第7回 医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会の議事録

日時

令和5年1月13日(金) 14:00~17:00

場所

AP虎ノ門 C+Dルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル(日本酒造虎ノ門ビル))
 

議題

  • (1)ベンチャー支援等に関する有識者、関係企業等からのヒアリング
  • (2)その他

議事

議事内容
○安藤医薬産業振興・医療情報企画課長 それでは、委員の皆様方、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 定刻となりましたので、ただいまから「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を開催させていただきます。
 初めに、構成員の先生方の御出欠について御報告させていただきます。
 本日、8名の構成員が会場での御参加、井上構成員、香取構成員、川原構成員、堀構成員がオンラインでの御出席との御連絡をいただいてございます。
 なお、井上構成員、香取構成員は途中での御退席、川原構成員は遅れての御出席となります。
 なお、本日におきましても、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、YouTube配信形式による公開にて行わせていただきます。
 次に、本日の会議資料を確認させていただきます。
 会場におられる構成員の先生方のお手元に、議事次第のほか、資料1~6、参考1として開催要綱、参考2として構成名簿を御用意してございます。
 以上でございます。何か不足等がございましたらお伝えいただければと思います。
 それでは、以降の議事進行につきましては、遠藤座長にお願いいたします。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 それではまず、議事に入る前に、メディア、マスコミの方々のカメラの頭撮りはこれまでにしていただきまして、御退室いただいた後、以降の傍聴につきましては、会場外にYouTubeが設定されておりますので、そちらのほうでよろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○遠藤座長 それでは、議題に入りたいと思います。
 議題1でございますが、「ベンチャー支援等に関する有識者、関係団体等からのヒアリング」でございます。本日お越しいただいております有識者あるいは業界の皆様から順番にお話をいただきまして、その後、まとめて質疑応答、ディスカッションをしたいと思います。
 それでは、恐縮ですが、最初に当有識者会議のメンバーでいらっしゃいます芦田構成員から御説明をいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○芦田構成員 遠藤座長、ありがとうございます。
 本日、こちら側の席でお話をさせていただきます。こちら側ですとちょっと緊張しますね。
 私は現在、株式会社INCJに所属しておりますが、それ以前の2004年から国内のライフサイエンス及びヘルスケアのスタートアップの支援に関わってまいりました。本日は、その経験に基づいて、日本の創薬スタートアップの現状と私が考える課題についてお話をさせていただきたいと思います。
 では、スライドをお願いいたします。
 次をお願いします。
 まず、このスライドにお示ししましたのは、本日のテーマであります革新的な医薬品の迅速な導入に係るステークホルダーとその関係を表したものです。新薬の開発は、国内に拠点を持つ内資及び外資の製薬企業に加えて、いわゆる創薬スタートアップ、そして、海外の新興バイオ製薬企業が主体となります。先月、前回の検討会でエマージングバイオファーマと述べていたものを、本日は新興バイオ製薬企業と呼ぶことにいたします。さらに、革新的なシーズの多くはアカデミアから生み出されております。そして、それらを支えているのが政府及び政府機関であり、そして、金融機関であると考えています。
 本日は、このスライドで黄色の楕円で囲いました2つのステークホルダーについてお話をいたします。
 まず、日本の創薬スタートアップの現状と課題及び課題解決に向けた私の考えを述べます。その後に、海外新興バイオ製薬企業の開発品の日本への導入における課題について、私の考えを述べたいと思います。
 次のスライドをお願いします。
 まず、日本の創薬スタートアップの現状についてです。ここにお示ししましたように、本日は4つの観点からお話をいたします。
 まず1点目ですが、日本の創薬スタートアップが開発して市場に上市された新薬にはどのようなものがどのくらいあるのか、その事例をお示しします。創薬スタートアップの役割の一つとして、アセットの創出や初期開発を行って製薬企業へ導出する、ライセンスアウトするということがあります。ここで今、アセットと申し上げました。開発中の新薬候補のことで、パイプラインと呼ぶことのほうが多いかもしれませんが、本日はアセットと呼ばせていただきます。
 そこで、2点目として、日本の創薬スタートアップと製薬企業とのアライアンスの状況についてお示しします。そして、そのアライアンスの一つとしてM&Aがあります。創薬スタートアップに投資をしておりますベンチャーキャピタルにとっては投資回収、いわゆるエグジットの一つの方法となります。
 3点目として、日本の創薬スタートアップが買収された事例を示します。
 最後に、4点目として創薬スタートアップの企業価値についてお話をします。東京証券取引所に上場している創薬スタートアップの時価総額の全体像についてお示しします。
 次のスライドをお願いします。
 このスライドは、東京証券取引所に上場している創薬スタートアップがアセットの創出または臨床開発を行って、承認された医薬品及び再生医療等製品を調べた結果です。漏れがあるかもしれませんが、傾向は示せているのではないかと思っております。
 ここに示した医薬品及び再生医療等製品は15品目です。医薬品の開発は長期間にわたり、しかも、リスクが高いとはいうものの、残念ながら数が少ないと考えています。
 また、上市に至った医薬品及び再生医療等製品を見てみますと、モダリティーの革新性やアンメットニーズが高い難病や希少疾患への革新的治療方法の提供と呼べるものは、数が限られているのではないかと考えています。
 次のスライドをお願いします。
 次に、創薬スタートアップと製薬企業のアライアンスについてお話をします。
 このスライドは、世界と日本の創薬にかかる企業間のアライアンスの件数の状況をお示ししたものです。
 右のグラフが示しているように、日本の創薬スタートアップが製薬企業などに開発中の化合物などを導出した件数は年間30件ほどで、増加傾向にあると言えます。
 しかしながら、左のグラフにあるように、世界では年間2,000件ほどの契約が結ばれていますので、世界と比較すると数はまだ少ないと言えると思います。
 次のスライドをお願いします。
 それでは、次に、どのようなアライアンス契約が行われているかについて代表的な事例をお示しします。
 このスライドは、日本の創薬スタートアップが製薬企業などと結んだアライアンス契約のうち、契約金額が公表されており、その契約金額が大きい大型契約の幾つかを例として示しています。なお、契約金額には、契約時に支払われる一時金に加えて、開発の進捗と上市後の販売の進捗に応じた、いわゆるマイルストーンペイメントを加えた総額を示しています。
 上の表が創薬基盤技術の技術ライセンス契約です。下の表が開発中の化合物や再生医療等製品の導出契約です。これらを見ると、創薬基盤技術の技術ライセンス契約において大型契約が見られます。その一方、アセットの導出契約を見ますと、臨床ステージに入っているアセットの導出で大型契約のものは少ないように思われます。
 これらのことから、ユニークな創薬基盤技術を持った創薬スタートアップがあるものの、創薬スタートアップによる化合物等の臨床開発は、製薬企業が導入するような段階まで進んでいる例が多くはないという見方ができるかと思います。また、大型契約は外資系製薬企業との契約が多いということも見てとれます。
 次のスライドをお願いします。
 このスライドは、日本の創薬スタートアップのM&Aの主な事例を示しています。公表されているものを調べましたけれども、若干の漏れがあるかもしれません。しかし、御覧いただけるように、創薬スタートアップが企業に買収された事例は、日本においては非常に数が少ないということがお分かりになるかと思います。
 次のスライドをお願いします。
 それでは、次にスタートアップの企業価値についてです。このスライドは東京証券取引所に現在上場している創薬スタートアップ39社の時価総額の分布を示したものです。時価総額の平均値は300億円を超えていますが、分布としては300億円以下の企業が大半を占め、中央値は108億円でした。
 これをどう見るかですが、創薬スタートアップのほとんどが研究開発を行っている段階にあり、赤字企業です。したがって、事業の継続には資金調達が必要になります。しかし、証券市場での資金調達はその企業の時価総額の大きさに影響を受けます。そのように考えますと、研究開発に必要な資金量に対して、残念ながら多くの企業が十分な企業価値にはないと考えられます。
 次のスライドをお願いします。
 ここまで日本の創薬スタートアップの現状についてお話をしてまいりました。残念ながら、日本の創薬スタートアップが創薬エコシステムの中で存在感を示すという状況にはなっていないと見ることができるかと思います。
 ここからは、その要因について幾つかの考察を試みたいと思います。ヒト・モノ・カネのうちモノ、すなわちここでは創薬シーズと言いますが、創薬シーズについては先ほど述べました。
 このスライドでは、資金についてお示しします。
 日本とアメリカのベンチャーキャピタル投資額の推移です。統計の主体が異なりますし、いずれも創薬以外の分野も含んでおります。したがって、統計対象がアップル・トゥ・アップルにはなっていませんが、傾向は見てとれるかなと思います。
 なお、左側の日本の2021年の値が大きくなっています。これはバイオテクノロジーを用いた新素材の開発のスタートアップで144億円を調達した会社と97億円を調達した会社があったため、この年、急に上がっているということです。
 それらを考慮すると、日本とアメリカでは、ベンチャーキャピタル投資額の総額はもとより、スタートアップ1社当たりの資金調達額に大きな差があると言えます。
 次のスライドをお願いします。
 次はヒト、人材についてです。創薬事業には高度なサイエンスとテクノロジーが求められるとともに、薬事及び保険に関する規制への理解と対応が必要になります。したがって、スタートアップの経営陣にも専門知識や経験が求められるということになります。
 右のグラフを御覧いただきたいのですが、右のグラフからアメリカの創薬スタートアップの経営層がほぼ製薬企業の出身者であるということが見てとれます。アメリカの人材の流動性の高さがアメリカの創薬スタートアップを支えている大きな要因の一つではないかと思われます。
 次のスライドをお願いします。
 今までお示ししてきました日本の創薬スタートアップ・エコシステムの課題をまとめたのがこのスライドです。4点ございます。
 まず1点目ですが、私は「アセットが少ない」と考えています。日本のアカデミアにはユニークな創薬基盤技術の研究成果があり、それに基づいて設立されて活躍している創薬スタートアップがあります。しかし、その中で、自社でその技術に基づいてアセットの創出から臨床開発まで進めている企業が多いとは言えません。
 また、日本のアカデミアには疾患原因や標的分子についてすぐれた研究成果があると考えています。しかし、アカデミア発の化合物の中には、医薬品開発の視点からはデータ及び知的財産が十分でない事例が見られます。そのような化合物に基づいて設立された創薬スタートアップの中には、改めて探索段階から研究開発を行う場合があり、臨床Proof of Concept取得まで結果的に長期間を必要とする例が見られます。そのような場合、ベンチャーキャピタルの投資、これはファンドの期間が限られていますので、そういった投資がつきにくい場合があると考えられます。
 次に2点目ですが、「投資資金が少ない」ということです。ベンチャーキャピタルの数もファンドの規模もここ数年で増えてきてはいます。しかし、まだまだ不足しているというのが現状かと思います。
 次に3点目、「専門人材が少ない」という点です。これも最近改善が見られるものの、創薬スタートアップ及びそれらを支援するベンチャーキャピタルや証券会社などに、医薬品業界の経験や医薬品分野の専門性を持った人がまだ少ないと考えています。
 最後の4点目ですが、「創薬スタートアップ及びベンチャーキャピタルのグローバル化の遅れ」を挙げたいと思います。革新的新薬は基本的にグローバル市場に展開可能なものです。しかし、国内のみで開発している事例が少なくありません。また、創薬スタートアップに投資をしているベンチャーキャピタルなど投資家のエグジット戦略が東京証券取引所のグロース市場の上場に偏っていると見ています。さらに、人材及び資金などのリソースの調達が国内に限定されており、アメリカの豊富なリソースを活用できていないと見ています。
 以上、4点申し上げましたが、これら4点は相互に原因と結果になっていると思われまして、いわば負の循環になっているのが日本の現状であると考えています。
 次のスライドをお願いします。
 先ほどの課題の一つ、資金についてですが、このスライドは政府の創薬スタートアップへの資金面での主な支援策をまとめたものです。政府のスタートアップへの資金支援のプログラムは増えておりまして、支援金額も増加してきています。特に創薬スタートアップについては、昨年からAMEDが創薬ベンチャーエコシステム強化事業というものを開始しました。これは基金ですが、この基金は総額で3500億円と大型のものです。
 また、投資資金についても、政府出資のベンチャーキャピタルファンドの数及びファンドの資金量は増加してきています。しかし、その多くが創薬に特化しているわけではありません。例えば、ほかにデジタルトランスフォーメーションや脱炭素化を事業とするスタートアップへの投資資金も含んでいます。そのように考えると、創薬スタートップ向けのベンチャーキャピタル資金量のさらなる増加が望まれると考えています。
 次のスライドをお願いします。
 それでは、これまで申し上げてきた課題を解決するための方向性として私個人の考えを申し上げます。
 具体的に入る前に、まず、創薬スタートアップ・エコシステムを日本に構築して根付かせるためには、やはり早く1つでも多くの成功事例を生み出すことが必要だと考えています。ここでの成功とは、革新的新薬の開発の進展や上市及び創薬スタートアップの企業価値の向上を言います。成功事例が生まれることによって、アカデミアなどでシーズを創出した研究者、スタートアップの起業家・経営者・従業員、そして、ベンチャーキャピタルなどの支援者に成功した人が生まれる。そうすると、次の起業や投資につながっていくものと思います。それによって、エコシステムの正の循環が回ると期待されます。
 具体的には3点挙げます。スタートアップ支援については非常に盛んに議論され、方策も打たれてきております。ここでは、既に政府が昨年11月に発表したスタートアップ育成5か年計画などには含まれていない点をお話ししたいと思います。
 まず1点目ですが、アカデミアのアセット創出の研究開発の拡充です。アカデミアにおける創薬基盤技術の研究と疾患原因や標的分子の基礎的な研究の一層の充実は必要だと思います。それに加えて、創薬基盤技術を用いた創薬研究、実際にアセットをつくるということの推進を強化していただきたいと考えています。また、アカデミアの創薬シーズのいわば成熟度を向上するとともに、特許を国際的に競争力のあるものにしていただきたいと考えています。
 次に2点目、海外開発及び海外リソース活用の支援です。国内スタートアップの競争力の向上、及びそれによる企業価値の向上、さらに投資の呼び込みということについては、成長市場である海外での開発、そして、グローバルに事業を展開している国内外の製薬企業とのアライアンスが必要だと考えています。
 また、海外、特にアメリカのエコシステムを活用するために、スタートアップが海外法人を設立するということも選択肢の一つであると考えています。その点から2つここに挙げております。一つは、既に一部のAMED事業では実施されていますが、AMEDが行っている補助事業や委託事業の対象を国内における開発には限定せず、海外における開発にも広げてはどうかと考えています。また、AMED事業の支援対象を国内の法人に限定せず、一定の要件を設けて、それらを満たすということであれば、海外法人に広げてはどうかと考えています。
 3点目、人材についてですが、兼業の推進です。専門的知識の共有化を図るために、製薬企業の社員の兼業・副業の促進に加えて、アカデミアの研究者や、AMEDやPMDAの方々を含む公務員の方々が創薬スタートアップやベンチャーキャピタルと兼業や副業を行うことを進める、もしくは認めたらどうかと考えています。これらがいずれ、人材の流動化の促進につながるのではないかと考えています。
 次のスライドをお願いします。
 これが私の最後のスライドです。
 これまで日本の創薬スタートアップについてお話をしてきましたが、ここからは話題を変えて、海外新興バイオ製薬企業が開発した革新的新薬の導入における課題について私の考えをお話しします。
 まず、海外、特にアメリカの新興バイオ製薬企業が開発している革新的新薬を日本で上市するには、次の4つの方法があると考えています。A)海外の新興バイオ製薬企業が自ら日本で開発する。B)日本の製薬企業が導入して開発、もしくは買収する。C)欧米の製薬企業が導入して開発、もしくは買収する。D)日本の創薬スタートアップが新興バイオ製薬企業から導入して開発する。ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの解消や防止のためには、これら4つのいずれかではなく、いずれも進める必要があると考えています。
 それでは、それらを進める上でどのような課題があるかについて、私の考えを述べます。
 まず1点目ですが、日本の薬価制度です。これは4つの方法のいずれに対しても当てはまると考えています。これは昨年12月の有識者検討会で議論したことですので、ここでは触れません。
 次に2点目、国内の薬事及び臨床試験環境です。これも海外企業にとってはもちろんですが、国内企業にとってもコストや開発期間のマイナス要因があると言われています。
 3点目、日本の製薬企業の事業戦略です。日本の製薬企業が新薬候補を導入して国内で開発・上市することが、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消に加えて、日本企業の体質転換に寄与するのではないかと考えています。
 さらに、ドラッグ・ラグを防ぐには、海外承認後の導入ではなく、早い開発段階での導入が望ましいと考えています。しかしながら、それには導入費用や開発費用、そして、開発リスクが伴いますので、難度は高いと思われますが、日本の製薬企業の積極的な取組を期待したいと考えています。
 最後4点目ですが、日本の創薬スタートアップの資金調達についてです。これは先ほど述べましたので、ここでは割愛いたします。
 以上、日本の創薬スタートアップ・エコシステムの現状と課題、そして海外からの革新的新薬の導入についての課題を述べさせていただきました。
 私の発表は以上でございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。非常に包括的な御説明かつ問題の提起、さらには提言も含まれておられて、今後の議論に非常に資する情報を御提供いただいたと思います。
 それでは、引き続きまして、2番目、MEDISO(株式会社三菱総務研究所)から資料の御説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○川上氏(三菱総研) よろしくお願いいたします。株式会社三菱総合研究所の川上と申します。
 では、資料の提示をお願いいたします。
 当社は三菱総合研究所でございますけれども、厚生労働省より医療系ベンチャートータルサポート事業、通称MEDISOを受託し、運営しております。
 本日は、MEDISO事務局という立場から、MEDISOによるベンチャー支援の紹介と医療系ベンチャー支援の課題について発表させていただきます。
 では、次のページをお願いいたします。
 まずは、MEDISOによるベンチャー支援について御紹介をいたします。
 次のページをお願いいたします。
 MEDISOですけれども、医薬品、医療機器、再生医療等製品の実用化を目指す医療系ベンチャー企業やアカデミアを支援しております。
 MEDISOは、研究段階から製品化段階まで、そして、法人化前からグローバル展開まで、成長ステージに応じた支援を提供しております。
 MEDISOの主となる支援は、様々な専門家による相談対応でございます。相談対応以外にも、そのほか、知財戦略・出口戦略調査、人材交流事業、ベンチャー企業・アカデミア向けセミナーやマッチングシステム、海外ピッチ等、様々な支援を提供しております。
 これらMEDISOによる相談対応や各種支援というのは、無料で提供しております。
 次のページをお願いいたします。
 MEDISOの目指すところは、大きく2つございます。一つは日本の医療系ベンチャー企業の底上げ、もう一つが日本から医療系ベンチャー企業の有望企業を輩出すること。この2つを目指しております。
 次のページをお願いいたします。
 まずは、MEDISOの主となる相談対応について御紹介いたします。
 MEDISOでは、右側のところにございますように、各分野の専門家を70名程度プールしており、相談者からの相談内容に応じた適切な専門家、サポーターと呼んでおりますけれども、これらとの面談により、相談者を支援しております。
 次のページをお願いいたします。
 MEDISOでは、通常1回の相談申込みに対し、1もしくは2回の面談を実施しておりますが、この相談申込みは何度でも可能となっております。面談後には優先的に対応すべき課題と対応方法案、そして、今後のMEDISOによる支援内容をフィードバックし、継続的なMEDISO利用を促しております。
 また、PMDAとも連携を図り、PMDA面談への同行支援も実施しております。ベンチャー企業・アカデミアの場合、PMDAとの面談に慣れておらず、面談の中での指摘事項等をその場できちんと理解し切れず、消化不良で終わってしまうケースというのもございますので、MEDISOサポーターがPMDAとの面談に同席し、PMDAとの面談後に振り返り面談を実施することで、今後の開発、薬事戦略立案の支援をしております。
 次のページをお願いいたします。
 MEDISOでございますが、2018年の2月に立ち上げ以降、4年10か月で1,038件の相談に対応しておりまして、相談件数は年々増加しております。2022年は計249件の相談申込みがございました。また、この相談件数のうち、19%が過去に相談経験のあるリピーターからの相談となっております。
 次のスライドをお願いいたします。
 MEDISOにいらっしゃる相談者の属性と相談種別でございますが、相談者全体に占めるベンチャー企業の割合は58%、アカデミアの割合は17%となっており、製品種別といたしましては医薬品が24%となっております。
 次のスライドをお願いいたします。
 先ほども申し上げましたとおり、MEDISOは様々な相談に対応しておりますが、全相談案件のうち多い相談というのは法規制対応、次いで資金調達、事業計画となっております。これら3つについては医薬品においても多いのですが、医薬品がほかの製品と比較して多い相談というのは資金調達、知財戦略といったところでございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 MEDISOは立ち上げから5年が経過するところでございますが、MEDISO相談者の中から、少しずつではございますが、成功事例が出てきております。ここに示しているのはごく一部でございますが、例えば製造販売承認や認証の取得、資金調達の成功、ライセンス契約の締結等の成功事例を数多く輩出しております。このような成功事例の特徴として、何度もMEDISOを活用いただいているというところが挙げられると考えております。
 次のスライドをお願いいたします。
 一方、典型的な困難例というものを3つこちらでお示しいたします。ここに記載したものは、いずれももっと早い段階で相談に来ていただければ、このような事態に陥らなかったのではないかと考えられるようなケースでございます。
 1つ目が研究と製品化の違いというところで、薬機法等関連法規の要求事項にのっとった開発を行っていないためのやり直しでございます。例えば品質システムの要求事項を満たしていないことで、非臨床試験や臨床試験のやり直しが必要となってしまうケースがございます。
 2つ目、先端分野の特許出願でございます。特許出願に関しては、正しい専門性を持った弁理士に依頼することが重要でございますが、例えば医療機器プログラムや医薬品の最新モダリティーのような先端分野の特許出願に関しては、やはり専門性を持った弁理士に依頼することが非常に重要でございます。そういったことを行っていないために、後々知財戦略の部分で困ってしまうというケースでございます。
 3点目は資本政策の失敗でございます。ベンチャー企業はシード期、ラウンドA、Bと資金調達を繰り返し、研究開発・製品化の試験を集めて進めてまいりますが、シード期に株主構成を間違えてしまい、その後の資金調達が難しくなってしまう。シーズはいいものの、その後の研究開発が進められないケースというものもございます。これはかなりクリティカルな失敗になると考えております。
 これらいずれのケースにおいても、やはり早くMEDISOに御相談いただければ避けられるのではないかと思うような相談でございます。
 ここまでMEDISOによる相談対応について御説明いたしました。
 次のスライドをお願いいたします。
 冒頭申し上げましたが、MEDISOでは相談対応以外にも様々な支援を行っております。本日、時間の関係上、全てを御紹介することはかないませんが、ベンチャー企業・アカデミア向けセミナーとジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミットについて簡単に御紹介をいたします。
 次のスライドをお願いいたします。
 MEDISOでは、薬事や知財等の専門トピックを取り上げるMEDISO主催のセミナーや、大学や自治体等との連携セミナーを実施しております。特に薬事関連については、厚生労働省事業の強みとして、厚生労働省やPMDAの担当者による講演等も取り入れております。また、東京開催だけではなく、全国各地の大学、自治体との共催セミナーの実施や出張の相談会等も実施しております。
 次のスライドをお願いいたします。
 続いて、ジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミットでございます。これは厚生労働省が主催する医療系ベンチャー・アカデミアと大手企業やベンチャーキャピタル等とのネットワーキングに資するイベントでございます。ブース出展により大手企業とのネットワークの場を提供するとともに、プレゼンテーションエリア内で出展者が行うピッチイベントや各種パネルディスカッション等をMEDISO事務局が企画し、実施しております。
 今年度は昨年の10月にパシフィコ横浜で実施いたしましたが、BioJapanとの共同でございますが、3日間延べ1万5813名の方に御参加いただいております。
 次のスライドをお願いいたします。
 また、このJHVSのスピンアウトとして、JHVSグローバルピッチを別日で開催しております。JHVS出展ベンチャーの海外進出をサポートする目的で、英語でのピッチ機会や海外VC、海外関連機関とのマッチング機会を提供しております。
 今年度はオックスフォード大学の技術移転を起源とするOxentia社と協力し、英国を中心とした海外の事業者、ベンチャーキャピタル、公的支援機関、イノベーション支援者等を集めて、英語でのピッチを実施しております。
 次のスライドをお願いいたします。
 もう一つJHVSのスピンオフとして、JHVSシンポジウムを毎年実施しております。シンポジウムでは、医療系ベンチャー・アカデミアを取り巻く業界動向や各種支援施策の情報提供、ネットワーク構築の場をつくることで、エコシステム形成を促進することを目的としております。
 今年度は来月2月2日、3日の2日間、オンラインと対面のハイブリッド開催を予定しております。
 次のスライドをお願いいたします。
 以上、MEDISOによるベンチャー支援を紹介してまいりました。これまでのMEDISO事業の経験から見えてきた医療系ベンチャー企業のニーズと、MEDISOの課題について御説明申し上げます。
 1つ目が、より早期からのMEDISO利用の促進でございます。先ほどの困難例のとおり、課題が顕在化してからの軌道修正は非常に困難な場合がございます。医薬品等の実用化を考えている方に、できるだけ早期からMEDISO利用を促す必要性があると認識しております。そのため、全国の支援機関での出張相談会の実施等を強化しております。
 2つ目が伴走支援・ハンズオン支援の拡充でございます。成功事例は人材交流事業によるハンズオン支援で躍進しているケースが多いのが実情でございます。今後、伴走支援の充実を図るため、フォローアップ対応の改善やハンズオン支援の対象期間の拡充を検討しております。
 3つ目が他省庁支援事業、民間支援機関との連携強化でございます。これはこの後に説明いたします医療系ベンチャー支援の課題にもつながりますが、医療系ベンチャーを含むベンチャー支援施策については充実してきております。関係府省、自治体、公的機関、民間企業等、各組織がそれぞれ個別に様々な支援施策を展開しております。MEDISOもそれら各機関との連携をしてきているところではございますが、今後は民間を含む他機関との連携を強化し、MEDISOの強みでございます集客力や規制対応等を生かして各種支援を展開していきたいと考えております。
 4つ目が海外展開支援の充実化でございます。医薬品等はグローバル展開が基本でございます。しかしながら、医療系ベンチャー企業には海外展開のノウハウがございませんため、潜在的な支援ニーズが高い領域でもございます。今年度、JETROや海外の支援機関等との連携を強化し、日本の医療系ベンチャーの海外展開支援を充実化させていきたいと考えております。
 最後5つ目、ベンチャー企業または起業家の間、並びに大企業・VC・支援人材との交流の促進でございます。日本の医療系ベンチャー企業には成功事例がまだまだ少なく、成功した医療系ベンチャー企業からの情報収集というのがベンチャー企業の側からも困難でございます。実際にMEDISOの相談者からも、成功事例のベンチャーの方と情報交換をしたいという要望もございます。また、情報のみならず、経営人材や各種専門人材の確保といったところもやはり困難な状況でございます。こういったところから、ベンチャー同士の交流会やベンチャーと大企業・VC・支援人材との交流会の提供などをこれまで以上に実施していきたいと考えております。
 次のスライドをお願いいたします。
 以上がMEDISOによるベンチャー支援の紹介でございました。ここから、これらを踏まえ、医療系ベンチャー支援の課題についてお話をいたします。
 次のスライドをお願いいたします。
 釈迦に説法ではございますが、医療系ベンチャーは研究開発と経営の両面を進めていく必要がございます。これら創薬ベンチャーの一般的な実用化プロセスを示しておりますが、基礎研究から非臨床、臨床を経て製造販売承認、そして販売とステップを踏んでいきます。もちろんのことながら、そこには様々な専門性が必要となってまいります。また一方、ベンチャー企業として法人化から組織拡大、エグジットに向けて資金調達や組織構築など様々な経営課題も存在しております。
 次のスライドをお願いいたします。
 このようなステップを経て実用化されてまいりますが、医療系ベンチャー企業は次のような事業特性を有するため、チャレンジが山積みと言われております。こちらは厚生労働省の医療のイノベーションを担うベンチャー企業の振興に関すること懇談会報告書からの抜粋でございますが、1つ目が高い科学技術水準と開発リスクがあるというところ。2つ目が承認までの時間の長さと必要資金の多さ。そして、3つ目が医療・薬事・保険に係る規制への理解と対応。4つ目が特性に精通した人材確保の困難と言われております。
 次のスライドをお願いいたします。
 また、御存じのとおり、医療系ベンチャーではチャレンジするためのあらゆる経営資源が不足しております。例えば経営人材が見つからない、各種専門家人材が見つからないといったヒトの問題や研究拠点、製造設備がないといったモノの問題、研究開発に必要な資金、専門人材を雇用する資金、特許関連費用といったものが十分に捻出できないといったカネの問題、研究開発に必要な薬事に関する知識、ノウハウがないですとか市場に関するノウハウがない、また、委託先や提携先候補企業に関する情報がないといった情報の不足など、本当にあらゆる面で足りない中、実用化に向けて進めていかなければなりません。
 次のスライドをお願いいたします。
 一方、近年、公的機関によるベンチャー支援は充実化してきております。MEDISOのみならず、経済産業省のInnoHubや、医療系に限った話ではございませんが、NEDOが中核となっているPlus One、各種補助金・アクセラレーションプログラム等、多くのベンチャー支援施策がございます。23ページ、24ページに、参考として主な公的支援策、補助金等をまとめております。
 24ページをお願いいたします。
 こちらの中ほどのAMED創薬ベンチャーエコシステム強化事業につきましては、年間マネーを呼び込むというところも含めながら、認定VCを設置し、さらに事業規模が3500億円になるというところなど、資金面での支援というのも強化が進んでおります。
 次のスライドをお願いいたします。
 このような状況下で、現在の医療系ベンチャー支援の課題として考えられるのは、ベンチャー支援に関する情報を収集し、一元的に情報発信するような交通整理が必要だというところと考えております。
 医療系ベンチャー企業の課題は、本当に様々でございます。また、それに対応するような医療系ベンチャー企業を支援する施策、機関というのも非常に増えております。もちろん1つの支援機関で全ての課題を解決できるわけではございませんので、ベンチャーの抱えている課題に対して適切な支援機関につないでいくということが非常に重要と考えております。
 次のスライドをお願いいたします。
 再度のスライドになりますが、このような課題に対しまして、MEDISOが交通整理を行い、官民によるトータルサポートを実現してはどうかと考えております。具体的には、各支援策の情報収集、情報発信、円滑な支援の橋渡し、イベントの相互乗り入れ・活用促進をこれまで以上に実施し、医療系ベンチャー企業・アカデミアに対するトータルサポートの一元窓口としてより一層機能することで、日本からの革新的な医薬品の創出につながると考えております。
 以上、MEDISOからの御説明でございました。ありがとうございました。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。医療系ベンチャーの支援の実態、及びそこから見えてきた医療系ベンチャーの課題、あるいはその支援策についての御提案といったことについて御説明をいただきました。
 続きまして、これはむしろベンチャーの方々からの御発言ということで、まずはアミカス・セラピューティクス株式会社より御説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○海老原氏(アミカス) 御紹介ありがとうございます。アミカス・セラピューティクスの海老原と申します。
 2ページ目のスライドからお願いできますでしょうか。
 スライドの御説明をさせていただきます。
 アミカス・セラピューティクス株式会社についての御紹介でございます。
 次のスライドをお願いします。
 アミカス・セラピューティクスは、「患者中心」を第一に挙げて、希少代謝性疾患とともに生きる方々のために質の高い医薬品を開発し、提供することを使命とするグローバルなバイオ企業でございます。
 米国におきまして、2002年に遺伝性の希少疾患医薬品の開発を目的に研究所を設立いたしまして、現在、欧米を含む世界約30か国を中心に展開しているところでございます。
 右下の写真でございますが、弊社CEOのジョン・クラウリーという者がその御家族と一緒に写っている写真、及びジョンがお子さんのために治療薬を開発したという経緯が映画になった際のDVDの画像でございます。難病に冒されたお子さん2人を救いたい一心から、全く製薬会社の社員ではなかったジョン・クラウリーが自ら新薬の開発のベンチャー企業をファンディングで起こしまして、お子さんの治療薬を開発したという実話がございまして、これが映画化されたものでございます。会社の宣伝ではないのですが、ベンチャー企業としての成り立ちという意味で御紹介させていただきたいと思いました。
 日本法人といたしましては2016年11月に設立されまして、2018年3月にオーファンの指定医薬品の承認を取得したところでございます。同年5月、薬価収載、上市をいたしたところでございまして、現在も新たにオーファンの医薬品の開発製造及び販売を行っているところでございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 本日のお話の構成を示したスライドでございます。初めにベンチャー企業による薬品開発について、次いで日本で医薬品を課す開発するメリットと課題、最後に、少しではございますが、ベンチャー企業の医薬品開発に関する海外ビジネスのモデルについて御説明させていただきたいと思います。
 弊社はベンチャー企業であり、設立から7年の会社でございますので、この期間に得た見識を踏まえ、また、基本的に小職の今までの医薬品開発から市販後に係る経験を踏まえた御説明になっておりますので、その点、御了解いただければと思います。雑駁な内容も含まれていると思いますが、何とぞお聞きいただければと思います。また、これらの内容に関連しまして、開示すべきCOI関係にある企業はございません。
 次のスライドをお願いします。
 ベンチャー企業による医薬品開発についてというところでございますが、まず開発から上市までの費用の観点からの課題というものがございます。メガファーマに比べますと、長期間にわたっての医薬品開発に必要な予算の確保というのがなかなか難しいところでございます。また、本邦において最初の医薬品開発を手がける場合、成功の可否の判断というのが当初難しく、リスクを避けるためにも先行投資のための人員が最小限に絞られるというところも課題でございます。
 御存じと思いますが、新医薬品の承認取得から上市のためには、第1種の医薬品製造販売業許可というものの取得が必要になってまいります。そのためには、要件として代表取締役と三役と呼ばれる総括製造販売責任者、品質保証責任者及び安全管理責任者の設置が義務づけられておりますので、まずこの4名の設置というところの人員配置が必要になります。そして、会社の設立、事務所の確保に加えまして、医薬品製造販売業許可取得のための要件であるこれらの人員と必須の初期費用として開発要員等の設置が必要となってまいります。企業の規模にかかわらず、この代表取締役と三役、事務所の設置といった費用は発生してまいりますので、必然的にメガファーマに比べますと相対的に初期の費用負担が大きくなるものと思います。
 また、人員が絞られる結果、医薬品の開発から申請のみならず、薬価収載市販後の安全性対策におきましても、外部の契約機関、CROと呼びますが、これらを利用する必要性が出てまいりまして、その結果として費用がかさんでくるといったところも課題だと思います。
 そこで、医薬品の開発着手から市販後の活動に対するベンチャー企業の資金への支援制度を設けてはどうかという提案を申し上げるところでございます。
 先ほどの参考人からも御説明がありましたが、AMEDでは創薬ベンチャーエコシステム強化事業を展開しておられます。これはベンチャー企業にとって非常に明るい話題だとは思いますけれども、基本的には感染症のワクチン治療薬の開発のための、または将来的に感染症のワクチン、治療薬開発に転用できる可能性のある革新的な技術開発を行う創薬ベンチャーを公募すると書かれておりまして、全ての創薬ベンチャーへの支援にすべからく門戸が開かれているわけではないと理解しております。間違っておりましたら申し訳ございませんが、ただし、このような狭き門という形ではなく、もっと広く門戸を広げる方法はないのだろうかというところが提案でございます。実際にAMEDのこのベンチャーへの支援におきましても、令和4年は8つの申請がありましたが、2つのみ申請が採択されたというところになりますので、繰り返しにはなりますが、医薬品の開発着手から市販後の活動に対するベンチャー企業への支援制度といったものが設けられるとありがたいと思うところでございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 続きましても、ベンチャー企業による医薬品開発についてでございますが、臨床試験におきましての患者登録についても課題がございます。こちらは医薬品を開発する会社全ての課題ではございますが、特にベンチャー企業におきましては大きな課題であると感じております。被験者(患者)の治験への理解度、特にプラセボを用いた二重盲検試験等についての信頼度が必ずしも高くないと思われますことから、患者を組み入れるための時間、コストといったものが費やされるところでございます。特に知名度の低いベンチャー企業が実施する治験におきましては、もし競合で知名度の高い会社様が同じような治験を始めている場合には、患者様の参加はおのずと大きな会社のほうに行ってしまうといったこともございます。外資系の場合、国際共同治験に組み入れられることが多いことから、また、海外のインフォームド・コンセントといったものを使わざるを得なくて、日本人特有の感性にマッチしないといったところがあり、患者の治験参画への躊躇といったものを助長させる可能性もあると思います。
 次のスライドをお願いいたします。
 このような状況の中、1つまた提案ということで挙げさせていただいておりますが、患者に治験への理解を深めていただくということで、治験への積極的な参加を促す方策というものが取れないだろうかというところでございます。産官学民患者といった形で、医薬品の開発について検討したり学習する場を設けてはどうかという提案をさせていただきたいと思っております。
 背景におきましては、欧州で10年以上前にEUPATIというPPI、患者市民参画型の促進を目的としたコンソーシアムが設立されております。日本でも数年前にPPI JAPANが設立されましたが、このような産官学民患者といった形で治験というものの理解を深めるような取組をしていただくということもあると有難いと思っているところでございます。
 一方、今、PMDAが安全対策業務の一環として、患者への迅速・的確な情報提供・収集のための患者会との連携といった活動をしてくださっておられまして、こういったことも併せて進めていただけますと、治験というものに関する国民もしくは患者様の信頼感、理解度が深まるものではないかと思っているところでございます。
 次のスライドをお願いします。
 こちらは、僣越ながらPMDAの取組を引用させていただいて御紹介するスライドでございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 このスライドでは、患者の登録及び患者数の把握というところに関する課題をまとめております。これはベンチャー企業には限りませんが、ただ、ベンチャー企業が開発する医薬品の中には希少疾病用治療医薬品、いわゆるオーファンが多く、弊社もオーファンの開発を手がけておりますが、オーファンとして医薬品を開発できるかどうか、オーファンの指定を受けるかどうかといったことは開発の可否、着手に関わる非常に大きな要素となっております。患者数は本邦での医薬品開発の成功確率、それは治験への組入れの難易度や効果の確認のために患者数の推定をするといったこと、また、将来においては売上げの予測といったことに関しても大きく関わる要素でございます。この調査には大幅な時間と労力が必要となります。もちろんベンチャーには限りませんが、ベンチャーでは人員が限られていることから、このような情報を収集するということに関しても課題となっております。
 患者数が公表されていないということから、日本における開発のGo/No Goのディシジョンに時間がかかり、より慎重にならざるを得ないという傾向があると存じます。
 ベンチャー企業では、医療従事者とのコネクションもあまり構築されていないことも多いため、日本で開発実績があり、知名度がある会社と競合している場合に、患者さんの組入れといったところでどうしてもスピード感が得られないといった課題もございます。
 以上を踏まえての提案としての9ページでございます。
 これは現実化するにはいろいろな課題があろうかとは存じますが、私の見解を述べて良いと言っていただいているので、あえて挑戦的なことかもしれませんが、よろしくお願いします。
 おおよその患者数の把握やオーファン指定の可能性など、これらの情報がある程度公表されていることで開発着手のための判断の可否に役立つものではないかと思っております。もちろんベンチャー企業のみならず、医薬品企業の開発への参画を推進するためには、患者数のおおよその推定、累計といった情報が公表されるということも一つの大きな要素になろうかと思います。
 ここで提案でございますが、患者登録システムを推進し、患者数を公表するということができないかということでございます。患者数を元にオーファンの指定の可否が判断できるような制度というものを、もし御検討いただければ、ある疾患の治療薬の開発においてはオーファン指定が受けられるといったある程度の確率の高い情報の下に、日本における医薬品開発の促進といったものも期待できるものではないかというところを提案させていただいているところでございます。
 10ページのスライドでございます。
 10ページのスライドは、医薬品の開発における薬事制度についてでございます。オーファンの開発におきましても、日本人の症例の組入れが必要とされることが少なくないところでございまして、日本の開発開始の優先順位が高く位置づけられなくて、開発の着手に遅れにつながるということがございます。実際に弊社でも、あまり詳しいことは申し上げられませんが、欧米、英国、アジア(日本を除く)でまずは開発を進めながら、日本の承認の準備を進めるといった形で進めていくという議論が常になされております。この辺りに関しましても、国際共同治験におきますとどうしても日本の症例の組入れが遅いといったこともありまして、日本を組み入れ難いといったことを言われるというのは、弊社のみならず外資だと時々聞くようなこともございますので、この辺りで、日本人症例の組入れといったところも一つの課題かなと思っております。特にオーファンにおいてでございます。
 また、欧米の申請資料をそのまま使用できないことというところで、言語が日本語であるということが申請書の基本原則となっているところがございまして、英語の資料もそのまま活用できるという部分もありますが、それをさらに範囲を広げていただくといったことがあると、英語を日本語にし、日本語を英語にするという手間と費用、または誤訳、誤記といったことを防ぐことができるという提案でございます。
 オーファン指定におきまして、また、日本人における安全性のデータや既承認薬との比較データによる有効性を示すことがオーファン指定の要件になっているというところもございます。と申しますと、開発の早期からオーファン指定を受けられるということが難しく、その分の助成金、支援、相談制度の優遇といったところも受けられないといった課題もございます。結果として、他国での開発を優先し、国内での開発の着手が遅れるケースというのもあると存じます。したがいまして、オーファンもしくはウルトラオーファンにおいては、日本人の症例の組入れは必ずしも必要としないといった承認申請制度、医薬品の条件つき承認制度等の仕組みが標準的に適用されるといった御議論をいただけると大変ありがたいところでございます。
 また、市販後の安全対策等で補完するといったことが条件つきになると思いますが、その場合の補助、助成といったものも御検討いただけると大変取り組みやすいかと考えております。
 続いて、11ページでございます。
 人材確保育成に関する課題でございます。こちらも先ほど先生方からもお話がありましたが、米国ではというか、日本以外ではと言ったほうがよいかもしれませんが、転職をしながら少しずつ自身のキャリアを高めていき、ポジションを高めていき、給与や社会的位置を上げるということが比較的行われていると思います。それに比べますと、やはり日本では安定型の就職を希望する傾向がございますので、ベンチャー企業への就職を第1希望にする人材というのは多くないと思います。
 本邦における医薬品開発の参入間もないベンチャー企業では、知名度も低いことがございますことから、なかなかよい人材に第1希望にしていただくのは難しいというところもあるかと思います。
 そのような方々を広く受け入れるために、資金の導入といったところの助成があるというのも一つの案ではないかなと思っているところです。また、医薬品開発から市販後における知識、経験の蓄積というのも、人員が少ないこと、また、どうしても流出が多いというところから難しい課題でございまして、このようなところに関しましても、例えば給与面、待遇面での保障をするというのは大きな課題と思いますので、資金の助成といったことを御検討いただけないかというところでございます。
 また、医薬品特有と存じますが、薬事規制、薬価制度、市販後の安全対策といった専門知識に対する習得、並びに、例えば外資でございますと外国語のコミュニケーションの習得といったものが必要なところから、そのような人材の確保というのが非常に難しいというところも課題でございます。
 提案でございますが、ベンチャー企業への人材確保、育成の支援制度を充実させてはどうかと思います。また、先ほどの御発表でもありましたが、ベンチャー企業の人材育成のために人事交流といったことも制度として御検討いただけないかと思うところでございます。
 12ページをお願いいたします。
 ここからのスライドでは、医薬品を本で医薬品を開発するメリットと課題を多少まとめさせていただいております。
 種々のメリットがあるということは確かでございまして、医薬品開発支援制度が設けられております。また、オーファンの開発支援制度も存在しております。オーファン開発に必要な試験研究費の助成金が設置され、試験研究費に対する税制措置上の申請等の認定事務支援を受けることができるとかというところもございますが、ただし、基本的には医薬品の開発から承認申請の年度末までの原則3年間といった支援というようなところに限られておりまして、申請後の審査対応、薬価収載対応、市販後の安全対策等に関する費用の支援というのは、基本的には大きなものがないと理解しております。
 一定の収益が見込めると助成金に関しても返金の義務が発生するといったところがございますが、これがまた制度利用における躊躇になっている場合もございます。
 したがいまして、提案させていただきたいこととしますと、もっと早い開発段階からの支援、もしくは承認取得後の支援といったものを御検討いただけないかなと考えております。
 13ページをお願いいたします。
 こちらのスライドもオーファン開発支援に関する説明でございますが、医薬品の申請手数料や相談手数料に関しても減額といった措置がございます。これらもいずれも開発までというところでございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 こちらも同様ですが、開発から審査までに審査機関といったものも優遇される措置というか制度を設けていただいているところでございまして、これらは日本における医薬品開発のメリットとして行政から御提供いただいているものと思います。
 15ページでございますが、この有識者会議で過去においても何回か挙げられているかもしれませんが、改めてオーファンの指定要件をまとめております。
 こちらの中で、日本の制度では医療上の必要性開発の可能性という要件がオーファン指定にはかかっております。開発の可能性が高いことという点で、初期段階のシーズが当該要件を満たすことは難しく、また、開発中期から後期になるまでは当該助成が受けられないという状況になっております。
 欧米では主に第1相試験や第2相試験のデータをもってオーファンの指定がされておりますが、日本では第3相試験の成績をもって指定の可否の根拠となされるといった状況です。したがいまして、約6割程度のオーファン指定が承認申請の半年ぐらい前にようやく受けられるというところになりますので、そこからの申請年度末までの助成金を受けるといった形になります。これをもっと早い開発段階から支援するという制度に広げていただけるということがあればありがたいと思います。
 16ページが提案でございますが、開発の早い段階から指定を受けるために、オーファン指定の要件から「開発の可能性」や「医療上の必要性」という文言を除いてはどうかというところでございます。もちろん一定の条件を設けるということは必要とは思いますが、この「開発の可能性」というところで、結局、開発の後期に至るまでオーファンの指定というものが受けられず、助成が受けられないというところも、日本に早期からの薬品開発に対するちゅうちょというものが起こる一つの要因になっていると思います。
 また、先ほどの繰り返しで申し上げますが、審査までの助成といった支援制度というのはたくさんあるのですけれども、承認後でも安全対策等に関する支援というものがあると大変ありがたいかと思います。
 医薬品は臨床試験を実施して承認申請し、承認されればあとは収益を得るのみというものではなく、安定供給のための企業努力、設備投資、維持、安全対策等、再審査期間までの臨床研究といった、承認が取り消されるまでに継続的に企業努力を行っておりまして、その分コストも使ってまいります。ですので、承認申請までではなく、承認後の安全対策等に関しましても、助成といったことを御検討いただけるとありがたいという提案でございます。
 17ページをお願いいたします。
 こちらのスライドは、新医療用医薬品開発支援のための制度に関するメリットと課題を同じく挙げたものでございます。
 メリットといたしましては、再審査期間の設定、承認事項の追加による期間延長などの可能性もございます。
 また、先駆的な医薬品指定制度や条件付き早期承認制度のスキームもございますし、医療上の必要性の高い未承認薬等の開発要請を受けた場合には開発支援が受けられるといったところもございます。しかしながら、こちらも申請までという規定がついているところでございます。
 一方、本邦における開発着手前の成功確率の推定に重要な要素である、患者数のみならず収支を決定する要因として薬価というものがございますが、日本では薬価設定を企業が決める制度ではないために、費用の先行投資のための資金計画や承認後の投資額の回収計画が非常に立てにくいところでございます。
 そこで、提案でございますが、確約するということではないということを前提にして、薬価を相談する場、特にベンチャーで経験の浅い会社において薬価を相談する場や制度というものを設けていただいてはどうかというところがございます。これにより、日本での成功確率に早くに確信を持てる企業が増えてくれば、日本における開発着手の促進にもつながることと期待しております。
 18ページをお願いいたします。
 このスライドは薬価制度に関するものでございます。こちらもメリットがあることは確かでございまして、国民皆保険制度があり、保険収載までの期間も短く、基本的には確実に収載され、一度薬価に収載されたら削除されることは基本的にないといったところが魅力となっていると思います。
 しかしながら、一方で再審査期間中も薬価が引き下げられる仕組みというのがございます。ベンチャーの場合、薬価上の措置として、ベンチャー要件に該当する企業においては、区分Ⅲという係数0.8を掛けられるところを区分Ⅱ0.9というような措置も設けていただいているところではございます。さはさりながら、ベンチャー企業の場合、区分Ⅰに該当するということはほとんどないと考えられますし、ベンチャーに限らず、いわゆる企業に区分を設けるといった制度を再考していただけるとよいのではないかと思っているところでございます。
 そこで提案させていただきたいと思うのですが、製薬企業自体を区分する制度の見直しを検討していただけないでしょうかということで、特許期間中/再審査期間中の新医薬品の薬価を維持することで、本邦における医薬品開発の優先度・価値を高めることが期待されるというところでございます。
 19ページをお願いいたします。
 これは御参考までに含めたスライドでございまして、このように企業区分において加算係数というものが設けられております。ベンチャーにおきましては区分Ⅰに該当することがほとんどないと思われますので、このようなところの見直しをしていただけると大変ありがたいというところでございます。
 続いて、20ページでございます。
 ベンチャー企業の医薬品開発に関する海外ビジネスモデルというところで、4ページ御用意させていただきました。先ほどからの御講演にもありますので、できるだけ早く進めたいと思いますけれども、資金調達の手段というのが日本とは大分違うと感じておりますM&AやIPOなどのファンドがあります。弊社におきましても、会社設立当時からずっとファンドという形で資金を提供いただいているところでございまして、アメリカでございますが、短期的には赤字であっても、中長期的に企業価値があると判断されると、継続的な資金調達というものがございます。
 また、米国ではシーズの段階であってもIPOによる資金調達が可能であります。日本では、成功確率が確認され、実績のある企業が開発を確定した後にIPOが行われるということが多いのではないかと思います。
 米国では、シーズ段階での医薬品開発を資本家・機関投資家が投資の対象とすると同時に、これが社会貢献として捉えられるという視点がございます。このような寄附といったものも日本に起こすと、さらによいのではないかと思う次第です。
 また、日本ではちゅうちょされることが多いと思われるので、医薬品としての開発着手の遅れや残念のか、確率が欧米に比べて高いのではないかと思っているところです。
 提案といたしましては、ベンチャー企業の医薬品開発支援のための資金調達や大手企業とのパートナリングの機会を提供する場を恒常的に提供できないかというところでございまして、先ほどのMEDISOさんのことは不勉強でよく分かっておりませんでしたけれども、そういう場を活用するということも重要かと思いました。
 21ページをお願いいたします。
 このスライドはバイオベンチャーのビジネスモデルを示しております。大きく3つのタイプに分けてありますが、必ずしも1つの型に専念しているとは限りません。収益性や開発期間等に応じて使い分けていると思いますが、創薬基盤型、パイプライン導入/買収型、創薬パイプライン型のようなモデルがあると思っております。
 次のスライドをお願いします。
 22ページ目と23ページ目で欧米の比較というところでございますが、米国ではパイプラインの開発段階にかかわらずファンディングというものがなされておりまして、非臨床の段階、フェーズ1の段階からでもファンディングというものが見受けられますが、23ページに示しますように、日本のファンディングとなりますと、パイプラインが整って他社との提携が進んだ後に行われるというところが見受けられます。
 以上のようなことから、先ほどから何度か繰り返しておりますけれども、開発初期のシーズを日本に早急に導入するためには、開発初期からの支援制度、患者数の把握、薬価相談制度、市販後までの支援制度などの設置を御検討いただけることが喫緊の課題と考えております。
 以上、雑駁な内容となりましたが、このような機会を与えていただきましたことに改めてお礼を申し上げ、私の話を終わりにしたいと思います。御清聴ありがとうございました。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。ベンチャー企業のお立場から、日本で開発を行う上での課題、あるいはそれに伴う御提案をいただきました。
 それでは、引き続きまして、次のお話に移りたいと思います。次は株式会社リボルナバイオサイエンスでございます。資料の御説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○富士氏(リボルナ) リボルナバイオサイエンスの富士と申します。本日はこのような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、スライドの投影をお願いいたします。
 私からは、革新的な医薬品の創出における課題と、当社から見た現状とのギャップについてコメントをさせていただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 次のスライドをお願いします。
 こちらのスライドは、希少疾患に関する数字を御紹介させていただきました。希少疾患の定義は各国によって異なるものの、グローバルでは推定3億5000万人の患者がいると言われている中で、およそ80%が遺伝性であり、また、全体の30%が5歳未満で死亡するとされています。こういった非常にアンメット・メディカル・ニーズが高い疾患領域でありながら、実際に医薬品として認可されている割合はわずか5%しかないといった状況になります。したがいまして、研究開発を加速化させるということが必然的に求められてきています。
 次のスライドをお願いします。
 このような背景がありまして、当社はEVP(Entrepreneurship Venture Program)と呼ばれるプログラムを通じまして、武田薬品工業株式会社からカーブアウトし、遺伝性希少疾患を対象とする医薬品の創出を志向した研究開発型バイオベンチャーとして2018年に操業を開始いたしました。
 次のスライドをお願いします。
 日本でベンチャーを起業するに当たり、経済産業省から出されているベンチャーの一般的なビジネスモデルを参考にいたしました。大きく3つに分類されているかと思います。
 このビジネスモデルを欧米のベンチャーと比較した場合、欧米ではそのほとんどが一番下にあります創薬パイプライン型である一方で、日本国内では創薬基盤技術型やパイプライン買収型の割合が高くなっている点が特徴となっています。
 このビジネスモデルの分類と製薬企業が求めるライセンスインの時期、すなわち人でのProof of Concept(POC)が取れる時期を考慮しますと、創薬基盤技術型やパイプライン買収型では、こちらに赤で示したように、前期の臨床試験期間がギャップとして生じていることが分かります。つまり、前期臨床試験を自社単独もしくはライセンスパートナーである製薬企業と共同で実施するかの選択が求められております。
 次のスライドをお願いします。
 このスライドは、希少疾患に対する治療薬と一般治療薬の臨床開発にかかる費用と期間を比較した論文の抜粋データになります。希少疾患の臨床開発は、患者数も少なく、短期間でコストも低いと考えられがちですが、開発期間は全てのフェーズにおいて希少疾患治療薬のほうが長く、また、第1相、第2相試験におきましては、一般治療薬の開発費用よりも費用がかかるといった結果が示されています。
 その主な理由としましては、対象患者となられます希少疾患の患者さんのリクルーティングに時間を要する点であったり、単価の高い専門の医療機関の確保が必要となっている点が考えられております。
 次のスライドをお願いします。
 それらを勘案しまして、バイオベンチャーの臨床開発に必要なものは大きく2つあるかと考えております。それは資金と臨床開発のチームの形成になります。
 資金に関しましては、新株を発行するエクイティーファイナンス、AMEDを代表とする補助金・助成金、また、金融機関などの借入れといった方法があるかと思います。
 エクイティーファイナンスにおきましてはベンチャーキャピタルがメインとなりますが、時としてエグジット戦略と医薬品の研究開発の方向性が合致しないといったケースがあるかと考えております。
 また、コーポレートベンチャーキャピタルにおきましては、同業種からの出資となるケースが多いことから、いつの間にかその会社が競合相手になっているということがあります。
 また、エンジェル投資に関しましても、日本国内でのチャンネルは海外に比べて圧倒的に少ないというのが現実かと存じます。
 また、AMEDなどの助成金は、株式の希釈化が起こらないといった観点から非常に有益な資金調達の方法ではありますが、ベンチャーが応募しやすい補助事業のような案件では必然的に競争率も高くなってしまい、煩雑な資料の準備を考慮すると、どうしても優先順位が低くなってしまうといった現状にあります。
 その他、金融機関からの借入れ等もございますが、実際には多額の研究費用を要するバイオベンチャーではあまり利用されていないのかと認識しております。
 次に、パイプライン買収型のような臨床開発を軸とした研究を行うベンチャーでは、大きな問題とはならないものの、アカデミア・ベンチャーに代表される創薬基盤技術型のビジネスモデルを継承しているバイオベンチャーにおきましては、一から臨床開発チームのチームビルディングが必要となっております。
 次のスライドをお願いします。
 これらを勘案しまして、当社では、創薬基盤技術から同定された候補物質を臨床研究に入る段階で製薬企業に導出するビジネスモデルを採用しています。臨床研究はパートナー製薬企業が主導しまして、非臨床研究を自社単独もしくは共同で実施することを想定しています。これにより、短期間で多くのパイプラインを構築することが可能となります。
 また、特に専門性の高い製薬企業の臨床開発チームにより研究が行われることで、結果として自社単独で行うのに比べてより短い期間で臨床開発を進められるといったメリットもあるかと考えております。
 また一方で、このビジネスモデルにおいても幾つかの課題があるかと認識しております。
 次のスライドをお願いします。
 最も重要な課題の一つとしまして、パートナー製薬企業との関係性が挙げられます。
我々の候補物質をしっかり上市までつなげていってもらう必要があるために、パートナー企業との信頼関係というのは最も重要だと考えております。
 また、製薬企業の興味関心は各社によって全く異なるために、多くの製薬企業に関心を持ってもらうためにパイプラインのバラエティーを充実させるといった必要が出てきます。その中でも自社のオリジナリティーを明確にしまして、優位性のある情報を提供する工夫が重要となっております。
 次のスライドをお願いします。
 次に、早期導出をする上で、特許の権利化が進んでいないケースというものもあるかと考えられます。したがいまして、特許戦略を含む知的財産の取扱い、パートナー企業に対し交渉可能な権利を明確にしておくということが必要となっております。
 次に、当然ですが、臨床試験の成功確率が高いと類推できるデータを非臨床段階で取得しておく必要があります。したがって、純粋に研究を深掘りするだけではなく、製薬企業が求める情報を先読みし、自ら有益なデータを生み出す必要が出てきます。
 最後に、研究コストに関しましても、取引先を十分に検討した上で決定する、あるいは社内プロジェクトも優先度を持って進めるということで、有限な資金を有効に活用する必要がございます。
 次のスライドをお願いします。
 革新的な医薬品創出に向けて、我々ベンチャー企業としてやらなければいけないことはまだまだたくさんあると感じております。こちらのスライドでは、特に重要だと我々が考えている3つの点を挙げさせていただきました。
 1点目は、当たり前のことでございますが、自分たちが持つ技術を高め、プロダクトの価値を最大化するために今まで以上に努力する必要があると考えております。
 2点目はオープンイノベーションの推進です。オープンイノベーションは、ここ数年前、非常によく耳にする言葉ではありますが、実践につなげられている製薬企業というのはそんなに多くはないのではないかと考えております。我々ベンチャー企業からもオープンなコミュニケーションを促す努力が必要であると考えております。
 最後に、成功事例の蓄積を挙げさせていただきました。海外の製薬企業では、ジェネンテックやバイオジェンといったベンチャー企業から大企業に成長した成功事例が数多くあるものの、日本ではまだその数は多くないと感じております。一方で、他業種を見れば、学ぶべき事例はすぐそばに数多くあると感じています。したがいまして、こういった知識、経験、ノウハウといったものを業界の垣根を越えて学ぶ必要があるのではないかなと考えております。
 次のスライドをお願いします。
 最後に、行政の皆様への期待を記載させていただきました。
 国内のバイオベンチャーは、国内ではなく海外で臨床試験を行うケースというのが非常に多いかと感じております。これは、臨床試験に移行するためのレギュレーションであったり、日本での治験パフォーマンスが海外に比べて低いということが考えられます。グローバルから選ばれる国になるため、行政が中心となって国際的なポジションを高めていただきたいと考えております。
 2点目はバイオベンチャーへのインセンティブです。薬価制度につきましては、本検討会におきましても既に提起されているかとは存じますが、ぜひベンチャー企業から出される特許期間の延長も併せて御検討いただければと期待しております。
 3点目、ベンチャー企業は必ずどこかのタイミングで製薬企業へライセンスアウトする必要があります。ですので、製薬企業側への働きかけ、特に製薬企業に優遇制度が適用されるような取組、ベンチャー企業との連携推進を促すような制度というのが必要になってくるのではないかなと考えております。これが全体として医薬品開発期間の短縮につながるものだと考えております。
 最後に、海外に比べてバイオベンチャーが適用できる、グラント制の資金供給というのは非常に限定的ではあると考えています。今後は柔軟な対応が可能なチャンネルが増えていくということを期待しております。
 発表は以上となります。ありがとうございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。バイオベンチャーのお立場から、様々な課題、また、バイオベンチャー御自身が努力するべき方向性、さらには行政に対する御要望といったことをまとめていただきました。
 最後に、事務局から資料が出されておりますので、事務局からの説明をお願いしたいと思います。
○山本ベンチャー等支援戦略室長 続きまして、資料の御説明の最後となりますけれども、資料5に基づきまして、事務局より行政の取組を中心に御説明をさせていただきます。
 次のページをお願いいたします。
 2ページ目でございますけれども、前回の検討会でもお示ししておりました医薬品のライフサイクルの概要をお示ししております。
 また、その次の3ページでございますが、こちらは本検討会の昨年の議論において取りまとめいただきました論点と主な御意見を再度掲載させていただいております。
 上の論点に記載しておりますとおり、今回は新薬、革新的な利益の迅速な導入に向けた議論のうち、赤囲みに記しておりますアカデミア・バイオベンチャー企業等におけるシーズの開発・導出を促進するための取組をテーマとしております。
 なお、その上にございます長期収載品に関する論点につきましては、次回以降の検討会において御議論いただく予定としております。
 続きまして、4ページ目以降は今回の議題に関する資料となりまして、まず5ページ目で流れを御紹介しております。
 5ページ目の上段でございますけれども、一昨年の令和3年に、医薬品産業政策の方向性の確認と共有を目的としまして「医薬品産業ビジョン2021」を策定しております。この中の大きなテーマの一つを革新的創薬としまして、オープンイノベーションコミュニティーを中心とした研究開発環境の整備等といった具体的な政策を各省で進めていく旨の記載を行っておりました。
 さらに、その方針を踏まえまして、下の段にございますとおり、昨年、令和4年に革新的医薬品創出のための官民対話を開催いたしまして、取組の進捗を御報告しております。
 今回は、昨年の官民対話での報告内容を引用しつつ、行政の主な取組の概要について御説明をさせていただきます。
 次の6ページでございます。
 こちらが昨年の官民対話で報告いたしました革新的創薬に向けた足下の取組の方向性をお示ししておりまして、下の図にございますとおり、創薬エコシステム構築の促進に加えまして、右側にございますバイオ医薬品や再生医療等製品の推進、医療情報データ基盤活用環境の整備、臨床試験効率化や承認審査のさらなる迅速化の大きく4つのテーマについてそれぞれ検討していくとされておりまして、この後の資料はこれらの柱の順に御説明をさせていただきます。
 次のページをお願いいたします。
 次の7ページからは、まず個別のテーマの1点目でございます創薬エコシステム構築促進についてでございます。
 7ページは官民対話での報告内容を再掲させていただいておりまして、課題としては、エコシステムの根幹となる製薬企業・アカデミア・ベンチャー企業の協業関係が十分に構築されていないですとか、アカデミア・ベンチャー企業は必要な資金の調達などに課題を抱えているといった指摘がございました。
 これを受けた具体的な取組として、次の8ページでございます。
 先ほども御説明いただきましたMEDISOやジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット等を実施しまして、エコシステムの構築に向けた各種相談支援、交流機会の提供などを実施しております。
 また、次の9ページでございますけれども、AMEDが実施しております革新的医療技術研究開発推進事業の御紹介でございまして、製薬企業と国のそれぞれの研究費を組み合わせてAMEDからアカデミアに対する助成を行うことで、医療上必要性の高い医薬品等に対する産学官共同による研究開発を推進するという取組でございます。アカデミアや企業単独では取り組みにくい領域に対して、国費と企業の原資を組み合わせて提供することを特徴としております。
 次の10ページは、昨年の医薬品開発協議会で報告されました創薬ベンチャーエコシステム構築に向けた取組の全体の概要の資料でございます。
 課題としまして、水色の囲みのとおり、米国に比べて日本の創薬ベンチャーエコシステムでは数千万円から数億円程度のベンチャーキャピタルからの出資を集めるのがやっとの状況であるといったことですとか、創薬ベンチャーはほかの分野のベンチャーに比べてもビジネスモデルが特殊で、事業の難易度が高く、リスクが大きいにもかかわらず、必要な開発資金が多いといった課題が指摘されておりました。
 これに対しまして、下の囲みのとおり、創薬ベンチャーに対する大胆な実用化開発支援や政府系ファンドの活用等も検討すべきではないかと指摘がされているところでございます。
 これらの指摘を踏まえたベンチャーエコシステム構築に向けた取組を次のページ以降に記載しておりまして、11ページ、12ページは先ほども御説明がありましたMEDISOとベンチャーサミットの御紹介でございますので割愛させていただきまして、13ページでございます。
 こちらも芦田先生等からも御紹介がございました、創薬ベンチャーエコシステム強化事業でございます。先ほど申し上げましたような課題に対応することを目的としまして、具体的には個別のベンチャーキャピタルの認定を行政のほうからしまして、そのベンチャーキャピタルが出資するベンチャー企業に対して、民間出資1に対して2倍までの範囲で国からも臨床試験等の開発費用を追加的に補助するという仕組みでございまして、さらなる民間資金の呼び水としていくことを目的としております。
 また、赤囲みにございますとおり、令和4年度の補正予算からは、感染症分野に限らず支援を行うということで、範囲を拡大して実施するということとしております。
 続いて、次の14ページからは、2つ目のテーマでございますバイオ医薬品や再生医療等製品の進展に関してでございます。
 上に書いております課題としましては、技術の専門性から、アカデミア・ベンチャーの活躍が特に求められる一方で、製薬企業との間で密接な関係が十分には構築できていない。
これは先ほどのエコシステム同様のお話でございます。また、バイオ開発や製造に関する製造設備や関連する人材が国内に不足しているといった指摘がされております。
 これを踏まえました具体的な取組としまして、1ページ飛ばしていただきまして、16ページ以降に具体的な施策を御紹介しております。
 製造拠点整備に関する事業としましては、経済産業省におきましてワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業を実施しております。内容としましては、今後の新たな感染症への備えとして、平時は通常のバイオ医薬品を製造しつつ、感染症感染拡大時の有事においてはワクチン製造への切り換えが可能な、いわゆるデュアルユース製造設備を整備するといった企業に対しまして、その設備構築に要する費用の補助を行う事業となっております。
 次の17ページには、当課で実施しておりますバイオ医薬品開発等促進事業を記載しております。こちらでは、バイオ医薬品の製造技術や開発を担う人材育成のための研修プログラムを継続的に実施してきているところでございます。
 また、次の18ページには、文部科学省が実施しております再生・細胞治療・遺伝子治療実現加速プログラムの概要をお示ししております。AMEDのほうから中核拠点となる大学等に委託をする形で、再生・細胞医療・遺伝子治療分野の研究や、それらの分野の基盤研究などを実施するとともに、若手研究者の育成の促進や伴走支援、マッチング支援なども併せて実施することとしております。
 続きまして、次の19ページからは、3つ目のテーマでございます研究開発データの基盤等の整備に向けた取組を御紹介しております。
 昨年の官民対話におきましては、こちらでは課題としまして、医療情報の収集は国による環境整備が必要であること、創薬分野の研究開発につなげるため、ゲノム情報の収集解析や疾患別に整備されたレジストリの構築などを通して、がんや難病患者によりよい医療を提供することが求められているところでございます。
 それらに向けて、対応の方向性を19ページの下から次の20ページにかけて記載しております。様々な対応の方向性が示されておりますが、その中の具体的な取組の一つとして、次の21ページからでございますけれども、クリニカル・イノベーション・ネットワーク、CIN事業について御紹介をさせていただいております。
 こちらは疾患登録情報を活用した治験や臨床研究が実施できる環境を整備して、臨床開発を加速することを目標とした事業でございまして、具体的には次の22ページをお願いできればと思いますが、こちらに3つポイントがございますけれども、上の1ポツのレジストリ、疾患登録システム自体の構築を進めるとともに、左側、2ポツでそのレジストリを活用した臨床研究や治験を実際に実施すること。また、右の3ポツでは、そのレジストリを活用する際の留意点などをまとめたガイドラインを作成して、より使用の促進を図ることといった取組を併せて行うものとなってございます。
 また、次の23ページでございますが、こちらは4つ目のテーマでございます。臨床試験の効率化や承認審査のさらなる迅速化について触れております。
 課題といたしましては、患者の来院に依存しない治験(分散化臨床試験)導入に向けたルールづくりですとか、再生医療等製品の特性を踏まえた審査要件の明確化、製薬企業等のニーズを踏まえた治験実施環境の整備、関連する人材の確保などが課題として挙げられております。
 これらに対する取組の御紹介でございますけれども、25ページをお願いできればと思います。
 1つ目でございますけれども、オンライン治験信頼性確保・調査事業としまして、患者に対する同意説明や治験の実施、また、データの信頼性の確認などの作業に関しましてオンラインで行えるようにするために、国内外の試験実施例を調査しつつ、オンライン技術を活用して治験を実施する際のガイダンスを策定することとしておりまして、これによって国際共同治験への参加を促進するということを目的とした事業でございます。
 次の26ページでは医療技術実用化総合促進事業について御紹介をしておりまして、こちらはより大規模かつ迅速な臨床研究や治験を実施できるにするという狙いから、臨床試験EDCネットワークという試験データの入力等を共通に実施可能とするための広域のネットワークを構築して、短期間に多数の医療機関から効率的にデータ収集ができるようにするといった基盤を整備するといった事業でございます。こちらもアカデミアや企業が臨床試験等をより実施しやすくするための環境整備となる事業でございます。
 続きまして、27ページでございます。
 こちらは先ほど挙げました4つのテーマとは別の取組となりますが、従来より新薬の研究開発への再投資を促進するための取組としまして、税制上の措置につきましても実施しております。研究開発税制を実施しているところでございます。
 具体的には上の四角囲みにございますとおり、研究開発を行っている企業に対しまして、法人税額から試験研究費の額に一定の割合を乗じた金額を税額控除できるといった制度でございまして、この研究開発税制につきまして、下にございますように、今回の令和5年度税制改正におきまして研究開発投資の維持拡大に対するインセンティブを強化するという狙いから、試験研究費の増減割合に応じて控除上限が変動するという制度の導入ですとか、研究開発型スタートアップの定義の見直しを行っているところでございます。
 最後の28ページでございます。
 こちらは今までお話しいただきましたヒアリングの内容も含めまして、本日の御議論、意見交換に当たっての論点を記載させていただいております。
 希少疾病・小児・難病等の治療薬など、海外では新興バイオベンチャー企業が主として開発している医療上特に必要な革新的新薬について、日本での創薬や日本への上市を進めるためにどのような取組が必要かとさせていただいております。
 前回の12月の検討会では、この革新的医薬品の創出・迅速導入に向けた取組のうち、薬価制度に関する御議論をいただいたところでございますが、今回はそれ以外の取組について御意見をいただきたいと考えております。
 また、別の参考資料のほうでは、その他の施策も含めて資料を掲載しておりますので、必要に応じて御参照いただければと考えております。
 事務局からの御説明は以上でございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
 ただいま、事務局から革新的新薬の創出であるとか、あるいはバイオベンチャーの振興に対する支援ということについて、既に政府として行っていることについて簡潔に御説明をいただきました。そして、最後に本日御検討いただきたい内容、事務局としてのお考えを示されたわけでありますので、できるだけこの内容に沿った御議論いただくことを期待したいと思います。
 それでは、本日は大変貴重な御発表をしていただいていますので、これから御質問、御意見等をいただければと思いますが、最初に、芦田構成員におかれましては、非常にすばらしい御報告をいただいておりますので、もし御質問等があればお答えいただければと思いますと同時に、この分野に大変お詳しい構成員のお一人として、他の発表者に対して御質問、御意見等をおっしゃることも自由でございますので、そのようなお立場でよろしくお願いいたします。
 それでは、いかがでございましょうか。
 それでは、芦田構成員、お願いいたします。
○芦田構成員 座長、ありがとうございます。
 事務局が示された論点とは違うのですけれども、先ほどアミカス・セラピューティクスの海老原様のご発表の最後のところにあったものについて、少しだけコメントをさせていただきたいと思います。
 ご発表の最後に、アメリカと日本でバイオベンチャー、バイオスタートアップが上場するステージが違うというお話がありました。アメリカはパイプラインの開発段階にかかわらず上場しているのに対し、日本はパイプラインが整ってほかの会社との提携が進んだ後に行われるというお話でした。これはデータでも示されていますように事実だと思います。
 これがどうして起こるかということについてコメントさせていただきたいと思います。これは、アメリカと日本の証券市場の仕組みの違いに起因すると考えています。アメリカは基本的には、いわゆる投資銀行、アンダーライターといいますけれども、彼らがこのスタートアップは上場できる、上場させようと考えて、投資家がつくと考えれば上場させるということになります。すなわち、上場するかしないかについて市場が何か判定するわけではないということになります。一方、日本は、基本的には東京証券取引所が審査をして上場するかしないかを決めるということになります。
 日本においてバイオベンチャーの上場がこのような形になっているというのは、東京証券取引所が創薬系バイオベンチャーの上場に係る要件のガイドラインというものを出されているからです。これは数年前に1回改訂されていますけれども、基本的には、ここに書いてあるように、まず複数のパイプラインがあること、最も進んでいるパイプラインが臨床POCを取得していること、もしくは有効性が示唆されるデータを取得できている段階です。それに加えて製薬企業との提携ができていることがガイドラインに示されています。すると、どうしても先ほどのアミカス様の資料にあったような形にならないと上場できないということになってきます。
 ここからは私見ですけれども、日本の東京証券取引所のグロース市場では、上場している会社は、基本的に黒字のスタートアップか、もしくは黒字化が近いスタートアップとなっています。もちろんバイオスタートアップ、創薬スタートアップの場合はなかなか黒字ということではないのですけれども、先ほど申し上げたかなり保守的なガイドラインが設けられています。そこに至らないと上場できていないというのが日本の現状で、アメリカと大きな違いになっているということかと思います。
 コメントをさせていただきました。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、オンラインで井上構成員が先ほど来お手を挙げておられますので、井上構成員、よろしくお願いいたします。
○井上構成員 どうも井上でございます。御発言の機会をいただきましてありがとうございます。
 私、4時前に退出しなくてはいけないということもあって、今日の論題について先にまとめてコメントと、その前に芦田委員に1つ質問がありまして、お伺いしたいと思います。
 私の勤務先の東工大で最近医科歯科との統合を発表しまして、今、工学院長として医工連携を強力に推進しているところで、そこで幾つかの課題意識を持っており、そうした視点から発言させていただきます。
 最初に芦田委員への質問で、資料の6ページに、ここは御発言の中でもあったのですけれども、日本の創薬スタートアップのアライアンス契約というものの大型契約が主に外資系に集中しているというような御指摘がありました。この辺の理由というのはどういうところにあるのでしょうか?日本の製薬メーカーは資金制約があってこうした契約はできないということでしょうか。むしろベンチャーやそのシーズ等に対する評価が低いであるとかそうしたところに依存しているのではないかと思うのですが如何でしょうか?ここの大型契約が外資に集中しているということの理由について、もしその要因について御見解があればお伺いしたいというのがまず最初の質問でございます。いかがでございましょうか。
○遠藤座長 では、芦田構成員、コメントをお願いいたします。
○芦田構成員 ありがとうございます。
 これは、理由は1つということではないとは思います。強いて言うのであれば、海外のメガファーマと日本の製薬企業の一つの違いは、やはり企業規模だと思うのです。創薬基盤技術を導入する、そういうスタートアップに対して大きな契約を結ぶということは、ある意味リスクを負っているわけです。技術ライセンス契約にしても、アセットの導入契約の場合も、早い段階の契約であればあるほど、必ず新薬が承認される、上市できるというわけではありませんので、開発のリスクを負っているわけです。そうすると、資金制約というよりは、やはり売上高とか収益の規模によってどれだけのリスクを負えるかというリスク許容度に違いが出てくるだろうとは思います。そういう意味では、一つの見方としては企業規模の違いにあるのかなとは考えています。
 お答えになっているでしょうか。
○井上構成員 分かりました。
 要は、最近企業側のリスクテイクの問題がありますけれども、そもそも規模の問題でリスクテイクの量が制約されていて、逆に成功例ではなかなか日系とベンチャーの間のシーズの受け渡しが難しくなっているということでございますかね。
○芦田構成員 そうですね。
○井上構成員 分かりました。
 芦田先生の資料も大変参考になりまして、その中でおっしゃられていたどれが原因でどれが結果かというと、全部が同時に負のスパイラルになっているとご指摘されました。これは、我々のアカデミックでいう同時決定というもので、因果関係が双方向で何が原因かがなかなか特定できないという御指摘があったかと思います。私自身もそこの部分は非常に問題かと思っていまして、そうした問題について一つ一つ協議していく必要があるかと思っております。その中で今日の論点の中でいわゆるアカデミアとの連携というところについて、一応理工系大学の者として一言述べさせていただくと、現状、産学連携というものを大学も非常に積極的に進めております。特に我々のところもメディカルエイジアリング、バイオという両方のところで医工連携を注力して行っておりますけれども、どうしても大学の場合は伝統的に研究室単位での研究が多くて、そうすると大型化がなかなかできなかった。研究室個別のプロジェクトが多かったということと、大学というのはサイクルがあって、一つは博士学生とポスドクといういわば2年3年という学生の在籍サイクルの中で研究をやっていく部分と、研究資金もやはり科研費など3年から5年の期限付きというものの中で回している部分が多く、プロジェクトの間断ない長期継続が難しいという部分もあります。
 これが徐々に大型化していかないといけないときに、これは大学側のこれまでの責任もあったと思うのですが、企業側の産学連携に対しての期待感が上がってこなくて、長期の産学連携というものがなかなかやりにくい。企業側のほうでもなかなか長期の連携契約を認めてもらえない。これによって、大学における最も重要な研究開発の担い手である博士人材であるとかポスドクというところの安定雇用ができないという問題があったかと思います。
 こうしたことを解決していく上で、企業、大学の間のマッチングというものがまだまだうまくいっていないのかなという感じがしております。ですので、ぜひ公的なところで、特に厚労省さん等にはそうした大学と企業、またはバイオベンチャー、または日本の製薬企業、外資も含めて、そうしたところのマッチングというものがうまく機能するような仕組みをもう少し工夫していただけるといいかなと考えました。それはやはり企業と大学の間には情報の非対称性があって、名をなした研究者のとこには企業側からかなり集中的に来ますけれども、なかなか研究に時間を費やす余裕のある若手教員のところまで行きにくいという問題もある。その辺のシーズの、またはシーズの前段階になるかもしれませんけれども、そうした研究者と企業のマッチングというのをより進めていく必要があるかなと思いました。
 もう一点は、そうした中で、厚労省さんの事務局の方の御説明、または三菱総研さんからの御説明にあったような様々な公的サービスというものが提供されていますが、実際に大学等で研究している、産学連携やスタートアップエコシステム構築を進めている側からすると、そうした公的サービスの全体像というのがなかなか情報として効率的には取得できていないという問題があります。こうした様々な厚労省の委員等で参加していれば、そこで情報を取得してこられる先生はいらっしゃるわけですけれども、なかなか個別の研究者にまでその情報が行き渡っていないという部分があるので、この辺、もう少し大学に対してのそうした情報提供ということを厚労省さん、またはそれぞれ仲介する三菱総研さんとかそうしたところからやっていただけると、もう少し大規模にできるかなと。
 大学としては、今、より共同研究というものを大学組織としての大型化を図って、それに従ってURAというような形でかなり研究支援人材というのを充実しているところでございます。この辺につきましては、芦田構成員からもあった人材交流というのは非常に重要で、官にいらっしゃる方々、それから、製薬企業等にいらっしゃる方々と大学の間の人材交流、そうした人材活用というものをより進めていく。そうすると、大学、公的機関、企業という間の情報の非対称性を解消してより連携しやすくなるのではないかと考えております。恐らくその後にそうしたベンチャーキャピタル等の開発資金というのが来ると思いますので、まずは入り口のところでの双方での情報の非対称性をできるだけ低めて、マッチングをより機能的にできるような体制を整えていくということ、そして、人材の流動化を図っていくことが非常に重要だと思いましたので、以上のことについて発言させていただきます。
 以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 御発言であって質問ではありませんけれども、事務局あるいはMEDISOさん、マッチングあるいは公的な支援サービスの情報の共有をできるだけさせるという辺りの問題意識について、何かコメントはございますか。
 それでは、川上参考人、お願いいたします。
○川上氏(三菱総研) コメントありがとうございます。
 今御指摘いただきました公的サービスの全体像が効率的に分からないといったところは、非常に我々も問題意識を持っております。今までベンチャー企業や、アカデミアの中でも臨床研究中核病院を持っているような医学系のアカデミアとの連携をしておりましたが、今後はやはりそれ以外の工学系や薬学部のような大学に我々MEDISO事務局が訪れて情報提供をするというのが非常に重要だと考えております。
 実際にちょうどこの半年ぐらいかと思いますけれども、医療系ではない大学から幾つかお声がけをいただきまして、MEDISOの御紹介をさせていただいておるところでございます。今後はそういったところもしっかりと実施していきたいと考えております。
 重要な御指摘ありがとうございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 事務局、何かありますか。
○山本ベンチャー等支援戦略室長 ありがとうございます。
 先ほどのMEDISOからのお話と重複いたしますけれども、公的サービス、行政からの支援施策等の全体像が分かりにくいというお話、御指摘は以前から様々なところでいただいているところでございますので、私どものほうではMEDISOを通じた情報提供、支援等を行っておりますが、それも含めて、できるだけ分かりやすい情報提供や支援を図っていくように努めていきたいと思います。ありがとうございます。
○井上構成員 ぜひ間口を、我々もちょっと意外感があったのですが、今回、大学統合もあって、かなりバイオテックやメディカルエンジニアリングというところに関して我々も中の教員の調査を進めたところ、我々が認識している以上にそうした取組をしたい、またはそうしたことに関連している研究を自分自身はしているけれども、医療系とは連携していなかったというような研究がかなりあります。そういう意味では、少し全日本的にそうしたものに対する個々の研究者の問題意識は非常に高まっている一方で、恐らく病院、中核、そうした診療機関等に割と集中して情報がいっているところはあると思いますので、ぜひそうしたものを少し広めていただくことも必要なのではないかなという感じがいたしました。よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、ほかにいかがでしょうか。
 それでは、小黒構成員、お願いいたします。
○小黒構成員 多岐にわたる非常にたくさんの情報をありがとうございます。
 先ほど芦田先生がおっしゃられたように、証券市場の課題はあると思いますけれども、3つに分けて、「情報」「専門人材」「制度」という3つの側面から少し質問させていただければと思います。
 一つは情報、今の話とも関係するのですけれども、日本国内のいろいろな理工系の先生方、今回のバイオ関係の創薬も含めて研究されている先生方はたくさんいらっしゃると思うのですが、例えば国内のベンチャーファンドみたいなものが、創薬の何かに投資したいと思ったときに、国内のみでなく、海外でも似たような研究している先生方はどういう方々いるのかと、そういうようなリストが開示されていると、投資するときの組合せがまた変わってくるのだと思うのです。逆に海外の創薬ベンチャーファンドから見たときに、実はアメリカとかではこういうことをやっている研究者はいなかったけれども、日本ではこんなことをやっている先生がいる、実はこれは使えそうだというような話もあるのだと思うのです。そういうような基本的な情報の共有というところをもうちょっと行うことによって、少し環境は変えられるのではないかとも先ほど伺っていて少し思いました。
 そのときに、専門人材との関係もあるのですけれども、芦田先生の資料はすごく衝撃的だったのですが、アメリカでは、創薬ベンチャーの供給元、人材は圧倒的に製薬メーカーだという話がありましたので、これは内部で最先端の情報に触れて研究をしている方々が外に出ていくことでそういう環境が起こっているのだろうと想像します。もし間違っていたら後で指摘していただければと思うのですけれども、そうだとすると、日本の創薬ベンチャーが投資を行うときに、そういうような専門人材をアメリカ等の海外から引っ張ってきてやってもいいのだと思うのです。そういうような足がかりみたいなところをどうつくっていくのかというのも結構重要なのではないかなと思います。
 今言った話のもう少し延長線上としては、日本で見た場合に、アメリカとか欧州といったところだけでなくて、例えば東アジアなどでも人材がいるかもしれない。そういう意味で、東アジアとの連携みたいなものを考えていくということも重要なのではないかと思います。特にオーファンで産官学民の検討の場で治験の話がアミカス側からありましたけれども、私、こういう場を設けることは非常に賛成ですし、患者数の公表とかをやっていくというところも重要だと思うのですけれども、同じアジア人で見たときに、例えば日本と遺伝子が違うという話もあるかもしれませんが、ベトナムとかそういうところは近いのだと思うのです。希少疾患のこういった薬をある程度治験しようとした場合に、東アジアの国々と連携するというのは当然あると思うので、そういうような共通のプラットフォームをつくりながら支援していくという方法もあるのかなと思いました。
 最後に制度の話なのですけれども、薬価制度の話は置くとしても、最後に上市するときに日本の薬価制度の問題は不透明だという話で、これは有識者検討会議の重要なテーマそのものだと思うのですけれども、当然コストをかけて開発しているので、収載の薬価や上市後の薬価など、先が見通せなければキャッシュフローが最終的にどうなるか分からないわけです。ただ、それはそうなのですけれども、上市するときも国内だけではなくて海外もあり得ると思います。そのときに、欧米、東アジアといった国々との関係で、先にそちらから上市していったりして資金調達する方法もあると思うのですけれども、そういうことも国内で政府が少し支援するというやり方もあるのかなと思いまして、そういうようなことを既存で既に議論されているのであれば、別に私が申し上げる話もないのですけれども、実際にその辺はどういうふうに見ていらっしゃるのかとか、少し何かコメントいただければと思います。
○遠藤座長 どなたに対してですか。
○小黒構成員 実際にプレーヤーでやっていらっしゃる方々と、最初の制度みたいな全体の情報のプラットフォームみたいなものは厚生労働省の事務局の方かなと思います。
○遠藤座長 分かりました。
○小倉構成員 すみません。あと、芦田先生にもぜひ一言いただければと。
○遠藤座長 それでは、どなたでも結構ですので、ただいまの小黒構成員の御発言について。
 それでは、富士参考人、お願いいたします。
○富士氏(リボルナ) 製薬からの人材というところで少しコメントさせていただければと思います。
 やはり海外のベンチャーの人間、製薬企業の人間からすると、国内の製薬企業の人間の人材流動性というのは、まだまだ海外に比べて低いものと思っています。海外の製薬研究者というのは、1年単位に場所を変えていったり、研究の機会を求めていったり、それが研究であったり、ベンチャーの経営であったりとかなり多くの転職機会を得ていると感じています。
 一方で、日本の製薬企業、特に製薬企業出身の研究者というのはまだまだ製薬企業の中での研究に数多く存在するのかなと思っています。今、転職機会というのもかなり日本国内でも充実している環境にはあると思いますので、こういったところが製薬企業の研究者というところまで波及していければ、今後のそういった機会、オポチュニティーというのはどんどん増えていくのかなと感じました。
○小黒構成員 私、もともと京都大学なのですけれども、理学部で生物系とかバイオ系を研究していた友人が、卒業後に製薬メーカーに就職しました。その後、製薬メーカーを退職した後にどこに行っているというと、外資系に行ったのですけれども、どこで研究しているかというとやはりアメリカなのです。なので、グローバルに見た場合に、アメリカが全てだと思わないのですけれども、そこがやはり最先端でホットな研究拠点になっているのかなと思います。
 そういう意味では、これは鶏と卵の関係に思いますが、最初に芦田先生がおっしゃった回転させていくときのトリガーというのはやはり専門人材なのではないかと私は思いまして、そういう意味では、最先端の専門人材をどういうふうに日本に呼び込んできて融合していくのかというところを真剣に考えるということも重要に思います。国内に優秀な研究者は、iPS細胞でノーベル賞を取られた先生もいらっしゃるので、当然いるのだと思いますけれども、マスの視点で考えるとそういうことかなと思っております。
○遠藤座長 では、事務局から何かありますか。
○横関治験推進室室長補佐 ありがとうございます。厚生労働省研究開発政策課治験推進室室長補佐の横関と申します。
 先ほどアジアとの連携についてといったお言葉をいただきましたので、現在行っている体制整備について御案内させていただければと思いまして、発言させていただきます。
 現在、医薬品の研究開発の環境整備としまして、日本を主導としました国際共同治験が行える枠組みの構築を目指し、アジア地域の臨床試験の環境整備を行っております。実際にはタイ、フィリピン、インドネシア等のアジア地域におきまして、現地の人材育成であるようなソフト面と現地の拠点構築といったハード面の2点から整備を行っておりまして、我々としてもそのような整備は非常に重要と考えておりますので、引き続き行ってまいりたいと思います。ありがとうございます。
○遠藤座長 では、芦田構成員、お願いいたします。
○芦田構成員 人材については、私も説明したように非常に重要な要素だと思います。私の発表の中にもありましたけれども、御指摘のように、海外、特にアメリカの人材を活用していくということも必要なのだろうと思います。その方法としては、アメリカの方に日本に来てくれと言うのは非常にハードルが高いので、一つにはアメリカに法人をつくり、そこで人材も獲得し、できれば資金も獲得していくということが必要だと思います。ある意味アメリカのエコシステムの中に入り込んでいくということが必要なのではないかなと思います。
 今、日本の創薬スタートアップのエコシステムを見てみますと、全てではありませんけれども、多くの場合、シーズが日本発であって、日本の方が日本の資金を使って日本で開発し、もしくは海外で開発する場合もありますけれども、やはり日本が中心で、最終的には日本の証券市場で上場しようとしている。どれも日本、日本、日本となっています。先ほど申し上げましたが、革新的医薬品は、基本的には製品がグローバルなものですし、プレーヤーも、顧客も、それから、競合もグローバル企業なので、やはりグローバルのエコシステムの中にどう位置づけていくかというような視点が必要だと思います。そういう意味では、日本の中に閉じたエコシステムではなくて、いかに海外のエコシステムの中に入り込んでいくか、もしくはリソースを取ってくるかといった視点が必要なのではないかと考えています。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 ただいまの議論の延長でも結構ですし、あるいは個別の御意見、御質問でも結構です。
 三村構成員、お願いいたします。
○三村構成員 少し論点が変わるかもしれないのですけれども、今回、非常に丁寧な御説明をいただきまして、大変ありがとうございました。芦田先生のご説明も非常によく分かりました。大変論点が多いということと、それから、ミッシングリンクというか非常にいろいろなところに欠けているものがある。どのようにつないでいくかということがこれから大変重要であるということをよく理解いたしました。
 ただ、そのためにまず何からできるかということが恐らく重要であろうということで、先生が13ページに、やはり何よりも成功事例をきちんとつくっていくこと、それから、私もこの点に賛成なのですけれども、海外開発、海外リソース運用支援ということで、特に政府機関における治験の援助、国際治験ということも今、厚労省からも御説明をいただきました。
 それにも関係するのですけれども、先ほどアミカスさんのほうからも非常にいろいろな形で具体的な御説明がございました。何からをまず強くするのかということですが、たまたま私の関心といたしまして、やはり患者のデータ、あるいは患者会とか患者との間の接点をきちんと強くしていく必要があるということで、6ページ目にもそういった御説明とか御提案がございました。PMDAがやっているような患者会とか患者支援の仕組みを、今は薬の安全というところに基本的には重点があるのですが、ある意味で、やはり難病の患者さんたちですから、新しい薬を開発していくためにも、患者会をもっと有効に活用できるのではないかという御提案だと思いますし、私も賛成です。
 それともう一つ、これはリボルナバイオサイエンスのほうからの御指摘ですが、薬の研究開発において、やはり第2相から第3相に進むところが一番大きなネックであり、そして、患者のリクルーティングとか専門的な機関の確保、治験体制の確立が非常に大変であるというお話でした。(トル)それに対して一体何をやっていったらいいのか。PMDAも最近いろいろな形で事業を展開されていて、非常によくやっていらっしゃるのですけれども、国際治験体制を整備・支援していく、あるいはアカデミアとの連携し人材を活用していく、組織体制を強化するという方向の中でいろいろ御苦労されているというお話も伺っております。
 そうすると、やはりそういうところをしっかりつくっていく必要があると思いますが、そういうところについて、例えば芦田先生はどのような御意見をお持ちなのか。あるいはアミカスさんやリボルナバイオサイエンスさんのほうから、それについて具体的にこれをまずは行っていただきたいみたいな御提案が何かあるのかどうかということについて質問させていただきます。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
 例えば芦田構成員、何かコメントはございますか。
○三村構成員 ご説明のなかで、AMEDとかPMDAに触れていらっしゃいますから、それをある意味で強化していくというような方向性もあるのではないかと思いましたので、それに対しての芦田先生の御意見ということで。
○芦田構成員 AMEDにしても、PMDAにしても、やはり人的にも予算的にも強化が望ましいと思っています。例えば以前、ドラッグ・ラグが課題になったときに、ドラッグ・ラグの中身で審査ラグが議論になりました。その後、PMDAの体制が強化されて、そこの部分はかなり改善されたという認識でおります。そういったことも含めて体制の強化ということができれば、効果が出るのだろうと思っています。
 同じようにAMEDに関しても、AMEDができたのは10年近く前だと思いますけれども、それ以前に比べれば政府の助成、補助というものについて非常に分かりやすくなってきたということはあると思います。AMEDのいろいろな事業についても、ここ近年ですけれども、先ほどMEDISOさんや事務局からの資料にありましたように、ベンチャーを直接対象とするような事業も増えてきているということで、AMED自体の考え方も良い方向に変化してきているのかなと思っています。
 しかし、それで十分かというと、先ほど申し上げましたように十分ではなくて、より拡充していく必要があるのだろうと思っています。
○遠藤座長 よろしいですか。
 それから、患者会の話も、言及をされておりますので、どうでしょうか。アミカスさん、何かコメントはございますか。
○海老原氏(アミカス) ありがとうございます。
 私も製薬会社で随分長いこと働いているのですが、例えばインフォームド・コンセントの文章を見ていただくとか、治験の結果を治験に入っていただいた方々には御説明をする機会とかといった形で、昔よりは患者さんと近づいているといった機会は増えていると思うので、各社さんいろいろ取り組んでおられると思うのですけれども、各社の努力というよりは、もう少し治験というものはどういうものなのかといったところの目線合わせといった場がやはりあるといいのではないかなと思うことがとても多いです。
 これはカルチャーの違いもあると思うのですけれども、あるファンドから研究資金みたいなものをもらって、製薬会社の何名かで世界各国の患者会の聞き取りをさせていただいたことがございまして、そういうときに、欧米の患者会、アドボカシーのほうのタイプの患者会ですと、治験に入るということは、自分のためというよりは自分の子供、孫のために、自分がそういった治験に入ることでよりいい薬を早く出せるということをおっしゃる患者さんもとても多いように感じるのです。日本の患者さんが少ないとは言いませんけれども、やはりそこの部分での治験というものに対する考え方といったことをもっと今のような形で考えていただけるような場があればすごくよいのではないかなと感じますし、先ほどの資料でも申し上げましたように、産官学民患者というところでお互いの不安とか疑問を適切に議論し合うといった中で、高め合うとか制度に生かしていくといった機会もあると、日本においての治験がさらに推進するといったことにつながるのではないかなと思っている次第です。
 お答えになっていれば幸いです。
○遠藤座長 三村構成員、よろしいですか。
 特定の疾患に関しては患者会は大変強いところもあって、がっちり製薬メーカーとか特定の医学者との関係が非常に強固なところも多々あるということなので、そこはばらつきが非常に大きいということですよね。
 ほかにございますでしょうか。
 それでは、三浦構成員、お願いいたします。
○三浦構成員 三浦でございます。
 詳細な御説明を御丁寧にいただきまして、皆様、どうもありがとうございました。
 芦田先生に少し質問させていただきたいのですけれども、すごく分かりやすく明快にお話しいただきまして、参考資料のところを読ませていただきますと、創薬スタートアップというだけではなくて、日本はやはりベンチャーが弱い、スタートアップが弱いという話がありまして、まさに先生が書かれているように人材、資金、事業という話で、事業というところは政府の政策とかにもすごく関わってくる感じがありまして、例えば、ちょっと話が変わって恐縮なのですけれども、EVとか日本は周回遅れという話がありますけれども、その一方で、EU、ヨーロッパなどの場合には、CAFEとたしか言っていたと思うのですけれども、燃費の規制がありまして、EVをたくさん作ると税金が安くなるとか罰金が減るみたいな、したがって、EVをいっぱい作らせるような政府の政策があるというので、どんどんEVはありますし、中国もほとんど同じような制度があると聞いております。そういった意味では、中国もどんどんEVが増える。
 そういうふうに考えますと、こういった創薬スタートアップをどんどん増やしていく、創薬をどんどん増やしていくためには、たくさん新薬を出したらそれだけ税金が減るとか、利益が増えるとか、政策的に何かそういったシステムみたいなものができてくると、実際に人材もなかなか集まりにくいとか、資金も集まりにくいと言うのですけれども、そういったシステムみたいなもの、政策があると、人が入り込んできやすくなって活性化するかなという感じが、EVの話にかかって恐縮だったのですが、ちょっと思ったもので、そういった画期的な割合で税金をどうするかみたいなことかもしれませんけれども、何かそんな政策が考えられるかどうかという御意見をひとついただきたい。
 あともう一点ございまして、イノベーションというと産業クラスター、産業集積という話がすごくありまして、シリコンバレーが物すごくはやった後ですけれども、世界各国がみんな産業集積をつくるという話になりまして、もう10年、20年前ですかね。北京の中関村という北京大学、清華大学があるところで中関村科技園区というものをつくりまして、北京大学、清華大学の人材も入ってくるわけですし、日米欧の企業が来るとか、関連企業がそこに入ってくるみたいな話がありまして、そういった意味ではすごく成功するとか、あと、ちょっと読んだ話だったら、バイオバレーというのがヨーロッパにあるという話で、ドイツとかフランス、スイスとかですか。やはりミュンヘン大学とかがありましたし、BASFとか製薬企業もたくさんありますもので、そういうふうに考えると、創薬クラスターみたいな日本版バイオバレーみたいなものがあるかどうかみたいなことを考えまして、MEDISOさんがおっしゃったように情報を一元化するというのはすごく重要です。これは、行くとみんないろいろなことを考えられるとかというお話もありますし、アミカスさんがおっしゃった患者が登録すればみんな使えるとか、あと、リボルナさんが言われた企業との連携もすごく簡単にしやすいみたいな、なかなか簡単にはいかないかもしれないのですが、そういった何か、日本版バイオバレーかもしれませんが、創薬クラスターみたいなものを、もちろん簡単にはいかないかとも思うのですが、そういった可能性があるかどうかみたいなところ、御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 では、芦田先生、何度も申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
○三浦構成員 すみません。恐縮です。
○芦田構成員 1点目の政策というか規制面だと思うのですけれども、確かに自動車産業において排ガス規制みたいなものを使って産業振興をするというのは、ヨーロッパはかなり以前からやっていることで、その辺はうまく使われているのだろうと思います。医薬品に関してどのように考えるかとしたときに、基本的には薬事は三極ハーモナイゼーションをされていますし、しかも、それぞれのところで情報が活用できるようにしようということですので、そういう面で海外との差をつけるということはないかな、むしろ逆行してしまうかなと思います。
 一方で、先ほども出てきましたけれども、例えばオーファンの指定方法といったところは、実は国とか地域によって違っています。先ほどのお話はむしろ日本が劣後しているというお話だったので、そういうところは改善の余地があるのなと聞いておりました。
 あと、2点目のクラスターについてですけれども、これは今、政府、自治体、それから、民間のいろいろな業界団体が、関東圏と関西圏でグローバルバイオコミュニティと呼ばれているクラスターづくりをされています。これは創薬に限ったことではなくて、基本的にはバイオコミュニティですので、創薬に加えて、それ以外のバイオケミカルであるとか、いろいろなものを含みますけれども、そういったコミュニティをつくって、交流や情報発信をしていこうという試みが既に始まっています。
○三浦構成員 では、そういった人もグレーター東京とかに創薬のクラスターみたいなところも入り込んでいけるみたいな感じになっているわけでしょうか。
○芦田構成員 創薬、メディカルもその一部になっています。
○三浦構成員 分かりました。ありがとうございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 三浦構成員、よろしいですか。
○三浦構成員 はい。
○遠藤座長 ほかにいかがでございましょうか。
 それでは、坂巻構成員、お願いいたします。
○坂巻構成員 坂巻でございます。
 本日は、芦田先生、それから、各参考人の方から大変勉強になる話を伺えて、ありがとうございました。
 今日お話を伺っていて、自分の頭の中を整理してみたのですけれども、今日、タイトルはベンチャー支援ということになっているのですけれども、少し分けて考えると、ベンチャー支援といっても、最初のシーズと言っていいのですかね。特にアカデミア発のシーズをいかにその後の開発パイプラインに乗せていくのかという最初のステージと、それから、芦田先生のお言葉で言うとアセットであるとか、あるいは特定のモダリティー、例えばペプチド医薬であったらペプチド医薬というモダリティーの基盤技術をいかに事業化するか。いずれにしても、事業化のプロセスをいかに強化していくかというところ。それから、3番目はあまり議論にならないとは思うのですけれども、ベンチャー企業をいかに育てていくのか。例えばリボルナさんからお話があったジェネンテックみたいな、ああいった成功企業をどうやってつくるのか。
 恐らくその3つぐらいに整理できるのだろうと思うのですけれども、その上で、事実認識としてどう考えればいいのかなというところを特に芦田先生にお聞きしたいのですけれども、まず、アカデミア発のシーズのところは、基本、恐らく少ないのだろうと思うのですが、これは現実として少ないのかどうか、あるいは少ないなら少ない理由として何が原因なのか。実際にアイデアとしてはいっぱいあるのだけれども、開発プロセスまで持っていくところのいわゆる死の谷とかという言葉なのでしょうか。そういったところに何か問題があって小さく見えているのかどうか。このところは、実際はどうなっているのかというところをまずお聞きしたいと思います。
 3つお聞きしたいのですけれども、2つ目が、そもそも先ほど申し上げた2番目の事業化する力についてはどうなのだろうか。これも何となく弱いのだろうなというのはお伺いしていて感じていて、それに対する御提案もいろいろと今日伺うことはできたと思うのですけれども、例えば、これはパーソナルコミュニケーションなのですが、あるグローバル企業の方が海外のバイオベンチャーとお話しして、実は日本の会社にライセンスアウトしているのだよねという話があった。ところが、その日本の会社はいつまでたっても上市できていない。こういったことも結構あるのだよという話がありました。これは事実かどうか分かりませんけれども、何となく日本の、そもそもバイオベンチャーもそうなのだけれども、パートナーである製薬企業も結構事業化する力に問題があるのではないか。ここも、実際はどうなのだろうか。もしそうだとしたら、どんなことを対策として考えなければいけないのか。これが2つ目です。
 それから、3つ目は資料の11ページ目ですけれども、自社でアセットの創出から臨床開発まで進めている企業がそれほど多いとは言えない。しかし、逆に考えると、ベンチャー企業が全てアセットの創出から臨床開発の全てをやらなければいけないのだろうか。
 例えば自分の関心領域は抗体医薬や免疫治療といったところなのですけれども、海外の会議に行ってみますと、様々なCROであったり、CDMOといったものが非常に多いなとすごく感じます。例えば日本でも、CROというと臨床開発だったり、GLPについてのCROは結構出てきていますけれども、例えば抗体医薬であればアッセイ系のCROであったり、そういった組織がPOCをつくるための委託研究を一緒に行う。
 ところが、これも印象ですけれども、日本ではそういったCRO、さらには製造のほうのCMO、CDMOも非常に弱いなと感じています。今日の芦田先生の資料の中でいうと2ページの図になると思いますけれども、そういったCDMO、CROの育成について、今日は論点には入れていないということでしたけれども、そこをどういうふうに育成すべきなのだろうか。シーズを持っている会社に対しては、ある意味薬価で最終的に何らかのインセンティブになるかもしれませんけれども、日本でCMOやCROが育っていかない理由の一つは、直接的なインセンティブとして補助金ぐらいしかない。そこについて私は問題意識を持っているのですけれども、それについて芦田先生はどうお考えになるのかということをお聞きしたいと思います。
 芦田先生には3つですけれども、もう一つ、せっかくですのでアミカスの海老原さんにも質問したいのですが、今日初めて知ったのですけれども、2ページ目の『小さな命が呼ぶとき』の本は、実は資金調達まで非常に詳しく書かれていて、ビジネススクールのケースとして読んでも非常に勉強になるもので、私、大学の教材で使っているのです。この社長のジョンさんはハーバードビジネススクール出身で、会社名は覚えていないのですけれども、どこかの会社に買収されて、今はサノフィになっていますよね。先ほどの3つ目の質問とも関係しますけれども、全てベンチャー企業が最終的にベンチャー企業として生き残るのだろうか。最終的にはどこかの会社に買収されてしまうという道もある中で、ベンチャービジネスとして継続することの理由は何なのでしょうかということをお尋ねしたいと思います。
質問が長くなりましたけれども、以上になります。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それではまず、芦田構成員からコメントをお願いいたしたいと思います。
○芦田構成員 ありがとうございます。
 1点目の御質問は、日本のアカデミアのシーズについての御質問だったと思います。私自身は一つ一つのシーズといいますか、アカデミアの研究成果については、ユニークなものであったり、非常にポテンシャルがあるものが多いとは思っています。多いか少ないかというのは、結局、何と比較して議論するかになりますが、例えばアメリカと比較した場合には、数の上でも少ないというのが実情だと思います。もともとアメリカの研究費と日本の研究費、また、研究の人口を比較しても、そこには差がありますので、少ないのが現状だと思います。ただ、日本にシーズがないかというと、創薬基盤技術にしても、それから、医薬品のシーズになるような研究というのは、非常にポテンシャルがあるものはたくさんあると見ています。
 先ほどの私の発表の中で、その上で何が課題かということを申し上げました。一つには、やはり創薬基盤技術を、例えばペプチドの技術や核酸医薬の技術など、ある先生が開発したというものを、それでスタートアップができるということも一つの方法です。それに加えて、アカデミアの中でそういった技術を、臨床をやっていらっしゃる先生との共同研究によって新しいシーズを作っていくというようなことが、まずアカデミアの中でもできていいのではないかと考えています。そのようなアカデミアでの研究を拡充することによって、いわゆるアセットの元になるものがもっと増えてくるということができるのではないのかと考えて提案をいたしました。
 もう一つは、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますけれども、やはりアカデミアの研究の成果だけだと、医薬品開発の視点、もう少し平たく言うと、例えば製薬企業から見たときに、データパッケージや知財の範囲などが必ずしも十分ではない。そうすると、なかなかそれを取り上げるのは難しいということが言われていますので、そこは資金であったり、ノウハウであったりというところをより拡充する必要があるのではないのかなと思っています。それで先ほどのような提案をさせていただいたところです。
 2点目の製薬企業の事業化する力ということですけれども、これはかなり個別性が高いのではないかなと私は思います。日本の製薬企業はと括って議論するのはなかなか難しいと思います。日本に本社を持つ製薬企業の中でも、例えば創薬であったり、臨床開発であったり、海外も含めた事業化、ここで海外を含めた事業化というのは、必ずしも自分が開発して販売するというだけではなくて、海外の企業と提携して事業化を進めていくということも含めて申し上げていますけれども、そういったことをされている企業もございますので、事業化する力というのは個別性が高いのかなと思います。
 それから、3番目のCRO、CDMOの点ですけれども、御指摘のとおり、創薬スタートアップが一から十まで全てやるということではないと思います。研究の段階、開発の段階でCRO、CDMOを使うということは実際に行われていますし、それは日本だけの話ではないと思います。
 先ほど事務局のほうからもお話がありましたけれども、CDMOについては、特に新しいモダリティーについて日本は体制が整っていないということが指摘されています。先般のワクチン戦略の中でCDMOを整備しようということで、いわゆるバイオ医薬品、これはタンパク製剤からmRNAまで非常に幅広いですけれども、そういったものを製造するCDMOに対して補助金がつくことになりました。その問題意識は恐らく政府および業界内で共有されていて、一つの方策として今回拠点整備が行われたという認識でおります。
 以上です。
○坂巻構成員 ありがとうございます。
 ちょっと最後のところだけ、例えば抗体医薬のCMO、CDMOでも薬事承認取得の経験まではまだいっていないですけれども、幾つか立ち上がっているところはあるのですけれども、結局、経験がないというところで、既存の製薬会社もそういったCMOを使わない。日本の新しいCMOを使うのであれば、むしろ海外の経験のあるCMOを使ってしまうということで、結局日本のCMOがなかなか育成されないという問題を私は感じております。そこら辺を具体的にどうしたらいいのかなというところも今後検討していただければと考えております。
 ありがとうございました。
○遠藤座長 お願いいたします。
○海老原氏(アミカス) 坂巻先生、ありがとうございました。
 先ほどの御質問の前に、CROさんのことについて言うと、個人的見解ではありますけれども、1つの流れとしては、CROに入社されて、ある程度経験を積まれて、製薬会社に転職するという方が多いやに聞いております。片や製薬企業といたしましても、人材を効率的に使うために減らしているので、片やCROさんで例えば臨床試験の実施の経験を積んでいるCROさんが多くて、製薬会社のほうがむしろその経験が少ないといったところもあると思いますので、そこは必ずしもCROさんが育たないということではないとは思っています。むしろCROさんの経験のある領域といったところもあると思いますし、薬事開発に関しましても5年10年かかる中で、いろいろな会社をお手伝いしておられるCROさんのほうがむしろ現状に詳しいという方もおられると思うので、一概になかなか言えないのではないかなと個人的には感じているところがございますので、意見を述べさせていただきました。
 それから、先ほどおっしゃっていただいたサノフィさん、あまり会社名はあれですが、その前にサノフィさんはジェンザイムさんを買われて、そこのところにあった薬剤のことをおっしゃっておられると思うのですが、私の聞いているところでは、ようやくお子さんたちのために治験薬が開発できて、治験をしようとした段階で、要するに、会社の経営者が自分の子供さんを治験に組み入れるということに対するコンフリクトのようなことが問題になりまして、それもあってジョンは会社を辞めて、お子さんに治験の治験薬を投与するという判断をしたと私としては聞いておりまして、そこのところは開発したからそれを売って次の資金源にということがメインの売却の理由ではないと聞いておりますので、真実のところは分かりませんけれども、そういったことで苦慮したというところも聞いているところです。
 現在の話で言いますと、どちらかというと、弊社はベンチャー企業だからかもしれませんが、開発本部長をしておりますが、あまり売上げのことについて厳しく言及されることよりも、むしろいかに効率的に患者さんに医薬品を届けるかのほうを重点的に議論する会社でございまして、今まで何社も製薬会社を経験した中では珍しい、あまりにももうかるということの議論がない会社なので、そういう意味では、会社を育てて売るというような気がうちのCEOとかにはあまりないのではないかなと思っているので、そういう意味での資金繰りをしていくというモデルケースではないような気がしていて、お返事するのが難しいと感じております。申し訳ありません。
○坂巻構成員 私の質問の仕方が悪くてすみません。個別の会社の話ではなくて、一般的にベンチャーであることのメリットは何かなということで質問したつもりだったのです。
 それから、前半のCROに関しても、確かに臨床開発のCROは日本もかなり経験が豊富になってきていて、しかも、私が言うまでもないですけれども、臨床試験の進め方もかなり変わってきています。そういった臨床試験の新しい流れに関して、進歩を支えているものもCROの役割だと思うのですよね。ただ一方で、先ほど言ったように非臨床系のCRO、特にアッセイであったり、そういった非臨床系のCROに関してはまだまだ日本は弱くて、そういう意味では、技術進歩を支えるというところまでいっていないというところに私個人は問題意識を持っております。
○海老原氏(アミカス) ありがとうございます。
 全般的なことを知っているわけではないので、生意気かもしれませんが、そういう意味では、日本からある時期に基礎の研究所がかなり海外に流出したというところで、その辺りを本当に御研究をされている方々がなかなか日本で昔ほど育っていないのではないかなといった印象はある気がします。基礎研究の部分で、昔よりは海外、アジアとかアメリカに研究職の方が流れているといったことも傾向としてはあるのかなと思わないではないです。
 もう一つ、先ほど申し忘れましたが、国際共同治験といったことが主流になってまいりますと、海外の本社で契約したCROさん、その子会社のCROさんが日本で治験とかに対応するというようなことも出てきていると、日本ではまだあまり実績がない海外のメガなCROさんの子会社さんという方たちが対応するということも何回か経験しておりまして、ですから、そういうところと日本にしっかり根付いてある程度の経験、実績を積んだCROさんがおられるというところも少し違う、幾つかのばらつきがあるのではないかなと僭越ですが思うときがございます。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
 ほかにいかがでございましょうか。
 それでは、成川構成員、お願いいたします。
○成川構成員 成川と申します。
 本日は資料の作成、それから、御説明ありがとうございました。
 私は、先ほどベンチャー企業のメリットという議論がございまして、それについてリボルナさんにお尋ねしたいのですけれども、御社の場合は武田薬品さんから独立というかスピンアウトという、そういう歴史でできた企業と認識しています。そのとき、要するにどういうメリットを期待して、そういう事業戦略を取られたのかということと、実際に活動してみてそれが想定どおりに行っているか、あるいは何かとても困っている点があるというか、その辺り、差し支えない範囲でお聞かせいただければと思います。お願いします。
○富士氏(リボルナ) ありがとうございます。
 私はもともと武田薬品で研究を務めていた研究者だったのですけれども、当時のポートフォリオから逸れたプロジェクトを進めたいというところで我々はカーブアウトして進めています。ですので、1つ大きくメリットがあるというところでは、武田薬品で当時できなかったプロジェクトというのが、ベンチャーになって我々のプロジェクトができるということ。また、当社はプラットフォームをもってパイプラインを創出するというビジネスモデルを構築しているのですけれども、ですので、数多く広範なパイプラインをそろえることができる、幅広く研究開発が進められるというところにメリットを感じています。
 また、もう一つ、意思決定の早さというところが挙げられると思います。やはりバイオベンチャーはデータが出てそこからすぐ次のディシジョンに向かえるというところから、大きな製薬会社での意思決定のプロセスから比べると非常に簡素化されていて、そこが一つやはりバイオベンチャーでいる大きなメリットかなと感じております。
○遠藤座長 成川構成員、よろしいですか。
 関連で、私から非常に基礎的なお話をお聞きしたいのですが、国内でベンチャー育成という議論をするときに、海外のベンチャーが非常に重要な薬を作っているので、それを日本で早く上市するための環境整備をしようということであるならば分かるのですが、国内では国内発のベンチャーというのはそれほど数が多くないし、アカデミアからのスピンオフというケースも必ずしも多くないように伺うわけです。しかも、ファイナンスとか人材はベンチャーにすると不足すというのであるならば、なぜ武田薬品の中でやらなかったのですかと。ベンチャーの意思決定の早さだけは分かったのですけれども、人材や資金の豊富な大企業が新しい薬を作ることにもっと向けばいい話であって、それをベンチャービジネスという形にするとどこがいいのでしょうかと。アメリカのように研究者からそのままスピンアウトしてベンチャーを作るというような受皿がある仕組みがあれば、ベンチャーで対応しようということなのですけれども、日本の場合はそこはどう考えたらいいのかということをお聞きできますか。
○富士氏(リボルナ) 大企業側の考え方としては私が答える側にないので、あくまでベンチャー側ということで回答させていただきますと、研究開発に係る一つのパイプラインでもそうですし、大企業とベンチャーとでは、多分ベンチャーで行うほうがファンドもお金も集めやすいですし、パイプラインごとの資金という意味では、大企業の中でやっている開発よりもまだベンチャーでやる方が資金面も実は多いのではないかなと考えています。ですので、意思決定のスピードというところと、そこに特化した資金ができる。特に我々のプラットフォームを使って出すというような、そこに応援してくださっているVCさんであったり、そこから使えるお金なので、非常に自由度も高いというところが挙げられるかなと考えています。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 芦田構成員、この議論に何かコメントをいただけますか。
○芦田構成員 製薬企業も数多くの創薬プロジェクトを持たれていて、それが常に一定ではなくて、戦略の変更やポートフォリオの組み替えというようなものが行われています。その中で、私の理解が正しければ、今まで研究をしてきたのだけれども、重点領域から漏れてしまうようなプロジェクトというのもやはり出てくるわけです。それは、大手企業の戦略の変更でそういったことが起きてくる。これは常に起こり得ることだと思います。
 そういう状態になったときに、例えばプロジェクトをやっていた研究者の方々にとってみれば、ずっとその企業の中で重点領域ではない、非重点領域ということで、予算の制約の中で研究を続けるのか。それとも、外に出て研究をするのか。外に出ると、今度は元の会社の戦略とは全く関係が切れるわけですから、プロジェクト自身、もしくは研究者自身がきちんと評価されるのであれば、そこに資金をつける投資家がいるということになるのだと思うのです。
 今のリボルナバイオサイエンスさんの例で言えば、個社の話をするのは適切ではないかもしれませんが、武田薬品に大きな事業の組み替えがあって、その中でベンチャーをつくっていこうというプログラムが作られて、そのときはリボルナバイオサイエンスさんだけではなくて、かなりの数のスタートアップができてきているのです。そこに資金をつけるベンチャーキャピタルがいたということだと思うのです。
○遠藤座長 そうすると、日本の新薬の創出の基盤を固めていくというときには、ベンチャーを育成していくというと、企業の戦略から外れたけれども社会的ニーズのあるものを別な仕組みで開発していくことを推進するのだと。そこが根拠になるということですか。
○芦田構成員 欧米を見ていると、創薬スタートアップは非常に数が多いわけですけれども、先ほどの私の発表ではアカデミア発をかなり中心にお話ししましたが、必ずしも薬の起源がアカデミアということになっているわけではないのです。企業発のシーズによって立ち上がっている創薬スタートアップも非常に数が多いです。
 投資家からすると、シーズなりアセットについて専門性をもって評価をして、実際にそれを研究開発する経営陣がいるかどうか、経営者の能力や実行可能性を評価した上でお金をつけるかどうかの判断をしている。そのときに、アメリカの場合であれば、専門性をもった評価をする人がいるし、大きなお金のプールがあるということで、エコシステムのサイクルが回っているということだろうと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 その場合、例えば企業の中である途中まで研究開発をして、その物を別な会社で製品化をするわけですよね。この問題は、アメリカの公的なファイナンスで開発した場合のバイドール法の議論と重なるわけですけれども、民間企業の場合はどういうふうな判断になるのですか。研究開発だけは元の会社でやっていて、八分どおりできたものをベンチャービジネスで製品化したというような問題というのはどういうような関係で扱われるのですか。
 芦田構成員、もしコメントがあれば。
○芦田構成員 ケース・バイ・ケースかもしれませんけれども、あるシーズなりアセットをスピンアウトして会社をつくり、そこで資金を集めて、開発を進めて、例えば上市したというケースになった場合、ある種のマイルストーンペイメントやロイヤリティーが元の会社に入るような仕組みにしているのだと思います。そういうケースが多いのだろうと思います。
 もし間違っていれば。
○遠藤座長 富士参考人。
○富士氏(リボルナ) 今の芦田先生の御説明に相違はないと思っています。
 2つあると思います。当時、武田薬品から出てきたというプログラムは、芦田先生から今コメントがあったように、数多くのバイオベンチャーが出ました。これは武田薬品に特化したプログラムではなくて、例えば海外でいうと、例えばメルクなども同じように一部の事業のアセットをベンチャーに持たせて、そこから研究開発を進めて、さらには違う会社にライセンスホップしていくというものもあります。
 もう一つは、社内の議論にもありましたけれども、例えばCMC事業部であったり、そこをスピンアウトさせて出ていくといったケースもあります。そういった場合は、権利関係のところではなくて、そこでプラットフォームとして事業を行うという大きく2つのパターンに分かれるのかなと理解しています。
○遠藤座長 ありがとうございます。分かりました。なぜベンチャービジネスを育成しなければいけないかという根本的なところの説明を聞いて、理解が深まりましたので、ありがとうございます。
 ほかに何か御質問はございますか。
 菅原構成員、どうぞ。
○菅原構成員 ありがとうございます。
 各報告者の方々から詳細な説明をいただきまして、大変有益な時間になりました。ありがとうございます。
 幾つか質問とコメントをさせていただきたいと思います。全体として自分の頭の中を整理したときに、結局、新しいイノベーション、いい薬を出していくためのベンチャーの役割を考えているわけですけれども、経済学の枠組みで言うイノベーション論の中で、新しいイノベーションを起こすための基本的な4条件というのが整理されています。一つはディマンドプル。要するに需要があって、多分この場合でいうと希少疾患みたいな患者さんたちがいて、この人たちをどうしても救いたいからという形のディマンドがプルすることによって新しいイノベーションが起こるという考え方。
 もう一つはテクノロジープッシュという形。これは最初の芦田構成員から、わが国においては技術導出、ライセンシングみたいなものは結構契約があるよねという話がありました。テクノロジー、今、既存の技術があって、これを使ってほかに何か使えるもの、新しいものがないのかという形での創発の方法がある。
 もう一つ大事なのは「技術機会」と我々は言うのですけれども、新たなモダリティーの開発もそうだと思うのですが、どれだけ新しい領域、新たな開発の余地があるかというところが大事で、これについては恐らく全世界的に見て、まだまだ色々なモダリティー等の開発の余地があるのだと思います。
 最後にもう一つ、「技術の占有可能性」という言葉を我々は使うのですけれども、そういうイノベーションを起こしたときに、どれだけイノベーターに対してお礼ができるか、それが返せるか。そこがやはり大事。だから特許の話も出ましたけれども、リスクを取って不確実性と戦った方々に、最後にリターンをきちんと返してあげられるかという制度設計が大事だと。大体この4つで整理ができると思います。
 今回いろいろなお話を伺ったのですけれども、その4つの中でそれぞれ考えるべき課題があるのだと。それがうまくつながっていない、あるいはつながっているのだけれども不十分なために、我が国におけるベンチャーの製薬環境があまりうまく回っていないという整理なのだろうと考えました。
 その中で私も幾つか聞きたいことがあったのですけれども、先ほど井上構成員もおっしゃっていた、シーズを最初につくるところのアカデミアの役割。この点について井上先生から少し御発言いただきましたが、私も一応大学の中にいて、アカデミアの中で企業と一緒に仕事をしていくということを考えたときに、アカデミアが生み出したシーズに対する貢献をどうやって返していくのか、あるいは先生方にどれだけの時間を費やしていただくか、とくに臨床開発の中では臨床研究の環境、特に治験の環境が日本ではよろしくないので、膨大な時間と労力をかけてお医者さん方にお願いをしているという現状があると思うのですけれども、そこに対するルールづくりといいますか、そういうところの環境がやはりきちんとできていない。アカデミアから労力と時間を出してもらうところもそうなのですけれども、企業との共同研究を促していくためのルールづくりというのは、最初のスタートポイントのところで我が国の、大学側もそうなのですけれども、大きな問題ではないかなと思いました。
 あと、川上様のところのMEDISOの事業は非常に有益かつ大事な事業だと思います。これは現在、三菱総研さんが基本的に受託されているということですが、永続的な事業なのですか。それともある一定期間の中でまた何か公募があって変わってしまうものなのか。基盤となる、すごく大事な事業だと思うのですけれども、どのくらいの期間、あるいは事業としての永続性がきちんと担保されているのかどうかというところが気になったのと、あとは、ここのサポーターで入っていらっしゃる70人の方々は、非常勤で恐らくサポートされていると思うのですが、この方々がもともとどういう属性でどうサポートされているのかというところも気になっています。当然守秘義務とかいろいろあると思うのですけれども、これがきちんと永続的なサポーターとして機能できるような体制づくりになっているのか。外形標準的な話で申し訳ないですが、そこの部分をきちんと確認したいなということがございました。
 それから、アミカス様の海老原様のお話の中で、私も本当にそうだなと思ったのは、先ほども言いましたけれども治験環境が悪い中、情報収集に大変な御苦労をされているということ。資料の中にもありましたけれども、データ基盤の整備や公表、リアルワールドデータの利活用促進、この辺りは国が引き続き、きちんとやるべき仕事だと思いますし、そういう認識が必要だと私自身も思っております。
 また、19枚目のスライドにあったと思いますけれども、これも前回か前々回に議論になりましたけれども、やはり企業要件ですよね。新薬創出のところの企業要件の在り方などに関しては、必ずしもベンチャー企業の創薬促進のメリットに十分なっていないということで、ここに関しての見直しというのは、今日話を聞いて改めて必要ではないかなと思いました。
 それから、お話の中で、アメリカとヨーロッパにおける承認申請の環境と比べて日本の承認申請はどうなのかという話があって、私自身の認識では総じて然程遜色ない、むしろ良くやっている部分も承認申請のプロセスについてあると思っています。その一方で、今日の話の資料の中にあったと思いますけれども、申請資料を英語で作ったものは受け付けられないというようなものがあって、私もかれこれ20年ぐらい前からずっとそういう話をお聞きしています。この辺りですよね。承認申請そのもののプロセス自体は特に煩雑で、欧米に比べて難しいわけではないのか、いや、やはり日本はそこも難しいのだよという話なのか、ランゲージバリアといいますか、そこの部分を解決してくれればもっともっとスムーズにいくものなのか。日本と欧米の承認環境の中でのネックというのが、本質的にはどの部分に今あると考えていいのか、できればお答えいただきたいなと思いました。
 それから、最後のリボルナの富士様の御発表に関しては、実は私も遠藤先生と同じことをお聞きしようと思っていて、あえて武田薬品から出てベンチャーでやるメリットは何なのかというところはすごく関心があったのですけれども、よく分かりました。
 では、そこは自由なコントラクトになっているということなのですね。分かりました。ありがとうございます。
 最後、事務局からの御説明の中で、海外からの申請だとか対応ということを受け入れる側としては本気で考えなくてはいけない段階になっていると思います。これから日本の人口減が進む中で、特に希少疾患の治験に関しては、治験環境は悪くなる一方だと思います。先ほどご説明もありましたけれども、東アジアの共同治験の体制を進めているという大変心強い話がありましたけれども、それを進めていただくと同時に、海外データとの共用利用だとか、そういうことを考えていかないと、希少疾患の治験を日本だけでやっていくということは当然難しい。これはグローバルでも当然共有されている問題意識だと思いますけれども、日本の中で薬が出てこなくなってしまうので、やはりその辺りは引き続き、きちんと対応していく必要があるのではないかなと。これは個人的な意見でございます。
 以上でございます。
○遠藤座長 質問がどなたかというのが捕捉できなくなってしまったのですが、実は堀構成員がもっと前に手を挙げておられたようなので、まず堀構成員から御発言をいただいて、もし質問があれば一緒に答えていただくという形にしたいと思います。
 堀先生、どうも失礼しました。よろしくお願いします。
○堀構成員 今日は包括的な御説明をありがとうございました。
 イノベーションを生み出していくというお話が先ほども他の構成員の先生からありましたけれども、医療分野に限らず、他の分野でも非常に重要なことだと思います。日本では他の分野でも全体的に低調で、ベンチャー投資額も少ないですし、海外のVCからの投資も少ないです。そもそも若い学生がベンチャー企業に就職したいと思える環境なのか、あるいは企業を退職してベンチャーで挑戦したい人々がどれだけいるのか。日本の現状だと医療以外の分野でも難しいところがあると思います。そういう状況なので、医療においてはさらにハードルが高いということを今日つくづく感じました。
 ただ、先ほどMEDISOさんの話の中で、医療機器のほうが医薬品よりも相談件数が多いというお話がありましたので、ひょっとしたら工学系のほうがそういう起業家教育というか、ベンチャースピリッツではないですけれども、製品の開発から製造、上市までの流れについて何かノウハウがあったり、促進する何かがあるのかなんて思いまして、医学部や薬学部等では起業家教育が行われているのかどうかということを感じました。
 それから、バイオベンチャーはスタートアップが困難な構造にあるということで、基本的に今日の皆さんのお話は共通していたと思います。つまり、専門人材が少ない、投資資金が少ない、また、グローバル化の対応がなかなかできていないというのが共通事項。よって、成功事例を増やしていかなければいけないというのはまさにそのとおりだと思います。1社だけではできないことだと思いますので、薬事承認もそうですけれども、臨床試験の環境の改善であるとか、資金調達のマッチングなどが重要だと思います。特に、グローバルピッチ、バイオコミュニティーの構築は非常に重要だと思いますし、MEDISOさんの活動取り組みについて非常に興味深く伺いました。
 また、事務局の話の中にあったオンライン治験というのも非常に面白いと思いました。菅原構成員がおっしゃられたように、アミカスさんの臨床試験の話であるとか書類の申請における英語の資料を認めるかどうかということも今後の課題ではないかと思います。
 それから、外資系だと国際共同治験で日本人の感性にマッチしないというようなお話も興味深く伺いました。
 12月の検討会でありました企業要件の見直しも、本日のお話を伺って本当に必要なのだなと思います。
 ここからは質問で、三菱総研のMEDISOさんになのですが、まだ取組として新しい、まだ始まったところということもあるとは思うのですが、先ほども少し話をしましたが、医薬品よりも医療機器の相談件数が多いというのは、どのような理由があるのかなど何かを分析されているのでしょうか。
 それから、公的機関のベンチャー支援は意外とあるというお話もありました。とは言っても、公的機関の支援というのは、私自身は基盤整備や環境整備のためにとても重要だと思うのですが、成功事例が増えていかないと、公的支援の意義が問われ、だんだん少なくなっていくこともあるのではないかと。よって、支援の有効性を高めるということがこれから重要になってくると思うのですけれども、どれくらいの時間軸で公的機関のベンチャー支援の有効性というのは見ていくべきなのかなと。これはMEDISOさんにというよりも厚生労働省の事務局に聞くべきなのかもしれません。今日の資料の5番目に厚労省の事務局から7ページに示された方向性とかはまさにこのとおりだと思いますし、企業とアカデミアが連携して基金と民間資金をうまく混ぜて複数年度でやっていくというのはとても重要な試みだと思っています。
 なので、ヒト・モノ・カネ・情報を好循環でエコシステムとして展開するのにも、一定の予算措置も国家戦略として重要だと思います。ただ、企業なので、企業独自や業界の自助努力も同時に重要なのかなと思うので、製薬に関するビジネスモデルを考えるときに、公費に依存することによって成立するビジネスモデルでは持続可能ではないと思います。 
質問としては、国としてはどこにより重点的に投資をしていくほうがいいのか。例えば今日のお話のようにバイオベンチャーを育成するというところでは、大企業よりもスタートアップをより優遇していくという視点もあるでしょうし、あるいは基礎的な研究で日本が得意としている世界をリードできるような分野で、つまり、競争優位なところでフォーカスしていくという視点もあると思います。あるいはバイオ開発人材を育てていくのにより積極的に投資するとか、その辺のメリハリではないですけれども、公的な支援の有効性を高めるためにも、どこにより重点的に投資していくのが健全なビジネスモデルの構築にとって重要なのかというところの御意見を伺えればと思います。
 以上です。ありがとうございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、菅原構成員と堀構成員から質問、御意見が多様に出ましたので、御対応の御発言がおありになる方、ぜひお手を挙げていただきたいと思います。
 それでは、川上参考人、どうぞ。
○川上氏(三菱総研) 御質問ありがとうございます。
 では、まず菅原構成員からの質問の1つ目、事業のことでございますけれども、MEDISO1年度の事業を再度入札しており、現在、我々としても決まっているのは3月末までである。次年度は今後入札がかかるというようなところかと思っております。
 ということで、ここは個人的な意見ですが、やはり創薬ベンチャー支援をするにはかなり長い時間というのも必要なので、年度の切れ目のところで少し支援が切れてしまうというのは非常にもったいないところではあるかなと、個人的な意見として述べさせていただきました。
 もう一つ、サポーターの方々の経験、どんな方がいらっしゃるかというところでございますが、最も多いのは、もともと製薬企業にいらっしゃったOBで、今、薬事コンサルを個人でされている、もしくは小さなコンサルを立ち上げている方というのが非常に多いというところでございます。そのほか多い方としては、ベンチャーキャピタリストですとか、弁理士、弁護士、弁理士、弁護士もいらっしゃいます。また、当局、PMDAのもともと審査をしていたOBの方というのもいらっしゃるというような形で、もともとベンチャー界隈にいたというよりも、製薬企業周り、もしくは規制当局周りにいた方が多いというのが現状でございます。
 続いて、堀構成員からの御質問の1つ目、医療機器のほうが医薬品より多いところの分析ですが。こちら、実は機器が多いだけではなく、最近増えております。最近これの中身を少し見てみたのですけれども、増えているのは医療機器のプログラム、SaMDとも呼ばれている部分でございます。そういったところはやはりスピード感も持って開発できるというのもございますし、割と多いのは、学生のうちにこういったことを構想してやってみたいというような学生、非常に若い方からの相談というのもそういった医療プログラムのところで増えているというのが現状でございます。医療機器と創薬ベンチャーでは起源が違ったり、開発スピードも違ったりというところもございますが、そういったところが影響しているのかなと考えております。
 最後、公的機関のベンチャー支援に関する評価のところについては、恐らく厚生労働省さんの方にお答えいただくのがよろしいかなと思いますので、私からの発言は以上とさせていただきます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 ほかに。
 それでは、海老原参考人、お願いいたします。
○海老原氏(アミカス) 御質問ありがとうございました。
 ランゲージバリアと一言で申しましてもいろいろあると思うのですけれども、少し論点を変えさせていただくことをお受けいただきたいのですが、まず、日本の薬事法というか、規制そのものに対しての理解が低いというのが正直あります。なぜならば、日本語で書いてあって、いわゆる英語で解説しているものというのが基本的にはありませんので、各ベンチャーのみならず、各外資系の子会社ですと、まずそこを英語にして分かってもらうということがとても大変だと思いますし、それでも各企業がやると、どうしても何でだというのが出てくるのです。何でそんなことが求められるのだとか、FDAとどうしてそんなに違うのだと。そこは幾ら企業が説明しても、でもルールはルールだ、で片づかなくて納得がいかない部分が結局残ってしまったりするところがありまして、できれば規制、薬機法なり、開発の簡略化したチャートといったものは英語にしていただいた上で、当局が直接海外の本社と説明をするような場をもっと持っていただくことで、しゃべるほうではないのですけれども、ランゲージバリアというものが下がるのかなと思っていますし、それによって日本の規制というか開発に着手することに対して、どちらかというと日本は面倒くさい国というか、大変な手続があるのではないかという考えを持たれることも結構ありまして、それによって、先ほど芦田先生がおっしゃったように、ドラッグ・ラグは大分解消したのですけれども、開発着手ラグというのはいまだに残っていると思うのです。先ほどの14ページでも書かせていただいておりますが、海外でオーファンで開発されたもののうち、半数ぐらいが日本でまだ未承認のオーファンであるといったことからも、審査機関そのものは非常に改善して、むしろFDAより短いということもありますが、そもそも開発に着手してもらうタイミングにラグがある。そこも一つにはやはりランゲージバリアもあるのかなとまず思っています。
 申請に当たっては、おっしゃっていただいたように、これは厚生労働省とかPMDAの不興を買うと困るのですけれども、海外のデータなり海外の薬局方といったものをもう少し活用していただけるようなところがあると、それだけでスピード感もありますし、翻訳の手間とか翻訳のコストといった部分でもバリアが下がるかなとは思っているところでございます。
 規制の複雑さ等、それに対する不明瞭というか、そういったところで弊社の植村がプロジェクトマネジメントを長いことやっておりますし、今、外部の開発、ベンチャーさんのコンサルをしている立場から少し意見を述べさせていただけたらと思います。
○遠藤座長 では、植村参考人、お願いいたします。
○植村氏(アミカス) 植村でございます。
 海老原が大分お話しさせていただいたので、あまり追加することはないのですけれども、どうしたら日本を選んでもらえるか。一時、ドラッグ・ラグは解消したように言われていましたけれども、最近またドラッグ・ラグというのが言われているのは、先ほど海老原も申しましたが、日本の規制はICHとほとんどそっくりさんのようになっているにもかかわらず、何らかの隠れた障壁であるとか、非常に細かいところの規制を乗り越えるのに時間がかかるので、面倒くさいというイメージがすごく出てしまう。その入り口のところは日本語はあるので、日本語があってよく分からないところに入っていくと細かいところが出てきて、最後には薬価のすごく難しい問題で、最終的な結果はこういうふうになってしまったという経験がちまたに流れるから、外資系、特にベンチャーは日本を敬遠するのではないかなと思っています。
 最近、チャイナベンチャーとすごくお話しする機会があって、アメリカとは今うまくいかないらしいので、次にどこに行くかというと、面白いことにシンガポールとかマレーシアとかと言うのです。何でそういうとこに行くのですかと。日本には明らかに大きなマーケットという魅力があるはずなので、通常、ビジネス的に考えると、欧米の次は日本ではないかと私も自然に考えて彼らに聞くのですけれども、日本はすごく難しくて厳しい国ではないかというイメージを彼らは持っているようです。なので、いろいろな機会に説明をさせていただいて、日本を選んでいただくように協力させていただきたいなと私は思っております。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 ほかにございますか。
 では、事務局、お願いいたします。
○山本ベンチャー等支援戦略室長 恐れ入ります。
 先ほど堀構成員のほうから御質問をいただきました。ベンチャー支援等に当たりまして分野等の重点化ができないのか、考えられないのかというような御指摘につきましては、例えば昨年末にまとめられましたスタートアップ5か年計画の中でも、創薬ベンチャーの中でも特定の分野に重点的にというような記載等はされていないところではございますけれども、施策で見ますと、本日資料の中で御紹介させていただきましたように、やはりバイオや再生医療、細胞治療等の新しいモダリティーに対する支援を中心に今実施しているところでございます。これはどちらかというと、日本の得意分野というよりかは、現在、資料のほうでも御指摘させていただきました人材や設備等を含めて、日本で不足している部分のさらなる強化を図っていく、促進を図っていくという観点でございますけれども、現状としましてはそれらの分野に対する取組を中心に重点化して強化しているところでございます。
 以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 ほかに何かコメントはございますか。よろしゅうございますか。
 菅原構成員、堀構成員、よろしゅうございますか。
○堀構成員 はい。ありがとうございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、予定していた時間も若干過ぎておりますので、これをもちまして本日の検討会を終了したいと思います。
 本日は本当に貴重な御意見を頂戴いたしまして、ありがとうございました。今後の我々の議論に大変役に立ちました。私自身も不勉強な部分も多々ありますので、大変勉強になりました。どうもありがとうございます。改めて御礼申し上げたいと思います。
 それでは、事務局、何かございますか。
○山本ベンチャー等支援戦略室長 次回の第8回検討会につきましては、1月26日の15時から開催させていただく予定でございます。詳細につきましては、厚生労働省事務局より構成員の先生方にはメール等にて御連絡させていただきます。
 また、本日の検討会の議事録につきましては、後日、厚生労働省のウェブサイトに掲載予定としております。
 事務局からの連絡事項は以上でございます。
○遠藤座長 それでは、これにて終了したいと思います。
 重ねて御礼申し上げます。どうもありがとうございました。