第145回先進医療技術審査部会 議事録

日時

令和5年2月9日(木)16:00~18:00

場所

日比谷国際ビルコンファレンススクエア「ホール8ABC」(オンライン)

出席者

竹内座長、北川座長代理、天野構成員、一家構成員、上村(尚)構成員、掛江構成員、 後藤構成員、坂井構成員、真田構成員、飛田構成員、平川構成員、 平田構成員、松山構成員、山本構成員、渡辺構成員、榎本技術専門委員、 北脇技術専門委員、近藤技術専門委員


(事務局)
医政局研究開発政策課長
医政局研究開発政策課 治験推進室長
医政局研究開発政策課 課長補佐
保険局医療課 先進・再生医療開発戦略専門官
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課 審査調整官

議題

1.総括報告書の評価について
2.新規申請技術の評価結果について
3.試験実施計画の変更について
4.協力医療機関の追加について
5.事前の規定による取り下げについて
6.申請医療機関からの報告について
7.その他

議事

 
○竹内座長 
 定刻となりましたので、第145回先進医療技術審査部会を始めます。御多用の中、お集まりいただきましてありがとうございます。本日はオンラインでの開催となります。
 構成員の出欠状況ですが、伊藤陽一構成員、上村夕香理構成員、戸高浩司構成員より御欠席の連絡を頂いております。また本日、技術専門委員として榎本隆之委員、北脇城委員、近藤幸尋委員に御出席いただいております。したがって、本日は18名の構成員のうち、15名の構成員にお集まりいただいていることから、本会議が成立していることを申し添えます。
 それでは、配布資料と本日の審査案件の確認を事務局からお願いいたします。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 傍聴者の方の撮影は、ここまでとさせていただきます。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 配布資料の確認をいたします。議事次第、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門委員名簿と続きます。続いて、「総括報告書の評価について」は資料1-1~2-3、「新規申請技術の評価結果について」は資料3-1~3-5、「試験実施計画の変更について」は資料4~資料6、「先進医療Bの協力医療機関の追加について」は資料7-1~7-2、「先進医療Bの取り下げについて」は資料8、「申請医療機関からの報告」は資料9、会議資料の最終ページは92ページとなります。お手元の資料に乱丁、落丁等ありましたら、事務局までお知らせください。
 続いて、利益相反の確認です。申請医療機関との関係、対象となる企業又は競合企業について、事務局から事前に確認させていただいております。今回、告示番号旧34の技術、慶應義塾大学病院からの総括報告に関して、当該技術について、北川座長代理におかれましては、自施設からの申請ということ。竹内座長、北川座長代理から御報告があり、500万円を超えるの該当がありました。つきましては、議事の取りまとめを含む検討及び事前評価に加わることができませんので、当該技術に係る審議の際は一時御退席いただければと存じます。また、当該技術について、山本構成員、榎本委員からも御報告がありましたが、50万円を超えて500万円未満でしたので、議事の取りまとめ及び事前評価にのみ加わることができません。天野構成員、平川構成員、北脇委員、近藤委員からも御報告がありましたが、50万円以下でしたので、当該技術の議事取りまとめ及び事前評価に加わることができます。なお、整理番号134の技術、大阪大学医学部附属病院からの新規申請技術及び資料9の報告に関して、上村尚人構成員、真田構成員、飛田構成員におかれましては、自施設からの申請ということで、審議の際は一時御退席いただければと思います。事前の届出以外に、もし何らかの利益相反がありましたら、この場で御報告をお願いいたします。

(確認)

○医政局研究開発政策課長補佐
 それでは、該当なしということで承知いたしました。また、今回は資料を事前にメールでお送りしております。会議資料と区別して、構成員・事務局限りの届出書類等を「タブレット資料」と御案内いたします。また、会議資料とタブレット資料の内容は異なっておりますので、発言者は会議資料の何ページ、又は差し替え資料の何ページ、若しくはタブレット資料の何ページと、あらかじめ御発言いただけますと、議事の進行上助かります。
 本日はオンラインの開催となり、構成員の先生方には大変御不便をおかけいたします。御発言いただく際には、初めにお名前をおっしゃっていただくようにお願いいたします。その他、途中で接続トラブル等ありましたら、お知らせいただきますようお願いいたします。また、Web会議ソフトには手挙げ機能が付いておりますので、こちらも適宜御活用いただければと存じます。以上です。

○竹内座長
 それでは議事に入ります。「総括報告書の評価結果」について、事務局から説明をお願いいたします。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 資料1-1の13ページを御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関する評価を頂くのは、告示番号旧34「トラスツズマブ静脈内投与及びドセタキセル静脈内投与の併用療法」です。申請医療機関は慶應義塾大学病院です。審査担当構成員は、主担当が平田構成員、副担当が伊藤構成員となっております。また技術専門委員として榎本委員に御検討いただきます。なお、本議題の審議に際し、竹内座長におかれましては利益相反の関係がありますので、進行を上村尚人構成員にお願いいたします。竹内座長におかれましては利益相反の関係、北川座長代理におかれましては、所属機関の関係と利益相反の関係で、本議題の審議に対し、御退席いただきたく存じます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

 (竹内座長、北川座長代理 退席)

○医政局研究開発政策課長補佐 
 それでは、資料に沿って説明いたします。乳房外パジェット病は、外陰部や肛囲周囲、腋窩の皮膚に好発する上皮内腺癌で、真皮内浸潤し、転移を来すと治療抵抗性で死に至る疾患である。高齢者に好発し、希少がんにあたる。切除不能ないし遠隔転移を有する進行期の症例では一般的に予後不良であるにもかかわらず、いずれも一時的な効果は認めるものの根治に至る例は未だ少なく、治療法の確立が必要とされている。近年、乳房外パジェット病においてもHER2陽性の報告が蓄積されつつある。転移症例の解析では、転移巣の37.1%にHER2遺伝子の増幅があり、抗HER2療法の対象となり得る進行期症例が一定数存在することが報告されている。本研究では、HER2陽性転移性乳房外パジェット病におけるトラスツズマブ、ドセタキセル療法の第Ⅱ相臨床試験を実施し、本併用療法の有効性・安全性を評価することを目的とする。
 主要評価項目は、安全性評価基準:有害事象の種類、頻度及び重症度。有効性評価基準:3クール終了時点での奏効率。副次評価項目は、有効性評価基準:奏効期間、安定期間など、記載のとおりです。目標症例数は13例に対し、登録症例数は13例でした。以上です。

○上村(尚)構成員 
 ありがとうございます。それでは、座長を代行して進めてまいります。本技術の評価について、主担当の平田構成員から説明をお願いいたします。

○平田構成員 
 平田です。私が説明いたしますのは、HER2陽性の進行期の乳房外パジェット病に対する薬物療法に関する医療技術になります。この医療技術の概要に関しては、差し替え版会議資料B21ページ、資料1-3を御覧ください。乳房外パジェット病は、皮膚の悪性腫瘍の1つで、10万人に対して0.6人という、とても希少な疾患ということもあり、そのため臨床研究が進んでいない領域で、効果的な治療法がなく、診断時には進行期で発見されるということが珍しくない疾患です。
 また、乳房外パジェット病には特徴があり、HER2という細胞増殖に関わるタンパク質が過剰に発現している場合か、HER2遺伝子が増幅している場合をHER2陽性といいますが、このHER2陽性の割合が高いことが分かっております。乳房外パジェット病全体でいいますと、HER2陽性が60%に存在しますし、今回の対象となる浸潤がんといわれる浸潤度が高くなると、更にHER2の陽性割合が高くなると言われております。このHER2を標的に開発されたトラスツズマブという薬剤が、既に乳がんや胃がんで、他の抗がん剤との併用で有効性が検証されており、今回の乳房外パジェット病に関して、トラスツズマブ、ドセタキセルの併用療法において、その安全性と有効性を評価するための本試験がなされたと理解しております。
 私の評価の部分については、差し替え版資料1の15ページ辺りを御覧になっていただければと思います。有効性に関しては、本試験の有効性の主要評価項目である3サイクル後の奏効率が13例中10人で、76.9%であり、信頼区間の下限値が50.5%と、閾値35%を上回ったことから、計画時に設定した基準は満たしていると考えられます。また、無増悪生存期間の9.3か月という数値や、全生存期間の中央値が推定できなかったというデータの結果、また過去の後ろ向きの抗がん剤の奏効率が大体60%前後ぐらいであることを考えると一定の有効性はあると判断いたしました。しかしながら、限られた症例数で単群試験であることを考慮すると、従来の医療技術よりも大幅に有効であるとまでは判断できず、Bの従来の医療技術を用いるよりも、やや有効であると判断いたしました。
 次に、安全性に関する評価になります。本試験では、未知かつ重篤な有害事象や治療関連死を認めませんでしたが、既知の重篤な有害事象は発現していることから、殺細胞性の抗がん剤を用いた薬物療法としては想定内の結果であることから、Bと評価いたしました。
 技術的な成熟度に関しては、ドセタキセル、トラスツズマブは既に乳がん等において本邦においても広く使われているレジメンですので、本試験の結果から特段の大きな問題は認めないということから、Aと判断しております。
 続いての評価結果に関しては、伊藤先生の御説明の後にさせていただきます。以上です。

○上村(尚)構成員 
 ありがとうございました。続いて、副担当の伊藤構成員が欠席ですので、事務局より代読をお願いいたします。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 資料1-1の16ページを御覧ください。副担当の伊藤構成員の御評価です。有効性については、A.従来の医療技術を用いるよりも、大幅に有効である。次に、安全性については、A.問題なし(ほとんど副作用、合併症なし)。コメントとしては、「抗癌剤に伴う既知の副作用はあるが、コントロール可能であった。」とあります。
 技術的成熟度については、A.当該分野を専門とし、経験を積んだ医師又は医師の指導の下であれば実施できるとなっております。以上です。

○上村(尚)構成員 
 ありがとうございます。続いて、本技術の評価について、技術専門委員の榎本委員から御検討をお願いいたします。

○榎本技術専門委員 
 榎本です。この奏効率76.9%は、症例数が13例と非常に少ないために大幅に有効であるかどうかという判断は、やはり難しいと思うのです。けれども希少がんなので症例がなかなか集積しにくいこと、それから大事なのはCRで、やはりこういった再発癌に対する化学療法ではCRが13分の5の、35%というのは非常に高いと思うのです。そういった意味では、評価できると思います。したがって、Aの大幅に有効であるというのはちょっと言い過ぎだと思うのですが、有効であると認めざるを得ないと思います。
 安全性については、先ほど主担当、副担当のコメントがありましたが、それほど余り強い有害事象がでていないので問題はないと考えます。総合的な判断でいいますと、やはりこういった臨床試験でよく経験するのですが、P2試験で非常にいい数字が出ても、実際に臨床の場に持っていくと期待したほど効果がなかったというのはよく経験することなので、もし保険診療にもっていく場合には、登録制にして、本当に有効であるかということを、ある程度症例を蓄積して評価する必要があるのではないかと思います。以上です。

○上村(尚)構成員 
 ありがとうございます。平田構成員より、何か追加のコメントなどありましたらお願いいたします。

○平田構成員 
 総合的なコメントに移ります。私のコメントとしては、本試験の結果から、HER2陽性の進行期乳房外パジェット病に対するドセタキセルとトラスツズマブの併用療法の一定の有効性は示されたと考えます。安全性に関しても、重篤な有害事象の発現はあるものの、有害事象の観察や管理、適切な休薬や減量がなされるのであれば、忍容可能と判断しております。
 また、未承認の医薬品等を伴う医療技術の場合の薬事承認申請の効率化に資するかどうかのコメントですが、本試験の対象が希少疾患であることを踏まえると、本試験で得られたデータは意義があると考えますが、本試験の症例数が少ないことからも、適切な承認条件を付すことにより、市販後の安全性を確認できる場合には添付資料の一つになり得ると考えます。ですので、先ほど榎本技術専門委員がおっしゃったように、これ1本で承認というのは、なかなか難しい場合もあるのかなと思います。以上です。

○上村(尚)構成員 
 ありがとうございます。ただいまの説明について、委員の先生方から何か御質問などはありませんか。天野構成員、お願いいたします。

○天野構成員 
 御説明ありがとうございました。1点確認です。資料1-2で質問が出ていて、投与3例目については、肺水腫、間質性肺炎、感染症の関与があると記載されているということについて、研究グループからは、因果関係は極めて少ない、若しくは可能性はあるという報告が出ていると理解しています。これについては、この報告に対して主担当の先生、若しくは副担当の先生、あるいは専門委員の先生は何かコメントがあれば教えていただきたいと思います。

○平田構成員 
 この報告をお聞きしたときには、基本的には、がんの進行に伴って起こった事象であることから、基本的には、本試験終了後のことですので関連性はなしということで判断しております。

○上村(尚)構成員 
 いかがですか。榎本先生、後治療のステージに入った中での事象で、最終的には肺水腫等が出てきて永眠されたというケースで。

○榎本技術専門委員 
 先ほど平田先生がおっしゃったように、進行によるものか、あるいは本当に副作用によるものかというのは、なかなかこれだけでは難しいとは思うのですが、確かに、やはり進行がんであれば臨床経過でこういう事象が起こっても不思議ではないので、今後、保険適用にされる場合には、症例を登録して、がんの経過で起こった事象か、副作用として起こった事象かということを分析したほうがいいのではないかと思います。

○上村(尚)構成員 
 ただいまの御指摘は非常に重要なポイントかと思います。天野先生からの質問も非常に大事なポイントであったと思います。ありがとうございます。ほかに何かありませんか。平均で見たときに奏効率が76.9%と、これは試験のデザイン上、オープンラベルでやっていますので、何かと比較をしたわけではないのですが。過去の例、あるいは一般的な臨床的な観点から、例えば、この治療法でない治療を選択した場合と比較すると、印象として数値的には、そこそこよいものと考えてよろしいものなのですかね。35%の閾値自体の妥当性ということにもつながるのだと思うのですが。榎本先生、いかがですか。

○榎本技術専門委員 
 私の受ける印象は、やはり基本的に、このCR率が35%とすごく高いというのは、トラスツズマブ、ドセタキセルによる治療を3クールしかやっていない時点での評価でこれだけの値が出るのは、普通はちょっと考えにくいです。そういった意味では、非常に効果があるのではないかという期待をもてるとは思うのですが。しかし、やはり症例数が少ないので、ビギナーズラックというか最初は効果がすごく高いようにみえても、症例が増えたらたいしたことなかったという可能性も十分あり得るので、症例を登録してきちんと見ていかないといけないのかなと思います。

○上村(尚)構成員 
 はい、分かりました。ほかに何かありませんか。それでは、告示番号旧34については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて、先進医療会議に報告をいたします。ありがとうございました。榎本技術専門委員におかれましては、以降は御退席いただいても結構です。本日は御多忙のところ、御出席いただきまして本当にありがとうございました。

○榎本技術専門委員 
 ありがとうございました。

(榎本技術専門委員 退席)

○上村(尚)構成員 
 よろしいでしょうか。それでは、事務局で座長を、また交代していただくことになろうかと思いますが。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 それでは、以降の審議については竹内座長にお戻りいただき、進行をお戻しいたします。しばらくお待ちください。

(竹内座長 入室)

○竹内座長 
 ありがとうございます。それでは、北川座長代理にお戻りいただくこととしたいと思います。北川座長代理、入室をお願いいたします。

(北川座長代理 入室)

○竹内座長 
 よろしいでしょうか。それでは、続きまして「総括報告書の評価結果」について、事務局から説明をお願いいたします。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 それでは、御説明いたします。資料2-1の23ページを御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂きますのは、告示番号旧42、「腎血管筋脂肪腫に対する腎腫瘍凝固・焼灼術(冷凍凝固によるものに限る。)」です。申請医療機関は、九州大学病院です。審査担当構成員は、主担当が北川座長代理、副担当が飛田構成員、技術専門員が近藤委員となっております。
 それでは、資料に沿って御説明いたします。結節性硬化症(TSC)は、全身に過誤腫と呼ばれる良性腫瘍が形成され、てんかんなど精神神経症状を示す希少疾患である。TSCに伴う血管筋脂肪腫(AML)は10代以降に通常腎に発生することが多く、TSC-AMLの増大による腎機能低下や破裂による出血等のため、TSC患者は年齢とともに腎疾患での死亡割合が増加し、大きな問題となっている。凍結療法は小径腎癌にのみ承認されており、その安全性・有効性は確立されているが、AMLは脈管系腫瘍であり、凍結療法の脈管系腫瘍に対するevidenceは乏しい。そこで、凍結療法のTSC-AMLに対する安全性・有効性を証明し、凍結療法の適応拡大を目的として本研究を行った。
 主要評価項目は、凍結療法が施行されたAMLの病勢コントロール率。副次評価項目:安全性評価基準として安全性(凍結療法開始後の安全性)、有効性評価基準として凍結療法が施行されたAMLのORR、腎機能など記載のとおりです。目標症例数15例に対して登録症例数は15例でした。以上です。

○竹内座長 
 ありがとうございます。それでは、本技術の評価について、主担当の北川座長代理から御説明をお願いいたします。

○北川座長代理 
 よろしくお願いします。本研究の有効性の評価結果について、私のコメントを資料に沿って御説明申し上げます。
 まず、有効性については、「B.従来の医療技術よりも、やや有効である」といたしました。コメントとしては、治療9か月で100%の症例で縮小しており、完全消失していることも多くの症例で確認されております。主要評価項目の有効性評価基準である標的病変の病勢コントロール率が100%ということで、この研究は、直径1~4cmという腎血管筋脂肪腫の小さいものを対象としているために、直接比較はなかなか難しいのですが、従来の既存の塞栓療法やエベロリムスと比較して有効であると評価いたしました。副次評価項目の有効性評価基準のうち、標的病変の奏効率は93.3%、健康状態調査票(SF-36)でチェックしたところ、治療後変化なし、期間中の追加治療もなかったということで、良好な結果と評価いたしました。一方、有効性評価基準である血清クレアチニン値は、一旦、低下して回復しますが、完全に元のところまで戻っていないというデータが示されていました。
 次に、安全性ですが、Grade3の有害事象が3件のみで、重篤な有害事象の報告はありませんでした。しかし、血清クレアチニン値とeGFRによる腎機能評価は、術後9か月時点で一定量の低下が確認されています。また、安全性としての評価の判断になる術後1か月における腎機能低下が、術後9か月時点で回復しきっていないということから、一部、腎機能の喪失という判断があり、BかCかというところですが、一応、C評価といたしました。
 技術の成熟度ですが、本試験では、既に小径腎悪性腫瘍で保険収載されている凍結療法の技術が用いられています。一方で、本試験の症例登録施設は、小径腎悪性腫瘍に対する凍結療法の施行数の多い経験のある施設で行われているということで、B評価といたしました。
 総合的評価は、単純比較ができないものの、病変の縮小率は既存の治療に比べて良好です。しかしながら、一定のeGFR低下が確認されており、また、これが完全に戻っていないということ、この結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫の予防的動脈塞栓術が、ガイドライン上では、一般に4cm以上の腫瘍、あるいは5cm以上の動脈瘤がある場合に推奨されている。
 本研究は、現在のガイドライン推奨のものよりも初期のもの、1~4cmに対する介入試験でした。標的病変の縮小率が良好であったことから、「予想される利益」に記載されている、「腎血管筋脂肪腫増大による症状発現の防止」が期待できるが、一方で、一定程度の腎機能の喪失があったことから、「末期腎不全に進行するまでの期間を延長させる」とまでの結論は導けないのではないかと判断いたしました。
 また、「繰り返し施行可能な局所療法としての位置づけ」については、今回、「繰り返し施行」の介入を含んでいないために、これについても更なるデータの蓄積が必要であると考えました。
 次に、「薬事未承認の医薬品等を伴う医療技術の場合、薬事承認申請の効率化に資するかどうか」の判断ですが、本試験研究では、TSCに伴う小径腎血管筋脂肪腫へ凍結療法による介入によって、主要評価項目である標的病変の病勢コントロール率100%が達成されております。腫瘍縮小に効果が認められた一方で、先ほど申しましたように、一定の腎機能の損失、ベースラインへの回復が満たされていないため、本手技による腫瘍縮小のメリットと、本手技による腎機能損失というデメリットとのバランスで、これを上回っている症例にのみ施行されるべきであると考えられます。ということで、「ベースラインで十分な腎機能を有していない症例での本手技の施行は腎機能の温存の目的からは推奨できない」というコメントにさせていただきました。私からは以上です。

○竹内座長 
 ありがとうございました。続きまして、副担当の飛田構成員より、御評価をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○飛田構成員 
 よろしくお願いします。私のコメントは、先ほどの続きの所から記載させていただいています。今回の試験が、先ほど北川先生からも説明がありましたとおり、ガイドラインでは腫瘍サイズが3cm以上の場合であれば薬物治療のエベロリムスが使われますが、本試験は1~4cmのサイズの対象に対する本医療技術単群の臨床試験が実施された成績が報告されています。そのため本試験は、従来の医療技術との比較試験ではないこと、主要評価項目である9か月時点のDCRの閾値が、帰無仮説として50%と設定されているのですが、この50%についても、これまでの1~4cmのサイズの腫瘍に対しての標準治療に基づいて設定された値ではないことから、有効性として適切な評価の選択肢がA~Eにはありません。
 ただし、DCRの閾値については、この技術の計画時の評価にも様々な議論をさせていただいたのですが、臨床的な視点から設定された値でもなく、計画時点以降も、このTSC-AMLに対する新たなevidenceや、この対象疾患に対する自然歴のデータ等々が得られてはいないとのことです。そのため、解析結果として値の値及び有意差があるという結論の取扱いには注意が必要ではありますが、結果的に15例全例でDCRに至っていること、脂肪成分が主であるAML患者の3例ではCRには至っていないのですが縮小傾向が確認されていること、更に長期的なフォローアップの結果も今後報告される予定であるという研究者からの照会事項に対する回答が得られていることから、総合的に評価してBと判断させていただいております。
 続いて、安全性については、全例で有害事象は認められているのですが、特に重篤な有害事象は認められていないことで、Bとしています。ただし、因果関係の否定されていないGrade3の有害事象が認められていますが、特に慢性腎臓病については、術後33日目、1か月後ぐらいに発現しているGrade3の有害事象(副作用)なので、一定の注意は必要と考え、Bとさせていただいています。
 最後に、技術的成熟度については、Bとさせていただきました。以上です。

○竹内座長 
 ありがとうございました。続きまして、技術専門委員の近藤委員から御説明をお願いいたします。

○近藤技術専門委員 
 近藤でございます。説明をさせていただきます。まず、有効性に関して、症例数が15例と比較的少ないのですが、一応、全例でDCRに至っていることは、有効性を示していると考えます。また、CRに至らなかった3例に関しては、いわゆる脂肪成分が多い腫瘍であることが示されております。この腎血管筋脂肪腫は、いわゆるファットプアなもの、要するに脂肪が少ないものから脂肪が非常に多いものまでバラエティに富んでいます。例えば、血管塞栓術で治療することもありますが、塞栓術の場合でもやはり脂肪成分が残っても、経過を見ますと、すぐに大きく再発してくることはないようです。本症例でも基本的には脂肪成分が多いとCRには至らないのだけれども治療効果としてはあるのではないかということでした。従来のエベロリムスに対して本医療技術は、やや有効ではないかということで、Bとさせていただきました。また、腎の中のどこに占拠しているかによって、実は十分に冷却できないという場合もあるので、これに関しては今後きちんと検討していただきたいと思っております。
 続きまして安全性ですが、基本的には、先の先生方の御意見と特に余り変わりはないのですが、やはり腎機能低下が一つのポイントになるかと思います。ですから、今後、腫瘍の大きさや冷却範囲に関して、慢性腎不全や慢性腎臓病などの合併症例に関しては非常に注意を要するということを考えながらやる必要があるかと思いました。一応、安全性に関しては、Bとさせていただきました。
 技術的成熟度ですが、こちらもBということです。数多くの経験を積んだ医師であれば可能であろうかと思います。ただ、この技術は単純にエコーガイドやCTガイドで穿刺して冷却すればよいというものではありません。要するに、腫瘍がどこにあるかによって、例えば近接臓器が右の場合は肝臓だったり下大静脈であったりとか、いろいろな近接臓器があります。その際にはその間にスペーサーというか、生理食塩水でスペースを作って、間をおいて冷却の影響がないようにしなければ合併症が起こる可能性があります。そういった技術を含めて、より高度なものが要求される場合もあります。ただ、さっと刺してやってしまえる場合もあります。ですから、難易度に関して言うと、一定ではなく簡単なものから困難なものまであると考えますので、少なくとも経験を積んだ医師でないといけないだろうと判断しました。以上です。

○竹内座長 
 ありがとうございました。大変、丁寧に御説明いただきました。それでは、主担当の北川座長代理から、何か追加のコメント等がありましたらお願いいたします。

○北川座長代理 
 今、最後に、近藤専門委員から御指摘いただいたような技術的な細かい点は非常に重要ですので、ここは私も改めて認識した次第です。そのほかにはありません。ありがとうございます。

○竹内座長 
 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明について、何か御質問はありますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、告示番号旧42番については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめまして、先進医療会議に報告させていただきたいと思います。近藤技術専門委員におかれましては、以降は御退席いただきまして結構です。本日は、御多忙のところ、御出席いただきましてありがとうございました。

○近藤技術専門委員 
 それでは、失礼いたします。

(近藤技術専門委員 退席)

○竹内座長 
 ありがとうございました。続きまして、新規申請技術の評価結果について、事務局から説明をお願いいたします。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 資料3-1(39ページ)を御覧ください。先進医療Bとして新規に御評価いただく技術は、整理番号134「着床前胚異数性検査」です。申請医療機関は、大阪大学医学部附属病院です。審査担当構成員は、主担当が竹内座長、副担当が掛江構成員、上村夕香理構成員、技術専門委員が北脇委員となっております。なお、本議題の審議に際し、上村尚人構成員、真田構成員、飛田構成員におかれましては、御所属の医療機関との関係で、本議題の審議に際し、御退席いただきたく存じます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

(上村尚人構成員、真田構成員、飛田構成員 退席)

○医政局研究開発政策課長補佐 
 資料3-5(67ページ)を御覧ください。審議に先立ち、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件について事務局より御説明いたします。1番目の実施責任医師の要件ですが、診療科は産婦人科、産科、婦人科、又は女性診療科、資格は日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医であり、かつ、日本生殖医学会認定生殖医療専門医であることが必要となっております。当該診療科の経験年数は5年以上、当該技術の経験年数は1年以上を必要としています。当該技術の経験症例数は術者として3例以上、それに加え、助手又は術者として2例以上、又は合計15個以上の胚盤胞の取り扱い経験が必要となっております。
 2番目の医療機関の要件です。診療科は産婦人科、産科、婦人科又は女性診療科が必要です。実施診療科の医師数は、常勤の日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医が1名以上配置されていることが必要で、他診療科医師数は不要です。その他、医療従事者の配置は、胚を扱うことができる技術者が必要です。病床数は不要で、看護配置は不要、当直体制は不要、緊急手術の実施体制は不要、院内検査の24時間実施体制は不要、他の医療機関との連携体制は必要で、具体的には、急変時に入院を含めた対応を可能とするということです。医療機器の保守管理体制は必要、また、倫理委員会による審査体制は、審査開催の条件として、倫理委員会が設置されており、必要な場合に随時開催すること、医療安全管理委員会の設置は必要、医療機関としての当該技術の実施症例数は5例以上、又は15個以上の胚盤胞の取り扱い経験が必要です。その他として、必要に応じて、自施設又は連携施設において遺伝カウンセリングが実施できる体制が必要です。日本産科婦人科学会にPGT-A承認実施施設として認定されていることが必要です。
 「Ⅲ.その他の要件」として、頻回の実績報告は不要となっております。事務局からは以上です。
 なお、本議題の審議については、竹内座長に御評価いただいており、北川座長代理の御都合もありまして、松山構成員に進行をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○松山構成員 
 こちらの案件に関して、何か御意見等はございますか。それでは、様式9に関して特段の意見がないということで、これをお認めさせていただくことといたします。
 次に、技術の概要と実施体制の評価について、主担当の竹内座長より御説明をお願いいたします。

○竹内座長 
 41ページの「医療技術の概要」の所を御説明いたします。前段のところは、体外受精で胚移植可能となるまで十分に発育した胚を移植しても、妊娠しない、又は流産する症例が多く、特に年齢が高くなると、その傾向が顕著であり、これが課題となっているということです。また、移植可能な状態まで発育した胚の半数以上に染色体の数的異常が認められて、結果的に子宮に戻しても着床しない、あるいは流産に至ることが明らかとなってきています。
 このようなことから、体外受精-胚移植(ART)を行うことの負荷が非常に大きくなっているということが課題になったという背景がありました。そこで、移植する前に胚の異数性を含む着床能、発育能を判定することができれば、これらの負担を回避できるのではないかと考え、着床前に胚の異数性検査(PGT-A)というものを行って、移植前に評価し、着床、発育がより期待できる胚を移植することで、ARTの成功率、体外受精胚移植の成功率を高め、流産を回避できる可能性があると考えて、本研究を計画したということです。
 この着床前異数性検査(PGT-A)によって、日本産婦人科学会が提示する胚診断指針に沿って、胚がA、Bと判定された胚が得られた場合に、初回凍結胚移植を実施する症例を「胚移植実施集団」として、実際に移植された集団における妊娠12週時点での妊娠継続率を評価するという計画です。主要評価項目は、今申し上げたとおりで、妊娠継続率12週、副次評価項目は、これに加えて流産率、着床率、着床あたりの臨床妊娠率等々の項目が含められております。予定期間として、先進医療告示日から2年、目標症例数は153例ということです。
 言葉だけでは分かりにくいので、資料3-4に図があります。65ページを御覧ください。体外受精については、卵巣を刺激し、採卵して体外受精を行い、受精卵を胚培養してから、その胚を移植する技術です。今回の先進医療技術は、この胚培養で得られた胚盤胞の栄養外胚葉から細胞を生検してまいります。この細胞について染色体異数性を検出します。日本産婦人科学会が規定する判断基準に基づいて、数性がない正常のA胚と一部の細胞のみに染色体数の異常があるB胚のみを移植し妊娠率を高めようとする計画です。今回の先進医療は、下の部分のこのパートに相当いたします。これが全体の概要です。
 42ページ、「実施体制の評価」についてです。先ほど御説明いただいた実施責任医師等の体制は「適」、実施医療機関の体制は「適」、医療技術の有用性等については「適」と判断させていただきました。この「適」の判断に至るまでには、49ページから51ページにわたる照会事項、例えば「臨床遺伝医、遺伝カウンセラーの認定条件」はどうか、あるいは「臨床遺伝部門の設置」についてはどうか、「遺伝子構造異常の有無」についてどのような結果が報告され、主治医がその結果を知って、どのような形で知らせるのか、「研究組織において遺伝カウンセリング体制に関して統一的な見解を取りまとめなくてよいか等々の質問をいたしましたが、適切に回答されました。
 コメント欄を見ていただきますと、体外受精-胚移植の成功率を高めることを目的として、着床前に胚異数性検査(PGT-A)胚染色体数を評価し、日本産婦人科学会が提示する胚診断指針に沿って、AあるいはB判定と診断された胚を移植する技術である。本技術の成功確率は、凍結胚移植後12週の継続妊娠率などの指標で評価しようとするものである。申請医療機関は大阪大学附属病院で、関連する市内の3つの医療施設が協力医療機関として患者登録に当たっています。この辺りは後ほど、掛江先生が詳しく、「患者に、より分かりやすい文言を使ったほうがいいのではないか」ということを御指摘されていて、それも修正していただいております。照会事項に対して適宜修正されました。適切に対応されていると判断し、実施体制は「適」と判断させていただきました。以上です。

○松山構成員 
 続いて、北脇技術専門委員より、実施体制の評価について御評価をお願いいたします。

○北脇技術専門委員 
 今まで説明いただいたとおりなのですが、まず、研究の流れについて一部重複いたしますが、簡単に補足させていただきたいと思います。
 現在、我が国においては、出生児13人に1人が体外受精による妊娠であるという時代になりました。しかし、体外受精で胚を移植しても着床しない、あるいは流産する例も多く、依然として十分な妊娠が得られていないのが現状です。その最大の原因が、約半数の胚に見られる染色体の数的異常です。
 そこで、着床前胚異数性検査(PGT-A)が開発されました。この方法では、受精卵を数日培養した胚盤胞というものの中で、将来胎盤になる部分である栄養外胚葉の部分から、5ないし10個の細胞を生検して、このDNAを増幅して、各染色体のDNA量を測定します。現在では、体外受精による妊娠例の90%では、胚は一旦液体窒素中で冷凍保存されます。採卵後、すぐに胚移植するのではなくて、受け手の母体のホルモン環境を良くしてから移植するほうが妊娠率が向上するからです。したがいまして、数週間後に判明するPGT-Aの検査結果を得た後に、カウンセリングを経て、患者の意思で移植胚を決定することができます。
 世界的にPGT-Aが広まる中、日本産科婦人科学会では、学会の定める技術的・倫理的規範に基づいて、2020年に特別臨床研究が開始され、PGT-Aの有用性の可能性が指摘されてきました。しかし、その一方で、PGT-Aは商業的に広く行われております。一般臨床では、学会の制約を超えて急速に普及しているというのが実情です。
 このような現状の中で、PGT-Aの臨床研究を先進医療に導入して、より確実なエビデンスを構築して、認定された技術として確立するのが日本産科婦人科学会の基本的な方針です。
 本申請の実施責任医師は、実施研究機関の産科婦人科教授でありますし、日本産科婦人科学会の現在の理事長です。実施研究機関は、日本産科婦人科学会が認定する生殖医療実施認定施設でありますし、遺伝カウンセリング実施体制を完備しています。実施協力医療機関として含まれている3医療機関も、いずれも生殖医療実施認定施設です。これらの4施設は、いずれも日本産科婦人科学会のPGT-A認定施設です。既に検査の実績もありますし、予定症例数の達成が見込まれています。申請書類は、構成員からの質問の中で適切に修正されておりますので、私は「適」と判断いたしました。

○松山構成員 
 続きまして、副担当の掛江構成員より、倫理的観点からの評価について御説明をお願いいたします。

○掛江構成員 
 国立成育医療研究センターの掛江です。まず、PGT-Aの実施の倫理性については、既に学会等でも十分に議論されておりますし、対象者も反復する体外受精の症例と習慣性流産、染色体構造異常の方に限定されていること、加えて遺伝カウンセリングの機会が補償されているということで、当該プロトコルにおいて、PGT-Aを実施されることによる倫理的な問題は生じないのではないかと考えました。
 その前提において、その他の倫理的な点として、同意文書、同意説明文書について確認させていただきましたが、「研究機関」という言葉を使われたり、「実施医療機関」という言葉を使われたり、分かりにくいところが少しございましたが、その辺りは丁寧に整理して適切に修正していただくことができました。
 それから、同意の撤回についての記載が十分ではなかったので、それを指摘させていただきました。研究計画書には、同意の撤回に関する事項の記載がなかったので、新たに追記していただき、説明文書についても少し加筆をしていただきましたので、分かりやすくなったかなと思っております。
 そのほか、会議資料の57ページ以降が質問させていただいた事項です。あと、手順についても、通常の不妊治療としての遺伝カウンセリングの話と、この研究に参加することによってカウンセリングを実施する辺りに分かりにくいところがありましたので、その点も質問させていただきまして、分かりやすく書いていただけたかと思います。
 あと、補償についてなのですが、当該研究は検査ですので、しかも体外で実施される検査ということで、申請者に対する質問の1つ目で、先進の届出書に記載されている本試験に参加することで生ずる健康被害とは、具体的にどういうものを想定しているのかと質問させていただきました。こちらに対して、「これは体外で実施する検査であるため、本試験特有の健康被害は想定していません」という回答を頂いているのですが、説明文書の中では、そのことを改めてきちんと想定はしていないのだけれども、「ART全般において何か生じた場合には、補償はないのだけれども、誠意をもって治療させていただく」という記載にしていただいて、それは分かりやすくてよかったかと思っているのですが、これは1点、部会の先生方の御判断を仰ぎたいと思っているところです。届出書には、届出書の9番の「被験者等に対して重大な事態が生じた場合の対処方法及び補償内容」という所に、「本試験に参加することで生じた健康被害については、通常の診療と同様に症状に応じた適切な治療を保険診療として提供する。その際は自己負担で」というような書き方をしておりまして、一般的に補償がない場合の臨床試験の書き方を書いていらっしゃるのです。想定していないのに、一般的な書き方で届出書の健康被害と補償の箇所が書いてあることについて、説明文書は適切に直していただいているので、倫理的に被験者に何か迷惑が掛かるとは思わないのですが、届出書の記載について、こういう記載で、こういった体外検査のものでも、こういった記載でいいのかどうかというところについては、後ほど部会の先生方の御意見を賜りたいと思っております。
 もう一点ですが、今回の研究なのですが、383名をエントリーするというプロトコルになっているのですが、その中で、153例の胚移植実施数をベースとして、その4割がそうなるということで、タブレットの397ページに、383名という人数を出しておられます。336ページの7-2が届出書の予定の症例数の所には、「153例(胚移植実施数)」としか書かれておりません。383人という人数は、症例数の設定根拠の中で初めて出てくるのです。きちんと読めば、その2つの数字の関係が分かりまして、どちらの数字も届出書には書かれているのですが、届出書の症例数は「153例」、プロトコルは「383例」で、説明文書は「383人」という形で記載されていましたので、こういう書き方が採用されるべきなのかどうかについても、内容として誤りだとは思いませんが、こういう書き方のままでいいのか、それとも修正を求めたほうがいいのかという辺りについては、是非、部会の先生方に御意見を賜りたいと思ったところです。
 そのほかは、患者の相談の窓口等は適切に設定されていましたし、記載もありましたので、問題はないということで、4番と5番について「適」と評価させていただきました。すみません、回りくどい説明になりましたが、以上です。

○松山構成員 
 今の掛江構成員から御指摘された論点は2つありまして、補償に関して、有害事象等はないと想定されているにもかかわらず、補償に関しての記載が残っていることをどうするかということが1点です。もう一点が、プロトコル上は383名で、実際にはPGT-Aを行う153例ということが、2つ目の論点です。
 後半に関しては、受精胚を作る前に、383人ぐらいに御説明をしたら、実際に受精胚ができてPGT-Aができるところまで進む方が153例という形で、プロトコルとして矛盾はないのかなと思っているのですが、この2つに関して、後ほど、まとめて御議論させていただくということでよろしいでしょうか。
 それでは、そのようにさせていただきます。一旦、進めさせていただこうと思います。臨床研究の実施計画書の評価に関しては、副担当の上村夕香理構成員が御欠席ということですので、事務局に代読をお願いしてもよろしいでしょうか。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 振替資料3-2(43ページ)を御覧ください。上村夕香理構成員からの「試験実施計画書等の評価」として、「6.期待される適応症、効能及び効果」から「16.個人情報保護の方法」まで、「適」とされております。
 コメントとしては、「本研究はPGT-Aにより日本産科婦人科学会が提示する胚診断指針に沿って、A,B判定と診断された胚が得られ、初回凍結胚移植を実施する症例を「胚移植実施集団」とし、胚移植実施集団におけるPGT-Aの有効性と安全性の評価を行います。主要評価項目は、胚移植実施集団症例における妊娠12週時の継続妊娠率とし、単群試験です。そのため、有効性の厳密な評価には限界はあると考えるものの、設定された閾値である41.4%は、1.悉皆的なデータである日本産科婦人科学会ARTデータ(PGT-A非実施)で得られたものであるため誤差は限定的である。2.日本産婦人科学会ARTデータは、体外受精の保険治療の要件とも関連付けられており、信頼性が高いと考えられる。3.年齢の分布を揃えるため重み付けにより年齢分布を揃えた上で算出した帰無仮説値である等の点を踏まえ、本試験デザインよりPGT-Aに対する一定の評価は可能と考えます。また、その他、計画書の不備等については、照会事項を通じて適切に修正されており、「適」と評価いたしました」とあります。以上です。

○松山構成員 
 それでは、「1から16の総評」について、竹内座長からのお話に入る前に、積み残していました掛江構成員からの御指摘について、御議論させていただこうと思います。プロトコル上は383例で、実際にPGT-Aを行うのは153例というところに関しては、北脇技術専門委員からコメントいただければ解決すると思うのですが、いかがでしょうか。

○北脇技術専門委員 
 数の根拠ですが、確率が40%になっているということに関して、その根拠自体は間違いではないと思います。掛江構成員が御指摘になっているのは書き方がどうかということですので、そのことに関しては、ほかの先生方の御意見を賜れればと思います。

○松山構成員 
 科学的に問題がなければ、このままでもよろしいのかなと思うのですが、北脇技術専門委員はいかがでしょうか。

○北脇技術専門委員 
 科学的に確率の40%を掛けたものという意味においては、問題ないと考えています。

○松山構成員 
 それでは、この論点に関しては、竹内座長、もしよろしければ、今、科学的な論点からは問題ないということでしたので、了解とさせていただくということでよろしいでしょうか。

○竹内座長 
 結構だと思います。

○松山構成員 
 そうしましたら、もう一点の補償の問題の所です。有害事象は大きくないのですが、掛江構成員、この論点を整理していただいてよろしいでしょうか。

○掛江構成員 
 申請者から、「本試験は体外で実施する検査であるため、本試験特有の健康被害は想定していません」と、はっきりお答えがあったにもかかわらず、届出書の記載は、「本試験に参加することで生じた健康被害については、通常の試験と同様に、症状に応じて適切な治療を保険診療として提供する」云々という書き方がされていまして、そもそも想定していないということであるにもかかわらず、「健康被害については」とさらっと定型の文章で書いてあるので、こういう書き方をしなければいけないという指導があるのかなと勘ぐってしまったぐらい、普通の試験の健康被害の書き方と同じ書き方をされていますので、こういった形を取らなければいけないのか、若しくは全く想定していないということであれば、原則として想定していないと。だから、補償も準備していないと。ただし、万が一何かあった場合には、対応しますという、今回の御回答と同じようなことを届出書にも書いていただくべきなのかというところで、これも書き方の問題なのかもしれないのですが、若干、気になりましたので、方向性を教えていただければ従いたいと思っているところです。

○松山構成員 
 構成員の先生方から、御議論、御質問等がありましたらお願いいたします。

○竹内座長 
 竹内です。よろしいでしょうか。

○松山構成員 
 よろしくお願いいたします。

○竹内座長 
 逆に、私も、57ページにある質問で、「全く健康被害は想定されていない」という回答に少し戸惑いました。60ページを見ていただきますと、この生検は栄養外胚葉から細胞を採取するということでしたが、文章の一部に、「間違って、内細胞塊を穿刺するリスクもある」という御説明が文書にあったと思います。そのようなことを含めて、健康被害はゼロということは言い切れないのではないかと私は判断していましたので、一連の文書の書き込みというのは適切なのかなと考えていました。この辺りは、北脇先生に是非、御意見を頂戴したいなと思います。いかがでしょうか。

○松山構成員 
 北脇先生、お願いいたします。

○北脇技術専門委員 
 今の図でいきますと、将来、胎盤になる部分である栄養外胚葉という所から5個~10個ぐらいの細胞を採ってくるというのが、今回の技術ですけれども、御指摘にありましたように、内細胞塊という部分が実際に胎児になりますので、そこを破損してしまいますと、胚が死滅してしまうことになります。仮に、そこに損傷が起こったものを移植しても妊娠には至りませんので、そういうことで例えば奇形児が生まれるといったようなことは存在いたしませんので、胚そのものを損傷してしまうという結果になります。そのことが健康被害というものではないとしましても胚の損傷の確率はあってもいいかと思います。ただし、その確率は非常に低いもので、今現在、こういった技術というのは非常に確立されておりますので、ほとんどないということを含めて、そういうことを書いておけばよろしいかと思います。
 その結果、母体のほう、あるいは胎児に奇形が生じるとかという健康被害が生じるということは、想定しておりません。

○松山構成員 
 恐らく大阪大学からの御返答の中では、母体自身に健康被害はないという感覚でお書きになっているのかなと。一方で、受精胚自身を少しマニュピレーションしますので、そこで胚がruptureしたりということがゼロの可能性はないというところだと思います。
 ここを勘案して最終的に、このまま「適」とするのか、あるいは一部文言を修正していく形にするのかというのは、検討かなと思います。
 掛江先生にお聞きしたいのですが、もし修正しなければいけないとしたら、今回は御質問の回答について引っ掛かったというところだと思うのですが、説明同意文書と本文の研究計画書の中で、修正したほうがよいという箇所はあるのでしょうか。

○掛江構成員 
 説明文書に関しては、北脇先生が御説明くださったように、胚の操作上のミスが起こり得ることについては、「細心の注意をもって行われます」という言葉で説明をされているので、説明文書について何かということは思っていません。
 ただ、今の北脇先生の御説明の中にもございましたが、胚の損傷のリスクを健康被害と呼んでいいのかどうかというところがあると思うのです。通常の健康被害、被験者が寛解で存在して、その方に介入して健康被害が、その方に生じるという話とは違うプロトコルにおいて、通常の書き方をして、健康被害という言葉でまとめている書き方が適切なのかどうかというところが引っ掛かったというだけで、松山先生がおっしゃるとおり、説明文書において、何かこれ以上修正していただかないと被験者に誤解が生じるというようには考えておりません。定型の書き方で、少し違うプロトコルの健康被害の対応について説明しているのが正しいのかなというところに引っ掛かったということです。

○松山構成員 
 そういう形であれば、例えばこう変えたほうがいいのではないかという強い助言があるわけではないと。ただ、こういう議論があって、定形で臨床計画が立てられているということに、アラートと言うか、同じようなことが起きてくると思いますので、そこは御配慮くださいということは、議事録を見ていただければ、皆さんも了解いただけるのかなという感覚でお聞きしておりました。
 以上を踏まえまして、竹内座長には申し訳ないのですが、「1から6の総評」について、コメントはこのままでよろしいか、どうするかを含めてお願いしたいのですが、よろしいでしょうか。

○竹内座長 
 患者にとっては、そういう細かな説明をしていただくということがとても重要で、仮に、この技術自体については極めてリスクが低いということであっても、丁寧な説明を頂いた上で、「健康被害については医療機関が最善の努力をする」ということを書いていただいたほうがいいのではないかと思います。むしろ、書かないことのほうが、いろいろな意味でリスクが高いという気はいたします。私は全体を俯瞰していただきまして、総合評価としては「適」とさせていただきました。ここに書いてあるように、不妊症患者を対象として、体外受精、胚移植の成功率の向上を目指して、次世代シークエンサーによって染色体異数性検査をすることで、妊娠率の向上を目指した計画であって、実施体制や倫理的な観点、試験実施計画書は適切に回答、修正されていて、総合的に「適」と判断させていただきました。
 掛江先生、もし必要があれば、照会事項の中で、相手方の申請施設に問いを投げ掛けて、回答を得ていただければ、本当は一番よかったのかなという気もいたしました。私は、これでいいのではないかというように思います。

○松山構成員 
 掛江構成員、いかがでしょうか。

○掛江構成員 
 ありがとうございます。竹内先生、申し訳ありませんでした。申請者に対しては、説明文書に関する観点に関しては、63ページで適切に御回答いただいております。「細心の注意をもって行われる本研究特有の健康被害はないと想定していますが、通常の保険診療として実施するARTに伴う合併症による健康被害が、この研究期間中に生じた場合、補償はありませんが、最善を尽くして適切な処置と治療を行います。」と。あと、「自己負担です。」ということも書いてくださっておりまして、説明文書に関しては適切に対応していただいているので、私もそれを踏まえて「適」とさせていただきました。届出書の記載の方法だけが気になりまして、そちらは1番の質問に対して、もしかしたら届出書のほうの書き方も再検討していただけるかなと思ったのですが、そちらの記載は再検討されなくて、「健康被害はありません」という回答だけでしたので、更に修正を求める必要があるのか、このままでいいのかというところについて先生方の御意見を伺いたかったところでしたので、特に松山先生にまとめていただいたとおりで、私は結構でございます。

○竹内座長 
 ここの部分があったので、逆に私は安心したところがありました。非常によく照会していただいて、患者同意説明文書の所に、その内容が反映されていたということで、安心した部分でした。どうもありがとうございました。

○掛江構成員 
 ありがとうございました。申し訳ございませんでした。

○松山構成員 
 今、北脇先生、竹内座長、掛江構成員のお話を踏まえて、いろいろな議論をさせていただきました。
 構成員の先生方に御討議いただきたいのですが、コメント、御質問、御議論等がございましたら、挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。かなり深い議論ができたと思っておりまして、先生方に深く感謝しております。それでは、整理番号134番については、竹内座長の申し出のとおり「適」ということにさせていただきたいと思います。
 北脇技術専門委員におかれましては、以降は御退席いただいて結構でございます。御多忙のところを御出席いただき、コメントいただきまして感謝いたします。ありがとうございました。

○北脇技術専門委員 
 ありがとうございました。

(北脇技術専門委員 退席)

○松山構成員 
 以降の審議については、竹内座長にお戻りいただいて、進行をお願いしたいと思います。

○竹内座長 
 ありがとうございました。それでは、上村尚人構成員、真田構成員、飛田構成員にはお戻りいただくことといたします。

(上村尚人構成員、真田構成員、飛田構成員 入室)

○竹内座長 
 それでは、「試験実施計画の変更」について、事務局から説明をお願いいたします。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 今回、試験計画等の変更申請が3件提出されております。資料4(69ページ)を御覧ください。国立精神・神経医療研究センターからの申請で、告示番号30「反復経頭蓋磁気刺激療法」です。適応症は、「薬物療法に反応しない双極性障害の抑うつエピソード」です。御審議いただく主な変更内容について、70ページを御覧ください。「主な変更内容」として、試験期間の延長とあります。研究対象登録期間を4年間延長、最終患者観察終了日とデータ解析期間が、それに伴い変更となっております。なお、最終患者観察終了日は登録期間許容範囲の2週間を追加修正、急性期の許容範囲の2日を追加修正して、併せて行っております。
 「変更申請する理由」としては、本研究の目標症例数は96例であり、当初の登録期間を4年と設定しておりました。しかしながら、COVID-19蔓延の影響は予想以上に大きく、登録に遅れが生じていた。NCNPでは、rTMS専門外来(うつ病、双極性障害が対象)を開設し、対象患者をリクルートしているが、2019年度の受診希望者が47例に比して、COVID-19蔓延の影響から2020年度は25例、2021年度は23例と大きく落ち込んでいる。(図1)。
 2022年度は、うつ病患者の受診が増加しているが、双極性障害の受診は増えていない。結果、2023年1月末時点で、全体の登録症例は、NCNP病院17例、東京慈恵会医科大学附属病院4例、慶應義塾大学病院5例、合計26例となっている。登録症例数は、専門外来以外にも再来患者も含まれているが、計画を立てやすい専門外来に限ると、双極性障害患者が本研究の適格性に合致する確率は、例年ほぼ4人に1人と変わらないため、現実的な対策として新患受診率を倍に増やすことである。2023年度は、専門外来数を倍増させ、連携医療機関へのアナウンスを強化し受診者数を確保する。倍増と仮定して、2023年度以降、NCNP病院の登録数を10例、東京慈恵会医科大学附属病院、慶應義塾大学病院の登録数をそれぞれ4例とすると、2026年度には98例の登録が満了する計算になり(表1)、登録期間とともに研究期間を4年間延長する申請をした。以上です。

○竹内座長 
 本変更内容について、御意見等はありますか。かなり明確な根拠に基づいて、COVID-19の影響で変更したいという申請内容ですが、よろしいですか。
 それでは、告示番号30の変更についてお認めしたいと思います。続いて、次の試験実施計画の変更について説明をお願いします。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 資料5(73ページ)を御覧ください。地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立小児総合医療センターからの申請です。告示番号50「腫瘍治療電場療法」です。適応症は、「膠芽腫(当該疾病が発症した時点における年齢が18歳未満の患者に関わるものであって、テント上に位置するものに限る)」です。
 御審議いただく主な変更内容について、74ページを御覧ください。「主な変更内容」として、(1)様式第9号の実施責任医師の要件の見直し。「変更申請する理由」として、(1)米国小児血液腫瘍専門医は、資格として本研究の実施責任医師の十分条件として妥当と考えるため。以上です。

○竹内座長 
 何か御意見はありますか。よろしいですか。米国の小児血液腫瘍専門医を、この要件の中に含めるということです。特に御意見がないようでしたら、これもお認めするということにさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、告示番号50の変更についてお認めすることといたします。続きまして、「次の実施計画の変更」について説明をお願いします。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 資料6(75ページ)を御覧ください。熊本大学病院からの申請です。告示番号65「生体肝移植術」です。適応症は、「切除が不可能な肝門部胆管がん」です。御審議いただく主な変更内容については、76ページを御覧ください。
 「主な変更内容」として、実施責任医師の要件である資格を「日本肝胆膵外科学会認定高度技能指導医もしくは専門医」から、「日本外科学会専門医(なお、日本肝胆膵外科学会認定高度技能指導医および専門医は日本外科学会専門医の上位資格である)」に変更する。
 「変更申請する理由」としては、共同研究施設より問い合わせを受け、本研究の実施10施設を決定した日本肝移植学会に再確認したところ、本研究の実施に当たり、その他の要件を鑑みた総合的な観点から、実施責任医師が保有すべき資格については、日本外科学会専門医の資格の保有で必要十分と判断されたためとあります。以上です。

○竹内座長 
 何か御質問等はありますか。

○北川座長代理 
 もとの高度技能専門医からというのは、かなり今、まだまだ人数はそろっていない高度な資格です。もちろん、こうした資格を持った者が、組織に入ることは重要ですが、責任医師の資格としては日本外科専門医として統括できるのではないかと思います。
 例えば、多くの施設、大学施設などの責任者が全員肝胆膵高度技能専門医を持っているという状況ではないので、むしろ、ガバナンスの面で、日本外科学会専門医としたほうが妥当なガバナンス体系がとれるのではないかと思います。私からの意見です。

○竹内座長 
 ありがとうございました。ほかにコメントはないようですので、告示番号65の変更についてお認めしたいと思います。ありがとうございました。続きまして、「先進医療Bの協力医療機関の追加」について、事務局から説明をお願いします。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 資料7-1(77ページ)を御覧ください。告示番号50について1件、告示番号65について5件、告示番号68について2件の協力医療機関の追加申請がありました。資料7-2、79ページ以降を御覧ください。事務局において、先進医療実施可能とする保険医療機関の要件(様式第9号)を満たしていることを確認しました。協力医療機関の追加として御了承いただきたく存じます。

(確認)

○医政局研究開発政策課長補佐 
 特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。以上です。

○竹内座長 
 よろしいでしょうか。それでは、事務局のほうで手続を進めていただくようにお願いいたします。続いて、「事前の規定による先進医療Bの取り下げ」について説明をお願いします。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 資料8(85ページ)を御覧ください。先進医療の取り下げとして、告示番号7の1件の申請がありました。事前の規定による試験中止に伴う先進医療Bの取り下げに準じて、取り下げを行う。なお、総括報告書(主たる解析時点)は、第126回先進医療技術審査部会で評価済みである。追跡期間終了後、最終解析における総括報告書を提出予定である。以上について、特に御意見がなければ手続を進めさせていただきます。

○竹内座長 
 よろしいですか。それでは、特に御意見がないようですので、事務局のほうで手続を進めていただければと思います。続きまして、「申請医療機関からの報告」について説明をお願いします。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 資料9(87ページ)を御覧ください。大阪大学医学部附属病院から、告示番号旧17「周術期カルペリチド静脈内投与による再発抑制療法」に関する御報告です。
 なお、上村尚人構成員、真田構成員、飛田構成員におかれましては、御所属の医療機関との関係で、本議題の審議に際し、御退席いただきたく存じます。御協力のほど、よろしくお願いします。

(上村尚人構成員、真田構成員、飛田構成員 退席)

○医政局研究開発政策課長補佐 
 それでは、資料に沿って御説明させていただきます。研究活動上の特定不正行為による特定臨床研究 非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP投与の多施設共同ランダム化第Ⅱ相比較試験(JANP study)中止後の被験者保護のための観察研究結果についての御報告です。
 次のページに移りまして、1.JANP study中止後の被験者保護のための観察研究実施についてです。前回の令和4年1月13日審議以降の更新事項をお伝えします。下から4行目、令和4年2月2日開催のCRBにて、JANP study総括報告書最終審議に合わせて、症例集積状況に加えて、令和3年11月16日開催の第1回観察期間独立安全性モニタリング委員会審議結果(5例のSAEに対する審議においてハンプと因果関係なし)が報告された。令和4年5月18日開催のCRBでは、症例集積状況(令和4年1月末時点:全施設で94症例分の登録)、令和4年5月18日開催のCRBでは、症例集積状況(令和4年4月末時点:全施設で168症例分の登録)に加えて、令和4年4月11日開催の第2回観察期間独立安全性モニタリング委員会審議結果(13例のSAEに対する審議においてハンプとの因果関係なし)が報告された。さらに、令和4年7月末に全症例の5年間の経過観察期間が終了し、令和4年8月3日開催のCRBでは、遅延なく症例登録を推進していくことを研究代表者より参加施設に依頼したことが報告された。全参加機関の症例登録330例についてのデータセンターへの症例報告は、令和4年10月初旬に終了したが、その後、参加全施設における症例報告情報のモニタリング、当院で登録された症例報告の監査、さらに観察期間中に認めた重篤な有害事象に関する観察研究独立安全性モニタリング委員会が開催され、データ固定が令和5年1月11日となった。当初、本観察研究の結果は、令和4年内に最終報告書を当病院長、当院臨床研究総括委員会、当院観察研究倫理審査委員会、認定臨床研究審査委員会、先進医療技術審査部会へ報告する予定であったが、研究代表者より、令和4年11月2日開催のCRBにて本観察研究の定期報告を行い、スライドを用いて症例登録状況及び参加施設訪問によるモニタリングのスケジュールが説明され、データ固定遅延による解析実施を令和4年末までに行うこと、本研究の最終報告書については、令和5年1月18日開催予定のCRBにて最終報告書の審議を行い、委員の意見を反映した上で各部署へ報告を行うことに関して承認を得た。本観察研究の進捗状況は、研究代表者より医政局研究開発政策課へ報告し、令和4年11月24日開催の当院臨床研究総括委員会、令和4年12月23日の当院病院運営会議に付議され承認された。
 本観察研究に対するモニタリングは、当院臨床研究センターのモニタリンググループにより、全参加施設において訪問形式で実施され、令和4年12月22日に最終報告がなされ、モニタリングによる指摘事項が全て解決したことを確認した。また、当院未来医療開発部監査室によって、当院の研究が倫理指針、関係する法規則及び研究計画書に従って行われたかについて監査を実施した。その結果、研究の対象者の権利、安全又は福祉を脅かす、あるいは研究の質と信頼性に影響を及ぼすような違反、逸脱、不遵守は見受けられなかった。(令和4年12月16日に最終報告)。本観察研究の統計解析は、当院未来医療開発部データセンターが担当し、令和5年1月11日に統計解析報告書が提出され、令和5年1月12日に研究代表者より観察研究最終報告書案がCRB委員に提出された。委員の意見に従って修正が加えられ、再提出された観察研究最終報告書(別添資料1)は、令和5年1月18日開催のCRBにて審議され承認された。
 次のページに移ります。2.JANP study中止後の被験者保護のための観察研究結果についてです。観察研究最終報告書によると、本観察研究への参加拒否を当院以外で参加された8例で認め、本研究における安全性解析対象集団は322名(ハンプ投与群161例、手術単独群161例)となった。JANP study安全性解析対象集団330例全例を対象に本研究に基づいた経過観察を実施することが望ましく、代表施設より当該施設へ日常診療による慎重な経過観察を依頼した。また、文書による同意を、投与群112例、手術単独群104例より取得した。
 一方、ハンプ投与群49例、手術単独群57例にて、オプトアウトによる同意取得が行われた。オプトアウトで同意を取得した場合には、オプトアウト方式で研究参加が許容される症例であることをモニタリングにより確認した。本観察研究機関において、報告された術後30日以降の重篤な有害事象は、ハンプ投与群161例中43例(26.7%)65件、手術単独群161例中47例(29.2%)69件であり、発生率に差を認めなかった。報告された術後30日以降の重篤な有害事象に対して、観察期間独立安全性モニタリング委員会にて審議が計5回行われ、90例(うちハンプ投与群は43例)について、被験薬ハンプと術後30日以降の重篤な有害事象に因果関係はないと判断された。
 さらに、JANP study早期中止によって解析できなかった術後5年無再発生存期間、肺癌特異的術後5年無再発期間、全生存期間が報告された。非小細胞癌以外の症例15例、及び非完全切除例7例を除く300例(ハンプ投与群150例、手術単独群150例)が本観察研究の有効性の解析対象となった。いずれのアウトカムにおいても、ハンプ投与群と手術単独群で差を認めず、本観察研究による長期観察によっても両群間でハンプの再発予防効果を証明できなかったことから、術後再発予防効果の観点から肺癌周術期にハンプを投与する有用性はないと結論づけた。JANP studyの根拠論文、参考論文の特定不正行為が認定されたことから、肺癌周術期にハンプを投与することの妥当性が、安全性、有効性の双方の観点から失われ、ハンプ投与による術後30日以内に発症した術後合併症は被験者がJANP studyへ参加しなければ発症しなかった可能性は否定できず、JANP studyに参加いただいた被験者に対して改めて深くお詫び申し上げるとともに、改めて本観察研究の結果を誠実に被験者に説明することを研究代表者へ通知した。以上です。

○竹内座長 
 大変詳しい御説明を頂きました。何か、コメント等はありますか。よろしいですか。この根拠論文、あるいは参照論文で特定不正行為があって、ハンプの試験そのものの根拠が危ぶまれておりました。今回、その後の経過観察結果が完了したということでのご報告でした。その結果、ハンプ群と対象群がほぼ同じ、むしろ、ハンプ群のほうが対象群よりも少し上回るように見える、という結果で、ハンプ群の患者さんへの健康被害等は観察されなかったということでした。
 特に御意見等がないようでしたら、よろしいですか。それでは、これで結構とさせていただきます。上村先生、真田構成員、飛田構成員については、お戻りいただいてよろしいかと思いますので、お戻りください。

(上村尚人構成員、真田構成員、飛田構成員 入室)

○竹内座長 
 申請医療機関からの報告については以上です。ありがとうございます。皆様、お戻りいただいたようです。それでは、本日の議題は以上ですが、構成員の皆様、全体を通して何か御意見、御質問等はありますか。よろしいですか。ないようでしたら、事務局から次回の日程等について御案内を頂きます。

○医政局研究開発政策課長補佐 
 次回は、令和5年3月9日(木)16時から18時の予定で、詳細については、別途御連絡させていただきます。また、本日の議事録については、作成次第、構成員の皆様に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますので、よろしくお願いします。

○竹内座長 
 ありがとうございました。それでは、これをもちまして、第145回先進医療技術審査部会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。