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- 2022年9月20日 第7回「精神障害の労災認定基準に関する専門検討会」 議事録
2022年9月20日 第7回「精神障害の労災認定基準に関する専門検討会」 議事録
日時
令和4年9月20日(火) 17:00~19:00
場所
中央合同庁舎5号館厚生労働省議室(9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
出席者
- 参集者:五十音順、敬称略
-
- 荒井稔
- 黒木宣夫
- 小山善子
- 品田充儀
- 田中克俊
- 中野妙子
- 中益陽子
- 丸山総一郎
- 三柴丈典
- 吉川徹
- 厚生労働省:事務局
-
- 梶原輝昭
- 西岡邦昭
- 児屋野文男
- 中山始
- 本間健司 他
議題
- (1)精神障害の労災認定の基準について
- (2)その他
議事
- 議事録
○本間職業病認定対策室長補佐 お待たせいたしました。定刻を過ぎておりますので、ただいまから第7回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、会議に御出席をいただきありがとうございます。
今回は、阿部先生が御欠席との御報告を頂戴しております。また、座長の黒木先生以外の先生方につきましては、オンラインでの参加となってございます。
初めに、御発言の際の御案内です。
会場で御出席の方につきましては、長いマイクの下のボタンを押していただき、赤いランプがつきましたら御発言をお願いいたします。終わりましたら、再度ボタンを押してください。
オンラインで参加される方に発言の際のお願いです。マイクのミュートを解除した上で、お名前と「発言があります」旨の発言をしていただくか、または、メッセージで「発言があります」と送信してください。その後、座長から「誰々さん、お願いします」と指名がございますので、その後に御発言をお願いいたします。
また、大変申し訳ございませんが、通信が不安定になったりすることで、発言内容が聞き取りにくい場合があることにあらかじめ御了承をお願いいたします。
検討会に先立ち、傍聴されている皆様にお願いがあります。携帯電話などは必ず電源を切るかマナーモードにしてください。そのほか、別途配付しております留意事項をよくお読みの上、検討会開催中はこれらの事項をお守りいただいて傍聴されるようお願い申し上げます。
また、傍聴されている方にも、会議室に入室する前にマスクの着用をお願いししておりますので、御協力をお願いいたします。
万一、留意事項に反するような行為があった場合には、この会議室から退室をお願いすることがありますので、あらかじめ御了承ください。
写真撮影等はここまでとさせていただきます。以後、写真撮影等は御遠慮ください。よろしくお願いいたします。
次に、本日の資料の御確認をお願いいたします。
本日の資料は、
【資料1】第7回における論点
【資料2】論点に関する労災補償状況
【資料3】論点に関する医学的知見
【資料4】論点に関する裁決例
【資料5】第4回検討会の議論の概要(第7回における論点関係)
【資料6】第6回検討会の議論の概要
【参考資料】団体からの意見要望
となっております。
また、本日は、第2回検討会で使用した「令和2年度ストレス評価に関する調査研究報告書」を適宜参照いただきながら御検討いただくことも予定しておりますので、御用意いただけますと幸いです。
本検討会はペーパーレスでの開催とさせていただいておりますので、お手元のタブレットで資料の確認をお願いいたします。
それでは、座長の黒木先生、以後の議事の進行をよろしくお願いいたします。
○黒木座長 それでは、始めさせていただきます。
今回は、まず論点1として、前回までに引き続き業務による心理的負荷評価表の検討を行い、次いで論点2として認定要件の1番目「対象疾病を発病していること」という要件と、その対象疾病について議論したいと思います。
それでは、事務局から資料について御説明をお願いいたします。
○西川中央職業病認定調査官 それでは、事務局から御説明いたします。
前回第6回の検討会では、業務による心理的負荷評価表に関しまして、特別な出来事と総合評価の共通事項について御議論いただいたところでございます。
今回の第7回では、まず、心理的負荷評価表につきましては「具体的出来事」の部分について、これまでの御議論を踏まえて全体としての考え方の整理と、類型1から3の部分の具体的出来事の項目名、総合評価の視点、「強」「中」「弱」の具体例について。さらに、類型3につきましては、労働時間と関連してまいりますので、労働時間の考え方について今回御議論いただきたいと考えてございます。
また併せて、先ほど黒木先生からも御紹介がございましたが、精神障害の労災認定の要件3点ございますけれども、そのうちの第1要件でございます「対象疾病を発病していたこと」と、その対象疾病についても論点としているところでございます。
これまでと同じように資料1が論点となります。資料2が論点に関する労災補償状況、資料3が医学的知見でございます。それぞれ論点の説明の中で触れさせていただきたいと思います。資料4は労働保険審査会の裁決例をお示ししたもので、今回の論点に限らず検討全体に関連するものでございますけれども、こちらも後ほど簡略に御説明をさせていただきたいと考えてございます。
前回第6回の議論の概要は、資料6にまとめてございます。
併せて非公開で事例の検討をいたしました第4回の議事のうち、労働時間に関する御意見について、個別事案に関する部分を除きまして今回資料5としてお示ししてございます。説明は割愛いたしますが、適宜御参照いただければと思います。
さらに、8月23日に過労死弁護団全国連絡会議から、9月9日に働くもののいのちと健康を守る全国センターから、9月15日に全国労働安全衛生センター連絡会議から、意見・要望が提出されましたので、まとめて参考資料としてお示ししてございます。こちらも内容については御紹介を割愛いたしますけれども、適宜御参照いただければと思います。
それでは、論点1について資料1に沿って御説明させていただきたいと思います。
いつものように、資料1の1ページ、2ページには論点をまとためものをお示ししてございますが、少し細かくお示ししたものが3ページ以降となります。3ページ以降に沿って御説明させていただきたいと思います。
まず、論点1のAでございます。大きな論点1つ目は、前回に引き続きまして心理的負荷評価表についてでございます。今回から具体的出来事ごとの検討に入りたいと存じます。論点のAが具体的出来事全体としての考え方の整理でございます。
Aの考え方でございますが、第5回の検討会において具体的出来事の統合、追加、修正について御議論いただきました。その際にも、いろいろな御指摘をいただいたところでございますが、そういった御指摘の内容や御意見の背景となる考え方について、現行認定基準の評価、今回の検討に当たっての現下の課題との関係、そして、実際にこの検討に当たっての考え方について、改めて確認・整理をしておきたいという論点を示してございます。
まず、3点示してございますけれども、現行基準について1つ目ですが、現行の評価表は22年度の調査を踏まえた詳細なものとなっているところでございます。ただ、一部に類似性の高いものが重複していたり、「強」と判断されることがまれな項目がたくさんあるなど、労災認定の指標としては複雑であるがゆえの分かりにくさがあったのではないかと考えてございます。
その上で、現下の課題といたしまして、近年請求件数は一層増大してきていることは、これまでもお示しさせていただいたところでございます。また、労働者を取り巻く職場環境の変化にも対応していかなければいけない。こういった観点から、各項目への当てはめや心理的負荷の強度の評価がより適切かつ効率的に行えるようにする必要があるのではないかと考えているところでございます。
そのため、これまでの御議論において、できる限り重複を避け、また細分化された項目を一定程度統合するとともに必要な項目は追加することで、また各項目の表現ぶりにおいて事実をなるべく客観的に評価でき、また、評価内容が具体化・明確化されるように検討してきたと整理できるのではないかと考えてございます。
このような整理でよいかどうか、さらに言及しておくべきことがないかどうかなど御意見を賜りますとありがたく存じます。
続きまして、Bでございますが、評価表の具体的出来事の項目名、総合評価の視点、「強」「中」「弱」の具体例についてでございます。
評価表全体はかなり分量がございますので、1回の検討会で全部御議論いただくのは難しいかと考えておりまして、今回は類型の1から3までを論点とさせていただいてございます。
具体的出来事それ自体の追加、統合、修正と、それぞれの平均的な強度については、第5回において御議論いただきましたけれども、その際の御指摘やその際のたたき台と今回のたたき台を比較してお示ししたものが4ページ、5ページでございます。第5回では、何を追加・統合するか、平均的強度をどうするかについては、おおむねたたき台のとおり御了解いただいている状況と考えておりまして、ただ、項目の表現ぶりについてはいろいろと御指摘を賜ったものと考えてございます。
頂いた御指摘について、資料の4ページ、5ページの「これまでのご意見」に示しておりますけれども、これを踏まえまして、この表の真ん中、一番上「改正案」と書いてあるところの「具体的出来事」と書いている部分についてが、今回新たにお示しさせていただきますたたき台となります。
なお、下線を引いているものは現行の評価表からの修正点となります。第5回のたたき台との違いについては、一番右の「第5回案」の欄と比較していただければと思っております。
全体に共通いたします修正といたしまして、括弧書きについて御指摘があったところでございます。項目1でいえば「(重度の)病気やケガ」、この「重度の」に括弧がついておりますけれども、これは項目1「重度の」という状態が平均的な心理的負荷の表、項目1は平均的な心理的負荷の強度がⅢでございますので、「重度の」という状況が強い心理的負荷と平均的に想定されるものであるので、括弧はないほうが分かりやすいのではないかという御指摘を頂いたところでございます。事務局でも検討いたしまして、御指摘を踏まえまして、全ての項目からこの趣旨での括弧を外したたたき台としてございます。
実際に項目1でいえば、例えば、軽度のけがの事案もこの項目に当てはめまして、実際の心理的負荷の強度については平均を修正いたしまして、「中」であったり、「弱」であったりと評価していくことになりますけれども、その点は例えば、達成困難とはいえないノルマが課された場合にも項目の8番に当てはめるといったことと同様でございますので、括弧を外すほうがより統一的で分かりやすいのではないかという御指摘で、全て括弧を外すたたき台とさせていただいております。
項目3、4、15、16、17も同様に修正させていただいております。
また、項目8、達成困難なノルマの関係でございますけれども、前回の案から少し表現を整理させていただいたもの。
また、項目10についてシステム導入の関係が、平均的強度がⅡ、中程度の心理的負荷のものを想定するに当たって、大型プロジェクトに相当するものが想定されることを明確にしたいという趣旨で少し修文をさせていただいたところでございます。
項目11でございますけれども、顧客や取引先から無理な注文や要求を受けたという前回のたたき台となってございましたが、この要求がカスタマーハラスメントに当たるような著しく不当な要求との区分が分かりにくいではないか、分かるようにすべきではないかという御指摘を頂いていたところでございます。「無理な注文」「無理な要求」と記載したときに、絶対に無理なものの要求であるとすると、これは確かにカスタマーハラスメント、著しく不当な要求と区別しがたいことも想定されまして、無理かもしれないが何とかなるかもしれない、何とか困難な対応をすべく努力するところにこの項目の心理的負荷がある、そういったものを現行でも評価しているという趣旨で御指摘を受けまして、今回のたたき台では「対応が困難な注文や要求等を受けた」という形にしてございます。「等」としては、例えば納品物の不具合の指摘などを想定しておりますが、そういった形に修正させていただいてございます。
項目14については、御指摘のあったとおり修正したものでございます。
また、項目16、17について、前回の案では「など」という記載をしておりましたが、「など」の前に示したものが、例示ではなく想定される水準そのものでございますので、これを削除いたしました。
類型3に追加する方向で第5回において合意いただいておりました「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」という項目でございますが、場所は決まっていなかったところでございますが、このたたき台においては連続勤務と勤務形態等の変化の間に入れてございます。
項目18ですけれども、勤務形態、仕事のペースの変化につきまして、仕事のペースについて仕事量と重なる部分があって不要ではないかという御指摘を頂いていたところです。この仕事のペースでございますけれども、作業速度、例えば、ライン作業におけるコンベヤーのスピード、つまり同一時間内における仕事の密度といったものを想定して現在運用しているところですが、そういったものの変化も項目の15、仕事内容・仕事量の変化で評価している場合もありまして、御指摘を踏まえ、そちらで評価する方向でやったほうがわかりやすいのではないかということで、18の項目名から「仕事のペース」を削除してございます。
なお、同じくこの項目で御指摘のありました裁量権・裁量度につきましては、外形的には判断しにくいこともありまして、総合評価の共通事項・留意事項として盛り込むことで、こちらの項目の中には盛り込まないというたたき台とさせていただいております。
このような修正のたたき台としました上で、6ページから8ページが評価表のたたき台となります。あくまでたたき台でございますので、いろいろと御指摘いただきたいと思っておりますが、現行の評価表から変更がない部分が黒、修正した部分を赤で示したたたき台となってございます。水色の部分は、修正や追加等に当たって参考としました第3回の資料3に示した裁判例の番号でございます。
全ての項目を逐一御説明する時間がございませんので、全体としての修正の考え方について御説明させていただきますけれども、まず総合評価の視点につきましては、具体例を示すに当たり、検討要素となっている事項がなるべく漏れがないように、また、ほかの具体的出来事と共通する視点について、なるべく表現ぶりが統一されるように、さらに、出来事を統合した部分がございますので、統合したものについては統合前の視点をできる限り網羅するようにという趣旨で修正してございます。
また、「強」「中」「弱」の具体例でございますが、裁判例等を踏まえて記載を追加しております。
また、現行の評価表では平均的強度がⅡのものについては、「強」「中」「弱」全ての具体例を示しているところですけれども、平均的強度がⅠやⅢのものについては、平均的強度以外の具体例を示さずに解説だけを示しているつくりになってございますが、なるべく各段階の具体例を追加してお示ししたたたき台とさせていただいてございます。ただ、平均がⅠで「強」の具体例を示すことがなかなか難しかったので、そこについては現行と同じく解説を入れているところでございます。
横にお示ししました具体例は、あくまで具体例でございますので、それぞれの強度の上限や下限ではございませんけれども、どのような場合には心理的負荷が強いと評価されるのか、どのような場合には中程度と評価されるのかといった観点も含めて御議論いただければと思います。
なお、労働時間数が示されている具体例が類型3に幾つかございますが、そこについてはCで後ほど御説明させていただきます。
それ以外の点で、このたたき台の個別のことで幾つか御説明させていただきますと、項目1について、「強」である例の「おおむね2か月以上の入院を要する」というところでございますが、ここ10年間の医療体制の変化等に応じまして、10年前の2か月と現在の状況が同様に示し続けられるのかどうか。また、特別な出来事の議論の際にも御指摘がありました、「6か月を超えて療養中の」という趣旨の記載が分かりにくいのではないかといった観点から修正させていただいてございます。
また、8ページでございますけれども、項目15から18につきましては、これまでの御議論を踏まえまして、総合評価の視点に勤務間インターバルに関することをお示ししているところでございます。
また、項目17の連続勤務でございますが、具体的出来事として「2週間以上にわたって」という記載があるところに「(12日)」という記載が出てくるのは返って分かりにくいのではないか。
それから、項目18について、働き方の変化やこれまでの御議論を踏まえまして、テレワークに関するものを具体例として示す必要があるのではないかといった観点から、修正や具体例の追加等を行っているところでございます。
続きまして、論点1のCでございます。一旦、1-3ページにお戻りいただきたいと思います。Cのところでございますが、評価表における労働時間の考え方を分かりやすく示すことについて、医学的知見の状況等を踏まえ、どのように考えるかという論点をお示しさせていただいてございます。
分かりにくいところがあるので分かりやすく示すことができないかという御指摘については、第3回の検討会でも頂いておりまして、こういった御指摘を踏まえた上で検討してございます。
まず、現行認定基準の労働時間についての考え方を維持することが適当かという論点を示してございます。ここで、現行の認定基準の考え方を口頭で恐縮ですが御説明させていただきますと、労働時間はいろいろな観点から出てくるところでございます。極度の長時間労働については、数週間にわたる生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保できないほどの長時間労働が心身の極度の疲弊・消耗を来たし、うつ病等の原因となると考えられ、臨床経験上発症直前の1か月におおむね160時間を超えるような時間外労働を行っている場合や、それに相当するものとして直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行っている場合がそれに当たると取りまとめられているところでございます。
さらに、平成22年のストレス調査の結果も踏まえまして、長時間労働それ自体を出来事として評価するとしておりまして、項目16の1か月に80時間以上の時間外労働を行ったという項目がこれに当たるところです。
さらに、恒常的長時間労働の関係でございますけれども、出来事に対処するために生じた長時間労働は心身の疲労を増加させ、ストレス対応能力を低下させる。また、長時間労働は一般に精神障害の準備状態を形成する要因となっているといった考え方を考慮いたしまして、恒常的な長時間労働の下で発生した出来事の心理的負荷は平均より強く評価される必要があると整理されておりまして、恒常的な長時間労働、月100時間労働となる時間外労働としてございますけれども、これが出来事の前あるいは後に認められる場合には、心理的負荷の総合評価を強める方向で修正することとしています。これが現行の考え方でございます。
これを現行の認定基準を取りまとめるときに整理していただいたところでございますが、資料3には、これに関する最新の医学的知見をお示ししているところでございます。資料3を御覧ください。
令和2年度に厚生労働省から委託事業といたしまして、労働時間や睡眠時間と精神障害の発病との関係につきまして、医学的知見の収集をお願いした結果、収集された文献の概要をお示ししているところでございます。黒木先生や防衛医科大学の公衆衛生の角田先生らの御協力を得まして、最新の医学的知見を検索・収集していただいたところでございます。この事業全体の報告書は第1回の検討会資料9-2としてお示ししておりますが、そのうち労働時間、睡眠時間と精神障害の関係について収集いただいた文献の概要の部分を今回の資料3として示しているところです。
ここでは収集していただいた結果としまして、その他の参考文献8件を含めまして、全体で48件の概要をお示ししてございます。その内容を見ますと、労働時間や睡眠時間と精神障害との関係はある。そういった意味でポジティブな文献が多数であるものの、同一時点における労働時間や睡眠時間と精神障害の症状を調査していて、時系列になっていないので長時間労働が発病に与える影響や因果関係を評価することができない横断研究とよばれる研究が数としては多かったという状況でございます。
時系列を考慮に入れまして、因果関係を一定評価できますコホート研究におきましては、有意な関係を認めるものもありますし、認めないものもある。有意な関係を認める研究においても、長い労働時間の定義あるいは短い睡眠時間の定義、つまり時間数が様々であるという状況であったものと事務局では解釈させていただいているところでございます。
このため、現行認定基準で示しております労働時間の考え方を大きく変更するに足りる知見があるとは言いにくいのではないかと思われるところでございますけれども、現行基準の考え方を維持することが適当と考えてよいかどうかについて御議論をいただきたいと思ってございます。
さらに、第2回の検討会におきまして田中先生に御説明を賜りました令和2年度のストレス調査でございます。全体については第1回検討会資料9-1でお示ししているものでございますが、この調査におきましては、長時間労働によるストレスについて、月60時間以上80時間未満、80時間以上100時間未満、100時間以上120時間未満、120時間以上、時間外労働をこの4区分に分けて調査していただいているところでございます。
その結果を平均点で見ますと、60~80時間については平均点5.45と他の区分より低いのですが、それ以上についてだんだん上がっていくわけではなくて、80時間以上100時間未満が5.62、100時間以上120時間未満が5.57、120時間以上が5.53とわずかな差ではございますが、80時間以上100時間未満が一番高くて、だんだん下がっていく結果となってございます。
このうち最も平均点が高かった「80~100時間の時間外労働を行った」という点数を、「仕事内容・仕事量の大きな変化があった」という点数よりは低く、「2週間以上の連続勤務」や「自分の関係する仕事で多額の損失が生じた」といった出来事とほぼ同じ水準でございました。
こういった調査結果を踏まえましても、評価表に示されている時間数を含めて労働時間の考え方を大きく変更するに足りる知見があるとは言いがたいのではないか、むしろ維持することが調査結果とも整合するのではないかと考えられるところではございますが、御議論いただきたいと考えてございます。
医学的知見の御説明は終わりまして、論点1、資料1にお戻りいただければと思います。3ページでございますけれども、Cの2つ目でございますように、現行認定基準の恒常的長時間労働の取扱い、これは実質的に「強」の具体例になっているところでございますが、そのことを評価表において分かりやすく示せないか。
また、3つ目にございますけれども、認定基準には先ほど申し上げたとおり労働時間数に基づく記載がいろいろあるところですが、そこで言う労働時間の考え方、留意事項、例えば労働密度が特に低い場合を除くといった注でございますけれども、こういった留意事項は共通していると思われるところ、必ずしも平仄のとれた表現ぶりになっていないところもございますので、これも分かりやすく示すことができないかということも併せて御議論いただければと思ってございます。
そこで、具体的には8ページにお進みいただきまして、評価表で労働時間の考え方のたたき台を見ていただきたいと思います。
先ほど申し上げましたとおり、考え方を大きく変更にするに足りる医学的知見があるという状況ではないのではないかと考えまして、項目15、16の「強」や「中」の具体例、あるいは恒常的長時間労働、極度の長時間労働で示した数字などの内容は変更しないたたき台とさせていただいてございます。
ただ、少しでも分かりやすくするために、恒常的長時間労働がある場合の取扱いについて、「強」となる具体例として示してはどうか。あるいは時間数を示した項目に共通する注といたしまして、一番下に※1、※2がございますけれども、※1参照として、時間外労働の定義や想定している内容を共通するものとして記載するというたたき台としてございます。
なお、この位置に極度の長時間労働を記載しておりますのは、今回の御議論の便宜のためという趣旨でございまして、もともとの表の作りからしましては、特別な出来事は表の一番最初にございますけれども、この構成を変えようというものではございません。
また、長時間労働と他の出来事との関係について、項目16の総合評価の視点に記載いたしました注意書きについては、現行認定基準から修正したたたき台となってございます。前回の検討会で丸山先生からも考え方について議論すべきと御指摘があったところでございますけれども、項目16「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」という報告につきましては、現在はほかの出来事があれば、その長時間労働の状況というのはほかの出来事の出来事後の状況として評価することから、「他の項目で評価されない場合のみ評価する」という注意書きが「弱」の例と「中」の具体例の中に記載されているところでございます。
しかしながら、1つ上の項目15を見ますと、総合評価の視点にある注意書きといたしまして、「他の項目で評価される場合でも、この項目でも評価する」という黒字の記載がございます。例えば配置転換、項目21の出来事がございまして、配置転換の結果仕事量が増えて、おおむね20時間以上増加して45時間以上となった場合には、一旦21と15に両方当てはめて評価しますと。これは、配置転換があったからといって必ずしも仕事量が増えるわけではないので、量の変化からの視点を見落とさないという趣旨で、このような評価方法としているものでございます。もちろん、これらは関連する出来事でございますので、最終的には項目15は項目21の出来事の状況として評価されていくわけでございますが、評価方法といたしましては、量の変化の観点からの評価を見通さないことを重視しているところでございます。
一方で、変化があればそういった形になるわけですけれども、現行認定基準において配置転換前も長時間労働で、配置転換後も長時間労働、ずっと80時間ありましたという場合ですけれども、その配置転換後の80時間は当然ながら項目21の出来事後の状況として評価するものではありますが、項目16に当てはめないという取扱いとなっておりまして、これが項目15の取扱いと異なっていて分かりにくいのではないか。さらに、配置転換後の80時間労働は当然出来事後の状況として適切に評価していくものとは思っておりますが、出来事によっては出来事後の状況と労働時間との関連があまり高くない出来事、例えば、事故の体験・目撃をした、セクシャルハラスメントを受けたといった出来事と80時間以上の長時間労働がある場合などにおいて、労働時間の状況が評価されにくいことになってしまっていないかという問題意識から、項目16の注意書きを15にそろえるようなたたき台とさせていただいているところでございます。
ただ、項目15の時間数の変化によって80時間以上となった場合にそれぞれ両方評価しますと、同じ時間数に着目した評価が重複する、観点そのものが重複して二重評価になってしまうことが懸念されますので、そこは除外するという注意書きのたたき台としてございます。この点も含めて御議論いただければと思います。
長くなりましたけれども、論点1の御説明は以上でございます。
続きまして、論点2、精神障害の労災認定の3つの要件のうち第1要件でございます「対象疾病を発病していたこと」について御説明させていただきます。資料の1-9ページを御覧ください。
現行認定要件は、Aの右側の欄に示しておりますように3点ございます。これまでずっと御議論していただいております心理的負荷評価表は認定要件2番、業務による強い心理的負荷に関するものとなりますが、その前提としてそもそもの入り口の要件として、1つ目に「対象疾病を発病していること」という要件がございます。この要件につきまして、現時点においても妥当なものと考えてよいかが論点2のAでございます。対象疾病をどう考えるかはBの問題になってまいりますけれども、そちらの問題はあるとしましても、心理的負荷による精神障害の認定基準を適用して業務上外を判断していくためには、この第1要件自体は非常に重要な要件ではないかと考えてございますが、御検討いただきたいと考えてございます。
2のBです。ここでいう「対象疾病」とは何かという点が論点でございます。現行認定基準におきましては、対象疾病について国際疾病分類第10回修正版、いわゆるICD-10の第5章「精神および行動の障害」に分類される精神障害であって、器質性のもの及び有害物質に起因するものを除くとしているところでございます。
ICD-10、WHOが示しております疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10回改訂と正式に訳されてございますけれども、それについては右側の「参考事項」欄に記載しておりますが、F0からF99までございまして、F0が器質的な精神障害、F1が有害物質によるもの、F2が統合失調症など、F3が鬱病などの気分(感情)障害、F4が神経性障害あるいはPTSDや適応障害などのストレス関連障害、そして身体表現性障害といったように整理されているところでございます。
この分類を前提といたしまして、現行認定基準の対象疾病についての考え方は、B欄の左側に*がありますけれども、このICD-10の中からF0の器質性のもの、つまり外傷などによるものあるいは脳疾患によるものを除く、あるいはF1の有害物質によるもの、これらは心理的負荷によるものではないので除外する。さらに、この対象疾病のうち、業務に関連して発病する可能性のある精神障害は、主としてF2からF4に分類されるものであると整理されているところでございます。
なお、3つ目の*ですが、器質性のものや有害物質によるものは、心理的負荷による認定基準の対象疾病ではございませんが、労災にならないということではありませんで、例えば業務上の脳の外傷によるものとして認められるかどうか、業務上の化学物質のばく露によるものとして認められるかというようなことを個別に判断することにしてございます。
また、いわゆる心身症、例えばストレスによる蕁麻疹が出たといった体に明らかな症状が生じるものは、この認定基準における精神障害には含まないとしているところでございます。
こういった疾病分類を一旦押さえていただいた上で、資料2の補償状況を見ていただければと思いますけれども、こちらは吉川先生のいらっしゃいます労働安全衛生研究所におきまして、過労死等の防止に関する研究の一環としまして、国から提供させていただきました精神障害の労災認定事案の分析を行っていただいた結果となってございます。
3ページついておりまして、男女、男性、女性という資料になってございますけれども、2ページの男女全数を見ていただきますと、一見して明らかなとおり、ここ10年間の合計が一番右に書かれておりますが、F3とF4がほとんど。しかも、これらはほぼ拮抗している、少しだけF4が多いといった状況となってございます。また、F2の疾病、統合失調症も数は少ないですが、まれというほどではなく、毎年一定数認定されている状況でございます。
その他として示されている事案、10年間で4件、ごくわずかではございますが、これについて事務局から状況を御説明させていただきますと、ここにあるのは基本的にはF5の疾病、非器質性の睡眠障害や摂食障害の事案といったものがわずかに存在するという状況でございます。
こういった認定状況にあることを踏まえた上で論点に戻っていただきますけれども、資料1-10~19ページには現行のICD-10の和訳、死亡診断書などに記載いただくための統計法に基づく総務省の告示「疾病、障害及び死因の統計分類」をお示ししているところでございます。現在は、これが施行されて運用されているところでございますが、新しいICD-11が既に示されているところでございます。
1-20ページを見ていただければと思いますけれども、「ICD-11の開発経緯」というページがございます。既に2018年にWHOから第11版が英語で公表されておりまして、2019年に採択されて、本年1月から発効している状況でございます。ただ、これには猶予期間が設けられておりまして、各国は発効から5年以内に運用を開始することとされています。日本で運用するためには日本語訳が必要、先ほどのICD-10に基づく告示を改正していくことになるわけでございますが、ICDというのは全ての分野の疾病名等に関するものでございますので、厚生労働省の統計担当部局が各学会に御相談して、日本語訳の案を作成しているところでございます。
21ページでございますけれども、この案ができましたら審議会で御議論いただきまして、最終的には総務省の告示となっていくところでございますが、現時点ではまだそこまで進んでいない、確立した日本語訳がまだない、日本語訳は作成中といった状況でございます。
英語については既に示されておりますので、次のページからお示ししてございますけれども、日本語訳が作成中であることを踏まえますと、今回の検討会においてはICD-10を前提といたしまして、資料1-9ページに戻りますが、Bの2段落目「現在」ですが、発効されているけれども、まだ日本語訳は作成中という状況でございますので、対象疾病については、この確立を待って別途検討する必要があるのではないか。この検討会においてはICD-10を前提としまして、11については日本語訳が確立した段階で別に検討する必要があるのではないかと考えているところでございます。この点についても御議論いただければと思います。
大変長くなりまして恐縮でございますが、論点についての御説明は以上です。
最後に、資料4について簡単に御説明させていただきます。労働保険審査会の裁決例でございます。第3回において裁判例をお示ししましたけれども、念のために裁決例も今回の論点に限らず検討全体の参考としていただくという趣旨でお示ししたものでございます。審査会においては個人情報を削除した上で、裁決例をホームページで紹介しているところでございますので、これを取りまとめたものになります。棄却の事案というのは、監督署の不支給決定が維持された事案、それから取り消しの事案、監督署の支給決定が覆った事案、両方をお示ししてございますが、棄却の事案は数が多いため直近の令和元年の公表済のものに限ってお示ししてございます。
1~28ページまでが棄却事案で、102件お示ししております。29ページからは取り消しの事案でございます。審査会において業務上と認められた事案でございますが、こちらは労働者性など争点が異なるものを除きまして公開されている平成26年以降のものを、現時点で公開されているもの24件を資料として提示しているところでございます。一つ一つの事案を詳細に御説明する時間はございませんが、次回以降も含めて御検討に当たって適宜御参照いただければと思います。
御説明は以上でございます。御説明いたしました論点につきまして、論点ごと1のA、B、C、2のA、B、これらに区切って御議論いただければと存じます。なお、論点1のBについては内容が多いため、類型1、2、3の順にそれぞれ御議論いただければありがたいと思ってございますし、また、ここで言う計算は論点Cにも関係してまいりますので、1のBの類型3では時間数以外の点に関して、時間数に関しては1のCにおいて御議論いただければありがたいと思ってございます。
それでは、御議論のほどよろしくお願いいたします。
○黒木座長 本当に詳細に、大変な膨大な量を御説明いただきました。事務局から論点1と論点2に関する資料についての説明がありました。
では、初めに、論点1について、資料1-3ページのA、評価表の「具体的出来事」を示すに当たっての考え方について、これまでの議論を踏まえ、どのように整理することが適当かについて検討いたします。これは現在の心理的負荷評価表が詳細であるがゆえに分かりにくいのではないか、精神障害に関する労災請求件数の増加などに迅速に対応し、新たな職場環境の変化に対応した適切かつ効率的な評価ができるものにするべく、出来事の重複や細分化を一定程度統合していき、明確化・具体化を図るよう検討すべきではないかとの趣旨です。これについて、ここまでそうした方向性で検討が進んできた認識があると思いますが、大きな御異論はないものと考えますけれども、御意見・御質問があれば御発言をお願いいたします。何か御意見ございますか。
吉川先生どうぞ。
○吉川委員 吉川です。今回、かなりきれいに整理がされていて、具体的な論点で言われている具体的出来事がかなり整えられたという印象を持っています。それから、新しい内容についても付け加えられて、全体的に今、事務局から提案いただいた内容は、大変よいものができていると思います。
その中で、1点、もし可能ならばというところで検討いただきたい点があります。感染症のところと第5回に議論がされた交代勤務のところに作業環境を入れたらどうかという意見があり、それに基づいて事務局につくっていただいたところです。今、提供いただいている1-8ページの17、18の項目の感染症と勤務形態ですが、労働安全衛生法の第22条で職場でコントロールすべき要因として、1番が化学物質に関するような原材料、ガス、感染症。2に物理的環境ということで、18を改めて読むと、作業環境の有害物が18の中に入るというのは少し違和感がありました。むしろ例えば、感染症と特出しですが、感染症は有害化学物質、病原体という1つのフィジカルというか、しっかりした有害因子と考えると、例えば、18に書いてあるような温度、照明、湿度みたいな有害環境、放射線のようなもの、それから、感染症というのは一つの有害化学物質によるばく露という形に整理しておいたほうが、今後、検討する際に何が原因で心理的負荷を生じたかに整理がつきやすいのかなと思いました。具体的には、アスベスト解体作業に従事することを不安に思うような方がいて、いろいろ申請を出してきたときに、それが感染症と同じ文脈の中で整理することもあるのではないかと思いました。なので、有害化学物質に関しては感染症と一緒にまとめてしまうのが、負荷の説明の仕方、防護が十分ではなかった、あるいは重大な健康障害を起こし得るような状況に従事してしまったというところでまとめやすい。18の勤務形態のところは、これも負荷要因ではあるのですけれども、交代勤務という測定の仕方がかなり異なるような構造になると思うので、そこは少し整理してもいいのかなと思いました。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。
吉川先生、具体的には感染症は評価表の中ではどういうふうになさればいいですか。
○吉川委員 感染症のところはこのまま残して、例えば「病原体や有害化学物質等による病気や事故の危険性が高い業務に従事した」みたいな、あるいは「作業環境」という言葉を「有害化学物質や感染症等による病気や」という形に整理してはどうかなと思いました。
○黒木座長 そうすると、類型のところはこのままでいいということですね。
○吉川委員 出来事の類型のところは、このままでいいように思いました。内容を少し検討したらどうかということです。
○黒木座長 分かりました。あと、交代勤務のところですね。
中野先生、いかがでしょうか。
○中野委員 ありがとうございます。資料1-4ページの項目1、3、4などの具体的出来事の書き方について、今回のたたき台では括弧書きを外してもらったところですけれども、以前、私もこの括弧書きの使い方について御意見申し上げましたが、個人的には今回お示しいただいたように、括弧がないほうがすっきりしていて分かりやすいと思います。括弧をつけていた趣旨は、例えば項目1であれば、重度の病気やけがに当たらない場合であっても、「弱」や「中」に当たるかどうか評価表に当てはめて検討するのだということを示すためであったと思いますけれども、もし、その趣旨を明記する必要があるのであれば、例えば、評価表の運用上の留意点などとして別途示せばよいのではないかと思いました。
以上です。
○黒木座長 これは別途、何か示す必要がありますか。事務局どうでしょうか。
○西川中央職業病認定調査官 今、中野先生から御指摘をいただいたのは、具体的な当てはめをするに当たって今回括弧を外してしまったので、運用上は当然今やっておりますし、今後もやっていくことになること自体は間違いないわけですけれども、軽度の病気やけがあるいは中程度の病気やけがについては評価しないというわけでもなくて、ここでこのように評価するのだということを何らかの形で示したほうがいいという御指摘だと思っておりますので、共通事項で示すのか、運用の細目みたいなところで示すのかということは、また改めて事務局でも検討させていただきたいと思いますが、御指摘の趣旨を踏まえて対応していきたいと思います。
○黒木座長 それでは、事務局で検討していただくということでお願いいたします。
品田先生、いかがでしょうか。
○品田委員 全体としてとっても分かりやすくなったと思います。議論もしっかり踏まえて、きちんとまとめていただいているなという感想を持っております。ただ、2~3点気づいたことをお話しさせていただきたいと思います。細かい話ですので後でもいいのかもしれないですけれども、一応気づいたので。
まず、2番の悲惨な事故や災害の目撃ですが、「中」である例で「特に悲惨な事故を目撃したが、被災者との関係もなく、傍観者的な立場で」云々とあるのですが、これは表現としてどうかと思います。つまり、関係が全くない人がいるわけではないので、「被害者との関係は浅く」、もしくは「薄く」、もしくは「救助できる可能性は低かった」という形で、「強」との関係における表現を用いたらどうかと思います。
次に4番目、「大きな誤発注」という言葉があるのですが、言葉としておかしいと言いましょうか、大きな誤発注というのは、大きな影響をもたらす誤発注のことなのかもしれないですが、もしそうであればそうすべきだし、そもそも誤発注のみをここで出すことに意味があるのかどうか。全体としてかなり内容を抽象化したにもかかわらず、ここだけ誤発注というかなり具体性のあることが出ていることに、やや違和感を覚えました。実例としてたくさんあるのであれば残してもよいと思いますが、一度検討の余地はあるのではないかと思います。
もう一つ、7番目、これも細かな話ですが、具体的出来事のところで「業務に関連し、違法な行為や不適切な行為」、「違法な行為」はいいと思うのですが、「不適切な行為」は行為だけではなくて、誰に何かを言えというようなこともかつてあった記憶もありますので、「不適切な言動を強要された」という言葉にしたほうが、より対象が広くなって分かりやすいのではないかと思います。
とりあえず以上です。
○黒木座長 ありがとうございました。1つは、傍観者的なところですね。あとは、別に本人が体験したわけではなくて、そこにいたという表現を少し事務局で検討していただくと。あと、「誤発注」と「不適切」という言葉に関して、もうちょっと工夫が必要ではないかということなので、これに関しては事務局で検討していただくということでよろしいでしょうか。
○品田委員 はい、結構です。
○黒木座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。田中先生。
○田中委員 前回の議論では統合しすぎることについての危惧も寄せられたところですけれども、今回提出していただいた案の統合の度合いは非常に適切なものだと思います。似たような類型が並ぶことで「中」が増えてしまって解釈が難しいということも少なからずありますので、これぐらいにまとめていただくと、運用上も助かるなという感じがしています。
別のことについては、吉川先生からありましたけれども、18で作業環境等の変化が出ていますが、総合評価における共通事項のところで職場環境の悪化がありまして、騒音とか照明とかいろいろ書いてあったと思いますけれども、ここで作業環境、職場環境のほうが広い意味ですので総合評価の視点に残しておいてもいいのかもしれませんが、これをある程度詰めることになりましたら、総合評価における共通事項から「職場環境の変化」を外したほうがいいのかなと思ったりもしました。
あと、交代勤務の例の表現ですけれども、「弱」と「中」において本人が会社に事情を申し出ていたか否か、本人の意向に従っていたかどうかが出されているところですけれども、通常、交代勤務においては最初から指定されているところもあり、本人が事情があっても言わない人、もともと言う人がなかなかいないと思うのですけれども、そういった事情もあって、交代勤務や夜勤への変更等について本人の意向やちゃんと申し出ていたかどうかを条件に加えるのは、運用上難しくなるのかなという感じはしております。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。総合評価で作業環境のところを外すかどうかと、夜勤への対応が困難な事情を会社に申し出ていたかどうかに関しては、なかなか難しいということですけれども、事務局のほうでこの件に関しては御意見ありますか。
○西川中央職業病認定調査官 平均的にはIとされている出来事につきまして、どういった場合に「中」になり得るのかを検討したときに、こういった例を一旦出させていただいたところではございますが、判断しにくい要素ではないかという御指摘でございますので、先生方とも御相談しながら検討してまいりたいと考えております。
○黒木座長 また、事務局で検討していただくということになります。
ほかにはいかがでしょうか。三柴先生、何かございますか。
○三柴委員 御指名ありがとうございます。別の項目で総合的な視点のところでお伝えしたいなと思っていることがありますが、この項目についてはとりあえず大丈夫です。
○黒木座長 ありがとうございます。
荒井先生、いかがでしょう。
○荒井委員 事務局に、これまでの議論を踏まえてとてもよく検討していただいて、今、御指摘のあったような点については、事務局で検討していただいて、最終的に決定していただければと思います。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。
丸山先生、何かございますか。
○丸山委員 全体的に項目数もほどよい数になったと思いますし、細かいところまで配慮いただいたと思います。今の総合評価における共通事項のところなのですけれども、私は職場環境の悪化というのは、包括的な意味合いも含めて残しておいたほうがいいかなと思っています。出来事に絡んでそれぞれのところで具体的に検討する事項として細かいことを挙げてもらうのは、それはそれでいいのですけれども、それ以外にも挙げ切れないような内容も多分あるのではないかと思うので、事務局でまた検討してもらえばいいですけれども、私はそのように思っています。よろしくお願いします。
○黒木座長 ありがとうございます。
小山先生のいかがでしょうか。
○小山委員 読んだ限りでは非常にまとまって分かりやすくなったかなと思います。
それぞれの先生方から御意見のあったことは私も感じていたので、そのとおりかなと思っておりますので、それ以上特にございません。
○黒木座長 ありがとうございます。
中益先生、いかがですか。
○中益委員 私も、すっきりまとめていただいたと思っております。特にほかに意見はございません。
○黒木座長 ありがとうございます。
それでは、方向性として御異論はないものと、この考え方、方向性を前提に次に進みたいと思います。
資料1-3ページのB「具体的出来事」の類型1から3、「強」「中」「弱」と判断する具体例や総合評価の視点を示すに当たり、どのような事項に留意すべきかについて検討します。これについては、これまでの議論を基に事務局が作成した別紙が提示されており、これを基に検討してはどうかとのことです。出来事の類型ごとに検討を進めていきたいと思います。
まず、初めに資料1-4「事故や災害の体験」の御意見、これはさっきいただきましたかね。それから「仕事の失敗、過重な責任な発生等」、全体的に御意見いただいたと思いますが、よろしいですか。
では、もう一回具体的に。まず「事故や災害の体験」について、何か御質問ありますか。
○丸山委員 丸山ですけれども、1つ目のことでもよろしいですか。さっき御説明がありました長期間というところですけれども、この前のおおむね2か月以上というのは外すということで、それは多分いろいろな意味で短縮されて、多分今は平均在院日数は28日ぐらいですか、短くなってきているのは分かるのですけれども、案外2か月というのはこれまでの議論の中で使ってきた経緯もないわけではないので、今度は長期間をどう具体的に考えていけばいいかを少し事務局からお示しいただければ理解しやすいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○黒木座長 いかがですか。
○西川中央職業病認定調査官 事務局では、今、丸山先生からも御指摘がありましたように、この項目について10年前と同じけがでの入院期間は短くなってきているのではないかといった状況下で、同じ期間を示し続けておくことの妥当性はいかがものであろうかということも含めて、一方で、1か月と書けるのか、あるいは1か月半なのか、やはり2か月と書き続けておくことがいいのかということも、なかなか正直決めかねる部分もございまして、一旦削除させていただくというたたき台をお示しさせていただいたところでございます。
そういった意味で、この検討会の場ではっきりしたものをお示しいただくことが難しいとするならば、運用上はこれまで書いてあったこと自体は残るわけでございますので、2か月以上であればまずは大丈夫であろうと。2か月より短いときには慎重に検討していかなければいけないだろうという、あまりはっきりしないお答えしかできない状況で恐縮でございますが、そうしたときに判断が難しくなるという課題もあろうかと思っておりますので、非常に悩ましく思っているところでございますが、それ以上に具体的なところはなかなか御回答できないところでございます。
○黒木座長 ありがとうございます。
確かに、病院の役割が非常に分化してきて、急性期の病院、リハビリ、慢性期の病院と分れてきていますから、この辺は荒井先生、いかがでしょうか。
○荒井委員 確かに、黒木先生のおっしゃるように、病院の性質によって入院期間が相当違いますので、2か月という数字を出してしまうと、それに満たないということで受け入れられないという場合が発生し得ると思いますので、ある程度のその病院にとっての「長い」という、運用上はそのように扱っていただければいいのではないかということで、2か月という具体的な数字をお示ししないほうが運用上も楽になるのではないかと思います。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。
急性期は、本当にすぐリハビリになると転院してしまうし、しかし、リハビリ病院で数か月かかるとか、あるいは半年以内と決められているので、その辺でこれは重度の後遺症を残すという判断ができるので、ここの2か月は消してもいいのではないかという気もします。
ほかにいかがでしょうか。中益先生、いかがでしょうか。
○中益委員 非常にささいな点なのですけれども、1の出来事の類型には業務上の事故や災害であることは特に書かれていないわけですけれども、具体例を見れば業務上のものであることが分かるのですが、2の項目番号3などは「業務に関連し」ということがついておりますので、ここも業務上の病気やけがであることが分かるほうが、バランスはよいのかなという感じがいたします。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。
品田先生、いかがでしょうか。
○品田委員 ここで1つずつやるとは思いませんで、先ほどまとめて言ってしまいました。議論の仕方として、論点1の(2)はどのような事項に留意するべきかという形で書かれているので、全体として「弱」「中」「強」の書きぶり、もしくは全体の状況をどのようにするべきかという議論かと私は理解したのですが、その中で、ちょっと気になるのは、14と18の「強」の部分については解説という形になっております。従来のものの中には「『強』となることはまれ」という形での表記があって、正直言ってかなり違和感を持っていたのですが、そういう意味において解説という形で書かれるのはまだいいと思うのですが、しかしながら、できれば14も18も「強」となる例があり得るのではないかという気もしますので、実際上はまれでしょうけれども、そうした状況が想定されることによって、より出来事の類型の意味があるのではないかと、認められるのではないかと感じますので、少しここは検討したほうがよいかと思います。
次回やる中においては「強」となる例が考えにくい部分もあるでしょうから、解説という形で置くことが絶対に駄目というわけではない、私の意見としてはそうです。しかしながら、この2つについては「強」となる例を想定することは不可能ではないのではないかという気がするので、できたら検討してみたらどうかと思います。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。結果的には個別ということになるので、そこで「強」の事例を総合的に考えると「強」として考えるということは当然あり得るわけですから、ここはまた事務局で考えていただければいいかと思います。
ほかにはいかがでしょうか。田中先生、いいですか。
○田中委員 特にございません。
○黒木座長 小山先生、いかがですか。
○小山委員 特にありません。
○黒木座長 ありがとうございます。
それでは、先ほどからこの部分は意見が出ましたので、次に進ませていただきます。
「仕事の量・質」に関しても御意見が出たと思いますけれども、何かこれに関して付け加えることとか、ここは強調しておきたいということがございましたら、御意見いただければと思いますが、よろしいでしょうか。
三柴先生、いいですか。
○三柴委員 私からは対象疾病に関することと労働時間の算定について、ちょっとだけ申し上げたいと思っているのですけれども、今、具体的項目の話だったと思うので、この項目については大丈夫です。本当に事務局の方、よくおまとめになられたなと思っております。
○黒木座長 中野先生、いかがでしょうか。
○中野委員 発言のタイミングを逃してしまいました。2の「仕事の失敗、過重な責任の発生等」に分類される出来事になるのですけれども、資料1-7ページの項目11です。「顧客や取引先から対応が困難な注文や要求等を受けた」ですけれども、「対応が困難な」という表現にすることによって、いわゆるカスタマーハラスメントなどとの区別を明確化していただいたと思います。ただ、一方で、総合評価の視点の「中」の具体例の箇条書き2点目、「業務に関連して、顧客等から納品物の不適合の指摘等その内容が妥当な指摘・要求を受け、その事後対応に従事した」というのが、これは従前から掲載されていた事例なのだと思いますけれども、対応が困難とは言えないのではないかという問題が逆に発生してしまっているのではないかと思います。この事例が心理的強度「中」として、この項目として評価される趣旨が分かりにくくなってしまっているのではないかというのが疑問点になります。
○黒木座長 ありがとうございます。この件は何か根拠、事例があるのですよね。
○西川中央職業病認定調査官 今、中野先生から御指摘がございましたけれども、現行の12番の「中」の具体例で、「業務に関連して顧客からクレーム(納品物の不適合な指摘等その内容が妥当など)を受けた」というものが現状で示されておりまして、そこからこの具体例は書かせていただいたものですが、それをここでもともと想定しているのは指摘が妥当だからといって、対応が簡単とは限らないことを想定して、例えば、納品物の型が合っていないというときに、いついつまでに間に合わせて納入しなければいけない。これは、指摘そのものは非常に妥当なもの、ある意味当然のものとなるわけですが、その対応が必ずしも容易とは限らないという趣旨、対応としてなかなか大変な場合もあるということで、以前から「中」の具体例として記載されていたと理解してございますけれども、今、先生から御指摘をいただいたのは、そのまま持ってきたことによって、指摘の内容が妥当、嫌がらせではないことだけは分かるけれども、対応の容易さ・困難さについては例の中に盛り込まれていないので、そこで見出しと具体例が必ずしも整合していないように読めるのではないかという御指摘と承りましたので、そこは整合がとれるようにさらに修正を加えたいと考えます。
○黒木座長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
○中野委員 御対応いただければと思います。よろしくお願いします。
○黒木座長 ありがとうございます。
ほかには何か御意見ございますか。なければ次に移らせていただきます。委員の皆様の御意見を事務局で取りまとめをしていただきたいと思います。
それでは次に、資料1-3ページのC、評価表における労働時間についての考え方を分かりやすく示すことについて、医学的知見の状況等を踏まえ、どのように考えるかについての検討に移ります。こちらも引き続き事務局が作成した別紙のたたき台を参考に検討を進めたいと思います。御意見・御質問があれば御発言をお願いいたします。
三柴先生。
○三柴委員 診断名や診断方法の詳細等については、専門の先生方にお任せ申し上げるという前提で、枠組み的なところについて一言だけお尋ねをさしあげたいのですけれども、最近は大分減っていると思うのですが、過去、行政の決定について審査された裁判例においては、何らかの精神障害に罹患していたというぼかした表現があったと思います。労災認定では少ないとしても民事損害賠償請求等では結構あったと思うのですが、事後的に診断名を確定することはマストなのかについて、以前議論があったかもしれませんけれどもお伺いしたいと。
例えば、ICD-10のF4で分類不明というのがありますから、分類不明という医師の診断があればいいということになるのか、そこまでは労災認定実務上要求することになるのか、それとも、確定はできないけれども精神障害への罹患が認められればいいということになるのか、そこについて教えていただければと思います。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。認定実務例はかなり精神疾患を診断すると。特に医療機関を受診していない事例については、何らかの精神疾患としか言いようがないという事例も中にはあると思います。精神科の荒井先生、いかがでしょうか。
○荒井委員 今、御指摘があったように、ICD-10あるいはDSM-5について、現在の運用上は何らかの精神障害というものを、アメリカではその他特定できないものとして分類しているものが非常に多くございます。ですから、我々も厳密にやっていくと特定できないけれども、例えばF4のどこかに入るという判断をせざるを得ない局面が多いので、何らかの精神障害というより、もう少しICD-10あるいはDSM-5、ICD-11の精神及び行動障害のどこかに位置づけられるのだということを少し具体的に示すことが、例えば、我々の医師としての業務・責任を持って判断するということではないかと思います。
以上です。
○黒木座長 なかなかICD-10分類にしっかり当てはめるということは難しいことですけれども、それでも可能な限りICD-10分類に近づける可能性があれば、具体的にはそういう形で荒井先生がおっしゃったような運用で行くというのが適当かなと思います。
部会に関わっている田中先生、いかがでしょうか。
○田中委員 実際我々が作業をしていても多くの診断書にうつ状態とか自律神経失調症とか、もともとICD-10の中にないようなものもたくさん含まれています。また、全ての診断分類には「その他の〇〇障害」、「詳細不明の○○障害」といった診断名も設けられています。裁判などでも、病名がうつ病であれ適応障害であれ、診断名によってその後の議論の方向性が変わることもなく、何らかの精神障害を発症していたことだけが確認されればそれで済むようなことも多いのが実情と思います。
また、部会審査でも、主治医からうつ病性障害といった診断名が出たとしても、本当に診断基準を満たしているのかカルテの記録を見てもきちんと確認できないケースも少なくなく、きちんとした診断名の特定は現実に難しいケースもありますしその意義もどこまであるか悩ましいと思います。
○黒木座長 ありがとうございました。
丸山先生、いかがですか。
○丸山委員 それですが、できればFの3桁まで診断名をつけられれば一番いいと思うのですけれども、2桁だったり、1桁だったり、「うつ状態」とだけ診断名にあっても、それがF4かF3かぐらいは全く検討つかないわけではなくて、例えばうつ病であればF3ですよね。適応障害であればF4ですけれども、その辺までは専門家であれば大体区別がつくので、何桁までということで、よく分からない精神病みたいな感じのつけ方はしないと思います。ですから、おおむねある程度つけている。そして、大事なのは主治医の意見です。それが基本であって、おかしいなということもないことはないわけですけれども、覆すには相当な根拠がなければいけないので、カルテからどれだけ拾えるかというのは、これまた悩ましいことがあります。ですから、基本的には主治医の意見を尊重しながら、3桁は難しい、例えば、かなり古い例であればより難しくなりますが、1桁ということは極めて少なく、大体2桁まではつくのではないかと思っています。そのようにやっているのが現状です。
○黒木座長 ありがとうございます。なかなか難しい側面があるということです。
三柴先生、よろしいですか。
○三柴委員 ありがとうございます。私はその道の専門ではありませんけれども、労災認定においては目的・趣旨志向が望ましいのかなと基本的には思っております。大変丁寧な御回答ありがとうございました。
○黒木座長 ありがとうございます。
品田先生、いかがでしょうか。
○品田委員 今ほどの話ですけれども、実務的に言えば何らかの疾病を発症したと考えるという表現は致し方ないことでありまして、御本人が自殺されている場合や受診の履歴がないような場合において、しかしながら様子が変だったという場合には、そういう表現を使うことは通例あることなので、これは本来医学的な診断における疾病名が明確にされることが原則ですけれども、そうした場合があることは致し方ないのかなと思います。
質問は違うのですが、医学的な知見の状況等を踏まえということですが、医学的な知見ではなくて、法律的な知見から質問させていただきたいのですが、たたき台の中において最後に時間外労働時間、連続勤務日数に関する注というものがあるのですが、これについても議論してよろしいのでしょうか。
○黒木座長 大丈夫です。
○品田委員 従前の認定基準表にはこうした表記はなかったと思うのですが、これを表記するのであれば、より内容を具体化しておかなければならないかと思います。まず、労働時間について一日40時間を原則とするということであれば、これは所定労働時間ではなくて法定労働時間を基準としたものだということを表明しているかと思いますが、そうなった場合、例えば1年以内の変形制を会社側がとっていた場合においても、この40時間は維持された、この考え方は維持されるのかどうか。ともかく何があっても40時間を超えているという基準をもって80時間、100時間というものを考えるのだということなのか、この点確認が必要かと思います。
続いて、連続勤務等について、一日当たりの労働時間について「手待時間が多い場合」云々という表現があるのですが、これは法律家の方は御承知のとおり、41条3号において監視・断続的労働については許可を受けた場合において認められるという話になるのですが、ここで言う労働の密度が特に短い場合というのは、そうした許可を受けた場合を想定するのか、そうでない場合も内容を見て判断するのか、その点も明確にしておく必要があろうかと思います。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。ただいまの御意見、何か事務局からありますか。
○西川中央職業病認定調査官 事務局からこれについて御指摘に答えつつ、補足で御説明させていただきたいと思います。
まず、最初に御指摘のありました週40時間を超える部分でございます。こちらにつきましては、現行認定基準の本文に時間外労働時間数という記載に括弧書きを記載してございまして、そこに「週40時間を超える労働時間数をいう(以下同じ)」という認定基準の本文での記載がございます。こちらは運用上もそういった形にしておりまして、法定労働時間が週44時間の事業場においても、あるいは変形制等において、その週においては48時間が法定内で合法にできるような場合においても、また逆に、その週は36時間と設定されているというような週においても、そういったことには関わりなく、今の労災認定実務上は実際の労働時間数が、その週で、7日で刻んだときに40時間を超えているかどうかを検討いたしまして、40を超えている部分を時間外労働時間数とカウントいたしまして、それを30日間分足し合わせるという形で、1か月の時間外労働時間数を算出して運用している状況でございます。趣旨としては、そういった形で今後も運用していくことを想定して書かせていただいているものでございます。
また、手待時間が多い場合につきましては、現行の評価表では極度の長時間労働の部分などにそういった括弧書きでの記載をさせていただいております。運用といたしましては、基本的には今先生のおっしゃられました監視・断続的労働の許可が得られるような労働実態であることを想定している。現に許可を取っているかどうかよりも、許可基準を満たすような労働実態であれば、これは少なくとも労働密度が特に低い場合に該当すると考えての運用をしているところでございます。
併せて、「その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものである場合」、こちらの注につきましても現在の運用で、通常その程度の労働時間を要することを前提としての労働時間の評価であることを想定して現在運用しておりますので、こういった注の示し方とさせていただいたところでございます。
全体といたしまして、現行の運用と変えているつもりはなくて、ただ、注の書き表し方として全体に共通した注になるように示させていただいたつもりではございますが、今回の検討会において、こういった形でこういったことを示したほうがいいという御指摘があれば、対応させていただきたいと思ってございます。
○黒木座長 ありがとうございます。
品田先生、よろしいですか。
○品田委員 もちろん従来のものは存じ上げておりますけれども、私は従来のままがよいと考えております。わざわざこういう形で評価表の中に注を書くことはあまり望ましくないと思います。
以上です。
○黒木座長 それでは、ここはまた検討していただくということで、よろしくお願いします。
次に、中野先生、よろしくお願いします。
○中野委員 今も品田先生から御指摘出ていたところなのですが、時間外労働時間に関する注の※1で、「その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものである場合」という注記がどのような趣旨で入れられているのかを教えていただきたいと思います。例えば、当該労働者の能力不足などにより通常よりも長時間かかってしまうような場合には、それなりの心理的負荷がかかりそうではあるのですけれども、そのような場合は例えば、項目8のノルマや項目15の仕事量の問題として評価することはあっても、時間外労働時間の問題としては評価しないということなのでしょうか。その点を教えてください。
○黒木座長 事務局よろしいですか。
○西川中央職業病認定調査官 実際に運用上こういった取扱いが問題になるのは、能力不足というよりも、例えば、その時間なぜ職場にいて働いていらっしゃったことになっているのかが業務量との関係からしてよく分からない場合に、それは確かに外形的に、例えば80時間、65時間だったからといって、それをそのまま評価するのかどうかが悩ましい場合を想定して記載させていただいているものでございます。
これで御回答になっておりますでしょうか。
○黒木座長 中野委員、よろしいですか。
○中野委員 分かりました。ありがとうございます。
○黒木座長 例えば、うつ病でもうつ病が発症してしまうと能力が落ちるので、そうすると普通にできたこともなかなかできない、そのために時間が発生することも当然あるので、先ほど事務局がおっしゃったような、外形的、ある程度拘束されてその分仕事をしているのは評価すべきかなと私は思います。
三柴先生、お待たせしました。
○三柴委員 これはちょっと議論を呼んでしまうのかもしれないのですけれども、やはり労災認定実務上、労働時間をどう算定するかは非常に重要な課題だと思っています。もちろん学問上の議論もあるわけですけれども、私の考えでは、ここはある種バッファーになっている面があるのではないかと思います。私自身の考え方の基本は、労災認定というのは趣旨・目的を大事にしながら、政策的な考慮もしていくべきものという考えなので、その前提で、先ほど西川さんからもお話があったように、労基法上の労働時間とは概念が違うというのはやむを得ないと思っています。そこで、どこにそれを書き込むのがいいのか分からないのですが、あるいは書き込むのがいいのかも分からないのですけれども、「なお、労働時間の算定は労基法上の考え方を基本としつつも、労災保険制度の趣旨等個別の事情を踏まえて行う」といったような一文を入れてもいいのかなとは思っています。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございました。これは、また事務局で検討していただくということでよろしいですか。何か御意見ありますか。
○西川中央職業病認定調査官 今の三柴先生の御指摘に関しての御説明となりますが、時間外労働時間については、起算点やどこの7日間で40時間を超えると判定していくかという点などで、労基法上の取扱いとは異なってくるわけでございますけれども、一方で、何を労働時間と考えるかについては、労基法上の考え方と異なる運用をしているつもりはございませんで、あくまで労働基準法に従って労働時間と判断される部分を労働時間として労災においてもカウントしていくという形で運用をさせていただいている状況でございますので、その点については念のため御説明させていただきたいと思ってございます。
○黒木座長 ありがとうございます。
三柴先生、よろしいでしょうか。
○三柴委員 事務局としてそのように整理されているということでしたら、これ以上申し上げないのですけれども、実際問題、司法判断においても労災保険法上は、特に精神の場合は業務上の負荷の認定の材料として労働時間を考えているために、労基法上の基準よりは認定する、しないの双方向で緩やかに考えていると思うので、御一考いただければという程度です。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございました。
ほかに、時間外のところで御意見ございますか。
それでは、時間外労働に関しては、事務局の説明でもライフイベント調査結果について言及があったところですが、その結果を踏まえても現行認定基準が採用している時間数は妥当であり、医学的にも見直しが必要とは言えないということになろうかと思います。
そのほか委員の皆様の御意見は、事務局で取りまとめをお願いします。
本日最後の検討項目になりますが、資料1-9ページ「精神障害の労災認定要件」についてです。
初めに、精神障害の労災認定要件のうち「1 対象疾病を発病していること」について、医学的知見の状況等を踏まえ、妥当なものと考えてよいかということになります。対象疾病については、特定の病気、すなわち対象疾病と業務上の要因との関係性を明らかにしたものが認定基準になりますので、特定の病気、本検討会では精神障害になりますが、これを発病していることは本認定基準を運用する際の前提になるのではないかと思います。この件に関して御意見・御質問があれば御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
お願いします。
○丸山委員 診断基準とも絡むことかもしれないですけれども、さっきの労働時間で今回大きく変わったのが、16、1か月に80時間以上の時間外労働を行ったという項目の(注)をとる。これは、出来事を1か月のスパンでとっているわけですよね。「強」になる場合にはもっと広い幅になっていくので、ほかの項目と比べるとかなり期間が広く、例えば、適応障害などの出来事はそんなに長いスパンの出来事を多分想定していないので、今の認定基準の評価に恒常的長時間労働の評価がありますよね。前後で100時間を評価していく、「中」であれば出来事の前あるいは後に評価していく。「弱」であれば前後を評価していく。項目16をある意味積極的にとっていくと、うまく整合性がとれるかどうか。時間的に齟齬が出ないのかどうか心配するのですけれども、以前のように積極的にとらない、他の項目で評価されない場合にのみ評価するということであれば、そういう問題は起きにくかったと思うのですが、その辺が診断とも絡んでくるところなので混乱しないか検討が必要だと思うのですが、事務局で何か付け加えて説明していただければありがたいのですが、いかがですか。
○黒木座長 では、ここを説明していただけますか。
○西川中央職業病認定調査官 現行基準におきましては、出来事は基本的には出来事プラス出来事後の状況も含めて出来事だと考えていることと相まって、項目16以外にも幅がある出来事が多数あるのかなと考えてございます。ノルマの関係についても課されたポイントだけではなくて、これに対応し続けているという間も出来事として考えた場合に幅が出てくるというところで、適応障害が出来事からおおむね1か月、長くても3か月というような判断をされるときに、その出来事はスタートだけを見るのかどうか私どもとしては理解が追いついていないところもあるのですけれども、一定の幅がある出来事のその幅の1か月以内と3か月以内、6か月以内という状況で発病することはあり得るのか。そこで大きな問題が生じると考えていなかったために、このたたき台になっておりますが、先生方の目から御覧になられてよろしくないのではないかという御懸念があれば、また御指摘を踏まえて対応していきたいと思いますので、どのようにしたらいいのかも含めて様々御指摘をいただければありがたいと思います。
○黒木座長 丸山先生、いかがですか。
○丸山委員 その点ですけれども、先ほど言いました総合的評価における共通事項に職場環境の悪化がありましたよね。これはある程度スパンがあって構わない状況だと思いますけれども、その後の評価とうまく整合性がとれるかが心配なんです。つまり、ライフイベントの研究でも、もともとそんなにスパンをとるような出来事を取り上げているわけではないです。せいぜい1か月以内です。例えば、ラザルスのデイリー・ハッスルズでも、この1か月の間でという聞き方で捉えているんですね。ということは、それよりも基本的には短いスパンの出来事。出来事で捉えるのであれば、そういう形になりますし、少しスパンが広がるのであれば、総合的な評価における共通事項で評価していくほうが整うのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。そもそも1か月80時間以上というのが、ほかの出来事と比べるとちょっと異質ですよね。その辺が今度、多分これをいっぱい取り上げることになると思うんですよ。そうすると、複数の出来事の全体評価にも影響してくるので、かなり慎重に議論しておかないと混乱が起きるので、よろしくお願いします。
○黒木座長 ありがとうございます。
何かほかの先生、御意見ございますか。荒井先生、いかがですか。
○荒井委員 慎重に考えていくのは当然必要だと思いますが、「中」が幾つかある場合にどんなふうに方針を立てていくのかということを我々は考えながら事案に対応しているわけですが、労働時間と出来事とのセットで一定程度考えているところはございます。ですから、事務局からの御提案について、我々は基本的にはそういう考え方で進んでいるということでよろしいのではないかと思います。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。
この件に関しては、事務局で少し丸山先生のおっしゃったことも含めて検討していただくことにさせていただきたいと思います。
ほかにはよろしいですか。時間も迫ってきておりますので、次に進めさせていただきます。
最後になるのですが、資料1-9ページのBです。現在の認定基準ではICD-10に依拠して対象疾病を定めているところですが、現在ICD-11の日本語訳が作成中の状況にあり、対象疾病はその確立を待って別途検討する必要があるのではないか。その間は、現行認定基準の対象疾病の考え方を当面維持することが適当ではないかという事務局からの提案になります。この件に関して御意見ありますか。
田中先生、いかがですか。
○田中委員 ICD-10から11への移行は大変大きな動きですので、その確立を待ってからすべきだと考えております。一番疾病として多い適応障害も、適応反応症という名前になるのかもしれませんが、そういったものについての概念は随分違ってきます。これまでより個人的な要因が重視された形でICD-11では位置づけされることになりますし、他の疾患分類においても違いが生じることになりますので、対象疾病も11の確定を待って11に従って決めていくべきだと思っております。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。
小山先生、いかがですか。
○小山委員 ICD-11の訳がいつ出てくるかよく分かりませんけれども、精神学会の運用検討委員会でもその訳をどうするかというのは、かなり検討しておりますので、そのうちに出るとは思うのですけれども、そうなれば先の長い話ではないので、11が出てから考えたほうが、今10で決めてしまって、それを変更していくというのは難しいかなと。11でかなり解釈が違ってきているところがありますので、11を待ってもいいかなとは思っています。
以上です。
○黒木座長 ありがとうございます。
精神神経学会では一応、連載で全部訳は出ているのですけれども、今回のICD-11はかなり変更があります。つまり、障害を症という形にしているとか、あるいはICD-10ではストレス関連のところに入っていたものを精神疾患から抜いて、違う精神的な健康に与える要因に入っているものもあるので、この辺もどう考えていくのかとか、精神神経学会から訳が出てから考えていかれるのがいいかなと思います。
それでは、本日の議論はここまでにしたいと思います。委員の皆様、様々な御意見ありがとうございました。本日の議論を通じて御意見・御質問があれば御発言をお願いします。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、本日の検討会はこれで終了といたします。どうもありがとうございました。
あと、事務局から何かございますか。
○本間職業病認定対策室長補佐 長時間の御議論ありがとうございました。次回の検討会の日時・開催場所につきましては、後日改めてお知らせをさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、お忙しい中、大変ありがとうございました。