2022年10月4日第1回「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会」議事録

日時

令和4年10月4日(火)10:00~12:00

場所

オンラインによる開催

出席者

構成員

議題

  1. (1)主な検討事項について
  2. (2)今後の検討の進め方等について
  3. (3)その他

議事

議事内容
○事務局 定刻となりましたので、これより第1回「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様におかれましては、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。
本会議は、資料、議事ともに原則公開としており、議事録については、後日、厚生労働省のホームページにて掲載予定となっております。
また、本会議は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、報道関係者及び一般の方の傍聴は御遠慮いただき、会議の模様をYouTubeによるライブ配信にて公開いたしますので、御承知おきください。
本日は、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長の辺見が公務のために欠席となりましたので、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課障害児・発達障害者支援室長の栗原より開会の御挨拶を申し上げます。
○栗原室長 どうも皆さん、おはようございます。厚生労働省障害児・発達障害者支援室長の栗原でございます。
本日、公務のため欠席となりました障害保健福祉部長の辺見に代わりまして、私のほうから一言御挨拶を申し上げます。
初めに、委員の皆様方におかれましては、日々大変御多忙の中、委員就任に御快諾をいただき、誠にありがとうございます。
また、本日は第1回目の検討会に御参集いただきましたことを重ねて御礼申し上げます。
皆様御存じのとおりのことですけれども、先般の社会保障審議会障害者部会において、障害者総合支援法改正の施行後3年の見直しにつきまして議論を重ねていただきました。その中でも、強度行動障害を含む重度障害者の支援体制の整備について多くの御意見をいただきました。
自閉症や知的障害の方で強度行動障害を有する方につきましては、その特性に適した環境調整や支援が適切に提供されない場合には、本人の困りごとが著しく大きくなって、行動上の課題が引き起こされてしまいます。適切な支援の継続的な提供が必要であるものの、現実には障害福祉サービスの受入れが困難で家族の重い負担となっていたり、受入事業所において適切な支援を提供することができず、意欲のある支援者が疲弊してしまうという中で、本人の状態像が悪化したり、虐待につながってしまう等の実情もあると考えております。
こうした現状を踏まえまして、厚生労働省といたしましては、今回、この強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会を開催させていただくこととなりました。この中では、強度行動障害を有する方の地域支援体制の在り方とか支援人材の育成・配置、支援対象者の評価基準の在り方などについて御議論いただきまして、今後の各施策に反映させてまいりたいと考えております。
委員の皆様方には、それぞれの立場から忌憚のない御意見を頂戴できればと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 では、カメラ等の撮影はここまでになりますので、よろしくお願いします。
本日は第1回目ですので、構成員の皆様を五十音順で紹介させていただきます。お顔とお名前が一致しますように、事務局からの御紹介の後に、Zoomのミュート機能を外していただき、よろしくなど一言だけ御発声いただきますようにお願いいたします。
まずは、独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター療育指導課長、會田構成員です。
○會田構成員 よろしくお願いします。會田です。
○事務局 続きまして、一般社団法人日本発達障害ネットワーク理事長、市川構成員です。
○市川構成員 よろしくお願いします。
○事務局 続きまして、一般社団法人日本自閉症協会理事、井上構成員です。
○井上構成員 よろしくお願いします。
○事務局 続きまして、一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合専務理事、田中構成員です。
○田中構成員 よろしくお願いします。田中です。
○事務局 続きまして、特定非営利活動法人日本相談支援専門委員協会理事・事務局次長、橋詰構成員です。
○橋詰構成員 橋詰です。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 続きまして、公益財団法人日本知的障害者福祉協会副会長、樋口構成員です。
○樋口構成員 よろしくお願いいたします。
○事務局 特定非営利活動法人全国地域生活支援ネットワーク理事、福島構成員です。
○福島構成員 福島です。よろしくお願いします。
○事務局 続きまして、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園研究部部長、日詰構成員です。
○日詰構成員 日詰です。よろしくお願いします。
○事務局 一般社団法人全日本自閉症支援者協会会長、松上構成員です。
○松上構成員 松上でございます。よろしくお願いします。
○事務局 札幌市保健福祉局障がい福祉部障害福祉課自立支援担当課長、渡邊構成員です。
○渡邊構成員 渡邊と申します。よろしくお願いいたします。
○事務局 本日は、以上10名全員の構成員の皆様に御出席をいただいております。
次に、事務局の職員ですが、配付しました座席表をもって紹介を省略させていただきます。
続きまして、資料の御確認をさせていただきます。
配付資料のとおり、議事次第、開催要綱のほかに、資料1、資料2、資料3及び参考資料1~3となっております。
不足等がございましたらば、事務局までお申しつけください。
また、事務局から資料について御説明させていただいた後に、構成員の皆様に御議論いただきますが、発言される場合は、Zoomの「手を挙げる」機能を使用していただきますようにお願いいたします。
発言者はこちらから指名させていただきますので、指名に基づき、Zoomのミュート機能を外していただき、御発言が終わりましたらば、またミュートしていただきますようにお願いします。
挙手しているにもかかわらず、発言希望の御意思が会場に伝わっていないと思われる場合は、オンライン会議システムのチャット機能等で会場へ御意思をお伝えいただくことも可能ですが、原則としては挙手にて意思表示をお願いいたします。
続きまして、検討会を開催させていただくに当たり、会議の進行役である座長の提出を行いたいと思います。
座長は構成員の互選により選出となっておりますので、どなたか御推薦いただければと思います。
○松上構成員 松上です。
市川構成員にお願いしたいと思います。
○事務局 松上構成員、ありがとうございます。
皆様、市川構成員の御推薦がありましたが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(構成員首肯)
○事務局 それでは、本会議における座長は市川構成員にお願いしたいと思います。
それでは、市川座長より一言御挨拶いただきたいと思います。
○市川座長 御推挙いただきました市川でございまして、よろしくお願いいたします。
○事務局 ありがとうございました。
続きまして、市川座長の指名により、座長代理の選任を行わせていただければと思います。
○市川座長 私のほうからは、日詰構成員を副座長としてお願いしたいと思います。
○事務局 ありがとうございます。
それでは、座長代理を日詰構成員にお願いしたいと思います。皆様、いかがでしょうか。
(構成員首肯)
○事務局 ありがとうございます。それでは、日詰構成員にお願いしたいと思います。
日詰座長代理より一言御挨拶をいただきたいと思います。
○日詰座長代理 ただいま座長代理に御指名いただきました日詰です。
座長の進行が円滑に進むようサポートしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○事務局 ありがとうございます。
それでは、以降の議事進行につきましては、市川座長にお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○市川座長 それでは、早速議事に入りたいと思います。
議事の「(1)主な検討事項について」、「(2)今後の検討の進め方等について」、「(3)強度行動障害児者の実態把握等に関する調査報告」、併せて事務局より資料の説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、資料1、資料2、資料3に基づいて御説明をいたします。
まず、資料1を御覧ください。
資料1が、この検討会の主な検討事項の案でございます。
1ページ目は、論点①としまして、強度行動障害を有する者の地域における支援体制の在り方についてどのように考えるかということで、(1)地域の中での日常的な支援体制としてのグループホームや障害者支援施設、その他サービスの役割、課題と対応、(2)在宅における支援の課題と対応、(3)状態が悪化した者に対する集中的支援の在り方(地域の中で複数事業所で継続的に支えていく仕組みの構築)、(4)強度行動障害を有する者及び家族に対する相談支援やサービス等に係る調整機能の在り方といったことについて論点として設定しています。
なお、下段には、この6月に取りまとめられました障害者総合支援法施行3年後の見直しに関する社会保障審議会障害者部会の最終報告書から、論点に該当すると思われる部分を抜き出して記載しています。
次に、2ページ目でございますが、論点②強度行動障害を有する者の支援人材の育成・配置についてどのように考えるかということで、(1)十分な専門性を持って日常的な支援を担う中核的人材、高度な専門性を持って困難事例等に対する助言ができる指導的人材の育成、(2)中核的人材に対する指導的人材の支援体制の在り方、地域の中での配置、ネットワークの構築といったことについて論点として設定しています。
最後になりますが、3ページ目、論点③支援対象者の評価基準の在り方について、適切な支援を行う観点からどのように考えるかということで、(1)行動関連項目による評価の課題と対応、(2)行動障害が特に強い状態にある者に対する評価の在り方ということについて、論点として説明しています。
以上が資料1「主な検討事項」の内容でございます。
続きまして、議事の「(2)今後の検討の進め方等について」でございますが、資料2を御覧ください。
資料2の1ページ目は、今後のスケジュール案でございます。
本日の議題が上のほうに書いてございますが、今月もう一回検討会を開催させていただきまして、実践報告の場を設定させていただく予定でございます。
その上で、来月11月から各検討課題について御議論いただきまして、年度末までに論点整理と報告書の取りまとめを行っていく予定にしております。
2ページ目を御覧ください。
先ほど御説明しました実践報告について、強度行動障害を有する者に関する実践を共有することで、現状の課題や今後の方向性を検討する材料としてはどうかということで、1事例10分程度で、人材育成についての実践、グループホームや施設入所支援の実践、状態が悪化した者に対する支援の実践、医療現場での実践、その他といった内容で御報告いただくことを考えています。
具体的に御報告いただく施設や業者については、次回までに座長とも相談の上で調整をさせていただきたいと思います。
次に、議事「(3)強度行動障害児者の実態把握等に関する調査報告」について説明いたします。
資料3を御覧ください。
こちらは、令和3年度障害者総合福祉推進事業という研究事業で実施した調査でございます。
資料の2ページ目に取りまとめ部分の抜粋が示されています。
調査に当たって設定された3つの作業仮説に対して、まず、1の現在、強度高度障害者(児)の国内の人数はどれくらいかということについて、障害支援区分認定調査結果データを活用して強度行動障害者(児)数の推計を行ったところ、1年間に障害支援区分認定調査を受けた26万7569件分のデータのうち、行動関連項目の合計点が10点以上は約15%であり、20点以上の人は約2.2%であったということでございます。
作業仮説2の強度行動障害者(児)のうち、サービス等につながっていない人数はどれぐらいか。また、サービス等につながっていてもニーズが満たされていない人数はどれぐらいか。さらに、その状況はどのようなものかというところでございますが、全国の市区町村への質問紙調査から、障害福祉サービス等につながっていない強度行動障害者(児)は1自治体当たり0.5人、障害福祉サービス等につながっているがニーズを満たされていない強度行動障害者(児)は1自治体当たり2.98人と推計することができたということでございます。
また、作業仮説3の家族や支援者の困難さや負担が大きい状況とは具体的にどのような状況か。また、家族がサービスにつながるまでの期間やプロセス、支援の負担がどのような部分かということに対して、事業所や家族へのヒアリング調査を通して整備をしたということでございます。
これらの調査結果を踏まえ、強度行動障害者(児)のよりよい支援に向けた課題として、この研究では以下の4点が挙げられています。
1、各自治体による強度行動障害者(児)の把握方法の検討。
2、強度行動障害者(児)を支援する障害福祉サービス等事業所の支援の困難さのどの部分に施策を要するのかに関する具体的な検討。
3、障害福祉サービス等の報酬上評価する強度行動障害者(児)の範囲に関しての検討。
4、強度行動障害者(児)が安定した暮らしをするための支援プロセスの把握。
以下、次のページからは調査の具体的な結果が示されているところでございますので、詳細の御説明は省略いたしますが、幾つか見てまいりますと、まず、5ページで障害支援区分ごとの行動関連項目の点数分布について示されております。15点、18点、20点以上というところでパーセンテージを示しております。
次に、6ページ目は行動関連項目ごとの合計点数の分布で、項目ごとに分布にばらつきがあることがあります。
7ページ目は、障害種別と合計得点の分布となっております。
8ページ目は療育手帳と合計得点の分布、9ページ目は年齢と合計得点の分布となっております。
10ページ目からは少し具体的なものになりますが、自治体調査結果におけるサービスにつながっていない事例の具体的な内容、利用を断られて自宅に閉じこもっておられることや、行動障害によって支援や生活が困難になっているような事例が見られています。
11ページ目は、サービスにつながっているがニーズが満たされていない事例ということで、利用を希望しているサービスでは施設やグループホーム、短期入所などが上位に挙げられています。
12ページ目は、利用ができなくなった理由等について、本人の行動に起因する理由、それ以外の理由でまとめられています。
13ページ目、今度は事業所調査で支援が困難になる事例をまとめたものですが、自傷や他害、物壊しなどに加え、突発的な行動や逆に行動停止による支援困難事例なども挙げられています。
最後、14ページ目ですが、事業所における支援の困難さに影響を与える要因を整理した資料となっています。
以上、少し長くなりましたが、資料1から3の御説明を終わります。
○市川座長 ただいま、議事の(1)、(2)、(3)について御説明いただきました。
議事の(1)~(3)までの御意見等を含めまして、今回は第1回ということで、強度行動障害支援の現状、課題や今後の方向性等について、構成員の皆様にお一人5分ずつぐらいで御意見を賜りたいと思います。
私の手前にあります画面から名前をお呼びいたしますので、お一人様5分ぐらいでお願いいたします。
會田構成員、お願いいたします。
○會田構成員 よろしくお願いします。国立病院機構肥前精神医療センターという療養介護の病棟で強度行動障害の方の治療をしている医師になります。
医療の現場のことで言いますと、以前は最後のとりでという形で医療に強度行動障害の方が来られることが多かったのですけれども、近年は障害福祉の中での強度行動障害支援者養成研修等の拡大を受けて、地域の中で拠点として医療が関わって、なるべく地域の福祉サービスを利用して過ごしていただくというのを目指しております。
ただ、そんな中でも、図らずも入院になられて、入院が長期化しているという方がかなりたくさんおられるというのが全国的な調査でも分かっておりますし、短期入院という形を目指して来られた方でも、退院・受入れの段階になって、在宅、御家庭や事業所が受入れ困難であるという事例も多々あります。
当院は専門的な病棟ですので、例えば入院中に利用できる行動援護という福祉サービスを医療の中でも利用していただきながら地域移行を促進したり、あるいは入院のときに福祉事業所で様々使われている視覚的支援のグッズですとか、その方に必要な支援の情報を福祉事業所さんからたくさんいただいて治療するというのを心がけております。
ただし、当院のような専門の国立病院機構の状況と各地域の一般の精神科病院、精神科病棟の状況というのは少し違います。精神科の救急病棟に強度行動障害の、特に成人の方が入院になることも多々あるのですけれども、そういう場合は精神科医医療の中でもなかなか専門的な医療、特に自閉症支援や福祉等と連携した地域移行支援が行われていない。行うすべがないといいますか、知識がないというのが精神科医療の中でもあります。そういった場合に、緊急避難的に入院したのに長期的な精神科病院の入院患者さんになってしまわれるということも多々見られております。
そのような課題をなるべく精神科医療として、標準化していこうということで、2年前から強度行動障害医療研究会というものを全国的に立ち上げ、その中での勉強会や研究を続けております。
医療は強度行動障害を伴う知的発達障害児者の方々を抱え込み過ぎず、しかし、地域の中で必要な支援の一部をしっかり担うというところが今の精神科医療の課題ではないかなと思っております。
今回のいろいろな実態調査等を含め、もう一度、医療の中でどのような形でどのような方に関われるかというのを検討していければと思っております。
私からは以上です。失礼します。
○市川座長 ありがとうございました。
続きまして、渡邊構成員、いかがでしょうか。
○渡邊構成員 札幌市の渡邊でございます。
それでは、私からは札幌市の強度行動障害の施策について御説明いたします。
まず、施設入所支援といたしまして、札幌市の指定管理施設の一つに自閉症者自立支援センター、平仮名で「ゆい」という施設がありまして、そこの設置目的が激しい行動障害を有する自閉症児者に対し、地域で独立した生活を目指した支援を行うとなっております。こちらの施設は社会福祉法人が指定管理者となっておりまして、事業種別としては入所、短期入所、生活介護、自立訓練を行っております。
また、この施設に併設して、同じく指定管理施設であります自閉症・発達障がい支援センター、こちらは平仮名で「おがる」と呼んでおりますけれども、こちらの設置目的としては、発達障害のある方及びその家族等に対して総合的な支援を行うほか、関係機関に対し発達障害に関する情報提供や研修を行うとしております。どちらも同じ社会福祉法人が指定管理者となっておりまして、おがるのほうでは事業所に対する機関支援業務をしたり、個別支援ケースに関する事業所間の調整、あとは普及啓発のような業務を担ってもらっています。
このほかに、札幌市の事業としては、国庫補助を活用して障がい者地域生活サービス基盤整備補助事業というものを実施しておりまして、この事業の内容については、社会福祉法人や医療法人、NPO法人等が重度障害の方または医療的ケア児が利用できる生活介護と短期入所、あるいは障害児通所支援と短期入所の事業所を開始するときに、建物の整備に要する工事費用を補助するというものであります。この補助の対象条件として重症心身障害児者という中に強度行動障害者も含むということにしておりまして、強度行動障害者の地域生活の支援に活用できる内容の事業としております。
この設置事業の実績なのですけれども、令和2年度に1軒生活介護と短期入所を行う事業所を設置できたほか、今年度も1軒新設できる予定で動いております。
札幌市における課題につきましては、強度行動障害児者も含めまして重い障害のある方を支援する技術のある人材の育成ですとか、そういった事業所の対象が十分ではないということがやはり挙げられると思います。サービス補修や補助金のような金銭面をはじめ、人材育成に対する支援の充実といったことによって多くの事業者支援者が強度行動障害者の支援に取り組めるような仕組みをつくっていくことが重要だとは思っているのですけれども、自治体単独での実施が難しいというようなところで、こういった検討会に参加させていただきながらいろいろな方法を考えていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。
私からは以上です。
○市川座長 ありがとうございました。
続きまして、田中構成員、お願いします。
○田中構成員 全国手をつなぐ育成会連合会の田中です。よろしくお願いします。
今回、この検討会が開催されるに当たり、重点的に強度行動障害を有する者の地域生活支援体制の検討が始まったことに、会員はもちろん、当事者の皆様、並びに家族の皆様は大いに期待しているところであると思っております。
会としては、ちょっと時間がたっておりますけれども、2年以上前、2021年1月に今日御参加の日本自閉症協会、JDDネットワーク、全日本自閉症支援者協会の皆様と「行動障害児者への適した環境と適切な対応の確保を早期に求める要望書」というものを障害保健福祉部長に提出させていただいております。
今日御参加の皆様には机上配付でその資料を出させていただいておりますが、基本的に問題意識としては、今回、先ほど調査研究で整理されたような課題が日常、特に育成会においては都道府県全てに会がありますので、どの県からも行動障害があるゆえにサービスにつながらない、在宅で家族と一緒に過ごさざるを得ないという非常にせっぱ詰まった声が少なからず寄せられているということを受けて、要望書を出させていただきました。
行動障害の特性ゆえに、適した環境にたどり着けなければそういった事情が起こるということで、施設の側でもいろいろ工夫はしていただいていますし、また、人材育成にも、国のほうでも、行動障害に関しては行動援護から始まり、強度行動障害支援者養成研修などで基本知識を得るというようなことも含めて対応してきていただいておりますけれども、個別の研修のままですと、もう一歩踏み出して事業所で一体的に取り組むとなったときに、まだベクトルが事業者内に十分育っていないと、結果として研修を受けた本人の知識は上がっても、サービスの質そのものに直結していかないというような問題がここ数年、特に激しい行動障害と位置づく対応に関しては十分に取り組み切れていないということもありまして、要望書の中では、全国どこであっても強度行動障害支援児者に対して適した環境での適切な関わり、教育支援がライフサイクルに沿って一定水準で確保されるよう、体制の確立をお願いしたいと。
また、強度行動障害者の障害特性を踏まえた関わりが教育や支援の基本となり、一貫性のある体制で提供されるような仕組みを行動障害支援センターのナショナルセンターとして構想していただきたいということを要望させていただいております。
行動障害支援センターは身近なところにあることを目指していただきたいということで、国に1つや全国で数か所ではなく、都道府県単位でそういったものが用意できるようなことを目指しつつ、仕組みを構築していただきたいと要望させていただいております。
また、学齢期から様々な問題が生じるのが行動障害の特性でもありますので、家庭、教育、福祉で一貫性のある取組ということで、国においても厚生労働省と文部科学省によるトライアングルプロジェクトが発足しておりますし、機能しつつありますので、そこにおいて、特に中・高生年齢の共同行動障害児者に対しての対応を具体化していただきたいということを要望してきております。
今回、社会保障審議会の場を通して、様々な課題が全ての事業において行動障害へも散見される部分がありましたので、そういったことが取りまとめられて今回検討会になるということについて非常に期待しているところです。
以上になります。
○市川座長 ありがとうございました。
続きまして、橋詰構成員、お願いいたします。
○橋詰構成員 お世話になります。日本相談支援専門員協会の橋詰でございます。
私からは、全国の相談支援協会というよりは、まず自分の地域、長野県の上田市というところで20万人ほどの規模の圏域で行動障害の方たちの支援体制をどんなふうに整えてきたかという中でのお話をさせていただければと思います。
まず、自立支援法が始まる前の状況の中では、やはりサービスの提供基盤がほとんどなくて、相談支援が実働として行動障害の方たちの休日や夜間の応援をするということに直面し、やむを得ず相談支援としてサービスを提供しなくてはいけないという時代がありました。
現在も、これまでの経過からも、特別支援学校の中で本当に担当している先生方がマンツーマンで関わったり、実際には教頭先生らも含めて支援の先生が2人ついて個別で対応しているような状況の学校の生徒さんが、いわゆる放課後だとか長期休暇の支援体制を図るという状況の中では、現在ある放課後デイサービスやレスパイトの事業所のような方たちが事業所の中でスキルを上げていただくということで、圏域の協議会の中で、圏域全体としての強度行動障害の方たちに対する支援スキルの学習会を入れたりということを実践してきています。
また、個別にそういったことでは、非常に意識の高い事業所については、その後にかなり専門的なアドバイスができる方をコンサルとして受け入れて、定期的に事例検討するみたいな形で支援計画の見直しや作成をしているという事業所も現在出てきているのかなと思っております。
ただ、実際に課題としては、学齢期の部分については、教育現場と放課後や長期休暇の支援場所というのは環境が必ず一致しているわけではなくて、大きく環境設定するということがなかなかできないので、学校で落ち着いていますという方が放課後になって突然混乱したりということで、環境設定をどんなふうにしていくかというところが、とても大きな課題かなというところは私たち自身もすごく感じているところです。
実際にはそんな状況の中で混乱期を迎えながら卒業を迎えてというところで、卒業後の進路について、どんなふうに環境を設定して御本人の落ち着いた生活につなげていくということを検討している中で、現在は圏域として10名ほどの利用者さんがいらっしゃると思うのですけれども、重度包括支援として集中支援を実施していく方法を導入しました。要するにグループホームであるとか、施設の中では重度包括支援棟みたいな環境をつくっていただいて、大勢の方たちが生活するというよりは、個別支援ができるような体制とハード面の整備を、社会福祉法人さんが自前で取り組んでいただいた経過があります。地域の利用者さんを受け入れるためにということで取り組んでいただいたところです。環境を整備しながら、重度包括支援の事業を使って人員の体制整備も図っていただいて、集中支援をしていただいているという状況の中で、実践事例は1年で効果が出るかというと、1年目はかなりタイト状況が続きますが、2年目、3年目の支援中で自分たちが生活する場所がどういう関係の中なのかというところが御本人たちに伝わってくると、3年目ぐらいで卒業時の混乱から大きく変化してきている実践を垣間見ています。圏域の協議会の中で実践報告をしていただいたりしながら実施しているという状況があります。
実際にそんな体制がとれる前に、行動援護のサービスは意外と個別の支援になってしまっていて、結構緊急時のSOSが出たり、イレギュラーのことがあったときに相談支援の私たちが支援現場に駆け付けたり、時には補助員みたいな形で2人体制でやらないと、何か起きたときのイレギュラーなことができないという経験もあって、今はそんな仕組みを少しずつつくってきたかなと思っています。
なぜこんな取組をし始めたのかということなのですけれども、実は私の圏域で5人ほど県立の障害児の入所施設の加齢児の方たちがいらっしゃって、その加齢児になっていらっしゃる方たちを、自分たちの圏域の利用者さんだけは何とか自分たちの地域で応援ができるような体制をつくろうということで圏域の協議会の中で話をして、この重度包括支援の仕組みを活用し、もう一つは設備面、ハード面の整備をして、全員の利用者さんを圏域で責任を持って受けるというやり方で実施してきたという実情があります。
ただ、これが全てのこれからまた卒業されてくる方たちの受皿になれていくかというと、今でも重度包括支援を提供できるのは2法人さんに留まり、まだまだ全ての形を受けられるニーズにはつながっていないという状況でもありますし、施設入所のところでは圏域の中で入所の調整、本当に施設入所が必要なのかというところでいろいろ検討するような会議があって、入所の御希望がないという場合には長野県全体の戸別調査をかけるのですけれども、そのときにはやはり区分5、区分6の障害者の方たちが長野県全体として施設入所での強度行動障害の方々が支援を受けられずに、個別の行動援護と一時的な短期入所で何とか家族に御協力を求めて支援しているという実態がどの圏域にもあるという状況です。今年も長野県の全体の協議会の中でも、重度障害者の受皿をどんなふうにつくっていくかというところについても全県で取り組んでいくということで県の協議会がテーマともさせていただいているという現状があります。
以上でございます。
○市川座長 ありがとうございました。
続きまして、井上構成員、お願いします。
○井上構成員 自閉症協会の井上と申します。よろしくお願いいたします。
私のほうは、鳥取大学において強度行動障害に関する療育あるいはその調査を行ってきました。
論点を順番にお話ししたいと思います。
まず、地域の中での日常的な支援体制としてのグループホーム、施設、その他サービスの役割・課題というところなのですけれども、鳥取県で2017年と2021年で全県的な悉皆調査を行っています。そのときのデータとして、行動関連項目で10点以上の人というのが2017年度では療育手帳所持者の9%で、21年度が9.8%。それから、高齢の方の割合も25名から37名、70歳以上の方なのですけれども、増加傾向にあります。
入所施設、グループホームに入っておられる方は50代以上だとほぼ全員入所施設もしくはグループホームに入っておられて、在宅の方が急激に減るのが30代からです。20代、30代の方に対して、在宅での支援をしっかりやっていく必要があるなと感じています。
入所施設自体の入所枠も定員としてはあるのですけれども、なかなか人材が募集しても来ないというところから、定員枠はあるのですが、そこに人を入れられないという状況にある。
2番目の在宅支援なのですけれども、鳥取県は、その課題を解決するために在宅強度行動障害支援事業を試行的に3年前から行っています。特に在宅で支援につながっていない人たちに対して、支援チームを組んで、その中で訪問して支援するというやり方をとっているのですが、その中でも特に支援が難しいのが、保護者の方に対するメンタルな支援が必要な方です。長年いろいろなところの事業所に関わりながら、支援を断られたり、途中で利用停止を余儀なくされた経験があったり、重度のてんかんをお持ちだったりして、子供さんと離れたときに施設側の対応に十分に信頼関係がつくれないと、どうしても親御さんは、それだったら自分で見るという形になってしまいます。
強度行動障害支援者養成研修においても、基礎研修、実践研修と保護者の声を聴くというセクションが設けてあるのですが、実際に福祉で対応していらっしゃる方に関して、保護者のメンタルな部分のケア、あるいは養育ストレスや行動障害があるがゆえの悪循環的なメンタルヘルスの悪化に対して注目してケアするということはかなり難しいのではないかと考えています。公認心理士等、心理職がこういった親御さんのケアに早期から関われるような仕組みづくりが重要ではないかなと思っています。
状況が悪化した者に対する集中的支援なのですが、これも幾つかの事例で行っていました。しかしながら、一旦改善しても、5年あるいは10年たっていくと、家族の移動があったり、家族の在りようが変わったりして、非常に虐待に近い状況になってしまっているケースがあります。したがって、後の課題にも関係するのですけれども、地域の中の仕組みとしては、要保護児童対策協議会という児童の中で設置されているものに関しては、行動障害がある方で家庭的な支援も必要な方に関しては要対協のほうでケアしているのですけれども、大人になってからそれがなくなってしまうと、どこでフォローしていいか。地域の支援から切り離されてしまった人をフォローしていく仕組みがないので、要対協のような地域全体でローカルな自治体がしっかり見ていくという仕組みが必要ではないかなと思いました。
4番目、家族に対する相談支援やサービスの調整なのですけれども、基幹相談支援センターというものが各福祉圏域にある程度設置されていると思うのですけれども、地域によって専門性のばらつきが非常に多くて、相談支援専門員がサービスを調整しようとしてうまくいかなくて行き詰まったときに、その基幹相談支援センターがフォローしてくださるはずなのですけれども、なかなかそれが十分でないという課題もあるかなと思います。
論点②の十分な専門性を持って関われる人材育成なのですけれども、御指摘のように、基礎研修と実践研修だけでは、実際にプログラムを作って、記録を取ったり、支援計画を実行したりすることに対して、マネジメントしたりするといった過程が得られていないので、実際に鳥取県では、10年前からグループで各地域の強度行動障害の人を実際に担当している職員を各事業所から集めて、6回シリーズで行うプログラムを立てて、実際にPlan-Do-Seeを回す研修を行っています。結果データとしては、支援者のメンタルヘルスと利用者として対象者となった方の行動障害の数値の改善というのが統計的に有意な数値で認められています。
ほかにも、松上先生たちが代表でやられたコンサルテーションの研究などもありますが、各地域で必要な資源をうまく使った形の支援者養成事例みたいなものをしっかり整理して、どういう資源を使ってどれぐらいの効果が上がるのかというのを明らかにしていきながら、地域でやれるリソースを活用するというマニュアルが作れればいいかなと思っています。
最後の論点③ですが、強度行動障害の先ほどのPwCのデータは児童のデータが極端に少ないのです。児童のときには強度行動障害はないかというと、そうではなくて、昨年度まとめた研究の結果によると、3歳児健診までに睡眠障害や、多動性とかこだわりが非常に強い方が一定数おられて、これは後方視的な振り返り研究というのですけれども、そういう方が小学校の真ん中ぐらい、10歳以降に強度行動障害の諸症状が悪化していって、思春期でかなり上っていくというパターンが見られています。予防のためには、3歳児健診あたりで、知的障害が重度で、自閉症の中で特にこだわりが強く衝動性があって、睡眠障害もあるような子供たちを早めにスクリーニングして、そして、そこに家族支援を入れていくというやり方が必要なのではないかなと思います。
そういうハイリスクによるケアについては、ヨーロッパでも研究が進んでいますが、日本ではまだこれが進められていません。それから、多くは特別支援学校に行っているわけですけれども、以前、厚労科研の調査を日本全国の特別支援学校にかけたときに、行動障害があるために1対1で先生が一定時間つかなければいけない生徒の数というのが2.3%という結果でした。なので、強度行動障害の旧法基準の人たちのパーセンテージとほぼ同じではないかなと思います。
児童の評価に関しては、行動関連項目とかという例えば福祉で使われているものが学校現場では全く浸透していません。児童を放課後に預かる放課後児童デイサービスに関しても、5領域11項目で評価していると思うのですけれども、行動関連項目のようなもの、あるいはもう少し精度の高いBPI-Sというものを標準化したのですけれども、何らかの形で児童にそういうものを評価するというシステムをつくっていただかないと、放課後児童デイサービスで、受け入れてもらえないという学齢期の子供たちがかなりの数いると思います。
強度行動障害が特に強い状態にある者に関しては、評価としては機能的アセスメントをするというのがほぼ世界標準になっています。これは、氷山モデルで背景にある体制と物に気づくという段階の次の段階だと思います。そうしないと、その行動障害を起こしている意味は何かというのを調べるのが機能的アセスメントなのですが、意味が分からないでアプローチしようとすると、やはり抑圧的なアプローチになってしまうということが言えます。なので、機能的アセスメントを日本でどの機関がどのようにしていくかというのは大きな問題で、検討点としては、特に重い状態にあるそういう人たちに対しての評価をどこがやるかという仕組みを考えていく必要があるかなと思います。
以上です。
○市川座長 ありがとうございました。
続きまして、福島構成員、お願いします。
○福島構成員 全国地域生活支援ネットワークの福島です。よろしくお願いします。
私たち全国地域生活支援ネットワークは、ユニバーサルな支援による共に生きる地域社会づくりを目指し、地域生活支援をより一層推進し、全国の当事者や事業者、行政、政治など関係者の横のつながりを深め、国民的な理解と共感を広げられるよう、活動を展開している全国組織になります。
全国ネットと呼ばせていただいておりますが、全国ネットでは平成17年の行動援護の創設のときに深くコミットさせていただき、その必要性を訴えるとともに、必要なエビデンスまたは研修体系をつくる際に関わらせていただいた経緯があります。また、近年では、強度行動障害支援者養成研修の基礎研修、実践研修について、全国の実践者の方と協力しながらプログラムを作ってきたという経緯があります。
まずは研修についてですが、強度行動障害支援者養成研修が全国の多くの支援者の方たちに受けていただけるよう、環境整備ができたことは非常に大きな一歩だと思っております。ただ、多くの実践現場で言われているのは、研修を受けても現場で活かすことができないということです。このことを踏まえて、現在、いろいろな地域においてフォローアップ研修やアドバンス研修等の研修が自主的に行われていたり、または国の研究事業等でコンサルタントについて研究がなされていますが、これらが進むことによって研修の内容が実際に支援の現場に浸透し、また、そのことを通して地域の中で人材が育成されていくということを期待しているところです。
また、実際に私は佐賀県にある社会福祉法人を運営しておりますけれども、そちらのほうで運営しているグループホームにおいて、非常にご家族やご本人が困って窮状にいらっしゃった強度行動障害のある方たちのグループホームを4年運営してきましたが、このグループホームの運営を通して様々なことを学ばせていただきました。
その一つは、私たちのように、グループホーム等の一つの支援機関だけで強度行動障害のある人たちを支えることはやはり限界があるということを実感したことです・。一例を挙げますと、非常に行動が激しくなって、私たちのグループホームでは、支え続けることができないという判断をせざるを得ない方がいらっしゃいました。非常に心苦しくはあったのですが、ただ、その方の生活またはこの事業所の継続を考えると、やはり私たちだけで抱えるのではなく、様々な人たちの協力を得ることが必要だと考え、地域の基幹相談支援、行政、医療機関、入所施設等に協力していただき、現在、その方は医療機関に入院していただき、次の移行先を探しているという段階になっております。
これらの経験を踏まえて、やはり先ほど言いましたように、一つの機関、事業所等で強度行動障害のある方たちを支えていくということには必ず限界があると実感しております。
現在、強度行動障害を支える機関、または機能としては、もちろん在宅の家族の方もいらっしゃいますし、グループホーム、施設入所支援、医療機関等あると思いますが、それぞれの機関の強みがあると思いますので、それらの強みを生かしながら、地域でどうやって支えていくかという体制づくりが必要ではないかと思っております。
例えば一例でいきますと、グループホームで状態が悪化した方、または課題となる行動が頻発するということが起こったときに、現場で何が起こるかというと、目の前の対応に追われて支援を振り返る余裕がなかったり、検討する余裕がなくなる。また、スタッフが疲弊していって支援力が落ちていくという現状があります。
このような時に、グループホームの入居者に関しても、ショートステイを利用できるようにして、その間にまた支援を振り返って組み直すなど、その方たちを支えていくことが継続できるような仕組みがあればいいと思います。このようなことを考えていくと、今ある既存のサービスの柔軟な利用や重層的な利用、活用等を考えながら支援体制をつくっていくということも必要ではないかと思っております。
以上です。
○市川座長 ありがとうございました。
続きまして、樋口構成員、お願いします。
○樋口構成員 日本知福の樋口です。
私からは、当協会が昨年実施しました著しい行動障害のある方々の実態調査の概要についてかいつまんでお話ししたいと思います。
当協会では、令和2年度から今年度まで特別委員会、著しい行動障害への対応に関する検討委員会を設置しました。令和3年3月から4月にかけて強度行動障害児者の全国実態調査を実施しまして、その調査結果を約1年かけて分析し、強度行動障害児者をめぐる諸課題について検討を重ね、その調査結果に基づいて、今後、早急に求められる具体的施策についての提言案を取りまとめました。本年6月に開催されました社会保障審議会障害者部会にその資料提出を行ったところです。
この調査は、当協会の会員施設事業所4,656か所に調査票を送付し、50.1%の回収率で2,332施設事業所から回答があったものです。障害児入所施設66.5%、障害者支援施設56.4%、生活介護事業所、通所ですけれども、48.7%の回収でした。
対象利用者は9万4887名、そのうち2万6160人が強度行動障害に該当し、障害者支援施設について見ると1万9750人でした。厚生労働省が把握する国保連データの81.2%に当たります。行動関連項目点数の詳細が把握できたのは1万3587人でした。
今回の調査は、大きく4点に要約されると思います。
1つ目は、強度行動障害のある人が利用されている居住施設、障害者支援施設グループホームですが、その建物環境と人員配置についてです。
2つ目は、施設における身体拘束の現状です。
3つ目は、重度支援体制加算の対象となる支援区分調査の行動関連項目における10点から24点までの各点数ごとの分布と、その支援の困難度です。
5分間という時間ですので、詳しい説明はここではできませんが、1つ目の居住環境で言えば、障害者支援施設における定員10人以下の小規模ユニット化の現状は約10%に満たないものでした。また、著しい行動障害のある方の受け入れが多くなるに従い、生活日中活動空間における安全面に配慮した環境整備を行う施設が増加し、そうした財政的な支援を必要としている様子が見てとれます。人員配置の項目では、1対1での付き添いが必要な人数は削除したとしても、日中活動後から就寝前までの時間帯では、配置基準上は見かけは2対1ですが、実態は9.3対1となりました。グループホームでも同様で、配置基準上は1.3対1ですが、実態は6対1となりました。
2つ目と3つ目の項目については重なりますが、身体拘束、労災に関わる設問では行動関連項目の高い人に関連して、労災関連事項の頻度が高く、支援者からの身体的な行動制限や、身体拘束に当たる自分で開けられない居室への隔離、向精神薬の服用の割合が増加するという支援の難易度が示唆されました。
4つ目の人材育成と人材確保に関する項目では、強度行動障害者支援者養成研修の受講者が障害者支援施設の職員では62%が受講しており、研修の成果があると56%の施設が評価している一方で、残りの44%の施設が研修効果に懐疑的であるという回答でした。また、支援員等への特別な配慮を行う事業所、つまり、熱心に取り組んでいる施設ほど、そうでない施設よりも退職者の出る確率が高まるという結果も出ておりました。
私からは以上です。
○市川座長 ありがとうございました。
続きまして、松上構成員、お願いいたします。
○松上構成員 松上です。
私からは、全日本自閉症支援者協会の活動を通して、問題の提起をしていきたいと思います。
私ども全自者協は、三十数年前に重い知的障害を伴う行動障害のある子供さんを抱えて、行き場がないというか、その当時、専門的な支援をしてくれるようなサービス、事業所がないというようなところで、自分たちで主に入所型の施設をつくって専門的な支援をしていこうというような、親がつくった知的障害者入所施設を中心として協会が発足したという歴史があります。ですから、三十数年にわたって強度行動障害のある人たちの支援をしてきましたし、全自者協の中心的な活動だということが言えると思います。
そういう中で、特別処遇事業、入所施設の中で強度行動障害のある人を支援して地域移行を目指していくというような事業がありましたけれども、全自者協の加盟している事業所の多くがこの事業の取組をしたのです。しかし、これは失敗したのです。ですから、ぜひ今までの強度行動障害のある人たちに対する支援の施策についての検証が必要と思うのです。
なぜうまくいかなかったかというと、要は移行先がないのです。地域で受け止めてもらえない。この現状が今でも続いていまして、例えば大阪府も強度行動障害のある人たちの有期限、有目的、要するに一定の期間で地域に帰していく、地域移行していくという取組をしているのですけれども、全く地域移行ができない。受け入れる法人事業所がないというようなことなのです。ですから、私どもはやはり支援者の養成、要は地域でしっかりと受け止める事業所を多くつくるためには人材の育成が急務だということなのです。
先ほどもお話が出ました札幌市のゆいであるとかおがるの事業所法人も私ども協会の加盟している法人事業所ですけれども、ゆいでは3年間で行動障害のある人の地域移行をするということで実績を上げておられます。地域移行ができています。ただ、同じ運営法人がグループホームをつくって受け入れているという実態があるのです。私ども全自者協の加盟している施設で先駆的に取り組んでいるところというのは、地域のニーズを全部受け止めている。行動障害のある人は集中してそこの支援を希望されるわけです。そうすると、行動障害のある人たちが地域の中で暮らしていける支援に結びつかないですよね。点から面に行かないのです。
そういうことから言うと、やはり面として受け止めて、生涯にわたる支援を実現していく、切れ目ない支援を実現していくということになると、それを支える人材の育成が重要になる。機関連携も重要ですし、学齢前の療育の支援機関から学校へ移行するときの移行支援も重要です。だけれども、そこを担っていくには、やはり専門性のある強度行動障害の支援についてちゃんと理解と支援ができる人材の育成というのが求められていると思っています。
私自身も強度行動障害支援者養成研修のプログラムの開発にもかかわりました。先ほども樋口構成員から62%の人たちが研修を受け入れているというようなところで広がっていますけれども、問題はこの研修を受けた人たちが所属する事業所の中で学んだことを反映できない、その組織の中でそれを生かせない。その課題というのは、一つは、やはりアセスメントです。そこが十分機能していないというようなこともありますし、そもそもそれぞれの事業所にスーパービジョンをベースとしたOJTで支援者を育成していくというスーパービジョンの仕組みがないし、それを統括していくスーパーバイザーがいない。これらも決定的な問題かなと思っています。
そういうことで、協会独自としてスーパーバイザーの養成研修というものを実施してきたのですけれども、令和元年度から令和3年度の3年間で人材育成の研究を障害者総合福祉推進事業の中で実施してきまして、やはり中核的な人材の育成と、その中核的な人材を育成する指導者、スーパースーパーバイザーというのですかね。それをシステムとして地域の中にどう位置づけていくかということが重要だと思っています。
私ども協会の法人は、発達障害者支援センター事業を受けているところが多いのです。その中で地域支援マネージャーという取組があって、その中でも行動障害のある人たちへの支援をしている事業所に対するサポートを実践している法人もありますが、発達障害者支援センター事業の課題における人材育成の課題もあって、なかなか進まないというようなことがありますので、やはり人材育成のプログラム開発と、それを仕組みとして全国的に展開するような体制整備に向けて、ぜひこの検討会で議論をしていただけたらありがたいなと思っています。
それと、會田先生も入っていただいて、特に急性期のところでの福祉と医療の連携もすごく重要だと思っていますし、井上先生もおっしゃっていることで、3歳までの高リスクの子供の対応というのも非常に重要で、幼児学齢期から行動障害を誘発させない支援をどうするかというのが非常に重要なテーマですので、こういうようなことについても検討が進めばいいなと思っています。
私からは以上です。
○市川座長 ありがとうございました。
続きまして、日詰座長代理、お願いいたします。
○日詰構成員 日詰です。よろしくお願いします。
皆さんの現場で日々頑張っておられることをたくさん聞いて、私たちの国立のぞみの園も国立機関としていろいろな調査で教えていただいていることばかりですので、これからよろしくお願いします。
今回、厚生労働省がこういう検討会を立ち上げてくださったり、ここ数年、調査推進事業を立ち上げているということは、我々、とてもチャンスが来ていると思っています。とても難しくて、でも、実は福祉をやる者にとっては根本的な問題で取り残されていることを、この機会に一歩でも日本でも進めるチャンスですので、ぜひ皆さんたちと取り組んでいけたらなと思っています。
今お話を聞いた中で、井上構成員のお話しされていた経年での調査の経過のお話がありました。そういう継続して「現場で困っている方がどれくらいいて、どういうことをしたらどうよくなったのか」と言う視点は重要です。目の前のことももちろん頑張らなくてはいけないのですが、この機会に足元をしっかりさせていくということを皆さんと議論しなくてはいけないなと思っています。人材の話ですとか建物の話、それから、地域での仲間が大事だという福島さんのお話もありましたし、そういうことがやりやすいようにぜひしていきましょう。
一つ、私が、お伺いしていきたいなと思っているのは、先ほどPwCの調査の中で、松崎専門官からも御紹介がありましたが、支援プロセスの把握ということで、強度行動障害となると、先ほどの話にもありましたが、地元で大変だからそういう人は見たくないとか、見られないとか、御家族もこの先どうなるのだろうかという先が見えない不安とか、最初から諦めてしまうというところがまだまだ我々も払拭できていないので、最終的には御本人が長い人生をどう生きていくのかというのを我々がそれぞれ分担しながら助けていくという話だと思いますので、そのプロセスの話です。医療も関わったり、福祉も関わったり、いろいろな人に助けてもらって地域生活を支える。あるときはうまくいかなかったりするのだけれども、長い人生を振り返ってみたときに、何となく通り抜けていけたと。そういうものをもうちょっと整理して、今回、すごくたくさん実践家が集まっているので、お見せしていかないと、現場の支援者も家族も不安だけが残って、そういうプロセスでどう希望を持たせていくのかというのも我々はとても大事だなと思っています。井上構成員からの継続的な調査の話を聞いていてそのように思いました。
国立のぞみの園は、そのほかにも人材育成も受入れもやっておりますが、課題はたくさんあると自分たちでも認識しています。この検討会を通して、より質を上げて、着実に実行に移すことが皆さんと一緒にできるようにと思っております。
私からは以上です。
○市川座長 ありがとうございました。
それでは、最後になりますが、私から少しお話を。私、先ほど自己紹介を飛ばしてしまったみたいなので、それも含めてお話しさせていただきたいと思います。
私はもともと児童精神科医で、今日いらっしゃる會田先生と同じなのです。精神科の医者ですけれども、子供さんを診るというのは圧倒的少数派なのですが、昭和50年度後半ですかね。私が当時世田谷にありました日本で一番大きな児童精神科病院に行ったときに、一番驚いたのが、当時そういう言葉はなかったですからね。強度行動障害の方々でありまして、170名ぐらい入院していたのですけれども、そのうち70名ぐらいがそういう方なのです。どういうふうなことが起きているかというと、子供の病院のはずなのに成人になった人がいっぱいいるという状況で、結局、成人の病院はそんな知的遅れが重たくて行動に問題があるというのはやりたくないと。当時の精神科の大多数は、今でもそうかもしれませんけれども、やはり統合失調症や鬱病みたいなものが中心に治療されているわけで、そこで子供さんたちの精神科をやっているのは圧倒的に少数でした。
国は、全国4か所ですかね。自閉症の医療施設というものをつくってくれていまして、札幌と東京、三重、大阪の4か所にありました。私どもの世田谷にあった病院にもそういうものがありましたけれども、結局、医療的機能を満たしていたかというと、なかなかそれはないです。
もちろん現在でも医療で強度行動障害の人を完全に治すということは難しいだろうと思います。そうしますと、病棟の中にそういう方が徐々に増えていってしまうわけです。大体20人ぐらいいる病棟だと、私がいたところは7~8人そういう方がいました。当時は今と違いまして、半数は恐らく脳炎とか髄膜炎の後遺症の方だったのです。これも一定の期間がたってしまうと治療がなかなか難しくなるということで、私がやっている仕事というのは、どこかで施設ができたというと、まだ埋まっていないと言えば、1人でも2人でも取ってくださいと頭下げて福祉施設を回るような仕事をしていたのです。もちろん中でやることはありますけれども、中心的なところ、実際に脳炎や髄膜炎の後遺症の方のCTスキャンを見たら、脳がすかすかになってしまっていますから、これは困ったなと言ったのを覚えております。
しかし、少しずつ変わってきたところはあるかもしれませんが、もう一つ、平成2年からですかね。私は2年間、当時日本で一番大きかったので障害児施設の医務課長を務めたことがありまして、そこに行ったときにびっくりしたのは、ほとんどいわゆる病院の中で困っている方と同じような方がいらっしゃるということでした。かつどうしたらいいか分からないという方がいっぱいいましたし、今までそんなことはないですけれども、当時、幹部職員の方は私に先生みたいに真面目に治療しては困ると言われるのです。医療は何のためにあるかというと、役立たないことを証明するためにある。要するにそれまでいた医者はほとんど働いてなかったのだろうと思いましたけれども、びっくりして、職員を対象に福祉における医療の大切さという話を6回ぐらいかな。1回2時間ぐらい講演したら、残業手当を出さなくてもみんな聞きにきてくれて、やはりこれは必要だなと思ったのを覚えています。
実際に全国的にも大体20か所ぐらいですかね。児童精神科の治療施設で入院している病院があったのですけれども、ほかはみんな軒並みそういう方が増えてきてしまって、仕事になっていない状況で、実際に宮崎の病院は潰れてしまったところもあるのです。みんな集まっても何を話しているかというと、うちにはどれだけ大人になった人がたまっているかと。実際に私の病院でも、最高齢者は40代後半でしたね。御家族の方に一定の治療が終わったのでという話をしても、完全に治っていないものは退院させられないと言われてしまった。本当に福祉ともっと連携しなくてはいけないのだなと思いながら、それができていなかった。非常に残念です。
精神科医療の中でも、會田構成員もそうですけれども、いろいろこういうものがもっと広まってほしいなということでやってきたのですけれども、そもそも精神科医の中でそういうものをやっても聞きにくる医者はほとんどいない、興味を持っている医者はほとんどいないという状況だったのです。
しかしながら、この7~8年でそういうところにいろいろ若いお医者さんが聞きにきてくれるということが分かって、會田構成員と話をして、強度行動障害医療研究会というものを立ち上げましょうということで、今、會田構成員に事務局をお願いして立ち上げおりまして、100人ぐらいですかね。幸いオンラインでいろいろできる時代になりまして、話をしておりますので、ぜひ医療のほうも充実させて福祉と連携していけば、当事者のためになるのだろうなと思っております。
もちろんこれに向けているのは教育の問題だと思いますし、これもやはり入ってきてもらわないといけないし、実際にかなり対応の仕方とか環境でよくなったり悪くなったりする方々ですので、それに対して我々はもっと努力していかないといけない。
そういうことを考えますと、こういう会合が開かれるということ自身、私にとっては隔世の感がありますし、世の中は変わったなと思っております。また、ここに10名の方が集まってお話しすることが今後どんどん広がっていけばいいなと思っておりますので、ぜひこの会合がほかの方にも、いろいろと知識のあるいは情報の収集もありますけれども、広がっていくといいなと思っておりますので、非常に私自身も期待しておりますので、よろしくお願いいたします。
今日は皆さん方に少しディスカッションしていただこうということで、お話をいただきました。いろいろ皆さん方、ありがとうございました。
最後に、議事「(4)その他」というところがあるのですが、何か皆さんのほうで言っておきたいということがあれば、ありますか。時間も押してきておりますので、皆さんのほうからこのことだけは言っておきたいというのがなければ、ここまでにしたいと思いますが、いかがでしょうか。
次回以降、来年度になるまでと言っていましたか。なので、またよろしくお願いしたいと思います。
本日の議事はこれで全て終了ということになっておりますので、事務局から今後のスケジュール等をお願いいたします。
○事務局 では、皆様、御議論どうもありがとうございました。事務局です。
次回の検討会の予定について御案内させていただきます。次回は10月25日火曜日、10時から12時、オンラインでの開催を予定しております。またどうぞよろしくお願いします。
本日は、お忙しい中、御出席いただき、ありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いします。