第12回全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会(議事録)

日時

令和4年11月15日(火) 16:00~18:00

開催方法

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議事

議事内容
○原澤推進官 事務局でございます。
定刻を過ぎてしまい申し訳ありません。ただいまより第12回「全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会」を開催いたします。
委員の皆様方、参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の原澤でございます。よろしくお願いいたします。
本日の委員の出席状況でございますが、全ての委員の先生方に御出席いただいております。
また、参考人の皆様につきましては、時間の関係上、御紹介は割愛させていただきますので、参考資料1の「委員名簿・参考人名簿」を御参照いただければと思います。
参考人の先生方におかれましては、御発表もしくは御発言時のみ画像をオンにしていただくようにお願い申し上げます。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。資料は、厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございます。議事次第、資料1から資料3までがございますので、御確認ください。
また、本委員会はYou Tubeにて配信をしておりますので、その点も御承知ください。
事務局からの御案内は以上でございます。
以降の進行は中釜委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
○中釜委員長 委員長の中釜です。それでは、皆様、本日もよろしくお願いいたします。
早速、議題に移りたいと思います。まず、議題(1)全ゲノム解析等に係る検討状況等について、厚生労働省健康局がん・疾病対策課より資料1-1の説明をお願いいたします。
○中原課長補佐 がん・疾病対策課の中原です。
資料1、全ゲノム解析等に係る検討状況等について御説明いたします。お手元の資料を御覧ください。
資料1-1の1枚目をおめくりいただきまして、2ページ目ですが、こちらは全ゲノム解析等実行計画の推進に係る今年度の政府方針についての記載をお示ししています。
1ポツ目は経済財政運営と改革の基本方針2022、いわゆる骨太の方針、2ポツ目は新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画、3ポツ目、新しい資本主義実行計画フォローアップ、4ポツ目は総合イノベーション戦略2022にこのような記載の文言が記載されております。
3ページ目をおめくりください。
3ページ目には令和4年度の専門委員会のスケジュールをお示ししています。前回第11回の専門委員会において「全ゲノム解析等実行計画2022(仮称)」(案)をお取りまとめいただきました。その後、先生方の御意見を踏まえた修正を加えまして、「全ゲノム解析等実行計画2022(仮称)」(案)は9月5日から12日に開催された第131回厚生科学審議会科学技術部会において審議の上、了承されたことを受けまして、9月30日に厚生労働省において「全ゲノム解析等実行計画2022」として策定されました。皆様の御尽力に対しまして、重ねてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
今回の専門委員会におきましては、AMED研究班及び厚生労働研究班からの本年度の中間報告、また、来年度のAMED研究体制の概要案についての発表を予定しております。
今後、今年度は1~2回程度の委員会を予定しており、研究班からの最終報告及び来年度の方針案について御議論をお願いできればと考えています。
資料の4枚目をおめくりください。
資料の4ページ目から8ページ目は、策定された全ゲノム解析等実行計画2022の概要を示しております。
4ページ目には全ゲノム解析等実行計画の推進によって目指す医療の姿、5ページ目には実行計画第1版を含めた実行計画の全体像を一枚紙としてまとめました。
次に、資料の6ページ目に移りまして、6ページ目から8ページ目までは、前回の専門委員会でお取りまとめいただいた実行計画2022からの主な変更点を赤字で記載しております。
6ページ目の(4)のマル1ですけれども、医療機関の要件について、中釜委員長の御意見を踏まえまして、「全ゲノム解析結果の分析的妥当性及び臨床的有用性についての評価ができる体制が整っていること」と追記しております。
次に、7ページ目に参りまして、マル5の産業フォーラム、アカデミアフォーラムについての記載です。アカデミアフォーラムの役割として、水澤委員の御意見を踏まえまして、下から2行目、「必要なデータを取りそろえたのち、エキスパートパネル等における患者還元に値するものかどうか判断するなどの役割が求められる」という記載を追記しております。
次に、8ページ目に移ります。
7番の倫理的・法的・社会的課題、いわゆるELSIに係る事項についてです。前回、神里委員、天野委員、横野参考人からいただいた御意見を踏まえまして、ELSIへの対応に当たる留意点として、ポツを増やしまして、「ゲノム情報等における不利益が生じないようにするために社会環境の整備をする上での制度面での課題を把握したうえで、本事業における対応方針を検討する」という記載を追記しております。
次に、9ページ目に移ります。
9ページ目は今年度の全ゲノム解析等実施体制、10ページ目には厚生労働科学研究のいわゆる中釜班の体制をお示ししています。9ページ目、10ページ目に関してはこれまでと記載に変更はございません。
次に、11ページ目に移ります。
11ページ目は今年度のがん領域におけるAMED研究班の概要を示しています。前回の専門委員会におきまして、患者還元を行う医療機関として岡山大学病院の追加が了承されましたので、A班の追加医療機関に岡山大学病院を追記しております。
次に、12ページ目に移ります。
12ページ目にはこれまでの患者還元班の成果をまとめました。令和3年度は3医療機関において前向き600症例の解析が実施され、令和4年度からは6医療機関が加わり、全部で9医療機関において2,000症例の解析を予定しております。
これまでに677症例についてエキスパートパネルが実施され、治療薬の選択や診断等に有用な、いわゆるアクショナブルな変異の検出が381症例でございました。また、既存の検査では検出できないがんに関与するゲノム異常の検出が113症例で認められ、全ゲノム解析の結果が診断に有用であった症例が32症例、がん以外の疾患に関与する可能性が高いゲノム異常の検出が見られた症例が30症例であったという報告を受けております。なお、これらの症例数は延べ数となっております。
これらの結果を受けまして、今後、出口戦略の加速による創薬の促進や患者還元の拡大を進めてまいりたいと考えております。
次に、資料の13ページ目に参ります。
本実行計画の対象には造血器腫瘍が含まれております。造血器腫瘍を対象とした本格解析の実施について、現状と課題、それに対する対応策案をまとめました。
課題の2ポツ目ですが、現状、造血器腫瘍を対象とした保険承認された遺伝子パネル検査は存在せず、遺伝子パネル検査に基づくゲノム医療提供体制の在り方についてはまさに議論の途上でございます。そのような状況下での造血器腫瘍を対象とした全ゲノム解析結果に基づく患者還元(本格解析)については、エキスパートパネルの実施方法、確認検査の体制等、検討すべき課題が山積していると認識しております。
造血器腫瘍を対象とした本格解析の実施に向けて、対応方針案として、厚労科研中釜班の患者還元WGにおいて課題の整理及び対応方針について整理することとしてはどうかということを提案させていただきます。
また、厚労科研中釜班での検討に際しては、必要に応じ、造血器腫瘍の専門家に参画していただくこととしてはどうかと提案させていただいております。
次に、14ページに移ります。
先日、新たな総合経済対策が発表されました。第3の柱として新しい資本主義の加速が掲げられており、その実現のため、科学技術・イノベーションへの投資の促進として、全ゲノム解析等実行計画2022の推進に、こちらに示しましたように約49億円の令和4年度第二次補正予算案が閣議決定されております。
次の15ページに移ります。
15ページではがん領域の令和5年の研究体制の概要案を示しています。準備が整い次第、一部前倒しでの開始を検討しております。
この概要案ですけれども、これまでのA班患者還元、B班領域別解析、C班統一解析という大枠は継続していきたいと考えております。今年度、C班に出口戦略チームとして基本コホート及び戦略コホートが加わっております。出口戦略の加速を推進するために、来年度からはA班を患者還元・出口戦略班とし、A班に基本コホートチームと患者還元及び戦略コホートチームを設けてはどうかという案を提示させていただいております。
基本コホートチームとしては、基本コホートの全登録症例について、全ゲノム解析等の結果収集されるゲノムデータ及び臨床情報等の分析を行い、全ゲノム解析等の臨床的有用性を検証するということを目標とした研究を実施していただきたいと考えています。また、各機関からの依頼に基づき、確認検査の提供を行う。その他、中釜班と連携し、全ゲノム解析等の実用化も見据えた標準レポートフォーマットの改良等、患者還元における課題の抽出及び対応策の検討を目的としていただきたいと考えております。
マル2の患者還元・戦略コホートチームですが、代表医療機関を中心に患者還元を行いつつ、全例を基本コホートに登録するとともに、全体の50%以上の症例を目標に出口戦略に基づいた臨床研究等に登録する。代表機関ごとに1~2程度の臨床研究を実施し、この臨床研究の実施に当たっては日本を代表する臨床研究グループと連携した研究実施体制が構築されることが望ましいということをご提案させていただきます。
B班は、アカデミアフォーラム班として準備室と連携し、フォーラムの構築に協力するとともに、蓄積された全ゲノムデータ等を用いた研究を行い、新たに指摘された変異等の知見について、その臨床的意義等を協議し、得られたコンセンサスをA班、C班及び中釜班に提供し、患者還元に役立てていただくという目的に適った研究を実施していただきたいと考えております。
C班は解析・データセンター班として、ゲノムデータ・臨床情報の収集を行うとともに、統一解析パイプラインの改善及び解析、クラウドへの展開、Visiting環境の構築・改修を行う。また、検体・ゲノムデータ・臨床情報の集中管理システムの構築や運用、臨床情報自動収集システムの構築・試行・改修及びデータ共有・利活用支援システムの検証を行う。さらに、厚労科研中釜班及び準備室等と連携し、解析・データセンターの構築に必要な研究を行うことを目標としていります。
次に、16ページ目は研究体制の案でして、A班として基本コホート1班程度、患者還元・出口戦略班として数班程度、B班のアカデミアフォーラムとしては領域別及びがん種横断的な解析を行うことを目標として数班程度、C班としては解析・データセンター班として1班の公募を予定しております。
17ページ以降はこれまでの既存の参考資料になります。
以上です。御清聴ありがとうございました。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ただいまの資料1-1の説明に関して、委員の先生方から何か御質問はございますでしょうか。
では、宮野委員、お願いいたします。
○宮野委員 宮野です。
資料の15ページから16ページにかけてアカデミアフォーラム班という言葉が使われておりますが、説明が横のほうに書いてあって、内容としてはよろしいのでしょうけれども、一般の方がぱっと御覧になったときに、アカデミアの中で閉じていてアカデミアのために活動するだけなのかという印象を持たれてしまうのではないかなとちょっと心配になりましたので、より適切な言葉があれば、そうしていただけたらよいかなと思いました。国民の誤解を避けるためです。
以上です。
○中釜委員長 今の御指摘について、現時点でコメントはございますか。
○中原課長補佐 コメントありがとうございました。
御意見を踏まえまして、産学連携を連想するような適切な名前を今後検討させていただきたいと思います。御意見ありがとうございました。
○中釜委員長 続きまして、栗原委員、お願いできますでしょうか。
○栗原委員 ありがとうございます。
私も一点はアカデミアフォーラム班のところなのですが、先ほど産学連携が浮かぶような名前にという回答もありましたが、産学の「学」だけではなく、「産」がありますので、産業フォーラムについても意識した、要は利活用を促進するための班として活動していただきたいし、それにふさわしい名前がいいのではないかと思います。
それから、それに関連して、名前は今後変わるかもしれませんが、アカデミアフォーラム班とあえて書かれたのは、産業フォーラムとアカデミアフォーラムでアカデミアフォーラムのほうが先に活動が開始されるという辺りを意識して、まずはアカデミアフォーラムの方の立ち上げからという背景があったのかどうかということをお聞きしたく思います。
それから、もう一つ、これは今回の事柄と必ずしも関係するかどうか分からないのですが、14ページに、今回の二次補正で49億の予算がついたということであります。この49億がついたことによって実行計画の何が拡充されたり、加速されたりするのかをぜひ教えていただきたいと思います。
○中釜委員長 ありがとうございます。
では、御指摘の2点についてお答えいただけますでしょうか。
○中原課長補佐 コメントありがとうございます。
まず、アカデミアフォーラムのほうが先に活動を開始するのかという御質問についてですけれども、今回こちらに示しましたのはAMEDの研究体制案でして、AMEDのほうは準備が整い次第、公募を開始しますので、ある意味AMEDのタイムスケジュールに従ってB班の活動がスタートするというところでございます。産業フォーラムにつきましても、できる限り歩調を合わせて開始していただきたいと我々としては考えております。
よろしいでしょうか。
○中釜委員長 原澤推進官、追加でこの点について。
○原澤推進官 がん・疾病対策課の原澤でございます。
後段に御質問いただきました予算についてでございます。資料1-1の14ページ目に記載してございますとおり、補正予算案として今49億円という形でお出ししております。施策の目的の下に書いてあるマル3の施策の概要にお示ししておりますとおり、全ゲノム解析等実行計画2022を策定していただいたというところを踏まえて、全ゲノム解析等及びその結果の患者還元、データ利活用の準備等、特にその内容としては出口戦略を加速していくための臨床研究や利活用環境の整備、加えて、事業実施組織の構築に向けた検討に用いる研究費用という形で予算を要求している状況でございますので、こちらについて今申し上げたような中身をさらに詰めて、計画を今後立てていくというステータスであると理解しております。
以上でございます。
○中釜委員長 今の説明でよろしいでしょうか。
最初の点に関して確認なのですけれども、解析・データセンターが臨床情報等と併せてフィルタリングされた後にデポジットされた場合、100症例の起点のところで利活用は進められると思いますが、その段階で特に産業フォーラム、アカデミアフォーラムの差異はないと理解していましたが、そういう理解でよろしいですか。
○中原課長補佐 そのとおりでございます。現在、準備室WGのほうで利活用ポリシーについて御検討をいただいておりますので、利活用ポリシーができ次第、それに従った形で利活用を産業、アカデミア、特に区別なくしていただけるものと考えております。
○中釜委員長 栗原委員、今の説明でよろしいでしょうか。
○栗原委員 ありがとうございます。そちらのほうは分かりました。
補正予算のところは、この補正予算がなくてももともと施策について当初から予定されていたと思いますので、この予算によって何がどう加速するのかということは分かりませんでした。年度の後半で加速するのであれば期待しますし、時間のかかるものもありますので、来年度が許されるのであれば上手にというかきちんと、有効活用といいますか効果のあるような形で執行をお願いしたいと思います。
○中釜委員長 では、今の御指摘に関して追加で御発言をお願いします。
○原澤推進官 事務局でございます。
御指摘ありがとうございます。今の御指摘も踏まえて、先生方にどのような形で内容として進めていくのかということが分かるようにお示しできるように準備してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
では、続きまして杉山委員、お願いします。
○杉山委員 15ページに令和5年度AMED緊急体制の概要ということでA班、B班、C班と3つ示していただいていますが、今度、A班のマル2の中に患者還元体制のA体制、B体制というのがあって、両方大文字のアルファベットですので、同じページに出てくると混乱しやすいかなと思いますので、例えば1班、2班、3班にするとか、A体制、B体制は小文字のa、bにするとか、何か変えていただけると見て分かりやすいかなと思いました。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございます。その辺りは工夫をお願いいたします。
続きまして、森正樹委員、お願いいたします。
○森(正)委員 森です。よろしくお願いします。
同じく15ページなのですが、C班の右側の説明の統一パイプラインを用いたゲノム解析とクラウドへの展開及びゲノムデータの収集というところで、統一パイプラインを用いた解析でデータを俯瞰的に比較するというのは非常に重要ではあるのですけれども、統一パイプラインを用いることで企業の独占が起こらないかという危惧があるようにも思えますが、その点はいかがでしょうか。
○中釜委員長 御指摘に関して、厚労省、よろしいですか。
○中原課長補佐 ありがとうございます。
統一パイプラインの構築につきましては、現在、C班の井元先生のほうで進めていただいておりまして、特定の企業の独占が起こるような形にはしていないというのが第1点と、現状、クラウドへの展開に際しましては、クラウドでの性能をメジャーなクラウド企業3つ全てにおいて性能テストをし、最終的に一番よかったところを選ぶという形で進めると伺っております。
○森(正)委員 ありがとうございます。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
では、続きまして天野委員、お願いいたします。
○天野委員 ありがとうございます。
細かい点で恐縮ですが、先ほど御説明いただいたスライドの14ページ目でございます。二次補正予算がついているということですが、その中の施策の概要のマル3で「事業実施組織の構築に向けた検討に必要な研究費用について措置を行う」と書いていただいていますが、これはいわゆる事業実施組織の準備室に対して予算がつくということでよろしいのでしょうか。また、その場合、準備室はいつ頃から立ち上がる予定なのか、併せて教えていただければと思います。
○中釜委員長 今の点について、厚労省、お願いできますか。
○増田課長補佐 天野委員、ありがとうございます。
こちらのマル3に関しましては、御指摘のとおり、準備室WGにおいて事業実施準備室・事業実施組織の構築に向けた検討に必要な研究費用ということになります。
その上で、すみません。もう一点の御指摘事項は。
○天野委員 準備室が立ち上がるとなれば、いつ頃から立ち上がるのかという質問でした。
○増田課長補佐 準備室の設立に関しましては、令和4年度中の設立という方針で準備を進めております。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
○天野委員 分かりました。ありがとうございます。
○中釜委員長 では、続きまして葛西参考人、お願いいたします。
○葛西参考人 ありがとうございます。
私も同じく15ページ目、全体に関わるのですが、特にC班が主なのですが、IT面、システム面で令和5年にやっておかなければいけないだろうことを少し細かくお伝えしたほうがいいかなと思いました。
まず一つが、臨床データの収集に関してはあくまで検証段階にまだ到達していないと思います。ですので、いよいよ本格的な検証段階に入っていただく必要があるかなと。その際に、実は全体はまだ令和4年の段階は基本的なこと、いわばシステムづくりの基礎中の基礎しかやれていません。なので、いよいよ本番環境に向けて、例えばネットワークをどうするかとか、ストレージの堅牢性をどうやって維持するかとか、本番環境に向けた実装を含めて、あと、移行の仕方も含めて検討いただくというのが一番大事です。
細かいところで、あと一点ですけれども、最近気づいたことではあるのですが、エキスパートパネルをやっていく過程の中で、今回のところにも書いていないのですけれども、治験情報であったり、治験だけではないのですけれども、いろいろな論文の情報といった知識データの収集の仕方がもう少し高度化できるはずだなと感じています。今の状態ですと、あくまで部分的なところしかデータを提供できない状態なのではないかということを少し危惧しておりまして、それは私が誤解しているかもしれないのですが、いずれもエキスパートパネルを支えるための知識の提供の仕方、特にAI等をさらに高度化していくという研究は必要なのではないかなと思います。
あと、解析については、実はこの辺り、まだ構造変異の解析であったり、一般のサービスよりより早くなっているかとか、もう少しクラウドの方式との比較を丁寧にやる必要があるかなと。
大体以上のことが令和5年に必要なことではないかなと感じております。以上でございます。
○中釜委員長 重要な御指摘ありがとうございます。
この点について、厚労省のほうから現時点でお答えできることはありますか。
○中原課長補佐 ありがとうございます。
まず、自動収集のシステムは検証段階であって、今後、実装に向けて検討を進めていくべきであるという御指摘について承知いたしました。我々も同じような認識でおります。C班は来年度から公募になりますので、今年度のC班の先生方とも、来年度のC班の先生方とも、詳細について先生の御意見も踏まえながら検討させていただきたいと思います。
2点目のエキスパートパネルの知識データについて、今後エキスパートパネルの補助等に使えるようなデータベースやツールとしてAIなどを使って開発すべきではないかという御意見はおっしゃるとおりであると思います。全ゲノムに限らず、がんゲノム医療下で進めているがん遺伝子パネル検査につきましても、エキスパートパネルについて現場の負担をなるべく下げたいという御意見が多々ございますことを我々としても認識しております。ぜひ産業フォーラム等でそういったことも新しい研究開発として検討を進めていただきたいと考えております。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございます。よろしいでしょうか。
○葛西参考人 承知しました。
○中釜委員長 続きまして、中村委員、お願いいたします。
○中村委員 今、クラウドの性能を3社で比較するというようなことをおっしゃいましたけれども、クラウドの性能は何をもってはかれるのか、いま一つよく分からないのですが、ストレージをどうするのか、計算をどうするのか、あとはコストもあると思うのですけれども、一番大事なのはセキュリティーだと思うのです。それはなかなか検証できないと思うのですけれども、ここのプロジェクトでやるのではなくて、情報を収集してやるしかないと思うのですが、このプロジェクトの中で検証するというようなことを言っておられましたが、具体的には何をどう検証されるのですか。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の御指摘に関して、厚労省、お答えできますか。
○増田課長補佐 中村委員、ありがとうございます。
クラウド上での性能比較に関しましては、井元先生からこの後の研究班のご報告の中で御説明いただければと思っております。
○中村委員 分かりました。
○中釜委員長 その段階でもしまた追加の御質問があればよろしくお願いいたします。
続きまして、水澤委員、お願いいたします。
○水澤委員 ありがとうございます。
御説明ありがとうございました。
1つ根本的な質問というか確認なのですけれども、これは3年間でしょうか、今年度までで一区切りが終わって、来年度以降の研究に関して、A班、B班、C班というのが、現在もそういう名前のものがあって、ほぼ似た形ですけれども、別のアカデミアフォーラム班とか新しい名前もつけて、少し内容を変えて研究を継続する形であるという理解でいいのでしょうか。この後お話があるように、既に今の中釜先生の班等、すごく多くの業績を上げておられるわけですけれども、令和7年度まで実施組織の体制が整うまでに少し時間があるということで、研究を継続するというような理解なのかということが一つ。
それから、実施組織はもちろん1つなわけですけれども、そういう一体的な組織をつくるということが非常に大きな目的だと思うのですが、それが一番難しいというか、これは各業務を分担してやっていく形で、最終的にどこかでこれを一体化していく、スムーズにこういった機能が1つの組織の中で行われるようにしていくというのが重要になってくると思うのですけれども、その辺の予定というか見込みはいかがなものでしょうか。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の御指摘に関して、厚労省からお願いできますか。
○増田課長補佐 水澤委員、御指摘ありがとうございます。
来年度の研究に関しましては、こちらに記載のとおり、これまでの経験を踏まえつつ、現在行っている研究をより加速できるような班の構成となっております。
今後の進め方に関しましては、令和7年度の事業実施組織設立に向けまして、本事業の中核である患者還元と創薬等の推進に向けた情報基盤の構築や利活用といったところをしっかりと行っていけるように、それぞれのパーツとなる部分についてこの研究班A班、B班、C班でそれぞれ分担して試行的に研究を行っていって、どういった方法で事業実施組織の中で行っていくのがいいのかということを検討していくこととなります。
御指摘のとおり、A班、B班、C班とそれぞれ役割で分かれているわけですけれども、これは当然一体となって成果として出る必要がございますので、その点、今年度そして来年度に向けて各班が連携して取り組めるような会議体の設置ですとか、あるいは厚労科研中釜班を中心とした統一的なルールの整備といったところをよりしっかりと行って、スムーズな連携を行っていけるようにしてまいりたいと思っております。
○水澤委員 分かりました。私も申し上げたように、各班の活動というのは現在でもできる活動だと思いますので、それが統合されるような形がこの委員会でしょうか、我々の目指すところだと思いますので、ぜひこの統合のところを視野に置いてやっていただければと思います。
もう一つ、細かいことなのですけれども、今、たまたま気づいたのですが、6ページでタイプミスが見つかったので、(4)のマル1の【難病】と書いてあるところの1行目なのですけれども、「令和4年度以降は本実証」で止まっていますけれども。多分実証事業か実証研究事業というようなことになると思いますので、そこだけ事務局と御確認いただければと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
私のほうから1点、水澤委員の最初の御指摘の点に関してです。研究の継続性に関しては、冒頭に厚労省から説明がありましたけれども、この事業は日常診療への導入と個別化医療の実現、さらにはデータをストレージすることによる創薬への展開という3つを並行して進めていくものです。データの患者還元とその利活用を踏まえつつ進めていくところ、患者還元という意味では、実証研究をかなり積み重ねていく必要があることから、令和7年度以降の事業実施機関へ移行できるように、研究を含めながら検証を進めているという理解です。研究というのはそういう位置づけにあると理解していますが、このような理解でよろしいでしょうか。
○水澤委員 私もそこはよく理解しておりますので、それを後半のほうで、令和6年か7年か分からないのですけれども、組織が確立するのが7年だと思いますので、そういったところで、統一した組織でこの全体を行うということを視野に置いてやらなくてはいけないのではないかなと思った次第です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
続きまして、森正樹委員、お願いいたします。
○森(正)委員 ありがとうございます。
今の水澤委員の御発言とも関連するのですけれども、あるいは中釜委員長の御発言とも関連するのですが、A班、B班、C班はそれぞれすばらしいことをやっておられていいのですけれども、それぞれの情報が共有できるシステム、要するに日々共有できるシステムがあるのかということと、例えばそれこそ文献等で毎日毎日いろいろな情報が出ているのですが、その重要な情報をA班、B班、C班のそれぞれの班員が共有して認識できるようなものをつくっておく必要が非常にあるのではないかと思いますし、例えば自分の専門分野でしたらもちろんよく勉強すると思いますけれども、少し専門を外れると目にする機会が少なくなったりしますので、それをするにはまた大変だと思うのですが、気づいた人がアップしていくのかというようなこともあろうかと思うのですけれども、情報を管理する人、そして、重要な文献等を皆さんに共通して知らせるというようなことが必要ではないかなと思うのですが、それをすれば情報共有が非常に進みますし、皆さんの認識の共有が重要という点ではそういうことが必要ではないかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
○中釜委員長 今の御指摘に関して、どうですか。
私の理解では、恐らく患者還元のところでのレポート作成に関しては共通のフォーマットで返していくので、そのときの考え方に関しては機関内の共有を進めていく必要があるかと思うのですけれども、同時に開発的な研究も進める必要がある以上、全ての情報をあまねく共有というところは開発の班によって戦略的に異なってくる面もあるだろうと思います。ただ、どういう研究が進められているかという情報共有はこの班の中で共有すべきだと私自身は理解していますが、厚労省のほうで何か追加でございますか。
○増田課長補佐 ありがとうございます。
我々としても同様の認識でありますが、資料の15ページの一番下に書いてありますとおり、「A~C班による合同の班会議の開催等を通じ協力」というところを今回追記させていただいております。こういった形のA~C班で情報を共有できる場というのをより多く機会を作っていきたいと思っております。その中で、今御指摘いただいたような、研究を進める上での最新の情報の共有などもスムーズに行える仕掛けといいますか、そういったところを研究班の皆様方と検討していければと思っております。
○森(正)委員 ありがとうございます。定期的にやるものはもちろん必要だと思うのですけれども、これをリアルタイムにやるということがやはり時間軸を考えると重要だと思いますので、その辺、少し工夫できればいいのではないかなと思いましたので、発言させていただきました。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございました。
ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、一旦ここで1-1に関する議論は閉じまして、続きまして、医政局研究開発政策課の医療イノベーション推進室から、資料1-2「全ゲノム解析等の実行計画に係る実施組織に求められる機能等について(案)」についての説明をお願いいたします。
○杉山調整官 ありがとうございます。厚生労働省医政局研究開発政策課医療イノベーション推進室の室長補佐の杉山と申します。
資料1-2を御覧ください。
「全ゲノム解析等実行計画に係る事業実施組織に求められる機能等について(案)」につきまして御説明をさせていただきたいと思います。
この資料につきましては、前回この専門委員会に提示させていただきまして、委員や参考人の皆様から御意見をいただいた内容を踏まえ、修文したものを改めて提示するものとなります。
本日、この修正案につきまして御協議いただき、この事業実施組織に求められる機能等を取りまとめたいと考えております。
それでは、1ページおめくりください。
主な修正点について順に御説明させていただきます。
まず1つ目、「1.公益性・公共性」の<対応方針案>を御覧ください。こちらは、元の文案は「事業実施組織は、何らかの法的根拠に基づいた公的な性格を有するものであることが望ましい」となっておりましたが、こちらの書きぶりはそのほかの項目のように「べきである」だとか「必要である」といった信頼できる形で書き直すべきということを前回の専門委員会にて宮野委員より御指摘をいただきましたので、今回、「事業実施組織は、何らかの法的根拠に基づいた公的な性格を有するものである”べきである”」といった形に修文いたしました。
次に、「3.データ等の利活用の公平性」の<対応方針案>を御覧ください。こちらにつきましては、元の文案は「企業やアカデミアが迅速かつ公平で安全に利活用することが可能なデータ共有システムをオンプレミスやクラウド上に構築し、その利活用を支援する部門を事業実施組織に設置する」となっていましたが、前回の専門委員会におきまして、栗原委員から、共通システムというハードのことを示しているように思われるが、ハードだけではなくプロセスや手続の構築についても含めて書き込むべきではないかという御意見をいただきました。その御意見を踏まえまして、「データ等を」の記載を追加し、「企業やアカデミアがデータ等を迅速かつ公平で安全に利活用することが可能となるよう、データ共有システムをオンプレミスやクラウド上に構築すると共に」とし、さらに、それに続く形で、「利活用のためのルールや手続き等を整備し」といった記載を追記しております。 続きまして、3か所目になります。「4.ガバナンス」について御覧ください。こちらにつきましては、前回の専門委員会において、中村委員より、強固なガバナンスが必要であるとともに、様々なディシジョンメイキングのプロセスに透明性が必要であり、透明性のある組織と明記すべきであると御意見をいただきましたので、そちらの御意見を踏まえまして、<検討の視点>の3行目に、「柔軟で迅速な運営判断が可能な自立性」の後に「および透明性の高い組織であるべき」と「透明性の高い」という文言を追記しております。
また、それと対応する形で、<対応方針案>の1ポツ目の3行目にも同様に「透明性の高い組織とする」といった形で修文をしております。
次に、「6.倫理的・法的・社会的課題」の項目の<検討の視点>について御覧ください。こちらは、元の文案は「事業実施組織は、全ゲノム解析等の結果により、患者等が社会の様々な場面で不適切な取扱いを受けたり不利益を被ることがないよう、社会の理解と信頼を得ながら適切に業務を行うべき」としておりましたが、中村委員より医療現場での不利益を回避することが最重要であると御意見をいただきまして、そちらの御意見を踏まえ、「事業実施組織は、全ゲノム解析等の結果により、患者等が」の後に「医療現場を含め」という文言を追記いたしました。「患者等が”医療現場を含め”、様々な場面で不利益を被ることがないよう、適切に業務を行うべき」という形で修文しております。
最後に、「7.人材育成」を御覧ください。こちらの項目については、前回の専門委員会において、栗原委員より、事業実施組織は公的な性格を持つことに伴い、人員の増減が柔軟に対応できないといったことにならないように、人員の専門性及び組織の体制の柔軟性について表現していただきたいと御意見をいただきました。その点を踏まえまして、<検討の視点>の3~4行目にかけて、元の文案は「多様な専門性を備えた人材確保が必要」となっておりましたが、こちらの部分を「多様な専門性を備えた人材の確保を”柔軟に行える”必要がある」といった形で柔軟に行うということを追記しております。
また、森委員及び葛西参考人から、人材育成については、現在や将来とでどのような人材がどの程度必要となるか等の検討を踏まえた人材獲得の戦略についてきちんと入れていただきたいと御意見をいただきましたので、<検討の視点>の最後に「また、そのための人員育成・確保の計画が必要である」と追記しております。
それと対応する形で、<対応方針案>における1ポツ目の3行目以降につきましては、元の文案の「その実施に当たって必要な人材を育成する」に対しまして、「その実施に当たって必要な人材の専門性や規模について検討を行い、柔軟に人材育成・確保を行うための計画を策定する」といった形で、人材の専門性や規模の検討、柔軟な人材育成・確保のための計画の策定という文言を追記しております。
また、<対応方針案>の1ポツ目の1行目につきましては、葛西参考人からの御意見を踏まえまして、「民間企業や大学院等と連携し、データ解析や情報基盤の構築」の前に「設計」という単語を新しく追記しております。
また、データ管理の次に「情報セキュリティ対策等に加え」と「情報セキュリティ対策」という言葉も追記しておりますので、「設計」と、「情報セキュリティ対策」が追記になっております。
加えて、<対応方針案>の2行目の後半部を御覧ください。「各種最先端の情報科学に係る研究を実施する部門を事業実施組織に設置し」という元の文案がございましたが、こちらについては、厳密には事業実施組織が研究を実施するわけではなくて、研究を支援することになりますので、各種最先端の情報科学に係る研究を支援する部門と、研究を「実施」から「支援」に変更する形で修文をしております。
また、同様の観点で、対応方針案の2ポツ目の後半部についても、「遺伝カウンセラー等をOJT等により育成するための部門を事業実施組織に設置する」という元の文案に対しまして、「遺伝カウンセラー等の育成を支援するための部門を事業実施組織に設置する」といった記載に修正しております。
主な修正点については以上となります。
また、資料1-2につきましては、今回別添1及び別添2の資料をつけております。
資料1-2別添1について御覧ください。
こちらは全ゲノム解析等実行計画に係る事業実施組織事業概要(案)となります。
この資料については、ほとんどが全ゲノム解析等実行計画2022における記載が元となっておりますが、一枚紙として事業実施組織の事業概要や事業背景、事業目的、基本戦略、事業内容についてまとめております。
また、右下のボードメンバーという項目につきましては、これまでの議論を踏まえまして、「ボードメンバーは総括責任者(CEO)及びアカデミアや産業界を含む幅広い分野から成る外部有識者で構成される。CEOは事業内容に必要な専門知識と経験を有するものとする」としております。
続きまして、別添2の資料を御覧ください。
こちらは全ゲノム解析等実行計画に係る事業実施組織のビジョンについてまとめております。新たな個別化医療等の推進や日常診療へ導入といった患者への直接的な還元と、戦略的なデータ蓄積や研究・創薬等へ利活用促進といった情報基盤を活用した成果を患者還元につなげ、国民へ質の高い医療を届け、将来的ながん・難病等の克服を目指す好循環の実現をお示ししております。
これらを踏まえまして、事業実施組織の構築に取り組んでまいりたいと考えております。
以上で資料1-2の説明を終わりにしたいと思います。
○中釜委員長 説明ありがとうございました。
それでは、ただいまの資料1-2の説明につきまして、御質問等がありましたらお願いいたします。
では、まず宮野委員、お願いいたします。
○宮野委員 宮野です。ありがとうございます。
最初の資料の2ページ目の「3.データ等の利活用の公平性」のところで、「利活用のためのルールや手続き等を整備し」と大変結構なことで、クリアになったかと思うのですけれども、データを利活用するときのいわゆる出口をきちんとコントロールする。ルールはつくっても、ルールを破る者が利活用に関わってくるときに、このルールというのは罰則規定のようなものも視野に入れておられるのでしょうか。私はそうすべきだと思っているのですけれども。
○市村室長 御指摘ありがとうございます。厚生労働省医政局イノベ室長の市村です。
御指摘の点に関しましては、罰則規定を設けるかどうかを含めまして準備室WGのほうで議論をしていきたいと考えております。
○中釜委員長 今の説明でよろしいでしょうか。御指摘の点は非常に重要な点だと思います。
○宮野委員 ありがとうございます。
利活用が公平にされるということは、言葉だけで言っていてもなかなか難しいということは皆さん御存じのことだと思いますので、ぜひ社会の規範を遵守できるようにしていただきたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございます。
ほかに御意見はございますでしょうか。
では、森正樹委員、お願いします。
○森(正)委員 大変細かいことで恐縮なのですが、4ページ目の一番上の「民間企業や大学院等と連携し」というところに大学という名称は入れないでいいのですか。「民間企業や大学、大学院等と連携し」のほうが実際的ではないかなと思うのですけれども、非常に細かいことで申し訳ありません。
○市村室長 ありがとうございます。
こちらについては、大学院等の「等」に含まれるとは思っているのですけれども、微修正ですので、その辺りは先生の御指摘を踏まえ、修正させていただきたいと思います。
○中釜委員長 今の回答はよろしいでしょうか。
それでは、続きまして水澤委員、お願いいたします。
○水澤委員 御説明ありがとうございます。
今、最後の4ページ目のところの御説明を聞いていて、研究はしないということを明言されたと思いますが、ここにもちろんいろいろなことを支援する役割が大きいというのは私もよく分かるのですけれども、もし実施組織に研究者も所属しないと成り立たないと思うのですけれども、この方々が全く何も研究できないことになってしまっては、本当に優秀な方が来てくれるかどうかということが分かりませんし、やはりここでなければできない研究というのもあると思うのです。ですので、研究はしないと言ってしまっていいのかどうか、そこのところを教えていただければというのがまず第1点です。
○中釜委員長 では、今の点について、厚労省、説明をお願いいたします。
○市村室長 御指摘ありがとうございます。
御指摘の点につきましては、こちらは事業実施組織のバックオフィスや、運営サイドのことを念頭に置いておりまして、実際に解析・データセンターに協力してくれるかなり高度な専門職の先生方が全く研究できないということではなく、その先生方がデータセンターに協力していただきつつ、どこかの研究機関に恐らく同時に在籍することになるかと思いますので、何らかの形で正式なルートをしっかりと踏んで、データを利活用し研究ができるものと考えております。要は、先ほどあったデータ利活用の公平性という面で、データセンターにいる研究員が、そこにいるからというだけで優遇されてデータを使えるということがないようにしつつ、研究員の専門の先生も何らかの形でしっかりと正式な手続を踏んで研究ができるような体制にしていきたいと考えています。
具体的な個々の先生の処遇だとか立てつけということに関しましても、今後、準備室WGのほうで事業実施組織を構築していくに当たって、事業実施組織のデータセンターに勤務するような専門職の先生方に不利益がないような形、やる気が維持できるような形、なおかつ外から見たときに公平性が担保されるような形にしていく必要があると考えております。
したがって、バックオフィスとしてはあくまでも支援する部門、部門としては支援する部門という記載になっております。
○中釜委員長 水澤委員、今の説明でよろしいでしょうか。
○水澤委員 説明をお聞きすると何となく分かるのですけれども、やはりそういうことが分かるようにというか、私、ペーパーを読んだときには、「支援」とは書いてあったのですが、研究はしないとは書いていないので、できるのだろうとよいほうに解釈しておりましたけれども、今、御説明があったように、私も申し上げましたけれども、ぜひここに行きたいというような組織のほうが私は絶対に成功するとこれまでの経験で思いますので、そういったこともぜひ準備室でディスカッションしていただくようにお願いしたいと思います。
それが第1点で、第2点のほうは、ちょっと前の点なのですけれども、2ページ目の最後のところです。先ほどおっしゃった自立性の「自立」はこれで本当にいいのかと。自ら立つになっているのですけれども、自ら律するかどうかです。2ページ目の最後の行です。4ポツの3行目の最後の行で「自立性および透明性」。それから、3ページ目の一番上、「自立的に行う一方でと」。2ページだとある意味で意味も通るかもしれないのですけれども、3ページ目だとあまりこういう使い方はしないかと思うのです。
先ほどの資料1-1を拝見しますと、7ページのマル6の実施組織のところの1行目、「説明責任を有する自律性の高い組織である」と。これは律するになっているということで、どちらの「りつ」なのか。あるいは自主的という言葉がその後に出てきますけれども、自主的なというような意味なのか。そこのところ、よく考えて統一したほうがいいかなと思います。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございます。
今の「じりつ」に関して、まず資料1-2で説明いただけますか。
○市村室長 ありがとうございます。
ワーディングの齟齬につきましては改めて修正等させていただきます。
資料1-2の「自立」ということに関しましては、運営判断及び財務的にもできるだけ自立するようにいう意味での自立を意味しております。
○水澤委員 どちらかというと、今の立つという意味は経済的に自立したりするときによく使う自立かなと思いますので、そういう意味も含んでいるのかなということで今お聞きした次第ですけれども、どちらかというとインディペンデントに行うというか、様々なところから影響を受けないでということだと自主的にといった、英語で言うとインディペンデントというのが一番近いような気がするのですが、これは統一していただければ私はあまり細かいところなので気にはなりませんが、そこが一つ。
今、せっかく出ているのでもう一点、3ページ目の2ポツ目です。「人事等を通じて」という行の最後のところに「顧客志向」というのがあるのですけれども、これは民間の経営視点等を活用しつつということなので、民間でよくクライアントとかそういったことで使うと思うのですけれども、ここで使うとなるとちょっと異質な感じがするので。利用者志向とかそういうことなのかなと私は思いました。これは一つの意見でございます。
以上です。
○市村室長 ありがとうございます。
この辺りのワーディングにつきましては、先生の御指摘を踏まえて、適宜修正させていただきたいと思います。
○中釜委員長 水澤委員、今の説明でよろしいでしょうか。
○水澤委員 結構です。
○中釜委員長 あと、資料1-1と1-2のワーディングの整合性についてまた検討いただければと思います。よろしくお願いします。
ほかに。
それでは、葛西参考人、お願いいたします。
○葛西参考人 ありがとうございます。
私は事業実施組織事業概要の話なのですけれども、ここにCEOという言葉が出てきたので、そろそろそういう議論なのかなと思いまして、発言しようと思うのですが、デジタル庁も最近CXOみたいな役割が出るようになりましたので、基本的にはまず執行体制をどうするかというのはどこかで明確にしたほうがいいかなと。執行体制はどういうことかというと、執行部とオーナーシップというのはやはり分かれていることが往々にしてございます。オーナーシップと執行部というのと、さらにそれを資本にするという三極ガバナンスをきちんとキープしなければいけないと思っています。執行体制の中において私が意見があるのは、CEOというワードが出ている限り、当然情報管理責任者であるCIO、そして、技術の総合的な責任、インフラストラクチャー全体を見るCTO、それから、セキュリティーに関して全体を統括するCSOというのは少なくとも別々でなければいけないと思います。どんなに私が丁寧にシステムをつくっても、自分自身で自分のセキュリティは把握できませんので、必ずそういったところは別々にしていただくということを考えていただく。
そういったことが、実は準備組織の中で議論というよりは、当然、前回もそういう話でしたから、専門委員会やもちろん厚生労働省のほうである程度組織の骨格像を見せた上でオープンな議論をしていただく必要があると思います。
私自身がもう一個気になっているのは、実は技術の要素がこれはさらっと書いてあるのですけれども、かなり複雑に込み入っていまして、相当先進的なセキュリティー対策から相当先進的なクラウド技術を対応しているので、正直に言いますと、私も一生懸命頑張っていろいろな助言をしたりする機会もあるのですが、全体を通して全てにおいて理解するというのは並大抵ではございません。なので、今の研究においても、もう少しそういう技術の専門性がある方に個々別に意見をいただけるような体制が必ず必要です。もう一つが、事業管理面は今の段階でもとんでもなく複雑な構成状態になっているので、構成管理を含めて、事業実施管理とシステムの全体設計管理、全体設計管理は一人の人間では全然できませんので、そういったPMO体制と管理基準は丁寧につくって、それを守っていただくというふうにしていただきたいなと感じております。
私からは以上です。
○中釜委員長 重要な御指摘ありがとうございます。実施組織に当たっての体制の透明性と、全体的な議論をしていただきたいということです。
厚労省、この点については現時点ではよろしいでしょうか。では、御指摘を踏まえて検討していただきたいと思います。
○市村室長 ありがとうございます。準備室WGのほうで検討させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○中釜委員長 ありがとうございます。
よろしいでしょうか。
では、続きまして神里委員、お願いいたします。
○神里委員 ありがとうございます。
3ページ目の6のELSIの部分の<検討の視点>の記載に関してです。今のままですと、患者等が不利益をこうむることがないよう、事業実施組織は社会の理解と信頼を得ながら適切に業務を行うべきという趣旨の内容になっているかと思いますが、実行計画2022を見ましても、本事業が社会の理解と信頼を得るということがもともとの趣旨だったと思いますので、ワーディングの問題ではあるかと思いますけれども、趣旨がずれてしまったので、そこを修正していただきたいと思います。
例えばこれを生かすのであれば、「社会の理解と信頼」まではそのままにして、「社会の理解と信頼を促進する必要がある」という形で、ほかのところも「必要がある」ということで終えている文も多くありますので、そのような修文でもよろしいかなと考えました。
以上です。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございます。
今の点について何か御発言はございますか。厚労省からお願いいたします。
○市村室長 御指摘ありがとうございます。
御指摘のとおり、事業実施組織自体の社会と信頼性というのが読み取りにくくなっていると思いますので、御指摘のワーディングに修文させていただきたいと思います。
○中釜委員長 ありがとうございます。
そのほか、御意見はございますか。よろしいでしょうか。
それでは、委員の先生方にいただきました御意見を参考にぜひ修文あるいは整合性の取れる表現に変えていただけばと思います。ありがとうございます。
それでは、続きまして議題(2)に進めたいと思います。
AMEDの土師課長より、資料2「全ゲノム解析等に係るAMED研究について(中間報告)」の説明をお願いいたします。
○土師参考人 AMEDの土師でございます。
目次の順にAMED研究の進捗状況について報告いたします。
2ページ目はR4年度の研究の概要でございます。
A班の3班では施設要件を満たす分担医療機関を追加しつつ、最大2,000例の解析を行い、結果を患者に還元いたします。
B班の6班ではR3年度分の各班1,400症例の解析を行い、臨床情報の登録を行うとともに、解析データを用いた研究を行うこととしております。
では、3ページ目でございます。
進捗状況を順にお示しいたします。
まずはA班のデータベース構築に関する進捗状況でございます。前回は7月20日時点の集計結果をお示しいたしましたが、今回は10月20日時点の集計結果をお示しいたします。スライド上部に記載しております全体の状況ですが、FASTQのデータ利用数はR3年度、R4年度分とも、ホールゲノムシークエンス分に加えまして、RNAシークエンス分が新たに蓄積されてきております。データ確定数はホールゲノムシークエンス分で370症例ほど増加しております。
続きまして、4ページ目でございます。
こちらはB班の状況でございます。
全体といたしまして、FASTQのデータ受領数は、ホールゲノムシークエンスで720症例、RNAシークエンスで4684症例、データ確定数におきましてはホールゲノムシークエンスで1,091症例増加しております。
詳細は下の表を御覧ください。
続きまして、5ページ目になります。
臨床情報の登録を行いますB班のEDC整備の進捗状況でございます。6班の代表機関及び連携機関において、こちらの表に示す進捗になってございます。完了した部分につきましてはセルを塗りつぶしてございます。
なお、最下段に記載のございますEDC入力開始に向けた調整事項といたしまして、連携病院等でEDCの導入が難しい施設への対応といたしまして、臨床情報の入力にExcelを用いるシステムの運用を昨日より開始いたしております。
続きまして、6ページでございます。
EDCの入力される予定の症例数の合計と実際に入力された臨床情報につきまして、患者基本情報シートまで入力した数、基本項目と全て入力を完了しました全項目のそれぞれの数を示しております。この中で、加藤班につきましては、昨日より運用開始されましたExcelでの取り込みシステムを用いて大部分の症例の入力を今後進める予定となってございます。
7ページ目でございます。
A班におけますエキスパートパネルの進捗状況でございます。数字の部分は先ほどの説明と重複がありますので、割愛させていただきます。
下段にホールゲノムシークエンスを用いたエキスパートパネルにより得られた成果を例示しておりますけれども、前回からの追加点といたしまして、まず1つ目の既存の検査では検出できないがんに関与するゲノム異常を検出したケースといたしまして、新たに病的と強く疑われるBRCA2のバリアントや構造異常、転座・欠失などが検出されております。
2つ目の全ゲノム解析の結果が診断や治療に有用であった例といたしまして、融合遺伝子の確認検査後、推奨薬剤を投与して有効であったケースが新たに認められてございます。
3つ目といたしまして、がん以外の疾患に関与する可能性が高いゲノム異常を検出したケースは前回と同じ内容となってございます。
8ページ目でございます。
こちらは全ゲノム解析研究に参加する施設の拡大として、A班の角南班において東京大学を追加することを考えておりますことをお示ししております。
東京大学は中核拠点病院として、全ゲノムに対するエキスパートパネルを介した患者還元体制を構築しており、東京大学病院は全ゲノム解析等実行計画2022に記載された医療機関の要件を満たし、小児がんの症例数集積の加速が期待できます。
本委員会にてご承認をいただけましたら、小児がんやその他の固形がんにつきまして50例を検討予定としております。
続きまして、9ページ以降でございますが、C班の進捗状況をお示しいたします。
このスライドでは、C班内の5つの分担、及びそれに附属します6つの担当チーム、そして、それぞれのチームの令和4年度の目標を示しております。この表にあります、担当のチームごと、その令和4年度の目標ごとに次のページ以降で進捗状況をまとめております。
10ページ目でございます。
例えばマル1の集中管理チームでは、黒い帯で示しておりますけれども、大きく7つの項目に分類される目標が掲げられておりまして、その目標ごとにさらに詳細なタスクが設定されております。それぞれのタスクの今年度における開始月が白丸、完了予定月が黒丸で表記されており、10月20日時点で既に着手されているタスクを水色で塗りつぶしております。
本チームの各タスクについては予定どおり開始されており、進捗状況欄に大まかな状況を記載しております。
例えば黒帯の5つ目になりますけれども、組織型別サンプル保管手順書の作成といったところでは、日本病理学会と連携して臓器別検体取扱SOP作成作業を実施中であります。その下のサンプル輸送・処理プロトコル作成におきましては、A班、B班に核酸抽出のアンケートを実施し、集計作業を実施中といったことが記載されておりまして、現時点では特に大きな問題なく進捗しております。
11ページ目でございます。
こちらはマル2のゲノム解析チームの状況を示しております。こちらでは灰色で塗りつぶされたタスクがありますけれども、これは一部のタスクが既に完了していることを示しているものでございます。詳細は割愛させていただきます。
12ページです。
こちらはマル3の臨床情報チームの状況でございます。こちらも完了しているタスクと現在進行中のタスクということで、今のところ大きな問題はないという報告を受けております。
先ほどのEDCのシステムに関しまして、11月14日より開始されたという状況になってございます。
13ページ目でございます。
こちらはマル4のレポート作成チームとマル5のデータ共有チームの状況でございます。こちらも予定どおり進捗しているという状況になってございます。
14ページはマル5の出口戦略チームの状況で、コホート別に示しております。出口戦略チームの基本コホート、戦略コホート、アンサンブル試験、両方とも症例登録は11月より開始予定となってございます。
15ページでございます。
こちらのチームも、現時点では大きな問題なくタスクが進んでいる状況となってございます。
足早でございましたけれども、最後16ページが今年度のスケジュールでございます。
AMEDからは以上でございます。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関して何か御質問、御意見はございますでしょうか。
では、中村委員、お願いいたします。
○中村委員 actionable mutationが六百何十例かで見つかったということですけれども、その中で実際に薬が届いた症例というのは何例ぐらいあるのでしょうか。分かっていればお教えいただきたいです。
○中釜委員長 お願いいたします。
○土師参考人 現状では1例となってございます。
○中村委員 670人actionable mutationがあって、薬が届いたのは1例ということですか。
○土師参考人 厚労省の資料にございますけれども、全ゲノム解析の結果が診断に有用であった例としては32例ございます。実際に薬剤といたしましては、現時点は1例でございます。
○中村委員 分かりました。ちょっと寂しい気がしますけれども。
○中釜委員長 私から質問です。これは恐らく確認検査を含めて体制を整える必要があるということから、actionableのうちに実際に返せる仕組みを基本コホートの中でつくっていくのものと理解していますが、そういう理解でよろしいですか。今後その1がさらに増えていくということで、actionableから実際に患者還元できる体制が整えられるとお聞きしたのですが、そういう理解でよろしいでしょうか。
AMED、お答えいただけますか。
○土師参考人 そのとおりでございます。
○中釜委員長 現時点で1例というのは確かに寂しいので、そこはぜひ数を増やしていっていただきたいと思います。
中村委員、それでよろしいでしょうか。
○中村委員 恐らくオンゴーイングの症例もあると思いますけれども、ちょっと寂しい感じがしましたので、コメントです。ありがとうございました。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございます。
それでは、宮野委員、お願いいたします。
○宮野委員 今、中釜先生が御説明になったことですっきりしたのですが、actionableという言葉の定義がきちんとしていないというのが原因だと思うのです。実際に海外で全ゲノムシークエンスをやったりパネルをやったりして、actionableな変異がこれだけ100人中何人見つかった。実際にアクションにつながったものが何例というactionableとアクションが取られたということの間にはギャップがあって、そこの部分がactionableという言葉だけを使っていると国民の人たちに誤解を生んでしまうのではないかなと思うので、そこのところはきちんとクリアに分かるようにしておくべきだと思います。先ほどの中釜先生の御説明は専門的で非常にクリアであるのですけれども、一般の人たちに分かるような言葉が必要かなと思いました。
以上、感想です。
○中釜委員長 重要な御指摘かと思いますので、ぜひAMEDでもそういう形での文言の整理と実際にアクションにつながったものを少し整理していただければと思います。よろしくお願いいたします。
ほかに御意見はございますか。よろしいでしょうか。
河野先生。
○河野参考人 参考人ですけれども、一言だけコメントさせてください。
今のactionable変異の中でお薬を投薬されたものが少ないということは、確かに実情としては確認検査の体制づくりなどももちろんありますし、あと、一番初めにスタートした症例などはある程度手術例を対象としていたので、まだ病的にそこまで進んでいないというような例もあると思います。ただ、今のA班の体制ですと、より進行がんですとか、それこそ微少病変などのチャレンジなども始まっていますので、薬が届いていくレートというのは今後は上がっていくのではないかと考えております。
○中釜委員長 説明ありがとうございます。
中村委員、宮野委員、よろしいでしょうか。
ぜひ症例を患者さんに返す、患者還元ができる症例を増やしていければと思います。
それでは、続きまして森正樹委員、お願いします。
○森(正)委員 ありがとうございます。
中村先生御指摘のように少し寂しい気はするのですけれども、逆に言えば、私自身はこれぐらいだろうなと。かなり少ないだろうなという感覚は持っていました。ですので、患者さん側はかなり期待しているのは現実としてあると思います。ですので、この辺を上手と言ったらあれですけれども、要するに、過度の期待がないけれども、でも、この研究にやはりきちんと参加したいというようなプロモーションというか、患者さん側にそういう伝え方をしていかないと、この検査をしても全然薬がないのではというような話になると非常に困る事態になると思いますので、その辺、特に配慮していただければなと思います。
以上です。
○中釜委員長 極めて重要な御指摘をありがとうございます。ぜひその方向で進めていただきたいと思います。
ほかに御意見はございますか。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
では、続きまして、議題(3)に移らせていただきます。議題(3)「全ゲノム解析等に係る厚生労働科学研究について(中間報告)」について、まずは患者還元WG長の河野参考人から説明をお願いいたします。
○河野参考人 国立がん研究センターの河野です。
患者還元WGについて報告させていただきたいと思います。
次をお願いいたします。
こちら、青塗りしている部分が今回の対応している部分になります。
次をお願いいたします。
こちらが先ほどの青色の部分をピックアップしたものでございます。特に2番に関しましては、準備室WGのほうでいろいろポリシーなどたたき台の準備を一緒にやらせていただいたというところで、こちらは省略いたしますが、1と3と4につきまして次からのスライドで説明をさせていただきたいと思います。
次をお願いいたします。
先ほどAMEDから公募の案などもございましたけれども、今回一番大きな論点かなと思っておりますが、医療機関を今後どういうふうに拡充していくかというようなところがございます。といいますのも、今までこの専門委員会の中では、やはりがんゲノム医療中核拠点病院等拠点病院を主体とした全ゲノムの還元体制ということで議論されてきました。ただ、下のほうの青色にありましたように、第10回の全ゲノムの専門委員会の中で、やはり出口戦略ということで臨床試験に参加するということから考えますと、どうしても症例集積から中核拠点(拠点)だけでは難しいというところで、連携病院等の確保も議論すべきというところになってまいりました。
そうしましたところ、今度は連携病院をいかに追加したらよいかということになろうかと思います。上のほうの赤字のところですけれども、やはり連携病院を加えるというところであっても、患者さんへの還元をきっちりと実現させるというところで医療者は習熟すべきということもありますし、また、ゲノム解析ということに基づいて臨床試験やそのほか治験など、そういうような実績を有しているところを重んずるべきと。こちらが連携病院を加える条件ではないかなと考えております。
そして、対策案として、一番下、オレンジ色のところですけれども、青字のところを修文いたしましてオレンジ色のようにしております。特に体制がきちんとできていること、そして、症例集積性を勘案するということで拠点や連携病院を加えていく。そして、エキスパートパネルを含めた適切な実施体制を構築するということが必要であると書かせていただきました。
また、今後、施設を追加していくときに、特に連携病院の実質体制等に関しては理由書を提出するなどとして、この施設が必要である、そして、体制がきちんとしているということを報告していただいて、それを患者還元WGが取りまとめて専門委員会で審議されるのがよいのではないかと考えております。
次をお願いいたします。
こちらはロングリードシークエンス、今年、令和4年度になってB班あるいはA班が行っているものであります。真ん中の赤字に書かせていただいておりますが、ロングリードシークエンスに関しては、もともと正常組織から30ギガ塩基以上、そして、腫瘍からは90ギガ塩基以上というような目標のデータ値を定めさせていただきました。
今回、ロングリードシークエンサーはPacBioという機械を用いて行うということが厚労あるいはAMED側から決定されまして、そして、AMED班のほうで実際にデータの取得に今向かっているのですけれども、補償ポリシーというのがありまして、30ギガ塩基は大体一ラン分ということになるのですが、企業の補償としては10%の公差、すなわち27ギガベースになってしまうこともありますというようなことであります。全てのサンプルに対して30ギガ確実に取得という要件としますと予算上非常に厳しくなってしまうというところがございまして、今回、PacBioでのデータ取得に関しては公差を許容するという文言を足してはどうかと考えております。
次をお願いいたします。
こちらはデータQCの体制で、先ほど厚労省からも説明していただきましたけれども、特に患者還元WGはQC3というところを担当したいと思っています。これは何かといいますと、まずはシークエンス受託企業あるいは解析班がゲノムリードデータをマッピングした後のQCのデータをきちんと集計するというところです。そして、今回、患者還元に進んでいくために避けては通れないところとしましては、まずはサンプルの取り違えあるいは腫瘍と正常のミスマッチ、このようなものがどのぐらい起きているのか。それがある程度特定の例えば医療施設や研究施設に偏ってしまうですとか、もしかすると検査企業によって偏ってしまうとか、そういうことがあるのかないのかということをきちんと検証したいと思います。また、同様に他者のDNAがコンタミしているというようなこともございますので、そういうものも確認させていただければと思います。
そして、この集計データ、この後それをどうするかというところもありますけれども、まずはこれを俯瞰して全体の品質というものを把握したいと思っております。
次のスライドをお願いします。
こちらはたびたびこの専門委員会でも議論に上がっているところなのですが、一つは電子的なICというものを行うためにどういう要件が必要であるか。既に全ゲノム解析等実行計画にこれだけのことが書かれております。現実にどういうところで電子的なICが導入されているかというような調査も進めております。いろいろな場面でいろいろなタイプのものが使われているということが分かってきました。今回、全ゲノムのこの事業の中では、どういうふうにこれを実際に導入していったらいいのかというところは、やはりこのWGだけではなくて専門的な検討班が必要ではないかと考えております。
以上です。長くなりましてすみません。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ただいまの説明に関して、何か御意見はありますでしょうか。
加えて、先ほどの資料2の説明で確認を忘れていたのですが、A班の角南班の中に東大病院を加えて進めていいかというところは承認を得るべきだったのですけれども、その点も含めて、何か御意見がありましたらと思います。特に東大病院を超えることに異議がなければ、その点はこのまま進めさせていただきたいと思います。併せて御意見をいただけばと思います。よろしくお願いします。
この中では、ロングリードで10%の公差をお認めいただければということも河野参考人から御意見としてありましたが、その点も含めて御意見をいただければと思います。
特にございませんでしょうか。
それでは、天野委員、お願いします。
○天野委員 ありがとうございます。
拡充するという方針自体に私は異議はございません。
1点お願いがございます。これはほかの既存の医療機関についてもなのですが、患者還元を行う医療機関ということになってくると、ゲノム医療の質の担保というのは当然非常にしっかりやっていただくべきですし、そうやっていただけるものと思っておりますが、その中で説明の水準というか、一定の説明の仕方が恐らく定型的になっている必要があると思っています。というのは、実際に従来の既存の遺伝子パネル検査の説明においても医療機関によって医師によって大分違っているという状況がありまして、丁寧に説明していただける病院医師もいらっしゃれば、全く時間がないということで、詳しくは自分でネットで調べてくださいと言われてそのままになってしまうという患者さんもいらっしゃる状況があります。一方で、そういう状況になる背景には当然医療現場は多忙であるという事情もあるかと思いますので、例えば何らかの資材であるとか、そういった定型的な一定の説明が担保できるような仕組みも併せて御検討いただければと願っております。
○中釜委員長 重要な御指摘ありがとうございます。
この点について、河野参考人、何か御発言はございますか。
○河野参考人 ありがとうございます。
例えばレポートに載せる解析結果の在り方とか、そういうものはA班とC班との話合いなども一緒に開催させていただいて議論をさせていただいているところです。ただ、実際に現場でレポートができた後、どういうふうに患者さんに説明するのかというところに関して私では理解が足りていませんので、同じWGの織田教授が今日出てくださっていますので、織田先生のほうから御意見をいただきたいと思います。
○織田参考人 参考人で織田と申します。よろしくお願いいたします。
重要な御指摘ありがとうございます。
今回、こちらの7ページの修正文にも少し記載させていただいております。実際に患者還元を行う現場の医師、これは中核も拠点も連携も主治医がメインになるわけですけれども、特に連携病院の場合に臨床研究等に参加している主治医が本当にゲノム医療に精通しているのかというところが少し懸念としてあるかと思いました。ただ、連携病院にももちろんこちらの拡充方法にも記載されていますとおり、がんゲノム医療に習熟した医療者というのは当然いるわけですので、そうすると、がんゲノム医療に習熟した医療者と臨床研究等で全ゲノム解析に関わる連携病院の主治医の連携が非常に重要になるだろうと考えております。
したがいまして、資材を整えるという部分に加えて、施設内で十分密な連携の下で、実際に患者さんに説明をする医師が適切にゲノムに習熟した後、患者還元を一定の水準以上で実施することが求められます。資材を適切に活用した上で、それぞれの患者さんに適切な形で結果を説明する仕組みを整える必要があるかと思います。また、そういった体制が本当に担保されているのかどうかというところを理由書等、基になる中核拠点、拠点から提出していただき、それをこちらの専門委員会でも御報告、御確認いただく。そういった流れで、どの患者さんに対しても適切な形で還元が行われるようにということを担保していければと考えております。
○中釜委員長 天野委員、今の説明でよろしいでしょうか。
○天野委員 ありがとうございます。適切な説明並びに現場の負担軽減も併せて進めていただければと願っております。ありがとうございました。
○中釜委員長 それでは、続きまして中村委員、お願いいたします。
○中村委員 簡単に。e-コンセントに関してはいろいろなところでやられていますし、例えば成育医療センターでは生体肝移植の際の説明に人工知能アバターを使うというようなこともされているので、ぜひ参考にしていただければと思います。これはコメントです。
それから、ロングリードの要件のところですけれども、ロングリードのシークエンサーというのは日進月歩でいろいろな技術が出てきていると思うのですが、研究として競争をやっていただければいいのではないかと個人的には思っているのですけれども、ここで要件を決めないといけない理由というのは何かあるのでしょうか。
○中釜委員長 今の点について、河野参考人、お願いいたします。
○河野参考人 確かに研究競争で進めるというところ、特に新しい技術の場合には非常に大事だと思います。私、個人的には非常に大賛成な意見であります。
一方で、このWGとして言われておりますのは、同じショートリードのシークエンスのデータを取った症例の一部において、ロングリードシークエンサーについても均質な条件でデータを残す。そのような要件を考えていただきたいというような厚労省からの御意見もございまして、このような要件を今回挙げております。
○中村委員 もともとこの委員会のミッションというのはゲノム医療を社会に実装化するというところで、最初のほうの議論で、ロングリードに関してはまだまだ研究的な要素なので、AMEDでやっていろいろな技術を比較すればいいのではないかという話だったと思うのですけれども、いろいろな技術を検証してみて、どれが本当に正確なのか。技術もどんどん進んでくるので、今要件を決めても来年になるとどうなっているか分からないようなぐらいすごく技術が進んできているので、やはり研究的な要素としてロングリードのいろいろな技術を比較するということは現時点では大事だと思いますので、そこはぜひ御検討いただきたいと思います。
○中釜委員長 重要な御指摘ありがとうございます。
河野参考人、よろしいでしょうか。
○河野参考人 はい。ありがとうございます。
○中釜委員長 先生御指摘のように、研究によって技術をかなり高度化し、さらに精緻化し、患者還元の精度を上げていくというところで両方が一体化して進む必要があるのだろうと改めて理解しました。ありがとうございます。
ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、承認を得る必要があった先ほどのA班角南班に東大病院を含める点と、今のロングリードの10%公差を含めて御了承いただいたと理解してよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○中釜委員長 ありがとうございます。
それでは、続きまして解析・データセンターWG長の井元参考人から説明をお願いいたします。
○井元参考人 井元でございます。
解析・データセンターWGの活動について、中間報告として報告させていただきます。
次のスライドをお願いいたします。
先ほど河野先生からも紹介がありましたとおり、品質基準、QC1、QC2、そして中釜班のQC3ですが、本日はQC1とQC2の結果について中間報告をさせていただきます。
まず、このスライドは、中釜班にてシークエンスデータの品質基準を定めた表になっています。この表に従って受け取ったシークエンスデータの品質を確認するというプロセスになります。
次のスライドをお願いいたします。
まず、QC1は受託企業で実施されるQCになります。このテーブルは先ほどのスライドから受託企業が行うQCについてのみを切り出したものになります。赤字の部分はロングリードデータに対するQCですので、ここでは取り扱いません。
QCIでは、2項目確認します。上の項目がQV30/20以上の塩基の割合になります。基準値としてはQV30以上の塩基の割合が75%以上であること、QV20以上の塩基が90%以上であることという基準を設けています。これに対しまして、解析班で受け取った約9,000症例、1症例が正常検体と腫瘍検体の2つの検体を持っているということになります。正常検体(N)では99.4%、腫瘍検体(T)では99.5%の検体がQV30/20の基準を満たしていることになります。
2番目項目である重複リードを除去した後の塩基数については、正常検体は90ギガ塩基以上、腫瘍検体が360ギガ塩基以上が基準です。これは、正常で30x以上、腫瘍は120x以上の読み取り深度であることに相当します。この項目に対しまして、正常検体では99.3%以上の検体がパスしていて、腫瘍検体は97.4%の検体がパスしている状況でございます。腫瘍検体のほうが若干低いパーセントになっております。これは主にタグメンテーションを行ってシークエンスしたデータだということを認識しております。また詳しくはそれぞれの検体を確認していくことになると考えています。
次をお願いいたします。
先ほどのQC1は、受託企業で実施するQCでした。データを受け取り、解析班にて解析を行うとBAMファイルというファイルが得られます。BAMファイルとは、リファレンスゲノムにシークエンスデータをアライメントした後のデータとなります。重複リードや、その他シークエンスエラーなどが原因でマッピングされないリードも全て検出することができますので、より正確なデータの品質確認となります。
確認する項目としては、全体で5つの項目があります。それぞれについて簡単に結果を説明していきたいと思います。
次のスライドをお願いいたします。
これは、マップ率に関する結果になります。マップ率とは、得られたシークエンスリードの何%がヒトリファレンスゲノムにアライメントできたかという割合になります。正常検体、腫瘍検体、それぞれのマップ率を箱ひげ図で表しています。ほとんどの検体において99%以上のリードはリファレンスゲノムにアライメントされます。
一方、正常検体で99%以下のマップ率であった検体が6.8%ございました。これらの検体については、実際にアライメントされなかったリードがなぜアライメントされなかったのか、その原因を確認する作業を行っているというところになります。
腫瘍検体については全ての検体が99%以上のマップ率であったというところは非常によかったということになります。
次をお願いいたします。
次は重複率です。先ほど説明しましたQC1でも「重複を排除し」と書かれていましたが、QC1では、全部のリードから重複率を計算しているのではなくサンプリングによって重複率を見積もっています。従って、このスライドのデータが正確な重複率となります。重複率については、中央値で14.5%、正常で14.5%、腫瘍で15%ですので、普通にあり得る重複率となりますが、受託会社によって傾向が見られます。つまり、重複率が低い傾向にある受託会社、重複率がある程度高い傾向にある受託会社があります。重複率が高くなりましてもクオリティーに関してそれほど悪影響はないことが多いです。一方、重複率が高くなってしまいますと、塩基数の基準を満たすためにはその分多くのシークエンスリードを取得しなければいけません。従って、その余裕分を持ってデータを取得してデータセンターに送るわけですので、その分データサイズは大きくなり、データの転送コストがかかることになります。重複率が高い検体、特に30%以上の検体については、先ほどのマップ率と合わせて評価していく必要があります。
次をお願いいたします。
インサート長というのは、配列を読み取っているDNAフラグメントの長さになります。今回は両端から150塩基ずつ読んでいますので、300塩基のDNAフラグメントですと左右から読んでちょうど全部読めることになります。逆に、200塩基しかないDNAフラグメントですと100塩基がオーバーラップするわけです。今回の結果では中央値で大体400塩基ですので、プロトコルの基準となるサイズになっていると思います。
一方、最小値としては腫瘍検体で若干短いフラグメントがあります。短いフラグメントが特定の受託会社に偏っていないか、特定の処理をされた検体ではないか、そのようなことを確認することになります。
次をお願いいたします。
次は読み取りの深度です。先ほどのQC1で塩基数の基準で30x以上、120x以上を満たしているかというお話をさせていただきました。今回、こちらのQC2のほうでは、リファレンスゲノムにアライメントを行い、アライメントされたシークエンスリードを用いた読み取り深度となります。すなわち、こちらの数字が実際の解析に用いることの出来るデータ数を表していることになります。リファレンスゲノムにアライメントされないシークエンスリードもそれなりの数が出てきますので、先ほどのQC1の結果より若干ながら読み取り深度は低くなりがちになります。
ここで、どのような検体に注目すべきかですが、例えば、正常検体の最小値は6.2 xの検体があります。この検体はQCIでは30x近くあったわけなので、マップ率が低かったものと考えられます。このような検体の保存状態がどうだったのか、処理のプロトコルや実際にアライメントされなかったリードはどのような配列なのか、詳しく調べる必要がございます。
一方、このようなアライメント後に1桁台の読み取り深度になってしまうような検体は、今回お示ししている、3,600症例中3検体ございました。
次をお願いいたします。
他者ゲノムの混入になります。ここでは正常検体と腫瘍検体のマッチ/アンマッチをNGSCheckMateというツールを使って検討しております。このスライドでは、5,072症例の検討結果を示しておりまして、44症例でNとTがマッチしないという判定になりました。マッチするか否かは、SNPのパターンを見ていると思っていただければ結構です。実際にはSNPにおけるバリアントリードの頻度を勘案していますので、他者ゲノムの混入も考慮しています。アンマッチの割合ですけれども、約0.87%になります。
本事業の解析症例は、バイオバンクでの保存検体も多く含まれていると認識しています。また、血液腫瘍における骨髄移植例も考慮しなければなりません。それを踏まえると、0.87%という数字については、それほど高い割合ではないと考えております。一方、前向き症例と既存症例でこの差があるのかというところは注意して見ておかなくてはいけないところだと認識しています。
次のスライドをお願いいたします。
QC1とQC2について、それぞれの項目の結果の概要を説明させていただきましたが、中釜班で実施されるQC3に関しましては、特にQC2の各項目について、全体の分布を考慮して詳細に品質を検討するべき検体を抽出することが最初の作業となります。その後、抽出された注目すべき検体について、特定のがん種や受託会社、解析プロトコルに偏っていないか調査することになります。
ここまでが解析・データセンターWGの説明となります。もう一点、先ほど中村委員からクラウドの比較検討とは一体何かという御質問がございました。私の方からクラウドの比較検討について、その内容を簡単に説明させていただきます。
クラウドに関しましては、お金をかければかけるだけ高性能な環境が手に入るということは事実だと思います。一方、資金は有限でありますし、統一パイプラインで解析するのは現在は、ショートリードで読まれた全ゲノムシークエンスデータ、RNAシークエンスデータとなります。統一パイプラインは幅広な解析ツール群で構成されますが、決まった解析ツールを用いて解析するわけですので、スピード面、コスト面のバランスを取り、現在のオンプレミスのシステムからクラウドに解析環境を移していくことになります。その際には、例えば各クラウドでHPC向けの環境も提供状況が異なります。また、統一パイプラインでの解析にどこまで高性能なHPC向けの環境が必要なのかというところも検討事項ですし、使いたいサービスの日本での提供状況についても調査を行いつつ進めております。また、ストレージシステムについても、どこにどのようなスペックのストレージを置くのか、これはデータ解析のボトルネックになってくる可能性が高いですので、これからに評価を行っていく予定です。
今年度は全体構成の中の一部、入り口のところを評価している段階にあります。現在は、オンプレミスのシステムを用いて解析を行っておりますが、それをスムーズにスケーラブルなクラウドに移行し、持続可能なように高いメンテナンス性を有し、かつしっかりとしたセキュリティ対策を行えるシステムを目指して比較検討を行っております。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの解析・データセンターワーキングの説明につきまして、御質問、御意見はございますでしょうか。
中村委員、お願いいたします。
○中村委員 クオリティーはそこそこだったと思いますので、クオリティーに満たないとどうするのか、本当は先にルールを決めておくべきだったと思うのですけれども、これからの課題として絶対に必要だと思います。また、マッピングが悪いのはどうしてなのかというのはすごく大事なので、そこはぜひ検証していただければと思います。
それから、クラウドの件なのですけれども、3社を比較するという話でしたが、現実的には非常に難しくて、うちは安く預かりますよという会社も来られますけれども、結局、データを引き出すときに非常に高くて、気づいたらすごく課金されるというようなこともあると思いますので、セキュリティーも併せて、そこはこれからどんなクラウドシステムを使っていくのかというのは配慮すべきだと思いますので、よろしくお願いします。
それから、やはり井元先生サイドに立つと、情報解析はサーバーの件も含めてすごくお金がかかると思うのですけれども、そこを積算していかないと結局どこかで行き詰まってしまうので、実施組織も含めて、どんな形でどんな情報を集めて、それにはどんな設備が必要なのかというのはここまで来ると不可避だと思います。情報のコストというのをやはりちゃんと考えて、持続可能な情報解析システムというのは必要だと思いますので、ぜひ検討していただきたいと思います。
以上、コメントです。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございました。
井元先生、現時点では何かよろしいでしょうか。
○井元参考人 ありがとうございます。そのとおりでございます。
○中釜委員長 ありがとうございます。
ほかに御意見、御質問はございますか。よろしいですか。
非常に大きな作業を伴うことを担当していただいていて、今日御指摘いただいた点も含めてこれからさらに精緻化していっていただきたいと思います。
よろしいでしょうか。
それでは、続きましてELSI WG長の横野参考人に説明をお願いいたします。
○横野参考人 早稲田大学の横野よりELSI WGについて御報告申し上げます。
次をお願いいたします。
こちらのブルーの着色をしている部分が、検討事項のうち関連する部分となります。
次をお願いいたします。
ELSI WGでは外部有識者を含むWGとしての会議を定期的に開催しています。これまでに3回開催し、方針の検討を行いました。また、必要に応じて、主に文献でですけれども、国内外の関連動向についての調査を行っています。
検討事項のうち、ICFに関しては、モデル法案について今年度の前半にAMED研究班の先生方からフィードバックを得たほか、今年度後半に実際に説明の実務を担当している方を対象として、より具体的な課題を把握するための調査を行いたいと考えています。また、難病領域でもICFの検討が行われていると伺っていますので、そちらとの整合ということも考えて、今後のモデル文案の改訂、見直しについて検討を進めていきたいと思っております。
次に、情報発信の在り方ですが、こちらに関しては準備室WG発足以降、難病とがんの会議というものを難病WGのほうで準備をしていただいて開催してきております。そこでこれまで主にウェブサイトをはじめとした情報発信の在り方について検討してまいりました。今年度はまだ実施組織あるいは準備室も発足していない状況ですので、準備室WGとして体制班の取組を紹介するためのウェブページを作成・公開するという形で進めております。
その中で、ELSI及びPPIに関する取組ということで、一部分を患者・市民の皆様向けのページということで、現在の時点では本事業におけるELSI・PPIに関する取組ですとか、全ゲノム解析等実行計画の概要についての紹介という簡単な内容になっておりますが、今後、必要に応じてこのウェブサイトから情報提供をしていけるようにしていきたいと思います。
また、今後、準備室が発足し、また、それを引き継ぐ形で事業実施組織が発足した後のウェブサイトの在り方について、コンテンツだけではなく管理体制も含め、引き続き検討を進めているところです。
次のページをお願いいたします。
PPIについては、パイロット的な形でPPIのイベントを行っています。一つは、この全ゲノム解析等に係る課題も検討しておられます厚労科研の小杉班、それから、難病の水澤班と共催で、9月に、小杉班のほうでこれまで何回か開催実績のあるゲノム交流会という企画の場をお借りして、ゲノム情報による社会的不利益や差別の問題について考えていただく場を設けました。一般の方から参加を募って、スモールグループディスカッションを実施しています。かなり活発な意見交換が行われておりまして、また今後も同様の企画を開催してほしいといった感想もいただいております。一方で、参加者の募集ですとか議論進め方等に関しては、今後のPPI活動を行う上での課題も把握できたと考えております。
また、今後は、国立がん研究センターのほうに10年以上前から設置されております患者・市民パネルというものがございます。こちらで定期的に開催されている患者・市民パネル検討会の場をお借りして、この研究班と共同で全ゲノム及びゲノム研究、ゲノム医療に係るPPIの在り方について、多くの方の御意見を伺いながら検討していくイベントを企画しているところです。
次をお願いいたします。
3点目として、結果還元の在り方です。これまでも今回この点に関する御議論が幾つかあったと思いますが、実行計画2022の中で患者還元を行う医療機関の要件としてELSIへの対応ということも含まれております。患者還元の実装に当たり、ELSIについての課題の把握、対応体制の整備ということが重要になってくると思われます。前半のお話でありましたように、既に677例についてエキスパートパネルでの症例検討が行われているということがありますので、その蓄積を基にして課題の把握というものを行っていく段階になってきているように思われます。
ELSI WGでは、外部有識者の先生から、本事業におけるエキスパートまでの運用実態や、それを踏まえた上でのELSI面での課題を把握する時期に来ているのではないかという御指摘もいただいています。
また、今後、医療機関が拡充されるという話が出ておりましたが、今までの実績を基に今後医療機関が拡充された場合に、スムーズにそこでの患者還元が実施できるように、ELSI面も含めた適切な患者還元体制の構築についての検討を行っていく必要があると思われます。これはELSI WGだけではなく、患者還元WG等と協力しながら行っていくと考えております。
現時点では今後の検討の進め方についてのみ検討している段階ですが、現在、これまでの実際の患者還元の実績に基づいて課題を把握する、それに基づく対応方針を検討するということが必要かと考えております。患者還元の体制もA体制、B体制とありますし、先ほど造血器腫瘍についても導入するという話がありましたが、がん種によって課題が異なる面もあるかと思います。
また、先ほど天野委員からも御指摘がありましたけれども、既にがんゲノムプロファイリング検査に関しては一定実績があり、そこでの課題等も指摘されていますので、それと比較しながら検討していくということが有益なのではないかなと考えております。エキスパートパネルを介した患者還元の体制について、これまでの実績に基づく情報提供の在り方ですとか、あるいはレポートの在り方、そのフォローアップの在り方についてELSI面での検討を進めていく必要があると考えています。
これまでの実績に基づく検討を行って、今後、医療機関が活性化されることによって機関ごとの体制や環境がこれまでよりも多様になってくると思われますので、そういった中でできるだけ標準化した形で患者管理を適切に行う上での必要な検討を行い、その成果の共有や支援を行う枠組みの構築に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。
ELSI WGからは以上です。
○中釜委員長 説明ありがとうございました。
ただいまのELSI WGからの説明に関して何か御質問、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
少し当初の予定の時間を過ぎましたが、あと15分ほどいただきまして、残りの部分を説明させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、続きまして準備室WGの青木参考人から説明をお願いいたします。
○青木参考人 準備室WGの国立がん研究センター研究所の青木です。
準備室WGの中間報告をいたします。
スライドをお願いいたします。
これは、赤で示した部分が準備室WGで現在検討しているところになります。
次をお願いいたします。
これが全体のまとめとなりまして、現在、厚労省のイノベーション推進室とともにがんと難病で連携して検討を進めております。利活用推進の仕組みの構築に関しましては、データ利活用を開始するという目的のためにポリシー案、利活用審査委員会の設置・運用規定案を患者還元WGと連携して作っており、先生方にコメント等をいただいておりますので、その対応をしているといったところです。また、事業実施組織あるいは準備室でのデータ利活用システムの検討など行ってもおります。
準備室発足に係る事項の検討に関しましては、11月半ばから準備室発足や利活用の仕組みの構築、全体のプランを作成するたに大型の総合調整コンサルを委託することにしております。それまで、9月の段階では、事業実施組織に係る論点整理・マスタープラン案を作成いたしました。
それから、PPIの推進に関しましては、先ほど横野WG長から御説明がありましたが、ELSI WGと連携してウェブサイトを医療研究連携推進本部(JH)のホームページに作成いたしております。
また、ELSI・PPIに関しまして、がんと難病の間で合同の班会議を開いておりまして、情報発信の在り方、PPIのスキームなどを検討しております。
次をお願いいたします。
これはマスタープランを作成するに当たっての検討すべき論点といったもので、大論点としては、オールジャパンでの全ゲノム計画を推進するためにどのような事業実施組織を構築するか。そして、そのためには、中論点として、検討すべき内容は何か。そして、他のWGでの検討内容をどのように取り込むか。このことから検討してまいりました。
次をお願いいたします。
これはマスタープランとなりますけれども、令和7年度の事業実施組織の設立に向けて、本年度は令和7年度の組織設立を目指した計画を作成し、令和5年度に利活用を試行しつつ計画をブラッシュアップする。令和6年度に事業実施組織設立に向けた実務的な準備や実施を行うということとなっております。
そして、具体的には、例えば準備室あるいは準備室WGでは、令和4年度に事業実施組織設立に向けたグランドデザインを作成して、その計画を詳細化、具体化していく。あるいは利活用や患者還元の計画を作成し、産業/アカデミアフォーラムの運営方法を決め、その運営を支援していく。解析・データセンターに関しましても、現在の解析・データセンターに関する検討事項に関して将来的に事業実施組織への移行計画を立てていく。人材育成やELSI・PPIに関しましても計画を立てて実行していく。このような計画となっております。
次をお願いいたします。
次はこの令和4年度に実際に行うべきタスクということで、全体としては事業実施組織設立に向けたグランドデザインを作成する。利活用・患者還元に関してはモデルを整理して計画を立てる。産業/アカデミアフォーラムの運営方法の在り方を検討するなどがあります。
次をお願いいたします。
解析・データセンターに関しましては、現状での検討のアセスメントを行って、将来のシステムへの移行計画を立てる。運用ルールを整備する。人材育成に関してもその計画を立てる、ELSI・PPIに関してもその実行計画を立てるとともに、また、できれば患者・市民の意識調査も行えればと思っております。
スライドをお願いいたします。
それから、先ほど申しましたが、JHのホームページに全ゲノム解析等実行計画の推進についてということで、準備室WGの取組という形で情報発信の場を作らせていただきました。概要と患者・市民の皆様向けのページとなっております。
次をお願いいたします。
概要に関しては、まだ本当に限られた情報でありますが、事業全体の概要などを示しております。また、先ほど横野先生から示していただきましたように、患者・市民の方向けのページでも情報発信を始めております。
スライドをお願いいたします。
このような形で、ELSI・PPIに関しましては、がんと難病側で情報共有、意見調整、あるいは情報発信の在り方の検討、そして、ELSI・PPIの部門構築に向けた検討を行うために、合同会議を月1回開かせていただいております。これまでは、先生方は、ウェブサイトの作成に非常に関心が高いので、ウェブサイトの目的や方針などを定め、ロードマップを作成し、管理・運営体制をどのようにするかというようなことを現在検討しているといったところでありまして、今後はELSI・PPI部門を将来事業実施組織に設立するに当たっての論点整理なども行ってまいります。
簡単ですが、以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの準備室ワーキンググループの説明に関して、何か御質問、御意見はございますでしょうか。
栗原委員、お願いします。
○栗原委員 時間を過ぎてすみません。
準備室WGだけの問題ではないのですが、全体を通して、先ほど患者還元WGで医療機関の拡充というのがありまして、医療機関の審査承認をこの専門委員会が年1回実施して、医療機関として要件を満たしているかどうかを審査していくというような書き振りがありました。それに関連して、医療機関が何を満たすべきかについては、ELSIなどの観点や、あるいは患者に対しての説明がきちんと行われているかといった観点も見ていくポイントだろうと思います。
そうすると、そういったことが、今、準備室もありませんし、ましてや実施組織もない中では、この専門委員会がやっていくのかどうかということと、仮に実施組織ができた場合には、医療機関の審査も実施組織の役割の中に入っていくのかどうかということについてどう考えたらいいのかと思いましたので、何か考えていらっしゃることがあったら教えていただきたいと思います。
○中釜委員長 ありがとうございます。
2点です。まず最初に、ELSIに関する妥当性、適正なフォローアップに関してどのような体制を取るのかということについて、青木先生、いかがでしょうか。
○青木参考人 将来的に令和7年度から事業実施組織が設立してまいりますので、そこではELSIに関する妥当性といった点に関しても検討して審査できるような体制をつくっていきたいと思っております。最終的に医療機関を認定するかどうかというのは、事業実施組織で認定するのか、あるいは現在のように専門委員会のほうで認定していただくのかということに関しても、まだこれから検討していかなくてはいけないところかと思います。
○中釜委員長 よろしいですか。
2点目の医療機関の拡充に関しては、厚労省としては現時点で御意見はございますか。
○増田課長補佐 ありがとうございます。
2点目につきましては、今回の専門委員会において、ゲノム医療連携病院を追加する場合の方法について患者還元WGから御提案いただいたという認識でおります。
実際にどのように評価や承認を行っていくかという細かな部分については、まさにこれから検討すべき点かと思いますので、いただいた御意見を踏まえて、患者還元WGとも連携しながら検討してまいりたいと思います。
○中釜委員長 栗原委員、今の回答でよろしいでしょうか。
○栗原委員 ありがとうございます。
データだけではなくて、医療機関の体制の審査ということですので、そこに対してもきちんと専門性あるリソースが必要だと思いましたので、よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 ほかはよろしいでしょうか。
1点だけ青木参考人に質問ですけれども、先ほど葛西参考人から指摘されておりましたシステムの点に関する検討、体制強化に関しても準備室の中で枠組みを議論するという理解でよろしいですか。
○青木参考人 そうです。現在はAMEDのC班が中心になって検討していただいているところですけれども、いずれ令和7年度からの事業実施組織のシステムなどに移行していくということですので、準備室の段階から一緒に検討させていただいて、事業を実施するときにはきちんとそのようなこともできるような体制にしていきたいと思っております。
○中釜委員長 ありがとうございます。
ほかに御意見、御質問はございますか。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
最後に全体を通して何か追加での御発言、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
それでは、以上で本委員会を終了したいと思います。本日は非常に貴重な御意見を幾つもいただいたと思いますので、もしまた追加でありましたら適宜事務局までお寄せください。
本日、委員の皆様にはスムーズな議事進行に御協力いただき、誠にありがとうございました。
それでは、事務局、お願いいたします。
○原澤推進官 事務局でございます。
次回の専門委員会につきましては、日程調整につき、事務担当よりまた御連絡させていただきますので、委員の皆様方におかれましては、御回答のほど、よろしくお願い申し上げます。
それでは、以上をもちまして本日の会議を終了したいと思います。どうもありがとうございました。