2022年11月29日 第183回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年11月29日(火) 10:00~12:00

場所

航空会館 501+502号室
(東京都港区新橋1-18-1 航空会館5階)

出席者

公益代表委員
荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、佐藤(厚)委員、藤村委員、両角委員
労働者代表委員
川野委員、北野委員、櫻田委員、冨髙委員、八野委員、世永委員
使用者代表委員
池田委員、鬼村委員、佐久間委員、鈴木委員、鳥澤委員、山内委員
事務局
鈴木労働基準局長、青山審議官(労働条件政策、賃金担当)、梶原審議官(労災、建設・自動車運送分野担当)、古舘総務課長、松原労働条件政策課長、竹野監督課長、岡賃金課長、益原労働関係法専門官、木原労働条件政策課課長補佐、長澤労働条件企画専門官

議題

  1. (1)「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件案要綱」について(諮問)
  2. (2)労働時間制度について
  3. (3)その他

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、皆様、おそろいということですので、ただいまから第183回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日の分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施をいたします。
 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の水島郁子委員、労働者代表の大崎真委員、東矢孝朗委員、使用者代表の佐藤晴子委員、兵藤美希子委員が御欠席と承っております。
 なお、本日、黒田委員は所用のため、途中で退席されると伺っております。
 カメラ撮りは、ここまでということでお願いします。
 本日の議事に入ります。
 まず議題(1)は「『自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件案要綱』について」です。
 本件につきましては、本日、厚生労働大臣から諮問を受けた案件ということになります。
 事務局から説明をお願いいたします。
○監督課長 おはようございます。監督課でございます。
 資料1-1が改善基準告示改正案の要綱です。資料1-2がその概要です。資料1-2に沿って御説明します。
 1ページをお願いします。「Ⅰ 改正の趣旨」です。
 改善基準告示は、自動車運転者の労働時間等の労働条件の向上を図るため、その業務の特性を踏まえ、拘束時間等の基準を定めたものです。
これまでの経緯等につきましては、本年10月11日の本分科会でも御説明しておりますので、かいつまんで申し上げますと、令和6年4月から自動車運転者についても時間外労働の上限規制が適用されること、それから、働き方改革関連法の国会附帯決議で過労死等の防止の観点から改善基準告示の改善を求められていることなどを踏まえ、本分科会の下に設置されました専門委員会で検討が行われた結果、本年9月27日に報告が取りまとめられ、10月11日の本分科会で了承されたところです。本件は、この報告の内容に沿って、改善基準告示の改正を行うものです。
 「Ⅱ 改正の概要」です。
 ※印ですが、各項目に括弧書きを付して、専門委員会報告の項目番号との対応関係を示しております。
 先に資料の7ページをお願いします。専門委員会の報告と改正告示案要綱の項目番号の対比表でございます。左側に専門委員会報告の柱立て、右側にそれに対応する要綱の番号を示しております。
今回諮問しておりますのは改正告示案要綱ですので、告示を改正する部分が要綱に記載されています。したがいまして、通達で対応する部分や告示を改正しない部分につきましては要綱に記載がありません。例えば1(4)の「② 適用除外業務」につきましては、通達で対応することとしており、要綱に記載はありません。また、1(5)の「休日労働」につきましては現行どおりとされましたため、告示改正は不要です。このため、こちらも要綱に記載はありません。
 以上のとおり、専門委員会報告の内容の一部については、今回の要綱に記載がありませんが、通達等で専門委員会報告の内容を盛り込んでいく予定です。
 資料1ページにお戻り下さい。以下、改正の概要を説明します。
 まず、第一は、タクシー運転者に係る拘束時間等の改正です。日勤に就く者については、拘束時間は月288時間を超えない、車庫待ち等の場合は労使協定により月300時間まで延長できる、1日の最大拘束時間は15時間で、14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努める、としています。
 勤務終了後のインターバルについては、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らない、としています。
 2ページです。
 隔日勤務に就く者については、2暦日の拘束時間は22時間を超えず、勤務2回平均1回当たり21時間を超えない、ただし、車庫待ち等の場合は労使協定により1か月の拘束時間を270時間まで延長し、要件を満たす場合には、加えて10時間まで延長できる、としています。
 隔日勤務の場合のインターバルは、継続24時間以上与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回らない、としています。
 次に、予期し得ない事象です。これは車両の故障などの事象をいいますが、その事象への対応時間を拘束時間から除くことができることとしています。その対応時間により最大拘束時間を超えた場合は、一定の休息期間を与えるものとしています。
 第二は、ハイヤー運転者に係る時間外労働に関する改正です。
 まず、労使当事者は、三六協定を締結するに当たっては、次の事項を遵守しなければならないとし、時間外労働時間は月45時間・年360時間の限度時間を超えないこと、臨時的に限度時間を超える場合でも960時間を超えない範囲内とすることを掲げています。
 次に、使用者は、三六協定において時間外・休日労働の時間数をできる限り短くするよう努めなければならない、また、ハイヤーに乗務する者が疲労回復を図るために必要な睡眠時間を確保できるよう、一定の休息期間を与えなければならないものとしています。
 第三は、トラック運転者に係る拘束時間等の改正です。
 拘束時間は月284時間かつ年3,300時間を超えない、ただし、労使協定により6か月までは、月310時間まで、年3,400時間まで延長できるとしています。
 この場合に、月284時間を超える月が3か月を超えて連続しないものとし、1か月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努めるものとしています。
 1日の最大拘束時間は15時間としています。ただし書は、いわゆる長距離・宿泊付きの運行の場合の特例であり、週2回に限り最大拘束時間を16時間とすることができる、としています。
 3ページです。
 1日の拘束時間が14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努める、としています。
 インターバルについては、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない、としています。ただし書は、長距離・宿泊付き運行の場合であり、インターバルを週2回に限り8時間とすることができ、運行終了後に12時間以上与える、としています。
 次に、連続運転時間についてです。
 連続運転時間は、中断することなく連続して運転する時間をいいます。この中断については、現行では連続10分以上とされていますが、トラックについてはこれをおおむね連続10分以上に改めます。また、この中断については、原則として休憩を与えることとしています。
 また、サービスエリアなどに駐停車できないため、やむを得ず4時間を超える場合には、4時間30分まで延長できるとしています。
 予期し得ない事象については、タクシーと同様ですが、拘束時間のほか、運転時間や連続運転時間からも対応時間を除くことができ、勤務終了後に通常どおりの休息期間を与えるものとしています。
 拘束時間等の特例です。
 現行では、特例の具体的な要件については通達で定めておりますが、専門委員会報告を踏まえ、資料に記載している部分については告示で規定することにしています。
 まず、休息期間の分割特例については、業務の必要上、継続した休息期間を与えることが困難な場合、次の要件を満たすものに限り、1か月程度を限度とする一定期間の全勤務回数の2分の1を限度に、分割して与えることができる、としています。
 分割の要件として、分割された休息期間は1回当たり継続3時間以上で、2分割または3分割とする、1日につき2分割の場合は10時間、3分割の場合は12時間以上の休息期間を与える、3分割とする日が連続しないよう努める、といったことを定めています。
 次に、2人乗務の特例につきましては、身体を伸ばして休息できる設備がある場合に、最大拘束時間を20時間まで延長できる、などとしています。加えて、ただし書で、車両内ベッドなどの一定の要件を満たす場合には、拘束時間を24時間または28時間まで延長できる、としています。要件の詳細については、専門委員会報告を踏まえ、通達で定める予定です。
 隔日勤務の特例については、2暦日における拘束時間が21時間を超えず、勤務終了後20時間以上の休息を与える場合に、隔日勤務に就かせることができる、などとしています。
 4ページです。
 フェリー特例につきましては、乗船時間は原則として休息期間とし、与えるべき休息期間の時間から除くことができる、などとしています。なお、隔日勤務の特例とフェリー特例については、内容に変更はありませんが、通達の内容を告示に規定することから、要綱に記載しているということです。
 第四は、バス運転者に係る拘束時間等の改正です。
 拘束時間については、1か月の基準、または4週平均1週当たりの基準のいずれかを満たすものとしています。1か月の基準は、月281時間かつ年3,300時間を超えない、ただし、貸切バス等乗務者の場合は労使協定により年6か月までは月294時間、年3,400時間まで延長できる、としています。
 なお、このただし書が適用される者について、現行では貸切バスや高速バスの乗務者などを定めていますが、これに新たに、一時的な需要に応じて運行される乗合バスの乗務者を加えることとしています。これについては運転時間も同様としています。
 4週平均1週の基準については、週65時間を超えず、かつ、52週で3,300時間を超えない、ただし、貸切バス等乗務者の場合は、労使協定により、52週中24週までは4週平均1週当たり68時間、52週について3,400時間まで延長できる、としています。
 また、1か月の基準の場合は、月281時間を超える月が4か月を、4週平均1週当たりの基準の場合は週65時間を超える週が16週を、それぞれ超えて連続しないものとしています。
 最大拘束時間は15時間とし、1日の拘束時間が14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努める、また、インターバルについては、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない、としています。
 連続運転時間については、高速バスと貸切バスの乗務者が高速道路等を運行する場合は、おおむね2時間を超えないよう努める、としています。夜間長距離運行を行う貸切バスの場合は、高速道路等以外の区間の運転時間を含みます。
 「交通の円滑を図るため」という部分ですが、これはこれまで「軽微な移動」として議論されてきた部分です。駐停車した自動車を移動させる必要が生じたために運転した時間を、記録がある場合に限り、連続運転時間から除くことができる、としています。
 5ページです。
 予期し得ない事象に遭遇した場合については、トラックと同内容としています。
 次に、拘束時間等の特例です。こちらもトラックと同様、現行では通達で定めている内容を告示に規定することにしています。
 休息期間の分割特例については、1か月を限度とする一定期間の全勤務回数の2分の1を限度に、休息期間を2分割して与えることができるとし、この場合の休息期間は、1回当たり継続4時間以上で、合計11時間以上としています。
 2人乗務の特例については、車両内に身体を伸ばして休息できる設備が運転者専用の座席であり、一定の要件を満たす場合は、最大拘束時間を19時間まで、また、ベッドが設けられている場合など一定の場合は、最大拘束時間を20時間まで延長できる、などとしています。
 隔日勤務の特例とフェリー特例についてはトラックと同内容とするものです。
 第五のその他については、労働基準法に基づく時間外労働の上限規制が適用されることなどについて、入念的に規定することとしています。具体的には、三六協定を締結する場合において、時間外労働時間は月45時間、年360時間の限度時間を超えない時間に限ること、また、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合であっても、年960時間を超えないことを定めることとしています。
 また、三六協定で定める時間外労働等について留意すべき事項に関しては、労働基準法第36条に基づく指針で定められておりますが、これに十分に留意しなければならないことについて、改善基準告示にも規定することとしています。
 以上が改善基準告示の改正案の内容でございます。
 告示日は本年12月下旬で、適用日は令和6年4月1日を予定しています。
 説明は以上でございます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明について、御質問、御意見があればお願いいたします。
 なお、オンライン参加の委員の皆様におかれましては、発言希望とチャットに書き込んでお知らせください。いかがでしょうか。
 冨髙委員。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 諮問の内容につきましては、この間の専門委員会での報告の内容が適切に反映されていると考えております。その上で、何点か申し上げたいと思います。まず先ほども説明がありましたように、今回、特例が多く、非常に分かりにくくなっているため、丁寧な周知が必要という点は以前も申し上げたところです。特例については今後、通達等でも要件を示していくことになると考えておりますが、その内容は労働者の健康と安全をしっかりと確保するような形で明確に示していただきたいと考えております。
 それから、今回、個人事業主や白ナンバー等を含めて、新たな告示の内容を周知、定着をさせていくことが重要だと思っておりますけれども、とりわけ荷主への周知を進めることが非常に重要です。現場からは、例えば荷主の方たちは、なかなか説明会にはいらっしゃらないのですが、労基署の共催、もしくは同席をするような説明会では荷主企業の参加が高まったというような声も聞いております。ぜひ行政としてもそのような積極的かつ前向きな対応をしていただきたいと考えております。
 加えて、自動車運転者における働き方改革を進めていくためには、取引慣行、商慣行等の是正が非常に重要だと思っております。厚労省だけではなくて、省庁横断的にしっかり取り組んでいく必要があると考えておりますので、この点は改めてお願いをしておきたいと考えております。
 これらの取組をこれから進めていくということですが、新しい告示に基づいた取組をしっかり徹底して労働時間の縮減の取組を進めていくことで、早期の一般則適用の実現に向けた取組も進めていただきたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
 本要綱案は、現場に即して専門委員会の関係者の皆様の真摯な議論を経てまとめられた報告書に沿った内容だと思いますので異論はございません。
 今、冨髙委員からも商慣行の是正の重要性について御指摘がございました。全く同感です。この告示の円滑な履行が図られるよう、改めて自動車運転者の長時間労働につながるような商慣行の見直し、とりわけ発着荷主による荷待ち時間の短縮、これを引き続き呼びかけてまいります。
 以上です。
○荒木分科会長 佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 バス、トラック、タクシーの3分類については、労使の意見に相反する部分が少なからずあったと思います。ただし書、そして、例外というのが非常に多く、一般の方々にとっては業界の今までのルールについて、分かりにくいところがあると思います。今回、公益の先生方に調整をいただきながら一定の結論として、この改善基準告示が改正されたということを認識しております。
 しかしながら、労働移動の重要性が指摘されている中で、まだまだ当該業界は、長時間労働、令和6年からの960時間というのがありますけれども、労働者は時間外労働での賃金確保を意図することもあり、収入を確保しするために長時間労働を行っている現状もあるのかと思いますが、労働者が入ってきやすい業界の環境というのを労使双方でつくり上げていくということが今後の課題だというように思っております。ただ、そのためには、特にトラック運送事業の関係ですけれども、標準料金の導入とか、先ほど鈴木委員からも言われましたけれども、運送事業者にとって、原材料、人件費のアップ分を価格転嫁しやすい環境を作っていただきたいと思います。国のほうも、ぜひより一層の周知等を行っていただいて、喚起していただきたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 オンラインから池田委員、お願いいたします。
○池田委員 どうもありがとうございます。
 先んじて御発言いただいた冨髙委員、鈴木委員、佐久間委員、皆様がおっしゃっていただいたので改めてということになってしまうのですが、物流というものは重要なインフラであるということは皆さん、御認識いただけているのではないかなと思います。その上で、トラックドライバーにつきましては、労働時間も非常に長い状況でなかなか改善が進まないというような状況にまだ陥っておりまして、その意味では、先ほど荷主企業の御協力ということも皆さんの発言にもありましたが、そういった全体の対策も含めた取組がこの拘束時間なり改善基準告示の遵守ということにつながっていくのに必要なことかなというように実感しておりますので、ぜひ総力を挙げた取組ということを進めていただきたいというように思っております。
 私から以上です。ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかに何か御意見、御質問等ございましょうか。
 私も公益委員としまして、専門委員会報告、これは大変慎重な、周到な議論をしてまとめていただいたものでございますが、これに沿った内容になっているということで、適切なものと考えております。
 それでは、内容については特段御意見がないということでありますので、当分科会といたしましては、ただいま説明のあった要綱につきましておおむね妥当と認め、労働政策審議会宛てに報告をすることとしたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、そのように進めさせていただきます。
 事務局から答申の案文と報告のかがみ文の配付をお願いいたします。
 オンラインで御参加の委員の皆様には、共有画面で御確認をお願いします。
(答申案文、報告かがみ配付)
○荒木分科会長 お手元の答申と報告の案について御確認いただきたいと思います。
 労働政策審議会令第6条第7項及び労働政策審議会運営規程第9条の規定により「分科会の議決をもって審議会の議決とすることができる」こととされています。
 そこで、お配りした案のとおり、労働政策審議会長宛てに報告し、この報告のとおり厚生労働大臣宛ての答申を行うこととしたいと考えますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ここで、事務局から何か御発言はございますか。お願いいたします。
○労働基準局長 労働基準局長でございます。
 ただいま「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件案要綱」につきまして、本日、御答申をいただいたことにまずは感謝を申し上げたいと思います。
 厚生労働省といたしましては、本日の答申を受けまして、必要な告示改正の手続を進めまして12月下旬に告示したいと考えてございます。
 告示の適用日は令和6年4月1日でございますけれども、本日いただきました御意見も踏まえまして、改正内容の周知を丁寧に行いますとともに、荷主に対する長時間労働改善の働きかけに取り組むなど、本改正の趣旨が事業者、労働者のみならず荷主等の発注者を含め関係者に広く浸透していくよう円滑な施行に向けた準備を進めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。事務局におかれては、御対応のほど、よろしくお願いいたします。
 それでは、議題(1)につきましては、ここまでとさせていただきます。
 次の議題に移りたいと思います。
 議題の「(2)労働時間制度について」です。
 事務局から説明をお願いします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。
 まず資料2-1を御覧ください。
 こちらが「労働時間制度に関する検討の論点について」ということで、本日御議論いただきたい論点として、この赤字になってございます今後の労働時間制度の在り方について、まず御議論いただきたいと思ってございます。
 具体的な論点が2ページ目、3ページ目でございまして、全部で5項目ございます。
 まず2ページ目の一番上でございますけれども、「労働時間法制についての基本認識」ということで細かく2点ございます。
 1点目ですけれども、労働時間法制の実効性を確保するためには、その必要性が労使をはじめ社会に十分に理解され、広く受け入れられるものとすることが必要ではないか。
 2点目でございますが、多様な人材の労働参加、労働者・使用者の意識・ニーズの変化、ICTやAI等の技術の進展、普及等による働き方そのものの変化等を受け止める制度として労働時間法制を考えていく際、各制度の対象となると考えられる労働者像を明確にすることが、労働者保護の観点からも、企業の適切なマネジメントの実現の観点からも必要ではないかという点となってございます。
 次が「シンプルで分かりやすい制度」でございまして、こちらも2点ございます。
 まず1点目でございますが、働き方に対する労使のニーズの多様化が今後も見込まれる中で、こうしたニーズに応えられるようにしつつ、労働時間法制が多様化・複雑化し、分かりにくいものとならないよう、現行制度を横断的な視点で見直し、労使双方にとってシンプルで分かりやすいものにしていくことが求められるのではないか。
 2点目といたしまして、そのためには、当事者の合意によっては変更できない枠組みとして法が設定すべき事項と、当該制度枠組みの中で具体的な制度設計を労使の協議に委ねてよい事項との整理が課題となるのではないか。また、後者の場面では、労使協議が労働者保護を確保しつつ実質的に行われるための体制整備が課題となるのではないかとしてございます。
 次が「IT技術を活用した健康確保の在り方等」で、こちらは1点ございます。
 テレワーク、副業・兼業、フリーランスなど、働き方の多様化が今後も見込まれる中で、働く者の健康確保の重要性が一層増していくものと考えられる。個人情報の保護に配慮しつつ、IT技術の活用などによる健康確保の在り方、多様な働き方に対応した労働時間の状況の把握の在り方、労働者自身が行う健康管理を支援する方策等について検討を行っていくことが求められるのではないかでございます。
 次に、3ページ目をおめくりください。
 次に「労働時間制度等に関する企業による情報発信」として2点挙げてございます。
 1点目でございますけれども、現役世代の減少が進み、人材獲得競争の激化が見込まれる中で、企業が、自らに適した働き方を選択したいという労働者のニーズに応え、優れた人材を確保していくためには、企業が労働時間制度やその運用状況等に関する情報を積極的に発信し、その情報を基に、労働者が企業を選択できるようにすることが重要ではないか。
 2点目でございますけれども、労働時間制度やその運用状況等に関する情報を労使で共有し、協議することで、採用した制度の適正な運用の確保も期待できる。こうした観点から、労働時間制度等に関する企業による情報発信を更に進めていくことが求められるのではないかの2点でございます。
 最後の項目が「労使コミュニケーションの在り方等」で、こちらも2点ございます。
 まず1点目でございますけれども、職場の労働者の過半数を代表する労働組合等各企業の実情に応じて労働者の意見が適切に反映される形でのコミュニケーションを図っていくことが重要ではないか。そのため過半数代表制や労使委員会の在り方についても中期的な課題ではないか。
 2点目でございますが、今後の労働時間制度について、適切な労使協議の場の制度的担保を前提として、対象範囲や要件等を法令で詳細に規定するといった手法から、制度が濫用されないよう法令で一定の枠組みと手続を定めた上で、その枠内で労使の適切な労使協議により制度の具体的内容の決定を認める手法に比重を移していくという考え方もあるのではないかとしてございます。
 次に、資料2-2を御覧ください。
 こちらが今、御説明申し上げました論点について、関係する制度の概要等をまとめたものでございます。
 まず目次の1ページ目を御覧ください。
 「労働時間制度の概要と主な改正経緯」等についてまとめてございます。
 2ページ目を御覧ください。
 2ページ目からが、まず「労働時間制度の概要と主な改正経緯」についてまとめているものでございますけれども、こちらは以前の本分科会でも御説明した資料でございますので簡単に御説明させていただきます。
 3ページ目を御覧ください。
 こちらが現在の労働時間法制の概要でございまして、法定労働時間は1日8時間、週40時間とされているほか、変形労働時間制等の労働時間制度が設けられてございます。
 次のページを御覧ください。
 こちらが変形労働時間制、フレックスタイム制等の労働時間制度の概況についてまとめたものとなってございます。
 次のページを御覧ください。
 この5ページ目と次の6ページ目が労働時間法制の主な改正経緯をまとめたものでございますので、適宜御参照いただければと思います。
 7ページ目を御覧ください。
 7ページ目が各制度等の対象労働者別に規定の適用関係等をまとめたものとなってございます。
 8ページ目を御覧ください。
 8ページ目以降が「労働時間の状況の把握と医師による面接指導等」についての資料でございます。
 9ページ目を御覧ください。
 働き方改革関連法によりまして、労働基準法において時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月で休日労働を含んで100時間未満、複数月で休日労働を含んで平均80時間を限度に設定することとされてございます。
 次のページを御覧ください。
 こちら、労働安全衛生法においての規定でございますけれども、事業者は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピューター等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならないこととされてございます。
 この労働時間の状況の把握につきましては、労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握するものとされてございます。
 次のページを御覧ください。
 こちらのページですけれども、労働安全衛生法におきましては、一定の長時間労働者に対して医師による面接指導を行うことを事業者に義務付けておりまして、裁量労働制適用者や管理監督者を含む高度プロフェッショナル制度適用者以外の労働者と研究開発業務従事者と高度プロフェッショナル制度適用者の面接指導の対象となる基準や罰則の有無について整理した資料となってございます。
 12ページ目を御覧ください。
 12ページ目以降が「企業による労働条件等の情報提供」についてまとめた資料でございます。
 13ページ目を御覧ください。
 こちらが企業による労働条件等の情報提供に関する主な労働関係法令をまとめたものでございますけれども、例えば一番上の女性の職業生活における活躍の推進に関する法律、いわゆる女性活躍推進法でございますが、こちらの法律におきましては、301人以上の一般事業主等は①にございます男女の賃金の差異と②にございます女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績、③にございます職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績の区分から、それぞれ1項目以上の計3項目以上を定期的に公表することなどとされてございます。
 14ページ目を御覧ください。
 こちらが女性活躍推進法・青少年雇用促進法における公表等の項目の詳細でございますので、こちらは御参考でございます。
 15ページ目を御覧ください。
 15ページ目以降が「過半数代表等」に関する資料となってございまして、16ページ目を御覧ください。
 16ページ目が労働時間制度等に関して過半数代表及び労使を構成員とする委員会関係規定についてまとめたものでございます。上の表にございます過半数代表につきましては、労使協定の締結や労使委員会の労働者側委員の指名の場面で規定されてございます。
 次の17ページ目を御覧ください。
 こちらが過半数代表者の選出についての労働基準法施行規則の規定でございます。こちら、下線部がございますけれども、働き方改革関連法の施行に伴って行った平成30年の省令改正におきまして、使用者の意向に基づき選出されたものでないことや、使用者は、過半数代表者が法に規定する協定等に関する事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならないことが追加されてございます。
 次のページを御覧ください。
 労働基準法関連の法令様式等につきましては、使用者及び労働者の押印欄の削除と、法令上、押印又は署名を求めないこととされた際の議論を踏まえまして、法令様式に協定当事者が的確であることについてのチェックボックスを設け、これに使用者のチェックがない場合には形式上の要件を備えていないものとすることとされ、令和3年4月1日より施行されてございます。
 具体的な記載といたしましては、例えば過半数代表者が労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者ではなく、かつ、同法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であって使用者の意向に基づき選出されたものでないことを確認するチェックボックスが設けられてございます。
 次のページを御覧ください。
 こちらのページが、いわゆる三六協定の届出様式に係る実際のチェックボックスの例でございますので、適宜御参照ください。
 次に、資料2-3を御覧ください。
 こちらの資料が本日御議論いただきます論点に関するデータをまとめた資料となってございまして、1ページ目を御覧いただきますと「経済社会の変化」等についてまとめてございます。
 まず2ページ目以降が「経済社会の変化」でございます。
 3ページ目を御覧いただきまして、日本の人口の推移でございますけれども、15~64歳の現役世代の減少が更に進む見込みとなってございます。
 4ページ目を御覧ください。
 2040年までの人口構造の変化でございますけれども、こちらを見ましても15~64歳人口が2025年から2040年にかけて減少が更に進む見込みとなってございます。
 次のページを御覧ください。
 就業者数の推移でございますけれども、労働力人口の中でも、就業者数(非農林業)の推移を見てみますと、就業者の大層が雇用者である状況が続いておりまして、2021年において雇用者が就業者に占める割合が約91%となってございます。
 6ページ目でございます。
 産業別就業者数の推移でございますけれども、製造業で働く労働者は減って、代わって非製造業での就業者が増えてございます。
 次に7ページ目を御覧ください。
 こちらは企業が考える人生100年時代に求められる能力についてでございますけれども、「自ら考え、行動することのできる能力」、「柔軟な発想で新しい考えを生み出すことのできる能力」等の割合が高くなってございます。
 8ページ目を御覧ください。
 こちらは雇用人員の過不足状況についての企業の調査でございます。「現場の技能労働者」に次いで「研究開発等を支える高度人材」、「システム・アプリケーション等を開発する高度人材」等が「大いに不足」、又は「不足」していると感じられてございます。
 9ページ目を御覧ください。
 こちら、今後の見通しを踏まえた企業の将来の人材戦略についてでございます。企業の業績に係る今後の見通しを踏まえた将来の人材戦略について尋ねたところ、「人材活用の方向性」につきましては「雇用や人材の育成を重視する」が最も高くなってございます。「人件費の配分」につきましては、「年齢に関わりなく能力・成果に応じた登用を進め、正社員の年功賃金割合を小さくする」が最も高くなってございます。また、「人材マネジメントの方向性」につきましては、「中途採用を強化する」が最も高く、次いで「教育訓練・能力開発を進める」が高くなってございます。
 10ページ目を御覧ください。
 賃金制度の状況でございますが、賃金制度につきましては、管理職層、非管理職層ともに役割・職務給の導入率が増加してございます。
 11ページ目を御覧ください。
 11ページ目以降が「デジタル化による働き方の変化」についての資料でございます。
 12ページ目を御覧ください。
 AI等による従業員の担当業務の代替の状況でございますけれども、総務、人事、生産、調達・仕入で強い影響を受けることが予想されるものとなってございます。
 13ページ目を御覧ください。
 ポストコロナにおけるデジタル化関連項目に対する変革についての企業の考えでございますけれども、「デジタル活用の視点からの業務プロセスの見直し」が推進されるとする企業が53.3%、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が推進されるとする企業が47.0%となってございます。
 14ページ目を御覧ください。
 AI等の進展・普及が雇用・労働に与える影響について、「経理、給与管理等の人事部門、データ入力係等のバックオフィスのホワイトカラーの仕事が減少する」ことについて自社に当てはまると考えている企業が55.2%、「人が直接対応することが質・価値の向上につながるサービスに係る仕事が増加する」と考えている企業が45.0%等となってございます。
 15ページ目を御覧ください。
 AI等が普及する中での今後の人事労務施策の変化につきましては、「必要な人材について、現在より、内部育成ではなく即戦力を企業外から採用する傾向が強まる」については「当てはまる」とする割合が高くなってございます。「将来の幹部候補を、新卒一括採用・内部育成で確保する度合いが今よりも弱くなる」、「新卒採用について長期雇用を意識しないで採用する度合いが強まる」につきましては、「当てはまらない」とする割合が高くなってございます。
 16ページ目を御覧ください。
 16ページ目以降は「コロナ禍等による労働者の意識変化等」でございます。
 17ページ目を御覧ください。
 こちら、テレワークの実施率の推移の企業調査でございますけれども、2020年2月は5.0%でございましたが、2022年1月には44.2%となってございます。
 18ページ目を御覧ください。
 テレワークの実施状況についての労働者調査でございます。多くの職種で上昇した一方で、職種によってテレワークの実施状況の増加幅は大きく異なっておりまして、「生産現場職」、「運輸・保安職」の増加幅は限定的となってございます。
 19ページ目を御覧ください。
 コロナ禍収束後の働き方等の変化の可能性についての労働者調査でございますけれども、「コロナ禍収束後、変化は起こり得るか」という質問に対し、「起こり得る」「どちらかと言えば起こり得る」とした回答の合計が、「時間管理の柔軟化」については46%、「テレワークの普及」については37.3%となってございます。
 20ページ目を御覧ください。
 テレワークを行うことによる仕事の生産性・効率性等の変化についての労働者調査でございます。オフィスで働く場合を100として、在宅勤務・テレワークを行うことによる変化を0~200の範囲で尋ねたものでございますけれども、「仕事の生産性・効率性」と「仕事を通じた充実感・満足感」については、いずれも「低下する」の割合計が「上昇する」よりも大きく上回ってございます。他方で、「ワーク・ライフ・バランスの実現度」につきましては、「上昇する」の回答が「低下する」の回答の割合計をやや上回っているというものとなってございます。
 最後、21ページ目を御覧ください。
 こちら、テレワーク実施者の今後の継続意向等について尋ねたものでございますけれども、新型コロナウイルス感染症の影響等によりテレワークを実施した方の大半が継続してテレワークを実施することを希望している、また、テレワークを実施していない者の中にも、テレワークをしてみたいと思っている方が存在するという結果となってございます。
 資料の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。資料2-1から2-3まで御説明いただきました。
 ただいまの事務局からの説明につきまして、委員の皆様より御意見、御質問等があればお願いしたいと思います。
 先ほどと同様、オンラインの委員の皆様にはチャット機能で発言希望と書いてお知らせください。いかがでしょうか。
 藤村先生、お願いします。
○藤村委員 どうも御説明ありがとうございました。
 労働時間法制をどう組み立てるかというときに、どういった働き方をしている人たちを前提に考えるかによって議論は変わってくるように思います。労働基準法ができた当時、第二次大戦直後というのは工場労働が中心で、大半が正社員で、同じ時間に出て、同じ時間に帰るという働き方の下での労働時間法制であり、ある意味、非常に単純だったと思います。しかし、その後、経済社会の変化とともに、いろいろな働き方をする人が出てきて、それぞれの働き方に合わせて、労働時間法制も相当変わってきたように思います。
 これからどういうものをつくっていくかというときに、どんな人たちを前提にして考えるかという点がとても大事だと思います。つまり、どういう労働者像を前提にして議論するということですね。これは労使それぞれに御意見があるし、なかなか割り切れない部分もあるのですが、ある種の社会的な合意をつくりつつ、「こういう人たちを前提に労働時間制度の在り方を考えていくのだ」という点を明確にしていくことが議論を整理していく上で必要だと思っております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。今後の労働時間制度の在り方について御意見を伺いたいということでございます。
 オンラインから鳥澤委員、お願いいたします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
 御説明ありがとうございます。私からは3点、意見と要望を申し上げたいと思います。
 まず1点目でございますが、資料2-1に記載していただいている論点のうち、「シンプルで分かりやすい制度」について2ページ中段に記載されている内容に私は賛成いたします。
 法が設定すべき事項については、健康・福祉確保措置や労働時間管理、制度導入に関わる手続など、制度全体で共通化できる事項や対象業務、年収要件など、制度趣旨に合わせて個別に検討すべき事項を横断的に整理していくことが必要と思います。現在はそれぞれが独立した制度となってございますが、将来的には柔軟な労働時間制度という一つの枠組みを設け、共通して守るべき事項、目的や趣旨に分かれたコースなどによって運用していくことも一つの案として分かりやすいと思います。
 また、労使のニーズが多様化する中では、可能な限り労使自治に委ねる範囲を広げていくことも必要と考えます。実際に中小企業においては、経営者と従業員の距離が近く、普段から緊密なコミュニケーションを図っているため、法に反しない範囲で個別対応に近い形で双方にとって望ましい労働条件を設定する企業も多いと思っております。
 2点目でございますが、資料2-2の12ページ以降に記載のある「企業による労働条件等の情報提供」について、昨今、雇用・労働に関する情報開示の義務化・努力義務化にされる内容が増えておりますが、開示の効果というものがなかなか感じられず負担に感じる声を多く聞いてございます。企業の労働時間制度についても、制度によらず柔軟な対応を取っている企業も多いことを踏まえれば、行政が一定の強制力を持って情報開示を促すのではなく、各企業がその各企業の人材戦略に基づき企業の判断で開示されることが私は望ましいのではないかと考えております。
 最後、3点目なのですが、少しこの論点から外れてしまいますが、今後の労働時間制度を検討していくに当たっては、労働者・求職者の働き方のニーズについて詳しく調査していただくことを要望したいと思います。先ほどのアンケートにありましたように、中小企業で、多様で柔軟な労働時間制度の導入を検討する目的というのは、人材確保のためによるものが大きいと考えております。中小企業では人手不足の状況にあり、求職者に選ばれるために求職者のニーズに応じた柔軟な労働時間を提示しなければ人材を確保できないという声を聞いております。こうした点から、求職者の働き方ニーズに重点を置いて制度を検討することが私は重要ではないかと思っております。
 私からは3点でございました。以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、山内委員、お願いします。
○山内委員 御指名ありがとうございます。
 私からは意見、1点だけ申し伝えたいと思います。
 御説明いただきました内容、ありがとうございます。資料2-1の2ページと3ページ、それぞれに書いてありますシンプルで分かりやすい制度、あと労使コミュニケーションの在り方について、これを併せ持って意見を申し上げたいと思います。
 まず労働時間規制の役割については、上限規制、割増賃金規制、各種健康・福祉確保措置の実施などを通じた健康確保に重点を置いたことがありますが、例えばフレックスタイム制のように働き手の自主性の尊重あるいはワーク・ライフ・バランス支援の意味合い、これらが持つ制度の意味合いもあると思います。
 加えまして、グローバルに事業を営んでいる企業であるとか、ダイバーシテイ・エクイティ・アンド・インクルージョン(DE&I)を推進するような企業は外国籍の人材を今後も日本に来て活躍してもらうために、諸外国で適用されてきた制度に近しい制度を用意することで、持てる能力を最大限に発揮してもらうという視点もあります。このような形から、労働時間制度の在り方を考えることは非常に重要というように考えております。
 このように労働時間制度の役割というのは働き手の健康確保も当然ながら、労使の多様なニーズに応えるという意味合いもあるわけです。さらに、事業環境の変化が激しい時代にあって、働き手が一層多様化することを考えると、多様な実態に対応し得る労働時間制度とすることが今後求められていくのではないかと思います。
 その点、単に制度のシンプルさを追求すると制度の多様性が失われる可能性がありますが、今後の労働時間法制の在り方について、法律による規制と労使自治の組合せ、これによって健康確保を前提とした労働者保護を確保しつつ、制度の安定性、あと実効性を高める方向性を模索することは労使の多様なニーズに応えることにもつながりますので、とてもよいアプローチだと私は考えております。
 なお、労使自治に委ねることを考える上で、労働者側委員の選出の手続や労使協議の手続など、手続規制が論点になってくると思われます。その際、各社の労使関係の成熟度は多様であるということから、一律の手続規制を設けるというよりは、むしろここまでの手続を踏めば労使自治に委ねる範囲をここまで拡大する、そういったようなレベルに応じた段階的で多様な労使自治が認められるような仕組みを検討することが重要ではないかというように考えております。
 私からは以上、1点の御意見でございました。ありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、池田委員、お願いします。
○池田委員 どうぞよろしくお願いします。
 私からは、企業による情報発信について意見を申し上げたいと思います。
 労働時間制度等に関する企業による情報発信について、有識者検討会の報告書の24ページを見ますと、労働時間制度の運用状況についても発信することの重要性が指摘され、また、資料2-2の12ページ以降で、女性活躍推進法など法律で情報開示を義務化する例も紹介されております。仮に情報開示の対象に労働時間制度ごとの労働時間数の実態も含むとした場合、例えば上限規制の適用猶予業種が人手不足解消や長時間労働につながる商慣行の是正の過渡期にあるタイミングでこれら情報開示を求められますと、現状でも不利な求人活動がさらに難しくなる可能性すらあり、企業の働き方改革に向けた取組に水を差しかねないと考えます。情報発信について、政府が介入することは避けるべきではないかというように考えます。
 次に、IT技術を活用した健康確保策について申し上げたいと思います。
 こうした方策を検討することは、フリーランスの健康確保を考える上でも有効というように考えますが、フリーランスの対策にはまずもって安全や健康管理についてのフリーランスの方々自身の意識を高めることが必要だと思います。例えば学校教育段階で行われるワークルールの学習において、多様な働き方とその特性、適用される保護策とともに、自営業としての心構えのような基礎的なところも含めて教育をすることが重要ではないでしょうか。
 私からは以上になります。ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 今、使用者側委員の皆さんから様々な意見が出たところでございますし、冒頭に藤村委員のほうからもどのような働き方をする人を前提に考えるかというところも重要だというご指摘がございました。確かに、以前と比べれば格段に働き方の多様性は広がっていると考えるところではありますが、検討会報告にもあるように、労働時間法制は労働者の健康確保が何よりも重要だと労働側も考えております。そのことは経済社会や働き方が様々変わってきても、変わることのない一つの大きな太い柱だと考えているところです。
 事務局より説明いただいた労働時間制度の概況には様々な法制度があり、多様な働き方は、現行制度を適切に運用すれば一定程度実現できるのではないかと思っております。今後、多様な働き方を労使がきちんと話し合って選択をすることは重要ですけれども、効果的に活用するためには企業の適切な対応、適切に運用するマネジメント力の強化も求められると思っております。このような取組を進めるためには必ずしも法改正の必要はなく、現行法の中でも適切に対応すれば働き方の多様化への対応は可能と考えているところでございます。
 現場では、様々な事情を抱えた労働者がおりますので、そのニーズを適切に把握しながら、まずは健康確保を図るところが今まで以上に重要になってくると思っております。法の適正な運用に対する労使の取組を、行政としても後押ししていくことが重要と考えています。
 先ほどシンプルで分かりやすい制度について様々御意見がありました。シンプルで分かりやすい制度は、労働者にとっても意味があることで、労働者自らも制度をきちんと理解した上で働くことが求められるというように思っております。法定すべき事項と労使協議に委ねていい事項の整理については、労使関係が構築できているところはよいのですが、十分機能していないところもあることを考えますと、やみくもに効率化を図ることを促進すれば、労働者保護に欠けるような状況も出てくるのではないかというように考えます。そのようなバランスも踏まえて慎重に対応することが重要と考えております。
 それから、先ほど手続規制についても使用者側の委員の方が触れておりましたけれども、きちんと労使自治を十分機能させるという意味でも、むしろ今まで以上に厳格に定めることが重要と考えておりますので、その点、申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 安藤委員、お願いいたします。
○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。
 今までの皆様の議論を聞いていて、私も変化への対応ということは必要と思います。社会も経済も大きく変化している状況において、企業が労働者の業務の内容、遂行方法を具体的に示す、これが困難になっているケースもホワイトカラーを中心として増えているようにも感じております。
 また、コロナ禍の中で働くという経験を踏まえて、労働者自身の働き方に関する考え方、希望も変化している。また、世代によって働き方に対する考え方も著しく異なってきている、このような社会変化ということを十分に理解することが私たちに求められていると思っています。
 これを踏まえ、今後の労働時間制度について検討を行う際には、現在の労働者がまずどういう働き方、どういうキャリアに対する希望を持っているのか、ニーズをしっかりと把握して各制度の対象となるだろうと考えられる労働者の姿を明確にしておくことが求められます。これまでどおり、週40時間という考え方をベースに制度を適用すべき労働者もまだまだいますし、自由に働きたいであったり、明確な指示を受けないで自律的に動いているような人もいるでしょう。これまでの制度の範疇に収まらない、こういう方もいらっしゃるのではないかということで、労働者という集団ではなく、より個人に焦点を当てた法制度というものが必要ですし、考えていかないといけない時代になっているのではないかと思います。
 労働者がどのような働き方を望んでいるのかというのは一様ではないわけですが、ニーズは個別化、細分化されているということを踏まえて、仕組みの不断の見直しを行っていくということが本審議会、本分科会に課せられた役割だと考えます。
 これまで裁量労働制の対象などについての議論がありましたが、働き方についてのルールを見直す際には、基本的には労働者と使用者、双方にとって納得のいくものを追求していくことが必要です。これまで、裁量労働制の対象についてはどちらかというと使用者側から要望があり、労働者側は否定的な見解を示すといったやり取りが見られます。しかし、理想論を言えば、本来なら労働者側から、私も例えば裁量労働制の枠に入れてほしい、そのほうがやりやすい、働きやすいという声が上がって、それを議論していく、これが理想的な姿ではないでしょうか。
 例えば私を含め大学教員というのは専門業務型の裁量労働制の対象となり得るわけで、完全に労働時間をきっちり管理されて、時間外労働の命令があれば割増賃金をもらって働くというものではなく、裁量労働制の適用を望むという大学教員は、かなり多いかと思います。このように労働者側が時間管理をしっかりされるものがいいのか、それとも裁量の余地があるのがいいのか、こういう形で労働者の視点から見てという話が出てくることが望ましいわけです。
 ただし、ここに難しい点があって、これまでそのような契約の下で働いた経験がないと要望をなかなか出しにくいという現実もございます。そこで、当事者である労働者の意見をしっかり聞きつつ、よく考えて合理的なものであれば導入を十分検討する必要がある。ただし、これまで調査があって8割ぐらいの労働者が裁量労働制の適用については満足している。反対に言えば2割ぐらいの人にまだ問題があるという主張もあるわけで、事後的によく調査してルールの見直しの議論を今後も不断に続けていくことが必要だと思っております。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 八野委員、お願いします。
○八野委員 今までの御意見は、今後の働き方に関する様々な観点からのご指摘だと思います。働き方が多様化しているということではありますが、この労働条件分科会の議論を見ていると、人材獲得競争のターゲットになる人材の働き方が中心になっているように思います。しかし、労働時間法制は、有期契約労働者を含むすべての労働者に目を向け、健康確保を重視した対応が必要だと思っています。
 もう一点、労働時間を中心に働き方が多様化しているという意見がありますが、私が考えるには労働時間を管理するマネジメント能力が不十分、または低下していると思わざるを得ません。労使自治がきちんとできていると思われるところや、有名企業であっても、過重労働が生じている実態、過労死の事案も起きております。そのことを私たち公労使の三者構成の会議の中では厳しく見ていかなくてはいけないのではないかと思っています。
 SDGsの中で目標8の中に「働きがいも経済成長も」という言葉がございます。この根底は、ディーセントワークです。ディーセントワークという言葉が今、あまり使われていません。その原点に戻ったときに、働きがいがある人間らしい仕事ということだけで解釈するのではなく、目標8に掲げられた4つの項目についてしっかりと基盤をつくり、公労使三者で労働時間法制をしっかりと考えていく必要があると思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 鬼村委員、よろしくお願いします。
○鬼村委員 これからの働き方という意味でいきますと、やはり従業員を見ておりましても、おのおのの希望する働き方や、就労観は大分異なってきております。したがいまして、一律に当てはめるということではなくて、選択肢として提供でき、企業もその中で複数の選択肢を使い分けることができるというような環境をつくっていくのが非常に重要なのだろうなと思います。
 そういう意味でいきますと、昨今議論させていただいている裁量労働制のような働き方の方が適する場面もあれば、旧来の工場法的な働き方の方が適する場面というのもやはり厳然としてあると思っていて、それらをうまく使い分けていくというのが大事なのだろうと。その際に、先ほど八野委員からもご発言がございましたが、やはりマネジメントがしっかりそういうことを管理する。労働者の一人一人を見てどういうものがよいのかというのをお互いに議論して、正しい理解の下で制度運用していくという、非常にマネジメントとしては負担が大きいものになっていくと思いますが、企業としてはここをしっかりやっていくということで、こういう新しい働き方に適用した企業、日本社会というのをうまくつくっていければなと思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 佐藤委員、お願いいたします。
○佐藤(厚)委員 ありがとうございます。公益委員の佐藤でございます。
 これまでの議論と皆さんの御意見を伺いまして、一つ一つそうだなということで、それぞれのお立場を踏まえた御発言ということで、その問題意識について理解できます。
 私からは、これまでの議論を踏まえて、現行の仕組みがあるわけですね。その現行の仕組みが幾つか弾力化を許容したような仕組みが入ってきて、それがまたいろいろな多様なニーズに合った形で導入すべく取り入れられつつあるわけですけれども、この中でこれからのニーズ、皆さんがおっしゃったような経済環境あるいは技術革新環境に合った形でニーズを踏まえて、それに対応できないものは何なのだろうかと、現行の仕組みを運用する中でできないことは何なのだろうか。また逆に、それができるということであったとするならば、つまり、今の仕組みをそれほど大きく変えないで対応できるけれども、実態としてなかなかうまくいかないというものは何なのだろうかと、ここのところをしっかり分けて議論する必要があるかなというように思います。
 特に後者の今の仕組みを大きく変えないでもいいのだと、その上で運用が問題なのだと、そしてまた、それはマネジメント能力なのだと、それに依存するということが複数の委員から御指摘がございましたけれども、私も全くそこは同感でございまして、やはり時間管理もそうですが、人事管理というのは8割ぐらいマネジャーが機能としては担っているのですね。人事部ももちろん組合も担っているのだけれども、この制度設計の導入とかそこは担っているのだが、日々の運用というところが実は一番重要なところでありまして、それを担っているのはマネジャー、具体的に言えば課長さん、部長さんやいろいろマネジャーの名前があるが、そこなのです。
 ますます複雑になってきている労働時間制度の中では、ますますマネジャーの力量、マネジャーの役割が重要になってくる。どのように仕事を割り振るのか、どのように仕事の配分とその時間の長さを調整するのか、どのように評価するのか、ここまでを一体として日々適切な運用が求められている。その中でパフォーマンスも維持していかなければならない。場合によっては部下の能力開発もしていかなければならないというように多重役割を負っているのがマネジャーです。ですから、そこのところをうまく運用できるようにしていない仕組みというのはどういう仕組みを入れてもうまく機能しないのではないかなというように私は思っているわけですね。そこがまず非常に重要になってくるのではないかなというように思っています。しかし、この分科会、審議会の中でそこまで踏み込んで議論するというのはなかなか大変だと思います。ですので、いくつか議論がある中では、こういう状況で多様化してきている中でマネジャーの力量も問題になる中で、労使自治という現場に近いところに委ねていくという考え方がいいのだというように持っていくのか、それとも、そうではなくて、組合のないところもたくさんあるので、労使自治に委ねてしまったのだったらそれに対応し切れない現実もあり、過半数代表の選出の仕組みについてもいろいろな形で問題になってきている中で、それでは駄目なのだと。すなわち、法で規制すべきところはしないといけない。例えば働き過ぎのチェックだとか健康・福祉確保措置というのは任せてしまっては機能しない。任せてしまってうまく機能するところはいい。そこはいいのですよ。だけれども、そうでないところもいっぱいあるわけですから、では、そこはどうなのだというところですね。その兼ね合いがますます大事になってくるのかなというように思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 多様な貴重な御意見をいただきました。私なりに少しまとめさせていただきますと、働き方の多様化に対して一律の規制というものではなかなか合理的な規制とならない、そういう状況が増えてきている。それに対して一般的な一律の規制を単に適用除外してしまうと何ら保護措置が残らないということになってしまいます。これは適切ではない。ですから、望まれているのは、多様化に対応した一般規制とは異なる特別の規制というものを適切に用意するということであろうと思います。
 その場合には、健康確保のためにも最長労働時間、長さに着目するのも原則的な考えですが、他方で、労働から解放された時間を確保するというアプローチもあり得ます。高プロの場合は年間104日、これは三六協定を結んでも休日労働させることができない。これは一般の労働者よりもより厳しい労働解放時間の規制です。それから、インターバル規制や2週連続の休暇も労働解放時間の規制を強化しようということで一般規制とは違ったアプローチをしている特別規制と理解しております。
 それから、割増賃金規制についても、それを直接適用しない場合には年収要件とか、あるいはその人にふさわしい収入の確保というものが重要となり、今回の検討会の報告書でも裁量労働制適用労働者については裁量労働制にふさわしい処遇の確保というものを強調して、これも一般規制とは別の観点からのアプローチを特別規制として考えているのだと思います。
 このように多様な労働者、働き方に対応して規制を多様化していくということになりますと、御指摘があったように非常に規制が複雑になってしまう。これは使用者にとっても困りますが、労働者自身が自分を守ってくれる法規範は何かを認識できないということですと、これは法違反ではないかという声も上げづらいということになって適切でありません。したがって、法規制自体はシンプルなものであることが必要となります。
 では、そのシンプルさと多様性のバランスをどうするかですが、法規制を一定範囲、現場でカスタマイズすることを認める、そのカスタマイズをする余地の枠を法が適切に設定する、ということが大事だと思います。そうしたカスタマイズを現場の労使で行うと、そのルールは自分たちが現場でつくったルールですから、これが制度をつくったときの趣旨に合致してないということであれば、これはおかしいではないかということで、その履行確保も図りやすくなるというメリットがあります。
 ただ、御指摘があったように、そのカスタマイズの担い手が非常に重要で、労働者の保護を適切に図るという任務を果たし得る仕組みが必要となります。実は企画業務型裁量労働制を導入したときには、このような考え方から、対象業務は企画、立案、調査、分析という比較的ざっくりとしたくくりとし、現場で制度設計をする、その担い手を過半数代表者ではなく労使委員会という労使同数の委員からなる常設の機関とする。そこでしっかりとした仕組みを設計していただこうということを企図したところです。
 すなわち、法規制自体はシンプル化し、現場の多様性に応じた規制のカスタマイズというものはしっかりとしたそれを担い得る制度を用意して対応しようということで、シンプルな規制と規制の多様化の双方を実現させる仕組みということで考慮されたものと理解をしています。したがって、今後は、こうしたシンプルな規制と多様な働き方の双方を実現していくために、労使委員会とか労使協議の実効的な活用というものが重要になってくると考えております。
 それから、もう一点、付言いたしますと、労働人口が減少していく中で労働者に選ばれるような労働時間制度、これを提供することが使用者、企業にとっては非常に重要だと考えます。そのためには情報の公開が必要となってきますし、労働者の選択によって望ましい労働時間制度の普及を図るというような方向性も考えられます。すなわち、法規制自体をどう適切なものにしていくかということと同時に、市場の選択を通じた望ましい労働時間の普及を図る、こういった複合的なアプローチというものも今後考えていく必要があると考えています。
 それでは、この論点、かなり時間を取ってしまいましたので、よろしければ次の論点に参りたいと思います。
 次は資料No.3ということになります。事務局から説明をお願いします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。
 資料3を御覧ください。
 これまで労働時間に関する検討の論点に沿って御議論いただいてきたところでございますけれども、本資料は論点ごとに労使の各委員のこれまでの主な御意見を整理したものとなってございます。
 1ページ目を御覧ください。
 まず、裁量労働制についての(1)の対象業務でございます。これ以降の資料、全てそうでございますけれども、まず緑の検討の論点という欄に御議論いただいた際にお示しした検討の論点をお示ししておりまして、その下に労働者側委員からの御発言と使用者側委員からの御発言を並べています。
 まず「(1)対象業務」についてでございます。
 労働者側委員からの御発言、3点挙げてございます。
 1点目でございますけれども、裁量労働制が適用されると、通常の労働時間管理を外れ、みなし労働時間制になり、正確な労働時間の把握がされない事案が増えるのではないか。仮に対象業務を拡大するようなことになれば、労働時間が正確に管理されない労働者の数が増えることを大いに懸念。長時間労働を助長し、労働時間法制の原初的な使命である労働者の健康確保の観点から問題がある事案を増やしかねないため、裁量労働制の安易な拡大については反対。
 2点目でございますけれども、フレックスタイム制でも業務の遂行方法を含めて工夫して取り組んでいるところもあり、裁量労働制を適用する必要はないのではないか。
 最後、3点目でございます。現状、様々な不適切な運用が見られるため、まずはここをしっかりと改善すべきではないか。裁量労働制の本旨を逸脱したような不適切な運用改善を徹底し、実効性を高めていくことが先決であり、安易な拡大は反対となってございます。
 次に、使用者側委員からの御発言で4点ございます。
 1点目でございますけれども、昨今、課題解決型・提案型のビジネスなど、必ずしも時間と成果が比例しない職務が増えてきた。真に時間にとらわれない働き方を可能とする裁量労働制が広く活用されることを期待している。一方、少ないながらも裁量労働制の適用に不満を持つ方がいることも事実であり、適正な運用を図りつつ、対象業務の拡大を検討する必要があるのではないか。
 2点目でございます。フレックスタイム制では報酬が成果ではなく労働時間の実績に応じて支払われる一方で、裁量労働制は成果を重視した制度で、成果主義的な処遇と親和的な仕組みであるため、裁量労働制の対象業務の拡大とフレックスタイム制の活用は切り離して議論する必要があるのではないか。
 3点目でございます。平成29年に本分科会で示された働き方改革関連法案要綱において企画型の対象業務へ追加することとされていた「課題解決型開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」の必要性はむしろ高まっており、裁量労働制の対象にすべきではないか。
 最後でございます。「金融機関において、顧客に対し、資金調達方法や合併・買収等に関する考案及び助言をする業務」は、専門性が極めて高く、労働時間と成果が比例しない性質のものであることから、まさに裁量労働制の対象にふさわしいのではないかとなってございます。
 2ページ目を御覧ください。
 こちらも裁量労働制について、「(2)労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保」についての「① 対象労働者の要件」についてでございます。
 まず労働者側委員からの御発言、1点ございます。
 専門型においては、企画型のような要件が法律上定められていないが、省令・告示の業務に該当するからといって経験が全くない者を裁量労働制の対象にしてよいのかということも改めて検討が必要ではないか。企画業務型における対象労働者の要件について、現行では告示における例示にとどまっている内容をより明確にすべきではないか。
 次に、使用者側委員からの御発言でございます。
 専門型を適用する労働者については、必要であれば労使で協議して決定することが望ましいが、この必要性も含めて労使自治に委ねることが適当であると考えるため、一律の制度化はそぐわないのではないかとなってございます。
 次に、3ページ目を御覧ください。
 次に、同じく(2)の「② 本人同意・同意の撤回・適用解除」についてでございます。
 まず労働者側委員からの御発言、2点、挙げてございます。
 1点目でございますけれども、現在は同意を求められていない専門型においても、同意を求める方向で検討すべきではないか。その際、制度概要や賃金・評価制度等が制度適用によってどうなるのかをしっかりと対象労働者に説明し、理解と納得を得た上で真の自由意思による同意を得ることが重要ではないか。
 2点目でございます。同意の撤回の実効性を確保するため、撤回したことを理由とする不利益取扱いを禁止するとともに、その手順を明確に定めておくべき。また、健康確保の観点からは、長時間労働が続いていたり、心身の不調が見られる場合に、一定の基準を設けてそれに該当する場合には、本人の意思にかかわらず適用解除の措置を設けることも検討すべきではないかとなってございます。
 次に、使用者側委員からの御発言、2点挙げてございます。
 1点目でございますけれども、専門型において本人同意を取ることが法定されていないのは、業務ごとに求められる資格や業務内容が比較的明確であり、使用者による具体的な指示が困難であることが明らかな業務である点が影響していると考えられ、専門型にも本人同意を一律に義務化することについては慎重な議論が必要ではないか。
 2点目でございますけれども、一定の基準に該当した場合に制度適用を解除する措置等を設けることについては、健康確保措置として有効な措置であると考えるが、裁量労働制適用による健康状態への影響があるとはいえないという分析の結果もある中で、一律の義務化は過度な規制ではないかとなってございます。
 次に、4ページ目を御覧ください。
 同じく(2)「③ 業務量のコントロール等を通じた裁量の確保」についてでございます。
 労働者側委員からの御発言、1点挙げてございます。
 裁量の程度が大きいかは個人の主観によるところもあり、どのような場合に裁量が失われたと判断するのか、労使委員会であらかじめ定めておくことを検討すべきではないか。その基準に基づいて裁量労働制の下で過重な業務負担となっていないか、また、長時間労働となっていないかなど、制度導入後も労使で運用実態をチェックすることが極めて重要となってございます。
 次に、使用者側委員からの御発言、1点ございます。
 業務量が過大等の理由で裁量が事実上失われている場合等に、状況を改善する、あるいは制度適用を除外するため、告示の内容を各企業が徹底することが重要ではないか。例えば、過大な業務量を与える場合や著しく短い納期設定をする場合には、時間配分に関する裁量が事実上失われていることがある点などを各企業のガイドラインに盛り込んで、上司と適用労働者双方に定期的に周知していく取組や、管理職向け研修に盛り込むことなどが有効ではないかとなってございます。
 5ページ目を御覧ください。
 ここからは裁量労働制について、「(3)労働者の健康と処遇の確保」でございまして、まず「① 健康・福祉確保措置」についてでございます。
 労働者側委員からの御発言、2点挙げてございます。
 1点目でございますけれども、実施されている健康・福祉確保措置として、心と体の健康相談窓口の設置、産業医等による面接指導等、比較的取り組みやすい措置に偏っている。健康・福祉確保措置を実効性のあるものにするには、勤務間インターバルの確保や一定期間当たりの労働時間の上限の設定、配置転換等の複数措置と組み合わせていくことが必要ではないか。高度プロフェッショナル制度では複数措置の実施が義務付けられており、健康確保の実効性を担保するため、裁量労働制においても同様に複数措置とすることを検討すべきではないか。
 2点目でございますけれども、健康・福祉確保措置を実施する必要がある労働時間がどの程度であるか基準を例示することなども必要ではないかとなってございます。
 次に、使用者側委員からの御発言、2点挙げてございます。
 1点目でございますけれども、裁量労働制適用による健康状態への影響があるとは必ずしも言えない中で、健康・福祉確保措置に関する過度な規制強化は避けるべきであり、むしろ措置の内容や意義等の一層の周知徹底が重要ではないか。
 2点目でございますけれども、裁量労働制において、勤務間インターバルの確保をメニューに追加するという意味では検討の余地はあるが、勤務間インターバルの確保を必須措置とするのは、高度プロフェッショナル制度でも選択的措置の一つとしていることからも制度間の整合性がとれないため反対となってございます。
 6ページ目を御覧ください。
 同じく(3)「② みなし労働時間の設定と処遇の確保」についてでございます。
 労働者側委員からの御発言、1点ございます。
 割増賃金の支払いを逃れるための法の潜脱ではないかと思われるような低い処遇の適用労働者がいることは大きな問題。対象労働者は対象業務を適切に遂行する知識、経験等を有しており、その知識や経験に見合う処遇になっているのかという観点から労使でしっかり協議すべきではないか。
 使用者側委員からの御発言、1点挙げてございます。
 特別手当の支給や、業績・成果に応じて変わる賞与の裁量加算など、ヒアリング結果等から得られた事例を周知することは、各企業の労使が処遇について活発に議論する上で有効ではないかとなってございます。
 7ページ目を御覧ください。
 ここからは裁量労働制についての「(4)労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保」ということで、まず7ページ目が「① 労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上」についてでございます。
 まず労働者側委員からの御発言、3点挙げてございます。
 1点目でございますけれども、専門型については、賃金・評価制度に関する指針がないが、企画型と同様に専門型も運用実態を明らかにすることや、専門型・企画型双方とも対象労働者にふさわしい処遇を確保することを促すような仕組みを検討することが必要ではないか。
 2点目でございますけれども、法の潜脱的な運用がなされないためにも、専門型でも労使委員会のような仕組みを作り、制度導入後の適正運用を担保することが必要ではないか。
 3点目でございますけれども、労使委員会が制度の適正な運用のための責務を負っていることを明確にすべきではないかとなってございます。
 次に、使用者側委員からの御発言、2点挙げてございます。
 1点目でございます。賃金・処遇制度の運用状況をどこまで開示するかは慎重に議論すべきではないか。開示情報を一律に決めるのではなく、開示が推奨される情報の例を示すなど、企業の実態に合った話し合いを促進していくべきではないか。
 2点目でございますけれども、専門型の労使委員会の導入については、義務化ではなく、労使の自主的な判断によって労使委員会を活用することを促すべきではないかとなってございます。
 8ページ目を御覧ください。
 同じく(4)「② 苦情処理措置」についてでございます。
 まず労働者側委員からの御発言、1点挙げてございます。
 苦情の内容は、「業務量が過大である」「賃金などの処遇が悪い」「人事評価が不適切」「労働時間が長い」など、直接人事担当者や上司に申し出ることが難しい内容が上位になっている。裁量労働制を適切な制度にしていくために、労使委員会が苦情の窓口となることや独立した機関を設けることによって苦情を処理していくことが重要ではないか。
 次に、使用者側委員からの御発言、同じく1点挙げてございます。
 労使委員会に苦情処理窓口としての役割を担わせることについては慎重に考えるべきではないか。労使委員会は常設機関ではあるものの、実際には、苦情の都度、タイムリーに委員が参集して議論するのは難しい。また、苦情を申し出る労働者の中には、使用者ではなく、労働組合や過半数代表者、労使委員会の労側委員にだけ相談をしたい人もいることも考えられ、労使委員会を苦情処理窓口とすることで、かえって苦情を言いにくい状況になってしまうことも考えられるのではないかとなってございます。
 次に9ページ目でございます。
 同じく裁量労働制について(4)の「③行政の関与・記録の保存等」についてでございます。
 まず労働者側委員からの御発言、2点挙げてございます。
 1点目でございますけれども、定期報告について、制度を逸脱した運用があることを踏まえれば、制度の定着を理由として頻度を減らすことは慎重に対応すべきではないか。
 2点目でございます。本社一括届出により、各事業場の実態が踏まえられなくなり、形式的な届出となることを懸念するとなってございます。
 次に、使用者側委員からの御発言、2点挙げてございます。
 1点目、労使委員会の役割・機能などを含めて、適正運用に向けた検討を進めていく中で、労働基準監督署への定期報告の簡素化を図ることをお願いしたい。
 2点目といたしまして、実態調査の結果を踏まえれば、裁量労働制が制度として定着してきたことが一定程度分かる。定期報告の頻度を減らすことや、本社一括届出を認めることを考えていただきたいとなってございます。
 最後のページでございますけれども、こちらは年次有給休暇についてでございます。
 まず労働者側委員からの御発言、2点挙げてございます。
 1点目でございますけれども、心身の疲労回復のために細切れの時間単位年休が有用かという点については疑問であり、5日の付与義務については1日単位でしっかりと休ませることが重要。少なくとも年休の趣旨を踏まえて取得させるべきだと思っており、時間単位年休を年5日の使用者の時季指定義務に含めることは反対。
 2点目といたしまして、中小企業は慢性的な人手不足の状況であり、ただでさえ年休が取得しづらい職場実態がある。時間単位年休を年5日の使用者の時季指定義務に含めることで、さらに一日単位の年休を取得しづらくなりかねないとしてございます。
 最後に、使用者側委員からの御発言、1点挙げてございます。
 労働者のニーズの変化を捉えて休み方の選択肢を増やすことも大事であり、時間単位年休の取得日数上限を拡大すべき。また、年休の年5日の時季指定義務に関して、取得義務日数に時間単位年休の時間も含めることについて検討していただきたいとしてございます。
 資料3についての事務局からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 事務局において、これまでの労使の議論を整理していただいたところです。議論の仕方ですけれども、時間も押しておりますので、大きくは裁量労働制についての(1)から(4)の論点、そして、もう一つ、年次有給休暇、大きくはこの2つに分けて、まずは裁量労働制について項目を分けずに、どの点でも結構ですので、どの論点に関するものかということを示して御発言いただきたいと思います。今回、労使の議論もまとめていただいておりますので、公益委員の皆様にも御意見をいただければと考えております。いかがでしょうか。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
 私からは、金融機関において、顧客に対し、資金調達方法や合併・買収、事業承継に関する考案、助言をする業務を裁量労働制の対象にぜひとも追加いただくことを改めて強く申し上げたいと思います。
 現在、多くの事業分野でビジネス環境は激変しております。我が国企業が世界に伍していくためには、既存の事業にとどまらない挑戦、スピード感を持った事業展開が極めて重要です。こうした挑戦は、言うまでもなく投資活動を伴うということから、例えばプロジェクトファイナンス等の資金調達が重要になりますし、M&Aなどの事業再編による経営資源の獲得も不可欠と考えます。特にM&Aを実施した企業は、売上高成長率などが高いというデータもあり、我が国企業におけるM&Aの件数も右肩上がりで伸びております。
 こうした業務に従事する方の能力を最大限発揮できる環境を整えられるかどうかは、我が国企業の浮沈に関わる大きな課題だと認識しております。対象業務の追加をお願いしている金融機関の一定業務のうち、合併・買収、事業承継の考案及び助言を行う業務は顧客企業等の調査分析を行い、買収先、後継者の選定、経営統合後あるいは承継後の体制整備に関する戦略づくり、取引や資金調達のスキーム構築等についての提案、そして、その実現に向けたコンサルティングを行う業務です。
 また、資金調達方法に関わる考案及び助言の業務は、典型的なものから非常に難易度の高いものまで幅広くございます。ただ、私どもが想定しているのは、企業の財務指標等を踏まえ企業の信用をベースに貸付を行うといった類いのものではありません。将来キャッシュフロー予測の結果を踏まえて計画、実行するような高度な資金調達方法であり、いわゆるプロジェクトファイナンスと呼ばれるものが代表的です。
 このプロジェクトファイナンスの場合には、プロジェクト自体から生まれる将来キャッシュフロー、それから、中長期にわたるリスクを正確に予測する高い専門性が求められます。また、その専門性に関しては、常に変化する市場環境、事業性評価、さらには人権や環境といった新しいリスクにも対応する必要があります。その意味で、この各種リスク分析の難易度は将来にわたって高まりこそすれ、陳腐化することはないと思っています。こうした業務は上司でさえ正確な答えを持ち合わせておらず、働き手自らが裁量を持って業務を遂行するほかなく、しかも、その成果は時間と必ずしも比例しない性格の業務ですので、まさに裁量労働制にふさわしい業務だと強く思っています。
 なお、この業務に関しては、前回の分科会においして労働側委員より2点御指摘がありました。考案及び助言を行う業務は顧客の都合に左右されるのではないか、また、ヒアリング結果に記載のとおり2~3名のチームで行うことが一般的であれば、裁量をもって働くことは難しいのではないかという御指摘です。
 まず顧客の都合に左右されるかどうかという点です。まず御理解いただきたいのは、私どもが想定をしている金融機関の一定の業務は、顧客訪問を通じたニーズの把握や専門部隊の調整を専ら行うような、いわゆるフロント部隊と言われる方々の業務ではありません。フロントとは別に、フロントが拾ってきたニーズに対して、高い専門性を発揮しながら提案内容を考案及び助言する業務、いわゆるミドルバックと言われる専門部隊の業務を追加いただきたいとお願いしております。
 また、会員企業によると、顧客から頻回に追加の要求等を受けることは少ないと聞いておりますので、顧客都合によって裁量が持てないという指摘は当たらないと考えています。
 次に、チームで動くという点についてですが、今回要望している金融機関の一定の業務はチームで仕事をしますが、各担当者が上司の具体的な指示に基づいて業務遂行するわけではありません。実際の業務でもそれぞれの専門性を発揮して個別に担当業務に当たると聞いております。そのため、個人の裁量を持って働くことができ、裁量労働制の対象業務にすることがふさわしいと考えております。
 最後に、御提案申し上げている金融機関の一定の業務が我が国企業の成長、発展に極めて大きな役割を果たすということ、そして何より、業務自身が持つ高い専門性、高い裁量性をぜひとも御理解をいただき、裁量労働制の対象業務としていただくよう強く要望をいたします。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 オンラインからたくさん要望が出ております。まず両角委員、お願いいたします。
○両角委員 どうもありがとうございます。
 私からは2点、申し上げます。
 まずは裁量労働制の健康・福祉確保措置についてでございます。先ほど来から多くの委員や分科会長が指摘されているように、労働時間規制の根本的な一番の目的というのは労働者の健康の確保にあります。裁量労働制の場合は御承知のように割増賃金というものによる長時間労働の抑制を原則としては外すということになりますので、そうしますと、やはり労働からの解放の保証という形でよりダイレクトにある意味では労働者の健康を確保していくということが必要になると思います。その観点から言えば、今回、対象業務を拡大するかどうかということを検討する、私の考えではその前の前提として、まず健康・福祉確保措置が強化されるということが必要ではないかなと思います。
 具体的にどういう形で強化するかということですが、やはりこれは制度の整合性を考えますと、さらに既に先行している高度プロフェッショナル制度のメニュー、選択的措置のメニューを参考にしていくのがよいとか、それは一つの考え方ではないかと思います。もちろん、私、前の分科会でも申し上げましたように、現在の高度プロフェッショナル制度の措置のメニューが本当に医学的に見て健康確保の観点から全てが同じように有効なものなのかどうかというのは今後、見直しの時期を迎えたときには検証すべきだと思っておりますけれども、現時点では高度プロフッショナル制度のメニューを参考にしながら、例えば勤務間インターバルの措置などをメニューに追加していくということも検討されるべきではないかというように思います。それが一点です。
 それから、もう一つは、同じく裁量労働制に関する労使委員会の実効性確保についてでございます。これも先ほど来から多くの委員が指摘されておりますように、裁量労働制は対象となる労働者が自律的な働き方ができるということ、それから、割増賃金が基本的には払われないのでしかるべき経済的な処遇がされていること、それらが確保されるということが制度趣旨に沿った運用には不可欠であると言えます。前に御説明があった調査でも、それらが確保されていれば労働者の満足度も割に高いという結果が出ていたかと思います。これらを確保していくために、やはりこれも多くの委員が既に指摘されていることですけれども、労使委員会の機能、チェック機能を強化していくということが重要だと思います。つまり、制度の導入のときももちろんですけれども、その後、どのように裁量労働制が運用されているかという実態のチェックをやはり労使委員会が実効的に行っていくということが重要だと思います。
 そのためにどうすればいいかというと、これは根本的には多分中期的な、これも指摘されているようにいろいろ今すぐできるところもあれば、まだまだのところもあるということで中期的な課題ではあるかと思いますが、とりあえず考えられるものとしては、やはり労使委員会に使用者が開示する情報をもう少し充実するということも考え得ると思います。例えば報告書にもありましたけれども、適用労働者に対する評価や賃金の制度はもう現行制度の下で開示することになっているのですが、その制度がどのように運用されているかということももちろん個人情報、プライバシーへの配慮は必要ですが、何らかの形で労使委員会に開示していくということは必要かなというように個人的に考えております。
 私からは以上となります。ありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 ありがとうございます。
 私のほうから3点、意見を申し上げたいと思います。
 まず1点目が対象業務の部分でございまして、これは裁量労働制を企業側から見たときの必要性について言及させていただきたいと思います。前回の分科会で藤村先生からフレックスタイム制の活用では不十分で裁量労働制が必要であることの理由がはっきりしていないというような御指摘がございましたので、改めてこの場を借りて申し上げたいと思います。
 通常の労働時間制やフレックスタイム制では生み出す成果が労働時間に比例するような業務に適しており、そうした業務というのは数多く存在していると思っています。他方で、生産年齢人口が急速に減少する中で、労働生産性を高めていくには創造的で成果が労働時間に比例しないような業務を増やしていくということが求められていると思っています。
 例えば我々自動車業界においては、CASEと呼ばれるような技術革新が進んでいまして、上司でもクリアに答えを持ち得ない、そんな競争環境の中で生み出していく成果というものは、これはどうしても働き手の創造性あるいは裁量と呼ばれるものに左右されるというもので、労働時間に必ずしも比例するというものではない状況でございます。つまり、通常の労働時間制やフレックスタイム制の適用が賃金・処遇の観点でそぐわないケースがあって、しかも、そうしたケースが増えてきているというように感じております。
 少しイメージで申し上げますと、例えば同じ基本給で同じ役割期待を担う働き手が2人、AとBといたとして、Aはある成果を出すのにつき45時間の時間外労働をしました。一方で、Bは10時間で非常に効率的に同様の成果を出したというように仮定をすると、我が国の時間外労働では労働時間に比例した賃金の支払いというのが割増賃金規制によって求められておりますので、この場合、通常労働時間制あるいはフレックスタイム制の下ではAのほうが多くの賃金を得るということになって、本来は能力が高くて短時間で効率よく成果を出そうと頑張ったBの意欲というのが場合によっては損なわれる可能性すらあるのだろうと思います。これは労働生産性の高い人に報いようとする企業にとっては大きな問題ではないかと思っています。もちろん、こうした場合、Bは人事評価で高い賞与額や昇給額が約束されるということにはなってくるとは思うのですけれども、成果と時間が必ずしも比例しない業務に就く社員の間で、報酬の不公平感を生み出す要因になろうかと思います。
 また、もう一点、これは弊社でも従業員全員ではなくて、いわゆる総合職の方々になりますけれども、このような成果に根差した働き方あるいは創造的な働き方に報いるために、例えば賞与の評価の幅を拡大していくとかということを行って制度の見直しは随時進めてはきております。
 ところが、足元では現在のフレックスタイム制をはじめとした、結局実績管理型の労働時間管理で行いますと、ややもすると、言わば矛盾したメッセージを従業員のほうが受け取るようなケースもあって、従業員の意識改革がやや進みにくいなというように感じておるところでございます。
 また、厚労省の裁量労働制実態調査における事業場調査では、労働者の能力発揮を促すことを目的に裁量労働制を導入した事業場のうち90.9%に効果があったと回答しております。また、同調査において制度適用に満足している労働者の43.0%が能力や仕事の成果に応じた処遇となっていると回答していて、加えて裁量労働制適用者の約8割が制度適用に満足あるいはやや満足と回答している。制度に満足していると回答した適用労働者の51.3%が自分の能力を発揮しやすいと、このように答えております。こうした調査からも裁量労働制が従事した時間と成果が必ずしも比例しない業務には適した仕組みになっているというように感じており、裁量労働制の導入が能力発揮を通じたイノベーション創出の有力なツールになると、このように考えております。
 最後に、改めて申し上げますけれども、我が国の労働生産性向上には働き手の能力発揮というのが非常に重要であって、それを可能とする労働環境を整えるための施策を総動員する必要があると思っております。その中の一つとして裁量労働制の活用というのは、こうした働き方が求められる層にとっては間違いなく有効かつ重要な施策であるということを強く主張させていただきたいと、このように思います。
 すみません、それから、あと2点です。
 (2)の①、②のところですけれども、まず①のところですが、企画型の職務経験要件については通達に記載する内容を明確化するということに異論はないですが、専門型について同様の要件を求めるということには反対をしたいと思っております。
 専門業務型の対象業務は業務ごとに求められる資格や業務内容が比較的明らかでありますし、例えば研究者の場合は就職する前に大学の研究室で経験を積んでいる場合などいろいろございますので、専門型に職務経験の要件を一律に課すというのはやや適当ではないのだろうと思っております。
 それから、もう一点、最後ですが、適用解除の措置でございます。一定の基準に該当した場合、会社主導で裁量労働制の適用を除外する、こういう仕組みを設けること自体は健康・福祉確保措置としては有効なものであろうと思っております。ただ、こうした措置は労使で協議の上、実態に合わせてメニューを選択するということがよいと思っておりますし、いわゆる高度プロフェッショナル制度の中でも選択的措置の一つとされている状況を考えますと、一律に制度化するということはやや過度な規制になるのではないかなと、このように考えております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 安藤委員、お願いいたします。
○安藤委員 私からは裁量労働制の同意の撤回時や適用解除後の処遇についてコメントがございます。
 まず、本人同意が撤回された場合に制度の適用から外れること、これを明確化する必要性については労使から異論はないと思います。そして、同意の撤回について明確化する際には、併せて同意撤回後の処遇等についてあらかじめ労使で取り決めをしておく、これが望ましいということを示す、これが必要ではないかと考えます。
 また、同様に、一定の基準を設けて裁量労働制の適用が解除される、そういう措置を設けることについても、それを義務とするか否かは別として、そういう措置が有効であることについては労使双方が認めているものと考えています。このように、特定の対象労働者を制度適用の対象としないとする場合にも、配置または処遇について、また、その決定方法について、あらかじめ定めておくことが望ましい、このようなことも示しておくことが必要かと考えます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 池田委員、お願いいたします。
○池田委員 どうもありがとうございます。
 私からは、労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上について申し上げさせていただきます。
 まず、労使委員会等での賃金・評価制度の運用状況等の開示について、これはこれまでの分科会でも何度も申し上げてきましたが、賃金・処遇制度を設計あるいは見直す際には、必要な情報を共有の上、労使で協議してまいりますが、制度運用時の個別の人事評価等は会社の専権事項となっていることが多いと思います。ですので、多くの会社では、たとえ分布であっても組合等に公表していないのではないかというように考えてございます。
 また、裁量労働制適用者が少ない場合は、たとえ分布の公表であっても個人の情報が実質的に分かってしまう、そういうことも懸念いたします。なので、何らか情報共有を通じた労使委員会の実効性向上を図るにしても、開示情報を一律に定めてしまうと、これまで築き上げてきた労使関係に影響を及ぼすことも考えられますので、開示が推奨される情報の例を複数示すなど、各企業の労使が実態に合った議論ができるような配慮をお願いできればというように考えます。
 また、次に、専門型においても労使委員会の活用を促すという論点についてですが、企画型と専門型では対象業務要件が異なっているため、全く同様の規制をかけることの道理はないというように考えます。既に専門型でも労使委員会を設置している企業があることを承知しておりますが、これは適正な運用を図るための施策の一つとして有効であるとは思いますが、一律に要件化することは避けて、任意に設置している企業の好事例を周知するなど、積極的に活用を促す、そのようにすることのほうが大切というように考えます。
 私から以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、山内委員、お願いします。
○山内委員 御指名ありがとうございます。
 私からは1点だけです。結論から申し上げますと、手続の簡素化についてでございます。資料3の9ページ、この1枚を御覧になっていただければと思います。
 まず、検討の論点の2つ目、ここの○印の中に書類の保存を義務付けることが適当ではないかという表現があります。一方で、下の労働者側の委員から意見をいただいている制度を逸脱した運用があることを踏まえれば、定期的な報告の頻度を下げることは慎重であるべきとの御意見、これもいただいております。この2つを併せ持ったとき、論点で指摘されているような書類の保存がきちんとなされれば、定期報告の頻度を減らしても行政による監督指導に大きな支障は生じないのではないかというように考えます。ぜひこの点は併せ持ってセットで考えていただくことをお願いしたいと思います。これが一点です。
 もう一つ、同じく労働者側委員の御意見に本社一括の届出について、各事業場の実態が踏まえられなくなり、形式的な届出になることを懸念するとの指摘をいただいております。御案内のとおり、労使委員会の決議や労使協定の締結と届出、これは別物であります。一括届出が認められることによって決議がなおざりになるということはないというように考えます。もちろん、労使委員会の決議、あと労使協定を行うに当たっては、適用される賃金制度あるいは評価制度などを労使で十分共有しながら、各事業場の実態に即した内容で決議や労使協定の締結を行うことが重要であります。その点の周知徹底は引き続き行うことは重要と考えますが、先ほどの一括届出、これを理由に排除するというのは適当ではないのではないかというように考えます。
 最後になります。これは繰り返しになります。最近、各事業場の人事担当者の仕事が非常に増えておるのが実態としてございます。コンプライアンスの徹底であるとか男女賃金格差の公表、育児制度の改定への対応、様々な対応事項が増加傾向にあることにあります。働きやすい環境の構築をはじめ人事労務の観点から企業の競争力を強化することに対して使用者側のリソースを最大限に活用していきたいと考えておりますので、手続の簡素化をぜひとも進めていただければというように考えております。私からは以上であります。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 会場からも手が挙がっておりました。それでは、八野委員、お願いします。
○八野委員 ありがとうございます。
 私のほうから大きくは3点あります。
 まず一つは対象業務でございます。資料3の1ページに参りまして、労働者側が繰り返し意見を言っておりますが、大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるという対象業務の趣旨に反した運用が見られるということ、または適用労働者が長時間労働の割合が高いことなどを踏まえれば、制度趣旨に沿った適正な運用の徹底こそが重要であると思っております。
 顧客や現場に絡むような事案において、やはり労働者に労働時間に係る裁量がないことが多く、または、そのような事案で現行のフレックスタイム制など現行制度の活用によって柔軟に対応できているという事例が挙がっていると思います。
 先ほど使側が金融関係業務のことを強く発言されておりましたが、私がかかわっている流通業界では、M&Aで成功した事例は非常に少なく、かなりいろいろな問題が起きているところもあります。
 使側が主張するように金融関係業務が日本の経済成長に非常に重要で、また、企業買収や投資、その他の様々な新たなビジネスモデルをつくっていく業務であったとしても、むしろ高度プロフェッショナル制度において整理や検討がなされるべき業務ではないかと考えます。
 次に、(2)の労働者が理解・納得した上で適用、裁量云々というところの業務コントロール等を通じた裁量の確保についてでございます。論点にも記載がありますように、裁量が事実上失われたと判断される場合には裁量労働制を適用することはできないということを明確にするべきであると考えております。実態調査においても裁量の程度が大きいと回答した労働者のほうが長時間労働になる割合、または健康状態やメンタルヘルス等に与える影響も低かったということを踏まえれば、裁量の確保の有無は健康確保の観点からも非常に重要であるというように捉えております。
 また、どのような場合に裁量が事実上失われたと判断されるのか、その基準や具体的な例をあらかじめ定めておくべきではないかというように考えております。そのような基準、例示に基づいて、過重な業務量となってないか、長時間労働となってないか等、制度導入後も引き続き運用実態を適宜確認していくことが適正な制度運用のためには非常に重要と考えております。
 次に、(4)労使コミュニケーションの促進を通じた適正な制度の運用の確保というところですが、責務規定、過半数代表者について発言させていただきたいと思います。労使委員会の責務規定に関して、前回の分科会において裁量労働制においても労使委員会が制度の適正な運用のために責務を負っていることを明確にすべきと労働者側より発言をしております。実態として、労基署への定期報告が年に2回であることから、労使委員会も同様の頻度で実施しているところが多いと認識をしております。単に監督機関への報告のために開催するのではなく、そもそも導入した制度に対して労使委員会として決定した内容に対し責務があるのだということを明確にすべきではないかということを改めて述べておきたいと思います。
 また、労使委員会の労働者側委員の選出手続の適正化等については、今まで、何回も述べてきておりますので、その点もしっかりと押さえていただければと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。
 北野委員、お願いします。
○北野委員 ありがとうございます。
 私から対象業務と行政の関与・記録の保存について意見を申し上げたいと思っています。
 対象業務の論議において、前回も、使用者側委員からの発言に時間と成果が比例しない、または、裁量労働制は成果を重視した制度との発言がありました。しかし、裁量労働制は御案内のとおり、労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があり、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務とされております。要するに、本来、成果とは関係ない制度ではないかと認識をしております。賃金や評価制度を成果と関連付けている企業もありますが、それはあくまでも個別労使の判断だと思いますので、対象業務拡大の理由として適切なものではないと考えております。
 成果と労働時間の関係で申し上げますと、高度プロフェッショナル制度において、その性質上、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務として明確にされています。そういう意味では、先ほども八野委員からもありましたが、金融関係業務のヒアリング資料にも労働時間と成果が必ずしも連関するわけではないM&Aアドバイザーという記載もありましたが、これは制度趣旨を踏まえれば、高度プロフェッショナル制度において検討すべき業務ということで裁量労働制において論議することは適当ではないというように思っております。
 それから、行政の関与・記録の保存について申し上げたいと思います。繰り返しになりますが、そもそも適正な制度運用に尽力している現場においては、労使委員会にとどまらず、労使協議や労使対話等を適宜実施している実態がございます。
 一方で、法で定められた労使協定の締結、最低限の労使委員会さえ実施すればよいと考えている事業者もあるのではないかと考えておりまして、適正な法の履行確保、実効性の確保という観点から一律の負担軽減を認めることには慎重であるべきと思っております。
 それから、前回の分科会において書類の保存についても行政による指導監督に支障が生じないように、健康・福祉確保措置の実施状況に関する書類の保存を義務付けることになっていることに関して、現行制度においては労働時間の状況と健康・福祉確保措置に関する労働者ごとの記録の保存が義務付けられていることを労働者側より指摘をさせていただきました。
 今回の検討の論点において健康・福祉確保措置の実施状況に関する書類のみとなっておりますが、改めて労働時間の状況の記載がないのは含まれていないという理解でよいのか、ここは確認をしたいと思います。もし労働時間の状況については書類の保存義務に含まれないということであれば、健康確保の重要性が軽視をされているのではないか。保存の対象とすべきであるということを改めて申し上げておきたいと思います。
 また現行では、講じた苦情処理措置及び対象労働者の同意も、労使委員会決議または労使協定の有効期間中、及び有効期間満了5年間、当面の間では3年間保存するということとされておりますが、前回分科会においても監督指導の観点から本人同意の有無についてきちんと確認できるよう、保存を義務付けるべきだという発言をしておりますので、改めて申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 それでは、川野委員、お願いします。
○川野委員 ありがとうございます。2点、申し上げておきたいと思います。
 まず1点目は、資料No.3の2ページで対象労働者の要件でございます。労働者側意見にありますとおり、企画型では対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者と規定されている一方、専門型においては特に労働者の要件はなく、省令及び告示に該当する業務であれば、経験年数が全くなくとも適用することができることになっております。しかし、上司に相談することなく自分で判断し、大幅な裁量を持って働くためには一定の実務経験及び能力が必要となってきますし、たとえ対象業務であっても一律に適用するのは適切でないと考えます。真に裁量を有した働き方ができるためには、どの程度の知識や経験が必要なのかについて労使での協議を促し、一定の制限をかけることが必要だと考えます。
 加えてもう一点は、労使コミュニケーション、労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上についてでございます。制度趣旨に沿った適正な運用を促すためには、労使委員会のような定期的に労使でPDCAサイクルを確認する仕組みが必要であることは前回、労働者側より発言してきたとおりでございます。特に専門型におきましては、現行制度では協定さえ締結すれば運用状況の確認は特に必要ない仕組みとなっている点に関し、長時間労働や低い処遇の問題等、実態調査からも様々な課題があることが明らかになっており、労使委員会において運用状況を適宜確認する仕組みを設けるべきだと考えます。
 加えて、労使協議をより実効性のあるものとするためには、運用の実態を明らかにすることが非常に重要であり、どのような評価制度、賃金制度が適用されるか、また、変更を含めてどのようになるのかということ、制度趣旨に沿った処遇や裁量が確保されている実態があるのかどうか等、対象労働者が納得感を持って働くためにも、専門型・企画型、いずれにおいても運用実態や情報開示をすべきであると考えます。
 以上です。
○荒木分科会長 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
 先ほど八野委員、北野委員から金融機関の一定の業務について、高度プロフェッショナル制度の適用で十分ではないかという御趣旨の御発言がありましたので簡単に発言させていただきます。
 前回も申し上げましたが、裁量労働制と高度プロフェッショナル制度は、制度内容と要件が全く違うと思っています。特に要件について、働き手が満足感を持って働きながら、持てる能力を最大限発揮して成果の最大化を図る上で、労働時間、休日、深夜の適用除外まで必要と考える労使があれば、高度プロフェッショナル制度を選択するということですし、1日単位のみなし労働時間制によって能力発揮ができ、生き生きと働くことができると期待する企業があれば、裁量労働制を選択するという話です。ただ、現状、金融機関の一定の業務が選択の対象になっていないところが問題ですので、選択肢を拡大していただくことが非常に重要だと思っています。
 また、繰り返しで恐縮ですが、厚労省の実態調査では、裁量労働制の適用労働者の8割が制度適用に満足あるいはやや満足と回答しており、生き生き働いてもらえる労働者を増やすための選択肢が増えることはよいことではないかと改めて強調いたします。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、もう一つ、年次有給休暇が残っておりますので、年次有給休暇について、御発言ありましたら、お願いします。
 世永委員、お願いします。
○世永委員 年次有給休暇も含めて3点、申し上げます。
 労働時間の状況の把握ということで、やはり現行の指針、労働安全衛生法に基づく業務の内容を踏まえて、論点では「取扱いを明らかにすることが適当ではないか」となっています。労働安全衛生法においては原則として全ての使用者に対して労働時間の客観的な把握が義務付けられていますが、実態調査において自己申告の割合が専門型は高く、企画型は2割ということは問題であると考えています。そもそも把握をされているのか疑問があることについては労働者側からこの間、発言をしてきています。
 健康・福祉確保措置の観点から、前提として労働時間管理が適正になされていることが必要であり、労働時間の状況に応じて、どのような労働時間であれば健康・福祉確保措置を実施する必要があるのかということも議論をしていくべきと考えております。
苦情処理措置につきましては、対象労働者に積極的に周知していくべきと考えております。その上で業務量が過大あるいは処遇が悪い、人事評価が不適切といった直接上司に申し出ることが難しいということについては労働者側がこの間ずっと主張をしてきているところであります。記載にあるとおり、直接労使委員会が窓口になることが難しいのであれば、適宜連携を図ることを確認した上で苦情処理のための独立した機関というものの設置も検討するべきだろうと思っています。
 それから、繰り返しになりますけれども、専門業務型においては、現行は通達にとどまっていますけれども、苦情処理措置に関しましては専門型・企画型で差異を設ける必要はなく、整合性をとることが必要ということを申し上げさせていただきます。
 最後に年次有給休暇の関係です。有給休暇の制度趣旨については、労働からの解放による心身の疲労回復が目的と思っています。調査の結果で見ますと、年5日の時間単位の年休につきまして、そもそも導入していない企業が8割に上っているということであれば、まずは導入していない企業に対し、休みやすい環境づくりの一環としての取組を促すことが先決ではないかと考えております。
 使用者側から意見がありました時間単位の関係です。本来の年次有給休暇の趣旨も踏まえて、取得日数の上限拡大については慎重に検討することが必要だと考えております。また、年休の年5日の時季指定義務に時間単位年休を含めることについては、やはり慎重に検討するべきだということを繰り返し申し上げておきます。
 以上です。
○荒木分科会長 櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。2点申し上げさせていただきたいと思います。
 まず、(2)の本人同意のところです。ここは対象労働者の要件において専門型であっても全く経験のない者も含めて一律に適用するのは適切でないということを川野委員のほうからも発言をさせていただいたと思います。たとえ、これが対象業務であっても、当該業務を適切に遂行するためには一定の知識や経験年数を必要とするという方向で労使協議を促すのであれば、対象労働者についてもそのような経験と知識を有しているかの確認、それから制度適用への本人同意が必要だというように考えています。検討の論点にもあるように、本人同意を取るようにしていくべきだというように考えております。
 また、その際に、この資料3の3ページの労働者側の意見にも記載がありますけれども、みなし労働時間制を含めてどのような制度であるのか、賃金・評価制度についても説明をして理解と納得を得ることがやはり重要だと思っています。特に専門型におきましては、この間、繰り返し述べさせていただいておりますけれども、処遇の確保の労働者側意見に記載があるように、低い処遇の労働者がいることは大きな問題だというように捉えております。制度が要求しております高度専門知識等、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等に見合う処遇となっているかということを説明した上で、労働者の同意を得ていくことが必要だと考えております。
 それから、もう一点、労働者の健康と処遇の確保の(3)の健康・福祉確保措置についてですが、労働者側としては健康確保のために求められる措置は制度間で整合性が取れるものとすべきであるということを申し上げておりました。勤務間インターバルの導入など実効性の高いメニューの追加、それから、複数の措置を適用していくことの組み合わせを行うことが必要だと考えています。
 心と体の健康相談窓口の設置や産業医等の面接指導が取り組みやすい措置というように考えられますけれども、それが単に窓口を設置したとか、面接指導を労働者に対して行ったというだけでは十分ではないと思います。相談や面接指導の対労働者という一方向のものではなくて、他方で、対職場としての就業環境の改善も重要であるというように考えております。労働者の健康確保のためには、双方向からの措置を検討していくことが重要だと考えております。ありがとうございます。
○荒木分科会長 年次有給休暇については、御意見はよろしいでしょうか。
 では、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 議論が尽くされたとは思っておりませんので、次回以降も議論が必要と考えております。先ほど金融関係業務に関する追加の必要性について鈴木委員から発言がありました。労働側から高度プロフェッショナル制度についての話もありました。高度プロフェッショナル制度で検討を進めていただきたいということでは全くございませんが、以前、使用者側から、高度プロフェッショナル制度の年収要件を上回るのが難しいこともあるため、裁量労働制の対象業務として追加を、といった旨の発言もあったことから、労働側としては非常に懸念をしているという点は申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 藤村委員、お願いします。
○藤村委員 裁量労働制について、この間、ずっと議論してきたのですが、改めて事務局にお願いをしたいことがあります。そもそもどういう要素を考慮して裁量労働制の対象を判断しているのかという点です。今日でなくても結構ですので、次回、元々のところに一度戻って整理をしておいた方がいいと思いました。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。多様な御意見をいただいたところであります。事務局においては、今後の議論に資するように必要な資料等の準備をお願いしたいと思います。
 本日は、議題の(3)というのがございます。「その他」についてです。
 事務局から簡潔な御説明をお願いします。
○賃金課長 賃金課でございます。よろしくお願いいたします。
 資料4で、資金移動業者の口座への賃金支払いの作業の進捗状況について御報告させていただきます。
 2ページを御覧いただきたいと思います。
 昨日、11月28日に省令を公布いたしました。同日、2本の通達を発出してございます。
 一つは「労働基準法施行規則の一部を改正する省令の公布について」という通達でございまして、これはこの分科会で御議論いただきました対応方針について、省令では書き切れない部分について、その詳細を示す通達でございます。
 それから、もう一つ「賃金の口座振込み等について」という通達の発出がございます。これは使用者への指導に当たり留意すべき事項を示す通達ということで、従前も銀行口座への振込等について留意すべき事項を示した通達でございまして、今回、資金移動業者の口座への賃金支払いを追加するものでございます。
 また、分科会で御議論のございました同意書のひな形もこの通達で示してございます。
 なお、労働者の同意あるいは労使協定の方法につきまして、これまで書面によることとしてございました。これにつきまして、いわゆるe文書法という法律で法令上、書面によることとされているものについては、書面または電磁的記録によるというように改正がされておることを踏まえまして、この通達においても書面または電磁的記録によることとすることを併せて明示してございます。
 それから、昨日、厚労省ホームページに賃金のデジタル払いのページを開設いたしました。その中で、制度を十分理解していただくようにということで基本的な項目についてQ&Aを掲載してございます。この中で制度を導入するためのプロセスですとかスケジュール的なものも含めて掲載してございます。
 それから、パブリックコメントに寄せられた御意見への回答も公表してございます。今後、施行に向けまして、リーフレットの作成、周知、それから、Q&Aについても充実を図っていくこととしてございます。また、資金移動業者向けのガイドラインも今後作成していく予定でございます。
 そして、来年4月1日に省令が施行になりまして、この日から資金移動業者からの指定申請の受付を開始いたします。受付をした後、厚労省のほうで審査をいたしまして、指定をいたします。これについては数か月かかると思います。その後に導入する企業においては労使協定を結んでいただき、さらに個別の同意を取っていただく、その後に、この方法による賃金支払いが開始されるということになります。
 それから、その間も、またその後も引き続き制度の周知を実施していきたいというように考えてございます。
 簡単でございますが、以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして、何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。報告事項ということで承りました。
 時間を延長してしまいまして大変申し訳ございませんでした。本日の議事はここまでとさせていただきます。
 次回について、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせさせていただきますが、本日、分科会長より御指示がございましたように、次回以降につきましても資料を用意させていただきまして御意見を賜るようにしてまいりたいと思っております。また、藤村先生からのお話もございましたので、こちらにつきましても準備させていただきたいと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 それでは、以上で本日の労働条件分科会は終了とさせていただきます。
 御参加いただきありがとうございました。