第48回 社会保障審議会生活保護基準部会議事録

日時

令和4年10月6日(木) 16:00~18:00

場所

AP虎ノ門11階C+D室(オンライン)
(東京都港区西新橋1-6-15NS虎ノ門ビル)

出席者(五十音順)

議題

  • 生活扶助基準の体系の検証について
  • その他

議事

(議事録)
■小塩部会長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第48回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
事務局より、本日の委員の出欠状況と、資料の確認をお願いいたします。
また、オンラインで出席されている委員の方がいらっしゃいますので、会議での発言方法等についても、改めて御説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 まず、本日の委員の出欠の状況でございますが、岡部委員から御欠席との連絡を受けております。
また、渡辺専門委員におかれましては、17時15分めどで御退席されると伺っています。
加えて、事務局においては、駒木総務課長が他の公務のため欠席となっております。
傍聴につきましては、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、本日は、一般の方の傍聴は御遠慮いただいており、報道機関の方のみの傍聴とさせていただいております。
議事録につきましては、後日、ホームページに掲載いたしますので、御承知おき願います。
次に、本日の資料でございます。
議事次第に続きまして、資料1「生活扶助基準の体系の検証」。
参考資料1「被保護者調査(概数)の結果(令和4年7月分)」となっております。
資料の不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。
よろしいでしょうか。
会議の進行に当たりましては、お手元の資料を御覧になりながら御参加いただければと思いますが、事務局からの資料説明の際には、Zoomの画面上にも資料を表示するようにいたします。
また、会議中、発言を希望される際は、カメラに向かって挙手をお願いいたします。
部会長の指名を受けた後、マイクのミュートを解除して御発言いただき、御発言終了後は、再度マイクのミュートをお願いいたします。
それでは、これからの議事運営につきましては、小塩部会長にお願いしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
■小塩部会長 分かりました。
それでは、カメラ撮影の方は、これで御退室をお願いいたします。よろしいですね。
それでは、本日の議事に入りたいと思います。
事務局から資料1について説明をお願いいたします。
■安西社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料1「生活扶助基準の体系の検証」を御説明いたします。
1ページを御覧ください。こちらは改めてになりますが、4月の第43回部会で共有事項となりました「令和4年度における生活保護基準の検証作業の進め方」について抜粋したものを載せています。
基本的な考え方として、生活扶助基準は、「標準世帯」に係る基準額を基軸として級地、世帯人員数及び世帯員の年齢階級の別に基準額が設定されていることから、この基準体系(較差)について、これまでも級地、世帯人員数及び世帯員の年齢階級ごとの消費実態の較差との比較による検証を行ってきたところであり、今回も、過去の検証手法を踏襲して同様の検証を行うとされています。
2ページです。
生活扶助基準の較差の検証の具体的な作業内容として、級地、世帯人員数及び世帯員の年齢階級ごとの消費実態の較差との比較による検証は、これまでの検証手法を踏襲して行う。具体的には、2019年全国家計構造調査の個別世帯のデータを用いて、低所得世帯を対象として、第1類相当支出及び第2類相当支出のそれぞれについて、各世帯の世帯構成、級地、収入及び資産等を説明変数とする回帰分析を行い、その結果を基に消費実態の較差(指数)を推計し、当該推計結果と現行の生活扶助基準における較差を比較することにより評価・検証を行うとされています。
加えて、2つ目のポツにありますとおり、展開手法の改善の観点から必要がある場合には、参照する所得階層や具体的な説明変数の設定などの回帰分析の細部について、採り得る方法を生活保護基準部会においてあらかじめ検討し、当該方法による結果を、従前の方法による結果と併せて算出するということにされていまして、この間、部会において議論を重ねていただいたところです。
また、消費実態の較差の推計が、多様な世帯類型の消費実態の較差を反映したものとなっているかを確認する観点から、参考とすべき指標について検討を行い、その状況を確認するとされています。
3ページからは、検証手法を記載しています。
4ページです。
ここからは、これまで御議論いただいた回帰分析の改善の観点について記載しています。8月の第46回部会の資料でお示しした内容に加えまして、その際の御議論を踏まえまして、追記等をしています。
こちらのページでは、マル1として世帯人員数・年齢構成に関する変数について、世帯人員ごとのダミー変数と年齢階級の構成割合を説明変数として設定するとされており、第46回部会の資料と同じ内容を再度記載しています。
5ページです。
マル2といたしまして、収入・資産・家賃に関する変数についてになります。
このうち、1つ目と2つ目の丸は、第46回部会で既に御説明した内容となっていまして、収入に関する説明変数は除外すること、家賃に関する説明変数は除外し、持ち家の有無についてダミー変数を設定することとしています。
3つ目の丸の資産の関係の説明変数については、これまでの議論において必ずしも入れる必要はないという御指摘があった一方で、対象範囲を低所得世帯に限ったとしても、例えば、高齢世帯など、収入のみではなく資産の取り崩しを生活に充てる世帯もあるとの御意見もあったことから、資産に関する説明変数は引き続き設定することとしています。ただし、これまで資産に関する説明変数は、貯蓄現在高から負債現在高を差し引いたネット資産額の実額を用いてきましたが、負債額の8割以上は住宅ローンであり、実際にはそうした負債額に見合う住宅を資産として保有していることが見込まれますので、資産に関する説明変数は、貯蓄現在高の対数によることとしています。一方で、住宅ローンについては、その支払い負担があることで消費行動への影響が見込まれる旨、第46回部会の議論の中で御指摘がありましたことから、住宅ローン支払いの有無についてダミー変数を設定するようにしています。
6ページです。
マル3の対象とする世帯については、第46回部会で御議論いただき、前回の第47回部会で部会長から方針が示されましたように、世帯人員間の較差を捉える観点から世帯人員ごとの対象となる世帯の割合を考慮し、単身世帯、2人世帯、3人世帯、4人世帯、5人世帯のそれぞれにおいて年収階級第1・十分位に属する世帯を対象とすることとしています。
マル4の外れ値の除外については、第46回部会での御意見を踏まえまして、頻度の低い消費支出の状況を反映できなくなってしまう可能性があることから、被説明変数の消費支出についてトップコーディングは行わないこととするようにしています。
米書きに、外れ値の状況を確認した結果を記載しています。分析の対象となる標本世帯4,422世帯のうち、第1類相当支出の対数について平均+3.5σを超えるサンプルは観測されなかったこと。また、第2類相当支出の対数について平均+3.5σを超えるサンプルは8世帯観測されましたが、仮に、これらの値を平均+3.5σの値で置き換えても、この後に出てきます回帰式で消費較差指数の算出を行った場合でも、算出結果にはほぼ影響がなかったということを確認しています。
7ページです。これまで御説明した点を踏まえまして、回帰式はこちらの表のとおりとしています。
8ページです。こちらは、回帰分析結果からの較差指数の算出方法についてとなりまして、第46回部会の資料から変更はございません。
9ページです。こちらは、対象となるサンプルの割合について級地ごとの状況も確認しておく必要があるという御意見がありましたことから、世帯人員別かつ級地別にサンプル世帯数を示したものとなっています。各欄の括弧書きは、世帯人員数、級地ごとの全年収階級の標本世帯数に対する抽出割合を記載しています。
10ページからは、算出の結果となります。
11ページです。こちらが、先ほど御説明した回帰式での回帰分析の結果となります。各説明変数の係数の算出結果とともに、係数が有意な結果となったものについては、t値の欄にアスタリスクをつけています。また、これまでの議論において多重共線性等の問題について御指摘がありましたことから、変数間の多重共線性を検出するための指標であるVIFの値を併せて記載しています。
12ページです。こちらは、11ページの回帰分析の結果を用いた場合の較差指数の算出結果となります。
オレンジ色のラインで四角のマーカーのグラフが消費実態の較差、青色のラインで丸のマーカーのグラフが現行の基準額の較差になります。オレンジ色のラインの消費実態の較差の各数値には数値に下線を引いていますので、数値の読み取りに当たって御活用いただければと思います。
上段が第1類、下段が第2類となっています。左側が第1類のみとなりますが、年齢別較差指数、真ん中が級地間較差指数、右側が世帯人員別較差指数となっています。
米書きに記載していますが、回帰分析の結果に基づく消費較差の推定値には一定程度の誤差を生じることから、幅をもってみる必要があります。
グラフ中でアスタリスクをつけている箇所は、起点となる1と有意な差があるものとなりまして、前のページの回帰分析結果で有意となった係数と対応しているものになります。
なお、幅をもってみる必要があることにつきましては、アスタリスクがついているものも同様となります。
13ページです。
こちらは、(2)として級地区分の見直しの検討状況を踏まえた算出結果ということで、上段枠内の米書きにありますように、級地区分について、「生活保護制度に関する国と地方の実務者協議におけるこれまでの議論の整理」を踏まえまして、1~3級地のそれぞれの枝番を統合した場合の回帰分析の結果となります。
14ページです。13ページの回帰分析の結果を用いた場合の較差指数の算出結果となります。
先ほどと同様に、オレンジ色のラインで四角のマーカーのグラフが消費実態の較差、青色のラインで丸のマーカーのグラフが現行の基準額の較差となります。オレンジ色のラインの消費実態の較差の各数値には数値に下線を引いていますので、数値の読み取りに当たって御活用いただければと思います。
真ん中の級地間較差指数以外は、12ページの級地6区分での結果とほとんど差異がない状況となっています。
米書きの留意点の記載は、先ほどと同様になります。
続きまして、15ページです。
ここからは、従前の方法による算出結果ということで、前回、平成29年検証の際の方法による算出結果となります。平成29年検証の際は、用いた回帰式が複数ありますので、回帰式A、回帰式B、回帰式Cとしています。
次に、17ページを御覧ください。こちらは、従前の方法による較差指数の算出結果となります。
従前の方法では、右側の世帯人員別較差指数の算出は、実データによる方法と回帰分析による方法の二通りの方法で行っていたことから、実データによる消費実態の較差をオレンジ色のラインで四角のマーカーのグラフ、回帰分析によるものを緑色の点線のラインで三角のマーカーのグラフで示しています。また、オレンジ色のラインの消費実態の較差の各数値については数値に下線を引いていますので、数値の読み取りに当たって御活用いただければと思います。
米書きの2つ目に記載していますが、グラフ中アスタリスクをつけている箇所は、起点となる1と有意な差があるものとなります。ただし、従前の方法による場合は、左側の年齢別較差指数と右側の世帯人員別較差指数においては、1と有意な差があるか回帰分析の結果から明らかではないためアスタリスクは付していないということになっています。
続きまして、18ページです。
こちらは、8月の第46回部会で御提案していましたが、回帰分析の結果について、世帯類型間の第1類の消費較差の反映状況を確認する観点から、参考として算出するとしていたものになります。
表中のオレンジ色の表頭「平均支出」の欄は、分析の対象とした世帯のうち、各世帯類型の消費支出の平均額の違いから算出した世帯類型間の較差指数になります。青色の表頭の「較差指数」の欄は、これまでに御説明したそれぞれの方法により算出した年齢別較差指数、世帯人員別較差指数を用いまして、年齢別較差指数の平均と世帯人員別較差指数を掛け合わせた値となっています。「平均支出」の指数については、較差指数と合わせてAの若年単身世帯を1とする指数で表示しています。また、括弧内の数字は、それぞれ支出平均による指数との差を表示しているものです。
19ページ以降は参考としまして、5年前、平成29年検証における消費較差の算出方法について記載しています。
資料の説明は以上になります。
基本的には、これまで積み上げてきた議論を基に集計作業を行った結果について御報告したものとなっています。この結果を見る上で留意すべき点などがあれば、御意見をいただけましたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
■小塩部会長 ありがとうございました。
ただいま、事務局から資料1について説明していただきました。御意見、御質問等ございましたらよろしくお願いいたします。
山田委員のお手が挙がっています。よろしくお願いいたします。
■山田委員 今回も詳細な結果について膨大な作業と、それから、資料の御準備を本当にありがとうございます。
一応、いろいろな細かい質問に入る前に、大前提として、今回の推計というのは基準額そのものではなくて、展開のみをどのようにするのかといった、そうしたことに使う情報になるという理解だと思いますけれども、そういった理解でよろしいでしょうかというのをまず、ちょっと確認させていただければと思います。
その上で、ちょっと細かい点になりますけれども、いろいろ御質問さしあげることができればと思います。よろしくお願いいたします。
■小塩部会長 承知しました。
この点、重要ですので、事務局から回答をお願いできますでしょうか。今日の紹介していただいた結果ですけれども、これはどのように使うのかという点についての確認です。
■森口社会・援護局保護課長補佐 お答えいたします。
今回お示ししました結果については、級地別、世帯人員別、年齢階級別のそれぞれの基準体系の相対的な較差の程度を検証するためのものとなってございますので、その観点から御議論いただければと思います。
■小塩部会長 山田委員、よろしいですか。
■山田委員 分かりました。ありがとうございます。
■小塩部会長 では、その上で御質問をお願いいたします。
■山田委員 まず、そういうことであれば、低所得層の生活扶助相当支出のパラメーター、つまり、級地ごとの較差とか年齢階級ごとの較差とか世帯人員ごとの較差、それを比率でどれほどかというのを本日お示しいただいた資料から酌み取ることができると思うのです。
その場合、大前提として、経済学とかいろいろと実証分析の世界では言われるのが、ほかの条件が一定であれば年齢階級ごとの較差はどうなるのかとか、級地ごとの較差はどうなるのか、あと、世帯人員ごとの較差というのはどうなるのかということが重要になってくるわけです。ほかの条件が一定ならば、という大前提を満たすためには、細かく変数を調整する必要があるのではないかと思うわけです。
特に慎重を期すべきなのは、今回、前回と違って、どういう分析対象を持ってきているかというと、世帯員数ごとに第1・十分位というのを切り出して推計対象としているというのが前回とは異なるわけです。前回についてはそうではなくて、こちらの資料でもお示しいただいたように、2ページの中ほどの米印に書かれているように、1人当たり年収階級第1・十分位の世帯を前回は分析対象としたわけです。ですから、分析対象サンプルは前回と異なっていると。そのことをどう考えるのかということです。
推計対象としているのが今回は世帯員数ごとの第1・十分位ということなのですけれども、世帯員数によっては、いわゆる貧しさの度合いというのはそれぞれの世帯員数で見た世帯類型によって異なっている可能性というのを注意しなくてはいけない。
例えば、単身世帯の第1・十分位で例えば最も貧しく、各世帯類型の中で3人世帯の第1・十分位というのは、同じ第1・十分位でもあまり貧しくないとします。これは仮定の話です。貧しさの度合いがもしあった場合にそれをそろえず推計結果で得られた係数というのを、パラメーターというのを生活保護基準で当てはめて展開させると、単身世帯の基準を相対的に下げるということになります。ですから、そうならないように貧しさの度合いというのを、各世帯員数で見た世帯類型の各第1・十分位それぞれでそろえるように、やはり前回も入れていた世帯年収とか負債も考慮したネット資産とか家賃という変数はやはり入れるべきではないかと結果を見ていて思いました。
特に、前回お示しいただいた資料でも持ち家がない場合、一般世帯ですら社会的な剥奪の状況が、持ち家がある人と比べて家賃を支払っている人というのは明らかに悪いことが明らかになっているので、家賃額を統御するというのが、貧しさの度合いをコントロールするには、貧しさというよりは、家賃以外に生活扶助相当支出に使えるお金がどれくらい割合としてあるのかということを統御するにはとりわけ重要かと思います。
5ページのマル2の初めの丸に、多重共線性等の問題により係数を不安定にする懸念があるということですね。これについては、幸いにも実際に従前の方法でやられたVIFを見ても、この新たに加えるべき3つの変数、世帯年収、負債も考慮したネット資産、家賃についてはVIFは高くないので、多重共線性の懸念を払拭して入れることができるということが幸いにもある程度分かっていますので、やはりこれは貧しさの度合い、今回、とりわけ新しくサンプル、要するに推計するサンプルを持ってきているので、細かくコントロールする必要があるのかというのがまず1点目になります。
ただちょっと、それ以外についてお話しすると非常に長くなるので、一旦ここで区切らせていただいて、また別途、御質問、コメントさしあげたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
■小塩部会長 ありがとうございます。
今、山田委員から御質問がございましたが、ほかの委員の方にもちょっと聞いてみたいと思うのですけれども、ほかの委員の方、御質問、御意見ございますでしょうか。
宇南山委員、お願いいたします。
■宇南山委員 宇南山です。ありがとうございます。
私は、もちろん各世帯人員別の各下位10%をサンプルとするということで完全に厚生水準がそろえられるというのは必ずしも保障されていないというのはもっともだと思います。しかし、家賃とか年収、特に年収のほうを入れるのは問題が多いと思います。等価尺度でコントロールできている年収を入れるとすれば非常に望ましいと思うのですけれども、それが入れられない以上、年収を入れてしまうと等価尺度を調整するような項として世帯人員の各人数のダミーの係数が変化することになります。そうなると、各人数ダミーの係数が年収を等価尺度に換算するための効果なのか、厚生水準をそろえた上での人数の効果なのかが判別できないと思っています。年間収入を等価尺度でコントロールできない状況で、なおかつ、非常に低所得者にそろえている状況であれば、年間収入を加えるというのはあまり適切な処理ではないのと私は考えています。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
この点、年収等々そういうものをコントロールすべきかという点について、山田委員、それから、宇南山委員にお考えをいただきましたけれども、ほかの委員の方、ほかのところでも結構なのですけれども、コメント、御意見ございますでしょうか。
それでは、この点につきまして、事務局はいかがでしょうか。コメントいただければと思います。
■森口社会・援護局保護課長補佐 御意見いただきました点について、事務局から補足させていただきます。
まず、世帯人員数ごとに下位10%を対象とするということとなっていますということで御指摘がございました。こちらにつきましては、第46回の部会で御議論いただきまして、それを踏まえて前回、第47回の部会で部会長から示された方針に沿ったものとなってございます。当然、分析の対象範囲、考え方を変えれば違う結果が出てくるとは思いますけれども、複数の結果を見て改めて手法を取捨選択するというものではないということについては御理解いただければと思います。
また、年収や資産、家賃に関する説明変数についても細かく見るべきということで御意見がございました。こちらにつきましては宇南山先生からも御指摘がございましたけれども、世帯年収という変数を入れると、かなりほかの変数の係数を不安定にするおそれがあるということで、こちらにつきましてはVIFの数字が引用されておりましたけれども、そもそも世帯年収というのは世帯人員数や年齢構成によって相当程度説明されてしまう、高い相関があるということかと思いますので、当然に係数が不安定になるものではないかと承知しております。それゆえ、今回、そうした問題があることも踏まえまして設定しないということとしたものと承知しております。
それから、資産や家賃についてということで、特に家賃の話をされてございましたけれども、今回の回帰式には説明変数として持ち家ダミーが入ってございます。一般に持ち家ではない場合というのは賃貸住宅に居住しているということが考えられますので、計算の構造上持ち家ダミーが入っていることというのは、家賃の支払いをしている世帯についてのダミー変数が設定されているということと同じ意味を持つものかと思います。
■小塩部会長 山田委員のお手が挙がっています。お願いいたします。
■山田委員 すみません、委員として意見の軽重というわけではないのですけれども、事務局がこういう形で采配するようなコメントを、専門的な意見を述べるということは、これは部会長から求められていることでしょうか。私の理解としては、委員同士の議論に基づいていろいろと方針なり何なりが進められていくという理解なのですけれども、今の事務局の御発言は、あたかも委員が申し上げた意見に対してそれはできないとおっしゃっているようにも聞こえますけれども、委員と事務局の役割分担についてもう一度確認できればと思います。
事務局は、事実確認についていろいろな意見をいただくというのはもちろん、それは行政のプロとして当然だと思うのですけれども、こちらが申し上げたことについて、例えば、今も幾つかありましたけれども、VIFを確認しない限りは多重共線性というのはよく分からないにも関わらず、それについて多重共線性があるかもしれない。だから入れないのだという、そういったことをおっしゃったように思います。
それから、住宅ローンはダミーが入っているのではないかということなのですけれども、やはり住宅ローンを払っていないとか持ち家ダミーが入っていることによって、いわゆる借家がコントロールできているのではないかということですけれども、これは委員からすると、家賃といういわゆるより詳細な情報を活かさずしてなぜその持ち家ダミーだけで、その裏側が借家だから入れなくていいのだということになるのかどうかという、そういう意見になるのかどうかというのはちょっと私は理解できないと思うのです。
ですから、もう少し役割分担を明確にしたほうがよいのではないかと。事実確認についてもちろん事務局側が意見をおっしゃるというのは当然のことだと思うのですけれども、そうではない部分について、何か委員同士の意見、流れを方向づけるような発言というのが果たしていいかどうかというと、私はちょっと不適切だと思います。
以上です。
■小塩部会長 部会長から申し上げます。
事務局から先ほど説明がございましたけれども、これは委員の方々の議論の参考となるよう質問や意見への補足的な情報ということですので、そういう位置づけだと考えていただいて結構です。
山田委員、いかがでしょうか。
■山田委員 承知しました。
参考ということですけれども、いろいろな委員の意見の方向づけを行うように事実に基づかない、例えば、多重共線性が世帯年収を入れたら起こるかどうかというのはVIFできっちり確認しないと分からないことにもかかわらず、起こるかもしれないから入れないのだという意見というのは、事実に基づかない、もしくは実証的な根拠に基づかない意見ですので、少しその点については気をつけていただければと思います。
■小塩部会長 承知しました。
ほかに、今の点、あるいはそれ以外の点について、委員の方々からコメントはございますでしょうか。ほかの委員の方、いかがでしょうか。
阿部委員、お願いいたします。
■阿部委員 この結果について議論を始めてもよろしいでしょうか。手法についてではなくて。
■小塩部会長 お願いいたします。
■阿部委員 この結果を、いわゆる展開するときの係数の結果についてなのですけれども、まず、11ページのものも13ページの級地見直しの検討を踏まえた結果でもこの新しい手法を使ったときに、年齢のところの係数がどれも75歳以上以外はどれも有意にならないということについては、これをどういうふうに。このような結果になってしまいますと、非常にこの年齢の較差をどういうふうにしていくのかと。特に第1類費のほうについて解釈が非常に難しいなと思います。そうしたときに有意でないものをそのまま使うのか、それとも、それは全て有意ではないのでゼロとみなして、ゼロと違うという結果が得られないのでゼロとみなすという形でフラットにするのかと。ここについては、それによってやはりここはどうしても係数的に展開するときにはどうしても必要な数値ですので、どういうふうにするおつもりなのか、それとも、それについてもこの部会の中で話し合って、私たちの中で話し合って何が一番いい方法かということを議論させていただけるのかということをお聞きしたいなということを思いました。
それともう一つが、級地間較差の第2類費のところで、2級地1と2級地2の間に結構大きな差があるという結果になっております。11ページ、12ページの結果です。この差についてはどのように見るのかと。こちらのほうも有意ではないわけなのですよね。2類費のほうは。なので、これをこういう有意でないような結果のところをどういうふうにするかということについて。お聞きしたいのは、これは私たちの議論の中でこれをゼロとみなすべきなのかということなのか、それとも、この数値を使うべきなのかという話のところまで議論していいのか、それとも、私たちの役割というのは、この推計式が正しいかどうかということを議論するのみにとどまるのか。そこをお聞きしたいなと思いました。その上でもし議論させていただけるのであれば議論させていただきたいなと思います。
■小塩部会長 阿部委員からは、年齢別の較差、それから、級地間の較差等についてどういうふうに解釈するかという問題提起をいただきました。この結果は、私たちが今までいろいろ議論してきた手法に基づいて事務局に計算していただいた結果ということなのですけれども、この解釈については私たち、この部会でいろいろ議論すべきテーマだろうと思いますので、今、山田委員のお手が挙がっていますけれども、阿部委員もほかの委員の方々も御意見を頂戴できればと思っております。よろしいでしょうか。
ちょっと今、事務局から発言を求められておりますので、まず、池上課長からコメントをお願いします。
■池上社会・援護局保護課長 阿部委員から御質問を頂戴しました。部会長からおっしゃっていただいたように、この数値の解釈についてまさに部会で御議論いただければと思っております。あわせて、阿部委員からは、実際に基準はどうするのかというお話もあったかと思いますけれども、基準についてはまさに基準部会で御議論いただいたその検証結果を受けて厚生労働省のほうでどのように対応すべきか勘案しながら検討していくということになりますので、最終的に政策的にどのような対応を取るかという点については、繰り返しになりますけれども、基準部会での検証の結果を踏まえて厚生労働省のほうで検討させていただきたいと思ってございます。
■小塩部会長 ということで、今、課長からの御意見がありましたけれども、それぞれ委員の方々からこの結果について御意見がございましたらよろしくお願いいたします。
阿部委員、お願いいたします。
■阿部委員 それでは、有意でない結果のところ、例えば、(1)の11ページのところの年齢別の係数ですけれども、ここから実際の年齢の較差の傾きというのをどういうふうに計算するのかということは教えていただけるのでしょうか。そこが分からないと、この結果をゼロとするべきなのか、それとも、これを0.01、0.097、0.028と解釈すべきなのかというのが私たちのほうでは判断しかねるかなと思うのですけれども、いかがでしょうか。
■小塩部会長 この点は事務局に答えていただければと思うのですけれども、いかがですか。
■森口社会・援護局保護課長補佐 検証の結果を踏まえまして、厚生労働省において、どのように基準額を設定していくのかを判断していくというものでございます。ですので、それを受けて議論するというよりも、消費の実態としてどのような較差になっているのかという観点で御議論いただければと思います。
■小塩部会長 阿部委員、よろしいですか。
■阿部委員 すみません、消費の結果としてというのは、ですので、この統計式を(1)にするのか(2)や(3)が一番正しいのかと。それをどのように読み取るのかということを話せばいいということなのでしょうか。というのは、(1)か(2)か(3)はという意見はそれぞれあると思いますけれども、それぞれの数値がどういういった意味でtがどれぐらいで標準誤差がこれぐらいというそれをどういうふうに見るのかというのは統計の教科書に書いてあるようなことですので、私たちが解釈のしようがないわけなのですよね。なので、この統計式が正しいのか正しくないのかということを聞いていらっしゃるのか、これが基準をつくる際に参考となるものなのかどうかというところは、やはりそれをどういうふうに使われるかが分からないと何とも発言しにくいというところがあるかなと思います。
■小塩部会長 ありがとうございます。
この点について、山田委員はいかがですか。お手が挙がっていますが。
■山田委員 ありがとうございます。
まず、先ほど申し上げたように、やはりほかの条件が一定という前提が多分満たされていないからこのような結果が出てくるのではないかというのを、その可能性を排除したいと思います。だから、それを入れてですね。
と申しますのは、例えば、15ページとかを見ますと、年齢別の較差指数は前回の検証ではきれいに出ていたわけです。推計対象の変更とか、また、その変数を入れなかった途端にうまく年齢別の較差指数が出てこなくなったと。
もちろん、だから今回の11ページの推計式の中でネット資産とか家賃とか、前回と同様のコントロールをしたところでこの構成割合のところがうまく出てくるか出てこないかということですね。ですから、それをやはり確認する必要があると。
先ほど事務局から、推計結果を見ながらいろいろと出し入れして推計するのではないという話をしましたけれども、逆だと思います。うまくいかないようなフィットの悪い推計式であれば、やはり変数を出し入れして見ていく必要があるというのが委員の意見になります。ですから、そこの作業を少しやる必要があるかなと。
そしてもう一つ、この年齢階級について考えていくと、2001年には第1類の年齢区分というのはもっと現役層について細かかったのです。18~19とか、20~40、41~59とか、そういう区分で細かかったわけです。18~64の区分がもっと細かかったわけです。今、18~64歳というかなり広範な年齢階級がベースとなっていて、一方でほかの年齢階級のサンプルサイズが小さいからだとしたらあまりうまく有意に出てこないかもしれない。だから、現役層の区分をもっと細かくしたらどうなのかということは一つ確認したいと思います。
そして、阿部委員の御意見とも重なりますけれども、今回の推計をどう基準額に反映するかというのは事務局は答えられない、ということなのですけれども、そうしますと、前回の平成29年の検証時にこの推計結果をどう反映したのかというのは、それは記録が残っているはずですからぜひ教えていただきたいと思います。最終的にどのように推計結果から展開したのか、具体的手順をぜひ教えていただきたいと思います。具体的とは、パラメーターを用いてどのカテゴリーを出発点に、年齢階級とか世帯員数、級地でどの順番で展開していったのかというのを教えていただきたいと思います。以前、かなり忠実に、もちろん激変緩和措置は入れましたけれども、このパラメーターの結果を基準に反映させているというお話もありましたので、その情報というのは阿部委員もお尋ねしていたように私もぜひ知りたい情報となっています。
繰り返しになりますけれども、推計結果を見ながら推計式を変えるというのはいけないわけではない。これがうまくフィットができていないということであれば、ほかにフィットがいいような推計式というのを変数なり何なり考えて精緻化していく必要があるかと思います。だからこそ前回までの検証ではちゃんと作業部会を設けてこういう細かい手続を踏んだわけです。今回は事務局からえいやという形で推計結果がいきなり1つぽんと出てきてそれで議論してくださいという話になっていますけれども、前回、作業部会を設けて統計に詳しい委員が入ってやったことからすると、かなり荒っぽいやり方だと受け止めています。ですから、今からでもそうした推計式をどうするかというのはもっとフィットがいいものを考えてもよいのではないかと。その前提条件となるのは、やはりほかの条件が一定であればというところをクリアしておく必要があると思います。
以上です。
■小塩部会長 宇南山委員がお手を挙げていらっしゃいますので、この点について御意見を伺います。
■宇南山委員 ありがとうございます。
私は、先ほどお話ししましたように、世帯年収を入れるということを例えばするというのは、この推計のフィットをよくするということではなくて、世帯人員別の係数というものの解釈を変えてしまうことだと思います。現状ですと、同じ厚生水準の下で世帯人員が違ったら消費支出額が幾ら違うかという概念で推計をしているのに対し、世帯年収を入れてしまうと、等価尺度の調整のための項という新しい効果が加わるため、世帯人員が違うことによる消費水準が違う効果との合計が出てきてしまいます。世帯人員の係数の解釈というものが変わってしまうので、違う解釈の下で違う推計をしてもあまりそのロバストネスの確認にはならないのではないかというのが一つです。
ただ、私は、従前のやり方の結果と比較して見て、阿部先生が御指摘のとおり、今回の推計では年齢の効果が全然有意にならないことが気になっています。従前のやり方ですと見かけ上は全て有意になっているわけですけれども、これは世帯人員の人数が異なるという効果も込みのもので有意になっているので、今回のものとの比較が非常に難しいと思っています。
もう少し言いますと、前回までは2本の推計式で様々なパラメーターを推計しているという手順を踏んでいたのですけれども、それと今回の1本でやる方式で本当にもともと統計的な性質が同じなのかということについて疑念を抱いています。前回もそれらしい手順なのですけれども、世帯人員の非線形性の処理について、私はちょっと不自然なものを感じていて、本当にこれが統計学的な言葉で言うところの一致性を持った推計方法になっているのかという点に疑問を持っています。
もし事務局が可能であれば、非常に手間がかかるかもしれないのですけれども、もちろんその一致性を数学的に示せなんてことは言えないのですけれども、例えば、これを仮想的に0~5歳の人だったら幾ら余計にかかるとか、パラメーターを与えて生成したような疑似的なデータを使い、従前の方法と今回の方法で推計をしてみて、推計方法としてはもともとは同じものなのですよと。真のパラメーターを知っている状況ではどちらの方法でも真のパラメーターを推計できるやり方なのだということを、1つの数値例でも構いませんのでお示しいただいて、今回、結果が不安定になったのが手法上の問題なのか、それとも、たまたまデータが悪いのかというのを確認していただければと思います。
手間のかかることなのですけれども、仮想的なデータ、例えば、世帯人員のデータとか年齢のデータは全消のデータから引っ張ってきて、そこに何か真の値を適当に与えてそのデータを推計する、そのような手順でシミュレーションみたいなものができると思うのです。前回のやり方をどこまで信じていいかという点に関して、そういったシミュレーションみたいなものでいいので一致性を確認していただければと思います。今回のものももちろん推計して、今回のやり方は、私の理解ですと一致性を持っているはずだと信じていますので、少しその辺を確認していただければと思います。そうすれば、今回の結果が前回の結果と結構異なるというときに、推計方法の問題なのか、たまたまデータの問題なのかが明らかにできるのではないかと思います。
以上です。
■小塩部会長 宇南山委員から、今回の推計についてのパフォーマンスの評価について、ちょっと新たな方法で確認できないかという御要望がありましたけれども、いかがですか。事務局では対応できるのですか。ちょっと私はあまりこの分野のことを詳しく知らないのでどこまで手間がかかるかは分からないのですけれども、いかがですか。
■森口社会・援護局保護課長補佐 ありがとうございます。
今いただいたご意見でおおむねのイメージは分かりますので、検討させていただきます。
■小塩部会長 ということでございます。
ほかはいかがですか。
部会長からちょっとコメントさせていただきたいのですけれども、まず一つは、今回の結果は、今まで私たちがこういう方法でいいのではないかということでいろいろ考えて提示した方法に基づいて粛々とやってもらったその結果なのですよね。それを皆さんで解釈、評価していくという、そういう場であるということが一つです。事務局がこういう案で行きましょうというふうに踏み出したものでは必ずしもないということです。
それともう一つなのですけれども、確かに、これは部会長というよりは私の研究者としての立場からのコメントなのですけれども、参考にしていただければいいと思うのですけれども、確かに年齢のところで有意ではない結果が出ていますよね。これは私は、不安定とか推計がまずいということでは必ずしもないのではないかなという気がするのですよ。つまり、これはダミー変数ですからね。いわゆるベンチマークからそんなに大きく離れていないよということを意味するだけであって、有意でないよというのが事実ではないかなと、それも示しているのかなと思います。これは私の研究者としてのコメントですので参考にしていただければいいかなと思っています。
山田委員の手が挙がっています。お願いいたします。
■山田委員 ありがとうございます。
もちろんここの議論を踏まえての推計だったのですけれども、私は前回、この推計をやるときにやはり社会的剥奪指標を見て、持ち家か持ち家ではないかで社会的剥奪指標の値が大分変わってくるので家賃は入れてくださいというのを申し上げたわけです。ですから、必ずしもここの議論を全部踏まえてやっているというよりは、私としては、事務局でセットしたものをやっているという感覚が非常に強いです。作業部会を今回は設けていないわけです。
その上でもう二点ほど、今の議論に関係することを申し上げますけれども、やはり最初に戻ると世帯人員別の世帯類型で第1・十分位を持ってくるということが貧しさの度合いが全部同じということを前提にしているから、何もそれ以外の所得についてはコントロールしないということになっているわけですけれども、それが全く同じというのはあくまでも仮定であって、全くそれは根拠が、しっかりした根拠が別にあるわけではないと。だからやはり、どのみち世帯人員別にダミーを入れていて定数項は違っているわけなので、例えば、2人世帯の所得を入れたときにどれくらい2人世帯の係数が違ってくるのかというのは、それは見るべきだというのが、前回も入っていたわけですから入れるべきではないかというのが、蒸し返しの意見になりますけれども、私が考えていることになります。
ですから、もう一度そのことを考えていただきたいというのと、あと、構成割合というのは、これはダミー変数ではなくて、構成割合に関しては比率が入っているわけですけれども、この比率が利いていないということですね。ですから、この解釈はもちろん、何度も何度も繰り返し申し上げているように、有意ではないということは同じだということを意味しないというのは何度も申し上げているので、そこに注意する必要があると思うのですけれども、ただ、74歳まで各年齢階級の構成割合が全く利かないというのはなぜかというのはやはり非常に気になっているのです。ひょっとしたらやりくりがあるから同じようになっているのかという理由があるのか、何か推計式の設定が誤っていてこのようなことが起こっているのかというのは、少なくとも前回の検証結果はパラメーターはそのまま、激変緩和措置以外は反映させたと聞いているので、これをそのまま反映させたとすると、統計的に有意ではないというのは同じだと解釈してはいけないと言いつつもどうなるのかというのは非常に気になるところであります。
私からは以上です。
あとは、平成29年の検証時にどういうふうにパラメーターに展開したかというのは教えていただきたいということについて、事務局から今お答えいただけるのか、それとも、次回の資料で御準備いただけるのかを教えていただければと思います。
■小塩部会長 分かりました。ありがとうございます。
それでは、前回の、どういうふうに数字を固めていったかという点について、いかがですか。これは事務局からお答えできますか。
■森口社会・援護局保護課長補佐 はい。
先ほども申し上げた点ではございますが、まず、そもそもとして、今回の議論については相対的な較差の程度を御議論いただくということで、当然、それがどのように検討されてどのように反映されていくかということが分かっていないとできない議論ではないということは前提として御理解いただければと思います。
その上で、平成29年の検証時にそれを踏まえて30年の見直しがどのように行われたかという点につきましては、基本的には平成29年の検証の中で示された消費の較差指数に合わせるように基準の較差指数を調整して、水準検証の結果に合うように設定したという形です。
■小塩部会長 山田委員、よろしいですか。
■山田委員 御説明ありがとうございます。
繰り返しになるのですけれども、そういった反映をしているということは理解しているのですけれども、具体的に、例えば、どのカテゴリーを出発点に、例えば、3人世帯でしたら3人世帯を出発点にどの順番で、例えば、年齢階級から出発しているのか、その後の世帯員数をやっているのか、級地をやっているのか。3つの要素を全部一緒に動かすことはできないわけなので、どういう順番でやっていっているのかというその手順を教えていただきたいということで、抽象的な違いではなくてこういうふうに反映させましたというのが分かると、もちろんそれを前提に議論というよりは、こう使われているのだなというのはやはり委員としては情報としては必要だということです。ですから、それをお願いしたいということです。今のようなお答えではなくて、どういうふうに具体的にやったのかというのをお示しいただければと思います。
■小塩部会長 恐らく、今、事務局の方が資料をお手元に持っていらっしゃらないと思いますので、ちょっとこれは私が引き取りましょうか。どうしましょう。
■宇南山委員 すみません、関連してよろしいですか。
■小塩部会長 では、今の件でお願いします。
■宇南山委員 山田委員の御懸念をちょっと理解したいと思うのですけれども、最終的に我々が夫婦子1人のところで丈比べをしてそろえさせると。そこから、今ここで計算している指数というのに基づいて、結果として、夫婦子1人の人との相対関係がここで推計された比に沿うように反映されると。イメージとしては、もらっている基準額表に書いてある額がここでやっているような推計式を回せば、回帰式を回せば、そこで出てくる係数はここで得られた係数と同じものになっていますよねというと、我々の出した結果が反映されたねというイメージになるわけですよね。もしそうだとしたら、具体的な手順として最初にどれだとかというのがどの程度重要なのかというのがちょっと私には理解できなくて、最終的に出来上がった基準額表がここで出した比と合わないところがあるのではないかとかそういう話ではないわけですよね。恐らく、同じ世帯人員で年齢が違う人の基準額表を見ればここでやったのと同じだけの差が生まれているよなというのは、恐らくは確認できるはずだということですと、もしそうだとすれば、そこの手順を詳しく知る必要というのはどの辺にあるのかをもし教えていただければと。
■小塩部会長 この点について、山田委員、いかがですか。
■山田委員 懸念しているのは、年齢階級とか何かの較差を表さずにほかのことを果たして議論して意味がある基準額の展開方法になるのかというのをちょっと確認したいという動機があります。今、実際にこれで年収を入れたらどうなるかは分かりませんけれども、13ページでは、この年齢階級に関するものが有意でないと。その場合にほかの部分というのを決めていくことができるのかということですね。決めていくことができないとなるならば、この推計式というのをどうするのか、改善していくのかという話をしなくてはいけないということになりますし、そうでなければ、どうやってここから標準3人世帯で各その3人を構成する費用が分からないにもかかわらず、同じといってはあれなのですけれども、分からないにもかかわらず展開していけるのだろうかと。だからそこら辺はやはりどういうふうに展開していくのだというのは、今後の議論を進めるためにもやはり知っておくべき情報ではないかなと考えた次第です。それでお伺いしたという、具体的なやり方を教えていただきたいということになります。
■小塩部会長 この件はちょっと複雑ですので、事務局でちょっと検討していただきたいなと思いますので、よろしいですか。
それともう一点、山田委員から問題提起がございました。年収を入れるべきではないかということですよね。これについては宇南山委員が先ほど御意見をおっしゃいましたので、改めてどういうふうに考えるかということについて説明していただけますでしょうか。年収を入れるかどうかということについての御意見です。
■宇南山委員 私の意見を説明させていただきます。
山田先生のおっしゃるとおり、下10分の1を取ったら厚生水準が一緒になっているということを保証するものは何かあるのかというと何もないわけですが、ただ、下位10分の1でしたら同じ世帯人員、世帯人員が同じ世帯人員なら下位10分の1というのがそんなに私はおかしい仮定ではないという感覚をまず先入観として持っているというのを前提にした上で、では、年間収入を入れるとそういう天下り的な仮定を置くことよりもベターな推計ができるのかどうかというところがポイントだと思います。年間収入を入れると、必然的にそれを等価尺度に直すような項というのが、仮に厚生水準で消費パターンが決まっているのだとすれば、年収を入れた途端、それを等価尺度にコントロールするための効果というのが世帯人員の係数に必ず付加されてしまうので、本来知りたい厚生水準を一定とした場合に世帯人員が1人増えたら幾ら余計にかかるのかという係数だけではなくて、厚生水準そのものをそろえるための効果というのが係数に含まれてしまうので、原理的に本来知りたいものとは違う解釈しかできない係数が出てきてしまう。
私は、厚生水準をそれでそろえることができるのだというのは、ほかの目的があるのならいいのですけれども、世帯人員の効果を見たいという大前提に立った場合には、論理的にも整合的でないし、下位10分の1なら厚生水準が一緒だというその天下り的な仮定を何か克服できるような根本的な解決策になっているわけでもないのに、論理的には絶対に真に知りたいものとは違う解釈しかできなくしてしまうような回帰式にするというのは望ましくないと思っていまして、積極的には私は年間収入は入れないほうがいいのではないかと考えています。
■小塩部会長 山田委員のお手が挙がっていますが、もしほかの委員の方でこの点について御意見があればその方を優先しますけれども、いかがですか。よろしいですか。
では、山田委員、お願いします。
■山田委員 実は宇南山委員と私の意見が180度違うからというのではなくて、多分、どの仮定を重んじるのかということだと思うのです。例えば、第1・十分位で貧しさの度合いが単身世帯と3人世帯で違っていたとする。これは今日の最初に議論したことですけれども、そうした場合にもし年収を入れなかった場合には貧しさの度合いをそのまま世帯員数ダミーが示してしまう。どういうことかというと、単身世帯がもし相対的に貧しさが非常に高い世帯だったと。第1・十分位で。そうすると、平均所得を考えると、単身世帯のダミー変数、ここでは基準となっている中に入っていないですけれども、その大きさ、マイナスの度合いというのは非常に大きく評価してしまうと。だから、貧しさの度合いが平均的に単身世帯のほうが高いということを無視してそのまま世帯年収も何もコントロールしないで入れないと、かえって単身世帯のダミー変数、ここでは基準になっていますけれども、それが非常に低く出てしまうというのを反映してしまうという問題があるというわけです。
だから、結局どちらが正しいというよりは、どちらの、要するに前提を重んじるのかということで、今回、各世帯類型の第1・十分位を取ってくるというのは初めてのことであるわけです。これは要するに初めてのことで、実は第1・五分位でもいいわけです。そして、もしかしたら全サンプルを入れて世帯年収でコントロールするのでやってよいかもしれない。ただ、単身世帯の第1・十分位というとかなり貧しい方が含まれてくるし、貧しさの度合いというのが単身世帯が高いというのはいろいろな社会的剥奪指標とかなんかでも出てくるので、やはり世帯年収でコントロールして、大きくこのダミー変数が変わらないかどうかというのは、初めてそういう分析対象を取ってくるのであれば見て、その影響が、ダミーの効果がどれほど変わるのか。ダミーの効果が変わる理由というのはひょっとしたら貧しさの度合いをコントロールしてしまうかもしれないし、一方で宇南山委員が御懸念のように、いわゆる等価尺度を含んでいるかもしれない。
ただ、私は、等価尺度を含んでいるかもしれないという問題は軽微ではないかと思っています。なぜなら、これはダミー変数を入れていて、要するに切片が違うということを前提に、そこから傾きは同じだけれどもその割合がどういうふうに違うのかというのを見ているだけなので、結局、各世帯類型で所得が違うということは、第1類相当支出なり第2類相当支出が異なるということを前提にした上でさらに世帯年収でコントロールするだけなので、それほど大きな悪影響というのはないのではないかと思っています。
ただ、これを入れてみてどれくらいパラメーターが動くかというのはやはり見るべきですし、繰り返しとなりますけれども、今回、作業部会を前回検証とは異なって設けていないわけですよね。こういった細かい作業をやる場というのがなくて、そうしたことが今回、こうした平場で長々と細かいテクニカルな点について議論せざるを得ないという状況になっているわけです。ですから、部会の運営方法については事務局の責任なので私は何とも申し上げられませんけれども、やはり少し、私は、世帯年収以外にも家賃とかネット資産とかを入れてやったほうがいいのではないかということを申し上げましたので、少しそれを検討されたほうがいいのではないかと思います。
■小塩部会長 ありがとうございます。
この点についての御意見、ほかにございますでしょうか。
宇南山委員のお手が挙がっています。
■宇南山委員 私の感覚ですと、前回まで1人当たり年収で区切っていて、その結果として大きく言うと、1人世帯でも2人世帯でも3人世帯でも下位10%近くが選ばれていたという事実は前々回ぐらいの部会のときに確認したと思うのですけれども、これは何を意味しているかというと、世帯年収そのものをぽんと入れればおおむね、1人世帯に比べて3人世帯は3倍になるわけです。平均的な世帯年収を比較すれば。だからこそ、1人当たりの年収で比べて大体同じぐらいになっているという結果になっていたわけですから。
そうなると、3倍もの年収がある世帯を同一厚生水準だとコントロールするためには、やはり3人世帯ダミーは結構大きくそれをコントロールするように、どちらになるのでしょうか。等価尺度の分母側に入る係数、真の等価尺度でしたら3人世帯にかかるべき係数というのが、今出ている係数に足されることになってしまう。足されるのですかね、引かれるのですかね。いずれにせよ、ずれることになる。
となると、私は、それは係数的に結構大きな影響が出るし、やった結果違う数字になったねと言って分かることは、違う仮定の下で違う解釈の係数を推計してみたら違う結果になったという以上の情報がないのではないかと思っていて、違う考え方の違う結果というものをこういう部会みたいな場ですといろいろと示してみるというのはあまり望ましくないのではないかと思うのと、もし1つ選べといったら、等価尺度の分は論理的にここで推計される係数には含まれるべきものではないので、それを含まずに推計できる方法といったら、むしろ年収を除く方法なのではないかと。もちろん、全くサンプルを選ばなければ年収をコントロールしないなんてことには何の意味もないといえばそうなのですけれども、今は幸いにも下位十分位ですし、それは1人当たりの年収が大体同じぐらいの世帯を選んできている。そうすると、規模の経済はあまり考慮できていないかもしれないけれども、おおむね厚生水準にいけるのではないのという仮定にそれほど不自然なところはないのではないかと思うので、そうすると、一貫性からすると、推計結果を1つ出せと言われたら、年収を入れないほうがいいのではないかというのが私の考えです。
■小塩部会長 ありがとうございます。
ほかの委員の方、この点についていかがでしょうか。非常に難しいですね。
渡辺委員、どうでしょう。御専門の立場から何か御意見がありましたら頂戴いたします。
■渡辺専門委員 今、テクニカルな点から御議論がされていたかと思いますけれども、生活保護の基準については、生活保護法からも考えなければいけないと思いますので、ご参考までにお話したいと思います。今、御議論があったように、どのような推計式が最適なのかということは、なかなか決め難いところではあると思いますが、資料にある推計結果について、先ほど来から年齢の変数が有意になっていないという話がありました。
一方で、12ページのグラフから、オレンジの折れ線で示されている消費較差を見ると、推計結果の係数がそのまま使われています。もし推計結果をそのまま読むのだとしたら、75歳以上の構成割合以外については、18~64歳と差があるとは言えないという結果ですので、係数をそのまま使うことは、推計結果の解釈としては不適切だと思います。つまり、0~74歳までは全て1、75歳だけ少し下がるというふうにグラフとして見せるのが正しかったのだろうと思います。
ただ、先ほど生活保護法の観点からと申し上げましたけれども、基準及び程度の原則を踏まえる必要があります。基準及び程度の原則では、地域、世帯、年齢などに応じて最低限の生活を超えない基準を定めることが生活保護法で規定されているわけです。第1類の年齢区分は、新法施行以来、年齢区分の変更は多々ありましたけれども、10~15程度の年齢区分が設けられていました。ただ、この推計結果をそのまま採用することとすると、75歳以上とそれ以外という2つの年齢区分となってしまう。これは、基準及び程度の原則からいって、果たして問題ないのだろうかということも恐らく考えなければならないところになると思います。もちろん基準は、最終的には厚生労働大臣の裁量になるわけですけれども、裁量といっても、合理的かつ客観的な事実は求められるわけです。
一方で、今、12ページの折れ線グラフは、合理的かつ客観的な事実に基づいた消費較差を示していることならないように思います。世帯規模の経済性を調整すること、そのための最適な推計式を選ぶことは重要なのですけれども、生活保護法や基準体系のこれまでの在り方からも考える必要があります。単純に推計結果の解釈をするのでしたら、第1類の年齢区分は2区分とすることになるのだろうと思います。果たしてそれでよろしいのかというのも御検討いただいたらいいのかなと思いました。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがですか。収入以外の件でも結構なのですけれども、コメントはございますか。
宇南山委員、お願いいたします。
■宇南山委員 今の点については私も、解釈のところで統計的に有意でないから1にするというのが、山田委員が再三正しくないとおっしゃっていたのですけれども、つまりどういうことかというと、統計的有意性というのは帰無仮説を、ここの場合でいうと指数が1であるという帰無仮説に立てば、それが必ずしも否定されるものではないということを示しているということで、帰無仮説の立て方次第で有意性とかというのは決められるものだと思っていて、その意味では、点推定をそのまま、例えば、指数に反映するというのも私は決して科学的におかしいというわけではないと思っていて、帰無仮説を1に置くのか、帰無仮説が点推定の場所と見るのか、それとも、帰無仮説は前回の基準が帰無仮説であるべきで、そこから変更すべきですかということをテストするものだと考えることもできるので、そこの考え方というのは、もちろん我々も意見を述べるべきだと思いますけれども、仮に言えば、科学的に、もしくは学術的な見地から何かを言える話ではないので、少なくともあまり変な帰無仮説は立てないでくださいということだけが言えるのだと思います。
例えば、0~5歳が、この場合でいうと係数が1.5であるというのも否定できていないですよねとかという基準をつくられると、それは科学的というよりはおかしいと思いたいですけれども、例えば、だから基準は前回のままにしますというのを、例えば、事務局で提案されれば、それは論理的には間違っていないのではないかとかという判断ができるというのが現状だと思いますので、統計的に有意ではないから全部1にすべきだというのが必ずしもこの部会の結論になるべきとは思っていないです。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
阿部委員のお手が挙がっています。お願いします。
■阿部委員 今の点が最初にお聞きした点だと思うのです。前回も含め、恐らく、統計的に有意ではないところをどのように扱っているのですかと。その結果を。そこを教えていただかないと、私たちはこれで、この推計結果をどのように解釈するのかということが分からないと、これについてお墨つきみたいなものを与えるのは躊躇してしまうというのは当然だと思うのです。先ほど言ったように、今、統計的に有意ではないので、75歳だけ20%基準を低くしてほかの人よりも低くしますという年齢のあれをやるのですかということを私たちはやはり危惧しているわけですよ。なので、どのようにこれを使うのですかと。今回のことをおっしゃられるなら、前回どのようにここから実際の年齢の傾き、18~65歳だったら幾ら、0~5歳だったら幾らと決めているわけですよね。それをどうやってはじき出したのですかと、教えてくださいと山田委員は言っているわけなのですよね。
なので、今回、このような結果が出て、この係数をどのように使われるおつもりなのですかということをお聞きしたいです。再度ですけれども。
■小塩部会長 ありがとうございます。
この点について、先ほど事務局から御回答がありましたけれども、いかがですか。何か追加で回答することは。
課長が手を挙げていただいています。お願いします。
■池上社会・援護局保護課長 今後のことについて確たることは申し上げられないのですけれども、前回、どのような反映だったかということになりますけれども、基本的にはお示しいただいた点推計を基に基準を策定するというふうにしています。なお、検証の過程の中では、第2類の級地間較差指数について、現状では1級地1が1とすると、それ以外のところ、5つの区分については0.96となっておりますけれども、これについては同等の水準で設定するようになっているというところもございます。
 
■小塩部会長 阿部委員、よろしいですか。
山田委員のお手が挙がっています。お願いします。
■山田委員 阿部委員はよろしいということになったのですけれども、多分、阿部委員がおっしゃっているのは、統計的に有意ではない部分については、前回、どう扱いましたかということですので、即答が難しければ次回にでも資料をお示しいただいてどういうふうに展開したのかという、繰り返しのお願いになって大変恐縮ですけれども、資料をお示しいただければと思います。
あと、ちょっと今、年齢階級のほうに集中していますけれども、あともう一点だけ、年齢階級のことについて教えていただきたいのは、従前の方法による算出結果で17ページですね。第1類で、これは15ページの推計結果を見ると、世帯人員別の係数が有意ではあるのですけれども、ちょっとこの較差の有意性が回帰分析から明らかでないため米印を付していないというのが、ちょっとこの意味がよく理解できなかったので、それをちょっと教えていただきたいということです。
あと、級地ですね。級地について1と比較しているわけですけれども、今回のデータで1級地1と1級地2にパラメーターに差があるのかとか、2級地1と2級地2にパラメーターに差があるのかというのは、当然1と差があるのかどうかというのが計算できるとすれば、そちらの計算というのもやって、今回は難しいと思いますので次回にお示しいただきたいと思います。級地については取りあえずその点です。
あともう一点です。18ページにお示しいただいた消費較差の反映状況の確認なのですけれども、まず、75歳以上のところがマイナスになって統計的に有意で大きく下がるということなので、75歳以上の高齢単身と75歳以上の高齢夫婦についてもお示しいただきたいと思います。今回、そこが下がる部分で、下がる部分がちょっと18ページに示されていないというのは、どういうふうに結果を解釈するのかということについては非常に重要なところなのでお示しいただきたいと思います。
そして、すみません、前後して申し訳ございませんけれども、今回の検証方法のところで、外れ値の除外、これを大変丁寧に見ていただいてありがとうございます。6ページの米印がついているところであります。ただ、外れ値の除外方針ですけれども、頻度の低い消費支出の状況を反映できないからという理由で今後もトップコーディングは行わないという一律な方針にはしないほうがよいのではないかと思いました。過去にも自宅の修繕費用が高齢者のところでものすごくかかったとか、結婚式を挙げて結婚費用が大きくかかったといったサンプルを含めるか含めないかで、無視できないほど特定の年齢階級の消費額の平均値が影響されるということがありましたので、非常に大きな値があれば消費支出の当該項目を細かく見て、その都度オープンに議論されるべきことだと思います。ですから、マル4の外れ値の除外については、これは今後の方針にしないほうがいいように思います。
以上です。ありがとうございます。
■小塩部会長 ありがとうございます。
山田委員から御質問が幾つかありましたけれども、現時点でお答えできるものはございますか。事務局、いかがでしょうか。
■森口社会・援護局保護課長補佐 お答えいたします。
まず、前回、5年前に、較差が有意ではなかった部分をどうしたかということについては、基準部会の議論の中で、有意ではないものについては起点となる部分と同一とみなした消費較差の指数を示して、それとの比較により結果が示されていたと承知しております。
その上で、今回については、検証の方針をお示しさせていただいたときに、山田委員からそうした手順はしないほうがいいという御意見がありましたので、今回はそのまま示させていただいているものでございます。
そして、グラフの中のアスタリスクで従前の手法による部分、17ページのほうで年齢別の較差のところが有意かどうか分からないということについてですが、こちらは回帰分析の結果として、係数がゼロと有意に差があるかということで、t値が出ているものとなってございますが、これは年齢間の較差の有意性を示すものとはなってございませんので、直ちに直前のページの結果から明らかになるというものではないため、このように書かせていただきました。何か別の特段の分析をすれば、そこの有意性は当然測られる得るものだとは思いますが、回帰分析の結果から直ちには分からなかったということでございます。
それから、18ページのところでございます。これは過去に代表的に取り扱っていた世帯類型についてお示しさせていただいているものですので、御指摘の点を踏まえて検討させていただきます。
■小塩部会長 ありがとうございます。
山田委員、いかがですか。よろしいですか。
■山田委員 ありがとうございます。
較差の有意性が回帰分析の結果から明らかではないという17ページのところですけれども、そうすると、何でこれが1を基準に書けているのだろうというのがちょっと分からなかったもので、それでちょっとお尋ねしたものです。これは、15ページの結果に基づいて17ページの年齢別較差指数というのを出しているわけなのですかねというのと、あと、繰り返しのお願いになりますけれども、1級地1と1級地2などの級地間のパラメーターの差が統計的に有意かどうかというのは一応確認していただければと思っています。
すみません、再度のお願いですけれども、よろしくお願いいたします。
■小塩部会長 ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。
宇南山委員が手を挙げていらっしゃいます。
■宇南山委員 外れ値についてなのですけれども、御懸念はよく分かるのですけれども、私は家計調査をつくっている側の人間とよく付き合いがあるせいもあるのですけれども、ここで今、外れ値というのは何かというときに、自前で我々が、例えば、調査をするときとは違って、統計局のもとで十分に審査を受けた上での結果であるということを考えると、記入間違いであるとか本当の意味での間違えというものではないのだと思います。しかも、総務省の側でも本当に異常な値、例えば、どんな例があるのか分からないですけれども、1世帯だけで全体の平均を0.1%以上変えてしまうような値が出ると、向こうのほうでトップコーディングをしているという、これはあまり公表データではないようですけれども、実務上の処理としてはそのようなコーディングが行われているというのはよく言われています。
何が言いたいかというと、データ上のミスとか本当の意味での外れ値というのは、既に処理されているデータを使っているというのが前提になるのではないかと思います。その意味では、もちろん結婚式というのが入って不安定になるのは望ましくないという面もあるのですけれども、やはり真に統計を信じるならば、そこの外れ値というのも相当な理由がない限りは外すべきではないと思っていて、その意味では、原則としてこういうふうに書いて、今のところ3.5σの範囲ではほとんどないということなので、私は原則としては行わないという表記があってしかるべきではないかなと思っています。
以上です。
■小塩部会長 御意見ありがとうございました。
山田委員、お願いします。
■山田委員 宇南山委員、御説明ありがとうございます。トップコーディングがその調査票の段階できっちり行われてくるというのは私も初めて知った知識で大変勉強になりました。
その上で、トップコーディングは、6ページですね。一律に行わない、という意味ではなくて、原則としては行わないことにするということを以降の方針にするということで、原則としては、というのでしたら結構だと思います。ただ大きな外れ値というか、異常値というものではなくて、たまたま非常にまれなイベントによる大きな消費変動が観測された年齢階級についてはやはりその情報をオープンにして、例外的に外すことを議論する、というのが重要かと思います。
と申しますのは、たまたまその5年に1回の調査で結婚式が入ったりとか入らなかったりで、もし忠実にこの結果を基準額に反映させるのであれば、そこで基準額が増減するというのはやはり最低生活保障の基準を安定的に設定するという目標があるのだったら、その都度動いてしまうというのは、やはり問題かもしれない。その点については、そのようなサンプルが存在することをオープンにして、このようなめったにないイベントで大きく動いたということがあれば、今後も原則としてはトップコーディングを行わないにしろ、そうしたサンプルについては例外的に外すことを検討していただければと思います。ここで一旦書かれると、本当に次回も、前回こうでしたからとなってしまうので、そこの点について、もし最終報告書に書くときには気をつけていただきたいです。
あと、2ページに戻りますけれども、これは確認ですけれども、前回は生活保護を受給していると推察される世帯を除いたわけですけれども、今回も、一応確認ですけれども、除かれていると。除かれているのであれば、今日でなくてもいいのですけれども、何サンプル該当したというのがもし最終報告書には書き込まれるとよいのではないかと思います。別のところに書かれていてちょっと私が見落としているかもしれませんけれども、今のところどうなっているのか、ということが分かりませんでしたのでよろしくお願いします。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
最後の点だけですけれども、今回も生活保護受給世帯は除いているということですね。
■森口社会・援護局保護課長補佐 はい。5年前、前回と同様の手法で、生活保護を受給していると推察される世帯については除外しております。すみません、該当のサンプル数についてはちょっと今、手元に数字がございませんので、報告書の際には記載させていただくようにいたします。
■小塩部会長 ありがとうございます。
栃本部会長代理から御発言の要請がございましたので、お願いいたします。
■栃本部会長代理 先ほど来、今のトップコーディングもそうなのですけれども、統計的な有意について、そもそもの、有意な差、差が見られないといった場合、その意味と判断について、宇南山委員から御説明が繰り返しありました。宇南山委員の御意見、また、判断が示されているわけなのですけれども、所得について入れるか入れないか判断を示されています。ある意味では、山田委員に対する御発言というものもかなりあったと思うのです。それに対して、委員間同士で議論しているということで、これは専門的な統計に関する議論を踏まえた上でのこの審議会の部会で議論するという形では非常に正常な、非常にいい形になっていると思います。ただ、同旨の議論を繰り返し提起する堂々巡りみたいなことも時々発生しているように私は思いました。
それともう一つは、最初に山田委員から御発言があって、その後、宇南山委員が御発言されて、お互いに専門的観点からの議論のやり取りというふうに私はもちろん受け止めているわけなのですけれども、その上で事務局のほうが説明を振られたので事務局のほうで説明したわけなのですけれども、私の聞いている立場からすると、特に事務局のほうが指図してこちらの方向に持っていくとかそれを決めているという印象は私は持ちません。むしろ議論というものを丹念に拾って委員同士の、今日は、渡辺委員は退席されましたけれども、渡辺委員からも専門委員としての御発言がありました。というので、適切に議論がされていると私は思います。決して事務局のほうで方向性を指示したりこういうふうに決めているということではないと思います。
ただ、表現の仕方というのがもしかしたらあるのかもしれないけれども、私が聞いている限りでは、非常に事務局としては丹念に説明して、あと、今日、山田先生からもお話がありましたが、委員のいろいろな指摘を踏まえてできる限りの改善したデータというものを入れる努力というものはなされていると思いました。
以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
今日も非常に多くの御意見をいただいたのですけれども、ちょっと私の手違いで十分に収れんするところまで行かなかったのですけれども、現時点で何か追加でコメントされるとかそういうことはございますか。よろしいですか。
それでは、私から幾つか申し上げたいのですけれども、まず、年収の話です。これはちょっと御意見が分かれるようですね。ですから、特に山田委員のお考え、それから、宇南山委員のお考えを両方拝聴したのですけれども、どちらが優れているとかそういう話とはちょっと違うような印象を受けます。それから、年収を入れると、今日お見せした結果と違う意味を酌み取らなければいけないという面があるかもしれないですね。ですから、私としては、入れることについては慎重に検討すべきではないかなと思っております。これが一つです。
それから、それ以外の変数についてさらに検討すべきではないかなという御意見もありました。これは、私は研究者としては非常に同意するのです。我々も論文を書くときにうまい結果が出ないといろいろやり取りを、変数を入れ替えたり、あるいは新しいものを入れたりするということが普通にやっている話なので、非常に私もそうかなと思うのですけれども、ただ、今回は今まで私たちがいろいろ議論を積み重ねて、もちろん時間的に制約があったという面はあるかと思うのですけれども、ベストの方針を一応皆さんの合意の下でつくってそれでやってみて、結果こういうことになりましたよと今日、粛々と御報告していただいた面があると思うのです。ですから、結果がちょっとうまくいかなかったので違うものをやりましょうということになるという、論文を書くスタイルとは違うかなという気がするのです。
ただ、そうはいっても、今日、委員の方々から幾つか貴重な御意見をいただきましたので、本日、皆さんから御指摘のあった内容につきましては、事務局のほうで対応できるか検討していただいて、次回以降の基準部会で報告していただくということでお願いしたいのですけれども、それでよろしいでしょうか。
山田委員、いかがでしょうか。
■山田委員 繰り返しになるのですけれども、今回、作業部会を設けなかったということで、いろいろと試行錯誤の部分ができなかったというのがございます。事務局としてそういう意図はなかったと栃本部会長代理がおっしゃるとおりかとは思うのですけれども。ただ、一旦これを出したからそれに拘泥してむしろ真実から遠い推計式になっているかもしれないものを、作業部会もなく試行錯誤もなく、これをそのまま認めてくださいというのはちょっと。本当に1円でも下回ったら最低生活保障にはなりませんから、私としては、もう少しやはり慎重な試行錯誤をと。部会長としてはどういうふうに運営するかということをひょっとしたら私が非常に困らせているというか、ひょっとしたらではなくて困らせているということは分かっているのですけれども、やはり生活保護基準部会で生活保護基準を議論する委員としての務めだと思いますので、それを言わなければいけないというわけなのです。
ですから、やはりもうこれで議論を積み重ねた推計式でやりましたという立場ですと、ちょっと私は違うなと。前回の部会でも家賃を入れたほうがいいのではないかとか、いろいろとこれまでの部会でもほかの委員からも世帯年収の話が出てきたわけで、それなのに全部、これでやりますというのを言われてきたので、私としては試行錯誤の部分はもう少しあってもよかったのではないかと思っていますので、可能な範囲ではなくて可能な限り試行錯誤の部分を今からでもやって、本当に真実に近い推計式というのを見せていただければと思います。よろしくお願いします。
■小塩部会長 ありがとうございます。
これも繰り返しになるのですけれども、今まで短い期間ではあるのですけれども、いろいろ皆さんで議論してきた結果これでいきましょうということでやってきた結果を、今日、報告していただいたということですので、それをどういうふうに解釈するかという問題だろうと思います。山田委員からも非常に貴重な御指摘があったのですけれども、やはり私たちは責任がありますので、非常に慎重に議論を進めていきたいなと思っています。
それで、本日の議論を踏まえてどういったことができるのかということについて、事務局で改めて検討していただいて、次回報告していただくということでお願いしたいと思います。
よろしいですか。事務局から何かコメントはございますか。
■池上社会・援護局保護課長 部会長の御指示に基づきまして対応を検討させていただきたいと思います。
■小塩部会長 ありがとうございます。
ほかにスケジュール等々、事務局から何か御連絡はございますか。
■安西社会・援護局保護課長補佐 次回の開催スケジュールにつきましては、現在調整中でございますので、追って御連絡をさせていただきます。
連絡事項は以上でございます。
■小塩部会長 ありがとうございました。
それでは、本日の議論は以上とさせていただきます。御多忙の中、ありがとうございました。