2022年8月30日 第177回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年8月30日(火) 10:00~12:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

【公益代表委員】
 荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、佐藤(厚)委員、藤村委員、水島委員、両角委員
【労働者代表委員】
 梅田委員、川野委員、櫻田委員、東矢委員、冨髙委員、八野委員、世永委員
【使用者代表委員】
 池田委員、鬼村委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、鳥澤委員、山内委員
【事務局】
 鈴木労働基準局長、青山審議官(労働条件政策、賃金担当)、松原労働条件政策課長、竹野監督課長、吉村労働関係法課長、田邉労働関係法課総括調整官、小川労働関係法課課長補佐、長澤労働条件企画専門官

議題

  1. (1)無期転換ルールについて
  2. (2)労働時間制度について

議事

議事内容
○荒木分科会長 定刻になりましたので、ただいまから第177回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施をいたします。
本日の委員の出欠状況ですが、労働者代表の北野眞一委員、使用者代表の兵藤美希子委員が御欠席と承っております。
なお、労働者代表の梅田委員は電車の遅延の関係で少し遅れての御到着と伺っております。
カメラ撮りはここまでということでお願いします。
本日の議題に入ります。
本日の議題(1)は「無期転換ルールについて」です。
事務局から説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 事務局の方から、無期転換ルールに関する論点についての資料に基づきまして説明をさせていただきます。
資料No.1と付されております資料を御覧ください。「無期転換ルールに関する論点について」でございます。
資料の右下にページ番号を振っておりますけれども、1ページ目を御覧ください。論点項目一覧ということで、本日御議論いただきたいと思っておりますのが冒頭の「1.無期転換ルールに関する見直しについて」で、(1)から(7)まで赤字で記載をしております。これらの論点について、本日御議論いただきたいと考えております。個々の論点につきましては、2ページ目以降で御説明をいたします。
資料の2ページ目を御覧ください。ここからがそれぞれの論点に入ってまいりますけれども、資料の構成といたしましては、まず冒頭にこれまで御議論いただいておりました論点につきまして記載をしております。その上で、その後に参考といたしまして、これまでの分科会における主な議論を御紹介いたしまして、その後に対応の方向性(案)といたしまして事務局の方で整理したものを記載しているという構成になっております。
まず、「(1)総論」についてでございます。論点については3点ございました。
無期転換ルールの活用状況について、どう考えるか。
2点目でございますけれども、無期転換ルールは、雇用の安定性や雇用管理にどのような効果・影響があったと考えられるか。
3点目といたしまして、見直しの方向性について、どのように考えるか、ということでございました。
対応の方向性(案)といたしましては、2ページ目の一番下に記載をしております。
制度の活用状況を踏まえますと、導入目的であります有期契約労働者の雇用の安定に一定の効果が見られ、現時点でこのルールを根幹から見直さなければならない問題が生じている状況ではないと考えられますけれども、制度が適切に活用されるよう、必要な見直しを進めていくことが重要ではないかということで、案として整理をさせていただいております。
3ページ目を御覧ください。2点目の「(2)無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保」でございます。
論点といたしましては、3ページ目の上に1点記載をしております。希望する労働者の転換申込機会の確保についてどう考えるかというものでございまして、具体的には、検討会で示されました対応策として2つ黒丸が記載されております。労使双方に対するルールの更なる周知、2点目の黒丸ですけれども、使用者から個々の労働者に対しまして、無期転換申込機会に関する通知を行うことについて御議論をいただきました。
対応の方向性(案)といたしまして、3ページ目の下のほうに記載をしております。2点ございます。
1点目が、労使の認知状況を踏まえまして、無期転換ルールの趣旨、内容、活用事例について、一層の周知徹底に取り組むこととしてはどうかという形で、案として整理をしております。
2点目といたしましては、無期転換申込権が発生する契約更新時に、労働基準法の労働条件明示事項といたしまして、転換申込機会と無期転換申込後の労働条件につきまして、使用者から個々の労働者への通知を義務づける形にしてはどうか、という案として整理をさせていただいております。
資料の4ページ目を御覧ください。「(3)無期転換前の雇止め等」についてでございます。論点としては3点ございました。
1点目といたしましては、雇止めや無期転換回避策と見られるもののうち、問題があると考えられるケースへの対応についてどのように考えるか。
2点目といたしまして、更新上限設定に関します紛争の未然防止や解決促進のための方策について、具体的には2点黒丸が記載されておりますけれども、検討会報告書で示された対応策についてということで、1点目が、労働条件明示の際に、更新上限の有無、それからその内容を明示することについて。2点目の黒丸でございますけれども、最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合に、上限設定の理由を説明することについて。大きな2点目がこういったことについて御議論いただきました。
論点の3つ目でございますけれども、無期転換申込みを行ったことなどを理由とする不利益取扱いについての対応について御議論いただきました。
これについての対応の方向性(案)といたしまして、5ページ目を御覧ください。真ん中辺りから下に対応の方向性(案)として2点ございます。
1点目といたしましては、雇止めや不利益取扱い等につきまして、法令、裁判例に基づく考え方、留意点などを整理して、周知をする、それから、個別紛争解決制度に活用していくこととしてはどうかということで、案として整理をしているのが1点目でございます。
2点目が、紛争の未然防止や解決促進のために、①が更新上限の有無、それからその内容の労働者への明示を義務づけることとしてはどうかというものでございます。②が最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける、それから更新上限を短縮するような場合につきましては、その理由の労働者への事前の説明を義務づけることにしてはどうか、という形で、方向性(案)として整理をしております。
資料の6ページ目を御覧ください。「(4)通算契約期間及びクーリング期間」でございます。論点といたしましては1点、通算契約期間とクーリング期間についてどう考えるかというものでございます。
これにつきましての対応の方向性(案)といたしましては、6ページ目の下の方を御覧ください。通算契約期間、クーリング期間につきましては、現時点で枠組みを見直すまでの必要性は生じていないと考えられますけれども、法の趣旨に照らして望ましいとは言えないような事例につきまして、一層の周知徹底に取り組むこととしてはどうか、という形で、方向性の案として整理をさせていただいております。
資料の7ページ目を御覧ください。「(5)無期転換後の労働条件について」でございます。論点としては2点ございました。
1点目が、無期転換時に労働条件の別段の定めをする場合の留意点について、それから無期転換後の労働条件の見直しについてどう考えるかというものでございます。
2点目といたしましては、無期転換者とほかの無期契約労働者との待遇の均衡についてどう考えるかということで、検討会で示された対応策といたしまして1つ黒丸がございますけれども、使用者から個々の労働者に対しまして、無期転換後の労働条件について均衡を考慮した事項について説明をするよう促していくことについて御議論をいただきました。
(5)の労働条件につきましては多数御発言がございましたので、主な議論を7ページ目、8ページ目で御紹介しておりまして、9ページ目に対応の方向性(案)という形で整理をさせていただいております。
無期転換後の労働条件につきまして、対応の方向性(案)として3点整理をさせていただいております。
1点目が、無期転換後の労働条件につきまして、有期契約時と異なる定めを行う場合を含めまして、法令、裁判例に基づく考え方・留意点を整理して、周知に取り組んでいくべきではないかというものでございます。
2点目といたしましては、無期転換後の労働条件につきまして、有期フルタイム契約の労働者につきましては、無期転換をした場合にパート有期労働法の適用を外れることがございますので、こういったことも踏まえまして、労働契約法第3条第2項を踏まえました均衡考慮が求められる旨を周知する。それから、均衡を考慮した事項につきまして、使用者から労働者への説明を促す措置を講ずる、こういったことをしてはどうかと考えているというのが2点目でございます。
3つ目の○でございますけれども、正社員の転換をはじめとするキャリアアップ支援に一層取り組むこととしてはどうかという形で、案として整理をさせていただいております。
10ページ目を御覧ください。「(6)有期雇用特別措置法に基づく無期転換ルールの特例」についてでございます。論点といたしましては、この特例についてどう考えるかということでございます。
対応の方向性(案)といたしましては、10ページの下に記載をさせていただいております。この特例につきまして、十分に認知されていないという現状があるということで、さらなる周知に取り組むこととしてはどうかというものを案として整理をさせていただいております。
資料の11ページ目を御覧ください。「(7)その他」でございます。論点といたしましては1点。労使コミュニケーション等を通じました無期転換ルールの円滑な運用の促進について御議論をいただきました。
対応の方向性(案)といたしまして、11ページ目の下に記載をさせていただいております。
1点でございますけれども、ルールが円滑に運用されるよう、好事例の周知など多様な労使コミュニケーションを促していく方策の実施に一層取り組むべきではないか、という形で、案として整理をさせていただいております。
資料No.1の説明は以上でございます。
あと、参考資料として、参考資料No.1からNo.5まで、今回の論点に関しましてお配りをしておりますけれども、説明は省略させていただきます。
事務局からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、論点は特に区切らずに御議論いただきたいと考えておりますので、無期転換ルールに関する論点全体について、委員の皆様より御質問、御意見があればお願いしたいと思います。
なお、オンライン参加の委員の皆様におかれましては、発言の希望がある場合にはチャットのほうに発言希望と書き込んでお知らせください。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 御説明ありがとうございます。
今、全体を御説明いただきましたけれども、私からは総論と無期転換前の雇止めの点について意見と、1点質問をさせていただきたいと思います。
まず、総論における見直しの方向性でございます。改正労契法の施行前から無期転換ルールにつきましては行政及び労使が協働しながら継続的に周知を行ってきたにもかかわらず、ルールの認知状況は4割弱と低いままで、無期転換の申込権を実際に行使された方は全体の3割に満たないのが現状であるのは皆さんも御承知のとおりかと思っております。
参考資料No.2の19ページには無期転換に係る現状ということで、個別説明など対象を絞った形で説明された労働者のほうが、無期転換申込権を行使した割合が高くなっているという結果ですが、このようなことを踏まえると、無期転換ルールの周知が不十分だったことが、活用が十分に進んでいなかった一因ではないかと考えられます。
対応の方向性は、全般的に周知を徹底していくということが今回様々散りばめられております。これは現状を踏まえたものだと思っておりますし、法の趣旨に沿って適切に対応するという観点で申し上げれば、一層の周知に取り組むということは我々としても望ましいとは考えております。しかし、本当にそれだけでいいのかということを考えると、処遇改善を含めた総合的な雇用の安定を実現するという意味では、十分ではないと考えているところです。
資料にも記載されていますけれども、労働側が今まで申し上げてきた、契約締結や更新時ごとの労働者への無期転換ルールの周知の義務づけ、無期転換者の納得性をしっかり高めていくための均衡考慮に関する説明の義務づけ、無期転換回避策やクーリング規定の濫用防止など、転換後の労働条件改善に関するさらに踏み込んだ取組が不可欠ではないかということを改めて申し上げておきたいと思います。
もう一点、無期転換前の雇止めのところ、資料の5ページです。1つ目の対応(案)、問題がある無期転換回避策への対応についてですけれども、労働側としましては、雇用の原則は期間の定めのない労働契約が基本であると考えておりますので、本来であれば入口規制を導入するべきではないかというのが基本的な考えです。
有期雇用労働者の雇用の安定化を図るという無期転換ルールの趣旨を踏まえれば、まずは雇止め自体が望ましい運用ではないということを徹底する。これは労使ともに同じ意見ではないかと考えているところです。
その上でお伺いしたいのですが、法の趣旨に反しない雇止めとは、具体的にどのようなケースが該当するのかというところをお伺いしたいと思います。これは質問です。
○荒木分科会長 それでは、質問が出ましたので、事務局よりお願いいたします。
○労働関係法課長 冨髙委員から雇止めにつきまして、法律の趣旨に反しないようなケースがあるのかどうかについて御質問がございました。
これにつきましては、必ずしも更新の上限を設定すること自体は禁止されているものではございませんので、あらかじめ更新上限を定めているような場合で、それをきちんと労働者にも事前に御説明をされていて、そのルールに従った上で、この上限に達したということで、契約を更新しないというような場合につきましてまで法の趣旨に反する問題がある事例とまでは言えないのではないかと考えております。
○荒木分科会長 冨髙委員。
○冨髙委員 ありがとうございます。
そうなりますと、使用者が様々に合理的な理由もなく上限を設定することで、もともと有期契約で働く労働者の方たちの雇用の安定のためにつくった無期転換ルールが形骸化してしまうおそれがあります。使用者の一方的な理由で上限を決めること自体が、本来の法の趣旨に反するのではないかということについては申し上げておきたいと思います。
そもそも法の趣旨に反しないケースというのは、例えば有期のプロジェクト業務とか、かなり限られた非常に限定的なものではないかと考えております。実際、本当に今の雇止めが限定的なものなのかどうか、実態をしっかり把握する必要もあると思いますし、合理的な理由がない使用者からの一方的な上限設定によって、労働者が無期転換申込権を行使できないということがあっては絶対にならないと考えているところでございます。
以前も申し上げましたが、実際に労働相談の中では、問題がある雇止めであっても、裁判まで行くのが難しくて、泣き寝入りとなっているようなことも多々ございます。そのような現実がある中で、法令等の考え方や留意点の周知という方向性の案が示されていますけれども、それだけで労働者を救済していくことは難しいのではないかと考えております。検討会報告でも議論がありましたが、無期転換申込みをしたことを理由とした不利益取扱いの禁止などの回避策へのさらなる対策が必要なのではないかということを改めて申し上げておきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、オンラインのほうから、鳥澤委員から御希望が出ております。お願いいたします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
また、御説明ありがとうございました。
私からは、前回までの発言と重複しますが、無期転換ルールの周知について御意見を述べさせていただきます。
今回御提示いただいた資料にも記載されているように、基本的には各論点について、「労使双方に対し丁寧な周知が必要である」という点は共通しており、これまでの議論で委員の皆様から出た意見を踏まえたものとして私も同意しています。
ただし、2013年から無期転換ルールが施行されて早9年が経っていますが、ルールについて知らない労働者が4割弱存在するということから、周知方法について従来のやり方を抜本的に見直し、強化していく必要があるのではないかと思います。9年間周知をしていただいてきたものの、それでもやはり何かが足りないのだろうと思っています。
なお、周知に当たっては、制度の内容に加え、円滑に進めるためのノウハウ、参考となる書類のフォーマット、好事例の提供など、きめ細やかなサポートをお願いしたいと思っております。
以上、私からの意見でございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、池田委員、お願いいたします。
○池田委員 どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
私からは、均衡処遇に関して意見を申し上げさせていただきたいと思います。
まず、無期転換者と他の無期契約労働者との均衡待遇についてでございますが、これまでも申し上げてきましたけれども、いわゆる同一労働同一賃金の法改正を機に、各社は有期契約労働者と通常の労働者との間で処遇のバランスを取る対策を講じておりますので、雇用形態間の均衡待遇は相当進んでいると認識しております。そのため、無期転換後の労働条件も基本的には通常の労働者との間で均衡待遇が実現されており、改めて均衡待遇が図られているか否かに焦点を当てる必要性は少ないと考えます。
また、無期転換を行う際に、別段の定めにより処遇を見直すケースもあると思いますが、この場合にも処遇の見直しは業務内容や職責、配置変更の範囲などとセットで考えるべきものであります。そのため、業務内容や職責などが変わらないにもかかわらず処遇を引き下げることは、特段の事情、有期プレミアムなどがない限りは適切とは言えず、引き続き周知していくことが重要と考えますし、他方で、処遇の引上げについても、業務内容や職責が重くなることとセットで行われるべきものと考えますので、ポストを用意する事業者側の事情と、そうした働き方を希望するかどうかという働き手の事情が合致する必要があろうかと思います。
政策的に1つの方向性を示すというよりは、労使双方の事情により、無期転換ルールや独自の制度、正社員登用などの制度を運用している実態を尊重していただけるとよいと思っております。
意見は以上です。
1点、お願いがあります。参考資料No.3として判例の資料があり、1ページ目の下から2番目に日本通運事件に関する記載があります。詳細は13ページ目以降に詳しく書いていただいているのですが、1ページ目の下から2段目にサマリーしていただいている内容が、断片的というか判決の前段部分だけになっており、結果が誤認されるようなサマリーだと思います。できれば修正するか、付言いただければと思います。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
取りあえずオンラインでの御発言希望にお応えしたいと思いますので、佐藤晴子委員、お願いいたします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
私からは、先ほど冨髙委員から御発言があった点で、念のため申し上げておきたいと思いまして発言させていただきます。
資料は3ページ、転換機会の確保ということで、先ほどあったかと思うのですけれども、使用者が個々の労働者へ転換申込機会と転換後の労働条件を通知するということは、労働者が制度を認知していなかったために発生するようなトラブルの防止にもつながると考えますので、非常に重要なことかと思っておるのですが、一方で、先ほど聞き間違いでなければ、そのタイミングについて、契約更新ごとの周知というお話があったかと思うのですけれども、私としましては、今、3ページの対応の方向性(案)にあるような、無期転換申込権が発生する契約更新時にしっかりと通知をするということをタイミングとして適切ではないかということを申し上げておきたいと思います。
趣旨が違ったら恐縮ですけれども、仮にこれが無期転換申込権が発生する契約更新時ではなく、もっと前の、仮に有期契約を初めて締結するときから全ての契約更新のタイミングで都度通知をすると。これが義務づけとなりますと大分違ってくるかなと思っていまして、無期転換であったりとか、5年経過までの契約更新に対する事実上の期待を持たせることにつながってしまったり、あるいはそもそも働き手のニーズとも違っているということも想定されますし、ここは無用な労使トラブル、あるいは働き手の就労ニーズとの乖離といった観点から、タイミングとしてはここに記載のあるような無期転換申込権が発生する契約更新時が適切であろうということを考えております。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
八野委員、お願いいたします。
○八野委員 ありがとうございます。
私のほうからは、まず無期転換ルールの一層の周知についてです。先ほど使用者側の鳥澤委員からも意見がありましたが、資料No.1の3ページ、1つ目の対応の方向性というところで、無期転換ルールの認知状況の向上について、一層周知徹底に取り組むという記載がございます。その他にも、いろいろな箇所に周知徹底という言葉が出てまいります。
行政として具体的にどのようにアプローチしていくのか、また、それで無期転換ルールの認知度が高まり、積極的な活用を促すことができるのか、まずそのことをお伺いしたいと思います。
○荒木分科会長 それでは、まず事務局より八野委員の御質問から先にお願いいたします。
○労働関係法課長 八野委員、ありがとうございました。
これから分科会の取りまとめも踏まえまして、今後、具体的な周知の内容については御意見もいただきながら考えていきたいと考えておりますけれども、従前より労使の御協力をいただきながら、この制度についての周知も御協力をいただいて進めていただいておりますし、行政独自といたしましても、直接、企業あるいは労働者の方向けの周知もさせていただいているところでございますけれども、なかなかまだ十分に届いていないというところはおっしゃるとおりのところがあろうかと思っております。
今後につきましてもいろいろなやり方を考えていきたいとは思っておりますけれども、委員から御提案のあったような、例えば支店や店舗の店長といったポストに就かれている方が無期転換ルールを知らないのではないかというような御意見もいただいておりますので、そういった実務担当者の方を対象にしたセミナーを行うとか、あるいは有期の方が多いような業界との連携につきましても、引き続き検討してまいりたいと考えております。
○荒木分科会長 八野委員、どうぞ。
○八野委員 どうもありがとうございます。
このようなルールができたときは、労使、特に使用者が労働者に対して説明をしていくのですが、継続性が非常に重要であるというポイントは外してはいけないと思っております。
参考資料No.2の22ページにもあるように、企業規模が小さいほど認知度が低いということと、例えばサービス・流通業で広域の事業を営んでいるところですと、店舗ごとに有期契約労働者を採用するということになります。有期契約労働者の雇用管理を行う者が労働者への周知を行っていくことになりますので、そのような方々まで無期転換ルールの内容がしっかりと伝わることが非常に重要だと思っています。
より一層の周知の徹底を、どう具体的に、継続的に行っていくのかということが、この法の趣旨を徹底させるために重要なことだと思います。
また、対応の方向性(案)の2つ目のところで、先ほど佐藤委員のほうから無期転換ルールのところについて、契約更新時だけで足りるのではないかというご意見がございましたが、雇用労働者で特に有期の短時間勤務の労働者等に対して、少なくとも契約更新時には、その企業で無期転換ルールをどう運用しているのかということの周知は行っていくべきであろうと思います。
それを選択するかしないかは個人の判断になるわけですが、実際、労働者が契約更新時まで知らなかったということになりますと、働いている側が制度そのものを知らなかったということになります。無期転換ルールの運用がどうなっているのかということについては、きちんと知らせていくべきなのではないかと思っております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
八野委員から周知の継続性の重要性の御指摘をいただきました。私も全く同感でございます。
ただ、一方で最近感じておりますのは、労働関連法制の見直しが毎年のように行われ、かつ、それぞれの見直しがかなり複雑な法令ばかりであります。法令の周知は政府、そして私ども事業主の課題であると認識しておりますが、無期転換ルールの制度認知度が低いこともあって、プッシュ型の個別周知を図っることが、実効性を確保する上で大きな期待が持てるのではないかと思っております。
話は戻りますが、制度の複雑化が周知の阻害要件になりかねないことから、一般論ではありますが、制度を考えるときにシンプルな仕組みにしていくことを心掛けることが今後の課題と考えたところです。
各論ですけれども、先ほど冨髙委員から契約期間の上限についての御指摘がございました。私どもは以前も申し上げておりますとおり、契約期間の上限を途中で設けることについては、相当な合理的な理由とか十分な説明をしっかりする必要があり、この点の十分な周知が必要と考えます。
他方、労働契約をはじめて締結する段階で契約期間の上限を設けるかどうかの判断は、先ほど池田委員からも話がありましたとおり、労働契約は多様なニーズ、事業者側のニーズ、労使双方のニーズの合致によるところが大きく、、その点は最大限尊重していただきたいと思っております。
その上で、適切な運用となるよう、周知を含めてしっかりと取り組んでいく必要があると考えています。
最後に、無期転換後の労働条件の説明についてです。説明の仕方についてはいろいろと意見があるのではないかと思っているところですけれども、観念的なお話をさせていただければ、無期と無期の間の均衡処遇については、裁判例上も考え方が確立していないと考えておりますので、労働契約法第3条第2項を超える内容で説明をすることは、謙抑的に考えるべきであり、事務局からお示しいただいた原案が適当と考えております。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
川野委員、お願いいたします。
○川野委員 ありがとうございます。
関連して、無期転換前の雇止めに関することでございます。
資料No.1の5ページの対応(案)に関することでございますけれども、まず、先ほど来お話がありますとおり、不利益取扱い等の問題がある無期転換回避策への対応について、無期転換の申込みを行ったことを理由とする雇止め、労働条件の引下げといった不利益な取扱いは明らかに無期転換の権利行使を妨害する不適切なものであることは言うまでもありません。その上で、労働者の権利行使の実効性を確保して無期転換を促進するためには、本来は検討会報告の中にありましたとおり、無期転換回避策を禁止する規定を設ける等の立法措置も含めた対応策の検討を進める必要があるのではないかと考えているところが1点でございます。
もう一つ、2つ目の対応(案)でございますが、更新上限設定に関する労働者の説明義務についてですが、先ほど冨髙委員からも話がありましたとおり、無期転換ルールは雇用の安定を損なう有期契約の濫用防止が目的と理解しておりますし、合理的な理由なしに、一方的に上限を定めることは法の趣旨に反すると考えているところでございます。
したがいまして、使用者に対して契約締結時を含めて上限設定の理由やその内容、必要性などについて、労働者への説明義務を課す必要があると考えていますし、合理的であるということを労働者が理解できるような丁寧な対応が必要だと思います。
また、論点には「労働者からの求めに応じて」という記載がございましたが、対応の方向性では削除されております。更新上限の新設及び短縮する場合について、労働者から求めがない場合も含めて説明を義務づけていくという理解でよろしいか、最後は質問でございます。よろしくお願いします。
○荒木分科会長 それでは、ただいまの質問について、事務局からお願いします。
○労働関係法課長 川野委員、ありがとうございました。
資料の5ページ目の対応の方向性(案)の2つ目の②の更新上限を新たに設ける場合、あるいは更新上限を短縮する場合の労働者への説明についてでございますけれども、こちらについては事前の説明を義務づけという形で書いておりまして、労働者からの求めに応じてということは書いてございませんので、求めの有無にかかわらず、ということで方向性の案として御提案しているものでございます。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
ほかにはいかがでしょうか。
櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。
資料No.1の3ページ無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保のところで意見を申し上げたいと思います。
対応の方向性の2つ目についてですけれども、使用者から個々の労働者に対して無期転換申込機会とか、転換後の労働条件の通知を義務づけることについては、労働者の権利行使を後押しすることにつながると考えています。
ただ、その通知時期について、無期転換申込権が発生する契約更新時に限定されているというところについては疑問が残ると思っています。
先ほど八野委員からも発言がありましたけれども、ルールの認知状況は今でも低い状況にあるのが事実であります。それを抜本的な改善につなげていくことになりますと、契約締結時だけでなく、契約更新ごとに労働者へ通知を義務づけることも検討していく必要があるのではないかと思います。
それから、無期転換申込権が発生する契約更新時の通知の仕方についてなのですけれども、このときには単にメールなど一方的な通知にとどめてはいけないと思っています。非常に大事なタイミングですので、面談等も通じて、労働者の無期転換権の行使に関する意向も確認できるような方策を考えていく必要があるのではないかと思っております。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
佐藤晴子委員からさらなる御発言の希望がありました。お願いします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
今、御意見をお聞きしていて、もう少し申し上げたかったところが、現場感覚で申し上げたとき、近年、働き手のニーズが多様化しているということで、有期雇用を希望する方が決して少ないわけではないということかと思っています。総務省の労働力調査によりますと、いわゆる不本意非正規労働者といった、正規の従業員の仕事がないから、現職の雇用形態、非正規雇用に就いているということを主な理由に挙げた方は減少していて、2021年では10.7%というデータもあると承知しています。
そうした中で、先ほど通知するタイミングは今、映していただいている対応の方向(案)が適切ではないかと申し上げたのですけれども、雇用就労形態、それから働き手のキャリアの在り方はやはり多様であって、各社の実態あるいは働き手のニーズなどによって適切なものが選択できるように配慮していただくというところも大切なのかなと思っておりますので、付言させていただきます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
皆さんの意見をお伺いしまして、本当にそのとおりだなと思います。
この項目について数回にわたり検討してきており、厚生労働省 事務局のほうから対応の方向性が示されているわけですけれども、基本的に私も、総論のところで示されているとおり、現在、一定の効果が見られており、特に見直さなければいけない問題が生じている状況ではないということで、今後一層の制度の周知等必要な取組を進めていくことが重要でないか、このとおりだと思います。
各論についても、細かいところでは委員それぞれ細かい意見等はあると思われますが、このまま進めていただくのがよろしいのではないかと思います。
その上で、まず働いていくということで、正社員になるだけではなく、その選択が、無期契約のまま、あるいは、有期契約のまま労働していくということもあるでしょうし、それぞれの方の働き方について、窓口を多様化していくことが必要なのだろうと思います。
それから、周知の関係で各委員から発言がありますが、私も同意見でございます。例えば、裁判例等を周知していくという説明がありましたが、これはどちらかというと雇止めについて違法性があるということだけではなく、「契約書等こういう記載をちゃんと明記しておけば、明記された期限が終われば契約は終了する。」ということも併せて明記をしていただきたいと思います。
あと、就業規則などに労働条件を明記していくわけでありますけれども、無期転換をして無期の方が正社員になった場合、そして、無期転換をしないで有期のままの方の場合、いろいろなケースが出てくると思います。就業規則を正社員と同じもので作成、整備していくのか、それとも無期契約、有期契約などの適用労働者ごとに就業規則を作成していくのか、社内で契約形態が異なる人に見られては不都合ということはないと思うのですけれども、その方向についても、厚生労働省から教えていただきたいと思います。
最後に周知全般についてですが、この件だけではなく、厚生労働省が多種多様な施策や助成金など、きめ細かくやっていただいている分、それを周知するのは私どもの役割ではありますが、あまりにも周知するものが多く、傘下の会員組合なり企業から、これだけ多い容量のものを送らないでほしいと意見も実際出てきております。そこの中で私たちも工夫をしながら周知しているつもりなのですけれども、負担感が非常に大きい状況です。
厚生労働省のホームページを見ても、階層が深過ぎてしまって、どこを探したらいいか分からなく、事業別などに出ているものもいいのですけれども、別に薄いパンフレットの部分をすべて集めたり、それをもっと深掘りした詳細版については、それだけを全部集めたページをつくったりする見せ方も必要です。今までやっている周知の方法とともに、そういう方策も考えていかないと、経営者として把握するよう努めても、なかなかすべてを把握することはできません。今回の資料でも「周知」という言葉が27か所ぐらい出てきているのです。「周知」は、単に流すだけでは目にとめ、理解することはできないものですから、本当に根本的なもの(効果)を考えていかなければいけないなと思っています。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
八野委員、お願いいたします。
○八野委員 周知のことがいろいろ出てきておりますが、ここでは無期転換ルールに絞って発言をさせていただきたいと思います。
いわゆる契約社員、パートタイムの労働者の有期の方たち、それ以外の契約の方たちもいらっしゃると思うのですが、使用者も含め、労働者のニーズも違ってきていると思います。そのため、周知の在り方を議論する場合もそのような実態のところまで見ていかないと、しっかりしたルールの説明にはならないということは申し上げておきたいと思います。
もう一点は、資料No.1の6ページにクーリング期間への対応が出ております。クーリング期間は、不適切な運用がされているという労働相談の事例が複数あることは以前、労側から申し上げたとおりでございます。有期労働契約の濫用の防止をして雇用の安定を図るのが法の趣旨であり、労働側としては、クーリング期間は設けるべきではないというのが本来のスタンスであります。
このクーリング期間に関しては、国会では、育児や介護といった労働者側の事情により離職をした後、そのような事情が解消して、過去の職務経験を生かすために同じ会社、同じ企業に復帰するケースがあるとの政府答弁がなされております。また、使用者側の事情により離職した後、仕事量が増えてきたとか、生産量が増えてきたとき、同じ仕事をしていただきたい方に復帰していただく例があるという答弁もなされておりまして、いわゆる限定的なケースを想定していることが分かります。
このように、極めて限定的なものであるということを全ての使用者に対して、周知徹底していくべきであると考えております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
梅田委員、お願いします。
○梅田委員 ありがとうございます。
私からは、無期転換後の労働条件につきまして、先ほど使用者側の委員の方々からもそれぞれ御発言がありましたけれども、労働者側としての考え方を改めて申し述べておきたいと思います。
2点ございまして、1つ目が別段の定めの関係でございます。無期転換後の労働条件に関する考え方、それから留意点等の周知についてということで、1つ目の方向性を出していただいております。本来この別段の定めの趣旨は労働条件の引上げを念頭に置いたものであるという趣旨を周知するとともに、適切な活用を促進する。そのことで無期転換者の処遇改善の取組を強化すべきであるということについて繰り返し申し上げておきたいと思います。
あわせまして、転換申込みを事実上抑制するような別段の定めにつきましては、法の趣旨に合致していないということを徹底して、周知を図ることが必要だと思っております。
それから、2つ目の対応策でございます。均衡・均等待遇実現の項目についてでございますけれども、まずは無期転換前における同一労働同一賃金の法規定に基づく取組につきまして、改めて周知徹底を図る。そのことによって、正社員との均等・均衡待遇を実現することが不可欠であると考えてございます。
そして、パート有期法の適用外であるフルタイム無期転換者の不合理な待遇差の是正についても重要だということはこれまでも申し上げておりますけれども、本来、通常の労働者との間で不合理な待遇差、差別的な取扱いがなされないように、さらなる対応を行って、使用者に具体的に処遇改善の取組を促していくことが必要であろうと考えております。
少なくとも労契法第3条第2項を踏まえました均衡考慮につきましては、労働者の納得性を高める観点からも、使用者に説明義務を課すことによって実効性を確保すべきではないかと考えております。その際の説明の内容につきましては、パート有期法の規定に準じて、具体的な待遇それぞれについて説明をすべきであると考えてございます。
以上、よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
オンラインで世永委員から発言希望が出ております。お願いいたします。
○世永委員 ありがとうございます。
(6)の有期雇用特別措置法の活用状況について発言をさせていただきます。
資料No.1の10ページの対応策、有期特措法の特例の周知についてです。無期転換ルールはあらゆる労働者に等しく適用されるべき基本ルールであることから、特例はなくしていくべきというのが労働側の基本的な考え方であることは、改めて申し上げさせていただきたいと思います。これにつきましては、科技・イノベ法による研究者等の無期転換ルールの特例についても同様です。
2023年3月末に契約期間の上限である10年を迎える研究者等が多くいるため、無期転換を回避するための雇止めが相次ぐ懸念があることは前回も申し上げさせていただきました。使用者から一方的に更新上限を定めることは法の趣旨に反しており、労働者の無期転換申込権の行使を阻害するものであり、今回の問題を踏まえても、これまで申し上げているとおり、使用者に上限設定の理由の説明義務を課すことが重要であると考えております。
以上です。ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
東矢委員、お願いします。
○東矢委員 ありがとうございます。
私からは資料No.1の11ページにございます(7)その他のところ、労使コミュニケーションを通じた無期転換の促進について意見を申し上げさせていただきます。
前回、使用者側の委員の方から、多様な労使コミュニケーションの方法といたしまして個別労使関係を念頭に置いた御発言がございましたけれども、労使の交渉力の差を踏まえますと、あくまでも集団的労使関係が労使コミュニケーションの原則であるといったところは強調させていただきたいと考えています。
労働契約に関わるやり取りは、労働者の働き方や生活に直結する非常に重要なものでございますし、労使コミュニケーションは一方通行のものではなくて、労使が双方向でしっかりと議論を尽くしていくことが重要だと考えてございます。
私ども労働組合といたしましても、その組織化を進めるとともに、労使協議等を通じて集団的労使関係の構築強化を図っていく考えでございますが、他方で、労働組合がない職場も少なくないことから、行政としても、労働組合を中心とした集団的労使関係の構築を後押しいただくように引き続きお願いしたいと考えてございます。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 先ほどから周知のところが議論の中心になっておりますが、 鈴木委員から、法律が様々ある中で、シンプルに周知を図っていくという発言があったかと思います。
労働者の雇用の安定に資する様々な法律の改正が行われておりますが、複雑過ぎて分からないということがあってはいけないと思いますので、その点ではシンプルにするのは望ましいと思います。ただ、労働者は日頃から労働法に触れているわけではないため、分かりやすく丁寧に説明を繰り返し行うことが重要だと考えております。そのような観点でも、更新ごとの周知の義務付けも必要だという話をさせていただいたところでございます。
また、佐藤委員から、更新ごとも含めて考えると、例えば必要のない期待を持たせるのではないかということや、紛争防止という意味では発生時点での周知で足りるのではないかという御発言もありました。しかしながら、無期転換ルールは労働者からみれば雇用の安定につながるものですし、最初の契約の時点では有期で良いという判断をされた方が、何年か働いてある程度経験も積んだときに、無期転換したいというように考え方が変化していくこともあると思うのです。
そのような意味で言えば、発生時点だけではなくて、契約更新の都度説明をしていくことが、有期で働く方たちのキャリア形成の視点でも非常に重要なのではないかと思いますので、改めて発言をさせていただきます。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
先ほど池田委員のほうから、参考資料No.3についてまとめ方がこれでよいのかという御発言がありましたけれども、この点について事務局からはいかがでしょうか。
○労働関係法課長 池田委員からの御指摘につきましては要旨のところかと思いますので、そちらにつきましては誤解のないような形で訂正をさせていただきたいと思います。
○荒木分科会長 それでは、ほかに御発言はございますでしょうか。
よろしければ、この議題についてはここまでとさせていただきたいと存じます。
それでは、次の議題に移ります。「(2)労働時間制度について」事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。
議題2の労働時間制度について、御説明させていただきます。
資料No.2-1から2-4までございまして、まず資料No.2-3を御覧ください。「労働時間制度に関する検討の論点(案)」ということで、今後議論を進めるに当たっての論点案をお示しさせていただいてございます。
1つ目として、労働時間制度の課題等について。2つ目として、裁量労働制について。3つ目として、今後の労働時間制度の在り方についてという形で示させていただいてございます。本日はこの中の1番の労働時間制度の課題等について御議論いただきたいと考えてございまして、資料を御用意してございます。
それでは、資料No.2-1を御覧ください。「労働時間制度の概要等について」ということで、まず1ページ目を御覧ください。こちらの資料は労働時間制度の概要についてと、裁量労働制に関するこれまでの経緯についてまとめた資料となってございます。
早速、2ページ目以降を御覧ください。
まず、3ページ目でございます。労働時間制度の概況についての資料でございまして、1日8時間、週40時間の通常の労働時間制度のほか、変形労働時間制やフレックスタイム制などが整備されてきたところでございます。
4ページ目、5ページ目が労働時間法制の主な改正経緯についてでございまして、昭和22年の労働基準法制定時には、法定労働時間は1日8時間、1週48時間とされていたほか、4週間以内の期間を単位とする変形労働時間制が設けられてございました。
昭和62年改正におきまして、フレックスタイム制と事業場外みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制の創設などが行われております。この際、専門業務型裁量労働制の対象業務につきましては通達で例示列挙され、事業場の労使協定で定めることとされてございました。
平成5年改正におきまして、変形労働時間制の改正や専門業務型裁量労働制の改正などが行われてございます。この改正によりまして、専門業務型裁量労働制の対象業務は、省令で限定列挙された業務について、事業場の労使協定で定めることとされてございます。
平成10年改正におきましては、企画業務型裁量労働制の創設等が行われております。
続きまして、5ページ目でございます。平成15年改正におきましては、専門業務型、企画業務型ともに裁量労働制が改正されておりまして、例えば専門業務型におきましては健康・福祉確保措置の追加などが行われております。
平成20年改正におきましては、月60時間超の時間外労働について、割増賃金率を5割以上へ引き上げることとされましたけれども、中小企業に関しましては適用を猶予されることとされてございました。
いわゆる働き方改革関連法による平成30年改正におきましては、時間外労働の上限規制の導入、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の引上げの中小企業への適用、高度プロフェッショナル制度の創設などが行われてございます。
こうした改正経緯を経た現在の労働時間制の概要が6ページ目でございまして、次の7ページ目以降は、それぞれの制度などについて御説明させていただきます。
7ページ目でございます。まず、時間外労働の上限規制についてです。時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、休日労働を含んで単月100時間未満、複数月平均80時間を限度に設定することとされてございます。
また、自動車運転の業務や医師などにつきましては上限規制が適用猶予とされるなど、ここにある業種・業務について適用が猶予あるいは除外されてございます。
8ページ目でございます。変形労働時間制につきましては、1か月単位、1年単位、1週単位とございますけれども、例えば一番上にあります1か月単位について見てみますと、1か月以内の期間を平均して、法定労働時間を超えない範囲で、特定の日・週で法定労働時間を超えて労働させることができる制度でございまして、労働時間につきましては、1か月以内の期間と期間内の総労働時間を定め、その枠内で働くこととされてございます。
9ページ目です。フレックスタイム制につきましては、労働者が各日の始業、終業の時刻を自らの意思で決めて働く制度でございまして、労働時間については3か月以内の一定期間と総労働時間を定め、その枠内で働く制度となってございます。
10ページ目です。事業場外みなし労働時間制につきましては、労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間の算定が困難なときが対象とされてございまして、労働時間については、原則として所定労働時間労働したものとみなすけれども、業務を遂行するために、通常所定労働時間を超えて労働することが必要である場合には、当該業務の遂行に通常必要な時間労働したものとみなすこととされてございます。
11ページ目でございます。裁量労働制についてでございます。
まず、上の専門業務型裁量労働制につきましては、対象は業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分等を大幅に労働者の裁量に委ねる業務として、厚生労働省令及び大臣告示で定められた専門的な業務に従事する労働者とされておりまして、労働時間は労使協定で定めた時間を労働したものとみなすこととされてございます。
下の企画業務型裁量労働制につきましては、対象は事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務の性質上、これを適切に遂行するために、業務遂行の手段や時間配分等を大幅に労働者に委ねる業務に従事する労働者とされてございまして、労働時間は労使委員会の決議で定めた時間を労働したものとみなすこととされてございます。
12ページ目です。高度プロフェッショナル制度についてです。対象は、金融商品の開発など、ここにございます5つの業務に従事し、年収が1075万円以上である労働者でございまして、法的効果としては、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用除外となることとされてございます。
13ページ目でございます。管理監督者についてです。管理監督者は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間等の規制が適用除外となる者でございます。
管理監督者に当てはまるかどうかは実態により判断されることとなっておりまして、ここにある3つの事項が主な判断要素となってございます。
14ページ目は各制度などの対象者について関係規定の適用を整理したものでございますので、適宜御参照いただければと思います。
15ページ目です。年次有給休暇につきましては、まず要件・効果として、雇い入れの日から起算して6ヶ月継続勤務し、全所定労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、10労働日の年次有給休暇が与えられ、その後、継続勤務年数1年ごとに、ここにある表の日数の年次有給休暇が与えられることとなってございます。
取得単位といたしましては、1日単位が原則とされてございますけれども、半日単位が認められているほか、労使協定で定めた場合には、年に5日を限度に、時間単位での取得もできることとなってございます。
付与に関しましては、労働者による請求、計画年休のほか、平成30年の働き方改革関連法による改正によりまして、年5日の使用者による時季指定義務が設けられてございます。
16ページ目です。勤務間インターバル制度についてです。勤務間インターバル制度とは、終業時刻から次の始業時刻の間に一定時間以上のインターバル時間を確保する仕組みでございまして、働き方改革関連法による労働時間等設定改善法の改正により、その導入が事業主の努力義務となってございます。
17ページ目でございます。フランスにおける、いわゆる「つながらない権利」の概要についてです。いわゆる「つながらない権利」とは、勤務時間外や休日に仕事上のメールなどへの対応を拒否できる権利のこととされてございまして、フランスでは2016年に成立した労働法改革の中で、労使における交渉をテーマに追加すること等の「つながらない権利」に関する規定が新設されてございます。
18ページ目です。主な働き方改革関連法に係る今後も含めたスケジュールについてでございます。
平成30年6月に働き方改革関連法が成立した後、平成31年4月に大企業への時間外・休日労働時間の上限規制や高度プロフェッショナル制度等が施行されてございます。
令和2年4月には、中小企業への時間外・休日労働時間の上限規制が施行されてございます。
今後、令和5年4月には、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げが施行され、令和6年4月には、適用猶予業種への時間外・休日労働時間の上限規制が施行されることとなってございます。
19ページ目は働き方改革関連法の概要でございますので、御参考でございます。
20ページ目を御覧ください。こちらは時間外・休日労働時間の上限規制の適用猶予業種について、それぞれ、令和6年4月以降の上限時間等を整理しているものでございますので、適宜御参照いただければと思います。
21ページ目です。次に裁量労働制に関するこれまでの経緯について、御説明します。
22ページ目です。平成27年労働政策審議会の建議の中での裁量労働制の見直しについての抜粋でございます。この建議の中では、(1)企画業務型裁量労働制の新たな枠組として、ここにございます①、②の新たな類型を企画業務型裁量労働制の対象業務要件に追加することが適当であるとされてございました。
また、同じ(1)の最後のポツの健康・福祉確保措置について、現行の法定指針に例示されている事項を参考にしつつ、長時間労働を行った場合の面接指導等を追加することも含め検討の上、省令で規定することが適当であるとされてございました。
(2)手続の簡素化につきましては、①として労使委員会決議の本社一括届を認めるとともに、②として定期報告は6か月後に行い、その後は健康・福祉確保措置の実施状況に関する書類の保存を義務づけることが適当であるとされてございました。
(3)裁量労働制の本旨の徹底としまして、例えば、裁量労働制は始業・終業の時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを法定し、明確化することが適当であるとされてございました。
また、同じページの上部の「なお」で始まる箇所にありますように、労働者代表委員から、企画業務型裁量労働制の対象業務に新たな類型を追加することについて認められないとの意見があった旨も付記されてございます。
23ページ目でございます。平成29年に本分科会に示された働き方改革関連法案要綱の裁量労働制に関する部分の抜粋でございます。
まず1として、ここにある(1)、(2)にある業務を企画業務型裁量労働制の対象業務に追加することとされてございました。
2におきましては、企画業務型裁量労働制の対象労働者は、対象業務を適切に遂行するために必要なものとして、厚生労働大臣が定める基準に該当する知識、経験等を有する者に限るものとすることとされてございました。
3におきましては、健康・福祉確保措置について、当該労働者に対する終業から始業までの時間の確保などの厚生労働省令で定める措置のうち、労使委員会の決議で定めるものを使用者が講ずるものとすることとされてございました。
4におきましては、労使委員会の委員は、決議の内容が指針に適合したものとなるようにしなければならないものとすることとされ、5におきましては、行政官庁が労使委員会の委員に対し、必要な助言及び指導を行うことができるものとすることとされてございました。
6におきましては、使用者が具体的な指示をしない時間配分の決定に始業及び終業の時刻の決定が含まれることを明確化することとされてございました。
最後に、注⑤にございますけれども、3の健康・福祉確保措置に関するものと、6の始業・終業時刻の決定に関するものは、専門業務型裁量労働制でも同様の改正を行うこととされてございました。
24ページ目でございます。この法案要綱に基づいて法律案を作成していたところでございますけれども、ここにある経緯のとおり、平成25年度労働時間等総合実態調査に関する問題が発生し、働き方改革関連法案の中から裁量労働制の改正については全面削除することとされております。その後、働き方改革関連法の附帯決議を踏まえまして裁量労働制実態調査を実施し、その結果を公表した後に、これからの労働時間制度に関する検討会を設置し、16回の議論を経て、本年7月15日に報告書を公表したところでございます。
25ページ目は裁量労働制実態調査に関する専門家検討会の概要でございまして、次の26ページ目がこれからの労働時間制度に関する検討会の概要でございます。
27ページ目、28ページ目が、前回この分科会で御説明いたしましたこれからの労働時間制度に関する検討会報告書の概要でございますので、説明は割愛させていただきます。
29ページ目を御覧ください。衆議院、参議院ともに、厚生労働委員会におきまして働き方改革関連法案に対する附帯決議が付されておりまして、例えば上にございます衆議院の方では、裁量労働制について、現行制度の施行状況をしっかりと把握した上で、労働政策審議会において検討を行い、その結論に応じて所要の措置を講ずることとされてございます。
最後に30ページ目でございます。本年6月に閣議決定されました経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針におきましては、裁量労働制を含めた労働時間制度の在り方について、裁量労働制の実態調査の結果やデジタル化による働き方の変化等を踏まえ、更なる検討を進めることとされてございます。
また、下の同日に閣議決定されました規制改革実施計画におきましても、裁量労働制を含む労働時間制度全体が制度の趣旨に沿って労使双方にとって有益な制度となるよう十分留意して検討を進めることとされてございます。
ここまでが資料No.2-1でございまして、次に資料No.2-2を御覧ください。
こちらも最初に1ページ目を御覧いただきますと、1つ目として経済社会の変化について、2つ目として労働時間等の現状について、3つ目として裁量労働制の現状と分析についてまとめた資料になってございます。
2ページ以降の経済社会の変化について御覧ください。
日本の人口につきましては既に減少傾向を迎えておりまして、今後は15~64歳の現役世代の減少が更に進む見込みとなってございます。
4ページ目でございます。産業別就業者数の推移を見てみますと、製造業で働く労働者が減り、代わって第三次産業での就業者が増えてございます。
5ページ目でございます。就業者数の推移を見てみますと、就業者の大層が雇用者である状況が続いておりまして、雇用者が就業者に占める割合は約9割となってございます。
6ページ目はテレワークの実施率の推移でございます。こちらを見てみますと、2020年2月の5.0%から、4月には60.0%にまで上昇した後、最初の緊急事態宣言の解除とともに低下傾向にございましたけれども、2度目、3度目の緊急事態宣言が発出されるなどする中で、2022年1月には44.2%となってございます。
7ページ目でございます。テレワーク実施者の今後の継続意向等の労働者調査でございますけれども、テレワークを実施した方の大半が、継続してテレワークを実施することを希望しているという結果となってございます。
8ページ目でございます。「コロナ禍収束後、変化は起こり得るか」という労働者への調査について、「起こり得る」「どちらかと言えば起こり得る」とした回答の合計が、「時間管理の柔軟化」は51.3%、「テレワークの普及」は42.5%となってございます。
9ページ目でございます。副業・兼業につきましては、希望する雇用者も、実際に副業・兼業している雇用者も増加傾向にございます。
10ページ目でございます。人手の過不足状況について企業に尋ねた調査でございますけれども、「現場の技能労働者」に次いで、「研究開発等を支える高度人材」、「システムアプリケーション等を開発する高度人材」等が大いに不足又は不足していると感じられてございます。
11ページ目でございます。人生100年時代に求められる能力についての企業に対する調査でございますけれども、「自ら考え行動することのできる能力」、「柔軟な発想で新しい考えを生み出すことのできる能力」等の割合が高くなってございます。
12ページ目でございます。賃金制度の状況でございますけれども、管理職層、非管理職層ともに役割・職務給の導入率が増加しているということと、また、非管理職層におきましては、年齢・勤続給の導入率が減少していることとなってございます。
13ページ目でございます。今後の見通しを踏まえた企業の将来の人材戦略に関する調査でございます。こちらは企業への調査でございますけれども、人材活用の方向性については「雇用や人材の育成を重視する」が最も高くなってございます。
人件費の配分につきましては、「年齢に関わりなく能力・成果に応じた登用を進め、正社員の年功賃金割合を小さくする」が最も高くなってございます。
また、人材マネジメントの方向性については、「中途採用を強化する」が最も高く、次いで「教育訓練・能力開発を進める」が高くなってございます。
ここまでが経済社会の変化についてでございまして、14ページ目以降が労働時間等の現状についてでございます。
15ページ目を御覧ください。年間の総実労働時間は減少傾向で推移してございまして、直近では1,710時間となってございます。
16ページ目を御覧ください。年間総実労働時間の減少傾向につきましては、一般労働者の総実労働時間についてほぼ横ばいで推移するなかで、総実労働時間が比較的短いパートタイム労働者の比率が高まったことなどがその要因と考えられるとされてございます。
ただし、一般労働者の年間総実労働時間はおおむね2,000時間台で推移してございましたけれども、平成30年以降は減少傾向にあります。
17ページ目でございます。月末1週間の労働時間が60時間以上の方の割合でございまして、こちらも近年減少傾向にございまして、直近で5%となってございます。
18ページ目です。各労働時間制度ごとの適用労働者割合の推移についてでございますけれども、直近を見てみますと、1か月単位の変形労働時間制が21.5%、1年単位の変形労働時間制が17.8%、フレックスタイム制が9.5%となっているほか、専門業務型裁量労働制は1.2%、企画業務型裁量労働制は0.3%となってございます。
19ページ目でございます。各労働局ごとに産業構造や労働災害の発生状況などを踏まえて、年間計画により実施してございます定期監督等の実施状況についてでございます。
令和3年におきましては約12万2000の事業場に実施し、違反事業場数は約8万3000で、違反率は68.2%となってございます。
20ページ目が年次有給休暇の取得状況の推移でございます。年次有給休暇の取得率につきましては近年上昇傾向にございまして、直近で56.6%となってございます。
21ページ目でございます。勤務間インターバル制度の導入状況を見てみますと、令和3年におきまして、「導入している」あるいは「導入を予定又は検討している」と答えた企業割合は18.4%となってございます。
左下でございますけれども、企業規模別に導入している企業割合を見てみますと1,000人以上規模が最も高く、14.5%となってございます。
右下でございますが、勤務間インターバル制度の導入予定はなく、検討もしていない理由を見てみますと、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」が最も多くなってございます。
ここまでが労働時間等の現状でございます。
22ページ目以降が裁量労働制の現状と分析でございます。
まず、23ページ目が労働者の労働時間・睡眠時間についてでございます。1日の平均実労働時間数を見てみますと、裁量労働制適用労働者が9時間00分、非適用労働者が8時間39分となってございます。
右上でございますけれども、1週間の実労働時間の分布を見ると、40時間超、60時間超ともに適用労働者の方が割合が高くなってございます。
また、下の表でございますが、裁量労働制の適用が労働時間・睡眠時間に与える影響についての回帰分析によりますと、労働者の個人属性の影響を制御すると、1週当たりの労働時間については、裁量労働制適用労働者のほうが約1.3時間長いという結果になり、1日当たりの睡眠時間は裁量労働制適用労働者の方が若干長いという結果になってございます。
24ページ目でございます。労働者の働き方についてでございますけれども、労働者の裁量の程度に関する適用労働者調査について、左上の業務の遂行方法、時間配分等に関する設問では、専門型、企画型ともに「上司に相談の上、自分が決めている」あるいは「上司に相談せず、自分が決めている」の合計が約90%、「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」あるいは「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が5%程度となってございます。
出退勤時間につきましては、「上司に相談の上、自分が決めている」あるいは「上司に相談せず、自分が決めている」の合計が、専門型で約86%、企画型で約90%、「自分に相談なく、上司(又は社内の決まり)が決めている」あるいは「自分に相談の上、上司が決めている」の合計が、専門型で7.6%、企画型で6%となってございます。
下の裁量労働制適用の満足度についての適用労働者調査におきましては、専門型、企画型ともに約8割が「満足している」あるいは「やや満足している」と回答しているという結果になってございます。
25ページ目です。労働者の処遇について見てみますと、左のグラフでございますけれども、年収が高いほど裁量労働制適用の満足度が高い傾向になってございます。
右にあります特別手当の有無に関する事業場調査におきましては、専門型で48.5%、企画型で35.8%が、特別手当制度がないとしてございます。
所定労働時間をみなし労働時間とする事業場における特別手当の有無につきましては、専門型で52.9%、企画型で17.0%が、特別手当制度がないとしてございます。
26ページ目でございます。労働者の年収につきましては、上のグラフでございますけれども、専門型の適用労働者では700万円以上800万円未満が最も高く、次に600万円以上700万円未満が多くなってございます。下の企画型の適用労働者を見てみますと、700万円以上800万円未満が最も多く、次に800万円以上900万円未満と、1000万円以上1250万円未満が多くなってございます。
裁量労働制が年収に与える影響を回帰分析した結果が下の表でございますけれども、労働者の個人属性の影響を制御した場合、裁量労働制適用労働者の方が約13%年収が高いという結果になってございます。
27ページ目でございます。健康状態の認識につきましては、適用労働者の約60%が「よい」あるいは「まあよい」と回答し、10%が「あまりよくない」あるいは「よくない」と回答してございます。
裁量労働制が健康状態に与える影響についての回帰分析におきましては、裁量労働制の適用によって健康状態が悪化するといった影響は見られないという結果になってございます。
28ページ目でございます。裁量労働制適用労働者について、労働者の裁量の程度によって、裁量労働制の適用が1週当たりの労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率に与える影響が異なるのかについて分析を行ったものでございまして、こちらのページがまず専門型の結果でございます。
業務の遂行方法、時間配分等の裁量の程度についてみてみますと、裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が1週当たり労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率が高くなってございますけれども、1週当たり労働時間が60時間以上となる確率につきましては、裁量の程度が大きい場合には、その影響は低減されるという結果になってございます。
出退勤時間の裁量の程度についてみてみますと、裁量の程度が小さい場合には、適用労働者の方が1週当たり労働時間が60時間以上・50時間以上となる確率が高くなってございますけれども、どちらも裁量の程度が大きい場合には、その影響が低減されるという結果になってございます。
29ページ目が企画型でも同様の分析を行ったものでございますけれども、結果は専門型と同様の傾向となってございますので、御参照いただければと思います。
30ページ目でございます。本人同意について、専門型におきましては制度導入に当たっての労使協定事項とはなってございませんけれども、本人同意を独自に要件としている事業場が46.3%ございました。
本人同意のある専門型適用労働者の実労働時間や健康状態について回帰分析したものが下の表でございますけれども、その結果によりますと、実労働時間が週60時間以上となる確率、健康状態があまりよくない・よくないと答える確率ともに本人同意のある場合の方が低いという結果となってございました。
31ページ目が労使委員会の実効性に関する認識についての労働者調査が右の上でございますけれども、この調査によりますと、労使委員会が十分機能していると思うかという質問に対し、52.3%が「そう思う」あるいは「どちらかと言えばそう思う」と回答してございます。
この労使委員会の実効性が労働時間あるいは健康状態に与える影響について行った回帰分析によりますと、下の表でございますけれども、労使委員会の実効性があると労働者が回答した場合の方が、実労働時間が週60時間、50時間以上となる確率、健康状態をあまりよくない・よくないと答える確率ともに低くなるという結果となってございます。
ここまでが資料No.2-2の御説明でございまして、最後に資料No.2-4を御覧ください。こちらは前回概要について御説明申し上げました、これからの労働時間制度に関する検討会報告書の抜粋でございますので、御議論の際に適宜御参照いただければと思います。
事務局からの説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局の説明につきまして、御質問、御意見があればお願いいたします。
鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
私からは改めて裁量労働制の意義と手続の簡素化などについて申し上げます。
事務局から資料の御説明をいただいた中にもありましたが、経済社会あるいは働き方が変化していると改めて感じており、これに伴って、今後働き手の裁量性を十分生かし、創造性の発揮が求められる業務に従事する方々が増えていくと予想しております。
また、先ほど事務局からの御説明もございましたように、我が国の人口減少が加速していく中で、国力をどう維持、向上させるかが重要です。わが国は資源が少ないですので、働き手一人一人の能力発揮、それによる一人一人の労働生産性の飛躍的な向上が不可欠ではないかと考えております。
2020年度の我が国の1時間当たりのGDP、いわゆる時間当たりの労働生産性は、OECD加盟38か国中23位と低迷しております。この23位という順位自体もゆゆしき事態だと思っておりますが、我が国の労働時間が仮にOECDの中で一番短いドイツ並みに減ったとしても、この順位が23位から20位という小幅な上昇にとどまることが推計されるところです。単に労働時間を削減するだけでは不十分であり、労働生産性の分子である付加価値をいかに大きくするかという点で、政策を総動員する必要があると思っております。
そのため、中長期的に各企業が自社の実態に応じて労働時間をベースとする処遇と、それから労働時間をベースとしない処遇とを適切に組み合わせることを可能とするような法制の見直しに向けた検討を行っていくべきではないかというのが基本的な課題認識でございます。
こうした課題を踏まえまして、適用労働者の8割が満足をしている裁量労働制につきまして、制度趣旨に合致するような業務を追加していただき、もって働き手の能力発揮を促す、ということの必要性を改めて強調したいと思います。
また、有識者検討会の報告書では、例えば企画型が制度として定着してきたことを踏まえ、現行では6か月以内ごとに1回行わなければならないこととされている定期報告について、その負担を軽減させることが適当という指摘がされております。
この点について、例えば労使委員会の役割、機能なども含めて、適正運用に向けた検討を進めていく中で、労基署への定期報告の簡素化を図ることもぜひお願いしたいと思っております。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、オンラインで御参加の鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。
私からは、裁量労働制の意義、また企業の取組実態等について御意見申し上げたいと思います。
先ほど来、御説明があったとおり、日本全体で経済社会環境が大きく変化しておりますが、我々どもの自動車業界でも、いわゆるCASEと呼ばれるようないろいろな技術革新が今までにないスピードで進んでおり、業界全体としても従来の技術あるいはノウハウなどがそのままは通用しにくい場面も今後増えていくのだろうと思っております。
こうした環境の中で成果を生み出していこうとすると、先ほど御説明いただいた資料No.2-2の11ページにも御記載がございましたが、自ら考えて行動することのできる能力に加えて、今後は柔軟な発想で新しい考えを生み出すことのできる能力がまさに重要となっていくと思っています。
このような成果が働き手の創造性に左右されて、労働時間と必ずしも比例しないような働き方においては、それに適した労働時間法制が求められるのだろうと思っております。
裁量労働制は、労働者が主体的に働いて、創造性を発揮しやすい制度であって、納得性の高い処遇を可能とする制度であろうと思っておりますので、こうした経済社会の変化にマッチした制度であると感じております。
なお、コアタイムのないフレックスタイム制を活用すれば裁量労働制を使わなくてもいいのではないかという声も聞くことがございますけれども、これはやはり裁量労働制とは全く違う制度であろうと認識しています。裁量労働制とフレックスタイム制は始終業時刻を労働者が決定する点のみが共通しているのであって、使用者が労働者に対して具体的な指示をするしないといった点では大きく異なっていると思っています。
また、フレックスタイム制は報酬も労働時間の実績に応じて支払われるものでございます。そうしますと、報酬の多寡が、生み出した成果ではなく、労働時間の長さによることになってしまうため、創造性を発揮することが今、求められている、こうした環境、あるいはそういう人材については、労働時間制度としてはなじみが悪いというか、不十分であろうと思っています。
検討会や本分科会においても、裁量労働制の課題についての指摘や不適切な運用事例が挙がっていまして、こういう点は真摯に検討していかないといけませんが、実態調査結果によりますと、先ほど鈴木委員からもございましたが、適用労働者の約8割は制度適用に満足、あるいはやや満足と回答しています。
最も懸念すべき健康状態についても、適用者の方が悪化するといった影響があるとは言えないという結果が出ております。
裁量性の有無や労使委員会の実効性についても、否定的な回答をされた労働者は限定的でもあります。こうした調査結果から、裁量労働制はきちんと使えばよい有効な制度であって、かつ、大部分の企業がきちんと使っているため満足度が高い制度であるということが言えると思っています。
新しい経済社会の変化を踏まえて、労働者の満足度が高まるような、よりよい制度に見直していく建設的な議論が必要であると思っています。
弊社でも、裁量労働制の適用を可能とする対象となる資格を労使であらかじめ定めた上で、裁量労働制の制度の概要や趣旨を記載したマニュアルをつくって、それを管理者や労働者にもそれぞれ浸透させて、さらにその運用状況については労使委員会等で確認、対応していくということで、適切な運用に努めております。
裁量労働制の適切な運用をより拡大していくために、必要な健康・福祉確保措置等は図りつつも、同時並行で対象業務についても拡大していくような建設的な議論がなされることを強く期待しております。
私の意見としては以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、鳥澤委員、お願いいたします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
御説明ありがとうございました。
今後の労働時間制度の在り方について、少し大きな視点で発言をさせていただきます。
現在、中小企業においては、人手不足感がコロナ前の深刻な状況に戻っていることに加えて、物価の高騰など、企業に対する賃上げ圧力も高まっていることから、余力のない中小企業は人材の確保が非常に厳しくなっています。資料No.2-2の13ページにもございましたが、今後も人材獲得競争の厳しさが増す中で、人材を確保するために自己変革を進めていかないと事業継続が立ち行かなくなることが懸念されます。
そういった中で中小企業では、求職者・従業員に選ばれるために、働く人のニーズに応じられる魅力ある職場をつくろうと努力しているところがあり、今後もさらに人材を獲得するために、企業ごとに様々な工夫に取り組んでいくことが求められています。
特にコロナやDXなど社会環境の変化の中で働く人のニーズは多様化していることを踏まえますと、時間や場所にとらわれられない柔軟な働き方は今後ますます関心が高まっていくものと思っています。
こうした中で、本日御報告された「これからの労働時間制度に関する検討会報告書」に記載されている内容については、大いに共感いたします。かつてないスピードで社会環境が変化していますので、こうした労働法制についての検証はぜひ定期的に実施していただきたいと思います。
また、「今後の課題」に記載されている「労使双方のニーズに応えるようにしつつ、現行の制度をシンプルで分かりやすいものにしていく」という点について、分かりやすいという点は労使双方で大事だと思いますので、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。
私からの発言は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、山内委員、お願いいたします。
○山内委員 ありがとうございます。
事務局からの丁寧な御説明、ありがとうございました。
私からは、働き方の多様化への対応について2点、意見を申し上げたいと思います。
2点のうち最初は、深夜の割増賃金規制に関してでございます。頂きました資料No.2-2の6ページと7ページを拝見する限り、テレワークが非常に普及していること、あるいは労働者のテレワークに対するニーズが高いというのが示されているかと思います。
女性活躍促進がうたわれる中で、性別を問わず仕事と家事、育児、介護等の両立を図っていくためには柔軟な働き方の促進が重要であって、企業においては労使間で議論を重ね、例えば先ほどお話がありましたようなコアタイムなしのフレックスタイム制の導入であるとか、テレワーク勤務時の中抜けを認めるなど、働きやすい環境整備に努めているところであります。
こうした中で、育児・介護事由による時間的制約を抱えながら働く労働者から、育児・介護を行いつつ、しっかりと仕事でも成果を出していくために、昼間は仕事から離れて育児・介護をしつつ、フレックスタイム制を活用しながら深夜時間帯でも仕事ができるようにしたいというニーズの声が一定程度上がっております。こうした声に応えられるような新しい労働時間の仕組みについて検討していくことも必要ではないかと考えております。
例えば一定の条件を設けた上で、深夜の労働への割増賃金の適用を除外することを考えてはどうかというものでございます。具体的に申し上げますと、当然ながら健康を確保する適切な運用を担保することが前提でありますが、例えば育児・介護の事由に限るであるとか、適用除外を認める労働時間の範囲は1日8時間以内、それを超えた場合は当然ながら通常どおりの割増賃金の支払い対象とする。また、テレワーク等により通勤がない場合に限ったり、フレックスタイム制や裁量労働制の適用者に限ったり、当然ながら本人の申出があった場合に限る、こういった条件を付すことで深夜の労働への割増賃金の適用の除外とすることも1つの考え方ではないかと。多様な働き手の活躍促進という観点で、ぜひ検討いただけないかと考えております。
もう一点は、勤務間インターバル制度についてでございます。
近年、企業においては、労使で働き方改革のフェーズIを積極的に進めてきております。2019年、働き方改革関連法が施行されたことも相まって、これも同じように資料No.2-2の17ページから18ページに記載していただいているとおり、労働時間の削減について一定の成果は出てきていると思われます。
ただ、先ほど事務局の方から御説明があったように、年間の総実労働時間の減少傾向にはパートタイムの労働者の増加も一部影響しているということも事実かと思います。したがって、一般労働者の総実労働時間の削減については、今後も継続的な取組が必要であると認識しております。
こういう中で、弊社においても1か月の時間外労働時間が例えば80時間を超すもの、あるいは深夜勤務するものは基本的にゼロとすることや、年間の年休の取得率は全員が20日を目指すことなどの具体的なKPIを設けることで、従来の長時間労働や深夜に及ぶ働き方を根本から見直す取組を進めることで、従業員の健康維持やメリハリのある勤務を実現する取組を進めております。
こういう中で、労働時間削減、労働時間の健康確保のための施策の1つとして、今、勤務間インターバル制度の導入が努力義務とされております。余暇時間の確保等、本制度の活用は一定程度意義があると考えておりますが、トラブルあるいは事故、災害等への緊急対応や複数の海外拠点との時差を考慮したやり取りなど、事業運営上不可欠な場合もあります。そういった状況から、例えば1日11時間のインターバル確保を一律に義務化するような規制は、事業運営に多大な影響を及ぼす可能性があると考えております。
既に導入している企業の実態を見ますと、例えば月4回までは1日11時間のインターバルを確保できない日があってもよいとするケースや、職種ごとの働き方の特性に合わせてインターバル時間の回数制限等の条件を柔軟に考えるケースもあり、対応は様々であります。まずは各企業が実態に合わせて効果的な制度を柔軟に設計している事例をできるだけ広く周知、共有することが重要ではないかと考えております。
私からの意見は以上、2点でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
川野委員、お願いします。
○川野委員 我が国における労働時間法制、労働者の健康確保の観点から、原則的な労働時間は1日8時間、週40時間ということで、労働基準法第32条が定められているわけでございまして、例外として、労使協定を結んだ場合において、時間外・休日労働ができるとされているところでございます。
労使協定がいろいろなところで出てくるわけですけれども、時間外・休日労働だけでなく、資料No.2-1の8ページには、全ての労働法制の手続において労使協定の締結が求められているわけであります。
我々労働組合がある職場では、同じ職場で働く人たちの健康を害するような働き方が職場で発生しないように、上限規制に張りついた協定を結ぶのではなく、健康確保を前提に、原則的な上限を踏まえて協定を結ぶという取り組みを進めているところでございます。
一方、過半数組合がない職場においては、過半数代表者と締結することも可能になっているわけでございまして、過半数代表者に関しては、労働相談から適正な選出に疑義があるというような事案も複数見受けられております。
また、たとえ挙手によって選出されたとしても、過半数代表者の選出に関して全従業員によく周知された上での挙手による選出等々の手続の部分が適正に行われているかということについては、問題があるという調査結果も出ているわけでございまして、広く職場の声を聴く仕組みとして本当に機能しているのかということについて、疑問も残ります。
労働時間原則の例外を認める手続の要として、労使委員会や労働組合等が大きな役割を担っていることを考えれば、これらが実効性ある形で機能していくことは大変重要であるということでございますし、必要な取組だと思います。労働時間法制に関しては、資料No.2-1の5ページにありますとおり、時間外労働の上限規制の適用が猶予されている業種や業務への上限規制が令和6年度に施行され、また中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予が来年度には廃止されます。
まだそのような取り組みが残されているわけでございまして、これから先のことを考えると、労働時間法制の本来の使命でございます労働者の健康を確保するための法の趣旨を踏まえた適正な運用がされなければならないと思っていますし、そのような制度にしていかなければならない。加えて、しっかりとした指導監督は大変重要な取組だと思いますので、引き続き取り組みを徹底いただきたいと思っています。
以上、発言させていただきました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、オンラインの安藤委員から発言希望が出ております。安藤委員、お願いします。
○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。
裁量労働制の対象業務について発言したいと思います。
裁量労働制実態調査の結果によると、専門業務型、企画業務型ともに、約8割の適用労働者が制度の適用に対して満足しているまたはやや満足していると回答しており、また、制度適用による健康への悪影響も大きくないということが今日御報告いただいた内容から捉えることができると思いました。
したがって、裁量労働制というのは、まずは適用労働者にとって満足度が一定程度高い制度であるという認識に立って、対象業務の在り方を含めて議論することが重要であると考えています。
他方で、以前、対象業務拡大について法案要綱が示されているわけですが、もう5年程度が経過しております。この間、働き方改革関連法の施行により、時間外・休日労働の上限規制等が施行されたほか、コロナ禍によって働き方の変化等も大きく生じています。よって、平成29年当時の内容が現時点でも適当であるかということは、非常にしっかりと精査することが必要だと思っています。
今回の検討会の報告書にもあるとおり、きちんと検討、精査すれば、現行制度下でも可能なものもあるのではないかという観点から、使用者側委員から、現行のものではできない、一致していないという話もありましたが、要望の内容をさらに精査の上、裁量労働制の対象業務の拡大が必要なのはどういう場合なのか、現時点でどのようなニーズがあるのかということをより丁寧にみていく必要があるのではないかと感じました。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
先ほど東矢委員から手が挙がっておりましたので、東矢委員からお願いします。
○東矢委員 ありがとうございます。
私からは、裁量労働制について発言させていただきたいと思います。
前回の分科会において、また先ほども使用者側の委員の方々から、自立的な働き方のニーズへの高まりだとか、労働時間に比例しない仕事が増加しているといった中においては、裁量労働制の対象業務を拡大すべきだとの趣旨の御発言があったかと思います。
裁量労働制につきましては、以前、労働者側の委員からも発言したとおり、労使協議等が実効性ある形で機能しているとか、制度趣旨をしっかり労使で理解して、それに沿った適正な運用がされている職場においては、労働者の働きがい、生産性の向上につながり得るものだと受け止めております。
一方で、資料No.2-2の24ページなどを見ますと、業務の遂行方法、出退勤等について裁量がないなど、実質的に裁量がない働き方をしていると思われる方も一定数回答としてございますし、同じく資料No.2-2の31ページに労使委員会の実効性に関するところがございますけれども、十分機能していると思うかといった質問に対して、実効性があるとは感じていない労働者が約半数いるといったところなど、必ずしも全ての職場で法の趣旨に沿った運用とはなっていない。そのようなところはしっかり認識をする必要があると受け止めてございます。
裁量労働制につきましては、真に裁量が認められる労働者に限ってその対象としなければ、結果として長時間労働、過重労働を生み出すことになってしまうと考えています。今申し上げた課題や労働時間規制の使命は労働者の健康確保であること、また、自立的な働き方は、フレックスタイム制などを活用すれば十分可能ではないかといったことを踏まえますと、裁量労働制によってみなしの労働時間となって、結果、長時間労働となるおそれが高まる労働者の範囲をあえて拡大していく必要があるのかについては、労働者としては大いに疑問であるということを改めて申し上げておきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
八野委員、どうぞ。
○八野委員 ありがとうございます。
これからの労働時間制度に関する基本的な考え方の中にも、新たに生じている労使のニーズや社会的要請に適切に対応し得ているのかは、労働者の健康確保という原初的な使命を念頭に置きながら、労働時間法制は考えるべきだということが示されているわけです。
私たちは様々な社会または企業を取り巻く環境、働く者のニーズを考えながらも、健康確保ということが労働時間の中では重要だという点をもう一度確認しておきたいと思います。
その中で、資料No.2-2の23ページの裁量労働制の下で働く労働者の労働時間を見ると、満足度が高い方が多くなってはいますが、週40時間超えの割合が非適用労働者よりも多くなっています。特に1か月の実労働時間が80時間に近い。これはつまり過労死の認定基準で働いている労働者の割合も非適用者よりも多いという結果が出ているわけです。
また、労働時間の管理方法として、今、好事例は使用者側から提示していただきました。今回の審議会に資料は出されておりませんが、2021年6月に結果が公表された、裁量労働制実態調査では、労働時間の把握方法が自己申告であると回答した労働者の割合も、専門型で約35%、企画型で22%となっています。みなし労働時間制のもとで運用されているわけですが、労働時間の管理が適正に行われていないのではないかという疑念も持っております。
皆さんも御存じのとおり、長時間労働が、脳、心臓疾患のリスクを大きく高め、精神疾患や過労死、過労自殺等の要因にもなっているという因果関係は明確であり、また、過労死等の件数も高止まりしている現状があります。そのような実態を直視しなくてはならないと思います。
裁量労働制が議論された当時、私も審議に参加をさせていただき、労働時間が長くなるおそれがあることを踏まえれば、労働側としては対象業務の拡大については反対というスタンスを示させていただきました。
もう一点、なぜか裁量労働のほうに持っていこうとしているような雰囲気が見えますが、経済社会が変化していることについては労働側も同じ考え方でありますが、例えば生産年齢人口の減少については、今、国の方でその歯止めをかけていく施策が十分に議論されていない。そのような根本的な議論が必要であると思いますし、労働生産性の向上、付加価値の拡大について、私たちもそれに反対すべきものではありません。
ただし、労働生産性の指標は、日本で使われているものは8通りありますので、どれを見て各企業の中で労働生産性を見ていくのか。私どもは日本生産性本部の指標を見させていただいております。
付加価値の拡大について見ていけば、イノベーションの強化、人材育成の拡充、企業革新力の充実、経済の新陳代謝の促進などについて、その中でどういう働き方なのか、どういう人材育成をしていくのか、まず労使の中でしっかりと協議して取り組んでいくことが重要です。
様々な現行の労働時間法制を活用しながら、各企業における人材育成、採用、または人事制度というものの中で動いていくことのほうが重要であり、そのような取り組みを進めることが第一義ではないかと考えております。
そのような内容は、検討会の報告の中にも、労使で取り組む労働時間制度だけでなく、経営の方針、目標の管理等を含む組織マネジメントの在り方を考慮することが、労使双方にとってメリットのある働き方の実現に資すると考えられるということが明記されています。そのようなことも踏まえて、今回、ここでは労働時間法制について、健康確保を前提としてどう考えるのかということが重要であると思いますので、付け加えて意見とさせていただきます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、オンラインの世永委員、その後、藤村委員から御発言をお願いいたします。
○世永委員 ありがとうございます。
先ほどの使側のほうから手続の簡素化について進めるべきだという発言がありました。労側としては反対ということで発言をさせていただきます。
前回の分科会において、日常的な労使対話、労使協議等を通じて制度の運用状況を把握し、適正な制度運用に努めている職場もあるということを発言させていただきました。
資料No.2-2の31ページの労使委員会に関わる資料を見ても、労使委員会の実効性があると回答した者では長時間労働になる確率が低下することなどを踏まえますと、適正な運用の要は労使委員会であると考えております。
その上で、労使委員会が適正運用のために果たしている役割などを踏まえれば、定期報告の頻度を減らすことや労使協定の一括届出等の手続の簡素化は、適用される労働者の納得性の確保を含め、実効性確保に逆行するものであり、前回分科会発言の繰り返しになりますが、安易な手続の緩和については認められないということについて発言をさせていただきます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
藤村委員、お願いいたします。
○藤村委員 どうもありがとうございます。
裁量労働制について、8割の人が満足をしている点に注目して議論するのか、あるいは2割の満足していない人たちに注目をして議論するかで、議論の方向は分かれると思います。
例えば満足していない人たちについて言えば、年収が300万円ぐらいで、20代前半で働き始めてすぐの人たちが裁量労働制の対象となっているのが適当なのかということが検討会の中でも議論されました。
そこで、労働側の委員にこれからぜひお考えいただきたいのですけれども、満足している8割の人たちの働き方を見ると、自分自身の裁量を生かした働き方ができている点を評価していますと。これはとてもいい制度だという意見があります。これをさらに進めていくためにどうすればいいのか。労使委員会がとても大事な役割を果たしているわけですけれども、労使委員会の実効性を高めるために、労働側としてはどういうことをすればいいとお考えなのか。そこをもう少しお考えいただけるといいなと思います。
それから、2割の満足していない人たちを減らしていくために、労働側委員としてはどういうことを実際にやっていけばいいのかという点についても議論していただければと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 基本的には先ほど八野委員が申し上げたとおりでございますけれども、労働側としては、労働時間法制については労働者の健康確保という原初的な使命を念頭に置いていただきたいということでございます。先ほど使側委員の皆様から様々に御意見が出てまいりましたけれども、裁量労働制を拡大しなければ実際に創造的な仕事ができないのかといったら、そうではなくて、既存の制度の中で、きちんと適切な労働時間の中で効率的な働き方は十分可能であると考えております。それはマネジメントの問題もあるのではないかと我々としては思っているところでございますので、その点についてきちんと考えていただきたいと思いますし、多様な働き方という名の下に都合よく解釈され、労働時間法制が緩和されることはあってはならないと考えております。裁量労働制につきましても、対象業務の拡大等は行うべきではないということを改めて申し上げておきたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
資料No.2-3の論点(案)のうちの「1 労働時間制度の課題等について」は本日御議論いただきましたので、次は「2 裁量労働制について」に関して議論していただきたいと考えております。そこで事務局には、本日の議論も踏まえて資料などを用意していただくようお願いいたします。
それでは、本日の議論はここまでといたします。
最後に、次回の日程等について、事務局から説明をお願いします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、本日の労働条件分科会は以上といたします。どうもありがとうございました。