2022年12月27日 第187回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年12月27日(火) 9:00~10:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

公益代表委員
荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、藤村委員、水島委員、両角委員
労働者代表委員
大崎委員、川野委員、北野委員、櫻田委員、東矢委員、冨髙委員、西尾委員、世永委員
使用者代表委員
池田委員、鬼村委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、鳥澤委員、兵藤委員、山内委員
事務局
鈴木労働基準局長、青山審議官(労働条件政策、賃金担当)、古舘総務課長、松原労働条件政策課長、吉村労働関係法課長、益原労働関係法専門官、木原労働条件政策課課長補佐、田邉労働関係法課総括調整官、小川労働関係法課課長補佐、長澤労働条件企画専門官

議題

労働契約制度及び労働時間制度について

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第187回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 年の瀬も迫った時期に御参集いただきまして、ありがとうございます。
 本日の分科会も、会場での御参加とオンラインでの御参加双方で実施してまいります。
 議事に入ります前に、本分科会委員の交代について、事務局から御説明をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。
 本分科会委員の交代につきまして、御報告いたします。
 労働者代表の八野正一委員が退任され、新たにUAゼンセン副書記長の西尾多聞委員に就任いただきました。
○西尾委員 西尾です。
 よろしくお願いいたします。
○労働条件企画専門官 なお、お手元の参考資料No.1として「労働条件分科会委員名簿」を配付しておりますので、あわせて御参照ください。
 事務局からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 本日の委員の出欠状況でありますが、公益代表の佐藤厚委員が欠席と承っております。
 それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いします。
(カメラ退室)
○荒木分科会長 本日の議事に入りたいと思います。
 本日の議題は「労働契約制度及び労働時間制度について」です。
 事務局から説明をお願いいたします。
○労働関係法課課長補佐 事務局です。 
 よろしくお願いいたします。
 資料No.1を御覧ください。
 これまでの議論を踏まえまして「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)(案)」を作成しております。
 御説明させていただきます。
 冒頭に、総括としまして、本分科会においては、無期転換ルールに関する見直しと多様な正社員の雇用ルールの明確化等については、令和4年5月27日以後○回にわたり、今後の労働時間法制の在り方に関しては、令和4年8月30日以後○回にわたり検討を行い、精力的に議論を深めてきたところであるが、本日下記のとおりの結論に達したので、報告する。
 厚生労働省においては、本報告を踏まえ、所要の措置を講ずることが適当であるとしております。
 次に、具体的な内容となります。
 まず、労働契約法制に関してです。
 「I 労働契約法制」。
 「1 無期転換ルールについて」。
 「(1)無期転換ルール」。
 制度の活用状況を踏まえると、無期転換ルールの導入目的である有期契約労働者の雇用の安定に一定の効果が見られるものの、制度が適切に活用されるよう、必要な取組を更に進めることが適当である。
 「(2)無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保」。
 無期転換ルールに関する労使の認知状況を踏まえ、無期転換ルールの趣旨や内容、活用事例について、一層の周知徹底に取り組むことが適当である。
 無期転換申込権が発生する契約更新時に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件について、労働基準法の労働条件明示の明示事項に追加することが適当である。
 この場合において、労働基準法の労働条件明示において、書面で明示することとされているものは、無期転換後の労働条件明示に当たっても書面事項とすることが適当である。
 「(3)無期転換前の雇止め等」。
 無期転換前の雇い止めや、無期転換申込みを行ったことなどを理由とする不利益取扱い等について、法令や裁判例に基づく考え方を整理し、周知するとともに、個別紛争解決制度による助言・指導にも活用していくことが適当である。
 紛争の未然防止や解決促進のため、更新上限の有無及びその内容について、労働基準法の労働条件明示事項に追加するとともに、労働基準法第14条に基づく告示において、最初の契約締結より後に、更新上限を新たに設ける場合、または更新上限を短縮する場合には、その理由を労働者に事前説明するものとすることが適当である。
 「(4)クーリング期間」。
 クーリング期間に関して、法の趣旨に照らして望ましいとは言えない事例等について。
ページをおめくりください。2ページです。
 一層の周知徹底に取り組むことが適当である。
 「(5)無期転換後の労働条件」。
 無期転換後の労働条件について、有期労働契約時と異なる定めを行う場合を含め、法令や裁判例に基づく考え方、留意点等を整理し、周知に取り組むことが適当である。
 無期転換後の労働条件について、労働契約法第3条第2項を踏まえた均衡考慮が求められる旨を周知するとともに、無期転換申込権が発生する契約更新時の無期転換後の労働条件等の明示の際に、当該労働条件を決定するに当たって、労働契約法第3条第2項の趣旨を踏まえて、均衡を考慮した事項について、使用者が労働者に対して説明に努めることとすることが適当である。
 正社員への転換をはじめとするキャリアアップの支援に一層取り組むことが適当である。
 「(6)有期雇用特別措置法の活用状況」。
 有期雇用特別措置法の特例について、特例の存在が十分に認知されていない現状があるため、一層の周知徹底に取り組むことが適当である。
 「2 労働契約関係の明確化について」。
 多様な正社員に限らず、労働者全般について、労働基準法の労働条件明示事項に就業場所・業務の変更の範囲を追加することが適当である。
 労働契約法第4条の趣旨を踏まえて、多様な正社員に限らず、労働者全般について、労働契約の内容の変更のタイミングで、労働契約締結時に書面で明示することとされている事項については、変更の内容をできる限り書面等により明示するよう促していくことが適当である。
 労働基準法の労働条件明示のタイミングに、労働条件の変更時を追加することを引き続き検討することが適当である。
 紛争の未然防止のため、多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する裁判例等を幅広く整理して明らかにし、周知徹底に取り組むことが適当である。
 就業規則を備え付けている場所等を労働者に示すことなど、就業規則を必要なときに容易に確認できるようにする必要があることを明らかにすることが適当である。また、就業規則の更なる周知の在り方について、引き続き検討することが適当である。
 短時間正社員については、処遇について、正社員としての実態を伴っていない場合には、パート・有期労働法の適用があり、均衡・均等待遇が求められることや、同法が適用されないそれ以外の多様な正社員においても、労働契約法第3条第2項による配慮が求められることを周知することが適当である。
 「3 労使コミュニケーションについて」。
 労使コミュニケーションに当たっての留意点や、適切に労使コミュニケーションを図り。
おめくりください。
 図りながら、無期転換や多様な正社員等について、制度の設計や運用を行った各企業の取組事例を把握して、周知することが適当である。
 過半数代表者の適正な運用の確保や多様な労働者全体の意見を反映した労使コミュニケーションのさらなる促進を図る方策について、引き続き検討を行うことが適当である。
 労働契約法制については、以上としております。
○労働条件政策課課長補佐 続きまして「II 労働時間法制」についてです。
 「1 裁量労働制について」。
 「(1)対象業務」
 企画業務型裁量労働制(以下「企画型」という。)や専門業務型裁量労働制(以下「専
門型」という。)の現行の対象業務の明確化を行うことが適当である。
 銀行又は証券会社において、顧客に対し、合併、買収等に関する考案及び助言をする業務について、専門型の対象とすることが適当である。
 ここで「合併、買収等」としておりますが、この「等」におきましては、事業承継、あるいは資本提携や会社分割、株式譲渡といったM&Aに係る手法が入ることを念頭に置いてございます。
 「(2)労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保」
 (対象労働者の要件)
 専門型について、対象労働者の属性について、労使で十分協議・決定することが望ましいことを明らかにすることが適当である。
 対象労働者を定めるに当たっての適切な協議を促すため、使用者が当該事業場における労働者の賃金水準を労使協議の当事者に提示することが望ましいことを示すことが適当である。
 対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更しようとする場合に、使用者が労使委員会に変更内容について説明を行うこととすることが適当である。
 (本人同意・同意の撤回)
 専門型について、本人同意を得ることや同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないこととすることが適当である。
 本人同意を得る際に、使用者が労働者に対し制度概要等について説明することが適当であること等を示すことが適当である。
 同意の撤回の手続を定めることとすることが適当である。また、同意を撤回した場合に不利益取扱いをしてはならないことを示すことや、撤回後の配置や処遇等についてあらかじめ定めることが望ましいことを示すことが適当である。
 (業務量のコントロール等を通じた裁量の確保)
 裁量労働制は、始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを示すことが適当である。
 労働者から時間配分の決定等に関する裁量が失われた場合には、労働時間のみなしの効果は生じないものであることに留意することを示すことが適当である。
 「(3)労働者の健康と処遇の確保」
 (健康・福祉確保措置)
 健康・福祉確保措置の追加(勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の適用解除)、医師の面接指導)等を行うことが適当である。
 ここで「追加等を行うこと」としてございますが、ここでは、対象労働者の勤務状況やその健康状態を踏まえ、労働時間の上限措置を決議することが望ましいことを示すことを念頭に置いてございます。
 健康・福祉確保措置の内容を「事業場における制度的な措置」と「個々の対象労働者に対する措置」に分類した上で、それぞれから1つずつ以上を実施することが望ましいことを示すことが適当である。
 「労働時間の状況」の概念及びその把握方法が労働安全衛生法と同一のものであることを示すことが適当である。
 (みなし労働時間の設定と処遇の確保)
 みなし労働時間の設定に当たっては対象業務の内容、賃金・評価制度を考慮して適切な水準とする必要があることや対象労働者に適用される賃金・評価制度において相応の処遇を確保する必要があることを示すこと等が適当である。
 「(4)労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保」
 (労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上)
 決議に先立って、使用者が労使委員会に対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容について説明することとすることが適当である。
 労使委員会が制度の実施状況の把握及び運用の改善等を行うこととすること等が適当である。
 労使委員会の委員が制度の実施状況に関する情報を十分に把握するため、賃金・評価制度の運用状況の開示を行うことが望ましいことを示すことが適当である。
 労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とするとともに、労働者側委員の選出手続の適正化を図ることとすること等が適当である。
 専門型についても労使委員会を活用することが望ましいことを明らかにすることが適当である。
 (苦情処理措置)
 本人同意の事前説明時に苦情の申出方法等を対象労働者に伝えることが望ましいことを示すことが適当である。
 労使委員会が苦情の内容を確実に把握できるようにすることや、苦情に至らないような運用上の問題点についても幅広く相談できる体制を整備することが望ましいことを示すことが適当である。
 (行政の関与・記録の保存等)
 6か月以内ごとに行うこととされている企画型の定期報告の頻度を初回は6か月以内に1回及びその後1年以内ごとに1回とすることが適当である。
 健康・福祉確保措置の実施状況等に関する書類を労働者ごとに作成し、保存することとすることが適当である。
 労使協定及び労使委員会決議の本社一括届出を可能とすることが適当である。
 「2 年次有給休暇について」
 令和7年までに「年次有給休暇の取得率を70%以上とする」という政府の目標を踏まえ、年次有給休暇の取得率の向上に向け、好事例の収集・普及等の一層の取組を検討することが適当である。また、年5日以内とされている年次有給休暇の時間単位での取得について、年5日を超えて取得したいという労働者のニーズに応えるような各企業独自の取組を促すことが適当である。
 ここで「各企業独自の取組」としてございますが、これは、法を上回る措置として、法定の年次有給休暇とは別に、時間単位で取得できる特別休暇を設けるなどの各企業の取組を促進することを念頭に置いてございます。
 「3 今後の労働時間制度についての検討」
 働き方改革関連法で導入又は改正された、時間外労働の上限措置、フレックスタイム制、高度プロフェッショナル制度、年次有給休暇制度等は、同法の施行5年後に、施行状況等を踏まえて検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずることとされていることを踏まえ、今後、施行状況等を把握した上で、検討を加えることが適当である。
 その際には、働く方の健康確保という原初的使命を念頭に置きながら、経済社会の変化や働き方の多様化等を踏まえ、働き方やキャリアに関する労働者のニーズを把握した上で、労働時間制度の在り方の検証・検討を行うことが適当である。
 資料1の説明は以上でございます。
 よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、報告書案は、労働契約制度と労働時間制度と大きく2つに分かれておりますので、まずは労働契約制度について、委員の皆様より御質問、御意見があれば、お願いいたします。
 なお、オンライン参加の委員の皆様におかれましては、御発言の希望をチャット機能に書き込んでお知らせください。
 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 まず、労働契約法制でございますが、今回、報告案でお示しいただいた無期転換ルールにおける申込機会、転換後の労働条件、更新上限の有無も含めて、書面明示の義務づけは、労働者の適正な活用促進の観点から、重要な見直しだと考えております。処遇改善の必要性なども含めて、法の趣旨をしっかりと踏まえた取組が重要であり、現場の労使までしっかりと認知されるよう、一層効果的な周知を進めていく必要があると考えております。
 特に有期契約労働者の雇用の安定と、さらなる処遇改善を進めることが重要でございまして、希望する労働者が安心して確実に無期転換申込権を行使できるようにすることが不可欠であり、無期転換回避の防止、転換後の処遇改善といった均等・均衡待遇の取組を徹底するよう、ぜひ積極的に促していただきたいと考えております。
 前回も労働者側委員から申し上げておりますが、無期転換前の雇い止め、不利益取扱いの禁止の法制化についても、引き続き検討を続けていく必要があると考えておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。
 また、働き方の多様化が進んでいるからこそ、労働者が自らの労働条件を理解、納得の上で、安心して働き続けられることが重要であり、変更時を含めた労働条件の明示、就業規則の周知徹底を進めていく必要があると考えております。
 今回義務づけられる部分にとどまらず、広く労働者が安心して働くことができるよう、積極的な使用者への働きかけを行政としてもぜひお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 西尾委員、お願いします。
○西尾委員 西尾です。よろしくお願いいたします。
 2点ほどございまして、1点目が、無期転換ルールでございます。
 実態調査でも無期転換ルールの認知度が低いことが明らかになったことを踏まえれば、まず、一層の周知を進めることが重要と考えています。
 無期転換ルールの活用促進のためには、使用者から労働者に対する無期転換ルールという制度自体の積極的な周知、それから契約締結時も含めた更新上限設定の理由の説明が、労働者の理解促進と納得性確保という観点から大変重要であります。
 行政から好事例の横展開とともに、これらの取組を使用者に促すよう、働きかけをお願いしたいと思っています。
 また、労働契約法3条2項の趣旨を踏まえて、均衡を考慮した事項の説明につきましては、具体的な待遇それぞれについて説明する必要があることを使用者に促していただきたいと思っています。
 2点目ですが、労働契約関係の明確化でございます。
 締結時の就業場所、業務の変更の範囲の書面明示だけではなく、労働者全体に関わる労働条件の変更時においても、しっかりと書面で明示していくことが必要だと考えております。行政としても、使用者に対して、変更時にも書面明示を徹底することや、就業規則の一層の周知がなされるように促していただきたい。
 また、労働側から繰り返し発言しておりますが、限定された職務などが廃止された場合にも、使用者には解雇回避努力義務が課せられるという原則の考え方をしっかりと周知徹底いただきたいと考えております。
 よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 では、事務局からお願いします。
○労働関係法課長 事務局でございます。
 今、冨髙委員と西尾委員から御指摘いただいたことですとか、これまで委員の皆様から御指摘いただいた御意見につきましては、非常に重要な御指摘だと思っております。
 無期転換ルールにつきましては、契約期間が限られることによる雇い止めとか生活の不安、その不安から契約上、法令上の権利の行使が抑制されるなどの有期労働契約の問題を踏まえまして、有期労働契約の濫用を防ぎ、労働者の雇用の安定を図るために導入された制度だと理解しております。
 こうした無期転換ルールの趣旨、目的をしっかりと踏まえまして、仮に新しく報告書に盛り込まれることとなれば法令上の措置につきまして、その履行確保をしっかりと図っていくということだけではございませんでして、法令の趣旨に反するような事例への啓発・指導、あるいは法令を上回って雇用の安定を図るような取組につきましても、労働者の希望に沿った形での取組を促していくこと、待遇の向上などを含めましたキャリアアップの支援につきましても取組を進めていくことなどを通じまして、無期転換ルールの趣旨、目的であります雇用の安定に向けて、しっかりと取り組んでいきたいと考えております。
 また、労働契約関係の明確化につきましても御指摘をいただいたところでございます。
 法令上の措置の履行確保に加えまして、それを上回るような取組といったところにつきましても取り組まれておられる例等につきまして、労働者の希望に沿った形で行われていくことを促すとともに、制度自体の周知につきましてもしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、オンラインから池田委員、お願いいたします。
○池田委員 どうもありがとうございます。
 まず、報告案で示されました無期転換ルールの見直しと労働契約関係の明確化の内容につきましては、労働者が自身の労働条件について理解を深めて、それによって労使紛争の未然防止に資するということになるかと受け止めています。
 その上で、今回の議論を通じまして、改めて感じたことを申し上げたいと思うのですが、各社は、同一労働同一賃金の規定が設けられ、以前にも増して処遇の均等・均衡が求められています。
 転換するタイミングでも、均等・均衡ということを考えれば、職務や職責などが上がることが、処遇改善の前提となると思いますし、転換の前後を問わず、高いキャリアを目指したい働き手に対して、政府または企業が支援していくなど、働き手の就労ニーズが多様化している実態を踏まえた政策を進めることが重要であると強く思いました。
 いずれにいたしましても、使用者側として今回の見直し、明確化の内容について周知を行って、良好な労使関係の構築を後押ししたいと考えてございます。
 以上でございます。
 ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、2つ目の労働時間制度について、委員の皆様より御意見、御質問があれば、お願いいたします。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 今回の裁量労働制の見直しにつきましては、その前段で実態調査なども実施されましたが、調査結果の中では、実質裁量がなく、処遇の面などにおいても潜脱的な運用がなされているような事案も見受けられたと思っております。
 そのような状況も踏まえて、今回、様々な規制強化の方向での改善がなされたと思っております。対象労働者の要件を明確にした上で、実効性確保の観点から、専門業務型においても本人同意を要件とすること、また、同意の撤回に係る手続の義務化、撤回及び不同意の場合の不利益取扱いの禁止、健康・福祉確保措置の強化といったものが盛り込まれることが示されており、裁量労働制の適正化に向けた重要な見直しと考えております。今後、これらの措置が確実・適切に実施されることが重要だと考えております。
 対象業務の明確化につきましては、前回までの答弁も含めて、範囲を拡大するのではなく、あくまでも現行法制下で行われるものと理解したところでございます。
 また、使用者から繰り返し要望がございました金融機関における資金調達方法を考案する業務に関しましては、その業務の範囲が明確でなく、一般的な融資業務も含まれるのではないか、そうなれば、やみくもに対象者が拡大するのではないかという部分は、労働側から指摘させていただきました。今回、資金調達方法を考案する業務の部分が落とされたことは、労働者側の懸念が受け入れられたものと理解しているところでございます。
 一方で、銀行と証券会社に限定したM&Aに係る業務につきましては、専門業務型として追加されることが示されております。
 この間も、銀行、証券会社以外の業務への拡大の懸念、専門性の担保、業務の範囲の不明確さといったところについて指摘してきたところです。
 今後、対象範囲の明確化も含めて、いたずらに対象者が拡大しないよう、今回新たに示された規制強化策とあわせて、労働時間制度の原初的な使命である健康確保を念頭に置き、厳格に指導監督していただきたいと考えております。
 前回も申し上げましたが、裁量労働制は、労使でしっかりと議論を尽くして運用することが非常に重要だと考えておりますので、ぜひ行政としての働きかけをお願いしたいと思っております。
 我々も、今回の健康・福祉確保措置等の規制強化策をはじめ、組合における取り組みも含めて、しっかりと対応していきたいと考えております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 大崎委員、お願いします。
○大崎委員 ありがとうございます。
 私も、裁量労働制の対象業務の2つ目の○で、「合併、買収等」の「等」について、事業承継、株式譲渡などの合併、買収に伴う手法に関わる業務といった説明がございました。
 前回、労働側委員より質問した際に、部分的に業務に携わっている場合には制度の適用対象ではなくて、通常の労働時間法制が適用になるといった答弁だったと認識しております。「等」というところで、幅広い業務が読み込まれることがないよう、明確にしていただきたいと思います。
 対象業務への部分的に関与している者や、経験年数が少ない者など本来適用ができない者が対象とならないよう、指導監督においてはしっかりと確認いただきたいと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 北野委員、お願いします。
○北野委員 ありがとうございます。
 私からは、2点申し上げたいと思います。
 1点目、先ほど説明があったとおり、一定の労働時間を超えた場合の適用解除については選択的措置の一つということになりましたが、この間の審議会においても、適用解除は健康確保という観点からより実効性のあるものだと思っておりまして、一段上の取組として位置づけるべきではないかと繰り返し発言させていただいたところでございます。
 適用解除については、それが選択されることが望ましいという形で、省令、指針において整理するという説明だったと思いますが、労働者の健康確保という観点からの適用解除の有効性をしっかりと示していただき、選択されるよう促していただくことが必要だと思っております。
 2つ目ですが、今回、専門業務型における本人同意など、新たに義務化される点が多々ございますが、専門業務型においては、労使協定の締結で制度導入が可能となっているため、次回の労使協定を締結する際には、今回新たに義務化された点を踏まえて、協定を結ぶ必要があることについてしっかりと周知に取り組んでいただきたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 裁量労働制の対象業務について、これまでの当分科会の議論において、課題解決型開発提案業務とPDCA型業務は個別具体的に見た場合、現行の対象業務になり得るものがあることが明確になったと考えております。厚労省には、企業が理解しやすいような形となるようお願いしたいと思います。
 銀行、証券会社における合併、買収等に関する業務については、新たに追加になるということで、M&Aに携わる働き手の満足度を高める労使の選択肢が増えるものだと受け止めております。
 資金調達方法に関する考案及び助言の業務は、繰り返し申し上げてきたとおり、専門性が高く、業務範囲が明確であり、裁量労働制にふさわしい業務であると確信しておりますが、今回、理解が得られなかったということで、極めて残念であります。
 さて、裁量労働制は、適用労働者の約8割が制度適用に満足、あるいはやや満足と回答しており、大部分では制度趣旨に沿った適正な導入・運用がされていると考えております。
 他方で、一部制度趣旨に反するようなケースもあるということが実態調査でも明らかになったということで、今回、規制を強化した事項、実施することが望ましい事項、また、周知徹底を図る事項などが整理されました。
 裁量労働制は、今回の見直しを経て、一層適正な導入・運用が促され、より満足度の高い、労使双方にとってメリットのある制度になると考えております。
 また、今回の審議におきましては、建設的な議論に資する多くの実態調査や回帰分析の結果を御提供いただきました。この点について、荒木分科会長と事務局に改めて感謝申し上げたいと思います。
 今後も経済社会の変化、あるいは働き手のニーズの変化・多様化に不断に対応すべく、制度や運用に関する議論が続くと思います。エビデンスに基づいた建設的な議論となることを期待しておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 事務局からいかがでしょうか。
○労働条件政策課長 労使双方から御意見をいただきました。
 まず、労働者側から御懸念がございましたが、裁量労働制の対象業務の在り方につきましては、本日、おまとめいただくかどうかはまだこれからでございますが、労使それぞれ御意見をお持ちであろうと考えております。
 事務局といたしましては、今回の御議論を踏まえますと、対象業務の在り方については、働く方の健康確保という労働時間制度の原初的使命を念頭に置きつつ、その必要性と妥当性について検証する必要性がまずはあると考えております。
 また、対象業務に関しましては、仮に今回対象業務が追加された場合、その施行後の運用状況を踏まえることは当然必要となるであろうと考えているところでございます。
 それから、先ほど労働者側の大崎委員からもお話がございましたが、合併、買収等の「等」でございますが、冒頭に事務局から御説明申し上げましたが、事業承継や、M&Aに係る手法である、資本提携、会社分割、株式譲渡といったものを念頭に置いてございます。
 仮にこの業務が裁量労働制の対象となった場合には、通達等におきまして、その内容をより明確にする必要があると考えているところでございます。
 以上でございます。
○荒木分科会長 オンラインのほうから佐久間委員の発言希望が出ております。
 お願いいたします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 今、事務局から御説明があった後で申し訳ございません。
 私は、4ページの「労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保」について、意見と一つ質問させていただきたいと思います。
 (4)の○の1つ目の賃金・評価制度の内容について説明することについては、一つの方向性として納得できるところだと思います。
 3つ目の○ですが、労使委員会の委員が制度の実施状況に関する情報を十分に把握するため、賃金・評価制度の運用状況の開示を行うことが望ましいことを示すことが適当であるとあります。
 今までの議論の中でも、企業の経営権に属するのではないかということがお話しされていたと思います。私も、その意見には同意というか、行き過ぎた開示要求に通じるところまでは厳しいのかなと思うところでございます。
 あと、最後の専門型についても、労使委員会を活用することが望ましいことを明らかにすることが適当であるとあります。
 この「明らかにすること」は、どういう義務まで含まれているのか。周知を超えて、その枠組みを広く労使で協議して、導入の促進に向けて活用していくということだと思うのですが、「明らかにすること」ということで、今までの表現とほかの字句の並びがちょっと異なっていますので、ここの範囲について、質問ということで教えていただきたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 それでは、質問がございましたので、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 佐久間委員からの御質問にお答え申し上げます。
 まず、労使コミュニケーションの○の3つ目の賃金・評価制度の運用状況の開示でございますが、前回までに使用者側からの御意見もございましたように、こちらは、労使委員会のモニタリング機能を高めていくものの一助として、賃金・評価制度の運用状況の開示が望ましいということでお示ししているものでございます。
 中身につきましては、それぞれ労使、各企業の実情がございますので、それを踏まえたものにしていただきたいと考えているところでございます。
 それから、(4)の○の5つ目でございますが、専門型についても労使委員会を活用することが望ましいというところでございます。
 こちらにつきましては、私どもとしましては、現行において、専門型も労使委員会において協定代替決議ができますので、その中で活用することが望ましいということでございまして、必ず労使委員会の設置を求めるものではございません。
 ただ、裁量労働制については、一定のモニタリング機能を求めていくことが重要と考えておりますので、ここにつきましては、通達等で専門型においても労使委員会を活用することが望ましい旨を明らかにし、その旨を周知したいと考えておるところでございます。
 以上でございます。
○荒木分科会長 佐久間委員、よろしいでしょうか。
○佐久間委員 分かりました。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。
 それでは、川田委員、お願いします。
○川田委員 ありがとうございます。
 私からは、まず、裁量労働制の適正な制度運用の確保に関わる行政監督の状況に関して、事務局にお伺いしたい点がございます。
 裁量労働制について、適正な制度運用の確保を図ることについては、ここまでの議論の中でも、特に労働者側の委員から多くの御指摘がなされてきたと思いますが、このような適正な制度運用の確保を図る重要性は、私もそのとおりだと思いますし、審議の中で共通の認識になっているとも言ってよいかと考えております。
 具体的に伺いたい点ですが、裁量労働制に係る労働基準法の違反等の監督指導の状況についてどうなっているのか、事務局でお分かりになる点がございましたら、教えていただきたいと思います。
○荒木分科会長 それでは、事務局、お願いします。
○労働条件政策課長 川田委員の御質問にお答え申し上げます。
 令和3年の監督指導の状況でございますが、いわゆる是正勧告又は指導を行った事業場でございますが、企画業務型は60事業場、専門業務型は218事業場となっておりまして、合計278事業場となっております。
 こちらにつきましては、是正勧告又は指導を実際に行った事業場でございまして、この件数で御報告申し上げたいと思います。
○川田委員 ありがとうございました。
 今御説明いただいたところを踏まえて、報告書案全体にかかわる部分もありますが、述べさせていただきたいと思います。
 この分科会では、今年の夏から無期転換ルールに関する見直し、あるいは多様な正社員などに関わる労働契約関係の明確化などの労働契約法制の在り方、裁量労働制などを含めた労働時間法制の在り方について、各制度がその趣旨に沿って労使双方に有益な制度として活用されるように、精力的と言える議論を重ねてきたと認識しているところです。
 この報告書案の内容は、こうした分科会での審議を踏まえて、先ほど述べたような労働契約法制や労働時間法制が適切に機能していくことを確保するために必要な対応を多く含む形で取りまとめられているものと思います。
 特に裁量労働制につきましては、この間、対象業務の見直しについて多くの議論がされてきたと思いますが、そのほかの重要な点として、現行の規定の中にどのような業務が該当するかを明確にすることの重要性や、専門業務型裁量労働制についても、制度の適用に対して、本人同意を求めることの重要性、それから、労使委員会のモニタリング機能の強化の方向性など、制度全体を見て、労使双方にとってメリットのある働き方を実現する内容が審議を踏まえた形で報告書案に盛り込まれていると考えております。
 そうした点で、報告書案には有意義な内容を多く含んでいると思いますので、この案が報告書として取りまとめられた際には、これらをしっかりと履行確保することが重要だと思います。事務局、厚生労働省には特に周知や指導監督をしっかりと行っていただきたいとお願いしたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 川田委員からの御発言をいただきました。
 また、特に対象業務の明確化につきましては、前回までの御審議においても労使、公益委員の皆様方から、現行の企画型や専門型の対象業務に係る規定にどのような業務が該当するのかを明確にする必要性があるという共通の御指摘をいただいたものと認識しております。
 基本的には、現場の監督署等におきまして、対象業務か否かを判断するものと考えておりますが、その対応の中で生じた疑義等に適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。
 また、こちらも労使、公益委員から、監督指導につきまして御指摘をいただきました。
 今回、おまとめいただいた際には、制度の履行確保を図っていくのは、行政として当然の責務であろうと考えております。
 私どもとしましては、その際には制度の周知や監督指導をしっかりと徹底してまいりたいと考えているところでございます。
 事務局からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等はございましょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、特にないようでしたら、お手元の報告案を当分科会の報告とし、労働政策審議会長宛てに報告することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 そのように進めさせていただきます。
 それでは、事務局から報告案の配付をお願いいたします。
 オンラインで御参加の委員の皆様には、共有画面にて御確認をお願いいたします。
(報告案配付、画面共有)
○荒木分科会長 お手元に届いたかと思いますが、お配りした報告案のとおり、労働政策審議会長宛ての報告とすることについて、御了承いただけますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、事務局から発言をお願いいたします。
○労働基準局長 労働基準局長でございます。
 委員の皆様におかれましては、労働契約制度に関しましては本年5月より、労働時間制度につきましては本年8月より、大変熱心に御議論いただき、本日、報告をお取りまとめいただきましたこと、御礼申し上げたいと存じます。
 厚生労働省といたしましては、この報告に基づき、必要な対応を行ってまいりたいと思っております。
 労働契約制度及び労働時間制度が労使にとって有益な制度となるよう、今後とも努力していきたいと思っておりますので、引き続き御支援、御協力を賜りますようあわせてお願い申し上げます。
 誠にありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 事務局におかれましては、御対応のほどよろしくお願いいたします。
 この間、公労使の委員の皆様におかれましては、大変熱心、真摯に御議論いただきまして、本日の報告書をおまとめいただきました。この点について、分科会長としても改めて御礼申し上げます。
 ありがとうございました。
 それでは、本日の議事はここまでとさせていただきます。
 最後に、次回の日程等について、事務局から説明をお願いします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。
 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、以上で第187回「労働条件分科会」は終了といたします。
 本日は、お忙しい中御参集いただきまして、ありがとうございました。
 皆様、どうぞよいお年をお迎えください。