第49回 社会保障審議会生活保護基準部会議事録

日時

令和4年11月2日(水) 15:00~17:30

場所

AP虎ノ門11階C+D室(オンライン)
(東京都港区西新橋1-6-15NS虎ノ門ビル)

出席者(五十音順)

議題

  • 生活扶助基準の体系の検証について
  • 生活扶助基準の水準と消費実態との比較検証について
  • 新たな検証手法に関する検討について
  • その他

議事

(議事録)
■小塩部会長 それでは、始めます。定刻になりましたので、ただいまから、第49回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
事務局より、本日の委員の出欠状況と資料の確認をお願いいたします。それと同時に、オンラインで出席されている委員の方がいらっしゃいますので、会議での発言方法等についても改めて御説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 まず、本日の委員の出欠状況でございますが、全ての委員に御出席をいただいております。
傍聴につきましては、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、本日は一般の方の傍聴は御遠慮いただいており、報道機関の方のみの傍聴としております。
議事録につきましては、後日、ホームページに掲載をいたしますので、御承知おき願います。
次に、本日の資料でございます。
議事次第に続きまして、資料1「生活扶助基準の体系の検証についての補足等」。
資料2「夫婦子1人世帯における生活扶助基準の消費水準との比較検証」。
資料3「新たな検証手法に関する検討」。
参考資料1「被保護者調査(概数)の結果(令和4年8月分)」。
参考資料2「生活扶助基準の体系の検証(第48回資料1)」。
参考資料3-1「MIS手法による最低生活費の試算に関する調査研究事業について(第41回資料1-2)」。
参考資料3-2「主観的最低生活費の試算に関する調査研究事業について(第41回資料1-3)」。
参考資料4「平成29年検証結果の反映状況(委員依頼資料)」となっています。
資料の不足等がございましたら事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。
会議の進行に当たりましては、お手元の資料を御覧になりながら御参加いただければと思いますが、事務局からの資料説明の際には、Zoomの画面上にも資料を表示するようにいたします。
また、会議中、発言を希望される際は、カメラに向かって挙手をお願いいたします。
部会長の指名を受けた後、マイクのミュートを解除して御発言いただき、御発言終了後は、再度マイクのミュートをお願いいたします。
それでは、これからの議事運営につきましては、小塩部会長にお願いしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
■小塩部会長 分かりました。
それでは、カメラ撮影の方はいらっしゃいますでしょうか。いらっしゃらない。
それでは、議事に入りますが、本日は3つの議事を終えた後、事務局からの報告として参考資料4についても説明がございます。まずは本日の議事に関連する資料について事務局から説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料1「生活扶助基準の体系の検証についての補足等」について御説明いたします。こちらの資料は前回、第48回部会の議論を受けまして、その補足となる資料をまとめておりますほか、2019年全国家計構造調査の取扱いに関して確認することとしていた事項の確認結果を掲載しています。
1ページからが前回、第48回部会で議論になりました回帰分析の説明変数等に関する内容となります。
2ページです。(1)としまして年収に関する説明変数についてになります。こちらにつきましては、前回、第48回部会において山田委員から、貧しさの度合いをそろえて分析するために前回の検証作業と同様に年収をコントロールすべきという御意見があったところです。また、宇南山委員からは、第1・十分位の抽出によって必ずしも厚生水準が揃えられている保証はないが、年収に関する説明変数を入れると等価尺度を調整する効果が人数別の係数に足されたり引かれたりしてしまって大きな影響が出るので、年収に関する説明変数は入れないほうがよいという御意見があったところです。これに関しましての補足資料となります。
ページの右側の表は前回、第48回部会の資料でもお示ししていた数字になりますが、従前の方法では回帰式A、B、Cと複数の回帰分析を行っているところ、回帰式によって世帯年収を世帯当たりとするか、世帯員1人当たりとするかなど、用いる等価尺度に違いがあるというところです。各回帰分析の結果として、第1類については回帰式Aでは年齢階級によって違いがあるものの、各年齢階級の人数についての係数は0.3~0.4程度となっている一方で、回帰式Cでは世帯人員数の係数が0.549となっており、回帰式Aのいずれの年齢階級の係数よりも高い係数となっています。また、世帯人員数の2乗の係数については、回帰式Aではマイナス0.029、回帰式Cではマイナス0.041となっています。
右側の第2類では回帰式B、Cのいずれにも説明変数として世帯人員数と世帯人員数の2乗が設定されていますので、直接的に見比べることができますけれども、それぞれの係数で1.5倍程度の違いが見られるところです。
これを踏まえまして、左側の枠内になりますが、このように年収に関する説明変数の設定については、従前の方法による回帰分析結果を見てもどういった等価尺度を用いるかによって世帯人員数に係る係数に一定程度の違いが生じます。米書きにありますように、例えば第1類の18~64歳の3人世帯の単身世帯に対する較差指数を回帰式Aと回帰式Cの係数から算出いたしますと、回帰式Aでは1.74、回帰式Cでは2.15となります。この違いについては、宇南山委員から御指摘がありましたが、2つ目のマルにありますように、等価尺度の調整自体が世帯人員数に関する説明変数の係数に直接的に影響することによるものとなります。
米書きに計算式を記載していますけれども、ある正解の等価尺度、t乗が仮にあったとすると、単に世帯年収の対数を説明変数としてしまうと、世帯人員数の対数のt倍だけ世帯人員数の説明変数の係数に影響を与える操作が含まれていることになります。特に今回の議論を踏まえた方法では、世帯人員別にダミー変数を設定しているので、これらの関係式からも分かるように、より直接的な影響が生じることとなります。
このため、3点目のマルに記載していますけれども、山田委員から御意見がありました年収の程度を説明変数として考慮することについては、当然考え方として否定されるものではありませんが、仮に入れる場合にはどういった等価尺度を用いるかの判断があることが前提となります。この点は8月の第46回部会において議論を経て部会長から発言がありましたように、もとより等価尺度について何が正解かを決めることは難しいものであり、そうした議論もあって、9月の第47回部会では、部会長から世帯人員別の年収階級により対象範囲を設定する旨の方針が示され、それに従って算出作業を行ってきたところです。
こうした議論との整合性も考慮し、部会長からも係数の考え方が違うことになってしまうので慎重にという御指摘もありましたので、年収に関する説明変数は設定しないこととしています。この点、分析に関する補足として御理解をいただければと存じます。
続きまして、3ページです。(2)といたしまして家賃・住宅ローンに関する説明変数についてとなります。こちらは前回、第48回部会において山田委員から、持ち家の有無や住宅ローン支払いの有無だけではなく、持ち家でない世帯では家賃の金額、また住宅ローンがある場合でもその金額を考慮すべきという趣旨の御意見がありましたので、その影響程度について確認を行ったものとなります。表中の手法(1)が今回の議論を踏まえた方法になりますが、これを基本としまして、家賃・地代支出額の対数を説明変数として設定した場合を手法(2)として、住宅ローンの額の程度として土地家屋借金返済額の対数を説明変数として設定した場合を手法(3)として結果を示しています。いずれの場合においても世帯人員数、年齢階級、級地に関する説明変数の係数の結果にはほとんど影響がないことを確認しています。
なお、参考につきましては、山田委員から従前の方法の説明変数を用いた場合の結果を確認したい旨の御依頼がありましたので、住居・資産に関する説明変数として持ち家ダミーと住宅ローン支払いダミーを除外し、従前の方法と同様に家賃・地代支出の対数とネット資産額を設定した場合の結果をお示ししたものとなります。この場合、手法(1)との比較において家賃や住宅ローンの支払い金額の程度のみではなく、変数の設定方法による違いもある点に御留意をいただければと思います。
続きまして、4ページです。(3)年齢別較差指数の差異についてです。第1類の年齢別較差指数については、今回の議論を踏まえた方法で算出した指数が従前の方法で算出した場合の結果と一定程度の差異が生じていることが前回の第48回部会で一つの議論となったところです。そのため、その要因について補足的に確認をしたものとなります。
こちらの表にありますように、従前の方法を手法マル1として、手法マル2、手法マル3と順に回帰分析の設定内容を変えていき、手法マル4が今回の議論を踏まえた方法となります。
その結果が右側のグラフとなりますが、年収、資産、住居に関する変数を変更した手法マル1と手法マル2の間ではほとんど結果の違いが見られない一方で、特に結果の違いが見られたのは手法マル3と手法マル4の間で、これは説明変数として年齢階級別の構成割合と世帯人員ダミーを設定した点になりますので、これが特に結果の違いに影響したものと見られるところです。
5ページです。こちらは4ページからの続きとなりまして、右側の表が手法1から手法4までの各回帰分析の結果の係数とその有意性を示しています。この結果表を見ますと、年齢階級別の人数を説明変数として用いる手法マル1、マル2、マル3はいずれも係数が有意になりますが、年齢構成割合を用いる手法マル4では多くの年齢階級の構成割合の係数が有意ではない結果となります。
これを踏まえ、左側の枠内になりますが、前回の第48回部会でも議論がありましたように、今回の議論を踏まえた方法では、年齢に関する説明変数の係数が有意でない部分が多く生じていますが、これは宇南山委員から御指摘があったように、年齢階級別の説明変数の設定方法として、従前の方法では年齢階級別の人数を説明変数としていたことから、一つの変数が年齢の違いによる効果と人数の違いによる効果を持っていた一方で、今回の議論を踏まえた方法では、年齢階級別の構成割合を説明変数として年齢の違いによる効果のみを切り分けて設定していることによるものと考えられます。
米書きにありますように、これは同時に従前の方法では人数の違いによる効果もあり、係数が有意となっていることが考えられますが、この場合、年齢別の差自体が有意かどうかを示すものではないということについて御留意をいただければと存じます。
6ページからは年齢別較差指数の算出構造の確認となります。これは前回、第48回部会において宇南山委員から御提案がありました仮想的なデータを使った計算構造の確認になります。
7ページです。まず(1)確認内容についてです。今回の議論を踏まえて算出した消費実態の較差指数のうち、特に第1類の年齢別較差指数については、従前の方法で算出した場合の結果との差異が見られました。このため、今回の議論を踏まえた算出方法と従前の算出方法の2つの算出方法について統計的な性質として一致性を持った推計方法であるかという点について、第1類の年齢別較差指数について確認を行いました。
具体的には、前回の部会で御提案がありましたように、2019年全国家計構造調査のデータのうち、第1類相当支出に代えて、あらかじめ設定した較差指数により個々の世帯属性に応じて指数(支出額)を算出して代入したものをテストデータとして用いまして、今回の議論を踏まえた算出方法と従前の算出方法のそれぞれにより年齢別較差指数の算出を行ってみて、算出した較差指数と事前に設定した較差指数との乖離の程度を確認するというものになります。
米書きで補足をしていますが、仮に、消費支出が級地、年齢、世帯人員の要素のみによって決まっていた場合というのを仮想的に想定した場合、それぞれの要素の効果を正確に捉えられる手法となっているかをテストデータを用いて確認するものとなります。
これに当たりましては、下段にありますように、今回、テストデータとして2つのケースを用意いたしました。上段のテストデータ1は機械的なケースとして年齢別較差が一律で級地別較差が0.05刻み、世帯人員別較差が人数比例というものを用意しております。これが実際どのようなデータかといいますと、一番下の米書きにありますが、個別世帯のデータのそれぞれについて級地、世帯人員数、年齢構成に応じて支出額を設定したものとなりまして、テストデータ1では、例えば1級地の2に居住する3人世帯は2.85という支出額が設定されます。年齢別較差は一定としていますので、世帯の年齢構成にかかわらず、どの3人世帯も同じ2.85になります。
また、回帰分析に当たっては、被説明変数は支出額の対数となりますので、単位によって内容が変わるものではありませんが、例えば22.85万円といったイメージを持っていただければと思います。
下段のテストデータ2は変則的な較差を持つケースとして、現行の基準による較差を設定したものとしています。
このように仮想的に作ったテストデータ1、テストデータ2のそれぞれについて、今回の議論を踏まえた算出方法と従前の算出方法のそれぞれにより年齢別較差指数の算出を行った場合に、事前に設定した正解となる較差指数を導けるかどうかというテストを行います。事前に設定した正解の較差指数はテストデータ1であれば全ての年齢階級で1.00、テストデータ2であれば0~5歳であれば0.94、75歳以上であれば0.86となるところです。
8ページです。こちらは確認の手順の続きとなります。テストデータの指数、支出額については、収入や資産、住居の状況によって変化することを前提としないデータになりますので、回帰分析に当たっては、これらに関する説明変数は設定しないものとなり、具体的にはこちらの表の回帰式を用いることになります。なお、これは今回、特に従前の方法との間で差異が生じる要因となった年齢階級別の構成割合と世帯人員ダミーを説明変数として設定している点についての確認ということにもなるものです。
9ページです。こちらが確認の結果となります。左側のグラフがテストデータ1による結果、右側のグラフがテストデータ2による結果です。それぞれオレンジ色の線で四角のマーカーのものが事前に設定した較差指数、正解の値になります。緑色の線でアスタリスクのマーカーのものが従前の方法による較差指数の算出結果です。さらに、青色の線で丸のマーカーのものが今回の議論を踏まえた方法による算出結果になります。
結果といたしましては、上段の枠内に記載をしているように、今回の議論を踏まえた算出方法による較差指数は従前の手法による較差指数と比べ、事前に設定した格差との乖離が小さく、より精緻に年齢別の較差を捉えている結果となっています。
米書きはこの解釈についての補足になります。この結果は、算出方法の構造としてより精緻に消費較差を捉えられるようになったことを意味していますが、一方で実際の消費実態のデータについてはサンプルサイズが限られていることや、特に年齢別較差に関しては消費支出のデータが世帯単位のものであって、年齢別の個人の消費を直接捉えられるものではないなど、利用可能なデータ上の制約があることには引き続き留意が必要となります。このため、較差指数の算出結果自体は引き続き幅をもって見る必要がある、この点について統計上の解釈として誤解のないように記載をしています。
続きまして、11ページです。こちらは世帯類型間の消費較差の反映状況の確認として前回、第48回部会の資料でも参考として支出平均と回帰分析で算出した較差指数との比較の表を提示していましたけれども、山田委員からの御要望を踏まえまして、75歳以上の世帯についても集計し、結果を追記しています。具体的には、Cの75歳以上の高齢単身とFの75歳以上2人の高齢夫婦について追記をしています。
続きまして、13ページです。こちらは級地間の較差の有意性について山田委員から御要望がありましたので、確認を行ったものとなります。具体的な作業としましては、一番上の点線囲みの米書きになりますが、回帰分析の際に級地ダミーについて説明変数として設定しない区分を入れ替えた場合の結果を示しています。
上段の(1)が級地6区分の場合の結果、下段の(2)が級地を3区分とした場合の結果となります。例えば(1)の表では、一番左が1級地の1ダミーを設定しないものとなり、すなわち1級地の1を基点とする結果になります。こちらについては、前回、第48回部会の資料でお示ししている結果と同じものになります。
そこから右へ順に1級地の2を基点とする場合の結果、2級地の1を基点とする結果というふうに表が並んでいるところです。
14ページ以降は基本調査による算出結果の確認になります。
15ページです。上段は4月にまとめた検証作業の進め方の抜粋となりますが、この中で2019年全国家計構造調査の取扱いの留意点として、2019年全国家計構造調査の集計世帯に6か月の継続調査である家計調査世帯、すなわち家計調査世帯特別調査の対象世帯が含まれることについて指摘があったことから、家計調査世帯特別調査の対象世帯を除く場合の集計結果を併せて確認することとしていました。
確認作業としましては、下段の枠囲みになりますが、2019年全国家計構造調査のうち、家計調査世帯特別調査の対象を除くよう、基本調査の対象世帯に限って、今回の議論を踏まえた方法により回帰分析を行い、指数の算出を行っています。
16ページです。このページ以降が今の点についての具体的な算出結果となるものです。また、18ページ、19ページは級地区分を3区分にした場合の算出結果となっています。
資料1の説明は以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
ただいま事務局より資料1についての説明がございました。これにつきまして御意見、御質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。
山田委員、お願いします。
■山田委員 資料1も含めて、今回も膨大な資料と前回の議論の結果を踏まえた補足推計等をしていただきまして、大変ありがとうございました。その上で幾つかコメントを差し上げたいと思います。前回も議論させていただきましたけれども、やはり今回、これまでと最も違う方法、手法上の変化というと、パラメーターを求めるときに各世帯人員で見た世帯類型の第1・十分位を持ってくるというのが非常に前回とは異なるわけですね。これは私も記憶にあるのですけれども、事務局の推計を進めるためにということで、議事録も確認していただくと分かると思うのですが、部会のかなり後ろのほうでばたばたと提案されて、この方針でいくということが決まったと記憶しています。
ただ、非常に気になるのは、世帯年収を入れないことによって貧しさの度合いがコントロールされていないと。例えば今回、ちゃんと精査していないのですけれども、単身世帯の第1・十分位が相対的に貧しかったとすると、それをそのまま反映するような結果が出てきてしまうことに懸念を持っておりました。世帯年収を入れた推計を例えば2ページとか3ページについてもやってみたらどうなるのか見せていただきたいということを事務局に別途メールでもお伝えしたのですけれども、2ページの3ポツ目の関係上、それはできないということになって、今回は出てこなかったと理解しております。ただ、初めてそういったサンプルの取り方をして、果たして貧しさの度合いがそろっているかどうかというのがきっちり確認できていないと。それで世帯年収をコントロールしないと貧しさの度合いが世帯人員別の世帯類型でそのままダイレクトに出てきてしまって、例えば相対的にある世帯、特に単身世帯が低く抑えられてしまったり、単身世帯に多く含まれている高齢者世帯が事実上低く出てきてしまったりというのを大変懸念しております。
もちろん色々な推計をしていただいて大変ありがたいのですけれども、その懸念についてはまだ解決されていないと。委員が申し上げても世帯年収を事務局としては入れないということであれば、私としてはこれ以上、致し方ありませんので何も申し上げませんけれども、少なくとも幾つかの方法で貧しさの度合いを確認する作業を専門的な見地からしていかなくてはいけない。
4点ほどあって、第一は、どの等価尺度を用いるかというのは何が正解かというのを決めることは難しいというのはおっしゃるとおりです。膨大な研究、検証もあります。ただ、OECDでは例えば世帯人員の0.5乗を使おうと。それはもし何か特定の等価尺度がなければそれを使うことになっていますので、そういったやり方もありますし、あとはエクストリームな2つのケースです。世帯人員のゼロ乗と世帯人員の1乗というのを用いて、その中間に多分あるだろうということで各第1・十分位を持ってくるのは一つの考え方ですねと。
あと、2番目としては、この検証のまま突っ走ると。言い方は悪いですけれども、そういった検証ができないということであれば、少なくとも事後の検証で各世帯類型、代表的な世帯類型について出てきた生活扶助基準額について、実際の平均的な消費支出、各世帯類型と比べてどれほどの水準かという検証は丁寧に行うことが必要であると。
3番目は、各世帯人員別の世帯類型の第1・十分位の中に生保未満の所得しかない人がどれくらい含まれているのかというのを見ると。例えば単身世帯のほうにそれがたくさん含まれていれば、相対的に生活扶助相当支出を押し下げるようなパラメーター設定をすることになるというのが確認できると。
4番目の方法としては、社会的剥奪指標というのがもし十分なサンプルサイズがあるのであれば、各第1・十分位の世帯人員別の世帯類型でどれほど違うのかというのは確認しておくと。
とにかく前回までとは異なるやり方をしているわけですから、そこは慎重にあらねばならないと思います。 取りあえず、長くなりますので、ここで一旦切りたいと思います。
■小塩部会長 ありがとうございました。
宇南山委員、お手が挙がっておりますので、続いてお願いいたします。
■宇南山委員 ありがとうございます。私のほうは別件だったのですが、まずは山田委員の御意見なのですけれども、私の考え方からしますと、現状が理論的にばっちり完璧だということを言うものではないのですが、何度か前回、前々回の部会でもお話ししましたように、年収を入れてしまうと人数ダミーの係数の意味が変わってしまうというのは非常に深刻な問題だと考えています。ここでやりたいことは基本的には厚生水準がそろっている前提で何人世帯だと何倍ぐらいのコストがかかるのかということを計測するための係数を求めることですから、その中に等価尺度を調整するための項が含まれてしまうというのは非常に大きい問題だと思います。
また、世帯年収をコントロールしていない下10分の1を取ってきてしまうというのは今回非常に大きい変更だということなのですけれども、以前の部会でも確認したと思うのですが、1人当たりの年収を取ると、実は単身世帯から4人世帯、5人世帯ぐらいまでおおむね下位10%が取られていたという事実があったと思います。その辺を考慮しますと、年収を取ったことで等価尺度を調整する項が抜けたという部分では非常に大きい変化なのですけれども、作業自体は非常に似たものだと私は理解しています。
結論としては、私は、世帯の規模の効果とは独立に等価尺度をコントロールした上で規模の経済を評価することはできないので、概念的に一貫性のある年収を含めない推計のほうが望ましいと思っています。
もう一つ、今回の新しい方法で年齢別の係数が有意にならなかったという点と、前回までのやり方とは少し傾向の違う結果が出ていたというところで、どういうことが起こっているのだろうかという懸念についてです。事務局のほうに作業をしていただいたおかげで、資料で言うと9ページ目の辺りで、テストデータを用いた数値計算の結果、今回事務局から提案されている方法はきちんと正しく真の姿を捉えられる手法であるのに対し、従前のやり方は少なくとも年齢の効果などについてバイアスのある推計結果をもたらしてしまう手法だったことが明らかになったと思います。前回と今回で結果が違うという懸念に関しては、今回のほうが正しいのだろうと理解できると思っています。
その意味では、統計的有意性が低いという点で取扱いについては非常に慎重になる必要があると思いますが、前回の結果と違うことに関しては、それほど気にしなくていいということが分かったのではないかなと理解しています。
私からは以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。今、お二人の委員の方から特に年収を説明変数に加えるべきかどうかということについて異なる御意見をいただきました。今、山田委員のお手が挙がっていますけれども、他の委員の方、何か付け加える、あるいは違う角度からの御意見はございますか。よろしいですか。それでは、山田委員、お願いいたします。
■山田委員 ありがとうございます。まず幾つか、前回の議論の蒸し返しになるのでそこは最小限にとどめておきたいと思うのですけれども、単身世帯の第1・十分位というのはOECDのいわゆる等価年収で見ると2割近い貧困率になっているわけなので、そこの10%を取ってくるというのはかなり低い人たちを取ってくることと同義だということです。ですから、宇南山委員も御指摘のように、厚生水準が揃っているか、揃っていないかというのが重要で、世帯年収を入れるかどうかというよりは、揃っているかどうかというのが非常に気になっているところで、方法としては4点ぐらいあるのではないかというのは先ほど述べたとおりです。
そして、シミュレーション、これは宇南山委員の前回の発言で非常に精緻なものが今回の推計式で出てきたというのは私も9ページを見て驚いています。ただ、重要な点は、ここでもやはり仮定というものが重要なわけです。例えば第1・十分位を持ってくるのも、厚生水準が揃っているという仮定があったら確かにこの指数が正しいだろうということはあるかもしれません。このパラメーターの開き方がですね。ところが、揃っていなければ、その仮定、前提としていることが満たされなければ、肝心の生活扶助相当支出がちゃんと捉えられているかというのは疑問になってくるわけです。
それと同様に、シミュレーションは非常にぴったりになって、私も驚きました。ただ、7ページの米印に書かれているように、ここでも仮定が重要で、消費支出が級地、年齢、世帯人員の要素のみで決まっていた場合には、という仮定では確かにこのようにぴったり当てはまります。ただ、実際に3ページとかを見てみると、貯蓄現在高とか持ち家ダミーとかその他の要素で決まってきている部分も当然ながらあります。そうすると、世帯年収も今回は入れないということで、結局そうした、ここでは仮にということで捨象されている変数を入れた場合にどちらの推計式が正しいかどうかというのは、このシミュレーションは仮定の話で進めてぴったり当てはまったということだけなので、私はそこら辺については慎重にありたいなと思います。
また、非常に気がかりなのは、この推計式が正しいとすると、今回の推計式のほうが正しいとか、今回の推計式のほうが真実に近いとするならば、では、前回設定した基準額は一体どういうふうに取り扱うのかというのは気になるところであります。それがもし前回のほうが、宇南山委員のおっしゃるように真実から遠いとか誤っていた推計式であれば、前回の基準額をどういうふうに扱えばいいかという、今度は新しい問題について我々は考えなくてはいけないと思います。
私からは取りあえず以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
他にこの点について、資料1について御意見、御質問はございますか。
事務局から補足で何か説明を付け加えることはございますか。
■森口社会・援護局保護課長補佐 御意見ありがとうございます。事務局から何点か補足を付け加えさせていただきます。
まず、今回、世帯人員ごとに年収階級第1・十分位を対象とするとしたことにつきましては、第46回基準部会で阿部委員から御提案があり、宇南山委員からそれを支持する御意見があったものとなりまして、その際、等価尺度について何が正解かを決めることが難しいという中で、前回5年前と同様に対象範囲を設定して世帯員1人当たり年収によって第1・十分位を持ってくると、おおむね世帯人員ごとに下位10%が参照される結果となっていたということとの整合性を踏まえまして、世帯人員ごとの抽出割合のバランスを考慮して、第47回に部会長から方針として示されたものであるということは御理解いただきたいと思います。
また、年収について説明変数としてコントロールするという点につきましては、これまでの議論からも資料の2ページにあるような等価尺度の調整についての懸念があるということは御理解いただきたいと考えております。
それから、山田委員からありました従前の方法についての評価ですが、テストデータによる今回の確認結果を踏まえますと、今回の議論を踏まえた方法によることで、計算構造上は消費較差をより精緻に捉えられるようになっているものと理解してございますが、従前の方法も、当時考えられる中で最善の方法を採って検証されたものと承知してございます。5年前の検証の際には、検討作業班が置かれまして、そこで実際にどのような検討がされたか私個人は承知していないですが、前回、第48回の基準部会で山田委員からもコメントがございましたように、専門家の助言を受けつつ試行錯誤した結果である旨は承知しております。
事務局からの補足は以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。他の委員の方でこの件について、資料1について御意見ございますか。よろしいですか。阿部委員、お手が挙がっております。お願いします。
■阿部委員 ありがとうございます。細かい表とかがたくさんあって、一般市民の人を含め、ここから年齢の較差とかはどうなるのかといったところで、そこだけ最終的に確認したいのですけれども、4ページに今回の推計結果のグラフが出ています。これがこの推計値から出された青い線のグラフだと思うのですけれども、このうち有意だったのは75歳以上のところだけだったということでよろしいですね。
級地のほうは13ページの表から割り出せということなのかな。どうですかね。後ろのほうは基本調査だけですものね。ですが、この有意であるものと有意でないものと、また年齢別でもかなりでこぼこになっていますけれども、それをどのように基準に反映するのかと。推定式はこうなりましたということで結構だと思うのですけれども、それを基準にどのように反映されるのかということ、それはこの後の部会で議論されるところなのでしょうか。これは取るべきだ、これは取らないべきだと。それとも、今ここで議論するべきなのでしょうか。
■小塩部会長 では、課長から御説明いただきます。
■池上社会・援護局保護課長 御質問どうもありがとうございます。展開部分の結果については前回の部会で資料としてまとめてお出ししておりまして、今回も参考資料2としてお配りさせていただいております。参考資料2の12ページが今回の議論を踏まえた算出結果であり、14ページには級地区分が3区分になった場合の算出結果も併せてお示しさせていただいております。有意でない数値も含めて結果としては出てきているところでございます。先ほどの資料の説明にもございましたけれども、特に年齢別については、世帯単位で消費の状況を捉えるということがございますので、必ずしも年齢別の消費そのものをダイレクトに取れるような仕組みではございませんので、その意味でなかなか有意差というのは統計的にはつきにくいと考えてございます。
この結果については、分析の内容について手法を様々御議論いただいておりますし、本日も御議論いただいているところですけれども、その結果、さらに、例えば幅をもって捉える必要があるというような御意見も今いただいたかと思いますけれども、そういったことを踏まえて、検証作業が終わった後に厚生労働省としてそれらを勘案しつつ、基準としてどういうふうに設定するか考えていきたいと思ってございます。
■阿部委員 ということは、これがどのように基準に反映されるのかということについては、まだ分からない状況ということでよろしいですか。今回、参考資料4で報告のところに入っていますけれども、私が分かったのは、ここから一体どうするのという話です。例えば、これから厚生労働省の独自の裁量で、年齢区分は2区分、75歳以上か以下かだけにするというような決定がなされる可能性もあると考えてよろしいですか。もし有意であるところしか使わないのならそうですし、また、級地のほうはどうするのでしょうか。級地のほうは2級地の1と2の間で今、差があったりしますけれども、そういったものは無視して3区分にしてしまって、その差については目をつぶるというようなこと、その判断について私たちが意見を言う場はこの場ではないということでしょうか。意見を言うことはできないということでしょうか。
■小塩部会長 保護課長、いかがでしょうか。
■池上社会・援護局保護課長 統計結果として現時点で出ているものがございます。これについてどのように反映していくかというのは、検証作業が終わった後に我々としても考えていかなければいけないと思ってございます。仮に有意差がないときに同じ水準にするのかどうかという部分についても、現時点で何か決まったものがあるわけではございませんけれども、一方で部会の議論の中でも点推計として違いが出てきていることを勘案するのが不合理ではないというような意見もありましたし、そういったことも勘案させていただいて、厚生労働省として検討していきたいと考えてございます。
■阿部委員 そのときに年齢のほうでは有意でなくても取るけれども、級地のほうは有意であるところだけ取るとか、そのような判断の可能性も残っているということでしょうか。そこは何らかの形で統一するのか。つまり、そこについての私たちの委員としての技術的な意見というのは聴取されることがなく、厚労省で検証後にこの部会が終わった後に決めることになるということですね。
■小塩部会長 課長、説明をよろしいでしょうか。
■池上社会・援護局保護課長 検証作業の中で御意見もいただいておりますし、報告書をまとめていただく段階でデータに関する留意点とかをおっしゃっていただいて、記載されるということもあろうかと思います。そういったものは踏まえつつ、厚生労働省として検討していくことになろうかと思います。今の段階でこっちについてはこうする、あっちについてはああするといったようなものはございませんので、今申し上げたようなプロセスで考えていきたいと考えてございます。
■阿部委員 分かりました。そのようにきちんとおっしゃっていただいたほうがいいと思います。
■小塩部会長 ありがとうございます。他に資料1についてはいかがでしょうか。よろしいですか。山田委員、お願いいたします。
■山田委員 ありがとうございます。級地のことについてなのですけれども、13ページを見ると、例えば1類だと3級地の1と3級地の2の間にやはり差があるようだとか、今、阿部委員からも指摘がありましたように、2類で見ると2級地1と2級地2で差がある。私は、本来だったら枝番2に組み込むべき市町村が例えば枝番1になっていたりしているので、有意な差がこんなに出てくるというのは、新しいデータでやってみて、実は驚きでした。
そうすると、やはり専門的見地からすると、枝番1と枝番2を統合するというのは、ちゃんとした差があるのにもかかわらず統合するというのは専門的見地からすると少しおかしいのではないかと思います。
あと、もう一つ、3区分にまとめるということについて自治体との議論でやった際に、国の統計の分析というふうに民間シンクタンクに委託した報告書が引用されているのです。確かに国の統計の分析を使っているわけですけれども、あくまでも民間シンクタンクが4区分以上にはならないと言っていますけれども、実際に報告書をきっちり精査すると3つ切れ目が入っているので、この部会でも何度も申し上げましたように4区分以上になりますし、あとは民間シンクタンクの報告書の中に実はこのように枝番をまとめる以外にも介護報酬の級地区分のように、周りが例えば囲まれていたら変更するという考え方もあるよと示されていたので、これを国の統計の分析結果がそうだ、というふうに説明しているのだったら、説明の仕方がややミスリードではなかったかというのを付け加えさせていただきます。
私からは以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
他のポイントはいかがでしょうか。よろしいですか。
事務局から御説明がございますでしょうか。
■岡本社会・援護局保護基準検証専門官 級地に関して山田委員からコメントいただきましたことに関してですけれども、まず、国と地方の協議の場で御説明させていただいた内容については、基本的に基準部会での報告書でまとまったことと、先ほどおっしゃられた民間シンクタンクで報告されたこと、それをちゃんと御説明した上であのような形になっていまして、国の統計分析というところでミスリードがあったということまでは私どもは考えておりません。
■小塩部会長 ありがとうございます。
■森口社会・援護局保護課長補佐 もう一点、「国の統計の分析結果」の話ではなく、本日お出ししております資料についての補足となりますが、生活保護制度においては、各地域において同一の生活水準を保障する観点から級地制度によって基準額の地域差は設けているところですが、これは、生活に要する費用の全体について階級を区分しているものでございますので、第1類や第2類という特定の費用のそれぞれで見ている本日の資料で、級地区分について御議論いただくことは想定していないものとなりますので、御指摘の点については、参考として受け止めさせていただきます。
■小塩部会長 ありがとうございます。他はよろしいでしょうか。
これから報告書をまとめる作業に入るわけなのですけれども、資料1について、先生方のお話を伺って色々な論点が浮かび上がりました。それを報告書の中にも反映させていこうと思っているのですけれども、その中で1つだけ私のほうからもコメントをさせていただきたいことがございます。それは今日の議論の冒頭でも議論になっておりました、年収を入れるかどうかということですね。これにつきましては、これまで何度も議論をしてまいりまして、当初は1人当たりで見ようか、等価所得で見ようかというところから始まって、どちらで見るかで結果が非常に違ってくる。それから、現在の基準に引っかかるところとそうでないところのバランスが大きく変わる可能性があるということで、先ほど冒頭の説明にございましたように、私がそれぞれの世帯の10%を基準にして計算をしたらどうかという提案をさせていただきました。それに基づいて本日、具体的な数字を見せていただきました。それについて、今日もまたやはり年収を入れるべきではないかという御意見もいただきました。逆に、やはり年収を入れるべきではないという御意見もありました。原案は年収を入れないということです。
私も、研究者としては所得をコントロールするというのは非常によく理解できる考え方ではあります。それは申し上げておきたいのですけれども、やはり宇南山委員から御指摘があったように、どういう等価所得の取り方にするかで結果がごろごろ変わるということになりますと、非常に解釈が難しいということになります。
それから、そういう問題を回避するためにあえて下位10%でそろえてやりましたよというふうにしたのですが、またそこに戻ってしまうということもございますので、ここはやはり原案どおり、収入を入れることはしないというふうにしてはどうかと思っています。
ただし、それについては私自身もちょっと考えるところがございます。それについては報告書の中でしっかりと研究者としての立場から意見を反映させたいと思っております。ということで、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、次の議題に移りたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料2「夫婦子1人世帯における生活扶助基準の消費水準との比較検証」について御説明いたします。
1ページです。こちらは改めてになりますが、4月の第43回部会でまとめた検証作業の進め方の抜粋を掲載しています。作業内容としましては、マル1の2019年全国家計構造調査の取扱いの留意点では、家計調査世帯特別調査の対象世帯を除く場合の状況も確認しておくこととしています。これについては、枠外の米書きにありますように、2019年全国家計構造調査のうち、家計調査世帯特別調査の対象を除くよう、基本調査の対象世帯に限った場合の生活扶助相当支出額及び参考とすべき指標の集計を行うこととなります。
マル2の生活扶助基準の水準の検証については、1点目にありますように平成29年検証における分析結果を踏まえ、2019年全国家計構造調査により、夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位における生活扶助相当支出額の平均を算出し、生活扶助基準額と比較することにより評価・検証を行うこととしていました。
この際、2点目にありますように、消費実態を参照する集団の状況について、平成29年検証時に参照した集団の状況と大きく変化していないかを確認する観点から、参考とすべき指標について検討を行い、その状況を確認することとしていました。
2ページからがこれまで検討いただいた比較検証に当たって参考とすべき指標になります。
3ページです。確認する指標をリストアップしているものになりまして、まず1つ目の中位所得層に対する消費水準の比率については、夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位における平均消費支出額を年収階級第3・五分位における平均消費支出額で割って算出するものとなります。これにつきましては、中位所得層の消費実態を基準として、低所得層の消費実態が相対的に減少、格差が拡大していないかどうかを確認するという趣旨になるものです。
次に、2つ目の固定的経費割合について。これは平成29年検証の際に分析で用いました指標となりまして、固定的経費を消費支出額で割って算出するものとなります。なお、2019年全国家計構造調査の収支項目分類の取扱いが平成29年検証の際に用いた平成26年全国消費実態調査から変わったことを受けて、固定的経費の算出方法について、これまで複数回の部会において改めて御議論をいただいたところです。
議論を踏まえまして、固定的経費の具体的な算出方法については、次のページに記載しているものになっています。
この固定的経費割合は食費や光熱水費などに代表される固定的経費の支出割合については、エンゲル係数、食費の支出割合と同様の側面を持つものとして低いほど厚生水準がよい状態を示すとも考えられることから、その変化の状況を確認するという趣旨になっています。
3つ目は年間可処分所得の中央値に対する比率になります。こちらは5月の第44回部会におきまして山田委員から、収入額が変わらなかったとしても実態的に可処分所得がどうなっているのかを確認すべき旨の御指摘があったことを踏まえまして、年間可処分所得についての指標を追加したものとなります。
また、相対的貧困率との関係を懸念する御意見もありましたことから、夫婦子1人世帯における中央値との対比で見る形にしたものとなっています。年間可処分所得の中央値を基準として、年収階級第1・十分位の年間可処分所得が相対的に減少、すなわち貧困の度合いが高くなっていないかどうかを確認するものとしています。
下段の点線枠内につきましては、上がったか下がったかという変化が直接的に評価に結びつくというものではありませんが、大きな変化がないかどうかを確認しておくものとなります。
まず、世帯属性です。こちらは5月の第44回部会におきまして宇南山委員から御提案があった内容になります。世帯の基本的な状況といたしまして、配偶者の就業状態、子供の就学状態、貯蓄・負債の状況について確認し、世帯の属性として大きな変化がないかを確認するというものです。
次に、所得額・貯蓄額の分布につきましては、6月の第45回部会におきまして山田委員から年収階級第1・十分位において資産等を勘案して生活保護基準未満の世帯がどれだけ含まれているのかという割合が前回と比べて高くなったのか、低くなったのかということを確認したいという趣旨の御意見がありましたので、その問題意識に応えられるよう、所得額・貯蓄額の分布を確認するというものになっています。
最後に、社会的必需項目の不足状況につきましては、同じく6月の第45回部会におきまして山田委員から、消費額以外の別の指標を持ってきて評価するということが重要であるとの御意見がありましたので、夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位における社会的必需項目の不足状況を確認することとしています。
なお、米書きの2つ目にありますように、こちらは2010年、2016年及び2019年の家庭の生活実態及び生活意識に関する調査による集計となり、基準額と消費水準の比較検証時に参照する集団とは調査時点や標本世帯、対象範囲等が異なることになりますので、必ずしも直接的に比較ができないという点については御留意いただければと思います。
4ページです。こちらは今回用いました固定的経費の算出方法となります。第46回、第47回の部会で議論を重ねていただきまして、そちらを踏まえた内容となっています。
5ページです。こちらは各支出項目の固定的経費、変動的経費の判定結果となります。
6ページです。こちらは参考といたしまして、以前の部会の資料にも掲載していましたが、小分類以上の品目分類と、2019年全国家計構造調査の支出項目との対応関係を示した表になっています。
7ページです。こちらが参考とすべきとした各指標の算出結果になります。表中の黄色の網かけの指標は先ほど説明した3ページの上段で確認をする指標として掲げておりました項目の結果となります。上から順に御説明いたします。
まず、夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位における消費支出額の平均は21万7863円で、前回、検証対象世帯に記載しています5年前に参照した集団の20万2240円と比較をして7.7%増加しています。夫婦子1人世帯の年収階級第3・五分位との対比におきましては、84.5%となっておりまして、前回の72.0%から12.6%ポイント上昇しています。
次に、固定的経費割合です。今回検証対象世帯では54.3%となっていまして、前回の集団の58.6%から4.3%ポイント低下しています。こちらのパーセントの低下は改善の方向を示すものになります。
その下の参考、「酒類・学校給食含む」につきましては、9月の第47回部会におきまして山田委員から、教育費のことを考えると固定的経費の判定に当たって、子供が小学生か、中学生か、高校生かという大まかな世帯属性を考慮した場合にも違いがないか確認しておく必要があるとの御意見がありましたことから、枠外の下段の米書きの3にありますように、子供の就学状況を小学生ダミー、中学生ダミー、高校生ダミーとしてコントロールした場合の判定を行ったところ、酒類及び学校給食が追加的に固定的経費として分類される結果となりましたので、参考としてこれらの品目を含む割合を示しているものとなります。数字としましては、1行上にありますこれらの支出項目を含めない場合と傾向は変わらないという状況になっています。
続きまして、夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位における年間可処分所得について、今回検証対象世帯では283万円となっており、前回の集団の251万円から12.8%増加をしています。6月の第45回部会において山田委員から、可処分所得の実質的な伸びについて見る必要があるとの御意見がありましたので、この点につきましてはこちらの数字を御覧いただければと思います。
この年間可処分所得については、夫婦子1人世帯における中央値との対比を行っており、それが次の行になります。今回、検証対象世帯では51.3%となっており、前回の集団の49.8%から1.5%ポイント上昇し、50%を上回る状況となっています。
なお、参考として、その次の行に示していますが、中央値自体につきましても今回が551万円、前回が504万円となっていまして、9.4%増加しているという状況になっています。
下のブロックでは、今回と前回の検証対象世帯の世帯属性の状況について記載をしています。まず、夫婦の平均年齢は今回36.7歳となっていて、前回の集団から1.4歳上昇しています。配偶者の就業率につきましては、今回37.9%で、前回の集団から6.7%ポイント上昇しています。子供の就学状況につきましては、大きな変化は見られないところですが、今回の集団では未就学児がやや減少しまして、中学生、高校生がわずかに増加をしています。
なお、こちらのその他の欄は、枠外の米書きの5に記載していますが、子供が15歳以上で中学校、高等学校のいずれにも在学していないものとなっています。
枠内に戻りまして、貯蓄現在高です。今回337万円で、前回の集団より24.3%増加をしています。負債現在高は今回522万円で、前回の集団から89%増加していますが、その次の行にありますとおり、その多くの部分は住宅・土地購入のための借入金、住宅ローンになっています。持ち家率は今回44.6%で、前回の集団から11.0%ポイント上昇しています。
また、今回検証対象世帯と増減の欄に括弧書きの数字がございますが、こちらは本資料の1ページに記載したとおり、2019年全国家計構造調査の家計調査世帯特別調査の対象世帯を除く場合の状況も確認しておくことにしていますので、基本調査の対象世帯に限った場合の集計値を記載しているものです。
続きまして、8ページです。こちらは年間可処分所得と貯蓄現在高の分布になります。こちらの表は大きく上段、中段、下段の3つのブロックから成っていまして、上段は今回の検証対象世帯、中段は今回の検証対象世帯のうち基本調査の対象世帯に限ったもの、下段が前回の検証対象世帯となっております。それぞれのブロックにおきまして、縦方向が年間可処分所得の階級、横方向が貯蓄現在高の階級となっています。
結果としましては、今回の検証対象世帯と前回の検証対象世帯を比較しますと、今回の検証対象世帯においては年間可処分所得の低い層が多くなっているということはなく、所得が高いほうに分布が移動しているという状況になっているところです。
9ページを御覧ください。こちらは夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位における社会的必需項目の不足状況となります。一番左の列が令和元年時点の不足割合となっていまして、その右隣の列に平成28年時点の不足割合との差、さらにその右隣に平成22年時点の不足割合との差を記載しています。
また、これまでの議論を踏まえまして、各数字の下に括弧書きをしています。標準誤差を表示していまして、平成28年対差、平成22年対差については、その数字が1.96掛ける標準誤差を超える場合に数字の右側にアスタリスクをつけていますので、それぞれの項目について御確認をいただければと思います。
次に、11ページを御覧ください。こちらは基準額と消費水準の比較検証になります。上段の(1)は夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位における基準額と消費水準の比較結果になります。2019年全国家計構造調査における夫婦子1人世帯の収入階級第1・十分位に係る特別集計結果となっていまして、マル1の生活扶助基準額につきましては、13万7790円となっています。こちらの額につきましては、米書きの2つ目に書いていますように、児童養育加算等の各種加算は含まない額となっています。
マル2の生活扶助相当支出額、消費実態になりますが、こちらは14万514円となっています。生活扶助相当支出額の外れ値につきましては、米書きの3つ目にありますように前回の検証で一つの目安としていました3σを超えるものは観測されないという状況でした。また、この生活扶助相当支出額14万514円は、夫婦子1人世帯の収入階級第3・五分位との対比で71.1%となっているところです。
マル2の生活扶助相当支出額14万514円をマル1の生活扶助基準額13万7790円で割った数値が、1.020となっています。
なお、米書きの4つ目にありますように、2019年全国家計構造調査の基本調査の対象世帯のみによる集計を行った場合、夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位における生活扶助相当支出額は13万8071円となっています。
下段(2)は消費水準との比較による夫婦子1人世帯の基準の検証結果の案になっています。生活扶助基準の消費水準との比較検証に当たって、参照する夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位の状況について確認したところ、平成29年検証時に参照した集団と比較して、消費支出額は7.7%増加し、年収階級第3・五分位対比では72.0%から84.5%に上昇。固定的経費割合は、58.6%から54.3%に低下。年間可処分所得は12.8%増加し、夫婦子1人世帯の中央値対比でも49.8%から51.3%に上昇となっており、状況がおおむね改善していることが見込まれる。
こうした中で夫婦子1人世帯における生活扶助相当支出額は14万514円となっており、生活扶助基準額13万7790円を2%程度上回っているとしています。
この検証結果案につきまして、御意見を頂戴できればと存じます。
加えて、2019年全国家計構造調査の基本調査の対象世帯のみで集計を行った場合は生活扶助基準額と生活扶助相当支出額がおおむね同程度となっているところですが、この点につきましてもコメントがあれば併せてお願いをしたいと存じます。
最後に、(1)の金額の表の右隣に注として記載していますが、こちらの資料はモデル世帯となる夫婦子1人世帯に係る検証の結果となりますので、様々な世帯類型の消費実態については、こちらの結果だけではなく、級地、世帯人員数及び世帯員の年齢階級ごとの消費実態の較差の分析結果を踏まえて見る必要があるという点について御留意をいただければと思います。
資料2の説明は以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
ただいま事務局から資料2について説明がございました。御意見、御質問をいただきます。阿部委員、お願いします。
■阿部委員 まず、おさらいといいますか、この検証の方法についての意見を再度、何回か前の議論ですけれども、意見を述べさせていただきたいと思います。今回は折れ線グラフで第1・十分位が本当に参照とすべきなのか、そこが最低生活費をその群では保たれているという妥当な階級なのかどうかということを検証するためにたくさんの分析をいたしました。ですが、今回はそのような分析はせず、前回の第1・十分位に比べて今回の第1・十分位はどうかという検証しかしていないわけですね。その方法については、私は賛成できるものではなく、他の先生について私は言えませんけれども、委員の一致の意見としてそういったやり方がよいと言ったわけではないと。毎回毎回参照する第1・十分位なのか、第2・十分位なのか分かりませんけれども、それはどこにすべきか。憲法で保障されている最低限の生活が保たれている階級であるかどうかということを検証しなければいけないと私は思っています。でも、それは今回はやりませんでした。簡単な簡略方法と言ったら違いますけれども、代替案として前回の第1・十分位と比べてみることをやっているということかなと思います。
その結果を見て、前回の第1・十分位より今回の第1・十分位のほうが比較的に状況がいいような指標が出ていますので、それはそれでよいのですけれども、手法的にそれが正しいものかどうかというのは、次回まで引きずるようなことはないようにしていただきたい。次回はやはりこのところを委員の中できちんと話し合っていただきたいなと思いました。それが意見です。
2つ目は最後のページ、2%ほど生活扶助基準額を上回っているというところですけれども、そこで注書きをしております。この注書きというのが私は意図が分からなくて、といいますのも、本当にここの注書きに書いてあることが正しいのであれば、夫婦子1人世帯で丈比べをするという手法自体が間違っていることになりますので、それを覆すような書き方は、ちょっと意地悪に読めば、夫婦子1人世帯は2%アップですけれども、他の世帯は別にそうじゃなくてもいいですよねというふうに聞こえなくもないということがありますので、この注書きというのは、私たちがこの手法を取っている以上、必要のないものではないかなと思いました。
以上です。
■小塩部会長 阿部委員、ありがとうございます。
他の委員の方の御意見も頂戴しようと思いますが、いかがでしょうか。どなたかいらっしゃいますか。岡部委員、お手が挙がっていますので、お願いいたします。
■岡部委員 資料を作成していただきありがとうございます。その上で意見を述べさせていただきます。物価が高騰しています。今回の審議は2019年のデータを基にしていますが、現下の状況を受けどのように反映していくか。この点では前回改定物価水準の変動では大きな問題にならなかったわけですが、今回はそのような状況下にはありません。その点を確認させてください。
■小塩部会長 ありがとうございます。今、阿部委員、岡部委員から御意見、御質問がございました。事務局に答えていただこうかと思うのですけれども、他の委員の方々から御意見、御質問はございますか。よろしいですか。
それでは、事務局、お答えできる点がございましたらお願いいたします。
■森口社会・援護局保護課長補佐 阿部委員から御指摘いただきました点、補足と回答をさせていただきます。まず、今回、折れ線回帰分析を行わなかったことにつきましては、こちらは検証作業の進め方に至る議論の過程で、今回必ずしもやる必要はないといった御意見もあったと承知しております。そうした中で、前回の検証で妥当とされた集団との比較という形で、今回の集団の妥当性を見ていくという話になっていたと承知しております。
それから、11ページにある注書きについてですが、こちらはあらゆる世帯でこうした検証をすべきだということを意味しているものではなく、検証結果としては、こちらのページにありますもののほか、較差の検証をしていただいておりますので、そうしたものも考慮して見なければならないという旨を書かせていただいているものでございます。
■小塩部会長 続きまして、課長からお願いいたします。
■池上社会・援護局保護課長 岡部委員から御質問を頂戴した件でございます。物価の高騰等が現在生じているところでございます。現在、基準の5年に1度の検証を行っていただいているところですが、厚生労働省といたしましては、現在行っていただいております検証結果、それから、その後の社会経済情勢の変化等も踏まえまして、基準として今後よく検討してまいりたいと考えてございます。
■小塩部会長 阿部委員、岡部委員、よろしいでしょうか。
では、まず岡部委員から御発言をお願いします。次に山田委員、お願いします。
■岡部委員 この件に関して部会にお諮りするということをしていただけるのか、されないのかということについて確認をしたいと思います。
■小塩部会長 課長からお願いいたします。
■池上社会・援護局保護課長 具体的に数字をもって議論するのは、足下、動いている状況がありますのでなかなか難しいかと思っております。必要に応じて報告書の取りまとめの中で御意見を頂戴できれば幸いでございます。
■小塩部会長 よろしいでしょうか。
■岡部委員 はい。
■小塩部会長 それでは、山田委員、お願いいたします。
■山田委員 こちらの資料も、前回の資料までに色々と御対応をいただきましてありがとうございます。その上でちょっと気になった点についてのコメントなのですけれども、今、夫婦子1人の3人世帯の状況が景気の改善にもよって高くなったというのは分かりました。ただ、前の議論にも通じるところなのですけれども、標準3人世帯は景気動向で高くなる一方で、単身世帯、特に高齢者世帯で例えば年金の給付乗率を折ることによって年金が低下し消費水準が低下してくるということがあると、今回のような手法を使っている限り、どんどん較差が広がっていく。場合によっては高齢者とか単身世帯の給付水準をバランス的に削っていくことにつながりかねないと思います。
そこでやはり重要なのは、先ほど部会長がおっしゃったように、もし年収を入れないということをするのであれば、設定した生活保護基準額が実際の消費、高齢者世帯も含めて何割かというのをちゃんと精査していかなくては。パラメーターを単に当てはめているだけでは実態とどんどん乖離していくという手法に含まれた原理的な問題が懸念されます。ですから、この後、展開していかれるのですけれども、展開した後の基準額と、そして高齢者世帯を含めて実際の消費額というのがどういう水準になるのかというのは見ていかないと、原理的にどんどん単身世帯とか高齢者世帯の特に高い年齢層の基準額を引き下げていくという懸念があるので、そこのところは行っていただきたい。
先ほど世帯年収を入れない代わりに世帯人員別の世帯類型の第1・十分位が本当に貧しさの相対的な度合いが違わないかということを確認するため等価世帯年収以外に3つの方法があり得るというのを申し上げましたけれども、そのときには今言った原理的な問題があるので、そちらについても確認していく必要があるかと思います。
そして、物価に関しては水準均衡方式というのは消費水準の一般世帯との均衡を見るということもあると思うのですけれども、当該年度における消費動向も考えなくてはいけないということで、その2つですね。足下で動いているということはおっしゃるとおりだと思うのですけれども、水準均衡方式を取る限り、一般世帯の消費の均衡と当該年度の物価の動向も加味してというと、当該年度の物価についても見ていくというのは我々の職掌なのではないかというのがちょっと気になっているところです。
私からは取りあえず以上になります。
■小塩部会長 ありがとうございます。この点について、事務局、いかがですか。
■森口社会・援護局保護課長補佐 まず1点、展開後の基準額という言及があったかと思いますが、生活扶助基準の見直しについては、生活保護基準部会における検証結果がまとまった後、これを踏まえて厚生労働省において検討した上で、設定すべき額を判断していくものとなりますので、順番として、検証時点で見直し後の基準額を示すということはできないかと考えております。
■小塩部会長 課長からいかがですか。
■池上社会・援護局保護課長 物価あるいは足下の消費動向についての御意見をいただきました。基準部会は5年に1度、大規模な消費の調査である、現在ですと家計構造調査を用いての検証が主な役割になろうかと考えてございます。その後の状況については厚生労働省としてどのように勘案するのか等を含めて検討してまいりたいと考えてございます。
■小塩部会長 山田委員、お手が挙がっています。お願いします。
■山田委員 たびたびすみません。私の記憶が確かであれば、毎回最後に展開した基準額がどういう数値になっているかというのと、各世帯類型の消費水準を比べて、例えば前回だと高齢世帯が5割で、7割と言っているものをかなり下回っているから、単純に機械的に当てはめるとこうなるからまずいのではないかという議論まで進めたので、森口課長補佐がおっしゃっているそれができないというのがよく分かりませんので、そこは即答はしなくても、前回やって、我々もこのようなパラメーターが出たって、パラメーターはいいと言いましたけれども、その後展開された基準額というのは。先ほど原理的な問題として年金の給付水準をカットして、また将来マクロ経済スライドを適用していくと、高齢単身がどんどん相対的に下がっていく。その下がっていくパラメーターを当てはめると、自動的に基準額を下げていくことになります。基準額が下がったときに本当にこの基準額でいいのかというのを議論する場だと私は少なくとも理解していますので、そこの整理は前回とは違うなということと、今回も私はやるべきではないかという意見です。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。この点について事務局から御説明をお願いします。
■森口社会・援護局保護課長補佐 事務局から補足いたします。毎回とおっしゃられましたが、そうした分析は、平成29年検証においては世帯人員別の消費較差の指数の算出方法として「実データによる方法」と「回帰分析による方法」の2つがあったことから、そのいずれを用いるべきかという検討のために、算出した較差指数と、それから生活扶助基準の水準の検証に用いた消費データを組み合わせて、世帯類型別の消費水準を推計して、これを基準額の試算として示していたものと承知してございます。
今回の検証では、適切な消費較差を算出する方法としまして、これまで議論を積み重ねていただいているところでございまして、そうした試算に基づいて御議論いただく状況とは必ずしもなっていないと理解しております。
いずれにしても、実際の見直しに当たって検討されていく基準額については、必ずしもその試算結果ということではなく、今後、厚生労働省においての検討をした上で設定していくべき額を判断していくというものになりますので、その点はどうぞ御理解ください。
■小塩部会長 山田委員、いかがですか。
■山田委員 非常に重要なポイントだと思います。最後の生活保護基準を、もちろん細かい点について事務局のほうで色々と設定していただくというのは行政のプロとして職掌だと思うのですけれども、出てきたパラメーターをこう当てはめてこうなりましたと。パラメーターについては我々は承知しましたと。その先の基準額については事務局のほうで決めますと。その基準額については一切、例えば5割を下回っていたとしても、それはこの基準部会が認めたからこのような仕方をしましたと言われても、我々はさすがに7割とか6割という水準均衡の考え方からすると、5割というのはかなり低いのではないかと。さらに言えば、高齢者がなぜこんなに低いのかという消費実態からの検証というのも行っていない中で、生活保護基準部会を一種の権威づけにしてこう決まりましたというふうにされても各委員困ると思うのです。だから、そちらについては、前回の状況については把握しましたけれども、出てきた数値についていずれか委員が意見を述べる場というのは最終回までに私は必要だと理解しています。この点は他の委員の御意見もぜひ、私一人がそう思っているかもしれませんので、伺いたいと思っているところです。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。他の委員もということなのですけれども、いかがですか。阿部委員、お手が挙がっています。
■阿部委員 私も山田委員に全く賛成です。こういった手法は長年行われてきているのですけれども、最終的な標準世帯でやる方法は各世帯類型の方々の最低生活費が保証されているかどうかが担保できないというところがあるかなと思います。ですので、やはりそこのところを確認させていただきたいなと思います。ここのところが夫婦子1人世帯では2%増だったのですけれども、他のところでは20%減で、そこのところは最低生活を送れないということがないかどうかを確認するという作業をぜひさせていただければなと思います。
■小塩部会長 ありがとうございます。他の方はよろしいですか。
岡部委員、御発言をお願いいたします。
■岡部委員 私も山田委員の御意見に賛同いたします。標準世帯を出すというのはよろしいのですが、生活保護受給世帯の構成割合から考えますと、圧倒的に高齢者夫婦世帯、高齢単身世帯それ以外の世帯が非常に多く占めています。この点については実態を反映する世帯類型もぜひ出していただくのがよいと思っております。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
宇南山委員、お願いします。
■宇南山委員 ありがとうございます。若干問題意識が共有できていないかもしれないのですが、夫婦子1人の高さをそろえるという作業があって、そこから1人世帯だとどうとか、高齢者がいたら減らすとか、そういうルールを当てはめることになるのだと思います。高さと比率が決まっていれば、少なくとも機械的には全ての類型で基準額が決まるということだと思います。その比率を較差の基準として我々が話し合ったのだと思います。
その中で、御懸念があるとすれば、その高さであるとか比率をここでは話し合っていない全く違う数字を使ってしまうのではないかという疑念だと理解しています。そうであれば私も非常に問題だと思うのですが、一定の実務上の配慮があった上で、おおむね検証された数字を使っているということであれば、それは我々が決めた基準だというふうになり、懸念する事項ではないと思います。
その意味では、前回、我々と同じようなことをやって年齢別であるとか人数別の数値を出した上で、夫婦子1人で高さも決めて、その結果として導かれた構造が本当に基準額に反映されたのかは確認することに同意します。もちろんそこは一定の厚労省の中での裁量があるというのが現在の立てつけだと思いますので、多少のずれがあるのはやむを得ないことだと思うのですけれども、人数であるとか、年齢であるとか、地域であるとかを部会で議論した基準どおりにつくられているかどうかは重要だとは考えています。一方で、基準部会の制度的な仕組みの建前上、我々が比率は示す、高さも示す、それでやってくださいねというのを投げてから厚労省が判断するという立てつけになっている以上、最終的な基準額は部会の中ではなかなか議論できないのではないかと思います。
結論としては、前回示した基準の案みたいなものが本当に実際の基準額に反映されているかどうかを示してくださいというのであれば私は賛成します。一方、今回、最終的な基準額を部会の中で示すべきだという提案だとすれば、若干それは部会の位置づけとずれるのではないかなと思いました。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
それでは、渡辺委員、御専門の観点からお願いいたします。
■渡辺専門委員 水準均衡方式において一番重要な検証は、基準額が水準均衡しているか、つまり基準額が一般世帯の消費水準の6~7割に達しているかどうかの確認だと思っています。ただし、水準均衡方式が定められたときとここ10年ぐらいにおいて統計的手法を使うようになったときと、基準の改定方法が全然違うのですね。それまでは一律の改定率を定めて、それを級地や年齢別、人数別に当てはめていったので、標準3人世帯の基準額だけ一般世帯と比較すればよかったものと思いますけれども、統計的手法を用いるようになってからは展開の指数が級地、年齢、人数によって違う。一律の改定率でなくなったわけです。むしろ一律の改定率を示せなくなったのです。
それがゆえ、厚生労働白書でも平成28年までは改定率というか、どれぐらいの改定をしたかというのを示していますけれども、それ以降は示していないのは一律の改定率ではなくなったことが理由だと思っています。
もちろん最終的には厚生労働大臣の裁量にはなるのですけれども、統計的な客観的な数値との合理的関連性や専門的知見との整合性というのは、これまでの判決からでも求められるものだと思っています。ですので、最終的にどうなっているのか。今回特に級地も変更するのですね。なので、枝番の高いほうの級地にいた世帯は平均的には恐らく下がる。下がる世帯がどれぐらいいるのか。級地改定は、多くの世帯に影響がありますし、多くの世帯に影響する改定については審議会で議論すべしというような判決もなされています。今回、級地も変わりますし、かつ年齢や世帯人数によっても改定率が違うということからも、それぞれの世帯構成、特に先ほど岡部先生も御指摘されましたけれども、代表的な世帯は単身世帯ですので、前回検証で行ったように、複数の世帯構成を用いて、水準均衡になっているのかという確認は必要だと思います。水準均衡方式であるわけですから、最終的な一般世帯の消費水準との確認というのは、最も重要な作業であるのではないかと思います。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。皆様から貴重な御意見を頂戴いたしました。課長から御説明がございますので、お願いします。
■池上社会・援護局保護課長 資料1のときの議論にも少し関わるのですけれども、今回の展開部分の分析結果について、基準にどう反映するのか。例えば有意でない結果が出た部分などもございますけれども、そういった部分も含めてどう反映するか自体も判断が難しい部分もあろうかと思います。基準額を議論いただくということについて、そういった面でもなかなか難しい点もあるのではないかなと考えてございます。
■小塩部会長 ありがとうございます。
では、私からも一言申し上げます。この生活保護基準部会というのは基本的には生活扶助基準につきまして統計データを用いて専門的かつ客観的な立場から評価・検証を行うというのが基本的ミッションであるということなのですね。それが私たちの守るべき一番重要な点だと思うのですけれども、それを前提としつつ、今日、皆様からたくさんの御意見を頂戴いたしましたので、部会長としても何ができるかというのを検討させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ということで、次の議題に移ってよろしいでしょうか。事務局から資料3について御説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料3「新たな検証手法に関する検討」について御説明いたします。
1ページを御覧ください。新たな検証手法につきましては、本日の参考資料3-1、3-2としても配付をしていますが、昨年11月の第41回部会におきまして調査研究事業の報告をさせていただき、御議論をいただいたところです。こうした議論の結果を踏まえまして、本年4月の第43回部会でまとめております令和4年度における生活保護基準の検証作業の進め方においては、(2)の4に記載していますとおり、基準部会で報告されたMIS手法による最低生活費の試算及び主観的最低生活費の試算の結果については、これまでの議論を踏まえ、必ずしも基準額の設定の直接的な根拠となり得るものではないことに留意しつつも、上記の消費実態に基づく検証結果との関係において補完的な参考資料としてどのように参照することが可能かを検討することとされています。
2ページを御覧ください。こちらは令和3年3月に生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会においてまとめられたこれまでの議論を踏まえた検討課題と論点の整理の抜粋になります。ここではMIS手法による最低生活費や主観的最低生活費について、食費、通信費、教養娯楽費等の費目ごとに、一般低所得世帯の消費実態である全国家計構造調査の結果や生活保護世帯の消費支出の状況である社会保障生計調査の結果と比較することにより生活扶助基準の検証に活用することが考えられるのではないかという提案がされています。
3ページです。こちらはMIS手法の最低生活費の試算につきまして、先ほどの検討会の提案を踏まえて費目ごとに比較ができるよう、左側にMIS手法による最低生活費の試算、真ん中に2019年全国家計構造調査、右側に2019年社会保障生計調査の結果を配置した資料となっています。こちらでは若年の単身世帯について比較を行っています。左側のMIS手法による最低生活費の試算は足立区の32歳の男女でそれぞれ算出をしていまして、マル1として男性、マル2として女性について費目別に記載しています。なお、足立区の級地は1級地の1となっています。
真ん中の全国家計構造調査につきましては、単身世帯の年収階級第1・十分位の世帯と全平均のうち65歳未満の民間借家・貸間世帯の全級地平均の消費支出額をそれぞれ費目ごとに記載をしています。それぞれにマル1との差、マル2との差としてMIS手法による男女の最低生活費の試算との差額を記載しています。なお、MIS手法では住居について仮想家賃を用いていることから、全国家計構造調査の民間借家・貸間世帯を比較対象としています。
右側の社会保障生計調査については、65歳未満の生活保護を受給している単身世帯の全級地平均の消費支出額を費目別に記載しています。こちらも真ん中の全国家計構造調査と同様に、マル1との差、マル2との差としてMIS手法による男女の最低生活費の試算との差額を記載しています。
結果につきまして、まず、左側のMIS手法と真ん中の全国家計構造調査を比較しますと、消費支出額全体ではMIS手法が第1・十分位との比較で8万9000円から11万6000円程度上回っており、全平均との比較でもMIS手法が4万3000円から7万円程度上回っています。費目別で見ますと、その他の消費支出で特に差額が生じていまして、MIS手法が第1・十分位との比較で3万5000円から3万8000円程度上回っており、全平均との比較においてもMIS手法が2万6000円から2万7000円程度上回っています。
次に、左側のMIS手法と右側の社会保障生計調査を比較しますと、消費支出額全体ではMIS手法が社会保障生計調査を11万4000円から14万1000円程度上回っています。費目別で見ますと、その他の消費支出で特に差額が生じていまして、MIS手法が社会保障生計調査を3万7000円から4万円程度上回っています。
4ページです。こちらは高齢の単身世帯について比較を行っています。まず左側のMIS手法による最低生活費の試算については、町田市の71歳の男女でそれぞれ算出をしていまして、マル1として男性、マル2として女性の費目別に記載をしています。なお、町田市の級地は1級地の1です。
真ん中の全国家計構造調査につきましては、単身世帯の年収階級第1・十分位の世帯と全平均のうち65歳以上の民間借家・貸間世帯の全級地平均の消費支出額をそれぞれ費目別に記載をしています。先ほどの若年世帯と同様に、MIS手法による男女の最低生活費の試算との差額をそれぞれマル1との差、マル2との差として記載をしています。
右側の社会保障生計調査につきましては、65歳以上の生活保護を受給している単身世帯の全級地平均の消費支出額を費目別に記載しています。こちらも真ん中の全国家計構造調査と同様にマル1との差、マル2との差としまして、MIS手法による男女の最低生活費の試算との差額を記載しています。
結果につきまして、左側のMIS手法と真ん中の全国家計構造調査を比較しますと、消費支出額全体ではMIS手法が第1・十分位との比較で5万3000円から6万1000円程度上回っています。また、費目別で見ますと、住所を除きますと食料で差額が生じていまして、MIS手法が第1・十分位との比較で1万5000円から1万8000円程度上回っているところです。
また、左側のMIS手法と右側の社会保障生計調査を比較しますと、消費支出額全体ではMIS手法が社会保障生計調査を6万7000円から7万5000円程度上回っています。費目別で見ますと、上記を除くと食料で差額が生じていまして、MIS手法が社会保障生計調査を1万2000円から1万6000円程度上回っている状況です。
続きまして、5ページです。ここからは主観的最低生活費の試算につきまして検討会の提案を踏まえまして費目ごとに比較ができるよう、左側に主観的最低生活費の試算、真ん中に2019年全国家計構造調査、右側に2019年社会保障生計調査の結果を配置した資料となっています。ここでは夫婦子1人世帯について比較を行っています。主観的最低生活費の試算につきましては、5ページは世帯主が30代の世帯、6ページは世帯主が40代の世帯、7ページは世帯主が50代の世帯となっており、それぞれ切り詰めるだけ切り詰め、最低限幾ら必要ですかという質問文で調査されたK調査の結果をマル1として、また、慎ましいながらも人前で恥ずかしくない社会生活を送るために幾ら必要ですかという質問文で調査されたT調査の結果をマル2として費目別に記載しています。対象地域は1級地の1となっています。
真ん中の全国家計構造調査につきましては、夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位の世帯と、全平均のうち世帯主の年齢が30歳から59歳までの民間借家・貸間世帯の全級地平均の消費支出額をそれぞれ費目別に記載しています。また、それぞれにマル1との差として主観的最低生活費のK調査の結果との差額を、また、マル2との差として主観的最低生活費のT調査の結果との差額を記載しています。なお、主観的最低生活費の試算におきましては、住居について仮想家賃を用いていることから、全国家計構造調査の民間借家・貸間世帯を比較対象としています。
右側の社会保障生計調査につきましては、夫婦子1人世帯ではサンプル数の確保が困難なため、生活保護を受給しているその他3人世帯の全級地平均の消費支出額を費目別に記載しています。こちらも真ん中の全国家計構造調査と同様に、マル1との差、マル2との差として主観的最低生活費のK調査の結果とT調査の結果との差額を記載しています。
なお、下段の点線囲みの中の一つに注釈として記載をしていますが、社会保障生計調査のその他3人世帯は高齢者世帯、母子世帯以外の世帯でなりまして、傷病者・障害者世帯を含むことになるものです。
結果につきましては、まず、左側の主観的最低生活費と真ん中の全国家計構造調査を比較しますと、消費支出額全体では第1・十分位との比較においてマル1のK調査が6万2000円程度、マル2のT調査が10万7000円程度上回っているところです。費目別で見ますと、その他の消費支出で特に差額が生じていまして、第1・十分位で比較をしますと、マル1のK調査で1万7000円程度、マル2のT調査で3万2000円程度上回っているという状況です。
次に、左側の主観的最低生活費と右側の社会保障生計調査を比較しますと、消費支出額全体ではマル1のK調査が社会保障生計調査を9万9000円程度、マル2のT調査が社会保障生計調査を14万4000円程度上回っています。また、費目別で見ますと、住居を除くとその他の消費支出で特に差額が生じていまして、マル1のK調査が社会保障生計調査を3万円程度、マル2のT調査が社会保障生計調査を4万5000円程度上回っているという状況です。
6ページです。こちらは左側の主観的最低生活費について世帯主の年齢が40代の世帯となっています。真ん中の全国家計構造調査と右側の社会保障生計調査につきましては、先ほどの5ページと同じ内容になっています。
結果につきましては、左側の主観的最低生活費と真ん中の全国家計構造調査を比較しますと、消費支出額全体では第1・十分位との比較においてマル1のK調査が8万9000円程度、マル2のT調査が14万4000円程度上回っています。費目別で見ますと、住居を除くとその他の消費支出で特に差額が生じておりまして、第1・十分位で比較しますと、マル1のK調査で2万3000円程度、マル2のT調査で3万9000円程度上回っているところです。
次に、左側の主観的最低生活費と右側の社会保障生計調査を比較しますと、消費支出額全体ではマル1のK調査が社会保障生計調査を12万6000円程度、マル2のT調査が社会保障生計調査を18万1000円程度上回っております。また、費目別で見ますと住居を除くとその他の消費支出で特に差額が生じていまして、マル1のK調査が社会保障生計調査を3万6000円程度、マル2のT調査が社会保障生計調査を5万2000円程度上回っているところです。
7ページです。こちらは左側の主観的最低生活費について世帯主の年齢が50代の世帯となっています。真ん中の全国家計構造調査と右側の社会保障生計調査につきましては、5ページと同様の内容となっています。
結果につきましては、左側の主観的最低生活費と真ん中の全国家計構造調査を比較しますと、消費支出額全体では第1・十分位との比較において、マル1のK調査が12万8000円程度、マル2のT調査が20万円程度上回っています。費目別で見ますと、住居を除くとその他の消費支出で特に差額が生じていまして、第1・十分位で比較をしますとマル1のK調査で4万3000円程度、マル2のT調査で4万1000円程度上回っているところです。
次に、左側の主観的最低生活費と右側の社会保障生計調査を比較しますと、消費支出額全体ではマル1のK調査が社会保障生計調査を16万5000円程度、マル2のT調査が社会保障生計調査を23万7000円程度上回っています。費目別で見ますと、住居を除くとその他の消費支出で特に差額が生じていまして、マル1のK調査が社会保障生計調査を5万6000円程度、マル2のT調査が社会保障生計調査を5万4000円程度上回っているところです。
8ページです。こちらは参考としまして、MIS手法と主観的最低生活費の概要について算出方法等の特徴を整理した資料になっています。詳細につきましては参考資料3-1、3-2にそれぞれつけていますので、御参照ください。
資料2の「夫婦子1人世帯における生活扶助基準の消費水準との比較検証」との関係におきまして、補完的な参考資料としてどのように参照することが可能か御議論を賜れればと思います。
資料3の説明は以上になります。
■小塩部会長 ありがとうございました。
ただいま資料3について事務局から説明をいただきました。御意見、御質問はよろしいでしょうか。岡部委員、お願いいたします。
■岡部委員 平成29年の基準部会の報告書では、水準均衡方式について一般低所得世帯との均衡を考える相対的な捉え方である、これはこれで非常に意味があるものだと思いますが、それだけではなく、健康で文化的な最低限度の生活を保障する基準になっているかどうかという、ある意味では絶対的な基準でも考えるべきであるという考え方が出されていました。今回は、この2つが検討したデータとして出していただいたのは非常によいと思います。
その上で、水準均衡方式について審議・検討していただいています。それを基調にしながら考えていただくことは大事ですが、もう一方では、ここで出されていたMIS、あるいは主観的最低生活費の試算が出されています。これは先の話になりますが、最低生活費は人びとの最も根幹に関わる基準です。今後は検討の場をぜひ部会の中で、あるいはそれ以外の場でも結構なのですが、持っていただくことを要望します。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
他に御意見、御質問はございますでしょうか。阿部委員、お願いいたします。
■阿部委員
今の岡部委員の御提案に賛成いたします。先のことと先生はおっしゃいましたけれども、先のこととは言わずに、これはもうずっと何年も何年も続いている課題であり、部会長であられた岩田正美先生などもこのやり方での限界ということを何度も言及していらっしゃいます。
そういった中で、今回もやってみたと。はい、それで終わりではなくて、具体的にこれをどのように、どこに反映させるかということを検討する部会をすぐにでも始めていただきたいなと思います。私自身としては、これを項目別、費目別に分けて使えるところもあるのではないかと。費目によっては相対的に決められないものがあるのですね。例えば交際するときに、私は相対的なので、1万円を払う結婚式のあれを6,000円でお願いしますというわけにはいかないわけなのですね。そういうこともありますので、積み上げなければいけないものというのもあると思います。そういった中でのマーケットバスケット方式ですとか、MIS方式ですとか、また主観的最低生活費の方法というのをどのように組み入れていくかということは具体的に検討を始めていただきたいなと思います。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
他に御意見ございますでしょうか。宇南山委員、お手が挙がっています。お願いします。
■宇南山委員 ありがとうございます。春先の阿部先生と山田先生の研究報告の際もそうだったのですけれども、今回改めて見て、水準が非常に大きく実態とずれていると。普通の人の平均をも上回ってしまうほどの水準が出たりすることもあるということで、これは何らかの方法で参考にするようにといった場合、なかなか水準そのものを扱うのは難しいのではないかと思いますというのが1点です。
恐らくは何らかの意味で変化率とかそういったもの、もしくは世帯類型ごとの、我々は全国家計構造調査を使って較差を推計しているわけですが、その較差の推計とかに使うのであればあり得るのではないかと思いました。しかし、特にMIS手法みたいなものですと、幅広く色々な級地の色々な世帯類型の人を網羅できるような形で調査するというのはちょっと非現実的な印象があって、そうすると較差の推計方法が正しいかどうかということの検証に使うのもなかなか難しいかなという印象を持っています。もちろん学術的に比較して評価をするというのは非常にいいことだと思うのですけれども、現状の結果を眺めていると、ここでどうやって使おうかというのはなかなか難しい問題だと思っています。
阿部先生から今、項目別にという御意見があったのですけれども、これは春のときにも私は述べたと思うのですが、項目別に何か反映するというのは、私はあまり賛成ではありません。生活保護というのは家計全体の支出に対して扶助をすることによって、少なくとも自己決定というものは最大限尊重されるべきだと思っていて、どんな費目にどんなお金の使い方をするか。例えば結婚式に行って3万円払うのがどうしてもノルマでそこは譲れないという人がいたとしても、それは他のところで調整してくださいと。そこの自由を奪うというのは非常によくないことだと私は思います。何か行動を制約する原因になり得る費目だけをとって、この費目に関しては必ず保障するとか、そういった個人の選択に関わる部分で影響を与えかねないような使い方には反対します。
それ以外のよりうまい使い方というのは、私は必ずしも思いついているわけではないですけれども、現状だと水準をそのまま使うというのは難しいかなと感じています。
以上です。
■阿部委員 すみません。私、別に行動を選択するようなということは全く何も申していないのですけれども。例えば児童養育加算なんかは既に全体の平均値という形で決められておりますし、相対的に相対基準で決められているわけではありませんし、母子加算ですとかそういったところについても相対的概念で決められているわけではありませんので、積み上げ方式で決められるべきところも十分あるかなと思います。
■小塩部会長 ありがとうございます。
それでは、山田委員、お手が挙がっています。お願いします。
■山田委員 ありがとうございます。何点かコメントなのですけれども、特に生活保護というのは貯蓄の面で制約があるということは、要するにためておいて、それに備えることが非常に難しいということでは、やはり生活保護を受給している世帯はかなり強い制約を受けていると。あと、もう一つは、我々は生活保護基準がいいかどうかを実態的な消費水準から出しているわけですけれども、そういったものがなかったとしたら一体どれくらい必要とするのだろうという確認は、所得に制約された消費データからは出てこないわけです。ですから、そういった面から一体どれくらい実態が必要だろう。例えば老齢加算を過去に廃止しました。老齢加算を廃止したことによって、実際はOECDの相対的貧困線を生活保護基準が大きく下回るような設定になったわけです。その結果、何が起こったかというと、老齢加算を受給していた被保護世帯は食費を削ったわけですね。我々は食費を削ったというのは分かるわけですけれども、その食費を削ったというのが果たして妥当な線なのか、それとも実は健康を害するところまで食費を、例えば野菜とか何かを削っているのかというのは分からないわけです。ですから、そういった制約がない場合にどれくらい必要かというのを知ることが必要であると。
また、教養娯楽とかそういったものに関しては非常に個人の嗜好が多様なわけです。それを例えばMISではどれくらいそういう多様性を重んじながらも必要かというので議論して、これぐらい必要というのは、やはり意味があるわけです。さらに言えば、K調査とT調査という、これは手前みそでございますけれども、指し示しているのは、かつかつで暮らしているという額よりも幾つかの世帯類型で基準額は低いというのが分かっている。そうすると、この額を直接使わなかったとしても本当にこの下回っている世帯類型ではこの基準額で足りているのだろうかという意味で疑問を投げかけてくれるわけです。ですから、所得に制約された低所得の消費支出データから分からないものがここから見えてくるという点では重要なことですし、そうした費目が何かと考えたときに、本当に例えば老齢加算を廃止された世帯の栄養が足りているのかというのをこれから確認しなくてはいけないねとか、あと教養娯楽については本当に十分なのかと。特に貯蓄について制約を受けている生活保護受給世帯においてそういったものがなかなか出せないという状況があるのだったら、そこについては何らかの給付なり何なりを考えなくてはいけないねと。そういう使い方としては、私は有用だと。自分がやったということもありますけれども、それを信じてやっております。
私からは以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
栃本部会長代理からもお手が挙がっていますので、お願いいたします。
■栃本部会長代理 今、山田先生から説明がありましたけれども、まさに予算制約を外して試算するという試みをするのはもちろん非常に重要だと私も思います。
平成29年の部会報告書の中で先ほど事務局も説明し、また委員の方々からもお話がありましたけれども、それに基づいて今回の部会が始まる前に新たな検証手法が検討されて、今回それが使われたというか、示されたということで、これは非常に重要なことだと思います。最低限の生活ということと同時に、やはり人間の尊厳に値する生活とは何なのかということを考えることは重要で、そのためには大切なことだと思います。
その上でですが、この手法は予算制約を外して試算することに非常に重要な意義があるわけなのですけれども、それは今申し上げた意味においてであります。
一方、実際に一般市民の生活はおのおのの予算制約の中で営まれているということでやりくりしています。先ほど宇南山委員の方からもお話があったと思いますけれども、MISにしろ、K調査にしろ、T調査にしろ、そこで示された額というものは、これを第何・十分位辺りになるのかなというのを見てみるとかなり高いものになってしまっている。高いものになってしまっており、おおむね消費実態の平均値以上となってしまうということでこれがそもそも最低限の生活水準かということについて世帯によってはかなり高い所得分位に相当することになっているんです。
この調査に加わった人々が考える最低生活の中身が人並みの平均的な生活を思い描くということになっている。このことに留意することも必要だと思いますというので、私はこの手法について、先ほど委員の方々からすぐにでもより議論というか、検討したほうがいいというお話がありましたが、今回の結果に関しては、こうした結果を最低限度の生活を念頭に置いた結果としてどのように当てはめるかということについては慎重にする必要があると思います。
先ほどの事務局の、これは検討された方がいらっしゃるので私が申し上げるまでもないけれども、MIS手法と主観的最低生活費の簡単な比較表がありますが、ここでは少人数の議論、8人程度の人に対して4回やってするというような形になっていますね。これらをさらに精緻化するというか、より綿密なものにイラボレートする作業が残されていると思いますので、予算制約を外して試算するというのが非常に重要であることは私はよく分かりますが。その上でやはり生活保護ということで考えると、一方でいずれもおおむね消費実態の平均以上となっているというようなデータであるということもはたしてどうなのか見ておく必要があろうかと思います。
私が申し上げたいのは、今後引き続き、非常に重要なことに踏み込んだわけです。踏み込んだというか挑戦したわけですから、これをさらに精緻化して使えるものにしていただくということが必要であると思います。そして、今回については慎重に検討する、慎重に扱うということが必要であると思います。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
山田委員、お手が挙がっています。お願いします。
■山田委員 ありがとうございます。栃本部会長代理、補足をありがとうございます。栃本先生も私も予算制約の意味というのは分かっているわけですけれども、予算制約を外したということについて誤解がないように申し上げておきますけれども、MISは最低限度の生活という前提があるということで、予算制約はないと申しましたけれども、水準はそれを考えているということです。そして、主観的最低生活費についても切り詰めるだけ切り詰めて最低限幾ら必要か。そして、慎ましいながらも人前で恥ずかしくない社会生活を送るために幾ら必要かと。事務局から御説明がありましたように、全くフリーで予算制約を外しているわけではない。それは栃本先生御理解のとおりなのですけれども、ただ、予算制約を外したということを申し上げると、私の説明のミスで、まるで何も予算制約がないように聞こえてしまうかもしれませんので、一応最低限度という、もしくは切り詰めるだけ切り詰めて最低限幾ら必要かという前提があるということですね。
あと、加えてですけれども、実はMISとこちらの主観的最低生活費以外にも重要な作業が十分行われていない。それは何かというと、先ほども申し上げましたように、栄養的に本当に今の基準額で足りているのか。積み上げた場合にそういったものが足りているのかどうかというのはまだ検証されていない。実はこれを検証しようとしたのですけれども、色々な事情で検証できなかったという経緯があると仄聞しております。ですから、そういったものが今出ていない以上、そういったことを実はやらなくてはいけない。毎回毎回これを出すと、参考にしますということなのですけれども、そろそろどういうふうに使うのか。例えば両方とも、T調査でもK調査でも生活扶助基準が下回っているときには実態的な生活費が本当に足りているかどうかというのを調査するためのベンチマークとして使うのか。要するにそのまま使うというのに問題があるのであれば、そこを考えなくてはいけないと思いますし、そういった具体的な使い方ですね。毎回毎回参照するといいつつも、具体的にどう参照されたか分からないというところからそろそろ一歩踏み出すことが必要ではないかと私は考えています。
以上、補足とコメントです。
■小塩部会長 ありがとうございます。
阿部委員もお手が挙がっています。お願いします。
■阿部委員 私がこれを具体的にと言ったときには、ここの金額をそのまま使えと、そういったことだけではないわけです。MISの結果というのは、ここの表に示されているだけではありません。例えば一般市民の人々が何を最低生活と考えるのかというようなことの考えを、なのでこういった活動が必要なのだ、こういったことをすることが必要なのだと。私たちは消費実態の数値を見ていますけれども、生活の中身は全く見ていません。そういったことを見るためにもMISという手法を使うことはできるわけなのですね。例えば子供のある世帯であればどういったものが必要なのか。そこで欠けてはいけないもの、例えば私たちでもそういったものを全て相対的に決めるといいつつも、義務教育に係るお金はみんな100%必要だよねとか、クラブ活動は必要だよね、だからクラブ経費を出しましょうですとか、部活経費を出しましょうとか、そういう判断をしているわけなのですけれども、その判断の基という中で、何が必要かというのはすごく曖昧ですよね。そういったことを考えていく上でもこのような調査が非常に有効になるかなと思います。
ですので、この数値をすぐにどうしろ、こうしろということではなくて、やはりMISの中で分かってきたこと、主観的最低生活費の中で分かってきた、本当に慎ましく生活するには何が必要なのだという話ですよね。それをもう一度やるべきではないかというのが私の提案です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
栃本部会長代理、お手が挙がっていますけれども、お願いします。
■栃本部会長代理 阿部先生からお話がありましたので、阿部先生のおっしゃったことについて、さっき僕が言いたかったのは全然否定するものではないのですよ。阿部先生のおっしゃっているのは研究者としてよく分かります。だから、逆にこの数字を使ってこれだということをいうのはどうかなということは言いました。それ以外のことについては非常に重要な知見があって、これは今後、要するに最低限の生活というものを考える際には非常に重要なものであるということを申し上げているだけなのです。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
岡部委員、お願いします。
■岡部委員 新しい手法として行なわれることは非常によいことだということと、検討の場を設けてほしいということをお話ししましたが、今、栃本委員からお話がありましたように、基本的にどれぐらい必要なのかを理論的に積み上げていく。これはマーケットバスケット方式で、私の記憶ですと第8次改定、昭和23年から生活保護基準が科学的・客観的な根拠のもとで算定されることになります。これは山田委員が述べられていたことで飲食物費となります。きちんと飲食物費が生活保護世帯の人に渡るように、まず飲食物費を基本にそれから、それ以外に何が必要なのかという形の積み上げを行い、生活保護基準が国民最低限の基準を守る制度だということが示され国民の認識として広がったと考えます。その中でもう一度そのことについてさらなる検討をしていくこと、そして新しい手法が出ましたので精査していただくことが非常に大切であると思います。
もう一つ、栃本委員からお話がありましたように、生活保護基準については、少し古い話になりますが、昭和20年代では財政的な制約を受けず、まず第一に優先的に考えることが政府より示されています。それと併せて、国民感情は一応考慮に入れますが制約を受けない、まず最低限の基盤は国家が保障することが政策の合意事項となっていたと思います。まずは最低限の基準をどのように考えていくか、手法について、水準均衡方式が精査され、また2つの手法が出てきました。マバ方式かエンゲル方式であるとかとも含めて、新しいという方式も取り入れながら、実体化していく方向でぜひ検討の場を設けてほしいと再度お話をさせていただきました。
■小塩部会長 ありがとうございます。
皆さんの御意見を伺いました。ちょっと温度差といいますか、積極的な御意見をお持ちの方から慎重な御意見をお持ちの方、それから、もう少し検討を進めるべきだというような御意見もありました。ただ、委員の方々全員がこの分析は重要だという認識はお持ちだということもよく分かりました。
これをどうまとめるかということなのですけれども、これは今までも申し上げましたけれども、絶対的貧困の概念というのはなかなか難しくて、決定打というのがなくて、今回出されたものもやや探索的な部分がございます。
それから、実は私もたいへん興味がございまして、実際に自分の研究でもそれによく似たことをやっています。今日お話があったのは、いわゆるアマルティア・センのケイパビリティーにもつながる概念で、もう少し具体的に落とし込んだ議論としては多元的貧困という概念があります。ただ、その概念も、それが人々の主観的な構成とか健康に影響するという分析はあるのですが、それを使って絶対的な貧困水準を規定するというところまではまだまだ研究が進んでいないのではないかなという気がするのです。
先ほど健康の話がありました。これは実はイギリスで研究がありまして、人々が健康な生活をできるぎりぎりのところはどうかと、それで絶対的な貧困を決定しようというふうな研究もあります。ただ、いずれもなかなか全ての人が納得できるようなところまでいっていないのではないかなと思います。
このように、非常に多くの御意見、また貴重な御意見があったと思うのですが、具体的に私たちの部会のミッションとしてどのような形で検証に2つの新しいアプローチを活用するかという点については、現時点では残念ながら結論には至らなかったと判断せざるを得ないのではないかなと思います。岡部委員、それから他の委員もおっしゃったように、何らかの機会でさらなる検討を進めていくということは、私は個人的には非常にやっていただきたいな、やりたいなと思っております。
ということで、よろしいでしょうか。
それで、もうほとんど時間がなくなってしまいましたが、実は参考資料4も御用意していたのですけれども、これは報告事項でございましたので、後で御覧になっていただければよろしいかと思います。もし何かコメントがございましたら、後ほどメール等で御連絡いただければと思います。
ということで、ちょっと今日は長時間で申し訳なかったのですけれども、今回の議事をもちまして、令和4年度における生活保護基準の検討作業の進め方で予定しておりました事項の審議を行いました。次回以降は報告書の取りまとめに向けた議論を行いたいと思います。事務局から御連絡等ございますでしょうか。
■安西社会・援護局保護課長補佐 次回の開催スケジュールについては、現在調整中でございますので、追って御連絡をさせていただきます。
連絡事項は以上でございます。
■小塩部会長 ありがとうございます。これからもまだ作業は続きますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。本日は長時間ありがとうございました。