第13回全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会(議事録)

日時

令和5年2月9日(木) 14:00~16:00

開催方法

WEB開催

議事

議事内容
○原澤推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第13回「全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会」を開催いたします。
 委員、参考人の皆様方におかれましてはお忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 事務局を務めさせていただきます厚生労働省健康局がん・疾病対策課の原澤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず最初に委員の御出席状況の確認でございます。
 本日、全ての委員に御出席をいただいてございます。
 また、参考人の皆様につきましては時間の関係上、御紹介は割愛させていただきますので「参考資料1 委員名簿・参考人名簿」のほうを御参照ください。
 なお、参考人の先生方におかれましては、御発表もしくは御発言時のみ画像をオンにしていただくようにお願い申し上げます。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。資料につきましては、厚生労働省のウェブサイトに掲載してございます。議事次第、資料1から資料4までございますので御確認いただきますようお願い申し上げます。
 また、本委員会はYouTubeにて配信をしておりますので、その点も御承知おきください。
 事務局からは以上でございます。
 以降の進行は中釜委員長にお願いしたいと思います。中釜委員長、よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 委員長の中釜です。皆様、本日もよろしくお願いいたします。
 限られた時間ですので、早速本日の議事に入りたいと思います。
 まず議題1「全ゲノム解析等に係る検討状況等について」、厚生労働省健康局がん・疾病対策課より、資料1「全ゲノム解析等に係る検討状況等について」の御説明をお願いいたします。
○がん・疾病対策課(増田) よろしくお願いいたします。がん・疾病対策課の増田です。
 厚労省から「全ゲノム解析等に係る検討状況等について」、ポイントを絞って御説明させていただきます。
 次のスライドをお願いします。こちらは、「全ゲノム解析等実行計画の推進」に係る政府方針で、いつもと変わりありません。
 3ページ目は、「令和4年度のスケジュール」です。本日第13回専門委員会では、事業実施準備室に係る事項がメインの議題となります。
 また、本年度は3月9日、第14回の専門委員会を最後に行う予定としております。
○水澤委員 スライドが出ていないのではないでしょうか。まだ資料の一覧表しか出ていないと思いますが、よろしいですか。
○原澤推進官 確認いたしますので、少々お待ちください。
○水澤委員 今、出ました。
○がん・疾病対策課(増田) そうしましたら、これまでのところはいつもと大きな変わりはございませんので、続けさせていただきます。
 1枚、前に戻していただけますでしょうか。
 こちらが、「実行計画2022」の概要です。大きく変わりありませんが、現在、「実行計画2022」に沿って10万ゲノム規模を目指した解析、患者還元、情報基盤の構築を推進しており、また、事業実施組織、ELSI・PPIに係る事項について検討を進めております。
 5ページは、実施体制です。
 6ページは、厚労科研中釜班の実施体制です。
 7ページも特に変わりありませんが、「令和4年度AMED研究班の概要」と実施体制です。
 8ページは、前回の専門委員会からアップデートがございます。「AMED研究患者還元班のこれまでの成果」です。全ゲノム解析等の結果に基づくエキスパートパネルの実施は、1,000例を超えました。治療薬の選択やがん腫の診断に有用なActionable変異の検出につきましては567症例、その中で既存の検査では検出できないがんに関与するゲノム異常の検出は123症例に認められました。
 また、全ゲノム解析の結果が診断に有用であった例が46症例、がん以外の疾患に関与する可能性が高いゲノム異常の検出についても42症例で認められております。
 今後は、こういった結果に基づく創薬の促進ですとか、患者還元の拡大というところが課題となりますので、引き続き検討を進めていきたいと思っております。
 9ページは、「出口戦略コホートに参画する医療機関について」です。
 まず、現状、出口戦略コホートにおいて臨床試験が行われておりますが、臨床試験については対象となる疾患や目的等が絞られておりますので、その成果を速やかに創出するためには高い症例集積力が必要です。
 一方で、「全ゲノム解析等実行計画2022」では、本研究に参画する要件としてゲノム医療中核拠点病院、またはゲノム医療拠点病院であることが示されており、参画可能な医療機関は限定されている状況です。
 そういったことを踏まえ、【対応方針(案)】として、戦略コホートに関しましては臨床研究グループに属しているなど、多機関共同研究等の実績のあるがんゲノム医療連携病院であれば参加を可能としてはどうか。また、がんゲノム医療連携病院の参加の可否については、研究班の代表者からゲノム医療連携病院を追加することの必要性や、追加を希望するゲノム医療連携病院の実施体制等について理由書を提出していただき、その理由書を専門委員会で審議することとしてはどうかというのが【対応方針(案)】となります。
 理由書の具体的な中身に関しては、本日、議題3で厚労科研中釜班から発表がありますので、そちらの患者還元ワーキングからの議題の際に御審議いただければと思っております。
 10ページは、難病領域のAMED研究班の概要です。
 11ページは「難病領域AMED研究班のこれまでの成果」ですが、令和3年度までに6,861検体の全ゲノム解析を実施しております。診断困難な疾患において、全エクソン解析でも疾患の特定に至らない患者のうち、9.4%が全ゲノム解析を通じて疾患の特定に至ることが示されました。
 12ページは御報告ですが、令和5年度のAMED全ゲノム研究に関しまして公募が行われました。がん・難病全ゲノム解析等実行プログラムとして、事業間連携による新たなプログラムとしての公募が行われました。現在審査中でございますので、こちらについては、結果が出ましたら専門委員会でもご報告いたします。
 13ページは、中長期的なスケジュール(案)です。一番下に「法人」と書いてありますが、その中の黄色で書かれております事業実施準備室のところが本日のメインの議題となります。こちらについては厚労科研中釜班準備室ワーキングから発表がありますので、そこのところについて十分な議論ができればと思っております。
 私からは以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの資料1の説明につきまして御質問、御意見ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、もし何か後ほどお聞きになりたい点がありましたら御意見をいただければと思います。続きまして議題2に進みたいと思います。
 議題2ですが、AMEDの土師課長より資料2「全ゲノム解析等に係るAMED研究について」の説明をお願いいたします。
○土師委員 AMEDの土師でございます。AMEDからの御報告も、要点を絞り報告いたします。
 まず2ページ目でありますけれども、研究概要になります。全ゲノムシークエンスの解析計画数は、A班はR3年度に1,500症例、R4年度に2,000症例、B班はR3年度分として8,400症例でございます。
 3ページ目、まずA班でございますけれども、R3年度分につきましてはホール・ゲノム・シークエンスがFASTQデータ受領数、データ確定数ともにほぼ完了いたしております。現在、R3年度分のRNA-seq及びR4年度分のホール・ゲノム・シークエンス及びRNA-seqの解析を継続しております。
 4ページ目はB班の状況です。こちらはホール・ゲノム・シークエンスはほぼ完了いたしまして、RNA-seqは約80%が完了しております。A班、B班ともに、各班の詳細は表を御覧いただければと存じます。
 5ページ目は、臨床情報のEDC入力の進捗状況です。A班、B班ともに、施設の状況に応じてEDCシステムに直接入力する方法、あるいは一旦エクセルシートに情報を集約いたしましてEDCに流し込む方法により、臨床情報の基本項目及び全項目の入力を進めております。予後などの臨床情報で未確定の情報につきましては、2023年3月1日時点の情報を入力することとしておりまして、各班とも本年度中にEDC入力を終える計画で進めております。
 6ページ目は、エキスパートパネルの状況です。それぞれの項目につきまして、数値の増加が認められております。詳細につきましては、先ほどの厚労省の資料にもございましたので、そちらの内容とも併せて御覧いただければと存じます。
 続きまして、C班の状況です。7ページ目にありますマル1からマル6のそれぞれの6つのチームにつきまして、それぞれのチームにおけます進捗状況の概要を8ページ目と9ページ目に記載しております。
 8ページ目のほうですけれども、集中管理チームにおきましてはホール・ゲノム・シークエンスデータや各種の情報をひもづけて管理するシステムにつきまして委託先を決定し、構築作業を進めているところでございます。
 ゲノム解析チームにおきましては、解析はホール・ゲノム・シークエンスからRNA-seqへと軸足を移しつつございます。
 臨床情報チームでは、EDCの改修を継続しながら運用を進めているところでございます。
 9ページ目になりますけれども、出口戦略チームにおきましては基本コホートは研究用CGP検査の出検が可能となりまして、戦略コホートではENSEMBLE試験、乳がんのNAC観察研究、非小細胞肺がんの周術期観察研究の症例登録が始まってございます。
 最後の10ページ目は、今年度のスケジュールでございます。
 AMEDからは以上でございます。
○中釜委員長 ありがとうございました。
 それでは、資料2の説明につきまして何か御意見、御質問ございますでしょうか。
 では、中村委員お願いいたします。
○中村委員 当初シークエンスの数だけではなくて1人当たりちゃんとデータがカバーされているのか、あるいはクオリティーがどうなのかをチェックする話が、たしか河野先生のほうからされていたと思いますけれども、ここまでやった。そのやった結果としてちゃんとカバーされているのか、シークエンスの質はどうなのかということをチェックしていくということで始まったと思いますけれども、全くそのデータが出てこないのはちょっと納得できません。
 そもそもこのゲノムシークエンスが始まるときに、質が大事だ、あるいはちゃんと言ったとおりにカバーできているのかどうかという話があったはずですけれども、これはもうYouTubeで公開されているのですから、委員会の責任としてこういうことをしますと言った以上、その結果もちゃんと示されてしかるべきだと思います。今日、間に合わないんだったら次回にはちゃんと企業に委託してやった結果がどうなったのかということを明確にお示しすべきだと思いますけれども、違うんでしょうか。
○土師委員 中村先生、御指摘ありがとうございます。
 A班、B班の結果におきまして、QCに関しましては例えば3ページを御覧いただきますと、R3年度、R4年度のデータ確定数というところでここはQC完了数としておりますけれども、塩基数あるいはQVをクリアしたものということで数値はお示ししているところでございます。
 また、厚労科研のほうにおきましては、このQCに関しまして別途議論しているところがございますので、後ほど御紹介があるかと考えてございます。
○中村委員 これを臨床現場に広げていくためには、みんなしゃんしゃんで終わっていると思わないで、どういうクオリティーだとどういう結果だったのか、どこの施設がどれだけのクオリティーのデータを出していたのかということをやはりちゃんと検証しないと。
○土師委員 承知いたしました。
○中村委員 QCですが、結局QCもはっきりどこが基準か決まらないままに始まったと思うんですけれども、そこを含めてどういう基準をクリアしたのがどれだけの数あったのか。それは今後のために絶対に必要になってくると思いますので、そこを何かファジーにしないで、ちゃんとこういう分布だったとかという定量的な指標を示していただきたいと思います。
 以上です。
○土師委員 承知いたしました。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございます。恐らく、後ほど厚労科研研究班の解析・データセンターから全体のデータのQCの状況についてはプレゼンがあると思うんですけれども、御指摘の解析機関ごとのデータに関してはまた検討いただきたいと思います。ありがとうございます。
 ほかに御質問ございますか。よろしいですか。
 葛西参考人、お願いいたします。
○葛西参考人 すみません、参考人なんですけれども、システムの基盤に関することでちょっと気がついたことがございますので1点だけ簡単にですが、現状、実は今日のデータを見ても手で入力するのは結構負担が大きいんだなということがちょっと分かりました。結構、手で入力されるとどうしても臨床情報がなかなか取れないんだなというのがあります。
 それからもう一つは集中管理というところ、これは実際には検体と臨床情報をひもづけて管理する部分、そしてゲノム解析は解析ですね。ゲノムのデータはパイプライン、臨床情報は臨床情報というふうにそれぞれが実は部分最適になっています。
 これを本来は患者プロファイルとして1つにして、ちゃんと産業側に渡せる状態で一気通貫の集中管理構造が必要なはずで、少し研究班のプラットフォームを統合化するようにシステムドリブンで見直す必要があるのではないかと思います。
 今の状態では、それぞれの分野、分野で単に部分最適されていてその部分、部分の機能はうまく回るかもしれないですが、最後に実は産業なり、外部に研究なりにデータを利用しようとすると、あれが足りない、これが足りないということになるので、統一的な基盤状態にこれから持ち込むように研究班の在り方を少しずつ見直していくことを御検討いただければと思います。
 以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 重要な御指摘と思います。後ほど、こちらも厚労科研の解析班、井元班から現状の報告とその部分最適のところでいかに統一的な基盤を構築するかということに関してもまた御意見をいただければと思います。ありがとうございます。
 ほかに御質問ございますか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、議題3に移らせていただきます。議題3は「全ゲノム解析等に係る厚生労働科学研究について」です。こちらについては各ワーキンググループ長より説明をお願いしたいと思いますが、本日は時間の関係上、まず患者還元ワーキンググループからELSIワーキンググループまで御説明いただいた後で、まとめて御質問、御意見をいただく形で設定したいと思います。
 それでは、まず患者還元ワーキンググループ長の河野参考人から説明をお願いいたします。
○河野参考人 よろしくお願いします。国立がん研究センターの河野です。
 次をお願いいたします。
 2ページは患者還元ワーキンググループでございますけれども、特に今回に関しましては一番初めの厚生労働省からの御説明もありましたように、施設を追加するというところに関して進捗がございましたので、そちらを御報告させていただきます。
 4ページです。まずその病院でありますけれども、前回から議論になっておりますが、連携医療機関を追加する必要性があるということが臨床現場から挙がっております。そこで、どのように追加するかということで真ん中でございますけれども、「追加までの手順」としまして、まずは代表者からAMEDに理由書を提出し、それを患者還元ワーキンググループで内容を確認、不明点等を改訂して、ゲノム専門委員会で審議し、承認、そして再びそれが臨床研究者に伝えられる。こういう方針でいくということを前回提案させていただきました。
 そして、今回理由書というものをつくってまいりました。今までは中核拠点病院、もしくは拠点病院の参画が望ましいということでしたが、さらにがんゲノム医療において熱意や実績、能力のあるがんゲノム医療連携病院の参加をいただくということが臨床試験を動かすですとか、それぞれ実装していくに当たって有益であるというふうに考えました。
 そこで、今回要件としては下の5つのポツにありますような要件、具体的には遺伝子パネル検査の実績がある、あるいは連携病院ではありますけれども、部分的にがんゲノム医療中核拠点病院の要件を部分的に求める。または、EP開催ができるという要件を部分的に求める。さらに、責任の所在を明らかにする。そして、一番上にありますけれども、これまで議論に挙がってきましたような以下の要件を満たすというようなことをチェック表としております。
 5ページが、具体的に作成いたしましたチェック表でございます。色分けにしておりますけれども、下の色分け、例えば遺伝子パネル検査が5例以上、あるいは専門的な知識を要する常勤の医師が配置されているですとか、そのほか資料の取扱いのことが書かれております。
 また、真ん中、灰色の部分ですけれども、今回の二次的所見の返却ということが非常に大事な要件となってきています。そこで、その二次的所見の開示に関する責任医師、あるいはゲノム臨床情報の提供に関する担当者、そういうものがきっちりと責任の所在が分かるということ。
 そして、最後にこの全ゲノムの患者還元の研究について統括する医師が設定されている、またはその方にはきちんと業績があるということを宣言していただきたいと思っております。
 また、その下、もともとのゲノム専門委員会で追加してきた要件の中の一つでございますけれども、ゲノムリテラシーの向上、あるいは臨床試験や治験の実績、そういうものも宣言していただきたく思います。
 6ページですが、もう一つ、今回臨床現場からやはり挙がってきたものでありますけれども、今までこの全ゲノム解析というものの対象症例ですが、質や量に優れた外科的切除サンプルの得られる周術期の患者さんについて1患者1検体ということで解析をしてきております。
 しかしながら、今回再発あるいは転移をしたというときの場合に、その解析あるいは重複がんと思われるようなもの、すなわち個別に解析したほうがよいという腫瘍の解析、こういうものが治療の選択で必要な場合には今回の解析に含めてもよいというふうに考えました。
 このAMED研究では便宜上、登録数というものがありますので、別症例として2症例として1つの患者さんからの2検体をカウントするということではいかがかと思っております。
 以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。重要な2点についての検討の提案であります。
 続きまして、解析・データセンターワーキンググループの活動について、井元参考人からお願いいたします。
○井元参考人 井元でございます。
 では、次のスライドをお願いいたします。私のほうからは先ほども話に挙がりましたQC、クオリティーチェックについて現在得られている結果を報告させていただきます。
 クオリティーチェックに関しては、研究班もしくは医療施設で確認するQC0から、受託会社で確認するQC1、これは、受託会社で得られるシーケンスデータの基本的なQCになります。解析班の実施するQC2は、実際にリファレンスゲノムにデータをアライメントし、その上で細かいクオリティーを確認するものになります。
 その上で、厚生労働科研中釜班の解析・データセンターワーキングとして実施するQC3があります。これはQC1、QC2を合わせて実施するクオリティチェックという位置づけであり、受託会社で実施する簡便なQCの結果と、実際に解析して初めて判明するQC2の関係を検討し、何らかの問題があると考えられる検体を見いだし、例えば試薬に何か偏りがあるのかとか、サンプルの調整方法に何か偏りがあるのか等を確認することで将来のサンプルの取り扱いやシークエンス解析に活かすことのできる情報を提供することを目的としています。
 また、解析する検体は、正常検体と腫瘍検体のペアの検体ですので、ミスマッチがあっては発見されるバリアントの情報は信用するに値しません。解析ペアにミスマッチがないか、他人の検体が混ざってしまっていないか、そのようなクオリティチェックもQC3に含まれます。
 9ページですが、QC1とQC2の項目をまとめた表になっております。受託企業のほうで行うQC1が左側、右側が解析・データセンターで行うQC2となっています。
 QC1として受託企業ではショートリードデータの基準は黒で書かれていますが、クオリティーバリューが30以上、これは99.9%以上の精度に相当しますが、その塩基の割合が75%以上、QV20、99%以上の精度が90%以上の塩基であることという基準になっております。
 この基準について少し細かいことを申し上げますと、シークエンサーをつくっているイルミナ社が各シークエンス機器について担保しているクオリティがあります。ただし、それは1回のランで生成される全てのデータを対象にした基準になっています。
 一方、このQC1として先ほどAMEDから報告がありましたクオリティースコア基準をパスしている検体数は、それぞれの検体に対してこの基準に当てはめてクリアしているかどうかを判定しているものです。
 QC1については、前回の中間報告として約9,000症例分で紹介しましたが、今回は資料に含めておりません。来月に詳しく、必要に応じて班ごと、もしくはがん腫ごとに集計して報告したいと思っています。今日はQC2の結果と、QC3の方針に関してお話ししたいと思っています。
 QC2については数値的な基準は特に設けられておりませんが、全体の分布の中で問題がある可能性のある検体を見いだしていくことになります。
 10ページです。解析・データセンターで実施するQC2は、シークエンスデータをリファレンスゲノムにアライメントし、その上で詳しくデータのクオリティーを見ていくというものになります。4つのポイントで見て行きます。
 1番目はマッピング率です。得られたシークエンスリードがリファレンスゲノムにマッピングされる割合です。
 重複率というのは、あまり細かいことは申し上げませんけれども、実験的な問題で全く同じシークエンスリードが生成されてしまうことがあります。これは無駄なデータですので、重複リードの割合を見ていくことになります。低いほうが好ましい事になります。
 次のインサート長は、DNAを断片化して生成されるDNA断片の長さのことです。これは、後でまた説明します。
 最後の読み取り深度は、どれくらいのデータ量を個人のゲノムを解読するために読んだのかという情報です。正常検体は30x以上、腫瘍検体は120x以上の読み取り深度で読むことがQC1の基準でしたが、アライメント後には重複リードはもちろん除外されますし、アライメントをする際にエラーが多いリードはやはり除かれてしまいます。従いまして、基本的にQC1よりも少し浅めの読み取り深度になってしまう傾向にあります。QC2では、どれくらい減ってしまうのかということを検討するべきであると考えています。その減少割合が特定の実験条件などで大きく変化するかなどはQC3の領域になってきます。
 QC2のそれぞれの項目について、前回は、3,649症例でお話ししましたが、今回は8,670症例の解析結果に基づくものとなっています。
 11ページですが、これはマッピング率です。「マップ率」と書いてありますが、先ほどのスライドでマッピング率と書いたものになります。8,670症例の結果で、左側が正常検体、右側TがTumorで腫瘍検体になります。平均値、中央値等は右側のテーブルに書いていますが、ほぼ100%になっていて、前回の結果とほぼ変わりはありません。
 一方、表示はボックスプロットですけれども、箱がもう潰れてしまって見えないわけですが、特に正常検体のほうで、ややマップ率が低い検体もあります。マップ率が99%以下になってしまった検体の割合を、正常検体と腫瘍検体で集計していますが、正常検体は3.1%、腫瘍検体は0.1%です。3,600検体でレポートした前回と比べますと、前回は正常検体のほうは99%以下のマップ率の検体というのは6.8%でした。
 一方、今回は8,700ですが3.1%と減っていました。解析は、解析班にデータが届いた順番で基本的には実施しております。ということは、初期のデータよりも今回の基準でシークエンス解析をある程度実施した後のデータのほうがだんだんと精度が高くなってきたというところもあるのかもしれないとも思っています。
 また、それはQC3として、データ受領時期とクオリティに関係があるのかについては見ていこうと思っております。
 12ページです。これは先ほど少し説明しましたが、シークエンスリードの「重複率」の分布を正常検体と腫瘍検体で分けて表示しています。平均値13%、中央値12%になります。重複率は先ほど少し説明しましたけれども、実験場の問題で全く同じリードが生成されてしまい、それらは無駄なデータになってしまいますので、重複率は低いほうが望ましいわけです。前回の3,600検体の結果で言うと、平均値、中央値、ともに2%程度今回の結果の方が低くなっていました。やはり後で受領したデータのほうが重複率が低い傾向にあったのではないかと思います。
 重複率の値としての絶対値的な意味合いは、30%以上になるとちょっと高いかなと思っています。それが、この箱ひげ図のひげよりも外に出ているぐらいのところになってきまして、正常検体で1%、腫瘍検体で0.6%が該当します。
 13ページは「インサート長」の結果になります。DNA断片の長さですが、平均値480、中央値440程度となっています。これは正直、実験の設定次第なところもありまして、解析班で進めているNGSのSOP作成では、インサート長に関しては350の設定と550の設定があるということが受託会社からのレポートで挙がってきています。このインサート長の評価も、幾つで調整されたものかということを併せて見ていく必要があると考えています。
 14ページは「読み取り深度」になります。こちらはデータ解析ではとても大切な指標となります。正常検体では、QC1で30x以上あること、腫瘍は120x以上ということになっています。アライメント後では、平均値は正常検体31.5x、腫瘍検体120.9xとなりました。
 このボックスプロットを見ますと、読み取り深度がかなり低くなってしまっている検体もあります。この一番下ですね。正常検体でQC1の基準を下回っているものが47.5%、腫瘍では40.6%です。
 一方、前回の3,600検体の解析では、特に腫瘍検体でQC1基準を下回る検体が50.5%でした。それに比べると、今回は10%ほど改善しております。これは、後から受領したデータはDepthが厚かったということもあるかも知れませんが、一部のデータに関しては読み足しされたものが届いたりしていますので、その影響もあるかと思っております。
 15ページのスライドですが、QC3の見方の一つとして例示させてもらったものになります。この表は、QC1でのDepthとQC2でのDepthで大きく食い違いがある10検体をピックアップしています。トップ1は、QC1では34.7xあるものが、アライメントした後、4.7xになってしまっている。これは一番大きな差があった検体でしたが、なぜこのような事が起きたのか原因を幾つか探りました。
 1つは、マップ率が低い。先ほどほとんど100%であったマップ率が、この検体に関しては八十数%しかございません。もう一つが、マッピングクオリティーが低い。150塩基あるリードの中で、大体30から40塩基ぐらいしかアライメントされていないんです。このデータはもう少し深く調べる必要があると思います。主な理由としては、マップ率やマッピングクオリティーが低いことがこのような大きな差になる原因ということが見えてきております。
 こういう網羅的な検討を行いまして、検討を要する検体をピックアップします。その検体について、どのような検体なのか、どういうがん腫で、DNAの処理の方法や、使われた試薬など検体や実験について偏りがないか確認しながら、解析班でつくられているSOPにも関係しますので、情報共有しながら進めていきたいと思っております。
 16ページをお願いいたします。これもQC3の一部ですが、「他者ゲノムの混入」ということで、NTのアンマッチを見ています。8,975症例中、69症例でNTのアンマッチがございました。ここではSNPのパターンが合わないという意味になります。前回は0.87%でしたので、若干ながらこの割合も減ったということになります。
 一方、このNTアンマッチについては、研究班の先生方ともディスカッションしておりまして、血液がんの先生方からは、もしかすると移植を行われた患者さんかもしれないと聞いております。NTアンマッチの情報は、研究班の先生方にも共有いたしました。これは解析班として申し上げているわけですけれども、該当症例の血液がんですと治療法、記録の中でNTアンマッチが生じる可能性があったところはないか等、確認してもらっているところになります。
 以上で、解析・データセンターワーキングからの説明を終わります。ありがとうございました。
○中釜委員長 ありがとうございました。
 それでは、続きましてELSIワーキング長の横野参考人から説明をお願いいたします。
○横野参考人 横野です。よろしくお願いいたします。ちょっと回線が不安定なので、カメラオフでお願いいたします。
 次のスライドをお願いいたします。
 ELSIワーキングからは2点あります。
 18ページですが、1点目はPPIの取組の一環としてイベントの開催報告です。昨年末に「「患者・市民パネル」検討会~ゲノム医療への患者・市民参画」という企画を、国立がん研究センターの患者・市民パネル検討会事務局の御協力をいただいて開催いたしました。多くの患者さん、それから関係者の方にも御参加いただきました。
 国立がん研究センターで2008年度より患者・市民パネルというものが活動をしております。この患者・市民パネルには全国から約100名の方が参加されていて、このイベントは、ここに参加されている方を対象にして行った検討会という形になります。体制班の先生方にも御協力をいただき、また事務局の方にも非常に大きな御協力をいただいて、無事、成功裏に開催できたと考えております。
 19ページです。今回は報告をする時間がないので詳細は割愛させていただきますが、アンケートやグループディスカッションを通じて今後の全ゲノム解析等実行計画の運営ですとか、それからPPIの取組に関して非常に示唆に富んだ御意見をいただいています。結果についてはほぼまとまっていますので、次回以降、この専門委員会でも御報告して共有させていただければと思っております。
 20ページです。2点目は、この全ゲノム解析等実行計画で収集解析したデータの国外からの利用に関してです。
 今スライドでお示ししていますのは、「実行計画2022」の中の記載です。全ゲノム解析等の解析結果を研究・創薬等に活用するための基本戦略として、国内外の研究機関及び企業の研究者がデータをオープンかつフェアに利用できる体制の整備ということが掲げられています。
 それで、最初の2段落目ですが、その際にデータ利用に関して、国外の企業や研究機関からの利用に関しては、日本と同等の水準にあると認められる個人情報の保護に関する制度を有している国または地域に限定するというふうに、その地域であることを必要とするという方針が示されております。この点について、具体的な運用面を含めて御検討いただければと思っております。
 現状、個人情報保護委員会のほうで同等の水準にあるというふうに認められているのはEUと英国に限られます。したがって、この前提ではそれ以外の国や地域にある研究機関や企業等がデータを利用することは対象外になります。対象となる同等水準の国は今後追加される可能性もありますし、また減ってしまう可能性もありますが、現状ではEUと英国ということになります。
 例えば、アメリカですとかヨーロッパでしたらEUに加盟していないスイス、あるいはアジア、オセアニア諸国などはデータ利用の対象外ということになります。
 データの活用という面で、個人情報の保護体制を確保しつつ、この事業としての目的にかなうデータ利活用が可能となるように、このデータの利用範囲についてぜひ御検討いただければと思っております。具体的な背景とか、関連ルールについて次のスライドで御説明したいと思います。
 21ページです。本事業では全ゲノム解析データや診療情報を取り扱うため、当然ですが、個人情報やプライバシーの保護には細心の注意を払う必要があるというのが共通の認識になっていると思います。
 上記の観点から、データを利用する機関が同等水準国にあることは望ましいものの、実際の個人情報やプライバシーの保護レベルは、その機関がEU、または英国の機関であるといった、ある意味形式的な要件のみによって規定されるわけではありません。国によって法制度は異なりますし、特に遺伝情報や医療情報を扱う分野については、一般の個人情報保護法制とは異なる特別法などによって、より手厚い保護が設けられている場合もあり、個人情報保護法制において同等水準かどうかということだけでは、個別具体的な保護の水準というのは必ずしも分かるわけではありません。
 実質的には機関ごとの体制、あるいはその機関に適用される法令ですとか、利用されるデータの内容、利用目的、利用状況をきめ細かく確認することのほうが重要ではないかと考えております。
 法令に関しては、この同等水準国というのは個人情報保護法の中で示されている一つの基準です。それで、法令の前提としては、外国に提供するということについて事前に本人の同意を得た上で、外国にある第三者に個人データを提供する場合には、個人情報保護法としては同等水準国に限定すべきという要件は特段設けられていません。
 同等水準国とする要件というのは、外国にある第三者に対して、事前に外国に提供するという旨の本人同意を得ずに提供する場合の要件となっています。
 また、法令の規定としては、学術例外や公衆衛生例外に該当する場合には提供先の所在、個人情報の保護体制にかかわらず、同意を得ずに提供することが許容されるという形になっています。
 本事業でのデータの利用体制としては、現状で以下のような形で検討されていますので、一般的な企業活動等で外国にある第三者に個人データを提供する場合とは異なる面が多いように思われます。
 これまでも紹介されてきましたように、Visiting解析環境の整備が予定されています。Visiting解析であっても、個人情報保護法上は第三者提供という整理にはなりますが、個人データそのものを利用するユーザーである研究機関や企業が持ち帰るわけではありません。
 さらに、データの利用はコンソーシアムの枠組みを通じて行われます。このコンソーシアムへの参加には審査が必要であり、さらに個別具体的な利活用に際しては計画を立てて、それについての研究倫理審査、データ利活用審査により承認を受ける必要があります。
 さらに、コンソーシアムを通じて、データ利活用をそれぞれの参画機関がどのように行っていくのかということについては、本事業として継続的に支援、監督する体制が設けられるということになっています。また、利活用の状況については情報公開を通じた透明性の確保が図られることが予定されています。
 そのため、研究上の必要性ですとか、利用するデータの内容と利用目的、そしてプライバシーの保護体制等を総合的に考慮して個別の審査、その後の支援を丁寧にすることが重要で、ある意味で形式的な要件である同等水準国ということをあらゆる場合における前提とすることは必ずしも必要ないのではないかと考えています。
 また、今後の利活用の積み重ね等によって、より具体的なデータ利活用ポリシーの運用における基準といったものも蓄積されていくと思いますので、そうしたところで具体的なデータ利用の妥当性というものを担保していくことで、個人情報の保護とデータ利活用の両方を担保することができるのではないかと考えています。
 ELSIワーキングからは以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 それでは、これまで3つのワーキンググループからの検討状況について御説明いただきました。ここで一旦、区切りまして、今の説明に関して何か御質問、御意見ございますでしょうか。
 それでは、天野委員お願いいたします。
○天野委員 私から、ELSIワーキングの説明に関して2点質問がございます。
 1点目は国外からのデータ利活用についてですが、先ほどあったように、国外からのデータ利活用は現状でそのまま適用するとEU並びに英国のみになってしまうということがありましたが、ただ、一方で今回のこの事業の目的を考えた場合、より多くの患者さんに資する、特に希少がんであるとか希少難病では幅広い国際的な協力がないと臨床開発が進まないという面があるかと思います。そういった面から考えると、もう少し適用を広げることを考えてもいいのではないか。もちろん野放図に進めていいというわけではないですが、ある程度広げることは可能かということを改めて確認したいということです。
 2点目は、その1点目に関連して、現状は患者さんというか、今、研究に加わっていただいている方に対して、説明文書等で国外からの利用に関してどのような説明が文章として、もしくは説明としてなされているのかということについて、分かれば教えていただきたい。
 この2点でございます。よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 では、横野先生から御説明いただけますか。
○横野参考人 ありがとうございます。
 1点目に関しましては、やはり具体的な説明文書での説明ですとか利活用ポリシーを考えていく上で、現状ではどうしても提供される範囲が狭くなり過ぎてしまうのではないかと考えましたので、今回このような御提案をさせていただいたところです。きちんとした個別の審査をするということを前提として、もう少し幅広い提供というのを認めるような形に方針として進んでいけばいいというふうにELSIワーキングとしては考えています。
 2点目に関しては、がんのほうの説明文書では、現状では外国に提供しますということについては、特に提供先の国を特定しない形でお示しするという説明内容になっています。
 ただ、その後、指針の改定がございまして、外国に提供する場合の情報提供について、より細かい情報提供をする必要性というのが出てきておりますので、そういった情報提供として何を提供するかということを考える上で、この範囲に限定しますという説明にするのか、あるいはもう少し幅広く提供しますという説明をするのかといったところで、今の提案をさせていただいたところです。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
○天野委員 ありがとうございました。
○中釜委員長 では、続きまして中村委員お願いいたします。
○中村委員 中村です。
 最初に話のあった医療機関を広げていくというのは私は賛成で、やはり最終的にはいつでもどこでもこういう情報というか、ゲノム医療にアクセスできるというのは大事なので、広げていっていただきたいと思いますし、先生方も御存じのようにチャットGPTとか出てきて非常に高度でいろいろなことを解析できるAIが登場してきていまして、今のエキスパートパネルよりも多分、上回るような人工知能が出てきているので、医療の在り方は変わってくると思います。それも含めて、どのような形でゲノム医療を広げていくのか。多分、実施組織が活動できるような頃にはもっと様変わりしていると思いますので、そこも含めてどのような形で医療機関を広げていくのかということをぜひ考えていただければと思います。
 それから、井元先生のQCに関しては、クオリティーは重要でもし、質の悪い結果で判断すると結局患者さんに不利益ということが起こりますので、やはりクオリティーをどういう形で担保して、どういうフィルターをかけていくのかというのは今後のゲノム医療にとって非常に重要ですので、そこも含めて、何が問題だからクオリティーが悪かったのか。恐らくシークエンス試薬のバッチ差というのはあると思いますし、そのバッチ間差を拾い上げていくというのはこれからのゲノム医療に大事だと思いますので、そのことも解析して教えていただければと思います。
 それから、国外への利用ですけれども、最終的なゴール設定をどこに置くのかによって違ってくると思います。本当に難病の場合だと、薬を届けるためには国内だけでは動かないというのは明らかなので、やはり薬を届ける、治らない病気を治すという観点で国外の企業に使っていただいて、最終的に患者さんに還元する道を模索していっていただければと思います。
 そこで、1つだけ質問があるんですけれども、国外の企業といった場合に、国外の企業でも数は少ないですが、国内に研究所がある場合にそれはどういう位置づけになるのかだけ、まだそこまで検討していないとしても今の考え方として国内外の定義や、国内で使う海外、例えばアメリカの企業であればいいのかどうか、御判断をお聞かせいただければと思います。
 以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
 では、最後の点について横野先生よろしいですか。
○横野参考人 その点に関しましては、現状ではどういう方針でこの事業において臨むのかということについてまだ具体的なことは決まっていないというふうに認識しております。法人としてどこにあるかということと、またはそのデータ自体がどこで解析されるのかということがあると思いますので、まだ今の時点で具体的な検討ができていないんですけれども、今いただいた御意見も参考にしながら検討していきたいと考えております。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 御指摘のように、できるだけ広く利活用の方向で、ただし、個人情報も配慮した利活用の体制について御意見を踏まえて検討していただきたいと思います。
 それでは、森正樹委員お願いいたします。
○森(正)委員 ありがとうございます。
 解析方法に関しましては、中村委員がおっしゃったように日進月歩のところがあって、そういうところをどんなふうに利用していくかというのも現在の作業に加えて勘案すべき作業だろうと思いますけれども、他方でサンプル集めに関してはアナログのままで当然、地道に行く部分が多いと思います。
 その中で「他者ゲノムの混入」というスライドがあったと思いますけれども、ここではアンマッチの割合が0.77%と、前は0.87%だったけれども、0.77%ということですが、サンプルのところで一番重要なのはやはり間違えないということとコンタミを防ぐということだろうと思うんですけれども、この0.77%というのはサンプル自体の取り違えなのか、途中でのいわゆるコンタミネーションなのかというところを教えていただきたいと思います。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 この点について、井元参考人からお願いします。
○井元参考人 井元のほうからお答えします。
 今お出ししている数字は、このサンプルの取り違えのところをお示ししています。サンプルコンタミに関しても同じように見ていくことができますので、それはまた次回にお示ししたいと思っています。
○森(正)委員 ありがとうございます。
 そうすると、やはり一番初めの段階で間違えることが、0.77というのが決して少ないとは言えない頻度で、しかもこれは国内を代表する施設で行われていることですし、これを一般にずっと広げていくときにはさらにルーズになる可能性がありますので、その辺はせっかくの貴重なサンプルを無駄にしないという観点から、さらにそこのところのチェックをどうするかというのも御勘案いただければいいかと思いますので、よろしくお願いいたします。
○井元参考人 ありがとうございます。
○中釜委員長 重要な御指摘かと思います。そういう意味でも、参加施設を広げる場合の検体の管理体制をきっちり評価しながら進めていくことが大事だと思いました。
 それでは、続きまして森参考人お願いできますか。
○森参考人 製薬協の森でございます。
 天野委員が発言された内容とほぼ趣旨は似ているのですけれども、ELSIワーキンググループの国外からのデータ利用、資料で言えば20ページのところになりますが、ここで挙げられている、利用できるところが日本と同等の水準であると認められる国、地域というふうにしてしまうと、製薬業界的にいうと、米国は非常に大きなフィールドで、しかも企業の利用ということだけではなくて、FDAに申請するというような事態を考えると、そこでディテールのデータの信頼性の確認等も行われることから、データの利用、アクセスということが想定されます。これが排除されてしまうようなことは非常に困るということでございますので、利用できる範囲について限定をすることは極力避けていただきたいと思います。
 一方で、インフォームドコンセントの取得をする段階というのはかなり前の段階ですので、その時点でどこの国に持っていきますということを言明することは非常に困難だと思いますし、現場のコンセントを取る先生方も大変苦労されると思うのです。個情委の施行規則には、国が特定できない場合の説明としては、特定できない旨とその理由、それから講じられる措置の参考情報といったところを説明するというようなことが示されておりますので、こういう方法をやはり容認するというか、想定した形でお考えいただいたらと思います。
 これは、がん、難病を問わず、そういった事情については同じかと思っておりますので、その点、これは天野委員のおっしゃった趣旨と私は同趣旨だと思っているのですが、製薬業界としてもその点は非常に大事なポイントだと思っていますので、よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 ありがとうございました。
 では、続きまして上野委員お願いできますか。
○上野委員 今ちょうど議論の出ていた国内、国外での利用というところなのですけれども、方針に関しては異存ないのですが、スライドのほうでも言及していただいているように、個人情報保護法に関するガイドラインで示されている外国にある第三者への提供ということと、あとは個人情報保護法上の外国にある第三者への提供ということの意味、範囲の整理というのと、コンソーシアムで国外からの利用方針についてどうしましょうかというところは、厳密に必ずしも範囲が一致するところではないと思っていて、個人情報保護法で外国の第三者に個人データを提供するときにどういう要件を満たさなければならないのかという範囲の把握と、それはそれとしてコンソーシアムの参加者にどういう範囲に参加していただいて、どういう範囲で利用を許しましょうかという議論は整理した上で、今後利活用ポリシーの議論などでも進めていくとよいのかなと思っております。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございます。
 この点について、横野委員から何かコメントございますか。当面はコンソーシアムにおける利活用からスタートして、そこに参画する企業という位置づけで国内、国外の定義をどうするかということかと理解しましたが、横野委員から何かございますか。
○横野参考人 私も同じように考えておりまして、必ずしも個人情報保護法の、しかも同意を得ずに提供する際の要件の一つというところにこだわる必要はないのかなと思っております。
 コンソーシアムとしてどのような活用目的で、どのような範囲で利用するのかということを明確化して、適切にそこをマネジメントできるような仕組みを構築していくということが重要かと思っておりますので、今後ポリシーの明確化等でその辺りを実現したいと考えております。
○中釜委員長 上野委員、今の説明でよろしいでしょうか。
○上野委員 ありがとうございます。
○中釜委員長 それでは、続きまして葛西参考人お願いいたします。
○葛西参考人 ありがとうございます。
 私も国外利用の話なのですが、少し観点が違っていまして、基本的に二国に限定するのは個情法による考え方に基づいていると思います。それで、医療情報を扱う際に、実は個情法の解釈ではなかなか限界があるなということで、諸外国、例えばGDPRに対してEHDSをつくるというような違う枠組みを検討いただいているので、これはちゃんと立法的なスキームにおいてもここでも限界があるということを申し送る必要があるかと思います。
 一方、どちらかというと規制面で言うと一つ御検討いただきたいのは、経済安全保障の観点です。これはどちらかというと、明らかにセキュリティークリアランス上、問題があるというところに渡すのはまずいと思いますので、それをどうやって確認するかということをちゃんと患者さんに、経済安保上の危険国に渡しているわけではないですということは言わなければいけないと思うので、その運用をどうするかというのはぜひ今後も研究の中で検討いただきたいと思います。
 以上です。
○中釜委員長 重要な御指摘、ありがとうございました。ぜひそこの辺りも含めて検討していただきたいと思います。
 ほかに御意見、御質問ございますか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、続きまして準備室ワーキンググループから、ワーキング長の青木参考人、説明をお願いいたします。
○青木参考人 準備室ワーキンググループの青木です。どうぞよろしくお願いいたします。
 準備室ワーキンググループにおきましては、実行2022に基づいて厚生労働省のイノベーション推進室と連携して、また、がんと難病側が連携して事業の実施組織準備室の設立に向けて活動してまいりました。
 次のスライドですが、本日はその事業の実施準備室の設立に関する進捗状況について御説明させていただきたいと思います。
 24ページですが、準備室ワーキンググループとしては、令和4年度末までの達成目標として3つあるだろうと考えております。
 事業実施準備室を国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部内に設置する。これは通称JHと言っているものでありまして、6個のナショナルセンターが連携して共同研究を進めるという目的のために3年ほど前に設立された組織であり、そこに準備室を設置するということです。
 2つ目が、フォーラムの運営方法の在り方を検討し、産業・アカデミアフォーラムの発足を目指すということです。
 3つ目は、データ利活用の仕組みの構築を目指し、試験的データ利活用を実施する、ということです。
 本日御議論いただきたい点はこの現状の主な検討課題となります。まず、事業実施組織のミッションや規模、組織図、それからその準備室の青写真についてです。また、フォーラムに関しては団体名をフォーラムからコンソーシアムに変更したい。そして、そのコンソーシアムの運用体制や概略、活動計画についてです。利活用に関しては、段階的に患者還元/データ利活用のユースケースというものを実現していくということを目標といたしておりますが、令和4年度は試験的データ利活用を開始したい。このようなことを御説明させていただければと思います。
 25ページです。これまで準備室の設立に関しましては、準備室のミッション及び機能の定義と、それから事業実施組織あるいはその準備室の設計について、フォーラムの発足に関しましてはフォーラムの目的と提供価値、それからその運用体制の概略などについて、患者還元/データ利活用の仕組みに関しましてはユースケースというものとその実現時期の検討、そして試験的データ利活用の計画策定といったものを行ってまいりました。
 26ページですが、まず「事業実施組織及び事業実施準備室について」の御説明をさせていただきます。
 27ページですが、これは我々が考えた「事業実施組織のミッション」でありまして、これは使命、存在意義といった意味で使っておりますが、「日本の産官学及び患者・国民が一体となり、全ゲノム情報等の解析によって、一人一人に最適な医療を届け、人類の福祉に貢献する」といったものといたしております。
 28ページは、「事業実施組織のビジョン」であります。ビジョンに関しましては前回の専門委員会で既に承認いただいているものでありますが、「国民へ質の高い医療を届け、将来的な「がん・難病等の克服」を目指す好循環の実現」ということになっております。
 29ページは「本事業実施組織の設計方針」ということでありまして、組織設計におけるよりどころとなっています。トータル6個あると考えておりまして、事業実施組織内部での方針としては、組織内部の部門に対して適切なガバナンスが効いているということ。それから、その部門におきましても自律性、透明性、柔軟性、効率性、利用者志向性を有するということ。また、事業のプロセスにおいても事業全体や情報のセキュアな管理ができるということ、です。
 外部の組織との関係では、公共性を持ち、政府から十分な適切なガバナンスが効いているということ。国内外のアカデミアや産業界と連携し、迅速かつ公平に安全性の担保された体制でデータを共有できる。国民への情報発信、社会の理解と信頼を得ることができること。これらを設計方針と考えております。
 30ページは、「事業実施組織が果たす機能の全体像」となります。事業の柱としては6つあるのではないかと考えております。患者の本事業への参加促進、医療機関との連携、必要なデータの取得、解析機能の向上、データ利活用の促進、患者還元の促進で、これらの柱を根本で支えるものがELSIへの適切な対応と考えております。
 また、組織といたしましては、横断的な基盤として、プロセス管理・セキュリティー体制の構築や公的な性格を持つ組織としてのガバナンス構築、国民・社会の理解に基づく事業推進とPPIへの取組、このようなものが組織の横断的基盤になると思っております。
 31ページは、先ほどの6つの機能と4つの基盤の内容をごく簡単に説明したものでありますが、我々はこの6つの機能、4つの基盤から実際にどのような活動を行うべきかということを検討いたしまして、それらの活動を効率的に行うには次のような組織がよいのではないかということで検討してまいりました。
 32ページですが、「令和7年度に目指す事業実施組織の組織図」は、準備室ワーキンググループからの提案です。
厚生労働省のこの専門委員会に報告して、全体の方針を決定していただくというところに関しましては同じです。
 真ん中に事業実施組織と書いてありますが、トータル10個の部門がございます。左側に書いてある青で塗ってあるところが臨床・患者還元支援部門、解析・データセンター運営部門、コンソーシアム支援部門とありますが、これは事業の柱となるものと考えております。
 この中でも解析・データセンター周りというところが事業実施組織全体のエンジンになるところでは非常に重要なところであります。あとは、この解析・データセンターに関する部門は、患者還元支援部門あるいはコンソーシアム支援部門との関わりでございます。各部門はデータの独立性を確保するため、それぞれ独立して構成されておりますが、密接に連携しています。ただし、情報の秘匿性は保持しなければいけないと考えております。
 その横のIT・情報基盤に関しましては事業実施組織のインフラ基盤などを担うもの、あるいはセキュリティーを担うところになります。
 国際連携部門、人材育成部門とありまして、ELSIとPPIは独立した部門を設けることは決まっております。PPIに関しましては、患者さんや国民の参画といったことと同時に、事業実施組織から広報・PRもいたしますので、双方のコミュニケーションということでコミュニケーション部門としています。
 ガバナンスに関しましては組織のガバナンスといったことと、利活用といったことが非常に重要ですので、その利活用に関するガバナンスを担当する部門が入っております。
 それと総務部門になります。
 また、この事業実施組織の重要な機能といたしましては、利活用審査委員会があります。コンソーシアムなどからデータ利用申請があった場合には、この委員会で公平・中立に審査を行うということで非常に大事な機能となっているかと思います。
 次の2枚は「各部門が担う主な機能」で、このようなことを担う部門ということを示したものであり、簡単に説明させていただきます。
 臨床・患者還元支援部門におきましては、連携する医療機関の拡大ですとか患者さんの臨床データ・検体を効率よく取得して、本事業と連携できるシステムを実装する。あるいは、解析・データセンターと連携して解析結果レポートの品質管理や最新の治験情報をレポートに反映する。あるいはエキスパートパネルの要件や、e-Consentに関するところ、このようなところは臨床・患者還元支援部門の担うところと思っております。
 コンソーシアム支援部門におきましては、コンソーシアムから得られた本事業へのニーズといったものを本事業実施組織に橋渡しをして改善するといった役割でしたり、あるいは先ほどの利活用審査委員会の運営事務局機能を担うということが挙がってございます。
 解析・データセンター運営部門は、解析・データセンターにおける現状の技術を評価して改善に向けた技術要件を設計したり、参画組織が解析・データセンターへ簡単にアクセスできるシステムなどを設計・構築するなどがありますし、臨床・患者還元部門やコンソーシアム支援部門でシステム構築の観点で連携が必要なところに関しましては、その機能の実装を連携して行っていくということが考えられます。
 34ページですが、IT・情報基盤部門は先ほど申しましたように組織のインフラ基盤を設計・運用する、セキュリティー部門は情報セキュリティーの指針あるいはデータのトレーサビリティーを担保させる、といった機能がございます。
 国際連携部門は、国際連携に関わる部門で、人材育成支援は、事業実施組織全体を担う人材を育成するということもありますし、遺伝カウンセラーなどの育成を支援するということも含まれます。
 それから、ELSIに適切に配慮した運営ということでELSI部門。PPIは国民・患者からの意見を反映させる。それから、広報もございます。
 ガバナンスに関しては、この組織全体のガバナンスを見るということと、利活用監査に関しましては、公平性・安全性が担保されているということを見る、といった機能があります。
 そして総務部門ですが、このような各部門の機能があるのではないかと考えております。
 35ページですが、先ほど令和7年度の事業実施組織の組織図案をお示ししましたが、あれは令和7年度の事業実施組織のもので、それがどのような法人形態になるかということは決まっていません。一方、その前の段階として、準備室をJHに設立されるということでありますが、この2つは組織としては異なってくるものと思われます。しかし、準備室からなるべくスムーズに事業実施組織に移行できる体制をつくるということが必要です。
 現状では、まだこの事業実施組織のメンバーというものが決まっておりませんので、当初は、現在ワーキンググループで参画するメンバーを適宜配置してチームといった形で活動を継続し、次第に100%近いリソースを割くことができる人材を登用して事業実施組織の設立に向けていくということではいかがかと準備室ワーキンググループでは考えております。
 次に、「フォーラムについて」の御説明をさせていただきます。
 37ページは、フォーラムの目的と産業界・アカデミアの役割です。この目的は、創薬や診断技術の研究開発を促進し、患者さんにいち早く成果を届けるということで、そのためにフォーラムを形成するということとなっております。
 産業界の役割としては新たな診断技術や治療薬の開発、アカデミアの役割においてはゲノム医療に係る研究の進展といったことが、実行計画2022に記載されています。
 次に38ページです。産業界・アカデミアの方々にヒアリングをしてみますと、フォーラムに対するニーズに関しては、この左側に書いてある4つがニーズとしてありそうだということが分かってまいりました。
 幅広いデータへのアクセス、柔軟な解析環境・研究環境の提供、産学連携の推進、全ゲノム事業へ運営参画です。
 そこで、我々としましては「フォーラムの参画組織への提供価値」、すなわちメリットということになるかと思いますが、このような5つがあるのではないかと考えております。データのプレ検索機能ですとか、利活用申請ができるといったデータのアクセス、あるいは研究のコンサルティングですとか共同研究者を募集する場を設けるといった研究のサポート、研究会などの場を提供したりバイオインフォマティクスなどの新しい知見を共有する議論の場の提供、それから他のフォーラムとの共同のコンソーシアム、アカデミアと企業のマッチング、あるいはその資金調達の機会の提供などの政府、外部団体との連携ということがあるかと思います。そして、そのフォーラム運営への参画というようなものがメリットではないかと思います。
 39ページです。そこで、団体の名称に関して、従来はフォーラムと申しましておりましたが、日本語でフォーラムというとどうしても公開討論会という意味合いが強くなります。そこで、協会、組合、企業連合といった意味合いのコンソーシアムといった名前に変更したいと思っております。
 40ページは、「コンソーシアムと事業実施組織の関係性」を示したものであります。従来、産業フォーラム、アカデミアフォーラムをそれぞれ別個につくるということになっておりましたが、産学の連携を促進するためには一つのコンソーシアムとしてつくったらどうかと考えております。そのことによって、総務や事務などの効率化も図れるかと思います。
 コンソーシアムの役割といたしましては、参画したいという産業界、アカデミアに対して審査をいたします。また、その産業アカデミアは、事業実施組織の中の利活用審査委員会に利活用の申請を行って、許可が得られた場合には解析・データセンターにアクセスできる。このような役割となっております。また、このコンソーシアムは運営的にも財務的にも自立するということが求められております。
 一方、事業実施組織とコンソーシアムは密接に連携していかなければデータの利活用はなかなかうまくいきませんので、どのように仕組みで密接に連携していくか。ここら辺に関しては現在も検討しているところでございまして、そこは難しい課題だと認識いたしております。
 41ページはコンソーシアムの内部構造を示しております。産業とアカデミアは、コンソーシアムとしては1つですが、それぞれアカデミア側、産業側の固有のニーズがあると考えられますので、運営に関しましてはアカデミアと産業側はそれぞれ別々に運営してはどうか、という提案です。
 ただ、研究の領域、何々がんの領域ですとか、そういうところに関しましては産業側とアカデミアが必要であれば一緒になって活動する。このようなことによって産学の連携を推進するという構造としてはどうかと思っております。
 42ページです。この後3月にコンソーシアムの発足を目指すということで、3月の専門委員会にかけて実際の初期運営メンバーを選定していかなければいけないわけですけれども、この2月の段階におきましては初期運営メンバーの要件ということを御承認いただければと思っております。
 アカデミアとしましては、学位を持っているということや、ゲノム解析研究に対して10年以上の経験を持っていること、あるいはバイオインフォマティクスはそれらによりませんけれども、10年以上の経験を持っていること。
 産業側といたしましては、ゲノム創薬に関連するような企業に10年以上の経験があるということや、これまでアカデミアと協働した経験を持つ、ということ。
 患者・国民の方にも御参画いただきたいと思いますので、ゲノム解析研究等に関する知見を持っていたり、あるいはその患者・国民視点で意見を述べることができる。このような要件が必要かと思っております。
 それから、できましたらその代表の理事の方はこれまでフォーラム等で役員として運営業務に関わった経験があることが望ましいのではないかと思います。
 43ページですが、今年度中にこのコンソーシアムの発足を目指すということでございますが、何をもってコンソーシアムの発足かということが決まっているわけではありませんので、我々といたしましては、真ん中のカラムの発足要件を満たしたところで発足としたいと考えております。
 コンソーシアムというふうにフォーラムから名前を切り替える。設立目的や提供価値の初期案、自律的な運営の枠組み、あるいは産業とアカデミアで一つのコンソーシアムづくり、そのような案を承認していただいたということに加えて、発足時の実際の協力者、あるいは初期運営メンバーを承認していただいたところでコンソーシアムの発足としたいと思っております。
 実際には、そのコンソーシアムの初期運営メンバーの中で、理事長ですとか、会則、あるいは活動計画などについては検討していただくという形になります。もちろん、そこには準備室も強くサポートするという形かと思っております。
 次は、「患者還元/データ利活用について」です。
 45ページですが、データ利活用の対象疾患としては実行計画2022に書かれておりますが、既存患者では全エクソン解析では検出困難な構造変異などが多いがん腫ですとか、ゲノムプロファイリングによる層別化が治療などに結びつくがん腫、難病では単一性遺伝子疾患、多因子性疾患、それから一番重要かと思われますのが診断困難である疾患、このようなものではないかと思います。
 46ページですが、我々は、実際に患者還元/データ利活用のユースケースにはどのようなものがあるのかということについて検討いたしました。実際のユースケースとしては真ん中の太字で書いてあるような8つの場合があるのではないかということが分かってまいりました。
 日常診療において患者さんのゲノム情報に応じた適切な診断・治療などの提供を行う。それから、ゲノム情報に基づいて診断治療の目的で臨床研究や治験への参加を通じた個別化医療を提供する。様々な研究テーマがあった場合にはその潜在患者数の推定などを行うことによってどの研究テーマがよりよいかといった研究テーマの早期スクリーニング。アカデミアでは、特に疾病の原因遺伝子の探索や病態の解明、あるいは産業界では創薬への応用。また、そのターゲットとする遺伝子変異の頻度やその患者像の明確化などによる臨床試験・治験デザインの検討。それから、該当患者の検索によって臨床試験・治験への組み入れを推進する。また、試験の対照群、ヒストリカルコントロールとしての活用や、薬剤市販後にその調査などに用いるということ。このような8つのユースケースがあるのではないかと考えております。
 47ページですが、今、申しました8つのユースケースのうち上の2つ、日常診療における診断治療方針の決定ですとか個別化医療といったものは、限定的でありますが、既に実施されてきているかと思います。
 下の2つ、ヒストリカルコントロールとして用いるとか、市販後の有効性・安全性の検討ということは、ある程度症例数が多くならないとなかなか難しいので、そう簡単には実施できないのではないかと思っております。
 一方、研究テーマの早期スクリーニングですとか、疾病の原因遺伝子や病態の解明、あるいは治験デザインの検討、このようなものはある程度症例数が少なくても開始可能ではないかと思っておりますので、できましたら令和5年度に段階的に実際の患者さんのデータを用いた利活用を始めたいと考えております。
 48ページです。令和7年度に実施組織が始まる頃には今、申しましたユースケースの全部とは言いませんが、多くは実施できるようにしておきたいと思っております。それに向けて段階的なデータの利活用を進めていくために、令和4年度においては試験的データ利活用を開始したい、と考えております。
 その試験的データ利活用と考えているのは、右のカラムの下から2番目のところにありますように、実際はまだ患者さんのデータではなくて秘匿性のない市販のヒトがん細胞がん株、シャーレの中の細胞株から得られた全ゲノムデータを用いまして、実際にデータの共有システムを試験的に見てみるということであります。変異データのリストを見ていただいたりとか、ゲノムビューワーによるゲノム情報の可視化、そのようなことを製薬協ですとか厚生労働省、あるいはコンソーシアムなどに見ていただいて、そのユーザビリティーですとか、データの項目はこれでよいか、そのようなことの御意見をいただく。このような形で試験的データ活用を始めていきたいと思っております。
 準備室ワーキングからは以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの準備室ワーキンググループからの説明について何か御質問、御意見ございますでしょうか。
 それでは、まず宮野委員お願いいたします。
○宮野委員 宮野です。
 2点ありまして、1つはなぜコンソーシアムの形を取ろうとされたのでしょうかということと、そのコンソーシアムの運営にはアカデミア、産業界、そして3つ目くらいに患者、国民ということが書かれてはいたのですが、コンソーシアム全体のところを拝見してみますと、患者や、将来の患者さんを排除とまではいかないけれども、何からち外に置いた形でのコンソーシアムができてしまうのではないかという懸念を強く持ちました。
 そして、このコンソーシアムができることによって、国民の皆さんががんや難病のゲノム医療に対して明るい未来を描くことができるのだろうかと私自身に問いかけたときに、そうではないのではないかというふうに強く感じた次第です。
 以上です。
○青木参考人 ありがとうございます。
 このコンソーシアムの目的というのは、最初のほうに記載がありますように、患者さんへ診断治療法を届けるという目的になっております。それで、先生が今おっしゃられたように、それが見えないということであるのは我々としても本意ではありませんので、もうちょっとそれが見えるような形で資料等を修正したいと思っております。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。患者参画などをどのように反映していくのかということも踏まえた利活用の仕組みというところをもう少し分かりやすい形にして、国民の理解を得られる、協力が得られる、期待を反映できるものに御検討いただければと思います。
 それでは、続きまして天野委員お願いいたします。
○天野委員 ありがとうございます。
 今、宮野委員のおっしゃったことと同じです。
 1点目は、実施組織においては患者市民参画を既に検討いただいていますので、こちらのフォーラム、コンソーシアムかもしれませんが、そちらのほうでも患者市民参画の在り方をぜひ御検討いただきたい。もちろん専門性であるとか、守秘義務であるとか、知財の問題はいろいろあると思いますけれども、できれば参加できるように御検討いただきたいということです。
 2点目は細かいのですが、準備室は今年度中に発足ということと理解していますが、大体いつ頃の予定なのか、もし分かれば教えていただきたいということです。
○青木参考人 まず1点目に関しましては、コンソーシアムに関しての活動計画の具体的な内容というのは決まっている状況ではありませんで、今後コンソーシアムのメンバーの方々と恐らく準備室が一緒になってやっていく形になろうかと思っています。そこの中で天野委員がおっしゃいますように、PPIの活動ということもぜひ進めていけるような活動計画にしてまいりたいと思っております。
 それから、準備室の発足はいつかということに関しましては、何をもって準備室の発足かというのは実は難しいところであるのですが、我々は一応準備室のトップの方が決まって、それで大体の組織図や活動計画が決まってきて、初期運営メンバー辺りが決まったところで発足という形かと思っております。
○医療イノベーション推進室(市村) 厚生労働省医療イノベーション推進室長の市村と申します。
 医療イノベーション推進室は、全ゲノム解析等実行計画に係る事業実施組織発足に向けての取りまとめを担当しております。準備室ワーキングの先生方と協力して行っておりますけれども、最終的には準備室ワーキングの先生方が検討していただいた内容を専門委員会にて承認していただいた後、厚生労働省の会議体である「ゲノム医療推進チーム」においてしっかりと検討し、最終的には厚生労働省が責任を持って準備室を発足させていきたいと考えております。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 天野委員、今の説明でよろしいでしょうか。
○天野委員 分かりました。ありがとうございました。
○中釜委員長 それでは、森正樹委員お願いいたします。
○森(正)委員 ありがとうございます。
 先ほどからの意見もございましたけれども、既存の組織を使って、こういうことの必要性は当然あろうかと思いますが、運営に当たって新しい組織をつくるということはなかなか大変だろうと思いますので、既存のものを発展させる形で何か考えられないかということが1つありました。
 それからもう一つ、本当に新しい組織をつくるとすれば、令和5年度にはその資金とか運営の方針とかを決めるということでしたけれども、実際はそこで働く専任の人、常勤の人というのはどれくらいの規模の方を想定していて、そしてそういう方をどうやって集めるか。やはり優秀なやる気のある人を集めないといけないだろうと思いますので、その辺の見通しがどうかというところを教えていただきたいと思います。
○中釜委員長 今の質問に対して、青木先生お願いいたします。
○青木参考人 御質問ありがとうございます。
 確かに実際に組織をつくって人員を配置して、どのようにそれを大きくしていくかということは非常に重要な課題だと思っておりまして、現在各部門の構成などはできているところでありますし、その部門の構成などに応じてどのような人数規模で行っていくかという人数の計画などについても検討しておりますので、いずれまたそれに関してもお示しさせていただければと思っております。
 ただ、現在のところ、将来的な事業実施組織の法人形態がまだ決まっていないというところもありますので、そのようなことも決まり、また予算の立てつけ等が決まっていく中で、実際のメンバーを配置していく形になるのかなと思っております。
○中釜委員長 今の準備室ワーキンググループの意見ですが、厚労省イノベ室から何かこの点について追加の御発言はございますか。
○医療イノベーション推進室(市村) 医療イノベーション推進室の市村です。
 御指摘のとおり、人材確保については非常に重要であると考えております。各フェーズにおいてどういった人材が必要か、どういった要件が必要かといったことを現在検討しておりまして、その検討結果が出次第、どれぐらいの予算が必要かというのを示していくことができると考えております。
○中釜委員長 森委員、今の回答でよろしいでしょうか。
○森(正)委員 ありがとうございます。
○中釜委員長 それでは、中村委員お願いいたします。
○中村委員 もう時間も押しているので簡潔に申し上げますと、40ページのコンソーシアムのところで「財政的に自立した組織を目指す」と書いてありますけれども、財政的に自立した組織というのは実施組織全体がどのような形で財政的に自立していくかを考えるべきであって、今のコンソーシアムはコンソーシアムでいいのですが、何となく建物の全体の設計が決まっていないのにワンフロアだけ設計して、ワンフロアは自立するというのは組織の在り方としておかしいと思います。
 そこはやはり全体の中であってこのコンソーシアムの位置づけを考えていかないと、コンソーシアムが自律的に運用されるというのはそもそも組織論として成り立たないと思いますので、やはり実施組織全体として自律的に、財政的にもどうするのかという議論はまずすべきであって、何かコンソーシアムだけ別に運用されて自律的に動くというのは私はおかしいと思います。
 それで、ずっと言い続けているのは、実施組織にとって一番ヘビーな部分というのはやはり情報系の部分、情報インフラの部分だと思いますので、そこの具体的な枠組みが決まらないと、インフラまで恐らくある程度、国の予算で整備しないと、どこかに間借りするといっても永遠に間借りするわけにもいかないし、井元先生のお話をお伺いしても、ぎりぎりでやっているという感じですので、情報系のインフラをどう考えていくのかというのはぜひ考えていただきたいと思います。
 最後に、細胞株を使ってやるという話でしたけれども、そんなものはコンソーシアムをつくらなくてもいろいろなデータベースで細胞株のデータはあるわけですから、今日の話でも出ているように、実際にシークエンスをやるときにどのようにクオリティーをチェックするのか、臨床情報をどう集めるのかというのがまず第一弾として大事なので、ちょっと細胞株を取りあえず使ってみる。それで企業とコンソーシアムを組むといっても、既にどこでも利用できるデータで何のコンソーシアムを組むのか、甚だ疑問なので、やはり今の集まっているデータを使って課題を抽出していくという方向で考えていただきたいと思います。
 以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 最初の御指摘のコンソーシアムの位置づけ、情報系のインフラについては厚労省イノベ室にお答えいただいたほうがいいかと思いますが、市村さんどうでしょうか。
○医療イノベーション推進室(市村) イノベ室の市村です。
 中村先生、御指摘ありがとうございます。非常に大切な点と考えております。我々としましても、事業実施組織の全体像をしっかりとお示しして、その中でコンソーシアムとの関連性についても整理をして、次回、御提示できるように準備をしたいと考えております。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
 2点目の細胞株を使った利活用のパイプラインの整備に関して、青木先生いかがでしょう。
○青木参考人 試験的データ利活用と今回申していますのは、データ共有システムを実際に使ってみていただくという形になります。それで、来年度考えている本格的な患者さんのデータ利活用ということに関しましては、実際に利活用審査委員会をつくって、利活用審査委員会に申請してそこで議論をしていただいて、承認をした上で解析・データセンターのほうにアクセスする。そのような形の利活用を考えておりますので、今回は細胞株を使うというところは、患者さんのデータを使えるというのはまだなかなか難しいということもありますので、データの共有システムの見え方をまずは見ていただくというところが主眼になっております。
 それから、解析・データセンターのことに関しましては、中村先生のおっしゃるとおり、我々は解析・データセンターの骨格ということに関しては非常に重要だと思っております。現在、我々は今、解析・データセンターのがんと難病側に関して、サンプルの流れや臨床情報の流れ、どこで1次解析、2次解析が行われてレポートが作成されているか。そのようなことを明らかにし、将来的にはがんと難病側で統合できるようなところはなるべく統合してできるように、計画しております。
 また、解析・データセンターを含めて、システムとデータの連携の未来像を検討しています。患者さんからイーコンセントなどによって同意を取り、サンプルを得て、検体管理システムなど一括の管理システムのところで検体番号が発行されて、その検体がシークエンス会社に送られて、解析結果がデータセンターに集積する、臨床情報も自動的に収集される、それが利活用システムや患者ポータルに反映される。このようなデータとシステムの連携の未来像といったものも現在は検討いたしております。
 解析・データセンターは非常に重要ですので、解析・データセンターワーキングの井元先生やAMED研究班、それから難病では徳永先生と連携しながらそこら辺のつくり込みというのは至急していきたいと思っております。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 専門委員会の中村委員からの御指摘は、実際の患者さんのデータを使って、それを利活用するようなパイプラインの構築と、それをセキュアな環境で実施する仕組みで、今後求められるところなので、できるだけ早く実施、試行的にやってほしいということだと思います。ぜひそちらの方向で進めていただければと思いますが、中村委員、今の御回答でよろしいでしょうか。
○中村委員 青木先生が苦労されているのはよく分かりますけれども、やはりもともと患者さんのデータを使って社会に還元するということがミッションでしたので、もうこれは13回目で多くの方がYouTubeを通して聞かれている中で、今頃細胞株なのかということに対しては多分専門委員会の委員それぞれの責任が問われるようなことだと思いますので、そこはちゃんと考えてやっていただきたいと思います。
 中釜先生の苦労も分かりますので、これで結構です。
○中釜委員長 重要な御指摘、ありがとうございました。
 それでは、続きまして栗原委員お願いいたします。
○栗原委員 ありがとうございます。
 今回、実施組織あるいはその前段階での準備室、それからそれとは違う組織だと私は理解していますけれども、フォーラムについてのいろいろ仔細な検討結果が出てきたと思っておりまして、ここに至るまで大変な御検討をされたと思いますし、これからこれをブラッシュアップしていくに際しての素案が提示されたと思っておりまして、大変有意義だと思います。
 今回、これらが一気に御紹介されたので混同して理解される懸念があると今日の議論を聞いていて感じたのですが、私は実施組織あるいはその準備室と、以前はフォーラムしかもアカデミアフォーラム、産業フォーラムと言っていたのが今回は一つのコンソーシアムという名称に変わっていますが、このコンソーシアムとは、それぞれ役割が違いまして、かつ組織も違うと思いますので、実施組織の中にコンソーシアムやフォーラムが存在しているのではないという前提で考えていかなければいけないのではないかと思います。
 利活用を進める上での実施組織とは異なる集まりとしてのコンソーシアムがどういう位置づけになって、どういう役割を果たして、実施組織とどう違うのかということを改めて理解し、進めていく必要があると、今日の議論を聞いていて思いました。
 コンソーシアムは実施組織とは財政基盤も、形態も、ガバナンスも違うと思いますので、ここがどう産業界の集まりとして、あるいはアカデミアの集まりとして機能を発揮し、どう集まりとして維持していかれるべきかということは、実施組織の在り方とは別の事柄として考えたほうが良いと思います。ゲノミクス・イングランドにおいてもこういう仕組みは存在していて、そこが果たす役割もありますので、そこを改めて共通の理解を持っておいたほうが良いと思います。
 ただ、別組織とはいえ、コンソーシアムへの参加が情報にアクセスする場合の最初の入り口であることも、現在の建付けでは間違いないので、単なる集まりではありません。いろいろな方の意見を聞いて、どういう意義を発揮していくか考えたほうが良いので、これから議論を深めていく上で大変良い素案をいただいたと思っております。
 素案とは言え、かなりいろいろなことが詰められていると思いますので、それらについては非常に評価しております。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 1点確認させていただきたいのは、先の議論でコンソーシアムの位置づけが議論されてそれが重要だということ、それから自律性の課題についてでした。今の栗原委員のご指摘はコンソーシアム、実施組織との関係性における企業、アカデミア、あるいは企業の集まりから、実際に実施組織にデータアクセスする中で幾つかのステップがあり、そのステップにおける役割を明確にした上で、きちんと使えるような仕組みであることが重要ということ。その上で今おっしゃったコンソーシアムの自律性をいかに担保し、実施組織との関係性、連携をどうするかというところを段階的に進める必要があるというふうに理解しましたが、そういう理解でよろしいですか。栗原委員へ発言の確認です。
○栗原委員 段階というのが、段階を踏んで構築していくという意味なのか、データへのアクセスのプロセスにおける段階性なのか、どちらを意味するのか分かりませんが、いずれにしても、役割自体も大分違います。いろいろな産業界の人が参画している訳ですが、その参加者のデータ申請については、コンソーシアム内で共有される訳ではなく、実際の利活用の際の情報は守秘性が保たれる形が必要です。実施組織との間のデータの利活用に関するやりとりは、コンソーシアムとは分離されていなければいけないと思いますので、実施組織とは別組織として存在している必要があるのではないかと思います。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 今の指摘を踏まえて、青木参考人から何か現時点でお答えできることはありますか。
○青木参考人 ありがとうございます。
 コンソーシアムの構築はとても重要な課題だと認識しておりまして、コンソーシアムの立てつけから内部での活動計画などについても、ぜひ先生方の御意見をいただきながらいいものをつくっていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 今の御指摘について、厚労省のイノベ室から何か追加での御発言はございますか。
○医療イノベーション推進室(市村) イノベ室の市村です。
 栗原先生、大変重要な御指摘ありがとうございます。引き続き、青木先生をはじめとする準備室ワーキングの先生方と協議し、よりよいものをつくっていきたいと考えております。
○中釜委員長 栗原委員、よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして杉山委員お願いいたします。
○杉山委員 どうもありがとうございました。
 38ページでコンソーシアムの提供価値をまとめていただいていますが、下から2番目のところに「政府、外部団体との連携」ということで「国内外の外部団体や学術機関と連携し、研究向けの企業マッチングの場を提供」という項目がございます。
 それに対しまして、42ページで初期運営メンバーの理事候補の要件がございますが、この「産業」の部分を見ますと「国内で」という制限がついているのですが、実際に多分国際的なことを担当されるような方というのは必要ではないかなという気がします。これも何か事情があって国内という制限をつけているかと思うのですが、国際担当をされるような役割の人というのは想定されているのでしょうか。
○中釜委員長 今の御指摘に対して、青木参考人いかがでしょうか。
○青木参考人 御指摘ありがとうございます。
 まず、これは初期運営メンバーということでありますので、取りあえずは国内で活躍されている方という形で書いております。それで、実際に初期運営メンバーが決まったところで、その後、例えば理事の数は何人にするとか、理事長をどうするとか、そのようなことについてはコンソーシアムのメンバーの中で御議論いただく事になるかと思います。国内外などの要件などについてもその中で御議論いただきたいと思います。
○杉山委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして水澤委員お願いいたします。
○水澤委員 ありがとうございました。
 35ページ辺りになりましょうか。コンソーシアムの役割ということが先に出てきてしまったので、それだけなのかもしれないのですけれども、現在の御説明を拝聴しますと、様々な研究活動ですね。それは全てコンソーシアムを通して行われることになってしまって、実施組織本体のほうでは何か研究はできないみたいなイメージがあるのですけれども、それはやはり困るのではないかと思いますが、そこの点はどうなのでしょうか。研究組織本体でも、例えば解析・データセンターなどは非常に重要だと思うのですけれども、研究活動をしたいという人はおられると思いますし、そうでないとなかなか発展性がないように思うのですが、いかがでしょうか。
○青木参考人 御質問ありがとうございます。
 水澤先生の御指摘のように、特に解析・データセンターのところと、あとはELSIのところに関しましては、事業実施組織の中でも研究的な要素があると思っております。例えば、解析・データセンターでも現在の技術の進行状況や要件などについても熟知していなければいけないところはありますので、そこは解析・データセンターと一緒になりながらも研究ができるような仕組みをつくっていきたいと思っています。
 ELSIのことに関しても、恐らく最新の状況に合わせてELSIの研究ということも必要だと思いますので、このELSIに関しても研究的な要素があるかと思っています。
○水澤委員 それは、これから実施本体のことがだんだん明らかになってくればはっきりしてくるということと理解してよろしいでしょうか。
○青木参考人 はい、実施組織準備や準備室の組織体制や活動計画ですとか、人員の計画ところで次第に明らかになってくると思います。
○水澤委員 ありがとうございました。
○中釜委員長 今の御指摘は、恐らく解析・データセンターをどういうふうに位置づけるかということとも関わってくるかと思いますので、その辺を含めてぜひ御検討いただきたいと思います。
 それでは、まず森参考人お願いできますか。
○森参考人 ありがとうございます。
 またコンソーシアムの話の部分にコメントということなのですけれども、41ページに「コンソーシアムの内部構造と運用体制」と書かれているものです。これはかなり踏み込んだ案ということだと思うのですが、お示しいただいていて、この中で産業界とアカデミアが連携をもっと進めるべきだということについては全く同意なのですけれども、一体的、一体型の運用というふうに書かれている部分は、具体的に何をもって一体というふうに考えているのかがよく分からない。見る人によって実にいろいろな理解ができるので、ここは誤解を生まないように詰めていっていただきたいということがお願いです。
 それと、分野別でアカデミアと企業とで組ませるという絵になっているのですけれども、あまり特定の企業をアサインするような格好になり過ぎてしまうと、これは基本的に企業の活動というのは必ずライバルや協力関係のある企業がいて、アカデミアとの関係においてもいろいろな関係がありますので、特定をして具体性を持たせたいという意図は理解するのですが、あまりこのようなピン留めされたような格好にした絵が出回ると、いろんな見方をされてしまうという点で非常に心配なところがございます。
 いずれにしましても、ここはまだ検討をされている最中の一つの例示ということで理解はしたいと思いますが、かなりデリケートな部分があるということについては御留意いただきたいと思います。
 以上です。
○中釜委員長 重要な御指摘を2点、ありがとうございました。
 今の御指摘の2点について、青木参考人から何かコメントはございますか。
○青木参考人 御指摘ありがとうございます。
 そのような御指摘を踏まえて、中の構造などについても考えていきたいと思います。これは例示ということで示させていただいておりますので、実際の運用はどのようにするかということに関しましてはコンソーシアムとも相談しながら決めていく形になるかと思います。
 それから、一体型運用とは何かという辺りに関しても、より明確になるように資料を作りたいと思います。
○森参考人 アカデミアは研究ということで論文を作るというアウトプットをお考えになっておられるのと、薬を作って患者さんにお届けするということを考えている産業界と、そういう意味では違う部分が必ずあるので、無理やりそれを合わせるようなことにはならないようにぜひ御配慮いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○青木参考人 1点、このような構造は実はフィンランドのフィンジェンという組織を参考にしておりまして、そこはアカデミアと産業側が一体的に運用しており、結構企業と大学が連携して新しい病気の変異遺伝子などを見つけたりしておりますので、こういう運用をするとそういう成果も出てくることもあり得るかなということで例示させていただきました。
○森参考人 非競争的段階においてのコラボは世界中いろいろなところでやられているというのは私もよく承知しておりますので、そういったところを明確にしてお話をいただきますとありがたいと思います。
 ありがとうございました。
○中釜委員長 ありがとうございます。例示の仕方によって誤解とか、あまりピン留めしたような話に展開しないような注意はぜひお願いしたいと思います。
 それでは、葛西参考人お願いできますか。
○葛西参考人 ありがとうございます。
 私は、30ページ目にあるミッションビジョンの話が少し気になりまして発言したいと思います。
 現在、法人格がまだ特定されていない中ですので、これからどういうふうにこういったものを設定するかというのはさらなる検討が必要だと思いますけれども、その際に完全に自立した民間企業の場合であればミッションビジョンというミッションがあり、その企業がどういうビジョンに到達したいかという将来像を示すというのはあるのですが、今回公的な分野だと思うんです。かつ、突然民間のように自立できるという可能性はほぼないわけなので、そうなった場合には公的分野のビジョンというのは基本的に政策として立案されてきます。ですので、ゲノミクス・イングランドであろうと、独法であろうと、もう一度確認したのですけれども、自発的にビジョンを勝手に決めるというのは非常に危険なことです。専門委員会であったり、国であったり、オリジンを示すんですね。どういうことでこういうことをやってきたんでしたかということを丁寧に常に見直すということが大事なんです。
 そういう意味では、患者還元というワーディングが、いつしか例えばコンソーシアムに至るときに消えてしまうようなことがあっては絶対にならないわけですので、そういったビジョンというものが政策として立案されて、それをただ単に守りますという関係だと思います。
 それから、もう少し具体的なお話をさしあげるに当たっては、今後の検討に当たって中村先生からもありましたけれども、技術的な機能には全くそういうふうに整理されていないと私も思います。基本的に情報インフラどおりの機能論では事業の柱は整理されていないので、もっと複雑です。
 そういったときに、今回情報システム系の基盤が中核にあるというのは確かなのですが、そういったところのハイアリングをする際にエキスパート職ですね。例えばデジタル庁の場合、統括というラインと、統括官というラインがあります。いわゆるライン上、エキスパート職は兼務もオーケーになっているのですけれども、ライン上は常勤の人間である。そういった構成をしないと、なかなか全部を必ず職員で集めようというのは破綻してしまうので、どうやってそういうエキスパート職を集められるかというのはゲノミクス・イングランドなどでもやっていますから、そういったこともよくお考えいただく必要があるかと思います。
 あとは、法人格として中期目標管理法人か、研究開発法人かによって理念の設定であったり、それからミッションの設定の仕方が違います。これがもし独法であった場合には独法の法律がありますから、そういう各法律を解きほぐして30ページ目はさらにブラッシュアップいただきたいと思います。
 以上です。
○中釜委員長 重要な御指摘ありがとうございました。
 今の御指摘に対して、青木参考人から何か今の段階で答えることはありますか。
○青木参考人 御指摘ありがとうございます。
 ミッション、ビジョンのことに関しましては、やはり最終的な法人形態としてどのようなものになるかということによって大分変わってくると思いますので、もちろんそれに定められたものができるのであれば、それに従うという形になるかと思いますが、現状ではどのような法人形態かは分かりませんので、このような形で進めさせていただきましたが、法人形態が分かってきましたらそのような形で進めたいと思います。
○中釜委員長 非常に重要な御指摘に関して、現時点で厚労省イノベ室から何か御発言ありますか。よろしいですか。
○医療イノベーション推進室(市村) 葛西参考人、御指摘ありがとうございます。
 その点につきましては、我々のほうでもしっかりと検討していきたいと思います。
○中釜委員長 それでは、中村委員よろしくお願いします。
○中村委員 ちょっと重要な点ですが、今の準備室というのは事業実施組織の準備室ですよね。私はそういう理解なのですが、40ページを見るとコンソーシアムというのは事業実施組織と連携すると、その連携する組織をまずこの専門委員会で議論して、しかも自立するというのは何か本末転倒で、この事業実施組織が、準備委員会ができたらコンソーシアムと連携するということは、ここが非常に引っかかっているんですけれども、自律的な運用と、臨床データを取ったりシークエンスデータを取るのは実施組織で、使うことだけを別に考えるというのはやはり実施組織の在り方として私は個人的には考えにくいですし、水澤先生からも指摘されたように、では実施組織は何をするのか。データを集めてコンソーシアムにデータを提供するだけなのか。
 こんなことはあり得ないわけで、やはり根底、事業実施組織の準備委員会として外づけでコンソーシアムをつくるということを前提に考えるということで厚生労働省もいいわけですか。臨床データを集めたり、ゲノムデータをさらに集めるというのは、実施組織はこれから考えて使う部分だけこんな形で自律的な運営をやっていきましょうというのは、どう考えても今の議論の在り方としておかしいと思います。
 事業実施組織は何をするかも分からないままにコンソーシアムで使うことだけを考えましょうというのでいいのかどうか。ここは最終的に専門委員会が承認するわけですけれども、こんな絵を描かれて、はい分かりましたと、まず使う部分だけは自立して財政的にも自立しよう。では、実施組織は財政的にはどうやっていくのかという議論が全くないわけで、結局母屋はどうするかを考えないでまず離れだけをつくってやりましょうというので、議論としては厚労省の専門委員会として実施組織の外にこんなことを置くということを議論するということ自体、少なくとも実施組織がはっきりしない段階でこんな議論をするのはおかしいと思います。
 以上です。
○中釜委員長 重要な御指摘、ありがとうございます。
 今の御指摘に関して、現時点で厚労省イノベ室から何かお返事ありますでしょうか。
○医療イノベーション推進室(市村) 中村先生、御意見ありがとうございます。
 事業実施組織の法人形態につきましては、令和5年度中には厚生労働省にて決定していく方針でおります。その組織形態に合わせてコンソーシアムとの関係性、またはコンソーシアムが実際に自立できるのかどうか、また、コンソーシアムをどういう形でガバナンスを取っていくのかといったことを含めて、今後検討していきたいと思っております。
○中村委員 全然、質問に対する答えになっていないと思います。実施組織が何をするかという準備委員会なのに、実施組織の外の話をこんな形で議論に出してきて、ここで承認されましたというのはやはり専門委員会の良識としてどうかと私は思います。
 以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 今の御指摘は非常に重要だと私も認識しますし、事業実施組織の中に利活用委員会を設けることは既に提示されていますので、その中で利活用すべきデータと、それを利用する場のアカデミア、あるいは産業界のコンソーシアムをどのように位置づけていくのか。その連携が重要なことは間違いないと思いますので、利活用のルールづくりとともにコンソーシアムをどういうふうに定義して位置づけていくのか。
 そのときに、完全に中に入れるということなのか、あるいはある程度、特にアカデミアなどの利用側の利用の際の自律性の言葉の定義をもう少し正確にする必要があると感じました。その辺りをしっかりとして、そうでなければ御指摘のように事業実施組織は何をする組織だというそもそもの本質論になってしまうと改めて思いましたので、その辺りを整理した上でまた検討させていただき、専門委員の御意見を伺う形になろうかと思います。今の御指摘に関して追加でイノベ室から何か御発言ございますか。よろしいですか。
○医療イノベーション推進室(市村) コンソーシアム自体の在り方というのは、やはり今後議論していきたいと思っております。また、事業実施組織のビッグピクチャーについても、お示ししていきたいと考えております。
○中釜委員長 十分なお答えになっていないかもしれませんけれども、現時点では今の回答でまた検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
 中村委員、よろしいでしょうか。
○中村委員 根幹にかかわるところですし、順序からいってコンソーシアムの話だけが先に出て母屋が何をするのか全く見えてこないというのはおかしな議論だと思いますのでよろしくお願いします。
○中釜委員長 ありがとうございました。
 ほかに御意見ございますでしょうか。
 ありがとうございます。委員長の不手際で少し所定の時間を過ぎてしまいましたけれども、もう少し案件がありますので、お時間のある方はお付き合いいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、議題4「その他」に移ります。資料4の「難病領域の全ゲノム解析等説明文書(案)」について、難病対策課より説明をお願いします。
○難病対策課(江崎) 厚生労働省健康局難病対策課の江崎と申します。資料4の「難病領域の全ゲノム解析等説明文書(案)」というのを御覧ください。
今、画像メインに移っているところでございます。
 少しこの同意文書(案)をつくった経緯について御説明しますと、以前、がん領域でモデル文書案というもので、こういう要素が入った同意書をつくりますようにということで御議論いただいたと思います。
 難病領域ではそれを踏まえまして、モデル文書案ではなくてこの同意書本体の案というものを作成しまして、難病領域で全ゲノム解析を行うときはこの同意書を原則としてお使いいただくということを想定しております。
 難病のゲノムは、疾患を絞り込むという診断的な要素と、それからやはり1か所にデータをまとめてそれを創薬に結びつけるという要素がございます。これまで病態解明の研究とかはかなり進められてきたところなのですけれども、より一歩、創薬にこの全ゲノムのデータを使うというところが難病の全ゲノム解析の考え方になると思っております。

 他方、難病領域とがん領域で少し趣が異なりますのが、がんが体細胞変異のものを取り扱うことが一般的であるのに対して、難病は胚細胞、germ cell lineのものを取り扱います。ですので、より患者さんの倫理面であるとか、そういうものに一層配慮しなければならないという特性がございます。

 そういった観点でこの同意文書案をつくっておりますので、少しがんと違うところもありますが、一つ一つ見ていきたいと思います。
 まず7ページをお開きください。
 7ページのところにございますのが、「あなたにお伝えする可能性のある情報」と、そうではない情報ということを明示的にお示ししております。
 マル1のところに「あなたの病気に関連する所見」ということで、これは一次所見と、それからマル2のところで「その他あなたの健康管理の参考になる所見」ということで、これは二次所見をお示ししているところです。
 ここのところの書き方とか、特に患者さんが知る権利と知らないでいる権利というのがありますので、今回の同意書ではそのいずれについても知りたいか、知りたくないかということを選択できるような形としております。
 次いで、8ページを御覧ください。
 難病の全ゲノムにおいてはゲノムデータ、全ゲノムのデータと、それから臨床情報を1か所に集めてそれを第三者提供するということになります。ここで、これまで難病の全ゲノム解析では3年までに5,500症例の検体をやってきたところなのですけれども、それはこれまでに難病の研究班が集めた検体とかレジストリー、ここに登録されたものについてオプトインでもともと取られていた難病研究班の同意書に加えて、オプトアウトでこれに参加していただくという同意を取って国土班の研究を進めてまいりました。
 この点においては個人情報保護法上、学術研究に当たる場合は第三者提供が可能なのですけれども、企業の単独利用を行うという場合においては本人のその点に関するオプトインの同意が必要ということで、この点が取れている研究とそうでないものがございました。
 ですので、今回の同意書では一気通貫で全て企業の単独利用ができるようにする。全ゲノムのデータと、それから経時的なこの臨床情報をしっかりと企業の創薬活動に使えるようにオプトインで同意を取っていきたいと考えております。これまでに取った検体についてもオプトアウトでしか取れていなかったものについてありますので、それを改めてオプトインで取って企業の単独利用ができるようにしたいというのがその心でございます。
 この点について、全ゲノムのデータと、それから臨床情報については企業の単独利用でお出しするということで、今回オプトインで同意を取りますけれども、検体についてこれを企業に提供するのかどうかということについて結構、議論がございました。
 当然、創薬に携わる立場の方から言いますと、それが使えるようになれば、より創薬が一層進むという御意見もありましたし、また患者団体の方ともお話しする中で、まだ現時点ではなかなかそこまでの理解というのも得づらいのではないかという御意見もありました。
 そういうことを総合的に勘案しまして、今回は検体を第三者に提供するというところまではオプトインを取る案にはなっておりませんが、今後必要になりましたら患者さんに改めて御説明をして提供するという枠組みも想定されるのではないかと考えております。
 それから、次の9ページを御覧ください。
 先ほど少し御議論がありましたけれども、その第三者に提供する先が外国である場合の取扱いでございます。原則、このゲノム情報は要配慮個人情報になりますので、この個人情報保護法のルールを守らなければいけません。個人情報保護法上、外国に提供する場合はそのことについて本人の同意を得る必要があるのですが、その例外がございまして、EUでやるなど日本と同等程度の体制が取られているとされる国、それから基準適合体制というものが充足されている第三者であれば、それ以外の国であっても本人の同意なくお出しするということが認められております。
 そういうことも考慮しまして、今回の場合、難病領域ではそういった国であるとか基準適合体制が担保されている。これは、具体例としてはCBPRのシステムの認証を取得している場合というのがこの基準適合体制の例としてありますけれども、そういったところについて提供する可能性がありますということを明記しております。したがって、米国でありましても、しっかりとこういう適合体制を充足する場合には御提供できるということを想定しております。
 それから、10ページを御覧ください。
 10ページの12のところに「この事業における情報や試料等の保管」ということを書いております。今は国土班、国立国際医療研究センターに検体を保管しておりますけれども、今後、事業実施組織が創設された場合、そういった中央的な機能を移管するということが必要になっております。現在、事業実施組織がどのようなところにどういった形でつくられるかということはまだ議論がなされているところでありますけれども、そういったところにデータや検体を移管するということについても承諾を得ております。
 これは、個人情報保護法上は第三者提供という枠組みになりますので、そういった第三者提供がつまり移管としてなされまして、そこからさらに製薬会社さんなどへの第三者提供が将来的には行われますよということを御理解いただいた上でオプトインでの同意を取るという予定にしております。
 主な論点はそういったところが恐らく重要になると思いまして、なかなか患者さん、そして現場の主治医の先生にしっかりと説明して御理解いただけるような内容にするということを留意しました。ですので、ふだんの研究の同意書と少し違って、個人情報保護法のことも踏まえながらつくる必要があったところでありますけれども、現時点の案として厚生労働省の難病対策課としてはこういった案で進めていきたいと考えております。
 どうか御議論いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 どうも御説明ありがとうございました。
 それでは、議題4について御質問、御意見ございますでしょうか。
 それでは、神里委員お願いいたします。
○神里委員 ありがとうございます。
 御説明ありがとうございます。本日、この文書についてこの委員会ではどういう取扱いをすればよいのかということをお尋ねしたいと思います。
 というのも、恐らくこれは代表機関である国土班のNCGMのほうの倫理審査委員会を通すことに今後なるかと思うのですけれども、その場合に、今日は暫定的に意見を集めて、そしてNCGMのほうで御議論いただいて、また修正があるかもしれないのですけれども、それがまたこの委員会に戻ってきて、最終的にこれでいいんじゃないかという手続になるのでしょうか。今日の議論の扱いについて教えてください。
 もう一点が、前々回、水澤班のELSIチームのほうでPPI活動をされているという御紹介がありました。それを説明文書に反映させたいというお話だったと思うのですけれども、今回この文書の中で具体的にそのPPI活動から得られた御意見を反映したところがありましたら、それを教えてください。
 以上です。
○中釜委員長 では、御指摘の2点についてお願いいたします。
○難病対策課(江崎) ありがとうございます。
 今、神里先生から御指摘がありましたように、国土班の研究計画の中で倫理審査にかけることになりますので、当然ここで最終結論というわけではございません。ここでの御了解プラス実際の研究倫理の審査委員会での同意があって初めて有効になるということでございます。
 ですので、軽微な修正であればこちらに一回一回お諮りするということはありませんけれども、重要な部分が大きく変わるという場合については改めて御議論いただくということになります。
 それから、PPI活動の点につきましては、実はこの同意文書案は難病対策課の我々のほうで個人情報保護委員会などとも相談をしつつ細部を考えていきましたが、その中で、その前提として水澤班の中で御議論いただいた内容でたたき台を作っていただきまして、それをベースに作っております。
 その中で、特に患者さんの予想される利益、不利益という10ページから11ページのところにその内容を盛り込んでおりまして、特に11ページのところなど、患者さんが非常に心配なさるところとして声が上がったところを具体的に書いてございます。
 例えば、民間保険への加入とか、そういう不利益な取扱いを受ける可能性が心配されることとしてあります。しかし、こういった声明なども出ておりますと、こういったことを書いております。ですので、患者さんやその家族の方の御不安とか懸念点を踏まえてこの同意書案を策定したというところでございます。
 以上です。
○中釜委員長 今の説明に加えて、水澤委員から何か追加で御発言ございますか。よろしいですか。
○水澤委員 まさにそのとおりです。武藤先生に最初はご担当いただいたと思います。
○中釜委員長 では、続きまして森幸子委員お願いいたします。
○森(幸)委員 ありがとうございます。患者の立場から発言させていただきたいと思います。
 まず最初に、この説明同意文書ですけれども、難病の特性を踏まえて大変大きな不安であるプライバシーについても倫理的な側面に配慮いただきましてありがたいと思っています。説明文書はよく読むと理解できる文章ではあるのですけれども、やはり患者からすると、使われている用語ですとか、こういった契約書のような形式の文章というのも慣れていませんし、難しく感じます。
 そこで、入り口のハードルが高いと関心を持つ前に諦めてしまうというようなことがあっては残念ですので、この説明文書に接する前に、例えばこの事業について分かりやすい啓発動画ですとか資料などを作成いただき、大まかにでもまず理解を得られるようなものがあるとよいかと思います。その上で、それぞれの患者さんに合わせて、分かりやすい言葉で説明をお願いしたいです。
 あと3点ほどあるのですけれども、「6-1.あなたにお伝えする可能性のある情報」のところで、二次所見というところですが、マル2の「その他あなたの健康管理の参考になる所見」ですけれども、ここには血縁者のことは入れておかなくてもいいのでしょうか。難病の場合、家族に関する遺伝性の情報であることも理解して、その上で説明を希望するのか、しないのかを選択するのではないかと思うのですけれども、こういった記載がないと、説明がないと患者としては気がつかないところもありますので、できるだけ必要な情報は詳しく説明をしていただきたいと思います。
 それから、先ほども第三者提供のところに再同意のところなどもありましたけれども、9番の例えば連絡を取らせていただく可能性などは新たに説明をして再同意を取るというような場合だと思いますけれども、当初の説明では先の想定が見えないところまで一度に丸めての白紙の部分の同意まではできかねないので、再度連絡をいただけるのはとてもありがたいです。この連絡までのプロレスが私たちにはよく分からないのですけれども、スムーズに連絡が可能なのでしょうか。この辺りが少し心配です。
 あとは、10ページの「予想される利益」のところです。先ほども御説明がありましたけれども、診断がついていない場合は、確かに難病の場合は早期診断につながることがまず求められるところなのですが、既に診断がついている人の場合というのは、何か利益というものがここに書き込める部分はないのかどうなのかなと思いました。
 最後に先ほどの不利益のところ、※印の御説明いただいたところですけれども、文字が小さくなっておりますが、「なお」からの部分ですね。これは、情報を入れていただいてありがとうございます。患者を不安にさせているところですので、とても関心の高い情報だと思っております。ありがとうございました。
 取りあえず以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
 今の4つのご指摘の点について、最初の部分は分かりやすいことですが、2点目から4点目について厚労省難病対策課からお願いいたします。
○難病対策課(江崎) 森委員、ありがとうございます。
 動画については作成予定でございまして、またこちらでも御紹介できる機会があればと思います。
 それから、血縁者につきましては別途の同意書を作る予定にしております。多くは同じような内容なんですけれども、知りたいか、知りたくないかというのは、御本人が知りたいか、知りたくないか、それから血縁者が知りたいか、知りたくないかというのは別のものになりますので、内容としては同じでも別途の同意書を取るという予定にしております。
 それから、リコンタクトするときのプロセスでございます。ここがとても重要なところだと我々も認識しておりまして、特に製薬協さんのほうも新たな臨床情報とかを取りたい、それから情報を取りたいという場合にリコンタクトがちゃんとできるようにということを言われております。そのときにスムーズに患者さんに御理解いただいて、そこでも説明をしてリコンタクトをして御協力いただくということが必要になると思います。
 現段階では、いきなり全然知らない人から連絡が来ますと患者さんも非常に驚きますし、主治医も知らないところで話が進んでしまうということが懸念されます。ですので、あくまでも病院、その当院のところに出てくる医療機関の主治医や、またはそれを引き継いだ先生とかがちゃんと説明をした上で、患者さんから御納得していただいた上でいろいろなものを御提供いただくということを想定しております。
 それから、未診断の方以外の方の利点でございます。こちらは、11ページのマル2の351行目というところになりますが、研究とか創薬の促進ということを書いております。今、難病法が施行されて難病制度がかなり充実はしてきましたけれども、難病の患者さんは根本的には新しい薬ができるということを非常に心待ちにされていると思っています。
 ですので、ある意味、新しい全ゲノム解析という技術がゲームチェンジャーになって、希少疾病の創薬とか開発に結びつくということですごく期待されていることが分かるようにこちらに記載しております。
 私からは以上でございます。
○中釜委員長 今の説明でよろしいでしょうか。
(森(幸)委員 首肯)
○中釜委員長 続きまして、松原委員お願いいたします。
○松原委員 このような説明文書同意書を見せていただいてどうもありがとうございました。
 私は1つだけ質問があります。先ほど森委員からも御質問がありました7ページの「6-1.あなたにお伝えする可能性のある情報」というところで、ここには先ほど御質問のあった血縁者に対しては特に記載がないわけですけれども、先ほどの御説明では、血縁者に関しては別の書類を作られるということではあったのですが、血縁者への告知ということに関してはかなり微妙な問題がいろいろあると思います。
 実際に診療の現場でよく見るのは、お子さんと同じ病気を実は持っていて将来、発症する可能性がある。あるいは保因者であって次のお子さんとか、そういった方に発症してくる可能性があるというような場合がいろいろあって、それはかなり微妙な問題であるということが多いです。
 血縁者の方にわざわざ同意書を取ってしまうと、その辺がある程度、義務として生じてしまうようなことがあるんじゃないかと思うんですね。現在のままですと、あなたにお伝えしない情報として「マル1、マル2以外の情報については、原則としてお伝えする予定はありません」と書いてあるので、これだけですと、要するに血縁者に関してはどう判断するかというのは幅を持たせているというか、ある程度、裁量権を研究側のほうで残しているというふうに私は取れていると思うのですが、血縁者の方までそういうような同意書を取ってしまうと、かえってややこしいことになるんじゃないか。
 1つには、二次的所見を必ず教えなければいけないというようなことにもなりかねませんし、その辺はちょっとやぶ蛇になるんじゃないかと思うので、そういった意味では現在のように曖昧なまま少し幅を持たせておいたほうがむしろいいんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございました。
 森幸子委員、今の御指摘に関して追加でコメントございますでしょうか。よろしいですか。
 では、難病課のほうで何かありますか。
○難病対策課(江崎) 松原先生、ありがとうございます。
 これを作るとき、非常に議論がありましたし、悩ましいところではありました。それで、実際このような文書を作って、事務的に御本人や血縁者にどうですかと言って同意を取るということでは私はないと思っていまして、当然これに至るまでには長い診療の中で培われた信頼関係が恐らくあるはずであります。難病の場合は、特にですね。それで、この御家族であればこの研究に参加して大丈夫であろうかというある程度の信頼関係というものがあると思っております。
 その中で、研究に御参加いただくときには、本当に知りたいのか、知りたくないのかということを十分に説明して、無理強いすることがあってはいけませんので、よく御納得いただいた上で、参加いただくことになると理解しています。ただ、形式的には後で、いや、知りたくなかったのに知らされてしまった、ということがないように記録としてちゃんと同意は取っておくということだと思います。
 ですから、これから我々が気をつけなければいけないのが、この書類さえ取ればいいとことではなくて、その中には実が伴っていないといけないわけでありまして、患者さんと利用者との信頼関係の中で、特に難病の場合はそういったことのコンセンサスを得た上で、最後の最後にこれに御了解をいただくということだということは忘れないように肝に銘じて我々も進めていかなければならないと思っております。
○中釜委員長 今の回答でよろしいでしょうか。
 それでは、かなり時間を超過してしまいましたが、まだ3、4名から手が挙がっていますので、手短に御質問をお願いできますか。
 まず、水澤委員お願いいたします。
○水澤委員 ありがとうございます。
 私も今の7ページの6-1のマル2の二次所見のところなのですけれども、基本的な方針はよいかとは思うのですが、やはりここに記載されているのはそういう可能性がありますということと、あなたにお伝えをすることがありますということと、比較的淡々と書いてあると思いますけれども、恐らく患者さんが期待するところはそういう二次所見は完全に全部教えてほしいというか、それが全て分かるのかというふうに思われると思いますけれども、実際に診療の現場で、シークエンスの現場でそれを解釈するほうとしては、それがなかなか完璧ではないというジレンマがあります。
 したがいまして、この二次所見に関しましては、それを系統的に、網羅的に検出して解釈する方法は確立していないといったこと、あるいはそういう情報を確実に患者さんにお伝えすることを約束できるというわけではないのだといったところをきちんと書き込んでおいていただいたほうが、双方にとってよいのではないかと思いましたが、いかがでしょうか。
○中釜委員長 今のことについてお願いいたします。
○難病対策課(江崎) 水澤先生、ありがとうございます。
 御指摘いただいたような点を少し追記する。一次所見と二次所見は少し違いまして、二次所見のほうはまだいろいろな課題も多いところで、患者さんが過度な期待を持たないようにということもとても大切だと思いますので、その点が明白になるように少し文章を追記したいと思います。ありがとうございました。
○水澤委員 よろしくお願いします。
○中釜委員長 それでは、あと3名ほどですが、河野参考人お願いいたします。
○河野参考人 時間がないところ、すみません。
 質問させていただきたいのですが、外国へのデータ提供のところでCBPRシステムを認証している事業者、これは米国の事業者を想定しているんだと思うのですけれども、私の理解では製薬企業はCBPRのシステムを採用していないところがほとんどであると聞いたことがあるんです。そうすると、実行計画2022の記載を超えてこういうふうに外国へのデータ提供の範囲を広げて記載していると思うのですけれども、これで製薬企業の参加や、創薬に十分であるとお考えなのでしょうか。
○中釜委員長 今の御指摘についていかがでしょうか。難病対策課、お願いいたします。
○難病対策課(江崎) ありがとうございます。
 製薬協の中でこの要件を満たすところというのは今、決して米国企業の中でも多くないとは思いますけれども、他方、患者さんや取り扱う情報が非常に機微であるということを踏まえますと、あくまでもCBPRというのは例示として個人情報保護委員会が挙げているものですが、少なくとも個情委が挙げているような基準を満たすような体制をしっかりと取っていただいた上で、ぜひこれを積極的に使っていただくということをお願いしたいと考えております。
○河野参考人 ありがとうございます。
○中釜委員長 ぜひ今の御指摘の点を踏まえて情報をきちんと担保しながらの利活用の革新について検討いただきたいと思います。
 それでは、製薬協の森参考人お願いいたします。
○森参考人 ありがとうございます。
 これは質問というよりはお願いということで申し上げておくものですが、8ページ目の8-2のところで、第三者提供するのは情報だけにするというふうに御説明をいただいております。
 ただ、創薬に生かすということでいいますと、やはり検体、オミックス情報、そういったものをちゃんと分析できるような形で提供するということをぜひお願いしたい。がんと難病でそこに差がつくような格好では非常に申し訳ないという思いもございますし、この点はぜひ可能にしていただけるように、出だしで何か非常に困難な事情があるということでしたら、それをできるだけ早く解決をして、できるだけ速やかに検体も利用できるように、活用できるようにということで御配慮、御検討いただきたいと思いますので、要望ということで申し上げておきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 現時点で、要望に対して何かコメントございますでしょうか。
○難病対策課(江崎) 製薬協様のほうからそういう御要望があるということは重々承知をしております。やはり一歩、一歩、着実に患者さんへの御理解、それから主治医、医療現場の理解も踏まえつつ進めていくことが大切だと思っておりますので、いただいた御要望を踏まえつつしっかりと進めていけるように引き続き御協力いただきたいと思います。
 御要望としてはしっかりと承りました。ありがとうございます。
○中釜委員長 それでは、最後に葛西参考人お願いいたします。
○葛西参考人 私は、11ページ目の「予想される不利益」のマル2のところです。実は、これはかなりリスクがある記述になっています。不利益としてはハッキングなど考えられるので、そういうリスクはあるかもしれないけれども、最後の一文ですね。「セキュリティー対策は常に最新のものを取り入れます。」というふうに書いてあります。
 医療機関であろうと、どこでもあらゆる技術について常に最新のものを対応するというのはできないんですね。それで、実際にどうやるかというと、まず通常は公知、既知の脆弱性に対する対策を怠った場合には、それはその人の責任になりかねないというのが通常の解釈です。ですから、例えば医療情報安全性ガイドラインを守るであるとか、もしくは本来であれば私が所属するような機構でCVEという脆弱性を公開しているのですが、既知、公知の脆弱性に関しては対策を行うという文章でないと、セキュリティー対策は常に最新のものを取り入れますというものをそのまま承認した場合、病院もですし、共同研究機関も解析拠点もデータベースも、ひいてはこのフレームワーク全体を承認している厚生労働省もかなり大きなリスクを負う事業になっているので、よく御検討いただいたほうがいいのではないかと思います。
 以上です。
○中釜委員長 今の御指摘に対して難病対策課いかがでしょうか。
○難病対策課(江崎) ありがとうございます。
 常に最新のものというのがなかなか現実的に困難であるというような御指摘かと受け止めました。いただいた御指摘を踏まえまして修正を考えたいと思いますので、また具体的にいろいろと後日アドバイスいただけますとありがたいです。ありがとうございます。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。ほかに御質問ございませんでしょうか。
 それでは、最後に全体を通して改めてここで何か御発言されたい方はいらっしゃいますでしょうか。
 特にございませんね。委員長の不手際で時間をかなり超過してしまいましたが、本日いろいろな御意見をいただきました。特に例えば事業実施機関の役割、コンソーシアムの位置づけ、それからデータ解析センターと実施組織の関係、情報インフラに関する整備、これは法人形態によっていろいろ要件が異なってくる可能性があるということで、法人の要件を踏まえた形での盤石な情報インフラに対する考え方、定義、それらを検討していただきたいという点、細かな点では国外からの利活用体制に対する整備、さらには精度管理ですね。解析等の精度管理、品質管理の問題は解析パイプラインのQCにも関係しますし、あるいは委託される先の検査会社のQCにも関係するかと思います。この辺りのところをきちんと整備をすることが重要ということで幾つか具体的な御意見をいただきましたので、いただいたご意見を基に引き続き各ワーキンググループのほうで協議していただいて、次回の専門委員では再度御報告させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、以上で本委員会を終了したいと思いますが、追加の意見等がございましたらぜひ事務局までお寄せいただきたいと思います。時間をかなり超過しましたことをおわびいたします。
 最後に事務局にお返しします。
○原澤推進官 事務局でございます。
 長時間にわたる御議論、本当にありがとうございました。
 次回の専門委員会の日程につきましては、後日事務担当より御連絡させていただきますので、専門委員の皆様方におかれましては御回答のほどよろしくお願い申し上げます。
 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了したいと思います。本日はどうもありがとうございました。