第6回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

日時

令和4年10月31日(月)14:00~

場所

厚生労働省専用22~24会議室

議題

(1)業界団体等ヒアリング
     ①全国コミュニティ・ユニオン連合会
     ②一般社団法人日本フードデリバリーサービス協会
 (2)諸外国の規制状況等に関する報告(鹿野参集者、三柴参集者)
(3)フリーディスカッション
(4)その他

議事

議事内容
○船井安全課長補佐 定刻より少々早いですが、ただいまより第6回「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」を開催いたします。本検討会は、会議の資料及び議事録は原則公開ですが、カメラ撮影はここまでとさせていただきますので、御協力よろしくお願いいたします。
 本日は、出口委員、森委員のお二方がオンラインでの参加となっております。それでは、以後の議事進行について、土橋座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○土橋座長 皆様、よろしくお願いします。今回は、これまでの検討会における議論でも話題に上りました、デジタル・プラットフォームを活用して就労する個人事業者につきまして、その就労実態をよく御存知の団体として、全国コミュニティ・ユニオン連合会から関口様、一般社団法人日本フードデリバリーサービス協会の西村様からヒアリングを行うこととしております。また、鹿野委員、三柴委員の両名から、個人事業者を取り巻く諸外国の規制状況などについて、御報告を頂くこととしております。それぞれのお話を伺った後、前回までの議論を踏まえて、事務局が整理した論点について、フリーディスカッションを行っていただく予定です。短い時間ではありますが、効率的に議事を進めさせていただければと思いますので、御協力をお願いいたします。それでは、議事に入る前に、事務局から資料の確認をお願いします。
○船井安全課長補佐 資料は、お手元にクリップ止めの分厚い資料が1つあります。一番上が次第です。1枚めくりますと、配布資料一覧があります。資料としては1~6まであります。資料1~資料6のほか、参考資料が2種類付いております。資料1には、事務局が準備した論点整理ということで、フリーディスカッションに先立ちまして説明させていただきます。
 資料3~資料6までがヒアリングの関係の資料です。ヒアリングに対応いただく方が、それぞれこの資料を用いて御説明いただくということになっております。もし、足りていない部分がありましたら、手を挙げていただければ事務局のほうがお持ちしますので、よろしくお願いします。
○土橋座長 よろしいですか。それでは議題1として、業界団体の皆様からヒアリングを行いたいと思います。初めに、全国コミュニティ・ユニオンの関口様、よろしくお願いします。
○(全国コミュニティ・ユニオン連合会)関口様 御紹介いただきました、全国ユニオンの関口と申します。よろしくお願いします。本日は、このような機会を頂きまして、ありがとうございます。こちらはヒアリング資料ということで、御用意させていただきました。早速、御説明させていただきます。
 1枚めくりますと、全国ユニオンは連合加盟しておりますが、いわゆるほかの産別とは、若干、作りが違うというか、個人加盟の労働組合の連合体として結成しています。相談活動を軸にして、個人加盟型の労働組合として日々、相談活動を中心にして活動をしている団体です。
 現時点で12組織、うちオブザーバー加盟ということで1組織、約2,800人が加入をしている組織です。各地で個人加盟の相談をいろいろ受け付けているので、地方によっては外国人の方がたくさんいらっしゃる地域もあり、地域によっての特色があったり、その時点で様々な労働市場で起きていることが、比較的ビビットに反映されるような相談が寄せられております。本日は、その中で個人事業主として扱われている配達員、今、全国ユニオンで取り組んでいる、アマゾンの配達員の方を中心にしてお話をさせていただきます。
 2枚目、まず、仕組みを御説明いたします。今回、私のほうで説明するのは、いわゆるラストワンマイルということで、個人宅や企業などに荷物を配達する配達ドライバーの方です。大きく分けて2つあります。一番右側に書いてあるアマゾンフレックスというのは、スマートフォンにアプリをダウンロードして、仕事を受注していくということになっています。契約は個人事業主として扱われています。ラビットと呼ばれるアプリですが、自身が所有しているスマートフォンにダウンロードして、それを起動しますといろいろメニューが出ます。ここの倉庫には配達時間何時から何時まで、報酬は幾らということが表示されていくので、それを自分で、エントリーしていくという言い方をするのですが、応募していくような形で仕事を受注していく。これが午前便・午後便、最近は夜の6時からの配達も出てきているらしいですが、そういう形で表示されているものを、自分で選んで取りに行くということです。早い者勝ちなので、1日働きたかったのだけれども、午前中の仕事が取れなかったとか、夜の仕事しか取れなかったということも、まま発生しているようです。
 先ほど言ったように、倉庫の名前と、ここの倉庫ですよということと、何時から何時までで、幾らですということしか表示されていないので、どこに何を幾つ運ぶのかということは行ってみないと分からないのです。倉庫に行って、アプリを再度倉庫の中で起動させて、初めてどこに何個運ぶのかというのが分かる。そういう仕組みになっています。
 働き始めてからしばらくの間は、1週間ぐらい先の仕事しか取れないのですが、その後、遅配、遅れて届けたりとか、いろいろお客様からの苦情がないような状態で配達ができていると、1か月ぐらい先の仕事まで取れるようになっています。ある種、優遇されるような状況になっていくということです。
 もう1つが、1次請けと書いてある所です。今、こちらでも労働組合を作って取り組んでいるところです。1次請けは、デリバリープロバイダという呼ばれ方をします。1次請けというのは運送会社です。さらに2次請けも運送会社です。そういう所と契約をした配達員が、配達をしていくという仕組みになっています。
 この下請でいきますと、勤務はシフト制で同じ倉庫に通って1日配達をする形です。アマゾンフレックスの場合と同じく、ラビットというアプリを使っているのですが、やはり、そのアプリを起動しないと、どこに何を個運ぶか分からないというところは共通しています。ラビットというアプリをインストールするというところからが配達員のスタートなので、このアプリで全て管理される。誰が何個、どこに運んでいるのか、何時から何時まで運んでいるのか、あるいはどこの地点で、どれぐらい止まっているのかということも、このアプリを通じて把握しているという状況になっています。
 デリバリープロバイダのケースでは、大体8時から9時ぐらいに出発して、早い方だと12時から1時に倉庫に戻り仕分けとか、荷物ができていれば、2時か3時ぐらいにそのまま積んで出て行くということです。大体、12時から3時ぐらいの間に配達を終えて、1回倉庫に戻ってきて、もう1回午後の荷物を積んで出て行くという形で、ドライバーは働いています。こちらのケースは日当でお金が払われています。日当はその地域によって、それぞればらばらです。かなり差があるという状況です。
 日当ということでお話をしましたが、1枚めくりますと、横須賀で説明をさせていただきますが、当初は1個幾らという形で報酬が決められていたので、たくさん運べばそれだけ収入になった。ある時点から、アマゾンがAIを導入することになったので、配達の効率も非常に上がり1日大体120個ぐらいになる。だから、日当に変更したほうが得だ。なと提案されて日当に変更しました。横須賀の場合は1万8,000円です。ただ、2019年頃から始まっている倉庫は、最初から日当のケースもあります。日当ですから、1日何個運んだとしても収入が変わらないということなのです。大体、1年ぐらいは言ったとおりになっていたらしいのです。ところが、これはおそらくコロナとかの影響もあると思うのですが、2021年頃から急激に荷物が増加し始めて、1日200個を超えるようなことが常態化していく。1次請けの担当者ですが、こんなに増えるとは思っていなくて、会社としてアマゾンと協議しているとは言っていたのですが、荷物がその後も減ることなく、大体200個を超えるという状況が、今、常態化しているということです。それがどれぐらいの荷物の量かというのを、写真で送っていただいたものが、次のページです。
 大体午前便だけで、これぐらいの量です。助手席のほうにも荷物を乗せるという形で、ほぼほぼ目一杯です。会社の方に言わせますと、バックミラーが見えないのは、もう当たり前なのだと。サイドミラーが見えなくなると、それはまずいから言ってくださいという状況になっています。次のパターンについては、サイドミラーがギリギリ見えるという状況になっています。これは別に、この方たちが特段荷物が多いというわけではなくて、ほぼほぼ同じような荷物の量になっているのが、現状になってしまっています。
 そういう中で、荷物の量が増えると、結果的に労働時間が長くなってしまう。配達時間が長くなってしまうのです。しかしアマゾンが独自のルールで、すべてのサプライチェーンは残業時間も含めて、60時間にしてくださいということを通達している。しかし当然、このような形で荷物の量が多くなると、60時間が守れなくなってしまう。そういう中で登場してきたのが、一部、新聞報道などもありました、ダミーコードという言い方をしますが、これで長時間の労働を容認させていくという仕組みができてしまう。これを御説明させていただきます。
 先ほど個人でアプリをダウンロードして、管理していくというお話をしましたが、どこに、何を運んで、どれぐらい配達しているのかという、それぞれの配達員の実労働時間は、アマゾンのほうで管理しています。例えば週4日働いて、5日目、フルに普通にシフトを入れてしまうと、60時間を超えてしまうというケースでは、この人はもうこれ以上働かせないでくださいという案内をされてしまうわけです。そういうときに、60時間を超えても働かせたい。要するに、これは荷物が多いのに配達員が少なくなってさばけない。ドライバーにしてみれば、日当なのでたくさん運んで、結果的に大変な思いをしたのに、日当1日分減ってしまう。こういうことでは困るということで、どういうことをするかと言いますと、要は、他人のアカウント、自分ではない人でログインをして、別の人が配達をしているということで、ある種、偽装するやり方をしているということになります。
 次のページ、赤い丸が付いている真ん中の所、「自分のコードでない方が数名いるので、必ず確認をして割り当てられた別の人のコードでサインインしてください。」という案内をされます。要するに、Aさんはもう今週、これ以上働くと60時間を超えてしまうので、Bさんのコードでログインをして配達する。アマゾンにはBさんが配達をしているということにして、配達をしてくださいよと案内をされて、結果的に60時間を超えて配達ができるような形が、事実上容認されてしまっています。
 さらに、ここのケースでは、倉庫に行く時間も指示をされて、出勤時間が8時10分、出庫時間が8時35分、これがAグループです。Bグループは、出勤時間が8時40分で、9時5分に出庫してくださいという指示が、このようにラインなどで出されている。こちらは先ほどのIDの新聞報道ですが、このような形でも既に報道されているとおりです。
 もう1枚めくりますと、出庫時間については、Aは先ほどのAの時間帯に出勤してください。Bは、Bの時間に倉庫に来て出て行ってくださいと。黒塗りをしている所は、名前がそれぞれ書いてある所ですが、こういうことで指示をされていくという状況になっています。そういう意味で言いますと、労働時間も実質管理をされた中で働いているという状況です。
 実際、これがどれぐらい広く行われているかということですが、ダミーコードに関するアンケートを取りました。次のページです。サンプル数はそれほど多くないのですが、使用したことがありますかという方は75%、毎週のように使っているという方が44%と、半数近くいます。
 ほかの人の名前で配達するので、事故の記録も、別の人の名前で記録されてしまう。そういう意味で言いますと、正確なデータが全然取れない状況になってしまっている。これも非常に問題だと思います。
 事故事例を次のページでお示ししています。配達中の交通事故のケースばかりではなくて、個人宅なので周りを見えなくなるようにしたので、少し分かりづらいかもしれません。一番上の写真が横須賀の配達の現場です。横須賀も非常に坂の多い所で、自宅まで上っていく階段が急な階段で、そこのポストに荷物を投函して、階段を下るときに足を滑らせて転落をして、背中を強打してしばらく気を失い、救急車で搬送されているという事故です。
 もう1人はアマゾンフレックスの方ですが、雨天のときに配達の荷物を持って、ガードレールを跨ごうとしたときに、股の下を裂傷して怪我をして雑菌が入ったということで、入院をされている方もいました。交通事故のケースでは、これもアマゾンフレックスの方ですが、細い畑道のような所から幹線道路に出るときに、車同士ぶつかってしまって、頚椎捻挫で、今も腕が上がらないような状況で、怪我をしてしまっているということです。
 さらに、倉庫の中でどの荷物を扱うか。比較的小さい荷物は多いは多いのですが、次のページを見ますと、重量物の表示がかなり杜撰なやり方をされていて、25kgを超えると、「0.0」と表示自体されなくなるような荷物もあります。チームリフトということで、2人以上で持ってくださいと言われているにもかかわらず、一人一人皆さん個人事業主で荷物も多いですから、そんなことをやっている時間もないわけです。そもそも1人ずつの個人事業主扱いをしているにもかかわらず、チームリフトで持っていかなければいけないような荷物を持たされること自体、私はどうなのかなという気もしています。
 アマゾンのケースを中心に御説明しましたが、組合を作っているデリバリープロバイダの仕組みというのは、アマゾン特有のものではなくて、ここ何年だか分かりませんが、運送業界で広がっている仕組みで発注者が例えば郵便局や、ほかの業者さんということで、1次請けが大手の運送会社さんであるケースも非常に増えていて、この仕組み自体は、運送会社の中では、非常に広がっていると御理解いただければと思います。
 さらに、別のプラットフォーム型のものもあるので御紹介します。荷物をどこからどこまで、幾らですよというのを、ドライバーが登録すると、仕事の一覧が見られるようなページがあって、それを自分で、これいいなと思ったものをエントリーして仕事を取りに行く仕組みです。仕事によっては取り合いになるので、取れなければそれっきりです。これも1か月ぐらい先は取れる形になっているみたいですが、プラットフォームが、荷主とドライバーさんを結びますよという名目です。これも広がっていて、場合によっては車も貸しますということで、比較的気軽に応募してくださいみたいな形で、今、広告なども非常に出ていて、プラットフォームとしての配送業者が、とても広がっています。
 最後に、課題ということで書きました。今度、自動車運転手の改善基準が改正になっていく中で、このような個人請負いのドライバーに、仕事が流れていくのではないかと考えています。また普通の軽の自動車でも、今度黒ナンバーが取れるということで、配達する人を広げていくという状況になっている。私たちは、こうしたドライバーの多くは「個人事業主」ではなく「個人事業主扱い」ではないかと思っています。今後、こうした「個人事業主扱い」をされるドライバーが、増えていくのではないか。さらに、イーコマースの拡大で、荷物が急激に増えているのですが、配達員を増やすのではなく適正な荷物の量をどうやって確保していくか。配達員の中には、お客さんの所に持っていきますと、「今日じゃなくても良かったのに」みたいに言われる方も多くいらっしゃると。その中で、適正な荷量をどうやって確保していくかということも、やはり考えていかなければいけないのではないかと思います。
 現状では、アルコールチェックさえほとんどできていないという状況です。1次請けの会社の方針で、やっている所とやっていない所がある。そういう意味で言いますと、倉庫を管理している管理者が、やったほうがいいと思うところはやっていたりとか、最後に御説明した直接的なプラットフォーム型のものだと、完全にアルコールチェックなどやる余地もないわけです。そういう中で、果たして安全な配達ができ得るのだろうかと非常に危惧しているところです。やはり、どういうふうに改善していくかということで考えたいと思いまして、最後に書かせていただいたのは、プラットフォームとしての責任は明確にすべきではないかと思います。例えばプラットフォームに、どういう事故が何件起きているのかという報告をさせるとか、事故の管理について、きちんとプラットフォーマーに責任を負わせるとか、そういうことも必要だと思います。やはり、配達員の仕事というのは、一般の道路を使いますので、放置していると、非常に大きな事故が発生し得る状況であるのではないかと思います。先ほども言いましたように、実態雇用であると思われるケースが非常に多いです。相談を受けていても、疑われるケースが非常に多いので、労働者として保護すべき対象というのはきちんと保護をして、明確に個人事業主と位置付けられる方については、個人事業主としての保護を適切にやっていくということが、必要ではないかと思います。
 ただ、事故に関しては、発注者としてとか、プラットフォーマーとして、応分の負担をしていく必要があるのではないかと思います。例えば、労災保険とかは特別加入ではなくて、一定の人たちに対しては拡大して対象にしていくとか、そういうようなことも、是非これからは必要になっていくのではないかと思います。以上です。ありがとうございます。
○土橋座長 ありがとうございました。質疑応答につきましては、後ほど鹿野委員の説明の後に時間を取らせて頂きます。
 続きまして、日本フードデリバリーサービス協会の西村様、御説明よろしくお願いいたします。
○(日本フードデリバリーサービス協会)西村様 今日はこのようなヒアリングの場を頂きましてありがとうございます。日本フードデリバリーサービス協会で副事務局長を務めております西村と申します、よろしくお願いいたします。

 それでは手短にご説明させていただきます。最初に、今日のアジェンダですけれども、フードデリバリーサービス協会(JaFDA)の概要。あとフードデリバリーの配達員、皆さんよく街中で見かけると思うのですが、こういった方々が、我々とどういう契約関係で業務をしていただいているのかという、業務実態について少し触れたいと思います。最後に、今回のメインの話である、配達員の安全衛生確保に向けた我々業界団体の取組として、幾つか説明させていただきます。
 まずJaFDAの概要ですけれども、かなり若い団体で、2021年の2月に発足したばかりです。ただ昨今、急速にフードデリバリーというものが、日本社会に広がっておりまして、こういったものに業界横断で、しっかり取り組むべきではないかということで、我々の業界で集ってJaFDAを設立いたしました。
 JaFDAのメンバーですけれども、現在10社が会員となっております。少し変動はあったのですが、今、日本でよく見かけるようなフードデリバリーのプレイヤーというのは、この中にほぼ含まれております。
 JaFDAの理事と幹事の構成ですけれども、意識したのは業界の中だけではなくて、外の目をしっかりと入れたいということで、代表理事には元農水省事務次官の末松様に御就任いただいています。人数比も外部理事・幹事が事業者の理事と同数か、それよりも多い人数で構成しております。
 JaFDAの活動ですけれども、記載している五本柱をはじめ、その時々のホットトピックに合わせて活動しております。まず対応したのは、交通ルールの順守です。皆さん思い出していただくと、ちょうど2年ぐらい前、フードデリバリーの配達員がコロナ禍において街中に増えて、危険運転をしているのではないかとか、あるいは配達員自身の事故が起こったりしておりまして、非常に社会からの注目が高まっていたところですので、こちらについて早急に、このJaFDAの中で検討を行っておりました。
 あと、右側にある配達員との適切な関係の構築、この辺りも非常に意識しております。配達員の方々は、基本的には個人事業主で働いている方々が大半ですけれども、事業者として、配達員がどういった形でより良い就業環境を確保できるのか、それをどのように支援できるのかということについて、真剣に検討して参りました。
 配達員の事業実態、業務実態、こちらはUber Eatsを事例にして挙げています。我々Uber Eatsの場合、注文者・レストラン・配達員の3者をつなげるようなサービスを提供しております。使ったことがある方は御存じだと思うのですが、アプリ上で「この料理が食べたい」というようにオーダーいただくと、レストランの方にそのオーダーが飛んで、そのオーダーに合わせて料理を作って、料理ができたころに、配達パートナーの方がピックアップをしてお届けします。決済機能も事業者のほうで提供しております。
 配達パートナーの方との契約関係というのは、いろいろな形態があります。1つはプラットフォーム事業者、我々Uber Eatsみたいな事業者が、直接配達業務を個人業主である配達パートナーに委託する場合です。
 もう1つは本当にプラットフォームとして仲介のみ行い、実質的な配達業務委託契約は、レストランから配達パートナーにするパターンです。
 あと、アルバイトとして時給で働いている方や、あるいは運送会社にプラットフォーム事業者が委託をして、その運送会社のもとで働いている方、いろいろなパターンがあります。
 では、どのような働き方をしているのかというと、非常に多様な働き方をされておりまして、左側を見ていただくと分かるように、1週間に5時間未満稼働という方から、60時間以上稼働しているという方までおります。この前半のほう、5時間未満は本業があってその合い間、例えば週末に、少し副業的に稼いでみようということでやられている方、それがだんだんやれる時間が増えていくと10時間、20時間というようになって、本格的にこちら一本でやられている方というのは、多分40時間や60時間といったところで、フル稼働されているのかなと思っております。
 右側で特徴的なのは、約半分の方が複数のプラットフォームに登録されていることです。スマートフォンの中に、複数のアプリを入れており、今はUber Eatsのオーダーで配達したけれども、ちょうどいいタイミングで出前館のオーダーが入ったので、では今度はそちらで配達しようとか、あと人によっては、このエリアはmenuのオーダーが入りやすいからmenuで配達しようとか、自分はアプリの使い易さとかが好きだからWoltでやっていますとか、いろいろなパターンがあります。そういった形で、かなり配達員の方々が、軽やかにプラットフォームを横断的に御活用いただくような働き方になっております。
 10ページは、我々としても心強いなという結果になったのですが、配達員の方々はどれぐらいこの業務について満足されているのかを聞いております。80%以上の方が「しばらくは続けたい」、あるいは「ずっと続けたい」というお話を頂いていて、割と世の中で、配達員というのは搾取されているのではないかというような論調もあるのですが、大半の80%以上の方というのは、しっかりと継続意志を持ってやっていただいている。
 特に何がいいのかと言うと、フレキシビリティやワークライフ・バランス、こういったところに満足いただいているという結果も出ております。後ほど説明いたしますけれども、例えば、うつ状態の方が「フードデリバリーだったら体調の良い時に働ける」とか、「子育てをしながらでも隙間時間に働くことができた」ということで、本当に単発で、例えば15分刻みの業務などとなっておりますので、そういったものをうまく活用していただいて、ワークライフ・バランスを保っていくといったこともあるのかなと思っております。
 それから収入のところに関してさえも、半分近くの方が満足しているという結果で、そこは我々として心強く思っているところです。
 3.で本論のほうに移りまして、配達員の安全衛生確保支援に向けた、我々業界としての取組について御説明させていただきます。まず、どのようなリスクが、フードデリバリー配達員の場合にあるのかといったところですけれども、さすがにフードデリバリーで放射能を扱ったり、爆発物を扱ったりといったことはありませんので、危険有害作業のうち、上のほうに書いてあるようなものは該当はしておりません。
 ただ1つあるのは、やはり交通事故のリスクというのは、非常に付きまとっております。私も何度か配達をした経験があるのですが、やはり一番のリスクは交通事故ということで、自転車ですので車道の左側を走らなければいけないのですが、やはり幹線道路などで後ろにダンプトラックやバスがいると、危険性を感じることがありました。そういった交通事故との危険というのは、やはりある程度隣り合わせになっています。
 危険有害作業以外では、過重労働のところで、やはり長時間労働のリスク、これは個人事業主のみんなが当てはまると思うのですが、やればやるほど稼げるというのはしょうがないところなので、それを踏まえて、我々もどう対策するかを考えなければいけないなと思っております。
 (1)のメインの交通事故のリスク対応ですが、こちらについては先ほど申しましたように、JaFDAが発足してすぐ、検討委員会を設けてガイドラインを策定いたしました。こちら、警察にも入っていただきましたし、厚労省からもオブザーバーで御意見を頂いた上で、策定したものになっております。この中でいくと、まず周知や注意喚起、安全の確保、事故防止、あとは仮に事故が発生してしまった時の対応、こういった形で分けて規定しております。
 周知や注意喚起のところですが、まず配達員として登録していただくのですけれども、その時にしっかりと交通安全に係る情報提供等必要な措置を講じることを定めております。あとはその都度、いろいろ注意喚起というものもありまして、我々、警察と連携を密にしているのですが、いろいろ都道府県警から「今、春の交通安全期間だから注意してくれ」とか「昨今、重大な事故が起こったので注意してくれ」といったような注意喚起もあります。そういったこともJaFDAを通じて、会員企業から配達員のほうに伝える、そのような仕組みを入れております。
 幾つか写真でお示ししておりますが、JaFDAでも神奈川県警と一緒に交通安全教室を実施したり、あるいは京都市、京都府警と一緒に安全講習会を実施しております。左側、蛍光色のベストを着ているのがJaFDAのメンバーで、奥にゼッケンを付けているのが配達員の方々になります。あと、新宿区や東京都と一緒に啓発活動を行ったり、警視庁と一緒にイベントでも交通安全のことを呼び掛けております。Uber Eatsの例では、アプリ上で交通安全について理解を深めてもらうためのコンテンツも揃えておりますので、こういったところにも力を入れております。
 次が、安全確保と事故防止のところですけれども、安全確保の仕組みとして、アプリ上で稼働いただいているので、GPSで位置情報というのは必要に応じて把握できるようになっております。あと、悪天候の場合は業務を中止にするなどの対応もしております。先ほどの全国ユニオンの話でもあったのですが、配達物が重過ぎるといった場合、そういった場合の対応もJaFDAのガイドラインのほうに設けております。
 Uber Eatsの場合は、アプリ上で稼働前に「ちゃんとヘルメットを被りましたか」とか、「自転車の整備ができていますか」ということを、確認いただくようなチェックリストというものがあります。あと、例えば今日は荒天なのでサービスを停止しますといったこと。ここは逆に利用する方々からはオーダーは多く出てしまうところなのですけれども、配達員の安全のために、サービスを停止するといったような措置を取っております。あと、事故が起こった時の頭部の損傷を軽減するために、ヘルメットの着用を非常に推進しております。そのためのイベントを開催したり、あるいはUber Eatsの場合は「ヘルメットクラブ」といったものを発足いたしまして、このクラブに希望して入っていただくと、自分でちゃんとヘルメットを被りますよと宣言いただいた上で、アプリ上でヘルメットの着用をAIが認証するような仕組みもあります。
 事故発生時の対応として、どうしても事故というものは起こってしまうものですので、しっかりと保険を掛けるであるとか、相談窓口を設けるといったことが、ガイドライン上に定められております。
 配達員の方々に対する就業環境を良くしていこうということで、JaFDAとして「配達員ガイドライン」というものも策定しております。今年の3月に作ったものですけれども、こちら、労働法の専門の大内伸哉先生に座長になっていただきまして、厚労省にもオブザーバーになっていただいて、検討したものとなっております。
 この中にも、配達中の事故に備えてしっかりと保険を付保しましょうとか、労災保険の特別加入という制度も作っていただきましたので、こちらの情報提供を行うようにといったことがガイドラインのほうに定められております。Uber Eatsの場合、サポート電話のデスクが用意されております。
 保険の付保ですが、こちら、事業者負担の保険についてJaFDAに加盟している各事業者を調べたところ、みな、1億円以上の保険にはしっかりと入っているようでして、稼働中の事故については、きちんと担保できるような体制を取っております。ただ、稼働以外のところ、移動中や休憩中の事故まではカバーできないので、そこは自主的に入っていただくような呼び掛けをしております。
 次が、長時間労働のリスクです。交通安全ガイドラインでは、注意喚起などの措置を講じるということで、規定を設けております。では、具体的に事業者が何をやっているかというと、例えばUber Eatsの場合は12時間稼働した場合、アプリがその後6時間は稼働できないような仕組みとなっております。
 あと、事前に厚労省と少し議論させていただいた時、「メンタルヘルスとかどうですか」というような話がございました。こちらは課題というか、むしろメンタルヘルスにとっては、非常にこの働き方は合っているのではないかと思っておりまして、いろいろアンケートでもうれしい反応も頂いております。最初のものは、例えば勤務先でうつになってしまって休職しました。ただ、フードデリバリーであれば、個人事業主としてそこまで対人的なプレッシャーを感じないでやれるので復帰できた、という話があります。あと、そこまでいかなくても、いろいろとほかの人に気兼ねすることなく働ける、上司がいないのがいいということで働いていらっしゃる方が、かなりいらっしゃるかと思っております。健康にもいいということで、「10キロ減量できました」という話がありました。私も電動自転車で稼働はしていたのですが、やはり2時間くらい行くと相当疲れて、むしろ御飯がおいしくなったりして健康になったなと思っておりますので、この辺り、お勧めです。そういった形でJaFDAのガイドライン上でも、メンタルヘルス、健康管理、健康保険制度や福利厚生制度といったところも、しっかりと周知をしていきましょうというガイドラインにしております。
 少し駆け足になりましたが、以上のようにフードデリバリー配達員の場合は、特に交通安全の問題、ここが一番のリスクとなっております。、我々事業者としても、事業上のリスクと捉え、我々のプラットフォームで稼働いただいている方、あるいは我々の業務委託を受託して稼働いただいている方の、安全を守らなければいけないということで、業界をあげてガイドラインを作って、各社で取り組んでいる状況です。以上となります。
○土橋座長 ありがとうございました。続きまして、議題2に入りますが、諸外国の規制状況等に関する報告といたしまして、鹿野委員より御報告をお願いいたします。
○鹿野参集者 鹿野と申します。よろしくお願いします。資料1ページ目に書いておりますように、私は、慶應義塾大学に所属しておりますが、専門は労働法ではなく民法です。この後に三柴先生から、安全衛生の問題についての詳しい御報告があるということを伺っております。ですから、私の報告というのは、あくまでもデジタル・プラットフォームと、プラットフォームワーカーをめぐる全般的な状況ということで、御理解いただければと思います。
 次のページお願いします。全体としてここに記載した順番で話を進めていきたいと考えております。
 次のページをお願いします。言うまでもないかもしれませんが、プラットフォームワークをめぐる全般的な状況ということで、前提としてデジタル社会の進展と共に、プラットフォーム事業者、あるいはプラットフォーマーとも言われますが、その影響力が増大しているということを指摘できます。これは何も労働の分野だけではなくて、様々な取引において、その影響力が増大しているということが見てとれるところです。さらに働き方に関しても、既に具体的な御報告がありましたとおり、プラットフォームを通して仕事を得て就労をするという働き方が、急速に拡大してきたといえます。
 一般的に、プラットフォームについては、マッチング型のプラットフォームと、非マッチング型のプラットフォームというような分類がされることが多いわけですが、ここで問題となっているのは、いわゆるマッチング型のプラットフォームであり、しかも主に念頭におかれているのが、雇用類似就業者と言われる人が働く場面です。契約の当事者が誰になるのかということについても、実際には様々な場合があるのですが、プラットフォームワーカーについては、いわゆるフリーランスの保護の問題の一環として、議論されてきたように思われるところです。
 先ほど具体例として、運送やフードデリバリーの話がありましたが、仕事仲介のプラットフォームといっても、その仕事の内容は様々ですし、仕事の内容の特定のあり方、専門性、裁量性やあるいは契約形態なども、かなり多様なものが見られます。更に、仕事の内容や、あるいは報酬決定に対するプラットフォーマーの介入の度合いも、様々だということができます。純粋に仲介をするに過ぎないプラットフォームというようなものも存在するのですが、今日においては、プラットフォーマーが契約内容などに、大きく介入していると見られるようなケースも存在すると思われます。後でEUの判例などを紹介するときに、また触れさせていただきます。
 プラットフォームワーカーの特徴としては、従来型のフリーランスの問題と重なるところも多いのですが、何といってもプラットフォームを介して、役務を提供するということになるわけですし、プラットフォーマーを中心として、そこに契約が複数存在するということが、1つの特徴かと思います。しかもプラットフォーマーが、利用規約をあらかじめ定めていて、それに従って就業するということになるという特徴もあります。それから、ワーカーは単発的で、細分化されたタスクに従事することが多いということがありますし、評価システムでも、AIなどを使ったアルゴリズムを利用した評価システムが活発に利用される傾向があるという点も、特徴として指摘することができるように思います。
 このように、プラットフォームビジネスが拡大してきたということで、国内でも法的な規制をめぐって、いろいろな局面で議論が行われてきたことは、既に御存じだとは思いますが、これを一言で申しますと、要するにプラットフォーマーの役割と責任というものをめぐって、議論が行われてきたと言えるのではないかと思います。先ほども申しましたように、プラットフォームを介した取引においては、ここに取引というのは労働、就業に関する取引も含まれるわけですが、そこにおいては、プラットフォーマーがその用意した規約に基づいて、それぞれの当事者と様々な契約を締結し、それを前提としてプラットフォーム利用者間での契約も締結されることが多いわけです。
 先ほど、評価システムにおいても、特徴があるというようなことを申し上げましたが、プラットフォームにより、その利用する画面等における表示の設定や、あるいはアプリなどを用いているところも多いわけですが、そういうものの設定に対するプラットフォーマーの影響もありますし、あるいは収集された情報に基づく、様々なクエリーの結果表示などもあり、それが取引に影響を及ぼす状況が見られます。このような全般的な状況の中で、商品や役務提供の契約当事者だけではなくて、プラットフォーマーについても、利用当事者に対する関係で、役割に応じた義務と責任を負うべきではないかというような議論が、起こってきたということだと思います。
 次のページお願いします。これも確認なのですが、日本においても御存じのとおり、近時プラットフォーム関係の立法があり、個人情報保護法の改正等も別にあるのですが、プラットフォームに直接特化した立法としては、令和2年に制定され、本年施行された「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」というものがありますし、消費者保護の観点からは、「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」もあり、これは昨年制定されて、今年施行されました。
 このように、プラットフォームをめぐる議論が、日本でも活発化しているところですが、それではEU法はどうかについて見てみたいと思います。今お話したような日本の立法も、実はEU法など海外の状況を踏まえながら、日本の実情を考慮して制定されたということでもあります。そこで、改めてEU法の状況ということで、少し判例や立法の動きを見てみたいと思います。判例として、ここでは個々の国の判例というのではなく、欧州司法裁判所の注目されたプラットフォーム関連の判例について取り上げたいと思います。
 なお、以下、幾つか判例を紹介するのですが、ここでは、直接的には市場参入制限の適用の有無などが問題となっているのですが、ただ実質的には、当該プラットフォーマーが単なる仲介者に過ぎないのか、それともプラットフォームを経由して締結されているサービスを、プラットフォーマー自らが提供している、あるいはそれに準じた立場にあると見られるのかということが問題となったケースです。
 次のページをお願いします。そこでまず①Uber Spainの事件判決について紹介したいと思います。資料ではごく簡単に書いているのですが、Uber Spainがタクシーライセンスを得ずに、プロではない運転手と運輸サービスを望むユーザーとの間の、オンデマンド予約サービスを提供していたというものです。そこでUber Spainがやっている事業が適法なのか違法なのか、簡単に言うとそういうことが問題となったわけなのですが、ここでの司法裁判所の判断としては、このUber Spainというのは、自ら運輸サービスを提供しているものに該当するのだということで、だからライセンスが必要なのにないわけですから、違法だというような判断を下したところです。
 同じような判断が②のUber France事件の判決でもありまして、そこでも裁判所は、Uber Franceは、自ら運輸サービスを提供しているものに該当するのだと判断したところです。つまり形の上では、つまり契約形態では、仲介に過ぎず、だから仲介以上の責任は負いませんよというようなことを、たとえ規約等で定めていたとしても、実質は違うでしょうという判断がされたところでございます。
 次のページお願いします。③はAirbnbの事件でありまして、これはプラットフォーマーが、建物等の仲介や管理の事業のライセンスを得ずに、建物賃貸希望者つまり自分は不動産を持っていてこれを貸して利益を得たいという人と、宿泊を希望する人とを、プラットフォームでマッチングする有料サービスを実施していたというものです。これについては、EU司法裁判所は、先ほどとは逆の結論を出しました、つまり、このプラットフォーマーは、自らが宿泊サービスを提供しているわけではないとしたところです。
 ④はStar Taxi事件ですけれども、こちらは、自らはタクシーのライセンスを得ずに、タクシー運転手とユーザーとをマッチングさせるアプリを運用していたというものであります。人を乗せる車をマッチングさせるという点では、先ほどの①と②と似ている部分もありますが、④では結論は逆で、このプラットフォーマーは、自らタクシーサービスを提供しているものには当たらないと判断されました。
 次のページをお願いします。このように、結論がそれぞれ違うわけなのですが、注目されるのが、これらの判例で用いられた判断基準であります。つまり、最初に言いましたように、単なる仲介を越えた存在なのかどうかということが問題となるのですが、その判断に際して掲げられている基準ないし項目として、①当該サービス提供のための代替的手段の有無というようなことが挙げられていますし、更に注目されるのが、②で書いていますように、プラットフォーマーがサービスを提供しているプラットフォームユーザーに対して、決定的な影響力を有しているのかというようなことが基準とされているということです。この決定的影響力を有しているか否かということを見極めるための、より具体的な考慮要素として、価格の設定及び支払プロセスへの関与の有無や、サービス提供者に対するプラットフォーマーによる管理、及び排除可能性の有無などを挙げています。
 このような判例が出されて注目を集め、これがいろいろとEUにおけるプラットフォーム全体をめぐる、ルールの形成にも影響を与えてきたということがいえそうです。 (2)で挙げていますのは、ELIモデル準則への影響です。つまり、ELIと言うのは、ヨーロッパ法協会と言われる組織でして、そこがプラットフォームに関するモデル準則を策定したのですが、そこには、先ほどの決定的影響力という判例が用いた基準を参考にしたと思われるような、支配的影響力という概念を基準として、契約上の責任を、一定の場合に負わせるというようなルールも盛り込まれているところです。
 次のページをお願いします。更に最近ようやく採択された、これも取引上は非常に注目される、デジタル・サービス法というものと、その次のページに書いているデジタル・マーケット法というものがあるのですが、ここにも多少、先ほどの欧州司法裁判所の影響の痕跡が見られるのではないかと指摘されているところです。労働法に関してもこのような全体的な状況の中、取引的な側面からも指令の案等が出されているように思われます。
 最後のページをお願いします。以上では、プラットフォームをめぐる問題のうち、主に取引法的な観点からの議論と立法の紹介をしました。これは、安全衛生上の問題に直結するものではないように思われますが、ただ、全般的な観察を通して幾つかの点は指摘できるのではないかということで、最後に掲げているところです。繰り返しになりますが、まず、プラットフォームワーカーが多様な形で増加してきていて、そのワーカーの保護というのは大きな課題であるということ、また、その際、プラットフォームワーカーと言っても、就業態様は多様であり、その多様性を踏まえた規制のあり方を検討する必要があるということです。それから、プラットフォームワーカーに対するプラットフォームの介入、影響力の多様性ということもありまして、これを示すために、EUの判例も少し取り上げたということでもありますが、支配的なあるいは決定的な影響力を持っているかどうかということだけでは恐らくなくて、その間に多様な介入の仕方、影響力の及ぼし方ということもあると思いますので、ここでもその多様性を踏まえて、契約形式上は発注者とは異なるプラットフォーマーにも、安全衛生に関しても一定の役割を担ってもらうというような考え方が、検討されるべきかと考えているところです。なお、最初に申しましたように、私は民法が専門ですので、民法的にはいろいろと関心を持っていることがあるのですが、もう時間も来ましたのでこれぐらいで終わらせていただきます。ありがとうございました。
○土橋座長 御説明ありがとうございました。それではここまでに、2つの関係業界団体等の方からのヒアリングと、鹿野委員からの御報告がありました。いずれもデジタル・プラットフォーマーを活用して就労する個人事業者に関連する内容ですので、ここで、質疑応答の時間を取らせていただきたいと思います。質疑のある方はお願いいたします。
○小菅参集者 1つ目の御報告を頂いた関口さんに対して、アマゾン配達員の働き方について伺いたいと思います。お話を伺って、労働者性の判断要素のうち、労務提供の代替性や報酬の労務対償性があること、勤務場所、勤務時間が拘束されていること、専属性が高いことに加え、業務遂行上の指揮監督の程度も高いと理解したのですけれども、そのような認識齟齬があれば教えていただきたいと思います。また、仕事の依頼や業務の指示等に関する諾否の自由の有無について、もう少し伺えればと思います。以上です。
○土橋座長 関口様お願いします。
○(全国コミュニティ・ユニオン連合会)関口様 御説明したように、アマゾンフレックスにしろ、デリバリープロバイダにしろ、当日行ってみないと、どこに何を何個運ぶか全く分からなくて、行ってみて、こんなに多いから嫌だよという拒否をしたら、仕事ができなくなる、キャンセルをするということで、事実上その日の日当が得られない。場合によっては、そのようなことが重なるようであれば、仕事ができなくなるということなので、そういう意味でいうと、事実上の諾否の自由はないと思っていただいていいと思います。特にデリバリープロバイダだとシフトも決まっている、出勤する日は決まっているわけなので、それはもう、ほぼほぼ拒否は全くできる余地がないと御理解いただければと思います。前段の所については、そのような理解ということで御異論はありません。
○小菅参集者 ありがとうございました。回答をうかがい改めて労働者性が極めて高いと認識しました。偽装請負という可能性も否定できない状況ではいかと思いますが、これについて、厚生労働省からもコメントを頂ければと思います。
○土橋座長 いかがでしょうか。
○船井安全課長補佐 今、小菅委員から頂いた御質問ですけれども、個別の事案について、偽装請負に該当するかどうかという判断は、差し控えさせていただきますということが1つ。この検討会で、ある形態が労働者性があるかないかということを切り分けるというよりも、労働者が働いているときに保護されるべき水準は、労働者以外の働き方をする方についても、同じ水準が必要だろうと、そのようなときにどのような関係者が、どのような役割を分担しながらそれを確保していくのか、そのためには何をすればいいかという形で、議論をさせていただけたらという気持ちでやっておりますので、その点を御理解いただければと思います。
○土橋座長 それでは、中村委員お願いします。
○中村参集者 今の御説明に関連してお聞きしたいのですけれども、最初の事例を聞いていると、どう見ても違法の領域に入っているような話が、結構あったように思うのですが、現実の話として、この違法状態は解消される可能性があるのでしょうか。
○土橋座長 関口様お願いします。
○(全国コミュニティ・ユニオン連合会)関口様 解消するためには、やはりすごく大きな幾つかのハードルがあるので、事実上、委託や請負と切り分けられてしまうと、実態として労働者であるということを証明することが、今の段階で非常に困難な状況になってると認識をしています。それは実務的にも、非常に難しいことがあると思います。不可能というわけではないのですけれども、非常に壁があることが問題だと思います。ある意味、事業主と労働者の間は、どうしてもグレーな部分は残るものと思うのですけれども、現状で見ていくと、私の印象としては労働者の部分にグレーな部分が広がってしまっていて、そこは非常に問題だと思います。どうしても0にできないので、もっと小さくしてきちんと事業主として保護される方は、事業主として保護され、労基法上の労働者として保護される方は、労基法上の労働者として保護されていく仕組みを、きちんと作っていくべきではないかと思います。
○中村参集者 すみません。私は、先ほどの鹿野先生の御説明を聞いていると、EUの判例の①②の所と④の工夫をどうするかという話をお聞きしてて、そうすると、最初に説明を頂いた事例は明らかに危ない事例、違法事例だと思うので、なぜそのようなことを言っているかというと、法を守ることを前提の上で、委員会としては、いろいろな個人事業主の保護をまとめることだと思うのですけれども、そこのところをどうするかを1つ問われたので質問いたしました。
○土橋座長 御意見を承りました。それではオンラインから森委員から手が挙がっております。どうぞお願いします。
○森参集者 ありがとうございます。それぞれ1つずつ御質問があります。最初の関口様の御発表の中で、アマゾン配達員の仕組みがありました。その中に、1次請け2次請けというものがあるのですが、その請負業者はもっぱらアマゾンの仕事だけをしているのか、ほかのプラットフォーマーの仕事も合わせて受けて、いろいろな仕事をしているような存在なのか。つまり、選択がいろいろあるのか。また、配達員が、他の仕事を受けることがルールとしてはできたとしても、恐らく評価されるため、実質的にそれ以外の仕事が受けられないこの仕事に専念しないといけないという、完全なコントロールされる状態にあるのかを、確認させていただければと思います。
 それから、2つ目のフードデリバリーサービス協会のお話の中で、12時間働くと6時間仕事が受けられない仕組みがあると伺いました。これ自体は、仕組みを作って規制をするということは、ある意味すばらしいことだと思います。一方でそもそも6時間という基準は、何かの専門家のアドバイスに基づいて、根拠に基づいて決めたものなのか、実質的に6時間というのがいいだろうとやったような話なのか、この辺りはどのように決められたのかを、教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。
○土橋座長 双方のヒアリングに御質問ありました。まず、関口様からお願いします。
○(全国コミュニティ・ユニオン連合会)関口様 1次請け2次請け、それぞれ割合は違いますけれども、ほかの仕事をやっているところ、例えば、2次請けはアマゾンの仕事も受けながら、郵政の仕事も受けたりというところもあります。配達員に関しては、ほかの仕事をやるためには、ここで働いている日数を減らさないと事実上できない。特にデリバリープロバイダ型だと、ほぼほぼ1日この仕事に取られてしまうので、週5日ではなく、週2日なり3日なりにして、ほかの仕事をするという形の方は確かにいらっしゃいます。
○森参集者 ありがとうございます。
○(日本フードデリバリーサービス協会)西村様 6時間でオフになる根拠といったところですけれども、どのような検討の経緯で6時間になったのか把握しておりません。逆に労働衛生管理上、あるいは何か法制上、6ではなく8がいい、これぐらいが健全だといったものもあれば、御助言を頂ければ非常に有り難いと思っております。
○森参集者 分かりました。ありがとうございます。恐らく参考になるのが、長時間労働を含めての、ジョブインターバルの制度がヨーロッパ、あるいは日本でも高度プロフェッショナルにはそういった制度が入っているので、ヨーロッパの場合は11時間という基準だと思いますけれども、それだと厳しすぎるので、9時間とかそのような時間というのは、何らかの形の基準が出せると思いますけれども、6時間というのは8時から20時まで働くと、次は、夜中の2時から働きますよと言う仕組みなので、それが長時間労働や安全対策のサポートになるかどうかが、多少、微妙な数字だと思ったので質問させていただきました。ありがとうございました。
○土橋座長 それでは、鈴木委員お願いします。
○鈴木参集者 ありがとうございます。お三方から貴重なお話を頂き、ありがとうございました。私から森先生の御質問に関連して、質問をさせていただきたいと思います。24時間以内12時間以上稼働した場合、6時間はオフラインになることのシステムについてです。実際に12時間を超えて働く配達員が、どのぐらいいらっしゃるかどうかということが分かれば教えてください。
 2点目は、アプリによって例えば1週間や1か月、配達員自身の方々の稼働時間がどのくらいかが、分かるような仕組みになっているかどうか。
 3点目は、アプリによって健康確保や、先ほど最大の課題は交通事故というお話がありましたけれども、交通事故防止に副次的に効果を感じておられるかどうかについて、お伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
○土橋座長 それでは西村様、よろしくお願いします。
○(日本フードデリバリーサービス協会)西村様 1点目ですが、12時間を超える人がどれぐらいいるかは、実際に12時間を超えるとオンにできなくなるので、そこの人数の集計はできていないところです。
 1週間当たりの稼働時間がどれぐらいかは、アプリ上で過去1週間の記録を見ることができます。その中でオンライン時間が何時間何分かと集計して出るので、本人としても1週間どれぐらいオンラインにしていたかが、こちらで確認できます。
 長時間労働による交通事故への影響は、疲れや集中力の面で、そこは何かしらの影響はあるのではないかと思っておりますけれども、そこの有意な判断というか、測定は専門的なところの話になってくるので、我々は把握はしておりません。
○鈴木参集者 ありがとうございました
○土橋座長 予定をオーバーしておりますので、追加の質問がございましたら、後ほどのフリーディスカッションの中で御発言いただきたいと思います。それでは、次に移ります。続いて、議題(2)諸外国の規制状況等に関する報告について、三柴委員より御報告をお願いいたします。
○三柴参集者 では、三柴より御報告させて頂きます。まず冒頭に申し上げたいのは、脱工業国のうち、安全衛生を重視する国では、リスク創出者管理責任負担原則を法で定める傾向にあるということです。ここで述べた原則は、職域のリスクについての情報や管理の権限を持つ者を含めて、リスクを創り出す者こそが、それを管理する責任を負うというものです。まず、その傾向を象徴するのがEU諸国ですが、ギグワーカーの安全衛生についても徐々に、法整備が進んでいる模様です。例えば、スペインでは「Rider's Law」が制定され、不安定な就労者の立場の改善、アルゴリズム管理について駄目だとは言わず、仕組みや就業条件を透明化をせよと定めております。
 本日はUKとオーストラリアについて紹介したいと思います。日本がよく安全衛生法制について参照してきたUKからご紹介します。UKにはHSWAという安全衛生法典、統一的な法典がございますが、その概論から申し上げますと、安全と衛生と快適性の全てにわたり、雇用者に限らずリスクを生み出す者を広く名宛人、つまり、義務付けの対象として、自ら雇用する労働者のほか、その活動の影響を受ける者全てを保護するために、できる限りの措置を求める罰則付きの一般条項を置いております。法違反には多額の罰金を科す定めを置いて、現に運用しております。例えば、第3条第1項は、雇用者に対して、同人と「雇用関係にない者」の安全衛生も確保する一般的な義務を課しております。ここで「雇用関係にない者」には、自営業者や訪問者も含まれます。
 他方、自営業者に対しても、自身とその活動の影響を受ける者の安全衛生確保の義務を課しております。それから、UKには労災職業病報告の要件や方法等を定めたRIDDORという規則があり、そこで指定された業務に起因する死傷病等は、フリーランサーもギグワーカーも、全て報告の義務が生じることになっております。ここで報告の責任を負うのは、雇用主はもちろんですが、被用者のほか、災害原因となった施設の管理者等多様な者が想定されております。また、報告対象となる業務起因は、事業の遂行(方法)に関連するか、事業のために用いられる設備や物質に関連するか等で、判断されることになっております。ちなみに、2017年から2022年の5年間のデータを見ますと、全体の16%しかいない自営業者で、全体の33%もの重大災害が生じていたと、HSEでは報告されております。特に、一次産業と管理支援サービスで、自営業者の災害割合が高いというデータが出ております。
 次に、フリーランス等の自営業者向けの規制について述べます。UKでは、雇用者の従属的自営業者への保護よりも、従属的自営業者の事業活動が他者の安全衛生に及ぼす影響が重視されている模様です。2011年にLoefstedt教授によって提出されたReview(Loefstedt Review)に基づき、2015年に従属的自営業者向けの規則が制定され、小説家、フィナンシャル・アドバイザー等約170万人の自営業者が、他者の安全衛生に特段のリスクをもたらさない者として安全衛生法の適用を免除されました。つまり、安衛法上の義務を負わなくても良いとされました。逆に、その事業活動の影響を受ける自営業者、要するに、自営業者が保護を受けるかどうかの点については、一般事業者の安衛法上の責任は、もとより上記第3条第1項により担保されていると思われます。守られるべきかという点では、一般事業者の活動範囲内であれば当然守られるということになっております。
 それから、建設業の発注者や設計者向けの規制について申し上げます。これは有名なので御存じの先生も多いと思います。CDMという規則がイギリスにはあります。内容は、まず発注者は十分な安全費用・施設・人員の確保を含め、建設計画自体を適切にアレンジする義務を負うと定められております。「適切なアレンジ」の内容は、できる限り当該計画の影響を受ける全ての者の安全衛生にリスクをもたらさずに、工事が実施されるようにということになっております。発注者から設計者や関係請負人へのリスク関連情報の事前の提供義務が課されております。
 発注者は、元請人がきちんとした計画を作成しているかどうかチェックをする義務を負っています。それから、設計者にも義務が課されています。主任設計者が、当該建設工事の全関係者に関する安全衛生ファイルを作成し、発注者らがチェックする義務が課されております。この安全衛生ファイルというのは、その建設工事で安全を確保するための要点や実施状況、実際にきちんと守られているかといったことを記すファイルです。
 それから、複数の注文者が存在する場合には、きちんと協議する、協議により主たる注文者を書面で定め、その者のみが発注者の義務を負うことになりますが、関係者と連携するという義務については、これは全ての注文者等が負う、一事業者だけが負うわけではないということです。元請業者による建設工事の適切な実施の統括管理義務も課されており、これは日本と一緒です。ある建設現場での建設作業の実施方法を管理する発注者と関係請負人は、その管理権限に関する限り、つまり管理する権限があるのであれば、自律的に連携して安全な工事現場の形成をすることになっております。
 主任設計者から主な請負人に対してリスク関連情報の提供義務が定められております。これは強調したいのですが、建設工事の設計者や請負人は、所要のスキル、知識、経験、組織能力を備え、工事の安全を担保できる者でなければならず、その要件を満たさない限り受注してはならない。仕事を受けるなという禁止規定があります。設計者や主たる注文者は、その要件充足の確認のための合理的措置を講じねばならないということも定められており、結果責任は負わないが、確認の努力はしなさいということも言われております。それから、他者の管理下にある者は、リスクを管理権限を持つ者に伝達せねばならない。守られる側だからといって、甘えてはいけないことも書かれております。
 デジタル・プラットフォームを利用するギグワーカー向けの規制について述べます。UKの場合、プラットフォーマーの管理が強く及ぶことから、employerではなくても、workerには当たるとする最高裁の判決が最近下されております。workerとは、被用者と自営業者の中間的概念で、これに当たればおおむねHSWA(安全衛生法)の適用は受けるだろうと思われます。ちなみに、HSEのWEBサイトでは、ギグワークと労働者派遣を同列に扱った上で、プラットフォーマーは労働者の支配管理を行うので、その責任を負うことも多いという書き方をしておりました。結局、支配管理可能性です。鹿野先生のお話にもありましたが、そこが主な判断基準とされることがうかがわれます。
 次に、オーストラリアの話です。オーストラリアでは、2011年にWork Health and Safety Actという法律ができており、このWorkという用語が実は結構味噌で、今までoccupationalやindustrial等の用語が使われてきましたが、それより広いのだと、Workする者はみんな保護されるのだということを示しております。その法制度についての概論です。オーストラリアの法律(正しくは、各州に法律の制定を促すためのモデル法律案。既に殆どの州が採用している)も、UKの影響を強く受けているが、UKよりラディカルな法制度を構築しております。なぜ、そのような法律ができたかというと、専門委員会で相当長いこと議論しているうちに、やっとここに合意が達したと専門家は言っておりました。その第19条は使用者ではなく、事業を営む者(PCBU)を名宛人として、合理的に可能な限り、彼、彼女らの事業のために、あるいはそれに関わる業務を行う全ての就労者(worker)の安全衛生を確保せねばならないと定めております。
 要するに、事業者を広く名宛人として、その人のためにお仕事をする人であれば、みんな守ってあげなさいという、ものすごい広い定め方をしたわけです。ここで合理的に可能な限りと制限が付いていますが、どう判断するかというと、第18条でリスクの大きさ、軽減可能性、認識可能性等を考慮することになっております。ここで、PCBUには個人と法人の両者が該当し、フランチャイザー、元請、サプライチェーンの川上の販売者等が広く含まれます。したがって、下請をする自営業者は、PCBUと就労者の両方を兼ねる可能性があります。守る側と守られる側と両方の役割になり得るということです。守られる側の就労者(worker)には、立場を問わず、PCBUのために業務を遂行する者が広く該当し、請負人、請負人の被用者等が含まれます。就労者は、不特定のPCBUのために仕事をする人でも良いので、サプライチェーンの川下で就労する者等も該当するとされております。
  デジタル・プラットフォーマーが、顧客(end-user)と就労者の媒体を果たしている場合、この法律を適用できるかというところは、オーストラリアでもなかなか判断が難しいですが、この領域で国際的に影響力を持ち、この法律の制定にも関与したよう同国のRichard Johnstone教授は、関係者間の取り決め、就労条件の設定(arrangement)、両者の実際の関係により、適用の如何が決まると述べております。このPCBUがなすべき措置については、一般的なリスク管理措置のほか、各事業の性質に応じた危害防止措置を取るよう定められております。つまり、職場、設備、取り扱う有害物のありよう等に応じて、やるべきことが決まってくるので、それをやってくださいということです。それから、守られる側、就労者はもちろん、作業場に出入りする他者もやるべきことがある。①自身の安全衛生を守りなさい。②他者に危害を加えてはいけない。③PCBUから合理的な指示があったら守りなさい。④PCBUによる安全衛生施策・手順と協働しなさいと書いております。このような問題ですから、単に誰かに責任を預ければ良いということではないことも示されているわけです。
 重層的な請負関係下では、複数のPCBU間での協議・連携が義務付けられております。これも強調すべきですが、労災(死傷病)報告を行うべき者も、協議・連携の下で決定されることとなっております。いろいろなPCBUから、行政にどんどん報告がされたら収拾がつかないし、統括管理者にその意識をもってもらう必要があるため、こうされているのだと思いますまた、同法は、workerが連帯して結成するwork groupを措定しており、これに労働組合と同様の権限と、PCBUによる活動費用の支給等を保障しております。Work groupは、安全衛生代表(HSR)を選出し、その代表はPCBUの安全衛生活動を監視することになっております。
 このPCBUの役員ら上級幹部には重い管理責任が課されており、安全衛生監督官には安全衛生の実現のための、広い裁量が与えられております。法違反の罰金額はイギリスに似て高く、重大なリスクについての重過失だと、日本円で約2億8,000万円にのぼります。なぜ、このようなラディカルな法律ができたのか、再三、Johnstone教授に聞いたのですが、現代のビジネスモデルのスピーディーな変化に際して、頻繁な法改正をしなくても済むようにというところに、何度もパネルで検討・議論をするうちに、やっと合意に達したのだということでした。
 しかし、出来上がってみると、例えば、Deliverooというプラットフォーマーから、work groupの交渉単位の区割り等、細かい所を突いた激しい抵抗に遭っているほか(最近、かなり決着したそうですが)、監督行政機関も、アルゴリズム管理や事業の仕組みそのものへ介入することについては、消極姿勢である等の問題を生じているということです。日本の場合は、ルールを作った以上はきちんと守る。ルール自体はソフト・ローになるが、作った以上は守るとあるため、ここまでラディカルなルールを作ると、やはり執行がきついということになるのではないかとも思われます。フリーランス等の自営業者向けの規制については、フリーランサーは自身の事業を営むので、基本的に自分がPCBUに該当するが、他のPCBUの事業に従事する場合は、その就労者として守られるということです。
 建設業の発注者や設計者向けの規制については建設業において注文者や設計者は、みんな事業を営む者である以上PCBUに該当し、WHS Actに定めるリスク管理の義務を負うということです。メインの義務は先ほど御紹介した第19条ですが、設計者の場合、第22条に基づき、別途の義務を負うことになっております。すなわち、プラント、化学物質、構造物の設計者は、できる限り、建設上、安全で衛生的な設計を保証せねばならないと、設計者への義務付けがなされております。
 同法に紐づくニューサウスウェールズのWork Health and Safety Regulation 2017には以下のような規定があります。プラントや構造物の設計者、製造者、輸入業者、設置者、建設者は出入り制限を含めて、そこに立ち入る人のリスクが最小化されるよう保証せねばならない。設計者にこのような義務を課されています。違反者(個人、法人)には、それぞれ所定の罰金を科すとされております。また、請負人すなわち建設業者であって、場や施設の管理者はPCBUに該当し、それに応じた法的なリスク管理義務を負う。建設業者に所属し、場や施設の管理を行う管理者は就労者(worker)であって基本的には保護の対象であり、就労者としての義務(①自身の安全衛生の確保、②他者への危害の防止等)を負うにとどまります。
 しかし、管理者の地位が高く、役員(officers)クラスであれば、PCBUによる義務の履行につき善管注意義務(due diligence)を果たさなければいけない。due diligenceの安全衛生面での中身は何かというと、①安全衛生に関する最新の知識を獲得すること。②個別的、一般的なリスクについて理解すること。③PCBUに、適切な資源とプロセスを使用させること等が含まれるとされております。違反すると独自に刑事罰を受けることがあります。以上が外国の法制度の状況です。
 2か国しか取り上げておりませんが、安全衛生を重視する国の例として、参考にはなると思います。最後に、日本における個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方について、少し申し述べて終わりたいと思います。日本の労働関係法は、一般的にソフト・ローであり、従属的自営業に関する法制度もまだ不十分ですが、独自の趣旨を持つ様々な法律が新しい課題を包囲し、法律以外の力学、例えば、関係者の信頼や社会の評判等、こういったものと共に事業者の行動を監視していることだと思います。
 非常に乱暴に言うと、オーストラリアの学者と話してつくづく思うのは、日本は法よりも文化のほうが強いのではないか。そう感じることがあります。そのような意味で、良く言えば多面性と柔軟性を持っている。つまり、直接的な規制は乏しいが、例えば、ひどい事業者が現われた、重大な脱法的問題が生じたとなると、行政や裁判所が、その周りを取り囲んでいる法律の柔軟な解釈により、つまりそれらをうまく使って救済を図り、その後、立法にも結び付くというようなパターンだと思います。
 その前提で、言い過ぎないように注意しながら今後の立法を占いますと、発注者等の業務管理者等に課すべき措置として重要なのは、a.リスク調査をして調査結果を従属的自営業者等に提供すること。b.集団的交渉への誠実な対応を図ること。国が行うべき措置は、c.従属的自営業に伴う一般的なリスクと、良好な対応策(best practice)を調査し、情報提供等が核心となるだろうと思います。
 それから、メンタルを含む心身の健康問題については、d.中小企業等協同組合法(経済法)で保護された協同組合や商工会議所等の団体が、メンバーの面接等を担当する産業医を選任する。中小事業者が集まった団体単位で産業医等を選任し、e.その産業医が必要と認める場合は、委託者らに対して、当該就労者の就労条件の改善のための働きかけを図るようなスキームも考えられる。なお、ギグワークについては、産業衛生学等から、それに伴うリスクもかなり指摘されているので、そのようなものの活用も求められると思います。以上です。ありがとうございました。
○土橋座長 ありがとうございました。ただいまの三柴委員の御報告に関しましての質疑応答は、後ほどのフリーディスカッションの時間でお願いしたいと思います。それでは、これまで事務局から提示された論点について、これまでのヒアリングや委員の皆様からの御報告を踏まえ、フリーディスカッションを行っていただきたいと思います。まず、論点1と論点3について、前回までのヒアリングや検討会での議論を踏まえて、事務局が整理を行っているとのことですので、フリーディスカッションに先立ち、資料の説明をお願いいたします。
○船井安全課長補佐 それでは、資料1と資料2について簡単に説明させていただきます。資料1は論点1、資料2は論点3になっております。まず、資料1を1枚めくり、これまでの検討会に出した資料の使い回しということで掲載しておりますが、論点1はこの部分になります。3ページ以降も、前回までに出された意見のポイントで、こちらも再掲しております。7ページまで飛んで、再掲させていただいた意見のポイントについて、これをベースに事務局で論点を整理したということです。こちらの論点の整理について、関係者が非常に多岐にわたりますので、誰に何をやっていただくかが分かりやすくなるように色分けをして、網掛けを付けております。赤は国とか関係団体に措置を求めるもの、黄色が個人事業者等自身に措置を求めるもの、緑が事業者や注文者等に措置を求めるものという形で整理しております。色がついてないのは、その他です。右上に※で書いていますが、こちらの資料に掲載の事項は、検討会でヒアリングなどを踏まえて御議論いただいた意見を、集約して整理したもので、必ずしも安全衛生関係法令で、全部対応可能だと現時点で整理ができたものではありません。そこら辺については、また引き続き御検討、御議論を頂く必要があることを御留意いただければと思います。
 まず、総論です。前回も少し御紹介させていただきましたが、非常にたくさんヒアリングをやらせていただきましたが、業種・業態によって状況は異なるので、全部一括りにして議論するのはなかなか難しいのではないか。ですので、無理に共通化して課題を捉えるのではなく、個々の論点については各業種・業態に共通する課題と、業種・業態に特有な課題を分けて検討してはどうか。分けて検討した課題について、それに対応する手法としては、必ずしも法令による規制だけではなく、ガイドラインによる取組であるとか、様々な支援とか、いろいろなやり方が考えられるのではないかというのが、まず総論として1点です。それ以外にも、個人事業者を取り巻く労災の特別加入団体をはじめとしたいろいろな団体、そういったところに関与を求め、それを支援していくことも重要ではないか。
 次のページから各論に入り、8ページの(1)検討の基礎となる災害実態の深掘りということで、災害の状況は必ずしも十分に把握できていなかったという指摘を頂きましたので、まず、労働者の災害状況を報告している仕組みを参考にしながら、個人事業者についても、報告の制度を作ってはどうか。ただ、その際いろいろサポートが必要なのではないかということで、いろいろな取組について整理しております。
 次の9ページは、把握したデータについては、しっかり整理して公表し、災害防止に活用していくべきではないかという観点です。10ページは(2)個人事業者自身による措置や、その実行を確保するための仕組みのあり方です。労働者の場合、事業者に何かをしろというふうに指揮命令を受けた場合には、罰則付きでそれに応じる義務が設けられているのですが、個人事業者の場合については、事業者から一部作業を請け負ったり、事業者が管理する場で作業するときの立ち入り禁止措置、そういった管理下に置かれるような状況もあるのですが、それに対して労働者と違い、指揮命令関係がないので、現時点で罰則付きの義務のようなものはない。ですので、労働者と同じ水準で保護するのであれば、そこら辺のバランスも考える必要があるのではないかという観点です。使用する機械についても、事業者の場合は検査や規格を具備しないと、使ってはいけないと規定されているのですが、個人事業者の場合はそこら辺がカバーされていないので、これも同じようにカバーする必要があるのではないか。
 11ページは、同様に教育の関係です。それと健康診断についても労働者と同じ作業に従事するのであれば、教育や研修もしっかりやっていただく必要がある。12ページについても、これらは混在作業における措置ということで、建設業や製造業、造船業については、元方事業者に混在作業による災害防止ということで、いろいろなことをお願いしているのですが、この混在が、労働者同士の混在しか条文上読めない形になってしまっておりますので、そういったところをどうしていくのか。複数の事業者が混在して働くような職場を管理する元方事業者、もしくは製造業の工場主が、その場に入場してくる個人事業者の健診の状況や、教育の状況を確保していくことも重要ではないか、こういう御指摘がありました。
 続きまして、13ページの(3)発注者による措置です。これは、安衛法第3条第3項に注文者の責務というものがあり、その規定について下に小さい字で書いてありますが、もう少しいろいろな注文者に適用される趣旨が、明確になるようにすべきであるとか、無理な工期や納期など、後付けの注文なども、こういう趣旨にはそぐわないことを明確にすることも必要なのではないか。注文者と一口で言っても、いろいろな注文の仕方があります。ここに書いてあるような①~④について、例えば工期や報酬の額とかそういうものとは別に、場所を指定したり、作業方法を指定したりということもあります。ですので、こういうことを指定する、しないで、注文者の影響力は大分違いますので、こういったことを整理して、何をやっていただくかを明確にする必要もあると思います。
 次の14ページにありますように、明確にしてアプローチするに当たっては、保護対象となる人の直近上位の人だけではなく、きちんとその人にお願いすれば問題が解決する。先ほど三柴委員からもございましたように、リスクを誰が発生させているのかという観点で、どこにアプローチするかを決めることも重要なのではないか。下の白い四角にありますように、注文者、発注者が一般の方である場合どうすればいいのか。まずは仕事に安全衛生が付きものなのだという意識啓発を図るとか、あと個人の発注者に対して何を求めるかといったときに、なかなか個人に何かを求めても、実行性がないじゃないかという御指摘もありましたが、これは先ほど説明した、いろいろな作業場所や、作業方法を指定している、していないというところで、自ずと一般の個人の方は、そんなに強度のある措置というのは必要ないのではないか。
 15ページについては、労働安全衛生法に基づいて、元方事業者が法令に違反しないように指示をする、指導するという規定があるのですが、この指示指導はやっていただいても、偽装請負にはならないということなのですが、それ以外の一般的な安全上の指導や指示が、ともすれば偽装請負いになってしまうということで、現場では尻込みしているというような声もありましたので、ここら辺を整理する必要があるのではないか。
 次の16ページですが、統括管理、混在職場の関係です。建設・造船・製造以外の業種についても、同じような混在があるのではないか。こういうようなものについて、何らかの措置を求めるべきではないか。混在と一口に言っても、仕事をまたぐような混在、例えば製造工場で混在して作業している場所に、更に運送業者の方が荷物を運んできて作業を行って、仕事をまたいだ混在が生ずるというようなこともあり得るのではないか。こういう際の措置、どういう措置がありうるのか。陸運業の関係もいろいろ業態の特色があるので、そういう特色を踏まえた対応も必要ではないかということです。
 少し飛びまして18ページ目です。発注者、注文者対策を考える場合と同じように、災害のリスクをコントロールすることができる権限を持った方に対して措置を求める。例えば、建物や機械の貸与者というものが、そういうものに該当するのではないか。こういう立て付け自体は既に安全衛生法にもあるので、そういう部分の拡大も含めて検討してはどうか。19ページについては、プラットフォーマーの関係です。こういったプラットフォーマーの方々というのは、必ずしも作業を行う人にとっては、注文者の立場には該当しないのですが、業務システムの提供とか、実質的に安全衛生に影響を及ぼす場合もありますので、こういう場合については、注文者の求めているような配慮と、同じようなことを求めていくことも重要ではないか。最後の20ページ、支援です。国がいろいろなことを労働者向けにやってきた取組は、個人事業者向けに拡張したり、既存の相談窓口との連携、業所管官庁との連携といったようなことも必要ではないか。
 同じように、資料2の7ページ以降を御覧ください。こちらについては論点3の関係ですが、過重労働やメンタル、健康管理の関係についても同様に整理をしております。長時間の就業による健康障害を防止する観点については、就業時間の把握、把握した就業時間が余り長くなりすぎないように、長くなってしまった場合にはどういうことをすればいいのか。まずは、黄色のところにあるように、個人事業者の方が自身で管理把握をしていく。なかなか自分自身でできない部分については、赤い四角にあるように、国がいろいろなツールを準備してはどうか。業態というか、仕事のやり方によっては、例えばこの検討会のヒアリングでも話がありました、撮影現場みたいな形で、仕事を発注する方とか、発注者ではないのですが、その仕事を管理するような方がその場を仕切っていて、業務の性質上、何時から何時までということ、就業時間が自ずと特定されてしまうような場合もありますので、そういうときに発注者等に対して、どういうことを求めるのがいいのかも論点になってくると思います。
 次のページです。先ほど来出ている安衛法の第3条第3項というような規定も踏まえ、発注の際にどういう配慮を求めていくことが考えられるか。今申し上げました長時間労働と同じように、メンタルの場合についても、御自身でストレスチェックを受けていただき、問題がある場合には医師による面接指導、そういったものにつなげていただく。そういうことをやる際にツールで支援していく。発注者についても、ストレスが生じないように、どういうことを求めていくのがいいのか。健康診断についても、なかなか研修を受けていない方がいらっしゃるというデータもありますので、労働者と同じように1年に1回、何らかの検診を受けていただくことも重要ではないか。最後、その他の健康障害の防止については、働く場所の管理や腰痛、筋骨格系の肩こりや眼性疲労、そういった作業についても、パソコン作業などをやっていると生ずることがありますので、発注者の方に対して場所を管理する、場所を特定するような場合については、どういうことを求めていくのか。あと、御自身で作業をする場合にも、就業環境をしっかり確保していただく。もしくは肩こりとか腰痛が起きないように、労働者であればお勧め事項も含めて、求めているようなことも参考にしながら、取り組んでいただく。
 最後のページは、やはり支援の関係です。ヘルスリテラシーの向上とか、行政が労働者向けにやっているいろいろな仕組みを、個人事業者の方、とりわけ労災保険に特別加入している方にも活用できるようにするとか、あと個人事業者を支援するような団体に対して、やはり国が支援をして、ストレスチェックや研修、情報提供を活発にしていくというようなことが重要ではないかということで、まとめさせていただいております。以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。これまでいろいろな業界や業種等の話を聞く中で、かなり広い範囲の課題がございましたが、その辺りをうまく整理いただいているものと思います。それでは、今の説明も踏まえて、フリーディスカッションの時間とさせていただきます。御発言の際には、今日の御説明等の誰に対する御質問か。また、ただいまのどの論点に対する御意見かを最初にお示しください。いかがでしょうか。では三柴委員、お願いします。
○三柴参集者 先ほどの意見聴取を受けていただいたお二方にお尋ねなのですが、基本的には1問ずつです。まず、関口様に向けてなのですが、一言でいいますと、ほかの独立的な働き方に比べて何が問題なのか、何が大変なのか。そこを教えていただきたい。そのUberなりのプラットフォーマーが、新たな仕事を生み出している面がないのかということと合わせ、関口様にお聞きしたいと思います。
 西村様に対しては、この働き方で生活を支える人がいるということを、想定されているかということを伺いたいと思います。いろいろな働き方に対応できるというお考えだとは思うのですが、基本的にはライトな、気軽な働き方という想定をされているのか。それとも、これで生活を支えていこうという人もいるということを、それで食べていくという人がいることを想定されているか。ここをお聞きしたいのと、もう1つ、関口様からもあったアプリの悪用です。これへの対応はどのようにお考えなのか。これを伺いたいと思います。
○土橋座長 それでは、関口様のほうからまずお願いします。
○(全国コミュニティ・ユニオン連合会)関口様 まず、何が問題かというところですけれども、正直申し上げると、運送業界の全体の問題という印象です。少し論点が外れるかもしれないのですが、インターネットを通じて、いつでも好きな物が、好きな時間帯に届くという便利さを追求していくということが、基本的に一番大きな問題になってしまっているのかなというふうに思っています。非常にサービスとして優れていると見る反面、そこにやはり人が介在していて。それを運ぶ人がいるという中で、果たしてそのサービスの追求というのがどういうふうに、どこまで追及していくのがいいのかというのは、考えたほうがいいのかなと思います。一人一人の消費者という立場や観点からも、考えたほうがいいのかなと思っています。
 大変ということで言うと、その結果として荷物の量が非常に増えていっているということです。しかも、そのアプリを介して指示をされている。どこに誰が何を持っていくのかというのを、全部アプリを介しての指示なので、そこで人が介在すると、これは確かに持っていきづらいよねとかということを、若干調整する余地もあるのですけれども、基本的にアマゾンだと、AIで管理しているので、これで行けないはずないだろうということになってしまって。ある意味、分かりやすく言うと血の通わない、そういうような側面があるのかなというふうには思っています。
○土橋座長 それでは西村様。
○(日本フードデリバリーサービス協会)西村様 フードデリバリー協会のほうからも回答させていただきます。1つ目は、こういったフードデリバリーの配達員ということで、生活を支えるために彼らが働いているという前提で、我々事業者として事業を行っているかどうかといったところですけれども、もともとのこの事業の成り立ちというのは、そのフードデリバリーの需要と供給のバランスに応じて推奨される報酬を決めて、それで配達員とその需要をマッチングさせて配達をするということだったので、そのビジネスモデル自体には、そこまでの要素は入ってはいないと認識しています。ただ、現状見ていくと、先ほどのアンケートにもあったように、週に40、60時間など、主な収入源としてこの業務に従事されている方もいらっしゃることが見受けられます。そういった状況も鑑みて、JaFDAでは、配達員の就業環境の整備に関するガイドラインというものを定めております。これも先ほど説明したガイドラインですが、この中で社会保険の制度に関する周知であるとか、あるいは買い叩きが行われないようにといったような仕組み、制度も入れております。それを自主的に各事業者が守っているといったような状況ですので、結果的に今の働き方を見て、そういった生活を支えるためにも、安心して働けるための環境作りを支援するため、取り組んでおります。
 あとはアプリの悪用対応といったところは、これ本当に深刻な問題です。「なりすまし」などの問題も発生しております。やり方も、どんどん巧妙になってきているので、常に改善はしております。例えば、他人のIDで入っていくといったような問題の対策として、定期的に本人の顔写真を撮ってくださいというようなアプリの機能を入れております。ただ、そうすると、もともと別の写真を用意しておいて、その写真をかざす人が出てくるといったことがあるので、ではちょっと顔動かしてくださいですとか、追加の機能を入れています。あとは、Uber Eatsですと、非常に残念なことに、不法就労助長罪で書類送検されたことがあります。こちらは捜査されたことがありまして、それで不起訴にはなったのですけれども。そういった中で指摘されたのは、外国人の就労者が、これもまた「なりすまし」で入っていた。偽造の在留許可証で登録してしまったというような事例がございました。これらの対応として、対面での審査という形を、外国人の方には取らせていただくように変えておりますので、こういったアプリの悪用対策というのは、本当に毎日毎日我々深刻に考え、対応させていただいているところです。
○土橋座長 ありがとうございました。少し時間超過になりましたが、続けさせていただきます。御発言ございますか。小野委員、お願いします。
○小野参集者 2つありまして、1つは関口様にお伺いしたいと思います。資料でいけば、これは図のところです。アマゾン配達員の仕組みということなのですが、全体の全国ユニオンとしては、様々な業種・業態の方たちがいらっしゃるということですが、今回は、特にアマゾンの配達員について御説明いただきました。全体で2,800人ということなのですが、今回の組合作りということで言えば、おおむね何人ぐらいが対象になるのかということを、一応データとしてお聞きしたいということが、1点です。
 さらに、その方たちは基本的には、軽自動車を持ち込みで配達をするというスタイルでよろしいのですよね。はい。その場合、皆さん御承知のとおり、トラックの場合には白ナンバーと青ナンバー、緑ですが、営業用と自家用というのがしっかり分かれております。軽自動車もしっかりと自家用は黄色ナンバー、あるいは営業用は黒ナンバーということで分かれています。さっき黒ナンバーの軽トラとおっしゃったので、皆さん、絶対に基本的には営業用の軽トラを持ち込みだろうと思っているのですが、自家用の黄色を持ち込んでいるような方たちというのは、アマゾンのほうでは排除しているのかどうか。これが2点目です。
 それからもう1つは、災害についてです。現場と違って毎回のように配達先が変わりますので、これについては、その労働災害という観点で見れば、交通事故という大きな問題があります。当然のように物流センター発の問題もありますし、着荷主の各家庭の所、先ほど階段の転落事故ありましたが、そういったこともあるのですが、運送途上の事故もあるのです。そういったときに、大体は、自動車保険で任意保険に入っていれば、済まされるわけなのですが、通常のものと違って運送行為の場合は、大きい事故が起きた場合、あるいは傷害が起きたときは仕事ができなくなりますが、もう1つ大きな問題があるのですね。これは、運送貨物保険に入っているかどうか。営業用の大きな会社の場合には、ほとんどの場合は運送貨物保険に入っています。それは何を保障するかというと、運送途上にあるその貨物の賠償責任を負うものです。ですので、もしもそれに入っていないと、交通事故で貨物を業務委託で壊してしまった、損傷してしまった場合には、それを更に保障しなきゃいけない、個人で。そういうことが後々、自分は入院中でありながら、それを数十万円、数百万円の賠償責任を負ってしまうので、通常は運送貨物保険に入るのです。それについての保険加入は、もしもその雇い主である、発注先である、これでいうとアマゾン本体1次請け、2次請けですが、そういうところが、しっかりそういう条件の個人の方に運送保険も入って、当然のように自動車保険もですが、そういったところで、まず選別をしていただけると、災害のときあるいは交通事故が起きたときも、その個人の方は悲惨な状況にならないことはありますので、通常の営業用の、通常の一般貨物運送事業と同じような形で、そういう条件を付けているような、付けるような動きがあるのかないのか。これが3点目です。
 それから、もう1つは全般的な話になります。注文者等がやはり配慮をしていかないと、この個人に対する労働災害もなかなか減らないということになりますので、そういったときには、例えば建設工事問題も同じなのですが、運送業ではますます大きいのですが、リードタイムとあります。やはり納期、長距離輸送とかで、例えば広島から東京に来る、明日の朝までに着いてというと、一睡もせずに運転をするしかない。そういった途中で事故を起きてしまうというのがあります。なかなか厳しい輸送条件を課すような荷主については、まず働き側の事業者、ドライバーについては厳しい労働時間の制限があります。改善基準告示というものがあって、実際の年間の休憩、労働時間を含めた拘束時間あるいは運転時間、そういったことが決められているのですが。そういうときに厳しいリードタイムによって影響を受けるような場合は、その荷主に対して社名を公表するような制度が、今回設けられることになりました。例えば、こういった場合でも個人の方たちでも。
○土橋座長 手短にお願いします。
○小野参集者 そういうことあります。そういうような動きをしていくと、1つの全体の流れとして発注者に対する抑止力になっていくのではないか。これが4つ目です。
○土橋座長 これは、関口様への質問でよろしいですか。お二人に。
○小野参集者 関口さんです。
○土橋座長 では、まず関口様、お願いします。
○(全国コミュニティ・ユニオン連合会)関口様 対象というのは、そのドライバーが何人いるかということでしょうか。
○小野参集者 はい。
○(全国コミュニティ・ユニオン連合会)関口様 そこは正直、こちらのほうでまだ把握は、完全に把握はできておりません。というのは、かなり数が多くなっているのと、その人数自体が、倉庫によっても、大小によっても違ったりするので、全体の人数というのは把握し切れていないところです。ただ、今のところ組合に加入しているのは、30人くらいが加入している状況です。
 車は持ち込みかどうか。持ち込みの方も多いのですが、同時にリースをするというような、1次請けや2次請けとかがリースをしていて。黒ナンバーの車、場合によっては免許証と何とかを持ってきてと言って、手続きもして、「じゃ、これだからね」ということで、リースを用意するようなケースも非常に多いです。さすがにやはり黄色ナンバーとかはいないです、見当たらないと思います。もしかしたら、本当にそのアンダーグラウンドみたいなところは、いらっしゃるのかもしれないですけれども、基本的に、やはり黒ナンバーを皆さん取ってらっしゃいます。
 交通事故の保険対応なのですが、これは基本的に貨物の保険などは皆さん入っています。さすがに入っているので、それは大丈夫なのですけれども。自賠責とかで入っているので、最大限のけがの保障とかをされるケース多いのですけれども。そういう意味で言うと、そこでカバーしきれないような事故も結構起きているので、そこで非常に生活に困窮してしまうとか、障害が残ったときに、なかなかそこをカバーしきれないとかというようなところもあるというふうに思います。やはり荷主の方に、一定の責任を負わせるというのは、非常に有効だと思います。そこは何らかの形で、そういう形の規制なりがないと、なかなかそこは全体を正常に動かしていくというふうには、なりにくいのかなというふうに思います。以上です。
○土橋座長 ありがとうございます。次の発言に移らせていただきます。オンラインで森委員から手が挙がっております。森委員お願いします。
○森参集者 ありがとうございます。資料1、2の関係について、少し意見を述べさせていただきます。資料1の11ページでは、特殊健康診断のことを促すことが記載されています。
 また、資料2の7、8ページにおいては、長時間労働の面接指導、それからストレスチェック、一般健康診断の受診を促すことが記載されています。結局、多くの場合、何か有害物のばく露やストレスがあるような場合に、健康影響の評価を医師に依頼をするということを、よく落とし所としてもっていくわけですが、健康影響を評価はしても、評価しただけでは何も事が起きないわけでありますので、それをそもそもどのように事後措置をするんだ、通常の労働者であれば本人に指導した上で、事業者が医師から意見を聴取して、就業の配慮を促すということが当然なのですが、それを完全に自己責任にするのか、それ以外の方法で事後措置に反映させるのか、その中身が必要だろうと考えます。ただ、評価しただけで終わってはいけないと思っています。
 それから、資料1の特殊健康診断においては更に複雑で、当然のことながら健康診断の項目を決めるに当たって、特に今後はどのような化学物質等を使っていて、どのようなばく露があるのかということの情報提供がされない限り、特殊健康診断をする実施側としては、受けられないわけでありますし、そのような情報がなければ、出てきた結果の判定すらできないわけです。
 例えば肝機能の障害がありますと出てきても、ばく露の情報がなければ、それがばく露によるものなのか、ただ単に、その人の持病なのかすら分からないという情報ですので、個人事業者に促すというだけではなくて、情報提供、またその出た結果をどのように扱うのかというところまで縫い込んで検討して、初めて対策と言えるのではないかと思っています。
 私はその事後措置について、今どうしたらいいのかという答えを持っておりませんので、今後以降にも少し考えたいと思いますが、その点について述べさせていただきました。以上です。
○土橋座長 御意見ありがとうございました。時間の関係もありますので、論点に対する御意見は次回以降に回させていただいて、今日の御説明に対する質問だけ、この後はお受けしたいと思います。いかがですか。田久委員お願いします。
○田久参集者 ありがとうございます。今日、業界団体の方のお二方に1つお聞きしたいのは、先ほど、いろいろな部分で補償をするために、個人で保険なり何かに入ると。こういうことを言われているのですが、今、言われた単価や日当というものの中に、現状として、そういったことが、きちんと含まれて出されているものなのかどうかということを、お聞きしたい。それと、三柴先生のところで、2.3の建設業、UKの建設業の発注者の関係は、先ほど言った発注者に、個人と一般消費者へというのは、ここの部分は海外のところでは含まれているのかどうかということを、お聞きしたいと思います。以上です。
○土橋座長 簡潔で結構ですので、お答えください。まず、関口様。
○(全国コミュニティ・ユニオン連合会)関口様 単価には、恐らく明確にその内訳というのは分からないですが、含まれてないと考えられます。
○土橋座長 では、西村様。
○(日本フードデリバリーサービス協会)西村様 稼働中の保険というのは、事業者負担で全てカバーしておりますので、全体のビジネスとして、そういったものは含んでおります。ただ、本人が労災保険の特別加入に入るとか、任意保険に入るというのを切り分けて、単価の中に入れているということではありません。それをひっくるめて、御本人に入ってくださいということで促しております。
○土橋座長 三柴委員お願いします。
○三柴参集者 当初、個人も含めていたので、えらい問題になって、そこに対応することになったと承知しております。
○土橋座長 ほかにいかがでしょうか。中村委員。
○中村参集者 三柴先生にお聞きしたいのですが、今日のまとめを見ていて、非常に私たちはよくやらなきゃいけないということが、よくまとめられていると思って聞いておりました。それで、質問したいのは日本の法制の中で、いわゆる法よりも文化のほうが強い傾向があって、かなり多面的、柔軟性を持った運用をされているという説明があって、そうは言っても最後に、今後の立法の中でこれぐらいはちゃんと課すべきだと書いてあるのですが、そことの関係はどのように考えればよろしいですか。
○三柴参集者 ありがとうございます。オーストラリア等に比べれば、日本はやはり文化重視かと思いますが、結論から言うと、法規制と文化との相乗効果、シナジー効果を考えておくのがいいのではないかということです。一言で申し上げれば。
○中村参集者 私が今言いたかったのは、例えばリスク評価ということを、もう少し発注主の所に盛り込むようなことを、これは法ではないから、ガイドライン的のものになると思うので、入れてもいいのではないかということで聞いていたのですが。
○三柴参集者 リスクという概念が、日本に適応するかというのはもう少し考えないといけないと私は思っていますが、方向性として、そこはもう少し強く義務付けていくべきだというのが、私見ではあります。
○中村参集者 私も鹿野先生と、それから三柴先生の話を聞きながら、やはりリスクを作り出したものに責任があるということを、やはり、しっかりと言っていく必要があるかと思って、両先生の話を聞いておりました。
○三柴参集者 リスクについて申し上げたのは、リスクという概念自体が、結構、文化の影響を受けるので、リスク管理責任をより重視する流れは賛成なのですが、中身を考える必要がある。それだけです。
○中村参集者 分かりました。
○土橋座長 ほかに御質問はありますでしょうか。日下部委員どうぞ。
○日下部参集者 フードデリバリーの御説明を受けて、資料4ページの所で、いろいろ情報がまだ非公開というところが多数あって、この検討会の当初は労働災害の実態が、十分把握されていないということでスタートしたと思いますが、このいろいろな情報公開について、どのような姿勢を持たれているか、お伺いしたいと思います。
○土橋座長 どちらのヒアリング。両方。
○(日本フードデリバリーサービス協会)西村様 フードデリバリーのほうですか。
○土橋座長 はい。
○(日本フードデリバリーサービス協会)西村様 情報公開については、積極的に取り組んでいかなければいけないと、これは社会の一員として認識しております。一方で競争上、開示はなかなか難しいようなものもありますので、詳細な配達員数というのは、各社公表できない部分や、あるいはおおむねこれぐらいといったような水準で、提示しているような状況です。
○土橋座長 よろしいでしょうか。
○日下部参集者 結構です。
○土橋座長 そのほか御発言はありますか。オンラインの森委員の手が挙がっているようですが、これは手を下ろし忘れた感じですか。
○森参集者 申し訳ありません。
○土橋座長 少し時間を超過してしまいましたが、様々な御質問や御議論、ありがとうございました。それでは、本日の議論については事務局において、次回までに整理をお願いいたします。
 それでは最後になりますが、その他として事務局から何かありますか。
○船井安全課長補佐 連絡事項ですが、次回の日程は後日、また改めて御案内させていただきますが、今日、説明させていただいた論点について、十分御議論いただく時間がありませんでした。申し訳ございませんでした。この部分については次回以降も、またフリーディスカッションをやっていただけるように、十分、時間を取らせていただきたいと思いますので、御了承ください。
 また、本日の議事録については、参集者の方々の御確認を頂いた上で、公表するということにさせていただきますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○土橋座長 それでは本日は長時間にわたり、活発な御議論を頂きまして、ありがとうございました。また、本日は日本コミュニティ・ユニオン連合会の関口様、日本フードデリバリーサービス協会の西村様におかれましては、御説明や質疑の対応、大変ありがとうございました。また、鹿野委員、三柴委員におかれましても、御報告ありがとうございました。
 それでは以上で、第6回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会を閉会いたします。ありがとうございました。