第51回 社会保障審議会生活保護基準部会議事録

日時

令和4年12月6日(火) 10:00~12:00

場所

AP虎ノ門11階C+D室(オンライン)
(東京都港区西新橋1-6-15NS虎ノ門ビル)

出席者(五十音順)

議題

  • 報告書(案)について
  • その他

議事

議事録
■小塩部会長 おはようございます。それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第51回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
最初に、事務局より、本日の委員の出欠状況と資料の確認をお願いいたします。また、オンラインで出席されている委員の方がいらっしゃいますので、会議での発言方法等についても改めて御説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 まず、本日の委員の出欠の状況でございますが、全ての委員から出席の連絡を頂戴しておりますが、新保委員におかれましては途中からの御出席、また、阿部委員におかれましては途中で御退席される旨、承っております。また、事務局におきましては、本多審議官が欠席となっています。
続きまして、本日の資料でございます。
議事次第に続きまして、資料1-1「社会保障審議会生活保護基準部会報告書(案)」。
資料1-2「社会保障審議会生活保護基準部会報告書 別紙(案)」。
資料1-3「社会保障審議会生活保護基準部会報告書 参考1(案)」といたしましてMIS手法による最低生活費の試算に関する調査研究事業について。
資料1-4「社会保障審議会生活保護基準部会報告書 参考2(案)」といたしまして主観的最低生活費の試算に関する調査研究事業について。
参考資料1-1「社会保障審議会生活保護基準部会報告書(案)」。こちらは第50回資料からの変更箇所を赤字で見え消ししたものになります。
参考資料1-2「社会保障審議会生活保護基準部会報告書 別紙(案)」。こちらも第50回資料から変更箇所を赤字で見え消ししたものになります。
最後に参考資料2「世帯類型別の低所得世帯の消費水準」となっています。
資料の不足等ありましたら、事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。
続きまして、会議の進行に当たりましては、お手元の資料を御覧になりながら御参加いただければと思いますが、事務局からの資料説明の際には、Zoomの画面上にも資料を表示するようにいたします。
また、会議中、発言を希望される際は、カメラに向かって挙手をお願いいたします。部会長の指名を受けた後、マイクのミュートを解除して御発言いただき、御発言終了後は再度マイクのミュートをお願いいたします。
続きまして、本部会の取扱いについて御説明いたします。
本部会の議事につきましては公開となってございますが、今般の新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、会場での傍聴は報道関係の方のみとさせていただき、その他の傍聴希望者に向けてユーチューブでライブ配信をしております。
本部会では、これ以降の録音、録画を禁止させていただきますので、傍聴される方におかれましては、くれぐれも御注意のほど、よろしくお願いいたします。
また、議事録につきましては、後日、ホームページに掲載をいたしますので、御承知おき願います。
それでは、これからの議事運営につきましては、小塩部会長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
■小塩部会長 承知しました。
恐縮ですけれども、カメラ撮影の方はこれで御退室をお願いいたします。
それでは、議事に入ります。
本日は、前回に引き続き、これまでの部会の議論をまとめた報告書(案)についての議論となります。
それから、報告書(案)と併せて参考資料2「世帯類型別の低所得世帯の消費水準」がございます。この資料は、これまでの議論を踏まえて私から事務局の皆さんに作業をお願いした資料となっております。
それでは、事務局から報告書(案)と併せて参考資料2の説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 本日、資料といたしまして「社会保障審議会生活保護基準部会報告書(案)」を用意していますが、これは前回、第50回の基準部会での委員の皆様の御議論を踏まえ、部会長、部会長代理と相談し、その御指示を受けて修正したものとなっています。前回、第50回部会でお示しした報告書(案)からの変更点が分かるように、変更箇所を赤字で見え消ししている参考資料1-1、1-2を御用意しておりますので、こちらに沿って御説明いたします。
では、参考資料1-1「社会保障審議会生活保護基準部会報告書(案)」を御覧ください。
まず、1ページの「I はじめに」におきましては、冒頭に一文を加えておりまして、「生活保護制度は、国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する最後のセーフティネットの役割を果たす社会保障制度であり、最低限度の生活保障を具体化するものが生活保護基準である」としています。
続きまして、4ページです。こちらは過去の生活保護基準の見直しによる影響分析の検証方法に係るページになりますが、ページの一番下の脚注につきまして、5つ目になりますが「生活扶助基準の見直しによる影響額は、平成30年度以降、令和3年度までの改定に係るものであり、これには、令和元年10月の消費税率の引上げ等の影響を踏まえた改定分を含む。このため、平成30年10月の見直しにあたって見込まれた影響と比べ、減額となった世帯が少ないことが想定される」としています。
続きまして、6ページです。こちらも過去の生活保護基準見直しによる影響分析のページになりますが、前回幾つか御意見のありましたマル4、生活保護受給世帯と一般世帯の社会的必需項目の不足状況についてです。脚注9にありますように「生活保護受給世帯の社会的必需項目の不足状況の変化に係る集計結果は、別紙資料3参照」としていまして、後で触れますが、別紙資料に結果表を追加しています。また、「なお、一般世帯における社会的必需項目の不足状況との比較に関しては、「III-5(3)生活の質の面からみた生活実態・意識の分析」において後述する」という旨も併せて記載をしています。
こちらの社会的必需項目の不足状況については、全てが全く評価できなかったわけではないといった御意見もありましたので、本文に戻りまして、マル4の1つ目のマルの「また」以降ですけれども、「集計世帯数が限られる部分も多いことから、相当程度の幅をもって数字を評価する必要があり、平成30年10月以降の生活保護基準の見直しによる影響を明確に確認することは難しい結果となった」としていまして、あわせて、次の2つ目のマルで「なお、世帯類型によっては、不足状況が過去から有意に変化している項目もあったことから、こうした点について、生活保護基準の見直しによる影響がある可能性も懸念されるという意見もあった」としています。
続きまして、12ページです。「III-2 生活扶助基準の水準の検証」の(1)検証方法の部分です。前回、第50回部会での御議論を踏まえて、今回の検証方法についての議論が分かるように記載を追記しています。
2つ目のマルにつきまして、「この比較検証にあたって消費実態を参照する所得階層については、直近の平成29年検証時に変曲点理論を用いた消費の変動分析が行われ、その結果、「夫婦子一人世帯の生活扶助基準については、年収階級第1・十分位を比較対象とする所得階層と考えることが適当である」とされたところであり、これまでの歴史的経緯やその継続性は尊重されるべきとの意見もあったことから、引き続き、夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位を対象とした」としています。
また、下段の脚注21ですが、「水準均衡方式が導入された以前にまで遡れば、年収階級第1・十分位は、その消費実態の変化率に着目する形で参照されていた」という旨を前回、第50回部会でありました御意見を踏まえて記載しています。
それから、本文に戻りまして3つ目のマルの「ただし」以降です。「この際、消費実態を参照する集団の状況について、平成29年検証時に参照した集団の状況と大きく変化していないかを確認する観点から参考とすべき指標について議論を重ね、下記(2)の指標により確認を行うこととした。なお、年収階級第1・十分位が生活扶助基準と比較する一般低所得世帯として相応しい所得階層であるかについては、こうした方法によらず検証を行うべきとする意見もあった。一方で、今回の議論においては、これまでの変曲点分析に関して、その理論は認められるが、現代社会において消費実態の調査から消費構造が変化する点が明確に読み取れるかという課題があるとの指摘があったほか、近年の経済学における研究に照らせば、折れ線回帰分析を用いた前回同様の変曲点分析を必ずしも行う必要はないという意見もあったことを踏まえ、参照する集団の変化の状況を確認することとしたものである」としています。
次に、27ページまで飛びます。「III-3 生活扶助基準の較差の検証」の(3)消費較差指数の算出結果の確認のマル3、年齢別較差指数の算出構造についての確認の(ii)確認結果の部分になります。ここは表現ぶりの修正になりますが、2つ目のマルを「今回の方法において、年齢階級別の構成割合と世帯人員数ごとのダミー変数を説明変数として設定したことにより、算出構造として、より精緻に消費較差を捉えられるようになった。もとより実際の消費実態については、前提とした基準体系の要素以外にも、年収や資産、住居等の様々な要因によって変化するものであることには留意しなければならないとしています。
続きまして、32ページです。生活扶助基準の較差の検証の(4)検証結果のマル3、検証結果に係る留意点のページになります。こちらには前回の部会の御意見を踏まえ、別紙資料としていた第1類及び第2類の費用の級地間較差の有意性の表を本文中に入れています。これに伴い、もともとの脚注の46は削除しています。
続きまして、33ページです。「III-4 新型コロナウイルス感染症による影響等」につきまして、前回、第50回部会では、足下の物価上昇に関しての御議論がありましたので、4点目のマルとして、「さらに、足下では、新型コロナウイルス感染症による影響等だけでなく、物価が上昇していることにより消費の実態が変化していると考えられることにも留意が必要である」と記載を追加していまして、5つ目のマルを「令和元年以降の新型コロナウイルス感染症による影響や物価上昇等を含むこうした社会経済情勢の変化については、2019年全国家計構造調査による検証結果に、家計調査等による経済指標の動向により機械的な調整を加えて消費実態との均衡を評価することは難しいと考えられるが、足下の実態を捉えるにあたって考慮しなければならない重要な事項である」としています。
続きまして、36ページです。「III-5 新たな検証手法に関する検討」の(2)各調査研究における試算結果の参照方法の検討に関しまして、前回、第50回部会で主観的最低生活費についての御意見がありましたので、マル2、試算結果の評価の3つ目のマルについて、「このほか、MIS手法については、その内容から一般市民が何を最低生活のために必要としているかを捉えることにつながるという意見や、主観的最低生活費については、K調査とT調査のそれぞれによる試算結果と基準額を世帯類型ごとに比較をすることで、基準が不足している可能性を探ることにつながるという意見があった」というふうにしています。
続きまして、38ページです。(3)生活の質の面からみた生活実態・意識の分析について、こちらは前回、第50回部会での御意見を踏まえまして、1つ目のマルの「このほか」以下に「世帯類型によっては、「1年に1回以上の新しい下着の購入」はしていない、金銭的な余裕がないために「毎日のたんぱく質の摂取」、「1日1回以上の野菜の摂取」はしていないと回答した割合なども、生活保護受給世帯の方が一般世帯より高い部分がみられた」と記載を追加していまして、また、3つ目のマルについては「このような差がみられた要因として」を「このような差がみられた要因のうちには」としています。
また、最後の4つ目のマルについては「社会参加の状況や健康状態を含めた生活水準は、他の支援と相まって確保されるものであることから、金銭給付によるべき費用の水準として評価することは難しいものの、生活保護受給世帯は平均的な一般世帯と比べて、社会的活動を行う上での制約がある可能性については留意する必要がある」というふうにしています。
続きまして、39ページです。「III-6 生活扶助基準の水準等の妥当性の検証結果の総括及び留意点」については、前回、総括のページがあったほうがよいという御意見がありましたことから、(1)として検証結果の総括のパートを追加しています。内容といたしましては、「生活扶助基準の消費水準との比較検証にあたって参照する夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位の状況は、平成29年検証時に参照した集団と比較して概ね改善していると見込まれる状況であった。こうした中で、夫婦子1人世帯における生活扶助相当支出額は、生活扶助基準額を2%程度上回る結果となった」。2つ目のマルとして「生活扶助基準の較差の検証にあたっては、より精緻に実態を捉えられるよう消費較差の算出方法を改善した。その上で、当該方法による分析結果から、基準体系ごとの消費較差の実態と現行の生活扶助基準の較差との乖離の状況を確認した」。「新たな検証手法に関する検討については、今回、各調査研究の報告を受け、その試算結果の参照方法について検討を行ったが、様々な意見があり、部会として結論を得るには至らなかった。消費実態との比較によらない手法については、下支えとなる水準を明らかにしていくために今後も議論を重ねていくことが重要である」というふうにしています。
検証結果を踏まえる上での留意点は(2)としていまして、前回の部会でありました御意見を踏まえ、追記をしています。初めの2つのマルは前回も記載してあったものでして、3点目からになります。「較差検証の結果については、各集計値の統計的な信頼性に照らして慎重に受け止める必要があり、検証結果を踏まえて基準較差の見直しを行うに当たっては、集計結果を反映することが基本となるとしても、急激な変化に配慮した対応が考えられる」。「基準体系ごとの消費較差のうち、特に年齢別較差に関しては、消費支出が世帯単位のものであって年齢別の個人の消費を直接捉えられるものではないなど、利用可能なデータ上の制約からも幅をもってみる必要がある。そうした中で、機械的に反映させた場合には現行の基準較差から大幅な変更となることを考慮すれば、検証結果と矛盾のないよう信頼区間から外れない範囲で、激変緩和のための一定の政策的配慮はあり得るものと考えられる。ただし、こうした政策的な対応については、信頼区間から外れないというだけでなく、政策的配慮に一定の合理性が必要であることには留意すべきである」。「また、世帯類型や地域によって消費実態が低い水準となっている場合には、下限となるべき水準についても配慮する必要がある」。「このほか、第2類の費用の級地間較差に関しては、必ずしも上位級地が下位級地よりも高くない状況であるため、これを機械的に反映した場合には、これまでの制度と矛盾が生じることにも留意が必要である」。「加えて、生活扶助基準の検証に用いた2019年全国家計構造調査の実施時点以降、新型コロナウイルス感染症だけでなく足下の物価上昇を背景として、消費実態等の社会経済情勢が変化していることについては、適切に配慮する必要がある」というふうにしています。
最後のマルは前回も記載のあったものとなります。
続きまして、41ページです。生活保護基準における級地区分の検証に関しまして、まず表現の変更ですが、ページの真ん中辺り、3点目のマルにありますc)の各市町村の級地区分の指定については「の指定」という部分を削除する形で表現を変更しています。
それから、こちらは変更点ではありませんが、前回の基準部会において報告書の取りまとめに先立って級地区分の分析結果をまとめた経緯について記載するよう御意見がありましたが、こちらは脚注53にその旨の記載がありますので、その点を補足させていただきます。
続きまして、44ページです。こちらも前回の御意見を踏まえて記載の仕方を修正しているところです。
続きまして、47ページです。「V 今後の検証等に関する意見」といたしまして、前回の部会でいただいた意見を記載しています。
「(1)生活保護基準の検証作業に関する意見」としまして、「生活水準が維持されているかについては、生活の質の観点から、社会的剥奪状況として必需品項目の不足の状況を確認することも重要であるという意見があった。また、こうした生活実態及び生活意識の分析をより精緻に実施していくことが必要であるとの意見もあった。このほか、生存水準に関わる観点として、栄養摂取基準などからみて最低生活が満たされる水準となっているか確認する必要があるとの意見もあった」。「最低生活費の水準を議論するに当たっては、引き続き一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかという観点から検証を行うことが基本となる。一方で、一般低所得世帯の消費実態との均衡のみにより生活保護基準の水準を捉えていると、比較する消費水準が低下する場合に絶対的な水準を割ってしまう懸念があることから、その下支えとなる水準を明らかにしていくため、消費実態との比較によらない手法について、今後、議論の場を設けるべきとの意見があった」。「本部会では、生活扶助基準の定期的な検証を行うことを基本としつつ、過去、平成26年には住宅扶助基準等の検証、平成29年には母子加算、児童養育加算等の検証も実施したところであり、今回の検証作業においては、生活扶助基準の定期的な検証のほかに級地区分の検証を行ったところである。今後、他の扶助や加算の基準について検証を行う際には、各扶助等により賄うべき需要に対応するための費用を捉える観点からデータの収集及び整理を適切に行っていく必要がある」。
また、「(2)その他の意見」として、「今回、過去の生活保護基準の見直しの影響の分析の中で、「被保護者調査」については、学習支援費の支給実績が把握できないことや保護廃止の理由が明らかでない部分が多いこと。「社会保障生計調査」及び「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」については、サンプルサイズの小さい世帯類型が生じてしまうことなどのデータ上の制約があったことから、調査項目や標本の抽出方法など、各調査の改善に向けた課題があるとの意見があった」としています。
48ページに続いて、「今回の検証作業においてまとめられた学習支援費の支給状況等についての福祉事務所からの報告を踏まえると、生活保護受給世帯への事前周知も含めて、福祉事務所の支援体制が不十分である可能性がある。学習支援費の更なる活用を図るため、福祉事務所から学習支援費の支給対象世帯に対して制度の活用に向けた周知が適切に行われるよう改めて徹底するとともに、支給対象となり得る子育て世帯等に対する制度の事前の周知・広報にも積極的に取り組んでいくことも必要である」としています。
49ページです。「MIS手法による最低生活費の試算に関する調査研究事業について」、及び「主観的最低生活費の試算に関する調査研究事業について」の資料を、それぞれ報告書の参考1、参考2としています。
参考資料1-1の説明は以上になります。
続きまして、参考資料1-2です。まず3ページです。別紙資料3としまして、生活保護受給世帯の社会的必需項目の不足状況の変化の表を追加しています。
続きまして、27ページまで飛びます。別紙資料17としていた第1類及び第2類の費用の級地間較差の有意性の表は、先ほど御説明したとおり本文中、参考資料1-1ですと32ページに移動をしています。
続きまして、31ページ。別紙資料21です。先ほどの別紙資料3と区別するため、表のタイトルを「社会的必需項目の不足状況の比較」に変更しています。
続きまして、32ページです。別紙資料22としまして、本日の参考資料2にも記載している世帯類型別の低所得世帯の消費水準、生活扶助相当の表を追加しています。
参考資料1-2の説明は以上になります。
続きまして、参考資料2「世帯類型別の低所得世帯の消費水準」について説明いたします。こちらはこれまでの基準部会での御議論を踏まえまして、部会長から作業指示をいただいて作成したものになります。
1ページです。こちらの表は前回、第50回部会でも提出しました世帯類型別の低所得世帯の消費水準について、中位所得、年収階級第3・五分位との対比を示した表となりますが、75歳以上の高齢夫婦世帯、75歳以上の高齢単身世帯を加えています。なお、こちらは平成29年検証の報告書には掲載がございませんので、過去との比較はできるようになっていないということでございます。
2ページです。こちらは参考といたしまして、算出方法の式を表記しています。
3ページです。こちらは今回の方法により算出した消費較差指数に基づき、平成29年の検証作業における展開方法と同様の方法により機械的に算出した展開後の消費水準(生活扶助相当)の額となります。
下段の赤枠の注書きにありますように、こちらは2019年全国家計構造調査のデータを基に、一定の仮定の下で機械的に算出した消費水準でありまして、生活扶助の基準額ではありませんので十分御留意をお願いしたいと思います。実際の生活扶助基準は、こうした結果も含め、一連の検証結果も踏まえていますが、このほかに社会経済情勢等を踏まえて、今後、予算編成過程において検討されるものとなっています。
続きまして、4ページです。機械的に算出した展開後の消費水準(生活扶助相当)の額について級地区分を3区分とした場合のものとなります。下段の赤枠の注書きにありますように、繰り返しになりますが、これらは一定の仮定の下で機械的に算出した消費水準でして、生活扶助の基準額ではないということ。また、級地区分の在り方についての方向性を示すものでもありませんので、御承知おき願います。実際の生活扶助基準は一連の検証結果のほか、社会経済情勢等を踏まえて今後検討されるものとなります。
参考資料2の説明は以上となります。
参考資料1-1におきまして、一部、本文中、青字の部分がございました。こちらは体裁の誤りでございますので、資料を赤字に修正しておきます。失礼をいたしました。
資料の説明は以上になります。
本日は報告書の取りまとめに向けた審議を行っていただきます。規定によりまして、本委員及び臨時委員による御審議をお願いいたします。
私からの説明は以上でございます。
■小塩部会長 どうもありがとうございました。
ただいま事務局から、報告書(案)、それから、参考資料2の説明をしていただきました。報告書(案)につきましては、前回一度委員の方々に御議論いただいたところです。それを踏まえて今回修正したものをお見せしているということでございます。テーマによっては考え方が違うという面もあったかと思いますけれども、そういう異なった意見につきましてもできるだけ文章に反映させていただいたつもりでございます。
今回は、前回の報告書(案)からの変更箇所、具体的に赤字で書いたところですけれども、ここを中心に委員の方々の御意見を頂戴したいと思います。よろしいでしょうか。
それでは、委員の皆様、報告書(案)について御意見を頂戴いたしますので、お願いいたします。阿部委員が途中で退室されると伺っておりますので、もしほかの委員の方がよろしければ阿部委員に初めに御意見を頂戴したいと思うのですけれども、いかがでしょうか。それでは、もしよろしければ、阿部委員から口火を切っていただければと思います。お願いいたします。
■阿部委員 部会長、御配慮ありがとうございます。報告書(案)の修正ありがとうございました。読ませていただき、その上で幾つか修正していただきたい点があります。紙に用意しましたので、これを読み上げさせていただいてもよろしいでしょうか。重要なところの順番にいきたいと思います。
1つ目がIII-2(1)、見え消し版でいきますと12ページになります。2つ目のパラグラフの4行目から5行目にかけてですけれども、現行では「ところであり、これまでの歴史的経緯やその継続性は尊重されるべきとの意見もあった」と書かれているのですが、歴史的経緯や継続性が重視されるべきであったのは、年収階級第1・十分位を比較対象とすることではありません。ここら辺は渡辺委員が詳しいので後ほど御発言いただければと思いますが、このように修正、「ところであり」から「あった」までを削除していただきたいと思います。
また、その1つ下の「ただし」から「としたものである」というパラグラフですけれども、修正していただきたいのはここのところ全体であり、なお、年収階級第1・十分位が生活扶助基準と比較する一般低所得世帯として相応しい所得階層であるかについては、これまで部会で行われた変曲点分析や憲法25条の観点に基づいた分析も含めて厳密な検証を行うべきとの意見もあった。しかしながら、本部会においては、平成29年検討時に参照した集団の状況と大きく変化していないかを確認することとし、下記(2)の指標により確認を行うことにした」というふうにしていただきたいと思います。
その理由は、一般世帯の第1・十分位の人々が憲法25条で保障する健康で文化的な最低限の生活を享受できているのかといった点については、これは所与の前提ではありませんので、その検証のためにこの点を確認すべきということで、これはこれまでの部会でも何度も言わせていただいたところです。今回はそこのところは行わず、前回の第1・十分位との実質的な変化がなかったかということの検証に留まったということになりますので、ここのところは第1・十分位の比較をすることがデファクトにならないようにきちんとして書いていただきたいなと思いました。
2点目が「III-4 新型コロナウイルス感染症による影響等」のところです。33ページになります。ここでは5つ目のパラグラフの1行目に「や物価上昇」と書いてあるのですけれども、それに一言加えて、「令和3年以降の物価上昇」と書いていただきたいなと思います。
また、3行目ですけれども、「家計調査等による」という文もあるのですけれども、ここも「令和3年にかけてまでの家計調査」というふうに付け加えていただきたいと思いました。というのは、今回行った検証はあくまでも令和元年から令和3年にかけての家計調査を使っておりますので、それ以降の足下の変化については、どのようなデータでも検証していないわけですから、それを家計調査等で把握することができないと断言してしまうことは、そこはやっていないと思います。ですので、ここはあくまでも令和3年までのということをきちんと明記すべきと思います。
3つ目の点は、戻りますが、見え消しの6ページの生活保護世帯と一般世帯の社会的必需項目の不足状況の比較のところです。ここではまず1つ目のパラグラフ、5行目に現行で「また、集計世帯数が限られる部分も多いことから」と書いてありますが、これは世帯類型によって違いますので、修正として、「また、世帯類型によっては集計世帯数が限られるものがあり」というふうにしていただきたい。また、同じパラグラフの2行下で「難しい結果となった」とありますが、これは「難しいところもあった」という書き方にしていただきたい。というのは、難しいところと難しくないところがあるということですので。
2つ目のパラグラフは1行目のところですけれども、ここは付け加えていただいたところですが、このところを、「なお、不足状況が過去から有意に悪化している世帯類型については、生活保護基準の見直しによる影響がある可能性が懸念される」という言い方をしたほうがよろしいかなと思いました。意見があったといいますか、これはやはり懸念されることが部会の総意としてあるかなと思います。
4つ目は最後の課題のところになります。まず、今後の検証方法のところなのですけれども、Vの(1)の2つ目のマルになります。ここでは最後の行で「今後、議論の場を設けるべき」と記述されておりますけれども、修正案として、「次回の検証に間に合うようにその具体的な手法の開発を行うべき」というふうに、この点はこれまでも何遍も指摘されてきたところで、何回も宿題事項となっておりますので、そのようにより積極的に書くべきと思います。
また、最後の学習支援費にかかるところ、Vの(2)のところです。2つ目のパラグラフの2行目で、現行のものでは「福祉事務所からの報告を踏まえると」といって福祉事務所への調査のことを書いていると思われますけれども、福祉事務所が周知徹底を行っていないということも重要なのですが、それ以上にやはり支給実績が伴っていないということがありますので、修正として、「支給実績や福祉事務所からの報告を踏まえると」にしていただきたい。
その4行下の現行のところで「支援対象となり得る子育て世帯等に対する制度の事前の周知・広報にも積極的に取り組んでいくことも必要である」とありますが、修正案として、「とともに、周知・徹底のみで改善しないのであれば、学習支援費の支給方法の変更も含めて検討することも必要である」と書いていただきたいと思います。理由としては、周知徹底のみでこの非常に大きな較差が改善されるとは思われません。これは支給方法を変更させたことによる変化ですので、支給方法について見直しを行うということも書くべきだと思います。
以上となります。ありがとうございます。
■小塩部会長 ありがとうございました。多くの貴重な御意見を頂戴いたしました。
■阿部委員 部会長、よろしければ、今の文章をチャットに流しますが。
■小塩部会長 後で事務局にメールでその文章を送っていただくことはできますでしょうか。
■阿部委員 もちろんできます。部会長にもお送りします。
■小塩部会長 お願いします。
それでは、ほかの方はいかがでしょうか。
岡部委員、お手が挙がっております。よろしくお願いいたします。
■岡部委員 阿部委員の意見に私も賛同します。この件に関して阿部委員から39ページの3番目のマルの箇所で、次の部会に間に合うように手法の開発の議論をしていくことが重要という御指摘がありました。この点について、保護基準は社会保障制度の根幹に関わりますので、基準については相対化して捉えるだけではなく絶対的な基準でもということを前回の部会報告書にも記載されておりますので、引き続き検討をしていただきますようお願い致します。
この関連については、47ページの3番目のマルの箇所においても同じように、今後、議論の場を設けるべき意見があったと記されています。これについても次の部会に間に合うよう早期に議論の場を設けるべきという意見も入れていただければと思います。この点は、生活保護基準は5年に1回ですが、普段から最低生活ということについて開発・検討する場を設けていくことが大事であると考えます。 以上です。
■小塩部会長 岡部委員、ありがとうございました。
ほかの委員の方々、いかがでしょうか。
それでは、栃本部会長代理からお手が挙がっていましたので、お願いします。
■栃本部会長代理 今、岡部委員と阿部委員からお話があった件で、39ページの部分、つまり「今後も議論を重ねていくことが重要である」というところの前に、次の部会に間に合うように今後も議論を重ねていくことが重要であるということにすべきじゃないかというお話だと思うのです。
あと、47ページのところで岡部先生が触れられた2つ目のポツ、今後、次の部会に間に合うように議論の場を設けるべきとの意見があったという、この2つとおっしゃったと思うのです。
■岡部委員 そうです。
■栃本部会長代理 それで、後ろのほうは意見があった、なのですね。それに対して、前のほうは部会として、総括という意味での消費実態との比較によらない方法については、下支えとなる水準を明らかにするために、次の部会に間に合うように今後も議論を重ねることが重要であるというので、ちょっと位置関係というか。
■岡部委員 そうです。
■栃本部会長代理 だから、そこら辺は両方とも大切だということですね。
■岡部委員 私は、39ページのほうに載せていただければと思っています。
■阿部委員 私のほうは、むしろ47ページのほうを申し上げていて、ここでも意見があったというよりも、次回までに間に合うように具体的な手法を開発すべきということで、意見があったではなく、すべきと書くことを求めたいと思います。
■小塩部会長 この点、よろしいでしょうか。
■岡部委員 私も、どちらかといえばということです。総論的なところで意見ではなく阿部委員がおっしゃっていた箇所にしていただければと考えます。
■小塩部会長 承知しました。
栃本委員、いかがですか。
■栃本部会長代理 岡部先生と阿部先生の御指摘の部分の確認をお聞きしたわけですけれども、私もこれについて発言しましたが、次回の部会に間に合うかどうかというのは様々な課題があるなかで、なかなか難しい部分があると思うのです。ただ、皆さん方の議論の中でも、これが重要であることはみんな共有していると思うのです。その上で精緻化する作業というものは適切に、速やかに行われるべきだということは私もよく理解しております。ただ、間に合うかどうか、今決めることは難しい、そういうことだと思います。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
ほかの点につきまして、御意見ございましたらお願いいたします。
岡部委員、お手がもう一度挙がっているのですけれども。
■岡部委員 今、阿部委員の報告に関して述べさせていただきました。私の意見として2点あります。
1点目は、38ページの4番目のマルの箇所です。これについて修文をして下さったことはありがたかったのですが、この文章を読んで、なかなか文意が取りづらいということがあります。この点についてもう少し表現としてシンプルにしていただくのがよいと考えます。この箇所について、私の意見としては2つ考えられ、前段の社会参加の状況から難しいもののという箇所は外していただき、生活保護受給世帯は平均的な一般世帯と比べて、社会的活動を行う上での制約があるため、今後改善すべきである、または改善の必要があるでも結構ですが、改善すべきであるという文言に換えていただければと思います。
これはなぜかといいますと、上のマルの段階では影響が既にデータが出されています。基準の観点から考えるならば、上の前段は運用で解消できるのだという言い方にもなってしまいます。基準部会として考えるならば、社会的活動のコストの制約を受けていることについて今後改善が必要である。と述べたほうがよいと考えます。社会参加に対し剥奪が現われておりますので、文意を明確にされるのがよいと思います。
2点目は、部会の運営についての要望です。他部会では有識者、利用者等のヒアリングを行っています。しかし基準部会では行っておりません。本部会はマクロデータを使用して科学的・客観的に検証・審議する場だと考えております。しかしながら、生活保護基準について、生活保護を受給されている被保護者の実態や意識を聞くことや生活保護の実施機関のワーカーをはじめとして直接的に関わっていらっしゃる方々の声を聴くということは、審議する上で必要と考えています。部会委員としてではなく、有識者、利用者の報告と意見交換の場をつくっていただくことをこの生活保護基準部会でもぜひお願いしたいと思います。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
それでは、新保委員、お願いいたします。
■新保委員 本日も途中からの参加になって申し訳ありませんでした。私からも3点ほどお伝えしたいと思います。ちょうど岡部委員が発言されましたことに重なることですので、続けて発言させていただきます。
まず、38ページの4つ目のマルのところは、岡部委員と同じような、文意がつかみづらいという印象を私も持っておりまして、岡部委員の意見に賛同いたします。ぜひ社会参加のために必要な基準の在り方については継続的に検討していただければありがたく思います。
2点目は、これも岡部委員がおっしゃっていたことなのですけれども、今後、基準の在り方を検証する際に、現在、生活保護制度を利用されている利用者の声を、定量的・定性的に調査を通じて把握していただいて、ぜひ議論の参考にできるようにしていただきたいと思います。実際に生活保護基準による生活が利用者にどのように受け止められているのかという観点から検討することも必要ではないかと思うところです。
最後はお願いです。今回、報告書の冒頭に、平成29年度の報告書と同様に制度や基準の定義を書いていただいたことはとてもよかったと思っております。加えて、29年度の報告書の「はじめに」の中に、「国民の最低生活保障の水準を決定するという生活保護基準の必要性に鑑み、その評価及び検証を行う本部会の議論について広く国民に共有されることを期待する」と書いてあるのですが、できればその記述も加筆していただけたらありがたいと思います。
私は今期からこの部会に参加させていただいております。部会の議論に十分貢献できませんでしたけれども、本部会で議論されている保護基準が、健康で文化的な最低限度の生活を支える基準であるとともに、様々な制度の利用にも影響するとても重要なものであるという、その重みや重要性を常に感じながらここまで参りました。これは誰かのための基準ではなくて、私たちの生活を支える基準であると思いますので、今後もぜひ、国民に開かれた議論を継続していただければと思います。
以上です。
■小塩部会長 新保委員、どうもありがとうございました。
山田委員、お願いいたします。
■山田委員 ありがとうございます。まず、非常にたくさんの意見を修正として報告書の中に入れていただきまして、ありがとうございます。また、部会長におかれましては、参考資料2について、また様々な意見の集約ということで色々と大変な御苦労をされたかと思います。この作業に従事してくださった事務局に対してとともに改めて御礼を申し上げます。ありがとうございます。
その上で幾つか申し上げたいと思います。今まで出てきた意見に関しましては私も賛成ですので、意見があったというよりは、なるべく断言の形で入れていただくという方向でよろしいのではないかと思います。もちろん委員が、意見があったにしてほしいという部分についてはそのままでいいかと思いますけれども、なるべく部会全体でそういう方向性で決めたということが明らかになるようにしていただければなと思います。これまでの意見については、私はその方向性に賛成です。
その上で少し私も細かい文言について申し上げますので、長くなることをあらかじめおわび申し上げますけれども、幾つか述べていきたいと思います。
まず、今回出していただいた参考資料2でございますけれども、これは前回、平成29年検証では、参考資料ではなく本体報告に入っていた非常に重要な図表になるかと思います。したがいまして、この図表については、非常に重要な資料ですので、31ページの各級地間較差指数とか世帯人員別較差指数の後辺りに前回の報告書と同様に入れていただきたい。そうすると別紙資料の方を抜くという話になると、多分、事務局は後の方の資料番号を変えていったりと非常に大変だと思いますので、参考資料の別紙資料22は、今回の参考資料2に差し替えていただいた上で、そのまま入れておいていただいて結構かと思います。資料番号を全部ずらしたりすると大変かと思いますので、そこはそのままで本体報告に新たに入れていただきたいということになります。
2点目のコメントなのですけれども、今回「V 今後の検証等に関する意見」として、参考資料2で分かったことは、特に75歳以上については、機械的に今回の結果を適用すれば生活保護基準を2割引き下げることになるわけです。ですから、40ページのVの検証に関する意見の中に、「一般国民生活における6割という水準均衡方式から逸脱しないようなレベルを下限として留意する必要がある」というのと、また、「6割を維持しても、最低生活水準を割り込む可能性がある」、この後理由をお話ししますけれども、「全般的に割り込む可能性があることに留意する必要がある」という文言を入れていただきたい。もと前の部会でもお話ししましたように、もともと老齢加算廃止後の高齢者の生活扶助基準というのは既にOECDの相対的貧困基準を下回っています。また、老齢加算を外したときに食費を減らしたということも統計的に分かっております。ですから、たとえ60%であっても最低生活水準を割り込む可能性が非常に懸念されるということになります。
3点目になります。3点目は今後の検証に関する意見として、75歳以上で私が気になったのは、入れていただきたい文言は、「回帰分析により較差指標を求めるという方法は、すなわち生活保護基準の体系を検証するという手法は、高齢者をはじめとする平均所得の低いグループの生活扶助相当支出を相対的に低く見積もるという問題を抱えている。したがって、回帰分析で得た較差指標をそのまま用いることは、やがてそれらのグループの生活扶助基準を、最低生活費を割り込む水準に設定してしまうことになる。そうした問題を回避するには、マ・バ方式で例えば必要栄養所要量を食費が割り込んでいないか、あるいはMIS、主観的最低生活費、エンゲル方式、社会的剥奪指標等に基づいて個別項目の消費品目、あるいはそれらを積み上げた額が最低生活水準を下回っていないか確認する作業が必須となる」、というふうに書き込んでいただければと思います。
この理由は部会でも何度かお話ししましたけれども、回帰分析による較差指標を求める作業はいわば標準3人世帯との平均的な差とか比率を求める作業と同じであります。特に高齢者の場合にはやはり年金給付水準というのが、給付乗率を逓減させたりとか、マクロ経済スライドの適用で、長期的に低下していく。そうすると、高齢者世帯の生活扶助相当支出は相対的にどんどん押し下げられていく可能性があります。このことから、やはり早晩、この手法を使い続ける限りにおいて、少なくとも高齢者世帯については最低生活水準を割り込む基準額に設定してしまうおそれが出てくることが懸念されるということになります。
もちろん若年単身世帯とかほかの世帯類型でも相対的な平均所得が下がれば同じようなことが起こる可能性があるというので、常にそれをチェックする必要があるかと思います。
次に4点目になります。4点目については32ページの最初のマルです。その3行目から7行目に係る部分です。この部分は実は検証結果を踏まえる上での留意点の39ページに書かれている部分をむしろ入れ替えて、32ページの3行目から7行目は削除したほうがいいのではないか。
その理由を述べます。まず、この文章を読むと、仮説を何か設定することが科学的に否定されないという文になっているのですけれども、この理解が非常に難しいということです。一般に仮説が設定された上で何か検定をパスして統計的に有意とならなければ何らかの科学的根拠というのにはなり得ないわけです。そういった統計的に有意になるという部分がないにもかかわらず、科学的に否定されないというのは大変理解が難しい文章なので、削除したほうがいいのではないかと。特に今回第1類費では18から64歳と他の年齢階級とに有意な差があるかどうかというのが仮説だったわけですね。ですから、もし違う仮説を立てるのだったら、その違う分析を部会内で示すなど、きちんと議論すべきだと思います。第1類費については18歳から64歳を細かい年齢区分で分析したらどうかというコメントを過去の部会で差し上げましたけれども、結局18歳から64歳でいってしまったのでこうなったわけです。それから、部会閉会後に仮に厚生労働省が何か設定して、有意であるという仮説を設定して確認したところで、もう部会が閉会していたら、それは政策的判断なわけですね。ですから、厚生労働省がもし設定して何か仮説検証した場合、その仮説の妥当性について部会が意見をすることが閉会後であればできないのに、その責任を部会が負うことは難しいのではないか。以上の理由から、3行目から7行目は削除していただき、39ページから40ページに書かれている、39ページの一番下のマル2つを入れておいたほうがむしろいいのではないかと思います。
次に5点目に行きます。歴史的経緯に関する脚注が12ページの21にあります。多分これは私のほうで前回少し申し上げたことを酌み取っていただいたのですけれども、真意は、まず加筆として必要なのは、「昭和59年からの水準均衡方式での比較対象は一般低所得世帯ではなく、一般国民生活における消費水準である。また、水準均衡方式以前である昭和39年に新たに全都市勤労者世帯の第1・十分位階級による検討が中央社会福祉審議会生活保護専門分科会にて行われたが、それ以前は十分位階級ではなく五分位階級、四分位階級であった。しかし、全都市勤労者世帯の第2・十分位より第1・十分位の平均消費水準の伸びが高かったため、昭和39年に全都市勤労者世帯の第1・十分位による検討が行えるようになった」、ということです。
ポイントは、これは先ほど阿部先生もおっしゃったように、歴史的にずっと遡って第1・十分位が比較対象ではなかったということです。なので「第1・十分位が比較対象として適切かどうかというのは常に確認する必要がある」ということになります。
6点目、今度は同じく12ページですけれども、これは阿部先生のご発言を優先してほしいと思うのですが、うまく入れられるのであれば、相対的な比率に基づく指標ではなく、消費構造などの質的変化に基づき検証を行うべきという意見も多かったと思いますので、それを文章に入れていただきたいというのと、それに関連して「V 今後の検証等に関する意見」にも「消費実態との相対比較のみでは第1・十分位が下支えとなる生活水準を満たしているかどうかは分からない」という文言を理由として入れていただきたいということになります。
長くなって申し訳ありませんけれども、あと2つで終わります。7点目、24ページの下から4行目に「従前の方法では、年齢階級別の人数」と書いてあるのですけれども、ここに、「従前の方法では、第1類は個人的経費であるとの考えに基づき」というのを入れていただきたい。つまり、そもそも第1類の体系を検証するというのは、世帯規模の経済性を明らかにするというのが主目的ではなく、年齢階級別の個人単位の消費水準の相対比較をするのが一義的な目的だったわけです。でも、結果的に今回推計式は第1類にもかかわらず、75歳以上の構成割合以外は有意ではない。結果的に世帯規模の経済性にフォーカスを当てた推計式となってしまっているということがありますので、そもそもの考えを入れていただきたい。
これに関連して、あとは27ページの最後から6行目に「算出構造」というのと、あと、31ページにも「算出構造」というのが2行目にあるかと思います。「算出構造」と単に書いてあるのですけれども、やはり仮定を明確化していただきたい。どういうことかというと、入れていただきたいのは、「『年齢階級別の構成割合』と『世帯人員数』のみで生活扶助相当支出を全て説明できるとの仮定の下では」というのを「算出構造」の前に入れたほうがいいということです。さらに、算出構造の脚注としては、「『年齢階級別の構成割合』と『世帯人員数』以外にも世帯収入、資産額等で現実の生活扶助相当支出が説明できるとすれば、前回と今回の推計式のどちらが精緻かどうかはまた別問題である」というのは入れたほうがいいかと思います。
あと、これが最後になりますけれども、47ページの「V 今後の検証等に関する意見」の下から5行目で「保護廃止の理由」となっていますけれども、「保護開始の理由」についても以前、「貯蓄等の減少・喪失」がどんどん増えていて、その背景が分からないということを指摘しましたので、そちらについても入れていただければと思います。
私からは以上になります。
■小塩部会長 山田委員、非常に多くの御意見をいただきまして、どうもありがとうございます。
続きまして、宇南山委員、お手が挙がっていますので、お願いいたします。
■宇南山委員 ありがとうございます。今回は報告書の作成に当たりまして部会長、事務局ともに大変な作業だったと思います。どうもありがとうございます。
私がこの部会において心がけているのは、現在の経済学もしくは計量経済学の枠組みの下で、与えられた仮定の下で最適な比較が可能になるようにすることです。その観点で今回様々な点で技術的な改善ができたのではないかなと思っていて、その点ではよかったのではないかと思います。
その他、絶対水準の必要性などはほかの委員の皆様の御意見、もっともだと思って聞いていたところであります。ただ、今の山田委員から技術的な指摘が幾つかありまして、そこについては若干意見が違うので、意見を述べさせていただきたいと思います。
まず最初に、回帰分析による方法だと、長期的には高齢者が不利になっていってしまうというようなところ、完全には理解できていないかもしれませんが、そういった趣旨の発言があったように思います。私の理解する範囲では、現在取っている回帰分析による較差の識別の方法が構造的に何か大きな問題を持っているというものではと理解しています。そのため、高齢者が不利になるという論点が必ずしも部会の中で議論されていたものとは違うような気もしています。現在取っている手法が科学的には最善に近いということを確認することは制度上の位置づけとしても重要だと思いますので、回帰分析による手法だと大きな偏りがあるというような記述は望ましくないと思っています。
また、27ページ目のところで較差指標の一致性の推計をやっていただいた部分について、ここのところで年収や資産、住居等、様々な要因によって変化するものであることには留意しなければならないというのは、私の技術的な理解によれば、世帯属性や年収、資産などに強い相関関係とかがあると世帯人員や年齢だけで説明できていたとしても、たとえ一致性があったとしても、内生性の問題が発生して真実とずれた推計結果になり得るという趣旨だと理解しています。
その点で言いますと、従前の方法というのは、推計結果を見る限り、一致性を持っていなかったということでありますので、そこにさらに内生性の問題が入ってくれば、原理的にはより「当たらない推計」になってしまうということで、従前の方法と今回の方法ではどちらがいいか現実的には分からないというのはあまり科学的な態度ではないと思っています。少なくとも分かっている範囲では、こちらは完全に一致性を持っていて、従前の方法は残念ながら一致性を持っていなかったということですので、それ以外の要因をコントロールしてたまたま一致するかもというようなことではないと思います。そこの点はやはり今回、技術的には大きな改善があったと理解すべきです。これまでやってきたことがすごく間違っていたという書き方はできないにしても、今回非常に技術的な改善があったのだということを強調することは制度の信頼性の上でも重要なことではないかなと思いました。
私からは以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
山田委員、お手が挙がっています。お願いします。
■山田委員 私の説明ぶりが悪くて至らない点がありまして、分からない点もあるということで、ちょっとエクストリームな例を設定したいと思います。例えば単身世帯の消費水準がゼロになったとする。ただし標準3人世帯では今と変わらない消費水準であったとすると、単身世帯の消費水準がゼロになった場合には、もちろん推計式ではゼロというふうように、相対的にそのような差が開いているというふうに推計式で出すと、ここまではよろしいでしょうか。
私はそれが間違っているというふうには申し上げておりません。それは推計式としては正しいかもしれない。しかしながら、もしゼロと出ましたということを基準額に当てはめるとすると、ゼロということになります。ここまではよろしいですか。そうすると、それというのは、ここの部会のミッションは、憲法25条が保障する最低生活水準を保障するのがミッションなのであるから、それは当然ながら推計式は正しくても、そうしたゼロとおくものを、ゼロと当てはめておくような、最低生活水準を設定するというミッションにおいては、そうしたゼロというのを採用することはできませんよねというのがポイントになります。
高齢者の話に戻しますと、今、年金の給付乗率を折っていっているわけで、年金の分布がやや左側にずれてきているという論文も出ています。ですから、そういった場合に、そうすると今申し上げた、だんだんゼロにはならないですけれども、低いほうに消費水準がどんどん寄っていく。それは制度設計上そのような消費水準の変化を及ぼすので、そういうふうに寄っていく。そうすると、今、推計式は誤ってはいないけれども、そのまま援用すると高齢者の最低生活を下回るような水準に設定することにつながりかねませんねと。だから、最低生活水準を、ゼロより明らかに上ですけれども、考える必要があるのだというのが私の趣旨になります。
そして、2点目の宇南山委員の話は私もよく分かるのですけれども、シミュレーションで、ここで入れているのは、年齢階級別と級地と人数という3要素だけで決まるという前提を置いたらぴったり当てはまったと。現実のデータはそれ以外のものでも決まっているから、本当にぴったり当てはまるかどうかというのは、これは確実なことは言えないかもしれない。そもそも第1類費の推計式の目的は、年齢階級別に個人毎の消費額が幾らかというのを算出したいというのが大きなミッションなわけですね。等価尺度をちゃんと切り分けたいというのではなくて、一人一人の消費にどれぐらい必要かを見極めたいというミッションのため、一つの方法としてこれが採用されたと。だから、その値が出てこない推計式というのは、推計式が正しくてもこの目的には使えない。使えないという言い方は悪いですけれども、必ずしも目的を達成するような推計式ではない可能性がありますねということも申し上げたかった。
なお、報告書に書いてあるように、例えば先ほど宇南山委員が前回の手法が一致性を持たないという旨をおっしゃったわけですけれども、これは前の部会のときにも議論しましたけれども、より精緻にとか、より精緻でないとか、前回推計のほうが一致性を持たないということであれば、前回検証に基づく生活保護基準を実は見直す必要あるということを指し示していることになるので、ここはやはり注意深く考えたほうがよいかなというふうに、宇南山先生の御説明、非常に的確に説明していただき分かりました。また、こちらの説明が至らなかった点はおわび申し上げますけれども、その点についてはちょっと気になったところです。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
ほかに。
宇南山委員、お願いします。
■宇南山委員 今の山田委員からの御説明でおおむね理解したのですけれども、第1点のほうで回帰分析だと性質上よくないというのは、そこは結局のところ、第1・十分位を比較対象にしていると絶対水準を割り込んでしまう可能性があるということと言っていることは同じことだと理解しましたが、違うのでしょうか。つまり、較差を推計するという点では、私はこれで問題のない方法で、それをやると絶対水準を割り込む可能性があることは全く同意しますが、3人世帯と1人世帯の比較をするという観点では、現状のデータと技術的な制約の下ではベストな方法なのだろうと理解しております。
第2点で、過去の方法について間違っていたというのは一大事だというのは全くそのとおりだと思うのですけれども、現実問題として、やはり我々も全知全能の神ではありませんので、既に分かっている欠点を全て解消できるわけではありませんので、ここは今まで気づかなかった部分について改善ができたというふうに素直に捉えることができるのではないか。それに基づいて新しい基準が定められるということは、過去に遡及してという問題ではなく、これからはより精緻の結果に基づく推計ができるようになったと強調して書いて全く問題ないのではないかと理解しています。
■小塩部会長 ありがとうございます。
山田委員、お手が挙がっていますが、いかがでしょうか。
■山田委員 ちょっと議論が錯綜していますけれども、もちろん第1・十分位が本当に参照基準として、いわゆる標準3人世帯がよって立つべき基準としていいかというのはまた議論としては別にあります。退席された阿部委員からも、第1・十分位を本当に比較検討対象としていいのかどうかというのは毎回考えなくてはいけない。繰り返しになりますけれども、水準均衡方式というのは、まず、一般国民生活の何割かで決まっているものですから、それが本当に第1・十分位を使うことでいいのかどうかというのは色々と、本来だったらもっと議論しなくてはいけない。これは私も前の回までに、例えば第1・十分位にどれくらい生活保護基準未満の所得の人が含まれているのかというのを知りたかったわけですけれども、そこは時間制約によって分からなかったと。ただし、もちろん生活保護世帯についてはそこから抜くという作業はきっちりやってはいるわけですけれども、例えばある世帯類型で生活保護基準未満の世帯がどんどん第1・十分位で増えていったら、その分だけその世帯類型の生活保護基準を引き下げるということに、標準3人世帯と丈比べすることで、時には起こり得ますと。
2点目としては、ひょっとしたら私が宇南山先生のお話しになったことをうまく理解できていないのかもしれないのですけれども、制度上、どんどん年金給付水準が引き下がる、標準3人世帯よりも明らかに消費水準が相対比較で下方に引き離されていく集団というのがあるわけです。特に生活保護世帯の中では単身高齢というのは物すごく多いわけです。そういった人たちが今、年金給付水準を引き下げられていく。当然ながら生活扶助相当支出も下がっていくと、標準3人世帯との開き方を、その比率をそのまま回帰分析は正しくてもそれで求めて当てはめるということは、原理的にどんどん標準3人世帯と年金生活者である高齢者の生活扶助基準を引き離していくという方式。推計式が正しかったとしても、そういう方式を取るのと同義ですよと。それはやはり問題があるのではないかということです。年金給付水準が引き下がっていくということは既定なわけですから、そこの点を考えなくてはいけない。だから、推計式が誤りだと申し上げているわけではなくて、その推計式をそういう方向で使うこと自体が年金生活者の、高齢者の生活扶助基準を自動的に引き下げていく方向になってしまう。だから、推計式が間違いというより、その使い方としてこういうことが起こりますよと。それは一般国民生活の6割という基準を設定しようとするときに、この使い方では原理的にどんどん引き下がっていくのにいいのですかね、ということを申し上げました。すみません。さらに混乱させるような説明だったらあらかじめおわび申し上げますけれども、説明の真意はそういうことになります。
■小塩部会長 宇南山委員、お手が挙がっていますので、お願いいたします。
■宇南山委員 ありがとうございます。状況は理解したのですけれども、ただ、そこには暗黙のうちに年金の水準が下がっていることが、標準世帯と比べて非常に経済状況が悪化しているという大前提が置かれているということと、年金が減額されると高齢者の生活水準が下がるということも前提になっているように思います。どちらももちろんありえる想定ですが、そういうことが起こっているかを検証していませんし、起こっていないということも検証していない。可能性として、特定の世帯が他の世帯と比べ生活状況が悪化したというようなことがあったとしたら、その人たちの平均を使って回帰分析をしてしまうというのは、本来の目的と違った使い方になってしまうのだろうというのはよく理解します。しかし、ここで今回推計した高齢者の結果がそういう問題によって引き起こされているという証拠もないですし、今回の部会でそういうことを議論したわけでもありません。手法として常に特定の世帯に不利になるという性質を持っているわけではなくて、どういうタイプの世帯に固有のショックが発生するかということにかかっています。その意味では、それがバイアスかいうと、事前には想定できないという意味でバイアスではありません。こういう見方をしたら今回の結果はゆがんだものだということを言うことはあり得て、全国家計構造調査だけでは分からない、こんな情報を私は持っていて、それによればきっとこういうバイアスがあるはずだというのはもちろん色々な研究者が色々言うことは非常に重要だと思います。しかし、手法的にこの手法だと高齢者に必ず不利になってしまうというような記述はぜひとも避けていただきたいと思います。
まとめますと、今回の結果に関して、この方法だと高齢者の生活水準が固有に下がっている現状の下では偏った結果ではないのかという問題提起があるというのであれば、それは研究者としての見解として尊重しますけれども、推計方法そのものに大きな瑕疵があるというような書き方は避けていただきたいと思います。
以上です。
■小塩部会長 山田委員、お手が挙がっていますが、いかがですか。
■山田委員 ありがとうございます。証拠がないのではないかということなのですけれども、実は生活扶助基準未満の所得水準の高齢者がこの後も増えてくるという精緻なシミュレーションは、マイクロシミュレーションを用いたもので、稲垣誠一氏がやっておられる研究があるということです。これは未婚化・単身化によって、また非正規雇用が増えていることによっても年金給付水準がどんどん落ちていく。それを反映して生活保護基準未満の所得しか持っていない高齢者がどんどん増えるというシミュレーションが既にあって、それを念頭にお話ししているところです。ですから、研究がない中で私が勝手に申し上げているかというと、そうではないということです。
今、高齢者の話をしましたけれども、それ以外にも、例えば若年単身で非正規で働いている人たちが増えれば、そういった相対的に消費水準の低い人たちを、繰り返しになりますが、推計式としては間違えていなかったとしても、手法としてそれを機械的に当てはめていくとそういう問題があるというのは気をつけなくてはいけないということで、推計式に瑕疵があるということを強調するのではなくて、推計法式を当てはめて最低生活水準を設定するということ自体について非常に気をつけなくてはいけない。それは原理的にそういう問題があるから、そういった趣旨でお話ししたところです。
繰り返しになりますけれども、私の説明不足とか説明の至らなさで何か混乱なり誤解を招きましたら、あらかじめおわび申し上げます。
■小塩部会長 ありがとうございます。今、お二人の間で推計の方法について御議論いただいたのですけれども、これは私の個人的な印象なのですが、お二人の間にそんなに大きなお考えの差はないのではないかなという気がするのです。手法自体は淡々と我々は客観的に回帰式を推計して、場合によっては消費水準の較差が年齢間である。これを見つけるということ自体は重要な作業だと思うのです。それが1つ。ただ、それを見て直ちに機械的に乱暴にこれで基準を設定したりするということは、私たちは現在の報告書でもそれはちょっとまずいですよということを強調して書いていますので、解釈の仕方、あるいは政策にどういうふうに反映させるかという点については別途重要な議論が必要であるということ、そういうすみ分けはお二人の間でも共通しているのではないかなと思います。
栃本委員から御意見があるようですけれども、いかがでしょうか。
■栃本部会長代理 ありがとうございます。非常に活発な意見交換ができてとてもいいと思いますし、また、最終報告の報告書をよりいいものにしていくための御意見が多く出ていますので、大変ありがたいことだと思っています。また、これからその文章については部会長の下で今日の議論を踏まえて検討していくと思いますけれども、今回の部会、透明性が大変高くなったことと、事務局が委員の方々のリクエスト、テクニカルなアドバイス、また疑念であるとか疑問に対して、私は横から見ていて極めて誠実に対応されたと思います。統計データをつくっていく作業もされました。それらが資料などを含めて繰り返し手直しされて、よいものにしてくださっているというプロセスを間近で拝見し、前回の意見書も大変重要なもの、立派なものだったのですけれども、今回より透明性、説明力が高まった報告書になったと思います。
また、こういう形で公開の場で繰り返し統計上のテクニカルなことを含めて、今日もそうですけれども、真摯に議論がされたということは大変な成果であると思いますし、先ほどの宇南山先生と山田先生の議論など、公開の場で大変真摯な議論がおこなわれたということで、色々な情報、議論などが皆で共有されたということで大変すばらしいと思いました。
先ほど部会長から、機械的な当てはめについては何か所も何か所もそういうことは考えなければいけないということの指摘がありましたし、報告書でも述べているとおりです。また、報告書にあるように、様々な委員の方々の御提案によって、25ページ以降に先ほどのテストということが行われ、その結果、より精緻化されたデータを提示できたことは大きな成果であると思います。そういう意味では、事務局やそれぞれの委員の御発言に感謝したいと思います。
あともう一つ、先ほど阿部先生や岡部先生から2つのやり方についての議論がありました。これは2つの手法について正式に基準部会として報告がなされることになりました。基準部会として行政の中でアジェンダとして検討し、俎上にのったということは、生活保護制度の歴史といいますか、基準というものを考える際に極めて大きな、大変重要な一歩だったと思います。これは前回検証を終えて、その際の新たな検証手法についてきちんと検討すべきだという御指摘を踏まえて、今日御出席の先生方も委員になられてそのような作業をしていただいたものを今回基準部会で取り上げて検討したということであって、生活保護制度の歴史といいますか、基準というものを考える際の大局的な歴史からいいますと、大変大きな一歩であると思います。
ちょっと長く話しましたけれども、以上です。
■小塩部会長 栃本委員、どうもありがとうございました。
ほかに追加で御意見、コメントはございますでしょうか。よろしいですか。
岡部委員、それから山田委員からお手が挙がっておりますので、まず岡部委員からお願いいたします。
■岡部委員 栃本部会長代理から大所高所からお話しいただき私も了承致します。その上で、今、宇南山委員、山田委員の御意見、また先ほど阿部委員からもお話がありましたが、生活保護基準の算定方式に関して、どういう手法で算定していくかということについて、それぞれの時代背景の中でどのような算定方式が望ましいかを検討されてきた経緯があります。
前回お話ししましたように、昭和23年8月第8次改定でマーケット・バスケット方式を導入し生活保護基準が科学的・客観的に算定する方式へ、それから、高度経済成長を背景にしながら昭和36年度エンゲル方式、昭和40年度格差縮小方式に、そして低成長下にある昭和59 年度から水準均等方式を導入して現在に至っています。これについて経済や雇用等の環境が変化する中で、どの程度の賃金水準、消費水準であるかを背景にし、健康で文化的な生活、憲法25条の規範的な概念を生活保護基準に落とし込んできたことになります。そこで山田委員等がおっしゃっている第1・十分位の取扱いをどう考えるか、そこでの見合いで一般の低所得世帯と生活保護の基準で考えていくか、この点、現在は水準均衡方式で行っていますので、検証を慎重に行うべきとのことで、技術的・専門的なお話をされたのだと思います。
これは宇南山委員がおっしゃっているように、この方式で行うとこうなるのだということと、これはこれでよいかがあると思います。経済的な状況や消費の動向等を考えたときに、配慮しながら、山田委員がミッションという言い方をされましたが、基準がミッションにかなっているかどうか慎重にすべきだという御意見だったと思います。
私自身としては、部会長が委員の方々と違ったことをおっしゃっていないと思いますので、最終的に報告書の中でどのように表現されるかということになります。これは新保委員がおっしゃっていたように、生活保護基準は生活保護の受給者だけではなくて、色々な制度に影響を与えます。この辺りのところは、山田委員がおっしゃっていたことをできる限り反映をする方向で、かつ宇南山委員がおっしゃっていたこれまで行ってきたことについての評価もしながら、どういうふうにふうにのように報告書に落とし込んでいくのかを考えていただけるのではないかと思っています。
これは本筋の話ではないのですけれども、私としては栃本部会長代理のお話を受けて、私はそれぞれの算定方式は、国民生活の最低限を保障するという有効性をどのように担保していくかということを背景として出てきますので、それは山田委員がおっしゃっていたミッションという言葉にも関わってくると思っております。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
続きまして、山田委員、お願いいたします。
■山田委員 部会の運営の在り方について、部会長代理からも大所高所からのお話がありました。今回、前回阿部先生がおっしゃったように、ほぼZoom参加しか選択できなかったということで、前回の検証のときには、例えば部会が終わった後に記者が細かい点について委員に発言内容を確認したりとか、委員同士で意見交換をするという、そうした場が実際にはあって、それはある程度有効に機能していたと思います。もちろんコロナ禍というのもありますけれども、ほかの部会の開催状況を見てみますと対面参加もある中で、全てZoom参加というのがよかったかどうかは、次回とか何かまた状況が変わっているかもしれませんけれども、少しそれは考えていただきたいというのが1点目。
2点目については、事務局におかれても膨大な推計作業、重ねて御礼申し上げます。その上で、もう少しやはり推計について議論を重ねる場として、前回は作業班を設けていたのですけれども、作業班というのがあったら、ぎりぎりになって前回の報告書に入っていた参考資料2のようなものが出てくるようなことはなかったと、もうちょっと早目に色々な軌道修正なり何なりが図れた可能性はあったということで、そういった意味で、コロナ禍という特殊な状況で集まるのが難しいという御判断かもしれませんけれども、その長所と短所も含め、作業班を前回置いていたけれども今回置かなかったということについては、もう少し細かい推計方式とか分析対象サンプルに委員がもっと関与していく必要もミッションとしては必要だったかもしれないと思いました。その2点になります。
以上です。
■小塩部会長 この点につきまして、私からお答え申し上げます。まず、Zoom開催なのですけれども、これは皆さんに御不便をおかけしたというのは御指摘のとおりです。ただ、私も幾つかの審議会に関係しておりますけれども、大体オンラインでやるというのが普通で、たまにハイブリッドでやる場合もありますけれども、コロナの問題がありますので、オンラインでの開催というのはやむを得ないかなと思っています。これが1つです。
それからもう一つ、作業部会のお話がございました。前回は作業部会を設けて議論していただいたのですけれども、今回は全てのテーマについて全員参加で議論していただくというのを重視いたしました。会議を開催する前に打合せもさせていただいて、全ての人が情報を共有して、できるだけ透明な形で議論するということをいたしました。もちろん時間的な制約がございましたので、具体的な非常に細かい作業はなかなか難しかったというのはそのとおりかもしれないですけれども、できるだけ皆さんで共有して議論を進めて、できるだけ透明な形でというのに重きを置いて運営したということでございます。
前回、私は作業部会に入っていなかったので、やはりみんなで情報は共有したほうがいいかなという考えは個人的に持っていますが、それは別といたしまして、今回はそういう工夫をさせていただいたという点でございます。よろしいですか。
事務局サイドからもよろしいですか。
ということで、皆さんから非常に多くの貴重な御意見を頂戴いたしました。今日、委員の方々の御議論を伺っている限りにおきましては、もちろん細部で調整する必要はございますけれども、この報告書案に今日いただいた多くの御意見を踏まえて必要な修正を行うということで御賛同いただけるのではないかなと私は思います。本日いただいた御意見を踏まえて、報告書にどういうふうに反映させるかという点につきましては、誠に僣越ではございますが、私、部会長に一任していただければと思うのですけれども、いかがでしょうか。
山田委員、いかがですか。お手が挙がっています。
■山田委員 もちろんその方向でよいとは思うのですが、やはり前回もコメントしたことが、もちろん私の説明ぶりがいけなかったのもあるのですけれども、ちょっと違ったように書き込まれたりしているということについては何らかの意見を述べる場が、事実誤認に関してのみは受け付けるという形に、もしくはこんな発言はしていません、ちょっと発言の趣旨と違う、ということを述べる機会はあったほうがよいのではないかと思います。最終的には部会長預かりということについて、もちろん賛成なのですけれども、必ずしも趣旨がうまく伝わっていない箇所とか、もしくは表現ぶりが伝えられていない箇所については微修正の機会が、例えば今回、阿部委員も半ばで退席しましたし、そういった場は必要ではないかと思います。もちろんお任せしますけれども、その可能性について部会長に探っていただければと思います。これはあくまでもお願い、希望でございます。最終的には部会長の御判断だと思います。
以上です。
■小塩部会長 承知いたしました。
岡部委員もお手が挙がっています。
■岡部委員 私も山田委員と同様の意見です。これはこれだけ多くの意見が出ておりますので、この意見をどのように反映していただいているのかどうかについては、そのことを確認する機会をぜひつくっていただきたいと考えます。部会長、部会長代理にそのことを要望して一任させていただきます。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。本日いただきました御意見につきましては、私も十分尊重して文章に反映したいと思います。
それから、修正後のものについてということですけれども、これは委員の方々にもお見せすることにいたします。ただ、修正内容につきましては、今日いただいた御意見を踏まえて私のほうで考えさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
事務局からいかがですか。
■安西社会・援護局保護課長補佐 活発な御議論を賜り、誠にありがとうございました。
それでは、今回の生活保護基準部会の議論を終えるに当たりまして、局長の川又から御挨拶を申し上げます。
■川又社会・援護局長 社会・援護局長の川又でございます。事務局を代表いたしまして御礼を申し上げます。
昨年から本日に至るまで、委員の先生方におかれましては大変精力的に御議論いただきまして本当にありがとうございました。また、この間、何人かの委員の先生から御指摘がありましたが、コロナ禍においてオンラインの開催ということになりまして、様々な御不便をおかけすることになったことにつきましては、事務局としてもおわびを申し上げます。
今後、政府として具体的な生活保護基準の検討を進めることになりますけれども、この検証結果、それから盛り込まれている留意事項を十分に考慮いたしまして、現下の社会経済情勢も踏まえつつ、対応してまいりたいと考えております。
部会長の小塩先生、部会長代理の栃本先生をはじめ、委員の皆様方に改めて御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
■小塩部会長 ありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、今回の生活保護基準部会における審議は終了させていただきます。委員の皆様におかれましては、昨年4月から大変精力的に御議論いただきました。厚くお礼申し上げます。誠にありがとうございました。