第5回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

日時

令和4年9月26日(月)16:00~

場所

中央労働委員会講堂(7F)

議題

  1. (1)業界団体等ヒアリング
    1. 全国建設業協会(出口委員)
    2. 建設産業専門団体連合会(大木委員)
    3. 日本建設業連合会(本多委員)
    4. 住宅生産団体連合会(青木委員)
    5. 陸上貨物運送事業労働災害防止協会
  2. (2)フリーディスカッション
  3. (3)その他

議事

議事内容
○船井安全課長補佐 本日は、大変お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまから、第5回「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」を開催いたします。本検討会は、会議の資料及び議事録は原則公開ですが、カメラ撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をよろしくお願いいたします。本日は、鹿野委員、三柴委員、森委員の3名がオンラインでの参加となっておりますが、全員出席で欠席者の方はおりません。
 それでは、以後の議事進行につきましては、土橋座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○土橋座長 それでは、皆様よろしくお願いいたします。今回は、前回に引き続き、業界団体の皆様からのヒアリングを行いながら、フリーディスカッションを行っていただくことを予定しております。今回の業界団体ヒアリングは、まず建設業界で、青木委員、大木委員、出口委員、本多委員の4名から建設現場の実態について、それから運送業関係では、陸上貨物運送事業労働災害防止協会の横尾様より、荷役業務における災害防止上の課題について、それぞれ業界の実態を踏まえつつお話をお伺いすることとしております。短い時間ではありますが、効率的に議事を進めさせていただければと思いますので、よろしく御協力をお願いいたします。
 それでは、議事に入る前に事務局から資料の確認をお願いします。
○船井安全課長補佐 お手元に紙資料を配布しております。分厚くなっておりますが、資料番号が振ってあり、資料としては1~7まであります。資料1と資料2は、これまでの主な意見ということで事務局が用意した資料です。資料3~7は、今回ヒアリングで御対応いただく委員の皆様、若しくは陸上貨物運送事業労働災害防止協会の提出資料になっております。それに加えまして、参考資料として、参考1~4までが、開催要綱に始まり、過去の検討会で出していただいた論点について、フリーディスカッションの際の参考にしていただくということで付けております。私からは以上です。
○土橋座長 それでは、議事に入ります。議題1、業界団体等ヒアリングということですが、まずは、それに先立ちまして、前回までの議論やヒアリングにおいて、御説明いただいた事項のうち、論点と関係が深いものを整理した資料につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○船井安全課長補佐 それでは、資料1、資料2について説明します。資料1、資料2に、これまでの主な意見ということで論点1と論点3に分けて書いています。
 まず、資料1ですが、前回までに出された意見のポイントです。まず、(0)「全般」に書いてありますが、こちらは事務局から提示した論点とは少し違った、もう少し上の目線から見た意見ということで、幾つかありましたのでまとめております。今回、複数の団体に対してヒアリングを行いましたが、それぞれ業種、業界によって状況が大きくことなりますので、全部一緒にして共通化してしまうのは難しいのではないかという御意見がありました。それぞれ業界の業所管省庁のあるなしもあるのですけれども、そういった業所管の所と連携した取組や仕組みを作るのがいいのではないかと。また、取引関係の法令と連携した対応は必要ですけれども、安全衛生については、取引に委ねるのではなくて、やはり一定の、別途の規制が必要ではないかという御意見がありました。働き方はいろいろ業種によって異なりますが、業務の場所が毎回変わるような働き方と、例えば自宅で固定された働き方をするようなケースがあるので、災害リスクという観点からいえば前者のほうが重いのではないかと。あとは協同組合のように個人事業者をメンバーとするような団体を作って、発注者の方と協議をしたり、個人事業者に対してサービスを提供したりするような仕組みも考えてはどうかと、こういう全般的な御意見もありました。それ以外には、事務局から提出しました論点に応じ、個人事業者等の災害の把握・分析という観点につきましては、しっかり把握すべきである。ただ、把握するやり方については検討すべきであるし、労働者と同じようなやり方で把握するべきですけれども、少なくとも特別加入者については、特別加入団体を活用すべきであるという御意見がありました。
 (2)個人事業者自身による取組についても、しっかり情報伝達をして、周知だけではなく、実効性を確保するような取組を考えるべきである。特に、教育、知識の付与については、しっかりやる必要があり、特別加入団体などの団体の活用も必要ですし、やはり、教育の部分については、ただやってくださいというだけではなく、ある程度の強制性を持たせるようなやり方も必要ではないかということです。また、健康状態が原因となって事故につながることにも注意が必要ですし、個人事業者自身による取組をやるだけではなく、自分では対応できない部分をどうするかという観点も必要ではないかという御意見もありました。
 (3)発注者による取組については、非常に多岐にわたる御意見を頂きました。全ては御説明できないと思いますけれども、幾つかピックアップして説明します。安全衛生法の第3条で、包括的に注文者の義務・責務が書いてあるのですけれども、これが限定的に読めてしまうこともありまして、これを対象が広いということを明確にして、具体化して実効性をもたせることが重要ではないかという御意見。また、運送業の関係では、どうしても配送先の荷役作業で災害が起きているということなので、荷主の対策をしっかりやっていくべきではないか。また、運送契約についても、初めて現場に行ってどういう作業か、どういう作業条件かが分かるということがあるという御意見がありまして、そういったところをしっかり明示するように発注者に対して働きかけるべきであるという御意見がありました。運送業の場合には非常にたくさんのプレーヤーがおりますので、それぞれの関係者の役割分担が重要である。そういったことを考えるに当たっては、オーストラリアのように取引に関連する全ての方が連帯責任をもって当たるというやり方も参考になるのではないかという御意見がありました。
建設業につきましては、適正な工期設定や費用負担、そういった部分を発注者側の対策について実行性をもたせるものになるよう検討すべきではないか。また、発注者側から非常に厳しい条件を出されて事故につながるというような場合があるというのは、建設業界も運輸業界も同じ認識であったということです。また、発注者対策を考えるときには、直接契約している直上の人だけではなく、実際にリスクをコントロールできるような人たちに対して対応を求めることが必要である。そのほか、作業間の連絡調整、安全上の指示、安全上のアドバイスというのが、ひとたび間違うと偽装請負のような形に捉えられてしまいますので、指揮命令に当たるかどうかを、誤解のないような形で明示していただけるとありがたい、こういう御意見もありました。
一口に発注者といっても個人の場合もありますので、そういった人たちに対してどうしていくのか。意識啓発は必要であるのですけれども、あまり強く縛る必要はないのではないかという御意見もありました。
 次のページの(4)その他のリスクを生み出す者ということで、こういう立場の人においては、例えばプラットフォーマーのような実質的に作業のかなりの部分をコントロールしているような方に対しては、一定の措置を求めていくべきではないかという御意見もありました。(5)個人事業者に対する支援につきましては、費用面も含めた支援、若しくは団体と捉えて団体に対する支援も含めて考えていくべきではないかという御意見もありました。
 資料2、これまでの主な意見の論点③の関係です。(1)個人事業者等の災害の把握・分析ですが、これは論点①と重なる部分があるのですけれども、ヒアリング団体のイラストレーター関係の協会の方の御意見としては、キャリアパスを積んでいく上で非常に負荷をかけて作業をする時期もあるので、災害リスクはキャリアの時期によって違うということも踏まえた分析が必要ではないかという御意見がありました。(2)発注者による取組ですけれども、例えば建設業において、公共の工事の場合は、工期の短縮が求められる傾向にありますので、そういったところが過重労働につながるという懸念もあるということを踏まえて検討するべきである。あと、ストレスチェックや健診といった部分についても、発注者や仲介業者に取り組んでいただくことが効果的ではないかということ。(3)個人事業者支援については、ヘルスリテラシーの向上が重要で、そういったことを目的とした研修や健診についての受診勧奨などの啓発が必要であるという御意見がありました。
こちらにつきましては、次のページ以降にITフリーランス支援機構様、日本芸能従事者協会様、日本イラストレーション協会様それぞれに、ヒアリングの際にヒアリング団体の方から実態を述べていただいたものについて、論点と関係が深そうな部分をピックアップして載せております。各団体とも共通して言えることは、やはり脳・心臓疾患や精神疾患の事案が起きている。これは、同じ業界で働く労働者の方でも、やはり同じようなことが起きているという御意見が共通してありました。やはり各団体の皆様は、こういった部分を問題視されて、いろいろな取組、支援、研修といったことに既に着手されているという状況もありました。一方で、特に芸能従事者協会様の話ですと、実際に芸能の現場というのは非常に重層な下請の構造になっているのですが、災害防止の責任者というのが明確にされていないので、誰に対して、どうアプローチをすればいいのかというのは、はっきりしていないところがあって、そういった部分では新しい方策を立てていく必要があるのではないかと。そういう責任が明確になっていないことと裏表の問題だと思うのですけれども、いろいろなハラスメントとか、トイレや更衣室がないといったような問題が非常に多くなっているほか、非常に過重な労働というのも見られるという状況がありました。こういったことも踏まえて、また論点を掘り下げて、本検討会で御議論いただきたいと思っております。資料1、資料2については以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。それでは、続きまして業界団体の皆様からのヒアリングに移らせていただきます。はじめに全国建設業協会の出口委員、よろしくお願いいたします。
○出口参集者 全国建設業協会の出口です。よろしくお願いいたします。持ち時間が約10分程度と聞いておりますので、建設業の現状と、個人事業者に対する課題を中心に御報告いたします。
まず、1番の全国建設業協会の概要です。概要につきましては、お手元の資料の1に記載のとおりです。会員は47都道府県、建設業協会を正会員とし、県協会の傘下に約1万9,000の会員企業が存在しております。全国建設業協会の目的と事業活動につきましては、添付資料の全国建設業協会の御案内を御参照ください。
 続きまして、2番の建設業の現状と課題について御説明いたします。就業者数につきましては、平成9年をピークに減少し、技能労働者の高齢化が進み、10年後には大量な離職が見込まれるものの、若手入職者数は不足しております。担い手の確保が最大の課題となっています。また、建設業男性生産労働者の年間賃金総支給額につきましては、近年、徐々に上昇しているものの、全産業男性労働者の賃金より低い状況となっております。また、労働時間につきましては、全産業平均に比べ、年間で340時間以上長く、2019年4月に施行された改正労働基準法で「36協定で定める時間外労働の上限規制」が見直されました。建設業での適用は2024年4月1日、それ以降は、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、特別の事情がなければ、これを超えることができなくなります。労働時間の短縮も緊急の課題となっております。週休2日制についても、他の産業に比べて導入が遅れております。特に工事現場における導入の遅れが見られます。全建としては、「2+360(ツープラスサンロクマル)運動」を展開し、休暇取得促進、労働時間の短縮を進めております。資料については、別添1、国交省資料、別添2、全建「働き方改革アンケート」の調査結果②~④を御参照ください。
 3番、会員企業の状況です。会員については、一人親方は存在しないため、その就労状況のデータは保有しておりません。会員企業の中心は地域の中小元請建設企業。取扱業務は土木工事が約6割、建設工事が約1割、その他が約3割で、これは令和3年8月時点での状況です。
 4番の個人事業者の就労状況です。全建にはデータはありませんので、(株)奥村組東日本支社管内の工事所データにて、一人親方が登録されているデータを取りまとめてみました。結果は圧倒的に建設現場に多く就労しており、要因としては、一般的に建設とは異なり、土木は工種が少なく、施工する構築物も出来高の上げ方も異なります。建築については、三役(とび土工・鉄筋工・型枠工)は少ないのですが、内装工事・電気設備工事・給排水設備工事等の分業発注しやすい工種に集中する傾向が強いと思われます。これについては別添3の個人事業者の就労状況[奥村組東日本者土木・建築集計表]を御参照ください。
 5番の個人事業者の工事現場への入場要件です。国土交通省(以下、国交省)から、元請企業においては、社会保険未加入である建設企業を下請企業として選定しないこと等の要請を受けており、社会保険の適正加入の促進を図っています。当該ガイドラインにおいて、国交省独自の基準により、「建設業において認める一人親方の姿」が確立され、適正と認められない、いわゆる一人親方については、個人事業主としては求められず現場入場ができなくなるものと考えております。
 6番の元請企業の役割等についてです。労働安全衛生法等の遵守は、もとより、上記4のガイドラインにおいて、元請企業については、①一人親方が工事を請け負う個人事業者として現場に入場するのか、実態が雇用契約を締結すべきと考えられる雇用労働者として現場に入場するのかを確認すること。②下請企業が行った一人親方との業務請負契約に疑義がある場合には、下請企業に対して関係書類(再下請通知書、請負契約書)の提出を求め、内容を確認することとなっております。確認にあたっては、国交省作成の「自己診断チェックリスト」を参考にすることとなっています。
また、その結果に応じて、労働者性が高い一人親方については、直近の請負契約事業者に対して、契約の見直し、雇用契約への変更を促し、個人事業者として適正であると考えられる場合には、元請企業は適切な「施工体制台帳・施工体系図」を作成することとなっております。なお、「個人事業主」と書いている語句が散見されますが、これは「個人事業者」の誤りでございます。修正をお願いします。
そして、他の業界も同様に、元請や協会(団体)として規制された法令等はあると思います。しかし、建設業においては、建設業法や他の法令等に準じた独自のルールがあり、他の業界のヒアリングを聞かせていただき有難いと思うとともに、建設業との大きな異なりを感じると同時に、ここまで異なる他の業界を1つの検討会ではなく、業界が抱えるステージ、課題や問題点それぞれが近いものをグループ化すればよかったのではないかと考えております。
 7番の労働災害の発生状況です。別添5の厚労省「令和3年労働災害発生状況」及び別添6の厚労省「建設業の一人親方等の死亡災害発生状況(令和3年)」については、厚労省のデータそのものでございます。
このように、個人事業者等の災害発生状況につきましては、現状は完全に把握されておりません。労働者が被災して休業や死亡した際に、所轄監督署に届け出る「労働者死傷病報告」が個人事業者等には提出する義務もなく、把握は労災保険の特別加入制度を利用し、申請してきた件数のみが集計されている状況です。また、その加入率は低いため、単純に労働者と比較してよいのかとも考えております。
今後、個人事業者等に対する安全衛生対策を継続して検討していくならば、やはりデータとして一番の基となる個人事業者等の全体数の把握、「死傷病報告」提出の義務化により、災害発生状況の深掘りを行い、また労災保険の特別加入制度の義務化は検討していくべきではないかと考えております。
 8番の個人事業者等の安全衛生管理です。上記3のとおり、会員企業に一人親方は存在いたしませんが、建設業における重層下請構造の作業において、一人親方が個人事業者として請負契約を締結し、現場に入場する場合があります。この場合、会員企業は元方事業者(特定元方事業者)として、労働安全衛生法第29条等に基づく対策を講じ、個人事業者等の安全衛生管理に努めております。労働政策審議会安全衛生分科会においても小職が発言しておりますが、建設業では元請企業として、労働者と個人事業者等を区分した安全衛生管理は行ってはおりません。全建におきましては、厚生労働省から示される労働関係諸法令の改正内容、新たな制度について会員企業への周知啓発を行っております。
 9番の個人事業者に対する労災補償です。上記7のとおり、一人親方が個人事業者として現場に入場することがあるため、労働災害が発生した場合に備えて、全建において労災保険の特別加入制度の周知を図っております。しかしながら、同制度については保険料金が高い、加入手続が複雑であるなどの問題があるため、より簡単に、より適正な補償金額に加入しやすくなるよう検討をお願いいたします。
 最後に10番、建設業における個人事業者等の課題についてです。これまで、労働安全衛生法による保護対象者は雇用労働者であったものが、今回、同法による保護対象として検討している者にも適用が拡大されます。同対象者に労働災害が発生した場合の建設業における元請責任、労災補償(特別加入制度の周知等)のあり方についても、本検討会において検討すべき事項ではないでしょうか。
ヒアリング内容をお聞きしていますと、事務委託をすることで特別加入の手続や更新の手続などをしてもらえて、同時に雇用労働者がいれば、その分の保険加入手続も行えるメリットがある一方で、保険料以外にも事務手数料などを負担しなければならないことになりますので金銭的な負担が増えるデメリットがあります。AIやICTが叫ばれる昨今、民間企業とも連携を模索し、従来の特別加入団体や団体が事務処理を行うことができる区域の枠をなくすなど、思い切った抜本的な方針を立てなければ、特別加入者数は伸びないと考えております。
 また1例としては、個人事業者、一人親方の処遇改善として特別加入促進を目的とした助成金を設けるなどもよいのではないでしょうか。新たに労働安全衛生法による保護対象者を労働者以外の個人事業者等も含めるならば、個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方、労働災害を防止するために対象とする者に対しても何らかの安全衛生教育・研修を実施すべき方策を検討すべきと考えます。ただ、日々忙しく飛び回る個人事業者等を集めるための支援や展開方法も、併せて検討すべき事項です。個人事業者等が、元請企業と直接契約を締結する1次会社と契約していれば元請企業が促す効果も高いですが、2次以降になると元請企業と直接契約のない下請企業と契約している個人事業者等の場合は、元請が促す効果は低いと考えております。
 そして、誤解がないようにコメントいたします。10番の「同法による保護対象として検討している者にも適用が拡大」される。また、「保護対象者は労働者以外の個人事業者等も含めるならば」と記載しておりますが、これにつきましては、あくまで安衛法が省令改正されました第22条の部分について指すものであり、ほかのことについて容認しているコメントではありません。
 以上が、全建からの建設業の現状と個人事業者等の課題となります。本検討会におきましては、建設業の特殊性につきましても特段の御理解、御配慮をお願いいたします。御清聴ありがとうございました。
○土橋座長 どうもありがとうございました。質疑、応答につきましては、建設業関係団体の皆様からの4つの説明を頂いた後に時間を取らせていただきます。
 続きまして、建設産業専門団体連合会の大木委員、御説明をよろしくお願いいたします。
○大木参集者 建設産業専門団体連合会の大木でございます。当連合会は、昭和39年11月に全国建設専門工事業団体連合会、「全国建団連」として、当初は13団体で設立いたしました。以後、各団体が加入し、平成14年6月に一般社団法人建設産業専門団体連合会、「建専連」として新たに発足いたしました。現在、正会員は34団体が参加しております。活動方針として、現場で働く全ての就労者が安心して働ける環境整備を図り、技能労働者の処遇改善に努め、技能・技術の伝承ができる企業体制を確立しております。
 個人事業者の安全衛生対策についてです。建専連は各種専門工事業団体の連合体であり、会員団体の企業には個人事業主、事業者が多く存在します。現状は将来の担い手確保に向け、元請企業と一丸となり、入職前の若者が選ぶ業界となるよう働き方改革を推進しております。専門工事業の設備や塗装など、現場が小さく、元請施行する業種もありますが、大規模現場で下請施行をする場面が多いです。そうした現場では、現場の安全管理体制は元請をトップに徹底されており、全体的な災害数のみの評価では他産業に比べ多いかもしれませんが、これまで公表されている資料から、災害の発生場所や原因を見れば施行体制化にあって元請・下請の複数チェックが可能であり、災害予防が利く構造となっており、大規模工事現場での災害は極めて少ないです。さらに、個人事業者であっても建設現場の施行体制の中に一体となって安全管理がされており、現場の施行体制でしっかりチェックの利く建設現場は、これまで紹介のあったIT産業や芸能業界とは大きく異なっており、同じテーブルでの議論はいかがなものかと感じております。
 また建設現場は、8時~17時の時間管理はありますが、仕事の切りや、天候で早く上がったりすることがあり、個人事業者の利点でもありますので、どのような形になるかは分かりませんが、一律の規制は慎重にお願いしたいと思います。
 建設現場での災害として転落が多いとされており、その場所は梯子や脚立、若しくはそういったものが利用できない個人住宅の梁や屋根とされておりますが、個人事業者だから発生するというものではありませんので、そういった現場特性や、災害発生原因等を更に詳しく調査・分析した上で、一品受注の下請施工という特徴のある建設業は、他産業とは別に対応を練っていただくことが必要ではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。続いて、日本建設業連合会の本多委員、説明をよろしくお願いいたします。
○本多参集者 日本建設業連合会の本多と申します。通常、日建連と言っておりますが、全国的に総合工事業、いわゆる元請を営む百数十社で構成する団体です。私からは、資料5の1~4ページで、建設業、一人親方等についての特徴をデータに沿って御説明し、5~14ページは、災害分析を行った際の御報告をいたします。
 まず、1ページは、建設現場の体制あるいは人員、一人親方を含む人員等を御理解いただくために、工事現場の一例を挙げて御紹介いたします。医療施設の増設工事です。請負金額が約48億円、延べ床面積10,299m2、工期は1年8か月ぐらいの中期ぐらいのレベルです。この1年8か月の間に当現場に入場した会社の総実数は、1次が75社、2次が432社、3次が329社、4次が33社で869社が現場に入場しております。そのうち技能労働者が2,725名、一人親方の内訳の総実数は、1次が0名、2次が112名、3次が97名、4次が9名で528名(約8%)です。残りの90%強は雇用労働者という状況です。
 続いて、私は鹿島建設におりますが、そこで全ての現場を対象に実施しました労務賃金アンケート調査結果です。一人親方・個人事業主あるいは労働者等の違いを御説明したいと思います。調査対象は今年の4月のある時期に入場している技能者の方々に直接アンケートを配ったもので、回答者は1万2,000名ほどで、そのうち一人親方あるいは個人事業主が合計1,500~1,600名いらっしゃいました。
 2ページは、そのうちの土木工事でお仕事をされている方々です。道路、トンネル、ダム、橋、そのようなジャンルで働いている方々です。左上の(1)のグラフを御覧ください。土木工事は、非常に一人親方・個人事業主が少なくて122名しかおりません。40代、50代で全体の8割弱です。70代の方もいらっしゃいます。右上の(2)は同じ土木ですが、多くの方々は2次に所属していらっしゃいます。
 (3)は公共・民間別の日当の比較です。左上のグラフですが、3つのうちの「全体」のところを御覧ください。ブルーが一人親方・個人事業主で、赤が一般雇用労働者の方で、一人親方のほうが賃金は高いということです。右上のグラフは年収です。こちらも同様に、一人親方・個人事業主のほうが一般雇用労働者の方よりも高いということです。
 (4)年代別に見ても、おおむね同じではありますが、一番右下のグラフは年収で、70代になると、若干逆転する傾向にあります。全体的には一人親方・個人事業主は高い。逆に、20代は低いということで、20代は割合が小さいので何とも言えませんが、この辺りについて一人親方、個人事業主の本当の割合については少し疑問があります。
 3ページは、同じもので建築です。(1)一人親方・個人事業主の総数は1,429名です。左上の40代、50代が全体の半数以上を占めております。右の(2)次数別ですが、2次と3次が全体の9割で、1次が若干数で、元請はほとんどいないということです。
 (3)年収は、こちらも同様に、日当、年収ともに、一人親方、個人事業主のほうが雇用労働者の方よりも高く、(4)年代別もほぼ同様です。こちらは年代に関係なく、やはり一人親方、個人事業主のほうが収入は高いことが御理解いただけるかと思います。
 4ページです。こちらは就労環境です。3.上2つが土木現場での労働時間、右側が就労日数です。この土木に関しては御覧のとおり、ブルーが一人親方・個人事業主ですので、労働時間、就労日数ともに一般の雇用労働者の方よりも少ないという、非常に自由度のある働き方をしていることがお分かりいただけるかと思います。下の建築工事も同様に、労働時間、就労日数ともに、一人親方・個人事業主よりも一般雇用労働者のほうが就労環境は良くないことが御理解いただけると思います。
 次に、5ページ以降について御説明いたします。この検討会では「個人事業主等の災害発生状況等を十分に踏まえた上で」ということで議論がなされており、委員の皆様も御出席されておりますが、それについて厚生労働省から公表されております「令和3年の一人親方等の死亡災害発生状況概要」というA4判3枚の資料を、先般、安全課の方から頂戴しました。それをベースに分析を行い、この資料の5~14ページまで全10枚に整理をし直しました。これについて簡単に御報告いたします。
 まず、5ページの表1です。これまで「一人親方等」という文言が多用されており、一人親方が死亡災害の大部分を占めているかのような印象がありますが、実際に分析してみますと、一人親方の災害と中小事業主等の災害は、ほぼ半分ずつを占めていることが分かります。中小事業主等は自らが雇用している労働者に対する安全衛生法上の措置義務を課せられているものであり、当該義務を適切に果たすことにより、結果的に自らの安全も確保することになるという立場にあります。一人親方も自らの安全を確保すべき立場にはありますが、安衛法に違反すれば処罰されるという中小事業主等の組織部とは明らかに異なります。一人親方と中小事業主等は明確に区別した上で検討を行っていくべきであると考えます。
なお、一人親方等が死亡した災害を業種別に見ますと、建築工事の死亡者数は62名で全体の66%を占めていますが、その建築工事の内訳を更に見ますと、鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事は僅か10%に過ぎず、木造家屋建築工事が35%と、その他の建築工事が55%で、この2業種で全体の90%を占めております。このことから、木造家屋建築工事とその他の建築工事における災害防止対策をいかに講じていくかを優先して検討していく必要があると考えているところです。
 次に、6ページの表2を御覧ください。事故の型別では、墜落、転落が全体の66%を占めていますが、「墜落、転落」を起因物別に見ると、足場が27%、屋根、はり、けた等が24%、はしご等が18となっており、この3つだけで全体の70%程度を占めております。墜落、転落災害を減少させていくためには、これらの3つの要因に係る対策を講じていく必要があるものと考えます。
 なお、2番目に多いのは、「崩壊、倒壊」の7名、3番目が「激突され」の6名ですが、いずれも一人親方は1名しか被災しておらず、中小事業主等が被災する事案が大部分を占めていることが注目されます。被災者の属性により災害発生状況が異なっている可能性があります。
 次は、7ページの表1、表2を御覧ください。墜落、転落災害の73%は建築工事で発生していますが、同様に内訳を見ますと、木造家屋造建築工事が44%、その他の建築工事が47%であり、鉄骨・鉄筋コンクリート造建築工事は9%にすぎません。また、「足場」に係る墜落、転落災害の94%、「はしご等」に係る墜落、転落災害の73%は建築工事で発生していますが、その全てが木造家屋造建築工事、又はその他の建築工事で発生しており、鉄骨・鉄筋コンクリート造建築工事では1件も発生しておりません。
 また、屋根、はり、もや、けた等に係る墜落、転落災害の87%は建築工事で発生していますが、その内訳を業種別で見ると、やはり、木造家屋造建築工事が54%、その他の建築工事が38%であり、鉄骨・鉄筋コンクリート造建築工事は8%にすぎません。これらのことから、墜落、転落災害を防止していくには、木造家屋造建築工事とその他の建築工事の2業種に着目した施策が必要であると考えているところです。
 次は、8ページの表3、表4、表5を御覧ください。一人親方の27%、中小事業主等の44%が元請として稼働していますが、特に土木工事においては、一人親方は全員が元請であり、中小事業主等を加えた一人親方等全体で見ても78%が元請として工事を施工しています。一人親方と中小事業主等は、いずれも請負った工事を自らの責任で完成させる責任を負っており、一人親方等が元請の場合における安全対策について検討していく必要があると考えております。
 中小事業主等は自らが雇用する労働者に対する措置義務を現在でも課せられておりますが、これに一人親方のうち元請・自社及び1次下請を加えると、全体の70%を占めることになります。一人親方のうち1次下請も加えた理由は、あくまでも安衛法22条を根拠とする省令改正と同様の改正が行われるとした場合には、1次下請が最上位の措置義務者になることが多いと想定されるためです。一人親方の災害を防止するために検討しているわけですが、一人親方等に対して過重な責任を負わせることのないようにしていく必要があると考えているところです。
 9ページの表6、表7を御覧ください。被災者を年齢別に見ると、一人親方の67%、中小事業主等の65%が60歳以上です。特に、70歳以上の被災者は年代別では最も多く、一人親方の47%、中小事業主等の42%を占めていることが注目されます。一人親方が被災する災害のうち、「墜落、転落災害」が最も多く、墜落、転落災害を起因物別に見ると、「屋根、はり、もや、けた等」や、「足場、はしご等」が多いことが分かっていますが、視点を変えてみると、一人親方等が被災する災害を減少させるためには、高齢労働者対策についての検討が必要不可欠であることが御理解いただけると思います。
 次は、10ページの表1です。土木工事で死亡した被災者は、全員が中小事業主等又は元請として工事を施工する一人親方でした。土木工事における災害防止対策を検討していく際には、このような被災者の属性を踏まえていかなければならないものと考えております。次に、表2、表3を御覧ください。事故の型別で見ると、「墜落、転落」が4件で最も多くなっていますが、実際には、そのうちの3件は、車両系建設機械が「滑落、転落」した災害であり、一般的な墜落、転落のイメージとはかけ離れたものでした。
 また、「墜落、転落、挟まれ、転倒」が起因と分類された8件のうち7件は、やはり車両系建設機械又は移動式クレーンが関係した災害であり、土木工事の場合には車両系建設機械又は移動式クレーンを用いた作業について優先的に検討していく必要が生じているものと思われます。
 また、「崩壊、倒壊」に分類された3件の内訳は、立木伐採中に倒れた枝の下敷きになった事案が1件、車両系建設機械で掘削した箇所の地山が崩壊した事案が1件、ブロック塀をコンクリートカッターで解体中にブロック塀が倒壊した事案が1件でした。また、「墜落、転落災害」のうち、車両系建設機械が関係しない残る1件は、民家の庭の植栽の剪定作業に従事していた被災者が乗っていた立木の枝が折れて墜落した事案であり、足場や作業床端部等からの墜落、転落した災害事案は1件もありませんでした。
 11ページの表1です。墜落、転落災害は4件発生していますが、そのうち1件は、手すり、中さん等が設けられていたにもかかわらず、被災者自らが手すり等をすり抜けた事案でした。鉄骨建て方中に墜落した2件は、被災者はいずれも安全帯を使っていませんでした。
 12ページの表1、表2、表3を御覧ください。事故の型別では、「墜落、転落」が20件で全体の91%を占めており、木造家屋造建築工事では、墜落・転落災害が大部分を占めていることが最大の特徴となっています。
墜落・転落災害を起因物別に見ると、「足場」と「屋根、はり、もや、けた等」が7件ずつで最も多く、「はしご等」が4件で続いています。一方、墜落・転落災害に関する推定原因別では、安全帯の未使用事案が最も多く、全体の80%に達しているほか、被災者の中には、紳士用ベルト2本を結び、ロープ状にして腰に固定していましたが墜落時にベルトが引きちぎられて墜落してしまった事案が含まれていることなどからも、有効な安全帯を確実に使用させることが喫緊の課題となっているものと考えているところです。
 また、災害発生時の作業状況を見ると、不明を除く16件の墜落・転落災害のうち、一人親方・中小事業主が単独で作業を行っていた事案が9件で過半数を占めていることが注目されます。木造家屋造建築工事の場合には、一人親方等が現場で単独で作業をしている際に、災害が発生している場合が多いと思われます。また、作業床端部に設けられた手すり等を資材の荷揚げのために取り外した後に、墜落した事案が発生していることからも、どのようにして一人親方等の安全意識の向上を図っていくかが課題となっているものと思われます。
 次に、13ページの表1、表2です。事故の型別では、「墜落・転落」が21件で全体の62%を占めていますが、「墜落・転落災害」を起因物別に見ると、「足場」が9件、「屋根、はり、もや、けた等」が5件、「はしご等」が4件等となっており、一人親方等全体の傾向と同じ状況が生じています。見方を変えると、先ほど御説明した木造家屋造建築工事とその他建築工事が全体の傾向に大きな影響を与えているのだろうと考えているところです。また、災害発生時の作業状況を見ると、21件の墜落・転落災害のうち、一人親方・中小事業主が単独で作業を行っていた事案が8件で38%を占めており、木造家屋造建築工事と類似していることが分かります。
 最後の14ページの表1、表2です。事故の型別では、「墜落・転落」が12件で全体の57%を占めていますが、「墜落・転落」を起因物別に見ると、「はしご等」が3件で25%、「屋根、はり.もや、けた等」が2件で17%となっていますが、他の起因物も比較的多いことから、起因物については分散している傾向が見られます。なお、災害発生時の作業状況を見ると、その他の建設工事18件のうち一人親方・中小事業主が単独で作業を行っていた事案は6件(33%)、現場内に他の作業者が1名以上いた事案は8件(44%)となっております。分析の結果は以上です。
 最後に総括ですが、冒頭でお話したとおり、個人事業主等の災害発生状況を深掘りして現状を的確に把握し、効果的な災害防止対策に結び付けていくことが非常に重要だと考えております。法令改正は、個人事業主等の災害を防止していくための指標の1つであり、目的ではありません。行政指導を強化したり、関係業界や事業者等に自主的な取組を促すこと等も含め、制約のない幅広い検討を行っていくべきと考えます。
 先ほど御説明しましたように、個人事業主等の災害を防止していくための施策を検討していく際には、優先的に検討していく課題を絞り込むことが可能だと考えております。個人事業主等の場合には、元請として工事を施行する場合が比較的多いこと、ヒューマンエラーも非常に多いこと、そして、現場内で単独作業中に被災した災害が多いという特徴が見られます。また、安全帯の未使用に代表される個人事業主等の安全意識、危機管理の低さが災害発生に大きく影響していると考えられます。今回の資料はあくまでも1つの分析例にすぎませんが、是非、本検討会では、厚生労働省の助言、協力等を得ながら、法令改正ありきではなく、災害発生状況の深掘りを行った後に、その結果を踏まえた上で検討を行っていただくようお願いしたいと思っているところです。以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。それでは続きまして、住宅生産団体連合会の青木委員、御説明よろしくお願いいたします。
○青木参集者 それでは住宅生産団体連合会の青木から御説明させていただきます。住宅業界の特徴を踏まえた一人親方についてということです。まず、住宅業界では、よく皆様も言葉としてハウスメーカー、ハウスビルダー、工務店等と、いろいろお聞きになるかと思いますが、もともと住宅生産団体連合会は、このハウスメーカー、大手ハウスメーカーが中心になって作られた団体です。それにプラスアルファで中堅どころ、中小零細というところの団体も加入して、現在の住宅生産団体連合会という形になっております。
 それぞれの言葉に関してですが、2ページ目で説明します。明確な定義は特にないのですが、「ハウスメーカー」というものは、一般的には住宅メーカーとも言い、自前で生産設備を有し、広範囲で住宅を請負う企業です。ハウスメーカーは、全国に拠点を置いていまして、年間の販売棟数は数千棟から1万棟にも達します。また各地の住宅展示場に出展して、会社によっては、鉄骨系であったり、また木質系であったり、ツーバイフォーなど構造・性能を一定の仕様にそろえた商品ラインアップを持ち、自社の研究所で常に新しい技術開発と商品開発を行っています。自社工場を持っているということも1つの特徴です。一般的には施工部隊は持ちません。下請企業に工事を依頼するケースが非常に多いです。
 「ハウスビルダー」は、ハウスメーカーと工務店の中間的な規模といえると思います。年間数十棟から数千棟の住宅を供給している企業で、こういったハウスメーカーほどの規模ではないものの、1から3都道府県程度のエリアに特化して、年間数百棟から数千棟程度の住宅を供給する会社のことを言います。「地域ビルダー」「ハウスビルダー」「ホームビルダー」「パワービルダー」などと呼ばれることもあります。ハウスメーカーと工務店の間のかなり広い範囲を示すことが多いです。
 それから、工務店は、地域密着の企業です。年間数棟から数十棟の住宅を供給している企業です。工務店とは、地域密着の大工・職人集団で、今、申し上げたような年間数棟から数十棟の規模で活動しています。形態は規模によって様々ですが、「商品」という概念は、ハウスメーカーとは違ってありません。施主との対話によって、一棟一棟オーダーメイドの家づくりをしている会社が多いということが言えます。
 その中で、まずハウスメーカーですが、先ほど申し上げたように全国展開です。ほぼ全国に、しかも都道府県だけではなく各都市にそれぞれ展示場や営業所などを持っています。施工体制は企業や規模によって若干異なりますが、下請の施工店は、ゼネコンと比べると小規模で、地域ごとにハウスメーカーの特約店として専属的に工事を請けることが多いです。そういった意味合いでは、ほぼ地域ごとにまとまった形で固定されている企業集団を傘下に持っているということが言えます。メーカーによっては、総合施工店としてグループ傘下やフランチャイズを立てる場合もあります。ハウスメーカーにより直接、一人親方へ発注するということは比較的少ないです。一人親方は、各協力施工店の下で現場に入ることが多いと言えます。
左側を見ていただきますと、ハウスメーカーが元請になり、その下に協力施工店があって、2次下請の下や、その協力施工店の下に一人親方が入るということが多いです。また、右側を見ていただきますと、ハウスメーカーから総合施工店にいき、そこから2次下請、又は直接に一人親方というような形で雇われるケースが多いです。
 次に、ハウスビルダーです。施工体制は、ビルダーの規模や方針により若干異なりますが、エリアが限定的であるため、発注先はある程度固定されています。下請の施工店は、ビルダーとの関係がゼネコンよりも密で、気心が知れた仕事仲間となるケースが多いです。そのため、無保険者等を未確認のまま工事発注をすることは非常に少ないというのが現状です。
 ビルダーは直営工事が一般的で、社員大工等技能者を直接雇用している会社もあります。ビルダーより、直接一人親方へ発注する場合もあります。下図にあるような形です。ハウスビルダーから直接、一人親方を雇うということもあり得ます。
 それから工務店です。先ほど申し上げたように、地域密着型の経営で、オーダーメイドの住宅を建設する場合が多いのですが、ハウスビルダーよりさらに小規模な施工会社の構成となります。経営者自身が大工であることが多く、中には社員の大工を抱えている企業もあります。工務店が直接、一人親方へ発注するケースというものも、この場合でもあります。
 ここでは、また建設業界といっても、やはりゼネコンと住宅業界は大分違います。これは、よく野丁場と町場というような言葉で区別されることもありますが、そういった意味合いで技能者の作業内容について御説明します。
 技能者不足というのは住宅業界でも全く一緒です。施工現場が非常に狭くて、日々の作業は大体1人か2人が当たり前というのが現状になっています。住宅は、短工期、小規模のため、重層請負による「技能者の収益減」防止のため、多能工化や囲い込みによる継続発注というものを推進しています。それから、収益性確保のため、日当形式の「常用」ではなく、「請負」を目指す技能者、一般的には「一人親方」ですが、これを目指す者も少なくありません。ある意味、「一人親方」というのは、稼ぎたい技能者の着地点であって、この世界に入る目標の一つでもあります。一人親方が工務店経営への第一歩であるという場合もあります。「やる気」に経験年数や年齢は関係がないと言われていまして、適法な一人親方は住宅業界としては、むしろ推進すべき形と考えています。
 住宅現場は工事中に、「施主」と「職方」との接点が多く、職方には施工スキル以外に施主との対応スキルも求められます。また、全体に責任を持つ「請負」と、日当に対する日々の仕事をする「常用」との差というのは、やはり品質にも影響します。また、品質以上に顧客である「施主対応」に大きな差があります。元請としては、施主との良好な関係を築くためにも職方の施主対応スキルは外せないと言われています。請負のほうが、責任感が強く、施主対応スキルも一般的には高いです。特に、施主との良好な関係の構築は、新規紹介顧客獲得には欠かせません。大手ハウスメーカーでも受注の約半数がOB顧客の紹介によるという実態があります。地方の工務店などは、それが更に大きいと言えます。ここで言う施主対応というのは、やはり施主であるお客様が現場にどんな様子かと見に来るのですが、そのときに先ほど申し上げたように、大体1人か2人しか職人さんがいませんから、直接その職人さんと話すということが多いです。その際に、いかに丁寧に対応ができるか、それによって、その会社の信用が上がるか下がるか、そういった内容に差が出てくるということがあります。
 次に、ハウスメーカー、大手ハウスビルダーの状況を御説明します。ハウスメーカーやハウスビルダーは独自の商品を有している場合が多いです。生産性の効率化と品質確保のため、自社工場又は外注工場で製作した資材を「現場搬入」し、それから「取付、組立」という形になっています。各社が「売り」とする性能や工法を実現するために必要な独自技術の習得のため技能者を養成しています。作業員の「腕による品質のばらつき」をなくすため、各社はシステム化、マニュアル化を推進しています。「腕の良い技能者」よりも、「マニュアルに忠実で図面が読みこなせる技能者」が重宝されます。主として、型式適合認定(建築基準法第68条関係)を受けた建物(部材、性能等)が作業対象であり、ある種、プラモデルを組み立てるような工法なので、技能取得にさほど時間はかかりません。専門工事業団体はなく、各社は各々使用する部材や施工法など、オリジナル性が高いのが特徴です。いわゆる市販品の使用は少ないです。そういった意味合いでは、協力工事店の技能者の専属性がかなり高くなり、逆に言えば、技能の汎用性は一般工務店よりも低いということが言えます。技能者に対しては、各社独自の技能的評価があり、その評価によって賃金の単価アップや一時金などの優遇制度があります。これがハウスメーカーなどの状況です。
 次に、建設現場の環境について御説明します。住宅現場は、よく言われますように狭くて現場事務所も設置できない場合がほとんどです。敷地にゆとりがあっても、常駐技能者が少なく、またゼネコンなどと比較して低い受注額に対する仮設コストの関係もあって、現場事務所を作る必要性が低いと言われています。休憩所はなく、設備が整った洋式仮設トイレ等の設置も少なく、快適な作業環境としての改善課題があります。工期が3か月~4か月程度と短く、リフォーム工事などでは1日で終わる工事もあります。規模的に「監理/主任技術者」は非専任が多く、元請の「現場監督」は常時多くの担当現場を巡回しており、1つの現場に常駐してはいません。こういった中で一人親方が多いのですが、その場合は請負になります。そのため現場での作業日数に関係なく、出来高での売上げ(収入)ということになります。技能者の業務負荷は現場数に比例します。現場数は毎月固定ではなく季節変動があります。例えば3月や年末に、引渡しが集中したりします。
 住宅用建材メーカーにおける製品開発においても、熟練工と見習い工で仕上りに差が出ない方向で進められており、技能スキルの高さが人工賃に反映されるということが少なくなってきています。一方で、伝統的な和室を仕上げることのできる技能スキルの高い大工などは高齢化等で減少しつつあります。そのために現場数を減らす代わりに人工単価を上げて高齢大工の働く場を創出する工夫なども一部では見られます。
 次に、契約形態ですが、住宅は民間需要がほとんどです。いわゆる「B to C」です。したがって、発注者は個人顧客、サラリーマンである場合が多いわけですが、「終の棲家」、いわゆる事業としてではなく実需として考えています。顧客が住宅を選ぶポイントの中で、価格と品質と信用は必ず上位にきています。顧客は基本的に個人であり、口コミや評判(近年ではSNS)、施工事例などを調べて、仕事を依頼(契約)しています。顧客にとって、契約の決め手として、信頼、商品品質、アフターサービス等が非常に重要です。住宅の場合は、元請と個人顧客が数十年に及ぶ長きにわたる付き合いとなりますので、顧客、元請、先ほど申し上げたような技能者の一体感というものが不可欠であると言われています。住宅はその規模から、元請と下請との契約について取引開始時の基本契約締結の後は、現場ごとの請負契約の締結というのは行っていません。発注書と請書のやりとりのみで行われる場合が多いです。
 最後になりますが、雇用形態別の労働災害の発生状況を簡単に御説明します。令和元年~令和3年の間の雇用形態別の労働災害発生状況で、これは休業日数4日以上です。これは死亡ではありません。休業日数4日以上の災害発生状況で、これは住団連全体のものです。これを見ますと、一番右側が紫色の一人親方ですが、大体3割から4割の間、この3年間だけ切り取りますと、一人親方が増えていって、日本人労働者が減っているというような状況が見てとれます。全体的には一人親方は3割から4割ぐらいというような状況です。
 ただ、そうは言っても、住団連は先ほど申し上げたように、様々な団体の集まりで、実はその内容はかなり違ってきています。ここで、左上がプレハブ建築協会、実際に現場数というのはプレハブ建築協会のものが非常に多いです。その右側が日本木造住宅産業協会、それから左下が日本ツーバイフォー建築協会、右下が全国住宅産業協会で、この4つが大きな団体であるわけですが、一人親方の割合は、プレハブ建築協会が37.0%、それに対して一番多いのが、右下の全国住宅産業協会で、64.7%です。正直に申し上げて、一人親方が、特に日本人労働者と比べて被災率が多いかという状況は見られないと思われますので、これはこのまま雇用形態のパーセンテージに大体ニア・イコールなのかなというふうに考えています。
そういった形で、こういった一人親方の割合であるとか、また赤が外国人労働者ですが、外国人労働者がプレハブ建築協会などでは非常に少ないのですが、例えば木造住宅産業協会などは約12%ぐらいであったり、また全くないという所もあったりして、団体によって、この辺も実際には差があります。
ただ、先ほど申し上げたように、現場としてはプレハブ建築協会の数が非常に多いので、先ほど申し上げたように、住団連の全体の形というのは、プレハブ建築協会の状況に引っ張られるというような状況があるかと思います。住宅生産団体連合会からの説明は以上になります。御清聴ありがとうございました。
○土橋座長 御説明ありがとうございました。それでは、ただいまの建設業関係団体の4団体の御説明に対して、質疑応答の時間とさせていただきたいと思います。質問等のある方はお願いいたします。中村委員、お願いいたします。
○中村参集者 どうもありがとうございました。今、4つの団体の話を聞いていて、ちょっと分からなくなってきたのですが、まず本多さんに確認したいことは、一番最後の所で、建設業の特殊性ということについて配慮してほしいとおっしゃったのは、どのようなことを指しておっしゃっているのかなということを、これは一番最初におっしゃった出口参集者でしたか、すみません。
 それで今度、そのことについて考えながら、本多さんの御説明を伺っていて分かってきたのは、いわゆる個人事業主という建設業でいる人は、いわゆる小規模企業の延長線上の個人事業主ではなくて、もっとスキルや技能を持ったような人が建設業の個人事業主だと、だから収入にしても、いわゆる一般社員よりも高いと。そういう意味で、個人事業主と言いながらも、その人は結構スキルや技能を持った人が個人事業主と言っていると。その人の仕事自体は、その人自身で完結している部分はあるので、どういうふうに安全指導をするといっても、なかなか難しい面があるのではないか。
 もう1つは、事故が起きるとすれば、誰かが管理しながら、その仕事を管理しているというものではなくて、その人自身の安全に対する認識の問題があるのではないかと。そういう意味では、従来の今まで話のあった小規模な個人事業主が延長線上にあるということと、建設業の個人事業主とは少し違うと、そのように理解したのですが、そういう理解でよかったでしょうか。これは本多さんにお聞きしたほうがいいですか。
○土橋座長 お願いします。
○本多参集者 4団体で説明させていただきましたが、同じ建設業界でも、お聞きいただいたとおり、いろいろな違いはあるかとは思います。ただし、おおまかに一人親方というところでは、皆さんから御説明されたとおり、スキルやノウハウのある方々が一人親方になる、あるいは一人前になるということの目標というところでは同じなのかなというように思います。
 仕事を完結できるというところ、それから待遇面で見ましても、データだけ見ると弱者ではないというのが実情なのかなという気はします。対策についても、いろいろ見方を変えなくてはいけないのではないかなという気はしています。以上です。
○中村参集者 そうすると、やはりまとめ方の中では、いわゆる他の業界の個人事業主というものと、建設業としてある種の特殊な特徴があるということでまとめたほうがいいと、そういうことでしょうか。出口さんも、そうおっしゃったように聞こえたのですが。
○出口参集者 そうですね。おっしゃるとおりだと思います。他の業界の方々のヒアリング等を聞かせていただきまして、やはり建設業との大きな違い、日建連の本多委員が御説明されましたとおり、それぞれ提示された資料が如実に物語っているのではないかと考えています。
○中村参集者 分かりました。どうもありがとうございます。
○土橋座長 ただいまの件、ほかの団体の方も何かありますか、よろしいですか。それでは、田久委員、お願いいたします。 
○田久参集者 御説明ありがとうございます。何度か、こういう話は団体上、聞いたことはありますが、1つは、出口委員のほうの資料の中で、認識の確認なのですが、加入率が低い特別加入の関係があるのですが、その辺はどの辺をもって、そういう認識を持たれているのかということが1点です。もう1つは、適正な補償金額の保険に加入しやすいようにということですが、労災保険自体が事故率によって保険料率が決まっているということですので、やはりこの部分でいくと、ただ単に加入しやすいということではないのではないかという認識を持っていまして、その部分では金額が下がることによって加入しやすいということと、その下における事業所の課題の中での事務処理を、いわゆる簡素化したほうがいいのではないかというようなことだとは思いますが、特別加入団体の事務の1つとして安全対策の措置というものが重点に置かれていると僕は認識しているのですが、その辺を取り払っても、そういったところでの安全対策として、きちんとできるということの何か、そういった事例やお考えがあるのかどうかというのを少しお聞きできればなというふうに思っています。
○土橋座長 出口委員でよろしいですか。
○出口参集者 特別加入の加入率については、検討会の第1回目、第2回目で個人事業者の災害状況の発生のときに、特別加入は、実際に被災した方々が加入されているのが約6割程度だというデータがありました。ですから、実際に危ない建設業で従事していただく一人親方の皆さん方については、やはりもっと高い加入率であるべきだと考えた次第です。
 そして、より簡単で適正な加入をしやすくなるようなという文言については、この言葉をストレートに読んでしまうと、簡単に入れるのであれば、ヒアリングでも、3等級に限定されていた団体さんもいらっしゃいました。決して加入しやすい、安いものに入れと言っているわけではありません。実際にその方の所得に、できるだけ見合う補償内容の特別加入に加入していただく、そして事務的には、より簡単な方法を検討するべきではないかと考えている次第です。
 団体さんの安全教育等を実施されている分については、決して無駄であるとか、働きの有効性を可否しているわけではありません。やはり個人事業者、一人親方、その方々がそれぞれの働きを、もっと自らの責任を認識できるような教育は別途、何かの形で構築する必要が今後あるのではないかと考えている状況です。以上です。
○土橋座長 よろしいでしょうか。それでは、オンラインで三柴委員から手が挙がっています。お願いいたします。
○三柴参集者 御指名、ありがとうございます。日建連さんに3つ伺いたいと思います。ちょっと厳しめのお尋ねになることをお許しいただきたいのですが、1つ目は、一人親方や中小事業主と分類されている者の、本質的な安全管理上の裁量についてどう認識しておられるのか、安全衛生に関する情報や権限、具体的には工期や工事方法、作業手順について、どのぐらいそういう方々が認識と影響力を持っているのかを伺いたいなというのが1つです。
 それから、2つ目なのですが、そうした方々の労働者と比べたときの仕事や稼ぎ、収入ですね、その安定性について、どういう御認識かというのを教えていただきたい。平たく言うと、景気が悪くても切られにくいのかということを伺いたいのです。
 最後に、データを取られたゼネコンの鹿島建設様の工事現場の安全秩序というのは、良質なほうなのか、それとも標準的なのか、そこについての御認識をデータのバイアス調整のために伺いたいなというふうに思いました。以上です。
○土橋座長 三柴委員、ちょっと接続が弱かったので、1つ目だけもう1回お願いいたします。
○三柴参集者 分かりました。1つ目は御報告で、一人親方や中小事業主と分類された方、この方々の本質的な安全管理上の裁量について、どういう御認識かを伺いたいということです。特に、情報や権限について、そういう方々がどの程度持っていると御認識かということです。具体的には、工期や工事の方法とか、手順など、そういうところについて、そういう方々がどの程度影響できるのかという点についての御認識を伺えればと、これが1点目でした。
○土橋座長 分かりました。それでは、日建連さんということなので、本多委員、お願いいたします。
○本多参集者 1つ目の質問は、一人親方と中小事業主の違いみたいなところなのでしょうか。
○三柴参集者 むしろ、労働者と一人親方との違いですね。
○本多参集者 一人親方、あるいは中小事業主の方々というのは、直近、上位の会社と直接の工事請負契約を結びますので、情報については普通の事業者とほぼ同じです。何ら変わるところはありません。当該工事はもちろんですが、担当する仕事の納期、手順等については完全な情報を持って仕事をやっているということですので、本質的な安全管理というところでは、一般の事業者とほとんど変わるところはありません。
 それから労働者と比べた場合の安定性や収入というところですが、一般的に一人親方や中小事業主になられる方というのは、やはり若い方は雇用労働者として、まず入職をして、その中で結婚したり、あるいは子供が生まれたり、あるいは家を造ったりすると、収入増が必要になってきますので、そうなると独立して一人親方、中小事業主になるという方がありますので、一般的には収入は高くなるということです。データ的にも先ほど御説明したとおりです。
 安定性というところでは、これは普通の事業者と当然同じであって、景気の波に左右されることはありますし、その御本人一人一人の資質や能力などというところで変わってくるのは、何ら変わるところはないと思います。
 それから3番目の質問、私は鹿島建設ですが、日建連の一会員でありますので、百数十社の会社と比べて何ら変わるところはないと思いますので、先ほど申し述べたいろいろなデータ類というのは、ほぼ汎用性があるものと考えています。以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。かなり予定の時間を過ぎておりますので、質疑については、追加がありましたら最後のフリーディスカッションの中で、また御発言いただくということで、ヒアリングに戻らせていただきたいと思います。では、続いて陸上貨物運送事業労働災害防止協会の横尾様から説明をお願いいたします。
○横尾様 ただいま御紹介いただきました陸上貨物運送事業労働災害防止協会、通常は略称として「陸災防」と呼称しております。専務理事の横尾です。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、当検討会にヒアリングの機会を設けていただき、誠にありがとうございます。感謝申し上げます。
私ども陸災防は、昭和39年に労働災害防止団体法に基づいて設置された特別民間法人です。陸運業における労働災害を防止するために、安全衛生に関する各種講習会の開催、安全衛生教育の実施、広報活動等を通じて、会員である陸運関係事業場の安全衛生水準の向上に取り組んでいる団体です。
 最初に、「陸運業における労働災害の発生状況」について御説明します。資料の3ページです。下に棒グラフがありますが、死亡者数については、平成12年には271人、その後も200人台で推移しておりましたが、徐々に減少して近年では100人を下回る水準にまで至っております。一方で、死傷災害は、上の折れ線グラフですが、平成21年には1万2,000人台まで一時減少いたしましたけれども、その後は増加に転じました。令和3年には1万6,732人と、平成21年に比べて約4,000人増加しており、残念ながら増加傾向になかなか歯止めがかからないという状況です。
 次ページの「死亡災害の動向」を見てみます。平成18年から令和3年まで5年ごとの推移を見てみますと、交通事故による死亡者が121人から37人まで減少しております。その死亡災害に占める交通事故の割合も、6割から4割弱にまで減少しております。一方、交通事故以外、墜落・転落、はさまれ・巻き込まれといった荷役関連災害による死亡者数には、残念ながら顕著な減少は見られていないという状況です。
 次ページは、「死傷災害の動向」です。業種別の構成比を見ますと、従来は製造業、建設業に次いで陸運業が多かったのですが、製造業、建設業では着実に減少しております。一方で、陸運業は横ばいで推移しており、平成30年には建設業と逆転して、その後も建設業を上回るという状況が継続しております。その災害の内訳を見ますと、交通事故については5%、陸運業の災害というと交通事故を想定しがちですが、死傷災害全体で交通事故は5%です。そのほかの墜落・転落、動作の反動・無理な動作、転倒によるものが多くて、起因物別もトラック、荷姿のもの、通路、人力運搬機、フォークリフトといった荷役作業に係る災害が多くを占めているという現状です。このような陸運業における労働災害は、交通事故によるものは少数であり、多くは荷役作業中に発生しております。荷役関連の災害を防止するということが極めて重要です。
 次ページで、国内の貨物輸送の状況を見てみます。営業用車両と自家用車両で比較いたしますと、営業用車両による輸送が25億3,000万トン、自家用車両によるものが12億3,000万トンとなっており、営業用車両による輸送が自家用車両による輸送の約2倍の輸送量になっております。輸送品目別では、建設関連貨物については、ほぼ同量の輸送量ですが、農水産品、食料工業品等の消費関連貨物、右側の金属、機械、石油製品等の生産関連貨物はほぼ営業用車両、すなわち、陸運事業者がその輸送を担っているという状況です。
 7ページです。そこで、こうした輸送を担っている陸運事業者の実情を見てみますと、陸運事業者は現在、全国で約6万3,000社近くが営業しておりますが、規模別の状況を見ていただきますと、保有車両数が10両以下の事業者が55%、30両以下で85%、従業員数でも10人以下の事業者が49%、30人以下で82%というように、陸運事業者の約8割が中小、しかも、約半数は零細事業者だということがお分かりいただけるかと思います。
 次に、陸運事業者の数の推移を次ページで見ていきます。ここにありますように、平成2年度当時は全国で約4万社でしたが、平成16年度には6万社を超え、その後6万2,000~6万3,000社前後で推移しております。この平成2年度から15年ほどの間に、事業者数が約1.5倍に急激に増加しております。この間、営業用トラックによる貨物の輸送量、途中で集計方法が変更されていて分かりにくいですが、大体30億トン前後で大きく増加しているという状況は見られません。こうした事業者の増加というのは、左上にちょっと書いておりますが、物流二法(貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱事業法)が施行されたことにより、まず運送業が免許制から許可制になったこと。それから、営業区域が順次拡大された後、廃止されました。また、最低車両台数が順次5台にまで引き下げられ、さらに、運賃制度が認可制から事前の届出制、更に事後届出制に移行するという非常に大きな規制緩和が行われたことによるものです。こうした規制緩和によって、参入事業者が一気に増加する一方で、輸送総量には大きな変化がない、結果として、事業者間の競争が激化していったということが言えるかと思います。
 加えて、陸運業界では慢性的な人手不足、従業員の高年齢化、近年の燃油費の高騰、更には2024年の改善基準告示の改正施行が予定される等、業界を取り巻く環境というのは非常に厳しいものがあります。
 ここで、次ページの物流の流れ全体を見ていきたいと思います。基本的には、企業間取引(B to B)を前提にお話させていただきます。まず最初に、出荷元での作業ですが、出荷準備が行われます。はいくずし、荷造り、仕分け、検品・検収を行った後、出荷の準備が整いますと、その後、その場所あるいは荷物の保管場所から貨物自動車(トラック等)への積込み場所に、下の図にありますように荷物をロールボックスパレット、あるいはクレーンとかフォークリフト等を使用して運搬移動してトラックに積み込みます。この積込み作業も、フォークリフト等の機械を用いる場合だけではなくて、手作業で手積みをするという場合もあります。それから、積み込まれた荷を陸運事業者が納品先まで輸送いたします。納品先では、貨物自動車から荷を積卸して、所定の保管場所へ運搬移動し、納品作業(検品・検収、仕分け、はい付け作業)を行って、一連の物流としての作業が終了するということになります。
 こうした一連の作業の流れの中で、陸運事業者が担当していますのは、本来ですと出荷元と納品先の間の輸送に関する業務です。一般的には、「車上受け」、「車上渡し」と言われておりますが、トラックに積み込んだ荷物を納品先まで安全・確実に輸送するというのが運送業としての本来の業務です。しかしながら、最近では出荷元での保管場所から積込み場所への移動、積込み、納品先でも荷卸から保管場所までの運搬といった輸送の前後における付帯作業まで運送事業者が行わざるを得ないという状況が一般化しているのが現状です。中には、仕分け、検品・検収作業まで、あるいは、スーパー等では店内の商品の陳列場所まで運ばされるといった例もあると聞いております。しかも、これらの付帯作業に関しては、具体的に契約が交わされているわけではなく、その責任の所在が明確になっていないものが多くを占めているというのも実情です。さらに、荷物の積込み、積卸しの前後では、場合によっては長時間の待機を伴うことも多いというのが実情です。
 このような輸送業務の前後における付帯作業までを陸運事業者のトラックドライバーが行うということになったのは、先ほど御説明したように、輸送貨物の総量が増加しない中で規制緩和に伴って運送事業者が急激に増加したと。そのために、事業者間の競争も激化して、こうした付帯業務までサービスで実施せざるを得なくなってきたということ、あるいは荷主事業者側においても、業務の合理化あるいはアウトソーシングへの移行のニーズが高まってきたということ等が、その背景にあるのではないかと考えております。
トラックドライバーというのは、こうした発荷主の作業場所に1人でトラックを運転していって、発荷主の作業場所で発荷主の作業指示に基づいて、保管場所からトラックへの積込み場所へ荷物をロールボックスパレット等を使用して運搬したり、フォークリフトを使ってトラックに荷を積み込むというような作業を行いますが、これらの作業に用いるロールボックスパレットやフォークリフトといった機材は、発荷主が所有する機材を使用するというのがほとんどです。作業場所や通路など、全て発荷主の管理する施設内で行われ、かつ、荷主事業者の労働者との混在作業が行われているというのが通常です。これらは、着荷主においても同様です。
つまり、陸運事業者の労働者であるトラックドライバー、荷主事業者が管理する施設の中で荷主事業者の指示を受けて、荷主事業者の労働者と混在して、荷主事業者が所有する機材を用いて、契約にはない輸送業務以外の作業に従事しています。これらの荷物の移動とか積込み作業が、いわゆる荷役作業と言われるものです。荷役作業が陸運業における死傷災害の多くを占めているということは先ほど御説明したとおりです。こうした荷役作業で災害が発生しますと、その時点で物流の流れは停止いたします。荷物を発送できなくなる、あるいは荷物を受けることができなくなるという事態になるわけで、荷主事業者にとっても、トラックドライバーが荷役作業中に被災することによって、少なからず影響を受けるということが明らかであろうかと思います。
 そこで、陸運業における荷役作業における労働災害の発生状況を、次のページで見てみたいと思います。これは、令和2年に発生した死傷災害から1,000件を無作為に抽出して分析を行った結果です。左側にありますように、労働災害の65%が荷役災害、その約60%が荷主先で発生しております。荷役災害の事故の型別は右のほうですが、墜落・転落災害では、その7割、動作の反動・無理な動作あるいは転倒等では、その6割が荷主先で発生しております。下のほうの死亡災害を含む休業見込み日数60日以上の重篤災害の約7割近くが荷主先で発生しております。
 次に、荷主先において、どのような労働災害が発生しているか、具体的な例を次ページで見ていきます。荷主先における荷役災害の発生事例として幾つかピックアップしております。ここに記載していますのは、令和2年、3年に、労働基準監督署に提出された労働者死傷病報告から代表的な事例をピックアップしたものです。
一番目の事例は、配送先での荷卸作業が終了して、トラック後部で荷台のウイング格納作業を行っていたところ、後退してきた配送先事業場のフォークリフトとトラックとの間にはさまれて死亡したというもので、配送先事業者と運送事業者間の連絡調整が不十分であったということが要因として考えられます。
 次の事例は、ロールボックスパレットです。先ほどの図の一番左にありましたが、ロールボックスパレット(箱入飲料水約300kg搭載)をトラックから降ろして、搬入口に敷かれた合板上を移動中、地面と合板との段差にロールボックスパレットの車輪が引っ掛かり、倒れたロールボックスパレットの下敷きとなり死亡したものです。作業場所の環境が適切でなかったことが要因と考えられます。このロールボックスパレットというのは、300kg、500kg、場合によっては1トン近くの重量物を人力で容易に運ぶことができるために、今、多くの事業場で使用されておりますが、この事例にありますように、小さな段差とか、路面が傾斜しているとき、あるいはキャスターの不具合等で非常に転倒しやすく、その下敷きになって被災するという例が後を絶ちません。ロールボックスパレットは、その多くが荷主事業者の所有になるものです。その点検整備はもとより、ロールボックスパレットを移動する通路など、施設の管理も非常に重要です。
 次の事例は、トラック運転手が荷卸しのために荷台上で玉掛作業を行い、ほかの会社の労働者がクレーンを操作したところ、クレーンの操作機器等が故障していたために地切りした荷が振れて、荷とトラックキャビンとの間にはさまれて死亡したというもので、機器の整備不良が要因です。
また、次の事例は、商品を両手で持って納品中に、搬入口付近が油で滑りやすくなっており、踏み出した足を滑らせて、足首を骨折し、休業6週間の負傷を負ったというもので、これも作業場所の環境不良であったということです。
 最後の事例は、荷を積むために構内にある木製パレットを7段重ねして作業足場として使用していた際に、一番上の天場に置いたパレットが割れてバランスを崩して地面に転落し、左肩を打撲して、休業1か月の負傷を負ったというもので、パレットの損傷に気付かずに作業足場としてしまったというのが要因として考えられます。荷主側のリフトマンがパレットをセットしたのですが、そのパレットも荷主所有のパレットと考えられます。
 こうした事例を見てみますと、荷主先における荷役作業には、このページの上段の枠内にありますように、作業場所や、備え付けられているロールボックスパレット、クレーン、フォークリフトなどの機械設備等の管理改善を、実際に使用する陸運事業者が行えないということがあります。それから、荷主先事業者の労働者や、構内に出入りする他の事業者との混在作業が頻繁にあります。さらに、陸運事業者側は、運転手だけの単独作業となる場合がほとんどです。更には、配送先である着荷主と陸運事業者との間には契約関係はありません。運送契約に荷役作業における安全対策を盛り込むという手法はとれないという特徴があります。陸運事業に従事する労働者の災害を防止するためには、こうした荷主側事業者の積極的な協力あるいは責任の明確化が不可欠です。
 次ページです。荷役作業における労働災害がなかなか減少しないという状況から、私ども陸災防では、昨年末から学識経験者、労使代表者等による荷役作業における安全対策に関する検討会を設置し、荷役災害防止に関する今後の安全対策のあり方について検討を進めてまいりました。先日、8月26日に報告書を取りまとめて、今月8日、安全衛生部長に当協会の会長から、この報告書を提出して、効果的な対応について要請したところです。
次ページに、報告書の目次をお示ししております。この報告書では、災害の現状を分析した上で、6項目の安全対策を提言しております。そのうち、第4の5に、荷主等庭先での荷役作業についての荷主等の役割についても提言を行っております。
この荷主等の役割に関する項については次ページですが、荷役災害の約7割が荷主等庭先で発生しており、荷役関連災害の減少には荷主の協力が極めて重要であるということを示した上で、平成25年に厚生労働省が荷役災害防止のために発出した荷役ガイドライン、これは「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」ですが、その荷主への周知が十分に行われていないことを課題として指摘しております。
 次ページに荷役ガイドラインの概要をお示ししておりますが、荷役ガイドラインでは、陸運事業者の実施事項と併せて、第3として、荷主等の実施事項を明示しております。荷役作業における労働災害防止措置、荷役作業の安全衛生教育の実施、陸運事業者との連絡調整、自動車運転者に荷役作業を行わせる場合の措置、更に、陸運事業者間で業務請負等を行う場合の措置等について、大変詳細に、行うべき事項を示しております。荷役ガイドラインの内容は、この検討会で議論されております同じ作業場にいる他社の労働者、あるいは資材を搬入する業者等に対する具体的保護措置というものを、いわば先取りする形で行政指導として取り組んでいると理解できます。大変高く評価できる内容だと考えております。この荷役ガイドラインが荷主等に十分周知されて、荷主等において、この実施事項が確実に実施されれば陸運業における労働災害の減少に大いに資することができると期待しているのですが、残念ながら荷主等に対する周知は余り進んでいないというのが現状です。
 次ページです。陸災防では、荷役ガイドラインが発出されて以降、その周知遵守に努めております。毎年、各支部で研修会を実施しております。この中で、令和元年度と令和2年度には、荷主等を対象とした荷役ガイドラインの講習会を実施いたしました。この講習会に参加される荷主事業者というのは、いわば陸運業における労働災害の防止に対して大変理解のある事業者であると考えられますが、令和2年度に実施した講習会で受講者にアンケートを取ったところ、下の左側のグラフですけれども、荷役ガイドラインを「知らなかった」、「名前だけ知っている」と回答した事業者が87%に上っております。陸運業における安全対策に理解のある荷主においてさえ、その周知がほとんど進んでいない。これは荷役ガイドラインが発出されて、既に6、7年たった段階です。陸運事業者にとって、荷主先というのは客先ですので、こうした荷主等に対する荷役ガイドラインの周知や遵守を求めることは事実上不可能です。行政から積極的に周知遵守の指導を行っていただくということが重要です。
 次ページですが、このために提言をさせていただいております。この提言では、最初に、国は、荷主事業者、特に製造業、建設業、小売業などに対して、安全衛生指導をはじめとする、あらゆる指導の機会を利用した適切な指導の実施を行うように求めております。この「あらゆる指導」には、当然、監督指導や集団指導、災害調査、説明会などが含まれるものです。特に製造業、小売業などでは、必ず製品、商品などの荷物の搬入・搬出が行われますし、その作業がどのように行われているのか、荷役ガイドラインが認識されて遵守されているかをきちんと確認していただいて必要な指導を行っていただくようにお願いしております。また、当検討会において、荷の積卸し場所を管理する荷主事業者の安全責任の明確化についても検討していただきたいということもお願いしております。
 なお、次ページ記載の通り、報告書では、荷主等の役割について、参加していただいている委員から寄せられた意見をそのまま併記しております。少々長くなりますので、内容の説明は省略いたしますが、業界の生の声が出されておりますので、是非、御参照いただきたいと思います。
 最後に、労働災害防止に向けた要望事項についてお話しさせていただきます。まず、労働安全衛生法の適用事業者であって、当該事業場内で荷物の積込み、積卸し及び、それに不随する作業を陸運事業者の労働者に行わせる事業者は、当該作業を自社の労働者に行わせる場合と同様の労働安全衛生法上の責務を負うような仕組みづくりを是非、御検討いただきたいと思います。また、荷役作業安全ガイドラインには荷主事業者も含めた大変有用な内容が示されております。荷役作業の安全対策のためにも法令上の位置付けを明確化するなど、その実効性を高めるための方策について是非、御検討いただきたいと思います。さらに、当検討会においては、陸運事業が直面する諸問題を解決し、持続可能な社会インフラとして更なる効率化を図るために、着荷主を含む荷主等が一定の役割を担うべきであるという観点から御検討いただくようお願いしたいと思います。
 特にこの点、本年9月には経済産業省、国土交通省、農林水産省が持続可能な物流の実現に向けた検討会を設置して、こうした検討を開始しております。陸運事業者が輸送を担っております消費関連貨物、あるいは生産関連貨物等については、経済産業省、農林水産省の役割も非常に大きなものがあります。物流の重要な担い手であるトラック運転手の命と健康を荷役作業の面から守るということも、持続可能な物流に不可欠な課題として、併せて検討がなされるように、是非、厚生労働省の積極的な御対応を切望いたします。以上、陸運事業者が置かれております現状、陸運業における荷役災害の状況、荷役災害を防止するための荷主事業者の役割等について御説明させていただきました。本検討会において、こうした課題について、荷役災害を防止するために効果的な対策が示されることを期待して、私の説明とさせていただきます。本日は、どうもありがとうございました。
○土橋座長 どうもありがとうございました。かなり時間が押してしまっておりますので、まず、議事の2番のフリーディスカッションに移らせていただきます。このフリーディスカッションの中で、ただいまの御説明も含めまして、今日の5つのヒアリングに対する質問が更にありましたらお受けいたします。それからフリーディスカッションとして、いろいろな御意見を頂きたいと思います。それに当たりましては、これまでの論点について、冒頭に事務局から説明がありましたので、そちらも御参考にしていただきたいと思います。御質問、御意見、御発言がございましたらお願いいたします。小野委員、お願いします。
○小野参集者 小野でございます。今、御説明いただきました陸災防さんに、意見というか、感じたことを言いたいと思います。2点あります。1つは、3ページ目です。3ページ目で、冒頭に御説明がありましたように、死亡者数は激減しつつある、相当減っている一方で、死傷者数は減っていない、むしろ増加だというところだと思うのです。
 この場合の1つの要因として、私の知る限りにおいては、死亡事故のうち、一定の割合が交通事故者なのです。これについては本当に、この20年間の中で、まず1つ目は、当然ドライバーの意識が向上していますが、そのほかに走行環境は、道路のICT化で極めて交通事故が起きにくい道路で、とても走行環境がよくなっています。それからもう1つ、御存知のとおり、車両の設備、簡単にいえば、例えばレーンキープアシスト、あるいは衝突被害軽減ブレーキシステムが入っているような形で、もとから死亡事故が起きにくい、交通事故自体が起きにくいような環境が1つあります。それから、あと、ドライブレコーダー、この装着率は極めて高くなっておりまして、こういったIT、ICT、AIなどによって、労災の死亡事故が相当数減ってきたということが、一つ言えると思います。
 ただ一方で、増えてきたというのは何でなのかなと、死傷者事故でも交通事故でも、当然、死亡ではない人たちもたくさんいるのですが、その人たちも減っているにもかかわらず、荷役作業中心にこれだけ増えてきているということはとても問題があるので、ここに注目して中身の分析を一つやられたほうがいいのかと思います。1点でございます。
 もう1つは、16ページです。正に発荷主、あるいは直接契約のない着荷主等での荷役中での死傷事故、死亡事故、労災がものすごく多いということは既に分っております。ここに対しては荷主の協力ですね。特に、発荷主のほうでは契約があるので申入れもできる、着荷主のほうは縁もゆかりもない所ですから、お客様のお客様ということになりますからなかなかできないのですが、こういった荷主に対してのガイドラインというのが本当に重要なポイントになります。
私は、これだけのガイドラインができて研修会がこれだけやられているということを知らなかったのですが、これはなかなかすばらしいと思います。1つは、この数字で割ってみると大体1回当たり30人くらいの参加者があるのかと思うのですが、運送事業者も入ってらっしゃるのかなと。本当に実際に真の荷主に、現場の責任者として、ここに相当来てもらわないと駄目なので、そういった形で受講者数のイメージが本当の真の荷主なのか。もう1つは、どういう業者なのか、危ないところに対しては重点的に地域ごとにやってらっしゃるのですが、そういったところについても、これから進める上で、効果的なポイントを見定めながら有効に、このガイドラインを使っていただけるような方針みたいなものを、ひとつお聞きかせ願えたらいいなと。この2点でございます。以上です。
○土橋座長 はい、お願いします。
○横尾様 重要な御指摘を頂きまして誠にありがとうございます。ただいま、委員がおっしゃいましたとおり、死亡災害については、やはり交通事故によるものが大きく減少したのは効果を示しています。一方で、死傷災害が増えている、あるいは交通事故以外の死亡事故がなかなか減っていないという現状があります。
 これは分析を見ますと、非常に多いのが、実は墜落・転落災害や、動作の反動・無理な動作といったところです。墜落・転落は、主に荷台からの墜落や転落が多いというのが一つあります。作業所の足場としては取りにくい場所があり、昇降や荷台の上の作業は必ず付いていますので、そのためによる墜落災害が非常に多い。
 この対策としまして、先ほどの報告書の中にも、昇降設備を従来は5t以上だったのを荷台の高さは余り変わりませんので2t以上まで拡大をする。あるいは、保護帽を着実に着用していただく。つまり、保護帽については、5t以上であったのを2t以上に拡大していただく、死亡災害の中で保護帽を着用していれば必ず防げた災害が多数あります。したがって、墜落防止のための昇降設備の設置、あるいは保護帽の着用が重要であろうかと思います。
 それから、最近非常に増えていますのがロールボックスパレットというような非常に簡易な機具を用いた災害です。これは本当に簡単に倒れてしまいますし、数百キロのものがのし掛かってくる。それと併せて、先ほどの9ページの物流の流れの一番右の下の図にテールゲートリフターと書いていますが、テールゲートリフターとロールボックスパレットをセットにして使う場合が多い。実はテールゲートリフターは、よく見かけると思うのですが、荷物と一緒に昇降する場合が多いわけです。このテールゲートリフターは、人の昇降は前提としておらず、荷物の昇降だけです。その昇降の途中で、このロールボックスパレットが転倒してその下敷きになるとか、テールゲートリフターから放り出されるというような災害が非常に多く見かけられます。荷役の作業そのものの災害をもっと細かく分析して検討しながら進めていくことが必要だと思います。そのためには、テールゲートリフターやロールボックスパレットについて、操作者の労働者、あるいは荷主のほうにも、きちんと理解していただいて、十分な教育をしていくことが、今後の大きな課題になると考えております。
 それから、ガイドラインの周知等については引き続き実施していきたいと考えております。特に、我々陸運事業者そのものについては、荷役ガイドラインは相当浸透してきていると考えていますが、やはり、荷主のほうがなかなか不十分だということがあります。実は、これだけの荷主の方に来ていただくというのは、各支部には相当努力をしていただいておいでいただいたということです。今後も、荷主向けのガイドラインの周知広報をやっていきたいと思いますが、そのためには、やはり各労働局、監督署等からの支援も重要になってくるだろうと思いますので、その辺も併せてお願いさせていただいて、今後も引き続き実施を進めていきたいと思います。以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。中村委員、どうぞ。
○中村参集者 どうも説明ありがとうございました。1点だけ確認をしたいのですが、今日のお話でよく分かったのは、実際に事故が起きるのは荷役の作業場ですよね。そのときに、荷役作業をトラックの運転手の方がやっているのは分かったのですが、そのときに相手方の、例えば発注者側が一緒に立会っているのですか。それとも、そのときに何らかの指導をした上で仕事をしているのでしょうか。
○横尾様 現場によって随分違ってくると思います。一緒に立会っている場合もありますし、単純に、ここにあるものをというふうに指示をして、そこに運ばせたりする場合もあるので、現場によってかなり差があると思いますが、その辺は清水委員から報告いただいたほうが間違いないかもしれません。
○中村参集者 むしろ、現場で違うのは分かるのですが、今後のことを考えたら、荷役側の設備を使うわけですよね。そうすると、実際に立会えとか、あるいはそのときに来る人に対して安全指導をするとか、そういうことをやらなければいけないように思うのですが。
○横尾様 おっしゃるとおりだと思います。その辺をきちんと、使用する機材や、その点検整備を荷主のほうで確実にやっていただくと。同時に、荷主側の労働者と、トラックドライバーとの間の連絡調整です。具体的に、どういう作業を、どちらがどこまで担当してやるのか、全体のことをきちんと、あらかじめ業務指示書なり何なりで明確にしておくということが重要だと思います。
○中村参集者 それは現実にはどの程度、今、実際にあるのですか。
○横尾様 実は、荷役ガイドラインでも、そのことがきちんと明記されているのですが、なかなかそこまで、業務指示書についてはお互いに進んでいないというのが現状です。
○中村参集者 だと思いました。今日、禁止等の措置が分かりましたので、逆に、そこをきちんと指導しないと、ここの事故が減らないというように思って聞いておりました。
○横尾様 そうですね。やはり双方向の問題だろうと思いますので。
○中村参集者 ありがとうございます。
○土橋座長 ほかはいかがでしょうか。清水委員、お願いします。
○清水参集者 発表、お疲れさまでした。補足というか、関係することなのですが、物流事業者の不足というのは、物流事業者だけではなくて荷主側にもあるわけですね。フォーク作業をする荷受人や積込をする作業員なども実際には不足しているわけです。その不足した人員を補うためにドライバーが作業をしているというところも大いにあって、死者数が減っていて死傷者数は増えているのも、物流関係者が不足しているので、ドライバーがやらざるを得ないということで、受渡現場を多くのドライバーが担っていることで死傷者が増加しているというのも要因としてあると思います。
 それから、荷役作業安全ガイドラインの講習などをやっていただいているのですが、実際に、荷主やメーカーさん、発注者、卸し事業者などに対するアナウンスは、まだまだ足らないなということで、こちらに関しては、関係省庁の方に大いに力を奮っていただいて、一番は法制化だと思いますが、これをやらなければ公正取引委員会に引っ掛かるとか、そういうことで法規制をしていかないと、なかなか。
 私たち荷主や、メーカーさんも、特に発注者に対して、ものを言うのがなかなかできないのです。なので、荷役作業も納品先では抑制ができない。何をさせるかは、ドライバーが行くので、行ったらやらせてくださいということしか言えない。ここの関係上、運送契約に盛り込むのはなかなか難しい。運送事業者の構成を見ていただきましたが、10台とか10人という事業者が大半だということで下請け体質なのです。直接、お客様と取引をしている事業者はほとんどいない。なので、その事業者たちが下請の末端の物流を担っているのですが、そこから改善してくれという話が通りにくいというのが大いにあります。
 この2024年の労働時間の問題も含めてですが、効率化を図らなくてはいけないのに、待機時間があったり荷役作業があったりということで非常に苦しんでいるというところです。ここの発注者、発荷主、納入事業者、ここを併せて運送契約を結んだり法令で縛ったりということをやっていかないと、ここの事業者さんたちは、ほとんど物流の現場には無関心です。ほとんど法律が変わってからやろうという方たちばかりなので、だから2024年問題も、この労働時間を短縮していこうというところも、厚生労働省の関係では大いに関係あると思うのですが、ここが2024年に向って進んでいかないというのも、ここが大きな問題ではないのかと思っております。以上です。
○土橋座長 補足の説明として、ありがとうございました。オンラインのほうで、三柴委員、お願いします。
○三柴参集者 重ねてで、恐縮です。大事だと思うので、ちょっと先ほどのやり取りに戻らせていただきたいのですが。まず、建設業界で、特にゼネコンさんが安全管理に尽力されてきたことについては敬意を表したいと思っています。その前提で、まず、一人親方等が安全管理について情報や権限を持っているかという点については、私なりの事件や事例の俯瞰の限りですが、場合によるなと認識しています。特に情報はそうです。権限については余りないのではないかなと認識しています。これが1点目です。
 それから、鹿島さんで集められたデータについて、これは前に御報告があった話とも考え合わせると、やはり元請さんの管理が効いているという条件下では、安全秩序は比較的良質なデータになってくるのではないかなとは感じております。
 最後に、一人親方についてのデータを見るときに、やはり御報告があったように、ベテランの方が割と多いとなると、仕事に慣れている分、危ない面もあるけれども比較的災害は起きにくいということかなと思いますので、そういう視点で見ていかないといけないかなと思っています。以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。そのほか、いかがでしょうか。田久委員、お願いします。
○田久参集者 陸災防さんに聞きたいのですが、基本的には、事故の発生も含めたところは労働者ということになるのでよろしいのでしょうか。実際的に、陸災防さんのほうで、個人事業主と言われている人たちの死傷者などの把握などは、努めてこられたことがあるのか、把握はしているのかということが、まず、お聞きしたいと。この間、聞いていると、個人事業主等の実態把握は本当にできてないなということを改めて認識しているところなのですが、その辺はどうなのでしょうか。
○横尾様 お示ししているデータは全て労働者死傷病報告に基づきますので、基本的には、一人親方という部分ではございません。全て労働者という位置付けでお考えいただければいいと思います。
○田久参集者 建設のところでいうと、建設資材運搬とかで、私たちの全建総連傘下の特別加入団体の中にも入っている方はいらっしゃいますから、そういったところのヒアリングなども含めると、取れるのかなと改めて思ったところですが。あくまでも建設資材になってしまいますから、通常の運搬ということにはならないのですが、できる限り、そこのところを聞いていて、その部分の改善に向けて、まず、そこをどう着手するかという点も含めて検討が必要ではないのかなと改めて思ったので、是非、その辺もよろしくお願いいたします。
○土橋座長 ほかはいかがでしょうか。今の件で、先ほどのガイドラインですが、ガイドラインの係るようなところで、個人事業主的な方も、そういう仕事をしていらっしゃるという理解でよろしいですか。ただ、それが余り把握されていないという、横尾さん、よろしいですか。
○黒谷様 恐縮でございます。陸災防の担当部署の黒谷と申します。私のほうから少し補足をさせていただきます。基本的に、今日、陸災防としてお話をしましたのは、労働安全衛生法の適用のある陸運事業場、つまり、道路貨物運送業と陸上貨物取扱業ということでお話させていただいております。それから、陸運の事業の中でいくと、資料の6ページにありますように、自家用で車両を運んでいらっしゃる、たとえば、建設事業関係のダンプなどが多いと思いますが、陸災防としての対象業種及びその事業場ではありません。したがいまして、こういった事業場の情報は陸災防では持っていません、前回の赤帽事業は個人事業主でやられており、同じ陸運業でも、事業の営業許可での整理が必要かと思いますが、今日のご説明した内容は、個人事業主ではない陸運事業であり、労働安全衛生法の適用事業場です。働いている方は労働者という定義で御理解をいただければと思います。
○土橋座長 ありがとうございました。中村委員、お願いします。
○中村参集者 すみません。今のことについて、私はこのように理解をしながら聞いていました。陸運業者は、最終的には一人一人が小規模事業なのだけれども、実際の仕事場では個人が仕事をする形が多いから、そういう意味で考えたら、個人事業主かというと違うのだけれども個人が現場で仕事をしていると。その際の危険をどうするかという観点で聞いたらいいのかなと思って聞いていましたが。
○土橋座長 はい、田久委員。
○田久参集者 今、中村委員が言われたのと同様で、要するに、この災害を防止することが、その部分で言うと、個人事業主の災害防止につながっていくという考えで発表していただいたということでの理解でよろしいですか。分かりました。
○土橋座長 ほかはいかがでしょうか。かなり時間も過ぎてしまいました。様々な御質問、御意見を頂きましてありがとうございました。それでは、本日の議論については、事務局において、前回の結果と併せて、取りまとめていただくようにお願いいたします。それでは、最後になりますが、その他として事務局から何かありますか。
○船井安全課長補佐 最後でございますが、事務連絡になります。正式には、後日、改めて御案内させていただきますが、次回は10月31日の月曜日に開催させていただく予定としております。次回の検討会については、これまでの御議論の中で御指摘いただいておりましたプラットフォーマーの関係としまして、フードデリバリーサービスの団体、ネット通販の配送業務を請負っておられる個人事業者の実態に詳しい団体の方から、追加でヒアリングをさせていただくことにしております。また、これまでのフリーディスカッションを踏まえて、各論点について更に議論を深めていただく必要があると思いますので、それに先立ちまして、鹿野先生と三柴先生から、それぞれ諸外国における個人事業者を取り巻く規制の状況についても御紹介をいただきまして、今後の議論に役立てたいと考えております。
 最後に、事務連絡ですが、本日の議事録については、参集者の皆様に御確認をいただいた上で、公開することとさせていただきますので、よろしくお願いします。
○土橋座長 よろしいでしょうか。それでは、本日は長時間にわたりまして活発な御議論をいただき、ありがとうございました。また、本日の建設業界の状況について御説明いただいた各委員の皆様、陸上貨物運送事業労働災害防止協会の横尾様におかれましては、御説明、質疑対応をありがとうございました。それでは、以上で第5回「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。