第31回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会 議事録

健康局予防接種担当参事官室

日時

令和5年1月25日(水) 13:00~15:00

場所

Web会議
中央合同庁舎5号館 専用第21会議室
(東京都千代田区霞ヶ関1-2-2)

議題

(1)海外のインフルエンザワクチンの製造株選定プロセス(案)について
(2)その他

議事

 

○萩森予防接種担当参事官室室長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより、予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を開催いたします。本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。本日の議事は公開です。議事の様子はYouTubeで配信しますので、あらかじめ御了承ください。なお、事務局で用意しているYouTube撮影用以外のカメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレスの関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は、傍聴に関しての留意事項の遵守をお願いいたします。会議の冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので御留意ください。
 本日も一部Web会議で開催します。まず、Web会議を開催するに当たり、会議の進め方について御連絡させていただきます。御発言される場合は、まずお名前をおっしゃっていただき、部会長から御指名されてから御発言をお願いします。なお、Web会議でタイムラグが生じますが、御了承願います。会議の途中で長時間音声が聞こえない等のトラブルが生じた場合は、あらかじめお知らせしている番号まで、お電話をお願いします。
 続いて、委員の出欠状況について御報告いたします。現在、9名の委員にWeb又は会場にて御出席いただいております。委員10名のうち9名に御参加いただいておりますので、厚生科学審議会の規程により定足数を満たしておりますので、本日の会議が成立したことを御報告いたします。また、本日は参考人として、国立感染症研究所から6名の方に御出席いただいておりますので御紹介いたします。国立感染症研究所インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター長の長谷川参考人、ウイルス第三部第四室長の原田参考人、インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター第一室長の渡邉参考人、インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター第三室長の浅沼参考人、インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター第四室長の高橋参考人、インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター主任研究官の板村参考人に参加いただいております。なお、渡邉参考人、浅沼参考人、板村参考人につきましては、議題1が終了した段階で会議から退席される旨の連絡を頂いております。
 申し訳ありませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。これ以降は、写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので御留意ください。
 それでは、議事に先立ち、資料の確認をさせていただきます。本委員会の資料はあらかじめ送付させていただいた電子ファイル及びお手元のタブレット端末で閲覧する方式で実施します。01の議事次第及び委員名簿から07の利益相反関係書類を用意しております。資料の不足等御不明な点がありましたら事務局にお申し出ください。それでは、ここからの進行は伊藤部会長にお願いいたします。
○伊藤部会長 皆様、御出席ありがとうございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。それでは、事務局から審議参加に関わる遵守事項と利益相反の確認を、よろしくお願いいたします。
○萩森予防接種担当参事官室室長補佐 事務局です。審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日御出席いただいた委員及び参考人から、予防接種ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売会社からの寄附金等の受取状況、申請資料への関与について申告を頂きました。各委員及び参考人からの申告内容については、資料07の利益相反関係書類を御確認いただければと思います。本日の議事内容において、個別に調査審議される品目はありませんので、議事への不参加に該当する方はおりません。以上です。
○伊藤部会長 議事に入らせていただきます。最初の議題は、海外のインフルエンザワクチンの製造株選定のプロセス(案)についてです。まず、事務局から御説明をお願いいたします。
○稲角ワクチン開発専門官 資料は「03」で始まるファイルになります。2枚目ですが、昨年3月に開催した本部会の資料を復習という意味で準備しました。昨年の3月の部会では、当時開発が進んでいる投与方法などが改良されたインフルエンザワクチンとして、例えば経鼻のワクチンが承認申請中であるとか、高用量のインフルエンザワクチンが第Ⅲ相試験中であることをお示ししました。そういった中で、現状と課題、対応案をお示ししました。
 対応案の1点目ですが、WHOの推奨する複数の製造株の中から選定した株でワクチンを製造していることを前提に、海外製のインフルエンザワクチンの導入について検討を進めてはどうかという形でお示しし、具体的には1つ目の矢羽根にございますが、国内外の製造株の検討スキームを比較整理して、新しい取扱いの必要性について進めたいという形で御提案させていただきました。
 また、2点目ですが、mRNA等の鶏卵を用いないものについては今も開発が進んでいる状況と承知していますので、WHOの動向などを踏まえつつ、別途検討させていただければと考えておりました。こういったことを踏まえ本日の資料を準備しておりますので、次に説明させていただきます。
 資料の4枚目と5枚目を御覧ください。資料の4枚目が国内のインフルエンザワクチンの供給までのプロセスで、5枚目が海外のものということです。こちらも、昨年の3月の部会で提示させていただいた資料ですが、一部強調したい所や補足したい部分を赤枠で囲ったり、オレンジのボックスに入れて記載を追加しております。
 国内外でWHOで決定された推奨株や類似株の中からワクチンの製造株を選んでいる点は共通しているのですが、国内では厚生労働省が製造株を決めていて、海外では製造メーカーが製造株を決定している点が異なっています。また、海外の資料の、下のほうにありますが、薬事審査といった薬事の承認審査プロセスがあるという点が、国内と大きく異なっている点です。
 6枚目でまとめております。左側に欧米における対応、右側に国内の状況の記載をしております。株を決めることについては、海外ですとそれぞれの企業が決めますが、国内ですと厚生労働省が審議会等の意見を聞いて決める形になっております。また、国内ですと薬事審査があるのですが、その部分は海外ではぽっかり空いている点が大きく異なっている点だと整理させていただきました。
 7枚目のスライドを御覧ください。先ほどから、WHOが決定したワクチンを製造するための推奨株、類似株の中から選んでと申し上げているのですが、それがどのように決まっているかをお示ししています。白い背景の部分の1つ目のポツにございますが、WHOでは、各国の規制当局、専門家の集団がいろいろなデータを持ち寄って議論しているということで、サーベイランスのデータ、遺伝子系統での解析結果、インフルエンザウイルスの流行予測結果などを踏まえまして、1つの推奨株を選んでいるという状況です。また、WHOではワクチンを製造するための推奨株と抗原が類似しているワクチン候補株についても公表しておりまして、その類似株の中から季節性のインフルエンザワクチンを作ってもよいということになっています。
 8枚目がイメージです。これは去年公表されている製造株のリストになります。一番上の赤枠の「A/Darwin/9/2021」となっている部分は、ワクチンの推奨株ということになっております。そして、その下の表に抗原性が類似しているものがリストに挙げられていまして、オレンジの枠で囲ったものですが、そういったものがプロトタイプの推奨株と抗原性や遺伝子配列が同等であると認められた株になっているということで、メーカーはこのリストを見ながら、株を選んでワクチンを作ることを決めているということです。
 9枚目と10枚目を御覧ください。こちらは厚生労働科学研究で廣田先生に研究代表者をお願いしている研究班でまとめていただいたもので、本研究の分担者は、この会議にも御出席いただいている福島先生と、他に大藤先生です。これも昨年の3月の部会で御紹介させていただいたものなのですが、一部御紹介できていなかった部分がございます。10枚目の5)を御覧ください。国内の製造スキームと海外の製造スキームについて、それぞれ長所と短所があるということでまとめていただきました。これを踏まえたメーカーからの要望がございまして、1つ目のポツですが、国内のメーカーからは、引き続き国内の統一株、現状のものがよいということです。3ポツ目ですが、外資メーカーからは、WHOが推奨する類似株の中から、メーカー側の任意選択がよいという要望です。ここまでで、国内外のスキームを比較したものをまとめさせていただきました。
 これを踏まえて、12枚目以降で、先生方から御意見を頂きたいことをまとめております。まず、グレーの枠で囲った部分は、この部会の下にあるインフルエンザの製造株を決める小委員会がありまして、そこで毎年提示している株の選定の考え方です。簡単に読み上げますと、WHOが推奨する株の中から、1つ目は有効性、2つ目は供給可能量といったものを踏まえた上で、それぞれの双方を考慮した有益性が最大になるように検討しているということで、この考え方を海外のワクチンに当てはめて考えるとどうなるかを整理しております。この点について、今回御意見を頂きたいと考えております。
 ①に記載しておりますが、期待される有効性の部分です。1つ目の矢羽ですが、今後流行が予測されるウイルス株を検討した上で、WHOがワクチンを製造するための推奨株若しくはその複数の類似株を示しておりますので、その中からワクチンの製造株が選ばれていれば、一定のワクチンの効果が期待できるものと考えております。一方で、ウイルス株については継代による抗原性の変異が生じることが知られている状況で、海外製のワクチンについても、WHOの推奨株や類似株と抗原性が変化していないことは確認したいと考えております。
 先に13枚目の説明を補足的にさせていただきますが、これは国内の4社が作っているワクチンのときに、感染研の先生にも協力を頂いて、どういったステップで抗原性が変化していないかを確認しているかを示したものです。6つほど箱がありますが、紫のものが現在流行している、または今後大きな流行が予測されるクレードということで、細胞分離株のものです。そこから、そのクレードの抗原性が反映されている鶏卵分離株がプロトタイプということになっております。ここの抗原性が保持されていることが重要ということになります。
 右側から青い矢印が1つ出ておりますが、WHOのリアソータントラボにおいて、ワクチンの推奨株と抗原性が類似しているワクチン候補株を作出となります。ここで、WHOのリアソータントラボにおいて、作成したワクチン候補株がワクチン推奨株と抗原性が類似しているかを確認しているということです。
 そういったWHOのリアソータントラボにおいて作成されたワクチン候補株を、海外から感染研が入手する場合についてです。入手したものについては、国内メーカーは4社ありますが、そちらに分与する前に、1代継代しておりますので、そこの段階でも抗原性が変化していないことを確認して、そこからメーカーにお渡ししていると。メーカーでも抗原性が変わっていないことをある程度確認されていると聞いております。
 このように、国内でワクチンを作るときに、WHOで推奨された株と抗原性が変わっていないかを確認しております。12枚目に戻りまして、海外製のワクチンについても、こういった形で抗原性が変わっていないことが最終的に担保されているのかということを確認する必要があると考えております。まとめますと、WHOで推奨された株であれば、ある程度効果があると考えられるのだけれども、その前提として、抗原性は変わっていないという考え方ではないかと考えております。
 ②を御覧ください。ワクチンの供給可能量についてです。海外のワクチンは、メーカーが製造する株を決めていますが、メーカーはかなりグローバルにワクチンを売っている企業ばかりですので、当然ですが、需要を賄えるほどのウイルスの増殖性があるかといったことは当然確認された上で株を決定していると考えますので、そういったものについて、日本でもう一度増殖性をわざわざ確認する必要はないのではないかと考えております。このような形で、まず製造株選定に当たって確認すべき事項として、国内と比べたときに、海外はこのような形で整理ができるのではないかという点について、御意見を頂きたいと考えております。
 14枚目を御覧ください。国内外の製造株の選定スキームです。上のほうは国内のものをメインで書いております。1つ目のポツですが、国内の既存のインフルエンザワクチンについては、感染研での検討を経て、厚労省で製造株を1つに決めているという状況です。こういうステップを踏んでいますので、通常であれば薬事で承認を取っているものの承認証の中に製造株が記載されていれば、それをいちいち変えるという作業が必要なのですが、そうではなくて、国が指定する株を使えばいいというように書いていますので、現状では薬事承認は不要となっております。
 また、2つ目のポツですが、現状のスキームを振り返ってみますと、4社でそれぞれワクチンを作られているのですが、感染研の御指導もございまして、メーカーの間で品質のばらつきは少なく、均質なワクチンが得られるという使う側のメリットもありますし、メーカーから見ると、国内の認可試験で使用する試薬といったものを作らなければ駄目なのですが、そういった点についても、4社で分担して対応できるという点で、作る側の負荷の軽減というメリットもあると伺っております。
 一方で、感染研で検討していただいて、厚労省の審議会を経て製造株を決めていますので、製造株が決まるのは例年4月の中下旬になっております。この4月中下旬という時期なのですが、製造株を決めるというステップを考えますと、海外から見ると、海外でたくさん作るというタイムラインに合っていない時期に製造株が決まるということもありまして、要するに日本のタイムラインに合っていない面があるということです。
 こういった状況がある中で、今後どうしていくかということを考えるときに、大枠の骨格として御意見を頂きたい点としてまとめたものが箱に書いてあるものです。1つ目のポツですが、国内のワクチンについては、現状のものをそのまま維持するというのが、1つ目のポイントです。
 2つ目のポイントとして、海外製のワクチンについては、前提はWHOの推奨株又は類似株の中から製造していることになりますが、この製造株の変更だけであっても、海外と同様に薬事申請してもらって、その中で感染研の先生にも御協力いただきまして、審査の中で抗原性の変化がないことを確認した上で、国内と同様に抗原性が変わっていないことを確認するというステップを踏んではどうかと考えております。
 そのようなステップを踏むということですが、12枚目にあった製造量の部分については、日本で確認する必要はないということであれば、わざわざワクチン製造株の小委員会で事前に厚労省が株を1つに指定する必要はないと考えておりまして、そのような形で海外の株というのは、海外のスキームを真似たものをそのまま日本に持ってきてはどうかと考えております。
 また、これまで説明の際に便宜上、「国内のワクチン」「海外のワクチン」と申し上げましたが、どちらのスキームを使うかというのは、今後メーカーが選択できるようにしてはどうかと考えております。どちらのスキームも同じものが得られるのであれば、国内だからこちら、海外だからこちらというように割り当てる必要もないと考えております。この点に御意見を頂ければと思いますので、よろしくお願いします。
 最後に15枚目を御覧ください。今後の進め方についてです。本日御意見を頂きまして、どのような形になるかですが、もし御賛同を得られて、この方向で大きな異論はないということであれば、もう少し検討を進めていきたいと考えております。具体的には、製造株の変更に伴って、薬事審査をするということですと、薬事の当局と、感染研の先生方と、申請資料とかスケジュールといったものを調整する必要がありますし、審査と関係なくですが、国家検定も必要になりますので、そういった部分についても、感染研の先生方や薬事の当局と調整させていただきたいと考えております。そういったものの調整が終わりましたら、4枚目、5枚目のような形で、これが日本の第2のスキームという形で御提出させていただければと考えております。資料1は以上になります。
○伊藤部会長 今、御説明いただいたことの基になったのが、福島先生が分担研究者をされている「インフルエンザワクチン株選定の在り方」ということなのですが、福島先生から説明の補足などございますでしょうか。
○福島委員 お気遣いいただきまして、ありがとうございます。当時、研究代表者の廣田良夫先生の下で、研究分担者の1人として報告書をまとめさせていただきました。本日の審議会に御参加の委員、あるいは参考人の先生の中で、報告書の作成にあたり御意見を直接お聞かせいただいた先生が数人いらっしゃいます。当時は本当にありがとうございました。私も膨大な情報とともに、株選定のスキーム、あるいは国内の株選定に潜在する課題であるとか、今後に向けた課題とか、本当にたくさん勉強させていただきました。
 私からの追加は特にないのですが、今回の報告書で、メーカーさんからの要望(まとめ)という当時の所を引用していただきまして、ありがとうございます。この報告書は3年前に作成したものですので、コロナ禍を経て、かなり状況も変わっていると思います。また事務局のほうで確認をされると思うのですが、今、改めてどのように思われているかをお聞きいただければと思いました。
 その上で、御提示いただいた14枚目のスライドですが、当時の各メーカーさんの御要望をおおむね反映させた上で、海外製ワクチンの製造株については抗原性の変化があるかどうか、変化がある場合は許容範囲かどうかを感染研の先生方に確認いただけるということで、非常に有り難いと感謝申し上げます。どこまで事務局と調整が進んでいるのか分からないのですけれども、抗原性の変化の評価に当たっての御負担ですとか、要する時間などを、本日、可能な範囲でお聞かせいただければと思いました。以上です。
○伊藤部会長 事務局から説明をお願いいたします。
○稲角ワクチン開発専門官 科研費で作成していただいた報告書の作成は3年前なので、現状についても確認してほしいということでした。関係企業とは、こういった方向でどうかということは意見交換をしながら話を進めさせていただいております。反対の御意見は頂いていない状況です。
 抗原性の変化の確認にどれぐらいの負担がかかるかについては、実際に試験をするのか、若しくは海外で実施された試験の結果の書面を確認するのかで変わってくる部分はあると思いますが、できれば書面のほうでやりたいと我々としては思っております。感染研の先生方から補足があればよろしくお願いいたします。
○伊藤部会長 感染研の先生方からいかがでしょうか。
○浅沼参考人 抗原性の変化の確認については、基本的には書面での審査ができればというように考えております。試験が必要になる状況になりましたら、また改めて相談ということになると思います。
○伊藤部会長 今回のスキームは難しいところがあって、今まで国内で使われている鶏卵培養のワクチンに関しては、国のほうで株を決めて分与して、製造していただいていたと思います。それを今回から、WHOが決めた株に関しては、海外のメーカーが作る鶏卵培養のワクチンで、日本に持ってきて承認申請するものについては申請の審査過程の中で評価をして、日本で販売ができるようになるというものです。ある意味では黒船なのか、今後のインフルエンザワクチンの製造の蟻の一穴になるのかは、多少難しいところがあります。関係方面の方々にあらかじめ御意見を聞いた上で、そういう枠組みであればということで提案されていると認識していますが、実際にワクチンの検定をされている方も、この中にいらっしゃいますし、そういう皆さんの御納得が得られていることが前提でないと、先にいかないと思っております。御意見はございますでしょうか。
 特にありませんか。日本医師会としての今後の対応についてですが、今までは国内のワクチンだけであったのが海外からも入ってくる、そのときは株についてはWHOが決めた株が承認申請の過程で入ってくるので、今までのように、国内で使われているワクチンが1種類だけではない状況になるということだと認識しますが、それについては特に問題がないということで整理させていただいてよろしいでしょうか。
○釜萢委員 本日の議論の中では、まず、海外から鶏卵ワクチンが新たに入ってくる可能性について、まずは検討するという伊藤先生からのお話でしたが、場合によっては、鶏卵ワクチン以外のワクチンも輸入されるという事態も想定されるかと思います。それで、なるべく多くの国民に適切なワクチンが提供されることは必要なのですが、これまでは国内で生産できた量と接種量は、生産量がある程度少なかった場合には、それに見合っただけの接種が行われるということで、希望しても受けられない方もあったわけですが、今後、仮にたくさんのワクチンが輸入されるということになると、今申し上げているのは鶏卵ワクチンについてですが、もっと多くの方が接種を受ける機会が増える可能性もあるということかなと思います。その場合に、感染研の手を煩わせるわけですが、株についての評価がなされた上で、我が国でも打てるようになれば、それはそれでよいのではないかと感じております。
 一方、更にいろいろな製造方法の違うもの、例えばmRNAのワクチンが入ってくるというようなことになると、価格の問題とか効果の確認ということが大分異なってくると思うので、その点については更に別の検討が必要かなと思います。
 ですから、今御説明いただいた鶏卵を用いたワクチンの製造株が、我が国で作られたものと異なるものがWHOの基準には合致するということですけれども、違う株のワクチンが入ってくるということはこれまで経験がないので、その辺りについては本日、ほかの先生方からもいろいろと御意見を伺いたいと思っております。私からは以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございました。ほかに御意見などはありませんか。特に感染研で今まで従事されていた方、それから従前から鶏卵培養の場合には鶏卵馴化などの問題もあって、今回の場合は鶏卵培養を前提にしていますので、鶏卵馴化の話は余り関係がないのかもしれませんが、そういった観点からも、新たなワクチンの株が入ってくるという状況を今後は認めていくということで、今まで感染研の方々にも仕事をたくさんしていただいて、選定についても御努力いただいたところが、ある意味ではそういう決定の部分が全部だったものが、一部というか縮小する形になることも含めて承知されているということで皆さんの意見の取りまとめをすることになるのですが、それでよろしいでしょうか。特に御意見がなければ、そういう取りまとめをさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 信澤先生、御意見はありませんか。
○信澤委員 特に反対するつもりはないのですが、ちょっと確認をさせていただきたいのは、14ページの御意見いただきたい点で、先ほど福島先生も触れられました、薬事審査の中で抗原性の変化の有無などの必要な情報を感染研で確認するということですが、海外のメーカーとしては今の日本の決定プロセスだと時間的に間に合わないので、4月中下旬では遅過ぎるということで、恐らくWHOの会議直後ぐらいには承認をしてほしいということになるのかと推測しているのですが、その辺りは大丈夫なのでしょうか。
○伊藤部会長 事務局から説明をお願いいたします。
○稲角ワクチン開発専門官 事務局です。資料の15枚目にも記載していますが、承認申請の資料やスケジュールについては、これから整理をさせていただきたい部分があります。実務的にできる部分、できない部分などがありますし、毎年秋に出荷をして冬の前までに使っていただくというワクチンになりますので、普通の医薬品とタイムスパンや扱いが変わる部分をどこまで実務的に落とし込めるかは、感染研の先生方や薬事の担当部局と相談をさせていただきたいと考えています。
○信澤委員 ありがとうございます。それともう1点だけ、確認させていただきたいのですが、審議会には改めて議論していただく必要は低いということで、その議論の必要はないと思いますが、確認した結果というのはどこかで報告のようなことはされるのでしょうか。
○稲角ワクチン開発専門官 事務局です。現在、想定していることとしては、毎年8月ぐらいにその年のインフルエンザワクチンの供給量をお示しするものを開いていますので、これまでも御提示をしているのですが、その場では少なくとも製造株を資料として提示させていただきたいと考えています。必要であれば、通知の中に盛り込めるかどうかも含めて考えさせていただきたいと思います。
○信澤委員 ありがとうございます。
○釜萢委員 伊藤先生、釜萢ですが、輸入量の予測はなかなかできないのだろうと思いますが、国内での生産量と輸入とどういうふうに現時点で予測するのか。そして、国内での生産分については、これまでと同様に感染研で株を製造メーカーに分与するということは、変わりなくやるわけなのでしょうから、その辺りの状況がどうなのかを、もう一度確認をしたいと思います。いかがでしょう。
○稲角ワクチン開発専門官 釜萢先生、ありがとうございます。事務局です。まず製造量の部分ですが、メーカーさんと予防接種担当参事官室と意見交換をさせていただきまして、我々も需要予測はなかなか難しい面がありますが、例えばコロナがはやったときでは需要が高まるところがあるだろうということで、できるだけたくさん作っていただいたケースもあります。3価のワクチンであった時代に、製造量に余裕があったときについては余り細かいことは多分、申し上げなかっただろうと思います。今後、どのような形になるかについては、承認されてくる海外のワクチンの対象年齢、若しくは過去の年度でどれくらい使用されているか、そういったものを確認しながらメーカーさんの作れる能力など、そういったものを含めて御相談になると思います。
 また、海外のメーカーさんでは日本の割当量というものをかなり早い時期に決めないと、トータルの製造量が決められないと思いますので、日本の当局と話をする前にもしかしたらある程度の割当量を決めてしまうかもしれないと思います。その部分について、相談があればメーカーさんと意見交換することはあると思いますが、我々もちょっと決め手がないというのが正直なところではあります。ただ、なるべく多くの方に、ワクチンを希望される方に打っていただく量を準備するという考え方は基本で、御相談をさせていただきたいと考えています。以上です。
○伊藤部会長 石井先生、どうぞ。
○石井委員 今の釜萢先生の御質問にも絡むのですが、海外のワクチンの場合、5枚目のスライドを見ますと、かなり早く供給が可能になるのではないかと思います。国内のワクチンの場合は、早くても9月から市場に供給になるのですが、海外の場合はこのスキームでは早ければ7月ぐらいから供給が可能になるような気がするのです。つまり、海外のワクチンが先にかなり多量に入ってきてしまって、国内ワクチンが余り使用されない、そういうことにはならないのか。市場への供給のタイミングというのはどのようにお考えなのかをちょっとお伺いしたいのですが。
○稲角ワクチン開発専門官 事務局です。石井先生から御指摘を頂きました5枚目の部分については、あくまで海外の状況をお示しをさせていただいたものになります。繰り返しにはなるのですが、検定のスケジュールも薬事審査の承認のスケジュールに引っ張られる部分もありますし、実際に感染研の先生方に検定の作業をしていただく時間も必要になりますので、そういったものを見ながら、どういった形で出荷時期が前後するかという見通せない部分はあるのですが、正直なことを申し上げますと、余り差が付かないような形にしかならないのではないかと思っています。海外のものを早く出したいなどそういうことではなくて、来たものをちゃんと順次検定をしていただくなど、国内のものを先に出したいなどそういうことではないと思いますので、それぞれの関係者に時間をなるべくたくさん使いたいと思いますので、結論としてはそんなに変わらない時期になるのではないかなと思っています。
○石井委員 どうもありがとうございます。
○伊藤部会長 釜萢先生、どうぞ。
○釜萢委員 なかなか需要の予測というのは難しいと思いますが、一方で実際にインフルエンザのワクチンを実質的には大体10月初めから打ち始めていますが、実際に打つ可能量もある程度決まっていて、昨年からのシーズンを考えるとコロナのワクチンも対応しなければならない中で、インフルエンザへの対応時間というか対応可能量が各医療機関で減ってしまったと思います。ですから、その辺りのところも今後どういうふうにしていったらよいか。コロナのワクチンを1日100万回接種するという目標の下に、実際にはもっと多く打った時期もあるのですが、毎年インフルエンザに対して集団接種の会場などもつくって一斉に実施というのは無理だと思います。インフルエンザについては基本的には従来の個別接種のやり方を継続していくことになると予想すれば、そんなに接種可能量が増えるとはちょっと考えにくいので、果たしてそんなに輸入量を増やさなければ需要に追い付けないというほど、需要も増えるのだろうかなというところは、ちょっとお話を伺っていて疑問に感じました。なかなかこの辺りは見通しが立たないとは思うのですが、事務局としては接種のトータルの量をどのくらいと見込んでいるのか、可能な範囲で教えてください。
○伊藤部会長 荒戸先生、ちょっと待ってくださいね。事務局から。
○稲角ワクチン開発専門官 事務局です。ありがとうございます。インフルエンザワクチンの接種の量をどのくらい見込んでいるかということで御質問いただきました。正直なことを言いますと、コロナが始まって、かなり状況が変わってしまった面があり、令和2年度、2020年度を見ますとワクチンの使用量もかなり高まって需要が旺盛でしたし、ワクチンの接種もかなり、それぞれの医療機関で御対応いただけたのではないかと思っています。このときの使用量が3,000万本以上ありましたので、打った回数で言いますと、6,000万回分以上は接種されていると思います。そういったものを見ますと、一番ピークのときは6,000万回を超える数をインフルで接種をしていただいたと思いますが、一方で先ほど釜萢先生からありましたが、コロナのワクチンがきて、その対応が結構大変だということになりますと、ちょっとその部分の対応面ということもあります。今年の出荷量なども見ていますと、やはり3,000万本弱ぐらいはそれでも今年に出荷をされているという状況ですので、そういったものを踏まえますと、年間3,000万本ぐらい、回数で換算すると6,000万回分ぐらいは接種されることは続くのかなとは思いますが、一方でなかなかこれでいいですという根拠もないような状況です。以上です。
○釜萢委員 どうもありがとうございます。これは私の肌感覚に過ぎないのですが、インフエンザのワクチンの需要が、例えば4,000万本や5,000万本が必要になるという事態はちょっと考えにくいなと思っていて、国内での生産でこんなに不足するのだろうかなとも思います。ですから、海外から入ってくるのを止めなくてはいけないという事態ではないけれども、その辺りのことは余り混乱をさせないような行政の指導なり、あるいは調節が必要ではないかなと感じました。いろいろ長くしゃべってごめんなさい。以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございます。荒戸先生、どうぞ。
○荒戸委員 別の質問になりますが、よろしいですか。1点、確認させていただきたいのですが、6ページにありましたとおり、欧米では株変更に伴う薬事申請をしているということですが、その内容というのは抗原性の違いだけなのでしょうか。違う株でもちゃんと製造できることを示すといったような、別の検討内容も入っているのかどうか教えていただきたいことと、それに伴って国内で、株変更の際に、どのようなことを求めていくことになるのか。これは少し部署が違ってくるのかと思いますが、どのように進めていくのかを教えていただきたく思います。
○伊藤部会長 板村先生、御質問をお願いできますか。
○板村参考人 先ほどの需給の件で、質問というかコメントですが、大丈夫ですか。
○伊藤部会長 まず、お話いただいて、それから事務局から回答していただきます。
○板村参考人 先ほど供給量の問題でディスカッションがありましたが、今後、輸入が予定されているワクチンは必ずしも現状の国内のワクチンと全く同一ではなくて、1つは今、承認申請されているもので言いますと、いわゆる経鼻の生ワクチン、作るのは卵なのですが、基本的には2歳以上19歳未満がターゲットになっていたりしますし、高用量のワクチンなどで言いますと、恐らく高齢者をターゲットにしたワクチンになると思います。単純に鶏卵由来ではありますが、全く現行のワクチンと同質というわけではないので、それぞれ需給の規模で言うと、そういったところも含めて今後、考えていただく必要があるのかなと思ったので、ちょっとコメントさせていただきました。以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございます。では事務局から、荒戸先生の御質問に答えていただけますか。
○稲角ワクチン開発専門官 先生、ありがとうございました。2点、御質問を頂きましたが、まず1点目は海外で別の株についても情報が必要なのかという趣旨の御質問だったのかなと思います。基本的には海外のものについても、参考をいろいろ調べましたが、製造に使う株についての変更申請と認識をしています。海外の状況を見ますと、新しい株の継代レベルや原材料の管理の状況などの情報など、若しくは珍しいというか、普通の医薬品と違いまして、安定性の実データがなかなかないので、前シーズンの安定性のデータを出してもらったり、あとは引き続き安定性の試験の結果を出していきますというコミットメントをやってもらったりなど、そういった情報をEUでは出しているとは伺っています。
 また、国内のものについて、株変更で何か変える必要があるのかという御質問も頂きましたが、その面についてはこちらとしては現状、今のものを余り変える必要はないのかなという形で御提案をさせていただいている状況です。これでよろしいでしょうか。
○荒戸委員 ありがとうございます。2点目は、私の質問の仕方がよくなかったのかもしれないのですが、国内のものを変えるということではなく、欧米産のワクチンを国内に導入したときの株変更の審査内容について、海外と変わってくるのかどうか、どういう立て付けなのかといった趣旨で質問させていただいたのですが。
○稲角ワクチン開発専門官 すみません、失礼しました。私の認識が間違っていました。海外のメーカーさんが国内で変更申請するときの審査内容について、海外の申請資料の一覧や例を提供いただいたりはしていますので、そういったものを見ながら、今、相談をしているところにはなります。ただ、個別に見るものはたくさんかというと、そんなにはないかなという気はしていますが、その部分も薬事の当局とちょっと御相談をさせていただければなと考えています。
○荒戸委員 分かりました。是非、よろしくお願いいたします。
○伊藤部会長 今、板村先生からお話がありましたように、今回の海外から導入されるものは経鼻のワクチンや高用量、多分、4倍量ぐらいの高齢者を対象にしたワクチンの国内への導入に当たって、海外の株選定の形、WHOの株選定を導入してくるということで、従来から行われていました感染研なり小委員会で決めた株選定以外のものが導入される状況になるという認識です。ですから、今のお話からいうと、皮下接種以外の別の形のものが上乗せで付いてくることが将来的な予測ということでいいのですよね。事務局に一応、確認をさせていただきますが。
○稲角ワクチン開発専門官 皮下接種のものが入ってくるというのは、どう理解をすれば。
○伊藤部会長 今の1回当たり1価15μgというもの以外のものが入ってくるということですね。可能性としてはあるということの最初の議論ということですね。
○稲角ワクチン開発専門官 昨年の3月に提出させていただいた資料にも記載をしましたが、国内で開発が進んでいる海外オリジンのワクチンについては、先ほど板村先生からもありましたように、経鼻のワクチンや高用量のワクチンということで、国内と全く同じものではない状況です。
○伊藤部会長 そういう意味でワクチンの種類が少し違うので、適用する方々や、適用する範囲がもしかすると少し違うかもしれないという状況の中で、まず株の選定に当たっての内外の差がなくなるというか、外部から導入するに当たっての障壁が、彼らからするとなくなっていくということに関する会議だと思っていますが、釜萢先生も十分御理解をされた上で、この議論に参加されていると思っていますが、以上ということでよろしいですか。
○釜萢委員 それは分かっていますが、ただ、国内で生産されるのと同様のワクチンが入って、同様のドーズで、皮下の変わらないものが入ってくるという可能性も、申請は今、出てはいませんが、そういうこともあり得るのではないかなと思います。それから、先ほど申し上げましたmRNAのワクチンなどはどうなるのかなというところも、今後の考えておくべきテーマではないかなと思います。今、申請が出て直近で問題になるのは、経鼻のものとドーズの違うもの、どちらかというと違うワクチンが入ってくるわけですが、現在、国内で使われているものとほぼ同様のワクチンが入ってくるという事態もあり得るのではないかと思って、発言をしていました。
○伊藤部会長 ありがとうございます。もちろんそのとおりなのですが、一応、そういう状況で、今回はmRNAワクチンや鶏卵以外のものに関しては、まだ別のところできちんと議論をすることが前提で、鶏卵培養由来のものが今日の議論だと認識しています。信澤先生、どうぞ。
○信澤委員 私も今の釜萢先生の御意見は大変重要だと思います。以前この会議でも意見を述べさせていただきましたが、接種できるワクチンの種類が増えることは打たれる側にとってはいいことだと思いますが、そのために日本の国産のワクチン、あるいは国内メーカーが疲弊するようなことがあってはいけないので、ワクチンの種類を増やすと同時に、国内メーカーがある程度存続できるというと、ちょっと大袈裟かもしれませんが、その辺も考慮した上で対応していただきたいと思います。以上です。
○伊藤部会長 信澤先生の御意見は承りました。ほかに御意見などはありませんか。一応、今、事務局から説明があったように、鶏卵培養の株選定についての枠組みが増える。今後、鶏卵培養ではあっても、別の種類のモダリティのワクチンが導入される可能性があるということが前提での今日の議論ということで御意見を承りましたが、多くの方々の賛同が得られ、このことについて上部の委員会に持ち上げていくということでよろしいですか。ありがとうございます。それでは、そういう対応にさせていただきます。ありがとうございました。
 では、引き続きまして、議題の2に移っていきますが、渡邉参考人、浅沼参考人、板村参考人におかれましては、御退席をしていただいても結構です。他の参考人におかれましても御都合があるようでしたら、適宜、御対応いただければと思います。以上です。ありがとうございました。
 引き続いて議題2、その他ですが、資料が3つ準備されていますから、事務局から御説明をお願いいたします。
○原田予防接種担当参事官室室長補佐 事務局です。よろしくお願いいたします。資料2についてまず最初に御説明をいたします。資料2の1ページを御覧ください。昨年12月9日、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律が公布されてございます。同法によりまして、予防接種法も改正を行いました。本日はその改正概要について、資料2を用いまして御報告申し上げます。
 初めに改正概要です。1ページの(1)の臨時接種の類型の見直し等については記載のとおり、疾病のまん延予防上緊急の必要がある場合において、厚生労働大臣が都道府県知事又は市町村に指示をして臨時接種を行う類型を設けることとしました。また、国民の生命・健康に重大な影響を与える疾病に係る臨時接種の費用負担については全額国費とするなどの改正を行います。こちらの規定は公布日と同日、昨年の12月9日より既に施行されてございます。
 次に、(2)予防接種事務のデジタル化等についてです。大きくオンライン対象者資格確認の導入及び予防接種データベースの整備による予防接種の有効性及び安全性の向上を図るための調査・研究を行うための規定を整備することとしております。こちらは、公布の日から起算して3年6か月を超えない範囲内で政令で定める日に施行予定をしております。
 2ページ以降を御説明いたします。2ページ以降は改正の詳細となります。まず2ページについてですが、予防接種法第6条に規定する臨時接種類型について、次の感染症危機に備えて様々な感染症を想定して、疾病のまん延予防上の緊急の必要がある場合において機動的なワクチンの接種を可能とすることを目的として、接種の実施に当たっての指示体系や接種主体等を改めて整理しまして、3種類の類型に整理したところです。
 具体的には改正後を御覧いただければと思いますが、改正後の第6条第1項については、都道府県知事が対象者等を指定して自ら又は市町村長に指示をして予防接種を行う類型とさせていただいております。第6条第2項については、厚生労働大臣が対象者などを指定して都道府県知事又は市町村長に指示をして予防接種を行う類型とします。第6条の第3項については、A類疾病のうち、全国的かつ急速なまん延によって国民の生命・健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病が発生した場合に厚生労働大臣が対象者を指定して都道府県知事又は市町村長に指示をし、予防接種を行う類型としております。この第6条第3項については、この場合の費用負担は全額国費で行うことができるとさせていただいております。
 なお、新型コロナワクチンの特例臨時接種の根拠規定である予防接種法附則第7条というものがございましたが、こちらは特例の規定でございまして、今般の法改正に伴い廃止をいたしました。しかしながら、改正法の附則の経過措置規定を設けまして、特例臨時接種については、引き続き第6条第3項の接種とみなして継続して実施するというような法体系と整理しております。以上が類型の見直しの御説明です。
続きまして3ページを御覧ください。こちらは、予防接種事務のデジタル化等についてです。まず、現状の①について御説明いたします。これまで、予防接種事務というのは自治体が紙の予診票や接種券を接種対象者に送付いたしまして、医療機関は費用請求のため紙の予診票、請求書を市町村に送付し、市町村は送付された予診票をもとに台帳に手打ちで入力するという事務を行っており、主に紙で事務を行っていたところです。
 こうした事務を効率化するために、右側の改正後①ですが、医療機関が個人番号カードを用いてオンライン資格確認を実施する、といったシステムなどを導入し、予防接種の事務を全体的にデジタル化いたします。オンライン資格対象者確認、オンライン費用請求というものも併せてできるようにシステムを改変し、自治体や医療機関の費用請求、支払事務についてオンラインでできるようにするなどの効率化を図ることとしたいと思っております。そのための法律の規定を今般整備したところです。
 続きまして、現状の②です。予防接種の有効性・安全性に関する調査・研究についてですが、これまで厚生労働省が自治体の実施する予防接種の状況、こちらは自治体のほうでしか把握しておらず、厚生労働省が接種対象者の接種の有無などを把握することができない状況にございました。また、予防接種の有効性・安全性に関する調査のための情報基盤もなかったところです。
 このため、改正後の②ですが、自治体は予防接種の実施状況について厚生労働大臣に報告しなければならないという規定を設けまして、この報告により実施状況を把握することとしたいと思います。さらに、この実施状況や併せて副反応疑い報告の情報に関しても、匿名化をした上で新たに作る予防接種データベースに格納をし、NDBなどの他のデータベースとの連結も可能にすることで、予防接種の有効性・安全性に関する調査・研究の充実を図っていきたいと考えております。
 今、3ページの御説明をしましたが、4ページについては、今申し上げたデジタル化、データベース整備に係るシステムやネットワークのイメージです。御参考ですが、こうしたシステム構成については関係機関が多いものですから、現在、関係機関との調整を行っているところです。3ページ目で申し上げた事務を実現すべく、今こういったシステムの新設や改修について準備を進めているところです。取り急ぎ以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございます。予防接種法が昨年12月に改正となって、今行われている新型コロナワクチンの類型がきちんと法体系の中に入ってきていますが、現行をそのまま踏襲されているということです。ただ、新型コロナワクチンが突発的なものではなくてちゃんとした法体系の中に入れられたという説明と、それから、資料3がデジタル化についての話で、前からも出ていた話だと思いますが、それについてよりその精緻な形で、特にマイナンバーカードとつながる形で、将来的に保険証がマイナンバーカードと一緒になれば、初めてそれを通じて予防接種歴と診療歴がつながって研究ができるような形になるという説明だったと思います。その点について何か御質問はございますでしょうか。
○細矢委員 申し訳ないです、いいですか。質問だったのですけれども。デジタル化の所で、1つが、今までは紙の予診票だったのですけれども、これもデジタル化されるという方向で考えられているということですか。
○原田予防接種担当参事官室室長補佐 事務局です。おっしゃるとおり予診票については、オンラインで入力していただきそちらを使う方向で検討しております。スマートフォンやパソコンで入力するようなイメージです。
○細矢委員 もう1点が4ページの右側で、予防接種データベースとNDBのデータベースを連結と書いてあるのですけれども、この連結そのものは匿名化されているのか、それともちゃんと個人がひも付けされて連結という意味なのか、ちょっとよく分からなかったので、そこを教えていただきたいと思います。
○原田予防接種担当参事官室室長補佐 匿名化をしておりますが、連結可能なIDを、NDBやこちらの予防接種データベースと共通するようなIDを振り出して、名前等個人を特定できるような情報はないものの、NDBに入っているレセプト情報のAさんの情報と我々のデータベースに入っているAさんの情報を連結できるような形でデータベースを構築するというふうに考えております。
○細矢委員 それから、4ページの一番右側に、大学とか研究機関等には匿名の情報が提供されると書いてあるのですが、これは連結されるということはないのですか。
○原田予防接種担当参事官室室長補佐 こちらも連結した状態でお渡しすることを可能にするように調整したいと考えております。
○細矢委員 ありがとうございます。
○伊藤部会長 ほかに御質問ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。釜萢先生。
○釜萢委員 資料2の(2)予防接種事業のデジタル化等というのが、公布の日から起算して3年6月を超えない範囲において政令で定める日として、公布は昨年の12月ですから3年6月以内に今お示しになったような状況、その間にこれを実現するということなのだろうと思いますが、ちょっとそこの確認をしてください。
○原田予防接種担当参事官室室長補佐 おっしゃるとおりで、3年6か月以内の定める日までにこういったシステムを全て整備した上で実現をしていきたいと考えております。
○釜萢委員 はい、承知いたしました。ありがとうございます。
○伊藤部会長 ほかにございますでしょうか。では、引き続きまして資料3、4を、まず事務局から説明をしていただいて、それから御質問を受けたいと思います。よろしくお願いします。
○稲角ワクチン開発専門官 資料3を御覧ください。新型コロナワクチンの自治体等への供給についてという資料です。こちらは、生産・流通部会でも、流通を冠する部会ですのに新型コロナワクチンの供給について余り現状報告はできておりませんでしたので、御準備をさせていただいた資料です。
 2枚目を御覧ください。新型コロナウイルスワクチンの接種の関係でそれぞれ国・都道府県、市町村の役割分担を示したものです。国は主導的役割、都道府県は広域的視点でいろいろな調整をお願いして、市町村が接種の実施主体となっております。ワクチンの接種という面で見たときの供給などは、赤枠で囲った部分ですが、ワクチンの確保、ワクチンの流通の委託は国が実施して、都道府県は地域の卸売業者さんと調整をしていただくとか、そういったことをお願いして、これまでワクチンの供給を進めております。
 3枚目ですけれども、国から医療機関へのワクチンの配送の実際の流れで、代表的なものとしてファイザー社のワクチンとモデルナ社のワクチンのものをお示ししております。両方とも海外で製造されているワクチンになりますので、いずれも輸入されて国内の倉庫に一旦入った後は、それぞれ医療機関ですとか接種会場、そういった所に配送されます。ファイザー社のワクチンは国内倉庫から配送業者さんが直接医療機関等へ配送している一方で、モデルナ社のワクチンは地域担当卸という形で地域独占という特別対応という形になっておりますけれども、地域担当卸さんが医療機関等へ配送しているという状況です。
 それぞれ配送することを考えますと、どの医療機関にどれだけのワクチンをいつ必要なのだということがちゃんと関係者の間で情報共有できていないと駄目ですので、4枚目にございますV-SYSと呼ばれているワクチン接種円滑化システムで関係者が情報を共有してワクチンの配送を進めているという状況です。その情報の一部は国民の皆様にも一部公表させていただいています。
 5枚目、6枚目のスライドは、昨年までに承認されている新型コロナワクチンの一覧的なものになります。それぞれ対象者が非常に多かったということもございまして、1バイアルの単位の部分、若しくは最小流通単位の部分が赤字になっておりますけれども、1バイアルもかなりのマルチドーズが入っておりますし、最終流通単位もかなりの量になっています。この部分は普通の定期接種とは違った形かなと思います。
 最後ですけれども、ワクチンの接種実績等もこのような形で官邸のページで公表されております。また、自治体へのワクチンの配送量につきましては、グレーの掛かった文字の書いてある2つ目のポツにございますけれども、厚生労働省のウェブサイトでも随時公表しておりまして、こちらでそれぞれいつぐらいの時期に、どれだけのワクチンを、どの会社のワクチンを送ったかというのが分かる形で、情報公開もしているという状況です。簡単になりますが、資料3は以上です。
○武内感染症医薬品対策専門官 では、続きまして資料4の説明をさせていただきます。資料4を御覧ください。タイトルとしては、「令和4年度『ワクチン・新規モダリティ研究開発事業(一般公募)』の採択課題について」です。こちらについてはSCARDAの現状を御報告申し上げるものになります。
 これまでの当部会におきましても、御報告をたびたびさせていただいていますけれども、国立研究開発法人日本医療研究開発機構においてSCARDAが立ち上がりまして、SCARDAにおいてこちらの『ワクチン・新規モダリティ研究開発事業(一般公募)』の公募を行ってまいりました。
 スライド2枚目を御覧ください。真ん中の表ですけれども、こちらの事業は令和4年6月、まず第1回目の公募を行い、申請のあった課題より採択を行い、2課題採択させていただいたところです。その後、令和4年度秋口に第2回目の公募を行い、その結果12月に、下の表で示しましたように、3つの課題が採択されました。採択したものに関しましては、1つ目が麻疹ウイルスベクターを用いたニパウイルス感染症ワクチンの開発ということで、東京大学の甲斐先生の研究課題です。2つ目は痘そうワクチンの製法近代化に関する研究ということで、KMバイオロジクス株式会社の研究課題を採択しております。3つ目としましては弱毒生4価デングワクチンの開発ということで、こちらも同じくKMバイオロジクス社の研究課題が採択されています。内容としては以上です。
 次回以降になるかとは思うのですけれども、これまでの部会でも御提案いただいていますとおり、各研究開発課題に関しまして、どういったワクチンが今後開発されるのかイメージしにくいとのご意見があったことを踏まえ、何かしらポンチ絵といいますか、イメージできるようなものを準備し、御報告させていただきたいと思っております。準備でき次第、こちらの部会でも報告させていただきたいと思います。以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございました。以上2点について、新型コロナワクチンの自治体への供給とSCARDAの状況についてですが、御質問ございますでしょうか。両方とも公開はされていると思っていますが、引き続きSCARDAについては、ラインリストではなくて詳細なものが分かるようにお願いして、皆さんに御覧いただけるようにしようと思います。細矢先生、どうぞ。
○細矢委員 細矢です。V-SYSについてちょっとお聞きしたいのですけれども、かなり費用が掛かったのではないかと聞いています。臨時接種ということもあったと思うのですけれども、これを使うことによってうまく供給体制ができたのかどうかという検証のようなものがなされているかどうか、お聞きします。
○稲角ワクチン開発専門官 事務局です。V-SYSについて御質問いただきましたが、現状このシステムがあって、特に行政側と言いますか我々は非常にどの施設というのがユニークに分かりまして、過去の履歴も含めてかなり便利に使わせていただいている状況です。一方で自治体や現場からちょっと使いにくいといった声も聞いてはおるのですけれども、管理という面では我々としては非常に助かっているシステムだと考えてございます。検証の部分ですけれども、現時点で何かやっているという状況ではございませんが、何ができるか検討させていただきたいと考えております。以上です。
○細矢委員 大変いいシステムというか、供給の面ではいいのではないかと思います。例えば、このまま直接は無理だと思うのですけれども、定期のワクチンについてこういった供給体制を作れないか。今までいつもショーテージを来して問題になっていますので、費用対効果というのもあるかもしれませんけれども、そういった検討もされてもいいのかなと思いました。以上です。
○伊藤部会長 ありがとうございました。福島先生、どうぞ。
○福島委員 ありがとうございます。これに直接関係するところではないのですけれども、流通というところで1年前ですか、ワクチンの流通情報の基盤整備に向けた検討会というのがございまして、流通の偏在等を見える化していこうという報告書が提出されました。私の他、釜萢先生も検討会の構成員でいらっしゃったわけですけれども、今、細矢先生が言われましたV-SYSの検証というところで思い出しました。当時の検討会で一定の結論が出たシステムが、今どのような状況になっているのかということと、その結果は今回、AMED、SCARDAの報告等もございましたけれども、こういうような形で提示していただけるのでしょうか。関連質問で申し訳ないです。 
○稲角ワクチン開発専門官 ありがとうございます。昨年、この部会でも御報告させていただきました基盤整備事業の関係ですけれども、引き続き検討を進めておりますので、御相談させていただければという状況です。すみません、以上です。
○伊藤部会長 ほかにございますでしょうか。生産・流通部会ですので、こういったことに関しては、この部会を通じて国民の方々に知っていただく良いチャネルだと思っておりますので、できるだけの情報の提供をさせていただきたいと思っております。ほかに御質問等ございますでしょうか。では、事務局から最後の話をさせていただきます。 
○萩森予防接種担当参事官室室長補佐 事務局です。本日も様々な御意見を頂きましてありがとうございました。次回の開催については追って御連絡させていただきますので、引き続き御協力のほどよろしくお願いいたします。以上です。
○伊藤部会長 それでは、本日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を終了いたします。本日はどうもありがとうございました。