第2回産業保健のあり方に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

日時

令和4年11月14日(月)10:00~

場所

労働委員会会館会議室612号室

議題

(1)今後の産業保健のあり方について
(2)産業保健の現状と課題に関するヒアリング
(3)その他

議事

議事内容
○岩澤産業保健支援室長補佐 本日は大変お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより「第2回産業保健のあり方に関する検討会」を開催いたします。本検討会は、資料及び議事録は原則公開といたしますが、カメラの撮影はここまでといたします。
 本日は及川構成員、大下構成員、小松原構成員、中島構成員、中嶋構成員、古井構成員、三柴構成員、武藤構成員がオンラインでの参加です。
 また、オブザーバーとして、経済産業省商務・サービスグループヘルスケア産業課、厚生労働省保険局保険課、同じく厚生労働省健康局健康課が参加しております。
 なお、大下構成員におかれましては、所用のため、11時までの出席を予定しております。
 初めに、お手元の資料を確認させていただきます。資料1「今後の産業保健のあり方に関する論点」、資料2「神村構成員提出資料」、資料3「中嶋構成員提出資料」、資料4「武藤構成員提出資料」、資料5「神津構成員提出資料」、資料6「岡田構成員提出資料」、参考資料といたしまして、「産業保健のあり方に関する検討会開催要綱」です。資料の不足等はございませんでしょうか。
 それでは、以降の議事進行につきましては森座長にお願いいたします。
○森座長 皆さん、おはようございます。本日は第2回の検討会ということで、更に議論を深めてまいりたいと思います。議事次第にございますように、まず1回目の検討会の主な意見を振り返り、その後に、更に情報を収集するという目的で、産業医、衛生管理者、保健師として活躍されている構成員から、産業保健の現状と課題に関するヒアリングをさせていただきます。それを受けて、さらに皆さんとフリーディスカッションしていくという流れになっていますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、議題(1)今後の産業保健のあり方について、事務局から御説明をお願いいたします。
○岩澤産業保健支援室長補佐 それでは、資料1に基づきまして御説明いたします。
 まず、資料の構成でございますが、黒字部分につきましては、前回、第1回の検討会で事務局より提出した論点ということになっております。青字部分が、第1回検討会で構成員の皆様から御意見を頂いた所でございますので、こちらを中心に御説明いたします。
 まず、「多様化するニーズに対応した産業保健の位置づけについて」でございますが、全ての従業員が健康で安全に働ける職場環境を構築することが重要で、業務起因性疾病の予防だけでなく、それ以外の健康課題への対応も産業保健活動として位置付けるべきといった御意見、一方、産業保健という言葉の幅が広いので、優先順位を付けて取り組むべき、業務起因性のある疾病予防が一義的な産業保健の目的であることは堅持すべきといった御意見がございました。
 資料を1枚おめくりください。論点2「取組を推進すべき産業保健活動について」でございます。こちらにつきましては、メンタルヘルス対策、両立支援、女性の健康問題、高年齢労働者対策、化学物質の自律的な管理といった、事務局よりお示しした論点について、重要であるという御意見を頂きました。また、がん検診の実施率が低いという点に関しまして、例えば受診しやすい環境整備、自治体の行う検診の受診勧奨等、職域でもできる部分もあるのではないかといった御意見がありました。
 続いて論点3「産業保健の実施体制・担い手について」でございます。1つ目が、産業医の職務でございます。御意見としましては、職務適性に関する医学的判断、リスクマネジメントの視点での全体の総括管理、独立性を持った勧告権の行使は産業医に残すべきといった御意見、また、医師にしかできない職務として、どう働かせるかといった医学的判断といった御意見がございました。続いて、衛生管理者の職務についてでございます。中小企業においては、産業医や看護職が事業場に常駐しないといったことから、衛生管理者だけは現場に常駐し現場の実情を知っているので、現場の責任者として配置すべきといった御意見、衛生管理者については、役割を整理し、活動の場を広げるべきといった御意見がございました。
 資料を1枚おめくりください。続いて、現在の法令で産業医と衛生管理者に限定されている仕組みについてどう考えるのか、また、既に多くの現場で活動されている保健師・看護師はどのように位置付けるべきかという点についてでございます。まず、産業医の業務につきましては、保健師が実施できる部分も多い、その役割を整理すべき、産業医の職務を補完するような役割を保健師に与えるべきといった御意見がございました。メンタルヘルス対策や両立支援、女性の健康問題等の支援については、看護職が中心となって主治医との連絡調整を行うことが可能、企業が保健師を採用できる体制を整備すべきといった御意見もありました。また、看護職の活用を進めるため、保健師・看護師について、法律上に位置付け、質の向上も図るべきといった御意見もございました。
 資料をまたおめくりください。続いては、産業医や衛生管理者の選任に関する現在の仕組みについてどう考えるのかという点でございます。まず、全ての労働者に産業保健サービスが届くようにすべき、規模によらず全ての事業場に実態に合わせて産業保健体制を整備すべきという御意見がございました。また、現行の法制度が緩和されるような形となり、法令に基づかない自主的な活動を含め、事業場の現在の健康管理の取組が後退しないように留意すべきといった御意見もございました。もう一点、本社の産業医、保健師等が傘下の小規模事業場の健康管理を行っている例がある、こういうことを踏まえて、企業単位での体制を構築していく考え方も必要という御意見もございました。
 1枚おめくりください。続いては、保険者、健康診断実施機関、健康管理サービス会社等の外部の組織による産業保健サービスの提供についてということでございます。こちらにつきましては、健診機関、保険者、自治体、地域の経済団体と連携することが効果的、特に健診機関につきましては、人的リソースもあるのでサービス提供機関として適切といった御意見がございました。また、外部機関を活用するに当たっては、質の確保のための精度管理が重要、そのために国がしっかり支援することが必要といった御意見もございました。
 1ページおめくりください。続いては、保険者と産業保健はどのような連携体制を構築すべきかという点でございます。保険者と産業保健の役割分担をきっちりとして効率的に実施すべき、産業保健と保険者の保健事業それぞれ何に重点を置くべきなのか整理すべきといった御意見がございました。また、それに関連しまして、企業規模が小さいほど健診実施率が低いという実態がある、傷病手当金に占める精神及び行動障害の割合が増加しているという御指摘がございました。
 続いて8ページをお願いいたします。こちらは、「産業保健を担う者の資質向上について」という点でございます。まず、産業医、衛生管理者の教育研修についてでございます。産業医につきましては、医学に関する知識のほか、法令の知識や社会性も求められる、教育における産業医学の専門性を再定義すべきという御意見がございました。また、衛生管理者については、特に初任時の教育が不足している、また、個人情報を多く取り扱うのに守秘義務について十分理解していないという御意見がございました。続いて、保健師・看護師の教育研修についてでございます。こちらについては、新任期・中堅期・管理期の研修の体系化が必要、特に新任期は重点化すべきという御意見がございました。
 続いて資料の9ページをお願いいたします。「中小企業における産業保健活動について」でございます。まず、どのようなリソース、体制で実施するのが望ましいかという点についてでございます。大企業傘下の小規模事業場については、バックアップ体制として本社の常勤産業医等が支援する仕組みも効率的ではないかという御意見がございました。また、中小企業については、人手不足が深刻であって、義務を重くすると受けきれない、そういった観点で、経営者に対してうまくメリットと捉えられるような意識付けが必要という御意見がございました。
 10ページをお願いします。「中小企業における産業保健活動について」でございます。こちらについて、どのような支援が必要かという点でございます。中小企業の経営者や労働者が相談できる身近な公的な機関があるとよい、商工会や地域産業保健センターにその役割を期待したい、産業保健総合支援センターの強化が必要で、そこへ専従の保健師配置等を検討してはどうかという御意見がございました。また、中小企業については、年1回は必ず受ける健康診断の実施率の向上が必要、その後に健康づくりのサポートが重要となるという御意見がございました。
 資料11ページをお願いいたします。「生産性の向上」という観点でございます。経営者に対して、経営上、生産性向上につながる重要な視点であることを啓発するという部分でございますが、従業員の健康に投資した結果が生産性向上につながるというのが本来の流れであって、生産性向上の前に労働者の健康管理の推進が基本であることは忘れてはならないという御意見がございました。まずは、従業員の健康確保については事業主の責務であるということが大前提であって、法令上の義務事項や努力義務事項を実施する中で、結果として健康経営として評価され企業価値の向上につながるという御意見、「コロナ禍で従業員の健康管理の意識が向上しているので、これを機会に推進していくべきといったような御意見がございました。
 資料の12ページをお願いいたします。生産性向上の関係で、地方公共団体や地域に根ざした組織との連携という観点でございます。御意見としましては、働く人も地域の住民であるので、産業保健の基礎として、もっと行政が地元企業に関心を持ち、連携して取り組む必要があるのではないか、また、企業の経営企画部門が中心となって、地元の団体も巻き込んで活動している例もあるので、そういったものを参考にしてはどうかという御意見もございました。
 資料の13ページでございます。論点7「IT技術の活用促進について」という観点でございます。IT技術を積極的に活用すべき、健診結果の受け取りの効率化のためフォーマットを統一すべき、保健指導やメンタル面談、巡視など、もっとITを活用すべきという御意見がございました。また、職場巡視に関しましては、衛生管理者について、職場巡視を通じて人や環境を見ることで適切な対応ができる、産業医につきまして、職務適性の判断という視点で職場環境を知るということも必要であるという御意見もございました。
 資料の14ページでございます。「その他の意見」でございますが、健康保持増進のために労働者自身のヘルスリテラシーの向上も必要という御意見がございました。資料の説明は以上となります。
○森座長 ありがとうございます。只今、御説明がありましたように、第1回の検討会における主な意見をまとめていただきました。この内容についての議論は、ヒアリングを行った上で、それらの情報も合わせて行っていきたいと思いますので、次の議題(2)産業保健の現状と課題に関するヒアリングに移っていきたいと思います。先ほど申しましたように、今回は、企業等の現場で産業医や衛生管理者、保健師として活躍されている構成員から、それぞれの現場で感じている課題や、今後、重視するべきであると考える取組について、発表を行っていただきます。お1人10分程度ということでお聞きしております。それでは、初めに神村構成員、お願いいたします。
○神村構成員 日本医師会の神村裕子でございます。医師会内では産業保健を担当しております。また地元、山形県のほうでは、複数の事業場の嘱託産業医を務めるとともに、山形産業保健総合支援センターの所長を務めております。
 産業医は、規模の大きい事業場と雇用関係にある専属産業医の方、医療機関での診療を本業としつつ、事業場との嘱託契約により産業医活動もする嘱託産業医に大別されると存じます。平成27年の調査では71%が嘱託産業医というふうに、私どもで把握しております。嘱託産業医の大半は「日本医師会認定産業医」であり、本業の傍ら、各事業場に応じた内容で産業医活動をしております。
 この日本医師会認定産業医制度ですけれども、60分を1単位とする産業医学基礎研修を50単位以上修了し、認定されます。認定後は、5年ごとに20単位以上の生涯研修というものを受けていただき、更新することになります。これらの認定手続の窓口は、各都道府県の医師会となっております。でも、医師会員でなくても認定申請が可能でございます。
 産業医研修会の多くは、都道府県医師会が企画、開催しております。その内容は、御覧のように多岐にわたります。Webを活用し個人のパソコン等で受けられる研修会も今年度から企画していますが、多くの研修会は、まだ対面、集合形式でございます。いずれの研修も、本人であることの確認と、時間内で適正に受講していただいているかどうかの受講確認を行い、厳格な単位認定を実施しております。
 さて、その認定産業医の総数ですけれども、これまでの制度開始以後の累計で10万7,000人を超えておりますが、この中で、亡くなった方、あるいは更新せず失効した方を除き、5年ごとの更新をちゃんと続けて重ねておられる現在の有効者数は、10月28日現在で7万208名となっております。その7万名余りの認定産業医有効者のうち半数近くが、実際に現在、産業医活動を行っていると把握しております。活動している産業医数を年代別に見てみますと、60歳台がピークでございます。活動できない理由としては、平成27年、少し前のアンケートでございますけれども、本業が忙しいからという方が60%、事業所とマッチングできていないという方が35%、経験不足で自信がないという方も20%などでございました。
 こちらのグラフは、2022年10月現在で活動している産業医へのアンケートです。71.2%は契約事業場数が1~2社であります。また、グラフには表しておりませんけれども、1月当たりの活動時間が10時間未満の産業医が75%となっております。
 産業保健サービスを受ける労働者の側から見ていただきますと、労働者数50人以上の事業場に産業医選任義務がございますが、右側のグラフは、産業医選任義務のない小規模事業場で働く労働者が全労働者の59.6%であることを示しております。このように、多数の労働者が産業医との関わりを持っていない可能性があります。これらの小規模事業場の産業保健を支えるのが、次にお示しする産業保健総合センター、いわゆる産保センターと、地域産業保健センター、地産保でございます。
 次をお願いいたします。こちらは産保センター事業の概要です。これらの事業は、いずれも無料で提供されております。産保センターは、都道府県ごとに設置され、産業保健スタッフや事業主からの相談を受けて、研修も開催いたします。右側の地産保ですけれども、地産保はおおむね労働基準監督署ごとに設置され、50人未満の小規模事業場に対応いたします。多くの地産保は、地域の医師会が運営の主体となり、特に健康診断の結果についての意見聴取や、右上のほうにございますけれども、長時間労働者や高ストレス者に対する面接指導は、医師会の登録産業医が対応いたします。
 このように、小規模事業場にとって大切な地域産業保健センター、地産保ですが、例えば私の山形県内では、労働保険が適用されている事業場が3万848事業場ございますけれども、そのうち、令和3年度に地産保を利用したのは3,956事業場、12.8%と、利用度が低い現状がございます。これは他の地域も同じだと思います。地産保の活用が低調な理由といたしましては、知名度不足がございます。また、たとえ無料のサービスであっても、産業保健に関心がないという事業主が多いことも一因でしょう。また、地産保の運営体制はコーディネーター、登録産業医をはじめ、全て非常勤の者で成り立っております。活動予算も限られていることから、積極的な事業展開は困難です。
 このような中でも、地域のそれぞれの医師会は、産業保健をその地域に根ざした公衆衛生活動の一環として捉えて重要視しております。地域住民である労働者の健康支援として、母子保健や学校保健、高齢者保健などとともに、全世代型の社会保障をつなげる重要な部分と考えております。働く人、すなわち納税者の健康を支えて、地域の産業を支える重要な役割があると認識しております。
 次のスライドからは、産業医が行うべき業務、職務のことでございます。ここは、法令の中で産業医が明記されている職務でございます。安衛法や安衛則などの法令で明記されている職務は、職場巡視、衛生委員会への参加、健康診断及びストレスチェックに関すること、職業性疾病を疑う事例の原因調査と再発防止に関することです。法令の中では医師等と明記されているのが、こちらの職務になります。ここでの医師等というのは、医師、歯科医師とされております。主要な業務は、面接指導を行うことと、就業上の措置に関する意見を述べることとなります。
 産業医は臨床も行うため、時間の制約のある産業医の業務負担を軽減したいと存じますけれども、更に地域での活動幅を広げるには、他の職種、多数の職種と連携したチーム産業保健としての活動が不可欠だと思います。現在の法令では、地産保での50人未満事業場の健康管理に当たるのは保健師にも認められていると存じております。
 産業医の職務は近年、多様化し、様々な負担が多くなっております。現場の産業医は様々な課題に直面することが多くなってきたと存じます。令和2年5月に、日本医師会をはじめ、産業衛生関連団体がネットワーク化いたしまして、産業医、産業保健活動を支援する全国医師会産業医部会連絡協議会、少し長い名前なのですけれども、これを立ち上げました。今後の課題解決に向けて、各団体の知見を集めることが重要と思います。さらに、本検討会議に御参集の皆様方の知見も頂き、特に私といたしましては、地域に根ざした中小規模事業場の産業保健活動を支援していければと願っております。
 最後のスライドになります。私、地方に暮らす嘱託産業医からの提言と思ってお聞きいただければと思います。特に産業医が不足している地方部や中小事業場の産業保健活動の活性化は重要です。産業医の職務の効率化を図り、衛生管理者や他の職種とチーム化、前回の検討会でも取り上げられました健康診断フォーマットの統一、また、両立支援には治療担当医師と連携することにより、特に地域の小規模事業場の産業保健の充実、ひいては全ての労働者への産業保健サービス提供を目指しています。日本医師会は長年、産業医選任義務を50人から30人以上に引き下げることを要望しておりますが、真に目指すところは、全ての労働者への産業保健サービスの提供です。そのため、本検討会で皆様のお知恵を頂きたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
○森座長 ありがとうございました。それでは、続きまして中嶋構成員、お願いいたします。
○中嶋構成員 中嶋でございます。私は、先ほど神村先生からありましたように、7割を占める嘱託産業医としての経験から、現在の問題をまとめていきたいと思っております。
 このような4つのことについてお話をしていきたいと思います。まずは、現場ではどのようなことが課題となっているかです。
 私がメンタルの専門医であるということもあるのかもしれませんが、実際上、1か月以上の休復職者の3分の2以上はメンタル関連です。それらの休復職者の判定と、配慮の実装に関する助言が、非常に多く求められます。特に、もちろん6か月以上の長期休業者である場合、あるいは、やはり多いのは再発の場合、それから、休職に至らないアブセンティーズム若しくはプレゼンティーズムといった問題に対する休復職の判定や、配慮の実装についての助言が求められています。
 一方で、産業医として、産業医にかけさえすればよい、あるいは、場合によっては専門医にかけさえすればよいといった医療への過剰な期待があることがよくあります。もちろん疾病性については医療の問題であるとは思いますが、実際には、事例性が医療の問題ではなく、例えば休復職の方を考えても、職場環境の問題であるようなことが多い。その方に対する要求水準が不適切に設定されていたり、あるいは、現在は産業保健も多様な働き方を許容する形の要求になっていると思いますが、職場のほうに、まだ多様な働き方を許容できない風土があるというようなことがあり、むしろ、これは産業保健の問題ではなく職場環境の調整の問題であるというようなことが多いように思われます。
 これは、一般的にメンタル不調の治療と休復職の支援に関して産業保健の立場からやっていることです。下の3つの軸は、当然、産業医がやるべきことなのですが、上の事業者の基本方針、つまり休復職のルールの明示をしたり、あるいは支援窓口を明示したりといったことは、事業者のほうでやらなければいけないことです。このルールがやられていなくて、産業保健のスタッフに丸投げといった形もあるかと思います。そういった意味で、事業者の責任は大きいものだと思っております。
 ここで、現場ではどのような体制で業務を行っているかについて、3つのポイントでお話をしていきたいと思います。まず(1)、チームというものが先ほど神村構成員からも出ましたが、産業保健チームというものが非常に重要だと思います。柔らかく何重にも支える産業保健体制というものをキーワードにしております。社内では、事務担当者/衛生管理者、人事労務担当者、社員相談室がある場合は社員相談室、それに加えて、産業看護・産業保健師、公認心理師やキャリアコンサルタントといったものが、やはり産業保健の推進のためには必要です。特に、私は嘱託産業医として受ける場合に、やはり現場の産業医、産業看護師・産業保健師が必須と考えております。理想としては、ある程度の企業であれば、やはり複数の産業看護・保健師がいるべきだと思っております。また、休復職に当たっては、これは内装する必要はないかとは思いますが、当然、休復職はキャリアに関わることですので、公認心理師やキャリアコンサルタント、あるいはキャリアに関する相談ができる専門職が大きな役割を果たすと思っております。全てを内装することは無理ですので、外部EAP、あるいは休復職に関しては復職支援サービスのようなものを利用して、連携を取りながらやっていく形になっております。
 これはイメージ図です。従業員・従業員家族を、産業医、もちろん事業者、それ以外の専門職が関わりながら、柔らかく何重にも支えていく細やかな産業保健体制が望まれていると思います。
 (2)は遠隔協働です。コロナ禍になってから、特にこのような傾向が強まったと思っております。そもそも嘱託産業医は、契約によって、事業所に時間を決めて、かつ、その事業所の所にという形で支援をするわけですが、それには当然、嘱託産業医の場合は制限がございます。むしろ、時間と場所に囚われない支援を実現するためには、やはり遠隔協働という形で、例えばWEBによる面談、WEBによる安全衛生委員会、クラウドベースの健康管理データ共有や意見書作成、メール等での情報共有を行うことがよいと思っておりますし、私の仕事の仕方もこの形にいっております。嘱託産業医はほとんどが副業であることを考えますと、移動時間が省かれ、手待ち時間に対応できるために、地方の産業医不足問題への解決ともなります。ただし、情報セキュリティ(個人情報保護)の徹底は必要ですし、メール等により情報を共有するというやり方もやはり注意すべきですし、どちらかと言うと、クラウドベースのほうが望ましいのではないかと思っております。
 私が事業所に行っていても、職員さんたちが遠隔で仕事をしているので、それで当然、遠隔で面談しなければいけないということもありますので、コロナ禍による働き方の変化に対応する形になっております。ここで問題になりますのが、巡視の件です。巡視を遠隔でできるのかということがあります。やはり原則としては、一度は直視でその事業所に行くことは必要ですが、例えば衛生管理者が職場巡視をする際に、アクションカメラ等を持って、その映像を同時に、若しくは事後に見るということは、トライアルとしてはよろしいのではないかと思っております。逆に直視、自分の目でしか見られない場所よりも、そういったアクションカメラ等の映像を用いることにより、より細かく見たり、注意して見ることも可能ではないかと思っております。
 これは、現在の新型コロナウイルス感染症の影響下における内閣府の調査で、御覧のとおり、テレワークが情報通信業では非常に高くなっております。私は、この中では卸売業、小売業、農林漁業、保育関係以外の全ての業種について、現在若しくは過去に扱ったことがあります。どの領域でも、やはり遠隔での産業保健は有効だと思います。私が勤めている病院でも、当然テレワークは少ないですが、やはり安全衛生委員会、あるいは個別の面談、長時間労働者に対する医師の面談等はWEBでやっているという実態にありますので、できるだけ対面の支援と遠隔の支援を併用していくことが必要かと思います。
もう1つは、嘱託産業医をやっていて一番強く思うのは、文書作成がものすごく時間を取って負担です。これが軽減されることが重要かと思います。面談結果・措置意見書等の必要な書類等を、ひな形を利用したりクラウドベースで文書作成管理をすることにより、省略化していくことが非常に必要だと思います。また、休復職や両立支援などのために主治医との情報共有が必要ですが、こちらも、私は主治医の立場で産業医と関わることもありますが、その際に、そういった細かい文書を一から作るのは非常に負担が強く、現場に負担を掛けます。ですから、職務を遂行する上での実際的な問題に焦点をあててやり取りするようにして、漠然とした働き方の制限について照会しないことは、非常に重要かと思っております。
 では、特に中小企業として感じることはどういうことかです。次のスライドをお願いいたします。当然のことですが、休復職における配慮が、大企業に比べ制限されてしまう、これは人数が少ないせいでできないことも多いですし、産業医等が不在の場合、全て主治医の意見に丸投げみたいな形になってしまい、主治医の意見が一人歩きしてしまうことが非常に問題だと思っています。また、仮に産業保健スタッフがいても、ひとり職場のことが多く、業務・判断が時に独善的、属人的になりやすいことがあると思います。やはり、こういった中小企業では衛生管理者が活躍されるべきだと思いますが、同じくこれも独善的、属人的になることが多いかと思いますので、複数の目で、複数の形で支えていくことが大切だと思っております。
 今後、重視すべきと感じている取組について御説明申し上げます。次のスライドをお願いいたします。最初に申し上げたように、従業員の多様な働き方を支援することが、現在の産業保健では求められております。そういった包含力の高い産業保健活動を目指すためには、チームという観点では、法令上の構成員、例えば産業看護師や産業保健師の位置付けを明確にすべきだと思います。また、遠隔協働ですが、先ほど神村構成員からも出ましたように、結構、高齢の産業医が働いていることを考えますと、なおさらITリテラシーの向上と、当然のことながら遠隔協働をやるベースとなる情報セキュリティについての取組が必要だと思います。それから、実際に私が働いていて必要だと思う効率化ですが、やはり必要な文書化の過程を合理化・省略化することが求められているものかと思います。以上でございます。
○森座長 続きまして、武藤構成員、お願いいたします。
○武藤構成員 日本人間ドック学会の武藤でございます。私からは、中小企業における産業医業務の実際ということで、健診機関の立場から具体的な業務内容、課題対応等について御説明申し上げます。神村先生や中嶋先生とかなり重複している部分もありますので、御了承いただきたいと思います。
 まず初めに、中小企業の産業医業務を御紹介する前に、我々はどの程度の事業所と契約し、どの程度の労働者の健康管理を請け負っているかを、口頭で御紹介します。我々は静岡県に3つの施設があり、常勤と非常勤を合わせて約40名が、嘱託産業医業務を行っています。契約事業所数は約400で、平均、1人約10事業所となります。事業所数は、小売店の各店舗が別事業所としてカウントされていることもありまして、実際には1人約8事業所程度を担当しています。おおよそですが、1事業所の従業員数が平均約100名程度とすると、嘱託産業医が平均で800~1,000名程度の従業員の健康管理をしているということになります。
 それでは、嘱託産業医がどのような業務を行っているかを御紹介します。ここには記載していませんが、訪問頻度は多くは月に1回ですけれども、規模の大小によって、増えたり減ったりすることもあります。1回の訪問時における活動時間は、おおむね2~3時間程度です。主な業務は、分かりやすく御説明するために「3点セット」と申しておりますが、安全衛生委員会への出席、職場巡視、健康相談になります。おおよその活動時間は、ここにお示ししましたが、事業所の特性によって濃淡が生じています。この3点セット以外ですと、健康診断の実施時期には健康診断の結果を確認し、就業上の措置判定を行っています。
 3点セットの業務をそれぞれ簡単に御紹介します。まず、安全衛生委員会に参加した際には、労災や業務上疾病の予防や再発防止に関する助言、労働衛生3管理に関する助言、最近の健康問題に関するトピックスなどについてコメントしていますが、スライドを使って簡単な健康講話を行っている所もあります。
 職場巡視は、作業管理、作業方法についての問題を指摘し、職場巡視報告書を作成しています。
 健康相談は、メンタルヘルス不調者、長時間労働者、高ストレス者、定期健康診断の有所見者、その他の健康問題などがありますが、質量ともに負担が大きいのがメンタルヘルス不調者への対応です。長時間労働者の多い事業所では、この面談に取られる時間が非常に多くなっています。10年、20年前と比べて、この辺りの業務が質量ともに非常に多くなってきていると思います。以上が、我々が行っている嘱託産業医の簡単な概要です。
 次に、中小企業における産業医業務の課題・原因・対応等についてまとめましたので、御紹介します。まず、移動に時間が取られるという物理的な問題があります。前回の検討会でも申しましたが、特に製造業は騒音、臭気、化学物質の問題等から、市街地から郊外に移転しているため、産業医が訪問する際の移動にかなりの時間が取られます。オンラインの活用を考えましたが、職場巡視が課題となります。この場合、例えば産業医の職場巡視は数ヶ月に1回でも可とし、巡視できない月は衛生管理者の巡視記録の確認で代替するといった方法も考えられます。
 次に、嘱託産業医で特徴的なのが、定期の訪問日以外の対応が難しい点です。特に、職場復帰面談をタイムリーに行えないことが課題です。看護職の活用やオンラインの活用などの対応案を考えています。
 次に、これも職場復帰関連ですが、嘱託産業医ですと、タイムリーに主治医とのやり取りをすることが難しくなります。そこで、看護職が情報提供依頼書を主治医宛てに作成することもあるのですが、主治医からは医師でなければ受け付けてもらえないために、職場復帰が遅れてしまうことが課題となっています。もちろん、患者を紹介する際の診療情報の提供は産業医が作成しなければなりませんが、主治医から職場復帰可の診断書が出された後に、就業上の配慮の情報提供依頼書を看護職、若しくは事業所から主治医に依頼できるシステムがあればと考えています。
 次に、分散型事業所では、トータルの人数が1,000名を超えている所もあるにもかかわらず、1事業所当たりの人数が多くないため、産業保健サービスは十分に行き渡っていないと考えられます。トータルの従業員を勘案した産業医、若しくは看護職の選任が必要ではないかと考えます。
 次に、ストレスチェックでは、産業医の面接指導を希望しない高ストレス者が少ないことも課題と考えます。ストレスの原因を会社に知られたくない、相談しても解決はしない、そもそも深刻な問題はないといった理由があるからと、希望制であることから、活用が進んでいないと思われます。看護職のほうがむしろ話しやすいという場合も多いことから、一次面接を看護職が担い、必要な人にだけ産業医に回すという方法もあるのではないかと考えます。
 そして、長時間労働者、過重労働者に対する面接指導ですが、就業上の指示をいかしていない事業所が散見されます。こういった事業所は、産業医面談さえしていれば法的義務を果たしていると考えていると思われます。このため、長時間労働が全く改善されず、ひたすら面談だけが繰り返されるという事態が生じています。これを改善するためには、事業所に対して、産業医の指示を受けた後の事業所側の対応結果を記録し、場合によっては報告義務を負わせるといったことも必要ではないかと考えます。
 次に、定期健康診断後の保健指導は、看護職のいない事業所ではほぼ行われていないと思われます。この点に関しても、看護職の活用が望まれます。
 そして、これは産業医の業務ではありませんが、衛生管理者の業務についても少し触れたいと思います。前回の検討会でも申しましたが、衛生管理者が十分に活躍していないというのが課題だと思っています。その原因の多くは、衛生管理者自身というよりも、事業者側にあると思っています。事業所は資格を取るように指示するのですが、何の仕事をする資格なのかを把握していないため、適切な指示が出ていません。衛生管理者も事業所からの指示がないと動けないため、活動が限定的になっているのが実情だと思います。そこで、例えば衛生管理者の年間の巡視回数を労働基準監督署に報告するようにすれば、事業者側にも衛生管理者の巡視義務が明確になるのではないかと考えます。この衛生管理者の職場巡視は、先ほど述べた産業医のオンライン業務を推進する上で重要な役割を果たす可能性があるので、是非検討していただきたいと考えます。
 話題が前後しますが、ストレスチェックについて追加です。集団分析の結果から、職場環境の改善が必要になることがありますが、これが低調であることも課題と考えています。専門家が不在なことや、やり方が分からないということが原因となっていると思われます。
 そして、報酬の関係で、専門産業医の関与が乏しいことも問題と考えます。好事例の積み重ねや国からの助成があると、産業保健のレベルアップにつながると考えています。
 50人未満の事業所の産業保健ですけれども、地域産業保健事業のカバー率の低さですとか、産業保健サービスが困難となっている所があるかと思います。地域産業保健センターの体制や権限の強化とともに、国からの財政支援、看護職の活用、健康経営事業との連携などを対応策として考えました。
 最後に、リスクアセスメントの実施率の低さを挙げさせていただきます。やり方が分からない、必要性を感じていないことが原因であり、例えば報告書の提出によって労災保険料の低減などのインセンティブを与えるといった改善方法も考えられます。
 今回のテーマとは少し逸れますが、人間ドック健診機関が行っている、産業医の選任義務のない50人未満の事業所の従業員に対する産業保健への関わりについて、簡単に補足したいと思います。
 我々が行っているのは、主に健康診断と事後措置に関する部分と考えておりまして、健康診断の結果、要受診判定となった人に対して、受診勧奨をしていますが、これは事業所が実施すべき保健指導や受診勧奨を代行しているとも考えられます。特に、就業上の配慮が必要と思われるような異常値、例えば血圧ですと180/110mmHgのⅢ度高血圧のような人には、強力な受診勧奨をしています。受診さえすれば、ひとまず適切な治療や管理がされているはずですから、あとは、必要に応じて両立支援を活用することができれば、健康診断結果に基づく事後措置は一定レベルになると思います。したがいまして、まず健康診断を受診することと、要受診となったらしっかりと受診されることが重要と考えています。
 それから、特殊健康診断につきましては、一次健診結果に基づく結果通知や文書指導はもちろん、二次検査の実施と、その結果に基づく事後指導も行っています。次のスライドのような書式を用いて、この二次検査の結果から業務起因性を推定し、それに基づき就業上の措置も指導しています。この辺りまで行っていれば、実際に巡視ができない50人未満の事業所であっても、健康管理、作業管理、作業環境管理が一定程度可能になると考えます。しかしながら、これはあくまで特殊健康診断を受診していなければ始まらないことですから、まずは必要な人には特殊健康診断を受診していただくことが重要になります。それに加えて、我々、人間ドック健診機関が、特殊健康診断の二次検査の実施と、それに基づく事後措置が適切に行えるよう、体制整備をすることも重要であると考えます。以上になります。
○森座長 武藤構成員、ありがとうございました。この後、もう2つ御発表を予定していますが、当初からお話がありましたように、本日は日本商工会議所の大下構成員が11時までの御参加ということをお聞きしております。ここまでのことで、御発言があればお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。
○大下構成員 日本商工会議所の大下です。御配慮いただきまして、ありがとうございます。
 神村先生、中嶋先生からお話があった中で、確かにそうだと思ったことですが、前回申し上げましたとおり、中小企業は社内では健康管理や産業保健の維持について体制が十分ではありません。ですので、いろいろな主体が関わって、多層的、多重的にカバーできる仕組みを作っていくことは本当に重要だと思っております。是非この点を重視をして今後の議論を進めていただけると、中小企業にとっても有り難いと思います。
○森座長 ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。それでは、ヒアリングに戻りたいと思います。神津構成員からお願いいたします。
○神津構成員 全国衛生管理者協議会の監事をしている神津と申します。本日は、衛生管理者の現状と課題についてということで、御報告をさせていただきます。なお、御報告に当たりまして、私はHOYAという会社に勤務して衛生管理の業務を行っておりますので、本日の話は、前半に弊社の現状を、後半に全国衛生管理者協議会で行ったアンケートの結果を基に、御報告をさせていただきます。
 まず、企業における衛生管理者の現状ということで、主に製造業として事業活動を行っている企業の「衛生管理者」の現状について、すなわち私が所属する会社の現状について、まずは御報告させていただきます。
 企業規模としては、国内に3,400人ほどの従業員がいる会社です。衛生管理者の選任が必要となる事業場は18事業場ございます。そのうち、衛生管理者を1人選任する必要がある事業場、50~200人の事業場が約9割となっています。事業場の業態としては、製造、技術開発、オフィスの3つがございます。製造と技術開発の事業場、12事業場については、有害業務を有しております。所在地は東京と埼玉をメインにしておりまして、東北地方にも数拠点ございます。
 グループ会社としての労働衛生管理体制ですが、本社に安全衛生のグローバル統括責任者、この者は統括産業医でもありますが、責任者を置き、私のような専任の安全衛生担当者を数名配置し、グループの安全衛生方針の策定や、事業部/事業所を支援するというようなことを行っています。また、特徴として、グループ全体と国内事業場の健康管理、いわゆる産業保健を推進し支援する組織を設けておりまして、専属の産業医、ここは事業場の専属産業医ということではなく常勤という意味合いですが、数名の産業医と数名の保健師を配置しております。
 次いで、事業場の衛生管理者の現状と業務遂行状況について御説明いたします。業務については、安全衛生法第12条と安全衛生規則第11条の業務を基に整理いたしました。
 まず、衛生管理者の現状ですが、資格取得年齢は20~30代の者が5割、40代で約4割と、幅広い年齢となっております。経験年数は、平均約10年です。所属部門は、人事部門が7割、総務関係その他が3割となっています。人事部門に所属する者は、健康診断の設定、その他健康管理に関する業務を主たる職務の一部としている部門です。また、業務の遂行状況ですが、職場巡視、作業環境管理、作業管理、それらをしっかりと実施、遂行しております。
 労働衛生3管理の1つとなる健康管理、労働衛生教育、そして、現状で大変重要となっている化学物質のリスクアセスメント、さらには総括管理ということで整理しております。特に健康管理については、有害業務を含めた健診の設定、結果の把握、嘱託産業医の先生による保健指導、あるいは社内の保健師による健康相談の調整といったことを幅広く行っています。また、有害業務がある事業場においては、化学物質のリスクアセスメントが重要な業務となっておりますが、これについては、社内に「化学物質管理基準」、「リスクアセスメントガイドライン」等を策定して導入しておりますので、その中で、化学物質管理者の関係者と連携して、業務を遂行しているという状況です。総括管理については、いろいろな業務がございますが、弊社の場合、ISO45001、いわゆる労働安全衛生マネジメントシステムをグループとして導入しておりますので、その中で、衛生管理者もPDCAの運用に関与し、さらには事業場のリスク管理を含めて行っております。
 このような状況を踏まえまして、弊社の衛生管理者の業務遂行状況について、今回その特徴となる部分を8つほどに整理いたしました。(1)事業場の規模が小さいので、各衛生管理者は、主たる業務との兼務で業務を遂行しています。(2)と(3)ですが、事業場の業態によって注力する部分が異なるという点です。当然ですが、有害業務がある事業場とオフィスでは、業務の主体が異なるということです。(4)にあるのは所属による違いです。人事部門所属の場合、主たる業務内容に健康管理が含まれますので、法の第12条で示されている「健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置」が効率よく遂行されていると言えます。
 (5)は(4)と同様に所属に関することですが、人事部門以外の所属の場合、その事業場の人事部門の担当者が「健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置」を遂行しており、選任の衛生管理者は、彼らと連携して、事業場で必要となる業務を滞りなく行っているというようなことです。
 (6)から(8)は、業務を遂行する中で更に特徴的な部分を示しています。(6)にあるように、衛生管理者の業務というのは多岐にわたるので、いろいろな方が、それぞれの役割分担の下、補完し合いながら業務を遂行することが衛生管理者としては大変重要であるということが、今回改めて分かりました。また、(7)にあるように、資格を取得する前に健康管理等の事務的な業務経験があると、資格取得によってその知識と意識が深まり、資格取得後の衛生管理業務がより効率的に行われる傾向にあることも、今回分かりました。衛生管理者の免許取得に当たり、労働衛生の実務経験の必要性と重要性を改めて認識した次第です。(8)ですが、経験の浅い衛生管理者は能力向上教育の受講を大変強く希望しているという点も、今回整理する中で再認識いたしました。
 以上のように、本社に安全衛生管理部門があり、さらには常勤の産業医が配置され、事業場の嘱託産業医として業務をこなし、かつ、保健師も常勤でいるような企業では、彼らが事業場の衛生管理者と協力し、かつ、衛生管理者はその支援を受けながら、衛生管理者としての業務を遂行していると言えます。そのような管理体制にあれば、衛生管理者としての業務は十分に遂行できるのではないかと思っています。
 以上のように、弊社の衛生管理者の現状については、大きな問題はないと思いますが、次の点を今後推進していきたいと思っております。1つは資格の取得の促進、能力向上教育の推進、さらには、労働衛生の3管理にある作業管理、こちらはエルゴノミクスによる作業改善も必要になっております。4つ目ですが、化学物質におけるこの度の省令改正への適応ということが、今後必要になってきています。
 ここからは、過去、全国衛生管理者協議会として、衛生管理者へアンケートを行っておりますので、そこで得られた情報を基に、こちらは中小企業をメインとした衛生管理者の方々の現状と思っておりますが、その点を御報告させていただきます。アンケートは令和元年に行ったもので、回答総数は595件でした。能力向上教育に関する状況把握がメインでありましたが、衛生管理者の業務実態、悩み、希望なども提示いただいております。その点についてお話をさせていただきます。関係データは13ページ以降にお示ししておりますので、必要に応じて御確認いただければと思います。
 まず、回答者の実態です。中小企業の方が約5割となっており、さらには、衛生管理者の選任義務が1名という事業場が約5割、兼務で業務を行っている方が8割というような現状になっておりました。また、下にありますように、資格を取得して選任届を出し、その後は十分に業務が行われていないという点も、実態として浮かんでまいりました。能力向上教育という点ではあまり周知できておらず、その教育を受ける機会もあまりなかったというようなことが分かっております。
 ここからは、アンケートの中で示された意見を取りまとめております。このページでは、事業者の理解について、この点が十分ではないという御意見について、幾つかお示ししております。4つ目にあるように、「名前を貸しているだけ」とか、5つ目にあるように、「形ばかり」というような御意見も中にはありました。
 次いで、衛生管理者の業務遂行上の悩みと希望ということで、衛生管理者の方々から頂いた御意見を整理いたしました。1つは業務負荷への悩みです。こちらは、活動の場を求めている、大変やる気のある衛生管理者の方々の御意見ですが、いわゆる労働衛生の5管理、さらには週1回の職場巡視など、衛生管理者の業務量は非常に多く、その期待に十分に応えられていないという悩みを持っている方が多数いらっしゃるという現実がございます。また、業務内容や業務能力という点についても悩みを持っていまして、どこに重点を置いて衛生管理業務をやればいいのか分からない、経験も余りなく業務遂行能力が自分には十分に備っていないというようなことで悩んでいる方々もいらっしゃいました。次をお願いいたします。3つ目ですが、多くの方々が、情報や知識を共有する場が余りないので、そのような場が欲しい、あるいは困ったときに相談できる仕組み、相談できる機関が欲しいというような希望を持っておられることも分かりました。以上、3年前のアンケートを基に、衛生管理者の課題ということで、中小企業を中心とする衛生管理者の方々が持っている悩みや希望という点をお示しいたしました。
 こちらで、私の報告は最後となります。これまでお示しした衛生管理者の意見を基に、では、どのようなことを今後考えていかなければならないのかということで、見出しとして、「再整理・見直して進めると良いと思われる事項」というようなことで、3点ほど整理いたしました。こちらは全国衛生管理者協議会の中にある事業検討委員会でも議論した内容です。
 1つは、衛生管理者の職務の再整理です。現在、衛生管理者の業務は多岐にわたっており、それぞれの事業場の業態、あるいは所属する組織での役割などによって、業務にかけるウエイトがそれぞれ異なることが分かっております。この点を踏まえて、衛生管理者の業務、職務を再整理し、具体的にお示しする必要があるのではないかと考えております。
 2つ目は、能力向上教育の見直しです。これは、初任時の受講を強化することはもとより、実施方法など柔軟に対応できるような方法を検討することが必要ではないかと思っております。現状では、平成元年に出された指針及び平成6年の通達を基に行われるようになっております。その改正、改定が必要な時期になっているのではないかと思っております。
 3つ目は、更新制度についてです。こちらは能力向上教育と連携して運用するような方法があろうかと思いますが、その制度の検討が今後必要ではないかと思っております。以上、駆け足で申し訳ございませんが、私の報告とさせていただきます。ありがとうございました。
○森座長 ありがとうございました。それでは、最後に岡田構成員、お願いいたします。
○岡田構成員 富士通株式会社で保健師をしております岡田と申します。よろしくお願いいたします。私は、大規模事業所に勤務している保健師ということで、今回お話をさせていただきます。
 会社概況でございます。1935年設立、本社は東京新橋にございます。テクノロジーで人を幸せにする会社として、幅広い領域のプロダクト、サービス、ソリューションを提供しています。13万人の社員が、世界180か国でお客様をサポートしております。国内には約8万人が在籍しております。
 2020年4月、コロナ感染症拡大に伴いまして、在宅勤務が加速されました。そのタイミングで、新しい働き方のコンセプトとして、Work Life Shiftを発表しております。これは、働くということだけではなく、仕事・生活をトータルにシフトし、ウェルビーイングを実現するものであり、仕事の内容や目的、ライフスタイルに応じた最適な働き方、固定的な場所や時間に囚われない、社員の高い自律性と信頼をベースにした取組でございます。固定的なオフィスに全員出社する従来の働き方を前提とした勤務制度、それから手当、福利厚生、IT環境を全面的に見直しております。現在は、アフターコロナを見据えて、オフィスでのリアルなコミュニケーションの効果的な活用を組み合わせたハイブリッドワークを推奨しています。
 こちらが弊社の健康管理体制のあゆみです。1944年の診療所開設からスタートしております。1963年に病院が建設され、71年には病院内に健康管理部門が分離しました。1976年に健康管理センターが建設され、この頃から健診システム、健康管理室も立ち上がり、本格的な予防活動がスタートしております。2009~2010年にかけて健康推進本部が設立されまして、病院のほうもクリニックということで予防にシフトした体制となっています。
 こちらが、健康推進体制の組織図と担当者数ということで、右上のほうがスタッフ数です。400名という大変大規模な所帯となっています。左側ですが、こちらの組織の特徴としましては、人事、総務と独立して、産業保健として独立した組織であること、各専門職種ごとのチームに分かれているということ、それから、全国横断的な配置ということで、この赤丸の所には、産業医の先生方と我々保健師・看護師が配置されているという状況です。
 安全衛生活動というのは経営そのものであり、やはり事業所単位ではなかなか追い付かないということで、現在、会社全体としてどういうふうに取り組むか、まだ期の途中ですけれども、体制整備を行っているところです。この緑の所がエリアという形で、このエリアごとにまずチーム作りをして、そこで連携・協働する体制。そして、そこで過不足があるところを、本部からサポートするということで、京浜地区に大規模な事業所が集中していますので、そこに全国、それから東日本の統括機能がございます。西日本は関西の所に大きな事業所がございますので、こちらに西日本を統括する機能がございまして、それぞれに統括産業医が配置されています。
 私は、このピンクの統括的役割の保健師として全国の保健師・看護師を統制するということで、京浜地区に在籍しております。この8月、さらに事務担当、衛生管理者資格を一部持っている方も含めまして、全社エリアを統合的に見ていこうということで配置されて、今準備を進めているところです。
 これは、地域エリアの活動の一部の紹介ということで、先ほどのエリアごとの特徴的なところを御紹介しています。まず北海道・東北エリアですけれども、北海道は非常勤の産業医の先生と常勤の保健師、それから、東北ですと非常勤の産業医の先生と常勤の保健師3名です。ふだんは、大きなオフィスから小さな近隣のオフィスを、オンラインで遠隔で支援をしています。年に2回ほど、上期・下期で事業所を訪問しまして、その際は、現地にいる衛生管理者に事前に面談の調整等をしていただいていますので、効率的に面談をして帰ってくる。必要なときは、本部から常勤の産業医がサポートすることもあります。また、九州・沖縄エリアは、非常勤の先生方と常勤保健師が4人おります。この常勤保健師4人が福岡と熊本におりますが、それ以外の都道府県も兼務している状況です。あと、中国・四国エリアは、産業医の先生も保健師も皆非常勤ということで、やはり非常勤ばかりですと、なかなか情報共有や連携が取りにくいというところで、本部からのサポートが多くなる場面があります。
 これは、我々健康支援室ということで、保健師・看護師の組織の簡単な紹介です。ピラミッド図のようになっていまして、京浜地区に統括保健師がおりまして、あとはエリアごと、大きな事業所に管理職として保健師が配置されています。さらに、先ほどのエリアごとには、なるだけ常勤の保健師がリーダーシップを取るということで配置をするということで今進めています。
 保健師・看護師の現状となっています。在籍は132名ございまして、正規雇用が72.2%、保健師が110名、看護師が22名となっています。現在、保健師の新規採用は、一般採用募集に準じて計画的人員計画に乗せていただき、2年に1回ぐらい新卒を採用していく予定です。看護師に関しましては、これまで歴史的に、工場採用ですとか診療所機能を有する事業所採用、関係会社の採用等々、雇用背景がございます。現在、新規の採用はない状態です。また、大きな大人数の職場もあれば、ひとり職場もある。それから、社員さん、支援をする対象職種も、工場製造ラインですとか、営業さん、SEさん、SIさん、研究開発と多岐にわたっています。我々保健師・看護師も、従来は新卒入社よりもキャリア入社が圧倒的に多く、臨床経験のある方ですとか行政保健師、他企業様、それから他職種から転職してくるケースが圧倒的に多い状況です。また、受けてきた教育も様々です。
 主な業務は、こちらにお示ししているとおりです。保健師は、一部、衛生管理者として登録して活動している事業場もあります。次の事例を通して、活動については御紹介していきたいと思います。
 これはお読みすると時間がなくなってしまうのですけれども、要所要所を読ませていただきます。担当職場、職場担当制をしていますので、ある保健師はこのように特徴的な仕事をするということで、担当職場から聞こえてくる情報によると、最近大きな顧客との商談が進み、繁忙になっているというような状況がありました。そう言えば長残面談が増えているなとか、新人面談では新人が疲れているな、管理職も疲れているな、そういうことを日々感じながら、最終的には個別の対応ではもう限界があるなと。事業所に何か起こっているな、もう少しヒアリングしてみようかな、不調者をプロットしてみようかな、こういったところが保健師の特徴的な仕事の仕方かなと思っています。そして、最終的に産業医に一連のことを報告し、相談し、職場にきちんと先生のほうから問題を提起してもらうという事例になっています。
 活動の実際1ということで、新入社員全員に面談をしています。こちらは、健康診断の有所見にかかわらず、積極的に健診の機会に面談をしています。顔の見える関係を築いておくことによって、“いざというとき”に相談に来やすい、それから、日頃の職場の情報収集をする良い機会とも捉えています。また、管理職も同じです。ライン管理の中で不調者の速やかな対応につながっています。
 こちらは健康相談です。保健師がファーストラインで相談に応じることが多くあります。状況に応じて、産業医面談につなぐ、心理職と連携、それから医療機関受診勧奨等を行いまして、交通整理を行うことにより速やかな対応につながっています。
 こちらはストレスチェックの高ストレス者の対応です。高ストレス者は、弊社の場合、システム上『健康相談』と『面接指導』の選択肢がもともとありますが、それに加えまして、保健師のよる補助面談も併用しています。その都度、状況に応じた柔軟な対応を取ることができまして、最終的に“医師による面接指導”が効率よく適切に実施できています。また、医師の面接指導を申し出ない高ストレス者に対しましても、リストを作成しまして、過去の対応歴ですとか健康診断の結果、残業状況などを確認しまして、必要なときは積極的に職場担当の保健師から声をかけて、医師につなげることもあります。
 こちらは長時間残業の対応です。弊社の場合、スタッフが充実しているという強みをいかしまして、役割分担をしています。数の多い毎月のルーチン業務の効率化を図っています。結果、単なる個別の面談対応ではなくて、残業の多い職場に産業医の先生から職場支援をするような時間を作ることが可能となっています。
 この事例の最終的なゴールですけれども、やはり個別のハイリスクアプローチには限界があります。管理職も疲弊している、リーダーのフォローが必要、ハラスメント教育も必要であろうということで、やはり一連の状況を情報集約し、個別の問題の背景には職場の問題があるということが推測され、産業医の先生とともに適切な問題提起を行うことができて、最終的には管理職の『ラインケア教育』の実施と職場主体の『職場環境改善活動』につながっているという事例です。
 次をお願いします。これは保健師・看護師の教育体制、弊社の教育体制となっています。4つの柱があります。社内研修、社外研修、計画的な人事ローテーション、それから自己啓発となります。資料を表の所まで送っていただけますか。こちらが、まとめた現任教育です。なかなか産業保健分野には体系的なな教育がございませんので、現在、社内と社外の教育を組み合わせて行っています。もともと、正規で雇用しますと人事制度が社員と同じですので、昇格研修もございます。その研修をしっかり積み上げています。それから、この計画的人事ローテーションが意外と大事で、多様な経験をしていく上では大事なローテーションかなと思っています。やはり企業体力がある場所は自社で実施できますけれども、ひとり職場のような小さな所では、なかなかこういった研修体制がないというのが現状の問題かと思っています。
 まとめとなります。小さな事業所の場合、事業所規模の日数配置ではスポットの対応となってしまい、なかなか継続的な支援は困難であるため、何かしらカバーできる体制が必要である。それから、ひとり職場、少人数職場となりますと、やはり定期的な情報交換ができる場が必要、特に研修ということですね。今本当に誰に何を聞いたらいいかというのが分からない状態ですので、そうなるとたどり着くのがネット情報になります。本当に広くたくさんの情報が出ていますので、適切な研修やセミナーに参加しないと、本当の意味で研鑚を積めないということにつながります。今後の課題として、国なり歴史のある団体に、しっかりお墨付きの研修を提供していただけると大変有り難いと思っています。また、困ったときの身近な相談先の明確化も必要と思っています。地域資源の活用も、場合によっては望まれると思います。
 全体を通してということで、弊社の場合ですと、出社ありきの社員さんと、ハイブリッドワークということでほとんど会社に来ない社員さんがいる中で、ダブルスタンダードになっています。また、事業所をまたぐ組織対応、活動も増えていますので、安衛法がそぐわないと感じることも多々あります。それから、異動や働く場の多様性に向けて、健診データの一元化が今必要と感じていまして、更に将来的に自治体とつながると、退職後も継続的な支援が可能になるのではないかと思っています。あと、いろいろな職種が職務と役割で連携していくことが今後望まれると思いますけれども、効果的に進めるためのコーディネート機能というのは、どこかしらに必要かと思っています。それから、会社在籍の自治体と、社員さんが住んでいる居住区の自治体との連携、これはコロナ禍で非常に強く感じましたので、是非連携が必要かと思っています。私からは以上となります。ありがとうございました。
○森座長 ありがとうございました。ただいま、5名の構成員の方々に御発表いただきました。この後はフリーディスカッションに移っていきますが、その前に、事実関係も含めて、発表に対して何かここは確認しておきたいということがありましたら、短時間ですけれども、時間を取ってお受けしたいと思います。いかがでしょうか。では、冨髙構成員、お願いいたします。
○冨髙構成員 大変貴重なご報告、ありがとうございました。幾つかお伺いしたいことがあります。まず、神村先生にお伺いします。最後のページの提言の所に「衛生管理者からの情報提供が重要」と記載されております。これは我々も同様に考えているところですが、兼務の衛生管理者の方が多い中、いわゆる名ばかり衛生管理者の方もいるのではないかということを踏まえると、その事業場の意識改革や衛生管理者の活性化につながる施策が重要だと考えておりますが、何かお考えがあればお伺いしたいと思っております。
 それから、武藤先生にお伺いします。スライドの5枚目の表の下から3つ目に、課題として「過重労働者面談で産業医の指示が活かされていない」というものがあり、対応案として「産業医の指示に対する事業所側の対応結果まで報告義務とする」とあります。この点について、産業医の勧告権は強化されておりますが、指示がいかされない場合に勧告までいった事例などを把握されていれば、どれぐらいあるのかお伺いしたいと考えております。以上でございます。
○森座長 ありがとうございます。それでは、神村構成員からお願いします。
○神村構成員 御質問、御意見をありがとうございます。今、お伺いしたのは、衛生管理者からの情報提供についてですけれども、私の体験している立場から言いますと、やはり嘱託産業医がその事業場と連絡を取るのに一番窓口になってくださるのが衛生管理者、たまには総務の事務の担当の方ということもありますけれども、なるべく衛生管理者の資格のある方を引き出してきて、その方とお話をしたいとは申しております。その中を通して、衛生管理者の方がどういう職務をしなければいけないか、事業場の中でどのようなことをしていただきたいかということを、こちらのほうでも要求して、その情報をくださいと。毎週の職場巡視のほうは、簡単なフォーマットを作って、お互いに交換しましょうとか、そういうやり方もしながら、私としては、産業医が衛生管理者の職務を支えながら、体験をしていっていただいているという場面もかなりあるのではないかと思いますので、情報提供というよりも、情報のやり取りが一番重要と考えております。以上です。
○森座長 ありがとうございます。それでは、武藤構成員、お願いします。
○武藤構成員 御質問をありがとうございます。長時間労働者に対する面談で、まず、指示に対してなかなか応えてもらえないという事業所自体は、非常に少ないです。その中で、勧告権までいく所はないです。なぜかと言いますと、そこまでしますと、嘱託産業医の契約を解除しますとか、そういったことになってしまう可能性もあるので、余り強い権限、強権発動みたいなことはなかなかしにくいところがありますので、実際のところは、そこまでできないという状況です。そういった感じかと思います。
○森座長 ありがとうございます。私は、勧告権という刀は抜かずに使うというのが一番いいと思っています。この対応がされなければ、勧告権を使うぞと言うだけでも随分効果があるという経験があります。他はいかがでしょうか、質問の時間は、これでよろしいでしょうか。では、この後のフリーディスカッションの中でも、今の御発表を受けての御意見も含めてお寄せいただければと思います。
 本日は、論点1、2、3、5という、特に産業保健体制に関することが議論の中心です。それぞれの専門職の資質向上が4番ですから、これは除いて、各専門職どのような活動をするかを考慮して、その担い手を養成し、特に中小企業も含めて提供していくのかということを中心に議論をしていきたいと思っております。それでは、どなたからでも結構ですので御発言をお願いいたします。
 すぐに手が挙がりませんので、最初に私から発言させていただきます。衛生管理者の方々の役割というのがすごい大事だという認識がまずあります。また、保健師の皆さんにもすごい活躍してもらいたいというのが、真の思いです。そのような中で、それぞれの役割をどのように定義するかについて、まず衛生管理者は産業保健スタッフの一部なのかどうなのかという議論をすべきかと思っています。依然、労働者の健康情報の取扱いを議論したときにも議論があったと記憶していますが、衛生管理者というのは、事業者の持っている責任に対しての技術的事項を行うという立場に置かれていますので、産業医のような独立性は必ずしも求められていません。そのような中で、、保健師がは、これまで法的な位置付けが不明確だったから、衛生管理者を取って、衛生管理者的な仕事をするという動きは一部にあったと思います。今後、保健師は衛生管理者のような立場なのか、産業医のように独立性を担保したらいいのか、保健師の位置付けをどうするのかについて、明確化が必要に思います。労使関係の中で、産業保健のスタッフの位置付けは、ある意味すごく重要なことなので、衛生管理者にはこういう役割、産業医はこういう役割、保健師はこれを機として、その方々が衛生管理者の資格を取って衛生管理者という役割を果たすなら果たす、または産業医とともに産業保健スタッフを構成して、独立的な立場で役割を果たす、その辺りを整理しなければならないのではないかと、今日の皆さんのお話を聞きながら考えていました。どの職種の役割もすごい大事だということは分かっているのです。最初に口火を切らせていただきました。他はいかがでしょうか。三柴構成員、お願いします。
○三柴構成員 御指名ありがとうございます。まず、今の森先生の御発言に賛成です。一方で、日本の雇用慣行というか労使関係の特徴を考えなければいけないと思っています。ある種、ごちゃっとしているのが良さという。ヨーロッパのように、労使が階層的な対立関係にあって、何でも白黒きちんとつけていこういうところと、ちょっと違うというのはあるかなと思っています。
 3点、要点を絞って意見兼質問を差し上げたいと思います。1つ目は中小企業対策、2つ目は個人情報管理、3つ目は関係機関連携についてです。中小企業対策について言うと、現状では日医さんの認定産業医が、実質、免許のような役割になっているので、その部分で、特に更新単位とか実地のところ、あるいはそもそも基礎研修のところで、産業医の先生が資格を獲得したり維持するためには、中小企業での就業を条件化するような、一部でもいいのですけれども、経験を持っていただくような枠組みというのが考えられないのかなと考えています。
 それから、現状、産保センターに、特に中小企業対策の面で予算を強化する傾向と承知しており、その方向には賛成です。ただし、実際、産保センターさんに協力できる医師が限られている、医療資源が限られている、お願いしても、なかなか応じてもらえないという実態もあるので、結局、企業団体等、商工会議所さんも含めて、そういった所が共同で産業医の先生を選任する、そういった方と契約するというのはあってもいいのではないかと思っています。これは、別途、検討が進んでいるフリーランス等への産業保健の拡充を考えても重要な対策になってくるのではないかと思います。そうした方法により、その業種の特徴を踏まえた産業保健とか、あるいは一定の報酬を、産保センターだと支払えない部分の報酬を支払えることになるのではないかとも思っているということです。以上が中小企業関係です。
 個人情報管理の面ですけれども、これは端的に申し上げて、日本の労使関係の特徴を捉えると、産業保健者と事業者間で、特にそれが必要な場面での情報の連携ができるようにするということは多分重要で、そのために、ルールをシンプルかつ柔軟にするということが必要かなと。以前、健康情報等の取扱いに関する検討会が開かれて、既に法令改正と手引きまで公表されていますが、やはり綿密に書きすぎて、シンプルさと柔軟さが企業等に伝わるのかなというのが、ちょっと疑問なのです。
 最後に、関係機関連携ですが、ここでは特にリハビリ機関、これと企業ないしは産保センターとの連携というのが考えられないかなと思っています。例えば休復職の場面で、オランダなどですと、専門のリハビリ機関があって、そこに労働者を預けると、専門性もありますし、そこで事業者との連携も図ってくれるということで、ちゃんと治療もやってくれるし、それから、戻れるタイミングも上手に図ってくれると。さらに、事業場内で仕事がなくても、そこで就業している限りは働いていることにする。だから、雇用も保障するというやり方を、北欧の国では取っていたりするのです。日本でも大企業中心に、復職判定の前にリハビリ機関にお預けするということはやられているようなので、その枠組みをもう少し公的に認証していってもいいのではないか、その際、産保センターとの連携というのはあってもいいのではないかと思っています。以上です。
○森座長 三柴構成員、質問の部分は、どなたにどこをお聞きするのですか。
○三柴構成員 質問の部分は、森先生の御発言とかぶる内容なのですけれども、衛生管理者の位置付け、事業者との関係での位置付けについて、私も衛生管理者協議会さんに御所見を伺いたいなと思いました。ちなみに、私は人事に近くていいのではないかと思っています。
○森座長 神津構成員、お願いします。
○神津構成員 位置付けですけれども、私たちが衛生管理者全体を見ていますと、かなり不明瞭というのが現状なわけですが、本来あるべき姿は、先ほど森先生がおっしゃられましたように、事業者の責務の中の1つです。これは、総括安全衛生管理者という法の10条の中に記載されている事項を、12条で、衛生管理者がその権限を持って実行する、管理するという表現になっています。そのような位置付けです。ただし、先ほど申し上げましたように、そういう現状としてやりたい、頑張ろうという人たちが多数いる中で、それは事業者のやはり理解ということが大前提にありまして、そこがやはり大きな、若干ネックになっているのかなと思っております。法的には位置付けはもう明確でして、なおかつ、職場巡視に対しては、衛生の措置をするという権限を与えているということもありますので、それをいかに履行するかという部分かなと思っております。以上です。
○森座長 ありがとうございます。鎌田構成員、お願いします。
○鎌田構成員 5名の構成員の皆様、貴重な御報告をありがとうございました。日本看護協会の鎌田でございます。前回の検討会でも述べましたとおり、労働者の数によって区分されることなく、全ての労働者に産業保健サービスを提供することができる体制をしっかり整えていくべきと考えております。一方で、現行の安衛法で規定されている産業医の職務は、多岐にわたっており、これまでの検討会でも指摘されているとおり、産業医の業務負担はかなり大きいと考えております。神村構成員提出資料の11~13ページにも示されておりますが、産業医でないとできない業務と、産業保健スタッフが実施できる業務とを、しっかりこの検討会で整理し、産業保健チームとして中小企業を支援していくことが重要ではないかと考えております。
 また、岡田構成員の御報告にもありましたとおり、産業保健分野で看護師や保健師は多岐にわたって活躍しております。日本看護協会は、個人事業所や地域産業保健センター等で中小企業を支援している保健師にヒアリングを行いました。その結果、中小企業を支援する保健師は、それぞれのケースの緊急度と解決に必要な支援を判断し、労働環境を含めた詳細な情報を収集、整理した上で産業医の就業判断につなげていました。このように、保健師は、それぞれのケースの解決に必要な対応を見極めて、産業医の判断に必要な医学的情報を収集し提供することで、産業医が適切かつ迅速に就業判断を行えるようサポートしております。
 また、保健師は、個別のケースのみならず、中小企業が自立して健康管理を行えるようサポートしておりました。具体的には、事業所の経営者や人事担当者等が適切に健康管理計画を作成し実施できるよう、企業の現状と課題を示し、どのような課題に取り組むべきかを経営者に助言したり、担当者にそのデータの読み方を説明したりするなど、幅広く活動しておりました。
 このように、産業保健分野で保健師は多岐にわたって活動しております。中小企業に産業保健サービスを提供するためには、このような保健師や看護師による産業保健活動を、より広く推進していく必要があると考えております。中小企業に対する産業保健体制を整備するためにも、労働安全衛生法上に保健師や看護師をしっかり位置付けるべきであり、そのための検討を進めていただきたいと思っております。以上です。
○森座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。神村構成員、お願いします。
○神村構成員 産業保健のほうに様々な職種が関わってチームを作るということは、こちらでも主張しているところでございます。ただいまのお話の中で、看護師・保健師、そこの辺りの違いについて、もう少し認識がないのかなと思いました。1つには、先ほど岡田委員の御発表にも、今、看護師としては募集していないとか、そういうところがちょっとあったのではないかと。それから、保健師課程、看護師課程の大学教育において、カリキュラムが大分違っていると聞いております。ですから、例えば看護師の資格をお持ちの方で、産業保健に関わるのであれば、このような研修が必要とか、そういうこともあった上での、ある程度の研修を担保した上で、OJTに任せてしまうと、その辺が曖昧になるので、何かそういう仕組みがあってこその産業保健の中の位置付けではないのかなと思っておりますので、御検討いただければと思います。
○森座長 位置付けるに当たって、資質と裏付けをしっかりやっていくということですね。ありがとうございます。では、及川構成員、お願いします。
○及川構成員 及川です。プレゼン、本当にありがとうございました。実に勉強になりました。改めて、中小企業のためにも地域のプラットホームというのをしっかり作っていただく必要があるのではないかと思いました。その際には、役割をしっかり分担するとか、地域の資源を十分に活用するとか、多層的なことに地域ごとに特徴を出していただいて結構だと思います。改めて、遠隔協働ですとか、書類のフォーマットの必要性、今できること、あるいは、もう少し時間が掛かること、将来の課題というのを、地域プラットホームに乗せる構想の中で、今後アクションプランに起こしていただいて、できることはすぐやっていただきたいと、今日プレゼンを頂いた課題が多いということを踏まえて、強く思った次第でございます。あと、活動していない産業医の割合、数というのが、はっきり改めて示されたということも大変勉強になり、今後、考えるべき問題だと思います。
 それと、幾つか各論的な話ですけれども、やはりメンタルのところが、数年、かなり増えてきています。これは、もう産業構造の転換、当初より、かなり産業が変わっているということがあると思います。非正規が増えているということもあると思います。ハラスメントのところでは、相談所が出来ていますので、そういった所の連携というのが、かなり現場では必要になってくると感じました。また、地域資源の話も御指摘いただきましたけれども、私どもですと、温泉旅館組合という地域の組織がありまして、地域に根付いた活動もしております。こういったものも、しっかり連携ができるのではないかと思っております。
 いずれにしても、今後の方向は是非データドリブンで、データを活用して効果的にプラットホームが切れ目なくシームレスにつながることが重要だと感じております。中小企業の課題が多いということは、改めて感じました。できるところから進めていただきたいと思っております。以上でございます。
○森座長 ありがとうございます。それでは、続きまして、協会けんぽの中島構成員、お願いします。
○中島構成員 協会けんぽの中島でございます。1点、質問させていただきます。先ほどの日医の神村構成員と問題意識が共通しておりまして、すなわち、産業保健を担う医療専門職として、産業保健の保健師・看護師についてどのように考えるのかということです。保健師と看護師というのは明確に職分が違います。そして、保健師の中でも、行政保健師と産業保健師は、ミッションも違えば、求められる資質もかなり違ってきているという実感がございます。そういう意味で、今後、産業保健を担う職種として、保健師を念頭に置いているのか、看護師を念頭に置いているのか、また、保健師を念頭に置くにしても、行政保健師のニーズが高く、国としても、今後、行政保健師を1.5倍確保していこうという方策で地財措置もしています。協会けんぽにおいても、保健師の確保をしたいと思っておりますが、採用するのが困難な状況です。そういう中で、果たして、量的な確保ができるのかということ1点ございます。
 それとともに、産業保健が高度化し、とりわけ、メンタルヘルス等の対応が求められていく中で、従来の保健師、看護師の国家資格というスタート地点だけで、本当にこの検討会で求められる職責が果たしていけるのか、すなわち、育成という点において、今後どのような展望を持っていかなければいけないのかということも重要になってくると思われます。
 そういう意味では、実際に人員の確保が可能なのか、かつ、そうした資質をもった保健師・看護師をどのように育成していくのか、そのことについて、足が地に付いた議論というものを、整理していく必要があると考えております。
○森座長 大変重要な点、ありがとうございます。先に事務局から御説明を頂こうと思います。その上で、鈴木構成員にお願いします。
○中村産業保健支援室長 今、中島委員からも頂きましたし、先ほどの神村先生も含めて、今回の検討で、保健師と看護師をどういうふうに位置付けていくのかということについて、問題提起を頂いておりますが、今回の検討会のコンセプトは、中小企業を含めて、産業保健サービスが届いていない方々に、どういうふうにサービスを届けていくのかということになっているかと思います。皆様、御承知のように、日本には400万の企業があるのが現実で、こういう方々に産業保健サービスを届けていくためには、どれだけのリソースが必要なのかということも、この検討会の中では念頭に置きながら議論をしていく必要があると思っております。その関係で、前回、事務局からも御提案させていただいた資料には、保健師・看護師の両方を書かせていただいているのですが、まず、そもそも量的なリソースとして、どこまでの方々に産業保健を支えていただく人員として参画いただくのが適当なのかという議論が必要かと思います。
 もう1つは、何度も御指摘も頂いておりますが、現状、保健師なり看護師の方々に産業保健についてきちんと教育を受けていただくという仕組みが出来上がっていない。卒前教育で一部やっていらっしゃるということもあるかと思いますが、それで十分なのかと言うと、十分ではない。産業医の教育と比べても、全く足りていないという現状だと思います。ですので、産業保健に入ってきていただくために、では、どういう教育が必要なのかということについても、論点4のほうになってくるかと思いますが、きちんと整理して、必要であれば制度化していくということが必要なことなのかなと思っております。そういうことも含めて御検討いただければと思います。
○森座長 今回のキーの部分に当たることかと思いますので、今後も議論を続けていくということです。鈴木構成員、お願いします。
○鈴木構成員 ただいまの問題意識について、重ねてになりますが、お話させていただきたいと思います。私自身、産業医の先生と看護師あるいは保健師の方々との間で役割分担を進めていただき、産業保健活動をより実効性のあるものにしていくことについては賛成です。ただし、中島構成員から御指摘がありましたように、進めていくにあたり、量的な確保が課題になるかと思います。
 厚生労働省の「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」を見ますと、事業所に勤務される保健師の方は3,789人と健師全体の7%弱、看護師の方は5,176人看護師全体の1%未満という実態があります。今後、産業保健活動の主体的なプレイヤーとして、こうした方々により一層活躍をしてもらうためには、保健師や看護師に期待される役割を整理した上で、企業や地産保など、どのような所に、どのような役割で入ってもらうかの全体像や計画を考えた上で必要な人数を割り出してどのように育成していくのか、また、予算的な措置も含めて対応していくのかというロードマップを検討していただきたいと思います。これが1点目です。
 それから、資料1の9ページでは、地方の中小企業での産業保健活動の実効性への懸念の話や企業規模が小さいほど健診実施率が低いという指摘が記載されています。中小企業においては、現行制度が求める措置ですら十分にまかなえていない状況を踏まえますと、前回の検討会でも申し上げましたとおり、産業保健の一義的な目的は、業務起因性のある疾病の予防ということを堅持すべきではないかと考えております。
 その上で、2ページの産業保健において重点的に取り組むべき課題を改めて見ますと、こちらにラインナップされている項目は、おそらく大企業では既に対応されているのではないかと思いますが、先ほど神村先生がおっしゃったように、全ての労働者の方に産業保健のサービスをあまねく受けてもらうという観点からしますと、1点目のメンタルヘルス不調の予防、あるいは復職時のフォロー、4点目の高年齢労働者対策、6点目の化学物質の自律的な管理、これらの課題が産業保健の一義的な目的に合致するのではないかと考えております。
 最後に、7ページの保険者と産業保健の連携体制について申し上げたいと思います。業務起因性のある疾病を予防する観点からは、過重労働による脳・心臓疾患の発症リスクを下げることが重要かと思います。大企業では、健康診断で血圧や血糖値の値が高い労働者の方に受診勧奨をするということが一般的に行われていますが、中小企業では取組が十分に進んでいないと思われます。先ほど武藤構成員より、受診勧奨を実質的に代行されているという、重要なサービスの御指摘もあり、大変勉強になったところですが、それに加えて、保険者の役割は考えられないかという御提案です。改正健康保険法の施行により、40歳未満の事業主健診の情報を保険者に提供できる法的な仕組みが整いました。保険者が、中小企業で働くハイリスクの労働者に対して受診勧奨をするといった「コラボヘルス」を展開していくことも考えられるのではないかと思います。
 強調したいのは、大企業では、体制も予算も潤沢なので、政策的な支援をミニマムにしても対応可能な面がありますが、中小企業で働く労働者の方が過重労働等に陥らないよう、政策的なサポートをどのように連携しながら行っていくか、これは重要だと思っています。中小企業と大企業の労働者の間で、受けられる産業保健サービスの格差をできるだけ小さくしていく努力が重要ではないかということを強調して、私の発言に代えさせていただきます。ありがとうございました。
○森座長 ありがとうございます。保健師の供給に関して、少しだけコメントをさせていただきたいと思います。以前は、大学の看護学科全てが看護師とと保健師の受験資格を得られるようになっていました。その後、保健師の教育が非常に高度化し、多くの実習が必要になってきました。しかし、特に自治体での研修受け入れの枠がかなり限られているため、都道府県ごとに各大学に人数の割当てが行われるようになり、これが保健師の受検資格者を規定するようになりました。例えば福岡県はかなり厳しくて、産業医大も70人の看護学生がいて、18人しか保健師コースに行けないという状況になっています。それでも、7,000~8,000人に近いぐらい、保健師資格を取っている方が毎年出てくるのです。それが本当に需給関係として十分なのかという議論です。この検討会は、そのことを議論するには少し場所が違いますが、今後、産業保健の立場から人材育成に関して、要望を出しえいかないといけないのかなと思いました。ありがとうございました。古井構成員、よろしくお願いします。
○古井構成員 産業保健というのが社会インフラになっているということを踏まえて、400万ある事業所というイメージを持つと、圧倒的な事業所数にをカバーする体制の整備が重要ではないかと、改めて認識しました。そのときに、御意見があったように、多面的、多層的な地域の社会資源の関わりが不可欠になると思いますので、産業医と保健師、衛生管理者以外に関わっていただく際には、産業保健というのは何を目指していて、どこまで関われるのか、どこまで関係機関に関わってほしいのかということの明文化が必要ではないかと思います。
 商工会議所さんが、今、自治体と一緒に働き盛り世代の健康づくりを進められていて、その中で健康宣言という制度をほとんどの都道府県でやっています。その健康宣言をする会社からの申請書には、産業保健の要素が随分入るようになってきました。先ほど鈴木先生から御指摘があったように、事業所の健診データをきちんと協会けんぽに提出していますか、あるいは提出をする意向がありますかとか、地産保の存在を知っているか、そういう項目を入れていますので、今回の検討会で、産業保健はこれからの長寿社会に大事なインフラなのだと、そのために、中小企業を含めて、働き盛り世代の健康に関わってくださる機関に、明示していくことが必要だと思っています。
 それから、健診を基点に、毎年関われる強みを持つ健診機関の関わりは、非常に大事だと思います。また、地域を問わず、国民皆保険ということで、協会けんぽをはじめ、場合によっては、総合健保や国保組合といった保険者の関わり、どういうふうに関わっていただくかも示すべきではないかと感じました。以上です。
○森座長 ありがとうございました。それでは、協会けんぽの中島構成員、もう一度お願いします。
○中島構成員 経団連の鈴木構成員から御発言がありましたように、それに関連して一言申し上げます。
 鈴木構成員がおっしゃるように、40歳未満の方々の事業主健診のデータを、医療保険者が頂いて、保険者としての保健活動に使っていくことができるという法改正がありました。しかしながら、健診のひな形契約書の普及を厚労省に進めていただいていますが、なかなかそれが定着しないので、事業主健診データの取得が難しいという現状があります。それ以前の問題として、私が第1回目の検討会でも申し上げたように、40歳未満の方々の事業主健診のデータを保険者が頂いて、保健事業に活用するということについて、方向性は正しいと思いますが、産業保健の分野において、40歳未満の事業主健診のデータを活用して、何に重点的に取り組まれているのか、その上で、保険者は同じ健診データを用いて、どこに重点を置いて保健事業に努めていくのか、産業保健と保険者の行う保健事業の重点分野の棲み分けをきちんと整理した上でないと、保険者は事業主健診データを取得して健康づくりに取り組めばいいのだという形だけでは、物事は進まないのではないかと思っております。その点を申し上げたいと思います。
○森座長 ありがとうございます。続いて、小松原構成員、お願いします。
○小松原構成員 健保連の小松原です。本日のプレゼン、どうもありがとうございました。産業保健師・看護師の業務範囲は本当に広いと痛感しました。看護協会の鎌田構成員もおっしゃっていましたが、法令上、産業医と衛生管理者に限定されている現在の仕組みについて、考えなければいけないと思った次第です。保健師・看護師の役割を明確化したほうがいいのではないかと感じました。
 産業保健師のリソースが少ないのではないかといった話も多く聞こえてくる一方で、産業保健の就職口がなく、看護師等の臨床で働いているという話も多々耳にしております。また、最近は保健師の養成数はかなり絞られていると聞いております。数年前までは年間大体2万人ぐらいの卒業生は出ていたのではないかと思いますが、しっかりとした教育体制があれば、産業保健の中でリソースがもう少しあるのではないかと思います。
 もう一点は、中小企業と保険者が連携したらどうかという話がありました。そこは是非連携をさせていただきたいと思っています。しかし、現在、健診のフォーマットがばらばらであることが一番の問題です。事業主から健診データを頂いても、一からデータをパンチしなければいけないことが生じておりますので、是非健診データの統一も含めて御議論いただけたらと思います。
○森座長 ありがとうございます。冨髙構成員、お願いします。
○冨髙構成員 私からは、先ほどの質問にも関連して、幾つか意見を申し上げたいと思います。まず、5ページの事業者規模による選任義務の違いについて先ほど神村構成員から、産業医の選任義務は30人以上の事業場に拡大すべきという考え方が示されました。また、衛生管理者とのやり取りが非常に重要というお話もありました。正にそのとおりと思っております。そういった意味で考えますと、安全衛生委員会や衛生委員会を有効に活用することも重要かと考えております。全ての労働者にあまねくサービスが提供されるように安全衛生委員会や衛生委員会の設置義務の拡充についても、検討すべきではないかと考えるところです。
 また、先ほど武藤構成員にお伺いした勧告権についてです。私も、勧告権をすぐに使うのではなく、その前に様々な対応をし、改善していくことが重要だと考えております。一方で、武藤構成員から、過重労働者の面談で産業医の支援が活かされていない、事業所側は面談そのものを目的として改善する気がないという課題と、産業医の指示に対する事業場側の対応結果まで報告義務とするのはどうか、という対応案が出されておりました。産業医の指示が活かされないということは、労働者の健康に悪影響を及ぼすことにもつながりかねないと思いますので、その報告義務といった対応策なども含めて、検討する必要があると考えるところです。
 最後、4ページにある産業医と衛生管理者に限定させた現在の仕組みのあり方について、全ての労働者に、ということを考えますと看護師・保健師の方にも産業保健業務をしっかり担っていただくことは有益なのではないかと考えるところです。ただ、皆様からも意見が出されておりますが、産業医はもとより産業看護師・保健師は、一般の医師、看護師、保健師の方たちとは求められるスキルも違いますので、質の担保というところで、今後の研修の充実が重要になってくると考えております。以上です。
○森座長 ありがとうございます。それでは、亀澤構成員、お願いします。
○亀澤構成員 御指名ありがとうございます。私は健診機関の代表として3点申し上げたいと思います。
 先ほど古井構成員から、健診機関の関わりは重要で、どんなふうに関わるのか明文化する必要があるのではないかという御指摘がありました。その関係ですが、第1回目でも申し上げましたが、全衛連では、会員以外も含めて、健診機関が事業場の産業保健に適切に関われるように、労働衛生サービス機能評価事業を行っております。基準として、産業保健に関われるような体制、どのように関わったらいいのかということを示しておりまして、それを用いて健診機関を認定する仕組みを設けております。
 次に、健診機関とのいろいろな打合せの際に、顧客の事業場の状況を適切に把握する必要があると考えています。そういう点で、渉外の担当の者に対しては、衛生管理者の資格を取るようにと勧めておりまして、健診機関の中でも相当の数の衛生管理者がいるということを、2点目として申し上げたいと思います。
 3点目は、何人かの方から、健康診断結果報告書の様式の統一が必要だというお話がありまして、全衛連もそのように考えております。私は、健診機関という立場ではなくて、小規模事業場の総務担当をしていたときに、いろいろな健診機関で実施した様式の異なる健診結果を整理する仕事が大変でした。実際に、健診機関が異なっても標準フォーマットで保険者に提出されるという仕組みを整えて、保健指導に活用されているという保険組合もあると伺っております。是非、健診データのフォーマットの統一ということも進められたらと願っております。以上です。
○森座長 御発言、ありがとうございました。今日はもう時間がまいりましたので、次回に議論を続くということでお願いします。
 座長としての今日の感想的なものですが、大企業の事例で、HOYAさんの事例と富士通さんの事例がありました。限られた資源をどうやって会社全体にカバーしていくかということで、いろいろな工夫をされておりました。中小企業のサービスも、恐らく1つのモデルで全て解決するのは難しくて、いろいろなモデルが出てきて、地域や事業者ごとにそれが選択できていくということが大事だと思います。一方で、機能として、産業医、保健師、看護師、衛生管理者、この辺りの資源の役割はある程度明確にしながら、そこに柔軟性を持ちながらやっていくということが、皆さんの意見なのかと思います。かなりの議論の方向性が見えてきているのではないかと感じました。ありがとうございました。
 それでは、今日の議論を踏まえて、事務局には次回の議論に向けて整理をお願いします。本日の主な議題は終了しました。事務局より、その他の事項について御報告をお願いします。
○岩澤産業保健支援室長補佐 その他の事項は、特にありません。
○森座長 それでは、事務局から連絡事項があればお願いします。
○岩澤産業保健支援室長補佐 連絡事項は2点あります。次回の日程ですが、12月23日10時からの開催を予定しております。委員の皆様には、改めて御連絡させていただきます。また、本日の議事録については、先生方に内容を御確認いただいた上で、厚生労働省ホームページに掲載いたしますので、追って御連絡させていただきます。
○森座長 それでは、本日の検討会は以上で終了いたします。どうもありがとうございました。