2022年10月11日 第180回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年10月11日(火) 14:00~16:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

公益代表委員
荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、藤村委員
労働者代表委員
大崎委員、川野委員、北野委員、櫻田委員、東矢委員、冨髙委員、八野委員、世永委員
使用者代表委員
池田委員、鬼村委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、鳥澤委員、兵藤委員、山内委員
事務局
鈴木労働基準局長、梶原審議官(労災、建設・自動車運送分野担当)、古舘総務課長、松原労働条件政策課長、竹野監督課長、岡田過重労働特別対策室長、長澤労働条件企画専門官

議題

  1. 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の在り方について

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第180回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加、双方で実施をいたします。
本日の委員の出欠状況ですけれども、公益代表の佐藤厚委員、水島郁子委員、両角道代委員については御欠席と承っております。
カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
本日の議事に入りたいと思います。
本日の議題は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の在り方について」です。
本件については、先日開催された自動車運転者労働時間等専門委員会において報告がとりまとめられたところでございます。
自動車運転者労働時間専門委員長でいらっしゃる藤村委員より、まず御報告をお願い申し上げます。よろしくお願いします。
○藤村委員 分かりました。藤村でございます。御報告申し上げたいと思います。
自動車運転者労働時間等専門委員会においては、令和元年12月より検討を開始いたしまして、本年9月27日の委員会において報告をとりまとめたところでございます。この報告は、自動車運転者の拘束時間等を定めた改善基準告示の見直しの内容について議論し、それをとりまとめております。
詳細につきましては事務局から説明をさせていただきます。お願いします。
○荒木分科会長 それでは、事務局から説明をお願いいたします。
○監督課長 監督課でございます。
資料1、2と参考資料が3種類ございます。資料1が自動車運転者労働時間等専門委員会の報告で、9月27日の委員会においてとりまとめられたものでございます。資料2が専門委員会の検討状況ということで、検討経緯や委員会報告の概要をまとめた資料となっております。
資料№2に基づき御説明させていただきます。1ページ目をお願いします。
改善基準告示の制定経緯と主な内容です。トラックなどの自動車運転者については、従来から長時間労働の実態が見られ、その改善が求められてきました。自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、いわゆる改善基準告示でございますけれども、こうした自動車運転者の労働条件の向上を図るため、その業務の特性を踏まえ、全ての産業に適用される労働基準法では規制が難しい拘束時間、休息期間、運転時間などの基準を定めたものです。
制定の経緯としては、昭和42年に局長通達が策定され、その後の見直しを経て、平成元年に大臣告示の形式にすることで労使が合意し、改善基準告示が策定されました。この告示では、トラック、バス、タクシーといった業態ごとに基準を設けておりまして、例えばトラックに適用される主な内容としては、1か月の拘束時間は293時間、1日の拘束時間は原則13時間、最大16時間などとなっています。
施行に当たっては、労働基準監督署において監督指導を行うほか、国土交通省とも連携し、労働基準監督署と運輸局との合同監督や違反事案の相互通報を行っております。
2ページをお願いします。今回の改善基準告示の見直しの経緯でございます。平成30年に成立した働き方改革関連法に基づき、一般の労働者については平成31年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。一方、自動車運転者については、上限規制の適用が5年間猶予されており、令和6年4月から適用されることになります。これに伴い、改善基準告示についても見直しが必要になることから、本分科会のもとに自動車運転者労働時間等専門委員会を設置し、議論を進めてまいりました。
議論に当たりましては、働き方改革関連法の国会附帯決議において過労死等の防止の観点からの見直しが求められていること、特に道路貨物運送業は過労死などの労災支給決定件数が最も多い業種であることを踏まえ、検討が行われました。
タクシーとバスにつきましては、本年3月の専門委員会で中間とりまとめが行われ、本年4月27日に開催されました本分科会でその内容を御説明させていただいております。
その後、トラックについて検討を進めた結果、本年9月8日のトラック作業部会で見直しの内容がとりまとめられ、9月27日の専門委員会で最終とりまとめがなされました。今後は、本年12月に告示の改正を予定しており、周知などを行った上で、令和6年4月に時間外労働の上限規制と改正後の改善基準告示が適用されることになります。
3ページをお願いします。専門委員会の委員名簿でございます。公益代表と各業界の労使で構成されます。藤村委員に委員長を務めていただいたほか、公益から川田委員、両角委員、労側から世永委員に御参加いただきました。
4ページをお願いします。(参考)で、時間外労働の上限規制と拘束時間等の説明です。左側は時間外労働の上限規制です。一般労働者については、原則として、月45時間、年360時間、また、臨時的特別の事情がある場合の例外として年720時間、1か月100時間未満、複数月平均80時間、原則の月45時間を超えられるのは年6か月までといった規制がございます。
一方、自動車運転者については、年960時間の上限のみとなっており、1か月100時間未満などの規制は適用されません。
右側は、拘束時間と休息期間です。一般労働者は、労働基準法に基づき、労働時間が規制されますが、改善基準告示では、自動車運転者について拘束時間の基準を定めています。拘束時間とは、労働時間、休憩時間その他使用者に拘束されている時間をいい、労働時間には運転、整備などの作業時間や荷待ちなどの手待ち時間が含まれます。また、休息期間とは、使用者の拘束を受けない期間を言います。
左下に年や月の拘束時間を考えるに当たっての基礎的な計算式をお示ししています。年間の法定労働時間は週40時間×52週で2,080時間、1年間の休憩時間は、1日1時間×5日×52週で260時間、これらを足し合わせると2,340時間になります。この2,340時間に時間外労働の上限である960時間を足し合わせると、3,300時間になります。これを12で割ると、月当たり275時間になります。
これらの数字を念頭に置きながら見直し案を御覧いただければと思います。
5ページをお願いします。専門委員会報告の構成を示したものです。1がハイヤー・タクシーのとりまとめ内容、2がトラック、3がバス、4がその他となっております。1のハイヤー・タクシーと3のバスのとりまとめ内容につきましては、4月27日の本分科会で御説明したものと同内容ですので、本日は、2のトラックと4のその他について御説明いたします。
資料飛びまして、13ページをお願いします。ここからがトラックに係る改善基準告示の見直し内容です。現行を左側、見直し案を右側に記載しています。まず、1か月の拘束時間です。現行は、1か月293時間まで、また、労使協定により年6か月までは年間の総拘束時間が3,516時間を超えない範囲で、1か月320時間まで延長できるとされています。見直し案では、原則として年間3,300時間、かつ、1か月284時間まで、例外として、労使協定により年6か月までは年間3,400時間を超えない範囲で、1か月310時間までとされています。この原則の年間3,300時間が、時間外労働の上限規制の960時間に対応した水準になります。
現行からの減少幅ですけれども、年間では3,516時間から原則3,300時間で216時間の減少、1か月の原則は293時間から284時間で9時間の減少、1か月の例外は320時間から310時間で10時間の減少となっております。
その上で、284時間を超える月が3か月を超えて連続しない、また、1か月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努めるといった内容が加わっています。
14ページをお願いします。1日の拘束時間です。現行は、原則1日13時間まで、延長する場合でも最大16時間までとされ、1日15時間を超える回数は週2回までとされています。見直し案では、原則の13時間は同じですが、最大は15時間で、1時間の減少となっています。
一方で、②の部分ですが、長距離貨物運送で、かつ、休息期間が住所地以外の場所であるもの、すなわち外泊を伴う場合ということですけれども、その場合には、拘束時間を週2回に限り最大16時間とすることができるという例外がございます。趣旨については次のページで御説明いたします。また、拘束時間が1日14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努めるものとし、通達で週2回以内を目安として示すといった内容になってございます。
15ページをお願いします。1日の休息期間、いわゆるインターバルでございます。これは先ほどの1日の拘束時間と表裏の関係になります。現行は継続8時間以上とされています。見直し案では、継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らないとされています。②の部分ですけれども、例外として、長距離貨物運送で外泊を伴う場合には、週2回に限り8時間とすることができるとされています。この場合、運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与えるとされています。
この例外につきましては、部会での議論において、同じ貨物運送でも、長距離と近・中距離で実態が異なるといった指摘や、外泊、例えば車中泊をするような場合に、そこで長期間の休息を取るよりは、運行を早く終えてからまとまった休息を確保するほうがよいといったような御指摘があった中で、このような例外を設けることとされました。
以上、タクシーやバスにも共通いたしますが、1年間や1か月の拘束時間が短縮されたこと、それから、1日のインターバルの時間が確保されたということが、今回の改善基準見直しの主なポイントとなります。
16ページをお願いします。ここからは少し細かい内容になります。運転時間と連続運転時間です。運転時間については、2日平均で1日9時間、2週平均で1週44時間となっており、これについては現行どおりとなっています。
連続運転時間とは、中断することなく連続して運転する時間をいい、現行では4時間までとされています。この中断については、1回が連続10分以上、かつ、合計30分以上とされておりまして、例えば2時間運転して10分中断し、2時間運転したら、20分の中断が必要になるということでございます。
見直し案ですけれども、3点ございます。まず、中断の「連続10分以上」という部分について、「概ね連続10分以上」と幅のある形になりました。この「概ね連続10分以上」については、10分未満の中断が3回以上連続しないことなどを通達で示すこととしています。
次に、「当該運転の中断は、原則休憩とする」という部分でございます。これは、現行の中断については荷積み、荷下ろしなどの作業をさせてもよいという解釈になっておりまして、それだと休憩が取りにくいということで、できるだけ休憩を取っていただく観点からこのような形になってございます。
さらに例外として、サービスエリアなどに駐停車できないことにより、やむを得ず連続運転時間が4時間を超える場合には、30分まで延長できる、との内容が加わっております。
17ページをお願いします。例外的な取扱いです。事故などの予期し得ない事象に遭遇し、遅延が生じた場合には、客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間、運転時間などの規制の適用に当たって、その対応に要した時間を除くことができるとされています。
具体的な事由としては、車両が故障した場合、乗船予定のフェリーが欠航した場合などが示されてございます。
18ページをお願いします。分割休息の特例です。休息期間、インターバルについては、現行では8時間以上とされておりますけれども、業務の必要上、8時間以上の休息を与えることが困難な場合には、一定期間における全勤務回数の2分の1を限度に、休息期間を分割して与えることができるとされております。
分割された休息期間は、1回当たり継続4時間以上、1日合計10時間以上とされておりまして、一定期間は最大でも2か月程度とされています。また、3分割も認められるとされています。このため、現行では、2分割する場合には、4時間と6時間、または5時間と5時間といった組合せになります。また、3分割の場合につきましては、下限が4時間となりますので、図にありますとおり、4時間×3で合計12時間になるということでございます。
見直し案ですけれども、4点ございます。まず1点目は、現行の1回当たり継続4時間以上という部分が、継続3時間以上になります。このため、見直し後は3時間と7時間といった分割が可能になるということでございます。
2点目は、一定期間の限度が2か月程度から1か月程度に短縮されます。
3点目ですけれども、3分割の場合は、1日合計12時間以上となります。このため、図にありますとおり、3時間、3時間、6時間の分割、または3時間、4時間、5時間といった分割が可能になるということでございます。
4点目は、休息期間が3分割される日が連続しないよう努めるとされてございます。
19ページをお願いします。2人乗務の特例でございます。現行では、運転者が2人乗務し、身体を伸ばして休息できる設備がある場合に、拘束時間を20時間まで延長できるなどの特例が設けられています。
見直し案では、この特例を維持した上で、さらに車両内ベッドなどの一定の要件を満たす場合には、拘束時間を24時間または28時間まで延長できることとされています。これにつきましては、作業部会の場で使用者代表から、馬匹輸送、競走馬の輸送の実態について説明がございまして、その実態を踏まえた特例の内容となっております。
20ページをお願いします。隔日勤務の特例です。現行では、2暦日における拘束時間は21時間まで、勤務終了後20時間以上の休息を与えるなどの特例が設けられていますが、これについては現行どおりとなっています。
21ページをお願いいたします。フェリー特例です。現行では、乗船時間は原則として休息期間として取り扱うといった特例が設けられていますが、これについても現行どおりとなっています。
以上がトラックに関する改善基準告示の見直し案のとりまとめ内容ということでございます。
資料飛びまして、30ページをお願いします。見直しの内容の周知、それから運用状況の把握等についてでございます。9月27日の専門委員会報告の「4 その他」の部分では、専門委員会や各部会で指摘があった事項のうち、改善基準告示の内容そのものではない、運用面などに関する指摘をまとめて記載しております。
大きく3点ございます。まず1点目は、荷主などの関係者に対する周知です。告示の改正に当たっては、荷主、元請運送事業者などの発注者、貨物自動車利用運送事業者などに、関係省庁と連携し、幅広く周知することが適当とされています。また、トラックに関しては、過労死などの労災支給決定件数が最も多い業種であることなどを踏まえ、改正後速やかに、発着荷主等に対し、長時間の荷待ちを発生させないことなどについて労働基準監督署による「要請」を実施することが適当などとされています。これについては、次のページで御説明いたします。
2点目は、いわゆる「白ナンバー」や個人事業主などに対しても周知がなされるようにすることが適当とされてございます。
3点目は運用状況の把握等についてです。まず1つ目の○で、働き方改革関連法の附帯決議において一般則の適用に向けた検討を行うに当たっては、一部の規定または一部の事業・業務についてだけでも先行的に適用することを含め検討することが求められています。
2つ目の○で、各部会での指摘を記載しております。実態調査は、調査対象の属性を分類した上で実施すべき。脳・心臓疾患による労災支給決定事案についても属性を分類し、要因などについて検討を行うべき。長時間の荷待ちが告示遵守に与える影響などについても把握し検討を行うべきといったことが記載されています。
その上で、適用後3年を目途に、調査設計などを含め見直しに向けた検討を開始することが適当とされています。
31ページをお願いします。トラックに関する新たな取組として、発着荷主などに対し、長時間の荷待ちを発生させないことや、担当者に改善基準告示を周知することについて、労働基準監督署から配慮を要請することとしています。労働基準監督署が立入調査を行った際に得た荷主の情報や、厚生労働省のホームページで収集した情報をもとに、発着荷主などに対し要請を行うこととしておりまして、その情報を国土交通省にも提供することとしています。
改善基準告示を遵守し、労働条件の向上を図るためには、荷主都合による荷待ちなどの発生を避ける必要がありますけれども、それには発着荷主などの協力が必要不可欠との労使双方からの強い御意見があった中で、労働基準監督署においても新たにこのような取組を開始することとしたものでございます。
以上、専門委員会報告のうち、トラックに関するとりまとめ内容と、周知や運用状況の把握などについて御説明させていただきました。これらの内容も含めまして、ハイヤー・タクシー、トラック、バスの改善基準告示の見直しについては、冒頭も申し上げましたとおり、自動車運転者労働時間等専門委員会において、資料№1のとおり、報告がとりまとめられているところでございます。
説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、本件につきまして、先ほどの報告を踏まえ、委員の皆様に御議論いただきたいと思います。御質問、御意見があればお願いいたします。
なお、オンライン参加の皆様におかれましては、発言の希望をチャット機能で「発言希望」と書いてお知らせください。いかがでしょうか。
世永委員、どうぞ。
○世永委員 ありがとうございます。トラックの改善基準告示の見直しにつきまして、作業部会や専門委員会での議論に参画してきたわけですけれども、改めてトラック業界で働く者の立場から意見を申し上げさせていただきます。
先ほど報告された内容につきましては、公労使で議論してきた結果であり、トラックについても、総拘束時間や休息期間など、全体としては確実に改善が図られたと受け止めています。一方、連続運転時間、分割休息や2人乗務の特例の見直しなど、運用によっては一部緩和となり得る部分については、労働者の健康確保の観点から懸念があるため、原則がしっかりと徹底されるよう、行政による監督指導を強化することが必要だと考えております。
また、荷主都合による長時間の荷待ちへの対策として、資料2の31ページに記載された労基署による荷主への要請と国交省による荷主への働きかけが実効性あるものとなるよう、これまで以上に連携を強化した取組が必要であると強く申し上げておきたいと思います。
特にトラックでは、特例以外にも例外的な取扱いが多く設けられることとなるため、あくまでも基本は原則であることを通達やリーフレットなどに明記していただくとともに、実効性を高めるための取組を確実に推進していただきたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
北野委員、お願いします。
○北野委員 ありがとうございます。個人事業主等に関わることについて、意見を申し上 御案内のとおり、インターネットショッピング、EC市場が拡大しておりますし、ネット利用による個人間の取引も一層拡大しております。このコロナ禍も一層拍車をかけたということで、宅配便の取扱個数が急増していますし、多くの運送会社が、個人事業主等に業務委託、再委託を行う動きが拡大していると認識しております。
そういう意味では、個人宅へのラストワンマイルの配達を個人事業主が担うことが増えている中において、弱い立場にある個人事業主が過度な配達を担い、長時間労働が常態化するなどしわ寄せが生じているものと認識しております。そのような中、今月中にも、いわゆる黒ナンバー、貨物軽自動車運送事業において軽貨物車に加えて軽乗用車も使用可能となり、副業等でこの事業に参入する者が増加すれば、本業を含めて過重労働などの問題が生じかねないと懸念をしております。
就業者保護の観点から、個人事業主であったとしても、実質的に発注者等の指揮命令下で働いていれば当然労働者に該当し、労働関係法令が適用されるということや、さらには独禁法や下請法も適用されることなどを徹底していくことが必要だと思います。
また、資料№2の30ページにも記載があるとおり、改善基準告示は、個人事業主等には直接は適用されませんが、道路運送法等に基づく国交省の告示において改善基準告示が引用されているということをもって、同様の基準が個人事業主等にも適用されることになります。このことを個人事業主だけではなく、荷主や発注者等にも周知徹底し、業界全体の商慣行の是正、さらには働き方の見直しに取り組んでいくべきだと思っております。
ただ、現状では、個人事業主が改善基準告示を遵守しているのか、荷主や発注者等が告示を守れるような発注を行っているかに関して、国交省による実効性ある指導監督がなされているのか懸念がございます。労働者の働き方改革が進むことにより、労働者が個人事業主への業務委託等に置き換わるような動きを後押しすることになっては本末転倒でございます。関係省庁における実効性が高まる指導監督の仕組みを整備することが必要だということを申し上げておきたいと思います。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
まず初めに、専門委員の方、それから関係者の方が自動車運転者の健康確保のために、改善基準告示について、実態に即して、かつ、真摯な協議を重ねられ、このたび報告をまとめられたことに敬意を表したいと思います。
御案内のとおり、運輸業の年間総実労働時間は長く、特にトラック運転手の方の場合には、全産業対比で2割ほど時間が長いという実態があると承知しており、自動車運転者の労働環境の改善は喫緊の課題だと思っています。
また、こうした背景もあって、例えばトラック運転手の有効求人倍率を見ますと、全職種平均の2倍となっており、人手不足がかなり厳しいと感じられる事業者も少なくないのではないかと推察しています。
そういう意味では、もとより物流というのは国民の生活と産業の基盤ですので、若い方も含めて物流業界で働いてみたいと思ってもらえるような環境の整備に、国全体で取り組むということが重要だと思っています。
労働時間の削減につきましては、先ほど労側の委員の方からも少し御指摘があったかと思いますが、一企業、あるいは一業界の努力だけでは解消できない課題も少なくないと理解しています。例えば令和2年に国交省がまとめた実態調査によりますと、運転手1運行当たりの荷待ち時間というのが実に1時間34分、さらに2時間を超える荷待ち時間があると回答されたところも18%もあるという状況ですので、発着荷主企業の理解と協力が重要になると思います。
経団連といたしましても、パートナーシップ構築宣言の宣言呼びかけを引き続き行っていくとともに、今後は、荷主の荷待ち時間の解消に向けて発着荷主企業に対する協力を求めてまいりたいと思っております。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
オンラインのほうで鳥澤委員から手が挙がっております。お願いいたします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。御説明ありがとうございました。私から1点、意見を申し述べます。
先ほど労側の委員からもございましたが、改善基準告示は個人事業主には直接適用されないものと思いますが、違反した場合には国土交通省からの行政処分等が科せられることを考えますと、資料2の30ページにも記載がある通り、個人事業主も遵守する必要があると考えております。
そのため、改善基準告示の内容を守ってもらうために、個人事業主にも間接的に改善基準告示が適用されることを、個人事業主及び個人事業主に依頼する事業主がしっかりと理解することが必要であると考えます。
しかし、一般的な運送事業者などを対象としたリーフレットなどからは、個人事業主にも間接的に適用されることが伝わりづらく、「個人事業主は改善基準告示を遵守する必要がない」と認識されている可能性もあると思っております。
特に個人事業主の場合は、自身の管理で仕事しているためにルールが非常に形骸化することがありますので、個人事業主自身が労働時間の上限規定が適用されないと勘違いしないよう、また、事業主が自社ドライバーの労働時間削減のために個人事業主に無理をさせることがないよう、改善基準告示が適用される範囲を明確に示し、周知いただきたいと思います。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて池田委員からお願いします。
○池田委員 どうもありがとうございました。
まずは、専門委員会の委員をはじめ関係者の皆様が議論を尽くされて改善基準告示についておとりまとめいただきましたこと、感謝を申し上げたいと思います。また、これまでの内容と比べまして、上限時間が引き下げられた点などは、労働環境や健康配慮の面で働くドライバーの方々の負担軽減につながるものであり、よりよい内容にしていただけたものと感じてございます。誠にありがとうございました。
さて、私は物流企業に身を置いておりますので、その立場から少しお話をさせていただきたいと思います。
改善基準告示においては、拘束時間、この上限が設けられています。先ほど鈴木委員から手待ち時間への言及がございましたが、この手待ち時間は拘束時間となるものでございます。それが1運行当たりで平均1時間34分、あと、2時間を超える割合も約18%もあるということは、ドライバー自身にも物流事業者にも大変大きな負担となってございます。
平成30年に、産業構造や商慣行による物流事業者の荷主への交渉力の弱さなどの事情を踏まえて、労働条件の改善、事業の健全な運営の確保のため、国土交通大臣が標準的な運賃を定め告示できることなどを定めた改正貨物自動車運送事業法が成立しています。その中では、運賃についてはドライバーの賃金を全産業の標準的水準に是正すること、それとコンプライアンスを確保できること、これらを前提とした適正な原価に適正な利潤を加えたものが標準運賃とされて、それに加えて、運賃とは別に収受できるものを料金というふうに定義をし、具体的に30分を超える手待ち時間の料金、高速道路料金、フェリー料金、燃料サーチャージなどが挙げられています。
このように、法改正をしていただいたわけですが、実際のところ、その法改正に至った背景である交渉力の弱さというのは相変わらずで、手待ち時間の削減が進んだりですとか、手待ち時間が削減できていない場合には料金を支払いいただくということが進展しているというふうに実感するには至っていない、そのように感じてございます。
先ほどの鈴木委員の御発言にもありましたが、運輸業は他産業と比較して長時間労働となっており、トラック運転手のなり手不足も顕在化してございます。あらゆるものは物流の手によって必要とする方に届いて初めて意味があるわけで、物流が生活産業全般の重要な基盤であるということを改めて御認識いただいて、物流事業者側の努力もあることは重々承知しておりますが、国交省、厚労省をはじめとする行政の皆様や荷主企業の皆様をはじめ国全体でその基盤を毀損させないための取組をお願いしていきたいと思います。
私からは以上です。どうもありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 ありがとうございます。私からも1つ意見を申し上げたいと思います。
まずは、この改善基準告示の見直しのとりまとめにお関わりになりました関係者の皆様の尽力に敬意と感謝を申し上げたいと思います。私自身も製造業で働く者として、事業活動の基盤となる物流を担う事業者様の重要性というのは身にしみて感じてございまして、深刻な人手不足の解決に向けた対応というのは極めて重要であろうと考えております。
先ほど鈴木委員からも御発言ございましたけれども、トラック運転手の荷待ち時間短縮等による労働環境の改善に向けては、輸送会社と発着荷主企業の業界を超えた協力が不可欠であります。例えば国交省のホワイト物流推進運動には、令和4年8月末時点で1,457社が賛同しており、弊社も賛同させていただいております。具体的には、契約外の搬入作業を行わないことを指す運搬物の庭先渡しルールの徹底や、荷役作業場に屋根をつけることでの雨天時等の負担の軽減、また、生産に当たっての部品の必要量を輸送会社や仕入れ先様に事前共有することによって運行効率の向上、あるいは仕入れ先、輸送会社様と一体となって物流全体のプロセスを効率化する等、こうした改善にも取り組んでいるところでございます。
このような取組を含めて商慣行を改善していくことが改善基準告示の実効性を高め、ひいては物流業界の労働環境の改善につながるものと思っております。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 ありがとうございます。私のほうからも、まず、各作業部会での真摯な御審議と、また専門委員会での報告のとりまとめにつきまして、深く感謝申し上げます。
トラックの議論につきましては先ほど世永委員から申し上げたところでございますけれども、自動車運転全体で考えますと、過労死等が多い状況の中で、その防止の観点から議論をしてきたわけでございますし、労働側もその観点から、総拘束時間の大幅な縮減等を含め求めてきたところでございます。今回の報告の中では、全業態で拘束時間縮減など全体的に改善が図られたと考えておりまして、自動車運転者の長時間労働の是正に向けて取組がこれから一歩前進するものと受け止めているところでございます。
労働者の健康確保の観点、公衆災害の未然防止という様々な観点から、この新基準の適用を待つことなく、労働時間削減に向けて不断の努力が非常に重要だと考えております。また、国会の附帯決議や、専門委員会報告の中でも、次の見直しに向けた検討について適用後3年を目途ということが明記されておりますけれども、まずしっかりルールを定着させるということと、引き続き運用の状況等をしっかり把握をして検証していくことが重要と考えております。それを踏まえて、一般則への早期適用に向けた検討を引き続き進めていく必要があると考えております。
先ほど鈴木委員のほうからもございましたけれども、これから就職する若者や、今働いている労働者が安全に安心して働けるような労働環境の整備や処遇の改善というところには労使双方がしっかりと議論をして取組を進めていくことが重要だと考えております。様々な委員からもご発言がございましたけれども、厚労省においても、新たな基準の定着を通じた実効性確保、取引慣行や商慣行等の是正に向けて、一般消費者も含めた意識の醸成というところも必要だと考えておりますし、また、国交省、経産省、公正取引委員会なども含めた省庁横断的に連携した取組が重要になってくると思います。ぜひ連携した取り組みを進めていただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。まず、とりまとめに携わっていただきました藤村先生はじめ、各委員の方々、本当にありがとうございました。
タクシー、バス、そして、トラック運送の非常に労働時間も長い傾向がみられ、適用猶予がなされている状況において、業界の慣行もあり、大変難しい改善基準告示の見直しだったと思います。ただ今、冨髙委員からもご発言がありましたけれども、令和6年度以降の適応となっている960時間の時間外労働についても、早い時期での一般則への適用に向け労使がともに協力して、移行していただきますよう、お願い申し上げます。
改善基準告示を拝見させていただきましたが、本則だけだったらいいのですけれども、例外措置が結構多くて、分かりにくいなという印象を持ちました。従前、そして現行もそうなのですけれども、但し書きでの例外措置を多いことから、決定された原則と例外的な事項をあまりつくらず、シンプルにできれば一番よいのではないかと思いました。ただ、資料2の30ページの「その他」のところで記載されている、「周知」について、業界関係者だけでなく、利用者にも如何に図っていくのかというのが、今後本当に必要なことになるのではないかなと思います。発・着荷主の関係、そして、トラックの運送事業者にとっても、お互いに認識をし合う、というのが最も重要になっていくと思いますので、これは皆さん方も言われていましたけれども、国等から地方に波及する形で、ぜひ周知を徹底していただきたいなと思っております。
もう一点ですけれども、先ほど鈴木委員のほうからご発言がありました、労働移動についてです。トラック業界など運輸業界に対して、労働移動がなされていくように、人手不足の業界においては、これをいかにしていくかというのが非常に大切なことと思います。時間外労働の適用除外となっている業界がこれだけの労働時間や例外措置あるということになると、やはりこの業界に参入してくる労働者の方々もちょっと躊躇してしまうなということがあると思われます。世の中で今、リスキリングとかリカレントとか言われていますけれども、その免許や資格を取得する道はあったとしても、ここで労働者の教育、人材育成、養成をして、もっとこの業界に入って、そして、もちろん賃金等の待遇改善もありますが、メリットがある業種にならないと人が集まりにくいと思います。人が業界に入ってくる何らに方策を今後も検討していただきたいなと思っております。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
それでは、委員長を務められた藤村先生から一言いただけますでしょうか。
○藤村委員 最後に一言申し上げたいと思います。
今回の自動車運転者の労働時間の改善基準告示を議論するに当たりまして、2つのことを念頭に置きながら議論いたしました。1つは、若者が入ってくる産業にしたいことです。委員の皆さんからの御発言にもありましたように、人手不足が解消されない状況です。どうしてかというと、1つは賃金の問題があります。これは運賃との関係ですね。もう一つは労働時間が長いということで、この2つの理由で若者が魅力的だと思ってくれない産業になっています。これをどうやって解決するかが大きな課題です。運賃の問題は、今回は対象になりませんでしたが、少なくとも労働時間を適正な水準に持っていかないといけないということで、労使双方、時には厳しい議論もありましたが、何とかここまでこぎつけることができました。
それから、もう一つ念頭に置きました点は、いわゆる過労死を起こしてはいけないという点です。脳・心臓疾患がとても多い業種で、その大きな理由の一つが、労働時間が長い、拘束時間が長いということです。それを適正な水準に持っていきたいということで議論いたしました。決してこれで満足いくものとは私も思っておりません。労使双方もそういう認識だと思います。いわゆる一般則の適用に向けて、いかにこの条件をよくしていくかということがこれからの課題になってくると思います。
委員の皆さんには、多大な御協力をいただきまして、何とかまとめることができました。どうもありがとうございました。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかに御意見等ございましょうか。
よろしいでしょうか。
よろしければ、この自動車運転者労働時間等専門委員会の報告を当分科会の報告とすることにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○荒木分科会長 それでは、異議なく、御了承いただいたということにさせていただきます。事務局におかれては、この報告を踏まえて改善基準告示の改正の作業を進めていただきたいと考えます。
それでは、本日の議事はここまでとさせていただきます。
最後に、次回の日程について事務局から説明をお願いします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、以上で第180回の「労働条件分科会」は終了とさせていただきます。本日も御参加いただきまして、どうもありがとうございました。