第21回厚生科学審議会がん登録部会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和4年12月5日(月)16:00~19:00

場所

オンライン開催

議題

  1. (1)全国がん登録及び院内がん登録における課題について【公開】
  2. (2)新規申出の全国がん登録情報の提供について【非公開】

議事

議事内容
○原澤推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第21回「厚生科学審議会がん登録部会」を開催いたします。
 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課、原澤と申します。よろしくお願いいたします。
 本日の検討会につきましてはYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきいただければと思います。
 委員の皆様方におかれましては、参加中、基本的にはマイクをミュートにしていただき、御発言の際には挙手ボタンで挙手をいただきまして、こちらからもしくは部会長から御指名がございましたら、初めにお名前を頂戴してから御意見・御発言をいただくようお願い申し上げます。
 続きまして、委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、本田麻由美委員、亀井美和子委員の2名より御欠席の御連絡を頂戴しております。
 また、石井夏生利委員から、遅刻して参加される旨、御連絡を頂戴してございます。
 本日のがん登録部会における委員及び議事に関係のある臨時委員定数14名に対しまして、現在13名が参加されています。がん登録部会における委員及び議事に関係のある臨時委員のうち過半数8名以上が出席しておりますので、厚生科学審議会令にある議事運営に必要な「委員及び議事に関係のある臨時委員の過半数」を満たしていることを御報告させていただきます。
 続きまして、本日参考人といたしまして、国立がん研究センターがん対策研究所がん登録センターのセンター長、東尚弘参考人に御出席いただいております。
 また、健康局長は本日、公務のため欠席とさせていただきますので御了承ください。
 それでは、以後の進行は辻部会長にお願いしたく存じます。辻部会長、よろしくお願いいたします。
○辻部会長 皆様、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 まずは、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○事務局 事務局でございます。それでは、資料の確認をさせていただきます。
 資料は委員の皆様方に事前にメールでお送りさせていただいておりますが、厚生労働省のウェブサイトに掲載しております。
 議事次第、資料1、資料2、資料3及び参考資料1から14がございますので御確認ください。
 なお、参考資料10から14は非公開資料となっております。
 資料の不足、落丁等がございましたら事務局までお申出ください。
 事務局からは以上です。
 それでは、辻部会長、議題をよろしくお願いします。
○辻部会長 皆様、資料確認よろしいでしょうか。
 それでは、議題「全国がん登録及び院内がん登録における課題について」に入ります。
 現行のがん登録等の推進に関する法律における課題につきまして、令和3年12月9日の第18回厚生科学審議会がん登録部会から御議論いただいておりますけれども、本日は、特に御議論いただきたい課題といたしまして「検討に当たっての論点」と「法第20条に基づいて提供された情報の取扱い」、課題については「対応方針(案)」が示されております。課題ごとに議論の時間を設けますので、検討に当たりましては、まず事務局から資料1の説明をお願いいたします。
○事務局 資料1「全国がん登録及び院内がん登録における課題について」御説明いたします。
 資料2枚目を御覧ください。本日御議論いただく課題は、がん登録の整備について「届出の照合・集約作業の効率化」と「住所異動確認調査の円滑化」、全国がん登録情報等の利用及び提供について「全国がん登録情報等の国外提供に係るルールの明確化」と「法第20条に基づいて提供された情報の取扱い」、院内がん登録について「がん登録推進法施行前に収集された症例の予後調査の取扱い」の5課題でございます。このうち「法第20条に基づいて提供された情報の取扱い」については、前回の第20回厚生科学審議会がん登録部会において御議論いただき、課題に対応する方向性を確認させていただきましたので、今回は対応方針案について御議論いただきたく存じます。
 まず「届出の照合・集約作業の効率化」に関する課題です。
 現在、病院等から提出があった届出は、法第8条及び第9条に基づき、都道府県等及び国立がん研究センターがそれぞれで審査・整理を行った上で、全国がん登録データベースに記録されています。
 審査・整理に当たっては、複数の医療機関からの届出を照合し、患者を名寄せする作業が必要であり、現在はシステム上で氏名・住所・性別・生年月日の4情報を使って候補者を絞り込んだ後、住所変更等で一致しない項目がある場合は、目視で確認作業を行っています。これらについては、目視での確認作業に相当な労力と時間を要しているほか、見落としによる照合漏れが発生する可能性が高いことから、その効率化が課題とされています。
 届出の照合・集約作業の効率化に向けて、個人に対する一意性の番号の活用が考えられますが、被保険者番号が候補となります。被保険者番号は、資料6枚目でお示しするように、「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」において、プライバシー保護の観点から、健康保険事業とこれに関連する事務以外に、被保険者記号・番号の告知要求が制限されています。
 しかしながら、全国がん登録に係る事務は、被保険者番号等の利用が特に必要な場合として、「高齢者の医療の確保に関する法律施行規則」第118条の3第2項第4号及び第5号において定められており、告知要求制限の適用を受けないこととされています。
 以上から、「検討に当たっての論点(案)」として、罹患情報届出の照合作業の効率化等に資するための方策について、一意性のある番号として被保険者番号の収集・活用に向けて調整を進めてはどうかと挙げさせていただきます。
事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。ただいま御説明のありました「届出の照合・集約作業の効率化」につきまして、委員のみなさまから御意見・御質問いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 祖父江委員、お願いします。
○祖父江委員 ここの課題1にいく前に、2ページの課題一覧についてコメントがあるのですけれども、「がん登録」という言葉と「全国がん登録」「院内がん登録」、それから「院内がん登録全国集計」、この言葉の使い方をきちんと整理したほうがいいと思うのですけれども、課題1においては恐らく全国がん登録の整備についてということで届出の照合や住所異動のことが示されているのだと思います。課題2は全国がん登録、課題3も恐らく全国がん登録に関しての情報の適切な取扱いについて。課題4の院内がん登録についてですけれども、院内がん登録と院内がん登録全国集計というのは包含されるものではなくて、排他的なものだと私は考えています。ですから、院内がん登録というのは病院の開設者あるいは管理者がその病院の中で行うものであり、院内がん登録全国集計というのは、国立がん研究センターかあるいは国が実施主体となって病院の外で行う行為なので、これは峻別して記載すべきであって、これはまた課題4のところで言いますけれども、「院内がん登録について」という形で院内がん登録全国集計を使うと非常に混乱すると思います。
 ですから、全国がん登録、院内がん登録、院内がん登録全国集計を排他的に使ったほうが私はいいと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 事務局、これに対して何かありますか。
○事務局 御意見承りました。ありがとうございます。
○辻部会長 では、後でそのように整理していただくということで。
 続きまして、大木委員どうぞ。
○大木委員 まず、現時点で被保険者番号の収集というのは、収集項目が1つ増えるということです。それによって情報が増加すると同時に管理面、判断や処理が増えるということが事実として挙げられます。がん登録実務として精度向上・効率化に現時点で直結するわけではなく、特に次の議論になる住所異動調査についてはほとんど軽減が認められないと思います。一方で、NDBや介護データベースとの今後の連携を視野に入れると有用であり、必要だと考えます。被保険者番号の履歴を管理する仕組みなどを創設することで、マイナンバーのような一意の番号として機能するのであれば、収集と活用に向けて調整を進めることに賛成です。
 あと、実際にそういったことを実行に移すときは、どうか平時によく周知して丁寧に行っていただきたいと思っています。いきなり全国に実施するというのではなく、幾つかの県で実施検証するなど運用を含めた検討を進めてほしいです。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 では、天野委員、お願いします。
○天野委員 私からは基本的な点で恐縮ですが、質問は2点ございます。
 1点目、4ページで、現在「目視での確認作業に相当な労力と時間を要しているほか」という記載があるのですが、この目視というのは具体的にどういった作業なのか、もし分かれば教えていただきたいというのが、基本的で恐縮ですが質問です。例えば、個票を書面等で見ているのか、それともPC画面上で一件一件確認しているのか、どういった点で時間と労力を要しているのかを教えていただければと思います。
 2点目が8ページで検討の論点をお示しいただいて、私自身はいわゆる収集・活用に向けて調整を進めることについては賛成でございますが、具体的に法改正等が必要になるような論点なのかについて教えていただければと思います。
 以上でございます。
○辻部会長 ありがとうございます。では、これにつきましては事務局から御返答お願いいできますか。
○事務局 1点目、目視での確認作業はどのような作業が具体的に行われているかという点に関しては、実際に作業を行っていただいています、国立がん研究センターの東参考人に御発言いただくと幸いに存じます。
 東参考人、いかがでしょうか。
○東参考人 目視で行っているというのは、画面上で似ているけれども少し違うという方々の情報が出てきて、それを一件一件この人たちは同じ、この人たちは違うという分類をしているということです。当然、完全に一致した複数のデータについては自動で流れるのですけれども、一部だけ違う、ちょっと微妙、逆に全く違う人は挙ってこないわけですけれども、名前が一文字違うといったところは人間が見るという形になっております。
○辻部会長 天野委員、いかがでしょうか。
○天野委員 相当負担が大きい作業だということがよく分かりました。ありがとうございます。
○事務局 2点目についてです。こういった一意性のある番号を収集・活用することに対しては、現時点では、がん登録推進法等においてこういった項目を収集するという決まりになっておりませんので、何らかの改正が必要と認識しております。
 以上です。
○辻部会長 天野委員、いかがでしょうか。
○天野委員 法改正が必要ということで承知いたしました。ありがとうございます。
○辻部会長 では、家原委員、お願いします。
○家原委員 御説明ありがとうございました。届出の照合、集約作業の効率化において、被保険者番号等の利用を進めることには賛同いたしますが、根拠として7ページにお示しいただいているような高齢者の医療の確保に関する法律を根拠にした場合には、被保険者番号を使うときに小児や若年成人が含まれるのかという課題が出てくると思いますので、何らか別の根拠資料も必要なのではないかと思いますが、その点はいかがでございましょうか。
○辻部会長 これにつきましても事務局、お願いします。
○事務局 こちらは「高齢者の医療の確保に関する法律」という名前がついておりますけれども、基本的に高齢者に特に限ったものではないと認識しておりますので、小児からの対象を含むものと認識しております。
 以上です。
○辻部会長 家原委員、よろしいでしょうか。
○家原委員 分かりました。それで法上問題がないのであれば承知いたしました。ありがとうございます。
○辻部会長 では、黒瀨委員、お願いします。
○黒瀨委員 基本的に被保険者番号を使うことに関して全く異存はございません。医療DXを適正に進めていくために、こういった一意性のある番号を使ってDXで進めていただければと思うのですが、省庁間の調整や法改正が必要ということもありまして難しいのかもしれませんけれども、中長期的にはマイナンバーカードで集約してしまうのが一番シンプルでよろしいのではないかと私自身は感じています。オンライン資格確認でも出していただいていますけれども、マイナンバーカードを持って医療機関を受けるのが普通になってくると思いますので、ぜひ、その辺も中長期的には考慮に入れていただければと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 では、続きまして坂元委員、お願いします。
○坂元委員 今の黒瀨委員と同じ意見なので、いわゆる保険番号というのは中途半端で、マイナンバーを使うと死亡個票等の確認もできるし、住民が異動したときも一々確認しなくて済むので、積極的にマイナンバーを利用するみたいなものをどこかにはっきり明記して、今後はマイナンバーを利用していくとしたい。本当に保険番号というのは暫定的なものだと私は考えています。その意味では黒瀨委員の意見と同じで、また死亡個票等の確認などは別にやらないといけないので、マイナンバーでやればその辺の作業もなくなるので、それを一日も早く進めることに努力すべきだと私も思います。その意味では、黒瀨委員と同じ意見でございます。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 では、山本委員、お願いします。
○山本(隆)委員 マイナンバーカードを使うのは賛成なのですけれども、マイナンバーそのものを使うのはあまり賛成ではございません。そのために、被保険者番号の個人番号化を一生懸命やってきたわけで、もちろん保険者が代わったら番号は変わるという意味ではあまり永続性がないのですけれども、支払基金において被保険者番号の履歴データベースをつくっておりまして、これに問い合わせることによってマイナンバーと同等のというか、保険者はマイナンバーを使いますので、事実上マイナンバーと連結した一意に識別する番号として使えるという意味では、非常に使い勝手がよいものだと思います。住所変更の突合に関しては、また後で議論があると思いますからそのときに申し上げますけれども、いわゆるID5と呼ばれている被保険者番号から抽出されるIDを使うことによって、NDBや介護データベースの突合はものすごく簡単になりますし、今、NDBは死亡個票との連結を進めております。そういう意味では、死亡票との連結もNDBとの連結を介して行うこともできるので、ほぼオートマチックにいくことになりますし、がん登録データベースの運用の合理化にも資すると思いますので、被保険者番号由来のIDを使った上でNDBと有機的に突合して合理化していくのがよろしいのではないかと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 では、石井委員、お願いいたします。
○石井委員 先ほどからマイナンバーを利用してという御意見が出ているところについてコメントさせていただければと思います。
 オンライン上の資格確認をマイナンバーカードでできるようになるのは、利用者証明用電子証明書という本人確認の仕組みを使っていると。マイナンバーカードについている機能を使っているということで、マイナンバーそのものを連携することとは違うのというのが、まず1点留意すべき点として挙げられます。
 マイナンバーを使って集約作業をしたいという話になってくると、マイナンバー法を変える必要が生じる可能性があります。
具体的には個人番号を利用するためにマイナンバー法に列挙されている根拠に当てはまらないといけないことや、マイナンバーが含まれる個人情報を提供するときに、同じようにマイナンバー法が列挙するどれかの項目に当てはまらないと提供できないということになり、ハードルの高い話になってくることになります。このようなことで、そもそもマイナンバーを使うのか、そうではない本人確認の機能を使っているのかという点で混乱しないような議論が必要だと思います。マイナンバーを使いたいときには、社会保障、税、災害対策の目的に含まれる行政手続として、マイナンバー法が許容する用途に含まれるのかと、あるいは、個人番号の利用や特定個人情報の提供を認めるための法改正をしなければならないのかという話になり、結構話が大きくなろうかと思いますので、その辺りをきちんと押さえた上で、それでもマイナンバーを使うことが望ましいかという議論をすべかと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、中村委員、お願いします。
○中村委員 病院現場としては、なるべくなら煩雑さを少なくしていただきたい。ですからマイナンバーを使うのであればマイナンバーで全てを確定していただきたいし、被保険者番号から将来的にマイナンバーに統一するとか様々な話が出ていますけれども、現場としては2つの番号をそれぞれ使い分けるのは非常に大変だと思いますし、現場サイドのスタッフたちの労力を考えて、何か1つで全てできることをぜひ考えていただきたいと思っています。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、東参考人、お願いします。
○東参考人 私たち国立がん研究センターとしても、先ほど天野委員に御説明申し上げたとおり、相当な労力がかかっている名寄せ作業をしておりますし、番号が何かつくことで名寄せもそうなのですけれども、住所異動調査もそうですし、あわよくば死亡情報との照合も簡略化されると思います。番号はもちろんマイナンバー相当の番号であれば一意でとてもいいのですが、もともとの被保険者番号だけでも時期が同じであれば恐らく同じであろうということも言えますので、それだけでも大分我々としては違うので、細かい違いも整理は必要ではあるのですが、何らかの番号を入れていただきたいというのは切なる希望です。
 あと、先ほど法改正が必要なのではないかと言われましたけれども、確かに法律に準ずるところということで、恐らく省令あたりの改正で大丈夫だと思いますので、法律の完全な改正ほどではないと私たちは認識しております。ぜひ御検討のほう、よろしくお願いいたします。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 では、松本委員、お願いします。
○松本委員 今、東参考人もおっしゃいましたことがあることを初めて知りまして、効率化には賛成ですし、がん登録情報が正しく利活用されることは重要だとまず申し上げておきます。
 その上で、いまだにマイナンバーに対しては一定の数の方が抵抗を持っていることもありますので、これについては丁寧な説明が必要であるということ、マイナンバーを使うことになっても、あるいは保険者番号を使うことになってもですけれども、国民がしっかりと理解できるような仕組みについても今後併せて検討していただきたいと申し上げておきます。
 ありがとうございました。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、時間もありますので、白井委員で最後にしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○白井委員 私も松本委員の懸念と同様のところもあるのですけれども、マイナンバーにつきましては、カードの取得を自治体でも進めてはおるのですが、やはり一定の方についての不信感がまだまだありますし、また、がん登録についても何のためにそれを使うのかを国民の方々に明確に示していただいて、それは必要なのだという気運を高めていただく必要があるかなと思います。
 特に、自治体ごとによっては法律改正がなくても個人情報をどう提供するかについては感染症法の場合であっても個人情報保護審議会にかけるという条例の中で定めがありますので、そういったところをクリアできるような技術的なデータ利活用の改善については御配慮いただきたいなと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。ただいま委員の方々から大変貴重な御意見を頂きました。一応まとめてみたいと思うのですが、届出の照合・集約作業の効率化プラス精度の向上のために被保険者番号を使ってよろしいかというお伺いでしたが、基本的にはそれをお認めするという御意見だったのではないかと考えております。
 ただ、一方で、もしマイナンバーカードを使うことができれば、いろいろな意味で業務が円滑に進むと考えられるわけですけれども、その一方で、現状ではまだ全ての国民が保有しているわけではなく、普及が十分進んでいないという問題もありますし、法改正の必要性あるいは国民の理解の問題もありますので、当面の課題といたしましては事務局御提案どおり、被保険者番号の収集・活用に向けて調整していただくということでまとめたいと思います。それに加えまして、情報の収集・活用・照合を行うことの必要性・安全性について十分国民に理解してもらえるような情報提供が必要であるということも付け加えた上でお認めしたいと思いますが、いかがでしょうか。それでよろしゅうございますか。
(首肯する委員あり)
○辻部会長 ありがとうございます。では、お認めいただきました。
 続きまして「住所異動確認調査の円滑化」に移ります。では、事務局から資料の説明をお願いします。
○事務局 住所異動確認調査の円滑化について御説明します。
 住所異動確認調査は法令に基づく調査でございますが、「国」及び「都道府県(自治体)」が、国立がん研究センター及び大学病院等の都道府県がん登録室にそれぞれ委託して実施しています。しかし、国立がん研究センター及び大学病院等の都道府県がん登録室が、住民基本台帳法上の「国」及び「都道府県(自治体)」に該当しないこと等を理由に、市区町村において調査への対応を拒まれる場合があり、調査の円滑化が課題とされています。
 また、当該調査事務は、国立がん研究センターから通知を受けた都道府県が、封書で市区町村に対して住所異動確認調査票を送付し、住民票等の交付を請求、市区町村から返送された住民票等の写しを参照し、その結果を全国がん登録システムの端末に入力するなどしており、その効率化・デジタル化を検討することが必要です。
 資料11枚目には、国立研究開発法人国立がん研究センター理事長から各都道府県知事宛ての通知である、「全国がん登録における個人同定のための住所異動確認調査について」の一部を抜粋してお示ししております。住所異動確認調査は、がん登録推進法第10条及び第13条、住民基本台帳法第12条の2第1項及び第15条の4第2項に基づき、毎年国立がん研究センターから都道府県に通知され、通知を受けた都道府県が市町村に住民票等の写しを請求することにより実施されています。
 がん登録推進法第23条は、法第10条第2項及び第13条第2項における厚生労働大臣の権限及び事務を国立がん研究センターに委任するものとしており、また、法第24条は第10条第2項及び第13条第2項における都道府県知事の権限及び事務を、政令で定める者に委任できることとしています。
 以上から「検討に当たっての論点(案)」として、住所異動確認調査が法令に基づいて実施されている調査である旨を、改めて国から市区町村へ周知徹底してはどうかと、その上で、当該調査に係る事務負担を軽減するため、デジタル化を含め必要な見直しを検討してはどうかと挙げさせていただきます。
 事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。ただいま御説明のありました、住所異動確認調査の円滑化につきまして、委員の皆様から御質問・御意見をいただきたいと思います。時間が限られていますので発言は簡潔にお願いいたしたいと思います。
 まず、天野委員から。
○天野委員 御説明ありがとうございました。2点ございます。13ページで論点案をお示しいただきました。その点について2点です。
 1点目、住所異動確認調査というのは現状、概数で結構なので、どの程度の件数行われているものなのかを教えていただければと思います。
 2点目は、デジタル化を含む必要な見直しの検討自体には賛成ですが、デジタル化は便利そうというのは何となく分かるのですけれども、どういった内容になってくるのか、もし具体的なイメージ等あれば教えていただければと思います。
 以上です。
○辻部会長 では、事務局あるいは東参考人、お願いいたします。
○事務局 事務局です。1点目でございますが、実際、都道府県等で調査に当たっていただくこともある大木委員に御発言いただければと思いますが、大木委員、いかがでしょうか。
○大木委員 ちなみに栃木県だと200万人の人口ですけれども、抽出の仕方が変わったので2022年は多くて2021年は少ないのですが、1つの県で年間400件くらいやっております。それは人口規模によって変わりますが、大体そのくらいの件数でやっております。
○事務局 ありがとうございます。住所異動確認調査は都道府県で行った後に、それ以外のところは国で行っていることもあるので、国立がん研究センターの東参考人、国のほうでの住所異動確認調査というのはいかがでしょうか。
○東参考人 今、調べてもらっています。正確な数字は今すぐに出てきませんが、分かりしだいお教えします。
○事務局 ありがとうございます。
 2点目について、デジタル化を含めた必要な見直しでございますが、現状利用できるものとして現在考えているのは、住基ネット等のシステムの活用も検討しておりまして、こちらは今後いろいろ協議して検討していく必要があると思いますが、そのあたりを念頭に入れております。
 以上です。
○辻部会長 天野委員、いかがでしょうか。
○天野委員 承知しました。ありがとうございます。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、山本委員、お願いします。
○山本(隆)委員 住基ネットを利用して、つまりJ-LISと言われている全国の自治体から委託を受けて管理している組織がございますけれども、J-LISのシステムを利用してできるだけデジタル化を早くしたほうが、つまらない労力にエネルギーを割かなくて済むと思います。もちろん総務省等との交渉が結構大変でしょうけれども、ぜひ進めていただきたいと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、大木委員、お願いします。
○大木委員 まず、デジタル化については天野委員が質問していただいた通り住基ネットを使うようなことだと分かったので、全体としてのデジタル化は進めていただくようにお願いしたいと思っています。
 住基ネットを使うことによって、今、市町村に全部配っているのですけれども、それを県レベルもしくは国レベルで一遍にやってしまうという合理的な方法も考慮いただく一つかと思っています。
 それから、国から市町村への周知徹底については、現場レベルとしてはぜひお願いしたいと思います。我々が厚労省に確認するように、市町村は総務省に確認していきますので、どうか総務省の自治行政局住民制度課と協議済みということではありますが、そちらもよく周知していただいて、全てのところでうまく情報共有していただけると大変ありがたく思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 では、坂元委員、お願いします。
○坂元委員 住基ネットをつなげることは必要だと思います。現実に予防接種台帳は住基ネットとつながっているのですが、その予防接種台帳は市町村を越えても情報交換ができるシステムになっているので、さほど難しくないと思います。それから、あとは市町村というのは、自治体は何年かごとに担当者が代わってしまうと分からないということがあるので、場合によるとホームページのどこかに載せておいて、ホームページのこの場所と指定して、開いていただければその文章が出てくれば、市町村の職員も応じると思いますので、そういう工夫のやり方、一々電話して確認するとかせずに、ホームページのどこを見てくださいと、それくらいで私はいいと思います。通知が出て知らないというのは、やはり市町村側の怠慢なので、その辺はしっかりやったほうがいいと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 では、白井委員、お願いします。
○白井委員 論点としては違うかもしれないのですが、希有な例としても、住基がない方も結構自治体の中では存在というか、確認できない方がいらっしゃいますので、そういった場合の調査を想定されているのかどうかを申し添えたいと思いました。
 以上です。
○辻部会長 これにつきまして事務局、いかがでしょうか。
○事務局 頂いた御意見につきましては、そういったケースがあると今お伺いしましたので、少し整理して、その観点も含めて検討します。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、家原委員、お願いします。
○家原委員 私もショートな質問ですが、海外への転出の事例もあると思うのですが、そういった事例のフォローは現在どのようにされているのか教えてください。
○辻部会長 事務局、いかがでしょうか。
○事務局 少しお伺いしたいのですが、実際の事例は、大木委員、こういったことはございますか。
○大木委員 大体死亡票などの照合で来ることが多く、海外に転出したものについては経験がないです。もしかしたら、都会の都道府県においてはあるかもしれないのですが、そういったケースがなく分かりません。要は、同一人物かどうかを調べることが調査ですので、その人がその住所にいるかどうか、その人が転出したかどうかだけなので、理由が海外に転出するということはわかりません。多分住所異動調査ではあまりないケースだと思います。
○辻部会長 2つのお話、白井委員からの住民票のない事例、家原委員からの国外転出された方について、現実には大木委員のほうではあまり経験されたことはないと。
○大木委員 住民票がないというのはあります。
○辻部会長 ごく少数例ですけれども、そういったこともあって、これについてはまた検討を続けていただくということでお願いいたします。
 では、東参考人、お願いいたします。
○東参考人 先ほどの質問に対する答えが出ました。2020年では3万1030件です。結構大変ですが、やっておりますということです。
 以上です。
○辻部会長 御苦労様でございます。
 では、石井委員、お願いします。
○石井委員 住基ネットを使うという話については、住民制度課との交渉・話し合いにある程度時間がかかるだろうと思います。周知徹底のところで先ほどホームページにという御意見を伺ったところですが、厚生労働省のウェブサイトの分かりやすいところに協力要請のような形で情報を載せていただいて、自治体で情報を見やすく、発見しやすくすることで大分改善する可能性はあると思います。ただ、通知を送るのみでは周知徹底にはならないので、ウェブサイトなどを活用して情報にリーチしやすくするような取組を図っていただければと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。大体出尽くした感じがしますので、この議論をまとめさせていただきます。
 基本的には、住所異動確認調査の円滑化に向けて様々な工夫を行うことについては、お認めしたいということが委員の皆様の御意見かと思います。特に具体的な話として住基ネットのお話が出てきまして、これにつきましてもほぼ全員の方が住基ネットの活用について賛成されたと思います。
 一方、住基ネットが完全に使えるようになるまでには時間もかかりますので、その間も含めて、特に周知徹底ということでは、がん登録のホームページ、厚生労働省のホームページで通知のコピーを掲載することで自治体に対応をお願いしたいということと、住民票関係は総務省が管理していますので総務省から自治体に対して周知をお願いしたいということです。住基ネットの活用に向けた準備を始めていただきたいわけですけれども、それが実現する前にもまだ幾つかやれることがあるので、そういったことも徹底していただきたいということでまとめたいと思いますが、いかがでしょうか。
(首肯する委員あり)
○辻部会長 ありがとうございました。お認めいただきました。
 続きまして「全国がん登録情報等の国外提供に係るルールの明確化」に移りたいと思います。では、事務局から御説明をお願いします。
○事務局 それでは「全国がん登録情報等の国外提供に係るルールの明確化」について御説明します。
 全国がん登録情報等の国外提供については、がん登録推進法等において明確な規定がなく、これまでも行われてきておりませんでした。こうした現在の運用については、国外での情報漏洩等を防止し、基本理念である情報の厳格な保護に資する反面、国際共同研究や国際機関へのデータ提供の機会が制限され、十分な活用ができていないという御指摘がございました。
 これを踏まえ、令和3年9月29日第17回厚生科学審議会がん登録部会において、現行法における当面の運用として、法第17条第1項第2号に基づく申出について、一定の要件を満たす場合に国外適用を可能とする対応案を提示し、了承を得たところです。具体的には、第17条第1項第2号に該当する委託を受けた者等が外国政府または日本が加盟している国際機関等の公的機関であって、かつ、委託等を行う国の行政機関もしくは独立行政法人が提供依頼申出者となり共同で責任を負う場合について、国外提供が可能と整理しています。
 一方で、「国外にある第三者を直接の提供依頼申出者とする申出については、がん登録推進法に基づく安全管理措置等の実効性の担保について懸念があることから、現時点では提供を不可」とされ、引き続き慎重な検討が求められているところです。
 資料17枚目には、全国がん登録情報等の提供に係る規定条文を御参考としてお示ししています。
 以上から「検討に当たっての論点(案)」として、法第17条第1項第2号に基づく申出のうち、一定の要件を満たす場合に国外提供を可能とする現在の対応について、がん登録推進法の整備も含め、更なる安全性の確保に向けて必要な対応を検討することとしてはどうかと、さらに、国のがん対策の企画立案または実施に必要ながんに係る調査研究以外の利用や、国外にある第三者を直接の提供依頼申出者とする利用等について、個人情報保護法等の他の制度との整合性、提供依頼申出者の属性、安全管理措置等の実効性等の観点から、どのようにすべきかと挙げさせていただきます。
事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。ただいま御説明のありました全国がん登録情報等の国外提供に係るルールの明確化につきまして、委員の皆様から御質問・御意見を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 大木委員からお願いします。
○大木委員 海外との共同利用については資料に示されているとおり、17条に基づく議論を頂いたところですけれども、どうか研究機関や大学がやっているプロジェクトにも参加できるような検討を続けてほしいということと、研究利用である21条についても検討を続けてほしいというのが要望です。
 17条は、非匿名化と匿名化が両方入っていて、それを併せて検討したという形なのですが、匿名情報と非匿名情報では安全性をはじめいろいろな意味でかなり違いますので、できれば匿名情報や集計値などについても今後、検討していただけるとありがたいと思っています。
 どうか法の目的であるがん登録の対策や研究への利活用によって国民に還元されるよう強く望んでいます。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 では、坂元委員、お願いします。
○坂元委員 私も、こういう時代、国際的な学術交流というのはいいことだと思うのですが、法律的に17条にしても不用意にそういう情報を漏らした場合、罰則があるわけですね。そうすると、海外利用で海外の人と研究をやって向こう側が漏らしてしまったときに、この罰則は一体誰にかかるのかということです。私が言いたいのは、その辺を明確化しておかないと、逆にそういうことをやるのをためらってしまうと思います。つまり、自分のせいではないけれども共同研究の中で相手がやってしまった場合に、相手に法の範囲が及ばないときに共同研究者が処罰対象になることが起こるのかどうか。その辺をある程度明確にしておかないと、逆に日本の研究者が尻込みして進まないという部分もあるので、その辺の検討をしっかりしておくべきではないかと思っております。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。とても重要なポイントだと思います。
 引き続き、石井委員、お願いします。
○石井委員 外国提供の話は、がん登録推進法だけではなくて個人情報保護法との関係で相当大きな課題になるという認識です。外国にある第三者への個人データの提供については、個人情報保護法上制限があり、提供が認められるのは相手先の保護レベルが日本の個人情報保護制度から見て適切な保護措置を講じているかどうかによります。具体的には、個人情報保護委員会が認めた場合と、外国第三者が個人情報取扱事業者が講ずべき措置に相当する措置を講じている場合、個別に本人の同意を得た場合、法令上の根拠がある場合などがあり、その中の一つの例外として公衆衛生向上の例外が適用されます。ただ、基本的な個人情報保護制度の考え方としては、日本の個人情報保護制度と齟齬がないような、きちんとした体制が講じられている国であれば、一定の信頼があるので提供可能と考える必要があるだろうということです。
 例えば、外国の研究者と一緒に研究したいときに、その研究者は信頼できたとしても、その方の所在国の制度で、情報を政府が無制限に吸い上げることができるという仕組みが存在していると、相手の研究者が信頼できても相手国が信頼できないという話になります。これには経済安全保障の問題なども絡んできますし、がん登録推進法に基づいて扱われる情報は間違いなく機微情報に当たりますので、そのあたりの留意も必要だと思います。共同研究の必要性は十分理解しているつもりではありますが、ほかの要素も考えた上で検討を進めておく必要があるということを申し上げておきます。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 石井委員にお尋ねしたいのですけれども、個人情報保護法で扱われている現状についてお知らせいただきたいのですが、外国の研究者に情報提供したとして、その方が何らかの形で個人情報を漏えいしてしまった場合の罰則というのはどうなっているのでしょうか。
○石井委員 個人情報保護法が外国の事業者に適用されるかどうかで変わってくるという理解です。
 がん登録推進法に違反した場合について、国外犯処罰の規定等があったかどうかをすぐには確認できないのですが、制度上どうなっているか、事務局にお聞きしてもよろしいでしょうか。
○辻部会長 では、事務局、お願いします。
○原澤推進官 御質問いただきました、がん登録法と海外に提供した際の罰則規定については、現時点で明確な回答はないので確認の上、後日回答できるように準備してまいりたいと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 ほかに皆さんからの御意見・御質問ございますか。
○石井委員 よろしいでしょうか。個人情報保護法には国外犯処罰規定があります。補足させていただきました。
○辻部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか御意見・御質問ございませんか。山本委員、お願いします。
○山本(隆)委員 多分、議論としては非常に難しくて、それぞれの法律の国外へのどれだけの有効性があるのかというので、こちらで規定しても向こうで受け付けないという場合もあるでしょうから、そういったことを相当綿密に検討しなければいけない必要があるだろうと思います。それよりも前に、まず本当にどれだけのニーズがあるのかを我々としてはしっかりと調査したほうがいいと思うんです。本当に個票を、しかも、個人が識別できない顕名の個票を提供するような研究ニーズがどれくらいあるのか。あるいは匿名情報でいいのか、あるいは集計情報でいいのかというのは多分それぞれ違ってくると思います。それによって法的な対応も随分変わってくると思いますので、もう少し精緻に状況を把握した上で議論する。要するに、どこまでできるかという話が多分大事だと思いますので、どこまで許すかというときにはニーズ調査が必要ではないかと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。大変重要な御指摘だと思います。国際共同研究をする際にどのような情報の提供が求められるか。それに応じて法律上の考え方も変わってくるだろうというのは非常に重要だと思うのですが、その辺について祖父江委員にお聞きしたいと思うのですが、祖父江委員は国際共同研究の御経験もたくさんおありだと思うのですけれども、その上で、実際に顕名データの提供を求められることはあるのでしょうか。
○祖父江委員 顕名データというのは、まずないと思います。匿名というのが、匿名加工情報なのか、仮名加工情報の状態なのか、ここが微妙なところで、完全な匿名加工情報ではない状態で恐らく提供することがあるのだと思います。これまでの情報提供はそのレベルに当たってしまうのがちょっと問題なのかなと思います。
○辻部会長 その辺については、やはり検討が必要だということですね。分かりました。
 山本委員、そのような状況のようですが、いかがでしょうか。
○山本(隆)委員 恐らくそうだと思うんですよね。その場合も提供の仕方で、例えば仮名加工情報であっても対応表が向こうに渡るわけではなくて、こちらの研究所で保持されているということであれば、加工の仕方によっては基本的には識別できない情報だと考える場合もあると思います。そういう細かな場合分けをして議論をしていかないと、これは進まない話ではないかと思います。
○辻部会長 ありがとうございます。恐らく委員の皆様からも手が挙ってこないのは、その辺を一般化して議論するのは難しいということなのかなとも思っておりますので、これにつきましては、もし、ほかにどなたかから御意見があれば頂きたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 石井委員、お願いします。
○石井委員 恐らく匿名加工情報として扱えられるケースはかなり限定されるのではないかと思われます。個人情報保護法の匿名加工情報自体もそこまで活発に使われているかというと、その辺は評価が分かれるところかなという面もあります。また、匿名加工情報にするためには、個人情報保護委員会の定める基準にのっとって実施しなければならないことなどの条件をクリアする必要があり、かつ、提供するニーズがどの程度あるかといった話もありますので、基本的には個人識別性のある情報を提供する前提での整理をしておく必要があるのではないかと思っているところです。
 それから、外国の事業者に個人情報保護法が適用されるかどうかのところで、国内にあるものに対する物品または役務の提供に関連して個人情報、匿名加工情報などを外国において取り扱う場合において適用することとなっています。国内にあるものに関する物品または役務の提供に関連するかどうかが、外国の方々に及ぶのかどうかが今の時点で私のほうで考えが整理されていないといいますか、もう少し調べたほうがよさそうだと思います。
 とはいえ、処罰規定自体は国外犯処罰もありますので、何かしらの規律は及ぶ可能性はあるというのが、今のところお伝えできる内容になります。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、家原委員、お願いします。
○家原委員 私ども小児がんを扱っておりますと、小児がんは希少がんが多いので、特に人種差や医療事情や治療法の違いを発生数や予後の比較研究が国外で行われるという事案が想定されると思います。そういった、少数例になった場合に加工データでも個人情報を特定されるのか、そういった議論も必要になってきます。、私としては、できるだけこういった研究を推進する方向で何らかの基準、環境整備ができればと考えておりますが、希少がんのことも検討材料として考慮いただければと考えております。
 以上でございます。
○辻部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたかございますか。どうもありがとうございました。
 では、委員の皆様からの御意見も出尽くしたようですので、現状での議論の整理をさせていただきますが、先ほどの2つの議題は割とクリアにイメージできる話だったと思うのですけれども、今回の議題は外国の状況にもよるし、データの状況にもよるということで、一般化した議論が難しいというのが正直なところではないかと思います。したがいまして、本日はこの点につきまして特に結論を出すことは難しいと考えております。次回以降、また事務局から論点を出していただきたいと思うのですが、その際は、国外に提供するデータの種類として顕名のデータが提供されることはまずないだろうという話でしたけれども、匿名化がどの程度のものなのかによっても扱いが大分変わってくるでしょうし、あるいは集計データだけだったら取扱いも変わってくると思います。また、プラスして希少がんでは何例まで出せるかという議論もずっと続いていますけれども、少し細かく場合分けをしていただき、その上で論点として御提示いただくと、議論しやすくなると思いますので、その辺の整理をぜひお願いしたいと思います。
 それから、外国にいる方が情報漏えいしたときの扱い方、国外処罰が適用されるのではないかというお話も石井委員からございましたけれども、そこを確認していただきたいのが1つ。
 もう一つは、共同研究をしている中で外国にいる研究者が情報漏えいしたことが発生した場合、日本国内にいる共同研究者も責任を問われるのかどうかという御質問もございましたので、そういったことにつきましても関係省庁あるいは様々な関連法律の条文、解釈と照らし合わせて、かなり細かく具体的な論点をお出しいただきたいと思います。その上で次回以降、委員の皆様方に御議論いただきたいと思いますが、それでいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○辻部会長 ありがとうございます。では、これにつきましては、今のようなことでまとめたいと思います。
 では、続きまして「法第20条に基づいて提供された情報の取扱い」に移りたいと思います。事務局から御説明をお願いします。
○事務局 それでは「法第20条に基づいて提供された情報の取扱い」について御説明します。
 全国の病院等から収集された全国がん登録情報は、第20条に基づき、都道府県がん登録室から届出施設の院内がん登録を取扱う管理室に還元されています。第20条に基づき各病院に提供される情報は、第30条から第34条に基づく管理が求められることから、診療録への転記が許されておりません。一方で、第20条に基づき各病院に提供される情報のうち、特に生存確認情報(死亡及び死因情報)は、病院等で生存確認調査を行うことが難しく、また、死亡情報の有無は治療法の評価に直結するなど医学研究において重要なデータであり、実務上、診療録への転記に係るニーズが大きいことから、第20条に基づいて提供された情報の取扱いが課題とされています。特に、保有期間については第32条の規定による制限を受けるため、最長で15年間とされており、院内がん登録に還元した場合等における当該保有期間の考え方についても見直しが課題とされています。
 検討に当たって、法第20条に基づいて提供された情報(特に生存確認情報)を診療録へ転記できる体制の整備についてどのように考えるべきか、特に転記された情報について、がん登録推進法との関係をどのように考えるか、また、院内がん登録への情報の還元及び診療録への転記において、還元または転記後の情報に保有期間を設けることの実務上の必要性や適正についてどのように考えるべきかと論点を挙げて前回御議論いただきました。
 資料21~23枚目は、前回議論の際に使用した資料の再掲ですので、割愛させていただきます。
 資料24枚目には、前回頂いた御意見を集約しています。還元された情報の活用の必要性について、がん患者の最終的な予後情報は極めて重要であり、学会等では予後調査に関して非常に苦労しているため、診療録において予後情報が明確になることで、学会で実施している臓器別がん登録等の予後調査が明確になることが期待されるとございました。診療録に転記できない理由は、機微ながん情報が漏えいすることに対するリスク管理によりますが、機微な個人情報が記載されている診療録に対しては、情報セキュリティーが講じられている中、診療録に転記する死亡情報のみを漏えい対象として特段厳しく保護する必要があるのか御意見ございました。予後情報がない場合、亡くなった患者さんの診療録が完成しないという問題も御指摘いただきました。診療録に転記できないとは法律上に何も書かれていない中、予後情報の保存期間と第三者提供の制限について、情報の管理を懸念して診療録に転記できないと判断されていますが、保存期間と第三者提供の制限は必要かどうか御意見がございました。さらに、診療録に転記されないことによるデメリットが大きいのであれば見直しが必要とも御意見いただきました。
 対応方針について、以前から議論されており、現行法で認められない整理であれば、法律を見直して診療録に転記できるよう検討すればよいのではないか、死亡日を別個に保存することは非常に煩雑であること、がん登録における情報の利活用と個人情報保護のバランスをとる必要があり、第三者提供をどこまでできるか含めた議論ができれば望ましいと御意見いただきました。
 以上から、「対応方針(案)」として、現行法では、20条に基づいて提供された情報も保存期間等の制限がかかるため、実務上、日常的な診療録への転記等は難しいところです。各病院で保有する診療録等の医療情報を充実させ、がんに係る研究を促進することは、がん登録推進法の理念に合致するところですので、20条に基づき提供された情報について、診療録に転記する等の利活用ができるよう必要な見直しを行い、がん登録推進法等の規定の整備を含め対応を検討すること、その際、20条に基づいて提供された情報の保有期間について、実務上の必要性や適正を勘案し、必要な見直しを行うこと。また、20条に基づいて提供された情報のうち、当該病院の診療録で保有していない情報は特に生存確認情報ですので、個人情報保護法上の「個人情報」の考え方も踏まえた上で、適切な安全管理の在り方を検討することを挙げます。
 事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。ただいま御説明のありました法第20条に基づいて提供された情報の取扱いにつきまして、委員の皆様から御質問・御意見を頂きたいと思います。
 まず、祖父江委員、お願いします。
○祖父江委員 今のページなのですけれども、説明の中に「生存確認情報」というものが出てきますね。字面からすると生きていることを確認している情報のように思いますけれども、この主な情報源は法律の第12条の死亡者情報票、いわゆる人口動態統計の死亡票のことですけれども、それが主たるデータソースだと思うので死亡者の情報だと思うのですが、これ以外に生存確認情報の情報源はあるのですか。これは事務局にお伺いしたいです。
○辻部会長 では、事務局、お願いします。
○事務局 御指摘のとおり、基本的には死亡情報が生存確認情報ということになると思います。
 以上です。
○祖父江委員 そうすると、ここで言っている個人情報保護法上の個人情報の考え方を踏まえるというのは、死亡者の情報だから個人情報保護法の個人情報に当たらないと言っているのですか。
○事務局 個人情報保護法上、亡くなっている方は個人情報に当たらないという考え方がございますけれども、還元された死亡情報が診療録に記載されることで、例えば、御遺族の方などの個人情報に派生していく可能性等もあると認識しておりますが、石井委員、死亡情報を診療録に戻した場合のほかの個人情報に派生していく問題等について、少しコメントを頂けたらと思いますが、いかがでしょうか。
○石井委員 亡くなった方の情報については、亡くなった本人との関係では個人情報としては扱わないということになりますが、遺族を識別し得るような情報であれば、遺族との関係ではいまだ個人情報に当たるという整理にはなります。
 ついでにコメントさせていただければと思いますが、カルテに転記できないそもそもの趣旨というのが、安全管理措置か何かに関連付けられており、あまり合理的な理由になっていないように思います。祖父江委員の御質問からは少しずれてしまいますが、仮に個人情報として扱うときに、安全管理措置のためにカルテに転記してはならないとしても、同じ病院の中で管理されているのに、情報セキュリティに関する一定の措置が講じられていれば、それは同じ話ではないかと思います。
 他方、提供を受けた目的以外に使ってはならないという条文が31条1項にありますが、カルテの転記が駄目というのがもしこれに関連付けられているのであれば、どのような目的であれば使って良いのかを詰める必要があるとも思っておりまして、いずれにしても転記してはならないという合理的な根拠、積極的な根拠はないように思う、というのが率直なところにはなります。
 個人情報に当たるかどうかというと、生きている人にひもづいている限りは個人情報になってしまいますので、個人情報かどうかで区切ろうとすると、なかなかきれいに整理できない面は出てくるかと思います。
 差し当たり以上になりますが、よろしいでしょうか。
○辻部会長 どうもありがとうございます。
 では、坂元委員、お願いします。
○坂元委員 カルテになぜ転記できないのか、以前そういう議論になったのは私も承知していますが、確かにどういう根拠だろうなというのは今でも疑問に思っています。ただ、がん登録情報の保管期間の問題については、カルテの場合は、例えば本人が死亡したとか、全く病院に来なかった場合、それが5年経過したら、そのカルテは保管しなくてもいいという規定があるのですけれども、逆に保管しても構わない。だから、病院によっては割と貴重な症例はかなりの期間保管している例もあることはあるので、その辺との整合性をどうするかということが一つはあると思うのですが、カルテの情報はかなりセキュリティーの高い情報で、通常カルテの内容の開示請求があるのは、御本人が何か医療事故等で裁判で請求するとか、死亡した遺族が請求する場合とかいろいろあるのですが、この内容が通常漏れることは普通は考えられないのと、医療上、患者が死亡しているということはかなり重要な医療情報であると思いますので、この辺の転記というのは何かの縛りをつけながらもある程度認めていく必要があるのではないかと思っております。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 では、家原委員、お願いします。
○家原委員 この議論がなされたときに私も会議に参加しておりましたので、診療録に転記できないことに違和感を持っておりました。ただし、もう一度見返してみますと、法の32条に利用期間を定めるとあり、その定めは政令第323号の規定で最長15年となっていると理解しております。ですから、私自身は政令第323号の規定に診療録は保有期間を除外するといった、法自体の改定ではなく政令の改定でいけないのかを法律の専門家の先生にお教えいただければと存じます。いかがでございましょうか。
○辻部会長 ありがとうございます。
 中村委員からお願いします。
○中村委員 これも現場の意見なのですけれども、診療録に関しては5年という一つのルールがあって、この5年以降、どう診療録をとっておくかということで、データセンターに置かなければいけないとか様々な部分が診療報酬上では担保されていないんですね。そういう諸問題が一つあることと、先ほど委員の方々がお話しされているように、診療録に転記できない理由はあまりないと思っていて、カルテに記載されている情報というのは、本当に家族構成から、そのときの患者さんの様々な思いだとか、全て最高セキュリティーをかけなければいけないような情報がカルテの中に入っています。また、病院としてもそれを守るべくセキュリティーを非常に高めているのも現状なので、そこに転記することは決して間違いではないし、できるのではないかと思っています。ただ、医療法上カルテの保存期間の問題がしっかり担保されないのであれば難しいのですけれども、それに対しての補助は全くないものですから、現場としてはなかなか混乱する場所だと思っています。
○辻部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか御意見ございますか。石井委員、お願いします。
○石井委員 条文32条の保有期間を政令で変えればいいのではないか、御質問でしょうか。この条文に限って御回答させていただくとすると、政令で定める期間を限度とするとなっていますので、具体的な期間は政令で定めるという話にはなります。ですので、政令で定める期間が変われば保存期間も変わるというのが、この規定の内容になると思います。もし違うということであれば事務局に後から修正していただければと思います。
 併せて、先ほどから御議論を伺っていて気になる点があります。利用ないしは提供の話をしているのか、安全管理の話をしているのか、保有期間の話をしているのか、委員の方々によってコメントの仕方が違っていて、どの場面の話をしているのかがつかみにくいところが気になっています。個人情報の取扱いというのは、収集から利用、提供、消去、安全管理、情報セキュリティ、保存期間など、その場面に応じて規律の在り方を考えていくのが個人情報の取扱いの考え方になりますので、どの話をしているのかを明らかにしつつ御議論を進めていただくのが混乱を招かずに済むと思いました。
 もう一つコメントさせていただきたい点があります。今の御議論もそうですが、部会で議論された資料がそのまま解釈されて、そのまま運用されているという運用方法には賛成しません。きちんと厚生労働省で解釈指針をつくっていただいて、安定的に運用できるようにするというのが本来のハンドリングの方法ですので、部会資料がどうのというのをここで議論することはもあまり望ましいやり方ではないと思います。解釈のガイドラインを策定することは少し大変かもしれませんけれども、きちんとつくっていただきたいというのが私からの御提案になります。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 今、石井委員に非常にきれいにまとめていただいたのですけれども、議論が保有期間の問題なのか、カルテを通じて第三者提供が可能なのか、安全管理がどうなのか、この3点がかなり混乱している感じはありますよね。
 私から事務局になるのか、委員の皆さんになるのか分からないですけれども、1つ問いかけをしたいのですが、今回この議論が始まったのは、臓器別がん登録の予後をきちんと知るために情報を利用できないかという話がもともとの出発点としてあったと思うのですけれども、今回がん登録情報をカルテに転記したら、そこから臓器別がん登録といった第三者機関に情報提供することは可能なのでしょうか。どういう解釈をすればいいでしょうか。私はそこが今でもまだ釈然としないところがあるのですけれども、これにつきまして何か事務局あるいは委員の皆様から何か御意見頂けませんでしょうか。
 家原委員、お願いします。
○家原委員 臓器別がん登録に予後をどうやって転記するかの議論でございますが、学会等で行っている臓器別がん登録には、例えば中央倫理審査を学会が通しておいて、それに賛同する施設長が承認した場合に予後調査を出すことができるということになるかと思います。その前に、もちろん患者様の同意のある、学会臓器別がん登録がなされているということです。カルテに載っている新たな死亡情報等は、臓器別がん登録の予後調査には有益と考えております。
 それから、先ほどからございますカルテにどうして載せられないのかという議論ですが、カルテに載せてはいけないということは法律上書かれていないと理解しております。制限がかかっているのは、保有期間が一番の議論の対象になっていると考えます。それは先ほど申し上げた20条に基づいて出された情報は、32条に一定必要な期間を超えて保有してはならないと書かれており、政令に15年となっているということが一番の障壁ではないかと私自身は理解しております。
 以上でございます。
○辻部会長 その場合、どこをどう直せばいいですか。政令を変えるということですか。
○家原委員 私の意見は、政令を変えることでカルテへの15年という保有期間が外れれば記載が可能になるのではないかということです。法律の専門の先生方に先ほどお問い合わせしたという経緯でございます。
○辻部会長 では、それを受けて石井委員から何かコメント頂けますでしょうか。
○石井委員 保有期間を長くしようと思えば政令で変えられるというのは、おっしゃるとおりだと私も考えていますが、それを転記していいかどうかというのは、部会の資料の解釈が変わるかどうかによるという話だと思います。先ほどから委員の方々がおっしゃっているように、カルテに転記しないこと、という条件は法律上明記されているわけでもないですし、安全管理措置的な義務としてもこのような文は見たことがありません。同じ組織の中で管理されているのであれば、カルテに転記されているものと、院内がん登録データベースに管理されているものと何が違うのかというのは、私の観点から見たらよく分からないところもありまして、合理性はなさそうだ、というのは先ほど申し上げたとおりです。その辺も論点整理しながら議論をきちんと整理しておく必要があるとは思います。
○辻部会長 ありがとうございます。
 今までの御意見としては、法律の観点からすると、今、石井委員にまとめていただいたとおりですし、医師の専門家の先生方は、おおむね診療録転記に賛成という声がほぼ全員かなと思うのですけれども、これに対して患者団体の方から御意見を頂きたいと思いますが、天野委員と松本委員から何かこの点について御意見いただけますか。
○天野委員 私は患者団体の立場でございますが、実際にがん登録に関わる実務者・研究者の方々から、いわゆる20条問題を何とかしてほしいというコメントをたくさんいただいていて、がん登録が有効に利活用されるためにも、この20条問題の解決のために必要な情報提供ができる、カルテとの連結ができるようにしていただきと思っております。
 以上でございます。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、松本委員、いかがでしょうか。
○松本委員 私も、今の天野さんの意見と同じでございます。
 1点だけ、素人で分からないので教えていただきたいのですが、先ほど石井委員から教えていただいた中に、死亡した人の情報というのは個人情報保護法に当たらないけれども、遺族を識別できるものは該当するというお話がありました。ここで何かが問題になることがあり得るのでしょうか。遺族を識別できるものは個人情報保護法に該当すると私は先ほど認識したのですけれども、このことで何らか問題が起こることは考えられるのでしょうか。
○辻部会長 では、石井委員、お願いします。
○石井委員 問題が起こるというよりは、個人情報保護法の適用があるかどうかに違いが生じるという話になります。亡くなった方の情報が記録された診療録は、亡くなった方との関係では個人情報ではないので守る必要はない、という話になるのですが、その方のお子さんであったり他のご家族、ご遺族の方にとって、その人が配偶者であるこやお父さんであることなどの情報が分かるような形になっていれば、診療録もいまだ個人情報に当たるという話になります。基本、個人情報保護法は非常に範囲の広い一般法ですので、個人情報でないものを探すほうが実は大変だったりするという話です。違いが生じるのは、個人情報保護法の適用が生じるかどうかの1点に尽きるかと思います。個人情報保護法の適用が生じてしまうと、医療機関としては亡くなった方の診療録なのに、生存者と変わらない管理をしないとならなくなることが負担になる可能性はあると思います。セキュリティ上のリスクが生じるというわけではないというのが差し当たりの回答になります。
 個人情報保護法の適用があるかどうかで申し上げたら、一般法ですので、院内がん登録データベースに記録されている情報であったとしても、通常の診療録として扱われているものであったとしても、個人情報保護法の適用は普通にかかってくるというのが私の理解になります。そのあたりで、がん登録推進法の観点だけでなく、一般法としての個人情報保護法が幅広く及ぶということは、ベースとして共通認識を持っておいたほうがいいのかと思います。その上で、がん登録推進法が特別法の位置づけになるときに、個人情報保護法とは違ったルールが適用されるという形になる、ということだと思います。なかなか難しい法律で、私もあまり自信がないのですけれども、今お答えできるのは以上です。
○松本委員 ありがとうございました。
○辻部会長 では、大木委員、お願いします。
○大木委員 20条の問題は、病院からカルテの情報を抽出して、それを院内がん登録、そこから全国がん登録にデータを提出する。出すときは特に強く言われないのですが、逆に20条の提供を受けるときは、21条などほかの提供と同じように30条から34条の縛りがかかります。出すときは期限内に早く出してください、きちんと出してくださいと言われて出すのだけれども、提供を受けるときは30条から34条の縛りを受けて、厳しい安全管理も求められている。これだと、死亡日が入っているという部分は変わりますが、出すものと出されたものが返ってくるものはあまり変わらないのに整合性がとれないのかなと思っています。家原委員は期間のところを政令でとおっしゃったのですが、私は30~34条の縛りを20条ではとってはいかがかなと思ったりしています。
 あと、安全管理ですけれども、もともと安全管理のいろいろな基準や方法は、都道府県がん登録室、つまり大学病院、がんセンター、県庁であったりしたところでいかに安全に個人情報を守るかを念頭に置きながらつくったものなので、病院の医事課といったところになじまない点もあります。そういったところも含めて見直していただくとありがたいと思っております。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 ほかに皆様から御意見ございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、私のほうでまとめてみたいと思いますが、基本的には、委員の皆様は、がん登録情報の死亡情報を診療録に転記することについてお認めいただいているという理解でよろしいでしょうか。その上で、対応方針で幾つか事務局から出していただいたのですが、保有期間について考えなければいけないことと、安全管理をどうするかを少し具体的に議論しなければいけないのかなというところで、保有期間については法改正なのか、あるいは政令の改正でいいのかを御検討いただきたい。
 それから、安全管理については30~34条が実際の運用上縛りになるのではないかということが先ほど大木委員からございましたので、これについても現状のカルテ管理、十分厳重にされているわけですけれども、必ずしも30~34条にぴったりと適応するかというとそうではない場合もあるので、そこを前提にされると実際には転記できなくなってしまいますので、その安全管理、30~34条について診療録に転記する部分については、がん登録情報と切り離して現実的には扱ってもいいのではないかという御提案があったと思いますけれども、この辺の保有期間の問題と安全管理をどう縛るかにつきまして、部会としては、がん登録情報のうち死亡情報を診療録へ転記することは認めるという前提の上で、保有期間の問題、安全管理の問題について、事務局でさらに検討を加えて御提案いただきたいということでおまとめしてよろしいでしょうか。
 石井委員、お願いします。
○石井委員 30~34条には安全管理の保有期間だけではなく、利用提供の制限や従事者の秘密保持義務の規定があります。それぞれ趣旨が違っていますので、カルテへの転記を駄目だとしている解釈上の根拠が、私が資料をちゃんと理解していないのかもしれないのですが、何条の何項のどれに基づいて導かれたのかをまず押さえた上で、その合理性がなければカルテへの転記のルールは見直すという整理をしておく必要があると思います。方向性としては、委員の方々の御意見に私も賛成ですが、法令上の根拠の何の話をしているのかをきちんと押さえておく必要があると思いました。
 利用目的の制限なのかなという感じもしますので、事務局に確認できれば。
○辻部会長 もう一度事務局から御説明・御確認いただけますか。多分23ページのところになってくるかと思いますけれども。
○事務局 具体的に何を申し上げればよろしいでしょうか。
○石井委員 課題のところで、確かに30~34条までの規定に基づいた管理、特に保有期間の遵守の観点から転記が駄目と書いてあるのですが、保有期間の問題を解決すれば転記してもいいという話なのか、30~34条までの規定が様々求められているルールのほかの規定も根拠になっているのかという、転記を制限する具体的な根拠となる法令上の条文、第何条第何項の解釈に基づいて駄目だと解釈しているのかをきちんと確定した上で、それに合理的な理由がないのであれば解釈は変えたほうがいいという話になるかと思いますので、そこを御確認いただいて御整理いただければと思っているところです。
○事務局 ありがとうございます。まず、保有期間については第32条でカルテの診療録と死亡情報の管理が整合性がとれない部分があると思います。それ以外の部分につきまして改めて整理した上で、20条で還元された死亡情報がカルテに転記できないというところは、ほかに第三者提供に関して具体的な法律に書いていないけれども、その後、何か問題が起きないように対策を講じている面もあるのかもしれません。このあたり整理させていただいて、また改めて何が問題で現在の対応がとられているかという形でお示しさせていただければと思います。
 以上です。
○石井委員 ありがとうございます。
○辻部会長 ありがとうございます。この議論のまとめとしては、先ほど私が申し上げたところでお認めいただきたいと思うのですが、最後に、私から事務局に対してお願いがあるのですが、20条で死亡情報を診療録に転記できないということが、がん登録の利活用に関してはその価値を下げている部分が非常に多いと思います。また、現場の臨床の先生方もそのところで大きく困っていることが多いと思いますので、できるだけ速やかにこの問題の解決に向けて動いていただきたいと思っていますので、我々もできるだけ協力いたしますので、ぜひお願いいたします。
 山本委員から手が挙がっていますか。お願いします。
○山本(隆)委員 この20条の問題は多分ケースとしては非常に少ないのですけれども、単にカルテに転記するためだけに返しているのではなくて、データベースのサブセットとしてある病院のがん登録情報をお返しすると。それをデータベースとして使って二次利用するという場合もないではないと思うんです。これは、がん登録データベースの利活用になってきますので、ここはそういった意味で30~34条までの制限は私は必要だと思うんです。
 一方で、もともとのデータのオリジナルであるカルテに転記するというのは用途として全く別と考えていいと思っています。ここは区別してこれから政令なり何なりの改正をしたほうがよくて、診療録に返すことに関して制限がある必要は私は全くないと思っていますけれども、例えば、大きな規模の病院でデータベースとして利活用するというのは、がん登録データベースの全体の運用として考えなくてはいけないと思いますけれども、そこは区別をしておいたほうがいい。例としては多分少ないとは思いますが、そういうことを危惧してこの条文が書かれているのではないかと私は思っていたのですけれども、そこは何もかもなしというのはちょっと具合が悪くて、診療録に返すという部分に関してはかなり制限を緩和するべきだと思いますし、ほとんど無制限で私はいいと思うのですが、一方で、データセットの利用の仕方によっては制限がかかるのは必要ではないかと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 ほかの委員の皆様から追加の御意見などございますか。よろしいでしょうか。
 では、今、山本委員にお話しいただいたところを含めて、転記された情報の利活用の在り方あるいは安全管理も含めてになろうかと思いますけれども、その辺につきましても具体的な状況、シナリオを想定しながら議論していきたいと思います。さらに、この問題はできるだけ早く解消していただきたいと多くの臨床の先生方、がん登録の関係者の方々も考えていらっしゃいますので、その辺の対応をぜひお願いしたいということで、とりあえずこれについては本日の議論は閉じさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○辻部会長 では、それでよろしくお願いいたします。
 では、次になりますが、続きまして、院内がん登録における「がん登録推進法施行前に収集された症例の予後調査の取扱い」に移りたいと思います。事務局から御説明をお願いします。
○事務局 それでは、院内がん登録における「がん登録推進法施行前に収集された症例の予後調査の取扱い」について御説明します。
 院内がん登録は、全国のがん診療連携拠点病院等で実施されており、2007年から毎年、国立がん研究センターにおいて院内がん登録全国集計として報告書を作成・公表しています。院内がん登録情報を基とした生存率集計の算出に当たっては、信頼性の高い生存率を算定するために、患者の生存状況を把握する生存確認調査が必要となります。
 がん登録推進法施行後の症例については、法第20条による情報収集が可能である一方で、がん登録推進法施行前の症例における生存確認調査については、市町村等へ調査を依頼することとなります。実際は、国立がん研究センターにおいて、各病院から調査の付託を受け、一括して市町村に問い合わせる「予後調査支援調査」を実施しています。生存確認調査については、市町村等の対応にばらつきがあり、都道府県別の生存状況把握割合に大きな差が生じていることが課題とされています。
 以上から「検討に当たっての論点(案)」として、法施行前の症例の予後調査について、市町村等から協力が得られるような方策及び調査の効率化に資する方策として、どのような対応が可能か、院内がん登録のがん登録推進法上の位置づけの検討と併せて、対応を検討することとしてはどうかと挙げます。
 事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局の御説明を受けまして、委員の皆様から御質問・御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
 祖父江委員どうぞ。
○祖父江委員 先ほど申し上げたのですけれども、「国立がんセンターにおいて各病院から調査の付託を受け」なので、この予後調査の実施主体は各病院であって、がんセンターはその付託を受けてやっている。一方、全国集計というのは、別に各病院から付託を受けたわけではなくて、がんセンターが行っていると。なので、院内がん登録と院内がん登録全国集計というのが一つの事業のように書かれていますけれども、これは別の事業であって、院内がん登録は全国がん登録のデータソースであるとともに、院内がん登録全国集計のデータソースであって、院内がん登録全国集計と全国がん登録が同じレベルの事業、院内がん登録は各病院で行う事業、こういうことをきちんと整理できずに書かれているような気がするんです。非常にそこが混乱していて、法律の中で院内がん登録と院内がん登録全国集計のことをきちんと区別して書かれてもいないので、全国集計のことは全く書かれてもいないので、そこが一番大きく気にしていることだと思いますけれども、こういう文章を書くときにそこを峻別して記載してほしいというのが私のコメントです。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。ほかに御意見ございますか。
 祖父江委員、そうしますと、この議題はこの場にはなじまない的な話ですか。
○祖父江委員 いえいえ、なじまないことではなく、これは期限のある話なので、要は施行前というのは2015年までに登録された例の予後調査をいつまでやるかということなので、それほど長く続くことではないと思います。現状やっているのは住民票照会ですので、住民票照会の法的な根拠に基づく行為を国立がんセンターが各病院から付託を受けてやっている。これはそのまま続けたらいいと思いますけれども、今後、第20条で情報が移ると。本当は死亡情報だけをもらっているのだけれども、本当は住民の生存確認というのがどこかで必要になってくるかもしれない。法第20条で、がん登録施行後は予後調査ができていると言っていますけれども、住民票で確認しているわけではないんですよね。死亡票でないから生きていると言っているだけなんです。そこのずれを考えるほうが、むしろ将来的には重要だと思います。
○辻部会長 ありがとうございます。
 ほかに皆様から何か御意見ございますか。白井委員、お願いします。
○白井委員 この話の中で「市町村等の対応にばらつきがあり」ということで、具体的にはどういうばらつきがあって、どのようなことを統一したら市町村等から協力が得られるような方策になるのでしょうか。そういうイメージがつかないので、具体的にどういうところが問題になっているのかをお示しいただきたいと思うのですが。
○辻部会長 ありがとうございます。そこを含めて東参考人からいかがでしょうか。
○東参考人 ちょうど私もそれを申し上げようと思っていたところでした。
 端的に申し上げて、市区町村ごとに協力しないところがあるということです。そういうところは予後情報の収集が抜けるということです。
 もう一点だけ、祖父江委員がさっきおっしゃったとおり、これは時限的な話で、あと数年すれば終わるということではあります。今やっているのは10年生存率を計算しているのですけれども、2011年の10年生存率を今年やったところです。ただ、2015年まであるので、あと3回やらないといかんということと、今年の実績だと1年に当たり14万件の調査をしていてかなりな負担ですので、何とかしてほしいと現場は思っていることも付記させてください。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 白井委員どうぞ。
○白井委員 ありがとうございました。協力しないという理由が何かなと思ったのですが、死亡票であれば保険証があるのですが、住民票であったら市民課が対応すると思いますし、死亡については個人情報ではないという石井委員のお話もあったのですけれども、何のためにこれを提供するか担当者が理解できていないと、自治体は簡単に出さないというのが普通だと思います。ですから、こういう法律にはないけれども、それをどうするかといったときに、何のためにこれが必要であるか。もちろん信頼性の高いがんの生存率というか、死亡票もそうですけれども、そういうことがその後の市民・国民のデータとして大事だということを分かっていないと、多分出せないと思うんです。そういうことを理解するような方策というか、そういう形で持っていっていただく必要があるかなと思いました。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 天野委員どうぞ。
○天野委員 今の白井委員の指摘に関連して、この論点のみならず全体の論点についてお願いがございます。
 本日、資料をつくるに当たって、当然がん登録の実務に係る利便性の向上や負担の軽減、調査の効率化という観点からとても重要な論点だと思っているしだいですが、一方で、こういった施策が結果として患者さんや国民の利益につながるのだという視点からも、なかなか難しいと思いますが、資料を作成していただければと思います。もちろん、がん登録が推進されれば公衆衛生が向上したり、調査研究が進むことによって還元されることなのでしょうけれども、負担の軽減や利便性の向上以外にも患者さんや国民に還元されるのだという視点からも可能であれば資料をつくっていただけると助かるかと思いました。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。ほかに御意見ございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、簡単にまとめてみたいと思いますけれども、この法律施行前に収集・登録されたがん症例の予後調査ということですが、この調査はまだしばらく続くということが現実にある一方で、なかなか市町村の協力が得られないところもありますので、きちんとした信頼性の高い生存率を算定するためには、きちんとした生存確認調査が必要となってきますので、その方策及びその調査の効率化に向けて御対応を御検討いただきたいということにしたいと思います。
 さらには、現状として一部の市町村から協力が得られにくいという現状も考えますと、がん登録の重要性あるいは生存率をきちんと算定できることによって、具体的にどのような利益を国民や自治体が得られるのかについて、きちんと情報提供して理解を促すような対策をしていただきたいということを付記した上で、この対応について検討を進めていただきたいということを部会のまとめにしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
(首肯する委員あり)
○辻部会長 では、これでお認めいただきました。
 では、本日御議論いただきました論点を踏まえて、引き続き厚生科学審議会がん登録部会として議論を進めていくことにしたいと思います。資料1に関する議論は以上といたしたいと思います。どうもありがとうございました。
 引き続まして、資料2「全国がん登録情報等の提供に係る事項について」、事務局から資料の御説明をお願いします。
○事務局 資料2「全国がん登録情報等の提供に係る事項について」御説明いたします。
 全国がん登録情報の利用と提供について少しずつ実績を重ねてきているところでございますが、今回、事務局として、全国がん登録情報の提供依頼申出者向けに、申請に当たって改めて確認する事項を明示し、適切に提供依頼を申出できることを目的として、今回の議題を設定しました。今回は法第17条申請、被験者の同意、同意代替措置の3点について取り上げさせていただきます。
 まず、法第17条申請についてです。
 法第17条申請の場合、利用目的が「国のがん対策の企画立案又は実施に必要ながんに係る調査研究のため」であり、提供依頼申出者が、国の行政機関(都道府県知事/市町村の長)及び独立行政法人(地方独立行政法人)、国の行政機関もしくは独立行政法人からの委託を受けた者またはそれらと共同して調査研究を行う者、上記に準ずる者として省令(都道府県/市町村の長)で定める者等であることから、本人の同意取得が不要とされています。ここで、改めて17条が規定する「国のがん対策の企画立案又は実施に必要ながんに係る調査研究」について、一定の解釈を示す必要があると考えています。
 厚生労働大臣による全国がん登録情報等の提供を利用目的の別で整理すると表のようになり、法第17条申請はマル1の行政利用で、条文はお示しのとおりです。それ以外の研究については、適用条文が第21条第3項、第4項になります。
 資料8枚目でお示ししているように、形式審査、審議会内容審査で求められる要件は条文によって分けているところです。
 検討の視点として、がん登録推進法は、国のがん対策の企画立案または実施に必要な調査研究と、それ以外のがん医療の質の向上等に資する調査研究を区別して規定しており、前者については顕名での提供についても同意取得を求めていないところです。適用条文については、窓口組織及び事務局で申出内容を確認し、利用目的に即した適切な適用条文になっているかを確認しています。
 対応(案)として、国のがん対策の企画立案または実施に必要な調査研究であることと、法第17条第1項第1~3号に定める者が申出者であることを前提とした上で、次の全ての要件を確認することを提案します。
 1つ目は「申出時に必要な添付書類等の留意事項」として、提供の申出に係る調査研究の目的が、「国のがん対策の企画立案又は実施に必要ながんに係る調査研究」の場合、提供マニュアルに従えば、申出を行う当該機関の活動にとって必要不可欠であることを証明する書類の提出が必要です。委託の場合、調査研究等の委託等に係る契約書等の写しとなりますが、事前相談の段階から、その提出を確認することとします。また、当該研究における研究計画書において、国のがん対策として実施されている記述があることを確認することとします。
 続いて、被験者の同意についてです。
 被験者等に対して、全国がん登録情報の利用に対する同意を取得する際、「全国がん登録 情報の提供マニュアル」に同意に関する説明はございますが、最低限どの程度、研究者ががん登録について説明するか、その基準が明確でないため、申出申請によって同意取得における説明にばらつきがございます。申出書類として、どの程度の同意に関する記述を求めるべきか、方針を示す必要があると考えています。
 提供マニュアル第3版の9~10ページに同意に関する記載がございますが、下線部分「全国がん登録の説明」と「当該調査研究のため、がんに罹患した場合には、当該調査研究を行う者が、対象者の全国がん登録情報又は都道府県がん情報の提供を受けること」のみです。
 以上から、対応(案)として、現行の提供マニュアルにある記載内容に補足説明することを挙げます。同意取得に当たっては、条件として次の内容を説明文書に記載していること、1つ目は、当該調査研究を行う者が、対象者の全国がん登録情報または都道府県がん情報の提供を受け、調査情報と紐付けて集計や解析を行うこと。2つ目は、全国がん登録情報または都道府県がん情報の提供を申請する際は、対象者の個人情報(氏名、生年月日、住所等)を国立がん研究センターに送付することです。その他、全国がん登録情報または都道府県がん情報の説明及び提供を受けた情報の利用方法に関する説明を、説明文書または別添資料として配布していることを条件として挙げます。ホームページに公開し説明文書にリンクを示す等の対応も可能とします。
 今回の同意についての追加説明は、マニュアルの内容を変更するものではなく、あくまで補足になるため、マニュアルを改訂せず、国立がん研究センターのホームページで明示する予定です。
 最後に、被験者の同意代替措置についてです。
 現行の提供マニュアルでは、申出に係る調査研究が、法の施行日である平成28年1月1日以前に、当該調査研究の実施計画において調査研究の対象とされる者の範囲が定められたものであり、その規模等の事情を勘案して、法の施行日後に対象とされている者の同意を得ることが当該調査研究の円滑な遂行に支障を及ぼすものとして、施行日前からがんに係る調査研究の対象とされている者が5,000人以上の場合、がんに係る調査研究を行う者が記載にあるイまたはロに掲げる事情があることにより、同意を得ることががんに係る調査研究の円滑な遂行に支障を及ぼすことについての厚生労働大臣の認定を受けた場合、法附則第2条より、全国がん登録情報または都道府県がん情報が提供されることについての同意は必要としないとされています。前者に該当、後者の認定を受けようとする際は、所定の申請書を提出しなければならないこととされています。
 現状・課題について、がん登録情報の提供に当たっては、現行の提供マニュアルに同意代替措置について記載していますが、同意代替措置についての理解が必ずしも十分に浸透しておらず、利用者から解釈について照会が多いです。厚生労働省として同意代替措置について改めて見解を示し、周知徹底すべきところであり、対応(案)として、同意代替措置に関する疑義照会事務連絡を発出することを挙げています。
 事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。ただいま御説明のありました資料2につきまして、委員の皆様から御質問・御意見を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 家原委員からお願いいたします。
○家原委員 御説明ありがとうございました。法第17条の申請についての9ページでございますが、「国のがん対策として実施されている記述があることを確認する」と御提案されていますが、具体的にはどういった記載を想定されているのでしょうか。例えば、厚生労働省の研究班の研究であるとか、そういった内容でございますか。それとも何かもう少し違ったもの、具体的に少し御提示いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○辻部会長 事務局お願いします。
○事務局 例えばということで例示いただいた厚生労働省の研究班等では不十分であると考えておりまして、厚生労働省や国が関与しているのみならず、前もって行政機関からの委託を受けて研究をしているとか、行政機関そのものが研究を行っている場合でもいいのですけれども、行政の研究事業として計画されて、そのもとに実行していることが前もって分かる記述を確認したいと考えております。そういったことを念頭に置いておりまして、また個別の申請については窓口組織と事務局でその基準の下、適用条文が正しいかどうかを確認していきたいと考えております。
 以上です。
○辻部会長 家原委員、いかがでしょうか。
○家原委員 そうなりますと、研究というよりは事業としての役割が多いものを想定されているという理解でよろしいですか。
○事務局 おっしゃるとおりです。国・都道府県または市町村等いろいろ行政での調査があると思いますけれども、事業としての役割が大きいものとして実施されているものと考えております。
 以上です。
○家原委員 分かりました。ありがとうございます。
○辻部会長 では、小俣委員、お願いします。
○小俣委員 被験者の同意についてですけれども、手厚くさらに加えていただくということで大変ありがたく思います。患者・家族側にとっては治療を受けている身になりますので、なかなか同意したくないということは言いにくいこともあるかと思います。実際に補足なので改訂はしないということではありますが、患者・家族が安心して協力することについて同意することを考えますと徹底していただきたいので、ぜひ改訂をしていただければと思います。
 以上です。
○辻部会長 これにつきまして事務局、いかがでしょうか。
○事務局 こちらの対応としてマニュアルを改訂すべしという御意見と認識しました。そちらも含めて検討させていただきます。まずは申請者に分かるようにということでホームページに記載の上、マニュアル改訂も引き続き検討させてください。
 事務局からは以上です。
○小俣委員 よろしくお願いいたします。
○辻部会長 ほかに皆さんから御質問・御意見ございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、資料2に関しましては以上とさせていただきます。
 続きまして、資料3「がん登録情報等の民間事業者の利用について」、事務局から資料の説明をお願いします。
○事務局 資料3「がん登録情報等の民間事業者の利用について」御説明いたします。
 全国がん登録情報等の提供に係る規定のうち、第21条第3項、第4項、第8項及び第9項の利用目的について、民間業者の利用を認めるかという課題に対して、前回部会議論の結論として、主たる目的に関連する公益性と企業の利益との関わり合い、委託関係及び委託先での利用状況に留意しつつ慎重に議論を進める前提において対応方針案(民間企業利用)を認めることとしています。当面は個別に議論しながら、その都度どのような理由でこのように判断したかという理由を明示し、判断基準を積み上げ、適宜オープンにしていくこととなりました。
 今後の審査の進め方として、第20回厚生科学審議会がん登録部会の議論内容、及びその後がん登録部会・審査委員会の委員から募集した意見に基づき、民間事業者の利用申出の審査上で特に留意すべき点を事務局で抽出しました。
 民間事業者の利用申出の審査上で特に留意すべき点を7つ挙げます。1つ目は「がんの医療の質の向上等に資するもの」が直接の目的であることが明らかな調査研究であるか。2つ目は、特定の商品または役務の広告または宣伝に利用するために行うものではないか。3つ目は、がん登録情報を利用して行った研究の成果物が、がん患者及びその家族を初めとする国民に還元される方法で公表される予定か。4つ目は、科学的な調査研究を実行する体制であることが研究計画等から明らかであるか。5つ目は、個人情報保護を含め、がん患者・家族を含む国民の不利益につながらないか。6つ目は、顕名での提供の場合、有効な同意の取得があるか。7つ目は、全国がん登録情報等の適切な管理のために必要な措置を講じていることが規程等において確認できるかです。
 当面のがん登録情報等の民間企業利用の審議に当たっては、これらの点に注意を払いつつ、申出の内容を精査、慎重に議論を行いたいと思います。法令、マニュアルに沿って個別審査を行う中で、この他に留意すべき点やより具体的な基準を設けるべき点が認められた場合は、マニュアルの改訂等も含めて、必要な対応を今後検討していくこととします。
 事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。資料3につきまして、委員の皆様から御質問・御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
 坂元委員、お願いします。
○坂元委員 民間事業者、例えば製薬企業が自社で開発している、仮に抗がん剤の効果を何らかの形で確かめる。結果として、それは製品の付加価値を上げると同時に、その薬で治療されている患者さんの役に立つ。民間企業がいわゆるがん医療の向上、それが直接目的ということが本当に考えられるのかどうか。場合によると、自分の製品の付加価値を上げたい。しかし、その研究の結果、それは治療を受けている市民の方にも有益性をもたらすところなので、この書きぶりがもし直接それが目的でないと駄目だとなると、恐らく民間利用というのはあまり起きないと思います。やはりここの書きよう、結果であってもいいから、それが必ず市民の役に立つという書きぶりでないと、直接目的と書くとあまり利用が起きないのではないかという気がします。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、石井委員、お願いします。
○石井委員 今の目的のところと関連しますが、民間事業者が情報を使うときに営利目的が全く入らないということはないだろうと思います。特に営利企業の場合は営利目的が入らないことはないだろうと思われます。その場合、個人情報保護法の解釈を参考にするならば、学術研究機関に当たるか、学術研究目的に当たるかどうかについて、主たる目的は何かで判断します。主たる目的が、がん医療の質の向上等に資すると言えるかどうかは個別で判断していくしかないかとは思いました。主たる目的、専ら何かを目的としているのかを観点にするのが一つ考えられるだろうと思います。ただ、いずれにしても個別判断になってしまうというところはあります。
 委託・再委託が簡単に書いてあるのですが、個人情報保護の分野ですと委託関係・再委託関係で問題が起きるというのはよくニュースなどでも目にするところです。再委託をそもそも認めていいかという話もありますし、委託するとしても、その委託の範囲がきちんと明確になっていて、委託先に対してきちんと情報の取扱い状況を確認できるような管理体制、ガバナンス体制が敷けるかどうかも観点になると思います。委託・再委託は結構問題になりやすいので、ここは少し精査して要件を新たに立てていただくことが望ましいかとは思いました。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、白井委員、お願いします。
○白井委員 民間事業者というのはどの程度の範囲なのかなと思ったのですが、今までの話だと医療系や薬剤関係という印象があるのですけれども、ほかにも研究として称していろいろ情報を得たいところがあるのではないかと思うのですが、例えば、公益財団等の縛り、そういう想定はどこまでいっているのかなと思いましたので、想定の御説明をいただければと思いました。
○辻部会長 これにつきまして事務局から御返答お願いできますか。
○事務局 民間事業者の想定、定義は事前に定めているものは特別ないのですけれども、基本的には、これまで申請があったような研究者等の利用以外の提供依頼申出者のことを指しているものと考えています。今後、個別の申出において民間事業者に当たるかどうかはまた判断しつつ、必要時には部会にお伺いしたいと考えております。
 以上です。
○辻部会長 白井委員、いかがでしょうか。
○白井委員 ありがとうございました。これについても歯止めがかかることが懸念されましたので、民間はかなり幅が広いですので、その辺をある程度定義づけるということは整理していただきたいと思いました。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、森内委員、お願いします。
○森内委員 先ほど坂元委員がおっしゃった内容と同じです。どうしても民間事業者になりますと、利益追求型もあるかもしれません。そういう状況の中では、研究の成果が患者さんたちに貢献できる、役に立つことが示されることが大事です。成果が営利目的のみに優先しないように注意していかなければならないと思います。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
 では、山本秀樹委員、お願いします。
○山本(秀)委員 日本歯科医師会の山本です。ありがとうございます。
 事務局に留意すべき点を数々書いていただいたので、これらを全部見ながら個別の審査ということであれば、それほど大きな問題はないのではないかと思います。先ほどのお話のように、確かに民間の事業者なので必ず営利目的は考えてはいると思いますが、がん患者の方やその家族に対して還元されるということが書いてありますので、こういった形で個別に審査するということであれば問題はないのかなと思いますので、この事務局案で私はよろしいかと思っています。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
 天野委員、お願いします。
○天野委員 先ほど石井委員から御指摘があった点について付け加えます。
 委託関係、再委託を含む部分についてはかなり注意が必要だと思いますが、この部分は特出しで記載するべきではないかというのが1点。
 それに関連してですが、これは別に民間事業者に限らず、いわゆる研究機関や公的な機関であっても委託している場合がありまして、例えば、都道府県等でがん登録の審議会があって、そういった審査も私は関わっておりますが、中にはこれはどうかと思われる部分もありますので、この部分はかなり慎重な記載ぶりが必要だと思いますし、それは公的な機関についても同様だと思いますので、あえて申し述べさせていただきます。
 以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。ほかに御意見・御質問ございませんでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、資料3に関しては以上とさせていただきたいと思います。
 ここで、次の議題に入る前に10分間の休憩をいただきたいと思います。これから先は非公開の議事となりますので、YouTubeを切断させていただきます。
 では、委員の皆様方におかれましては、10分後にまたお集まりいただきますよう、よろしくお願いいたします。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表03-5253-1111(内線 3825原澤、2150渭原)