2023年2月14日 第188回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和5年2月14日(火) 15:00~17:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

公益代表委員
荒木委員、安藤委員、川田委員、佐藤(厚)委員、藤村委員、水島委員、両角委員
労働者代表委員
大崎委員、川野委員、北野委員、櫻田委員、東矢委員、冨髙委員、西尾委員、世永委員
使用者代表委員
池田委員、鬼村委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、鳥澤委員、兵藤委員
事務局
鈴木労働基準局長、青山審議官(労働条件政策、賃金担当)、古舘総務課長、松原労働条件政策課長、吉村労働関係法課長、田上大臣官房厚生科学課総括調整官、益原労働関係法専門官、木原労働条件政策課課長補佐、田邉労働関係法課総括調整官、多根井労働関係法専門官、小川労働関係法課課長補佐、長澤労働条件企画専門官

議題

  1. (1)「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱」等について(諮問)
  2. (2)研究者等に対する無期転換ルールについて
  3. (3)担保法制の見直し(事業(成長)担保制度の導入等)について(報告事項)
  4. (4)2021年度 年度評価について

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第188回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日の分科会も会場からの御参加とオンラインでの御参加、双方で実施をいたします。
 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の黒田祥子委員、使用者代表の山内一生委員が欠席と承っております。
 カメラ撮りはここまでということでお願いします。
 本日の議事に入ります。まず、本日の議題1は「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案要綱」等についてです。本件につきましては、本日、厚生労働大臣から諮問を受けた案件ということになります。事務局から説明をお願いします。
○労働関係法課課長補佐 事務局になります。よろしくお願いいたします。
 昨年12月に取りまとめいただきました報告書の内容を踏まえまして、省令と告示の改正案を整理しております。省令案が1つ、告示案が2つとなっております。
 資料構成ですけれども、資料1-1が労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案の要綱、資料1-2がその概要となります。
 資料2-1が有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の一部を改正する件案の要綱、資料2-2がその概要となります。
 資料3-1が労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示案の要綱、資料3-2がその概要となります。
 それぞれ概要に沿って御説明をいたします。
 まず、資料1-2を御覧ください。省令案の概要となります。
 1ページ目を御覧ください。1.改正の概要とあります。労働基準法施行規則に以下の内容を追加することといたします。
 (1)無期転換ルール及び労働契約関係の明確化についてを御覧ください。
 1つ目の○のとおり、労働基準法第15条第1項前段に基づく労働条件明示事項に、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の上限並びに就業場所・業務の変更の範囲を追加することとします。
 2つ目の○です。無期転換申込権が発生する契約更新時における法第15条第1項前段に基づく労働条件明示事項に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件を追加することといたします。
 3つ目、無期転換後の労働条件を明示する際には、労働契約の締結時に書面の交付等の方法により明示することとされている事項については、書面の交付等の方法により明示することといたします。
 (1)は以上となります。
○労働条件政策課課長補佐 (2)以降が裁量労働制についてでございます。
 1つ目の項目が対象労働者の要件でございます。企画型について、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更する場合に、使用者が労使委員会に変更内容について説明を行うことを決議事項に追加することとする。
 2つ目の項目は本人同意・同意の撤回についてでございます。専門型について、本人同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないことを協定事項に追加することとする。
 専門型及び企画型について、同意の撤回の手続を協定事項及び決議事項に追加することとする。
 次は労使委員会の実効性向上に関するものでございます。企画型について、使用者が労使委員会に対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容について説明することに関する事項を労使委員会の運営規程に追加することとする。
 企画型について、労使委員会が制度の実施状況の把握及び運用の改善等を行うことに関する事項を労使委員会の運営規程に追加することとする。
 労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とすることを労使委員会の運営規程に定めることとするとともに、労使委員会の労働者代表委員の選出手続の適正化を図ることとする。
 労使委員会の労働者代表委員が労使委員会の決議等に関する事務を円滑に遂行することができるよう、使用者は必要な配慮を行わなければならないものとする。(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則(平成4年労働省令第26号)における労働時間等設定改善委員会においても同様の改正を行うこととする。)
 次に、行政の関与・記録の保存等についてでございます。
 6か月以内ごとに行うこととされている企画型の定期報告の頻度を初回は6か月以内に1回及びその後1年以内ごとに1回とすることとする。
 専門型・企画型とともに、健康・福祉確保措置の実施状況等に関する労働者ごとの記録を作成し、保存することとする。
 その他所要の改正を行う。
 施行期日に関しましては、令和6年4月1日を予定してございます。
 資料1-2は以上でございます。
○労働関係法課課長補佐 次に、資料2-2の1ページ目を御覧ください。こちらは有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の一部を改正する件案の概要となっております。
 1.改正の概要の①でございますが、使用者は有期労働契約の締結後、当該有期労働契約の変更又は更新に際して、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め、又はこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならないこととするとしております。
 次に②でございます。使用者は、労働基準法第15条第1項の規定により、労働者に対して無期転換後の労働条件を明示する場合においては、当該労働条件に関する定めをするに当たって労働契約法第3条第2項の規定の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければならないこととするとしております。
 最後に③です。その他、上記改正に伴う題名の変更及び所要の規定の整理を行うとしております。
 適用期日は令和6年4月1日を予定しております。
 資料2-2については以上となります。
○労働条件政策課課長補佐 最後に資料の3-2を御覧ください。こちらが労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針及び労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務の一部を改正する告示案ということで、2つの告示案を改正する内容となってございます。
 (1)が前者でございまして、労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針(平成11年労働省告示第149号)に係る改正でございまして、こちらは企画型について定めております指針の改正でございます。
 内容について御説明いたします。1つ目の項目は対象労働者の要件でございます。
 対象労働者を定めるに当たっての適切な協議を促すため、使用者が当該事業場における労働者の賃金水準を労使協議の当事者に示すことが望ましいことに留意することが必要であることを示すこととする。
 対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更しようとする場合に、使用者が労使委員会に対し、事前に変更内容について説明を行うことが適当であることに留意することが必要であることを示すこととする。
 次に、本人同意・同意の撤回に関するものでございます。
 本人同意を得る際に、使用者が労働者に対し制度概要等について明示した上で説明することが適当であること等に留意することが必要であることを示すこととする。
 同意の撤回の手続を決議するに際しては、申出先の部署等を明らかにする必要があること及び同意の撤回を理由として不利益取扱いをしてはならないことを示すとともに、撤回後の配置や処遇等について、あらかじめ決議で定めることが望ましいことに留意することが必要であることを示すこととする。
 次に、裁量の確保に関するものでございます。
 裁量労働制は、始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを示すこととする。
 労働者から時間配分の決定等に関する裁量が失われたと認められる場合には、労働時間のみなしの効果は生じないものであることに留意することが必要であることを示すこととする。
 次に、健康・福祉確保措置に関するものです。
 「労働時間の状況」の概念及びその把握方法が労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)と同一のものであることを示すこととする。
 健康・福祉確保措置の内容に、勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)、一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導を追加し、決議することを示すこととする。
 健康・福祉確保措置の内容を「事業場における制度的な措置」と「個々の対象労働者に対する措置」に分類した上で、それぞれから1つずつ以上を実施することが望ましいことに留意することが必要であることを示すこととする。
 健康・福祉確保措置として、対象労働者の勤務状況及びその健康状態を踏まえ、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)を決議することが望ましいことに留意することが必要であることを示すこととする。
 健康・福祉確保措置の結果を踏まえ、特定の対象労働者に制度を適用しないこととする場合における、配置及び処遇又はその決定方法について、あらかじめ決議で定めておくことが望ましいことに留意することが必要であることを示すこととする。
 次に、みなし労働時間の設定と処遇の確保についてでございます。
 みなし労働時間について決議するに当たっては、対象業務の内容、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を考慮して適切な水準とし、相応の処遇を確保する必要があることを示すこととする。
 次に、労使委員会の実効性向上についてでございます。
 委員の半数以上からの申出があった場合に限らず、制度の実施状況等について定期的に調査審議するために必要がある場合には、労使委員会を開催する必要があることに留意することが必要であることを示すこととする。
 労使委員会に求められる役割として、労使委員会においては、決議の内容が指針の内容に適合するようにするとともに、決議の有効期間中も、定期的に制度の実施状況に関する情報を把握し、対象労働者の働き方や処遇が制度の趣旨に沿ったものとなっているかを調査審議し、必要に応じて、運用の改善を図ることや決議の内容について見直しを行うことが求められることを示すこととする。また、委員は労使委員会がこうした役割を担うことに留意することが必要であることを示すこととする。
 使用者は、過半数代表者が必要な手続を円滑に実施できるよう十分に話し合い、必要な配慮を行うことが適当であることを示すこととする。
 過半数代表者が適正に選出されていない場合等には、労使委員会による決議は無効になること及び労使を代表する委員それぞれ1名計2名で構成される委員会は労使委員会として認められないことを示すこととする。
 使用者及び委員は、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容の使用者からの説明に関する事項を運営規程に定めるに当たっては、使用者からの説明は、決議に先立って行う必要があることに留意することが必要であることを示すこととする。
 制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項を運営規程に定めるに当たっては、対象労働者の働き方や処遇が制度の趣旨に沿ったものとなっているかを労使委員会で調査審議し、運用の改善を図ることや決議の内容について必要な見直しを行うことが必要であること等を踏まえ、使用者及び委員は、制度の実施状況の把握の頻度や方法を運営規程に定める必要があることに留意することが必要であることを示すこととする。
 労使委員会の委員が制度の実施状況に関する情報を十分に把握するため、使用者は、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の運用状況を開示することが適当であることに留意することが必要であることを示すこととする。
 次に、苦情処理措置についてでございます。
 労使委員会が苦情の内容を確実に把握できるようにすることや、苦情に至らないような運用上の問題点についても幅広く相談できる体制を整備することが望ましいことに留意することが必要であることを示すこととする。
 苦情処理措置に関して、使用者は、労働者から制度の適用に関する同意を得るに当たって、苦情の申出先や苦情の申出方法等を書面で明示する等、具体的内容を説明することが適当であることに留意することが必要であることを示すこととする。
 その他所要の改正を行うとしてございます。
 (2)が労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務(平成9年労働省告示第7号)について、以下の改正を行うということで、こちらは専門型の対象業務に関するものでございます。
 銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言をする業務について専門業務型裁量労働制の対象とすることとするとしてございます。
 こちらでございますけれども、昨年末に取りまとめていただいた報告書では、「銀行又は証券会社において、顧客に対し、合併、買収等に関する考案及び助言をする業務」とされていたものを法令にするに当たって精査した結果、このような規定となってございます。報告書を取りまとめていただいた際にもご説明した通り、この業務は事業承継に関するものも含むものであり、報告書の内容と齟齬はございません。なお、対象業務の範囲は通達で明確に示すことを考えております。
 こちらも適用期日に関しては令和6年4月1日を予定してございます。
 資料の説明は以上でございますけれども、補足として2点ございます。
 今回は、昨年末に取りまとめていただきました報告書の内容のうち、省令や告示の改正を伴うものについて、その改正案について諮問をさせていただいているところでございます。報告書の中には、例えば専門業務型裁量労働制について労使委員会を活用することが望ましいことを明らかにするなど、省令や告示の改正を要しないものも含まれておりますけれども、そういったものは今後通達等においてお示ししていきたいと思ってございます。
 2点目はパブリックコメントについてでございます。本日諮問しております3つの省令案、告示案について、それぞれ1月13日から2月11日までの30日間実施しました。御意見としては労働条件明示の方法に関するものや裁量労働制の同意や同意の撤回に関するものなどがございました。
 事務局からの説明は以上でございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま事務局から説明がありました省令案要綱等のうち、前半部分ですけれども、資料1-1、1-2、2-1及び2-2の労働契約制度の部分について、最初に委員の皆様より御質問・御意見があればお願いいたしたいと思います。なお、オンライン参加の委員の皆様におかれましては御発言希望ということをチャット機能に書き込んでお知らせください。よろしくお願いします。
 川野委員お願いします。
○川野委員 2点の質問と意見・要望でございます。変更範囲の明示と無期転換労働者等の処遇についてす。
 1点目は、就業場所の変更の範囲について、どのような地域単位で明示することが労働者の予見可能性を高めることにつながるのかという観点や、業務の変更の範囲についても正社員と限定正社員の両方向で転換可能である場合など、様々なケースが考えられますが、労働契約の内容を一層明確化することで労働者保護が図られるようにしていく必要があると思います。
 その上で、厚生労働省として変更の範囲の明示をどのような形で示すことを求めていくのか確認させていただきたいと思います。
 また、あらかじめ明示されていた職務や就業場所がなくなった場合においても解雇回避努力義務が課せられるという考え方をしっかりと周知徹底していただくよう重ねてお願いしておきたいと思います。
 もう1点の御質問は、有期契約労働者や無期転換労働者の雇用の安定や処遇改善に向け、前回厚労省から法を上回る取組の周知やキャリアアップ支援等に取り組むとのお答えがありましたが、具体的な取組としてはどのようなことを検討しているのか、伺いたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 2点御質問がありました。事務局からお願いします。
○労働関係法課長 川野委員、ありがとうございます。
 2つ御質問がございまして、変更範囲につきましては、どのような形で求めていくことになるのかという点でございます。こちらにつきましては省令上、業務、それから、就業場所の変更の範囲ということを労働条件明示事項として追加するということを御提案させていただいております。具体的にどういった形で求めていくことになるかということにつきましては、複数の具体例をお示しいたしまして、そういったものを参考にしていただきながら、各企業でどういった明示をしていくかということについて御検討いただくということになるのかと考えております。
 もう1点目につきましては、法を上回るような取組ですとかキャリアアップの取組について、12月の分科会で、こちらからお話をさせていただいたことについて、どういった取組を考えているかというところでございます。こちらにつきましては、例えば法を上回るような取組につきましては、告示で労働契約法3条2項の趣旨を踏まえまして、均衡を考慮した事項につきまして労働者に対して説明をするように努めなければならないこととするという内容を御提案させていただいておりますが、その具体的な内容につきまして、例えばですけれども、より詳細なやり方というのはこういったやり方がございますというようなことを周知の際に御説明をさせていただくですとか、あるいは今回の報告書では引き続き検討となっておりますけれども、労働条件の変更の際の明示といったことについても、トラブルを防止するという観点からはできる限り行っていただきたいということを周知させていただくというようなこと、あるいはキャリアアップの取組につきましては、従前から行っておりますけれども、キャリアアップ助成金なども活用いたしました正社員転換等を促していくといったことを考えているところでございます。
○荒木分科会長 川野委員、よろしいでしょうか。
○川野委員 ありがとうございました。
 今ほど説明いただいたとおり、きめ細やかで丁寧な周知が非常に重要だと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 西尾委員、お願いします。
○西尾委員 更新上限を新設、あるいは変更した理由の説明のところであります。意見を申し上げますが、説明の実効性を確保することや、契約当初の更新上限の年数などでは書面明示が義務化されていることも踏まえまして、更新上限の内容やその理由の説明は書面で行うことが基本としていくことが重要だと考えています。
 また、労働契約法3条2項を踏まえた均衡を考慮した事項の説明の部分につきましても、各職場レベルでの均衡処遇の取組が着実に進むように、具体的な例示を含めて周知が重要です。さらにパート有期法の14条2項と同様の説明のほうがより適切であると考えております。これらのことをしっかり周知徹底をいただきたいと考えております。
 また、無期転換前の雇止め、無期転換の申し込みを行ったことによる解雇や労働条件の引き下げなどの不利益な取扱いがなされることがないよう、前回も事務局からは法の趣旨に反するような事例への啓発・指導にも取り組むとの答弁をいただいておりますので、ぜひ周知を含めて、これまでより一段実効性を高めていく形で前向きに取り組んでいただきたいと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 オンラインのほうから鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 省令告示案に関しては、年末に取りまとめられました分科会報告の内容と齟齬がないと思っており、異論はございません。その上で、幾つかコメントをさせていただきます。
 労働条件明示の追加に関して、特に有期契約労働者における無期転換ルールの認知状況に課題があることをこの審議会でも共有した上で、その対策として、労使双方で適切に情報を共有することで有期契約労働者の雇用の安定に資するものだと考えております。
 また、就業場所、業務の変更の範囲を労働条件の明示事項に追加することに関して、この点も予見可能性を高めることで労使紛争の未然防止に資すると考えております。労側委員からも幾つかこの周知徹底が重要だという御指摘がございましたが、全くそのとおりだと思います。特に就業場所、業務の変更の範囲についての明示の仕方は審議の途中で使用者側からも縷々主張させていただきましたとおり、多様な実態がございます。新しく取り組むという企業も多いと思いますので、多様な事例を行政としてお示しいただきながら、実務上、混乱が生じないような分かりやすい周知をお願いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、先ほど川野委員から御指摘がありました、勤務場所等がなくなったときにも解雇回避努力義務が求められるという点は私どもも認識しておりますが、一方で、この解雇回避努力義務の履行に対する裁判所の判断・当てはめについては様々なバリエーションがあるとも思っております。多様な裁判例をバランスよく周知するという点は共通の理解に至ったと思いますので、その点を改めてお願いしたいと思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかに労働契約制度について御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、後半の資料1-1、1-2、3-1、3-2で説明がありました労働時間制度の部分について御意見を承りたいと思います。同様にオンラインの方はチャットでお知らせください。いかがでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 今回諮問されている省令案や告示案に直接関係することではないのですが、先日、裁量的にPDCAを回す業務及び課題解決型開発提案業務に関して、現行法の再解釈と弾力的な運用によって対象業務を拡大するというような新聞報道がございました。これについて弊会にも問い合わせが多数ありました。そこで、昨年末に取りまとめられた報告書について、事務局に1点確認をさせていただきたいと思います。
 労働側委員としましては、働き方改革関連法案から削除された内容の対象業務の追加を行うためには法律改正が必要と理解しております。今回の報告書に記載された、企画型や専門型の現行の対象業務の明確化を行うことには、そのような見直しは含まれておらず、「明確化」というのは、あくまでも現行規定の解釈の範囲内でどのような業務が裁量労働制の対象となるのか否かを明確にするという意味での記載だと認識しております。その点について、事務局としての認識を改めてお伺いしたいと思います。
○荒木分科会長 それでは、お尋ねがありましたので、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 冨髙委員の御質問に対しましてお答えします。
 御指摘のように様々な報道等がなされていることは承知してございます。事務局といたしましては、委員から今お話がありましたとおり、働き方改革関連法案から削除された裁量労働制の対象業務の追加は当然法律改正を必要とするものであると考えておりまして、これにつきましては現行の法条文の下で対応できるものではないと考えております。
 9回にわたりまして真摯に御議論いただいた結果、12月27日に取りまとめいただきました報告書における対象業務の明確化につきましては、今、冨髙委員よりお話がございましたとおり、現行の裁量労働制の対象業務に係る規定にどのような業務が該当するかを明確にしていく必要があるとされたものと認識しておりまして、審議会の報告を踏まえまして、現場の労働基準監督署等におきまして裁量労働制の対象業務に関する個別の疑義等に丁寧に対応していくことにより対応してまいりたいと考えているところでございます。
 御質問に対するお答えは以上でございます。
○荒木分科会長 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 あくまでも現行の対象業務の明確化であり、対象業務を拡大する趣旨ではないと理解しました。昨年末の報告書の取りまとめに当たりましては、公労使の各委員がそれぞれの立場で真摯に議論を尽くした結果であると考えておりますし、今回の見直しには、本人同意や健康・福祉確保措置の強化など、労働者保護の観点で望ましい内容も多くあったと考えております。しかしながら、一部の報道によって、あたかも法改正を行わずとも対象業務が拡大されるかのような誤解が広がっている点に関しては、非常に残念に感じているところでございます。
 事務局におかれましては、このような誤解に基づいた報道による混乱や、誤った理解による不適切な対応につながらないように、今まで以上に正確な周知と厳正な対応をお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ただいま冨髙委員のお尋ねに対して、事務局から対象業務の明確化の趣旨について回答があったところでありますけれども、このような趣旨であったということで、委員の皆様は御異論ないでしょうか。
(異論無し)
 ありがとうございました。その点を確認させていただきます。
 ほかに労働時間制度についていかがでしょうか。
 北野委員、お願いします。
○北野委員 私からは、省令・告示案要綱について意見・要望と質問をさせていただきます。
 先ほど冨髙委員からもございましたが、今回の省令及び指針で追加される専門型における本人同意、企画型を含めた同意の撤回、それに係る手続、これについては労働者保護の観点、さらには裁量労働制の適正な運用のために重要であると、私も認識をしております。ただ、裁量労働制が適用される労働者本人の納得性の確保、実態調査で不適切な運用が見られたということを踏まえれば、新たに追加される内容の正しい理解と確実な履行に向けて、しっかりと周知徹底をしていただきたいと思っております。
 とりわけ告示案要綱の健康・福祉確保措置における労働時間の上限措置については、決議することが望ましいことに留意することが必要であることを示すこととされておりますが、労働者の健康確保という点では、他の措置よりも実効性の高い措置であることは、これまでの審議会の中でも労働者側委員から繰り返し申し上げてきたところですので、多くの事業所において選択されるように、ぜひ取り組んでいただきたいと考えております。
 その上で質問でございます。通達は後ほど別途示すということでしたが、上限措置における一定時間の基準については通達で示されることになるのか、この点をお伺いしたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 御質問について事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 健康・福祉確保措置におけます一定時間以上の上限措置につきまして、どのような対応をするのかという御質問と承知しております。基本的に事業所ごとに適切な数字を定めていただくべきものと考えておりますけれども、ただ、今、御指摘のありましたとおり、当該時間を著しく長い時間に設定することは適切でないと考えておりますので、今後、通達等におきまして何らかの目安、例示などを示すことを検討してまいりたいと考えております。
○荒木分科会長 北野委員、よろしいでしょうか。
 ほかに会場からはいかがでしょうか。
 東矢委員、お願いします。
○東矢委員 私からは1点、意見を述べさせていただきます。
 今回示されておりますのは省令及び告示案の要綱でございますが、特に専門業務型におきましては、実態調査の結果から、法の潜脱とも思えるような低い処遇や、省令・告示に該当する業務だからということで経験が全くない者が対象になっている実態など、不適切な運用が明らかになったと認識をしておりまして、適正な運用のための改善は急務だと考えております。
 適正性を確保する方策の一つは省令案で示されている本人同意の導入でございますが、高度の専門知識等を有した者にふさわしい処遇が確保されているのかといった点、また、制度の適正な運用に労使が責務を負っていることを踏まえれば、運用の実態を労使で確認しているかなどについて通達で明確にしていただくとともに、通達の内容も含めた適正な手続・取組が行われるように周知徹底をいただきたいと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 事務局はいかがですか。
○労働条件政策課長 東矢委員からの御意見ということでございましたけれども、今回の報告書及び今回お示しさせていただきました省令・告示案の内容につきましては、労使委員会のモニタリング機能を高めるという基本的な考え方に基づきまして報告をいただいたものと考えておりますので、その基本的な考え方に基づきまして適切な対応をしてまいりたいと考えております。
○荒木分科会長 オンラインのほうから大崎委員、お願いします。
○大崎委員 専門業務型における業務の追加について、1点の確認と意見でございます。
 まず、専門業務型において、銀行または証券会社に限定する形で、今回M&Aアドバイザー業務を追加することに関して、かねてより業務範囲の不明確さ、専門性の担保がどのように図られるかが明確でないことについては指摘をしてきました。今回、追加が予定されているM&Aアドバイザー業務についても、主体的に合併・買収の業務に関わるわけでなく、もっぱら調査のみ行っている者にまで裁量労働制が適用され、拡大解釈されることがないよう、専門性の確保を含め、対象者の範囲についてはしっかりと確認することが必要であると考えております。
 念のため改めて確認いたしますが、調査又は分析のみを行っている労働者については今回追加されるM&Aアドバイザー業務の対象労働者に該当しないという理解でよいのか伺いたいと思います。
 加えて意見ですけれども、省令案において本人同意、同意の撤回等の規制強化に関わる手続が設けられることと併せて、厳格に指導・監督いただきたいと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 確認が1点ありましたが、事務局はいかがでしょうか。
○労働条件政策課長 調査又は分析というものだけを実施している方が裁量労働制の対象になるのかという御質問だったと思います。今回の規定におきましては、「調査又は分析」と「考案及び助言」の業務を「及び」という形で結ばせていただいております。御審議を踏まえた形でございますけれども、この両方の業務を実施している必要があるという書きぶりをさせていただいておりまして、調査又は分析だけを実施している者は、この規定により裁量労働制の対象にすることはできないと考えております。
 それから、御意見がございました本人同意等の指導・監督につきましては、本日の御審議の結果を踏まえ、適切な対応をしてまいりたいと考えております。
○荒木分科会長 大崎委員、よろしいでしょうか。
○大崎委員 ありがとうございます。確認しました。
○荒木分科会長 続いて、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 裁量労働制についての実態調査結果も踏まえ、制度が適切に適用され、制度趣旨に沿った適正な運用が行われれば、労使双方にとってメリットのある働き方が実現できるものと、もとより考えておりますが、健康・福祉確保措置の強化なども含め、今回の制度見直しを経て、裁量労働制が一層労使双方にとって満足度の高い制度になると期待しております。
 企業が省令及び告示の見直し内容や、対象業務を正しく理解した上で制度を運用できるよう、行政において分かりやすく周知・広報をいただくとともに、全国の労働基準監督署において適切な監督・指導を行っていただくことを併せてお願いしたいと思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、内容につきましては特段異論がありませんでしたので、当分科会といたしましては、ただいま説明がありました省令案要綱等につきましては、おおむね妥当と認め、労働政策審議会宛てに報告することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○荒木分科会長 ありがとうございました。そのように進めさせていただきます。
 では、事務局から答申の案文と報告のかがみ文の配付をお願いいたします。オンラインで参加の委員の皆様には共有画面にて確認いただくようお願いします。
(答申案文・報告かがみ配付、画面共有)
 それでは、お手元の答申と報告の案について御確認いただきたいと思います。
 労働政策審議会令第6条第7項及び労働政策審議会運営規程第9条の規定により「分科会の議決をもって審議会の議決とすることができる」こととされております。そこで、お配りした案のとおり、労働政策審議会長宛てに報告し、この報告のとおり、厚生労働大臣宛て答申を行うこととしたいと考えますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○荒木分科会長 ありがとうございます。それではそのように取り扱うことといたします。
 事務局から何かございますでしょうか。労働基準局長、お願いします。
○労働基準局長 この場を借りまして一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 委員の皆様におかれましては、労働契約法制、労働時間法制につきまして、これまで真摯に御議論いただきまして誠にありがとうございました。心より感謝を申し上げます。
今後、本日の答申を受けまして、必要な省令及び告示改正の手続を進めさせていただきます。厚生労働省といたしましては施行に向けてしっかりと内容の周知に取り組みながら、施行の暁には必要な指導・監督等を行いまして、履行確保を図ってまいりたいと考えております。
 引き続き皆様方の御指導・御援助などをいただけたら幸いと存じます。どうもありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 事務局におかれましては、御対応のほど、よろしくお願いします。
 それでは、第1の議題については以上とさせていただきます。説明者が交代しますので若干お待ちください。
 それでは、次の議題に移ります。議題2「研究者等に対する無期転換ルールについて」です。事務局から説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 事務局から資料4「研究者等に対する無期転換ルールについて」に基づきまして説明をいたします。
 資料1ページを御覧ください。無期転換ルールの概要でございます。こちらにつきましては有期労働契約が更新され、5年を超えた際には、労働者の申し込みによって無期転換ができるというものでございまして、先ほど御議論いただいた形で省令・告示等の改正が行われてまいりますと、明示事項ですとか説明といったところも追加をされていくという形になると思っております。
 2ページを御覧ください。科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律による無期転換ルールの特例でございます。こちらにつきましては大学等及び研究開発法人の研究者等につきましては、無期転換の申し込みができるまでの期間の特例、10年を超えた際に無期転換申込権が発生するという特例が法律で定められているということを御説明しております。
 3ページを御覧ください。こうした研究者の方などにつきまして、無期転換の特例が設けられていることを踏まえまして、研究者等のキャリアパス支援ですとか、雇用の安定化に取り組んでいるところでございますので、その概要について御説明をいたします。
 まず、上のほうでございますけれども、研究者が安心して研究に専念できる環境を整備するための取組でございます。文部科学省におきまして、ポストドクター等の雇用・育成に関するガイドラインを定めまして取組を進めているということもございますし、運営費交付金におきまして、若手ポストの確保をはじめとした人事給与マネジメント改革等に積極的に取り組まれる大学への重点的な配分も行っているところでございます。
 2つ目でございますけれども、労働契約法の特例に関する対応でございます。こちらにつきましては、昨年の11月に文部科学省より関係機関に対しまして文書が発出をされているところでございます。
 赤の1つ目でございますけれども、特例の適用に当たって留意すべき事項といたしましては、無期転換ルールの適用を意図的に避けることを目的とする雇止め等は労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではないということを改めてお伝えしております。
 さらには※で書いておりますけれども、文部科学省・厚生労働省連名でリーフレットを作成いたしまして、特例の対象者に特例対象者となる旨を文書等で明示をするなど、適切な運用を行う必要があるということ、それから、大学等と有期労働契約を締結した教員等であることをもって一律に特例の対象者となるものではないことに留意する必要があることを周知しているところでございます。
 また、下の赤の2つ目の部分でございますけれども、雇用状況の改善に向けた取組例等といたしまして、早期に無期転換することを可能としておられる事例、あるいは雇用の安定化に取り組む部局に対する支援金の配分をしておられる事例、こういったものを御紹介いたしまして取組を促しているという状況でございます。
 また、一番下に記載があるように、研究者、教員等の雇用状況等に関する調査を行いまして、本年2月に改めて文部科学省から各機関に対しまして適切な対応を促す依頼文を発出しているところでございます。
 調査の概要につきましては4ページで御説明をいたします。文部科学省「研究者・教員等の雇用状況等に関する調査」の結果(概要)でございます。こちらにつきましては、昨年の9月1日時点の状況を全846機関に回答を求めまして、681機関から回答があったというものでございます。主な調査結果は下半分に3点ございます。
 1点目が、2022年度末で通算契約期間が10年を迎える方につきまして、2023年度以降、有期労働契約を継続する、もしくは継続の可能性がある方につきましては44.7%、未定の方が41.2%となったということでございます。
 2点目が、特例対象者に特例の対象となる旨を伝えている機関は、今後早期に伝える予定としていた機関も含めますと88.5%、また、制度の概要ですとか無期転換申込手順を伝えている機関につきましては、今後早期に伝える予定としている機関も含めますと85.2%という結果でございました。
 3つ目が、研究者等に対する調査では約6,900人からの回答のうち、無期転換を希望する方が3,814名であったということでございます。
 先ほどもお伝えしましたとおり、この調査結果を踏まえまして、再度文部科学省から各機関に対しまして改めて特例の対象者に対しての書面での明示、それから、制度の概要ですとか内容の説明を促しているということを行っておりますし、さらには対象者への説明・相談に努めて、キャリアサポートに係る取組例等も参考にしながら対応を促しているところでございます。
 引き続き文部科学省を中心といたします関係省庁と連携いたしまして、特例制度の周知ですとか、安定的な研究環境の確保等、雇用管理の適切な対応がなされるように取り組んでまいりたいと考えております。
 5ページをお願いいたします。昨年9月の新型コロナウイルス感染症対策本部の決定の抜粋でございます。下の4の(2)でございますけれども、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合して新しい専門家組織を創設することが決定されております。これを踏まえまして、現在新しい専門家組織の設立に向けた法案の準備をしているところでございます。
 6ページをお願いいたします。労働契約法の特例との関係でございますけれども、新しい専門家組織は国立健康危機管理研究機構という仮称を考えているところでございますけれども、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律上の試験研究機関等であります国立感染症研究所と研究開発法人であります国立国際医療研究センターを統合することを考えておりまして、新しい専門家組織につきましても労働契約法の特例を適用することを考えているところでございます。
 こういった形で研究者等に対しまして無期転換ルールの特例を適用される法人につきまして変更を検討しているところがございますので、本日、内容について御説明をさせていただいたものでございます。
 事務局からの説明は以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、委員の皆様から御質問・御意見があればお願いいたします。
 櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 今、御説明いただいた無期転換ルールの特例の運用のことについて、まず、質問させていただきたいと思っております。
 科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律による特例対象者への制度の説明に関してですが、これまで文部科学省から各研究機関等に対しては、特例の対象者であることなどを説明することをどのタイミングで行うように促してきたのか、まず、お伺いさせていただきたいと思います。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○労働関係法課長 櫻田委員から御質問のございました無期転換ルールの特例と対象となります研究者等に対しまして、無期転換ルールの特例が適用されることの説明について、明示等で認知をしていただくように取り組んでいることについて、どのタイミングかということについて御質問がございました。こちらにつきましては科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律に基づく義務ではございませんけれども、この法律改正によりまして10年特例のルールが設けられた際に、文部科学省から各機関に対して書面等での明示を依頼しているところでございまして、そのタイミングといたしましては、有期労働契約を締結する場合にと言っておりますので、契約のタイミングと認識をしております。
○荒木分科会長 櫻田委員、いかがでしょうか。
○櫻田委員 タイミングについては承知いたしました。そのように文部科学省のほうから促してきたにもかかわらず、運用に関して、参考資料の2の調査を行った結果を見ますと、10ページで特例対象者かどうか回答者自身が分からないということが33.7%という結果になっておりまして、それ自体も課題だと思っております。加えて、その次の11ページには、対象者のうち、特例の内容を把握しているのが回答者全体の40%にすぎないことは問題だと思います。無期転換前の雇止め等が行われないようにすることはもとよりですが、希望者が確実に無期転換権を行使できるように、文部科学省とも連携をさらに強化して、対象機関に対して法の趣旨に沿った運用の徹底を改めて促していただきたいと思っております。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 私も今の櫻田委員の質問とかぶるのですけれども、現在の無期転換申込権とか、説明のタイミングについて、もう一度確認をさせてください。
 今回、本分科会では、企業の場合、更新のタイミングとか、どこで説明をするのかということを協議してきたわけですけれども、通常の場合、労働者から転換の申し込みがあったときに説明、そして、申込権が発生する前に1回説明をする。それ以前の申込権が発生する前にも、例えば、契約更新の都度、説明をするなど、更新権が発生する前に、なるべく早い時期に説明をしていく必要があるとの議論がありました。
 この科学技術・イノベーション創出の関係であれば、こういう研究者・科学者の場合は、プロジェクトが終われば、そこで解散をするというか、そこでの雇用が一応終わりという形になると思うのです。しかし、引き続いて、また新しいプロジェクトにするとか、御自分の所属先企業、機関のほうに戻られるとか、さらに研究をしていくということがあると思いますが、このような長い10年のスパンの研究等について、無期転換についての説明責任、説明をするタイミングというのは、更新の申し込みをした後は当然だと思うのですけれども、その前の更新のタイミングや期間、また、なるべく早い時期、プロジェクトについては、その次のプロジェクトがあるかどうかが分かりにくいと思うのです。その辺はどのタイミングでしていったらいいのかというのをもう一度教えてください。
 もう1点ですが、最後のページのほうに試験研究機関等、これは多分、国の機関だと思います。それから、研究開発機関として国立国際医療研究センター、これはたしか独立行政法人だとお伺いしているのですけれども、これが一緒になるとすると、対象となる人数は、概ねどのぐらいの人数規模になるのか、教えていただければと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 2点、御質問がありました。事務局からお願いします。
○労働関係法課長 佐久間委員、ありがとうございます。
 無期転換に関します説明等についてのタイミングについて御質問があったと思っております。まず、労働契約法の一般ルールの観点で申し上げますと、先ほど御議論いただきました省令の内容といたしまして、それが実現するとなった場合についてでございますけれども、無期転換申込権が発生をする契約更新のタイミングで、無期転換申込権が発生しますということについて、あるいは無期転換後の労働条件につきまして明示していただくということを新しく導入できないかということで提案させていただいているところでございます。
 他方で、研究者の方、10年特例となる方々につきましては、当然同じように無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングで明示というところが、今後、制度改正が行われましたら求められていくことになろうかと思いますけれども、このことに加えまして、文部科学省から科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律の観点で、法令上の義務ではございませんけれども、お願いをしている事項といたしましては、無期転換申込権が発生するということではなくて、あなたは労働契約法の特例である10年の特例の対象者ですということについて、対象者の方に対しまして書面等で明示するということをお願いしているというところでございまして、おっしゃるとおり、タイミングですとか、あるいは求めている内容が少し違う状況になっていると認識をしております。
○大臣官房厚生科学課総括調整官 佐久間委員に御質問いただきました対象者数についてお答えを申し上げます。
 まず、国立感染症研究所でございますが、現在は国の施設等機関で職員は公務員でございます。総職員数が694名でございまして、そのうち研究職員であって、かつ有期雇用である者が304名ございます。
 国立国際医療研究センターにつきましては総職員数が3,032名、そのうち、研究職員であって有期雇用である者が311名ございます。
 合計してこの特例の対象になり得る方が615名ということでございます。これは昨年11月1日現在のデータでございます。
 以上です。
○荒木分科会長 佐久間委員、よろしいでしょうか。
○佐久間委員 分かりました。両方とも非常に大きい機関だったのですね。ありがとうございます。
○荒木分科会長 東矢委員、お願いします。
○東矢委員 まず初めに、労働側としましては、無期転換ルールの特例の対象の拡大については慎重であるべきと考えていることは改めて申し上げておきます。その上で、3点質問です。
 1点目は、先ほどの佐久間委員の質問とつながる部分になりますが、今回の国立健康危機管理研究機構で特例の対象となる有期契約労働者数は、先ほどお答えいただきましたが、その中で、今年4月に無期転換権が発生する労働者の人数を教えていただきたいと思います。
 2点目ですが、無期転換権が発生する労働者に対して、転換申込が可能なことについて、漏れなく通知がされているのかという点も伺いたいと思います。
 3点目ですが、統合前の組織における有期労働契約期間は、統合後の組織においても通算されるかということもお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○大臣官房厚生科学課総括調整官 まず、令和5年4月1日の任期更新の際に無期転換申込権が発生する者でございますが、国立感染症研究所は公務員でございますので制度適用外でございます。国立国際医療研究センターに関しましては、既に無期転換申込権が発生している研究者が10名、この4月で無期転換申込権が発生する方が52名いらっしゃって、合計62名ということでございます。
 その方々たちへの対応でございますが、これまで国立国際医療研究センターでは雇用契約を交わす際と、毎回毎回の契約更新の際に労働条件通知書をお渡しし、その通知書に無期転換ルールについて記載をして通知をしていたところでございますが、今年4月に本格的に無期転換申込権が発生するということで、漏れなく周知をするために、これまでは10年の特例がかかる方、かからない方を含めて、希望のあった方に無期転換申込書をお渡ししていたのですが、今回からは全ての方に無期転換の申込書をお渡しして、希望があれば出してくださいという形にして、全員に漏れなく伝わるようにするという方向で、今、考えているところでございます。
 あと、統合後でございますけれども、国立感染症研究所の職員は公務員から新たに雇用者に変わるということで、移行から10年のカウントが始まるということになります。国立国際医療研究センターの職員については、法律上、国立国際研究センターの権利義務を新しい機構が承継いたしますので、無期転換ルールのカウントについても引き継いでカウントするということになろうと考えております。
○荒木分科会長 東矢委員、よろしいでしょうか。
○東矢委員 御丁寧に説明いただきましてありがとうございます。
 今後拡大対象として想定されている方々を含め、資料4の3ページ目に記載されております取組などを一層進めていただいて、希望者が無期転換ルールを利用できるように、しっかり周知を徹底していただくとともに、文部科学省と連携してポストドクター等の雇用・育成に関するガイドラインの周知も含め、研究者等の雇用の安定につながるキャリア支援をしっかり進めていただきたいと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 東矢委員からもございましたけれども、無期転換ルールは、不安定な立場で雇止めを心配しながら働く有期契約労働者の雇用の安定を目的とするものでございまして、これはもちろん研究者等であっても同じであると考えておりますので、本来はこのような特例が設けられること自体、適当ではないというのが労働側の基本的な考え方でございます。
 以前の分科会で、科技・イノベ法の施行状況の調査を行って、その結果を踏まえて法改正も含めて検討を行うべきではないかとの発言をさせていただきました。今回、文科省から公表された調査結果をお示しいただいておりますが、その結果を見ていただくと、参考資料2の7ページで、2023年の3月末で通算期間10年を迎える対象者が約1万2,000人いる中、4割以上の方が雇用契約の見通しは未定とされており、雇止めが数多く発生する懸念があるのではないかと懸念しております。
 また、調査結果の10ページを見てみますと、回答された方が特例の対象なのか否かが、そもそも分からない方も3割以上いるような状況ですし、9ページでは、昨年の9月と、今年の1月の調査結果がそれぞれ出ておりますが、今年の1月に至っても3割以上の対象機関が、対象者に対して、特例の対象となることや無期転換の制度概要、申込手順を伝えていない状況です。
 さらには、8ページの図5のところですが、今回、2022年度中に雇用契約を終了する理由には、「定期的に人材を入れ替えることで、よりよい教育・研究環境を構築したいから」との項目を選択した研究機関が半数以上あります。科技・イノベ法の研究開発等の推進のための基盤の強化に関する規定の中には、若年者である研究者の雇用の安定や、研究者の育成も掲げられているにもかかわらず、このように研究機関側の都合で雇用を不安定化させるようにも見えるような回答が多いというのは、法の趣旨と矛盾するのではないでしょうか。
 今回の調査結果等の実態も踏まえて、科技・イノベ法の附則の見直しを検討する必要があるのではないかと考えておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、この議題についてはここまでとさせていただきます。
 ここでまた説明者を交代しますので、しばしお待ちください。
 それでは、議題3「担保法制の見直し(事業(成長)担保制度の導入等)について」です。事務局から説明をお願いします。
○労働関係法課長 事務局から、資料5-1、5-2に沿いまして御説明をさせていただきます。
 まず、資料5-1を御覧ください。「担保法制の見直し(事業(成長)担保制度の導入等)について」というものです。2ページを御覧ください。担保法制の見直しの関係につきましては、昨年12月の労働条件分科会でも状況について御説明をしたところでございますけれども、その後の状況の動きにつきまして、本日、また御説明をさせていただきたいと思っております。
 まず、上の法務省の動きでございますけれども、3つ目の○の状況というところを御覧ください。法制審の担保法制部会の中間試案につきましては、今年の1月20日付けでパブリックコメントに付されているという状況でございまして、その結果も踏まえた調査審議が今後行われる予定となっております。
 下側の金融庁の金融審議会の動きでございます。こちらにつきましては、3つ目の○でございますけれども、今年の2月10日付けで報告書が公表されているという状況でございます。
 次のページを御覧ください。金融庁のワーキンググループでの資料を基に厚生労働省のほうで整理をいたしました、報告書で取りまとめられております事業(成長)担保制度のイメージでございます。
 左側が資金を借り入れて担保権を設定する局面でございまして、青の四角で囲っておりますけれども、事業担保権の対象となる財産というのは法人の総財産を想定しておりまして、労働契約上の地位も含まれていることが前提となっております。このことは昨年12月にも御説明したところでございますけれども、少し変わったところといたしましては、与信を行います債権者と担保権を設定する担保権者というのが分かれた形での制度設計となりまして、与信者のほうが事業のモニタリング、担保権者のほうが担保価値維持の観点からの管理を行っていくという形での制度が想定されているところでございます。
 右側が債務不履行になった場合でございますけれども、担保権者からの申し出によりまして裁判所が管財人を選任いたしまして、管財人が事業の経営権、財産の管理処分権を有しまして事業の譲渡先を探すという形になってまいります。事業譲渡が行われてまいりますと、労働契約上の地位も移転することが想定されますので、労働契約関係にも影響が出てくるということで御説明をしているところでございます。
 詳しい報告書の内容につきましては、資料5-2を基に御説明をさせていただきます。2月10日付けで公表されました、金融庁のワーキンググループの報告書でございまして、労働関係に絡む部分につきましては赤線を引いておりますので、そのうちの主なところを御説明させていただきます。
 まず、8ページを御覧ください。先ほども少し御説明をいたしましたけれども、事業(成長)担保権につきましては、総財産を一体として、担保権の目的とすることが適当と考えられるという形で整理がなされております。
 20ページを御覧ください。実行のタイミングで裁判所より管財人が選任をされる旨が記載されておりまして、管財人の権限といたしましては事業の経営権、それから、財産の管理処分権を専属することとすることが記載されております。
 また、換価につきましては一番下ですけれども、雇用を維持しつつ承継するなど、事業を解体せずに換価することを原則として、個別財産の換価につきましては、事業の譲渡が困難である場合の例外とした上で、個別事案ごとに管財人が善管注意義務等に照らしまして相当な方法により行うものとし、これを裁判所の許可基準とするということが記載をされております。
 また、21ページの注釈67というところに、個々の契約関係等の移転に当たりまして同意を必要とする特定承継を前提としていることが記載をされているところでございます。
 29ページから、労働者保護に関する論点が整理をされているところでございます。
 まず、総論的な視点でございますけれども、制度設計に当たりましては労働者保護の観点も重要であるということが記載をされておりまして、その後、考慮事項といたしまして5つ矢印が記載をされております。
 1つ目の矢印といたしましては、伴走型支援による事業の継続・成長を実現するためには、労働者の協力は不可欠であるということ。
 2つ目といたしまして、担保権の設定自体は労働契約の締結・変更等について追加的な制約を加えるものではないということ。
 3つ目といたしまして、実行手続につきましては、事業そのものを承継させるものとすることで事業価値を維持するだけではなくて、労働者の雇用の継続にもつながるものとなること。
 4つ目といたしまして、管財人は労働組合法の使用者に該当すると解されることから、団体交渉に応じるなど、労働組合法上の義務を遵守する必要があるということ。
 5つ目といたしまして、実行手続における労働契約の承継においても労働法制上のルール等が適用されるということ。
 こういったことを考慮する必要があるということが記載をされております。
 また、30ページを御覧ください。未払い賃金債権等についてでございますけれども、こちらにつきましては随時優先弁済するものと位置づけをされることが考えられている旨が記載されているところでございます。
 31ページを御覧ください。実行時の労働契約の承継の在り方についてでございます。こちらにつきましては、真ん中辺りの①というところで、3つの矢印の形で整理がなされております。
 1つ目は、管財人は担保権者のみならず、労働者も含めました利害関係人全体に対して善管注意義務を負うということ。
 2つ目は、事業を解体せず雇用を維持しつつ承継することを原則とし、個別財産の換価は事業の譲渡が困難である場合における例外とするということ。
 3つ目は、事業の承継等につきましては、裁判所が労働組合等の意見を聴取した上で許可することとするということ。
 こういった整理がなされているところでございます。
 32ページを御覧ください。実行時の情報提供・周知徹底についてでございます。
 ①の一番下のところに矢印が書かれておりますけれども、実行の際の手続といたしまして、裁判所は労働組合等にその旨を通知することとするということ。
 次の33ページに続きまして、2つ目の矢印ですけれども、裁判所は事業の承継先・条件の決定(許可)に当たりまして、労働組合等の意見を聴取いたしまして、一部の労働者が承継から不当に排除されていないかどうか等を検討するということ。
 こういったことが記載をされております。
 また、33ページの②でございまして、管財人の観点でございますけれども、管財人は開始決定後、遅滞なく労働組合等に対しまして必要な情報提供をする手続を設けるものとするということ。
 2点目といたしまして、管財人は情報提供に際しまして、事業譲渡等指針等の留意事項を参考にするものとすること、といったことが記載をされてございます。
 また、34ページに設定・活用に関する情報提供・周知といったことが記載をされております。真ん中辺りでございますけれども、設定のタイミングで労使関係者の意見も踏まえながら労働組合等への情報提供等の促進に向けて取り組むことが望まれると記載をされております。
 その上で、情報提供の在り方として整理が①という形で3つ記載をされております。
 1つ目の矢印ですけれども、担保権の目的に使用者の地位が含まれるとしても、担保権者は労働条件等について決定する等の権限を有するものではないということ。
 2つ目の矢印ですけれども、担保権設定の目的は担保権者が労働条件等に影響を及ぼすことではないということ。
 3つ目の矢印ですけれども、設定の際における労働組合等への説明を行うことが望ましいこと。
 こういったことにつきまして、政府において積極的に周知・広報を図るということが記載されております。
 また、34ページの一番下の②で労働組合法上の使用者性の論点について記載をされておりまして、通常担保権を設定すること、与信を提供することのみをもって労働組合法上の使用者に該当するとは言えないものの、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に、現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合につきましては、労働組合法上の使用者性を有する可能性がある、こういったことを金融機関等に対しまして周知することが考えられるという形で記載をされております。
 今後、この報告書を踏まえまして、金融庁で制度設計に向けた検討が行われると伺っており、労働者に与える影響もあり得るということで、本日御報告をさせていただきました。
 事務局からの説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして御質問・御意見等があればお願いいたします。
 西尾委員、どうぞ。
○西尾委員 金融審議会のワーキンググループで取りまとめられた報告ということですが、今後の対応でお願いしたいことを幾つか発言させていただきたいと思います。
 報告の中では、労働債権を優先的に弁済させる仕組みや、あるいは事業を解体せずに雇用を維持しつつ承継することを原則とすることが盛り込まれてはいますけれども、現実はいろいろなケースが想定されますし、実際に労働者の雇用や労働条件に及ぼす影響には不透明な部分もあるのではないかと考えています。
 また、例外とされてはいますけれども、個別換価になった場合の労働契約不継承の不利益、それから労働条件の引き下げ等の課題が出てくると思います。また、その際の労働協約の取扱いを含めて、労働者保護に課題が残っていると思っております。今後、法制化に向けて金融庁において作業が進められると思いますが、厚生労働省としても事業(成長)担保制度が労働者にとってマイナスの影響を及ぼすものとならないように注視をしていただきたいですし、金融庁との連携をお願いしたいと考えております。
 加えまして、倒産や事業譲渡における労働債権、労働者保護の脆弱性につきましては、かねてから問題意識を持っております。厚生労働省においても労働者保護ルールの法制化についても、ぜひ御検討をお願いしたいと考えております。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。オンラインからも特段御希望がありませんが、よろしいでしょうか。
 それでは、御意見を伺ったということで、この件については以上とさせていただきます。
 ここで次の議題のために説明者を交代しますので、しばしお待ちください。
 それでは、最後の議題4となります「2021年度 年度評価について」です。事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。資料6に沿って御説明をいたします。
 1ページ目でございますが、当分科会におきまして、2025年までの目標を2つ設定してございます。
 1つ目が、年次有給休暇取得率を70%とするもの、2つ目が、週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%とするものでございます。
 本日は、この目標の2021年度における進捗状況や今後の方針等について、御説明を申し上げます。
 まず、1つ目の目標であります年次有給休暇の取得率につきまして、2021年度の実績は58.3%となっております。
 次に、2つ目の目標である週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合につきまして、2021年度の実績は8.8%となっております。
 続きまして、1ページ目の真ん中から少し下の部分になりますが、施策の実施状況としまして、2021年度の主な取組を簡単に御説明いたします。
 働き方改革関連法の周知、働き方改革推進支援センターによる相談対応、働き方・休み方改善コンサルタントによる相談対応や助言指導、働き方改革推進支援助成金による助成の実施、しわ寄せ防止のための取組の推進といった働き方改革に関する相談対応や各種支援等を実施してまいりました。
 また、長時間労働の是正に向けた監督指導や、計画的な年次有給休暇の取得を企業等に働きかけるなどの年次有給休暇の取得促進に向けた取組も行ってまいりました。
 続きまして、3ページ目、2021年度の施策実施状況に係る分析でございます。
 まず、①につきましては、目標である70%とは、まだ乖離がありますが、労使双方の御尽力もございまして、58.3%は昭和59年以降で最も高い数値となりまして、また、7年連続の増加となりました。
 なお、参考資料3の4ページに企業規模別の取得率の経年変化を記載してございます。2021年の取得率は、前年と比較しまして、いずれの規模別区分においても増加してございます。一方で、企業規模が小さいほど取得率が低くなっておりますので、引き続き中小企業に対する支援に取り組む必要があると考えてございます。
 また、同じ資料のページの下の部分に参考として記載してございますが、令和3年度の意識調査によりますと、45.5%の労働者が年次有給休暇の取得にためらいを感じる、またはややためらいを感じると回答しております。この割合は令和元年度調査では56.3%、令和2年度調査では52.7%と年々減少してきております。ためらいを感じる理由としましては、周囲に迷惑がかかってしまうのではないかと感じるといったことですとか、後々忙しくなってしまうのではないか、職場の雰囲気で取得しづらいといったことが挙げられております。この点に関し、厚生労働省といたしましても、年次有給休暇を取得しやすい職場の環境・雰囲気づくりに引き続き取り組んでいく必要があると考えております。
 続きまして、資料6の3ページに戻りまして、②についてでございます。こちらも目標の5%とはまだ乖離がございますが、労使双方の御尽力もございまして、8年連続で減少してきてございます。この点につきまして、週労働時間60時間以上の雇用者の割合に関するものにはなりますが、令和4年度版労働経済白書におきまして、「週60時間以上就労雇用者の割合は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響もあり、2021年も2020年と同様の低水準を維持している。感染拡大後の働き方の変化等新たな要因により週60時間以上就労雇用者の割合が低水準になっている可能性もあり、今後もその動きを注視していく必要がある」と分析されております。労働時間の状況につきましては、今後の動向を十分に注視しつつ、長時間労働の是正のため、引き続き、働き方改革の取組を推進していく必要があると考えております。
 最後に4ページ、施策の達成状況を踏まえた評価と今後の方針でございます。
 まず、①につきましては、労使双方の御尽力もございまして、増加してきている状況でございます。目標の達成に向けまして、引き続き丁寧な相談支援の実施、各種支援、各種施策の周知等を行ってまいります。なお、昨年12月27日付けの当分科会報告におきまして、「令和7年までに『年次有給休暇の取得率を70%以上とする』という政府の目標を踏まえ、年次有給休暇の取得率の向上に向け、好事例の収集・普及等の一層の取組を検討することが適当である」とされたところでございまして、今後、当該取組について検討していくこととしてございます。
 ②の目標につきましても、労使双方の御尽力もございまして、減少してきている状況でございます。時間外労働につきましては、上限規制の適用が猶予されている事業・業務への適用が約1年後に迫っております。上限規制の適用が猶予されている事業・業務につきましては、その特殊性や業界の慣行等から長時間労働が発生している側面がございます。上限規制の適用に向けまして、国民全体の理解を得ることが必要でございますので、来年度は、関係省庁とも連携して各種施策をしっかりと進めていくとともに、業界や関係団体等と協力して積極的に周知を図っていくこととしてございます。
 特に自動車運転業務、中でもトラック運転者に関しましては、長時間労働の是正等を推進していく必要がある一方で、従来からの取引慣行等、個々の事業主の努力だけでは見直しが困難な事情も認められるところでございます。このような状況を踏まえまして、昨年8月にトラック運転者の長時間労働改善特別相談センターを設置しまして、運送事業者や荷主からの相談に対応しております。また、昨年12月からはトラック運送事業者の改善基準告示違反が荷主都合で発生した長時間の恒常的な荷待ちによるものと疑われる等の場合、荷待ち時間を発生させないことなどについて、発荷主や着荷主に対して労働基準監督署が要請を行うなどの取組と、それらの情報を国土交通省に提供する取組を開始しております。引き続き、国土交通省とも連携して各種取組を推進してまいります。
 なお、適用猶予事業・業務に関しましては、来年度、働き方改革推進支援助成金におきまして、労働時間の短縮に向けて環境整備に取り組む適用猶予事業・業務に係る事業主を支援するためのコースを新設する予定でございます。
 また、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が、中小企業においても本年4月から50%に引き上げられることについての周知等も重要であると考えてございます。この点につきましても引き続きしっかりと取り組んでまいります。
 以上のことを踏まえまして、厚生労働省としましては、目標の達成に向け、引き続き丁寧な周知・啓発や相談支援の実施等によりまして、企業における働き方・休み方の見直しに向けた自主的な取組を促進してまいりたいと考えてございます。
 私からの説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして、委員の皆様より御質問・御意見等があればお願いいたします。
 世永委員、お願いします。
○世永委員 2021年度の評価について、年休取得率、あるいは週労働時間60時間以上の雇用者の割合も改善傾向にあるということですが、いずれにしましても2025年までの目標とは、かなり開きがある結果になっていると思っております。
 また、参考資料3の4ページにも記載されていますが、週労働時間60時間以上の雇用者の割合につきましては、やはり運輸・郵便業が他産業と比較して特に高い状況は変わっておりません。
 昨年12月に改善基準告示が改正され、来年4月からの適用となることを踏まえると、ホワイト物流推進運動や、新たに実施される労基署による荷主の要請、荷主特別対策チームを含め、何としてでも取引慣行や商慣習等の是正を進めながら、労働時間の短縮が着実に図られるよう、この告示の確実な施行に向けて改正内容の周知徹底が必要だと思っています。あわせて、行政による監督・指導も強化していただきたいと思います。
 加えて、現在、適用猶予業種であります医師や建設業も、来年4月から時間外・休日労働の上限規制が適用されますので、こちらも確実な施行に向けた取組が必要であると考えております。特に医師につきましては過労死ラインを大きく超える特例水準が定められており、段階的な是正を着実に図っていく必要があるということは、強調しておきたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 川野委員、お願いします。
○川野委員 参考資料の3ページにありますが、年休取得の上昇傾向が続いていることを報告いただいたところです。とはいえ、中小企業の年休取得率が低くなっている実態がございます。別の調査によれば、平均取得日数も従業員規模が小さくなるほど低くなっているのが実態です。2020年4月から中小企業でも年5日の取得が義務化されたものの、いまだそのことを知らない経営者も実態としては少なくありません。さらには今年の4月から中小企業にも週60時間超の時間外労働の割増賃金率50%が適用開始となります。年5日の取得義務と割増賃金率の引き上げを併せた継続的な周知と徹底を行っていただきたいと思います。
 もう1点は、年次有給休暇は心身の疲労の回復を目的に、ゆとりある生活を保障するための休暇制度であって、取得しても賃金が減額されない休暇です。しかしながら、参考資料の3ページの意識調査の結果にあるように、約半数が年休取得へのためらいを感じているということです。このことは人手不足が深刻な中小企業においては特に顕著なのではないかと考えているところです。企業規模が小さくなるほど、年休を含めて権利を行使しにくくなる実態については改善が必要だと思っております。職場の制度だけでなく、そういった意識の改革が進むよう、厚労省におかれましても、中小企業における年休取得率向上を後押しするような積極的な支援施策の展開をお願いしたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は8年連続で減少しているというデータの御紹介がありました。分析結果の御説明がございましたとおり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響も大きいとは思いますが、労働時間の削減に向けた働き方改革フェーズⅠの取組の成果が一定程度現れていると思います。
 ただ、労側委員の方も強調されておりましたが、目標達成には一層の努力が求められているかと思います。今後、長時間労働の是正を図っていくとき、鍵を握るのは商慣行の改善だと思います。企業間取引における商慣行の改善という点では、例えば時間外労働上限規制の適用が猶予されている建設業や、自動車運転の業務において、例えば建設現場の週休2日制の実現に向けた適正な工期設定や、トラック運転手の荷待ち時間の短縮といった課題の解決に向けて、業界・企業の枠を超えた協力が不可欠だと思っております。
 経済界としましては、長時間労働につながる商慣行の改善を業界横断的に実現すべく、様々なところで呼びかけを強化しておりますが、引き続き機運醸成に努めてまいりたいと思っております。
 また、官公庁取引における長時間労働につながる商慣行の改善も必要です。この点について、経団連が厚生労働省に対して改善の要請を行わせていただいております。こうした商慣行の是正に向けて、厚生労働省、それから、政府には一層の周知をお願いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、池田委員、お願いします。
○池田委員 年次有給休暇の取得率の関係で発言させていただきます。
 年次有給休暇の取得率は7年連続で上昇しているということでございました。コロナ禍の影響はあるのだろうと想像しますが、働き方改革の機運の高まりであるとか、政府の支援、労使の取組ということが数字に表れている面もあるのだろうなと思っております。
 今後、70%の目標を達成するには、年休の取得しやすさをいかに確保していくかが重要であろうと考えます。例えば年休の計画的付与制度は、組織的に年休を取ってもらうという意味で効果的かなと考えます。厚生労働省の令和4年就労条件総合調査によると、計画的付与制度がある企業割合は全体で43.1%、企業規模で30~99人という規模の企業においても41.7%となっており、企業規模は問わずに導入しやすい仕組みであろうと考えます。
 そのほか、例えば年休取得奨励日を年に数日設けて、当該日の取得率を人事部が部署ごとにフォローするような事例や、部署単位で個人別の年休取得状況、取得計画一覧表を作成して部署内で見える化する事例、社員が休暇をどのように楽しんだかをウェブ上の所定のページに掲載することで休暇取得の後ろめたさを払拭するような事例など、各社様々な工夫をされています。そうした好事例を参考に、社会全体で年休を積極的に取得する風土を醸成していくことが肝要だと思います。
 もう1点、先ほど世永委員からも発言がございましたが、トラック事業者の労働時間短縮に向けた荷待ち等の改善のための荷主対策チームへの言及がございました。トラック事業者の労働時間短縮に始まって、労働環境全体の改善ということは、皆様も2024年問題といって物が運べなくなっていくというリスクをお聞きになっているかもしれません。徹底した取組で改善をして、物を運べる環境、インフラとしての物流を維持できるように取り組んでいっていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御意見・御質問等ありますでしょうか。
 川田委員、どうぞ。
○川田委員 年休取得率の点について述べさせていただきたいと思います。
 既に御発言の中にもありましたように、近年着実に上昇はしているものの、目標とされた数字とはなお開きがあるという状況であり、また、事務局からの報告にもありましたように、大きな要因として職場における雰囲気であるとか、あるいはそれを反映した労働者の意向・意識、どうしても年休取得を躊躇してしまうというようなところが大きいというような状況です。そういうことからすると、取得率を上げる方策としては、基本的には事務局からの御報告の中にもありましたような好事例の周知等を通じて、現場の意識を取得率を上げるほうにできるだけいざなっていくようなものが中心になろうかと思っております。
 そのような中で、私なりに重要かなと思う点として、一つは、ある程度大きく取得率を上げていくことを目指す場合には、部分的にこれまでの御意見と重複するところもありますが、例えば計画年休の仕組み等を使うなどして、ある程度長い日数の休暇をまとまって取るとか、あるいはそこまでいかないまでも何らかの形で一定の日数の休暇は1年のうちに取るようにしていくといったような、ある程度大きな休暇を取ることを推進するという視点があり、これが本来的な年休の在り方に寄り添ったものだと思います。それに加えて、1日未満単位での年休なども視野に入れながら、労働者の日々の生活の中で生じる労働から解放されることへのニーズに応えていくような、いわば小さな休暇というものの双方を視野に入れた取組も必要であると思います。大きな休暇と小さな休暇という双方があって両方とも大事なのだという視点が大事なのかと思っております。それが1点です。
 もう一つは、労働者の意識という点も含めて、職場に年休を取得していくというような意識を広げていく上で、近年の労働時間法制の中では、様々な観点から労働者に労働からの解放を適切に保障するという視点が重視されているように考えています。この点は、もちろん労働者にとって有意義であるとともに、恐らく使用者から見ても事業を効率的、あるいは持続的に行っていく上で、適切な形で労働者の労働からの解放を実現していくということが有意義であるという面もあろうかと思います。
 そのような恐らく双方にとって有意義なものになり得るという視点から、労働からの解放については年休のほかに、例えば近年議論されているものとしては、勤務間インターバルなど、幾つかのものがあります。そういったものをある程度組み合わせながら、職場に労働からの解放を図る意義、あるいはそのための具体的な施策を実現していくというような考え方を広げていくという視点も重要なのかと思っているところです。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。ほかに特にないということでしたら、この議題もここまでとさせていただきます。
 本日の議事は以上となります。
 最後に、次回の日程等につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、以上で第188回の労働条件分科会は終了とさせていただきます。本日もお忙しい中御参加いただきまして、どうもありがとうございました。