電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律に係る発電事業者の指定に関する会合 議事要旨

日時

令和5年3月23日(木)

場所

厚生労働省仮設第1会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館)

出席者

  • 岡崎 信勝 (全国電力関連産業労働組合総連合 会長代理)
  • 松元 洋平 (全国電力関連産業労働組合総連合 労働政策局長)
  • 山脇 義光 (日本労働組合総連合会 労働法制局長)
  • 山口 哲生 (電気事業連合会 総務部部長(労務担当))
  • 銅堂 誠一 (電気事業連合会 総務部労務 副部長)
  • 坂下 多身 (日本経済団体連合会 労働法制本部 上席主幹)

(オブザーバー)
経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力基盤整備課課長補佐

(事務局)
労働関係法課長
労働関係法推進官

議題

発電事業者の指定範囲について

議事

【議事】
  • 事務局から、前年と比べ状況に大きな変化がないことから、告示は変更しないこととする案が示された。
  • 出席者より、事務局に対し、
    ①日本原子力発電株式会社(以下「日本原電」という。)を引き続き指定対象とする理由
    ②電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律(以下「スト規制法」という。)の見直しに関する検討の進捗状況
    について質問があり、事務局から回答を行った。
  • その後、各出席者から意見が述べられた。まとめとして、今回は告示の変更は行わないこととした。
【質疑応答】
質問1(全国電力関連産業労働組合総連合)
発電事業者指定の考え方と指定の方針において、発電状況等を検証し、指定する事業者について検討するとしているものの、日本原電については、指定外の事業者の中にも同社と同程度の設備容量のものがあることや、原子力規制委員会の安全審査等の進捗を踏まえれば、指定から除外されるべきではないかと考えるが、指定対象とした考えを伺いたい。
 
(事務局回答1)
 法に基づく指定については、これまで、発電状況としては最大接続電力に着目し、その多寡等を踏まえて指定を行っている。日本原電についても、この考え方から指定をし、その後、この点の数値に特段の変化がないことから、指定を継続するもの。
 この一年間で最大接続電力が日本原電と同程度になっている指定外の事業者もあるが、これについては、新たな事業者の指定について、過去に本会合において慎重な判断が示されたことも参考に、引き続き状況を見極める必要があると判断し、指定を提案しないこととした。
 現行の指定事業者についても、毎年の会合において、その発電設備の最大接続電力等を勘案して指定の要否を検討する対象に含まれており、従って、今回の会合で指定を継続することとしても、今後も状況を注視しながら、指定の要否を検討することに変わりはない。
 なお、日本原電の現状を踏まえると、法の適用は、以下①②のようになる。実際に電力供給を行っていない状況下においても争議行為の権利が制約されることは不適切という主旨のご指摘と存じるが、以下②のとおり、そのような状況下での争議行為は通常禁止されないものと考えられる。
① 第一条は、その争議行為によって安定供給に支障が生じるおそれのある事業者の範囲を指定するものであり、おそれのある場合も含めて指定をする仕組み上、現在稼働していない状況や安全審査の進捗等を踏まえても、なおその有する発電設備の最大接続電力の大きさを全く考慮しないことは難しく、指定は継続せざるを得ないと考える。
② 他方で、指定事業者における争議行為が一律に禁止される訳では全くなく、禁止される行為は第二条にあり、あくまで、正常な電力供給に直接障害を生じさせるものに限られる。そして、これに該当するかは、個々の争議行為ごとに、稼働の状況などの具体的な状況に基づき判断される。このため、そもそも電力供給がされていないような状況下では、禁止行為に該当するような争議行為は、通常想定されない。
 
質問2(全国電力関連産業労働組合総連合)
○これまでの会合で、スト規制法の廃止に向けて検討するよう求めてきたが、現状の進捗について伺いたい。
 
(事務局回答2)
 現在実施に向けた調整をいただいている現場の業務や労使関係に関するヒアリングを行うほか、海外の制度調べについても着手している。前回の検討は、労政審の下に部会を設けて、公労使の委員に参画いただいて検討をしており、今回も、こうした形を参考に、予断を持たず附帯決議に基づく検討を進めていく考えである。
 
【出席者の主な意見】
(1)全国電力関連産業労働組合総連合
○ 事務局から示された考え方は、電力が自由化されている現在においても、旧一般電気事業および卸電気事業に働く労働者のみを対象として労働基本権を制約している現状を固定化しかねないものであり、大変残念である。
○ 他方、新たな事業者の指定を提案しなかった点については、新規に指定事業者を追加することに対して、慎重に判断するということ自体は理解できるものである。
○ 昨年もスト規制法の廃止に向けて検討を開始すべきことを述べたが、この1年間状況が一歩も前進していないことについて強い問題意識を持っている。先ほど回答があった通り早急に現場ヒアリング等の実施を含め、同法の廃止に向けて検討を加速すべきことを改めて強く求めておきたい。
 
(2)日本労働組合総連合会
○ 次年度の発電事業者の指定に関する会合に向けては、先ほどの電力総連からの発言も踏まえ、検討いただきたい。
○ また、これまでも繰り返し申し上げてきたとおり、労働側は、基本的に、スト規制法は廃止すべきと考えている。スト規制法は、電気事業等の労働者の憲法上の労働基本権を制約しているうえ、すでに労働関係調整法の公益事業規制があるなかで、追加的に規制を設ける根拠がない。
○ 平成27年の第3弾の電力システム改革に関する電事法改正法案の審議では、スト規制法について、「廃止を含めた検討を行い、結論を得る」との附帯決議が行われている。厚生労働省においては、電力総連からの発言や、先の附帯決議を重く受け止め、早期に体制を整えるとともに、この間の会合の議論も踏まえて、検討を進めるべきである。
 
(3)日本経済団体連合会
○ 事業者の指定を変更しないという厚労省の説明に特に異論はない。
 
(4)電気事業連合会
○ 事業者の指定を変更しないという厚労省の説明に異論はない。
○ 我々としては、これまで電力の安全・安定供給を維持することができたのは、健全な労使関係を相互の努力により築き上げてきた結果であり、今後も引き続き、争議行為が発生することのないよう、労使が密にコミュニケーションを重ねていくことが重要であると考えている。