2023年1月12日 令和4年度第2回 厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会 議事録

日時

令和5年1月12日(木)16:00~18:00

TKP新橋カンファレンスセンター16D

(東京都千代田区内幸町1-3-1)

議題

  1. 1.令和4年薬機法等改正の施行状況について
  2. 2.大麻規制検討小委員会とりまとめについて
  3. 3.その他

議事

○衣笠総務課長 定刻になりましたので、ただいまから令和4年度第2回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変御多用のところ御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日は、新型コロナウイルス感染症対策のため、会議室における対面形式とオンライン形式を併用して、本部会を進めさせていただきます。本部会については公開とさせていただきますが、新型コロナウイルス感染症対策のため一般の方の会場への入場を制限し、報道機関の方のみの入場とさせていただいております。会議の議事録は、後日公開いたします。また、YouTubeでの同時配信も行っております。
 厚生労働省全体の取組といたしまして、審議会等のペーパーレス化を進めております。本日はペーパーレスでの制度部会開催とさせていただきますので、資料はお手元のタブレットを操作して御覧いただくことになります。分量が多く、1ページずつ進めるのが大変な場合はお手元の操作説明書、表面の下から裏面にかけて、任意のページを指定して表示する方法が載っておりますので、御活用ください。操作等で御不明な点がありましたら適宜、事務局がサポートいたしますのでよろしくお願いします。
 最後に、審議中の御意見や御質問の方法についてお知らせします。まず、会場にお越しになって御参加いただいている委員においては挙手をしていただき、部会長から指名されたら卓上のマイクをオンにして御発言をお願いいたします。御発言が終わりましたら、マイクをオフにしていただきますようお願いいたします。またオンラインで御参加いただいている委員においては、御発言をしない間はミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際はZOOMの挙手ボタンを押していただき、その後に部会長から順に発言者を指名しますので、マイクをオンにして御発言をお願いいたします。また御発言が終わりましたら、ミュートにしていただきますようお願いいたします。
 続きまして、本日の委員の出欠状況をお知らせいたします。赤池委員、本田委員、村島委員、山本委員は、御欠席ということで伺っております。事務局については座席表に記載のとおりです。
 それでは本部会の開会に当たりまして、厚生労働省医薬・生活衛生局長の八神から御挨拶申し上げます。
○八神医薬・生活衛生局長 医薬・生活衛生局長の八神です。どうぞよろしくお願いいたします。新年明けましておめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。
 本年度の開催としては、制度部会は2回目ということで、前回は8月に御議論を頂きました。本日も、活発な御意見を頂ければと思っております。
 本日の議題ですけれども、令和4年薬機法改正の施行状況ということで、緊急承認制度、これは昨年の11月に1品目が緊急承認されたところです。この話と、1月から電子処方箋管理サービスの運用がスタートする予定ですが、その電子処方箋の関係です。準備の整った医療機関や薬局等から是非御参画いただいて、私どもも普及と拡大に努めていきたいと思っております。それから、8月に続いて、大麻規制検討小委員会のとりまとめということで、報告させていただきたいと思っております。そして、議題3はその他ということです。是非とも、今年も活発な御意見を頂ければと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○衣笠総務課長 間もなく議題に入りますので、冒頭のカメラ等の撮影は、ここまでとさせていただきます。
 以後の議事進行を福井部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○福井部会長 部会長の福井です。今年もよろしくお願いいたします。法律に関わるような案件が多くて大変ですが、理にかなった変更が今後とも求められると思いますので、活発な御意見をどうぞよろしくお願いいたします。
 本日は議題が、その他を含めて3つの議題がございます。最初の議題1について、事務局から説明をお願いいたします。
○吉田医薬品審査管理課長 議題1の令和4年薬機法等改正の施行状況についてのうち、緊急承認の部分について御説明いたします。資料1-1、資料1-2が関連の資料です。
 資料1-1の2枚目を御覧ください。先の通常国会で御議論いただいた、いわゆる薬機法の改正の概要です。真ん中辺りに内容があります。緊急時の薬事承認、いわゆる緊急承認制度の創設という内容と、電子処方箋の仕組みの創設の2つとなっております。
 緊急承認制度は、後ほど詳しく説明しますが、国民の生命や健康に重要な影響を与える、いわゆるパンデミックの際の緊急に承認することが必要なものについて緊急承認するということで、運用に当たっては安全性は確認、有効性は推定で、条件・期限を付してということで、通常は2年が原則ですが、期限を付けて承認するものです。特例措置については、特例承認とほぼ同様の特例措置を設けるというものです。このような制度設計になっております。令和4年の5月20日から施行という形です。
 内容については、4ページ辺りから詳しく説明します。4ページが、承認制度の比較です。通常承認、平時の承認、緊急時の承認制度を並べています。特に緊急時の制度については、これまでの特例承認に加えて、緊急承認制度を設けました。大きな違いは、特例承認は外国で承認されているものが対象で、今回の緊急承認は全てのものが対象ということです。それから、有効性及び安全性のクライテリアが変わって、有効性は推定でも構わないといった違いがあります。
 5ページを御覧ください。これについては、この制度部会でも御説明させていただきましたが、実際の有効性を推定する際に、どういったデータで迅速化するのかというイメージです。大きく2つあります。ワクチンの場合には、基本的には健常人に投与するということから、大規模第Ⅲ相試験に加えて国内治験が原則だと思いますが、仮に国内治験を未実施の場合、従来ですと、これは確認レベルには達しないので承認できませんが、新たな制度では、顕著な有効性があって、人種差・地域差の懸念があっても高いベネフィットが推定できるという場合には、緊急承認の対象でいいのではないか。
治療薬については、第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相とある中で、通常は第Ⅲ相まで必要ですが、第Ⅲ相が未実施の場合には、通常は確認レベルに達しませんが、新たな制度では第Ⅱ相までで有効性が推定できれば、第Ⅲ相なしでも承認の判断が可能といったイメージだということで御説明し、法施行の際も、そういう考えをとってます。
 6ページを御覧ください。これらのことを明確にするために、課長通知ですが、いわゆるガイドラインとして承認の際の考え方についてお示ししております。その大まかな内容です。
 左のほうに、有効性及び安全性の評価の運用の考え方があります。今、粗々で申し上げたことを少し具体的に書いた形です。基本的にリスクとベネフィットのバランスを考慮するわけですが、個別の必要な臨床試験成績に基づきますが、それは推定される有効性に比べて安全性が許容可能であることを確認することが原則です。各論として、具体的にこのようになるだろうということで、治療薬については、探索的な臨床試験で一定の有効性が示されている場合を想定。探索的な試験というのは、通常は後期第Ⅱ相試験が該当するということを示しています。なお、特殊なケースですが、抗体医薬品については、日本人成績が必要でない場合もあるということも明記しております。
 ワクチンについては、原則、代替指標の臨床的意義が明らかになっていない場合が多いと思いますので、原則、発症予防を評価指標とした検証的な第Ⅲ相試験が原則で、第Ⅲ相は必須だということをお示ししています。ただ、第Ⅲ相試験の中間解析の段階で推定はできる場合はあるということを示すとともに、日本人のデータがない場合でも、海外での検証的な大規模臨床試験で顕著な成績が得られている場合には、有効性を推定できる場合はあるだろうといったことを、ガイドラインとして示しております。
 適用の要件、緊急性、代替性のこともガイドラインでも示していますが、緊急性は、いわゆる感染症のアウトブレイク、原子力事故、放射能汚染、バイオテロ等も念頭に置いています。代替性については、ここにあるような内容を明記しています。既承認薬がない場合は自明だと思いますが、既承認薬があったとしても、例えば作用機序が違っていて複数の治療選択肢が必要になる場合もあるだろう。それから、国産かどうかということも含めて、供給が十分かどうかという視点も入るだろうと。それから、極めて高い有効性及び安全性が見込まれる。こういったものが代替性を考える際の要件だと示しております。あとは期限内の取扱い等も示した形です。こういった形で運用するということを、法施行と同時に、ガイドラインでお示しています。
 7ページを御覧ください。その上で、実際の各論としての事例が1つございます。塩野義製薬の経口薬のゾコーバです。成分はエンシトレルビル フマル酸で、ゾコーバ錠という販売名です。これについては、申請の審議経過は左の下のほうに記載しております。当初は2月に、既存の枠組みとして条件付き承認を希望という形で申請されましたが、その辺の条件を満たすかどうかも含め審査している中で薬機法が改正され、緊急承認制度が創設されましたので、それを受けて緊急承認制度の適用を企業のほうから希望がなされ、それに該当するのかどうかという視点で審査を続け、6月7月の部会、分科会の場で1回目の御議論を頂いたわけです。
 その際には、7月20日の所に書いてありますとおり、いわゆる後期第Ⅱ相試験ではあったのですが、ウイルスを低下させる効果はプラセボと差がありましたが、いわゆる12の臨床症状については、プラセボと差が出ませんでした。主要評価はトータルで見るという形になっておりましたので、結果として、第Ⅱ相で統計的に有効性は示せていないとなっておりました。当日の審議においては、そういう結果ではありますが、当時の感染症の状況などに鑑みて、何か推定できる余地はないのか、評価できる余地はないのかということも考えられるのではないかということで御議論いただきましたが、結局は現時点のデータでは難しいということで、第Ⅲ相の結果を待って改めて審議するという形になっております。
 その後、9月28日に第Ⅲ相の結果が出てきました。第Ⅱ相と変わったところは大きく2つあります。特にオミクロンになると重症化が難しいというところもあり、また、そもそも重症化リスクのない方、ワクチンを打っている方も含めて、軽症と中等症を対象患者にしておりましたので、重症化しにくいというところもあります。そういった中で、特に顕著な症状として出ている5症状の鼻水・鼻づまり、喉の痛み、咳、熱っぽさ・発熱、倦怠感という、オミクロンに顕著に出てくるような症状をもって評価をする。それから、患者も症状が発現してから72時間以内の患者を解析対象にするといったような扱いに、手続にのっとった形でプロトコルを変更した上で、最終解析を行った結果、プラセボと比べて、本剤は症状消失までの期間を1日相当短くする、有意差をもって改善するという結果が出ましたので、それをもって有効性が第Ⅲ相のところで認められるだろうという形になりまして、少なくとも有効性が推定できるということで、緊急性と代替性と併せて、緊急承認は可という結論を頂いたわけです。
 対象患者については、軽症と中等症Ⅰの患者で、重症化リスク因子のない患者でも結果を出しておりますが、明確に結果が出ているのは、高熱、咳等の強い症状がある者となってますので、その辺のところで処方を検討するということを、感染症学会のガイドラインで明確化した形で使用される形にしております。承認の期限を付す形になるので、1年の期限ということで緊急承認をしているものです。これについては、今回の第Ⅲ相のところについては、速報的な評価になっておりますので、今後フルの評価結果が出されて、1年以内に再度評価を行い、本承認について再度審議を行うといった扱いになるものです。
また、緊急承認制度については、前回の制度部会で、「緊急承認制度というのは分かりにくい」という御指摘があり、それについてはパンフレットのようなものを用意していることを申し上げましたが、資料1-2としてパンフレットを御用意しております。こういったものを活用いただき、承認制度の理解の促進に資するように、活用いただければと思っています。私からは以上です。
○福井部会長 ただいまの事務局からの説明について、御意見、御質問がございましたら、御発言をお願いします。森委員からお願いします。
○森委員 日本薬剤師会の森です。一昨年の末だったでしょうか、この部会で集中的に審議をして、今回、承認制度を動かして、国民が必要な医薬品にアクセスできるようになったというのは、非常によかったと思っております。
 今、審査管理課長から説明がありましたけれども、7ページ目の申請審議状況を見ても、薬食審の第二部会等で、手順に従って慎重に審議され、緊急承認されたと理解しております。ただ、市販後の安全対策が重要なことは緊急承認に限ったことではないのですが、ゾコーバの特性に応じた安全性に関する情報を収集して、高頻度に審議会を開催し、専門家の意見を聞くなど、十分な安全対策を実施していただきたいと思っております。
○吉田医薬品審査管理課長 御指摘ありがとうございます。市販後安全対策の話については、この部会でも御指摘いただき、更には国会の審議の場でも、その辺についての御指摘を頂いたところでございます。具体的に、本剤、ゾコーバについては、正に市販後安全対策の強化として、審議会での副作用安全性評価の頻度を従来より多く行うということで、既に昨年の12月27日に1回目の評価をさせていただきました。一部で軽度の副作用がありましたが、安全性について問題はないという評価をさせていただいたところです。引き続き十分な市販後安全対策を続けてまいりたいと思っております。
○森委員 あと、この緊急承認制度のパンフレットについてですが、ありがとうございました。こういう薬を薬局の現場で調剤することになりますので、患者に安心して使ってもらえるように、是非活用していきたいと思っております。
○福井部会長 よろしいですか。それでは山口委員どうぞ。
○山口委員 COMLの山口です。森委員とほぼ被っているのですが、期限が1年ということで、12月に検証されたということでした。ゾコーバについては期限が1年と書いてありまして、資料1-2の裏面を見ると、承認後も副作用などの情報を収集して、2年以内に有効性の確認、再度承認申請と書いてあります。これは1年と決まったということは、この1年間の間の情報を収集して、その後、また継続するかどうかということが審議されるということなのでしょうか。どれぐらいの頻度で、どのような情報収集の仕方をしているのかということも併せてお聞きしたいと思います。
○吉田医薬品審査管理課長 ご指摘、ありがとうございます。ここで言う期限と申しますのは、緊急承認は推定段階で承認しておりますので、いろいろな意味でデータが不十分です。通常は、第Ⅲ相のデータがない段階で評価が行われるのが通常なのですが、今回の場合には第Ⅲ相試験をやっているので、そこが分かりにくいという御指摘もあろうかと思います。
 ただ、先ほど少し申し上げましたとおり、第Ⅲ相試験の結果は出たのですが、急いで緊急的な評価をする必要があるということで、速報値的な、一部の本当に必要な最低限の部分だけの解析結果をもって、有効性が推定できるという評価をした形になっております。したがいまして、更に副次的な評価、ウイルス量の変化とか、いろいろな階層での分析や解析、第Ⅲ相試験を普通にやると、もっと詳細な解析をしなければいけないのですが、今後、その辺りの全ての解析をしっかりとやっていただいて、それを1年以内に出していただきます。更にその際に加えて、ほかの臨床試験、例えばアメリカでも臨床試験が計画されておりますので、そういったデータがあれば、それも出していただきます。更には市販後の安全性情報があれば、それも出していただきます。そういったものを全部総合的に見て、今度は本承認できるかどうかという視点で総合的に評価を行います。その期限について、遅くとも1年以内にお願いするということです。
○山口委員 よく分かりました。ありがとうございます。
○福井部会長 オンラインの花井委員、どうぞ。
○花井委員 この場でも、この制度については緊急性のある場合に、必要な医薬品の供給は必要だということで賛同させていただきましたし、制度設計上は、国会での議論でも、かなりいろいろと意見は言わせていただきましたが、やはり、いろいろ懸念点があるということを意見として申し上げたいし、質問を2つほどしたいと思います。
 1つ目は懸念点です。6ページ目のスライドで、ここでも議論がありましたが、状況です。つまり、緊急性の状況というのは、ディシジョンメイクとしては、もっと上のほうでするのでしょうという話と、薬事の持ち分との整合性については、かなり議論させていただきました。制度上は、この緊急性要件というのが、正に上部の意思決定状況です。下の代替性要件というのが、いわゆる薬事上の専門的な判断という整理になっていると思います。
 ここで、②に既承認薬はあるが複数の選択肢が必要というのが出てきて、その下に御丁寧に②の例として、「作用機序が異なる場合や禁忌の対象が異なる場合が含まれる」と書いあって、そうなると、作用機序が違うとか、禁忌の対象が違うというのは、薬が変われば、幾らでも追加で薬が出てくるので、企業からすると、緊急承認の間口はかなり、これで広がってしまったのかなと。もっと穿った見方をすれば、ゾコーバを念頭に置いて、②と一番下のポツを考えたのではないかという気さえするので、ここがどうかなという気はしています。
 だから、この代替性要件ということで、②と②の説明のポツは、かなり拡張してしまったなと。となると、緊急性の状況においては、かなり拡張するというような形になりますね。なので、ここは懸念があるということです。
 もう1つは、ゾコーバを具体的に言いますと、せっかく条件付き承認で考えていたのだし、第Ⅲ相の中間解析までできていれば、今までの薬事承認の歴史を見ると、この状況で承認された医薬品はたくさんあるのです。だから、あえて緊急承認をする必要はなかったとも言えていて、あえてゾコーバを緊急承認したことによって、緊急承認制度がぼけたのではないかという懸念を持ちました。だから、無理をせずに中間解析で、ゾコーバについては有効性を推定していますが、今まで、このレベルの推定で有効性を確認で承認された医薬品は、歴史の中でたくさんあるわけです。ここはグラデーションなので、微妙なところでもありますが。本来は、ゾコーバを緊急の対象にしたかったというのが動機付けが、代替性の要件に逆流しているように見えるところが懸念としてあります。
今後、運用について、先駆けとか条件付け早期承認、あるいは再生医療等製品の仮免許、緊急承認、特例承認という、様々な承認のバリエーションの整理は、もう一度考えていただかないといけないと思います。先ほど森委員からもありましたが、現場では全部承認済みの薬ですから、それがいろいろなバリエーションがあるときに、それぞれの制度設計がぶれるというのは、非常に懸念があるというのが、私の意見です。
 質問ですが、そうなると状況自体がどこまで続くかという問題が出てきます。つまり、今、コロナがアウトブレイクしていると言っているから、これが成り立つのですが、どこまでいったらアウトブレイクは終わるのでしょうか。いわゆるSARS COV2というウイルスがそう簡単に消えてなくなるわけではないわけであって、そうすると、ことによってはこの病気自体は10年ぐらいは普通にある病気として存在し続ける可能性があり、そのどこかの段階で緊急性、今、5類に変えるという議論がありますが、5類に変わった時点でアウトブレイクではなくなるので、緊急承認はできなくなるのでしょうか。そこの緊急性要件について、どこでこれが終わるかということについて、質問が1つあります。
 それから、ゾコーバについては、先行薬があったわけです。どちらかと言うと先行薬のほうが効くのではないかという印象もないことはないのですが、非劣性試験をやる方法もあったと思うのですが、非劣性性というのは分からないという理解でいいのでしょうか。ゾコーバが先行薬と同じぐらい効くのか、若しくは大して効かないのか、若しくは先行薬より優れているのかという評価は全く分からないのですが、この辺の評価はどうなっているのでしょうか。以上2点、質問です。
○福井部会長 コロナが5類に変わったらということですが、いかがでしょうか。
○吉田医薬品審査管理課長 まず、どの時点で緊急性がなくなるのか、緊急性はどうなるのかという御質問でした。形式的なことを申し上げますと、政令で緊急性の条件を満たすものを指定していますので、政令指定されている限り、一定の要件を満たしているという判断もできるのではないかと思います。では、その政令をなくすのかどうかということについては、これまでの新型インフルエンザなども消しているわけではありませんので、そこは消さないまま続く可能性はあるのかなと思います。これらはちょっと文理的な説明です。
 その上で、実際に緊急性等の判断に基づき緊急承認するのかどうかという際には、分類が変わったらどうかというのは、1つの考慮すべき要素になるのではないかと個人的には思いますが、そこは私どもの所で即答するのは難しい御質問かなと思っております。状況を十分に見て考えるという形になるのではないかと思います。可能性はだんだん低くなってくるというのは、そうなのだろうと思うのですが、どうかという断定的なことは難しいと思っております。
 2点目の質問で既存薬と比べた評価ですが、既存薬というのは、ファイザーのパキロビットのことを念頭に置いているのだと思います。作用機序的にはゾコーバと同じようなものです。
 これについて非劣性の試験を行うのは、特にこういう環境下で緊急時に、みんな同時開発でやっている中で、非劣性を臨床データで確認するというのは、現実的には相当難しい問題だろうと思っています。それがないのは致し方ないと思います。
 その上で、データをどう評価するのかということですが、これも実は非常に難しくて、ゾコーバを開発したときというのは、オミクロン株が流行っていました。一方で、これまでの既存のパキロビット等の頃はデルタ株で、その前の試験です。臨床症状の出方が違ううではないかということで、そのことをもって劣っているとか、そういう評価をするのは難しいと思っております。
 ただ、抗ウイルス効果は客観的な評価だと思いますので、それを見る限りにおいては、既存の抗ウイルス薬と同等、あるいは同等以上の抗ウイルス効果があるのではないかと思われますので、データ的には難しいところはございますが、臨床的な評価については、正に同等程度の効果は推定はできるのではないかと思っているところです。
○花井委員 要するに状況については難しいと。恐らくそういうお答えになるかなと思ったのですが、最後に懸念として、先駆けの指定とか、条件付き早期承認というのは、どちらかと言うと製販業者が経営の計画性とか、そういうことを立てやすいように制度化したという経緯があるのです。今回の緊急承認とか特例承認的なものは、どちらかと言うと危機管理的な政府の要請に寄った制度で、本来は異なる文脈だったはずなのだけれども、そこが曖昧になると、今度はメーカー側が、この制度はうまく早期承認に使えるというようになれば、同じような承認制度が並ぶということになって、先ほど言った「ぼける」というのは、そういう趣旨なのです。
 だから、今後はそこの緊急要件というところは曖昧なお答えではありましたが、そこは厳密に守っていただいて、これは多くの国民の緊急性に対応する制度だというところの輪郭をぼかさないような運用をお願い申し上げて質問を終わります。
○吉田医薬品審査管理課長 緊急時における特別な承認であるというのは、そのとおりでございますので、その辺りの運用について問題がなかったかどうか、更に事務的にも精査させていただきたいと思っています。どうもありがとうございました。
○福井部会長 北澤委員、どうぞ。
○北澤委員 ゾコーバを緊急承認制度の下で緊急承認したことで、先ほど花井委員は「ぼける」とおっしゃったのですが、私も全く同感で、かえって緊急承認制度という制度が分かりにくくなってしまったのではないかと感じています。
 緊急承認制度を新しく作るときに、この制度部会でも議論がありましたが、そのときに私自身がイメージしていたのは、もっと緊急で、本当に大変だから、何もないから何かほしいというようなときに、有効性が推定の段階で承認するというイメージで考えていたのですが、ゾコーバの場合は、申請したのが去年の2月で、既にそのときはコロナが流行りだして2年ぐらいたっていて、ワクチンも皆が複数回接種しているという段階で、何でそれが緊急なのかというのが、素人目に考えてよく分からないというのが、率直な印象です。
 一方の代替性についても、厚労省の「緊急承認制度における承認審査の考え方について」で代替性について4つの条件を出しておられるのですが、この4つのどれについても、本当にそうなのかと疑問に思うところがございます。
 特に、主要評価項目を後から変えたということについては、これまでにいろいろな議論や批判も出ており、私もほぼ同感です。
 緊急承認制度というのが今のままで、本当にゾコーバのようなやり方でほかの薬も緊急承認してよいのかどうか、国はもっと真剣に考えてもらいたいと思います。以上意見です。
○福井部会長 茂松委員、お願いします。
○茂松委員 日本医師会の茂松です。今、COVID-19がかなりの猛威を振るっているということで、医療機関、高齢者施設において、クラスターがかなり出ているということと、また医療従事者にもかなり広がっているということがあります。その中でゾコーバの使われ方というのは、どうなっているのでしょうか。
○吉田医薬品審査管理課長 ゾコーバについては、併用禁忌のものがかなりあるということもございますので、承認当初はパキロビットを使ったことがある所に限定した形で使っていました。ただ、その後は問題ないということから、使える医療機関を拡大して、現在に至っているという状況です。
 直近の投与者数としては、昨年末現在の数字で約8,000人近くに投与されているという状況です。
○茂松委員 現場では、使いたいのだけれども使える人が限られてしまっているという話もございますし、ある程度安全性があれば、使えてもいいのではないかという印象を持っております。よろしくお願いいたします。
○福井部会長 そのほかはいかがでしょうか。川上委員、どうぞ。
○川上委員 コメントを1つさせていただきます。制度を作った時に自分たちがイメージした典型的な事例というのは、第Ⅱ相試験で有効性が推定できた場合に第Ⅲ相試験をしなくても緊急承認できるという内容だったのですが、実際には、ゾコーバ錠の承認での議論は、そうではなかったと思います。
 例えば資料1-2は、緊急承認制度自体の説明としては、このリーフレットで何ら問題ないと思うのですが、裏面の1行目に、小さな字で「掲載の図は一例です」とはありますが、これを使ってゾコーバ錠のことを一般の方に説明すると、第Ⅲ相試験をせずに承認したのかという誤解を与えてしまうと思うのです。
 典型的な事例ではなかったゾコーバ錠については、一般の方にも、第Ⅲ相試験で基本的には主要評価項目は評価できていて、その他の副次評価項目の解析や、最終的な審査報告書の作成を待っていると時間がかかるので、そこを急いだのだという事実が分かるような説明も、別途あってもいいのかなという印象を持っています。
○吉田医薬品審査管理課長 その辺は何か工夫できないか、検討させていただきます。
○福井部会長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
 ゾコーバを使用後、これこれの項目については必ずデータを収集することとなっていて、データ集収後に検討することになっているのでしょうか。
○中井医薬安全課長 ゾコーバについても、リスクマネージメントプラン(RMP)を作成し、リスクに対して医薬品安全性監視活動とリスク最小化活動を行っています。その中において、市販後に使用成績調査を実施しており、そういうことをやるのが1つです。
 加えて、副作用報告ということで、医療従事者、企業から自発的に上がってくる報告を受けて、それらを高頻度な審議会で評価を行っております。また、リアルワールドデータを活用した調査も行っております。このような3つのことを実施しております。
○福井部会長 分かりました。ほかにはよろしいでしょうか。
 それでは、議題1の(2)の電子処方箋に移りたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
○伊藤企画官 電子処方箋サービス推進室長の伊藤です。よろしくお願いします。資料1-1、緊急承認に続いて、2のスライド8枚目以降の御紹介をいたします。スライド9枚目、電子処方箋については、10月31日からモデル事業を開始しております。モデル事業は1年間続けることになっておりまして、現時点では4地域でやっています。各地域では準備が整ったところから参加していくということですので、スタート時点では17施設でしたが、今は順次拡大をしております。全国での運用開始は1月26日を予定しております。ここに向けて、モデル事業においてシステム、運用の両面から最終的な検証を行いながら、実際にやっているということです。
 スライド10枚目、現状、モデル事業ですが、ステップ1、ステップ2で、2段階で分けた取組を進めております。これは何かと申しますと、ステップ1というのは、まずは紙の処方箋のみで患者さんには処方して、一方で、電子処方箋のデータは登録をするということで、データがきちんと入っているかどうか、薬局側で受け取れるかどうか、こういった確認をステップ1でやったということです。
問題がなければ、順次ステップ2に移行して、電子処方箋も選べる本番と同じ環境でやることとしています。1月6日時点では、4地域全体では38の施設でモデル事業を行っております。利用状況については、12月31日時点のデータで、処方箋の登録件数は9万件を超えております。これは医療機関と薬局側で数字がそれぞれ6万5,000、2万5,000とありますが、これは必ずしも医療機関で処方された方がモデル対象施設の薬局に行った方、行っていない方、それぞれいるということで、多少数字がずれております。
 右下、重複投薬等、チェックの実施件数については、約15万件出ています。これは処方箋枚数に対して多いということですが、これは任意の回数が重複投薬のチェックをかけることは可能ということですので、医療機関によっては2回を1回の処方に対して行っているということだと考えております。
 実際に重複投薬、若しくは併用禁忌がかかったのが、医療機関側では3,800件、薬局では約4,300件ほど検知があったということです。今回の電子処方箋のメリットの1つに重複投薬の抑止効果ということがありますので、こういった結果も出ているということです。
スライド11枚目、モデル事業における対応事例です。現時点におきましては、ステップ2と本番と変わらない状況でやっておりますが、おおむね問題なく運用ができていると考えております。もちろん細かい論点は出てきているわけです。例えばということですが、1番目は、実際に運用していたときの取扱いですが、電子処方箋のサービスと接続する端末が診察室、若しくは調剤室にない場合にはどういう対応をすればいいのかということが、モデル実施事業からの意見としてありました。この場合は、タブレット、外部とは接続が切り離されたようなものを活用して、診察室、調剤室で使うような事例を対応していた施設もあります。薬局側ですと、用紙に印刷して調剤するという形で、運用面の取組をしていたということです。
 マイナンバーカード、電子処方箋について、患者にどうやって説明したらいいのかという御意見も出ております。こちらについては、これまで厚労省におきまして様々な周知広報の資料を提供しているところです。例えば、モデル事業の施設ですと、デジタルサイネージを使いながら、実際に動画でこういうふうにやるとか、使い方を受付の近くに設置して御紹介するとか、できる限り患者さんに分かりやすい形でお示しをしていくということでやらせていただいております。
 スライド12枚目、周知広報関係です。これまで医療機関、薬局向けに説明会を3回行ってまいりました。国民向けについても、住民説明会、様々な媒体を通して周知広報の資料の提供をさせていただいております。1月26日からの運用開始に合わせて、どの施設が電子処方箋に対応しているのかというのは、厚労省のホームページであらかじめお示しをしております。できるだけ分かりやすく国民の皆様にお伝えすることが重要だと思っておりますので、右下のような掲示物、ポスターのようなものを現場には貼っていただくようにお願いをしております。以上が取組です。
 続いて、予算の御紹介に移ります。スライド13枚目です。令和4年度の第2次補正予算が、昨年の臨時国会で成立しております。電子処方箋については34億円を獲得しております。こちらは、中央の運営主体である支払基金の電子処方箋サービスの機能拡充の予算になっております。具体的にはリフィル機能や、処方箋をお預かりするサービスを支払基金において行うために開発するための予算です。
 スライド14枚目、HPKIの補助も合わせて22億円補正予算を確保しました。電子処方箋を出すときに電子署名が必要になってきますので、医師、歯科医師、薬剤師、それぞれについて補助をさせていただきます。具体的な補助額については、右下の表にあるように、最大5,500円の支援をさせていただくということです。経済対策が閣議決定された昨年の10月28日以降に申請したものについて、御支援の対象ということです。こういったものを使いながら、電子署名の円滑な対応をしっかり進めていきたいと思っております。
 最後にスライド15枚目、これは各医療機関、薬局のシステム改修費用の支援ということで、令和5年度の予算案で、これから通常国会で御審議を頂くことになりますが、130.9億円を積んでいるということです。既に令和4年度分については383億円を確保しておりますが、令和5年度の改修分についても補助率を引き上げるという形で措置をしておりまして、令和4年度と同等の補助率になったということです。こういった予算面の措置も活用して、先ほど申し上げたような丁寧な形での周知広報、こういったことで準備のできた所から26日の運用開始を進めていきたいと考えております。説明は以上です。
○福井部会長 ただいまの事務局からの説明について、御意見、御質問等ありましたらよろしくお願いします。花井委員、どうぞ。
○花井委員 スライド10の重複投薬チェックの数字を見て驚きました。つまり、これは薬局だと8%で、医療機関だと3.何パーセントだと思います。ということは、モデルでこれだけということは、日本全国ではどうなってしまうのだろうか、中医協の支払い側から見たら引っくり返ってしまうのではないかという数字だと思いますが、これは「おくすり手帳」の普及との関係ではどういうふうに事務局としては評価されているのですか。若しくは、これが広がればこれはなくなっていくということで、かなり喜ばしいと思いますが、その辺の御認識を教えてください。
○伊藤企画官 まず、重複投薬については、まだ限られた施設、限られた機関ということで、詳細な中身については、今、精査をしていおります。。よく分析をしていきたいと思っております。
 「おくすり手帳」については、現在、電子処方箋との連携、電子処方箋に加えて一般薬の情報を「おくすり手帳」のほうで併せて見るとか、そういった使いやすい形で、今現在検討を進めているところですので、組み合わせてうまく活用していきたいと思っております。
○花井委員 ありがとうございます。
○福井部会長 三村委員、どうぞ。
○三村委員 御説明ありがとうございました。基本的にはこの方法は、多少、最初混乱等あると思いますが、医療機関、薬局、患者、私たち自身も慣れていくということが大変重要であると思います。
 1つだけ確認させていただきたいと思います。現在、実験段階から始められて、一斉にできるだけ迅速に進めていこうということになると、いつも心配になるのは、プラットホームとしての強靭化とか、システムの安全性とか、セキュリティという話がどうしても出てきます。せっかく良いものを作っても、どこかで不具合が起こって、全体が止まってしまうと、混乱が起こり、これはやはりもとのペーパーのほうが良かったのではないかという話になるかもしれないということがあります。せっかくの試みですが、13ページに今年度の補正予算は34億円とありますが、これが全国レベルのシステムになったときには、もう少しこれに対しての対応が必要になってくるのではないかと思いますが、その辺りはどうお考えなのか質問させていただきます。
○伊藤企画官 お答えになるか分かりませんが、あくまでもこのシステムを円滑に動かしていく、安全性が大前提ということです。これまでもモデル事業は2段階に分けてやるということは、正確にきちんとデータが飛んでいるか、慎重に確認しながらやってきたということです。この方針は運用開始後も変わらないと思っております。34億円は機能拡充予算ということで取っておりますが、実際にトラブルが起きないよう、支払基金が運用主体になっておりますので、連携しながらしっかり取り組んでいきたいと思っております。
○三村委員 やはり、メンテナンスコストとか、いろいろかかってくると思います。その辺りも含めて、できるだけ長期的に準備していただければいいのではないかと思います。ありがとうございます。
○福井部会長 森委員、お願いします。
○森委員 日本薬剤師会の森です。薬局では電子処方箋を適切に活用して、より質の高い医療の提供に取り組んでいきたいと考えております。ただ、そのためには安全・安心な仕組みが大前提であり、そのため、昨年の10月末からモデル事業が実施されたと理解しております。
 前回の本部会で、機能面での検証はもちろん、運用面での検証を是非行ってほしいとこの場で申し上げたのですが、10ページにモデル事業の実施状況、11ページに対応事例があるのですが、正直、これだけではどのようなことが確認、検証できたのか、どのような課題があったのか、それでどう対応したのかというのが分からないところがありますので、1点は、そこを詳しく説明いただきたいと思います。
 11ページのモデル事業における対応事例の中で、処方箋の発行や受付等実施できているということで、そういうことはできたのでしょうが、例えば、薬局に来た処方情報が正しいものが来たのかとか、薬局で調剤した後に調剤情報を上げますので、きちんと上げられたのかとか、今度は電子処方箋を薬局で保管することになりますので、様々なことがあると思います。そこのところが1点分からないので、検証の結果等教えていただければと思います。
 もう一点、10ページのモデル事業の実施状況のステップ1、ステップ2、先ほど事務局からまずは紙でという御説明がありましたが、これは薬局を分けたのは何か意味があるのですか。同じ所でステップ1をやり、ステップ2に移行するといろいろ分かったのか。あえて分けた理由が何かあるのであればまず教えていただきたいと思います。以上です。
○伊藤企画官 2点御質問を頂いております。まず1点目のスライドの11枚目との関係ですが、ここはおおむね問題なくと書いてあるわけですが、その中でも、細かい論点、課題は出てきております。その都度、システムを更新したりとか、運用面についてはFAQを更新したりとか、そういった形で対応していたのが実態です。
 事例が少なかったかもしれませんが、少し御紹介させていただきます。まずシステムに実際どういうことがあったのかということについては、例えば、医療機関側で古いバージョンのツールを使用していたので、接続が電子処方箋でできなかったということもありました。こういうことについては、そのシステムのアップデートを最新版に医療機関側でやってもらって、問題なく稼動することができたという事例もありました。
 レセコンについては、少し前だと枝番号が入っていない保険証を持っている患者さんもおられると思いますが、そういったところで枝番がないので正しく登録ができなかったということはありました。こういったものについては、オンライン資格確認、マイナンバー保険証を活用していただくと、正しく登録することができるということで、そういったものの周知を図っていたということがありました。
 運用面については、疑義照会をした後に、処方を変更する場合のやり方をどうしたらいいのかということについては、例えば、医療機関側で処方箋の再発行をしたほうがいいのかどうかとか、そういった御質問もありましたので、それは処方医の判断に基づいてやってほしいということで、Q&Aの拡充をしていったということです。こういった話がいろいろありましてやっていったわけですが、森委員が御指摘されたように、処方箋のデータが正しく登録されているのか。調剤情報が正しく読み取れるのか。こういった根幹に関わることについては問題なく運用できているということです。
 10枚目のステップ1、ステップ2で、薬局をあえて分けた理由については、あえて分けたというよりかは、各地域、各施設ごとにどのタイミングでステップ2に移行するかというのは、話をしてもらいながらやっていただいたというのが実態です。これは使っているシステム、ベンダー、それぞれ異なるということで、この地域ではこのタイミングでステップ2に、この施設はいくと定期的に相談しながらやってもらっているというのが実態です。
○森委員 今の話の中で、医療機関側が古いバージョンという話があったのですが、医療機関は10何万件あるのでしょうか、他の医療機関でも同様のことが起こり得ると思いますので、課題となったことはできれば速やかに、公表とか対応をどうしたのかというのは御案内いただきたいと思います。
 今後の運用に向けてのお願いを2点させていただきたいと思います。繰り返しになりますが、電子処方箋の運用は安全・安心な仕組みが大前提だと考えています。電子処方箋の仕組みを積極的に活用していこうと思っておりますが、仕組みに問題があれば、患者さんの健康や不利益に直結しますので、問題が起きないように確実、着実に進めていく必要があると思っております。
 1点目、運用開始後、新しく出てくる課題もあると思います。課題が見つかった際には、適切にシステムや制度運用に反映できるよう、課題解決の道筋を厚労省でしっかりと付けていただきたいと思っております。また、何かあったときの相談窓口を設置するなど、積極的に現場からの意見を収集して、運用改善につながる仕組みや、現場への情報提供をしっかりとお願いしたいと思います。
 2点目、現状、電子処方箋に対応できるレセコンの準備ができているベンダーはほぼないと聞いています。本稼動を現場がしっかりと迎えられるよう、ベンダーに対して早急な環境の整備を、厚労省からも強く働きかけていただきたいと思います。以上、2点です。よろしくお願いします。
○福井部会長 いかがですか。
○伊藤企画官 森委員の御指摘を踏まえて、周知広報を丁寧な形で、それから慎重に安全を最優先にということで、しっかりと進めていきたいと思います。
 ベンダーの状況については、今、断続的に個別にヒアリングを行っております。また、主要なところも集めて働きかけも引き続きやっていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
○福井部会長 山口委員、その後、茂松委員、お願いします。
○山口委員 COMLの山口です。この電子処方箋については、非公開で行われた電子処方箋の会議に私も参加してまいりまして、そこでいろいろと意見を述べてきました。やはり、この仕組みについては、国民に周知が全然できていない状況の中で、例えば、この間、NHKでモデル事業の紹介をニュースでしていましたが、あれを見ますと、全ての医療機関や薬局で始まるのではないかと感じてしまう国民の方も結構いらっしゃるのではないかと思います。一部から徐々に徐々に始まっていくということで、どこの医療機関や薬局が導入しているのか、探すこと自体もなかなか難しいのではないかとか、引換え番号が必要になってくるとか、いろいろと知っておかないといけないことがあるかなと思っています。
 その中で、今回モデル事業は住民説明会を開かれたということで、恐らく、住民の方たちも理解した上で、重複投薬のチェックも同意される方が多いと思います。これは一般に広がってきますと、同意しない方も結構出てくるのではないかと思うのです。私がずっと懸念しているのは、重複投薬のチェックをしたときに、同意をしている場合は、どこの医療機関で出されている、どの薬と今回のこの薬が重複しているということが出てくるのですが、同意していない方の場合は、どこの医療機関のどの薬かは分からないが、重複しているものがあるというアラートが出ると聞いています。そうしますと、私は同意していないのに、何でそんなことを知っているのだというようなトラブルが、医療機関あるいは薬局で発生するのではないかと非常に懸念しています。そういった情報提供までしようと思いますと、かなり詳しくやらないといけないのではないかと思っています。
 国民向けの動画を作る所にも少し協力をさせていただいたのですが、そこまでのことは動画の中に入れられていないのです。ですので、各医療機関や薬局での丁寧な説明が、特に初期段階では必要になるのではないかと思っています。そういったことがモデル事業の中で問題点としてはまだ出てきていないのか、1つ確認したいのがまず1点です。
 それから12ページの所に、国民向けWebページがありますが、先ほどサイネージなどで情報提供という話がありましたが、これは既にモデル事業以外の医療機関や薬局で、これをサイネージで流したいというときに使える状況になっているのかどうか。使える医療機関、あるいは薬局に対しての情報提供が行われているのかどうか。もう1月26日から始まるということになれば、できるだけ早く必要とする患者さんたちに知らせていく必要があると思いますので、その状況がどうなっているのかお尋ねしたいと思います。
 もう1つが、実は今日、同じ時刻に厚労省の医政局で医療情報提供の内容等の在り方検討会が行われています。私はそこの委員ですが、そちらは意見書を出して、こちらに出席したのです。実は医療情報提供システムというのがあって、医療機関と薬局の情報提供を各都道府県のホームページの中で情報提供できるようになっています。国民への周知は非常に低いのですが。その中に、オンライン資格確認を導入しているかどうかということを新しい項目として入れるということが、今日の議題の中に書いてあるのです。それを承認するかどうかということが話し合われているのですが、そこに電子処方箋のことが書かれていなかったのです。同時に電子処方箋を取り扱っているかどうか入れていただきたいという意見を出してきたのですが、なかなかその辺りが医政局と医薬の連携が取れていないのではないかと思いましたので、是非、そういった動きを察知して、同時に入れてもらうように、意見書に書いたことが取り入れてもらえるかどうか、結果まではまだ分からないのですが、そういったことを報告として1つさせていただきたいと思います。最初の2点はお聞かせいただきたいと思います。
○福井部会長 いかがですか。
○伊藤企画官 まず1点目のモデル事業において、本人が同意をしていない場合、実際患者さんから何か意見とかあったかということですが、ここについては、少なくとも現時点においては特段こういった御意見は出てきていないです。ただ、モデル事業においては、サイネージでこういう形で本人同意が必要であると掲示をしております。そういったところを運用開始した後も、対応している施設ではやっていきたいと思います。
 2点目の国民の掲示物とかサイネージとか、そういった素材がすぐ使えるようになっているのかということについては、我々の動画とかも使えるように用意しておりますので、いつでもそれはダウンロードして使えるようになっておりますし、使ってくださいという周知もしています。3点目については、よくしっかり連携して進めさせていただきます。
○山口委員 実際にもう流されている医療機関や薬局はあるのですか。
○伊藤企画官 モデル事業以外ということですか。
○山口委員 はい。多分、ほとんど知られていないのではないかと思います。
○伊藤企画官 はい。しっかりやっていきたいと思います。
○福井部会長 よろしくお願いします。
○山口委員 先ほどの重複投薬の所は、やはり、モデル事業以外の所は説明会なしで始まってしまいますので、きっとモデル事業では出てこないような問題点も起こるのではないかという懸念はしていますので、何とか医療機関や薬局で丁寧に説明してもらうようにも、厚労省から周知していただきたいと思います。
○福井部会長 茂松委員、お願いします。
○茂松委員 日本医師会の茂松です。実はモデル事業を見ますと、限られた医療機関と、限られたチェーン薬局ということが中心になっております。ということは、普段から連携がある程度ある中のモデル事業ではないかと思います。今現在、本当に全国で支払基金の電子処方箋の管理サービスが全て行き届いているのかどうか。このモデル事業はもう少し拡大した事業でないとものが言えないのではないか、ということがあるのではないかと思っております。
 その中で、重複投薬等がこれだけあるということは、やはり検証をしっかりとしていただいて、再度、どういうことが行われているのか御報告いただきたいと思いますが、いかがですか。
○伊藤企画官 まず支払基金が全国の運用開始に向けて、電子処方箋サービスが対応できているのかというところについては、その前提で今準備を進めております。今は38施設でモデル事業をやらせていただいておりますが、実は、モデル事業に参加する意思表示をしておりますが、まだここには入っていない医療機関や薬局がありますので、順次、これも拡大しております。モデル事業については、運用開始後も引き続き続けていくことにしておりまして、1年間、やる予定になっております。そういったところでの実態をよく踏まえて、全国の対応する施設への改善に努めていきたいと思っております。
○茂松委員 これは国民にとっては非常に難しい話であるかと思います。先ほど山口委員からもありましたが、やはり、国民への周知を本当に丁寧に慎重にしていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
○福井部会長 伊藤委員、どうぞ。
○伊藤委員 今年の1月から電子処方箋開始というニュースをずっと前に伺ったときには、ちょっと無理だろうと思っていたのですが、何とかスタートにこじつけたということで、事務局の努力に改めて感謝申し上げます。まだまだ始めの一歩と理解しております。
 その中で既に委員から御指摘がありましたが、明らかにシステム上改善すべき具体的な重大な問題はなかったのかという点です。山口さんもおっしゃっていた同意をめぐる齟齬や、そういったことも大変重要な点だと思います。そういった何件達成しましたということではなく、具体的にこれから全国ベースでシステムを導入するに当たって、重大なシステム上の瑕疵のようなものが見つかったかどうか、丁寧な検証がなされて、それが報告として上がってくることがこのモデル事業の大事なところだと思いますので、もう少し情報量としてまとまったものがあればいいなと、今後を期待したいと思います。
 全体に関することでどうしても気になっていることがあります。先ほど山口委員からも御指摘がありましたが、やはり、厚労省の電子化というのは、それぞれの部局がやってきたことを、今本当に幕内弁当の中身をそろえるみたいな感じで、ようやくお弁当が見えてきたという感じだと思います。それぞれの具材が、ほかの具材のことを全然知らないと言いますか、そういう状態でもあると思います。
 例えば、ここでも卑近な例で言いますと、電子処方箋と電子版おくすり手帳と言って今までやってきたもの、うまくつながっているのだろうかという点での懸念もあります。例えば、単純に今まで紙だったものをPDFとか、その情報がマイナポータルに載るだけでは余り意味がなくて、恐らく、情報の相互流通と言いますか、患者さんの情報が医療機関に分かり、薬局の薬剤師に分かり、薬剤師から医師に行けば、医師から薬剤師に行くということで、結果的に患者さんにとっての処方が改善するというような、中身の質的な効果も非常に重要だと思いますが、現状ではなかなかその部分が見えづらいと言いますか、重複投薬の検知等もありましたが、ほかでもう少しこういう試適にアドオンしているようなシステム上の設計として工夫している点があるのかとか、そういったことに関してなかなか私たちレベルでも全然分かっていないところがあるかと思います。
 情報の接続や、このシステム自体がオンライン資格確認がないといけない、マイナンバーカードがないといけない、マイナポータルがないといけないと様々な制約の下で、ごく限られた運用事例だと思いますので、そういったものを本当にこれから広げていくに当たって、一体何の接続上の問題があるのか、特に情報の接続上の問題があるのかということをもう少し精査していきながら御検討いただきたいと思います。雑ぱくなコメントになってしまいましたが、以上です。
○福井部会長 事務局からお願いします。
○伊藤企画官 モデル事業は引き続き1年続けますので、課題や問題みたいなことが起きたら、その都度検証して、透明性を高く情報の提供をしていきたいと思っております。
 医療DX全体については、今現在、推進本部を立ち上げて、政府全体でやっていくということになっております。伊藤委員がおっしゃられたオンライン資格確認、マイナンバーカード、健康保険証の一体化、電子処方箋など、平行して進んでおりますので、よく連携しながら取り組んでいきたいと考えております。
○福井部会長 ほかにはよろしいですか。
○森委員 重複投薬等の所ですが、等は相互作用も含まれますよね。私もこれは正直多いと思っていました。日薬で疑義照会調査をやってもほぼ3%で、きちんと全体を把握しても3%ぐらいと少し多いので、これは多分相互作用もチェックがかかっていたものだと思います。事務局のほうからも、これだけ重複投薬等が検知されましたが、大変だったという話は多分出なかったので、現場ではこれは把握をした上で投与しているものも含まれていると理解したので、これだけの資料では分からないので、重複投薬のもの、相互作用のものというのも分析しながら次に進んでいただければと思います。以上です。
○伊藤企画官 重複投薬の所は、詳細は分析しているということで、また整理して改めて御報告したいと思います。同一医療機関で継続して投与されているものが処方日数がかぶっていて、それも重複とカウントされている可能性もありますので詳しく見ていただければと思います。
○福井部会長 八神局長からお願いします。
○八神医薬・生活衛生局長 今日はたくさんの御意見を頂きまして、それは多分、この電子処方箋という新しい取組に対する期待の裏返しだろうとも思っております。そういう意味でもしっかりと取り組んでいきたいとまず考えております。周知広報もしっかりやっていかなければいけないと思っております。
先ほど山口委員から、全国で1月26日から電子処方箋がどの医療機関に行っても、薬局に行ってもということではなくて、本当にまず取り組める所、準備が整った所から取り組んでいただくということで着実に広げていく。これが良いと実感していただきながら、私どもも中身の検証などをしながら広がっていくという形で進めていくということだろうと思います。そういう意味で、例えば先ほど森委員からもありましたが、ベンダーさんは実はオンライン資格確認のこともやらなければいけないとか、なかなか手一杯と伺っておりますので、私どもも協力を頂きながら、準備ができた所から取り組んで、着実に検証しながら進めていくという取組方をしていきたいと思います。
 あと厚労省の中での情報の連携がというのは、私どももよく反省をいたします。一方、電子処方箋の仕組みというのは、実はオンライン資格確認という保険制度の仕組みの上に乗って、これを活用しながらやっていくという意味での取組、横で連携しながらという取組でもあります。さらにまだまだ足りないという御意見だと思いますので、そこは私どもも心して取り組みたいと思います。まずはスタートすることが、私ども、まず大事だと思っておりますので、やりながら直すべきところを見ながらと思っておりますので、是非、御意見も頂ければと思います。よろしくお願いします。
○福井部会長 よろしいですか。最後に私から質問です。これは患者さん、薬局、あるいは医療施設に何らかのインセンティブを付けて、この取組を進めようということも考えられているのですか。金銭的なインセンティブも含めてです。
○伊藤企画官 資料でも御紹介させていただきましたが、医療機関向けということで、例えば15枚目、14枚目などは、電子処方箋導入に当たって必要な費用、こういったものについては一部について国から御支援をさせていただいております。
○福井部会長 導入のための補助金ではなく、電子処方箋を使うことによって収益が増える、患者さんとしては負担が減るとか、そういう方向へのインセンティブという意味でしょうか。
○伊藤企画官 そういった利用を推進するためのインセンティブみたいなことは、今はありませんが、今後はよく検討していきたいと思います。
○福井部会長 よろしいですか。それでは、議題2に移ります。大麻規制検討小委員会とりまとめについて、事務局から説明をお願いします。
○佐藤監視指導・麻薬対策課長 資料2-1について説明いたします。資料2-1は、当部会の下に設置をいたしました大麻規制検討小委員会のとりまとめです。1ページです。大麻規制検討小委員会は都合4回開催されております。9月29日の開催でとりまとめを行っておりますが、7月の第3回開催の後の8月の当部会で1度中間報告をさせていただいております。2ページ目は小委員会の構成員、3ページ目が小委員会での議論の論点で、4つの論点について主に議論をさせていただき、とりまとめを行っております。この4つについて順次簡潔に説明申し上げます。
 5ページ目は医療ニーズへの対応で、大麻由来医薬品に係る取扱いです。2ページにもありますが、国際的には、大麻草を原料として製造された大麻成分を含有する医薬品、具体的にはEpidiolexですが、こういうものが重度のてんかん症候群の患者さんに対して米国FDA、そして欧州委員会等においても承認をされている状況です。また国連麻薬委員会での麻薬の分類の中でも、大麻に関する分類が見直されたところです。そのような国際的なニーズを踏まえて、大麻から製造された医薬品であって、有効性・安全性が確認され、薬機法に基づく承認を得た医薬品については、その輸入、製造及び施用を可能とすべきというのが1つ目です。
 この際、現行の大麻取締法では、大麻から製造された医薬品の施用(人に投与すること)・受施用(投与を受けること)、交付を禁止しておりますので、この大麻取締法第4条の関係条項を改正する必要があります。その際に、言ってみれば大麻由来の医薬品についても、これは他の麻薬と同様になりますので、大麻成分についての規制という形に移行し、麻向法に基づく麻薬の製造・製薬、流通、施用に関する免許制度等、流通管理の仕組みの中に大麻由来医薬品も移していくことになってまいります。また、この大麻由来医薬品を麻向法における麻薬の流通管理に移していくに当たり、やはり当該医薬品が麻薬となる場合に医療関係者においても適正に管理されるよう、管理の徹底等も呼びかけていく必要があります。
 続いて2番目は、薬物乱用への対応です。7ページを御覧ください。薬物乱用ということで、大麻乱用に関する対応のあり方です。現状、大麻の乱用として、特に10代、20代の若年層の方の大麻の乱用が、ここ数年非常に増えているというトレンドがあるわけです。他の薬物法規は、いわゆる薬物の使用罪と所持罪とセットで設定がされておりますが、大麻取締法は所持罪はあって使用罪がない状況です。そうした使用罪がないことが大麻使用へのハードルを下げている状況が、各種調査からも言われております。そういう観点から、大麻についても使用罪を明確に設定をすべきである。ただ、医薬品としての施用・受施用を除き、他の薬物と同様の対応が必要であるといったとりまとめを頂いております。
 8ページ目です。一方で、これは大麻に限ったことではありませんが、薬物を使用した人を刑罰により罰することが、薬物を使用した方の孤立を深める、社会復帰が困難になる、スティグマを助長するおそれがあるといった意見もありました。そういう観点からすると、薬物乱用や依存の背景事情等も考慮して、国民に対する啓発、薬物依存からの回復、社会復帰の支援といったもので、スティグマ解消に努めていく対応を強化する必要があると言われております。
ただ、一方で薬物の使用、薬物の所持について申し上げると、必ずしも全てが有罪になるということではなく、起訴猶予になるケースもありますし、執行猶予になるケースもあるということで、刑の一部執行猶予制度等も導入されて、そういった乱用をされている方の社会移行や社会復帰に対する支援が受けやすいような形にもなってきております。また刑法の改正により、懲役と禁錮刑が廃止され、拘禁刑という仕組みもできてまいりました。こういう中で、円滑な社会復帰を図るための処遇が可能になっている状況で、そういうものを進めていくべきだという御意見もありました。
 9ページは、具体的にその成分規制の制度の体系にする。参考に示しているようなテトラヒドロカンナビノール及びその誘導体についての成分を、法令上明確に指定をしていくといったイメージです。10ページは、その成分に着目した規制の導入では、特に薬物の使用に関する立証については、尿において代謝されて排泄されるものに対するきちんとした検査法などの導入を検討すべきであると言われてきております。
11ページです。先ほど、社会復帰の支援等がありましたが、見直しの考え方・方向性の中で、2つ目の○にも書いているような薬物使用犯罪を経験した方が偏見、差別を受けないための体制ということで、関係省庁一丸となって支援すべき具体的な内容についても、ここで挙げております。また、薬物依存に至る社会的な背景も考慮をして、メンタルヘルスの側面を含めた若者の抱える問題や多様性を考慮し、薬物使用者のスティグマ解消にも配慮していくことが望まれます。言ってみれば、「ダメ、ゼッタイ」というようなパターンリズム的な予防啓発だけではなく、一次予防のみならずそういった依存者への支援も必要だと言われております。
 3番目は、大麻の適切な利用の推進の論点です。13ページを御覧ください。大麻に関する部位規制から、先ほどの成分を原則とした規制に移行すると。一方で、そういうことになると、先ほどのCBD(カンナビジオール)といった製品、成分等については、麻薬でないものとして流通が可能になる状況もあります。そういうものに対して、THCの残留限度値をしっかりと定めるべき、またそれに対する監視を行うべきということが、この中で触れられております。一方で、容易にTHCに変換するような物質も存在するわけで、そういうものに対しては麻薬成分の前駆物質として、適切に規制を行っていく仕組みを検討すべきという御指摘を頂いております。
 4番目の論点です。15ページ、大麻草の適切な栽培及び管理の徹底についてです。一方、現行でも栽培免許による管理の下で大麻草は栽培されているわけです。現状は神社に奉納するしめ縄を作るとか、それを育てるための種子を採取する目的のみが免許制度の中で認められてきております。その繊維や栽培の現状ニーズを踏まえて、いわゆる栽培する免許の範囲についても新たな産業利用を念頭においた形での目的に広げていく必要があるのではないかということです。また、THCの含有量に応じた栽培管理のあり方については、海外ではTHCの含有量が低い、毒性の低い大麻草を栽培する形にシフトをしてきており、産業用途の大麻についてはそういった低THCの大麻草を栽培するような形に設定すべきではないか。また、そういった品種に今後栽培を切り替えていく必要があるのではないかと言われております。
 16ページは、こういった栽培管理に関する基準です。現状、都道府県の自治事務ということで免許事務を行っておりますが、ある程度統一した全国的な基準を明確化すべきだと。また、医薬品原料用途、医薬品を作るための栽培については、THCが高い含有量の大麻草を栽培することもありますので、そこについては国による管理、国の免許権者を基本として検討すべきではないか。また、大麻研究を行う研究免許については、麻薬研究者に一元化をする、また栽培については国で管理を行うといったことが言われております。
 17ページです。先ほどの低THCの大麻草を栽培するという所と関係しておりますが、低THCの大麻草を栽培するという規制のやり方に切り替える。これまで、盗難防止などの物理的な大麻栽培管理規制を敷いている部分、高い塀を設けるとか目隠しを設ける、監視カメラを付けるといった畑に対して行っているような物理的な規制については、一定程度合理化できるのではないかと言われてきております。言ってみれば規制のやり方を変えることになろうかということです。
 18ページは、THCが低い大麻草を栽培するということですが、それを行うに当たって種子の段階でTHCの濃度の検査をしっかりと行っていくことが言われております。そのための種子の生産・供給体制の整備についても課題があると御指摘を頂いております。また、発芽可能な海外産の登録種子等も入手できるような形で手続を改めるべきかと指摘いただいております。
 以上4つの論点について、小委員会からとりまとめを頂きました。このとりまとめに基づき、本日こちらの部会でも御議論いただき、それを踏まえて私どももできるだけ早期に大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締薬法の改正法案を国会に提出できるように準備を進めてまいりたいと考えております。事務局からは以上です。
○福井部会長 ただいまの事務局からの説明について御意見、御質問等がありましたら、よろしくお願いいたします。山家委員、どうぞ。
○山家委員 つばめの会の山家です。前回私のほうで、スティグマがあるというお話があって、それについてかなり刑罰的な方向からも見直しがかけられるというような記載がありましたので、それについては非常によいお話だと伺いました。1点、資料の先のほうで説明されるのか、質問なのですが、栽培管理の部分です。種子の部分で検査されているということで、50ページの資料などを見ると登録品種の種類、在来品種の種類によって、多分種子のどの段階で、若しくは増殖したどの種子のロットの段階で検査するのかが規定されていて、これ自体は多分この方法であれば、低THCが保証されると理解いたしました。私の気になった点としては、これは初代のものはOKで、更に栽培管理の規制を緩くすることを今おっしゃっていたかと思うのですが、そうすることによって、今度はいわゆる農作物の盗難的な部分はどうなのだろうなというのが気になったので、質問させていただきました。
 農林水産省の資料も拝見したのですが、やはり農作物の盗難が圃場で起きてはいて、対策としてはパトロールとかカメラとか施錠すると記載されていました。そういったことを考えると、もちろん低THCの段階では問題がないのですが、では低THCのものを例えば悪用する意図で盗んでしまって、化合物として加工するといったことは懸念されるのか、そういったことは起き得ないのかということが1つです。
 もう一つは、もっと気軽に隣の畑の種を頂いて、うちの庭でも育ててみましょうみたいな気軽なパターンの形で流出してしまって、その先に何代か継代して低THCではないものが出回ってしまうようなことがあるのかどうか。それは過剰な懸念で実際は起き得ないのかというようなことをお伺いできればと思います。
○佐藤監視指導・麻薬対策課長 事務局から御質問についてお答えいたします。基本的にこれは免許制度になっていますので、事前に免許を受けた方がその種子を入手して栽培をする。また、その種子についても様々な段階での検査を受ける仕組みにしていますので、一般の方が盗難でもしない限りは、この種をどこからか入手して育てるということは考えにくいだろうと思います。
 それから盗難対策の観点から申し上げると、確かに一般の農作物でも、ダイコンでもニンジンでも畑から盗難されることはあるので、大麻草についても盗難するリスクは全くないわけではありません。ただ、諸外国で導入しているような一定以下の低THCの品種については、我々もいろいろな実験をしていますが、かなり大量のものを畑から盗んでこないと、いってみれば麻薬としての効果が期待できるものは得られない状況のものが、正にこの低THCの品種です。むしろ現在乱用されている方は、どこかから非常にTHCが高い種を入手されて、お家の中などで闇に簡単に栽培をして流通されている方が、実際に現在捕まっておられるような状況になっています。そういうことをやっておられる方からすると、ほとんど余り魅力のないものである形のものを栽培していくというようなレギュレーションにするという趣旨だと御理解いただければと思います。
○山家委員 分かりました。広まったとしても、もともとの種子が低THCであるので問題がないと理解いたしました。ありがとうございます。
○福井部会長 ほかにはいかがでしょうか。花井委員、どうぞ。
○花井委員 前回も少し触れましたが、いわゆる若年層ということで、触法であってもあへんのようなものや覚醒剤とはユーザー層が違うということで、普通の若者といっては何ですが、アウトローでない方々が広がっているので、厳罰化に対して注意が必要だということで、かなり配慮いただいていると理解しています。ですが、やはりこの問題は一時期はバイオメディカル上のアデクションということで概念上回収して、そのアデクションを治療するのだみたいな文脈だけで語られている部分があって、やはりこれは社会的な手当が必要だということなので、薬事としてはこれでもう整理できていると思いますが、取り締まるほうは警察なので、そこは薬事のほうからも配慮いただくということを言っていただけたらと思います。以上です。
○福井部会長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。三村委員、どうぞ。
○三村委員 基本的にこの方向性に私は賛成いたします。大麻草といっても全て悪いわけではなくて、基本的にある成分が医薬品として非常に有効であるということですから、大麻草由来の医薬品としてきちんと整理され、定義されて、それに向けてのきちんとした管理、流通、施用体制を整備していく。しかも、それを法律のきちんとしたバックアップの中で整理していくということですので、私はこれをこのまま是非進めていただきたいと思います。
 ただ、いろいろな意味で先ほどの懸念はあるという話もありますし、花井委員からのご指摘の懸念もあるかもしれませんが、一番心配するのは特に若い方たちに一種の混乱が起きないようにしていただきたいということだと思います。世界を見ますと、この大麻草の使用などについて非常に規制緩和しているというか、これはそれぞれの事情があるのかもしれませんが、大きく規制緩和をして混乱が起こっているというような話も伺っております。若い方たちも、この数年は海外に出かける機会はなかったのですが、これからはそのような状況に恐らく接触される可能性もあるということです。この中でもしっかりと書いていただいて、使用罪という言葉も使われて、これは基本的に使ってはいけないものだということを明示するとともに、ある意味で啓発、きちんとした情報提供が大変重要かと思います。それについて、是非御配慮をお願いしたいと思います。
 私も大学に勤めていたときには、そういう情報がきちんと伝えられていないのではないかという印象もありましたので、是非啓発活動に力を入れていただきたいと思います。以上です。
○福井部会長 ありがとうございます。森委員、どうぞ。
○森委員 三村委員と同じように、今までこの大麻由来成分から製造された医薬品は、日本では認められていませんでしたが、適正に管理できるのであればそれは承認すべきだと思っています。今お話があった2点、乱用のリスクと不正流通の問題なのですが、乱用のリスクに関してはまずは国民への啓発活動が重要だと思っています。薬機法の第1条の第6の中にも、国民の役割として国民は医薬品等を適正に使用するとともに、これらの有効性及び安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならないとあります。国民の役割として、医薬品の適正使用、乱用防止に努めることが基本であり、小・中学校からの乱用防止教育をはじめとする一次予防を更に充実していく必要があると考えています。ここに関しては、学校薬剤師等で薬剤師会も積極的に取り組んでいきたいと思っております。
 もう一点は質問なのですが、乱用防止の点で資料の27ページで、薬物事犯検挙人員の推移の所で、大麻のことの検挙人員はずっと上がっているのですが、青の部分の覚醒剤が下がっているのです。これは何か対策をしたのでしょうか。何か有用な対策があるのであれば全体にいかすこともできると思うので、ここが下がっていていいことだと思うのですが、ここが何か対策をしたのかというのが質問の1点目です。
 2点目は、先ほど監視指導麻薬課長から御説明があった5ページ目を御覧いただければと思います。今後もし承認をされたときに、これを麻薬として扱うのか、麻薬に分類されるのかということが、流通管理も非常に重要になってくると思います。卸から薬局、薬局から患者さんに渡して、その後の残薬管理を含めてきちんと対応はしていきたいとは思っているのですが、そこがどうなっていくのか。麻薬になるのか、麻薬として扱うことになるのか。そうなると、例えば医師の麻薬処方箋に関して、施用者番号と患者住所が書いてありますが、そのようなことになるのか。麻薬として扱うのであれば、薬局は麻薬の小売業を持っていればそのまま扱えるのか等ありますので、制度に関わることなのでその辺りのことを教えていただきたいと思います。以上です。
○佐藤監視指導・麻薬対策課長 お二人の先生から御指摘いただいた普及啓発、正しい情報の提供について、我々も全力を尽してまいりますので、よろしくお願いいたします。今御質問いただいた点ですが、まずは覚醒剤の検挙者数が減っていることについてです。もちろん様々な意味での薬物乱用対策というものをやってきていますが、なぜ覚醒剤が減ってきているのかという理由についてはよく分からないところです。大麻に置き換わっているというような考え方もあるのかもしれませんし、一方で全体の検挙するキャパシティーの問題もあるのかもしれませんし、そこについては私どもでも明確な理由は分からないです。ただ、やはり大麻のほうが今は非常に目立って増えてきているトレンドについては、御理解を頂けるのではないかと思います。
 それから、大麻と麻薬の関係ですが、今回いろいろな形でとりまとめを頂いて法改正を行っていく、規制を見直していく方向としては、大麻由来の医薬品を麻向法における麻薬に位置づけるということです。現在の麻薬と同じ扱いですので、正に先ほどのエピディオレックスみたいなものが承認された場合には、麻薬処方箋に基づいて処方いただいて、言ってみれば麻薬としての金庫等の管理を行って流通をするというようなものになります。そういう意味では、ほかの麻薬と取扱いは同じになりますので、現場の方には混乱がないのかなとは考えております。
○福井部会長 そのほかいかがでしょうか。中島委員、どうぞ。
○中島委員 東京都の中島です。今後法改正して、また施行へと進める中で、自治体では各種業務を行うために体制整備を進めていく必要があります。円滑に制度を運用するためにも、厚労省とよく相談しながら準備を進めていきたいと考えております。今後、適宜、情報提供や意見反映の機会を設けていただけると有難く思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
○福井部会長 よろしいでしょうか。そのほかいかがでしょうか。よろしいですか。山家委員、どうぞ。
○山家委員 先ほどとは少し違う点で、もう一点質問させていただきます。例えばエピディオレックスを今後患者さんが使われた場合や、一部スクリーニングチェックの所で受動喫煙のような場合は問題ないですというようなお話があったかと思うのです。CBD製品を利用した方やエピディオレックスを利用したような方が、そういったスクリーニングの所で引っかかってしまって、まるで問題がある方のように受け取られてしまうというような可能性について教えていただけますか。
○佐藤監視指導・麻薬対策課長 エピディオレックスについては、まだ承認されているものではありませんので、明確なお答えはできないと思いますが、そのエピディオレックスの中に入っているTHC成分が仮にあったとした場合に、それが麻薬として流通している医薬品であれば、それはお使いの患者さんの尿からTHCの代謝物が検出されたとしても、適正に使用されているものですので、乱用ではないということです。
 一方で、先ほどの尿から検査をするということですが、現在の検査を行っていく技術としては、このレポートにもありますように、受動喫煙については区別ができるやり方をする。またCBD製品等におけるTHCの残留基準値については、そういった尿検査に影響を与えないような形での残留基準値を設けるということが、このレポートの中でも求められていますので、CBDのTHC残留基準を設定する際にはそういった点をうまく配慮をして対応していきたいと考えております。
○福井部会長 そのほかいかがでしょうか。よろしいですか。特に修正をという御意見はなかったと思いますので、この大麻規制検討小委員会のとりまとめについては、本部会として了承した上で、本日いただいた様々な御意見を踏まえて引き続き必要な検討、取組を進めていただくことにいたします。
 非常に活発な御意見ありがとうございました。時間のこともありますので、本日の議論はここまでといたします。事務局におきましては、本日の議論を踏まえて、今後の取組を進めていただきたいと思います。
 最後に事務局から連絡事項等ありましたら、よろしくお願いいたします。
○衣笠総務課長 次回以降の制度部会については、日程等が正式に決まり次第事務局から連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。
○福井部会長 それでは、以上をもちまして令和4年度第2回医薬品医療機器制度部会を閉会といたします。御協力誠にありがとうございました。