薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会(2022年12月23日)

日時

令和4年12月23日(金)
10時00分~13時00分

場所

オンライン会議

出席者

委員

杉本部会長 桒形委員 笹本委員 瀧本委員
多田委員 戸塚委員 中島委員 原委員
二村委員 松藤委員 三浦委員 渡辺委員
       

事務局

近藤食品基準審査課長 田中室長 冨士原専門官
竹田専門官 清水主査  

議題

  1. (1)審議事項
    • フィチン酸カルシウムの新規指定の可否等について
    • 硫酸銅の規格基準改正について
  2. (2)報告事項

議事

 
○事務局 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会を開催いたします。本日は御多忙のところ御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、オンラインで実施をしますので、委員の皆様に御注意をいただきたい点を確認させていただきます。御発言時以外は、マイクをミュートにしていただくようにお願いいたします。オンになっており御発言ない場合には、事務局でミュートにさせていただきます。また、御発言がある場合には、挙手機能であるとかコメント機能によりまして意思表示をお願いいたします。意思表示いただきましたらば、部会長又は事務局が指名をさせていただきますので、その後に御発言をお願いいたします。御発言の際には、最初に御自身のお名前をおっしゃっていただくようにお願いいたします。また、部会長から委員の皆様に、審議事項につきまして、認めることでよろしいかという確認をしていただくことがありますが、チャット機能で意思表示をお願いいたします。御了承いただける場合には「異議なし」などを入力いただくようにお願いいたします。注意事項は、以上となります。
 続きまして、部会長の交代がございましたので、御報告を申し上げます。佐藤恭子委員の辞任に伴いまして、杉本直樹委員に部会長をお願いすることとなりました。杉本部会長から一言、御挨拶をお願いいたします。
○杉本部会長 国立医薬品食品衛生研究所の杉本です。今回から部会長を務めさせていただきます。不慣れな部分も多くありますし、そのせいで皆様に御迷惑を掛けることもあるかもしれません。御容赦くださいますよう、お願いいたします。また、皆様の協力がなければ、本会は成立しません。何とぞ御協力、活発な御議論をお願いいたします。どうかよろしくお願いいたします。以上です。
○事務局 ありがとうございました。また、今回から新たに部会の委員として御就任いただきました委員を御紹介いたします。委員名簿にお名前がありますが、多田敦子委員です。多田委員から一言、御挨拶をお願いいたします。
○多田委員 国立医薬品食品衛生研究所の多田です。今回からこの部会に参加させていただきます。よろしくお願いいたします。
○事務局 ありがとうございました。続きまして、前回部会以降に、事務局に人事異動がありましたので、紹介をいたします。本年6月28日付けで食品基準審査課長に着任いたしました、近藤です。
○近藤食品基準審査課長 食品基準審査課長の近藤です。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 また、福澤の後任として竹田が着任しております。重田の後任として清水が着任しております。
本日の委員の皆様の出席状況を御報告いたします。本日は頭金委員から御欠席の御連絡を頂いておりまして、現時点で部会委員13名中12名の委員に御出席いただいておりますので、本日の部会が成立していることを御報告申し上げます。
 続けて、部会長代理の指名をお願いしたいと思います。薬事・食品衛生審議会令第7条第5項におきまして「部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員又は臨時委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する」という規定があります。そこで、食品衛生分科会では今般、緊急時に指名するのではなく、事前に代理を指名しておくということとなりました。それでは、杉本部会長、部会長代理の指名をお願いいたします。
○杉本部会長 頭金委員にお願いしたいと思います。
○事務局 ありがとうございます。それでは、頭金委員にお願いをしたいと思いますが、本日はあいにく御欠席ということで、事前に御挨拶をお預かりしております。事務局から御紹介をさせていただきます。
 名古屋市立大学大学院薬学研究科の頭金正博です。本日の部会は学務予定と重複し、誠に申し訳ありませんが欠席させていただきます。部会長代理の御指名を杉本部会長より頂き、光栄であるとともに、重責を感じております。微力ですが、杉本部会長を補佐して、本部会の審議が公正かつ正確に行えるように心掛けたいと思いますので、皆様の御協力をよろしくお願い申し上げます。
以上です。
続きまして、資料等の確認をいたします。あらかじめ、議事次第委員名簿、資料1-1から1-3、資料2-1から2-3及び参考資料1、以上の資料をお送りしております。
 ここから、議事の進行を杉本部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○杉本部会長 委員の先生方には、この年末の御多忙の中お集まりいただき、感謝しております。せっかくですので、活発な御議論をお願いいたします。では、議事の進行を私の方で行いますが、よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から、本日の部会の審議品目に関する利益相反の確認結果について御報告をお願いいたします。
○事務局 本日の部会におきましては、利益相反の確認対象はございません。以上です。
○杉本部会長 よろしいですね。皆さん問題ありませんね。では、議題のほうに移りたいと思います。議題1の「フィチン酸カルシウムの新規指定の可否等」に関して、審議を行いたいと思います。
まず、事務局からフィチン酸カルシウムの添加物としての概要を説明お願いいたします。
○事務局 よろしくお願いします。本日御審議いただくものは、フィチン酸カルシウムと硫酸銅ですが、使用する場面に関しましては、いつも用いていますこちらの「ワイン製造工程と添加物の使用」という参考資料1でお示ししております。本日は一番下の所に追加しています「フィチン酸カルシウム」と「硫酸銅」です。それぞれぶどう酒中の鉄を除く作用と、硫化水素を除いて不快な臭いの除去をする作用で、どちらもぶどう酒の段階で使用するということで、使用工程<2>、上の図の発酵中から発酵終了後、ろ過前までの所で使用されるものになっています。
では、「フィチン酸カルシウム」から説明いたします。資料1-1から資料1-3までございます。1-1が諮問書です。1-2が部会の報告書(案)で、こちらの内容について御確認いただければと思います。フィチン酸カルシウムは新規指定ですので、それに伴い規格基準の設定に関して御審議いただきたいと思います。
品目名は「フィチン酸カルシウム」です。構造式としてはフィチン酸カルシウムそのものではないのですが、フィチン酸の構造としてこのような構造で、Rの部分がリン酸になっているもの、さらにそこにカルシウム又はマグネシウムが結合したものです。名称としてはフィチン酸カルシウムですが、製造の工程等を踏まえまして、マグネシウムが複塩のような形で入ってくることが分かっておりますので、マグネシウムについても報告書内で言及しております。
 用途は清澄剤です。概要としては、フィチン酸カルシウムの高いキレート作用によって、ぶどう酒中の鉄イオンを沈殿させることができます。これによって生じた沈殿を滓引き等によって除去します。過剰量の鉄イオンがぶどう酒に存在する場合に、ぶどう酒中で不溶性の混濁物質を形成することがありますので、それをあらかじめこのフィチン酸カルシウムの処理をすることにより除くことで、混濁による品質劣化を減少させることができるというものになっております。なお、日本におきましては、既存添加物として「フィチン酸」及び「フィチン(抽出物)」というものが既存添加物名簿に載っているので使用可能なのですが、既存添加物はもともと天然添加物とされていたものであり、化学反応を用いて製造されたものに関しては既存添加物にはなり得ません。一方、今回、使用可能とすることが望まれているものについては、金属塩等との反応によって製造されるものが含まれているということで、新規の指定が必要と判断しております。
 諸外国での使用状況ですが、欧州連合(EU)では赤ワインに8 g/hL以下の量で使用できるとされております。L単位にすると0.08 gになります。フィチン酸カルシウムで処理した後、ワインには微量の鉄が含まれていなければならないとされています。アメリカにおきましては、欧州連合(EU)との協定により、欧州連合(EU)においてフィチン酸カルシウムを用いて製造されたワインについては国内での流通が認められています。オーストラリアでは加工助剤としてワインへの使用が認められている状況です。
 次に、添加物としての有効性についてです。まず、鉄を除去する機能についてですが、一般にぶどう酒中には鉄イオンが1-10 mg/L程度含まれているとされており、高濃度になると混濁の原因となる。特に5 mg/L以上になると混濁のリスクが高くなるとされています。典型的には1-10 mg/Lですけれども、これよりもっと多い量含まれているケースもあるということが文献で示されております。フィチン酸カルシウムをぶどう酒に添加すると、解離して生じたフィチン酸イオンが鉄イオンを捕捉します。このフィチン酸と鉄の塩が難溶性であることで、滓引きによって沈殿させて取り除くことができることになっております。
この際の反応が下の式で示しているとおりですが、これはカルシウム単独の塩を例としたもので、実際にはマグネシウムとの複塩になっているものがありますが、それについても同様に、フィチン酸の部分が鉄と反応して沈殿を作ると考えられます。フィチン酸カルシウムを添加する場合には、作用する鉄がFe+のものではなくてFe+のものであるため、あらかじめエアレーション、通気させることにより、好気的な環境にして、鉄イオンの酸化を促すようにする必要があります。その後、フィチン酸カルシウムを添加し、生じた沈殿を滓引き等により除去するということになります。
反応式から計算しますと、フィチン酸カルシウム4.22 mgの添加により1 mgの鉄が沈殿することになりますが、実際的には、フィチン酸カルシウム5-5.5 mgの添加により1 mgの鉄が沈殿するという知見があります。表1の所に実際にフィチン酸カルシウムを添加した場合の鉄イオンの推移に関して記載しているのですが、鉄が13 mg/Lほど含まれているぶどう酒中に50 mg/Lのフィチン酸カルシウムを添加した場合に、20日後時点で88.4%の除去率になっているというものがあります。先に述べたようにフィチン酸カルシウム5-5.5 mgで1 mgの鉄が除去されるということで、13 mg/Lの鉄を除くということであれば、大体65 mg程度の添加になると思われますが、それより少し少ない量での除去率が88.4%で、そこから更に100 mg、200 mgと増やしていっても、大きく除去率は変わってこないということで、添加量を大きく増やしていっても除去される鉄の量はほとんど増えないことがこの表から分かります。 
ぶどう酒中の鉄を除去するために用いられる添加物としては、ほかにフィチン酸、フェロシアン化カリウムが知られています。フィチン酸はフィチン酸カルシウムと同様に、フィチン酸の部分の機序により鉄イオンを除くと考えられ、実際にその効果も確かめられております。フェロシアン化カリウムについては、本部会で3月に審議されたものですが、こちらは十分な量をぶどう酒に添加することによって、ぶどう酒中のほとんどの鉄イオンを除去したというような報告があります。前述のとおり、フィチン酸カルシウムの場合には、過剰に添加してもある程度の鉄イオンがぶどう酒中に残存すると考えられますので、鉄イオンをぶどう酒中にほとんど残存しないようにする場合にはフェロシアン化カリウムを使用し、そうでない場合にはフィチン酸カルシウムが使用されるものと考えられます。
 次に、食品中での安定性について記載しております。フィチン酸カルシウムはpH4以下の酸性溶液で高い溶解度を示すと報告されております。pH4.8以下でフィチン酸イオンとカルシウムイオンに解離するとされています。また、フィチン酸マグネシウムはpH5以下の酸性溶液で高い溶解度を示すと報告されており、pH4.5以下ではその大部分のマグネシウムイオンが解離した状態で存在していると報告されています。したがいまして、ぶどう酒が通常pH4以下であることから、フィチン酸カルシウムをぶどう酒中に溶解した場合、ほとんどがフィチン酸イオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンに解離していると考えられます。なお、ぶどう酒中のフィチン酸カルシウムの溶解度は8-10 g/Ⅼ程度とされております。
 また、温度の影響についての知見も得られているので記載しています。120℃程度までであればフィチン酸の構造が分解することはないと確かめられております。使用基準案におきましては、使用対象をぶどう酒に限定していますけれども、ぶどう酒が120℃に達することはありませんので、フィチン酸の塩である「フィチン酸カルシウム」はぶどう酒中では温度に対して安定と考えられます。
 次に、食品中の栄養成分に及ぼす影響についてです。フィチン酸カルシウムはぶどう酒中ではフィチン酸、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンに解離すると考えられ、そのうちのフィチン酸の多くは、ぶどう酒中の鉄イオンとの塩を形成して沈殿し、除かれると考えられます。また、ぶどう酒中にもともと含有されていた過剰な鉄イオンは減少することになりますけれども、これはフィチン酸カルシウムの使用目的そのものです。なお、フィチン酸カルシウムの添加量を、9割近くの鉄を除去した量からさらに数倍に増やして添加したとしても、鉄の除去量がそれに比例することはないことが分かっており、大体1.0 mg/L程度の残存の報告がありますので、仮に意図した量を増やして添加したとしても、鉄イオンを過剰に除去することにはならないと考えられます。この辺の説明に関しては、先ほどの表1の内容を示しています。
 それから、フィチン酸カルシウムに由来するカルシウムとマグネシウムについては、処理後のぶどう酒に残存しうるため、その含有量を増加させる可能性があります。ぶどう酒中には元来カルシウムが10-210 mg/L程度、マグネシウムが50-240 mg/L程度含まれているという知見がありまして、フィチン酸カルシウムについて使用基準における添加量最大の0.08 g/Lに含まれる金属種がそれぞれカルシウム、マグネシウムのみであったと仮定し、処理後のぶどう酒にそれぞれ最大量残存したと試算した場合に、カルシウムについては21.65 mg/L、マグネシウムは14.96 mg/L程度増加すると考えられます。通常ぶどう酒に含まれるカルシウム及びマグネシウムを著しく増加させるほどの量ではないということで、本添加物による含有量の増加によって有意な影響はないと考えられます。
以上から、フィチン酸カルシウムをぶどう酒に使用した場合の栄養成分に与える影響は無視できると考えられます。有効性までの説明については以上です。
○杉本部会長 ここまでで委員の先生方から御質問などございますか。
○二村委員 二村です。1点だけ質問があります。2ページの上のほうです。大変細かい質問で恐縮なのですが、欧州連合(EU)では赤ワインに使用されると書いてあり、オーストラリアでは普通にワインとだけ書いてあります。これは、普通は赤ワインに使うとか白ワインには使わないとか、何かそういうものなのでしょうか。それとも、ワインに幅広く一般に使われるものなのか、ワインの作られ方をよく知らないので、もし知見のある方がいらっしゃれば教えていただければと思いました。よろしくお願いいたします。
○杉本部会長 これについて何か情報はございますか。
○国税庁 国税庁の北村です。御質問を頂いた点ですが、有効性に関するデータとしては、赤に対しても白に対しても効果が認められるというデータがございます。ただ一方で、欧州連合(EU)の醸造規則というところでは、使用対象は、for red wineということで、赤ワインに対して使用されるということです。有効性はどちらにも認められるのですけれども、一般的な使用としては赤ワインを想定しているのかなというところでございます。
○杉本部会長 ありがとうございます。二村委員、今の回答でどうでしょう。
○二村委員 分かりました。ありがとうございます。それでは、日本でこれから作る場合には、別に赤とか白とかの区別はないので、一般的にワインに使用できるとするけれども、多分、通常使用されるのがもしあるとすれば赤ワインだろうと、そのように考えてよろしいですか。
○杉本部会長 そういう理解でいいですよね。
○二村委員 はい、ありがとうございます。
○杉本部会長 ほかにございますか。なさそうですね。
 それでは続いて、フィチン酸カルシウムの食品安全委員会における評価結果について、事務局より端的に御説明をお願いいたします。
○事務局 食品安全委員会における評価結果です。今年の令和4年9月6日付けで、食品安全委員会からは食品健康影響評価の通知があり、「フィチン酸カルシウムが添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念がないと考えられ、許容一日摂取量を特定する必要はない」とされています。評価書からの主要な部分の抜粋を下に載せています。かいつまんで説明いたします。
 「フィチン酸カルシウム」は、ぶどう酒中及び胃内においては、フィチン酸イオンとカルシウムイオン及びマグネシウムイオンに解離することから、フィチン酸、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンに係る評価を踏まえ、総合的に食品健康影響評価を行うこととされました。
 まず、フィチン酸についてです。現在のフィチン酸の一日摂取量は10.7 mg/kg体重/日(591 mg/人/日)と推定されています。フィチン酸カルシウムの全量をフィチン酸とみなして、ぶどう酒からのフィチン酸の一日摂取量を6.75×10-2 mg/kg体重/日(3.72 mg/人/日)と推定されています。
 次は、体内動態に関してですが、あらかじめ頭金委員からコメントを頂いておりまして、内容として重複する部分が多いので、ここでは説明せず、後で紹介させていただきます。
毒性の部分ですが、フィチン酸では遺伝毒性はないものと判断されています。反復投与毒性については、NOAELの判断が可能な知見は得られなかったとされています。発がん性は認められないと判断されています。生殖発生毒性については、母動物において体重増加抑制が認められ、胎児においては骨格変異を有する胎児の出現率の有意な増加が認められました。それぞれから、750 mg/kg/体重/日をNOAELと判断されています。それから、ヒトにおける知見が得られており、フィチン酸1,800-3,000 mg/人/日を4週間摂取した試験、及び600 mg/人/日を12週間摂取した試験のいずれにおいても毒性影響は認められないと判断されています。
 食品安全委員会の決定としましては、フィチン酸は食品中に含まれており、また、「フィチン酸カルシウム」からの摂取量(3.72 mg/人/日)は現在の摂取量(591 mg/人/日/)と比べて少ないこと、ヒトが600-3,000 mg/人/日を摂取した試験において毒性影響が認められていないこと、毒性試験成績からNOAELが得られているものの、NOAELの根拠とした発生毒性試験での母動物の一般毒性所見と胎児の発生毒性所見は、いずれも最高用量群でのみ認められる軽度の所見であり、毒性影響は重篤ではないことから、「フィチン酸カルシウム」が添加物として適切に使用される場合には、安全性に懸念がないと考えられ、ADIを特定する必要はないと判断されています。以上がフィチン酸イオンについてです。
 次にカルシウムイオンについて記載しております。カルシウムイオンについては過去に評価が行われており、ULS(サプリメントとしての耐容上限摂取量。通常の食事以外からの摂取量の上限値。)として2,000 mg/人/日とすることが適当と判断されております。その後新たな知見が認められていないことから、新たな体内動態及び毒性に関する検討は行われませんでしたが、フィチン酸カルシウム由来のカルシウムの推定摂取量は1.01 mg/人/日で、現在の通常の食事由来の摂取量の499 mgに比べて少ないことを総合的に評価し、食品安全委員会においては、添加物として適切に使用される場合にはフィチン酸カルシウムに由来するカルシウムは安全性に懸念がないと判断されています。
 マグネシウムイオンについては、こちらも過去に評価が行われており、通常の食事以外からのマグネシウム摂取量の上限値を350 mg/人/日とすることが適当と判断されています。その後新たな知見が認められていないことから、新たな体内動態及び毒性に関する検討は行なわれなかったが、「フィチン酸カルシウム」由来のマグネシウムの推定摂取量が0.684 mg/人/日で、現在の食事由来の摂取量の255 mgに比べて少ないことを総合的に評価し、食品安全委員会は、添加物として適切に使用される場合には、「フィチン酸カルシウム」に由来するマグネシウムは安全性に懸念がないと判断しております。
以上を踏まえ、食品安全委員会においては、「フィチン酸カルシウム」が添加物として適切に使用される場合には安全性に懸念がないと考えられ、ADIを特定する必要がないと判断しております。
 また、すぐ下に摂取量の推計がありますが、ここの記載は添加物の評価書における摂取量推計と同じ内容になっています。ぶどう酒の摂取量については、これまでのワイン添加物の審議の際に毎回使用してきた値と同様に46.5 mL/人/日として、使用基準案における最大使用量である0.08 g/Lのフィチン酸カルシウムが全てぶどう酒中に残存した場合を仮定すると、フィチン酸カルシウムの摂取量は3.72 mg/人/日と推計されています。
健康影響評価に関しては以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。では、食品安全委員会における安全性に関する評価の概要について、委員より簡単に御説明をお願いいたします。まず、一般毒性について、桒形委員、いかがでしょうか。
○桒形委員 桒形です。今、事務局が御説明していただいたとおりで、フィチン酸については重篤な毒性は特にありません。急性毒性試験をラット、マウス、ウサギで行われているのですが、LD50が405-2,750と非常に大きな値を示しておりますので、重篤な急性毒性の発現の懸念は低いと考えられます。
 反復毒性については、事務局の御説明のとおり、何本かやられているのですが、一般毒性を評価するような目的で実施された試験ではありませんので、NOAELの判定は難しいと判断いたしました。
生殖発生毒性がNOAELの根拠となっていますが、一番高い濃度の2.5%投与群、750 mg/kg体重/日で、第1頸椎の過剰や肋骨の本数が正常よりも多いという変異を有する胎児の発現率が多かったということで、その下のドーズがNOAELの設定になっています。2.5%で1,500 mg/kg体重/日という一番高い濃度で、このように胎児に肋骨の数が多いとか椎骨の数が多いという所見が出ていますので、毒性の評価として、1つ下の750 mg/kg体重/日がNOAELとなっています。
 ヒトについても、過剰摂取と長期摂取の2つの試験が実施されていますが、御説明があったとおり、毒性影響は認められないと報告があり、特に懸念はないと判断いたしました。以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。続いて、遺伝毒性について戸塚委員、いかがでしょうか。
○戸塚委員 遺伝毒性に関しては、お手元の資料1-3の36-37ページを御覧ください。表15に遺伝毒性試験について、in vitroの復帰突然変異試験やマウスリンフォーマTK試験、in vivoの染色体異常試験、小核試験などがここに記載されていますが、いずれの試験においても陰性の結果が得られていますので、この結果をもって、フィチン酸及びフィチン酸ナトリウムには、特別に問題となるような遺伝毒性はないと判断されています。以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。続いて、体内動態について、頭金委員からコメントを頂いております。事務局から紹介をお願いします。
○事務局 頭金委員から体内動態についてのコメントを頂いております。
フィチン酸カルシウムは胃内(低pH)で、フィチン酸イオンとカルシウムイオンに解離している。そこで、フィチン酸カルシウムの体内動態は、フィチン酸のカルシウム、マグネシウム及びナトリウム塩の知見から評価を行っている。フィチン酸の体内動態はラット、ブタ、ヒトの知見を基に評価を行っている。フィチン酸の吸収は摂取量が増えても一定量以上の吸収はせず、また、カルシウム摂取で吸収が抑制される。フィチン酸は食事由来、あるいは腸内細菌由来のフィターゼによって脱リン酸化される。摂取したフィチン酸のリンの半分程度が無機リンとして排泄される。また、カルシウム摂取により大腸での分解は影響を受けるが、胃や小腸での分解は影響を受けないと評価している。カルシウムイオンについては、添加物評価書「炭酸カルシウム」でカルシウムのリスク評価が行われており、その後に新たな知見がないことから、今回のフィチン酸カルシウムで新たな評価は行っていない。マグネシウムイオンについては、清涼飲料水評価書「カルシウム・マグネシウム等(硬度)」で評価されており、その後に新たな知見がないことから、今回のフィチン酸カルシウムで新たな評価は行っていない。
コメントは以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。ここまでで、委員の先生から、食品健康影響評価における評価結果について御質問等がありますでしょうか。三浦委員、お願いいたします。
○三浦委員 静岡県立大の三浦です。1点の確認と、もう1つは質問です。ラットの催奇形性試験ですが、2.5%で骨格異常ということでしたが、1.25%では認められなかったということでよろしいでしょうか。
○桒形委員 桒形ですが、発言してよろしいですか。
○杉本部会長 お願いします。
○桒形委員 御質問、ありがとうございます。評価書によりますと、1.25%では認められないと判断できます。
○三浦委員 ありがとうございます。2つ目の質問ですが、消化管での代謝の説明をしてくださっており、そのときに、フィターゼという酵素、これは内因性ではなく腸内で作られる酵素だという話でしたが、こちらは腸内細菌が作るような酵素なのかということと、腸内細菌は人によって違うので、フィターゼを持っていない人の場合と持っている人の場合で、体内動態の違いが生じるかどうかを教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○杉本部会長 この辺りに詳しい委員の先生はいらっしゃいますか。今のところ、評価書の資料1-3の23ページの中ほどに、「腸内細菌由来のフィターゼが関係し、内因性の酵素の活性は無視できるとしている」と、この部分しか今のところ情報としてないのですが、ほかに、何かここについて説明できる方がいらっしゃいましたらお願いしたいのですが。いなさそうですね。
○近藤食品基準審査課長 事務局です。もし、よろしければ、後ほど事務局でも確認するとともに、代謝の御専門の頭金委員にも御確認して、また委員の先生方にフィードバックさせていただくということでいかがでしょうか。
○三浦委員 承知しました。すみません、お手数をお掛けします。よろしくお願いします。
○杉本部会長 ありがとうございます。ほかにありますでしょうか。大丈夫ですね。
 続きまして、フィチン酸カルシウムの使用基準案と成分規格案等について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 8.からはこの報告書の結論の部分です。まず、新規指定についてです。フィチン酸カルシウムについては、食品安全委員会における食品健康影響評価を踏まえ、食品衛生法第12条の規定に基づく添加物として指定することは差し支えないとしています。
 9.規格基準の設定について記載しています。今回、規格と使用基準をそれぞれ設定する予定でして、使用基準については、「フィチン酸カルシウムは、ぶどう酒以外の食品に使用してはならない。フィチン酸カルシウムの使用量は、フィチン酸カルシウムとして、ぶどう酒1 Lにつき0.08 g以下でなければならない。」としています。
 成分規格については別紙1に記載しております。最初に説明しましたが、フィチン酸カルシウムについてはマグネシウムとの複塩になっている部分があるということで、定義において、「本品は、イノシトールヘキサリン酸のカルシウム塩(カルシウム・マグネシウム複塩を含む)を主成分とするものである。」としております。別紙は他に2と3が付いており、それぞれの設定根拠について記載しております。それぞれ、CAS登録番号の所が事前に委員の先生方に共有させていただいた内容から少し変えている部分がありますので、そこだけ変更点になっております。
規格基準の部分に関しては以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。使用基準案及び成分規格案等について、委員の先生からコメントがあればお願いいたします。まず、成分規格について、多田委員、いかがですか。
○多田委員 事務局から説明がありましたように、フィチン酸カルシウムの規格に関しては、OIV規格及び食品添加物公定書の類似品目である「フィチン酸」の規格や「フィチン(抽出物)」の10版公定書規格案を参考にして設定がされています。また、国際的に流通している製品に関しても問題のない、齟齬のない規格が設定されていると思います。試験法も問題のない方法が設定されていると思います。以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。それでは、フィチン酸カルシウムの使用基準案及び成分規格案について、そのほかに委員の先生から御質問はありますでしょうか。大丈夫そうですね。ありがとうございます。
 それでは、全体を通して、フィチン酸カルシウムの新規指定等の可否について、御意見等お願いいたします。大丈夫ですね。
 それでは、一通り御審議をいただいたようですので、先ほど質問がありましたフィターゼの件に関しては、後で調べて御報告をするということで、全体を通して、フィチン酸カルシウムの新規指定の可否については認めることでよろしいでしょうか。御意見がある場合には、御発言をお願いいたします。御了承いただける場合は、コメント欄に「異議なし」などを御入力いただければと思います。
 皆さんから「異議なし」のコメントが届いていますので、問題ないですね。それでは、部会報告書を取りまとめ、分科会へ報告する手続を取りたいと思います。
事務局から、その他、何かありますでしょうか。
○事務局 本件は、添加物の新規指定であるため、分科会では審議事項とされています。細かい文言の変更等の軽微な修正が必要となった場合については、修正内容を部会長に確認いただいた上で手続を進めることとしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
○杉本部会長 事務局からの提案ですが、そのように進めてよろしいでしょうか。御意見がある場合は御発言いただきたいのですが。なさそうですね。それでは、今後のスケジュールはどのようになりますか。
○事務局 今回の審議結果については、食品衛生分科会での審議のほか、所定の事務手続を開始したいと考えております。
○杉本部会長 それでは、適切に手続をお願いいたします。
 では、議題2「硫酸銅の規格基準改正について」に関して審議を行いたいと思います。まず、事務局から硫酸銅の添加物としての概要の説明をお願いいたします。
○事務局 よろしくお願いいたします。資料2-1から2-3までが硫酸銅に関する資料になっております。資料2-1が諮問書です。資料2-2が部会報告書(案)で、資料2-3が食品安全委員会の食品健康影響評価の結果の通知です。資料2-2に従いまして説明いたします。
硫酸銅は、新規指定ではなく、規格基準の改正となっております。品目名としては「硫酸銅」としておりますが、指定添加物の名称としては「銅塩類(グルコン酸銅及び硫酸銅に限る。)」となっております。使用基準、規格においては「硫酸銅」という名称を使用しておりますので、「硫酸銅」という名称で説明いたします。規格においては、五水和物とされております。今回追加する用途ですが、不快な臭いの除去です。硫酸銅がぶどう酒中で銅イオンと硫酸イオンに解離し、この銅イオンのほうが、ぶどう酒中の不快な臭いの原因となる硫化水素と反応して不溶性の硫化銅を形成し、沈殿します。この沈殿を除去することによって、硫化水素を除去するというものです。
 「硫酸銅」は昭和58年に添加物として指定されておりますが、現行の使用基準においては、母乳代替食品への使用のみが認められており、ぶどう酒への使用は認められておりません。ぶどう酒への使用をできるようにするために使用基準の改正を行うものです。
 諸外国での使用状況ですが、欧州連合(EU)においては、ワインの製造における使用量は、1 g/hL以下、10 mg/L以下となっており、処理された後の製品の銅濃度が1 mg/Lを超えないことが条件となっております。ただ、一部のリキュールワインにおいては、
2 mg/Lを超えないこととなっております。
 米国においては、一般に安全と認められる物質(GRAS)とされており、加工助剤や栄養補助剤として使用することが認められております。ワイン製造における添加量は銅換算で6 mg/Lを超えないこと、最終製品中の銅濃度が1 mg/Lを超えないことが規定されております。
 オーストラリアにおいては、加工助剤としてワインを含む全ての食品に使用することが認められております。なお、欧州連合(EU)とオーストラリアの間では、ワインの取引に関する協定が結ばれており、相手国内で流通させるワインの製造においては、硫酸銅の使用量を、処理された後の製品の銅濃度が1 mg/Lを超えないことを条件として、最大1 g/hLとしております。
 次に、添加物の有効性の部分の説明です。まず、硫化水素を除去する機能についてですが、硫化水素は、ぶどう酒の製造工程において酵母が代謝の過程で生成することが知られており、ぶどう酒の香りに関係する一方で、腐った卵臭といった不快な臭いの原因となります。そのため、ぶどう酒の品質向上のために硫化水素の量を調整することが必要になる場合があります。これをするのに効果的な方法として硫酸銅の添加が知られています。硫酸銅は、ぶどう酒中において銅イオンと硫酸イオンに解離し、銅イオンが硫化水素と反応することによって硫化銅を生成します。この硫化銅は水溶性が低いため沈殿し、滓としてぶどう酒中から除去されます。その反応の式が下に示しているとおりで、このCuSとなっているものが沈殿して除かれるものです。
 銅イオンによる硫化水素除去の効果については、モデルぶどう酒を用いた研究により確認されており、それが図1に示しているものです。この研究においては、硫化水素のほかにCys、6SH、3SHというものが300 μⅯずつ入れられ、それの変化量を記載しております。6SHと3SHについては、3ページの脚注に記載しておりますが、6SHと3SHはそれぞれ1級チオールの6-Sulfanylhexan-1-olと2級チオールの3-Sulfanylhexans-1-olというもので、それぞれ香りに関係する物質ではあるようですが、硫化水素と同じように銅によって除去されることが知られているということで、今回のこの研究の中では測定の対象になっているというものです。
 メインになるのは硫化水素の変化ですが、図1中の黒丸の変化をたどっていただきますと、まず300 μⅯから硫酸銅の添加によって一気に量が下がり、その後、緩やかに下がっていくのですが、大体3日ほどの時間を掛けると、ほとんどぶどう酒中に残存しないぐらいまで硫化水素を取り除くことができるものになっております。
 この図から、硫化水素は、モデルぶどう酒中で銅イオンと速やかに反応することが分かりました。なお、硫化水素を除去する方法としては、硫酸銅を使用する方法以外に、通気を行う方法が従来から行われておりますが、白ワインにおいては酸化によるワインの色調の変化、赤ワインにおいては酢酸菌の活性化を引き起こすことがあることから、硫酸銅による硫化水素の除去は、通気を行う方法と比較して有用な手段であるとされております。
 次に、食品中での安定性の部分ですが、硫酸銅の水への溶解度は20.7 g/100 mLということでかなり大きくなっており、使用基準案の上限の10 mg/L添加した場合であっても、硫酸銅はぶどう酒中において銅イオンと硫酸イオンに解離すると考えられます。
 次に、食品中の栄養成分に及ぼす影響についてですが、硫酸銅由来の銅イオンは、ぶどう酒中の硫化物イオンと反応し、硫化銅として沈殿して除去されます。そのため、ぶどう酒中の硫化物イオンについては減少しますが、これは硫酸銅の使用目的そのものです。硫酸イオンについては、使用基準案における硫酸銅の最大使用量である10 mg/Lを加えた場合、ぶどう酒中で約4 mg/L程度増加することになると思われますが、ぶどう酒中にもともと硫酸塩が30-2,200 mg/L程度存在するとの知見があることを考慮しますと、これと比較して増加量として僅かであると考えられます。また、後述しますが、食品安全委員会における推計においては、使用基準案上限のとおり添加して全量残存した場合のぶどう酒からの摂取量が推計されておりますが、これが0.179 mg/人/日であるのに対して、食事中や飲料水中/からの摂取量は少なくとも68.7-80.8 mg/人/日であるとされております。もともとほかの食品からも多く摂取するものであることを考慮しますと、栄養成分に及ぼす影響として考える必要はないものと考えております。
以上から、硫酸銅をぶどう酒に使用した場合の栄養成分に与える影響は無視できると考えております。有効性までの説明に関しては、以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。ここまでで委員の先生方から御質問などはありますか。なさそうですね。
それでは続いて、硫酸銅の食品安全委員会における評価結果について、事務局より御説明をお願いします。
○事務局 食品安全委員会の評価結果ですが、令和4年8月9日付けで通知がされており、「硫酸銅が添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念はない」とされております。この評価書の概要については、下に主要部分を抜粋しております。8行目からですが、「硫酸銅は、ぶどう酒中で、銅イオン及び硫酸イオンに解離すると考えられることから、それぞれについての評価を踏まえ、総合的に「硫酸銅」の食品健康影響評価を行うこととした」としております。
 まず、銅イオンの摂取量についてですが、令和元年度の国民健康栄養調査の結果から、1.14 mg/人/日の摂取量があるとされております。それに加えて、「グルコン酸銅」の使用基準において5 mg/人/日の摂取量を超えないようにということになっており、特定保健用食品及び栄養機能食品を摂取するような人の場合には、1.14 mgに5 mgを足して6.14 mg/人/日の摂取になる可能性があるとされております。一方で、今回の「硫酸銅」を使えるようになって、ぶどう酒から摂取するようになったとした場合、この摂取量は0.093 mg/人/日と推計されております。
 17行目から体内動態の説明ですが、こちらは、フィチン酸カルシウムと同じように頭金委員からコメントを頂いており、重複する部分が多いですので、後で説明させていただきます。
 毒性の部分についてですが、硫酸銅及び銅・銅塩類については、生体にとって特段問題となる遺伝毒性はないものと判断されております。急性毒性、反復投与毒性及び生殖発生毒性試験等の試験成績を検討した結果、ラット2世代生殖毒性試験において、親動物及び児動物における脾臓の重量減少が認められたことから、最小のNOAELは、銅として15.2 mg/kg体重/日と判断されております。硫酸銅及び銅塩類を被験物質としたヒトにおける知見では、銅として10 mg/人/日までを摂取させる介入試験が行われており、いずれの試験においても、銅の摂取による影響は認められておりません。
 添加物評価書「グルコン酸銅」の評価において、ヒトに銅として一日10 mgのグルコン酸銅を12週間投与した結果、影響は認められていないとされています。その後、この判断を変更すべき新たな知見は認められていないこと、製造用剤として用いられる「硫酸銅」に由来する銅イオンの摂取量(0.093 mg/人/日)が現在の摂取量(特定保健用食品及び栄養機能食品を摂取しない場合は1.14 mg/人/日、摂取する場合は6.14 mg/人/日)と比べて少ないことを総合的に評価した結果、食品安全委員会としては、添加物として適切に使用される場合には、「硫酸銅」に由来する銅イオンは安全性に懸念がないと判断しております。ここまでが銅イオンについての話です。
 次に、硫酸イオンについて記載しております。硫酸イオンについても、過去に評価が行われているということで、その後新たな知見が認められていないことから、新たな体内動態及び毒性に関する検討は行われておりません。食事中に添加物として含まれ、体内で容易に解離し硫酸イオンを形成すると考えられる無機硫酸塩及び飲料水に含まれる硫酸イオンの摂取量を推計したところ、現在の摂取量は少なくとも68.7-80.8 mg/人/日と推計されており、これに対してぶどう酒に添加した「硫酸銅」由来の硫酸イオンの摂取量が0.179 mg/人/日と少ないことを総合的に評価した結果、食品安全委員会としては、添加物として適切に使用される場合、「硫酸銅」に由来する硫酸イオンは、安全性に懸念がないと判断しております。
食品安委員会では、以上を踏まえ、「硫酸銅」が添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念はないと判断しております。
 次に、評価書と同じ内容を記載しているのですが、摂取量の推計についてです。ぶどう酒の摂取量としては、46.5 mL/人/日を用いて計算し、硫酸銅については、使用基準案における銅としての最大残存量の硫酸銅がぶどう酒中に残存した場合を仮定しますと、ぶどう酒からの硫酸銅の摂取量は、無水物としての計算で0.234 mg/人/日になるだろうとしております。
 銅イオンの現在の摂取量については、先ほどのとおり特定保健用食品及び栄養機能食品を摂取しない場合は1.14 mg/人/日、摂取する場合は6.14 mg/人/日であって、使用基準案改正後におけるぶどう酒からの摂取量は0.093 mg/人/日と推計されております。
 また、硫酸イオンについては、食品添加物の生産量統計調査に基づき、硫酸イオンが含まれている添加物の摂取量からの計算ですが、約60.2-72.3 mg/人/日、飲料水由来の摂取量については、平成24年度の摂水量調査と令和元年度の水道統計における硫酸イオンの給水栓水での検出状況から、8.4 mg/人/日と推計し、合わせて68.7-80.8 mg/人/日とされております。使用基準案における硫酸銅(Ⅱ)五水和物としての最大使用量の硫酸銅を添加し、その全量がぶどう酒中に残存した場合を仮定しますと、使用基準改正後のぶどう酒からの摂取量は0.179 mg/人/日と推計しております。
食品健康影響評価に関する部分に関しては、以上です。
○杉本部会長 ありがとうございます。食品安全委員会における安全性に係る評価の概要について、委員より説明をお願いします。一般毒性について、桒形委員、いかがでしょうか。
○桒形委員 資料2-3の36ページから、表20に急性毒性の結果がございます。こちらのLD50の値が比較的大きいことが分かります。すなわち、重篤な急性毒性の発現というものは、比較的低いと考えられます。
 その下の(3)から、反復投与毒性試験がたくさん行われております。表21、表22、表23、表24、表25というように、とてもシンプルな表になっておりますが、こちらはラットあるいはウサギを用いた反復投与毒性試験が行われています。ただ、今御覧いただいたように、1ドーズで行われており、一般毒性を評価するという検査項目を満たしておりませんので、こちらは参考データというように評価されております。
 39ページのf.ですが、ラット及びマウスの92日間及び15日間の反復投与毒性試験です。こちらは評価する検査項目を満たしておりまして、ラットの混餌投与が92日間で行われています。表27が毒性試験で、1,000ppmから8,000ppmの試験が行われていますが、2,000ppm以上で毒性所見が認められています。表28、病理のほうも2,000ppm以上で投与による所見が認められています。評価書によると、2,000ppm以上の投与による所見というように判断しているようです。
 これらの結果から、この被験物質、前胃による刺激性であるとか、肝臓、腎臓、造血系に及ぼす影響というものが2,000ppm以上で認められており、NOAELを1,000ppmというように判断しております。
(b)マウスの92日間、こちらは反復投与毒性試験です。こちらは血液生化学、尿検査等が実施されておりません。しかし、マウスにおいても、表30に記載があるようにラットと同じように前胃に刺激性による所見が認められております。
 続いて42ページの(c)です。参考資料として2本の試験が実施されております。1本目が混餌投与試験、2本目が飲水投与試験です。ただ、こちらも予備試験ですので、血液生化学あるいは尿検査等が実施されていないということで、参考データになります。表32ですが、所見には再現性があり、前胃、肝臓、腎臓等に、ラットでは毒性所見が認められており、マウスでは2,000ppm以上で、刺激性と考えられる胃への所見が認められています。
 45ページを御覧ください。これらの結果をまとめて、食品安全委員会としては、ラットとマウスの各試験の評価をした結果、ラットにおいては、前胃、肝臓、腎臓及び造血系の所見が認められたことからNOAELを1,000ppm、マウスにおいては前胃の所見が認められたことから、NOAELを2,000ppmというように判断しております。
 続いて、(4)の発がん性試験ですが、試験の提出はございません。
 (5)の生殖発生毒性試験です。2世代生殖試験が実施されております。表35をお願いします。1,500ppm、一番高い用量で、雌動物に脾臓の重量の低値が認められています。表36をお願いします。児動物においても、一番高いドーズで脾臓の重量が減少しております。
 47ページの一番下のほうですが、食品安全委員会は、これらの結果から、生殖能力に対する影響は高い濃度まで認められていないということから、生殖毒性に係るNOAELを最高用量の1,500ppm、また、1,500ppm投与群では、親動物あるいは児動物において脾臓の重量減少が認められたことから、親動物の一般毒性及び児動物に対する毒性に係るNOAELを1,000ppmというように判断しております。
 48ページの3.はヒトにおける知見です。介入試験が3試験報告されています。50ページを御覧ください。銅として、10 mg/人/日まで摂取する介入試験が3本報告されていますが、いずれも銅の摂取による影響は認められていないと報告されています。
以上です。
○杉本部会長 続いて、遺伝毒性について、戸塚委員、御説明をお願いします。
○戸塚委員 同じ資料の33ページからになります。硫酸銅に関する遺伝毒性試験の結果が示されております。この硫酸銅に関しては、2019年に既に「2-デアミノ-2-ヒドロキシメチオニン銅」の中で評価をされていまして、そのときの結果が、この表15になっています。見ていただくとお分かりのように、復帰突然変異に関しては、いずれの試験でも陰性となっています。唯一、この中では不定期DNA合成試験、UDS試験という、DNA損傷を対象としたような試験ですけれども、こちらで1つ陽性が出ているという結果になっています。
 次のページを御覧ください。一方、染色体異常試験に関しては、幾つか陽性の結果が出ていることが、この表からもお分かりになると思います。2019年に評価した後に新たに得られた知見として、表16にまとめられておりますが、これもDNA損傷を対象とした試験では陽性という結果になっております。表17は、直接遺伝毒性等を見たような結果ではないので、参考資料となっております。
 <3>銅・銅塩類という所ですと、表18では、復帰突然変異試験の結果が陰性となっておりまして、表19では、今回、それまでに追加された知見として、DNA損傷性を対象とした結果で陽性という結果になっております。
 これらの結果を踏まえて、この評価書では、「2-デアミノ-2-ヒドロキシメチオニン銅」において、染色体異常等を誘発するものに関しては陽性という結果が出ているけれども、遺伝子突然変異誘発性はないというように考えたということです。染色体異常陽性となる機序については、銅自体は、そもそも酸化還元活性遷移元素でありまして、潜在的にこういった活性酸素が発生するような反応を触媒してしまうというようなことが知られておりますので、こういった機構で、恐らく染色体異常、DNA損傷等が陽性になっているのではないかと。つまり、これは間接的な影響であると捉えたということです。また、こういった間接的な影響が見られるものの、ヒトに対する銅の遺伝毒性に関しては、通常の経口摂取の範囲においては、特段問題があるような遺伝毒性はないと考えたと結論しております。
 さらに、今回追加で得られた試験系に関しても、陽性となっている所見は得られているのですが、いずれの試験も細胞の毒性が非常に強く出るような濃度のところでの陽性結果となっているので、こういったことからも総合的に考えて、硫酸銅及び銅・銅塩類には、生体にとって特段問題となる遺伝毒性はないと判断したとされております。
○杉本部会長 ありがとうございます。あとは体内動態ですが、これは頭金委員から頂いています。事務局からお願いいたします。
○事務局 頭金委員から頂いているコメントを読み上げます。
 硫酸銅の体内動態について。硫酸銅はブドウ酒中で、銅イオンと硫酸イオンに解離して存在するので、それぞれのイオンの体内動態について評価を行っている。銅イオンについては、ラットとヒトでの体内動態の知見を基に評価を行っている。経口摂取させた場合、銅の摂取量が多いほど吸収率は低下し、ヒトでの真の吸収率、一旦体内に吸収された銅が腸管へ排泄される量を考慮して算出した吸収率は、29%から77%と、摂取量によって大きく異なっていた。胃及び十二指腸から吸収された銅は、肝臓でアポセルロプラスミンと結合してセルロプラスミンを形成し、血中に放出される。銅は、肝臓以外に筋肉や骨に分布する。主な排泄経路は胆汁を介した糞便中への排泄になる。体内の銅の量は、恒常性維持機能で一定に保たれているが、この際、胆汁を介した腸管への排泄量の調節機能が重要な働きをする。硫酸イオンについては、過去に硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硫酸アルミニウムカリウムのリスク評価が行われており、その後に新たな知見がないことから、今回の硫酸銅で新たな評価は行われていない。
○杉本部会長 ここまでで、委員の先生方から、食品健康影響評価に関する評価結果について、御質問はございますか。
○三浦委員 今回、いろいろな毒性の評価は硫酸銅で行われていましたが、ワインに硫酸銅を添加して硫化水素と反応させて生成する硫化銅についての評価がなかったのですが、こちらはワイン製造中に沈殿物として沈殿して、除去されてしまうということの理解でよろしいのでしょうか。
○事務局 事務局でございます。除去されるということで、ここでの話になっていないということなのだと理解しています。
○三浦委員 分かりました。ありがとうございました。
○笹本委員 素人的な質問で恐縮なのですが、先ほどのフィチン酸カルシウムと硫酸銅は、ワインの製造工程で同じような工程のときに使われるようなのですが、これは両方が存在しているとお互いを打ち消し合ってしまうのではないかという気がするのですが、その辺はどうなのでしょうか。銅がキレートされてしまって、目的とする効果が得られないのではないかと思ったのですが、そういうことはないのでしょうか。
○国税庁 御質問いただいた点に関してですが、それぞれの添加物は目的に応じて使い分けるといったところで使用していくものになっていまして、今回の硫酸銅については、硫化水素を除きたいといった、果汁だとかブドウ酒の性質を持ったものに対して使いたい、そういうときに使うものになります。同じように、フィチン酸カルシウムについても、果汁中にイオンの濃度が高いといった場合に使うということで、それぞれ目的に応じて使い分けることになりますので、両方を使って打ち消し合うということには、あまりならないかなと考えております。
○笹本委員 分かりました。あと1点なのですが、硫酸銅の場合に懸念されるのは、急性の銅中毒になるかと思うのですが、実際に銅の中毒を起こす濃度というのは、恐らくこの濃度の1,000倍というレベルにならないと中毒は起こさないと思うので、ヒトの急性銅中毒という懸念からしても、まず問題ない量なのではないかと。これは意見ですが、そのように感じました。
○杉本部会長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。
 続きまして、硫酸銅の使用基準案などについて、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 初めに説明しましたとおり、硫酸銅自体は指定がされておりまして、今回の申請に関しては、使用基準の改正の要望ということで、使用基準の改正案をこちらに示しております。下線部の部分が、改正前から新たに加わった部分でして、「硫酸銅は、ぶどう酒及び母乳代替食品以外の食品に使用してはならない」としておりまして、硫酸銅の部分については、「硫酸銅の使用量は、硫酸銅(Ⅱ)五水和物として、ぶどう酒にあってはその1Ⅼにつき10 mg以下でなければならない。また、硫酸銅は、銅として、ぶどう酒にあってはその1Ⅼにつき2 mgを超えて残存しないように使用しなければならない」としております。使用基準に関しては以上です。
 成分規格のほうについては、特に今回は変更の必要はありませんので、別紙に付けておりますけれども、参考として付けているものです。
○杉本部会長 硫酸銅の使用基準案について、委員の先生方から御質問などはございますか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、全体を通して、硫酸銅の規格基準改正について、御意見などがありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、一通り御審議いただきましたので、硫酸銅の規格基準改正については認めるということでよろしいでしょうか。御意見がある場合には御発言をお願いします。また、御了承いただける場合、「異議なし」というコメントをコメント欄に入力ください。
異議はないと認めました。ありがとうございました。
 それでは、部会報告書を取りまとめ、分科会へ報告する手続を取りたいと思います。その他、事務局から何かございますか。
○事務局 本件は、添加物の規格基準の改正であるため、「その基原、製法、用途等からみて慎重に審議する必要があるとの部会の意見に基づき、分科会長が決定するもの」を除きまして、分科会では審議事項ではなく、報告事項とされております。報告事項として進めさせていただきたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
○杉本部会長 事務局からの提案ですが、そのように進めてよろしいでしょうか。御意見がある場合は御発言ください。よろしいでしょうか。
 それでは、今後のスケジュールについては、どのようになりますでしょうか。
○事務局 今回の審議結果につき、食品衛生分科会での報告のほか、所定の事務手続を開始したいと考えております。
○杉本部会長 それでは、適切に手続をお願いいたします。
 本日の審議、報告は以上ですが、部会委員の皆様から、その他何か御発言等がありましたらお願いいたします。
○中島委員 先ほどのフィターゼについてなのですが、最終回なので宿題が残った形で終わるのは悔しいので、先ほどはメモを引っ繰り返しておりましたので、一般論の話をさせていただこうかと思います。よろしいでしょうか。
○杉本部会長 お願いいたします。
○中島委員 フィチン酸というのは、一般に栄養阻害物質とみなされておりまして、理由としては、リン酸の吸収が悪くなってしまうということで、飼料添加物としてフィターゼ、フィチン酸からリン酸を切除する作用を持っている酵素が、飼料添加物としてよく開発されております。食品安全委員会の遺伝子組換えのところでもよく出てきますが、これを入れると飼料の栄養効率がよくなるというものです。
 フィターゼを作る微生物がいろいろと探索されておりまして、多くは酵母などです。フィターゼは、一般に、胃が1個しかない動物では自力でほとんど生産、分泌しませんので、そのためにリンの摂取量が悪くなる、それを改善するためにこのフィターゼが飼料添加物として開発されております。
 先ほどの質問のポイントは、フィターゼを生産する腸内細菌がいるかということだったのですが、私は、実はそこは詳しくないので、先ほど発言を控えさせていただいたのですが、フィターゼ生産菌の中に、腸内細菌は幾つか見つかっております。ただ、その腸内細菌が作るフィターゼが、十分に食品中に含まれるフィチン酸を完全に分解しているかどうか、そこは知らなくて申し訳ないのですが、一般にかなりの量を腸内細菌で分解しているだろうと考えられております。私の知っている限りでは以上なのですが、少しお役に立ちましたでしょうか。
○杉本部会長 ありがとうございます。三浦委員、いかがですか。中島委員から情報を頂けました。
○三浦委員 御説明いただきまして、ありがとうございます。腸内細菌は個人差がありますので、人によって代謝が異なるのではないかと少し思いました。ただ、それが毒性発現に大きな影響を及ぼさないのであれば、特に問題はないかと思います。
○中島委員 毒性には問題はないかと思います。ありがとうございます。
○杉本部会長 ここの部分は宿題になっていましたが、宿題でなくてもよろしいということでいいですね。
 次に桒形委員、お願いします。
○桒形委員 資料1-3を共有できますでしょうか。先ほどのフィチン酸カルシウムの毒性のところの三浦先生からの御質問で、評価書の42ページを御覧ください。2.5%の投与群で、骨格変異の胎児の出現があるけれども、その下の1.25%では見られていないのですかという質問に対して、私は、表21でないからありませんと答えたのですが、これは不適切でした。生データまで戻らなければ出ていたか出ていなかったかということは分からないので評価書では分からないのですが、ただ、ここで言えるのは、表21に記載されているような変化は自然発生でも見られる変化です。ですから、2.5%では対照群と比べて、そういう胎児がたくさん見られたということで、その下の群では見られているかもしれませんが、対照群、すなわち自然発生との発現頻度には差はなかったという判断であったと思います。不適切な答えだったので、ここで修正させていただきます。申し訳ございませんでした。
○杉本部会長 三浦委員、今の説明でよろしいでしょうか。
○三浦委員 スポンタのレベルということで理解しました。ありがとうございます。
○杉本部会長 ほかにはございますか。よろしいでしょうか。
 では、次回の予定について、事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 次回の添加物部会については、来年の2月10日の10時から開催の予定です。改めまして、日時、場所、議題に関して御案内をさせていただきます。
○杉本部会長 それでは、本日の添加物部会はこれで終了いたします。笹本委員、中島委員は、これで最後です。どうもありがとうございました。またどこかでお会いすることがあると思いますが、その際には御協力をお願いいたします。どうもありがとうございました。これで部会を終了とします。どうもありがとうございました。