第2回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会 議事録

●日時

2023(令和5)年2月24日(金)16時57分~18時22分

●場所

AP新橋 3F Aルーム

●出席者

深尾委員長、権丈委員、小枝委員、武田委員、玉木委員、土居委員、徳島委員、藤澤委員
(オブザーバー)
前田参事官(内閣府計量分析室)、泉審議役(年金積立金管理運用(独):GPIF)、相澤企画部長(年金積立金管理運用(独):GPIF)
 

●議題

経済指標の動向について

●議事録

深尾委員長
定刻より少し早いですが、皆さんお集まりのようなので、ただいまより、第2回「年金財政における経済前提に関する専門委員会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、御多忙の折、お集まりいただき、ありがとうございます。
 本日の委員の出席状況ですが、植田委員と滝澤委員から欠席の御連絡をいただいています。その他の委員の方は、今日は全員リアルで参加していただいています。
 オブザーバーにつきましては、内閣府計量分析室から前田参事官、年金積立金管理運用独立行政法人から泉審議役と相澤企画部長に出席いただいています。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 カメラの方々は、ここで退席をお願いします。

(カメラ退室)

深尾委員長
 まず、事務局から資料の確認をお願いします。

佐藤数理課長
 年金局数理課長の佐藤でございます。
 私から、資料の確認をさせていただきます。本日の資料は、資料1「令和元年財政検証で設定した経済指標と実績の動向」、資料2「経済成長率と賃金上昇率の関係」、資料3「経済指標の国際比較」、参考資料1-1「中長期の経済財政に関する試算(2023年1月)のポイント」、参考資料1-2「中長期の経済財政に関する試算(令和5年1月24日経済財政諮問会議提出)」、参考資料2「国民経済計算の2015年(平成27年)基準改定に向けて」をお配りしております。

深尾委員長
 ありがとうございます。
 それでは、議事に移らせていただきます。
 「経済指標の動向について」、ただいま御紹介のあった資料1から資料3により、事務局から説明をお願いします。

佐藤数理課長
 数理課長でございます。
 私から、資料1~3をまとめて御説明させていただきます。
 まず、資料1を御覧ください。前回、令和元年財政検証において経済前提の設定に当たって設定した様々な経済指標につきまして、実績の推移を確認いたしまして、実績と設定値の比較を行ったものとなります。
 初めに、経済前提そのもの、物価上昇率、賃金上昇率、運用利回りについての比較となります。
 資料の2ページ、3ページは、前回の設定の一覧となります。説明は省略いたします。
 資料の4ページを御覧ください。物価上昇率の実績と前提になります。前回の財政検証のシミュレーション期間となります2019年以降を御確認いただきたいと思います。2021年までは実績が前提を下回っておりましたが、直近の2022年は上回っているところであります。
 5ページは、実質賃金上昇率になります。こちらの実績が判明しているものが2021年度までになります。2019年度以降を同じように確認していただきますと、2020年度まで実績が前提を下回っておりましたが、直近の2021年度は上回っているところであります。
 6ページを御覧ください。対CPIで見た実質運用利回りになります。直近の2020年度と21年度は、実績が前提を上回っております。また、運用利回りの設定に当たっては、この実質運用利回りの10年移動平均を参照することにしておりますので、オレンジの10年移動平均を御覧いただきたいと思います。2020年度の好成績を反映して高い水準で推移しておりまして、直近は5%を超える水準となっているところであります。
 7ページは、対賃金で見た実質的な運用利回りになります。6ページの対CPIの運用利回りとおおむね同様の傾向となっているところであります。
 8ページ以降が、経済モデルで設定した各種パラメータの実績と前提の比較になります。
 9ページ、10ページがパラメータの一覧となります。
 11ページを御覧ください。労働投入量のベースとなります就業率の比較になります。2021年の実績は、男女とも高齢期は労働参加が進むケースの見通しを上回っているところでありますが、女性の子育て期、30代、40代辺りは見通しを下回っているところであります。
 12ページは、トータルの就業者数、雇用者数の比較になります。いずれも、実績が労働参加が進むケースの見通しを上回っているところであります。
 13ページを御覧ください。内閣府が公表しております全要素生産性(TFP)上昇率の推移となります。前回検証時のものが緑の点線、直近公表のものが青の実線となります。この間、SNAの基準改定があったことなどから、過去に遡って遡及改定されているところであります。1990年代後半以降の推移を見ていただきますと、0.3~1.5%の範囲で推移しているところであります。
 14ページを御覧ください。TFP上昇率の設定に当たりまして、過去30年の分布を踏まえて設定することとしておりましたので、この分布がどのように変化するかを確認したものであります。左側の分布が前回、右側が直近のものになります。直近の公表値は1995年以降となりますので、右側は30年に少し満たない期間となりますが、約30年の分布となっているところであります。また、前回は年度ベースのデータを用いておりましたが、より詳細にデータを確認するという観点から、今回は四半期ベースのデータを採用しているところであります。期間がずれることによりまして、バブル期の高い数値が抜けて、新しく入ってきた足元の期間の数値が低いことから、直近の分布は下振れをしているところであります。例えば、上の表の部分を見ていただきますと、前回のケースⅢを見ていただきますと、上位60パーセンタイルを参照しまして、0.9%を用いたわけでありますが、同様に上位60%を参照いたしますと、今回は0.7%となりまして、0.2%ほど低下するとこであります。TFP上昇率の前提の低下は、労働生産性、利潤率の低下を通じまして、実質賃金上昇率、実質運用利回りの設定の低下要因となるものであります。
 15ページを御覧ください。実質運用利回りの設定の基礎となりますGPIFの実質運用利回りの実績になります。実質運用利回りは、10年移動平均の範囲を基礎に設定しております。TFPと同様、データの取り方を少し変更しておりまして、前回は年度単位のデータでしたけども、より詳細に確認する観点から、四半期ベースのデータを採用しております。また、注1に記載いたしましたけれども、四半期ベースに変更したことから、前回は承継資金運用勘定における借入金利息と運用手数料の控除後のデータとしておりましたが、今回は控除前のデータとなっております。ただ、承継資金運用勘定の借入金利息は、GPIF発足前の借入を継承したものですので、GPIFの運用成果を確認する上ではむしろ控除しないほうが適切ではないかと考えております。また、運用手数料は控除すべきものかと思いますが、注3に記載したとおり、GPIFの運用手数料の金利は最大で2020年度の0.04%となっているところでありまして、運用収入に対してその規模は比較的小さいものであります。なお、パーセンタイルを取る際には、この0.04%を控除することとして、これによって運用手数料を控除することとしているところであります。数値を御確認いただきますと、10年移動平均の直近は、先ほど申し上げたように、5%程度の高い水準を推移しております。その結果、前回、ケースI~Ⅲで参照しました上位70パーセンタイルを見ていただきますと、前回は2.3%でありましたが、今回は3.1%となっているところであります。こちらの変化は実質運用利回り設定の上昇要因となるものであります。
 16ページ以降、国民経済計算、SNAから計算される各種パラメータになります。SNAにつきましては、前回の財政検証時は2011年基準のSNAを利用しておりましたが、直近の公表は青のラインの2015年度基準で公表されています。すなわち、赤と青のラインの水準の違いは基準改定の影響であります。
 基準改定については、30ページ以降に概要を添付しております。ページが飛んで恐縮ですけれども、31ページを御覧いただければと思います。こちらに、GDPに与える影響が示されております。全体で基準改定によって6.7兆円ほどGDPを押し上げる効果がありますが、最も大きいものが従来は中間消費とされておりましたリフォーム・リニューアル工事の付加価値への計上になっておりまして、これによりGDPを7.5兆円押し上げる効果があります。
 また、次の32ページを御確認いただきますと、内訳といたしましては、民間住宅や民間企業設備投資が増加するところになっておりまして、総固定資本形成が増加しているところであります。
 16ページに戻っていただきまして、数値の確認をいたしますと、資本分配率になりますが、前回財政検証設定時は2017年度までの実績を参照しておりましたが、それ以降の動向を確認いただくこととします。そうすると、資本分配率は、2018年度以降、大きく低下しております。特にコロナが襲った2020年度におきましては大きく低下しておりまして、2021年度も低い水準にとどまっています。逆に言いますと、労働分配率が大きく上昇していることになります。
 17ページを御覧ください。資本減耗率になります。資本減耗率につきましては、長期的に低下傾向にあったところであります。2020年度に上昇いたしましたが、2021年度は再び低下しているということで、大きくは低下傾向が続いているところであります。
 18ページを御覧ください。総投資率となります。総投資率は、リーマンショック後、上昇傾向にありまして、コロナ禍の2020年度以降についても、おおむね横ばいで推移している、大きな変化はなかったということであります。一方、前回の設定では、将来は横ばいまたは低下するという設定となっていたところであります。
 19ページは、総貯蓄率になります。総投資率と同様に、リーマンショック後、上昇傾向にありました。コロナ禍の2020年度は低下したところでありますが、2021年度には再び上昇したことが見てとれるところであります。
 次ページ以降は、今度は経済モデルの推計結果となります潜在成長率の寄与や利潤率の比較になっております。
 21ページを御覧ください。グラフは、潜在成長率とその寄与の推移となります。2018年度以降を確認いたしますと、TFPの上昇率、赤の部分は緩やかに増加しているところ、一方、緑の部分の資本投入はプラスに寄与しておりまして、紫に当たります労働投入はマイナスに寄与しているところであります。将来見通しとの比較は、下の表で行っております。直近の2021年を見ていただきますと、TFP上昇率は実績が見通しを若干下回っておりまして、労働投入と資本投入は実績が見通しを若干上回っています。
 22ページは、利潤率となります。2018年度以降、実績は低下しておりまして、特にコロナ禍の2020年度に大きく低下しているところであります。また、2021年度も低い水準にとどまっています。一方、将来見通しは、上昇を見込んでおりましたので、逆の動きとなっているところであります。
 23ページを御覧いただきますと、資本係数になります。資本係数は利潤率の算式の分母に当たりますので、利潤率と逆の動きをしているところであります。2018年度以降、実績は上昇しているところであります。一方、将来見通しは低下を見込んでおりまして、こちらも逆の動きとなっているところであります。
 24ページ以降は、前回の推計結果となりますので、説明は省略いたします。
 資料1は、以上であります。
 続きまして、資料2を御覧ください。資料2は、経済成長率と賃金上昇率の関係につきまして、1994~2021年のデータで調べた資料となります。特に労働生産性上昇率と実質賃金上昇率の関係について見ているものであります。一般に、バブル崩壊後約30年間を観察すると、日本は、一定の生産性の向上は見られましたが、それが必ずしも実質賃金の上昇に結びついていないということで、その要因を調べた資料になっております。
 まず、1ページを御覧ください。先ほども見ていただきました実質成長率と潜在成長率とその寄与になります。TFP上昇率はプラスとなっておりまして、この間を平均いたしますと、0.8%の上昇となっております。一定の生産性の向上が確認できるところであります。
 2ページを御覧いただきますと、1人当たりで実質GDPの伸びと実質賃金の伸びを比較したものであります。青の実線が実質GDPの伸びになっておりまして、緑の毎月勤労統計調査、いわゆる毎勤統計の現金給与総額、また、オレンジの点線の厚生年金の標準報酬の伸びより高くなっているところであります。同じ実質賃金でも、厚生年金の標準報酬の伸びが、毎勤の就業者の現金給付総額の伸びより高くなっているところであります。厚生年金につきましては、短時間の労働者の多くは適用対象外となっているということで、短時間労働者の増加の影響を受けにくいことが要因ではないかと考えております。
 3ページを御覧ください。名目で、同じように、1人当たりのGDPと賃金の伸びを比較したものとなります。名目で見ていただきますとその差は小さくなるということでありまして、すなわち、実質化する際のデフレーターが、GDPはGDPデフレーターで賃金は消費者物価指数と異なっていることが影響しています。
 4ページを御覧ください。今申しましたデフレーターの差を確認したものになります。左下の表、27年間の平均の伸び率を見ていただきますと、GDPデフレーターが平均でマイナス0.4%低下していることに対して、消費者物価指数はプラス0.1%となっておりまして、おおむね0.5%程度の差があるところであります。デフレーターの差の要因といたしましては、大きく、対象範囲の違いと算定方法の違いがありますが、可能な限り対象範囲をそろえた国内家計最終消費支出のデフレーターを御覧いただきますと、上のグラフで見ていただきますと、消費者物価指数とおおむね同様の動きをしているところですが、水準が異なっているところでありまして、その平均伸び率を見ていただきますとマイナス0.2%となっているところであります。また、右下の表で範囲の違いの内訳を確認していただきますと、輸出入のデフレーターが他の項目と水準が異なっていることが分かります。すなわち、輸出入の影響、交易条件の悪化が範囲の違いの主要因であることが分かるところであります。
 6ページを御覧いただきたいと思います。こちらからは、労働統計を確認したものになります。就業者の内訳を見たものになります。内訳を見ますと、長期的には自営業者が減少して雇用者が増加しているところであります。
 7ページを御覧ください。雇用者の内訳を見たものになります。長期的には非正規雇用が増加しまして正規雇用が減少してきているところでありますが、2010年代後半以降は正規雇用者も増加に転じているところであります。
 8ページを御覧ください。1人当たりの労働時間を見たものになります。7ページで確認した非正規の増加に伴いまして、1人当たりの労働時間が減少しているところであります。労働力調査で見ましても、毎月勤労統計を見ましても、就業者計の1人当たり労働時間は大きく減少していることが確認できるところであります。ただ、毎勤で一般労働者とパートタイム労働者に分けてみますと、一般労働者の労働時間は、赤のラインになりますけれども、それほど減少していないところであります。すなわち、労働時間の減少の大きな要因はパートタイム労働者の増加ということであります。
 9ページを御覧ください。1人当たりの名目賃金の動きを見たものになります。青の就業者計の1人当たりの賃金は、3ページでも御確認いただいたものでありますけれども、低下傾向が見られるところであります。これは労働時間の低下の影響を受けているということかと思われます。そこで、一般労働者とパートタイム労働者に分けて賃金の動きを確認したものが緑の線と赤の線になります。赤の一般労働者の賃金、緑のパートタイム労働者の賃金については、低下傾向は見られないところであります。
 10ページが、今度はマンアワーベースで賃金の動きを確認したものになります。こちらを見ていただきますと、一般労働者、パートタイム労働者ともに賃金に低下傾向はなくて、2010年代後半以降を見ていただきますと、むしろ増加傾向にあることが確認できるところであります。特にパートタイム労働者の賃金については、最低賃金の引上げの影響もありまして、大きく伸びていることが確認できます。
 11ページは、GDPの構成割合の変化を確認したものになります。1994年から2021年の変化を見ますと、まず、自営業者の減少に伴いまして、混合所得が大きく減少しております。構成割合で見ますと、4.7%減少しているところであります。一方、雇用者の労働分配に当たります雇用者報酬は、雇用者の増加に伴いまして増加しているところでありますが、構成割合では1.0%の増加にとどまっているということです。さらに、雇用者報酬の内訳を見ますと、雇主の社会負担が増加している一方で、賃金・俸給の動きは減少しているところであります。
 こういった構成割合の変化がありますので、この構成割合の変化から労働分配率を計算したものが次の12ページとなります。こちらを御確認ください。労働分配率は、1990年代から2000年代前半ぐらいにかけまして低下してきたところでありますが、2018年以降は大きく上昇しておりまして、直近の2021年を見ますと大体1994年と同水準となっているところであります。したがって、5年前も同じような分析をしましたが、そのときは労働分配率の低下が実質賃金の低下の要因であったわけですが、今回は賃金低迷の主要因にはなっていないということかと考えております。
 13ページを御覧ください。名目のマンアワーベースで全て比較しておりますが、GDPと賃金の伸びの差を見たものです。その差を調べるために、SNA統計を使って様々な指標の伸びを比較しております。一番上の青線が就業者の付加価値の伸びで、一番下のオレンジが賃金・俸給の伸びになります。その間にあります緑色が雇用者の付加価値の伸びを示したものとなりまして、算出方法は注2に記載しております。また、その下の赤色の線が雇用者報酬の伸びになります。すなわち、青と緑の差が就業者と雇用者の付加価値の伸びの差となりまして、これは、自営業者の減少のほか、間接税の増加の影響が含まれているところであります。続いて、緑と赤の差が労働分配率の影響になりまして、この27年間を見ますと、その差は小さくなっているところであります。続いて、赤とオレンジの差が雇主の社会負担の増加の影響であります。
 以上をまとめましたものが次の14ページとなりますので、そちらを御覧ください。1994年から2021年の間のマンアワーベースの平均伸び率を比較しているものであります。この間、労働生産性上昇率は1.2%増加しているわけですが、一番左下の赤の数値を見ていただきますと、実質賃金は0.1%しか増加していないところであります。しかし、名目で比較しますと、GDPの伸びは0.7%で賃金は0.3%となりまして、その差が約半分になります。つまり、デフレーターの差が大きく影響しているということであります。また、名目の差を分解いたしますと、労働分配率の影響は小さくて、自営業者の減少や間接税の増加の影響が0.2%で、雇主の社会負担の増加が0.2%となっているということであります。
 次の15ページは、以上をまとめたものとなります。
 資料2の説明は、以上であります。
 続きまして、資料3を御覧ください。資料3は、経済指標について国際比較を行いまして、日本の特徴を調べたものになります。
 1ページに作成方法をまとめておりますので、御覧ください。まず、データにつきましては、全てOECDの統計を使っているということです。特に統一の基準で作成しましたSNAに基づいたデータを中心に使用しております。対象国は、G7及びその他主要先進国の合計15か国の比較となっております。対象期間は、データがそろいます1995年以降としております。マンアワーベースの賃金の比較をしておりますが、賃金についても、統一の基準で作成するという観点から、SNAから作成しているところであります。具体的には、SNAの賃金・俸給をSNAの雇用者数及び雇用者1人当たり平均労働時間で除することによって算出しているところであります。ちなみに、OECDの日本の統計については、内閣府の公表しているSNAや総務省の消費者物価指数と比較したところ、一致していることを確認しております。
 2ページを御覧ください。消費者物価指数の比較となります。1995年を100といたしまして、指数で伸びの比較をしております。左側がG7で、右側がその他の先進国となります。また、日本を赤い折れ線で表示しておりますので、赤の線と他国を比較して見ていただければと思います。こちらを見ていただきますと一目瞭然かと思いますけれども、日本だけが物価が伸びていないということで、他国は、平均すると年1%以上、伸びているところであります。
 3ページを御覧ください。マンアワーベースの実質賃金の比較となります。こちらについても伸びていないのは日本だけでありまして、多くの国は年1%程度の伸びを示しているところであります。日本以外で1%に満たないのは、下の表を見ていただきますと、イタリアの0.5%、オランダの0.7%、ドイツの0.9%となっております。
 4ページを御覧ください。労働生産性上昇率の国際比較になります。労働生産性はかなり様子が異なっておりまして、日本はG7の中で中位辺りの位置を示しております。平均伸び率も、1%を超えて、1.3%になっているということであります。
 5ページを御覧ください。先ほどの資料2で、労働生産性と実質賃金の差の大きな要因としてデフレーターの差があるということを確認いたしました。その差を確認したものになります。このグラフでマイナスは、実質賃金の押し下げ要因であることを示しております。日本はデフレーターの差が実質賃金の押し下げ要因として大きいということが把握できるものであります。平均で0.6%程度、賃金の押し下げ要因となっておりまして、日本と同程度に大きいものは韓国のみとなっているところであります。
 6ページを御覧ください。実質賃金の伸びを、労働生産性上昇率、労働分配率、デフレーターの差、及び、その他に要因分解したものとなります。こちらを御覧いただきますと、実質賃金の伸びのベースになっているものは水色の部分である労働生産性上昇率であることが確認できるかと思います。一方、緑の労働分配率につきましては、プラスに寄与している国、マイナスに寄与している国とありまして、その大きさも労働生産性上昇率に比べると小さいということが分かります。また、オレンジのデフレーターの差につきましても、プラスの国とマイナスの国がありまして、一定の大きさがあることが確認できるところであります。その中で、日本はマイナスの寄与が大きい国であります。さらに、日本はその他の要因も一定の大きさがあることが確認できます。
 7ページを御覧いただきますと、6ページの要因分解の方法について説明した資料となります。実質賃金の式を変形いたしますと、2行目の式、労働生産性とデフレーターの比率、さらに一番下の式に飛んでいきまして、これにさらに労働分配率と雇主の社会負担と雇用者と就業者の付加価値の比率を乗じたものに変形できるということであります。これらの変化を寄与として分解したものになります。したがって、先ほどのその他の寄与は一番下にあります雇主の社会負担と雇用者と就業者の付加価値の比率の変化による要因ということになります。
 8ページを御覧ください。8ページと9ページにつきましては、各国について労働生産性と実質賃金の伸びを比較したものとなります。日本は労働生産性が伸びているにもかかわらず実質賃金が横ばいとなっているところでありますけれども、ほかの国を御覧いただきますと、一定の乖離はありますが、労働生産性の伸びに伴いまして実質賃金が伸びていることが確認できます。また、国によっては労働生産性以上に実質賃金が伸びている国もありまして、例えば、8ページのイギリス、次の9ページを御覧いただきますと、ノルウェーやスウェーデンといった国につきましては、労働生産性よりも実質賃金の伸びのほうが高いということを示しております。すなわち、過去30年程度を見ますと、日本が非常に例外的な状況にあったことが確認できるのではないかと考えております。
 10ページを御覧ください。マクロの実質経済成長を確認したものになります。マクロの経済成長を見ますと、日本は低い水準であることが確認できます。日本より低い成長となっているのはイタリアのみであります。
 11ページ以降は、その要因を確認するために、11ページから13ページにかけまして、実質成長の寄与となりますTFPと資本と労働の伸びをそれぞれ確認しております。11ページがTFPの伸びを確認したものになります。OECDの表記で多要素生産性(Multifactor productivity)となっておりますので、そのように記載しておりますが、注1に記載しているとおり、TFPと同義のものと理解しております。TFPを御覧いただきますと、日本は、G7の中で低いほうではありますけれども、中位の下の方に位置し、特別に低いわけではないことが分かります。
 しかし、次の12ページを御覧いただきますと、資本の伸びを見たものになりますが、こちらは伸びの最も低い国となっているところであります。
 13ページを確認いただきますと、労働の伸びになりますが、多くの国がプラスとなっている中で大きなマイナスを示しているところで、最も低い国になっております。すなわち、マクロの経済成長が低いのは資本及び労働の伸びが低いことが主要因ということでありまして、人口減少が影響しているものと考えられるところであります。
 14ページ以降は、経済モデルで用いますパラメータにつきまして、OECDのSNA統計から計算いたしまして、国際比較を行ったものとなります。14ページ、資本分配率を確認いただきますと、日本は高い水準にあることが確認できます。
 15ページ、資本減耗率になりますが、こちらも日本は高い水準にあります。
 さらに、16ページを御覧いただきますと、総投資率となりますが、こちらも高い水準にあることが分かります。
 17ページ、利潤率の比較となりますが、こちらは一転して最も低いグループに入っておりまして、低い水準にあることが確認できます。
 最後に、18ページが資本係数の比較となります、こちらは逆に最も高いグループで高い水準にあることが確認できます。以上から、日本は、資本係数が高くて資本減耗率も高いということですので、付加価値の多くが資本減耗に充てられていることが分かるかと思います。そのため、総投資率が高くなりまして、資本分配率も高くなっているということが考えられるわけです。一方、資本分配の相当部分が減耗に充てられることから、利潤が低くなって、利潤率が低迷しているということが考えられるのではないかと思っております。
 以上、長くなり恐縮ですけれども、私からの説明は以上であります。

深尾委員長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等がありましたら、御発言をお願いします。
 私から、最初に口火を切らせていただきます。
 3点あります。
 1つ目は、資料1の16ページに資本分配率の定義が書いてあって、雇用者報酬と営業余剰で営業余剰を割ったものとなっているのですけれども、一方で、22ページ、利潤率は国内総生産に資本分配率を掛けて固定資産で割っている。本来だったら、資本分配率に雇用者報酬と営業余剰を掛けると利潤に当たると思うのです。これは、昔からこうなっているみたいなのですけれども、どうしてこうなっているのか。変えたほうがいいのではないかと私は思うのですけれども、それについて教えてくださいということが1点目です。間接税、補助金、混合所得の問題とかで、国内総生産とさっきの資本分配率の計算の分母の雇用者報酬と営業余剰の和の間には乖離が生じると思うので、利潤率のところが不正確な計算になっているのではないかということが私の1番目の疑問です。
 2番目なのですけれども、資料2の4ページで、交易条件が悪化したことで労働生産性の上昇に比べて実質賃金が上がらないということは非常に大事な問題だと思います。足元、御承知のように、交易条件は非常に悪化しているわけです。これは2021年までのデータなので、それがはっきりは出ていないわけですが、今後、この委員会としても、こういう交易条件の悪化が中長期的にどうなるかということは大事な問題かと思います。細かいことなのですが、この4ページの左側、国内家計最終消費支出デフレーターと消費者物価指数の乖離は、算定方式の違い等と書いてありますけれども、実際にはカバーしている消費支出の範囲が違うという問題も結構重要。政府が負担しているような医療や介護の扱いの違いの問題もあると思いますので、もうちょっと詳しく書いたほうがいいと思いました。
 最後なのですけれども、今日配られた資料の参考資料についても質問していいのですよね。参考資料1-1、内閣府の中長期の経済財政に関する試算のポイント、1月24日付のところで、成長実現ケースはかなり楽観的に出ている。例えば、潜在成長率についてかなり楽観的な見通しになっているわけですが、この背後で、先ほどの事務局からの御説明にもあったように、資本蓄積、TFPの上昇、労働時間といった分解もできると思うのですけれども、内閣府でそういういわゆる成長会計の分解をされているかどうか、将来的にそれは公表できるかどうかについて、教えていただければと思います。
 私からは、以上です。

佐藤数理課長
 1点目について中心にお答えさせていただければと思うのですが、利潤率の式について、資本分配率の式と整合性が取れているのかという御質問かと思います。これまで、この専門委員会でずっとこの式を使ってきたということですけれども、私の理解ですと、まず、利潤率の式を計算する際は、自営業者の混合所得も勘案するという観点で、GDPに資本分配率を掛けていると理解しております。どうしてそういうことをしているかというと、利潤率の計算の分母のほうは固定資産となっています。これは自営業者の資産も入っているということですし、その後で引いている資本減耗率も自営業者の資本減耗が入っているということなので、そこら辺の整合性を考えてこうしていると理解しているところであります。一方、資本分配率では、まさに「混合所得」という名のとおり、自営業者について、賃金に相当する部分か、それとも利益に相当するものか、そこは分けられないので、そこを除いて、簡便的に被用者だけで分配率を計算しているという理解でおるところであります。

深尾委員長
 混合所得については分かるのですけれども、22ページの国内総生産は、市場価格表示のGDP、つまり、もう一つ、間接税、補助金の扱いの問題はあるのではないですかね。混合所得については、分かりましたけれども。

佐藤数理課長
 間接税については、確かに議論があるところかと思います。そこについては、今後、考えていきたいと思います。

深尾委員長
 検討していただければと思います。
 CPIと家計国内最終消費支出デフレーターの違いについても、検討していただくという感じですかね。

佐藤数理課長
 CPIとデフレーターの違いについては、この算定方式の違いは、単にラスパイレスとパーシェの違いだけではなくて、先生のおっしゃるとおり、政府支出のある医療などの取り扱いが異なるということもあるかと思います。ここは、記載の方法を見直すということかなと思います。考えていきたいと思います。

深尾委員長
 分かりました。

前田参事官
 内閣府でございます。
 先ほど、深尾先生から、こちらの潜在成長率のグラフについてお尋ねをいただきました。ポイントの資料の、左側のグラフについてだと思います。詳細な数値につきましては、もう一つの参考資料1-2の計数表に詳しい数字を載せてございます。こちらの中に潜在成長率の数字を載せてございまして、先生の御指摘のとおり、このバックグラウンドのモデルの中には成長会計的な計算で供給側のモデルが組まれている状況でございます。この要素としては、今回の説明資料にもありましたとおり、TFP、資本、労働のコンテンツから成っております。TFPに関しましては、計数では示してはいないのですけれども、足元0.5のTFPが5年間で0.9%程度上がるという設定を文章で御説明させていただいておりますので、外形的に、5年後の2027年以降に関しましては、TFPが1.4と計算ができるということでございます。成長率は、例えば、2027年でございますけれども、1.9となっておりますので、その差分、0.5あるいは0.4という辺りが、投資、資本による影響ということで、外形的に計算することができるという形になってございます。

深尾委員長
 分かりました。ありがとうございました。
 どうぞ。

土居委員
 御説明をどうもありがとうございました。
 先ほどの深尾委員長のおっしゃった点、特に分配面から見たGDPの構成については、私も若干気になってはいます。特に、いわゆる付加価値税に相当する部分の整合性です。確かに、これまでの財政検証でも、資本分配率と労働分配率で、本当は付加価値税の部分がある、生産・輸入品に課される税の部分があるわけですけれども、モデル上、そこはそんなに深く追求しておられなかったと思います。そうかといって、仮定を置くわけにもいかないし、将来、税率が上がれば、当然そこの部分の構成比が大きくなるということは考えられて、GDPはその構成比の分だけ大きくなるということは考えられなくはないけれども、どういう理屈なら、それを表立って推計しなくても、モデル上、GDPの動きと資本分配率と利潤率の動きの整合性を取れるかというところは、経済モデルを考えるロジックとして、私も「こうすればうまく説明ができる」というほどの説明の根拠を今すぐにぱっとは思いつきませんが、行く行くはそこの整合性も踏まえた上での推計モデルの説明の工夫が必要かとは思いました。
 違う点で少し申し上げたいと思うことは、資料1で、総投資率と総貯蓄率を載せていただいています。前回の財政検証のときも、今後の総投資率の推移を考える上で、総貯蓄率を参照されたということは記憶しておりますけれども、いわゆる経済学でフェルドシュタイン・ホリオカ・パズルと言われている、国際的に、総貯蓄率と総投資率は相関が高いという現象が観察されている。本来、国際資本移動が自由になれば、その両者は乖離してもおかしくないのだけれども、なぜか資本移動が自由になっている今日においても、今日といっても、最初に書かれた論文は1980年ですが、その両者の間には相関が高いということが知られています。その後の幾つかの追従した研究を見ても、その両者は国際的に見ても相関が高い、だから、総投資率が高い国は貯蓄率の高い国、そういう相関関係が強いんだということが、フェルドシュタイン・ホリオカ・パズルとして経済学界の中では知られているわけです。けれども、足元、コロナの影響のせいなのか、それが若干ずれていると。この資料1の18枚目のスライドと19枚目スライドを見ると、当然ながら、コロナで消費や投資ができなかったので、貯蓄が増えていて、それとの動きとの間の関係は、コロナの下では、貯蓄率は上がっているけれども、投資率は横ばいみたいな、若干のずれはあるのですけれども、これを一時的と言うべきなのかどうなのかというところは、相関が高いというパズルは経済学界でよく知られていることなので、相関があると見立てて、今後も投資率は貯蓄率と似たような推移をすると踏むのか、それともまた違うロジックがあり得るということなのかということは、議論のポイントの一つになるのかなと思って拝見していました。
 もう一つは、資料3で、国際的に見たときに、労働生産性と実質賃金との間の関係で、今月、ちょうど『週刊エコノミスト』の2月7日号に、JILPTの樋口理事長が原稿を書いておられました。労働生産性の動きと実質賃金の動きは、本当は、完全競争市場だったら、両者は連動する。労働生産性が上がれば賃金も上がってくるということなのだけれども、雇主の賃金交渉力が雇われる側よりも格段に強いと、賃金が抑えられてしまうので、そうすると、その両者は乖離することがある。だから、各国は、いろいろな労働法制や政府の支援とかで、賃金が買いたたかれないようにするために、いろいろと支援しているんだという話が樋口先生の論稿には書いてあって、日本はそれが弱いと。この資料3の8ページと9ページに各国の国際比較があって、その両者の乖離が結構日本は大きいということは樋口先生も別の資料で御指摘されていて、まさにそれをこの資料でも如実に描写しているのだなと思いました。もちろん、その両者の乖離がなぜあるのかということを探求することがこの委員会かと言われると、また違うかもしれませんが、それを踏まえると、今後の経済前提を考える上で、その両者の乖離をどのように見立てるのか、今後の日本で、この乖離が縮まるということなのか、それとも引き続き乖離し続けるということなのかということをにらむというところで、経済前提の議論の非常に重要なポイントの一つになるのかなと拝見いたしました。
 最後に、2点、質問があります。
 1点目は、資料2の14枚目、マンアワーベースでの比較をされていて、これは非常にうまく説明されているものだと認識しておりますが、マンアワーベースでの動きはこうだったけれども、過去の財政検証の例を踏まえると、マンアワーベースの今後の労働力の推計がJILPTとかから提供されるということを今回の財政検証でも想定しておられて、今日、ここでマンアワーベースの動きはこのように整理できるのではないかと資料を提出されたのかというところを、今後、2024年の財政検証のときに、マンアワーベースの今後の日本における推移が何らかの形で推計されて、それを財政検証に用いることができるということを前提に議論をしていいということなのかどうなのかということを、1点目の質問としてお伺いしたい。
 2点目の質問は、私自身もきちんと把握し切れていないからなのかもしれませんが、資料1の12ページで、前回の財政検証の後、就業者・雇用者の実績がもともと推計されていたものと比べて上回っているという実績値の数値をグラフで示しておられます。「就業者数及び雇用者数の実績と見通し」という資料ですけれども、前回の財政検証のときに想定していた折れ線グラフに比べて上回っているということなのだと思いますけれども、これはどういう理由なのかというところが若干気になっています。1つ前の11枚目のスライドを見ると、確かに高齢者の就業率は高くなっていて、それが影響したということで説明してしまってほとんど問題ないという感じなのか、それともそれ以外に別の要因があるということなのかというところが気になったので、お伺いしたいと思います。
 以上です。

深尾委員長
 お願いします。

佐藤数理課長
 お答えいたします。
 まず、マンアワーベースのお話ですけれども、前回の財政検証でも、まず、経済前提の設定の際には、マンアワーベースの労働生産性を推計して、それを基に実質賃金を設定しているところであります。このマンアワーベースをどう計算しているのかという話かと思いますけれども、マンアワーベースを計算するには総労働時間が必要になるわけですけれども、この総労働時間は、JILPTの人数ベースの推計を基に、JILPTの労働力需給推計をつくるに当たって、1人当たりの労働時間がどう変わっていくかという前提がありますので、その前提を使って数理課で総労働時間は計算しているところです。JILPTの推計と整合性が取れるように総労働時間を推計しております。
 その次、2点目の就業者数が上回っている要因ですけれども、11ページの就業率はまさに12ページの就業者数の基になっているものですので、少なくとも就業者に関しては高齢者の労働参加が見通し以上に進んでいるというところが要因となって上回っていると考えているところであります。
 以上です。

深尾委員長
 ほかに、事務局から、今の御指摘について、特にないですか。よろしいですか。
 どうぞ。

権丈委員
 質問を1つ。
 資料3の15ページで、資本減耗率が日本は高いということは、どういう理由によるのか、教えていただければと。これは、最後のまとめのところで結構大きな意味を持つわけですよね。よろしくお願いします。

佐藤数理課長
 この資本減耗率が日本は高いというものはOECDのデータを取ったらそうなっているというところなのですが、どうして高いのかは我々も頭を悩ませておりまして、そこら辺で、もし逆に御知見があれば、教えていただければありがたい。

土居委員
 私が知っている限り、経済産業省とかが分析していますけれども、日本の固定資本のビンテージが古いというか、大分前の資本を使っているという話があります。もちろん、定率法的に考えると、だんだん擦り減る資本が減ってくるということなのかもしれませんけれども、全体として古い機械が相対的に多いという話までは承知しています。もちろん古いから直ちに固定資本減耗が多いということには必ずしもならないのですけれども、何らかのそのビンテージの効果は影響しているようにも思えるのです。この固定資本減耗の計算の仕方は内閣府にお伺いしなければいけないかもしれませんけれども、そのときにそういうビンテージがどれぐらい影響しているのかというところは何か関係しそうだという気はします。

深尾委員長
 私が知っている範囲では、恐らく、これが国民経済計算に基づいているとすると、日本の場合、内閣府が資本の減耗について調査を大がかりにされて、例えば、住宅の減耗率とかは結構高いわけですよね。ドイツとかは50年や100年ともつものが、日本は耐用年数が短く減耗率が高いとか、そういう要因も影響しているのだと思います。
 内閣府、ほかに何かありますか。

前田参事官
 統計作成部署ではないので、越権みたいになってしまうのですけれども、水準という問題では、最後に深尾先生におっしゃっていただいた点は大きいと思います。ただ、それが伸びているということに関しましては、土居先生の御見解のほうに近い話もあるのかなと思っています。

深尾委員長
 どうぞ。

玉木委員
 私が今回の御説明を伺いまして最も興味深かったことは、生産性の上昇率と実質賃金の上昇率の乖離でございます。まさに土居先生が御指摘の賃金に関する交渉力の格差は、大変興味深いところだと思うのです。この専門委員会の最終的な生産物は、超長期の、10年後以降の、数十年単位の表になるわけです。そうなってくると、数十年単位の中に入ってしまうようなサイクルの変化はならされてしまって関係なくなるわけですので、今後、生産性の上昇率と実質賃金の上昇率の乖離について御検討をされるときには、その要因が数十年よりももっと長い期間にわたって持続するようなものなのか、そうではなくて、短期的な在庫循環のようなもので、数十年を考えたらあまり関係がなくなるというものであるのか、この辺は御説明のときになるべく分かりやすく整理していただけるとよろしいかと思います。
 以上です。

深尾委員長
 交渉力の問題については、最近のところは、5~10年ぐらい、非正規の女性や高齢者とかの労働供給が非常に増えたということが起きたわけですけれども、例えば、労働経済学者の方にここに来ていただくとかして、長期的な見通しについて、これからどうなるかということを含めて、東大の川口さんとか、どなたか適当な方にお話を聞ければと思います。
 もう一つ、韓国と日本で交易条件がすごく悪化しているのは、私の専門の国際経済学で見ると、割とハイテクなものを作っていて、どんどん値段が下がってきている、そのことで輸出財が輸入財に比べて割安になり続けているということがあるので、結局、生産性の上昇で、安価なものを作って世界中に輸出するので、外国の人がその利益を享受してしまうという感じですよね。そういうことが韓国や日本では起きているという要因もあると思います。ただ、日本は、電機産業とかがだんだん弱くなって、自動車は海外に生産を移転していますし、おっしゃるとおり、長期的にこういう状況が続くかどうかということはかなり難しい問題で、考えてみるべき問題かと思います。

権丈委員
 樋口先生や清家先生や私とかは、辻村江太郎先生という先生の授業で「縁付きエジワースボックス」という話を聞いていて、頭の中に、労使間のバーゲニングポジション、交渉上の地歩という言葉がどうしても出てくるわけです。「縁付きエジワースボックス」は私の本『政策思想』の中にも、スミスとリカードの距離という文章で書いてますが、その中で、日本のここ10年から20年の制度を見ていると、企業内組合の交渉上の地歩の弱さが原因のひとつなのかもしれないのですが、物すごく安い労働力を生む制度をつくってきたわけですね。非正規というところで女性と高齢者という人たちが低賃金で働くような労働供給をせっせとつくってきたということは、現象としてはあります。これがヨーロッパの労働組合になってくると、そういう企業内労組とは全然違う形であると同時に、低賃金労働者が生まれてくる、非正規が生まれてくるといったら、これをブロックしないと今度は自分たちが危ないと考えていて、そこを出だしのところからまとめていくというか、保護していくということを、労働組合のほうから動いてくるわけですけれども、それがこの国ではなかった。だから、私は、基本的には、この国は、自民党は企業や経済界がつくった政党ですからという話をしていますけれども、経済界にとって都合のいい労働市場が出来上がってきて、二重労働市場となって、低賃金労働者である非正規の人たちの構成割合が高くなってきたから、総体としての賃金は伸びなかったという理解です。ほとんど昨日の経済教室みたいな話をしているわけですけれども、もうそうした供給源はなくなりますからね。女性も就業率はほぼ天井に近づいてきていると同時に、前期高齢者は去年ぐらいから減少し始めてきて、60歳以上の労働力人口は、増えないのではなくて、減っていきます。今までのような形で安価な労働力を利用することができないということになってくると、さて何が起こるかという話。そこで展開されるものとして、今日、この会議の前の時間の構築会議で話してきたことですが、安い労働力をもっと使わせろというレントシーキングが起こるから、それには政治は応えてはいけないという話とかになっていくわけですけれども、これから先、状況はかなり変わってくるのではないかと思います。

深尾委員長
 武田委員、お願いします。

武田委員
 本日は、本当にデータに基づく資料をたくさん御提示いただいて、ありがとうございます。いろいろな構造的な問題が理解できました。
 既に、幾つか議論として出ましたが、全部で5点ございます。
 1点目は、権丈先生がおっしゃったことについて、私は全く同感でございます。これまでは労働力をコストと捉えていた風潮がありますが、足元で労働参加率が天井に近づいている中では、人の獲得競争に変化が生じていると思います。そのような中で、本来ならば変わらなければいけない局面にあると思います。ただし、本当に日本が変われるのかという点が、恐らく、ここ1~2年、問われており、変われなかったならば日本は大変なことになるという結論ですが、変わる転換点にあるという一つの仮説を持つことも視野に入れなければいけないと思います。
 2点目は、今の話とも関係しますが、資料2の8に、労働時間の話がございました。人口減で労働力の減少を説明しがちですが、足元の状況を見ますと、雇用者数の増加は頭打ちになってきていますが、まださほど減少しているわけではない。つまり、女性やシニアの方の労働参加率が、ここまでのところは、上がってきています。一方で、労働時間に注目すると、緑の線が、下がっています。先ほど、事務局からは、一般労働者はあまり下がっていませんというお話がございましたが、緑との差という意味ではそうかもしれません。しかし、赤も、1994年から比べますと、傾向としてはやはり下がってきています。今後、どのように労働時間を捉えるかという点は、高齢化の問題だけではない要素として見ておくべきなのかどうか、一つ、論点と思いました。
 3点目の、CPIとデフレーターの問題については、前回も話題になったと記憶しておりますが、そのときよりもさらに差が開いていると思います。パーシェ、ラスパイレスの差はよく知られているところですが、海外とここまで違いが出ている理由として、先ほど、座長が韓国と日本がなぜ低いのかということを御説明してくださり、なるほどと思いましたが、海外との差において、CPIなどの統計の問題についても何か心当たりがありましたら、教えていただきたいと思います。
 4点目は、労働分配率が足元で上がっている問題です。SNAで出すとこのような結果になると思いますが、例えば、他の統計から類推して民間と公的部門で方向感に違いはないのか、もしお分かりになれば教えていただきたいと思います。
 最後に、貯蓄の問題です。先ほど、土居先生からも御指摘がありましたが、前回から上振れている背景として、コロナはかなり影響していると思います。弊社では、コロナ禍で、本来ならばこの程度であっただろうという貯蓄からの上振れ幅を推計しており、家計だけで64兆と推計しています。ここは、さすがに、これは継続せず、コロナによる影響が大きいことは踏まえておくべきではないかと思います。
 細かい論点で恐縮ですが、以上です。

深尾委員長
 すみません。武田委員、最後から2番目の質問をもう一回。

武田委員
 民間部門でこんなに上がっているのかどうか。労働分配率ですので、資料2の12ページでございます。

深尾委員長
 僕も、違和感はあったのです。
 事務局から、何か。

佐藤数理課長
 まず、分配率の話は、今、手元にデータがありませんので、もし民間で見たらどうなっているかというデータがあれば、必要な資料を提出したいと思います。

武田委員
 ありがとうございます。

深尾委員長
 確かに、日銀の経済・物価情勢の展望とかで見ると、企業はもうかっていて、労働分配率や労働報酬が下がっているということが大体の見方だと思うのです。それとこれが違うのはなぜかということは、事務局で調べていただければと思います。
 小枝委員、お願いします。

小枝委員
 私からは、何点かコメントを申し上げたいと思います。
 まず、資料1の14ページ、TFP上昇率の分布、直近の分布のところは、1994年から見ていると思うのですけれども、個人的には、この時期、構造変化などのエビデンスもありますので、この辺りから見ることが妥当かと思いました。バブルの頃を入れずにということになります。
 次のコメントですけれども、資料1の15ページですかね。過去10年移動平均を見ると、前回よりも高い運用利回りになっているわけですけれども、実績ベースでどれだけシナリオに入れていくか、あるいは、保有しているわけですから、国債の利回りをどのぐらい考慮に入れるのか、この辺は、一つ、論点になるのかなと思いました。
 デフレーターが賃金を押し上げている要因は、玉木委員や武田委員などが既にご議論されています。前回の前提でも考慮したわけですけれども、構造的にどれだけ考慮するかということは、国際比較で見ても日本は顕著に押し下げ要因になっているわけですから、やはり、論点の一つかと思いました。
 最後に、今、武田委員もおっしゃったのですけれども、労働分配率が5年前に下がって実質賃金が下がったという事務局の御説明があったと思うのですが、今回、足元で上がっているということなのです。それでは、実質賃金は上がるかというと、モデルでも(コブ・ダグラス等)、非線形性があり、資本や労働がどう推移していくかにもよりますし、この辺は、今回はそれほど論点にならないかと、感覚的には、思いました。労働分配率が足元で上がっていることが実質賃金にどう影響を与えるかということは、今回はあまり論点にならないかもしれないと思いました。
 以上です。

深尾委員長
 ありがとうございました。
 どうぞ。

徳島委員
 御説明をありがとうございました。
 幾つか、コメントと質問をさせていただけたらと思います。
 今回、資料2や3で御説明いただきました、日本の資本形成のところと資本減耗率の高さに関しては、最近不動産投資とかを見ている関係もありまして、諸外国と比べて、日本の住宅や設備の、いわゆる耐用年数というか、消耗期間が短いのではないかと感じます。時々申し上げるのですが、例えば、エンパイア・ステート・ビルディングは一体いつ竣工したのでしょうかと質問をよくします。日本の不動産の寿命の短さは、江戸時代の長屋、木造の時代からしみついているのではないかと言っています。諸外国と比較すると、資本のビンテージの短さみたいなものが日本にあり、結局、それが原因で労働への分配に回っていないのではないかと強く感じる次第です。
 具体的な質問として、まず、資料1の13と14で小枝委員からも御指摘のあったTFPのところですが、今回の四半期ベースで見ることには賛成です。一方、13ページのグラフを見ていくと、TFPは波を打って、サイクルのように上がったり下がったりしていて、ちょうど2018から2019の辺りで底をつけ、これが上に戻っていくとしても、上限の高さがどこまであるのかを慎重に見ないと、ミスリードされるかと思います。特に14ページ右下の分布を見ていますと、足元の四半期は低いところに偏っている形に見えていますので、今後、また1年程度、今回の財政検証の前提を考える際にデータが追加されて入って来ますので、それらがどういった推移をするかを慎重に見て行きたいと思います。
 資料1の次の15ページで、GPIFの運用利回りは、GPIFのポートフォリオが大きく変更されたときに、その事実を無視してGPIFの運用で高い利回りが獲得できるとすることは、即断過ぎると思います。例えば、6~7年前までは、GPIFのポートフォリオは約8割が国内投資でした。ところが。今のGPIFは海外に5割投資している。そういったポートフォリオの差を無視して過去の運用実績を援用することには疑問がありますので、例えば、現在の基本ポートフォリオでの過去のパフォーマンスをインデックスベースで試算したものを用い、それにGPIFの運用努力による超過収益獲得のプラスアルファをどう評価して乗せるかといった工夫が、必要ではないかと思っております。
 3点目です。資料の2の14と資料3の6を比較しますと、今日一番議論になっている実質賃金上昇率と労働生産性上昇率のところなのですが、結局、資料3の6ページでいきますと、日本のグラフで一番下になっている「その他の要因」でマイナス項目になっているところ、資料2の14でいくと、色々な事項が書いてあって、これらが全て「その他の要因」に入っていることのようです。他の国々とデータの作成方法が必ずしも一致はしていないのですが、なぜ他の国で「その他の要因」がこんなに大きくならないのか。そういった統計の構造を見ておく必要があるかと思料します。結局のところ、日本においては「その他の要因」のマイナスによって、労働生産性が上がってもマンアワーベースの実質賃金上昇率が上がらないという構造に帰結しているように見えますので、慎重に考えて行きたいと思いました。
 以上です。

深尾委員長
 ありがとうございました。
 事務局から。

佐藤数理課長
 幾つか御意見をいただきました。
 今後もいろいろと資料を提出して御議論いただきたいと思っておりまして、例えば、GPIFのポートフォリオの変更の影響とかも、調べて提出していきたいと思っておりますので、今後も引き続き御議論いただければと思います。よろしくお願いします。

深尾委員長
 7ページにも書いてありますけれども、「その他の要因」の中で雇主の社会負担の問題は結構重要だと思いますので、限界生産性と報酬の間、賃金との間に入る部分も議論できればと思います。
 どうぞ。

藤澤委員
 説明をありがとうございました。
 少し違った視点で、2点、コメントを申し上げたいと思います。
 1点目は、前回複数の委員からコメントがあったコロナの影響をどう見るのかという点です。企業年金の場合も、数理的な前提を置いて将来推計を行っていますが、例えば、リストラ等があった場合、異常年度の脱退実績の全てを使用しない取扱いも認められています。異常年度のデータを全て除外するという取扱いです。公的年金でも同様の取扱いとすべきかということを自分なりに考えてみたのですが、よりどころとなる資料として、国際アクチュアリー会というところがございまして、そこが作成した実務基準がございます。第78回の年金数理部会で、「社会保障アクチュアリーの実務に関する国際動向」というタイトルで坂本委員が報告しているものでございます。日本には社会保障に関する実務基準はないのですが、そのような国に対してモデル実務基準として提示したもので、社会保障の財政分析に関与するアクチュアリーが集まって作成したベストプラクティスが記載されている資料になっています。その実務基準を確認したのですが、企業年金と異なって、異常年度を除外する記載はございませんでした。一方で、プロジェクションということが背景にあるのだと思いますが、前提は中立的に設定されなければならないという記載がございました。異常年度は、何が異常なのかを定義しないといけなくて、一定の恣意性が入る余地があると思っています。今回事務局から示していただいた実績データを見ても、細かい部分はいろいろあると思いますが、物価や賃金も異常と言えるほど上昇はしていないと感じています。また、公的年金は、約100年という長期のプロジェクションを行うものでございまして、その間にコロナのような外的ショックが起こらないということは誰にも言えないと思っています。あと1年ぐらいの状況をモニタリングする必要があると考えていますが、中立的な前提を設定するという趣旨で、コロナ期間もそんなに特別な処理を行わないことが国際アクチュアリー会の実務基準にも整合的な取扱いだと考えてございます。
 もう1点、少し細かい話ですが、前回の専門委員会で報告があった積立金を平滑化すべきかどうかという論点です。前回の委員会だと、平滑化期間を5年とした収益差平滑化方式の説明がございました。その場合、財政検証の企業年度の収益だけではなくて、過去5年の収益を5分の1ずつ認識するという形になると考えてございます。長期の運用利回りについては、一定率なので、平滑化しても問題ないと思いますが、足元の運用利回りは、年度単位で決めていますので、予定と実際の利回りの認識のタイミングが少しずれる点が少し気になっています。例えば、資料1の6ページや7ページを御覧いただくと、2020年度の運用スプレッドが24%前後ですかね。かなり大きくなっていて、収益差平滑化方式を用いると、これが2024年度の収益まで影響することになると考えています。一方で、予定の運用利回りは、足元の前提は内閣府試算をベースにしているので、年度単位でその運用収益を見ると、認識のずれのような、期ずれが発生すると思っています。ただ、財政検証は、超長期の推計を行っているので、年度単位の収支にはそんなにこだわる必要はないという点は理解していますが、積立金の評価方法を変更する場合は、その影響や経済前提との整合性も考慮したほうがいいと考えてございます。
 以上です。

深尾委員長
 事務局、ありますか。

佐藤数理課長
 1点、積立金の平準化に関して、期ずれのようなものが起きるという話がありましたけれども、そもそも、財政検証で設定している運用利回りは、時価の運用利回りなのか、それともある程度平準化した運用利回りなのか、また、財政検証で推計している積立金は、時価の積立金なのか、それとも平準化後の積立金なのかといったところの整理が必要かと考えています。今の話は多分そういった整理とも関連してくるかと考えているところであります。
 以上です。

深尾委員長
 ほかによろしいですか。
 どうぞ。

土居委員
 先ほど徳島委員がおっしゃった、資料3の6ページ、日本は「その他の要因」が大きいという話は、資料2の15枚目のところである程度読み解けるというか、ここでは労働分配率の変化という緑のものが日本はほとんどゼロなので、そうすると、デフレーターの差でマイナス0.6、残りが「その他の要因」。資料2の15枚目にある「雇主の社会負担の増加」と「その他」を合計したものが資料3の6枚目に入っているという話なのですよね。この間、25年で消費税が3%から10%まで上がっているという日本ならではの「その他の要因」は、ほかで打ち消し合っている可能性はもちろんあるので、どこまで消費税の影響かということは自明ではないにしても、大きくてもおかしくない、イベントは確かにあったかなと、そんな感じがしたというコメントです。

深尾委員長
 ほかはよろしいですか。
 今日は、非常に貴重な意見をありがとうございます。大分、問題点、論点ははっきりしたと思います。今日の議論を踏まえて、次回以降、また議論を深めていきたいと思います。
 1点、私から付け加えるとすると、土居さんがおっしゃったフェルドシュタイン・ホリオカの国内貯蓄と国内投資の関係の話なのですけれども、ちょうど前回、植田さんは前の委員長だったわけですけれども、植田さんとお話しする機会があったのですが、基本的にこの委員会の経済モデルは完全資本移動を前提にしないと。完全資本移動だったら投資は世界金利と国内の投資機会で決まってきて国内貯蓄からは影響がなくなる。貯蓄超過分だけ経常収支が黒字になるだけなわけですが、日本は、御承知のように、ずっと貯蓄率が非常に高くて、それをいかに財政赤字で吸収するかと、経常収支で黒字を出すとアメリカから文句を言われて貿易摩擦が起きて円高になるとか、いろいろなことで苦労をしてきたわけです。そういう実態を踏まえると、そもそも世界金利がどう動くかを予測することもすごく大変ですし、不完全な資本移動を前提にしたモデルみたいに、ちょっと中途半端にはなっているけれど、それが現実的な仮定でありやむを得ないのかなと。同時に、御指摘のとおり、貯蓄の動向とかを考えると、例えば、貯蓄と投資の差額は経常収支の黒字になるわけですが、どれくらいの経常収支黒字を国際的に出す余裕があるのか。貿易摩擦の問題や海外の投資機会の問題も含めて、考えていくのか。資本蓄積のことを考えるときには考える必要があるのかなと思いました。理論的にはすっきりしないのだけれどもやむを得ないということが、この間、植田さんとお話ししたときの印象でした。
 ほかにはよろしいですか。
 労働の話は、権丈先生からも御指摘がありましたけれども、またぜひ考えていきたいと思います。

権丈委員
 「パート」という言葉を単に短時間労働者と言えないこの日本は、何か不思議な世界であると。向こう側では、パートタイマーは短時間労働者、それだけの意味で、別に劣等処遇はほとんどない意味になりますけれども、こっち側は「パート」と言っただけで意味が変わってしまう。外国の人に「パート」の説明しなければいけない、非常に残念な状況にあるところに、かなりこの国の労働市場での特徴があるかと思います。

深尾委員長
 ほかにはよろしいですか。
 それでは、まだ時間よりは早いのですが、今日の議論は大体尽くせたと思いますので、本日の審議は終了したいと思います。
 事務局から、何か御連絡はありますか。

佐藤数理課長
 次回以降の日程につきましては、改めて御連絡申し上げたいと思います。
 よろしくお願いします。

深尾委員長
 ありがとうございました。