2022年12月13日 第185回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年12月13日(火) 14:00~16:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

公益代表委員
荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、藤村委員
労働者代表委員
川野委員、北野委員、櫻田委員、東矢委員、冨髙委員、八野委員、世永委員
使用者代表委員
池田委員、鬼村委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、鳥澤委員、兵藤委員、山内委員
事務局
鈴木労働基準局長、青山審議官(労働条件政策、賃金担当)、古舘総務課長、松原労働条件政策課長、吉村労働関係法課長、益原労働関係法専門官、木原労働条件政策課課長補佐、田邉労働関係法課総括調整官、多根井労働関係法専門官、小川労働関係法課課長補佐、長澤労働条件企画専門官

議題

  1. (1)労働契約制度及び労働時間制度等について
  2. (2)担保法制の見直し(事業(成長)担保制度の導入等)について(報告事項)

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第185回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日の分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施をいたします。
 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の佐藤厚委員、水島郁子委員、両角道代委員、労働者代表の大崎真委員が欠席と承っております。
 また、黒田委員は所用のため途中で退席されると伺っております。
 カメラ撮りはここまでということでお願いします。
 本日の議事に入りたいと思います。
 議題(1)「労働契約制度及び労働時間制度等について」です。
 前回の分科会においてお願いしたとおり、労働契約法制や労働時間制度については、事務局に今回これまでの議論の整理をしていただくようお願いしたところです。
 それでは、事務局から説明をお願いいたします。
○労働関係法課課長補佐 よろしくお願いいたします。労働関係法課でございます。
 資料1「労働契約制度及び労働時間制度等について」となります。これまで分科会で御議論いただいた内容を整理した資料となります。
 2ページ目を御覧ください。まず、労働契約制度についてです。具体的にはこれまで御議論いただいていた無期転換ルール、労働契約関係の明確化についての御説明となります。
 3ページ目を御覧ください。無期転換ルールの内容となります。
 (1)無期転換ルールの部分を御覧ください。「制度の活用状況を踏まえると、無期転換ルールの導入目的である有期契約労働者の雇用の安定に一定の効果が見られ、現時点で、無期転換ルールを根幹から見直さなければならない問題が生じている状況ではないと考えられるが、制度が適切に活用されるよう必要な取組を進めることについてどのように考えるか」としております。
 次に(2)無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保です。
 1ポツ目として「無期転換ルールに関する労使の認知状況を踏まえ、無期転換ルールの趣旨や内容、活用事例について、一層の周知徹底に取り組むことについてどのように考えるか」。
 2ポツ目「無期転換申込権が発生する契約更新時に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件について、労働基準法の労働条件明示の明示事項に追加することについてどのように考えるか」。
 3ポツ目「この場合において、労働基準法の労働条件明示において書面で明示することとされているものは、無期転換後の労働条件明示にあたっても書面事項とすることについてどのように考えるか」としております。
 次に、(3)無期転換前の雇止め等です。
 1ポツ目「無期転換前の雇止めや無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱い等について、法令や裁判例に基づく考え方を整理し、周知するとともに、個別紛争解決制度による助言・指導にも活用していくことについてどのように考えるか」。
 2ポツ目として「紛争の未然防止や解決促進のため、更新上限の有無及びその内容について、労働基準法の労働条件明示事項に追加するとともに、労働基準法第14条に基づく告示において、最初の契約締結より後に、更新上限を新たに設ける場合又は更新上限を短縮する場合には、その理由の労働者への事前説明を求めることについてどのように考えるか」としております。
 4ページ目を御覧ください。通算期間及びクーリング期間です。
 「通算契約期間及びクーリング期間について、現時点で枠組みを見直すまでの必要性は生じていないと考えられるが、クーリング期間に関して、法の趣旨に照らして望ましいとは言えない事例等について、一層の周知徹底に取り組むことについてどのように考えるか」としております。
 次に、(5)無期転換後の労働条件です。
 1ポツ目「無期転換後の労働条件について、有期労働契約時と異なる定めを行う場合を含め、法令や裁判例に基づく考え方、留意点等を整理し、周知に取り組むことについてどのように考えるか」。
 2ポツ目として「無期転換後の労働条件について、労働契約法第3条第2項を踏まえた均衡考慮が求められる旨を周知するとともに、無期転換申込権が発生する契約更新時の無期転換後の労働条件等の明示の際に、当該労働条件を決定するにあたって、労働契約法第3条第2項の趣旨を踏まえて均衡を考慮した事項について、使用者が労働者に対して説明に努めることを求めることについてどのように考えるか」。
 3ポツ目「正社員への転換をはじめとするキャリアアップの支援に一層取り組むことについてどのように考えるか」としております。
 次に、(6)有期雇用特別措置法の活用状況です。
 「有期雇用特別措置法の特例について、特例の存在が十分に認知されていない現状があるため、一層の周知徹底に取り組むことについてどのように考えるか」としております。
 5ページ目を御覧ください。労働契約関係の明確化の内容となります。
 1ポツ目「多様な正社員に限らず労働者全般について、労働基準法の労働条件明示事項に就業場所・業務の変更の範囲を追加することについてどのように考えるか」。
 2ポツ目「労働契約法第4条の趣旨を踏まえて、多様な正社員に限らず労働者全般について、労働契約の内容の変更のタイミングで、労働契約締結時に書面で明示することとされている事項については、変更の内容をできる限り書面等により明示するよう促していくことについてどのように考えるか」。
 3ポツ目「労働基準法の労働条件明示のタイミングに、労働条件の変更時を追加することを引き続き検討することについてどのように考えるか」。
 4ポツ目「紛争の未然防止のため、多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する裁判例等を幅広く整理して明らかにし、周知徹底に取り組むことについてどのように考えるか」。
 5ポツ目「就業規則を備え付けている場所等を労働者に示すこと等、就業規則を必要なときに容易に確認できるようにする必要があることを明らかにすることについてどのように考えるか。また、就業規則の更なる周知の在り方について、引き続き検討することについてどのように考えるか」。
 6ポツ目「短時間正社員については、処遇について、正社員としての実態を伴っていない場合には、パート・有期労働法の適用があり、均衡・均等待遇が求められることや、同法が適用されないそれ以外の多様な正社員においても、労働契約法第3条第2項による配慮が求められることを周知することについてどのように考えるか」としております。
 6ページ目を御覧ください。労使コミュニケーションの内容となります。
 1ポツ目「労使コミュニケーションに当たっての留意点や、適切に労使コミュニケーションを図りながら、無期転換や多様な正社員等について制度の設計や運用を行った各企業の取組事例を把握して周知することについてどのように考えるか」。
 2ポツ目「過半数代表者の適正な運用の確保や多様な労働者全体の意見を反映した労使コミュニケーションの更なる促進を図る方策について引き続き検討を行うことについてどのように考えるか」としております。
 労働契約法制については以上となります。
○労働条件政策課課長補佐 続きまして、7ページ以降が労働時間制度についてでございます。こちらはこれまで御議論いただきました論点に沿って議論を整理してございます。
 8ページ目を御覧ください。まずは裁量労働制についてでございます。
 (1)が「対象業務」でございまして、「企画業務型裁量労働制や専門業務型裁量労働制の現行の対象業務の明確化等による対応を検討し、対象業務の範囲については、経済社会の変化や、それに伴う働き方に対する労使のニーズの変化等も踏まえて、その必要に応じて検討することについてどのように考えるか。また、金融機関における一定の業務についてどのように考えるか」としてございます。
 (2)が「労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保」で、①が対象労働者の要件でございまして、3点挙げてございます。「専門型について、対象労働者の属性について、労使で十分協議・決定することが望ましいことを明らかにすることについてどのように考えるか」。「対象労働者を定めるに当たっての適切な協議を促すため、使用者が当該事業場における労働者の賃金水準を労使協議の当事者に提示することが望ましいことを示すことについてどのように考えるか」。「対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更しようとする場合に、使用者が労使委員会に変更内容について説明を行うことを求めることについてどのように考えるか」としてございます。
 次のページを御覧ください。次に②本人同意・同意の撤回・適用解除でございまして、3点挙げてございます。「専門型について、本人同意を得ることや同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないことを求めることについてどのように考えるか」。「本人同意を得る際に、使用者が労働者に対し制度概要等について説明することが適当であること等を示すことについてどのように考えるか」。「同意の撤回の手続を定めることを求めることについてどのように考えるか。また、同意を撤回した場合に不利益取扱いをしてはならないことを示すことや、撤回後の配置や処遇等についてあらかじめ定めることが望ましいことを示すことについてどのように考えるか」としてございます。
 次に、③が業務量のコントロール等を通じた裁量の確保で、2点挙げてございます。「裁量労働制は、始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを示すことについてどのように考えるか」。「労働者から時間配分の決定等に関する裁量が失われた場合には、労働時間のみなしの効果は生じないものであることに留意することを示すことについてどのように考えるか」としてございます。
 次のページを御覧ください。(3)「労働者の健康と処遇の確保」でございます。①が健康・福祉確保措置でございまして、3点挙げてございます。「健康・福祉確保措置の追加(勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の適用解除)、医師の面接指導)等を行うことについてどのように考えるか」。「健康・福祉確保措置の内容を「事業場における制度的な措置」と「個々の対象労働者に対する措置」に分類した上で、それぞれから一つずつ以上を実施することが望ましいことを示すことについてどのように考えるか」。「「労働時間の状況」の概念及びその把握方法が労働安全衛生法と同一のものであることを示すことについてどのように考えるか」としてございます。
 次に、②でみなし労働時間の設定と処遇の確保について1点挙げてございます。「みなし労働時間の設定に当たっては対象業務の内容、賃金・評価制度を考慮して適切な水準とする必要があることや対象労働者に適用される賃金・評価制度において相応の処遇を確保する必要があることを示すこと等についてどのように考えるか」としてございます。
 次に、11ページ目を御覧ください。(4)が「労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保」でございまして、①が労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上でございます。こちらは5点ございます。「決議に先立って、使用者が労使委員会に対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容について説明することを求めることについてどのように考えるか」。「労使委員会に制度の実施状況の把握及び運用の改善等を行うことを求めること等についてどのように考えるか」。「労使委員会の委員が制度の実施状況に関する情報を十分に把握するため、賃金・評価制度の運用状況の開示を行うことが望ましいことを示すことについてどのように考えるか」。「労使委員会の開催頻度を6か月以内に1回以上とすることを求めるとともに、労働者側委員の選出手続の適正化を求めること等についてどのように考えるか」。「専門型についても労使委員会を活用することが望ましいことを明らかにすることについてどのように考えるか」としてございます。
 次に、②が苦情処理措置でございまして、2点挙げてございます。「本人同意の事前説明時に苦情の申出方法等を対象労働者に伝えることが望ましいことを示すことについてどのように考えるか」。「労使委員会が苦情の内容を確実に把握できるようにすることや、苦情に至らないような運用上の問題点についても幅広く相談できる体制を整備することが望ましいことを示すことについてどのように考えるか」としてございます。
 12ページ目を御覧ください。裁量労働制については最後でございますが、③行政の関与・記録の保存等でございます。3点ございます。「6か月以内ごとに行うこととされている企画型の定期報告の頻度を初回は6か月以内に1回及びその後1年に1回とすることについてどのように考えるか」。「健康・福祉確保措置の実施状況等に関する書類を労働者ごとに作成し、保存することを求めることについてどのように考えるか」。「労使協定及び労使委員会決議の本社一括届出を可能とすることについてどのように考えるか」としてございます。
 13ページ目を御覧ください。次に、年次有給休暇について3点挙げてございます。1点目「令和7年までに「年次有給休暇の取得率を70%以上とする」という政府の目標を踏まえ、年次有給休暇の取得率の向上に向けた一層の取組を検討することについてどのように考えるか」。「年5日以内とされている年次有給休暇の時間単位での取得について、上限日数を引き上げることや、使用者の時季指定義務の取得義務日数に時間単位で取得した時間も含めることについてどのように考えるか」。「また、年5日を超えて取得したいという労働者のニーズに応えるような各企業独自の取組を促すことについてどのように考えるか」としてございます。
 14ページ目を御覧ください。今後の労働時間制度についての検討でございまして、2点挙げてございます。「働き方改革関連法で導入又は改正された、時間外労働の上限規制、フレックスタイム制、高度プロフェッショナル制度、年次有給休暇制度等は、同法の施行5年後に、施行状況等を踏まえて検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずることとされていることを踏まえ、今後、施行状況等を把握した上で、検討を加えることについてどのように考えるか」。「その際には、働く方の健康確保という原初的使命を念頭に置きながら、経済社会の変化や働き方の多様化等を踏まえ、働き方やキャリアに関する労働者のニーズを把握した上で、労働時間制度の在り方の検証・検討を行うことについてどのように考えるか」としてございます。
 資料1に関しては以上でございます。
 参考資料といたしまして、裁量労働制の対象業務の議論に関しまして、金融機関における一定の業務の内容等に関する資料をお付けしていますので、適宜御参照いただければと思います。
 事務局からの説明は以上でございますので、よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ただいま資料No.1の労働契約制度と労働時間制度について説明をいただいたところです。
 まずは労働契約制度のほうについて委員の皆様より御質問、御意見があればお願いしたいと存じます。なお、オンライン参加の委員の皆様におかれましては、御発言の希望がある場合には、チャットのほうに発言希望と記入してお知らせください。川野委員、お願いします。
○川野委員 ありがとうございます。
 無期転換後の労働条件について意見を申し上げたいと思います。この間、重ねての発言になるかと思いますが、別段の定めが設けられた本来の趣旨は、労働条件の引き上げにあるということをしっかりと周知して、無期転換労働者の処遇改善の取組を促すことが非常に重要だと考えております。
 また、いわゆる正社員とフルタイム無期転換者との不合理な処遇差を是正するためには、労働契約法3条2項を踏まえた均衡考慮だけでは不十分であることは、以前より労働者側委員が申し上げてきたとおりでございます。少なくとも無期転換後の労働条件明示に当たっての説明は、均衡を考慮した事項について、主観的、抽象的なものではなく、パート・有期法の規定に準じて、具体的な待遇それぞれについて行うことが必要であると考えていますし、また、その説明の実効性を確保するためにも、使用者の方には説明を徹底させるような対応が必要でないかと考えております。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 3ページの無期転換ルールの(1)のところでございます。資料には、制度の活用状況を踏まえると、無期転換ルールの導入目的である有期契約労働者の雇用の安定に一定の効果が見られ、現時点では根幹から見直さなければならない問題は生じていないと記載されております。これまで労働者側委員からは、周知だけではなく、契約締結更新時ごとの労働者への無期転換ルールの周知の義務付けや、無期転換回避策への対応の強化、クーリング期間の濫用防止、転換後の処遇改善など、より具体的な対応が必要なのではないかということを発言してきており、この書きぶりでは不十分ではないかと考えております。周知はもちろん重要ですが、今、申し上げたような内容も含めて、無期転換労働者の総合的な雇用の安定を図るためには、より踏み込んだ対策が必要と考えます。
 それから、(2)の無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保も非常に重要な対策であり、周知に加えて、労働者が無期になりたいと希望する場合には、きちんと確実に申し込めるような環境を整備しなければいけないと考えております。そのような視点から言えば、契約更新時において無期転換申込機会や転換後の労働条件を明示事項に追加することは必要だと考えております。
 また、労働条件明示ですが、労働者の安心という観点から書面で明示していくことが重要だと考えておりますし、周知が不十分である現状を踏まえれば、契約更新時ごとにルール自体をしっかりと周知徹底していただきたいと考えております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 北野委員、お願いします。
○北野委員 ありがとうございます。
 無期転換前の雇止めとクーリング期間に関して意見を申し上げたいと思います。無期転換前の雇止めに関してですが、有期労働契約の濫用を防止して雇用の安定を図るという無期転換ルールの趣旨を踏まえれば、使用者が合理的な理由もなく、一方的に更新上限を設けることは法の趣旨に反するものと思っております。この点を踏まえて申し上げれば、労働契約は労働者と使用者との合意により変更されると捉えるべきであり、契約締結後に上限を新設・変更する場合においては、労働者への理由の説明は義務付けが必須だと考えております。以前、労働者側からの求めがない場合は、説明会等で集団的方法も認めるべきとの発言があったと記憶しておりますが、具体的な労働条件に関わることでもありますし、個別の説明が欠かせないと考えております。
 また、契約締結時においても、更新上限の有無、その内容については労働契約の重要な部分でもありますし、更新上限があるならそもそも契約を締結しないという、労働者の契約締結に係る判断にも関わることだと思っておりまして、締結後の取扱いとの整合性を図っていくことが重要ではないかと思います。
 クーリング期間について申し上げますと、枠組みを見直すほどの必要性は生じていないという記載がされておりますが、そもそも法の趣旨に沿ったクーリング期間というのは、国会でも答弁があったと思いますが、育児や介護といった労働者側の事情により離職をした後に、そうした事情が解消して過去の職務経験を生かすために同じ会社、企業に復帰しようとするといった場合のような非常に限定的なケースではないかという点は指摘しておきたいと思っています。そういう意味では、非常に限定的なケースのみ該当するという点をしっかり周知し、濫用を防止する取組を行うことが重要だと思っております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 世永委員、お願いします。
○世永委員 ありがとうございます。
 私からも無期転換前の雇止め等の関係について発言をさせていただきます。無期転換前の雇止めや申込みを行ったこと等を理由とする不利益な取扱いについて、労使の力の非対称性の問題がある中で、労働者保護を確実に図っていくためには、雇止めや不利益取扱いの禁止の法制化も含め検討を続けていくことが必要であると考えています。
 次に、(6)の有期特措法の活用状況に関しまして、無期転換ルールの特例として科技イノベ法などもあるわけですが、そもそも有期特措法などの特例につきましては、無期転換ルールが雇用安定のための基本ルールであるということを踏まえれば、設けるべきではなく、縮小する方向で検討するべきであるということについて、改めて申し上げたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 八野委員、お願いします。
○八野委員 ありがとうございます。
 私のほうからは5ページの労働契約関係の明確化のところについて意見を申し上げたいと思います。まず、労働条件の明示事項に就業場所・業務変更の範囲を追加することは必要だと考えております。一方、労働契約の変更時に関し、変更内容の書面明示についての努力義務を課すだけでは不十分であるということは、労働者側委員から申し上げてきたとおりでございます。
 労働条件の変更については、賃金等の処遇または転居を伴う配転など、労働者の生活に与える影響が非常に大きい場合も数多くあります。労働者は具体的な変更内容を理解・納得することが必要であり、そのためには、労基法の労働条件明示のタイミングに労働条件の変更時を追加する必要があるということは、改めて指摘をしておきたいと思います。
 また、就業場所・業務変更の範囲を書面明示することは、労働条件を明確にするために有用でありますが、一方で、限定された職務等が廃止された場合には、限定正社員の解雇等の不利益な取り扱いが行われる懸念があります。限定された就業場所や職務をなくしていくことについて、たとえば経営の合理化を目的とした解雇であっても、労働条件通知書などに限定内容が明記されていれば、労働者は解雇がやむを得ないものだと捉えられかねない。労働側としては解雇を回避する努力が非常に重要と考えております。限定された勤務地や職務の廃止はあくまでも企業の都合で行われるものであり、裁判例の周知だけでなく、限定された職務等が廃止された場合に、解雇は当然正当化されるものではなく、使用者には解雇回避努力義務が課せられる旨、原則となる考え方をしっかりと周知していただきたいと思っております。
 就業規則の周知について、就業規則は様々な労働条件が定められることを踏まえれば、就業規則は全ての働いている者が分かるところに備え付けておく、または個別に渡していくことが不可欠です。本来であれば、就業規則の制定・変更時も個別明示が必要であると思いますが、少なくとも使用者に一層の周知を促す実効性ある方策を検討していくことが必要であると考えております。
 また、短時間正社員の均等・均衡待遇の確保に関して5ページに記載があるように、実態が伴わない場合にはパート・有期法が適用されることをまずは周知すべきであると考えております。短時間正社員などの限定正社員において、その就労実態を踏まえてパート・有期法が適用されることがあるという前提で法の潜脱が生じないように、丁寧に周知徹底していくべきであると考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 東矢委員、お願いします。
○東矢委員 ありがとうございます。
 私からは6ページ目の3.にございます労使コミュニケーションについて意見を申し上げます。以前の審議会において使用者側委員から労使コミュニケーションについて、個別の労使関係も含めるような発言がございましたが、労使関係の力の非対称性などを考えますと、やはり労働組合を中心とした集団的労使関係の構築の重要性についてしっかりと浸透を図っていく必要があると考えております。
 また、過半数代表についても、適正な運用がしっかり図られるように行政として周知徹底すべきであるという点についても改めて申し述べさせていただきます。
 以上でございます。
○荒木分科会長 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 まず、別段の定めに関してです。使用者側として繰り返し申し上げているとおり、転換時の労働条件の引き上げは、本人の御意向もありますが、仕事内容の高度化とセットで労使で決められていくものであります。そのため、労働者の能力開発支援を社会全体で行っていく視点も重要と思っています。
 また、クーリングと有期特措法に関しては、いずれも多様な就労ニーズがあることを前提に考える必要があります。例えばクーリングの理由を限定するということや、有期特措法の仕組みの縮小は、雇用機会の減少にも直結しかねない問題ですので、極めて慎重に対応することが必要と思っています。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 オンラインのほうから発言希望が出ております。お待たせしました。まず、池田委員、お願いいたします。
○池田委員 どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます。
 私からは2点意見を述べさせていただきたいと思います。1点目は4ページ目の(5)無期転換後の労働条件についてでございます。いわゆる同一労働同一賃金の法改正を受けて、各社において有期契約労働者と通常の労働者との間で処遇のバランスを取るという対策は進んできております。そのため、無期転換前の対応を行った企業が転換後の処遇のバランスを取らないということは、想像しがたいと考えてございます。また、フルタイムの無期転換を希望している者の場合、転換後はパート・有期法の均衡・均等待遇の規定はございませんが、無期転換前であれば、御自身が有期契約労働者であることから、パート・有期法で保護されておりますし、それを背景に5年直前の更新時面談も行われるものと考えます。
 このことを踏まえますと、無期転換者と正社員や限定正社員等の多様な無期契約労働者との間でも、パート・有期法8条、9条と同様のルールを手当てする必要まではなく、労働契約法3条2項の趣旨を踏まえた対応が求められる旨を周知するということで十分だと考えます。
 その上で、3番目で、無期転換する労働者の納得感を高め、労使トラブルの未然防止に資するという対応は何か必要なのではないかなと考えてございます。そういうことが大切なのだろうと考えます。
 今回事務局から示されました労働契約法3条2項の趣旨を踏まえ、均衡を考慮した事項を労働者へ説明するように努めるように求めることは必要十分な内容ではないかなと捉えています。また、別段の定めにより無期転換後の労働条件を有期労働契約時と異なる条件に変更する場合は、やはり同一労働同一賃金の観点から、職務や職責、配置変更の範囲とセットで見直されることが一般的であろうと考えます。この場合、不合理な労働条件の変更とならないよう、法令や裁判例に基づく考え方や留意点を労使が共有しておくことが大切であり、厚労省事務局にはそうした点の周知をお願いしたいと思います。こちらが1点目です。
 もう1点は、資料5ページ目の4つ目のポツ、紛争の未然防止に資する裁判例等の周知についてでございます。これは以前の委員会でも申し上げましたが、労働契約法の通達では、無期労働契約に転換した後における解雇については、個々の事情により判断されるものであるが、一般的には勤務地や職務が限定されているなど、労働条件や雇用管理がいわゆる正社員と大きく異なるような労働者については、こうした限定等の事情がないいわゆる正社員と同列に取り扱われることにはならないと解されることとの解釈が示されています。実際に解雇回避努力等の判断において、勤務地、職務の専門性や限定性を考慮しているケースも存在しますので、裁判例の周知に当たっては、こうしたケースも含めて実態に沿った周知をしていただくようお願い申し上げます。
 私からは2点でございます。ありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、山内委員、お願いします。
○山内委員 御説明、御指名ありがとうございます。
 私からは資料5ページの労働契約関係の明確化、中でも変更の範囲の明示及び労働条件変更時の明示について意見を述べさせていただければと思います。
 まず、資料5ページ目の1つ目から3つ目のポツ、就業場所・業務の変更の範囲の明示と労働条件変更時の書面の明示について。裁判例を見ますと、労働契約上の限定の有無あるいは範囲についての取決めがないために、事後の紛争となって、限定合意があったかの認定が裁判所に委ねられるという事案があるということがあります。こういう事例から考えますと、勤務地、職務について、将来的な変更の範囲を示す、明示するというのは、トラブルの防止に資するものと受け止めております。
 ただ、一方で、勤務地と職務内容変更範囲を明示するということは、これまで義務がなかったということもありまして、各企業とも初めて対応するということになるかと思います。変更の範囲の決め方については、早くもどのように定めてよいか等々、不安に思う企業担当者の声も聞かれ始めております。労働者の将来のキャリアの予見可能性と企業の事業運用の柔軟性をどうバランスさせるかは、そう簡単ではないと思います。また、職務内容の限定の仕方は人材の確保にも影響し得るところ、範囲の絞り方も含めて同業他社の対応などを十分調査をする必要があるのかもしれません。
 このように企業によっては変更の範囲の明示に当たって記載の仕方に細心の注意を払い検討するため、担当に対して相当な負担がかかるものと想像されます。したがって、見直しを行う際には十分な周知期間が必要と思います。事務局の方々におかれましては十分な配慮をお願いしたいと思います。
 また、こうした負担を感じる企業がある中で、採用時の明示義務に加えて、労働条件変更時における明示の義務を同時に行うことは、企業にとっての負担がさらに大きくなると感じます。まずはベース部分となる勤務地・職務の変更範囲の明示の義務化にとどめ、ベース部分が定着してから変更時の明示について検討することがよいのではないかと改めて申し上げたいと思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、佐藤晴子委員、お願いします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
 私からは3ページの(2)の無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保、特に2ポツ目のことについて意見を申し上げたいと思います。以前にも御質問や意見を申し上げたところと若干重なるところがあると思いますが、改めて申し上げたいということでございます。無期転換申込権が発生する契約更新時に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件について労働条件明示の明示事項に追加するということに関してですが、労働者の権利は数多く存在するわけですが、その全てに企業からの周知義務を課すということ自体は違うと考えておりますけれども、この無期転換権の権利発生の見通しが必ずしも高くないといった事情や、あるいは制度の認知度が必ずしも高くないといった事情を鑑みれば、5年を超える有期雇用労働者に対する周知義務を課すということは、異論はないと思っております。
 義務を履行するに当たっては、当然ながら転換後のキャリアの選択肢や、あるいは労働者が御自身のキャリア志向と労働条件を照らし合わせて無期転換申込権を行使するか否かを判断できるため、納得を得た上での契約の締結につながり、労使双方にとってのメリットがあると感じます。
 ただ、このタイミングについては、ここに整理してある記載のとおり、無期転換申込権が発生する契約更新にすることが適当だということを申し上げたいと思います。無期転換権が発生するタイミングというのは、企業によって、あるいはそれぞれの個別契約によっても異なりまして、全てが必ずしも有期雇用契約から5年を超えて更新しているわけではないということだと思っておりますので、仮に5年を超える契約の更新より前のタイミングでこれらの明示をすることを義務付けるとしますと、労働者に不要な期待を抱かせることになりかねませんし、結果として不要な労使トラブルに発展することを懸念いたしますので、明示のタイミングというところは、今、記載のとおり整理していただくというのが適当だということを申し上げたいと思います。
 あと、厚生労働省の事務局には、制度の周知にとどまらずに、モデル労働条件通知書に明示方法を追記していただくとか、企業から労働者へ説明しやすくなるような御支援をお願いしたいと思いますので、申し添えたいと思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、兵藤委員、お願いいたします。
○兵藤委員 兵藤でございます。御指名ありがとうございます。
 私からは労働契約関係の明確化、資料5ページの5ポツ目の就業規則の周知について申し上げたいと思います。我が国では個別契約よりも就業規則において労働条件を定めることが多いため、就業規則の周知は非常に重要であり、就業規則を必要なときに容易に確認できるようにする必要があることを明らかにするという点は、非常に必要であると考えます。労働基準法施行規則第52条の2では就業規則等の周知方法を定めておりますけれども、具体的な就業規則の周知方法は各社の実態に応じて様々なやり方でされていると考えられますことからも、今後の周知の在り方について検討するに当たりましては、労働契約法第7条で使用者が就業規則を実質的な周知を行っていた場合には、労働契約の内容は就業規則で定める労働条件によるものとされておりますが、逆にこうした実質的な周知がされていない場合はその就業規則は無効になることについても十分周知いただくとともに、その際、就業規則の実質的な周知がされていると認められるケース、逆に認められないケースの両方を具体的に周知していくことも重要ではないかと考えます。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 会場から八野委員、お願いします。
○八野委員 使用者側委員から、有期契約労働者に関して同一労働同一賃金の取組がかなり進んできているという御発言がありました。確かに法規定前よりは取組が進んでおりますが、今後の春闘の中でも有期契約労働者の労働条件について様々な面で協議をしていかなくてはいけないところがまだ多く残っている現状があることは御理解いただきたいと思います。その上で、有期から無期に転換した短時間労働者などの処遇改善については、さらなる取組が必要になると認識しております。例えばあるスーパーでは最初から短時間労働者で無期雇用しているところもあります。
 無期転換のルールについては、契約更新時ごとの通知を行うと労働者に不要な期待感を持たせてしまう懸念があるという発言がありましたが、期待感を持ってはいけないのでしょうか。有期契約で働いていて、自分の働き方やその企業の特性、また、生活のリズムや家庭環境に合っているのかどうかというところを含めて、無期転換権が発生する前の5年間の中で転換するかどうかを判断していくこともあるのではないかと思っております。
 ある企業では5年のルールを短くしているところもあります。そのようなことも踏まえると、少なくとも無期転換ルールの周知については、例えば1年契約であれば、1年ごとにしっかりと行っていく必要があるという認識で労働者側委員は発言をしておりますので、御理解をいただきたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかに何か御意見はありますでしょうか。佐藤晴子委員、お願いいたします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
 無期転換権の権利行使の周知についてもし誤解があったらと思いまして、追加で申し上げさせていただきますけれども、あくまで義務化するということについての意見として、これを5年よりも前に義務化することによる懸念、無用な労使トラブルへの発展の懸念というところを申し上げたのであって、企業ごとにいろいろ違うことがあると思います。その企業において労使の自治でそれぞれの取組を行うこと自体を否定しているわけではないというところは付言させていただきます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 よろしければ、前半の労働契約制度については以上とさせていただきまして、後半の労働時間制度について、委員の皆様より引き続き御意見を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 前回の分科会において、労側委員より金融機関の一定の業務を裁量労働制の対象業務に追加することについて、御指摘をいただきましたので、少々長くなりますがコメント致します。
 まず、M&Aに関する考案及び助言の業務が対象業務となった場合、M&Aの仲介業者や、M&Aを手がけるコンサルティング会社にも対象が拡大するという御懸念についてです。この点、私どもは銀行・証券会社など金融機関におけるM&Aアドバイザリー業務のみを対象にすることを考えております。
 次に、M&Aの考案及び助言を行う業務について、マッチングから企業分析まで工程が多い、業務が多岐にわたって業務が判然としないという御指摘についてです。私どもが重要だと考えるのは、あくまでも業務の性質上、適切に遂行するには遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務、また企画、立案、調査及び分析について裁量を持って行う業務であるという要件に合致しているかどうかという点です。
 M&Aアドバイザリー業務は、戦略を企画、立案し、また、デューデリジェンスで調査分析をするなど、工程内の各業務は先程申し上げた要件に合致しており、その範囲は明確です。工程が多いことは、御指摘のとおり事実ですが、工程が多いこと自体は、裁量労働制の対象業務としてふさわしいかどうかと関係がありません。対象業務は専門性が高く、基本的には新卒での配属はなく、経験を積んだ社員が担当する業務です。なお、こうした業務に合致しない業務、例えば上司からの指示で調査の一部を受け持って調査業務のみを行う業務が当然対象外であることは明らかです。
 したがって、金融各社で対象業務の範囲が異なっていたとしても、裁量労働制の対象範囲は明確であり、M&A等に関する業務をしない方が広く対象になるという指摘は当たらないと思います。
 また、M&A業務に従事した方の労働時間が長いのではないかという御指摘についてです。この点は前回も少し申し上げましたとおり、例えば買い手と売り手の売値交渉の場面では一時的に密度の濃い作業もあると聞いておりますが、M&Aの戦略策定、取引スキームを考案する工程、売り手企業のデューデリジェンスを行う工程では、自分のペースで働いていると聞いておりまして、案件あるいは工程による繁閑の差はありますが、一般的には長時間労働になっていないと考えております。したがって、私自身は厚生労働省から示されたヒアリング結果の記載内容を、違和感なく自然に読ませていただいたところでございます。
 続いて、個社によってフロント、ミドル・バックの分け方や、顧客との関係性も異なる中、対象が広く解釈されてしまい、実質的に裁量のない働き手にも適用されてしまうのではないかという御指摘についてです。まずもって、私どもはフロント、ミドル・バックという名称のみをもって区分しているわけではありません。対象にすべきと考えているのは、いわゆるミドル・バックの業務であり、これは合併・買収、事業承継等に関する調査分析を行い、その結果を用いて合併・買収、事業承継などに関する考案及び助言を行う業務をさします。
 一方で、いわゆるフロントの業務というのは、時間配分を顧客の都合に合わせざるを得ない相談業務に専ら従事する者などを指しております。こうした定義を明確化すれば、企業によってフロント、ミドル・バックの定義が異なることが原因で、対象業務に従事しない働き手にも裁量労働制が適用されるというような問題は起きないと考えます。
 最後に、資金調達方法に関する考案及び助言の業務の専門性をどう担保するかという点の御指摘についてです。資金調達方法は様々ありますが、その中でもいわゆるプロジェクトファイナンスのように、将来キャッシュフローや中長期的なリスクの正確な予測を基に行う高度な資金調達方法を用い、かつ当該事業から生み出されるキャッシュフローを返済原資とするものに限って対象業務とすることを御提案しています。
 なお、御参考までに申し上げますと、こうした手法を用いる融資というのは一般的な融資と異なり、いわゆるノンリコースローンと呼ばれる、返済不能になった場合にその不足分を金融機関が借り主に返済請求できない契約形態であることが一般的です。すなわち、将来予測やリスク分析を誤ったばかりに計画どおり返済がされなかった場合には、金融機関が多大な不利益を被ることになります。したがって、当然に金融機関としては精緻な予測とリスク回避の提案を行うことになるわけであり、こうした高度な手法を必要とする案件を対象とした業務であるということが、専門性の証左にもなり得ると考えております。
 また、M&Aアドバイザリー業務と同様に、高度な資金調達方法の考案及び助言の業務には、基本的には新卒の社員が配属されることはなく、経験を積んだ社員が就くということからも一定の専門性があると考えております。
 先日来申し上げておりますとおり、金融機関の一定業務のうち、資金調達方法、合併・買収、事業承継に関する考案及び助言の業務は極めて専門性が高く、また、業務の性質上、適切に遂行するには遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要のある業務です。まさに裁量労働制の趣旨に合致した業務ですので、ぜひ対象業務に追加いただくよう、改めて強く申し上げます。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。北野委員、お願いします。
○北野委員 ありがとうございます。
 私から対象労働者の要件と対象業務について申し上げたいと思います。鈴木委員からも御発言がありましたが、専門型の対象業務は省令・告示で定められた業務でありますし、先ほど専門的なことを学んだ方は即戦力になり得るという話もありましたが、経験年数が少ない、または、学校を卒業して当該資格を取得したばかりの者であっても裁量労働制の対象労働者となり得ます。しかし、実務の場においては、いきなり独り立ちをして業務を遂行できない者がいることもしっかり踏まえた上で、対象労働者が本当に裁量を持って働けるのかどうか、専門型であってもきちんと労使で協議・確認の上で決定するということが必要だと思っておりますし、省令・告示に記載の業務であるから経験年数が少なくても対象労働者になるということではなく、繰り返し申し上げておりますが、記載の業務であっても、真に裁量を持って働くことができる能力や経験等があるのかを判断して適用の可否を決めるべきだと思っております。
 それから、対象業務について申し上げたいと思います。使用者側委員から専門性に関して陳腐化することも考えられないとの発言がありましたが、特に何らかの資格が必要であるという指摘はなく、どのように専門性を担保するのか分からないところであります。高い専門性が必要ということであれば、資格や経験年数で担保することなどがやはり必要ではないかと考えております。しかし、経験年数等に関しても特に発言はなかったというところでございますし、これでは新入社員で上司・先輩から資料作成を丸投げされるような、労働時間について裁量のない若手も対象になってしまう懸念は拭えないと思っております。
 加えて、案件全体を通して見ると、働き手が自身の裁量を持って働いていると言われておりますが、労働時間の実態がどうなっているのか分からないことに加え、工程によっては顧客都合に左右されるというケースが全体のどの程度を占めるかによっても、裁量の有無という観点からは異なってくると思います。
 労働者側委員としては、曖昧な点が多く、いかようにでも解釈できるようなことになれば、制度は形骸化しますし、長時間労働を一層助長してしまうおそれが非常に大きいと考えており、具体的な業務範囲を明確に区分できるか等も含めて明らかにすることが必要だと考えております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 八野委員、お願いします。
○八野委員 ありがとうございます。
 まず、金融機関における一定の業務についてですが、参考資料に金融機関については銀行と証券会社を想定としているとありますけれども、現行制度においてこのような限定が可能なのかどうか、厚労省に伺いたいと思います。
○荒木分科会長 それでは、質問がありましたので、事務局からお願いします。
○労働条件政策課課長補佐 今後の御議論次第かと思いますけれども、法令的には可能ではないかと考えてございます。
○八野委員 例えばコンサルタントや投資ファンドも同じような業務を行っていますが、銀行と証券会社に限定することはできるのでしょうか。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 先ほど申し上げたとおり、今後の議論ということになりますけれども、どのような対象業務にするかということに伴いまして、対象業務の限定というのが基本的には可能であろうと考えております。
○荒木分科会長 八野委員、お願いします。
○八野委員 例えば銀行・証券会社以外のところでも、合併・買収、事業承継の考案・助言を行う業務、または資金調達方法に関わる考案・助言業務がある場合には、銀行・証券会社に限定する、もしくは拡大するということが可能であるという認識でよろしいですか。
○労働条件政策課長 今、専門型のお話をいただいていると思いますので、専門型の規定振りを申し上げますと、例えば、新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法に規定する放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務というものが専門型にございますので、このような規定振りは可能であろうと考えております。
○八野委員 ありがとうございます。今度は使用者側委員にお伺いしたいのですが、なぜ対象を銀行・証券会社のみと想定されているのでしょうか。先ほどから何度も申し上げているように、他の業態または業種で類似する業務が行われているにもかかわらず、銀行・証券会社のみとする理由は何かということをお伺いしたいと思います。
○荒木分科会長 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指摘ありがとうございます。
 M&Aについては、経済産業省の中小M&Aガイドラインにも記載があるとおり、いわゆるM&Aの買い手と売り手双方を1社で仲介する問題があります。金融機関の場合には、基本的に売り手、買い手のどちらかのアドバイザリー業務を行うため、そうした問題がないという点は重要だと考えておりますし、また、ファイナンスまで行うという点では、私の理解では金融機関のみが対象になると考えています。
○荒木分科会長 八野委員、お願いします。
○八野委員 ありがとうございます。
 ただ、合併・買収、事業承継の考案及び助言を行う業務、または資金調達方法に関わる考案・助言業務ということであれば、様々なM&Aの中では銀行・証券会社以外もかかわりながら進めていくという事例もあります。そのようなことを踏まえると、実際は一定の業界の範囲、事業範囲、事業単位のところにとどまらず、広がってしまうのではないか。なし崩し的な導入になっていくのではないかという懸念を持っています。
 先ほどフロントとミドル・バックの定義を明確にすれば問題ないという趣旨の御発言がありましたが、そうなると現段階では明確ではないのではないでしょうか。今の説明だけでは高度な知識等が必要な仕事ということは理解しますが、それが裁量労働制にふさわしい業務なのかどうかという点については疑問がございます。
 そのため、労働者側委員としては、明確に限定されていない金融機関の一定の業務を対象業務としていくことはできないと考えているところでございます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 藤村委員、お願いします。
○藤村委員 この間の労使双方のやり取りを聞いておりまして、私は使用者側から提案のあった業務について、裁量労働制の対象にすることも考えられるのではないかと思っています。労働者側委員は、本来ちゃんとした給料が支払われ、適正な労働時間内に収めるべきなのに、それが裁量労働制という名の下に悪用されるということを一番気にしておられると思うのです。ただ、本人の同意や、あるいはいわゆる労使の協定などで縛ることができるのではないかと思います。
 それから、このタイプの業務は転職が比較的可能なので、あまりにもひどい条件で働かされていれば、転職によって企業はその人材を失うことになるだろうと思います。そうすると、常識を逸脱したような働かせ方はしないのではないかということも予想されます。
 そのため、私は、今回の使用者側委員の主張にもっともだと思うところもありますので、対象業務に加えることを検討することに賛成をいたします。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 先ほど専門業務型の議論になっていたのですが、例えば企画業務型を想定した場合に限定ができるのかどうかを確認させてください。
○荒木分科会長 では、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 先ほどの説明が不足しておりまして申し訳ありません。使用者側委員のお話も企画業務型の対象とするというお話でもあったと認識しております。冨髙委員の御質問についてでございますが、企画型は企画、立案、調査及び分析という業務になっておりますので、基本的にはこちらで業種など、例えば何々業という形で限定することは困難であると考えております。
○荒木分科会長 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 今のご説明を踏まえますと、企画業務型で追加していく場合には対象業務の範囲が拡大する懸念が大きいということだと思っております。もちろん、専門業務型であればよいというわけではございませんが、企画型の方がより懸念が大きいのではないかと思っております。
 今、藤村委員から金融機関における一定の業務では、労働条件が非常に劣悪な場合には転職が可能ではないかというようなご指摘がございました。もちろん、転職をできる方もいらっしゃると思いますが、今まで過労死で亡くなった方たちなど、過重労働が続いている中で正常な判断が難しいケースなどの実態を見ていくと、必ずしも転職が容易ではない事例もあったのではないでしょうか。みなし労働時間制で労働時間がきちんと把握されていなければ、そのような働かせ方もできてしまいかねません。そのような意味でも、裁量労働制は健康確保の観点では懸念も多く、慎重に検討するべきと考えます。
 また、使用者側委員からPDCAを裁量的に回す業務や課題解決型開発提案業務などの対象拡大という御発言は今までもございましたが、労働側が従来から申し上げているとおり、現場においては既に存在している多様な働き方に関する現行制度をうまく活用することで十分対応可能と考えるところであり、その点整理が必要ではないかと思っております。
 また、成果と労働時間が比例しない働き方という発言も何度かございましたが、裁量労働制は成果主義と親和性が高いかどうかは、制度趣旨とは関係なく、拡大の理由にはならないということは改めて申し上げておきたいと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 オンラインのほうから鬼村委員の発言希望が出ております。鬼村委員、お願いします。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。
 私のほうからは、裁量労働制の対象業務の話と労使委員会での情報開示等の話で、大きく2点申し上げたいと思います。まず、対象業務ですけれども、資料の8ページのほうに「対象業務の範囲については、経済社会の変化や、それに伴う働き方に対する労使のニーズの変化等も踏まえて、その必要に応じて検討することについてどのように考えるか」とございます。我々使用者側委員としましては、対象業務については経済社会や労使のニーズの変化に合わせて不断に検討していくということが不可欠だろうと思っています。
 大きなくくりで申し上げますと、生産年齢人口の減少への対応というのは不可避な問題で、我が国の国力を維持・向上させていくためには、一人一人の働き手がより生産性を高めて、よりイノベーティブに働けるようにしていくことが求められていると思います。
 少しミクロの話をしますと、自動車業界にある弊社では、自動車の製造販売ということから特に移動に関わる色々なサービスに取り組んでいこう、モビリティーカンパニーに変わっていこうということを今やっております。当然そうした新しい領域におけるノウハウや知見というのはまだ社内に十分蓄積されておりませんので、上司が細やかに指示をして、担当者が業務遂行するという従来の一般的な仕事の進め方では、海外企業等に太刀打ちできなくなっていくのではないかという懸念がございます。
 我が国が人口減少に負けずグローバルな競争に勝ち残っていこうと思いますと、一人一人の働き手の自律的な主体的な業務遂行、それによって成果を最大限発揮していくということが必須であろうと思います。
 しかしながら、我が国の一般的な通常の労働時間制度やフレックスタイム制というものは、労働者の自律や主体性というよりも基本的には上司の具体的な指示に沿って働くということが想定されておりますし、その報酬も労働時間の見合いということになりますので、新しい領域で能力発揮が求められる働き手に適した制度ではないと考えております。その点、裁量労働制というのは非常にうってつけの制度であろうと確信をしております。
 先ほど申し上げた変化の事例というのは自動車業界に限ったことではなくて、皆さん御案内のとおりでございますが、今、あらゆる業界で市場環境の変化の速度というのは増しておりまして、従来以上に現場、現場でタイムリーに対応していくということが求められています。こうした変化への対応を可能とすべく、私どもは具体的に対象業務を追加していただきたいと申し上げておりますが、課題解決型開発提案業務、並びに裁量的にPDCAを回す業務をぜひ裁量労働制の対象業務としていただくよう、改めて強く要望させていただきたいと思います。
 もう一点、簡単にお話ししたいと思いますが、情報開示の話でございます。11ページの3つ目のポツに記載がございますが、労使委員会での賃金・処遇制度の運用状況の開示です。まず、裁量労働制の適用労働者としてふさわしい処遇であること。そのため労使自治でそれを決めていくということは非常に大切であると思います。また、制度導入時に制度上、その働き方を踏まえて対象となる社内での資格等級などを労使で確認するということも重要であろうと考えます。
 しかしながら、個別の人事評価等というのは会社の専権事項でありますし、また、事業場の規模によっては個人が特定されかねないという懸念もございますので、評価の分布を含め詳細に開示するなど、開示項目を縛るようなことは厳に避けていただきたいと改めて強調したいと思います。
 裁量労働制としてふさわしい処遇になっているかという確認方法については、各企業の労使がそれぞれの実態に合った形で確認をするということが重要であろうと思いますし、何らかの開示を求めるにしても、こうした多様性を担保しつつ、また、あまり細かくならない形で開示情報の参考例をお示しいただけると、各社は非常に参考にしやすいのかなと思いますので、ぜひ御検討をお願いできればと思います。
 最後に一つだけ。12ページに記載の手続の簡素化の話です。裁量労働制適用労働者の約8割の方が制度適用に「満足」「やや満足」と回答しているアンケート結果があったと思います。回帰分析でも制度適用によって労働時間が著しく長くなるとか、健康状態が悪化するとまでは言えないという結果が出ていたと思います。裁量労働制は一定程度定着してきているという判断はできると思いますので、手続の簡素化についてもぜひ進めていただければと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、山内委員、お願いいたします。
○山内委員 御指名ありがとうございます。
 私から事務局に質問を1点お願いしたいと思います。いただきました資料の10ページの(3)の①健康・福祉確保措置のポツの2つ目に書いてございます「「事業場における制度的な措置」と「個々の対象労働者に対する措置」に分類した上で、それぞれから一つずつ以上を実施することが望ましいことを示す」というような方向性が記載されているかと思うのですが、それぞれの措置の分類のイメージをお教えいただければありがたいかなと思うのですが、お願いできますでしょうか。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 御指摘のところは、前回労働者側委員からも御発言があったかと思います。イメージとしましては、「事業場における制度的な措置」につきましては、例えば現行の指針に上げられております措置でみますと、連続した年次有給休暇の取得促進などが考えられると考えております。また、仮に議論の整理にございますように、勤務間インターバルの確保や深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の適用解除)が追加されるような場合につきましては、こちらも今、申し上げた「事業場における制度的な措置」に分類されるのではないかと考えております。
 それと、「個々の対象労働者に対する措置」につきましては、こちらも現行の指針に挙げられているものとしましては、健康診断の実施、代償休日又は特別な休暇の付与、産業医等による助言指導又は保健指導などが考えられるのではないかと考えております。また、こちらも議論の整理にあるものの中では、医師による面接指導が考えられるのではないかと考えております。議論いただくことを前提とした考え方を御提示申し上げている状況でございます。
 以上です。
○荒木分科会長 山内委員、お願いします。
○山内委員 御丁寧にありがとうございました。
 今いただいたお話を伺う限り、これまで制度運用している企業の多くは、既に今、説明いただいたとおりの分類ごとに複数の措置を適用し、運用していると思っております。基本的にお考えには賛同いたします。
 ただ、措置の選択肢に追加することが検討されているメニューを選択した際、具体的な内容は労使の判断に委ねていただきたいなと考えております。例えば勤務間インターバルというお話をいただきました。導入企業でも現場の実態を踏まえて、例えば1日11時間の勤務インターバルを確保できない回数は月3回までとか、こういう柔軟な運用をする企業などがあったり、また、労働時間の上限措置についても、時間外労働が単月で80時間を超えた場合に裁量労働制の適用を外すとか、複数の月平均で60時間を超えた場合に同じく適用除外とするなど、企業ごとに様々な取組を既に進めていると考えております。
 そうした企業独自の取組の善し悪しは一概に測ることは難しく、企業労使による実態を踏まえた柔軟な制度設計を可能とするような配慮をいただくようにお願いできればと考えております。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 会場から世永委員、お願いします。
○世永委員 ありがとうございます。
 健康・福祉確保措置を分類した上で各々実施することについて、発言をさせていただきたいと思っています。現行制度においては特に事業場、労働者と分類せずにメニューが示され、選択されていることを踏まえれば、例えば窓口の設置や健康診断、そして勤務間インターバルにつきましては、「事業場における制度的な措置」として、また、代償休日や深夜業の回数制限などは、「個々の対象労働者に対する措置」と分類し、複数措置を組み合わせることによって、労働者の健康確保という観点からも実効性のあるものとすることが必要だと思っています。
 また、健康・福祉確保措置が実効性を持つためには、複数措置からの選択はもとより、そもそもの労働時間の把握が適正にされていなければならないということは、この間申し上げてきたとおりです。労働時間の把握が客観的な方法でなされなければならないということをしっかりと周知いただきたいと思っております。
 ②のみなし労働時間の設定と処遇の確保ですが、法定労働時間を上回るみなし労働時間につきましては、割増賃金が必要であることはもちろんですけれども、特別の手当を設ける等、裁量労働制にふさわしい処遇の確保が必要であることを厚労省として明示して、届出の際に確認する等、実効性を高めることが必要だと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 東矢委員、お願いします。
○東矢委員 ありがとうございます。
 まず資料8ページ目の対象労働者の要件のところの賃金・評価制度に関する部分でございます。専門業務型、企画業務型、いずれにつきましても、対象労働者を定めるに当たり、相応の処遇が確保されているかというところが重要だと考えております。実態調査の中におきましても、専門業務型で200万円未満、企画業務型でも300万円未満といった回答がございまして、このような法の潜脱のような事態が生じる懸念はないかというところをしっかり確認すべきであり、労使協議に当たりましては、その適正性を判断するためにも賃金水準が示されることが必要だと考えております。
 賃金・評価制度を変更する際におきましても、当然潜脱的なものではないかといった確認は必要であり、資料に記載されておりますように、変更内容について労使委員会で説明を行うようにするべきだと考えております。
 続きまして、資料の11ページ「労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上」について、3点発言をさせていただきます。まず、賃金・評価制度の説明、運用実態の開示といったところに関してですが、裁量労働制を導入するためには、労使委員会の設置や決議が求められていることを踏まえますと、制度の適正運用に関しましても労使委員会が責務を負うということを明確にすべきだと考えております。
 実効性ある労使委員会及び労使協議のためには、賃金・評価制度の内容のみならず、実態としてその裁量や処遇が確保されているのかなど、対象労働者が納得感を持って働くためにも情報及び運用の実態は開示することが必要だと考えております。使用者側委員から情報開示に対して消極的な意見も出されておりますが、相応の処遇の確保は裁量労働制適用の上で重要な観点でございますので、法の潜脱を防ぐためには適切な情報開示を行うべきだと考えております。
 続きまして、専門業務型における労使委員会の導入についてのところでございます。現行の専門業務型は労使協定を締結さえすれば制度導入が可能となっておりますが、そうした労使協定を締結して終わりではなく、制度を導入した労使として制度の適正運用に対する責務を負っているということを明らかにするとともに、労使委員会を積極的に活用していくということも促すべきであると考えてございます。
 最後ですが、労使委員会の開催頻度、また、労働者側委員の選出の適正化についてでございます。資料では開催頻度として6か月以内に1回以上という提案がされておりますけれども、適正な運用の確認のためにも定期的に労使委員会を開催し、運用実態を確認することが制度の実効性確保のために必要だと考えております。
 また、労使委員会の労働者側委員の選出手続の適正化に関しましては、過半数労働組合からの指名がある場合を除き、労働者からの信任手続を課すなど適正性の実効性確保が重要だと考えております。
 長くなりましたが、以上です。よろしくお願いします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 八野委員、お願いします。
○八野委員 私のほうから資料の9ページ、本人同意・同意の撤回・適用解除ということについて意見を述べさせていただきたいと思います。専門業務型の対象労働者に関して、適用されている労働者が真に裁量を有した形で働くことができるのか、それを労使で確認することに加え、本人同意を課すことにより、対象労働者本人が制度趣旨を理解し、納得感を持って働くことが重要であると思います。これは先ほど北野委員が発言したように、実務経験が全くない新卒の労働者であっても、省令・告示に該当する業務であれば適用可能となるわけですが、専門業務型の裁量労働制をより適正に運用するためには、本人同意が必要だと考えております。
 また、同意しなかった場合に関して、不利益に取り扱われないことが保証されていなければ、本人同意を得る手続を入れたとしても、それは形骸化してしまいかねないということでございます。専門業務型でも本人同意及び不利益取扱いの禁止をあわせて検討すべきであると考えております。
 次に、同意の撤回でございます。本人同意を得るのであれば、同意の撤回もできるようにすべきであり、撤回に係る手順などを明確に定めていくことが労働者保護の観点から非常に重要と思っております。
 企画業務型においては、告示において「同意を撤回することを認めることとする場合には」とされるにとどまっていますが、労働者が納得感を持って働くためにも、同意は撤回できるようにすべきであり、なおかつ、その手続を明確に定めておく必要があると考えております。
 専門業務型においても、同意と同意の撤回をあわせて検討すべきであるということを再度申し上げておきたいと思います。
 制度の実効性の確保の観点から、同意の撤回時について、不利益取扱いの禁止及び撤回後の処遇等もあわせて定めて、明確にしていくことが重要であると考えておりますので、意見として述べさせていただきます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。
 まず、苦情処理措置のところですが、本人同意を取る際の事前説明においては、苦情処理についての説明、申出方法などについて説明すべきだと考えています。幅広く相談できる体制の整備に関して、労使委員会が苦情の内容を把握するために適宜連携を図るということを確認の上で、独立した機関の設置など体制を整備するということが必要ではないかと考えています。
 次に、12ページの③行政の関与・記録の保存等について意見を申し上げたいと思います。定期報告の頻度に関してですが、初回は6か月以内に1回、その後は1年に1回と資料には示されています。しかしながら、健康・福祉確保措置の適正運用の実効性が年1回の報告で確保できるのかということ、それから指導監督を徹底することをあわせて行うのかについて厚生労働省としての考えを伺いたいと思っています。
 記録の保存に関して、労働者ごとの労働時間の状況や対象労働者の同意等も含め、やはり個々の労働者の状況が分かるように保存を義務付けるべきだと考えています。
 あわせて、企業単位での本社一括届出についてですが、同一の決議とするために各事業場の実態が踏まえられない、形式的なものとなってしまうということでは意味がないと思っています。職場の実態把握がしっかりなされることが重要であり、実態把握が形骸化しないようにする必要があると思っております。このことについては改めて申し上げておきたいと思います。
 私からは以上でございます。
○荒木分科会長 それでは、1点事務局にお尋ねがありましたので、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 櫻田委員からの御質問につきましてお答え申し上げます。まだ本審議会で御議論いただいている最中でございますので、それを前提に申し上げますと、現行の6か月以内ごとの定期報告につきましては、平成10年の法改正により企画業務型が導入された際に義務付けられております。労働基準法施行規則におきまして、初回6か月、その後1年ごとに1回というのが基本的な規定でございましたが、審議会などの御議論を踏まえまして、当面の間6か月以内ごととされているのが現状でございます。
 6か月以内に1回、その後1年に1回とすることについて、本審議会におきましてご賛同いただいたような場合につきましては、監督指導に基づいてしっかりと履行確保を図っていくのは当然であろうと考えております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
○櫻田委員 はい。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。川野委員、お願いします。
○川野委員 ありがとうございます。
 10ページのところ、適用解除に関して記載がございます。健康・福祉確保措置における労働時間の上限措置として入っている部分でございます。複数措置のうちの一つという形で提案がされておりますが、適用解除があくまで複数措置のうちの一つということになれば、選択されないという懸念があり、労働者の健康確保という観点からは疑問だということをまずは申し上げておきたいと思います。
 また、適用解除について、この間申し上げてきたとおり、労働者の健康確保の観点から、長時間労働が続いている、心身の不調が見られる等の一定の基準を設けて、該当する場合には、本人の意思にかかわらず、確実に裁量労働制の適用を解除することを担保されることが必要であると考えています。
 続いて、裁量の確保に関わるところについてです。資料に記載のある「始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを示す」という点については、裁量労働制として当然のことであり、労働者に時間の裁量がない場合は、そもそも裁量労働制の濫用であり、制度が適用できないということを周知徹底し、監督指導を強化することが重要であると考えております。
 時間配分の決定等に関する裁量が失われた場合については、この間どのような場合に裁量が失われたと判断されるのか、その基準や具体例をあらかじめ定めることが重要であると労働者側委員からは発言してきたところです。適用事業場で判断基準が様々になれば、労働時間のみなし効果が生じないことの実効性が失われることとなりかねません。そのことを留意点として示すのであれば、判断基準にばらつきが生じないよう、厚生労働省として例示することなどが必要だと考えます。
 また、現状では健康・福祉確保措置は、「心と体の健康相談窓口の設置」や「産業医等による面接指導」といった比較的取り組みやすいものに取組が偏っていると考えております。このような現行制度における取組の傾向を見ると、実効性を有する取組が選択されない懸念があります。
 健康・福祉確保措置として、勤務間インターバルの確保や深夜業の回数制限等、長時間労働を防ぎ、労働者の健康確保という観点から、実効性のある措置を選択肢に加えることが実効性を高める上で望ましいと考えております。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 私のほうからは、11ページの労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上、そして苦情処理措置について発言をさせていただきたいと思います。まず、専門型については労使協定、企画型については労使の委員会ということで、現状のままでよいのではないかと思います。中小事業者の場合、なかなか労組の組織率も悪く、そして過半数代表等でこういう裁量労働をやる場合があると思いますけれども、調査結果でも明らかであるとおり、労使委員会が必要であれば、そちらのほうが組織として合っていれば、それももちろん導入をしていただくということが望ましいとは思います。この辺は労働局等から、裁量労働制を適用している中小の事業者にも、労使委員会の設定などのもうちょっと風通しがいい組織にしていったらどうだということを機会があるごとに言っていただくのも必要なのではないかなと思います。ですから、今のところ現状どおり専門型については労使協定、企画型については労使委員会ということでよろしいのではないかと思っています。
 苦情処理措置については、櫻田委員がおっしゃられたとおりだと思います。これは裁量労働制だけではないと思うのですけれども、いろんなところで苦情等を言える場や機会があることが望ましく、その意見を一つの部署内に集まって、経営者のほうに届くような、そういう協議ができるような風通しのよい組織が必要だと思います。これは職場の労使双方で合意ができるのではないかと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 八野委員、お願いします。
○八野委員 藤村委員からも金融機関の一定の業務のところについて御意見がございましたが、労働者側委員は現状の裁量労働制の運用に課題があると考えています。適正な運用がなされることを担保する制度の整備が必要だということを申し上げてきました。企画型も専門型も導入されて一定期間が経過しているわけですが、現在でも不適切な運用がみられるところも多くありますので、今回労働側として様々な発言をさせていただいているところです。
 今回、使用者側から高度な専門性が必要となるという金融機関における一定の業務の追加を主張されていますが、現行制度において、専門型には本人同意は義務として課されていませんし、処遇についても東矢委員から意見があったように、かなり報酬の幅があるということでございます。そのような明らかになった運用上の課題に対する制度的対応の方向性を示していかなければ、一定の対象業務の拡大は非常に難しいということでございます。
 また、金融機関における一定の業務を裁量労働制の対象にすることで生産性を高めなければ、グローバル競争の中では生き残っていけないといった意見もございましたが、それは全ての業種・業態に該当することであり、また、ドメスティックな企業であっても生産年齢人口が減っていく上では生産性を高めていくことは課題であるわけです。したがって、生産性の課題が裁量労働制に結びつくとは全然考えておりませんし、現行の労働時間法制の中でいかに一人一人が人間らしく心豊かに生きていけるような働き方ができるかということをしっかりと考えていく必要があるのではないかということを意見として述べさせていただきたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
 八野委員の御指摘について、私どもから何度も御指摘をさせていただいているとおり、生産性を上げる取組は全ての企業、全ての経営者の共通の課題です。私どもとしては、生産性を高めるため、いかに労働者の持っている能力を最大限発揮してもらうかということに腐心しております。特に裁量と専門性を持って働いている方が能力発揮をするためにどのような環境を整えたらいいかと考えたときに、フレックスタイム制がいいだろうと判断する企業労使もありましょうし、裁量労働制の下で、成果主義的な処遇を可能とすることも含めて、自律的な働き方を応援することが能力発揮につながると考える企業労使もあると思っております。繰り返しで恐縮ですが、金融機関の一定の業務については、労使にとって十分な選択肢が用意されていないという制度上の問題があります。当該業務はまさに裁量労働制にふさわしい業務ですので、適用可能な労働時間制度の選択肢を増やすような見直しの必要性を改めて強調致します。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ほかにはよろしゅうございますか。東矢委員、お願いします。
○東矢委員 私からは13ページの2ポツの年次有給休暇について、意見を申し上げさせていただきます。
 以前より労働者側委員から申し上げておりますとおり、年次有給休暇の制度趣旨は、労働からの解放による心身の疲労回復であり、1日単位でしっかり休める環境の整備こそ重要でございます。そうしたことを踏まえますと、今、年5日を上限としている時間単位年休の上限日数を引き上げるということではなく、労働者の休息確保の観点から導入の取組を促すことが先ではないかと考えております。
 また、年5日の時季指定義務に時間単位年休を含めることに関しましては、働き方改革で制度を導入した趣旨に鑑みれば、1日しっかりと休むことこそ促進するべきだと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 私からも年休について一言申し上げます。以前厚生労働省からお示しいただいた労働者調査の結果によりますと、現行の時間単位年休を取得されたことのある労働者を分母に、5日分全て取得した方が1割未満ということで、時間単位年休の取得可能日数を拡大すべきという私どもの主張は、なかなか理解が得られないのではないかと感じますが、一方で、柔軟に年休を利用する選択肢を広げることや、業種によっては時間単位年休制度の導入率が4割近くになっているところもあること、さらには、未導入企業の労働者の中には時間単位年休を取得したいというニーズもそれなりにあることを鑑みますと、現行の時間単位年休制度自体の役割は決して小さくないと感じております。
 では、現行の時間単位年休制度をより活用してもらおうと考えたときに、業種特性によってそもそも時間単位年休制度の導入が難しい企業もあると思いますが、そういった企業を除けば、時間単位年休が年5日の事業主の年休取得時季指定義務の対象外であるという点が促進の妨げになっているとも思っています。例えば所定労働時間が1日8時間の会社において、4時間の半日単位年休はカウントされる一方、3時間あるいは5時間の時間単位年休はカウントされないのはおかしいのではないかと思います。
 この問題を解決せずに、企業独自の法定外の時間単位休暇制度の創設を促進することは、私自身、筋が違うと思いますので、改めて申し上げます。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 池田委員、お願いします。
○池田委員 ありがとうございます。
 裁量労働制のお話に戻ってしまうのですが、このたび、裁量労働制の話が改めて出てきたというのは、もともとは統計上の問題があって、データの取り直しであるとか、今回で言うとアンケートを取ってということで、また改めて議論が始まったのかなと理解しておりまして、その上で言うと、結果とすると80%以上の方がおおむね満足という結果と、健康的な影響もあまりないということ、加えて労働時間としてもそんなに長くなっていないという結果が得られたということ、これはデータで出てきていることだと思います。
 ですので、対象業務について議論をずっとしてきておりますけれども、これは適切に議論をして、裁量労働制にそぐうかという議論をしていった結果でいいかなと思いますが、場合によると、現状取り扱っている裁量労働制の範囲の中に収まる業務なのに、改めて議論している部分ももしかするとあるのではないかというふうにも思いますし、それは適切かどうかという議論を踏まえていければいいかなと考えております。
 あと、拡大の懸念であるとか、よりよい制度にしていくためにどうするかという意味で健康配慮の問題とかを充実させるということは、制度の充実という意味で議論をまたしていけばいいことかなと思いますので、その意味で言うと、ここの議論を改めて対立するということではなくて、議論を整理していければいいのかなと思います。
 あと、労使委員会の部分で使用者側が消極的というお話がありましたが、消極的というよりは、もともと賃金や評価の運用の部分というのは、事務局からも分布を示せばということがありましたが、懸念しているのは分布が分布にならないようなケースで、個別の特定に至ったりする場合に、それが運用状況ということになり得ないのではないかということだったりはしますので、そういうリスクをどう排除するかなので、ここの議論は義務化するかどうか。あとは、よりよい運用にするために個別の労使がどうする、こうするという話は、よりよくする議論をしていけばいい話なので、そこは切り分けていければいいのかなと考えています。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 対象業務のところで、資料の中に「対象業務の範囲については、経済社会の変化や、それに伴う働き方に対する労使のニーズの変化等も踏まえて、その必要に応じて検討する」とあります。あたかも今後も対象業務が拡大されるかのような書きぶりになっておりますけれども、労働側としましては、既に選択肢として様々に組合せが可能なものが既存の制度としてあると考えておりますので、ここで拡大を想起させるような記述を入れていることについては違和感があります。
 それから、池田委員からも現在の裁量労働制の中で対応できることもあるのではないかというご発言がございました。労働側も、使用者側委員がこれまで主張してきた業務の中にも既存のものでできるものもあるのではないかと考えております。金融機関における一定の業務につきまして、先ほど鈴木委員から、一般的には長時間労働になっていないが繁閑などはあるということや、基本的には新卒が対象となることはないということなどについて御発言がありましたが、明確ではない部分が少なくないと考えております。そのような中では、裁量労働制の対象業務として認めることはできないということを改めて申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 それでは、川田委員から最後にお願いします。
○川田委員 ありがとうございます。
 資料1の8ページの裁量労働制の対象業務のところと、続けて11ページ、12ページの労使委員会に関する部分について述べさせていただきたいと思います。
 対象業務に関しては、平成29年の建議のときにも企画業務型の業務への追加として挙がっていた2つの業務と、それから今回、金融機関の業務が検討の対象、審議の対象になっているかと思いますが、全体に共通して私の考え方としては、まず現行の制度における裁量労働制の対象との関係で、例えばこうした検討課題として挙がっているものについても、現行制度の規定の上で、実は制度の枠の中で対応できるようなものがあるのではないかといった関係の整理をしっかりした上で、この間の経済社会の変化、あるいは労働者の働き方に関するニーズの変化等を踏まえて、制度のレベルで見直すべき点があるところを制度の見直しとして議論していくという視点が必要で、冨髙委員から指摘のあった8ページの上の四角の中の書きぶりも、私としてはそういう趣旨のものとして理解すべきものではないかと考えております。
 もう一つ、対象業務に関しては、そういう観点から見直すことを検討する場合には、裁量労働制のほかの要件も視野に入れた検討、すなわち、仮に対象業務に加えることにした場合に、ほかの論点で上がっている裁量の確保や健康の確保、あるいは今回重要な視点として上がっている点だと思われる適正な処遇の実現といったところについても、裁量労働制の対象にすることで、制度の趣旨・目的からして望ましいような自由度の高い働き方が実現できるのかといったところを考えていく必要があるかなと思っております。
 そういう観点から考えた場合に、今回具体的に問題になっている業務について述べたい点として、まず1点、平成29年の建議のときにも挙がっておりました業務のうち、特に裁量的にPDCAサイクルを回す業務に関しては、改めて考えてみると、企画、立案、調査及び分析の業務という現行法の対象業務の定義の中で、PDCAサイクルの主要な部分が組み込まれているようなものについては、現行法の下でも対象業務の対象になり得る部分が結構あるのではないかと考えており、その点を改めて確認する必要があるかなということと、また、そうであれば、そういう趣旨を周知していくということも一つの課題になるのかなと思います。それが一つです。
 対象業務に関してはもう1点、金融業のところです。この点は、先ほど公益の藤村委員からも裁量労働制の対象業務になり得るのではないかということがありまして、私も対象業務の性質という点からすると、一定の自由度の高い働き方にふさわしいような裁量労働制の対象業務になり得る性質の業務という観点からの検討はしてしかるべきかなと思います。
 同時に、先ほど述べたように、他の要件との関係で実際に対象業務に加えたときに、適切な裁量労働制の下での働き方が実現できるかというところを見ていく必要があるのかと考えています。そのあたりは個別に見ていくといろいろあって、時間もありますので立ち入りませんが、1点だけ、その際の基本的な方向性として、理屈の問題として見た場合には、今回検討されている金融業の業務は、現行制度との関係では専門型の対象業務に近い性質のものなのかなと考えているところもあり、そうした点も今後検討していく中で検討されるべきだと考えています。
 次に労使委員会に関してですが、これまでの議論、審議の中でもされてきたように、制度を適切に運営する上で、労使委員会が実効的に機能するということが重要だと思っており、そういう方向性で審議が進むということが望ましいと思います。
 ここも細かいところに立ち入ると重要な点がいろいろあると考えていますが、その中でこれまでの議論を受けてやや細かい点ですが述べておきたい点として、今回の議論の中で決議に至るプロセス、決議に至る過程のあり方について、例えばこういう情報提供が望ましいというような議論があった部分があると思います。こうした決議に至る過程にかかわるところは、制度にしていくときに、現行の制度においては決議事項というような形で、労使委員会の活動について多くのものを制度化していますが、決議に至るプロセス、課程のあり方については、決議そのもののあるべき内容とは別の切り口で考えるべき面があるように思います。これが一つです。
 もう一つは、これは既に審議の中で出てきた点でもありますが、労使委員会に対する行政的な監督の役割に関しては、労使委員会というのが、そもそも個々の事業の実情に合うようなことを事業場の労使が自分たちで審議して、適切な制度を構築したり、運営したりするということが趣旨としてあるので、それと行政監督の間の役割分担という視点が意識される必要があるのかなと思います。具体的に問題になると考えられる点はいろいろありますが、審議の中に出てきた定期報告などについては、例えば開催頻度とか、先ほど述べたような労使委員会における審議の中身等といったような、労使委員会の現場のレベルでの機能を充実させるような仕組みがとられた場合には、ある程度定期報告の頻度そのものは簡素化していくという方向も役割分担としてはあるのではないか、要するに、現場の役割、機能が高まってくれば、その分簡素化していいところはしていくという視点もあるのかなと思っております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、時間が大分押しておりますので、この議題は以上ということにいたします。
 議題(1)には労働契約制度及び労働時間制度等とあります。「等」に関連して一言申し上げます。解雇無効時の金銭救済制度について、12月6日の分科会において様々議論いただいたところでありますけれども、制度導入の是非については、労使間で大きな意見の隔たりがあるということが分かりました。
 一方、その際に発言がありましたが、解雇は無効と判断されることを前提に、労働者の選択により権利行使が可能な仕組みについて、分科会での議論に資するよう、解雇や解雇をめぐる紛争の実態等、委員の皆様の御意見の背景にあるところについて、今後できる限り明らかにしていく必要があるのではないかと考えます。
 内容によっては時間もかかるかと思いますけれども、そうしたものを踏まえつつ、引き続き検討していくということとしたいと考えますが、いかがでしょうか。鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 今、分科会長から御指摘があった通り、今回労使の双方で制度創設について意見の隔たりが大きいということ、それから議論のベースとなる調査分析も不十分ではないかということで、引き続きの検討ということについて異論はございません。
 その上で、私どもとしては、解雇無効時の金銭救済制度は紛争解決の予見可能性を高め、労働者保護に資する制度になり得ると考えています。有識者検討会では金銭救済制度を裁判と労働審判に導入すると想定しているようですが、この制度が導入された際には、労働局のあっせん等の解決金水準の上昇といった影響も想定されるところ、今後の調査に当たっては、こうした点も踏まえ、労働者保護に資する可能性にフォーカスを当ててデータ収集・分析をしていただいて、なるべく早いタイミングで議論を再開することを期待しています。
 以上でございます。
○荒木分科会長 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 前回の議論を通じまして、労働者保護と言いながら、実際には使用者目線での予見可能性を高めるための制度の創設を図ろうとしているのだということを改めて実感したところでございます。従来から申し上げているように、すでに日本には労働紛争の解決制度が存在しており、制度の屋上屋をつくる必要は全くないと考えておりますので、改めて申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 労使双方から今、御意見を伺ったところではございますけれども、このような意見の対立の背景にある事情についても明らかにしていく必要があるのではないかと考えておりますので、内容について一定時間がかかるものがあるかもしれませんが、そうした明らかとなった背景・事情も踏まえつつ、引き続き検討していくということにしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○荒木分科会長 それでは、第1の議題については以上ということにさせていただきます。
 すみません。司会の不手際でありまして、実はもう一つ議題(2)というのが残っております。これについて事務局から説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 議題(2)「担保法制の見直し(事業(成長)担保制度の導入等)について」、事務局から資料No.2に基づきまして御説明をさせていただきます。
 本日労働条件分科会で御報告を申し上げます担保制度の見直しにつきましては、事業担保制度の創設などの議論が法務省、金融庁で行われているということでございまして、特に事業担保制度につきましては、事業担保権が実行された場合につきましては事業の譲渡などがなされまして、労働契約の移転がなされる可能性があるということで、労働関係に何らかの影響があるということが想定されるところでございます。
 事業担保制度を含みます担保制度の見直しにつきましては、法務省法制審議会担保法制部会におきまして12月6日に中間試案の取りまとめがなされました。
 また、事業担保制度につきましては、法務省と並行いたしまして、金融庁の金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」においても検討がなされているということでございます。こういった状況から、本日労働条件分科会に御報告をさせていただくものでございまして、法務省や金融庁の動きも注視をしつつ、適時この労働条件分科会にも御報告等をしていきたいと考えているところでございます。
 資料につきましては、時間も限られておりますので、簡単に説明させていただきます。資料No.2の2ページを御覧ください。上段が法務省での検討状況でございまして、担保法制部会におきましては、動産譲渡担保あるいは債権譲渡担保といったものの議論も行われておりまして、雇用関係の先取特権との優先というのも議論になっておりますし、先ほど申し上げました事業担保制度の創設といったことについても議論がなされているところでございます。
 2ページの下段の金融庁につきましては、事業担保制度の創設に絞って議論がなされているという状況でございます。
 資料の3ページを御覧ください。事業担保制度にかかります政府決定の状況でございまして、特に直近のものといたしましては、3ページの一番上、スタートアップ育成5か年計画でございます。こちらにつきましては、11月の「新しい資本主義実現会議」で決定をされたものでございますが、関連法案を早期に国会に提出することを目指す、ということが決定されているという状況でございます。
 4ページが事業担保制度のイメージということで、図にしたものでございます。左側がお金を借りるタイミングでの状況を絵にしたものでございます。事業担保につきましては、事業担保権の対象となる財産といいますのが、青の線で囲っておりますけれども、法人の総財産ということになっておりまして、ここにつきましては労働契約上の地位というものも含まれる想定になっております。これを担保といたしまして、担保権者が設定者に対しまして資金を貸し付けいたします。
 担保権者につきましては、その後、事業のモニタリング、支援を行ってまいりまして、順調にまいりますと、右側に青い棒がございますが、事業が成長、経営改善等していくということでございます。
 他方で、債務不履行の可能性もございますので、債務不履行になった場合につきましては、事業担保権の実行というケースも想定されるところでございます。その場合につきましては担保権の実行となりますけれども、担保権者が裁判所に担保権の実行の申立てを行いまして、裁判所が管財人の選任を行います。管財人が財産の管理処分権を有しまして、事業の譲渡や個別資産の換価を行っていくということが想定されております。その際には、労働契約上の地位につきましても、買受人に個別に移転をするということが想定されております。こうしたことで、本日御報告をさせていただいているものでございます。
 5ページ目以降につきましては、法務省の担保法制部会の中間試案の関連部分でございまして、先ほど申し上げましたところと説明が重複するところも多いので、本日は説明を省略させていただきます。
 事務局からの説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、何か御意見等があればお願いします。冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 今、御説明いただきました事業担保と事業成長担保権でございますが、企業の総財産が対象となるということで、そこに契約上の地位も含まれるという提案になっていると思います。労働者としては当然のことながら企業の総財産が担保の対象となって、特に債務不履行で実行という形になった場合に、事業譲渡等を念頭に置いて検討されるということを踏まえますと、そもそも設定時において労働者への情報提供等の手続が必要であろうと考えております。また一方で、現状の事業譲渡においては労働契約の不承継の問題等もございますので、このような問題を放置したままで制度を検討していくのはいかがなものかといったことをこの間発言しているところでございます。
 今、申し上げたように、事業成長担保制度は、労働者保護の観点からかなり懸念が大きい制度だと思いますが、法制審や金融庁のワーキング・グループにおけるこういった検討に対して、厚生労働省としてどのように労働者保護の観点から取り組もうと考えているのか、お伺いしたいと思います。
○荒木分科会長 では、事務局からお願いします。
○審議官(労働条件政策、賃金担当) 審議官の私のほうから御説明いたします。
 確かにこれは労働契約が実行の際に移転し得るということで、様々な労働への影響があるということは、こちらも認識しながら臨んでおります。我々も法制審のほうは幹事として、金融庁のほうもオブザーバーとして参加しておりまして、労働契約にどのような影響があるのか、課題があるのかということを、皆さんの御議論も聞きながら検証して、事業担保制度の中でどのような措置がされるのか、あと、労働政策上も何かできる措置があるのかということは並行して、よく注視しながら検討してまいりたいと思いますし、またこの審議会でも必要に応じ御意見をいただきたいと思っております。
○荒木分科会長 冨髙委員。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 ぜひ労働者保護の視点で検討していただきたいと思いますし、現在でも事業譲渡指針はありますが、あくまで指針でしかなく、労働側としては、2000年の労働契約承継法の制定以降、事業譲渡などの会社分割以外の組織変動に対応した労働者保護ルールは脆弱なままと考えております。労働者保護ルールの法制化に向けた有識者会議の立ち上げも含め、厚労省として積極的に検討していただきたいと考えております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 時間がない中、申し訳ございません。
 この事業担保制度ですが、不動産担保等の有形資産を持たない成長企業への融資を容易にするものだと理解していまして、とりわけスタートアップ企業における多様な資金調達手段の確保のためにも同制度の早期実現を期待する声が私どものところにも入っています。
 債務不履行になった場合の労働契約上の地位の移転については、特定承継か、包括承継かによって議論すべき内容は変わってくると思いますが、私どもとしては、仮に特定承継になった場合には現行の事業譲渡等指針、包括承継になった場合には現行の承継法を基本に検討することが適当だと考えています。
 いずれにしても、この法制の基本的なスキームについてはまだ結論が出ていないと思いますので、今後も法務省の担保法制部会、金融庁のワーキング・グループの議論を注視してまいりたいと思っています。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、時間も過ぎておりますので、本日の議事はここまでとさせていただきたいと思います。
 最後に、次回の日程について、事務局からお願いします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。
 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 時間が延長しまして大変申し訳ありませんでしたけれども、本日の労働条件分科会は以上で終了とさせていただきます。
 御参加いただきましてありがとうございました。