第20回 社会保障審議会企業年金・個人年金部会 議事録

日時

令和4年12月7日(水)10:00~12:03

場所

TKP新橋カンファレンスセンター 15階ホール15E

出席者

森戸部会長、渡邊部会長代理(オンライン)、岩城委員、大江委員、金子委員(オンライン)、小林(司)委員、
小林(由)委員、小林(洋)委員、島村委員、谷内委員、冨樫委員、原田委員、藤澤委員、山口委員(オンライン)

(オブザーバー)

鮫島企業年金連合会理事長、松下国民年金基金連合会理事長

議題

  1. (1)資産所得倍増プラン等について
  2. (2)その他

議事

議事内容
○森戸部会長  
 皆さん、おはようございます。
 定刻になりましたので、ただいまより第20回「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」を開催いたします。
 お忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。
 本日、渡邊部会長代理、金子委員、山口委員についてはオンラインで御参加いただいております。
 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えていますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 なお、島村委員は所用により少し早めに退席予定と伺っております。
 それでは、議事に入らせていただきますが、その前に事務局から資料の確認をお願いいたします。

○大竹企業年金・個人年金課長
 まず、資料の確認をさせていただきます。
 本日の資料といたしましては、資料1「資産所得倍増プラン等について」という資料でございます。それに加えまして、参考資料1として私的年金制度の現状等、参考資料2が資産所得倍増プラン、参考資料3がスタートアップ育成5か年計画、参考資料4が顧客本位タスクフォース中間報告(案)、参考資料5は委員名簿ということで準備をしておりますので、御確認をお願いいたします。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 それでは、議題に入りたいと思いますが、カメラの方はここで退室をお願いしたいと思います。

                       (報道関係者退室)

○森戸部会長
 本日は、「資産所得倍増プラン等について」を議題といたします。
 では、事務局より説明をお願いいたします。

○大竹企業年金・個人年金課長
 ありがとうございます。
 お手元の資料1に基づいて御説明させていただきます。「資産所得倍増プラン等について」でございます。
 前回、資産所得倍増プラン等における議論の状況を御報告いたしましたけれども、先週、11月28日に新しい資本主義実現会議におきまして資産所得倍増プランが決定されております。あわせて、スタートアップ育成5か年計画も決定されておりますけれども、これについても年金に関する記載がございます。本日は、資産所得倍増プランやスタートアップ育成5か年計画にどのような記載があるのかということを御報告させていただいた上で、この記載に基づいてどのような対応を行っていくのかということについて御議論いただければと考えております。
 それでは、資料に基づいて説明させていただきます。
 まず、3ページ目でございます。
 資産所得倍増プランにどのようなことが書かれているかということでございます。こちらは、第一の柱から第七の柱までございます。そのうち関係するところを抜粋しております。
 まず3ページ目、1つ目が第一の柱で、NISAの抜本的拡充や恒久化という内容でございます。この中に一部iDeCoの内容が含まれておりまして、1つ目の○の3行目の後半になりますけれども、「マイナンバーカードの活用も含め、NISA・iDeCoの口座開設の簡素化を検討する」ということで、NISAとiDeCoの口座を同時に開くときに開きやすいようにしようということでございます。
 2つ目の柱として、iDeCo制度の改革という柱がございます。3ページ目と4ページ目は現状やこれまでの経緯でございますので、省略させていただきます。
 5ページに具体的な内容が書かれております。➀から➂までございます。まず➀が、加入可能年齢の引上げでございます。こちらは前回も御議論いただきましたけれども、2つ目の○で、「働き方改革によって、高年齢者の就業確保措置の企業の努力義務が70歳まで伸びていること等を踏まえ、iDeCoの加入可能年齢を70歳に引き上げる。このため、2024年の公的年金の財政検証に併せて、所要の法制上の措置を講じる」という記載になっております。
 ➁、拠出限度額の引上げ及び受給開始年齢の上限の引上げということで、4つ目の○にございますけれども、「iDeCoの拠出限度額の引上げ及び受給開始年齢の上限の引上げについて、2024年の公的年金の財政検証に併せて結論を得る」とされております。
 ➂、手続の簡素化ということで、「各種手続きの簡素化・迅速化を進め、マイナンバーカードの活用も含め事務手続の効率化を図る」と記載されています。
 6ページ目でございます。第三の柱としまして、消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設ということで、1つ目の○の2行目の後半になりますけれども、令和6年中に新たに金融経済教育推進機構(仮称)を設置するということが書かれております。そこで「中立的なアドバイザーの認定や、これらのアドバイザーが継続的に質の高いサービスを提供できるようにするための支援を行う」とされております。
 また、2つ目の○でございますけれども、「助言対象を絞った投資助言業(例えば、つみたてNISAやiDeCoにおける投資可能商品に限定)」と書いておりますけれども、登録要件の緩和を検討するとされております。
 続いて、第四の柱、雇用者に対する資産形成の強化ということで、1つ目の○の3行目になりますけれども、特に「中小企業において職場つみたてNISAや企業型確定拠出年金、iDeCoが広がるように、これらの制度の普及に取り組むとともに、必要な支援について検討を行う」ということ。
 また、2つ目の○でございますけれども、内閣官房において「人的資本可視化指針」が定められておりまして、人材情報を極力開示していこうという流れがございますけれども、こういうものがエンゲージメントの向上にも効果的であるということで、「雇用者の資産形成を支援する取組を積極的に情報開示するように企業に促していく」ということでございます。
 7ページ目でございますけれども、第五の柱といたしまして、金融経済教育の充実という内容でございます。こちらも先ほど御紹介した金融経済教育推進機構を設立するということを書いてございますけれども、そこを中心としまして、2つ目の○でございますけれども、「企業による社員への継続教育の充実や地方自治体による金融経済教育の実施と併せて、広く国民に訴求する広報戦略を展開する」。また、「官民一体となった効率的・効果的な金融経済教育を全国的に実施する」ということが書かれております。
 また、日銀その他関係省庁、関係団体でつくっております「「金融リテラシー・マップ」の活用や、行動経済学の知見も参考にする」ということが記載されています。
 あと、国民の方への働きかけということで、資産形成に一歩踏み出してもらうための働きかけを行うということで、2つ目の○になりますけれども、「国家戦略としての「基本的な方針」を策定する」ということや、「協議会等の場を設けて、広く官民が協力して資産形成に必要な施策の協議・推進にあたる」という記載があります。
 また、3つ目の○、「つみたてNISA等の制度に関する情報発信も含め、全世代向けに積極的な広報を展開する」とされています。
 8ページ目でございます。第七の柱といたしまして、顧客本位の業務運営の確保ということでございます。1つ目の○の3行目以降になりますけれども、「インベストメント・チェーンの各参加者が期待される機能を十二分に発揮することが必要である」ということでございます。「このため、金融事業者や企業年金制度等の運営に携わる者について、横断的に、顧客等の利益を第一に考えた立場からの取組の定着や底上げが図られるよう、必要な取組を促すための環境整備を行う」とされております。
 また、2つ目の○でございますけれども、企業年金を含むアセットオーナーについては、受益者等の便益を最大化する観点から、適切な運用リターンの実現を図る必要があるということで、「関係省庁が連携して幅広い関係者との継続的対話の体制を整備し、運用体制・手法に係る調査研究の実施やベストプラクティスの共有・普及を図るなど」の対応を進めるとされております。
 続いて、前回御紹介をしておりませんでしたけれども、併せてスタートアップ育成5か年計画というものが策定されております。
 10ページ目に経緯がございます。今年の6月に骨太の方針において、「スタートアップエコシステム育成の全体像を5か年計画としてまとめる」ということが記載されております。また、最後の辺りになりますけれども、「年金・保険等の長期運用資金がベンチャーキャピタルやスタートアップに循環する流れの形成に取り組む」という記載がなされております。
 それを踏まえまして、11ページ目でございますけれども、新しい資本主義実現会議の下にスタートアップ育成分科会が設置されて、新たな計画がまとめられたということでございます。
 その中に年金に関する記載が一部ございまして、12ページ目、スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化という中で、資産所得倍増プランを推進していくということもございますけれども、4つ目の○でございますが、「企業年金について、受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るスチュワードシップ・コードの受け入れや、コーポレートガバナンス・コードを踏まえた上場企業の人事面・運営面の取組を促す」ということが記載されております。
 これらの記載を踏まえて、今後どういう対応をしていくかというところが14ページ目以降でございます。
 まず、14ページ目、iDeCo制度の改革という関係で➀から➂までございます。
 ➀、加入可能年齢の引上げについて、70歳まで引き上げるということでございますけれども、詳細な要件等については、働き方・ライフコースが多様化する中で、幅広い方々が公平に老後生活に備えることができる環境をつくることを基本として検討し、次期年金制度改正において、所要の法制上の措置を講じるということでございます。前回も御議論いただきまして、1号、3号も含めて一律で70歳まで引き上げるということを基本としつつ、今後詳細な要件等を検討していきたいと考えてございます。
 ➁、まず拠出限度額につきましては、令和元年12月のとりまとめにおきましても、その後の税制関係のとりまとめにおきましても、様々な課題があるということで議論を引き続き行っていくとされておりましたので、こちらにつきましても次期年金制度改正に向けて検討を行っていくということかと考えております。
 また、受給開始年齢の上限の引上げにつきましては、今年の4月に、60歳から75歳までの間でいつから受給を開始するかをそれぞれ決めていただけるよう上限を引き上げておりますけれども、今回、iDeCoの加入可能年齢を70歳まで引き上げるのであれば、掛金の拠出と運用を行う期間を一定期間確保することが必要ではないかという問題意識の下でこのような記載がなされていると思いますので、この点につきましてはそういう一定期間を確保する観点から、さらに引き上げることが適切かどうかということも含めて、次期年金制度改正に向けて検討を行っていくということかと考えております。
 ➂、iDeCoの手続の簡素化についてでございます。令和6年12月から、事業主証明書や現況確認を廃止することを予定しておりますけれども、このタイミング、あるいはその翌年も含めてになりますけれども、このようなタイミングでさらなる簡素化やデジタル化を進めていきたいと考えております。
 続いて、15ページ目でございます。第三の柱、中立的で信頼できるアドバイス提供の促進、金融経済教育の充実の関係でございます。こちらは、現時点においても様々な関係団体の方を含めてセミナーの実施やe-ラーニングの充実などを行っていただいているということでございますので、これをさらに拡充できないかということを検討して取組を進めていきたいと考えておりますし、新たに設置される機構の活用も当然お知らせして活用していくということかと考えております。
 また、投資助言業の登録要件の緩和につきましては、金融庁において検討が行われていくということかと思いますので、調整を行っていきたいと考えてございます。
 第四の柱、企業による資産形成の支援強化でございます。中小企業において企業年金やiDeCoが広がりますよう、現在の仕組みをまずは具体的に周知していくということで、具体的な周知広報等の取組について検討して、速やかに実施していきたいと考えています。その上で、さらなる支援策が考えられるかどうかというところで、令和2年の法改正時の附則におきまして、中小事業主掛金を拠出できる中小事業主の範囲について検討すべしという規定もございますので、その点も含めまして次期年金制度改正に向けて検討を行っていくということかと考えております。
 続きまして、第七の柱、顧客本位の業務運営の確保という観点でございます。こちらは記載がございましたとおり、金融事業者や企業年金制度等の運営に携わる者に対して、横断的に、最終受益者の最善の利益を図る取組の定着や底上げが図られるよう必要な取組を促すということでございますけれども、顧客本位タスクフォースにおける議論も踏まえて、金融庁と連携して対応していくということかと考えております。
 また、2つ目のポツでございますけれども、幅広い関係者との対話や、運用体制・手法に係るベストプラクティスの共有・普及について、これもまた金融庁とともに検討して対応していくということかと考えております。
 続いて、16ページ目、スチュワードシップ・コードの受け入れ促進ということです。企業年金におけるスチュワードシップ・コードの受入れを更に促進していきたいということで、特に一定規模以上の資産残高を有する企業年金を中心として、企業年金自らのスチュワードシップ・コード受入れ促進に向けてどのような方策が考えられるのかということを検討してまいりたいと考えております。
 引き続き、セミナーなどを金融庁や関係団体等と実施して、コード受入れの意義や受入れ手続の状況など、情報発信を行っていきたいと考えております。
 以上が今後の対応についてということでございますけれども、それぞれの内容について現状がどうなっているかというところを18ページ目以降に資料を準備しておりますので、簡単に触れさせていただければと思います。
 18ページ目、iDeCoの加入可能年齢ということで、これは前回も御紹介したとおりでございます。
 19ページ目が、iDeCoの拠出限度額ということで、令和6年12月からさらに引上げが予定されているということでございますけれども、こちらの在り方についてさらに検討していくということかと考えております。
 20ページ目は、受給開始可能年齢についてということで、60歳から75歳までの間で選んでいただくということを申し上げましたけれども、一部加入期間が短い場合には必ずしも60歳ではなくて、少し遅らせて受給を開始していただくという仕組みになっておりますので、そのような仕組みになっているということを御紹介させていただければと思います。
 21ページ目、iDeCoの関係届書についてでございます。こちらにつきましては、関係の金融機関や、そういった運営管理機関の方にいろいろ手続を委託しているということもございます。また、2号加入者の方については事業主の方にも手続を行っていただいているということでございますので、簡素化あるいはオンライン化、電子化、デジタル化を行っていくに当たっては、こういった関係者の方々にも御協力いただきながら進めていくということかと考えております。
 22ページ目は、前回も御紹介した事業主証明書や現況確認の廃止につきまして、企業年金プラットフォームを活用して進めていきたいと考えております。
 23ページ目は、第三の柱の関係で、中立的なアドバイザーの見える化ということでございます。新たに設置されることが予定されております金融経済教育推進機構の役割ということで、金融経済教育の充実・強化や中立的な助言サービスの提供が想定されているということでございます。
 続いて、24ページ目以降、第四の柱としまして、特に中小企業支援ということで、現在どのような仕組みがあるのかということを御紹介させていただいております。
 24ページ目、iDeCoプラスで支援をしております。
 25ページ目、簡易型DCということで、ある程度手続などを簡素化した仕組みも準備してございます。
 26ページ目でございますけれども、DCに限らず、DBにつきましては総合型DB基金などの仕組みがございますので、こういったところに入っていただいているところも多いのだろうと考えてございます。
 27ページ目、第四の柱でございますけれども、現在、iDeCoに関してどのような広報を行っているかという御紹介でございます。
 28ページ目、第五の柱としまして金融経済教育などがございますけれども、こちらは現在、企業型DCの実施事業主の方々につきましては投資教育を行っていただくという枠組みになっているということでございます。
 29ページ目は、国民年金基金連合会の方や企業年金連合会の方々にも、こういったところを担っていただいているということでございます。
 30ページ目、投資教育の具体的な内容ということで、金融商品の仕組みや特徴、資産の運用の基礎知識をお知らせしていただきたいということをお示ししているということでございます。
 31ページ目がその実施状況ということで、継続投資教育を実施した事業主が約6割になっているということでございますけれども、その具体的な内容、あるいは成果みたいなところは改めて今後御議論いただければと考えてございます。
 32ページ目、第七の柱ということで、顧客本位タスクフォースの資料でございます。家計の安定的な資産形成を図るためには、成長の果実が家計に分配されるという「資金の好循環」を実現する必要があるということで、そのためにはインベストメント・チェーンに参加する各主体の機能が十二分に発揮されることが期待されるということで、企業年金を含むアセットオーナーの機能発揮が求められているということでございます。
 33ページ目が、顧客本位タスクフォースの中間報告の案ということで、昨日提示されているものを引用しております。インベストメント・チェーンの機能発揮ということで書いてございますけれども、2行目中盤辺りに、「家計の安定的な資産形成に向けて、全ての金融サービスの提供について顧客本位の業務運営が求められる中、金融事業者全体による顧客本位の業務運営の取組みの定着・底上げを図る必要がある」ということで、顧客本位の事業運営に関する「原則」を定めてこれまで取組を進めてきたということでございますけれども、これについて一歩踏み込んだものとすることを促すべきということが記載されている。「広く金融事業者一般に共通する義務として定める」と書かれているということでございます。
 その上で、下線部でございますけれども、「金融事業者のほか、企業年金制度等の運営に携わる者等もこのような規定の対象に加えることにより、広くインベストメント・チェーンに関わる者を対象として、顧客・最終受益者の最善の利益を考えた業務運営に向けた取組みの一層の横断化を図るべきである」という記載がなされているということでございます。
 法律でこのような顧客本位の業務運営を求めていこうということが議論されているということでございますし、その対象範囲内に企業年金制度等の運営に携わる者も入れていこうということでございます。
 一方で、我々の認識としまして、34ページ目になりますけれども、何か新しい義務とか規制をかけるという話ではないと思っておりまして、赤字で下線を引いてございますが、既に事業主の方については加入者等に対する忠実義務が規定されているということでございます。
 DBにおける受託者責任ということで、まず基金型につきましては、理事の行為準則といたしまして、基金に対する忠実義務が規定されているということでございます。これは直接加入者等に対する忠実義務という法律上の規定にはなっておりませんけれども、ガイドライン等を通じてそういったことも求めているということでございます。
 規約型につきましては、明確に事業主の行為準則として、法律で加入者等に対する忠実義務が規定されているということでございます。
 35ページ目、企業型DCにおける受託者責任ということで、➅忠実義務ということで、事業主の方には、受給者の方を含めた加入者等に対して、忠実にその業務を遂行しなければならないということが規定されているということでございます。
 そのようなわけで、金融庁を中心に顧客本位タスクフォースで議論されている内容につきましても、何か新しい義務とか規制を定めるというよりは、現在規定されている忠実義務の範囲内で顧客本位の業務運営が求められているということを理念的に規定して、取組を求めていくということかと考えております。
 続きまして、スタートアップ育成5か年計画の関係で、スチュワードシップ・コードの関係が37ページ目以降でございます。
 スチュワードシップ・コードにつきましては、機関投資家が投資先企業との「建設的な対話」を通じまして、企業の持続的成長と顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図っていくための行動原則でございます。以下、スチュワードシップ・コードの8原則として御紹介しておりますけれども、こういったものを金融庁を中心にして議論を行って策定しているということでございます。
 こちらにつきましては、38ページ目、スチュワードシップ・コードと各企業におけるコーポレートガバナンス・コードが車の両輪となりまして、スチュワードシップ・コードを通じて企業との建設的な対話を促す。また、企業においては、コーポレートガバナンス・コードに基づいて取組を進めて、中長期的な企業価値の向上に努める。このような形で、結果として中長期的なリターンの向上、年金基金を含めて、機関投資家の利益になるということで、こういった好循環を生み出していこうというような枠組みであろうということでございます。
 39ページ目、これまでにおける取組ということで、企業年金のスチュワードシップ・コード受入れの意義を書いてございます。企業年金における受入れによって運用機関の取組みを促すという意義もございますし、また、企業年金そのものも受託者責任を履行する観点からも有意義であろうということでございます。
 これまでは、下の絵を見ますと、「間接のスチュワードシップ活動」と書いてございますけれども、どちらかというと運用機関にそういうスチュワードシップ活動を促すということを重視していたということでございまして、その上に<具体的な行動例>が書いてございますけれども、運用機関に議決権行使などスチュワードシップ活動に求める事項や原則を示すということや、運用機関に対して投資先企業の状況の的確な把握と把握状況の報告を求めるということを記載しているということでございます。
 具体的には40ページ目に、DB運用ガイドラインにおきましてどのような記載になっているかということを御紹介しておりますけれども、特に運用機関に対して様々な取組を求めることが望ましいとされているということでございます。
 そのようなわけで、これまではどちらかというと運用機関に対してスチュワードシップ活動を求めるというところがございまして、必ずしも企業年金本体で受け入れていなかったというところもございますけれども、今後はもう少し企業年金本体での受入れを進めていけないかということでございます。
 41ページ目はこれまでの取組ということで、2017年に検討会の報告書を取りまとめておりまして、ガイドラインの見直し、ハンドブックの改訂などを行ってきておりますし、また、スチュワードシップ・コードそのものも随時改訂がなされているということでございます。
 このような取組を通じまして、42ページ目が受入れ状況でございますけれども、現在、59の企業年金が受入れ済みでございます。こちらは分母が約1万2000でございますので、非常に少ないと思いますけれども、改めてこのような資産所得倍増プラン、あるいはスタートアップ育成5か年計画もとりまとめられたタイミングで、改めてスチュワードシップ・コード受入れの意義であったり、現在の手続やその他の取組を含めて周知を行ってまいりたいと考えてございます。
 長くなりましたけれども、以上でございます。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいま説明のありました資料について、委員の皆様から御質問、御意見等があればいただきたいと思います。
 谷内委員、お願いします。

○谷内委員
 谷内でございます。
 ただいま事務局案として示されました資料1の14ページから16ページにかける今後の対応につきまして、全体の方向性に異論はございません。異論はないという前提の下で3点ほど意見を述べます。
 まず1点目、15ページの第三の柱で述べられました、助言対象を絞った投資助言業の解禁についてです。確定拠出年金における投資助言やアドバイスの解禁については、今回が初めて議論されるわけではなくて、9年前の2013年に確定拠出年金の法令解釈通知を改正する際に、パブリックコメント案に投資助言やアドバイスに係る規定が加わったと記憶しております。そのときは、パブコメ等に寄せられた意見等を反映した結果、実現には至りませんでしたが、当時の議論は割と参考になると考えます。もちろん、運営管理機関の兼務規制が一部緩和されたなど、当時からは規制や環境が変わった面もありますが、当時を踏まえた議論が必要ではないかと考えております。
 次いで2点目です。15ページの第七の柱に掲げられている顧客本位の業務運営の確保ですが、こちらも全体的な方向性に異論はございません。ただし、企業年金に適用する場合、企業年金の役割やそれまでの歴史的な経緯を踏まえる必要があると考えます。
 事務局からの説明にもあったとおり、企業年金では四半世紀あるいは30年以上も前から受託者責任のあり方が議論されてきまして、厚生年金基金において忠実義務や注意義務などの義務が1997年に制定され、現在の確定給付企業年金や確定拠出年金にも受け継がれています。
 一方で、顧客本位タスクフォースの議論は、私も資料や議事録などいろいろ拝見したのですが、あちらは金融庁の所管だからかもしれませんが、どうしても金融商品すなわちiDeCoやNISAの目線に偏っている面があり、その延長線上で確定給付企業年金や企業型DCにも顧客の利益の最大化あるいは最善利益義務の遵守徹底が提唱されているものと感じます。
 例えば、最善の利益を資産の極大化と置き換えた場合、百歩譲って企業型DCには馴染む部分があるかもしれませんが、確定給付企業年金には馴染みません。確定給付企業年金の資産運用の目的は資産の極大化ではなく給付の履行であり、債務に見合った収益を確保すれば資産の極大化は必要ありません。いずれにしましても、企業年金と個人年金、あるいはDBとDCといった役割の違いを踏まえた議論が必要です。
 最後に3点目です。スチュワードシップ・コードの受入れや、スタートアップへの資金提供の話がありましたが、スチュワードシップ・コードは導入から8年が経過しておりますので、そろそろ定量的な分析を踏まえた上で議論する必要があると考えます。資料1の42ページにも導入状況が記載されていますが、例えば、実際にスチュワードシップ・コードを受け入れた結果、投資行動あるいは収益率にどういった変化が見られたのか、データに基づかない議論をして受け入れることが受託者責任あるいは最善の利益の義務を果たしたことになるのか、そうした議論が必要になっていると考えます。
 以上です。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 3点御意見をいただきました。いずれももっともだと思って伺っておりましたけれども、2点目、確かにDB、DCを分けることなく、顧客本位とざっくり言われているけれども、こちら側では企業年金サイドではもうちょっとそれぞれの制度の特性を考えなければいけないということはそのとおりだと思います。
 スチュワードシップ・コードも、おっしゃるとおり、受け入れてどうなったのか、何がどう変わったのか、何がよくなったのかというのを知りたい気がします。もうちょっと言うと、そんなにいいものだったら、みんなもっと受け入れるだろうという気もしますので、その辺が、言われていることは分かるけれども、少しそういう分析を知りたいなと私も思っているところではあります。
 事務局から何か補足がありますでしょうか。

○大竹企業年金・個人年金課長
 ありがとうございます。
 スチュワードシップ・コードの関係は、今、部会長からコメントもいただきましたけれども、もう少しデータなり、分析が必要だということかと思います。これまでの経緯というか、まさにこの数にとどまっている理由みたいなものがあるのだと思いますので、それをまず分析した上で、どうしていくのかというところが必要だと思います。そういった対応をしていきたいと思います。ありがとうございます。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 大江委員、お願いします。

○大江委員
 ありがとうございます。
 私も、今回まとめていただきました資産所得倍増プラン等を踏まえた対応について、違和感は全くございません。
 ただ、実際の検討に当たっては、私的年金分野においてはもっと重要性の高い、検討しなければいけないこともあると思いますので、そういうことも踏まえて来年以降検討していくものと理解しております。
 その上で、示していただいた対応について具体的に検討していく上で4点申し上げたいことがございます。
 まず、第二の柱のiDeCoの手続簡素化の部分です。やはり普及のために手続簡素化は欠かせないと思います。今までも、国民年金基金連合会をはじめ、いろいろな関係機関が協力し改善されているやに聞いているのですけれども、例えば帳票の記入項目一つとっても、必須ではない登録事業者番号が残っていたり、まだ余地はあると思いますので、ぜひもう一段、簡素化、デジタル化を頑張っていただきたいと思います。
 2つ目が、第三の柱、第五の柱の柱に出てきている認定アドバイザーと金融経済教育推進機関の話です。こちらは企業型確定拠出年金の継続教育などへの影響が大変大きい話ですので、金融庁での議論を厚生労働省様としても注視していただいて、適宜こちらの部会にもぜひ共有をいただきたいと思っております。
 それから、第四の柱である雇用者に対する資産形成の強化というところですが、資産形成の支援強化をしていく上では経営のコミットが欠かせないと思っております。そのために、実は資産所得倍増プランでも、今回資料にも6ページの一番下のところに入れていただいておりますけれども、「人的資本可視化指針」に沿って雇用者の資産形成を支援する取組を積極的に情報開示していくという一文を追加してくださいと言って追加をしていただきました。企業型確定拠出年金の加入者にとっては資産運用ができる時間は刻々減っているわけで、継続教育が未実施というのは放置できないと思っております。
 ですから、人への投資の一つとして、企業型確定拠出年金はきちんと継続教育をしている、適切な商品を選定しているということを有価証券報告書等に書くというのが当たり前になれば、上場企業で継続教育を実施しない企業はなくなると思うのですね。ですので、ぜひこれが実行されるように、いろいろな形で厚生労働省さんとしてもサポートをお願いしたいと思っております。
 最後、中小企業への普及ですけれども、こちらも谷内さんからスチュワードシップ・コードの話がありましたけれども、ネックがあると思うのですね。実態として何がネックなのか。特に、商工会議所さんとか現場の方にお話を聞いて、何をしたらいいのかということをヒアリングした上で、具体的な、効果的な施策を検討すべきかと存じます。
 以上です。

○森戸部会長
 ありがとうございました。4点、貴重な御意見をいただいたと思います。
 iDeCoに限りませんけれども、手続の簡素化は必要だというのは、もう10年ぐらい言っているような気もするのですけれども、何でできないのか、どこをどうしたら一番いいのか、そういうことをそれこそ大江さんはじめ現場の方に伺って、何か少し根本的にやっていかないと簡素化もなかなか進まないのだろうなという気がしていますので、その辺の必要性も今伺っていて改めて思ったところでございます。
 事務局、何かあればお願いします。

○大竹企業年金・個人年金課長
 手続の簡素化は、こういうプランの柱にもなっているわけですし、我々としてもしっかりやっていくべき話だと思っております。
 それで、今回御紹介しましたけれども、企業年金プラットフォームを活用して事業主証明書とか現況確認を廃止する、これは我々としては非常に大きい手続の見直しだと思っていますので、これに合わせてその周辺も含めて、単に電子化するだけでなくて、そもそも省略できるものは省略していこうという基本的な考え方の下でやっていきたいと思います。令和6年12月の周辺でしっかりやっていきたいと考えております。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 前回お話が出ていて、企業年金プラットフォームにも関わると思うのですけれども、拠出する人がいろいろあったり、制度がいっぱいあったり、かなり複雑になっていて、これまでそれを何とかシンプルにできないかと思っていたのですけれども、それぞれの歴史もあるし、制度も別になっているので、なかなか難しいとなると、全体像を見られるような、それがプラットフォームなのかもしれませんが、ダッシュボードみたいに、それぞれにあなたはこういうのがありますみたいなものが見られるというのが、取りあえず複雑な制度で、いろいろ絡んでいるけれども、私に関係するのがこれというのが見られるようなのがいいのかなと、前回から今回の議論で思っていたところであります。それは私の感想ですけれども、今の話に続けて一言申し上げました。
 ほかにいかがでしょうか。
 島村委員、お願いします。

○島村委員
 ありがとうございます。
 私も基本的に賛成ですけれども、3つの点から意見を言わせていただければと思います。
 まず、中立で信頼できるアドバイスの提供の促進については、アドバイザーの方の中立性をどのように確保、担保できるのかというところが大事だと思っています。そのためには、アドバイザーになる方の身分保障がしっかりされている必要があると思いますし、アドバイスの内容としてはどういうものが想定されるのかというのも大事な視点かと思います。
 加入者としては、どう運用すればよいか、もっと言えばどの商品を選べばいいかということを聞きたいとは思うのですけれども、他方で事業主とか運管はそういうことを言うのは禁止されていて、では、今度できるアドバイザーについてはどこまでどういうアドバイスができるのかというところが気になっております。箱をつくって中身が伴わないということになると本末転倒になるので、しっかり加入者に役立つような仕組みになっていただけるとよいと思います。
 もう一点が、今の点にも関連しますが、通常の投資に関する運用とiDeCoや企業年金における運用がどこまで同じルールでいいのか、それとも独自の上乗せルールが必要なのかどうなのかというところにも問題意識を持っております。新しくできる機構でのアドバイザーの業務としても、老後に関わる資金だからより慎重にとか、長期分散の方向でとか、大事にしてもらいたい点を我々のほうでまとめないといけないのではないかという問題意識を持っています。
 最後に、受給開始年齢の上限の引上げについては、引き上げた場合は例えば80歳まで運用して80歳で受け取るということになるかと思うのですけれども、DCからの給付を老後の収入の中でどういうものとして位置づけるのかという問題に関連しているかと思います。公的年金に上乗せするものとして受け取るのか、それとも公的年金を繰り下げて、その繰り下げている期間のつなぎとして使うのか、どういうものを想定しているかに関しても受給開始年齢の問題は関係してくるように思います。
 高齢になれば資産運用が難しくなるという話があるかと思うので、そうすると、つなぎ年金として利用して、あとは終身の公的年金に移すということも考えられますが、もしそうだとすると、受給開始年齢の上限を引き上げる必要性はそこまで高くないのかもしれないとも思っておりまして、もっと運用し続けたいみたいなニーズがどれぐらいあるのかについてはぜひとも確認をしていただけるとありがたいと思いました。
 長くなりました。以上です。

○森戸部会長
 ありがとうございました。3点いただきました。
 アドバイザーの件は、確かに普通はこういう話は、現場で事実上広まっていて、それにどういうふうに規制をかけるかみたいな話だと思うのですけれども、あまりない話をどんと入れていくという話になっているので、いろいろ考えないといけないなという気はしております。
 2点目も非常に重要な御指摘だったと思うのですけれども、確かに金融経済教育推進機構ができて金融経済教育が国として進められるのでしょうけれども、それと企業年金、DCなりDBの運用、投資、資産形成に当たって知っていなければいけないことは、重なる部分もあるのでしょうけれども、違う部分もあって、島村委員がおっしゃったように、こっちで企業年金とか職場の話、もしくは労働者のやる話はこう違うのですよということをちゃんと向こうに意見を言わないと、もしかしたら、こんなことを言われても困るなというのは私も思っていたのです。現行法では投資教育の一定の規制がありまして、ああいうものがベースなのでしょうけれども、同じでいい点と違いを考えるべき点はちゃんと分けて議論していかなければいけないなとは思いました。ありがとうございます。
 事務局、何か補足はありますでしょうか。

○大竹企業年金・個人年金課長
 ありがとうございます。
 中立的なアドバイスの関係は、まだ詳細が固まっていないところもあると承知していまして、顧客本位タスクフォースのほうでも報告書はある程度まとまっていますけれども、やはり中立をどう考えるかというところは、全く関係機関から手数料を受け取っていない、経済的には独立した人に限るべきだという考え方もあれば、我が国の金融ビジネスの慣行として、そういったところまで成立させるのは難しいのではないかみたいな指摘もあるという中でいろいろ調整をしているということかと思いますし、新しくできる機構の役割についてもまだ調整をしているところかと思います。一方で、まさに箱だけにならないようにしていくということは全くおっしゃるとおりですし、年金に関係する部分は慎重に対応していく必要があるのだろうと考えております。年金に関する部分は、引き続きこちらの部会で御議論いただくというふうに考えておりますので、そういった形で対応していきたいと考えております。ありがとうございます。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 岩城委員、お願いします。

○岩城委員
 ありがとうございます。岩城でございます。
 私も、この方向性について違和感はございません。
 私のほうからは、顧客本位について意見を述べさせていただきます。第一、第二の柱については、人生は長く、多様化している中、誰にとってもある程度の資産運用は必要な時代で、NISAの抜本的改革とか恒久化というのは強く望みたいと思います。同時に、老後資金を合理的につくっていくことができるiDeCoの加入可能年齢の引上げなどの制度改革も必要だと思いますし、より使いやすく認知度を高め、多くの人に利用してもらうには何ができるかということをより具体的に議論を進めていきたいと思っております。
 その要にもなってくるのが、第三の柱、消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設ですが、必要なのは、「中立な」というより、顧客の立場に立って専ら顧客の利益のみを考えて必要なアドバイスができる、「顧客本位のアドバイザー」であるべきだと思います。資本市場で金融事業者、長期で安定した資金を調達して、また、家計は長期で資産形成をします。マーケットでは両者のパワーバランスが均衡することが重要で、そのためには立場の弱い家計をサポートすることが必要だと思うからです。
 今回、顧客本位タスクフォースの中間報告案でも、資料4の5ページ、137行目からですので後から御覧いただきたいのですけれども、そちらにも示されましたが、インベストメント・チェーンの販売会社と家計の間に独立した顧客本位のアドバイザーが入るということで、投資未経験者を含めた幅広い層の金融経済教育を推進していけると思います。
 プランでは金融経済教育推進機構の設置が掲げられていますが、まずは中立性をどう担保するのか、国民に分かりやすく公表することが必要です。あわせて、国が主体となって各省庁が連帯を持って、専ら国民のライフプランに合わせたマネープランの実現のために、自助努力への支援、金融リテラシー向上のための金融経済教育を目的にしてほしいと強く願っています。
 そして、機構が認定・育成する顧客本位のアドバイザーについても、先ほども島村委員がおっしゃっていましたが、何をもって顧客本位と定義するのか、その認定基準を公表する。そして、家計に対して何をしてくれる人なのかといったことも分かりやすく公表して、行く行くは認定者のリストやアドバイザー育成プログラムの公表なども必要だと考えています。
 これらの取組を継続して定着していくためには、十分な知識、倫理規範を正しく持ったアドバイザーがプロフェッションとして自立できることも不可欠です。有益なアドバイスが無料ではないという文化を醸成していくことについても、今後議論を深めていく必要があると思います。
 その際、誰もが必要なアドバイスを漏れなく受けられるように、例えば全国旅行支援のような助成をすることも一つの案なのかなと思います。ただ、あくまで国民一人一人が自分の将来の安定のために自助努力をしていくことを基本として考え、助成の在り方については今後よく検討する必要があると思っています。
 そして、第四の柱の企業における雇用者の資産形成の支援のための取組は、人的資本の戦略上も重要という点につきましては全くそのとおりだと思います。新人研修やキャリアアップ研修などに組み込んでいく実施企業にインセンティブを与えるなども検討して、職域から金融経済教育を普及していく具体策を議論できればと思います。
 あわせて、第七の柱にも関連しますけれども、金融事業者だけではなく、企業は企業型DCについて専ら受益者のために商品ラインナップ等についての検討をし、運営管理機関等の評価、そして必要に応じ、是正改善のために運営管理機関と対話をしていくことを積極的に進めていくことを、今一度、徹底確認していただきたいと思います。よろしくお願いします。

○森戸部会長 
 ありがとうございました。
 いわゆるアドバイザー関係について、まさに全体像を指摘していただいたという感じで、一々うなずいておりましたけれども、おっしゃったように、この話は国民一人一人が、もちろん公的年金もあるけれども、自分の老後に向けては自分が自助でやっていかなければいけないのだなというところから出発しないといけない。そのために、自分はよく分からないからアドバイスを受けないとねという流れがないといけない。だから、制度も必要ですけれども、そういう意識改革も必要です。ただ、これは結構大きな話で、反発もあり得ると思うのですね。なので、企業年金にとどまる話ではありませんけれども、考えなければいけない点は多いなと思って伺っておりました。
 事務局、何か補足があればお願いいたします。

○大竹企業年金・個人年金課長
 ありがとうございます。
 まさに、新しい組織をつくってしっかりやっていこうという対応姿勢の表れなのだと思っています。まさに、いただいたような大きい話にちゃんと取り組んでいくためにそういう仕掛けをしていこうということかと思いますので、中立的なアドバイスをちゃんと受けられるような仕組み、関係をつくっていくというところで、我々としても引き続き金融庁を含めて調整していきたいと考えています。ありがとうございます。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 では、小林司委員、お願いします。

○小林(司)委員
 ありがとうございます。
 まず、資産所得倍増プランそのものについて、話がそれるかもしれませんが、投資未経験者が投資を行わない理由を金融庁は以前調査していますけれども、余裕資金がないからという回答が過半を超えていたかと思います。そういう中でまず優先すべきは、私たちとすれば、持続可能で誰もが安心できる社会保障の確立や、持続的に勤労所得が上がっていく構造への転換などがそもそも必要だとの考え方が根本としてあります。
 そういう意味で、単に家計の資金を貯蓄から投資へ振り向けることを目的に、施策を弥縫策的にやっていくのは違うのではないか、との考えを持っていることを含みおきください。
 その上で、論点です。「今後の対応について」と14ページから書いてありますが、公的年金が目減りしていく中で、個人の資産形成の機会をもっと確保しなければならないこと自体は分かるのですけれども、一方で高齢期になれば貯蓄しようと考えることもよく分かります。給付が迫る年齢においてなぜもっと投資に振り向けないといけないのか。そんな疑問といいますか、疑念があります。
 また、iDeCo制度について、確定拠出年金法の第1条では「公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする」とされていて、前回も少し話題になりましたが、その辺りとの整合性はどのように取るのかということがあります。
 この資料の書き方だと、70歳まで引き上げることとするとの結論を書いているように私には読めまして、議論の方向性を今回確認するのか、結論を確認するのか、先ほどは70歳までの引上げを基本としつつ詳細要件は今後議論するとの説明でしたが、ここで結論を先に決めてしまうということなのでしょうか。そうすると、要件を詰めていって、実はいろいろ弊害があるのではないかといったときに、その議論を縛ることになりはしないかという辺りをまず教えていただいてもいいですか。

○大竹企業年金・個人年金課長
 ありがとうございます。
 基本的には、御説明したとおり、70歳まで引き上げるという方向で検討していくということかと思っています。ただ、まさにお話しいただいたとおり、いろいろ細かい要件を詰めていく中で難しいところが出てくるかもしれないというときに、少し見直す余地はあるのだろうと思いますけれども、基本的には70歳で、幅はいろいろあると思うのです。2号だけ上げるとか、1号、3号はそのままというパターンも可能性としてはあり得るのかもしれませんけれども、基本は我々としては全て70歳まで引き上げるという方向で検討していきたいということかと思っています。

○小林(司)委員
 議論の方向性の可能性に言及いただいたので、その辺は慎重に議論する必要があると思います。そういう意味で、どのように整合性を取っていくのかとの疑問は持っていることも含みおきいただけないかと思います。
 その上で、先ほどの中立的なアドバイスにも絡みますが、信頼できるアドバイスとして投資には必ずリスクがあるということを伝えていくことが必要だと思います。まして、高齢期にも加入可能年齢を引き上げていくのであればなおさらと思いますし、もちろん若い方々にもそうですが、その辺をしっかりと伝えるべきと思っております。
 それから、第四の柱として、中小企業において企業年金やiDeCoが広がるようにという記載もありますけれども、中小企業による企業年金の普及そのものをどのようにやっていくかについては、この部会で具体的な周知広報の取組をしっかり議論していくことが必要ではないかと思っております。
 以上です。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 1点目はもちろんそのとおりだということ。
 それから、確かにこの話は投資にはリスクがあるということは前提の話で、一々その話は出てこないけれども、当然そのことを前提としている話だということはもちろんだと思います。
 結局、突き詰めれば、投資もそうですけれども、さっきの自助努力の話もそうですけれども、言ってしまえば、人生はリスクがあるのだよと、当たり前なのですけれども、そういうことを国民が認識する話かなと思って伺っていました。
 ただ、2点目というか、事務局からもさっきちょっとありましたけれども、資料1の14ページの➀iDeCoの加入可能年齢の引上げについて、ここは「70歳まで引き上げることとする」と。おっしゃるように、「こととする」と書いてあるのは、基本的にこれでいいかという意味だと思います。ほかのところは「検討を行っていく」なので、そことは明確に書き分けているので、ここは70歳まで引き上げるという前提です。
 ただ、課長がおっしゃったように、いろいろ整備をしていかなければいけない、検討する問題はあるだろうけれども、70歳にするのだということは、今日、皆さんにある程度合意というか、方向性にオーケーをいただかないといけないかなと部会長としては思っております。
 小林司委員は、伺っていると、70歳にすることが悪いというのではなくて、その場合のいろいろな制度との整合性をちゃんと考えるべきだという御意見かなと思っていたのですけれども、そういうことでいいのですか。逆に70歳にすることに、反対ではないのでしょうけれども、懸念されている理由をもうちょっと特定して教えていただきたいのです。

○小林(司)委員
 おっしゃるとおり、個人資産形成の機会を伸ばしていくことは、公的年金が目減りする以上、必要なのだろうと思いますが、一方でこれまで確定拠出年金法の第1条にある「目的」にこだわってきたと思うのです。特に「公的年金と相まって」というところです。70歳への引き上げありきとなれば、今の国民年金の仕組みに照らして、前回もアイデアとして出されていたのかもしれませんが、整合性が取れる見通しが腹案としてあるのか、あるならばそれを知りたいと思いますし、せっかくの社保審の部会ですからきちんとした議論をしたほうがよいと思います。
 有識者・専門家の皆さんは違和感がなく、私にだけ違和感があるのはもしかしたら法律的にそういう知見がないからなのかもしれませんが、大切にすべきものは大切にすべきで、きちっとした説明を私たち被保険者にも分かるようにしてもらえたらと思っています。

○森戸部会長
 法律の専門かどうかとは関係なくて、なぜかというとまだ法律でどうするかを決めていないので。ただ、70歳まで上げることはいいことなのではないかという前提において、おっしゃったように「公的年金と相まって」というのは、相まってか、補完するか、それはどういう意味かという法の意味は考えなければいけないというのは事務局もさっき申し上げたとおりだと思います。
 ただ、その場合に、全く同じ年齢でそろっていて、上に完全に乗っている、それだけが公的年金の補完とか相まってなのか、そうではなくて公的年金が、島村委員がおっしゃった、つなぎで前にあるというのももしかしたら補完だし、相まってだし、それから、公的年金は加入可能年齢をすぎたけれども、その先もiDeCoに加入できるのも別に相まってでいいじゃないかと、私は個人的には思っているので、公的年金をどう補うか、どういうふうにお互い一緒に国民の老後を保障していくかというのは、いろいろな在り方があると思うのです。
 だから、この後、法律を仕組むときにどうなるかというのは、分からないところもありますし、それを詰める中で小林委員にも相談が事務局からあると思うのですけれども、70歳に上げること自体にそんなにここで絶対にまかりならぬということではないかなと、全体としてはそういう意見かなと思って伺っていました。
 ですから、もし本当にそこは駄目だというなら、それは言ってもらわないと困るというか、ここでこれには一応オーケーをもらわなければいけないかなと私は思っているのです。
 結局、同じ年齢でそろっていないと駄目だと思っていらっしゃるということですか。

○小林(司)委員
 先に結論があり、それについてどうしようという議論をあまりこういう審議会の場でしたことがなく、どちらかというと一緒に仕組みを考えていく、その結果結論があるというものだと思います。方向性として目指していく議論をしていくことは分かるのですが、先に結論が来て、具体的にはこれからということ自体に違和感があるのです。
 部会長がおっしゃる、70歳に引き上げることそのものについてはと問われれば、個人の資産形成の機会を伸ばすことそのものは否定いたしませんので、その点は申し上げておきます。

○森戸部会長
 分かりました。審議会の分野によっていろいろやり方はあると思います。これも、決してこれで決まりというわけではなくて、しょせん部会なので、この後どうなっていくかはもちろん分からないですが、大きな方向性として別に異論があるわけではないと伺いました。
 ただ、法律をつくるときにちゃんとそこをクリアにして議論をしてくれるのだなという御意見だと承りましたので、そのときにこっちにも相談しろよということだと思いますので、それはもちろん事務局としては再度やりますし、どうやって公的年金との関係を法的に整理するのかという話もちゃんと説明していただけると思います。
 だから、結論なのか、方向性なのかというのはごまかしではありますけれども、ざっくりとした結論であり、方向性かなという感じで何とか捉えていただくということでよろしいですか。

○小林(司)委員
 進めていただければと思います。

○森戸部会長
 すみません。ありがとうございます。
 事務局、何かありますか。

○大竹企業年金・個人年金課長
 前回もある程度御議論いただいたところで、このような文章にさせていただいたところもあると思います。一方で、御指摘いただいたとおり、もうちょっと全体像の中でどう位置づけられるのかということもありますし、さらに詳細な要件は大丈夫なのかというところもあると思いますので、その辺りの疑問にしっかりお答えできるように、今後、詳細な要件をお示しするときに、併せてそういったところもお示しさせていただいて、しっかり御理解いただいて、また、ある意味説明できるようにしていきたいと考えております。

○森戸部会長
 ぜひ、今のような御意見があったことを踏まえて、今後の作業を進めていただければと思います。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 冨樫委員、お願いします。

○冨樫委員
 ありがとうございます。
 大きく2つ御意見させていただきます。
 1つ目は、皆様からもう既にたくさん御指摘がございますが、「資産所得倍増プラン等を踏まえた今後の対応」の第三、第五の柱でございます。事業主における投資教育促進に向けて、金融庁と連携しつつ、中立的な認定アドバイザーを活用した場合に支援を行う仕組みについて周知し、活用を促していくと記載がございました。既に先生方が発言されていたように、認定アドバイザーの中立性と信頼性の確保というのは大変重要であり、大切な課題だと思っております。
 今後、この部会においてアドバイザーを活用した場合の支援の仕組みについても考えていくと思うのですが、その場合、たとえアドバイザーを活用した場合であっても、事業主の責任の範囲の明確化、つまり、アドバイザーを活用したことで投資教育をアドバイザーさんに任せきりということではなく、事業主の責任は変わらないことなども含め、加入者にとって本当に実効性のある投資教育の実現に向けて御議論できればと思います。
 それから、先ほども投資教育についてたくさんの先生方の御意見がございましたが、iDeCo制度においては国基連が加入者に対して投資教育を実施することが努力義務とされています。さらに、継続投資教育は運管や企業年金連合会に委託することも可能となっています。
 実際に実施されている投資教育の動画のコンテンツとかオンラインセミナーというのは、きっと工夫されていることと思うのですが、受講している側、私たちの側から見て、実効性のある投資教育と呼べるのかどうかは確認をする必要があると思います。
 もう一つ、企業型DCの事業主における投資教育の実施状況等に関する調査を実施していますという記載がございましたけれども、今後、この部会において、iDeCo加入者に対する投資教育についての実施状況の詳細や、投資教育を受けた加入者の意識などのデータの提示についても、検討いただければと思います。これは要望です。
 それから、スタートアップ育成5か年計画についても発言させていただきます。
 企業年金におけるスチュワードシップ・コード受入れの促進の方向性に関しては、もちろん異論はございませんが、資料にはGPIF等長期運用資金がベンチャー投資やインフラ整備などに循環する流れを構築するとの記載があります。国民年金法や厚年法では、積立金の運用については「専ら被保険者の利益のため長期的な観点から安全かつ効率的な運用を行う」とされています。GPIFの中期目標には他事考慮の禁止も明記されていますが、企業年金などに関しても従業員の意思が反映された上で、長期的、安定的な運用が大事だと思います。
 つまり、GPIFや企業年金、どちらに関しても受益者のために長期にわたり運用されることが大前提ですので、スタートアップとかベンチャー投資への循環という政策の目的のために年金資産が運用されるべきではないと考えております。
 以上です。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 4点とも一々もっともだと思ってうなずいておりましたが、特に3点目のデータの話は今後用意していただければと思います。
 それから、1点目、私もちょっと思っていたのですけれども、15ページの最初の中立的で信頼できるアドバイス提供の促進、第三の柱と第五の柱のところの「従業員が職域において中立的な認定アドバイザーを活用した場合に支援を行う仕組みについても周知し」のところですけれども、これは私が分かっていないだけなのだけれども、この仕組みは今あるということですか。それだけを教えてください。

○大竹企業年金・個人年金課長
 これは今後、新しい機構をつくった上で、そこへ中立的な認定アドバイザーを認定していくとか、それを活用していただくという枠組みをつくっていく。その際に何らかの支援はできないかということを検討しているという話ですので、もし仮にそういう話が決まったならば周知をしたいということかと思います。

○森戸部会長
 では、それがどんな仕組みかということは、別にそれ以上書いていない。

○大竹企業年金・個人年金課長
 書いていないですし、決まっていないですし、今後決まったときに、当然、事業主の方にも使っていただけるような仕組みにするのだと思いますし、使っていただけるように周知をしていくということです。

○森戸部会長
 分かりました。すみません。
 では、ほかの点で何か、冨樫委員の御発言にはよろしいですか。補足等があれば。

○大竹企業年金・個人年金課長
 最後の資金の話ですけれども、これはスタートアップ育成5か年計画の中でも、そちらにお金を流していこうというよりは、大原則として被保険者等の利益の観点から我々は運用するのですということが大前提の上で、結果としてそういうところにもお金が行きますねという記載になっています。そのような前提で、企業年金も同じ話かと思いますけれども、加入者等の利益のためというのが大原則としてあるということかと思いますし、そもそもの話として、ちゃんと意思が反映されるようなガバナンスにするというのがあると思いますけれども、そのような範囲内でこのような計画にも関与していきたいということかと考えております。ありがとうございます。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 確かにちゃんと読めば書いてあるのかもしれませんが、ばっと読むから、GPIFも企業年金もみんなスタートアップに突っ込むぞみたいに読めると、あまりよろしくないなと。そうは書いていないのですけれども、そういうふうなことではないということを今事務局にも改めて確認いただいたと思います。ありがとうございました。
 では、原田委員。

○原田委員
 ありがとうございます。
 感想とかも含めて3点ぐらいです。
 まず1点目は、今ちょうど最後に話題になりました顧客本位とスタートアップ関連のところに絡む部分で、冒頭に谷内委員がDBの話も少し触れられたと思うのですけれども、DCとDBはやはり毛色が違っていて、企業が運営したり、基金型として運営しているDBは、運用する果実を誰が取るか。最近は運用実績に連動するような給付も出てきていますので、そこのところはかなりグレーゾーンが出てきたと思っておるのですけれども、原則的にはDBで運用がうまくいく、運用収益が大きくなると、企業の負担が減るということで、直接的には加入者の給付が増えるわけではない。そういうことがありますので、若干毛色が違うということも踏まえて、スタートアップへの投資へどう回していくかということは考えていかなければいけないのではないかと思います。一方で、企業年金連合会等になりますと、運用がうまくいかなかったときの負担が直接受益者に回ってしまうので、そういうところと追加負担の義務がある企業が運営しているDBは少し考え方が違うと思いますので、そこも踏まえてうまく整理できればと思いました。
 それから、第四の柱に関してですけれども、資料でいうと15ページとかに出ているところですが、企業による資産形成の支援強化で、中小企業への企業年金の実施率を高めていくとか加入率を促進していくということに関しては、昔の厚生年金基金のように総合型という形態で中小企業が入るという基金が非常に少なくなってしまいましたので、そこは中小企業の企業年金の実施率の低下にストレートに影響しているところかなと思っております。
 先ほど資料のほうで徐々に増えてきているという御説明がありましたけれども、もっともっと増えていったらいいと私も考えておりまして、確定給付型の総合型の基金というのももう少し活用できないのかなと。
 その際に問題になるのが、基金として運営するとなると運営費用がそれなりに必要になってきまして、人数が少ないと基金として運営できないのですね。ですから、何千人とか入ってこないと1人当たりの運営コストが非常に高くなってしまって、厚生年金基金から確定給付企業年金に移行しなかった理由が、現場感覚からすると、人数が少なくて事務費の掛金が高過ぎると。通常の給付に回す掛金の2~3割という水準の事務費を負担しなければいけない、だから、やめましょうと。人数が多いところになりますと、1人当たりの負担は下がってくるのですけれども、そういう課題がありましてDBをつくらなかったという総合型の基金も多くありました。ですので、そういったことも含めて、加入促進とか総合型の基金が運営しやすいような支援を何かしら考えていければいいと考えております。
 それから、ちょっと細かいところに入ってしまいますが、第二の柱にありましたiDeCoの拠出限度額、受給開始年齢の上限の引上げの点についてでございます。
 iDeCoに限らず確定拠出年金の拠出限度額に関しては、必要性とか十分性といったところを踏まえて検討していく課題だという認識は持っておりますけれども、その中で、ちょっと勇み足的な発言になってしまいますけれども、一定年齢以上の限度額を引き上げるとか、先ほど加入可能年齢が上がるということを考えたときに、それなりの年齢になってから始めるという方が出てくるのではないかと思います。要は、収入が増えてからとか、家計に余裕が出てからとか、そういう形でスタートする方がいたときに、拠出限度額があってあまりたまらないのだったらやめようということも十分あると思います。
 正直、私はiDeCoに入っているのですけれども、最初、金額が少ないからやめようか、どうしようかと考えたこともあります。しかも、結構な年齢になってから入りましたので、積立期間も短くて限度額も少なく、大してたまらないなということでどうしようかと悩んだこともありますので、一定年齢以上に上乗せの限度額を設定するようなことや、諸外国であるように、総額管理で高齢からでも追いつけるようにするとか、そういった工夫はできるのではないのかと思っております。
 それと、iDeCoの限度額に関しては、働き方といいますか、1号、2号、3号の被保険者で限度額がそれぞれ異なっていて、これが合理的な差なのかというところについても改めて確認していきたいと考えています。
 企業年金のありなしで限度額が違っているということ。1号と2号の違いは非常によく分かるのですけれども、2号の中で企業年金があるないということで限度額が変わるということが、そうしておくべき必要性はどこにあるのかというところも疑問に思う部分であります。
 企業年金は、そもそも会社からすると報酬をどういう形で払うかということの一つの手段でしかないと思っておりまして、給与で払うのか、退職金で払うのかというところかと思います。そう考えると、従業員に対してどう払うかというやり方の違い、かつ、外に積み立てるのか、社内で持っているのか。企業年金なのか、退職金なのかで、いわゆる自助であるiDeCoの限度額が異なることは必ずしも必要ではないのではないかと個人的に考えております。
 税金の問題とかいろいろ絡んできて、なかなか整理するのが大変だということは十分認識しておるのですけれども、企業年金に関する税制とか、そういった取扱いについては、DC、DBを含めて、それなら退職金のほうが使い勝手がいいから退職金にしてしまおうとか、前払いの給与で払ってしまおうといったことにならないように、ぜひ整理していただきたいなと感じております。
 以上でございます。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 1点目、顧客本位と言っても受託者責任と言ってもいいのでしょうけれども、DC、DBの違いを踏まえるべきだと。まさにそのとおりだと思います。究極的には法的な忠実義務というものの中身の意味ということかなと思って伺っておりました。
 DB総合型というお話は、もちろんそのほうがいいと思うのですが、過去の経緯もありますので、そういうことも踏まえて検討事項だろうと思います。
 それから、最後のほうでおっしゃったこと、年齢が増えたら限度額が増えるというのは議論があるかなと思って伺っていましたが、総額管理的なのは考えてもいいような気はいたしております。
 資産所得倍増プランも、今日は70歳の話だけがメインというか、決めなければいけないのはそこでしょうが、書き方を見ると、資産所得倍増と言っているのだから、限度額を増やせよという気が素直にするのと、倍増すると言うのだから拠出が増えなければ駄目じゃんと思うのと、そうすると総額管理みたいなこともあっていいのかなと思います。
 それから、税の話もちょっとされましたけれども、資産所得倍増プランの書き方も、拠出時の課税の話、運用の課税、前提として今の特法税がない、凍結前提の話でずっと書いてあるので、これを読む限りは、特法税も廃止するという前提で書いているような感じで私は勝手に読んでいたのです。だから、資産所得倍増と言うのだったら限度額とか税金の話も当然考えなければいけないよねというのは私も思っていたところであります。
 最後のほうは余計な話ですけれども、事務局、何か補足はありますでしょうか。

○大竹企業年金・個人年金課長
 ありがとうございます。
 限度額については改めてしっかりと次の改正に向けて議論できればと思います。資産所得倍増プランの中でも少しでも上げられないかという議論はあったのだと思いますけれども、一方で、大きい枠組みとして、今御意見いただいたような差があるのを許容しつつ、少しでも上げるのか、あるいは包括的に全体として見直すのかというところがあったのだと思います。全体として見直すというお求めもある中ではありますので、そういう大きな議論を今後行っていくということかと思っておりますので、よろしくお願いします。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 では、藤澤委員、お願いします。

○藤澤委員
 藤澤でございます。
 事務局のほうから説明がございましたが、今後の対応については基本的に賛成いたします。特にiDeCoの加入可能年齢を70歳まで引き上げるという提案につきましては、働き方によらず公平な拠出機会を提供することにつながりますので、ぜひ前向きに検討いただきたいと思います。
 このような制度の改正と併せて重要になってくるのが、iDeCoについて知ってもらうという広報活動だと考えています。前回、森戸部会長のほうからも、加入可能年齢の引上げは高齢者だけではなくて若者にとってもいい話というコメントがございましたが、私も同じように考えています。若者にどうやってiDeCoのメリットを広報していくのかというのも重要なポイントだと思います。
 これはあまり報道されていないのですが、今年の3月に厚生労働省の年金広報活動が、ISSAと言われる国際社会保障協会、International Social Security Associationから特別優秀賞を受賞してございます。年金局が実施している広報活動がグローバルに評価されているということだと認識してございます。
 ただ、現在の広報活動の内容を見ると、多くが公的年金に関するものとなっていまして、ここにiDeCoを含む私的年金のコンテンツを入れることを検討いただけないかと思っています。
 例えば、QuizKnockの年金動画のクイズを見ると、ユーチューブで直近で88万回再生と、かなり多くの方が御覧になっています。この動画を大学で学生に年金を教えるときにも使わせていただいていますが、硬くないコンテンツなので学生からもよい反応をもらっています。
 デジタル化の話もございましたけれども、広報活動についても、パンフレットとかチラシなどの従来型の媒体だけでなく、若者が目にするような媒体も使ってiDeCoのメリットを周知していただきたいと思っています。
 年金局が実施している広報活動はグローバルに評価されておりますので、年金局の中で連携いただいて、私的年金のコンテンツの拡充だったり、特に非課税で長期分散投資ができるというiDeCoのメリットを若者に届けていくような工夫をしていただきたいと思ってございます。
 以上です。

○森戸部会長
  ありがとうございます。
 昨今たたかれることが多いのにそんな表彰をされていたとは。表彰されているのなら、それもちゃんとここも含めて御紹介いただければと思います。時間がないからそれは今度にしますけれども、今の藤澤委員の御意見についてコメントがあればお願いします。

○岡部総務課長
 広報関連ですので私からお話しします。
 ISSAから表彰いただいたのは、小学生向けの漫画の教材を作るなど、最近独自のことをやっていることが評価されたと理解をしております。
 おっしゃるとおり、若者といってもいろいろな層がありまして、社会人もありますし、大学生もありますし、今では中高生、さらに小学生まで、できるだけ階層を分けて、まず年金とは何かということを伝えていくことに我々は注力しているところです。
 その中身は、もともとの経緯もありまして、公的年金に対する信頼度が非常に下がっているということを憂いて、まずは基礎年金なり、老齢年金なり、障害年金の大切さを訴えていくというところから始めましたが、当然ながらその先には企業年金なり私的年金も対象に含めて考えるべきだと思います。
 ちょっと時間がかかりますが、次のコンテンツをつくるときにはそのような内容も入れようと考えているところですので、ここでの御議論を参考にして、どういうことができるかを考えていきたいと思います。
 以上です。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 では、小林洋一委員、お願いします。

○小林(洋)委員
 ありがとうございます。
 私どもとしても、全体の方向性としてはいいのかなと思っておりますけれども、意見や要望として、主にリスクと普及と教育の3点について、意見を述べさせていただきたいと思っております。
 まず1点目は、リスクということで、6ページから7ページに金融経済教育について書いてあるのですけれども、今ちょっとお話がありましたとおり、私もここのページとか今のお話で、若干話がそれますけれども、息子が高校生のときに投資に関する授業があったというのを家で聞いたのを思い出しました。そういった勉強も授業でやるのか、時代は変わったなというところで、改めて、ぜひ幅広い世代に金融経済教育の重要性を普及していただくような形でお願いしたいと思います。
 また、新たに創設される金融経済教育推進機構というのは、中立的な立場でということですけれども、こういったところにも大きな期待を寄せておりますので、より具体的に、また説明の機会をいただけたらと思っております。
 一方で、金融経済教育で、投資であるという中でリスクがあることは、ぜひ正しく伝えるべきではないかなと思っています。今のお話の説明を聞いていると、投資イコール資産所得倍増というのが前面に出ていて、リスクについてそれほど触れていないというか、それは教育だという形ですけれども、もうちょっとリスクについてしっかりと議論等々、もしくは表現をしていくことが重要ではないかなと思っています。
 前回も私どもは申し上げているのですけれども、企業における年金制度の導入・拡充を進めるアドバイザーとして、私ども商工会議所が運営しているDCプランナー制度というのがございますので、ぜひこの辺も積極的に活用する御検討をしていただければと思っております。
 2点目は普及・促進についてです。24ページにiDeCoプラスの実施状況の表があるのですけれども、対象者と事業主共に非常に伸びているのですが、よくよく数字を見てみますと、単純に割り算をすると、参加が1事業主6人程度です。約2年前に従業員規模300人以下という形で増やしている割には6人という形でかなり少ないので、ぜひそういった事情もしくは普及という観点に関して、教えていただけたらと思っております。
 また、27ページにiDeCoに関する広報の取組という形で記載がございますけれども、こういったホームページやチラシの配布だけでは、なかなか中小企業の経営者に届いていないということを考えるべきではないかと思っております。実効性を上げるために、中小企業と取引のある金融機関、もしくは私ども商工会議所等の活用を、ぜひ普及促進策の一環として検討していただけないかなと思っております。
 最後に、3点目の教育という中で、31ページの企業型DC実施事業主等による継続投資教育の実施状況というところですけれども、実施の有無については、この図から6割方が実施しているということを理解したのですけれども、より重要なのは従業員の教育の方法だと思います。継続教育の方法について把握していく部分があれば参考にしたいので、具体的な事例等をお教えいただきたいとともに、従業員の満足度が高い事例など、そういった事例がありましたら、横展開をして効果的な施策につながるのではないかと考えておりますので、ぜひご検討のほどよろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 いろいろと貴重な御指摘をいただきました。確かに金融経済教育が本当に国民にとって大事なのだったら、それは学校でもやったほうがいいよねという話にシンプルにはなりそうな気がしますし、最近はそういう講義も割とあるように伺っていますけれども、内容とかも本当は検討しなければいけないのだろうとは思います。
 幾つか事務局に要望というか、御質問があったと思いますので、コメントがあればお願いします。

○大竹企業年金・個人年金課長
 ありがとうございます。
 リスクの関係は、我々としても正しく伝えていくのだと思いますし、資産所得倍増プランもみんながみんな全員投資してくれという話ではないと思っていて、もちろん年齢とかそれぞれのライフプランに応じてある程度は差があるのだろうと思いますので、全ての預金を投資してくださいということではないと思っています。そういうことも含めてしっかりお伝えするということかと思いますし、リスクはあるといっても、長期・分散・積立でやっていくとリスクも大分軽減されるのですよみたいなことも含めていろいろお知らせしていくのが大事なのだろうと我々としても思っています。
 あと、iDeCoプラスのお話をいただきまして、1事業者当たり6人程度になってしまうというお話がございました。これは中身を見ますと、今のところ5人以下の事業所で入っているところが多いというところもあって、そういう意味で平均して6人というところは、それほど極端に少ないわけではないと思っています。一方で100人から300人に上限を引き上げたわけですけれども、そこの部分の加入は必ずしも進んでいないようなので、ここへの周知は今後一つ大きいポイントなのだろうと思っています。
 まだ施行から時間がそれほどたっていないところもあると思います。そして、そういう300人規模のところで必ずしも300人全員が入るわけではないということも当然あると思います。今の段階では極端に低いというわけではないのですけれども、もう少し上げていく余地はもちろんあるのだろうと思いますし、その周知に当たっては商工会議所さんも含めて協力させていただければと思います。
 今のところ、どちらかというと金融機関任せみたいなところがあるのかなと我々は思っていますので、お願いするならもう少し強くお願いしていくことを含めてやっていきたいと思います。
 あと、金融経済教育は、様々な団体で事例を御紹介いただいているところもありますので、我々としてもそういう事例を御紹介したり、当然、この場でも今後議論のポイントになるのだろうと思っています。ありがとうございます。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 リスクの点は、事務局もおっしゃったとおりで、ちゃんとリスクのある話だというのを踏まえなければいけないのでしょうけれども、他方で、資産所得倍増プランに前向きなムードも必要でしょうから、小さい字で実はリスクがありますとつけるのもよくないから、それはそれで、こういうところではそういうこともしっかり踏まえて議論しましょうということかなと思います。
 あと、iDeCoプラスの点は、私はここで何度もiDeCoプラスは別に中小企業に限る必要はないのではないかとよく言っていたのですけれども、今伺っていると、上限を300人にしてもそっちは増えていないと伺って、だから、そこは大企業に広げてももしかしたらそんなに増えないのかもしれないということも言えるし、ではそれは何なのかという話と、他方で、5人とか本当に小さいところでの加入が進んでいるというのは、ある意味いいことでもありますよね。そういうところにもこういう話が広がっている。そういうところの背景事情なりも、今おっしゃいましたけれども、今後確認できればと思って伺っておりました。ありがとうございます。
 では、小林由紀子委員、お願いします。

○小林(由)委員
 ありがとうございます。
 大きな方向性については理解できるのですが、幾つか気になる点もありますのでコメントさせていただきます。
 まず、資料の14ページに記載されたiDeCo制度の改革についてです。前回の部会でも申し上げましたが、iDeCoについては公的年金の上乗せという位置づけにあると理解をしており、加入可能年齢の引上げをなし崩し的に行うべきではないと考えます。国民年金の被保険者であることを加入要件としてきたこれまでの取扱いとその背景について、改めて整理した上で議論する必要があると認識しております。
 また、拠出限度額については、iDeCoだけを取り出して議論をするということではなくて、企業年金、個人年金を通した将来像を検討、明確化した上で、全体として引上げを実現していくべきと考えます。
 その際には、2021年度の税制改正の中で確定給付企業年金も含めた拠出限度額が設定されたことで、一部企業年金制度では制約を受けた状態にあることにも留意すべきと考えます。
 次に、資料の15ページに記載の金融経済教育の充実についてです。事業主における投資教育促進に向けて、関係団体等とともに検討し、取組を進めていくとありますが、これがiDeCoやNISAといった個人が任意で加入する資産形成手段についてまで職域で教育を行うという趣旨であれば、そこには少し違和感があります。
 資料の35ページにも記載がありますように、少なくともiDeCo加入者への投資教育は一義的には国基連さんが対応するものだと認識しております。29ページで御紹介いただいているような企年連との連携による継続投資教育などについて、さらなる周知拡大を期待するところです。
 一方で、企業型DCにおける投資教育は、各社の制度状況に基づいて制度加入者の運用商品選択を支援することが目的だと認識しており、それぞれ制度ごとに果たすべき役割を踏まえて対応すべきと考えます。
 最後に、16ページに記載のスチュワードシップ・コードについてですが、各企業年金は現状においてもガイドライン等に沿って受託者責任の下で管理運用業務を行っています。手続の簡素化についてはコードの受入れの促進に資すると考えますが、受入れを行うかどうかは、各企業年金が自律的・自発的に判断するものであって、強制するものではないと考えます。
 さらに、資料の中には、一定規模以上の資産残高を有する企業年金について受入れを促進するという記載がありますが、企業年金全体ではなくて、資産残高で線引きを行うことには違和感があるということを申し添えておきたいと思います。
 今後、公的年金の給付水準低下が見込まれる中で、退職後の生活や資産における私的年金の重要性はますます高まっていくことを踏まえますと、現下の優先課題はその普及・拡大にあると認識をしています。第18回の本部会でも、企業年金の実施意欲をそぐ改革はすべきではないという旨が整理されましたが、改めて過度な要請、規制を行うことで制度の普及・拡大が阻害されることの無いように留意をいただきたいと考えます。
 以上です。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 特に1点目、方向性としては70歳の話は賛成だけれども、これまでの国民年金、公的年金との関係をきちんと整理してほしいと。これはさっき小林司委員がおっしゃったこととも同じですので、これは労使が一致しておっしゃっているので、非常に重い意見なので、事務局のほうで当然やられると思いますけれども、きちんと整理をした上でこの話を進めていただければと思います。
 2点目、確かに任意加入の制度まで職場でやれと言われてもというのはそのとおりではありますが、他方で、さっき大江委員とかもおっしゃっていましたか、職場でそういう教育をすることがエンゲージメント、言ってみれば経営とか人事管理上プラスにもなり得るのではないかという観点もあるという話もあったと思うのです。
 他方で、労働者としては、これとこれで運用しているのに、こっちは知りません、企業はこっちだけですというのも、せっかくならトータルでどうなのかを教えてほしいよねというニーズもあるかなという気がします。
 だから、そこは難しいですけれども、小林由紀子委員の御指摘はもっともですので、そういうすみ分けというか制度がある中でどういうふうに投資教育なりをしていくかというのを考えなければいけないという御意見だと承っておりました。
 事務局、何かあればお願いいたします。

○大竹企業年金・個人年金課長
 まさにおっしゃっていただいたとおり、役割分担をいかにしていくかということかと思います。企業型DCの継続教育を行うにしても、ベースとなる部分は多分やっていただいているのだと思うので、その部分をもう少しライフプランの中でどう位置づけるかみたいな話も含めて、ベースとなる部分を新しい機構なりアドバイザーの方なりを活用していただいてやっていただくというのが基本的なコンセプトなのだろうと思いますので、今までやっていたものがなくなるということではないと思っています。役割分担をしていきましょうということかと思います。ありがとうございます。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 それでは、オンラインの委員の方で何かありますか。途中で聞こうと思ったのですけれども、効率的にと思ったら結局最後に回ってしまってすみません。
 山口委員、お願いします。

○山口委員
 ありがとうございます。
 皆様の御議論、私も同意見の部分が多々あります。
 2点お伝えしたいと思います。1点は、公的年金と私的年金の関係は、私的年金の位置づけを考えていくときに重要な点であると思います。確かに、公的年金の所得代替率は下がるという見通しでありますけれども、公的年金における給付の十分性についてはきちんと議論していただきたいということを私も考えております。
 そのことを前提として、私的年金をどう位置づけていくかというところは、これまであまり意識的に議論をする必要がなかったのか、されてこなかったのかは分かりませんけれども、そこを今後に向けてどう考えていくかということを、今、この部会としても考えていく時なのかと改めて思っております。
 その上で1点、金融経済教育に関してです。最近、iDeCoとNISAがセットで報道される場面を度々目にするようになってきていますけれども、皆様がおっしゃるように、iDeCoとNISAは年金資産であるというところでちょっと違うなということも感じております。
 というわけで、教育を行っていくときにも、金融商品であるということは申すまでもなく、年金資産ということの位置づけ、特性ということは基本的な部分として理解していく必要があると考えます。
 年金資産の特性という点で言えば、前回も森戸先生もおっしゃいましたが、労働条件とか働く人の権利という部分もありますので、そういう点も考えていくということがあります。教育という点からは、今、加入可能年齢の引上げが議論になっていて、このペーパーの14ページに、幅広い方々が公平に老後生活に備えることができる環境をつくるという考え方が示されています。ということは、それを支える教育についても、どういうところで働いて生活していても公平に金融経済教育を受けられる、学ぶ場があるように社会的にしていかないといけないということだろうと思います。
 学校段階では、2022年、本年4月から学習指導要領で金融経済教育の充実ということが行われておりますので、まずは学校段階で基礎的な部分の教育をきちんと位置づけて行うことが、これも最近の話でありましょうから、若い人に向けて腰を据えてやっていく必要があると思います。
 実際に、生活のお金のこととか、さらに先の老後の資産形成というと、お金を自分で本格的に管理するようになるのは社会人になってからと考えますと、働き始めてからの継続的な教育はさらに重要だろうと思っています。まずは職場でやっていただけるといいと思います。しかし、職場で前回のアンケートなども、大きな企業であればある程度実施できていることがうかがえる一方で、中小企業とか人材の確保がなかなか難しいだろうと思われるようなところでは支援が必要ではないかということも見てとれます。
 したがって、職場と同時に地域で、どのようなところで働いて生活していても学ぶ場があるという環境を整えていくことを、教育の仕組みを考えていくときにも目配りをして仕組みを考えていけるといいと思っております。
 以上です。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 公私年金の連携なり、整合的な位置づけの在り方というのは、既にほかの委員からも御指摘がありましたが、改めて重要だということを御指摘いただいたと思います。
 確かに、おっしゃるようにiDeCo・NISAとセットでいろいろなところで出てくるので、何となくそういうふうにセットで捉えていますけれども、それぞれ性格の違うものだということはきちんと認識をする必要があると。そのとおりだと思います。
 あと、私は知りませんでしたが、ちゃんと学習指導要領に金融経済教育の話も入っているということなので、まさにそういうふうに話は動いているのだなと伺っておりました。ありがとうございます。
 事務局、何かあればお願いします。

○大竹企業年金・個人年金課長
 ありがとうございます。
 金融経済教育はプラットフォーム的なものをつくっていこうということで、これは新しい機構をつくるという話もございます。そういう中でNISAなども含めていろいろ周知をしていくのだと思いますけれども、iDeCoはまさに途中で引き出せないという意味でかなり明確なメルクマールもあるのだと思いますので、そういう辺りも含めてしっかりと御説明していくということかと思っております。ありがとうございます。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 では、金子委員、お願いします。

○金子委員
 発言の機会をいただき、ありがとうございます。
 私のほうからは、資料1の14ページ、➀から➂についてお話しさせていただきたいと思います。基本的にいずれも賛成です。この場では別の視点を提示し、今後の検討課題の提案みたいなことをお話しさせていただきたいと思います。
 1点目は➀の加入可能年齢の引上げに関連することですが、皆さんがおっしゃるとおり、働く期間の延伸に合わせてDCに加入し続けられる選択肢を用意しておくことは大切だと思っています。
 ただ、現実には60歳のときに既に受給の裁定請求を行ってしまう加入者はかなり多いと聞いております。これは、何名かの知り合いの運営管理機関の方に聞いた限りですが、例えば、もともと59歳時点で加入者だった方を100とすると、60歳の段階で裁定手続を行ってしまう人が6~7割に達するとか、63歳までには7~8割に達するという感じでした。一般的な傾向と言えるまで広く聞くことはできませんでしたので、もし事務局のほうで情報を持っているのならば、いつかこの場でも御紹介いただきたいと思っております。
 この場は、仮にそうだとするということを前提でお話ししたいと思うのですが、資産所得倍増プランが期待するような資産シフトをこの世代、60代で起こそうとするのであれば、DC制度としてはもうじき受給者になる人に対して、受給してからも運用し続けられるという選択肢を知らせることも大変重要だと思っております。このことは、資産所得倍増プランを離れて、DC制度あるいはDC加入者にとっても大変大事なことだと思っております。
 伝えるべき内容としては、年金受給に当たって、年金として受け取りながら資産運用を継続することの重要性とか、あるいは一時金受給の場合には受け取った給付金をNISAなどの投資優遇制度を利用しながら運用することの重要性が挙げられると思います。
 法令解釈通知などに記載し、事業主などに対応してもらう方法もありますが、今であれば、先ほど来、出てきている金融経済教育推進機構と協力し、事業主には機構に相談する選択肢があるということを加入者に示すことを義務づけるということも考えられるのではないかと思っております。
 金融経済教育推進機構の一つのモデルであるイギリスのMaPSでは、50歳以上のDC保有者に対して引き出し方の選択肢について無料のガイダンスを提供しております。日本でも取り入れる余地はあるのではないかと思っております。
 なお、DCを年金化して受け取ることに関して硬直的過ぎるのではないかという問題意識も持っております。現状、年金計画を最初に提出させて、原則としてその後変更できないというのはいかにも使いにくく、こういった点もDCにおいて一時金受け取りの割合を高めていることにつながっているのではないかと思っていますし、DCという安価な運用環境を使い続ける人を少なくしているのではないかと思っています。制度創設から20年以上もたった今であれば改善の余地があるはずで、今後の議論の対象にしてもよいのではないかと思っております。
 2点目は、➁のiDeCoの拠出限度額の引上げに関することです。限度額そのものを引き上げることができれば、それにこしたことはないと思いますが、それ以外にも、現在では、先ほど来森戸部会長もおっしゃっておりましたけれども、年間限度額は変わらなくても生涯拠出額を設定するという考え方もあるのではないかと思っています。
 現在検討中ということなのですが、NISAでは抜本的に拡充する中で、生涯投資額の管理をつくろうとしていると聞いております。これが成功すれば、iDeCoをはじめDCにも生涯拠出額を管理していくという選択肢もあるのではないかと思っております。
 最後に3つ目、iDeCoの手続の簡素化についてです。加入手続の簡素化は、iDeCoの新規加入者の水準に影響する重要な要素だと思っております。この観点から、企業年金プラットフォームが予定どおりの時期に稼働できるよう、念を押してお願いしたいと思っています。事業主証明の廃止により、現在iDeCoの加入申込時の障害の一つがなくなることになります。もう一つの障害は恐らくなじみのない記載項目が多いことだと思いますが、これに対してはマイナンバーなども絡めた、もう一段のデジタル化に期待したいと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 受給しながら運用という話もありましたけれども、今日は受け取るときの話はあまりできていませんが、かなり具体的な御提案もいただいていましたけれども、その点は重要なポイントだと思います。
 生涯拠出額の管理みたいな話も、さっきああいうふうに言っておいて何ですけれども、NISA・iDeCoを並べているのだったらiDeCoのほうも拠出額を柔軟に管理するのを考えてもいいのではないかということも言えるかなと思って伺っておりました。
 事務局、何かあればお願いします。

○大竹企業年金・個人年金課長
 ありがとうございます。
 受け取り方について議論する際にいろいろデータも提示できればと思います。DCの老齢一時金の受給時期は、企業型と個人型を分けたデータではないのですけれども一部のRKから聴取した限りにおいては、60歳で受け取っている方が2021年度の数字で68.5%ということで約7割となっています。その後、61歳で5.8%、62歳で4.4%と、5%前後の数字が並んで、65歳で6.8%ということで、ここまでで累計95%ですので、7割の方が60歳で受け取っているということかと思います。
 これがいいのかどうかとか、その方のライフプランの中でどう位置づけているかということもあると思いますし、受け取り方は一時金なのか年金なのかということもあるかと思いますけれども、その辺りを今後議論していきたいと思います。
 以上でございます。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 それでは、渡邊部会長代理、ありますでしょうか。

○渡邊部会長代理
 御説明とか、いろいろありがとうございました。
 皆様の意見を伺っておりまして、もっともだということが多くて、私から申し上げることはほとんどないという状況でございますが、少しだけコメントさせていただきます。
 今回の議論の発端が、資産所得倍増プランにおいて企業年金や個人年金が主要な柱として位置づけられたということがありまして、その資産所得倍増プランとの関係から企業年金、個人年金がこういった役割を果たしてほしいといった方向性が示されている点があろうかと思います。ですが、企業年金、個人年金は老後の資産形成といった大きな目的があるところを忘れずに今後の方向性を議論していく必要があろうかと改めて思っております。
 そういった観点からいきますと、先ほどから議論の中で出てきておりますが、中立的で信頼できるアドバイス提供の促進とか金融経済教育の充実といった観点も、老後の資産形成であるといったところからどういった提供体制が望ましいのか、そういったところから議論を進める必要があるのではないかと思いました。
 さらに、資産所得倍増プランではDCという確定拠出型のほうに主眼が置かれた書かれ方をしておりますが、企業年金といった場合にはDBという確定給付型も重要な役割を果たしているといったところから支援の在り方を議論することも必要であろうと改めて思っているところでございます。
 私からは以上です。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 1点目、まさにもっともでございまして、当たり前ですけれども、企業年金、個人年金、こちらの部会で制度の特殊性を踏まえた議論、資産所得倍増プランとして尊重するとしても、ちゃんとこちらの議論は必要 だよということはおっしゃったとおりだと思います。
 事務局、何かありますか。

○大竹企業年金・個人年金課長
 まさに老後の資産形成を促進していくという視点を忘れずにという観点から、当然、厚労省も関与していくということかと思っております。ありがとうございます。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 それから、オブザーバーのほうから今日御発言の御希望があるように伺っております。
 松下理事長、お願いします。

○松下国民年金基金連合会理事長
 国民年金基金連合会の松下でございます。
 皆様の御説明、ありがとうございました。2点申し上げたいと思います。
 まず、資産所得倍増プランの方向性については、特段大きな異論はございません。
 この中で触れてある項目とも関係するのですけれども、皆さん御案内のとおり、今年度は2年前の法改正施行の年に当たっておりまして、4月以降、年内に3回、再来年の2024年にも1回ということで、段階的な法改正の施行が実施されます。その中で、先ほど70歳までの加入可能年齢の引上げというお話がありましたが、本年5月には65歳までの加入可能年齢の引上げ対応を実施したところでございます。
 この法改正の効果という意味では、半年間という短期間ではありますが、5月から10月までの60歳以上の新規又は継続加入者は約5万人いたということでありまして、この間の新規加入者数の実績が全体で約30万人でありますので、これと比較いたしますと、新規加入者全体の約6分の1に相当する規模の方が60歳以降もiDeCoに加入をしていただいていることになります。今後についても、実績面での分析、モニタリングを継続していく必要があるかと考えております。
 もう一方で、加入可能年齢の引上げが私どもの実務面でどういう影響を与えているかという点について若干触れさせていただくと、一つは加入に当たっての審査項目とか、加入資格の確認事項の増加という状況がございます。また、それに伴うシステム開発工数の増加、あるいは事務工程の増加、複雑化といった部分に影響を与えている面があるということを指摘しておきたいと思います。
 私どもとしては、今申し上げた法改正による制度の普及・推進面での効果と、実務面での実際の影響と、この両面をしっかり考慮していくことが必要であるということを関係者の皆様とも認識の共有化をしたいと思います。
 それから、今後のタイムスケジュールを考えていきますと、今申し上げたような、iDeCoそのものの制度的な改正要因に加えて、これも御案内のとおりですが、政府の推進するデジタル化への対応も控えております。そういう意味では、複数の対応が必須となる状況の中で、私どもとしてはiDeCoの手続の簡素化を進めていく必要があるということで、今後、十分な準備期間を持って対応していくということにぜひ御配慮をいただきたいと思います。
 それから、今後の制度改正の詳細を詰めるに当たりましては、できるだけ簡素な仕組みになることが今申し上げたような実務面の課題の解決につながるということと、ひいては加入者の皆さんの負担の軽減、利便性の向上に資すると考えているということであります。
 もう一点申し上げたいのは、これも御案内のとおりでありますが、私どもはiDeCoに加えて国民年金基金制度の運営にも携わっております。1号被保険者の公的年金を補完する制度としてこの普及に努めているわけですが、両方の制度に関わる立場から申し上げますと、この2つの制度はDCとDBという違いこそあれ、そこに制度としての優劣はないと私どもとしては理解をしておりまして、加入に当たっては、まさに加入者自身のリスク許容度とか、運用に対するリテラシーの違いなどによって、どちらか、あるいは両方ということもあるかもしれませんが、選択されるということではないかと思っております。
 しかしながら、最近の状況を俯瞰しておりますと、iDeCoの拡充、あるいは2号被保険者の年金の充実に議論が偏っているのではないかとも感じております。ぜひとも両制度の違いとか被保険者区分の間において偏りのない、バランスの取れた取扱いになるように、今後の議論におきまして十分な御配慮をいただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 確かに、国民年金基金の話も忘れずにちゃんと考えなければいけないですね。
 それから、全体として簡単に理事長のおっしゃったことを翻訳するなら、そっちはいろいろ勝手に決めるけれども、現場は大変だからちゃんと配慮してくれということだったかなと。ちょっと翻訳し過ぎましたけれども、ちゃんと国基連さんと連携を取ってやっていかなければいけない話だということは言うまでもないことだと思います。
 事務局、何かありますか。

○大竹企業年金・個人年金課長
 まとめていただいたとおりでして、プラットフォームの運用も含めて、国民年金基金連合会の皆様、企業年金連合会の皆様、また関係機関、関係団体の方に御努力をいただいて施行も行ってきているというところがございますので、引き続き実務を踏まえた議論を行っていければと考えております。

○森戸部会長
 ありがとうございます。
 鮫島理事長はよろしいですか。
 ありがとうございました。
 まだまだ御意見はあるとは思いますけれども、本当は2回りぐらい意見をしてもらいたいと思っていたのですけれども、何でできないのだろうと思ったら、私がちょいちょいしゃべるからだということが分かりましたので、あまり言えませんけれども、一応時間も来ましたので閉会したいと思います。
 本日は、資産所得倍増プランやスタートアップ育成5か年計画を踏まえた今後の対応方針について事務局から資料を提出いただきました。いろいろ重要な御意見もいただきましたし、宿題もいただきましたが、何か大きな反対はなかったと理解しております。
 資産所得倍増プラン等を踏まえた今日の議論ですけれども、もちろん70歳引上げとか、ある程度方向を決めたこともありますが、全体としていろいろな企業年金、個人年金に関わる論点というのですか、メニューをばっと出していただいた。さらに皆さんに議論していただいて、意見をいただいて、いろいろな検討ポイントがばっと出たという印象があります。
 これからは、これを踏まえて、もちろん70歳の話も検討しなければいけませんが、事務局のほうで今後どういう点に絞って議論していくのか、どういう方向にしていくかということを考えていただくことになりますので、それはまた皆さんにもお知恵をいただければと思います。本日の意見を踏まえてさらに事務局で検討していただいた上で、改めて今後の部会でも議論していくことになるかと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 では、ちょっと時間を過ぎたようですが、本日の議事は以上で終了といたします。
 今後の予定について、事務局からお願いいたします。

○大竹企業年金・個人年金課長
 ありがとうございます。
 次回の議題や開催日程につきましては、追って御連絡させていただければと思いますが、年内は今回で最後というつもりでおります。
 以上でございます。

○森戸部会長
 ありがとうございました。
 それでは、第20回「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」を終了いたします。御多忙の折、皆様お集まりいただきましてどうもありがとうございました。