第1回腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会 議事録

厚生労働省健康局がん・疾病対策課

日時

令和4年10月28日(金)14:00~17:00

場所

航空会館ビジネスフォーラム(オンライン開催)

議題

  1. 開会
  2. 腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会について
  3. 座長の選任
  4. 腎疾患対策の現状等について
  5. 糖尿病対策の現状等について
  6. その他

議事

議事

2022-10-28 第1回腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会

○原澤課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより第1回「腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
事務局を務めさせていただきます厚生労働省健康局がん・疾病対策課の原澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
なお、本検討会はYouTubeにて配信しておりますので、その点、御承知おきください。
それでは、検討会の開催に当たりまして、健康局長の佐原が本日欠席でございますので、その代理で健康局がん・疾病対策課長の中谷より御挨拶申し上げます。
○中谷がん・疾病対策課長 がん・疾病対策課長をしております中谷でございます。
構成員の皆様には、本日お忙しいところ御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
局長の代理として一言御挨拶をさせていただきます。
まず、今日の検討会の趣旨、腎疾患対策につきましては、構成員の先生方御承知のように、平成30年に取りまとめました検討会報告書に基づきまして、特に自覚症状に乏しい腎疾患を早期に発見・診断して良質なサービスにつなげ、そのQOLを高めるということを目標に取り組んできたところでございます。また、原因疾患として重要な糖尿病対策につきましても、第7次の医療計画や健康日本21に基づいて、糖尿病の発症と重症化予防を目標に取り組んできたところでございます。
この2つの対策につきましては、前回の報告書の取りまとめから一定期間が経過しておりますことと、本年度は第8次医療計画の見直しを今まさにやっているところでございまして、この糖尿病対策については、これまでの取組を振り返り、新しい計画に必要な取組をまた盛り込んでいくということが必要でございますので、このたびこの検討会を開催させていただいている次第でございます。後ほど担当から詳しく説明があると思いますが、国と関係者、自治体が連携してしっかりと取組を推進するということが非常に大事でございますので、ぜひ先生方の御協力をいただければと思っております。
本日の検討会におきましては、構成員の皆様方には忌憚のない御意見、御指導をいただければと思っております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
それでは、座長が選任されるまでの間、私のほうで進行を務めさせていただきます。
それでは、まず構成員の皆様の御紹介をさせていただきます。構成員の皆様におかれましては、お名前を呼ばれましたら、ミュートを解除していただき、一言御挨拶をお願い申し上げます。
一般社団法人全国腎臓病協議会会長、池田充構成員です。
○池田構成員 皆さん、今日はよろしくお願いいたします。池田です。私は昭和52年に透析を導入しまして、54年に腎移植をして今日に至っております。移植して43年になりますが、患者の代表ということで、皆様の御意見をいろいろとお聞きしたいと思っております。どうぞひとつよろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
続きまして、公益社団法人日本看護協会常任理事、井本寛子構成員ですが、本日は御欠席と伺ってございます。
続きまして、国立国際医療研究センター糖尿病研究センターセンター長、植木浩二郎構成員です。
○植木構成員 国立国際医療研究センターの植木でございます。私は現在日本糖尿病学会の理事長も務めております。いい案がまとめられますように貢献してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
続きまして、川崎医科大学腎臓・高血圧内科学教授、柏原直樹構成員です。
○柏原構成員 川崎医科大学の柏原でございます。私はこの6月まで一般社団法人日本腎臓学会の理事長も拝命しておりました。本日は構成員として現理事長の南学正臣先生も御参加いただいております。御指導のほど何とぞよろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
続きまして、公益社団法人日本医師会常任理事、黒瀨巌構成員です。
○黒瀨構成員 皆様、こんにちは。日本医師会の黒瀨でございます。いつも大変お世話になっております。本検討会でもまたいろいろと御指導いただけますようよろしくお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
続きまして、公益社団法人日本栄養士会専務理事、下浦佳之構成員です。
○下浦構成員 皆さん、お世話になっております。日本栄養士会の下浦と申します。本日の会議、またいろいろと御指導いただきますようにどうぞよろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
続きまして、大阪公立大学大学院医学研究科泌尿器病態学病院教授、武本佳昭構成員です。
○武本構成員 皆さん、よろしくお願いいたします。現在、私、日本透析医学会の理事長もさせていただいておるので、この腎疾患について実践で仕事をさせていただいておりますので、いい案ができるように、御協力よろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
続きまして、女子栄養大学特任教授、津下一代構成員です。
○津下構成員 津下と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私は、健康日本21(第二次)の最終評価、また、次期の策定のメンバーとして関わっております。また、糖尿病の発症予防としての特定健診・特定保健指導、重症化予防事業の研究・実践にも関わっているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
続きまして、神奈川県健康医療局医務監、中澤よう子構成員です。
○中澤構成員 中澤でございます。私は、地方行政の立場からということと、前回の腎疾患対策検討会の報告書を作成したメンバーにもさせていただきましたので、今回も参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
続きまして、東京大学大学院医学系研究科教授、南学正臣構成員です。
○南学構成員 東京大学の南学でございます。柏原先生の後任として日本腎臓学会の理事長を拝命しております。また、現在日本内科学会の理事長、国際腎臓学会のPresident-electを兼務しております。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
続きまして、信州大学医学部眼科教授、村田敏規構成員ですが、本日御欠席と伺ってございます。
続きまして、名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学教授、室原豊明構成員です。
○室原構成員 名古屋大学循環器内科の室原と申します。本日からどうかよろしくお願い申し上げます。糖尿病や腎疾患の方は非常に心血管病を発症しやすいということで、今回循環器学会の立場から参加させていただきます。どうかよろしくお願い申し上げます。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
続きまして、岐阜大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学教授、矢部大介構成員です。
○矢部構成員 岐阜大学の矢部でございます。私は、公益社団法人日本糖尿病協会の理事、また、日本糖尿病学会の監事として活動しております。また、特に糖尿病性腎症重症化予防の大規模実証事業の中でプロジェクトの一つを担当させていただいております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
続きまして、国立保健医療科学院生涯健康研究部部長、横山徹爾構成員です。
○横山構成員 国立保健医療科学院の横山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私も健康日本21の最終評価、そして次期計画推進の専門委員もさせていただいていますが、特に疫学・統計的事項、有病者数の推計など、その辺りが専門かと思いますので、そういった観点で貢献させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
構成員の皆様の御紹介は以上となります。
また、本日参考人としてお越しいただいている方々を御紹介させていただきます。
奈良県立医科大学、野田龍也先生。
埼玉医科大学、岡田浩一先生。
横浜市立大学、後藤温先生。
愛知学院大学、成瀬桂子先生。
同じく愛知学院大学、三谷章雄先生。
東京大学、山内敏正先生。
以上の方々に御出席いただいておりますので、御承知おきください。
続きまして、事務局の御紹介をさせていただきます。
先ほど御挨拶を申し上げましたが、健康局がん・疾病対策課長の中谷でございます。
私、がん・疾病対策課課長補佐の原澤でございます。よろしくお願いいたします。
続きまして、がん・疾病対策課課長補佐の原でございます。
続きまして、健康課、がん・疾病対策課課長補佐の寺井でございます。
続きまして、がん・疾病対策課課長補佐の知野見でございます。
続きまして、医政局歯科保健課歯科口腔保健推進室、小嶺室長です。
続きまして、保険局国民健康保険課、右田専門官です。
続きまして、労働基準局安全衛生部労働衛生課、伊藤係長です。
以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、資料の確認に移らせていただきます。資料は厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございます。資料は、議事次第、資料1-1から3-7まで、及び参考資料1から3までがございますので、御確認ください。
それでは、議題(1)「腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会について」に移りたいと思います。まず、資料1-1を御覧いただければと思います。こちらで本検討会の趣旨につきまして、事務局のほうから御紹介させていただきます。
我が国における腎疾患対策につきましては、平成30年に取りまとめた腎疾患対策検討会報告書に基づきまして、自覚症状に乏しい慢性腎臓病を早期に発見・診断し、良質で適切な治療を早期から実施・継続することにより、CKD患者のQOLの維持向上を図ることを全体目標として取り組んでおります。
また、糖尿病対策については、平成19年に取りまとめた「糖尿病等の生活習慣病対策の推進について(中間とりまとめ)」及び「第7次医療計画」「健康日本21(第二次)」等に基づき、糖尿病の発症と重症化を予防することを目標として、予防・健康づくり対策の推進や医療体制の構築に取り組んでいるところでございます。
本検討会におきましては、腎疾患対策及び糖尿病対策に関する報告書等に関する目標達成度等の評価や計画等の改正について検討するとともに、具体的な取組を進める上での参考となるよう、所要の検討を行うこととしております。
検討事項については、お示ししているとおり、(1)として腎疾患対策検討会報告書の中間評価について、(2)糖尿病に関する第7次医療計画の見直し及び今後の糖尿病対策について、(3)その他としております。
それでは、引き続きましてスケジュールの説明に移らせていただきたいと思います。資料1-2を御覧いただければと思います。ただいま申し上げましたとおり、それぞれの疾患対策について御議論いただきたいと考えてございますが、当面の検討としましては、一番下の水色の矢印で書いてあるとおり、第8次医療計画の策定に関する議論が、年度内に計画に関する策定指針の発出を目途として実施されているところでございます。
そういった点を踏まえまして、まずは本日の検討会において、腎臓病対策の現在の取組状況の説明と、研究班からの御報告、糖尿病対策についても同じように、現在の取組状況の説明と、研究班からの御報告をいただいた上で、意見交換、御議論いただきまして、第2回の検討会において、特に糖尿病対策について、第8次医療計画の策定に向けた中間取りまとめ(案)という形で御検討いただいて、その取りまとめた内容について、第8次医療計画の策定に関する見直し内容に反映していただくといったことを考えてございます。
次年度以降に腎臓病対策に関する今後の対策に係る議論を引き続き実施していただきたいと考えてございますので、現時点でのスケジュールについてお示ししております。
以上でございます。
それでは、引き続きまして座長の選任に移りたいと思います。一度資料1-1にお戻りいただきまして、資料1-1の「3.構成等」の(2)及び(3)にございますとおり、「本検討会では座長及び座長代理を置き、座長は構成員の互選により選出」、「座長代理は、構成員の中から座長が指名」することとされております。
事前に南学構成員より柏原構成員を座長として御推薦いただいておりましたが、そのほか、御推薦等ございますでしょうか。
特段ございませんようですので、柏原構成員に本検討会の座長をお願いするという形でよろしいでしょうか。
(構成員首肯)
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
それでは、柏原構成員に本検討会の座長をお願いしたく存じます。
○柏原座長 座長に御指名いただきましてありがとうございます。
私、平成30年に厚生労働省健康局に腎疾患対策検討会が構成されましたときに、南学先生、中澤先生たちと一緒に構成員、あるいは座長としてこの議論に参画いたしました。また、令和4年4月から始まりました厚生労働省研究班、「腎疾患対策検討会報告書に基づく対策の進捗管理および新たな対策の提言に資するエビデンス構築」班の代表も務めているということでございます。そういう関係で本日の検討会にはお招きいただいたと理解しております。構成員の皆様方におかれましては、ぜひ活発な御議論と御指導をよろしくお願いしたいと思います。
また、座長代理ということでございますが、この検討会は腎疾患対策と糖尿病対策を扱うということであります。糖尿病に関する議論も数多くあるということで、糖尿病の議論をリードいただくということで、国立国際医療研究センター、植木浩二郎先生に副座長という形でお願いしたいと考えております。皆様、いかがでしょうか。
(構成員首肯)
○柏原座長 ありがとうございます。
それでは、植木先生、ぜひよろしくお願いいたします。
○植木副座長 御指名ですので、柏原座長を補佐してこの検討会の議論を進行させていただければと思います。何とぞよろしくお願いいたします。
○原澤課長補佐 お二人の先生方、ありがとうございました。
それでは、この後の進行につきましては、柏原座長、植木副座長にお願いしたく存じます。よろしくお願いいたします。
○柏原座長 改めまして、皆様、ぜひ御指導のほどよろしくお願いいたします。
これ以降でございますが、議題(3)に関しましては、私が進行を務めさせていただきます。議題(4)につきましては、植木副座長にお願いしたく存じます。
それでは、議題(3)「腎疾患対策の現状等について」に移りたいと思います。
資料2-1の御説明を事務局よりお願いいたします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
それでは、資料2-1「腎疾患対策の取組について」、御説明させていただきます。
2ページ目を御覧ください。先生方は十分御存じかと思いますが、腎疾患の特徴について、簡単に御説明させていただきます。腎臓は「沈黙の臓器」と言われ、自覚症状が乏しく、症状を自覚したときには既に進行しているというケースも少なくないが、早期から適切な治療を行うことによって、腎疾患の重症度予防は可能であるため、早期診断、早期治療が重要であるというものでございます。
また、腎臓は、構成上、毛細血管が球状に絡まった形になっており、従って腎臓の血管の障害は腎疾患の発症に直結する。つまり、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病や加齢などが腎疾患の主な発症リスクになっているということでございます。
3枚目をお願いいたします。腎疾患の概念図といたしまして、下にお示ししているように、慢性腎臓病という考え方がございます。慢性腎臓病は「CKD」と略されますが、こちらは1つの疾患の名称ではなく、糖尿病性腎症などを含めた、腎臓の働きが徐々に低下していく様々な腎臓病を包括した総称でございます。こちらは予防啓発に積極的に取り組むために提唱された名称となっております。
4ページは、慢性透析患者数と有病率の推移でございます。こちらにお示ししておりますのは、2020年末時点の慢性透析患者数でございまして、こちらは34万7671人という形で、御覧いただいているとおり、増加傾向になっているという状況でございます。参考として、人工透析に係る医療費の状況とか、そういったところも記載してございますので、御参照いただければと思います。
5ページ目は、累積の患者数ではなく、新規の導入患者数が分かるグラフとなっております。水色のグラフが新規に導入された患者数でございますが、一番直近の2020年のデータとしては4万744人という形になっているという状況でございます。
6ページ目、導入患者さんの原疾患の割合の推移というものを御覧いただいております。透析導入の原因となる疾患の中で一番割合として高いものは、一番上にお示ししている茶色い折れ線グラフ、糖尿病性腎症でございますが、その割合は若干の低下傾向を見せており、ほかの原因、特にピンク色の折れ線グラフで示しております腎硬化症などが増加傾向にあるといったところが特徴として捉えられるかと思います。
7ページ目を御覧ください。先ほど来、この会の趣旨等で御説明させていただいた腎疾患対策検討会報告書が平成30年7月に発出されてございます。こちらの中では、全体目標については、御覧いただいているとおりの記載がございますが、達成すべき成果目標としてマル1、マル2、マル3とございます。特にマル3の2028年までに年間新規透析導入患者数を3万5000人以下に減少させるという具体的な行動目標も設定されてございます。
その中で実施すべき取組として、5つの柱立てで記載されており、1つ目が普及啓発、2つ目が医療連携体制の構築、3つ目が診療水準の向上、4つ目が人材育成、5つ目が研究の推進という形で、それぞれの柱立てについて具体的な内容を書き記しておりますので、御参照いただければと思います。
8ページ目は、慢性腎臓病診療連携体制の全国展開ということで、予防・健康づくりを推進するため、かかりつけ医・腎臓専門医療機関等が連携し、慢性腎臓病患者を早期に適切な診療につなげる慢性腎臓病診療連携体制の構築や、先進事例の横展開などを通じて疾病予防・重症化予防に取り組むといったことを掲げておりまして、左下にはCKDの診療連携体制のイメージ図等をお示ししております。
9ページ目を御覧ください。こういった取組を進めるために、令和4年度の腎疾患対策に関する予算について御紹介をさせていただきたいと思います。お示ししているようなメニューで御用意しておりまして、一番上の腎疾患対策の概要のところに記載してある、2つ目の丸のところからが具体的なメニューになっております。腎疾患対策費、慢性腎臓病特別対策事業などの事業を設けておりますので、次のページから御紹介させていただきます。
10ページ目を御覧ください。慢性腎臓病特別対策事業という形で事業を設けてございます。こちらは事業内容として、患者等一般向けの講演会等の開催や、病院や診療所等の医療関係者を対象とした研修の実施などを、都道府県や政令指定都市、中核市を補助先として実施しているというものでございます。
11ページ目は、慢性腎臓病診療連携構築のモデル事業ということで、事業実施のイメージのところで、マル1の保険者や地方公共団体と医療従事者が連携した腎疾患対策推進のための会議体の設置や、研修会等の実施、マル2の腎疾患対策検討会報告書に基づいた戦略策定と対策の実践等を実施していただくためのモデル事業でございます。こちらは次年度の概算要求で少し組替えを検討しておりまして、12ページ目を御覧いただきますと、その新しいモデル事業の案を記載してございます。「2 事業概要・イメージ」というところに記載しておりますが、都道府県が実施する腎疾患対策と連携可能な病院において、都道府県や健保組合、健診施設、地域の医師会、産業医や企業等と連携し、腎疾患の診療体制の構築や多職種連携を行うための会議体の設置等の取組を行っていただくというイメージで、補助主体を、先ほど申し上げたものの都道府県から、その中で中心となってくださる医療機関を補助の対象とするという形に組み替えてデザインをし直しているというイメージでございます。このような形で少しずつ取組の形を変えながら、国としても腎疾患対策を進めていきたいと考えているところでございます。
13ページ目につきましては、当面の検討スケジュールを再掲してございます。こちらは冒頭御説明いたしましたので、割愛させていただきます。
事務局からの資料2-1に関する御説明は以上となります。どうぞよろしくお願いいたします。
○柏原座長 御説明、どうもありがとうございます。
これから今の御説明に関しまして御質問や御質問を伺おうと思うのですが、まず冒頭に、本日御欠席でありますが、井本構成員から書面で御意見を伺っております。事務局より代読をお願いできますでしょうか。
○原澤課長補佐 今、座長よりおっしゃっていただいたように、日本看護協会の井本構成員から書面にて御意見を頂戴しておりますので、読み上げさせていただきます。
資料2-1に関しまして、CKDの患者さんにとって、重症化予防は大変重要だと認識しています。重症化予防のためには、早期から適切な支援を受ける必要があり、適切な支援を届けるためには、住み慣れた地域への体制整備が重要になります。
資料の12ページにあるモデル事業にも示されているとおり、看護師や保健師は現在療養支援に携わっておりますが、継続的な支援に苦慮するケースもあります。外来での療養指導体制を強化しながら、看護師や保健師が連携調整役としても引き続き役割を果たすことが必要だと考えます。
とのことでございます。
以上でございます。
○柏原座長 井本構成員からの御意見でございました。
それでは、本日御参加の構成員の方々から御意見や御質問を承りたいと思います。御自由に挙手いただければと思います。いかがでしょうか。
これは意見ではなくて所感でございますが、先ほど事務局から御説明いただきました令和5年度からの新規事業として、重症化予防のための診療体制構築、多職種連携モデル事業(仮称)を新たに立てていただいたということ。病院が実施主体となり、補助率も100%であるということ。これが非常に新しい事業だろうと思います。
いかがでしょうか。御意見等ございますでしょうか。武本構成員、お願いいたします。
○武本構成員 こういう事業について、私、泌尿器科ですので、腎臓病だけでなくて、腎臓病になった方が透析になる前に、腎移植とかそういうことの啓発についてもいろいろ補助をつけていただいて、増やしていっていただけたらと希望しております。
以上です。
○柏原座長 武本構成員から、腎臓病の重症化のみならず、腎不全に陥ったときの腎代替療法の選択についても注力していただきたいという御意見と理解いたしました。平成30年の腎疾患対策検討会報告書にはそのことも目標の中に設定されていたと記憶しております。大変貴重な御意見、ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。御意見等ございませんでしょうか。津下構成員、よろしくお願いいたします。
○津下構成員 ありがとうございます。
腎疾患も症状がないので、このように保険者が対象者を抽出して医療機関への受診勧奨を行うということで、未治療者、治療中断者を拾い上げることが非常に重要だと思います。
その中で、療養指導が必要な対象者の抽出基準などについて、保険者間でばらつきがあったり、優先順位について十分な検討がなされていない場合がある、と感じるのですけれども、その辺り、どのようになっているかということ。
それから、透析導入患者さんの数については、減少という目標は立てているのですが、まだそれには向かっていないということなのですが、年齢構成別に見ると高齢化に移行しているということもございますので、その辺りを踏まえた対策については何か御検討されているかどうか、お知らせいただければと思います。
以上、2点をお願いいたします。
○柏原座長 津下構成員のほうから、保険者から抽出するときの抽出基準、そしてKPIとして2016年度と比較して新規導入患者を10%減らすという目標は達成しているわけですが、これを細かく年齢構成別に見ると、一部は達成できているのではないか。その辺りの進捗状況を教えてほしいという御意見だったと思います。
後者に関しましては、この後で岡田参考人のほうから詳しい解析結果を御発表いただけると思います。確かに全国的に見ますと、5%の減少には至っていないわけですが、性別で解析したり、あるいは都道府県別に解析すると、4~5%以上の減少を示した地域もあるということ。女性に関しましては、男性と比べて減少しているということ。このように部分的には一定の進捗を見せているところがございます。後ほど詳しく御説明をいただきたいと思います。
抽出基準に関しましても、実はこの報告書の中に記載しておりますが、私ども研究班、あるいはこの報告書を実践するためにNPO法人日本腎臓病協会と連携しておりますが、そこの普及啓発活動の中においては、まだ十分に抽出基準の普及ということに注力できていないのではないかなと反省しております。これは持ち帰り再度検討したいと考えます。
それ以外には御意見ございませんでしょうか。黒瀨構成員、よろしくお願いいたします。
○黒瀨構成員 ありがとうございます。
確認と質問ですけれども、11ページに記載されている診療連携構築モデルの事業は、令和4年度も継続されて、その上に新規事業として12ページに出ている診療体制構築と多職種連携モデルというのがさらに追加されるということなのでしょうか。それとも、11ページのほうは令和3年度で一旦終了になって、4年度から多職種を加えた新しい連携モデルというのを考えているのかという点を教えていただきたい。
あと、医師会とか関連団体、あるいは多職種というのを新しく12ページのスキームのほうに入れていただいてはいるのですが、都道府県が実施する腎疾患対策ということと、それから地域の医師会、ここの連携というのが、通常都道府県がやるものに対しては都道府県医師会が対応するのですけれども、ここは多職種というのが入って、いわゆるもう少し限定された地域のものを扱うために、あえて都道府県医師会ではなく、地域の医師会、いわゆる郡とか市とか町の医師会というものを入れていらっしゃるのかということ。
その場合に、病院の規模によっては、当然ながら二次医療圏の広い医療圏を対象にやっている病院と、それからもう少し地域に根差した病院と、病院にレベルによって、あるいはその規模によって対象の患者さんとかが違ってくると思うのですけれども、どの辺りの規模を考えていらっしゃるのか教えていただきたいなと思いまして御質問させていただきました。
○柏原座長 ありがとうございます。
御質問いただきましたことに関しましては、事務局のほうから御回答いただきたいと思います。お願いします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。黒瀨構成員、御質問いただきありがとうございます。
まず、令和4年度までの慢性腎臓病診療連携構築モデルと12ページにお示ししております概算要求との関係でございますが、御指摘のとおり、令和4年度まで11ページ目のモデル事業を実施しておりまして、こちらを組み替えるという形で令和5年度の概算要求の御提案、12ページ目の御提案になりますので、11ページ目のモデル事業を、形を変えて次年度以降実施したいと考えているというのが1点目への御回答となります。
その上で、12ページ目の事業概要のところの記載についての御質問でございますが、まず「地域の医師会」と記載してございますのは、今おっしゃっていただいた都道府県医師会や郡市区医師会など、対象を規定し過ぎずに、地域の実情に応じて適切に連携していただきたいということから、このような書き方になっていると御理解いただければと思います。
その上で、一定都道府県が実施する腎疾患対策との連携が必要ということもあるので、想定しているものとしては、領域をかなり限定したものというよりは、一定程度その都道府県のエリアをカバーできるような医療機関にまずはやっていただくのではないかというふうに想定してモデル事業を構築しているというところでございます。
こちらで事務局からの回答とさせていただきます。
○黒瀨構成員 ありがとうございます。
実施主体はあくまでも病院ということですので、どういった病院を対象にされるかというのがこの事業のボリュームというか、大きさがそれによって変わってくるのだろうなと思いまして伺わせていただきました。
ありがとうございます。
○柏原座長 御質問ありがとうございます。この事業の内容についても理解が深まったと思います。
ほかには御質問ございませんでしょうか。矢部構成員、お願いいたします。
○矢部構成員 岐阜大学の矢部でございます。
12ページの重症化予防のための診療体制構築及び多職種連携モデル事業は、大変すばらしいと思います。特に多職種連携は効果を上げる意味で極めて重要な要素だと。糖尿病の診療の観点でもいつも感じるわけでございます。
多職種に関してでございますが、現在薬剤師、保健師、看護師、管理栄養士という形になっておりますが、例えば病院で行っている糖尿病透析予防指導に関して言うと、理学療法士の関与もございますが、この辺り、理学療法士等はこれに含められるということはないのでしょうか。その辺りをお聞かせいただければと思います。
○柏原座長 これに関しましても事務局のほうからお答えいただいてよろしいですか。
○原澤課長補佐 ありがとうございます。
今の御質問は、12ページ目の事業イメージのところの「モデル病院」という赤枠の中の療養指導・両立支援のところで示されている職種のところに触れていただいたものと認識しております。事業の概要のマル4に記載しておりますとおり、多職種連携による療養指導及び両立支援の実施という形で、関係していただく職種について特段規定を設けているわけではございませんので、今おっしゃっていただいたような専門職の方々にも実情に応じて関与していただくということだと理解してございます。
以上でございます。
○矢部構成員 ありがとうございます。
現行、病院の中でそのような形で透析予防指導が行われていることを踏まえると、ここに「理学療法士」というのもあると、互換性というところで理解しやすいかと思って質問させていただきました。
ありがとうございます。
○柏原座長 ありがとうございます。
いかがでしょうか。ほかに御意見はございませんでしょうか。植木構成員、お願いいたします。
○植木構成員 CKDの重症化予防という点では、10ページにございますような一般の方々への啓発が非常に大事だと思うのですけれども、これは糖尿病の診療においてもできていないので、じくじたるものがございますが、例えば健診を受けた方、あるいは基礎疾病がある方は、かかりつけの先生方による検査で何を見ればいいのかというものの認知度というのは、例えばeGFRを見て、それが異常かどうかというのが一般の方々にどのくらい認知されているのかという指標が非常に大事なのではないかと思うのですが、そのようなことがこの中で行われているかどうかということについてお伺いできればと思います。
○柏原座長 ありがとうございます。
認知度、普及率に関しましては、参考人の岡田先生のほうから後ほど詳しく御発表いただけると思うのですが、様々なメディアを通してCKDの構成要素が2つあります。eGFR60未満と蛋白尿を主体とする検尿異常に注意していただきたいということは行っているところであります。最近テレビコマーシャルなども活用しているところであります。もう少し詳しく後ほど岡田参考人のほうから御報告させていただきたいと思います。
植木先生、そのようなことでよろしくお願いいたします。
○植木構成員 はい。
○柏原座長 ほかには御質問ございませんでしょうか。
恐らくまだあろうかと思うのですが、この後の岡田参考人からの御発表の後に質疑応答の時間もありますので、その時間も含めて続けて議論いただければと思います。
多くの活発な御議論をいただきましたこと、ありがとうございました。
それでは、厚生労働省科学研究班から御報告をいただきます。資料2-2を用いて、岡田参考人から御発表をよろしくお願いいたします。
○岡田参考人 では、スライドを共有させていただきます。
それでは、改めまして、埼玉医科大学腎臓内科の岡田浩一が腎疾患対策の進捗状況について御報告をさせていただきます。
本日のアジェンダとなります。まず、先ほども腎疾患対策検討会報告書について御紹介がございましたけれども、簡単におさらいをさせていただきます。
2018年に今、お示ししておりますような構成員からなる腎疾患対策検討会が開催されて、そこからの「腎疾患対策検討会報告書:腎疾患対策の更なる推進を目指して」という報告書が発出されました。
その中に述べられている、我々が今後10年間で取り組む腎疾患対策の5つの柱として、地域の医療提供体制の整備、普及啓発、診療水準の向上、人材育成、研究開発の推進が示され、これらを通して生活習慣病の発症予防、CKDの発症予防、CKDの重症化や合併症予防を推進し、透析導入患者の数を1割減らすことが目標として掲げられております。
もう少し具体的に申し上げますと、CKDを早期に診断・発見し、適切な治療を施すことによってCKDの重症化を予防する。また、CKDの患者さんのQOLの維持向上も一緒に図っていくということで、その具体的な方策として、かかりつけの先生方やメディカルスタッフ、我々専門医が連携して、地域の実情に即した形でCKDの診療体制を充実させていく。その体制のもとで標準治療を施すことを通して、2028年、10年後の新規透析導入の患者さんを1割減である3万5000人以下にするということが目標として掲げられております。
その際の連携システムとして、かかりつけの先生方と専門医とが1人の患者さんにおける2人の主治医として、ふだんはかかりつけの先生方に御覧いただいていて、何か問題が生じたら専門医のほうに御紹介いただき、専門医は適切なアドバイスをつけて逆紹介をする。こういった二人主治医制という連携体制のもとで1人のCKD患者さんの残存腎機能の温存を目指していく。
人数の限られた腎臓専門医が膨大な人数のCKD患者さんの診療に効率よく関わっていくためには、こういった2人主治医制というのが非常に有用であるということは分かっていますが、こういった体制を地域の実情に即した形で実現化するのは、トップダウンのアプローチでは難しい。そこで、2018年にこの報告書が発出されたのと時を同じくして、日本腎臓学会は外郭団体でありますNPO法人日本腎臓病協会を立ち上げました。この協会には4つの部門があり、そのうちの2つの部門、普及啓発や診療連携体制の構築をサポートするCKD対策部会と、腎臓病療養指導士制度、つまりCKDの診療に非常にたけたメディカルスタッフの育成を管轄する部門の2つがこのCKD対策に直接関わっている日本腎臓病協会の部門ということになります。
CKD対策部会では、日本全国を12のブロックに分け、それぞれにブロック長を置き、そのブロック内にあります府県それぞれに地域の実情をよく理解したリーダーを任命して、それらの先生方の協力の下、地域の実情に即した形の連携体制を構築していく。こういったスキームでCKD対策を全国展開しております。
例えば私は、埼玉、千葉、神奈川をまとめる南関東ブロック長として3県を管轄しておりますし、また、埼玉県の一リーダーとして地元の連携体制の構築にも関わっております。
また、先ほど柏原先生が簡単に触れられましたが、腎疾患政策研究事業の公的研究班も立ち上がっており、これはホームページのフロントページですけれども、柏原先生と私とが2つのCKD対策研究班の班長として活動を行っております。
柏原班は指定政策研究班として、これらの分担研究者の先生方と一緒に、CKD対策の進捗のモニタリングを担当されています。また、私が班長を務めます研究班のほうでは、先ほど御紹介いたしました日本腎臓病協会のブロック長の先生方を分担研究者に就任いただいて、各地域における実動部隊としてCKD対策活動を行っております。
全体の立てつけですけれども、腎疾患対策検討会報告書に上げられた目標を達成するために、腎臓学会、腎臓病協会、そして2つの研究班が連携し合って、該当地域の研究分担者、もしくは対策部会のブロック長をその地域のリーダーとして、例えば行政や保健師の皆さんと協力し合って、地域の住民の方たちの保健指導や受診勧奨をする。また、かかりつけの先生方と専門医との間に2人主治医制を構築したり、さらにそこに腎臓病療養指導士が関わって生活習慣の改善を目指していく。こういった診療体制を地域の実情に即して、トップダウンではなくて、ボトムアップの形で構築していく。そして、好事例に関しては同じような環境にある地域に横展開させていくことによって、日本全体のCKD対策を進めていく。また、研究班のホームページにCKD対策支援データベースを作成して、この横展開を支援していくように準備を進めております。
それでは、これまでの個々の取り組みの進捗状況について御紹介いたします。
まず、医療提供体制の構築ですけれども、この報告書が出る前の段階で、地域におけるCKDの診療連携というものが機能していますかということに関して、日本臨床内科医会の先生方、多くはかかりつけ医の先生方にアンケートをしたところ、自分の地元では機能してると回答された先生方は2割でした。8割の先生方はまだまだだという回答だったということで、この連携体制をしっかり構築していかなければいけないという結果でした。
そこでまず、かかりつけの先生方から腎臓専門医への紹介基準を策定しました。黄色でお示ししている部分、蛋白尿がなくて腎機能低下も中等度といった患者については、かかりつけの先生方が紹介に迷われると思いますので、40歳未満なら紹介、40歳以上は先生方で管理してくださいというように、きちんと方針を示しました。また、腎機能は正常で蛋白尿も軽度といった患者に関しても、血尿を伴っている場合には専門医へ紹介するという紹介基準を作成しました。もちろん、この基準は絶対的なものではなくて、地域の実情に即して様々にアレンジして、使いやすく改変した紹介基準をそれぞれの地域で使われていると理解しております。
この紹介基準を発出した後、臨床内科医会の先生方にアンケートを行いましたが、この紹介基準を時に以上の頻度で活用されている先生方が5割をちょっと超えるぐらいということで、まあまあ活用していただいているのかなと思います。紹介するきっかけの多くのものは、急激に腎機能が悪くなった、もしくは高度な蛋白尿が出ているので、その原因検索をといったことが多いということが分かっておりますし、専門医のほうにアンケートを取ってみますと、かかりつけの先生方のアンケート結果を裏づけるように、蛋白尿の原因検索とクレアチニン上昇の原因検索というのが紹介患者さんの8割ぐらいを占めていました。2人主治医制の下で推進しているCKD管理、たとえば血圧管理や血糖管理に関するコンサルテーションというのは、残念ながらまだ1割に満たないということですので、まだまだこういったコンサルテーションには伸び代がある状態であり、今後もここを伸ばしていかなければならないわけです。
このような診療連携をする際には、かかりつけの先生方が紹介をした際の満足度というのが重要になります。この報告書が出る前の段階でのアンケート結果で、CKDの診療連携に満足されていますかという質問に対して、ほぼ満足されている先生は6割。4割の先生方は満足されていませんでした。不満の理由は、患者さんや紹介した自分への説明が不十分である、もしくは専門医からめぼしいアドバイスをもらえなかったということが不満の原因になっていました。
こういった結果をもとに、実りの多い末広がりの連携体制を構築するために様々な試みがなされております。パスの運用というのもその一つで、お示ししておりますのは埼玉県内で我々が作成して運用しているパスです。左側は紹介状のほうで、かかりつけの先生方にはシンプルな紹介状をつくっていただいて御紹介いただく。我々専門医のほうは、かかりつけの先生方に満足していただける逆紹介状が書けるように、治療方針、処方薬のアドバイス、指導内容、そして今後の連携のスタイル等が、誰が書いてもある程度満足度の高い逆紹介状ができるようにパスを工夫して作成して、これを運用しております。
たとえば私どもの大学病院のお膝元の坂戸鶴ヶ島医師会のホームページにこういったバナーを設置して、ここをクリックすると、先ほどの紹介状がダウンロードできる形で連携体制の構築を進めております。
埼玉県内では4つの機関病院が関連する医師会との間に連携体制を構築して、だんだんとそのエリアを広げている状況です。言わばドミノ倒しのように県内全域へと拡大して埼玉県のCKD対策、連携体制構築というものを進めていこうとしています。これが典型的なボトムアップ方式です。
様々な地域でこういったパスの試みがなされております。直近、臨床内科医会の先生方に最近の診療連携に満足されていますかというアンケート調査をしたところ、9割の先生方が普通以上に満足されているという回答で、以前に比べて大分と連携が良好に進むようになってきているという結果でした。しかし、いまだに1割の先生方は説明が不十分だとか、紹介しても大したアドバイスをしてもらえなかったというところに不満を感じていらっしゃるので、こういったところに配慮した連携を構築していくことが重要です。
もう一つ、千葉県の試みを御紹介したいと思います。こちらはどちらかというとトップダウン方式の試みです。千葉県というのは、実は専門医の充足度が47都道府県の中で下から数えて5番目、専門医が少ない地域に相当します。御覧いただけますように、県全体の50%以上のエリアに専門医がいないとい状況なっております。
そこで、県庁や県医師会のサポートを得て、千葉県を統括しております今澤先生がCKD対策協力医という制度を構築して、ここに手挙げしてくださった先生方にこういった称号を与えて、県内のエキスパートの先生方によるCKD対策上の様々なレクチャーを通してCKD診療のスキルを習得していただき、腎臓専門医とCKD対策協力医とで全県を覆うような形で、千葉県のCKD診療連携体制の構築が進められています。こういったトップダウン方式のアプローチが試みられている県もあるということをご紹介いたしました。
普及啓発に関しましても、これは岡山県での試みをお示ししますが、「世界腎臓デー」というのが毎年3月にあり、その日にあわせてこのようなチラシや懸垂幕等々を準備して、県民へCKD啓発を行っています。また、このような様々な市民公開講座を通してCKDの疾患概念の普及啓発を試みられています。
こういった試みが様々な都道府県で行われていて、CKDの認知度がどれほど深まってきたのかということについて定期的にアンケート調査をしております。こちらは製薬企業のサポートを受けて日本腎臓病協会のほうで行っております。
対象は様々な世代、男女もほぼ均等な集団で、日本全国の一般の方からアンケート調査をしております。
まず慢性腎臓病について知っていらっしゃいますかという質問ですけれども、2019年から21年にかけて、まさしくコロナ禍なのですが、漸増傾向が認められております。特に30代、40代、あまり慢性腎臓病というものを切実には感じていらっしゃらないような世代においてこの疾患概念が普及しつつあるということは非常によい兆しかなと思いますが、ただ、まだ約半数の方しかご存じないということで、今後も様々なチャネルを通した普及啓発が重要です。そこで、今回、製薬企業の協力を得て、テレビコマーシャルやそのパンフレット、ポスターを通して、GFRが59以下だと慢性腎臓病の可能性があるので、かかりつけの先生に御相談してください、という啓発事業を展開しております。こういった試みを通してCKDの概念の普及啓発が一層進むことを期待しております。
診療水準の向上に関しましては、標準治療というものがガイドラインという形で発出されている必要があります。2018年という報告書が発出された年は、ちょうど日本腎臓学会がかかりつけの先生方に向けて標準治療を記したガイドラインを改定・出版した年に当たります。
また、日本腎臓学会では、並行して患者及び家族の診療参加を促進するために、CKD療養ガイドという患者さん向けのガイドもこの年に出版しました。これらが車の両輪として、かかりつけの先生方によるCKD診療や、患者さんやご家族によるCKDの療養を推進していることを目指しました。
このような取り組みがどのように進捗しているのかということを定量的にモニタリングするため、我々は4箇所の定点観測を行うことにいたしました。この定点観測の地域ですけれども、専門医が充足して連携体制が既にある程度完成している地域、岡山と熊本、また専門医が不足していて連携体制を現在まさに構築中の地域、千葉と旭川、この4つのエリアを選んで定点観測を行っております。この4県のリーダーの先生方には全て、岡田班の分担研究者をお願いしております。
こういった先生方に毎年地域の診療連携体制構築状況と、そこで行われている医療水準、ガイドラインに準拠した標準治療がどの程度行われているかという点についてモニタリングを行っております。
まだ2年分のデータしかそろっておりませんし、ちょうどコロナ禍の真っただ中ということもありまして、連携体制の構築やガイドラインの遵守率等々、増えている項目もあれば、横ばい、もしくは少し減っているといったものと様々あります。このようなモニタリングをしっかりと続けていき、伸びていく項目はその取り組みを横展開する。また、横ばいもしくは下っていく項目では、その問題点を検討して改善策を試みる。それが奏功するならば方策を横展開するという形で全国に普及させていきたいと考えております。
具体的なCKDへの治療アプローチですけれども、糖尿病性腎臓病に関しましては集学的治療、特にそれぞれの目標値を厳しく設定した集学的治療が、従来型の集学的治療よりも糖尿病の臓器合併症、脳血管や腎臓のイベントを減らすということが、本日構成員を務めていただいております植木先生を代表とする日本糖尿病学会の先生方が、J-DOIT3研究として世界に発信されております。
この集学的治療というのは、糖尿病性腎症だけではなくて、非糖尿病性のCKDに対しても、先ほどのガイドラインで示されている個々の標準治療の目標に関して、達成している項目数が少ない患者に比べてより多くの項目を達成している患者の方が透析導入率が低い。CKDの保存期が延長されるということが分かっておりますので、糖尿病の有無に関わらずCKD全般に有効であることが示されています。
CKDに対する標準治療の目標を達成していく際に、腎臓専門医の役割が非常に重要であるということを、構成員を務めていらっしゃいます南学先生のグループが論文化されております。CKD診療へ腎臓専門医の関わりが増えると、CKDに特化した治療薬、リン吸着薬とか腎性貧血の治療薬といった薬剤の処方率が高まるということが分かっておりますので、こういった標準治療の普及のためには腎臓専門医が2人主治医制という連携体制のもとで、効率よくCKD診療に関わっていく必要があります。
また、医師だけではなくて、メディカルスタッフの関わりが重要であるということも日本で実施されたFROM-J研究が明らかにしています。ここでは、かかりつけの先生方の診療に加えて、管理栄養士による診療支援がどのように有効であるかということを検討していて、管理栄養士による診療支援によって、クレアチニンの2倍化、GFRの半減といったアウトカムが有意に減少するということが示され、メディカルスタッフが関わるCKD診療というのがCKDの進展抑制に重要となります。
また、多職種が関わるようなチームケアというものが非糖尿病性および、糖尿病性のCKDに有効で、いずれにおきましてもGFRの年間低下率を10分の1ぐらいに減らすことができるということが報告されております。こういったCKD診療に長けたメディカルスタッフがそろっていることもかかりつけ医と専門医療施設とが連携するメリットの一つですし、腎臓専門医が少ないエリアでこそ、このようなメディカルスタッフを増やしていくということが重要となります。
スライドには腎臓専門医とCKD診療に長けたメディカルスタッフの資格であります腎臓病療養指導士の人数の年次推移をお示しておりますが、2019年から順調に増え続けています。この傾向を持続させて、多職種でCKD患者さんのケアに取り組めるように日本全国でこの数を増やしていきたいと思います。ただ残念ながら専門医と療養指導士は、各都道府県で分布にばらつきがあります。そこで、専門医や療養指導士の数が不足する都道府県におきましては、CKD対策部会のブロック長や都道府県のリーダーの先生方に資格取得数を増やすように御尽力いただきたいと考えております。
また、今後はICTを用いた健康増進というのも非常に重要です。DialBeticsLiteという糖尿病患者向けのスマホアプリは、血圧や血糖を測定するとデータが自動で取り込まれ、ガイドラインに基づいた判定メッセージが利用者に提示される。また、運動量も見える化できる。食事の画像を取り込むと、栄養バランスや総カロリーといった情報がフィードバックされ、食事管理を改善させる。また、そういった情報は担当医の方にも共有され、診療情報としても役立たせることができる。
このアプリを用いた実証研究によると、糖尿病性腎臓病患者のアルブミン尿を1年半の間、持続的に抑制し、HbA1cも有意に低い状態を長く保つことができた。こういったICTを用いた管理というのも今後どんどんと普及させていく必要がありますので、分担研究者のお一人であります大阪大学の猪阪先生が代表を務められるAMED研究班とも協力して、このICTのCKD診療への技術介入を推進していきたいと思います。
また、先ほど少し御紹介しましたが、透析患者、移植患者のQOLを改善するということも求められており、もちろんその取り組みも行っておりますが、こういった腎代替療法を選択されなかったCKD患者のQOLというのも当然保たれなければいけないということで、保存的腎臓療法、腎代替療法を行わない末期腎不全の患者に対する積極的な管理としてのCKMという概念が普及し、その標準化も進めてきました。
腎代替療法を選択しないという意思決定のプロセスに関しては、日本透析医学会がリーダーシップを取られてまとめられた提言が改定・発表されております。このような適切なプロセスを踏んだ上で、腎代替療法を選択しないという選択をされたCKD患者に関しては、本日座長をお務めの柏原先生が班長を務められたAMED研究班でCKMの標準化を目指したガイドを本年発出しております。こういったガイドに沿った腎代替療法を選択されない患者へのQOLを向上させていくことも本研究班で推進していきたいと考えております。
研究開発に関しましては、我々の研究班のホームページのバナーをクリックしていただくと、一目で成果が分かるように見える化していきたいと思います。
ホームページに掲載するデータベースとして、CKD対策支援データベースというのを構築中です。ここにはこのような日本地図が出ており、例えば私が務めております埼玉県をクリックしますと、県の年齢調整された透析導入率の年次推移というものが一目で分かります。全国的に女性では全ての世代で右肩下がりの経過を示しているのですが、埼玉県では75歳以上の高齢女性において、2020年に増加傾向に転じている。エリアの担当者は、この原因が何なのかを検討し、対策を立案していくことになります。また同様の経過をたどっている他のエリアもこのデータベースで検索すればすぐに見つかります。
男性に関しては、全国的にも75歳以上の高齢者においては増加傾向ということで、埼玉県でもほぼ同等ということで、高齢男性の透析導入率の増加傾向というものは全国的な問題として対策を立てていかなければいけないことが一目瞭然です。さらに県内の腎臓専門医と腎臓病療養指導士もリストアップされており、例えば毛呂山町の埼玉医大には岡田という専門医がいるということが、このデータベースをクリックしていただきますとすぐに分かります。
研究班の研究の一つのトピックスとして、日本のCKD患者数のアップデートがあります。2005年には約1330万人、2015年には約1500万人という患者数が推定されておりますが、現在の推定数を2つの独立したグループが異なるアプローチによって算出を試みている最中です。また、こちらは追ってホームページ上で公開いたします。
日本腎臓学会ではCKD患者に特化したデータベースであるJ-CKD-DBを構築しており、横断的なDBには15万人分、縦断的なDBには21万人分のデータが格納されており、日本のCKD患者の構成や診療実態、ガイドラインに示された標準治療の遵守率。例えば腎性貧血治療における推進遵守率が非常に低いということがこの論文で報告されておりますし、DKD治療薬の有効性のリアルワールドにおける実証といったものもこのJ-CJD-DBを用いて順次発出されております。
その他の当研究班の研究開発としては、先ほど糖尿病患者やCKD患者への集学的治療が有効であるということを御紹介しましたが、CKD患者さんにおける集学的治療に取りあげるべき標準治療の組合せ、CKD患者の残存腎機能の温存効果を最大化するための標準治療の組合せを明らかにすべく、このDBを用いて解析している。
以上、腎疾患対策検討会報告書が発出されてからの5年間の取り組みをご紹介してきましたが、その成果の中間報告をいたします。
1年間に透析導入された患者数ですが、男性においては、2016年と比較し2020年では5.8%増加しておりましたが、女性においては1.5%減少しております。合計では3.5%の微増ということになっております。
世代別の導入率の変化を見てみますと、ほぼ全ての世代で減少傾向なのですが、85歳以上の高齢男性の透析導入率のみ上昇しています。各都道府県別に見てみますと、20以上の県で減少傾向に向かっております。こういった県の取り組みを増加傾向の県に横展開することによって、全県で減少傾向を達成させたいと考えております。
また原病に関しましては、糖尿病は減少傾向、腎硬化症は増加傾向、腎炎は減少傾向となっています。とくに腎硬化症の増加傾向というのが、単に高齢者が増えているためなのかを明らかにするために、年齢で標準化した導入率の経年変化というものを見てみました。そういたしますと、まずは男性も女性も糖尿病性腎症による透析導入率は順調に減少しております。慢性腎炎も同等です。ただ腎硬化症に関しては、男性も女性も年齢調整をしても増加傾向なので、高齢者が増えていることだけでは説明のつかない原因で腎硬化症による透析導入が増加しています。そこで基礎研究の成果も取り込みつつ、腎硬化症によるCKDの進展抑制を今後進めていく必要があるということが今回の検討から分かりました。
総括です。今まで御説明しました内容をこちらにお示ししておりますので、ご参照ください。
以上です。御清聴ありがとうございました。
○柏原座長 岡田参考人、どうもありがとうございました。非常に膨大な内容をコンサイスに御報告いただいたと思います。
それでは、この御発表に関しまして御質問、御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。挙手いただければと思います。黒瀨構成員、よろしくお願いします。
○黒瀨構成員 ありがとうございました。
岡田先生、大変丁寧に詳細に御説明いただきましてありがとうございます。10ページ、先ほどのモデル事業の件もそうですが、病診連携システムということで、2人主治医制ということをきちんと入れていただいていること、本当にありがとうございます。また、多職種との連携についても御説明いただいてありがとうございます。
その中で我々も大切だなと思うことの一つが、きめの細かい迅速な診療情報の共有というところでございまして、オンライン資格確認のPHR機能が拡充されていって、そうすれば情報共有というのもしやすくなってくるとは思うのですけれども、現時点で地域によっては地域医療の情報ネットワーク、EHRみたいなものが、その地域地域で医師会を主体に展開されておりますので、そういったところを使って電子的に情報共有をかなりリアルタイムに近い状況でしていただくと、勤務医の先生方の働き方改革にもなりますし、また、我々かかりつけ医としても、紙で頂いた情報を電子カルテに入力し直してとかそういった手間も省けるわけで、そうなればなおさらこの連携に協力しよう、連携に加わらせていただこうというかかりつけ医が増えていくと思うのです。ですので、患者さんのためにももちろんなりますし、2人主治医、両側にとっても働き方改革になりますので、ぜひそういった視点でこれからもまた連携を進めていっていただければと思います。また、先ほどのモデル事業でも、病院を選ばれる際にある程度そういった視点でその病院を選んでいただくのも、今後のいわゆる医療DXに沿った形で進めていくためにも必要なのかなと思って聞かせていただきました。
ありがとうございました。
○岡田参考人 ありがとうございました。
先ほどちょっと御紹介しましたけれども、大阪大学の猪阪教授が班長を務めていらっしゃいますAMEDの研究班で、デジタル技術の導入に関する提言というものの作成に着手しております。もちろん、我々の研究班とも協力し合って行いますので、今、先生がおっしゃられたような技術導入に対する一つの力強い追い風にしたいと考えております。
ありがとうございました。
○黒瀨構成員 ありがとうございました。
○柏原座長 ほかにはいかがでしょうか。武本構成員、お願いいたします。
○武本構成員 岡田先生にですが、66枚目、年齢で調整した透析導入率は、都道府県ですごく差があるという興味深い御発表だったのですけれども、その原因については何らか考察できることがあるのか。例えば腎臓内科の専門医が少ないとか、療養士が少ないとか、あとはシステム的に何らかの違いがあるのかという考察はもうなされているのでしょうか。ちょっとお伺いしたくて。
○岡田参考人 ありがとうございます。
今日ここで御報告できるような形ではまだ解析は進んでおりません。ようやくこのデータが出たばかりなので、まずは全ての都道府県の担当者にこの情報を共有して、自分のエリアがどういう状況かというのを認識していただいて、行政ともご協力しながら問題点の棚卸しと対策の立案に取り組んでいただきたいと考えております。また追って御報告させていただきたいと思います。
○武本構成員 ありがとうございます。お待ちしております。よろしくお願いします。
○柏原座長 それでは、これが最後の御質問にしたいと思います。中澤構成員からお願いいたします。
○中澤構成員 ありがとうございます。
岡田先生、すばらしい御発表ありがとうございます。報告書をつくった後に、つくりっ放しというわけではないのですけれども、その後どういうふうな成果が出ているのか、非常に気になっていたので、とても分かりやすい御発表をいただいて、うれしく思っております。
特に多職種連携、2人主治医制ということが非常に効果があるということが目に見えて分かるということは、いろんな対策を行っていく臨床の先生方だけではなくて、行政の立場としても非常にやりがいが出るし、どういうところに今後の事業を展開していったらいいかということが分かりやすくて、とてもいい御発表だったなと思っていました。
最後のほうで面白いなと思っていたのがICTを用いた管理ということで、いろんな形で、特に生活習慣病のような類いのものでこういうのはすごく合っているのではないかなと。今回コロナでそういう管理などで行き渡ったところもあるかと思うのですが、患者さんの立場からすると、私の周りでも患者さんがいらっしゃったのですけれども、痛くもかゆくもないからどうしても管理を怠ってしまうというところが、自分で管理するだけではなくて、主治医の先生とか関わっていらっしゃる皆さんとつながるというところで、自分の腎臓を大切に守っていこうということになるのではないかと思いますし、今後DXがますます盛んになっていく世の中で非常にすばらしいツールだと思います。
これはまだそういう段階ではないのかもしれないのですけれども、今後こういうすばらしいICTの管理をどういう感じで日本で広げていったらいいのではないかというお考えをお持ちでしたら教えていただければと思っております。
○岡田参考人 ありがとうございます。
先ほど申し上げましたように、猪阪先生を代表とする研究班で日本におけるCKD診療へのICT技術導入に関する提言を作成し発出いたしますので、これがまとまった暁には、中澤先生の御質問へのお答えになるのではと思います。私個人の見解は控えさせていただきますけれども。先ほどのDialBeticsLiteというスマホアプリに関しましては、AMED柏原班での研究成果ですので、このアプリに関しまして、柏原先生、実用化に向けてはどういう状況でしょうか。
○柏原座長 研究代表の脇嘉代先生がもう既にPMDAに事前相談もされていて、臨床研究が間もなく始まると伺っております。
中澤構成員、どうもありがとうございました。
○中澤構成員 ありがとうございました。
○柏原座長 活発な御議論どうもありがとうございました。
司会の不手際で予定した時間を少しオーバーしてしまいました。ここまでで腎疾患対策に関しましてはひとまず終えたいと思います。
それでは、ここから植木副座長に進行を交代したいと思います。植木先生、よろしくお願いいたします。
○植木副座長 それでは、議題(4)「糖尿病対策の現状等について」に移りたいと思います。本議題につきましては、全部で5件の発表がございます。最後に総合討論をいたしますけれども、適宜各発表についても質疑の時間をごく短くですが設けております。
それでは、資料3-1の説明を事務局よりお願いいたします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
それでは、資料3-1「糖尿病対策の取組について」、御説明させていただきます。こちらの資料は大部になっておりますので、かいつまんでの御説明になりますことを御了承ください。
2ページからお願いいたします。「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性が否定できない者」の推移ということで、グラフをお示ししております。左側が「糖尿病が強く疑われる者」について、漸増傾向である一方で、右側の「糖尿病の可能性が否定できない者」については、漸減傾向であるといった形で見てとれると思います。
次のスライドは、「糖尿病が強く疑われる者」の年次推移についてお示ししております。
4ページは、「糖尿病が強く疑われる者」の性・年齢別の罹病率についてお示ししておりますので、御覧ください。
5ページ目は、第7次の医療計画以降の施策・検討状況等について図示しております。健康日本21(第二次)が2023年度までの計画として動いているほか、第7次医療計画が2023年度までの6か年の計画で動いている。同様の期間で第3期の医療費適正化計画。ここの中で特定健診・特定保健指導についての規定がございますが、こちらも同様の年次で動いているという形になっています。
そのほか、研究班の動きなどをお示ししておりますので、御覧ください。
6ページ目は、健康日本21(第二次)の概要ということで、取組についていろいろお示ししておりますが、マル2の「生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底」の中に糖尿病への対策というところが位置づけられているという御紹介でございます。
この取組について、7ページ目にお進みいただきまして、今般最終評価というものを実施しておりまして、それぞれの目標値についてAからEの5段階で評価しているという状況でございます。
糖尿病関連の最終評価結果について、8ページ目にお示ししてございますが、マル3の血糖コントロール不良者の割合の減少というところについては、目標達成のAという評価になってございます。そのほかは残念ながらAの評価にはなってございませんので、特にマル1、マル2、マル4、マル5、マル6の辺りの取組は引き続き必要だということと認識してございます。
9ページ目は、健康日本21の最終評価について、その取組の構造とともに図示した形になりますので、御参照ください。
10ページ目は、次期国民健康づくり運動プランの検討スケジュールについてお示ししておりまして、こちらも御参考いただければと思います。
11ページ目は、現在の糖尿病対策についての御紹介でございます。柱立てとして発症予防、重症化予防という大きな2つに分かれておりまして、重症化予防のうち、透析の予防という形で特出しで糖尿病性腎症重症化予防プログラム等の取組について御紹介しております。
12ページ目は、健康局のほうで所管している糖尿病の予防・疾病管理に関する事業についてお示ししておりますので、御参照ください。
13ページ目は、重症化予防プログラムの効果検証事業ということで、こちらは保険者等に対して適切な予防・健康事業の実施を促すために、予防・健康づくりの健康増進効果等のエビデンスを確認、蓄積することを目的として、令和2年度から令和4年度にかけて、経産省との合同で予防・健康づくりに関する大規模実証事業というものを実施してございます。そのうちの一つとして、糖尿病性腎症の重症化予防プログラムについての効果検証事業を実施してございますので、御紹介でございます。
その効果検証の内容について、14ページ目、15ページ目、16ページ目とそれぞれ具体的な検証の内容についてお示ししておりますので、こちらも適宜御参照いただければと思います。
17枚目は、治療と仕事の両立支援の推進ということで、御覧いただければと思いますが、労働人口の3人に1人が何らかの病気を抱えながら働いているという現状。事業場において、糖尿病等の反復、継続して治療が必要な労働者が業務によって疾病を増悪させることがないよう、就業上の措置や治療に対する配慮が適切に行われるような支援が必要であるという全体の流れの中で、平成29年3月に閣議決定された働き方改革実行計画の施策項目の一つとして「病気の治療と仕事の両立」が盛り込まれております。そちらでガイドラインの策定をはじめ、周知・啓発等の各種取組を進めております。
この中で糖尿病がどこにあるかというと、図の真ん中辺り、矢羽根の1つ目のポツの2つ目「企業・医療機関連携マニュアル」というところに、太字下線で「糖尿病」と書いてございますが、反復、継続して治療が必要な代表的疾患にも挙げられているところ、ガイドラインの参考資料として糖尿病の基礎情報や支援に当たっての留意事項を、「企業・医療機関連携マニュアル」に支援事例を示しているほか、診療報酬の療養・就労両立支援指導料の対象疾患にも設定されるなど、位置づけがされておりますので、御紹介させていただきます。
18ページ目は、糖尿病の医療体制についてお示ししております。こちらは第7次医療計画において示されている図でございまして、先ほどの健康日本21でも同様の図が使われておりましたが、左側のピラミッドのような形のものについて、一次予防として発症予防、二次予防として重症化予防、さらに多臓器の合併症による臓器障害の予防や生命予後の改善という形で三次予防として位置づけていて、それぞれの取組を進める必要があるという形で、各都道府県においてこういった取組が必要だということを整理しているものでございます。
19ページ目、糖尿病のそういった医療提供体制の構築について、現状把握のための指標例として医療計画の中でお示ししておりますのがここの指標例になります。「予防」「初期・安定期」「合併症予防を含む専門的治療」「合併症治療」という4つの軸で、それぞれストラクチャー、プロセス、アウトカムの軸に沿って指標例をお示ししているというものでございます。こちらを都道府県における取組の進捗管理に用いていただいているというイメージで御理解いただければと思います。
こういった取組を第7次医療計画の中で進めていただいておりますが、20ページ目を御覧いただきますと、第8次の医療計画を策定するのに向けた検討がまさに進んでおりまして、イメージとしては、今年度中に基本方針を取りまとめて、医療計画策定指針等の都道府県に発出する通知を作成するというプロセスになっています。来年度は各都道府県において第8次の医療計画を策定していただくという年になり、2024年度から6か年の運用をしていただくというイメージでございます。
そこに向けて今回検討していただきたい内容としては、主なものとして21ページ目にお示ししております。こういった項目について今回御議論いただきたいと思っています。1つは糖尿病対策に係る他計画との連携を含めた診療提供体制に係る検討ということで、健康日本21や特定健診・特定保健指導等と連動した診療提供体制の検討が必要ではないかということでお示ししております。
続いて、この後、参考人の先生から御発表いただきますが、新型コロナウイルス感染症というものがこの6か年の間に生じておりますので、そういった拡大時の経験を踏まえた今後の糖尿病医療体制についても御議論いただければと思っております。
最後に、第8次医療計画に向けた指標の見直しということで、こちらも研究班の先生から御発表いただきますが、検討状況を踏まえて指標の方針についても御議論いただき、第8次医療計画に反映していくということを進めていければと思っております。
22ページ目は冒頭御説明した検討スケジュールでございますので、割愛させていただきます。
事務局からの御説明は以上でございます。
○植木副座長 ありがとうございました。
引き続きまして、厚生労働科学研究班からの御報告に移りたいと思います。まず、資料3-2につきまして、山内参考人に御発表をお願いいたします。
○山内参考人 厚労科研の研究班の事務局が研究班の資料として作成したものを、東京大学の山内が代表して発表させていただきます。糖尿病診療の現状についてです。
次をお願いします。これは先ほど事務局からも出ましたが、糖尿病が強く疑われる人の数が増え続けていて、一番新しいデータで2016年に1000万人であったということであります。
次をお願いいたします。4~5年ごとに更新されていますので、その次がどうなったかということでありますけれども、これに関しましては、本日構成員として御参加の横山先生が、黄色のところで示していますけれども、回帰曲線で推定ということで、健康・栄養調査の通常調査を用いて、各年度は少しばらついていますので、この回帰曲線で推定されたということでありますけれども、令和元年に1150万人であったということであります。これは先ほどの1000万人よりは増えてしまっているわけでありますが、策定時の将来予測では1270万人であったということで、増加が続いていますけれども改善傾向にあるのではないかということが報告されているところであります。
次をお願いいたします。こちらは1型糖尿病の有病者を地域ごとに示したものでありますが、全国的に地域差は少ないということが明らかとなっております。
次をお願いいたします。糖尿病治療の目標について示したもので、これは日本糖尿病学会が作成している「糖尿病治療ガイド2022-2023」からの抜粋ですけれども、糖尿病の最大の治療の目標「糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL」ということを一貫して糖尿病学会のほうでは申してまいりました。このためには動脈硬化性疾患や糖尿病細小血管合併症、糖尿病の合併症の発症、進展を阻止することが非常に重要で、そのためには、血糖をはじめとしました良好なコントロール状態を維持するということが非常に重要ということになりますし、また、左上にありますように、高齢化していますので、増加する併存症の予防や管理を行うことによって、最終的な目標、アウトカムに向かって進みたいということであります。
次をお願いいたします。これも糖尿病学会が本年の8月に発出いたしました2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズムから抜粋したものでありますが、現在糖尿病治療薬は非常に種類が増えておりまして、インスリン分泌促進系から非促進薬まで多種類ありまして、それぞれの患者さんの病態に合った薬剤を選択し、そして安全性を考慮し、そしてアディショナルなベネフィットに基づいて選択していって、それぞれの患者さんが持たれるいろいろな観点を考慮して選ぶようになっております。
次をお願いいたします。こちらはNCGMの事務局を務めていただいている杉山先生、坊内先生らのデータでありますけれども、ナショナルデータベースを使いまして糖尿病のある人の初回糖尿病薬処方選択を年次推移で見ることができるようになっています。これによりますと、DPP-4阻害薬は非常にたくさん使われていますけれども、年次を経るに従って少しずつ下がっている。それに比べまして、ビグアナイド薬やSGLT2阻害薬に関しましては、年次を経て増えてきているということが見てとれます。
次をお願いいたします。これは海外のデータということになりますけれども、糖尿病の合併症が減少しているということを示したもので、上から心筋梗塞、脳卒中、足の切断などにおいて合併症が減少しているということが示されております。
次をお願いいたします。こちらは糖尿病網膜症に関するデータでありますが、糖尿病網膜症による視覚障害の認定数、視覚障害に占める割合は共に低下しているということが示されています。
次をお願いいたします。こちらは先ほど岡田先生からも提示がありましたけれども、糖尿病腎症による年間の透析の導入患者さんは、高齢化の影響を受けていますが、74歳以下では減少傾向にあるということが明らかとなっております。
次をお願いいたします。これは糖尿病学会が10年ごとに行っております糖尿病のある方の死因調査の報告からですけれども、平均の死亡時年齢が上がっているということと、それから腎障害や虚血性心疾患、脳血管障害が死因となっている方は減ってきているということが示されておりまして、治療の進歩による生命予後の改善が示唆されているところであります。
次をお願いします。これは合併症の発生が着実に減少していると考えられるわけですが、その背景には、ライフスタイルの改善や治療薬の開発などを経てリスク因子がコントロールされるようになってきていることが考えられます。
次をお願いいたします。これは杉山先生、NCGMの先生方のデータですけれども、糖尿病に関わるデータベースを用いた研究の結果です。年1回以上の検査実施割合の算出ですが、HbA1c・グリコアルブミンに限りますと、ほとんどの方がされています。一方、網膜症に関しましては、ガイドライン上は1年に1回以上ですけれども、50%程度であって、また、一番下にありますように、腎症の病期を知る上で非常に重要ですが、尿アルブミン・蛋白定量は20%しかされていないということで、まだまだ改善の余地があるということが分かります。
次をお願いいたします。こちらは糖尿病における眼科の受診率について示していますが、上段、非認定教育施設においては約4割ほど。下段は糖尿病の認定教育施設を示していますけれども、眼科を受診されている方が6割ぐらいということで、全国平均は先ほど50%ということでしたが、認定教育施設においても十分ではないということが見てとれるかと思います。
次をお願いいたします。こちらも先ほどの岡田先生の提示と似ていますけれども、かかりつけ医と糖尿病科と腎臓内科、循環器内科の専門領域、眼科の先生方、患者さんにとってはそれぞれが主治医となって連携していくことが非常に重要ということになろうかと思います。
次をお願いいたします。これは糖尿病学会と医師会が作成したものでありますが、かかりつけ医からの糖尿病専門医・専門医療機関への紹介基準ということで、厚労科研の研究班もこれに関わらせていただいておりました。かかりつけ医の先生方から血糖のコントロール改善が十分でない場合、また、中段にありますけれども、合併症がうまくマネジメントできない、また、一番下にありますように、手術のときには血糖マネジメントすることが手術成績をよくする上で非常に重要ですので、専門の医療機関に紹介するということが非常に重要ということがここでは記載されています。
次をお願いします。これは先ほど岡田先生からありましたけれども、腎臓学会と医師会で作成されました、かかりつけ医からの腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準でありますが、微量アルブミン尿などを測定することの重要性がここからもうかがい知れるかと思います。
次をお願いします。これは糖尿病内科医が、自分が糖尿病の病棟で実際に糖尿病を診ている患者さんと同じぐらいの数の他科に入院している血糖マネジメントを必要とする方を診ているということを示していまして、左側では実際にその人数、中央ではエフォート率について示していますけれども、およそ5割からその少し下ぐらいですが、やはり診療の質を上げるために血糖のマネジメントは非常に重要で、そこに糖尿病の内科医が貢献しているということがうかがい知れまして、今後医療の質を上げる上でも非常に重要な観点かと思われました。
次をお願いいたします。これは最後の1枚ですけれども、糖尿病のある方が糖尿病のない方と変わらない寿命とQOLを全うするために、このようなことを進めていく必要があると思います。
以上です。
○植木副座長 山内参考人、ありがとうございました。
引き続きまして、資料3-3につきまして、後藤参考人から御発表をお願いいたします。
○後藤参考人 どうぞよろしくお願いいたします。横浜市立大学の後藤でございます。このたびは貴重な発表の機会をいただきまして誠にありがとうございます。
本日は、COVID-19パンデミック下における糖尿病診療に関しまして、令和3年度厚生労働科学研究費植木班の分担研究者として発表させていただきます。
冒頭でこれまでの研究班での検討結果をまとめさせていただきます。全体を通しまして、新型コロナウイルス感染症の糖尿病コントロール、具体的にはHbA1c値への影響は大きくないと推定されました。その上で、受診回数の検証について見ますと、第1波の期間に減少が見られましたが、それ以降の期間では減少を認めませんでした。これが研究班での検討結果のまとめであります。
続きまして、検討結果の詳細につきまして、データ分析の内容も踏まえて御報告させていただきます。こちらのスライドは、背景でございますけれども、COVID-19のパンデミックとそれに伴います緊急事態措置やまん延防止等重点措置は、糖尿病に影響をもたらしたのではないかと懸念されていました。そのため、COVID-19パンデミック下における診療実態を把握し、糖尿病治療等が適切に提供できているのかについて評価することは、糖尿病対策を考える上で重要と考えられます。また、糖尿病患者の医療提供体制の整備において、遠隔診療の役割を検討することも急務であると考えられます。
そこで、本研究班では幾つかのデータソースを用いまして糖尿病診療の実態を分析いたしました。最初の分析で用いましたデータはJMDCレセプトデータベースでございます。JMDCは、株式会社JMDCが提供する商用データベースとしまして広く用いられておりまして、JMDCが全国の100近くの健康保険組合と契約を結びましてレセプトや健診データ等を収集し、それをデータベース化したものでございます。2021年の時点で約1300万人を含む大規模なデータベースとなってございます。
私たちは本データを用いまして、糖尿病治療を受けており、2018年7月から2020年5月まで観察可能であった1型糖尿病患者4,595人と、2型糖尿病患者12万3686人を対象として、COVID-19パンデミックに伴う総受診数と遠隔診療回数の変化を評価いたしました。上のほうに書かれておりますのが総受診に対する影響を見た分析結果でありまして、下のほうが遠隔診療の実施に関する検討結果でございます。
分析に当たりましては、同年の1~3月と同時期の2019年を対象とする差分の差法と呼ばれる統計手法を用いまして、可能な限りパンデミック以外の要因による変化を取り除いた上で評価を行いました。
その結果、まず総受診についてですが、1型糖尿病につきましては、赤の点線、2019年に比べまして、2020年5月においては、100人当たり8.8回の統計学的に有意な受診回数の減少が見られ、2型糖尿病においては、減少は少ないものの、4月に2.5回、5月に3.7回の有意な減少が見られました。一方で、遠隔診療については、1型、2型共に統計学的に有意ではあるものの、ごく僅かな増加を認めました。
次に、JMDCの2017年から2020年の期間中の全データを分析し、外来における糖尿病薬の平均処方日数を各年月で集計いたしました。その結果、それまでの年と比べて特に2020年4月と5月において処方日数が多い傾向がありましたが、その後、その傾向は顕著でなくなりました。
次に、J-DREAMS、糖尿病学会と国立国際医療研究センターが共同で運営し、各医療機関における糖尿病患者のレジストリーをつくってデータベース化しているデータを用いまして分析を行いました。2017年から2020年まで定期的に通院を続けている糖尿病患者7,030人を対象としまして、受診間隔日数と年平均HbA1cの値を比較いたしました。左側の図が受診間隔日数の変化、右側がHbA1cの変化を見ております。その結果、受診間隔に関しまして、2019年と比べますと2020年において約6日間の受診間隔日数の増加が認められましたのに対して、HbA1cに関しては、2019年に比べて0.02%の変化であったことから、HbA1cについては臨床的な変化はほとんどないということが明らかとなりました。
最初の分析としての小活ですけれども、2型糖尿病患者においては、COVID-19の受診への影響は小さいことが分かりました。1型糖尿病患者においては、継続受診によりインスリンを継続使用するかどうかというのが命に関わるということを考えますと、2型糖尿病に比べて継続受診を行うことの重要性がさらに増すと考えられるわけですが、そういったことも踏まえますと、2020年5月の受診数というのは顕著に減少しているとも捉えられるような結果でございました。また、同時期に遠隔診療はあまり利用されておりませんでした。このようなことを踏まえますと、感染症流行下でも1型糖尿病患者が適切な医療を受けられるような体制整備が必要であると考えられました。
次に、受診間隔に関しましては、2019年に比較しまして2020年の平均受診間隔が延長しておりましたが、HbA1cで測定される血糖コントロールには大きな影響が見られず、血糖コントロールが安定している患者においては、現在の診療間隔より長い間隔での対面診療で対応できる可能性が示唆されました。
続きまして、糖尿病患者における遠隔診療についても検討を行いました。こちらは海外で行われたランダム化比較試験のメタ解析の結果であります。こちらは通常診療に含められた検討結果で、複数のアウトカムが評価されておりましたが、ここでは主要なものをピックアップしておりまして、HbA1c、QOLの指標とか、糖尿病治療に対する負担感の程度のスコアとか、低血糖についての結果を抜粋しております。
これらの結果を見ますと、糖尿病の通常診療に比べて遠隔診療を行うと、HbA1cは0.28~0.57%低下し、糖尿病治療の負担感も軽減させる傾向が見られました。一方で、EQ—5Dなどで測定されるQOLや低血糖の頻度などは変わらないという結果が報告されていました。
続いて、遠隔診療が可能な糖尿病患者像の検討につきまして、まず厚生労働省が指針として取りまとめておりますオンライン診療の適切な例といたしまして、1つ目として、生活習慣病の慢性疾患について、定期的な直接の対面診療の一部をオンライン診療に代替し、医師及び患者の利便性の向上を図る例。2として、生活習慣病等の慢性疾患について、定期的な直接の対面診療にオンライン診療を追加し、医学管理の継続性や服薬コンプライアンス等の向上を図る例が紹介されております。
これらに加えまして、厚労科研の植木班での検討におきまして、糖尿病患者で遠隔診療が可能な例を検討しましたところ、オンライン診療では診察が問診と視診のみとなるということを踏まえまして、血糖コントロールが安定しており、治療薬の変更を必要としないような症例、また、SMBG(血糖自己測定)やCGM(持続血糖測定)などにより自己管理を行えている症例が遠隔診療が可能な糖尿病患者像と考えられました。
小活(2)といたしまして、糖尿病患者における適切な遠隔診療の利用は、海外の研究結果から血糖コントロールの改善や治療負担感の軽減をすることも期待されています。
今後、適切に遠隔診療を行えるような糖尿病患者像に関して、詳細な検討を我が国においても行っていく必要がございますが、現時点では、血糖コントロールが安定しており、SMBGやCGMにより採血を行わずに自己管理が行えているような患者には遠隔診療が可能であると考えられました。
以上で私の発表を終えさせていただきます。どうもありがとうございました。
○植木副座長 後藤参考人、ありがとうございます。
引き続きまして、資料3-4につきまして、再び山内参考人に御発表をお願いいたします。
○山内参考人 それでは、始めさせていただきます。厚労科研の糖尿病実態把握と環境整備のための研究班の事務局が、研究班の資料として作成したものを研究代表者の東京大学の山内が発表させていただきます。「糖尿病の医療体制構築に係る現状把握のための指標について」です。
次をお願いいたします。これは先ほど事務局からも御紹介いただきましたけれども、本年7月の第8次医療計画の見直しに関する検討会での資料ですが、私どもの班を医療計画の指標の検討として研究していると位置づけていただいているところであります。
次をお願いします。同じ検討会での資料でありますが、医政局のほうの医療計画の研究班は厚労科研の今村班でありますが、健康局の私どもの班と連携して進めているところであります。
こちらは第7次の医療計画中間見直し時点での糖尿病の医療体制構築に係る現状把握のための指標例を示しています。下に赤で示していますように、第8次の医療計画を作成することが私どもの目指しているところということになります。
次をお願いいたします。私たちの研究班では、この指標の検討のために修正Delphi法を用いて検討しました。1回目の事前評価、合議、2回目の評価というプロセスを踏んでおります。修正Delphi法では選定した指標案を踏まえまして、最終的に研究班の会議で研究班の案を選定しています。
具体的な評価の流れとしましては、研究班の事務局により各指標における経緯、特徴、定義案を取りまとめていただき、評価者は1点から9点の評点をつけまして、一番下の左から3カラム目、重点/必須指標を1人当たり10項目選んでいただくという方法で評価を行っております。
次をお願いいたします。これは指標案作成までのアウトラインですけれども、指標案作成時に特に意識したポイントに関しまして、指標項目の選定に注力し、具体的な定義については参考にとどめました。過去の指標項目との継続性や、各疾患領域のバランスなどを配慮しています。指標項目の重複はなるべく避けました。今後、各都道府県の行政官・医療者が理解しやすいように、なるべくシンプルにするようにしています。
実際の指標案作成の推移ですけれども、修正Delphi法の会議時点では50項目用意されていました。この中から評価点7~9点のものを抽出しまして、重点/必須項目で2票以上を獲得したものを抽出いたしまして、合計30項目となりました。
この中で3項目が循環器関係でありましたが、具体的な定義の設定が困難であると考えまして、次回の医療計画の見直しの際に改めて検討すべきということで、この循環器関係指標以外の27項目を研究班としての指標案といたしました。
次をお願いいたします。こちらは最終的な研究班の案27項目について、第7次の医療計画の中間見直しからの項目の変更状況について示したスライドであります。赤字は第7次の医療計画中間見直しの指標項目より修正、追記した部分17項目になります。イエローでハイライトした部分が項目概念を新規に追加した3項目ということになりまして、グレー部分が第7次の医療計画中間見直し時から減らした項目ということになりまして、13項目あります。ブルーのハイライト部分が、先ほど申し上げた次回の医療計画の見直しの際に改めて検討する3項目になります。
なお、第6次の医療計画時には21項目、第7次の医療計画時の35項目、第7次の医療計画中間見直し時には37項目ございました。また、既存の4つのマトリックス、「予防」「初期・安定期」「合併症予防を含む専門治療」「合併症治療」というマトリックスでは、どのマトリックスに相当するか分けにくい項目が多くあることが研究班で指摘されました。
次をお願いいたします。研究班といたしましては、マトリックスは3×3で、「糖尿病の予防」「糖尿病の治療・重症化予防」「糖尿病合併症の治療・重症化予防」という3段階に分けることを提案させていただきたいと思います。また、これまで数でカウントすることが多かったわけですけれども、割合・比率の方向のほうが都道府県比較が可能となり、望ましいと考えています。また、割合・比率の分母につきましては、項目によって違いますけれども、人口10万人というのをベースにして、場合によっては糖尿病患者数を用いることも有用であると考えています。
次をお願いいたします。こちらは研究班の項目案における糖尿病対策におけるロジックモデルとして示したものであります。大きく目指すアウトカムとしましては、糖尿病患者の増加の抑制と重症者の減少と考えています。
次をお願いいたします。今回変更を提案している個別の指標についての具体例について、ここから少し示させていただきたいと思います。実際の修正Delphi法会議で使用した資料を一部改編して説明させていただきます。
次をお願いいたします。HbA1c検査の実施がこれまで入っていたわけですけれども、例えば透析患者さんなどで貧血の場合には、HbA1cではなく、グリコアルブミンの測定が推奨されているということを考え合わせまして、HbA1cもしくはグリコアルブミン検査の実施というように変更させていただきたいと考えています。
次をお願いいたします。こちらはこれまでは糖尿病腎症の管理が可能な医療機関数として示されていました。これは出典が施設基準の届出状況(地方厚生局のホームページ)となっておりました。実績がある医療機関を把握することのほうが重要という議論がありまして、NDBを出典としまして、「糖尿病腎症に対する専門的治療を行う医療機関数」と項目名を修正することを提案させていただきたいと思います。
次をお願いいたします。これは追加項目でありますけれども、特定健診での受診勧奨を受けた方が実際に医療機関へ受診した糖尿病未治療の患者率というのは非常に大切で、未受診という状態を解消するということにおいて重要と思って、新規に提案させていただいております。
次をお願いいたします。次は糖尿病治療を主にした入院患者数ということになりますが、中段にありますように、OECD加盟国間で国際比較をするために医療の質指標を公開されていまして、この中にはDiabetes hospital admission in adultsというのがありまして、国際的な医療の質との連動が望ましいと考えまして、こちらを提案させていただきたいと思います。
次をお願いいたします。こちらは削除することを提案している項目でありますけれども、内服薬の処方状況ということを提案させていただきたいと思います。例えばビグアナイド薬とDPP-4阻害薬を1剤ずつ内服している患者さんが毎月受診すると、2剤×12か月で年間24件と換算されますが、この数字をどのように活用すれば良いか非常に難しいということで、削除を提案させていただきたいと思います。
次をお願いいたします。これは教育入院を行う医療機関数であります。1~2週間の教育入院もしくは学習入院が適した患者さんがいらっしゃることは確かではあるのですが、以前の医療計画における出典が糖尿病協会となっておりました。糖尿病協会に聞いてみますと、2010年に一度収集したのみで、それ以降はしていないことが分かりました。そのほかにも、全国レベルでのデータが取れないということで、削除させていただけたらと考えております。
次をお願いいたします。こちらは、マトリックスに関しましては3×3、数と比率に関しましては比率のほうがいいのではないか、あと、専門家の人数か、専門医療機関の数かという問題がございます。
次をお願いいたします。糖尿病の専門家の人数もしくは専門医療機関の数かということで、ここで例を示させていただいております。分母につきましては糖尿病患者数と人口10万人というのがありますけれども、基本的には10万人がよろしいのではないか。場合によっては糖尿病の患者さんの数を使う場合もあろうかと思います。
次をお願いいたします。具体的な例について、算出イメージを御説明させていただきたいと思います。これは糖尿病の専門医の数か、専門医が在籍する医療機関の数かということと、それから分母を何にするかということですけれども、ここでは東京都と山形県と島根県を示しています。どちらも単純な数字で示しますと、一番上段にありますように、専門医数、医療機関数共に東京都が多いということになりますが、これを例えば人口10万人あたりの専門医数もしくは医療機関数としますと、最下段にありますけれども、東京都と島根県ではあまり差がないということで、こちらに関しましては、東京都の人口10万人あたりの糖尿病の患者数が少なくて、年齢の影響を受けているという可能性が考えられますが、見え方が非常に違うということであります。都道府県の比較としては比率のほうがいいのではないかということを提案させていただきたいと思います。
次をお願いいたします。こちらは数か比率かということですけれども、最下段に書いておりますように、1型糖尿病の指標におきましては、分母は1型糖尿病の患者数や人口10万人がよいのではないか。妊娠糖尿病の指標では、分母に再生産年齢の女性人口のほうがよい可能性があるということが議論されております。
次をお願いいたします。こちらは1型糖尿病に対する専門的治療を行う医療機関に関する具体例を示しています。医療機関数では東京都が圧倒的に多いということになりますけれども、糖尿病患者1,000人当たりもしくは人口10万人あたりで比較しますと、最下段の2列にありますように、山形県のほうがむしろ多いということがありまして、山形県は、1人ずつの専門医が在籍する医療機関が多くの1型糖尿病の専門治療を行っているという可能性が考えられます。比率のほうが都道府県の比較としては得られる情報が多いと考えているところであります。
次をお願いいたします。最後の1枚です。厚労科研・研究班におきまして修正Delphi法を用いまして第8次医療計画における糖尿病指標案としまして27項目を選定しました。
以下の資料は参考資料として御覧いただけたらと思います。
以上です。
○植木副座長 山内参考人、ありがとうございます。
少し時間が押しておりますが、この時点で今までの3名の御発表につきまして御質問があれば、1~2お受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。南学構成員、お願いいたします。
○南学構成員 ありがとうございます。
後藤先生の発表で伺いたいのですが、遠隔診療の話をされましけれども、あれはイコールオンライン診療で使われていますでしょうか。それとも電話診療とオンライン診療を合わせたものを遠隔診療として解析をされていますでしょうか。
○後藤参考人 大事な御質問ありがとうございます。私たちの分析では電話診療も含めて分析させていただいております。
○南学構成員 了解しました。電話診療はコロナ禍でのかなりの特殊な例であり、かつオンライン診療とは全然別のものなので、分けて解析されるとより今後の参考になるかと思いました。
以上です。
○後藤参考人 ありがとうございます。
○植木副座長 それでは、下浦構成員、お願いいたします。
○下浦構成員 栄養士会の下浦でございます。御説明ありがとうございました。
山内先生にお尋ねしたいのですが、ちょっと細かな話で申し訳ないのですけれども、最後の現状把握のための指標の部分で、今回7次から8次に変更される場合のところで、私どもは栄養に関係しますので、外来の栄養食事指導料の実施件数が今回削除になった理由をお聞かせいただけるとありがたいのですけれども。
○山内参考人 御質問いただきましてありがとうございます。
研究班では修正Delphi法という方法を今回は用いました。その評価の中で評価点は非常に高かったのですけれども、必須/重点指標への投票というので2票以上獲得したという項目を今回は選ばせていただきまして、その段階でこれが落ちたということになりました。
しかしながら、先生御指摘のように、例えば糖尿病の合併症の抑制におきまして、未受診を避けるということとともに、治療の中断を避けるということも非常に重要で、治療の中断を避ける上で栄養食事指導をしているということなどが予防に非常に有効であるということも知られているところでありますので、厚労省や検討会において指標として復活させたほうがよいという議論になりましたら、復活させるのは非常によいのではないかと考えているところであります。
○下浦構成員 説明いただきましてありがとうございます。私どもで今、これに代わる何かという案はございませんけれども、ほかの先生方のほうからまた御意見がありましたら、ぜひお聞かせいただきたいなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○植木副座長 後ほど議論させていただければと思います。
では、最後に矢部構成員、お願いいたします。
○矢部構成員 矢部でございます。
先ほどの御質問と関連してコメントでございます。やはり外来の栄養食事指導料の実施件数です。糖尿病の治療において食事療法の指導というのは極めて重要でございますので、これは後ほどのディスカッションのところでまた御議論いただければと思います。
以上です。
○植木副座長 ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、医科歯科連携の現状に関する御報告に移りたいと思います。まず、資料3-5につきまして、三谷参考人に御説明をお願いいたします。
○三谷参考人 よろしくお願いします。
私のほうから医科歯科連携の現状(糖尿病と歯周病)ということで、歯科の立場からお話しさせていただきたいと思います。愛知学院の三谷です。
歯周病というところがちょっと分かりにくいところもありますので、まずは概要として、歯周病というのは、健康なときにこういう状態が、歯周病になるとこういうふうに変わっていくわけですが、健康なときは歯の頭の部分しか見えていませんが、その上に肉がありますし、中には根っこが長くありまして、根っこを収納する歯槽骨という骨があります。骨と根っこの間にばねの靱帯があるという構造になっているのですが、ちょうどこの境界の辺りにデンタルプラークという雑菌がいっぱいあると、磨き残しでうまくやれていないと、これに反応した歯肉の組織で炎症が起こってまいります。それが持続してしまいますと、炎症性のサイトカイン等が全身にも流れますし、歯槽骨がどんどん吸収して、どんどん下がっていって、歯肉が落ちていくという状態になってまいります。
糖尿病と歯周病はお互いに悪影響を及ぼしているというのが分かっておりまして、糖尿病があると歯周病に罹患しやすくなりますし、悪化しやすくなりますし、改善度も悪くなります。逆に歯周病がございますと、先ほどのような炎症が起こっているところ、面積で言いますと、例えば歯周ポケットと言われるようなものが全部の歯で5ミリあったといたしますと、このポケットの潰瘍面積というものは手のひらの大きさぐらいの面積があると言われております。この部分からどんどん細菌が入っていく、あるいは炎症性の物質が全身に移行していくということがあって、「糖尿病が悪化しやすくなる」「糖尿病の改善度が悪くなる」「糖尿病に罹患しやすくなる可能性も」ということが言われております。
糖尿病、歯周病はそういう関係がありますので、どちらの治療も同時にやっておくというのが患者さんの健康管理に非常に重要ではないかということで、この患者さんは糖尿病を患った歯周病患者さんで、治療をする前、PISAというのは歯周ポケット内の炎症面積を概算したものでございます。2000ちょっとあるものが歯周治療を行ったときに90ぐらいまで改善しております。これに応じてか、7.9%だったHbA1cが6.9と1%減弱している。この患者さんに関しては薬も多少変わっておりますので、歯周治療だけとは言えないですけれども、いずれにしてもこの治療が必要であろうということが言えます。
日本歯周病学会ではガイドラインがございまして、糖尿病患者さんに歯周治療を行う場合はHbA1cを6.9以下にしましょうとか、歯周治療を行うと糖尿病の病態が改善する可能性がありますから、しっかりやってくださいということが書いてあります。
論文、データ的にはどんなことが言われているかといいますと、2型糖尿病患者さんで歯周病の管理治療をやっている者とやっていない者で糖尿病の悪化に影響を及ぼすのではないかと。特に糖尿病の悪化によるインスリン導入の確率が低下している。オッズ比でこのぐらい下がっているということまで報告されていたり、あるいは口腔衛生習慣、歯磨きの回数とか残存歯数と人工透析患者さんの生存率の関係などということも報告されておりまして、口腔清掃が悪いような人は、いい人に比べて死亡リスクが有意に上がっているということが分かりますし、歯磨きの回数が2回未満の患者さんというのは、2回以上の患者さんよりも死亡率が上がっているということがあります。残存歯数でも少ないほうが死亡率が上がっているということが分かっております。こういったこともあって、我々としては医科歯科連携において歯科治療、歯周治療は非常に大事なのだなと認識しております。
また、最近では歯周炎という歯周病があることで酸化ストレスというものを介して腎機能を悪化させるというような報告もございます。現在コホート研究を行っている最中ですが、そのベースライン時のデータを利用した分析でございますと、間接的な関係というのが分かってきている。つまり、PISAという歯周の炎症面積が大きいということが酸化ストレスに関係して、酸化ストレスが高くなっているということでeGFRのほうに影響してしまうということで、こういったところの情報が研究の発表として言われております。
こういう背景を基に、愛知学院大学歯学部附属病院では医科歯科連携をしっかり取り組もうということで、内科を中心として糖尿病合併症外来というものを行わせていただいております。私ども歯周病科も参画させていただいています。月に1回、大体3時間ぐらい要していろんな検査をやっていって、歯周病に関してもかなり精密な検査をさせていただくということをやらせていただいております。これを今までやってきて、実績として47名の患者さんがいまして、その中で歯周病検査を受けられたのは8割ぐらいです。その検査を受けた上で、歯周病・口腔衛生という歯科治療に新たに行ってもらうということになった患者さんが2割ほどいるということがありました。
これを今まで数は多くないですがやってみて、利点としては、電子カルテ上で我々歯科医師が糖尿病の状態変化を共有できるということはいいことであろうと。あとは、歯周病は基本的には自分で分からない病気ですけれども、患者さんに歯周病を自覚してもらうことができるのは有益であった。あとは、内科と歯周病科を両方受診することで、歯周病の治療の効果は上がっていたということが実感されています。あとは、医科の患者数第二位の糖尿病、歯科の患者数第一位の歯周病、両疾患を同じ機関でやり取りできるというのは非常にやりやすかった部分はあります。両疾患のコントロール状況に合わせた診療体系を提供できますし、医歯薬連携の相談とかが本当に近くで簡単に相談できるというのは利点でした。
しかしながら、課題はございます。歯科病院ということで、糖尿病合併症外来をやっていても、内科やこういう合併症外来があることに気づいてもらえなくて、患者数をなかなか増やせられないということ。それから、歯周病から合併症に行ってくださいと紹介しようと思っても、既にかかりつけの内科医がいたりして、うまく数が伸びなかったということ。それから、両疾患はどちらも自覚症状に乏しいという疾患ですので、早期発見・早期治療の重要性を患者さんも含めて周知していかないと、こういうのは活性化しないのではないかという課題。それから、合併症外来と併科受診をするということのメリット、治療効果などを先生たちがきっちり説明できる必要がまだまだあるのだろうということ。それから、医科・歯科を併設している病院として、歯周病検査に歯科の検査の一環として全身の検査が含まれるのだという認識を歯科医ももっと強く思わないといけないのではないかということが課題として挙げられました。
私からは以上ですが、内科の成瀬先生のほうからもう少し詳細にやっていただけると思います。
以上です。ありがとうございました。
○植木副座長 三谷参考人、ありがとうございました。
引き続きまして、資料3-6につきまして、成瀬参考人から御説明をお願いいたします。
○成瀬参考人 愛知学院大学の成瀬です。
私のほうからは、愛知学院大学歯学部附属病院における医科歯科連携の現状と課題について、お話をさせていただきます。
先ほど三谷先生からも御紹介がありましたけれども、糖尿病合併症外来における医科歯科連携についてお話をさせていただきます。私どもは歯学部の附属病院ですのでちょっと特殊で、糖尿病内科のほうに医師とともに歯科医師やほかのメンバー、メディカルスタッフも入っていただいているという形で外来を行っております。特に合併症外来では歯周病科による歯周病検査というものも実施しております。外来としましては、歯科治療に難渋する患者さんなどは、歯科医師のほうから糖尿病内科に御紹介いただくことも多いという現状です。
糖尿病合併症外来のほうでは、先ほど三谷先生のほうから御報告がありましたので、割愛させていただきます。
実際に合併症外来における歯周病の現状とその課題ということで、平均年齢65.4歳。何年か分を集めておりますので、少し人数がこちらのほうが増えておりますけれども、現在歯数、平均が22本、歯周病罹患歯が6.4本、齲歯が0.34本という現状でありました。いずれにしましても、程度の差はありますが、歯周病のない糖尿病患者はいないということが分かりましたし、私どものほうでは、患者が希望すれば当院の歯周病科で治療を継続しております。また、電子カルテを通じることによって、糖尿と歯周の状態の把握をお互いできるということになります。
課題といたしましては、既に他院に通院している患者さんも多くいらっしゃいまして、経年的に見てもあまり歯周病の改善が認められない場合に、それ以上コミュニケーションが取りづらい。また、実施には多くの人が必要となりますので、一度に多くの患者を検査できないというデメリットがあります。
続きまして、歯周病科初診患者に対する医科歯科連携というのを取組として行いました。
実際にはここにお示ししている患者用の案内文書をつくりまして、フローチャートといたしましては、歯周病科初診の患者さんに内科のほうへ移動いただければ、内科のほうに行っていただいて、なるべく短時間でということで、HbA1cと簡易血糖検査のみを行い、その場で御説明するということを計画いたしました。受診勧奨基準といたしましては、右にあるように境界型も拾い上げるような形で計画をいたしました。
しかしながら、この仕組みは2019年に整いましたけれども、これまでに歯周病科からの紹介は数名のみで、うまくいっていると言うことはできません。利点としましては、歯周病科終了後、内科を受診することによって、同一施設内でスクリーニングができますし、特に糖尿病がありながら治療を受けていない患者さんを、歯周病を持っていらっしゃるということで、高率にスクリーニングできる可能性が高いのではないか。患者さんが了解すれば、ほかの検査もできるというメリットがありますけれども、歯科の先生にとっては、歯周病科初診だけでも診察時間が長くて、さらに内科受診を勧めるだけの時間的余裕がない。歯科医にとってもインセンティブが足りない。患者さんは初診料を歯科と内科にも払う必要があるということで、割高となってしまう。検査しても異常がない場合には、患者さんが不満を持ってくる可能性もあるということで、この仕組みはうまくいってはおりません。
最後に、糖尿病外来通院患者に対する他の歯科医院との医科歯科連携について、お話をさせていただきます。
お示ししますデータは、全国の糖尿病を専門とする医療機関に通院中の患者さんに対する大規模観察研究であるJDCPのベースラインの口腔所見のデータであります。お示ししますように、1型糖尿病においても2型糖尿病においても歯間清掃用具を使っていない方のほうが多く、また、歯科定期健診を行っている方も半数以上の方が歯科定期健診は行っていないという現状であります。
実際にこの研究で歯の数が20本未満となるオッズ比を見てみますと、そのリスク因子としまして、1型糖尿病では年齢はもちろん、HbA1cがございますけれども、歯間清掃用具は未使用である。また、2型糖尿病におきましても、年齢の次に来るのが歯間清掃用具の未使用、次がほぼ糖尿病罹病歴と同じぐらいの割合で定期歯科受診がないというところが来ておりますので、定期的な歯科受診というのは非常に重要であると考えております。
他院に医科歯科連携する場合には糖尿病連携手帳を使いまして行っております。このように眼科と同じぐらいのスペースがありまして、いろんなことができますけれども、この利点としましては、メディカルスタッフも記入することできるので、記入における負担も少なく、紹介料も発生しなくて患者さんの負担が少ない。医科歯科連携が容易であるし、患者さん自身も見ることができるというメリットがありますが、糖尿病連携手帳の交付というのは、内科からでなくて、歯科医師から交付されることは基本的にないということです。なので、歯科医師から内科受診を勧めるためのツールとはなっていないことが問題かなと思っております。
以上です。ありがとうございました。
○植木副座長 成瀬参考人、ありがとうございました。
それでは、今のお二人の御発表につきまして御質問、コメントなどございますでしょうか。よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。
それでは、最後に資料3-7につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
それでは、資料3-7「第8次医療計画に向けた見直しに関する論点」ということで、資料を御説明させていただきます。冒頭、スケジュールで御説明したとおり、第8次医療計画の見直しに向けて御意見の整理を少し進めたいと考えておりまして、その論点についてお示ししております。この論点に沿ってこの後に御議論いただければと思っております。
2ページ目を御覧いただければと思います。まず、見直しに関する論点を3つにまとめております。そのうちの2つを御紹介します。1として糖尿病対策に係る他計画との連携等を含めた診療提供体制の検討ということで、第8次医療計画の策定に向けて、健康日本21や医療費適正化計画の見直しに係る検討状況、重症化予防や両立支援に係る取組状況等を踏まえつつ、見直しの方向性を整理することとしてはどうかということ。その他、診療提供体制に係る記載について、厚生労働科学研究の内容等を踏まえ、必要な見直しを行うこととしてはどうかとしております。
続いて、2)の新型コロナウイルス感染症拡大時の経験を踏まえた今後の糖尿病医療体制ということで、今回の新型コロナウイルス感染症拡大時の経験も踏まえ、地域の実情に応じて、多施設・多職種による重症化予防を含む予防的介入や、治療中断対策等を含むより継続的な疾病管理に向けた診療提供体制の整備等を進めることとしてはどうかとしております。
続いて、3ページ目にお進みください。3)第8次医療計画に向けた指標の見直しでございます。こちらは先ほど山内先生より御発表いただいた資料を踏まえて、厚生労働科学研究において提案された指標案を踏まえ、以下の方針で整理を進めることとしてはどうかという御提案でございます。
1つ目のポツ、「予防」「治療・重症化予防」「合併症の治療・重症化予防」の3項目を軸として整理することとしてはどうかということ。
2つ目のポツ、「比率」または「実数」のいずれを採用するかという研究班で決め切れなかった点につきましては、都道府県間での比較を可能とするという観点から、糖尿病患者数の正確な把握が困難な現状を踏まえ、原則として「人口10万人あたりの比率」を採用することとしつつ、ただし、例えば「1型糖尿病に対する専門的治療を行う医療機関数」や「妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠に対する専門的な治療を行う医療機関数」等、「人口10万人あたり」を母数とすることは必ずしも適当ではなく、かつ適切な分母の設定が難しいような指標については「実数」を用いることとしてはどうかという御提案でございます。
最後のポツは、「専門家数」または「専門医療機関数」のいずれを採用するかについては、医療提供体制の整備という観点から「専門医療機関数」を用いることとしてはどうかという御提案でございます。
事務局からの論点についての御説明は以上でございます。
○植木副座長 ありがとうございました。
それでは、今、御説明ございました論点も含めまして全体の討論を進めてまいりたいと思いますが、まず初めに、本日御欠席の井本構成員から御意見を頂戴していると伺っております。事務局のほうから御説明をお願いいたします。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
資料3-1、資料3-4に関連して井本構成員より書面にて頂戴しておりますので、読み上げさせていただきます。
糖尿病の医療体制構築において、重症化予防の観点から、看護師は療養指導に携わっており、治療中断にならないよう、また、薬物療法開始後も継続した運動習慣やセルフケア行動の維持ができるように支援しています。特に糖尿病看護認定看護師等、専門性の高い看護師はより専門的な知識を有し、組織横断的な活動をしています。しかし、今回の資料3-4に示された指標例では項目から削除されており、大変残念です。各期において医師と共同している糖尿病看護認定看護師等、専門性の高い看護師に関する指標について、ぜひとも再検討していただきたいと思います。
また、重症化予防に重点を置いた対策を推進するため、地域での連携体制の構築が重要であることが資料3-1の18ページでも示されているところです。在宅療養者は高齢化しており、認知機能低下を認める場合もあり、例えばインスリン注射の自己管理が難しい場合など、訪問看護師が状況を確認しながら、かかりつけ医等とも情報を共有している実態があります。しかしながら、現在の第7次医療計画の指針には、地域連携の状況として訪問看護ステーションの関わりに関する記載がありませんので、現状を踏まえてこの点についても追加を検討いただきたいと思います。
ということでございます。
以上です。
○植木副座長 ありがとうございました。
今の御意見も参考にして、事務局のほうから提示がありました論点等を含めて御議論いただきたいと思います。時間も限られておりますので、まず事務局のほうから提示がありました1)、2)の糖尿病対策に係る他計画との連携等を含めた診療提供体制の検討と、それから新型コロナウイルス感染症拡大時の経験を踏まえた今後の糖尿病医療体制、これを組み入れていくという大まかな方針については御異論がないということでよろしいでしょうか。もし特段御意見がございましたらお願いいたしますが。これは方向としてお認めいただいてよいということでよろしいでしょうか。
(首肯する構成員あり)
○植木副座長 それでは、3)第8次医療計画に向けた見直しの中心でございます指標の見直しでございますが、特に第7次と変わっているところとして、マトリックスが3×4から3×3になっているということですけれども、この点について何か御意見等ございますでしょうか。山内構成員からも御説明があったように、なかなか分けにくいということもあって、シンプルにということだと思います。室原構成員、お願いいたします。
○室原構成員 どうもありがとうございます。
先ほど申し上げればよかったかもしれないのですが、マトリックス3×3のところで、「糖尿病合併症の治療・重症化予防」の項目で、循環器は3項目ほど省かれたというお話でしたが、最近は心筋梗塞は必ずしも増えていないのですが、糖尿病の方の心不全というのが非常に問題になっておりますので、循環器専門医の数もしくは循環器専門医がいる病院の人口10万人あたりの数なども入れてもいいのではないかとちょっと思いました。
以上です。
○植木副座長 ありがとうございます。
いかがでしょうか。ストラクチャー指標ということになりますでしょうか。
○室原構成員 はい。ストラクチャーの3×3の27項目のイメージ案というところであります。
○植木副座長 循環器疾患に対する専門的治療を行う循環器合併症ないしは併存症みたいな書き方という御意見かと思います。
○室原構成員 そうですね。ほかの科目と足並みをそろえるということであれば、循環器専門医ですね。
○植木副座長 分かりました。
という御意見ですが、いかがでしょうか。
この点についても検討させていただければと思いますが、ほかに御意見ございませんでしょうか。基本的に3×3のマトリックスはお認めいただいたものとして進めてよろしいでしょうか。
(首肯する構成員あり)
○植木副座長 次のポツは比較的テクニカルといいますか、地域間の検討をするために多くの指標で「人口10万人あたり」を用いるという指針ですが、これはこのような形でよろしいでしょうか。そして、1型糖尿病であるとか、妊娠であるとか、必ずしも数で割り切れなくて、地域に必ず必要な専門施設数が要るものについては「実数」という考え方かと思いますけれども、このような基本方針でよろしいでしょうか。
(首肯する構成員あり)
○植木副座長 ありがとうございます。
3番目も同じような考え方で、専門医数ではなくて専門機関数を用いたいという研究班からの御提案ですけれども、これもこのような方針でよろしいでしょうか。
(首肯する構成員あり)
○植木副座長 大まかな方針についてはお認めいただいたものとさせていただければと思いますが、各項目につきまして、構成員の先生方から御意見があろうかと思いますけれども、ぜひ。今、お二人の先生から不採用になったもの、あるいは足りない項目についての御意見がございましたが、あとは前のほうで栄養指導に関するものが削除されたのは復活させてほしいという御意見もございましたが、ほかは何かございませんでしょうか。津下構成員、お願いします。
○津下構成員 前回の第7次と第8次を比べますと、眼底検査、尿中アルブミン、クレアチニンの検査について、前回は初期から実施するというメッセージではなかったかなと思います。確かに「合併症の治療・重症化予防」というくくりで合併症の検査であるという位置づけなのですけれども、その考え方の違いというか、これは重症になったから実施する検査なのだというように捉えられるといけないかなと思いました。初期から実施しなければいけない検査であるのですが、右側に位置づけられていることで、進行してから実施するための検査に見えます。今までのマトリックスに慣れたほうから見ると、若干その辺が心配であるという点が1点ございます。
2点目ですが、地域包括ケアとか、高齢者においては一体的な実施の中で、血糖コントロール目標など、見ていく指標が違うかなというふうにも思います。これまでは高齢者向けの指標というのはなかったのですけれども、高齢の糖尿病患者さんが増えてきている実態の中で、そのことを把握できるような指標立てというのは検討可能なのかどうかというのが2点目です。
3点目ですけれども、従来の方法と違いまして、今回はNDBで算出される指標が非常に多くなってくるのかなと思いますが、従来の方法と比べて、NDBで把握したものの、実際にどのような数字の違いが出てくるのかということについて、明示する必要があるかと思いました。計画の指標が変わるのでその見え方が違うというのはあるとは思います。NDBを活用した指標設定ということについて、定義とか計算式とか、どういうデータベースを使うとか、そういう具体的な事項について国から提供される予定でしょうか。都道府県がつくる計画になりますので、NDBの活用の在り方についてお伺いしたいと思いました。
3点、お願いします。
○植木副座長 最後の点につきましては、山内参考人のほうから御説明いただけますでしょうか。
○山内参考人 第7次のときから比較的NDBによる指標というのは増えてはおりました。ただ、先生がおっしゃいますように、現時点でこちらのほうがいいのではないかということで、今回は投票で決まったわけでありますけれども、従来からの連続性という意味では、本来科学的には両方取った上で、妥当性がお互いにあるのも含めまして検証すべきかなとは思います。この時点でベストと思うものと、それから先生御指摘のように、これまでの連続性からの観点からも、項目を指標として、本文中に入るような形でのもう一つの項目という形がいいのかどうかも含めまして御議論いただけたらと思います。
○植木副座長 もう一つは、高齢糖尿病に関する指標というのは検討されたのでしょうか。
○山内参考人 これは研究班の事務局の段階でまず検討いただきまして、御指摘のように、今、65歳以上の糖尿病のある方に占める割合が78%で、非常に重要な部分であるわけですが、特定健診が74歳までということで、75歳以上の方はNDB内の特定健診の数値などが拾えないということで、事務局案の段階で今回は入れておりませんでしたけれども、ただ、重要な観点と思いますので、今回御指摘いただいたような形で厚労省、またこの検討会で御議論いただけたらと思います。
○植木副座長 津下構成員の最初の御質問に関しましては、一番右側のマトリックスのタイトルのところの注釈、糖尿病合併症の治療は、それが顕在化する前から重要であるというようなことをつければ、津下構成員の御趣旨にも合うのかなとも思いました。この点につきましても先生方の間で御議論いただければと思います。
ほかはいかがでしょうか。
○津下構成員 すみません。先ほどの高齢者の件ですけれども、75歳以上はほぼ全てが後期高齢者医療制度になるので、国保データベース、KDBに医療・介護のデータ、健診のデータも全部入っています。それを活用すれば高齢者向けの指標立てというのも今後可能かなと思います。できればその辺りの御検討もしていただけるといいのかなと考えております。
以上です。
○植木副座長 ありがとうございました。
構成員の先生方からほかに何か御意見ございますでしょうか。
○原澤課長補佐 植木副座長、事務局から1点よろしいでしょうか。
○植木副座長 どうぞ。
○原澤課長補佐 先ほど津下構成員から御質問いただいたデータの提供はどのようになされるのかという点についての回答でございます。ほかの領域の指標についても同様でございますが、医政局のほうで医療計画の策定に当たって都道府県で用いていただいている指標につきましては、年に1回データブックという形で、抽出する項目や方法が一定時期までに決まったものについては、提供するようには努めてございます。ですので、集計定義等が定まったものにつきましては定期的に提供できるように努めてまいりますので、その点、御承知おきいただければと思います。
以上でございます。
○植木副座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでしょうか。
私のほうから1点だけ。現在、糖尿病の治療・重症化予防のアウトカム指標として、糖尿病治療を主にした入院患者数という項目がございますが、山内参考人からの御説明では、海外との比較の上でこれを取り入れるというような御説明があったかと思いますけれども、これはアウトカム指標にしてしまいますと、多いほうがいいのか、少ないほうがいいのかというのは、なかなか難しい議論にもなるのかなと思いまして、むしろプロセス指標のほうがふさわしいのではないのかと思うのですが、この辺はいかがでしょうか。
○山内参考人 大変重要な御指摘ありがとうございます。
先生御指摘のとおり、OECDのほうではDiabetes avoidable admissionsということで、低血糖とかDKA、DKAなどの入院を減らすことを目標にしたアウトカム的な側面の指標となっているのですけれども、先生御指摘のように、日本では教育入院という形で、それが増えたほうがプロセスとしてはいいのではないかというようなのが合算されてしまいますので、確かに複雑で、本来であればそれが分けられればと思うところでありますが、非常に難しいところだというふうに議論にはなっておりました。
○植木副座長 ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。矢部構成員、お願いいたします。
○矢部構成員 矢部でございます。
少しナイーブな質問になります。糖尿病の予防のところになりますが、ストラクチャー、プロセス、アウトカムという形で、今、特定健診の受診率や特定保健指導の実施率がストラクチャーに入っているのですが、恐らく前回のものからのキャリーオーバーというところで、ここが適切ということで入っていると思うのですけれども、今回の3×3の図で見ると、いずれもプロセスの位置にあるのが適切ではないかなと個人的に思うのですが、この辺りの背景とかを御説明いただければと思いますが、いかがでしょうか。
○植木副座長 これも山内参考人、お願いできますでしょうか。
○山内参考人 事務局から答えていただきます。
○山内参考人(杉山氏) すみません。山内参考人の陪席をさせていただいております山内班の事務局の杉山と申します。
私のほうから回答させていただきますと、第7次のほうのキャリーオーバーということで、おっしゃるとおりでございます。こちらのほう、プロセスという意味で、実施率が高いほうがプロセスがよいということで、こちらはプロセスのほうに置いていただくということで適切かと思いますので、そのように御支援いただければと思います。
以上です。
○植木副座長 ありがとうございました。
ほかはよろしいでしょうか。
たくさん御意見をいただきましたけれども、いただいた御意見を踏まえまして、事務局のほうでまた検討をさせていただいて、先生方に改めてお諮りできればと思います。
それでは、ここで進行を柏原座長にお戻ししたいと思います。よろしくお願いいたします。
○柏原座長 植木副座長、構成員の皆様方、非常に活発な御議論ありがとうございました。
予定した議題は以上となります。
最後に、事務局のほうから何かございますでしょうか。
○原澤課長補佐 事務局でございます。
構成員の先生方、御議論いただきましてありがとうございました。
次回の検討会につきましては、事前に先生方に御連絡させていただいているとおり、11月18日(金)の10時から12時までを予定してございます。場所等の詳細につきましては、事務局から改めて御案内させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
○柏原座長 それでは、長時間になりましたが、以上で本日の検討会を終了したく存じます。構成員の皆様、参考人の皆様、長時間にわたり誠にありがとうございました。
以上でございます。