、ここは少しランクを上げてもいいのではないかと思います。安全措置もしない状況で、ネット上で誹謗中傷をするような団体も含めて目立っているので、きちんと安全対策を組めるということであれば、きちんと情報を整理しなければ難しいと思いますから、こういったところはそういう位置付けに上げていく必要はあるかなと思います。
 次に、9ページの教育と健診の関係です。教育に関して言うと、個人事業主だと休んでということもありますから、この辺に対する支援のあり方の検討は、この場でもあるのか、違う所なのか分かりませんが、検討していただくのと同時に、ここの特殊健診の部分でいくと、これを受ける病院が少ないということは、この間ずっと言われてきています。私たちの仲間の中からも、そういった所がなくて、県に1つしかなくて、県内の遠い位置からだと行く気にもなれないという、今でさえそういう状況なので、その辺の改善などは是非、関係の部署なども含めて、今後検討されるかどうかというのは、質問という形になります。
 それと、先ほど来あるように、15ページの混在作業の関係は、私自身もこの部分は、このままの関係で是非進めていくべきではないかと思っています。この間でいくと、混在作業であったとしても、そういう業種として認められていないと言うか、なっていないところも含めて、対象にしていくべきではないかと思っています。
 最後ですが、災害事例と拡大すべきという所ですが、資料の4の1~5では、この部分で言うと、先ほどの山脇委員同様、私自身も労働者に限定する必要はないというところで、是非進めていただきたいということが強い要望ですので、こういうことによって、個人事業主の安全衛生の措置というか、安全と健康を守るという意味では、そういったところはきちんと強めていくということで進めていただければなと思います。
○土橋座長 健康診断の病院が少ないという点については、事務局からございますか。
○中村産業保健支援室長 特殊健康診断を受診できる所が少ないというのは、個人事業者に限定する課題ではなくて、労働者も含めての課題で、この場で検討するということではないと思いますが、問題としては我々も認識しておりますので、またしっかりと検討させていただきたいと思います。
○土橋座長 是非よろしくお願いいたします。大木委員、お願いします。
○大木参集者 資料2に「団体」という言葉が出てくるのですが、例えば5ページの一番下の行に、業種・職種別団体は周知しなければいけないとあって、それはしなければいけないと、我々団体としてもしなければいけないとは思っております。
 ただ、4ページの黄色の案3の部分に、「個人事業者自身による報告を原則としつつ、物理的に報告が困難な場合は、団体や作業場所を管理する者とする」とありまして、団体が報告するということになると、私も今日は建専連という団体として出ていますし、傘下に鉄筋組合、左官組合というような団体があるのですが、個人事業主はそういう団体に所属していない人がほとんどだと思うので、団体が報告するというのは非常に難しいと思うのです。これを質問します。
○船井安全課長補佐 4ページ目の案3の部分だと思うのですが、こういう御意見も踏まえて、案として併記させていただいて、御議論を頂いたところです。御指摘のとおり、団体に報告を義務付けるといった場合に、加入していない人をどうするのだという話になります。それは、個人事業者自身に義務付けたときも、団体に加入していなくて重症の場合はどうなるのだという話も出ていたと思います。そういったことも踏まえて、今、事務局提案として出させていただいた資料のとおり、一定の災害対象について、災害発生場所を管理する事業者の義務として出していただくと。その上で、個人事業者自身とか、所属されている団体といった方に情報提供していただくような仕組みにできればなと思っております。なので、現時点では、団体に提出を義務付けるといった流れにはなっておりませんので、御理解いただければと思います。
○土橋座長 ほかはございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、論点1について様々な御意見を頂き、ありがとうございました。事務局においては、本日の議論を踏まえた整理をお願いいたします。
 続いて、論点3について、前回の議論を踏まえて整理した資料に基づいて議論を進めていただきたいと思います。議論に先立ちまして、事務局から資料説明をお願いいたします。
○船井安全課長補佐 よろしくお願いいたします。続いて、資料3番の論点3の関係について御説明いたします。こちらの資料も、これまで出させていただいたものに、前回、初めてちょっと長めにフリーディスカッションをしていただきましたので、そこで出た意見というのを3ページ目以降に赤字で追記をしております。例えば(1)の所では、業務上災害の報告に過重やメンタルというものをひっくるめてしまうというのはなかなか難しいのではないかということで、団体から報告させるといったようなことも適当ではないかという意見や、個人事業者による取組として、やはり個人による取組を促すというのが基本であるなど。あとは、個人事業者で団体に入っていない人に対する啓発が必要であるといったような意見がいろいろな観点から出されております。また、発注者による取組等ということで団体の活用。団体がない所は、しっかりと団体を作っていくような取組が必要であるなど。あとは、ITの関係ではエージェントがしっかりグリップできる立場にあるので、そういったことの活用というのも重要なのではないでしょうかと。あとは、ちょっと特殊なケースなのかもしれませんが、個人事業者自身が働き方をコントロールできないような場合、発注者等がかなり場所や時間というのを指定してしまうような状況というのがあるので、そういった場合については、そういう指定を行っている、条件をコントロールできるような人にしっかり措置を求めていくべきなのではないかというような御意見がありました。こういったことも踏まえて、5ページ目以降で論点を見直しています。修正部分については、論点1の資料と同じように赤字で書いております。
 まず、(1)です。個人事業者等の脳・心臓疾患及び精神障害事案の報告の関係です。この脳心・精神事案については、1個目の赤い四角の所にあるように、ポツを4個ほど並べておりますが、なかなか脳心・精神の事案の原因特定というのは難しい場合があったり、発注者や仕事の受託に関わる人に報告を求めた場合に、なかなか個人事業者に不利益な取扱いになってしまって、そういったような働き方を阻害するようなことにもなるのではないかと。また、メンタルについては、個人情報の保護にも非常に留意しなければいけないですし、個人事業者が、みんな労災の特別加入をしているわけでもありませんので、なかなか団体を通じてというのをメインにするのも難しいということも踏まえて、まずは、ほかの業務上災害の報告とは区別をした上で、脳心・精神の事案については、個人事業者自身が監督署に報告できるような仕組みをつくって、それを関係団体や特別加入団体も含めた団体が支援をしていくという形にしてはどうかというように整理しております。
 個人事業者等の「等」の部分、中小企業の経営者や役員さん、これは所属の企業がありますので、そういった所に災害報告の場合と同様に報告を頂いてもいいのではないか。また、兼業・副業的な観点で言うと、個人事業者が個人事業者として働く傍ら労働者としても働いている場合、逆のほうがしっくりくるかもしれないですが、労働者が兼業・副業で個人事業者的に働いている場合の脳心・精神というのは、なかなか判断が難しいなということも論点に入れてはどうかということです。
 続いて、6ページ目です。個人事業者の健康管理のあり方です。こちらは、個人事業者の健康管理はこれまでずっと議論してきましたが、まずは自分の心身の健康状態は自分で把握をして、その結果を踏まえて必要な対応を行うことを基本にしてはどうかということです。その上で、その取組を促していくためにいろいろなことをやってはどうかと。まず、一般的な健康管理については、個人事業者の方が労働者であれば、年1回受けているような定期健康診断と同じような内容のものを、保険者が実施する特定健康診査なども活用してちゃんと年1回受けていただく。その上で、その結果に基づく精密検査といったものを受診してくださいということで、国が促していくということ。長時間の就業による健康障害の防止については、個人事業者が自らの就業時間を把握して、また、疲労が蓄積することがないような、ちゃんと睡眠・休養を確保するための体調管理をやっていってくださいということを促していこうと。
 また、働きすぎにならないように促す。その際に、どういう基準が働きすぎになるのかという観点で言うと、同じような形態で働いている労働者の方であれば、こういう水準なんですよというのを参考にしていただきながら、望ましい水準として示して、そこに収まるようにしてくださいというのがいいのではないでしょうかと。あと、この部分は変更していませんが、そういったものを自分で管理をしてアクションにつなげていくためには、ツールやアプリを活用していただくことがいいのではないかということです。メンタルについても、ちゃんとストレスチェックを受けていただいて、その結果を踏まえて面接指導などにつなげていただくということを促してはどうかということです。
 7ページ目です。今言った健康管理以外の、もうちょっとフィジカルな部分の健康についてです。個人事業者の方が、例えば、自宅で働くような場合も結構あると思いますが、そういった部分も含めて、働く場所の環境については、しっかり自分自身で確保していただくように促すのがよいのではないかと。その際の作業机や椅子、若しくはパソコンのディスプレイや入力機器などについても、労働者であれば守ってほしいガイドラインもあるので、そういうものも参考にして適切なものを促していってはどうかということです。あと、個人事業者のヘルスリテラシーの向上について、関係団体と協力して啓発を進めていくことも重要ではないかということです。
 8ページ目の(3)です。個人事業者等に対して、健康リスクを生み出す者による措置のあり方です。これは、ある意味、ちょっと限定的なケースになるかもしれませんが、赤字で書いている、発注者等から依頼される業務の性質上、就業時間が特定される場合の対応ということです。では、どういう場合に、そういうシチュエーションになるかという例示を幾つか挙げています。こういった特定のケースで働く個人事業者を想定したものですので、今からこの(3)で御説明する事項は、広く個人事業者全般ということではなくて、こういうちょっと特殊な働き方をされる方に対しての措置だということで御理解を頂ければと思います。
 例えば、1日に配送すべき荷物の量が指定されていて、好きな時間だけ働くというようなことがなかなか難しい、発注者等が日々の業務量といったものを具体的に管理・指定しているようなケースもあると思います。あと、映画の撮影現場のように、いつから撮影を開始して、いつ終わるというのは、もう監督さんが仕切っているような部分、自由に業務量や業務時間をコントロールできないようなケースもあると思います。あとは、個人事業者が発注者等の事業場に常駐して、例えば、ITやプログラマーなどの客先常駐というのがあると思います。そして、発注者等の労働者や他の個人事業者の方と共同でプロジェクトに当たっているような場合、これはなかなか好きな時間に好きなだけやるというのは難しいのではないか。このようなケースについて、例えば、個人事業者に仕事を発注したり、その仕事を管理するような方たちに対してどのようなことを求めていくことが考えられるのか、長時間の就業になりすぎないようにするためには何を働き掛けていけばいいのか、長時間就業による健康への影響が出ないように、安全衛生を損なうような長時間就業とならないような配慮というのも求めていってはどうか。図らずも長時間になってしまったような場合、発注者等に対しては、どのようなことを求めることが考えられるのでしょうかということ。若しくは、その際に、個人事業者から求めがあった場合に、医師による面接指導を受ける機会をこの発注者等が提供するといったことについて、どのように考えるかということです。
 メンタル不調の予防についても、発注者に対してどのようなことを求めることが考えられるか。健康診断の受診に当たっても、健診費用というのを安全衛生経費として契約に盛り込むことについても、どのように考えられるかということ。あと、作業環境に関連した健康障害の防止について、発注者が依頼する業務の性質によって、その就業する場所というのが決まってしまう場合もあると思います。これは、発注者が管理できる場所の場合もあれば、発注者側が管理できない場合もあると。いずれの場合についても、ちゃんと適切な環境確保のために必要な措置が講じられているということを発注者が確認すべきではないかと。発注者が管理しているのであれば自分で確認すればいいのですが、管理していない場所、どこかレンタルのスペースなどといった場合であれば、その場所で働かせる就業場所を指定するので、その働き場所になる場所を管理している方と発注者の方がコミュニケーションを取って、ちゃんと適切な環境になっているかというのを確認するということも重要なのではないか。
 適切な環境としては、労働者であれば、例えば室内の温度管理や気積、明るさやトイレなど、そういったことが考えられます。今申し上げたようなちゃんとした環境になっているかという確認については、これは何も個人事業者だけではなくて、労働者の場合でも同じことが言えるわけで、あるAという所で雇われている労働者の方が、Bという事業場に常駐をして何か作業を行うといったときに、では、Bという事業場の環境はどうなのでしょうか。これは、Aではなかなか管理できないので、ちゃんとAがBとコミュニケーションを取って、しっかりした環境になっていますかというのを確認するということが、やはり労働者の場合でも必要なのだということです。
 最後に支援の部分です。今までいろいろな意見が出ました。団体を通じた支援、例えば、健診やストレスチェックに関する支援、健康管理に関する研修や情報提供といった部分を、業界団体、IT分野であれば仲介業者さん、こういった個人事業者を支援する団体がある場合には、そういう団体を通じて展開していくことがいいのではないかと。2個目の○にあるように、そういう団体に対して情報提供等の支援を行うと。また、団体がない業界については、これは時間が掛かるかもしれませんが、業界団体等の形成を促すような取組を進めるということも重要ではないかということです。
 それに加えて国は、団体に対する支援のほか、個人事業者等の健康管理を支援するために、下に書いてあるようないろいろなことをやってはどうかと。幅広い周知・広報であったり、ツールの提供若しくは労働者向けに展開している産業保健総合支援センターや地域産業保健センターについても、個人事業者であったとしても、特別加入者のような方についてはしっかり門戸を開いて受け入れていくということも必要なのではないかということです。論点3については以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。ただいまの資料3に基づき御議論を頂きたいと思います。御発言いただく際は、該当部分を明示してくださいますようお願いいたします。御発言、いかがでしょうか。森委員、お願いします。
○森参集者 今回の個人事業者の健康問題は、論点3に書かれているように、やはり個人自身がいろいろなリスクなどを理解して取り組まないと成果がでない要素が極めて大きくて、できることは、ヘルスリテラシーの向上を含めて全般的に支援していくことなどに限定されるかと思います。その中で、実効性を上げるためにいろいろ工夫していかないといけないのではないかと思うような点を、各論になりますが3点ほど、意見を言わせていただきたいと思います。
 まず、5ページの脳・心臓疾患及び精神障害の発生について、個人事業者自身が報告するという部分です。この点もこれが限界かなとは思います。というのは、こういった業務起因性の健康障害の場合、有害要因にばく露をしているかという情報がなければ、業務起因性の話にはなりません。このようなばく露に関する情報、長時間労働になっているということは、個人事業者自身しか分からない状況では、本人が報告するしかないのかなと思っています。一方で、個人が監督署に報告することは、当然のことながら、個人に何かいいことがあるとか、価値があるということに結び付かなければ、報告はされないと思います。個人に報告させることが、本人にどのような価値があると想定しているかということを、このページについては確認をさせていただければと思います。
 2点目は、6ページについてです。ここには、長時間労働のチェックを個人でしましょうという話や、高ストレス判定をされた場合の自身で取るべき対応が書かれています。この場合の医師による面接指導とか、看護職、心理職による健康相談という、その行動の受皿が書かれています。体調不良があって医療機関に掛かるとか、健診を受けて、特殊健診を受けた後で精密検査に行くというような場合においては、医療又は健診機関という受皿があるわけですが、医師による面接指導というのは、通常、健診機関に行ったらすぐ受けられる枠組みがあるわけでもなく、当然のことながら、医療の世界ではそういう受皿がないわけですので、この実施の受皿は、そもそも何を想定されているのかということを確認をさせていただければと思います。先ほどの業界団体の役割は非常に大きいのかなと思っています。
 もう一点は、8ページ、発注者からの依頼があって就業時間が特定される場合の対応についてです。最初の○の中に、長時間にならないような配慮をちゃんとアルゴリズムその他でやってくださいということがあります。これについて、最初のときにも少しお話があったかと思いますが、私は、やはり勤務時間インターバルの話はちゃんと入れるべきではないかなというように思っています。来年度から始まる医師の働き方改革では、医師は年間1,860時間まで、指定を受ければ時間外労働が認められるという、極めて長時間労働を許容している状態になるわけですが、この場合、長時間労働と面接指導だけではなくて、24時間の中で9時間の勤務間インターバル、又は46時間働かないといけない場合は18時間の、その中での勤務間インターバルというものを連続して取るといった制度になりました。これは、1日、2日という単位で疲労を残さないようにする、残してしまうと、医療の安全やその他に大きな影響があることも背景にあると思っています。今回、このような就業時間を特定される場合の中には、車の運転をされるような方もかなり含まれている可能性があるので、やはり睡眠が6時間未満になるようなことがあると、安全上のリスクが極めて高くなることも含めて、長時間労働だけではなくて、勤務間インターバルの話を、具体的に明示していただきたいと思っています。以上、3点です
○土橋座長 では、質問について事務局からお願いいたします。
○中村産業保健支援室長 3点頂きましたが、まず、1点目の個人に報告をさせるというか、することができるという仕組みにしたときに、個人にどういうメリットがあるのかということです。これは、通常のほかの業務上災害の報告義務とは性格が異なっていて、ここに書いてあるように、報告することができる権利のような形ですので、必ず全て報告をしていただくというのは、恐らく、脳心や精神という事案の性質上は難しいだろうなと思っています。恐らく、こういう仕組みを作ったとしても、個人が自分には報告をするメリットがないというように判断をすると、この仕組みでは先生の御指摘のとおり、必ず報告されるというわけではないだろうなと思いますけれども、逆に、例えば、発注者との関係で、厳しい発注条件であったり、そういうことで自分がこういう業務上災害に遭ったのだということを監督署のほうにも情報として知っていただいて、どういうことができるかというのはあると思いますが、例えば、必要に応じて、その監督署のほうから調査をしたり指導をしたりということにもつながっていくようなことも考えられると思います。そういうことも含めての価値を見いだしていただいて、そういう方が報告をしていただくというところから、まずは始めるところが今時点での出せた知恵というところです。なかなか悉皆的に脳心・精神を個人から報告させる、把握させるというのは制度として難しいのかなということで、今の選択肢としてお示ししているのが今の案です。
 2点目の、過重労働になったときの面接指導の受皿という点については、ちょっとほかの部分にも書いてありますが、特別加入をしていただいている方であれば、地域産業保健センターが面接指導やストレスチェックとかの受皿にはなりますので、加入していただいている方はできると思います。それは加入されている方なのですが、特別加入団体とか、フリーランスの人を支援していただいているような団体が、そういうサービスを提供しているという例もあります。全く団体に加入していないような方については、なかなか今すぐ受皿があるかというのは難しいのですが、例えば、これは有料だと思いますが、民間のサービスを使っていただいたり、あとは、本当に心身に不調を来しているような場合は、もう病院に行っていただくというような対応から始まるのかなというように考えております。
 3点目のインターバルについては、ちょっと先生の御指摘も踏まえて、また事務局のほうで検討させていただければと思います。
○森参集者 ありがとうございました。よろしくお願いします。
○土橋座長 それでは、オンラインから、高山委員、お願いします。
○高山参集者 ITフリーランス支援機構の高山でございます。発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。私のほうからは、IT関係の立場からの発言となることを御了解いただければと思っております。全般的にフリーランスの安全衛生を高めるというのは非常に重要な取組ではある一方で、結果的にフリーランスの仕事といいますか、発注が控えられるような状況というのをできるだけ回避しながらフリーランスの安全衛生を高めていくというふうな、そういった取組が基本的な考え方になればいいというふうに思っております。
 それを踏まえまして、まず、資料3の5ページの個人事業者等の脳・心臓疾患及び精神障害関係の報告の所ですけれども、基本的に事務局の御意見に全面的に賛成でございまして、個人のほうから報告していただくというところが、基本的に中心になってくるのかなと。そこに向けて、特別加入団体やITの場合は仲介事業者の存在がございますので、仲介事業者がサポートしていくような、そういった取組が一番いいというふうに考えております。
 6、7ページの部分につきましては、個人自身の健康管理のあり方という所ですが、こちらのほうも事務局に記載していただいていますとおり、基本的には個人のほうで、御自身で健康管理をしていただく。それを団体やエージェントがサポートしていくというふうな、そういった仕組みが一番いいというふうに思っています。それを踏まえた上で、長時間の就業に関する記述が真ん中のほうにございますけれども、一定、目安の時間を示すというところは賛成はするところではあるのですけれども、フリーランスの方につきましては一定期間、多数の案件、複数の案件を掛け持ちで意図的にやりながら報酬を高めていったりと、年間を通じて自身の稼働する時間やこなす案件をコントロールしていくという方がいらっしゃいますので、そこを含めてある程度の目安というところで強制力のないような、そういった提示が重要になってくるのではないかというふうに思っております。
 それから8、9ページです。こちらのほうはリスクを生み出す者の措置のあり方というところで、IT関係でいきますと、8ページ上の赤丸のマル3に該当するケースが非常に多いというふうに思っておりますけれども、こちらにつきましては基本的に冒頭で申し上げましたとおり、個人事業主への発注が消極的にならないように、発注側の過度の負担などを求めるような、そういう取組にならないほうがいいというふうに思っています。とは言いつつも何か、やはり手は打たなくてはいけないので、そこで、個人のほうから相談できる窓口というものを整備して、そういった窓口があるということを広く周知して気軽に相談ができるような、そういう仕組みづくり。例えばエージェントがそういった役割を果たすこともできますし、あるいは特別加入団体という所がそういった窓口を設置し、その辺のサポートをするということは十分に考えられますので、そういった取組が推進強化できるような、そういった考え方で仕組みづくりができればいいというふうに思っております。
 それから、最後の10ページ。個人の支援のあり方ですが、こちらのほうも事務局からお示しいただいている案に全体的に賛成するところでございます。あとは、三柴委員からのお話もありましたとおり、こういった支援をする団体・企業がメリットのある仕組みをしていただくことが促進するポイントかなというふうに思っております。例えば、非常に力強く支援しているような企業には優良認定を与える。そういった取組をすることによって、他のエージェントに比べて差別化要因になりますので、そういう仕組みづくりというものが重要になると思っております。私からは以上です。ありがとうございました。
○土橋座長 御意見ありがとうございました。それでは、オンラインから三柴委員、お願いします。
○三柴参集者 論点1から3まで、事務局の整理に敬意を表したいというのが、先ず申し上げたい点です。特に論点3については、基本は自己管理だけれども、健康管理を支援する、また、リスク管理者にも責任を負っていただくという姿勢に賛成いたします。その前提でですけれども、まず産業保健について労働者以外に保護なり支援を拡大しようということになると、マクロ的な視点では、労働法での規制から、ひいては経済法での個人事業者の保護というところの強化にシフトしていく、あるいは連携していくということになると思います。
 その間に、労働法の外縁に、外枠のほうに派遣法があったり、家内労働法という準労働法のようなものがあるから、そういったものを活用していく。労働法から経済法のほうにシフトしていかざるを得ないのだけれども、中間の規制もあるという、そういう体系・流れになるだろうと思います。その際、先ほど派遣法と申し上げましたけれども、スライドですと8枚目で、プラットフォームをどうするという論点が挙がっておりました。前に申し上げたとおり、イギリスではプラットフォームの議論は派遣と似ているから、その規制を応用するという示唆がHSEのWebサイトにもあります。その考え方は日本にも当てはまるだろうということと、ただしプラットフォーム、特にデジタルプラットフォームではアルゴリズム管理によるプレッシャーを考慮しないといけないと思うので、それを考える必要があると。それを派遣法の援用の際にも考慮することと、それから、家内労働法にある労働条件一般についての規制の仕組みというのは、多分使えると思うのです。家内労働法を少し変えるだけでも、ある程度デジタルプラットフォームに適用ができると思います。家内労働法では手帳による管理や、過重負荷を与えるような発注については停止命令が労働監督で出せるような仕組みも書かれておりますので、それはかなり応用が利くと思っております。
 それから、次で最後ですけれども、スライド5枚目についてです。先ほどの高山委員の御意見と共通するのですけれども、やはりこの課題への対応で一番重要、恐らく実効性を持つと思われるのは団体の形成支援ではないかと思います。団体というと、フリーランスとの関係では業界団体、仕事を与える側と働く側、就労者の団体が考えられますけれども、どちらでもいいので、あるいはいずれも形成を支援していくことが重要だと思います。
 これも高山委員と同意見ですが、ここに行政でブランディングをしていくと。しっかり働き方を健康に保っていっている団体に対しては、しっかりやっている所だという認定を与える。団体側も、補償の仕組みにつなげる、ビジネスを支援する、ワンストップ機能を獲得していく。そのことで、注文者、お客さんに対しても、うちの団体を通じて仕事を頼むとBCPが確保できる、ちゃんと一定の人に安定して仕事をやってもらえる条件になるという形を取ることが重要かなと思います。
 そのことで注文者側にも一定の安全費用を、健康費用の負担をしてもらうと。少し高めでもここに頼めば安心だという材料作り、基盤作りができるのではないかというふうに思っております。その中で、特に危険業務がある場合には、免許制にするということも考えられるというふうに思っております。以上です。長くなりまして失礼しました。
○土橋座長 御意見、大変ありがとうございました。それでは鈴木委員、オンラインからお願いいたします。
○鈴木参集者 御指名ありがとうございます。資料3の9ページについて発言いたします。今回、健康診断の受診の促進に関する新たな論点として、健診費用を安全衛生経費として契約に盛り込むことについてどう考えるかというものがあります。この内容については明確に反対の立場を表明したいと思います。
 御案内のとおり、労働者の場合には、健康診断で有所見者になった場合、事業者が医師や歯科医師の意見を踏まえて必要な措置を講じる体制になっています。個人事業者については、健診の事後措置の仕組みがありませんし、また、仮にそのような仕組みができたとしても、現状として徹底する前提がない中で、健診費用だけを契約に盛り込んでも安全衛生対策の実効性に乏しいのではないかと考えます。もちろん、広く健康の保持増進の意識を高めるために健診の受診を促すことを否定するスタンスではありません。例えば、行政による助成措置も考えられるかもしれませんし、個人事業者が加入する国民健康保険の中には、健診や特定健診を廉価あるいは無料で行う自治体もあると聞いています。まずは、公的支援の強化を積極的に行うとともに、そのようなサービスを個人事業者にPRすることが重要ではないかと考えています。以上です。
○土橋座長 御意見ありがとうございました。それでは、会場のほうから山脇委員、お願いします。
○山脇参集者 何点か手短に申し上げます。
 1つは、フリーランス新法との整合という観点です。例えばフリーランス新法14条には、ハラスメントに関する措置義務の規定が設けられております。こうした規定も参考に、過重労働、メンタルヘルス、健康管理についても、何らか応用できるものがないかという視点で、事務局には検討をお願いしておきたいと思います。
 また、5ページの脳心及び精神の関係の報告につきまして、個人事業者本人の報告に加えて、特別加入団体も報告することは認められるべきと考えます。
兼業との関係でいうと、やはり通算の問題は大きな論点だと思っております。先ほども触れましたが、個人事業の形態を利用した労働時間規制の潜脱行為が拡大するという懸念からも、やはり通算については、何らかの規制を行っていく必要があると考えています。
 6ページ、個人事業者等の健康管理のあり方については、自ら促していくことが基本ということは理解しますが、促す、ということだけで実効性は担保できるのかどうかは引き続き検討が必要だと考えます。また、先ほど健康診断費用について、鈴木委員から御意見がありましたけれども、私は、むしろこれは契約の中にしっかりと経費として盛り込むべきではないかと考えています。
 8ページの長時間労働の就業による健康障害の防止について。先ほどの法の潜脱行為とも関係しますが、たとえ個人事業者が希望したとしても、何ら規制がない中で長時間労働が横行すれば、健康障害の増加につながりかねません。事務局から御提示いただいております安衛法の3条3項の配慮義務に含めていくことについては、もちろん賛成の立場ですが、これだけで実効性が上がるのかという点で疑問があるということ指摘をしておきたいと思います。〇の2つ目の所で、就業時間が特定されるような場合については、義務化も含めて検討いただけないかと思っているところです。
 (3)の健康リスクを生み出す者に対する措置のあり方の、健診費用を契約に盛り込むことについては、先ほど申し上げたとおり、経費として盛り込むべきだと考えております。作業環境による健康障害等の防止についても、労働者と同等の安全衛生水準を享受すべきという基本的観点に立てば、それぞれ発注者、あるいは建築貸与者が確認すべきという結論に至ると思っております。以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。1点、質問がございました。お願いします。
○中村産業保健支援室長 1つ、頂いたフリーランス新法は、これから国会で審議をされることになると思いますけれども、当然そことの連携を意識しながら進めていきたいと思っております。脳心・精神の報告を特別加入団体ができるのかということです。一応ここで示している案としては、原則個人、本人に報告をしていただくのですけれども、特別加入団体が支援することを妨げているわけではありませんので、そこはそういうやり方も可能だということです。
○土橋座長 時間が過ぎて申し訳ありません。もう少し続けさせていただきます。オンラインの出口委員から手が挙がっておりましたので、お願いいたします。
○出口参集者 出口です。資料2の5ページにあります1つ目の〇のポツの4つ目で、「個人事業者は労災に特別加入していない者も多い」と記載があります。今までの各委員の御発言のとおり、団体支援も非常に重要で、考えるべきことですが、その中で災害補償制度は、第8回及び第9回検討会の論点1で主な意見がありました。やはり、個人事業者が災害に被災した場合や、疾病、長時間労働による健康障害、例えばメンタル不調等についても、充実した災害補償制度が基本的に必要ではないかと考えております。今回の検討会では、対象外ということでしたが、特別加入制度を根本的に見直し、考える時期に差し掛かったのではないでしょうか。今後継続して議論という形で加えていただくように、お願いいたします。要望です。
○土橋座長 御意見ありがとうございました。それでは、清水委員、お願いします。
○清水参集者 ありがとうございます。EC物流の個人事業主についてですが、前回もお話があったように、点呼もやっていないので何時から何時まで働いているのか分からない。アマゾンフレックスの例でいうと、8時から22時の14時間ですね。この間で8時間とか4時間という区切りで雇用されているのですけれども、実際は副業とか、名前を別にしたりして14時間目一杯、それと、交通事情で行き来する時間を入れたら16時間以上となるわけですね。それぐらいドライバーは働いているのですけれども、個人事業主ということで荷主企業、発注者というのは何も関知しない。
 日本の運輸行政でいうと、法人の場合は時間規制があるわけです。でも、個人になると時間規制がないということで、フリーに使われている、働いている人がいると思います。マスメディアでも報道されていますけれども、置き配で乱暴に荷物を取り扱ったりというのは、AI配車で100件以上の納品を強いられて、それで8時間で終わるわけはないのですよね。そういう配車をされて、アマゾンさんだったらアマゾンの社員と同じように使われているのだけど、個人でやっているので委託配車ということで、時間規制を受けない。そういうことで、メンタルヘルスにも大きく影響していると思います。先ほど睡眠時間の話がありましたけれども、法人の運送事業ですと、休息時間を必ず取らせないといけないとなるのですけれども、個人事業主の場合は、もう分からないですね。だから、発注者側とか荷主側にしっかりその辺を管理させるというのも必要かなと。
 あとは、この人たちの事故の多さですね。団体にも所属しておりませんし、企業にも所属しておりませんので、すごい事故を起こしています。事故の件数の把握も、本来だったら発注者側や荷主側にさせたほうがいいのではないか。僕ら、法人の運輸行政とは全く違う、抜け道のようなところなので、法人で請け負っている会社というのも中にはあるのですけれども、数少ない。そこが今のEC物流の個人事業主に逃げられているというか、荷主側、発注者側のいいように運用されているのかなというので、そこはしっかり規制をしていかないと、この人たちの健康診断とか時間の規制とかというのは全く守られない。初めて社会に出る人がアマゾンフレックスに入れば、アマゾンの仕事ができると思って入るのですけれども、実際はAI配車で100件とか200件の配送依頼を受けて、もうとんでもないと。個人事業主の営業なんかも取ってこないと、フレックスの作業ができないのですね。そこのギャップに圧倒されて、メンタルヘルスを支障したり、健康障害を負ったりということが大勢あると聞いております。そういったところを、発注者とか荷主サイドに規制させたり報告させたりというのを、是非お願いしたいと思います。以上です。
○土橋座長 実態の御説明と御意見、ありがとうございました。三柴委員から手短にお願いします。
○三柴参集者 1点だけ。特別加入者の脳心とか精神事案での労働時間というのは何かという点について通達を出していただくと、かなり大きな意味があると思っています。以上です。すみません。
○土橋座長 ありがとうございました。時間は過ぎておりますが、特に御発言は。それでは、青木委員、お願いします。
○青木参集者 住宅生産団体連合会の青木です。今までのお話、いろいろ伺っていますと、やはり団体の支援というものが非常に重要であると思いました。ただ、一方で団体に加入していない個人事業者が多いという事実もあります。なぜ団体に加入しないかという理由を明確に調べる必要もあると思いますし、また、恐らく加入費とか会費、そういったものも大きな障害になっているのではないかと思います。そういった費用に対しての、例えば国の補助とか、9ページにもありましたけれども、費用を安全衛生経費として契約に盛り込むというような、団体加入経費といったものを入れてしまってもいいのではないかと思いました。手短ですが、以上です。
○土橋座長 御意見ありがとうございました。それでは、よろしいでしょうか。では、今日は多方面から様々な御意見を頂き、ありがとうございました。事務局におきましては、ただいまの論点3につきましても、本日の議論を踏まえた整理をお願いいたします。
 それでは、最後になりますが、その他として事務局から何かございますか。
○船井安全課長補佐 連絡事項ですが、今回は、今年度最後の開催になります。次回は、正式には後日改めて御案内させていただきますが、年度明けて4月21日(金)の午後に開催を予定しております。本日の議事録につきましては、参集者の皆様に御確認いただいた上で別途公開することとさせていただきます。以上でございます。
○土橋座長 よろしいでしょうか。それでは、本日は長時間にわたりまして活発な御議論を頂き、ありがとうございました。それでは、以上で第10回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会を閉会いたします。ありがとうございました。