2022年11月8日 第182回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年11月8日(火) 15:00~17:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

公益代表委員
荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、藤村委員
労働者代表委員
大崎委員、川野委員、東矢委員、冨髙委員、八野委員、世永委員
使用者代表委員
池田委員、鬼村委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、鳥澤委員、兵藤委員、山内委員
事務局
鈴木労働基準局長、松原労働条件政策課長、益原労働関係法専門官、木原労働条件政策課課長補佐、長澤労働条件企画専門官

議題

  1. 労働時間制度について

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第182回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日の分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施をいたします。
 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の佐藤厚委員、水島郁子委員、両角道代委員、労働者代表の北野眞一委員、櫻田あすか委員が御欠席と承っております。
 カメラ撮りは、ここまでということでお願いします。
 本日の議事に入りたいと思います。
 本日の議題は、「労働時間制度について」です。この労働時間制度について、大きく資料1と資料2の2つに分かれておりますけれども、まず、資料1関係の労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保について、事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。
 まず、資料1-1を御覧ください。こちらは労働時間制度に関する検討の論点についてでございます。
 1ページ目を御覧ください。こちらは、これまでお示しさせていただきました論点でございますけれども、本日は、このうち、2の裁量労働制についての「労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保」について御議論いただきたいと思ってございます。
 2ページ目を御覧ください。2ページ目、3ページ目は、この論点に関してさらに詳細にした論点でございまして、大きく3つの項目がございます。1つ目の項目が労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上、2つ目の項目が苦情処理措置、3つ目の項目が、次のページでございますけれども、行政の関与・記録の保存等となってございます。それぞれ説明させていただきます。
 2ページ目にお戻りください。まず、労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上でございます。こちらは、細かく4点ございます。1点目でございますけれども、使用者は労使協議の当事者に対し、裁量労働制の実施状況や賃金・評価制度の運用実態等を明らかにすることや、労使協議の当事者は当該実態等を参考にしながら協議し、みなし労働時間の設定や処遇の確保について制度の趣旨に沿った運用になっていないと考えられる等の場合には、これらの事項や対象労働者の範囲、業務量等を見直す必要があること等を明確にすることが適当ではないか。2点目でございますけれども、企画型について、労使委員会委員に対し、決議の内容を指針に適合したものにするよう促すとともに、指針の趣旨の正しい理解を促す観点から、行政官庁が委員に対し適切に働きかけを行うことも考えられるのではないか。3点目といたしまして、専門型においても、労使委員会の活用を促していくことが適当ではないか。最後、4点目でございます。過半数代表者や労使委員会の労働者側委員の選出手続の適正化、過半数代表者等に関する好事例の収集・普及を行うことが適当ではないか。併せて、労使委員会の実効性向上のための留意点を示すことが適当ではないか。この4点となってございます。
 次に、苦情処理措置について2点ございます。まず、1点目でございますけれども、苦情処理措置については、本人同意を取る際の事前説明時等に苦情申出の方法等を積極的に対象労働者に伝えることが望ましいことを示すことが適当ではないか。2点目といたしまして、例えば、労使委員会に苦情処理窓口としての役割を担わせるなど、労使委員会を通じた解決が図られるようにすることや、苦情に至らないような内容についても幅広く相談できるような体制を整備することを企業に求めることが適当ではないか。この2点となってございます。
 おめくりいただきまして、3ページ目でございます。行政の関与・記録の保存等に関しては、3点ございます。1点目といたしまして、企画型が制度として定着してきたことを踏まえ、現行では6か月以内ごとに1回行わなければならないこととされている定期報告について、その負担を減らすことが適当ではないか。2点目といたしまして、その際、行政による監督指導に支障が生じないよう、健康・福祉確保措置の実施状況に関する書類の保存を義務付けることが適当ではないか。3点目でございますけれども、手続の簡素化の観点から、企画型の労使委員会決議・専門型の労使協定の本社一括届出を認めることが適当ではないか。この3点となってございます。
 次に、資料1-2を御覧ください。こちらは、今説明いたしました本日ご議論いただきたい論点に関する制度の概要をまとめたものとなってございます。
 まず、3ページ目は、これまでもお示しさせていただいてございました裁量労働制の概要でございますので、説明は割愛させていただきます。
 4ページ目を御覧ください。こちらが、労使協定・労使委員会についてでございます。まず、制度の導入に当たって、専門業務型裁量労働制では、労使協定の締結と労働基準監督署への届出が求められておりまして、ここにございます①から⑦が協定事項となってございます。真ん中の企画業務型裁量労働制におきましては、5分の4以上の多数決による労使委員会の決議と労働基準監督署への届出が求められてございまして、ここにございます①から⑧が決議事項となってございます。高度プロフェッショナル制度におきましては、5分の4以上の多数決による労使委員会の決議と労働基準監督署への届出が求められてございまして、ここにございます①から⑬が決議事項となってございます。また、企画業務型裁量労働制、高度プロフェッショナル制度ともに、指針におきまして、使用者が対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更しようとする場合にあっては労使委員会に対し事前に変更内容の説明をするものとすることを決議することが望ましいこととされてございます。協定または決議の有効期間でございますけれども、専門業務型裁量労働制及び企画業務型裁量労働制におきましては、通達で3年以内とすることが望ましいとされてございます。高度プロフェッショナル制度につきましては、指針で1年とすることが望ましいとされてございます。また、専門業務型裁量労働制の労使協定、企画業務型裁量労働制及び高度プロフェッショナル制度の労使委員会決議については、いずれも労働者に周知することと、5年間(当分の間は3年間)保存することが求められてございます。
 次のページを御覧ください。次に、労使協定や労使委員会の当事者についてでございます。専門業務型裁量労働制の労使協定は、使用者と過半数労働組合又は労働者の過半数を代表する者が当事者となってございまして、この過半数代表者の要件として、管理監督者でないことや使用者の意向に基づき選出された者でないことなどが求められてございます。また、使用者は、過半数代表者が労使協定等に関する事務を円滑に遂行することができるような必要な配慮を行わなければならないこととされてございます。真ん中の企画業務型裁量労働制及び一番右の高度プロフェッショナル制度における労使委員会につきましては、使側委員が使用者を代表する者、労側委員が過半数労働組合又は過半数代表者より指名を受けた労働者を代表する者となってございます。また、企画業務型裁量労働制、高度プロフェッショナル制度ともに、通達あるいは指針におきまして、労使各1名で構成される委員会は労使委員会として認められないこととされてございます。労使委員会の開催頻度につきましては、企画業務型裁量労働制では少なくとも1年に2回と通達で示されてございます。高度プロフェッショナル制度におきましては、指針におきまして少なくとも6か月に1回とされてございます。
 次のページを御覧ください。こちらが労使委員会の運営規程についてでございます。企画業務型裁量労働制、高度プロフェッショナル制度ともに、労使委員会の運営規程を定めることが求められてございます。また、労使委員会の議事録に関しましては、開催の都度作成し、5年間(当分の間は3年間)保存するとともに、労働者に対して周知することが求められてございます。また、企画業務型裁量労働制、高度プロフェッショナル制度ともに、指針におきまして、労使委員会決議が適切に行われるため、使用者は、労使委員会に対し、労使委員会が決議のための調査審議をする場合には、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容などを開示することが適当であることに留意することが必要などとされてございます。加えまして、同じく指針におきまして、使用者及び労使委員会委員は、使用者が開示すべき情報の範囲など、必要な事項を運営規程で定めておくことが適当であることに留意することが必要などとされてございます。また、高度プロフェッショナル制度の指針におきましては、この使用者が開示すべき情報の範囲を定めるに当たっては、健康管理時間の状況や休日確保措置の実施状況に関し使用者が開示すべき情報の範囲について、対象労働者全体の平均値だけではなく、その分布を示すなど、対象労働者の個別の状況が明らかになるものとすることが適当とされてございます。下の点線の枠囲みでございますけれども、こちらは本分科会に示されました平成29年の働き方改革関連法案要綱のうち、企画業務型裁量労働制の労使委員会委員に関する事項の抜粋でございます。御参考でございます。
 次のページを御覧ください。次に、苦情処理措置についてでございます。専門業務型裁量労働制は労使協定におきまして、企画業務型裁量労働制及び高度プロフェッショナル制度は労使委員会決議におきまして、苦情処理措置について労使協定または労使委員会決議が必要とされてございます。また、企画業務型裁量労働制、高度プロフェッショナル制度ともに、指針におきまして、一番上の黒ポツにございますように、苦情の申出の窓口及び担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順・方法等その具体的内容を明らかにすることが必要であるということや、一番下の黒ポツにございますように、使用者は、労使委員会委員が制度の実施状況に関する情報を十分に把握するため、労使委員会に対し、苦情処理措置の実施状況を開示することが適当であることに留意することが必要などとされてございます。専門業務型裁量労働制におきましては、通達におきまして、苦情処理措置の具体的な内容については、企画業務型裁量労働制と同等のものとすることが望ましいことが示されてございます。
 次のページを御覧ください。最後に、行政の関与・記録の保存等についてでございます。専門業務型裁量労働制におきましては、労使協定を労働基準監督署に届け出なければならないこととされてございまして、届出義務違反の場合の罰則が設けられてございます。また、使用者は、労働時間の状況と講じた健康・福祉確保措置等に関する労働者ごとの記録を、労使協定の有効期間中及び有効期間満了後5年間(当分の間は3年間)保存することを労使協定において定めることが必要とされてございます。真ん中の企画業務型裁量労働制につきましては、労使委員会決議を労働基準監督署に届け出ることで、労働時間をみなす効果が生じることとされてございます。また、使用者は、決議後6か月以内に1回、及びその後1年以内ごとに1回(当分の間、6か月以内ごとに1回)、労働時間の状況などを労働基準監督署に報告しなければならないこととされてございます。また、使用者は労働時間の状況と講じた健康・福祉確保措置等に関する労働者ごとの記録を労使委員会決議の有効期間中及び有効期間満了後5年間(当分の間は3年間)保存することを労使委員会で決議することが必要とされてございます。労使委員会の議事録の作成・保存につきましては、先ほど御説明したとおりでございます。一番右の高度プロフェッショナル制度におきましては、労使委員会決議を労働基準監督署に届け出ることで、対象労働者に対する労働基準法に定める労働時間等に関する規定の適用除外の効果が生じることとされてございます。また、使用者は、同意や撤回等に関する労働者ごとの記録などを労使委員会決議の有効期間中及び有効期間満了後5年間(当分の間は3年間)保存することについて、労使委員会で決議することが必要とされてございます。労使委員会の議事録の作成・保存については、先ほど御説明したとおりでございます。下の点線の枠囲みは、平成27年の労働政策審議会の建議において、企画業務型裁量労働制に関して、届出、定期報告、記録の保存等について触れられている箇所の抜粋でございます。御参考でございます。
 9ページ目以降は、参照条文でございますので適宜御参照いただければと思います。
 最後に、資料1-3を御覧ください。こちらは、本日御議論いただく論点に関するデータをまとめたものとなってございまして、目次を御覧いただきますと、大きく労使協定・労使委員会関係と苦情処理措置関係に分かれてございます。
 それでは、早速、3ページ目を御覧ください。こちらの上の表が、労使委員会の労働者側委員の指名方法についてでございます。専門型につきましては、労使委員会の設置が求められていませんので、労使委員会の人数などについて回答があった事業場を自主的に労使委員会を設置・決議をしている事業場とみなして集計しておりまして、そういった事業場が12.1%ございました。そういった事業場を母数とした場合でございますけれども、「労働組合による指名」が49.6%、「労働者の過半数代表者による指名」が40.4%、「使用者による指名」が3.8%などとなってございます。下の企画型でございますけれども、「労働組合による指名」が57.3%、「労働者の過半数代表者による指名」が33.2%、「使用者による指名」が2.7%などとなってございます。下のグラフでございますが、こちらは平成30年度に開催されました労使委員会の議題についてでございまして、青が専門型、赤が企画型でございますが、このいずれにつきましても、「勤務状況や措置の実施状況の記録・保存」や「健康・福祉確保措置」が比較的多くなってございます。
 次のページを御覧ください。こちらが、労使委員会の労働者側委員の指名方法について事業場規模別に見たものでございます。上の専門型は参考でございますので、下の企画型のところを御覧いただきますと、事業場規模が大きい方が「労働組合による指名」と回答する割合が大きい傾向にございますけれども、いずれの規模におきましても「労働組合による指名」という回答が最も多くなってございます。
 次のページを御覧ください。こちらは、労使委員会の労働者側委員の指名方法について労働組合の有無別に見たものでございます。ここで、労働組合の有無につきましては、事業場の過半数で組織されているものについて回答を得たものでございます。これも下の企画型を御覧いただければと思いますけれども、労働組合がある場合には、「労働組合による指名」が88.1%、「過半数代表者による指名」が9.5%、「使用者による指名」が0.9%となってございます。労働組合がない場合におきましては、「労働組合による指名」が1.4%、「過半数代表者による指名」が76.2%、「使用者による指名」が6.1%となってございます。
 次のページを御覧ください。次に、労使委員会の平成30年度の開催頻度について事業場規模別に見たものでございます。これも、下の企画型を御覧いただきますと、いずれの規模におきましても「2回」という回答が多くなってございます。
 次のページを御覧ください。こちらは、労使委員会が十分に機能していると思うかという質問について、「そう思う」、「どちらかと言えばそう思う」と回答した企画型の適用労働者が、それぞれ24.1%あるいは28.2%いらっしゃいました。これらの回答について、「労使委員会の実効性がある」として、それ以外の回答を「労使委員会の実効性がない」としてまとめた上で、裁量労働制の適用労働者について、労使委員会の実効性は1週当たりの労働時間が60時間以上あるいは50時間以上となる確率に与える影響があるかについて分析を行ったものが下の表でございます。分析といたしましては、こちらは企画型でございますけれども、労使委員会の実効性がある場合には、1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率が半分以上低くなり、50時間以上となる確率も低くなっている結果となりました。
 次のページを御覧ください。こちらは、同様のまとめ方をした上で、労使委員会の実効性が健康状態を「あまりよくない」、「よくない」と答える確率に与える影響について分析を行ったものでございます。こちらの分析によりますと、労使委員会の実効性がある場合には、健康状態を「あまりよくない」、「よくない」と答える確率が低くなっている結果となりました。
 次のページを御覧ください。こちらも、同様のまとめ方をした上で、労使委員会の実効性が「仕事の疲労感」や「時間に追われる感覚」などのメンタルヘルスに与える影響があるかについて分析を行ったものでございます。この分析によりますと、労使委員会の実効性がある場合には、ここにございますメンタルヘルスに係る全ての項目について、「よくある」、「ときどきある」と答える確率が低くなっているという結果となってございます。
 次のページを御覧ください。これ以降が、苦情処理措置に関するデータでございます。
 11ページ目を御覧ください。事業場に設けられている裁量労働制における苦情処理措置について、事業場に尋ねたものでございます。専門型、企画型いずれにおきましても、「人事担当部署等に相談窓口を設置」や「上司への申出」が多くなってございます。また、このほか、企画型におきましては、「労働組合が相談窓口を設置」が41.2%、「労使委員会に相談窓口を設置」が27.4%などとなってございます。
 12ページ目を御覧ください。こちらは、苦情処理措置の認知状況などについてでございます。「苦情処理措置を知っている」という労働者が専門型で43.6%、企画型で65.3%となってございます。これらの労働者に対して、平成30年度の苦情の申出有無について尋ねたものが右のグラフでございまして、専門型で2.1%、企画型で1.3%が「ある」と答えてございます。
 次のページを御覧ください。先ほどのページの調査で、平成30年度の苦情の申出があると回答した労働者を分母とした苦情の内容別の割合を見たものでございます。専門型におきましては、「業務量が過大である」、「賃金などの処遇が悪い」、「人事評価が不適切である」が多くなってございます。企画型におきましては、「業務量が過大である」、「労働時間が長い」、「みなし労働時間の設定が不適切である」が多くなってございます。
 資料の説明につきましては、以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま事務局から説明がありました労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保について、委員の皆様より、御質問、御意見があれば、お伺いしたいと思います。なお、オンライン参加の委員の皆様におかれましては、発言の希望がある場合には、チャット機能に発言希望と書き込んでお知らせください。いかがでしょうか。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 私からは、労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上について、2点ほど意見と質問がございます。
 まず、1点目でございますけれども、今回、論点の中に、専門型においても労使委員会の活用を促していくことが適当ではないかというところがございました。先ほど御説明の中にもございましたけれども、現在、専門型につきまして、労使協定があれば導入可能となってございます。導入後に協定に沿った運用がなされているかどうかというところが実効性に関わってくるかと思いますけれども、そのチェック機能を働かせるという意味で申し上げると、労使委員会のように定期的に労使で制度のPDCAをしっかり確認していくような仕組みが必要ではないかと考えております。今のように、協定さえ締結すればその後の運用状況の確認は特に求められていないという形ですと、専門型は1週間の実労働時間が60時間以上となっている者が企画型に比べて多く、深夜や休日労働を行っている者の割合が高いという実態もございます。やはり現状の把握、課題をしっかり労使で協議を尽くすことが重要と考えておりますので、労使委員会のような常設の機関において運用状況をきちんと確認する仕組みは必要と考えております。
 次に、1点、質問なのですけれども、労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上の部分で、2つ目のポツのところで、行政官庁が労使委員会委員に対し適切に働きかけを行うことも考えられるのではないかとございますけれども、具体的なイメージがあれば教えていただきたいと思います。
○荒木分科会長 それでは、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。冨髙委員の質問に対しまして、お答え申し上げます。
 御指摘の部分でございますけれども、まず現行の指針自体も労使委員会委員のためにつくられたものでございまして、これを遵守することを求めていくことになっております。これまでの経緯もございまして、この行政官庁が委員に対して働きかけを行うというところにつきましては、働き方改革関連法案要綱をお示しした際には、法改正により、労使委員会委員に対し助言・指導を行政官庁が行うことができるという規定を設けようということが考えられていたところでございます。これは当時様々な御議論があった結果でございますけれども、先般の検討会におきましてもこの点につき様々な御議論がございまして、労使自治に対する行政の介入をどこまでやるべきなのかということ等も御議論もいただき、「行政官庁が委員に対し適切に働きかけを行うことも考えられるのではないか」という言い方の論点にしています。
 以上でございます。
○荒木分科会長 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 我々も労使自治は重要だと思っておりまして、制度趣旨に沿った決議がなされ、また、制度趣旨に沿った適正な運用ができるというところが裁量労働制の大原則だと考えております。そのことは、まずは労使が議論を尽くしてきちんと決めていくことが大前提と思っております。具体的に、みなし労働時間の設定や処遇の確保について、制度の趣旨に沿った運用になっていないと考えられる場合などもありますので、どのような場合が制度の趣旨に沿っていないのかというところも含めて、何らかの目安のようなものを示して労使の協議を促すということが重要であり、特に労働組合がない組織等への行政の支援が求められるのではないかと考えているところでございます。その上で、適正な運用となっていない事案が見られるのであれば、行政から企業に対して指導監督するべきと考えております。先ほど申し上げたように、専門型においても労使委員会のような仕組みを作って運用状況を確認することが必要だと思っておりますけれども、法の潜脱的な運用がなされないためにも、制度導入後の適正運用を担保する仕組みはしっかりと作っていくべきではないかと考えております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 オンラインから、5名ほど希望が出ておりますので、お願いしたいと思います。
 兵藤委員、お願いします。
○兵藤委員 ありがとうございます。兵藤でございます。
 私からも、労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上の項目についてでございます。ポツの4つ目に該当するかと思いますが、過半数代表者や労使委員会委員の選出手続の適正化や労使委員会の実効性の向上について、お願いということで申し上げたいと思います。
 資料1-3の4ページ、5ページを見ますと、労使委員会の労働者側委員の指名方法について、特に企業規模が小さい場合や労働組合がない場合には、使用者による指名の割合が高まっております。言うまでもなく、労使委員会委員や過半数代表の選出手続の適正化は重要だと思います。資料1-1に記載のとおり、厚生労働省におかれましては、好事例の収集・普及をぜひともお願いしたいと思います。
 また、労使委員会の実効性の向上のための留意点を示すことについても、ぜひお願いしたいと思います。一般的には、各社の労使が他社の労使委員会での議論の模様などに関する情報に触れる機会はありませんので、実効性の高い運用をされている企業労使の例を参考に、分かりやすい留意点をお示しいただければありがたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、池田委員、お願いします。
○池田委員 御指名をありがとうございます。御説明も、どうもありがとうございました。
 私からは、労使委員会での制度の運用状況のモニタリングについて意見を申し上げたいと思います。
 言うまでもなく、みなし労働時間の設定や処遇の確保等について制度趣旨に沿った運用がなされることは重要でありますが、一方で、賃金・処遇制度の運用状況についての情報をどこまで開示するかについては、慎重に議論すべきと考えています。一般に、賃金・処遇制度を設計するあるいは見直す場合には、労使で協議し、労働協約や就業規則の締結、見直しを行いますが、制度運用時の個別の人事評価や昇給査定等に関しては、会社の専権事項であります。実際、多くの会社では、人事評価結果について、個人ごとはもとより、分布であっても組合等に公表していないのではないかと思います。裁判所も賃金制度の新設・変更に対しては、就業規則の不利益変更法理などによって厳格な司法判断を行いますが、評価については、不当労働行為等など差別事案を除いて、企業の裁量を広く認めていただいていると理解しています。また、特に裁量労働制適用者が少ない事業場においては、分布の公表であっても、実際上、個人の情報が分かってしまうことも懸念しています。労使で十分話し合うことが重要で、労使委員会が運用状況等のモニタリング機能を担う企業労使があってよいとは思いますが、9月27日の分科会でも申し上げたとおり、開示情報を一律に決めるのではなく、開示が推奨される情報の例を示すなど、各企業の実態に合った話し合いを促進するようなことを考えていただければと思います。
 私からは、以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 御指名をありがとうございます。
 私から、労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保という部分の苦情処理措置について、1つ意見を申し上げたいと思います。苦情処理窓口・苦情処理制度の周知という部分の2つ目のものに該当すると思いますけれども、労使委員会に苦情処理窓口としての役割を担わせ、労使委員会を通じた解決が図られるようにすることが適当ではないかという御指摘がございますけれども、これは慎重に考えるべきではないかと感じております。まずもって、労使委員会は常設機関ではあるものの、実際には、例えば、計6名の労使各側委員が、苦情の都度、タイムリーに参集して議論をすることは難しく、対応のスピード感の観点でも問題があろうかと思います。また、こちらのほうがポイントかと思いますが、苦情を申し出る労働者の中には、使用者ではなくて、労働組合あるいは過半数代表者、労使委員会の労側委員にだけ相談をしたいと考える方もいらっしゃるのではないかと思われます。労使各側委員から成る労使委員会を窓口とすることで、かえって苦情を申し出にくいという状況になってしまうのではないかということを懸念しております。企業によっては労使委員会が苦情処理窓口を担っている場合もございまして、これを否定するものではもちろんございませんが、タイムリーな相談対応や相談しやすい相談体制を考えますと、一律に労使委員会に苦情処理等の問題解決機能に担わせることの義務化は現実的ではないのではないかと考えます。また、人事部や労働組合等が窓口を担いつつ、苦情の内容と対応した内容を最終的に労使委員会で共有して、各種制度の運用や制度の見直しについての話し合いにつなげるということは十分に考えられますが、そうした場合でも、先ほど申し上げた懸念のとおり、情報の取扱いには十分な留意が必要であるとは思います。むしろ、資料1-3の12ページにございましたけれども、適用労働者のうち、専門型で約50%、企画型で約30%の方が、苦情処理措置を知らないと回答している実態がむしろ問題であって、論点にもご記載のとおり、適用者の方への事前説明の際に、苦情処理措置に関する詳細を説明するように促す等、一層の周知徹底を図っていくことが重要だと考えております。
 私からは、以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、山内委員、お願いいたします。
○山内委員 御指名をありがとうございます。
 私からも、同じように、資料1-1の3ページ、論点のマル2のところ、行政の関与・記録の保存等の部分について、意見を申し上げたいと思います。御説明いただいたとおり、企画型の場合、労働時間の状況や健康・福祉確保措置の実施状況を労働基準監督署へ定期的に報告することが義務付けられております。また、裁量労働制の運用実態、先ほどの実態調査結果を拝見するに、裁量労働制適用者の8割の方が制度適用に満足している。また、裁量労働制の適用により労働時間が長くなる、あるいは、健康状態が悪化するとは必ずしも言えないという分析結果が出ていることを踏まえますと、論点のところに記載していただいているとおり、裁量労働制が制度として定着してきたことが、一定程度分かるかと思います。
 これらを踏まえての意見として、この機会にぜひ定期報告の頻度を減らすとか、記載いただいているとおり、本社一括届出を認めることをお考えいただくことが適当かと考えます。一方で、臨検等の際に監督指導を円滑に実施するために、書類の保存を義務化することが論点に記載されております。監督指導を円滑するためにという提案の方向性は、理解はできます。ただ、近年、例えば、男女賃金差の公表、育児制度改定の対応、各種ハラスメント事案の未然防止や事後対応等々、人事労務担当部署はかなり業務のボリュームが増えております。このような状況を踏まえると、使用者側のリソースを最大限有効活用する観点から考えると、書類の保存を義務化される場合には、ぜひ定期報告の負担軽減と併せて御検討を進めていただければと考えております。
 私からは、意見でございます。以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、佐藤晴子委員、お願いします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
 私からは、先ほどの池田委員の発言に関連して、1つ目のポツですかね、労使委員会での情報開示の懸念という話が先ほどありましたけれども、それに関連して、労使協議の当事者について意見を申し上げたいと思います。ここにある労使協議の当事者という中には、労使委員会の委員、あるいは、過半数労働組合だけではなくて、過半数代表者という方も含めて考えておられるのではないかと想定ができるわけです。そうしますと、例えば、過半数労働組合のない企業が専門型を導入する場合には、過半数代表者を選出することになりますけれども、原則とすれば、協定締結の都度選出をされるというものですので、こういった代表者に対して、モニタリングのようなことの協議を行うことまで担わせるということは、負担としても重いし、そもそもの制度趣旨からしても逸脱があるのではないかと思います。もちろん、労使協定の有効期間の中であっても、もしその制度趣旨に大きく反するような運用がなされているといった場合には協定内容を見直すあるいは再締結といったこともすべきかとは存じますけれども、そういった対応をもしタイムリーに行うということであれば、例えば、3年以内が望ましいとされている協定の有効期間を短く設定するようなことを、企業労使に促すといった方法も考えられるかとは思います。いずれにしても、本来の制度趣旨を超えて、過半数代表者という方に、過度なという言い方が適切かはありますけれども、役割を担わせることは避けていただきたいと、意見として申し上げたいと思います。
 もう一つですけれども、専門型においても労使委員会の活用を促していくことが適当ではないかということについてですけれども、こちらも労使の自主的な判断によって労使委員会を活用するということであればよろしいかと思うのですけれども、設置を義務化するということになりますと、専門型と企画型のそもそもにおける違いもありますので、そこは、今事務局案に書かれておるような、義務化ではなく、活用を促すという方向性に賛成であるということを意見として申し上げたいと思います。
 私からは、以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、会場から、いかがでしょうか。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
 私からは、先ほど冨髙委員から御発言のございました労使委員会委員への行政官庁の働きかけについて申し上げます。裁量労働制を指針に適合したものにするということは、制度導入時のみならず、適正な運用を維持する上で大変重要だと思っています。例えば、会社が労使委員会の委員に対して指針の内容を十分に説明して、理解してもらった上で協議に臨んでもらうこと、あるいは、制度導入後に定期的に適用労働者の上司にこの指針の内容を理解してもらうように、チェックリストのような形で確認をしてもらう工夫など、いろいろと考えられるのではないかと思います。他方で、行政官庁による働きかけということを考えますと、必ずしも労使委員会の委員個人に対して直接行う必要はないのではないかと思います。例えば、行政官庁が、法令あるいは指針に適合しない事象を把握した場合、企業の人事に対して指導を行い、その指導内容を労使委員会と共有して協議をし、必要があれば、その制度の見直しあるいは運用の改善につなげていくということでよいのではないかと思います。労使委員会の役割としては、各職場の労使コミュニケーションを促進し、もって適正な運用を図っていくことが期待されており、その点が重要ですが、労使委員会委員への行政官庁の直接の働きかけが、ややもすると、自律的な労使コミュニケーションに影響を与えてしまう懸念もありますので、この点の議論は慎重を期す必要があると考えています。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 川野委員、お願いします。
○川野委員 ありがとうございます。
 大きく分けて、3点、ございます。
 まず、1点目は、労使委員会の実効性、責務規定について、資料1-3の7ページでございます。労使委員会の実効性に関して、実効性があると思うと回答した労働者においては1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率が低いとの分析結果が示されています。労使委員会の実効性を確保する方策の一つとして、参加する労使全員が納得する形で制度の内容を検討し、運用することが大変重要であると考えます。高度プロフェッショナル制度においては、労使委員会の責務規定が法に明記されていることを踏まえれば、裁量労働制においても労使委員会が制度の適正な運用のために責務を負っていることをより明確にすべきだと思います。労働組合がある職場においては、労使委員会のみならず、長時間労働となっている場合等、適宜、労使協議を実施し、適正な運用の担保に尽力している職場があることは承知しており、そうした取組を法的に明確に位置付けて、適正な運用を促すことで労使委員会の実効性を確保していくべきではないかと思います。
 続いて、同じく資料1-3、4ページのところ、過半数代表者や労使委員会の労働者側委員の選出の適正化についての部分でございます。使用者による指名という回答があることは先ほど兵藤委員からも御指摘があったところでございますが、こうした事案自体が問題であることは言うまでもなく、たとえ過半数代表者による指名であっても、過半数代表者自体が適正に選出されていない実態があることは、これまでも労働者側委員より重ねて発言してきたところでございます。真に労働者を代表し現場労働者の声を代弁できる者が、労働者側委員に選出される仕組みを担保することが重要であり、そのためには、過半数労働組合からの指名がある場合を除き、労働者からの信任手続を課すことも検討すべきではないかと考えています。
 加えて、本日の検討の論点、資料1-1で先ほども御指摘があったのですが、3ページの労使コミュニケーションの促進等の部分で行政の関与・記録の保存等の3つ目のポツでございます。ここでは手続の簡素化の観点からとございますが、手続の簡素化を目的として本社一括届出を認めることで、各事業場の実態が踏まえられることなく、形式的な届出となるのではないかという懸念がございます。各事業場においては、実態を踏まえて、労使委員会で適用対象者等を検討し適正運用のために見直しを行っていることを考えれば、一括届出とすることで、各事業場における実態把握が形骸化し、労働者保護が十分に図られなくなることを懸念しております。以上、3点意見を申し上げました。よろしくお願いします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 各委員から、労使委員会の活用と苦情処理の手続の面での御意見を賜っているわけですけれども、まずは労使委員会の活用についてでございます。専門型においても労使委員会の活用を促していくことが適当ではないかとなっていますけれども、現状、この調査結果等もあるわけでございますけれども、ようやくこの専門型においても普及が進んできて、またここでほかの制度と同じようにこの労使委員会を活用しなければいけないということになれば、またそこで、中小企業では、手続上とか、制度として変更がなされると社内での混乱が生じるということがあります。労使委員会の活用について、労働者側、使用者側もそうですけれども、意見が十分反映されるということでしたら、専門型については、労使協定の制度はそのままにしておき、労使委員会を活用していくという方向でよろしいのではないかと思います。活用については、その企業においてこの労使委員会でやっていこうということがあれば、それは構わないのではないかと思います。法定までは必要ないのではと思います。
 資料1-1、丸の4つ目なのですけれども、この好事例の収集の意味合いです。こういういい事例があったら出していくという制度的な周知は必要だと思うのですけれども、本来の選定の仕方、過半数代表の選び方とかについては、やっていれば、それは好事例というか、当然のものなのですね。それをあえて好事例というのか、逆に言えば、普通にやっている事例と、何かここはおかしいなという、失敗事例ではないのですけれども、何か疑義がある事例みたいなものを出していただいたほうが区別がつきやすいのではないかと私は思います。あえて否定するわけではないのですけれども、その事例集の意味合いが、何が好事例集なのか。当然にやっているものは好事例集ではないのか。それができていないということが分かるように示していく事例の方が周知はしやすいかと思います。
 最後ですけれども、苦情処理の関係でございます。これは、資料1-3、11ページに、1か所、労使委員会に委ねる、その窓口を設定するということは、ここで集まれるかとか、各労働者側の委員、使用者側の委員からも、意見が出たところでございます。そこの中で、こういう窓口をいろいろなところで苦情を言える場所をつくっていく。例えば、このときには労使委員会の委員に言ってもいいでしょうし、労働組合が相談窓口になるとか、上司への申出が一番最初になるとか、言いやすいところをつくりながら、最後に、よくある、一番多い人事担当の部署に相談窓口があれば、そこにつなげていくという職場の雰囲気をつくることがまずは大切かと思っています。労使委員会に苦情処理窓口を設置することよりも、まず、言いやすい環境を整えていく、そちらの周知、労使双方のそういう雰囲気をつくっていくという土壌が必要なのではないかと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 東矢委員、お願いします。
○東矢委員 御指名をありがとうございます。
 私からは、労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上の中の1つ目のポツの部分、賃金・評価制度の運用実態に関連するところで発言をさせていただきます。資料1-2の6ページ目のところに記載があるとおり、現行制度では、企画型の指針において、対象労働者に適用される評価制度や賃金制度等の使用者による情報開示が規定されておりますが、制度の趣旨に沿った処遇が確保される仕組みとなっているかどうかを検討する上で、こうした情報の開示は非常に重要だと労働者側としては考えています。現行制度では、開示することが適当であることに留意することが必要とありますが、それだけでは十分とは言えず、その対象労働者の納得性確保のためにも開示を一層進めていく必要があると考えております。また、専門型に関しましては、そもそも法律及び省令に列挙された業務に該当すれば対象になるということで、その賃金・評価制度等に関わる指針がありません。しかし、専門型及び企画型のいずれにおきましても、年収が200万円未満や300万円未満といった、その制度の対象労働者としてふさわしい処遇とは言えないような労働者が一定数見られ、また、そのような労働者が制度への満足度が低いことも踏まえますと、専門型でも企画型と同様に運用実態を明らかにする、専門型、企画型の双方とも対象労働者にふさわしい処遇の確保を促すような仕組みを検討する必要があると考えております。
 私からは、以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 八野委員、お願いします。
○八野委員 私からは、苦情処理の措置について意見を述べたいと思います。先ほども、使用者側から対象労働者への周知について御意見がありました。資料1-3の12ページをもう一度見ていただきたいと思いますが、認知状況を見ると、専門型では認知度が半数を下回っている、企画型でもかなりの割合で十分周知されていない現状があります。まず、苦情処理措置が設けられていることを対象労働者にしっかりと周知する必要があると思います。また、企画型の指針において、資料1-2の7ページのところにも出ておりますけれども、使用者や人事担当者以外の者を申出の窓口とすること等の工夫により、対象労働者が苦情を申し出しやすい仕組みにすることが適当であることに留意することが必要とされていることを改めて確認しておきたいと思います。その上で、資料1-3の11ページを見ていきますと、人事担当部署の相談窓口を設置している割合が最も高く、次いで、上司への申出ということです。苦情内容を見てもらいたいのですが、13ページのところを見ると、「業務量が過大である」、「賃金などの処遇が悪い」、「人事評価が不適切」、「労働時間が長い」など、いわゆる働いている者としては直接人事担当者や自分たちの上司になかなか申し出ることが難しい内容が上位に来ているということを踏まえますと、労使委員会や苦情処理のための独立した機関の設置などによって苦情解決を一層促進していくことが非常に重要ではないかと思っております。
 次に、専門型における苦情処理措置についてですが、専門型では通達において企画型と同等のものにすることが望ましいと記載されるにとどまっています。同じく、資料1-3、13ページを見ると、専門型で見ると、処遇または人事評価についての苦情は、専門型のほうが約2倍になっております。また、「休暇が取れない」、「業務の期限設定が短い」といった労働時間に関する苦情も多いことを踏まえれば、専門型においても、しっかりとした苦情処理の措置とその内容について明記し、適正な運用を意識づけていくことが必要だと考えております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 世永委員、お願いします。
○世永委員 ありがとうございます。
 資料1-1の3ページにあります定期報告の頻度について、発言をさせていただきます。論点の中で負担を減らすことが適当ではないかという記載があって、先ほど使用者側からもそれを求める意見がありましたけれども、制度を逸脱した運用が見られる事案があるということを踏まえれば、制度が定着してきたことを理由にして定期報告の頻度を減らすことには慎重であるべきだと考えております。制度の議論開始当初も含め、何度か分科会において申し上げてきておりますけれども、労働組合のある職場においては、労使委員会にとどまらず、労使協議や労使対話等を適宜実施することにより、適正な制度運用を確保している実態があると受けとめています。一方、法で定められた最低限の労使委員会しか実施していないところもあるのではないかと考えており、実際の取組には非常に濃淡があるのではないかと思っています。こうした濃淡がある取組に関し一律に負担軽減を認めることは、対象労働者の保護という観点からも問題があると思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 オンラインの大崎委員、どうぞお願いします。
○大崎委員 大崎です。
 私からは、資料1-1のスライド3、行政の関与・記録の保存等、ポツの2つ目についてです。行政による監督指導に支障が生じないよう、健康・福祉確保措置の実施状況に関する書類の保存を義務付けることが適当という考えが示されておりますけれども、現行制度には、労働時間の状況も入っております。この論点に示されている健康・福祉確保措置の実施状況だけという理解でいいのか確認させていただきたいと思います。もし、健康・福祉確保措置の実施状況だけという提案であるとすれば、労働時間法制の原初的な使命は労働者の健康確保でありますので、労働時間の状況をなくすことに関しては反対でありますし、書類の保存の義務付ける対象とすべきだと思っております。
 書類の保存について、もう1点、本人同意についてです。現行でも、記録の保存が義務付けられています。健康・福祉確保措置の実施状況だけ記録の保存を求めるとなると、先の分科会で、専門型、企画型いずれにおいても本人同意を得るようにしていくことが適当といった考えが示されたことと齟齬が生じるのではないかと思っております。企画型においては、本人同意が要件であり、本人が制度を理解し納得した上で同意していることが必要だと考えておりますけれども、監督指導においても要件を満たしているかどうか確認する必要があるのではないかと考えております。また、同意の撤回についても、先の分科会で論点として挙げられたことを踏まえれば、監督指導という観点から、本人同意の有無についてきちんと確認できるよう、保存を義務付けるべきだと思います。健康・福祉確保措置の書類の保存のみで良いということに関しては、反対させていただきます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 川田委員、お願いします。
○川田委員 ありがとうございます。
 資料1-1の2ページ目、上のほうの論点、労使委員会の導入促進と労使協議の実効性向上という点に関連して、労使委員会の意義全般とこの中に出てくる行政官庁の委員への働きかけについて、1点ずつ述べさせていただきたいと思います。
 まず、労使委員会の意義ですが、基本的な制度上の前提として、労働時間規制の特例、労基法上の特例を設ける際には労使協定を要件としているものが多い中、企画業務型裁量労働制に関しては労使委員会という制度が設けられ、同時に、労使委員会がある場合にはその決議をもって労使協定に代替できるということになっているわけです。そういう中で、労使協定と比較した労使委員会の意義として、労働法の学説等も参考に考えると、包括性と常設性という2つのポイントがあると言えるのではないかと考えています。包括性とは、企画型の条文である労働基準法第38条の4第1項によれば、労使委員会とは、当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に関して当該事項について意見を述べることを目的とする委員会とされていて、労使協定の締結あるいは裁量労働制の導入よりももうちょっと広い事項について、審議の対象にできる制度として設計されています。それはその制度の導入に関するピンポイントの点だけではなく、もう少し幅広く調査審議できるような委員会にしようということだと言えるわけですが、それによって、裁量労働制との関係でいうと、これまでこの分科会の議論の中でも出てきているような適切な処遇あるいは健康確保といったことについて、制度上最低限の要求よりも幅広いことも併せて、その制度の在り方について議論することを可能にすることで、より制度が適切に運用されるようにする。そういうことが期待される制度という面が1つあると思います。常設性というのは、労使協定であれば、その協定を締結する当事者が協定を締結してしまったら、協定自体は続いていくのだけれども、その締結当事者の役割は協定を締結したら終わりということになり得るわけですが、労使委員会の場合には定期的に会議体を形成するということで、制度が導入された後、制度が適正に運用されているかどうかを確認でき、あるいは、その都度制度の適用となる労働者に制度の内容が適切に理解され、納得した上で制度の適用を受けるということを確実に確保するという観点から果たせる役割があるということなのだろうと思います。この後、検討していく中で、制度との関係でどういう検討をしていくのかということは今後の審議に委ねられていると思いますが、労使委員会の意義として、そうした制度を適切に運用していくあるいは濫用を防ぐ上でも役に立と思われる包括性や常設性という視点があるということを踏まえた議論になるといいなと思っているということが1点です。
 行政官庁の働きかけに関しては、労使自治との関係が1つのポイントになると思いますが、先ほどの労使委員会の意義の話とも関わりますが、労使委員会は基本的にはそういう適切な枠組みがうまく機能する中で労使の話合いに委ねる部分が大きくしようとする制度だといえます。他方で、制度的に、例えば、労働者側委員の選び方について、労使協定の締結当事者と同じ立場の過半数代表者が委員を指名することになっているので、そういうところで労働者側の委員が適切に選ばれるかという点の問題が、労使協定と、ある意味、共通の問題があり得る部分もあるだろうと考えると、制度を適切に運用する最小限、特に問題のある運用を排除するという部分については、行政による働きかけの必要もそれなりにあるのではないかと思います。要点としては、このような働きかけについて検討する場合には、特にその働きかけの必要が大きい制度の濫用的な使われ方の防止、適正な使われ方の確保に関する部分については、例えば、重点的に働きかけを行う必要が大きいという、その内容に応じて重点的な部分と労使自治に委ねる部分を意識して使い分けていくという考え方が必要になるかと思っています。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかに何か御意見ございましょうか。
 よろしければ、次の2つ目の問題に移りたいと思います。対象業務の関係、資料2の関係になります。第179回の分科会において、私から、公労使各委員の御発言を踏まえまして、一定の対応が必要となるような業務について、ニーズ等の把握に努め、その結果を分科会に報告するようにということで事務局にお願いをしていたところでございます。今般、事務局におきまして、ニーズ等の把握をヒアリングという形で行っていただきました。この点について、資料2を用いて御説明をよろしくお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。
 まず、資料2-1を御覧ください。第179回の本分科会におきまして、裁量労働制の対象業務について御発言いただいた際の、労働者側委員の方々、使用者側委員の方々の御発言をまとめたものとなってございます。
 ページをおめくりください。
 まず、労働者側委員から、「裁量労働制が適用されると、通常の労働時間管理を外れ、みなし労働時間制になり、正確な労働時間の把握がされない事案が増えるのではないか。対象業務を拡大するようなことになれば、労働時間が正確に管理されない労働者の数が増えるのではないかということを大いに懸念。長時間労働を助長し、労働時間法制の原初的な使命である労働者の健康確保の観点から問題がある事案を増やしかねないと考えられ、裁量労働制の安易な拡大については反対」。2点目でございますけれども、「フレックスタイム制など柔軟な働き方を可能とする制度のもとで、業務遂行方法も含めて工夫して取り組んでいるところもあり、裁量労働制を拡大する必要はないのではないか。」という御発言がございました。
 使用者側委員から、「車両メーカーにおいて、車両開発とITサービスを組み合わせて、車両の使用状況や故障・修繕実績等のデータを一元的に管理する管理システムを開発提案する業務。システム開発会社において、ITシステム、あるいはハードの製品とITシステムを組み合わせた製品やサービスを、顧客から潜在的ニーズを探りながら、オーダーメイドで提案する業務、機械メーカーの生産ラインにおける作業改善計画を立案、計画に基づいて改善施策を試行、結果を測定、測定結果を踏まえて改善点を洗い出し、本格実施する業務、人事部門で働き方改革推進の施策を企画・立案するとともに、経営層や社員に説明の上で施策の実施を行い、経営層や従業員からの意見を踏まえて改善してチェックし、改善を重ねて実行に移す、PDCAを回す業務、金融機関において、顧客に対し、資金調達方法や合併・買収等に関する考案及び助言をする業務について、裁量労働制の対象にすべきではないか。」という御発言がございました。
 そちらをまとめたものが、この資料2-1でございます。
 次に、資料2-2を御覧ください。先ほど分科会長から御説明いただきましたとおり、第179回の本分科会におきまして、対象業務について御議論いただいた際に、一定の対応が必要となるような業務について、ニーズ等の把握に努め、その結果を報告する旨を分科会長より御指示いただいていたところでございます。これにつきまして、事務局で整理いたしましたところ、今説明いたしました資料2-1にございます使用者側委員から御発言のあった業務のうち、金融機関において、顧客に対し、資金調達方法や合併・買収等に関する考案及び助言をする業務以外の業務については、平成29年に本分科会に示された働き方改革関連法案要綱に含まれていた業務でございまして、これまでも本分科会において、労使で御議論いただいてきたものであると考えてございます。他方で、金融機関において、顧客に対し、資金調達方法や合併・買収等に関する考案及び助言をする業務につきましては、働き方改革関連法案要綱に含まれていたものではなく、今般労使で御議論いただくに当たりましては、その前提として、業務の内容や業務の遂行方法等について精査が必要であると考えられましたため、事務局においてヒアリングを行うことといたしました。ヒアリングにつきましては、複数の金融業の関係団体と複数の企業に御協力をいただき、令和4年10月に行ってございまして、その結果をまとめたものがこの資料2-2となってございます。
 まず、関係団体からのヒアリング概要について、それぞれ読み上げさせていただきます。1点目でございますけれども、金融機関における、合併、買収等に関する考案及び助言をする業務、こちらはいわゆるM&Aアドバイザー業務と呼ばれているようでございますけれども、こういった業務も資金調達方法を考案する業務も、従来の労働集約的な業務ではなく、自らの知識・経験を活かした知識集約型の、繁閑に応じて自律的に動くことができる業務であると一般的には考えられる。2点目でございます。ある程度の期間が必要な業務であり、その中でチームや個人の役割が決まる。最終的な期限を念頭に、各個人が自身に割り当てられた役割のもと、裁量を持って業務を遂行している。次の点ですが、1つの案件について、2~3名などのチームで行うことが一般的。4点目といたしまして、M&Aアドバイザー業務も資金調達方法を考案する業務も、専門部署に所属する場合には、在籍中に他の仕事をすることはないと考えられる。次でございますが、勤務時間は、案件の進捗に合わせて対応事項が決まるため、通常の業務と比べ繁閑の差が激しく、案件を担当している間は数か月忙しくなることも想定されるが、案件次第で閑散期もあると認識している。次でございます。現状は、労働時間の対価に賃金を払っていると考えられるが、今後は業務によっては、成果に賃金を支払うという流れを加速させていくことも必要と考えられ、労働時間と成果が必ずしも連関するわけではないM&Aアドバイザーのような業務は、そのような業務の1つと考えられる。専門性を有するアドバイザーの経験に基づいた企画立案・遂行などのアウトプットに対して賃金を支払うことがより適する場合もあると考えられる。次です。また、資金調達方法を考案する業務も、資金調達のスキームを考案する業務であるため、案件ごとにリスクを把握する等の能力、将来のキャッシュフローに係る分析能力やリスクに応じたスキーム構築等の専門性が必要。最後です。M&Aアドバイザー業務も資金調達方法を考案する業務も、スキル・専門性や成果に対して賃金を支払うという考え方が検討されるべき業務であると思う。ここまでが関係団体からのヒアリング概要でございます。
 次に、企業からのヒアリング概要でございます。1点目でございますけれども、M&Aアドバイザー業務も資金調達方法を考案する業務も、始業・終業時刻は業務の状況に応じて一定の自由度を持った働き方ができる業務ではある。業務の遂行方法の裁量については、大きな方向性やスケジュールは上司に相談するが、その中で具体的にどのように業務を遂行するかについては裁量を持てる。おめくりいただきまして、2ページ目でございます。M&Aアドバイザー業務は企業価値算定の知識や、法務、会計、税務の知識、各種業界への知見を必要とするところであり、専門性の高い分野である。次でございますが、資金調達方法を考案する業務の専門性については資金調達支援業務の種別ごとに異なるが、一般的にはキャッシュフローへの理解、デット・ファイナンスやエクイティ・ファイナンスへの知識、各業界への知見や会計の知識等が必要。次でございますけれども、評価においては成果が重視されており、案件獲得数や提案の内容、収益への寄与等に対する達成状況で評価されている。次でございます。業務には繁閑の差があるが、それほど長時間の時間外労働は発生していない。最後でございます。資金調達方法を考案する業務に配属されるために特段必要な資格はないが、配属後、証券アナリストは取得するよう強く推奨している。また、アセット・ファイナンスに関しては宅建等の不動産関係の資格を取得することを推奨している。ここまでがヒアリング結果の概要でございます。
 資料の説明は以上でございますので、よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、対象業務について、ヒアリング結果等も踏まえて、委員の皆様より、御質問、御意見があれば、お願いいたします。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 今回、第179回の労働条件分科会での発言を入れていただいているように、労働者側委員の考え方については、基本はここに記載されている通りですけれども、加えて申し上げると、裁量労働制の本旨を逸脱したような不適切な運用が見られることを踏まえ、適切な運用を徹底する、実効性を高めていくことが重要ではないかということを付け加えさせていただきたいと考えております。そのことに取り組むことが先決であって、安易な拡大は反対だというところは改めて申し上げておきたいと考えております。
 それから、使用者側の委員から、金融機関の一定の業務ですけれども、高度プロフェッショナル制度の年収に満たないから裁量労働制の対象業務に加えるべきとも捉えられるような発言があったかと思います。既に八野委員からも当日に発言していただいておりますけれども、年収要件を満たせないことを理由として対象業務を拡大することはあってはならないと考えております。高度な専門知識等が必要な業務ということで、業務の性質上、従事した時間と従事して得た成果の関連性が高くないということであれば、それは高度プロフェッショナル制度の対象業務として本来は議論する話ではないかと考えております。言うまでもなく、裁量労働制は、高度プロフェッショナル制度の適用対象要件を満たせないものの受け皿ではございませんので、制度の趣旨・目的は全く別の制度だと考えておりますので、その部分をしっかりと踏まえて議論する必要があるということは、強く申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 東矢委員、お願いします。
○東矢委員 ありがとうございます。
 私からは、資料2-1、使用者側より裁量労働制の対象にすべきではないかという業務に関しまして、現場の状況や意見を幾つかお伝えさせていただきます。
 具体的に、まず、3点目のところにあります機械メーカーの生産ラインにおける作業改善業務についてでございます。改善施策の試行や結果の測定といった業務は、工場の生産ラインの稼働時間も考慮しながら、その隙間時間に行うことが大半であると認識をしておりますので、労働時間の裁量を労働者個人に委ねることは非常に難しいのではないかというのが、現場における感覚であります。また、こうした改善施策の試行や測定や本格実施は、基本的には個人ではなくチームで行う仕事であることや、また、安全衛生の観点からも、現場における作業監督者がマネジメントすることになっていることからも、労働者個人による裁量はほとんどないと考えております。また、それ以外の業務につきましても、こちらは第179回の分科会の労働者側委員の発言とも重複いたしますが、その現場においては現行のフレックスタイム制などの中で問題なく業務が遂行できているといった声も聞いておりまして、労働者側といたしましては、裁量労働制の対象業務とすることについては疑問を感じているところです。
 最後になりますが、こうした業務を裁量労働制の対象とすることによって、夜間や休日も含めた長時間労働につながるのではないかといった現場からの懸念の声もあったということに関しましても、併せてお伝えさせていただきます。
 私からは、以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 八野委員、お願いします。
○八野委員 私からは、金融機関に関するところです。まず、最初にお伺いしたいのですが、ヒアリングの結果が示されておりますが、どのような形でヒアリングをされたのか。例えば、労働条件分科会の中で、使用者側から、金融機関においても裁量労働制を考えており、その上で、M&Aに関する実態がどうなっているのかといった聞き方なのでしょうか。
○荒木分科会長 事務局から、お願いします。
○労働条件政策課長 八野委員の質問にお答え申し上げます。
 「労働条件分科会において裁量労働制の議論を行っており、その中で、金融業の一定の業務が裁量労働制の対象業務にふさわしいというご意見があり、議論をこれから行っていくことになる。金融機関において裁量労働制の適用になり得るような業務とはどのようなものか、無いのであれば「無い」という回答でも結構です。」という旨の聞き方をしております。
○荒木分科会長 八野委員、お願いします。
○八野委員 どうもありがとうございます。
 このヒアリング結果で示された、特に関係団体から出ているものは、我々として納得できないような内容が入っているところがあります。例えば、現状は労働時間の対価として賃金を払っていると考えられるということなのですが、これは全く認識が違うところがありまして、先ほど使用者側からも言われたように、賃金制度、人事・評価制度にもとづいて、賃金が支払われているということが前提になるかと思っています。金融機関に関する資金調達方法や合併・買収に関する考案や助言をする業務について、「顧客に対し」とありますけれども、顧客に対して対応をするということ、また、案件の進捗ということを考えると、労働時間に関しては、相手の顧客の都合にかなり左右されるのではないか、要するに、裁量がなかなか持てないのではないかということでございます。また、この業務は現状2~3名のチームが行うことが一般的ということでありますけれども、チームで行う場合は、業務の遂行方法や働く時間を、労働者自身の裁量で決めることができるのかどうかということに対しては、疑問を持たざるを得ないということです。いわゆるチームということであれば、チームの考え方に左右されて、労働者、その1人が裁量を持てる余地は非常に少ないのではないかということでございます。そういう意味でも、労働者に裁量が委ねられると言えるかどうかということは、労働者側としては疑問を持っております。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 オンラインから、お2人、希望が出ております。
 まず、池田委員、お願いします。
○池田委員 どうもありがとうございます。
 私からは、裁量労働制の対象拡大について意見を申し上げたいと思います。資料2-1に記載の労働者側委員の発言内容について、裁量労働制の適用が増えると、正確な労働時間把握がされない労働者が増えるという御懸念が示されています。まず、前提としまして、裁量労働制適用者であっても、労働基準法と労働安全衛生法上の労働時間の状況の把握義務が課されるので、基本的に裁量労働制が適用されたからといって健康管理のための労働時間管理がされないことにはならないと考えます。その上で、これまでの議論で懸念が示されているのは、労働時間の状況の把握方法についてかと思います。確かに、裁量労働制適用事業場のうちの2~3割が自己申告となっておりまして、その是正は必要なのだろうと考えます。パソコンのログオン・ログオフなどの客観的方法による把握を徹底させるよう、さらなる周知をすべく、経済界としても呼びかけていったらいいのではないのかなと考えるところです。
 次に、裁量労働制の拡大が、長時間労働を助長し、労働者の健康確保の観点から問題がある事案を増やしかねない、その御懸念については、実態調査結果に基づく回帰分析によると、裁量労働制の適用によって、労働時間が著しく長くなる、健康状態が悪化するといった影響があるとは言えないという結果が出ておりますし、加えて、裁量労働制の適用労働者の多くが裁量労働制に満足しているということも見られますので、そうしたデータに基づいた議論を行うことが適当と考えます。
 私からは、以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、大崎委員、お願いします。
○大崎委員 ありがとうございます。
 資料2-2、ヒアリング結果の概要のところです。関係団体からのヒアリング概要の、どのような業務が裁量労働として考えられるかということについて、今後は成果に賃金を支払うという流れに変わっていくといった記載がありますけれども、成果に賃金を払うこととみなし労働時間になることは全く違うのではないかと思います。成果に対して賃金を払えば、どれだけ労働していようが労働時間は関係ないというようにも見えます。そもそも、裁量労働制は、成果に対して賃金を払う制度ではなくて、業務の性質上、業務の遂行を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある場合に適用される制度であり、成果とは関係ないと考えております。この6つ目の丸のところで、裁量労働制にふさわしいものがM&Aアドバイザー業務と書いていますけれども、アドバイザーは、対顧客の業務でありますし、顧客に合わせて動く必要があるといったことを踏まえると、時間配分に関して労働者が自律的に決めることができるのか、疑問であると考えております。
 最後、もう1点、資料2-1の使用者側の発言は、先ほど東矢委員からもいろいろと現場の意見がございましたけれども、私からも、システム開発会社について、SEの方は、オーダーメイド業務で提案する業務と書いていますけれども、その顧客とのやり取りや、場合によっては、試作品、いわゆるプロトタイプの開発・生産が絡むことになり、そうなるとあまり裁量があるとは言えないといった声も聞いておりますので、これを裁量労働制の対象にすることには慎重な判断が必要ではないかと思います。
 私からは、以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、鳥澤委員、お願いします。
○鳥澤委員 まず、御説明をありがとうございました。
 私からは、裁量労働制の対象業務について、1点、申し上げたいと思います。以前も私は発言したかと思いますが、マンパワーの少ない中小企業においては、どうしても1人が複数の業務に携わる場合が多いので、裁量労働制の対象にならない労働者が多いと思っています。常態としては裁量労働制の業務に対応していても、一部他の業務をやっていることによって適用されないことがあると思っております。そのため、中小企業においては、なかなか制度の導入が進んでいないことが実情でございます。他方で、現行の企画業務型裁量労働制においても、以前、こちらの会議だったと思いますが、事務局から、「企画、立案、調査及び分析の一環として情報の収集等を行うことは可能である」という御説明をいただきました。こういった点が、裁量労働制を希望している労働者もそうですが、企業にもしっかりと理解されていないと感じますので、まずはこうした内容について具体的な事例と併せて中小企業への周知をお願いしたいと思います。
 私からは、以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、鬼村委員、お願いします。
○鬼村委員 御指名をありがとうございます。
 私からは、資料2-1の対象業務について意見を申し上げたいと思います。使用者側からは、かねてより課題解決型開発提案業務と呼ばれるものと裁量的にPDCAを回す業務の2つを裁量労働制の対象業務に追加いただくよう主張してまいりました。改めて、その背景を申し上げたいと思います。厚生労働省の令和4年版労働経済白書でも紹介されておりますけれども、我が国の実質賃金の変動要因を見ますと、欧米と比較して労働分配率の寄与度が比較的高い一方で、労働生産性の寄与度が小さく、これから実質賃金を高めていくには労働生産性の上昇が極めて重要であります。鍵を握るのは、イノベーションの創出をいかに進めていくのかということだと思っています。以前、私から自動車業界にはCASEと呼ばれる技術革新の動きがあるというお話をさせていただいたと思います。こうした中では、場合によっては、上司でさえも答えを持ち合わせにくい競争環境の中で成果を生み出していこうと思いますと、柔軟な発想を持って自律的に新しい考えを生み出すことのできる能力をいかに伸ばしていくのか、あるいは、そのように働くことのできる環境をいかに整えていくのかということが、今後、ますます企業にとっては重要となってまいります。実態調査結果によりますと、裁量労働制適用労働者の約8割が制度適用に満足あるいはやや満足と回答されております。製造ラインの改善を推進する技術者や人事部門で働き方改革を推進する担当者など、事業運営の企画、立案、調査、分析をした上で、その成果を活用して実施状況の把握や評価のための業務までを一体的に行うPDCA型業務、あるいは、ITシステムの開発提案や製品及び運用管理システムの開発提案等、特定の顧客に向け、ソフトウェア、ハードウェアを企画、立案、調査、分析を行った上で、それに基づいて開発提案までを行う課題解決型開発提案業務につきましては、労働の成果のありようは働き手の創造性に左右されまして、必ずしも労働時間に比例するものではないため、裁量労働制を適用するのにふさわしい業務であろうと考えております。
 私からは、以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、山内委員、お願いします。
○山内委員 御指名をありがとうございます。
 私からは、先ほどからお話しいただいている対象業務について、お話をしたいと思います。資料2-1の労働者側からいただきました2つ目の丸、フレックスタイム制などを活用しつつ業務遂行方法等について工夫すれば十分であるという御指摘をいただいたかと思います。これに対して、使用者側として発言させていただければと思います。たしか、8月30日、177回のときに、先ほど鬼村委員からお話しいただいたことが御記憶に残っているかと思います。労働時間と成果が比例しない業務に従事する働き手にとってはフレックスタイム制の活用では不十分であるという理由として、フレックスタイム制では、報酬が成果ではなくて労働時間の実績に応じて支払われる側面が強いため、成果主義的な手法が難しいという発言があったかと思います。この問題を考える上で、非常に重要なポイントかと思います。例えば、働き手に裁量を持たせて働いてもらうよう工夫をする場合、そのような働き手に対する処遇をどうするかということを例として考えてみるとします。裁量労働制のほうがフレックスタイム制に比べて成果主義的な処遇と親和的な仕組みになりますので、成果主義的な処遇をすることで創造性の発揮を期待する企業労使は裁量労働制を選ぶことになるでしょう。ただ、企業労使の中で、そこまでのことは考えない場合には、裁量労働制を選択しないということになるかと思います。改めての発言になりますが、このフレックスタイム制と裁量労働制を比べると、時間管理を自己の管理に委ねるという点では共通しておりますが、フレックスタイム制の狙いは、仕事を効率よく進めたり、私生活との両立を可能とすることが1つの目的にあります。1か月間で決められた所定就業時間勤務することが前提となる一方で、裁量労働制は成果を重視した制度で、制度適用の対象者に違いがあると言わざるをえないと思います。念のために両制度とも健康確保を前提とすることは重要なポイントではありますが、裁量労働制の拡大の論点とフレックスタイム制を活用することは切り離して議論することが適当と考えております。
 私からは、以上が意見でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。私からも、裁量労働制の対象について申し上げたいと思います。9月27日の分科会にて、金融機関において、顧客に対し、資金調達方法や合併・買収等に関する考案及び助言をする業務について、専門性が高く、また、労働時間と成果が必ずしも比例しない性質の業務であるため、裁量労働制を適用するのにふさわしく、対象業務に追加していただくよう要望致しました。事務局の皆様には、当該業務の実態について、かなり短い期間でヒアリングをいただきまして、深く感謝申し上げます。いろいろな見方があるかとは思いますが、ヒアリング結果を私なりに拝見いたしますと、おおむね裁量労働制の趣旨に沿った業務内容と働き方になっているという受け止めをしております。金融機関から私どもが独自にお話をお伺いする中でも、各種、資金調達方法、企業価値分析、あるいは、リスクや法務など、様々な専門性を発揮して、商品開発提案あるいはコンサルティングに専念する専門家も少なくないと聞いております。こうした業務については、多様な働き方の選択肢を用意して、各社の労使のニーズに合った働き方が選択できるようにすることが重要ではないかと考えておりまして、ヒアリング結果も踏まえ、当該業務を裁量労働制の対象に追加いただくよう改めてお願いしたいと思います。
 最後に、先ほど冨髙委員から御指摘があったかと思いますが、9月27日の分科会において私から申し上げた高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の対象業務の追加との関係についてです。御指摘のとおり、高度プロフェッショナル制度と裁量労働制は、制度の趣旨が全く異なっております。どちらの制度を選択するは、各社のニーズあるいは選択の問題ですし、どちらも選択しないという判断も当然あるわけです。要件の違いだけを理由に、高度プロフェッショナル制度が適用できないので、裁量労働制の対象への追加を要望しているわけではないということを御理解いただきたいと思います。
 私からは、以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 世永委員、お願いします。
○世永委員 ありがとうございます。
 私から、ヒアリング結果の概要について、意見を述べさせていただきます。2ページ目の4つ目の丸のところに、それほど長時間の時間外労働は発生していないとありますけれども、それほど長時間ではないというのは、個人の感覚ではないかと感じております。
 戻りまして、1ページ目の2番の企業からのヒアリングの概要について、1つ目の丸にありますけれども、始業・終業時刻は業務の状況に応じて一定の自由度はあるとなっています。一定の自由度ということについても、先ほど申し上げた個人の感覚と考えられ、一定の自由度があることが大幅に労働者の裁量に委ねられる必要があるという制度の本旨からして適切なものかということについては疑問があります。いずれにしましても、このヒアリングだけをもって裁量労働制にふさわしいと整理することは問題ではないかということは、意見として申し上げさせていただきます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 川野委員、お願いします。
○川野委員 労働者側委員からの発言の裏づけになるようなことについて発言させていただきます。我々の組織は、機械、金属の製造業、特に中小企業が77%を占めるような労働組合の組織でございます。毎年、裁量労働制を含めて調査を重ねておりまして、その中で、本年度、2022年5月調査の中では、我々の組織に属する企業1,346のうち、専門業務型裁量労働制を適用しているのが、54企業、組織しかございません。加えて、企画業務型裁量労働制を適用しているところは、25組織しかないという実態でございます。ただ、その数だけで労働者側の発言をフォローする意味ではございませんが、専門業務型裁量労働制を適用している54組織のうち、46組織が大幅な裁量が労働者に委ねられるという働き方であるのですが、そうであっても、所定労働時間より同じか長いという組織が54分の46なのです。裁量が与えられているとしたら、短くなる労働者が一定程度いてもいいと思うのですが、85.2%が所定労働時間より長いもしくは同じという働き方に属していて、本当にそこに大幅な裁量があるのかという疑問が残るところでございます。企画業務型裁量労働制についても、25組織のうちの20組織、80%は所定労働時間と同じもしくはそれより長いという回答があって、労働組合がある組織でもこのような状況にあるということを踏まえても、裁量労働制が適正に運用されているか、健康確保を含めて労働時間管理が適正に行われるかということに一定の懸念を持っていることを改めて申し上げたいと思います。
 先ほど、中小企業も含めて、労働生産性の向上、イノベーションという発言がございました。これは、少し角度が変わるかもしれませんが、今、パートナーシップ構築宣言等々で、価格転嫁について様々な取組強化を政労使ともに取り組んでいるところでございます。パートナーシップ構築宣言のキックオフのときに示された図表がございます。多岐にわたって、生産性向上は中小企業もずっと続けてきているのですが、それが利益につながっていない生産性向上を阻害している理由として、その表が使われておりまして、中小企業白書にも同じ表が添付されています。それは、価格転嫁力が弱いがゆえに、本来の労働生産性が相殺されて中小企業の成長が阻害されているということを受けて、パートナーシップ構築宣言、価格転嫁、共存共栄のパートナーとしての取組が推進されているということです。そのことを踏まえると、本来的な働き方のみではなくて、労働時間のみではなく、労働生産性の向上については、より多角的な対応・対策が必要であるということも、申し上げておきたいと思います。
 よろしくお願いします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかには何か発言の御希望がありましょうか。
 川田委員、お願いします。
○川田委員 ありがとうございます。
 資料2-2、ヒアリングに関して述べさせていただきたいと思います。まず、これまでの議論の中にもありましたが、平成29年の要綱の中には入っていない業務で、特にこの後検討していく上で関連する実態の把握や使用者側から出ている要望の内容等を確認しておく必要性が高い点だろうと思いましたので、この点について、まず、迅速に示していただいたという点はありがたく思っております。基本的には、今述べたような関連する団体あるいは企業の側から見た現状認識等が示されたものだろうと思っておりますが、そのようなものとして受け止めて、この後の審議に反映させていくべきものではないかと考えております。
 その上で、この点についての事務局からの御説明の内容あるいはその後の審議の状況も含めて、2点申し上げたいと思います。
 1つは、全体的なことなのですがここ、これまで、このヒアリングに至る経緯なども含めて考えた場合に、このヒアリングの結果について、例えば、回答の中で、企画立案という言葉が出てくるところもあり、全体的に、ヒアリングの中で、もしかしたら企画型の対象業務を拡大するという点を意識したような質問・回答になっている部分があるのかなと感じたところです。私の認識を前提とすると、この後の審議をしていく中では、対象業務の性質については、一定の専門性といったことが言われている部分もありましたし、ヒアリングの回答、今日の審議の中でも、その業務の遂行の仕方についても、労働者の選択、労働者の裁量に関わるような点と思われる内容もございました。この後、裁量労働制の対象業務という論点での審議になってはいくものの、裁量労働制の中で、このような業務を含めるということについては、関連する要件なども含めて、制度全体の中でどう見ていくかという視点も持って審議をしていくことが必要ではないかと思いました。その点を、1つ意見として述べさせていただきたいと思います。
 もう1つ、このヒアリング結果を見ますと、この資料2-2で挙がっている金融機関に関する業務については、これも私の受けた印象ですが、M&Aアドバイザー業務と資金調達方法を考案する業務が、ある程度、独立性があるというか、2つの類型のような形で挙がっているような印象を受けました。それが前提で、そうした場合に、特に資金調達方法を考案する業務というのは、私なりに考えてみたところ、例えば、金融とか企業財務に関する経済学・経営学上の一定の専門性の高い理論を使って仕事をするとか、あるいは、資金を調達した後に行われる、事業に関する専門的な知見を必要とするというものがあるのかなと思います。一方で、取りようによっては、一般的な金融機関が行っている融資業務と同じような、融資業務と区別がつきにくいようなものも入り得るのかなという印象を受けまして、裁量労働制の対象業務として検討する際には、もう少し業務の内容や範囲を明確にした上で議論を進めていくことが必要になるのかなと感じたということを、2点目として述べさせていただきたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 八野委員、お願いします。
○八野委員 対象業務の議論の中で、先ほど、使用者側の方から、労働生産性を高めるイノベーションの創出が重要である、それには柔軟な発想・新しい働き方というお話もあったと思います。これを否定するわけではありませんが、労働生産性を上げるということは、今日よりも明日、明日よりも明後日といった工夫をしていくことも重要なイノベーションであると考えております。この両輪で、企業の生産性、労働生産性を高めていくことが非常に重要だろうと認識しております。先ほど、対象業務について、労働者側委員より意見をいただきましたが、実態調査においても裁量労働制の適用労働者のほうが非適用労働者よりも平均の実労働時間が長いことや、適用労働者の1割弱は1週間の労働時間の平均が60時間を超えているという結果が出ております。適切な運用がなされている企業、例えば、労使委員会がうまく機能しているとか、そのチェック機能が効いているところは事例としてあるわけですが、我々労働者を代表する立場としては、それができていないところをどうしていくのかが重要と考えております。労働時間の問題は健康確保が非常に重要であり、様々な観点の中で、今回出された調査結果や資料の中で、いい面だけを見るのではなく、出来ていない部分がきちんと整う、その上でどうなのかを議論していかなければならないと思っています。まだ整っていない部分も多く見受けられるということを踏まえて、労働者側として様々な指摘をしているということを改めて申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかには、いかがでしょうか。
 藤村委員、お願いします。
○藤村委員 労働者側の委員が対象業務に対して非常に心配していらっしゃるということはよく分かります。実際に調査などをしても、変な使われ方をしているという実態があって、これを放置したままでいいのかと、そこは私もそう思います。使用者側委員の皆さんの発言を聞いていて思いますのは、裁量労働制という働き方でないと困るんだという話が、あまり出てきていません。例えば、スーパーフレックスとか、非常に柔軟な労働時間で働けるという制度が既にあって、その制度だと困るんだ、裁量労働制という働き方をしたほうが仕事の成果が明らかによくなるんだというような話があまり出てきていないように思います。柔軟な働き方にはいろいろ選択があったほうがいいよねという話が中心で、一歩踏み込んだ必要性の主張が足りないと思います。その辺りの話がないことが、労働者側の皆さんが、いや、確かにそうだよねと納得できない理由なのではないかなと思います。その辺をさらに深めていく必要があるのではないかと思っています。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかには、いかがでしょうか。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
 本日は、かなり本質的な議論に入っているような気がしています。まず、生産性向上策ということでは、先ほど川野委員からもありましたように価格転嫁の問題などに対して様々工夫をしていくような、積上げ型の生産性向上は大変重要だと思います。ただし、一方で、特定するわけではありませんが、先ほど鬼村委員からも御指摘がありました自動車業界の新しい動きに対し、新たな発想で、イノベーションを起こしていくことも重要です。生産性向上の施策は、業種業態によって違いますが、日頃の積み重ねではない形での生産性向上も必要だと強く思っている企業もあるということだけは御理解をいただきたいということが1点目です。
 次に2点目ですが、確かに、自己申告という望ましくない形での労働時間把握がされるケース、実質的に裁量性のないケース、あるいは、健康確保に対して苦情処理がワークしないケースなどに対し、虚心坦懐に議論をしてきたつもりです。制度上なのか運用上なのか、労使委員会で解決できないかといった観点でこれまでも議論をしており、そこについては、解決策があるのではないかと考えておりますので、引き続き探っていきたいと思っています。裁量労働制でないといけないのかという指摘については、再三申し上げておりますが、まずもって裁量労働制の適用労働者のうち、8割の方が適用に満足あるいはやや満足していることは大変重要だと思っています。いつ働くかという点での柔軟性を高めることは、フレックスタイム制の下で可能というお考えの企業もあるかもしれませんが、業務の性質上、従事した時間と成果とのリンケージが必ずしも明確ではないような業務に適した制度であると考えて裁量労働制を入れており、かつ適用されている方がかなり満足されているという企業労使がたくさんあるということは強調しておきたいと思います。
 私からは、以上です。
○荒木分科会長 ほかには、いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、ほぼ定刻になりましたので、本日の議事はここまでとさせていただきたいと思います。
 最後に、次回の日程について、事務局から説明をお願いいたします。
〇労働条件企画専門官 事務局でございます。
 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、第182回労働条件分科会は以上で終了とさせていただきます。
 本日も、お忙しい中、御参加いただきまして、どうもありがとうございました。