2022年10月26日 第181回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年10月26日(水) 13:00~15:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

公益代表委員
荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、藤村委員、水島委員
労働者代表委員
大崎委員、川野委員、北野委員、櫻田委員、東矢委員、冨髙委員、八野委員
使用者代表委員
池田委員、鬼村委員、佐久間委員、鈴木委員、鳥澤委員、兵藤委員、山内委員
事務局
青山審議官(労働条件政策、賃金担当)、古舘総務課長、松原労働条件政策課長、吉村労働関係法課長、岡賃金課長、木原労働条件政策課課長補佐、長澤労働条件企画専門官、田邉労働関係法課総括調整官、宮田労働関係法課課長補佐、小川労働関係法課課長補佐
オブザーバー
眞下金融庁総合政策局フィンテック参事官、伊藤金融庁総合政策局資金決済モニタリング室長

議題

  1. (1)「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について(諮問)
  2. (2)労働時間制度について
  3. (3)労働契約関係の明確化等について
  4. (4)その他

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第181回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加、双方で実施をいたします。
本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の佐藤厚委員、両角道代委員、労働者代表の世永正伸委員、使用者側代表の佐藤晴子委員が御欠席と伺っております。
それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
(カメラ退室)
○荒木分科会長 本日の議事に入りたいと思います。
なお、本日は議題が4件と多くなっております。15時終了の予定となっておりますけれども、少々時間が延びることも予想されますので、この点、委員の皆様におかれましては、あらかじめ御承知いただければ幸いでございます。
まず、本日の議題1は「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱について」です。
本件につきましては、本日厚生労働大臣から諮問を受けた案件でございます。
なお、本議題は金融庁の所管事項に関係することから、労働政策審議会運営規定に基づきまして、金融庁の担当官2名に本日オブザーバーとして御出席をいただいております。
それでは、事務局から説明をお願いいたします。
○賃金課長 賃金課長の岡でございます。よろしくお願いいたします。
まず、資料の説明に入ります前に、9月13日に開催されました労働条件分科会におきまして、監督を行う専門人材の確保に関する御意見をいただきました。その際、私の説明が少し不十分で申し訳なかったと思っております。
この専門人材の確保についてでございますが、現在、金融庁等と連携しまして、金融、会計、法務の専門人材の確保を進めております。これらの専門人材を配した万全の体制で施行してまいります。
それでは、資料の説明に移りたいと思います。資料No.1-1は省令案の要綱でございます。資料1-2が省令案の概要になります。1-2の概要に沿って内容を御説明させていただきたいと思います。
表紙をめくっていただきまして、省令案の改正の趣旨でございます。労働基準法では、賃金は原則、通貨で支払わなければならないとされておりますけれども、労働基準法施行規則におきまして、労働者の同意を得た場合には、銀行口座への振込み、あるいは証券総合口座への払込みが認められてございます。
今般、これらに加えまして、キャッシュレスの普及や送金サービスの多様化が進む中で、資金移動業者の口座への資金移動を給与受取に活用するニーズも一定程度見られることから、労働者の同意を得た上で、一定の要件を満たした場合には、労働者の資金移動業者の口座への賃金支払を可能とするものでございます。
次に、改正の概要でございますが、賃金の支払方法として、労働者の同意を得た場合に、資金決済法に基づく第二種資金移動業を営む資金移動業者であって、次の①から⑧の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定した指定資金移動業者のうち労働者が指定する口座への資金移動により賃金を支払うことを可能とするものでございます。
具体的な指定要件は、①口座残高の上限額を100万円以下に設定していること。または100万円を超えた場合でも速やかに100万円以下にするための措置を講じていること。②破綻などにより口座残高の受取が困難になった場合に、全額を速やかに弁済することを保証する仕組みを有していること。③不正な取引により口座残高に損失が生じたときに、その損失を補償する仕組みを有していること。④最後に口座残高が変動した日から、特段の事情がない限り、少なくとも10年間は口座残高を受け取ることができるための措置を講じていること。⑤賃金支払に係る口座への資金移動が1円単位でできる措置を講じていること。⑥ATMを利用すること等、通貨で賃金の受取ができる手段により、1円単位で賃金の受取ができるための措置を講じていること。少なくとも毎月1回はATMの利用手数料等の負担なく賃金の受取ができるための措置を講じていること。⑦賃金の支払に関する業務の実施状況や財務状況を適時厚生労働大臣に報告できる体制を有すること。⑧資金の支払に係る業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。
この中には、個人情報保護の措置を講じていること、資金決済法の行政処分を受けていないことが含まれます。
次に、資金移動業者の口座への賃金支払を行う場合は、労働者が銀行口座または証券総合口座への賃金支払も併せて選択できるようにするとともに、当該労働者に対して必要な事項を説明した上で、当該労働者の同意を得なければならないこととする。
厚生労働大臣の指定を受けようとする資金移動業者は、先ほどの①から⑧の要件を満たすことを証する書類を添えて、申請書を厚生労働大臣に提出しなければならないこととする。
指定資金移動業者は、指定の要件に係る変更があったときは、あらかじめ厚生労働大臣に届け出なければならないこととする。また、資金決済法による変更登録または変更届出を行ったときは、遅滞なく厚生労働大臣に届け出なければならないこととする。
厚生労働大臣は、賃金の支払に関する業務の適正かつ確実な実施を確保するために必要があると認めるときは、指定資金移動業者に対し、業務の実施状況や財務状況に関し報告を求め、又は必要な措置を求めることができることとする。
厚生労働大臣は、指定資金移動業者が次のいずれかに該当するときは、その指定を取り消すことができる。その事由は3つございます。1つ目は、資金決済法による処分が行われたとき。2つ目は、指定の要件を満たさなくなったとき。3つ目は、不正の手段により指定を受けたときになります。
次に、厚生労働大臣は、指定の取消しを行ったときは、その旨を公告しなければならないこととする。
指定の取消しを受けた指定資金移動業者であった者は、賃金の支払の義務の履行を確保するために必要があると大臣が認めるときは、なお指定資金移動業者とみなす。
指定資金移動業者は、次のいずれかに該当するときは、遅滞なく厚生労働大臣にその旨を届け出なければならないこととする。1つ目は、指定を辞退しようとするとき。2つ目は、事業の廃止等の届出をしたときになります。
指定資金移動業者が指定を辞退しようとするときは、30日前までにその旨を公告するとともに、全ての営業所の公衆の目につきやすい場所に掲示し、また、公告した旨を直ちに厚生労働大臣に届け出なければならないこととする。
以上が省令案の内容でございまして、この省令案につきましては、公布は11月、施行期日は令和5年4月1日を予定してございます。
以上が資料1-2でございます。
参考資料1といたしまして、これまでこの分科会で御議論いただいた内容を資料にまとめてございます。表紙の次の2ページ目、指定要件(2)のところに①から⑦がございますが、9月13日の分科会で御議論のありました②、④を追加してございます。
それ以下のページについては特段の変更はございません。
参考資料2を御覧いただきたいと思います。「パブリックコメントでの主なご意見と考え方」でございます。9月22日から10月21日の30日間パブリックコメントを実施してまいりました。多くの御意見をいただきましたが、これまでこの分科会で御議論いただいた制度の内容について、その趣旨がきちんと伝わっておらず、改めて説明したほうがよいと思われた御意見とその対応方針について、参考資料2にまとめました。なお、パブコメ全体の御意見への回答については、省令公布が行われる運びになった場合に、公布日にホームページに公表する予定でございます。
主な御意見は3つございます。1つ目は、ポイントでの支払に対する懸念。2つ目は、使用者に強制されるおそれへの懸念。3つ目は、現金化に係る手数料の負担への懸念でございます。
まず、1点目のポイントでの支払に対する懸念につきましては、今回の措置は現金化できる資金移動業者の口座への賃金支払を選択肢として追加するものであり、現金化できないポイントでの賃金支払は認められないものでございます。
2点目、資金移動業者の口座への賃金の支払については、労使協定の締結に加え、労働者の個別の同意が必要となります。また、労働者の自由意思に基づき同意ができるように、行政のほうでも同意書の様式例を作成してまいります。また、仮に労働者の同意なく支払を行った場合には労働基準法違反となりますので、労働基準監督署において適切に対応いたします。
3点目、既存の銀行口座等への賃金の振り込みについても手数料の負担なしに引き出せることを求めていない中で、今回の資金移動業者の口座への賃金支払については、利用者の利便性の観点から、月1回は無料としたものでございまして、現時点の案でも銀行等よりも利用者へ配慮したものとなっていると考えております。
以上の点につきましても十分周知をしてまいりたいと思いますし、これら以外の事項につきましても制度を正しく理解していただきますように、施行に向けまして丁寧な周知に取り組んでまいりたいと考えております。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ただいまの事務局の説明について御質問、御意見があればお願いいたします。なお、オンライン参加の委員の皆様におかれましては、発言の希望をチャット機能のほうに書き込んでお知らせください。いかがでしょうか。冨髙委員。
○冨髙委員 御説明ありがとうございました。
冒頭、体制整備の件について課長のほうからも御発言いただきました。現在、整備中ということだと思いますが、先ほど万全の体制で行っていきたいというご発言もありましたので、ぜひお願いしたいと思います。
また、省令案の内容でございますが、例えば資金保全の仕組みや、破綻した場合の保証、不正利用における損失補償、また、今、申し上げた体制整備の部分については、この間、本分科会で議論してきた内容が含まれていると考えているところでございます。
その上で、これまでも申し上げておりますが、これらはあくまで労基法の施行規則による上乗せの要件ということで、そもそも本体となる資金決済法に基づいたモニタリング、指導監督は金融庁が行うということが大前提であると労側として考えています。送金目的の業態に賃金が滞留するということになれば、現状のモニタリング、指導監督よりもより厳正な対応が金融庁にも求められるということは、改めて申し上げておきたいと思います。
厚労省と金融庁が制度のはざまを生まないように、何度も申し上げているように、労働者の労働の対価である大切な賃金を預ける先であるということを念頭に置いて緊密に連携いただきたいと思っております。
また、前回の議論を受けて我々のところにも様々な意見が寄せられております。先ほどパブリックコメントの主な意見についても御説明いただきました。ここに書いてあるような内容はもう既にこの分科会の中で議論してきた内容でございまして、その内容が理解されていない部分が多分にあることを改めて感じた次第でございます。内容が非常に複雑で分かりにくい制度となっておりますので、労側としてももちろんしっかりと周知していくつもりではございますけれども、大切な賃金を預ける先であることから、労働者の不安、誤解を生まないように、しっかりと分かりやすい周知を徹底していただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。オンラインから池田委員、お願いいたします。
○池田委員 御説明どうもありがとうございました。
資金移動業者の口座への賃金支払については、2020年8月の第163回分科会から先月13日の第178回分科会に至るまで2年を超えて議論が行われてまいりまして、その間、労使双方の委員から資金保全や労働者の同意をはじめ、様々な論点に関して多岐にわたる意見や質問が出されてまいりました。本日の省令案要綱を拝見し、分科会での指摘が大いに反映された制度設計がなされたと受け止めています。この間の厚生労働省の御尽力に心より御礼申し上げたいと思います。
新たな制度の円滑な施行に向けて厚生労働省に求めたい事項を3点申し述べさせていただきます。
1点目は、労使双方への制度の周知徹底です。先ほど事務局から御紹介がありましたし、ただいまの冨髙委員の御発言にもありましたが、パブリックコメントでは制度案に対する誤解や運用面での懸念が寄せられています。既存の賃金支払の手段は今後もなくならず、資金移動業者の口座という選択肢を法令上増やすということ。実際の導入に当たっては労使協定の締結と労働者の同意が前提となることという点を中心に、広く周知に努めていただきたいと思います。
2点目は、先月の分科会でも労働側の委員の方から御指摘がありました審査体制の整備でございます。厚生労働省において2階部分の指定取消しに関する必要な審査・対応が行われるよう、人材確保も含めて整備に努めるというお話がございました。1階部分の資金決済法に基づく行政処分等の情報について、金融庁と適時に連携・協力を行い、資金移動業者や保証会社、保険会社に対する報告・聴取と併せて、大臣指定後の適切なアクションにつなげていただきたいと思います。
3点目は、これまでも御指摘している企業の振込実務への配慮です。資金移動業者の口座には賃金の一部の振込が一般的な利用方法となることを踏まえれば、現行の銀行口座への振り込みと大きく乖離したオペレーションを求められると、導入に二の足を踏む事業者が多くなると予想されます。せっかくこれだけの議論を重ねて導入に踏み切るということですから、それが企業実務を理由としてニーズのある従業員の選択肢となり得ないということのないように、厚生労働省から資金移動業者に対し、このような実務面への目配りの重要性について呼びかけていただきたいと思います。
以上3点を申し上げた上で、私は本省令案要綱に賛成したいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。川田委員、どうぞ。
○川田委員 ありがとうございます。
私も今し方、労側、使側、それぞれの委員から御発言いただいた内容と大きくは変わらないのですが、まず諮問に関しては、当分科会でここまでの議論を反映された内容になっていると思いますので、特にこの場で意見等はございません。これでよいかと思っております。
その上で、これも既にほかの委員から御指摘がありました制度の内容の周知、内容が正しく理解された上で、その必要性のあるところに使われていくという点が重要だと思っています。方向性自体は、デジタル化が進んでいく中で、このような資金移動業者の口座への支払という選択肢が増えること自体は、方向性として望ましいかなと個人的には思っているのですが、その際にあり得べき誤解等をできるだけなくしていくような制度の導入、運営が求められるということだと思います。
事務局からもパブリックコメントの御説明がございましたが、この間、私が個人的に見聞きした範囲内においても、この制度についての捉え方、イメージの持たれ方が結構幅があって、審議会で審議している内容からすると、ちょっと違うというものも結構あるように思っています。
そこで、周知の重要性自体は、各委員、これまで指摘されたとおりだと思うのですが、例えばあり得べき典型的な誤解について、こういうのとは違うのですというような説明であるとか、あるいは具体的な制度の導入のされ方のイメージ。あり得べき誤解と言ってよいのかもしれませんが、例えば使用者側の都合で賃金の全額について、資金移動業者の口座への賃金支払がされるというイメージを持たれているような状況もあるように思いましたので、先ほども御発言がありましたが、例えば銀行の口座との併用というのは一般的な姿になるだろうし、あと換金性のないようなところへのポイント等をもって賃金の支払いにするのではないのだという辺りは、恐らく個々の企業で検討する、あるいは労使協定を結ぶという場面での参考になるために、ある程度具体的なイメージが示されることも重要なのかなと思って、周知の際にそういった点を留意する必要があるのかなと思っています。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。安藤委員、お願いいたします。
○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。
パブリックコメントに対する考え方を拝見したのですが、最後のところで「月1回は手数料を負担すること無く、ATM等での受取ができることとされていることが、月1回では少ない」という点についての考え方として、銀行及び証券総合口座の場合では無料とすることを求めていないのに対して、月1回手数料を負担することなく受け取れるのだから、こちらのほうが優遇されているというような整理がされているようです。しかし、御意見を下さった方としては実態を見ていらして、銀行からお金を引き出すときには、平日の日中であったら無料で引き出すことができるのが一般的なのに対してというものとの比較だと思います。
この観点から、最低限の基準については、月1回は手数料を負担することなく資金移動業者の口座からATM等を通じて出金ができるということ、このミニマムなものだけを現実の姿として考えるのではなく、資金移動業者同士の競争による利便性の向上を通じて、より利便性が高い形を追求していくような取組があると良いと考えております。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
それでは、ほかに意見がないということでございましたら、内容については特段の異論が述べられませんでしたので、当分科会といたしましては、ただいま説明がありました省令案要綱につきましては、おおむね妥当と認め、労働政策審議会宛てに報告することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○荒木分科会長 ありがとうございました。それでは、そのように進めさせていただきます。
では、事務局から答申の案文と報告のかがみ文の配付をお願いいたします。オンライン参加の皆様には共有画面で掲示しますので、御確認ください。
(答申の案文と報告のかがみ文配付)
○荒木分科会長 それでは、お手元の答申と報告の案について御確認いただきたいと思います。
労働政策審議会令第6条第7項及び労働政策審議会運営規定第9条の規定により、分科会の議決をもって審議会の議決とすることができることとされています。
そこで、お配りした案のとおり、労働政策審議会長宛てに報告し、この報告のとおり厚生労働大臣宛てに答申を行うこととしたいと考えますが、よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○荒木分科会長 ありがとうございます。
それでは、ここで事務局から御発言がございますでしょうか。
○審議官 審議官の青山でございます。
本日、労働基準局長が国会要務で欠席でございますので、私のほうから一言申し上げます。
委員の皆様におかれましては、御答申いただきまして大変ありがとうございます。今後、本日の答申を受けまして、厚労省としましては必要な省令改正の手続を進めさせていただきます。施行日につきましては、来年4月1日を予定しておりますが、厚労省といたしましては、この制度について丁寧な周知を行ってまいります。また、施行に向けまして引き続き金融庁と連携するとともに、厚生労働省の実施体制についても必要な専門人材を確保し、万全を期してまいります。
事務局からは以上でございます。どうもありがとうございました。
○荒木分科会長 それでは、事務局におかれましては御対応のほどよろしくお願いいたします。
第1の議題については以上といたしまして、ここで説明者の交代をさせていただきます。
それでは、次の議題に移ります。議題2「労働時間制度について」です。
事務局より説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。
議題2につきましては、資料2-1から資料2-3と、資料3-1、3-2を御用意してございますので、お手元に御用意いただければと思います。
それでは、早速資料2-1を御覧ください。まず、労働時間制度に関する検討の論点についてでございます。1ページ目を御覧いただきますと、こちらが第177回の本分科会にお示しさせていただいた論点のうち、赤字の部分が本日御議論いただきたいと思っている論点でございまして、「裁量労働制について」の中の「労働者の健康と処遇の確保」についてございます。
2ページ目、具体的な論点といたしまして、本日の項目は大きく2項目でございまして、1項目が「健康・福祉確保措置」、2項目が「みなし労働時間の設定と処遇の確保」でございます。
まず、健康・福祉確保措置について4点ございます。1点目、対象労働者の健康確保を徹底するため、健康・福祉確保措置を見直していくことが必要であり、その際、分かりやすさや制度間の整合性にも配慮することが適当ではないか。2点目、労働時間の状況の把握については、現行の指針で定めている内容や労働安全衛生法に基づく義務の内容を踏まえ、これらの取扱いを明らかにすることが適当ではないか。3点目、健康・福祉確保措置については、他制度との整合性を考慮してメニューを追加することや、複数の措置の適用を求めていくことが適当ではないか。最後になりますが、4点目として、専門型と企画型とで差異を設ける理由はないと考えられることから、できる限り同様のものとすることが適当ではないかとなってございます。
次に、みなし労働時間の設定と処遇の確保についてでございます。
1点目、みなし労働時間は、対象業務の内容と、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を考慮して適切な水準となるよう設定する必要があること等を明確にすることが適当ではないか。2点目、その際、以下の内容について明確にすることが適当ではないかということで、2点挙げてございます。1点目、業務の遂行に必要とされる時間を踏まえ、法定労働時間を超えるみなし労働時間を設定した場合は、当該超える時間に対する割増賃金の支払が求められることになり、そのような方法で相応の処遇を確保することも可能であること。2点目として、制度上は、実労働時間とは切り離したみなし労働時間の設定も可能であるが、例えば所定労働時間をみなし労働時間とする場合には、制度濫用を防止し、裁量労働制にふさわしい処遇を確保するため、対象労働者に特別な手当を設けたり、対象労働者の基本給を引き上げたりするなどの対応が必要となること。
こういった論点について、本日御議論いただきたいと思ってございます。
次に、資料2-2を御覧ください。こちらは、今、御紹介いたしました今回御議論いただく論点について、制度の概要をまとめたものでございます。
3ページ目はこれまでもお示ししてきました裁量労働制の概要の資料ですので、説明は割愛させていただきます。
4ページ目は、健康確保について、裁量労働制と高度プロフェッショナル制度を並べて整理したものでございます。一番左の専門業務型裁量労働制でございますが、労使協定で定める健康・福祉確保措置を労働者の労働時間の状況に応じて実施することとされておりまして、その具体的な内容は、企画業務型裁量労働制と同等のものとすることが望ましいと通達で示しております。
真ん中の企画業務型でございますが、こちらでは労使委員会の決議で定める健康・福祉確保措置を、労働者の労働時間の状況に応じて実施することとされておりまして、その内容といたしましては、ここにある①から⑥の措置が指針で例示として規定されてございます。
一番右の高度プロフェッショナル制度におきましては、ここにあります①から③の措置が求められております。①は年間104日以上、かつ、4週当たり4日以上の休日取得。②は勤務間インターバルの確保と深夜業の回数制限や健康管理時間の上限措置などの4つの選択肢から労使委員会の決議で選択した措置。③は医師による面接指導など、点線の枠囲みにある措置のうち労使委員会の決議で選択した措置となってございます。
5ページ目でございます。次に、健康確保に関しまして、労働安全衛生法も含めた医師の面接指導や労働時間の状況の把握について整理したものでございます。
まず、労働安全衛生法におきましては、一般の労働者も裁量労働制適用者も高度プロフェッショナル制度の適用者も一定の基準の下、事業者は医師による面接指導を行わなければならないこととされてございます。ただし、※1と※2にございますように、その基準ですとか罰則の有無というものは、高度プロフェッショナル制度の対象者とそれ以外の一般の労働者、あるいは裁量労働制適用者とで異なっています。
次に、労働安全衛生法におきまして、事業者は一般の労働者と裁量労働制適用者について労働時間の状況を把握しなければならないこととなってございます。その方法といたしましては、※3にあるような方法とすることとされてございます。
最後に、労働基準法におきましては、※4にございますように、裁量労働制適用者について労働時間の状況の把握を求めてございます。
また、高度プロフェッショナル制度適用者につきましては、※5にあるような方法により健康管理時間の把握が求められてございます。
下の点線の枠囲みは、平成27年の労働政策審議会建議及び本分科会に示された働き方改革関連法案の要綱のうち、裁量労働制の健康・福祉確保措置に関する部分の抜粋ですので、適宜御参照いただければと思います。
6ページ目はみなし労働時間についてでございます。
一番左の専門業務型裁量労働制では、対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間を労使協定において定めることで、当該時間労働したものとみなすこととされてございます。
また、通達におきまして、みなし労働時間の設定については、当該業務の遂行に必要とされる時間を定めることなどとされてございます。
企画業務型裁量労働制におきましては、対象業務に従事する労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定される時間を労使委員会において決議し、決議を労働基準監督署に届け出ることで当該時間労働したものとみなすこととされておりまして、指針におきましては、みなし労働時間について決議するに当たっては、労使委員会の委員は対象業務の内容を十分検討するとともに、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度について使用者から十分な説明を受け、それらの内容を十分理解した上で、適切な水準のものとなるよう決議することが必要であることに留意することが必要とされてございます。
高度プロフェッショナル制度では、労働時間等に関する規定は適用除外となってございます。
下の点線の枠囲みは、平成27年の労働政策審議会建議の企画業務型裁量労働制のみなし労働時間の設定に関する箇所の抜粋でございます。
7ページ目は処遇・評価についてでございます。
専門業務型裁量労働制では特段の規定はございません。
真ん中の企画業務型裁量労働制につきましては、指針によりまして、労使委員会においては、決議を行うに当たっては、委員が対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容を十分理解した上で行うことが重要などとされてございます。
高度プロフェッショナル制度におきましても、指針に企画業務型裁量労働制と同様の規定があるほか、対象労働者に関する要件といたしまして、年収が1075万円以上であることが求められてございます。
8ページ目以降は参照条文でございますので、適宜御参照いただければと思います。
次に、資料2-3を御覧ください。こちらは今回御議論いただく論点につきまして、データをまとめたものでございます。
おめくりいただきまして、大きく分けて健康・福祉確保措置関係とみなし労働時間関係がございます。
3ページ目以降が健康・福祉確保措置関係でございます。
3ページ目は、1週間の労働時間の分布についてでございますけれども、40時間以上の割合も60時間以上の割合も適用労働者の方が非適用労働者よりも大きくなっています。
4ページ目は、同じく1週間の労働時間の分布について、適用労働者の中で専門型と企画型とで分けたものでございます。1週間の労働時間が40時間以上の割合は企画型の方が大きく、60時間以上の割合は専門型の方が大きくなっています。
5ページ目は、深夜労働・休日労働の状況についてでございます。左の深夜の時間帯に仕事をすることについて、専門型の適用労働者では36.7%が「よくある」または「ときどきある」と、63.1%が「あまりない」または「全くない」と答えておりまして、「よくある」または「ときどきある」の合計は、非適用労働者よりも大きくなってございます。
企画型の適用労働者では、20.0%が「よくある」または「ときどきある」と、79.1%が「あまりない」または「全くない」と答えており、「よくある」または「ときどきある」の合計は、非適用労働者よりも大きくなってございます。
右の週休日や祝日などに仕事をすることにつきましては、専門型の適用労働者では49.5%が「よくある」または「ときどきある」と、50.2%が「あまりない」または「全くない」と答えており、「よくある」または「ときどきある」の合計は、非適用労働者よりも大きくなってございます。
企画型の適用労働者におきましては、25.1%が「よくある」または「ときどきある」と、73.9%が「あまりない」または「全くない」と答えておりまして、「よくある」または「ときどきある」の合計は、非適用労働者の方が大きくなっているという結果になってございます。
6ページ目は、労働時間・睡眠時間についてのデータでございます。
上の表の1日の平均実労働時間につきまして、計の欄を御覧いただきますと、適用労働者が9時間00分、非適用労働者が8時間39分となってございます。
下の青い表は、裁量労働制の適用が労働時間や睡眠時間に与える影響について回帰分析を行ったもので、労働者の個人属性の影響を制御した場合、1週当たりの労働時間は適用労働者の方が1.276時間長く、1日当たりの睡眠時間は適用労働者の方が0.040時間長いという結果となってございます。
7ページ目は、健康状態についてでございます。上のグラフの健康状態の認識につきましては、適用労働者の60.5%が「よい」または「まあよい」と答えており、10.0%が「あまりない」または「よくない」と答えてございます。
下の表は、裁量労働制が健康状態に与える影響について回帰分析したもので、裁量労働制の適用によって健康状態が悪化するといった影響は見られないというような結果となってございます。
8ページ目は、裁量労働制の適用期間が1年未満の労働者における前年からの健康状態の変化についてのデータでございます。左の専門型におきましては、9.8%が「よくなった」、79.6%が「変わらない」、7.8%が「悪くなった」としてございます。右の企画型では、8.5%が「よくなった」、78.0%が「変わらない」、12.1%が「悪くなった」と答えてございます。
9ページ目は、労働時間の状況の把握方法についての事業場調査でございます。上の専門型の適用事業場の欄を御覧いただきますと、専門型では「タイムカード・ICカード」とする事業場が最も多く、次いで「自己申告」が多くなってございます。企画型も同様に、適用事業場のところを見ていただきますと、こちらは「PCのログイン・ログアウト」が最も多く、次いで「タイムカード・ICカード」が多くなってございます。
10ページ目は、事業場に設けられている健康・福祉確保措置についての調査でございます。専門型では、「労働者の勤務状況及び健康状態に応じて、健康診断を実施する」が最も多く、次いで「心と体の健康相談窓口を設置する」が多くなってございます。企画型におきましては、「一定以上の勤務や休日労働が行われた場合に、産業医等による面接指導を受けさせる」が最も多く、次いで「心と体の健康相談窓口を設置する」が多くなってございます。
次のページは、健康・福祉確保措置の満足度についての適用労働者調査でございます。専門型では、46.5%が「満足している」、7.4%が「満足していない」、33.2%が「どちらとも言えない」としてございます。企画型では、52.7%が「満足している」、4.1%が「満足していない」、27.9%が「どちらとも言えない」と答えてございます。
12ページからがみなし労働時間関係のデータでございます。
次のページを御覧ください。左のグラフがみなし労働時間の認知状況についてでございますが、総数のところを御覧いただきますと、59.4%がみなし労働時間を「分かる」、38.1%が「分からない」と回答してございます。
次に、1日の平均実労働時間数と平均みなし労働時間数について、上の青の表が適用事業場調査、下の緑の表が適用労働者調査でございます。まず、適用事業場調査について、外れ値を除いた欄の計の箇所を御覧いただきますと、平均実労働時間数は8時間46分、平均みなし労働時間数は8時間14分となってございます。適用労働者調査におきましては、平均実労働時間数が9時間3分、平均みなし労働時間数が8時間14分となってございます。
次のページは、特別手当の支給についてでございます。専門型では47.2%、企画型では63.2%の事業場が「1か月ごとに支払われている」と回答してございまして、その名目といたしましては、専門型、企画型どちらも「通常の所定労働時間を超える残業代として」というものが最も多くなってございます。
次のページを御覧ください。特別手当の1か月の平均金額に関しましては、専門型が7万3545円、企画型が8万5401円となってございます。その分布といたしましては、どちらも「5万円以上6万円未満」が最も多くなってございます。
次のページは、特別手当の有無についてでございます。専門型では51.2%が、企画型では64.0%の事業場が「特別手当制度がある」と答えてございます。
また、所定労働時間をみなし労働時間とする事業場におきましては、専門型では47.0%が、企画型では82.6%が「特別手当制度がある」と答えてございます。
次のページは、特別手当の有無について規模別に見たものでございます。「特別手当制度がある」という回答の割合は、専門型では「1,000人以上」が最も多く、企画型では「300~499人」が最も多くなってございます。
次のページは、特別手当の有無について労働組合の有無別に見たものでございます。「特別手当制度がある」とする割合につきましては、専門型では、労働組合がある場合には77.2%、労働組合がない場合には44.6%となってございます。企画型におきましては、労働組合がある場合には66.9%、労働組合がない場合には58.8%となっております。
次のページは、裁量労働制の適用による年収の増減について回帰分析を行ったものでございます。労働者の個人属性の影響を制御いたしますと、適用労働者の方が13%ほど年収が高いという結果になってございます。
次のページは、裁量労働制の満足度についての回帰分析の結果で、20ページが専門型、次の21ページ目が企画型でございますけれども、専門型、企画型共に「能力や仕事の成果の応じた処遇となっている」ことが、満足度を上げる影響を与えているという結果になったものでございます。
資料2-3の御説明は以上でございます。
続きまして、資料3-1の説明をさせていただきます。資料3-1が年次有給休暇制度の概要をまとめたものでございます。
3ページ目は、年次有給休暇制度に関する論点といたしまして3点挙げてございます。
1点目が、政府は、令和7年までに「年次有給休暇の取得率を70%以上とする」ことを目標として掲げていることから、さらなる取得率向上のため、例えば、年次有給休暇の完全消化を前提に年度当初に取得計画を作成することや、そのために必要な要員配置を行うことを企業に推奨するなど、より一層の取得率向上の取組が求められるのではないか。
2点目でございます。年5日を超えて時間単位年休を取得したいという労働者のニーズについては、まずはこうしたニーズに応えるような各企業独自の取組を促すことが必要ではないか。
3点目でございます。働き方改革関連法において、改正の施行後5年を目途とした検討が求められていることから、使用者の時季指定義務の施行の状況等を十分に把握した上で、検討を進めていくことが求められるのではないか。
この3点について御議論いただきたいと考えてございます。
4ページ目は、年次有給休暇制度の概要でございます。まず、要件・効果といたしましては、雇い入れの日から起算して6か月継続勤務し、全所定労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、10労働日の年次有給休暇が与えられ、その後、継続勤務年数1年ごとに、ここにある表の日数の年次有給休暇が与えられるという制度となってございます。
取得単位におきましては、原則1日とされてございますけれども、半日単位でも認められているほか、年に5日を限度に、労使協定で定めた場合には時間単位での取得も可能となってございます。
時季の決定方法といたしましては、労働者による請求や計画年休のほか、平成30年の働き方改革関連法によりまして、使用者による時季指定義務が設けられてございます。
5ページ目は、時間単位年休に関する改正経緯でございます。時間単位での取得につきましては、平成20年の労働基準法改正によりまして、労使協定により、年5日の範囲内で可能となったというものでございます。
これにつきましては、本年6月に閣議決定されました規制改革実施計画におきまして、年5日以内とされている時間単位年次有給休暇について、労働者アンケート調査におけるニーズや利用実態等を踏まえ、柔軟な働き方を促進するために必要な措置を検討し、令和4年度中に結論を得ることとされているものでございます。
6ページ目以降は参照条文でございますので、こちらは適宜御参照いただければと思います。
最後に資料3-2を御覧ください。こちらが年次有給休暇の現状についてデータをまとめたものでございます。
3ページを御覧ください。こちらは年次有給休暇の取得状況でございますけれども、年休の取得率は近年上昇傾向にございまして、直近で56.6%となってございます。
4ページ目を御覧ください。取得率を企業規模別・産業別に見てみますと、規模別では1,000人以上、産業別では電気・ガス・熱供給・水道業が最も多くなってございます。
5ページ目以降が年次有給休暇の取得に関するアンケート調査の結果の概要でございまして、調査の概要について、6ページ目を御覧ください。労働政策研究・研修機構が年次有給休暇に関する企業調査・労働者調査を行ってございまして、昨年7月にその結果を公表してございます。本日は、その結果のうち時間単位年休に関するものを御紹介させていただきます。
7ページ目は、企業調査の結果についてでございます。22.0%の企業が時間単位年休制度を「導入している」と回答してございまして、それらの企業で1年間に取得できる時間単位年休の日数は「5日分」が最も多くなってございます。
8ページ目は、導入状況を規模別・業種別に見たものでございますので、適宜御参照いただければと思います。
9ページ目は、時間単位年休を導入している企業に対して、時間単位年休制度が適用されている労働者の中で、1回でも時間単位年休を取得した方の割合を尋ねた調査でございますけれども、「1割程度」という回答が最も多くなってございます。
また、利用者が取得した時間単位年休の総計は、「1日分以上~2日分未満」が最も多くなってございます。
10ページ目は、時間単位年休を導入している企業に対して、時間単位年休の限度日数の評価について聞いたものでございます。「増やした方がよい」という答えが22.5%となってございます。また、「増やした方がよい」と回答した企業に希望する取得限度日数を聞くと、「年休付与日数の全て」という回答が最も多くなってございます。
11ページ目は、今、御紹介いたしました時間単位年休の取得限度日数の評価について、規模別・業種別に聞いたものでございますので、適宜後参照いただければと思います。
12ページ目は、時間単位年休制度を導入していない企業に対して、その理由を尋ねた調査でございます。その理由としては、「勤怠管理が煩雑になる」という答えが最も多くなってございます。
13ページ目からは労働者調査の結果でございます。時間単位年休制度の導入・適用状況については、22.3%の労働者が「時間単位年休が導入されており適用労働者である」と答えておりまして、それらの労働者が1年間に取得できる時間単位年休の日数は「5日」という答えが最も多くなってございます。
14ページ目は、時間単位年休が導入されており、対象労働者である労働者のうち、56.7%が2018年度に「取得したことがある」と回答してございまして、その取得総数は「2日分以上~3日分未満」とする割合が最も多くなってございます。
15ページ目を御覧ください。2018年度に時間単位年休を「取得したことがある」とした労働者に、その利用用途を尋ねると、「自身の病気などの通院」という答えが最も多くなってございます。
16ページ目は、時間単位年休が導入されており、対象労働者である労働者に対して、自分が取得可能な時間単位年休の日数希望を尋ねた調査でございます。18.5%が「増やしてほしい」と回答しておりまして、その希望日数としては「年休付与日数の半分程度」が40.2%、「年休付与日数の全て」が40.0%となってございます。
最後のページは、「時間単位年休制度が導入されていない」などと答えた労働者に、導入・適用の希望を聞いたものでございます。50.6%が「導入・適用してほしい」と回答しているというものでございます。
資料の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
資料2の関係が裁量労働制、資料3の関係が年次有給休暇ということで、2つ大きく分かれておりますので、まずは裁量労働制について御意見をいただきたいと思います。先ほどと同様、発言の希望がありましたらお願いします。八野委員。
○八野委員 ありがとうございます。
裁量労働制の健康・福祉確保措置の見直しの考え方ということで、意見を言わせていただきたいと思っております。労働時間制度の原初的使命が労働者の健康確保であるということを踏まえれば、みなし労働時間として通常の労働時間管理を外れる制度において、健康確保のために求められる措置は制度間で整合性が取れるものとしていくべきだということの考え方が前提であるということでございます。
専門業務型においては、通達で企画業務型裁量労働制と同様にすることが望ましいと示されているのみであり、企画業務型裁量労働制についても告示で例示がされているにすぎないと捉えています。
資料2-3の4ページを見てみますと、先ほども説明がありましたが、専門型、企画型とも週40時間以上となっている割合が8割以上を占めています。
また、同じ資料の5ページの深夜・休日労働の割合についても、特に専門型の適用労働者が「よくある」と回答しているものが多いということを踏まえていくと、通達のみにとどまっている専門型について、企画型と同様に具体的に措置の内容を示していく必要があると考えます。
また、専門型、企画型のいずれにおいても、例示でよいのかということも含めて規定の在り方を検討していくべきではないかということでございます。
資料2-1の2ページ「本日ご議論いただきたい論点」の健康・福祉確保措置の4つ目のポツにあるように、専門型と企画型とで差異を設ける理由はないという考え方。これに基づいていきますと、やはり同様な内容とする必要があるというふうに思います。
まず、健康・福祉確保措置の見直しについての考え方を示させていただきました。ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
オンラインのほうから鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。
私のほうからも健康・福祉確保措置の考え方について一言申し上げたいと思います。適用労働者の健康確保をして制度運用をしていくことは大変重要なことであり、制度運用の前提となることであろうと思っております。導入企業は健康・福祉確保措置を複数適用するなどしてしっかり取り組んでいるということだと思っています。
今回の報告書の中でも裁量労働制の適用によって労働時間が著しく長くなる、あるいは睡眠時間が短くなる、健康状態が悪化するといった影響はないことが示されています。
また、資料2-3の11ページにございましたけれども、健康・福祉確保措置について満足していない労働者の割合が、専門型で約7%、企画型で約4%と極めて少なく、おおむね現行の健康・福祉確保措置が機能している状況にあると言えると思っています。
メニュー追加等の見直しを行うに当たって、他制度との整合性を考慮することなどが重要との指摘もございますが、そもそも各制度は趣旨や目的等は異なるものであって、当然必要な規制等のレベルも異なってしかるべきであります。おおむね現行の健康・福祉確保措置が機能している状況を踏まえますと、過度な規制は避けていただきたいとお願いしたいと思います。
ただ、11ページのデータで適用者の約3割が健康・福祉確保措置の満足度について、どちらでもないと回答していることや、適用労働者の6.4%が健康・福祉確保措置が設けられていることを知らないと回答している調査結果もあることから、措置の内容や意義等を一層周知徹底するということは重要であると思います。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、山内委員、お願いいたします。
○山内委員 御指名ありがとうございます。
私のほうからはみなし労働時間と処遇について、事務局の方に確認をさせていただければと思っております。まず、裁量労働制については、必ずしも時間と成果が比例しない業務に従事する労働者に適した制度であるということであります。導入企業各社は、適用労働者の能力や成果を最大限に発揮してもらうためにも、裁量労働制を適用するのにふさわしい処遇の確保に向けて、様々な工夫を凝らすことが大変重要となります。ただし、こういった処遇なら裁量労働制にふさわしいのかということは、各企業において、実労働時間だけではなく、例えば対象者の基本給であるとか賞与、手当、業務内容、成果、業務量、裁量の程度等々いろんなことを考慮して総合的に判断されるべきものと考えます。
以上のことを踏まえると、今回お示しいただいた資料2-1の後段、「みなし労働時間の設定と処遇の確保」に記載していただいている明確化することが適当とされた2つの点は、今、私が申し上げたことを前提として記載いただいているかについて、事務局に確認させていただければと思います。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
検討会の報告書の記載ぶりにあわせて、今回論点として御提示させていただいてございます。基本的に今、御指摘いただいたとおりの御認識で結構かと思っておりますけれども、裁量労働制の趣旨でございますが、業務の遂行方法や時間配分等を労働者の裁量に委ねて、自律的、主体的に働くことができるようにすることによりまして、労働者の自らの知識・経験を生かして創造的な能力を発揮することを実現することということで、検討会報告書にございます「ふさわしい処遇」というのは、裁量をもって自律的、主体的に働くにふさわしい業務に従事する方の相応の処遇を意味するものでございまして、その水準は現場の労使でしっかり協議されるべきものということで、検討会でおまとめいただいているものと考えております。
また、検討会報告書におきましても、裁量労働制の対象労働者につきまして年収要件等の御議論も行われたわけでございますが、現在裁量労働制の企業規模を問わずに広く適用されておりますし、また、年収水準などにつきましても企業間で異なっているという現状を踏まえますと、まずは裁量労働制にふさわしい処遇が確保されるよう、労使協議を促していくということが重要であるという形で指摘されているところでございます。
以上でございます。
○山内委員 ありがとうございました。
○荒木分科会長 裁量労働制について、他に御意見ありますでしょうか。川野委員、お願いします。
○川野委員 ありがとうございます。
裁量労働制における健康・福祉確保措置の実施は、あくまで労働時間の状況に応じて行われているということに関し、労働時間の状況把握の方法に関する資料2-3の9ページを見ますと、自己申告という割合が専門型で3割強、企画型でも2割あることを踏まえれば、健康・福祉確保措置の実施の前提となる労働時間が適正に把握されているのか疑問を感じるところでございます。
「労働時間の把握の適正化を促進するとともに、労働者の労働時間の状況に応じて」とは、どの程度の労働時間であれば、健康・福祉確保措置を実施する必要があるのか。現行自主的な取組に委ねられている部分に関して、基準を例示するということなども必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。よろしくお願いします。
○荒木分科会長 では、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 自己申告でございますけれども、おっしゃるとおり、裁量労働制につきましては、労働時間の状況の把握が義務づけられております。また、同じような形で安全衛生法におきましても労働時間の状況の把握が義務づけられておりまして、この中ではタイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等での電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とすることとしておりまして、やむを得ず客観的な方法により把握しがたい場合につきましては、一定の措置を講じた上で、自己申告による把握をすることが可能であるとしておりまして、行政としましてもこのような形で現在運用を行っているところでございます。
一定の基準につきましては、本審議会で御議論いただく内容であると考えております。
以上でございます。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
○川野委員 はい。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。
私も健康・福祉確保措置について意見を申し上げたいと思っています。資料2-3の10ページ「事業場に設けられている健康・福祉確保措置」のところを見ますと、「心と体の健康相談窓口の設置」「産業医等による面接指導」などが上位に上がっていまして、比較的取り組みやすいものに偏っているのではないかと感じております。
先ほど一定機能しているという御意見もありましたけれども、健康・福祉確保措置を労働者の健康確保という観点から実効性があるものにするためには、窓口を設置したとか面接指導を行ったということにとどまらずに、インターバルの確保とか、上限時間の設定とか、配置転換等の複数措置を組み合わせて実施することにより健康確保をしていくということが必要ではないかと思っています。高度プロフェッショナル制度では複数措置の実施ということが義務づけられておりますが、健康確保の実効性を高めるという点においては、同様に複数措置を検討することも必要ではないかと思いますので、御意見として申し上げます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。東矢委員、お願いします。
○東矢委員 ありがとうございます。
私からはみなし労働時間について発言をさせていただきます。資料2-3の13ページ、右下のほうにみなし労働時間に関する適用労働者調査がございます。1日の平均みなし労働時間数と1日の平均実労働時間数が記載されておりますが、これらの時間数の違いが大きいことが見てとれるかと思います。こうしたところを踏まえますと、当該業務の遂行に必要とする時間が適正に定められているのか、また、それにふさわしい処遇になっているのかという点が重要だと考えております。
専門業務型については、みなし労働時間の設定に関する通達はございますけれども、処遇に関する規定はございません。しかし、先の分科会の資料におきましては、割増賃金の適用を逃れるための法の潜脱ではないかと思われるような低い処遇の適用労働者がいるという結果が示されておりました。こうした実労働時間とみなし労働時間の乖離、また、適正な処遇の確保という点を考えますと、現行でみなし労働時間に関わる通達しかない専門業務型につきましてはふさわしい処遇になっているか、検討や点検を促す措置を設けるべきだと考えてございます。
以上、意見でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。大崎委員、お願いします。
○大崎委員 私からもみなし労働時間の設定、処遇について発言させていただきます。
資料2-3、16ページ。14ページにも記載がありますけれども、特別手当の有無を見ると、専門業務型では半数近く、48.5%が事業場において特別手当制度はないと回答しております。
一方で、同じ資料の18ページのところを見ますと、専門業務型において、労働組合がありの事業場においては8割近くでこの特別手当を設けています。労働組合の有無の差が30ポイント以上ありますが、これによるものが大きくて、ふさわしい処遇の確保のために労働組合として尽力していることが分かるかと思います。
また、企画業務型では、特別手当制度を設けている事業場が多くなっておりますけれども、告示において、労使委員会での決議に関して、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度について、適切な水準のものとなるよう決議することが必要と示されていることの実効性が表れているとみなすことができるのではないかと考えております。
労働組合として専門型、企画型、いずれにおいてもふさわしい処遇確保のために、これについては引き続き取り組んでいく必要があると思っていますけれども、労働組合がない職場、企業が多いという現状を踏まえると、法的に適正な処遇が確保される仕組みを検討すべきだと考えます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。藤村委員、どうぞ。
○藤村委員 検討会のメンバーであったということもありまして、特に処遇の確保というところで一言申し上げたいと思います。先のこの分科会でも報告がありましたが、年収の低い層ほど満足度が低くなっています。年収が低い水準で裁量労働制で働いている人が一定数いますが、裁量労働という働き方にふさわしい収入を確保していく必要があると思います。実際は労使の話し合いで決めていくということになっているわけですが、今も御発言がありましたように、労働組合がない会社も非常に多いのが現状です。私の感覚ですが、裁量労働で働く以上は年収は500万円以上はあってほしいと思っております。ただし、年収要件を決めるというのは非常に難しくて、不可能に近いというのはよく分かります。それを補う措置として、裁量労働で働いている人たちというのは大体これくらいの年収をもらっていますよという事実が広く知れ渡るようになると、働いている本人が自分の年収はそれよりも低い、これはおかしいよねと思って、場合によってはその会社を辞めて別の会社に行くという行動を取る可能性も出てきます。それが望ましいとは思わないのですけれども、一定の年収要件というのは、何らかの形で世間が知ることになるといいのではないかと思っています。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
先ほど櫻田委員から健康・福祉確保措置について、高度プロフェッショナル制度も引用されながら、勤務間インターバルの組み合わせをされてはどうかという御指摘がございましたので、私から1点申し述べます。裁量労働制の適用により、長時間労働になったり、健康状態を害するとはいえないと理解しており、まずはその前提を共有した上で考える必要があると思います。高度プロフェッショナル制度でも勤務間インターバル制度は選択的措置の一つという位置づけです。メニューを増やすということ自体は、制度間の整合性を取るという意味で、大いに検討すべき課題であると思いますが、裁量労働制において必須の措置にするということまでは、逆に制度間の整合性が取れないのではないかと思っております。したがいまして、勤務間インターバル制度の必須化という点については反対の立場を明らかにさせていただきます。
補足ですが、企業ヒアリングの中でも、ある一定の時間を超えた場合に一時的に適用除外をするという仕組みを入れていらっしゃる企業もありました。こういった仕組みも場合によってはメニューに追加することは当然考えられると思っていますが、既に導入されている企業で具体的な中身を見ますと、例えば時間外労働が月何時間を超えた場合に外すとか、あるいは何か月連続で何時間を超えた場合には外すというように、各社様々工夫をされていますので、こういったメニューを入れるとしても、各社が運用している多様な措置を認めるような形でお考えいただきたいと思います。2点目はお願いです。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
八野委員、どうぞ。
○八野委員 健康状態に問題がないかたちで裁量労働制が行われているという御意見が数回あったのですが、例えば7ページのところの「健康状態」で、確かに「あまりよくない」「よくない」というところが1割ということですが、8ページ「裁量労働制の適用期間が1年未満の労働者における前年からの健康状態の変化」というところを見ていきますと、悪くなったという回答が専門型でこれだけ、企画型でも約1割ということになっております。
実施されている健康・福祉確保措置との結びつきは分かりませんが、健康状態が悪化している実態があるということを踏まえて、この1割の人たちに対してどのように対応していくのかという点も、今後、裁量労働制を議論するにあたって重要な点だと思いますので、意見として述べさせていただきたいと思います。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
よろしければ、資料3の関係の「年次有給休暇の関係について」に移りたいと思います。
○鳥澤委員 私から有給休暇の取得について1点意見を述べさせていただきます。
年次有給休暇を半日単位や時間単位で取得できる制度は、労働者が必要な用事などに対しスポットで効果的に取得できるものと理解しております。テレワークをはじめとして、柔軟な働き方を導入する企業が増えている中で、年次有給休暇についても柔軟に取得できるニーズは高まっていると感じております。
他方で、従来1日単位で取得していた休暇を半日や時間単位で取得することによって、取得回数は増えるけれどもトータルでの取得日数は減少することが懸念されます。また、導入していない理由の上位にもあるとおり、雇用管理や給与計算の負担増を懸念する企業もございます。ほかにも、休暇は1日単位でしっかり休むことが重要と考える企業や労働者がいるのも事実です。
企業規模や業態、労働者によって休暇に対するニーズは多様であるため、時間単位や半日単位の取得に対し、一律に上限日数を設けるのでなく、各事業所の労使自治による裁量を拡大することも検討していただきたいと思います。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、年次有給休暇について、他の方から御意見を伺います。北野委員、どうぞ。
○北野委員 ありがとうございます。
まず、有給休暇の取得率については、働き方改革で年5日の時季指定が義務化されたということもあって、先ほど御紹介があったとおり、6割近い取得率となっておりますし、政府としてもこれを2025年までに70%とすることを目標に掲げているということを踏まえれば、論点にあるとおり、取得率向上のためにこの取組は一層促進すべきだと考えております。
その上で、年5日の時間単位年休に関しましては、資料3-2の7ページを見ると、「導入していない」という企業が約8割となっておりまして、その理由として勤怠管理、給与計算の煩雑さなどが挙げられております。まずはこうした導入していない企業に対して好事例を展開するなど取組を促すことが先決ではないかと考えております。
そして、労働者のニーズでございますが、これも資料3-2の16ページです。約2割の労働者が年5日を超えて時間単位年休を「増やしてほしい」と希望しておりますが、一方で、「ちょうどよい」と回答している割合も7割ある。また、資料14ページの取得の有無を見ていただきますと、時間単位で取得できる5日分を全て使っている労働者は多くなく、そもそも取得していない方も4割近いという実態であります。
これらの状況を踏まえますと、時間単位年休のニーズがあることは認識しておりますが、年次有給休暇の取得は労働者の解放による心身の疲労回復だということもありますし、そのような制度趣旨とのバランスを踏まえて考えていくことが重要だと思っております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
私からも年次有給休暇の取得促進ということについて申し述べます。年休取得率は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を考慮したとしても着実に向上していると思います。とはいえ、先ほど厚労省からも御指摘がありましたように、令和3年の取得率は56.6%ということで、さらなる向上が求められている状況かと思います。
向上を図る措置というのは、各社各様、業種・業態によって異なり得るわけですが、例えば計画的付与制度について、一斉付与だけでなく、部署別や個人単位別など、各社・各職場の実態に合った形で活用を促していくことが有効ではないかと考えていますので、厚生労働省には、計画的付与制度のいろんなバラエティーがあるということも含めて一層の周知をお願いしたいと思います。
また、年休の取得率を企業規模別で見ますと、資料3-2の5ページにございますように、従業員1,000人以上の企業では60.8%に対して、30~99人以下の企業では51.2%と乖離があります。そのため、国全体での長時間労働につながるような商慣行の是正といったことも含めて、中小企業で働く社員の方がより休みを取りやすい環境を整えていくことが重要だと思います。
資料3-2の12ページを見ますと、中小・小規模企業ほど「時間単位年休の限度日数を増やした方がよい」と回答しており、時間単位年休の限度日数の拡大というのは、とりわけ中小企業の社員が休みやすい環境をつくる上で助けになるのではないかと私自身は思っています。
また、17ページにあるとおり、時間単位年休を活用する労働者のうち約15%が取得制限緩和を希望されています。近年、仕事と家庭の両立の必要性の高まりや、テレワークの普及もあり、中抜けなど一時的に業務から離脱することのニーズも高まっているのではないかと感じています。もちろん、先ほど労側委員からも御指摘がありましたとおり、年休取得の本来の趣旨は、1日単位で取って心身の疲労回復を図るということにあると理解はしていますが、労働者のニーズの変化を捉まえて休み方の選択肢を増やすことも大事ではないかと考えています。
加えて、年休の年5日の取得義務に関してでございます。この取得日数の内数に時間単位年休の取得日数を含めるということをぜひ御検討いただきたいと思います。資料3-2の13ページ「時間単位年休制度を導入していない理由」というところの選択肢には直接書かれてはいないですが、年5日の取得の内数にこの時間単位年休取得の日数がカウントされていないこと、さらにこの制度が煩雑だということが原因で時間単位年休制度導入をためらう企業もあるのではないかと推察しています。
18ページにありますように、現在制度が導入されていない企業の5割以上の労働者の方が時間単位年休の導入を希望されています。御案内のとおり、半日単位年休については、年5日の取得義務のカウントとして認められています。このことを踏まえますと、少なくとも現行の時間単位年休制度について、年5日の義務のカウントの対象に加えていただき、時間単位年休を労使で選択しやすくするよう制度見直しをお願いしたいと思います。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
山内委員から御希望が出ております。お願いします。
○山内委員 御指名ありがとうございます。
今、鈴木委員から時間単位年休についての御発言がありましたので、私からも1点申し上げさせていただきたいと思います。弊社では多様な働き方を可能とする一環で時間単位年休制度の導入をしておるのですが、職種や勤務形態によって制度活用に差があることを課題として感じております。新型コロナの影響で在宅勤務を活用する従業員が増える一方で、工場の現場で作業に従事する人たち、設備機械の保守とか、あるいはカスタマーサービスを行う方々は、テレワークとか時間単位年休の活用が非常に難しい状況にあります。こういう方にどういうふうに活用を促していくかということを工夫しているのですが、時差出勤や出張先への直行直帰、こういうものと併せて使ってもらって、先ほどお話が出ましたが、少しでも体の負荷を軽減させてもらうことに役立ててもらうというふうに広く制度活用を考えております。
こういう中で、こうした問題は恐らく当社だけの課題ではないと考えておりまして、厚労省におかれましては、先ほど業種別の導入状況をお示しいただきましたが、可能であれば職種別の時間単位年休の制度導入率やその活用状況、この辺のデータを公表していただきつつ、好事例を展開いただいて共有させていただけると、非常に多くの企業にとってありがたいのではないかなと思いますので、可能であればお願いしたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
先ほど鈴木委員のほうから時間単位年休の上限日数と、有給の5日付与のところに時間単位も入れてはどうかという御意見があったかと思います。先ほど北野委員が申し上げたとおり、もともとの制度趣旨は心身の疲労回復というところが一つ大きなポイントだと思っておりますので、時間単位年休を増やしていくことについては、そのバランスを考えなければいけないと思います。
年5日間の付与義務は働き方改革の中で設けられたものですが、なぜこの働き方改革が法律になったかと申し上げると、過労死や、日本における長時間労働について、本来は労使がしっかりと話し合いをして改善していくべきところ、なかなか改善していかない中で、半ば法的に強制して5日間はしっかりと取得させ、心身の疲労をしっかりと回復させるという趣旨だと思っております。
中小企業における年休の取得が進まない現状はあるとは思うのですが、細切れの時間単位の年休だけで本当に心身の疲労が回復するのかどうかは、非常に疑問だと思っております。年5日はしっかりと1日単位で休ませるという趣旨を念頭に取得できるようにすべきだと思っておりまして、時間単位を入れることについては反対でございます。いかに取得しやすくするかということについては、それぞれの職場でも働き方が違うと思いますので、適切な休み方について労使協議などでしっかり議論して、きちんと1日単位で取らせるということが重要だと思っております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
年次有給休暇の関係ですが、基本的には、この5日というのは、時間単位の年休を超えて取得ができるようにお願いをしたいと思います。3-2の調査結果を見ますと、導入率、時間単位というのはまだまだ少ないというのは、鈴木委員からも発言がございました。中小企業だけですと数字が低く見えるのですが、もちろんこれは大企業、1,000人以上というのもそんなに高い数字がなく、まだまだ普及が進んでいない点が表れているのではないかなと思います。
5日というのが、全体の、半年加えたら、10日の半分程度ということで、それで出てきたのかもしれませんけれども、有給の取得促進を図るため、あるいは、午前にちょっとだけお医者様に行きたいとか、そういう労働者の細かいニーズに応えていくためにも時間単位の年休というのもあればよいのではないでしょうか。一方では、管理するのが大変だという問題もあるかもしれませんけれども、フレキシブルに環境をつくってあげるということも必要なのではないかなと思います。
ただ、中小企業にとっては、時間単位で取得すると管理の難しさというのはどうしても出てくると思います。システムで管理するいうことが多くなってきていると思うのですが、今、ホームページなども拝見しますと、働き方改革の推進支援助成金などで時間短縮・年休促進の支援コースも申請が多くなっており、また労働時間の適正管理の関係のコースなども予算を取っていただいていますが、中小企業にとって、自分たちが入れたいソフトを導入できるような形をシステムを一層進めていただきたいなと思っております。
労働者にとって有給を取得して心身を休める。これは本当に1日単位、または半日単位ということでも緩やかになってきており、有給の意味合いというのは十分私たちも分かっているつもりですけれども、時間を少しフレキシブルに使わせていただくためにも、1回時間を取っ払っていただいて、それから労使協定で決めていける方向というのもあるのではないかなと思っております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。川野委員、お願いします。
○川野委員 時間単位年休制度は中小企業でニーズが高まっていることが、数字上は表れております。しかし、我々の組織の中でも、中小企業は慢性的な人手不足の中にあって、少人数の職場であるがゆえに、年次有給休暇の取得に対して強い抵抗を感じている労働者が多いということも事実でございます。加えて言いますと、労働組合の組織率は、100人未満だと1%に満たない状況がございますので、なかなか自分の意思を職場の上長や会社側に伝えるのは非常に難しい状況が広くあると理解しております。
そのような中で、時間単位年休制度を5日間の指定付与の中に盛り込むということについては、より一層年次有給休暇の取得率を中小企業において低下させるような状況になるのではないかという懸念を持っていますし、通院などの後、短時間で職場に戻ろうとする意思の表れが調査結果の数字ではないかということもありますので、そうしたことを踏まえて在り方を議論する必要があるかと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 ありがとうございます。
年次有給休暇の取得促進につきまして、皆様から御意見をいただいたところでございます。現行の法制度をどうしていくか等につきましては、本審議会で御議論いただくことだと思っておりますけれども、事務局といたしましては、趣旨を踏まえつつ、年休の取得促進をどう図っていくかという観点に立ちまして御議論いただきたいと考えてございます。
それと、いただいた様々な御意見、好事例の横展開や、山内委員からお話のあった職種別のものが取れないかということなどにつきましては、事務局で少し調べさせていただきまして、できるものは対応してまいりたいと考えております。
助成金の関係の御発言が佐久間委員からございました。働き方改革支援助成金につきましては、こちらの中で時間単位の年休の導入につきましても、様々な労務管理機器や専門家のコンサルの導入の経費につきまして助成を行っているところでございます。
私どもとしましては、これに加えまして、各都道府県の働き方改革推進支援センターにおける相談支援もございますので、これは社労士等の専門家が無料で実施しておりますので、こういう支援を引き続き継続しまして、導入を希望する企業、特に中小企業の皆様に対しまして御支援申し上げたいと考えているところでございます。
以上でございます。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。冨髙委員。
○冨髙委員 1つだけ意見を申し上げたいと思います。取得率をあげていくことは非常に重要だと思っているのですが、それが目的になってしまうと、結局、時間単位でなるべく取れる形で積み上げていって取得率を上げていくという方向の議論にもなってしまうと思っています。まず年次有給休暇は心身の疲労の回復のための制度だと思いますので、目的が何なのかということを見失わないよう議論していただきたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 今日の資料3-1の3ページの冒頭のところに書いてあるのですが、ヨーロッパなどで年休が完全取得となっているのは、年度の当初に完全取得を前提として要員計画を立てているからです。ですから、年休の取得率を上げるためには、時間単位の年休も一つの方法ではありますけれども、本来であればILO条約では年休というのは2週間単位が最低単位として確保されるべきということで、長期に仕事から離れるというのが年次有給休暇の本来の目的でございました。そういうことで、完全消化を前提として労使共に計画を立てるということが非常に重要だろうと考えております。
その上で、取得率が5割を切っていたという中で、未消化の年休権が2年間で時効消滅していくということであれば、様々なニーズに応えるような時間単位の年休の活用の仕方もあるのではないかということで、言わば働き方の柔軟性を認めるために活用することもまあ認めようということであって、時間単位年休で年休取得を促進しようということではなかったのではないかと考えております。年度当初から年休の完全消化を前提とした働き方を考えていただくことも重要だろうと考えております。
ほかにはよろしいでしょうか。
それでは、ほかの案件もありますので、この議題については以上ということにさせていただきます。
またここで説明者の交代がありますので、しばしお待ちください。
それでは、次の議題は「労働契約関係の明確化等について」であります。
事務局から説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 議題3の「労働契約関係の明確化等について」でございますけれども、資料No.4、「多様な正社員の労働契約関係の明確化等について」と題しております資料に基づいて説明をさせていただきます。
資料の2ページを御覧ください。本日の分科会で御議論いただきたいと考えておりますのは、2ページの真ん中辺りからございます「2.多様な正社員の労働契約関係の明確化等について」の(1)から(3)、それから「3.その他」の(1)、(2)について御議論いただければと思っております。
個別の論点につきましては、6ページから御説明をさせていただきます。6ページにつきましては、「2.多様な正社員の労働契約関係の明確化等について」の(1)の総論の部分でございます。今回の資料につきましては、冒頭に論点を御紹介させていただきまして、これについて過去の分科会で御議論をいただいておりますので、その分科会での主な御議論の内容をその後に御紹介させていただきまして、その下に「対応の方向性(案)」というものを整理させていただいております。(1)の総論につきまして、6ページの冒頭に論点として、四角の中に丸が2つございます。1つ目の丸につきましては「職務、勤務地、労働時間を限定した多様な正社員の更なる普及・促進について」、2つ目の丸は「多様な正社員をはじめとする労働者全般の労働契約関係の明確化」、この2点についてこれまで御議論をいただきました。
これまでの分科会における主な議論につきましては、省略いたします。
7ページ、(1)総論の「対応の方向性(案)」としているところを御覧ください。2つ丸がございます。1つ目の丸ですけれども、多様な正社員、これは職務、勤務地、労働時間を限定したものを考えておりますが、ワーク・ライフ・バランスとか人材の確保等に資する面もございまして、多様な働き方の選択肢の一つとして、労使の議論を通じて双方にとって望ましい形の活用ということが適当ではないかという形で整理をできないかと思っているというものでございます。その際には、テレワーク、フレックスタイム等の活用もあり得るとか、正社員の働き方の在り方、転換制度や能力開発機会の確保、こういったことにも留意することが適当ではないかという形で方向性(案)として考えております。
2つ目の丸でございますけれども、労働契約関係の明確化につきましては、多様な正社員のみならず、全労働者に対して有益ということで、労働者全般を対象として検討していくということが適当ではないかということで、方向性の案としては整理をできないかと思っているものでございます。
8ページを御覧ください。(2)労働契約関係の明確化でございます。御議論いただいておりました論点としては3つございまして、1つ目の丸が「多様な正社員をはじめとする労働者全般を対象に、労働契約関係を明確化すること」ということで、具体的には黒丸が2つございますが、検討会報告書でお示しいただいておりましたが、1つ目の黒丸、労働条件明示の対象に就業場所・業務の変更の範囲を加えるということ、2つ目の黒丸、労働条件明示のタイミングに労働条件の変更時というのを加えるということ、こういったことについて御議論をいただいておりました。
2つ目の丸は、就業規則の更なる周知についてということで、具体的には検討会報告書で示されておりました、就業規則を備え付けている場所等が周知をされるような方策、就業規則を必要なときに容易に確認できる方策、こういったことについて御議論をいただいておりました。
3つ目の丸は、労働契約関係の明確化を図る場合の労使の紛争の未然防止等についてということで、具体的には、裁判例等の内容をまとめて、整理をしてお示ししていくということについて御議論をいただいておりました。
これにつきましては、9ページ、10ページにこれまでの分科会でいただいておりました主な議論について、分野ごとに整理をしてお示ししておりますけれども、説明は省略いたします。
11ページを御覧ください。対応の方向性(案)として整理をさせていただいているものが4つございます。1つ目の丸ですが、多様な正社員に限らず、労働者全般につきまして、労働条件明示の対象に就業の場所、業務の変更の範囲を追加するということとしてはどうか、というのが1つ目の対応の方向性(案)でございます。
2つ目の丸でございますが、労働契約の内容の変更のタイミングにおいて、労働契約締結のタイミングで書面で明示するとされている事項については、変更の内容はできる限り書面等により明示するよう促していくという形にしてはどうかと考えておりまして、その上で、労働条件明示のタイミングに労働条件の変更のタイミングというものを加えていくことについては、引き続き検討することが必要ではないかという形で、対応の方向性(案)として整理をさせていただいております。
3つ目の丸でございます。就業規則につきましては、備え付けている場所等を労働者に示すことなどによりまして、必要なときに容易に確認できるようにするということが必要であることを明確化することとしてはどうかというのが、方向性(案)の前段でございます。
後段につきましては、就業規則のさらなる周知の在り方について、引き続き検討することが必要ではないかという形で、方向性(案)としてお示しをさせていただいております。
4つ目の丸でございますけれども、限定された勤務地・職務等が廃止された場合に、それによる解雇は当然に正当化されるということにはならずに、解雇回避努力等が求められること、こういった紛争の未然防止に資する裁判例等を整理して明らかにして、周知をしていくということにしてはどうかというのが4つ目の方向性(案)として整理をさせていただいているものでございます。
12ページにつきましては、論点の(3)その他の部分でございまして、多様な正社員の活用等に関しまして、労使コミュニケーションの促進を図っていくということについて御議論をいただいておりました。方向性(案)といたしまして整理させていただいておりますのは、12ページの下に四角で囲っている部分、2つございます。1つ目の丸の部分でございます。多様な正社員の活用等に際しまして、関係する労働者の意見が適切に反映されるよう、労使コミュニケーションの促進を図っていくということにしてはどうかというのが方向性(案)として整理をしている1つ目の丸でございます。
2つ目の丸といたしましては、短時間正社員につきましては、パート・有期労働法上の「いわゆる正規型の労働者」に該当する場合につきましては、パート・有期労働法の適用はございませんけれども、処遇につきまして、正社員としての実態を伴っていないような場合につきましては、パート・有期労働法の適用がございまして、均衡・均等待遇というのが求められているということですとか、パート・有期労働法が適用されないそれ以外の多様な正社員におきましても、労働契約法3条2項による配慮というのが求められている、こうしたことを周知することとしてはどうかというのが2つ目の対応の方向性(案)として整理をさせていただいているものでございます。
13ページからが無期転換、多様な正社員等の全体の関係のその他でございまして、論点といたしましては、14ページの(1)労使コミュニケーション等のところでこれまで議論をしていただいておりました。論点といたしましては、無期転換者や多様な正社員等の多様な労働者全体の意見集約のための労使コミュニケーションについてということで、御議論いただいておりまして、対応の方向性(案)として整理させていただいておりますのが3つ、14ページの下にございます。
1つ目の丸です。労働組合や過半数代表者は多様な労働者全体の意見を集約するということが重要であるということ、それから、過半数代表者が円滑に事務を遂行することができるように、使用者には配慮が求められているということ、こうしたことを労使コミュニケーションに当たっての留意点という形で周知していくこととしてはどうかというのが1つ目の対応の方向性(案)として整理をさせていただいているものです。
2つ目の丸でございます。適切に労使コミュニケーションを図りながら、無期転換、多様な正社員等につきまして、企業での取組事例を把握して周知するということにしてはどうかと考えているのを、方向性(案)の2つ目として整理をしております。
3つ目の丸でございます。過半数代表者の適正な運用の確保とか、多様な労働者全体の意見を反映した労使コミュニケーションの更なる促進を図るような方策、こういったことにつきましては引き続き検討をしていくことが必要ではないか、という形で対応の方向性(案)として整理をさせていただいています。
資料No.4の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、委員の皆様より御意見等があればお願いいたします。冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。私のほうからは総論と、その後の部分にもつながるようなところについて意見を申し上げたいと思います。
まず、総論のところで、方向性として7ページに出していただいております。1つ目のほうの多様な正社員の活用についてというところでございます。これはワーク・ライフ・バランスや人材の確保等に資する面があり、多様な働き方の選択肢として、労使の議論を通じ、活用していくことが適当と書いております。これ自体はもう既に労使で今までそれぞれの働き方などを踏まえながら整理をされてきているところだと思っておりまして、殊さら政策的な後押しが必要なのかどうか疑問があるところでございます。
ワーク・ライフ・バランスや人材の確保に資する選択肢の一つという意味では否定をするところではございませんけれども、そもそも正社員の働き方の見直しを含めた働き方改革とか、雇用形態間の格差是正というところをしっかり取り組むことが重要だと考えております。
もう一つ懸念されることとしては、職務や勤務地等がなくなることを理由とした解雇等の不利益な取扱いがなされるのではないかということです。ここにつきましては、裁判例の周知にとどまらないように、解雇の不利益取扱いは望ましくないというところを明確にした上で、対策を講じていただく必要があるのではないかと考えているところでございます。
総論の2点目のほうでございます。労働契約関係の明確化は非常に重要な点だと考えているところでございまして、具体的にきちんと進めていく必要があると思います。とはいえ、就業場所・業務の変更の範囲の明示の義務づけだけでは、全般的に労働契約関係の明確化を図るという意味では十分とは言えないと考えております。
前回も少し申し上げましたが、JILPTの以前の調査では、労働条件が変更される事項として、退職制度とか賃金など重要なものが多数を占めておりまして、それは当然のことながら労働者の生活に与える影響も非常に大きいと考えております。そのことを踏まえますと、就業規則による場合も含めてしっかりと労働者に明示することが重要だと考えていますし、それを丁寧に説明して納得していただくことも不可欠だと思っております。締結時に加えて、労働契約の変更時の明示というのも義務づけることが必要ではないかと考えております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
オンラインのほうで池田委員から発言希望がございます。お願いします。
○池田委員 御説明どうもありがとうございました。
私からは1点意見でございます。資料4の11ページの4つ目の丸のところです。紛争の未然防止に資する裁判例等の周知について申し上げたいと思います。第179回分科会でも申し上げましたが、限定された勤務地、職務が廃止されたとしても、それによる解雇が当然に正当化されることにはならないと。その点は裁判例の傾向からして理解はできます。ただし、裁判例等の周知に当たっては、限定された勤務地、職務が廃止された場合の解雇が無効とされた事例だけではなく、例えば配置転換の範囲や職務の高度な専門性が解雇回避努力や被解雇者選定の妥当性等の判断に影響を与えた事例などもあります。これらをバランスよく周知いただくことをお願いしました。今回お示しいただいた対応の方向性(案)には今、申し上げた点が残念ながら盛り込まれておりませんでした。
参考までに申し上げますと、労働契約法の通達では、無期労働契約に転換した後における解雇については、個々の事情により判断されるものであるが、一般的には勤務地や職務が限定されている等、労働条件や雇用管理がいわゆる正社員と大きく異なるような労働者については、こうした限定等の事情がないいわゆる正社員と当然には同列に扱われることにならないと解されることという解釈が示されています。
解雇が当然に正当化されないという点だけでなく、配置転換の範囲や職務の高度な専門性が解雇回避努力や被解雇者選定の妥当性等の判断に影響を与えることがあり得るという点をこの方向性(案)に明記していただくことをお願いします。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。川野委員、お願いします。
○川野委員 11ページの4つ目の部分でございます。労使紛争の未然防止等について、以前も発言させていただいたとおりでございますが、労働契約関係の明確化によって事業場の閉鎖、職務等を廃止された場合に、限定的な働き方正社員の解雇につながりかねないという点について大きな懸念を持っていることは、繰り返しになりますが発言させていただきたいと思います。
資料4の21ページにあるように、事業場・事業所閉鎖等に直面した場合の雇用維持方針について、「分からない」「考えたことがない」と無回答を合わせると3割以上となっていることからも、事業所閉鎖等に際して、解雇をはじめとする不利益な取扱いがなされてしまう、そうした懸念を拭えない状況です。
そのような事態が生じないように、職務等が廃止された場合であっても解雇が当然に正当化されることなく、解雇回避努力義務が課せられることについては、裁判例等の周知にとどまらず、雇用管理上の留意事項に原則となる考え方を追記することを含めて、一層の対策を講じるべきだと考えます。
以上、発言させていただきました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがしょうか。東矢委員、お願いします。
○東矢委員 私からは資料No.4の11ページの1つ目の丸のところについて発言をさせていただきます。労働条件明示の対象に新たに就業場所及び業務の変更の範囲を加えることは必要な取組ではございますが、これはあくまでも契約締結時における変更の可能性がある範囲を定めているにすぎないと考えております。
たとえ契約締結時に就業場所・業務の変更の範囲を明示していたとしても、労働者の同意があれば、就業場所、業務についての変更の範囲そのものを変更することも当然可能であることを踏まえますと、契約締結時の明示だけでは限定正社員の労働契約関係の明確化を進めるという効果も限定的になってしまうのではないかと思っております。
変更後の労働条件がしっかりと明示されなければ、労使の認識のずれといったものが生じかねませんので、そうした意味でも、労働契約の変更によって、就業場所・業務の変更の範囲が変わったタイミングにおいても書面明示の義務づけを行うべきだと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
以上、意見です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
大崎委員、お願いします。
○大崎委員 今、東矢委員も発言しましたけれども、就業場所・業務の変更の範囲について、労働者全般に関わる対応案についても11ページの2つ目に示されておりますが、全ての労働者の労働契約関係の明確化を図るためには、労基法15条の明示のタイミングに労働条件の変更時も追加することが必要だと考えております。
12ページにもありますが、書面明示が義務づけられている締結時の労働条件の明示すらも1割程度の違反が見られるということで、必ずしも徹底されるとは言えないと考えております。対応の方向性で示された労契法4条の趣旨を踏まえ書面明示をできる限り促すというだけでは実効性が担保されないのではないかと思っております。
使用者が一方的に決定できる就業規則に基づいて、転居を伴う配転命令など幅広い人事権が濫用されることがないよう、労働契約の変更時に具体的に労働条件を明示して、丁寧に説明し労働者の理解を得ることが欠かせないと考えております。
同じ資料の16ページのところでも、限定正社員についての調査結果でありますけれども、労働条件を説明している場合のほうがトラブルにつながりにくいということが示されております。限定正社員に限らず、全ての労働者に契約関係の明確化を図るためには、就業規則による明示も含め、労働条件の変更時の書面明示を義務づけるべきだと考えております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
○鈴木委員 ありがとうございます。
東矢委員と大崎委員、冨髙委員から、労働条件を変更した際にも書面明示を行うべきという御意見をいただきました。この件については、以前にも使用者側から意見を述べさせていただきましたが、改めて発言をお許しいただきたいと思います。
もとより、勤務地と職務について将来的な変更の範囲を示すことは、紛争解決の予防に大変資するものだと思っていますので、これは賛成する立場です。ただ、各社のビジネス環境は技術革新や時代の変化に応じて変わり得るものです。そのため、勤務地、職務の変更の範囲は、事業者としてますます予測しにくいということもひとつ御理解をいただきたいと思っています。そのため、変化の範囲を明示するに当たり、社会的な環境の変化に迅速に対応できるように、柔軟性を持って人事権を保持するため、記載の仕方に細心の注意を払うということを検討する企業も出てくるのではないかと思っています。
勤務地や職務を限定しないケースであれば、記載は簡単だと思いますが、例えば限定することを原則としつつも、例外的に配置転換や職務変更を命ずるような場合に、どのような記載の仕方が本人の今後のキャリアを見据える上で分かりやすいのか、また、先ほど申し上げたように企業側の事業運営上ベストか、といったことについては、かなり判断、対応が難しいと思う事業者も少なくないのではないかと思います。
前の分科会でも使用者側から申し上げたとおり、将来的な変更範囲の明示の義務化については、それ自体、企業として負担になり得るので、それに加えて労働条件を変更した場合の明示義務を同時に行うと、負担が大きいと感じる企業も多いと思っています。まず、ベース部分となる勤務地、職務の範囲の変更の明示を義務化していただき、この改正が定着してから変更時の明示についても検討いただけるとありがたいと思っています。
なお、労働契約法第4条の趣旨を踏まえて、労働契約の内容の変更時にその内容をできる限り書面等により明示することを促していくことについては賛成していまして、仮にこういった見直しを促していくという方向性が決まった暁には、経済団体としてもこの点をしっかりと周知してまいりたいと思っています。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
北野委員、お願いします。
○北野委員 ありがとうございます。
資料4の11ページ、3つ目の丸のところでございます。いわゆる就業規則のさらなる周知の在り方について、労働者の具体的な労働条件に関わる就業規則の内容については、周知が不十分であるということは問題であると思っておりますが、対応の方向性で示されたように、「必要なときに容易に確認できるようにする」だけでは不十分だと考えております。
労働契約を変更する手続として就業規則が最も多くなっているという実態もある中でございまして、使用者が就業規則で契約内容を変更したにもかかわらず、備え付けるなどして必要なときに確認ができるようにするだけでは足りないと思っております。それだけで足りるとすることは、労働契約法の4条の趣旨、いわゆる労働契約の内容の理解促進にも反するものではないかと思います。本来、就業規則についても変更が生じた場合には個別明示を原則とすべきと考えておりますが、少なくとも使用者の周知を一層促す方策をしっかり検討していくべきだと思っております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。八野委員。
○八野委員 私のほうからは資料4の12ページのところについて意見を述べたいと思います。論点のところも「労使コミュニケーションの促進を図っていくことについて、どう考えるか」となっておりますが、前にも意見を申し上げたように、労働側としては集団的労使関係をベースとした上で、労使コミュニケーションの促進を図っていくためにはどうするか検討していくことが重要であると考えております。12ページの1つ目の対応策に、関係労働者を含めた労使コミュニケーションの促進との記載がございますが、これまでも労働組合としては、組織化しているかいないかにかかわらず、幅広い労働者を含めたヒアリング、意見収集に取り組んできております。そうしないと事業所内の活性化や、労働条件の向上にしっかりと結びついていかないということでございます。
働く者全体を含めた円滑なコミュニケーションに向けた環境をつくっていくために、まず各労使がどういう取組をしているのかという事例を出していかないと、どうしても閉鎖的になってしまうところがありますので、そのような取り組みの好事例の周知が必要ではないかと思います。
2つ目の対応策ということで、限定正社員の均衡・均等待遇の確保についてでございますが、いわゆる短時間正社員などの限定正社員においても、パート・有期法の適用対象になるかどうかは、総合的な判断に委ねられているということを踏まえれば、適用される労働者がいるという前提に立って、いわゆる正社員との均衡・均等待遇が求められることを改めて周知すべきであると考えております。
次は少しお伺いしたい点もあるのですが、正社員と他の無期契約労働者の間の不合理な格差の是正についても何度か労働側から申し上げてきているとおり、労契法の3条2項による均衡の考慮が必要なことの周知が必要となっていますが、それだけでは実効性が低いのではないか。一層の対策が必要であると労働側は思うわけですが、もう一つは、正社員との均衡が図られなければ、限定正社員という雇用区分を理由として処遇が据え置かれてしまうのではないかという懸念を持っております。この点に対して、厚労省としてはどのような対応を図っていくと考えられているのか、お伺いしたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 それでは、お尋ねがありましたので、事務局からお願いします。
○労働関係法課長 八野委員から正社員間での均衡とか待遇の関係について御質問があったのかなと思っております。委員もおっしゃいましたとおり、現行、労働契約法3条2項に規定されておりますような均衡の配慮の規定以外につきまして、パート・有期労働法のような規定があるというわけではないと理解をしております。
そういった観点で申しますと、先ほど申しましたとおり、適切な労使コミュニケーションを図っていただいて、正社員の間での待遇の何か問題があるという点につきましては、その話し合いを通じて解消を図っていくというところがまず考えられるのではないかと考えております。
○荒木分科会長 八野委員、どうぞ。
○八野委員 ありがとうございます。
均衡の考慮ということが労契法の条文の中に入っているわけですが、そのことを踏まえて、正社員と多様な正社員との間で具体的に均衡を図っていくことが非常に重要なところだと思います。無期契約の労働者だけではなく、短時間の正社員や地域限定の正社員などを含めて、均衡・均等待遇の取り組みをより一層進めていく必要があると思っております。
資料4の14ページのところ、1つ目と2つ目の対応策ということで、労使協議などを後押しする周知について、労働契約に関わる制度の設計や運用は、労働者の働き方や生活にも大きく関わる重要な問題であるということから、言うまでもなく双方向の労使協議、労使コミュニケーションが非常に重要であると思っております。
その点を踏まえながら、労使協議、または労使コミュニケーションに当たっての留意点や各企業の取組事例についても周知に取り組んでいただきたいと思っています。それを進める上では、過半数労働者については、不適切な選出が違われる事実も労働相談で私たちのところに寄せられているということから、過半数代表者の選出方法をはじめ、適正な運用について改めて周知徹底を図るべきだと思っています。ここが土台となると思っておりますので、強く意見として述べておきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。川田委員、どうぞ。
○川田委員 ありがとうございます。
私も資料4の11ページのところで挙げられた点、特に就業場所・業務の変更の範囲を明確化するというときに、労働契約内容をできるだけ明確化するということが望ましいことは言うまでもないのですが、それを労働基準法15条の労働条件明示の対象とするという形で行うということについて、私なりに法律的な観点から考えたことを幾つか述べたいと思います。意見というよりは、こういう辺りを検討することが今後必要になってくるのではないかという問題提起の面がやや大きいかと思います。
1つは労働基準法15条の基本的な性格をどう考えるかということで、私なりに理解したところでは、この規定の主眼としては、正確ではない労働条件を伝えたり、あるいは労働条件を明確にしない形で労働者を雇い入れて、実際には労働者が考えていたよりも悪い労働条件であったりしたような場合に、ただ、働き始めてしまって、その後、辞めるに辞められないという状況で、実質的に強制労働に近いような状況になってしまうという状況を問題視して、排除するということが一つの主眼であったのだろうと思います。
だからこそ労働基準法15条では、1項で雇入れ時の明示義務を課した上で、2項、3項で実際の労働条件と違った場合に、労働者に即時の労働契約解除を認め、かつ帰郷する場合の費用負担を使用者に義務づけるという形で規定がされているわけですが、それはまさにそういう不正確な労働条件で労働者を雇い入れるという事態の対処を重く見ているということだと思います。また、違反に対して罰則をかけているという点も一定の規制がある扱いを規定することを念頭に置いているという面があるのだろうと思います。
そういう一定の悪質性がある事態への対処に一定の主眼を置いていると考えられる規定であるということが一方にあり、その一方で、近年の運用の中で問題が完全にないというわけではないと思いますが、労基法15条に基づく労働条件通知書の交付という扱いが社会に一定程度定着して、ある程度外形的に明確な形で労働条件を明らかにする。それで果たしている役割というのもあるのだと思います。そういう幾つかの視点がある中で、労働基準法15条にこの問題についてどこまでの役割を持たせるのがよいのかという視点が1つ重要になるのだろうと思います。
それとの関係で2点目ですが、これまでの15条の労働条件明示の対象と労働契約内容の関係についても改めて整理、あるいは検討をすることが必要になると思います。これまでも採用時に就労の場所とか担当する職務を明示することにはなっていましたが、それは必ずしも明示された内容で労働契約上、職種とか勤務場所が限定されているということは意味しない。契約内容としてはその後に変更される可能性があるという理解がされていたと思います。要するに、15条で明示される労働条件と労働契約の内容というのは、必ずしも完全に一致するわけではない扱いということで、今回この提案というのは、その両者をできるだけ近づけていこうという方向なのだろうと思いますが、ただ、完全に一致させるのかどうかという点は問題になると思いますし、それから、就業場所・業務の変更の範囲以外の点では明示の内容と労働契約内容が完全に一致するわけではないという状況は残るだろうと思いますので、そういった辺りの整理も今後必要になっていくのかなと思います。
3点目、最後ですが、労働契約内容を明確化する方法としては、制度上、運用上いろいろなものがある中で、労働基準法15条を使うということの意義を、ほかの選択肢もあるという中で整理して考えていくということも必要だと思います。
例えば就業規則であれば、これも別の点で論点になっていますが、就業規則自体に周知が求められているというルールがありますし、労働条件、特に一旦定めたものが変更される場合などは、労働協約で労働条件の決定、変更が行われる場面というのもあると思いますが、この場合には基本的には労働組合が組合員に対して説明するということになると思います。
若干悩ましいのが、労働組合法17条等で規定されている組合員以外の人に労働協約の効力が及ぶ一般的拘束力という問題もあり、それも視野に入れる必要があり、さらに合意の場合には、特に近年、裁判例などでいわゆる不利益変更の合意については、労働者の自由意思によることの客観的な裏づけがあるかという点を重視するような判断があり、その中で使用者からの説明が適切であったかどうかが問われる。
そういういろいろな労働契約内容を明確化する方法の中で15条の明示をどう位置づけていくのかということがあり、さらに言うと、多様な正社員のような、新たに労働契約を結んだ後、例えばいろいろライフステージが変わっていったりする中で利害関心が変わってくるというときに、単なる明確化のほかに、その時点で適切な、例えば契約内容についての再交渉等を促すことが望ましいかもしれないという点もあるのではないかと思います。そういった点をいろいろ考えることが必要かなと思っているということです。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
安藤委員から発言希望が出ております。お願いいたします。
○安藤委員 私からは11ページの4つ目の丸について、限定された勤務地・職務等が廃止された場合の解雇回避努力について、1点発言させていただきます。紛争の未然防止の観点からは、勤務地や職務等について限定をつけた契約を行う場合には、その限定が満たせなくなった場合の処遇についても契約で定めておくことが適切ではないかと個人的に考えております。
例えば勤務地限定であったとすると、事業所が続く限りはその事業所で働くことになります。しかし、その事業所が閉められることになった場合には、別の事業所への配置転換も含めて雇用維持を求めるという契約があってもいいし、私はここの地域から離れられない事情があるので、事業所が閉められる場合にはほかで仕事を探します。なので、配置転換は不要である。こういう契約があってもよいではないかと考えていて、これは職務についても同じで、その職務にこだわりがある場合には職務を続けることがふさわしいであろうと考えております。
このように限定が満たせない場合の処理について明確化することが紛争防止に役立つのか、またはこのようなもしかしたらといった内容を契約に定めることには何か不都合がある、不適切な副作用がある等も含めて、今後こういう限定した働き方というものが増えていくと、場合によってはこういう限定を満たせない場合についての扱いを書いておく契約というのも出てくるのではないかという観点から、どのように扱うことが適切かというのは議論しておく必要があるのかなと感じております。
同時に、限定が満たせない場合の処理について、今、申し上げたような明記がない場合には、裁判所が判断するのかもしれませんが、どう扱うのかも含めて、こちらも同時に考えておく必要があると思っています。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
時間が相当過ぎておりますので、第3の議題については以上ということにさせていただきたいと思います。
最後の議題「(4)その他」ということになります。
事務局からお願いします。
○労働関係法課長 事務局から資料No.5、「解雇に関する紛争解決制度の現状と労働審判事件等における解決金額等に関する調査について」と題しております資料について、御説明いたします。これにつきましては、経緯といたしましては、4月の労働条件分科会におきまして、解雇に関する紛争解決制度の現状とか解決金額等について調査をしてほしいというお話がございましたので、こちらの方でJILPTにお願いして調査いただいた結果について御報告をするというものでございます。
資料の3ページを御覧ください。まず、解雇に関します紛争解決制度の概要ということでございまして、現行解雇等が起こった場合の紛争の解決制度といたしましては、左から労働局におきます個別労働紛争解決制度、真ん中の裁判所におきます労働審判手続、右側の裁判所におきます民事訴訟というのがございますということの概要でございます。
4ページ目につきましては、先ほど御説明いたしました3つの制度はどれぐらいの取扱い件数があるかということでございます。上が労働局のあっせんでございまして、解雇につきまして、令和3年度では743件、雇止めについては373件の申請があったというものでございます。
真ん中の労働審判につきましては、解雇等を含んでおります地位確認の新規受理件数が1,751件、労働関係訴訟につきましては、解雇等を含む地位確認の新規受理件数が1,082件でございました。
5ページ目は、その数字の推移をお示ししているものでございます。1つ目の黒丸ですが、それぞれの制度につきまして、リーマンショックの影響を受けました2008年から2009年に大きく件数が増加してまいりましたけれども、以降高い水準で推移をしている状況です。それぞれの制度ごとに申請件数が最も多かった件数につきましては、あっせんが2008年、労働審判が2020年、労働関係訴訟が2021年でございました。
6ページは、3つの制度におきます審理期間を整理したものでございます。下に棒グラフがついておりますが、統計上の問題でそれぞれの期間の区分がそろえられていないという前提で御覧いただければと思います。あっせんにつきましては、約8割の事案が2か月以内に終結しております。労働審判につきましては、2018年度までは約7割の事案が3か月以内に終結しております。右側の労働関係訴訟につきましては1年以内に終結している割合が半数程度という状況でございました。
7ページ以降が労働審判事件等におきます解決金額等に関しての調査でございます。
8ページ目が今回の調査の概要でございます。調査の方法といたしましては、独立行政法人労働政策研究・研修機構に調査をいただきました。対象とした事案につきましては、令和2年から3年までの2年間におきまして、労働審判手続における調停・労働審判785件、労働関係民事通常訴訟上の和解282件、これについて調査をしております。
主な調査事項としては、労働者、企業の属性、請求内容、請求金額、解決金額などについてお調べしております。
9ページは省略いたします。
10ページは、解決金額の分布でございます。青が労働審判手続、赤が民事通常訴訟における和解でございます。労働審判手続よりも民事通常訴訟和解のほうがより高額で解決する傾向がございますけれども、分布は幅広くなっておりまして、中央値では労働審判手続が150万円、民事通常訴訟の和解が300万円でございました。
11ページは、解決金額の分布を円ベースではなくて月収表示にしたものでございます。傾向としては同じでございまして、より幅広く分布している形になっておりまして、中央値で見ますと、労働審判手続は4.7月、民事通常訴訟の和解が7.3月分でございました。
12ページは、解決期間がどれぐらいであったかというものでございます。解決期間につきましては、解雇等がされた日の事案発生日から終結までの期間をお示ししております。労働審判手続につきましては3月以上9月未満で終結した割合が約6割、民事通常訴訟の和解では1年以上3年未満の期間で終結する割合が約7割でございまして、中央値で見ますと、労働審判手続が6.6月、民事通常訴訟上の和解が18.3月でございました。
13ページ目は金額に影響を及ぼす要因等の調査・分析ということで、こちらは労働審判手続と民事通常訴訟上の和解の中央値を折れ線グラフに表示したものでございまして、横軸が勤続期間、縦軸が月収表示の解決金額でございます。青が労働審判手続、赤が民事通常訴訟の和解でございます。
14ページを御覧ください。今度は横軸を変えたものでございまして、こちらにつきましては年齢を横軸に取りまして、縦軸を月収表示の解決金額としたものでございます。同じように青が労働審判手続で、赤が民事通常訴訟の和解でございます。
15ページを御覧ください。同様に横軸をまた変えたものでございまして、横軸に解決の期間を取って、縦軸は月収表示の解決金額にしたものでございます。
16ページは、横軸を企業規模、縦軸を月収表示の解決金額で取ったものでございまして、労働審判手続、民事通常訴訟の和解の中央値を折れ線グラフにお示ししたものでございます。
資料の説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
本日のところは時間が大幅に過ぎておりますので、ただいまの説明につきましては、次回改めて皆様から御自由に御意見を伺いたいと思いますけれども、現時点で特段の御質問があればお受けいたしますが、細かい点については事務局に寄せていただくということでお願いできればと思います。何か特段ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、司会の不手際で大幅に時間が延びましたけれども、本日の議事はここまでとさせていただきます。
最後に、次回の日程等について、事務局からお願いします。
○労働条件企画専門官 時間の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、本日の労働条件分科会は以上といたします。
お忙しい中、御参加いただきましてありがとうございました。