第5回雇用保険制度研究会 議事録

日時

令和4年10月26日(水)17:00~19:00

場所

厚生労働省 仮設第4会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館)

議事

議事内容
○尾田雇用保険課長 それでは、定刻になりましたので、第5回「雇用保険制度研究会」を開催いたします。
本日は、御議論いただく内容を踏まえまして、まず、フランスにおける失業保険制度の有識者として、早稲田大学名誉教授の鈴木宏昌様、そして、デジタル技術の活用の有識者として、厚生労働省デジタル統括アドバイザーの柴田利則様の御両名に臨時委員として御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
なお、佐々木先生におれかましては、所用により18時ごろから御出席との予定と伺っております。
報道陣の皆様の頭撮りは、ここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議事に移りたいと思います。本日の議題は(1)失業認定について、(2)求職者支援制度についての2つです。
まず、議題(1)「失業認定について」につきまして、事務局から資料1及び資料2について御説明申し上げます。
○山口調査官 それでは、資料に基づきまして事務局より御説明をさせていただきます。
まず、資料1を用いまして、前回の研究会の議論における御意見の振り返りをさせていただきたいと考えております。
2ページでございます。前回、育児休業給付について御議論をいただきました。幾つかかいつまんで御意見を振り返りますけれども、一番上を御覧いただきますと、育児休業給付について、形式的に非正規の方々に門戸が開かれてきたけれども、それにもかかわらず期間雇用者の受給割合が低いという状況に対して踏み込んだ分析が必要ではないか。
また、その下ですが、雇用保険制度の中心的な趣旨からすると、育児休業給付というのはやや外れつつある可能性があって、特に厳しい財政状況下において、雇用保険の中でなお維持すべきかどうかという御意見がございました。
また、次ですが、男性の育休取得促進をするに当たって、雇用保険制度の枠組みでやるべきなのかどうかという御指摘や、1つ飛ばした下ですが、恒常的・定期的に就業する場合、育休を取得できないが、もう少し柔軟な運用ができないかという御指摘がございました。
また、1つ飛ばしまして、育休給付の延長はしやすいので、希望する保育園に入園できないなら、延長をたやすく選択することがあるのではないかというお話や、育休給付の給付目的が変容してきたと捉えられるが、雇用保険法それ自体が労働者の雇用と生活の安定といった労働市場政策の一環として行われているという点では限界があるということは押さえておく必要があるという御指摘がありました。
3ページを御覧いただきまして、育休給付ですけれども、世帯単位で発想する国が海外のあることを踏まえつつ、世帯単位で物事を考えるときには日本の雇用保険のように労働者と使用者が個人単位で納付している保険料は財源としてなじみにくいのではないかという御指摘がございました。
上から5つ目ですけれども、育休給付の性格の変容については皆様から御指摘があったところですが、一企業での雇用継続に限らなければ労働市場からの退出防止という点からまだ説明がつくのではないかという御指摘がございました。
また、一番下ですけれども、育児休業期間の所得保障というよりは就業継続といった観点から短時間勤務に伴う賃金の減少を補塡する給付の在り方を考えていくべきではないかという御意見がありました。
資料1につきましては、以上でございます。
続きまして、資料2に基づきまして「失業認定について」御説明をさし上げます。
まず、1ページ目。失業認定につきましては、第2回の雇用保険制度研究会におきまして、基本手当の議論の中でオンライン化も含めて少し議題とさせていただいたところでございます。今回はそれに引き続き、また議題とさせていただくものですけれども、前回も御紹介いたしましたが、規制改革実施計画を本年6月に閣議決定してございます。その中で、失業認定関連手続を含む雇用保険の受給関連手続の在り方について、デジタル技術の専門家の御意見も伺いながら対応の方向性の検討を行い、1年をめどに結論を得るとされていたところでございます。
また、市町村取次の対象者につきまして、オンライン化を可能な者から順次措置するということも記載されてございます。
その後、本年10月、加藤大臣の閣議後記者会見で御覧のような発言がございました。具体的には、10月11日に河野大臣と岡田大臣と私、加藤大臣とで、いわゆる2プラス1大臣会合を開催し、その中でハローワークにおける失業認定のオンライン化について議論したということです。この会合を踏まえまして、ハローワークにおける失業認定については、雇用保険の受給に関する手続の際、全員一律に4週間に一度ハローワークへの出頭を求める取扱いを見直すという御発言がございました。まずは、離島に在住するなどハローワークに出向くことが大きな負担となっている方に対して、遅くとも来年4月からオンラインを活用した取組を実施し、検証を行う。その上で検証結果も踏まえつつ、また諸外国の実態も参考に、できるだけ速やかに結論を得たいという発言があったところでございます。
2ページを御覧ください。雇用保険の基本手当の受給の手続の流れについて示した資料になっております。労働者の方が離職をされてから雇用保険を受け、さらに、その支給が終了するという一連のフローをお示ししたものになります。
まず、一番左側の離職でございますけれども、労働者が離職した場合には、事業主の方が雇用保険の被保険者資格を失ったということで、喪失届をハローワークに提出いただくことになっております。ハローワークではこれを踏まえて離職時賃金額や離職理由を審査の上、離職票を交付することになっております。離職者の方が離職票を入手いたしましたら、それを持ってハローワークにおいでいただきます。まずは、職業相談部門においでいただきまして、求職の申込みをハローワークに行っていただきます。その上で、雇用保険部門に離職票等の必要書類を持ってきていただいて、ハローワークの職員と面談し、基本手当の受給に必要な被保険者期間を満たしているかどうかや、労働の意思・能力の有無を確認しております。このプロセスを経て、基本手当を受ける資格があるということで受給資格決定という手続を取っているところでございます。
この手続が終わりまして、また別日に何人かの求職者の方、大体1回当たり60~70人ぐらいの方々が集まって雇用保険の説明会を受けていただく機会がございます。この際に受給資格者証をハローワークから求職者の方に交付し、求職者の方はそれをお手元に持ちながら雇用保険の基本手当を受ける仕組みについて説明を受けていただきます。
具体的には、認定日に来所していただく必要があることや、必要な求職活動実績がどういうものなのか。また、基本手当を受けている期間について、何かお仕事をして収入を得られた場合はそれを申告していただきたいということや、早めに再就職すると再就職手当という給付が受けられること。それから、必要な申告を怠った場合は不正受給ということで、既に給付した額の3倍の額をお返しいただく可能性があるといったことなどについて説明しているところでございます。ここの理解で誤解がありますと後々トラブルになる可能性がありますので、正確に給付の仕組みを理解いただく必要があると考えております。
また、雇用保険説明会に併せて職業講習会を同時開催していることが一般的でございます。この講習会につきましては、ハローワークの利用方法や就職活動のやり方、応募書類の書き方といった基礎的な内容をセミナーの形でお伝えしているものでございます。
その後、失業の認定の手続に移行いたします。求職者の方は、あらかじめ決められた失業の認定日にハローワークに来所いただくことになります。その際、受給資格者証と失業認定申告書をお持ちいただきまして、ハローワーク職員と面談によって就労の有無、労働の意思・能力の確認を受けることになります。その結果を踏まえて失業の認定がなされることになります。
この雇用保険の手続が終わりましたら、同じ建物の中に職業相談部門がございますので、そちらへ誘導することで就職意欲を喚起しているということです
赤い字の部分が雇用保険の受給の手続に関するもので、青い字が職業相談に関するものですけれども、職業相談に関することと給付に関することを一体的に運営していることが一つ特色でございます。
失業認定が行われまして、おおむね1週間後に基本手当の振り込みが行われることになります。このサイクルを原則として4週間に1回繰り返す中で、再就職して給付が終わる、もしくは支給期間が終了するということになります。
3ページでございます。こちらは離職された方々の離職理由によって給付制限がある場合とない場合で、どのようなスケジュールの違いが生じるかを具体的にお示ししたものでございます。
会社都合で辞められた方につきましては、給付制限期間はございませんので、ハローワークに来所されてから最初の7日間待期期間がございますが、その後から給付がすぐに始まります。来所されてから28日のサイクルで初回の認定日を設定しておりまして、そこにまずおいでいただいて最初21日分の認定を行います。その後は28日のサイクルで来所を繰り返していただくことで、認定対象期間の中に少なくとも求職活動実績を2回求めることになっております。
一方で、自己都合離職の方につきましては、給付制限が2カ月間存在しておりますので、その経過後に認定が開始するという流れになっております。
4ページを御覧いただければと思います。こちらは雇用保険の受給資格者証の実物でございます。表面と裏面がございまして、表面につきましては、基本手当の受給に必要な基礎的な内容を整理してございます。これが一番最初の受給資格決定の際に確認する事項ということになっておりまして、御本人様の氏名、性別、生年月日と基礎的な情報のほか、払い込みをする先の口座番号や離職理由、離職時の賃金日額、所定給付日数、また認定日について整理しております。
裏面につきましては、基本手当を受けるたびに何日分について幾ら支払われ、残日数がどの程度かについて、毎回失業認定のたびに記録をすることになっております。
5ページ、失業認定申告書でございます。ここで重要な点が2点ございまして、1点目が、認定対象期間中に働いていたかどうかの申告。2点目が、求職活動の実績の申告となっております。
1点目につきましては、就職・就労、内職・手伝いを実施したかを報告いただいておりまして、例えば記載例のケースですと、10月の1日から28日までの28日間が認定対象期間となっておりますが、この間に一日4時間以上の労働をした場合はカレンダーに○を、一日4時間未満の就労をされた場合はカレンダーに×を記載いただいております。○が記載された日につきましては、基本手当は支給されないことになります。また、×が記載された日については、基本手当は支給されますが、収入の額によっては基本手当の額が減額される場合がございます。このため4時間未満の就労によってどのくらい収入を得たかも、併せて申告いただく必要がございます。この内容に不備があったり、不誠実な記載をしている場合につきましては、不正受給になる可能性がございます。
求職活動の実績でございますが、具体的にどのような活動を行ったのかという記録をつけていただいておりまして、ハローワークで職業講習会を受けた、民間の人材サービスで職業紹介を受けた、派遣会社であっせんを受けた等々の申告をしていただいているところでございます。
ハローワークのことでございましたらハローワークに記録が残っておりますが、民間サービスを活用した場合につきましては、ハローワークでは把握できておりませんので、電話番号等を記載いただいて、実際にそのような活動をしているのかが把握できる仕組みになっております。
次に6ページでございます。市町村取次による失業認定の見直し方針で資料を入れてございます。
市町村取次につきましては、前回第2回の研究会で議論いただいた際に、オンライン化の活用を考えるべきではないかという御意見を頂きましたので、それを踏まえまして試行実施案を検討しております。
まず、市町村取次は何かということですが、ハローワークへの出頭に往復6時間以上を要する市町村であって、安定局長の承認を受けた地域にお住まいの方の基本手当の手続に関する特例となります。具体的には、失業認定日に管轄のハローワークではなく市町村役場に出頭いただきまして、市町村の職員の方が労働の意思・能力の有無を確認し、それを書類に落とし込んでいただいてハローワークに取り次いでいただきます。ハローワークの職員は、その書類を基に失業認定を行うという取扱いでありまして、令和4年度現在、主に離島を中心に52市町村でそうした取扱いがなされております。
この点につきまして、遅くとも令和5年4月からオンラインによる失業認定の試行実施をしたいと考えております。具体的には、受給資格決定と失業認定、2つのフェーズに分けておりますけれども、受給資格決定につきましては、現在、市町村取次であってもハローワークに来所いただく取扱いになっておりますが、試行実施の案といたしまして、市町村役場においでいただきまして、求職者の方とハローワークの職員を直接オンラインで結び、その面談をする中で受給資格決定を行いたいと考えております。
また、失業認定につきましては、市町村役場においでいただいて市町村の職員が面談するという形で実施しておりますが、これにつきましても、ハローワークの職員と直接オンラインで結び、ハローワークの職員が直接求職者の方に労働の意思・能力の確認を行う形にしたいと思っております。
7ページは、失業給付の運営の海外との比較ということで、前回はフランスの資料を入れておりましたが、さらにドイツを追加してございます。
上から3段目の「失業認定の仕組み(対面orオンライン)」を御覧いただければと思いますが、フランスの場合は後ほど鈴木先生から詳しくお話があると思いますけれども、毎月1回雇用センターのサイトにおいて求職活動の状況を報告いただいている。また、すべての求職者について個別就職支援計画というものをつくっているのですけれども、その初回の面談については対面での実施を優先しており、2回目以降については対面、遠隔(オンライン)の双方があり得るということで認識してございます。
一方で、ドイツの場合もオンラインまたは対面で失業登録ができることになっておりまして、求職活動に関する合意書を求職者とハローワークの間で結んでおり、それに基づいてどんな活動をしたかの報告をいただいているということで認識しております。
最後に、8ページに議論の観点でございますけれども、現行、失業認定において原則として4週間に1回ハローワークへの出頭を求めているが、ITによる遠隔でのコミュニケーション技術の発展等も踏まえ、今後の失業認定の在り方を議論するに当たり、どのような点に留意すべきかとしております。
資料の御説明は以上でございます。
○尾田雇用保険課長 続きまして、鈴木先生からフランスの失業保険制度について御説明をお願いしております。鈴木先生、よろしくお願いいたします。
○鈴木臨時委員 今日は、少し時間をいただきまして、フランスの失業保険制度とその運用ということで、30分ぐらいいただきまして、細かな説明をしたいと思います。
2ページをお願いします。内容といたしまして、失業保険制度の歴史、現在の失業保険の統治構造、雇用センターの誕生、2008年ですけれども、これについてはもう少し詳しく御説明いたします。それから各論になりますけれども、雇用センターのデジタル化あるいは自営業の問題を扱いまして、そして、日本の雇用保険との違い、大きなポイントだけ説明させていただきます。
3ページをお願いします。現在の失業保険制度の概略ですけれども、その前に、ちょっと前置きとして日本とフランスの雇用保険、失業保険を比較して、どうしても頭に置いておかなければいけないなと思うポイントが、私の考えでは3つほどあります。
1つは、フランスの失業問題の重要性です。これは皆さん御存じだと思いますけれども、フランスは慢性的に高い失業率に悩んでいる。大体1970年代の終わり、または1980年代から、ずっと失業率が8%から12%という非常に高い率で推移してまいりました。ということは、失業問題あるいは雇用政策が政治的な非常に大きな課題にずっとなり続けてきたわけです。例えば、1981年に左翼のミッテラン大統領が初めて当選しますけれども、この一つのバックグラウンドになったのが失業問題と考えていいと思います。
それから40年間、フランスは政権が変わるごとに様々な雇用政策を行いまして、例えば、一番伝統的な職業訓練の充実、教育の充実あるいは労働時間短縮、ワークシェアリングの試み、あるいは助成された雇用、これは企業に対する補助も含めまして、様々な形がとられております。
それから、最近ではCOVID、新型コロナに伴いまして、フランスの場合は2020年3月から大体3か月間、家から一歩も動けないという非常事態でして、これをほとんどカバーしていたのが部分失業制度ということになります。これらの制度を使って、いろいろ試みておりますけれども、まだ失業問題が政治的に非常に大きな問題であると。このことを頭に置く必要があろうかと思います。
それから、2番目としまして労使関係の重要性というのでしょうか、御存じだと思いますけれども、フランスの労働組合の組織率は先進国の中で一番低いと言われていますけれども、ただし制度的な保障はあるものですから、組合の政治力・影響力は非常に強いです。例えば、団体交渉は毎年法的に行わなければならない。その内容につきましても、賃金、労働時間、安全衛生、これらすべて団体交渉を行わなければならないと法律で決められているということです。それから、組合の立場も組合代表の地位も法的に保障されております。ですから、労使関係の役割が大きいということを頭に置く必要があろうかと思います。
3番目といたしまして、職業資格がフランスの労働市場で一番大きな要因になっております。人を採用するときに何を聞くかといいますと、一番最初にどんな技能を持っているか、どんな職業資格を持っているかを聞くわけです。具体的な例は幾つもありますけれども、例えば、肉屋さん、肉の職人を考えてみますと、肉の職人になれる人は現在では肉職人用のバカロレア、高校卒業単位を持っていなければ、ほとんど肉屋の雇用に応じることはできない。大体ほかの産業につきましても、職業資格が非常に大きな要素になってまいります。
私は、長い間フランスのことを勉強していましたけれども、雇用問題、失業問題のときに何で職業訓練が出てくるのかなといつも疑問に思っていたのですが、企業が採用するときに職業資格を求めるので、職業資格を持っていない人はなかなか就職できない、こういうことになろうかと思います。ですから、逆に言いますと、技能を持っていない、教育レベルが低い人たちについては、就職は難しいあるいは長期失業者になる可能性が高いということでもあります。
この3つのポイントを頭に入れていただいて、簡単に現在の失業保険の概略を書き出しました。
保険の対象は全雇用労働者です。そして、失業給付の対象になる人たちは、原則的に民間の労働者で失職した者。ですから、自己都合ではないというのが原則です。失業保険に一定期間加盟した者ということで、24か月で130日と決まっておりますけれども、50歳以上の人については36か月で130日、3か月働けばいいと非常に大らかな制度です。我が国よりも非常に緩い制度になっていると思います。これには一つ歴史的な事情がありまして、例えば、放送や映画などの分野で働いている人たちは、大体一日、1週間単位の労働契約になるものですから、この人たちをある程度カバーしようというので、失業保険の加入期間がかなり短い期間に抑えられております。
それから、パートタイム労働者の場合は130日がそのまま使われまして、また、失業給付などにつきましては細かな質問を雇用センターに投げかけましたら、非常に細かな説明がございましたけれども、原則的に時間に応じて計算されているということです。
給付額につきましては57%から75%、下に厚いという給付額になっております。
給付期間につきましては、50歳未満の場合は4か月から24か月、50歳以上は36か月、実際に非常に長い期間が設定されております。このバックグラウンドをお話ししますと、50歳以上になりますと、再就職が非常に難しくなる。それから、年金受給との連結を図るという意味で、36か月という非常に長い期間が設定されております。
財源は、現在では使用者負担で、賃金総額の4.05%となっております。それに加えて、これは2018年からですけれども、CSGという社会連帯税の1.27%が払い込まれることになっております。
管理運営につきましては、Unedicという機関とPôle emploi(雇用センター)となっております。Unedicというのは労使が運用している機関です。政府機関ではありません。
それから、失業者扶助につきましては、連帯特別手当がございます。そうはいいましても、Pôle emploiでの求職者が現在650万、すさまじい数です。それから、失業給付者が260万。先ほどドイツが100万になっておりましたけれども、その2倍半という大変な数の受給者がまだおります。
失業給付総額は369億ユーロ、今の換算率でいくと5兆円を超えるのでしょうか。そのうち21年につきましては、部分失業に226億ユーロかかったということです。
ただ、失業扶助総額は国庫負担ですけれども、これは20億ユーロ。ですから、失業給付全体と比べると、かなり小さな数になっております。
4ページをお願いします。失業保険制度の歴史を簡単に御説明しますが、1958年にすべての雇用労働者の社会保険として創設されました。このとき国が介入するかどうかという議論があったようですけれども、結局、社会保険ということで労使が運用する制度としてできてまいります。その運用を託されたのがUnedicです。Unedicには5つの代表的な労働組合と3つの使用者団体が代表を出しまして運用しております。Assedicというのが保険の徴収、失業給付を担当する労働金庫みたいなものの集まりです。高度成長の最中、人手不足が続いた時代で、経済構造の変化に伴う摩擦的失業の救済が目標だったということです。1950年から1970年代まで非常に大きな黒字を出しまして、失業者には賃金の90%を払うということが続いておりましたけれども、その事情が大きく70年代に変化いたします。
失業問題が表面化する1967年に、国の雇用促進の機構としてAgence nationale pour l'emploi(ANPE)という機関が創設されます。これは国の機関です。
1980年代からは失業率が10%を超え、雇用問題が大きな政治問題になるということです。
1984年に失業保険が切れた人を対象とする社会的扶助制度ができてまいります。名前はその後いろいろ変わりますけれども、現在まで継続しております。
1990年から2000年にかけまして、EUやOECDなどの影響を受けまして、activation(失業者の再就職の促進)を重視する動きが強くなっております。
5ページをお願いします。2008年に長年懸案だった国の機関であるANPEとAssedicの合併により、Pôle emploiが誕生すると。これは次のスライドで御説明いたします。
最近では2018年に雇用労働者の拠出の代わりに、私の記憶では大体使用者2、労働者側1という割合で失業保険の財源になっていたのですけれども、その代わりにCSGをあてがうという変化が起こりました。これは国からのかなり強い要望があったということです。
2018年、2019年からは、実質的な制度の変更が行われ、まず政府がロードマップを示し、その後労使団体が協議することになるということで、かなり体質が違う制度になりつつあります。
2018年には政府の意向に沿い、労使の合意の下に失業保険の改革が行われ、ここで自営業者などへの一定の拡張が行われるわけです。この背景としまして、CSGは社会連帯税ですので、この場合は雇用労働者のみではなく自営業者も年金受給者も払うことになります。
2019年には、政府は法律で失業保険の改革を行うと。これは労使が合意できなかったものですから、政府は法律を通したというわけです。失業給付の受給要件の変更、短期・有期の雇用を多く使う産業への保険料を上げることを行っております。それから、現在、上院に失業保険の改革の議案が実際に出ているということで、失業保険は非常に政治的に動いている最中です。
6ページをお願いします。Unedicにつきましては、労使の代表が運用し、失業保険の保険料率や失業給付のルールなどを定めております。ただし、実質的な保険料の徴収はURSSAFという、これは社会保障関係の保険料を全部集めている大きな機関ですけれども、ここに託しております。それから、求職者の登録や失業給付の支払いは雇用センターに委託しております。ですから、Unedicの職員は大体300人ぐらいと言われておりまして、そのうちかなりの部分は白書をつくったり、労使に対するコミュニケーションを行っております。
雇用センターへの委託は、国とUnedicと雇用センターが3年ごとに協定を結びまして、予算や政策目標が決められる。直近の協定では22年までですので、現在もう協議が始まっていると言われております。
2021年にUnedicが事業主から徴収した額は約400億ユーロというものすごい額になっております。
もう一つ、Unedicの累積赤字は690億ユーロになっております。かなりの部分は新型コロナに伴うもので、この赤字は現在、政府担保の借入金で賄っております。
7ページをお願いします。先ほどちょっと触れました雇用センターの誕生ですけれども、それまで失業給付はUnedic、Assedic、民間の団体が運用しておりまして、再就職促進は公共部門で公務員のANPEという機関が携わるということで、これを一緒にしようという試みが何回も行われたのですけれども、結局結びつかず、2007年の大統領選挙で保守党のサルコジの公約の一つとして、求職者へのワンストップサービス、給付と同時に再就職を促進することを公約したものですから実現したという次第です。
その当時のANPEの職員数が3万人と巨大な機関です。その大部分は雇用アドバイザー。それから、Assedicは1万5000人、これは給付を担当しておりました。それにUnedicの一部が合併ということで、5万人という巨大な雇用センターという機関が出現いたします。この問題を非常に複雑にしたのは、ANPEという国の機関で公務員の身分だったことと、民間のAssedicの場合は、25%ほど賃金水準が高かったんですね。
これをどうにかまとめ上げまして、最初は雇用アドバイザーにも給付の認定作業をしてもらうという約束で合併が実現したのですけれども、実際には失業給付事業に大きな遅れが生じまして、これで失敗に終わって、職員はどちらかに専門化させるという効率を高めることを行います。
8ページをお願いします。雇用センターのプロフィールですけれども、現在予算規模が55億ユーロ、そのうち労使団体のUnedicが34億ユーロ、国が15億ユーロという予算になっております。
職員数は、現在5万4000人、雇用アドバイザーが2万4000人、大変な数です。給付担当が7,600人。それから、雇用アドバイザーの中で企業担当の人は5,500人という全体の数になっております。
事業所数は約900か所。ですから、ほぼ大きな都市には必ず雇用センターがあるということです。
失業給付の額が非常に大きくなっております。
9ページをお願いします。雇用センターは非常に大きな組織なものですから、パリにある本部、各地域、これは大きな地域という意味ですが、そこに統括事務所があります。そして、各地に雇用センターというオフィスができております。各地の雇用センターは大体人数にしまして10~20人ぐらいが担当しており、窓口で求職者の対応をすることになります。
ほとんどの作業は各雇用センターで行われます。各求職者には必ず個人的にアドバイスする雇用アドバイザーがつきます。1対1の関係になります。ですから、求職者が雇用センターの登録の際には、雇用アドバイザーと必ず面接いたします。ここでPPAEと呼ばれる個別再就職計画書を作成するわけです。この個別再就職計画書は実際には書式がコンピューターのソフトで決まっております。ですから、中に入れる用語、職業資格につきましても、ソフトにある中から選択して書き込むというシステムになっております。この書式の中に学歴、職場経験、求職者の希望、実際に地域労働市場、どの範囲で動けるか、それから、結構な問題として出てきますのは自動車を所有しているかどうか。例えば、老人ホームの介護の補助をするような人たちの場合は、自動車がなければ移動ができませんので、職業選択の範囲が非常に狭まってくる。こういうことなどをPPAEに書き込まれることになっております。このPPAEは求職者と相談しながらインプットしていく。そのコピーは当然、求職者に渡されるわけです。
このソフトの大きなポイントは、求職者のプロフィールから再就職の可能性の距離を測定する機能を持っております。
膨大な数の求職者・失業者に対応するために、2万4000人という雇用アドバイザーが必要になるということです。
10ページをお願いします。一般的に求職者は3つのグループに分類されております。1つは、suivi(follow)、求職者は個人的に再就職先を見つけることが可能と判断されたグループ。学歴があったり、企業が求める技能を持つ求職者、これはある意味で多分放っておいても再就職可能だろうということで分類されます。
guide(Guided)、求職者の希望と地域の企業の求める技能に相当の距離があるグループ。若者で夢を追っているような人たちの場合、雇用アドバイザーはどうやって求人と結びつけるかということで面談していくことになっております。それから、職業訓練の可能性なども探るわけです。
3つ目としましてrenforce(intensified)、これは長期失業者になる可能性が強い求職者。例えば、学歴がない、あるいは現在子育て中であり、時間がない、若年層で学歴が低い、ドロップアウトした人たちです。この人たちには、定期的に面談する必要があるということで、この3つのカテゴリーに分かれるわけです。
11ページをお願いします。過去には雇用センターは、失業率を低くするために全ての階層の求職者を同じように扱った時期もありましたが、現在ではguideとrenforceのグループを優先しています。これは何かといいますと、効率を重視しますと再就職しやすい人たちを援助することになって、一番難しい人たちが取り残される。この教訓から、現在では雇用センターは、むしろ個人では再就職が難しい人たちにアドバイスするという仕組みを優先していることになります。
現在の雇用センターの仕組みでは、雇用アドバイザーもかなり専門化していて、一番軽いグループ担当者の場合は1人で400人ぐらいを扱っているようです。guideの場合は150~200人、一番難しいrenforceの人たちは最高が70人、これが目標値なのですけれども、実際にはこれよりオーバーしているところが幾つもあるようです。
実際に雇用アドバイザーと定期的に面談、呼び出されたりしているのは、renforceとguideのグループということになります。
12ページをお願いします。これはちょっとマクロ的な視野ですけれども、採用市場における雇用センター経由の採用の比率を示す統計はありません。ただ、雇用センターや様々な国・自治体全て合わせて全体的に3分の1ぐらいが雇用センターなどを使って採用されているのではないかとみられております。そのほかは日本と同じですけれども、一般募集、縁故採用、大学や職業訓練校経由というのが3分の2ぐらいになっております。
雇用センター経由の再就職では、学歴が低く、市場が求める技能を持たない求職者が多いので、建設現場の労働者、荷物の搬送、清掃夫あるいは家事手伝いなどの職業が割合に多くなっております。それから、これは日本とちょっと違う点ですけれども、地域によってはパリの郊外などになりますと、大体人口の2割、3割が外国出身者となりますので、この辺も難しい問題を持っております。例えば、教育レベルをどう評価するか、職業経験をどう評価するかということについても難しい問題を抱えております。
中小零細の企業が主な就職先です。人事の専門家がいないので選択を雇用センターに任せる。逆に言いますと、雇用センターは誰でも推薦できるというわけではなくて、ある程度責任を持てる人を推薦することになります。
13ページをお願いします。今度は各論になりますけれども、雇用センターの作業のデジタル化は他の行政機関に先駆け、2015年から本格的に始まっております。それまで手書きで入力していた再就職計画書など、同じソフトを使い、同じ書式となっております。学歴の証明書、離職証明書、CVなどは1回目の面談の前に原則的にコンピューターに入力されます。ただ、実際にはちょっと遅れるケースもあるようです。それで1回目のときに雇用アドバイザーが分類を行いまして、書式にないところは日記という形で残しております。
雇用センターのシステム担当の局で働く職員は1,500人、大変大きな人数となっております。
それから、ひとたび登録した労働者は、いつでも雇用アドバイザーと連絡を取りまして助言を求めることができます。求職者には適当と思われる求人情報がパソコンあるいは電話、携帯に流されます。
PPAEの毎月の報告はオンラインでできます。
14ページをお願いします。失業保険の自営業への適用は、労働者負担をCSGが肩代わりしたことと関係いたします。そして、CSGは国民全体が負担するもので、自営業も失業保険の視野に入るという論理です。
実際の加入要件といたしましては、離職以前に継続した2年以上同じ職にあった人で、その職が失われた場合、自己都合ではありません、給付がなされるというシステムになっています。職人、事業主、農業経営者などが対象となります。
給付期間は最高6か月。それから、一日26.30ユーロ、ですから、月に800ユーロ。最低賃金が1,300ユーロですので、決して高い給付ではありません。
15ページをお願いします。雇用センターの問題点、これは私がいろいろなものを読んだ感想でもあるのですが、雇用アドバイザーは求職者との対応に追われ、労働市場の知識を持たない人が多い。ドイツなどでは企業との対応を行う人と、雇用アドバイザーがチームになって1つになって仕事をしていると言われておりますけれども、フランスの場合はかなり専門化しておりまして、どうもチームとして活動していないように思います。ですから、雇用アドバイザーは雇用アドバイザーに特化しているということで、地域の労働市場の知識が少し不足しているのではないか。これは会計検査院から指摘されておりました。
雇用センターを非効率的であるとする批判は昔からありますけれども、効率性の尺度はなく、結局、各雇用センターの実績、面談の頻度や求職者・企業の満足度、再就職率などを各地域の統括事務所が監視するにとどまっているのが現状だろうと思います。
全体的に雇用センターの職員は毎日面談が多くて、かなりストレスを感じている人が多いようです。大体3分の2、7割近くが女性の雇用アドバイザーだそうです。他の民間企業に比較し欠勤率が高く、労働時間も短い。ちょっと複雑な労使関係、2008年に合併したこともありますので、結構ストなどもあると聞いております。
16ページをお願いします。日本の雇用保険との違いということで、まとめとしまして、フランスではここ40年間、失業率と雇用問題は大きな政治的課題であったと。その影響でビスマルク型の社会保険であった失業保険は、実質的に政府の雇用政策の一つの柱になってきている。ただし、使用者団体・労働組合の政治力に配慮しまして、労使が運営する失業保険だという建前は崩しておりません。
雇用センターには、失業者の再就職の促進が強く求められております。そのため大量の雇用アドバイザーが個人的に求職者をフォローしています。ただし、雇用センターの求職者には教育・技能水準が低い人が多いので、雇用センター経由の再就職の確率はそう高くないようです。
600万人を超える求職者を扱うので、雇用センターのデジタル化は進んでおります。問題点として指摘されているのは、雇用アドバイザーの判断ミスによるグループ分けの問題、一番最初に軽いグループにされますと、ほとんど面談などがありませんので、困っている人たちもかなりいるようです。それから、インターネットに不慣れな求職者の存在、これはいろいろな講習会を行ってはおりますけれども、なかなか難しい問題だろうと思います。それから、時間に追われる職員のモチベーションなどが指摘されております。
では、最後の17ページをお願いします。雇用センターは人種や宗教、出身などに関係なく求職者を扱うのが原則になっております。地域によっては、求職者が外国出身で、学歴・技能の評価が難しいことが多い。雇用センターの置かれた地域によって、求職者の質が異なるようです。
規則では、就職活動に不熱心な求職者には失業給付の認定取り消しなどのサンクションが行われているが、実際には給付取り消しなどのケースは少ないように思われると。実際には、雇用アドバイザーの人たちは、非常に困った求職者を助けているのだという意識が強いものですから、私は求職者の監視役ではありませんという意識もあるのだろうと思います。
失業保険の財政問題、これはまだ現在解決されておりません。
ちょっと時間を長くとりまして申し訳ありませんでした。以上で終わらせていただきます。
○尾田雇用保険課長 鈴木先生、どうもありがとうございました。
それでは、今の事務局及び鈴木先生からの御発表を踏まえまして、委員の皆様から御意見・御質問をお願いできたらと思います。
恐縮ですが、名簿の50音順ということで、まず酒井先生から御発言をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○酒井委員 事務局の御説明、鈴木先生の御報告、ありがとうございました。大変興味深く聞かせていただきました。
私のほうから鈴木先生の御報告に対して聞きたいところもあるのですけれども、時間の関係もございますので、失業認定のことのみコメントさせていただきたく思います。
今回、市町村取次のオンライン化に関して方針案が示されましたけれども、基本的にこの方向性は、私、以前のこの会議でも申し上げましたけれども、賛成です。ただ、示された案ですと、オンライン化といっても市町村役場には出向くということのようですので、利便性を高めるという観点からは、例えば、自宅からオンラインでつないでもいいというようなこともあり得るのではないかということで、将来的に検討してもいいかなと感じたしだいです。
一方で、今後オンラインによる失業認定を一般化していくというか、適用範囲を拡大していくに当たって、多少懸念というか注意すべきこともあるのかなと感じております。私は、失業認定に関しては対面で認定して職業相談を行って、再就職につなげていくことが非常に大事だと考えております。ですので、オンライン化に当たって検証が必要ということは述べられていたかと思うのですけれども、その際にはオンラインによって失業認定がちゃんとできているのかの検証も非常に重要だと思いますが、それと同時に、オンラインで失業認定した場合に、そういった人たちの就職率がちゃんと保たれているのか、はっきり言ってしまうと、そういった人たちの就職率が低くなるようなことがないのか、そういう視点も非常に重要かと思います。その点も含めて検証が必要かと思います。
今言ったようなオンラインによる失業認定を行った場合に就職率が低くならないかを検証するには、市町村取次の事例だけで検証するのはサンプルサイズとしては少ないかなと感じますし、また、就職率であればその検証には時間がかかると思いますので、将来的な検証課題ということになろうかと思います。
私からは以上です。
○尾田雇用保険課長 酒井先生、ありがとうございました。
続きまして、佐々木先生は後ほどお願いするとして、まず土岐先生からお願いできますでしょうか。
○土岐委員 山口さんの御説明、鈴木先生の御報告、どうもありがとうございました。私
もオンライン化については今、酒井先生がおっしゃったのと同じような感想を最初に持ちまして、せっかくオンライン化するのであれば、自宅からつないだときにどんな問題が生じるかも含めて試行するのがよいかと思ったしだいです。8月にハローワークの視察に行ったときも、実際、失業認定者が来所してハローワークで実際の求人情報に触れてみたり、職業相談をその場でやっていることは非常に重要な意味があるのだということでしたので、そこも含めて検証できるといいのではないかと思いました。
それに関連して、どのようにオンライン化するかにも若干関わるかと思うのですけれども、視察をしたときに、コロナ禍の緊急対応をしていた時期に、失業認定を郵便で行っていた時期があったとお話しされておりました。私であれば、何となく郵送の手続のほうが簡単なので郵送を使ってしまうかなと思ったのですけれども、実際にはほとんどの方が来所して失業認定の手続をしているということでした。郵送だとタイムラグも生じるかもしれないというお話だったのですけれども、郵送の失業認定の課題がもしかするとオンライン化・デジタル化していくときに影響するところもあるかもしれないなと思いましたので、郵送の失業認定をしたときに、どんな課題があったかを質問させていただければと思っております。
とりあえず私からは以上です。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございます。
続きまして、水島先生、お願いできますでしょうか。
○水島委員 鈴木先生、御報告ありがとうございました。また山口調査官、御説明ありがとうございます。
私も失業認定をオンラインで行う方向には基本的に賛成ですが、職業相談との連携という点で意見を述べさせていただきます。土岐先生のご意見と共通します。
ハローワークの中には、失業認定と職業相談・職業紹介を別のフロアで行っているところもありますが、8月に土岐先生と視察させていただきましたハローワーク梅田は、ワンフロア対応を行い、来所者を適切な窓口に誘導する工夫がありました。特に、失業認定の窓口に来た人は、出口に行くまでに必ず職業相談の窓口の前を通ることになっていまして、また、職業相談が雇用保険受給中の人を対象とする窓口と、それ以外の職業相談窓口に分けられていました。失業認定のために来所した失業者がスムーズに職業相談の窓口に足を運び、職業相談を受ける流れがつくられていて、失業認定と職業相談が連携していることを実感しました。
先ほどの山口調査官の説明でも、失業認定と職業相談の連携の言及がありましたけれども、雇用保険の趣旨からもこの連携は重要と考えます。この連携が失業認定をオンライン化した場合にマイナスの影響が出ないか、少々心配です。
ハローワーク梅田の視察では、対面の職業相談のほか、オンラインでの職業相談も御紹介いただきました。オンラインでの職業相談も丁寧に行っておられまして、職業相談をオンラインで行うこと自体に問題はないと考えます。もっとも失業認定も職業相談も全てオンラインで問題ないという求職者も一定数いらっしゃると思いますが、逆にそうでない方もいらっしゃると考えます。
したがいまして、失業認定をオンライン化した場合に、職業相談との連携をどうするのかは、今後慎重に検討する必要があると思います。例えば、オンラインで失業認定した後、職業相談を連続させることを可能にする仕組みや、あるいは失業が一定期間になった場合には、失業認定について出頭を義務づけ、対面で職業相談を受けてもらうといったことが差し当たり考えられます。
また、私自身、整理できていないのですが、将来的な制度の在り方として、原則オンラインとするのか、あるいは原則は対面としてオンラインで代替できる場合を大幅に拡大するのか、両者のメリット・デメリットを職業相談との連携という観点を含め、検討する必要があると考えます。
それから、鈴木先生にはフランスの失業問題につきまして、フランスの特徴や歴史的発展を含め詳細な御教示をいただき、誠にありがとうございました。
感想になりますが、財源についての考え方、特に労使の保険料で保険を運営することから、その一部を社会連帯税に置き換えた点に非常に興味を持ちました。社会連帯税のような財源を入れることによって、保険の枠にとらわれない政策目標が達成しやすくなるように思いました。
それから、フランスでは求職者を3つのグループに分類されている点も興味深く、また、より職業相談が必要な人に手厚くするという方法は効率的であると思いました。ただ、先ほど先生からsuiviのグループで困っている人もいるというお話がありましたけれども、これは希望しても面談が受けられない、なかなか順番が回ってこないということなのか、そうであればその点は問題であるように私も思いました。
このようなグループ分けはしないとしても、日本でも実務上ハローワークで求職者の必要性の度合いに応じて面談を優先させるような方法をとっておられるのか、あるいは公平に順番に対応されているのか、もし可能であれば、日本の実務がどうなっているのかを御教示いただければと思います。
以上でございます。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございました。
それでは、山川先生、お願いできますでしょうか。
○山川座長 鈴木先生、山口さん、御説明ありがとうございました。
鈴木先生には後で1点お話していただける機会があろうかと思いまして質問があります。個別就職計画がどのように機能しているか、あるいはそれに何か問題があるかという点につきまして、もし何か御感想ないし御知見がありましたら、お伺いできればと思います。
あとは、失業認定に関わることですが、これまで先生方からもお話がありましたように、失業認定と職業相談が有効に連携することが再就職の促進等でも非常に重要なことかと思います。それとオンライン化の関係につきまして、オンライン化を促進する方向性は基本的には結構だと思いますが、恐らく職業相談という面につきましては、対面の有効性がより強く出てくるのかなと推測しています。視察のときにもかなり対面のニーズも多いというお話がありました。これは多分、求職者のタイプによって異なるのかなと思います。それを希望している人について望まないオンライン認定や特に相談を強制するようなことですと、あまり効果も生じないですし、そのあたりは制度設計を考える必要があると思います。
あと、大学の授業などでもハイブリッドだと一番大変だということがありまして、二重に進めるといろいろ大変なので、そのあたりも工夫を要するかなと思います。
あとは、オンライン化すると特にそうなのですけれども、職業相談の結果が頭に残りやすくする工夫も要るのではないか、相談した結果がその後の求職活動に生かせるような仕組み、鈴木先生にお伺いした個別就職計画もそういう色彩を持つかと思います。ただ、あまり細かく公文書のようなものを出すとすると、それだけで苦労が重なってしまいますので、チェックリスト的な簡単に相談の結果を求職活動に生かせるような工夫が何かできないか、あるいは既にやっておられるかもしれませんけれども、そういうことを感じた次第です。
以上です。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございました。
それでは、渡邊先生、お願いできますでしょうか。
○渡邊委員 御説明・御報告どうもありがとうございました。大変勉強になりました。私からは3点コメントさせていただきたいと思います。
まず、1点目ですが、失業認定の在り方との関係で、現在特定の求職者に対して個別支援計画を作成して就職支援を行っているという状況を現場の視察などで伺いました。そのような個別の支援計画を求職者全般に対して行うことを検討する必要性があるのではないかと申し上げておきたいと思います。現在行われている個別の求職者に寄り添う形で行われている個別支援計画は、一定の成果を上げていると考えられますし、そのような個別支援計画を作成して、計画どおりに進んでいるかどうかを確認する行為が、現在の失業認定において行われております求職活動実績の申告・確認作業の代わりになるのではないかと考えております。資料2の5ページに出てきたものかと思います。個別の求職者の事情に配慮して継続的な支援を行いやすくする点からも、さらに失業認定における実質的な求職活動の確認という点からも、求職者に対して個別支援計画を策定して就職支援を行う方法は利点も多く、検討すべきではないかと思いました。
2点目としては、失業認定などを含めましてオンライン化を図るといった方向性が示されているところですが、現場担当者が適切に対応するという観点からも、さらに、利用する国民の視点からも、雇用保険制度そのもののシンプルさが改めて問われているのではないかと思います。以前にも申し上げていたかと思いますが、雇用保険は失業政策において活用される制度という側面があります。その時々の社会状況に応じまして、暫定措置や特例的措置が多く講じられています。その時々の社会状況に臨機応変に対処するという点からは確かに利点が認められるのですが、その一方で、暫定措置や特例的な措置が多くなりますと、制度自体が複雑化してきます。そのため、その制度を正確に理解して運用するといった点では難しくなる面があろうかと思います。現場で実務を担当する者にとっても、制度を利用する者にとっても、どのような支援を利用することができるのか。あの給付とこの給付は同時に併給できるのかといったような多くの点で確認という作業が必要になってきておりまして、手間がかかるといった状況が見てとれるかと思います。制度を適切に運営して利用するといった観点からは、制度の複雑性の解消を改めて考えなければならないのではないかという考えを持っております。
3点目として最後になりますが、今申し上げてきた2つの点と密接に関わってくることとして、適切な就職支援や雇用保険給付の実務を担当するには現場の職員があまりにも少ないのではないか、この少なさを改善する必要があるのではないかということも申し上げておきたいと思います。資料2の7ページで、日本、フランス、ドイツの失業給付の運営比較を一覧表にしたものがございますが、その表の一番下に拠点数と職員数が示されております。ドイツ、フランスと比べますと、拠点数そのものも少ないのですが、特に日本は職員数、その中でも常勤の職員数が圧倒的に少ないことが見てとれます。各国で職員が担当している職務の違いはもちろんあると思うのですが、現状でも日本の職員数はその業務量に比べて少なすぎるといった印象がぬぐえません。特に、職員総数に占める常勤職員数は半数以下で、非常勤職員のほうが多くなっているといった実態がございます。個別の就職支援計画に基づく就職支援を考える上でも、その役割を担っていくであろう職員数が少ないということは大きな障壁になると思われますし、先ほどの暫定措置や特例的な措置への対応といった面から見ても、数少ない職員、特に常勤の職員のほうにより一層の負担を強いているのではないかということが懸念されます。制度の適切な運営といった面からは、職員数の見直しも併せて検討すべき課題であろうと指摘しておきたいと思います。
私からは以上です。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございました。
それでは、佐々木先生、お願いできますでしょうか。
○佐々木委員 出席が1時間ほど遅れまして、どうも申し訳ございませんでした。鈴木先生の御報告も聞くことができず、大変申し訳ございません。また、私は8月の視察もコロナ感染のため参加できなくて、今日は頂いた資料を基にコメントしたいと思います。
まずは失業認定申告書の話ですけれども、給付期間中に終了したり内職または手伝いをしたりして収入を得る場合、就職認定申告書に申告しなければいけないことになっております。労働時間に応じて雇用保険給付が減額されたり、その日数分を後に延ばしたりしているようですが、その確認作業が意外と手間がかかると聞きました。もし、非常に手間がかかる、すなわちコストがかかるのなら、就職期間中の就労、内職、手伝いの有無に関係なく、決められた給付金を決められた給付期間に支払うようにすれば良いかと思います。
求職期間中に求職活動せず内職した場合、その分求職期間内に就職できる確率が減るわけですから、後で困るのは本人です。給付期間中に内職することですぐに手元にお金が入りますが、将来、なかなか就職できないということとトレードオフがあるわけです。そのトレードオフをもとに、どのように行動を選択するかは本人に委ねても良いと思いました。
就職者の行動が完全に観察できない中、自己申告させるということなので、やはりモラルハザードの問題は考えられます。モラルハザードによるコストと確認作業によるコストを比較して、もし後者のほうが大きいと判断すれば、このような確認作業はやめても良いと思います。先ほど渡邊先生もおっしゃったように、職員数が他の国に比べたら少ないことになっています。職員数をすぐに増やすことができないのであれば、職員の負担を減らすことが必要だと思います。
できるだけモラルハザードを抑制して、給付期間中は求職活動だけに集中してほしいのであれば、少なくとも「給付期間中に就労していたことが発覚すれば、大きなペナルティーがありますよ」という強いメッセージを発信し続けることが考えられる対策かと思います。今でも最初に不正に受給すれば3倍返しみたいなことを伝えているようなので、そういうメッセージを与え続けることは有効ではないかと思います。
以上でございます。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございました。
それでは、本日臨時委員として御出席の柴田様、御発言をお願いできますか。
○柴田臨時委員 デジタル統括アドバイザーの柴田と申します。よろしくお願いいたします。また、説明どうもありがとうございました。
私は2回目なのですけれども、今日はITにずっと長く携わってきた経験から、IT技術を活用した失業認定ということで意見を述べさせていただければと思っております。
今回、来年遅くとも4月から試行を始めるということですけれども、今回の試行は最初はオンラインツールは使うけれども、あまりシステム的なところは使えないということで、それでもまずは、オンラインでの遠隔地からのコミュニケーションのノウハウを蓄積することが大事かなと、まず1点目に思います。2年半ぐらい前にコロナになって、オンラインの会議がどんどん行われるようになったのですけれども、最初はみんな結構懐疑的で、あるいはちょっと不安があったり、効率が悪いのではないかということもあったと思いますけれども、現在はどちらかというと対面でも行えるような会議でもオンラインで行うことも多くなりました。最初は操作に不慣れだったり、オンライン環境が不安定だったり、なかなか会議が成立しないということもあったのですけれども、近ごろでは移動が要らないとか、どこからでも参加できるということで、多くのメンバーが会議に参加するようになったんです。これはどういうことかというと、会議室の制約もなくて移動もないので、多くの関係者が参加するとメンバーのためのフィードバックも要らなくって、そちらのほうが効率いいからということで結構参加して、30人、40人、50人の会議も増えてきました。これというのは2年間やってきて実際にノウハウもたまって、メリットも実感できたということだと思います。
今回、失業認定をオンラインでやるということで、これは1対1ですけれども、お互い顔が見えることがあって、ただ、対面と違ってオンラインだと全身は見られないとか、歩いているところが見られないといったところはあるかと思いますが、Zoomとかこの会議なども録画できますし、そうすると前回の録画と表情や顔色がどう違うのかといったところも確認できて、あるいは会話の記録もできるとかいろいろなメリットがあるので、そういったところを生かしながら、4週間での求職活動の履歴の確認とともにオンラインあるいはシステムでの機能を組み合わせて、同様の失業認定を今までと同様にできるのではないかと考えています。
先ほども先生から言われましたけれども、今回、市町村役場に出頭するということですが、私も自宅からでもいろいろやれるのかなと、そういったことも試行してもいいのかなと思っています。そういう中で、ノウハウをためていく、そこで気づいたことをきちんと改善していくことが非常に重要かなと思いまして、そういったことをためていって失業認定をオンラインでやる、システムでやるために、状況に合ったデジタル技術を採用するか、そういったシステムをつくることが非常に重要かなと思います。今回のオンラインの失業認定では、例えばツールを使うことだけではなくて、システムで手助けをするのも非常に重要かなと思っています。
例えば、先ほどハローワークでも講習会や応募の採用・不採用というハローワークで分かるものはシステムの中にあるということも言われましたけれども、もっと広げて、就職活動の是非などをオンラインでも確認できるようにするとか、あるいはサービス向上ということでは、例えば今、ハローワークで順番待ちされている方もおられると思いますけれども、オンラインになれば例えば予約機能で予約することもできます。もちろん予約しないでも、その場で急にということでもいいようにしておくなど、そういった機能をつくっておく。そうすると、前の人の相談の長さでいろいろと時間が変わることもありますが、例えば定期的にあなたの待ち時間はどのくらいですとか、前の人が長引いているなどというのはメールなどで簡単に知らせることができるので、そういう意味では自宅などで待つことはあっても待ち時間も分かるので、待っている間に違う仕事をするといったこともできるということで、真に職を求めている人へのサービスの向上にもつながるのかなと。
あと、先ほどもある先生から言われましたけれども、職業相談との連携も例えば、失業認定の最後のほうで、画面とかシステム、機能の対応で、次の職業相談をどうされますかとか予約もできるようにしたりとか、そちらのほうに促すような、導いていくようなやり方もオンラインだとできる。オンラインで職業相談するか、出頭してやるかということも選べるようにするとか、そういった機能、スケジュール管理もできるのかなと。
あと、パソコン操作に不慣れな人も結構いらっしゃると思うのですけれども、今よくやられている操作や環境の事前確認といったことも機能として取り入れれば、安全に、予定どおりにやることもできるということが言えるのではないかと思います。
もう一つ最後ですけれども、そういったシステムを導入するとなると、結構時間もお金かかるというのはあるのですが、まずは、より確実・より効率に行うために、スモールスタートから始めてシステム及び業務の改善を一緒に続けていく、システムを変えていくことも重要なのかなと思っています。政府では今、システムをつくるときにサービスデザイン思考を取り入れているのですが、これは利用者のニーズに沿った情報システムをつくるためですけれども、その中に、サービス設計12箇条というものがあって、その1つに一遍にやらずに一貫してやるという方針があります。先ほど言いましたスモールスタートで改善を繰り返すということ、最初から完全なものを求めるものではないということなのですけれども、そういうやり方として機能を絞ってやる。PoC(Proof of Concept)という言葉もあります、概念実証。まずは、小さく必要な機能だけをつくって、多分ハローワークと違う外付けのシステムなのですが、そういったPoC、概念実証を行ってそこで確認しながら、例えば、失業認定の2回目からそういったことをやっていくとか、そういうやり方もあるのかなと思って、資料などを見させていただいて説明も聞かせていただきました。
私もハローワークシステムを今担当していますが、なかなかシステム本体の改修というのは時間もかかるし、そういう意味では、小さくやるというPoCみたいなところも、この試行と本当はできれば併せてやっていく、そういったシステムの力のサポートを借りながらやっていくことも重要かなと思いました。
以上でございます。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございました。
ここで、先ほど土岐先生、水島先生から御質問がございましたので、簡単に事務局からお答えさせていただきます。
○事務局 まず、土岐先生から御質問がありました、郵送認定の課題についてですけれども、認定日から郵送認定ということで申告書を送るということでタイムラグが発生します。対面日程の場合だと、その場で確認してすぐに支給できるのですけれども、郵送だと届いてから確認する。さらに、その確認のときも、このときはコロナで説明会などもできていなかったものですから不備が多かったということで、電話で確認しようとするのですけれども、なかなか本人が出てくれないということで確認に手間がかかったということで、大きく課題としては支給決定までのタイムラグが発生するのと、確認に非常に時間がかかるというところかと思います。
それから、水島先生から御質問がありました、フランスのように日本でも求職者を類型分けして対応しているのかという点についてですが、失業認定の関係では類型分けはしていないのですが、職業相談のほうで受給資格決定した後に、その方が早期再就職を目指しているかどうかということで、緊要度を見て緊要度が高いということであれば、個別支援計画ということで担当者制によるじっくり相談をやっていく、3か月とか期間を決めてやっていくという対応はしております。
簡単ですけれども、以上です。
○尾田雇用保険課長 それでは、鈴木先生から、先ほど山川先生からフランスの個別就職計画が機能しているのかという御質問もございましたし、各委員から御発言がございましたことを踏まえて、何かございましたら御発言いただけますでしょうか。
○鈴木臨時委員 山川先生、質問ありがとうございます。PPAEにつきまして、私、実際に雇用センターと夏休みの前にアポイントメントをとろうとしたのですけれども、残念ながら、バカンスのシーズンだったので人手がありませんと断られてしまいました。別のUnedicを通して、今度12月初めにフランスに帰りますけれども、実際に雇用センターに現場を見てみたいと、そのときに現場の人から実際のPPAEがどうなっているのか、問題があるのかどうかを聞いてみたいと思います。PPAEに関しての論文・報告書はほとんどないものですから、何とも言えません。私の知っている範囲では、PPAEの元になったのは、ANPEのころからできている再就職計画が発展して、現在のPPAEになったということのようです。ですから、事務局にメールか何かで実際にどうなっているか、1月か2月あたりに報告できるのではないかと考えております。
以上です。
○尾田雇用保険課長 鈴木先生ありがとうございました。またフィードバックをいただけましたら、委員の皆様にも共有させていただきたいと思います。どうもありがとうございます。
それでは、議題1については以上とさせていただきたいと思います。
大分時間が押して恐縮でございますが、次の議題に移ります。議題(2)は「求職者支援制度について」でございます。まず、事務局より資料について御説明申し上げます。
○平川訓練受講支援室長 訓練受講支援室長の平川と申します。よろしくお願いいたします。
資料4の2ページですけれども、求職者支援制度の特例措置の活用状況についてでございます。求職者支援制度は、雇用保険を受給できない方を対象に、月10万円の給付金と無料の職業訓練機会を提供することによってスキルアップを支援するという制度でございます。
給付金につきましては支給要件が設けられておりますけれども、この要件につきましてコロナ禍の中で特例的に緩和しているところでございます。この特例の趣旨でございますが、令和3年当初から緊急事態宣言が断続的に発出されるといった中で、休業を余儀なくされる方やシフトが減少したシフト制労働者の方が、仕事と訓練受講を両立しやすい環境整備を図るという観点から実施しているものでございます。これらの特例は、本年度末までの時限措置となっておりまして、現在までの活用状況についてまとめましたので、御報告させていただきます。
特例措置の具体的な内容につきましては下に書いてございますけれども、本人収入要件といたしまして、シフト制で働く方については収入要件を8万円から12万円に引き上げる。
世帯収入要件は配偶者の方や親御さんと同居している場合ですけれども、世帯収入が25万円を超える場合は支給しないという要件を月40万円以上に引き上げる特例でございます。
出席要件につきましては、もともとはやむを得ない理由以外で欠席した場合は給付金が支給されないことになってございますけれども、例えば、子どものぐずりなど証明できない理由で出席できない状況も考えられますので、そういった場合、やむを得ない理由以外の理由で欠席した場合は、訓練実施日数の2割までであれば日割りで減額して支給するというものでございます。※で書いてある下のほうになりますけれども、病気による欠席の場合は、もともとやむを得ない理由として取り扱っておりますが、特例措置といたしまして、仕事による欠席につきましてもやむを得ない理由として取り扱うこととしております。
訓練対象者につきましては、非正規雇用労働者の方などがほかの職場への転職を希望せず、働きながら訓練を受講して現在の職場でそのまま正社員となることを希望するような場合も訓練受講の対象とすることとしたものでございます。
一番下の訓練基準は、職業訓練の実施機関が訓練コースを設定する際の基準を緩和いたしまして、短期間あるいは短時間の訓練コースの設定ができるようにしたものでございます。
こちらの活用状況につきまして、ハローワークでアンケート調査を実施いたしました。3ページですが、調査は2つ行っておりまして、調査1は、訓練受講者の方へのアンケート調査でございます。訓練受講中の方は、月に1回ハローワークに来所して職業相談することになっておりますので、そういった際にアンケートを回収しております。
調査2は、ハローワークの職員が訓練受講希望者の職業相談を行った中で、受講申込みに至らなかった方について、その理由をハローワークの職員から報告させたものでございます。
アンケートの結果ですけれども、4ページです。まず、訓練受講者の属性ということで女性が7割、左下が年齢ですけれども、比較的幅広い年齢の方に受講していただいています。右下のグラフは、育児・介護をしながら訓練を受講している方の割合で、訓練受講者全体の8.2%となってございます。
5ページですけれども、働きながら訓練を受講している方の状況をまとめたものでございます。左上のグラフで、働きながら訓練を受講している方は全体の15%、左下のグラフで、そういった方たちは比較的若い層に多いということでございます。右が働き方になりますけれども、1週間の就労日数は週3日以内という方が大半。週20時間未満という方が大半。就労による収入につきましては、9万円未満の方が大半といった状況になってございます。
6ページでございますけれども、訓練受講の目的を聞いております。「未経験の職種に転職・就職するために新たなスキルを習得したい」というものが一番多くなってございます。ただ、右のグラフを見ていただきますと、年齢層が上がってくると「経験のある職種で就職・転職するためにさらにスキルアップしたい」のオレンジ色の部分が増えてくるといった状況でございます。
以上が回答者の属性でしたが、7ページから特例措置の活用状況でございます。特例措置は今いろいろ御説明しましたけれども、いずれかの特例措置を利用した方は受給者全体の15.6%でした。世帯収入要件の特例が9.1%ということで最も活用されております。訓練対象者の要件、転職を目指さない方も対象とするといった特例は、本アンケートでは対象になった方はいらっしゃいませんでした。
8ページから要件ごとの適用状況でございますけれども、まず収入要件で、左側が本人収入要件の関係でございます。働きながら訓練を受けている方は全体の15%と申しましたが、その中で本人収入要件を活用されたのが13.7%ということでございます。右のグラフが世帯収入要件の適用割合ということで、全体の適用割合は先ほど9.1%と申しましたけれども、働きながら訓練を受講されている中での適用割合、育児をされながら訓練を受けている方の中での特例措置の適用割合、それぞれ11.9%、23.5%ということで割合が高くなっております。
9ページでございます。出席要件の特例措置の適用状況でございます。左がやむを得ない理由以外の欠席の適用割合でございまして、子どものぐずりなど証明できない理由による欠席などを想定した特例措置でございますけれども、右のグラフが育児中の方の中で適用された割合ということで、育児中でない方より適用割合が高くなっております。右のグラフが仕事のための欠席の適用割合でございまして、一番右の棒が合計になりますけれども、働いておられる方の中で特例の利用割合は3.2%ということで、それほど利用割合は高くなかったということでございます。
10ページでございます。調査2でございます。訓練を受講しない理由をハローワークの職員に報告させたものですが、訓練を受講しない理由としては「毎日通所することが困難」「就職を優先したい」「受講したい分野の職業訓練がない」「給付金の対象外である」といったことが上位となっております。右が育児中の方が受講しない理由で、何らかの理由で通所することが困難という回答が多いということでございます。
11ページは、今の理由の年齢別のグラフですけれども、時間の関係で飛ばさせていただきます。
12ページは、実際の特例措置が適用された件数でございます。御参考でございます。
最後13ページ、議論の論点でございますけれども、上の○で今回の特例活用状況についてどのように考えるか。その観点に加えまして下の○ですけれども、こういった特例措置を実際にやってみた活用状況も踏まえまして、今後の求職者支援制度全体の在り方という観点まで含めて、幅広く御議論をお願いできたらと思っております。
以上でございます。
○尾田雇用保険課長 それでは、今ほどの説明につきまして順次御発言をお願いできればと思います。
また、50音順で恐縮ですけれども、酒井先生から順に御発言をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
○酒井委員 御説明ありがとうございました。
求職者支援制度の特例措置の利用実態ということで興味深く、関心を持っていたわけですけれども、それが分かってきたということで、とてもいいことだと思っております。ただ、これは分析の第一歩と認識しておりまして、今後さらなる分析が必要かなと思っております。具体的に言えば、特例措置の意図した効果が発揮されているのか、あるいは意図せざることが起きていないか、モラルハザードといったことが起きていないかといったことに関する精査が必要かなと思っております。その上で、特例措置の是非を論じて、廃止すべきは廃止という決定もなされるべきではないかと感じております。
ただ、一方で、単純に特例措置の利用が少ないから今後は廃止だといった発想でいいのかという思いもございます。今回、私が注目しているのは、転職を意図しなくても求職支援制度を利用できるという適用対象の拡大による特例措置なわけですけれども、残念ながら、今回の御報告によると利用実績は非常に少ない、あるいは6ページの資料などでも訓練受講の目的として、「経験のある職種で就職・転職するためにさらにスキルアップしたい」という理由は、あまり高くないということです。ただ、リスキリングという観点からは、こういった転職しないでも経験職種の中でスキルアップするために求職者支援訓練を活用するということも非常に重要なのではないかと思っております。
そういう観点からは、今回の特例措置のうち適用拡大の措置に関しては、非常に重要かと思っておりますので、単純に利用実態が少ないので廃止ということにはならないほうがいいかなと感じているしだいです。
私は以上です。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございました。
それでは、佐々木先生、お願いできますでしょうか。
○佐々木委員 どうもありがとうございます。時間もないので手短にお話ししたいと思います。
論点の中で今後の在り方があったと思いますけれども、検証すべきことは求職者支援訓練の効果検証ではないかと思います。もし効果検証によって効果があるなら、今度は求職者支援訓練に参加を促すためにどうすべきかを考えなければいけないと思います。
厚生労働省と内閣府の研究会である「雇用・就労に係るEBPM推進・拡充タスクフォース」でも求職者支援訓練の効果検証をしております。私も参加していますが、8月23日に開催された今年度の第1回検討会の資料から、分析の方向性としては、求職者支援訓練を受講することで安定した雇用につながっているのか、そして、希望どおりの雇用形態等の仕事に就けたのかを検証する予定になっております。
今のところ、求職者支援訓練を受講している人を介入群、訓練を受けておらず、かつ雇用保険基本手当の被受給者を対照群として分け、単純に2つのグループを比較したところ、介入群の人たち、すなわち訓練を受けた人たちのほうが就職確率は高いという結果となりました。これはまだ予備的な結果ですが、今後このタスクフォースにおいてもっと詳しい検証が行われる予定です。
私からは以上です。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございます。
それでは、土岐先生、お願いできますでしょうか。
○土岐委員 先ほど言い残したことではないのですけれども、事務局からの補足説明を聞いてということなのですが、さっきのオンライン化の議論のところで、受給者が作成した書類を補正しないといけない箇所が多かったりすることもあるのですぐに認定できないというお話だったと思うのですけれども、オンライン化というと電子申請が思い浮かぶのですが、多分、委員の皆さん暗黙の内にリアルタイムのコミュニケーションが伴う形でのデジタル化を念頭に置いていたと思われるので、その点は確認しておいたほうがいいのかなと思って付け足しで発言しております。
求職者支援制度については、平川さん、御説明どうもありがとうございました。私も利用頻度が低調だからということだけで廃止するべきではないだろうと思いました。そもそも特例措置の利用が始まってからまだ1年とか、2年はたっていないと思われるので、すぐに効果がある、ないということ自体そもそも判断が難しい状態ではないかという感覚を持っております。
2ページに、それぞれコロナ禍で講じている特例措置が、なぜこのような措置を講じているかという理由が書いてあるのですけれども、それぞれのものは必ずしもコロナ禍だからこういう措置なのですということではなくて、より制度を一般的に使いやすくなる点から考えたときに、すべて同じように当てはまる事柄だと思います。ですので、先ほど酒井先生もおっしゃっておられましたが、利用頻度が低いから廃止すべきというよりは、むしろ前向きにというか、要件が緩和されたことで従来利用できなかった人が利用できるようになった、広く拾うべき人を拾えるようになったという前向きな捉え方をしたほうがいいのかなと思いました。
早口で申し訳ありません。以上です。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございました。
それでは、水島先生、お願いできますでしょうか。
○水島委員 御説明ありがとうございました。特例措置の活用状況をどのように分析するべきかは酒井先生が説明してくださったことに尽きます。
私は、特例なので利用頻度は低くて問題がないと考えております。むしろモラルハザードの点からあまり高かったら問題と思っておりました。特に、出席要件の緩和の影響を気にしていましたが、利用率(欠席率)は思ったほど高くなく、継続しても制度の趣旨を損なわないように思いました。ただ、12ページの月別の比較を見ますと、出席要件の適用件数、割合の増加傾向があり、これは利用が進んでいると見るべきなのか、あるいはモラルハザードを心配し始めたほうがいいのか、というところではないかと思います。
以上でございます。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございました。
それでは、山川先生、お願いできますでしょうか。
○山川座長 特に付け加えることもないのですけれども、同じようにコロナ禍にかかわらず有益なものは残すことを検討する必要があろうかと思います。
もう一つは、訓練の中身の問題もありまして、趣旨に照らして有益な訓練を提供しているかどうかという点も検証が必要かと思います。
以上です。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございます。
それでは、渡邊先生、お願いできますでしょうか。
○渡邊委員 私からも1点だけなのですが、特に今回のような特例措置というのは、そもそも利用者が制度の有り様を知っているのかという点が大きな影響を与えると思いますので、調査の結果の判断は慎重になされるべきだと思いました。
以上です。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございました。
それでは、本日の議論全体につきまして、追加的に言い足りないこと等がございましたら、どなたでも結構ですが、ございますか。よろしいでしょうか。
それでは、このあたりで本日の議論を終了したいと思います。
最後に、山川座長から総括ということで御発言いただければと思います。
○山川座長 本日は、いろいろありがとうございました。有益なお話・御説明を伺えて、また、非常に有益な議論がなされたと思います。失業認定の在り方が一つの大きな柱だったのですけれども、オンライン化等も含めて新たな方向性を考える場合には、皆様の御議論からはハローワークの中で失業認定の果たしている全体的な役割といいますか、他の機能との関わりも考えて検討する必要があるというのが1つ思った点です。
もう一つは実施体制、特に組織や人員の在り方の問題、一方では、オンライン等のシステムの中身の問題も含めて検討していくことになるのかなと思いました。
いずれにしても、新しいことをする場合は試行錯誤にならざるを得ないと思いますので、他国の仕組みやあるいはハローワークですと所ごとにいろいろ独自なことができますので、ノウハウや経験の共有を図りながら、PDCAサイクル的に進めていくことになろうかと思った次第です。
本日はどうもありがとうございました。
○尾田雇用保険課長 ありがとうございます。
それでは、以上になります。本日は闊達な御議論をいただきまして、ありがとうございました。
次回の日程等の詳細は、追って御連絡させていただきます。
本日の研究会は以上で終了させていただきます。委員の皆様、柴田様、鈴木先生、どうもありがとうございました。