薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和4年度第3回安全技術調査会議事録

日時

令和4年10月25日(火)15:00~17:00

開催形式

Web会議

出席者

出席委員:(10名)五十音順、敬称略
欠席委員:敬称略
国立感染症研究所:敬称略
日本赤十字社:敬称略
事務局:

議題

  1. 1.感染症安全対策体制整備事業について
  2. 2.NAT コントロールサーベイ事業について
  3. 3.日本赤十字社のヘモビジランスについて
  4. 4.新型コロナウイルス既感染者の採血制限について
  5. 5.その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

議事内容
○有田血液対策課長補佐 それでは定刻となりましたので、「薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和4年度第3回安全技術調査会」のWeb会議を開催いたします。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
 本日はお忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。この度、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。
 本日のWeb会議における委員の出席についてですが、荒戸委員より御欠席との連絡を頂いております。現時点で安全技術調査会委員11名中9名の出席を頂いていることを報告いたします。また、熊川委員におかれましては、遅れて参加される旨の御連絡を頂いております。また、本日は、参考人として国立感染症研究所より、水上拓郎次世代生物学的製剤研究センター第1室室長、手塚健太次世代生物学的製剤研究センター第2室主任研究官に御出席いただいております。また、日本赤十字社血液事業本部より佐竹正博中央血液研究所所長、松田由浩経営企画部次長、後藤直子技術部次長に御出席いただいております。
 続きまして、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、報告させていただきます。また、薬事分科会審議参加規程に基づいて各委員の利益相反の確認を行いましたところ、岡崎委員、岡田委員から、関連企業より一定額の寄附金・契約金などの受取の報告を頂きましたので、御報告いたします。議題4に関しましては、岡崎委員、岡田委員につきましては、意見を述べていただくことは可能ですが、議決には加わらないこととさせていただきます。他の委員につきましては、対象年度における寄附金・契約金等の受取の実績なし、又は50万円以下の受取であることから、特段の措置はありません。これらの申告については、ホームページで公開させていただきます。
 委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いいたします。タブレット上にマル1議事次第からマル25参考資料4-17までのPDFファイルが表示されているか御確認をお願いいたします。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。
 本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず、御自身のお名前と発言したい旨を発言いただきますようお願いいたします。その後、座長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上御発言ください。また、ノイズを減らすため、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度皆様の発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は座長からお願いをする場合があります。その場合には、記入されたメッセージに応じて、座長より発言者を御指名いただきます。
 また、本日のWeb会議に際し、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてマスクを着用したまま説明させていただく場合がありますので、御了承いただければと思います。
 なお、事務局の異動がありましたので、御報告します。私、血液対策課長補佐の有田が佐野の後任として着任しておりますので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
 間もなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。それでは、以降の進行を濵口座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○濵口座長 皆さん、こんにちは。本日も、どうぞよろしくお願いいたします。これまでの説明に委員の先生方から御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。それでは議事に入りたいと思います。議題1「感染症安全対策体制整備事業について」、事務局より説明をお願いいたします。
○有田血液対策課長補佐 私から説明させていただきます。感染症安全対策体制整備事業は、新たな病原体が移入した場合などに備えて血液対策課が国立感染症研究所に実施を依頼している事業です。令和3年度の実績の報告について、水上参考人よりお願いいたします。
○水上参考人 それでは、令和3年度の感染症安全対策体制整備事業の実績報告をいたします。本事業の代表者は、国立感染症研究所次世代生物学的製剤研究センターセンター長の濵口功先生で、同1室の水上拓郎から報告させていただきます。
 まず、資料1を御覧ください。なお、大変申し訳ございませんが、1か所修正箇所がございますので、発表中にお示しいたします。まず、事業の目的ですが、1段落目までは今報告いただきましたので、2段落目から発表させていただきたいと思います。
 本事業では、日本の献血血液への混入リスクのある病原体について、高感度の核酸検査法や標準品・参照品パネルを整備し、将来的な血液の安全性対策に資することを目的としております。令和3年度は、2019年末に発生した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関し、その後、発生してきた新規変異株に対応するため、複数の高感度Primerを組み合わせたMultiplex高感度核酸検査法を開発するとともに、アルファ、ベータ、ガンマ、オミクロンなどの新規変異株を不活化して作製した「変異株参照品パネル」を整備し、既に令和2年度、当該事業において複数施設による共同測定で値付け・整備した国内参照品を元に、相対的な核酸量の参考値を付与し、参照品として制定することといたしました。
 2番目は実施内容となります。まず、課題1.SARS-CoV-2に対する高感度核酸検査法の開発になります。SARS-CoV-2感染に関しましては、一部の重症患者の血液から、核酸検査(PCR)によりウイルスRNAが検出されることが報告されていたため、無症候性感染者からの献血を想定し、献血血液にウイルスが存在するリスクに至急備える必要がありました。
 また、様々な変異株が出現し、新規変異株の流行により、病原性の変化、検査系における感度の低下等も懸念されておりましたので、WHOが定める「懸念される変異株(Variants of Concern)」、いわゆるVOCなどに関して対応可能な高感度multiplex PCR検出法の開発とともに、参照品及び変異株パネルの作成が必要となりました。
 そこで、課題1では、献血血液に微量に混入したウイルスを検出可能な高感度核酸検査系を別途開発し、準備することを目的といたしました。令和3年度は令和2年度に開発した高感度核酸検査法を更に発展させ、複数の高感度Primerを組み合わせたMultiplex高感度核酸検査法を開発することといたしました。
 研究方法および結果です。高感度multiplex RT-PCR法の構築に関してですが、変異株対策として、令和2年度に構築した複数の高感度primer-probeをmultiplex化して、多くの変異株を包括的に検出できる核酸検出系とすることといたしました。構築した11セットのうち、NCBI登録株約4,000株に対して相同性を評価し、Table.1に示すように、登録株と100%一致する率が99%以上のprimer-probeを、変異ミスマッチの生じにくい高感度primer-probeとして3セット選出し、Multiplex化いたしました。
 Table.2でお示しいたしますとおり、感度評価の結果、Single系と3plex系で増幅効率が変わらないことを確認いたしました。
 続いて、高感度multiplex RT-qPCRの感度確認です。構築したNIID-S2 3plex法の95%検出感度を検討いたしました。その結果、Table.3に示すとおり、世界的に使用されている米国CDCで公開された検出系である2019-nCoV_N2法が、28.7copies/reactionであったのに対し、感染研法であるNIID-S2 3plexは、16.3copies/reactionであったことから、現行法と比べても、同等以上の検出感度があることが確認できました。
 すみません、ここは修正が入りまして、ここは「SARS-CoV-2」と書いてありますが、「SARS-CoV-1」になります。SARS-CoV-1に対する95%検出感度は、37.6copies/reactionでありました。
 最後に、血液関連ウイルス、類似コロナウイルスに対する特異性の確認となります。輸血感染ウイルスとして、HIV-1、HBV、HCV、HEV、Parvovirus B19、蚊媒介ウイルスとして、Dengue virus1~4、Chikungunya virus、Zika virus、日本脳炎ウイルス、West Nile virus、Yellow fever virus、一般的なHuman coronavirusとして、229E、NL63、OC43、HKU1を対象として、それぞれの精製RNAを鋳型としてRT-qPCRにおける増幅を検討しました。その結果、Table.4に示すとおり、これらのいずれのウイルスに対しても、本primer-probesetに関しましては増幅しませんでした。
 続いて、課題2、SARS-CoV-2の核酸検査法のための変異株参照パネルの構築になります。SARS-CoV-2の核酸検査に関しては、抽出効率を反映させた生ウイルス由来の核酸検査用標準品は日本には存在せず、一般に、国際標準品も令和3年頃までは入手が困難でありました。我々は令和2年度に、核酸検査用に使用できる国内参照品候補品2種類を10施設で測定し、値付けを実施し、国内参照品に対して国際単位IU/mLの表示値を付与いたしました。
 そこで令和3年度は、既存の検出法の評価に使用できるよう、新規に発生した懸念される変異株VOCなどの変異株に対する参照パネルを構築し、複数施設で値付けを行いました。
 研究方法および結果です。SARS-CoV-2変異ウイルス株の選定と、ウイルス不活化処理に関してです。変異ウイルス株は2021年12月の時点で、国立感染症研究所の分与株対象となっていた(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロン)の5株を対象といたしました。各変異ウイルス液は60分加熱処理を実施して不活化し、更に50%酢酸による酸処理を実施し、安全性マージンを追加いたしました。不活化処理済みのウイルス液を、ユニバーサルバッファーで適宜希釈し、分注したものを参照品パネルといたしました。パネルは、veroE6/TMPRSS2細胞に添加し、3代継代し、細胞変性効果が認められず、感染性が認められないことを確認いたしました。
 パネルの測定と核酸量の算出になります。日本赤十字社、 国立感染症研究所を含む4施設において、核酸量の参考値付与のための共同測定を実施いたしました。5種類の参照品及び国内参照品、そして、国際標準品を3希釈3回測定し、Table.5にお示しいたしますように、定量値、Ct値を集計し、解析いたしました。
 その結果、施設1のデータが他より低値で、各変異ウイルス株定量値の変動係数GCV%は、186~361%となり、若干の乖離が認められました。
 続きまして、パネル核酸量の相対評価による値付けとなります。各パネルの核酸量参考値はTable.6にお示ししますとおり、国内参照品の値付け値を元に平行線定量法にて相対的に算出いたしました。Table.7に示すとおり、各施設の相対定量値の幾何平均値をパネルの核酸量の参考値として定めました。
 その結果、Table.8に示しますとおり、変動係数の低下が認められ、各施設間差は減少し、いずれの施設においても同等の定量値が得られました。
 課題3です。海外における血液安全に関する情報の収集及び交換となります。WHOの血液安全に関するカンファレンス等に定期的に参加するとともに、各国の血液事業に関わるネットワーク会議BRN等に参加活動し、感染症リスクの早期察知及び評価に基づく安全対策の検討を行いました。また、国立感染症研究所の病原体関連部署と連携し、情報の収集や交換を行いました。
 3番、考察と課題となります。まず、課題1、SARS-CoV-2に対する高感度核酸検査法の開発に関してです。本事業にて構築したSARS-CoV-2に対する高感度核酸検査法NIID-S2 3plexは、血液のSARS-CoV-2に対する安全対策として、非常に優れた検出法であると考えられました。今後、WHOの国際規格で規定された標準品や、我々の制定した参照品パネル等を用いて感度等を評価する予定となっております。
 続きまして、課題2です。SARS-CoV-2の核酸検査法のための変異株参照パネルの構築に関してです。本事業により、新型コロナウイルスSARS-CoV-2の変異ウイルス株パネルが整備され、参考値が付与されました。変異ウイルス株のパネルと国内参照品が整備されたことにより、いずれの施設で実施する核酸検査であっても、国内外のキットの検出感度を比較でき、試験精度が管理できることが確認されました。このような不活化ウイルス由来の参照品パネルは、現状では整備されていないため、今後希望があれば、配布できる体制を整えていく予定でございます。また、今後も引き続きVOC等の変異株が確認された場合は、必要に応じ変異株の追加を検討する予定でございます。
 最後に結論となります。本事業では、血液を介して感染し得る病原体に関する情報を継続して収集し、日本において感染のリスクのある病原体については高感度核酸検査法を開発し、小規模モニタリングを継続しており、アウトブレイク等に備えた体制整備に貢献してまいりました。
 令和3年度は、SARS-CoV-2のmultiplex法による高感度核酸検査法を開発し、現在までに流行した変異株のパネルを構築し、参考値を付与いたしました。令和3年度事業により、核酸検査に関しては標準化が可能となり、信頼性が向上したと言えます。世界規模でのコロナ収束と社会活動の活発化に合わせて、サル痘をはじめ、そのほかの新興・再興感染症の流行が起こりつつあります。引き続き、新たな感染症リスクの早期把握と評価及びその対策を実施するとともに、血液を介して感染する新たな病原体等に関しては、常に注視・情報収集し、血液の安全性確保のために適宜対応していくことが必要であると言えます。
 最後に、令和4年度の事業計画ですが、まず、1番目としては、ジカウイルスに対する高感度核酸検査法の国内標準品の整備。2番として、チクングニアウイルスに対する高感度核酸検査法の国内標準品の整備。そして、海外における血液安全に関する情報の収集及び交換等を、引き続き継続する予定でございます。以上となります。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、委員の先生方から御意見や御質問がございましたらお願いいたします。
○岡田委員 埼玉医大の岡田です。国際標準品も含めて、これらのウイルスの標準品は血漿若しくは血清に浮遊させた状態なのでしょうか。
○水上参考人 今回構築いたしましたパネル、標準品等につきましては、ベースマトリックス、いわゆる血漿ですけれども、それにスパイクさせた状態で不活化しているものとなります。
○岡田委員 分かりました。もう1つは、今年度の実施予定で、ジカウイルスの国内標準品の整備ということになっておりますけれども、米国においてはジカウイルスの血液上の安全性が、もう、余り要らないのではないかという、そういう報告もありますので、ジカよりもまだデングウイルスのほうが整備されていなければ、ジカウイルスよりもデングのほうを優先的にやったほうがよろしいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○水上参考人 私のほうから回答させていただきます。一応、今回ジカということで、FDAのほうから、もう既に監視対象ということではないということは報告されておりますが、これにつきましては、部内でも引き続き検討させていただいて、できれば、今年はジカをきっちりつくってしまって、次年度以降また対応するということも、少し検討したいと思います。
○岡田委員 分かりました。
○濵口座長 よろしくお願いします。それでは脇田委員、お願いします。
○脇田委員 ありがとうございました。高感度の新型コロナの検出系を開発して、パネルも整備されたということで、それはよく理解できたのですが、今、パンデミックが3年目ぐらいになって、それで、今、輸血を介して新型コロナが感染するリスクというのをどの程度、今、評価されているのかということを教えていただけますか。
○水上参考人 私のほうからでよろしいでしょうか。
○濵口座長 お願いします。
○水上参考人 現状では、輸血によるSARS-CoV-2の感染というのは報告されておりませんし、血液より病原体のRNAが検出されたという報告はあるのですが、ウイルス自体が分離されたという報告は現状ではございません。そういった現状を踏まえますと、コロナウイルスの血液感染、輸血感染というのは非常にリスクとしては低いのではないかと考えております。ただ今後、新規変異株等が出たときに、血中に出てくることもあり得ると考えておりますので、引き続き注視、モニターしていきたいと考えております。
○脇田委員 分かりました。ありがとうございます。
○濵口座長 ありがとうございます。では、大隈委員、お願いします。
○大隈委員 関西医大の大隈です。確認させていただきたいのですが、パネルの測定と核酸量の算出のところで、1施設のデータが他の施設と比べて乖離が認められたということなのですけれども、もし分かればその原因と、その結果については、これは値付けにどのように反映されているのかお教えください。
○水上参考人 その1施設ですけれども、詳細は不明ですが検出試薬の特性が原因であるのではないかと推測しております。基本的には施設によりばらつきがあるのですけれども、最終的に国内標準品を用い平行線定量法に基づいて値を値付けすることで、先ほど言ったとおりGCVに関しては、かなり低くなってきているところがありますので、そういったところで、このばらつきに関しては修正されましたので、それを基に、これらの値も使って最終的な値付けを行いました。
○大隈委員 特に問題ないということですね。
○水上参考人 問題ないと理解しております。
○大隈委員 分かりました。ありがとうございました。
○濵口座長 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、引き続き血液安全監視の一環として情報収集をよろしくお願いいたします。
 続きまして、議題2「NATコントロールサーベイ事業について」に移りたいと思います。まず事務局から御説明をお願いいたします。
○有田血液対策課長補佐 事務局です。NATコントロールサーベイ事業は、NATの精度管理の実情を把握するため、血液対策課が国立感染症研究所に実施を依頼している事業です。令和3年度の実績の報告について、手塚参考人よりお願いいたします。
○手塚参考人 国立感染症研究所の手塚と申します。よろしくお願いいたします。2021年度のNATコントロールサーベイ事業について実績報告させていただきます。まず、本事業の目的です。近年のNATの技術の進歩は目覚ましく、我が国においても、2013年から2014年に血漿分画製剤の原料プールと輸血用血液のNATスクリーニングの試験法が、それぞれ新しいマルチプレックス法に変更されています。それを踏まえて、2014年には、NATのガイドラインの改正が行われ、さらに、輸血用血液スクリーニングへの個別NAT導入に伴うNATに必要とされる検出限界値の改正も行われております。
 以降、2016年度には、新しいマルチプレックス法を用いたHBV NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、WHOのHBVジェノタイプ国際参照パネルを用いた第8回NATコントロールサーベイ事業、そして2017、2018年度には、HIV-1 NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、WHO HIV-1サブタイプ国際参照パネルを用いた第9回NATコントロールサーベイ事業、さらに2019年度には、HCV NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、HCVサブタイプ国内参照パネルを用いた第10回NATコントロールサーベイ事業が行われております。
 また、2020年度には、新しいマルチプレックス法におけるHIV-1 NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、WHO HIV-1CRF国際参照パネルを用いた第11回NATコントロールサーベイ事業が実施されてきました。輸血用血液のNATスクリーニング試験法は2020年8月より、HEVの検出を加えたマルチプレックス法に変更されております。
 これを踏まえて、2021年度は、HBV、HCV、HIV-1、HEVの4種類の検出パネルを用いて、新試験法のそれぞれのウイルスに対する検出感度と特異性の把握を目的とした第12回NATコントロールサーベイを、輸血用血液のNATスクリーニング試験及び同定試験のNAT試験を対象として実施しております。
 具体的な実施内容です。資料の後半の表1を御覧ください。参加施設を示しております。表1の中に、輸血用血液製剤のNAT実施施設が8施設記載されております。また、オブザーバーとして試薬メーカーが1施設、及び日本赤十字社の研究施設が1施設加わっております。
 具体的な材料ですが、表2のパネルの調製の所で御覧ください。材料としてHBV、HCV、HIV-1、HEVの国内標準品を用いて評価用のパネルを作成しました。陰性血漿検体並びに陽性検体の希釈には、国内献血由来の陰性血漿を用いております。HBV、HCV、HIV-1については、輸血用血液のNATで必要とされる検出限界値、HBVが100IU/mL、HCVが100IU/mL、そしてHIV-1が200IU/mLとなっていますが、その3倍の濃度に当たる300IU/mLあるいは600IU/mLに検体を希釈調整しております。
 また、HEV NATについては、輸血用血液のNATに必要とされる検出限界値がまだ設定されておりませんでしたが、日本赤十字社の導入した検査システムの95%分析感度は3.6IU/mLと極めて低いことを鑑みて、HBVやHCVと同様の100IU/mLと、その3倍濃度に当たる300IU/mLの2種類に検体を希釈調整しております。
 スクリーニング用試験パネルとして9検体、及び同定試験用パネルとして6検体の計15検体をブラインド化して、参加施設に送付しております。
 次に測定方法です。今回の測定はHBV、HCV、HIVを識別せずに検出し、同時にHEVを単独で検出するスクリーニング試験法と、HBV、HCV、HIVを識別するための同定試験法というふうに構成されています。参加施設はスクリーニング試験と同定試験の両方の試験法を用いて、スクリーニング試験用パネル9検体と同定試験用パネル6検体に対して、それぞれ日を変えて2回ずつ測定を行っていただきました。
 続いて結果です。表3を御覧ください。日本赤十字社ブロック血液センターの全8施設において、改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT試験は、スクリーニング試験法と同定試験法の両方においてHBV、HCV、HIV-1及びHEVに関する精度管理が適切に実施されておりました。全施設においてHBV、HCV、HIV-1及びHEVの検出限界値に希釈された検体、及びその3倍濃度に希釈された検体を全て検出することを確認しております。また、陰性対照は全て陰性と判定されております。加えまして、オブザーバーとして参加していただいた施設も全く同様の結果でした。
 続いて考察です。2021年度に実施したHBV、HCV、HIV-1、HEVの4種のウイルスパネルを用いた第12回NATコントロールサーベイにて、輸血用血液のNATスクリーニング試験と同定試験の両試験法において、HBV、HCV、HIV-1及びHEVの各ウイルスの陽性検体を問題なく検出できることを確認できました。輸血用血液製剤のNAT実施施設8施設において、輸血用血液のNATスクリーニング試験法が2020年8月より、従来のHBV、HIV、HCVにHEVの検出を加えたマルチプレックス法に更新されております。今回のサーベイにおいて、新しい試験法に関する精度管理が適切に実施されているということを確認できたと考えております。
 最後に、表4にありますとおり、2022年、本年度の実施計画です。本年度は血漿分画製剤の原料血漿プールのNATを実施する施設を対象に、HBV、HCV、HIV-1のNATの感度と特異性の実情把握を目的とした、第13回NATコントロールサーベイの実施を計画しております。以上です。
○濱口座長 ありがとうございました。ただいまの説明について、委員の先生方から御意見や御質問がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 御意見がないようですので、引き続き、この事業を次年度もまた続けていただきますようによろしくお願いいたします。
○手塚参考人 よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○濱口座長 ありがとうございました。続きまして、議題3「日本赤十字社のヘモビジランスについて」に移りたいと思います。日本赤十字社より資料の説明をお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 資料3を御覧ください。日赤のヘモビジランスについて、2021年の結果を中心にお話いたします。2枚目を御覧ください。本日は、まず輸血感染症について、次いで輸血副作用についてお話いたします。
 3枚目にお進みください。輸血後に感染が疑われ、医療機関から御報告いただいた症例数の推移を病原体別にお示ししました。個別NAT導入後の年間の報告受理数は100件以下で減少傾向が続いており、2021年は過去最少の43例となりました。
 4枚目を御覧ください。2021年の病原体別解析結果をお示ししました。報告受理数はHBVが9件、HCVが5件、細菌感染疑いが20件、CMV感染疑いが5件、HEV感染疑いが4件、合計43件で、輸血による感染が特定されたのはHBVの2例のみでした。
 輸血後ウイルス感染症についてお話いたします。6枚目を御覧ください。輸血による感染が特定された症例について、原因となった血液の採血年ごとの本数を安全対策の導入状況とともにお示ししました。輸血後のHCV、HIV感染については個別NATの導入後は認められておりません。HBVはプールNAT時代は年に10件ほどの感染事例がございましたが、2014年に個別NATを導入して以降は、遡及調査により受血者の感染が判明した個別NAT陰性の血液によるHBV感染例が年に1例ほどの割合で発生しております。
 7枚目を御覧ください。遡及調査には遡及調査ガイドラインにもあるように、大きく分けて医療機関発と供血者発の2種類があります。医療機関発の場合、輸血後の患者にマーカーの陽転が認められた後に報告されます。輸血した血液は2014年以降は、過去の献血も含めて個別NAT陰性ですが、この被疑薬とされた血液が個別NATのウインドウ・ピリオドに採血されたものかどうかは分かりません。したがって、ウインドウ・ピリオドを超えた時期の次回献血又は事後検査の結果により、当該献血がNATウインドウ期のものではないことを確認いたします。右側の供血者発の遡及調査の場合は、複数回献血者の陽転情報を基に調査を行います。個別NATのウインドウ・ピリオドを基に定めた遡及調査期間の献血血液について、受血者の感染状況を調査しております。遡及調査により判明したNAT陰性の血液によるHBV感染事例を御紹介いたします。
 8枚目を御覧ください。血漿製剤によるHBVの感染事例です。この症例は、受血者の肝炎発症を発端に医療機関から報告された症例です。受血者は2020年の9月に大動脈解離の手術で、FFPを含む複数本の輸血を受けました。その後、医療機関で11月に実施された検査で、HBV-DNAが陽性となっていましたが、この時点では日赤への報告はなく、2021年の1月に肝炎を発症し、日赤へ感染症報告がございました。この報告を受けて関連献血者を調査したところ、FFP1本の献血者が、当該のこのFFPの献血から当時の遡及調査期間の72日を超えた84日後の次回献血で、スクリーニングNATでHBVが陽性となっていたことが分かりました。この陽転献血時のHBVと、受血者のHBVのウイルス相同性が一致したことから、輸血による感染が判明いたしました。受血者は、その後肝炎治療のため他院に転院し、エンテカビルの治療を受け、6月にHBV-DNA陰性が確認されております。
 この感染事例は、献血者の次回献血でHBV陽性と判明していましたが、この当時の遡及期間を超えていたため、貯留保管中であったFFPが遡及対象にならず輸血に使用されました。それにより感染が起きたという事例でした。この事例を切っ掛けに、遡及調査ガイドラインの改正が行われました。なお、2019年12月の全血献血から製造された赤血球製剤の受血者については、輸血後の検査でHBV-DNAが陰性であり、感染の疑いなしという情報を得ております。
 9枚目を御覧ください。献血者にHBV-NATの陽転が認められ、14日前のマルチプレックスのスクリーニングNAT陽性、同定NATの陰性を挟んで、28日前の献血血液が遡及調査対象となりました。この献血から製造された血小板製剤2本の供給先医療機関に情報提供したところ、受血者のマル1は急性骨髄性白血病の患者で、血小板製剤を輸血後フォローしておりましたが、輸血155日後にHBV-DNA及びHBs抗原が陽性となっていました。献血者及び受血者の血液から検出されたHBVの塩基配列に相同性が認められ、輸血による感染と考えられました。GenotypeはB2でした。
 もう一方の受血者マル2は再生不良性貧血等の患者で、輸血後のフォローをしている中で、2022年に入ってからHBV感染が確認され、献血者血液から検出したウイルスと相同性が認められました。こちらの症例は2022年に感染情報を入手しましたので、集計としては2022年の症例というようになります。10枚目を御覧ください。輸血によるHEVの感染症は2021年は1例も確定例はございませんでした。
 続いて、HEVの遡及調査の経過について御報告いたします。12枚目を御覧ください。個別のHEV-NATを開始した2020年8月5日の採血分から半年後の2月採血分のHEV陽転に係る遡及調査については、過去の献血がHEV-NAT陽性となった者についてのみ、受血者の感染状況を調査し、昨年の安全技術調査会で報告いたしました。
 13枚目を御覧ください。その後の運営委員会等において、HEV陽転の6か月前までのHEV-NAT陰性の血液の受血者についても調査をすべきという御意見を頂きました。
 14枚目を御覧ください。運営委員会等の御意見を反映し、現在は陽転献血者の発生ごとに、過去6か月の献血血液の受血者について調査を実施しております。また、HEV-NATを開始当時の遡及調査で、未対応であった6か月の遡及調査期間内のHEV-NAT陰性血液の受血者についても、併せて調査を実施しております。
 15枚目を御覧ください。こちらがHEV-NAT開始時に未対応であって、後追いで調査を行っている件数になります。HEV-NAT陽性となり、遡及調査となる過去の献血があったものが全部で2,011件あり、献血者数としては2,007人でした。遡及調査対象の過去の献血が5,648件あり、これらの検査結果はスクリーニングNAT保管検体の追加検査分を含め、全て陰性でした。現在、これらの献血血液から製造した輸血用血液製剤の供給先医療機関に情報提供を行い、受血者の感染状況を調査しております。今年度内に御報告できるように準備を進めてまいります。16枚目に、輸血後ウイルス感染症のまとめをお示ししました。後ほど御覧いただければと思います。
 続きまして、輸血後細菌感染症についてお話いたします。18枚目を御覧ください。輸血後細菌感染症は初流血除去や保存前白血球除去を導入した2007年以降は、血小板製剤による感染が21例特定されています。2021年は輸血後細菌感染の特定例はありませんでした。
 19枚目に輸血後細菌感染症のまとめを記載いたしました。日本赤十字社では、更なる安全対策として細菌スクリーニングの導入に向けて検討を進めております。
 ここからは輸血副作用についてです。まず、非溶血性の副作用から御紹介いたします。21枚目を御覧ください。輸血による副作用や感染症が認められ日赤に報告いただいた事例は、2021年は非溶血性の副作用が2,737例、溶血性の副作用が41例、感染症が43例でした。
 22枚目にお進みください。非溶血性副作用の内訳は、軽微なアレルギーと重症アレルギーで全体の約3分の2を占め、発熱、TRALIやTACOを含む呼吸困難、血圧低下と続いております。PMDAの報告対象となる重篤症例と、非重篤の症例に分けると、全体の4分の1が重篤例で、内訳は重症アレルギーや呼吸困難がメインであり、残りの4分の3は軽微なアレルギーや発熱などが占めておりました。
 23枚目を御覧ください。製剤別の副作用では、血小板と赤血球による副作用が40%弱と多く、次いでFFPとなりました。下のグラフで示しましたが、赤血球はアレルギーのほかにも、発熱と呼吸困難の割合が高くなっておりましたが、血漿が多い製剤であるFFPとPCについては、圧倒的にアレルギーの割合が高くなっております。この傾向については例年と変化はございません。
 24枚目を御覧ください。呼吸器の副作用であるTRALIとTACOの評価については、2021年4月から新たな評価基準を用いておりますが、こちらのフローチャートには3月までの旧基準で評価したものをお示ししました。TRALIが疑われTRALIの評価を行った45例のうち、TRALIが2例、possibleTRALIが1例の合計3例と、評価件数の6.5%となりました。TRALIではないとされた症例のうち、31例は心原性肺水腫と考えられ、TACOが疑われた1例とともにTACOの評価を行ったところ、TACOが22例、その他のボリュームオーバーロードが10例となりました。
 25枚目を御覧ください。左側がTRALIとTACOのこれまでの評価基準で、右が2021年の4月から使用している評価基準となります。新しい評価基準では、1度の評価でTRALIやTACO、その他の呼吸器系の輸血副作用を分類できるよう、ロジックを組んでおります。
 26枚目を御覧ください。こちらがロジックの表になります。新しい評価では、この表に示した指標の項目に該当するかを参考に判定し、症例の経過や胸部画像から総合的に評価していただくこととしております。
 27枚目を御覧ください。2021年のTRALIやTACOの評価結果をお示ししました。左が新たな評価基準による4月からの評価結果となります。結果はTRALIのタイプ1が1例、TRALI/TACOが2例あり、TACOが77例と最多、次いで輸血による呼吸困難であるTADが16例、ARDSが2例、その他が17例でした。新たな評価基準は分類も今までと異なることから、右に示した3月までの事例と直接比較するのは難しいのですが、ボリュームオーバーロードが一番多いという傾向には変化はありませんでした。
 28枚目を御覧ください。2004年から2021年までのTRALIやTACOの評価状況をお示ししました。TRALIは年々減少傾向でありますが、ここ数年では2021年はTRALIと評価された事例が6例と、これまでより少し多くなりました。日赤では、2012年から400mL献血由来のFFPを男性献血者の血液を優先して製造する対策を導入しています。下に、これまでのTRALIと評価されて原因血液がFFPであったものをグラフで並べてみました。全てのTRALI症例がFFPによるものではなかったことは、グラフからも分かりますが、男性由来FFPの導入以降は、TRALI症例の数が減少した傾向は確認できました。2021年は男性由来のFFPで2例、成分採血の女性由来FFPで1例のTRALIが発生していました。
 29枚目に2020年までのTRALI症例383例の患者内訳、製剤の内訳を記載しております。こちらは古い評価基準による分類でありまして、昨年と同様のスライドでありますので、説明は割愛させていただきます。
 30枚目を御覧ください。2021年のTRALI症例の患者内訳と、被疑製剤をお示ししました。全部で6例と少ないのですが、5例で製剤から抗白血球抗体が検出されました。2021年は赤血球製剤単独によるものがなく、原因とされた血液は血小板、FFP、赤血球も含む複合製剤となっておりました。
 31枚目を御覧ください。TACO事例の患者内訳と原因血液を旧基準と新基準ごとに分けてお示ししました。旧基準では、過去の除外項目を設けており、これに該当する場合は心原性肺水腫と分類されておりましたが、新基準ではこれらのほとんどがTACOに分類されるため、1年でTACOが100例ほどになりました。原因製剤は赤血球が多いこと、患者の男女別、年代別の分布からは、旧基準と新基準で大きな差は認められないと考えております。今後は新しい基準での症例評価を進め、データの蓄積や解析を進めてまいります。
 最後に溶血性副作用のまとめです。33ページ目を御覧ください。2021年は即時型と遅発型の合計で41例の報告が医療機関からありました。主に重篤例の患者血液の不規則抗体等の検査を行ったところ、17例で表に示した抗体が検出されました。34枚目に輸血副作用のまとめを記載しました。こちらも説明は割愛させていただきます。日赤からは以上となります。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの日赤からの説明について、委員の先生方から御意見、御質問がありましたらお願いします。
○朝比奈委員 医科歯科大学の朝比奈です。HEVに関してなのですが、遡及調査の件に関連してです。以前、事前に御質問させていただいて、HEVの検査数に対して、HEVのNATの陽性はどれぐらいかという質問をさせていただいて御回答いただきました。710万9,882件中、陽性が3,791ということで、約0.05%というように考えられるのですが、それでよろしいでしょうか。
 そして、これだけのデータがあるので、これらのデータから例えばHEVのウインドウ期間というのが推定できるようであれば、可能であれば教えていただければというように思います。
○日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所佐竹所長 陽性率に関しては、先生がおっしゃったとおりのデータです。ただ、それは検査数に対する陽性率ですので、検査された方は複数回の献血者も含まれていますので、実人数に対しての陽性率となりますと、これよりはかなり多くなります。ですので、実人数で言えば、大体0.05%の3倍近くになるかと思われます。
 それから、ウインドウ期ですが、世界中でウインドウ期を出したデータはまだございませんが、我々の所で詳しく検査はしております。ウインドウ期を算出するには、末梢血中のウイルスのダブリングタイムが必須ですので、そのデータがないと計算できないわけですが、我々の所ではダブリングタイムは、大体のところですが、HBVよりちょっと早いぐらいのダブリングタイムと見ております。それで計算しますと、ウインドウ期も実は製剤によって異なります。すなわち、大量の血漿のあるFFPやPCの中に、1個ウイルスがいるところから検出感度まで増えるまでの時間と、赤血球製剤などの血漿が僅かしか含まれていないところに、1個あったところから検査で捕まるまでの時間は相当違いますので、これは世界的にも余りそこのところを注意していないのが不思議なのですが、製剤によってそのウインドウ期は異なります。大体、最長で20日ぐらいになると我々は計算しております。赤血球製剤の場合は、もっと短くなります。それが大体現在得られているデータです。
○朝比奈委員 ありがとうございます。
○濵口座長 ほかはいかがでしょうか。
○岡田委員 埼玉医大の岡田です。B型肝炎の2番目の症例、スライドの9番です。この感染された患者というのは、輸血されてから4か月間はHBVのDNAが陰性なのです。それで、5か月後に陽性になったというもので、非常に増えが遅いウイルスだと思うのですが、このウイルスは特に何か変異が入っていたのでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所佐竹所長 このウイルスに関して、特徴的なシークエンスというものは認められておりません。
○岡田委員 この患者、2人ですが、白血病の治療を受けている最中に輸血を受けたのだろうと想像されるのですが、そうしますと、B型肝炎そのものの増殖も抑制されているために、PCRで検出される時期が非常に長くなるので、通常の検査で陽性になる期間よりも更に長い期間を要して、それで陽性になったりとか、最悪で肝炎を発症するようなことが起こるので、血液疾患等で治療中に感染した場合は、今までの考えよりも更に長期間フォローしないといけないなというように感じました。
○日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所佐竹所長 おっしゃるとおりで、特に個別NATでスクリーニングしているような状況の場合には、こういった事例が中心になってくると考えています。ただ、今、先生がおっしゃった免疫抑制されている患者でのウイルスの増殖が抑えられるかどうか、そこは私もよく分かりません。と言いますのは、結局何も分からないのですが、肝炎というものが、B型肝炎のいわゆる肝障害というものは、細胞性免疫で起こりますので、免疫抑制を掛けていますと、その細胞性免疫が非常に抑えられています。そういったところで、ウイルスが逆に増えてくる、増殖が増えるという可能性もあるかもしれませんので。というメカニズムで、このような非常に長期のラテントフェーズがあるのか分かりません。少なくとも、ID NATの時代ですので、混入するウイルスの量が極めて微量である、そこのところのファクターは非常に大きいかと考えます。
○岡田委員 いろいろな治療の影響を受けるということで、結局、従来よりも長くフォローしないといけないなということだと思います。
○濵口座長 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。
 私から1つお伺いします。HEV-NATが入って、輸血による感染事例というのが0であるということがあったのですけれども、海外の報告では、NATを導入したにもかかわらずE型肝炎の感染が起こったという報告もあったと思います。国内のNATは、現状においては、かなり感度が高く検出されているので、HEVの感染は、これからもコントロールできるだろうという見通しということでよろしいでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所佐竹所長 海外ではプールでやっている所もありますので、そういう意味では感染例が出ているのかと思います。
 メーカーと共同開発したスクリーニングシステムは極めて高感度ですので、症例が出ることは極めて希だろうとは考えていますが、我々の所では、最少感染ウイルス量というものを、特別に低い事例を経験しております。それは世界に全く例のないような、極めて少ない量のウイルスでHEV感染した例を持っております。ですので、そういったことを考えますと、HBVやHCVと同じように、症例が重なれば、もっともっと低いウイルス量、総ウイルス量で感染する例も出てくるのではないかと考えています。ですので、BやCの場合は、10コピー以下でも感染が起こるという世界ですので、HEVも現在は大体300コピーぐらいが最低のレベルというデータを持っていますが、症例が重なれば、どんどん少なくなってくるおそれもあるなとは考えています。
○濵口座長 それでは、日本赤十字社におきましては、引き続き血液安全監視の一環として、情報収集をお願いしたいと思います。
 続きまして、議題4に移りたいと思います。「新型コロナウイルス既感染者の採血制限について」です。事務局より資料の説明をお願いします。
○有田血液対策課長補佐 資料4を御覧ください。新型コロナウイルス既感染者の採血制限についてです。これまでの経緯を説明いたします。新型コロナウイルス既感染者に対する採血制限については、令和2年7月22日に開催された令和2年度第1回安全技術調査会以降、数度にわたって御議論いただいてきたところです。厚生労働科学研究班で整理した知見を踏まえ、令和3年7月27日に開催された令和3年度第2回安全技術調査会で御審議いただきました。その結果、献血者及び血液製剤の安全性確保の観点、並びに採血所における感染拡大防止の観点から、以下の案で御了承いただきました。
 新型コロナウイルス既感染者の採血制限の期間を、症状消失から4週間、若しくは無症候の場合は陽性となった検査から4週間とすることといたしました。これに加えて、新型コロナウイルス感染症は後遺症も多く報告されておりますので、献血者の安全性の観点から問題があると考えられる後遺症の有無に関する問診を適切に行うことによって、採血を回避すべきと考えられる後遺症を発症している者については、対象から除外することとなっております。
 この審議結果を反映させて、令和3年8月23日付けで通知を発出しております。そちらに「なお、新興・再興感染症については、今後新たな知見が得られる可能性等も踏まえ、本問診等の適切性について再考する必要性があると考えることから、少なくとも1年ごとに本通知の適切性について評価すること」としたところです。この通知の発出から1年が経過して、厚生労働科学研究班(大隈班)において、改めて知見の収集・整理を行ったことを受けて、同通知の適切性について評価することとしたいと考えております。
 大隈班の見解としては、後ほど詳しくご説明いただきますが、私から簡単に説明いたします。令和4年9月30日の研究班会議で、以下に挙げる大まかに3つの理由から、新型コロナウイルス既感染者の採血制限については、変更不要とする旨の意見が取りまとめられました。理由の1つ目は、新型コロナウイルス感染後の感染性ウイルスの排出期間は、PCR陰性になるまでの期間や培養による確認方法で、デルタ株・オミクロン株ともに11日以内と考えられています。理由の2つ目は、諸外国における新型コロナウイルス既感染者の症状消失後の採血制限期間は、4週間より短いものが多くなっています。理由の3つ目は、現行の基準に従った運用の中で、血液製剤の供給への影響は現時点までに生じていません。以上の理由から、新型コロナウイルス既感染者の採血制限については変更不要、つまり4週間のままとするという案が取りまとまっていますので、これについて御審議いただきたいと思います。
○濵口座長 本件に関して、研究班で行われた議論内容について、大隈委員より説明をお願いします。
○大隈委員 関西医大の大隈です。よろしくお願いいたします。この見直しについてですが、研究班としては関連する資料として、新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引の最新版や、関連する論文報告、それから海外の当局の規制などを参考に検討いたしました。研究班の見解としては、今御説明があったとおりです。補足させていただきたいこととしては、献血者の安全性確保の観点からは、この採血制限の期間の設定根拠の1つにもなっておりますCOVID-19の診療の手引における退院、職場の復帰基準ですが、これが最新版においても変更が行われていないということです。それから、現在既に献血時の健康診断に加えて、献血に不適切と考えられる後遺症の有無等に関わる問診等が実施されておりますが、これによって今のところ問題が生じていないこと。それから血液製剤の安全性の観点からですが、血液製剤によって輸血感染があったとの文献報告はこれまでないことなどを踏まえ、総合的に勘案しました。
 研究班としては、先ほど御説明のとおり、採血制限については今のところですが変更は必要ないのではないかと考えております。ただ、日本赤十字社のほうは、現在採血状況や血液製剤の供給状況は特に問題ないということですが、今後感染拡大が顕著になって血液製剤の供給等がひっ迫することがあるかもしれないという可能性もあります。ですので、そういった状態を想定して、制限期間の変更が必要ないかどうかについては、今後も研究班の中で検討していきたいと考えております。私からは以上です。
○有田血液対策課長補佐 ありがとうございます。本件に関して、研究班の中で日本赤十字社より説明いただいた内容について、日本赤十字社よりお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日赤の後藤から、参考資料4-3について簡単に説明いたします。2ページ目には、先ほど事務局から御説明がありましたように、昨年の班会議での見解を示しております。3ページ目には、これに基づいて行われている現在の献血の受け入れ基準、症状消失後4週間経過、それから後遺症の有無及びその内容を確認することを示しております。4ページ目の表には、諸外国における献血延期期間を示しております。こちらも先ほど事務局から御説明がありましたように、日本よりは短く設定している所が多い状況です。5ページ目に、本件に係る日赤の見解を示しました。ウィズコロナの新しい段階への移行を見据えて、オミクロン株の特徴を踏まえた療養期間等が見直されましたが、従来株もオミクロン株も発症後約10日を経過するまでは感染リスクがあるという評価自体に変更はありません。新型コロナウイルス既感染者の献血受け入れ基準については、現状においては変更は考えておりません。日赤からは以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの大隈班、日赤の説明について、委員の先生方から御意見や御質問がありましたらお願いいたします。
○岡田委員 埼玉医大の岡田ですが、よろしいでしょうか。
○濵口座長 はい、お願いします。
○岡田委員 私も大隈班の班員の1人なのですが、確かに現状では変更する必要はないと思いますが。例えばこれから第8波が起こったりするときに、どんな血液製剤に影響が出るだろうなと逆に考えると、やはり血小板に関しては有効期間が短いのと、2週間間隔で献血できるということで、流行が起こった場合に供給不足が起こる可能性が高い製剤だと考えられます。そういう点で現状では変える必要はありませんが、供給が不足気味になったときに備えて、どの程度までは短縮できるのかなという検討を今のうちにしておくのがいいのかなと思います。以上です。
○濵口座長 ありがとうございます。日本赤十字社のほうで、例えばこの間の第7波のときに相当感染者が出ましたが、その際どの程度耐え得る能力があったのかということを想定して、それに近いような感染状況がもし起こった場合には、どの時点でもう一度検討をしたほうがいいというご意見が現時点でもしあるようであれば、教えていただきたいと思いますが。いかがでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所佐竹所長 ありがとうございます。そのような具体的な数字等について検討はしておりませんが、いずれにしても表で見ますように、先生方の決められた日数については、非常に余裕のある、世界でも最も猶予のある形ですので、これをフィックスしたものではなく、需要供給のひっ迫の度合いにおいて、そのときはもう一度検討をすることがあるという御意見を頂いていると、大変感謝申し上げたいと思います。内部でそういったシミュレーションもこれからしてみたいと思います。
○濵口座長 ありがとうございます。岡田先生、日赤のほうでもシミュレーションをしていただくということですが。
○岡田委員 よろしくお願いします。
○濵口座長 熊川先生、お願いします。
○熊川委員 熊川です。今おっしゃった血小板製剤の供給のことで、もう少し地方のユーザーの立場で発言させていただきたいと思います。今は少しコロナが落ち着いていると考えられている時期ですが、今でもやはり血小板については、今日は何型の血小板が、基本夜までは供給できませんという連絡が折々に病院に入っておりますので、正直、現時点で、ある意味コロナの影響がやや薄い状況であっても、もう構造的に血小板の供給がひっ迫しているということを、地方のユーザーは感じております。ですので、今おっしゃったシミュレーション等を少し厳しめに御検討をお願いしたいと思います。以上です。
○日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所佐竹所長 ありがとうございます。その状況について、我々のほうでも検討したいと思います。
○濵口座長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、またシミュレーションの結果等が出ましたら皆さんに御報告したいと思いますので、よろしくお願いします。それでは、今回大隈班から出されました新型コロナウイルス既感染者の採血制限についての提案については、変更なしということでいきたいと思います。事務局が提示した案で承認いただけますか。御異議がないようですので、これで進めます。ありがとうございました。事務局に関しては、今回の議論をもとに、これまでどおりということでよろしくお願いいたします。
 最後に、議題5、その他ですが、事務局から何かありますか。
○有田血液対策課長補佐 事務局からは特にありません。
○濵口座長 ありがとうございました。本日の議題は以上となります。ほかに何か御意見等ありましたら、お願いします。よろしいでしょうか。それでは、事務局に進行を戻します。
○有田血液対策課長補佐 濵口座長、ありがとうございました。次回の安全技術調査会の日程は、別途御連絡差し上げます。これにて、血液事業部会令和4年度第3回安全技術調査会を終了いたします。ありがとうございました。
(了)