2022年9月27日 第179回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年9月27日(火) 13:00~15:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

公益代表委員
荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、水島委員
労働者代表委員
川野委員、北野委員、櫻田委員、東矢委員、冨髙委員、八野委員、世永委員
使用者代表委員
池田委員、鬼村委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、兵藤委員、山内委員
事務局
鈴木労働基準局長、青山審議官(労働条件政策、賃金担当)、古舘総務課長、松原労働条件政策課長、竹野監督課長、吉村労働関係法課長、木原労働条件政策課課長補佐、田邉労働関係法課総括調整官、小川労働関係法課課長補佐、長澤労働条件企画専門官

議題

  1. (1)労働時間制度について
  2. (2)労働契約関係の明確化等について

議事

議事内容
○荒木分科会長 定刻になりましたので、ただいまから第179回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日の分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加、双方で実施をいたします。
 議事に入ります前に、本分科会の委員の交代について事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件企画専門官 事務局でございます。本分科会委員の交代につきまして御報告いたします。
 労働者代表の梅田利也委員が御退任され、新たに、全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会中央執行委員、大崎真委員に就任いただきました。
 なお、お手元の参考資料No.6としまして、労働条件分科会委員名簿を配付してございますので、併せて御参照ください。
 事務局からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の佐藤厚委員、藤村博之委員、両角道代委員、労働者代表の大崎真委員、使用者代表の鳥澤加津志委員が欠席と承っております。
 カメラ撮りはここまでということでお願いします。
 本日の議題に入ります。
 本日の議題(1)は「労働時間制度について」です。
 事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。
 議題(1)の「労働時間制度について」、資料No.1-1から1-3を御用意してございますので、その資料の御説明をさせていただきます。
 まず、資料No.1-1を御覧ください。こちらは労働時間制度に関する検討の論点についての資料でございます。
 1ページ目を御覧ください。こちらは、第177回分科会においてお示しさせていただきました労働時間制度に関する検討の論点でございます。本日は、この中の赤字になってございます「2 裁量労働制について」のうち「対象業務」と「労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保」について御議論いただきたいと考えてございます。
 その具体的な中身が2ページ目以降でございます。2ページ目を御覧ください。
 まず1つ目の「対象業務」でございます。論点として、読み上げさせていただきますと、
・まずは現行制度の下で制度の趣旨に沿った対応が可能か否かを検証の上、可能であれば、企画型や専門型の現行の対象業務の明確化等による対応を検討し、対象業務の範囲については、経済社会の変化や、それに伴う働き方に対する労使のニーズの変化等も踏まえて、その必要に応じて検討することが適当ではないか。
としてございます。
 2つ目の論点「労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保」でございまして、こちらにつきましては3つの項目がございます。
 1つ目の項目として「対象労働者の要件」の中に3点ございますので、それぞれ読み上げさせていただきます。
企画型の対象労働者の要件の着実な履行確保を図るため、職務経験等の具体的な要件をより明確に定めることが考えられるのではないか。
・専門型でも、裁量労働制の下で働くにふさわしい労働者に制度が適用されるようにする観点から、そのような労働者の属性について、必要に応じ、労使で十分協議・決定することが求められるのではないか。
・賃金・評価制度の運用実態等を労使協議の当事者に提示することを使用者に求める等、対象労働者を定めるに当たっての適切な協議を促すことが適当ではないか。
 2つ目の項目が「本人同意・同意の撤回・適用解除」でございます。こちらも3点ございます。
・専門型・企画型いずれについても、使用者は、労働者に対し、制度概要等について確実に説明した上で、制度適用に当たっての本人同意を得るようにしていくことが適当ではないか。
・本人同意が撤回されれば制度の適用から外れることを明確化することが適当ではないか。
・労働者の申出による同意の撤回とは別に、一定の基準に該当した場合には裁量労働制の適用を解除する措置等を講ずるような制度設計を求めていくことが適当ではないか。
の3点となってございます。
 おめくりいただきまして、3ページ目でございます。
 最後の項目として「業務量のコントロール等を通じた裁量の確保」でございまして、こちらは2点ございます。
・裁量が事実上失われたと判断される場合には、裁量労働制を適用することはできないことを明確化するとともに、そのような働かせ方とならないよう、労使が裁量労働制の導入時点のみならず、制度の導入後もその運用実態を適切にチェックしていくことを求めていくことが適当ではないか。
・裁量労働制は、始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを改めて明確化することが適当ではないか。
こちらが本日御議論いただきたい論点になってございます。
 次に、資料No.1-2を御覧ください。資料No.1-2に関しましては、今、資料No.1-1で御説明いたしました本日御議論いただく論点に関する制度の概要を整理した資料でございます。おめくりいただきまして、現行の裁量労働制についてと参照条文をまとめた資料でございます。
 3ページ目を御覧ください。こちらは、以前の本分科会でも御説明いたしました裁量労働制の概要に関する資料でございますので、説明は割愛させていただきます。
 4ページ目を御覧ください。4ページ目以降は、裁量労働制の制度の概要について、高度プロフェッショナル制度と並べる形で整理したものでございまして、まずは対象業務についてでございます。
 一番左の「専門業務型裁量労働制」でございますけれども、その対象業務は「業務の性質上その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務」とされておりまして、具体的には、ここにある①から⑲の業務が省令等で規定されてございます。各事業場で適用される業務は、その範囲内で労使協定で定めることとされてございます。
 次に、真ん中の「企画業務型裁量労働制」でございます。その対象業務は「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」とされてございまして、各事業場の労使委員会でこの要件を満たす業務を対象業務として決議することとされてございます。
 1ページおめくりいただきまして、5ページ目を御覧ください。
 続きでございますが、この企画業務型裁量労働制の対象業務の使用者が具体的な指示をしないこととする業務については、指針に規定がございまして、例えば一番上の●にございますように「当該業務の遂行に当たり、その内容である『企画』、『立案』、『調査』、『分析』という相互に関連し合う作業をいつ、どのように行うか等についての広範な裁量が労働者に認められている業務をいう」とされてございます。
 4ページ目にお戻りください。一番右の高度プロフェッショナル制度の対象業務につきましては「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務」とされておりまして、具体的には、ここにある①から⑤の5つの業務が規定されてございます。各事業場で適用される業務は、その範囲内で労使委員会で決議することとされております。また、省令におきまして、業務に従事する時間に関し、使用者から具体的な指示を受けて行うものを除くこととされてございます。
 5ページ目を御覧ください。一番右の高度プロフェッショナル制度の部分でございますけれども、この「当該業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示を受けて行うものを除く」について指針に規定がございまして、例えば一番上の●にありますように「『具体的な指示』とは、対象労働者から対象業務に従事する時間に関する裁量を失わせるような指示をいい、対象業務は働く時間帯の選択や時間配分について自らが決定できる広範な裁量が対象労働者に認められている業務でなければならない」とされてございます。
 6ページ目を御覧ください。このページは、以前の本分科会でも御説明いたしました平成27年の労働政策審議会の建議と、平成29年に本分科会にお示しいたしました働き方改革関連法案要綱のうちの企画業務型裁量労働制の対象業務に関する部分の抜粋でございますので、御参考でございます。
 7ページ目を御覧ください。次に、対象労働者についてでございます。まず、一番左の「専門業務型裁量労働制」でございますけれども、その対象労働者は対象業務に従事する労働者とされてございます。
 真ん中の「企画業務型裁量労働制」でございますが、こちらの対象労働者は、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有し、当該業務に従事する労働者とされております。また、指針におきまして「対象労働者の範囲は、対象業務ごとに異なり得るものであるため、対象労働者となり得る者の範囲を特定するために必要な職務経験年数、職能資格等の具体的な基準を明らかにすることが必要。例えば、大学の学部を卒業した労働者であって全く職務経験がないものは客観的に対象労働者に該当し得ず、少なくとも3~5年程度の職務経験を経た上で、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有するかどうかの判断の対象となり得るものであることに留意することが必要」とされております。
 一番右の「高度プロフェッショナル制度」でございますけれども、こちらの対象労働者は2つの要件に該当する労働者で、対象業務に従事するものとなっておりまして、その要件の1つ目が、使用者との間の合意に基づき、職務が明確に定められていること、2つ目が、年収が1,075万円以上であることとなっております。
 下の点線の枠囲みは、平成29年の働き方改革関連法案要綱のうち企画業務型裁量労働制の対象労働者に関する部分の抜粋でございます。
 8ページ目を御覧ください。次に、本人同意や同意の撤回などについてでございます。
 まず、一番左の「専門業務型裁量労働制」に関しましては、同意に関する規定はございません。
 真ん中の「企画業務型裁量労働制」でございますけれども、こちらは対象労働者本人の同意を得なければならないことについて、労使委員会で決議することが必要とされてございます。また、指針におきまして、本人同意に関し労使委員会決議をするに当たり、委員は、当該事業場における企画業務型裁量労働制の概要などについて、使用者が労働者に対し明示して同意を得ることとすることを決議で定めることが適当であることに留意することが必要とされてございます。加えまして、不同意の労働者に対する不利益取扱いの禁止につきまして労使委員会で決議することが必要とされてございます。
 一番右の「高度プロフェッショナル制度」でございますけれども、こちらは対象労働者への制度適用に当たっては、同意をした場合には、労働基準法に定められた労働時間などに関する規定が適用されないこととなる旨などを明示した書面に対象労働者本人の署名を受けることにより、本人同意を得ることが必要とされてございます。また、指針におきまして、本人同意を得るに当たり、使用者は、労働者本人にあらかじめ、当該事業場における決議の内容などを書面で明示することが適当とされてございます。加えまして、不同意の労働者に対する不利益取扱いの禁止について労使委員会決議が必要とされてございます。
 9ページ目を御覧ください。次に、同意の撤回と適用解除についてでございます。
 まず、一番左の「専門業務型裁量労働制」では、いずれにつきましても特段の規定はございません。
 真ん中の「企画業務型裁量労働制」に関しましては、まず同意の撤回に関しまして、指針において労使委員会委員は対象労働者から同意を撤回することを認める場合には、その要件・手続を決議において具体的に定めることが適当であることに留意することが必要とされてございます。
 また、適用解除につきましては、同じく指針におきまして、使用者は、把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、対象労働者への制度適用について必要な見直しを行うことを労使委員会決議に含めることが望ましいことに留意することが必要とされてございまして、この必要な見直しについて、通達におきまして、例えば、対象労働者への企画業務型裁量労働制の適用を除外することが考えられるとされてございます。
 一番右の「高度プロフェッショナル制度」につきましては、対象労働者の同意の撤回に関する手続について労使委員会決議が必要とされてございまして、指針において、同意を撤回した場合の配置・処遇について、撤回した労働者をそのことを理由として不利益に取り扱ってはならないこととされております。
 また、適用解除に関しましては、指針において、「労使委員会委員は、把握した対象労働者の健康管理時間及びその健康状態に応じて、対象労働者への制度適用について必要な見直しを行うことが望ましい。例えば、健康管理時間が一定時間を超えた労働者については制度を適用しないこととすることなどが考えられる」とされています。
 おめくりいただきまして、10ページ目以降は参照条文でございますので、こちらは適宜御参照いただければと思います。
 資料No.1-2の説明は以上でございます。
 続きまして、資料No.1-3を御覧ください。こちらの資料は、本日御議論いただきます論点に関するデータなどをまとめたものでございます。目次を御覧いただきまして、1つ目の項目が対象業務及び対象労働者関係、2つ目の項目が本人同意関係となってございます。
 3ページ目を御覧ください。こちらは、事業場が定めている裁量労働制の適用要件の内容についてでございます。まず、青の専門型では「職種(事務職、営業職、専門職など)」が最も多く、次いで「労働者本人の同意」が多くなっております。赤の企画型では「労働者本人の同意」が最も多く、次いで「一定の人事等級以上(職能クラスなど)」、「職種(事務職、営業職、専門職など)」が多くなってございます。
 4ページ目を御覧ください。事業場が行っている裁量労働制対象業務についてでございます。裁量労働制適用事業場のうち87.3%が専門業務型裁量労働制を適用しておりまして、業務としては「情報処理システムの分析、設計の業務」が最も多く、次いで「新商品・新技術の研究開発又は人文科学・自然科学に関する研究業務」が多くなってございます。企画業務型裁量労働制は22.9%となってございます。
 5ページ目を御覧ください。こちらは労働者の業務従事年数・現在の勤め先での業務従事年数についてでございます。左側のグラフが以前の勤め先での業務従事年数を含んだ業務従事年数で、右が現在の勤め先での業務従事年数でございます。適用労働者を御覧いただきますと、どちらの年数につきましても、専門型、企画型いずれも「5年以上10年未満」と「10年以上15年未満」が多くなってございます。
 6ページ目を御覧ください。こちらは適用労働者の平成30年の年収についてでございます。適用労働者を御覧いただきますと、専門型では薄紫の「700万円以上800万円未満」が最も多く、次いで黄色の「600万円以上700万円未満」が多くなってございます。
 下の企画型も同じく適用労働者を御覧いただきますと、薄紫の「700万円以上800万円未満」が最も多く、次いで濃いピンクの「800万円以上900万円未満」と赤の「1,000万円以上1,250万円未満」が多くなってございます。
 次のページを御覧ください。こちらは年収階級別の裁量労働制適用の満足度についてでございます。まずこのページが専門型でございますけれども、こちらは、年収が高いほど裁量労働制の適用について「満足している」または「やや満足している」と答える割合が高い傾向にございます。
 8ページ目が、企画型に関する調査結果でございます。こちらも同様でございまして、年収が高いほど裁量労働制の適用について「満足している」または「やや満足している」と答える割合が高い傾向にございます。
 9ページ目を御覧ください。ここから4ページにわたりまして、労働者の裁量の程度についての労働者調査結果を御紹介いたします。
 まず、具体的な仕事の内容・量についてでございます。適用労働者のグラフを御覧いただきますと、上の専門型につきましては、「上司に相談せず、自分が決めている」または「上司に相談の上、自分が決めている」の合計が63.6%となっておりまして、「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が27.5%となってございます。
 企画型におきましては、同じく適用労働者でございますが、「上司に相談せず、自分が決めている」または「上司に相談の上、自分が決めている」の合計が60.4%となっておりまして、「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が32.1%となってございます。
 10ページ目を御覧ください。次に進捗報告の頻度についての裁量の程度についてでございます。
 こちらも適用労働者を御覧いただきますと、まず、専門型は「上司に相談せず、自分が決めている」または「上司に相談の上、自分が決めている」の合計が70.3%となっておりまして、「自分に相談なく、上司(又は会社の決まり)が決めている」または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が20.4%となっております。
 下の企画型でございますけれども、「上司に相談せず、自分が決めている」または「上司に相談の上、自分が決めている」の合計が77.6%となっておりまして、「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が16.1%となっております。
 次のページを御覧ください。こちらは業務の遂行方法、時間配分等についての裁量の程度についてでございます。
 こちらも適用労働者を御覧いただきますと、専門型は「上司に相談せず、自分が決めている」または「上司に相談の上、自分が決めている」の合計が88.7%となっておりまして、「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が5.7%となっております。
 企画型を見てみますと、「上司に相談せず、自分が決めている」または「上司に相談の上、自分が決めている」の合計が90.6%となっており、「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が5.0%となっております。
 12ページ目、最後でございますけれども、出退勤時間についての裁量の程度でございます。こちらも適用労働者を御覧いただきますと、まず専門型では「上司に相談せず、自分が決めている」または「上司に相談の上、自分が決めている」の合計が85.9%となっておりまして、「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が7.6%となってございます。
 企画型を見てみますと、「上司に相談せず、自分が決めている」または「上司に相談の上、自分が決めている」の合計が89.1%となっており、「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」または「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が6.0%となってございます。
 13ページ目を御覧ください。こちらが労働者の現在の働き方に対する認識についての調査結果でございまして、左の青いグラフが適用労働者でございますので、そちらを御覧いただければと思います。
 まず、上の専門型でございますけれども、「時間にとらわれず柔軟に働くことで、ワーク・ライフ・バランスが確保できる」が最も多く、次いで「仕事の裁量が与えられることでメリハリのある仕事ができる」が多くなってございます。
 下の企画型も、同じく適用労働者を見てみますと、「効率的に働くことで、労働時間を減らすことができる」が最も多く、次いで「仕事の裁量が与えられることで、メリハリのある仕事ができる」が多くなってございます。
 14ページ目を御覧ください。こちらは裁量労働制の適用に対する満足度についてでございます。
 まず、上の専門型では、80%が「満足している」または「やや満足している」、19.4%が「やや不満である」または「不満である」と回答してございます。
 下の企画型では、83.7%が「満足している」または「やや満足している」と答えている一方で、16.1%が「やや不満である」または「不満である」と回答してございます。
 おめくりいただきまして、15ページ目です。次に、労働者の裁量の程度によって、裁量労働制の適用が1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率に与える影響が異なるのかについての分析結果でございまして、このページがまず専門型の結果でございます。
 業務の遂行方法、時間配分等の裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率が高くなっております。他方で、1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率につきましては、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。また、出退勤時間の裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率が高くなっておりますけれども、そのどちらも裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
 次の16ページ目が、同様の分析を企画型で行ったものでございます。業務の遂行方法、時間配分等の裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率が高くなっております。このうち1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率につきましては、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
 また、出退勤時間の裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率が高くなっております。このうち1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率については、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
 おめくりいただきまして、17ページ目でございます。次に、労働者の裁量の程度によって裁量労働制の適用が健康状態をあまりよくない・よくないと答える確率に与える影響が異なるのかという点についての分析結果でございます。専門型につきましては、業務の遂行方法、時間配分等の裁量の程度や出退勤時間の裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が健康状態をあまくよくない・よくないと答える割合が高くなってございますけれども、裁量の程度が大きい場合にはその影響が低減されるという結果となったものでございます。
 おめくりいただきまして、18ページ目でございます。こちらが、労働者の裁量の程度によって、裁量労働制の適用がメンタルヘルスに与える影響が異なるのかについて分析を行ったものでございまして、まずは専門型の結果でございます。
 業務の遂行方法、時間配分等の裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が時間に追われる感覚や用事に集中できないことが「よくある」「ときどきある」と答える確率が高くなっておりますけれども、時間に追われる感覚につきましては、裁量の程度が大きい場合にはその影響が低減されるという結果となってございます。
 また、出退勤時間の裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が仕事後の疲労感、時間に追われる感覚、用事に集中できないことが「よくある」「ときどきある」と答える確率が高くなっておりますけれども、仕事後の疲労感、時間に追われる感覚につきましては、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
 19ページ目を御覧ください。こちらは同様の分析を企画型で行ったものでございます。業務の遂行方法、時間配分等の裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が時間に追われる感覚、用事に集中できない、眠れないといったことが「よくある」「ときどきある」と答える確率が高くなっております。このいずれにつきましても、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
 また、出退勤時間の裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が用事に集中できない、眠れない、不安感を感じることが「よくある」「ときどきある」と答える確率が高くなっておりますけれども、このいずれについても、裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果となってございます。
 20ページ目を御覧ください。次に、裁量労働制適用の専門型の労働者について、裁量労働制適用に対して「満足」又は「やや満足」と答える確率にどのような要素が影響するのかを分析したものでございます。こちらは様々な要素が満足度に一定程度の影響を与えておりますけれども、例えば出退勤時間に裁量の程度が大きいことなどが満足度を上げる影響を与えている一方で、業務量が過大であることは、満足度を下げる影響を与えているということが分かったものでございます。また、期限設定が短いと満足度を下げる影響もみられたものでございます。
 21ページ目を御覧ください。こちらが同様の分析を企画型で行ったものでございます。こちらも様々な要素が一定程度の影響を与えておりますけれども、出退勤時間に裁量の程度が大きいことなどが満足度を上げる影響を与えている一方で、業務量が過大であることは満足度を下げる影響を与えていることが分かったものでございます。また、本人同意時の説明があること等も満足度を上げる影響もみられたというものでございます。
 ここまでが対象業務及び対象労働者関係のデータでございます。
 22ページ目以降が本人同意関係でございます。23ページ目を御覧ください。
 まず、専門型の適用事業場のうち46.3%が本人同意を要件としておりまして、その理由としては「労働者に納得して働いてもらうため」が最も多くなっております。
 24ページ目を御覧ください。次に、企画型の本人同意についてでございますけれども、こちらは97.0%が本人同意の際の労働者への説明を行っております。また、真ん中でございますけれども、89.4%が本人同意が得られなかった労働者がいないと回答している一方で、そういった労働者がいると答えた事業場が1.9%となっております。
 一番右でございますけれども、同意を撤回した割合につきましては、そのような労働者がいないとする答えが93.9%となっている一方で、1.7%がいると答えているものでございます。
 25ページ目を御覧ください。こちらは、本人同意や同意の撤回の手続についてでございます。まず左の本人同意の手続の方法についてでございますけれども、この青の専門型におきましては「書面で行うこととしている」が最も多く、次いで「口頭で行うこととしている」が多くなってございます。赤の企画型では「書面で行うこととしている」が最も多く、次いで「メールなどの電磁的方法で行うこととしている」が多くなってございます。
 右の同意撤回の手続の方法に関しましては、まず、青の専門型では「書面で行うこととしている」が最も多く、次いで「口頭で行うこととしている」が多くなってございます。赤の企画型では「書面で行うこととしている」と「メールなどの電磁的方法で行うこととしている」が多くなってございます。この同意の撤回の「手続は特に定めていない」という回答に関しましては、専門型で26.2%、企画型で24.0%となってございます。
 最後、26ページ目でございます。こちらが、専門型の適用労働者につきまして、本人同意がある場合に1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率、あるいは健康状態を「あまりよくない」・「よくない」と答える確率に与える影響があるかについての分析でございます。結果といたしましては、本人同意がある場合は、1週当たりの労働時間が60時間以上となる確率も、健康状態を「あまりよくない」・「よくない」と答える確率も低くなっているというものでございます。
 資料の説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 本日は裁量労働制について大きく2つの論点です。第1が対象業務、第2が労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保。この2つに分かれております。
 まずは、対象業務について御議論いただきたいと思います。なお、オンライン参加の委員の皆様におかれましては、発言の希望の旨をチャット機能に書き込んでお知らせいただきたいと思います。
 それでは、対象業務について御意見があればお願いいたします。
 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。対象業務について意見を申し上げたいと思います。
 資料No.1-2の4ページで、対象業務の趣旨の部分を説明いただきました。専門業務型裁量労働制につきましても、業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるとされているということ、また、企画業務型裁量労働制のほうも、いずれも、その遂行の方法については大幅に労働者の裁量に委ねるとされております。
 この大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるということに関しまして、先ほど資料No.1-3の9ページから12ページのあたりで御説明いただきましたけれども、上司が決めている場合は、そもそも制度の趣旨に反していると考えますけれども、自分が決めていると言っても、上司に相談の上で自分が決めているというものについて、裁量があるような形で資料において整理されていると思っております。上司への相談の頻度なども分からない中で、最終的に自分が決めているというだけで裁量があると判断していいのか疑問があるのではないかと考えております。業務遂行の手段等を労働者の裁量に大幅に委ねる必要があるという制度の趣旨を考えれば、この中で言えば、上司に相談せずに自分が決めているというところが本来の制度趣旨に沿った裁量労働制ではないかと考えているところでございます。
 裁量労働制が適用されますと、通常の労働時間管理を外れ、みなし労働時間制になるわけですけれども、そういった中で、正確な労働時間の把握がされない事案が増えることは、裁量労働制実態調査の中でも自己申告という回答をした割合が専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制ともに3割を超えているという状況からやはり明らかではないかと思っております。その対象業務を拡大するようなことになりますと、労働時間を正確に管理されない労働者の数が増えるのではないかということを我々としては大いに懸念しております。長時間労働を助長して、労働時間法制の原初的な使命、これは報告書の中にも書いてありましたけれども、労働者の健康確保というのが最も重要であり、その観点から問題がある事案を増やしかねないのではないかと思っております。従来から申し上げているとおり、安易な拡大については私どもとしては反対ということを意見として申し述べておきたいと思います。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 池田委員、お願いいたします。
○池田委員 どうもありがとうございます。私からは、使用者からの賃金・評価制度の運用実態等の提示について意見を申し上げたいと思います。
 裁量労働制で働く社員にふさわしい処遇となるように労使で話し合いをしていくことは非常に大切だと考えております。ただ、労使委員会でどこまでの情報を開示するのかということについては難しい問題もあると考えます。
 と申しますのも、賃金・評価制度の運用実態の公表について、個別労使の関係性によって現状の実態は異なっており、処遇制度改定時など特段の事情がない限り、賃金や評価結果の公表を差し控えている企業は少なくないと思います。また、有識者検討会の報告書にも記載のとおり、賃金・評価制度については業界における水準やアサインされる職種、業務内容との関係など総合的に考えるものだと思います。どういったレベルの処遇なら裁量労働制にふさわしいのかということは、業界ごと、企業ごと、職種ごとに異なり得るところだと思います。開示情報を一律に決めるのではなく、開示が推奨される情報の例などを示しながら、各企業の実態に合った話し合いができるような配慮をお願いしたいと思います。
 なお、論点とは直接関係がないかもしれませんが、裁量労働制の活用企業は非常に少ないこともあり、他社事例を目にする機会があまりありません。特別手当の支給や業績・成果に応じて変わる賞与の裁量加算など実態調査やヒアリング結果から得られる事例を周知することは、各企業の労使が処遇について活発に議論する上で有効と思われますので、御検討をお願いしたいと思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 本日の論点に関わる御意見でありますけれども、論点が多岐にわたりますので、この場ではまず対象業務について御意見を伺って、労働者の理解、納得した上での制度の適用と裁量の確保に関わる問題については後ほど分けて議論させていただければと思います。ただいまの御意見については後ほどまた議論の対象とさせていただければと思います。
○池田委員 承知しました。
○荒木分科会長 それでは、対象業務に関わる論点について御意見等があればお願いいたします。
 山内委員、お願いいたします。
○山内委員 ありがとうございます。私からは、今、お話ありましたように、対象業務について申し上げたいと思います。
 前回の本分科会において安藤委員より、裁量労働制の対象業務の拡大について、現時点でのニーズを把握する必要があるという御指摘をいただいたかと思います。この御意見に対して、この時間をいただいて、御指摘のニーズについて触れたいと思います。
 使用者側としては、目まぐるしく変化している社会・経済情勢の中で、働き手が主体性を持って自らの知識あるいはスキルを最大限に発揮できる環境を整えるため、平成29年、本分科会で示されました働き方改革関連法案の要綱に企画業務型裁量労働制の対象業務への追加と記されました課題解決型開発提案業務と裁量的にPDCAサイクルを回す業務の2つの必要性はむしろ高まってきていると考えております。
 具体的な事例を挙げたいと思います。
 まず課題解決型開発提案業務についてです。例えば車両メーカーでは、CASEあるいはMaaSに象徴されるように、事業に求められるものは大きく変化してきております。例えば、従来の製品を開発して製造して車両を提供するというビジネスから、IoTの発達によって渋滞や事故の発生をリアルタイムで感知、回避したり、盗難車両の追跡や保険料の算定に役立てる等々、車両を提供するだけではなくて、移動の利便性の向上、あるいは地域の課題解決に向けて、車両開発とITサービスを組み合わせた車両の使用状況、故障、修繕実績等のデータを一元的に管理する管理システムを開発提案する業務が増えてきているというのが実態としてあります。
 また、システム開発会社においても、従来、システムエンジニアや組み込みエンジニアの業務から、お客様のニーズ、特にお客様の課題を解決することを目的としたソリューションとしてのITシステムを提供するために、提案から開発まで行ういわゆるデジタル人材のニーズが非常に高まっております。
 以上のとおり、デジタルトランスフォーメーション化が急速に進む中で、ITシステム、あるいはハード製品とITシステムの組合せといったサービスを、お客様から潜在的なニーズを探りながらオーダーメードで提案する課題解決型開発提案業務は今後一層拡大していくことが予想されております。
 2つ目の裁量的にPDCAサイクルを回す業務について2つ事例を挙げます。
 例えば機械メーカーの生産ラインにおいて作業改善計画を立案するP。計画に基づいて改善施策を施行するD。結果を測定するC。そして、結果測定を踏まえて改善点を洗い出して本格実施に向けるA。
 また、人事部門においても、現在進めている働き方改革、これらの推進施策を企画・立案するP、そして実行するD。ただ、経営層の意見、あるいは従業員からサーベイを通じた意見、これらを踏まえて改善を重ねていく、チェックをするC。そして、改善を重ねてさらに実行に移していくA。いわゆるこれらのPDCAサイクルを回す業務というのは企業において非常に数多く増えてきておるのが実態であります。
 以上のとおり、DXやGXなど我々を取り巻く事業環境の変化に伴い、従来以上に裁量労働制の適用拡大を求める声は増えております。正しく適用、運用すれば、労使双方にとってよい制度であるという前提に立って、経済社会の変化に合わせた制度の見直しをしていくことを強く要望いたします。
 長くなりましたが、私からの意見は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
 対象業務の追加のニーズについて、山内委員に続き私からも申し述べます。
 近年、事業者等による資金調達方法が多様化し、金融機関では個別の顧客のニーズに応じたファイナンススキームの組成が行われたり、実際、M&Aや事業承継の件数も増えています。財務計画や企業の価値の分析を含めたM&A、事業承継に関する専門的なアドバイスを金融機関から受けたいというニーズは一層高まっていると思っています。
 改めて銀行等からニーズについてのヒアリングもさせていただいたところ、金融機関において、顧客に対し、資金調達方法や合併、吸収、買収等に関する考案及び助言を行う業務は極めて専門性が高く、労働時間とその成果が比例しない性質のものであり、まさに裁量労働制の対象にふさわしいものと考えております。
 こうした業務に就かれる方の年収水準は高く、満足度も高いと考えられますが、我が国の賞与決定の方法が、個別企業労使で都度決定をする、あるいは変動部分の報酬も高いということもありますので、例えば高度プロフェッショナル制度などの要件を常にクリアすることが難しい場合もあり、高プロを選択できない場合も少なくないと思っています。
 こうした状況を踏まえますと、金融機関において、資金調達方法や、合併・買収等に関する考案及び助言をする業務に従事する方の能力発揮を促して働きやすい環境を整えるには、裁量労働制の対象への追加が適当ではないかと考えます。
 もちろん、企業として、働き手の能力を最大限発揮するため有効と思われる施策は不断に取り組んでいるところです。例えば評価制度の見直しや人材育成の工夫などを行っていますが、労働時間と成果が比例しない業務に従事する働き手に適した労働時間法制の活用は、働き手のエンゲージメント、生産性の向上の両面が極めて重要だと考えています。
 最後に、裁量労働制適用労働者の約8割は「満足」又は「やや満足」と回答されていることを前提に、適正な制度運用に向けた議論も重要ですが、併せて対象業務の拡大についても建設的な議論をお願いできればと思っています。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 八野委員、お願いします。
○八野委員 今、使用者側からのお二方の意見に関して、現下の企業変革に伴う様々な対応が必要だということについては理解します。ただ、前回申し上げましたように、まずは企業の明確な方針、ビジョンがきちんとあって、その上で人事制度が設計されて、どういう働き方なのかということが決まっていくことになると思いますので、企業変革に伴う対応が直接、裁量労働制の拡大には結びつかないと認識しております。
 それと、今、鈴木委員は資金調達の例を出されました。そこで働く人たちは高額な報酬ではあるものの、高度プロフェッショナル制度の年収要件までには達しないから、企画業務型裁量労働制の拡大が必要という発言のように聞こえました。高度プロフェッショナル制度を作るときにおいても議論されたところですが、制度の求める年収要件や様々な要件において合わないからといって、それを裁量労働制の拡大に結びつけることは労働時間法制のロジックから外れていると認識しておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 川田委員、お願いします。
○川田委員 ありがとうございます。
 私からは、意見というよりは、この後の議論を進めていく上で、前提として法的な観点から確認しておいたほうがいいかなと思われる点について、事務局にいくつか御確認させていただきたいと思います。
 今回の資料No.1-1の2ページ目の上に、まず、現行制度の下で対応可能かというところを確認した上で、対象業務の範囲について改めて検討することが必要である部分を検討しておくということが適当だろうと示されています。先ほど来具体的に御発言があったような点についても、まずは現行法上どういう位置づけになるものなのかということを確認しておくことが重要なのではないかと思います。
 そのような観点から、まず1つは、資料No.1-2で言いますと、6ページの平成29年の要綱のところです。そこのところに挙がっているいわゆる課題解決型開発提案業務と裁量的にPDCAサイクルを回す業務について改めて必要性に関する御発言がありました。
 このうち課題解決型開発提案業務に関しては、お話を伺っていたところ、現行制度との関係でいうと、4ページに列挙されている専門業務型裁量労働制の対象業務との関係で、例えば、情報システムの構築に関してハードウェアとソフトウェアの開発を一体として行うということであれば、資料でいうと①の新商品・新技術の研究開発と②、あるいは⑦といった情報システム関係の業務にまたがる業務と整理できる可能性があるのではないか。あるいは、情報システム関係の業務の中で②のいわゆるシステムエンジニア、システムの分析・設計の業務と⑦のシステムコンサルタントの業務にまたがるような業務という形で整理できる可能性があるのではないかと思ったところです。
 そこで質問としては、現行の専門業務型裁量労働制の対象業務に関する解釈で、ここの①から⑲は、条文でいうと労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づく委任を受けて、大臣告示で定められる業務が各号ごとに列挙されているのに対応していると思うのですけれども、そういう条文の項目でいうと、別々の項目、複数の項目にまたがるような業務についてです。
 1つの項目だけ見ると、例えば、システムエンジニアの業務の中では収まり切らないけれども、その方が行う業務がシステムエンジニアとシステムコンサルタントの業務をあわせたものの中には入っているというケースについて、現行の専門業務型裁量労働制の対象業務になり得るのか。その点が適切に定められるような労使協定が締結されていれば含まれ得るということでいいのかなと考えられるところではありますが、その点がどうなっているのかについて、伺えれば、それを議論の前提にできるのではないかと思います。
 それから、裁量的にPDCAサイクルを回す業務については、平成29年の時点では対象業務の拡大の対象ということで議論されたのですから、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務という今の労働基準法第38条の4の第1項第1号に定められた対象業務に収まり切らない部分があると考えられたために拡大の議論がされたと思うのですが、この点についても、具体的に現行の労働基準法第38条の4の対象業務の解釈の中でどういうところがとらえ切れないと考えられたのかというところを確認できればと思います。
 あわせて、先ほど鈴木委員から御発言がありました金融機関における資金調達手法や、M&Aの手法等を顧客のニーズにおいて開発する業務というものが例として挙がっていたかと思いますが、これももし分かるようであれば、現行法の中の位置づけがどういうところになるのかということについて教えていただければと思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 質問がありましたので、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。川田委員からの御質問についてお答え申し上げます。
 まず、専門業務型裁量労働制の対象業務は19業務ございますけれども、例えば対象業務の中で組み合わせた場合にどうなるのかという御質問だったと思います。現行法制上、対象業務に該当している限りという前提でございますが、対象労働者が従事する業務の内容が複数の対象業務に該当する場合であっても、労使協定の内容を前提にしまして、専門業務型裁量労働制の適用対象になると考えており、そのように運用させていただいているという状況でございます。
 それから、企画業務型裁量労働制の裁量的にPDCAサイクルを回す業務につきまして、企画、立案、調査及び分析の業務に係る御質問だったと思います。事業の運営に関する事項の企画、立案、調査及び分析の業務の一環として情報の収集等を行うことは可能と考えています。一方、例えば、企画、立案、調査及び分析の業務とは別に、ほぼ毎日のように、一定の時間、現場において計画等の実施状況の把握及び評価を行うことが命じられているようなものは、現行法上対象にはならないと考えておりまして、前回の法案要綱におきましては、この部分などについて対処しようということで御提案させていただいたものと考えてございます。
 個別の状況にはよりますが、現時点で分かるものについては以上の解釈になります。
 それから、鈴木委員から御発言がありました金融機関における業務については、内容的なものは精査する必要がありますので、確たることは申し上げられませんが、企画業務型もしくは専門業務型裁量労働制の対象にならないというものであれば、何らかの形で対象業務への追加が必要か否かを検討することが必要になるものと考えられますけれども、今の時点では事務局として判断しかねますという回答となります。
 以上でございます。
○川田委員 ありがとうございました。
○荒木分科会長 ほかに対象業務についていかがでしょうか。
 佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
 私もこの対象業務について、資料No.1-1の2ページに書かれている方向性には、異議ありません。対象業務の範囲については、その必要に応じて検討することが適当ではないかと思います。検討ですので、こういう経済活動でいろいろな業務が対象となる中で、どれが適用するのかというのが非常に難しいところだと思います。ですから、分科会でもその在り方については検討を進めていくことが必要になるだろうと思います。
 その上に立って、例えば平成27年の建議で示された業務などは詳細な議論を行ってきて提示されたと思うのですけれども、一方で、はっきり申し上げて抽象的に記載され、分かりにくいと思うのです。今の企画業務型裁量労働制の対象業務と、もちろんこれでまだ足りない部分があるからということのものなのでしょうけれども、分かりにくいと思います。その辺を明確にしていく必要があるのかなと考えます。また、裁量労働制については、特にみなし労働時間の在り方が問題になると思います。これは労使双方の責任もあると思うのですけれども、その中で、やはり分かりやすく、適用できるようにしていただきたい。中小企業でいろいろな業務に一人の人間が携わっているときに、今のままでも読めるのではないか、これでは読めないというのが非常に分かりにくいなというのを感じたところでございます。
 対象業務については私はそういう意見でございます。以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 対象業務についてはとりあえずはよろしいでしょうか。
 それでは、資料No.1-1の2ページ目の大きな2つ目の項目「労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保」について、3つ論点がございますので、それぞれの論点ごとに議論させていただければと思います。
 まず、対象労働者の要件に関して御意見があれば、お願いいたします。
 八野委員、お願いいたします。
○八野委員 ありがとうございます。
 先ほど冨髙委員が、対象業務とはその遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねることが必要だということを述べました。本来的には上司に相談せず自分で決めることができる業務が制度趣旨に沿った業務ではないかという指摘であったと思います。専門業務型裁量労働制においては具体的な対象業務が省令・告示で規定されていまして、その範囲内で労使協定において定めることになっています。また、企画業務型裁量労働制に関しても、法律の要件を満たす業務について、労使委員会で対象業務として決議したものとされています。労働者の裁量に大幅に委ねるためには、労働者が業務に関する専門的知識を有し、自らの知識と経験を用いながら業務を自身の判断で遂行することが必要だと思います。
 資料No.1-3の5ページ目を見ると、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制ともに、以前の勤め先での業務従事年数を含んでも「1年未満」と答えている労働者が一定程度いるということです。特に企画業務型裁量労働制に関しては、労働基準法の第38条の4の第1項第2号において「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」と規定されています。経験年数が少ない労働者がこれに該当するのかというと、極めて疑問を持たざるを得ません。経験年数の少ない労働者は、告示で示されているように、本来、裁量労働制の適用外であり、一定程度の職場での実務経験を積まなければ、実務の場においても裁量を持って働くことは難しいと考えています。
 資料No.1-1の2ページ目に、対象労働者の要件においては、企画業務型裁量労働制に関しては「職務経験等の具体的な要件をより明確に定めることが考えられる」とあります。法の適正な履行を促すためには、労働基準法第38条の4第1項第2号が規定する労働者とはどのような知識、経験等を有する必要があるものかを示すことや、現行の告示で例示されているものをより明確にしていくことが必要なのではないかと思っております。
 また、専門業務型裁量労働制においては、企画業務型裁量労働制のような要件が法律上課せられていませんが、省令・告示において該当する業務だからといって、経験が全くないような者を裁量労働制の対象にしてよいのかということも改めて検討が必要なのではないかと思います。例えば大学や大学院で高度な専門知識を学んだとしても、企画業務型裁量労働制同様、実際の実務の場においては、専門知識だけではない実務の経験や知識もあわせて必要になる場合もあり、本当に裁量を持って働けるかという点も含めた総合的な検討を現場労使において十分に行うべきと考えます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、東矢委員、お願いいたします。
○東矢委員 ありがとうございます。私からは、対象労働者の要件の中にある3つ目のポツの「賃金・評価制度の運用実態等」に関する部分を中心に3点発言をさせていただきます。
 最初に、資料No.1-3の6ページ目になります。こちらは適用対象者の年収を表している部分ですが、上の専門業務型裁量労働制のところを見ますと、「200万円未満」や「200万円以上300万円未満」といった回答が見られておりまして、こういった割増賃金の支払いを逃れるための法の潜脱ではないかと思われるような低い処遇の適用労働者がいるということは大きな問題ではないかと考えてございます。法が要求している高度な専門知識等や対象業務を適切に遂行するための知識・経験等を有しているにも関わらず、賃金が果たしてその知識や経験等に見合う水準になっているのかというところは、適正な法の履行確保という観点から労使でしっかり協議するべきと考えております。
 2点目は、次の論点の本人同意のところにも関わる話でございますけれども、対象労働者の納得性の確保という観点からは、本人同意を取る以前に、まず、当該事業場においてどのように制度が運用されているか、賃金の評価制度等がどうなっているのかということを十分に説明し、理解と納得を得ることが重要だと思います。
 企画業務型裁量労働制におきましては、賃金・評価制度について事前明示した上で同意を得るということが適当だと規定されておりますけれども、企画業務型裁量労働制、専門業務型裁量労働制のいずれにおいても明示し、労働者の納得を得るようにすべきではないかと考えております。
 最後、3点目ですけれども、適切で実効的な労使協議を行い、労働者の納得性を得るためには、当該事業場の労働者の声を吸い上げて発言していくことが必要です。労働組合がある職場においては、職場対応等を通じて常日頃よりコミュニケーションを取っているところが多いと認識しておりますけれども、一方で、労働組合のない職場において適切な協議を行うためには、前提として、透明なプロセスで適正に選出された過半数代表でなければなりません。労使委員会の実効性という点から、後の議論にも関係するところだと思いますので、最後の1点についてはあらかじめ発言をさせていただきました。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 時間が押しておりますので、それぞれに分けて議論しようと思っておりましたけれども、既に労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保で、対象者の要件のほかにも、本人同意、それからコミュニケーションについても御発言をいただいておりますので、分けずに、大きな2つ目の「対象業務」以外の「労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量」についてまとめて御発言いただくということで、お願いしたいと思います。
 佐藤委員、お願いいたします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。私からは、対象労働者の要件というところで、端的に申し上げさせていただきたいと思います。
 先ほど八野委員からも御発言がありましたけれども、私も、企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制それぞれの対象業務の要件について意見を述べたいと思います。
 まず、企画業務型裁量労働制については、指針で、先ほど来御紹介があったような職務経験等について示されている、事業の運営に関する企画、立案、調査及び分析という要件は抽象的でもありますので、あらゆる業種、職種で存在し得る業務かと思います。そのため、裁量を持って業務遂行ができる知識や経験を適用労働者が有しているかどうかという判断が難しいということは言えると思いますので、この内容をより明確化していくこと自体は違和感ございませんし、そういった方向で検討を進めていくべきだろうと考えております。
 一方で、専門業務型裁量労働制の対象業務については、先ほど御紹介がありましたけれども、19種類の業務ごとに、求められる資格であったり、業務内容というのが比較的明らかであると思っております。また、その経験とかも、例えば研究者の場合ですと、就職をされる前でも研究室で十分に経験を積んでおられるケース、そうでないケース、様々考えられます。したがいまして、専門業務型裁量労働制を適用する労働者については、必要があれば、労使で十分協議し決定することが望ましいと思いますけれども、この必要性も含めて労使自治に委ねるのが適当と考えておりますので、一律の制度化などはそぐわないのかなと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 次に、池田委員、お願いいたします。先ほど御発言いただきましたけれども、ポイントをもう一度確認する御発言をお願いしたいと思います。
○池田委員 先ほどは失礼しました。
 私が申し上げたことは、裁量労働制で働く従業員がふさわしい処遇となるように労使での話合いというのは非常に重要だと考えますが、どういった賃金・評価制度の運用実態の公表をしていくかというのは、個別労使の関係性によっていろいろな差があると思いますし、また、業界における水準ですとか、アサインされる職種・業務内容との関係性もあって、処遇、評価、その他賃金とかということは業界ごと、企業ごとに異なるのではないかと考えます。ですので、開示情報を一律に決めるということはできれば避けていただいて、開示が推奨される情報の例などを示しながら、各企業の実態に合った話し合いができるような配慮をしてほしいというのが意見でございます。
 あと、もう一つお願いとして挙げたことは、裁量労働制活用企業が非常に少ないので、他社事例を目にするという意味で、特別手当の支給であるとか、業績・成果に応じて変わる賞与の裁量加算などをヒアリング結果から得られた事例を周知するということは、各企業の労使の議論に有効だと思うので、厚労省への検討をお願いしたいということを要請させていただいていました。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、兵藤委員、お願いいたします。
○兵藤委員 ありがとうございます。私からは、業務量のコントロールなどを通じた裁量の確保の点について御意見を申し上げたいと思います。
 適用労働者に裁量を委ねることは本制度の根本でございます。特に出退勤の時刻や業務の時間配分の決定を労働者に委ねる必要性は特に高いと思っておりますが、実態調査を見ますと、約5%から8%程度の割合で上司が決めているという実態があるということでございますので、適切な運用に向けて、このあたりを改めて明確化するべきだと思います。
 また、業務量が過大などの理由で裁量が事実上失われているという場合においては、状況を改善する、あるいは制度適用を除外するために、資料No.1-2の5ページ目に記載がございます告示の内容を各企業が徹底することが重要だと考えております。例えば、過大な業務量を与える場合や著しく短い納期設定をする場合には、時間配分に対する裁量が事実上失われていることがある点など、告示の内容を各企業・会社内のガイドラインに盛り込んでいく、それから、上司と適用労働者双方に向けて定期的に周知していくような取組や管理者に向けた継続的な研修などが有効ではないかと考えております。
 私からの意見は以上でございます。ありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 ありがとうございます。私からは、本人同意及び同意の撤回、および、適用除外について意見を申し上げたいと思います。
 まず、制度の適用に際しては、使用者のほうから制度の趣旨・目的を確実に説明するということは極めて重要なことだろうと思います。始終業時刻や業務の遂行方法、業務の時間配分について使用者が具体的な指示をしないことや、一方で、業務の目的、目標、期限等の基本事項に関する指示は可能であるということなども事前に説明をして、適用後に労使間で齟齬が生まれないようにしていくことが重要だろうと思います。
 一方で、専門業務型裁量労働制においては、本人同意を取ることが想定されていないと思いますけれども、これは業務ごとに求められる資格や業務内容が比較的明確で、使用者による具体的な指示が困難であることが明らかな業務であるという点が影響していると考えております。そういたしますと、専門業務型裁量労働制にも本人同意を一律に義務化することについては慎重な議論が必要だろうと思います。
 ただ、資料No.1-3の23ページ目にございましたが、専門業務型裁量労働制を導入している事業場で任意で本人同意を取っている企業は46.3%という数字でございました。こうした実態を念頭に置いた上で、任意に広げていく方策について検討していくことがいいのだろうと考えます。
 最後に、一定の基準に該当した場合に制度適用を解除する措置等を設けることについてですが、例えば、弊社でも裁量労働制適用労働者の始終業時刻からいわゆる健康管理時間というのを把握して、これで管理をしておりますけれども、こうしたものが一定時間を超えた場合に適用除外するという制度は、こういう健康・福祉確保措置としては有効な措置であろうと思っています。
 一方で、実態調査において、制度適用により健康状態に影響があるとまでは言えない結果が出ている中では、一律の義務化は過度な規制であろうと感じます。まずは、健康確保には様々なアプローチが考えられるということを周知しながら、各社が適切な措置を取れるようしっかり促していくことが重要ではないかと思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 川野委員、お願いします。
○川野委員 ありがとうございます。
 本人同意に関して、企画業務型裁量労働制では対象労働者の同意が要件とされている一方で、専門業務型裁量労働制では同意に係る事項は一切ありません。
 一方、資料No.1-3、先ほど御指摘のあった23ページ目を見ると、法律上同意が求められていない専門業務型裁量労働制においても、約半数で同意を取っています。その理由として、労働者の納得性確保を挙げている割合が9割に上っています。そうしたことを踏まえれば、今は同意が求められていない専門業務型裁量労働制においても本人同意を求める方向で検討すべきだと考えます。
 また、その際には、さきの運用実態等において、東矢委員が述べられましたとおり、制度概要や賃金・評価制度などの制度適用によってどうなるのか、きちんと対象労働者に説明し、理解と納得を得た上で真の自由意思による同意を得ることが大変重要だと考えています。
 なお、企画業務型裁量労働制において、法律上同意が要件として求められていることを踏まえれば、資料No.1-3の24ページ目で要件としている割合が100%に満たないことは問題であり、指導監督を適正に実施していく必要があると考えています。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 世永委員、お願いします。
○世永委員 ありがとうございます。同意の撤回について発言をさせていただきます。
 資料No.1-3の25ページ目になります。同意撤回の手続の方法を見ますと、「手続は特に定めていない」とする割合が専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制ともに2割を超えているという状況です。企画業務型裁量労働制に関し、同意は法律上要件になっているにもかかわらず、撤回に関しては、告示において同意を撤回することを認める場合には、要件・手続を決議において具体的に定めることが適当とするにとどまっていると受け止めています。
 対象労働者から見れば、一旦同意してしまうと、何らかの事情があっても同意を撤回したときに、そもそも撤回できるのか、どのような手続を経ればできるのかが分からず、不安になるのではないでしょうか。本人の同意を得る制度であるならば、本人がもはや継続できないと思うときには同意を撤回できるようにすべきであり、かつ、同意撤回に関わる手順は明確に定めておくことが労働者の権利保護の観点からも重要だと考えています。
 また、同意を撤回する際においては、不同意と同様に不利益取扱いは禁止するべきです。同意を撤回しても不利益な取扱いをされないことが担保されていなければ、結果として、同意撤回の制度を設けていたとしても、労働者としては不利益取扱いを恐れて同意撤回ができなくなってしまい、制度の実効性が確保されないと考えています。
 なお、労働者の健康確保の観点からは、長時間労働が続いている、あるいは心身の不調が見られる、産業医からの指摘がある等の一定の基準を設けて、それに該当する場合には、本人の意思に関わらず、裁量労働制の適用を解除するような制度を設けていくことも検討するべきではないでしょうか。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 北野委員、お願いします。
○北野委員 ありがとうございます。裁量の確保に関して意見を申し上げたいと思います。
 先ほど資料No.1-3の15ページ目に、「裁量の程度が大きい」と回答した労働者は、長時間労働になる割合、さらには健康状態、メンタルヘルス等に与える影響が低いとなっています。そのことを踏まえれば、資料No.1-1の3ページの1つ目のポツにあるように、裁量が事実上失われたと判断される場合には、裁量労働制を適用することはできないことを明確にしておく必要があると思っております。
 一方で、その裁量の程度が大きいかどうかについては、個人の主観に係る部分もありますし、どのようなときに裁量が事実上失われたと判断するのか、そのような基準のようなものをあわせて示す、または労使委員会であらかじめ定めておくことも検討すべきではないかと思っております。その基準に基づいて裁量労働制の名のもとで過重な業務負担となっていないか、長時間労働となっていないか、制度導入後も労使で運用実態をチェックし、適正に運用していくことが極めて重要だと思っております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。私から、前回8月の労働条件分科会においての発言に対して、意見を申し上げたいと思います。
 使用者側委員の方から、前回、例えば育児や介護をしている方に限定した上で、仕事と育児の両立を図るために時間外労働の深夜の割増賃金の適用除外にしてはどうかという発言があったと認識しております。深夜業務に関しては、睡眠時間が減少するということもありますし、労働者の心身等に与える影響が大変大きく、深夜業を含む業務に常時従事する場合においては、労働安全衛生規則で特定業務従事者の健康診断が義務づけられております。育児や家事の両立ということで言えば、ただでさえ睡眠不足になりやすいという実態があります。私も育児中の当事者として申し上げたいと思いますけれども、落ち着いて仕事に集中できる時間が深夜になってしまうのが実態なのだと思います。そういったことを踏まえれば、労働者の健康確保という観点から、企業の責務として、深夜に及ぶ労働の縮減に取り組むべきだと思いますし、深夜の割増賃金の適用除外とすることについてはもってのほかだと思っております。
 もう一点、フレックスタイム制における使用者による具体的指示についてです。現行制度の適切な活用で多様な働き方の実現は十分に可能だと考えておりまして、裁量労働制の対象業務拡大は必要ないと労働者側から発言しましたが、使用者側の委員の方から、裁量労働制と他の労働時間法制では使用者の具体的指示の有無が異なっているという指摘があったと承知しております。しかし、フレックスタイム制など現行制度でも柔軟な働き方を可能とする制度のもとで、業務遂行方法も含めて工夫して取り組んでいるところはありますし、裁量労働制という制度を適用しなければ必ずしもできないものではないと考えております。具体的指示の有無が異なるからということで裁量労働制を拡大するということにはならないと思いますので、その点についても意見として申し上げます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 では、この議題についてはここまでとさせていただきたいと思います。
 裁量労働制について2つの論点について多様な議論をいただいたところでございます。対象業務につきましては、使用者側委員からはニーズのある業務についての御発言がありまして、労働者側委員からは業務拡大には慎重であるべきだという趣旨の御発言をいただきました。また、公益委員からの質問に対しましては、事務局より現行の対象業務に係る解釈について回答がなされたところであります。
 これらを踏まえた上で、事務局においては、今後の議題に資するための整理をしていただき、一定の対応が必要と考えられるような業務については、そのニーズの把握に努めていただき、その結果をこの分科会に報告していただきたいと考えております。
 それでは、次の議題の(2)に移ります。「労働契約関係の明確化等について」であります。事務局から説明をお願いします。
○労働関係法課長 議題(2)の「労働契約関係の明確化等について」、資料No.2「多様な正社員の労働契約関係の明確化等について」という資料に基づきまして説明をさせていただきます。
 右下にページ番号を振っておりますけれども、2ページ目を御覧ください。本日御議論いただきたい論点でございます。具体的に申し上げますと、「2.多様な正社員の労働契約関係の明確化等について」と「3.その他」の点につきまして本日御議論いただければと思っております。
 具体的な論点の内容につきましては、資料の6ページ目以降を御覧ください。資料の6ページ目は「多様な正社員の労働契約関係の明確化等について」の(1)の総論部分でございます。資料の作り方といたしましては、まず【論点】という形で冒頭に記載をさせていただきまして、その後に検討会の報告書の抜粋ですとか、補足資料がある場合につきましては補足資料をつけさせていただいております。
 まずは、(1)の【論点】でございますけれども、○が2つございます。1つ目は、職務、勤務地または労働時間を限定した多様な正社員の更なる普及・促進について、2つ目といたしまして、多様な正社員をはじめとする労働者全般の契約関係の明確化について、御議論いただけないかと思っております。
 【参考】といたしまして検討会の報告書の抜粋を記載しております。6ページの下側につきましては、多様な正社員の更なる普及・促進関係でございまして、多様な正社員につきましては、多様な労働力の確保に資するとか、限定的な働き方を希望する場合のニーズ、それから、働き方の二極化の緩和、ワーク・ライフ・バランス、自律的なキャリア形成、人材の確保・定着といった点で、労使双方にとって望ましい形で普及・促進を推進していくことが適当ではないか、という形で検討会では整理をいただいております。
 7ページ目を御覧ください。検討会の報告書の抜粋でございまして、労働契約関係の明確化の関係でございます。3点ございます。
 1点目でございますけれども、労働条件が限定されている場合には当事者の合意がなければ変更できないというのが基本原則でございますけれども、多様な正社員を労使双方にとって望ましい形でさらに普及ということを考えた場合に、紛争の未然防止、予見可能性の向上といったことから、労働契約関係の明確化というのを検討することが適当ではないか、というのが1点目でございます。
 2点目といたしましては、もとより多様な正社員制度を設けるかどうかは個々の企業で決定されるべきことでございますけれども、労働契約関係の明確化といいますのは、予見可能性の向上、紛争の未然防止、情報の質・量の格差是正や透明性の確保にもつながるものでございますので、労使双方にとって望ましい形で普及・促進を考えた場合に、重要な環境整備と言えるのではないか、という整理をいただいております。
 その上で、3点目の○でございますけれども、検討の対象とする労働者の範囲につきましては、「・」が3つございます。1つ目の「・」は、多様な正社員といわゆる正社員につきましては、法律上で取扱いを区分することが難しい。それから、正社員という概念自体も曖昧になっている。2点目の「・」でございますけれども、いわゆる正社員の場合も限定がないことを認識することが重要ではないか。3つ目の「・」ですけれども、有期契約労働者等の正社員以外の労働者も含めまして、個別に労働契約の内容を設定したり限定したりすることが重要になってきている。
 こういったことを踏まえまして、検討会におきましては、多様な正社員のみならず、いわゆる正社員、有期労働契約労働者等も含めまして、労働契約関係の明確化について検討の対象にした、ということでございます。
 8ページ目を御覧ください。「(2)労働契約関係の明確化」でございます。論点は3つございます。
 1点目の論点といたしましては、多様な正社員を初めとする労働者全般を対象にいたしまして、労働契約関係を明確化することについて、ということで、具体的には検討会報告書で示されておりました次の2点について御議論いただければと思っております。
 1点目は、1つ目の「・」ですけれども、労働条件明示の対象といたしまして、就業の場所・業務の変更の範囲を加えること。2つ目の「・」といたしまして、労働条件明示のタイミングといたしまして労働条件の変更時を加えること。ここの意味するところといたしましては、※を追加しておりますけれども、労働契約の内容が変更される場合を想定しており、就業規則の変更ですとか、予定されている変更の範囲内での変更は除くということで考えております。
 2つ目の○でございますけれども、就業規則の更なる周知についてということで、具体的には検討会報告書で示されております2点。「・」が2つございますけれども、1つ目の「・」は、就業規則を備え付けている場所等が周知されるような方策、2つ目の「・」といたしましては、就業規則を必要なときに容易に確認できるような方策、こういったことについて御議論いただけないかと思っております。
 3つ目の○でございますけれども、労働契約関係の明確化を図る場合の労使の紛争の未然防止ということで、具体的には検討会報告書で示されました裁判例の内容をまとめて整理をして示していくこと。
 こういったことについて御議論いただけないかと思っております。
 9ページ目以降が検討会報告書の関係部分の抜粋でございます。9ページの上が就業の場所、業務の変更の範囲を加えることの関係でございます。これにつきましては、予見可能性の向上、紛争の未然防止といったことから、労働条件明示の事項として、就業の場所、従事すべき業務の変更の範囲を追加することが適当と考えられるという形で整理をいただいております。
 具体的には「なお」というところでございますけれども、限定されている場合にはその具体的な意味を示す、変更が予定されている場合にはその旨を示すことになるのではないかということで整理をいただいております。
 9ページ目の下側につきましては、労働条件の明示のタイミングに労働条件の変更時も加えるということの関係でございます。
 検討会の報告書から2点抜粋しております。
 1点目といたしましては、現行の制度といたしましては、労働条件が変更された場合に、変更された後の労働条件を明示することは義務づけられておりません。ただ、労働条件の変更とその内容を示すことで、内容の確認の機会が保障されて、変更をめぐる紛争の防止に資するのではないか。
 また、2つ目の「・」ですけれども、変更後の労働条件を明示しなければ、変更前の労働条件が存続していると誤解されてしまうリスクがあるのではないかということで、変更時も明示すべき時期に加えるのが適当ではないか、ということで整理をいただいております。
 2つ目の○につきましては、具体的にはということで、書面で明示することとされている労働条件が変更されたときに、変更の内容を書面で明示する義務を課すことが考えられるのではないか、ただし、括弧書きで①、②とございますけれども、就業規則変更の場合ですとか、もともと規定されている変更の範囲内での変更については除かれるのではないか、という形で整理をいただいております。
 10ページ目を御覧ください。上の部分につきましては、就業規則の更なる周知関係でございます。○が2つございますけれども、1つ目の○につきましては、就業規則を備え付けている場所ですとか、就業規則を必要なとき容易に確認できる方策について検討することが必要であるという整理をいただいております。
 2つ目の○といたしましては、就業規則の変更のタイミングでの周知も重要と考えられるということで御指摘をいただいているものでございます。
 10ページ目の下側につきましては、検討会の報告書で労働契約関係の明確化を図る場合の紛争の未然防止の関係でございます。○が2つございますけれども、1点目の○につきましては、明確化を図る場合の留意点については、紛争の未然防止ですとか予見可能性の向上といった観点から、裁判例等の内容をまとめて整理をし、示していくことが重要と考えられる。
 2つ目の○といたしまして、具体的にどういった内容かということで「・」が5点ございます。
 1点目が、勤務地ですとか職務等について限定合意が認められる場合に、この合意に反する配転命令については、労働者の自由な意思による同意がない限り効力を有しないものとされるということ。
 2つ目の「・」ですけれども、限定合意を変更するための労働者の同意については、自由意思によるものが必要となること。
 3つ目の「・」ですけれども、限定された勤務地・職務が廃止されたとしても、それによる解雇が当然に正当化されることにはならないこと。
 4つ目の「・」ですけれども、いわゆる変更解約告知については、その有効性の判断枠組みに関して裁判所の判断も分かれているので注意を要するということ。
 5つ目の「・」ですけれども、規定をされております変更の範囲内の労働条件の変更であったとしても、個々の具体的な状況への配慮ですとか、理解を得るための丁寧な説明が必要とされ得ること。
 こういったことについて周知していく必要があるのではないか、ということで整理をいただいております。
 11ページ目につきましては、現行の制度の概要でございまして、労働条件の明示については、労働基準法15条第1項に基づき明示が求められております。明示の時点といたしましては労働契約を締結するタイミングでございまして、明示事項といたしましては、真ん中にございます①から⑭の事項、そのうち下線が引いてあります①から⑥については書面で明示をすることになっております。
 また、右側に「※2」ということで、点線で囲っている部分がございますけれども、明示事項につきましては、雇入れ直後の就業の場所、従事すべき業務を明示すれば足るとされております。
 12ページ目を御覧ください。労働条件の明確化の関係で、仮に就業の場所、従事すべき業務の内容につきまして変更の範囲を記載するということをした場合の想定といたしまして、どういう記載が考えられるかということを検討会の報告書で整理いただいたものの抜粋でございます。就業の場所につきましては、変更の範囲として、例えば限定がある場合には「東京都23区内」と記載する、従事すべき業務の内容については、変更の範囲として「営業」と記載する、ということが考えられるのではないか、一番下にございますように、逆に限定がない場合の変更の範囲の例といたしましては、「会社の定める事業所/業務」といった形の記載があり得るのではないか、ということで整理をいただいております。
 13ページ目、14ページ目につきましては、法律の抜粋ですので説明を省略いたしまして、15ページ目「(3)その他」でございます。【論点】といたしましては、多様な正社員の活用等に関しまして、労使コミュニケーションの促進を図っていくことについて御議論いただければということで考えておりまして、15ページ目の下側に検討会報告書におけるこの部分についての記載を抜粋しております。
 4点ございます。
 1点目でございますけれども、労働契約法3条2項の均衡考慮といいますのは、正社員と多様な正社員の間の均衡も含まれているということ。
 2つ目の○でございますけれども、勤務時間限定正社員の活用例が比較的少ないという観点につきましては、正社員の働き方の見直しも必要になってくるのではないかということ。
 3つ目の○といたしましては、労働契約法3条3項の仕事と生活の調和、これにつきましては、正社員といわゆる正社員の間の転換制度を設けることも含まれるのではないかということ。
 4点目の○といたしましては、総括といたしまして、こういった取組を考える場合には、関係する労働者の意見が適切に反映されるよう労使間でのコミュニケーションを促していくことが適当である、という形で整理をいただいております。
 17ページ目が「3.その他」の論点の関係でございます。【論点】といたしまして、1点、無期転換者や多様な正社員等、多様な労働者全体の意見集約のための労使コミュニケーションについて御議論いただければということで考えております。
 17ページ目の下側に検討会報告書における抜粋として、○が2つございます。
 1つ目の○ですけれども、労使コミュニケーションの方法につきまして、各企業の取組事例を把握して周知していくことが考えられるのではないか。
 2つ目の○といたしまして、無期転換ですとか多様な正社員に係る制度については、対象となる労働者の意見を吸い上げ、労働者全体の意見を調整することも必要であるということ、具体的には、①、②、③について周知・促進をしていくことが適当であるということで整理をいただいております。
 ①については、労働組合において使用者と労働者のニーズや課題に関する情報共有、議論を行って、多様な働き方の選択肢を労働者自らが選択できるような支援を行うよう努めていくということ。
 ②といたしましては、過半数代表者については、適正な手続で選任をされて、不利益な取扱いを受けないようにするということ。
 ③といたしまして、労働組合・過半数代表者いずれにいたしましても、全ての労働者の利益を代表するよう努めること。
 こういったことについて周知・促進していくことが適当である、という形で整理をしております。また、使用者におかれては、過半数代表者が法に規定する協定等に関する事務を円滑に遂行できるように必要な配慮を行わなければならない、こういったことも周知をしていくことが適当であるという形で整理をいただいております。
 最後に、多様な労働者全体の意見を反映した労使コミュニケーションの促進を図る方策も中長期的な課題である、という形で整理をさせていただいているものでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見があればお願いいたします。
 冨髙委員。
○冨髙委員 ありがとうございます。私から、まず資料2の6ページの【論点】の2つについて意見を申し上げたいと思います。
 まず1点目でございますけれども、「多様な正社員の更なる普及・促進について、どう考えるか」というところでございます。従来から申し上げておりますけれども、職務や勤務地等を限定した正社員につきましては、既に個別労使が話合いを重ねて、各職場における実態とか必要性を踏まえて、議論の上、必要であれば導入をするものだと考えておりますので、行政が制度導入を仕組みとして後押しする必要があるのかは疑問と考えております。各職場における労使における創意工夫を周知・横展開することが重要だと思いますし、また、多様な働き方を難しくする一因であるのは長時間労働だと思いますので、その是正が必要であり、テレワークとかフレックスタイム制などの柔軟な働き方ができるような制度の適正な利用と活用の促進、雇用形態間の格差是正ということにまず取り組むべきだと考えているところでございます。
 多様な働き方の実現というのは、多様な正社員として幾つも雇用管理区分を設けなければいけないものではなく、現行制度の適切な選択と活用によって十分実現可能だと考えております。むしろ、雇用区分が複雑化・多様化すれば、低い雇用区分への固定化など、労働者間の格差が埋まらないばかりか労働者間の分断が生じてしまうような懸念もあると考えてございます。
 2点目は、「多様な正社員をはじめとする労働者全般の労働契約関係の明確化」でございます。使用者から労働契約の内容をしっかりと説明して労働者の理解を得ることは、契約締結の変更時の大前提だと考えているところでございます。
 ただ、少し前の調査になりますけれども、2016年のJILPTの調査結果を見ても、そもそも労基法で義務づけられている労働契約の締結時の明示すら徹底をされているとは言いがたく、我々連合に寄せられた労働相談では、職務限定で採用されたにも関わらず、本人の同意なしにほかの職種に異動させられたとか、本来限定されているはずの内容が会社都合で一方的に変更されるような事例も聞いております。労働者の生活に大きな影響を与える労働条件について、労働契約の内容に沿って適切に運用されるためにも、明確化を図ることは重要だと考えております。
 一方で、例えば、職務・勤務地等の限定内容をあらかじめ明示することによって、明示された職務や勤務地等がなくなったことを理由に解雇が促されてしまうのではないかという懸念もございます。労働者側も、労働条件通知などに限定内容の記載があることで、解雇はやむを得ないのではないかと誤認をしてしまうようなことがあってはならないと考えます。また、限定内容を明確化することに伴って、従前の就労が維持できないということだけを理由とした解雇等の不利益な取扱いを安易に許すことがあってはいけないと考えておりますので、防止措置を含めた一層の対策を講ずるべきだと考えております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 それでは、オンラインで東矢委員、発言をお願いいたします。
○東矢委員 ありがとうございます。すみません。途中で接続が少し不安定だったので確認させていただきたいのですけれども、今、総論のところに限らず、ほかの(2)とかも含めて発言してよろしいですか。
○荒木分科会長 はい。この「多様な正社員の労働契約関係の明確化等について」全般についての御意見、結構です。
○東矢委員 分かりました。ありがとうございます。
 私からは、資料No.2の8ページ目のところにございます1つ目の論点、労働条件の明示の対象に就業場所・業務の変更の範囲を追加すること、及び、明示のタイミングに労働条件変更時を追加することについて発言させていただきます。
 労働契約の内容を明確にして労働者の理解・納得を得るということが契約締結変更時の基本であることを踏まえますと、労基法15条の労働条件明示の対象に新たに就業場所及び業務の変更の範囲を加えることは重要な施策だと考えております。しかし、仮に契約締結時だけ就業場所・業務の変更の範囲を明示したとしても、労働契約変更時の明示義務が課されないといったことが起こった場合においては、将来の働き方やスキルアップなどを検討しつつ、労働者個々人が主体的にキャリア形成を図ることは難しいのではないかと思われます。
 したがいまして、今、提示されている対応策として記載されている就業場所・業務の変更の範囲の明示と、あと、労働条件変更時の明示義務づけにつきましては、どちらか独立で対応するということではなく、2つセットであることが不可欠だということを強調させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 続いて、佐藤晴子委員、お願いします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。私からは1点お願いと質問をさせていただきます。
 内容は、今、東矢委員からも御発言がありました8ページのところで、勤務地・職種の変更範囲の明示についてということに関してです。変更範囲の明示については、先ほど来御発言がありますとおり、紛争の未然防止に資するものであったり、そういったものと受け止めております。ただ、各社における雇用契約であったり、コースを設定しているなどの実態というのは様々だと思っております。ですので、変更の範囲の記載の仕方の面で、実務上、混乱であったり、余計にトラブルを惹起するような可能性もあると考えております。
 したがいまして、変更範囲の明示を義務化するに当たっては、そういった混乱が生じないように、先ほど12ページのところに赤字で記載例がありましたけれども、勤務地とか職務が完全に限定されているケース、あるいは完全に無限定のケースだけではなくて、一部のみの限定のケースだとか、ある程度様々なパターンを想定していただいて、記載の仕方の例とかをもう少し示していただけると分かりやすいのかなと思いました。これがお願いです。
 それから、質問です。以前の本分科会でも、私、申し上げさせていただきましたけれども、法令上想定されているものと少し違う働き方になってきたとき、例えばテレワーク、あるいは出向の可能性があるとか、そういった場合はどういうふうに変更の範囲の記載の仕方を想定しておられるのか。以前、問題提起はさせていただいたのですけれども、実際そういった働き方があるわけですから、それを変更の範囲と想定する場合には、それぞれどのような形での明示を想定しているのかということを教えていただければと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 では、事務局、お願いします。
○労働関係法課長 佐藤晴子委員からの御指摘についてでございますけれども、まず、出向の関係でございます。仮にこういった制度を導入するとなった場合には、在籍出向につきましては雇用関係が出向元と継続しておりますので、変更の範囲の明示の対象に入ってくるのではないかと考えております。
 その際の記載の仕方といたしましては、就業の場所につきましてそもそも限定がない場合として、P12で記載をしておりますように、会社の定める事業場というような形を書いておくことで出向先についても明示をしているという形で整理できるのではないかと考えております。
 また、テレワークにつきましては、就業規則等で制度上予定をされておられるような場合につきましては、就業の場所の変更の範囲に関わってくると思います。例えば12ページの例で申し上げますと、「東京23区内」と書いてある場合に、自宅がそことは違うケースも考えられますので、「東京23区内または会社が許可する場所」と記載するという形が考えられるのではないかと思っております。就業の場所の変更の範囲に全く限定がないような場合につきましては「会社の定める場所」といったところで、テレワークについても含まれているという形で整理ができるのではないかと現時点では考えております。
 また、仮にこの制度を導入するとなった場合の様々な記載例の在り方につきましては、引き続き検討させていただきたいと思っております。
 事務局からは以上です。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
 それでは、続いて鬼村委員からお願いします。
○鬼村委員 ありがとうございます。私からは労働条件の変更時の明示について意見を申し上げたいと思います。
 今回お話ございました、雇用契約を締結した際に、勤務地や従事する職務内容について将来的な変更の範囲を明示するという方向性については、トラブルの防止に資するものとも受け止められますので、必要な措置なのだろうと考えております。ただ、将来的な変更範囲の明示の義務化などについては、企業によっては非常に大きな負担となり得るものだろうと思います。このため、雇用契約締結時に勤務地・職務の変更範囲の明示を義務化して、基準法15条の明示事項に追加することについては必要であろうと感じますけれども、労働条件を変更したときにもこれをそのまま適用することについては慎重であるべきではないかと考えます。まずは、雇用契約締結時の措置のみを義務化して、これが定着してから変更時の明示についても検討していくということでよいのではないかと考えております。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 続いて、池田委員、お願いします。
○池田委員 どうもありがとうございます。私からは、資料の8ページ目の【論点】の3つ目の○、労働契約関係の明確化を図る場合の労使紛争の未然防止等について御要望を申し上げたいと思います。
 報告書では、特に周知が必要な点として、限定された勤務地・職務が廃止されたとしても、それによる解雇がそれだけで正当化されることにはならないということが指摘されています。私も、裁判例の傾向からしてそういう事例がありますので、その点を周知することは重要と考えます。ただし、裁判例等の周知に当たっては、限定された勤務地・職務が廃止された場合であっても、解雇が無効とされた事例だけではなく、例えば、参考資料3にも記載いただいていますが、2ページ及び25ページの村上学園事件のように、配置転換の範囲が解雇回避努力や被解雇者選定の妥当性の判断に影響を与えた事例ですとか、同じく参考資料No.3の2ページ目及び29ページ目にあるフェイス事件のように、職務の高度な専門性やそれに応じた高水準の処遇が整理解雇法理の判断に影響を与えた事例。こういったものも含めてバランスよく周知していただくことが重要だと思いますので、そのようにお願いしたいと思います。
 私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 川野委員、お願いします。
○川野委員 ありがとうございます。
 資料No.2の8ページ、1つ目の論点の労働条件の明示タイミングに労働条件の変更時を追加することについてです。先ほど冨髙委員からもありましたが、これまでも、家族の介護や治療等の理由があるにもかかわらず、使用者から就業規則を根拠に転居を伴う配置転換を迫られたことによって、仕事を辞めざるを得なかったという労働者からの相談が一定程度寄せられています。このような配転命令権の濫用が疑われる事案を未然に防止するためには、報告書にもあるとおり、就業規則の変更時にも労働条件の内容をしっかりと明示させることが大変重要だと思います。
 参考資料2の19ページにあるように、労働条件の変更手続については9割以上が就業規則の変更によって行われている実態にありますが、参考資料2の20ページには、就業規則の周知方法として「特に周知していない」というのが1.2%、「申し出があったときに見せている」の中でも「申し出があったときにだけ見せている」という回答があります。就業規則に記載するだけでは労働者に対して必要な情報の明示及び丁寧な説明がされているかどうか不明確であると思います。実効性がある形で労働契約関係の明確化を図るためには、就業規則の変更時もしっかりと本人に対する明示の対象とすべきであると考えます。
 加えて、そもそも変更が生じていない場合の周知についても、資料No.2の8ページの2つ目の論点に示されておりますが、先ほど見た参考資料2の20ページのデータのように、労働者の具体的な労働条件に関わる就業規則の周知が十分になされていないことは大変重要な問題であり、就業規則の周知に関しては従前より課題として指摘されてきましたし、この間、状況が改善してきているとは言いがたく、現行の延長線上で対応を幾ら検討しても、事態の抜本的な改善につながらないと考えています。就業規則については、労基法106条で周知が義務づけられていますが、労基則では具体的な周知方法について、書面交付を除いては備付け等の記載にとどまっており、実効性に欠けるのではないかと思います。労契法7条では、就業規則が労働契約の内容となるためには、使用者は労働者に周知することを要件としています。こうした扱いを踏まえて一層の対応策を検討してはどうかと考えています。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 八野委員、お願いします。
○八野委員 ありがとうございます。私からは、資料2の8ページの3つ目の論点、労使紛争の未然防止について意見を述べさせていただきたいと思います。
 先ほどから何度も出ているように、例えば、裁判例等の考え方を整理して周知していくことは必要な取組であると認識していますが、労働契約関係の明確化によって事業場の閉鎖、職務等が廃止された場合に、限定正社員の解雇が促進されかねないという点について非常に大きな懸念を労働側は持っています。
 先ほど冨髙委員からもあったとおり、労働条件通知書などに限定内容の記載があることで、労働者も解雇は致し方ないと思ってしまうおそれがある。そうなると、実態としては、単なるコストカットが目的の解雇であったとしても、労働者は問題がある解雇という自覚ではなく、泣き寝入りせざるを得ないということも考えられます。
 そのような事態を生じさせないように、職務等が廃止された場合も、解雇が当然に正当化されることなく解雇回避努力義務が課せられることについては、考え方の周知にとどまらず、今後議論される対応の方向性の中にしっかりと明記するとともに、少なくとも趣旨を明示するなど一層の対策を講じることが不可欠であるということを強調しておきたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。私は「(3)その他」のところについて、2点申し上げたいと思います。
 まずは、資料No.2の15ページの【論点】の多様な正社員の活用等に関する労使コミュニケーションの促進についてです。労使コミュニケーションは集団的労使関係をベースにした意見集約が重要であるということは、繰り返しになりますけれども、申し上げておきたいと思っております。その上で、関連して、限定正社員の均衡・均等待遇の確保について意見を申し上げたいと思っています。
 まず、短時間正社員ですけれども、こちらはパート・有期法の適用対象になりますので、いわゆる正社員との均衡・均等待遇が求められるということを改めて周知すべきだと思っています。また、無期転換ルールの議論の際にも労働側から申し上げましたけれども、正社員とほかの無期労契約労働者の間についても不合理な格差を是正する必要があると考えています。そのことがしっかり担保されなければ、この限定正社員という雇用区分がパート・有期法の適用逃れの手段として悪用されかねないのではないかという懸念を持っています。前々回の分科会の際に対応の方向性で示されていましたが、労契法3条2項の均衡・考慮を踏まえた取組だけでは不十分だということは再度申し述べておきたいと思います。
 もう一点、いわゆる正社員の働き方の見直しと限定正社員のキャリアアップ支援の必要性について申し上げたいと思っています。しかし、正社員が無限定の働き方であるという前提での記載が検討会報告でも見られると思っています。そもそも正社員が無限定な働き方であるという前提こそが見直されるべきであって、裁判例等を踏まえても、常態的な時間外労働ですとか無制限な配置転換などは許されていないということを申し上げておきたいと思います。
 その上で、限定正社員だからといって、希望してもキャリアアップが望めないですとか、あきらめざるを得ないということがあってはならないと思っています。当初は、個人の希望ですとかライフイベントの都合上、契約上制約のある働き方を選択するということがあると思います。ただ、その後働き続ける中では、正社員として就労継続を希望するということは当然あり得ることだと思います。ですから、転換が可能となるキャリア形成、それから能力開発の機会等の均衡・均等待遇の取組は不可欠だと思っております。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 時間が来ておりますけれども、ほかに何かありますでしょうか。
 世永委員。
○世永委員 17ページの【論点】のところです。多様な労働者の意見集約のための労使コミュニケーションについて、意見を申し上げていきたいと思っています。
 そもそも立場の弱い労働者が使用者と対等な立場に立つために、団結権が保障されて、労働組合の法的保護が図られていると思っております。これまでも労働者側として何度も申し上げてきたように、個別労使関係を念頭に置いたような労使コミュニケーションの方法を検討するのではなく、労使コミュニケーションの土台である集団的労使関係の強化・構築の促進されるよう、行政としても取組の後押しをしていただきたいと考えております。労働相談からも、過半数代表者の選出方法について不適切な事例が報告されているということで、まずは現行制度のもとで適正な運用を徹底することが重要だということを付言しておきたいと思います。
 以上です。
○荒木分科会長 それでは、本日の議題の(2)についてはここまでとさせていただきたいと思います。
 そのほか、この場で何か御発言の御希望がございますでしょうか。
 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。本日の内容に関わるものではないのですけれども、本日までの予定で「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」がパブリックコメントにかけられております。その件で1点発言させていただきたいと思います。
 働き方の多様化による業務委託や請負等で働く者の増加、また、この間のコロナ禍におけるフリーランスのセーフティーネットの脆弱性が非常に明らかになっておりますので、その意味では、今回の就業者を保護する仕組みの整備は重要だと考えております。
 ただ、フリーランスで働く者が労働者なのかどうかというところはあるのですけれども、我々にとっては働く者に関する法整備だと考えております。今回、雇用環境・均等分科会での報告はありましたが、この件に関しましては、厚労省としても長年見直されてきていない労働者性を真正面からきちんと議論、検討するべきではないかと考えております。特にフリーランスの中には、労働者性が高いものが含まれていることも踏まえると、労働条件分科会においても、労基法上の労働者に係る見直しも議論していくことが必要ではないかと考えます。
 今後、雇用類似、働く就業者を含む政策の方向性を取りまとめるにあたっては、当事者の意見を十分踏まえつつ、この労政審の中でもしっかりと議論していただきたいと考えております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 今の点について事務局から何かございますか。
 鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 ありがとうございます。今、冨髙委員から労働者性の御発言がありましたので、一言申し上げます。
 私も、いわゆるフリーランス新法のパブコメにかかっている内容を拝見させていただきましたが、例えば契約が不明瞭であるとか、そもそも書面化もされていないために後でトラブルになるという問題、あるいは、急に契約を終了させられて困ってしまうという問題について、過去、雇用類似の働き方に関する検討会でも問題視されたところですが、いわゆるフリーランス新法のパブコメの内容を見ますと、一定程度手当てがされており、その点で新法の意義は小さくないと思っています。
 また、最近は、フリーランスの方に対する相談体制の整備や、労災の特別加入制度の対象範囲の拡充も順次されてきており、労働安全衛生分科会では、今、個人事業者の労災防止策についても鋭意議論がされています。この問題は、労働者性の拡充を図るというよりは、私自身はフリーランスの方に真に必要な保護策は何なのかということを個別具体的に検討していくことが実態に即しているのではないかと思っておりますので、一言コメントをさせていただきます。
 以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございます。
 事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 冨髙委員と鈴木委員から御意見、御要望をいただいたということで、事務局としてはしっかりと受け止めさせていただきたいと思います。先ほどお話ございましたように、いわゆるフリーランス新法につきましては、今月16日に開催されました雇用環境・均等分科会において報告がなされたと承知しております。その内容は、労働基準法上の労働者ではなくフリーランスの形態で仕事をされる方の取引適正化のための法制度という位置づけになっているものと承知しております。
 一方で、労働者性につきましては、昨年3月に策定しましたフリーランスガイドラインにおいて、現行の労働者性の判断基準の枠組みを分かりやすくお示しさせていただいているところでございます。厚生労働省としましては、関係省庁と連携してこのガイドラインをしっかり周知してまいりたいと思っております。また、私どもは労働基準監督機関でございますので、実態として労働者と認められ、労働基準関係法令違反が認められた場合には、労働基準監督署において適切な是正指導を行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
 本日は司会の不手際で時間が延長してしまいまして申し訳ありませんでした。本日の議事はここまでとしたいと思います。
 最後に、次回の日程等について事務局から説明をお願いします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、本日の「労働条件分科会」は以上で終了といたします。
 本日も、御参加いただきましてどうもありがとうございました。