第4回化学物質管理に係る専門家検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和4年12月15日(木) 14:00~17:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンター カンファレンスルーム16B
(東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング16階)

議題

  1. (1) 濃度基準値の検討の進め方
  2. (2) 濃度基準値の検討
  3. (3) その他

議事

○環境改善室長 本日は、大変お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、第4回化学物質管理に係る専門家検討会を開催いたします。
 私は、本日、座長に進行をお渡しするまで司会を務めさせていただきます化学物質対策課環境改善室の平川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、濃度基準値に関する事項について検討することとしていますので、開催要綱別紙の構成員名簿のうち、全般に関する事項、毒性に関する事項の欄に掲載の先生方に御参集いただいております。
 まず、本日の構成員の出席状況でございますが、14名の構成員の先生方に御出席いただいております。なお、本日は会場参加とオンライン参加の併用で開催させていただいており、14名出席者のうち1名がオンラインでの参加となっております。
 また、本日、安全衛生部長は所要により途中で退席されますので、御了承くださいますようお願いいたします。
 なお、本日の検討会は、会場とオンラインの併用で開催しておりますので、会場参加の皆様は、御発言の際に必ずマイクを使用していただきますようお願いいたします。オンラインの先生におかれましては、周囲の音を拾ってしまうことがありますので、御発言される場合を除きましてマイクをミュートかオフに設定していただきますようよろしくお願いいたします。また、御発言の際にはあらかじめチャットで御発言の旨を入れていただくか、またはお名前を名乗っていただき、座長の指名を受けてから御発言いただきますようお願いいたします。
 なお、本日、議事録を作成し、後日公表いたしますので、御承知おきくださいますようお願いいたします。
 また、本日の会議は公開としており、一般傍聴者につきましてはウェブでの音声配信を行っております。
 それでは、城内座長に以降の議事進行をお願いいたします。
○城内座長 ありがとうございました。それでは、議事進行をしていきたいと思います。
 まず、事務局から資料の御確認をお願いいたします。
○環境改善室長 本日の会議でございますが、本来であればペーパーレスにすべきところでございますが、個別の物質ごとに複数の資料を同時に御覧いただいたほうがよいかと考え、本日は印刷した資料を御用意させていただいております。
 資料でございますが、一番上の資料の表面が議事次第、裏面が配付資料一覧となっております。資料は資料1から資料5、また参考資料につきましては、参考1、2、3、4――1、4-2、4-3、5を用意いたしております。参考資料につきましては、左上1点留めとさせていただいております。
 なお、参考資料4-2でございますが、濃度基準値設定対象物質リスト(令和5年度)の案、参考資料4-3は濃度基準値設定対象物質リスト(令和6年度)の案でございます。また、参考資料5は有害性関連の専門用語の説明でございます。
 会場にお越しの皆様方におかれましては、資料に抜けなどはございませんでしょうか。オンラインで参加いただいている先生にも資料を事前に送付させていただいておりますが、何かございましたら、事務局までお知らせいただきたいと思います。
 なお、本日、資料説明時には会場モニターで画面を映します。
 資料の確認は以上でございます。また、本日の資料は厚生労働省のホームページにあらかじめ掲載しております。傍聴の方はそちらを御覧ください。
 以上でございます。
○城内座長 ありがとうございました。
 それでは、本日の議題に入ります。まず議題の1、濃度基準値の検討の進め方ですが、事務局より説明をお願いします。
○化学物質対策課長 化学物質対策課長の安井でございます。私から資料1から3まで御説明させていただきます。
 今回から濃度基準値の検討を始めるということでございますので、まず最初にどのように検討を進めるのかという進め方につきまして御説明させていただきます。
 資料1を御覧ください。まず基本的な考え方でございますけれども、濃度基準値は有害性に関する文献に基づき決定するということでございます。ただし、濃度基準値の検討に当たっては次の2点を考慮するということでございまして、1つは測定方法が定められていること、もう1つは有効な呼吸用保護具があることでございますが、今年度につきましては、厚生労働省のリスク評価を経た物質になっておりますので、基本的には測定方法、保護具等に問題はないという認識でございます。
 それから、濃度基準値は初期調査と詳細調査の2段階で検討するということでございまして、初期調査の情報では濃度基準値を決定できない場合には、詳細調査を行うという形でございます。
 初期調査につきましては、根拠論文の信頼性が高く、その根拠論文による数値、基準値が諸機関の職業性のばく露限界値と矛盾しない、大きく変わらないような場合につきましては、そちらの根拠論文に基づいて基準値を決定するということでございます。
 それから、次のような場合には詳細調査に移行するということでございまして、1つは複数の根拠論文があって、その結論が一致しないという場合で、根拠論文の信頼性の比較等が必要な場合、それから諸機関が提案しておりますばく露限度に大きなばらつきがあって、その根拠となっている論文の信頼性の比較がどうしても必要な場合につきましては、詳細調査を行うということでございます。
 詳細調査におきましては、根拠論文の疫学調査手法、動物実験の試験条件等から、信頼性の比較、評価を行って、信頼できる根拠論文というのを決めて、それに基づいて濃度基準値を決定するということでございます。
 それから、今年度の濃度基準値の検討スケジュールでございますが、第4回、本日は全体像をお示ししつつ、初期調査で完了できる物質につきまして御議論いただきます。
 第5回につきましては、初期調査で決定可能と考えている物質の積み残しと詳細調査を経た物質について御議論いただきます。
 第6回につきましては、それらの積み残しを議論するということで、最後の全体像の取りまとめも行う予定でございます。
 続きまして、次のページでございますけれども、基準値設定までの流れということでございます。今回の検討会につきましては、労働安全衛生総合研究所に専門家の会議を置いておりまして、そちらのほうであらかじめ文献のスクリーニング等をやっていただいておりますので、そちらの内容を御説明させていただきます。
 まず、右側のほうに安衛研専門家会議と書いてございますが、こちらに書いておりませんが、8つのワーキンググループがございまして、そちらのワーキンググループにそれぞれの物質を割り当てまして、各機関の提案文書であるとか様々な参照文献をレビューしていただきまして、鍵となる根拠論文を見つけ出して、なおかつそれを評価するということをワーキンググループでやっていただいております。
 その結果に基づいて、初期調査の報告書を作っていただくわけですが、初期調査だけで濃度基準値が提案できるというものにつきましては、それを行政の検討会に御報告いただくと。安衛研の専門家会議で詳細調査が必要であるという判断されたものにつきましては、詳細調査を行った上で再度御審議いただいて、濃度基準値の提案をしていただいて、行政検討会に提出いただくということでございます。本日提出されているものにつきましては、こういったプロセスを経て提出されているものであるということでございます。
 続きまして、左側にございますけれども、こちらで決定した後には、当然濃度基準値を告示でお示しするということになりますので、パブリックコメントをさせていただくということになります。場合によってはパブリックコメントを踏まえまして、再度検討になるような物質もあろうかと思いますけれども、その場合につきましては本検討会で検討させていただきたいというふうに考えているところでございます。
 資料2でございますが、先ほど資料1の内容を文章に落としただけでございますので、省略いたしまして、資料3が令和4年度の濃度基準値設定対象物質リストということでございます。こちらにつきましては、厚生労働省で行っておりましたリスク評価事業において、評価は終了しているもので管理濃度が定められていないといったものを選んでいるということでございます。
 右側に初期調査と詳細調査の列がございますが、初期調査の列というのが初期調査だけで濃度基準値の提案ができると判断できるものは○がつきます。詳細調査が必要なものは詳細調査が必要なところに○がつくわけでございますが、本日は○がついているものと保留になっているものがございますが、○がついているものが全部で21物質ございます。こちらにつきまして資料4以降に個別物質の取りまとめができておりますので、そちらにつきまして本日御議論、御検討いただきたいという趣旨でございます。
 私の説明は以上でございます。
○城内座長 ありがとうございました。今の事務局からの説明について何か御質問や御意見があればお願いいたします。進め方について何かございませんでしょうか。尾崎委員、お願いいたします。
○尾崎委員 前回も言ったのですけれども、化学業界にも化学物質にたけた人材がいるわけで、そこら辺のところにも積極的に意見を言ってもらいたいというのが私の意見なのです。前回そのお願いをして、なるべく早く資料を公開してくださいということをお願いしたのですけれども、今回の第4回の会議を開催するに当たって、資料が非常に多いということと、見ている時間が少ないという感じを受けましたので、そういうところに関して今後改善していただきたいと思っております。
 以上です。
○城内座長 そのほかございませんでしょうか。小野委員、お願いします。
○小野委員 安衛研の小野でございます。
 ただいま課長からの御説明で、中災防のリスク評価が終了したものというお話だったのですけれども、一部につきましては分析法の検討が完全終了していないものが含まれておりますので、その辺につきまして測定法を後ほど提案する形で出しておりますが、その点について御了解いただきたいと思います。
 以上です。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。では、お二方の御意見について、事務局から少しお願いします。
○化学物質対策課長 御意見ありがとうございます。
 まず、尾崎委員からの御意見でございますけれども、御指摘のとおりできるだけ早く情報について開示したいと思います。
 進め方でございますが、こちら専門家検討会ということでございますので、御出席いただいている専門家の御判断で基準値につきましては決定させていただいて、報告書にまとめさせていただくということでございます。そのうちそれを濃度基準告示案にまとめた後にパブリックコメントという形にさせていただきますので、業界の方につきましてはパブリックコメントの期間を1ヵ月間設けますので、そちらのところでコメントいただくということを想定しております。
 それから、小野委員の御指摘はそのとおりでございまして、そういったものも一部あるということは御理解いただければと思います。
 以上です。
○城内座長 ありがとうございました。それでは、次の議題に移りたいと思いますが、議題2、濃度基準値の検討です。資料の説明をお願いいたします。
○化学物質評価室長 本日、濃度基準値の検討を予定している物質数は21となります。
 議論の進め方ですけれども、7物質ずつに区切ってまとめて説明いたします。その後物質ごとに御議論いただくように致したいと思います。
 検討に必要な根拠論文などにつきましては、事務局にお知らせください。先生方の席までお持ちいたします。なお、根拠論文につきましては、著作権の関係がありますので、厚生労働省のホームページには掲載しておりません。
 まず、説明に入ります前に、資料4と資料5を使っての説明なのですが、様式について簡単に御説明いたします。資料4、表紙をめくっていただきまして、見開きで1つの物質につきまして2枚のシートを用意しております。1ページ目、2ページ目と見開きで用意しております。
 左側の1ページ目なのですけれども、物質名、CAS番号、詳細調査の要否ということが書いてあります。その次に提案いただく濃度基準値の案、検討に使った根拠論文の名前、根拠論文に書いてあることの抜粋を中心にコメント、詳細調査が必要な場合はその理由、一番最後にその他のコメントということで書いてございます。
 2ページ目を御覧ください。一番上は物質名、CAS番号、化審法の官報整理番号があれば書いております。その下にGHS分類、国で行っておりますので、それをまとめて書いてあります。ここで区分外という言葉が出てくる意味なのですが、表紙の一番下に注を入れてあります。区分外の表記につきましては、JIS Z 7252:2019における「区分に該当しない」に相当するという意味合いでございます。
 2ページ目に戻っていただきまして、5番、各機関で提案されている職業ばく露限界値の数値でございます。ない場合は「設定なし」と記載しております。5番の各機関が設定するに至った、もしくは設定なしとした根拠となる二次的なレビューの文献のリストを6番にまとめて書いてございます。
 続きまして、資料5、A3のほうを御用意ください。物質のことをまとめたものの表になります。左から物質名から文献調査結果までが先ほどの資料4の抜粋そのままコピーペーストしております。左側に「捕集法」、「分析法」とある部分が資料5だけに記載されておりまして、捕集法と分析法の具体的な内容になります。
 右側から2番目の測定法の総合評価に○と書いてあります。一番右に備考があります。○なのですけれども、備考をよく注意していただく必要がありますので、備考に詳細なことを記載しております。
 資料4と5を使いまして、本日は物質ごとに説明を順次していきます。
 では、一番最初の物質、アセチルサリチル酸、資料4の1ページ目と2ページ目を御覧ください。
 詳細調査の要否ですけれども、不要という提案です。
 濃度基準値のほうは時間加重平均ということで、5mg/㎥と提案されています。
 根拠論文は2つあります。
 コメントのところなのですけれども、ヒトの経口摂取では、血小板凝集抑制により出血を起こす。なお通常の治療用量では、5日間以上の投与で上記の影響を生じることがあるが、150mgでの報告もある。なお、呼吸器及び全身性アレルギー誘発物質であり、少量でアナフィラキシーを起こすことがある。厚生労働省リスク評価事業におけるリスク評価書において、ラット経口試験(3ヵ月)でのNOAELは375mg/㎥、吸入に換算すると45mg/㎥とされております。以上より、ヒトの薬理量での150mg/dayをNOAELと判断し、吸入量への換算及び不確実係数などを考慮した5mg/㎥を濃度基準値(時間加重平均)として提案するとされております。
 そのほかのコメントのところですけれども、この物質につきましては医薬品としての用途のみであり、濃度基準値は設定しないという選択肢もあるが、その製造工程でのばく露は否定できないことから、当該業務を想定した値として検討したとされております。
 資料5を御覧ください。捕集法、分析法のところなのですけれども、総合評価は○ということです。
 備考に捕集、加水分解してサリチル酸を定量するという注意が記載されております。
 続きまして2つ目の物質に移ります。アセトニトリル、資料4の3ページ目、4ページ目になります。
 この物質につきましては、詳細調査は不要とされております。
 濃度基準値の提案ですが、時間加重平均で10ppm。
 根拠論文がそこに1つ掲載されております。
 コメントですが、マウスの13週間の吸入ばく露試験では200ppmばく露群で前胃の過形成が見られたが、ラットの2年間吸入ばく露試験では200ppmで肝臓の好塩基性変化を認めた。以上から、より信頼性の高いラットの2年間の吸入ばく露試験を採用し、NOAELは100ppmと判断し、不確実性係数などを考慮した10ppmを濃度基準値(時間加重平均)として提案するとされております。
 資料5の捕集法、分析法を御覧ください。アセトニトリルにつきましては、測定法の総合評価は○ということで、備考は特になしとされております。
 続きまして、3番目の物質、アセトアルデヒドです。資料4の5ページ目、6ページ目になります。
 この物質につきましても、詳細調査は不要とされております。
 濃度基準値の提案ですが、短時間ばく露限界値で提案されておりまして、10ppmです。
 根拠論文はそこに記載のあります3つの論文となりまして、コメントですけれども、健康なヒト男性20人(非喫煙者)に50ppm、4時間ばく露した試験では、刺激症状を含む自覚症状及び鼻上皮細胞のmRNA発現量に非ばく露時との差が認められなかった。ラットによる動物試験(13週間)では、鼻腔の病理組織学的変化に対するNOAELは50ppmであった。なお、本物質はGHS分類における発がん性区分1Bの物質であるが、ヒトにおけるアルコール飲料摂取以外の発がんの証拠がなく、また動物実験での発がんの知見は局所影響(鼻腔粘膜)であること、文献1及び2でヒトの刺激性に係る知見があること、また日本人の約40%がアセトアルデヒド代謝が遷延する遺伝子を保有しており、アセトアルデヒドによるFEV1低下が敏感であることも考慮した不確実係数を考慮して、濃度基準値(短時間ばく露限界値)、15分のほうですけれども、10ppmが提案されております。
 その他コメント、一番下ですけれども、文献2より15分のヒトのばく露での刺激症状の知見があることから、短時間ばく露限界値としての設定が適切とされております。
 資料5を御覧ください。アセトアルデヒドにつきましては、捕集法、分析法は○と総合評価が記載されておりまして、備考のところですが、厚生労働省のリスク評価報告書に詳細な測定法の評価がないが、汎用の分析法であるため、使用可能な方法であるということでまとめられております。
 続きまして、資料4の7ページ目、8ページ目を御覧ください。1,1-ジクロロエチレンです。
 この物質につきましては、濃度基準値は時間加重平均で5ppmが提案されております。
 根拠論文は1つです。
 コメント欄ですが、動物への急性吸入ばく露では、高用量で広範囲の出血性小葉中心性肝臓壊死及び腎毒性が見られた。ラットに25または75ppmを6時間/日、5日/週で1.5年間反復吸入ばく露した試験では、一過性の肝細胞脂肪浸潤が認められた。そのことによりましてNOAELは25ppmと判断し、不確実係数等を考慮した5ppmを濃度基準値(時間加重平均)、8時間のほうですが、その値として提案されております。
 そのほかのコメントで一番下ですけれども、代謝により発生するエポキシドの生成は、ヒトはげっ歯類より低いと考えられる知見もあるが、その後NTP(2015)のレポートが公表されていることから、今後優先的にNTPのレポートを用いて検討する必要があるとコメントがあります。
 資料5を御覧ください。1,1-ジクロロエチレンにつきましては、捕集法、分析法は総合評価○とされております。
 備考欄ですが、高濃度では検量線が寝るため、検出器をFIDとして検討する必要がある。保存安定性の情報がないため、確認する必要があるとコメントされております。
 続きまして、資料4の9ページ目、10ページ目を御覧ください。アセトンシアノヒドリンです。
 詳細調査は不要とされております。
 濃度基準値の提案ですが、最大ばく露濃度として提案されております。この専門家検討会の前回、前々回の議論を取りまとめた中間取りまとめが公表されているのですが、その中では最大ばく露濃度は決めないとされておりまして、最大ばく露濃度で提案された5ppmの値をどう扱うのか議論があるかと思います。最大ばく露濃度を労働者のおります事業者でどうやって測定するのかという現実的な問題もありますので、5ppmを短時間に置き換えることができるのかどうかということを中心に御議論いただけばと思います。
 根拠論文は3つございます。
 コメントなのですけれども、アセトンシアノヒドリンはin vitro及びin vivoにおいて遊離シアン化物として挙動する。このため、シアン化物として評価する。ヒトの知見では電気メッキ部門(シアン化物の平均気中濃度6.4~10.4ppm)の労働者36人(ばく露期間5~15年)において頭痛、味覚・嗅覚変化、目まい、喉の刺激、流涙などの自覚症状の増加を認め、また、作業者の半数に甲状腺の腫大を認め、ヨード131投与後4~24時間の甲状腺での集積増加を認めているが、甲状腺機能異常は認めていない。なお、アルビノラットに対してシアン化水素100ppm及び300ppmを2年間ばく露した試験(混餌摂取)の結果、血液学的検査、形態学的及び組織学的異常所見を認めなかった。以上のことより、ヒトの自他覚症状に対する平均ばく露濃度に基づき、濃度基準値(最大ばく露濃度)5ppmが提案されております。
 資料5を御覧ください。アセトンシアノヒドリンにつきましては、捕集法、分析法につきまして総合評価は○ということです。
 備考のところを御覧ください。保存安定性は3日後には不安定である。捕集後すぐに分析するのが望ましいとコメントされております。
 続きまして、資料4の11ページ、12ページ目を御覧ください。トリクロロ酢酸になります。
 詳細調査は不要とされております。
 濃度基準値は時間加重平均で0.5ppmが提案されております。
 根拠論文は1つです。
 コメントですけれども、マウスに0.05g/L、0.5g/L、5g/Lのトリクロロ酢酸を60週間飲水経口投与した試験で、0.5g/Lばく露群で肝細胞がんまたは肝細胞腺腫などの新生物や非増殖性肝臓病理所見の有意な増加が観察された。以上より、NOAELは0.05g/Lであることから、吸入ばく露への換算及び不確実係数などを考慮した0.5ppmを濃度基準値(時間加重平均)として提案されております。
 資料5を御覧ください。総合評価のところですが、○とされております。
 備考ですが、ガスクロマトグラフ法は不安定であるため、液体クロマトグラフ法を採用したとコメントされております。
 続きまして7番目の物質になります。資料4の13ページ目、14ページ目を御覧ください。トリクロロニトロメタンです。
 詳細調査は不要です。
 この物質につきましても、最大ばく露濃度として0.1ppmが提案されております。先ほどのアセトンシアノヒドリンと最大ばく露濃度が提案されておりますので、この値をどう考えるかということについて御議論いただけばと思います。
 根拠論文は1つです。
 コメントですけれども、0.3~3.7ppm、3~30秒のばく露でヒトの目刺激が認められたことにより、ヒトの目の刺激症状に対するLOAELは0.3ppmと判断し、不確実係数などを考慮した0.1ppmを濃度基準値(最大ばく露濃度)として提案されています。
 その他コメント、一番下ですけれども、根拠論文の知見から、ばく露時間が極めて短時間、3~30秒ということでしたので、時間加重平均値ではなく最大ばく露濃度として提案する。なお根拠論文が二次文献であることから、1番の論文に*がついておりますが、この物質につきましては一次文献の収集ができないことから、二次文献を引用しております。一番下に注がございます。ということで二次文献が根拠論文となっております。今後、ばく露濃度と影響に係る新たな知見の検討が必要であるとコメントがあります。
 資料5を御覧ください。トリクロロニトロメタンにつきましては総合評価○。
 備考は要遮光とコメントがあります。
 7つの物質につきまして、駆け足ですけれども、説明は以上となります。
○城内座長 御説明ありがとうございました。それでは、ここまでの物質について1つずつ議論していきたいと思いますが、まず初めにアセチルサリチル酸について御意見等ございますでしょうか。川本委員、お願いいたします。
○川本委員 コメントの5行目ですけれども、ラット経口試験でNOAELは375mg/㎥となっていますが、これは何かの間違いではないでしょうか。
○化学物質評価室長 確認して、後で訂正が必要であれば直します。
○城内座長 そのほか何かございませんでしょうか。武林委員、お願いいたします。
○武林委員 最初ですので少し確認ということでございますが、コメントの上に医薬品としてどうするかという議論があると書いてありますが、今後のスタンスとしては医薬品についても特にこの物質のようにほぼ製造工程だけに限定されているような物質についても、情報があれば基準値をつくっていくという共通の考え方という理解でよろしいでしょうか。
○化学物質評価室長 はい、そのようになります。
○武林委員 医薬品の場合は当然もともとの用途があって、薬理作用があって、同時にいわゆる副作用があるわけですけれども、今回の根拠も先ほど川本先生の動物実験のことがまた後で確認があると思いますが、ヒトで起こった副作用といいますか副反応といいますか、その情報を常に使って作っていくと。いわゆる普通に薬で使う量とほぼ同じところでほとんどの薬が起こると思うのですけれども、そういうものを気中濃度に置き換えて作っていくというスタンスで行くという考え方で理解してよろしいのでしょうか。
○化学物質対策課長 リスク評価で行われたものにつきましては、基本的に職域でばく露があるものを一応選んだということになっておりますので、医薬品の用途のみというよりは、職業ばく露があるということで選んでおりますので、これにつきましてはその範囲内で御検討いただくということになっているということでございます。
○武林委員 分かりました。そうすると、ばく露の有無を確認してから、つまりいつもリスク評価書があるわけではないと思いますので、非常に膨大な数のものがあったときにどうするのかということは今後重要かなと思いましたので、イメージとしてその都度確認するということですね。
○化学物質対策課長 全てについて確認できるかどうか分からないのですけれども、今年度についてはその形でできるということでございます。
○武林委員 分かりました。またいろいろ出てくると思います。
 それから、薬理量を使って、通常の範囲のものをそのまま作業工程では予防すべき影響と考えるということも、一般的に今後医薬品を考えていくという、それ以外にはほとんどデータがないと思うのです。それで作るのかという議論だと思うのですけれども、それについてはいかがでしょうか。
○城内座長 委員の先生方から何か御意見等ございますでしょうか。大前先生、何か御意見ございますか。
○大前委員 大前です。医薬品であろうが、医薬品でなかろうが、化学物質という観点では全く同じなので、そこの差はあまりないと思っております。医薬品の場合は、薬理効果を狙って投与するのですけれども、今回の場合はそれを作る労働者ということなので、一応健康な方というわけですから、労働者が医薬品をばく露しても何のメリットもないわけです。患者さんは当然メリットがあるので投与するわけですけれども、一般論としては薬用量よりも現場でばく露する量のほうが小さいはずなので、そういう観点で作ることは可能だろうと思います。むしろ薬理効果は考えないほうがいいのではないかと思っています。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。武林先生からの御質問はよろしいですか。そのほかアセチルサリチル酸について御質問等ありますでしょうか。
 私から少し総論的なところで教えていただきたいのですが、この評価の結果で必ず不確実係数等が出てくるのですけれども、これについて説明頂いた文書の中で無かったものですから。大ざっぱに言って10の場合とか5の場合とかいろいろあるのですが、不確実係数が幾らだったのか、どういう考え方でそうなったかというのは、別の書類を見れば分かるようになっているのでしょうか。大前先生、お願いします。
○大前委員 不確実係数はいろいろな考え方があると思います。安全に考えれば、例えば種差とかそういうものを全部10を使うという、デフォルト値とよく言いますけれども、これをやる考え方もあるでしょうし、そのとき影響を受ける場所とか、例えば鼻腔だけだと不確実係数の数字が違うとか、見ている影響が軽い場合もデフォルトで10を使うということにはならないので、物質、それから影響の種類、影響を受ける場所、もちろん動物実験かヒトの実験かというデータであったかということを含めて、トータルで不確実係数を考えるというのが、非常にアンクリアな説明ですけれども、そうせざるを得ないかなと思います。
○城内座長 そうだと思いますが、実はずっと見ていたときに実験値と違う単位で濃度基準値が決められているときに、不確実係数を考慮して、こういう数字になったという文章があるのですが、そこが隠れている文章があるので、できればそういうものが委員会で決めた場合には、例えばトータルとして5で割ったとか10で割ったという議論が多分あったと思うので、その辺がはっきりしていないと、一般的に見たときに分かりにくいかなという感じがしましたので、コメントさせていただきました。今後、文章を作るときに御考慮いただければいいかなと思います。
 尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員 1点、文献値から得たデータに関してなのですけれども、試験の方法の信頼性ということで、その数字が出た試験方法の信頼性というのがこの文献の中から見えないので、そこの担保をどうやってしていくのかというところに関しては明示していただきたいと思います。
 以上です。
○城内座長 アセチルサリチル酸に関しては以上でよろしいでしょうか。
○化学物質評価室長 訂正よろしいですか。先ほど川本委員からありましたコメントの上から5行目の375云々のところですが、単位が違っておりました。吸入に換算した45mg/㎥が正しい値と単位です。そこは訂正いたします。
○城内座長 それでよろしいでしょうか。
○武林委員 ラットの経口試験のNOAELは375mg/㎥は合っているということですか。
○化学物質評価室長 375という数字が合っていて、その後ろの単位が間違っていまして。
○武林委員 もしこれが合っていれば、吸入に換算する場合は、体重と呼吸量から普通は450になるのは分かるのですけれども、種差とかは別に掛けるファクターであって、375が合っているのだったら、吸入に換算してももっと大きな数字になるはずだと思うのです。
○大前委員 その間別件でいいですか。今の尾崎委員の信頼性の話の件ですけれども、これは非常に重要な件なのですが、論文から信頼性を確定するのは非常に難しいことがあります。
 例えば動物実験の場合ですと、今GLPの基準がありますけれども、これができたのはせいぜい30年ぐらい前ではないかと思うのです。それ以前はそういう基準すらなかった。でも、実際にあるデータはその前のものを使わざるを得ないということもありますし、それから大学等の実験室で行われた結果はGLPにのっとっていないのですけれども、それを無視していいかというとそういうわけでもない。
 したがって、尾崎委員が言われたようなことで信頼性をどのように保証するかということは非常に難しい問題です。もちろんGLPの実験から持ってくる分にはいいと思うのですが、GLPの実験も若干問題があって、幾つか企業からのリクエストで実施されているものがあるのです。その結果をそのまま持ってくるのが本当にいいかどうかという問題もあるので、なかなか信頼性は難しい。
 それから疫学の場合はもっと難しくて、労働者に関しては一生を観察したような疫学は殆どないのです。せいぜい横断研究という形で一時点のデータしかないということはある。それから、そこで得られた濃度ですけれども、ばく露濃度か生体試料の濃度かいろいろあると思うのですが、その濃度も時代によって精度が違うのです。今はこうなのだけれども、実は昔の数字と今の数字が1桁くらい違うということはよくあるのです。そういう意味でも疫学に関してもいろいろな面で精度を確保するのは結構難しいので、論文を読んで精度に関しては確実に判断できないとしてもいいのではないかという判断が現実的なところになります。
○城内座長 ありがとうございました。事務局からよろしいですか。
○化学物質評価室長 武林先生からの数字の話ですけれども、厚生労働省のリスク評価書から持ってきておりまして、ラットの経口の3ヵ月間の反復投与試験です。375、NOAELなのですけれども、mg/㎥体重に種差ということで10分の1を掛けまして、試験期間の関係で5分の1を掛けて、7.5mg/kg/日です。これを吸入に換算すると、7.5mg/kg/日掛ける60kg/10㎥で45mg/㎥という値になります。
○城内座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。では、アセチルサリチル酸はよろしいでしょうか。
 次に行きたいと思います。アセトニトリルについてコメント等ございましたらお願いいたします。
 では、3番目、アセトアルデヒドについてはいかがでしょうか。宮内先生、お願いします。
○宮内委員 総論的なお話になって恐縮なのですけれども、アセトアルデヒドの臭気閾値が非常に低いのです。AIHAの公表だと低いものでは0.0015 ppmなのです。そもそも今回、健康影響に関することなので、臭気の話は別なのかなと思っているのですけれども、臭気閾値が低いものは、恐らく10ppmだと臭気強度という形で計算すると4とか5ぐらいになって、かなり匂いがきついという形になるのです。
 今回特にマスクの内側というか、直接呼吸器に入るということを考慮するとどうなのかなと思ったのですけれども、そういうことは今回クライテリアの中に入れない形でよろしいのかという確認をしたかった次第です。
○城内座長 事務局からいかがでしょうか。
○化学物質評価室長 御意見ありがとうございました。臭気の話ですけれども、毒性の先生方に教えていただきたいのですが、臭気について健康影響の評価に考慮する必要があるかどうかをお聞かせ願いたいのです。事務局ではこれまでリスク評価で特に臭気で健康影響評価に配慮したというのは私の記憶ではないのですけれども、いかがでしょうか。
○宮内委員 多分防毒マスクをされる形で実際作業をすると思いますので、運用上は気にしなくていいかなと思ったのですけれども、基準について何かあるのかなと思いましてお聞きしました。
 以上です。
○城内座長 大前委員、お願いします。
○大前委員 特に強い臭気で天井値等を決めることはあります。この物質に関して臭気の情報がないので何とも言えませんが、これを読む限りにおいて1番はヒトの文献のように見えるのですけれども、これを見ると50ppmで特に上気道はなかったということなので、匂いはあるかもしれないけれども、大きな影響がないのだろうと思います。
○宮内委員 ありがとうございます。理解いたしました。
○城内座長 ありがとうございました。武林委員、お願いします。
○武林委員 先ほど事務局から御説明があったように、アセトンシアノヒドリンとトリクロロニトロメタンのところで議論があるのだと思うのですが、反対にこの物質については10ppmが短時間ばく露限界値のみとして提案されているという理由はどこにあると理解したらよろしいでしょうか。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質評価室長 一番最後のその他コメントに書いてありますように、文献2から15分のヒトのばく露での刺激症状があるという知見で短時間ばく露限界値が提案されています。
○武林委員 一般的にこの物質はシーリングで提案されていることが多いと思います。実際に現場で考えると、最大許容濃度、シーリングで提案された場合、厳し目になるので、15分にすると3分の1とか2分の1ぐらいで実際に管理されることが一般的で、逆に言うと短時間でいいとなったということは、20とか30ぐらいまでは大丈夫だということが裏にあるのかどうかを知りたいです。現実的にはそのようになると思うのです。それでも問題がないと判断されて、あえて短時間なのかどうかを確認したかったということです。
 もっと言うと、この後の議論で最大許容濃度をつくるという議論になるのだったら、これも最大許容濃度でいいのではという気もしないのではないのですが、根拠に違いがあるのかをこの段階で確認させていただきたいという意味です。
○化学物質対策課長 最大許容濃度につきましては、どちらかと言うとエビデンスに極めて短時間で何かの問題があるのが文献上明らかなものについては、最大許容濃度に積極的にするのかなというイメージがございまして、こちらについては文献で一番短い時間が15分だったので、短時間でやるといった発想だったと認識しています。
○武林委員 いろいろな議論があると思うのです。ただ、例えば実際にACGIHを全てチェックしても、どっちかというとSTELという短時間ばく露限界値は時間加重平均値とセットで使われていることが多くて、単体でSTELだけが使われているのは多分エタノールを含めて3物質しかないのです。多くの場合、刺激であっても予防するためにシーリングを提案することが多かったので、やや違うアプローチだったので、何か確認したのかを少し議論しておいたほうが、この後の議論もあるのでいいのかなと思った次第です。
 以上です。
○城内座長 ありがとうございました。今後どこに視点を置いて基準値を決めていくかということも参考にしていきたいと思います。
あとアセトアルデヒドについてはいかがでしょうか。大前委員、お願いします。
○大前委員 今の宮内委員の御意見もあるのですが、1番の文献、先ほどヒトのデータだと言いましたけれども、コメントにありますように男性20人で50ppm、4時間ばく露した試験では、非ばく露時と差が認められなかったと書いてあるので、そういう意味ではシーリングでなくてもいいのかなと思います。
 ただ、シーリングでやらなくてはいけない物質も当然あると思います。先ほどの繰り返しになりますけれども、刺激が強い場合はシーリングで数字をよくつくりますので、後ほど出てくる2つぐらいの物質、あれはシーリングと出てきていますが、あれはいいのではないかと思っております。この物質は1番の文献などを見ると、STELでもいいのかなと思います。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかアセトアルデヒドについてよろしいでしょうか。宮本委員、お願いします。
○宮本委員 聞き漏らしたかもしれないのですけれども、10ppmというとACGIHとDFG、OSHAと随分値が違って、1桁以上違っているところについて何か説明が要るのではないかと思うのですが、日本人の遺伝子多型の特性からでよろしいのですか。
○化学物質評価室長 そのとおりです。日本人特有の特徴があるので低目の数字となっています。
○宮本委員 例えば外国人労働者も増えてくるのですが、その場合基準が変わるということになるのでしょうか。
○化学物質対策課長 こちらにも書いてございますけれども、全ての日本人に遺伝子型があるわけではなくて、40%ということでございますので、そこはマスで捉えて40%ものヒトに影響があるのであればということで10にしています。外国人労働者が入ってきても、40%から下がるかもしれませんが、全体の考え方は変わらないということかと思います。
○城内座長 よろしいでしょうか。それでは、4番目に参りたいと思います。1,1-ジクロロエチレンについてコメント等ございましたらお願いします。川本委員、お願いします。
○川本委員 コメントの欄で2行目にラットに25また75ppm云々でばく露した試験では一過性の幹細胞浸潤が認められたことにより、NOAELは25ppmということで、読んでいて奇異な感じがしまして、原文を当たらせていただいたら、確かに書かれているとおりでした。ただ、多分委員会で25ppmを所見としないと判断されたのだと思いますので、その辺は尊重したいと思いますが、文章を分かりやすく書いていただければということです。
 以上です。
○城内座長 ありがとうございます。そのほかコメント等ございますでしょうか。では、今のコメントは事務局で修正等お願いいたします。
 では、次、5番目、アセトンシアノヒドリン、いかがでしょうか。コメント等ございましたらお願いいたします。事務局、お願いします。
○化学物質対策課長 こちらがシーリングで提案されているところでございますので、御議論いただきたいと思っておりまして、頂いた文献を見ると、ばく露期間が5~10年とか4~24時間とか2年間とかかなり長期のばく露の文献に基づいて、ヒトの自他覚症状に対する平均ばく露濃度に基づいて、シーリングということになっているのですけれども、こういったエビデンスですとシーリングにはならないのではないかと思うのですが、こちらについて大前先生、いかがでしょうか。
○大前委員 この物質は要するにシアンと同じという感覚で見ていただきたいということで、急性毒性が非常に強い物質なのですけれども、36人のデータを単純に見ますと時間加重平均でもいいのかと思うのですが、ただシアンを8時間、時間加重平均で吸うというのは非常にリスクが大きい。これは時間加重平均でないほうが良いのではないかと私は思います。
 今課長が言われたように、この論文からシーリングが出るのかと言われてしまうとちょっと厳しいですけれども、シアンを8時間吸うというのはリスクが大きいと思うのです。短時間ばく露でもいいかもしれません。シーリングでなくてもいいかもしれません。
○化学物質対策課長 ありがとうございます。今の御指摘ですと、エビデンスそのものではなくて、シアンというのは毒性が非常に高いからという御指摘であると理解いたしましたが、それであれば短時間でも構わないということでしょうか。
○大前委員 時間はどうしていましたか。
○化学物質対策課長 時間は15分です。
○大前委員 何回という回数の規定か何かありましたか。
○化学物質対策課長 回数も濃度基準値には明確にしませんけれども、指針のような形で1日4回以下とか回数は定めるというか、推奨する予定でございます。推奨値としては1回当たり15分を超えず、8時間で4回まで、かつ1時間以上間隔を空けるように努めるとSTELの管理は推奨する予定でございます。
○大前委員 先ほども言いました疫学の精度の問題があるのですが、作業者が6.4~10.4ppmと書いてありますが、どういう吸い方をしたのかというのは論文から出てこないのです。ならしてしまってこのようにしたのか、あるいはあるとき測ったときにこうだったのかという問題もあるので、STELでもいいですけれども。8時間加重平均はまずいと思うのですけれども、どちらでもいいと言えばいいですが、1日4回15分、1時間間隔を空けるというパターンでしたらね。この判断は難しいです。
○化学物質対策課長 ありがとうございます。前回の中間取りまとめでは、シーリングを定めている国が実はアメリカしかなくて、定めていない理由を調べると、そもそも連続測定は極めて困難なものが多くて、アメリカについてもOSHA規則では連続測定できない場合は15分間値でいいという記載があって、下手にシーリングを定めると緩いエステルになってしまうので、そういう意味ではシーリングは取扱いが非常に難しいということで、前回の取りまとめでは基本的にはシーリングは定めない方向にすべきだという提言になっておりますので、その結論から踏まえると、こちらはできれば短時間のものにさせていただければと思います。
○城内座長 そのほか御意見ございませんでしょうか。尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員 右側の備考の欄にサンプルの採取の方法が書かれているのですけれども、捕集後すぐに分析するのが望ましいという言葉が書かれておりますが、2日ぐらいざらに空けるということがまま現場ではあるのではないかと思っていますので、ここら辺を分析する手法を書くところにははっきりと全面に押し出して、明示していただきたいと思います。
 以上です。
○城内座長 小野委員、お願いします。
○小野委員 今頂いた御意見と先ほどの15分で1日に何回かということまで規定した場合に、その2点について確認したいと思います。
 15分間で1日に何回というのを測るとすれば、連続モニターを導入しない限りは、1日を15分刻みで何十回も測らなければいけない、と真面目に考えるとなってしまいます。そういうことも含めて1回でしたら蓋を空けるときに測ればいいだろうという状況との突き合わせで行けると思いますので、今後測定についての細かい手引きみたいなものが出るときには、どういうところに落とし込むかをきめて、どうやって測るかについても保証されるものを記載していかないとまずいかなと思います。
 あと分析のタイミングですけれども、当然取ってすぐ次の日に測れることはあまりありませんので、その場合に測定法を○にしていいのかは、良心的にとがめるところはございます。ただ、それが7割ぐらいで安定しているならいいのか、それとも90%ならいいのかという議論もありますので、実際にやる方は各自その辺も自分たちで保証できる方法を用意してやっていただきたいという意味を込めた備考になると思います。
 ですから、測定が難しいものを測定して、それでリスクを評価するわけですから、これから測定に携わる方々には測定方法の内容について考えていただかないと難しいということも含めた○になっています。
 以上です。
○宮内委員 小野委員の付け足しみたいになりますが、まさに測定をする立場で言うと非常に重要かなと思っています。たしかC測定、D測定を決めるときに、どうやって繰り返しを評価するかというのがあったのです。リアルタイムで全て測るというのは理想ですけれども、それが難しければまずは同じような濃度パターンの作業を想定し、それを一度だけ測定して、そのパターンを繰り返しやる頻度とか間隔を決めることには非常に有効かなと思うのです。これから最大ばく露とか短時間ばく露の測り方とか運用の仕方を、どこかで話してもらうか、触れていただけるといいかなと思いました。
 以上です。
○化学物質対策課長 事務局でございます。コメントありがとうございます。
 1日当たり4回といった規定については、NIOSHなどに規定がありますが、実はイギリスにもドイツにも同じような規定がありますので、実際のやり方につきましては、宮内先生や小野先生がおっしゃったように連続モニターをうまく活用する方法もございますし、実務の世界でよく行われているのは、作業をよく観察して、恐らく一番ばく露が高いだろうというところを見極めて、そちらを測ることが簡単に言うとお釜をぱかっと開けるときということになります。
 高いばく露があるような回数をむしろ減らすと。そういうところにばく露する人間は必ず変えるとか、実際はそういう形で対応している例が多いように聞いておりますので、作業管理も含めた形でできるものをお示ししたいと考えてございます。
○城内座長 いろいろコメントありがとうございました。鷹屋委員、お願いします。
○鷹屋委員 細かい技術的な話になって恐縮ですけれども、シアンとして遊離するからシアンとして評価すると書いてあって、資料5の分析法だと対象の物質そのものを測ると思うのですが、例えば連続モニタリングを活用するとなると、また分析したシアンを測ることになると思うのです。実質的に労働者の健康を守るという観点だったら、例えば出てきているシアンの濃度を連続して測るということでいいと思うのですけれども、現実にこの濃度以下にするという、罰則つきの法的な値ですよね。そういうときに実質的な測定法でいいのか、きちんと測らなくてはいけないのかは、この物質に限らず似たような場合、整理する必要があるという気がします。
○化学物質対策課長 コメントありがとうございます。中間取りまとめにも書いてございますけれども、短時間ばく露は一番ばく露が高い時間を狙ってやることになっておりますので、当然作業を分析して、先ほど申し上げました蓋を開けるときとかに測るということは明確にしたいと思います。
○化学物質国際動向分析官 事務局なのですが、確認をさせてください。シアンの関係で今の特化物のほうですと、例えばシアン化ナトリウムとかシアン化カリウムのときには、作業環境測定をしたときの評価は、基準値の数字で「シアンとして」という括弧書きをつけて評価をするのですけれども、アセトンシアノヒドリンのときも同じように数字の後ろに「シアンとして」という書きぶりが必要になってきますでしょうか。数字を示すときどうなりますでしょうか。
○城内座長 分析の先生方、お願いします。
○小野委員 小野です。今ここですぐに結論に至れるかどうか分からないのですけれども、今回の場合は有害性としてシアンを見ていますので、「シアンとして」と書くのでしたら、シアンの分析法にここは変えないといけないと思います。
 それと同様というか、アセチルサリチル酸が全てアルカリで加水分解して、サリチル酸を測る方法をリスク評価で採用しています。そのほうがデータが安定するからなのですけれども、その場にサリチル酸が存在していれば、当然オーバーエスティメートになってしまいますので、有害性も違ってくる可能性があります。そこのところをもう一度見てから、この測定法でいいかの確認をする必要があると思います。(この2物質については次回、回答予定)
 アセチルサリチル酸として測るのか、サリチル酸として行けるのか、有害性評価はアセチルサリチル酸でやっているのか、副作用だとすると違うのかもしれないのですけれども、内容を見てもう一度考えないといけないと思います。今後もそういったように置き換えが出てくるようでしたら、分析法と何を測るのかを記述することについて考えながら進めていかなければいけないと思います。
 以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかございますでしょうか。
 では、次、トリクロロ酢酸に移りたいと思います。トリクロロ酢酸についてコメント等ございましたらお願いいたします。鷹屋委員、お願いします。
○鷹屋委員 この場合、先ほど大淵さんからシアン化カリウム、ナトリウムとか出たのと同じような話で、トリクロロ酢酸だけ対象なのですか。つまりトリクロロ酢酸の塩といったものは全く物質として別個だからということになるのでしょうか。測り方がppmなので、多分遊離の酸で蒸気で出るという前提だと思うのですけれども、塩として扱っているものに関して別途別物質として評価するのか。測り方が違うし、ばく露の仕方も当然違ってきますが、今後もこういったものはある気はするので、どう扱ったほうがいいのでしょうか。私はよく分からないのですけれども。
○化学物質対策課長 リスクアセスメントとか化合物もそうですけれども、金属の場合は特に金属及び化合物は包括指定というのを特にリスクアセスメント対象物質などでやっておりますが、こういったトリクロロ酢酸のようなものについては単体で基本的に指定しておりますので、その考え方でいいのかなと思っております。
○城内座長 そのほかコメント等ございますでしょうか。
 それでは、次、7番目、トリクロロニトロメタンについてコメント等ありましたらお願いいたします。宮本委員、お願いします。
○宮本委員 宮本です。教えていただきたいのですが、目のことだけが書いてあって、書き方の問題かもしれないのですけれども、これでいくと例えばゴーグルとかで目のばく露を抑えてしまったら他は大して影響がないのかどうかということで、例えば吸入とか皮膚とかは、目だけが抑えられていたらもうちょっと高くても作業してしまえる形に読めてしまうのですけれども、どういう考えでいけばよろしいか。ほかの気道粘膜ですとか皮膚も同じ値なのかというのを教えてください。
○化学物質対策課長 こちらについては、最大ばく露値にするかどうかというのはまた後で御議論いただきますが、ある特定の目刺激性があるとか、皮膚刺激性があるということについて、例えば保護具を前提とすればいいということではなくて、ばく露限界値というのは何もしないで大丈夫という値なのです。ですから、例えば何らかの値を超える場合は保護具をしてくださいという値になりますので、当然何の保護具もないような状態で健康影響があるかどうかというところで決める値になります。
○宮本委員 書き方の問題かもしれないと思ったのですけれども、どこにこういう文章が載るのか分からないのですが、目だけが書かれていると目を抑えたらほかは超えても大丈夫なのか、それとも呼吸用保護具も要るのか、皮膚に対しても防護が要るのか、ということです。目しか書いていなかったので誤解を受けるのではないかと。どういう理解でいったらいいのかという質問です。
○化学物質評価室長 トリクロロニトロメタンの14ページ目にGHS分類があるのですが、真ん中より上の特定標的臓器毒性のところを見ますと、目だけではなくてほかの呼吸器なども出ているので、ほかのところも症状があるかと思います。急性毒性もあります。コメントのところに確かに目しか書いていないのですけれども、目だけ防げばいいという物質ではないと思います。コメントのところ3行だけに濃縮されているので、ほかの症状が書いていないということになります。
○宮本委員 ほかの臓器も0.1という考えで今のところ行くということですか。
○化学物質評価室長 そうなります。
○化学物質対策課長 一般論の考え方として、もちろんGHS分類にあるのは基本的に文献の根拠があるものでございますので、様々な健康影響はあるという前提の下で、基準値を決めるときにどの文献を使うかという形になっておりますので、これは極端な例ですけれども、全ての健康影響についての文献が出ているわけではないというのは御理解いただけばと思います。
○城内座長 先ほど事務局からもありましたけれども、最大ばく露濃度でいいのかということについては、皆さんから御意見がないようですので、これでいいということでよろしいでしょうか。
○化学物質対策課長 ちょっとだけ確認なのですけれども、先ほど申し上げましたように最大ばく露濃度ということになりますと、これを連続測定できるのかという問題も実際出てきますし、あるいは法令上は短時間ばく露扱いにするという、要するにシーリングとすべきですが、法令上の扱いとしては短時間ばく露せざるを得ないと実際は考えておりますので。目にこういうことがあるので最大ばく露濃度として報告書としてまとめていただくということになりますけれども、法令上は最大ばく露濃度として連続測定したほうが望ましいですが、それはできない場合は15分間値も認めるというOSHAのようなやり方にならざるを得ないところがありますが、そういった点については何かございますでしょうか。
○城内座長 特に御意見がないようですので。宮内委員、お願いします。
○宮内委員 この物質は別名クロロピクリンですよね。たしか農薬でたくさん使われていて、土壌燻蒸とかでも使われていると思うのです。私も実験で使ったことがあるのですが、非常に目の刺激とか気道の刺激とかがあって、保護具を使わないと取扱いできない状態です。だから最大ばく露濃度という形でいいのかなと思ったのですけれども、致し方ないので15分間の平均の短時間ということになると思います。私は、文献も見させてもらいましたけれども、0.1でお願いできればと思いました。これは結構刺激が強いことは間違いないですね。
 以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかコメント等ございますでしょうか。武林委員、お願いします。
○武林委員 確認なのですけれども、そうすると扱いとしては最大ばく露濃度として出るのか、そうではなくて短時間という形で最終的には出るのか。コメントに書かれているように、今回の場合には比較的短いばく露で、0.3ppmで影響があることになっていて、非常に幅が狭く設定してありますので、ピークはもっと超えてもいいよとすると、通常これを超えるのだろうと思うのです。
 どう測定するかという現場の運用は別として、有害性の根拠からいくと、最大ばく露濃度であれば0.1ぎりぎりかなと思うのですけれども、ピークを許容してもいいとなると、本当に0.1でいいのかという議論を十分してからのほうがいいのではと思った次第です。
○化学物質対策課長 分かりました。ありがとうございました。測定の現実とかも踏まえて、例えば今の御提案でSTELだったらもっと数字を下げたほうがいいという御意見のように聞こえましたので、それも含めて御提案として最大ばく露値で0.1というのは現状こうせざるを得ないということですので、それを法令にどう落とすかにつきましては、行政で検討させていただきたいと思います。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。――ありがとうございます。今1番から7番までコメント等頂きました。また、事務局からの説明もありました。
 今日できれば決めたいというのは濃度基準値なわけで、今まで提案された中で時間加重平均値、それから最大ばく露濃度で提案が出されてきました。一番は数字についてこれでいいかということなのです。一つ一つやっていけばよかったのですが、まとめてしまって申し訳ないのです。1番から7番までの濃度基準値についてこれでいいか御承認いただかなければいけないのですが、いかがでしょうか。いろいろコメントが出されまして、根拠の中の修文、あるいは測定法の今後の検討課題等々ありましたけれども、濃度基準値についてはこれで行っていいという承認が頂けるかどうかだけは御意見頂かなければいけないのですが、いかがでしょうか。反対意見があれば出していただけばと思いますが、いかがでしょうか。
○化学物質対策課長 私の理解では、数値について特段のこれがいい、だめだという御議論はなかったと思うのですけれども、アセトシアノヒドリンについては、最大ばく露濃度として御提案いただいていますが、短時間に変えてもいいという理解でございますが、それでよろしいかというところがございます。
 トリクロロニトロメタンにつきましては、最大ばく露濃度として御提案いただくという理解でよろしいか確認したいと思います。
○城内座長 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。では、今事務局から説明があった修正の上で、1番から7番までの濃度基準値についてはそのように進めたいと思います。よろしくお願いいたします。
○化学物質対策課長 それと先ほどの御議論がございましたアセトシアノヒドリンの測定につきましては、シアンとしての分析法ができるかどうかについては、もう一回確認をするということでよろしいでしょうか。
○小野委員 私がはいと言うのはおかしい気もするのですけれども、シアンが有害性のターゲットというか、起因物質であれば、シアノヒドリンを分解してCNを出して、そのCNを測るという方法に持っていくべきではないかと思いますので、そういう測定法を検討すべきだと思います。
○化学物質対策課長 分かりました。ありがとうございます。
○城内座長 よろしいでしょうか。アセチルサリチル酸は今のままでよろしいですね。先ほどの事務局からの説明。
○小野委員 諸外国はアセチルサリチル酸を測るという形で分析法をやっているのですけれども、日本のリスク評価のときには、数値を安定させておきたいということと、あとはサリチル酸がない職場であるという前提でサリチル酸にして測定をしていましたので、アセチルサリチル酸の一般的な測定法と、それについて検討した上で決めたほうがいいかなと思います。
○城内座長 それは事務局の課題ということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、8番目に移りたいと思います。私の進め方がよくなかったこともありますので、今回8番目から一つ一つの物質について御承認を頂きながら進めたいと思います。
 では、しょう脳についてお願いいたします。
○化学物質国際動向分析官 それでは、説明者、大淵に交代いたします。私の説明はしょう脳から始まりまして4,4b-メチレンジアニリンまでの7物質でございます。
 まず1つ目、しょう脳から始めたいと思います。資料4では15ページ、16ページです。
 上から順に説明してまいりますが、詳細調査は不要ということで、濃度基準値の提案といたしましては、時間加重平均で2ppm、それから短時間ばく露限界値として3ppmでございます。お配りしている資料、短時間の単位が落ちておりまして、ppmということで補っていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 この数値を導き出してきました根拠は、こちらに書いてある1つの論文で、それに関するコメントが下の欄でございます。読み上げさせていただきます。合成しょう脳包装工場のしょう脳取扱いエリア(33~194mg/㎥)のばく露を受けた作業者6名(2名は現在作業あり、6名は過去に従事あり)の労働者への調査で、4名に鼻部及び咽喉部の炎症のみが観察され、また自覚症状変化(喉の乾燥1名、頭痛1名、手のしびれ2名、呼吸困難1名、鼻部乾燥2名、頬骨熱感1名、鼻汁2名、頭痛1名)が認められた。なお有症者のばく露レベルは記載されていない。なお、この調査で気中濃度測定を実施したハイジニストは、しょう脳取扱いエリアでの機器の調整作業時に発生した高濃度の短時間でのばく露の際に強い臭気と軽度の目の刺激及び嗅覚疲労を自覚したが、ばく露終了後10分後で回復し、作業者も同様の見解を示した。以上のことより、この知見での気中濃度を超えない12mg/㎥=2ppmを濃度基準値(時間加重平均)及び3ppmを濃度基準値(短時間ばく露限界値)として提案する。
 その他のコメントといたしましては、根拠文献の著者らは、上記記載の知見に基づき労働者のばく露濃度を12mg/㎥=2ppm以下にすることを文献内で提言している。以上が基準値の提案の関係でございます。
 しょう脳に関する測定法の関係が資料5に行っていただきまして、右側でございます。測定法の総合評価は○でございまして、備考欄には粒子状のしょう脳を捕集するために、前段にグラスファイバーフィルターが必要であるとございます。
 しょう脳についての説明は以上でございます。
 続きまして、次の物質、資料4の17ページ、18ページに行っていただきまして、物質名、リン酸トリ(オルトートリル)でございます。
 こちら詳細調査不要で、濃度基準値の提案といたしましては時間加重平均で0.002ppmでございます。
 その根拠といたしましては、こちらに書いてある2つの論文でございます。
 コメントといたしましては、OPIDN(有機リン酸による遅発性神経障害)について、ネコに99%トリ-o-クレジルリン酸塩を90日間連日経皮投与した結果、0.5mg/kg/dayでは神経障害は見られなかったが、1mg/kg/dayでは運動失調が見られ、5mg/kg/day以上では組織病理学的損傷が認められた。また、ヒトの知見として、ばく露期間は特定されていないが、0.55-1.7mg/㎥にばく露された3例で多発性神経炎の報告がある。以上より、動物実験での遅発性神経障害の知見をヒトの吸入ばく露に換算したNOAELを3mg/㎥(0.2ppm)と判断し、不確実係数等を考慮した0.002ppmを濃度基準値(時間加重平均)として提案する。
 その他のコメントでございます。生殖毒性に係る知見が認められているが、ラットへの経口投与実験による精巣形態異常のLOAELが25mg/㎥であり、そこから導かれるヒトへの換算が8.4mg/㎥(0.56ppm)であることから、今回提案する濃度基準値以下であれば生殖毒性を防ぐことが可能と思われる。
 資料5に行っていただきまして、測定法でございます。こちらの物質、総合評価は○でございまして、備考欄といたしましては、ガスの捕集を考慮していないので、ばく露状況に応じた捕集法が必要になる。
 以上でございます。
 続きまして、次の物質に参ります。資料4の19ページ、20ページのイソホロンでございます。
 こちら詳細調査不要で、濃度基準値の提案といたしましては、短時間ばく露限界値として5ppmでございます。
 根拠論文はここに書いてある1つの文献でございます。
 コメントといたしまして、ヒトのボランティアにイソホロン蒸気を15分間ばく露させた試験で、25ppmのばく露で目、鼻、喉に対する刺激性が認められたが、10ppmでは大多数で愁訴を認めなかったことにより、5ppmを濃度基準値(短時間ばく露限界値)として提案する。
 その他のコメントです。ラットの腎臓障害に係る知見に基づく時間加重平均値の設定がされているOELがあるが、イソホロンの直接的な影響ではないと考えられることなど懐疑的な面があることから今回は採用せず。今後さらなる知見の整理と検討が必要である。
 測定方法、資料の5でございます。総合評価欄は○、備考欄については特に記載がございません。
 次の物質に参ります。資料4の21、22ページ、o-アニシジンでございます。
 詳細評価は不要で、濃度基準値の提案といたしましては、時間加重平均値として0.1ppmを提案しております。
 根拠論文はこちらに書いてある2つの論文で、コメントといたしまして、0.4ppmの濃度で3.5時間/日、6ヵ月間ばく露された労働者に貧血や慢性中毒は見られなかったが、何人かの労働者から頭痛や目まいの訴えを認めており、スルフヘモグロビンやメトヘモグロビンの増加やハインツ体の発生が見られた。o-アニシジン塩酸塩を飼料に混ぜてラットまたはマウスに103週投与した試験ではラットに膀胱がん、腎盂がん、甲状腺腫瘍の有意な増加が認められている。以上より、軽度の症状も起こらないと期待される0.1ppmを濃度基準値(時間加重平均)として提案する。
 その他のコメントです。なお、厚生労働省リスク評価事業におけるリスク評価書においてin vitroサルモネラ菌変異原性試験S9(+)及びin vivoマウスによるコメットアッセイで陽性が示されており、遺伝毒性の可能性について今後検討する必要がある。
 測定方法に関しましては、総合評価が○となっております。備考欄にはNIOH2514の最新版が検証済みとなっております。
 次の物質に参ります。資料4の23から24ページ、フェニルオキシラン(別名:スチレンオキシド)でございます。
 詳細調査は不要ということで、濃度基準値の提案が時間加重平均として1ppmでございます。
 根拠論文はこちらに書いてある3つの論文でございます。
 コメントを読み上げます。ラットに1日6時間、週5日、4週間、25、50、75ppmのスチレンオキシドをばく露したとき、ばく露3日後に白血球数の有意な減少が3群全てに見られ、50と75ppm群にリンパ球と好中球の有意な減少が見られた。また、ラットやウサギの目や気道へ直接接触することにより、重篤な損傷が起こる。なお、New Zealand白兎に妊娠1-24日に1日7時間0、15、50ppmのスチレンオキシドをばく露した試験で見られた発生毒性は、母体毒性の二次的影響と考えられる。なお、催奇性は見られなかった。以上のことより、動物実験の白血球数の現象に対するLOAELは25ppmと判断し、不確実係数等を考慮した1ppmを濃度基準値(時間加重平均)として提案する。
 その他のコメントです。発がん性について、平成20年リスク初期評価書ではLOAEL50mg/kg/dayが示されている。
 一方、文献1)で報告されている遺伝毒性に関し、近年のレビュー文献から、in vitroでは染色体異常性が認められるが、げっ歯類での染色体異常誘発性/異数性誘発性は見られていないと結論づけられていることより、スチレンオキシドの発がん性については不明な点が多いと判断する。
 スチレンオキシドの細胞増殖抑制/細胞周期の以上について報告がある。
 生殖毒性については引き続き知見の収集と検討が必要であるということです。
 測定方法につきまして、測定の総合評価が○。備考欄が保存安定性85%程度ナノで、捕集後すぐに分析するのが望ましいとあります。
 次の物質に参ります。資料4、25ページ、26ページでございます。フルフリルアルコール。
 詳細調査は不要で、濃度基準値の提案として、時間加重平均として0.2ppmでございます。
 根拠としては、こちらに書いてある1つの論文でございます。
 コメントを読み上げます。ラット及びマウス(各ばく露群につき雌雄50匹)を用いた2年間の吸入試験で32ppmでは、鼻上皮腺腫・がん、扁平上皮がん(複合)の有意な増加が雄ラットのみで観察された。また、最低用量の2ppmでは、嗅上皮の化生及び萎縮、並びに鼻腔側壁及び呼気道上皮の過形成の有意な増加がラットで観察され、マウスでは、2ppmで鼻腺の過形成及び嗅上皮の化生の付加効果が見られた。以上より、目及び気道刺激性に対するLOAELを2ppmと判断し、不確実係数等を考慮した0.2ppmを濃度基準値(時間加重平均)として提案する。
 その他のコメントです。吸入試験で32ppmで認められた鼻上皮腺腫・がん、扁平上皮がん(複合)の有意な増加は、雄ラットのみで観察されたこと及び局所変化であることから今回は根拠としては採用しない。
 こちらの物質につきましての測定方法です。総合評価は○、それから備考としては要遮光となっております。
 では、私の担当する物質の最後となります。資料4の27~28ページ、4,4’-メチレンジアニリン。
 詳細調査は不要ということで、濃度基準値の提案ですが、時間加重平均値として0.4mg/㎥です。
 根拠論文は、こちらにお示ししております3つの論文です。
 コメントを読み上げます。4,4‘-メチレンジアニリン二塩酸塩(98.6%)を雌雄のラットに0及び800ppm、雌雄のマウスに0及び400ppmで13週間混餌投与したばく露試験では、両種において濃度依存性の胆管過形成が認められた。ラット及びマウスの雌雄50匹ずつで104週間の飲水投与試験では、高投与量ラットで甲状腺の腫瘍性変化が増加した。また、肝細胞の変性(脂肪浸潤及び局所変化)が認められ、肝腺腫及び肝がんの増加を伴っていた。腎乳頭の石灰化を伴う腎症は両種に発生した。マウスでは副腎褐色細胞腫、肺胞/気管支腺腫、悪性リンパ腫が用量依存的に有意に増加した。ヒトの知見では、1966年から1972年の間にMDAを含む断熱材の製造に従事していた12人の労働者が、黄疸を伴う急性熱性疾患に罹患し、その主なばく露経路は経皮と考えられた。以上より、動物(ラット)試験での10mg/kg/日をNOAELと判断し、吸入換算及び不確実係数より0.4mg/㎥を濃度基準値として提案する。
 その他のコメントです。動物種では発がんが認められているが、高用量での発症でありヒトの発がんは懐疑的であることから、引き続き検討が必要である。
 測定方法に参ります。こちらの測定方法、総合評価が○。備考欄は特に記載がございません。
 以上7物質の説明です。お願いいたします。
○城内座長 説明ありがとうございました。それでは、1物質ごとに議論していきたいと思いますが、最初のしょう脳についてコメント等お願いいたします。ございませんでしょうか。尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員 時間加重平均が2で、短時間ばく露が3ということ、昇華性もある物質だと思うのですけれども、この数値の位置づけがやたら近いような値がするのですが、しかも分析も相当昇華性のある物質なので、精度があるのかなという気はするのです。これを提示されると現場は非常に困るのではという気がします。
 以上です。
○城内座長 いかがでしょうか。
○化学物質対策課長 文献では短時間ばく露の際に強い異臭と軽度の目の刺激及び嗅覚疲労があるということで、それを踏まえて3ppmという御提案になっておりまして、確かに非常に近いなという印象はあるのですが、エビデンスがそうなっているということだろうと思うのですが。
○尾崎委員 3に近い値を8時間ばく露していていいのかという意見ですよね。
○化学物質対策課長 普通2~3倍ありますので、非常に近いので不安があるという御指摘かと思いますが、大前先生、いかがでしょうか。
○大前委員 多分3の根拠は1行目の33から194というのがあるので、これで出てきたからだと思うのですけれども、普通はこんな近接した数字ではないですね。
 それから、もう1つ、2の根拠が著者の御意見なのです。その他のコメントのところにありますように、論文がこれしかなく、著者の意見を尊重してこういう形になっていますけれども、コメントのところに書いてある数字からは出てきていないので、そこの問題点はあるのですが、時間加重平均は著者の意見を尊重してもいいかなと思います。短時間ばく露限界値は小さ過ぎますよね。
 おっしゃったように実際に揮発する物質なので、例えば包装工場のデータが出ていますけれども、ここでは粉じんとして出るものと揮発したベイパーと両方あるのでしょうね。測定のほうで両方ちゃんと測れるかという問題は別にあるのでしょうけれども。
○城内座長 武林委員、お願いします。
○武林委員 元の論文には3ppmが出てくるような根拠は書かれていなかったと思います。2ppmの議論はこの論文の中でされているように記憶していますが、3ppmという根拠になるような情報は載っていないと思います。
○城内座長 ACGIHのSTELが3になっているということは、ACGIHのドキュメントの中には3の根拠も書いてあるということですか。事務局のデータはあるでしょうか。
 3ppmについては根拠もあやふやなので、保留にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 そのほかしょう脳について、宮川委員、お願いします。
○宮川委員 この物質のみではないのですけれども、今、粉じんとベイパーと両方が問題になるという話がありました。今は単位をppmと決めて議論して、承認としていますけれども、今のような物質のことを考えると、ppmとmg/㎥と基本的には併記して、測るときには両方が反映できるようにするのがよろしいかと思いますが、いかがでしょうか。
○城内座長 よろしいでしょうか。小野委員、何か御意見ありますか。
○小野委員 これのコメントに粒子状のしょう脳を捕集する試験はリスク評価のときになくて、固体捕集剤にしょう脳の溶液を乗せて回収できているかとか、そういう実験になっていますので、一般的にこういうものを測定するときは前段にフィルターをつけて、後段に捕集剤をつけて、両方をまとめて測る方法を使います。ですから前段からサンプリングしている間に当然揮発して抜けますので、それは後段に捕集剤がついていることで両方が採れることを保証する実験も本当はしなくてはいけないのですけれども、多分これはやっていなかった。それでフィルターをつけてから測定してくださいと備考に書いてあります。それを厚生労働省では相補型捕集という難しい名前をつけているのですけれども、そういうことをすれば粒子とガスと両方サンプリングできると思います。
 ただ、根拠になっている論文までたどっていないのですけれども、そのときに分析で両方やっていたのか、あるいは蒸気だけだったのかということがあるので、もしかすると両方存在すると、もう少し濃度が高い状態だったのか、逆だったのか、その辺は精査が必要かもしれません。2ppmで割と高いので、その辺りは両方測れる方法を取ることで、安全側になると思います。
 意見としては以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかしょう脳について御意見ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
では、1つずつその値について決めていきたいと思うのですが、時間加重平均の2ppmについては妥当であろうということで、ただし、短時間ばく露、3ppmについては保留にしておくということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。では、そのようにして、次に行きたいと思います。リン酸トリについてですけれども、コメント等ございましたらお願いいたします。鷹屋委員、お願いします。
○鷹屋委員 測定法なのですけれども、普通の単純なフィルターでミストだけ捕集して、コメントのほうにもガスの捕集を考慮していないのでと書いてあるのですが、それ以前の問題として今調べると、25度の蒸気圧が0.002ppmに比して100万倍ぐらいあるのです。だから到底この方法では採れないと思うのですけれども、試験がこの濃度で測れるというパスをしたのでしょうか。物理定数からだけ言うとすごく疑問なのですけれども、どうなっているのか。
○小野委員 これに答えると私がデータをまとめたことがばれるのですけれども。私も書きぶりが固体捕集になってニトロセルロースで捕集と書いてあるので、ろ過捕集の間違いだとは思うのですけれども、もう一度そこは確認しないといけません。
 ニトロセルロースフィルターは、割と反応捕集もできるのですけれども、かつ2リッターで引いているので、もう一度確認いたします。ただ、ガスの捕集は固体捕集ならこれの後ろ側に捕集剤をつけることで捕集はできると思うのですけれども、ただこの物質からすると定量的な回収がうまくできるかどうかとか、もう一度元文献を確認して対応してもらうようにします。
○鷹屋委員 捕集速度が毎分2リッターだと、粒子の捕集はできても、反応捕集をしたとしても、多分間に合わないと思います。
○城内座長 捕集方法について問題があるということは、この値は今決められないということでよろしいですか。尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員 ちなみに検出下限値というのはどのくらいになるのかも併せて教えていただきたいと思います。
○化学物質対策課長 検出下限は基準値を10分の1というのを原則にしております。ただ絶対にではなくて、8分の1ではだめなのかということまではやっていませんが、10分の1をめどにマルバツはつけております。
○尾崎委員 この物質だけ数字が非常に小さいのでちょっと気になったところです。
○城内座長 そのほかコメント等ございますでしょうか。小野委員、お願いします。
○小野委員 今、定量下限値が低ければ○ということではなくて、それプラス捕集したものが分析する溶液に何%戻ってきて測れるか、あとは保存したときに何日後まで90%以上が担保できるかという3つを総合して、実際に分析をするものとしては○と△とクエスチョンぐらいにしたいところなのですけれども、ここに出すときに△を書くと、その説明を全部しなければいけないので、そういう書類も作ってはおります。ただここでは載せていませんので、その辺をどういう形でこれから公表をこの場でするのか、それともほかのところになるか分かりませんけれども、その点についてはまた考えていただけると思っております。
以上です。
○化学物質対策課長 それぞれの捕集・分析方法につきましては、濃度基準値を定めるときに同時に出しまして、技術上の指針においてごく簡単なものは出させていただく。ここに書いてあるようなそれぞれの捕集法、溶解法といったものがありますという一覧と、備考欄に書いてある程度のものはいわゆる指針としてお出しする予定です。それ以上に詳しい情報につきましては、例えば労働安全衛生総合研究所のホームページに載せるなど、そういった形で公表していくことを現時点では想定してございます。
○城内座長 いかがでしょうか。時間加重平均として0.02で取りあえず行ってもいいという判断をするか。測定の方法のみ保留でよろしいかということですが、いかがでしょうか。値はそのままで行くことにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。それでは補修方法については再度検討することでお願いしたいと思います。
 その次、イソホロンについて御意見等ございましたらお願いします。いかがでしょうか。特段意見がないようですので、これはそのまま短時間ばく露限界値5ppmでよろしいでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。それでは、次にo-アニシジンについてコメント等ございましたらお願いします。
私が気になったのですけれども、コメントの欄で「以上より軽度の症状も起こらないと期待される0.1ppmを濃度基準値として提案する」と書いてあるのです。発がん性を考慮したときはこういう書き方ではないと思うのですが、これでよろしいのでしょうか。つまり軽度の症状も起こらないと期待される0.1ppmという書き方でいいかということですけれども、いかがでしょうか。
○化学物質対策課長 ありがとうございます。濃度基準値は発がん性に基づいて決めておりませんので、多分そういう意味で書かれたと思うのですが、表現ぶりについては修正させていただきます。
○城内座長 よろしくお願いいたします。そのほかいかがでしょうか。コメント等ございませんでしょうか。ありがとうございます。
それでは、次に行きたいと思います。フェニルオキシラン、スチレンオキシドについてですけれども、コメント等ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。時間加重平均1ppmでよろしいでしょうか。
○尾崎委員 補足というか備考のところの分析、「85%程度ナノ」ではなく「85%程度なの」では。直してください。
○城内座長 ありがとうございます。では、次に参りたいと思います。フルフリルアルコールについてコメント等ございましたらお願いします。武林委員、お願いします。
○武林委員 フルフリルアルコールにつきましてコメントのところを読みますと、ラット、マウスの実験によって最低用量の2ppmで鼻腔での影響が見られているということだと思いますが、そのすぐ後にNOAELを2ppmとして判断してと書いてあります。それを影響と取らないということを判断されたということでしょうか。済みません、1個古いバージョンを見ていたみたいで、修正されたのであれば。
○城内座長 そのほかございませんでしょうか。御意見等よろしいですか。それでは、時間加重平均0.2ppmで御承認いただいたということで、次に行きたいと思います。
 4,4'-メチレンジアニリンについてコメント等ございましたらお願いします。川本委員、お願いします。
○川本委員 この物質だけ単位がmg/㎥になっていまして、先ほどからいろいろ討議がありますけれども、ACGIHはppmでも表記していますが、ここはmg/㎥にされたという理由はどういうことでしょうか。
○化学物質国際動向分析官 今の単位の関係なのですけれども、今までの特化物などを見ても、ppm単位で示すときとmg/㎥で示すときと物質によって違っておりまして、例えばガス状のものだとか蒸気圧の高いような物質は基本ppmで示すと。一方で蒸気圧の低い粒子状で存在するような物質については、mg/㎥で示すことが一般的に多いかと思います。メチレンジアニリンも分子量が結構ありますので、蒸気圧が低い物質ですので、mg/㎥でお示ししております。
○川本委員 気中に粒子として存在する可能性があるということですか。
○化学物質国際動向分析官 常温での状態として匂いのある無色から淡黄色の薄片となっています。常温の状態としては固体の物質なので、現場で取り扱うときも基本は上記というよりは粉じんとして舞っているほうが多いと思うのですが、蒸気がゼロではないですけれども。
○川本委員 ありがとうございます。
○化学物質国際動向分析官 ちなみに沸点が約400度です。398とか399です。
○城内座長 そのほかコメント等ございますでしょうか。では、4,4'-メチレンジアニリンについては0.4mg/㎥ということで、濃度基準値を設定させていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。それでは、次の7物質について説明をお願いいたします。
○有害性調査機関査察官 事務局、化学物質評価室の福田でございます。これから7物質を私のほうで御説明さし上げたいと思います。物質はp-ジクロロベンゼンから最後の5-エチリデン-2-ノルボルネン(別名エチリデンノルボルネン)までとなります。よろしくお願いします。
 まずp-ジクロロベンゼンです。
 詳細調査の要否については不要となっておりまして、時間加重平均として10ppmを提案させていただきたいと思います。
 根拠論文は4つで、コメントですが、ヒトに対し17ppmで目刺激性が認められており、また、ヒトの嗅覚閾値は15~30ppm以下になっております。ラットへの長期ばく露試験(混餌)において25ppm(150mg/㎥)で尿細管腺腫が認められているが、雄ラットに限定的であり、また発生率が高いとは言えないということです。ラットのNOAELは75~100ppmで、マウスにがんの発生率が増加しない最大濃度は75ppmと考えられます。以上の知見に基づきまして、ラットのばく露試験におけるNOAELに不確実係数を考慮して、濃度基準値10ppmを提案します。
 その他のコメントは特に記載がございません。
 最後の資料5の最後の欄ですが、総合評価は○になっております。備考欄には保存安定性未検討のため、保存安定性が十分かどうか検討する必要があるということで、すぐに分析すれば大丈夫ということが記載されております。
 続きまして、酢酸ビニルでございます。
 詳細調査の要否につきましては不要で、時間加重平均が10ppm、短時間ばく露限界値が15ppmで提案したいと思います。
 根拠論文については3文献となっております。
 コメントは、Sprague-Dawieyラット及びマウス雌雄各60匹群に対し行われた2年間吸入ばく露試験から、高濃度ばく露群で気管支剥離や管内線維性隆起などの慢性的な肺刺激性を示す呼吸器の変化が見られた。50ppmでは気道刺激性の顕微鏡的な証拠がなかった。労働者21人を対象とした横断疫学調査から、21.6ppmでばく露した従業員で目と喉の炎症が報告され、4ppmを2分間ばく露したボランティア9名中1名、72ppmを30分間ばく露した被験者4名全員、20ppmを4時間ばく露した被験者3名中1名から喉の刺激が報告された。20ppmに4時間、34ppmに2時間、72ppmに30分間ばく露したところ、嗅覚疲労が生じた。以上より、目及び気道の刺激性に対するLOAELを50ppmと判断し、不確実係数等を考慮した10ppmを時間加重平均、15ppmを短時間ばく露限界値とした濃度基準値を提案する。
 その他のコメントです。日本バイオアッセイ研究センターの試験結果など動物で明らかな発がん性の証拠が認められ、EUでは発がん性を考慮した時間過重平均を算出していることから、今後発がんに係る検討が必要である。
 資料5になります。測定法の総合評価は○となっておりまして、備考欄について特に記載ございません。
 続きましてピリジンになります。
 詳細調査の要否は不要で、時間加重平均1ppmを提案させていただきたいと思います。
 根拠論文につきましては1つで、コメントはラットへの2年間の飲水試験で、雄の400ppmばく露群で腎腺腫(尿細管腺腫)または腺がんの発生率が有意に増加した。また、マウスへの飲水試験で、雌の125ppmばく露群で肝細胞がんの発生率が有意に増加した。以上より、肝細胞がんに対するLOAELは125ppmと判断し、不確実係数等を考慮した1ppmを濃度基準値(時間加重平均)として提案する。
 その他のコメントです。肝細胞がんがエンドポイントではあるが、厚労省リスク評価事業におけるリスク評価書において遺伝毒性はないと考えられることから、閾値のある影響として濃度基準値を設定した。
測定法になります。資料5の一番右の欄を見ていただきたいと思いますが、測定法は総合評価として○、備考欄は特に記載がございません。
 続きまして、グルタルアルデヒドです。
 詳細調査の要否は不要で、最大ばく露濃度として0.03ppmを提案したいとしております。
 根拠論文としましては6つの論文が掲げております。
コメントですが、作業環境中濃度0.1ppm以下15分以内でグルタルアルデヒドにばく露された作業者に鼻、喉、皮膚、目への刺激性と頭痛が見られたとする報告がある。女性ボランティアに15分以上グルタルアルデヒドをばく露した実験の結果、グルタルアルデヒド濃度0.1ppm以上になるまで刺激性は認められていない。ばく露時間3分未満の38人の病院看護師を対象とした新しい横断的研究(ばく露濃度0.15ppm)でも刺激性は見られなかった。短時間個人ばく露濃度の中央値が0.039ppmである病院で職業性ぜんそくが発症している。以上のことから、エンドポイントは目、皮膚、呼吸器への刺激性、感作性であり、また感作性があることから、短時間ばく露限界値ではなく最大ばく露限界値の設定が必要であり、収集したヒトのキー論文において最も低いLOAEL、0.039ppmを下回る0.03ppmが妥当と判断する。
 その他のコメントです。気道感作性に対して、短時間ばく露限界値ではなく最大ばく露濃度を提案しております。
 資料5の右の欄の測定法ですが、測定法の総合評価は○、備考欄につきましては特に記載がございません。
 続きまして、2-クロロ-1,3-ブタジエン(クロロプレン)になります。
 詳細調査につきましては不要で、時間加重平均1ppmを提案させていただきたいということになります。
 根拠論文は3つの文献になります。
 コメントですが、2年間のマウス及びラットの0、12.8、32、80ppmの吸入ばく露試験から雄マウスの全ての投与群で肺、循環器及び腎臓に腫瘍性病変を誘発することが報告されている。2007年に報告された5,000人以上の労働者を対象とした60年間の追跡調査研究においては平均濃度5.23ppmでばく露されてもがん関連死亡率の有意な増加はなかったとしている。また、発がんについてはヒトではマウスよりも感受性が低いとの報告がある。以上のことから、腫瘍性病変の発生に対する12.8ppmをLOAELとしまして、不確実係数等を考慮した1ppmを濃度基準値(時間加重平均)として提案するとしております。
 その他のコメントです。ヒトへの発がんについては現時点では懐疑的であるが、厚生労働省のクロロプレンのリスク評価書において遺伝毒性ありと評価されていることから、今後検討が必要としております。
 資料5の測定法の欄になります。こちらにつきましては、備考欄から御説明さし上げますと、短時間測定では感度が足りないとありますが、ここは長期8時間、時間加重平均を提案していますので、問題ないと致しますが、質量分析で感度が改善するか要検討ということと、脱着率は50%程度で球状活性炭で改善しないか、要確認ということになりますので、測定法はPとなっております。本日は測定法がPという状況の中で基準値として適正か後ほど判断いただければと思います。
 続きましてキシリジンです。
 詳細調査の要否は不要で、時間加重平均は0.5ppmと提案したいということになります。
 根拠論文は2つの文献になります。
 コメントですが、キシリジンの全異性体のうち、2,4-キシリジン45ppmで1日7時間、週5日間、44週間のばく露でイヌ、ネコ、ウサギ、ラット及びマウスのいずれも肝毒性が見られたが、17.4ppmの吸入ばく露試験ではネコ以外には影響を認めず、また、2,4-キシリジン7.8ppmで125日7時間ばく露をサル及びネコに92回繰り返した試験で影響を認めなかった。また、ネコへの試験ではメトヘモグロビン血症が報告されている。以上よりNOAELを5ppmと判断と書いてありますが、上記に書いてある7.8ppmの間違いですので、後ほど資料は修正いたします。7.8ppmと判断しまして、不確実係数等を考慮した0.5ppmを濃度基準値(時間加重平均)として提案したいということとなっています。
 その他のコメントですが、キシリジンは異性体別に有害性の程度が異なるため、異性体別での濃度基準値の設定について今後検討が必要である。なお、厚労省リスク評価事業におけるリスク評価書において2,4-キシリジンに係る新たな知見に基づくLOAEL6ppmの記載があるが、エンドポイントはWistarラットでの臓器重量増加及び血中コレステロール値等の変化であり、過剰影響とは考えにくいことから今回は根拠には採用しないが、引き続き検討が必要であるとされております。
 資料5の測定の総合評価欄は○です。
 備考欄につきましては、誘導体化法なので難しい方法であるということで、条件つきで可能とされております。
 続きまして、5-エチリデン-2-ノルボルネン(別名エチリデンノルボルネン)です。
 詳細調査の要否は不要で、時間加重平均2ppmと短時間ばく露限界値4ppmを提案しております。
 根拠論文は2つの文献で、コメントとしましては、ラットに14週間吸入ばく露した試験で、5ppm以上の雌ラットに目周囲の腫脹、痂皮形成が見られ、雄ラットでは、150ppmで軽度貧血を、25ppmと150ppm以上ばく露群で13%と25%の体重減少が認められた。また、ボランティア(6名)に30分間ばく露した試験で、5.6ppmで3名に目の刺激性が見られた。以上より、動物実験での目周囲の腫脹や痂皮形成をエンドポイントとしたLOAELを5ppmと判断し、またヒトの短時間ばく露による知見から、不確実係数等を考慮した2ppmを濃度基準値(時間加重平均)、4ppmを短時間ばく露限界値としての濃度基準値として提案するとされております。
 その他のコメントはございません。
 資料5の右の欄になりますが、総合評価は○とされておりまして、備考欄には特に記載等はございません。
 以上となります。
○城内座長 御説明ありがとうございました。また1物質ごとに議論していきますが、15番目、p-ジクロロベンゼンについて御意見、コメント等ございましたらお願いいたします。宮川委員、お願いします。
○宮川委員 コメントの3行目ですけれども、ラットの長期ばく露試験で(混餌)と書いてあって、あとのほうが25ppm(150mg/㎥)となっているので、混餌だと単位が合わないので、御確認いただけばと思います。
○有害性調査機関査察官 確認させていただいて、資料に必要な修正等をさせていただきたいと思います。
○城内座長 そのほかコメント等ございますでしょうか。宮内委員、お願いします。
○宮内委員 確認です。嗅覚閾値ですけれども、この論文だと確かに15以上ですけれども、1983年に出ている論文があって、それだと0.121ぐらいなのです。やり方によって結構幅があることは確認しておきたいと思いました。この場合はそこによって10ppmが変わることはないと思うのですけれども、もう少し低い嗅覚閾値の論文もありましたということで。
 以上です。
○城内座長 ありがとうございます。宮川委員の指摘は事務局でチェックできましたか。そのほかコメント等ございませんでしょうか。確認事項は後でしていただくとして、10ppmについてはよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、次に移りたいと思いますが、酢酸ビニルについてコメント等ございましたらお願いします。宮川委員、お願いします。
○宮川委員 まず細かいことですが、コメントのラットのiとlのつづりが間違っている可能性があります。
 一番下でコメントなのですけれども、その他のコメントで日本バイオアッセイ研究センターの試験結果云々とあります。バイオが試験をしてそれなりのデータが出ていると思うのですけれども、非公表文献ということなので、ここでは使わないことになったのですが、今後に向けてはぜひ公表されて使えるような形で、バイオのデータを有効利用していただくのがよろしいかなと。
 特に論文として公表するというのは結構大変なことですけれども、GLP機関がした報告書をそのまま日本語で実験のデータの所有者といいますか依頼者がオーケーと言えば公表することもできると思いますし、下手に適当に選んで論文にするよりも、元の報告書そのままのほうが客観的なデータを世の中に公表することになると思います。
 さらに日本語のままでもこの頃は外国の方が機械翻訳などで読んでいただけますので、有効活用していただけると。諸外国のOELにも活用される可能性があると思いますので、ぜひその辺も御検討いただくのが必要なデータを無駄にしないことになってよろしいかと思いますので、コメントしました。
○城内座長 御検討いただきたいと思います。そのほか酢酸ビニルについてコメント等ございますでしょうか。川本委員、お願いします。
○川本委員 非常に細かいことですが、コメントの1行目、マウスもミススペルですので、Swiss- derived CD-lマウスと思いますので、御修正いただければと思います。
○城内座長 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。では、今修正コメントを幾つか頂きましたので、それは後で確認して修正していただければと思います。
 酢酸ビニルの10ppmについては、LOAEL基準値、これでよろしいでしょうか。御承認いただけますでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。それでは、次に参りたいと思いますが、ピリジンの1ppmについてコメント等いただければ。お願いいたします。武林委員、お願いします。
○武林委員 1つはNTPの論文、飲水試験と書いてあります。ppmというのは何を意味しているのかというのが。ダイレクトにそのまま気中濃度になっているようにも見えますが、多分違うと思いますので、もう少し丁寧に書かれたほうがいいのではないかというのが1点目です。
 それから2つ目は、先ほど課長がちらっとおっしゃいましたけれども、これを読むと非常にダイレクトに肝細胞がんの上昇を基にして数値をつくっていますが、例えば閾値があると判断できる別の証拠があるとか、別の証拠が落ちているのかとか、これだけ読むと発がんからダイレクトに数字を出しているように見えますので、そこについてはどのように考えられているのでしょうか。
○化学物質対策課長 その他コメントに肝細胞がんがエンドポイントであるけれども、リスク評価事業において遺伝毒性がないということなので、閾値のある影響として評価したということになっていまして。
○武林委員 その他に書いておいてそれがちゃんと世の中に出ていけばいいと思うのですけれども、上の部分だけ出ていくと理解が非常に難しいと思います。その他ではなくてむしろコメントの中にしっかり書いた方が良いかと。どういう形で公表されるのかよく理解していないのですけれども。
○化学物質対策課長 上に動かすのは可能でございます。
○城内座長 では、そのようにお願いいたします。そのほかコメント等ございますでしょうか。では、ピリジンは1ppmの濃度基準値でよろしいでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。それでは、次に移りたいと思います。
 グルタルアルデヒドについて0.03ppmという提案ですが、これについてコメントいかがでしょうか。
○化学物質対策課長 こちらも最大ばく露濃度としての御提案になっておりまして、根拠はエビデンスとして呼吸の刺激性とか感作性、ぜんそくといったものも含まれているのでということでございます。これももう1つあったものと似たような理由なので、最大ばく露でやらざるを得ないという理解でよろしいでしょうか。
○城内座長 大前委員、お願いします。
○大前委員 気道感作の場合は短時間でも起き得るので、この場合は最大ばく露と定めざるを得ないと思っております。行政的にどうなさるかはまた別の判断ですけれども。
○城内座長 そのほかコメント等ございますでしょうか。鷹屋委員、お願いします。
○鷹屋委員 質問なのですけれども、測定法の評価のときに、今回の議論で一部の物質、シーリングもつくるということになったのですけれども、8時間とSTELとシーリングでは全部分析法の何分の1まで評価するのかという話が変わってくるような気もするのです。シーリングの場合でも分析法の評価はSTELの評価と同じ、10分の1までという基準でオーケーという評価をされているのでしょうか。
 かつサンプリングの時間がシーリングだと何分ということがありますよね。シーリングでも15分なりで測って、それで10分の1という考え方で評価されているのかは、今後シーリングを設定するとなったら、その評価のルールも決めておかないといけないと思うのです。
○化学物質対策課長 中間取りまとめでは原則シーリングは定めないことになっておりますので、それをどのように測定するかは今後議論が必要かと思いますが、現実問題としては連続モニタリングをしない限りは極めて困難でございますので、それが可能かどうかということなのかと思います。小野先生、何かコメントがあれば。
○小野委員 実際上、具体的にというのはこれからお作りになる文書にどう書いていくかということに。今おっしゃったような、一番高いところで評価しておいて、あとは定性的に1日に何回とか、これは1日に1回という評価になるのかなと思いますが、それはお任せというか、厚生労働省さんでお考えいただくとして、分析の感度については、今のところは決まっていませんので、もしこの濃度になったら測れるとか、短時間については15分サンプリングしたとして測れるかどうかという、単純にTLVが測れるかどうか。実はそこの計算はあまりしていなくて、15分で測れるかでまずスクリーニングしています。TWAができるときには大丈夫かどうかということで、次の判断としていますけれども、最終的には濃度が決まって、シーリングなのかSTELなのかが決まったところで、改めて確実に計算するようにするべきだと思っております。
 以上です。
○城内座長 そのほかコメント等ございますでしょうか。宮内委員、お願いします。
○宮内委員 余計な話しかもしれませんが、グルタルアルデヒドは以前、分析手法を検討した経験がありまして、コメントですけれども、10分間で0.03の10分の1までは検出できたと思います。
 もう1つ確認なのですけれども、グルタルアルデヒドは以前、通達で健康障害防止についてという文書が出ているのですが、こういう扱いは今後どういう形になっていくのか、もし分かれば教えていただきたいと思います。平成17年2月だと思うのですけれども。
 以上です。
○城内座長 今のコメントに対して事務局からありますか。
○化学物質国際動向分析官 事務局でございます。グルタルアルデヒドの通達の関係、測定の関係とか測定の評価の辺りまで入っていたでしょうか。
○宮内委員 基準値は入っていないのですが、外国の値を参照という形になっていたと思いますけれども、それがそのまま生きていくのか、それともこちらで統一になるのか。
○化学物質国際動向分析官 濃度基準値を国で決めるようになれば、そちらに基づいて濃度はコントロールいただくという整理になるかと思います。
○宮内委員 分かりました。ありがとうございます。
○城内座長 そのほかコメント等ございますでしょうか。
 それでは、グルタルアルデヒドについては、濃度基準値として最大ばく露濃度0.03ということでよろしいでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。
 それでは、次に移りたいと思います。クロロプレンについてコメント等ございましたらお願いいたします。ございませんでしょうか。武林委員、お願いします。
○武林委員 これは先ほどと同じで、メカニズムからということで提案されたという理解でいいのでしょうか。ちょっとよく分からないのが、コメントの中にはヒトでマウスよりも感受性が低いという書き方がしてあって、これが遺伝毒性はあるけれども、代謝の関係で発がん性があるような遺伝毒性があるような物質ができにくいという意味なのか、そうではなくて先ほどのように直接遺伝毒性がないことを意味しているのか。3番の文献がどういうことを意味しているのか分からないのですが、少なくとも根拠として出すときに、もう少し明確に書かれておいたほうが。これだと判断に非常に迷うような記述ではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。
○化学物質対策課長 ありがとうございました。前回と似たような感じになりますが、下に発がん性については現時点で懐疑的ということですので、がんに対する基準値ではなくて腫瘍性病変ですので、がんではない腫瘍性病変を根拠にしているという位置づけにしております。
○武林委員 でも、普通発がんの試験は良性も含めて腫瘍ととると思うのです。懐疑的という言葉を使いにくいのではないかと思って、懐疑的という言葉をもう少し科学的に説明しておかれたほうが適切ではないかと。要するに根拠なしに懐疑的と書くのはやや乱暴かなと思ったので、何か少し情報を加えていただいて、上に上げていただいて、判断を全体的にこのデータに基づいて1ppmが出てくるという流れがあったほうがいいのではないかということです。
○化学物質対策課長 分かりました。コメントを踏まえて修正いたします。
○城内座長 そのほかございますでしょうか。それでは、クロロプレンの濃度基準値の提案としては、時間加重平均で1ppmということでよろしいでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。
 では、次に移りたいと思います。キシリジンについてのコメント等ございましたらお願いします。鷹屋委員、お願いします。
○鷹屋委員 単純な資料の修正ですけれども、分析法が液クロになっているのですが、GC/MSだと思いますのでここの修正と、ついでに修正いただくなら真ん中の脱着液の濃度が今は多分Nのノルマルではなくてモル濃度で書くのが一般的だと思うので、そこも修正していただければと思います。
○城内座長 ありがとうございます。そのほかコメント等ございますでしょうか。小野委員、お願いします。
○小野委員 単位の話なのですが、先ほどからppmなのかmg/㎥なのかという話はたびたび出ていますが、キシリジンとか先ほどのアニシジンとか芳香族アミン類は恐らく両方ガスと気液、気固とかそういうものを全部トータルで考えなくてはいけないので、そういうものについてはACGIHで今キシリジンもIFV設定になっていますけれども、粒子とベイパー両方という設定になっていますので、ppmとmg質量濃度併記で行ったほうがよろしいのではないかと思います。全体的にその辺りの見直しというか併記がよろしいのではないかと思います。
 以上です。
○城内座長 ありがとうございます。今後そういうことも頭に入れて併記していただければと思います。
○化学物質対策課長 こちらはNOAELが5ppmと書いてありますが、文献で一番低いのが7.8ppmになっておりますので、7.8ppmがNOAELということでよろしいというか、修正させていただいた上で、0.78ppmというのを基準値にするのはやりにくいということで、0.5ppmという理解でよろしいでしょうか。
○大前委員 よくそういうことをやります。切りのいい数字を使うというのは結構やることなので、基本的にはより低いほうの切りのいい数字を使うことがありますけれども、場合によっては例えば0.98だと1にしてしまうということもあり得ます。
○城内座長 そのほかコメント等ございますでしょうか。
○鷹屋委員 すぐには思いつかないのですけれども、逆に切りのよくない数字が出ているのはppmにしたからであって、例えばmg/㎥にすると切りのいい数字になるといったことも往々にしてあると思いますので。これがそうだとは言いませんけれども、よろしければ確認していただければ。
○城内座長 今の御意見は切りのいい数字にしたほうがいいという話ですか。併記するときは四捨五入したり。
○鷹屋委員 もしかしてmg/㎥でもともとの7.8が切りのいい数字だとしたら、切りのいい数字だからといって厳しい側に。2割違いますので、アクセプタブルかどうかはまた別の議論かなと思います。
○城内座長 併記しようとすると最初にどちらにするかで全部が切りがいいとは限らないですよね。
○大前委員 実験のときの単位がまずベースにあって、それがmg/㎥だったらそれをメインにして、必要に応じてppmを書く、あるいはppmがメインだったらそれを基準にしてmg/㎥を書く。この場合20とか25とか決めなくてはいけないのですけれども、元の文献がどういうことをやっているかで決められると思います。7.8がひょっとしたらmg/㎥がぴったりするのではなくて、7.8が半端なのだという可能性も元の文献を見ればあると思います。
○城内座長 そういうことで整理していただければいいと思いますが、キシリジンについて時間加重平均で0.5ppmということでよろしいでしょうか。承認いただけますでしょうか。
○大前委員 コメントにも書いてあるのですけれども、キシリジンは幾つか異性体があって、異性体ごとに若干毒性が違うので、将来的には分けるようなスタイルになればいいなと思っております。
○城内座長 ありがとうございます。
 それでは、最後の物質、5-エチリデン-2-ノルボルネンについてコメント等ございましたらお願いいたします。コメント等ございませんでしょうか。それでは、5-エチリデン-2-ノルボルネンについては濃度基準値、時間加重平均2ppm、短時間ばく露限界値4ppmということで承認いただけますでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。これで物質はおかげさまで全て終わりました。私の印象なのですが、武林委員からもコメント何回か頂きましたけれども、コメント欄が素人には分かりにくい言い方が結構あったり、論理が途絶えているなということも多々感じましたので、次回からのコメントについてはその辺少し注意していただいて、御提示いただければ読みやすくなるかなと思いましたので、よろしくお願いいたします。
 これで本日の検討対象の21物質全てについては審議が終わりましたが、最終結果、コメント等も含めてまとまっておりますでしょうか。
○化学物質国際動向分析官 事務局から。議論の途中で御質問が出ていた部分について確認したので、御報告です。
 資料4の29ページ、p-ジクロロベンゼンのコメント欄3行目でございます。ラットの試験が混餌の試験で、その後ろの濃度の単位がおかしいのではないかという御指摘頂きまして、確認したところですが、今の資料で150mg/㎥となっているところが間違っておりまして、150mg/kg/日です。体重1キロ当たりで150mgということでございました。失礼いたしました。
○化学物質評価室長 あと39ページ目のキシリジンで7ppmが半端な数字なので、単位が違えば切りのいい数字ではないかということだったのですけれども、原文を見るとキシリジン1リットル当たり0.038mgということで、こちらも切りのいい数字ではありませんでした。
 本日は、長時間、21物質について御議論いただきまして、ありがとうございました。コメント欄の修正ですとか数字のチェック、動物種の訂正、測定法の確認、様々な宿題は頂きましたが、提案された濃度基準値案につきましては了承いただいたことで、資料の確認をしつつ、手続を進めたいと思います。
 8番目のしょう脳につきましては、8時間が2ppmで、短時間が3ppmということで、3時間の根拠を検討いたします。
 5番目のアセトシアノヒドリンにつきましても、シアン化物で測るのかどうかということで、測定法の確認を致します。
 7番目のトリクロロニトロメタンにつきましては、最大ではなくて短時間で扱うということです。
○小野委員 アセチルサリチル酸のところもサリチル酸で分析していますので、それもサリチル酸でいいのかどうかの確認をすることになったと思います。
○化学物質評価室長 はい。一番最初の物質ですね。本体で測るのかサリチル酸で測るのかということですね。
 抜けがないとは思うのですが、幾つか確認すべきところは確認いたしまして、可能であれば次回の会議にお示ししたいと思います。次回1月16日で可能であればということです。
○城内座長 よろしいでしょうか。漏れはなかったと思いますが。
 本日の物質ごとの濃度基準値の議論は以上となりますが、長時間にわたりありがとうございました。
 もう1つ議題がありまして、その他ということですけれども、事務局からお願いいたします。
○環境改善室長 その他ということでございますけれども、本日の議題は以上でございます。なお、本日の議事録でございますが、後日構成員の皆様に御確認いただいた上での公開ということにさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 次回の日程でございますが、先ほどもお話がございましたが、年明けの1月16日月曜日午後1時から4時を予定いたしております。場所は同じ建物となります。議題は引き続き濃度基準値の検討となりますが、次回は初期調査だけで評価するものの積み残しと詳細調査により評価するものを予定しており、本日と同様に構成員名簿のうち全般に関する事項、毒性に関する事項の欄の先生方に御参集を予定しております。正式な開催案内は後日お送りさせていただきます。
 以上でございます。
○城内座長 海外の会議で3時間ぶっ続けってあり得ないと思うのですけれども、皆さん3時間大丈夫でしょうか。10分か15分休んだほうがいいかなと思うのですが、御意見いただいて、次回検討できればと思います。
 以上で本日の化学物質管理に関する専門家検討会を閉会させていただきます。本日は本当にありがとうございました。