第26回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和4年8月2日(火) 14:00~18:00

場所

オンライン開催

出席者

委員

議題

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和3年度業務実績評価について
    2. (2)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和3年度業務実績評価について
    3. (3)その他
  3. 閉会

配布資料

国立研究開発法人国立成育医療研究センター
資料1-1 令和3事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 令和3事業年度 業務実績概要説明資料
資料1-3 令和3事業年度 財務諸表等
資料1-4 令和3事業年度 監査報告書
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
資料2-1 令和3事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 令和3事業年度 業務実績概要説明資料
資料2-3 令和3事業年度 財務諸表等
資料2-4 令和3事業年度 監査報告書

議事

第26回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

○大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 定刻を少し過ぎましたけれども、ただいまより「第26回国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。
 新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンライン会議とさせていただいております。委員の皆様には大変お忙しい中をお集まりいただき、誠にありがとうございます。
 議事進行役を務めさせていただきます大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室の武藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は大西先生があとからお帰りになられますが、それ以外の全ての委員の方に御出席いただいておりますので、会議が成立することを御報告させていただきます。
 なお、厚生科学課長の伯野につきましては、公務により遅れての出席となりますので御了承ください。
 続きまして、本日のオンライン会議の進め方について説明いたします。マイクの設定についてですが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際はZoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、部会長による指名を受けたあとに御発言をお願いいたします。その際はマイクのミュートを解除していただきますようお願いいたします。御発言の際ですが、必ず冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明される際は、資料番号と該当ページを明示していただきますようお願いいたします。また、御発言終了後は再度マイクをミュートオフにしていただきますようお願いいたします。
 なお、進捗管理のため、事務局よりZoomサービス内のチャット機能を利用して、経過時間等を画面に表示させていただきますので、御承知おきいただきますようお願いいたします。
 続きまして本日の議題を御説明いたします。本日は国立成育医療研究センター及び国立精神・神経医療研究センターに関する「令和3年度業務実績評価」に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れにつきましては、評価項目ごとに法人から説明をしていただいたあと、委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと思っております。
 それでは、本日の会議資料の御確認をお願いいたします。委員の皆様におかれましては、お手元に議事次第、資料1-2、資料1-4、資料2-2、資料2-4を御用意いただいておりますでしょうか。そのほかの資料につきましては、事前にお知らせいたしましたURLより閲覧していただくようお願いいたします。評定記入用紙につきましては、様式の電子媒体を送付しておりますので、そちらに御記入いただき、事務局に御提出をお願いいたします。資料の閲覧方法について御不明な点がございましたら、チャット機能で事務局までお申し付けください。事務局からの説明は以上ですが、何か御質問などございますでしょうか、よろしいでしょうか。
 それでは、以降の進行につきましては祖父江部会長にお願いしたいと思います。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。今日、大変暑い中をお集まりいただきまして、皆様、本当にありがとうございます。今日も2つございますので、いつものようなパターンで進めたいというように思います。
 まず、国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和3年度業務実績評価について議論をお願いしたいと思います。慣例でございまして、議論をお願いするのですが、それに先立ちまして法人の理事長の五十嵐先生から、一言御挨拶を頂くことになっております。五十嵐先生、お願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。

○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 ありがとうございます。本日はこの会におきまして機会を頂きまして、誠にありがとうございます。
 私どものセンターは受精・妊娠から胎児期・新生児期、乳児期・学童期・思春期、そして次世代を育む若年成人期に至る過程で生じる疾患に関する医療と研究を推進することが主なミッションであります。この目的を果たすためにadvocacyの理念をベースに活動しております。妊娠・出産に関わる女性や急性疾患、あるいは難病の慢性疾患などの子供とその御家族が安心して優れた医療・看護・患者支援を受けられることが目標であります。
 現在、私どもは生体肝移植、難治性がんへの骨髄移植、遺伝子治療、ES細胞を用いた再生医療、重症アレルギー患者の治療などの高度先進医療の分野に特に力を入れております。こうした高度先進医療を実施するために、日々病院と研究所とが深く協力をしております。
 さて、新型コロナウイルスの流行は小児にも大きな影響を与えております。生活制限、集団での行動制限など、子供の日々の生活や保育園、幼稚園、学校での生活に大きな影響を及ぼしております。学びの機会が失われたり、人と人との交流に起因する気付きの機会なども損なわれていることが大変危惧されております。
 子供の不安も大変深刻な状況になっています。我が国では新型コロナウイルス感染の流行により、思春期の女子の自殺が増え、神経性食思不振症の女児の増加、あるいは病気の重症化なども見られております。
 もともと我が国の子どもの身体的健康度は世界的に最も良好と評価されていますけれども、心の健康度が大変低いというように評価されております。本日は長時間になりますけれども、本部会の委員の先生方から忌憚のない御意見を頂き、今後のセンターの運営に役立たせていただく所存であります。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 五十嵐先生、ありがとうございました。非常にコンパクトに全体のレビューをまとめていただきました。
 それでは、最初に研究開発項目の1-1、既にそこに評価項目として出ておりますが、1-1及び1-2、研究開発成果の最大化に関する事項ということで38分取っておりまして、法人からの説明が20分、その後質疑応答が18分ということです。それでは、法人の方から1-1及び1-2の御説明をお願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。

○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 1-1を担当いたします研究所長を拝任しております研究所長の梅澤です。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、説明資料の5ページを御覧いただけますでしょうか。現在映っているページです。評価項目1-1、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進です。自己評価をSとしております。
 中長期的な目標といたしまして、医療に貢献する研究成果を中長期目標期間中に20件以上、原著論文数については中長期目標期間中に2,500件以上というようにしております。難易度及び重要度はいずれも「高」とさせていただいております。
 まず、重要度が高い理由といたしましては、研究成果の実用化に大きく貢献することが求められているためです。研究成果がすぐに医療の現場におきまして実用化できるということは極めて重要で、そういった意味で重要度「高」というようにしております。
 難易度が高い理由といたしましては、免疫不全症や先天代謝異常症の多くは希少疾患並びに難治性疾患で、治療の対象となる患者数が極めて少ないことから、全国的なネットワークを形成し、患者情報を集約し、研究開発を多施設共同で取り組んでいるところです。また、倫理的な観点からもこれらの疾患に対する診断・治療に関し、我が国におけるコンセンサスを同時に形成していく必要があるといったような困難な面があるため、難易度「高」とさせていただいております。
 次に指標の達成状況の項目を御覧ください。医療に大きく貢献する研究成果は令和3年度は5件、また新規病因遺伝子の発見ですけれども、こちらは令和3年度は4件です。原著論文は令和3年度は488件でありまして、いずれも令和3年度の達成度は100%を超えているところです。
 6ページを御覧ください、要因として書かれているところです。2行目の指標の項目の医療に大きく貢献する研究成果の項です。食物アレルギーの新規検査法の開発、ヒトES細胞由来肝細胞による再生医療、ミニ小腸を活用した医学研究、父親育児の疫学研究、COVID-19と子どもの健康の社会医学研究といった、極めて重要な研究成果を上げることができました。
 次は新規病因遺伝子解明の行です。こちらは多数の成育疾患患者を対象にゲノム・エピゲノム解析を行いまして、4つの新規病因遺伝子、ZNF445,CDK19,TAB2,TNFAIP3の同定に成功し、この中には従来の疾患発症メカニズムの理解を覆す画期的な成果が含まれます。
 評定の根拠はそれぞれのスライドで御紹介させてください。7ページをお願いいたします。[1]希少・未診断疾患イニシアチブにおいて、原因不明(診断困難)な304症例のうち122症例で原因が判明いたしました。現在、病態解明などの治療開発に向けた研究も進んでいるところです。
 一番左の列、私どもは従来診断の付かない難病に対する研究プロジェクト、小児希少・未診断イニシアチブ(IRUD-P)の中心的な施設として、研究を実施してきているところです。全国各地の拠点病院・協力病院より検体を集め、収集しております。
 2021年度におきましては、真ん中のカラムの大きな赤字の所を御覧ください。304症例のうち122症例、40%の新規原因を含む疾患原因を同定いたしました。
 次のポツといたしまして、原因不明の知的障害(発達遅延、てんかん、多発奇形)の新規原因解明をいたしまして、実際の遺伝子名はCDK19遺伝子異常症を発見いたしました。
 3ポツ目、希少疾患である先天性下顎形成不全症の新規病型を発見いたしました。2022年以降は原因不明、希少疾患の全エクソーム解析、全ゲノム解析による原因特定に加えまして、ロングリード等の新規手法による解決を行い、ゲノム診断法の普及及び難治性治療開発に向けて推進を図っていくといったところでございます。ちょうど、このページの下のところには、それぞれの遺伝子の構造並びに具体的な患者さんの様子、またモデル動物を使った図を図示しております。
それでは8ページをお願いいたします。[2]成育疾患の新規原遺伝子発見と病態解明です。こちらは従来、左の列に赤字で示しておりますように、1万5,000以上の検体と臨床情報を集積しておりまして、次世代シークエンス、アレイCGH、パイロシークエンスといったことから、ゲノム・エピゲノムの解析を進めており、2021年度におきましては、一番上のポツでございますけれども、ZNF445機能低下型変異が、重度成長障害を伴うMultilocus imprinting disturbanceの原因であることを発見し、その発症メカニズムを解明いたしました。これについて私どもはかなり重要な発見というように理解しておりまして、エピゲノムとゲノムが関連しているということを世界で初めて示した例ではないかというように自負しております。
 2ポツ目は、Schimke immune-osseous dysplasiaを招く片親性ダイソミーの劣性変異顕在化を同定いたしました。3ポツ目が胆道閉鎖症発症における母子間マイクロキメリズムの意義を解明いたしました。これらの発見に続きまして、来年度以降は右側にピンクの背景で3つ掲げています。臨床遺伝子診断の社会実装、新規治療・重症化予防法の開発、ゲノムデータベースと国際共同研究への貢献につなげていきたいと考えております。
 9ページを御覧いただけますでしょうか、[3]の成果です。こちらは、医師主導による治験、先天性尿素サイクル異常症に対するHAES移植治療の医師主導治験で、新生児期発症型の患者を対象とした探索的試験です。右側の上に吹出しとして書いておりますが、「ES細胞由来肝細胞を使った初めての人への移植成果を、肝臓の再生医療製品の開発につなげる」というように考えています。
 成果は2021年度の真ん中の列、赤字で大きな字で書いている所を御覧ください。先天代謝異常症の新生児期発症型患者に対し、ヒト胚性幹細胞を用いて細胞治療を実施し、医師主導治験を完遂いたしました。治験完遂に伴いまして、全ての患者のフォローアップに向けた臨床研究を開始し、製品の安全性と有効性を評価しているところです。いずれの患者も高アンモニア血症による神経障害の症状もなく、経過良好でございます。2021年度におきましては、右下に赤く四角く囲んでありますが、5例中2例を治験として行って完遂したところです。今後は国内コンソーシアムを構築いたしまして、産官学患の連携を強化することで、再生医療全体の戦略的発展に貢献してまいりたいと考えております。まずは評価項目1-1に係る説明をいたしました。

○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 続いて評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備ということで、12ページになります。重要度は「高」とさせていただきました。自己評価はSとさせていただいております。中長期目標の内容といたしまして、6つ書いてありまして、First in humanの件数、それから医師主導件数、先進医療の承認件数、臨床研究の件数、治験の件数、学会等が作成する診療ガイドライン等の採用件数等を設定しております。
 指標の達成状況ですが、ただいまの中長期目標のほかに、毎年の目標も設定をしておりまして、数値としてはおおむね100%から200%を超えるものもあります。0%については、中長期目標期間中にいくつか実施することになっておりまして、今年度以降実施されていくと認識しております。
 それでは、具体的に自己評価Sとなった根拠について、16ページから御説明させていただきます。まず、小児医療情報収集システムによるリアルワールドデータ(RWD)収集・利活用基盤整備です。こちらは平成24年度から実施予定でして、令和3年度末時点で小児医療施設が11、クリニックなどの施設が31とネットワークを作っています。小児領域において日本最大級となる電子カルテデータとして、約71万人分のカルテデータ、それから問診データとして、8万人以上のデータを蓄積したものであり、例えばMIDネットと比較してもMIDネットでは20歳未満が約15万人分となっておりますので、それを大きく上回るデータ数となります。
 令和3年度は、問診データについて参加クリニックの受診予約システムと連動させるように改修作業を行いまして、これにより予約受診する全患者の電子カルテデータが入手可能となり、入力率も昨年度に比べて40%向上しています。また、令和3年度には独自開発した傾向スコアマッチングツールを用いることで、解析工程の高度化等を行い、データの利活用実績の蓄積が加速しております。解析案件数は前年度比67%増加しました。
 さらに、医療現場で注目されております医薬品8品目の使用実態調査を行いまして、厚生労働省医薬品安全課と共有するとともに、当センターホームページに記載することにより小児医薬品の安全対策及び適正使用に貢献しています。なお、今年度以降この成績を基にして、添付文書に記載することの検討も開始する形になりました。アカデミア研究者によって、学術研究目的でこのデータの利用を開始したことは、非常に大きな成果であり、今後の臨床データの有効利用に大きく貢献できたと考えております。
 続いて17ページですが、バクタ小型錠の開発についてです。バクタ配合錠は真ん中の右側に写真がありますように、直径約11mm厚さは5mmと非常に大きな錠剤で、しかし子供たちにとっては大切な医薬品であり、その上に記載していますように、移植後の免疫抑制剤や抗がん剤投与に起因する肺炎の治療及び発症抑制には欠かせない医薬品となっております。しかし、錠剤は御説明したように大きすぎる、あるいは顆粒剤もありますがかさ高さ、それから苦味などによって患者が非常に苦労をすることになります。左側に例を記載しておりますが、既に亡くなった患者も、この服薬に非常に辛い思いをしたことがつづられております。これらのことを解決するために、2019年から企業と共同で開発することを進めており、令和3年度は企業と共同で製剤特許を提出することができました。そして、その年の8月には承認取得を得られて、更に小型錠の受容性に関する臨床研究も同時に進め、このデータは国際的枠組みにおける小型錠の受容性に関する臨床研究として使用していくところです。
 次に18ページですが、タクロリムスの不妊治療に対する特定臨床研究の先進医療申請についてです。本剤については既存の治療方法に挙児が得られなかった中に母体の免疫異常の原因である患者が含まれておりまして、タクロリムス投与によって、不妊治療につながる可能性があることで、数年来研究者とともに開発を進めてまいりましたが、毒性データあるいは、先発企業等との話合いがつかず頓挫しておりました。ここにおいて、前政権の中で不妊治療に対する実態調査研究が実施され、本剤の使用頻度が高いということから、生殖医療ガイドラインにおいて、推奨レベルCと指定されています。推奨レベルCは使用頻度が高いもののエビデンス不足であると判断されたものであり、至急に臨床データが必要とされました。
 そこで、非常に年度も迫ったところでしたけれども、残りの期間で先進医療への申請の資料作りを始めました。更に先進医療を実施するための研究費、この獲得のためにAMEDに申請するためのデータを揃え、更に学会との協力もあり、約2か月の期間ではありましたけれども、これらの作業を完了することができ、無事、年度末に先進医療に申請をする結果となりました。今年度ですが、5月には先進医療として承認され、8月に告示を受けるという予定で進めています。以上1-2について、御説明を終了いたします。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。非常に詳しく御説明いただきましたので理解が進んだところかと思いますが、今、御説明いただいた内容について質疑応答に入りたいと思います。評価者の皆様方、手が挙がりましたね。では、順番に指名いたします。花井先生からよろしくお願いいたします。

○花井委員
 御説明ありがとうございます。特に、私どもは希少疾病の患者さんが常に難民化して、診断まで10年かかった、20年かかったなどの話は枚挙にいとまがない中で、このように未診断例を同定されているというところに、かなり感銘を受けました。実際問題として1つ、いわゆるエピゲノミックのことも含めて、ゲノムで世界で初めて同定されたという例を御紹介いただきましたが、この中で、ある意味、世界で初めて疾病として特定できたものと、医療体制の中で専門家が余り少ないので、迷子になった方が成育に来られた例があると思います。その比率はどのような感じで理解すればよろしいのでしょうか。

○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 ありがとうございます。私、梅澤からお答えいたします。まず、前半の部分において、現在、国内外の医療機関から令和3年度、当該年度は約500の臨床検体を集積し、現在、非常に技術が上がっており、アレイCGH、次世代シークエンサー、パイロシークエンサーといったもので、ゲノム・エピゲノムの解析を行っていく工程で、今、御質問いただきましたような新しい遺伝子を同定することができました。
 新しい遺伝子を同定することもとても大事なことですが、同時に、今、御質問いただきましたように、全国の御診断されていない方に対して、そのような検体ないしは、小児科の先生方、医師の方々が相談する窓口のようなものがきちんとできてきたかなと、私ども国立成育医療研究センターに頼めば、何らかの形で診断してくれるといったことが認められたのかなと思い、非常に嬉しく思っております。
 後半の御質問に関しては、本日、御紹介した4つのうち3つは、病気は分かっているが新しい遺伝子として遺伝子を同定できた例です。また同時に、病気の概念としてどうかといったようなところで1つだけ例を挙げますと、8ページを御覧ください。難しくて申し訳ございません。ZNF445と書いてありますのは、病院の中ではテンプル症候群といった形で診断、又はここに書いてありますMultilocus imprinting disturbanceといった診断を受けた患者さんです。もともとはエピゲノムの病気ではないかという診断がされておりました。
 今回、国立成育医療研究センターのチームが解析したところ、このエピゲノムとともに、ゲノム上の新しいZNF445という遺伝子に変異があることが分かり、これは、従来、エピゲノムと言われていた疾患がゲノムの病気としても理解することができるといったような形で、新しい疾患といった概念、疾患メカニズムの概念が明らかにできたのではないかと自負しているところです。お答えになりましたでしょうか。

○花井委員
 ありがとうございました。よく分かりました。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、深見先生よろしくお願いします。

○深見委員
 同じところで質問しようとしていたので、少し重複するところがあると思いますが、304症例で122、約40%ということで、とても素晴らしいと思うのですが、これは急に高くなったのですか。それとも昨年度、それとも徐々に次世代シークエンス等々の発展に伴って近年伸びてきているのかというのが1点です。
 もう1つは、エピゲノムと全ゲノムと両方関係しているようなニュアンスもあるのですが、基本的にこの解明に当たり、一番貢献できた解析方法というのはエピゲノム解析と考えて良いのかということです。もう1つは、単一遺伝子で説明がついている疾患だったのかということを教えていただきたいと思います。以上です。

○国立成育医療研究センター松原理事
 では、私、理事の松原からお答えいたします。まず、診断率についてです。IRUD-Pの未診断疾患イニシアチブは2015年に始まりました。初期の診断率は30%で、それが現在40%ぐらいまでに伸びてきております。この理由としては2つあります。1つは、次世代シークエンスを用いたエクソームを中心にやっております。そのパイプラインがどんどん整備されてきたということ。発展率が上がってきたということが1つです。
 もう1つは、今、世界的にこのようなプロジェクトが進んでおり、どんどんデータベースが充実しております。数年前は世界中のどこにも登録されていなかった疾患が、例えば、去年アメリカで、あるいはヨーロッパで見つかったというようなことで、データベースが充実してきておりますので、そこで照合することにより診断率が上がってきているということで現在40%です。今後は、徐々に上がっていくことが考えられると思います。
 それから、エピゲノム解析、ゲノム解析ですが、これは車の両輪のようなもので、基本的には、やはりゲノム解析が中心として動いておりますが、実際は、国がやっているものもゲノム解析のほうが中心ですが、エピゲノムを組み合わせないとゲノムだけでは分からないこともありますので、逆に、エピゲノムだけやっていても肝心のゲノムが分からないと解明はできませんので、2つとも両輪のように重要だと考えております。

○国立成育医療研究センター深見研究副所長
 3番目は、深見からお答えいたします。単一遺伝子治療が多いですかという御質問を頂きましたが、確かに、単一遺伝子治療が多いです。一方では、染色体微細構造異常、あるいは幾つかの遺伝子が重なった症状でのオリゴジェニックリソーダもかなり見つかってきておりますので、そういった意味で様々な発症原因が分かってきたと考えております。

○深見委員
 ありがとうございました。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、順次、御質問を頂きます。中野先生よろしくお願いします。

○中野委員
 中野です。素晴らしい研究成果の御報告をありがとうございます。私もIRUDについて御質問いたします。診断率が30%から40%に、この5年少しで上昇したことと関係するのかもしれませんが、解析を始めてから、検体を受け取ってから結果が出るまで、長くかかるものから短期間で分かるものまであると思いますが、どれぐらいかかっておられるか御教示いただきたいです。解析を始めてから診断までの期間も、この数年間で短縮してきているなど、そういったことも見られるのでしょうか。是非、御教示いただければと思います。

○国立成育医療研究センター松原理事
 では、松原からお答えいたします。解析期間ですが、IRUDも当初は、その辺りのターンアラウンドタイムにはっきりした規定がなかったので、結構、何年もお待たせすることがございました。これは解析がなかなか見つからないということもあったのですが、それでは臨床の場では困るということで、今では、6か月を目処に、必ず結果としてはこの時点でお返ししています。ただ、分かりませんでしたというのも1つの結果ですので、現時点では分かりませんでしたということで、制度としては6か月で取りあえずは報告させていただくことにしております。
 ただ、IRUDについては、ほかの診断拠点もいろいろあります。余りそういったことを守らないで、何年も放置しているセンターがあることも事実ですので、そういったところでは、臨床の様々な点でも御迷惑をお掛けしていることがあるかとは思います。
 それから、期間は短縮してきているかということですが、全般としてはかなり短縮してきております。1つには、私どもパイプラインがどんどん改良されてきたこともあり、それから、インフォマティックスの分野がかなり進んできて、ただのコンピューター解析だけではなく、かなり慣れてきましたので、少しずつではありますがターンアラウンドタイムは短くなってきております。

○中野委員
 ありがとうございます。臨床の現場としては本当に頼りになる研究成果ですので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、前村先生よろしくお願いします。

○前村委員
 前村です。ナショナルセンターならではの素晴らしい成果を出されて感服いたしました。9ページについて御質問いたします。昨年も類似の質問をしたのですが、ES細胞を用いた再生医療が実用化されているのは非常に素晴らしいと思いました。一方で、次のステップとしては、この入れたES細胞が永続的に機能して移植の必要がないステップにいけば、素晴らしいかと思います。この図を見ますと、肝移植を行った時期に3か月から6か月程度のばらつきがありますが、これは入れたES細胞の機能が落ちてきたので肝移植を早めにやったということでしょうか。それと関係なく、患者自体の体力が出たところで肝移植を行ったのでしょうか。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 ありがとうございます。病院長の笠原がお答えいたします。患者さんの選定条件は全て代謝性肝疾患です。一般的に肝臓移植は体重が6kgを超えますと安全に行えると言われております。今回は治験のエンドポイントが、臓器移植をして神経医学的な後遺症を残さず、元気にお子さんを正常な肝機能及び免疫抑制剤を飲みながら、高アンモニア血症等の脳症を起こさずに診ていけるところにエンドポイントを置いておりますので、今回の患者さんたちは体重が6kgになり次第、臓器移植を行っております。今後、先生がおっしゃるとおり、ES細胞を用いて永続的に酵素を発現して臓器移植がいらなくなる、そんな将来が待っていれば大変嬉しいと考えております。どうもありがとうございます。

○前村委員
 この移植をする直前は、入れたES細胞は機能していたのでしょうか。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 当然、内科治療を継続しながら診ている案件ですが、我々の解析では摘出した肝臓の中にES細胞由来の肝細胞がファンクションしている事実を突き止めておりますので、今後、論文で発表していきたいと思います。どうもありがとうございます。

○前村委員
 はい。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは続いて、土岐先生よろしくお願いします。

○土岐部会長代理
 私もIRUDのことで質問があります。いわゆる治療ですが、がんゲノムでも遺伝子の変異というのは、大体、がんでも決まっているので、どこかでプラトーに達するのですが、一方、治療の情報が非常な勢いで変化して進んでいくのですが、例えば、これらの治験等の情報を収集する、患者さんに紹介するなど、そういった試みはあるのでしょうか。

○国立成育医療研究センター松原理事
 松原からお答えします。もちろん、この治験等に関しては、私たちも非常に情報収集に努めております。大体、我が国最初の治験が成育になることが多いので、そういった最新の情報はいち早く患者さんに伝えるようにしております。ただ、IRUDに関しては、成育の中の患者さんの検体もあるのですが、むしろ外部から、全国各地の拠点病院の先生からいろいろ検体を頂くことも数として多いので、基本的には患者さんの治療に関しては、拠点病院の先生方にお任せしているのが現状です。以上です。

○土岐部会長代理
 そのIRUDのレポートには、治験情報は入ってこないということなのですね。

○国立成育医療研究センター松原理事
 レポートそのものには書いておりません。レポートそのものは、地方で厳しくフォーマットも決められておりますので、余りそういったことまでは書き込んではおりませんが、結果をお伝えするときに、そういったことも併せてお伝えする場合もございます。ただ、レポートそのものには書き込んではおりません。

○土岐部会長代理
 でも、患者さんにとっては、本当に喉から手が出るような欲しい情報だと思いますので、是非、御検討をよろしくお願いします。もう1つ、薬剤のデータベースを作っておられるとのことですが、製薬企業は小児に特化した事業に関して余り積極的ではないのでしょうか。16ページのこういったものに関して、製薬企業は小児のデータベースに関して、余り積極的に乗ってきてくれないということなのでしょうか。

○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 ありがとうございます。臨床研究センターの斉藤から御回答いたします。PMSについては、小児あるいは大人に関係なく厚生労働省は指定しておりますので、積極的に受託研究等を含め、製販後調査は我々も受け入れているところです。こういったデータベース作成に関しては、データベース作成後の利用性でいきますと、治験の数あるいは開発品目数等がなかなか商業ベースに乗らないところもあり、企業は大人ほど積極的ではないと理解をしております。以上です。

○土岐部会長代理
 そういう意味では非常に意義が大きいと思いますので、是非、続けていただければと思います。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。それでは、私から1つ、2つ御質問をお願いします。今のIRUDは私も大変素晴らしいと思い、これがどんどん進化していくといいなと思いました。まず、クイッククエスチョンですが、IRUDの御説明の中で、構造変異といいますか、ロングリードで分かる変異が少しあったようにお聞きしたのですが、全体の中でこのような、例えば、繰り返し配列、エクスパンションなど、そのような構造的なものがどれぐらい入っておりましたでしょうか。教えていただけると有り難いというのが1点です。まず、これをお願いします。

○国立成育医療研究センター松原理事
 松原がお答えします。何%かというのはすぐには分かりませんが、結構、見られることがあります。それは、むしろ繰り返し配列の異常というのは、特に、成人領域の神経疾患では非常に大きなものですが、小児領域では、むしろ、そういったものよりも染色体異常に重ねてみて、一見、普通のGバンドの染色体ではごくごく単純な点だというふうに思っているのか、ロングリードで持ってみると、実は、もっともっと複雑な3つの染色体の転座が重なっていて、それが構造異常につながっていることも経験しております。

○祖父江部会長
 なるほど。その点、成人とは少し違いますね。その構造異常の在り方自体が。

○国立成育医療研究センター松原理事
 疾患として出てくる、臨床症例として出てくる出方がどうしても違いますので。

○祖父江部会長
 なるほど。分かりました。ありがとうございます。もう1点ですが、これもIRUDに関連することになるかもしれませんが、先ほども治療という点の話が少し出ていたと思いますが、最近はこのようなゲノムを明らかにすることにより、例えば、SMAという病気だと、非常に早期に介入していくと発症を予防できる、そのようなフェーズに入ってきている疾患もボツボツ出かかっているというような状況になりつつあると思うのですが、発達時期の遺伝子変異による疾患の介入や治療、あるいは予防というような観点の見方というのはいかがでしょうか。今後のフェーズに入ってからの話になるとは思いますが、一部の疾患では実際に行われ始めているので、その辺の考え方はどのようなものでしょうか。少し教えていただけると有り難いと思いました。

○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 梅澤からお答えします。先ほどトリプレットリピートの話もありましたが、実際、ロングリードでは、私どもがやっている中では、大体、ロングリードにかけるのは10%と御理解ください。

○祖父江部会長
 そうですか。

○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 10%程度です。その理由としては、トリプレットを見る、エクスパンションを見るというよりも松原先生が言われたように、分かりづらいところを確認するためにやっていると。短いと、どうしても似た配列がありますので、ゲノム情報に当たらないところです。SMAの患者さんで早期介入することで、治療結果がどんどん良くなっているというのは、ゾルゲンスマに関しては、後に病院からも御説明があるかと思います。やはり、新規の遺伝子が分かりますと、例えば、ある種の遺伝子に変異がありますと、既存薬の中で使えるものが見つかってきております。

○祖父江部会長
 なるほど。

○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 こういった場合、保険診療ではありませんので、実際に臨床研究といったような形で治療してみると効くことがあるということです。ですので、今現在、化成品、低分子の薬のメカニズムがはっきりしている場合は、積極的に遺伝子診断とその後の治療に介入することを、臨床研究というフレームで進めていると御理解いただければと存じます。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。是非、その面も進めていただけると有り難いと思っております。どうぞよろしくお願いします。少し時間が延びていますかね。ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。もし、よろしければ、1-1、1-2はこれで終わり、次のセッションに移りたいと思います。また後で、いつものように振り返りの質問等を受け付ける時間がございますので、そこで御質問があれば、よろしくお願いいたします。
 それでは、次に、1-3から1-5の医療の提供と、その他の業務の質の向上に関する事項の御説明、時間は今と同じで、説明が20分、質疑が18分となっております。若干、手際よく御説明いただけると有り難いと思います。まず、法人から御説明をよろしくお願いいたします。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 よろしくお願いいたします。病院長の笠原が説明させていただきます。資料の19ページを御覧ください。自己評価はSとさせていただきました。
 中長期目標の内容ですが、周産期・小児医療において、医療機関と連携し、高度医療を確実に皆様に提供する。合併妊娠症への対応の充実、出生前診断等の推進等に取り組むこと及び小児臓器移植の一層の充実を目指すこと。医療事故防止、感染管理等医療安全に努め、医療安全の管理体制の充実を図ることとさせていただいております。
 指標の達成状況を御覧ください。小児難治性疾患に対する遺伝子治療、小児がん診療新規治療レジメンの開発、肝移植、心移植、医療安全管理委員会、医療安全及び感染に関する研修会、年間病床利用率、年間平均在院日数、1日平均入院患者数、ともに達成されております。今年度、コロナ禍で月平均の手術件数だけ93.1%と、若干の低下がございました。
 それでは、21ページの要因の分析及び評定の根拠です。22ページのパワーポイントの資料を御覧ください。国立成育医療研究センターでは開院以来、国内最多の小児の肝臓、腎臓、小腸移植を、現在まで850例実施してまいりました。2020年2月に、11歳未満の小児心臓移植施設に認定されました。資料の右手に示すとおり、これは小児専門施設では、本邦最初の唯一の認定施設です。そして、2021年8月に第1例目の小児の心臓移植を実施しました。この患者は心臓移植後無事に退院しまして、現在も元気に外来を御利用しております。本邦では2021年8月までに、延べ60件の小児の心臓移植が実施されていますが、東日本では18例(30%)しか行われていません。そのため、現状では小児心臓移植患者が東日本だけではなく、関東から主に大阪の施設に搬送されております。重症な心不全のために、心臓移植を実施する必要があります。EXCORという補助人工心臓を使用し、長期入院している患者は、国立成育医療研究センターの一般病棟に現在4名いらっしゃいます。しかし、特に新型コロナ禍で臓器提供自体が減っております。心臓移植の件数を増加させるために何ができるか、今現在、模索している最中でございます。
 次のページを御覧ください。先天性の重症大動脈弁狭窄症に対して、国内初の胎児治療を実施いたしました。胎児の重症大動脈弁狭窄症は、左心室から大動脈へ血液を送る弁が非常に狭いため、左心室に過度な負荷がかかり、体内で右心室の発育が障害される先天性の心臓の病気です。出生1万人に3.5人と、非常に稀な疾患ですが、右心室が小さくなる左心低形成症候群になり、左心室が機能しないため、生後何回も大きな心臓の手術が必要になり、生死にかかわる病気です。
 今回は妊娠25週に行われた胎児治療で、母体の腹壁から針を刺して、胎児の心臓の狭くなった大動脈弁を広げる手術です。体内で胎児の左心室の発達を促す治療で、2021年7月に、日本で初めて施行した胎児治療です。今後臨床試験が進み、治療法として確立していきたいと考えております。生後の治療では手遅れとなる病気を体内で治療する胎児治療は、今後大いに期待される分野です。
 スライドの24ページを御覧ください。新しい検査法を発見、食物アレルギーの診断、経口免疫療法の効果判定に有用。食物アレルギー患者の増加は21世紀のエピデミックとして、世界的に問題となっております。食物アレルギー症状を誘発する抗原食物の量は、この閾値は個々の患者によって大いに異なります。血液によるアレルギー抗体検査では、閾値を正確に把握できないため、患者に段階的に抗原食物を摂取させ、症状を誘発する閾値を確認する経口食物負荷試験が必要です。
 しかし、この試験にはアナフィラキシー等のリスクを伴うという課題がございます。治療として抗原食物を少量から食べ始め、計画的に増量していく経口免疫療法が行われていますが、体調の悪化や運動刺激などで閾値が変動し、許容量を超えるとアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があることから、病院では負荷試験で測定した閾値だけでなく、日常生活において安全な摂取可能閾値の算出方法の確立を検討しております。
 アレルギーセンターでは、これまで東京大学大学院農学生命科学研究科との共同研究により、患者の尿中に排泄されるプロスタグランジンD2の代謝産物のPGDMが食物アレルギー患者において、食物摂取でアレルギー反応が誘発された場合に、摂取4時間後に尿中濃度が上昇することを発見いたしました。すなわち、尿中のPGDMが食物アレルギーによる生体反応を検出できる有用なバイオマーカーである可能性を見出しました。
 また、鶏卵アレルギー治療のために自宅で経口免疫療法を行っている子供を対象に、自宅での食後の尿を採取し、尿中のPDGMの濃度を測定いたしました。その結果、経口免疫療法が成功し、治療を確認する経口摂取タンパク試験で、目標摂取量を無症状で摂取できるようになった患者は、経口免疫療法中の尿中PGDM濃度が低く、摂取前と差がありませんでした。これにより、閾値よりも十分低い量で抗原食物の摂取を完全に安全に続けることが、経口免疫療法を成功させるために重要なキーであることを発見いたしました。
 26ページのスライドを御覧ください。当センターの職員で学会の評議員等の役職に就いている人数は200名に上り、また、理事長相当職に就任している職員は8名と、日本の医学及び医療の水準の向上に寄与してまいりました。また、当センターから大学教授へ就任する職員も多く、2021年6月にも、1名大学教授に就任しております。小児専攻医の論文発表数は2021年度において、総数31、英文数20となっております。過去10年と比較して最多となっております。小児科学会一般演題口演については、2021年度の口演数は28、口演総数に占める当センターの割合は6.7%と高い割合で推移しております。2021年度のレジデント・フェローは、病院では内科系が和文20、英文44と最多となっております。原著論文は、全体の論文数は令和2年435、令和3年は488と、50編ほど多くなっております。
 次のスライドを御覧ください。小児治験ネットワークは、小児での開発を推進させることを目的としまして、一般社団法人小児総合医療施設協議会(JACHRI)の加盟施設を中心に平成22年に設立されました。現在では、大学病院国立病院機構など、全国55施設が加盟いたしまして、加盟施設の小児病床数を合算すると6,850床となり、国内唯一の小児領域に特化した全国規模の治験ネットワークです。小児治験ネットワークでは、令和3年度末までに全86課題の企業治験を実施しています。更に治験ネットワークを介して実施した治験データも、エビデンスとして使用され、23品目に製造販売承認を取得しております。
 平成17年に厚生労働省の事業として開設された妊娠と薬情報センターは、妊娠中の薬剤の安全性に関する情報提供と相談症例を基にしたエビデンスの創出を目的としております。令和3年度は高度推進事業の取組に大きなエフォートを割きました。この事業によって、令和4年から相談希望者がオンラインで申込みができるようになりました。また、妊娠と薬外来を設置する全国の拠点病院が、妊娠と薬情報センターの安全性の情報データベースを即座にアクセスできることで、申込みからカウンセリングまでのタイムラグが短縮されるようになっております。
 研究面では症例データベースを用いて、特定薬剤の催奇形性の解析を行うとともに、授乳中の薬物濃度測定を行い、これらの成果を論文化いたしました。また、新型コロナ感染症、妊婦などの登録研究の推進も図っております。
 研究班の仕事として、一般女性や医療者への当該分野への啓発のために、資材を作成しました。社会貢献としては、新型コロナ治療薬の妊娠中の安全性に関する情報をホームページ上で逐一発信を行っております。また、不妊治療薬の保険収載に当たり、これまで相談症例の妊娠転帰を集計しまして、厚生労働省に提供しております。
 次のスライドを御覧ください。コロナ感染症における小児と周産期医療への貢献です。小児・周産期においても、COVID-19の診療においては、小児医療の最後の砦として様々な対策を行ってきました。新興感染症に対して以前行った訓練や事業継続計画の経験をいかしながら、新型コロナウイルス感染症への体制整備を速やかに実行してまいりました。東京都からの診療要請に対応するため、36床の病床を新型コロナウイルス専用の病棟として活用し、更にNICUで1床、小児ICUで1床、産科病棟2床でも、新型コロナウイルス感染症を受け入れてまいりました。令和3年度の入院総数は、新型コロナウイルス感染症確定の小児患者が334例、妊婦の患者が62例です。新型コロナウイルス感染疑いの患者は、小児が79例、妊婦が4例でした。成人に対する新型コロナウイルスワクチンの接種の普及に伴い、相対的に小児の新型コロナウイルス感染者が増加してきました。
 当施設では、新型コロナウイルスワクチンが12歳以上、更には5歳から11歳の小児に対して、承認後、重篤な基礎疾患のある患者を対象に新型コロナウイルスワクチン接種を推進してきました。世界的に見ても、この患者群の新型コロナウイルスワクチンに関するデータが乏しいため、ワクチンの安全性や血清抗体化を測定し、有効性などの前方視的な評価を実施してまいりました。
 小児・周産期医療機関であるために、入院患者の面会制限は原則行わず、面会時間の制限のみで対応してきました。新型コロナウイルスが社会に蔓延する中、院内クラスターを抑えつつ、診療制限を最小限としまして、当施設の使命である高度先進医療の提供を継続してきました。大学病院等で新型コロナウイルスの成人患者の診療に追われ、新型コロナウイルス感染症ではない小児の重症患者の管理が困難となった際の受入先として、役割を担っております。新型コロナウイルス感染症の流行時には、小児救急の最後の砦となり、世田谷区だけでなく、東京23区の小児患者をカバーしまして、都外からの患者の受入要請にも応じてきました。小児・周産期の重点拠点として、新型コロナウイルスに関する最新、的確、多面的な情報を、広報を通して患者やその家族に対して提供し、メディアからの取材要請にも積極的に対応してまいりました。対外的なニーズにも応え、学会の各種ガイドラインや診療マニュアルなどを、委員会のメンバーとして、その作成と答申に寄与してきました。
 新型コロナウイルスに関する研究としては、小児や妊婦における臨床的特徴を明らかにし、世界的に権威のある雑誌の『Clinical Infectious Disease』に掲載されております。
 スライドの真ん中の下に示すのは、国内の小児入院患者のレジストリのまとめです。入院時に症状を認めなかった症例が30%ありまして、社会的入院が多かったという当時の実態を示しています。また、子供の新型コロナウイルスに関する大規模アンケート調査を行いまして、精神的ストレス、スティグマ、学校へ行きたいかどうか、うつ症状に関しても調査を行いました。スライドの右下に示すように、うつになっても誰にも相談できずに様子を見る子供が4割もいるという実態などを明らかにしてきました。以上、病院での活動について、御報告させていただきました。どうもありがとうございます。

○祖父江部会長
 非常に詳しく解説していただいたと思います。質疑応答に入ります。どなたからでも結構ですが、御質問、コメントなどはございませんでしょうか。中野先生からお願いします。

○中野委員
 評価項目の1-3、資料の19ページから20ページまでです。この事項についてお教えいただきたいのですが、多くの指標で十分な達成度を示していると思います。また、例えば手術件数などは、肝臓移植の200件以上の実施は161.8%ですし、第1例目の心臓手術もなされたということで、非常に成果が上がっていると思っております。月平均手術件数だけが100%を僅かに下回っているわけなのですが、これは何か理由があるのでしょうか。それをお聞かせいただければと思います。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 御質問ありがとうございます。こちらは、コロナによる手術の制限等で、一時的に手術件数が減ったことによります。生命を脅かすような手術を優先したことにより、手術件数の低下が見られたということです。

○中野委員
 理解できました。

○土岐部会長代理
 23ページの胎児手術についてですが、胎児手術のメリットと言うか、可塑性が胎児のほうがよいのかとか、なぜ胎児期にやるメリットが大きいのか。これにかかわらず、いろいろな胎児手術があるのですが、そのメリットは何なのでしょうか。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 いろいろな胎児手術があると思います。横隔膜ヘルニアもそうですし、先天性の心疾患もそうです。しかしながら、お子さんたちは体外に生まれてしまうと大変重篤な状況に陥ってしまうわけです。体内で発達の途中、発育の途中に治療に介入することで、生まれてすぐに手術が必要、あるいは何段階もの治療が必要というステップがより軽減化され、患者の重篤度が胎児治療によって軽減されることを目的としております。

○土岐部会長代理
 ありがとうございました。

○前村委員
 22ページの心移植のことに関してお伺いしたいと思います。1例目の心移植をされたということで、全国で小児の心移植は60例ぐらいということを伺いました。従来は渡航移植がほとんどだったと思うのですが、最近の渡航移植は年間何例ぐらいで、国内で何例ぐらいの移植がされているかということと、先ほど補助人工心臓を4例入れて待機しているとおっしゃっていたのですが、これは全部体外式の補助人工心臓なのでしょうか。そうすると、今、小児で体外式を入れて、どれぐらいの待機期間になっているのかを教えていただければと思います。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 最初の御質問からお答えさせていただきます。今現在、小児においては臓器提供が少ないです。心臓の移植は生体の移植ができませんので、少なからぬ数の患者は海外渡航での移植を受けています。数は実態調査が行われておりますが、年間ほぼ10例以内というように報告されています。
 2つ目の御質問についてです。今現在使っているのは、EXCORと言いまして、体内に埋め込み型の人工心臓が4台回っているわけです。こちらは、今現在6名の患者が、脳死の心臓の移植を待機されているのが現状で、そのうち4名に埋め込み型の人工心臓が入っているのが現状です。こちらの患者の方、小児の臓器の提供が大変少ないので、待機期間は一般的には約1年から1年半ということが心臓では言われております。

○前村委員
 埋め込み型ということですと、外来で待機できているのですね。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 全員入院でやっております。

○前村委員
 入院なのですね。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 いかがでしょうか。ほかにはございませんでしょうか。

○深見委員
 24ページの食物アレルギーの診断にプロスタグランジンD2を使うというものなのですが、侵襲性もなくて、こういうもので判断できるのはいいなと思うのですが、有意差のところのグラフを見てみるとばらつきも大きくて、プロスタグランジンD2だけの判断だと、少し判断が難しいことも多いのではないかなと考えるのですが、同様のマーカーとの組合せなどで信頼性を増すとか、そういうことはできないのでしょうか。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 御指摘ありがとうございます。おっしゃるとおり、尿中のPGDMだけで食物アレルギーの効果及びアレルギーの程度を判断するのは、大変難しいと思います。しかしながら、食物アレルギーの患者、特に小児は大変エピデミックで、世界的にも、日本でも患者数が大変多くなっておりますので、今現在は東京大学大学院の農学生命科学研究科と共同研究をしまして、これ以外のバイオマーカーがないか、あるいは食物負荷試験自体をもう少し違った形でできないかということをアレルギーセンターで検討している最中です。

○深見委員
 ありがとうございました。

○土岐部会長代理
 人材育成に関してなのですが、先日も、がんセンターの松本先生が子ども療養支援士のような、患者支援する職種が小児の領域では足りていないということをおっしゃっていましたが、そういう医師以外の患者サポートをするような職種の人材育成というのは、現在進んでいるのでしょうか。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 小児がんだけではなく、多方面にわたって、子供及び病んだ子供を持つ親に対する支援をする職種の方々が、大変大切になってきます。今現在、病院ではChild Life Specialistが4名、保育士28名、Facility Dogのマサというのが正職員でおりまして、職員カードも持っております。そういったいろいろな多職種で患者を支えるように、皆で努力しているところです。
 院内の教育に関しては、各部署で、それぞれ勉強会等を定期的に開いて、横のつながり、縦のつながりを大切に、職員の教育を行っているところです。

○土岐部会長代理
 よろしくお願いします。

○深見委員
 お子さんの病気のときに、家族を支援するような施設というのがあったと思うのですが、そういうものはコロナの影響を受けて、これまでのように活動できたのでしょうか。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 我々の施設では第2の家、お子さんたちと御家族がお家のように過ごせる、そしてケアも提供できる、「もみじの家」というものを併設しております。11床のベッドがございますが、コロナ禍で平均の病床利用率は5床から6床でしたが、今現在、第7波ですが、大分患者が戻ってきまして、病床の運用が8床から9床ぐらいまで戻ってきている最中です。これから更にケアが必要なお子さん及びその御両親たちをサポートできるように邁進していきたいと思います。

○深見委員
 ありがとうございました。

○祖父江部会長
 私からお聞きいたします。いろいろな新しい試みもうまくいっているようで、非常にいい感触を得ました。
 これは前も出されておられて、いいシステムだなと思ったのですが、小児の治験のネットワークというのがありまして、これは希少疾患などを全国ネットで集めて治験をやろうというときには、非常に有効に働くのではないかと思っておりましたし、今回拝見すると、だんだん数も増えてきて、ネットワークの病床数も相当たくさんになってきているのですが、具体的に治験をやるに当たって、どのように運営されているのでしょうか。患者の疾患についての現状情報のようなものを、どこか先生方の所で集約して、データ化して、いつもモニタリングしているような状態を作っているのか、あるいはその場で「この指止まれ」ということで集まってきていただいているのか、全体のマネジメントはどのような形になっているのでしょうか。

○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 まず、ネットワークが扱っている治験については、基本的に企業からの打診による企業治験です。企業治験の場合は、ネットワークに参加しているどの施設がこの治験に対応できるかという調査をしてほしいという依頼がありますので、まずその調査をかけまして、参加可能な施設に手を挙げていただきます。その手を挙げた施設に対しては、企業が直接交渉に出掛けて、その施設で実施するかどうかということを企業側が選択いたします。
 これまでは多施設、それこそ2桁の施設での治験が多かったのですが、最近は経費の問題等がありまして、大体1試験で3、4施設というのが平均になってきました。それに伴って症例数も、PMDAの努力もあると思うのですが、これまで2桁必要だとしていたものが1桁になるという試験もありますので、1施設平均、希少疾病ですと当院でも1から2症例、2から3施設ぐらいということで、全体で5症例ぐらいあれば、希少疾病については承認が得られる可能性があるというような状況です。

○祖父江部会長
 ここに書いてありますが、人材育成との組合せは、例えばCRCの養成とか施設の連携というようなことがうたってあるのですが、そういうものも一部共有しながら運営されているという側面もあるのですか。

○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 左様でございます。CRCの教育に関してはCRCの教育をする部門を作りまして、座学と実地の研修を実施しております。現在はコロナ禍ですので、Webによる座学だけで行っておりますが、従来は実地までを含めています。ただ、実地に対応できる施設がそう多くありませんので、成育医療センターをはじめ、大阪母子、都立小児、神奈川子どもぐらいの施設に対応していただいて、実地の研修を実施しています。
 先ほどJACHRIという一般社団法人が出てきましたが、こちらの理事長から修了証が手渡されることになっております。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。非常によく分かりましたし、参考になる話だと思いました。もう少し時間がございますが、いかがでしょうか。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 1点訂正させていただきたいのですが、よろしいでしょうか。

○祖父江部会長
 どうぞ。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 補助人工心臓ですが、EXCORですので、体外です。申し訳ございません。

○祖父江部会長
 もう1つだけ私からお聞きします。人材育成のところで企業との人材交流と言うか、後でまた出てくるのかもしれませんが、企業との連携、あるいは人材交流も含めてなのですが、企業との関係がなかなか見えにくかったのですが、実際にはやられているという理解でよろしいでしょうか。

○国立成育医療研究センター梅澤研究所長
 産業界と研究所並びに病院は、一体となって開発をやるケースが多くあります。どういう形で入っているかと言いますと、実際に国立成育医療研究センターの中にずっといて、一緒に開発を進めるといった形です。
 どのような企業かと言いますと、製薬企業のみならず、様々なバイオ系に関する企業が入ることで、デバイス、生物製剤、化成品、ディッシュ等の表面加工といったものに注力する会社がございまして、主にiPhoneなどの材料を作っている会社が同時にバイオの世界の材料を作っているというようなことで、センターの中に常駐して開発をしているといったところです。

○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 臨床研究センターからも治験等についての会社との関係ですが、先ほどCRCの研修会の話をさせていただきましたが、こちらの研修会は病院職員だけではございません。CRO、SMOという企業が作った、そういった治験の支援組織の職員の参加も認めておりますので、併せて教育をしているという状況もございます。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。企業との関連というのは、ナショナルセンターの全体を通じて非常に重要なテーマになってきておりますので、できればどこかでまとめて御説明いただけるといいなと思います。今のお話は重要な御発言だったと思います。ありがとうございます。
大西先生、よろしくお願いいたします。

○大西委員
 23ページの胎児の手術なのですが、胎児の診断というのは容易にできるものなのですか。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
胎児診断は超音波の機器及びMRの機器が大変優れておりますので、今は以前よりも胎児診療はかなりの高頻度でできるようになっております。

○大西委員
 ありがとうございました。

○祖父江部会長
 ほかにいかがでしょうか。よろしければ、次のテーマに移らせていただきたいと思います。
 次は、2-1から4-1までの広い範囲のテーマで、業務運営の効率化、財務内容の改善、その他業務運営に関する事項です。時間が非常に限られていて全体で14分、説明が8分、質疑応答が6分ということです。手際よく進めていただけると有り難いと思います。先ほどと同様に、まずは法人のほうから御説明をお願いします。

○国立成育医療研究センター北澤企画戦略局長
 よろしくお願いします。企画戦略局長の北澤と申します。よろしくお願いいたします。30ページから36ページまでになります。まず、30ページの評価項目2-1、業務運営の効率化に関する事項になります。自己評価はBとしております。指標の達成状況は表にありますとおり、この中で看護師の離職率、それから専門・認定看護師数、経常収支率、後発医薬品使用数量のシェアについては目標を達成しました。一方、紹介率、逆紹介率につきましては、コロナの影響を受け、また、医療未収金については改善の努力をいたしましたが、結果的には目標には達成しませんでした。
 32ページを御覧ください。まず、医薬品、医療材料等の経費削減になります。医療材料につきましては価格交渉を適切に行い、年間約2,400万円を削減できました。また棚卸資産(診療材料)は院内在庫を所持しない方式、消費払い方式とすることにより、右の図にありますとおり令和3年度は6年前の1割以下まで、在庫を縮減いたしました。
 次に、働き方改革でございます。魅力的で働きやすい職場環境整備に向けまして、施設内保育所の運営、育児短時間勤務制度の実施等に加え、令和3年度は不妊治療の休暇、職員出産費用の割引、また内閣府のベビーシッター利用支援事業を利用した割引制度を新たに導入いたしました。また労務管理、役割分担推進委員会を4回開催し、医師の働き方に関する議論等を行い、勤務医等の業務負担軽減計画を作成し、タスクシフト・タスクシェア・時間外労働の削減に向けた取組を行いました。更に[1]の3つ目の丸です。文書管理の電子化として、1からプログラムを開発するのではなく、より安価で職員が対応可能なローコードプラットフォームを利用したアプリケーション開発を行いました。これが、年間約1,700件ありますが、院内書類の申請の電子決裁化の運用を進めました。医師の具体的な業務軽減策としては、医師事務作業補助者を増員し、26名配置したほか、臨床工学技士の夜勤・宿日直を開始し、医療機器緊急対応を開始し、医師の業務縮減方策を進めました。
 続きまして、33ページを御覧ください。評価項目3-1、財務内容の改善に関する事項です。自己評価はBとなります。
 34ページのスライドを御覧ください。まず、[1]の収益の改善です。病院における医療収益の改善に加え、AMED等の競争的研究資金への積極的な申請の促進などにより、令和3年度は17.2億円を獲得いたしました。そのほか治験収益を獲得したほか、承認医療情報収集システムを将来の製薬企業等への提供に向けた体制や枠組みの整備を行いました。寄附につきましては、遺贈における外部金融機関との連携の範囲の拡大を行ったほか、企業に対する寄附獲得に向けた活動を実施いたしました。
 次に、右側の[2]の外部医療機関からの検体検査受託の推進になります。平成31年3月に登録した衛生検査所(衛生検査センター)では、令和3年度に新たに染色体検査の登録変更を申請するとともに、これまでの体細胞遺伝子検査等に加え、生殖細胞系列遺伝子検査の検査室の登録変更届出の準備を行い、受託できる検査の拡大に向けて取り組みました。
 また左下[3]の健全な財務内容では、令和3年度は新型コロナ感染の継続的な流行など、収支悪化要因がございましたが、経営努力等により、グラフにありますように平成28年度以降、6期連続の黒字決算を達成いたしました。
 続きまして、35ページを御覧ください。評価項目4-1、その他の事項になります。自己評価はBとなります。
 36ページを御覧ください。まず[1]のハラスメント対策等の推進になります。コンプライアンスの徹底を図るため、コンプライアンス室におきまして専任の弁護士による様々な法的問題に関するアドバイスの実施や、いわゆるパワハラ法への対応としてハラスメントに対応する規定を見直して、受付窓口の拡充を図るとともに、全職員向けのコンプライアンスニュースの発出など、情報発信やアンケート調査の実施と、その結果の全職員の周知を行いました。また、暴力・迷惑行為等の防止のためのポスターの院内掲示等を実施いたしました。更に、全職員を対象とした情報セキュリティのe-ラーニングの実施や、ファイヤーウォールの最新化の継続等により、情報セキュリティ対策の推進を行いました。
 [2]の広報の推進です。プレスリリースにつきましては、令和3年度は35件を配信し、メディアの露出数は1,940件と、昨年度よりも3割以上増加いたしました。そのほか総合パンフレットや広報誌の発刊、ホームページやソーシャルメディアでの当センターの取組、新着情報、一般の方への有益な情報などを発信いたしました。特に右の図にあります新型コロナウイルスに感染したお子さんが自宅療養される際のポイントにつきましては、令和4年3月には閲覧数が成育の中ではトップになるなど、多くのお子さん、保護者等の皆様方に御覧いただきました。説明は以上となります。どうぞよろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。ちょっと短い時間で申し訳なかったのですが、非常に分かりやすく御説明いただきました。それでは、今の御説明に対しまして御意見、御質問等をよろしくお願いします。根岸先生よろしくお願いします。

○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いいたします。御発表ありがとうございます。32ページの働き方改革についてお尋ねします。医師、看護師の業務負担を軽減するための計画を作成されて、いろいろな取組をされた。その結果、看護師の離職率が低下したとか、それなりの結果が出ているかと思うのですが、この働き方改革は企業にとっても非常に重要な課題となっております。ただ、この新型コロナウイルスの蔓延する中で、働き方改革を進める上では、大変な工夫や努力が求められているのではないかなと私は感じております。
 というのは、結局、感染症の対応でむしろ労働量が増えていった状況だと思うのです。その中で働き方改革を進めなければいけないといった改革が進むときにはメリットはもちろんあると思いますが、逆に現状として何かデメリットとして出てきた課題や問題があれば教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○国立成育医療研究センター金森総務部長
 人事部長の金森と言います。ありがとうございます。働き方改革を進める上で、国でいろいろ法律改正がなされて、それに則ってやる中で、1つは労働時間を正確に計れるのかということが非常に大変でした。これまで労働時間は、どちらかというと自己申告で残業時間を報告されていましたので、逆に過少申告で少なく報告されている方などがいたのではないかということで、それをきちんと計れるようにするために、若干お金を掛けまして、客観的にきちんとした記録が取れるようにする形で、これはまもなく9月から実施されます。全国の医療機関の中で、多分、この客観的に記録を取ることが医師の働き方改革の中では一番大変かなと思います。非常にお金が掛かる話ですが、成育医療研究センターとしては、お金を掛けて導入を進めております。

○根岸委員
 ありがとうございます。一番懸念されるのは、医療への影響が発生していないのかどうかを心配するところなのですが、その辺りはいかがでしょうか。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 どうもありがとうございます。病院長の笠原でございます。先生がおっしゃりますとおり、働き方改革、労働時間の管理といったことで、医療を行う者のモチベーションの低下が一番懸念される事案でございます。ただし、我々成育医療研究センター全職員は、患者さんの喜び、悲しみ、苦しみ、親御さんの喜びと向き合いながら、日々モチベーションを高く、臨床及び研究、業務を行っておりますので、現在コロナ禍で大変な状況で、職員の感染者も増えておりますが、その中でも我々は努力をして、前を向いてワンチームでやっているのが現状です。
 ですので、これから働き方改革で労務時間等の管理が始まってまいりますが、原則、患者さんに向き合って、しっかりお話をして、いい医療を提供していくというところはぶれずに、みんなで向かっていこうと思っております。

○根岸委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、藤川先生お願いします。

○藤川委員
 すみません。3点あります。34ページの遺贈における外部金融機関との連携の推進というのは、ちょっと珍しいなと思いました。これは、効果はいかがなのかを1点お聞きしたいと思います。
 次に、38ページで医業収支差としては令和2年、令和3年がマイナスになっていて、コロナの影響かなと思いますが、多分、補助金等をかなり受け取られていて、その効果もあり、何とか令和2年、令和3年も補助を出しているのかなとは思います。コロナの後にどのように見込んでいるのかという辺りについて、お聞かせいただきたいと思います。
 もう1点は、コロナの前の何年かで、かなり厳しい措置を取られた上で赤字ではなく黒字にしようと、かなり皆さんが御努力をされた感じを受けていましたが、そのままコロナに入ってしまって、疲弊感は並大抵ではないのではないかと思っていますが、その辺りが大変心配なので大丈夫かなということをお聞かせいただきたいです。よろしくお願いします。

○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 ありがとうございます。1点目の遺贈の件につきましては、臨床のほうから御説明いたします。信託銀行に遺贈先として当センターを表示させていただきました。つまり遺贈される側が、どこに遺贈先を決めるかというときに、私どもの施設が選択肢の1つになるチャンスを与えていただいたことになります。それを含めて、これまで1件当たり数千万円を超える遺贈が3件ございます。ですから、これからも遺贈先としてフラッグを立てることが非常に重要ではないかと考えております。
 御存じのように、米国の小児病院の運営費の4割は、一般の方からの寄附で成り立っておりますので、我が国でも将来そういう方向に行くのではないかと考えている次第です。

○国立成育医療研究センター北澤企画戦略局長
 2点目は、企画戦略局長の北澤からお答えいたします。確かに御指摘のとおり、医業収支的にはかなり厳しくて、コロナによる患者数全体が、やはり4年前よりも、特に令和2年度はかなり減り、令和3年度は少し回復しましたが、以前までは戻っていない状況です。補助金が、ちょうど令和3年度につきましては約12.7億円ございました。令和2年度は、前の年が15.7億円ということで、1年間で約3億円減っています。
 それもあり、全体の経常収支的には令和2年度に比べると若干落ちているので、やはりそういったことも考えコロナ後を踏まえますと、医業収支をどうしていくかというところは非常に大きなポイントになりますので、今、病院長を中心に経営改善策を一所懸命考えて、既に対応をとり始めている段階でございます。

○国立成育医療研究センター笠原病院長
 最後の御質問に対しまして、お答えいたします。病院長の笠原です。職員が疲弊していないか、モチベーションは低下していないかということですが、手前ども病院幹部及び研究所の幹部で、職員の面談を定期的に行っております。その中で職員から不平、不満等は幸いなことに聞くことがございません。それより大変な状況であっても、最善の医療を子供たち、妊産婦さんたちに提供することの喜び及び成育医療研究センターで働いている喜びを多く聞きますので、このままの状況が続きますとどうなるかは分かりませんが、今のところは大変モチベーションが高く、みんな働けているのではないかと思っております。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、庄子先生の手が挙がっております。少し短めでお願いします。

○庄子委員
 すみません。庄子です。36ページ広報の所ですが、細かい話ですが外部から採用した広報専門家2名とあり、これは差し支えない範囲で結構ですが、どんなバックグラウンドの方で、年代、何歳ぐらいなの方なのかなということ。
 それから、ツイッターのフォロワー数が倍近くまで伸びていますが、一番功を奏したのは何だと受け止められているのかをお答えいただければと思います。よろしくお願いします。


○国立成育医療研究センター企画戦略局長
 ありがとうございます。広報専門家については、バックグラウンドについてはいわゆる放送あるいは広報業界から転職した者が2名になり、年齢的には40前半の方になります。
 ツイッターについては、これはまさに広報専門家の2人がいろいろな工夫をすることにより、内容についても時期を見据えた、例えば、いろいろな方々に頂いた寄附を、こういった寄附を頂きましたとタイムリーに出した工夫をしたことにより、閲覧数、フォロワー数は増えてきたのではないかと考えております。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。時間がちょっと過ぎているのですが、1点だけクイッククエスチョンでお聞きします。先ほど働き方改革の所で職員の労働時間のモニタリングを、何かお金を掛けてやられたという話を聞きましたが、これは非常に重要ですが、なかなかきちんとできないのが一般的だと思います。どういうやり方をされたのかなと、可能な範囲で結構ですが、一言だけ教えていただけると有り難いです。

○国立成育医療研究センター金森総務部長
 人事部長の金森でございます。これは職員それぞれが、電波を発信する小さな機械を持っており、働く場所に近づくと電波をキャッチする。その間は労働時間としてカウントする仕組みのものでございます。

○祖父江部会長
 そうですか。これは、なかなかなものですね。全国的にも余りない感じがしましたが。また、いろいろ教えていただけたらと思います。ありがとうございました。以上で、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項につきましては、以上といたします。それから何か全体を通じて、もし御質問がありましたら御発言いただけますでしょうか。よろしいでしょうか。ここは、いつも時間が超過するのでスキップすることが多いのですが、よろしいでしょうか。それでは、一応質問は短い時間のこともございましたが進んでいるということにいたします。
 それでは、最後に法人の理事長の五十嵐先生と監事の岡田先生からヒアリングということにいたします。まず、法人の監事の先生から、岡田先生ですか。西田先生ですか。西田先生、よろしくお願いします。今後の課題や方針も若干含めながら、御説明をお願いできたらと思います。よろしくお願いします。

○国立成育医療研究センター西田監事
 はい、承知いたしました。監事の西田と申します。よろしくお願いいたします。まず令和3年度の監事監査の結果につきましては、お手元資料1-4にあるとおりで、当センターは適切に運営されています。また、財務諸表等について、適切な開示が行われていると認めているところでございます。ただ、令和2年度に引き続き、令和3年度も新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けながらも、理事長はじめ全ての職員の皆様の努力によって、研究開発の推進及び医療の提供等に関して、今まで御報告させていただきましたとおりの成果を達成できたことについては評価しているところでございます。
 ただ、先ほど少し話がありましたけども、その財務基盤につきましては、6期連続で黒字達成となっておりますが、この令和2年度以降2年間は、新型コロナウイルス感染症による影響を強く受けておりますので、単純な良否の判断は難しいですが、いずれにしても患者の受療行動の変化だとか、出生数の減少というのが続いているというところで、当センターが担っている小児・周産期医療、なかなか大変な状況だと認識しております。それについては理事会なりで、役職員の皆様、高い意識を持って経営改善について常に検討されておりますので、我々としてはそれを注視していきたいという考えで、監事監査を行っております。以上となります。お時間いただきありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。何か御質問等、コメント等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、最後になりますが、理事長の五十嵐先生のほうから、最終的な今日の発言のやり取りの内容や、今後の方針も含めながら、少しコメントを賜りたいと思いますが、よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。

○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 本日は長時間にわたりまして、私どものセンターにつきまして貴重なアドバイスを頂きましてありがとうございました。先ほどからのお話にありますように、コロナの影響を未だ強く受けておりますけれども、幸いに病院は感染する職員が数十人から100人近く出ておりますけれども、ほぼ正常な運営をしているところであります。それから研究所も、しっかりとした研究を続けさせていただいている状態が続いております。私どもは、子供と親御さんたちのために、彼らが身体・心理・社会的に健康な状態をいかに作っていくかということが非常に重要なテーマだと考えております。そういう意味で、1つの大学病院ではできないことをやるのが、私どもナショナルセンターのミッションだと思いますので、引き続き各方面の御支援を頂きながら、その目的に向かって邁進したいと考えております。これからも、御指導をどうぞよろしくお願いいたします。本日は、どうもありがとうございました。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。五十嵐先生ありがとうございます。全体をまとめていただきまして、今後の方針なども触れていただいたと思います。ありがとうございます。全体的によろしいでしょうか。それでは、以上で国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和3年度の業務実績評価についての審議を終了したいと思います。活発な御発言、質疑応答ありがとうございました。非常に理解が深まったと感じております。どうもありがとうございます。

○大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 事務局でございます。それでは10分休憩を取りまして、16:05分から議論を再開したいと思いますがよろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。

(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 退室)
(休憩)
(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 入室)

○祖父江部会長
 それでは全員おそろいですし、国立精神・神経医療研究センターのほうもおそろいのようですので始めたいと思います。それでは、先ほどの説明に続きまして、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和3年度の業務実績評価について議論を行いたいと思います。よろしくお願いします。今日は本当に暑い中、しかもコロナが蔓延している時期に、お集まりいただきまして本当にありがとうございます。少し長時間に及びますが、活発な御議論をお願いできると有り難いと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、議事に先立ちまして、法人理事長の中込理事長から一言御挨拶を賜りたいと思います。中込先生、お願いできますか。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 理事長の中込です。本日は非常にお忙しい中、当センターの業務実績評価のために、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございます。よろしければ、私のほうから概要の説明から入らせていただきたいと思います。
 本日は説明書に沿って説明を進めてまいります。2ページに自己評価を示しております。私からセンターの概要について御説明します。当センターは病院、2つの研究所、その間をつなぐ4センターからなっております。11の専門疾病センターがあり、そこで先端的な研究を展開しております。また、当センターは昭和15年に設立された傷痍軍人武蔵野療養所として設立され、現在に至っております。
 最大の特徴は、基礎から臨床までシームレスの対応を可能とする研究体制です。当センターで開発された筋ジストロフィーのビルトラルセンや、多発性硬化症のOCHといった治療薬がその成果に当たります。病院のほうは、精神、神経、筋疾患及び発達障害を対象とする高度専門医療機関でありますが、現在では様々な合併症を持つ患者さんへの対応を充実させるために、総合内科部門を強化しております。令和3年度は前年に引き続き、コロナに感染した精神・神経疾患患者の入院治療を行っており、これまでに250名を超える患者さんを受け入れてまいりました。現在、14床で受け入れをしております。その中で、我が国における研究基盤の強化を目指して、患者レジストリや臨床研究ネットワークの発展に注力してまいりました。既に実績のある神経筋疾患のレジストリに加えて、精神疾患のレジストリも2020年に立ち上げ、現在、エントリーの推進に努めているところです。概要についての私からの説明は以上です。

○祖父江部会長
 きれいにまとめていただきまして、非常に良いオリエンテーションをしていただいたのではないかと思います。ありがとうございました。順次、議論を進めたいと思います。今、既にスライドが出ておりますが、最初は、評価項目1-1及び1-2です。研究開発の成果の最大化に関する事項というテーマについてです。これは全体の時間が38分ありますが、説明に20分、質疑応答18分ということです。まずは、法人から説明を頂けますか。よろしくお願いします。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 それでは研究開発に関して、神経研究所の岩坪から説明をさせていただきます。8ページ、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進については、Sと自己評価しております。
 この自己評価の理由としては、当センターが筋ジストロフィーあるいは多発性硬化症などの免疫性神経疾患をはじめとする難治性疾患症例の集積に基づいて世界レベルの研究を進め、病態メカニズムに基づく画期的な治療薬の開発を達成し、患者さんのもとに届けているということを挙げたいと思います。
 令和3年度の自閉症あるいはコロナウイルス感染症後の脳神経、後遺症状などのそれぞれ医療推進に貢献する画期的な研究成果を多数挙げていることが、自己評価を高くした理由です。
 また、全体的な研究の発展を反映して、8ページ、下段の所に示しているように、論文の発表総数の目標の25%を超える797件に上っていることを自己評価への根拠としたところです。
 9ページ、要因分析に示したように、論文発表総数が目標を大きく上回った理由としては、我々NCNP、高度専門的な医療を提供し、質の高い症例集積が可能となっていることが大きく関わっていると考えております。
 9ページの下段に、評定の根拠とした3つの顕著な研究例についてまとめております。世界初の自閉症モデルマーモセットの開発、新型コロナ感染後の免疫性神経異常に関する研究の進歩、国民の健康増進に寄与する「睡眠の質」指標の開発。これらについて、この後御説明いたします。
 10ページを御覧ください。インパクトファクターが付与された学術雑誌収録論文数及び引用数を示しております。
 右のグラフにあるように、原著論文数は過去6年間で毎年増加傾向を示しております。令和3年度の原著論文発表数410とこれまで最高数となっております。左には、引用数を年次的に示しております。
 11ページを御覧ください。こちらから顕著な研究成果の達成例を報告いたします。まず、最初に霊長類、動物モデルであるマーモセットを用いて、世界で初めて自閉症の特徴をよく現すモデル動物を開発した成果をお示しします。
 自閉症は頻度が高く、その解決が強く求められている代表的な発達障害性の疾病です。しかしながら、これまでに開発されてきたモデル動物は、ラット等のげっ歯類に限られております。これらは自閉症の症状や病態を十分に反映できず、治療薬の開発にも適さないというものでありました。
 NCNP神経研究所長の一戸紀孝部長らは、より人に近い霊長類、マーモセットを用いたモデルを開発し、これがヒト自閉症を様々な面でよく再現することを示しました。臨床で非常によく使われる抗てんかん薬のバルプロ酸を妊婦が服用されますと、胎児が自閉症症状を引き起こす頻度が高まるということは古くから知られております。一戸らは、これをヒントにして、妊娠マーモセットにバルプロ酸を投与し、胎児期にバルプロ酸にばく露することで、自閉症様状態を極めて再現するモデルを作成しました。
 下段ですが、ヒトの自閉症脳で生じる遺伝子発現の異常は、右グラフにあるように、ラットのモデルでは余り相関しないのに対して、左のグラフにあるように、マーモセットでは、非常に高い相関が示されたというのが1つの成果です。また、左側を見ますと、神経シナプスが自閉症で数が増加したり、その機能が低下するということがありますが、このマーモセットモデル、ここに実際に写真がありますが、このシナプスの樹状突起の数の増大などの特徴が見られております。
 また、ヒトの自閉症では、コミュニケーション障害などの症状、また、視線の異常など、特徴的な行動のひずみが見られるわけですが、バルプロ酸マーモセットもこれを非常によく再現しておりました。このように、画期的なモデル動物を用いて、AND病態の解明、病態を反映するバイオマーカーの開発、新規治療薬の開発の進歩などが期待されます。本成果は、画期的な自閉症モデル動物開発として、世界でも高い評価を得まして、科学誌Nature Communicationsに発表され、プレスリリース等でも注目を浴びております。
 12ページを御覧ください。本自閉症モデルの開発に当たっては、2010年代から我々NCNPが一丸となりまして、霊長類の研究リソースの育成と研究基盤構築を進めてきた中で、大脳皮質研究の第一人者の1人である一戸らが、マーモセットの脳回路や機能、行動について着実な基礎的研究を重ねてきた成果です。
 中列にあるように、本研究はNCNPの所内で措置をされております研究開発費の成果として、例えばグリア細胞の過剰活性化、あるいは発症前からの早期の治療法開発などの重要所見を見い出しております。
 右側に今後の展望を示しております。ヒトの自閉症の脳における遺伝子の発現パターンについて、異なる3つのタイプが指摘されるようになっています。この特徴は、マーモセットも非常によく再現することから、自閉症のタイプに即した診断・治療後の開発につながると期待されるところです。また、ヒト臨床研究、COCOROがありますが、これで得られた画像や臨床のデータの解析によって、新規のバイオマーカーの開発につながるという期待もあります。また、マーモセットで自閉症様の症状と対応する遺伝子発現の調節ネットワークを見い出して、更に基礎研究にも遡り、病態の解明が期待されるところです。
 13ページを御覧ください。こちらでは、コロナウイルス感染症後遺症患者の脳に生じる病態の解明。特に、慢性疲労症候群に似た病態を見い出した成果を御紹介します。
 新型コロナウイルス感染症は今も猛威を振るっておりまして、特に、脳神経系の後遺症状の頻度が高いことが非常に注目されております。
 一方で、筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労症候群、以下、ME/CFSと略します。この疾患は、高度の倦怠感、あるいはブレイン・フォグと言われるようなもやもや感、神経系の症状などを呈する特徴的な症候群で、しばしばウイルス感染症などに続発することが知られております。
 この症状が新型コロナの後遺症と非常によく似ていることが指摘されてまいりました。NCNPでは多数のME/CFSでの診療、研究を行ってきまして、脳画像異常や、あるいは自律神経受容体に対する自己抗体の発生を伴う免疫性の神経疾患が、その本態の1つであることを示してまいりました。
 また、昨年度、ME/CFSで自律神経受容体抗体に関連した脳内構造ネットワークの特徴的な異常についても発表しております。神経研山村部長らは、これらの成果を喫緊の課題となりました新型コロナ後遺症などの研究に応用し、高度倦怠感の持続例における、自律神経受容体に対する自己抗体の上昇を示し、またリンパ球型の細胞であるプラズマブラスト細胞の増加など、ME/CFSと高度に共通する病態を見出しました。また脳血流シンチ画像法による脳の血流変化なども確認をしております。これらの研究の成果は、コロナ後遺症脳の病態理解、診断法・治療法開発において、本邦で初めて世界レベルに至った成果と考えております。
 14ページを御覧ください。このように新型コロナウイルス感染症後遺症の研究に直ちに着手できましたのは、過去にNCNPがME/CFSに対する研究連携体制や、診療手引きの作成、あるいは画像研究などを進めてきた基盤があったからです。これらがME/CFSの血液診断、画像研究、腸内細菌異常などの同定につながって、直ちにCOVID-19感染症後の研究に拡大することができ、先ほど述べたような免疫異常や画像異常の類似性、特徴などが発見できたわけです。
 今後、バイオマーカーや画像診断を統合した診断法を確立し、例えば、B細胞系を抑制する抗体医薬、リツキシマブなどを使った新規の免疫治療法、医師主導治験に展開し、最終にME/CFS並びにLong COVID双方に適用可能な画期的な治療の開発につながると期待をしております。
 15ページを御覧ください。睡眠の主観的評価指標としての睡眠休養感についての成果を御紹介します。NCNP精神保健研究所では、国民の健康増進に寄与する睡眠の質の指標の開発を進め、睡眠休養感、すなわち朝起きたときに体が休まった感覚を用いることの有用性を世界で初めて報告しました。また、壮年あるいは高齢者を通じて、睡眠休養感がない人は、死亡リスクが上昇することも示しました。睡眠休養感の向上が睡眠時間短縮による健康被害の防止につながることを示唆した成果です。
 また、睡眠休養感は、うつ症状を進める予測因子としては、不眠症状そのものよりも優れ、精神健康の予測指標としても有用であるということも示しております。
 16ページを御覧ください。これらの睡眠に関する成果は、これまで精神保健研究所が睡眠の質を表わす主観的指標の探索を全国的な調査研究に基づいて進めてきた実績に基づくものです。今後、睡眠休養感の指標の実装を目指しまして、例えば、職域コホート研究への展開、あるいはオンラインアプリ、チェックボックス等の開発などを進めまして、「健康日本21」における健康づくりへの還元につながると期待をしております。
 19ページを御覧ください。こちらから項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備について御説明します。こちらも令和3年度の自己評価はSとしております。
 20、21ページには、その根拠を示しております。これまでに進めてきた画期的な精神神経系の慢性疾患に対する治療薬の実用化につながったFirst in Human試験や医師主導治験、あるいは先進医療等ありますが、令和3年度で見ますと、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、予定をしていた研究等の開始は叶いませんでしたが、今後の計画の中で目標としては数を達成すると考えております。
 また、診療ガイドラインについても6件の作成が始まり、今後採用されるものと見込まれております。
 21ページにまとめたように、臨床研究について見ますと、目標値以上の実績があり、企業治験もほぼ目標値どおりに実施できているなど、実用化を目指した研究開発が順調に行われておりまして、First in Human試験及び医師主導治験についても、それぞれ継続分は1件、5件実施をしております。
 さらにバイオバンクの収集検体数は着実に増加しております。その利活用についても令和3年度は前年度比約20%増の50件の提供実績があったこと。さらに、AMEDと製薬協のマッチングファンド、GAPFREE4をはじめ、AMEDの大型研究や企業との共同研究も進捗していることから、自己評価をSとしております。
 22ページを御覧ください。こちらに治験・臨床試験の実施状況を示しております。コロナ禍にもかかわらず、令和3年度においても、企業治験、医師主導治験は同レベルを保っておりまして、臨床研究の総数は増大し、国際共同治験の数も過去最大に達しております。また、右の一覧表にあるように、当センターでは、難治性の精神神経疾患のほぼ全ての種類を網羅する治験を実施していることも特筆させていただきます。
 23、24ページには、バイオバンクという筋・ブレインバンクについてまとめております。当センターのバイオバンク、様々な内容がありますが、もっとも特に筋バンクについては、総数2万2,000を超えて、世界最大になりまして、現在、本邦の筋疾患診断の8割以上を担っております。
 こちらで得られた成果は、新規の疾患内容の確立、あるいは治療薬開発の基盤となり、一部ではiPS細胞としての保存も始めてきたところです。
 第2に、脳脊髄液サンプルについては、神経疾患のみならず、精神疾患でも積極的に集積を進め、現在、総数は約6,200となっております。また、脳バンクの剖検後のサンプル収集もコロナ前と同レベルに復活しております。
 NC間、国内外のバンクの連携においても、NCNPは中核的な役割を果たしております。
 24ページを御覧ください。こちらに利活用の実績をお示します。これらのリソースは、延べ213件の外部提供実績があり、令和3年度は過去最大を記録しております。グラフにあるように、毎年20%ずつ増加しておりまして、特に、企業に対しても13件、海外でも2件と貴重なサンプルのシェアリングを達成しております。この背景には、GAPFREE4の大型産官学連携事業が、非常に効果を発揮しておりまして、今年は脳脊髄液等サンプルからの多層オミックス解析成果をデータベースに格納することもできました。
 25ページに、CINの取組をまとめております。クリニカル・イノベーション・ネットワークは、各分野の患者登録、レジストリの構築を基盤に、臨床研究、治療薬開発に資する医療研究開発環境の整備体制を作る活動です。この事業では、当センターの武田元所長らの班によって、事業化に貢献するとともに、企業とのワーキンググループを形成して、開発のための情報提供体制を整備しました。
 右にまとめておりますNCNP内での活動では、筋疾患レジストリのRemudyをはじめ、精神疾患、運動失調、プリオン病、認知症予防研究のための調査レジストリIROOP、J-TRC、パーキンソン病発症予防のための運動症状発症前バイオマーカー研究PPMIなど、幅広いレジストリを構築し、企業を含む研究展開により治療薬の開発に貢献をいたしております。特に令和3年度には、シンポジウムの開催、手引き作成、構築支援などのCIN事業の進展に貢献したところです。
 26ページを御覧ください。こちらに人事交流を示しております。当センターの医師や研究者等から大学の教員や、PMDA、AMEDの専門職の中にも人材を輩出しております。特筆すべきこととしては、幅広い学術機関との連携を進め、令和3年度には大学に対して7名輩出しております。また、学生も多数受け入れております。外国人研究者も20名以上受け入れておりまして、国際的な人材育成にも貢献し、国内外の大学と連携協定を、延べ16大学8研究等機関と締結したところです。以上、1-1並びに1-2に関して御報告いたしました。御審議をどうぞよろしくお願いします。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。時間内に非常に要領よくまとめていただきまして、理解が進んだのではないかと思います。それでは 早速ですが、御説明いただいた1-1、1-2をまとめまして、質疑応答の時間を作りたいと思います。では根岸先生、よろしくお願いします。

○根岸委員
 根岸と申します。よろしくお願いいたします。御発表ありがとうございます。15ページの睡眠休養感についてお尋ねします。2点あります。まず1点目ですが、朝起きて夜眠るという、基本的な生活のサイクルでの指標なのかということです。労働者の中には、夜勤者も多く存在すると思うのですが、そういう場合にもこの指標を当てはめることができるのかどうか教えていただきたいと思います。それから、もう1点同じく睡眠休養感ですが、やはりある程度、睡眠時間が確保されないと睡眠休養感というものも感じないのではないかなと考えるのですが、いかがでしょうか。よろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 この研究を担当されました金所長のほうから言わせていただきます。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所所長
 精神・神経医療研究センター所長の金でございます。代わってお答えいたします。睡眠休養感というのは、睡眠時間のみでは評価することが出来ない睡眠の質を計る指標で、見た目上よく寝ているように見えても、休養感がなく、昼間に疲労感が残る方がおられますので、睡眠の対策の目標は昼間起きている時に、健康に覚醒するということでありますので、そのための指標として開発しました。ですから夜勤の方であっても、断続的な睡眠の方であっても、この睡眠休養感を担保することで個人の健康維持・増進にすることができます。以上が第1点目です。
 そして、第2点の御質問ですが、もう一度要点を教えていただけますでしょうか。

○根岸委員
 睡眠時間が短縮する傾向に日本はかなりあるということですが、とは言え睡眠時間がある程度確保されないと、睡眠休養感というのも感じないのではないかなと考えるのですが、いかがでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所所長
 それは必ずしもそうとは言えず、睡眠時間には個人差が大きいことが分かっています。3時間程度の睡眠で活躍した歴史上の人物もおりますので、本当に人によるということです。睡眠時間だけでは測れない睡眠の質を計る指標が「睡眠休養感」と位置づけられます。それから早寝早起きということが言われますが、人によっては遅寝遅起きのほうが健康感が高まるという人もいますので、その辺をあまり画一的にせずに、アウトカムとして睡眠休養感というものを統一の基準として、それに至る道筋は人それぞれいろいろなものがあると、そのように考えています。

○根岸委員
 分かりました。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、深見先生、次よろしくお願いいたします。

○深見委員
 深見です。3つありますので、それぞれ簡単にいきます。まず1つ目が、11ページのマーモセットなのですが、ヒトのモデル動物としてマーモセットはとても有用だと思うのですが、このマーモセットの開発というところで、何か遺伝子を改良したものなのでしょうか。遺伝子が分かっていたのかなと、ちょっとそこもありますので、マーモセットの作り方というか、それとヒトとの関係、ヒトは3つサブタイプがあるといいますので、サブタイプも遺伝子等で説明できるのかどうか、そこをお願いします。
 2つ目は先ほど出てきた睡眠休養感なのですが、かなり主観的なもので、若干心配なところがあるように私には感じられるのですが、何かもう少し客観的なパラメーターというものがないのかというところです。
 3つ目なのですが、1-2、19ページになりますが、自己評価がSになっているのですが、指標が結構低いものもたくさんあるのですが、これでSというように判断する、そこのところの一番の根拠を教えてください。以上です。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 ありがとうございます。では、最初の点と第3の点についてお答えいたします。マーモセットですが、これは先生から御指摘のあった、遺伝子改変モデルではございません。あくまでバルプロ酸ナトリウムという薬剤を用いた薬理学的なモデルでございます。バルプロ酸はヒストン脱アセチル化酵素のインヒビターです。それが母体に投与されますと、胎児において、発達中の脳の様々な遺伝子のエピジェネティクスに影響を与えて、そういうことから自閉症の発症促進を示すものでございます。既に実はマーモセットで遺伝子改変モデルもあるのですが、なかなかそろった頭数、改変して作るということが難しく、また必ずしも自閉症様の様々な特徴を十分に出していない。少し発展がスローなところがあるようです。そこで、このバルプロ酸のばく露によって、ヒトでの自閉症の発症率が上がるという疫学的な成果に着想を得て、このようなモデルを作りましたところ、非常に短期間でよく特徴を満たすことができたということです。

○深見委員
 そういうものだと、すごく変わってしまう。要するに環境とかで変わってしまう、性質が変わってしまうということはないのですか。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 そこについては一戸が詳しく解析しておりますけれども、非常に様々な面で、自閉症の特徴を現している。安定したモデルができたというのが今回のひとつのメリットになります。
 それから、3つの特徴というのは遺伝子発現の脳内でのパターンが、3つに分かれるのではないかということが、ごく最近米国の研究で言われるようになったということです。マーモセットについても、調べてみますと、時期、あるいは脳部位別のパターンによって、ヒトでの3つの分類にかなり近いパターンが得られるということで、ヒトの自閉症モデルとして、有効ではないかと考えています。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所所長
 2点目の質問につきまして、精神医学のほとんどにおいては、うつ病でも不安症でも患者さんの訴えは主観的なものでして、それに向けて治療を行っておりますけれども、主観的なものだから信頼性がないということではなく、追跡コホート調査により、主観的な睡眠休養感の欠如が、長期的な死亡リスクとなることを客観的解析手法により同定しておりますので、安定した尺度、測定法が開発されたということです。
 中でも睡眠というのは、脳生理学との関連が非常に深い分野ですので、この睡眠の休養感というものを指標として、今後、引き続き健康維持・促進に関わる睡眠構造とか睡眠・覚醒リズム、そういった研究を実施していきたいと思っています。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 第3点に頂きました研究開発、実用化を目指した推進、基盤整備の所をお答えさせていただきます。先生の御指摘はもっともでございまして、中期目標としては例えば今年、First in Human試験など中長期目標で設定していた数を、いずれも、昨年から本日に至るまでスタートできていないものもあるわけですが、申しましたように、この第2期の中期計画が始まりましたところでございますけれども、ここ数年の間に、確実にFirst in humanが進んでいくめどが立っております。今年の数は少ないのですが、これだけの見込みがあるということで、この部分は有効だと考えております。
 それから、後半で申しましたように、リソースの提供というところでは、極めて高い数値的・質的な実績を達成しておりますので、これらを総合しましてSとしたところでございます。

○深見委員
 ありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは引き続きまして、中野先生、よろしくお願いします。

○中野委員
 中野でございます。大変興味深い研究成果の御発表をありがとうございます。とても興味深く拝聴いたしました。2点、簡単に教えてください。まず、資料の11です。マーモセットの自閉症モデルのお話ですが、ヒトに近い霊長類ということで、是非治療薬の検討とかに、本当にうまくいくといいなと期待しています。
 私が今日お尋ね申し上げたいのは、バルプロ酸の胎児投与、先ほど疫学的にバルプロ酸へのばく露によるというお話がありましたが、この動物モデルにおいては、発症の機序というのは、少しアプローチできたのかどうかというのが1つ目の質問です。
 もう1つは13ページです。コロナ後遺症患者のほうで、慢性疲労症候群と同様な病態を発見。コロナ後遺症というのは、いわゆるLong COVIDというお話かなと思うのですが、今までも慢性疲労症候群とは、EBウイルスその他の関連も言われていたかと思います。今回このコロナにおいて、ほかのウイルスとは違う、何か異なる病態というのが発見できたということでしょうか。その2点を教えてください。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 ありがとうございます。まず、マーモセットモデルについてです。発症メカニズムについては、ただいま遺伝子発現のエピジェネティクスのほうの変化は、大規模な解析を進めているところでございまして、こちらの発現パターンとしては、このグラフでございますけれども、直接バルプロ酸が作用するターゲット遺伝子のエピジェネティックな修飾の変化については、これから明らかになるものと考えています。
 それから先ほど言いましたが、神経回路の作動異常につきまして、ヒト自閉症の特徴を、ある程度再現するものがマーモセットの神経性組織において確認されております。
 それから、このLong COVIDです。先生の御指摘のとおりで、Long COVIDの脳神経系の後遺症状が、ME/CFSと非常に似ていると。基本的には感染後のME/CFSの一型であろうということを聞いております。
 特徴は、コロナ後の場合に、特にこういう症状が多いというようなことはなくて、ただ、明らかに頻度は、ほかのウイルス感染後よりも高いのではないかということで、山村部長、佐藤室長という、臨床研究に携わっている両名から聞いたところでございます。

○中野委員
 ありがとうございました。

○祖父江部会長
 よろしいですか。それでは、花井先生お願いします。

○花井委員
 花井です。ありがとうございます。25ページのCINについてお伺いしたいのですけれども、このRemudyは、私どもも非常に先駆的なものとして注目していて、昨年度は例えばPMS利用のような、薬事的なものを実装していって、バイオバンクとの連携とか、若しくはePROとの連携とか、どんどん進化していっているように思えるのですが、ただ一方で、AMEDとか、厚生労働省のいろいろなファンドであるとか、いろいろな形のファンドが充実していると思うのですけれども、これがパーマネントなものにしていく上で、今後もずっと続いてくのですが、それについて中長期的にはセンターとしてはどのようにCINについて、お考えなのでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 ありがとうございます。私から答えて、その後理事長からも追加していただこうと思います。冒頭にもありましたように、我々の組織の中で、特にこのRemudyなど所管しておりますのは、TMC、トランスレーショナル・メディカルセンターという組織がございます。これは病院等から派生をしました、センター内センターですが、こちらを更に組織の強化をして、またリソースの導入をしながら、このRemudyを始めとするようなレジストリの実装化、あるいは拡大、安定化ということを進めようということに非常に注力しています。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 中込でございます。御質問ありがとうございます。こういったRemudyを始めとするレジストリで問題になるのは、先生がおっしゃった出口戦略ということになっています。1つのモデルとしては理想的に近いのですけれども、がんセンターの例えばマスターキープロジェクトというものが、我々の目指すところに近いかなと思っています。特に神経難病や希少疾病においては。こうしたレジストリを使った企業治験、市販後調査も含めての企業治験に使っていただいて、そしてその運営費において対価を少し運用できないかという考えを持っています。ただし、それだけではまだまだ自立するところまでは、ものすごく時間がかかると思いますので、そこは運営費交付金や公的研究費等で少し補填する必要はあると思っていますが、最終的にはそういった形で、積極的にいろいろな企業に使っていただくことで、運営費の部分を何とかカバーしたいと考えています。

○祖父江部会長
 よろしいですか。

○花井委員
 ありがとうございます。これってこの国際さんもいろいろつくのでしょうけれども、JHなんかとの関連って、CINとJHというのは別ものという理解でしょうかね。かねてから6NCで共通インフラだとか、そういうことをサスティナブルに国の支援を受けて、NCとしての役割でしょうということは、何度も議論に上がっているのですけれども、今結構、精神さんは非常にいろいろな工夫をされて、このようにCINを充実させているのですけれども、現状では精神単独でというイメージでよろしいですか。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 CIN事業は、JHの共働研究事業の中の1つに組み込まれていますので、恐らく共通のプラットフォームの下で、運用していくというのは最終的なゴールだとは思うのですけれども、レジストリの形態が、私どもいろいろな所からお話を伺うと、疾患領域によって違うということも分かっていまして、例えば研究開発といった場合に、精神の場合だと病態解明に関する研究が主になるわけでございますけれども、一方、がんはどうかというと、もっぱら治療薬の開発で、バイオマーカー、遺伝子のタイプによって、治療薬の開発をどんどんしていくという、それぞれ研究のフェーズが違うので、レジストリを一緒くたにするのは難しい。ただ、JHという組織の中で共同研究プロジェクトとして、お互いに情報交換しながら、進めていることは事実でございます。

○花井委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。今の話の続きなのですが、どなたかほかによろしいですか。ちょっと追加で今の続きなのですけれども、理事長先生からも今お話がございましたけれども、特に筋のバイオバンク、これは全国8割以上をここに集めておられるということで、日本のほとんど網羅的なバイオバンクを形成しておられると思うのですが、先ほどのお話を聞くと、企業との連携利用というだけでは、どうもほかのいろいろなレジストリバンクを見ても、企業との連携だけでは、なかなか今のところうまくこれが運営できないというような状態が多いのですが、実態としてはどれぐらいの費用感で、具体的な数字はもちろんいいのですが、インカムとして入ってきているのかという、いろいろな利用の仕方があると思いますので、その利用の仕方をひっくるめて、どんな感じの状況にあるのかというのを、ちょっとお聞かせ願えると有り難いなと思っています。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 岩坪の知る範囲でございますけれども、先生御指摘のとおりで、大手の製薬企業、あるいは海外の製薬企業からの、バンク利用に関する申し込みは徐々に増えてきていて。

○祖父江部会長
 そうですか。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 ただ、トータルの額はちょっと今正確には申し上げられませんが、それでファイナンシャルのサポートの大部分を賄うには、とても足らない状況ではございます。こちらは国内でのアカデミックなコラボレーションは非常に増えてきています。ですので、御指摘のとおりで、ジストロフィーのような先天性疾患、それから最近、筋炎などの炎症性疾患に非常に関心が高まってきておりますので、今後、研究開発、特に企業との連携が大きくなるものと見ています。

○祖父江部会長
 先ほどちょっとお触れになりましたけれども、iPSはどれぐらいカバーされておられますか。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 ちょうどですね、そこに出ておりますけれども、培養筋69というのがございまして、そのうちの一部はiPSということかと思います。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。大体時間になりつつありますが、ほかに御質問、コメント等ありますでしょうか。
 もう1つ非常に興味を持ったのは、最初に理事長先生がお示しになられた、特に精神疾患のレジストリを基盤とした、オールジャパンの精神疾患病態研究体制の構築ということですが、これはまた後でお話が出ますでしょうか。そこで少しディスカッションさせていただいてもいいかと思ったのですが。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 すみません。それは2020年から1,000例といった登録症例数なのですが、詳しい話は後に出てくる予定はございません。

○祖父江部会長
 どんな計画かだけちょっとお話いただけると有り難いのですが。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 精神疾患レジストリの特徴は、いわゆる精神疾患というものは、診断になかなか妥当性がないということがありますために、それをカバーするための臨床情報を比較的多く取らなければならないということがあります。そのために、今進めていますのは、電子カルテからの基本的な情報の抽出ができないかということを考えているところです。簡単に言いますと、テンプレートを作ってそこに流し込んで、臨床情報を取り出す。ただ、その一方で、生体試料のほうは、こちらのほうも積極的に前方視的にも取っていくのですけれども、それまでに取られたもののカタログ情報を使って、それをうまく利活用できないかということを考えています。注意しているのは、生体情報と臨床情報をバラバラにしないこということで、臨床情報と生体情報を結び付けた形で取っていく。さらに、精神疾患の場合は、患者さんがずっと同じ医療機関にいられることは少ないので、ePROというスマホ等デジタルデバイスを介した自記式評価という形で、病院ではなく患者さんの御協力を得て、縦断的に状態を追っかけていくと。そのように考えております。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。是非、御発展を期待しています。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 また経時的な御発表を頂けると有り難いなというように思います。よろしいでしょうか。ちょっと時間が過ぎましたので、それでは次に移りたいと思います。1-1、1-2は以上とさせていただきます。
 それでは、1-3から1-5に関するものですが、医療の提供とその他の業務の質の向上に関する事項ということで、これも時間は38分です。今と同じ20分で御説明いただいて、18分の質疑応答ということです。まず法人のほうから御説明をお願いします。

○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 それでは評価項目1-3につきまして、病院長の阿部から、説明いたします。自己評価Aとして申請させていただいております。27ページを御覧ください。中長期目標の内容が書いてあります。医療政策の一環として、センターで実施すべき高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供、それから、患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供。次ページは指標の達成状況が書いてあります。項目で7項目ありますが、そのうちの6項目を100%以上達成しています。
 次の29ページです。先進医療制度を活用した反復経頭蓋磁気刺激装置(rTMS)を用いた治療について、専門外来の患者数も増加して、昨年度の達成率は125%となっております。2つ目の医療安全や感染対策の研修を開催し、233%達成しております。
 新型コロナウイルスへの対応ですが、急性期の患者さんを受入れつつ1病棟をコロナ専用病棟として運用し、新型コロナウイルスに感染した精神疾患患者の受け入れを行っています。また、令和3年6月からはコロナ後遺症外来を開設し、コロナ罹患後の後遺症に悩む患者の診療にあたっています。このような根拠に基づいて自己評価を申請しております。
 30ページを御覧ください。昨年11月にニューロモデュレーションセンターを新しく設立いたしまして、ここにありますような電気けいれん療法、rTMS、脳外科的なDBS、小児神経科、それから脳外科、精神科この3者です。てんかんセンターを設置しまして、新しく総合的に他の病院では余りできない総合的な対応をしてきました。均てん化も引き続き推進していきます。
 次のページを御覧ください。神経内科領域についてです。ここに書いてありますLCIGという治療法がございまして、これはパーキンソン病が進行しますと、様々なジスキネジアなどの症状が出たり、治療は困難なわけですけれども、その際、胃のほうから直接患者さんのお腹に穴を開けて経腸的に投与するというところで、全国トップクラスの症例を重ねておりまして、2014年の臨床段階から、治験の段階からですが、現在でも多数の患者さんが来院しています。
 次のページは、同じく神経内科ですが、嚥下障害矯正プログラムを行っております。様々な神経内科治療で、主に進行期になりますと、どの疾患であれ嚥下障害を来してまいります。この嚥下障害は、重大なリスクになっておりまして、誤嚥から肺炎、患者さんの生命能力に直結する重大な症状でございますけれども、これにつきまして、当院では、以前から多診療科・多職種が連携して様々なアプローチをしております。ここにありますように、症例数も嚥下造影年間371件、嚥下内視鏡が年間165件で、これは全国最多です。それぞれ嚥下障害を4段階に分けて、正しい診断をした上で画面にありますような多診療科・多職種が連携して、患者さんの治療に直結しています。
 33ページを御覧ください。コロナになってから、日本の医療の、デジタル化が遅れているということが露呈しまして、当院では、以前からこの医療のデジタル化の推進をしてきたわけですが、昨年度は、もの忘れ外来、これが一番取り組みやすいだろうということで、取り組み始めております。今までは患者さんが受診前に、ホームページから紙をダウンロードして、そして、アナログ的にそれを記入して、10枚ぐらいの問診票を持ってきていたわけですけれども、このデータをデジタル化しまして、現在では受診前にそのデジタル化したソフトで、そこに指で触るだけでこのように開きまして、それを病院に持ってきていただきますと、病院側でアップロードする形です。
 続きまして、34ページを御覧ください。約1年半ぐらいにわたりまして、コロナの急性期病棟で対応してまいりまして、その患者数は200名以上に及んでいます。
 このスライドの34ページにありますように、上のほうが入院元別患者の推移でございます。第5波、第6波、デルタ株になります。今は第7波ですね。コロナがピークになりますと、当院のコロナ病床稼働率も満床になるという、その繰り返しできたわけです。
 次ページを御覧ください。退院しますと、今度はコロナの慢性期外来ですが、これは先ほど岩坪所長からも申し上げましたLong COVIDになるわけですが、これは現在、大変患者の数が増えておりまして、私どもとしましては、アフターコロナの症状のほとんどが精神、神経に関係する症状、めまい、しびれ、倦怠感ですので、ナショナルセンターとしては、それを正面から対応しなければいけないだろうということで、昨年6月に新たに開設いたしまして、先ほどのような、早速、新しいデータがそこから世界に向けて発信されてきているところでございます。
 続きまして、36ページを御覧ください。その他の神経疾患としては、ここにあります筋疾患、それから多発性硬化症、脊髄小脳変性症、パーキンソン病など、様々な病気の診療を多数行っておりまして、特に多発性硬化症、それからCIDP、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋ジス関係は全国でも屈指の患者数で、こちらに全国から数が集まっておりまして、様々な患者さんの治療に貢献しているところでございます。
 次ページを御覧ください。神経疾患の診断がなかなか付きづらい病気も多数ありまして、無診断の疾患をIRUDということで、全国の14ブロック、421の協力病院の当センターが中心となりまして、新しい遺伝子の特定も進めているところです。これまで45疾患で、新しい治療薬の開発につながる発見が8件もありました。
 38ページを御覧いただきますと、これまで大体年間1,000家系、3,000検体を超える新規登録がありまして、診断率はほぼ50%程度、高い診断率を誇っております。これまでの経過で、右下にありますように、Journal of Human Geneticsに今年3月に公表したところでございます。
 39ページです。ここはてんかんセンター活動報告をしております。疫学調査、それから基礎的な研究、臨床研究をうまくミックスして患者さんの診療、そして、研究に努めているというところです。
 40ページも同様ですけれども、てんかん新入院患者数は年々増えておりまして、昨年では1,428人でした。それからビデオ脳波モニタリングの延べ数ですが、1,936件に上っております。これも全国から多数集まっていて、こういう数字になっているというところです。
 41ページを御覧いただきますと、これは精神科における認知行動療法(CBT)と言われておりますけれども、その名の研究・研修・臨床・連携を多面的に進めておりまして、これまで研究費の獲得と研修で、過去最高の実績を上げております。
 最後、42ページを御覧いただきますと、ここに患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供ということで、訪問看護件数の増加、そして、退院支援実施件数も順調に伸びているところです。私からは、以上でございます。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所所長
 続きまして、金より人材育成に関する発表をさせていただきます。自己評価Aとしております。中期目標の内容といたしましては、1つは、精神医療研究のリーダーを育成する。もう1つは医療の裾野を広げるためのモデル的研修・講習の実施ということがあります。指標としましては、リーダー研修の中の生物統計学講座の開催というものを指標としております。目標10回に対して、10回開催いたしましたので達成率は100%となっております。
 次のページの評定の根拠は、リーダーとして活躍できる人材育成で、今、申し上げました生物統計学講座を目標どおり開催したということ。それから、臨床研究研修制度というもの、これは次のページで説明いたしますけれども、これも順調に開催しております。また、精神医療の底上げのための、精神に限らず神経もそうですけれども、モデル的研修・講習の実施も順調に行っております。特に、右のほうの説明の下3行に書いてあります光トポグラフィー研修、それから、薬物依存症に対する集団療法研修(SMARPP)と言っておりますけれども、この2つは、この研修を受けないと保険点数が請求できないという建付けになっておりまして、医療に直接の貢献を果たしております。
 次のページにまいりまして、令和3年度研修の実施状況ですが、このピンクの所が研究支援で、リーダーを育成するということでTMC臨床研究研修制度というものも走っておりますし、専門的な英語を書くというライティングの講座も走っております。また、倫理講座等も順調に開催されております。それから精神保健、光トポグラフィー技術、各種治療に関する研修も開かれております。昨年、一昨年とコロナの影響で研修会の開催は難しくなっていたのですけれども、Web開催等の方法を駆使して順調に参加者が増えております。例えば認知行動療法CBT研修は、令和元年が560人の参加者だったものが、1,677人と、3倍に増えています。PTSD対策専門研修も令和元年は400人だったものが、1,332人と増えておりまして、コロナ禍ではありますけれども、様々な工夫によって研修の裾野が広がっております。
 次を御覧ください。人材育成で、更に内訳を詳しく書いておりますけれども、右上のPTSD対策専門研修というのは、池田小学校事件を機に始まった研修でありまして、あのような不幸な事件が起こった後、トラウマを抱えた方々を支えられるかということで始まった研修でありまして、これが今まで1万5,000人を超える参加者を得ております。大きな国の中で、このような国のセンターがPTSD対策研修をここまで続けている例は世界的にもないと言ってよろしいかと思います。また、認知行動療法も、様々な療法についての研修を行ってきております。
 次をおめくりいただきまして、では、研修を受けた人間が、この研修をどのようにみなしているかというアンケートですけれども、研修全体については94.5%の方が満足若しくは大変満足と回答しております。
 具体的な例を挙げますと、摂食障害、うつと不安への認知行動療法を出しておりますけれども、御覧のように非常に高い満足度を得ております。また、令和3年度においては、こうした研修評価の在り方についても議論いたしまして、令和4年度以降に研修評価のフィードバックを更に効率的に得るという計画を、今、作っております。
 では、次にまいりまして、評価項目1-5、医療政策の推進等に関する事項です。これも自己評価Aをお願いしております。1つは、国への政策提言。1つは医療の均てん化に関する事項、情報収集及び情報発信。公衆衛生上の重大な危害への対応ということを目標にしております。
 指標としましては、情報発信について、公式ホームページのアクセス件数を目標にしております。530万件だったのが、800万件と、150%の達成度ということになっております。なぜこのような高い達成度ができたのか、これは次ページになります。やはりホームページ自体を刷新した。積極的にプレスリリースを行った。また、コロナ関連等、時期に適したサイトを開設したということがありますけれども、全体として、やはりNCNPのホームページへの認知度が上がり、情報リソースとしての信頼性が高まったことがあると考えております。
 評価の設定の根拠として、まず政策提言ですけれども、やはり自殺・うつ等に関して、様々な提言を行っておりまして、令和4年度の診療報酬改定において、新たな加算の新設等につながっております。また、情報発信としましては、先ほど申し上げたように、様々なリソースで発信をし、ホームページのビューが増えたということで評価をお願いしております。
 次ページです。医療の均てん化に関する事項として、情報収集及び情報発信がどのように行われているかということで、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)については、1万9,421の検体を数えておりまして、順調に登録数が伸びております。ゲノム情報データベースにつきましても、756家系が集まっておりまして、これも非常に大きなデータベースが順調に構築されております。
 摂食障害全国支援センター、これは厚労省からの委託事業で行っておりますけれども、先ほどの800万件とは別に、これはNCNPの外部に作ったサイトで、145万ビューを数えておりまして、人々の関心を集めております。また、依存症の全国拠点機関の32機関、医療観察法の指定入院機関数も33機関と、順調にネットワークを伸ばしております。また、公衆衛生上の重大な危害への対応としては、災害時のサイコロジカル・ファーストエイドと言いまして、いかに被災者の方と順調に接し、心のケアをするかという、WHOが開発したプログラムをWHOとの契約の下に普及させておりまして、147名の方が研修に参加いたしました。また、NCNPの外でも、この研修会は盛んに行われておりまして、40回ぐらいの研修会・講演会に対して支援をしております。
 次ページです。政策提言ですけれども、大きく3つありまして、1つは、クロザピンという統合失調症に対する非常に有効な薬がありますけれども、副作用のほうのモニタリングは非常に厳しく、なかなか普及できないということがありまして、これについて要件を緩和するという提言を行いまして、実際に薬事・食品衛生審議会において、精神保健研究所の部長が参考人として意見を述べ、この基準が緩和されるという結果に結び付いております。また、包括的支援マネジメント、精神科訪問診療の充実に関する提案につきましても、それぞれ研究部から提案をいたしまして、令和4年度の診療報酬改定において、それぞれ療養生活継続支援加算が算定され、そして、精神科在宅患者支援管理料の患者要件の見直しに結び付いております。中長期目標として、国への政策提言に関する事項として研究データベース、レジストリによって明らかになった課題等を、国にフィードバックして政策に反映させるということがありますので、これらが達成されてきたと考えております。
 代表的なものを、次に御紹介いたしますが、薬物依存に関しましては、まず左上、実態調査を行いまして、特にコロナ禍で大麻使用が増加している実態を踏まえ、社会啓発、教育に取り組んでおります。また、基礎研究として依存性薬物の基礎研究を行いつつ、危険ドラッグの科学的な認定に貢献しております。左下、二次予防、三次予防では、多くの医療機関と連携し、御覧のような患者数を組み入れ、治療の均てん化、向上に努めております。また、右下は、グラフが黒い背景で見にくいのですけれども、薬物依存症患者の医療アクセス数が、最近向上しております。ブルーのラインが全体の数、赤いラインは過去1年間に薬物を使用してしまったという患者さんの数ですけれども、ブルーのラインが順調に伸びておりますが、赤いラインが横ばいです。これは治療を受けている患者さんの中で、新たに薬物使用をする人が少ないということを反映しておりますので、治療の効果が裏付けられたと考えております。
 次ページです。政策研究ですけれども、地域精神医療で、このようなICM、つまり、患者さんに対して、患者さんがいろいろなサービスを渡り歩いて自分で選択するのではなく、こちらの集中的なサービスを提供するというシステムの有効性が研究から見出されましたので、それを根拠として、実際、所沢をモデル地区として実践活動を行い、また、その中で出てきた疑問に対して調査を行い、プログラムを改定するという、非常に良い循環が生まれています。右下は、先ほど申しましたように、そうした研究成果を踏まえ、診療報酬改定において反映されておりまして、研究・実践・法制度というところが、うまくかみ合っているというように考えております。最後は広報活動ですが、申し上げましたように、プレスリリースが順調に伸びている。そして、ホームページだけではなく、Twitter、YouTube等も活用しております。YouTube、Twitterはまだこれからフォロワー数が、もっと伸びてくることを期待しております。「コロナに負けない心のケア」も順調にビューが伸びております。そして、今回クラウドファンディングに初めて挑戦いたしまして、順調に研究費を獲得いたしました。クラウドファンディングは、別にお金が欲しくてやっているというよりは、市民が関心を持ってこの研究を応援してくださるという、そういう市民との対話を促進するということで行っておりまして、その目的が十分に達成されたと思っています。メディア塾を開催して、ジャーナリストとの交流を深め、また、市民公開講座を開いて、研究成果の市民還元にも努めております。以上でございます。御清聴ありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。いかがでしょうか、今の御発表に対しまして御質問、コメントを頂けますでしょうか。根岸先生、よろしくお願いします。

○根岸委員
 根岸です。よろしくお願いいたします。御発表ありがとうございます。ちょっと聞き漏らしたかもしれないのですけれども、31ページのパーキンソン病に対するLCIGについてお尋ねします。この治療法についてなのですが、ここに赤字で書いてあるように、血中濃度が安定し、薬効が安定するという、この効果は非常にすばらしいというように思いまして、これ自体が患者さんのQOLにつながるわけですけれども、その一方で、例えば専用ポンプを使用するとか、あるいは胃瘻を増設するとかということで、例えば生活上の制限だとか、何か生活しづらさみたいなものも考えられるのではないかなというように推測するのですけれども、例えば中止するというようなことがあろうかと思いますが、どういうような理由で中止されるようなケースがあるのかを教えてください。よろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 阿部がお答えいたします。これは先ほど申しましたように、進行期以降になりますと、非常に血中濃度が不安定になるのです。脳からのレセプターの機能が落ちてきますので、内服後バーッと血中が上がって、その後、サッと下がって、非常に乱高下します。それで安定的に血中濃度を保って、非常に有用な治療として、今も広く世界中で使われておりますが、これは胃に穴を開けるわけでして、おっしゃるように、多少の生活の不便はありますが、パーキンソン以外に非常に胃瘻を作る方が今は多いですから、余り大きな問題になっておりません。シャワーとかお風呂もある程度うまくやれば入れますので、余り生活上の不便はないですね。
 それから、やめるというのは、逆に余りなくて、一旦やってしまうと、是非これを続けていただきたいという方が非常に多いのです。

○根岸委員
 ありがとうございます。では、そういう生活上のしづらさというよりも、やはり治療の効果ということを大事にするということでよろしいですね。

○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 そう思います。

○根岸委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。続きまして、花井先生、よろしくお願いします。

○花井委員
 花井です。スライドの52枚目、ドラッグユース関係なのですけれども、若年層で、今、マリファナユースが増えていると、これ、規制法をいろいろ検討しているところだとは思いますけれども、私の経験的な実感からすると、80年代はマリファナユースというのは、割とサブカルチャー的なものでやっていたと。現在は、明らかにそのポップカルチャーのユーザーベース、要するに依存とかではなくて、ポップカルチャーで、確信犯的なユーザーがポップカルチャーに浸透していて、そういう人たちが若い世代にポップカルチャーとしてちょっと浸透していると、少し形態が変わってきているように思うのですね。こういう実態について、そちらの調査の中で、ユーザー層と言ったらまずいでしょうけれども、使用者の層がちょっと、やはりかつてのマリファナユースとは、相当変わっているように思うのですけれども、それはセンターとしてはある程度、この実態調査で把握できるものなのでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所所長
 大変重要な御指摘ありがとうございます。今、手元には、そこまでの資料が私はありませんので、後ほどこれは文書にして、担当の松本部長とも相談の上、御回答させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

○花井委員
 ありがとうございます。だけれども、やはり使い方が、覚せい剤からシフトしているという考え方もありますけれども、使い手の人たちのあり様というのが、変わっているところが分かればと思いました。ありがとうございました。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所所長
 ありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。ほかにはございませんでしょうか。土岐先生、よろしくお願いします。

○土岐部会長代理
 IRUDのところで教えていただきたいのですけれども、IRUDの家系、遺伝子変異候補という言い方が結構多くて、原因遺伝子候補という言い方になっているのですけれども、先ほど小児の場合は、割とはっきり原因遺伝子という表現もあったのですが、やはり神経疾患の場合は、なかなか確定診断は原因遺伝子であるという同定は難しいという、そういうことなのでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 この件は、神経研所長の岩坪から御回答させていただきます。

○国立精神・神経医療研究センター所長(岩坪)
 おっしゃるとおりでございますけれども、IRUDでは新規の病態、症状面等、それから、その遺伝性の場合ゲノムの解析、それが2つの柱になるわけでございます。でも、御案内のとおりで、ゲノムの中には、その病原性が確定しないようなバリアントもたくさん含まれています。これは症例を集積しながら、これはコモンバリアントであろう、これは病原性のバリアントであろうということを、徐々にネットワークの中で詰めてまいりますので、そういうことで、疑われるけれども、まだ確定していると言えないものも含めるので、このような表現になっているものだと思います。

○土岐部会長代理
 そのような中で、家系としての診断率は非常に44.6%と高いというのは、これは症状も併せて確定できるということなのでしょうか、遺伝子変異だけで確定できるということなのですか。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 おっしゃるとおり、これは必ずやはり症状、フェノタイプと、遺伝性変異のセットであるから、率が上がっているということ。それから、何より国内、また場合によっては、国際的なネットワークの中で症例の集積が多くなって、診断に至る率が飛躍的に上がっているということ。主任の水澤理事長特任補佐から伺っております。

○土岐部会長代理
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。ほかにはございませんでしょうか。では、私から1つ、人材育成のところで、コロナ禍にあって、これはいろいろなWebを利用したというお話だったのですが、研修の実績の結果が相当すごい数になっていて、ちょっと驚きました。コロナ禍でこれだけ、逆にコロナ禍でWebになると、これぐらい集まるのかなというように思っていました。一番多いのは、確か、認知行動療法ではないかなと思いましたけれども、去年もちょっと説明を伺ったかと思うのですが、これだけの人が集まって、また、全国に散って行くわけですよね。すると、これは、例えば認知行動療法で言えば、これの均てん化というか、確か、先生方の所でやられている認知行動療法は非常に成績もいいし、非常にスタンダード化した部分が結構あって、均てん化できると、全国に広がるのでいいかなという質問を去年もしたことがあるのですが、実態としてはどうですか。これだけの方が講習を受けられて、地方にまた戻って、このCBTを実際に実践されて、何か非常にいい効果が出ているという実感はありますか。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所所長
 個人的にはあるのですけれども、今、その点はですね、正に研究課題として慶應大学認知行動療法センター、精神保健研究で、今、協同して調査を始めようとしているところでございます。こういう良い治療法が実装化、インプリメンテーションということは非常に大きな課題になっておりまして、JHでもインプリメンテーションに関する研究チームができておりますので、CBTという観点とインプリメンテーションという観点の両方から、この普及について実証的な研究を行うと、正に思っているところでございます。

○祖父江部会長
 前から、実はこの会議では、ちょっと批判的な部分も入ってしまうのですが、こういう研修とか人材育成、それから情報を全国から、例えば患者さんなども全国から集まって来ているので、そこで行った治療が地方へ拡散することによって、これは1つの均てん化の非常にいいツールになると思うのですが、実際として、それがどういう効果をもたらしているのかという、今、先生がおっしゃった実証的研究というのが、ちょっと不足しているなということが、今まで時々出たのです。私、CBTは非常に良い例だと思いますので、進めていただけると有り難いなと思いました。是非、よろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所所長
 是非、頑張りたいと思います。よろしくお願いします。

○祖父江部会長
 よろしくお願いします。ほかにはいかがでしょうか。非常に幅広いお話を頂いたので、どのような質問でも受け付けて頂けるのではないかという感じを逆にしておりますが、いかがでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所所長
 先生が先ほどおっしゃった質問の前半の部分で、参加者が増えたという部分なのですが、医療の均てん化のためには、やはり現場の臨床科の先生が参加しないといけないのですが、そういう先生は東京まで出て来ることが従来できなかった人が多くて、それがWebでできる。それから、私たちは日曜日にも研修をやっていますので。そういう方が非常に多く参加されるようになったということが背景にございます。

○祖父江部会長
 それが今のお話の均てん化の非常にいいツールを得たという感じですね。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所所長
 逆にコロナのお陰で、いい方法が見付かったと考えております。

○祖父江部会長
 これ、是非全国への均てん化の1つ非常に重要なツールで、今後、展開していただいて、このCBTだけにかかわらず、ちょっと裏を取っていただけると有り難いなと思います。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所所長
 分かりました。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 よろしくお願いします。いかがですか、ほかにございますでしょうか。前村先生、よろしくお願いします。

○前村委員
 前村です。Long COVIDのことについてお伺いしたいと思います。35ページで、たくさんの患者さんを診ていらっしゃると思いますけれども、我々の所も多彩な症状を訴える患者さんが来られて困ったりしています。これを見ると、多彩な症状を訴えているのですけれども、先ほどのME/CFSが1つ原因だと思いますけれども、来られる患者の中で、どれぐらいの割合がME/CFSと診断されるのでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 阿部がお答えします。大体6割か7割ぐらいは、割と高い確率でその共通点が見られるという現状でございます。その他、様々な症状を訴えるのですけれども、共通部分は、かなり6、7割はあるというように担当者から伺っています。

○前村委員
 画像で診断するのですか。スペクトを取って、先ほどの。

○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 そうです。その疑いがある場合には画像をお勧めして、やっている場合もあるということでございます。

○前村委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。もう少し時間がございますが、いかがでしょうか。人材育成に入るのかもしれませんが、確認みたいな格好で、私から1つだけ。これはほかのグループ、施設、NCにもお聞きしたことがあるのですが、先ほど少し出ました企業連携ですけれども、企業の方々との人材の交流というか、実態としてどうでしょうか。例えば、ある施設では、研究所に企業の方がどんどん入り込んで、一緒に研究を進めているという事例が、非常にたくさんあるのだということを教えていただいたのですが、先生方の所は、その辺の企業の方々との連携というのは、今後、非常に重要になってくるのではないかというのが、1つの考え方になってきつつあるのですが、その辺はいかがでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 中込でございます。先生がおっしゃるとおり、私どもは企業と産学連携を強化しようということで、今、ルールをまとめているところでございます。ナショナルセンターの中では御存じのように、国循の「かるしおプロジェクト」であるとか、がんセンターも、今、正にベンチャー企業の支援ということで積極的にやっております。私どもも、そういったセンターの先行例がありますので、いろいろ意見を伺いながら、進めているところです。
 具体的には、今、考えていますのは、産学連携を進めるために企業の方の人事的な交流というか、誘致ができないかということで、事務方と話を詰めているところでございます。先生がおっしゃるとおりで、私どもかなり力を入れなければいけないと思っているのは、そこの部分だと認識しております。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。今、先生がおっしゃった国循とか、がんセンターなどは、結構本格的に企業を巻き込んでやっているという状況も見えたりしますので、ナショナルセンターとしては是非、企業と人事というか、人事が動くと、言い方は悪いですが、お金も付いてくると思っておりまして、是非、その辺をお進めいただけると、両方がうまくいくのではないかと思います。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 よろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所所長
 研究所のほうでも、以前から御報告しておりますような、ジストロフィンの核酸医薬品など、製薬企業とのコラボレーションが進んでいる領域ですと、常時、研究員の方が派遣されて、共同研究を何回かやっている事例は増えております。これは理事長が申しましたように、組織的に広げていこうということを相談しているところです。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。是非、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。それでは、そろそろ時間になりますので、何か御質問はよろしいでしょうか。今のセッションを通じてでも結構ですけれども、よろしいですか。どうもありがとうございました。
 それでは、次のセッションに移りたいと思います。次は少し短いセッションですが、2-1から4-1ということで、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項ということで、全体として14分になっております。説明が8分で、質疑6分ということで、かなり短いのですが、効率よくやっていただけると有り難いなと思います。これも法人のほうから、まず御説明を頂きたいと思います。よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター永田企画戦略局長
 それでは、業務に係る評価項目2-1から4-1までについて御説明をいたします。企画戦略局長の永田でございます。まず評価項目2-1、業務運営の効率化に関する事項について、自己評価はBとさせていただいております。中長期目標の内容については、掲げているとおり6点という形になります。指標の達成状況になりますが、経常収支率については、年度計画では100.1%以上としていたところ、実績値で103.8%、達成率104%となっております。後発医薬品については、年度計画90%以上に対し実績値92.5%、達成率が102%となっております。
 次の56ページを御覧ください。医業未収金について令和2年度は0.032%になりますが、それに比して低減し、実績値0.023%ということで、達成度は139%となっております。一般管理費について、目標期間中で令和2年度比5%以上を削減としているところですが、6,600万円余りと、前年度比134万、2%の減となっております。医業未収金の達成要因として、高額療養費受領委任払制度の活用や、文書や電話による催促、新規発生予防策として、電子マネー決済の導入などを図っているところです。
 57ページです。経常収支について、経常収益207億、経常費用199億で、真ん中のグラフに示したように、収支差7億4,900万円。経常収支率103.8%となり、平成30年度から4期連続の黒字となっております。黒字の要因としては、下段のグラフに示すような入院・外来患者数の増、あるいは単価増で医療収益が過去最高額の115億となったほか、新型コロナ患者受け入れによる補助金等約10億の影響により、経常収益が大幅増となっています。
 58ページです。その他の取組を紹介させていただきます。給与制度の適正化としては、令和3年度の賞与として、経営改善への取組や新型コロナ対応に対する職員のモチベーション向上のため、役職にある職員は0.05月引き上げての4.25月分。一般職員は0.1月分を引き上げての4.3月分としております。共同調達の推進として、医薬品においては他のNCのみならず、国立病院機構や労働者健康福祉安全機構労災病院とも共同入札を実施しております。医業未収金に関しては前述のとおりです。適切な診療報酬請求については、高額査定の検証と対策を実施いたしました。その結果、全国査定率0.27%よりも低い0.21%で、前年比でも-0.01%となっております。
59ページです。評価項目3-1、財務内容の改善に関する事項について、自己評価はBとさせていただいております。中長期目標の内容については、掲げられた2つとなっております。指標の達成状況ですが、令和3年度実績で6億8,800万円の解消ということで、残り17億5,600万円となっております。
 60ページです。外部資金の獲得状況ですが、令和3年度は38.8億円程度の外部資金の獲得を達成しております。61ページです。評価項目4-1、その他業務運営に関する事項について、自己評価はBとさせていただいております。中長期目標の内容については、掲げられた4つということになっております。
 62ページです。内部統制の適切な構築については、公的研究に関する説明会の実施や理解度確認テストの実施など。また、調達においては、公告期間を可能な限り長く設定する。あるいは複数業者への声掛け等を実施しております。また、随意契約の適正化について、契約審査委員会における審議を経て、随意契約によらざるを得ないものへの限定を付加ということを行っております。監査室による実地監査の実施、あるいは会計監査法人による実地監査も受審をしております。また、監事による役職員等の面談を実施したり、重要性の高い事象リストを作成し、モニタリングを継続実施。また、リスク管理委員会を開催し、リスク管理を行っております。
 情報セキュリティ対策としては、情報セキュリティ対策推進計画の策定、情報資産の棚卸し及びリスク評価を実施しております。人事の適性化としては、業績評価制度による職員評価の実施、あるいは結果の活用を図っております。また、最近となりますが、医薬品医療機器総合機構や日本医療研究開発機構との人材交流、研究機関とのクロスアポイントメントを実施しているほか、メディカルスタッフ、看護師、事務職等について、NC、国立病院機構、看護大学等の他の機関との人事交流を図っております。母性保護の観点から、業務軽減等の措置を就業規則に定めたり、医師業務マニュアルを統一化し、病棟勤務者の業務軽減を推進したところです。
 施設設備の整理については、令和6年までの4年間で、老朽化した第2研究棟の建替整備を開始しておりまして、初年度の基本設計及び実施設計を実施しております。また、医療機器等購入小委員会にて、緊急性や収益性等を踏まえ、医療機器等の整備を実施したところです。説明は以上となります。よろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。短い時間によくまとめていただいたと思います。それでは、ちょっと時間は短いのですが、質疑応答は6分ぐらいの時間しかありませんが、いかがでしょうか。藤川先生、よろしくお願いします。

○藤川委員
 1つは財務諸表の中の損益計算書で、その他臨時損失6,800万と少し大きめの金額が出ていたのですが、中身を教えてください。
 2つ目ですが、57ページで、いろいろ経常収支率はプラスになっているというような話は出ている一方でが、医業収支の辺りは余り触れられていなかったように思われましたが、7億4,900万の経常収支のところ、補助金が10億ということで、補助金がないとなかなか厳しかったということかなと思います。過去に、病棟のいろいろな再編等を行われて、これからかなりいろいろ努力しようとされていた頃から、コロナがはやってしまったというところもあるかと思うので、ちょっとその努力が中断してしまった部分もあるのかもしれませんが、コロナの影響というものを踏まえつつも、今後どのような取組をされていこうと考えてらっしゃるのかなと思いますので、御説明いただければと思います。よろしくお願いします。


○藤川委員
 この資料ではなくて、財務諸表の4ページ目の損益計算書です。財務諸表と別の資料ですが、その中に、その他臨時損失として6,800万円計上されています。

○国立精神・神経医療研究センター樋山総務部長
 過去の法人の未払金の清算額を計上しております。

○藤川委員
 未払金の清算。内容としては、損失で落とすようなものですか。

○国立精神・神経医療研究センター樋山総務部長
 すみません。ちょっと詳細について、また文書で回答させていただいてもよろしいでしょうか。

○藤川委員
 分かりました。普通、未払金の清算でというのは想定されるものでは、まあ、だから臨時損失になったと思いますが。では、後で御説明お願いします。

○国立精神・神経医療研究センター樋山総務部長
 後で文書でお送りさせていただきます。申し訳ございません。

○藤川委員
 分かりました。

○国立精神・神経医療研究センター永田企画戦略局長
 あと、病院の経営努力のお話は先生の御指摘のとおり、非常に病院でも頑張っていただいております。正にコロナの影響で、補助金があったという意味ではプラスな面があったのは間違いないのですが、たらればの話で恐縮なのですが、なくても結構いいところまでいくように去年は頑張っていただいておりまして。ただ、計算上そこが正確には出ないところではあるのですが、病院としては、かなり努力をされているような状況であります。

○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 病院長の阿部が代わりにお答え申し上げます。一昨年は、トータル収支が6億円の赤字だったのですが、これは、実はコロナ補助金は3億円ありました。病院の赤字は9億円だったのです。差し引きで6億円の赤字ということだったのですが、昨年は、コロナ補助金が10億になりましたので、その分プラス7億円増えているのですが、逆に、病院独自の赤字も一昨年は9億円マイナスだったのが5億円マイナス、そこで4億ぐらい押し戻していますので、今、永田先生がおっしゃったように、コロナ補助金だけではなくて、病院独自の経営改善も大分進んだお陰で、累績赤字の24億円だったものを17億円まで圧縮してきているというところです。

○藤川委員
 確か、コロナ前に、これ以上努力できませんとおっしゃったことが何かとても印象的だったのですが、その後2年ほどコロナが続いてしまったので、またコロナの影響がなくなってからの努力は大変かなと思うのですが、是非、継続的に御対応をお願いしたいと思います。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。では、1点だけ後で文書で御回答いただくということでよろしくお願いします。ほかにはいかがでしょうか、そろそろ時間ではありますが、何か、どうしても聞いておきたいということがあれば。土岐先生、よろしくお願いします。

○土岐部会長代理
 すみません。これは診療科としてのことをお伺いしたかったのですが、先日もコロナの診療の影響が一番大きかったのは耳鼻科が1番で、実は2番は外科で、3番が小児科とかという話があったのですが、基本的に、精神疾患や神経疾患は、コロナの影響が大きそうな気もするのですが、いわゆる、その患者さんの行動変容みたいなもので、今後、患者がどう変わるとかという、診療科全体としての傾向を、もし御存じでしたら教えていただけますでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 阿部がお答えいたします。神経内科はコロナ禍にもかかわらず、この3年間増え続けております。

○土岐部会長代理
 そうですか。

○国立精神・神経医療研究センター阿部病院長
 あと精神科は、外来の精神リハが、ここはやはり減っているのです。ただ、もともと余り多くはないので、さほど大きな影響にはなっておりません。というのは、小児神経も非常に重要な柱の1つなのですが、こればっかりは全国から来ていた方が少し減っておりますが、大分戻ってまいりました。脳外科や外科系は、ちょっと減っているのはやむを得ないかなというところですが、全体的に、うちは大きな打撃は受けていない。むしろちょっと増えているというように申し上げてよろしいかと思います。

○土岐部会長代理
 わかりました。私は外科なのですが、やはり外科の影響が大きくて、意外に神経系も少ないのですね。よく勉強になりました。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。まだまだ意見交換の余地があると思うのですが、時間が過ぎてまいりましたので、最後のセッションはこのぐらいにしたいと思いますが、何か、どうしても御発言ということはありますか、よろしいですか。ちょっとこのセッションは、実はいろいろな観点からの話がまとまっておりますので、本当は、もう少しディスカッションの時間が長いほうがいいかなというように思っているのですが、時間の設定がそうなっておりますので、そろそろ、このセッションを閉じたいというように思います。ありがとうございました。
 それから、これはいつもあるのですが、全体の振り返りの質疑というコーナーを設けているのですが、いかがでしょうか、最初の所から今までのセッションについて、何かお聞きになりたいことがあれば御発言していただければと思います。よろしいですか。特にないようでしたら、今までの議論で大体納まっているというように理解させていただきます。ありがとうございました。
 最後に、法人の理事長先生と監事のほうからヒアリングを行いたいと思います。まず法人監事の先生のほうから、監査等を踏まえた法人の現状の業務運営の状況や、今後の課題や改善方針等について、もしコメントをしていただけましたら有り難いと思います。

○国立精神・神経医療研究センター菱山監事
 監事の菱山と申します。まず、令和3年度の監事監査の結果ですが、監査報告書に記載したように、指摘すべき重要な事項は認められず、事業報告書なども、適切な記載がされておりますことを御報告申し上げます。
 監事に就任いたしまして1年が経過いたしましたが、センターの皆様が熱心に研究や医療に取り組まれていることを感じております。私が分かることで申し上げますと、精神や神経の疾患がある方へのコロナの医療を提供することは非常に難易度が高く、社会的に大変意義が大きいことだと感じ、敬意を表したいと思います。
 組織の課題を挙げるとすると、やはり人材に関することであり、財政難の中で、いかに魅力的な人に来ていただき、今いる方を含め、持続的に安心して研究や医療に打ち込める環境を整えていくことが最重要と感じております。これについては、センターで問題意識もお持ちでありますので、具体的な施策に注目してまいりたいと考えております。以上となります。

○祖父江部会長
 非常に簡潔におまとめいただき、ありがとうございます。何か、審査委員のほうから、今の御発言に対してコメントや質問はありますか、よろしいですか。
 それでは、最後に中込理事長のほうから、今日の議論、それから今後の展望なども踏まえながら、最後に一言頂けると有り難いというように思っておりますので、中込先生、よろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事長
 ありがとうございます。本日は長い時間にわたり、活発に御意見、御議論いただきまして誠にありがとうございます。私のほうから、議論を踏まえて感じたことと、今後の展望などについても少し触れたいと思います。
 先生方から御指摘がありましたマーモセットの研究ですが、私は精神科医なのですが、非常に大きな期待を持っています。と申しますのは、精神疾患のモデル動物というのは、なかなかうまくいかなかったというのが実際のところでありまして、こういった霊長類の動物モデルで、なおかつその行動について、かなりヒトと共通するフェノタイプが見られるということは私どもにも分かってきております。一応、自閉症モデルというようになっていますが、私どもから見ると、何かマーモセットが自閉症になっているというよりは、やはり特徴的な症状である社会認知の問題を抱えていると、そういう意味では、必ずしも疾患にはこだわらなくてもいいのですが、このマーモセットの持つ社会認知の問題の脳の病態の研究へとつなげ、そして今、画像研究の中では、こういったマーモセットとヒトの共通バイオマーカーとしては、神経回路についての研究は進んでいますので、そことタイアップすることによって、正に私どもが目指している基礎から臨床への連携といった形での研究は進むということに期待しているところです。
 2番目に、もう1つ御指摘がありました睡眠休養感という点です。睡眠休養感というのは、確かに主観的な指標なのです。これはちょっとどうなのかなというように思われる方はやはり多いと思うのですが、精神科の領域では、やはり患者さんの主観というのは非常に重要だというのは、精神保健研究所の金所長からもお話があったとおりでございますが、一方で、実は精神科医の我々も、その主観的な感覚というものについて、若干の懸念があります。それは何かというと、個人の中での主観的な変動というものは、ある程度信頼できるのだと思います。ただ、個人間の比較ということになると、例えば、こちらのAという方が幸せ、Bはまあまあといったときに、Aは本当にBより幸せかという比較の部分は大変難しいというように考えています。そういう意味で、ちょっと矛盾する表現ではありますが、そういう主観的感覚の客観的指標といったものの研究が、今後は重要なのだろうというように思いました。ありがとうございます。
 それから、こちらの精神保健研究所を中心に、研修は以前から非常に熱心にやっていますが、祖父江先生が御指摘のとおりで、私どもがこの研修をしてアンケートまでは取るのですが、それは果たして、受けられた方が地域でどのような活動につながっているかというところの調査が不足しているということで、今、CBTを1つのモデルにして、そういった調査を進めるということで、我々がやっている活動が、どのように、本当に世の中に均てん化されているのかということを、目の当たりにしていきたいというように考えております。
 最後に、レジストリの問題も、実はセンターとしては、この基盤研究というのは極めてNCのミッションに合っているというように思っていますが、出口の部分というのは、なかなか難しい部分がございます。ここについては、今後とも、どのような形でレジストリ、利活用していただいて、そして、日本全体の研究の底上げにつなげていけるかということを真剣に考えていきたい、そのように思っております。本日は、本当に貴重な御助言をありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常にいいおまとめを頂いて、今後の展望につながるおまとめであったと思いますが、これは精神・神経センターに限らず、あるいは我々の大学も含めて、非常に重要な課題になってきているというように思いますので、来年、再来年と楽しみにしておりますので、また新たな展開を期待したいところでございます。本当に、長時間ありがとうございました。我々も、非常に勉強しながらやらせていただいたというように思っております。改めてお礼を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。最後に、事務局のほうから。

○大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 最後に、事務局から今後の流れについて御連絡させていただきます。本日、御議論いただいた令和3年度業務実績評価については、今後、本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメントなどを踏まえ、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について法人に通知するとともに公表したいと思っております。委員の皆様におかれましては、事前に電子媒体でお配りしている評定記入用紙に必要事項を御記入いただき、8月4日木曜日に予定しておりますJHに関する審議を踏まえ、8月12日金曜日までに、事務局宛てメールにより御送付いただきますようお願いいたします。なお、本日、決定した内容については、後日、委員の皆様にお送りいたします。
 次回の予定ですが、8月4日木曜日13時半から、国立国際医療研究センター及び国立がん研究センターの評価に関する審議を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。本当に、長時間にわたりありがとうございます。本日は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。