2022年10月25日第2回「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会」議事録

日時

令和4年10月25日(火)10:00~12:00

場所

オンラインによる開催

出席者

【構成員】

議題

議題
(1)強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する実践報告
(2)その他

議事

議事内容
○事務局 それでは、定刻となりましたので、これより第2回「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様、また、実践報告者の皆様におかれましては、大変お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。
本会議は、資料、議事ともに原則公開としており、議事録については、後日、厚生労働省のホームページに掲載予定となっております。
また、本会議は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、報道関係者及び一般の方の傍聴は御遠慮いただき、代わりに会議の模様をYouTubeによるライブ配信にて公開しておりますので、御承知おきください。
まず、本日の構成員の出席状況でございますが、市川座長が所要で御欠席のため、9名の皆様に御出席いただいております。本日、座長が御欠席のため、本日の司会は日詰座長代理にお願いしております。日詰座長代理、よろしくお願いいたします。
続きまして、資料の確認をさせていただきます。
配付資料のとおり、開催要綱、議事次第のほか、資料1と、実践報告資料といたしまして資料1~8までございます。それと、実践報告の参考資料という構成となっております。不足等がございましたら、事務局までお申しつけください。
それでは、カメラ等の撮影はこれまでとさせていただきます。
(報道関係者退室)
○事務局 では、以降の議事進行につきましては、日詰座長代理にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○日詰座長代理 皆様、おはようございます。よろしくお願いします。
それでは、議事に入ります。議事(1)として、本日は、強度行動障害に関する実践報告をすることとしております。実践報告は、座長、事務局と御相談の上、8団体から御報告いただくこととなっております。
具体的な進め方については、事務局から御説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。
実践報告につきましては、10分程度で実践報告一覧に記載しました順番に報告していただきます。皆様、順番となりましたら団体のお名前をお呼びいたしますので、カメラをオン、ミュートを解除の上、御報告いただきますようにお願いいたします。
また、画面共有ができる設定をしておりますので、資料を共有していただきますよう、お願いいたします。
なお、質疑応答及び意見交換については、全ての報告が終了した後に時間を取りますので、よろしくお願いいたします。
○日詰座長代理 ありがとうございます。
では、早速、実践報告に入っていきたいと思います。
まずは、社会福祉法人侑愛会様より御報告をお願いします。
○中野先生 ありがとうございます。それでは、画面共有をさせていただきます。
御紹介いただきました社会福祉法人侑愛会の中野と申します。
本日は、侑愛会の人材育成の取組について、お話しさせていただく機会を頂きましたので、簡単ではありますけれども、御紹介させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
最初に、侑愛会の概要についてですけれども、事業を展開している場所は北海道南部の函館市と北斗市ということになります。人口規模は約30万の福祉圏域となっております。法人の設立は1953年で、保育園の開設から始まっております。ですので、今年で59年たったということになっております。
事業内容としては、乳幼児・学童期の領域については、幼稚園・こども園も含めると6か所で展開しております。うち1か所が障害児の入所施設ということになっておりました。また、成人期については、入所施設8か所と通所施設6か所で展開しており、入所施設の8か所のうち1か所は高齢知的障害者の入所施設ということになっております。そのほかにグループホーム47か所、受託支援事業所1か所、診療所2か所、相談事業所7か所が法人全体の事業展開となっております。
知的障害の福祉サービスで考えると、この福祉圏域における中核的な役割を担っている法人ということになるかもしれません。
それでは、自閉症支援者の育成が必要になった背景について説明させていただきます。
今回、強度行動障害に対する人材育成ではなく、自閉症支援者の育成とさせていただいた理由は、行動障害の支援で行うべきことは、障害特性を正しく理解して、機能的なアセスメントを行い、根拠のある支援を行うことを基本として、行動上の課題を引き起こさないための予防的な取組が必要だと考えているからです。したがって、自閉症支援者の人材育成と強度行動障害児者の適切な対応を行うことについては、大きく関係していると考えております。
さて、昨年度の推進事業で行われた強度行動障害の実態調査の報告書を見ると、地域で暮らしている方の中には、福祉サービスにつながっていない、または、福祉サービスにつながっているが、ニーズが満たされていないという方が一定数いらっしゃり、そして、そのニーズは強度行動障害の方々に対する居住サービスが不足しているということが示されたのだと思います。
このことは私どもの法人にも同じ声が寄せられており、重度知的障害の伴った自閉症の方々の居住サービスを希望するという方が年々増えております。
そして、知的障害の伴った自閉症の方々の受入れを積極的に行ってきた星が丘寮やねお・はろうでは、現在、たくさんの待機者を抱えており、新たなニーズに応え切れなくなったということがあります。そのため、ほかの入所施設やグループホーム、通所事業所や居宅支援事業所も含めて、どこでも自閉症の方々の受入れを積極的に行われるということが必要であり、そのための人材育成と新たな居住整備が必要になったということです。
そして、当法人でも、実際に自閉症の方々の居住サービスで受入れを行っていることについては、大きな差があったということです。
自閉症の方々の受入れが難しい理由として挙げられていることは、自閉症の方々を受け入れるための特別な支援が整っていないということや、行動障害への対応ができる体制や環境が整っていないということでした。何より入所施設やグループホームの空きがないということが一番の課題だと思っております。
そこで、単に研修を積み上げていくということだけではなく、専門性の高い中核的・指導的な職員が必要なときに、適切なアドバイスを行いながら直接的なサービスを行える体制を整備することが必要になっているということです。併せて、重度知的障害の伴った自閉症の方々を対象とした新たな居住の整備を検討していくということになりました。
この中核的・指導的人材育成を行っていくためには、法人全体のコンセンサスが重要だということで、その必要性については、法人内で情報共有しております。
ここでのポイントは、研修を受けて講義を聞いただけでは実践に結びつかないため、OJTを含めた研修の仕組みを構築することが必要だということについて強調しております。
中核的・指導的人材に求められることとして、①から⑤については、自閉症の方々の支援を行うために必要なスキルということになりますが、指導的人材を考えたときには、⑥のチームのマネジメントができるということも重要なスキルだと考え、人材育成のプログラムとして位置づけております。
それでは、実際に自閉症支援者育成についての仕組みについて御説明いたします。
最初の研修としては、法人で実践している自閉症基礎研修ということになります。ここでは、これから支援を行う上で、共通言語として使えるということを目的としております。対象は1年目から3年目の新人職員で、年7回の講座を用意しております。
その上のステップとしてあるのが、ワークショップとコンサルテーションという2つの取組です。
ワークショップでは、実際に利用者の方々に協力してもらい、支援のプロセスを学んでもらいます。受講対象者は自閉症基礎研修を修了した職員で、5日間の集中したトレーニングを行います。プログラムの構成は、最初に、御家族から支援者に対するメッセージ、そして、自閉症の特性と学習スタイルの理解、さらに、自立課題と生活場面の構造化、コミュニケーションの支援、最後に、余暇と社会参加という内容になっております。
このワークショップについては、受講者だけではなく、そこに関わるスタッフも実践からスキルを学ぶことができるのが一つの特徴となっております。
ワークショップを修了した方々には、実践報告を行ってもらうことにしております。ここでのポイントは、受講者の実践ではなく、チームで取り組んだことを報告してもらうことにしていました。
そのときのキーパーソンとして、チームリーダーとなる職員の存在が重要ということになります。そこがコンサルテーションの仕組みの中でチームリーダーとなる職員の位置づけということになりますが、そこの育成としては、ワークショップのスタッフとして協力していただくということになっております。
そして、ワークショップのサブトレーナーとして活躍してもらい、スキルと併せてマネジメントも行っていただくということがサブトレーナーという位置づけになっております。
そういった職員が法人内の事業所に出向いて、アドバイスやコーチングを行いながら現場の実践力を高めてもらい、その広がりを法人内で共有するということになっております。将来的には、地域のコンサルタントやワークショップのトレーナーとして活躍していただくということをゴールとした取組です。
また、法人内の仕組みだけでは不十分なため、ほかの関係機関とも連携していきながら必要な研修を受講することを推奨したり、より専門性を高めてもらうためのTEACCH公認のワークショップへの参加を推奨したりしております。この連携は人材育成を進めていく上で大変重要なものだと考えております。
このスライドは、ワークショップを受講した後のキャリアパスを中心とした育成のプロセスです。
ワークショップを受講した職員は機能的なアセスメントを学び、それぞれの事業所でより効率的な実践を行えるということを想定しています。その中から将来トレーナーとなり得る人材を発掘し、スーパーバイズが行える職員となり、法人の困り事を解決する役割を担ってもらいます。
そして、トレーナー同士のネットワークが形成され、そこから相互に学び合いながら、さらなるスキルの向上を期待しております。この循環が自閉症の方々の豊かな育ちと暮らしを実現すると考えております。
このスライドは、ワークショップにおける3年間の実績を示したものになります。
グループワークの形式の研修なので、人数が限られております。3年間で受講者は80名ということになりました。一方で、そこに関わるスタッフは3年間で135名を数えます。受講者よりもスタッフとして関わる人数のほうが多いという結果になっております。先ほども説明しましたが、スタッフも含めた研修ということでいうと、3年間で200人以上の方に学んでもらうということになりました。
そして、スタッフに関わってもらう中には、地元の自閉症協会の親御さんや特別支援学校の先生も含まれており、様々な方々との連携の中で、共通した考え方が地域の中に広がっていくという可能性があると考えております。
しかし、実際、やっていく中でも様々な課題があります。受講生の人数が限られているので、短期間で自閉症支援が広がっていくということは難しいこともありますし、5日間の研修に参加することでも、現場の負担やスタッフの負担が大きくなってしまうということがあります。
また、基礎からワークショップの受講までのステップの仕組みが必要で、それぞれの事業所でのOJTの仕組みが必要になってきます。そういった意味でも、事業所には中核的な人材が必要になってきます。
コンサルテーションの課題としては、ケースに関わった職員と関わっていない職員との温度差があるため、事業所を挙げてコンサルテーションに求める目的をしっかり共有しておくということが重要だと思っております。
では、地域でどのようなコンサルテーションが活用されているかという3つの代表的な例を挙げてみました。
1つ目の事例では、近隣住民とのトラブルでグループホームでの生活が困難になった利用者を、短期入所を利用して、そこでアセスメントを行い、支援の組立てと実務研修の受入れを行いながら、戻る先の事業所に対してはコンサルテーションとフォローアップを行ったというケースでした。
2つ目は、虐待事案のあった事業所に対して、自閉症支援の改革の要請を受け、コンサルテーションを行った例です。このときのポイントは、管理職への研修というところからスタートしたというアプローチです。
3つ目は、行動上の課題のある利用者への対応に苦慮しているケースに対して、メールやオンラインなど、ICTを活用したコンサルテーションの実践ということです。
まだまだコンサルテーションに派遣できる職員が潤沢にいるわけではないため、なかなか個別のケースに対してアプローチができる状況ではありませんが、在宅の行動障害の方々に対するアプローチに対しても、適切な支援に結びつけられるようなコンサルテーション、関わり方と併せて、在宅支援の連携の方法についても考えていかなければならないと思っております。
これまでの自閉症支援における人材育成の取組の中で感じていることは、人材育成には時間がかかるということです。したがって、この仕組みを長く継続していくということが必要で、そのためには、常に振り返りを行いながら、より実効性のあるシステムにつくり上げていかなければならないと思っております。
また、1法人の取組から地域の取組として定着させていくためには、地域の福祉計画や自立支援協議会などとも連携して進めていくということが必要だと感じております。
私からの報告については以上になります。御清聴ありがとうございました。
○日詰座長代理 中野さん、ありがとうございました。
続きまして、社会福祉法人はるにれの里様、よろしくお願いします。
○大嶋先生 よろしくお願いいたします。画面共有させていただきます。よろしいでしょうか。
それでは、これから社会福祉法人はるにれの里、グループホームようようの実践報告を始めたいと思います。
私は、グループホームようようで専任職員として勤務している大嶋基意と申します。
今回は、グループホームで生活されている利用者様の日々の余暇に対する取組を御紹介できたらと思います。
法人の紹介は配付資料で御参照ください。
まず、対象者H氏の簡単なプロフィールになります。35歳の方で自閉症を抱えています。ジャニーズが好きで、嵐の楽曲などのワンフレーズを歌ったりしていることが多いです。グループホームでは、お部屋で「テレビジョン」などの雑誌を見たり、好きなテレビ番組を見て、のんびりと過ごされていることが多いです。
その方の特性を把握・整理して、御本人が過ごしやすい生活環境を整えるための配慮に全力を尽くすのが、はるにれの里のスタンスです。それでもいろいろな課題は出てきますが、特性に基づいた配慮をさらにブラッシュアップしていくことを基本にしながら対策を講じています。
こちらがH氏の特性シートの抜粋と、今回の支援の全体構造を示した氷山モデルになります。では、この全体構造の内容について、次のスライドから御説明していきたいと思います。
実際、H氏にはどのような困り感があるのか。その一つとして挙げられるのが見通しです。例えば、私たちは旅行の予定があったら、もうすぐだな、あと何か月だな、何日ぐらいだなと把握しながら日々の生活を送っていますよね。ですが、H氏にとっての見通しというのは、あと何日なのかを想像するのが難しい側面があります。何月何日ですよと職員がお伝えしたとしても、自分の中でうまく処理することができず、何度も職員に確認してしまったり、自分の中のもやもやを解消しようと情動行動が激しくなって、ふだんの活動に支障を来したりしてしまいます。
では、その困り感による影響を詳しく見てみましょう。
1年を通してのイベントが気になってしまう。コロナ禍で例年できていた活動ができなくなる。日々の活動に集中できない。徐々にいらいらがたまる。このような不安感やいらいらを解消するために、職員への他害行為とか、30分から1時間以上の行動停滞が見られてしまう現状がありました。
このような困り感を解消するために、関係事業所とケース会議を開き、情報共有を行いました。すると、様々な課題が見えてきました。
まず、H氏本人の課題として、次のイベントまでの期間で不調なことが多い。無目的な時間が多く、次のイベントを気にしてしまう時間が増えてしまっている。職員へ話しかけ確認行動をするが、口頭では納得し切れない。
次に、グループホームとしての課題は、1週間の予定表は毎週更新しているが、本人の安心材料としては弱い。余暇活動の頻度が少ない。また、週によって違う。グループホーム内での楽しみが少ない。
チームで情報共有することで、このような課題が見えてきました。
以上のような課題を解消するために、3つのステップで支援を組み立てました。
まず、イベントまでの小さな楽しみを増やす。H氏は、次のイベントまでの期間に不調が見られることが多いです。長いスパンをもんもんと過ごすのではなくて、毎週土曜日に「おやつの日」というのをつくることによって、その長いスパンの間に小さな楽しみをつくる取組をしました。
2つ目に、無目的な時間を減らす。今までは週に何度か職員が余暇の日を設定して、タブレットなどの余暇活動を提供していました。ですが、いま一度H氏の生活を見直すと、無目的な時間が多いことに気づきました。そこで、毎日何かしらの活動が行えるように整備する必要がありました。
3つ目に、本人主体の余暇活動。H氏が自分でやりたい余暇活動を選び、自分で全て決められるシステムが必要だと感じました。それは、やりたい活動を本人が自分で選ぶことのできることを大切にしたいという思いがあったからです。
この3つのステップを実現するために、余暇カレンダーというものを導入しました。次のスライドから御紹介します。
この3ステップを取り入れられる支援として余暇活動の導入を行いました。ステップ1の取組として、毎週土曜日に「おやつの日」を設定しています。数種類のおやつの中から選んでもらって、H氏はチョコ系などの甘いお菓子を好んでよく選ばれていました。
ステップ2の取組として、毎日何かしらの活動ができるように整備しています。火曜日、木曜日には洗濯活動をしてもらっていて、洗濯活動をするごとにポイントを与え、リワードとして月末にH氏が好きな「テレビジョン」を提供しています。
ステップ3の取組として、本人主体の余暇活動とするために、月の初めに御自分で余暇活動を選んでもらっています。全てマグネットで作成しているので、空白の日にちに好きなように貼ってもらっています。また、活動が偏ってしまうのを防ぐために、余暇カードの枚数も統一しています。
この余暇カレンダーのいいところは、自分で選ぶことによって活動のモチベーションを保てるという点、また、選んだ内容もH氏が変更してもオーケーとしています。やはりH氏も毎日絶好調というわけではなくて、日によっては不調感が強い日もあります。気分が乗らないときは無理に活動しなくてもいいように、本を読むという活動があります。これはふだん読んでいる雑誌を部屋で見るというものなので、御本人の自由度が高いです。H氏も自分で不調感が分かるときには、例えば、本を読む活動をタブレットと入れ替えるなど、自分で貼り替えることをしています。そのように、H氏のその日その日の気分にも寄り添える支援を心がけています。
さらに、見通しという部分を解消するために、終わった日には白紙のマグネットを貼ってもらっています。これにより、どこまで日が進んだのか、あと何日で楽しみなイベントなのかが視覚的に分かりやすい配慮をしています。
では、この余暇カレンダーを導入してH氏にどのような変化があったのか。H氏のその後の様子として、情動行動による停滞の減少。余暇活動を楽しめている。予定の確認行動が減った。他害行動がほとんど見られなくなった。表情よく過ごされ笑顔の日が増えたとうれしい変化がたくさん見られていました。もちろん調子の悪い日はありますが、以前のように、見通しが持てずに不調感が続くということは減少しました。毎日何かしらの活動があること、週末が楽しみなこと、見通しが持ちやすいことなどは本人のプラスになっていると感じられる実践でした。
最後になりますが、今回は、このような発表の場を設けてくださり、ありがとうございました。自閉症を抱える方が地域生活を送っていくというのは、思った以上に大変なことが多いです。まだまだ日本では自閉症や発達障害に対する理解が遅れている側面があると思います。自閉症を抱えていたとしても、悪いことばかりではなく、少しアイデアを出して工夫をすれば、誰でも毎日を楽しく過ごすことができるのだということが伝わればいいなと思います。
今回、発表までに協力してくださった皆様、本当にありがとうございました。
御清聴ありがとうございました。
○日詰座長代理 大嶋さん、ありがとうございました。
それでは、続きまして、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園様からよろしくお願いします。
○古川先生 お世話になります。国立重度知的障害者総合施設のぞみの園の古川と申します。
早速、画面のほうを共有させていただきたいと思います。
今日は「著しい行動障害を有する者への支援について」ということで、国立のぞみの園の法人全体の取組をお話しさせていただければと思っております。
まず、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園というのが正式な名称になりますけれども、群馬県高崎市にございます。
6番の事業の概要を見ていただきますと、重度の知的障害者に対する自立のための総合施設の設置・運営、知的障害者の自立と社会参加に関する調査・研究及び情報提供、知的障害者の支援業務に従事する者の養成及び研修、障害者支援施設等の求めに応じた援助・助言といったことを中心に行っています。
その中で、著しい行動障害を有する人たちへの取組ということで、平成20年から中期目標に明記されて、開始しています。
重立ってはこの4つの柱立てに沿って行っていますが、目的としては、行動障害を有する著しく支援が困難な人たちの自立した生活が可能となるように、サービスモデルを構築して、全国の知的障害者関係施設等に情報発信を行うという役割を持っています。
特に養成・研修の中では、強度行動障害の支援者養成・研修、指導者研修、のぞみの園は国の研修に長く関わらせていただいているというところもございますし、また、研究部門では、国からの厚労科研等の委託研究で、強度行動障害の皆さんについての様々な情報等の収集、分析、発信ということを行わせていただいています。
今日は特に入所支援の部分について、お話をさせていただきます。
国立のぞみの園の著しい行動障害等を有する者への有期限入所支援、この有期限入所というところが特徴になろうかと思います。対象になる方は行動関連項目10点以上、いわゆる強度行動障害と言われる人たちなのですが、それだけではなくて、要件もございます。要件については、後ほどお話しします。
入所して問題解決に向けた支援構築の手がかりを探すということで、問題になっている行動の消失が目的ではないということです。
3つ目は、赤くなっていますが、ここが一番大切な部分になります。3年以内で出身地へ戻ってもらう。有期限の通過型ということになります。現状は、強度行動障害と言われる人たちに対しては、原則2年という形で支援をさせていただいています。
続いて、4つ目は、入所時から帰る地域と連携して支援の構築を行わせていただいています。ですので、うちへおいでいただいたときから現実に帰ることを想定して、そこと連携して支援させていただいています。そこが一つの特徴にもなろうかと思います。
実際には、おいでいただいたときに、全てが確実に帰れる場所があるという人たちではございませんので、入所してから早急に受けていただける事業所を見つけていただいて、なるべく早くから連携して、帰るための支援を行っていくということになります。
続いて、全国が対象ということになりますが、これについては、対象としては全国としていますが、現状は北海道、九州の方については、おいでいただいた実績はございません。待機に関しては、一番多いときで100名を超える待機者がいらっしゃいました。現状は50名程度に減ってはきていますけれども、やはり全国からおいでいただいていると、待機していただいているという状況が続いています。
現状では関連項目20点前後の利用者さんが中心で、特に最近は他害とか破壊行為が非常に激しい方たちが増えてきている印象です。まさに他者と一緒の生活支援が行えない人たちが増えています。
これは内容をまとめさせていただいた一覧になります。
入所前からいろいろな調整を行わせていただいて、実際には面会に行ったりとか、いろいろな情報を収集しますが、果たしてうちで本当に支援させていただける方なのかどうかというところは、実際に関わってみないと分からないというところで、最近大切にしているのは短期入所を使ってのアセスメントになります。およそ1か月、うちへおいでいただいて、いろいろと直接支援をさせていただいて、最終的にうちで果たして支援させていただくことが可能なのかどうかということを審査会で判断させていただくということです。
先ほどお伝えしました入所要件の別件の部分については、以下の状況にある者を対象ということで3つほど挙げさせていただいています。ただ、これはあくまでも代表的なものであって、実際には直接いろいろお話をさせていただきながら、受け止めさせていただいているという状況になります。
入っていただいた後は、本人の支援についてということで、下の「本人状態の確認」というところでは、重立ってはABA、TEACCHといった手法を使わせていただきながら、支援させていただくということになります。上には最長3年となっていますけれども、先ほどお伝えしたように、原則2年、もっと早く支援がある程度構築できれば、お帰りいただいているということになります。
実際にお帰りいただくということに関して、その上の「本人状態の整理」から様々な手続を踏んで、移行に向けて押し出していくということになります。
また、移った後も基本的にはきちんと定着支援で、受け止めていただいた事業所のほうからいろいろ御連絡いただいたり、こちらから御連絡したりしながら、御本人を支えていくという方法で進めさせていただいているところです。
全国からおいでいただいているところですが、基本的には男女では男性のほうが若干多い。受入れ前は、今はやはり圧倒的に在宅が多いです。でも、今、増えてきているのは病院です。精神科の病院の長期入院から受け止めさせていただくことが増えています。
お帰りいただくところは、基本的には在宅ということはなかなか難しいので、どうしても入所が多くなります。この5%の在宅に関しては、一部は、一戸建てを借り上げて、そこで24時間の重度訪問を使って支えているというケースになります。
受入れの人数についても、徐々に受け入れさせていただいてはいますけれども、なかなか難しい人たちですので、全国のセーフティーネットになれるほど支えられていないという現実もございます。
これが物壊しです。いわゆる破損行為について、かなり厳しい方たちでしたというところをちょっと見ていただきたくて、現状は建て直していますが、古い建物で支えていたときの状況です。壁も天井もドアも、場合によっては壁も貫通させるといった方たちです。
そういった方たちを支える支援の環境として、現状では専用の建物を、居住定員が10人のものを4棟準備しています。これは全て空いた建物を改築して使用していますので、新規に立ち上げたというものは1棟もございません。今、見ていただいたような知見を生かして、なるたけ御本人さんたちに破壊されにくい、個別対応が可能な住環境を整備しています。
あとは、専任の職員を充てて支援しています。特に専門性の担保というところでは、養成研修、トレーニングセミナー、それ以外には先進事業所での実務研修ということで、絶えず職員の専門性のスキルアップを続けています。
あとは、毎月、外部から支援の専門家を招聘して、支援の評価、スーパーバイズを行っております。
これが具体的な建物になります。赤い部分がかなり激しい方、もしくは来たばかりの方、急性期の方用の1人用のユニットで、外から直接出入りができて、風呂、トイレ、全て別になっています。
青い部分が3人用のユニットで、ここは1人用のユニットから移るケース、もしくは他者との関係性で、同性が交わらなければ他者とある程度は生活可能な方たちを受け止めます。
最終的には下の緑色のユニットを目指していくのです。みんなと一緒に暮らすということが可能になれば、戻っていっていただけるということにもなろうかと思います。
実際には、一人一人に合わせた支援をやっていますので、10人用の建物がいっぱいになるということはございません。残念ながら、3人用のユニットを1人で使っていただくとか、そういった現状があります。
最後、課題について、まとめさせていただきました。
我々はグループホームも一部持っているのですが、強度行動障害対応のグループホームはございませんので、地域での支援についてアセスメントできないという現状があります。また、待機者が多くて、緊急対応が難しいということもございます。あとは、支えている職員の専門性とメンタルヘルスの問題についても、今、頭を悩ませています。
国立として全国各地に支えられる仕組みづくりを進めていく。のぞみの園へ来ていただかなくても済む仕組みづくりに力を入れていかなければいけないと思っています。ネットワークや情報共有の仕組みとか、支援者養成のさらなる仕組みについて、これからも頑張っていきたいと考えております。
全国の皆さんに支えていただきながら、この事業については、国立としてまだまだ進めていかなければいけないと思っていますので、様々な御意見を頂きながら頑張っていければと考えております。
御清聴ありがとうございました。
○日詰座長代理 古川さん、ありがとうございました。
それでは、続きまして、社会福祉法人はる様、よろしくお願いします。
○上田先生 よろしくお願いします。共有させていただきます。
それでは、社会福祉法人はるのグループホームを担当しています上田と申します。本日はよろしくお願いします。
本日は「24h365日受け入れのGHで強度行動障害の方々と向き合う日々 そして地域のネットワークの大切さ」というタイトルでお話をさせていただきます。
佐賀県佐賀市にあります当法人はるは設立20年目となります。職員60名弱で、知的障害、発達障害の方々を日々支えております。その中で、グループホームの2棟に強度行動障害を持った方が8名入居しております。
今日の発表の鍵としまして、自閉症支援の組立てや助言ができるスタッフが法人内にはあまりおらず、経験が少ないスタッフで日々支援をしております。
2棟の簡略図ですが、右の棟のオレンジに1名、左のL字の棟に7名全員、強度行動障害の方が入居されています。
佐賀県内の調査としまして、強度行動障害の方が延べ900名以上いらっしゃいまして、その中で、自宅での生活が困難な方や、地域で暮らしたい希望を持たれていて入院されている患者さんなど、特に難しいとされる方々8名を当法人のグループホームで受け入れることとなりました。
5年前のグループホーム開設当時の法人の状況としまして、強度行動障害支援者養成研修に向けた取組やテキスト作成に関わっていたことや、法人に関わる利用者様の中に、自宅に住み続けられない結構切迫された方もいらっしゃって、地域で特に困っている自閉症の方々を受け入れようという流れになりました。
一方で、先駆的に取り組まれる法人さんの中には、私たちに対して、この支援度の方々を複数名同時に受け入れて大丈夫ですかと心配していただく声もありましたが、当時は患者さん方を支えたい思いでいっぱいでした。
そこから2年間の開設準備の期間がありまして、全国の先生方に力をお借りして、研修を実施しました。また、スタッフの採用や異動も行って準備を進めました。建物の建設に当たり、入居される利用者様の特性に合わせた構造の検討も重ねました。
そして、職員同士で検討を重ねて、法人の理念に沿った形で「安心」と「健康」と「豊か」というキーワードで運営の指針も定めました。
このような準備を進めて、ついに入居がスタートしました。そして、皆さんの入居が済んで利用者様もスタッフも緊張が解けてきた3月ぐらいに、ささいな行動から変化が起こり始めます。
当時のスタッフの支援スキルや体制では、この変化がこの後大変になる兆候だということに気づくことがなかなかできませんでした。入居前に先生方としっかり準備するということがまだできていないから、何か問題が起こっているという見立てをしまって、頼ろうとか、聞こうとか、そういうことになかなか発想が至らずに、自分たちで何とかしようと頑張ってしまって、入居時に設定したことを変えてはいけない、まだできていないという呪縛を自分たちに当てはめてしまいます。
グループホーム開設からの経緯としまして、年度ごとで、2018年までは新しい環境に戸惑う利用者様への支援がなかなか追いつかずに、問題となる行動が続きます。肥前精神医療センターへの入院に頼らせていただく機会もあり、支援の検討や研修受講、やはりその中でもなかなかままならずに、24時間毎日続く支援に職員がたびたび疲弊してしまうことがありました。
これを受けて、2019年度、2020年度と法人内でエース級といわれる職員を次々にグループホームに補充していき、研修を受けていくことや支援を検討して、実施していくような体制を整えていきます。
災害時にイレギュラーがありつつも、この中でようやく落ち着かれる利用者様も出てきました。しかし、コロナ禍が押し寄せてきて生活が一変していきます。2021年に、4年たちましたけれども、利用者様もスタッフもようやく新しい生活に慣れたねと思えた頃に、コロナ禍で生活の見通しが崩れていった利用者様が複数名いらっしゃいまして、状態が次々に悪化していきます。コロナ禍の影響はやはり複数名に広がっていきました。
2021年度末、今年の年明けの出来事です。グループホーム配属の職員が感染したりとか、濃厚接触で欠勤が相次ぎまして、利用者様は通所先の閉所であったり、外出・余暇の制限であったり、感染対策やルーチンの変更など、様々な行動の制限や変更でストレスが増していきます。
記載されている8名それぞれに検討が必要な事案が生じますが、職員がそろうこともままならずに、それぞれの検討が停滞・渋滞していきます。支援検討のための時間とスキルがキャパオーバーとなりました。適切な支援はあるのに取り組む余裕がなくて、利用者様にはしんどい時間を過ごさせてしまいました。
グループホーム開設から4年半たちまして、強度行動障害の方を当法人だけで24時間365日、複数名を支えるのは限界だとやっと判断しました。佐賀県内の強度行動障害のネットワークがありまして、そこに難しいと訴えました。
まず、基幹相談に状況を伝えまして、地域における緊急度を判断していただきました。はるという法人が強度行動障害を抱え込んでいるという状況と、その影響をひもとくように各機関に働きかけてくださいました。この図でいうと、Dさんがどこでどのように過ごすことができるか、どんな可能性があるかということを、県内の資源をフル活用して調整が行われました。
この中で、1人の利用者様をめぐる動きでありながら、ここではるがつまずくと、ほかの利用者様やはるに続く地域の施設への影響が大きいということで、今後もはるが利用者様を支え続けるために様々な助言が得られました。思いだけでは続かないこと、学び続けること、仕組みをつくることなどです。
そして、自法人だけで支える発想に限界があるということ、せっかく佐賀には強いネットワークがあるから、組み立てられる人材の不在というところはコンサルテーションなどに頼りましょう。複数名受け入れたことによる検討のキャパオーバーは、一時的に肥前のほうに入院するという手段に頼りつつも、病院、入所、家庭、グループホームで居住を分担し合うことが結果的に長く地域で支えることにつながるということを学びました。
何が大変にさせたのかということを分析していく中で、支援を組み立てられるスタッフがいないということで利用者様の変化に対応できませんでしたが、毎日寄り添って気持ちで支援をするということだけではなくて、左の図でいう①②の情報をしっかり集めていくこと、支援を実施して、それを記録・分析・振り返りを行うというPDCAのサイクルを回していくための体制や力が必要だということでした。
そのために、利用者様それぞれの特性の理解や、様々な支援の手法をしっかり繰り返し学ぶ必要があり、そのような学んだスタッフが、1人ではなく複数名で、チームで利用者様を支えていくということが大事でした。スタッフそれぞれの成長には数年の時間がかかることもありました。
また、様々な物差し・基準がありますが、強度行動障害に対応できる余力を見いだせない状態は、このバランスのところにもありました。私たちの場合は、5番目の自宅で暮らせなくなった方を24時間365日支えていくということが中心になっていたので、長く支え続けるための発想で、ほかの基準はもう少し優先順位をつけるべきだったと思います。
こちらは割愛します。
これらの経験から、自宅での生活がままならず、しかし、入所施設の選択肢などもなく、グループホームを頼る方もいらっしゃいます。そのような方を支えていこうとする中で、毎日24時間の支援でスキルがあるスタッフを分散させて、1週間、1か月を賄っています。行動援護であったり、保護者様であったり、そういうほかに頼る手段が少ない場合に、付きっきりで毎日の支援を行っていると、やがてスタッフは疲弊していきます。研修・検討は二の次で、まず毎日を回す発想となりました。
その中で、グループホームも利用しながら、ショートステイを確実に使えるような体制が整ったらいいなと感じることもありました。また、通所しない休日の昼間は支援費が発生しない仕組みですが、支援自体は行われておりますので、そういう時間も算定できたらいいなと感じました。
行動援護時の車内の支援というテーマで、ドライブという行為自体、移動ではなくて数少ない余暇の手段になっている方がいらっしゃいました。運転中のパニックも起こり得る中で、常に後部座席の気配を気にかけながらの運転が行われています。目的地で降車するということも難しく、ドライブだけということで、何か行動援護として算定ができないだろうかと感じることがあります。
体力と精神面ということですが、支援の組み立てができる中堅職員がそばにいない状況での支援は、現場スタッフの責任やプレッシャーがとても大きかったです。その状況でのグループホームとしての朝昼晩の不規則な勤務は、休息、メンタル面も含めた負荷の管理が必要と感じました。
利用者様のパニック時は、支援しているスタッフだけでは十分な対応ができずに、応援のスタッフで時間外勤務や休日出勤などもイレギュラーで発生していました。
これらのことから、人手を割かなくていい建物の構造であったり、ルールづくりが必要であったり、また、当法人は小さい法人ながらも定期で異動ができること、数年で次の職場、部署があるということもメンタル的に必要だなと感じました。そもそもパニックが起こらないアプローチを考えていくことも必要でした。
法人内に指導や育成のできる職員がおらず、困ったときに聞く先がなかなかなかったことから、コンサルテーションを積極的に利用する仕組みを始めました。ただ、検討や宿題に割ける余力も捻出しているような状況で、どれぐらいのペースで進めていくべきか。また、あくまで外部の講師との関係の中で、何でも聞ける関係や体制をどうやってつくれるか。これらはまだまだ模索中です。支援スキルの相談もさることながら、運営についても話せる関係をつくれていったら、もしかしたら、私たちが3年悩んだ呪縛が早く解かれていたかもしれません。
環境設備について、設立時にたくさん考えましたが、やはり住んでみて慣れた後にいろいろな気づきが出ました。適切な構造化には数十万円から数百万円の追加改修の費用が必要なこともありました。これらの改修であったり、設立時の考え方について、成功事例や失敗事例、保護者さんを交えた改修の費用の負担をどうしているか、補助金などの情報があるかなどを参考にしつつ、できれば、難しい利用者の方全員が専用のトイレと玄関がある個室で過ごせていると、結果的に長く安定して生活できるのではと実感しました。
このような経験から「失敗」としましたが、5つ学ばせていただきました。
私たちは、この建物の構造でよく支援ができているねと言われることがありまして、必要な改修にしっかりお金をかけましょうという方針を立てました。
2番目に、がむしゃらはやはり続きませんでした。私たちにとっては、この思いを続けるために、休息や異動、外部へ頼ることはとても大事だと感じました。
3番目に、研修を受け続けること、実践し続けること、佐賀にはCB支援ネットというグループがありまして、定期的に勉強会をしていただいています。こういうことを、1人の職員だけでなく、皆で積み上げていくことが大事でした。
4番目に、せっかくつながったコンサルテーションの講師の方との関係を途切らせずに続けること。何をするかというよりも、続けることの大切さを感じています。
5番目に、これらの項目はネットワークの中でふんだんに活用できる、頼れるところがあるので、どんどんこのつながりをつくっていくことが大事だと感じました。
失敗もありますが、一方で、しっかり準備をして日々向き合ってきたことで、受け入れた難しい8名の中で、6名は現在もグループホームで受け止め続けることができています。
佐賀県としての取組で、県議会の議員さんから知事たちに質問が及びました。実態の把握、人材の育成、支援体制の構築といった取組が始まっています。
まとめとして、強度行動障害をグループホームで支えていくために、学んでいくこと、検討していくこと、ネットワークで分散して支えること。これらが頼れるような、困っていたら気づいてもらえるような、また、気づけるような関係をネットワークで構築していくことが大事だと感じています。しんどくなったときに一つの組織・法人で判断することは、利用者様への使命感から判断が鈍るということも経験しました。
安心して支援できる仕組みを整えて、強度行動障害を持った方々を長く支えられるように、しんどくなるとSOSは発信できない、SOSに気づかない、あの法人、あの部署、あの職員は大丈夫?と気にかけられるネットワークが大事です。
貴重な発表の機会を頂き、ありがとうございます。御清聴ありがとうございました。
○日詰座長代理 上田さん、ありがとうございました。
それでは、続きまして、福岡市社会福祉事業団様、よろしくお願いします。
○森口先生 画面はよろしいでしょうか。
○日詰座長代理 大丈夫です。
○森口先生 では、始めさせていただきます。
ただいま御紹介いただきました福岡市社会福祉事業団、障がい者地域生活・行動支援センターか~むの森口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私からは「話題提供」にあります3つのテーマで皆さんに話題提供をさせていただきたいと思います。
まず「①福岡市における強度行動障がいへの取り組み」でございますが、皆様も御存じかもしれませんけれども、平成16年に福岡県内で起きました大きな虐待事件をきっかけに、当時、その施設を利用していました福岡市内の利用者の親の方々が当時の市長に対して処遇改善を求める陳情書を提出したり、同じ時期に市議会においても強度行動障害への取組の質疑が行われたということをきっかけにしまして、福岡市におきましては、ここにあります福岡市強度行動障がい者支援調査研究会、以下「調査研究会」と申し上げますが、この調査研究会を中心に福岡市における独自の強度行動障害者施策を展開してきた経緯がございます。
一方で、スライド右上にあります福岡市障がい者民間施設協議会という、いわゆるサービス事業者団体の地域での地道な法人間を超えた取組というものも福岡市の中で展開されてきたという経緯がございます。
調査研究会でいろいろな施策の協議を行った結果、ここにあります大きな3つの事業、上から、研修事業、真ん中が共同支援事業、そして、今日のメインのお話になります強度行動障がい者集中支援モデル事業といった施策を福岡市独自の施策として打ち出した経緯がございます。
簡単に御説明させていただきますが、福岡市強度行動障がい者支援研修会でございますが、この研修の特徴は、行動障害を有した実際の当事者の方を2日間お招きして、そこで支援を体験するといった内容のものが特徴的でございます。かなりリアリティーのある研修でございます。
共同支援事業でございますが、行動障害の方を地域で支える上で一つ課題になるのは、支援者をどう増やしていくかということでございまして、慣れた職員が慣れていない事業所さん、もしくはこれから関わろうとする事業所さんに手取り足取り直接御指導いただける。そのときに協力費として費用弁償を行うといった制度を福岡市のほうで立ち上げました。
しかし、どうしても家庭・在宅で支えられないケースが出てきたときにどうするかという問題にやはり直面しまして、そのときの対応の青写真として、このスライドが示されました。
真ん中がか~むの役割になっています。ここである程度エビデンスに基づいた支援を行い、短期間で集中的に支援を行った結果、スライド右側にありますように、地域のほうへ移行していくという仕組みでございます。
黄色で塗られたところが、今、福岡市の進捗状況として達成されている部分ですが、右側の破線で囲まれた「④地域の受け皿作り」というのが、まさに今、福岡市における喫緊の課題ということで取組を検討しているところでございます。
要は、か~むを通過した後、地域で支えるということになりますと、当然、地域事業者との連携ということがございますので、福岡市では、調査研究会と、先ほど御紹介しました福岡市民間障がい施設協議会、自立支援協議会の3つの大きな組織体と連携しながら進めていくといった一つのネットワークの状況がございます。
続きまして、今日のメインテーマでございます集中支援事業についてでございます。
今のか~むの全体の事業概要になりますが、上から3つ事業がございます。一番下の緊急対応受入れというのは、いわゆる地域生活支援拠点等整備事業に基づく短期入所になっています。今からのお話は上2つです。集中支援事業と、集中支援事業から移行した後の受け皿として移行型グループホームというものがありますので、ここはかなり一体的な事業として展開していますので、併せて御説明したいと思います。
一番下の職員体制でございますが、基本的には日勤・夜勤の2交代制になっております。したがいまして、どうしても職員をかなり確保しなければいけないといった課題がございますし、実際にか~むで採用する職員も最初からそんなに専門性があるわけではなくて、ある意味、やる気のある方、前向きに取り組んでいただける方というところを一つの採用の基準にしていく。入職した後にきちんと私どものほうでサポートしていくといった現状があるのかなと思います。
集中支援事業でございますが、定員2名、利用期間3か月、職員と利用者は一対一対応ということで、制度は共同生活援助をベースにして、福岡市からの委託を受けて、このようなかなり手厚い体制が整えられているということになります。当然、行動障害の軽減を図る目的と、支援の在り方ということをきちんと分析して、それを地域のほうにお伝えしていく。その結果、福祉サービスの利用機会が拡充し、御本人の地域生活の継続を目指すという事業になっております。
私はこのスライドが結構大事かなと思っているのですが、やはり支援に対する考え方とか、取組というものを各事業所がきちんと持っておくということが極めて重要なのかなと思っています。
そういう意味で、か~むの中では、ここにありますように、支援の原則とか、支援の継続・改善、これはマネジメントです。PDCAサイクルと支援の方向性、やはり今の時期は何を目指していくのかということを支援者と一緒に共有しながら、支援に当たるということが大事かなと思います。
併せて、事業者組織としても、やはり支援を継続するということがとても大事になります。ですから、ここに加えて、組織のマネジメント、支援者のケアというものを事業所の核となるマネジャーの方がどのように展開できるかというところなどが一つ重要なポイントになろうかと思っています。
か~むにおける集中支援から移行支援までの流れでございます。
特徴的なのは①と④になるのかなと思っています。「①利用者選定」のところは、入り口は基幹相談支援センターと連携するということにしております。これはか~むから卒業するときに、当然、基幹相談支援センターのコーディネートをかませるという目的で、基幹相談支援センターとの連携を図るということがございます。「④移行支援」については、次のスライドで御説明したいと思います。
ある程度か~むの中で支援が整いましたら、まずは昼間の生活の場、日中活動の場を地域のほうに移していくということで、ここにありますように、基幹相談支援センターが事業所を調整した後に、事業者さんと移行支援会議を行い、必要に応じて私どもが訪問支援を行ったり、逆に日中活動支援の事業者さんにか~むに来ていただいて、そこで実地を行いながら、御本人の特性や支援の在り方を引き継いでいくということをやっていきます。
ここのスキームがある程度安定してきましたら、いよいよ居住の場を移していくという形で、移行支援会議を行い、同じく訪問支援や実地研修を行いながら完全移行を目指すという立てつけになっております。
完全移行した後も、計画相談のモニタリングとはまた別に、集中支援の流れで月に1回程度モニタリング会議を行いながら、バックアップしていくという移行支援を行っているということでございます。
これはある利用者ですが、在宅でずっと御家族が抱えていた利用者なのですが、か~むを利用して日中活動の場が広がり、か~む利用後も地域の事業所さんへスムーズに移行したというケースでございますが、ここにもありますように、行動援護というものをかませながら、やはり地域に移行したときのツールといいますか、選択肢を増やすという意味で、か~むにいる間から地域の事業所さんとつながっていくという発想も極めて重要なのかなと思っています。
これがか~むの概要・利用状況でございますが、年数がたつにつれて、年度が上がるにつれて、やはり利用年数が長くなっているという現状がございます。これは利用者の方のケースの困難性が高まってきたのと、地域移行というものは、行動障害の改善のみが課題ではないということの表れなのかなと私どもは理解しているところでございます。
とはいいましても、今、実際に50%ぐらいの確率で地域のほうに移行できているのですが、特筆すべきは、令和4年度に入りまして、ようやく福岡市内における移行が進んだという実績にやっとつながったということです。
それ以前の移行の実績としましては、どうしても福岡市外の近郊のグループホームや入所施設に移行してきた経緯があるのですが、令和4年度になりまして、ようやく福岡市内での実績が出てきたということと、⑩のケースにありますように、グループホーム入所のみではなくて、重度訪問介護等を使って移行してきたというケースも出てきたのが少し特徴的かなと思っています。
「か~むを支える外部組織」ということで、先ほど出ました調査研究会や、下にあります支援拠点運営協議会という外部との連携、特に運営協議会におきましては、集中支援の利用者選定や、実際に私どもの支援の進捗状況を報告することによって、いろいろな助言・指導をいただくといったような形で、風通しのいい仕組みにしているところが特徴的でございます。
最後に「か~むの実践から見えてきた課題」でございますが、職員に対する支援の考え方等の共有が大事かなと思います。これは地域移行を実践する中で、それぞれの事業所さんたちの事業者理念や考え方というものも当然出てきますので、研修で行った中身がそのまま事業所にスライドしない部分もあるなというのを実感しています。
したがいまして、権限のあるマネジャーさんがどういう考え方や方針でやっていくのかということをきちんと育成していく必要があるなと思いますのと、それをベースに徹底したOJTの仕組みをつくるということが大事かなと思っております。
2番目ですが、継続して支援し続けることができる支援環境づくりです。これは先ほど出ました支援者ケアの充実です。行動障害というのは、支援する上でかなりリスクが高い支援かなと私は思っています。「つらい」「怖い」「不安」というものも当然出てきますので、そういう支援者のケアをどう考えるのかというところが重要かなと思っています。
そのためには、スーパービジョン(SV)の体制を整えたり、建物の工夫、ゆとりある職員配置・体制というものが結果的には虐待リスクの軽減にもつながっていくのかなと思っています。職員のスキルアップと併せて、こういう支援者が支援しやすい環境を整える必要があるのかなと思っています。
3番目ですが、利用の長期化です。か~むで実践していますと、何をもって改善とするのかというところは非常に難しいなと思います。単純に行動障害が軽減すれば成功なのかというと、それはまたちょっと違うような気がします。
一般的には、通常のサービスにどう適応させるかということを評価として求められる懸念が大きいのかなと思います。標準的なサービスへの適応とか汎化というのは、相当な時間がかかると思っています。適切な行動を形成するにはかなり時間がかかるということと、当然、環境が変われば、それに合わせた支援がまた出てくるというところでいうと、ここのゴール設定が難しいというところに長期化の一つの要因もあるのかなと思っています。
受入れ先事業所の拡大、これは先ほどのいろいろなケースの中でも話が出ていましたので、割愛したいと思います。
最後に、予防支援の在り方です。成人期の支援というのはどうしても時間がかかりますし、その分、手厚い支援をセットで地域移行を考えないと、恐らく現実的にはなかなか難しいのかなと思いますので、今あるサービスにどう適応させるかと考えた場合には、予防支援というものをセットで考えるということが極めて重要ではないかなと思います。
とりわけ就学前から学齢期にかけて18歳まで一貫した支援、特にここに書いています家族に対する支援みたいなものをどのように仕組みとして、セットとしてつくっていくのかということが、行動障害支援の全体像として組み込まれていく必要があるのかなとか~むの実践から感じているところでございます。
私からの話題提供を終了させていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。
○日詰座長代理 森口さん、ありがとうございました。
それでは、続きまして、公益財団法人日本知的障害者福祉協会様、よろしくお願いします。
○樋口構成員 日本知的障害者福祉協会の樋口です。
私からは京都式強度行動障害支援モデル事業の実践事例を報告させていただきます。
我が国の強度行動障害への行政的取組は、1993年に始まった強度行動障害特別処遇事業によって本格的に行われることになったわけですが、当時の当初の計画では、3年の期間内で適切な指導・訓練を行うことによって、行動障害の低減を図ることを目的に実施されたものですが、当時の事業の在り方に対しては、地域生活を継続して支援する視点が考慮されておらず、地域で暮らす家族から分離された入所型の施設で対応することのみを前提としていたことなどが問題として指摘されていました。
また、課題となる行動を一律に得点化できないことから、制度を真に必要とする対象者の抽出が難しいことや、受入れ先である施設の環境要件が制度利用の妨げとなるケースが多くありました。強度行動障害の評価基準や支援方法の標準化が課題となり、制度が普及することなく制度変更が繰り返され、今日に至っています。
京都式強度行動障害支援モデル事業は、こうした課題の解決に向けて、京都知的障害者福祉施設協議会が2008年から、強度行動障害のある方が地域の中で福祉サービスを積極的に利用でき、受入れ側となる施設・事業所がそのニーズを受け止められるよう、京都府に対して強度行動障害児者の府独自の制度の創設を要望してきたものです。
この長年の要望に対して、山田前知事の時代でしたが、当時、厚生労働省から京都府の障害者支援課長に赴任されていた南さんという方に大変御尽力いただき、2017年度の京都府予算に本事業が組み込まれ、実現したものです。コロナ禍で十分な活動ができない期間もありましたが、今年度で6年目を迎えます。
本事業は京都府の事業で、北部・南部に1か所ずつ、京都府からの委託を受けた社会福祉法人福知山学園、京都ライフサポート協会が運営を担っているものです。
事業の目的ですが、著しく行動に課題がある児者に対する集中支援を行い、課題とされる行動の軽減を図り、個々の障害状況に応じた支援を見いだし、本人が主体となった地域生活の実現と維持を支援するものです。一人一人が自尊心を取り戻し、生活の主体者として自己選択・自己決定ができるのだという自信と希望を持ってもらうことを目的としています。
このことに関しまして付言させていただきたいのは、先般、福岡県久留米市で発生した障害児虐待についてです。強度行動障害が3日間で改善されるなどとうたい、行動障害のある方を無理やり拘束し、激しい暴力で脅し、恐怖を与え、保護者などから療育の報酬として高額の金銭を受けたとされる事件です。
協会として既に声明を発しておりますが、こうした困難な障害状況にある方々への支援に当たっては、人としての尊厳・権利擁護が厳守されなければならず、また、体罰を含む虐待が自己肯定感を低下させ、脳に深刻な悪影響をもたらすことは科学的にも証明されており、暴力は療育の手段として絶対に認められるものではないことを、改めて強度行動障害児者への支援の在り方を検討する上で、特に強調しておきたいと考えています。
京都式強度行動障害支援モデル事業は、3か月を1クールとした集中支援事業と、本事業の申請者を1人でも多くサポートできるよう、原則、応募いただいた全事業所に対し、当該事業所が行う支援内容について、助言等の間接的なサポートを行うコンサルテーションに分かれています。
集中支援事業は、事業概要にあるように、一月ごとにアセスメント期、評価・確立期、移行支援・モニタリング期に分かれていますが、全期間を通じて受入れ先事業所、家族、市町村と適宜相談・連携を図りながら、移行後を見据えた支援に努めています。集中支援終了後もフォローアップ、支援会議、家庭・事業所訪問などを行う地域との伴走支援に最大の特徴があります。
申込みは各市町村担当課で、調査・確認を経て担当課から本事業に申請していただきます。その後、京都府との協議の上、集中支援対象者とコンサルテーション対象者を選考し、各市町村に通知することとしています。
こちらは京都府南部で本事業を受託する障害者支援施設の概要です。
『横手通り43番地「庵」』です。21年目を迎えます。定員40名、障害支援区分は全員が区分6、現在は32歳から75歳の利用者です。行動関連項目得点では、20点以上が64%、15~19点は33%、10~14点が3%です。10点未満の御利用者はおりません。
生活単位は一軒家サイズの小舎制で、5~6人単位の7つのユニットに分かれています。ここに短期入所の個室を8床設けており、緊急時の受入れや、本事業の利用者のそれぞれの障害状況によって、各ユニットで受入れを行っています。
行動障害の背景にある心理・身体・行動面でのストレス反応の低減には、生活の基本となるリズムをつくる必要があることから、日中は隣接市街の仕事場に通い、夕方になるとまた家に帰るという当たり前の暮らしの営みを実現するために、日中活動の場と住まいの場を分けて運営しています。
ユニットの定員は5~6名とし、グループホーム的な小規模な単位であるため、必然的に一人一人の生活の営みが見えてきます。5~6名という単位は、現行制度では支援者1人で支援可能なぎりぎりの最大限の人数であると言えます。
強度行動障害のある入所者に対応したカウンターです。どうしても他害傾向のある御利用者のために、一部を改装してカウンターを設けました。当該利用者は、落ち着いた生活ができるようになったとともに、カウンターを介してリビングの雰囲気も感じることができ、特に効果的だった建築的工夫の一つだと言えます。
構造化と脱構造化を繰り返す中で、普通の暮らしに近づけていく工夫を重ねています。壁や床も障害特性に応じて、御本人にけがのないような素材や、修繕のしやすさといった観点から選定するようにしています。壁は全てホテル仕様になっており、天井までを壁にして騒音が隣の部屋に響かないようなつくりになっています。
夜間の見守りシステムとしては、2年前からですけれども、センサーをマットレスの下に敷くタイプのシステムを導入しています。起床、離床、睡眠時間、呼吸や心拍数も把握・集計できますので、日々の支援に役立つだけでなく、データは精神科の医師に伝え、服薬の効果や減薬の参考にしてもらっています。
行動障害の改善は日中活動の充実に尽きると言っても過言ではなく、エネルギー的にも、精神的にも満たされることがなければ、閉鎖的空間では改善することができません。予期せずコロナのことがあって、終日「庵」で過ごされる期間もあり、その際は個室にばかり閉じこもり過ごされたため、拘禁症状を呈する方もおられたことから、日中活動を分けることは非常に有意義だと改めて感じております。
次に、過去6年間の当該事業の受入れ状況の一覧です。
コロナ禍の状況の中でのこの数字です。2017年から今年度まで延べ76件の申込みがありました。新型コロナの影響により、受入れを一時縮小せざるを得ない時期もありましたが、コンサルテーション支援を充実させるなどして支援を継続してきました。
性別では男性が大半を占め、年齢層では20代前半までが特に多いと言えますが、近年では、本事業が周知されたこともあり、年齢層に広がりが見え、40代前半の方の申込みも散見されるようになりました。
次に、集中支援対象者の介入前、介入後の生活状況の変化です。
介入前の通所困難な状況からの通所再開、家庭や通所先での対応困難な状況からのアセスメントと支援方法の再構築による通所先での支援の継続や、家庭生活の安定につながったケースなど、ほとんどのケースが事業を通して良好な経過をたどり、在宅での生活、地域生活を継続しておられます。中には、家族の関わりの中で再び状況が悪化するケースもあり、こうしたケースの介入後のフォロー体制がこの事業では必須だと考えています。
いずれも当該事業を利用された方々の改善傾向が読み取れます。
本事業は、年度ごとに公開の実践報告会にて事業の報告を行っております。前回はコロナのためオンラインでしたが、京都府、市町村行政、教育機関、医療機関、福祉領域から100名を超える参加がありました。
最後に、当協会が障害者部会に資料を提出し、前回御報告しました全国強度行動障害児者の全国実態調査の集計結果に基づく政策提言、期限を最大2年とする有期限行動障害生活支援センターの概要、そうした対象者を含むユニット・ホームについてです。
このそれぞれに昼夜一対一の配置は、これまでの施策に比べれば格段と実行機能が発揮される提言と言えますが、現にそうした体制で支援している現場から見れば、手厚過ぎるものでは決してなく、十分に実施可能で、必要不可欠な最低限の数字だと言えます。
5人単位で1人のスタッフの勤務実態、つまり、労働条件、有給休暇、そういう全て込みでこれを計算しますと、それぞれ昼夜5対2、深夜帯の夜勤者1人配置が限界だと考えられます。
最後に、今回もそうですけれども、前回、事前資料として提出しました中間まとめは、今後、精査の上、数値等に変更が生じる場合があります。あくまで中間整理として御参照いただきたいと思います。今年度も引き続き検討会を開催し、議論を継続していきたいと思います。
私からは以上です。
○日詰座長代理 樋口さん、ありがとうございました。
続きまして、独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター様、よろしくお願いします。
○會田構成員 よろしくお願いします。御紹介にあずかりました肥前精神医療センターの児童精神科医の會田と申します。
今回は「医療の実践~強度行動障害を有する人が安定した暮らしをするために」ということで報告をさせていただきます。
こちらは強度行動障害を伴う知的・発達障害児(者)の全般的な疫学等になりますが、この中で一番下の部分に書いております一般精神科病棟での治療の現状を述べますと、以前の平成27年から29年の報告の中で、2年以上の知的・発達障害の長期入院患者さんが少なくとも全国で975名おられるという報告がありました。
その中で、薬物療法はかなりのパーセンテージで行われているのですけれども、構造化や行動療法などの専門的支援につきましては、一般精神科病棟で導入率がかなり遅れているということが報告されています。
こちらは当院の属する国立病院機構の精神科の全国の配置図ですけれども、1972年から始まります。もともと動く重症児(者)と呼ばれる方たちが多かったのですけれども、療養介護や医療型障害児入所支援ということで、全国の740床の専門病棟で強度行動障害の方たちのセーフティーネット的な対応をしてまいりました。
現在はなるべく中間施設として地域に移行するということを目指して治療しておりますが、2022年6月現在でも長期入院の待機者が全国で124名いらっしゃるという現状になっております。
強度行動障害を有する方の医療としましては、まず、身体的な疾患の受診や入院、施設や在宅からの一時的な緊急も含めたレスパイト的な入院、行動障害を軽減するための短期・長期の有期限の入院というものがありますが、この中で二番目のニーズがかなり高いのですが、在宅や施設に戻れなくなって、次の受入れに医療機関も消極的になるという悪循環がございます。
また、全国的にもまだまだ潜在的要支援者と呼ばれる、福祉サービスの受入れ先のない強度行動障害の方がおられます。その中で家庭での監禁事件の報道がなされたり、あるいは虐待のリスクが高い行動障害の方々への対応が求められたり、あるいは保護者の方が自死してしまわれたり、福祉職員が離職を続けてしまうという状態もあります。それから、医療においても、行動障害を有する知的・発達障害児(者)での、精神科医療および、身体疾患治療双方の不足という状況がございます。
現在、精神科病院に入院している方も、長期化している方がかなり見られましたので、これから入院する人が長期化しないための対応も不可欠と考えます。まず、入院時に退院時期を確定していて、予定どおり退院できること。また、退院時期は未定であっても、退院(移行)先をコーディネートする地域の機関や仕組みが機能していること。それから、退院時期もコーディネート機関も未定だとしても、多機関連携して退院(移行)ができることなどが求められると思います。
実際の全国の医療の現状をアンケート調査からお示ししますと、後ほど述べます強度行動障害医療研究会での調査では、地域での行動障害に対する精神科医療機関の報告につきましても、全国33地域のうち「あり」と答えられた地域がまだ28か所で、病院数もまだまだ少ないという結果になりました。
この中で、強度行動障害に関する診療報酬の加算が取れる施設基準をクリアする病院というのは少なく、一般精神科病院では他の精神疾患の方と同様の、一般的な診療報酬の中で強度行動障害の手厚い対応をする必要があります。身体科的な医療機関となりますと、さらに「あり」と答えた地域と病院数が少なくなります。
先ほど入院を長期化させないための連携として、入院中の福祉サービス利用についても述べましたが、実際に全国で行動援護や重度訪問介護など、入院中に利用できるサービスを利用している機関というのはごく少数ということが分かりました。
このような現状がありまして、国立病院機構では強度行動障害チーム医療研修として全国的な研修を進めております。自閉スペクトラム症の特性に配慮し、専門医療・支援としては行動療法や構造化の概念を取り入れたものが2015年度から始まっております。多職種による講義やグループワーク、外部専門家の講演からなり、現在までに多職種の研修生が988名修了しております。
このような全国的な状況や研修の実績を通して、当院での福祉・教育との連携事例を御報告します。
これは2012年ですので、福祉のほうの強度行動障害支援者養成研修が始まる前の事例ですけれども、自宅から5年間外出できなかった10代の女性の地域の施設への移行事例です。
こだわり行動やパニック、家族の巻き込みから全く外出ができなかった方を、当院で短期間、構造化を取り入れた入院治療をして、施設のほうに移行するという実践をいたしました。
次は2015年の事例で、他害で福祉事業所の再利用が困難と思われた20代男性ですけれども、ネットワークの活用をしながら、次々と関わる機関が増えていき、当院も短期入院で関わる機関としてネットワークの一部を担い、現在では地域での生活ができております。
次に、これは10代の教育との連携事例ですが、当院でも時々行います高度肥満の治療実践ですけれども、この方はかなり顕著な250キロという体重になってしまわれた在宅の方ですが、教育との連携、福祉との連携を行い、入所施設に移行された事例になります。
また、この事例におきましては、2020年に複数回短期入院している20代男性ですが、パニックや他害・自傷などがあり、地域の福祉サービスの利用がなかなかできなくなっていましたが、当院でのレスパイト入院を複数回繰り返すことによって、現在は地域の通所施設が再度利用できるようになっております。構造化の支援のグッズは、御家族や福祉の事業所様が作成していただいたものを、当院のスタッフが利用するという形で連携しながら治療ができております。
また、御家族の急病で入院になった10代男性におきましても、専門病棟だけではなく、精神科救急病棟の保護室の中でも、このような福祉との支援の連携を通じて、個別スケジュール、カレンダーによる退院日の提示、予告の視覚的提示ということを行いながら入院治療を継続して、無事に退院できております。
入院中に行動援護を導入するということも積極的に行っております。例えば、行動援護を利用するときに病院として抵抗がある部分として、リスク管理をどのように考えるかということがありますが、事前に支援者会議の中でしっかりと話し合い、外出中の責任の所在を明確にし、御家族様の理解や了解も得ながら、福祉支援者と一緒に実践していくという形で行っております。
ポイントとしては、入院中でも行動援護サービスという福祉の事業所のサービスを繰り返して、退院後も自宅やグループホーム等で利用できるように、病院・福祉で相互に乗り入れ、やってみてメリットを感じるという実践になります。
このように精神科病棟の中で隔離や拘束、薬物による鎮静という従来のような精神科の古い治療体制だけではなく、移行先を見越した介入に転換していくということが重要と考えております。福祉や在宅に帰られたときに、どのような支援が必要なのか、それを見越した介入が病院の中でどのようにできるのかというのを実践していこうということになります。
非薬物療法と表現しますが、そのような専門的な支援の実践をすることで、お薬の量が多剤・大量で長期間になることも是正できると考えます。
現在は新型コロナウイルス感染症流行下ですが、当院の中にあるコロナ病棟でも、在宅・グループホームからの強度行動障害を伴う知的・発達障害児(者)の治療を受け入れております。こちらは一般の精神科看護師による身体ケアになりますが、生活・コミュニケーション支援のための準備を御家族や福祉事業所の方にしていただき、視覚的な入院予告と退院日のお知らせ、余暇グッズやスケジュールの利用、検査のための写真カード等の利用、それを感染ゾーンであるレッドゾーンでも配置して行っております。
このような中で、ふだんと違う環境でのコロナ治療にはなりますが、あまり大きな問題がなく治療ができ、逆に新しい経験の中で違う表情や行動を発見できることもございます。
最後にポイントとしまして、強度行動障害の方々が地域で安定して暮らせるために、支援で大事なことをまとめます。
1)自閉症特性を踏まえた受容・表出の両方のコミュニケーション支援や感覚特異性への配慮、2)余暇活動の充足等で強度行動障害の発生を予防し、3)医療と福祉・教育の連携でライフステージをつなぐ支援を行い、ICTも上手に利用してそれぞれの負担を減らしていく。4)長期的予後を見越した薬物療法の適正化を行い、また、そのために 5)共通の支援手法を持った多様性のあるネットワークづくりを各地域で行うということが重要と考えます。
このようなことを医療の中で実践していくために、2020年10月から強度行動障害医療研究会というものを設立し、現在、41都道府県の200名以上の多機関・多職種の方が参加されています。年3回の勉強会や情報共有などを実施する中で、全国の情報について共有しながら、それぞれの地域で生かすということを行っております。肥前精神医療センターのホームページのほうに「強度行動障害医療研究会」というバナーがございますので、御興味がある方は御覧ください。
というところで、強度行動障害に関する医療の実践について御報告を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○日詰座長代理 會田さん、ありがとうございました。
それでは、次が最後の実践報告になります。大阪府福祉部様、よろしくお願いします。
○山田先生 ありがとうございます。私は大阪府福祉部障害福祉室の山田と申します。どうぞよろしくお願いします。
まず、大阪府でこの事業を実施するに至った経緯について御説明いたします。
大阪府では、施設入所者の地域移行や地域生活支援拠点等の整備促進に取り組んでいるところです。取組を進めてきて、課題として挙がってきたのが次の2点になります。
地域移行については、これまで地域移行が可能な方から、順次、地域移行を進めてきたというところもあり、入所者の重度化や高齢化が進み、受け皿がなかなか見つからないということから、地域移行が鈍化してきているというところがあります。特に施設入所の多くは、重度障害者支援加算(Ⅱ)の利用状況を見ますと、多くの方が何らかの行動障害の状態を示しているということが分かりました。
また、地域生活支援拠点等の整備では、市町村が備えるのが困難な機能として専門的人材の養成・確保が挙がっており、特に行動障害の状態を示す重度知的障害者への専門的な支援を提供できる人材の確保が難しいというのを市町村のヒアリング等でも伺ってきたところです。
府内のグループホームの状況を御説明しますと、グループホームは府内で年々増加傾向にあります。令和4年度の最新の情報では、1,000に近い事業所がありまして、平成29年度に比べても倍増してきているところであります。
ここには記載しておりませんが、入所施設の待機者も府が把握しているだけで1,000人近くおり、多くが知的障害者となっていることから、グループホームが重度知的障害者の受け皿としてなかなか機能し切れていないのではないかということが考えられます。
重度の方のグループホームが増えない要因の一つとして、重度知的障害者の支援を組織的に取り組んでいる法人が少ないことや、支援をしたいと思っていても、支援に困ったときに助けを求めるところが少ないといったことも課題の一つになっているのではないかと考えられました。
以上のことから、大阪府では、重度知的障害者、特に行動障害の状態を示す方への専門的な支援が提供できる法人の養成に取り組むことになりました。
ちなみに、この事業につきましては、発達障害児者地域生活支援体制整備モデル事業の補助も受けて実施しているところです。
続きまして、事業の概要について御説明いたします。
府内では、強度行動障害の状態を示す方をグループホームで受け入れ、アセスメントに基づき、氷山モデル、PDCAサイクルなど、チーム支援を実践されている北摂杉の子会さんの支援ノウハウを3年間かけて6法人に伝え、重度知的障害者の支援の地域の中核となる法人を養成することを目的として取り組んでいるところです。令和2年度からモデル事業として開始しまして、令和3年度から本格的に実施しております。
3年間の構成を学校の先生の養成課程で例えますと、1年目は教育学部の学生さん、2年目は先生の資格を得るための実習生、3年目は先生になるための準備期間として位置づけて、3年間で何とか養成していけないかということで始まっています。
1年目はコンサルタントから手取り足取り教えてもらいながら、支援ノウハウを一から学ぶ年になっています。支援のイメージを膨らませるために、実際に支援がうまくいっている杉の子会さんのグループホームなどで実地研修なども交えて取り組んでいるところです。
2年目では、教育実習生として1年目で学んだことを自ら実践して、理解してもらいます。学んできたことを再確認するため、実地研修などを交えて取り組んでいます。
3年目では、先生になるために教える力を身につけてもらうという取組を実践しています。具体的には、コンサルタントの方に同行していただいて、コンサルタントの視点を学んでいただくということでやっております。
毎年実践報告会を実施し、学んできたことを振り返り、アウトプットしていただく機会も設けています。
このように、まず、地域に支援ノウハウを備えた法人を養成し、地域に展開できる仕組みづくりを行っているところです。
次のスライドに移ります。
事業の取組のイメージは、こちらのスライドに記載しているので、御確認ください。
この事業で、まず、法人内に定着させてほしいスキルとして、専門的な知識の獲得、根拠に基づいた支援計画の立案、実践と記録、評価、再計画、実践といった、いわゆるPDCAサイクルで支援方法を検討していく力をまずは定着させてほしいと考えているところです。
このサイクルについては、強度行動障害支援者養成研修でも取り扱われている支援ノウハウで、この研修の支援スキルを各事業所内で具体的に実践できるようにすることが目的となっています。
このスキルを法人内に定着させるため、今後の法人の中核を担う人物を各事業所からコアメンバーに選出してもらっています。選出されたコアメンバーを中心に、訪問コンサルテーションでは支援困難事例を通して支援サイクルを回す方法を学んでいただく。実地研修では、実際にうまくいっている支援をコアメンバーの方に体験していただく。
実践報告会で1年間の支援を振り返り、地域に取組を伝えてもらい、まずはコアメンバーの支援スキルの向上に取り組んでいく。また、根拠に基づいた支援が有効であることを地域の方々に知ってもらうということを目的として、実践報告会を実施しています。コアメンバーが各事業所に戻って取組を実践することで、法人内に取組が広がっていくということを期待しています。
このような仕組みで法人さんの養成を行っているところです。
事業終了後は、養成した法人による地域への展開をしていっていただくよう、現在、検討しているところです。
この事業のポイントの一つとして、参加法人から参加費を徴収していること、参加法人さんからコアメンバーを選出してもらっているということで、この事業への参加に法人の組織のトップの方の意思が加わっているというところが、組織内で取組を広めていくためのポイントの一つとなっていると考えています。
次のスライドに移ります。
こちらはこの事業に参加いただいている3年目、1.5年目、2年目の法人の取組の状況になります。1.5年目という中途半端になっているのは、コロナ禍の状況の中、なかなか取組を開始することができなかったということで、年度途中から開始された事業者さんがいらっしゃるので、1.5年目ということになっています。
ここではポイントだけを御説明させていただきます。
Cのところはこちらの記載ミスなのですが、コアメンバーの欄を見ていただきますと、どの法人さんもコアメンバーの中に管理者の方が入っていただいています。
また、右から2列目の法人内での取組内容というところを御覧いただきたいのですが、この事業を通じて、地域の地域生活支援拠点等の事業所の研修会を法人さんが実施してくださったり、地域の事業所へ向けた研修会等に自主的に取り組んでいただくような法人さんが出てきているということが、この事業を通して、法人さんだけではなくて、法人さんの周辺の地域を巻き込んだ取組に広がってきているということに効果を感じているところです。
続きまして、これは非公表資料ですが、その点を御留意いただけたらと思います。
昨年度の取組成果を試行的に「令和元年度 障害者総合福祉推進事業 強度行動障害児者に携わる者に対する体系的な支援スキルの向上及びスーパーバイズ等に関する研究報告書」で示されている7つの視点に、チームアプローチの視点を加えまして、コンサルタントの方の視点で評価していただいたものです。どの法人さんも取組の成果が出ていることがうかがえます。
ちなみに、こちらのシート案を基に、この評価をさせていただいたところになります。
次のスライドを御確認ください。こちらは、今後、地域に支援を拡大するための課題について記載しています。
この事業については、支援方法を府内事業所に拡大するためのアプローチ、特性理解とアセスメント・支援、チーム支援、他法人の事業所間連携というところを目的に取組を進めてきましたが、その結果、管理者やコアメンバーとの振り返りを通して分かった今後の課題となります。
右から2列目の事業所の声の欄で「支援方法を府内事業所に拡大するためのアプローチ」の欄を御確認いただきますと、外部機関を受け入れるのに最初は抵抗があったと多くの事業者さんがおっしゃっていました。外部のコンサルタントを実際に受け入れてみると、外部のコンサルタントの話をよく聞いて、目を輝かせて支援を実践するようになったということも共通して聞かれた言葉です。
こういったことから、外部のコンサルタントを受け入れる土壌づくりが今後の課題になっているのではないかなと感じています。この辺は行政の後押し、補助や加算、行政としてこういった事業に取り組んでいくというところが必要になってくるのではないかなと思っているところです。
続きまして「特性理解とアセスメント・支援」の欄を御確認ください。ここでも記載していないところがあるのですが、どの事業者様からも、実際にこの事業のアセスメントを通して、利用者さんの特性を理解していくという経験を通じまして、自分たちでもアセスメントをとれるようになりたいという声が多数上がっていました。
インフォーマルアセスメントやPEP-3といったアセスメントがあるのですが、それらを自分たちでとっていくには経験が必要になってきます。この3年間での経験ではなかなか足りないところがありますので、こういった実施者の経験の補完といったことが今後の課題になってくるのではないかなと思っています。コンサルタントとしての経験不足を、学識経験者や実務経験者からのスーパーバイズなどによって補うことが必要だと思っています。
「チーム支援」「他法人の事業所間連携」の欄を御確認ください。
チーム支援の有効性を体験してもらう取組として、実地研修は非常に有効であったという声をどの法人さんからも聞いています。ただ、成功体験を感じてもらう必要があるので、前向きに取り込めるようなインセンティブが必要かなと考えています。また、受入れ先には高度な専門性や、受入れに当たっての負担感が生じてきますので、そういったところへのフォローが必要ではないかと考えているところです。
次のスライドは今後の事業のイメージになります。
左側半分の①は、今、実際にやっている事業になります。②は、来年度から、今後の地域の展開のイメージということで、こういうイメージになります。最終的には大阪府の府立自立相談支援センターと連携したり、強度行動障がい支援者養成研修と連携したりということを念頭に置いて、この事業を広げていきたいと考えているところです。
取組は以上になります。ありがとうございました。
○日詰座長代理 山田さん、ありがとうございました。
時間もないところですが、構成員の方から今日の発表者の方に御質問のある方がいらっしゃいましたら、挙手していただければと思います。
では、松上構成員、よろしくお願いします。
○松上構成員 すみません。1点だけ。
侑愛会さんの実践は本当にすばらしいなと。人材育成の仕組みを完成された形で説明していただいたのですけれども、侑愛会さんもコンサルテーションというか、外部のコンサルタントを入れるというか、そのようなことはどういう形でされていますか。特にこういう研修を始める前の段階ではいかがでしょうか。
○日詰座長代理 中野さん、お願いします。
○中野先生 ありがとうございます。画面をもう一度共有させていただきます。
今の御質問は、ここのコンサルテーションの仕組みというところのお話だったと思います。現在、外部から招聘した自閉症支援の専門家お二人に来ていただいて、年3回コンサルテーションを実施しています。
内容的には、困難事例に対してのケースを1年間追っていくという形で実施しているのですけれども、その中で重要なのは、関わっている利用者の方々がチームとして取り組んだ実践を定期的に振り返るという形をとっています。
そのときに重要なのがここで言うチームリーダーの存在ということなので、ここの中核的な人材をいかに育てていくのかということが大きな課題であると思っています。
今、入所施設4か所、通所施設4か所、グループホーム2か所、全部で10か所ほどのコンサルテーションを受けていますけれども、その効果はかなり大きいと実感しています。ただ、コンサルテーションだけでは実践というところのスキルがなかなか高まっていかないということもあるので、やはり定型的に育てる仕組みとして、ワークショップのスタッフとして協力していただきながら、その方々がサブトレーナーとして中心的に活躍できるような形で考えていきたいと思っています。
そんな感じでよろしいですか。
○松上構成員 ありがとうございます。
○日詰座長代理 ありがとうございました。
時間の関係上、次の田中構成員の御質問で終わりにしたいと思います。
なお、今日の登壇者・発表者に対する質問がある方は、27日までに事務局に送っていただければ、後日、回答もできると聞いていますので、次の田中構成員で今日のこの場での質問は終わりにしたいと思います。
それでは、田中さん、よろしくお願いします。
○田中構成員 はるの上田さんにお願いしたいと思います。
事業上いろいろな工夫をなされていて、本当に大変な4年間だったと思いますが、救いを求めようというきっかけと、救いを求めていったときに、地域のチーム編成の中でたくさんの関わりを御紹介いただきましたけれども、役に立った順にベストスリーぐらいを教えていただけると、今後の参考になるかなと思いますので、救いを求めるきっかけと、困っている状況の中で役に立ったなと思う部分について、教えていただければと思います。
○上田先生 分かりました。
やはり職員の疲弊からの退職が大きなきっかけでした。1人の方を3人ほどで支えていたのですけれども、そのうち1人がちょっとしんどいということで、これはもう残り2人も続かないぞというところが大きなきっかけになっています。
その後にネットワークに頼っていますが、その1人の方を長年支えてくださっていた方が近くにたくさんおりましたので、動きとしては基幹相談の方、計画相談の方がハブになっていただいていますけれども、肥前さんであるとか、佐賀市であるとか、あと、通所先の日中の「それいゆ」さんという施設もたくさん手だてを考えてくださっていまして、そういうところは、具体的にどうしたらいいかとか、実際に頼れる、相談できる相手としてたくさん関わっていたことがやはり大きいかなと思っています。
その後に、そういう手だてとか、優先度をしっかり分かってくださる方がお話をしてくださったおかげで、入所施設のほうにつながることができたりとか、検討がすんなりということがありましたので、どういうところがベストスリーかと言われると、本当にどこも同じぐらい力を注いでくださったなという案件でした。
以上です。
○田中構成員 ありがとうございました。
○日詰座長代理 福島構成員、何か補足はありますか。
○福島構成員 ありがとうございます。私は、地域生活支援ネットワークですけれども、ふだんは上田が発表したはるというところの理事長をさせていただいております。
今の田中構成員からの御質問でいきますと、どこも非常に大きな協力をしていただいたのですけれども、一番最初に基幹相談が動いていただいたというのが大きかったと思います。これは地域としての課題だということで、すくい上げていただいたということです。
あとは、やはり私たち佐賀には肥前さんがありますので、そこでもすぐ入院に移行することができた。そういう機関があると、自分たちがどうしようもないときに、受け入れていただけるところがあるという安心感は強かったです。
もう一つは通所先の「それいゆ」さんです。ここは支援の専門家の方たちがいらっしゃいますので、そういう方たちが支援について、しっかりアドバイスいただいたという、ここは大きかったと思っています。
以上です。
○日詰座長代理 ありがとうございました。
時間になりましたが、本日は充実した実践報告ができたと思います。御発表の皆様、ありがとうございました。
議事(2)は内容ですので、議事はこれで終了となります。
では、今後の予定等について、事務局からよろしくお願いします。
○事務局 事務局でございます。
次回の検討会は11月29日木曜日、本日と同じく10時から12時、議題は論点2の人材育成から議論を進めていただく予定としております。よろしくお願いいたします。
本日は、お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございました。
○日詰座長代理 お疲れさまでした。ありがとうございました。