第9回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

日時

令和5年2月13日(月)16:00~

場所

AP虎ノ門Aルーム(11F)
東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル

議題

  1. (1)フリーディスカッション(論点1及び論点3関係)
  2. (2)その他

議事

議事内容
○船井安全課長補佐 本日は大変お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより、第9回「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」を開催いたします。本検討会は、会議の資料及び議事録は原則公開ですが、カメラ撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 本日は、土橋座長が電車のトラブルで急きょオンラインでの参加となりましたほか、鹿野委員、日下部委員、三柴委員の延べ4名がオンラインでの参加となっております。それでは、以降の議事進行につきましては土橋座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○土橋座長 土橋です。すみません、ちょっと電車が止まってしまったものですから、座長にもかかわらずオンラインで失礼いたします。本日は皆様、よろしくお願いいたします。
 前回の検討会ですが、論点1について、これまでの議論やヒアリングを通じて関係団体の皆様からお聞きした実態を踏まえまして、事務局が整理した「論点整理」に基づいて、フリーディスカッションを行っていただきました。
 今回は、論点1について、前回の議論を踏まえて事務局が整理した資料を基に議論を行っていただくとともに、これまで余り掘り下げた議論ができていなかった論点3について、フリーディスカッションを行っていただくことを予定しております。それでは、議事に入る前に事務局から資料の確認をお願いいたします。
○船井安全課長補佐 お手元の資料を御確認ください。1枚目が議事次第です。1番が「開会」、2番が「議事」で(1)、(2)とあり、3番が「閉会」という次第になっております。次のページに配付資料一覧があります。今回、準備いたしました資料としては4種類で、資料1~4です。あとは要綱を参考資料として付けております。資料については、ワード形式の資料1とパワーポイントの1枚紙の資料2、あとは資料3、4がパワーポイントでホチキスどめの資料になっております。欠落しているものなどありましたら手を挙げていただければ、事務局の者がお届けしますので、よろしくお願いいたします。
 また、本日は座長がオンラインでの御参加となりますので、後のフリーディスカッションで御発言、御質問いただく際には、どの資料のどの部分に関する御発言なのかを明示していただくよう、よろしくお願いいたします。以上です。
○土橋座長 それでは、議題1、フリーディスカッションとなっておりますが、論点1と論点3に関して、それぞれ御議論いただきたいと思います。まず論点1について、前回の議論を踏まえて事務局において整理した資料に基づいて議論を深めていただきたいと思います。それでは、議論に先立ちまして事務局から資料説明をお願いいたします。
○船井安全課長補佐 それでは、事務局から資料1から資料3について、それぞれ御説明させていただきます。これが論点1の関係の資料となります。
 まず、資料1です。これは前回の第8回において、論点1について少し長めに時間を取って御議論を頂いた、その議論の結果の総論的な部分と各論的な部分について、委員の皆様から出たものを比較的、事細かにまとめた資料となっております。それを事務局でカテゴライズして項目立てをいたしました。
 1番目は「検討会での議論を踏まえた対策の検討方針(案)」関係です。「検討の方向性について」は、いろいろな御意見がございました。省令改正といったような、法令改正だけではない方法も含めて議論を行うべきという御意見や、議論を行う際の視点として、再発防止にこれまで力を入れてきた規制づくりではなく、いろいろと変化する世の中に対応しながら普遍的な、ある意味では予防的な規制づくりという視点も必要なのではないか。とはいえ、災害の発生状況も踏まえるべきだという御意見がありました。そして、最後の丸にありますように、リスクの発生の可能性や、管理できる可能性に着目をして、関係者にそれ相応の役割を担ってもらうと、一言で言いますと、こういう方向で検討するのが適当なのではないかという御意見もありました。
 次の「業種・職種別の特性を踏まえた検討について」は、例えば、ワーキングのようなものを作って業種別に専門技術的な議論をするべきだという御意見と、専門技術的な議論はこの場でやるというよりも、むしろ、ここでは各業界・業態に共通するようなリスク管理の可能性に着目した対策というものを整理すれば、一定の大枠の議論は整理できるのではないか、そこから先は具体化の段階で各業界で議論をすればよいのではないかという、そういった御意見がありました。
 次のページの「検討に当たって留意すべき点」については、今回は、労使関係の枠を越えたような、個人事業者の方々の保護を考えるとありまして、事業者の、安衛法上は措置義務者になりますが、そういったものの定義自体を将来的に考えていくヒントになるような議論が必要なのではないかといったものや、あとは事業者のそもそもの位置付けについても、次の段階に向けて正面から議論をしていくことも必要なのではないかと、このような御意見がありました。
 次の3ページ以降は、個別の論点について御議論いただいたものです。事務局から提案させていただいた論点に対して、もう少し修正したほうがよいのではないか、であったり、別の切り口で議論をしたほうがいいという意見もありました。一つ一つ、個別に申し上げることは省略させていただき、後ほど出てきます資料で、今回の、この資料1に書いてあるような議論を踏まえて、もう一度修正したものがありますので、そちらを御覧になっていただければと思います。資料1については以上です。
 次は資料2で、パワーポイントの一枚紙です。こちらについては、資料1で出ていました意見も踏まえて、1か所だけ修正をしております。下から5行目に「マル2注文した仕事に係る作業場所や作業方法から」と書いてありますが、この後に「作業方法から生ずる災害リスクを管理することが可能である注文者が災害リスクに応じた措置を講ずる」と、頂いた御指摘を踏まえて、このような形で文言を修正いたしました。それ以外は変更はございません。
 資料3について、2ページ目は特に変更はありません。3ページ目の「論点(案)」と書いてある下に(0)として、「検討に当たっての基本的な考え方(案)」の部分、このページを1枚追加いたしました。前回のフリーディスカッションでは、こういった大枠の議論もたくさんありましたので、それを踏まえて今後の検討の基本的な方向性であったり、業種・職種別の検討であったり、検討に当たって留意すべき点というような形で整理をしております。
 まず、1つ目の丸ですが、「これまでの議論を踏まえた対策の検討に当たって」というペーパーがありましたが、その考え方に基づいて、作業場所や機械設備、取り扱う危険・有害物、さらには作業方法、こういったものに着目して、作業に伴うリスクを生み出し、これを管理することができる立場にある方に対して、安衛法の既存の枠組みの活用であったり、そこからはみ出るような部分については、ガイドラインなどを用いて必要な措置を求める方向で検討を進めさせていただきたいということが1点目です。
 2点目が、検討に当たっては、やはり産業の急速な変化に対応可能な普遍的な対策を予防的、戦略的に講ずることを基本にすると。さらには、諸外国の規制動向や国内における労働災害及び労働災害以外の個人事業者等による災害の実態も踏まえて、法令による規制だけではなく、ガイドラインによる取組や予算事業も活用した支援も含めて、柔軟な内容を検討していくことが必要であるということです。
 「業種・職種別の特性を踏まえた検討について」は、先ほど資料1でも触れましたとおり、ワーキングを設置して専門技術的な検討を行うべきという御意見と、大枠の整理はこの検討会の場で可能であり、詳細は業界で議論をすることが適当という御意見がありました。これも踏まえまして、検討会の下にワーキングを設置することはいたしませんが、例えば、業界の実情をもう少し把握する必要があるということであれば、追加ヒアリングであったり、関係団体との個別調整というものを丁寧に対応させていただければと思います。
 また、運用段階においても、これは大分先の話になるとは思いますが、関係団体としっかり連携をさせていただき、実態に応じた対策の推進を図りたいと考えております。最後に「検討に当たって留意すべき点」、これは安衛法の枠組みでは捉えきれない課題があり、このようなものについても、今回は十分に議論できないものについては将来的な検討課題の把握に努めて、次につなげていくということです。
 次のページ以降は、個別の論点について議論を踏まえて修正をした部分です。修正箇所は赤い字で書いてある所で、例えば、(1)の「業務上災害の報告」の所では、事務局で提示したものが案1でしたが、それ以外にも案2、案3のように、報告主体を個人事業者と直接契約する直近上位の事業者にするであったり、やはり報告自体を個人事業者自身にやっていただくことを原則としつつ、物理的に難しい場合は団体や場所を管理する方がサポートするというような幾つかの案が出ました。また、報告対象、罰則についても異なる案が出ておりまして、併記をしております。
 次の(2)「個人事業者自身による措置やその実行性を確保するための仕組みのあり方」については、この1つ目の丸はおおむね御理解いただけたと思います。労働安全衛生法第22条関係の最高裁判決を踏まえた省令改正の際に、立入禁止措置というのはこの1つ目の丸ですが、それ以外の保護具の着用の周知義務を事業者に課した部分について、どのようにやるのか。要は、周知を受けた個人事業者がその内容をしっかり講じるといった案1のようなやり方にするのか。その措置を徹底させるところまでを事業者に求めるというのが案2です。案2ですと指揮命令関係に少し影響が出てしまうので、案3のような形で、周知した事項を守っていない人は作業に従事させないといったようなやり方など、いろいろな方法がとり得るのではないかという御提案がありましたので、併記しております。
 次のページで御意見がありましたのは、「安全衛生教育の受講、危険有害業務に係る健康診断の受診等」ですが、特に健診の関係で事業者から情報提供や機会の提供をする際に、特殊健診では化学物質について、どういう物質をどれぐらい使ってばく露しているのかという基本的な情報が伝わらないと、受けた個人事業者側も対応のしようがありません。そういったものもしっかりと伝わるようにしましょうということで書いております。
 一番下の丸につきましては、安全や経費についてもただ周知をするだけではなくて、きちんと適切に確保されるようにということで、書かせていただいております。前回の議論では具体的な、明示的なコメント、修正がなかった(3)の部分は特に修正を加えてはおりませんが、今回また直したバージョンで御意見を頂ければ追加で修正をしたいと思います。
 11ページに飛びまして、真ん中にあります「注文者等による安全上の指示」については、法第29条以外の安全上の指示、これが指揮命令と混同されないように整理するという観点ですが、これについても現場の実態をよく踏まえて分かりやすく整理してほしいといった御意見がありました。
 次のページの「建設業、造船業及び製造業以外の業種の混在作業場所における連絡調整」については、製造業で義務付けているような段取り調整のようなものであれば、ほかの業種にも、業種限定をかけずに広めてはどうかといった御意見です。それは少し性急でありますので、業種・業態、さらには災害の実態、こういったものを踏まえて、どういう業種に対してどのような内容の措置を求めるべきかを検討した上で、必要な措置を求めるべきであるという御意見がありましたので、このように記載をしております。
 次は16ページに飛びまして、プラットフォーマー対策についてですが、こちらについては安衛法の枠内でやることはなかなか難しいところもありますので、まずは安衛法第3条第3項の注文者等の配慮義務の部分、プラットフォーマーといった形で必ずしも注文者には該当しない場合であっても、一定の業務内容によっては、個人事業者との関係には3条3項でお願いしているような事項が当てはまる場合があると。こういったことを解釈やガイドラインで示して、配慮すべき事項を明確化して措置を促していくというようなことを事務局案で書かせていただきましたが、本当にそれだけで十分なのかという御意見もありました。この部分については、プラットフォーマーの業務形態や契約に着目した新しい法制というのも、今、フリーランス新法というような形で議論されておりますし、諸外国の規制動向というものも時々刻々と変わっております。こういった動きも注視しつつ、安衛法の既存の枠組みでは捉えきれない課題への対応についても、しっかり将来的に対応できるように把握をしていきたいということです。
 次の17ページ、「個人事業者や小規模事業者に対する支援のあり方」について、注文者や元方事業者ばかりに支援をお願いするのではなく、それ以外にも、例えば、個人事業者が就業されている地域の自治体などの支援もうまく活用して、仕組みに取り入れながらサポートしていくことも重要ではないかという御意見がありましたので追加をしております。
 そして、最後のページの「相談窓口」について、相談窓口があっても案件によって、あっちに行って、こっちに行ってといった形になることがないように、利用者がワンストップで利用できるように既存のチャンネルをうまく組み合わせて、効率的・効果的な相談窓口運営をやるべきだということで書かせていただいております。資料1~3については以上になります。
○土橋座長 ただいま説明いただいた資料1から資料3に基づいて、議論いただきたいと思います。御発言いただく際は、資料幾つのどの部分ということを最初に述べていただきたく思います。御意見、コメントはございますでしょうか。
○本多参集者 日建連の本多でございます。資料3について、8つほど質問があります。
 まず、3ページから5ページで、4点御質問させていただきます。3ページ、検討の基本的な方向性についてです。検討に当たっては、産業の急速な変化に対応可能な普遍的な対策を予防的、戦略的に論ずることを基本とする旨が記載されておりますが、本日も配布されている検討会の開催要領には、そのような記載は全く見当たらず、むしろ本検討会の目的は個人事業者等に関する業務上の災害の実態把握、それから、実態を踏まえ、災害防止のために有効と考えられる安全衛生対策の考え方について検討することである旨が明記されております。私どもも、この趣旨に沿って考え、発言してきたつもりでございます。このようなことが、どの時点で、どのように生じたのかについて、御教示をいただきたいと思います。併せて、安衛法は、実際の労働災害の発生状況を踏まえて改正が繰り返されてきた経緯があるものと認識しております。第1条には、労働災害防止のための危険防止基準を確立することなどによって、労働者の安全と健康を確保することなどが目的の法律であると明記しております。安衛法においては、災害防止が重要な要素になっていることは理解していますが、実際に災害が発生していない、又は災害発生のおそれがないような事項についても、予防的、戦略的に規制を行う必要があるということになれば、安衛法の基本的性格自体を変えてしまうことになるかなと思っております。ですから、災害防止ではなく、普遍的な対策を予防的、戦略的に講ずることを基本とするという文言を用いた意図について教えていただきたいということが1点でございます。
 2点目についてです。3ページの中段の「業種・職種別の特性を踏まえた検討について」です。「検討会の下にWGは設置しないが、追加ヒアリングや関係団体との個別調整により丁寧な対応を図るとともに、運用段階においても関係団体と連携の上、実態に応じた対策の推進に努めることとする」と記載されておりますが、この点に関して、追加ヒアリングや関係団体との個別調整を行う主体は検討会なのでしょうか、それとも厚労省なのかについて、教えていただきたいと思います。また、個別調整というのは、どのような方向性で、どのような基準に沿って行われるのか、そして、運用段階における実態に応じた対策の推進とは、どのような事項を想定していらっしゃるのでしょうか。これが2点目です。
 3点目は4ページの中段、「業務上災害の報告」の「報告主体」の所です。案1から案3まで、3つの案が並記されて、今後いずれの案を採用するかについて、これから検討が進められていくものと思われますが、事業者に報告を求めるための根拠としては、安衛則に規定することだけではなく、通達やガイドラインで規定することも含まれると解釈してよろしいのか教えていただきたいと思います。
 4点目は、5ページの中段の業務上災害の報告の「罰則適用」の所です。個人事業者等は、元請として工事を施工したり、単独作業で被災している例が多いことが明らかになっているほか、個人事業者が負傷した事実について、当事者が作業場所を管理する事業者に対して報告しないことなども十分に想定されます。よって、事業者が具体的事実関係を全く把握していない事例や一部しか把握していない事例、又は伝聞等で相当期間がたった後に、ある程度承知はしたけれども正確性に疑問がある事例など様々なケースが生じることになりまして、また一方、第一線の機関である労働基準監督署においても、取扱いなどにばらつきが生じかねないものと懸念をしているわけです。そこで、作業場所を管理する事業者が個人事業者等の被災した具体的な事実関係を把握していないような場合であっても、刑事責任を追及し、当該事業者を送検することが可能であるかについて、厚労省さんの立場からの見解を御教示いただければと思います。以上の4点でございます。
○土橋座長 事務局からお願いいたします。
○船井安全課長補佐 まず1点目です。資料の1番に記載の、予防的とか戦略的という話がございました。これは前回の議論でも有識者の委員から具体的にそのような御発言を頂いたということで、文言としては書かせていただいております。この検討会の議論を通じて、例えばプラットフォーマーであるとか、個人事業者、一人親方に限らず、労働者という形ではない形で働く方が増えているというような実態は現に伺えます。そこで起きている問題も既にありますし、これから起きるであろう問題もあると考えられます。まだ十分に災害実態を把握する仕組みがございませんので、こうした問題が起きているということまでお示しすることはできていない状況にございますけれども、そういう問題が起きるということは非常に懸念されるわけです。
 そういったものに対応するために、現在、網羅的に災害を把握する仕組みはないわけですが、その仕組みを完璧なものではないまでも新たに設けていくことと併せて、現に起きている問題だけではなくて、起きる可能性が非常に高い部分については、必ずしも規制というやり方ではなくて、ガイドラインというやり方なども含めて、対策を示していこうという意図で書かせていただいております。
 なので、文言を読んでいただくと分かりますように「対策」と言っておりまして、全部、規制に限定しているような書きぶりにはなっておりませんので、御留意いただければと思います。先ほど御説明しました資料で言いましても、例えばプラットフォーマー対策というのは、一足飛びに規制というのはなかなか難しいと思います。なので、安衛法の枠組みの中で、あるものをうまく使って、ガイドラインなどでやっていくというやり方もあろうかと思います。
 2点目についてです。具体的に個別業界とどういうコミュニケーションを取っていくかということですが、これは非常に広い業界を相手にしておりますので、自分たちの業界ではそういう実態がないとか、逆に、こういう実態があるのだけれども、ちょっと違うというような声があるのではないかと我々としては気になっております。例えばですが、この災害報告の部分を1つ取ってみても、個人事業者の方が注文者とか元請に災害を知られたくなくて隠すというモチベーションが働く分野と、個人事業主の方は災害があったということを言いたいのですけれども、上のほうで揉み消されてしまうというような実態があるというような、相反するような御意見をお伺いすることもあります。そういった部分について、枠組みの大枠はここで議論するのですが、それぞれの業種によって起きている個別の問題については一緒くたに議論するのは難しいので、これを業界でうまくやっていくためには、業界の固有の問題について一番よく御存じの業界と、厚生労働省若しくは事務局がうまく連携しながら対応していくのがいいのではないかということで書かせていただきました。主体は厚労省なのか、この検討会なのかというのは、ものによるのではないかと思います。この検討会において、全体の枠を作るときに、是非、反映させるべき実態があれば、追加で検討会でのヒアリングも十分に検討させていただきたいと思います。報告主体について義務化となりますと法令ということになりますが、ガイドラインとか通達も含まれるのかは、現時点で、そういうやり方を排除しているものではございません。どうやるかも含めて、更に御議論を深めていただければと思います。
 4点目の罰則の関係については、申し訳ありませんが御発言の御趣旨がよく汲み取れなかったのですが、もう少し補足的にお話いただければと思います。
○本多参集者 船井補佐からお話がありましたように、把握しきれない場合、把握できない場合があったときにも、いわゆる罰則の適用について、どういうお考えなのかの確認でございます。
○船井安全課長補佐 今回、幾つか論点がありまして、まず、報告対象をどこまでにするかということがあります。把握できたものについてやっていただけばいいのか、それとも、とことん徹底的に把握してやってもらえばいいのか、そこの論点が書かれていると思います。その上で、罰則のありなしということになっております。
 ただ、これは一般論になりますが、罰則を適用するシチュエーションは、報告対象を限定的なものとして設定し、それができていなかった場合に罰則を適用するという、非常に厳しい世界があります。例えば、把握できたものだけを報告してくださいといったような言い方をしておいて、罰則を掛けるというのは、なかなか立法的に難しいと思っています。なので、そこは報告対象と罰則は一蓮托生の部分があると思いまして、仮に罰則を付けるのであれば、きっちりとした報告対象を限定的に捉えると。逆に、報告対象をふわっとするのであれば、罰則は難しいかなというのが、現時点での考えでございます。お答えになっているかどうか分かりませんが、よろしいでしょうか。
○土橋座長 ほかにございますか。
○鈴木参集者 ただいまの本多委員の御質問にも関わる部分です。資料3の4ページの業務上災害の報告について、質問させていただきます。検討の方向性の案として、「労働者死傷病報告と同等の内容を労働基準監督署に報告する仕組みを構築すべき」とございますが、報告の範囲として、休業4日未満を含む全ての業務上災害を想定しているのか。つまり「同等」の意味について、厚生労働省のお考えをお尋ねしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○船井安全課長補佐 同等というのは、鈴木委員がおっしゃったように、死傷病報告は休業災害について出してくださいということになっております。基本的には、なるべく網羅的に把握したほうがいいと思いますので、それに近い形は目指しておりますが、労働災害と全く同列でやるかと言うと限界もあると思います。労働災害についても、業務上かどうか定かでないものは、実際に出てきていないもの、過労死とかメンタルとか、また、起きた瞬間には労働災害か分からないようなものについては出ていないといったものもあります。どこまで追及するかというのは十分に御議論いただければと思います。労働災害と同じようなものを目指すという方向性はあるのですが、全く同じ水準でというところは難しいのかなというのが、現時点の認識でございます。
○鈴木参集者 報告の範囲についてはこれからの議論ということで承知しました。その上で、前回の検討会から引き続きの内容もあるかもしれませんが、意見を申し上げたいと思います。
 報告主体を案1や、案2とする場合、作業場所を管理する事業者、あるいは取引相手の事業者において、災害発生の状況あるいは原因を把握できない事態も当然生じてくると思います。このような場合に、事業者が被災した個人事業者等から必要な情報を得て行政に報告する負担は大きいと考えております。
 前回の検討会では、リスク管理権限を持つ者が報告を行うべきという御意見もございました。案1の場合、自らが管理する施設・設備に起因して発生した災害であれば、そのような考え方もできるかもしれませんが、管理上の問題を超えて、例えば疲労の蓄積により発生する脳・心臓疾患、あるいは無理な姿勢で重量物を持ち上げる、運ぶといった、不安全行動に起因する休業まで報告を求められることについては、幅広く事業者の理解と納得を得ることは、現時点では難しいと思っております。
 幾つかの業界団体に私どもでヒアリングをさせていただいたところ、もとより、作業場所にいる方が個人事業者かを、事業者が把握していないケースが多い業界もあり、業種・業態によって置かれている立場がかなり違うことを改めて感じました。また、災害が発生した際、契約関係にある個人事業者の被災状況を事業者が聞き取り、自社の労働者と同様に対応しているという先進的な業界もあると聞いております。このような業界の実態があることを前提に、案1の仕組みを導入した場合、一律に報告を義務付けることで、報告に要する労力が非常に大きくなるとも思いますし、既に機能している運用実態を否定してしまうことにもつながりかねないと懸念しております。したがいまして、私自身は案3を支持したいと思っております。その上で、全く新しい仕組みでもありますので、罰則の対象とすることについては慎重な議論が必要だということも申し添えたいと思います。私からは以上です。
○土橋座長 御意見頂きまして、ありがとうございます。出口委員、お願いします。
○出口参集者 本多委員、鈴木委員の発言については同感です。資料3の3ページ、業種・種別の特性を踏まえた検討について、前回の検討会の際に、WGを設置して、それぞれの業種・業態を深掘りし、ヒアリングで浮き彫りになった様々な実態を各業界で議論する。大枠の議論だけで整理されるのではなく、WGにおいて浮き彫りとなった詳細な部分も重要と捉え、大枠の中に戻せば、より、良いものが出来上がると考えています。しかし、資料では、WGは設置しないと考え方が明記されており、各関係団体等との個別調整を厚労省が実施する方がより良いものになる。各業界ごとのWGは余り意味がないという考え方なのか、御意見を聞かせていただきたいのが1点です。
 そして、4ページの業務上災害の報告ですが、これは丁寧に、検討していかなければなりません。案1から案3までまとめていただいておりますが、いろんなパターンが発生すると思います。資料1の3ページにも取りまとめていただいた「業務上災害の報告」では、各業界で業種・業態、作業場所において円滑で有効な報告の仕方を検討すべきです。私は、鈴木委員が発言された案3を支持するとともに、個人事業者自身による報告を原則としつつ、この後の物理的な報告が困難な場合は、団体や作業場所を管理する者とするが、管理する者に関しても、各業種で異なるので、丁寧な検討と議論を行っていただくようお願いします。
 ちなみに現行の死傷病報告は、労働者は所属している企業が行い、元請事業者は行いません。個人事業者等の報告を元請が行い、労働者は、が所属する事業者が行う形となると、管理方法が大きく異なり建設業では混乱します。案3を原則として、よりよい方法を検討させていただければと考えています。これは意見と要望になります。
○土橋座長 報告の部分については御意見を頂きました。前半は、ワーキングを設置しない件については御質問でしたが、事務局からお答えいただけますか。
○船井安全課長補佐 ワーキングの設置に関する事務局の考えは、資料1の(0)に書いたとおりです。ワーキングを設置する意味がないと思っているわけではございません。ただ、今回取りまとめようとしている対策について、中には業種対策もあると思うのですが、災害の報告であるとか、注文者対策のようなものは、業種ごとにばらばらの対策をやるのは考えておりません。ここで決まった枠から逸れない形で、各業種のうまいやり方、負担にならないようなやり方を、業界の特性を踏まえてうまくやっていただくというのが一番いいのではないかと思っております。
 ただ、全体の対策を決めるときに業界の実情を反映させなくていいのかというのは、正におっしゃるとおりですし、これまでやってきたヒアリングに加えて、個別に私どもでもいろいろな業界とコミュニケーションを取らせていただいて、そういったことを踏まえたような論点の資料作成にも努めておりますので、引き続きそういった形でやらせていただけたらなと思っております。
○土橋座長 三柴委員、お願いいたします。
○三柴参集者 まず、3ページのベタ打ち資料と論点(案)の(1)に記載された報告に関する件ですが、私も示された案3に、鈴木委員と同じく賛成の前提で、それを取り巻く制度の枠組み全体について、報告制度をどう設計するかというグランドデザインについて申し上げたいと思います。
 まず、個人事業主に対して義務を課すのは現実的でないと思っています。だから、権利付ける、権利を与えるというのが常道だろうと思います。現行の安衛法の第97条を参考にした条規を設けて、ただし、単に日本の労働者に権利を与えると、ちょっと厳しい発言になりますが、自分にも問題のある方が主張するということも間々起こるので、行政主導でもいいと思うのですが、ちゃんと団体を設けて、その支援をする。必要な声を挙げやすくするという手当が必要ではないか。その意味で、強い支援を個人事業主に対しては設ける必要があると、一方で思います。
 他方で、個人事業者以外のリスク管理者、管理権者のほうですが、こちらに対しては、努力義務程度の義務を課すと。ここは昨今流行りのと言いますか、共同規制の考え方を前提にして、全て行政が規制するのではなくて、行政は要点だけを規制して、基本的に自主管理を回させるような、それを促進するような方法を取ると。したがって、個人事業者の災害状況がどうなっているかをPDCAさせて、そのデータを行政に提供させるようにするのが適当かと思っています。
 では、リスク管理者とは誰なのかということなのですが、ここは海外の例を見ていても正解は多分ないのです。国によって考え方が違ったりします。日本の場合は、御案内のとおり、建設であれば元方とか元請施工、労災の加入義務も含めて、そういう傾向がありましたけれども、新しい産業にも対応していくという議論ですので、ここは透明化法などと同様に、業種ごとに指定していく。どこが報告義務を負うか、リスク管理権者であって報告義務を負うかを、業種ごとに、個々の事業者というよりも、考え方をちゃんと通達、通知していくことになるのかなと思います。
 もう1つは、建設業者の本多委員からあった根本議論について申し上げますと、国が現状で、ある程度予防的、戦略的な対応を図っていかないと、また規制権限不行使という国の責任問題になりかねないということは申し上げないといけないと思っています。もし、再発防止策のみを中心に安衛法を構成するのであれば、時代を遡って、旧労基法、旧労規則時代に戻ると。その後の安衛法は結局、リスクアセスメントの考え方に代表されるように、きちんとリスクを予測しながら、もちろん再発防止策を基軸にしつつ手を打ってきたのは明らかで、管理体制まで含めて定めることで労災を大きく減らしてきた歴史があるわけなので、そこを逆戻りさせるような議論はどうかと思っています。これについては建設業だけではなくて、ほかの業種の実情と御意見も聞いていくべきだと思っていることだけを申し上げたいと思います。
○土橋座長 鹿野委員、お願いします。
○鹿野参集者 質問と意見です。質問は、資料3の5ページの罰則に関するところです。私自身は、罰則を適用すべきだとかすべきではないという定見を持っているわけではございませんし、むしろ罰則ということになると、かなり対象は限定されるだろうなという感触は持っていますが、一般論として、先ほど御説明いただいたことについて、質問させてください。
 先ほど報告対象と罰則の適用について、言わば一蓮托生で、罰則を適用するのであれば対象が限定的になるというような御説明がありました。その限りでは、今申しましたように違和感はないのですが、報告対象はある程度広げておいて、その中で重大あるいは悪質な義務違反については、罰則の適用対象にするというような作りはできないのだろうかと思いました。私の説明の受け取り方が違うのかもしれませんけれども、その点について更に御説明いただければと思います。
 2点目は、一言だけ意見です。先ほど三柴委員がおっしゃった、誰がリスク管理者になるのかということについてですが、これは基本的に三柴委員の御意見に賛成です。つまり、ここでは大枠の考え方については共通なものを設定しておいて、ただ、業種によって違ってくるところがあると思いますので、そこを業種によって柔軟に指定できるような法的な手段を取るのがいいのではないかと考えていたところです。
○土橋座長 御質問と御意見を頂きました。質問のほうについて、事務局からお願いできますでしょうか。
○船井安全課長補佐 私の説明も不十分でございました。報告対象という意味では、先生がおっしゃったように、例えば休業災害、休業1か月とか死亡といった、重篤度、重大性という切り口もあれば、報告者が把握できたものを可能な範囲でというような切り口もあると思うのです。後者の部分は、構成要件がはっきりしませんので、そういうように報告対象をふわっとさせておいて罰則を掛けるのは、構成要件の関係で両立できないのかなという趣旨でした。
○土橋座長 続いて中村委員、お願いします。
○中村参集者 今の報告対象のことと、報告は誰をするかということと、災害の報告の内容をどうするかに関して、意見を申し上げます。
 今回の一番の大きな目的は、個人事業主の災害をどうやって防止するかだと思います。その点から考えると、資料1の3ページを見ればたくさんの意見は出ているのですが、これを総括して考えたら、基本的にはリスク管理権限を持つ者が報告を行うべきだと言っているように読めるのです。そのように考えると、例えば作業場の誰がどういう形でリスク管理をするかといったら、これは事業主になるだろうと思います。そういう意味で、私は資料3の4ページの案1、案2、案3で言えば、本来は案1を基本としながらも、そのときに事業主としたときに、どのように抜けがあるから、そこを補強するようなまとめ方のほうが本来ではないかと思うのです。
 なぜそう言うのかと申しますと、個人事業主に報告された場合に、場合によれば雇用関係から報告しないという事態も出てくると思います。むしろ社会から見たら、個人事業主の安全を担保するという意味では、その作業場を管理する事業者、ここに書いてあるように、むしろ案1を基本としながら、そこの抜けている部分を、案2、案3を補強していくのが本当ではないかと思います。これが1点目です。
 2点目は、どの辺の災害を報告するのかということです。私は、日本は小さなリスクも全部報告せよと言っているように思うのですが、それは違うのではないかと思います。グローバルの考え方からいった場合に、ある程度のことでなければ報告対象としないということがあるので、先ほどから事務局がおっしゃっている休業災害以上は報告、しかも4日以上という受け取りでいいのですよね。
○船井安全課長補佐 労働者死傷病報告ということで言いますと、休業1日以上は全て報告いただいております。
○中村参集者 ただし、グローバルな評価だと4日になりますよね。
○船井安全課長補佐 日本の場合は、4日以上の場合は、遅滞なく、結構事細かに報告していただいているというイメージで、報告の必要性自体は変わりません。
○中村参集者 なぜそういうことを言っているのかと言うと、全てのリスクまで報告対象に持っていくと、今の大きな流れの中で大変になるだろうと。逆に言えば、どの辺の傷害まではちゃんと報告するのだということを付けてあげないといけないような気がして、このようなことを申し上げました。
○土橋座長 田久委員、お願いします。
○田久参集者 私も資料3の4ページの報告主体ということで、先ほど来いろいろと御意見が出ていますし、私は中村委員の考え方に賛同したいと思います。原則、報告主体を個人事業主自身というようにしてしまうことによって、先ほど来、事務局からも報告があったように、仕事の関係上報告しないとか、逆に、上から災害を隠すとか、こういうことがあり得る。こういう部分では、リスク管理をする事業者がきちんと報告をするという前提の下に、報告が把握できない場合、若しくはそういうような状況が生まれた場合は、個人事業主も把握可能、報告できる、又はそういった団体を通じても報告ができるといった、案1と案3を組み合わせるような形態のほうが、私はいいのではないかと考えています。そういった点でも、災害を的確に把握して、個人事業主は基本的に体を資本としていると思いますので、そういった人たちが不利益を被らない体制をきちんと作っていくことが、報告の段階でも必要ではないかと思っています。
○土橋座長 森委員、お願いします。
○森参集者 「立入禁止等の措置の遵守」という所です。3つの案が現実の場面にどう適用されるのかをうまく理解できなかったので、その点もお聞きしたいと思います。恐らく工場等でいろいろな方が働いているときには、構内のルールを定める、又はこういった場合にはちゃんと保護具を付けなさいというルールを定めるというのが、まず1番目にあって、それが下請であろうが個人事業者であろうが守ってくださいと。守っていない人がいれば、当然のことながら、直接するかルートをどうするかは別にして、何らかの指導がいく。指導がいって、何度も繰り返されていると、下請というのは契約関係なので、当然のことながらそういう事業者は次又はその次に契約されないおそれがあり、そのこと自体が抑止力になって、結果的に多くの方がルールを守るというのが現場の現実だと思います。私が産業医をやっている事業場でも、それが現実だと見ています。そうなったときに、これは1、2、3のどれに当たるかがよく分からなくて、結果的に全部同じようにも読めるし、この辺りについて、今言ったような現実を、ちゃんと法律で自信を持って指導ができるようにしていただくというのが大事かなと思っております。
○土橋座長 事務局から何かございますか。
○船井安全課長補佐 御指摘ありがとうございます。ここで案1、2、3と並べていますのが、まず、1個目の丸に書いてあるように、立入禁止措置というのを既に省令改正をして、最高裁判決を踏まえた措置として対応しています。その立入禁止措置を講じられた際に、労働者の場合は罰則付きで守らなければいけない、個人事業者等の場合は、守らなければいけないというように手当されているのですが、罰則はありません。そこの並びはおかしいのではないかということで書かせていただきました。
 一方で保護具の着用については、労働者の場合は着用しなければならないという規定があるのですが、最高裁の判決を踏まえますと、事業者から保護具について必要性を周知された個人事業者が、それを自分で着用するのはいいのですけれども、指揮命令関係もない人に保護具を着用させるところまでは、なかなか難しいのではないかという判断があります。そこの着用させるのが難しいというのは、法令に基づいてやるのが難しいと我々としては評価していて、現場のルールとして、着用しなさいというように統一していただくのは、法令とは別に実際にやられていると思いますし、やっていただければと思うのです。ここでは、着用させるとか、着用していなかったら作業をさせないとか、そういうことを法令で手当するときどうかということで、案2と案3を書いております。
 なので、事務局案として出させていただいたのは、法令としては案1で、事業場がルールとして定めるような場合までは排除はしていないと。では、事業場が定めたルールについて、保護具をちゃんと着けなさいと個々の人に対して指導、アドバイスをすることが果たして指揮命令に該当するかしないかは、またちょっと別の話がありまして、それは違う論点で整理しようというようになっているところです。
○土橋座長 それでは清水委員、お願いいたします。
○清水参集者 5ページの罰則適用の所なのですが、作業場を管理する事業者に報告義務を課す場合であっても、実効性の観点から報告義務は罰則の対象とするということで、このように法制化をしてもらうと。法人の事業者であっても、荷主から命令があって納品に行ってくれと言われて、その作業場、着荷主というか発注者の所でやらせる作業が不確定なことが多く、そこでも作業機械、フォークリフトやかご台車などを使うのですが、それも着荷主の所有物であったりということで、そういったものの整備も含めて、改善されにくいのです。私たち中小事業者は多層構造で発注を受けていて、元請の運送事業者がいて、そこから発注を受ける可能性が高いです。そこでやると、優越的な地位の濫用で、付帯作業も待機時間も、持帰り等も含めてやらざるを得ない。それでドライバーはやってくると。
 12月に公正取引委員会が13事業者に勧告をしましたが、これも運賃とかコストを反映しないだけではなくて、優越的な地位を利用して付帯作業、フォークリフトやかご台車を使う、マンションへの運び入れをする、持帰りも含めて、そういったことを強要していたということで勧告を受けていると認識しています。特に、ECデリバリーに関する軽貨物事業者は個人事業主が多くて、それも元請の事業者から受注している場合が多く、労働時間も納品実態も把握されていない。納品時間は、一般企業ですと出勤の点呼、帰庫の点呼があるのですが、こういった事業主は点呼すらない。何時から働いて、何時に仕事が終わっているのかも全然分からない。そういう実態です。
 なので、罰則適用をしっかりしていただいて、ECデリバリーの場合は個人の発注者が多いのですけれども、それは荷主企業ということで、法人の企業が納品するというと今度はベンダーなどの納品場所、作業場を管理する事業者になるので、そこを規制していただかないと、その関係がなくならない、実態がなくならないのが実際のところです。是非それをお願いしたいと思います。
○土橋座長 三柴委員、お願いします。
○三柴参集者 報告について、先ほどの中村委員の見解と同じことを考えておりました。死亡災害プラスアルファは休業4日より重くていいと思うのですが、そこには報告義務を課すということと、先ほども申し上げたように、単に災害報告をすればいいのではなくて、ちゃんと防止の策まで考えるような体系を意識していただくようにすることが重要だと思います。もう1つ申し上げると、立入禁止について言えば、イギリスではPermit to Workという政策が敷かれていて、ちゃんと訓練とか教育を受けた資格のある人でないと現場に入れないというような考え方なので、そういう方法もあるのだろうなと思いました。
○土橋座長 山脇委員、お願いします。
○山脇参集者 「業務上災害の報告」並びに「立入禁止等の措置の遵守」について、意見を述べさせていただきます。
 まず、業務上災害の報告に関しては、私は中村先生及び田久委員と同様の意見です。まず報告主体ですが、基本的には案1とすべきではないかと思っています。ただし、既に労災事故発生時の事業者との契約が終了して遠隔地で働いているために、労災事故が起こった所の事業者との意思疎通が難しい場合もありますし、そもそも事業者が事故報告を拒むことも想定されますので、作業場所を管理する事業者による報告を原則としつつ、個人事業者本人あるいは特別加入団体による報告も可能とすべきではないかと思います。
 つぎに、5ページからの報告対象と罰則適用です。まず、報告対象については、私は案2とし、仕事の発注者に報告義務を課してはどうかと考えています。また、先ほど来、議論になっている罰則適用については、個人事業者の災害を防止することを目的とするならば、実効性を担保するという観点で、案2とすべきではないかと思っています。ただ、冒頭に他の方から質問がありましたが、ここは免責の規定が設けられて然るべきではないかと思います。全てに対して罰則を適用するのではなく、事業者が必要な対応を行っていたにもかかわらず個人事業者が事故報告を事業場を管理している事業者にしなかったなど、一定の場合については免責の規定を設けることを前提に罰則を設けてはどうかという考えです。
 また、立入禁止等の措置ですが、私は案3が望ましいと考えています。こうした作業に従事させない措置の義務化により、事業者には、適切な保護具の貸出しや購入費用など、必要な安全経費を請負契約に計上することが見込まれますので、結果として労働災害の減少に資することとなり本検討会の目的にも合致する施策ではないかと思っております。
○土橋座長 三柴委員、どうぞ。
○三柴参集者 報告書について、案3に賛成と申し上げましたが、案1の間違いでした。あと、報告できない場合もあり得るから裏付けを示す前提で免責するというのは、今の山脇委員の御発言に賛成でした。
○土橋座長 ほかはいかがでしょうか。中村委員、お願いします。
○中村参集者 今の立入禁止の所で、案1、案2、案3とあります。案1だと、指導している内容の保護具の着用とかは、本来は安全上の措置なので、当然やっていいことであるから、「事業者はそれを周知し」で、その後の文章は、この案1を取るならば「適切に」を取るべきだと思います。「個人事業者は、その応じた措置を講ずる」にするべきだと思います。要するに、これは安全上の指示なのだから、本来、そこのところを曖昧にしてしまうと、どこまでいっても個人事業主は守れなくなってくるので、そこは必要だと思います。
 それから、案2は、私から見たら、事業者に義務付けても個人事業主が守るという保証はどこにもないので、それはちょっと不利だろうと。そういう意味では、案3か案1で、もし案1を選ぶなら、「適切に」を取っていただきたいと思います。案3は、これで本当に馴染むなら、私も案3がいいと思います。
○土橋座長 ほかにございますでしょうか。IT関係からのお話を聞いていませんが、高山委員から何かございませんか。
○高山参集者 IT業の場合の労災の実態としては、建設業や製造業のような身体的なものと比較して、メンタルヘルスや過重労働系のほうが多い印象があり、ちょっと実態が違うかなという部分がありましたので、このタームでは発言を控えておりました。次の資料4に関する論点3の所でお話させていただければとも思いますが、いかがでしょうか。
○土橋座長 事務局から説明の後に御議論いただきますので、そのときにお願いいたします。
○高山参集者 そうさせていただきます。
○土橋座長 本多委員、お願いいたします。
○本多参集者 資料の6ページ以降で、4点ほど確認のための質問をさせていただきたいと思います。建設業というのは、現時点でも何十万という事業所が動いており、そういうこともありますので、恐れ入りますが若干お時間を頂いて4つほど質問させていただきたいと思います。
○土橋座長 時間も押していますので手短にお願いいたします。
○本多参集者 6ページの立入禁止の措置の所です。安衛法の中身に入りますので、各論で恐縮ですし、厚労省の方はお詳しいので釈迦に説法ですけれども、御説明させていただきます。
 安衛則に規定されている立入禁止措置には適用除外規定が設けられている場合とか、立入禁止措置が例示された1つの措置に過ぎない場合などが多く、安衛法令は単純に立入禁止措置を遵守すればよいという構成要件にはなっていないと認識しています。実際に、防網を取り付けたり、誘導者を配置して誘導させるといった別の措置を講じることとしたために、当然ながら立入禁止措置を講じずに作業を行っている現場は数多く存在しています。また、保護具の使用については、安全帯の使用を念頭に置いているものと理解しておりますが、安全帯には墜落自体を防止する機能がないため、墜落のおそれがある場所で作業を行う際には、安全帯の使用ではなく、墜落防止設備の設置に優先して取り組んでいただくという指導を厚労省から受けている次第です。建設業界としては、法令上の安全帯の使用は墜落防止設備を設けることが作業の性質上著しく困難である場合等に限られた措置義務でありますが、法令上の義務が課されていない場合であっても、より安全性を高めることができる場合には、任意の自主的な措置として安全帯の使用を促進していく必要があるという認識で、現場の管理を行っています。そのために、立入禁止の措置をすればいい、あるいは安全帯の使用を義務化すればいいということ等について、罰則を背景にしてそういうことを事業者に強制すればよいという考え方は、実態にそぐわないと考えています。そこで質問ですが、このような法令の構成要件とか、建設業界の自主的な取組、現場の実態等について、どのような見解をお持ちなのかを教えていただきたいと思います。
 2つ目は、7ページの中段の教育あるいは健康診断の所です。個人事業者等は、1つの現場で継続的に稼働するのではなく、むしろ様々な現場を転々としながら短期間ずつ稼働する場合が相当多いものと考えています。一方、安衛則等に基づく安全衛生教育は、現場が変わる都度実施が求められているわけではなく、また、危険有害業務に係る健康診断についても、例えば6か月以内ごとに1回というように、実施の頻度が定められています。注文者に対し、個人事業者等に対する教育・健診等に関する情報提供や受講、受診機会提供について配慮を求めることを、短期間しか稼働しない場合についてまで義務付けることが、法的整合性の見地から問題ないのかの見解も教えてください。また、安衛則等に規定されている危険有害業務に係る健康診断のほとんどは、いわゆる常時性を要件としていますけれども、個人事業者等は様々な異なる現場で稼働していることが多いために、常時性が明確に認められるか判別できない場合が非常に多いと思われます。危険有害業務に係る健康診断に関する情報提供や受診機会提供についての配慮を義務付けるとした場合には、個人事業者等に対して特殊健康診断が必要となる危険有害業務を請け負わせたという事実だけではなく、個人事業者に当該業務に係る常時性が認められることが前提になるものと考えていますが、個人事業者等に係る常時性の有無の把握について、どのような見解をお持ちなのかを教えていただきたいと思います。
 3つ目は8ページです。安衛法の第30条、第30条の2は、混在作業における労働災害を防止するための規定で、安衛法第29条のように、元方事業者に対して、関係請負人への指導や指示を義務付けている条文とは趣旨や要件が明らかに異なっているものと認識しています。これまでの検討会において、厚労省から提示された資料の中には、発注者等による対応が必要と考えられる死亡災害事例などが含まれ、連絡調整や情報提供が必要だったというコメントが付されている事案も一部にありましたが、安衛法第30条は建設業及び造船業、安衛法第30条の2は製造業という限定された業種において、元方事業者の労働者や関係請負労働者が、同一の場所で混在作業を行ったことによって生ずる労働災害を防止するための規定であることを踏まえた場合には、作業間の連絡調整が必要な場合であったとは認められないのではないかと考えています。また、現場感覚としましても、個人事業者等が元方事業者の労働者や他の関係請負の労働者と同一の場所で混在作業を行っていたことに起因して発生した災害は少ないものと感じています。そこで、建設業及び造船業又は製造業における元方事業者の労働者と個人事業者、又は個人事業者と他の関係請負の労働者が同一の場合で混在して作業を行ったことに起因して発生した重大な災害を把握されているようであれば、具体的な事例を御教示いただきたいと思います。
 4つ目は14ページをお願いします。法の第31条から第31条の3に基づく措置が、個人事業者等の保護の対象となることを明確にする旨の記載があります。これらの条文を根拠とする厚生労働省令は多岐にわたっており、実際には、個人事業者等が稼働していない作業を規制している条件も少なくありません。そこで、災害原因となるリスクを生み出すという意味合いは、個人事業者等が実際に稼働しており、現場に災害が発生している状況を踏まえたものと考えてよろしいかについて、見解をお知らせいただきたいと思っております。非常に具体的で大事なことでございますので、質問させていただきました。
○土橋座長 事務局からお願いできますか。
○船井安全課長補佐 1点目は、6ページ目の立入禁止について御意見がありました。ここで議論の対象にしている立入禁止というのは、最高裁の判決を踏まえて安衛法第22条に基づいて、いろいろ規定されている改正省令において手当したものを想定しております。それ以外の安全関係、危険を対象にしたような立入禁止については、現時点において改正されておりませんし、改正するかどうかも含めて、論点2のほうで御議論いただくことになろうかと思いますので、その議論を踏まえてということになるのではないかと思います。ただ、御指摘のとおり、立入禁止が1つの手法であって、それ以外に、監視人を置くだとか、そういうやり方もあると思います。それは、監視人を置くのであれば、その監視対象に入れればいいという話であって、別に立入禁止に個人事業者を含める必要はないということにはならないのではないか。そこも含めて、今後も議論いただければと思います。
 7ページ目です。短期間で様々な現場を移動するような個人事業者の方もいらっしゃると。そういった際に、個々の現場における元方事業者の方に配慮の義務を課すことがどうかと。更に配慮の義務を課すのであれば、例えば健診であれば、その個人事業者が常時性があるかどうかを踏まえて、配慮の義務が生じる生じないということになると、そういう御指摘だと理解しました。ただ、資料を読んでいただきますと分かりますように、配慮を求めるとは言っているのですが、配慮義務を課すところまでは議論していなくて、常時性を確認して、常時性がある場合に配慮しろという義務を課すものでは必ずしもないと、現時点ではそういうふうに思っております。これまでの議論において、事務局からも説明させていただいたとおり、ここでいう配慮というのは、例えば健診であれば、こういう健診機関があるよといったような情報提供ですとか、自分の所の労働者に健診をやるのであれば、お金は自前だけども一緒にどうですかという形で声を掛けるとか、そういったことをメインに想定しております。
 8ページ目です。災害事例の関係ですが、今、提示できるものはありませんが、ご指摘のような事例は把握しておりますので、別途の機会に御提示させていただきたいと思います。建設現場においては一般に、元方事業者の労働者と、関係請負人の労働者と関係請負人そのもの、個人事業者の場合もあれば、社長さんが自ら職長となって労働者を連れているような場合もあると思います。そういった方が、渾然一体というとちょっと大げさかもしれませんが、同じ場所で作業をしているケースは一般的に多くあるのではないかと思います。そういう中で、個人事業者だけ、条文上読めないので混在の対象から外していいよということにはならないのではないかという観点で、この論点を挙げております。
 最後、9ページ目の、第31条以降の条文の話です。ここで個人事業者を対象にすると申し上げたのは、次のページに具体の条文を書いてあるのですが、「労働者の労働災害を防止するため」という規定になっているのです。現に個人事業者とか労働者以外の人がいて、危害にさらされるおそれがあるのに、この条文にこう書いてあるから全く対象外というのは、ちょっとおかしいのではないでしょうか。こういった書きぶりも含めて、現に危害にさらされているのであれば、保護の対象としていいのではないか、そういう議論が必要ではないかということですので、本多委員の御指摘のとおりかと思います。以上でございます。
○土橋座長 よろしいでしょうか。それでは、時間の関係もありますので、本件最後、鈴木委員からお願いいたします。
○鈴木参集者 時間が押してる中、恐縮でございます。12ページの「建設業、造船業及び製造業以外の業種の混在作業場所における連絡調整」について、その連絡調整の方法について質問と意見をさせていただきたいと思います。過去の検討会の資料の中で、連絡調整不足を原因とする災害事例として、配送業務を請け負った運送事業者のドライバーが配送先でフォークリフトに追突されるという事例があったかと思います。このような場合に、配送先の事業者と運送事業者との間で、フォークリフトの稼働時間、何時から何時までということを共有して、ドライバーに伝達するのは容易ではないと思います。多数の運送事業者が出入りする作業場の事業場であればなおさら難しい面もあると思うところです。このような事例の場合における連絡調整の方法として、厚生労働省としてどのようなイメージを持たれているのか、お尋ねしたいと思います。
○船井安全課長補佐 具体的に、本当にきっちりした、これだというのがあるわけではございませんけれども、例えば今御指摘のような運送の関係の個人事業者、配達の方、運送業の人が、運送業とは異なる業種のバックヤードですとか作業場に入ってフォークリフトでひかれるとか、その場で行われている別の作業の影響を受けてしまうと。そういったものを想定しているのは、このページのマル2のほうです。要は仕事が異なる間での混在になります。具体的にこれを防止するための措置として、これは現場の状況によっていろいろなやり方があると思います。
 例えば、エリア分けをして、絶対にフォークリフトにひかれないような所で作業して荷物を下ろすとか、そういうやり方もあると思います。ただ、それもなかなか現実的でないのであれば、あらかじめ時間設定しておくということもあるし、例えば何か表示とか掲示で、「この時間帯は外部の方が荷物を運んでくるので、注意してください」というのを双方に共有すると。例えば管内放送で、「今、荷物の搬入が行われますので、フォークリフトの運転は停止してください」とか、いろいろなやり方があると思います。例えば定期的に荷物を運んで来る人がいるのであれば、その業者間で約束をして、一度ルールを決めてしまって、そこで作業時間帯を調整するというようなことを一番初めにやれば、毎回毎回、何か連絡調整みたいなことをする必要まではないのかと。やり方はいろいろあると思いますので、現場の状況に応じて、混在が生じないようなやり方を工夫してやっていただくのがいいのではないかと思います。まだかっちりしたものがあるわけではないのですが、災害実態を踏まえますと、今申し上げたようなのが効果的ではないかと思います。
○土橋座長 よろしいでしょうか。
○鈴木参集者 ありがとうございます。よく分かりました。現場の実態は多種多様ですので、厳格な意味で連絡し、調整をすること以外の方法も含めて、幅広く議論することが重要だと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
○船井安全課長補佐 おっしゃるとおりだと思いますので、検討に当たっては十分留意したいと思います。
○土橋座長 それでは、いろいろな方面から様々な御意見を頂きまして、ありがとうございました。次に移りたいと思います。今の御議論で、今後掘り下げるべき点については明らかになってきたと思いますので、資料1~3の関係については、事務局において本日の議論を踏まえた整理をお願いします。
 続きまして、今日は論点3を議論するということで、資料4に基づきフリーディスカッションを進めたいと思います。資料4について、事務局から説明はありますか。
○船井安全課長補佐 資料4については、何回か前の検討会に出させていただいた資料を、全く修正せずに出したものですので、中身について追加での説明はありません。具体的なフリーディスカッションは、7ページ以降に論点(案)ということでお示しさせていただいておりますので、その項目に沿った形でやっていただくと有り難いです。よろしくお願いします。
○土橋座長 特に資料はこれまでのものということです。7ページに論点(案)がありますが、この辺りを含めて御議論いただきたいと思います。また、同じようにどの部分への御発言かおっしゃってから、御意見をお願いしたいと思います。いかがですか。
○高山参集者 ITフリーランス支援機構の高山です。私どもの業界は、どちらかと言いますと、身体的な労働と比較して、IT業はメンタルヘルスや過重労働系の労災が多いかと思っております。ITフリーランスの場合は、働き方は様々あるのですが、基本的には御本人が正社員で働くか、あるいは派遣で働くか、はたまたフリーランスとして働くかというのは、御自身が選択して働かれるケースが多いかと思います。この点は、以前ヒアリングがあった芸能関係やイラストレーターさんとは違うという思いはあります。ですので、ここからのお話は、IT系に限定してお聞きいただければと思います。
 そのような御本人が選択して働く業界ですので、安全衛生に対して、発注企業、エンドユーザーに過度な措置を講じるならば、フリーランスの活用が消極的になるようなリスクも出てくるのかとも思いますので、余りその辺を強めるのはよろしくないかと思います。かと言いまして、全く何も講じなければ、フリーランスの方が健康管理をしっかりするかと言いますと、そうではないと思っております。
 一方で、ITフリーランスのエージェント業界というのは、最近仲介業者が増えてきておりまして、今、220社を超えるという調査もあるぐらいです。今後は、ものすごい勢いで仲介業者は増えてくるという調べもあります。ですので、1つ考えられるのは、そのような仲介業者が中心になって、フリーランスの安全衛生に関する配慮を行っていくというのが、大枠では一番いいのかなと思います。例えば、資料の7ページにある、長時間の就業による健康被害、長時間の就業の防止、要は働く時間の管理の部分については、仲介業者は必ずと言っていいほど把握しておりますので、そういった部分から、働く方々をケアしていくのは非常に有効かと思っています。
 あとは、メンタルヘルスの話もありました。こちらのほうも、一人一人本当に健康診断を受けているかどうかとか、そこまで管理するのが難しい部分はあるのですが、定期的にいろいろな教育をしたり健康診断の勧めをしたりするのは、仲介業者としては普通にやっていることだと思います。この辺は、裾野が広くなっていく仲介業者に配慮を求めるのは、非常に有効な手段かと思っています。
 一方で、先ほども議論がありましたが、労働者の死傷病の報告関係ですが、やはり業界の特性上、メンタルヘルス関係は労災の大部分を占めています。フリーランスからしますと、自身がメンタルで疲弊しているのをなかなか言い出せないという特殊事情があります。と言いますのも、先ほども冒頭で申し上げたとおり、社員、派遣、フリーランスといろいろな方がいる中で、要は、自分がその仕事を取っていくために、ある種競争力みたいなところがあって、メンタル的に疲弊している人に対して、言い方が適切でないのかもしれませんが、発注事業者からしますと、なかなか発注しづらい部分も、実際問題であったりもします。自分から言い出せない部分がありますので、ここは特別加入団体から必ず報告するような仕組みが一番いいのではないかと思います。現状、ITフリーランスの方が特別加入団体に入られている数は、まだまだ少ない状況ですので、ここの加入者数を増やしていくことを業界全体で取り組んでいきたいと思っています。その辺りについても、行政の御協力を頂きながら、特別加入団体の機能をそこに向けていくのは有効ではないかと思います。本当に業種・業態によって全く異なりますので、一律で適用していくのはなかなか難しいというのは、当初からの印象です。今も皆さんのお話を伺っている中で、やはりそういうふうに感じる次第です。以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。三柴委員、お願いします。
○三柴参集者 この問題については、やはり安全衛生の枠だけで考えるのではなく、労働条件一般との連携が非常に重要だと思います。例えば、賃金の支払い確保、工期、あるいはワーカーの関心が高いのは、失業や労災の保障です。こういったところの担保を他部署、他省庁と連携して進めていただくことが極めて重要と思っております。
 今、御発言がありましたように、確かに業種によっていろいろな実態がありますが、JILPTが、例えば今先端で行われているクラウドワーカーについて調べたところ、割と働きがいは高めで、報酬は低めで、仕事の不安定性は思ったほど高くない。プラットフォーマー、海外ではプラットフォームが正しいのですが、その役割を割と評価する。お客さんとの間に入ってくれて、条件を調整してくれるという声も強いことは分かっています。それではどうするかということですが、プラットフォームもそうですし、個人事業者が作る協同組合のようなものもそうですが、そういった団体に注視して、そこが例えば産業医なりを共同選任して、ほかに安全衛生上の専門家が必要だったら共同選任して、そういった方に上がった声を踏まえて、勤務条件について取引先なりに勧告していくという仕組みが考えられるかと思います。いずれにしても、法制度としては家内労働法と中協法を1つのデフォルトとして考えていくのが現実的かと思います。以上です。
○土橋座長 それでは、森委員、お願いします。
○森参集者 労働者の健康を守る上では、いろいろな取組が必要というのが前提です。ただ、実際に自身がコントロールすべきところまで誰かに管理させろというのは非常に難しいわけです。一方で、就業環境において自身がコントロールできないような状況は、管理ができる人がきちんと管理することが原則かと思います。
 そういった意味で、例えば、9ページにある就業場所の管理は自身がコントロールできませんし、前々回のヒアリングの中で出た、ある種のプラットフォームでアルゴリズム管理されていて、それが本人がコントロールできないような状況であれば、一定の責任をアルゴリズムを持っているプラットフォームが持つことが妥当かと思います。ただ、それ以外について、自身の健康をどうやって守っていくかということに関しては、ここに「促す」という言葉でたくさんありますが、周知をし、啓発をし、リテラシーを向上させる。そういったことがまず前提になるかと思います。
 その上で、健康評価の機会については、をたくさん“促す”という表現がされています。健康診断、ストレスチェック、長時間労働の機会など。しかし問題は、健康評価をしても、普通の労働者に対する産業保健サービスでもそうですが、評価それだけで終わったら何の解決にもならないので、評価のあとに事後措置をきちんと付けましょうということになっています。そうしますと、事後措置を受けるために、個人事業者が自分でどこか探して行くのは極めて難しい状況にありますので、そういった意味で、先ほど三柴委員もおっしゃいましたが、業界団体、ITフリーランスの皆さんの仲介業者、最近では、芸能事業者が産業医を専任したというニュースがありましたが、そういった団体が何とかサポートして事後措置ができる、又はここに行けばそういった対応ができるという状況にまで、レベルアップをしていただくのが有効な対策かと思います。以上です。
○土橋座長 それでは、小野委員、お願いします。
○小野参集者 資料の7ページを御覧ください。今からお話したいのは、基本的には質問ではなく、要望と意見ということで捉えていただければと思います。特に、トラック運送業については、長時間労働が大きな問題になっています。御存じのとおり、トラック運送業界の場合は、全産業よりも20%の長時間労働です。賃金水準は平均して10~20%安いので、単位時間当たりの単価は6割、5割になってしまいます。そういった厳しい中にあってよく言われるのが、2024年問題というのがあります。これは、時間外労働時間の上限規制が960時間になりますので、これに合わせてトラック運送業界は対策を講じて、厚生労働省としても、昨年の10月に改善基準告示、それに対応した形で改正が終わりました。ということで、年間で言えば、拘束時間は労働時間プラス休憩時間も含めた考え方ですが、3,516時間から、2024年から基本は3,300時間に減らされます。3,516時間というのは、現行の水準は、月間換算では293時間にも及びます。今、ものすごい長い時間が上限ということで、それ以内なら大丈夫になっています。
 そのほか、実際は改善基準告示では運転時間の制限とかいろいろあるのですが、問題としては個人事業者です。トラック運送業界には個人事業者は基本的にはいないということになりますので対象にはならないのですが、軽荷物運送事業者等については、個人事業者がとても多く、改善基準告示の対象となっていないことが現実に挙げられます。この前の団体のプレゼンにおいては、赤帽の連合会について、トラック運送業界で対象となるような改善基準告示については啓蒙ということで、同じようなトラックを、自動車を運転する業務の内容を知っていただくような啓蒙活動をしておられるとおっしゃっていました。
 ただ、問題は、赤帽についても、全体の個人事業者、軽荷物運送事業主について見れば、組織率はそう高いわけではありませんので、それ以外の方たちでも、そういった形での自動車運転職としての長時間労働による健康障害や交通事故防止を念頭に置いた改善基準告示の上限のあり方を啓蒙するようなツールが欲しいと思っております。そういったところについて、重点的にコロナ禍においてもメンタルという観点の一環として、是非取り入れていかれるような対策があればと思います。以上です。
○土橋座長 中村委員、お願いします。
○中村参集者 7ページ、長時間の就業防止について、今までのお話を聞きながら思ったのは、一律に個人事業者ということで長時間就業の防止にもっていってしまっていいのだろうかと思います。というのは、いわゆる中小企業のもっと下請の、今のトラック運転手のような方の長時間労働規制と、一人一人の才能をもとに働いている個人事業者がいましたら、それは一律規制ではなくて、ここだけは区分して、同じ個人事業主と言っても少し違う格好で書いてもらったほうがいいのではないかという気がします。どうしてかと言いますと、文章の「促して」ということは難しいと思ったので、むしろ、メンタルヘルスの面から分ける長時間就業については、やり方が違うということを書かれてもいいのではないかと思いました。なぜそう思うかと言いますと、やる気のある人は、かなり長時間働いても結構もつのです。しかし、いや、これは辛いという仕事は確かに無理だと思います。そういう意味で、仕事の種類を2つに分けたほうがいいような気がします。これは意見ですが、よろしくお願いします。
○土橋座長 そのほかいかがですか。山脇委員、お願いします。
○山脇参集者 過重労働やメンタルヘルス、健康管理等、危険有害作業以外の対策においても、労働者と同じ場所で就労する者については、労働者以外の者であっても労働者と同じ労働衛生水準を適用すべきということは言うまでもないと考えています。その上で、7ページの「長時間の就業による健康障害の防止」と8ページの「健康管理」について1点ずつ発言させていただきます。
 まず、長時間の就業による健康障害の防止ですが、請負契約を結んでいる方々は、そもそも請負という契約の特性上、労働時間法令の適用を受けないため、過労死認定基準を大きく超えるような労働時間で働いている方も少なくない実態があると聞きます。その結果として、メンタルヘルス不調をはじめとする健康障害の発生が課題となっています。
 こうした事態が発生しているのは、契約内容などに起因することも多く、個人事業者本人だけではコントロールすることが難しいケースも少なくありません。そうした観点を踏まえると、全ての注文者に対して、法の3条で規定されている、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないよう配慮させ、かつ、それを確実に担保していくことが重要だと考えます。その上で、過労死などをはじめとする健康障害を真に防止していくという観点に立つと、今、申し上げたような配慮とその確実な担保だけで、本当に健康障害を防止できるのでしょうか。更に一歩突っ込んだ対策ができないのかと考えています。
 冒頭で申し上げたとおり、労働者以外の者であっても、労働者と同じ安全衛生水準を適用すべきという観点に立つと、例えば、労働者と同様の労働時間規制のようなものを課すこと、具体的には、長時間労働の就業者を業務に従事させないという規定を新たに設けることも、検討に値するのではないかと考えます。
 もう1つは、健康管理ですが、8ページには、「個人事業者等は、健康診断の受診率が低く~」という記載があります。こうした受診率の低さをいかに高めていくかという観点で見ますと、個人事業者本人の受診に対する意識啓蒙を行うことはもとより、健康診断の受診に対する発注側の配慮が必要なことは言うまでもありません。加えて重要なのは、健康診断を受けるための経費が適切に契約に盛り込まれるようにすることです。その点では、建設業の取組である労働災害防止のための法令遵守のガイドラインは、好事例だと思っております。こうしたガイドラインを他の業種にも適用していくことが重要と考えます。さらには、ガイドラインを基準に格上げし、健康診断を含む安全衛生経費をしっかりと契約に盛り込むことで、全体として労働安全の確保につなげていくことを検討すべきはないでしょうか。安全衛生経費全体のあり方も含めて提起させていただきます。以上です。
○土橋座長 そのほか、いかがですか。
○本多参集者 資料の7ページ以降、論点の整理の内容については、そのとおりだと思います。異論はありません。10ページ、行政等による支援、あるいは業種・職種別団体による支援とありますが、この所で若干感想と質問を申し述べたいと思います。
 今、先生方のお話と同様の認識で、これまでの議論の中で、ITのフリーランス、あるいは芸能従事者、イラストレーター、フードデリバリーサービスの方々というのは、発注者のビジネス優先の中で非常に厳しい就労環境下にあって、健康障害のおそれがある中で仕事をされていると想像しておりましたが、実際、びっくりした次第です。私自身が間違っていれば訂正しますが、これらの業種の方々に関しては、所管の官庁が決まっていないとか、業界団体が設立されていない、あるいは団体が設立されているが十分に機能していない場合があって、そういうところについてどうするのかという認識があります。一方、先ほどお話いただきましたが、建設業の場合は、私は戦前のことは分かりませんが、戦前は建設業の就労環境は相当悪かったと思います。終戦後、労働省、建設省、建設業界、労働組合が一体となって、いろいろなものに取り組んで改善が図られ、ガイドライン等を非常に有効に活用してここまできたという認識があります。
 そういう意味で質問ですが、これらの業種に対応する所管官庁を定めたり、業界団体の設立を促すなど、これらの業種で稼働する個人事業者の就労環境の改善等に取り組むことが容易になるような枠組みを整備することが必要だと思いますが、厚労省として、どのような姿勢でこういう問題に取り組もうとされているのかおっしゃっていただければ有り難いです。お願いします。
○土橋座長 事務局、よろしいですか。
○中村産業保健支援室長 本多委員からも、ほかの委員からも頂いていますが、フリーランスというのは相当幅広い業種になっています。しっかりした団体がある業種もあれば、今、御指摘があったように、全く団体が機能していないような所もあれば、その所管省庁が決まっていない業界も多い。それが今の実態であると思っています。当然、行政だけでできることは限られていますので、委員の先生方がおっしゃるように、まとまりを作っていくことの重要性は我々も考えております。そんなにすぐ所管省庁が決められるのかという問題もありますし、全く歴史も浅くて団体もないような所に、すぐ団体が作れるのかという問題はあるかとは思いますが、団体を育てていって、そういった所を通じて全体の底上げをしていくという方向性は、我々も委員の先生方と同じ思いは持っております。ただ、一朝一夕でできることではないと思っていますので、そういったことを進めていきながらも、同時に個人個人の意識啓発もしていかなければいけないだろうと考えております。どうすれば実効性が上がるような仕組みが作っていけるのかは、これからも委員の先生方、関係業界の方々のお知恵も頂きながら、どういう形がいいのか考えていきたいと思っております。
○土橋座長 よろしいですか。ほかにありますか。
○鈴木参集者 先ほど山脇委員から、長時間就業する個人事業者を業務に従事させないことや、建設業の法令遵守のガイドラインを基準に格上げするという御指摘があったかと思います。先ほど高山委員からもありましたが、就労の多様性を確保しながら安全衛生をどのように守っていくかという視点も重要ではないかと思っております。個人事業者の就業時間の規制について、個人事業者、フリーランスの方々が果たして求めているのかどうか、業界ごとに調べていくことも含めて、慎重な議論が必要ではないかと思っております。
 もう一点は、以前、ヒアリングの中で、就業時間を容易に管理できるアプリ、ツールの披露があったかと思います。注文者などが、個人事業者に就業時間を容易に管理できるツールの利用を呼び掛けることがあってもよいと思います。その呼び掛けの際には、例えば今、国会に今後フリーランス保護新法が提出されるのではないかという動きがございます。新法の案では、書面交付義務が盛り込まれていると承知しております。今後、モデル契約書のようなものを関係省庁で作っていく中で、その欄外において、就業時間を容易に管理できるツールの利用を呼び掛けるということも一案ではないかと思いますので、意見として述べさせていただきます。以上です。
○土橋座長 フリーランス新法の情報についても、事務局側でも少し御検討いただければと思います。一応、議題としては大体終わりました。ほかにありませんか。締めに回ってもよろしいですか。
○青木参集者 住団連の青木です。簡単に。今の副業の推進というか、そういったことがいろいろ政府からも言われていると思います。その副業の場合は当然、労働者としての就業時間プラス副業、その副業がまた労働者の場合もあるでしょうし、一人でやる場合もあると思います。その際に当然、労働時間は長くなります。その辺りが諸々の規制で、ある意味、それを阻害するような形にならないように注意しながら進める必要があるのではないかと感じました。以上です。
○土橋座長 御意見ありがとうございます。ほかはいかがですか。よろしいですか。それでは、いろいろ御意見を頂きました。事務局におきましては、議論を踏まえて整理をお願いします。最後になりますが、その他として、事務局からありますか。
○船井安全課長補佐 その他、連絡事項ですが、正式には、後日改めて御案内させていただきます。次回は3月29日の午後に開催させていただく予定です。今日頂いた御意見も踏まえて、また資料もアップグレードさせていただきたいと思います。今日の議事録については、参集者の皆様に御確認を頂いた上で公表させていただきますので、よろしくお願いします。以上です。
○土橋座長 それでは、本日は長時間にわたり活発な御議論を頂きまして、ありがとうございました。以上で、第9回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。