薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会(2023年3月15日)

日時

令和5年3月15日(水)
14時00分~17時00分

場所

オンライン会議

出席者

委員

杉本部会長 大塚委員 桒形委員 児玉委員
瀧本委員 多田委員 頭金委員 戸塚委員
二村委員 松藤委員 渡辺委員  

事務局

近藤食品基準審査課長 田中室長  冨士原専門官
竹田専門官 清水主査  
 

議題

  1. (1)審議事項
    • 第10版食品添加物公定書について
    • L-システイン塩酸塩の規格基準改正について
  2. (2)報告事項
    • 令和2~3年度マーケットバスケット方式によるアルミニウムの摂取量調査の結果について
    • その他

議事

議事内容
○事務局 それでは、少し早いですが、「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会」を開催いたします。本日は御多忙のところ、御出席いただきまして誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。
まず初めに、部会をオンラインで実施する上で、委員の皆様に御注意いただきたい点について確認をいたします。
 御発言のとき以外には、基本的にマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。発言時以外にマイクがオンになっておりましたら、事務局側がミュートとさせていただく場合がありますので、御了承ください。
 また、御発言がある場合には、まず、挙手機能やコメント機能を用い意思表示していただき、意思表示を頂きましたら、部会長又は事務局が御指名をいたしますので、その後に御発言ください。御発言の際には、最初にお名前をおっしゃっていただくようお願いいたします。
 また、部会長から委員の皆様に、審議事項について、認めることでよいか等の確認を頂くことがありますが、チャット機能を用いて意思表示をお願いしております。了承いただける場合には、チャットで「異議なし」等を御入力いただきますようお願いいたします。注意事項は以上です。
 続きまして、本日の委員の出席状況を報告いたします。本日は、原委員と三浦委員から御欠席の連絡を受けております。現時点で添加物部会委員13名中11名の委員の皆様に御出席を頂いておりますので、本日の部会が成立することを御報告いたします。
続いて、資料の確認をいたします。あらかじめお送りしておりますが、議事次第と委員名簿、資料1-1から1-5、資料2-2から2-3、資料3及び参考資料1から3があります。
 それでは、議事の進行を杉本部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○杉本部会長 本日は年度末のお忙しい中、お集まりいただき、どうもありがとうございます。活発な審議をお願いしたいと思っております。前回は雪が降るような感じの天気でしたが、今日は非常に天気も良く、良い感じで暖かく、新橋から歩いてきたのですが、ちょっと汗だくの状態でこの審議会に挑んでいるところです。天気も良いことですので、なるべく活発に御意見等を頂けると良い会議になるかと思っております。
 それでは、始めたいと思います。まずは、事務局から本日の部会に関する利益相反の確認結果について御報告をお願いいたします。
○事務局 本日の部会におきましては、審議対象のL-システイン塩酸塩が利益相反確認対象品目となっております。当該品目につきまして、本日の部会において退出が必要な委員、あるいは議決に参加できない委員はいないことを確認しております。以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。問題ないですね。それでは、議題1の「第10版食品添加物公定書について」に関して、審議を行いたいと思います。まずは、事務局から本議題の概要について御説明をお願いいたします。
○事務局 議題(1)審議事項「第10版食品添加物公定書について」、事務局から紹介いたします。まず、資料の確認をいたします。資料1-1は、諮問書「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の改正に関する薬事・食品衛生審議会への諮問について」です。資料1-2は、「食品添加物公定書に伴う『食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)』の改正に関する部会報告書(案)」です。資料1-3は、「第10版食品添加物公定書(案)」、資料1-4は、「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の改正に係る食品健康影響評価について」です。資料1-5は、「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の改正に係る食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないときについて」です。
 また、参考資料1は、「平成30年10月24日、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会(資料3-1)『第10版食品添加物公定書作成の方針について』」です。これらが、今回の第10版食品添加物公定書に関する説明資料となります。その中で、本日は主に資料1-2、1-3に基づき、事務局から説明をいたします。
 それでは資料1-2を御覧ください。今回説明いたします食品添加物公定書の改正に伴う「食品、添加物等の規格基準」の改正については、「1.食品添加物の規格基準及び食品添加物公定書について」にありますように、食品衛生法第13条第1項の規定に基づき定められた添加物の規格基準について、「食品、添加物等の規格基準」において通則、一般試験法、試薬・試液等、成分規格・保存規格、製造基準及び使用基準が定められております。また、食品衛生法第21条の規定に基づき食品添加物公定書を作成し、使用基準の定められた添加物について当該規格基準を収載することとされております。
 続いて「2.食品添加物公定書の改正及び改正に伴う告示の改正の経緯」について説明いたします。食品添加物公定書は、昭和35年に第1版が作成されて以来、平成30年の第9版の作成まで逐次改正が行われております。食品添加物公定書の改正に際しては、前回の改正以降に設定された食品添加物の規格基準を収載するとともに、一般試験法や成分規格の見直し、既存添加物の規格の設定、記載方法の改良等について検討し、食品添加物公定書の改正に併せて告示の改正を行っております。
 直近の第9版公定書の作成においては、第8版公定書を作成した平成19年から11年を要したことから、次回以降の改正について、第9版公定書より短い期間で作成し、時宜を得た実用的な公定書としての整備を目指すため、平成30年10月24日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会にて報告しました『第10版食品添加物公定書作成の方針』」』にあります2点、<1>成分規格について第10版食品添加物公定書作成検討会(以下、「検討会」という)で検討を行い、結論が得られたものから告示に向けた作業を進め、第9版公定書の追補とする。また、意見募集の機会を増やし、より販売等の実態を踏まえた内容とする。<2>通則、一般試験法、試薬・試液等について検討会で検討を行い、第9版公定書の全体に影響する改正の必要が生じた場合、告示に向けた作業を進め、第10版公定書を作成する。この2点の方針に基づき、検討会を立ち上げております。
 検討会は、国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部長、佐藤恭子座長の下に立ち上げております。この検討会では、令和4年2月21日までに12回の審議を行っており、その検討結果をもとに、令和2年6月に第9版食品添加物公定書追補1、及び令和4年7月に同追補2を作成しております。更に令和4年8月16日薬生食基発0816第1号「第10版食品添加物公定書の作成のための『食品、添加物等の規格基準』の改正に係る意見募集(周知依頼)」により、上記検討結果に係る意見を募集し、寄せられた意見について検討した上で第10版食品添加物公定書を作成いたしました。なお、第9版食品添加物公定書追補2作成以降に新規指定等された指定添加物についても、「D 成分規格・保存規格各条」等に収載する予定です。
今回については、食品安全委員会より食品健康影響評価の結果等が通知されたことから、食品添加物公定書の改正に伴う、「食品、添加物等の規格基準」の改正について本部会での御審議をお願いするものです。
 それでは、「3.食品添加物公定書の改正に係る告示の改正案の概要」について説明いたします。本来であれば改正案の概要について全てを説明するべきかと存じますが、膨大な量となるため、一部の説明としますことを御了承ください。概要については、本資料に記載しております下記9点となっております。ここからは、資料1-3の「第10版食品添加物公定書(案)」を参照しながら御確認ください。(1)は、既存添加物45品目に係る成分規格を作成しております。作成した既存添加物については、この資料の後ろの別紙1に記載しております。ここで具体例を示します。資料1-3にありますPDF409ページを御覧ください。既存添加物「アグロバクテリウムスクシノグリカン」に関する記載があります。今回「アグロバクテリウムスクシノグリカン」については、新規の成分規格の設定ということで、定義、性状、確認試験、純度試験等で個別の規格を作成して収載するものとなります。このほか44品目に関して、同様の新規の記載があります。
 (2)は、指定添加物105品目に係る成分規格(128項目)、既存添加物59品目に係る成分規格(86項目)、及び添加物製剤2品目に係る成分規格(3項目)について、試験の操作性の改善及び精度の向上、名称及び構造式、用語、用例、計算式等の記載の統一、使用試薬・試液の変更等を目的として各成分規格を改正しております。改正した添加物は、別添2に記載をしております。別添2に関しては、お手元の資料1-2に記載があります。
 ここで1点修正があります。2月10日に開催いたしました薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会における報告にて、『指定添加物「ヤマモモ抽出物」』と記載がありましたが、正しくは『既存添加物「ヤマモモ抽出物」』です。お詫びして修正いたします。
 具体例として、資料1-3のPDF412ページを御覧ください。こちらは「アジピン酸」に関する記載です。今回改正しました部分として、定量法において「新たに煮沸して冷却した水」としていた記載を、「水(二酸化炭素除去)」へ改正いたしました。この改正は、従来の「新たに煮沸して冷却した水」という文言により、「二酸化炭素を除去した水」を用いる場合と、「溶存酸素を除去した水」を用いる場合の2つを指しておりましたが、明確化のために改正するものです。なお、同様の理由で改正するものが複数あります。
 続いてPDF433ページ、「アスパルテーム」を御覧ください。今回改正しました項目については、純度試験において国際整合性の観点から、分析条件(カラムの粒子径及び長さ、カラム温度、移動相、流量)を、JECFAの規格に収載されている分析法に修正いたしました。また、2017年にアスパルテームの混在物である光学異性体(L-α-アスパルチル-D-フェニルアラニンメチルエステル)の上限規格値において、JECFA規格が0.04%以下から0.02%以下へ改訂されていること、高速液体クロマトグラフを用いた簡便かつ一般的な分析法が採用されていることから、分析の実行性及び国際整合性の観点から、規格値及び分析法の改訂を行いました。
 続いてPDF1539ページ、「ルチン(抽出物)」を御覧ください。第9版食品添加物公定書においては、エンジュを原料とした「エンジュ抽出物」のみを収載しておりましたが、定義においてアズキ全草抽出物及びソバ全草抽出物を含めることとし、名称を「ルチン(抽出物)」に改正いたしました。以上が(2)に関する説明です。
 続いて(3)、指定添加物2品目、既存添加物5品目及び添加物製剤2品目に係る成分規格について、1つの品目当たり複数の子規格が設定されていたものについて、それぞれ個別に規定するよう記載整備を行いました。現在の公定書の中には、1つの添加物に2つの規格が設定されているものがある一方、1つの規格の中に複数の規格が設定されているものがあるなど、統一がなされていなかったことを踏まえた改正となります。改正した添加物は、別添3に記載をしております。
 具体例として、資料1-3のPDF426~429ページを御覧ください。第9版食品添加物公定書では、「アスパラギナーゼ」の規格の中に、2つの規格を収載しておりましたが、今御覧いただいていますように第10版食品添加物公定書においては、それぞれ独立した記載をしております。そのほか同様の変更が、先ほど紹介した別添3の食品添加物にございます。
 (4)は、A 通則について、国際整合性、試験の実行性や流通実態との整合性の確保を目的として改正することとしております。具体例としては、資料1-3のPDF2ページを御覧ください。Aの通則3に、原子量に関する取扱いがあります。第9版食品添加物公定書において、通則3は「物質名の次に()で分子式又は組成式を付けたものは化学的純物質を意味する。原子量は、2010年原子量表(日本化学会)によるものである。分子量は、小数第2位までとし、3位を四捨五入する」とされていると記述されております。第10版食品添加物公定書においては、原子量は国際原子量表に基づいていること、また、日本薬局方及びJISでの対応に倣い、次のように改正しております。「物質名の次に()で分子式又は組成式を付けたものは、化学的純物質を意味する。原子量は2015年国際原子量表による。ただし、2015年国際原子量表において原子量表が変動範囲で示されている元素の原子量は、2007年国際原子量表による。また、分子量は、小数第2位までとし、3位を四捨五入とする」と改正しております。こちらが(4)に関する主な改正内容となっております。
 続いて(5)は、B 一般試験法において、科学技術の発展に伴い、元素分析法等の試験法を新たに一般試験法として規定すること。既存の試験法16法について、技術の更新、国際整合性の確保、試験の実行性の確保、試験に用いる器具又は試薬・試液の変更、記載整備等に伴う改正を行うこと。また、適用する品目がなくなったため、メトキシ基定量法を削除することとしております。具体例として、資料1-3のPDF38ページを御覧ください。こちらに、16.元素分析法が新たに設定されております。その他、新設された試験法として、18.残留溶媒試験法、21.質量分析法、31.滴定終点検出法の3試験法があります。続いて、PDF59ページにて既存の試験法に関する紹介をいたします。24.赤外吸収スペクトル測定法ですが、近年急速に普及しつつある減衰全反射法、ATR法に関する事項を測定用試料の調製及び測定の項に追記をしております。また、メトキシ基定量法については、Dの成分規格・保存規格各条の「メチルセルロース」、PDF1428ページでのみ適用されておりましたが、「メチルセルロース」の各条規格定量法のメトシキ基の定量法がガスクロマトグラフィーを用いる方法に改正され、D 成分規格・保存規格各条内に試験方法が記載されたため、B 一般試験法を削除いたしました。以上が(5)に関する概要です。
 続いて(6)は、C 試薬・試液等において、新たな一般試験法の設定や成分規格の規定に伴った試薬を追加すること。試験の操作性の改善及び精度の向上、国際整合性、流通状況の反映、試薬・試液の旧名称の記載削除、用語、用例等の記載の統一等を目的として改正することとしております。資料1-3のPDF146ページを御覧ください。36行目に、試薬・試液として「DPPH試液(0.2 mmol/L)」が新たに設定されておりますが、こちらの設定に関しては既存添加物「精油除去ウイキョウ抽出物」の成分規格の新設に伴うものです。
 続いてPDF148ページを御覧ください。122行目の「L-アスコルビン酸2-グルコシド、定量用」です。今回、名称の括弧書きの(定量用)で始めるものを付け加えております。理由ですが、従来から定量用の試液については、その名称の最後に定量用を付しております。定量用を成分冒頭に付けると検索性が悪いため、名称の最後に付けて、50音順での順序を維持するためです。ただし、成分規格などで記述する場合、名称中に「、」があると読みにくいため、成分規格中では「定量用」で始める名称を用いておりました。つまり、1つの試液を指す用語が2つある中で、試薬・試液の部においては、前者、本ページのような名称のほうですが、こちらに具体的な定義、調製方法を記載し、もう片方では「●●を見よ」として、掲載しておりました。しかし、試薬の増加に伴い、これらの管理が複雑になってきたため、今回、前者の名称の後ろに後者の名称を置くとして、後者の規格は削除する。つまり「●●を見よ」という項目をなくしております。
 続いて(7)は、C 試薬・試液等において、各品目の参照赤外吸収スペクトルを削除し、D 成分規格・保存規格各条の各品目に必要な参照赤外吸収スペクトルを新たに追加すること。また、計量器として用器の規格を追加するため改正することとしております。参照赤外吸収スペクトルに関して、資料1-3のPDF421、422ページを御覧ください。こちらに関しては、「L-アスコルビン酸2-グルコシド」ですが、422ページにありますように参照スペクトルを新設しております。従来、第9版食品添加物公定書における参照赤外吸収スペクトルに記載されている参照スペクトルの記載箇所の変更です。また、計量器・用器の規格の追加については、PDF399ページを御覧ください。こちらに黄りん発光式酸素計、化学用体積計をはじめ、幾つかの計量器・用器の記載があります。以上が(7)に関する概要の説明です。
 (8)は、D 成分規格・保存規格各条の前文について、組換えDNA技術によって得られた生物を利用して製造された酵素のうち、酵素の定義の基原に係る規定を適用しないものを明確にするため改正することとあります。
資料1-3のPDF402ページを御覧ください。前文において、まず「添加物が組換えDNA技術によって得られた生物を利用して製造されたものである場合には、当該物は、厚生労働大臣が定める安全性審査の手続を経た旨の公表がなされたものでなければならない。」と規定しており、こちらは変更ありません。従来から、この手続を完了した酵素については、成分規格における酵素の定義の基原に関わる規定を適用しない主旨を規定していたのですが、ナチュラルオカレンスなどの安全性審査の対象外との確認を受けたものまで含むように誤解されるとの指摘があったため、「当該安全性審査の手続を経た旨の公表がなされた酵素については、当該酵素の定義の基原に係る規定を適用しない。」と改正するものです。
(9)は、E 製造基準及びF 使用基準において、対象物質の明確化のため、「砂」を削除し、「不溶性の鉱物性物質」を明記することとあります。こちらは資料1-3のPDF1550ページを御覧ください。こちらに関しては、E 製造基準 添加物一般の項、また、PDF1591ページのF 使用基準において、添加物としての販売等が認められていない「砂」を削除するとともに、不溶性の鉱物性物質として、パーライト、花こう斑岩、活性白土、クリストバル石、ゼオライト又はひる石(いし)を明記しております。以上、主な改正項目9つについて、具体例を用い説明いたしました。
 なお、2月10日に開催いたしました薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会において報告した内容から、その後の検討により変更を行った項目が2つあります。1つ目は、新たに成分規格を設定した既存添加物45品目のうちの1つである「分岐シクロデキストリン」を「分岐シクロデキストリン(粉末品)」へ改正いたしました。2つ目は、D 成分規格・保存規格各条「タール色素の製剤」における純度試験について、「マンガン」、「クロム」の項の必要性の再検討を行った結果、必要と判断し、純度試験の項については第9版食品添加物公定書から変更しないことといたしました。
 続いて、これら紹介いたしました告示の改正案の概要に対する「4.食品安全委員会における評価結果」について説明いたします。先ほど説明いたしました告示の改正案の概要のうち、本資料にあります先ほど紹介しました (1)及び(2)における「アスパルテーム」、「エンジュ抽出物」、「過酢酸製剤」、「カラシ抽出物」、「酢酸エチル」、「植物タンニン」、「テルピネオール」及び「二酸化チタン」の成分規格の改正については、食品安全基本法(平成15年法律第48号)第24条第1項第1号に基づき、令和5年2月17日付け厚生労働省発生食0217第14号により食品安全委員会に対して意見を求めたところ、『食品安全基本法第11条第1項第2号の人の健康に及ぼす悪影響の内容及び程度が明らかであるときに該当すると認められる』旨、令和5年3月1日付け府食第106号により通知されております。
 また、3.告示の改正案の概要のうち、(2)ただし、先ほど紹介した(2)における「アスパルテーム」、「エンジュ抽出物」、「過酢酸製剤」、「カラシ抽出物」、「酢酸エチル」、「植物タンニン」、「テルピネオール」及び「二酸化チタン」以外のものと、(3)~(9)については、食品安全基本法第11条第1項第1号の食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないときに該当すると解してよいか、令和5年2月24日付け厚生労働省生食発0224第3号により、食品安全委員会に対して照会をしたところ、『試験の操作性の改善若しくは精度の向上を目的とした試験法の変更、名称の変更又は用語若しくは用例の統一等による規格基準の改正であり、規格値の変更を伴うものではないことから、食品安全基本法第11条第1項第1号の食品健康影響評価を行うことが明らかに必要でないときに該当すると認められる』旨、令和5年3月1日付け府食第107号により通知をされております。
 以上を踏まえ、「5.告示の改正について」として、「法第13条第1項の規定に基づく規格基準については、別冊資料のとおり改正することが適当である。」、別冊資料というのは、資料1-3のことです。「また、改正については、原則、告示から1年の経過措置を設ける。」という案としております。なお、対応にかかる時間等を考慮し、「粗製海水塩化マグネシウム」については、第9版食品添加物公定書から引き続いて厚生労働大臣が定める日、「香辛料抽出物」、「ヘプタン」については告示から2年を予定しております。事務局からの説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○杉本部会長 ありがとうございます。ただいまの事務局からの御説明について、委員の先生方から御質問等はありますか。ありませんか。では、ありませんようですので、ありがとうございます。それでは、全体を通して第10版食品添加物公定書の作成に伴う食品、添加物等の規格基準の一部改正の可否について、御意見等をお願いします。御意見のある方、挙手をお願いします。こちらもありませんね。
 それでは、一通り御審議を頂いたようですので、「第10版食品添加物公定書の作成に伴う食品、添加物等の規格基準の一部改正」の可否については、認めるということでよろしいでしょうか。何か御意見がある場合は、御発言をお願いします。御了承いただける場合ですが、コメントの欄に「異議なし」などの入力をお願いします。全員、異議なしですか。
○事務局 「異議なし」とされております。
○杉本部会長 ありがとうございます。それでは、部会報告書を取りまとめ、分科会へ報告する手続を取りたいと思います。事務局から、その他、何かありますか。
○事務局 ありがとうございます。本件については、分科会では審議事項とされております。細かい文言の変更等の軽微な修正が必要となった場合については、修正内容を部会長に御確認いただいた上で、手続を進めることとしてよろしいでしょうか。
○杉本部会長 事務局からの提案ですが、そのように進めてよろしいでしょうか。御意見がある場合には、御発言ください。これも挙手いただけるとよいのですが、御意見はありませんか。大丈夫ですね。それでは、今後のスケジュールはどのようになりますか。説明をお願いします。
○事務局 事務局です。今回の審議結果について、食品衛生分科会での審議のほか、所定の事務手続を開始したいと思っております。
○杉本部会長 ありがとうございます。それでは、適切に手続を進めてください。よろしくお願いします。
 次に議題2です。議題2の「L-システイン塩酸塩の規格基準改正」に関し、審議を行いたいと思います。まずは、事務局から、L-システイン塩酸塩の添加物としての概要を御説明願います。
○事務局 事務局です。それでは、「L-システイン塩酸塩」について、御説明をいたします。資料は2-1から2-3までを使用いたします。資料2-1は、薬事・食品衛生審議会への諮問書になっています。資料2-2は、部会報告書(案)で、こちらの内容に沿って御確認いただければと思っております。資料2-3は、食品安全委員会からの評価結果通知です。「L-システイン塩酸塩」は既に添加物として指定されており、今回は使用対象食品の拡大について御審議をお願いできればと考えております。それでは、資料2-2を御覧ください。
品目名は「L-システイン塩酸塩」です。L-システイン塩酸塩は昭和44年に添加物として指定をされており、パンの品質改良及び天然果汁の酸化防止などへの使用が認められておりますが、パン及び天然果汁以外の食品への使用は認められておりません。そこで今般、調味料としてそれ以外の食品にも使用できるようにするため、使用基準の改正を行うものです。
 続いて、(2)諸外国での使用状況ですが、米国においては、一般に安全と認められる物質(GRAS)とされており、パン類の生地の強化剤として0.009%、タンパク質代替の栄養目的として自然由来の分も含めて2.3%まで添加することが認められております。欧州連合では、小麦粉への使用、乳幼児用ビスケットへの1,000 mg/kgまでの使用、フレーバーとしての使用が認められております。オーストラリア、ニュージーランドでは、根菜、アボカド及びバナナに対して、GMP下での使用が認められています。また、加工助剤としては、生地の調節剤として75 mg/kgまでの使用等と、フレーバーとしての使用が認められています。
 次に、添加物の有効性について、説明いたします。まず、L-システイン塩酸塩の調味料としての機能についてです。L-システイン塩酸塩そのものは特有のにおいを有しませんが、システインを還元糖と加熱すると、メイラード反応が起こり、硫黄を含有する各種のヘテロ環状化合物が生成されます。これらのヘテロ環状化合物が特異的な香気を有するとの報告があります。システインから生成する香気成分としては、チアゾール、チオフェン及びそれらの誘導体等が考えられますが、これらはJECFAや諸外国において、既に香料としてその安全性が評価されています。
 L-システイン塩酸塩の効果については、要請者により官能評価試験が行われており、そちらを図でお示ししております。方法としては、チキンスープに喫食時濃度で0.005%添加したものと、無添加のものとを評価者に提示し、評価者はその食品に特徴的な官能評価用語を選定し、それぞれについて0から100までの尺度で評価を定めるというものです。それらの結果を平均してグラフ化したものが、図1です。赤色でお示ししているものが、添加されたものの結果を、青色でお示ししているものが、添加されていない無添加のものの結果を示しています。この結果から要請者は、「L-システイン塩酸塩を添加することにより、ロースト感と脂感が増強していることが分かる」と説明をしています。
 また、そのほかにも、要請者は、めんつゆ、ラーメンスープ、ビーフコンソメスープ、オニオンコンソメスープ、玉子スープについても、0.0025%~0.005%のL-システイン塩酸塩の添加による効果を評価し、いずれも風味・味を改善する効果が確認されたとしています。これらの説明から、L-システイン塩酸塩を0.0025%~0.005%添加することによって、特徴的な風味改善効果が認められると考えております。
 次に、食品中での安定性についてです。システインは還元性を有するSHを有し、生体中や食品中では他のSH基又はS-S結合を有するシステイン、シスチン、還元型及び酸化型グルタチオン、タンパク質の還元ややS-S交換反応を起こし容易に酸化されますので、安定性が非常に低く、通常はやや安定な塩酸塩の形で供給されています。また、システインは、還元糖と共に加熱するとメイラード反応を起こし、食品香気成分を生成する役割を果たしております。なお、メイラード反応によって生成され、発がん性が問題となる物質として、アクリルアミドやヘテロサイクリックアミンがありますが、アクリルアミドについては、システインが共存することで生成率が下がるという報告があり、ヘテロサイクリックアミンについては、システインの添加によって生成を増加させないことが報告されています。
 次に、(3)の食品中の栄養成分に及ぼす影響について御説明します。L-システインは非必須アミノ酸であり、日本食品標準成分表2020年版による食品類別のタンパク質1 g当たりのシスチン含量と、令和元年国民健康・栄養調査の食品類別のタンパク質の平均一日摂取量から、日本人の食事中タンパク質由来のシステインの平均一日摂取量を計算すると、1歳以上で1,230 mg/人/日、20歳以上で1,247 mg/人/日と算出されます。また、L-システインはほとんどすべてのタンパク質に含まれており、JECFAは食品からの摂取量を1,010 mg/人/日と推定しています。一方で、今回の使用基準改正による「L―システイン塩酸塩」の一日最大摂取量は、20~64歳の成人で28.0 mg/人/日、1~6歳児で14.3 mg/人/日と想定されることから、食品中に含有されるL―システイン量と比較し、本改正により想定されるL-システイン摂取量の増加分は十分に少ないものと考えられます。
以上から、「L-システイン塩酸塩」を調味料として使用した場合の栄養成分に与える影響は無視できるものであると考えています。添加物の概要に関する説明は、以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。今、資料2-2に基づき、添加物の概要について事務局から説明をしていただきましたが、ここまでで、委員の方から御質問等はありますか。
○事務局 (Web会議画面を確認し)特にございません。
○杉本部会長 それでは、続いて、L-システイン塩酸塩の食品安全委員会における評価結果について、事務局より、まずは端的に御説明をお願いします。
○事務局 食品安全委員会の評価結果ですが、令和4年11月9日付けで通知されており、「L-システイン塩酸塩が添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念はない」とされております。この評価書の概要について、主要部分を抜粋しています。
「L-システイン塩酸塩は、胃液中でL-システインと塩酸に解離すると考えられることから、L-システイン塩酸塩だけでなく、L-システインに係る知見も併せて、『L-システイン塩酸塩』の体内動態及び毒性に関する検討を総合的に行うこととした」と冒頭に記載されています。
また、次が体内動態についてです。摂取されたL-システインは、食事由来のたんぱく質の加水分解で生じたL-システインやL-シスチンとともに、小腸上皮細胞の微繊毛膜アミノ酸輸送体により細胞内に取り込まれ、その後、側底膜アミノ酸輸送体により、吸収上皮細胞から門脈へ輸送されます。L-システイン及びL-シスチンは、腸管では食物源、L-システイン/L-シスチンシャトル及び管腔グルタチオンの分解と、血漿中及び細胞内では含硫アミノ酸代謝により、恒常性を保ちながら相互に変化をしています。
 ラットでは肝臓中のL-システイン濃度は一定の範囲に維持されており、哺乳類の肝臓は、細胞内の遊離L-システインプールを厳密に調節しています。組織に取り込まれたL-システイン及びL-シスチンは、たんぱく質合成に利用されるほか、硫酸塩、タウリン、グルタチオン等に異化され、生成した硫酸塩及びタウリンは、最終的に尿中に排泄されます。健常人では、含量シスチン量が多い食事の摂取によって、尿中システイン及びシスチン排出量が多い傾向が見られたとのことです。
 続きまして、次の段落が毒性の部分についてです。L-システイン塩酸塩には生体にとって特段問題となる遺伝毒性はないと判断されています。また、発がん性は認められないと判断されています。生殖毒性、発生毒性については、NOAELの判断が可能な知見は得られませんでした。
 L-システインを有効成分とする医薬品について、承認時及び市販後の2,122例中、副作用は14例のみ報告されていますが、その主なものは悪心、下痢等であり、重篤な副作用は認められておりませんでした。また、薬疹・中毒疹の患者を対象に、L-システイン240 mgを10日間投与する無作為化二重盲検試験において、L-システイン群に副作用は認められませんでした。また、思春期の尋常性痤そうの患者を対象にL-システイン480 mg/人/日を2週間投与する無作為化二重盲検試験においては、85例中3例に下痢又は嘔気が認められましたが、こちらも重篤な副作用はありませんでした。
 最後に摂取量について記載されています。消化管内を含め体内ではL-システインとL-シスチンの間で、酸化還元反応を生じていることから、L-シスチンの摂取量も考慮して摂取量推計が行われています。その結果、現在の食事由来の摂取量は、L-システインとして、1~6歳で843 mg/人/日、国民平均(1歳以上)で1,365 mg/人/日と推計されています。
 また、使用基準改正後の添加物由来の摂取量については、過大な見積もりではありますが、L-システインとして、1~6歳で54.9 mg/人/日、国民平均で105 mg/人/日、うち調味料としての「L-システイン塩酸塩」由来は、1~6歳で9.43 mg/人/日、国民平均で15.6 mg/人/日と推計されています。
 以上から、食品安全委員会では、「L-システイン塩酸塩」が添加物として適切に使用される場合、安全性の懸念がなく、ADIを特定する必要はないと判断をしています。ここまでは食品安全委員会の評価結果です。
 続きまして、先ほどの評価書と同様の内容にはなるのですが、摂取量の推定について記載をしております。7番です。調味の目的で用いる「L-システイン塩酸塩」由来のL-システインの摂取量については、対象食品への使用量を、風味を損なわない適正な量として、添加量は喫食時換算で0.0025~0.01%としているのですが、その最大値である0.01%で使用した場合を想定して推計を行いました。この使用量に、「L-システイン塩酸塩」を調味料として添加することが想定される食品の年齢別の喫食量に乗じて、調味量としての「L-システイン塩酸塩」の一日摂取量を推計しました。この推定摂取量をL-システインとしての摂取量に換算した結果、L-システインとして、1~6歳で9.43 mg/人/日、国民平均で15.6 mg/人/日となりました。
 また、現在の添加物由来の摂取量については、5~6ページにまたがって記載されておりますが、平成12年食品添加物一日摂取量総点検調査の報告書における「L-システイン塩酸塩」と「L-シスチン」の摂取量をL-システインとしての接取量に換算した値を合計し、L-システインとして、1~6歳で45.5 mg/人/日、国民平均で89.5 mg/人/日と推計されました。
 以上の結果を合計し、使用基準改正後の添加物由来の一日摂取量は、1~6歳で54.9 mg/人/日、国民平均で105 mg/人/日(L-システインとして)と推計しています。
食品健康影響評価に関する部分についての説明は以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。それでは、食品安全委員会における安全性に係る評価の概要について、委員より簡単に御説明をお願いいたします。まず、一般毒性(発がん性、毒性、in vivo試験)について、桒形委員、いかがでしょうか。
○桒形委員 資料2-3を御説明させていただきます。資料2-3の15ページ、こちらが毒性試験の記載になりますが、15ページです。次の次のページ。(2)急性毒性から御説明いたします。表6にありますように、こちらに記載されている数字はとても大きくなっておりますので、重篤な急性毒性の発現という可能性は低いと考えられます。
 (3)に、反復投与毒性試験。塩酸塩で実施されておりますが、16ページに結果が記載してあります。この試験では、尿検査で少し変化が出て、また肝臓でも肝臓重量、あるいは小葉中心性の肝肥大が認められています。1,000 mg/kgで尿検査と肝臓の重量、あるいは病理所見が出たということで、その下の用量の300 mg/kgをこの試験でNOAELと判断して、試験実施者は、このように報告しています。食品安全委員会のほうが網羅的に判断した結果が、17ページの一番上に書いてありますが、尿たんぱくの陽性、尿検査での変化というものは、腎臓の病理組織学的検査とか、あるいは血液生化学検査がパラレルに動いていないことから、剤による影響ではないと判断しております。また肝臓の変化につきましても、適応性変化であると判断をされていて、この反復投与毒性試験のNOAELを最高用量の1,000 mg/kgと設定しています。これはL-システイン換算にしますと、690 mg/kg 体重/日となります。私もこちらの判断は妥当だと考えております。
 (4)発がん性試験ですけれども、こちらは塩酸塩で実施されています。表8に用量設定がありますが、一番上の量が体重換算にいたしますと259 mg/kg、先ほどの13日の反復投与毒性試験に非常に近いのですけれども、先ほどは肝臓の重量は上がったとなっていますが、こちらでは肝臓の重量が下がったということで、あまり肝臓の変化も再現性が見られておりません。
 18ページの表9に毒性所見が記載されておりますが、その発がん性試験で、雌ラットに腎乳頭の壊死を発生させる可能性はあるかもしれないと考えられますが、発がん性は示さないと結論付けられております。
 続きまして、18ページの(5)生殖発生毒性試験ですが、まず19ページの一番上に、ラットの生殖毒性試験の記載がございます。ただ、こちらは1971年と非常に古くて、また18ページの一番下に記載がありましたが、被験物質を添加した後、加熱して餌としており、安定性が保証されていないということで、参考データになっています。この6世代にわたって混餌投与をした、今のガイドラインとはまた異なるのですが、その結果、明らかな毒性影響は認められなかったと結論付けられております。
 20ページ、今度はラットの発生毒性試験、こちらも1977年ですので、非常に古い試験になりますけれども、こちらの結果においても、L-システインはラットに催奇形性は示さないというように結論付けられています。
 21ページ、今度はマウスを用いた発生毒性試験の報告の記載があります。こちらも1977年と非常に古い試験です。こちらの結果においても、胎児、あるいは新生児に投与による影響はない、催奇形性は認められないと結論付けられております。22ページ、(6)毒性のまとめという所に記載がありますが、まず反復投与毒性試験については、ラットの13日間反復経口投与毒性試験について、塩酸塩での一番高いドーズ、1,000 mg/kg 体重/日がNOAEL、これをL-システイン換算にすると690 mg/kg 体重/日というように判断されています。発がん性は認められておりません。また、生殖毒性、あるいは発生毒性につきましては、先ほど申し上げましたとおり、非常に古い試験であるということから、NOAELの判断が可能な知見は認められていないとありますが、試験の結果からは特に繁殖毒性、あるいは催奇形性を疑うような結果は得られておりませんでした。説明は以上になります。
○杉本部会長 桒形委員、御説明ありがとうございます。続いて、遺伝毒性について戸塚委員いかがでしょうか。
○戸塚委員 お手元の御覧になっている資料2-3の13ページからが遺伝毒性になります。遺伝毒性に関しては、この表4がL-システイン塩酸塩で、次の表5がL-システインに関するものです。まず、表4から御覧いただきますと、一番上の復帰突然変異試験のAmes試験で陽性という結果が得られております。次に、染色体異常のところで、こちらはin vitroの染色体異常ですが、こちらも陽性の結果が得られております。
 次の表5に移ります。表5でも、一番上の復帰突然変異試験は陽性という結果になっております。次のその下のカラム、「YG3206において」のところ、こちらもTA1535と比べて増加している。YG3216だとTA100と比べて増加しているというような記載があり、いずれも陽性の結果が得られているということです。次は一番下、in vitroのマウスリンフォーマ試験も陽性という結果が得られております。まとめますと、幾つか陽性の結果が出てしまっていることになります。
 ところが、この陽性の試験を受けてのことだと思いますが、トランスジェニック動物を用いたin vivo試験の遺伝毒性試験を行っており、表4のTGR試験です。gpt deltaマウスを使った試験系では、最高用量1,000 mg/kgで28日間の反復投与を行っていますが、陰性という結果が出ておりますので、こちらを受けて、このin vitroの系で認められました陽性という所見は、恐らく、in vitroで起こっているもので、なおかつ、そのシステイン及びシスチンそのものが起こしているというよりは、二次的に起こる酸化ストレス等が、こういった陽性結果を起こしていると考えられるとまとめられております。
 こういったことから、14ページの下に<3>遺伝毒性のまとめがありますが、ここに記載があるように、L-システイン塩酸塩、若しくはL-システインでは遺伝毒性は認められないという結論に至っているということです。以上です。
○杉本部会長 戸塚委員、御説明ありがとうございます。続いて、体内動態について頭金委員いかがでしょうか。
○頭金委員 資料2-3の10ページを御覧ください。「1.体内動態」の項をご覧下さい。L-システインとL-シスチンは、酸化還元状態により平衡状態にあるわけですが、消化管内ではL-システインとL-シスチンのシャトル機構や管腔内のグルタチオンにより、この平衡状態の恒常性が維持されています。
 経口摂取されたL-システインの血漿中濃度に関するラット実験の結果が記載されています。ラットに高たんぱく食あるいは低たんぱく食、システインを添加した飼料を摂取させたときの血液及び肝臓中の総システイン濃度を測定した実験結果が示されています。システインの添加飼料を与えられたラットでも、動脈血漿中及び肝臓中濃度は空腹時の値と比較して有意な増加は見られていません。一方、低たんぱく食のラットにおいても、血漿中濃度は有意な減少は見られなかったことから、含硫アミノ酸の欠乏又は過剰に関わらず、肝臓中のL-システイン濃度は一定の範囲(20~100 nmol/g)に維持されており、哺乳類の肝臓では、細胞内の遊離L-システインプールを厳密に調節していると考えられております。
 資料2-3の11ページには、人での実験が記載されております。これは含硫アミノ酸を含む食事の充足している期間と不足している期間を設定し、それぞれの血漿中のシステイン濃度を測っているのですが、その結果が表3です。システインを負荷した後の血漿中濃度は、含硫アミノ酸摂取の充足時間及び不足期間のいずれにおいても、血漿中のシステイン濃度が有意に増加しているという結果ですが、その増加幅はそれほど大きく変わらないという結果が表3で示されております。
 次に、12ページです。肝臓に取り込まれたL-システイン及びL-シスチンについては、システインジオキシゲナーゼ等の酵素によって異化反応を受け、硫酸塩、タウリン、グルタチオン等に異化されるとされております。異化された硫酸塩、タウリンについては、最終的に尿中に排泄されるます。
 以上のことから、L-システインはたんぱく質として摂取されており、摂取量の増減に対して血漿中や組織中、肝臓中の濃度等の恒常性を保つ機能があるとされております。説明は以上です。
○杉本部会長 頭金委員、御説明ありがとうございます。一通り御説明を頂きましたが、委員の先生方から食品健康影響評価における評価結果について御質問等はございますか。ございませんか。では、私から1つ質問があります。遺伝毒性について戸塚委員から資料2-3の13ページの表4でTGR試験をやり、in vivoで陰性だったので遺伝毒性はないと判断をしたということですが、これはこのような考え方、in vivoで陽性になることはよくあることだと思いますが、TGR試験をやってin vitroで陰性だったら、一般的には陰性と判断するようなものなのでしょうか。この辺りは余り知らないので教えていただけると助かります。
○戸塚委員 一般的には、まずin vitroの試験で遺伝毒性、特に、Ames試験で陽性が出てしまうと、なかなかその先を考えるのが難しい状況もあるのですが、そういった場合は、可能であれば、トランスジェニック動物を用いたin vivo試験を行っていただき、その結果が陰性であれば、要は、生体を用いた試験系では陰性ということで、特に、遺伝毒性の安全性に関しては問題ないと判断することが多いと思います。
 今回の場合は、直接的な遺伝毒性、DNAの修飾等が考えられるわけではなく、頭金先生もおっしゃったと思いますが、酸化還元反応等がL-システインとL-シスチンが平衡状態であるところで起こってきたりすることもあり、なおかつ、先ほど、酸化ストレスに感受性の高い菌株で変異原性が上がるという結果も出てきておりますので、そういったところを全部まとめて考慮しますと、恐らく、このAmes試験で陽性と出ている理由というのは、二次的な反応だろうと捉えることができますから、その両方の側面から、遺伝毒性としては、特段問題がないという結論に至ったと考えられると思います。以上です。
○杉本部会長 丁寧な御説明、ありがとうございます。よく分かりました。ほかに御質問等はございますか。ないようですね。それでは、続いて、L-システイン塩酸塩の使用基準案等について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、8.規格基準の設定について御説明いたします。資料2-2の6ページです。現在の使用基準では「L-システイン塩酸塩は、パン及び天然果汁以外の食品に使用してはならない」とされているところ、今回、調味料としての使用を可能とするため、「ただし、調味の目的で使用する場合はこの限りではない」という一文を追記する案を考えております。また、成分規格・保存基準については、別紙でお示ししているとおり設定がされておりますが、今回の改正で変更の予定はございません。御説明は以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。それでは、L-システイン塩酸塩の使用基準案について、委員の先生方から御質問等はございますか。ございませんか。多田委員、何かありますか。
○多田委員 特にございません。
○杉本部会長 ないようですね。それでは、一通り全体を通して御審議を頂いたようですので、L-システイン塩酸塩の規格基準改正については認めるということでよろしいでしょうか。御意見がある場合には、御発言、挙手をお願いいたします。御了承いただける場合はコメント欄に「異議なし」等の入力をお願いいたします。
○事務局 委員全員、「異議なし」と書いていただいております。
○杉本部会長 「異議なし」ということで、それでは、部会報告書を取りまとめ、分科会へ報告する手続を取りたいと思います。事務局からその他、何かございますか。
○事務局 事務局です。本件は添加物の規格基準改正でありますため、「その基原、製法、用途等からみて慎重に審議する必要があるとの部会の意見に基づき、分科会長が決定するもの」を除き、分科会では審議事項ではなく、報告事項とされていることを踏まえ、報告事項として進めさせていただくことでよろしいでしょうか。
○杉本部会長 事務局からの提案ですが、そのように進めてよろしいでしょうか。御意見がある場合は御発言ください。ないようですので、それでは、今後のスケジュールはどのようになりますか。
○事務局 今回の審議結果について、食品衛生分科会での報告のほか、所定の事務手続を開始したいと思っております。
○杉本部会長 それでは、よろしくお願いいたします。適切に手続を進めてください。
次は報告事項です。「令和2~3年度マーケットバスケット方式によるアルミニウムの摂取量調査の結果について」に関して、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、令和2年度から3年度にかけて実施しましたマーケットバスケット方式によるアルミニウムの摂取量調査の結果について、御報告いたします。資料3に沿って御説明します。必要に応じて参考資料2、3を御参照ください。それでは、資料3の冒頭から説明いたします。
 まず、本調査の背景、目的について御説明いたします。FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、平成18年にアルミニウムの暫定耐容週間摂取量(PTWI)を7mg/kg体重/週から1 mg/kg体重/週に引き下げ、平成23年の再評価で2 mg/kg体重/週としました。それを受け、平成23~24年度に、厚生労働省では我が国におけるアルミニウムの摂取量をマーケットバスケット方式により調査しております。
 その結果を平成25年6月21日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会で報告し、対応を検討していただいたところ、偏った食生活を避け、バランスのとれた食生活を送ることが重要であるが、小児のアルミニウムの摂取量への寄与が大きいパン及び菓子への膨脹剤の使用について、関係業界に対して自主的な低減の取組を依頼するとともに、今後、使用実態を踏まえ、アルミニウムを含有する食品添加物の使用基準を設定することを検討する、との方針が了承されました。
 その後、平成29年3月21日付けで、アルミニウムを含む食品添加物である硫酸アルミニウムアンモニウム及び硫酸アルミニウムカリウムの使用基準の改正について、食品安全委員会に食品健康影響評価の諮問を行い、平成29年12月19日付けで硫酸アルミニウムアンモニウム及び硫酸アルミニウムカリウムについては、耐容週間摂取量(TWI)を2.1 mg/kg 体重/週(アルミニウムとして)と設定するという結果通知を受領しています。
 これを受け、厚生労働省では、平成30年11月30日に硫酸アルミニウムアンモニウム及び硫酸アルミニウムカリウムの使用基準を改正し、菓子、生菓子及びパンに新たに基準値を設定し、1 kgにつきアルミニウムとして0.1 g以下の使用とすることとしました。その改正に係る経過措置期間(1年)を過ぎたことから、検証を目的として、令和2年度から3年度にかけて、加工食品中に含まれるアルミニウムを対象としたマーケットバスケット方式による摂取量調査を実施したものです。
 それでは、方法と結果についてまとめて御説明いたします。今回は、(1)加工食品群別の混合試料を用いた調査、(2)加工食品の個別食品試料を用いた調査、(3)加工食品由来アルミニウムの推定週間摂取量及び対TWI比のパーセンタイル値の算出という3つの調査を実施しております。
 まず、【方法】の(1)加工食品群別の混合試料を用いた調査についてです。こちらは小児及び成人それぞれの平均的な食生活におけるアルミニウムの摂取量を評価するために、年齢層別加工食品群別のアルミニウムの推定一日摂取量を算出するものになっております。方法として、加工食品を1~7群に分け、それぞれについて年齢別の食品群別喫食量リストに基づいて、1~6歳の小児、20歳以上の成人の喫食する食品分類を考慮した食品をそれぞれ購入し、各食品群について混合試料を調製します。こちらを分析した結果に小児、成人の各加工食品群の喫食量を乗じ、アルミニウムの一日摂取量を推計しました。その結果を2ページの表1にお示ししております。
 小児では3群からの摂取量が最も多く、次いで1群、2群、6群の順で摂取量の値が多くなりました。また、成人は1群からの摂取量が高く、次いで3群、7群の順で値が高くなりました。また、平成30年に使用基準値を設定した菓子、生菓子を含む6群、及びパンが該当する2群については、前回の調査から値が大きく減少しておりました。
 そして、推定一日摂取量を各年齢層の平均体重(kg)で除し、7日を乗じて得られた推定週間摂取量(mg/kg 体重/週)を算出し、耐容週間摂取量(TWI)の2.1 mg/kg 体重/週に対する割合(対TWI比)とJECFAが設定した暫定耐容週間摂取量(PTWI)、2 mg/kg 体重/週に対する割合(対PTWI比)を3ページの表2にお示ししております。右側には前回調査時結果を、左側には今回の調査結果を載せております。結果として、小児、成人、いずれの年齢層も前回調査の値の半分以下に減少し、11%以下となりました。
 次に、【方法】の(2)加工食品の個別食品試料を用いた調査について御説明いたします。2ページ冒頭にお戻りください。こちらは先ほどとは異なり、混合はせずに、個別製品におけるアルミニウムの含有量について調査をしたものです。方法としては、混合試料の調製のために購入した食品のうち、アルミニウムを含有する食品添加物の表示がある製品と、先ほどの調査結果において前回調査から変化があった3群と6群については、全ての食品について、製品ごとに試料を調製して分析を行いました。
その結果を3ページの(2)にお示ししております。前回の調査では、6群においてベーキングパウダーを含むケーキドーナツ、バターケーキで0.1 g/kgを超えるアルミニウムを含む製品がありましたが、今回の調査では、ケーキドーナッツで0.52 mg/kg以下、バターケーキでは3.1 mg/kg以下となり、いずれも平成30年に設定された使用基準(100 mg/kg)を満たす低い値となっておりました。
 また、6群の製品で、前回調査で50 mg/kgを超えるアルミニウムが認められた蒸しまんじゅう、ショートケーキについても、今回は5.0 mg/kg以下、1.8 mg/kg以下の低い値となっており、これらの含有料の減少が、6群混合試料における含有量の低下に反映されたものと考えられました。また、6群以外の個別食品のアルミニウム含有量もこちらにお示ししております。
 2ページにお戻りいただき、最後に方法(3)加工食品由来アルミニウムの推定週間摂取量及び対TWI比のパーセンタイル値の算出について御説明いたします。こちらの算出は、食品喫食量の個人差によるアルミニウム摂取量の差を推定することを目的として、個人ごとの摂取量を算出し、より摂取量が高いと考えられる人における摂取量について評価を行うものです。
 方法としては、先ほど御説明した混合試料における調査結果を基に、喫食量データとして使用している「食品摂取頻度・摂取量調査の特別集計業務報告書」における個人の食品喫食量データの中から、混合試料の調製に用いた食品を選択し、その食品の喫食量の割合も考慮した上で加工食品群ごとに集計し、各加工食品群のアルミニウムの含有量を乗じて、個人のアルミニウムの一日摂取量を算出します。そして、この結果から、推定週間摂取量及び対TWI比を計算し、パーセンタイル値90、95、97.5、99について算出しました。
その結果を表3にお示ししています。こちらも右側に前回調査の結果を、左側に今回の調査結果をお示ししております。結果、前回は、小児における95%タイル値でPTWIを超える結果が出ていたのに対し、今回は、いずれの年齢層も対TWI比、対PTWI比は99%タイル値でも30%という結果になりました。
 以上の結果より、平成30年の使用基準改正後、経過措置期間の1年以上が経過し、加工食品由来のアルミニウム推定摂取量は、高摂取者も含めて、小児で大きく減少、成人においても減少していたことが確認できました。御説明は以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。ただいまアルミニウム摂取量調査結果について事務局より御説明を頂きましたが、委員の先生方から御質問等ございますか。二村委員お願いいたします。
○二村委員 二村です。今回の御報告ありがとうございました。この基準見直しの際も参加しておりましたので、とても興味を持って聞かせていただきました。今回のこの一連の取組ですが、国際機関で耐容摂取量が引き下げられ、また、コーデックスや諸外国でも基準値の見直しがされたことを踏まえ、日本としても摂取量調査等、それから食品安全委員会でのリスク評価を行っていただき、その上で使用基準の見直しを行ったものだと改めて認識しております。
 今回、再度、摂取量調査を行っていただき、基準の見直しが有効に働いたことが確認できたと思っております。情報収集、対策、対策の効果検証までの流れが有効に機能している良い事例であると思いますので、改めて、この間の取組に感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
○杉本部会長 二村委員ありがとうございます。ほかに御質問等はございますか。多田委員、何か追加してコメントすることはございますか。
○多田委員 特に私からはございません。
○杉本部会長 ほかに何か御意見はございますか。よろしいですか。そうしましたら、本日の報告は以上になります。部会の委員の皆様から、その他、何か御発言等、ございますか。ないようでしたら、次回の予定について事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 次回の添加物部会については、場所や議題が決まりましたら、また御連絡をさせていただきます。以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。それでは、本日の添加物部会はこれで終了いたします。本日はお集まりいただき、ありがとうございました。また、これからもよろしくお願いいたします。