第25回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和4年7月26日(火) 14:00~18:02

場所

オンライン開催

出席者

委員

議題

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)国立研究開発法人国立循環器病研究センターの令和3年度業務実績評価について
    2. (2)国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの令和3年度業務実績評価について
    3. (3)その他
  3. 閉会

配布資料

国立研究開発法人国立循環器病研究センター
資料1-1 令和3事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 令和3事業年度 業務実績概要説明資料
資料1-3 令和3事業年度 財務諸表等
資料1-4 令和3事業年度 監査報告書
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
資料2-1 令和3事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 令和3事業年度 業務実績概要説明資料
資料2-3 令和3事業年度 財務諸表等
資料2-4 令和3事業年度 監査報告書

議事

第25回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

○大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 それでは定刻となりましたので、ただいまより第25回国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会を開催いたします。新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンライン会議とさせていただいております。委員の皆様には大変お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。議事進行役を務めます、大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室の武藤と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、全ての委員の方に御出席いただいておりますので、会議が成立することを御報告いたします。なお、中野委員は16時20分頃に御退席予定です。また、組織改編により、本年6月28日付けで当室は大臣官房厚生科学課の所管に変わっており、大臣官房厚生科学課長に伯野春彦が着任しておりますことを御報告いたします。
 続いて、本部会の開催に当たり、厚生労働省危機管理・医務技術総括審議官の浅沼より挨拶申し上げます。

○浅沼危機管理・医務技術総括審議官
 危機管理・医務技術総括審議官の浅沼です。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中お時間を頂き、誠にありがとうございます。
 本部会において御議論いただきます国立高度専門医療研究センターにおいては、令和3年度から第3期中長期目標期間を迎えたところであり、それぞれの法人が使命である研究開発や医療の提供、人材育成等に尽力しているところでございます。そうした中で、法人の取組を更に良いものにするため、委員の皆様の御専門のお立場から令和3年度の業務実績に関して御議論を頂き、目標達成に向けた課題等について御意見や御助言を頂けますと幸いです。
 本日は、国立循環器病研究センター及び国立長寿医療研究センターにおける業務実績評価について、御議論を頂きますようお願いを申し上げます。また、来週も2日にわたり、その他4センターについても御議論を頂く予定としておりますので、よろしくお願いいたします。簡単ではありますが、私からの御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 それでは本日のオンライン会議の進め方について説明いたします。マイクの設定についてですが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際はZoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、部会長による指名を受けた後に御発言をお願いいたします。その際は、マイクのミュートを解除していただきますようお願いいたします。御発言の際は、必ず冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明される際には、資料番号と該当ページを明示いただきますようお願いいたします。また、御発言終了後は再度マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。なお、進捗管理のため、事務局よりZoomサービス内のチャット機能を利用して経過時間等を画面に表示させていただきますので、御承知おきいただけますようお願いいたします。
 続いて、本日の議事を説明いたします。本日は国立循環器病研究センター及び国立長寿医療研究センターに関する令和3年度業務実績評価に係る意見聴取を行います。評価に係る意見聴取の流れについては、評価項目ごとに法人から説明をしていただいた後、委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。
 それでは、本日の会議資料の確認をお願いいたします。委員の皆様におかれましては、お手元に議事次第、資料1-2、資料1-4、資料2-2、資料2-4を御用意いただいておりますでしょうか。その他の資料については、事前にお知らせいたしましたURLより閲覧していただくようお願いいたします。
 評定記入用紙については、様式の電子媒体を送付しておりますので、そちらに御記入いただき、事務局に御提出をお願いいたします。また、本年度より評定記入様式を変更しております。評価項目の1-1から1-3については、これまでどおり評定とコメントを付していただきたいと思いますが、1-4以降については評定を付さないこととし、業務実績に関する御意見や、法人の自己評価及び説明等について御意見がございましたらコメントを御記入いただくようお願いいたします。なお、全項目に共通いたしますが、NCによる自己評価が適当であると考えられる場合は、御記入いただかなくても結構です。
 資料の閲覧方法について御不明点がありましたら、チャット機能で事務局までお申し付けください。事務局からの説明は以上ですが、何か御質問等はありますか。よろしいでしょうか。総括審議官の浅沼については所用のため、ここまでで退席いたします。
 それでは、以降の進行について、祖父江部会長、よろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 それでは議事に入ります。先ほど御紹介がありましたように、国立循環器病センターの令和3年度の業務実績評価について、御議論をしていただきたいと思います。最初に法人の理事長の大津先生から御挨拶を頂くことになっておりますので、大津先生、一言御挨拶をお願いできますか。

○国立循環器病研究センター大津理事長
 理事長の大津です。本日は当センターの業績の評価をする機会を頂き、誠にありがとうございます。私は昨年4月に理事長に就任いたしました。私の使命は、現在の移転・新築で得た最高の環境を、研究面、医療面でこれまでの良いところは更に伸ばしつつ、改革すべきところは果断に改革を行い、名実ともに世界最高レベルの研究機関とすることであると思っています。そのために、私が今までの研究生活から考えていたこと、センター管理職約180名との個別面談で把握した現状を踏まえ、今年2月にセンターが重点的に取り組んでいく事項を、大津ビジョン「循環器領域における世界最高峰の機関を目指して」の形で取りまとめ、私の経営方針を全ての職員に対して明らかにしました。現在私の直轄でプロジェクトマネジメントオフィスを設置し、マイルストーンを明らかにしたロードマップを作成するなど、進捗管理を行い、ビジョンの実現に向けて取り組んでいるところです。本日の委員会で委員の先生からいただいた御指導、御鞭撻を踏まえ、更にセンターが発展していくよう取り組んでまいる所存ですので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、私から特に令和3年度の業績に関連して、4点ほど申し上げます。1点目は、世界初の動圧軸受式連続流式補助人工心臓の開発から臨床研究へと発展した画期的な結果です。世界初の体外設置型動圧軸受式連続流式補助人工心臓について、令和3年3月に薬機承認、同9月に保険償還を取得し、日本で唯一使用可能な体外設置型連続流式補助人工心臓として臨床使用が開始されました。また、抗血栓性、長期耐久性に優れた長期使用可能な超小型ECMOシステムについては、医師主導治験を継続しております。そして、今後の薬機承認、保険償還に向けて最終評価を実施中であり、これらの結果は重度の心臓疾患を有する患者さん、そしてコロナ感染患者の治療にブレークスルーをもたらす画期的なことと考えています。
 2点目は、当センターの研究者の研究成果が国際的な著明な学術誌に相次いで掲載されたことです。具体的には、心腔内の血流と心拍動の開始による物理的応力を化学シグナルに変換する仕組みを解明した結果がScience誌に掲載されました。また、AIによる熱中症発症予測モデルと心停止発症予測モデルを世界で初めて開発した成果が、Nature Communications誌に掲載されるなど、卓越した研究成果を残すことができました。
 3点目は、当センターが中心となり進めている科学技術振興機構のプロジェクトである共創の場形成支援プロジェクトです。共創の場として参画するグローバルバイオコミュニティが内閣府より国際バイオ拠点として国内2拠点のうちの一つに認定されました。また、全国共用利用を目的とした最新鋭のイメージング機器を7台設置して、健都イメージングサポート拠点の運用を開始したことは、当センターのみならず、我が国の研究者の研究環境に顕著な改善をもたらす画期的な取組だと考えております。
 4点目は、世界最高水準の高度専門的な医療の提供です。具体的には、当センターの重症心不全治療に関し最新補助人工心臓の実施数はアジア太平洋地域でもトップレベルで、世界でも極めて少ない小児に対する植込みも行っており、いずれも術後成績は良好です。また、昨年より心臓移植を目的としない補助人工心臓治療であるDestination Therapyも施行しており、国内では一番多く実施しております。また、神経難病CADASILに対する世界初の疾患修飾薬や、脳梗塞急性期に対する新規tPAテネクテプラーゼに関する医師主導治験、更には難治性肺動脈性肺高血圧症に対する新たな治療の選択肢となる世界初の肺動脈自律神経叢除神経治療を特定臨床研究として実施しております。これらの成果は、世界的な雑誌であるNewsweekのWorlds Best Specialized Hospitals 2022において、心臓病の専門病院としては世界22位、アジア1位、もちろん日本第1位の評価を頂くことになりました。
以上、昨年度の業績について簡単に御紹介いたしました。本日は御審議をよろしくお願い申し上げます。

○祖父江部会長
 大津先生、どうもありがとうございました。まとめて全体像をお話いただいたので、我々のほうにも非常にインパクトがありましたし、理解が進む内容になっていると思いました。どうもありがとうございました。
 それでは、実質的な議論に入りたいと思います。まずは、評価項目1-1及び1-2を説明していただきます。「研究開発の成果の最大化に関する事項」ということで、主に研究を中心にお話いただきますが、時間が限られておりまして、全体で38分という非常に短い時間です。まずは、法人から20分で説明していただき、その後、質疑応答を18分という流れで進めていきたいと思います。JHとも関係するのですが、連携推進本部、特にJHについて事務局から補足があります。武藤さんから簡単にお願いいたします。

○大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 事務局です。令和2年度に立ち上げられた医療研究連携推進本部、通称JHにつきましては、6NC共通の実績となっており、資料の内容や説明も統一的なものとなっているため、昨年度と同様にJHの本部長が所属していらっしゃる国立国際医療研究センターに関する審議の中で、8月4日(木曜日)に実施したいと思っております。そのため、本日審議を予定している国立循環器病研究センター及び国立長寿医療研究センターにおける研究開発の成果の最大化に関する事項と評価に係る御意見につきましては、8月4日のJHに関する議論を踏まえて実施していただきますよう、お願い申し上げます。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。JHについては、データも少しずつ出始めているようですので、また活発に議論をお願いできたらと思います。それでは、ポイントについて法人から説明いただけますか。よろしくお願いいたします。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 国立循環器病研究センターの研究所長の望月と申します。よろしくお願いいたします。資料1-2に沿いまして、業務実績概要を説明いたします。
 評価項目1-1、戦略的かつ重点的な研究・開発の推進に関しましては、自己評価をSとしました。3ページの指標の達成状況ですけれども、100%、116%、難易度「高」の状況で達成しましたのでSとしました。
 4ページ、評定の根拠ですが、先ほど大津理事長から申し上げました私どもの成果を、左側の根拠の所に挙げています。世界初の動圧軸受式連続流式補助人工心臓や膜型肺を持ち運びできる程度まで超小型化してECMOとして開発しているなど医療機器開発を推進しています。また、2つ目のポイントとして、世界初となる基礎研究成果の拡大及び世界的トップジャーナルへの掲載、3つ目として、私どもが創薬開発に力を入れております基盤研究を推進できたことを3つ目の根拠としています。
 5ページ目から具体的に説明をいたします。私ども国立循環器病研究センターでは、真ん中に書いてありますように、連続流式動圧軸受式ポンプと膜型人工肺を、心臓、肺に関して中心的に開発を進めてまいりました。先ほど申し上げましたように、この2つを組み合わせることにより、[1]COVID-ECMOの特定臨床研究を行うことができました。また、この2つを組み合わせることにより、[2]の写真に掲載してありますように、超小型のコンパクトな持ち歩き可能な緊急時に登載可能な超小型ECMOを使った医師主導治験を展開して、24症例のCOVID感染症に対して救命を行うことが可能となりました。また、[3]に書いてあります全く同様な動圧軸受式ポンプを利用しました超小型、1円玉のちょうど2倍くらいのサイズの体内植込み型の小児用の人工心臓を開発しております。その動物実験を用いて、さらにヒトへの応用ができる段階にまで達しているということで、これを根拠としております。
 続きまして、6ページです。左側がScience誌に掲載された結果です。簡単に説明申し上げますと、左下に書いてあります枠内、白線で書いてあるところが、小型魚類ゼブラフィッシュの心臓ですけれども、ここに黄色の矢印で示されている所、心房―心室間腔に弁が形成されます。この房室間の弁形成が血流依存性であることが分かりました。御存じのように、心臓は拍動とともに心臓内の血流がありますので、血流を止めた場合には、下段に示しますように弁形成が阻害されます。拍動性すなわち心拍依存性に血流が生じ房室間の二方向性血流依存性にカルシウムが上がることで、ちょうどこの部位に弁が形成されるということを証明することができて、これがScience誌に掲載されることになりました。また、右側を御覧ください。図として右下に書いてあります、これがクライオ電顕を用いた構造解析の結果です。なぜこれが重要かといいますと、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体の1つであるチトクロムCオキシダーゼ、酸化的リン酸化に必要な構造タンパク質です。これがないとATPが作れませんので、全身の中でエネルギーを作ることができなくなります。私どもの体の中で毎日50kgから60kgのATPを作っています。その中で最終的にこれがないと体が動かないということになりますので、本当に大事な結果を見出すことができたと考えております。これは、全身のミトコンドリア疾患に対しての治療薬の開発につながるということで掲げております。
 7ページです。私どもは公衆衛生、予防医学、劇薬に関する研究も、研究所内では展開しております。左側に書いてありますように、熱中症の発症数を大体12時間ごとに高精度に予測するAI開発に成功しました。これを開発したきっかけですけれども、東京オリンピックが開催されるときに、熱中症を予防するためにはどうしたらいいかということで、国レベルの集まりによって、こういう予測ができれば非常にいいということで、私どもが開発した経緯があります。詳細は割愛しますが、左下の図を御覧ください。マルで囲まれている所が上段と下段にあると思います。上段は、従来の予測値と実測値が書いてあります。実測値が黒線で、予測値が赤になります。赤線と黒線が乖離しています。これは、従来の分析である回帰分析で行ったものですが、下段に示しますように、私どもが解析したAIを用いた解析によりますと、実測値と予測値がほぼ一致、つまり、熱中症の発症を予測することができるという結果を『Nature Communications』に発表することができました。また、右側を御覧いただきますと、今度は心停止の発症数を12時間ごとに予測するAIの開発に成功したという成果であります。これは、日本全国のほぼ8,000万人の基礎データを解析することによって、実測値と予測値に乖離があるかどうかということを調べています。左側が従来の実測値と予測値、緑のマルで示していますように、実測値の黒点が予測値の赤と乖離していることが御覧になれると思います。一方、右に示しましたように、緑の枠内の実測値と予測値はほぼ一定になり、つまり、私どもが開発したAIの予測モデルが非常にヒットしていることが分かります。
 以上のように、今回掲げました1番のポンプ、2番の基礎研究、3番目の社会医学、いずれの面でも、研究所内で研究を推進することができましたことを、ここで改めてまとめさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 続きまして、オープンイノベーションセンター長の宮本より、評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備を説明させていただきます。10ページを御覧ください。中期目標は、オープンイノベーションセンターの機能を活用し、産学連携を進め、最先端医療・医療技術の開発、画期的な研究成果の実現と診療技術の高度化に取り組む。そして、創薬オミックス解析センターの機能整備、臨床研究の基盤整備、循環器疾患情報の収集、知的財産の活用、研究成果の社会導入、人的交流の基盤構築を目指しています。また、住民参加型の研究基盤の形成を挙げています。指標の達成状況は、表にお示しするように9項目全てが100%以上でありました。
 11ページを御覧ください。指標の9項目の中で、ファーストインヒューマン試験実施件数、医師主導治験実施件数、臨床研究実施件数、特定臨床研究の実施に伴い発表した質の高い論文、主導的に実施した臨床研究(特定臨床研究等)、共同研究(共同研究契約を締結したもの)の6項目においては、120%以上の達成率を示すことができました。さらに、共創の場が内閣府から国際バイオ拠点に認定され、本格支援に移行したこと、都市部地域住民による心不全等と認知症コホート研究を開始したこと、国循型オープンイノベーションの推進による社会実装を進めたことから、自己評価をSといたしました。
 では、個別の御説明をしたいと思います。12ページをお開きください。COI-NEXTとして採択された共創の場のバイオ分野として、後に述べますこれまでの事業が認められ、関西圏のBiocKに参画することができました。そして内閣府から国際バイオ拠点、国内2拠点のうちの一つに認定され、COI-NEXT事業として本格支援へと移行することができました。具体的に行った事業としましては、最先端のイメージング機器を複数台設置し、企業・大学、海外を含め、どこからでもリモート操作ができる全国共用の研究機器から成るイメージングプラットフォームを構築いたしました。また、オールスター研究センターの若手研究者の発掘、育成を積極的に行っています。
 さらに、右に示しますように健康・医療データプラットフォームの形成と、デジタルヘルスの実現にも取り組んでいます。子供と保護者の健康支援という学校健診、母子手帳情報を活用する研究事業を昨年度開始いたしました。同時に、高齢者の健康情報、医療情報を一元管理するプラットフォームの形成に着手しています。これにより、乳幼児から高齢者までライフコースを俯瞰できるヘルスケアモデルの開発、産学連携による研究開発のプラットフォームが構築できました。
 13ページを御覧ください。吹田研究は1989年から続いている住民コホート研究ですが、高血圧や糖尿病、脂質異常症など様々な古典的リスクのエビデンスを創出し、これまでに多くの診療ガイドライン、健診の手引、健康日本21などを作成する際のエビデンスとして活用されてまいりました。一方、口腔健康、睡眠など、様々な個別研究がその中で行われてきました。今回、これを包括的に解析できるデータベースを作成いたしました。これによって従来のリスクでカバーできない、いわゆる残余リスクの研究、あるいは人工知能を用いたリスク予測モデルの開発が可能になります。そして、右に示しますのは、65歳以上の準高齢者及び高齢者を対象とした、心不全と認知機能低下リスクの解明を目的とした住民参加型のコホート研究です。これを昨年度立ち上げました。このコホート研究では、感覚器を含む様々な調査を行い、その目的として、医師、医療者だけでなく様々な職業の方が参加して心不全や認知症を予防することができる、そういったことを成し遂げるために必要なエビデンスを創出することを目的としています。
 14ページを御覧ください。企業との異分野融合マッチングや新規事業創出を実現するために、我々は「イノベーションカフェ」を月1回、定期的に開催しています。様々な分野から昨年度は46社の企業に発表していただきました。そして延べ1,646人の方に参加いただきました。さらに、イベント後のマッチング交渉というものを積極的に行い、現在、6社と秘密保持契約を締結し、新たな共同研究が開始できるように協議を開始しているところです。また、2021年度は健都イノベーションパークに進出する企業であるエア・ウォーター株式会社、世界的なベンチャーキャピタルであるPlug and Play Japan株式会社と連携協定を締結いたしました。業種の枠を超えた異分野・異業種の間での交流を進めました。さらに、研究成果を社会実装するだけでなく、研究開発のためにマネタイズすることが重要です。そのために知財契約の交渉体制の強化に努めてまいりました。右のグラフに示しますように、2021年度は大型の導出契約交渉に成功することができました。約1.5億円の知的財産収入を得ることができました。これは大学のランキングに当てはめますと6位に相当するものです。さらに、医療現場のニーズを生かしてオープンイノベーションラボに入居している企業、地元の企業と連携することで、アイディアの提案から製品化までわずか1年間で達成することができました。具体的には高機能レスピレータマスク、「LUFKA」というものの発売に至りました。これは正に、ひとつ屋根の下で異なる企業やアカデミアが研究開発を行う国循型オープンイノベーションの賜だと考えています。
 15ページを御覧ください。最後に、全国の循環器疾患の情報収集事業について御紹介します。日本脳卒中データバンクは、国内最多の脳卒中診療施設が参加する脳卒中登録事業で、我が国の過去20年間にわたる脳卒中の初期重症度や機能転帰、いわゆる予後ですね、患者さんの重症度といったものを調査いたしました。脳梗塞では過去20年間で初期重症度が改善しており、脳梗塞患者の退院時の状態が良くなってきて、入院中の死亡が減少していることが示されました。これは恐らくtPAという薬剤による再灌流療法が寄与しているのではないかと考えられます。しかし、それに反して脳出血に対しては改善がほとんどないということが改めて示されました。今後、この脳出血に対する治療、予後、そして研究開発というものが重要であるということが考えられます。また、我が国の循環器診療最大のリアルワールドデータであるJROAD事業から、心血管疾患と脳血管疾患の関連を、入院時に既往歴として持っている併存症、入院中に発症した合併症の観点から検討いたしました。心血管疾患に脳血管疾患が併存する、または入院中に合併した場合には、入院中の死亡リスクが高くなることが示されました。また、脳血管疾患についても、入院中に心血管疾患が合併することは入院中のリスクを高くすることが示されました。このような情報を活用することで今後も医療体制を作ることに貢献できると考えています。
 以上で、評価項目1-2の説明を終わります。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。大変詳しく教えていただきまして非常によく分かりました。非常に大きなプログレスも出ているようですが、それでは、今の御説明に関しまして評価者の皆様、何か御質問等がございましたら、是非、よろしくお願いいたします。これは、チャット機能で手を挙げていただくのですかね。

○武藤補佐
 挙手ボタンをお願いいたします。

○祖父江部会長
 前村委員、よろしくお願いいたします。

○前村委員
 長崎大学の前村でございます。素晴らしいデータ、ありがとうございます。5ページについてお伺いしたいと思います。心臓関係のデバイスというのはほとんど欧米からのものが多くて、是非、日本でもっと開発していただきたいと思っています。今日は小児の植込み型補助人工心臓の開発の過程を示していただきましたけれども、御質問としては、今、どういう段階なのかというので、心拍出量が十分なのか、血栓性の問題とか溶血性などは応用できる段階にきているかということ。あと、これは小児の補助人工心臓ですけれども、成人についての植込み型の補助人工心臓を同じように開発しているか、お伺いしたいと思います。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 ありがとうございます。まず、小児の植込み型に関しましては中大動脈から大動脈まで試している段階で、十分なフローが取れるかどうか、今、確認している最中です。これは、まだ完璧に心臓を摘出したものに対し、駆動できるかどうかというところまでいっていませんので、最後に心臓を止めて、このポンプだけでいけるかどうかを最終確認中でございます。それから、成人型の植込みに関しては、従来のものですと大体60日という血栓性の評価をできていますが、更にそれを年余にわたってということに関しては、まだこれは評価できていませんのでなかなか難しい。ただ、承認が取れているのは体外式ということで既に取れていますので、これを植込み前の、移植前のブリッジとして使うことに関しては、この機器が本邦、世界初という機器になると認識しています。

○前村委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。それでは、中野先生がお手を挙げておられます。よろしくお願いします。

○中野委員
 川崎医大の中野です。素晴らしい御研究の成果を、ありがとうございます。私、小児科医ですので、資料の12ページにございます、吹田市民母子健康と高齢者健康情報と医療情報を永続的に一元管理ということに興味を持って拝聴させていただきました。私たち感染症の領域でも、例えば予防接種歴をどのように記録して生涯記録に残しておくか、これはなかなか難しい問題であり、個人情報のこともあっていろいろ議論のあるところです。ここで考えておられる吹田市の市民の皆さんの母子健康情報と高齢者健康情報は、特に循環器の領域だと理解したのですが、どのようなデータをどのように活用して、ライフコースにおける健康管理に医療情報と併せて活用しようとしているのか。あと、そのデータの管理者というのは、どなたを想定されているのでしょうか。御教示いただければと思います。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 COI-NEXTのPLをやっています望月のほうから答えさせていただきます。吹田市民には市民のIDという特別なIDがございまして、数十年前から住民の方々がIDを持っています。したがって、その方々が全て持っているデータを吹田市が保存していたもので、それを私どもが保存させていただくということを進めるように、吹田と国立循環器病研究センターの中で進めています。また、老人の方に関して、先ほど宮本OIC長から説明しましたように認知症とか心不全のデータに関して、これも連結していこうと。健康診断の情報と医療情報を連結した形で、国立循環器病研究センターのデータベースに登録させていただくということ。まず、吹田と国立循環器病院研究センター間でデータを保存させていただき、それを将来的に二次利用できるかどうか、そういうところまで進めていきたいと考えています。以上です。

○中野委員
 分かりました。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、次に大西先生、よろしくお願いいたします。

○大西委員
 5ページに戻っていただけますか。超小型ECMOの話ですけれども、治験が始まってから2年がたちますね。治験はどのぐらいの長さを想定されているのでしょうか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 これは、5ページの左下に書いてございますように、特定臨床研究のほうは全て33例終わりました。医師主導の治験のほうは今年で24例を達成して、今、評価中という段階で、令和3年度で24例は全部終わっています。

○大西委員
 ということは、最終評価しているということですね。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 はい。

○大西委員
 最終評価で何を評価されていますか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 多分、有効率を比べていると思いますけれども、合併症が全くなかったということで問題はないと考えて、当然、全てのマッチした症例、同一の疾患に対して、ほとんどコロナですけれども、それに対してどれだけ有効性があったかということをやって、非劣性はないということは確認できていると思います。

○大西委員
 これは省力化が達成されて、1人か2人の先生と看護師さんがいれば稼働できるわけですよね。しかも、長時間の運転が可能だと聞いていますので、今の利用状況を見ますととても必要な機械だと思います。そう思われませんか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 先生のおっしゃるとおり、これが本当に市場で早く出回って、1日も早く回っていただけると本当に救命率が上がるということを私どもは確信していますので、早く評価をしていただいて上市される、それから保険収載されることを望んでいます。

○大西委員
 最終評価というのは、PMDAでやっている評価ですか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 はい。

○大西委員
 PMDAがいいと言わないから、上市できないわけですね。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 いいと言わないというか、慎重な評価をなさっていると思いますが、24例というので、ECMOという、コロナの状況からだけですので、私も人工心肺として評価しているということもありますから、重症心不全に対する使用ということでなく、ECMOに対しては使用できる、そこら辺までいろいろ考えていただいての評価を受けていると認識しています。

○大西委員
 ということは、ECMOでやっているのが失敗だったと、コロナで。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 失敗だったというか、これはどうしても救命するためには必要なもので、全ての状況で使えるということだったと思いますけれども、ただ、これを利用したいというのは、どうしてもコロナの状況下ではコロナの患者さんに使って、救命救急に使いたいということで使わせていただいたというのが実情でございます。

○大西委員
 是非、実用化を急いでいただけるようにお願いします。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 ありがとうございます。

○祖父江部会長

 ありがとうございました。今の話ですが、具体的に最短、いつ頃、承認になるというふうにお考えなのでしょうか。ちょっと、それはまだ読めないですか。

○国立循環器病研究センター南データサイエンス部長
 当センターのARO部門の担当をしています南と申します。ただいまの御質問に対しまして御説明させていただきます。本治験は本年1月14日に治験終了届を提出しています。

○祖父江部会長
 なるほど。

○国立循環器病研究センター南データサイエンス部長
 4月にデータ固定を終了し、総括報告書を現在、作成している段階です。これと平行して、本治験機器の承認申請をしていただく企業と密に連絡を取りながら、申請のタイミングを見計らっているところです。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。

○国立循環器病研究センター南データサイエンス部長
 いつ承認されるのかということについては。

○祖父江部会長
 分からないのですね。

○国立循環器病研究センター南データサイエンス部長
 時期の特定は難しいところがございますけれども、今後も引き続き研究組織、関係者一同協力し、一日でも早い上市を目指して参ります。

○祖父江部会長
 今の御説明で大体分かりました。ありがとうございます。それでは、土岐先生、よろしくお願いいたします。

○土岐部会長代理
 10ページの所です。このデータですけれども、臨床研究中核病院を目指すところから、十分、実はクリアできそうな感じではあります。お伺いしたいのは、特定臨床研究を主導的に実施したのが10件、医師主導治験が4件ですが、これは、この年に新規で新しく始まったものですか、それとも継続しているものも含めての数なのでしょうか。といいますのは、今、特定臨床研究は我々の大阪大学も結構苦労していますけれども、年間20件の新しいのを始めるには結構、皆に頑張ってもらわないといけないかなという気がします。

○国立循環器病研究センター南データサイエンス部長
 データサイエンス部長の南がお答えさせていただきます。基本的に継続中の案件を含んだ数ですが、国循主で新規に立ち上げたものも6件開始することが出来たという形にはなっています。

○土岐部会長代理
 新規案件が10件で素晴らしいなと思ったのですが、臨床研究中核病院を取るのに、あと不足しているというか、この辺りが足りないと思うところがもしありましたら教えていただけますか。

○国立循環器病研究センター南データサイエンス部長
 御指摘のとおり、臨床研究中核病院取得に向け、頑張って年に2~3件の新規の医師主導治験を立ち上げていますけれども、単科の病院ということもあり、リソース的にも苦労しているところです。臨床研究支援部門の人材確保についても、人員要件に規定された人数を集めるということも大変ですが、サポートする研究が増えればさらにまた支援人材が必要となるということで苦労するところはございますが、何とか臨床研究中核病院取得に向け頑張ろうということで、必要な研究は出来るだけ支援したいということで頑張っています。

○土岐部会長代理
 ポテンシャルがかなり高いと思いますので、是非、よろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、深見先生、よろしくお願いします。

○深見委員
 大変、研究が推進していていいなと思いました。6ページのチトクロムCオキシダーゼのことですが、既にアロステリックな活性化剤というものを見出しているということですけれども、この状況というのはもう特許とか、論文はまだですかね。特許申請等ができる状況なのかということをお伺いしたいと思います。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 ありがとうございます。オキシダーゼも化合物がございますので特許申請に入っています。

○深見委員
 これは、既存薬とか、低分子化合物なのですか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 こちらでスクリーニングをした低分子化合物でございます。

○深見委員
 分かりました。ありがとうございました。

○祖父江部会長
 よろしいですか。ありがとうございました。ほかには、どなたか御質問はございませんか。1つ、私のほうからお聞きします。どうもありがとうございました。非常に素晴らしい成果を見せていただきまして非常に感銘を受けました。特にポンプですね。これは皆さんが非常に期待しているところですので、是非、早目に承認を取っていただけると有り難いなと思っています。これはドクターカーですか、運んでおられるようですが、ドクターヘリなんかでも、狭いですけど運べるぐらいの大きさだと思って見ていました。それは余談でございます。
 私の質問というかコメントに近いかもしれませんが、幾つかのコホート研究も進めておられて、これも非常に期待しているところですけれども、多くのコホート研究というか、私、未病という言葉を最近はよく使うのですが、未病の状態というか、病気の始まるかなり早い状態から、健常者の状態から、先ほど小児の場合には非常に若いときから高齢までを一気通貫で見ていこうというお話が出ていましたけれども、いわゆる疾患予防という観点から言うと、疾患になる前のデータが非常に重要になって、望月先生も入っていただいているのですが、ムーンショットなんかでは、今、それのコホートをどう対応していくのか、なかなか日本ではそういう非常にアーリーの時期から、特にウェットの材料ですね、血液とか細胞とかゲノムとか、そういう解析が経時的にできて発症前の状況を把握できるようなコホートというのが意外に少ないのですが、その辺の感覚はいかがでしょうか。望月先生もおられますので、どんな形のコホートを、今、組み立てておられるのかということも含めて、あるいは今後の展開、考え方も含めてコメントいただけたらと思いますが、いかがでしょうか。

○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 宮本のほうから答えさせていただきます。13ページの図にありますように、今回の吹田研究NEXTはバイオバンク同意を同時に取ると説明させていただいています。これは、ゲノム情報も含めてバイオバンクで検体を管理するということで、様々な研究が後でできるように本格的な同意を取るということになっています。また、吹田研究はこれまで2年に1回の健診を行って、そこで採血をした試料を蓄積していくということで行っていました。今回の吹田研究NEXTも、これはベースラインの調査をするだけではなくて継続的な健診を行うものと考えています。ですから、ここで継続的に試料が蓄積されてまいりますので、今、先生がおっしゃったような様々なクラシックディレクトリーの解析、そういったものも可能になるのではないか考えています。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。臨床データは非常にしっかり取ってあるけど、ウェットサンプルがなかなかないとか、ウェットサンプルの取り方も数理的なモデルに落とし込めるぐらいの密度で取っていないとか、いろいろなパターンがあって大変苦労していますので、是非、その辺もお考えいただくと有り難いなということでございました。

○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 バイオバンクのほうと連携することで、試料の確保、そして利用というものを濃密にできるように進めていきたいと思います。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。イメージング拠点なんかの機器を全国的にやるというのも、私は非常に感銘を受けていまして、これも非常に面白い、いいアイディアだというふうに感じています。たくさんいい点がありましたので、ちょっと時間が短くて申し訳ございませんでした。ありがとうございました。ちょうど時間だという表示が出ましたので、何か特別に聞いておきたいという先生はいらっしゃいますか。よろしいですか。もしよろしければ、このセッションはこれぐらいで終わりにさせていただきまして、次の評価項目1-3から1-5ですね、「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」という所に入りたいと思います。これも時間が38分です。説明が今と同じく20分、質疑が18分となっていますので、まずは法人のほうから御説明いただきまして、その後、今と同じような形で質疑応答ということにさせていただきます。それでは、法人のほうから御説明、よろしくお願いいたします。

○国立循環器病研究センター飯原病院長
 病院長の飯原でございます。それでは評価項目1-3から1-5まで続けて20分で説明させていただきます。まず評価項目1-3の医療の提供に関する事項でございます。16ページを御覧ください。指標の達成状況は表のとおりです。この項目の中で120%を超えているのが補助人工心臓装着患者外来管理患者数で、129%となっております。その次は研究開発成果の最大化、業務運営の部分でございますが、これは病院の保険診療の実績でございます。COVID-19の蔓延は病院の運営に大きな打撃となりましたけれども、手術件数は109%、入院実患者数も昨年を上回り101%となっています。
17ページを御覧ください。特に120%を超えているのが、先ほど申しました補助人工心臓装着患者外来管理患者数です。COVID-19感染症が蔓延する中、都道府県からの要請によるCOVID-19患者の受け入れとともに循環器病研究センターのミッションである、高度先進的な医療の継続を掲げて植込型VADを装着した在宅VADを増加させました。また、令和3年5月に保険収載されたDTを行い、増加させました。評定の根拠は下に示しております。
世界最高水準の医療の提供に関しては、最新補助人工心臓HeartMate3実施数はアジア太平洋地域でもトップレベル、術後成績も良好でした。また、世界でも極めて少ない小児に対する植込みを施行し、全例生存し成績は良好でした。さらに、心臓移植は13例行っており、全例が生存ということで、この治療成績は下にグラフとして示しているところでございます。
 18ページの右側です。これは神経難病CADASILへの医師主導治験の開始で、血管/神経再生ペプチド・アドレメデュリンを脳梗塞と神経難病CADASILL(AMCAD試験)に対する治療薬として2つの医師主導治験を実現しています。AMFIS試験に関しては完遂しまして、結果の解析を開始しているところでございまして、CADASILのほうは、これはAMEDの難治性疾患実用化事業として開始したところでございます。こちらCADASILは中年期に脳梗塞を多発して認知症に至る治療法のない神経難病でございまして、今回の医師主導治験の結果が期待されるところでございます。
 19ページにまいります。これは新規tPAであるテネクテプラーゼによる脳梗塞急性期の医師主導試験の開始でございまして、これは外国で現在使われている血栓溶解薬でございますが、現在、日本では使えないという状況でございまして、それを打破するための医師主導治験を開始したということでございます。
 右側は、これは治療抵抗性肺動脈自律神経叢除神経治療、PADNと略しますが、これは肺動脈内からカテーテルの高周波で自律神経を焼灼して、肺高血圧症を改善するという新規治療です。特定臨床研究の先進医療Bとして、令和元年より研究を開始し、令和2年10月より症例登録を開始、令和3年度には8例に対してPADNを施行しているということで、安全性が確認されたところでございます。また、治療後患者4例においてフォロー検査を施行して、血行動態の改善を確認しています。これによって、将来的には、この有効性が確立されれば、既存の治療薬剤の減量や肺移植の回避が期待されるということで、臨床的なメリットが大きく、新たな治療薬として期待されているところでございます。
 20ページの左側です。これは世界最高の専門病院として評価ということでございまして、『Newsweek』のWorlds Best Specialized Hospitals 2022において、心臓病の専門病院として、心臓外科のランクが各々22位にランクインしたという結果でございました。これはドイツの評価会社でございまして、世界中の専門部会が様々な指標を総合的に評価しています。この結果が2022年にこのような形で世界に公表されたということでございました。
 20ページの右側です。これは大動脈解離術後の偽腔拡大に対する血管内治療の中長期成績と安全性に対する臨床試験の結果でございます。大動脈解離に対する手術後に残存する内膜亀裂というのが、これはエンドリークと言われていますが、これが瘤のその後の増大に関与すると言われてきました。それに対して新たな治療として、その亀裂に小口径ステントグラフトを挿入するという治療です。こちらを先進医療として8例に実施して、良好な結果が現在得られているところで、長期成績を観察中でございます。
 21ページです。これは脳神経外科のハイブリッド手術室で、手術支援ロボットを用いた低侵襲心臓手術ということで、現在の治療の流れである低侵襲のワンストップの血管内治療ということで、ハイブリッド手術室で行って、安全性と有効性を融合させる治療ということで、この心臓のほうも、手術支援のロボットを用いた小開胸による低侵襲心臓手術を行ったということでございます。
 右側は、「吹田フレイル予防ネット」事業の立ち上げでございまして、国循の病院が中心となって、この吹田の近隣に、このフレイルを予防するネットワークを確立したということでございます。多職種連携によって、社会復帰のための支援システムを構築していこうということで、この「脳卒中と循環器病克服5か年計画」の中でも、このシームレスな医療体制の整備が重要視されています。そこで国循が中心となって新たな医療モデルを作ろうということでございまして、急性期の脳卒中入院患者直接自宅退院患者を対象とした仕組みでございます。
 22ページ、循環器病の先制医療・個別化医療の実施は、新しい疾患概念RNF213血管症を確立いたしました。これは日本人の2%が保有する遺伝子多型が頭蓋内の血管構築、頭蓋外の頸部血管構築に影響を与えることが明らかになりました。今回、当院でも、このRNF213p.R4810K多型と詳細な症候・画像所見を管理できる登録システムを構築して、このRNF213血管症という新たな疾患概念を提唱しています。また、島津製作所との産学連携活動によって、血液1㎕から1時間以内で本多型を判定できる方法を確立し、脳血管内治療の有効性を判定するという個別化医療を推進しているところでございます。
 22ページの右側で、これは家電の機器分離推定AI技術の活用により、認知機能低下を予測するモデル作成に成功しました。電力消費量の使用状況から認知機能の低下を予測するモデルを世界で初めて開発したということで、今後病院の中での見守りとかにも活用できるのではないかと期待されています。
 23ページです。これはチーム医療・シームレスな医療の提供に関するものでございます。上はハートブレインチームによる心原性脳塞栓予防、国循の心臓内科・心臓外科・脳内科チームによる適切な心原性脳塞栓予防への治療戦略を図っています。また、低侵襲の心臓外科手術による左心耳閉鎖+Maze手術も行い、内科的な左心耳閉鎖デバイスの活用を行っています。
 下は遠隔モニタリング診療でございまして、現在この国循が中心となって地域の開業医と連携したこのモニタリングを行っています。ペースメーカーとか植込み型除細動器、こういうような遠隔モニタリング総数は年間に2,432例ございまして、非常に発展の望まれる分野でございます。
 23ページの右と、24ページの地域医療の連携にICTの活用を目指したものでございまして、23ページは脳卒中や心不全の後の患者のQOLの低下を予防することがすごく大事だと言われていますが、それを患者自身がICTを活用して登録するシステムを開発したというところでございます。また、吹田市民病院と、地域連携医療情報システムを導入して、医療情報の相互共有を開始したところでございます。
 次に、評価項目1-4、人材育成に関する事項にまいります。こちらは幾つか項目がございますが、NC初の特定行為研修修了者の誕生のところで、昨年令和3年度には13名の特定看護師が誕生しております。この間も令和3年度はさらに手順書の改定・新設を行って、特定行為実践件数は前年度比324%増ということで、本格的にこの制度が順調に滑り出しているというところで、より内容も拡大して、区分選択コースも令和4年度より開講する準備を進めておりました。右側は、心不全重症化予防事業における新しい保健指導の指導育成でございまして、保健師、栄養士のレベルアップ講習会や、その内容をYouTubeで配信するなどしています。心不全重症化予防以外にも、認知症やがん予防にも使える指導育成を行って、社会的な啓発活動に国循が中心となって関わっているところでございます。
 次の27ページにまいりまして、この心臓レプリカの開発は、非常に複雑な先天性心疾患に対する外科治療の手術を安全に行う、あるいは技術者の育成に対して院内8症例のシミュレーションということと、東京大学とともに多機能のシミュレータの開発ということでございまして、これからこの複雑な手術が、より患者にとって、あるいは医療者にとっても非常に安全な手術が行えるということで、非常に大きな役割を果たすのではないかと期待されているところでございます。
 次は植込型補助人工心臓管理医、そういう人材育成、次のページのダイバーシティ、それから研究倫理コンサルタントの育成を行っているところでございます。
 最後に1-5、医療政策の推進等に関する事項、29ページからになります。これは国への政策提言で、循環器病対策で推進基本計画が策定され、これから都道府県でもそれが実行されていくわけですが、その中で国循も循環器病対策推進協議会において、当センターが「循環器病情報センター(仮称)」の機能を担い、データベースの管理・運営を行うことを了承されたことは、我々の長年にわたる循環器分野での貢献が認められた特筆すべき成果ということで、PRをさせていただきました。
それ以外にも、医療の均てん化ならびに情報の収集、発信に対しては、様々な世界最大規模の脳卒中・循環器病のデータベースを活用した均てん化の可視化、臨床指標の収集手法の実施とアウトカムとの関係を発信し、国の医療政策への理論的な根拠を提供し、進捗状況の把握を可能とする基盤を提供しています。
 30ページの左側が対策基本法への貢献ということで、令和3年9月に循環器病対策情報推進センターを設置いたしました。このイメージを下に書いております。
 右側、世界最大規模の脳卒中のデータベース、J-ASPECTデータベースを用いた解析でございまして、脳卒中治療施設の専門医数によって、アウトカムがどのように変わるかということを初めて可視化した研究でございまして、今後の医療体制の整備に期待されています。
 31ページには、Close The Gap-Stroke、これは脳卒中医療のガイドラインの遵守率です。これに関する全国的な調査でございまして、急性期再開通療法を対象に21,651件実施して、各指標を守ることによってどれぐらいアウトカムに影響するかということを調べたものでございます。
 右側の急性冠症候群の医療の質に関する研究、あるいは最後の32ページのJROAD-DPC、心不全再入院に関わる医療の質に関する研究ということで、これらは各々異なったデータベースを用いていますが、医療政策の推進にあたっての進捗状況の関連のアウトカムへ与える影響をエビデンスとして発信するということで、政策の推進に重要な役割を果たすものと考えています。私からは以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。時間内にまとめていただき、ありがとうございました。それでは、先ほどと同じように、今の法人からの御説明に対して、質疑応答に入りたいと思います。何か御質問はいかがでしょうか。花井先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○花井委員
 御説明ありがとうございます。先ほどのいわゆる吹田のコホートの話と、今回23ページでpatient-reported outcomeが全体、主にコホート、長期的なこういったシステムとか、その後、吹田市病院との連携を深めるという、幾つかITのコホートデータベースなのかリストと呼んでいいか分かりませんが、そういうのが結構駆使されているのですけれども、例えば、24ページだと、いわゆるパーソナルヘルスレコード的に患者が自分の診療、病診年表等に使えるようなパーソナルヘルスレコードのようなイメージなのか、このいわゆるpatient-reported outcomeは自動的に全部開示され、それが前方で全部見えるとか、そうなっているのであれば、そのデータ自体は患者さんが参照するのではなくて、いわゆる長期コホート研究ができるレジストリ的なコホート研究システムという理解なのか、その辺のPHRとレジストリ的なシステムとの関係というのは、それぞれどのように整理されて運用されているのでしょうか。

○国立循環器病研究センター飯原病院長
 ありがとうございます。すごく大事な点だと思うのですが、23ページのePROの所は、研究ベースでやっている仕事です。具体的には厚労科研とか、AMEDの資金をもらっているのですが、患者さん自身がスマホ上で患者さんのQOLを入れていくシステムになっています。これは、くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞の患者を対象として、22病院でしているシステムです。患者の効用値と書いてありますが、これによって、将来的には国循でもやっているような新規医療技術の開発がどれぐらい医療経済評価の観点から、日本人のデータに基づき、適正な評価に使えるかというのが1点です。
 もう1つは、PHR等の活用です。これは患者さんにQOLデータを入れていっていただくのですが、将来的にはこれに患者の疾患管理システムを入れて、重症化を予防し、できれば必要なときに、患者さんに早期の受診勧奨ができるシステムを考えています。EHRになると、先ほどから話題に出ていた予防の分野とか、そういうフェイズでの適用ということとかも今後考えていったらいいと思うのですが、このePROに関しては、急性期の医療情報と連結することを想定しています。
 その連結の仕方を、先ほどの望月研究所長が主催されている共創の場という大きな研究の枠組みの中で、活用することを検討しています。例えば、急性期病院を退院した際に、診療情報提供書や開示サマリーを、厚生労働省でも標準化する方向で検討しているのですが、まず国循で患者さんが自分の情報をQRコードで読みとって、それを自分で保持できるようになれば、自分の生涯を俯瞰するような医療情報ができると思います。それで、また他の病院を受診した際に、以前の医療情報が閲覧できると、患者さん自身のためにも非常に役立つシステムになるのではないかと考えています。以上です。

○花井委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 花井先生、よろしいですか。

○花井委員
 こういうデータベースで、例えばPMS利用で機能を利用できるとか、HTAになってくると、やはりQOL調査にはpatient outcomeというのは必要があるのだけれども、その使用方法についていろいろなことが思い浮かぶのですが、それぞれのデータベースの目的によっていろいろあって、国循がいろいろな取組をしているので、本当に参考になりました。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、次は前村先生、よろしくお願いいたします。

○前村委員
 直接、御発表の内容とは関係ないのですが、やはり新型コロナの診療への影響というのは、去年、今年と大きいところだと思います。大阪でも昨年、非常に逼迫した時期があったと思いますし、今も逼迫しつつあるのだと思いますが、コロナの患者を受け入れられないというだけではなくて、循環器病の患者の受入制限が発生してしまうというのが大きな社会問題になっていると思いますけれども、国循ではコロナの患者を受けているのかということと、循環器病の患者の受入れの制限をせざるを得ない状況があったかということ、受け入れても急性期の治療に遅延が生じてしまうようなことがなかったかということを教えていただければと思います。

○国立循環器病研究センター飯原病院長
 ただいまの点は、病院も理事長の御理解を得ながら、局長とも相談しながら行政との関係、大阪府からも病床確保要請とか、波が来る度に要請があって、その都度、波ごとに患者さんの状況とかが異なっておりましたので、個別対応を非常に迫られたわけです。国循は一貫して、COVID対応は大阪府の中で最優先の分類ではなかったのですが、それでも受け入れざるを得ない状況です。なおかつ循環器疾患を持っている患者さんというのは、COVIDというのはハイリスクになるので、発症した場合にはやはり重症化して来られる患者さんもいらっしゃるのです。それで、ICUにある程度の病床が入ってしまうと、通常の手術が制限されたという時期もありました。ただ、今日、御参加されている土岐先生が病院長をされていた大阪大学病院が近隣で、COVIDの重症患者を非常にたくさん受けていただいたので、私たちは、本来のミッションに比較的集中できたところもありました。
 しかし、第6波のときは、クラスターが発生したために回復期病床の受け入れが止まってしまって、救急を受け入れられなくなった時期がありました。そのときは、日本中で救急搬送時間がすごく延びて、患者さんが一日搬送されないとか、そういう時期でも、かかりつけの患者さんがCOVIDに罹患した場合には、できるだけ私たちは優先して受けておりましたので、救急の受け入れを断る時期というのは比較的短く済んだと思います。ですので、ほかの救急病院が止まったときは、その都度、大阪の大動脈乖離がほとんど国循に来ていたという時期もありましたので、私たちのミッションを優先しながら、何とか今のところ乗り切れてこられているのかなと思っております。ありがとうございます。

○前村委員
 どうもありがとうございます。

○祖父江部会長
 それでは土岐先生、よろしくお願いいたします。

○土岐部会長代理
 私からは、1つはDestinationのTherapy(DT)のことを教えてほしいというか、今、患者さんが8名施行されたのですが、年齢も引き上げるようなのですけれども、将来、数が増えると病院のほうで管理できるのかという、ちょっとその1点をまず教えていただけるでしょうか。

○国立循環器病研究センター飯原病院長
 DTは先生がおっしゃるとおり、高齢の患者さんとか、悪性腫瘍の既往がある人とか、腎機能障害のある人とか、患者サポートが十分取れない患者さんが対象なので、移植適応にならない重症心不全患者さんのQOLを大きく高める治療ではあるのですが、先生がおっしゃったような懸念点は確かに、学会をはじめ広く議論されていると思うのです。先ほどお話があった治療の後のQOLがどうなのかとか、それの管理を誰がするのかということが、重要な焦点なのです。ただ、DTの場合は、恐らく今のこういう管理施設でない所で将来的に見ていくことになるのではないかなとちょっと伺っているので、こういう患者さんが増えることによって、社会全体の受皿というか、そういうのも同時によく考えて整備していかないといけないなと思っています。ありがとうございました。

○土岐部会長代理
 もう1点よろしいでしょうか。看護師の特定行為のことです。やはり循環器疾患は非常にニーズが高いと思うのですが、現在、領域で人工呼吸器と循環作動薬となっていますが、これはほとんどICUでされているということですか。

○国立循環器病研究センター飯原病院長
 重症の集中治療管理コースのようなのが最初に行われて、今、特定の行為の中で中心静脈の抜去とAラインを取る、動脈ラインを取るのと動脈採血の3つを新しく今年やっています。あとは、教育に回っている方とかもいらっしゃいますが、詳細は看護部長から説明いたします。

○国立循環器病研究センター空山看護部長
 看護部長の空山です。先ほどの御質問にありました人工呼吸器関連、あと循環動態に係る薬剤投与関連については、ICU、CCU、HCUで実践をしております。

○土岐部会長代理
 是非、全国をリードしていただいて、そういう所の特定看護師さんを広げてほしいと思います。よろしくお願いいたします。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。ちょっと追加で1点だけクイッククエスチョンですが、今NCの話がずっと出ておりますが、国循ではNPのほうはどのような状況なのでしょうか。ちょっと一言、教えていただければと思います。

○国立循環器病研究センター空山看護部長
 NPに関しては、現在は0名です。

○祖父江部会長
 そうですか。

○国立循環器病研究センター空山看護部長
 1名が今、大学院の2年目になっております。あと1名が今年度受験予定になっており、NPによる支援も非常に大事だと思っておりますので、順次育成をしていきたいと思っております。

○祖父江部会長
 NCで十分間に合うから、NPは余り必要ないとかという感じではないのですね。

○国立循環器病研究センター空山看護部長
 やはり、専門に特化しているところはあるのですが、ほかの分野でも医学的判断を求められるときがありますので、できればNPの育成も同時に進めてまいりたいと思っております。

○祖父江部会長
 分かりました。ありがとうございます。それでは、根岸先生、よろしくお願いいたします。

○根岸委員
 藤沢タクシーの根岸です。よろしくお願いいたします。今の土岐先生の質問とかぶりました。人材育成についてです。6つの分野から御発表いただきましたが、特に1番の特定行為研修、4番の植込型補助人工心臓管理医、あるいは管理技術認定士、こういう方たちの人材育成というのは、大変、重要性が高まっていると思いますので、こういう方たちが更に増えてくること、あるいは全国に広がっていくことが、これからも推進されていくと非常にいいのではないかと思いました。
 でも、自己評価の所ではBとなっているのですが、個人的にもうちょっと高くていいのではないかなという気持ちがしております。特に評定の根拠というのは「該当なし」となっておりますが、何かその辺りでコメントがあれば教えていただきたいと思います。

○国立循環器病研究センター飯原病院長
 心強いお言葉を頂いて、ありがとうございます。COVID禍で大変私たちは苦戦しており、このルールでいうと達成度の数字がちょっと低めに出てしまったので、ちょっと控えめにBとさせていただきました。COVID禍で本当に受入れができなかったので、私たちはあらゆる機会を通して受入れをしたかったのですが、どうしても院内感染が起こるという危惧があって、特に患者さんに触れるような研修とか受入れに関しては、残念ながらお断りしていたので、その結果として自己評価をこのような形にさせていただきました。私たちとしては、気持ち的にはAでいきたいなというところですので、またよろしくお願いいたします。

○根岸委員
 ありがとうございます。少なくともA以上ではないかなと評価したいと思います。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 それでは、次は藤川先生、よろしくお願いいたします。

○藤川委員
 藤川です。よろしくお願いいたします。新しい目標期間に入って、今まで以上に活性化しているなという印象を受けました。今、御説明いただいた中でも、非常に多岐にわたっていろいろな取組がされているなと感じました。循環器病センターにおいては、もちろん世界トップレベルのいろいろな開発、治療などもされているのですが、特に機器の開発という面で非常に優れたいろいろな活動をされていると思っています。今の評価項目1-3以降の説明の中で、既に病気を発症された方、あるいは治られてその後のフォローアップというようなものはいろいろ開発されているのですが、例えば22ページの各家電の使用状況から認知機能を予測するとか、この辺りはちょっと面白いなと、まだ発症してはいないのかなというところを予測するというものがあって、こういう辺りは非常に興味深く思いました。
 最近は、スマートウォッチのようなものを使って、特に心臓系、循環器系の疾患のようなものをいろいろ予測するような、異常性を感知するようなことが行われているように思うのですが、AppleとかGoogleとか、そういう所がものすごくお金を掛けてやっていて、実際にそれで何か問題を感じて治療を受けたり、手術を受けたという方がいらっしゃると聞いたりもしています。ただ、それの専門性とか医学的な裏付けがきちんとあるのかという辺りで、民間の普通の人間からすると若干心配があります。そのようなところについても目を配って、いろいろな研究が進んでいるのかということを教えていただければと思いました。よろしくお願いいたします。

○国立循環器病研究センター飯原病院長
 今おっしゃったとおり、ウェアラブルデバイスに関する研究については、非常に多くの課題がここで出ています。私たちもOICとか、研究所の皆さんと共同で、あるいは企業、特に国内の企業とも連携しながらそういう課題にずっと挑戦しています。それがすぐに結果に結び付くかどうかは分からないのですが、今回22ページに書いてあるこれも東京電力と連携したものですし、今は多くの企業と連携しながら、例えばドック、国循でも高度循環器ドックとかがありますが、ドックとかの団体からそういうような診断の利用法ができないかという観点でいろいろ試行錯誤しているところですので、また来年度かその次の年に、何らかの成果の一端のような御報告ができたらと思っております。以上です。

○藤川委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 それでは、そろそろ時間ですが、私から1つだけお聞きできたらというか、去年もちょっとお聞きしたことがあります。一昨年でしたかもう一年前だったか分かりませんが、循環器、脳と心臓で法制化がなされましたよね。この新しい中長期目標の期間内に、がんと同じような何か全国区的な一元化したというか、データベースづくり、あるいは、何か将来に向かってのデータづくりのようなことを拠点病院のようなものを作りながらやっていこうというお話が、去年のディスカッションで少し出たような気がしたのです。国循の今の御説明を聞いていますと、コホートあるいはレジストリのいろいろな種類のものが既に、そんなに全国区的なというよりは拠点を決めてというのが多いとは思いますが、それが動いています。それで間に合っているのかどうなのかという感じはしましたが、こういう法制化との関係で何か全国的なスタディー、あるいは患者さんにフィードバックできる、あるいは全国民にプロセスを紹介できるというような、そういうシステムは何かお考えはあるのか、どのような状況にあるのかというのをちょっとお聞きしたいなと思ったのですが。

○国立循環器病研究センター飯原病院長
 これは、30ページに記載したとおりで、循環器病対策基本法への貢献というところで、循環器病対策情報センターというのを設置しています。これまでの検討会等で登録に必要な定義書とかを作成していたわけなのですが、それを更に発展させて、時宜に合った形で登録の項目を今も検討しているところです。都は国の施策の方向等を見据えながら、今までできていない、確かに先生がおっしゃるとおり、多くのデータベースがあるという考えもあると思うのですが、今日、様々な委員の先生方から御指摘いただいた生涯を一気通貫するような、循環器病というのは、予防から考えるとがんよりむしろすごく長い疾患なので、一気通貫するということを考えると、それに対応できるようなデータベースはまだないのです。ですから、そういう意味で、この対策基本法というのは、それに対応する1つの大きなきっかけで、協議会で国循が中心となってそれをするようにというような御下命を頂いて、国のデータヘルス改革に沿った形で進めたいというところです。この対策情報センターは、理事長直轄の組織として動いておりますので、国循として中心的に取り組みたいと考えております。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。非常に期待が大きいのではないかなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、よろしいでしょうか。ちょうど時間が過ぎてしまったのですが、何か御発言はよろしいでしょうか。
 それでは、「医療の提供等、その他業務の質の向上に関する事項」については以上とさせていただいて、評価項目2-1~4-1、結構たくさんあります。業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事業ということについて、申し訳ございませんが、時間が非常に短くなっております。14分ということで、説明が8分、質疑が6分と大変短い時間で申し訳ございません。それでは、先ほどと同じように主任からまず御説明いただいて、その後、質疑応答に移りたいと思います。では、御説明をよろしくお願いいたします。

○国立循環器病研究センター稻川企画戦略局長
 企画戦略局長の稻川と申します。よろしくお願いいたします。まず33ページの業務運営の効率化に関する事項です。自己評価はBとしております。指標の達成状況ですが、経常収支率は97.7%で目標の100%を達成できませんでした。後発医薬品の使用率は達成率106.2%となっております。一般管理費については、目標の内容が中長期目標期間の最終年度の目標になっておりますので達成度は0%というところですが、昨年は5%以上増加しております。
 34ページは、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書です。令和元年の移転・新築に伴い、移転の建物の費用、あるいは医療機器も一斉に更新したこともあり、損益計算書の設備関係費、具体的には減価償却費ですが、かなり高くなっておりますので、その結果の経常収支が8億8,000万円の赤字となっております。
 しかしながら、現金については、34ページ右側のキャッシュフロー計算書にありますとおり、ここに書いてある数字としては、Ⅳの資金増加額のところが12億3,000万円減っていることになっておりますが、実は、その下に書いておりますとおり、現金のうち、30億円を安全性の高い短期有価証券に運用したことにより、このような形になっておりますので、この点を加味しますと、法人の現金としては約17億円増えている形になっております。
 35ページは、経常収支と医業収支の推移です。医業収支のほうが13億3,700万円の赤字になったことが経常収支に影響しているところです。医業収益自体は前年比で6億円増えておりますが、医業費用もほぼ同額で伸びているということで、令和2年分と比べて若干の改善ということになっております。
 これは、これまでも出ておりますとおり、新型コロナウイルス関係で患者の数が減ったことで収益が伸び悩んだことが原因ですが、今後、当センターで令和5年度以降、移転・新築の関係で財政投融資の資金から借りたお金の返済も開始いたしますし、あとで御説明いたします大津ビジョンを実現していくためにも、財源は必要となってきますので、令和4年度の成果が正に正念場だと思っており、大津理事長を先頭に、財務基盤の強化に向けた取組を進めていきたいと思っております。
 それに関連して、36ページにありますのが、経費節減の取組として取り組みました医療材料費削減プロジェクトです。これについては、ここにありますように、他の病院の調達科目をベンチマークとして目標価格を設定し、メーカー及び専門ディーラーとの価格交渉では、事務方だけではなく副院長も自ら参加して交渉を行い、医療材料費削減に取り組んでおります。昨年度の成果として、いわゆるメーカーと直接交渉する品目については、年間で1,100万円の削減、それからSPDの業者を通じて一括購入したものについては、約3,700万円の経費節減となっております。個別の品目で、ここにSやA等がありますが、これはいわゆるベンチマークよりも低い、Sは最小単価ですが、その品目数も増えております。
 これで満足しているわけではないので、引き続き取り組みを強化していくとともに、ここには触れていませんが、昨年度、委託費の節減に向けた対策が検討され、それを受けて今年度に入って外部のコンサルを入れて委託費の見直しに取り組んでおります。ここは新規入院患者増や手術件数増によって医業収益の増加を図るとともに、経費節減の取組も進め、収支両面で医業収支を改善できるように取り組んでいきたいと思っております。
 続いて、37ページは、財務内容の改善に関する事項です。自己評価はBとしております。指標の達成状況は、繰越欠損金の削減ですが、ここに記載されておりますとおり、新型コロナウイルス感染症拡大による影響により、計画より患者数が減少したこともあり、計画額の達成には至りませんでした。
 先ほども申し上げたとおり、令和5年度までは医療機器の減価償却費と建物の減価償却費と両方ありますので厳しい状況が続きますが、令和6年度以降は医療機器のほうは償却が完了する関係で改善する見通しとなっております。足下、本年度の状況ですが、6月までは患者数は昨年度の受診を上回っておりますが、コロナウイルス第7波の到来により、若干、心配が出てきております。私どもとしても循環器疾患の最後の砦としての役割を果たしつつ、国難とも言えるコロナ患者対応を行い、収益に目配りするという非常に難しい課題をいただいておりますが、スピード感を持って解決に取り組んでいきたいと思っております。
 37ページの左下にある外部資金の獲得状況です。これは令和2年度と比較し減少しました。令和2年度はここにありますように、新型コロナウイルス感染症の関係で、先ほども議論のありました医師主導治験の関係で特別にAMEDからお金をいただいたこともありまして膨らんでおりますが、その部分を除けば、令和2年度とほぼ同じ水準を確保しております。外部資金の獲得も財務内容の改善に重要な打ち手になりますので、しっかり取り組んでいきたいと思っております。
 38ページは、評価項目4-1、その他業務運営に関する事項です。自己評価はBとしております。続いて39ページです。この取組としては、冒頭の大津理事長の挨拶にありましたが、本年2月にセンターが取り組む大津ビジョン、「循環器領域における世界最高峰の機関を目指して」というものを作りましたので、詳しく説明させていただければと思います。これは、もちろん対外的に大津理事長のもとでセンターが変わるということを示す意味でも大変重要なことだと思っておりますが、同時に、ガバナンスといいますか、理事長の組織運営方針を組織の末端まで浸透するという意味でも大変効果があると思っております。最近では、職員同士の仕事上の議論の中でも大津ビジョンということを目にすることが大変多くなってきているということです。
 具体的な内容はここに記載のとおりですが、国循が目指す姿として、ここにありますように、1つは、循環器領域で世界最高峰の研究成果やFirst in Humanを含んだ診療実績を有する機関となる。2点目は、産学連携の推進により、研究成果を積極的に社会に還元する。3点目は、我が国のみならず世界から人材を集めるとともに、世界に優秀な人材を輩出するための教育を行い、循環器領域の梁山泊を目指す。この3本の柱を設けております。
 現在、このビジョンを実現するために、センター内に約80のプロジェクトチームが立ち上がっており、プロジェクトごとにロードマップの作成も完了しております。今後、3ヶ月に1度プロジェクトマネジメントオフィスで進捗管理を行い、このプランに盛り込まれた事項の実現に取り組んでいきたいと思っております。
 40ページは、センターが令和2年8月及び令和3年1月に公表した研究所元室長の研究不正事案を受けまして、再発防止策として取り組んだ内容です。昨年7月に「研究実施体制及び組織体制検証会議」の報告書がとりまとめられ、その中で、追加で講じるべきとされた事項については、令和3年度中に対応が完了しております。また、平成30年度に発生した倫理指針不適合事案についての再発防止策も着実に実施いたしました。
 最後に、人事の最適化として、新進気鋭の若手のPI独立型研究室を設置することができる制度を設立いたしました。あと、広報企画室及び国際活動機能の強化を図るための組織規程改正も行いました。SNSによる情報発信も開始いたしました。
私からは以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。ちょうどの時間で終わっていただいたので、各委員の先生からも御質問をいただきたいと思います。いかがでしょうか。藤川先生、よろしくお願いします。

○藤川委員
 2点あるのですが、1点は37ページで、繰越欠損金解消計画、ここでは3億2,300万円がマイナスと書いてありますが、これに対して実績が9億4,700万円となっています。この差額は大体6億円ぐらいあるわけですが、そもそも機器の減価償却というのはある程度見えていたので、この差額はコロナの影響がほとんどと考えてよろしいのでしょうか。
 先ほど、コロナへの対応状況を少し説明していただきましたが、一定の受入れがあったということだったので、病床確保の補助金はどれぐらい受け取っていたのか。臨時の利益として1億5,800万円ぐらい上がっているのですが、それが該当するのかどうかという辺りを教えてください。
 あと、39ページから40ページにかけて、ガバナンスのお話等が出てきて、理事長が変わられて、大津ビジョンという、皆さんの口から出るような、皆さんで一緒になれる目標が立っていることも非常に大きいと思いますし、移転して本格稼働していることも大きいと思いますが、移転があったことに関して、組織の風土が変わったなと思うようなことを具体的に、何か感覚的なものというのは意外と大事なものだと思いますので、そういった印象のようなものがあったらコメントをいただけたらと思います。よろしくお願いします。

○国立循環器病研究センター稻川企画戦略局長
 ありがとうございます。藤川先生がおっしゃいましたとおり、減価償却は当然繰越欠損金解消計画に織り込んでおりますので、これが生じた原因はコロナの影響が非常に大きいと思っております。具体的には、外来の患者数は令和2年度に比べて伸びており、外来収益も伸びたということもありますが、やはり、入院患者がさほど伸びておらず、先ほど、飯原病院長の話にもありましたとおり、転院先のリハビリ病院などでいわゆるクラスターが発生して、患者さんを移せなかったことにより在院期間が延びてしまったという影響もありました。あと、うちの中でも職員の感染などで手術ができなくなったということもあり、そのような影響もあり、診療収益が伸びていないということです。
 それから、お話いただきましたコロナの補助金については、令和3年度に5.1億円、医業外収益として挙がっておりますが、実は、昨年度は、やはり当センターのミッションとして循環器病のほうにしっかり対応していくということで、コロナの重点医療機関への指定を希望しなかったものですから、非常に補助金の単価が安かったこともあり、正直、実際に患者さんを入れた場合の収益に比べてかなり低い額しかもらえなかったということがございます。本年度から、私どもも国難に対応するという意味で、重点医療機関の指定を受けました。足下で患者さんも増えてきておりますが、その辺り今年度は多少、補助金収入が確保できるかと思っております。それが1点目の質問に対するお答えです。
 組織風土の関係ですが、やはり、このような大津ビジョンという新しい方向性を示したということで、職員の意識として、やはり、どうしても私たちはこれまでやったことを変えることに対する勇気が持てないところはありましたが、その辺りは変えるということで勇気を持てたといいますか、理事長はそこをしっかり後押しするという姿勢がはっきり示せましたので、そのような意味で随所に改革マインドができつつあると思っております。やはり、職員自身、そのような意識に変わっていくことが法人が発展していく上で必要だと思っておりますので、今のこの良い流れを持続できるように、しっかり我々としても組織運営に心掛けていきたいというのが私どもの考えです。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。もう1つ、何か質問があったような気がしますが。藤川先生よろしいですか。

○藤川委員
 大丈夫です。

○祖父江部会長
 大丈夫ですか。

○藤川委員
 はい。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。いかがでしょうか。大分、時間も押しておりますが。土岐先生どうぞ。

○土岐部会長代理
 大変、細かいことですが、先日、東京大学が今年、電気代が4億円の赤字が出そうだとマスコミに出ておりましたが、国立循環器病研究センターは結構電気関係が多そうですが、電気代の上昇とかは大丈夫ですか。

○国立循環器病研究センター稻川企画戦略局長
 それは大変重要なお話で、私どもも恐らく、先ほど土岐先生が東大のケースでおっしゃったぐらいの額は増える見込みです。建物は、できたのが新しいこともあり、割と省エネは最新のものにはしているのですが、逆にいうと、その分、節約する余地がないということでもあり、その辺が私どもも頭が痛いところで、何とか良い解決策はないかなと思っております。

○土岐部会長代理
 これは医療界全体でアピールしていかないといけない問題だと。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。私どもも大変困った問題で、どうするかというのはあります。先生がおっしゃったように、全体で考えていく問題だとは思います。私から1つだけ、質問というか、コメントに近いと思いますが、させていただきます。先ほどの大津ビジョン、これは非常に素晴らしいと思ってお聞きしておりました。今、やっておりますこの中長期目標は、国のもので、評価もまとめて厚労大臣が設定するという立て付けになっており、余り職員の全員がこれを熟読して知っている人はほとんどいないのではないかと思います。
 先ほどのお話を聞くと、大津ビジョンはかなり行きわたっていて、「大津ビジョン」という言葉自体もどんどん出てきているということですので、これは理事長先生がガバナンスをきちんとやろうという点では、非常にほかのNCの参考になるものではないかと拝見しておりました。非常に身近に目標を立てている、しかも、小回りよく目標を回転させていくという点では非常に良いと思いました。
 1つだけ質問ですが、先ほど80のプロジェクトを今動かしておられるという、すごい数だなと思ったのですが、これは構成員としては、全員がどこかに入っているという感じなのでしょうか。その中身を少しだけお教えいただけると有り難いなと思います。

○国立循環器病研究センター稻川企画戦略局長
 稻川からお答えいたします。80は、各部門から部門担当的に各プロジェクトで大体10人ぐらいのチームができております。当然、重複で多くに入っている職員もいますので、延べでいくと200人ぐらいかもしれません。ただ、全体で、かなり多くの職員がかかわる形になっております。

○祖父江部会長
 大変、素晴らしいと思います。また来年、その動きがどうなったか教えていただけると有り難いです。どうもありがとうございました。次は、全体を振り返るコーナーですが、何か全体を通じて特別な御意見はありますでしょうか。一応、5分お時間をいただいてはおりますが、時間を過ぎてしまったので十分な議論はできませんが、何か御発言はございますか。今までのところで、全体を通して、一番最初のテーマからずっと、どの問題でも結構です。何か御発言、御質問はございますか。よろしいですか。ありがとうございました。
 それでは、このセッションは、いわゆる質問の中に含まれていたと考えて、進行させていただきます。それでは最後に、法人の理事長である大津先生と、監事の小川先生から、ヒアリングを行いたいと思います。合わせて3分となっておりますが、多少の時間は取っていただいても結構かと思います。それでは、法人の監事より、業務の監査結果等を取りまとめていただきました監査報告に基づいて説明をいただくと同時に、今後の課題、改善方針等についてコメントをお願いしたいと思います。では、法人の監事より御説明をよろしくお願いいたします。

○国立循環器病研究センター小川監事
 監事の小川です。よろしくお願いします。まず、監査の結果ですが、これにつきましては、資料の1-4に記されている監査報告書の記載通り、適正、適法の意見を表明させていただいております。次に、令和3年度について、少しコメントさせていただきます。当センターは、移転に伴い発生した多額の借入金の返済に備えて、業務改善への様々な取組等、数値目標を通じての業務改善に取り組んでいるところです。病院運営においては、入院患者数増加に向けた諸々の諸施策の実施により、業務改善に取り組んだ成果が十分に出てきていると感じております。
 令和3年度においては、先ほどもございましたが、残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、欠損金の解消等業務目標については未達に終わりましたが、安定した病院運営に必要な課題と対応策が全ての役職員に共有されていると感じられますので、業務改善に向けての取組は着実に進捗しているのではないかと思います。また本年2月には組織運営を行う上で取り組むべき様々な課題を「大津ビジョン」に取りまとめられ、全職員が一体となってビジョンの実現に取り組まれていると我々は感じております。監事としては、この大津ビジョンが実現すれば素晴しいセンターになると確信していますので、こういった取組状況については、令和4年度以降についても継続して確認させていただきたいと思っております。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。全体を包括的にまとめていただき、大津ビジョンの今後の展開にも期待するということではなかったかと思います。どうもありがとうございました。これは特にディスカッションはございませんので、最後に、法人の理事長である大津先生から、今いろいろな意見が出ましたので、その辺を踏まえて、あるいは今後の課題、改善方針、大津ビジョンについて触れていただいても結構ですが、お話いただけると有り難いと思います。よろしくお願いいたします。

○国立循環器病研究センター大津理事長
 大津でございます。本日は長い間、我々の業績評価、そして、いろいろなアドバイスをいただき、ありがとうございました。我々は3年前に移転してまいりました。ここの場所は、本当に世界レベルの素晴しい所でございます。それを最大限に活かして、最高の医療、最高の研究をしたいと思っています。移転に伴う借入金は負の部分でございますが、それは診療の拡大、量の拡大、質の拡大、そして知的財産を活用したオープンイノベーションの促進ということで、もちろん、コストカットには取り組みますが、それにとらわれるのではなく、拡大路線でそういう財政的な問題も解決していきたいと思っています。
 そして、更には、今日、先生方から指摘がありましたように、やはり教育というものが我々の大切な使命ですので、ここで教育をして日本各地に送り出して、日本の医療の均てん化を目指すことに全力を尽くしていきたいと思っております。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。大変、素晴らしい資料をいただいたと思います。既に、幾つか出ておりますが、移転されて、私も昨年までの流れと少し違った感じを受けております。良い意味でそれが働いているなという感じが今はしておりますので、更にこれを、大津ビジョンも含めて発展していただけると有り難いと感じた次第でございます。本当に、どうもありがとうございました。これはこちらでもまた議論させていただき、一定の評価をさせていただくことになると思います。本日は長時間にわたり、どうもありがとうございました。それでは、これで終わりにしたいと思います。国立循環器病研究センターは終わります。ここで10分休憩をとっていいですか。

○大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室高野室長
 はい、10分間の休憩とさせていただければと思います。


○祖父江部会長
 分かりました。皆様、どうもありがとうございました。それでは、12分から再開とさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 退室)
(休憩)
(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 入室)

○祖父江部会長
 それでは始めさせていただきます。国立研究開発法人国立長寿医療研究センター令和3年度の業務実績評価について、早速始めたいと思います。本日はどうも大変お忙しいところお集まりいただきまして、先生方をはじめ、皆様本当にありがとうございます。今から約1時間40分、時間をちょっとお使いいただいて、質疑応答に対応していただけると有り難いと思っております。よろしくお願いいたします。
 最初に、理事長先生からの御挨拶をいつも頂くことになっておりますので、荒井先生から、前年度の振り返りと今後の方向性なども含めて、少し御挨拶を頂けると有り難いと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 皆さんこんにちは。御紹介いただきました理事長の荒井でございます。実は4月から研究所長、病院長が変わりまして、また7月から企画戦略局長も変わりました。新しい体制で今日発表をさせていただきたいと思っております。どうかよろしく御評価のほうをお願いしたいと思います。
 スライドが出てまいりますけれども、お手元の資料を御覧いただきたいと思います。概要につきましては今更ですので説明を省略させていただきますけれども、次のスライドです。大きなイベントとしましては、昨年ではなく今年になりますけれども、今年5月に新しい診療棟がオープンしました。この診療棟におきましては、入院患者さんのケアだけではなく研究もするという施設でありまして、特に1階及び3、4、5階に研究スペースを設けており、全ての入院患者さんを対象とした臨床研究を更に加速する環境が整ったと考えております。
 次のスライドです。財務につきましては経常収益・費用が120億円となっておりまして、次のスライドで、このような形で老化研究、認知症研究を中心として、非常に学際的な研究を行うことによって社会実装・国際連携、そしてイノベーションを目指しているセンターであります。次のスライドです。こういった形でセンター内センターを設けているわけですけれども、センター内センターにおきまして、研究を行うだけではなく、各センター間の連携も十分に取りながら、この大きなテーマであります、認知症、運動器疾患、フレイルといった病態に対してアプローチを進めていきたいと思っております。
 令和3年もコロナの影響がかなり大きかったわけでありまして、コロナ病棟を作って対応させていただきました。その間、クラスターを起こすこともなく、患者さんのケアができたということは大変素晴らしいことだと思いますし、研究開発に関しましても、コロナを言い訳にせずに、研究開発を進めていただくことをお願いしておりました。特にコロナによって大きな影響を受けることなく研究開発が進んだことは、大変素晴らしいことだと思いますし、研究所のスタッフの御努力に感謝をしている次第であります。また、この後の発表で触れない点があるかもしれませんけれども、学生さんの実習を多く受け入れました。これにつきましては、ほかの病院がなかなか実習を受け入れていない中、実習を受け入れたことで、大学の教官からは大変感謝をしていただいておりまして、近隣の大学から、あるいは病院から、多くの研修の方々を受け入れたということで、今後もコロナが明けることを祈っておりますけれども、コロナを十分にケアしながら、研究・開発を進めていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。以上です。

○祖父江部会長
 非常に包括的におまとめいただいて、よく分かるインパクトになっていたと思います。どうもありがとうございました。
 それでは最初の項目の「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1及び1-2になります。時間がかなり限られておりまして、全体は38分、説明を法人から20分、質疑応答を18分の形で行います。まず、法人から御説明を頂きまして、その後、質疑応答とまとめてやりたいと思います。御説明のほうをよろしくお願いします。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 研究所長の櫻井です。早速ですが、評価項目1-1、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進を説明させていただきます。自己評価はSとしております。指標の達成状況は、加齢に伴う疾患・病態に関する医療の推進に大きく貢献する成果が4件、原著論文数が327件で、いずれも目標値を超えております。
 次、7、8ページを併せて御覧ください。評定の根拠ですが、以下の4点を挙げております。血液Aβバイオマーカーと患者層別化システムの開発、アルツハイマー病発症リスク遺伝子の発見、認知症及び介護予防を目的とした予防法の開発、さらに老化と睡眠に関する基礎研究において新たな進展がありましたので報告いたします。
 9ページを御覧ください。血液Aβバイオマーカーに関する研究から紹介いたします。本研究の目的は認知症及び認知症リスクを有する高齢者を、私どもが開発しました血液AβバイオマーカーとTauなどの認知症関連血液バイオマーカーを統合して層別化するシステムを開発することです。これらの研究はAMEDから御支援を頂きまして、BATON研究、ストリーム研究として進行しています。対象はAβ蓄積を評価するPiB-PET、Tau及び神経変性を評価するTHK5351-PET、局所ブドウ糖代謝を評価するFDG-PET、脳萎縮を評価するMRIの画像検査が行われました161例で、認知機能を正常の高齢者(以下CN)62例、MCIが13例、認知症86名からなります。Aβバイオマーカーの測定はIPMS-MS4で、p-Tau181、neurofilament light chain(以下NfL)、Glial Fibrillary Acidic Protein(GFAP)はシマを用いて測定し、臨床症状や画像所見との関連を横断的に解析しました。右の下図はPETの結果からAβ病理のネガティブ、ポジティブに分け、さらにCN、MCI、認知症の病態別に血液バイオマーカーの結果を示したものです。AβコンポジットスコアはAβ病理の有無と強く関連しました。しかしCN、MCI、ADディメンチアの間には差がなく、臨床症状とは関連が弱いことが分かります。p-Tau181の成績はAβ陽性者で高値であり、MCI、ADディメンチアであるほど高値でした。GFAPとNFLはともに神経変性バイオマーカー候補ですが、GFAPはAβ陽性のADディメンチアで高値であり、NfLはAβ病理の有無に関係なく認知症で高値でありました。
 また、上の図を見ていただきますと、血液バイオマーカーとATNに対応した脳画像検査との関連を重回帰分析で検討した結果を示しています。AβコンポジットスコアはAβPET画像と相関が強く、p-Tau181はAβPETとTau-PETの双方と強い関連を示しました。GFAPはFDG-PETのブドウ糖代謝領域と相関が強く、NfLはMRIの側頭葉の窩、内側領域の萎縮と強い相関が見られました。同じ神経変性疾患マーカーであるGFAP、NfLでも異なる脳の病態を反映していることを示した世界でも初めての所見でございます。以上のように、世界最高レベルの精度を持つ血液バイオマーカーを組み合わせることにより、PETと同じように認知症のATNの層別化が可能であることを示すことができました。
 次に10ページです。アルツハイマー病発症リスク遺伝子の発見について説明いたします。孤発性アルツハイマー病(以下LOAD)の遺伝因子の発症寄与率は60~80%と推定されていますが、欧米の先行研究でも遺伝因子の寄与は半分程度しか説明できておりません。そこで、本邦で初めて日本人LOAD患者の全ゲノム情報を活用して、日本人に特異的に見られる発症リスク遺伝子変異を解析しました。NCGGで有します全ゲノム情報の解析から、候補遺伝子を抽出し、検証を行いました。その結果、OR51G1遺伝子とMLKL遺伝子の2つの遺伝子に日本人に特異的な新規のLOAD発症リスク変異を発見しました。OR51G1遺伝子は嗅覚受容体関連遺伝子で、改めてアルツハイマー病と嗅覚受容体遺伝子との関連が示唆されました。一方、MLKL遺伝子は細胞腫瘍を誘導する遺伝子ですが、LOADと関連がある変異が2箇所見つかり、機能解析を行いました。右側です。HEK-293スターアイボにMLKL遺伝子を導入して細胞死を調べましたところ、Wild-typeでは25%程度の細胞死が観察されました。P-326Aの変異では、細胞死は優位な抑制を示しませんでしたが、48番のアミノ酸変異、p.Q48Xでは、ペイシコロンによるタンパク合成が阻害され、細胞死が誘導されていませんでした。また、遺伝子ベースの関連解析及び遺伝子間相互作用ネットワーク解析から8個のハブ遺伝子が見つかり、下図に示しました4個のハブ遺伝子は脳に広範に発現していることが分かり、LOAD発症関連候補遺伝子の可能性が高いことが示されました。NCGGの保有するゲノム情報から、R2年度はSHARPINを同定し、R3年度にも日本人特有の新たなLOADリスク遺伝子を発見しました。疾患研究には人種・民族のゲノム解析が重要であることを改めて示し、LOADのクリニカルシーケンスを通して、日本人の認知症の個別化医療につながる知見である画期的なものと考えます。結果は「Molecular Psychiatry」のインパクトファクター16点に掲載されました。
 11ページを御覧ください。認知症及び介護予防を目的とした予防法の開発と効果検証について説明いたします。本研究は地域在住高齢者の大規模コホートを基盤として、デジタルヘルスの推進を目的としております。(1)地域在住高齢者3万6,000人の大規模コホート研究では、R3年度は約2,000名が追加されました。また2,807名で頭部MRIのデータベースを構築いたしました。(2)デジタルヘルス推進の一環として、virtual realityを用いた高齢者の運転技能検査システムを開発しました。高齢者の運転リスクに特化したvirtual reality評価システムは世界でも初めてでございます。上の写真では高齢者がvirtualで運転していて、右折の場面に差し掛かったときの風景を下図に示しております。小さくて見えにくいのですが、トラックの後の赤丸の所にバイクが隠れています。このときの視線の動きから危険を察知できるか否かを自動評価するシステムでございます。本システムを用いて466名の高齢ドライバーの検査を行い、愛知県大府市と連携して行政事業として本システムが導入されております。
 右へ行きまして、コロナ禍でも実施可能な介護予防ツールを開発するために、オンライン通いの場のアプリを大幅に改修いたしました。高齢者の使いやすさが向上し、これまで約2万件以上のダウンロードを得ることができました。また、私どもは、認知症予防のために頭を使いながら運動をする二重課題が有効であることを実証してきました。R3年度は歩行しながら認知課題を実施するスマートフォンとウォーキングポールを連動したIoTデバイスの開発を完了しました。このIoTデバイスは世界でも初めてのものであり、現在、特許申請中でございます。以上のオンライン通いの場アプリとIoTデバイスを用いた自己管理型の活動促進プログラムを開発し、効果を検証するRCTを現在実施しております。R3年度は1,250名を登録し、通算1,640名で割付けが終了しております。
 12ページ、左を御覧ください。R3年度、老化と睡眠に関する基礎研究で、全く新しい進展が認められました。老化に伴い睡眠の質が低下することはよく知られており、その機序を明らかにすることが本研究の目的です。私たちはこれまで長寿遺伝子サーチュイン(Sirt1)の下流遺伝子としてPrdm13を見出してきましたが、視床下部の背内側部のPrdm13陽性神経細胞は興奮すると睡眠応答性が低下すること、またPrdm13の発現/活性量が低下すると睡眠断片化が誘導されることを発見しました。若齢期から慢性的に睡眠が断片化している背内側部特異的Prdm13欠損モデルでは、老齢期に活動量が低下し、体重減少、脂肪細胞の肥大化などが認められ、寿命が有意に短縮することが明らかになりました。睡眠障害が個体寿命に影響する因果関係を実験的に証明した世界的にも類を見ない研究成果でございます。また、カロリー制限により、老化に伴う睡眠の断片化を抑制で金きることも明らかになり、将来的に老人性睡眠障害への介入法の開発が期待されます。これらの研究成果は、high-ranking journalで現在リバイス中でございます。
 続いて、右側を御覧ください。R3年度にはミクログリアを標的としたPETイメージング、長寿オリジナルのファーストインヒューマン試験を始めました。認知症などの神経変性疾患の新たな治療ターゲットとして、ミクログリアが注目されていますが、これまで信頼できる画像バイオマーカーはありませんでした。そこで新たなバイオマーカーとしてミクログリアに特異的な分子、Colony stimulating factor-1 receptorを標的としたPETリガンド、NCGG401を開発しました。NCGG401は前臨床評価にて有効性・安全性が認められ、ヒトにおける特定臨床研究を開始しました。健常者2例の全身評価において、良好な脳移行性を認め、世界で初めてミクログリア機能を評価する画像マーカーとなることが期待されます。評価項目1-1はここまででございます。
 続きまして、15~16ページを御覧ください。評価項目1-2、実用化を目指した研究開発の推進及び基盤整備について説明いたします。指標の達成状況は、臨床研究346件、治験71件、First in human試験1件、企業との共同研究42件、ガイドラインへの貢献6件であり、医師主導治験、先進医療承認件数以外は全て目標値を超え、Sの自己評価といたしました。
 17ページを御覧ください。評価の根拠として、ゲノム医療、バイオバンク事業の整備、研究基盤センターの整備、長寿医療支援ロボットの開発普及及び基盤整備と、アルツハイマー病の血液バイオマーカー実用化について紹介いたします。
 18ページを御覧ください。アルツハイマー病を早期に捉える血液バイオマーカーの実用化についてです。血液Aβバイオマーカー測定システムは2020年に管理医療機器として承認を取得しました。しかし、現段階では血中アミロイドペプチド測定システムとしての承認であり、脳内のAβ病理を推定するアルツハイマー病の補助診断検査としては認められておりません。そこで薬機承認範囲拡大と保険収載を目指して新たな特定臨床研究を行っています。全国3施設の前向き観察研究で、Aβ-PETをゴールドスタンダードとして、血液Aβバイオマーカーの性能を検証しています。GCP準拠レベルで臨床情報を収集し、島津製作所において、Aβバイオマーカーをブラインドで測定しています。R3年度はコロナ禍の影響で若干進捗が遅れましたけれども、目標登録数の80%を達成し、本年9月までに終了の予定です。また保険収載を目指した関連学会との調整も進めています。さらに血液Aβバイオマーカーの性能を検証するため、既存検体を用いて解析したところ、AUCが0.934、Accuracyが0.906と、Natureで発表した性能と同等であることが再度確認できました。このような世界最高水準の血液バイオマーカーの臨床実用化への取組は、本研究とアメリカの1件のみであることから、R3年度の顕著な成果であると考えております。
 19ページを御覧ください。バイオバンクとメディカルゲノムセンターの整備について紹介します。(1)NCGGのバイオバンクは老年病領域のバイオバンクで、世界的にもまれなものでございます。特に日本人、東アジア系人種の認知症の試料・情報バンクとしましては、世界一の研究インフラでございます。R3年度の登録者数は病院から1,168名、研究所から3,610名でした。また試料の分譲本数もトータル6万2,797件でした。右へ行っていただきまして、メディカルゲノムセンターはアジア最大級の認知症データベースをセーブしております。病院から登録された検体の遺伝子解析、オミックス解析を行い、154名で認知症クリニカルシーケンスを対応しました。またメディカルゲノムセンターが構築したmiRNA-eQTLデータベースは、日本人集団における遺伝子多型がmiRNA発現に及ぼす影響をカタログ化したもので、R3年度にWebで公開しました。miRNA-eQTLデータベースは、欧米人のデータベースにもまだ構築されておらず、世界初であります。クリックしてください。これがJAMIA-eQTLデータベースのトップページです。もう一度押してください。ここに検索したいmiRNAナンバーを入力して検索ボタンを押し、関連を見たい認知症病名を選びますと、目的のmiRNAの各SNPにおける発現レベルを検索することができます。さらにそのSNPがどういう意味があるかを調べるために、SNPのIDであるRS番号をクリックしてください。NIHのSNPのデータベースとリンクしており、目的のSNPの詳細を知ることができます。
 もう一度クリック。なお、各認知症例のmiRNA-eQTLデータベースは、誰もがダウンロードして使えるように公開しています。今後は世界中の利用者が増加すると考えられ、研究成果の大幅な進展が期待できます。NCならではの研究基盤と考えています。
 20ページを御覧ください。R3年度には研究を支援する研究推進基盤センターを構築しました。動物実験施設、共同利用推進室、バイオセーフティ管理室などの6部門があり、遺伝子編集技術、プロテオーム解析などの支援を行っています。またCOVID-19に関連した研究のように緊急性を要する課題にも対応しています。特に強調したいのは、動物実験室で立ち上げたエイジング・ファーム、つまり自然老化マウスの育成です。マウスの平均寿命は23~24か月で、最長寿命は38.6か月です。この間の生存率や体重変化などの基礎的データが整備されました。マウスの老化研究では、通常18か月以上の個体を用いますが、NCGGの老化研究では20~24か月以上の老化現象をしっかり観察することが可能です。また尾静脈から採血をすることが可能であり、微量の血液検体から血液学検査、生化学検査ができるシステムを整備しました。つまりマウスの表現系の網羅的解析を繰り返して行うことができる世界最高水準のエイジング・ファームでございます。
 21ページを御覧ください。長寿医療支援ロボットの開発及び基盤整備についてです。介護ロボット、介護関連分析装置の開発・検証・実装を世界最高水準で実施できる施設は日本でもまれでございます。そこで左側の(1)生活支援実証室、リビングラボを整備しました。リビングラボは介護施設・在宅での介護ロボットの活用シーンを再現した実証スペースであり、現場により近い環境で介護ロボットの効果検証を行うことができます。さらにマーカーレス動作分析システムの開発を行い、介護ロボットなどによる介護職員の身体負担への軽減について簡便に実証することができます。また窓口相談も設けておりますので、介護施設への導入増加が期待でき、産業界に大きなブレークスルーとなっております。右は、介護支援ロボットの使用施設における調査も行いました。図のA~Cを御覧ください。A、Bのような離床支援ロボットを11か月にわたり使用することで、2人介助による離床支援が減少し、介護負担が軽減されたことが確認されました。(3)介護ロボット導入運用マニュアルをホームページで公開いたしました。介護者のみならず、介護主任者や介護施設向けにもマニュアルを公表し、安全・安心な社会の創出に著しく貢献できたと考えております。
私からは以上でございます。どうもありがとうございました。

○祖父江部会長
 大変詳しく御説明いただき、よく理解できたのではないかと思います。それでは20分の時間ですが、最初に手を挙げておられる深見先生、よろしくお願いいたします。

○深見委員
 深見です。血液のAβのバイオマーカーについてです。関連するページとしては、9ページと18ページです。画像と10ページのグラフがそれを示しているのかどうかが判断できなかったのです。画像でのAβの蓄積と、血液のAβのバイオマーカーとしての量は相関するという理解でいいかどうかというのが、まず1点です。もう1点あるのですけれども、まずそれをお願いできますか。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 まずはPETでの画像の所見をゴールドスタンダードにしており、それの陽性・陰性でバイオマーカーの値を測定した結果を、9ページの下のほうのグラフで示しています。例えばPiB-PETに関してはカットオフ値というのがあり、それに準じた形で血液バイオマーカーのほうもカットオフ値を今探しているところです。それが正しく正の相関をするかというところは、病態によっても異なるようです。現在、そういったところを調べている段階です。
○深見委員
 では、今は検証中ということですね。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 はい。

○深見委員
 Aβだけではなくて、ほかのバイオマーカーも一緒に調べていらっしゃいますけれども、総合的な判断に持っていくということですか。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 はい、そのとおりです。様々なバイオマーカーを使って、最終的に血液バイオマーカーで病態を明らかにしたいというのが目的です。

○深見委員
 Aβだけではなくということですね。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 はい、そうです。

○深見委員
 分かりました。2つ目の質問です。10ページのアルツハイマーの発症リスク遺伝子ということで、2つ見つけられています。OR51G1というのは、嗅覚に関係する遺伝子だということですね。とても面白いなと思いました。実際に嗅覚とアルツハイマーとの関係は分かっているのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 嗅覚障害が、アルツハイマー病でよく合併することは分かっております。嗅覚のみならず味覚も含めて、そういう感覚器の障害が先行することがあります。

○深見委員
 ありがとうございました。以上です。

○祖父江部会長
 それでは、どなたかほかにありますか。土岐先生、よろしくお願いいたします。

○土岐部会長代理
 アルツハイマーを初めとした素晴らしい研究が進捗していると思われます。質問というのは、先進医療のほうの医師主導治験の進捗がなかなかないということですけれども、そこはどのようにお考えなのかということです。また、介入を伴う特定臨床研究はどのぐらい進んでいるのか、そういったものの進捗状況を教えていただけるでしょうか。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 医師主導治験に関しては、今の再生関係で1つ準備中です。今年度中には始められるかと思います。それは再生医療に関連するもので、フレイルをターゲットとした医師主導治験の計画の準備が、今ほとんど整っております。先進医療については、準備状況としてはまだできていないので、今後検討ができればと考えております。

○土岐部会長代理
 介入を伴う特定臨床研究はいかがでしょうか。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 令和3年度はフレイルを対象として、漢方薬を用いた2つの特定臨床研究を走らせていて、既に研究は終わっており、今データ分析中のものが2件あります。いずれも私がPIをさせていただきました。そのほかの特定臨床研究について、何か情報はありますかね。恐らく私が知っている範囲ではないのではないかと思います。

○土岐部会長代理
 了解いたしました。よろしくお願いします。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。いかがでしょうか。ほかの方も何か御質問はありますか。もし、なければ私から、1つだけお伺いさせていただきます。非常に素晴らしいプログレスを御紹介いただき、良い成果を出していただいていると思いました。実質的には2つになりますかね。今も御質問がありましたけれども、9ページのサブグループ、画像的なもの、遺伝子、更にその次も遺伝子ということで、いろいろな遺伝子マーカーと画像とその沈着具合、血液の定量的な測定を加えて、それを臨床症状あるいはその前から追っていただき、今はそれをきちんと見ている段階だと思うのです。
 そこで私どもが非常に気になるのが、臨床的に見ると、この人はAβが結構たまっているのに、なかなか発症しない、あるいはこの人はAβがそうたまってはいないけれども、発症してしまったということがちょこちょこ起こって、実際には3割ぐらいの人は、Aβがかなり沈着していても発症しないということがあるのですが、天気予報ではありませんので、何年後とは言わないのですが、あなたは何年後に発症しますよという予測が、かなり前の健常に近い状態から示せるかどうかについては、どうなのでしょうか。今後、実現可能かというのが1点です。
 2点目は、物がたまるというのが発症に近づく非常に重要なポイントだと思うのです。先生の所でも、PET以外にも画像の解析システムをたくさん進められていると思います。いわゆる代償性の回路が発達しやすい人は、結構ものがたまっても発症しないということが、最近少しずつ分かってきました。それを「ハブ」と言っていますが、ハブ機能が非常に良くて、インテグレーション機能が非常に発達していると、そこで発症をごまかすと言うのですか、発症しないで済んでしまうというパターンが少しずつ見えてきているわけです。その辺の解析の状況はいかがかというのが、2つ目の質問です。まず最初の質問からよろしくお願いします。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 まず発症予測についてです。まずは縦断的な観察データを整備する必要があります。もの忘れセンターでは、これまで約700例のMCIの縦断のデータベースがあり、そのデータクリーニングが昨年度終わったのです。それでMCIから認知症に移行するのが年間15%ぐらいであったという明確なデータベースができて、それには様々な臨床情報が付いておりますし、今は血液バイオマーカーも加えて測定しているところです。
 そういうことができますと、少なくともMCIからの予測、どのくらいの期間でなってくるかということは分かってくるだろうと考えております。また、私ども長寿研では地域の研究もたくさんやっておりますので、そこでの脳の予備能の研究とか、2番目の質問でもあるMRIのデータを大分取りためておりますので、そういったところからも今後分かってくるだろうと思います。さらに東京都の健康長寿とも、今、共同研究を始めたところで、画像、バイオマーカー、血液バイオマーカーをしっかり付けて、予後の進展について予測する研究が今始まったところです。以上です。

○祖父江部会長
 あと、追加でJ-MINTのことをちょっと。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 あと、J-MINT研究という単一介入研究を私どもは3年前からやっており、今年の11月に終了する予定です。まだその中に認知症は出てきておりませんけれども、認知機能の悪くなっている者がかなり出てきております。J-MINT研究では様々なゲノムからバイオマーカー、環境因子、全てデータを取っておりますので、そういったところからもそのように悪化するという予測は出てくるだろうというように期待しております。

○祖父江部会長
 そうしますと、今は縦断的データをきちんとサーベストするという段階から、解析のほうに入っておられるというように考えてよろしいですか。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 はい。是非来年にはしたいなというところではあります。

○祖父江部会長
 来年には予測ができると。ただ、MCIより前の段階で予測するということは、やはりもう一段階難しい感じはしますね。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 前研究所長の新飯田がヘッドを務めていたストリーム研究というのが、正しくそこです。本当のごく早期の方のデータも、今集まっているところですが、それはかなり時間をかけて追いかける必要はあろうかと思っております。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。ほかにいかがですか。前村先生、どうぞよろしくお願いします。

○前村委員
 長崎大学の前村です。アルツハイマー発症リスク遺伝子について教えてください。10ページ、その中の1つで、MLKL変異が原因になっているというお話でしたけれども、アポトーシスに関係するとなると、いろいろな生命現象に関係してくると思うのです。MLKL遺伝子は、脳細胞に割と特異的に出ている遺伝子なのでしょうか。もしユビキタスに発現しているとすると、アルツハイマー以外にもいろいろな病気の原因になるのではないかと思います。いかがでしょうか。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 10ページの右側の棒が並んでいるグラフを見ていただきますと、MLKLではありませんが、それで分かってきたハブ遺伝子は、こういった脳にたくさん発現しているということです。それでMLKL遺伝子はどうかということになりますと、私は今正確な知識を持ち合わせておりませんので、また確認させていただければと思っております。

○前村委員
 ハブ遺伝子は割と特異的ということですね。分かりました。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 ほかにいかがでしょうか。御質問はありますか。特にありませんか。では、私のほうからもう1つ。私は神経ですけれども、遺伝子多型も含めて人種特異的なリスク遺伝子があるというのは、神経変性疾患でも人種によってリスク遺伝子が全然違うのです。これは民族差をきちんと調べることによって、発症のメカニズムがより分かるという方向に持っていけるのではないか。起こった疾患が本当に一緒かどうかというのは、また検討の余地があるかもしれませんけれども、その辺も含めて、人種によって非常に違う遺伝子を次々に見つけていただいているというのは、病態解明、発病へのリスクファクターなどとして非常に重要だと思っております。これは是非、今後もどんどん増やして欧米の結果とつなげていただいて、疾患が本当に同じように起こった病気なのかどうかも含めて、見かけは似ていますが、メカニズムや何かがどう違うのかということまで入り込めるといいなと、話をお聞きして考えておりました。是非期待しております。これはコメントですが、よろしくお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 ほかにはいかがでしょうか。何か御質問はありますか。非常に広い話をしていただきましたので、関連するちょっと別の観点からの御質問でも結構ではないかと思います。土岐先生、いいですか。どうぞよろしくお願いします。

○土岐部会長代理
 介入のウォーキングポールというのがあるのですけれども、これは患者が外来や、自宅にあるホームモニタリングをしながら、データを取っていくというシステムなのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 そのとおりです。11ページの写真を見ていただきたいと思います。男の人の後ろに、ヘッドホンみたいなものがあります。これからいろいろな数字で計算しろというような課題が聞こえてくるわけです。そういうことをしながら、ポールにオレンジ色のボタンが付いているのを見ていただけると思いますが、この問題の正解が1番だったらオレンジ色を押すというような感じです。連動しているということです。そういったことで二重課題を与えながら、高齢者が自ら生活様式を変えていくというプログラムです。

○土岐部会長代理
 ポールは歩くためのものではなくて、そういうクイズに答えるためのものでもあるのですか。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 いいえ、歩きながらこうする。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 歩くのに使って、同時にいろいろな質問が送られてくる。

○土岐部会長代理
 歩きながら考える。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 そうです。

○土岐部会長代理
 大丈夫ですか。2つのことができるかどうか、ちょっと心配ですけれども。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
結構大変で、難しいみたいですけれども、これを日常的にやっていただくことで、認知機能の改善を目指すということです。また、このイヤホンは実は骨伝導のイヤホンで、私も使ったことがありますけれども、運動をしていてもしっかりと非常にクリアに音が聞こえてきますので、多少難聴があったり周りの環境が騒がしくても、きれいに音が聞こえるようになっております。

○土岐部会長代理
 是非、次年度での結果を期待しております。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。それでは藤川先生、よろしくお願いします。

○藤川委員
 21ページの医療支援ロボットについてです。ロボット系の話は前からたくさん出ているものの、何となくそれほど進展がないかなというところが若干あったのです。新しい施設ができて、このような設備が整備されたのかなと思うものの、大きなブレークスルーとか世界最高水準の施設というようなことはあるのですが、具体的に中身がどうなのかというところが、よく分からないと思いました。また、このような分野では特にベンチャーのような所がいろいろ開発していきます。そういう所と組んで新たなイノベーションを期待したいところかと思うのですが、そういう連携などはあるのでしょうか。教えてください。

○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 ロボットセンター長の近藤のほうからお答えさせていただきます。今年の評価には出しませんでしたけれども、昨年度からは杖ロボットとか、新しいロボットの開発にかなり携わっております。こちらはどちらかと言うとそういったロボットの成果を出したいということで、この形の発表をさせていただきました。ベンチャーとの取組はたくさんやっておりますので、来年度以降でも御紹介できればと思っておりました。ありがとうございます。

○藤川委員
 よろしくお願いします。

○祖父江部会長
 ほかにはよろしいでしょうか。それから、これもコメントになるかもしれませんが、特にmiRNAのeQTLのデータベースが完成されて、これはこれから蓄積がされていくのですか。世界的にも公表されたということで、非常に重要だと思いました。特に今はゲノム関係では、世界がこういうものを集めて仕事をするということが、逆に主流になってきている様相もありますので、これは非常に重要だなと思っております。今後も更に増やしていただけるといいかと思いました。大西先生、手が挙がっております。どうぞよろしくお願いします。

○大西委員
 大西です。介護ロボットのところですけれども、市場というのは出来ているのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 台数自体がなかなか出ませんので、ごく一部のものしかマーケットができていません。特に介護ロボットでは、見守り系と言って、夜中の転倒を防いだり、安全確保のロボットはかなりの普及率で、老健や特養等では90%以上の施設が使っているということになっております。移動介助などの動力系のロボットは、まだ台数が少ないのです。今回の資料にはお出しできませんでしたけれども、それでもHALというロボットに関しては、年産が大体400台のところまで到達しております。ただ、実際に市場を形成するためには、やはり2,000台以上の生産がないと駄目なので、もうちょっと頑張ってもらえたらと考えている最中です。以上です。

○大西委員
 ありがとうございました。

○祖父江部会長
 時間が超過しましたので、よろしければ次のセッションに移りたいと思います。それでは1-3から1-5という結構たくさんの内容ですが、「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」ということで、時間は今と同じ38分です。説明が20分、質疑が18分ということでやらせていただきます。まず法人から御説明を頂いて、その後、質疑応答という順番でいきますので、まず御説明をよろしくお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 病院長の近藤でございます。評価項目1-3の医療の提供に関する事項に関して説明いたします。22ページを御覧ください。ここで自己評価をAといたしましたが、スライド下段の指標の達成状況にお示ししたように、入院延べ患者数と病床利用率が100%に達しておりません。このことについて説明させていただきます。まず、昨年度途中の11月から厚生労働省からの要請もありまして、コロナ病棟を立ち上げました。このとき、新しい病棟を作るわけにもいきませんでしたので、病棟変換のために地域包括ケア支援病棟45床を1.5か月にわたり入院停止といたしました。このため、まず全体の病床利用率に少なからず影響が出ております。加えて、変換後は感染症対応とするため、ベッド数を45床から13床に減らしました。このため、入院患者数にも当然のことながら影響が出ております。そのような大きなネガティブな要因がありながらも、スライドにはちょっとお示しできませんでしたが、一昨年の実績値の入院患者延べ人数が9万268名でした。スライドにはR3年度が9万473名ということで、ほぼ同等の数字が出ていることがお分かりになると思います。病床利用率に関しては、一昨年度82.4%と、全く同じ数字でした。こういった2つの大きなマイナス要因がありながら、一昨年度と比べても大差ない実績を達成しております。加えて、地域包括ケア病棟がない状況、つまり、どうしても入院日数が延びてしまう状況でありながら、平均在院日数は、令和元年度17.4日、令和2年度16.6日、昨年度はそこにお示ししたように15.7日と順調に短縮しております。また、手術件数も同様に、令和元年度2,074件、令和2年度2,211件、昨年度は、そこにお示ししたように2,633件と、大きな増加を示しております。このため、実質的には指標の120%を達成しているので、実質的な部分では達成しているのではないかということで評価をAとさせていただいた理由があります。
 次のスライドです。ここに評定の根拠を書きましたが、後ほど詳しく述べるため、この部分は割愛させていただきます。
 続いて、24ページです。もの忘れセンターで提供する最新の診断とケアに関して説明いたします。スライドの左側、診療実績に関しては例年とほぼ同等です。下段のMCI及び軽症の認知症患者さんを対象としたリハビリテーションに関しては、生活障害の進行を抑制するという知見を得ており、現在、論文発表の準備中です。右側の認知症の相談と本人や家族への支援に関しては、これも例年と同様の実績でしたが、通常は地域で行われる認知症患者への院内版である「petit茶論」を新たに開始しております。
 続いて、25ページです。認知症大綱(共生と予防)を目指したもの忘れセンターの研究に関して説明いたします。スライドの左側にお示ししましたが、これまで継続的に蓄積を続けてきた臨床情報、脳画像、ゲノム血液バイオマーカー及びケア情報などの包括的なデータベースの件数は既に1万件を超えております。件数を溜めるだけではなく、昨年度から公開に向けた整備を開始しており、特に、スライドの下段に示している、先ほど櫻井先生のほうからのお話もありました、670例のMCIのコホートに対してデータクリーニングを実施し、正確なMCIのコンバージョン率を算定し、中央値2.6年で約半数がアルツハイマーにコンバージヨンすることを確認しております。加えて、現在Aβのバイオマーカーを年間150例ずつ測定しており、更にTauとNeurofilament-Lも測定予定です。この品質で670例スケールのMCIの集団データベースは我が国で並ぶべきものはないのではないかと考えております。
 スライドの右側です。認知症予防を目指した多因子介入研究で、これもまた先ほどお話が出ていましたが、J-MINTに関しては、途中、COVID-19の影響を受けて期間の延長を行いましたが、オンラインなどでの受診の工夫を行い、無事に本年度、最終年度を迎えております。J-MINTに関しては、研究の完了を待つことなく、現在、社会実装モデルのプロトコル策定を開始しております。
 26ページです。ロコモフレイルセンターの活動に関しての説明となっております。スライドの左側の診療実績に関しては例年と同等です。スライドの右側です。昨年度から当センターだけではなく、多施設の協力も得て臨床情報を収集し、情報共有のシステム準備を開始しているほか、右側の下段に示したような企業と共同した開発研究も開始しております。
 27ページです。地域包括ケアシステムに対応した医療モデルの充実ですが、こちらは例年どおりの活動でしたので説明を割愛いたします。
 28ページです。リハビリテーションニーズの多様化に対応するための組織基盤の作成に関しては、スライドの左側に記載したように、既存の生活機能障害の評価方法が複雑で実施が難しいか、あるいは変化を検証するための有効な方法がない状況でしたので、介護施設の使用が困難であることも鑑みて、新たな評価方法、NCPASの作成で自宅・介護施設と医療施設の新しい医療・福祉連携の検討を行い、医療機関と介護施設で一気通貫の評価が可能になることを目指してまいりました。昨年度は、この評価尺度を有機的に使い、自立を促進して、介護ごとの改善を図るためのリハビリテーション手法と、生活指導の方法の策定に着手しております。
スライドの右側です。これまで認知症の人と家族のQOL向上のためのリハビリプログラムの開発を行ってきましたが、昨年度にマニュアル化を行っております。さらに、下段にお示ししたように、高齢者にフィットした回復期リハビリテーション病棟における診療とケアの開発を行ってまいりましたが、昨年度、実績指数が最高値に達したほか、医療事故が著明に減少し、特に転倒イベントに関しては、全国平均の約半分まで減少しております。
 このほかに、回復期及び地域包括病棟での生活をキャリーオーバーし、より良い生活環境を支援するために行っている訪問リハも、令和元年度は4,176件、令和2年度は6,930件、令和3年度は8,625件と順調に増加しており、地域高齢者のサービスを充実させているほか、それを通じて、在宅へのロボット導入の研究を行っております。
 29ページです。感覚器センターの活動をお示ししました。スライドの左側、感覚器難治性疾患の先進的医療開発は例年どおりの活動でしたが、スライドの右側にお示ししたように、これは京都府立医科大学との共同研究ですが、緑内障のゲノム診断に着手し特許を取得しております。
 30ページです。治験・臨床研究推進体制の整備に関しては、スライドの左側に示したように、先端医療開発推進センターにおいて、ARO(Academic Research Organization)に近い体制を構築し、さらに生物統計支援体制を充実させ、加えて、先ほども少しお話が出ていたものもありますが、ロコモフレイルセンターにおける再生医療の治験の開始を支援しております。また、スライドの右側にお示ししたClinical Trial Information Center in Dementia(CLIC-D)を構築し、個人情報とひも付けられていない認知症レジストリのデータを同意取得した上で登録し、創薬企業との情報をタイムリーに照会する仕組みを創出し、認知症患者さんの治験参加を容易にしております。
以上が評価項目1-3、医療の提供に関する事項の説明となります。引き続き、評価項目1-4、人材育成に関する事項に関して説明させていただきます。
 31ページを御覧ください。スライド下段の指標の達成状況に関しては、認知症サポート研修、高齢者看護研修は、いずれも120%以上を達成しております。認知症初期集中支援チーム研修に関しては達成度110%ですが、一昨年の実績値は840名で、昨年度はスライドに示した数を見てもらうとお分かりになると思いますが、30%以上増加しております。これらはコロナ禍で予備システムの構築を行い、遠隔での講習の充実を図ったためと考えられ、このため自己評価はAとさせていただきました。
 32ページです。要因分析と評定の根拠に関しては、後のスライドで説明いたします。
 33ページです。認知症施策推進に向けた各種研修・専門医等の育成を実施したことに関しては、左下段にサポート医研修、右下段に初期集中支援チーム員研修の実績をグラフでお示ししております。赤線で示した年度ごとの修了者数は、いずれもコロナの影響で令和元年、2年と落ち込んでいますが、昨年度は、先ほども申し上げたようにオンラインの効果が出て回復しております。システム構築には苦労いたしましたが、そういった効果が出たものと考えております。今後は、オンラインと実地研修を有機的に組み合わせ、より利便性を高め、コロナ前の実績に戻すことを目指したいと考えております。
 最後です。34ページで、その他の事項の説明をいたします。スライド左側の上段の高齢者看護研修では、昨年度、新しくCOVID-19に関するプログラムを追加し、6講座で174名の受講を達成しました。中段の専門医制度への対応/レジデント及び専門修練医の育成に関しては、昨年度は新たにレジデント3名、初期研修医2名の研修を開始しております。更に右側中段に示したように、新たにセンター発信の国際的プログラムであるe-TRIGGERを開始しております。
以上が評価項目1-4、人材育成に関する事項の説明になります。近藤の説明はこれで終わります。どうもありがとうございました。

○国立長寿医療研究センター和田企画戦略局長
 続いて、評価項目1-5、医療政策の推進等に関する事項について、企画戦略局長の和田から説明をいたします。資料は35ページを御覧ください。自己評価はAとしています。指標の達成状況ですが、ホームページのアクセス件数は447万件でした。目標値が340万件以上なので、それを上回る実績となっています。具体的な取組については、次のスライドの36ページを御覧ください。
 まず、(1)非がん疾患のエンドオブライフ・ケア(EOLC)に焦点を当てたガイドラインの発刊です。これは高齢者に多い臓器疾患、認知症、脳血管疾患、新型コロナウイルス感染症など、多くの疾患に対応したものとして、国内で初めてガイドラインを策定し公表したものです。エンドオブライフに従事する専門職に対しての有用性が高く、高齢者医療の均てん化が期待できるものと認識しています。
 また、(2)のとおり、日本老年医学会の提言が行われましたが、当センターの理事長及びロコモフレイル診療部長が委員として参画し、学会の提言の取りまとめに貢献しました。
 (3)認知症医療介護推進会議からの提言の取りまとめへの参画です。認知症医療介護推進会議は、理事長が議長、当センターが事務局を務めておりますが、新型コロナウイルス感染症流行下における、感染症対応の強化及び支援の推進に関する提言を取りまとめて厚生労働省に提出をいたしました。
 (4)は厚生労働省の介護予防マニュアルの改訂に当たっての参画です。理事長が改訂委員会の座長になるとともに、当センターが編集発行を行った「介護予防ガイド実践・エビデンス編」が改訂の参考とされました。
 37ページです。(5)認知症医療介護推進会議等の開催、先ほど会議については触れましたが、認知症医療介護推進フォーラムを開催いたしました。これには700名を超える参加があったところです。
また、(6)診療情報の積極的な発信について、幾つか取組を挙げております。まず、老年医療の知識と基本手技をまとめた「老年医療グリーンノート」を発刊いたしました。また、国際的な取組としては、WHOのPIR(リハビリテーション介入パッケージ)の開発及びWHO公表資料の日本語版作成の監修や翻訳に理事長が参画いたしました。また、AWGS、アジアサルコペニアワーキンググループに理事長が参加しており、サルコペニアと栄養に関するガイドラインの作成に寄与しました。このほか、「認知症サポート医・認知症初期集中支援チームのための認知症診療ハンドブック」の発刊を行ったところです。
 (7)地方自治体との協力です。愛知県との取組については、研修プラットフォームの構築、合計4種類の研修実施を行うとともに、愛知県外での取組として、「市町村における認知症予防の取組推進の手引き」の作成及び活用事例の動画の公開などを行っているところです。
評価項目1-5までの説明をさせていただきました。以上です。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。詳しく説明していただいたのでよかったと思います。少し遅れ気味なので時間を巻きたいと思います。いかがでしょうか。今の御説明に対して、御質問、コメント等ありますか。

○花井委員
 御説明ありがとうございます。新しく建物ができて、昨年まで環境整備的なところが進捗したというイメージで、いよいよこれを使っていろいろなことがスタートしているという印象を受けました。もの忘れ統合センター、統合データベースについて、昨年度で大分整備は進んだと思いますが、北欧の国々とデータシェアリングが始まると書いてありますが、これは国際的なデータベースと共通テーブルで両方統合して研究が可能というイメージですか。それとも、単純に海外からアクセスして、ここのデータベースを共同研究するというイメージですか。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長 
櫻井がお答えいたします。これは正に先生がおっしゃったように、データをハーモニゼーションして、統合したデータベースを作って、人種の違いを調べていこうというものです。

○花井委員
 そうしますと、かなりそれはいろいろなリサーチクエスチョンが考えられて、非常に期待されると思います。参考までに、向こうのデータベースはどのくらいのボリューム感ですか。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 北欧のほうにも、相当の数のデータベースがありまして、数万規模の所もありますし、先ほどのJ-MINT研究に対応したような、介入研究ですが、そういったデータベースもありまして、それぞれ目的に応じてそれらを合体していこうというものです。

○花井委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 それでは、庄子先生、よろしくお願いします。

○庄子委員
 28ページにあったMCPASの話ですが、これは医療機関から介護施設まで一気通貫ということで興味深いのですが、令和4年度の完成を目指しているということで、これは完成した後、どういう活用のされ方をイメージされているのですか。医療機関で使ってもらうとか。

○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 なるべく簡単にスマート端末でも使えるようにということで、アプリを開発して、なおかつ、そのスマート端末から自動的にクラウドにデータがたまるような仕組みを今作っております。将来的にはビッグデータにして、いろいろな分析をするのと同時に、場合によっては知財化して企業さんにデータを提供して、こういったことに関する開発をしていただこうと考えております。

○庄子委員
 分かりました。ありがとうございました。

○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 補足ですが、今までADLの評価はBarthelを使うか、FIMを使うかということになると思いますが、Barthelは簡単ですが、なかなか変化が見にくいという欠点があり、FIMはなかなか介護の現場で使いにくいという欠点があるということで、このNCPASは両方の現場で使えるということと、介入効果も見られるだろうということ、さらに、病院長からの話にもありましたように、アプリ化して可視化することによって、どこの部分に問題があるのか、その問題がある部分にどういったリハビリを提供するかということまで含めてアプリ化するということですので、そのアプリさえあれば御家族の方が評価をすることができ、実際に御家族の方にはADLの障害に対してどういうリハビリをすべきかを提供できるという部分で、在宅でもしっかりとリハビリが継続していただけるようなアプリになるのではないかと考えています。

○庄子委員
 家族の方も使えるというのは非常に面白いと思って聞いておりました。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 それでは根岸先生、よろしくお願いします。

○根岸委員
 27ページの地域包括ケアシステムの所の質問が2点あります。まず1点目が、エンドオブライフケアチームが倫理サポートをされているということで、具体的にこれはどういうサポートなのか教えていただきたいと思います。
 もう1点は、コロナによって高齢者の心と体に本当に深刻な影響を及ぼしていると思っておりますが、地域包括ケアシステムの中で、介護予防あるいは介護という所に、介護保険でのアプローチが主になっていると思いますが、今後、先生方のセンターと地域包括ケアシステムの中での介護、介護予防といったところとの連携について、方向性としてどんなふうにお考えがあるのか、もし具体的な計画があれば教えてください。よろしくお願いします。

○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 最初の質問の倫理サポートについては、特に我々は非がんのACPをやっております。がんはある程度行き先が決まっているのですが、非がんの場合は落とし所がなかなか決まらないというのがあります。そういったところにあえて介入していって、そういったことを決めてもらうというのは、なかなか倫理的な問題が生じることもあります。そこは現場のスタッフはいろいろ迷うことが多いので、そこを倫理的にサポートしていこうというのがこの試みです。
 2番目の、地域包括ケアとの協力に関しては、病院と地域包括ケア間の一番最初の接点は、病院を退院された方が地域でどういうふうにうまく生活していけるかというところが一番の肝になりますので、そこに対するアウトリーチを、TCPと言いまして、介護介入の支援とか、先ほども少し申し上げましたが、訪問リハビリを一生懸命やることによって、地域の包括ケアシステムの中で働いているスタッフの方々とかなり頻繁にクロスして、病院側のほうから支えていこうという形で介入を今始めております。以上です。

○国立長寿医療研究センター荒井理事長
補足しますが、EOLチームについては、ほとんどの病院はがんエンドオブライフケアだと思います。理由は、がんしか診療報酬が付いていないのが原因だと思います。我々としては、認知症、心不全、そういった非がんの方に対するアプローチを重視しており、それが約半分を占めています。将来的にそれを何とか診療報酬につなげたいという目的があります。ですから、そのエビデンスを作っているということで、そういった方に対して、例えば栄養の問題や、最終的なゴールをどういうふうにするかということを、家族とともに、当然、御本人も交えて、医師と看護師がディスカッションしながらサポートをしているということになっております。将来的なゴールは診療報酬につなげるということになります。
 COVID-19については、地域包括ケアの場合、どのような形で活かしていくかと。今、病院長からもお話がありましたが、我々の研究でも、高齢者の全体の運動量が約3割落ちていることがわかっています。ただ、その後、多くの方は回復しているのですが、一人暮らしで、社会参加のない高齢者は、運動量が落ちたままでずっといってフレイル化している、そして認知機能も低下しているという問題点を把握しています。そういったところにどのようにリーチするか。これは極めて難しい問題で、一人暮らしで社会参加がないわけですから、なかなか医療と結び付けるのは難しいということで、そういった方はやはり行政に把握していただいて、行政からのアプローチをしていただくと同時に、御家族がおられれば、先ほどの「オンライン通いの場」、これはITを使うというハードルがあるわけですが、そういったものを使っていただいて、実際にそれまでは通いの場に行っていたけれども、コロナで行けなくなったという方であれば、オンラインでつないでいくことも1つの方法としてあると思います。これは非常にハードルが高いと認識しておりますが、そういうサービスを利用していただく。通いの場も、感染に注意していただければ、実際集まって集合型で通いの場で介護予防的なアプローチに参加していただくことは可能だと思っております。
今、病院長からお話があったように、そういう早期の部分から医療につながっている方は訪問してリハビリテーションをする。去年、報告させていただきましたが、HEPOPという運動プログラムを開発したので、そういったものを導入していただく。リハビリのセラピストが行く時間だけでは十分なリハビリテーションになりませんので、日々、運動をしていただくということを、我々が開発したものを使って、COVID-19による生活機能の低下にアプローチをしていくということで、いろいろなアプローチを考えているということです。そのトータルの結果をどのように把握するかというのは、今後の課題ではないかと考えています。

○根岸委員
 ありがとうございました。是非、よろしくお願いします。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。そのほか何かありますか。私からも1つ、今と関連する話題ですが、質問させていただきます。今、質問していただいた高齢者のリハビリ介入については非常に重要で、生活リハと言いますか、非常に長期にわたる良い介入ができると、恐らくアウトカムは結構期待できるのではないかと思っています。いかんせん、今おっしゃったように、高齢者の方は心不全あり、フレイルあり、認知症あり、いろいろな病気を持っておられるので、どう介入リハを掛けていったらいいのかがなかなか難しいということを、確か去年も少し質問させていただきましたが、そういうものに対して、今のお話だと、家庭でもできる、その評価もNCPASなどを作っていただいて、結構、評価体制も総合的に作られている感じを受けるのですが、現物を見せていただかないと、本当にどれぐらいのそういうことが可能なのか、あるいは実際に動いているのか、あるいはアウトカムはどうなのかというのを、どこかの時点で見せていただけると有り難いなと、今年でなくても結構ですが、非常に強く思いました。これは長寿研でやっていただくテーマの中で最も重要なポイントの1つではないかと思います。そういう感じがしております。来年にとは言いませんが、そんな中で、何か家族もやれて、総合的にこういう良い効果が出てきたということを見せていただけると有り難いです。どうぞよろしくお願いします。

○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 この中長期の中では、何とか達成したいと思っております。来年、発表できるかはお約束できませんが、何とかこの中長期の中で達成したいと思っておりますので、よろしくお願いします。

○祖父江部会長
 非常に総合力が要る大変なお仕事だと思いますが、他にやる所がありませんので、先生の所しかないのではないかと思っておりますので、よろしくお願いします。

○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 発言、よろしいでしょうか。合併症も多い、高齢者なので駄目ではないかという考え方が支配的ですが、当センターの回復期リハビリテーション病棟で、85歳以上の方だけをピックアップして分析しますと、十分なリハビリテーションを供給すれば、ほとんど若い方と同じぐらいのトレンドで回復することは分かっております。やはり、世間的なスティグマがあって、どうせ高齢者は駄目だよという考え方を捨てていただいたほうがいいと思います。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。非常に重要なコンセプトだと思いますので、是非来年、その片鱗でもいいですので出していただきたいと思います。

○国立長寿医療研究センター近藤病院長
 そちらは今、原稿を書いておりますので、発表の準備をしております。高齢者は多病が特徴ですので、やはり医療としっかりとつながりつつ、リハビリテーションをやるということで、当センターは正にモデルになるべきセンターだと思っておりますので、是非とも今後ともよろしくお願いします。

○祖父江部会長
 ほかに何かありますか。

○藤川委員
 認知症サポート医ですが、今、おっしゃったような話を均てん化していく上で、なるべく認知症についていろいろ理解している方が増えなければいけないということで、もちろん研修は一旦は必要ですが、センターでのいろいろな新しい知見が継続的にそういう方に提供されるためには、研修も継続的に行われるべきかと思います。これを拝見しますと、修了すると終わりなのかなと思われます。これを継続的に事例研修なども含めたり、いろいろ現場でやったこととともに新しいことを一緒に学んでいただくような場というのは、どのように提供されるのか教えていただきたいと思います。

○国立長寿医療研究センター櫻井研究所長
 櫻井からお答えいたします。認知症サポート医の継続研修は、一応、都道府県がやるということになっておりまして、都道府県単位でそういった研修は進んでおります。認知症疾患センターというのが、地域の認知症の要的な存在でして、そこを中心とした全県、あるいは都道府県にわたる研修を行っているというところです。ただ、県によって温度差があるということも事実です。非常に進んだ所から、そうでもない所まであるということです。そういったところを均てん化するにはどうしたらいいかということが、認知症疾患センターの機能評価として、今進んでいるところです。

○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 今、老健事業でそういったクオリティについては検証していくこと、東京都の健康長寿センターでそれをやっていると思うのですが、やはりクオリティコントロールと言いますか、均てん化をきちんと数字である程度示していくことは課題ではないかと思っております。当センターも、できるだけそちらのほうにはコミットできればとは思っております。現状は最初のサポート医の研修だけに関わっている、あと愛知県の継続研修に関わっているというのが現状です。

○藤川委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは時間が少し過ぎておりますので、このセッションはこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。次は最後のセッションですが、2-1から4-1まで、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項」についてです。これは非常に時間が短く、説明を8分、質疑6分ということですので、効率よくやりたいと思います。まず、法人のほうから御説明をお願いします。

○国立長寿医療研究センター和田企画戦略局長
 説明をさせていただきます。資料は38ページ、評価項目2-1の業務運営の効率化に関する事項についてです。自己評価はBとしています。指標の達成状況について、令和3年度の経常収支率は101.4%で目標値の100%を超えています。後発医薬品の比率は84.9%、令和2年度は約80%でしたので、令和3年度は目標値とほぼ同等の水準まで上がっています。一般管理費は6,000万円となり、令和2年度に比べて5%の減となっています。また、医業未収金の比率は0.012%と前年度より高くなっていますが、高額の医業未収金を有する患者がいたためと分析をしています。
 次のスライドです。39ページ、効率化による収支改善です。左側から説明いたします。医業収益においては、看護職員夜間配置加算の再取得やリハビリテーションの実施増などの取組を行いまして、対前年度比で6億5,500万円増となる70億9,600万円となりました。また、材料費等の削減、収入の確保、一般管理費の削減に取り組んでおります。
 右側は情報セキュリティ対策その他の情報管理等についてです。引き続き職員による自己点検を実施するとともに、情報セキュリティ研修を実施しました。また、電子カルテシステムを更新しまして、リモート保守回線を集約することにより、より安全な保守環境の整備を併せて進めました。さらに、厚生労働省との連携強化として、CSIRTの情報セキュリティインシデント対処訓練を実施いたしました。これについては、当センターの対応等に問題はないことを確認いたしました。
 次のスライドです。40ページ、こちらは収支についての補足として資料を付けています。運営状況の前年度との比較ですが、上の医業収益については、対前年度比で6億5,500万円増の70億9,600万円です。医業費用は対前年度比で6億7,000万円増の71億5,600万円となっています。医業収支差はマイナス6,000万円となっています。収益増については、患者数の増及び平均単価の増が主な要因です。費用の増については、医療職を増やしたことによる給与費の増及び材料費の増が主な要因です。
 医業収支がマイナスとなっていますが、これについては、先ほど説明がありましたが、地域包括ケア病棟を新型コロナ専用病棟として運用した事情がありまして、実質的な運用病床が減少したことが医業収益に影響しております。なお、新型コロナ病床確保料等の新型コロナ関連補助金が2億4,900万円あります。こちらについては医業外収益のほうに計上しております。それを加味しますと、医業収支差は約1億8,900万円プラスという計算になります。
 また、医業外収支については、研究収益の減及びそれに伴う委託費の減等により、プラス6,500万円となります。前年度に比べ、こちらは大幅に改善をしております。また、総収支差についてもプラスの500万円と、プラスに転じております。
 次のスライドです。評価項目3-1の財務内容の改善に関する事項です。自己評価はB評価としています。指標の達成状況ですが、総収支差がプラス500万円でしたので、繰越欠損金も500万円の削減で1.1%減となっています。
 次のスライドです。42ページ、外部資金の獲得について補足いたします。対前年度比でマイナス20%の25億1,800万円となりました。前年度はAMEDにおいて金額の大きい研究費が多くありました。このため、前年度は約48%増加しましたが、令和3年度は、その反動で受託研究が減少した分、前年度から減少いたしました。また、寄附金の受入れについては、対前年度比でプラス170%と大幅に増加しております。
 自己収入の確保については、先ほど述べたとおり、看護職員の夜間の配置加算の再取得や、365日のリハビリテーションの開始などで、診療報酬の確保に努めております。
 次のスライドです。43ページ、左側の貸借対照表です。こちらは、年度末に新病棟が竣工したこと等により、建物が50億3,200万円増となっており、これに伴い資産額が大きく増加しています。また、損益計算書については、先ほど説明したとおり、当期の純利益が500万円となっています。右側の外部研究資金の獲得状況については、先ほど申し上げたとおり、大型のAMED研究の件数が減少したことにより、対前年度比で6億1,800万円減となっていますが、28年度からのトレンドでは年々増加していることになります。
 最後の44ページです。評価項目4-1、その他業務運営に関する重要事項についてです。自己評価はBとしております。評定の根拠については、内部監査を9回、監事監査を18回、会計監査人監査を13回、内部統制委員会を4回実施しております。また、人事交流については、引き続きAMED等をはじめとした交流を行っています。職場環境の整備については、特に、育児・介護と仕事の両立が可能な環境整備に努めております。制度改正の対応として、育児・介護休業法の改正に伴う非常勤職員に対する育児休業や介護休業の条件緩和、国家公務員の制度改正に伴う不妊治療休暇の新設等を行っております。
説明は以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、質疑をお願いいたします。今の御説明に対して、いかがでしょうか。
 外部資金の棒グラフがあったのですが、少し分かりにくかったのは、43ページの企業連携で、企業とのやり取りが、多分、共同研究は企業とのやり取りに入っているのではないかと思いますが、もう1つ上の受託研究は、先ほどの話でAMEDの研究費がここに入っていて、受託事業も、企業との共同研究のような企業からの受託を受けてと解釈してよろしいですか。そうすると、全体として、これは幾らになるのですか。少しその辺の御説明をいただけると有り難いのですが。企業からの費用で、先ほどロボットの話も少しあったのですが、これは前にもお聞きしたことがあるのですが、実際に企業連携でどれぐらいのサポートがあるのか教えていただけますでしょうか。

○国立長寿医療研究センター和田企画戦略局長
 企業との共同研究は、この中では共同研究の枠組みの中に入れております。ですので、正にその部分が増えたか減ったかを見ていただくことになります。令和3年度に関しては、企業との共同研究の部分はやや減っております。受託研究は、特にAMED研究費が非常に大きな額を占めていますが、共同研究とは別に、委託を受けて行う研究を計上したものです。令和2年度までは比較的順調に伸びてきましたが、令和3年度はかなり落ち込みました。基本的には、AMED研究費の部分だけで相当落ち込んでいます。ほかは上がったり下がったりという傾向です。

○祖父江部会長
 そうしますと、企業からの収入は433百万プラス90百万ということでいいのですか。

○国立長寿医療研究センター和田企画戦略局長
 受託事業は、厚労省などの事業になります。

○祖父江部会長
 そうすると、受託事業というのは国からのものですか。

○国立長寿医療研究センター和田企画戦略局長
 国からのものです。

○祖父江部会長
 企業からのものは、この90。

○国立長寿医療研究センター和田企画戦略局長
 9,000万円と見ていただければ結構です。

○祖父江部会長
 9,000万ということですね。

○国立長寿医療研究センター和田企画戦略局長
 はい。

○祖父江部会長
 余り大きくはないなというのが印象なのですが、実態はこういう具合のものですかね。ありがとうございました。よく分かりました。ほかにはいかがでしょうか。何か御質問はありますでしょうか。あと2、3分あるようですが。よろしいですか。経常収支を見ても、今年は100%という数字が出ておりますので、コロナの影響もあったように御説明されましたが、ぎりぎりオーケーかなと思います。ありがとうございます。全体を通じていかがでしょうか。少し全体として後ろに押しておりますので、このセッションはこれで終わりにさせていただきます。
 先ほどと同じく、全体の繰り返し質疑の時間を取ってありますが、時間が少し押しているのですが、1番目のテーマから今までを通じて何か御発言がありますでしょうか。御質問、あるいはコメントでも結構です。特にありませんか。もし、ないようでしたら、これもスキップさせていただきます。それぞれの質問の中に入っていたと考えさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、最後に、法人の理事長の荒井先生、それから監事の橋本先生からコメントをヒアリングさせていただきます。まずは、法人の監事の橋本先生から、監査結果を含めて、今後の課題や改善方針なども含めていただいても結構ですので、コメントをお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター橋本監事
 監事の橋本でございます。監査報告に沿って報告をします。令和3年度の監事監査報告は、6月22日付けで理事長宛に提出しまして、同じものが大臣宛にも提出されています。令和3年度の監査報告は私ども監事において協議しました結果、特段の指摘事項はありません。その結果、業務運営は法令等に準拠して適正に実施され、内部統制システムに関する法人の長の職務の執行について、指摘すべき重要な事項は認められませんでした。また、役員の職務の執行に関する不正行為又は法令等に違反する重大な事実も認められませんでした。そして、あずさ監査法人の監査報告及び報告は相当であると認めております。
 そこで今後の課題についてです。当センターは、これまで純損失を計上してきましたが、令和3年度は500万円余りの純益を出すことができました。ただ、令和2年度末時点において4億7,000万円の繰越欠損金が発生しておりますので、令和3年度において、具体的な繰越欠損金解消計画が立案され、理事会で承認されております。その内容は、具体的な経営指標を立てて収益を確保するとともに、給与費の適正化を図って費用を削減することにより、欠損金を令和38年度までに解消するというものです。この計画の進捗状況については、厚生労働省に定期的に報告することとなっております。いまだにコロナの状況が見落とせないこともあり、また、新病棟を建設したこと、及び電子カルテ導入による減価償却費の負担増もありますので、欠損金の解消については、緊張感を持って進めていただきたいと思っております。今後の収支及び欠損金の解消の実行については、監事として引き続き強い関心を持って注視してまいりたいと考えております。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、法人の理事長の荒井先生から、同じように今日の質疑応答も踏まえていただいて、今後の課題や方針なども含めて御発言をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 今日は長時間にわたりまして評価いただき、誠にありがとうございます。いろいろと貴重な意見を頂きましたので、それをしっかりと活かして、今後の研究開発及び経営につなげていきたいと考えております。
 先ほど祖父江先生からもお話がありましたように、我々のセンターとしての課題の1つは、企業との共同研究をどういうふうに進めるかということです。現状では、ロボットあるいはゲノムといった観点から企業との共同研究が進んでいるかと思いますが、当センターでは、非常に貴重な認知症、フレイルに関連する遺伝子、臨床データのデータベースが構築されつつあります。それをいかに今後オープンにしていくか、データベースの活用を通した企業との共同研究を更に進めていきたいと思います。実は、愛知県との間にいろいろな形でのシーズから企業との共同研究を今進めております。そういった形で、今後、企業との共同研究をしっかりと進めていきたいと思っております。
 今回のテーマではなかったのですが、今回のコロナに関しては、もちろん感染に対する対策を行ってまいりましたが、同時に、住民の方々に対するワクチン接種についても大きな貢献をさせていただいたと思っております。具体的には、大府市の方々に対してワクチン接種を行なわせていただいたということで、地域の感染対策にも大きく貢献をしたのではないかと考えております。
 また、我々のミッションである認知症、フレイルなどの老化研究については、今後とも、日本をリードするだけではなく、世界の著名な研究機関と共同して、先ほど話がありました、北欧やほかの国々、UKバイオバンクなどもあると思いますが、そういった所としっかりと連携をした形での研究を進めていきたいと考えておりますので、よろしく、御評価をお願いしたいと思います。以上です。

○祖父江部会長
 どうも、ありがとうございました。今後の展開を含めてまとめていただきまして、非常にいいコメントを頂いたと思います。今の監事の先生と理事長の先生のお話に対して、何か御質問等はありますでしょうか。よろしいでしょうか。
長寿研究というのは、ほかの領域に比べると、まだ始まったばかりで日が浅いのではないかと思っておりまして、今、理事長がおっしゃったように、企業もどうやってやったらいいか、実際にはまだよく分からない面が非常に大きいのではないかと思いますので、今後の10年単位ぐらいになってしまうかもしれませんが、非常に大きな領域に発展するポテンシャルはむしろ大きいのではないかと考えておりますので、そのコア、シーズを是非作っていっていただけると有り難いと考えているところです。本当に今日はどうも長時間にわたってありがとうございました。非常にいい議論ができたと思いますので、来年また楽しみにしておりますので、よろしくお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 よろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。
 事務局からコメントがあります。

○大臣官房厚生科学課国立高度専門医療研究センター支援室武藤室長補佐
 事務局です。今後の流れについて御連絡いたします。本日の御議論いただきました令和3年度業務実績評価については、今後、本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえまして、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について、法人に通知するとともに公表いたします。委員の皆様におかれましては、事前に電子媒体でお配りしている評定記入用紙に必要事項を御記入いただき、8月4日木曜日に予定していますJHに関する審議を踏まえまして、8月12日金曜日までに事務局宛にメールで評定結果を御送付いただきますようお願いいたします。なお、決定した内容については、後日、委員の皆様にお送りしたいと思います。次回は8月2日火曜日14時から、国立成育医療研究センター及び国立精神・神経医療研究センターの評価に関する審議を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。長時間にわたってありがとうございました。皆さん、よろしくお願いいたします。