2022年7月27日 第176回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年7月27日(水) 10:00~12:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

【公益代表委員】
 荒木委員、安藤委員、川田委員、佐藤(厚)委員、水島委員、両角委員
【労働者代表委員】
 梅田委員、北野委員、櫻田委員、東矢委員、冨髙委員、八野委員、世永委員
【使用者代表委員】
 池田委員、鬼村委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、鳥澤委員、山内委員
【事務局】
 鈴木労働基準局長、青山審議官(労働条件政策、賃金担当)、古舘総務課長、松原労働条件政策課長、竹野監督課長、吉村労働関係法課長、田上労働条件確保改善対策室長、岡田過重労働特別対策室長、田邉労働関係法課総括調整官、小川労働関係法課課長補佐、長澤労働条件企画専門官
【オブザーバー】
 伊地知復興庁福島国際教育機構準備室参事官補佐

議題

  1. (1)無期転換ルールについて
  2. (2)「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書について(報告事項)
  3. (3)その他

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第176回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催します。
本日の分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加双方で実施いたします。
本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の黒田祥子委員、藤村博之委員、労働者代表の川野英樹委員、使用者代表の兵藤美希子委員が欠席と承っております。
なお、公益代表の水島郁子委員におかれましては、所用のため途中からの出席と伺っております。
カメラ撮りはここまでということでお願いします。
本日の議題に入ります。
本日の議題(1)は「無期転換ルールについて」です。事務局から説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 それでは、事務局のほうから資料1、資料2について御説明させていただきます。
まず、資料No.1を御覧ください。無期転換ルールに関する論点についてでございます。論点の一覧につきまして、資料の3ページ目を御覧ください。論点として3つ大きく、1、2、3とございますけれども、無期転換ルールに関する見直し、1につきましては、前回、(1)から(4)の部分につきまして御議論いただいておりますので、本日は赤字で示しております(5)から(7)の論点について御議論いただければと思っております。個別の論点については後ほど個別に御説明させていただきます。
資料の6ページ目を御覧ください。(5)でございます。無期転換後の労働条件についてということで2点論点を掲げさせていただいております。1点目でございますけれども、無期転換後の労働条件の別段の定めをする場合の留意点につきまして、あるいはそれ以外の無期転換後の労働条件の見直しについてどう考えるかという点について御議論いただければというのが1点目でございます。
2点目といたしましては、無期転換者と他の無期契約労働者との待遇の均衡について、検討会報告書で示されている事項といたしまして、無期転換後の労働条件に関して、均衡を考慮した事項につきまして説明を促していくことについて、こういった点について御議論いただければと思っております。
資料、7ページ目を御覧ください。こちらからは参考でございますけれども、無期転換後の労働条件を考えた場合に、真ん中に無期転換者がおられますけれども、この方と下の正社員などとの間の待遇差についてですとか、あるいは有期労働契約から無期労働契約に切り替わった際の待遇の相違、こういったところが論点になるのかと思っております。
資料の8ページ目を御覧ください。無期転換後の労働条件に関しまして、まず、労働条件の別段の定めにつきまして、検討会における議論を4つ御紹介しております。1点目につきましては、1つ目の○ですけれども、就業規則によって別段の定めをする場合につきましては、無期労働契約が成立するタイミングに着目するということから考えますと、無期労働契約が成立する前から存在する場合につきましては、労働契約法7条、成立後に新設・変更された場合につきましては、10条の合理性が認められるかどうかというのが問題になると考えられますけれども、裁判例におきましては、労働契約法7条を適用しつつも、合理性の有無についてある程度踏み込んで判断したと解されることもありますので、こういった点について留意が必要であるということを周知することが適当であるというのが1点目の御指摘です。
2点目の御指摘といたしまして2つ目の○ですけれども、今度は個別の契約によって別段の定めをする場合につきまして、2点周知をすることが適当という御指摘をいただいております。1つ目の黒丸ですけれども、労働者が合意しない限りは別段の定めは成立しないということで、無期転換する前の労働条件と同一の内容で無期労働契約は成立するということ、それから、労働条件の不利益変更につきましては、個別の合意が認定されるにつきましては、自由な意思に基づいて同意したものと認められるに足る合理的な理由が客観的に存在する必要があるということ、こういったことについて周知することが適当というのが御指摘の2点目です。
大きな御指摘の3つ目の○ですけれども、無期転換に際しましては、労働条件の見直しが無制限に認められているというわけではなくて、特に引き下げる場合につきましては、司法において慎重に判断される可能性が高いということにつきまして、施行通達の改正ですとか個別労働紛争解決制度の助言・指導において活用することが適当というのが3点目でございます。
4点目といたしましては、労働者に対しましては、無期転換によりまして必ずしも正社員の労働条件が適用されるわけではないということですとか、無期転換後の労働条件を確認することが重要である、こういったことにつきまして周知していくことが適当という御指摘をいただいております。
9ページ目を御覧ください。こちらにつきましては、労働契約法ですとか、あるいは無期転換ルールに関するQ&Aでございますので、説明は省略いたします。
10ページ目につきましても、労働契約法の施行通達、あるいは別段の定めについての学説、それから労働条件の変更の合意が問題になった裁判例でございますので、説明は省略いたしまして、11ページ目につきましては、別段の定めをする時期によりまして合理性の判断の枠組みが、先ほど申し上げましたけれども、労働契約法7条、あるいは10条ということで分かれてきますということを図示したものでございます。
12ページ目につきましては、個別労働紛争解決制度における助言・指導、あっせん、こういったものを活用するという場合の現行の制度の御紹介でございまして、左側につきましては労働局長による助言・指導の流れでございますし、右側につきましては紛争調整委員会によるあっせんの手続を整理したものでございます。
13ページ目を御覧ください。無期転換後の労働条件の見直しにつきまして、検討会における議論を御紹介しているものでございます。3点ございますけれども、1つ目の○でございます。無期転換者の活用のあり方や待遇などにつきましては労使により検討されていくものである、労使コミュニケーションが重要であるというのが1点目の御指摘です。
2点目といたしましては、行政といたしましては、企業が自社の人事制度全般を踏まえて正社員登用をはじめとする多様なキャリアコースの検討などすることができるように、参考となる情報提供を行って労使自治を促進することが適当であるというのが2点目です。
3点目といたしましては、フルタイムの無期転換者につきましては、パート・有期労働法の適用はございませんけれども、正社員化を支援する助成措置を活用するなどによって希望する方の正社員への転換を推進するための措置を併せて講ずることが望ましいということを周知していくことが考えられるというのが3点目の御指摘でございます。
14ページ目につきましては、行政の支援といたしまして、キャリアアップ助成金というものがございますということの御紹介でございます。
15ページ目を御覧ください。無期転換者と他の無期契約労働者との待遇の均衡の関係でございます。検討会においては大きく3点御指摘いただいております。1点目につきましては、待遇の均衡につきましては原則としては労使の自治に委ねられるべきものでございますけれども、労働契約法3条2項を踏まえた均衡の考慮、これにつきましては無期転換者についても求められるということで、その点の周知を図ることが適当であるというのが1点目。
2点目といたしましては、無期転換者と他の無期契約労働者との待遇の相違につきましては労使間で理解の相違があるということも考えられますので、労使コミュニケーションの前提といたしまして、まずは待遇の相違について、労働者の理解が重要である、具体的には、2つ目の○の一番最後の段落でございますけれども、無期転換後の労働条件につきまして通知をするというタイミングを活用いたしまして、労働契約法3条2項の趣旨を踏まえて、均衡を考慮した事項につきまして使用者に十分説明するよう促していく措置を講ずることが適当であるというのが2点目でございます。
3つ目の○でございますけれども、パート・有期労働法8条と同様の均衡の規定を無期転換者に設けることにつきましては慎重な検討が必要という御意見をいただいておりますけれども、その次の段落ですが、パートタイム労働者ですとか有期契約労働者の処遇の見直しが行われる際には、フルタイムの無期転換者につきましても労働契約法3条2項も踏まえて見直しを検討することが望ましいということを周知していくことが考えられるというのが御指摘の3点目でございます。
16ページ目を御覧ください。転換申込機会と無期転換後の労働条件通知、これにつきましては前回の分科会で御議論いただきましたけれども、参考としてつけております。無期転換申込権が発生する労働契約時に転換申込機会ですとか転換後の労働条件につきまして通知をするということが適当ではないかという検討会の御指摘がございました。
17ページ目につきましては、パート・有期労働法の条文ですとか施行通達でございますので、説明は省略いたします。
18ページ目以降が(6)の論点で、有期雇用特別措置法に基づきます無期転換ルールの特例についてでございます。論点につきましては19ページ目でございますけれども、有期雇用特別措置法に基づきます無期転換ルールの特例につきまして御議論いただければと思っております。
19ページの下側に検討会における議論を御紹介しております。2点ございますけれども、1つ目の○につきましては、この特別措置法がなければ、プロジェクトの進捗状況等に応じて高度専門職を雇用しにくくなるですとか、65歳を超える高齢者の継続雇用に慎重になることも想定されるということで、この特別措置法があることで雇用の促進がされるという面もあると言えるのではないかというのが1点目です。
2点目といたしましては、この特例の存在が知られていないという課題がございますので、さらなる周知を行うことが適当であるという御指摘をいただいております。
20ページ目につきましては、この特別措置法の特例の内容でございまして、Ⅰ、Ⅱとございますけれども、2種類、特例の対象者がおられまして、Ⅰでございますけれども、5年を超えるような一定の期間内に完了することが予定されている業務に就かれるような高度専門的知識を有する有期雇用労働者につきましては、2の①のところでございますけれども、この一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く期間、上限は10年でございますけれども、この期間内は、無期転換申込権は発生しないという形になっております。
もう一つの種類といたしましては、1のⅡでございますけれども、定年後、有期契約で継続いたしまして同じ事業主に雇用されている高齢者。これにつきましては、2の②でございますけれども、この定年後引き続き雇用されている期間につきましては、無期転換申込権が発生しないという特例が設けられているというものでございます。
21ページ目につきましては、この特例につきまして企業の認知状況につきまして調査したものでございまして、左側が第一種、右側が第二種の認知度でございますけれども、どちらの制度につきましても5割を少し切るような認知状況であるという状況でございます。
22ページ目以降は(7)のその他の論点でございまして、具体的には、23ページ目でございますけれども、論点といたしまして労使コミュニケーション等を通じた無期転換ルールの円滑な運用の促進についてということで御議論いただければと思っております。
23ページ目の下側に検討会における議論を、3点御紹介しております。1点目といたしましては、無期転換者の就業規則を作成する場合につきまして、関係する労働者の意見が適切に反映されるよう労使コミュニケーションを促すことが適当ということで、無期転換申込に関する事項を就業規則に定める場合につきましては、パート・有期労働法7条が適用されるということを周知することが適当であるというのが1点目です。
2点目といたしましては、無期転換申込権の行使の保護につきましても、パート・有期労働法の雇用の管理の改善等に関する事項に当たるということを解釈としてお示しして、会社内で相談できる体制が構築されるよう促すことを検討していくことが適当であるというのが2点目です。
3点目といたしましては、使用者に対しまして職場でどのようにマネジメントしたらいいか、どのように活かすかですとか、あるいは労働者に対しましては雇用の安定によって様々なキャリア形成とか能力形成を行うことができることにつきまして、行政が好事例とともに示していくことが考えられるということを御指摘いただいております。
24ページ目につきましては、労働基準法ですとかパート・有期労働法、あるいは労働基準法の通達でございますので、説明は省略いたします。
続きまして資料No.2という形で、無期転換ルールに関します見直しについて、労働条件分科会におけるこれまでの主な意見という形で、173回から175回におきます意見につきまして事務局で論点ごとに整理をいたしたものでございますので、説明は省略させていただきます。
事務局からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、論点ごとに議論していただきたいと思います。まず最初に、(5)無期転換後の労働条件について、委員の皆様より御質問、御意見があればお願いいたします。
なお、オンライン参加の委員の皆様におかれましては、発言の希望についてはチャットに発言希望と書いてお知らせください。どうぞ、どなたからでも結構です。いかがでしょうか。
冨髙委員。
○冨髙委員 ありがとうございます。前回の発言にも若干重複するところはあるかと思いますが、幾つか御意見を申し上げたいと思います。
まず、別段の定めをする場合の留意点でございますが、前回発言させていただいたとおり、国会や過去の分科会の答弁を踏まえれば、制度の趣旨としては労働条件の引上げが念頭に置かれていると思います。
ただ、参考資料No.2の41ページにもありますが、無期転換後に別段の定めを設けずに、業務量・労働条件ともに変化がない、いわゆるただ無期と言われるような無期転換者が約8割を占めています。このことを踏まえると、実際には、無期転換を伴う労働条件の引上げがなされているとは言い難いのではないかと考えております。
労働組合としても、同一労働同一賃金の法整備前から、転換後の処遇改善に取り組んではおりますが、労働組合がない職場も多いため、そのような職場でも処遇改善の取組がしっかりとなされるよう、行政として、別段の定めの制度趣旨に沿った適切な運用がなされるように周知徹底をしていただきたいと考えております。
また、労働条件の引下げ防止について、連合の労働相談の中には、無期転換に伴って労働条件を一方的に引き下げられるという事例も聞いております。そのような実態を踏まえますと、本来、労働条件の引下げを抑制するような措置の検討も必要と考えております。
資料No.1の8ページ、3つ目の○に記載がありますが、少なくとも別段の定めによる労働条件の引下げについては司法において慎重に判断される可能性が高いことをしっかりと明確化することや、個別労働紛争解決制度の助言・指導における活用についてもしっかり進めていただきたいと考えております。
参考資料No.1の2ページ目の○の2つ目のところにも記載がありますが、いわゆる有期プレミアムがある場合にも、労働者の合意なく不合理な労働条件の引下げを行うことは許されないことはしっかり周知していただきたいと考えております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、オンラインのほうから発言希望が入っています。鳥澤委員、お願いいたします。
○鳥澤委員 鳥澤です。ありがとうございます。
私から、「無期転換後の労働条件」に関して1点申し上げます。前回も発言いたしましたが、無期転換後に労働条件を変更する場合の留意点について、事例を含めた丁寧な周知をお願いします。
人手不足に悩む中小企業においては、人材確保の点から、有期雇用であることを前提に柔軟な勤務体系やほかの労働者よりも高い報酬を提示するなど、個別の労働契約を行っているところもございます。こうした契約においては、無期雇用に転換するに当たって労働条件の変更を打診するケースが想定されます。
ですので、労使合意による無期転換が進むように、無期転換後に労働条件を変更し一層の活躍につながっている好事例とともに、変更に当たっての不適切な行為や不適切な変更として指摘される可能性がある事例なども併せて提示していただけると、法に基づいた無期転換後の労働条件変更がより一層進むと思っていますので、ぜひよろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。続いて池田委員、お願いいたします。
○池田委員 御指名ありがとうございます。私のほうからは、無期転換者と他の無期契約労働者との均衡待遇について申し上げたいと思います。
以前にも申し上げたとおり、いわゆる同一労働同一賃金の法改正が行われたことを機に、法の定めにのっとって多くの企業では、有期契約労働者と通常の労働者との間の処遇のバランスをとるよう対策を講じ、均衡待遇が進んできていると認識しております。そのため、職務や職責などが変わらない状態で別段の定めを定めることなく、無期契約に転換した場合、転換後の労働条件に不合理性がないことは明らかでございますので、したがって、改めて均衡待遇が図られているか否かに焦点を当てる必要性は小さいのではないかと考えます。
他方、別段の定めにより転換後の処遇を引き上げる場合には、職務や職責が増すこととセットで行うことが一般的であります。仮に転換したことだけをもって処遇改善を図ろうとすると、通常の労働者や転換前の有期契約労働者との関係で新たな不合理を生み出しかねません。
労使が話し合った結果、別段の定めをする企業というのは当然ございまして、望ましくもありますが、転換後、会社がどのような仕事をアサインし、労働者がそれを受けるかどうかといったことについては、企業側、労働者側それぞれの事情やお考えがあって、それぞれの企業の実態に応じて判断されるべきことかと思っております。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。続いて、櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。櫻田でございます。
フルタイムの無期転換者の不合理な処遇格差の是正について、意見を申し上げます。
有期契約労働者やパートタイム無期転換者については同一労働同一賃金にかかる法規定があり、法制度上はパート・有期労働法8条、9条が適用されて待遇間の格差是正がなされているところがある一方で、フルタイムの無期転換者だけは取り残されたような形になってしまっています。これらの労働者の不合理な格差是正のためには、均衡を考慮した事項の説明だけでは不十分でありますし、さらなる方策を検討すべきではないかと考えているところです。
もう一点、参考資料2の46ページのデータがございますが、無期転換後であっても、教育訓練機会のところは僅かしか改善していないとの結果が示されております。無期転換者のスキルやキャリアの向上を図るためには、均衡考慮を行う事項の中に教育訓練機会も含まれることを周知すべきだと思っております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。続いて、梅田委員、お願いいたします。
○梅田委員 ありがとうございます。私のほうから2点申し上げたいと思います。
1点目は、参考資料No.2の47ページにありますとおり、仕事がほぼ同じ正社員の処遇と比較した際の満足度について、無期転換者の半数以上は不満があるとしており、うち4割以上が不合理な賃金差があると回答しています。正社員との待遇差について説明を受けたとする割合も15%程度にとどまっています。また、正社員転換制度がないとする割合も15%程度あることが分かっております。
これらの結果も踏まえますと、無期転換者と正社員との不合理な待遇差を是正するとともに、希望する労働者の正社員転換を支援することは喫緊の課題と考えております。行政としましても、労使の取組への後押しも含めまして取組の推進をお願いします。
2点目ですが、資料No.1の14ページ目でございます。キャリアアップの助成金の各種制度は非常に有用な支援策と考えております。無期転換者の処遇改善などを促すためにも、これらキャリアアップ助成金のさらなる活用を促進すべきと考えております。
また、各コースについてそれぞれに周知徹底を図ることは重要ですが、実際の賃金規定の改定によって待遇の低下が生じていないか、支給した職場のその後の取組がどうなっているのか、さらには、助成金制度の効果を高めるためには何が必要なのかといったことも念頭に置きつつ、継続的な取組をお願いしたいと思います。
以上2点でございます。ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
先ほどの池田委員からの御指摘に少し重なる点があるのですけれども、私も、無期転換後の処遇につきましては、職務と職責とセットで考えるというのが基本になろうかと思っております。無期転換後の職務や職責に変更がないにもかかわらず、処遇だけを下げることは法の趣旨に照らして望ましくありませんので、引き続き周知徹底を図っていくということが必要だと思っております。
他方で、働き手の就労ニーズというのもかなり多様化していると思います。その意味で、無期転換権を行使される有期の方の希望も一様ではなく、例えば無期転換権を行使するものの、何らかの事情で負荷が増えることを望まないような方や、一時的に負荷の低減を希望されるような方もいらっしゃるのではないかと思います。
その背景は、様々あるところですけれども、私としては、その一つに、我が国では、子育て夫婦において家事、育児の分担がいまだに女性に偏っており、それが女性にとって結果として就労する際の制約にもなっている、このような実態もあるのではないかなと感じています。
そうした課題の解決のために、例えば男性の育児休業取得促進を官民挙げて取組んだり、父親学級の参加を促したりして、育児・家事、男女で一緒に行うという意識啓発を加速することも重要だと思いますし、あるいは長時間労働を是正し、より柔軟な働き方を可能にするような仕組みを普及させることなど、希望すればフルタイムで働くことができ、また、難しい仕事にもチャレンジしようとする方の背中を後押しするような環境整備を図っていくことが重要ではないかと思っております。
難しい仕事にチャレンジしやすい環境整備ということでは、先ほど櫻田委員もおっしゃっておられたように、能力開発支援、これを公的な支援も含めて強力に進めていくということも大きな課題ではないかと思っております。無期転換権のあり方の議論に加え、有期の処遇改善を総合的に取組むことが大事と考えております。
もちろん企業側の取組・支援も大切であり、先ほど梅田委員からも御指摘がございました正社員登用の助成金を企業が活用していくことも大変重要と思っております。
ここで事務局に質問させていただきたいと思うのですけれども、この正社員の登用の助成金はどの程度活用されているのかお尋ねしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 それでは、質問がありましたので、事務局からお願いいたします。
○労働関係法課長 ただいま鈴木委員から御質問ございましたキャリアアップ助成金についてでございますけれども、キャリアアップ助成金、令和3年度において、全体でございますと、支給の実績といたしましては7万6,000件ほどの利用がございまして、額といたしましては600億円を超える額を支給しているという状況でございます。そのうち、特に正社員コースにつきましても、10万人を超える労働者を対象に活用がされているという状況でございまして、かなり活用されているという状況であると思っております。
○荒木分科会長 よろしゅうございますか。
八野委員、お願いします。
○八野委員 今は、転換後の労働条件の見直しというところでよろしいですか。
○荒木分科会長 はい。
○八野委員 無期転換ルールの検討に当たっては、有期パートから無期パートになる、有期フルタイムから無期フルタイムになる、といった場合があって、無期パートの中でも同一職務や同一職責の場合と、それが異なる場合がある。有期から無期に転換する場合に、各企業によって様々対応が違っていることもあると思います。しかし、例えば無期のパートタイマーは同一労働同一賃金による不合理な格差是正が図られますが、資料47ページの正社員との待遇に関する説明の有無というところを見ると、パートタイマー、アルバイトの8割を超える者が、説明がない、または分からないという状況になっており、待遇差についての説明がないところに大きな問題があると考えています。
また、不満に感じた具体的な事柄についても調査結果が示されていますが、無期転換後の不合理な待遇差の是正や正社員転換制度の整備がなされていないことが問題だと思います。待遇差についての丁寧な説明や正社員転換制度の整備などが非常に重要になってくると思いますので、政策的な検討、もしくは取り組みの推進をお願いしたいと思います。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかに何か御発言ございますでしょうか。
よろしいですか。
多様な御発言をいただきましたけれども、事務局から何かございますか。
よろしいですか。
それでは、(5)無期転換後の労働条件につきましてはここまでといたしまして、次の(6)有期雇用特別措置法に基づく無期転換ルールの特例について、皆様より御意見、御質問があればお願いいたします。
八野委員、どうぞ。
○八野委員 すみません。ちょっと特例のほうにいってしまったので、均衡のところでもよろしいですか。
○荒木分科会長 どうぞ。
○八野委員 無期転換と他の無期転換者との待遇の均衡について、資料1の6ページの2つ目の転換後の労働条件に関して、均衡を考慮した事項の説明を促すことは本当に重要だと思いますが、やはり実効性を高めていくためには、使用者に説明義務を課す方向で検討すべきではないかと考えております。
その上で、資料No.1の15ページに記載がある労契法3条2項を踏まえた均衡考慮に関してですが、ここでいう均衡は誰と比較した場合の均衡なのかということを明確にしていく必要があります。パート・有期労働法のように、比較対象は誰で、どのように考慮するかを明らかにしておかなければ、労働者は誰との比較で均衡を考慮されたのか分からないということになります。比較対象についても明確にすべきという考え方を申し上げておきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、(6)のほうに移ります。有期雇用特別措置法に基づく無期転換ルールの特例についてです。
北野委員から手が挙がっております。お願いいたします。
○北野委員 ありがとうございます。私のほうから、資料19ページ、有期特措法に基づく特例について1点申し上げたいと思います。
無期転換ルールは、本来であれば全ての労働者に等しく適用されるべき基本的なルールだと思っておりますので、有期特措法、さらには科技・イノベ法も含めて、個別法で特例を設けるのは適当ではないということは労働側の考え方の基本であることは申し上げておきたいと思います。
その上で、特例の認知状況について、参考資料2の48ページに、第一種も第二種も50%弱ぐらいが知っていることが示されていますが、第一種については1件の認定にとどまっております。こうした状況を踏まえると、報告書では「さらなる周知を行うのが適当」とされているのですが、少なくともこの第一種については制度の必要性が乏しいのではないかと意見を申し上げておきたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 ありがとうございます。ただいま、一種について、労働側から必要性が乏しいのではないかという御意見がありました。
認定件数は1件ということですけれども、この民間の有期特措法については、御案内のとおり、科技・イノベ法等には設けられていない年収1,075万円以上という厳しい要件も課せられており、民間企業にとって特例を活用するハードルは、正直、高いという受け止めをしております。
さらに、一種特例のほかの要件に、5年を超える一定の期間内に完了する業務として、業務の開始日と、あと完了日、これを明確にするということが求められているのですけれども、例えば新規事業の立上げといったような場合に、完了日を特定しにくい業務というのもあると聞いております。そういったことで、この本特例が十分活用できていないという面もあるのではないかと考えておりまし、実際にそういう改善を求める企業の声もあるところでございます。そういう意味では、そうしたことも含めて考えないといけないので、直ちにこの廃止ということについては賛同しがたいということを申し上げたいと思います。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
冨髙委員。
○冨髙委員 使用者側のほうから要件緩和にもつながるような御発言がございましたけれども、検討会報告書の中で特例の周知が適当であるとされたところですが、少なくとも第1種の現状を踏まえれば必要性は乏しいのではないかと考えております。そもそも特例があること自体に労働側としては強い違和感がございますので、さらなる要件緩和については受け入れられないと考えております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、(6)については以上といたしまして、続いて(7)その他ということになりますけれども、これについて委員の皆様より御意見、御質問があればお願いいたします。
世永委員、お願いいたします。
○世永委員 ありがとうございます。私からは、23ページの論点、労使コミュニケーション等を通じた無期転換ルールの円滑な運用の促進について意見を申し上げます。
これまでも労働組合としましては、有期契約労働者の無期転換の促進や処遇改善に取り組んできましたが、今後も一層の取組が必要であると認識しております。特に労使間の情報の非対称性や交渉力の差などを考慮しますと、有期契約労働者や無期転換労働者の着実な処遇改善を実現していくためには、やはり集団的労使関係による労使コミュニケーションを軸に捉えることが重要であると考えています。労働組合としても雇用形態にかかわらず、職場の仲間を組織化するとともに、無期転換者や、これから無期転換申込権が発生する者を含め、意見集約等も併せて進めていきたいと思っておりますが、行政としても周知や情報提供など一層の後押しをお願いしたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 ありがとうございます。
無期転換者に適用される就業規則を作成変更する際、無期転換社員にとどまらず、有期の方の意見も聞くということが大変重要です。ただ、無期転換者も含めて、労働契約ですとか就業形態、結構多様化しておりますので、意見集約の方法というのは多様なものがあって良いと考えます。一義的には、有期の方の過半数代表を選出して、その方から聴取するという方法もあろうかと思うのですけれども、例えば有期契約労働者の方ですとか無期転換の方のアンケート調査を実施する、ほかにも、有期契約を更新する際に行う個別面談で個別に意見を聞くなど、各社の実態に合わせた方法が認められて良いと考えているところでございます。
したがって、厚生労働省におかれては、多様な労使コミュニケーションの、様々な好事例を集めていただいて、それを普及することでよりコミュニケーションの実を高める、そういったお取組も検討いただければありがたいと思っております。これは意見でございます。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
八野委員。
○八野委員 昨今、労働法制の議論の中で、または新しい資本主義の中でも、多様という言葉がよく使われますが、その範囲は不明確です。有期のパートタイマーの場合を考えますと、店舗の採用になっており、更新契約等も店舗の店長が行うというような形が多く見受けられます。
そのときに、特に無期転換ルールなどについて、企業としても、採用を担う店長などを含めしっかりと説明して理解させておかないと、そこで雇用された有期のパートタイマー、アルバイトに十分説明ができないことになります。そのような前提となる取り組みがないと、例えば労働者の意見を聞くこともなかなか難しいのではないかと思います。使用者に対する無期転換のルールを周知徹底することが重要であると思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
佐久間委員。
○佐久間委員 ありがとうございます。やはり労使のコミュニケーションのあり方というのが重要なところになってくるだろうなと思います。この無期転換は、対象労働者に説明をしていくタイミング等もあるのですが、企業は、人数規模とか組織体制、これを改編しながら成長し、事業や業務に応じた組織体が形成されていくことになります。特に中小企業においては、正社員、それから無期転換に該当する有期労働者などを対象とした、それぞれの就業規則とか、各種規定を作成、整備するに当たって、行政からの助成措置等も活用させていただいている例も多いと思います。対象者が複数の働き方の形態で異なると、一つの就業規則、規定類ではなく、対象者に応じたものが複数存在することになってしまいます。そのときにどれを使っていいのかとか、組織体として分かりにくくなるのではないでしょうか。また、社員間の意思疎通というのもできなくなるおそれもありますので、ぜひとも就業規則や規定類は、条項に項目の記載がされるか、あるいは、正社員、有期、無期等働く形態により分けるのであれば、それに合ったものを整理していただいて、行政としても企業に徹底していただくということも必要なのではないかなと思います。ぜひ、混乱することのないように措置をとっていただきたいと考えております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはよろしいでしょうか。
それでは、議題(1)の無期転換ルールについては以上とさせていただきたいと思います。
ここで説明者が交代いたしますので、しばしお待ちください。
それでは、議題の2番目、これからの労働時間制度に関する検討会報告書についてです。事務局より説明をお願いいたします。
○労働条件政策課課長補佐 事務局でございます。資料について御説明させていただきます。
本議題につきましては、資料3-1から3-4までと、参考資料No.6が資料となってございます。本検討会でございますが、本分科会の分科会長でもあります荒木教授に座長をお務めいただき、昨年7月から16回にわたって裁量労働制を含む労働時間制度全般について御議論いただきまして、7月15日に報告書を取りまとめましたので、その内容について御報告させていただきます。
資料3-1が報告書の概要でございまして、資料3-2が本文でございます。本文が大部にわたってございますので、資料3-1の概要を中心に、適宜、資料3-2の本文を参照する形で御説明させていただければと思ってございます。
まず、資料3-1を御覧ください。報告書は第1から第5に分かれてございます。まず、第1が「労働時間制度に関するこれまでの経緯と経済社会の変化」ということで、この概要では特に経済社会の変化についての記載を抜粋しています。
1つ目のポツが総括的な記載で、少子高齢化や産業構造の変化が進む中で、デジタル化の更なる加速や、新型コロナウイルス感染症の影響による生活・行動様式の変容が労働者の意識や働き方、企業が求める人材像にも影響しているという認識について御指摘いただいた上で、具体的にここにある4点について御説明いただいているものでございます。
例えば、上から3つ目の➣でございますが、労働者の意識や働き方はコロナ禍の影響等により多様化していること、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方のニーズが強まっていくと考えられることについて御指摘いただいてございます。
その下が企業側の目線で、デジタル化の進展に対応でき、創造的思考等の能力を有する人材等が一層求められていくこと、企業には、企業の求める能力を持った多様な人材が活躍できるような魅力ある人事労務制度を整備していくことが求められることについて整理いただいているものでございます。
第2が「これからの労働時間制度に関する基本的な考え方」を整理いただいたものでございます。1つ目でございますけれども、現在の労働時間法制が労使のニーズや社会的要請に適切に対応し得ているのかは、常に検証を行っていくことが必要と指摘いただきました。
その次のポツでございます。労使のニーズに沿った働き方は、これまでに整備されてきた様々な制度の趣旨を正しく理解した上で制度を選択し、運用することで相当程度実現可能であること、まずは各種労働時間制度の趣旨の理解を労使に浸透させる必要があると指摘していただいてございます。
「その上で」ということで、その下のポツでございますけれども、これからの労働時間制度を考える上での視点について3点おまとめいただいてございます。
1つ目が、「どのような労働時間制度を採用するにしても、労働者の健康確保が確実に行われることを土台としていくこと」、2点目が、「労使双方の多様なニーズに応じた働き方を実現できるようにすること」、3点目が、「労使当事者が十分に協議した上で、その企業や職場、職務内容にふさわしい制度を選択、運用できるようにすること」、この3点でございます。
続きまして、第3といたしまして「各労働時間制度の現状と課題」についてまとめていただいてございます。1つ目のポツでございますけれども、働き方改革関連法で導入・改正した時間外・休日労働の上限規制やフレックスタイム制等は、法の附則に設けられた改正の施行5年後の見直し規定に基づき、施行状況等を十分に把握し、検討することが求められるとされてございます。
次が年次有給休暇で、年次有給休暇の取得率向上のための年度当初の取得計画作成の推奨等の一層の取組や、あるいは時間単位での取得について労働者のニーズに応えるような各企業独自の取組の促進の必要性について指摘いただいているものでございます。
次のポツでございますけれども、勤務間インターバル制度につきましては、当面は、引き続き、企業の実情に応じて導入を促進することが必要であること、また、いわゆる「つながらない権利」を参考にして検討を深めていくことが考えられることについて整理いただいているものでございます。
次のページを御覧ください。第4が「裁量労働制について」でございます。こちらにつきましては、適宜本文も御参照いただければと思います。まず、現状認識のところで制度の趣旨についておまとめいただいてございまして、こちら、資料3-2ですと12ページ目でございます。
現状認識とあるところの○のところでございますけれども、「裁量労働制の趣旨は、業務の性質上その遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務について、労働時間の状況の把握に基づく労働者の健康確保と、法定労働時間を超える労働について、実労働時間数に比例した割増賃金による処遇以外の能力や成果に応じた処遇を可能としながら、実労働時間規制とは別の規制の下、使用者による実労働時間管理から離れて、業務の遂行手段や時間配分等を労働者の裁量に委ねて労働者が自律的・主体的に働くことができるようにすることにより、労働者自らの知識・技術を活かし創造的な能力を発揮することを実現することにある」という形で趣旨についておまとめいただいてございます。
概要をご覧いただきますと、次に現状と課題とございます。こちらも本文を御参照いただければと思います。13ページ目でございます。2つ目の○でございますけれども、昨年、本分科会でも御報告させていただきました裁量労働制実態調査の結果やそれを用いた回帰分析の結果を整理いただいたものでございます。
ポツのところを御覧いただければと思いますけれども、「裁量労働制適用労働者は概ね、業務の遂行方法、時間配分等について裁量をもって働いており、専門型・企画型ともに約8割が制度の適用に満足している又はやや満足していると回答するなど、裁量労働制が適用されることにも不満は少ない」とされてございます。
その下のポツでございますけれども、「労働者調査による1日の平均実労働時間数は、適用労働者が9:00、非適用労働者が8:39と適用労働者のほうが若干長い」。
その下のポツでございますけれども、「回帰分析によると、労働者の個人属性等を制御した場合には、裁量労働制の適用によって、労働時間が著しく長くなる、睡眠時間が短くなる、処遇が低くなる、健康状態が悪化するといった影響があるとはいえないという結果になった」とされてございます。
また、その下でございます。「専門型では、本人同意が必須ではないが、5割弱の事業場で本人同意が制度の適用要件となっている」とした上で、「回帰分析の結果によると、本人同意のある専門型適用労働者の方が、実労働時間が週60時間以上となる確率が低く、健康状態がよくない・あまりよくないと答える確率も低くなっている」という点について整理いただいてございます。
その下が労使委員会の関係でございますけれども、「回帰分析の結果によると、労使委員会の実効性があると労働者が回答した場合、長時間労働となる確率や健康状態がよくない・あまりよくないと答える確率が低くなっている」としてございます。
また、その下でございます。「回帰分析の結果によると、専門型・企画型双方について業務の遂行方法、時間配分等や出退勤時間の裁量の程度が小さい場合には、長時間労働となる確率や健康状態が悪くなる確率が高くなっており、また、業務量が過大である等の場合には、裁量労働制が適用されていることの満足度も低くなっている」としてございます。
次のポツでございますけれども、「年収が低くなるに従って裁量労働制が適用されていることの満足度が低くなっており、所定労働時間をみなし労働時間に設定している事業場において、特別手当制度を設けていないようなケースもみられる」としてございます。
ここまでが現状と課題でございます。このような制度の趣旨や現状と課題を踏まえ、対応の方向性として4点おまとめいただいてございます。
1点目が「対象業務」、2点目が「労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保」、3点目が「労働者の健康と処遇の確保」、4点目が「労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保でございます。
まず、1つ目の対象業務についてでございます。資料3-2の16ページ目を御覧ください。上から1つ目の○でございますけれども、「裁量労働制の趣旨に沿った制度の活用が進むようにすべきであり、こうした観点から、対象業務についても検討することが求められる」とした上で、その次の○で、「その際、まずは現行制度の下で制度の趣旨に沿った対応が可能か否かを検証の上、可能であれば、企画型や専門型の現行の対象業務の明確化等による対応を検討し、対象業務の範囲については、前述したような経済社会の変化や、それに伴う働き方に対する労使のニーズの変化等も踏まえて、その必要に応じた検討をすることが適当である」と整理いただいてございます。
2点目が「労働者が理解・納得した上での制度の適用と裁量の確保」でございますが、同じく16ページ目の下の○でございます。「労働者が制度等について十分理解し、納得した上で制度が適用されるようにしていくことが重要である」とした上で、「専門型・企画型いずれについても、使用者は、労働者に対し、制度概要等について確実に説明した上で、制度適用に当たっての本人同意を得るようにしていくことが適当である」としてございます。
その次のページでございますけれども、「また、裁量労働制の下で働くことが適切でないと労働者本人が判断した場合には、制度の適用から外れることができるようにすることが重要である」とした上で、「本人同意が撤回されれば制度の適用から外れることを明確化することが適当である」とされてございます。
次に、その2つ下の○、「また」で始まるところでございます。業務に没頭して働き過ぎとなり健康影響が懸念されるような場合などについては、裁量労働制の適用を継続することは適当でないとした上で、「労働者の申出による同意の撤回とは別に、一定の基準に該当した場合には裁量労働制の適用を解除する措置等を講ずるような制度設計を求めていくことが適当である」としてございます。
次に18ページ目でございます。資料3-1の概要では「始業・終業時刻の決定の裁量の必要性の明確化」とあるところでございますけれども、「実態調査結果等を踏まえると、労働者において始業・終業時刻の決定に係る裁量がないことが疑われるケースがみられることから、裁量労働制は始業・終業時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる制度であることを改めて明確化することが適当である」とされてございます。
ここまでが2つ目のまとめでございまして、3つ目が「労働者の健康と処遇の確保」についてでございます。1つ目が19ページ目の健康・福祉確保措置で、上から4つ目の○でございます。裁量労働制の対象労働者の健康確保を徹底するためには、「他制度との整合性を考慮してメニューを追加することや、複数の措置の適用を求めていくことが適当である」としてございます。
その次がみなし労働時間の設定と処遇の確保で、20ページ目でございます。5番目の○で、「みなし労働時間は、対象業務の内容と、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を考慮して適切な水準となるよう設定する必要があること等を明確にすることが適当である」とした上で、「例えば所定労働時間をみなし労働時間とする場合には、制度濫用を防止し、裁量労働制にふさわしい処遇を確保するため、対象労働者に特別の手当を設けたり、対象労働者の基本給を引き上げたりするなどの対応が必要となるものであり、これらについて明確にすることが適当である」とまとめていただいてございます。
4つ目が「労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保」ということで、こちらも本文を御参照いただきますと、21ページ目でございます。最初の○でございますけれども、「裁量労働制の導入時のみならず導入後においても、当該制度が労使が合意した形で運用されているかどうかを労使で確認・検証(モニタリング)し、必要に応じて制度の見直しをすることを通じて、適正な制度運用の確保を継続的に図ることが期待される」とした上で、「使用者は労使協議の当事者に対し、裁量労働制の実施状況や賃金・評価制度の運用実態等を明らかにすることや、労使協議の当事者は当該実態等を参考にしながら協議し、みなし労働時間の設定や処遇の確保について制度の趣旨に沿った運用になっていないと考えられるなどの場合には、これらの事項や対象労働者の範囲、業務量等を見直す必要があることなどを明確にすることが適当である」と整理されています。
ここまでが第4の「裁量労働制について」の概要でございます。
最後に、資料3-1にお戻りいただきまして、第5の「今後の課題」についてでございます。1つ目のポツでございますけれども、働き方改革関連法の施行5年後の施行状況等を踏まえた検討に加えて、経済社会の変化を認識し、将来を見据えた検討を行う必要性について御指摘いただいた上で、その検討に当たっての視点を幾つか御提示いただいてございます。
その下にある4つのポツでございますけれども、1つ目が現行制度を横断的な視点で見直し、労使双方にとってシンプルで分かりやすいものにしていくこと、2つ目がIT技術の活用などによる健康確保の在り方、労働者自身が行う健康管理を支援する方策等について検討すること。その次が、企業が発信した情報をもとに労働者が企業を選択できるようにする観点や、自分の働き方や労働環境が不適切なものになっていないかを労働者自身が確認できるようにするような観点などから、労働時間制度等に関する企業による情報発信を更に進めていくこと、最後でございますけれども、各企業の実情に応じて労働者の意見が適切に反映される形でのコミュニケーションが重要であるため、過半数代表制や労使委員会の在り方についても課題であること、適切な労使協議の場の制度的担保を前提として、労使協議により制度の具体的内容の決定を認める手法も検討課題の一つであるということについて御指摘いただいてございます。
報告書の内容については以上でございますが、最後に参考資料No.6を御覧ください。裁量労働制に関する附帯決議・働き方改革関連法の附則でございます。平成30年に働き方改革関連法案を国会で御審議いただいた際に、衆議院の厚生労働委員会あるいは参議院の厚生労働委員会から、ここに記載されている附帯決議をいただいてございまして、労働政策審議会において裁量労働制について検討することが求められているというのが現状でございます。
事務局からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、委員の皆様より御質問、御意見があればお願いいたします。
佐久間委員、お願いいたします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
まず、これからの労働時間制度に関する検討会の報告書は、この間の問題点、それから検討材料というのが簡易な形で表記されておりまして、非常に分かりやすい検討会の報告書ではないかなと考えております。
その中で、この検討会の報告書に掲載されている項目、例えば裁量労働とか、非常に重要なテーマが多数あります。これからこういうテーマをどのようなスケジュールで検討していくのか、この分科会でも検討しようとしているのか、雇止めと同じように、項目が結構多くなるとかなりの回数開催していかなければいけないのではないかなと。その辺のスケジュール感を教えていただきたいと思います。
それから、例えば勤務間インターバル制度の関係とか、それから「つながらない権利」というところがあったのですけれども、この勤務間インターバル制度については、過労死等防止対策大綱の目標としても、30人以上の企業で令和7年度までに15%の導入、適用をしていこうと目標があるわけでございます。現状、まだまだ進んでいないため、高い目標だとは思うのですけれども、中小企業の場合ですと、いろんな資料で時間外労働時間は概ね10時間程度になっております。
この勤務間インターバル制度を適用していくには、残業が多いとか超過勤務が多いという中で、まだまだ実施が少ないところもあるかもしれませんけれども、逆に、これも前回申し上げたのですけれども、あまり実態として影響がない事業所もありますので、そういう事業所で、就業規則に盛り込んでいくと、そういった助成措置も用意していただくわけですから、これは率先して普及していくチャンスではないか、とも思います。
それから、「つながらない権利」の関係も、業務時間以外に仕事の関係がメール等で来るのも嫌だなということはあると思うのですけれども、企業側としても各課やチームの一員として行動を求めることと、それから各課やチーム全体に情報を周知していきたいなど、伝えたい情報の種類により異なるのではないか、と考えています。こういう状況がある、ビジネスチャンスとか周辺の環境を教え合う、共有するということも必要だと思うので、そういう情報の内容について、一方的に会社からの情報だけメールを出さないということでなくて、そういう選択というのもあるのではないかなと思ったところでございます。
あと、いろいろな課題がありますけれども、これは先ほどのスケジュール感を教えていただきながら、随時また検討させていただきたいと思っております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。それでは、お尋ねありましたので、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
佐久間委員の御質問についてお答え申し上げます。スケジュール感でございますが、本日、この検討会の報告書を御報告させていただいた段階でございます。本日、委員各位から御意見をいただけるものと考えておりますので、その御意見等を踏まえながら、また分科会長と御相談させていただいて進め方を決めていくということになろうかと思ってございます。現時点で、具体的にいつまでという形で事務局において考えているものではございません。
ただ、先ほど御説明申し上げましたように、国会の附帯決議の中で裁量労働制の検討を本労働政策審議会で求められていることということは念頭に置いて進めてまいりたいと考えておりますし、また、本日御報告申し上げました報告書にもございますように、様々な課題というものがございますので、どのような形で議題を整理して進めていくかということは、また分科会長と御相談させていただきながら考えてまいりたいと思ってございます。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。私のほうからは、1点、裁量労働制の対象業務について意見申し上げさせていただきたいと思います。
参考資料3-3の6ページにもございましたけれども、我が国では生産年齢人口が大幅に減少していくことが確実視されております。今後国力を維持・向上していく上では、働き手一人一人の生産性向上というのは不可欠だろうと考えております。そうした中で、政府のほうでも人への投資の強化に向けて、3年で4,000億円という施策のパッケージなんかも打ち出されていらっしゃると思うのですけれども、こうした生産性向上をやっていこうと思いますといろんな政策を総動員してやっていく必要があるだろうと思います。そうした中には、労働時間法制の見直しというのも当然に入ってくるのだろうと考えております。
手前どもの自動車業界の状況についてこの場を借りて申し上げさせていただきますと、先日も中国のEVのメーカーさんが日本に参入するというような報道もございましたけれども、電動化であるとか自動運転とか、いろんな技術革新等に基づいて大きな環境変化が進んでいると思っています。我々自動車業界も従来の売り切り型のビジネスから事業としても転換していかないといけない、そしてまた技術的にも大きなチャレンジをしていかないといけないと、こんな状況になっていると思います。
これは、すなわち、社内のノウハウを生かしにくくなる状況になると思っていまして、そうしますと、やはり今まで以上に各従業員がそれぞれの自律性を持って能力を発揮していただくということが求められていくのだろうと思っております。
こうした点においては、裁量労働制というのはそうした働き方だとか働く意識への変革を非常に後押ししていただける制度であろうと思っていますので、従来以上にこの裁量労働制を有効活用したいというニーズは業界としても高まっているのだろうと思っています。
他方で、今回、実態調査の結果を見ますと、先ほど御説明もございましたけれども、裁量労働制適用者の約8割は、満足、あるいはやや満足という回答をされている。労働時間のほうを見ますと、適用者のほうが非適用者よりも1日20分程度、少々長いという結果が出たものの、回帰分析の結果によると、健康状態が悪化するといった影響があるとは言えないというようにも出ていたと思います。
こうしたことから、裁量労働制は、きちんと使えば大変有意義な、有効な制度であると思っておりますので、一定の健康管理、健康確保というのは前提としつつも、必要に応じて対象業務を見直して、対象業務を適宜拡大していって、裁量労働制が幅広く活用されるような議論になっていくように考えていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
私のほうから以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。続いて、鳥澤委員、お願いします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。このたびは、報告書を取りまとめていただき、誠にありがとうございます。
基本的な考え方に示されたとおり、社会環境の変化が進む中で、労使双方の意識やニーズは大きく変化していることから、多様で柔軟な働き方を進めていくことは非常に重要だと思っています。また、労働者の健康確保を前提とし、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を推進していくことは、生産性向上、人材確保・定着の効果が期待できることから、企業としても高いニーズがあるものと認識しています。
一方で、現在設定されている制度は、様々な目的・要件から多様化・複雑化しており、中小企業からは制度の導入に躊躇する声を多く聞きます。
ですので、今後の課題として、報告書に提示していただいているとおり、「労使双方にとってシンプルで分かりやすいものにしていく」ことをお願いしたいと思います。
また裁量労働制について、一つ一つの業務量が少なかったり、マンパワーが少なかったりする中小企業においては、一人の労働者が複数の業務を行うことが多々ございます。そのため、中小企業でも裁量労働制を運用しやすくなるようにする前提として、健康確保や労使コミュニケーション推進を担保しつつ、現行制度の下で実態把握や検証に努めたうえで、対象業務の拡大について引き続き検討していただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。続いて、山内委員、お願いいたします。
○山内委員 御指名いただいてありがとうございます。
まず初めに、報告書、膨大な量を取りまとめいただきまして、取りまとめに御尽力いただいた方々に感謝申し上げたいと思います。
私のほうからは、裁量労働制の対象業務の拡大と、あと適正な制度運用、この2点について意見を申し上げたいと思います。
先ほど鬼村委員のほうからもお話が出ましたが、裁量労働制を活用していく必要性について指摘があったと思います。皆さん御承知のとおり、コロナを経験する中で、時間と場所にとらわれない柔軟な働き方を加速する動きが様々な企業で活発になっているかと思います。私どもの電機業界においても、IT業界を含めてグローバル企業との競争は一層激しくなっております。そういう中で、日本においての労働生産性を高めていく、並行して従業員のエンゲージメントも高めていくためには、テレワークの活用や柔軟な勤務制度の導入など、いわゆる勤務の時間と場所の選択肢の拡大について各社とも様々な工夫を進めているところでありまして、裁量労働制の対象業務の拡大については期待する企業が非常に多いのが現状でございます。
いただきました報告書の中には、労使のニーズに沿った働き方は既存制度の適切な運用で相当程度実現可能であると記載いただいております。確かにフレックスタイム制度やテレワーク、ワーケーション制度等の活用で一定程度は実現可能なことはあるかと思います。ただ一方で、フレックスタイム制度は、いただきました参考資料3-2の9ページにあるように、生活と業務の調和を図りながら効率的に働くことを目的とした制度でございます。必ずしも仕事の進め方を働き手の裁量に委ねる業務のみを想定しているものではなく、また、報酬につきましては時間比例の側面があります。
昨今、必ずしも時間と成果が比例しない職務に就く働き手が増えております。これは、先ほど同じように鬼村さんからお話ありました売り切り型のビジネスから、いわゆる課題解決型、提案型のビジネスというのが非常に多くなってきております。いわゆる創意工夫に従事する時間というのが非常に多くなってきておりまして、これも同じく参考資料3-2の12ページにあるように、いわゆる労働者自らの知識や技術を生かし、創造的な能力を発揮することを実現するために、真に時間にとらわれない働き方を可能にするまさに裁量労働制への期待というのは非常に大きいと認識しております。
ただ、報告書に同じように記載があります、少ないながらも本制度に不満を持つ労働者の方々がいるのも事実であります。適切な適用を促すことが重要なのは言うまでもありませんが、正しく運用している企業の活用を一方で阻害するようなことがあると、国力の成長を妨げることにもつながりかねません。ぜひとも同時並行で、対象業務の拡大について検討することを強く要望いたしたいと思います。
あともう一点、制度適用・運用に関して、労使委員会の機能強化について言及されております。労使自治を軸に適正な運用を図っていこうとする方向性についてはそのとおりかと思います。これも参考資料3-3の45ページに労使委員会の実効性に対する認識に関するデータが出ておりますけれども、回答された適用労働者の中に具体的に何をもって実効性がないと回答されたのか、ここら辺が明らかに表現されておりません。
今後議論を進めていく中ではそうした点の分析や実態の深掘り、また好事例の共有などを進めて、実態に即した議論を行っていくことが必要であると感じました。事務局におかれましては、適宜必要な情報の提供をお願いできればと存じます。
以上2点、私からは意見を申し上げました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。続いて、北野委員、お願いいたします。
○北野委員 ありがとうございます。
私からは、報告書において6か月以内に1回行う定期報告に対する負担軽減をはかることが適当とありますが、労使委員会が十分機能していないところや、実質的に裁量がないような働き方をしているところもあります。そのような現状も踏まえますと、定期報告の頻度を減らしていくという方向性については疑問があります。
日常的な労使関係の中で運用状況を把握している事業場であればともかく、制度の運用状況も十分チェックできない事業場、さらには定期報告時しかチェックしないという事業場もあるのではないかと思いますので、そのような事業場において適正な制度の運用が本当に可能なのかということが疑問です。
また、報告書に「企画型が制度として定着してきたことを踏まえ」との記載がありますが、これは現場の労使の尽力によるものだということは重々頭に入れておかなければならないと思っております。
そこで、負担の軽減のほかに、企画型の労使委員会決議や、さらには専門型の労使協定の本社一括届出等の手続の簡素化などについても提言されていますが、労使によるチェック機能の強化を求められているということを踏まえれば、行政によるしっかりとしたモニタリングが不可欠だと思っておりますので、まずはモニタリングを徹底し、安易な規制緩和を行うべきではないと労働者側としては考えております。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 報告の中にもございますように、労働時間制度を考えるに当たりましては、労働者の健康確保が大前提であるということは言うまでもないことだと考えておりますし、これは環境の変化や、働き方の多様化の中でも変わることがないところであると考えています。
実際、労使の働き方のニーズが多様化したり変化する中でも、労使協議等を通じて現行制度を適切に活用することにより、多様な働き方は十分に可能ではないかと考えます。また、働き方改革関連法の施行により、時間外・休日労働の上限規制の着実な施行、職場への定着にしっかり取り組んでいくこと、そして、先ほど佐久間委員からもございましたが、勤務間インターバル制度の普及なども含めて、様々な現行制度の適切な運用を進めることが急務ではないかと考えているところです。
また、裁量労働制に関しましては、先ほど使用者側から様々な御意見がございました。我々も、日常的な労使対話や労使協議を通じて、労使で話し合いながら適切な制度運営に努めているところがあることは把握しております。一方で、裁量労働制実態調査や、我々が聞いている中でも、実質的に裁量がない働き方をしていると思われるような適用労働者がいたり、労使委員会が十分機能していないケースがあったり、また健康・福祉確保措置が相談窓口の設置等、簡単にできるものに偏りが見られるなど様々な課題がございますし、適用労働者の方が長時間労働の割合が高くなっているという実態もございます。
このような実態や課題を踏まえれば、やはりまずは制度趣旨に沿った現行制度の課題を改善すること、また、適切な運用を進めることが重要だと考えております。その観点から考えますと、使用者側から対象業務拡大の意見がありましたけれども、労働側としましては、対象業務拡大の部分も含めて安易に裁量労働制の拡大を図るべきではないと考えています。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
本日事務局から説明がありました検討会報告書については、労使ともに一定の評価をいただいたと考えております。次回以降の本分科会では労働時間制度についての検討を進めるということになりますけれども、先ほど事務局から説明がありましたとおり、国会の附帯決議で、裁量労働制については本審議会での検討が求められているということを念頭に置いて進めてまいりたいと考えています。
事務局においては、本日の議論を整理いただくとともに、議論を進めるための論点と必要な資料、この準備をよろしくお願いします。
それでは、この議題については以上とさせていただきまして、また説明者の交代をさせていただきます。
それでは、議題(3)その他です。まずは資料No.4について、事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
資No.4に沿って御説明いたします。まず、冒頭、本件に関しましてですが、「高度プロフェッショナル制度に関する報告の状況等について」ということで報告をさせていただきます。
高度プロフェッショナル制度は平成31年4月から施行されておりまして、施行から3年を経過いたしました。これまで事業場からの決議届ですとか半年に1度の定期報告をもとにその状況を取りまとめて公表してきたところでございますが、このタイミングを捉えまして、最新のものをまとめて報告させていただきますとともに、JILPTにおきまして労働者向けのアンケート調査も行っておりますので、この結果の速報値も併せてこの場で御報告させていただきたいと考えております。
高度プロフェッショナル制度は、働き方改革関連法の附則で施行後5年を目途とした検討を求められております。今、3年ということで、まだこの先少し時間はございますけれども、今ちょうど真ん中というところでございまして、状況を報告させていただきますので、皆様の御意見を賜れればと考えております。
2ページ目から4ページ目まではこれまでの定期報告等の取りまとめの公表の最新版となってございます。
2ページ目でございますが、高度プロフェッショナル制度に関する報告の状況ということで、まず対象労働者数でございます。制度施行、平成31年4月1日から令和4年3月31日までの間に受理した決議届、このうち直近のものを用いて集計したものでございます。そのうち各種情報から制度を廃止したと確認したようなところに関しては除外をして数字を出しているものでございます。労働者数が全体で665人、事業場数で22事業場、21社となってございます。
業務別に見ますと、4番のコンサルタントの業務が最も多くなっておりまして、労働者数で550人、決議事業場数で14事業場となってございます。
3ページ目でございます。各事業場の健康管理時間の状況でございます。御案内のことではございますが、健康管理時間は、対象労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計時間というのが定義となってございます。
健康管理時間の中には、労使委員会の決議で健康管理時間から除くとした場合以外は、休憩時間が含まれております。そういったことから休憩時間が含まれている事業場もございますので、これらの時間が必ずしも労働時間と一致するものではないということには御留意いただければと思います。
その上で、結果でございますけれども、令和4年3月31日までの1年間に受理した定期報告のうち直近のものを用いて集計いたしますと、健康管理時間の最長の時間、これは4番のコンサルタントの業務で400時間以上500時間未満となった事業場が2事業場ございます。これは対象期間において最も長い労働者でどれぐらいの時間だったかを事業場が報告した結果でございます。また、平均値ですと、証券アナリストの業務で1事業場、コンサルタントの業務で1事業場で、300時間以上400時間未満というところがございました。こういった結果となってございます。
4ページ目でございます。選択的措置及び健康・福祉確保措置の実施状況ということでございます。各事業場、労使委員会で決議して採用していただいてございますけれども、まず、選択的措置の実施状況につきましては、3番の1年に1回以上の連続2週間の休日を与えるというのが一番多くなってございます。健康・福祉確保措置に関しましては、4番の心とからだの健康問題についての相談窓口の設置、これが一番多くなってございます。
なお、これらは高プロ制度として設けているものでございますが、これらの措置のほかに、健康管理時間の中で週40時間を超える部分が月100時間を超える労働者、こういった方々に関しては、労働安全衛生法に基づいて、本人の申出の有無にかかわらず、医師の面接指導を義務として実施するということとなってございます。
ここまでが、監督署への定期報告等をまとめたデータとなってございます。
5ページ目以降でございますが、今般、JILPTにおきまして、高プロ制度適用労働者に対するアンケート調査を行いました。その結果の速報でございます。
調査設計でございますけれども、調査時点は昨年末、12月末日時点でございます。高プロ制度適用事業場、その時期で22事業場ございましたが、そこの労働者の方々に調査票を配布して回収したものでございます。適用労働者572人に配布いたしまして、有効回収数が254人、有効回収率が44.4%となっているものの結果でございます。
6ページ目でございます。適用労働者の属性でございます。まず性別でございますが、男性が82.3%、女性が16.9%、その他が0.8%でございました。年齢層につきましては、30代が45.7%、20代が22.4%、40代が19.7%、50代が11.0%、60代以上が1.2%となってございます。
7ページ目でございます。労働者の方がその対象業務にどれだけ従事していたかというものでございます。グラフの見方でございますが、青い棒グラフが、その労働者の方が職業人生の中でその業務にどれだけ従事していましたかということを聞いたものでございます。赤棒グラフがそのうち現在の勤め先でどれだけの年数その業務に従事していますかと聞いたものでございます。まず、その労働者の方の同じ業務への従事期間でございますが、3年未満が44.9%、3年以上が55.1%でございます。そのうち現在の勤め先でと聞いたところ、3年未満が60.2%、3年以上が39.8%という結果となってございます。
8ページ目でございます。対象労働者の方の雇用契約の性質について聞いたものでございます。まず、雇用契約期間の有無でございますが、期間の定めなしとお答えになった方が87.0%です。有期契約であると答えた方が13.0%となってございます。
有期契約の方の雇用契約期間をお聞きしたところ、1年契約であるという方が63.6%で最も多くなってございます。
勤務先での役職についてお伺いしたところ、「一般社員」と答えた方が50%、「課長クラス」と答えた方が22.0%となってございます。今回、専門職という選択肢はございませんでしたので、「一般社員」というところに入っているかと考えられます。
9ページ目でございます。賃金の算定方法等についてお聞きしたものでございます。まず、対象労働者の方の給与形態でございますが、「年俸制」であると答えた方が81.1%、「月給制」であると答えた方が18.5%という結果でございます。
高プロ制度適用後の年収はどの程度ですかと聞いたところでございますが、「1,075万円以上1,500万円未満」という方が55.2%、「1,500万円以上2,000万円未満」という方が26.3%、「2,000万円以上」という方が16.4%という結果でございました。
なお、右側グラフの※2にも書かせていただいておりますが、この質問で「1,075万円未満」という回答が5件見られたところでございます。この設問は、高プロ制度適用後の直近の年収を尋ねたものでございますが、この回答者の中には年度途中での適用者の方もいらっしゃったことから、調査時点での高プロ制度適用前の年収であったり、あるいは適用時点を起点にした1年に満たない収入実績を回答されたという可能性も考えられるところでございますが、高プロ制度は、1,075万以上でないと制度適用にはならないということは変わりございません。
それから、左下のグラフでございます。高プロ制度の適用前後での年収の変化を聞いたものでございます。これについては、「上がった」、もしくは「やや上がった」と答えた方が合計で58.7%、「ほぼ同じ」と答えた方が36.9%、「下がった」もしくは「やや下がった」と答えた方は4.4%という結果でございました。
10ページ目でございます。現在の高プロ制度での働き方に対する認識に関して聞いたものでございます。各項目で「当てはまる」と「どちらかといえば当てはまる」としたものの合計の割合で見ていきますと、まず、「時間にとらわれず自由かつ柔軟に働くことができる」というもの、「自分の能力を発揮して成果を出しやすい」「賃金などの処遇に見合った働き方である」「仕事の裁量が与えられることで、メリハリのある仕事ができる」「働きがいにつながっている」とお答えになった方が7割以上となっているということでございます。また、8番「働いている時間が長い」、7番「業務量が過大である」というお答えもそれぞれ68.5%、58.7%となってございます。
11ページ目でございます。自由で創造的な働き方ができていますかということと、成果や働きがいにつながっていますかということに関してお聞きした結果でございます。自由で創造的な働き方に関しましては、「できている」もしくは「どちらかといえばできている」とお答えになった方が84.3%、「できていない」もしくは「どちらかといえばできていない」とお答えになった方は15.7%でございました。
成果や働きがいにつながっていますかということに関しましては、「つながっている」もしくは「どちらかといえばつながっている」と答えた方が82.3%、「つながっていない」もしくは「どちらかといえばつながっていない」とお答えになった方が17.7%でございました。
12ページ目でございます。健康状態についてお伺いした結果でございます。まず、現在の健康状態についてお聞きしたところ、「よい」もしくは「まあよい」とお答えになった方が71.3%でございました。「ふつう」と答えた方が21.3%、「よくない」もしくは「あまりよくない」と答えた方が7.5%でございました。
高プロ適用の前後での健康状態に関してお伺いしたところ、「変わらない」と答えた方が80.7%、「よくなった」と答えた方が9.8%、「悪くなった」と答えた方が9.4%でございました。
13ページ目でございます。高プロ適用の満足度に関してでございます。まず、現在の高プロ制度適用に関して満足していますかという問いに関しましては、「満足している」もしくは「やや満足している」とお答えになった方が87.7%、「やや不満である」もしくは「不満である」と答えた方が12.3%でございました。
「あなたは希望して、高度プロフェッショナル制度の適用になりましたか」という問いに対しましては、「希望した」とする方が86.6%、「希望していない」と答えた方が13.4%でございました。
この質問でございますが、自ら希望して適用になったかを問うております。同意していないケースでは高プロは適用できませんので、制度適用者は、最終的には同意した上で制度適用となってございます。
その下でございます。「あなたは今後も、高度プロフェッショナル制度の適用を希望しますか」という問いに対しましては、「希望する」と答えた方の割合が89.4%でございました。「希望しない」と答えた方は10.6%でございました。
最後、14ページ目は参考としての高プロ制度の概要でございます。
以上、今回まとめさせていただいた高プロ制度の現状でございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、委員の皆様より御質問、御意見があればお願いいたします。
鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 ありがとうございます。御説明をいただきました点、私から意見と質問をさせていただきたいと思います。
労働者のアンケート調査では、高度プロフェッショナル制度適用労働者の約9割が制度適用に満足をされています。また、働き方に対する認識では、ただいま事務局からも御指摘がございましたように、自由で創造的な働き方ができている、あるいは成果や働きがいにつながっていると回答する方も圧倒的に多いということが分かりました。制度が目的としている部分で高い評価が得られているという点は大変重要だと感じておりまして、適切な運用を前提に今後も利用を進めていくべき制度だと感じたところでございます。
一方で、労働時間に関してですが、事業場からの報告と労働者のアンケートの双方において、一部事業場で長時間労働になっている状況が読み取れます。定期報告では1か月の健康管理時間が400時間以上の事業場が2つあるということですが、これらの事業場はどのような実態で400時間以上となったのか、また、これらの事業場に対し厚生労働省としてどのような指導等を行っている、あるいはこれから行おうとされているのかについてお尋ねしたいと思います。
○荒木分科会長 それでは、事務局からお願いします。
○監督課長 監督課でございます。
指導の関係で御質問いただきました。高度プロフェッショナル制度を導入した事業場に対しましては、全て監督指導を実施しているところでございます。その際には、週40時間を超える健康管理時間が1か月当たり100時間を超えた労働者に対して、労働安全衛生法に基づく医師による面接指導を確実に実施していることを確認してございます。
それから、年間104日以上、かつ4週4日以上の休日の付与、選択的措置、それから健康・福祉確保措置が適切に実施されているかということについても確認してございます。
また、対象労働者からのヒアリングも行いまして、働く時間帯の選択であるとか、時間配分に関する裁量を失わせるような成果・業務量の要求、納期・期限の設定などが行われていないかということを確認してございます。
個別の事案についての答えは差し控えさせていただきますけれども、一般論として、監督指導の結果、健康管理時間が長時間に及び、労働者の健康を害するおそれがあるような事業場に対しましては、まず、医師による面接指導、選択的措置、健康・福祉確保措置などの実施状況を踏まえ、健康確保のための措置が実効性あるものとなるよう指導してございます。
次に、こうした措置などを適切に行ってもなお健康管理時間が長時間に及び、労働者の健康を害するおそれがあるという場合には、対象労働者の業務量の見直し、あるいは高度プロフェッショナル制度の適用継続の可否について検討するよう指導することとしております。
また、例えば自宅で長期間パソコンを接続しっぱなしにしていることによりまして、事業場外において労働していないことが明らかな時間を健康管理時間に含めているという場合には、これは健康管理時間を適正に把握しているとは言えないということでございますので、適正な把握を指導することとしております。これらによりまして、対象労働者の健康確保はじめ制度の適切な運用に努めているということでございます。
以上でございます。
○荒木分科会長 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御回答ありがとうございました。一部問題がある事業場、あるいは疑われる事業場につきましては、引き続きしっかりとした指導監督をお願いしたいと思います。
また、繰り返しになりますが、全体としては、適用労働者にとって良い制度であると評価されていると思っております。法律施行後5年を経過した後に改めて制度の見直しの検討が始まると思っておりますが、その際には制度を発展させる形での議論をしてまいりたいと思っております。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
八野委員、どうぞ。
○八野委員 ありがとうございます。
高度プロフェッショナル制度は、この分科会の中で様々な議論をしてきたと思います。その中で、健康管理時間の把握や適用要件としての年収、また本人の同意が非常に重要なものであるということで、それがしっかり守れるところに対して適用するという整理だったと思っております。
鈴木委員からもありましたように健康管理時間は労働時間とは異なるわけですが、一般の方の過労死ラインを大幅に超過している時間数になっているということは、問題であると認識しております。全ての事業場に対して監督指導が行われているということですが、不適切な運用がなされないようにする対策を考えていく必要があると思っております。
資料の9ページに記載のある適用後の直近の年収について、適用要件として1,075万円以上でなくてはならないわけですが、適用労働者の給与額の決定単位が異なっても年収要件を満たしているか確認する事が必要なのではないかと思います。今後どのような監督指導をしていくのかをお伺いしたいと思っております。
また、資料13ページに制度適用時の希望の有無について、本人は同意しているが、実は希望していないというケースがあってはならないという議論を、過去の本分科会で行ってきたはずです。実際には適用を希望していない方も同意しているという説明だったと思いますが、真意にもとづく同意がなされているかどうかについては厚労省としてもしっかりと確認をいただき、このような事態が生じないようにすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
以上でございます。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 まず、1,075万円未満のところについてでございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、匿名で任意のアンケート調査でございますので、労働者の方が何をもって回答されたのかということまでは分からないというところでございます。
ただ、監督指導に関しましては、先ほどもありましたとおり、全ての事業場に関して監督指導を実施することとしていますので、こういった事業場に対しても監督指導を行うということになります。この調査自体は任意のアンケートで行っていますので、これ自体を端緒として監督指導するということではありませんが、監督指導を行っていく中で、1,075万未満というものが出てくるのであれば、それは当然に是正を指導していくということになると考えてございます。
それから、希望のところでございますが、説明を補足させていただくと、きっかけとして自分から希望していたか希望していないかということかと考えてございます。きっかけとして自分から希望していなかったけれども、企業から持ちかけられた後、話し合いの中で、じゃあやりますとなったというものであろうと考えているところではございますが、いずれにしても、今、御指摘もあったように、そこが無理強いになってはいけないということは確かなことかと思いますので、そのような実情がもしあるのであれば、監督指導の中でしっかり是正していくということでもあろうかと思いますし、そういった論点を今後、5年後の見直しに向けての検討の中で議論していくということになろうかと考えております。
○荒木分科会長 八野委員、どうぞ。
○八野委員 ありがとうございます。制度の内容や、実際の職務がどのようなものになるかということを本人が理解した上で、真意にもとづく同意がなされることが必要です。その中で、現実的には上司と部下の関係があるので、どこまでそれが担保できるのかということも以前議論したことだと思います。ですから、本人の同意のあり方はこの制度にとっては非常に重要なものだと認識しております。本人同意の重要性を踏まえて取り組みを進めていただきたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。両角委員、どうぞ。
○両角委員 公益委員の両角です。ありがとうございます。
私からは、健康確保措置のメニューについてコメントさせていただきたいと思います。御承知のように、現行制度では、高プロの場合、104日の休日付与と、それから4つの選択的措置の中から1つ以上を実施するということが義務づけられております。先ほど裁量労働制の話があって、そちらも健康確保措置を強化することを検討すべきであるということが報告書に書いてあったと思います。もちろん、裁量労働制と高プロはいろいろ違うところがありますので、全く同じように考えることはできないと思いますが、しかし、高プロのメニューも一つの参考として検討されていくのかなと考えております。
それで、その高プロの健康確保措置なのですが、今後の見直しの時には、この4つの選択的な措置に健康確保の効果がどのぐらいあるのかということを確認することも必要ではないかと思っております。勤務間インターバルはかなり医学的な裏づけのあるものだと思いますが、それ以外のものについてどのぐらい実効性があるのかを、やはり医学的といいますか、科学的な見地から踏まえた上で、このメニューを今後の見直しの際には改めて検討する必要があると思っております。
以上になります。
○荒木分科会長 ありがとうございました。冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 まず、この高度プロフェッショナル制度に関しては、もともと制度構築の議論の際に、十分な健康・福祉確保措置をとったとしても、やはり労働時間規制が適用されないということで長時間労働につながるおそれが非常に高いため、労働側としてはこの制度を創設すべきではないということを申し上げてきたわけでございます。
先ほど鈴木委員からも質問がございましたけれども、資料No.4の3ページのところにある1か月当たりの健康管理時間の部分につきまして、400時間以上500時間未満の事業場が2つもあるのは大きな問題であり、果たして人間らしい暮らしができるのだろうかというと疑問であると考えているところですし、高プロ制度の適用解除も含めて厳格に対応するべきではないかと考えております。
また、両角委員のほうからもございましたけれども、資料4ページの選択的措置、健康・福祉確保措置の内訳というところを見ると、いずれも容易に実施できる措置に偏っているという印象がございます。労働者の健康確保の実効性を高めるためには、勤務間インターバルの確保を含めた複数措置の実施等の見直しも今後検討すべきではないかと考えておりますが、その点について事務局の認識を伺いたいと思います。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○労働条件確保改善対策室長 健康・福祉確保措置でございますが、御指摘いただいたとおり、この健康・福祉確保措置と健康管理時間の管理等で労働者の健康を保っていくというのが制度の基本になっているかと考えております。いずれの健康・福祉確保措置を採用するかについては、各事業場の労使委員会で決議をいただくというものでございますけれども、どの措置を採用するにしても、決議どおり適切に実施されるということがまず必要であって、そこを担保していかなければならないということかと思います。
その上で、今後こうしたメニューがいいのか、メニューの見直しをするのかということについては、実際の状況を踏まえまして、5年後見直しの中で議論していくということになろうかと考えてございます。
○荒木分科会長 冨髙委員。
○冨髙委員 先ほど冒頭申し上げたように、非常に長時間労働になるおそれの高い制度だと考えておりますので、その点を重視していただきたいと思いますし、少なくとも現行制度につきましても、適切な運用がされるようにしっかりと監督指導を徹底いただきたいと考えております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。川田委員。
○川田委員 ありがとうございます。幾つか確認しておきたいことがございます。
まず、ここまでの労使の委員の御発言にもありましたように、今回資料4としてお示しいただいた状況報告の中で、3ページの健康管理時間に関して、1か月当たりの健康管理時間の最長という項目のところで、400時間以上500時間未満という事業場が2か所あったというところは注目される点の一つなのかなと考えております。その点に関連したことですが、同じページの※印の4番に書かれているところを見ますと、このデータは今年の3月31日までの1年間に受理した定期報告のうちの直近のものを集計したということになっておりますので、これは、ある事業場からの定期報告がこの1年間の間に2回あったというようなケースについてはダブルカウントになる状況を避けるといった観点から、直近のもの、すなわち最後になされた報告の内容をここのデータに取り込んでいるという趣旨だと理解したのですが、そういう理解でよいかということが一つです。続けて先に言ってしまいますが、そうだとしますと、今挙げた2事業場で1か月当たり最長が400時間以上500時間未満という点などは、直近の報告の中で出てきたデータであって、この1年間の間に高度プロフェッショナル制度のもとで働いた方に関するデータであってもここに反映されていないものがあるということかと思います。また、さらに言えば、当然それ以前のデータというのもあるという理解ということになるのかと思いますが、特に健康管理時間というのはその時々の状況によって変動するような性質があると思いますので、そういうことを踏まえた上で、次のもう一つの質問は、可能であれば、高度プロフェッショナル労働制の適用が始まったとき以来の状況ということでお伺いしたいのですが、健康管理時間が長時間になる状況について、例えばこの資料4の3ページ目の1か月当たりの健康管理時間が最長のケースというようなものを見ていった場合に、これまでの中で健康管理時間が一番長かった方が何時間ぐらいであるかとか、同じような長時間にわたるような状況が以前にもあったのかどうかということで分かることがあればお伺いしたいと思います。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○監督課長 川田委員御指摘のとおりでございまして、この定期報告については6か月以内ごとに1回となってございますので、年に2回出てくるということになります。今回お示しをしておりますのは直近のものを公表したということですので、年に2回のうちの1回分の公表という形になっておりまして、例えば1回目でその事業場で適用されていた方が2回目のときには適用から外れているというような場合には、その方の分のデータというのは反映されてこないということになります。
その上で、2つ目の御質問でございますけれども、これまでの定期報告の中で一番長かった健康管理時間というものにつきましては、500時間台の前半というデータがございました。ただ、補足して申し上げますと、この中に休憩時間なども含まれた上での数値ということでございます。
以上でございます。
○川田委員 ありがとうございました。今回、この2事業場に関しては監督指導の対応をされたということでしたが、これまでのケースも同じようにしているという理解でよろしいでしょうか。
○監督課長 高度プロフェッショナル制度を導入した事業場全てに対して監督指導を行っておりますので、御指摘のとおり、監督指導を行っているということでございます。
○川田委員 ありがとうございました。
○荒木分科会長 ほかにはよろしいでしょうか。
今回、高度プロフェッショナル制度適用について調査結果を紹介いただきました。これによりますと、適用対象者となる労働者の約9割の方がおおむね満足している、多くの方にとって、適用が健康状態に悪影響を与えてはいない、今後の制度適用を希望する方が約9割となっている、それから、自由で創造的な働き方が実現でき、成果や働きがいにつながると感じている方が大半を占めている一方で、業務量が過大であって、働いている時間が長いと考える労働者も一定数ある、ということが明らかとなったと思います。
一方、今、御指摘もあったように、健康管理時間が長いという方も見られることから、選択的措置や健康・福祉確保措置の確実な実施が必要であり、制度の周知、監督指導の適切な履行が求められているという状況かと思います。
制度の在り方については、働き方改革関連法の施行後5年を目途とした見直し規定に基づく検討に向けて、制度の適正な運用のための監督指導を実施しながら、実態を把握し、課題を整理していくことになると考えております。
事務局には、本日いただいた意見を参考として、適切な制度の履行確保に取り組んでいただくようお願いいたします。
それでは、最後、資料5に移ることといたします。すみません。あと少々お時間をいただきます。
資料5につきましては、復興庁の所管事項に関係することから、労働政策審議会運営規程第4条の規定に基づきまして、復興庁の担当者に本日オブザーバーとして御出席いただいております。
よろしければ、事務局より説明をお願いします。
○労働関係法課長 それでは、資料No.5につきまして事務局より御説明いたします。
福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律についての御報告でございます。
今年の1月に福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案について御説明をいたしましたけれども、先の通常国会でこの法律案が成立いたしましたので、そのことについて御報告させていただくものでございます。
資料の1ページ目を御覧ください。この法律の概要でございますけれども、福島をはじめ東北の復興を一層推進するということと、新たな産業の創出、産業の国際競争力の強化、こういったことに中核的な役割を担っていくような新しい法人として、福島国際研究教育機構というものを設立するというのが主な内容でございまして、この分科会との関係で申し上げますと、この福島国際研究教育機構に勤められる研究者の方などにつきましては、無期転換ルールの特例が適用されるということで、有期雇用を継続されておられる方について、10年を超えて初めて無期転換権が生じるというような特例措置をしているものでございます。
この法律につきましては先の通常国会で成立いたしましたけれども、衆議院の委員会、あるいは参議院の委員会で附帯決議がついておりまして、資料の3ページ目でございますけれども、七番でございます。衆議院の委員会におきます附帯決議といたしまして、「研究者等本人の意向を踏まえ、可能な限り有期労働契約から無期労働契約へ移行させるよう努めること」という内容の附帯決議がついております。
同様に、参議院の委員会におきましても、資料の6ページ目でございますけれども、八番ということで、同じような内容の附帯決議がついているということでございます。
事務局からの説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。これは報告事項ということですけれども、何か御質問、御意見等ございましょうか。
東矢委員、お願いいたします。
○東矢委員 ありがとうございます。私から1点意見を述べさせていただきます。
先ほどの議題(1)の中で、北野委員からの発言にもございましたけれども、労働者の雇用の安定を図るためには、有期特措法と同様に、このような特例を設けること自体、適切ではないというのが労働者側の基本的な考えであるということは、これまで申し上げてきたとおりです。
福島復興再生特別措置法が参考とした科技・イノベ法に関しましては、日本学術会議が2023年3月末で数千名もの研究者等が失職する可能性を指摘しております。現実に雇止めが多く生じれば、若手の研究者のキャリア形成はもとより、日本の学術、科学に与える影響も甚大でございます。そのような事態を防ぐため、科技・イノベ法附則に基づいて早急に法改正に向けた検討を行うべきだと考えております。少なくとも研究者等の雇用の安定につながるキャリア支援を強化すべきです。
国会における研究者と本人の意向を踏まえ、無期労働契約へ移行させるよう努めることとしている衆参両院の附帯決議を踏まえ、文部科学省を含めしっかりと対応していただきますよう、お願いいたします。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、すみません、時間が延長してしまいましたけれども、本日の議事は以上とさせていただきます。
最後に、次回の日程等について事務局からお願いいたします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、本日の第176回「労働条件分科会」は以上で終了とさせていただきます。どうもお忙しい中御参加いただきまして、ありがとうございました。