第3回化学物質管理に係る専門家検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和4年11月4日(金) 15:00~17:15

場所

TKP新橋カンファレンスセンター カンファレンスルーム16B
(東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング16階)

議題

  1. (1) ばく露が濃度基準値を下回ることを確認するための測定方法の考え方
  2. (2) 作業環境測定(個人サンプリング法)の対象物質の拡大の検討
  3. (3) その他

議事

○化学物質評価室長  本日は、大変お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、第3回化学物質管理に係る専門家検討会を開催いたします。
 化学物質対策課化学物質評価室の佐藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、ばく露防止対策に関する事項について検討することとしておりますので、開催要綱別紙の構成員名簿のうち、「全般に関する事項」「ばく露防止対策に関する事項」の欄に掲載の先生方に御参集いただいております。
 まず、本日の構成員の出席状況についてですが、本日は、13名の構成員の先生方に御出席いただいております。1名、平林先生が御欠席となっております。
 本日の会議は公開としておりまして、一般傍聴者につきましては、ウェブでの音声配信のみとさせていただいております。
 議事録は前回と同様作成いたしまして、後日公表いたしますので、御承知おきください。
 それでは、城内座長に以降の議事進行をお願いいたします。
○城内座長  城内です。よろしくお願いいたします。
 まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○化学物質評価室長  本日の会議の資料は、議事次第と配付資料一覧、資料1に別紙の1から4、これは前回の会議資料を一部修正したものです。資料2に別紙、これは前回の資料を一部修正したものです。参考資料1、2、前回と同じ資料です。以上のものを御用意しております。資料は先生方の机の上にありますタブレットのフォルダに格納しております。全体が1つのファイルになっておりますものと、個々の資料がばらばらになっているもの、2種類用意しておりますので、利用しやすいほうを御用意ください。タブレットの操作方法で御不明な点がございましたら、事務局が補佐をいたしますので、お申しつけください。
 本日の資料は厚生労働省のホームページにあらかじめ掲載しておりますので、傍聴者の方はそちらを御覧ください。
○城内座長  それでは、本日の議題に入ります。
 まずは、議題の1、ばく露が濃度基準値を下回ることを確認するための測定方法の考え方ですが、事務局より説明をお願いします。
○化学物質対策課長  化学物質対策課長の安井と申します。それでは、私から資料1、それから別紙が1から4までございますけれども、そちらの説明をさせていただきます。
 まず資料1の構成でございますけれども、こちらは前回お配りしました資料1-1から1-4、文献レビューがございました。それぞれの中に考察というところがございまして、その考察の前半部分はレビューのサマリーになっているのですけれども、後半のほうに、以上を踏まえてという形で、日本にそれを適用するにはこうしたらいいと提言部分がございましたが、その提言部分をこの資料1に全てコピーしてございます。その上で、前回御議論いただきました内容につきまして追加修正をしたという形で、この資料1を構成しているところでございます。
 それでは、こちらの資料1から御説明をさせていただきます。
 第1の1でございますが、(1)の冒頭、法令の位置づけを明確にしてございます。まず、安衛法の57条の3に基づくリスクアセスメントがございまして、法22条に基づく措置として、安衛則の577条の2の1項でリスクアセスメント等の結果に基づいて、労働者がばく露される程度を最小限にするという規定がございます。それから、同条第2項におきまして、濃度基準値が定められた物質につきましては、労働者のばく露の程度が濃度基準値を上回らないことが義務づけられているという、法令上の枠組みをまず入れてございます。
 (2)は、前回、宮本委員、あるいは最川委員より御指摘があったところでございますが、測定の実施は義務づけられていないということでございまして、ばく露を最小化して、濃度基準値以下とするという結果のみが求められていることに留意するという記載でございます。
 それから、なお書きで、前回、大前委員より御指摘がございましたが、濃度基準値は、有機則、特化則等の特別則の適用のある物質には設定されないということを記載してございます。
 (3)は、前回、非常にたくさん御意見をいただきましたリスクアセスメントと今回の濃度基準値を確認するための測定の関係性につきまして整理したところでございます。前回、小野委員からも御説明がございましたが、リスクアセスメント対象物質が約2,900ある一方、濃度基準値は800程度の物質に限られるということでございますので、まずは、数理モデルの活用を含めた適切な方法によって、リスクアセスメント対象物質に対してリスクアセスメントを実施していただくということでございます。もちろん、その後、その結果に基づいてばく露低減措置を実施していただくことになります。その結果、濃度基準値が設定されている物質を取り扱っている場合は、労働者のばく露が濃度基準値を超えるおそれのある作業を把握した場合は、労働者のばく露の程度と濃度基準値を比較して、労働者のばく露が濃度基準値以下であることを確認するための測定、確認測定と書いておりますが、それを実施して、その結果を踏まえて必要なばく露低減措置を実施するということでございます。
 前回、こちらは遵法測定という用語を用いておりましたが、そうすると測定そのものが義務づけられているような印象を与えるという御指摘も多かったので、こちらはあくまで確認するための測定ということで、確認測定という用語にしているところでございます。
 それから、(4)につきましては、濃度基準値が法22条に基づく健康障害を防止するための最低基準でございますので、当然のことながら、全ての労働者のばく露が、濃度基準値以下である必要がございます。ただし、統計的に処理をして、平均値の上限信頼区間限界が、濃度基準値以下であるところまで求める必要はないという記載でございます。この辺りは前回と変わってございません。
 また、こちらも前回御議論がございましたけれども、法令上、労働者のばく露が濃度基準値を超えてはならないということでございますので、労働者の呼吸域の濃度が濃度基準値を上回っていても、有効な呼吸用保護具の使用によって、労働者のばく露を濃度基準値以下とすることが許容されるということでございます。
 また前回、測定の結果、ばく露が濃度基準値を上回っていた場合どうするのかということがございましたが、それを把握した場合は、直ちにばく露低減措置を講じる必要がございます。例えばマスクを使用させるとか、排気装置を設けるということを直ちに行う必要がございます。また、労働基準監督機関が労働者のばく露が濃度基準値を上回っていることを把握した場合には、前回も御議論がございましたが、いきなり処罰するとかそういうことではなく、ばく露低減措置の実施を主眼として、具体的な方法を示す、あるいは外部専門家の活用を促すなどによって、事業場に対して丁寧に指導して、ばく露低減の措置を実施させるということを記載してございます。
 (5)は、リスクアセスメントにおいて、どういうときに測定するのかということでございます。濃度基準値が定められていない物質につきましては、何かと比較するという測定ではなくて、一定のばく露があることが分かった場合に、正確なばく露の評価を行う必要がある場合にのみ、測定を実施すべきであると記載してございます。この測定は、当然、577条の2の1項によって、ばく露を最小限とするための対策を検討するために行うということになりますので、工学的対策を実施する場合にあっては、労働者の呼吸域の測定のみならず、よくデザインされた場の測定も必要になる場合があるということでございます。
 また、事業場の全体の環境のばく露を下げるという趣旨から、統計的な根拠を持って事業場の有害物質のばく露が有効な管理下にあることを示す必要がございますので、統計上の信頼区間を踏まえた評価を行うことが望ましいということでございます。
 また、(6)につきましては、前回と記載を変えておりませんけれども、建設作業など毎回異なる環境で作業を行う場合につきましては、測定を行った結果に再現性がないということでございますので、典型的な作業を洗い出して、あらかじめその測定を行って、その結果に基づく要求防護係数に対して十分な余裕を持った指定防護係数を有する呼吸用保護具を使用するとか、防毒マスクの場合は吸収缶を適切に使用する、あるいは局排の設置等々によって、労働者のばく露の程度の最小化を行うとともに、労働者のばく露が濃度基準値を上回らないと判断する方法も認められるという記載でございます。
 (7)は、座長から御指摘がございましたが、これらの一連の措置につきましては、化学物質管理者が管理することが法令上規定されておりますので、こういったものにつきましては化学物質管理者の管理下において実施するということを記載してございます。
 それから、注書きを追記してございます。
 まず、注1につきましては、リスクアセスメントをどういった時期に実施するのかということでございます。マル1からマル3にありますように、安衛則の34条の2の7第1項の規定がございまして、リスクアセスメント対象物を原材料として新規に採用または変更するとき、対象物に係る作業の方法を採用または変更するとき、それから、対象物の危険性または有害性に変化が生じ、または生じるおそれがあるというときでございます。これは当然、新しい知見が入ったというときもございますし、例えば濃度基準値が定められたといった場合も含まれるということでございます。
 それから、リスクアセスメント指針におきましては、もう少し詳しく書いてございまして、例えば、前回のリスクアセスメントから一定の期間が経過して、設備の経年劣化、あるいは労働者の入れ替わりなどで労働者の知識などが変わった場合、それから、新しく濃度基準値が定まったような新たな知見の集積があった場合には、再度、リスクアセスメントを実施するよう求めているところでございます。
 注2で、労働者のばく露の程度が濃度基準値以下であることを確認する方法につきまして記載しているわけでございますが、こちらにつきましては自律管理ということで、事業者において決定されるものであり、ここで述べる確認測定以外の方法でももちろん差し支えないわけでございますが、その場合は、労働基準監督機関等に対して、労働者のばく露の程度が濃度基準値以下であることを明らかにできる資料を提示する必要があるということでございます。また、確認測定を行う場合につきましては、精度の担保から、作業環境測定士が測定に関与することが望ましいということでございます。
 それから、よくデザインされた場の測定という記載がございますが、こちらにつきましては、主として工学的対策の実施のために、化学物質の発散源の特定、局所排気装置等の有効性の確認のために、固定点で行う測定を言いまして、従来の作業環境測定のA・B測定の手法も含まれるわけでございますが、それ以外の方法もございます。こちらにつきましても、作業環境測定士の関与が望ましいという記載をしてございます。
 続きまして、2の確認測定の対象者の選定でございます。こちらにつきましては、前回はあまり御意見がなかったところでございますけれども、(1)に書いてございますのは、まず、均等ばく露作業というものを分けて、そこで測定を行うべきだということが1点。もう一つは、8時間濃度基準値の2分の1程度を超えると評価された場合は、何らかの測定が要るのではないかということを記載してございます。
 (2)は、確認測定の考え方でございますけれども、ハイリスクグループということで、最も高いばく露を受ける均等ばく露作業において、最も高い労働者の測定を行って、それで例えば濃度基準値を下回っていれば、ほかの人は全部問題ないので、そういうアプローチがございます。また、仮に濃度基準値を超えていたとしても、全ての労働者に対して、その人に対する防護措置と同じような一律の厳しい基準を取るのであれば、それ以外の均等ばく露作業について測定する必要はないわけでございますが、実際は、均等ばく露作業のばく露の程度によって対策の最適化を図る必要があろうかと思いますので、そういった場合につきましては、均等ばく露作業ごとに最大ばく露労働者を選んで、測定を実施することが望ましいのではないかという記載をしてございます。
 (3)につきましては、最も高いばく露を受ける労働者の選定を行って、そこの労働者の呼吸域の濃度を測定する必要があるということと、最も高いばく露を受ける労働者が把握できない場合、日々作業が違うような場合につきましては、いわゆるランダムサンプリングで均等ばく露作業の中から5分の1程度の労働者を抽出して測定を実施すべきであるということでございます。
 それから、均等ばく露作業の測定に当たりましては、測定結果が全員の平均の50%から2倍の間に収まるようにすべきだということで、プラスマイナス2倍の範囲で均等ばく露作業をやるべきであるということでございます。
 (5)は、宮内委員からの御指摘でございますけれども、577条の2の第10項によって、ばく露の程度に関しては、関係労働者の意見を聴取することが義務づけられておりますので、確認測定の結果の共有も含めて、関係労働者と十分な意思疎通を行う必要があるという記載をしてございます。
 注1につきましては、2分の1というのはなぜなのかというところでございますが、数理モデルによるばく露推定を行う場合は、ばく露濃度が高くなると、どうしてもばらつきが大きくなってきて、推定の信頼性が低いということ。ただ、低いところにつきましては信頼性があるので、そういう意味では、2分の1を1つ区切っているということでございます。この観点から、ばく露濃度を低くするために、ばく露低減措置の必要性がありますという記載をしてございます。
 それから、注2は、最も高いばく露を受ける労働者の選定というところでございます。こちらにつきましては、原理原則からいうと、1人測ればいいわけでございますけれども、実際には測定結果のばらつきとか、測定の失敗などもございますので、8時間濃度基準値との比較を行うものについては、最低限2人の測定対象者を選定することが望ましいという記載をしてございます。また、短時間濃度との比較につきましては、最も高いばく露を受ける労働者1人を繰り返し測定するのが妥当であろうという注書きを付け加えてございます。
 3が測定の時期でございます。まず、濃度基準値を上回るばく露が発生している場合につきましては、第3管理区分の個人サンプリングで義務づけられておりますように、少なくとも6か月に1回は個人ばく露測定を実施して、呼吸用保護具等のばく露低減措置が適切であるかを確認すべきだということにしてございます。
 それ以下の場合、濃度基準値の2分の1程度を上回って、かつ濃度基準値を超えない作業場所につきましては、明確な頻度を定めることはなくて、リスクアセスメントの結果など、あるいは固定式ばく露モニタリングの結果、工学的対策の信頼性、毒性、そういったものを勘案して、事業者が判断すべきであるという記載にしてございます。
 頻度につきましては、全ての場合について一定の頻度で定期的な測定が望ましいということでは必ずしもなくて、例えば局排を整備して、安定的に事業場の管理ができているような場合、あるいは固定式のばく露モニタリングによってばく露を監視しているような場合につきましては、作業の方法とか排気装置等の変更がない限り、呼吸域の測定を再度実施する必要はないという注書きを付け加えてございます。
 4がばく露低減措置の考え方でございます。こちらにつきましては、宮本委員からも御指摘がございましたけれども、ばく露低減措置というのは事業者が一義的には判断するわけでございますが、有害性の低い物質への代替、工学的対策、管理的対策、保護具の使用という優先順位があるということございます。
 それから、特に保護具の使用と選択につきましては、イギリスもアメリカも別規則で非常に詳細な規定を置いてございます。また、アメリカの場合は呼吸用保護具プログラムというのがございまして、インダストリアルハイジニストなどの関与を求めているところでございますので、こういった詳細な規定について、我が国においても規定すべきだという記載にしてございます。
 具体的には、ばく露測定の結果に基づいた要求防護係数を算出して、それを上回る指定防護係数を有する呼吸用保護具を使用させる。それから、防毒マスクの場合は、適切な吸収缶の選択と破過時間の管理、定期的にフィットテストを実施するということでございます。また、津田委員の御指摘を踏まえて、こういった一連の呼吸用保護具に関する措置につきましては、保護具に関して必要な教育を受けた保護具着用管理責任者の管理下で行われるということを追記してございます。
 あと、注書きでございますけれども、呼吸用保護具につきましては、適切に選択されて使用されないと効果を発揮し得ないことから、ばく露低減対策の信頼性という観点から、一番低い優先順位になっているというところを記載してございます。
 第2の短時間濃度基準値の運用でございます。こちらにつきましては、諸外国共通で15分間の時間平均値を超えてはならない濃度として、短時間濃度基準値を定めているということでございますので、その15分間を採用するのがいいということでございますが、8時間濃度基準値を超えて、短時間濃度基準値以下のばく露につきましては、各国の基準においてできるだけ抑制すべきであるというのが記載されていることを踏まえますと、やはり日本においても、例えば1回当たり15分を超えず、8時間で4回までかつ1時間以上の間隔を空けるといった低減対策に努めるべきだと。基準では認められていますので、努めるべきだという記載をしてございます。
 それから、短時間濃度基準値が定められていない物質がございますけれども、当然、短時間濃度基準値が定められていないからといって、それの7倍も8倍もピークの濃度があっていいということは毒性学的な見地からないということでございますので、英国の基準値の考え方を踏まえて、作業中のいかなる15分間の時間加重平均値も、8時間濃度基準値の3倍を超えないように、こちらも努めるべきであるという記載をしてございます。
 (3)の天井値については、英国、ドイツでは設定されていないということでございまして、米国のOSHA規則やACGIHについても、連続測定ができない場合は、15分間平均濃度で評価することが認められておりまして、いかなる瞬間も超えてはならないという天井値の趣旨どおりの運用が行われているわけではないということになりますと、ある意味、少し緩い15分間平均濃度値という運用になりかねないということと、現時点で全ての物質について連続測定が可能ではないという技術的限界を踏まえますと、天井値については設定しない方向で検討すべきではないかとしてございます。
 続きまして、第3は、確認測定における試料採取時間ということでございます。
 1は、8時間濃度時間と比較するための試料空気の採取時間でございます。まず、空気の採取場所につきましては、当然、労働者の呼吸域で行うということでございます。それから、採取の時間につきましては、8時間濃度基準値と比較するという趣旨から、米国、英国で共通に述べているように、本来は8時間の1つの試料か8時間の複数の連続した試料ということでございます。
 ただ、例外として、例えば米国のAIHAでは、作業日を通じて労働者のばく露が比較的均一である自動化・密閉化された作業につきましては、一定短縮してもいいという記載がございますが、こちらにつきましては、当然、測定されていない時間の存在が、ばく露測定の信頼性に対して深刻な影響を与えることになりますので、過去の測定結果や作業工程の観察などによって均一であることを立証することが求められるということと、少なくとも8時間の25%は測定すべきだという記載をしてございます。
 2が、短時間作業の場合の試料空気の採取時間でございます。短時間作業が断続的に行われる場合、あるいは一労働日で化学物質を取り扱う時間が例えば1時間のように非常に短い場合には、8時間の試料を採取するのは非常に難しい。この場合は、作業の全時間の試料を断続的に採取して、作業時間外の、要するにばく露がゼロの時間を加えて8時間加重平均を算出するか、作業を実施しているかどうかを問わず、とにかく8時間の測定を行って、8時間加重平均を算出する必要がございます。
 ただ、例えば1時間しか作業を行っていない場合ですと、1時間に8時間基準値の8倍ばく露していても、8時間平均すると8時間濃度基準値を下回ることになりますが、当然、毒性学上、急性毒性のおそれがございますので、そういったものは許容されないということです。これは、まず短時間濃度基準値が設定されている場合は、15分間の時間加重平均値を測定して、当然、短時間濃度基準値を超えていないことを確認すると。短時間濃度基準値が設定されていない場合につきましても、先ほど申し上げましたように、8時間濃度基準値の3倍を超えないように努めるべきであるという記載をしているということでございます。
 また、こういったやり方以外に、例えば1日1時間しか作業しないような場合は、1時間の時間平均値を計算して、それをダイレクトに8時間の濃度基準値と比較するような簡易な方法も考えられるのではないかという記載をしてございます。
 あと、注書きには、特に短時間作業の場合は、最もばく露が高い時間帯の15分間の時間加重平均値を評価することが、8時間加重平均値の評価よりも重要になってきますという記載をしてございます。
 3が、短時間濃度基準値と比較するための試料空気の採取でございます。短時間濃度基準値が設定されている場合につきましては、最もばく露が高いと推定される作業時間の15分間に測定を実施するわけでございますけれども、1つのシフト中に複数のピークがあると考えられるのが通常でございますので、少なくとも3回程度は測定を行うべきだということを記載してございます。ただし、そもそもの作業時間が20分しかないとか、そういった場合につきましては、もちろん、1つしか測定できないということになるという記載がございます。
 第4が、リスクアセスメントの測定の試料採取の場所及び評価でございます。
 リスクアセスメントにつきましては、濃度基準値が定められていないものもございますので、労働者のばく露が最低基準である濃度基準値を下回っているということのみならず、工学的対策等を駆使して、労働者のばく露を最小限とすることが求められているということでございますので、工学的対策の設計と評価をする場合につきましては、よくデザインされた場の測定も必要になるという記載をしてございます。
 それから、事業場における全ての労働者のばく露を最小限とするという趣旨から、事業場のばく露状況を包括的に評価できる測定である必要がございますので、幅広い均等ばく露作業を対象とした労働者の呼吸域の測定を行って、統計上の信頼区間も活用した評価や最も濃度の高い時間帯に行う測定の結果を活用した評価を行うことが望ましいという記載をしてございます。
 また、こちらは前回も入っておりましたが、建設作業など、毎回異なる環境で作業を行う場合につきましては、その場その場でリスクアセスメントを行うのが困難であるということから、あらかじめ典型的な作業に対して測定などを行っておいて、それに対する十分な余裕を持ったばく露低減措置を決定するという形で、リスクアセスメントを実施する方法も認められるべきであるという記載をしてございます。
 最後、第5の今後のスケジュールでございます。
 まず、今回の測定方法の詳細に関する法令上の位置づけでございますが、先ほど御説明いたしましたとおり、安衛則の577条の2の1項、2項につきましては、いずれも測定を義務づけていないということでございますので、今まで御説明した第1から第4に記載された事項につきましては、安衛法の28条第1項の規定に基づいて、事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための技術上の指針として公表すべきであるということでございます。ですので、ここに書いてある測定を行わなかったからといって、法令違反を問われるようなことはないということでございます。
 それから、先ほども述べましたように、有効な呼吸用保護具の選定、使用に関しては詳細な規定が必要ということでございますので、この技術上の指針にはそういったものも付記すべきであると。
 それから、濃度基準値が定められた物質につきましては、試料採取方法と分析手法について定めておきませんと、測定上の精度が維持できないということでございますので、こちらにつきましても技術上の指針に付記するということを提言してございます。
 今後のスケジュールでございますが、今回、中間取りまとめという形でまとめてございますけれども、これは現在、いろいろなところで作成しております化学物質管理者の講習のテキストにも影響を与えるということでございますので、速やかに取りまとめて公表すべきであるということでございます。
 一方、確認測定は、濃度基準値を上回るかどうかということで行いますので、濃度基準値が定められていないのに、測定の技術指針が出るというのも変なことでございますので、指針の公表につきましては、濃度基準値を定める大臣告示と時期を合わせるべきであるという記載にしてございます。
 当然、この技術上の指針の策定に当たりましては、パブリックコメントにより広く国民の意見を聴取すべきであるという記載をしてございます。
 別紙がついておりますけれども、この別紙につきましては、レビューの部分は何も変わっておりませんで、第3の考察の部分につきまして、資料1で御説明した内容と整合性があるような形で既に書き換えてございますので、こちらの説明につきましては省略をさせていただきます。
 説明は以上でございます。
○城内座長  ありがとうございました。測定方法についてかなり具体的になったのではないかと思いますが、今の事務局からの説明について、何か御質問や御意見等があればお願いいたします。大前委員、お願いします。
○大前委員  大前です。
 この中に、濃度基準値というものの性格を注意書きか何かで書いていただきたいと思います。というのは、我々はばく露濃度といいますと、普通、呼吸域の濃度のことをずっとばく露という言葉を使って言っておりました。このばく露濃度と濃度基準値を比較する場合も、呼吸用保護具がある場合は、呼吸用保護具の中の濃度と比較するということになるので、吸入濃度という言葉を「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」では使っていたと思いますけれども、そこら辺は誤解がないように、濃度基準値というのは、呼吸用保護具がない場合はばく露濃度、保護具がある場合は吸入濃度と比較するというような意味合いの注意書きを入れていただきたいと思います。
○城内座長  事務局からお願いします。
○化学物質対策課長  ありがとうございます。2ページの(4)のところでございまして、濃度基準値というのは、法令上、労働者のばく露がそれを上回ってはならない基準値であるので、呼吸域の濃度が基準値を上回っていても、有効な呼吸用保護具でばく露濃度を下げることができるという記載はしてございますので、分かりやすくなるように、注書きをつけるとか、そういったことで工夫させていただきたいと思います。
○大前委員  特に呼吸用保護具をつける場合に、ターゲットとする濃度は呼吸用保護具の中の濃度になるので、そこら辺を誤解といいますか、間違った解釈をされないような形で注意書きをつけたほうがいいのではないかという意味です。
○化学物質対策課長  分かりました。概念的にはそうだと。ただ、実際はもちろん、マスクの中を測れるわけではありませんので、あくまで概念的にそうだということで。
○大前委員  多分、それは直接測らなくても、漏れる人はその他の方法で推定ができるので。
○化学物質対策課長  そうですね。御指摘のとおり、要求防護係数で割り戻すのですけれども、そういったものも含めまして、記載させていただきたいと思います。
○城内座長  そのほかいかがでしょうか。最川委員、お願いします。
○最川委員  今の大前委員と同じ内容なのですけれども、私もこの検討会に参加して文言、例えば、ばく露限界がどういうものなのかとか、濃度基準値がどういうものというのを結構調べたのです。本当に分かりにくいので、技術指針でもいいのですけれども、言葉の定義をどこかに載せてもらわないと、専門家でないと多分分からないです。それを分かりやすくしていただいたほうがいいと思います。特に今回、濃度基準値ですとか、濃度基準値設定物質とか、そういう新しい文言が出てくると思うので、その定義の分かりやすい説明を必ず入れていただきたいというのがお願いです。以上です。
○城内座長  そのほかいかがでしょうか。尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員  4ページ目の2の(3)の5分の1のところ、この4行ぐらいの文章なのですけれども、ここに関しては不要なのではないかと考えております。やはり自律管理においては、事業者のレスポンシビリティーと労働者に対する、労基に対してでもいいのですけれども、アカウンタビリティーというのが恐らく必要になってくると思うのです。ここの部分に関しては全くレスポンシビリティーの話なので、「また」以降の文章があると、こちらに引きずられてしまうというのがまず1つあります。
 例えば、50人の職場でこれをやろうとすると、5分の1ですから10人ですよね。そこの職場で作っている銘柄が10品目あるとします。それで年2回と。そうすると、10×10×2ということで、200サンプル出てきてしまう。これを分析しようということになった瞬間、とんでもない分析件数になってしまうということなので、事業者の中にはこういったところに頭を引っ張られて、これはやめてくれという話になる。この文章に関しては、事業者の責任で最も高いばく露の人間を選びさえすればいいと思うのです。分からない場合というのはレアケースだと思うので、やっている人間は多分、最も高い人間というのは分かっているはずなので、そこを抽出していただいて、この文章は全部カットするという形でお願いしたいと思います。
○化学物質対策課長  こちらの記載は、最も高いばく露を受ける労働者であれば、それを測定することが妥当であって、分からないときの場合の記載になっていますので、ある意味、例外的ではあるのですけれども、分からない場合は、統計的な話をするとややこしいのですけれども、本当はものすごく高いサンプリングレートでやるのですけれども、HSEの場合は均等ばく露作業で分類しているので、これぐらいのサンプリングレートで行けるでしょうということになっていて、一応学術的に根拠のあるものなので、これは参考として記載すべきだとは思っております。
 注書きに落とすとか、本文から消すのは構わないと思いますが、例えば、我が社においては最も高くばく露する人間がどうしても分からないというときに、ガイダンスとなる文章がないというのもまた困ったものですので、ガイダンスとしては記載すべきかなと思っております。
○尾崎委員  意外と事業者は悲観的な感覚のほうに流れてしまって、1事業所、1プラントで200サンプルということになって、複合的な製品を作っている中型規模の工場になると1,000サンプルとかになってしまうと、分析部門は何をしていいのか分からなくなってしまって、逆にそちらのほうが混乱を招くのではないかと考えています。
 あくまでも参考値として試算していただくのはいいですよ。先ほどの50人の組織で200サンプルですよというのはいいのですけれども、これを書いたがために、逆に変なほうに引っ張られるという可能性が怖い気がします。
○化学物質対策課長  コメントありがとうございます。先ほど申し上げました、まず、最も高い労働者が把握できたら、もうそれで終わりなので、5分の1というのは空振りということが1つと、50人というのは、恐らく、均等ばく露作業に分けていくともっと細かくなるというのもございますので、そういったものも含めてということにはなろうかと思います。ACGIHなどは、最も高いばく露を受ける労働者の選定というのはそんなに難しくはないという記載もございますので、そういったことをちゃんと書いた上で、どうしても分からない場合はこうですよという形に書き分けたいと思います。
○城内座長  よろしいでしょうか。そのほか。津田委員、お願いします。
○津田委員  話が戻ってしまいますが、先ほどの大前委員のばく露の件なのですが、防毒マスクの中の濃度を測ることはできなくはないですけれども、非常に技術が必要なことなので、一般的には難しいと思うのですが、防護係数の満たしているものを使っていれば守れるという認識が一般の方に広がってしまいますと、要は、フィットしていなければ漏れて入ってしまうというところも併せて記述いただけるとありがたいと思うところが1点でございます。
 もう一点は、JIS T8150の部分です。5ページ目の4の(2)でございます。こちらにJIS T8150を記載していただき、ありがとうございます。フィットテストに関するところということで、フィットテストにかかっているかと思うのですが、選択と使用に関しても、通常の通達とJIS T8150では少し異なる部分がございまして、通達の部分をほとんど包含はしているのですけれども、今後、有害性が不明といいますか、どれくらい防げばいいのだろうというところが分かりにくくなってくる物質も増えてくると思いますので、できれば選択と使用のところにもJIS T8150がかかるような文章になっていただけると、よりありがたいと思いました。以上です。
○城内座長  今のコメントによろしいですか。
○化学物質対策課長  コメントありがとうございます。現在の選択、使用通達については改正の予定でございますので、新しいJIS T8150に基づく形で改正する前提にしております。また、事実上の指針の中そのものにかなり詳しく書こうとは思っておりますので、その中で、JIS T8150の指定防護係数の表とかそういったものは適宜引用させていただきたいと思っております。
○城内座長  そのほかございませんでしょうか。武林委員、お願いします。
○武林委員  すみません、3つあるので、順番に質問させていただいてもよろしいでしょうか。
 まずは、3ページの注1についてであります。ここにリスクアセスメントについてかなり具体的に書いていただいているかと思いますが、これは簡単に言うと、新規の物質、あるいは変更した場合、さらに設備の経年劣化、それから労働者の入れ替わり、新たな知見の集積ということだと思いますが、実際にこれが始まったときに、ほとんどの現場は、既存の工程であって、既存の物質をずっと使っていて、大して変化もなく、しかし、647の対象外でもある2,000ぐらいの物質を使っている場合には、特にリスクアセスメントは要らないという意味になるかと思いますが、そのような意図でこれは書かれているという理解でよろしいでしょうか。これが1つ目の質問です。
○化学物質対策課長  御質問ありがとうございます。こちらにつきましては、リスクアセスメント対象物の危険性または有害性に変化が生じるとか、新たな知見の集積があった場合の趣旨として、例えば、今までリスクアセスメント対象物質でなかったものが、今回、リスクアセスメント対象物質になるとか、濃度基準値が定められるとか、そういったものも含まれると考えておりますので、そういった場合につきましては、当然、全部リスクアセスメントは改めて必要ですという趣旨でございます。
○武林委員  広くアセスメントをするということが、どれぐらい現実的かは別として、もしそう書くのであれば、前回も申し上げたつもりなのですが、ここにある安衛則34条2の7のリスクアセスメントの定義というのは、今回の改正までは、法57条3の1の危険性または有害性の調査の場合にはこのリスクアセスメントをしろというように定義されていて、もともと狭いリスクアセスメントを想定していたはずなのです。今回の改正で、今、課長からも御説明があったように、幅広く、濃度基準値があろうがなかろうが一定の、かなりの数の物質のリスクアセスメントをするとなった以上、そもそもそこの定義を、今回、法律の頭だけ変えて、中身をきちんと変えていないということではないのかと。非常に理解が難しくなってしまったものですから、その辺の意図が現場に十分伝わるのか。これだけを読めば、普通は、ずっと変わっていない。何十年もたてば設備も劣化するでしょうけれども、そうではない現場は山のようにありますので、それが曖昧になると現場は非常に困惑するのではないかと思って、質問させていただきました。現場をよく御存じの先生方にとってどのように見えるかも、ぜひ伺えればと思います。
○化学物質対策課長  コメントありがとうございます。今回、新しい条文が入っているということでございますので、それに対応した形で、この実施時期をどのように書くのかということにつきましては、リスクアセスメント指針は改正する予定でございますので、そのときに御意見を踏まえて検討させていただきたいと思います。
○尾崎委員  現場のほうからコメントします。
○城内座長  お願いします。
○尾崎委員  設備の劣化、例えば局所排気装置とかの劣化は急激には進まないと思うのです。今からはやはり人の入替えですね。50代後半の分布のゾーンが結構今、一山立っていますので、ここら辺の入替えによって、人の知識レベルというのが多分変わっていくというのがありますので、人が替わることによる変化点管理というのが多分必要になってくるのではないかと思います。以上です。
○城内座長  では、2点目をお願いします。
○武林委員  2つ目の質問は、同じ3ページの2の(1)についてです。ここに、その結果、労働者のばく露の程度が、8時間の時間加重平均の濃度基準値の2分の1程度を超えると評価された場合は、確認測定を実施すべきと書かれています。これは、例えばOSHAを参照しますと、アクションレベルである2分の1を設定している物質と、設定していないことによって、PELを超えた場合に確認測定を行う物質が実際には混在しています。
 日本においては、全ての物質にアクションレベルに相当するような2分の1を適用するのか、それは今後、濃度基準値の議論であるとか、測定法の議論もあるかと思いますが、そこの考え方が、日本としてはかなり多くの物質を2分の1、全てを2分の1と考えるのかというのは、重要な観点かと思います。
 2つ目は、もう一つOSHAの中には、確認測定をするかどうかの、2分の1を超えるかどうかの判断の場合に、英語で、「routinely exceeded」と書いてあるのです。つまり、定常的に超えている場合と書かれています。これが1回なのか、定常的ということなのかは、多分、現場によって非常に大きなインパクトを持っていますので、その2点について、この記載がどのような意味を持っているか質問させていただきたいと思います。
○化学物質対策課長  コメントありがとうございます。OSHA規則は非常に複雑で、個別物質別になっているものと、いわゆるエアコンタミナンツみたいに漠と定めているものがございまして、このNIOSH自体は基本的に、個別物質に対してどうこうという記載にはなっていなく、資料1のフローチャートにありますように、2分の1を超えるかどうかというところで運用している実態があるということでございます。
 あと、定常的に超えているかどうかでございますが、NIOSHでは具体的にどういう形でどの濃度を使って2分の1を超えているかどうかというのは、実はきちんと書いていなくて、そこは事業者の裁量ということなのだろうと思いますけれども、実際は数理モデルでやるので、確率的な評価された数字で評価する形になると思いますので、そういう意味では、定常的なという意味は含んだような形の運用になるのではないかという想定をしております。
○武林委員  NIOSHの位置づけはOSHAとは大分違うと思いますので、ここは特に今後法令の中に入っていく以上、今みたいに課長が定常的にという意味が入るということであれば、そこはきちんと明記するなり、少し議論していただく必要があるのではないかというのが私の意見です。
○化学物質対策課長  ありがとうございます。こちらにつきましては、ちょうどNIOSHのガイダンスと同じような形で、いわゆる技術上の指針でお示ししますので、例えば2分の1を超えているから確認測定をしなかったらといって罰則がかかることはないのです。という意味では、NIOSHのガイダンスと同じレベルでございますので、指針でお示しするものが義務になるようなことはないということはひとつ申し上げたいと思います。
○武林委員  いずれにしても、定常的という言葉は結構大事ではないかと思うので、ばく露評価にとって1回の測定だけで物を言うということは誰も考えていないと思いますので、そこは現場にとって誤解のないような表現とか、運用を考えていただきたいというのがお願いです。
 3つ目は、2ページの(4)のところであります。(4)については前回とかなり違ったイメージで、事務局として表記を工夫してくださったと思います。その中で、労働基準監督機関が労働者のばく露が濃度基準値を上回っていることを把握した場合は、ばく露低減措置の実施を主眼とし、具体的な実施方法を示す、あるいは、外部専門家の活用を促すなどにより、事業場に対して丁寧な指導を行うべきであると書かれています。
 ここに監督機関の役割がかなり書かれたと思いますが、もともとの自律管理の基であったローベンス報告にも、自律的管理が有効に機能する大前提の1つはインスペクションと書かれていて、ここが非常に重要なのだと思います。
 このような記載があるということは、実際には、監督機関を統轄するような、同じ行政の中でも監督課も含めて議論されてこれが出てきている、つまり、現場はこのように回るのだということを我々は理解していいのかということを、一応確認させていただきたいということが3つ目の質問でございます。
○化学物質対策課長  個別具体的にこの文言について監督課と協議をしたわけではございませんが、ただ、一般論として、法令などを定めていく場合については、こういった丁寧にきちんと指導すべきだという記載は一般的に入りますので、その範囲内ということで記載をしてございます。
○武林委員  一般論ではなくて、実際に、日本の現場を支えてきているのは、監督との両輪だと思うのです。そこが皆さんにとってきちんと理解可能な範囲になっているのかというのは、現実的に運用が始まったときには、非常にきいてきますし、まさにここに書かれていることが実現するのであれば、この濃度基準値の運用は非常にいいと思いますし、それが厳しい形で運用されれば、現場がかなり混乱することは想像に難くないということもありまして、確認をさせていただいた次第です。
○城内座長  最川委員、お願いします。
○最川委員  今、武林委員が言われたとおりなのですけれども、現場のほうは、例えば監督官が来たら、法令に書かれている、例えば、リスクアセスメントをやっていないですね、濃度基準値を下回っていないですね、測定をしていないですねという指導で、リスクアセスメントの結果、防毒マスクの何を使いなさいという指導はないのです。結局、監督署の方もそこまで理解されていない人が多分ほとんどで、今回決めても、これを勉強するには相当の時間が必要だと思っているので、細かい、本当にこの文章のとおり指導していただけるのが一番いいと思うのですけれども、実際の運用でそれはできないと思っていますし、この数字ですとか、今回、濃度基準値の8時間、短時間、天井値を決められるのかもしれませんけれども、それを下回っているのを確認したのかみたいな話だけで、そういうところだけが出回ってしまって、現場はすごくやりづらくなると思っているので、私も後で言おうと思っていたのですが、質問も一緒にいいですか。
○城内座長  はい。
○最川委員  今回、濃度基準値を決めるという形であった中で、先ほど言った8時間濃度と短時間濃度と天井値、3つをそれぞれ決めるのか、その中のどれかを使えばいいのかというのが分からなかったのです。今回、8時間濃度も決められない物質もいっぱいありますよね。2,900のうちの800だから、残りの2,100は全くない。それは海外のものを流用すると言われていましたけれども、それが本当にどこに載っているのか調べなければ分かりませんし、そのほかのものはどういう運用をするのかというのが疑問なのです。現場のほうは分かりづらいなというのが印象です。以上です。
○化学物質対策課長  まず、御質問につきましては、800物質をめどに決めるとしておりますのは、当然、8時間だけしかないものもありますし、8時間とSTELが両方あるものもございます。あと、まれですけれども、STELしかない――すみません、STELというのは短時間ですが、短時間しかないという物質もございますので、それは物質ごとに違うということになります。
 天井値につきましては、先ほど申し上げましたように、定めない方向で提言をしてございます。
 あと、それ以外、例えば2,000物質ぐらいは濃度基準が全くないではないかと言われると、それは諸外国を全部見ても、ない物質がやはり2,000ぐらいありますので、こういったものについては濃度基準値がありませんので、リスクアセスメントのツールなどを使いながらやっていくという形になるという想定をしてございます。
 あと、監督官の話でございますが、我々といたしましても、当然、第一線の職員に対して十分な説明を行って、きちんと指導ができるように指導したいと思いますし、また、外部専門家の活用を促していくような形でぜひ指導していきたいと考えてございます。
○城内座長  そのほか御質問等ございますか。尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員  3ページ目の2は、均等ばく露作業のリスクアセスメントに関することが書かれているのですけれども、今回表現としてあまり出てこないのは、A・B測定ということがありましたが、これに関してはどこかに残していただくのがいいかなという感じを受けております。
 先ほど、このページに集中していますが、4ページ目の3の(1)の3行目、少なくとも6か月に1回、個人ばく露測定を実施しというところなのですけれども、ここでA・B測定ではなくて、個人ばく露測定が出ているということがあります。均等ばく露ということからするとA・B測定をイメージするのですけれども、ここで個人ばく露というのがいきなり出ると、現場としては混乱を招くのではないかということなので、この辺りの個人ばく露測定という言葉は、その下にあります確認測定みたいな感じにすべきなのではないかという気がしました。これは意見でございます。
 以上です。
○化学物質対策課長  御意見ありがとうございます。6か月に1回というのは、先ほどの濃度基準値を超えている場合というところだと思うのですけれども、こちらは濃度基準値を超えていますから、マスクの選定が不可避になりますので、ここは個人ばく露測定でないとマスクが選べない。要するに、場の測定からマスクを選ぶというのは非常に難しいことでございますので、こちらは個人ばく露という記載をしてございます。
○尾崎委員  場のリスクアセスメントをするに当たって、クリエイトシンプルなどで、ある程度の数字が出ますよね。それと比較するに当たっては、やはり環境の場の測定をして、そこで比較をするということにつながらないですか。いきなり個人ばく露という話になると、2ステップぐらい話が飛ぶみたいな感じになるので、A・B測定でいいのではないかという気がするのです。
○化学物質対策課長  ありがとうございます。リスクアセスメントについては、A・B測定が有効な場合もございまして、リスクアセスメントの場合、工学的対策を実施する場合にあっては、よくデザインされた場の測定が必要という記載が、3ページの注3にございますけれども、こういったものにつきましてはA・B測定を行うということ、A・B測定でなくてもいいのですけれども、場の測定をやるということは含まれているということでございます。
 あと、例えばクリエイトシンプルのようなツールを行った場合、おっしゃるように、あれは環境濃度の推定が出ますので、もちろんそれはそういう形になろうかと思います。ただ、環境濃度の推定値がどうしても濃度基準値に近づいてくると、そこはマスクの選択になってきますので、マスクの選択というのは要求防護係数を出さないといけないので、実際に呼吸域でどれぐらいばく露しているかの測定が必要だという使い分けでございます。
○城内座長  そのほかございませんでしょうか。宮内委員、お願いします。
○宮内委員  新しくできる577条の2の10項、これは非常に大事だと私は思っていまして、今回のこういった自律的管理の目的は、労働者のばく露を減らすことで健康を担保するということだと思います。そういう目的をどこかで労働者へきちんと伝える。これは安全衛生委員会にてもちろん実施されると思いますが、もう少しいいのは、関係する労働者を集めて、事業主がいろいろ意見聴取する場を設けた上で正確に伝えることだと思います。このことは非常に重要だと思っています。保護具について言うと、例えば安衛則の597条で、事業主が使用を命じた場合には労働者は使用しなくてはいけないとありますが、使用することを義務として伝えるだけではなくて、自分たちの健康を守るために保護具を着用するのだということをしっかり認識してもらうことが必要と思います。十分に時間をかけて意思の疎通をすることが重要です。結局、最終的に、ばく露防止対策としてなぜこれをやらなくてはいけないのかを理解してもらわないと継続できないのではないでしょうか。そのためにまずは徹底的に話し合っていくということが大前提だと思います。
 労働者へ説明することは化学物質管理者の職務の中にも係わると思いますし、また、予定されている専門的研修会のカリキュラムの中にても情報の伝達についての講義時間が設けられていると思いますので、そういうところでもう一回、化学物質管理者に対して、目的を明確にした上で管理することが重要だと教育して頂ければと思いました。
 それから、今後、ばく露の測定が主になるということですけれども、実は学会等でも、金属アーク溶接作業等のばく露測定をやってみて、どういう問題点が出た等は随分議論が行われています。その中で、やはり体に装着するということが日本人はあまり慣れていないというのも結構意見として出ました。確かにそのとおりで、測定対象者の方に十分説明をした上で協力をしてもらうということが絶対必要になると思います。また、測定士が均等ばく露作業をグルーピングするのが非常に難しいという意見もありました。したがって、まだまだ十分なトレーニングが要ると思います。これはデザインという分野の手法になるのですが、私も大学にて教えていて難しいと実感しています。測定士の方々は引き続きいろいろな機会にてばく露測定のデザインの研修を受けるチャンスがあったらいいかなと思います。特に企業の中の測定士の養成や能力向上が必要になると思います。二種の測定士が該当しますが、積極的にいろいろなトレーニングの場を設けていく、精度をきっちり担保していくということがやはり重要だと思いました。以上です。
○城内座長  尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員  今の作業環境測定士に関して、ぜひ化学物質管理者のテキスト作成においてもお願いしたいのですけれども、第2種という話がありまして、最低でも職場の中でこういった資格を持った人間を立てるようにという文言をぜひ入れていただきたいのです。そうでないと生産活動に直接響いてしまうので、生産計画に合わせて職場にいる測定士が寄り添ってサンプリングするということをやっていかないと、多分回っていかないのではないかと思いますので、ぜひよろしくお願いします。
○化学物質対策課長  御指摘ありがとうございます。資料2のほうに実は書いているのですけれども、全く御指摘のとおりでございまして、事業場にいる人間が測定士であれば、個人サンプリングは実は物すごく難易度が下がります。ふだんから顔がつながっている人にお願いするということで、作業の内容も分かっていますし、そういう意味では難易度も非常に下がりますし、ある意味、費用面についても非常に下がるということもございますので、それは注書きか何かで明記したいと思います。
○城内座長  そのほか御意見等。山室委員、お願いします。
○山室委員  6ページの第3、確認測定における試料採取時間等というところなのですが、8時間未満の作業については記載があるのですが、8時間を超えるものについて記載がないので、それがあったほうがいいのではないかと思います。というのは、我々は委託事業でばく露調査を行っていましたが、交代勤務ですと12時間勤務、10時間勤務というのもありましたので、そのことがあったほうがいいかと思います。
○化学物質対策課長  ありがとうございます。ACGIHの8時間を超える場合の考え方も一応記載がございますので、当然のことですけれども、8時間を超える場合は濃度基準値を下げないといけないということになるのですが、ACGIHではこういう記載があるという御紹介は注書きで入れるようにしたいと思います。
○城内座長  そのほか、いかがでしょうか。小野委員、お願いします。
○小野委員  どこに入るのか、多分、最後の技術指針の中身の話になってくるのかもしれないので、少し細かい話になってしまうような気もするのですが、3年間で800物質ぐらいが決まりますと、測定法として確立していないものが導入される可能性がございます。恐らくリスク評価事業で行ったばく露測定ならば大丈夫とも考えていたのですけれども、その中にもサンプリングに問題があるとか、分析に問題があるとか、100%保証できないものが含まれてまいります。その場合に、検証はとても間に合いませんので、提案する方法では測定値が実際より低くなる可能性があることを明記して、その場合でも確認測定が可能な方法を提案するという理解でよろしいでしょうか。基準値の存在自体とも関わってくると思うのですけれども、測定法について保証の程度も示されることになるのでしょうか。自律管理ではありますけれども、その測定で確認した結果に従って対策を取る必要があるかどうかを決めることになりますので、そこが割と重要になるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○化学物質対策課長  御指摘ありがとうございます。今回、濃度基準値を定める際に、測定の技術的な確立状況を併せて確認することにしておりますので、その中で検討される話とは思います。どこまで精度を求めるかというと、諸外国の基準を見ても、そういうのが必ずしも明確に決まっているわけではないので、ある程度技術的に確立していて、なおかつ、日本の分析機関で分析できるところだとは思いますので、そこは今後、濃度基準値を定める際に測定技術についても検証していくことになりますので、そちらで議論させていただきたいと思います。
○城内座長  そのほかございませんでしょうか。保利委員、お願いします。
○保利委員  どちらの測定でも、まず定性的なリスクアセスメントをやって、その結果、濃度基準値を超えるようなばく露があるのであれば、確認測定をするという流れだと思うのです。クリエイトシンプルはよくできていると思いますけれども、かなり幅が大きくて、1桁とか2桁とかそういうレベルですよね。それで濃度基準値の半分を超えているかどうかという判断は、化学物質管理者がやるのですか。やるとすると、かなり大変かなと思うのですけれども、超えそうかどうかという判断をどのようにして担保できるのかというところが気になります。
○化学物質対策課長  御指摘ありがとうございます。クリエイトシンプルは、現時点では95パーセンタイルのアッパーのほうを示す感じになっておりまして、ある意味、非常に厳しい値が出ます。我々が想定していますのは、そこまでは要らないということでございますので、例えば算術平均値を使うとかそういった形で、クリエイトシンプルの見直しは必要なのだろうとは考えてございますので、こういったものを今回キックオフという形で中間取りまとめでお示ししますけれども、その後、いろいろなガイダンスの文書などで、クリエイトシンプルの使い方とかそういったものはお示ししていきたいと考えております。
○保利委員  私もシミュレーションをやってみて、かなり安全側に出るなというのは感じてはいるのですけれども、個人差も結構あるので、作業のやり方というのはなかなか評価には入ってこないので、その辺のところをどうやって評価するかということをきちんとやったほうがいいと思いました。
○城内座長  そのほかいかがでしょうか。尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員  クリエイトシンプルのお話が出ましたので、要望があります。今、単独の組成でしか評価できないということになっています。業界の中にはB to Cのところで市場に非常に近いところがあります。例えば化粧品とか塗料屋さん、接着剤、界面活性剤とか、洗剤、そういった業界があるのですけれども、ここは複数の組成を持っています。この法律をうまく回していくには、こういったクリエイトシンプルの改良が多分必要になってくると思いますので、この対応をぜひよろしくお願いしたいと思います。
○化学物質対策課長  それぞれの物質について、それぞれの濃度を出すことになりますので、混合物の場合は、例えば5種類あれば、5種類の数字が全部出るような形になると思うのですけれども、それが使い勝手よく使えるかどうかという形では、検証させていただきたいと思います。
○城内座長  そのほかいかがでしょうか。宮本委員、お願いします。
○宮本委員  宮本です。確認です。リスクアセスメントの結果、リスクが高そうな場合に確認測定をするというので、均等作業だったら8時間というのは分かるのですけれども、例えば断続的なときには、短時間を測って、短時間濃度基準値、なければ8時間の濃度基準値の3倍を超えるか超えないかを確認すると。で、超えていたら8時間測るけれども、超えていなかったら、今度は8時間濃度基準値とまた比較して、その濃度基準値よりも下回っていたら、それはオーケーで、8時間濃度基準値とその3倍の間にあるのだったら、今度は、4ページにある間隔基準等のところを満たすようにさせて、それで満たしていればオーケーで、満たしていなければまた8時間測定に行けと。こういうフローチャートの理解でよろしいのですか。もしこれが図示できるのだったら、ぜひ示していただけるとありがたいのですが。
○化学物質対策課長  ケース・バイ・ケースですので、フローチャートになるかは検討が必要ですけれども、短時間作業の場合は、短時間ばく露基準のほうが多分クリティカルにきいてきますので、そこをクリアしていれば、8時間を超えることはないケースがほとんどだと思います。実際の運用はそんな感じになると思います。
○宮本委員  短時間濃度基準値を超えてしまうのだったら、8時間測定に行くのかというのでお聞きしたのです。短時間濃度基準値でも、それを超えてないが8時間濃度基準値との間に入る場合の話がさっき出たので、短時間濃度基準値との比較というのが複雑なフローになるのかなと思ったのですが。
○化学物質対策課長  要するに、1時間しかないときに、例えば3倍を超えなければ、それを8時間で割り戻したら、絶対に8時間の基準値は超えないのです。なので、やはり15分間の値が8時間基準値の3倍を超えるかどうかというところの判断が、多分一番重要になってくると思います。
○宮本委員  それだけでよろしいと。
○化学物質対策課長  あとは計算したら出るのですけれども、確実に下回るという結果になります。
○宮本委員  分かりました。
○城内座長  そのほかいかがでしょうか。宮内委員、お願いします。
○宮内委員  話がまた飛んですみません。リスクアセスメントについては、新しく指針が出る予定ということで、私からお願いなのですけれども、今回はサンプリング中心の技術指針が出るということなのですが、できれば今後、工学的な対策について何か指針みたいなものが出ればよいと思っています。これは言葉だけではなく、具体的なやり方の事例があると非常に普及しやすいですし、分かりやすいと思います。いろいろな専門家の方々にとって、今後活躍するときの手引にもなると思います。
 たしかインジウム化合物の技術指針のときには、3管理についての具体的なことが記載されていたと思います。そういう指針は具体的にとても参考になると思います。測定だけではなくて、ぜひ対策の方についても手引になるものがあるといいかなと思いました。これはお願いです。以上です。
○城内座長  ありがとうございました。そのほかございませんでしょうか。
 では、すみません、私から1点確認です。リスクアセスメントが始まったときに、28条の2で技術上の指針を出しなさいといって出されて、その後、57条の3でリスクアセスメントが義務化されて、それで指針は流用していたと思うのですが、今回はそれに確認測定とか結構違った定義のものも入ってきて、それについても記述しなければいけないようになると思うのです。その技術上の指針で、リスク対象物と対象外のもの、両方について技術上の指針に書かれるのでしょうか。どちらかだけになるのでしょうか。
○化学物質対策課長  法令上の話になりますが、今回議論している577条の2の第1項、第2項というのは、安衛法の22条根拠になっていますので、それを包括的に定める形で28条の指針という形になります。
○城内座長  ということは、対象外の物質については、どこにも指針みたいなものは出てこないということでしょうか。
○化学物質対策課長  577条の2の第1項はリスクアセスメント等を踏まえて最小限化するということが書いてあって、2項では濃度基準値が書いてあるのです。ですから、法令上は一応包含した形になっているのです。その包含された形の指針と。
○城内座長  読むほうが分かれば、それでいいと思います。ありがとうございます。
○化学物質対策課長  実際は、リスクアセスメント指針と総則挿入というか、そういう感じにはなると思います。
○城内座長  分かりました。尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員  化学物質の管理に関するところなのですけれども、濃度基準値の設定においては、日化協の会員企業様にも専門家が相当多いと聞いております。こういった専門家の意見、例えば設定のプロセスだったり、妥当性だったり、あと実効性だったりというところを幅広く意見を求めたいと思っていますので、関連資料とか情報については早めに開示をしていただきたいなと考えております。
○城内座長  そのほか。津田委員、お願いします。
○津田委員  ありがとうございます。先ほど、全体的に出てきているところですが、専門家を活用してくださいというところがあったかと思うのですが、今回、中小企業さんの事故が非常に多いということで話が進んでいるかと思います。これはこの中に入れる必要はなくて、通達などを出していただくときに、例えば、さんぽセンターには、メンタルヘルスが進んだものと同じように、技術的な立場の相談員もいらっしゃいますので、そちらの面を同じように活用していくという辺りも、ノウハウの部分なのですけれども、この場でお願いしておきたいなと思いまして、発言をいたしました。以上です。
○城内座長  大前委員、お願いします。
○大前委員  尾崎委員のお話と通じるのですけれども、この次の委員会は濃度基準値を決める委員会になろうかと思います。今、3回くらい予定されていますけれども、百十幾つあるので、1回当たり30を超えるような物質の議論になろうかと思います。今までの管理濃度委員会などの場合は、せいぜい数物質を2時間ぐらいかけて議論するということをやっていたのですが、今回はそれが30という物質なので、安衛研から出てきた案を事前に皆さんに回していただいて、実際、その数字でフィージビリティーがあるかどうかということを事前に皆さんにチェックしていただかないと、こなせないと思うのです。検討会の前にそういう情報、特に数字の情報でありますけれども、それを回すことについて、行政的に何の問題もなければ、そういうスタイルでやらないと無理だと思うので、ぜひ考えていただきたいと思います。
○化学物質対策課長  御指摘ありがとうございます。御指摘のとおり、安衛研のほうでもう一つの専門家会議を実際は回しておりまして、そちらで文献のレビューをあらかじめやっていただいて、こちらではある意味、二次審査のような形でやっていただくようにしてございます。その一次審査のものにつきましては、報告書という形で厚生労働省に頂くことになっておりますので、できるだけ早い段階で委員の先生にお配りできるようにしたいと思います。
○大前委員  濃度基準を決めるこの委員会の前に、期間は短いと思うのですけれども、やはりぜひ回していただいて、特に尾崎さん、あるいは最川さんのような現場の方々に、この数字は本当にフィージビリティーがあるのかどうかということを一応チェックしていただくというのが、この濃度基準値を決める議論の場でも重要な情報だと思いますので、よろしくお願いいたします。
○化学物質対策課長  できるだけ早い段階で委員の方にお配りできるようにしたいと思います。
○城内座長  そのほか。武林委員、お願いします。
○武林委員  すみません、中間取りまとめから離れてしまいますが、今の大前委員に追加です。課長は一次審査、二次審査という言葉を使われましたけれども、基本的には、一次審査と言われている安衛研で出てくるものは、ACGIHでありますとか既存の文献を確認する。簡単に言うと、いわゆるヘルスベースドで、あるいはサイエンスベースドで数字が出てくると思います。
 しかし、今回、濃度基準値は行政の値になりますので、今話があったようなフィージビリティーが当然加わって初めて規制値になると思います。多分、フィージビリティーの議論というのは幾つもあって、測定可能かというような技術的なフィージビリティーもあるでしょうし、実際にこの濃度が達成できるのかというフィージビリティーもあるでしょうし、経済的なフィージビリティーも当然世界では議論されていると思います。
 上がってくるものが事前に回ってくるのはいいと思うのですが、少なくとも、この委員会の中で何をフィージビリティーにして議論して、最終的な数字に決めるのかという議論を今のところしていませんし、次回、数値の議論に入る前に、一体何がフィージビリティーで、この検討会ではそれに基づいて議論するという論点を先に整理していただかないと、実際の数字を出すのに、非常にヘルスベースドに寄った数字になってしまって、議論が尽くせないと思います。
 尾崎委員がおっしゃったような日化協の中の専門家の意見もそうでしょうし、もっと言うと、世界的には、普通こういうときは、現場のばく露濃度のデータがあって、リスク分析みたいなことをやってから数字が決まると思うのです。その余裕がないのだとすると、どういう手順を取るのかを次回の検討会の最初のところで議論しておく必要があるのではないかというのが、私の意見です。以上です。
○化学物質対策課長  コメントありがとうございます。フィージビリティーがどこまでかというのはございますが、一義的には、今までの管理濃度というのは、いわゆる「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」というところでかなり議論してきたのです。これはなぜかというと、環境濃度を下げるというものであったので、当然のことながら、作業の性質であるとか、局排の問題がある。あるいは、例えば溶接ヒュームのように、そもそも溶接を達成するためには風があってはいけないとか、環境濃度を下げるという意味においてのフィージビリティーは非常に議論させていただきました。
 今回の場合は、環境濃度ではなく、ばく露になりますので、非常に簡潔に言うと、マスクを使えばいいということでございますので、フィージビリティーについてさほど議論する予定は今のところないのかなと考えております。ただ、測れなかったらもちろん実行不能ですので、測定につきましてはきちんと検討するような考えを持っております。
○城内座長  武林委員、よろしいでしょうか。
○武林委員  今の課長のおっしゃったことが本当に皆さんにとってオーケーなのかというのは、多分数字を見ないと分からないのかもしれませんけれども、普通は、フィージビリティーというのをもう少し広く、マスクの中の濃度だから、マスクがあるからオーケーだという議論で本当にいいのかというのは、すみません、私自身はまだ整理し切れていなくて、少なくとももう一回きちんとこの検討会の中で、事務局から上がってきた資料があるでしょうから、それを見ながら、まず冒頭議論してから進めるのが適切なのではないかと思います。
○城内座長  ありがとうございます。そのほか御意見等ございませんでしょうか。小野委員、お願いします。
○小野委員  今、マスクの中の濃度だから議論は少なくていいという感じのお答えだったと思うのですけれども、マスクは最終の解決ではないと思いますので、マスクでなければどうしても到達できないようなところなのか、そうではなくて、工学的対策の余地があるのかというようなことについてリスクアセスメントを進めていかないと、本当の解決までたどり着かないような気がしますので、フィージビリティーについてやはり考えるべきではないかというコメントです。
○化学物質対策課長  溶接ヒュームとか、管理濃度を定めてきた場合については、数字自体はサイエンティフィックに決めるのです。NOAELなりで決めますと。それが実現できない場合は、適用除外するというようなやり方をしてきました。ですから、フィージビリティーが取れないから、濃度の基準を緩くするということは一度もしたことがないのです。それは、多分、そういうことだろうと。当然、サイエンティフィックにこれを受けていたら、将来、健康障害が起きるような基準は定められませんので、そこは申し訳ありませんが、サイエンティフィックにびしっとやっていただきたいと思います。
 それから、それが実際にどういう適用で、どういうものができるかどうかというのは、もちろんそれは別の観点があろうかとは思いますけれども、数字自体はサイエンティフィックに決めるしかないと。そこはそのように我々としては理解しております。
○城内座長  津田委員、お願いします。
○津田委員  今回のところからはずれてしまうかもしれないのですが、マスクのお話が出ているので、マスクをすれば防げるというわけではなく、マスクに関しても、今回の化学物質は非常に多様ですので、全てのものに対して防げるわけではないというところが、一般の方に対して誤解を生じてしまうのではないかというところを危惧しております。マスクメーカーにこれに対してどうですかと聞いたところで、恐らく保証はできないので、お答えいただけないと思います。であれば、全て送気マスクになるというのであれば、作業がしにくいと思いますので、やはりマスクをつければ大丈夫というところに話が行ってしまうのは危険かなと思っております。以上です。
○城内座長  職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会からの議論をずっと見てきて、取りあえず、マスクをつけて応急的な措置をしましょうという話でマスクに行ったところがあって、それは改善しなくてもいいという話ではなかったと思うのです。今、技術的にいろいろな御意見が出たのはよく分かるのですが、そのときに行政としては、取りあえずマスクはしてくださいということで、マスクの話が全面に出てきているし、皮膚腐食性・刺激性もそうなのですけれども、とにかく労働災害が起きている現場では保護具をまず考えましょうということで出てきたのです。もうマスクとか保護具をつければいいよという話ではもちろんなかったはずなのですが、技術論になってしまうと、とても狭いところに行ってしまいますので、そういう議論になってしまったのかなと思うのですが、事務局から何かありますか。
○化学物質対策課長  御指摘ありがとうございます。まさに、職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会では、基本的には、濃度基準値というのは諸外国で定められている値を参考にしつつ、一次文献などをきちんと当たって定めていくというところでございましたので、そういったことなのかなとは考えてございます。
 繰り返しになりますけれども、まず数字について、フィージビリティーによって数字が変わることはないと。それだけはできませんので。要するに、労働者を危険にさらすような基準はつくれない。それははっきりしております。ただ、実際、実行できるかどうかということが、どうしてもないということであれば、それはその基準値を定めないということになろうかと思いますので、そういった議論はあろうかとは思います。ただ、フィージビリティーによって数字を触るということは考えにくいというのが1点ございます。
 あと、最後の砦であるマスクも使えないという場面がどこまであるのかという議論は、あろうかと思います。ただ、最悪の場合、送気マスクというオールマイティーなマスクがあるわけでございますけれども、例えば、通常の防毒マスクでは全く対応できない物質であって、送気マスクでしか対応できないと。なおかつ、送気マスクができないような作業をすると。そういった積み重ねがあった場合は、基準値をつくること自体が難しいということになろうかと思いますけれども、我々としては、そういった例は極めて特殊だと考えておりますので、そういったものがもしあれば、そういうものを考えたいと思いますが、濃度基準値についてはサイエンティフィックに文献に基づいてきちんと決めていただくということかなと考えてございます。
○城内座長  よろしいでしょうか。個別の値が出てきたときに、これは分析上できないとか、対策上どうしてもできないというときには、また御意見をいただいて検討することになるかなと思います。そのほか御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員  職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会のときの一丁目一番地で、平成29年の労災が450件というのを聞いて、個人的にも非常にびっくりしたというのがあります。やはりこれからの労働安全衛生政策が正しかったということを証明するためにも、PDCAを回してもらって、取りあえずその450件をベンチマークにしていただいて、この法案が通って動き出したときに、確実に労災が少なくなるということをフォローアップしていただきたいなと思います。
 特にリスクアセスメントをやっていないところがあるということで、売上げでも資本金でも何でもいいのですけれども、大企業と中小企業とリスクアセスメントをやった、やっていませんという、最低でも4象限にして現状を解析していただいて、その数字がどのように動いたのかということをフォローアップしていただきたいなと思っております。以上です。
○城内座長  ありがとうございました。そのほか御意見等ございませんでしょうか。最川委員、お願いします。
○最川委員  今回の化学物質の規制だけではないのですけれども、以前も言ったのですが、まずSDSに、今回濃度基準値を決めるのであれば、それをしっかり載せてもらいたいというのが1つ。
 あと、細かいところをいろいろ決めていますけれども、SDSでラベルの出回っている中の8割いっていない、今7割ぐらいですよね。「第13次労働災害防止計画」の目標は8割ですということ自体、私はおかしいと思っているのですけれども、SDSもない、ラベルもないというのが2割は世の中に出回っていて、そこは自分たちで調べなさいとか、そもそももっと危険なものとして扱いなさいみたいなことになっていますけれども、そういうのは放っておいて、細かい基準だけがどんどん決められていって、やることだけが増えていく。
 まずは、10割、SDSでやる、リスクアセスメントはSDSがないと私たちはできないですし、本当は取説だけで私はいいと思っているのですけれども、少なくともリスクアセスメントをして、工学的対策を立てるとか、そういうことに関しても、全部そこに記載させる。そこをまず10割目標でないこと自体がおかしいです。
 「第14次労働災害防止計画」はまたこれから決めると思うのですけれども、まずしっかり100%にしてもらわないと、そこは緩くしておいて、使う人たちだけに負担が起きているということを野放しにして、皆さん本当にどう思われているのかと思いますけれども、基準だけ決めていますが、私たちは全く分からないものを渡されて、危ないかどうか自分たちで調べて、やり方を間違えていたら法違反ですと、そういう立場に今現状、置かれてしまっているのです。
 まずは製造側にもっと厳しくする。こういう提言を製造側に言って、もし災害が起きたら、それをちゃんと調べさせるとか、もっと根本的な、前も言いましたけれども、製品だったら、それを使う安全なやり方を示すとか。現在は中途半端な書き方しかしていないわけです。危ないものは使わないでねと言っているだけなのです。ただ言葉を換えているだけで。ばく露しないマスク、ばく露しない保護衣、ばく露しない眼鏡を使いなさいと言っているだけで、そんなの、危ないものを使っては駄目だよと言っているだけなのです。それをただ細かく文章をいっぱい書かせて。
 そういうことではなくて、製品を出す人たちにちゃんと責任を持たせて、記入させるべきですし、こういう検討会は、多分今回で終わりではないと思うのですけれども、来年以降も続くのであれば、災害が起きたところを製造側にもっとぶつけるシステムをつくらないと、それぞれ経産省と厚労省なのかもしれませんけれども、そこの垣根をぜひ取り払って、システムをまずつくっていただきたいと思いますので、それは要望です。以上です。
○化学物質対策課長  コメントありがとうございました。まず、ラベルSDSの目標が80%というのは、あくまで努力義務の部分で、御指摘のとおり、義務がかかっている部分はもちろん100%が目標ということです。今後、2,900物質に増やしていく段階で、この努力義務というのはなくなってしまうのですけれども、次の労働災害防止計画の間ではまだ努力義務が残っていますので、一応80%という目標は定めますが、御指摘のとおり、義務がかかっているところは当然100%が目標でございます。
 それから、SDSの内容につきましては、省令でも保護具の内容はきちんと書くようになっておりますが、詳しくはJISのほうで決まっているところもございますので、今度、たまたま5年間のJISの見直しがございますので、そういったところでまた検討していきたいと考えてございます。以上です。
○尾崎委員  日化協としましても、製造側なのですけれども、今回のこの法令の改正において、いろいろなところで説明会を実施しておりますし、業界としても相当関心が高いなという感じをしております。日化協が中心となってラベル作成のガイドラインを作成しておりますので、こちらもぜひ一回見ていただきたいなと思っております。以上です。
○城内座長  ありがとうございました。今の最川委員の御指摘は、実はGHSを導入したときに、どうしても立てつけ上、日本の労働安全衛生法の57条には危険有害な物質を全部入れられないようになっていまして、それで努力義務と義務が発生したというところにも結びつきますので、私も少なからず責任を感じるではないのですけれども、現状はそうかなと思っているところです。
 そのほかコメントはございませんでしょうか。
 ありがとうございました。御意見が出尽くしたと思いますので、本日の御意見を踏まえた修正版を事務局から各委員に御確認いただいた上で、中間取りまとめとして私のほうで確定したいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
     (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。
 では、次に議題の2、作業環境測定(個人サンプリング法)の対象物質の拡大の検討です。資料の説明をお願いいたします。
○環境改善室長  それでは、資料2に沿いまして、私から説明させていただきます。「個人サンプリング法による作業環境測定の今後の在り方に関する中間取りまとめ(案)」でございます。
 前回、審議時間があまり取れなかった中でも各委員から貴重な御意見等をいただきました。誠にありがとうございました。これらの意見を踏まえまして、資料2ということでとりまとめるとともに、前回資料を別紙でつけさせていただいておりますが、前回の御意見等を踏まえて一部修正させていただいている点もございますので、そういったところを中心に説明させていただきます。
 まず、資料2の「1 個人サンプリング法による作業環境測定の今後の在り方」の(1)でございます。前回も御説明させていただきましたとおり、個人サンプリング法による作業環境測定は、現時点では実績が少ないですが、個人サンプリング法による作業環境測定を適用できる作業場の種類を拡大していくべきであるということを申し上げました。
 主な点といたしましては、マル1からマル3でございまして、マル1は、個人サンプリング法による作業環境測定とその結果の評価は、リスクアセスメントのための個人ばく露測定とその結果の統計的な評価を兼ねることができる。
 マル2は、個人ばく露測定の担い手を育成するという観点から、個人サンプリング法による作業環境測定に習熟した作業環境測定士の育成が必要であること。
 また、マル3は、再測定の結果も第3管理区分となった事業場に対する措置の強化に関して、呼吸用保護具の選択のための測定は、個人サンプリング法による作業環境測定または個人ばく露測定が原則となることということで、さらなる拡大をしていきたいということでございます。
 次が、(2)でございます。アンケート結果においては、約5割の作業環境測定機関が個人サンプリング法には利点があるとしている一方、問題があるとしたのは約3割でございました。その問題点も、費用に関するものがほとんどでございまして、個人サンプリング法の測定としての精度面での指摘はございませんでした。個人サンプリング法は、測定時間が長いため、要する経費がA・B測定と比較して高額となることは当然ではないかということでございます。
 次に、「2 個人サンプリング法における測定手法の検討」です。
 まず(1)といたしまして、個人サンプリング法による作業環境測定に追加可能な化学物質について、別紙の3「個人サンプリング法における測定手法の検討マル1」の物質については、追加することに課題はないとしております。
 別紙の資料を御覧いただければと思います。末尾の方に対象物質を示しておりまして、19ページに「個人サンプリング法における測定手法の検討マル1」がございます。2の(1)の該当物質等は、表の右側の部分にございます。この表中、マル5の粉じんの「作業環境測定」のところは、特定粉じん作業と書き直しております。
 次の20ページですが、「個人サンプリング法における測定手法の検討マル2」が、資料2の2の(2)と(3)に係るものでございまして、上の表は(2)の方の「現行の作業環境測定基準にない測定法を取り入れること等で可能」としている7物質で、NIOSH法には自己評価があることから、それらを確認しつつ検討させていただきたいと思います。下の表は、「引き続き検討が必要な19物質」ですが、(理由)に掲げる事項を踏まえて引き続き検討することにしたいと考えております。特に、マル4のD測定で管理濃度の10分の1の濃度を測定できることを確認する必要性があるというものについては、D測定は、C測定と異なり、統計的評価を行わず、また、作業中の最も高い濃度と管理濃度を比較するためのものであるため、10分の1のところは5分の1程度で足りるとすれば、測定することができるということになろうかと存じます。
 また、液体捕集法でございますけれども、諸外国で使用されているサンプラーの情報を今後収集していくなどにより、実現可能性を検討したいと考えております。
 それでは、資料2のほうに戻っていただきまして、「3 その他検討が必要な事項」です。(1)では「個人サンプリング法の精度管理の制度を構築すべきである。」という御意見をいただきましたので、今後そのような形で検討させていただきたいと思います。選択したサンプラーによって分析手法も異なり、精度に影響を与えることに留意が必要です。
 (2)は、先ほど御議論ございましたが、個人サンプリング法は、外部に委託するとサンプリング時間に応じて費用が高額となるが、自社測定士によってサンプリングを行い、分析だけを作業環境測定機関に委託すれば、費用を下げることが可能ではないかという御意見もございました。そうした方法について周知させていただきたいと思っております。
 次に「4 今後のスケジュール等」でございます。個別の物質の検討につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございますが、(1)については本年度中を目途に作業環境測定基準の改正に移りたいと考えております。残りの物質については、今後、本検討会での検討を経て、順次、作業環境測定基準の改正を行っていきたいということ。あと、作業環境測定基準の改正に当たっては、パブリックコメントにより国民の御意見をいただくということを予定しております。
資料2の説明は以上でございます。
○城内座長  どうもありがとうございました。御意見等をお願いいたします。鷹屋委員、お願いします。
○鷹屋委員  鷹屋です。前半の議論で宮内委員からも個人ばく露測定のところで出ていたと思うのですけれども、いわゆるデザインで、やはりA測定、B測定に関しては歴史が長いということだけではなくて、実はA測定は最初の法令の設計がうまくできていて、外部の測定士が限られた現場との観察であっても、割ときっちりと適切なデザインができるようにできています。
 それに比べると、C測定というのは、現場の観察が限られた時間では難しいのです。作業者の動きとか、一言で均等ばく露群の抽出とかいいますけれども、多分それはものすごく難しい。だから、そこら辺を、この中でもうたわれていますし、前半の議論でもありましたように、扱っている社内に測定士の資格を持つ人を勧めるという方法は非常にいいと思うし賛成なのですけれども、もう一つは、既存のA測定、B測定しかなかった頃の測定士も講習を受けて個人サンプリング法は制度的にはできていると思うのですが、もっと継続的にC測定、個人ばく露測定も兼ねたデザインの教育の場、あるいはテキストの提供を制度的に何かしら用意する。これは前半部分の確認測定を有効にするというところでも重要になってくると思いますが、とにかく、個人サンプリング法の拡充は大賛成なのですけれども、特にC測定のデザインに関して、作業環境測定士をサポートするための教育システムを充実させることが物すごく重要だと考えています。これは意見です。
○城内座長  ありがとうございました。宮内委員、お願いします。
○宮内委員  鷹屋委員の言われたことは全くそのとおりだと私も思っています。測定士教育の現場でもやはりまだまだ課題があって、C測定の概念を教えるのが非常に大変だなというのはあります。
 もう一つは、今後、費用の面も考えると、分析を外部に委託するというのは非常にいい方法だと私も思っています。ただ、測定機関に測定士がいて、サンプリングをしているというのは、実は、いろいろな企業にてサンプリングしたとき情報を踏まえて、改善提案をしていただけるとか、そういうノウハウを持っているという強味があり、経験により培われた力があります。そういうことも非常に重要ですので、企業の方もうまく考えていただいて、みんなで作業環境の改善方法を効率よくスキルアップできたらいいと私は思います。
 それから、第3管理区分に関しては、非常にクリアな対策が今後できると思うのです。ただ、第2管理区分に関しては、2分の1の濃度に達していないということになるかもしれませんけれども、やはり改善はすべきであって、それに対してアクションを起こすべきだと思います。優先順位は下がるかもしれませんけれども、将来的には、快適な職場をつくるという目的は全く変わりませんし、それに対して工学的な対策を常に積み重ねていくことは非常に重要だと思います。第3管理区分のときだけ改善するということではなくて、快適な職場をつくるという目的は、もう一回きちんとどこかで認識できたらいいかなと思いました。以上です。
○城内座長  保利委員、お願いします。
○保利委員  A・B測定はずっと長い歴史があるのですけれども、A・B測定とC・D測定を比較して、どちらかを事業者が選択するということになれば、どうしてもA・B測定になると思うのです。作業者に8時間作業なら8時間サンプラーをつけるということも負担になりますし、値段のこともありますけれども、自由に選択しろという形で今動いていますけれども、従来のA・B測定を禁止していないわけですから、どうしても従来のA・B測定のほうに流れるというのは必然かなと思うのです。
 ただ、見ているところが違うので、A・B測定で第1管理区分であっても、C・D測定だと区分が変わることもあり得るわけです。その辺を事業者もきちんと分かった上でどちらがより的確に状況を把握できるかを判断すればいいのですけれども、なかなかそこまで行かないというのが現状だと思うのです。
 それで、C・D測定を普及させるには、インセンティブが働くような仕組みというか、仕掛けというか、そういうものが必要だと思うのです。そのためには、測定士も、A・B測定は慣れていますけれども、C・D測定はほとんどやったことがないという現状ではなかなか難しいかもしれませんが、測定士の方からC・D測定はこういうメリットがあるということを事業者に伝えていくようなことも必要かなと思います。以上です。
○城内座長  お三方の御意見に事務局からお願いします。
○化学物質対策課長  様々な御意見ありがとうございました。社内に第二種の測定士を最低限置いて、現場できちんと測定するというのが有益ではないかというところは、共通の御意見でございますので、中間取りまとめでも書いてございますが、デザインとかの意味でも必要なのだみたいなことを付け加えるとか、させていただきたいと思います。
 あと、C・D測定がなかなか難しいという御意見はございますが、形として選択というところは今後も変えられないとは思いますけれども、前回御説明しましたように、第3管理区分の場合はC・D測定を原則とするとか、そういった形で、マスクの選択が必要な場合については、個人サンプリングが必要なのだということが、先ほど御説明した資料1とも絡んでくるわけでございますが、そういった形で浸透していくことと同時に、まさに環境測定士のほうが測定できるという、車の両輪ということだと思いますので、それがうまく回るように行政としてもやってまいりたいと考えてございます。以上でございます。
○城内座長  山室委員、お願いします。
○山室委員  D測定の定量下限値は、今回、管理濃度の5分の1程度ということで御提案いただいておりますが、前回もお話しさせていただきましたが、定量下限値というのは標準偏差の10倍の値を採用しておりますので、決して精度が悪いというわけではありません。検出下限のように標準偏差の3倍ではありません。例えば、定量下限値10ppmということであれば、3シグマということで、99.7%の範囲は、7から13ppmという範囲になります。D測定の定量下限値を管理濃度とするのは難しいということであれば、今回、アクションレベルを濃度基準値の2分の1という話が出てきております。将来的には管理濃度が濃度基準値に入れ替わるということもあろうかと思いますので、2分の1を定量下限値にしたらどうかと思います。10ppmが定量下限値ということであれば、濃度基準値は20ppmという位置関係になるということで、先ほど言いました7から13ppmというところがきちんと測れていれば、濃度基準値は十分余裕を持って測れていることになろうかと思いますので、私から提案させていただきたいと思います。
○城内座長  ありがとうございました。今、議論を聞いていて、それから資料1での説明も伺って、リスクアセスメントにおけるA・B測定の位置づけというのが読んだだけだと分からないのですけれども、それは今後説明する必要はないのでしょうか。測定の専門家の方たちの御意見があればうれしいのですけれども、いかがでしょうか。
 個人ばく露ということで議論が進んできたので、実はそこは職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会でもあまり議論していなかったように思うのです。宮内委員、お願いします。
○宮内委員  目的は、ばく露を減らして健康影響をなるべく減らす、なくしましょうということです。その手法として、場の管理をするということで、呼吸域の濃度を下げるという違いだけなので、全く同じことをやるということだと思うのです。環境省がやっているような大気中の濃度を下げて、住民の健康管理をしようというのと同じだと思うのです。だから、環境中の濃度を下げる、その濃度をまず見ましょうというステップだと私は思っていて、それがまさにC測定、動いてしまうのだけれども、結局、環境中のサンプリングをしているということでは同じなので、十分理解いただけるのではないかと思っています。
 A・B測定も、結局、場の測定、作業環境中の空気を作業者は吸うわけですから、それを制御するということの違いだけだと私は理解しています。以上です。
○城内座長  そのほかにコメント等ございませんでしょうか。津田委員、お願いします。
○津田委員  企業内での作業環境測定士の育成をということで、これは私もすごく賛成なのですが、企業の規模によっては、やはり作業環境測定士はすぐに受かるものでもないですし、ハードルも高いであろうと思います。ですので、こちらの中に何かを書くというわけではないのですけれども、測定士というものがあって、それが非常に重要であってというような雰囲気といいますか、事業者の方々に御理解いただけるような活動も、どこかで進めていただけたらありがたいなと思います。以上です。
○城内座長  ありがとうございます。そのほかコメント等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。時間も迫ってまいりましたが、事務局からはよろしいですか。
○化学物質対策課長  座長の先生から問題提起がございましたリスクアセスメントとA・B測定ということでございますけれども、宮内先生からまさに御説明がありましたように、工学的対策ということで環境中の濃度を下げるのだということであればA・B測定というか、場の測定は不可欠、特に局所排気装置のスイッチをオンとオフで効果がなかったら意味がないので、そういったもので場の測定が必要なのは間違いないと言えると思います。
 ただ、作業環境評価基準に基づく確率評価を場の測定で行っている国は、正直なところ、実はあまりなくて、そこについてどこまでやるのかというのは議論があると考えております。数理モデルは確かに確率的な数字を出しますので、それに近い概念なのかもしれないのですけれども、それはやはりばく露がある程度低いところに限定されるということになってきますので、ばく露が高くなってきたときには、マスクの選定も含めて個人ばく露に移行していく切替えがどこかで要るのだろうとは考えております。
○城内座長  保利委員、お願いします。
○保利委員  場の測定であっても、リスクアセスメントのためであれば、B測定でいいような気がします。ある程度リスクが高いところというのは分かりますので、そのような場合はA測定で全体を把握する必要はなく、B測定だけでもいいのではないかと思います。
○城内座長  宮内委員、お願いします。
○宮内委員  保利委員の言われているとおりだと思います。
 もう一つ、付け加えると、非常に作業場が狭いところが、中小零細と言っては失礼なのですけれども、多いですよね。そういうところは発生源がかなり明確になっているわけです。人のばく露量を測る以前に発生源は大体分かるので、そこに対するアプローチを先にすることができる。また、どういう優先順位でやったらいいのかもA測定値により、かなりわかります。改善のビフォア・アフターで各場所の測定値を比較して見ることで、効果が明確に分かるという面でも、日本の製造工程には合っているところもあると思います。両方うまく使い分けるのが非常にいいのかなと個人的には思っています。以上です。
○鷹屋委員  すみません、一言だけいいですか。
○城内座長  鷹屋委員、お願いします。
○鷹屋委員  私も思うのですけれども、結局、よくデザインされたA測定で出てきれいだったということは、単位作業場所で時間においても場所においても95パーセンタイルが管理濃度を下回っているということですので、課長のお話の繰り返しになりますけれども、リスクアセスメントとして非常にきれいになっている状態ですよということを示すやり方としては、A測定は非常に優れていると私は思っています。
○城内座長  ありがとうございます。そういう具体的なことを書いてあげたほうがいいかなと思って、発言させていただきました。時間も迫ってまいりましたが、コメント等ございますでしょうか。最川委員、お願いします。
○最川委員  今回の議論ではないのですけれども、この検討会で濃度基準値が決まりますよね。発がん性は数値がないと、前回、前々回のときに説明があったと思うのですけれども、今回これで基準が決まりましたという中で、発がん性に対しては、これより下回っていればいいというか、対策として示せていないということなのですか。発がん性だとか生殖毒性、いろいろあると思うのです。今回基準値を決めてそれを下回っていれば、私たちはその対策をやれば安全なのですよということで実際行うと思うのですけれども、これには発がん性は入っていないという認識でいいのですか。
○城内座長  事務局からお願いします。
○化学物質対策課長  濃度基準値は基本的に閾値があるものということなので、いわゆる確定的影響というものですね。急性毒性であるとか慢性毒性もそうですけれども、確率的影響でないものについて定めるというのが世界の流れでございますので、日本においてもそのような形になろうかと思います。
 がんにつきましては、どうしても確率的影響ということですので安全な数字というのが、要するにリスクが低い、ばく露が少なくなればなるほどリスクが下がるのですけれども、リスクがゼロになるということを立証するような数字はないというのが発がん性物質の特徴でございますので、その点につきましてはばく露を最小限にするというところで対応するという形になっていくのかなと考えてございます。
○最川委員  ただ、その辺の数値が示されないわけですよね。数値を表さないということは、濃度を測りもしない。
○化学物質対策課長  いえ、そんなことはなくて、2,900物質の中には発がん性物質も入っています。例えばクリエイトシンプルなどを使えば、発がん性物質も含めてリスクアセスメントのリスクレベルが出るようにはなっていますので、そういったツールを使ってリスクアセスメントしていただく形になります。濃度基準値というのはないのですけれども。
○最川委員  ないですよね。できるだけ下げるというだけで、何もここでは決めることはしないということでいいのですよね。
○化学物質対策課長  はい。
○城内座長  そのほか、よろしいでしょうか。保利委員、お願いします。
○保利委員  さっき、私はB測定だけでいいみたいな話をしましたけれども、あれは別に現在の作業環境測定を否定しているわけではなくて、リスクアセスメントをしっかりやっていて、ばく露濃度が高いと見積もられたときに、問題となりそうな個所を特定する場合は、場の測定が必要なので、そのときはB測定でいいのではないかという話です。
○城内座長  どうぞ。
○化学物質国際動向分析官  最川委員の御質問についてですが、発がん性物質でも有害性が発がん性だけしかないというと、確かに濃度基準値は決められないのですけれども、急性毒性とかほかの毒性を持っていることが多いので、そちらの毒性を基に基準値を決めることは可能です。発がん性物質だから全部基準値が決められないというわけではなくて、決めるものもあるし、決まらないものもあるという形になると思います。
○最川委員  私たちとすると、発がんしたときに、どういう責任があるかという話にまたなるのですけれども、結局、対策を幾ら取っても、使ったら責任ありますよというだけで、発がん性の区分1だから人体に影響があるものが実際に出回っているわけではないですか。その濃度も示されなくて、対策を取っても、数値が分からない。30年保存で、使っていたのだから、責任はあなたたちにあるよという法律ができたしまったとしか私は思っていないのですけれども、それが納得いかないというか、発がん性が分かっているものをどんどん売るのはよくて、使う側は、使ってしまったら労働者の責任をあなたたちは持たなければいけないよという法律ができたという認識なのです。おかしくないですか。皆さんそういう法律なのだよということでつくられているのかもしれないのですけれども、使う側としては、納得できないなと。それで数値も示されない。ここは発がん性を防ぐことの会議ではないということでしょう。有害なものをある程度低くするための法律はつくったけれども、発がん性をなくすとか、その方法を示せていない会議になってしまっているというところが、納得できないなというのはあります。
 世界的にそうなのかもしれないですけれども、ただ、責任が来るので、責任を決められた法律、特に今年の5月に公布された自律的管理の法律は、事業者に全て労働者の責任は負わされたと私は思っています。思っていますとしか言いようがないのですけれども。もうつくられてしまったので、しようがないのですけれども。本当は、1回つくったからといって、見直しをしてもらいたいと思っているのですけれども、意見だけ言わせていただきます。
○化学物質対策課長  ありがとうございます。いわゆる発がん性物質につきましては、特化物で言う特別管理物質ということで、第1類物質とかそういったもので従来からやってきてはおります。御指摘のとおり、特化物であれば、そういったものについてはかなり厳しく、例えば局排を設けなければいけないとか、細々と決めていたところが、自律管理になってしまったという言い方は変ですけれども、自律管理するというところでございますので、そういった形でプロセスの管理ではなくなってしまったというところはございます。
 ただ、従来の考え方からも、そういった管理物質については30年間保存していくとか、できるだけ濃度を下げるべきであるという考え方自体は実は同じでございまして、今回の改正でそういった考え方ががらっと変わったわけではないということは、一応申し上げたいと思います。
○最川委員  だから、123物質がこの自律的管理で将来的になくそうというように動いていますよね。そこが私は一番おかしいなと思っているところで、せっかく分かっている、はっきりしているところを増やしていくべきで、発がん性が高いところとのレベル差はやはり必要だと思っているのです。それを一律、何万物質が将来的に一緒になってしまって、責任も全部ありますよではなくて、はっきり発がん性が分かっていて、対策が分かるところは増やしていくべきだと思うので、そこをなくしていく方向に多分行くというところは、見直していただきたいなというのがあります。以上です。
○化学物質対策課長  ありがとうございます。だんだん話が全然違う方向に行ってしまいましたが、職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会もそういった過去の歴史的経緯から定められている物質について、一律に全てなくしてしまうような乱暴な議論をしているわけではなくて、そこはきちんとレベル別に整理をした上で、いわゆる一般則のほうに移そうという議論であったと承知しておりますので、まさにそういった御意見も踏まえながら、今後考えていくことにはなろうと思います。全て一律に何もなくなってしまって、レベル分けもなくなるということを考えているわけではないということは、申し上げたいと思います。
○城内座長  尾崎委員、お願いします。
○尾崎委員  自社で作業環境測定士を養成したほうがいいという話の中で、さっき津田先生から、第2種の資格も結構難しいのではないかという指摘がありましたが、化学工場のほうでは、現場の作業員がそれに何回もトライして落ち続けるということのないような、試料のサンプリング方法に特化したような第3種とかそういうものもぜひつくっていただいて、現場のルーチン作業が楽になるように考えて頂きたいと思います。それがまず1点。
 あと、全体的な話で言いますと、やはり職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会の一丁目一番町で、リスクアセスメントの実施率が53%にとどまっているというところが最大の問題でありまして、人的資源だったり知識が乏しいというところが多分理由になっていると思うのですけれども、そこにいかにメスを入れていくかというのが、やはり厚生労働省の実力だと思いますので、ここに関してもフォローアップをやっていただきたいなと思っております。以上です。
○城内座長  そのほか御意見等ございませんでしょうか。申し訳ありませんが、時間を超過してしまいましたので、もしなければ。よろしいでしょうか。
 たくさんの御意見ありがとうございました。本日の御意見を踏まえた修正版を事務局から各委員に確認いただいた上で、中間取りまとめ案としたいと思います。最終的な確認は私のほうでさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
     (「異議なし」の声あり)
 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。
 次に、議題の3、その他ですが、事務局から何かございますでしょうか。
○化学物質評価室長  特にございません。
○城内座長  ありがとうございます。
 本日の議題は以上となります。構成員の皆様、長時間の御議論ありがとうございました。
 事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○化学物質評価室長  御議論どうもありがとうございました。中間取りまとめにつきましては、座長に御了承いただき次第、公表いたします。また、本日の議事録は、後日、構成員の皆様に御確認いただいた上で公開させていただきます。
 次回は12月15日、金曜日、午後2時から5時に開催することとし、場所は同じ建物となります。議題は、参考2にございますとおり、濃度基準値の検討となります。出席者につきましては、構成員名簿のうち、「全般に関する事項」「毒性に関する事項」の欄の先生方に御参集いただきます。正式な開催案内は後日お送りさせていただきます。
○城内座長  ありがとうございました。以上で、本日の化学物質管理に係る専門家検討会を閉会とさせていただきます。本日はありがとうございました。お疲れさまでした。