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2022年12月1日 第6回目安制度の在り方に関する全員協議会 議事録
日時
令和4年12月1日(木) 15:00~17:00
場所
厚生労働省労働基準局専用第15会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館12階)
出席者
↵
- 公益代表委員
- 藤村会長、鹿住委員、小西委員、中窪委員、松浦委員
- 労働者代表委員
- 伊藤委員、古賀委員、永井委員、仁平委員、平野委員、水崎委員
- 使用者代表委員
- 池田委員、大下委員、佐久間委員、志賀委員、新田委員、堀内委員
- 事務局
- 青山大臣官房審議官、岡賃金課長、友住主任中央賃金指導官、
高松調査官、長山賃金課長補佐、青野賃金課長補佐
議題
(1)目安制度の在り方について
(2)その他
(2)その他
議事
○藤村会長
皆様、こんにちは。これから、第6回目安制度の在り方に関する全員協議会を開催します。本日は、所用により権丈委員は御欠席です。小西委員と堀内委員には、オンラインで御出席を頂いています。また、松浦委員は、少々遅れてオンラインで御出席となります。まずは、議題1「目安制度の在り方について」の資料について、事務局から説明をお願いします。
○岡賃金課長
それでは、資料に沿って御説明いたします。資料№1を御覧ください。資料№1は、議論すべきものとして御意見を頂いた事項(再整理)ということで、第5回の全員協議会にお出ししたものです。本日は、このうちの(1)中央最低賃金審議会における目安審議の在り方、あるべき水準、政府方針への配意の在り方、議事の公開を中心に御議論いただくことになるかと思います。
資料№2ですが、前回までに頂いた御意見の整理です。前回、第4回までに頂いた御意見を整理し、お出しいたしましたが、それに第5回に頂いた御意見を追記しております。今回、議題の中心になります(1)中央最低賃金審議会における目安審議の在り方で、前回頂いた御意見を御紹介したいと思います。
「あるべき水準については、4つ目のポツですが、全国加重平均1,000円が近づきつつある状況を踏まえ、あるべき水準についても議論を深めていく必要があるという御意見。政府が全国加重平均の金額を目標に掲げる限り、Aランクの引上げに依存することとなり、結果として地域間格差が生じることになることに留意が必要。諸外国の最低賃金と比べて日本の額が低いという指摘もあるが、各国と適用労働者の範囲、減額措置の手続も異なることを踏まえて、あるべき水準を検討することが必要。こういった御意見を頂きました。
次に政府方針への配意の在り方についてです。7つ目のポツですが、令和4年度の目安審議のように、3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ね、納得を得ることが重要、今後の目安審議に向けた取りまとめの中でも方向性を示したいという御意見を頂きました。
議事の公開については、前回、特段の御意見はなかったわけですが、第4回までの御議論の中で、地方最低賃金審議会への影響とか、あるいは公労使三者そろった場に限って公開することにしてはどうかと、そういった御意見を頂いたところです。以上が資料№2です。
資料№3からが、今回、御議論いただく検討項目の関連資料です。資料№3が、あるべき水準の関連資料です。1、2ページは、前回までにお出ししております平成27年の全員協議会の中間整理です。2の(1)の最低賃金の在り方については、ワークペイとしての一定の水準を念頭に置きながら、目安審議を行うべきという御意見がありました。他方、本来、労使自治の話合いにより決定するものであるので、その最低基準としての性格を踏まえて議論すべきという御意見がありました。
(2)の法の三原則の在り方についても、労働者の賃金については、賃金水準そのものを指すのであって、賃金上昇率を指すものではないのではないかという御意見。他方で、あるべき賃金水準は、同業種、同業態の類似の労働者をその時々に雇用することができる賃金ということで、最低賃金としてあるべき水準を示すことは適切ではないという御意見がありました。
こうしたことから、2ページの当面の論点で、最低賃金の在り方、目的を踏まえた一定の水準等については、引き続き議論していく必要があるとされたところです。
3ページ以降は、あるべき水準を御議論いただくときの参考となります諸外国の制度についてです。4ページが制度の概要です。欧州の最低賃金制度については、若年者等に対して適用除外等の措置がなされているのに対し、日本の最低賃金制度は、全労働者に適用しています。
イギリスですと、高等教育の就業体験、あるいは16歳に満たない労働者、そういった方などについて適用除外としています。また、22歳以下の方については、一般の最低賃金に比べて低い額の最低賃金が設定されています。フランス、ドイツ、アメリカ、韓国においても、適用除外があります。一方で、日本の場合は、先ほど申し上げたように適用除外はなく、一方で、減額特例ということで、都道府県労働局長の許可を得た場合に、障害者の方、あるいは試用期間中の人、訓練中の方などについて、減額する制度があります。
5ページは、諸外国の最低賃金の決定方法等についてです。この中で、アメリカについては、法律の改正によって最低賃金を改定することになっておりますが、それ以外の国では、日本も含めまして、審議会や委員会で審議をし、定期的に改定をしているところです。決定基準については、日本は3要素ということです。ほかの国も、日本と若干表現は異なりますが、経済全体に与える影響とか、物価、あるいは賃金の状況、そういったもの考慮して決定をしています。
6ページですが、最近の諸外国の引上げの考え方といいますか根拠です。イギリスについては、当初、2024年までに賃金中央値の3分の2相当まで最賃を引き上げるという目標を立て、その後、コロナの影響があり、若干修正はありましたが、現在は2024年までに賃金中央値の3分の2相当への引上げを目指すこととされております。同じくドイツについても、下の※の所にありますが、中位賃金の60%を目指すということで、引上げが行われてきているということになります。フランスについては、物価の上昇が2%以上あると引き上げると、そういった制度になっております。
7ページは、最近の引上げ状況です。以上が資料№3です。
続いて資料№4です。政府方針への配意の在り方の関連資料です。1~6ページは、中央最低賃金審議会への諮問の変遷についてということで、その時々の政府方針を配意して審議を求める、そういった諮問の内容になっております。
7、8ページは、平成23年の全員協議会報告、9、10ページは、前回の見直しであります平成29年の全員協議会報告の抜粋です。9ページ、平成29年の全員協議会報告の(1)ですが、近年の目安審議は、法の原則、目安制度、時々の事情を総合的に勘案して行われているということで、政府方針については、この時々の事情で配意しているということになります。
下のほうの「他方」という所ですが、近年、目安に占める時々の事情の比重が大きく、数値的な根拠が明確ではなくなっているという点から、目安に対する地方最低賃金審議会の信頼感が失われつつあるのではないかとの意見があったという指摘があります。
10ページは、今後の目安審議の在り方についてです。公労使三者が、真摯な話合いを通じて、法の原則、目安制度、時々の事情を勘案しつつ、総合的に行うことが重要である。その際、地方最低賃金審議会に対して、目安の合理的な根拠を示すための努力など、目安への信頼感を確保するための取組を一層進めていくことが必要であるという指摘がなされております。第5回全員協議会では、今年の中賃の振り返りをしていただきましたが、今年の中賃は、今までよりもデータに基づく議論が行われたという御指摘を頂いたところです。
資料№5ですが、議事の公開の関連資料です。1、2ページは、中央最低賃金審議会運営規程です。この中の第7条2項で、議事録及び会議については原則として公開とする、ただし、率直な意見の交換、意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合には、非公開とすることができるということで、現在、この規定に基づき、目安小委員会は非公開で行われております。
最後の3ページですが、前回の全員協議会の際に、地方最低賃金審議会の公開状況の資料を準備してほしいという御意見を頂きました。それで準備したものです。左側が令和4年度の地方最低賃金審議会の公開状況、右側が令和3年度の状況です。令和4年度の欄の左側が本審、右側が専門部会の状況です。
下のほうを御覧いただき、本審については、会議の傍聴を認めている所が24県、一部公開をしている所が23県という状況です。また、議事録については、33県で公開、14県で一部公開となっております。専門部会については、会議の傍聴を認めている所が1県、一部公開をしている所が18県、全面的に非公開の所が28県となっております。また、議事録については、公開が8県、一部公開が12県、議事要旨のみという所が27県になっております。
なお、令和4年度と令和3年度の数字を御覧いただきますと、令和4年度のほうが公開あるいは一部公開の割合が若干増えていると考えております。それから、一部公開ですが、初回に事務局からデータの説明をする場合、あるいは今後の議論の進め方について話し合う場合、そういったところは公開にしておりますが、金額の議論あるいは機微に触れる部分については非公開にしているという状況です。簡単ですが、資料の説明です。よろしくお願いいたします。
○藤村会長
どうも、ありがとうございました。では、あるべき水準というところから議論をしていきたいと思います。労使それぞれに御主張があると思いますので、それをお伺いしていきましょう。労働側からいきますか。伊藤さん、どうぞ。
○伊藤委員
労側としてのあるべき水準の考え方と併せて、一部、どうしても政府方針への配意の在り方が関わってきますので、少しそこを合わせながら、包括的に基本的な考え方について述べさせていただきたいと思っております。
まず、今年度の改正によって政府が目標にしてきた「全国加重平均1,000円」への到達が見えつつあるわけですが、これまでの目安審議でも申し上げましたとおり、労側が目指す水準ということでは、やはり「全国加重平均1,000円」ではなくて、「誰もが時給1,000円」であり、これをずっと主張してきておりますので、まずそこが基本的な考え方にあるということです。
ただ、こうしたあるべき水準を、数字ですとか考え方、あるいはその表し方ということで考えますと、労使で意見の違いも相当あると思われますので、そうした意味では、合意に向けては相当程度の努力が必要になるのだろうと思っております。ただ、努力は必要ではあるのですが、最終的に少なくとも目指すべき目標自体は、労使含めて持っておいたほうがいいのではないかと考えております。
かつ、それは労使の意見も踏まえて設定すべきだと考えております。したがって、こうした労使双方の考え方を踏まえた上で目指すべき目標を持つのだという基本認識を、まずは全協で醸成させていくことが必要ではないかと考えております。
この点というのが、つまりは「時々の事情」として配意が求められております政府方針への配意の在り方とも関係しております。最低賃金というものは、正に単年度で瞬間的に上げればいいというものではなくて、最賃法第1条の目的規定を達するために、持続的かつ安定的に引き上げていくことが重要だと思っております。そのためには、労使で合意し得る目標、これはひょっとしたら数字ではないかもしれませんが労使で検討・設定した上で、年々の審議では、その目標を意識しながら、3要素を踏まえて、どの程度引き上げるかという議論をしていくことが、非常に建設的ではないかと考えております。
最後、もう一度、繰り返しになりますが、そのためにも、「全国加重平均1,000円」への到達が見えつつあるこの段階で、あるべき水準、正にあるべき水準というのが必要でありまして、少なくとも、それは労使の意見を踏まえながら設定すべきなのだと。こうした基本的な考え方自体を、全協の取りまとめとして打ち出すべきではないかと考えております。基本的な考え方としては、以上でございます。
○藤村会長
分かりました。そのほか、労側からいいですか。では、使用者側の御意見を伺いましょうか。佐久間さん、どうぞ。
○佐久間委員
まず、資料の御準備等、本当に事務局の皆様方、ありがとうございました。今まで、1回から5回までの全員協議会で、目安審議の在り方、そこの中であるべき水準、それから政府方針への配意ということは、常々、意見を述べてまいりまして、資料№2に掲載していただいています。特に、全体的なこの目安審議の在り方の項目で、1ページの政府方針への配意の在り方、これの下の3つの丸ポツです。「政府方針に沿った形で議論することも1つの方法かもしれないが、中賃で検討をするのであれば、時々の事情を外して、データを根拠に算出した、今まで以上に納得できるような数字に基づいて、労使で議論をする必要がある。そして、この三者構成は重要であり、これは維持をしていただきたい。」また、最後の項目でありますが、「この3要素、生計費、賃金、そして支払能力のデータに基づき、労使で丁寧に議論を積み重ね、納得を得る」ことは、やはり特に重要だと思います。
これは、今年の審議においても私ども労使、事務局、公益の先生方で、ここに近づけていこうということで、努力をしてきたところだと思います。極端な話、パーセンテージとか、この3要素の項目でどこを重視していくかというのも、もちろんあると思います。例えば今年については、生計費的なものを重視されたと思いますが、実際に指標毎にパーセンテージと金額を当てはめたら、多分、実額としては低くなるのではないかと思います。そこである程度、従来使用されてきた時々の事情ということはないですが、やはり政府方針に配慮しながら、総合的にという言い方がいいのかもしれません。それに応じて支援策を用意していただくとか、そういう努力というのも事務局に折衝していただいたのではないかと思います。1つは、この業務改善助成金なども、厳しい財政情況の中で、非常に額の関係を拡張していただいた、使いやすくなってきたということも確かなのではないかと思っています。
つまり、目安審議の在り方には、あるべき水準が含まれると思いますが、下の3つの意見というのが集約されているのではないかと思っています。
その前提として、このあるべき水準なのですが、やはり1,000円が見えてきたというか、近づいてきつつあることは事実ですが、これが1,000円を達成した後、例えば1,200円、1,500円、その1,500円を達成したら、次の段階まで額が上がると、もう本当にこれは追っ掛けるだけで、例えば私ども経営者にとっては、いつになったらこれは先が見えるのだろう、自分たちの経営と突き合わせて、本当に厳しいということで、額を示すということ、提示は実行しにくいと考えます。額を提示しないまでも考え方、方向性を記載することでも、「あるべき水準」というのはあるかもしれません。具体的な額を提示しないと漠然として分かりにくいということもありますが、ここは毎年毎年の交渉、三者構成をもって皆さん方と協議をしていくということに努めていければと思います。以上でございます。
○藤村会長
ありがとうございました。使用者側としては、金額を示すということについては反対と。800円、1,000円というのも、この場で決まったわけではなくて、確か2007年ぐらいに、円卓会議とか何かそういうのができて、そこで800円、1,000円というのが出てきました。それの1,000円が達成されつつある中で、じゃあどうするのだ、また政労使の三者構成の会議で、何か出てくれば、それはそれで私たちも受け入れざるを得ないわけですが、それを待っていても話は進まないので、一応この場で、三者構成の場で、どういう考え方でいくのかというのを議論していきたいというように思っております。労側、次の意見はございますか。水崎さん、どうぞ。
○水崎委員
あるべき水準に関して、いろいろ御意見が出ていますが、労側としては、やはり先ほど来言っているとおり、水準は一定、公労使で合意をして見せるべきかというように思っています。ここ数年、地賃が大幅に引き上がってきていることもあって、経営の予見可能性、そういうものを高める観点からも、労使できちんと合意をした水準を一定見せていくことは、有益ではないかと考えています。労働側としても、最低賃金の大幅な引上げが、特に中小企業の経営に影響を及ぼしていることは認識をしています。だからこそ、中賃の中でも最低賃金の引上げ分を含む賃上げしやすい環境、あとは政府の支援、そういったものを求めていくべきではあるのですが、それに加えて、労使できちんと合意をしたあるべき水準というものを見せていくことが、必要なのではないかというように感じています。
目標を設定した上で、年々の論議では3要素を踏まえてどの程度引き上げていくべきかという議論をたどるプロセスを確立をしていけば、中小企業もそれに合わせた一定の経営の対応が可能になるのではないかというように感じています。以上となります。
○藤村会長
永井委員、どうぞ。
○永井委員
あるべき水準議論をどの場でするのかについて、今、会長からも政労使といった場だけではなくということもあったと思うのですが、私どもは、正に中賃は公労使の場だと思いますが、この中賃でも検討していく必要があると思っております。ここは中賃ですが、同じ厚生労働省の所管の労働政策審議会では、私の記憶では労働政策基本部会において、まだ余り起こっていないことも含めて、例えばAIのことやテレワークといったことについても、将来的な雇用労働政策の方向を取りまとめたという実績もあります。つまり、こういった審議会であるべき水準のような目標を定めることは一概に否定されるべきでもないですし、是非やっていく必要があるのではないかと思っております。少なくとも公労使、政労使の場で議論すべきであり、当事者がいない、労使がいない場で、賃金に関する目標が定められることは適当ではないと思っております。以上です。
○藤村会長
分かりました。ありがとうございます。使用者側、いかがですか。大下委員、どうぞ。
○大下委員
今、それぞれの委員がおっしゃった御意見ももっともかなと思いますが、私の認識としては、毎年の最低賃金額は、法に定める3要素に基づいて公労使三者構成の最低賃金審議会で決めるということ、これが、法が持っている最低賃金の決め方の大原則だと思っています。あるべき水準というものをどこかで持つというのは、変な考え方かもしれませんが、3要素に加えて4つ目の要素を持つということではないかなと思っています。それを、毎年の審議を行うこの最低賃金審議会で決めるのは、来年、再来年、更にその先の毎年の審議を一定程度縛ることになるのではないかと思います。この先の経済や雇用情勢の予見可能性が必ずしも高くない中で、そうした毎年の審議を一定程度縛るようなものを議論して果たして合意できるのか、来年のメンバー、再来年のメンバーの自由闊達な審議に影響を与えるような判断がどこまでできるのかというと、私は相当難しいのではないかなと思っています。
他方で、先程来、何人かからお話がありましたし、先生からも過去の例を引き合いにして政労使の会議で方針が議論されるということもあり得るのではというお話がありました。私は、政府方針が示されること自体を否定するものでもありませんし、将来的な日本の雇用労働の在り方を考える中で、今ある最低賃金法のルールをしっかり踏まえながら、別の会議体、なおかつ公労使がそろった会議体で、十分に現状のデータ、先行きの見通しを示すデータ等を踏まえて議論を行い、最低賃金が目指すべき水準を持つことは有り得るのではないかなと思っています。ただし、その場合にも、過去に示されてきた政府方針と同様、毎年の審議を過度に縛るものではあってはならないと思っています。私からは以上です。
○藤村会長
分かりました。大下さんの御意見は、ここは決める場ではないのではないかということですか。
○大下委員
それが意見の1つです。私自身としても、それは厳しいなと思っているのが本音のところです。
○藤村会長
分かりました。どういう水準を持つかは、いろんな意見があり得ると思います。今日の資料で諸外国の状況というのがあり、資料№3の6ページのドイツの所に、中位賃金の60%を下回る賃金は、EUでは「貧困に対して脆弱な水準」と判断されると。EUの場合は、いわゆる平均賃金の6割が1つの目安になっているようです。こういう持ち方もできるかなと思います。労側、いかがですか。平野さん、どうぞ。
○平野委員
前回の全協の中で、使用者側の方から、あるべき水準を議論するのに、直接、諸外国と比べていくのは難しいのではないかという御意見もありました。確かに、額だけを比べていくのは難しいと思います。ただ、国際比較の中で、先ほど言ったEUが取った手法や、例えば中央値に対して最賃が何割か、あとは平均賃金に対して何割かといったことについて、日本はかなり低いのが現実です。そのことを中賃、我々がどう受け止めるかということは大事ではないかなと思っています。だからこそ、それがいいのかどうかは分かりませんが、水準を示すか、どういった水準を目指すかは、少なくとも議論しておいたほうがいいのではないかと考えています。
そこの関連になりますが、諸外国と制度が違うという話がありましたが、日本の最低賃金制度は学生のアルバイトも含め適用除外がないのですが、学生のアルバイトの方も仕事と学業とを両立させて、それで生計を立てている方もいるわけですから、そうした方も含めて、きちんと賃金の最低額を保障して、誰もが働いていれば、それでいいのか分かりませんが、健康で文化的な生活を営むことができる賃金を得られるという社会をつくっていく必要性があると思っています。
○藤村会長
新田委員、どうぞ。
○新田委員
諸外国の最低賃金制度の絡みで御発言がありましたので、前回その関係で発言したこともあり、再度発言いたします。前回私が申し上げた趣旨ですが、日本の最低賃金が国際的に低いことは事実として認識しているということを、申し上げておきたいと思います。その上で、なぜそういう状況があるのかといったときに、今回資料としてお出しいただいている諸外国の最低賃金制度、特に4ページの概要を見ると、他の国と決定的に違うのは適用除外がないことです。まさに、賃金のセーフティネットとして、日本の場合は最低賃金制度がしっかりと存在しているということだと思います。やはり、そういったことを踏まえた上で比べる必要があるということを、重ねて申し上げておきたいと思います。
ですので、適用除外がないから低くていいと考えているわけでは全くなくて、先ほどお話が出ました、健康で文化的な最低限度の生活を営むことができる水準を、もし本当に日本の現行の最低賃金制度で担保するということであるならば、本当にどういう水準が適切なのかについて、現行は適用除外がないこと、あるいは、この減額特例という形で労働局長の許可を得るプロセスがあることも踏まえながら、考えていく必要があります。
先ほど平野委員から御指摘があったとおり、一定以下の年齢や学生ということだけで一律に線を引くのも難しい部分があるということも承知しています。昼間学生や夜間学生もいますので、そこは考慮しなくてはいけない。さらに適用基準を例えば週の労働時間で見るのか、それとも年収要件で見るのかとか、様々な議論が必要になってくると思います。
ただ、いずれにしても、もし本当に、日本の最低賃金水準のあるべき姿ということで、国際的な水準も踏まえながら、なおかつ、本当に真の意味で健康で文化的な最低限度の生活を営める水準を考えていくのであるとすれば、今申し上げた適用除外や、最低賃金制度のある程度根幹の部分について、やはり、我々としても覚悟を決めて、しっかり議論をしていく必要があるだろうと考えております。
最後にもう1点だけ申し上げます。先ほど来、複数の委員の方々から御発言があったとおり、できれば、しっかりと労使の間で議論をして、合意できる水準が設定できればいいと、私も心から願っております。願っている一方で、先ほど大下委員も申し上げているとおり、水準を決めることについて、使用者側としては非常に慎重にならざるを得ない部分もあると、私の中でも相矛盾する気持ちが存在しております。今の時点で、こういう水準でと合意できればという気持ちと、その合意が将来の最低賃金審議会に携わる人たちの審議の内容を拘束することになるということもありますので、これについては、今、明確な答えは出せません。いずれにしろ、そこの部分については引き続き審議をしていきながら、そういった水準が見いだせるのかどうかを探っていきながら、最終的にはどうするかを考えていきたいと思います。私からは以上です。
○藤村会長
分かりました。労働側、いかがですか。仁平さん、どうぞ。
○仁平委員
1点だけ。使用者の先生方もこういうことで共通認識が図れるのかという点について、1点だけ御意見を伺えればと思っています。具体的には、ポスト1,000円の目標水準を何らか持たざるを得ないとすれば、やはり労使が関わる場で決めるべきだ、これについては、一致できるものなのでしょうか。この審議会の場ではないのかもしれませんが、私は、必ずそれは必要だということを、少なくともこの中賃と全協の中では、きちんとはっきりさせておくべきなのではないかと思います。
○藤村会長
使用者側の皆様、いかがですか。佐久間さん、どうぞ。
○佐久間委員
そうですね、今、仁平さんの御発言の中で、あるべき水準をもう1つ、1,000円的なものから、みんなで共通的に、例えば1,500円なら1,500円というのを1つ置いておいてということで示す、そこに近づけていくという趣旨なのか、それとも、毎年やはり交渉しながら、額は具体的に示さなくても三者構成で毎年、協議しながら決定していくという意味合いなのか。どういう意味になるのか、すみません。
○仁平委員
佐久間委員、ありがとうございます。ごもっともなお話です。後者の部分は、当然ながら、毎年幾ら引き上げるのかというのは正に法律のフレームで決まっている話です。したがって、今の法律だったら中賃の場で、目安制度にやはりみんなに信頼を寄せていただいて、目安制度の中で決めていくべきだと思っています。
ただ、先ほど申し上げたのは、我々はいいと思ってというわけではないのですが、全国加重平均1,000円がクリアされつつある局面の中で、伊藤委員も言われていましたが、次の目標が具体的な数字ではないのかもしれませんが、何らかの議論をここで深めるべきではないかということが1つです。なおかつ、この中賃の場で決められないのだとしても、労使が関わる形で議論を進めるべきだといった議論の進め方、政府としての議論の進め方に、きちんと注文を付けておくことは大事な点ではないかなと思っており、その点を申し上げた次第です。
○佐久間委員
ありがとうございます。三者構成の重要性は、皆様方の共通認識だと思います。そこで今回1,000円という額が明示されてきたのは、先ほど藤村先生がおっしゃるとおり、政府からの数字として上がってきたと。それが近づいてくる、クリアできそうだと言っていいか分かりませんが、そこの水準にきたときに、では今度は、マスコミ等により世間で言われている1,500円と数字を挙げたときに、使用者側としてはプレッシャーにもちろんなります。そして、それを土台にして、1,500円を根拠としなければいけないというのは、今、新田委員そして大下委員が言われたとおり、それが妥当なものなのか、また、どこを適用除外にしていくかの議論がなされないまま、1,500円という数値が一人歩きしてしまうというのは、やはり懸念するところなので、そこの議論ができていない。この全員協議会の場で協議してもよろしいと思うのですが、これをどれだけのものとしてまとめていくか。多分、結構時間が掛かってくると思います。ですから、やはり次に、例えばランク性とか資料の関係とかいろいろある中で、項目を絞っていかないと、なかなか議論はできにくいのではないかなと思います。以上です。
○藤村会長
仁平さん、よろしいですか。
○仁平委員
時間の制約もあることだと思います。ただ、これも今回12月にやって、以降個別論点の議論も続きますし、さらにはもう一回まとめの局面もあると思うので、まとめの書きぶりの段階でもどういうまとめ方をするのかとも関わります。今日はこれ以上やってもという気もしないでもないと思いますし、使側の先生方の御懸念もよく分かります。ただし、よく分からない「〇〇円」みたいな目標を外からパっと持ってきて、良い悪いというのは、やはり労側としてもそれでいいのかと思っているということはお伝えしておきたいと思います。
○藤村会長
分かりました。ありがとうございます。あるべき水準については、明確に幾らと金額を示すのは難しいですが、これも議論を続けていくということで、一応今日の場は終わっておきたいと思います。
では、次は政府方針への配意の在り方です。その時々の事情というのをたくさん使ってきました、これでいいのかなと思いつつ、いわゆる政府の方針があり、それを完全に無視するわけにはいかない、それで、ここまできているわけですが、この場で、せっかくの機会ですから、政府方針をどうここで受け止めて審議に反映していくのかという辺りを、労使双方の御意見を伺いながら、理解を深めていきたいと思います。使用者側からいきますか。大下さん、どうぞ。
○大下委員
御案内のとおり、政府はこれまで、例えば2014年度ぐらいまでは生活保護との逆転現象を解消しましょう、それからここ数年は、今議論がありましたが、全国加重平均1,000円以上というものを国の経済財政政策の一環として掲げて、年によっては審議会の諮問に当たって配意を求めるということを明確に伝えてきています。これまでの議論の際に申し上げていますけれども、政府方針への配意を政府が求めることについて、それを駄目だと言うことはできるものではないと思っています。
ただ、先ほど来、申し上げているとおり、配意はしますが、あくまで3要素に基づいてきちんと議論をして決めるということは絶対守り抜かなければならないと考えています。昨年の審議では、コロナ禍で大変厳しい状況の中で過去最高の水準の目安額が示され、今年度は、その反省を踏まえて、データに基づく審議というものを公労使、また厚労省のスタッフの皆様にも大変御協力を頂いて、徹底してやってきました。それでもなお、地賃の委員を務めている各地の会議所の方々を含め、今もやはり政府方針ありきの議論になっているのではないのかという不信感は、極めて根強いものがあります。
この状況をしっかり見据えながら、政府方針への配意について考える必要があると思っています。すなわち、中賃、地賃とも、審議会の議論が、一生懸命やっていても実質は意味がない、形骸化しているのではないかというような懸念が、これ以上進むようなことがあってはならないというふうに思っています。ここ数年のこうした経緯、現状をしっかりと受け止めて、今申し上げたように、政府方針が示されることを否定するわけではないけれども、それを受け止めつつ、中央、地方の審議会においては、3要素のデータに基づく審議をしっかりやるのだということを、少なくとも今回の協議会の報告として明確に打ち出しておく必要があるのではないかと思っています。
重ねて言うと、政府方針に対していささか疑問に思うのは、特に昨年で言いますと、労使の代表がしっかりそろった場で議論されたものではないという状況にあります。今年は、そこをかなり要望で申し上げて、厚労省の方にも御配慮をいただき、日商会頭も出席した形で、新しい資本主義実現会議と経済財政諮問会議の合同の場で議論をして、政府方針が決められました。したがって、我々としては、その政府方針を何か否定するわけにもいかない、きちんと我々の意見を踏まえた上で決められたということになっていますが、この点もしっかり担保していただきたいと思います。
更に申し上げるならば、先ほどの議論、中賃でやっているような、3要素のデータをしっかり踏まえた議論を行って政府方針が決められているかと言うと、必ずしもそうではないと理解しています。今後も政府方針というものが何かしら示されるのであれば、先ほどの公労使、政労使三者構成の会議を別途設定するのかどうかは分からないですけれども、もう少しきちんとデータを踏まえた議論、時間を重ねた議論をしていただいて、方針を示していただくことがより望ましいのではないかと思っております。私からは以上です。
○藤村会長
分かりました。ありがとうございます。では、労働側委員、どうぞ。
○仁平委員
政府方針への配意の話は資料も出していただいておりますけれども、資料No.4の5ページに今年の記述があります。ここには「物価が上昇する中で、官民が協力して」と書いてあります。引上げ額については、三者構成の審議会で3要素をしっかり考慮して議論していただく旨が書かれており、ある意味、ここにとどめていただいたのだろうと思っております。そういう意味では、これは政府で議論されることかもしれませんが、この程度が適切なのではないかという気もしないでもないと思います。
ただ、前半の話にも関わるのですが、3要素と言っている賃金というのは、法律で書いてあるのはここまでだと思うのですが、必ずしも賃金改定状況調査第4表の上げ幅をもって賃金なのかというと、そういうわけではない。ですから、この中賃の場で持つべき指標について議論を、藤村先生が言われるように、例えば一般の賃金に対する比率などについて、どのように考えるのかということをある意味深めておくというのも、1つ大事な点ではないかと思っております。
○藤村会長
ありがとうございます。公益の委員の方、いかがですか。
○中窪委員
政府としてこういう形で示すときに、今年のように三者構成の審議会を尊重する態度が見えたということは大変好ましいことであって、当然、このようにしていただくべきだったと私は思います。中賃の前にいろいろ実質的な議論を詰めて、それを踏まえてとこちらに言われると、労使の意見は事前にある意味吸収されているのに、公益委員だけなかなか反映していただく機会がないという事態になっている気がいたしまして、もちろん公益委員といっても、それぞれまたいろいろな考え方がありますが、そこを最大公約数にこなしながら、中賃の審議の中で、法の趣旨とその時々の統計資料に基づいた判断をするわけです。そのことを政府としてもきちんと尊重していくべきであり、いろいろな経緯を踏まえて、そういう方向に向かっているとは思いますけれども、改めてそのようにしていただきたいと感じました。
それから、ついでに質問なのですけれども、今日の資料№3の中の最初に、平成27年の前回の全員協議会の中間整理の部分が出されているのですが、これがここに出ているというのは、最終的な報告書には取り込まれなかったけれども、途中でこのような意見がいろいろ出てきて、もう少し多彩な考え方があったので、もう一回振り返った上でここで議論しようと、そのような趣旨で出されていると理解してよろしいのでしょうか。
○岡賃金課長
御指摘のとおりです。
○中窪委員
ありがとうございます。
○鹿住委員
政府方針への配意ということなのですが、労使が入った場で政府が意見を聞いて決めたとしても、やはり立場が違うということを少し考えなければいけないかなと思います。要するに、昨今、与党だけではなくて野党も、最低賃金をもっと上げましょう、こういうふうに上げましょうと言っています。やはり、政治的な面で言うと、賃金を上げましょう、制度として上げますというのは、かなり有権者に対する強烈なアピールになるわけです。政府や国会の先生方のお立場での引上げの水準、目標を幾らにしましょうというお考えと、この審議会で法律にのっとって3要素に基づき議論する、労使の合意点を見いだすという趣旨と、若干立場が違うと思うのです。
ですので、もちろん無視はしませんし、配意はするべきだと思いますが、ただ、立場が違う、考え方が違うということは、全体として意識をしなければいけないのではないかということは思います。審議会で決めたことを、政府が政策的に少し上乗せするとか下げるとかということができるように制度上なっている国もありますよね。それは、正に立場の違いを制度でしっかり担保しているような、そういうことだと思うのですけれども、今現状の日本の制度ではそうはなっていないので、やはり最終的には審議会で決めるということは明確にしておいたほうがいいと思います。以上です。
○藤村会長
佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員
もう一点、私から発言させていただきたいと思います。政府方針への配意について、昨年度の審議においては、ランクもある程度方向付けがなされるということがありました。そこの中で、私個人的なものですが、こういうことであったら、最低賃金法を改正していただいて、政府案に基づいて決めていただければいいのではないかなとも思ったことがあります。でも、今年の審議を進めながら、私ども経営者団体としても、中小企業の意見を踏まえて審議をしてきているわけです。もちろん、労働側もそうであると思うのですが、それぞれによって額を示していく、また方針を示していくというのは、やむを得ないことだし、私は当然のことだと認識しております。ただ、あくまで方針であり、もしかしたら今年も政府案で早期に1,000円ということだけではなくて、具体的な額が腹案として持たれていたのかもしれない、でも、それをこの三者構成の場で協議して額を1つ決めてきたという重要性というのは必要なのだろうなと思います。
先ほど大下委員が言われたように、新しい資本主義実現会議で最低賃金の方向性が発表されましたが、私どもは、その新しい資本主義実現会議には、会長等は入っておりません。そのため、ある程度第三者的とは言えないかもしれませんが、新しい資本主義実現会議の動きというのは非常に関心があったところです。新しい資本主義実現会議において、どのように示されるのかなと。使用者側の代表者2名の構成メンバーに入っていたことで、データとか根拠に基づいて早期に1,000円という、今までの表現で抑えていただいたということも1つあるのかなと思います。それが具体的にもし額として示されるようであれば、どうして数値が挙げられたのかということを、詳細なデータとして示していただきたいと思います。以上です。
○藤村会長
分かりました。先ほど大下さんがおっしゃった点、地方最低賃金審議会の使用者側委員が、ここの中賃の目安審議に対して不信感を持っていると。要は、根拠なく何かえらい高い金額が出てくるなと、そういうことだと思うのです。その説明として、今年はよかったのですが、去年までは政府方針への配意というところで上げてきたと。これっていいのという、そういうのが背景にあるかと思います。政府がいろいろな政策を実現していく上で、個人消費を拡大するために賃金を上げていきたいと。ただ、民間企業の賃金に政府は直接介入はできませんから、辛うじて最低賃金は少し影響を及ぼせるというところで、いろいろな政府方針に配意してというのが出てきているわけですよね。どこまで政府方針というのをこの場で気にするかということについて、労側はどう思われますか。
○水崎委員
これは、私も今年から最低賃金に携わるようになって、去年までは労働組合にはいましたけれども、別の立場にいました。そうした立場から見たときに、政府方針というのは非常に発信力が強いというか、メッセージ性が強いのか、それともマスコミの取上げ方がどうなのかというのもありますが、やはり、そこを目掛けて最賃の引き上げの議論をやっているのではないかと見られがちだと思うのです。ですので、先ほどの前段の議論にもなるのですが、あるべき水準というものを、具体的に水準として書けるかどうか、日本語になるかもしれませんし、この場で決めるのはどうだという話も大下委員が言っておりごもっともだと思いますので、政府方針を目掛けてやっているように見えないように、この三者の場で、ある程度水準なのか、考え方なのか、日本語なのかというのは分かりませんけれども、付随するものを論議の上で作って、メッセージとして発信していくことが見せ方としても良いと感じているというのが私の意見です。
政府方針への配意は必要だと思いますが、外から見るとちょっと強いイメージがありますので、労使で議論したあるべき水準をきちんと発信していく必要があるのではないかと感じています。以上です。
○藤村会長
何か、この審議会が始まる前に決まっているのではないのかと、このように見えてしまうということですかね。池田委員、どうぞ。
○池田委員
政府方針がどのようにできているかということから考えると、目標値を出すにあたって、生産性向上策や取引の適正化にも言及されており、そういう意味では、再三申し上げてきている好循環というのを生み出す取組と連携して、その目標値が出てきているのではないかと考えています。ですので、そういう意味では、それらの政策的な取組の成果がどう表れているかも重要と考えます。その取組が不十分な中で、政府方針だけに近づけることをすれば、どうしても実態が伴っていないということになります。
配意としてそういう政策的な成果をどうデータで見ていくかということを含めた配意であれば、意味があると考えますが、そうではなく単純に額に近づけるというようにしていくと、三要素のどれかだけが強いものとなり、不信感とかということが拭えないのかなと思っています。以上です。
○藤村会長
これも、スパッとした結論は出ないですよね。その時々の事情で労使が話し合いながら、この辺でというようにやっていくしかないですよね。ただ、政府方針というのは、あくまでも私たちがここで決めるときの一参考情報であって、それに振り回されているわけではないと、そこは労使で合意できているところかなと思います。もし政府方針で決まるのだったら、先ほど佐久間さんがおっしゃったように、この審議会をやめて法律で決めるというようにしてしまえば、そのほうがはるかに楽というか、単純ですよね。でも、本当にそれが日本経済あるいは働く人たちのためになるのかというのは、これはまた別問題だと思います。では、政府方針への配意というのも、この辺りでよろしいでしょうか。
では、今日の3番目です。議事の公開というところにいきたいと思います。資料№5の一番後ろ、3ページに、地審がどういう状況かというのが示されております。今年度で言うと、公開している、会議の傍聴を認めているのが24県、一部というのが23県、そもそも認めていないという所は0県。私たちはこれをどのように受け止めて、中賃の場を公開していくかと。今、審議会というのは公開が原則ですので、よほど事情があれば非公開にできる。私たちのこの場は、これまで非公開ということでやってきているわけです。しかし、三者が全員集まる場であれば公開にしてもいいのではないかということで、徐々に合意ができつつあるように思います。
それで、実は労働側から慎重であるべきだという意見も出ていますので、そこをお願いいたします。
○仁平委員
地方審議会の公開状況を調べていただいて、ありがとうございました。目安審議の公開は、やはり地方への影響もあるものですから、労側として地賃の労側委員に聞いてみました。概要を申し上げれば、地方審議会の労側委員の多くの意見としては、透明性の確保や審議の公開も意識しつつ、最近はエビデンスに基づく主張をするように努力をされているというのを、地方の状況として総じて言えば聞いております。
他方、金額審議というのは、ある意味、労使交渉的側面もあって、それぞれの地方で様々な労使関係もあるものですから、それを土台にしながら審議をしています。したがって、地方ごとに土台の部分が随分違う所もあって、その中で本音をぶつけ合って、1円、2円も含めて、短時間ではありますが、非常に厳しい中身の交渉をしているというのが実態なのだろうと思っています。そうしたギリギリする場面を公開することは率直な意見交換を阻害する可能性もありなじまないのではないかという意見が多くありました。
そういう意味では、透明性の確保と率直な意見交換を阻害しないという両方を考える必要はあるのだろうと思っていて、そういう意味で、藤村会長におっしゃっていただいた、三者がそろった部分についてのみ公開するということは、ある意味そういう辺りなのではないかと思っております。むしろ、原則公開なのだからどんどん公開すればいいという話だけではないということだけ付け加えて、その辺りがよろしいのではないかと、意見としておきます。
○藤村会長
分かりました。資料№5の3ページの見方で、ひょっとしたら私が間違っていたかもしれないのですが、本審と書いてあるのは、我々の場合、中央最低賃金審議会ですよね、目安審議が専門部会という、そういう理解ですね。ですから、専門部会については、△が18で×が28という状況で、もし我々がここで三者がそろっている部分は公開しましょうとなると、恐らく地方最低賃金審議会にも何らかの影響があるだろうと思われます。使用者側はいかがでしょうか。大下委員、どうぞ。
○大下委員
仁平委員からの御説明を、大変興味深く伺わせていただきました。私も、審議の公開は、目安小委員会を含めて、冒頭の三者がそろっている場に限定してであれば基本的に公開可かと思っております。それ以降の審議に関しては、議論がどうしても行ったり来たりする部分もありますので、委員でない方に聞かれることを意識しながらやっていると、しっかり掘り下げた議論ができにくくなる部分もあるのではないかなと思っています。
他方で、なぜ議事の公開ということがここで議論になっているのかと言うと、先ほどの議論ではないですが、審議会できちんとした議論がなされているのか、どういったプロセスで最終結論に至っているのかというところに、外から見ていて今一つ不透明感があるということなのかなと思っています。それに関しては、今回の中賃の目安に関する審議で、データに基づく議論を徹底し、その内容をこれまでよりも、より一層しっかり報告書に書いていただきました。今年の審議で行ったようなことを徹底していき、それをまた事後ブリーフィング等で厚生労働省の方が記者に対してもきちんと説明していく。更に言えば、地賃に対しても、どういうプロセスで、この3要素のデータをどのように見て最終結論に至ったのか、政府方針をどのように配意したのかというところも含めて、議論のプロセスが最終的に終了したところで、できる限り外に対して分かりやすいように報告書あるいは答申においてしっかり示していくことが、審議の透明性や納得性をより高めるということになるのではないかなと思っています。私からは以上です。
○藤村会長
ありがとうございます。公開については、三者がそろっている場は基本的に公開にしていこうということで、労使の合意ができていると思います。ただ、夜中の2時、3時に調整が決着して、これから三者構成をやります、どうぞと言っても、誰が聞きにくるのだろうというのもあるのですが、それに対して、いやいや、そんなに遅い時間までやること自体がおかしいと。そんなに遅くなるのだったら回数を増やしてやったらどうだと、こういう意見もありますね。来年の目安審議をどのようにしていくかというところとも関わるのですが、せっかく時間もありますので、その辺りをどのようにお考えかというのをお聞かせいただけますか。どちらからでも結構ですよ、どうぞ。新田さん、どうぞ。
○新田委員
基本的な部分は、藤村会長からお話があったとおり、目安小委員会においては、三者が集まる全体会議について公開するということで、そこは合意形成が図られていると私も認識しております。全体会議がどのタイミングで開かれるかという問題も確かにあるのですが、それは正直、審議してみないと読めない部分があります。審議をやっている中で、このタイミングで持ち越しするよりは、長時間になっても引き続きやったほうがいい場面もあると思います。一方で、さすがにこの状況だったら一度中断したほうがいいということもあると思いますので、ここで決めるのは、あくまで全体会議について公開するということだと思います。全体会議が開かれるタイミングになったときに、呼び掛けて果たして誰が傍聴に来るのかという問題は確かにあるかもしれませんが、実際に傍聴に来る来ないはその人の判断ということで、我々として決めるべきは、全体会議についてはしっかりと公開するということであり、それを報告書の中に取りまとめて発信していくということが非常に大事ではないかと思っております。この件については、できる限りそういう前向きなメッセージを出していくべきと思っています。私からは以上です。
○藤村会長
確かに交渉はやってみないと分からないですからね。一義的には決められないというのは、おっしゃるとおりだと思います。労側から何かありますか。
○仁平委員
藤村先生に言っていただいたとおりなのかなと思います。そういう意味では、今年の夏のように、審議の途中でまた日を改めましょうということも含めて、いろいろなバージョン、運営が幅としては持てるのだろうなと思っております。さらに、新田委員も言われておりましたが、別に公開する場面を作ること自体が目的なのではないのだろうと思っていて、それは、透明性を含めて皆さん方に分かるように説明し、そういう場も持っておくだけの話であって、進め方そのものについては、やはり公労使がちゃんと納得して、一番いい答えが出せるような進め方ということも、事務方にもまたお願いしたいと思いますけれども、配慮して進めていただくのがいいと思います。
○藤村会長
ありがとうございました。今日、予定しておりました項目は以上ですが。どうぞ。
○中窪委員
私も、三者の所を公開というのは非常にいいことだと思います。毎回、最初と最後だけ公開することになりますが、最後、一番ぎりぎりの小委員会では、最終的な決着の所に人が入ってきて、読み合わせのところを見るというのが一番大きな違いだと思います。従来と違ってそこが見えるというのは、ある意味生々しいですが、すごくインパクトもあって、公開されたなということになっていいと思うのです。他方で、誰にどう言ってノーティスをするのかというのが非常に問題です。多分、新聞記者などはずっといますので、何人かはずっと熱心に待っていると思いますが、そのときに、どの範囲の人たちにどういう呼び掛けをして、何分後にすればいいのかということとか、来た人たちに資料を準備できるのか、あるいは、プロジェクターか何かで見せるのかとか、そういうロジスティックの部分も考える必要があります。実際はなかなか難しい面もあると思いますので、ちょっとそこを検討していただければと思います。
○藤村会長
そうですね。実際に運用する場面でのいろいろな工夫というのも必要かと思います。
一応、議事は以上ですが、何か御発言があれば是非お願いしたいと思います。いかがでしょうか。よろしいですか。どうもありがとうございました。
次回、第7回は、特に(2)の地方最低賃金審議会における審議に関する事項の資料を事務局で準備していただいた上で、引き続き各論の議論を深めていきたいと思います。次回の開催日程については、事務局で別途調整をお願いいたします。それでは、これをもちまして、本日の全員協議会を終了いたします。どうもお疲れさまでした。ありがとうございました。
皆様、こんにちは。これから、第6回目安制度の在り方に関する全員協議会を開催します。本日は、所用により権丈委員は御欠席です。小西委員と堀内委員には、オンラインで御出席を頂いています。また、松浦委員は、少々遅れてオンラインで御出席となります。まずは、議題1「目安制度の在り方について」の資料について、事務局から説明をお願いします。
○岡賃金課長
それでは、資料に沿って御説明いたします。資料№1を御覧ください。資料№1は、議論すべきものとして御意見を頂いた事項(再整理)ということで、第5回の全員協議会にお出ししたものです。本日は、このうちの(1)中央最低賃金審議会における目安審議の在り方、あるべき水準、政府方針への配意の在り方、議事の公開を中心に御議論いただくことになるかと思います。
資料№2ですが、前回までに頂いた御意見の整理です。前回、第4回までに頂いた御意見を整理し、お出しいたしましたが、それに第5回に頂いた御意見を追記しております。今回、議題の中心になります(1)中央最低賃金審議会における目安審議の在り方で、前回頂いた御意見を御紹介したいと思います。
「あるべき水準については、4つ目のポツですが、全国加重平均1,000円が近づきつつある状況を踏まえ、あるべき水準についても議論を深めていく必要があるという御意見。政府が全国加重平均の金額を目標に掲げる限り、Aランクの引上げに依存することとなり、結果として地域間格差が生じることになることに留意が必要。諸外国の最低賃金と比べて日本の額が低いという指摘もあるが、各国と適用労働者の範囲、減額措置の手続も異なることを踏まえて、あるべき水準を検討することが必要。こういった御意見を頂きました。
次に政府方針への配意の在り方についてです。7つ目のポツですが、令和4年度の目安審議のように、3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ね、納得を得ることが重要、今後の目安審議に向けた取りまとめの中でも方向性を示したいという御意見を頂きました。
議事の公開については、前回、特段の御意見はなかったわけですが、第4回までの御議論の中で、地方最低賃金審議会への影響とか、あるいは公労使三者そろった場に限って公開することにしてはどうかと、そういった御意見を頂いたところです。以上が資料№2です。
資料№3からが、今回、御議論いただく検討項目の関連資料です。資料№3が、あるべき水準の関連資料です。1、2ページは、前回までにお出ししております平成27年の全員協議会の中間整理です。2の(1)の最低賃金の在り方については、ワークペイとしての一定の水準を念頭に置きながら、目安審議を行うべきという御意見がありました。他方、本来、労使自治の話合いにより決定するものであるので、その最低基準としての性格を踏まえて議論すべきという御意見がありました。
(2)の法の三原則の在り方についても、労働者の賃金については、賃金水準そのものを指すのであって、賃金上昇率を指すものではないのではないかという御意見。他方で、あるべき賃金水準は、同業種、同業態の類似の労働者をその時々に雇用することができる賃金ということで、最低賃金としてあるべき水準を示すことは適切ではないという御意見がありました。
こうしたことから、2ページの当面の論点で、最低賃金の在り方、目的を踏まえた一定の水準等については、引き続き議論していく必要があるとされたところです。
3ページ以降は、あるべき水準を御議論いただくときの参考となります諸外国の制度についてです。4ページが制度の概要です。欧州の最低賃金制度については、若年者等に対して適用除外等の措置がなされているのに対し、日本の最低賃金制度は、全労働者に適用しています。
イギリスですと、高等教育の就業体験、あるいは16歳に満たない労働者、そういった方などについて適用除外としています。また、22歳以下の方については、一般の最低賃金に比べて低い額の最低賃金が設定されています。フランス、ドイツ、アメリカ、韓国においても、適用除外があります。一方で、日本の場合は、先ほど申し上げたように適用除外はなく、一方で、減額特例ということで、都道府県労働局長の許可を得た場合に、障害者の方、あるいは試用期間中の人、訓練中の方などについて、減額する制度があります。
5ページは、諸外国の最低賃金の決定方法等についてです。この中で、アメリカについては、法律の改正によって最低賃金を改定することになっておりますが、それ以外の国では、日本も含めまして、審議会や委員会で審議をし、定期的に改定をしているところです。決定基準については、日本は3要素ということです。ほかの国も、日本と若干表現は異なりますが、経済全体に与える影響とか、物価、あるいは賃金の状況、そういったもの考慮して決定をしています。
6ページですが、最近の諸外国の引上げの考え方といいますか根拠です。イギリスについては、当初、2024年までに賃金中央値の3分の2相当まで最賃を引き上げるという目標を立て、その後、コロナの影響があり、若干修正はありましたが、現在は2024年までに賃金中央値の3分の2相当への引上げを目指すこととされております。同じくドイツについても、下の※の所にありますが、中位賃金の60%を目指すということで、引上げが行われてきているということになります。フランスについては、物価の上昇が2%以上あると引き上げると、そういった制度になっております。
7ページは、最近の引上げ状況です。以上が資料№3です。
続いて資料№4です。政府方針への配意の在り方の関連資料です。1~6ページは、中央最低賃金審議会への諮問の変遷についてということで、その時々の政府方針を配意して審議を求める、そういった諮問の内容になっております。
7、8ページは、平成23年の全員協議会報告、9、10ページは、前回の見直しであります平成29年の全員協議会報告の抜粋です。9ページ、平成29年の全員協議会報告の(1)ですが、近年の目安審議は、法の原則、目安制度、時々の事情を総合的に勘案して行われているということで、政府方針については、この時々の事情で配意しているということになります。
下のほうの「他方」という所ですが、近年、目安に占める時々の事情の比重が大きく、数値的な根拠が明確ではなくなっているという点から、目安に対する地方最低賃金審議会の信頼感が失われつつあるのではないかとの意見があったという指摘があります。
10ページは、今後の目安審議の在り方についてです。公労使三者が、真摯な話合いを通じて、法の原則、目安制度、時々の事情を勘案しつつ、総合的に行うことが重要である。その際、地方最低賃金審議会に対して、目安の合理的な根拠を示すための努力など、目安への信頼感を確保するための取組を一層進めていくことが必要であるという指摘がなされております。第5回全員協議会では、今年の中賃の振り返りをしていただきましたが、今年の中賃は、今までよりもデータに基づく議論が行われたという御指摘を頂いたところです。
資料№5ですが、議事の公開の関連資料です。1、2ページは、中央最低賃金審議会運営規程です。この中の第7条2項で、議事録及び会議については原則として公開とする、ただし、率直な意見の交換、意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合には、非公開とすることができるということで、現在、この規定に基づき、目安小委員会は非公開で行われております。
最後の3ページですが、前回の全員協議会の際に、地方最低賃金審議会の公開状況の資料を準備してほしいという御意見を頂きました。それで準備したものです。左側が令和4年度の地方最低賃金審議会の公開状況、右側が令和3年度の状況です。令和4年度の欄の左側が本審、右側が専門部会の状況です。
下のほうを御覧いただき、本審については、会議の傍聴を認めている所が24県、一部公開をしている所が23県という状況です。また、議事録については、33県で公開、14県で一部公開となっております。専門部会については、会議の傍聴を認めている所が1県、一部公開をしている所が18県、全面的に非公開の所が28県となっております。また、議事録については、公開が8県、一部公開が12県、議事要旨のみという所が27県になっております。
なお、令和4年度と令和3年度の数字を御覧いただきますと、令和4年度のほうが公開あるいは一部公開の割合が若干増えていると考えております。それから、一部公開ですが、初回に事務局からデータの説明をする場合、あるいは今後の議論の進め方について話し合う場合、そういったところは公開にしておりますが、金額の議論あるいは機微に触れる部分については非公開にしているという状況です。簡単ですが、資料の説明です。よろしくお願いいたします。
○藤村会長
どうも、ありがとうございました。では、あるべき水準というところから議論をしていきたいと思います。労使それぞれに御主張があると思いますので、それをお伺いしていきましょう。労働側からいきますか。伊藤さん、どうぞ。
○伊藤委員
労側としてのあるべき水準の考え方と併せて、一部、どうしても政府方針への配意の在り方が関わってきますので、少しそこを合わせながら、包括的に基本的な考え方について述べさせていただきたいと思っております。
まず、今年度の改正によって政府が目標にしてきた「全国加重平均1,000円」への到達が見えつつあるわけですが、これまでの目安審議でも申し上げましたとおり、労側が目指す水準ということでは、やはり「全国加重平均1,000円」ではなくて、「誰もが時給1,000円」であり、これをずっと主張してきておりますので、まずそこが基本的な考え方にあるということです。
ただ、こうしたあるべき水準を、数字ですとか考え方、あるいはその表し方ということで考えますと、労使で意見の違いも相当あると思われますので、そうした意味では、合意に向けては相当程度の努力が必要になるのだろうと思っております。ただ、努力は必要ではあるのですが、最終的に少なくとも目指すべき目標自体は、労使含めて持っておいたほうがいいのではないかと考えております。
かつ、それは労使の意見も踏まえて設定すべきだと考えております。したがって、こうした労使双方の考え方を踏まえた上で目指すべき目標を持つのだという基本認識を、まずは全協で醸成させていくことが必要ではないかと考えております。
この点というのが、つまりは「時々の事情」として配意が求められております政府方針への配意の在り方とも関係しております。最低賃金というものは、正に単年度で瞬間的に上げればいいというものではなくて、最賃法第1条の目的規定を達するために、持続的かつ安定的に引き上げていくことが重要だと思っております。そのためには、労使で合意し得る目標、これはひょっとしたら数字ではないかもしれませんが労使で検討・設定した上で、年々の審議では、その目標を意識しながら、3要素を踏まえて、どの程度引き上げるかという議論をしていくことが、非常に建設的ではないかと考えております。
最後、もう一度、繰り返しになりますが、そのためにも、「全国加重平均1,000円」への到達が見えつつあるこの段階で、あるべき水準、正にあるべき水準というのが必要でありまして、少なくとも、それは労使の意見を踏まえながら設定すべきなのだと。こうした基本的な考え方自体を、全協の取りまとめとして打ち出すべきではないかと考えております。基本的な考え方としては、以上でございます。
○藤村会長
分かりました。そのほか、労側からいいですか。では、使用者側の御意見を伺いましょうか。佐久間さん、どうぞ。
○佐久間委員
まず、資料の御準備等、本当に事務局の皆様方、ありがとうございました。今まで、1回から5回までの全員協議会で、目安審議の在り方、そこの中であるべき水準、それから政府方針への配意ということは、常々、意見を述べてまいりまして、資料№2に掲載していただいています。特に、全体的なこの目安審議の在り方の項目で、1ページの政府方針への配意の在り方、これの下の3つの丸ポツです。「政府方針に沿った形で議論することも1つの方法かもしれないが、中賃で検討をするのであれば、時々の事情を外して、データを根拠に算出した、今まで以上に納得できるような数字に基づいて、労使で議論をする必要がある。そして、この三者構成は重要であり、これは維持をしていただきたい。」また、最後の項目でありますが、「この3要素、生計費、賃金、そして支払能力のデータに基づき、労使で丁寧に議論を積み重ね、納得を得る」ことは、やはり特に重要だと思います。
これは、今年の審議においても私ども労使、事務局、公益の先生方で、ここに近づけていこうということで、努力をしてきたところだと思います。極端な話、パーセンテージとか、この3要素の項目でどこを重視していくかというのも、もちろんあると思います。例えば今年については、生計費的なものを重視されたと思いますが、実際に指標毎にパーセンテージと金額を当てはめたら、多分、実額としては低くなるのではないかと思います。そこである程度、従来使用されてきた時々の事情ということはないですが、やはり政府方針に配慮しながら、総合的にという言い方がいいのかもしれません。それに応じて支援策を用意していただくとか、そういう努力というのも事務局に折衝していただいたのではないかと思います。1つは、この業務改善助成金なども、厳しい財政情況の中で、非常に額の関係を拡張していただいた、使いやすくなってきたということも確かなのではないかと思っています。
つまり、目安審議の在り方には、あるべき水準が含まれると思いますが、下の3つの意見というのが集約されているのではないかと思っています。
その前提として、このあるべき水準なのですが、やはり1,000円が見えてきたというか、近づいてきつつあることは事実ですが、これが1,000円を達成した後、例えば1,200円、1,500円、その1,500円を達成したら、次の段階まで額が上がると、もう本当にこれは追っ掛けるだけで、例えば私ども経営者にとっては、いつになったらこれは先が見えるのだろう、自分たちの経営と突き合わせて、本当に厳しいということで、額を示すということ、提示は実行しにくいと考えます。額を提示しないまでも考え方、方向性を記載することでも、「あるべき水準」というのはあるかもしれません。具体的な額を提示しないと漠然として分かりにくいということもありますが、ここは毎年毎年の交渉、三者構成をもって皆さん方と協議をしていくということに努めていければと思います。以上でございます。
○藤村会長
ありがとうございました。使用者側としては、金額を示すということについては反対と。800円、1,000円というのも、この場で決まったわけではなくて、確か2007年ぐらいに、円卓会議とか何かそういうのができて、そこで800円、1,000円というのが出てきました。それの1,000円が達成されつつある中で、じゃあどうするのだ、また政労使の三者構成の会議で、何か出てくれば、それはそれで私たちも受け入れざるを得ないわけですが、それを待っていても話は進まないので、一応この場で、三者構成の場で、どういう考え方でいくのかというのを議論していきたいというように思っております。労側、次の意見はございますか。水崎さん、どうぞ。
○水崎委員
あるべき水準に関して、いろいろ御意見が出ていますが、労側としては、やはり先ほど来言っているとおり、水準は一定、公労使で合意をして見せるべきかというように思っています。ここ数年、地賃が大幅に引き上がってきていることもあって、経営の予見可能性、そういうものを高める観点からも、労使できちんと合意をした水準を一定見せていくことは、有益ではないかと考えています。労働側としても、最低賃金の大幅な引上げが、特に中小企業の経営に影響を及ぼしていることは認識をしています。だからこそ、中賃の中でも最低賃金の引上げ分を含む賃上げしやすい環境、あとは政府の支援、そういったものを求めていくべきではあるのですが、それに加えて、労使できちんと合意をしたあるべき水準というものを見せていくことが、必要なのではないかというように感じています。
目標を設定した上で、年々の論議では3要素を踏まえてどの程度引き上げていくべきかという議論をたどるプロセスを確立をしていけば、中小企業もそれに合わせた一定の経営の対応が可能になるのではないかというように感じています。以上となります。
○藤村会長
永井委員、どうぞ。
○永井委員
あるべき水準議論をどの場でするのかについて、今、会長からも政労使といった場だけではなくということもあったと思うのですが、私どもは、正に中賃は公労使の場だと思いますが、この中賃でも検討していく必要があると思っております。ここは中賃ですが、同じ厚生労働省の所管の労働政策審議会では、私の記憶では労働政策基本部会において、まだ余り起こっていないことも含めて、例えばAIのことやテレワークといったことについても、将来的な雇用労働政策の方向を取りまとめたという実績もあります。つまり、こういった審議会であるべき水準のような目標を定めることは一概に否定されるべきでもないですし、是非やっていく必要があるのではないかと思っております。少なくとも公労使、政労使の場で議論すべきであり、当事者がいない、労使がいない場で、賃金に関する目標が定められることは適当ではないと思っております。以上です。
○藤村会長
分かりました。ありがとうございます。使用者側、いかがですか。大下委員、どうぞ。
○大下委員
今、それぞれの委員がおっしゃった御意見ももっともかなと思いますが、私の認識としては、毎年の最低賃金額は、法に定める3要素に基づいて公労使三者構成の最低賃金審議会で決めるということ、これが、法が持っている最低賃金の決め方の大原則だと思っています。あるべき水準というものをどこかで持つというのは、変な考え方かもしれませんが、3要素に加えて4つ目の要素を持つということではないかなと思っています。それを、毎年の審議を行うこの最低賃金審議会で決めるのは、来年、再来年、更にその先の毎年の審議を一定程度縛ることになるのではないかと思います。この先の経済や雇用情勢の予見可能性が必ずしも高くない中で、そうした毎年の審議を一定程度縛るようなものを議論して果たして合意できるのか、来年のメンバー、再来年のメンバーの自由闊達な審議に影響を与えるような判断がどこまでできるのかというと、私は相当難しいのではないかなと思っています。
他方で、先程来、何人かからお話がありましたし、先生からも過去の例を引き合いにして政労使の会議で方針が議論されるということもあり得るのではというお話がありました。私は、政府方針が示されること自体を否定するものでもありませんし、将来的な日本の雇用労働の在り方を考える中で、今ある最低賃金法のルールをしっかり踏まえながら、別の会議体、なおかつ公労使がそろった会議体で、十分に現状のデータ、先行きの見通しを示すデータ等を踏まえて議論を行い、最低賃金が目指すべき水準を持つことは有り得るのではないかなと思っています。ただし、その場合にも、過去に示されてきた政府方針と同様、毎年の審議を過度に縛るものではあってはならないと思っています。私からは以上です。
○藤村会長
分かりました。大下さんの御意見は、ここは決める場ではないのではないかということですか。
○大下委員
それが意見の1つです。私自身としても、それは厳しいなと思っているのが本音のところです。
○藤村会長
分かりました。どういう水準を持つかは、いろんな意見があり得ると思います。今日の資料で諸外国の状況というのがあり、資料№3の6ページのドイツの所に、中位賃金の60%を下回る賃金は、EUでは「貧困に対して脆弱な水準」と判断されると。EUの場合は、いわゆる平均賃金の6割が1つの目安になっているようです。こういう持ち方もできるかなと思います。労側、いかがですか。平野さん、どうぞ。
○平野委員
前回の全協の中で、使用者側の方から、あるべき水準を議論するのに、直接、諸外国と比べていくのは難しいのではないかという御意見もありました。確かに、額だけを比べていくのは難しいと思います。ただ、国際比較の中で、先ほど言ったEUが取った手法や、例えば中央値に対して最賃が何割か、あとは平均賃金に対して何割かといったことについて、日本はかなり低いのが現実です。そのことを中賃、我々がどう受け止めるかということは大事ではないかなと思っています。だからこそ、それがいいのかどうかは分かりませんが、水準を示すか、どういった水準を目指すかは、少なくとも議論しておいたほうがいいのではないかと考えています。
そこの関連になりますが、諸外国と制度が違うという話がありましたが、日本の最低賃金制度は学生のアルバイトも含め適用除外がないのですが、学生のアルバイトの方も仕事と学業とを両立させて、それで生計を立てている方もいるわけですから、そうした方も含めて、きちんと賃金の最低額を保障して、誰もが働いていれば、それでいいのか分かりませんが、健康で文化的な生活を営むことができる賃金を得られるという社会をつくっていく必要性があると思っています。
○藤村会長
新田委員、どうぞ。
○新田委員
諸外国の最低賃金制度の絡みで御発言がありましたので、前回その関係で発言したこともあり、再度発言いたします。前回私が申し上げた趣旨ですが、日本の最低賃金が国際的に低いことは事実として認識しているということを、申し上げておきたいと思います。その上で、なぜそういう状況があるのかといったときに、今回資料としてお出しいただいている諸外国の最低賃金制度、特に4ページの概要を見ると、他の国と決定的に違うのは適用除外がないことです。まさに、賃金のセーフティネットとして、日本の場合は最低賃金制度がしっかりと存在しているということだと思います。やはり、そういったことを踏まえた上で比べる必要があるということを、重ねて申し上げておきたいと思います。
ですので、適用除外がないから低くていいと考えているわけでは全くなくて、先ほどお話が出ました、健康で文化的な最低限度の生活を営むことができる水準を、もし本当に日本の現行の最低賃金制度で担保するということであるならば、本当にどういう水準が適切なのかについて、現行は適用除外がないこと、あるいは、この減額特例という形で労働局長の許可を得るプロセスがあることも踏まえながら、考えていく必要があります。
先ほど平野委員から御指摘があったとおり、一定以下の年齢や学生ということだけで一律に線を引くのも難しい部分があるということも承知しています。昼間学生や夜間学生もいますので、そこは考慮しなくてはいけない。さらに適用基準を例えば週の労働時間で見るのか、それとも年収要件で見るのかとか、様々な議論が必要になってくると思います。
ただ、いずれにしても、もし本当に、日本の最低賃金水準のあるべき姿ということで、国際的な水準も踏まえながら、なおかつ、本当に真の意味で健康で文化的な最低限度の生活を営める水準を考えていくのであるとすれば、今申し上げた適用除外や、最低賃金制度のある程度根幹の部分について、やはり、我々としても覚悟を決めて、しっかり議論をしていく必要があるだろうと考えております。
最後にもう1点だけ申し上げます。先ほど来、複数の委員の方々から御発言があったとおり、できれば、しっかりと労使の間で議論をして、合意できる水準が設定できればいいと、私も心から願っております。願っている一方で、先ほど大下委員も申し上げているとおり、水準を決めることについて、使用者側としては非常に慎重にならざるを得ない部分もあると、私の中でも相矛盾する気持ちが存在しております。今の時点で、こういう水準でと合意できればという気持ちと、その合意が将来の最低賃金審議会に携わる人たちの審議の内容を拘束することになるということもありますので、これについては、今、明確な答えは出せません。いずれにしろ、そこの部分については引き続き審議をしていきながら、そういった水準が見いだせるのかどうかを探っていきながら、最終的にはどうするかを考えていきたいと思います。私からは以上です。
○藤村会長
分かりました。労働側、いかがですか。仁平さん、どうぞ。
○仁平委員
1点だけ。使用者の先生方もこういうことで共通認識が図れるのかという点について、1点だけ御意見を伺えればと思っています。具体的には、ポスト1,000円の目標水準を何らか持たざるを得ないとすれば、やはり労使が関わる場で決めるべきだ、これについては、一致できるものなのでしょうか。この審議会の場ではないのかもしれませんが、私は、必ずそれは必要だということを、少なくともこの中賃と全協の中では、きちんとはっきりさせておくべきなのではないかと思います。
○藤村会長
使用者側の皆様、いかがですか。佐久間さん、どうぞ。
○佐久間委員
そうですね、今、仁平さんの御発言の中で、あるべき水準をもう1つ、1,000円的なものから、みんなで共通的に、例えば1,500円なら1,500円というのを1つ置いておいてということで示す、そこに近づけていくという趣旨なのか、それとも、毎年やはり交渉しながら、額は具体的に示さなくても三者構成で毎年、協議しながら決定していくという意味合いなのか。どういう意味になるのか、すみません。
○仁平委員
佐久間委員、ありがとうございます。ごもっともなお話です。後者の部分は、当然ながら、毎年幾ら引き上げるのかというのは正に法律のフレームで決まっている話です。したがって、今の法律だったら中賃の場で、目安制度にやはりみんなに信頼を寄せていただいて、目安制度の中で決めていくべきだと思っています。
ただ、先ほど申し上げたのは、我々はいいと思ってというわけではないのですが、全国加重平均1,000円がクリアされつつある局面の中で、伊藤委員も言われていましたが、次の目標が具体的な数字ではないのかもしれませんが、何らかの議論をここで深めるべきではないかということが1つです。なおかつ、この中賃の場で決められないのだとしても、労使が関わる形で議論を進めるべきだといった議論の進め方、政府としての議論の進め方に、きちんと注文を付けておくことは大事な点ではないかなと思っており、その点を申し上げた次第です。
○佐久間委員
ありがとうございます。三者構成の重要性は、皆様方の共通認識だと思います。そこで今回1,000円という額が明示されてきたのは、先ほど藤村先生がおっしゃるとおり、政府からの数字として上がってきたと。それが近づいてくる、クリアできそうだと言っていいか分かりませんが、そこの水準にきたときに、では今度は、マスコミ等により世間で言われている1,500円と数字を挙げたときに、使用者側としてはプレッシャーにもちろんなります。そして、それを土台にして、1,500円を根拠としなければいけないというのは、今、新田委員そして大下委員が言われたとおり、それが妥当なものなのか、また、どこを適用除外にしていくかの議論がなされないまま、1,500円という数値が一人歩きしてしまうというのは、やはり懸念するところなので、そこの議論ができていない。この全員協議会の場で協議してもよろしいと思うのですが、これをどれだけのものとしてまとめていくか。多分、結構時間が掛かってくると思います。ですから、やはり次に、例えばランク性とか資料の関係とかいろいろある中で、項目を絞っていかないと、なかなか議論はできにくいのではないかなと思います。以上です。
○藤村会長
仁平さん、よろしいですか。
○仁平委員
時間の制約もあることだと思います。ただ、これも今回12月にやって、以降個別論点の議論も続きますし、さらにはもう一回まとめの局面もあると思うので、まとめの書きぶりの段階でもどういうまとめ方をするのかとも関わります。今日はこれ以上やってもという気もしないでもないと思いますし、使側の先生方の御懸念もよく分かります。ただし、よく分からない「〇〇円」みたいな目標を外からパっと持ってきて、良い悪いというのは、やはり労側としてもそれでいいのかと思っているということはお伝えしておきたいと思います。
○藤村会長
分かりました。ありがとうございます。あるべき水準については、明確に幾らと金額を示すのは難しいですが、これも議論を続けていくということで、一応今日の場は終わっておきたいと思います。
では、次は政府方針への配意の在り方です。その時々の事情というのをたくさん使ってきました、これでいいのかなと思いつつ、いわゆる政府の方針があり、それを完全に無視するわけにはいかない、それで、ここまできているわけですが、この場で、せっかくの機会ですから、政府方針をどうここで受け止めて審議に反映していくのかという辺りを、労使双方の御意見を伺いながら、理解を深めていきたいと思います。使用者側からいきますか。大下さん、どうぞ。
○大下委員
御案内のとおり、政府はこれまで、例えば2014年度ぐらいまでは生活保護との逆転現象を解消しましょう、それからここ数年は、今議論がありましたが、全国加重平均1,000円以上というものを国の経済財政政策の一環として掲げて、年によっては審議会の諮問に当たって配意を求めるということを明確に伝えてきています。これまでの議論の際に申し上げていますけれども、政府方針への配意を政府が求めることについて、それを駄目だと言うことはできるものではないと思っています。
ただ、先ほど来、申し上げているとおり、配意はしますが、あくまで3要素に基づいてきちんと議論をして決めるということは絶対守り抜かなければならないと考えています。昨年の審議では、コロナ禍で大変厳しい状況の中で過去最高の水準の目安額が示され、今年度は、その反省を踏まえて、データに基づく審議というものを公労使、また厚労省のスタッフの皆様にも大変御協力を頂いて、徹底してやってきました。それでもなお、地賃の委員を務めている各地の会議所の方々を含め、今もやはり政府方針ありきの議論になっているのではないのかという不信感は、極めて根強いものがあります。
この状況をしっかり見据えながら、政府方針への配意について考える必要があると思っています。すなわち、中賃、地賃とも、審議会の議論が、一生懸命やっていても実質は意味がない、形骸化しているのではないかというような懸念が、これ以上進むようなことがあってはならないというふうに思っています。ここ数年のこうした経緯、現状をしっかりと受け止めて、今申し上げたように、政府方針が示されることを否定するわけではないけれども、それを受け止めつつ、中央、地方の審議会においては、3要素のデータに基づく審議をしっかりやるのだということを、少なくとも今回の協議会の報告として明確に打ち出しておく必要があるのではないかと思っています。
重ねて言うと、政府方針に対していささか疑問に思うのは、特に昨年で言いますと、労使の代表がしっかりそろった場で議論されたものではないという状況にあります。今年は、そこをかなり要望で申し上げて、厚労省の方にも御配慮をいただき、日商会頭も出席した形で、新しい資本主義実現会議と経済財政諮問会議の合同の場で議論をして、政府方針が決められました。したがって、我々としては、その政府方針を何か否定するわけにもいかない、きちんと我々の意見を踏まえた上で決められたということになっていますが、この点もしっかり担保していただきたいと思います。
更に申し上げるならば、先ほどの議論、中賃でやっているような、3要素のデータをしっかり踏まえた議論を行って政府方針が決められているかと言うと、必ずしもそうではないと理解しています。今後も政府方針というものが何かしら示されるのであれば、先ほどの公労使、政労使三者構成の会議を別途設定するのかどうかは分からないですけれども、もう少しきちんとデータを踏まえた議論、時間を重ねた議論をしていただいて、方針を示していただくことがより望ましいのではないかと思っております。私からは以上です。
○藤村会長
分かりました。ありがとうございます。では、労働側委員、どうぞ。
○仁平委員
政府方針への配意の話は資料も出していただいておりますけれども、資料No.4の5ページに今年の記述があります。ここには「物価が上昇する中で、官民が協力して」と書いてあります。引上げ額については、三者構成の審議会で3要素をしっかり考慮して議論していただく旨が書かれており、ある意味、ここにとどめていただいたのだろうと思っております。そういう意味では、これは政府で議論されることかもしれませんが、この程度が適切なのではないかという気もしないでもないと思います。
ただ、前半の話にも関わるのですが、3要素と言っている賃金というのは、法律で書いてあるのはここまでだと思うのですが、必ずしも賃金改定状況調査第4表の上げ幅をもって賃金なのかというと、そういうわけではない。ですから、この中賃の場で持つべき指標について議論を、藤村先生が言われるように、例えば一般の賃金に対する比率などについて、どのように考えるのかということをある意味深めておくというのも、1つ大事な点ではないかと思っております。
○藤村会長
ありがとうございます。公益の委員の方、いかがですか。
○中窪委員
政府としてこういう形で示すときに、今年のように三者構成の審議会を尊重する態度が見えたということは大変好ましいことであって、当然、このようにしていただくべきだったと私は思います。中賃の前にいろいろ実質的な議論を詰めて、それを踏まえてとこちらに言われると、労使の意見は事前にある意味吸収されているのに、公益委員だけなかなか反映していただく機会がないという事態になっている気がいたしまして、もちろん公益委員といっても、それぞれまたいろいろな考え方がありますが、そこを最大公約数にこなしながら、中賃の審議の中で、法の趣旨とその時々の統計資料に基づいた判断をするわけです。そのことを政府としてもきちんと尊重していくべきであり、いろいろな経緯を踏まえて、そういう方向に向かっているとは思いますけれども、改めてそのようにしていただきたいと感じました。
それから、ついでに質問なのですけれども、今日の資料№3の中の最初に、平成27年の前回の全員協議会の中間整理の部分が出されているのですが、これがここに出ているというのは、最終的な報告書には取り込まれなかったけれども、途中でこのような意見がいろいろ出てきて、もう少し多彩な考え方があったので、もう一回振り返った上でここで議論しようと、そのような趣旨で出されていると理解してよろしいのでしょうか。
○岡賃金課長
御指摘のとおりです。
○中窪委員
ありがとうございます。
○鹿住委員
政府方針への配意ということなのですが、労使が入った場で政府が意見を聞いて決めたとしても、やはり立場が違うということを少し考えなければいけないかなと思います。要するに、昨今、与党だけではなくて野党も、最低賃金をもっと上げましょう、こういうふうに上げましょうと言っています。やはり、政治的な面で言うと、賃金を上げましょう、制度として上げますというのは、かなり有権者に対する強烈なアピールになるわけです。政府や国会の先生方のお立場での引上げの水準、目標を幾らにしましょうというお考えと、この審議会で法律にのっとって3要素に基づき議論する、労使の合意点を見いだすという趣旨と、若干立場が違うと思うのです。
ですので、もちろん無視はしませんし、配意はするべきだと思いますが、ただ、立場が違う、考え方が違うということは、全体として意識をしなければいけないのではないかということは思います。審議会で決めたことを、政府が政策的に少し上乗せするとか下げるとかということができるように制度上なっている国もありますよね。それは、正に立場の違いを制度でしっかり担保しているような、そういうことだと思うのですけれども、今現状の日本の制度ではそうはなっていないので、やはり最終的には審議会で決めるということは明確にしておいたほうがいいと思います。以上です。
○藤村会長
佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員
もう一点、私から発言させていただきたいと思います。政府方針への配意について、昨年度の審議においては、ランクもある程度方向付けがなされるということがありました。そこの中で、私個人的なものですが、こういうことであったら、最低賃金法を改正していただいて、政府案に基づいて決めていただければいいのではないかなとも思ったことがあります。でも、今年の審議を進めながら、私ども経営者団体としても、中小企業の意見を踏まえて審議をしてきているわけです。もちろん、労働側もそうであると思うのですが、それぞれによって額を示していく、また方針を示していくというのは、やむを得ないことだし、私は当然のことだと認識しております。ただ、あくまで方針であり、もしかしたら今年も政府案で早期に1,000円ということだけではなくて、具体的な額が腹案として持たれていたのかもしれない、でも、それをこの三者構成の場で協議して額を1つ決めてきたという重要性というのは必要なのだろうなと思います。
先ほど大下委員が言われたように、新しい資本主義実現会議で最低賃金の方向性が発表されましたが、私どもは、その新しい資本主義実現会議には、会長等は入っておりません。そのため、ある程度第三者的とは言えないかもしれませんが、新しい資本主義実現会議の動きというのは非常に関心があったところです。新しい資本主義実現会議において、どのように示されるのかなと。使用者側の代表者2名の構成メンバーに入っていたことで、データとか根拠に基づいて早期に1,000円という、今までの表現で抑えていただいたということも1つあるのかなと思います。それが具体的にもし額として示されるようであれば、どうして数値が挙げられたのかということを、詳細なデータとして示していただきたいと思います。以上です。
○藤村会長
分かりました。先ほど大下さんがおっしゃった点、地方最低賃金審議会の使用者側委員が、ここの中賃の目安審議に対して不信感を持っていると。要は、根拠なく何かえらい高い金額が出てくるなと、そういうことだと思うのです。その説明として、今年はよかったのですが、去年までは政府方針への配意というところで上げてきたと。これっていいのという、そういうのが背景にあるかと思います。政府がいろいろな政策を実現していく上で、個人消費を拡大するために賃金を上げていきたいと。ただ、民間企業の賃金に政府は直接介入はできませんから、辛うじて最低賃金は少し影響を及ぼせるというところで、いろいろな政府方針に配意してというのが出てきているわけですよね。どこまで政府方針というのをこの場で気にするかということについて、労側はどう思われますか。
○水崎委員
これは、私も今年から最低賃金に携わるようになって、去年までは労働組合にはいましたけれども、別の立場にいました。そうした立場から見たときに、政府方針というのは非常に発信力が強いというか、メッセージ性が強いのか、それともマスコミの取上げ方がどうなのかというのもありますが、やはり、そこを目掛けて最賃の引き上げの議論をやっているのではないかと見られがちだと思うのです。ですので、先ほどの前段の議論にもなるのですが、あるべき水準というものを、具体的に水準として書けるかどうか、日本語になるかもしれませんし、この場で決めるのはどうだという話も大下委員が言っておりごもっともだと思いますので、政府方針を目掛けてやっているように見えないように、この三者の場で、ある程度水準なのか、考え方なのか、日本語なのかというのは分かりませんけれども、付随するものを論議の上で作って、メッセージとして発信していくことが見せ方としても良いと感じているというのが私の意見です。
政府方針への配意は必要だと思いますが、外から見るとちょっと強いイメージがありますので、労使で議論したあるべき水準をきちんと発信していく必要があるのではないかと感じています。以上です。
○藤村会長
何か、この審議会が始まる前に決まっているのではないのかと、このように見えてしまうということですかね。池田委員、どうぞ。
○池田委員
政府方針がどのようにできているかということから考えると、目標値を出すにあたって、生産性向上策や取引の適正化にも言及されており、そういう意味では、再三申し上げてきている好循環というのを生み出す取組と連携して、その目標値が出てきているのではないかと考えています。ですので、そういう意味では、それらの政策的な取組の成果がどう表れているかも重要と考えます。その取組が不十分な中で、政府方針だけに近づけることをすれば、どうしても実態が伴っていないということになります。
配意としてそういう政策的な成果をどうデータで見ていくかということを含めた配意であれば、意味があると考えますが、そうではなく単純に額に近づけるというようにしていくと、三要素のどれかだけが強いものとなり、不信感とかということが拭えないのかなと思っています。以上です。
○藤村会長
これも、スパッとした結論は出ないですよね。その時々の事情で労使が話し合いながら、この辺でというようにやっていくしかないですよね。ただ、政府方針というのは、あくまでも私たちがここで決めるときの一参考情報であって、それに振り回されているわけではないと、そこは労使で合意できているところかなと思います。もし政府方針で決まるのだったら、先ほど佐久間さんがおっしゃったように、この審議会をやめて法律で決めるというようにしてしまえば、そのほうがはるかに楽というか、単純ですよね。でも、本当にそれが日本経済あるいは働く人たちのためになるのかというのは、これはまた別問題だと思います。では、政府方針への配意というのも、この辺りでよろしいでしょうか。
では、今日の3番目です。議事の公開というところにいきたいと思います。資料№5の一番後ろ、3ページに、地審がどういう状況かというのが示されております。今年度で言うと、公開している、会議の傍聴を認めているのが24県、一部というのが23県、そもそも認めていないという所は0県。私たちはこれをどのように受け止めて、中賃の場を公開していくかと。今、審議会というのは公開が原則ですので、よほど事情があれば非公開にできる。私たちのこの場は、これまで非公開ということでやってきているわけです。しかし、三者が全員集まる場であれば公開にしてもいいのではないかということで、徐々に合意ができつつあるように思います。
それで、実は労働側から慎重であるべきだという意見も出ていますので、そこをお願いいたします。
○仁平委員
地方審議会の公開状況を調べていただいて、ありがとうございました。目安審議の公開は、やはり地方への影響もあるものですから、労側として地賃の労側委員に聞いてみました。概要を申し上げれば、地方審議会の労側委員の多くの意見としては、透明性の確保や審議の公開も意識しつつ、最近はエビデンスに基づく主張をするように努力をされているというのを、地方の状況として総じて言えば聞いております。
他方、金額審議というのは、ある意味、労使交渉的側面もあって、それぞれの地方で様々な労使関係もあるものですから、それを土台にしながら審議をしています。したがって、地方ごとに土台の部分が随分違う所もあって、その中で本音をぶつけ合って、1円、2円も含めて、短時間ではありますが、非常に厳しい中身の交渉をしているというのが実態なのだろうと思っています。そうしたギリギリする場面を公開することは率直な意見交換を阻害する可能性もありなじまないのではないかという意見が多くありました。
そういう意味では、透明性の確保と率直な意見交換を阻害しないという両方を考える必要はあるのだろうと思っていて、そういう意味で、藤村会長におっしゃっていただいた、三者がそろった部分についてのみ公開するということは、ある意味そういう辺りなのではないかと思っております。むしろ、原則公開なのだからどんどん公開すればいいという話だけではないということだけ付け加えて、その辺りがよろしいのではないかと、意見としておきます。
○藤村会長
分かりました。資料№5の3ページの見方で、ひょっとしたら私が間違っていたかもしれないのですが、本審と書いてあるのは、我々の場合、中央最低賃金審議会ですよね、目安審議が専門部会という、そういう理解ですね。ですから、専門部会については、△が18で×が28という状況で、もし我々がここで三者がそろっている部分は公開しましょうとなると、恐らく地方最低賃金審議会にも何らかの影響があるだろうと思われます。使用者側はいかがでしょうか。大下委員、どうぞ。
○大下委員
仁平委員からの御説明を、大変興味深く伺わせていただきました。私も、審議の公開は、目安小委員会を含めて、冒頭の三者がそろっている場に限定してであれば基本的に公開可かと思っております。それ以降の審議に関しては、議論がどうしても行ったり来たりする部分もありますので、委員でない方に聞かれることを意識しながらやっていると、しっかり掘り下げた議論ができにくくなる部分もあるのではないかなと思っています。
他方で、なぜ議事の公開ということがここで議論になっているのかと言うと、先ほどの議論ではないですが、審議会できちんとした議論がなされているのか、どういったプロセスで最終結論に至っているのかというところに、外から見ていて今一つ不透明感があるということなのかなと思っています。それに関しては、今回の中賃の目安に関する審議で、データに基づく議論を徹底し、その内容をこれまでよりも、より一層しっかり報告書に書いていただきました。今年の審議で行ったようなことを徹底していき、それをまた事後ブリーフィング等で厚生労働省の方が記者に対してもきちんと説明していく。更に言えば、地賃に対しても、どういうプロセスで、この3要素のデータをどのように見て最終結論に至ったのか、政府方針をどのように配意したのかというところも含めて、議論のプロセスが最終的に終了したところで、できる限り外に対して分かりやすいように報告書あるいは答申においてしっかり示していくことが、審議の透明性や納得性をより高めるということになるのではないかなと思っています。私からは以上です。
○藤村会長
ありがとうございます。公開については、三者がそろっている場は基本的に公開にしていこうということで、労使の合意ができていると思います。ただ、夜中の2時、3時に調整が決着して、これから三者構成をやります、どうぞと言っても、誰が聞きにくるのだろうというのもあるのですが、それに対して、いやいや、そんなに遅い時間までやること自体がおかしいと。そんなに遅くなるのだったら回数を増やしてやったらどうだと、こういう意見もありますね。来年の目安審議をどのようにしていくかというところとも関わるのですが、せっかく時間もありますので、その辺りをどのようにお考えかというのをお聞かせいただけますか。どちらからでも結構ですよ、どうぞ。新田さん、どうぞ。
○新田委員
基本的な部分は、藤村会長からお話があったとおり、目安小委員会においては、三者が集まる全体会議について公開するということで、そこは合意形成が図られていると私も認識しております。全体会議がどのタイミングで開かれるかという問題も確かにあるのですが、それは正直、審議してみないと読めない部分があります。審議をやっている中で、このタイミングで持ち越しするよりは、長時間になっても引き続きやったほうがいい場面もあると思います。一方で、さすがにこの状況だったら一度中断したほうがいいということもあると思いますので、ここで決めるのは、あくまで全体会議について公開するということだと思います。全体会議が開かれるタイミングになったときに、呼び掛けて果たして誰が傍聴に来るのかという問題は確かにあるかもしれませんが、実際に傍聴に来る来ないはその人の判断ということで、我々として決めるべきは、全体会議についてはしっかりと公開するということであり、それを報告書の中に取りまとめて発信していくということが非常に大事ではないかと思っております。この件については、できる限りそういう前向きなメッセージを出していくべきと思っています。私からは以上です。
○藤村会長
確かに交渉はやってみないと分からないですからね。一義的には決められないというのは、おっしゃるとおりだと思います。労側から何かありますか。
○仁平委員
藤村先生に言っていただいたとおりなのかなと思います。そういう意味では、今年の夏のように、審議の途中でまた日を改めましょうということも含めて、いろいろなバージョン、運営が幅としては持てるのだろうなと思っております。さらに、新田委員も言われておりましたが、別に公開する場面を作ること自体が目的なのではないのだろうと思っていて、それは、透明性を含めて皆さん方に分かるように説明し、そういう場も持っておくだけの話であって、進め方そのものについては、やはり公労使がちゃんと納得して、一番いい答えが出せるような進め方ということも、事務方にもまたお願いしたいと思いますけれども、配慮して進めていただくのがいいと思います。
○藤村会長
ありがとうございました。今日、予定しておりました項目は以上ですが。どうぞ。
○中窪委員
私も、三者の所を公開というのは非常にいいことだと思います。毎回、最初と最後だけ公開することになりますが、最後、一番ぎりぎりの小委員会では、最終的な決着の所に人が入ってきて、読み合わせのところを見るというのが一番大きな違いだと思います。従来と違ってそこが見えるというのは、ある意味生々しいですが、すごくインパクトもあって、公開されたなということになっていいと思うのです。他方で、誰にどう言ってノーティスをするのかというのが非常に問題です。多分、新聞記者などはずっといますので、何人かはずっと熱心に待っていると思いますが、そのときに、どの範囲の人たちにどういう呼び掛けをして、何分後にすればいいのかということとか、来た人たちに資料を準備できるのか、あるいは、プロジェクターか何かで見せるのかとか、そういうロジスティックの部分も考える必要があります。実際はなかなか難しい面もあると思いますので、ちょっとそこを検討していただければと思います。
○藤村会長
そうですね。実際に運用する場面でのいろいろな工夫というのも必要かと思います。
一応、議事は以上ですが、何か御発言があれば是非お願いしたいと思います。いかがでしょうか。よろしいですか。どうもありがとうございました。
次回、第7回は、特に(2)の地方最低賃金審議会における審議に関する事項の資料を事務局で準備していただいた上で、引き続き各論の議論を深めていきたいと思います。次回の開催日程については、事務局で別途調整をお願いいたします。それでは、これをもちまして、本日の全員協議会を終了いたします。どうもお疲れさまでした。ありがとうございました。