第2回 医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会の議事録

日時

令和4年9月29日(木) 12:00~14:00

場所

AP新橋 Fルーム
(東京都港区新橋1-12-9 新橋プレイス)

議題

  • (1)業界の現状と課題に係る関係団体等ヒアリング
  • (2)その他

議事

議事内容
○安藤医薬産業振興・医療情報企画課長 皆様おそろいですので、ただいまから「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」を開催させていただきたいと思います。
 本日も、大変御多用の中、御参集いただきましてありがとうございます。
 初めに、構成員の先生方の御出欠について御報告いたします。本日は三浦構成員より御欠席との御連絡をいただいてございます。本日、9名の構成員が会場での御参加、また、香取構成員、堀構成員がオンラインでの御参加で、それぞれ、香取構成員、堀構成員、ともに遅れて御参加されるという御連絡をいただいているところでございます。
 また、本日は、私どもの伊佐厚生労働副大臣及び本田厚生労働大臣政務官にも御出席いただくことになってございますが、両者とも少し遅れて御出席される予定になっていると聞いてございます。
 また、本日は、前回同様、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からYouTube配信形式による公開にて行わせていただきたいと思います。
 次に、本日の会議資料を確認させていただきます。会場におられる構成員の皆様のお手元にありますタブレットには、本日の議事次第のほか、資料1から資料3まで、参考1として開催要項、参考2として構成員名簿を御用意してございます。不足等ございましたら、事務局までお知らせいただければと存じ上げます。
 よろしいでしょうか。
 それでは、以降の議事進行につきましては遠藤座長にお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 皆様、こんにちは。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、早速、議事に入ろうと思いますけれども、まず、カメラの頭撮りにつきましてはこれまでとさせていただきたいと思いますので、マスコミの皆様におかれましては御退室をお願いしたいと思います。
(報道関係者退室)
○遠藤座長 それでは、議事に入らせていただきます。
 本日の議題は1つで「業界の現状と課題に係る関係団体等ヒアリング」で、前回と同様でございます。本日は2つの関係団体と1つの企業から参考人をお呼びしておりますので、前回同様、皆様からの御発言をお聞きして、その後、構成員の皆様との間のディスカッションをしたい。そのように考えております。
 それでは、最初に、再生医療イノベーションフォーラムの皆様から御発言いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○畠氏(FIRM) 本日は、このような機会を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。FIRM会長の畠でございます。
 それでは、早速、始めたいと思います。
 再生医療等製品はこれまでの医薬品と異なる面も多々ございますので、本日は再生医療の特徴などの御説明を交えながら、製品価格を含めたモダリティを取り巻く現状と課題、また、将来像についても御説明したいと思います。
 それでは、資料の2ページを御覧ください。本日のアジェンダをお示しします。
 初めに、改めまして再生医療等製品の特徴を御紹介させていただきまして、次に、再生医療等製品の価格に関する現在の課題とあるべき姿について申し述べさせていただきたいと思っています。また、最後に「3.成長戦略としての再生医療」と題し、再生医療の産業化がもたらす将来像についても言及していきたいと思っております。
 3ページを御覧ください。
 これまでの医薬品は低分子医薬品や抗体医薬などのバイオ医薬品が主流でありましたが、近年、科学技術の進歩により細胞、ウイルス、遺伝子などで治療ができる疾患が分かってまいりました。さらに、一部の疾患につきましては治癒に至る可能性があることが分かっております。
 図の赤枠が再生医療等製品ではありますが、遺伝子治療や細胞治療を含む複数のモダリティを包含しており、これらの治療法はこれまでイノベーションの積み重ねによって成り立っております。我々は、再生医療等製品は、既存の医薬品では治療困難な領域の疾患に対して新たな治療手段を提供することができる新たなモダリティであると考えております。
 4ページを御覧ください。
 前のページでも御説明いたしましたが、再生医療等製品に含まれるものは再生医療、細胞治療と遺伝子治療に大別されます。しかしながら、この分類の中でも極めて多様なモダリティが存在することも本領域の特徴でございます。したがいまして、再生医療等製品として課題を一括で論ずることができないケースもございまして、これまでに得られた知見に基づき、論点を整理した上で、この多様性を踏まえた検討を行う必要もございます。
 2007年に自家培養表皮ジェイスが重症熱傷で承認されてから現在までに17品目が承認されました。製品名に下線を引いた8品目は直近2年で承認されておりまして、今後とも種々の製品上市が期待されます。なお、現時点ではES細胞やiPS細胞のように、種々の細胞に分化できる多能性幹細胞を用いた製品は開発段階にあり、いまだ上市には至っておりません。
 5ページ目を御覧ください。このスライドでは、遺伝子治療、遺伝子細胞治療、細胞治療といった再生医療等製品のオリジネーターを低分子医薬品、抗体医薬品及び核酸医薬品と比較した結果を示しております。
 低分子医薬品では灰色で示す製薬企業が起源となっていることも多いのですが、抗体や核酸ではその割合が減少し、赤やオレンジで示すバイオベンチャーやアカデミアが増えております。さらに、再生医療等製品ではベンチャーやアカデミアが起源である割合がそれら既存の医薬品よりもさらに高いことがお分かりになるかと思います。また、前のページでお示しした日本で上市されている17個の再生医療等製品の起源は全てアカデミアやベンチャー企業となっております。
 6ページを御覧ください。
 山中先生のノーベル賞受賞以来、我が国におきましても再生医療の基礎分野に国からの継続的な支援をいただいております。その結果といたしまして、多能性幹細胞を用いた世界の臨床試験の状況を見ますと、2021年の日本における臨床試験数は米国、中国に次いで3位でありまして、iPS細胞に限れば引き続き1位となっております。また、米国をはじめ、国際的に臨床試験数は増加傾向であります。
 7ページ目を御覧ください。
 少し前のデータでございますが、近年、iPS細胞研究の国際的な特許出願数は増加傾向にあり、累積出願数で日本は米国に次いで2位となっております。
 8ページを御覧ください。
 インパクトファクターの高い論文数でも再生医療研究の論文は増加しており、特にiPS細胞に関する内容が増えております。その中でも日本は米国に次ぐ論文数となっております。また、健康・医療分野における我が国の論文数のシェアは平均6.6%ではありますが、再生細胞医療・遺伝子治療では8.7%と、日本の研究力の高さをうかがうことができます。
 ここまで4枚のスライドでお示ししましたように、再生医療等製品の候補となるものはバイオベンチャーやアカデミアが起源となっており、臨床開発も進捗しております。また、iPS細胞を中心に、特許出願や投稿論文数からは日本のポテンシャルが示されております。
 したがいまして、再生医療等製品を国民の皆様に継続してお届けするためには、引き続き国内外でアカデミアやベンチャー企業が有する開発候補品を日本及び海外での上市につなげるための産官の取組が重要となります。
 その際、我々メーカーの共同研究開発や伴走支援が必要であることはもちろんではありますが、国からの支援も必要であります。既にアカデミアやベンチャーから製薬企業への橋渡し推進施策をはじめ、各種施策を行っていただいてはおりますが、それ以外にも研究開発環境の整備等の支援が必要と考えます。例えばAMEDの創薬ベンチャーエコシステム強化事業は、令和3年6月に閣議決定されましたワクチン開発生産体制強化戦略に基づき500億円の補正予算が措置されましたが、感染症対策に限定することなく、再生医療に関するベンチャー支援も必要ではないかと考えております。
 9ページを御覧ください。さて、ここからは再生医療等製品の医療への貢献について御紹介させていただきます。
 このスライドは、ほかに治療法のない白血病の患者さんに遺伝子治療を行った結果、治療後10年たっても白血病が再発しなかった事例を紹介しております。
 従来の低分子医薬品による治療との比較で考えますと、1回の投与で長期にわたる効果が期待できるとともに、中には疾患が治癒する可能性を有するものもあります。
 10ページ目を御覧ください。
 このスライドは別の製品の例ですが、患者さん御自身の軟骨細胞を培養し、患部に移植することにより、治療前には痛みで歩行に支障があった方が歩行できるようになり、その効果が長期にわたり持続しております。この製品の場合、市販後調査を通じて医師の手技向上を図り、さらに治療効果が上がることも分かってまいりました。
 11ページを御覧ください。このスライドは、国民に提供し得る再生医療等製品の価値を改めてお示ししております。
 細胞治療によりまして、例えば重症熱傷など、これまで治療できなかった患者さんの救命が可能になりました。また、遺伝子治療やCAR-T細胞治療を含め、少ない投与回数で脊髄損傷や難治性がんの治療、さらには幾らかの希少疾患に対しまして新たな治療方法を提供できるようになってまいりました。これらの結果をもちまして、医療負担や医療費の総額削減など多様な社会的価値をもたらす可能性があると考えております。
 12ページを御覧ください。さきのスライドでは再生医療等製品のモダリティの多様性について御紹介いたしましたが、このスライドでは再生医療の産業構造の多様性をお示しいたします。
 再生医療等製品を患者さんにお届けするまでには、アカデミアや多くの周辺産業との連携が必要になっております。低分子医薬品では、研究開発、製造までを製薬企業が担う垂直統合型の産業構造が主流でしたが、再生医療等製品においては多くのステークホルダーが関わる水平分業型の産業構造へ変革が生じております。アカデミアやベンチャーが見つけた創薬の種を製薬企業やベンチャー企業が開発し、それを独自の流通の仕組みで患者さんにお届けしますが、場合によっては製造過程も製造受託機関、これはCMO、CDMOとよく申しておりますが、そちらに委託するケースもあり、それらの過程を周辺産業がサポートすることで成り立っております。
 ここまでが、アカデミア発で多様性を有する再生医療等製品ならではの特徴の御紹介でございます。
 13ページを御覧ください。この後、5枚のスライドで、再生医療等製品の価格に関する現在の課題と、FIRMが考える再生医療等製品価格のあるべき姿について御紹介いたしたいと思います。
 14ページを御覧ください。ここでは再生医療等製品の研究開発サイクルをお示しします。
 製薬メーカーは、御存じのとおり、患者さんに新規治療法を提供するために、まず、研究開発投資を行います。臨床試験で有効性・安全性が検証できて初めてその治療方法を患者さんにお届けできるわけでありますが、再生医療等製品の場合には専用の新規製造設備投資をすることもあります。開発した製品の価値に見合う評価をしていただくとともに、それが適切に維持されることで製薬メーカーは投資を回収し、初めて次の研究開発投資ができます。
 しかし、現在は再生医療等製品を複数上市しているメーカーでも日本国内では次の研究開発投資に回すほどの利益を出せていないケースがほとんどでございます。健全な研究サイクルが構築されなければ、国内外のメーカーが日本においてサステーナブルに患者さんに新規治療を提供できなかったり、提供する価値が海外と比較して遅くなったり、いわゆるドラッグロスやドラッグラグを生じ、国益を損なうおそれもあります。イノベーティブな治療を患者さんに届け、社会に新たな価値を継続的に提供するためには、このサイクルを回し続ける必要があると考えております。
 15ページを御覧ください。このスライドでは、2014年以降に欧米で承認された再生医療等製品の国内における開発・承認状況を示しております。
 引用データにより多少の差はありますが、欧米既承認品の50~60%は我が国で開発されておりませんでした。我が国での開発情報がない再生医療等製品について、ドラックロスなのか、単なる開発ラグなのか、また、その製品の臨床的な重要性を含めて定期的に調査を継続する必要がありますが、少なくとも現在未開発の製品が多いことは事実でございます。
 16ページを御覧ください。このスライドは再生医療等製品の海外価格との比較を示しております。
 欧米で上市済みの6製品を比較したところ、いずれの製品においても日本の価格が一番低く設定されておりました。また、昨今の円安を鑑みますと、お示ししました価格差は現実にはさらに拡大しているものと推察いたします。海外から見て、日本市場に魅力がなければ日本における開発の優先度を下げることが考えられます。特に再生医療分野ではベンチャーが自ら開発するケースもあり、後述する日本の薬事規制と併せ、日本進出を希望する海外ベンチャーには大きな問題となっている可能性がございます。
 加えて、日本のメーカーから見ても、日本の価格を参照して海外で値づけをされる現状を踏まえれば、日本の製品価格が低いことも海外展開時には問題になるかと思います。特に日本発のベンチャーは国内開発を先行せざるを得ないケースもあり、日本におけるビジネス環境や海外展開の課題を解決しなければ再生医療研究への投資が無駄になりません。これらの事態を避けるために、再生医療等製品の価格算定の仕組みを見直すとともに、薬事規制を含めた日本の課題を解決し、日本市場の魅力を取り戻す必要があると考えます。
 17ページを御覧ください。このスライドでお示ししますとおり、製造、求められる品質、輸送、流通設備、人材、規制、患者さんの規模、実施できる医療機関、特許など、多くの面で再生医療等製品は既存の医薬品と異なっております。
 例えば、低分子医薬では1ロットで数万から数十万錠製造でき、生活習慣病など、患者数の多い疾患が対象となり、かつ長期間投与などが前提となりますが、一方で再生医療等製品では大量生産できず、スケールメリットが得難く、製造施設、設備機器の転用が極めて困難であります。
 また、希少疾患を含め、対象疾患は比較的少なく、自家細胞製品は個別化医療となります。さらに、術式を伴うものについては医療機関の先生方の理解が必要であり、市場拡大に大きく影響を受けるものであります。また、生きた細胞を用いるため、有効期限は極めて短く、それに伴い、流通も専用の温度管理対応が必要でございます。
 現状は、再生医療等製品は医薬品もしくは医療機器、医療材料のいずれかのカテゴリーで価格を算定されておりますが、今、申し上げました医薬品との違いが現行の価格算定方式では適切に評価されていないため、再生医療等製品の特徴に適切に評価される新しい価格算定方式が必要だと考えております。
 なお、規制に係る課題や標準の利活用、医療機関に係る施設要件や適切な手技料の設定などの課題につきましては本有識者会議のスコープ外でございますが、再生医療を日本の患者さんにお届けするために併せて解決する必要がございます。
 18ページを御覧ください。再生医療等製品に関する現行の価格算定方式の課題をまとめました。
 第1に、再生医療等製品が医薬品、医療機器の例に分けられて算定されている点でございます。そのため、再生医療等製品特有の多様なコスト構造や、少ない投与回数で長期にわたる効果が期待できる製品の価値などが適切に評価できていないと考えます。加えて、再生医療等製品では、中間年改定は現時点ではほとんど影響を及ぼしていないものの、欧米の価格と比較して日本の価格は低く、結果として日本市場の魅力は海外と比して相対的に低下しつつあります。
 再生医療等製品の算定方式のあるべき姿として、既存の算定方式に加え、医療費や社会的価値に基づいた価格算定や、既存治療に対する付加価値を上市後にも反映できる仕組みを想定しております。製品の多様性が大きく、定量化が難しい製品特性や価値も想定されますが、再生医療等製品独自の加算体系をつくるなどで対応が可能ではないかと考えております。また、医薬品と同様に、一定期間、価格の維持となるよう新薬創出等加算制度の見直しも必要と考えます。
 再生医療等製品の価値や特徴、多様なイノベーションを評価できる新算定方式の導入をするべきと考えており、FIRMとしましても、現状の課題を整理しつつ、具体案の検討を進めておりますので、引き続きお声がけいただきたくよろしくお願い申し上げます。
 19ページを御覧ください。ここから3枚のスライドで再生医療の将来展望についてお話をさせていただきます。
 20ページを御覧ください。このスライドでは各モダリティの2020年と2030年時点でのグローバル市場規模予測及び2020年から2030年の成長率を示しております。
 赤枠で囲んだところが再生・細胞治療、遺伝子治療に関するデータでございます。既存の医薬品と比較いたしまして、2020年時点の市場規模は小さくはありますが、10年の成長率は総じて高い結果となっております。
 21ページを御覧ください。
 再生医療等製品が上市されることで、それを支える周辺産業の市場も拡大いたします。再生医療は、その製造方法を一つ取りましても改良の余地が大きい分野です。臨床医が再生医療等製品を使用し、臨床現場で得た知見を製薬メーカーにフィードバックすることを起点としたり、リバーストランスレーションリサーチが機能すれば周辺産業と製薬メーカーがプロセス改良に取り組み、新たなビジネスチャンスが生まれます。その中でBest-in-classの製品ができればグローバル製品となり、さらに市場が拡大する可能性を秘めております。
 一方で、さきのスライドでもお示ししましたが、再生医療等製品により患者さんが完治して、患者さん御本人やサポートされておられた御家族が社会に復帰すれば結果として生産性が向上することも期待されます。再生医療等製品の持つ社会的価値を含め、その潜在的なインパクトは大きいものがあると考えております。
 22ページを御覧ください。改めまして、再生医療全体の伸び代をお示しします。
 一つはプロセス構築であります。Best-in-classの製品の創出によるグローバル展開や、海外患者を日本に呼び込むインバウンド消費の拡大は、日本初の再生医療を世界の患者さんに届け、産業を成長させるとともに、国益にも資することになります。また、そのためにはリバーストランスレーションリサーチに資する医工連携ができる人材や細胞培養、ベクター製造に係る人材の育成も必要となります。
 もう一つは、周辺産業の発展でございます。産業のプラットフォームを構築し、基盤技術の知財を確保することも日本が勝ち残る道筋だと考えます。そのためには、国内基盤技術を支える周辺産業メーカーへの支援も必要でしょう。また、国内の再生医療が進捗することで、周辺産業の国内ビジネスの機会も創出されるだけでなく、再生医療等製品のグローバル展開を通じて、周辺産業メーカーの製品もアウトバウンドの可能性が広がります。
 このように、再生医療は製品のみならず、周辺産業も含めた新たな市場を創出する裾野の広い産業と捉えることができます。新しい資本主義のグランドデザイン実行計画で再生医療、細胞治療、遺伝子治療の研究開発への投資に言及いただいておりますが、本領域では製薬メーカーによる新たな治療手段の国民への提供のみならず、CDMOを含む周辺産業への発展を通じ、国益に資するものと考えます。黎明期である再生医療を成長産業としていくため、我々も引き続き国と連携してまいりたいと思いますので、包括的協議の機会をいただければと思います。
 次のページは本日のまとめでございます。
 大変駆け足な御説明になりました。失礼いたしました。
 私からの説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、日本医薬品卸売業連合会の御発言をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○鈴木氏(卸連) それでは、私から発言させていただきます。日本医薬品卸売業連合会の鈴木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 初めに、今回、薬価制度と流通制度を一体的に議論できる場を設けていただいたことについて、厚生労働省の方々に深く感謝申し上げます。
 さて、医薬品卸連合会、医薬品卸売業者は全国どこでも休みなく医薬品を医療機関・薬局に届けており、それらの医薬品が患者の皆様に使用されております。これにより、私たちは日本の医療の一端を支えている業界であると自負しております。また、医薬品の取引価格は医療保険制度にも取引先にも大きな影響を与えるものであり、強い責任感の下で適正な価格形成に努めてきております。
 しかし、医薬品卸は薬価制度の影響を強く受ける特殊な流通の中で長い間、苦しい状況に置かれております。薬価、流通、産業構造を総合的に議論していただけるこの場でぜひ、薬価とは何か、薬価制度が流通にどのような影響を与えているか、関係者全てに望ましい制度は何か。そういうことなどについて御議論いただくことを切に願っております。
 薬価制度の影響下の特殊性は、例えば薬価は事実上上限価格なっていること。一方、価格は交渉で決まるが、小包装か、大包装か。100錠包装か、1,000錠包装か。1店舗の個人薬局か、また、400店舗の上場株式会社薬局か。それでおのずと変わることになっております。このため、価格差は存在することがありますが、制度があるために、必ず薬価差と呼ばれております。供給不足でもコスト高でも値上げはできない構造であることであります。
 制度がある結果として医薬品流通があること。このような状況に置かれていることをぜひ御理解いただきますようお願いいたします。
 以上を申し上げた上で、これから資料に沿って説明いたします。
 まず、1ページを御覧ください。医薬品流通のあらましです。
 患者の手元に医療用医薬品が届くまでの流通過程では、製薬企業、卸、医療機関・薬局の間で、自由な競争の下でそれぞれの取引が行われています。その一方で、価格形成は、公定価格制に市場競争原理を融合させた構造になっております。
 また、従来からの医薬品流通特有の取引慣行を改善するために、厚生労働省が定められた流通改善ガイドラインに沿って、全ての流通当事者がその取組を進めております。
 2ページを御覧いただきたいと思います。こちらは医薬品流通における医薬品卸の機能についてです。
 私たち医薬品卸の基本的な使命は、いかなるときも、必要なところに必要な医薬品をお届けすることです。下の図にございますように、私たちは約1万3000品目の医療用医薬品を、離島・山間部を含めた全国約24万軒の医療機関や薬局へ日々供給しております。
 医薬品卸は単に医薬品を配送しているだけではありません。医薬品の流通過程における医薬品卸の機能は極めて多岐にわたっております。通常考えている物流機能、商流機能をはじめ、情報提供機能や需給調整機能、ライフライン機能など、持続的な安定供給に貢献しております。それぞれの概要について、下の図に示しております。
 3ページを御覧ください。医薬品流通の特徴についてまとめたものです。
 下の図は、取扱商品の特徴、流通過程におけるニーズ、それに対する医薬品卸の対応の3つの観点で医薬品流通の特徴を関連づけて示したものです。
 まず、取扱商品の特徴です。ここでは生命関連性、高品質性/多種多様性、需要周期の不規則性が挙げられます。これらの特徴を持った商品を取り扱うに当たっては、その流通過程において以下に示した様々なニーズが発生します。こうした医薬品特性のニーズに応えるために、医薬品卸が持っている機能を複合的に駆使することで安定的な医薬品供給を支えております。また、国民の命を守るという強い使命感の下で流通現場の担当者一人一人がこれらの対応に臨んでいることを申し添えさせていただきます。
 4ページを御覧ください。具体的な医薬品卸の対応の実例を3つ紹介いたします。
 1つ目は、災害・パンデミック時に備えた対応の実例です。
 医薬品卸は、いつ発生するか分からない災害に迅速に対応できるよう、日頃より、支店・物流センターの免震・耐震化や非常用電源設備など様々な投資を行い、常にその備えを強化しております。これらの設備投資以外にも、新型コロナウイルス感染症に伴う医薬品供給などの経験を踏まえて、今後もパンデミック時における配送体制を強化していく必要があります。
 5ページを御覧ください。2つ目は、地域医療との連携の強化の実例です。
 過去の災害時の経験を踏まえ、医薬品卸は地域医療との連携を強化し、有事の際の医薬品の安定供給を通じて、地域医療を支えるために取り組んでおります。また、国、地方自治体、医師会・薬剤師会などとの連携強化を常に図っております。下の図は宮城県と福岡県における実際の事例になります。
 6ページを御覧ください。3つ目は、ジェネリック医薬品の需給調整に係る対応についてです。
 医薬品卸は、現在も数千品目を対象にして、ジェネリック医薬品の需給調整の対応に追われております。欠品・出荷調整に係る業務は、医薬品卸だけでなく、メーカーや医療機関など、全ての流通当事者にとって大きな負担となっております。現場担当者が毎朝1時間から1時間半かけて取引先からの問合せ対応や代替となる医薬品の情報確認に追われているような状況でございます。また、民間調査会社の調査では、医薬品卸全体でこの需給調整に548億円相当のコストが費やされていると試算されております。現場では対応する担当者の精神的な負担も大変大きく、単純に金額ではかることのできない状況になっております。
 7ページを御覧ください。医薬品卸を取り巻く環境として、流通現場での業務負担増加と医薬品卸の経営状況の2つに焦点を当てております。
 まず、流通現場での業務負担についてです。
 2020年以降、コロナ禍にあっては、医薬品卸は行政からの要請に応じてコロナワクチンや検査キットの配送に尽力しております。このようなコロナ対応に関連する業務負担の大幅な増加に加え、先ほど説明したジェネリック医薬品の需給調整にも追われており、今でも医薬品流通の現場の逼迫状況が続いております。こうした状況に追い打ちをかけるように、中間年の薬価改定実施における薬価引下げ、右肩上がりのガソリン代・電気代が医薬品卸の収益構造の悪化に拍車をかけております。
 8ページを御覧ください。2つ目の、医薬品卸の経営状況についてです。
 調整幅2%以降の平均乖離率がおおむね一定なっている一方で、市場拡大再算定の適用拡大や長期収載品の段階的価格引下げなど制度面での影響に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、ここ最近の医薬品卸の経営状況は危機的な状況になっております。先ほどお話しした中間年の薬価改定による薬価引下げ、ガソリン代などの物価上昇の影響を踏まえると、今後の経営状況はさらに悪化する可能性があると危惧しております。
 9ページを御覧ください。薬価制度の課題について4つの項目を取り上げております。
 まず、薬価制度の在り方について2点述べさせていただきます。
 1つ目は、薬剤費抑制を大前提とした薬価改定が繰り返されることにより、薬価が下がり続けている問題です。下の図が示すように、上限価格である公定薬価が設定され、薬価が引き下げられる仕組みの中で、累次の引下げが医薬品卸のみならず全ての流通当事者の経営基盤を脆弱にする構造的なゆがみを抱えていると考えております。加えて、現行の薬価制度では、ガソリン代・電気料金などが急騰した場合の対応が想定されていないことも課題と認識しております。
 2つ目は、薬価差です。市場実勢価格の加重平均に基づく薬価算定ルールがある限り、常に加重平均値より安く購入する取引先が存在することとなって、薬価差がゼロになることはありません。しかも、医療機関や薬局などの取引先の属性によるバイイング・パワーの違いによって、薬価差が偏在する弊害が生じております。医療保険制度における公平性維持の観点から、改善を要する課題と考えております。下の図で負のスパイラルと図示しているとおり、継続的に薬価が引き下がる状況下で、納入価での下落が常態化することによって医薬品卸の収益構造が循環的に悪化している構図が出来上がっております。この構図が医薬品の安定供給の基盤を脆弱にさせております。
 10ページを御覧ください。ここでは中間年の薬価改定を取り上げております。
 平成28年度の薬価制度の抜本改革に向けた基本方針において、中間年においては価格乖離の大きな品目について薬価改定を行うこととなりましたが、令和3年度の薬価改定においては、改定対象品目が約7割に及ぶ結果となりました。「価格乖離の大きな品目」を厳格に定義した上で、それのみを対象とすべきではないかと思っております。この基本方針では、改革と合わせた今後の取組として、関係者の経営実態の把握、また、安定的な医薬品流通の確保、流通改善を進めることが明記されております。しかしながら、これらに関してはいまだ大きな進展が見られておりません。
 11ページを御覧ください。調整幅について、2つの課題を整理しております。
 まず、社会保障費抑制の財源的な手当てとして薬価を引き下げる財政手法が既定路線になっている中で、財政規律を重視する観点から調整幅の見直しが議論されております。薬剤流通を安定させるために設けられた調整幅は、医薬品卸のみならず全ての流通当事者にとって重要な役割を果たしております。仮に調整幅が引き下げられるようになれば医薬品の継続的な安定供給にとって重大なリスクとなっております。
 12ページを御覧ください。2つ目です。
 調整幅の廃止/縮小は、医薬品流通現場の柔軟性・機動性を損なうリスクとなり、持続的な安定供給に致命的なダメージを及ぼしかねません。医薬品卸の視点を考えた場合に、調整幅は多面的な“調整弁”として機能していると考えております。下の図の医薬品卸の視点で考える調整幅の意義を御覧いただきたいと思います。離島・過疎地の配送コストの地域差など、異なる取引条件により生じる納入価のばらつきを是正すること、薬価改定による薬価下落のスピードを緩和する、また、自然災害やパンデミックなどの不測の事態に備えるなどの調整幅の意義を挙げております。
 13ページを御覧ください。
 中間年の薬価改定により薬価の下落スピードが加速する中で、仮に調整幅がなくなった場合には、この下落スピードに拍車がかかることが危惧されております。下の図は、仮に中間年の薬価改定を全品目対象にして行った場合と、中間年の薬価改定を行わなかった場合のシミュレーションを示したものです。2020年度の薬価を100とした場合、10年後の薬価は中間年の薬価改定が行われなかったときは73.5ですが、中間年の薬価改定を行うと73.5から54.0へ下落スピードが加速しております。また、現在2%調整幅がなくなった場合には54.0から43.5へ下落スピードがさらに加速することとなっております。
 14ページを御覧いただきたいと思います。流通改善の課題についてです。
 流通改善ガイドラインに沿って取引慣行を見直すべく流通改善の取組を進めているものの、ガイドラインが目指すゴールに到着するまでには、いまだ道半ばの状況であります。医薬品卸の自助努力だけでは解決できない課題も多く残っているのが実情でございます。
 主な課題認識、検討すべき項目を4つ整理いたしました。
 1つ目の課題は、川上取引における仕切価・割戻し交渉の改善についてです。主に検討すべき項目としましては、一次売差マイナス解消に向け、市場実勢価を踏まえた仕切価設定をお願いしたいということです。仕切価・割戻し交渉の在り方・期間について、検討する必要があるのではないかと思っております。この2点を挙げております。
 次に、川下取引における総価交渉の取引慣行の是正についてです。主に検討すべき事項としては、総価交渉の取引慣行化の脱却を図るべく、単品単価交渉の対象拡大のためのロードマップを策定すべきではないかと思います。制度を見直すことで、単品単価交渉のさらなる拡大につながる仕組みを構築できないだろうか。単品単価交渉が浸透するよう、入札による契約についても、契約に至る過程の検証をしていただきたいと思います。この3つの点を挙げております。
 15ページを御覧ください。同じく、川下取引における頻繁な価格交渉の是正についてです。
 主に検討すべき項目としては、妥結価格の頻繁な変更は可能な限り回避すべきである。薬価調査の透明性を確保するために、未妥結減算制度を形骸化させかねない価格再交渉を防止する仕組みを検討できないだろうか。この2つを挙げております。
 最後に、医薬品の価値を無視した過大な値引き交渉についてです。主に検討すべき項目として、価格交渉を委託する場合においても、委託者及び受託者は個別の取引条件を勘案した単品単価交渉を進めるよう努めるべきであると思っております。受託者においても流通改善ガイドライン遵守の周知徹底に取り組むべきではないか。この2点を挙げております。単に表面的な単品ごとの交渉をすればよいのではなく、医薬品の価値に見合った交渉や配送コストなどの取引条件を加味した交渉の共通理解を徹底すべきです。
 16ページを御覧ください。最後に、今後の対応の方向について3点述べさせていただきます。
 最初に、財政規律に偏重することなく、持続的に医薬品の安定供給を可能とする薬価制度に見直すべきだと思います。その際には、自由な競争を阻害する仕組みにならないよう十分に注意すべきです。なお、安定確保医薬品、採算品目などについては、自由競争では限界があるので、何らかの配慮が必要であると考えております。
 医療保険制度における公平性を維持するため、過度な薬価差偏在を解消する仕組み。急激な物価上昇においても、適切なコスト転嫁が可能となる柔軟な価格形成の仕組み。さらに、全体として、適正な薬価差・適正な流通コスト負担など、公正かつ公平となるような償還価格の仕組みをぜひとも検討していただきたいと考えております。
 2つ目は、中間年の薬価改定については慎重に対応すべきであり、調整幅についても引き下げるべきではないと考えます。
 3つ目は、制度を見直すことで、流通改善に向けて当事者の行動変容を促す仕組みを構築すべきであると考えます。
 最後に、将来を見据えた新たな展望を開くための医薬品卸の取組について触れさせていただきます。
 医薬品卸は、社会経済状況の大きな変化に対応しつつ医療の向上に貢献するため「医薬流通産業」としてDX・GX等を推進し、新たな情報や付加価値の提供に努めることとしております。詳細はお手元のパンフレットを御覧いただきたいと思います。
 説明は以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
○遠藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に、クレコンリサーチ&コンサルティング株式会社から御説明をお願いしたいと思います。
○木村氏(クレコン) ありがとうございます。ただいま御紹介にあずかりました、クレコンリサーチ&コンサルティングの木村仁と申します。
 当社をあまり存じ上げない方も多いかと思いますので、簡単に当社のことを説明させていただきます。
 当社は、日本初の医療・医薬品に関わる市場・制度等の専門の調査・コンサルティング企業として1955年に設立された会社でございます。それ以降、医療・医薬品の制度・流通・市場について常に調査・研究をしてまいりました。近年では海外の医療・医薬品に関わる諸制度の研究も随時推進している企業でございます。周辺には、費用対効果・HTA及びリアルワールドデータの分析企業。また、医療機関さんと医薬品卸さんを結ぶ電子受発注システムの受託運営。また、医療用医薬品のトレーサビリティに関するデータの企業。3つの関連会社を運営させていただいております。
 本日はよろしくお願いいたします。
 本日は、厚生労働省様から、国際比較から見た日本の薬価制度と医薬品流通について第三者的な立場で説明してほしいということでしたので、御説明させていただきます。
 スライドを映していただけますでしょうか。
 まず、制度のお話に入る前に、4ページ目を御覧いただければと思います。
 前回の有識者検討会で、製薬協さん、米国製薬協(PhRMA)さん、欧州製薬協(EFPIA)さんがお話しなさったのは、主にこの特許品の自国への投資誘引力を薬価制度でしっかり手当てしないと、国家安全保障、国民へのアクセスにつながりますというお話がメインであったかと思います。今、米国のバイデン政権を見ますと、2月にムーンショット計画と呼ばれる、ゲノム診断を中心としてがんを半減させる、今年9月12日にバイオ産業のイニシアチブ戦略ということで、クリントン政権時代のインターネット戦略を彷彿させるようなバイオ・ゲノムの総合戦略を世界的に展開してイニシアチブを取っていこうという戦略は明らかでございます。それに対して、日本がどのような国家経済成長に結びつける産業をこの世界で生み出せるのかというのは、ここでのお話ではないのかもしれませんが、前回の議論に1つ加えさせていただきたい事項があります。
 この自国への投資誘引力は、薬価制度を改善することによって国家安全保障にもつながりますけれども、今、バイオの世界、ここのイノベーションの世界はほぼ低分子ではなくて高分子、先ほどFIRMさんからお話がありましたとおり、遺伝子治療ですとか細胞医療と、いろいろなタイプのものが出てきております。さらにその前には必ず高度な診断が必要です。ここで一番重要なのは、次のページを御覧ください。
 これは9月12日にバイデン政権が発表したバイオ産業のイニシアチブ戦略なのですけれども、包括的に今、米国はバイオで世界を制している中で、日本は創薬・開発の面ではかなり遅れている。その中で、低分子の医薬品と違ってバイオの製造、バイオマニュファクチャリングのところの誘致。これはmRNAも含めて、近隣職諸国との競争に、そして欧米のエコシステムの中に入っていかないと日本の役割やノウハウの蓄積がこの医薬品産業でなくなってくるという危惧をしております。
 バイオの製造は、低分子の製造と違って付加価値です。バイオ医薬品がどうやって保護されるかというと、物質特許だけではなくて、製法特許によって保護されています。昔、日本が中間型の製造モデルで付加価値を出して経済成長を遂げたように、この付加価値のある分野において製造を殆どしていない状態は非常に危険である。逆転の発想で、このアジア諸国において、どうやって日本の経済成長に結びつけられるハブ拠点をバイオ工場の分野でもつくれるかというのは、今は中国、韓国、台湾等に負ける瀬戸際でございますので、薬価制度と併せて、先ほどの自国への投資誘引力を合わせて考えていただければ幸いでございます。
 米国も、グローバル経済をパートナーとともに構築すると書いてあります。このままでいきますと、韓国、台湾等にパートナーの先が行ってしまう可能性が非常に高いと考えておりますので、一刻も早く、先ほどFIRMさんからお話がありましたように、バイオ製薬企業の工場の誘致、mRNAのワクチンの工場の誘致も含めて、あと、受託開発・製造企業(CDMO)の産業の活性化が中期的には非常に日本の分かれ道になると私は予測しております。
 次をお願いいたします。
 こちらが今、日本の実際の実情でございます。左側のボックスが薬剤費ベースで見たときに、どういうタイプのお薬にお金が使われているかです。御覧のとおり、7割が新薬創出加算品とその他特許品でございます。こちらが全体の70%を占めております。この約10兆円の市場の上位、20製品で何と16.5%を占めてしまう。それぐらいの占有率があるのですけれども、その中で今のところ日本は34.5%、オリジナル企業としてシェアがあります。今後3年でこの数値が激減します。一部の抗がん剤を除いて減り、ここの青色系統で示している部分はほぼ欧米のオリジナルの製品に代わっていくということでございます。しばらくすると、またここの青色の分野においても中国も出てくるということで、日本には創薬・開発のオリジナルもない。そして、これらのほとんどのバイオ工場すら日本にない。輸入に頼っている状況が加速することが予想されます。
 一方で、右のボックスを御覧ください。これは実際、取扱いの企画品目数なのですけれども、この品目数で見ますと実に半分以上、金額ベースで見ますとたった14%であったものが、品目数で見ますと55%が後発品です。多品種少量生産というお話もありましたが、こちらの原料がどこの国から来ているのかは御覧のとおりなのですけれども、粗製品または最終品で見ると中国から半分ぐらい輸入しています。原薬で見ますと中国と韓国で半分です。もっと恐ろしいのは、出発原料までたどっていくとほぼ中国でございます。これは紛れもない事実なのですが、この日本の空洞化を非常に危惧しておりまして、日本は、特許サイドと後発品サイドのバイイング・パワーが極めて弱い立場にある。早く何かセリング・パワー、世界的に売れるものを創薬・開発あるいは製造していかないと外交交渉上も非常に弱い立場が、それは公的な部分でも民間の部分でも強まっていきます。それを制度が阻害していないかという視点で見ていく。現状において、地政学的なことも含めて、制度が阻害していないかという視点が極めて重要かと思います。
 ここから制度の話に入っていきます。次をお願いいたします。
 基本的に、国民皆保険・皆保健サービス(イギリスのように一般税で賄われているところの入っている国)、アメリカは混合で公的・民間、両方ありますけれども、基本的に皆保険・皆保健サービスが入っているヨーロッパの国々では、これはいい悪いでは全くございませんし、いろいろな歴史的・文化的・経済的背景があって全く違うわけですが、処方権のあるなし、特許のあるなしで薬価制度は基本的には異なっているのが通常でございます。
 ここで着目したいのは、処方権の有無等とかではなくて、特許の有無でどう違うかでございます。基本的には、特許ありは製薬企業が設定するということでございます。ただ、どの国も、面白いことに、その代わりにというものが必ずあります。後ほどイギリスの話はしますけれども、例えばドイツの場合は上市後1年で早期有用性評価があって、それが分かれ道になります。フランスは新しく法案を通して、日本のような拡大再算定を入れています。随時、薬価変更できるような仕組みを導入しているということで、何も日本だけではないということです。ただ、原則、薬価は製薬企業が設定するということです。イギリスもギブ・アンド・テイクの関係を契約として、日本でいう製薬協さんと厚生労働省さんの間でVPASを締結しております。
 後発品に関しましては国それぞれでございます。ドイツは、基本的に同種同効品は参照価格グループで組み込まれます。フランスは日本と似ていて、特許が切れたら何掛けですとか、置換率によってその後の薬価が変わっていくとか、そういうところがあります。
 ここで一番言いたいポイントは、そういったことよりも、フランスの後発品促進策を日本はまねていったわけですけれども、皆さん、フランスと日本が大きく違うのは何だと思いますでしょうか。
 立場が違う。実はフランスやドイツは、EUに入っていれば、お薬が足りなければEU域内でどこからでも取ってこられるのです。これが大きな違いです。これは手続も必要ないのです。これを並行輸入といいます。
 フランスは、日本も同じような制度を入れていたのですけれども、日本は単一貿易経済国家でございますので、自国の分をしっかり確保しなければいけないという立場の違いがあることをこのスライドで強調させていただきます。
 次をお願いいたします。
 このイギリスとフランスとドイツを比べると、非常に大きなコントラストが現れてきます。日本のように薬価固定、薬価の中を医療機関さん、薬局さん、卸さん、メーカーさんで自由に取り合ってくださいという国は日本以外でイギリスしかないわけでございます。ヨーロッパの大陸側の国々は卸さんも薬局さんもマージンが固定されている。これは処方権のある病院さんとか診療所さんは別なのですけれども、薬局市場においてはマージン率が固定されているということでございます。
 先ほど申し上げましたように、イギリスの場合、薬価が固定されていて、その間、取り分は自由ですという代わりに3つの仕組みが入っています。
 一つは薬局の薬価差の返納で、イギリスの場合は皆保健サービス、国が支払側になりますので、国に直接、過剰な薬価差が生じた場合、具体的に申し上げますと、市場の中で年間8億ポンドを超えた場合には、あるテーブルがありまして、今年9月までは返済テーブルに基づいて薬価差を国に返納する仕組みがございます。今年10月からは特許のあるなしで一定率を返納する方針に変化します。これは良い悪いを言っているわけではなくて、ファクトベースでお伝えしております。
 また、製薬企業も新薬の薬価を設定できる代わりに、年成長率2%を市場が超えた場合に、複雑な計算式に基づいて、このVPASという協定に参加している企業は一定額の利益を製薬企業に戻さなければいけないということです。これも今年は非常に大きな問題になっていて、2%を大きく上回ってしまうと、返還率の、普通に計算すると2022年度は約19%も返納しなければいけない。これはあまりにも大き過ぎるということで、また両者間で話合いが行われまして、約15%で妥結しています。ただ、こういった業界団体と政府の間で協定を結んで、薬価は固定するけれども、別の形で返納する仕組みがイギリスには入っております。
 また、後発品の部分でございますけれども、日本以外で、世界で唯一、皆保険が入っている国で、市場実勢価に基づく薬価改定があるのがイギリスの薬局の後発品市場です。ただし、あまりにも低くなった場合には、薬価を変えるのではなくて、医療機関がレセプト請求する際に償還価格を一時的に引き上げる制度がございます。後ほど述べますが、償還価格調整制度があるということでございます。
 問題なのは、ここで申し上げたいポイントは1つです。先ほど並行輸入が可能なフランスとほぼ同じ策を日本が取ってきたところです。薬局さんの後発品調剤体制加算、フランスの場合は減算もありました。あと、後発品の置換率によって薬価を引き下げるとか、後発品の初収載時にオリジナル品の何掛けとか、そういった仕組みはほぼ日本と類似しているところで、ただ、彼らは幾ら足りなくなっても外から取ってこられるという、そもそもの違いがあるところに日本の難しさがあると思います。
 次をお願いいたします。
 そうなると、ここは簡単に飛ばしますけれども、イギリスがヨーロッパの先進国の中極めて珍しい、日本と同じ単一貿易経済国家であるという事実でございます。
 次をお願いいたします。
 先ほど申し上げましたように、あまりにも価格が下がり過ぎた場合には価格譲歩制度というものがありまして、日本でいう薬価収載リストに主に後発品が載っているパートがございます。ここに関しては、例えば原価を見せて申請すれば、薬価は変わりませんけれども、緊急的に薬価以上に償還できる仕組みがあります。それは簡単に申請もできて、決定したらすぐ、薬価収載リストの横に緊急の償還価格が出るような仕組みがございます。御覧のリンクに行っていただければ、薬価より高い償還価格がついている成分が散見されることがお分かりになるかと思います。
 次をお願いいたします。
 ここから、先ほど卸連様の鈴木会長様からお話がありましたけれども、では、卸さん自体の流通の部分を海外から見たとき、どうなのだというところを少し御説明させていただきます。
 次をお願いいたします。
 単純に申し上げまして、先ほど申し上げましたように、ヨーロッパは平行輸入があり、並行輸入業者も実は卸さんです。平均3社が国境をまたいで間に入りますので、その間に偽薬が入ることが大変問題になっております。
 アメリカは一見シンプルな、日本と似ているような感じがしますけれども、州ごとにレギュレーションが違いますので、大手卸さんであっても州ごとに、ライセンスもそうですし、レギュレーションに対応していく必要がある。
 日本は、これはすばらしいことだと思うのですけれども、流通に関しまして単一のレギュレーションで、基本的には間に卸さんが1回しか絡まない、仲間売り等もありますが、単層構造でございますので、メーカーさんと医療機関さんの間に入って需給調整や偽薬混入防止につながっている、非常に社会的に見たら効率的なシステムであると思います。
 次をお願いいたします。
 ここは先ほど鈴木会長様がおっしゃっていた部分なのですけれども、欧米の卸さんにはMSさんという存在がありません。医療機関さんの顔は見られません。例えばアメリカでハリケーンとかが来たときに、褒められるのは卸さんではなくて、卸さんが頼んでいる配送業者です。配送業者が医療機関さんの顔が分かっている状況で、アメリカの卸さんは基本的に物流センターを持って、いかに安く仕入れて高く売るかの差額のモデルです。日本は欧米よりも社会インフラ的な側面が非常に強いということで、こういった機能を持つことによって災害時にも対応できるということが言えるかと思います。
 次をお願いいたします。
 これはお時間のあるときに見ていただきたいのですけれども、基本的に欧米では製薬企業がやっているような仕事も日本は全て卸さんがやっているということでございます。また、その業務量も毎日配送する軒数で見ますと、アメリカより多い。これは歯科医を除いた数ですが、これだけの業務量の違いがあることは、お時間がございますときにお読みいただいて、御承知おきいただければと思います。
 次をお願いいたします。
 これは先ほど卸連様から発表がありました弊社調査の結果ですけれども、そういったことに加えまして、今、卸様の労働時間の20%以上が出荷調整品に費やされている。それを人件費換算しますと548億円で、私が申し上げたいのは、卸さんにも負荷がかかっていますが、主に低薬価品を中心とする出荷調整品に関して、医療機関さん、病院さん、診療所さん、保険薬局さんでもコストが、大変な手間がかかっているということです。恐らく、これは詳しくしっかり調査してみないと分かりませんけれども、卸さんで548億円ですから、軽く1兆円、もしかしたら2兆円レベルの予見性のない部分で負荷がかかっている可能性は高いというふうに、あくまで私見ですが、推察いたします。
 次をお願いいたします。
 あと、ここはこれから厚生労働省様でお調べいただかなければいけない部分なのですけれども、やはり日本の場合、地形的にヨーロッパと比べると地域差が大きい。あと、都道府県の割り方という問題もありまして、これもお時間のあるときに見ていただければと思いますが、1億円を卸さんが売上げを上げるためにカバーしなければいけない可住地面積を、東京が0.7、大阪が1.0とすると、地方は軒並み、それの3倍から4倍カバーしなければいけないということで、フランス、イギリスと比べても地域差が大きい傾向がございます。その他、もろもろ、離島の問題、僻地の問題等はお手元の資料をお時間のあるときにお読みいただければと思います。
 先に進んでいただければと思います。19ページまでお願いいたします。
 これは状況証拠しかそろっていないのですけれども、並行輸入が認められない国で薬価内の自由な取り合いであれば当然、だんだんきつくなって誰もやっていけなくなるのは市場の競争原理が働けば当然のことでございます。いつか原価割れを起こす。一方で、日本の経済力は相対的に弱まっていって、調達力、バイイング・パワーがどんどん減っていっている。これは破綻を迎えるのは明白であると思います。まだ公的な調査、エビデンスが必要ではございますが、このままですと民間製造企業(製薬企業)、民間流通企業(医薬品卸)、保険医療機関が低薬価品、後発品だけでなく、局方品、輸液ですとか、そういったものを採算ベースで全国の患者さんに安定供給することは、状況証拠から見て現実的に不可能であることは明白であると思います。エビデンスは必要ですけれども、状況証拠から見ると不可能に見えます。
 次をお願いいたします。
 それでは、どうすればいいかを最後に少しお話しさせていただきます。
 次をお願いいたします。
 先ほどのイギリスのプライスコンセッション制度、価格情報制度に当たるものが日本でいうと最低薬価、不採算品再算定、基礎的医薬品、安定確保医薬品でございます。やはり東日本大震災の記録を見ても分かるとおり、国家が有事になったとき、最初に必要とされるお薬ですとか医療製品は高額なものでなかったりする場合が多いです。
 例えば鎮静剤は2年前、非常に供給が輸入の問題で不足が生じました。たったそれだけで医療の現場は大変なことになったわけです。手術ができないとかで、これが今、3,000、5,000と増えていっている状況は緊急事態であると考えておりまして、まず、できることから早くやらないと非常に日本は危険な状態にあると感じております。ここで言う最低薬価、不採算品再算定、基礎的医薬品。ここのルールを決めたときが少し今の状況とは合っていない、かつ流通コストが考慮されていないことが言えるのではないかと思います。
 そのほかにも、後ほど述べますけれども、これまで医薬品の品質確保に貢献してきた日本薬局方という日本独自の規格によって海外の原薬とか海外の最終製品を逆に輸入しづらい状況が今はございます。また、在庫の偏在等を見る上でサプライチェーンの見える化システムも必要です。また、一番重要なのは、先ほどバイデン政権、民主党が打ち出しているように、国家として低薬価品の調達、原料を含めた調達、また、バイオを中心とする高付加価値品の分野で日本がどのような役割を果たしていくのかという戦略を国家のトップレベルで早急に決め、パートナーシップを締結していく必要があるということかと思います。
 本日は細かな私案として、最後に2つのことを申し上げたいと思います。次をお願いいたします。
 お時間のあるときに、この用語の定義については御確認いただければと思います。
 次をお願いいたします。
 まず、最初の提言は、低薬価品の短期緊急対策です。これは何も後発品だけではありません。再三申し上げますけれども、局方品並びに輸液ですとか、そういったものも含みます。
 ここで細かく書いてありますけれども、私が申し上げたいポイントは5点でございます。
 1つ目は、最低薬価の問題です。現状の最低薬価は、皆様御存じのとおり、例えば薬局方に載っているものでは、錠剤では10円10銭ですとか決まっております。日本ジェネリック製薬協会さんから前回お話がありましたけれども、今、3分の1が原価割れの状況でございます。この最低薬価を現状に合わせた形で引き上げる。それがもし難しいのであれば、みなし薬価が存在しています。これは平成12年にルール算定した際に、それより今の最低薬価より下回っているものはみなし最低薬価として存在しております。
 2つ目は、同一成分においてマーケットシェア。例えば責任を持って同一成分で30%以上のシェアがある、同一成分で100%のシェアがある、あるいは今後、成分の製造に投資をかける約束をする。そういった製薬企業に対しては薬価内で特別に銘柄別収載を認めるということです。
 3つ目は、急激な原価上昇においては、銘柄別収載されるような品目に関しましては特例で薬価を引き上げる暫定的な措置、イギリスのような措置の制度を導入することです。
 4つ目は、これらの品目は流通コストを薬価内で明確に考慮すること。
 5つ目は、その上で、今の安定確保医薬品のB・Cの成分の線引きを、経済安全保障の観点で何を必須医薬品とするのかという線引きの議論を早急に行うことでございます。
 お時間が大分超過しておりますので、もう一つの問題、日本薬局方(JP)の問題につきましては、日本独自規格が原料調達の足かせになっていることをお時間のあるときに読んでいただき、緊急の場合には、この日本薬局方を、世界でスタンダードになっております米国薬局方や欧州薬局方を一時的に許可する措置を取っていただくことを最後の私の提案とさせていただきます。
 お時間を超過して大変申し訳ございませんでした。以上で私のお話を終わらせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。
○遠藤座長 貴重な御報告ありがとうございました。十分御説明できなかったところはディスカッションの中で場合によってはまた御説明可能かもしれませんので、そのときはよろしくお願いいたします。
 それでは、今、2つの業界団体と1つの会社から御説明がございました。これからディスカッションに移りたいと思いますけれども、実は新たに構成員に任命されました堀構成員、前回は御欠席でしたが、本日はオンラインで参加されているということですので、恐縮ですけれども、一言御挨拶をお願いできればと思います。堀構成員、よろしくお願いします。
○堀構成員 よろしくお願いいたします。東海大学健康学部の堀と申します。
 総合対策に関する有識者検討会というふうに名前が変わったと伺っておりますので、総合的な視点からコメントさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 よろしくお願いいたします。
 それでは、これからはフリーディスカッションにさせていただきたいと思います。御意見、御質問等はございますでしょうか。
 いかがでしょう。御遠慮なく。
 では、坂巻構成員、どうぞ。
○坂巻構成員 坂巻でございます。3つの組織から大変貴重なお話、ありがとうございました。
 まず、FIRMの畠会長にお尋ねしたいのですが、最初にジェイスという日本で最初の再生医療等製品を上市していただきました。お話の中にもありましたけれども、保険償還価格に関しましては医療機器という形で、しかも原価算定方式だったと記憶しております。その後、いわゆる採取キットと移植キットでしたか。そういった形で算定方式の変更がありましたが、大変失礼ですけれども、その後のジャック、ジェイスと、2品目は長期間ずっと赤字でした。再生医療等製品だけではなくて、新しいモダリティを開発する場合にはやはり製造コストであったり、それらに対する投資をきちんと評価しないと、なかなか黒字にすることは厳しいのだろう。
 そういう中で、価値評価が重要だというお話がありましたけれども、やはり今、申し上げたような投資であるとか製造などコストについてもきちんと評価する、ある程度、原価計算が必要なのではないかということのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 もう一つ、卸連にお尋ねしたいのですけれども、今日は国内市場のお話がずっと中心でした。やはり製薬産業全体がグローバル化する中で、ロジスティクスに関してもグローバル化が必要なのではないかと思います。
 そういう意味で、新しい卸のビジネスモデルとして、いろいろな方向があると思うのですけれども、1つ、グローバル化についてどういった取組をされているのか。具体的には、例えばグローバルでのGDP取得の状況について現状をお聞かせいただければと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 それでは、実は一言、私もFIRMさんへの御質問は、今、坂巻構成員が言われたこととほぼ類似の質問をしようかなと思っておりましたので、類似なので多少付加させていただきますと、ここでの事例では新しい価値を評価することをおっしゃっておられる。そういう仕組みにするべきだとおっしゃっておりますが、これは日薬連さんも製薬協さんも言っている、全ての新薬についてという考え方なわけですけれども、この再生等医薬品につきましてはどちらかというと治療に近いのではないかと考えられるようなものまであって、まさにここの対応表に出ているように、既存の製品とは生産、開発及び流通において違っているので、それでは、現行の薬価基準制度では適用できないところがどこなのかが若干知りたいところがある。そういう御質問だったと思いますので、そこら辺を少しお聞かせいただければと思っています。
 では、まず、FIRMさんからお願いします。
○畠氏(FIRM) 御質問ありがとうございます。
 現状で再生医療等製品は17品目ございます。その17品目は先ほど申し上げましたように、かなり多様なもので、一概に全てのものを網羅的にお話しするのは難しいと言わざるを得ません。坂巻先生から御質問がありましたように、例えば最初に排出された培養表皮、培養軟骨を例にとりまして少しお話しさせていただきたいと思います。
 まずは、やはり先ほどお話しいただいた中では、原価積み上げ方式を適用する場合においてもいわゆるイニシャルコストがかなり大きいと言わざるを得ません。すなわち、特別に製品に応じたものをすべてそろえなくてはいけないということになり、この部分がすごく大きな課題になるかと思います。
 さらに、再生医療等製品は医師が使うもの、医師が手術手技等、特殊な技術をもって使うものの場合は、やはり医療として浸透するまでにかなりの時間がかかりますので、その浸透までの時間にいろいろな情報収集、もしくは先生方に対してのいろいろな情報提供コストがかかります。
 まだまだ製品の売上げが十分でないこともあいまって、こういったイニシャルのコストはかなり負担となるのではないでしょうか。今現在では、再生医療等製品の市場は小さいと言わざるを得ません。適用もかなり限られております。かつ施設基準等もございますので、これは規制等の問題だとは思いますが、規制と薬価とのバランスが重要なのではないでしょうか。
 あと、市場が小さく提供できる製品が少ないがゆえに、例えば一部変更申請等々が必要になった場合、ここの部分の費用はかなり負担となります。つまり、全体の売上げに対する利益のバランスを圧迫しているということでございます。先ほど私も本編の中でお話しさせていただきましたように、こういったこまかい内容についても現状の再生医療等製品に関して存在するということでございます。
 一方で、今回の本編でもお話しさせていただきました、いわゆる価値を評価していただくということであります。そういった意味では、例えば再生医療等製品は、そこで移植して生着するようなものでは、ライフタイム全てに応じて、効果が期待できるわけでありますが、そういった価値をどう考えるか。もしくは従来なかなか治らなかったものが治るものをどう考えるかが重要かと思います。今日はお時間がかなり限られておりましたのでお話を割愛させていただいたのですが、やはりこれも全てにおいて多様性があって、現状の医薬品もしくは医療機器というカテゴリーの中で収載価格を議論していくのはかなり無理があろうと思っております。
 2014年の医薬品・医療機器等法の成立でありますが、当時、旧薬事法の改正によって再生医療等製品というカテゴリーはできました。これによりまして、従来の医薬品・医療機器とは違う考え方が存在することを前提に議論が深まっていきました。恐らく薬価においても同様に、再生医療等製品をいかにして扱うかを決めたのちにカテゴリーをつくりあげるというよりは、そういうカテゴリーを設定した上でこの多様性に対してどういう考え方を持ったらいいのかを個別対応していく必要があろうかと思います。
 回答が中途半端になったかもしれませんが、以上でございますが、いかがでしょうか。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 それでは、もうお一方、御質問がありましたので、卸連からお願いいたします。
○眞鍋氏(卸連) ありがとうございます。卸連の眞鍋でございます。
 先ほど坂巻先生からお話がございました、製薬産業をグローバル化していく中で、流通の部分でどのような対応をされているかというお尋ねでありまして、一つは、卸売連合会の会員企業の中には総合商社と連携しながら海外の同業者と提携しているところが2~3あります。
 それと、もう一つ重要なところは、これは厚生労働行政の推進調査事業として2018~2019年ぐらいに「GMP、QMS及びGCTPのガイドラインの国際整合化に関する研究」がございまして、PIC/S GDPという国際的な流通の品質を担保する規格に準拠して、日本におけるいわゆるGood delivering practiceも改定されたところで、国際的な整合性という点で我々も業界を挙げて取り組んでいるところでございます。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 坂巻構成員、よろしゅうございますか。
○坂巻構成員 日本国内の対応だけになりますね。
○眞鍋氏(卸連) そうです。国際標準に合わせることになります。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 では、オンラインで香取構成員がお手を挙げておられますので、香取構成員、お願いいたします。
○香取構成員 ありがとうございます。オンライン参加で失礼いたします。
 13時過ぎに入りましたので、卸連さんの解説は資料でしか拝見しておりませんし、木村先生のものも最後の部分だけしか聞けていないので、既に御説明の中であったかもしれませんが、卸連さんに3点、クレコンリサーチさんに2点質問したいと思います。
 今日は流通の話なので、流通の視点から薬価の問題、あるいは取引関係の問題について質問したいと思います。
 一点目です。
定義上、薬価差とは、公定価格である薬価と実際の取引、納入価、実勢価との差をいうわけですが、もし世の中に薬価制度がなくて公定価格が定められていない市場で取引が行われていると考えた場合、医療機関・薬局との取引で、取引先によって、あるいは取引量や品目の形状等々によって価格のばらつきは生じることはないのか、という質問です。
 何が言いたいかというと、別に薬価制度があってもなくても、商品の形状とか包装単位とか取引相手とか条件とか、先ほど離島の問題などもありましたけれども、市場で取引をすれば、同じ医薬品でもそれぞれに納入価は異なる、ばらばらになるということなのではないか。通常の商品でも、例えば食品の卸さんが食品を卸す場合に、メガスーパーに入れるのとパパママ・ストアに納入するのとでは多分価格は違うだろうし、取引のボリュームでも違うだろう。普通、自由市場で取引が行われれば、公定価格があってもなくても取引によって価格がばらつくのが当たり前の姿ではないか。
 その意味で言うと、薬価差という概念は薬価で公定価格を決めているから生じるのであって、薬価制度がそうなっているから薬価差という概念が生まれるということなのではないか。つまり、価格のばらつきは自由市場であれば常に存在する、ということなのではないか。ここについてはどのようにお考えかというのが一点です。
 2点目は契約締結の問題です。今日も安定供給のことが議論になっていますけれども、医療用医薬品は基本的に安定供給されないといけないものなので、通常、常識的に考えると、卸と医療機関・薬局との取引は長期的・安定的に行われるものだろうし、そうであるべきものだろうということだと思うのですが、現実には薬価改定が行われるたびに契約の結び直しをやるというか、それを強いられている形になっているわけです。非常に頻回の、毎年1回とか薬価改定をするので、未妥結みたいなことが起こってそれがまた問題になっているのですが、考えてみると、経済状況とか市場環境が全く変わっていないのに、公定価格が改定されたというだけの理由で、もう一度契約を一からやり直すのを全国の卸が医療機関との間で一斉に行っている。
 さらに言えば、例えば卸さんがある医薬品を薬価どおりに納入する契約を結んでいたとしましょう。その契約に基づいて安定的に取引が行われていても、ある日薬価が変えられるということが起こって、そのためにその契約を破棄して新しい契約をし直すことが起こる。何兆円という規模の市場で何十万という取引相手と結んでいる契約を毎年、薬価が変わるたびに一からやり直すのはかなり取引としては異常なことをやっている。そういうことになるのではないかというのが2点目です。
 この2つの質問をなぜ私がしているかというと、1も2も、薬価差の問題も契約の問題も、公定価格という薬価制度があることによって、普通の商品であれば起こらないようなこと、あるいは問題にならないようなことが起こっている、ということなのではないかという気がするからです。その意味で言うと、公定価格制度の中で市場で自由な取引をする、というやり方をしていることによって市場の取引、市場における商品の価格形成にゆがみが起こっているのではないか。と思うので、この辺について、もしかしたら議論の中で既にお話があったかもしれませんが、お聞かせいただきたい。
 すみません。長くなって恐縮ですが、クレコンリサーチさんには2つ質問があって、一つは、説明の中でこれもあったかもしれませんけれども、皆保険とか皆保健サービスを取っている国の薬価の決め方を見ると、処方権があるかないか。つまり、医療機関と薬局とで違う薬価制度を採用している傾向がある、というお話があったのですが、公定価格と自由取引の組み合わせで、かつ営利法人の薬局開業を認めているのは英国だと思うのですけれども、例えば英国について、薬局に生じている薬価差とかマージンのあり方ついてどういう考え方に立っているのか。その背景の考え方を知りたい。
 何でこれを聞いているかというと、医療機関は医療行為の一環として薬を処方しているわけで、例えば薬価がついていてもいなくても、D P Cのように包括報酬になっていれば医療行為の対価である診療報酬の中で評価されるので、そもそも薬価差という概念も生まれないし、問題にならないわけですが、薬局の場合は処方権がなくて、まさに単体の薬を販売していることになる。この違いが薬価の考え方、あるいは決め方の違いにつながっているということだと思うのですが、その辺について、もし分かりやすく説明がいただけるのであればしていただきたい。
 それに関連して、これも御説明があったかもしれませんけれども、クローバックとか、あるいはチェーン薬局について一定の規制がかかっているという話があったかと思うのですが、こういった規制をしている背景、規制当局や制度の考え方について、もしお分かりであれば御説明いただきたい。
 すみません。恐縮ですが、それぞれよろしくお願いいたします。
○遠藤座長 それでは、卸連さん、コメントをお願いいたします。
○鈴木氏(卸連) 香取先生のお話ですけれども、薬価差についてでございますが、御指摘のとおり、薬価があろうとなかろうと、取引条件によっては納入価にはばらつきがございます。当然のことだと思います。
 結果として薬価差にばらつきが生まれていますが、その薬価差を得ること自体が目的となって過度な交渉が行われているところに課題が、問題があると認識しております。過度な交渉が問題だと思っております。
 もう一つ、契約締結についてでございますけれども、まさしく御指摘のとおり、薬価改定のたびに全ての医療機関、また、薬局と価格交渉しなければならないのは多分、他の産業と比べて特殊だと思っております。長期間にわたって販売されている商品であっても、しっかりした価格で売られ、また、産業形成されている事例は一般によくあると思っています。しかし、医薬品だけはどんどん値下がりしていますし、医療用必要であっても産業としての魅力がだんだんなくなってしまうのではないかと思います。
 3つ目ですけれども、この薬価制度があることで生じている市場のゆがみとしては、一つは薬価が上限価格なので、原価が上昇しても価格転嫁に限界があることです。もう一つは地域差や取引条件などで流通コストにばらつきがあるにもかかわらず薬価は1つなので、不公平であることになります。私は思うのですが、薬価は平等でありますけれども、公平ではないと思います。平等、Equalityが全員に等しく与えられるものとするならば、公平、Equityはそれぞれの違いを認めて同じ結果を得られるようにしようというものだと思います。こうした視点を今後の制度設計の中でも取り上げていただければ幸いと思います。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 それでは、木村参考人、お願いいたします。
○木村氏(クレコン) 今、香取先生の御質問に対して、1か国の医療制度・薬価制度を説明するだけで本当は3日ぐらいかかるのですけれども、まず、医療社会のヨーロッパの基本は、中世の都市国家において、医師とそれを出すお薬を確かめる薬剤師はそもそも分かれていた。そして、薬剤師がオーナーで該当された地域あるいはその地域の一定数の住民をカバーしなければならないというコミュニティの一部としての責任と、その表裏で開局規制がありました(フランスでは薬局の登録者である薬剤師が所有者でなければならないため、フランスでは薬局のチェーン展開を行うことはできない。また、薬局の増・開設には制限があり、薬局当たり住民が4,500人以上となる必要がある。ドイツでは管理が行き届く地域内で、2004年の制度改正により、一人が4軒まで(1薬局+最大3子薬局)薬局を経営できる。)。香取先生が仰たようにそもそも医師や病院の役割と発展の仕方と歴史が全く異なっているので、制度も当然異なっています。これがベースです。
 その上でイギリスは薬局市場を民間市場にしました。しかしヨーロッパにはそのようなベースがあるので、数十年前に薬価差の一部を返納するクローバックを導入した。そしてそれがサンプル数等の問題であまり機能していないということで、今年の10月から薬局市場において複雑な返納率テーブル方式から、特許のあるなしでそれぞれ一定率(薬価に対して後発品17.25%、特許品5%)を返納する方針を、イギリスの薬剤師会と政府の間の協議・合意を経て変更されます。
お答えになっているかどうか分かりませんけれども、以上になります。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 香取構成員、いかがでしょう。
○香取構成員 ありがとうございました。
 私も頭の整理をして、また次回以降の機会にこれらの点については発言したいと思います。今日はこれで結構です。ありがとうございました。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、ほかにいかがでしょう。
 小黒構成員、芦田構成員の順番でお願いしたいと思います。
○小黒構成員 本日は貴重なお話をありがとうございました。
 順番に1問ずつというか、感想をお伺いしたいのですけれども、まず、再生医療イノベーションフォーラム様です。今日はどちらかというと流通が中心という話でしたが、私はどちらかというと今日お伺いしたのはイノベーションのために投資する原資の重要性についてお話をされていたのではないかと思っております。どういうことかというと、グローバルに見たときに製薬メーカーの方々も、上市した医薬品の売上げとか、ある意味で超過利潤によって稼いだものを原資として、それを新しく開発もしくは投資に向けて循環して回しているということだと思います。そういう意味では、日本、アメリカ、諸外国も含めてグローバルな公共財みたいな形になっていて、各々国々の保険での収載により、そのコストをどういうふうに負担しているのかというふうに見ることもできるのかなと。
 そのときに、日本では一方でもお話がありましたけれども、円安の影響とか、そういったところもあって、投資のコストが一部回収できないというところもあったと思いますが、他方でアメリカとかほかの国では、ここはお伺いしたいところなのですけれども、インフレの影響でかなり激しくなっているので、そういう意味では超過利潤をきちんと確保するためにも薬の価格を引き上げないと長期的な投資ができなくなるということだと思うのですが、その辺、何かほかの国でどういうふうになっているかについて、もし何か情報があれば教えていただけないか。要するに、円安の影響だけではなくて、インフレの影響です。
 あと、卸さんのほうなのですけれども、これも非常に大変な状況だというのは私も認識しておりますが、令和2年で営業利益率が70%から97%ぐらい下がるという話がありましたけれども、これは直近の令和3年と令和4年ではどういう状況になっているかについてお話しいただければと思います。
 最後に、クレコンさんなのですけれども、ある意味でミクロ的なアプローチとして、最低薬価も含めたいろいろな見直しを検討していくことについて、重要性は私も認識しております。そういった意味では当然、いろいろ考えていなければいけないと思うのですが、やはり全体として財源をどう取ってくるかというマクロ的な部分で、財源のタマがないと結構難しいと思うのですけれども、ほかの国とかではどういうふうにそこの部分について取り組んでいるのかについて、イギリス、フランス、それから、ドイツ、それぞれの国について何か知見がありましたら教えていただければと思います。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 それでは、まず、FIRMさんからお願いしたいと思います。
○畠氏(FIRM) 御質問ありがとうございます。
 今、おっしゃられた整理をもとに考えますと、逆に我々は海外から日本を見た場合、とりわけ医療という市場について、日本市場の魅力が失われる恐れという観点で今日は御説明させていただきました。一方で、グローバルでこういったものの開発コストをどう考えるかは先生のおっしゃるとおりかと思います。
 今、残念ながら、そのあたりまで完全に精緻化して今回の産業構造をまだ見てはおりませんが、一方で、日本がこういったいわゆる再生医療等製品のグローバリゼーションをどう考えるかは重要な課題と思っています。
 ただ一方で、通常の医薬品と違って、いわゆる世界でこのモダリティが駆け巡るような状況ができるかどうか。すなわち、生産場所がどこか1か所にあって、全世界にそれを提供するようなモデルができるのか。細胞の場合、保存安定性の確保が難しいという点もありますので、やはり地産地消型のモデルも考える必要があるだろう思っております。そのあたりを含めて今のグローバルのコストヘッジという部分は必要になろうかと思います。
 一方で、恐らく2つ目が本質的な御質問かもしれません。このインフレにおきましてどうなっているかということであります。直近でこのインフレの状況は、本当にまだ間近だったものですから、データとしては正直申し上げて持ち合わせておりません。ただ、日本、FIRMの中の会員企業といろいろお話ししますと、やはり原料価格がどんどん上がっていっていますので、生産コストがとても高額になっている状況はございます。
 ただ、これが海外と共通の課題であるのかどうかに関しましては、すみません。情報を持ち得ておりませんので、回答は控えさせていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
○遠藤座長 では、関連でお願いいたします。
○加納氏(FIRM) 追加で発言させていただきます。
 特に他家細胞、他人の細胞を使う場合には、この原材料を供給するのが日本国内ではなかなか難しい状況でございます。そういう意味で、海外で原材料を供給していただいて、それを使うことになりますので、これは地政学的なリスクがやはり非常に大きいところで、特に今回、インフレの影響も受けている状況でございます。
 その他、細胞を培養するための試薬・培地等も多くの場合は海外から納品してもらうこともありますので、そういう意味で今、小黒先生から御指摘いただいたようなインフレの影響は今後大きく受けてくる可能性はございます。
 一方で我々、製品開発サイクルの話を少しさせていただきましたけれども、これを回すために、製薬会社であれば海外で利潤を出して、それを日本でということもあると思いますが、先ほどもお話しさせていただいたように、日本発のベンチャーやアカデミアが日本で先に開発するモデルがかなり多くなっておりますので、そういう観点で、まずはこのサイクルを回すこと自体が日本国内でできていないところが再生医療特有の問題かなとは考えております。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 では、卸連さん、お願いいたします。
○折本氏(卸連) 担当理事の折本と申します。よろしくお願いします。御質問ありがとうございました。
 今、御指摘の令和2年度の全国の大手上場6社卸の集計がこちらに出ており、0.4%でありますが、その後の集計では0.35%が全卸の営業利益率でございました。
 御指摘の令和3年度はどうかでありますが、これも実質、まだ総合的には集計できておりませんが、速報値では現在、全国0.53%という認識なのでございますが、コロナワクチンの運搬費用が国・県から頂戴している卸の平均値は定かではございませんが、0.2%ぐらいあるのではないか。そうなりますと、営業利益率はほぼ変わらないのかなと。
 また、いわゆる仕切価問題、最終原価も含めて、メーカーから頂戴する最終原価は0.3%ぐらい値上がりして、売価が0.3%、から0.4%ぐらいは値上げしたかなというところでありますけれども、やはり実質上厳しい状況と言わざるを得ない状況であります。
 以上であります。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、クレコンさん、お願いいたします。
○木村氏(クレコン) 先生、非常に核心をついた貴重な御質問ありがとうございます。
 まさに私が最後にそこを申し上げたかった部分なのですけれども、先ほどマイクロでいろいろ低薬価品に対する提言を行ったのですが、実はその低薬価品の部分を、市場競争原理に基づく原稿の薬価基準制度から離し、公的な固定された市場にする原資はどこにあるのか。また、一方で新たなイノベーションを生む原資をどこから持ってくるのかというところなのですけれども、イギリスが非常に参考になると私は思っております。
 イギリスが、先ほど申し上げましたVPASと呼ばれる仕組みは、これは国に返納するのですけれども、その資金はイノベーションに費やされたり後発品の調達に回されたりしております。日本の場合は皆保険制度、イギリスのように一般税の政府による運営ではございませんので、私案としましては、新薬系製薬企業さんの特許品は基本は固定する。固定される代わりに、ある計算率でもって、VPASと同じように超過した部分を、新たにファンドを外部に設置して、そのファンドにたまったお金を、イノベーションサイドの工場誘致等の原資や低薬価品の調達資源や流通原資に割り当てるべきではないかと思います。
 イギリスはそこが官民間ですごく戦略的にやられていると感じます。フランス、ドイツにつきましてはもう少し調査をさせていただきたいと思います。
 以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 小黒構成員、よろしいでしょうか。
○小黒構成員 すみません。確認ですけれども、VPASの場合は、例えば日本だと、バイアル数とかによりますが、売上げが上がってきたときに市場拡大再算定とか実行されると、場合によっては全体の売上げが下がってしまうときがありますけれども、一定の市場の伸び率を超過した部分を取ってくるという、ある意味で、売上げの伸びに一定の、最低限の保障をするようなルールになっているという理解で正しいでしょうか。
○木村氏(クレコン) やはり製薬企業様としては薬価を、外国の参照にもされますので、維持したいのもあると思います。その代わりに、薬価は下げない代わりに、超過した部分を国に返納するという、製薬会社さんにとっても有利ですし、国にとっても実質お金が入ってくるからいいという考えの下ですけれども。
○小黒構成員 なるほど。もっとも、このルールは、売上げの伸びにキャップを設けるような側面があり、日本でやろうとすると、製薬メーカーごとにもしかすると利害関係みたいなものや個別の事情もあるので、制度設計の調整や合意が難しい可能性がありますね。
○木村氏(クレコン) イギリスは一律なのです。だから、前年の実績を基に毎年決められた返済率が公表されて、それをメーカーさんに出してくださいということです。慢性疾患の医薬品が多い製薬企業さんによっては非常に不利で、例えば昨年の場合、実際に計算すると19.1%の返納があまりにも大き過ぎるので、製薬団体と政府の協議で緩和されました。私案としては、一律ではなく当初は何段階かのカテゴリー分けにして、段階的に集約していく方式もあるかと思います。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、お待たせいたしました。芦田構成員、どうぞ。
○芦田構成員 FIRMさんに1点御質問させていただきたいと思います。
 その前に、まず、今日の御発表にありましたように、再生医療製品と遺伝子治療製品は、これまで治療法がなかった疾患に対する治療法を提供することに加えて、根本治療となる可能性があるという意味で非常に価値が高い製品であると理解しております。
 ただ一方で、そもそもそれらの市場規模が小さくて、事業として収益を出すところが難しいところ、薬価が欧米に比べて低いことが日本市場の魅力度を下げていることの大きな要因であると理解しています。そういう中で、今回もアウトカムやベネフィットに基づいた価格算定の御提案があり、その必要性は私も理解しております。
 そこで質問なのですが、薬価は高額だけれども、効果があった場合のみ保険償還するという、いわゆるペイ・フォー・パフォーマンスの仕組みについてはどのようにお考えになっていますでしょうか。
○遠藤座長 では、FIRMさん、どうぞ。
○畠氏(FIRM) 御質問ありがとうございます。
 いわゆる効果があった場合にはという話ですが、これは先生方御存じのとおり、海外などではこういった考え方が出てきていると思っています。実際に、そういった方法の価値算定については先ほどの多様性も含めて、モダリティによってはその考え方が必要になってくる部分もあるだろうと思っています。ただ、長期間の効果を期待しているようなもので、そこに価値が存在するという話であれば、その長期間の価値も見ていく必要があるだろうとも思います。
 問題はそれを販売直後にどこまで判断できるのか、どこまで遡ってそれを訴求できるかという課題はあろうかと思いますが、やはり先ほど申し上げましたように、モダリティの多様性がありますので、その多様性の中で合致するもの、合致しないものがあるのではないかと思っています。
 我々、再生医療イノベーションフォーラムもいろいろなモダリティを持っている企業がありますので、あるところではそういった考え方が必要になる一方で、あるところでは合わないところがあります。一概にこうだということは申し上げにくいのですけれども、今、お話しになられたところも選択肢の一つとして大変重要な考え方と思っています。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 芦田構成員、よろしゅうございますか。
○加納氏(FIRM) すみません。追加でよろしいでしょうか。
○遠藤座長 失礼しました。では、追加でお願いいたします。
○加納氏(FIRM) 今、芦田構成員から御質問いただいた点は非常に重要な点でございます。FIRMの中でもペイ・フォー・パフォーマンスの件は議論をしておるところでございます。
 ただ一方で、今、畠が申しましたように、再生医療等製品は非常に多様でございますので、全ての製品にそれがフィットするかどうかは非常に疑問もございます。そういう意味で、今の原価算定方式には課題もございますし、類似薬効比較方式についても類似薬が本当に選べるのかどうか、いろいろ課題はありますけれども、今の制度にアドオンする形で何か新たなものが必要だというのが我々の考え方でございまして、その中の一つとしてペイ・フォー・パフォーマンスもあるかもしれないというところで、幾つかの算定方式について、今、議論しているところと承知しております。
 以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 ペイ・フォー・パフォーマンスに関しては薬価算定の議論の中でも、新薬の算定をどうするかというときに議論としては随分出てきた。要するに、アウトカム評価としてどこまで薬価に反映させるのかという議論は出てきたわけですけれども、非常に現実的には限定的な対応をしているのが現状であると今は考えられます。今後の議論としては重要な視点だと思います。ありがとうございます。
 それでは、川原構成員、どうぞ。
○川原構成員 御説明ありがとうございました。卸連さんに2点質問させていただきます。
 まず、1点目がジェネリック医薬品の需給調整。これが発生した前後で仕切価と納入価がどういうふうに影響を受けたか、分かる範囲で教えていただければというのが一点。
 あと、近年高いレベルの品質管理が求められているというお話がありましたけれども、医薬品も高度化していくことによって管理コストは多大なものになっていくのだろうと思うのですが、そこら辺の影響につきまして、何らかの調査ですとか将来推計みたいなものをもし御存じでしたら教えてください。
 以上です。
○遠藤座長 では、卸連さん、お願いいたします。
○折本氏(卸連) では、お答えになるかどうかは分かりませんが、まず、後発品の需給調整前とその後でございましたら、知る範囲では、後発品は需給調整後は仕切価、最終原価はかなり引き上がりました。それに伴って納入価交渉もしてはおるのですが、御案内のとおり、いわゆる今、流改懇でも単品単価取引、単品総価の割合は、20店舗以上のチェーン調剤では8割ぐらいが単品総価取引になっている中で、どうしても過去の薬価差率が目安になって交渉が始まりますので、我々はなるべく除外したり、今、新薬についても、これを何とかという価格交渉はしておりますが、後発品は残念ながら仕切価を度外視して、その価格に調整するカテゴリーになってしまっているのが実態であります。
 ですから、仕切価が上がったとしても、それに伴って納入価格を上げている実態は少ないと思います。本来は、需給調整でしたら当然、その段階で価格を上げて交渉すべきところでありますが、それが残念ながらできていないのが実態です。
 もう一つは。
○遠藤座長 川原構成員、よろしいでしょうか。
○川原構成員 はい。価格の面は承知しました。
 あと、高品質を維持するためのコストの調査・研究が、あったら教えていただければと思います。
○遠藤座長 では、お願いいたします。
○眞鍋氏(卸連) では、眞鍋のほうから。
 卸連の会員各社で個別の事例として、何しろ災害の多い我が国なものですから、特に東日本大震災以降、北海道から沖縄まで電源喪失によって保冷品の品質が維持できなかったりするようなこと、それから、新築する物流センターにおいては免震構造が採用されたりしていることは、個別の事例としてはあるのですけれども、今、卸連全体として調査しているわけではありません。
 以上です。
○川原構成員 ありがとうございました。
○遠藤座長 ほかにございますか。
 成川構成員、どうぞ。
 それでは、まだ追加の御発言があるそうですので、お願いします。
○折本氏(卸連) 先ほどの需給調整で、先般、22日の日薬連、日本ジェネリック製薬協会の御発表もありましたが、今、不採算品目が問題になっているかと思います。これについては本当に卸連合会としても制度の見直しをお願いできればと思っております。
 1点申し上げるのは、今回の反省で、需給調整で何が一番困ったかというと、まず、欠品ですという多数の届出が卸にありますが、医療機関などに連絡するのがどうしても遅れる。そうなりますと、コールセンターにお問合せがあって、コールセンター員が欠品でございません。そうすると、やはり患者さんが待っていらっしゃいますから、MSにもまた再度連絡をいただく。当然、メーカーにも連絡が行く。この悪循環が随分続いてしまって、先ほど会長から御報告申し上げたとおりに、精神的なダメージがあり、入った2年目の営業マンはほとんど謝って回っているのが始まりでありまして、精神的に問題になっている者もいて、離職も出始めてきています。
 ただ、今、DXが進んでいるにもかかわらず例えばこういう緊急な品目が出ました、これは長期欠品になりますといったものが登録されて、それがメーカー出荷再開した段階でどれぐらい出荷して、かつ卸在庫がどれぐらいあって、流通在庫がどれぐらいあるかという、リアルで透明に分かる仕組みがないのです。これを何とかしないと、お得意様にとっても、多分、卸はどこかに隠し持っているのではないかとか、都合のいいところに入れたのではないかという憶測がどうしても走るものですから、患者さんにとってもそういうことが調剤薬局様にも病院様にもあったと伺っております。
 この点でやはり今後のインフラ整備は何か考えていかなければいけないのかなと思っておりますので、今後の検討でお願いできればということであります。
 以上です。
○遠藤座長 では、引き続きお願いいたします。
○眞鍋氏(卸連) 手短に。
 今のお話で、欠品ないしは出荷調整が生じたときに、その情報が即座に、迅速に医療機関等へ報告されないことに関して、前回の有識者検討会でも出たと思うのですけれども、やはり欠品が生じた場合、出荷調整の度合いに応じてもそうなのですが、国に、政府に報告する法的な義務については検討していただきたいと現場を預かる者としては思っています。
 それと同時に、小林鷹之前経済安全保障担当大臣が特定重要物資に医薬品を例示として挙げられましたので、この安定供給を阻害するような商慣習については医薬品流通改善ガイドラインの中で厳しく戒められてはいるのですけれども、若干残念なことに、努力目標にすぎませんので、経済安全保障の観点からも、流通改善ガイドラインの一部の項目については今より少し拘束力を持たせるような方向で御検討を賜れればと思います。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございました。御意見として承りました。
 それでは、お待たせしました。成川構成員、どうぞ。
○成川構成員 ありがとうございます。成川です。FIRMさんと卸連さんに1つずつ御質問させてください。
 まず、畠会長の御発表を伺いまして、再生医療等製品の持っている多様性、活発化する臨床開発、今後の医療における重要性は非常によく理解できました。ありがとうございました。
 再生医療等製品について、新たな価格制度が必要だという御提案について、私も全く同感でありまして、今、いろいろな工夫しながらやっていますけれども、ぜひその実現を望みたいと思っています。具体的なやり方は今後いろいろな場で検討していくと思っているのですが、冒頭の議論にもあったように、やはり研究開発の投資回収とか、製造のコストはベースに考えておかないと事業として成り立たないと思います。
 それと並行して、前回、製薬協さんからの説明にもあったのですけれども、その製品の持つ社会的な価値とか多面的な役割もやはり評価すべきだというのも同感なのですが、ただ、それはベースのベンチマークにはなかなか使いづらいと理解していて、あくまで相対的なものと思っています。
 また、そういう価格を国民にも納得してもらう意味では、その製品が出たことによる医療の負担とか介護の負担の削減、あるいは社会復帰されての生産性の向上など、そういったものは承認時にはまだ分からないと思うのですけれども、長い目で見て、そこはきちんとコストを含めたデータを取っておくべきだと私は思っていて、そこは製品を上市した企業としてそのおつもりがあるのかどうか、あるいは既に最近上市されたものについて、その取組を始められているのかどうかをお伺いしたいのが質問です。
 あと、卸連さんには非常に端的な質問で、前回もジェネリック製薬協会からの御発表も聞いて、いろいろ勉強しているところなのですけれども、端的に申し上げて、ジェネリックは品目数の多さが卸さんの活動にどの程度の負荷をかけているのかの感触を伺えればと思っています。
 以上です。よろしくお願いします。
○遠藤座長 それでは、FIRMさんからお願いいたします。
○畠氏(FIRM) 御質問ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりでございます。
 実は、この再生医療等製品は今、上市後にほぼ全例、使用成績調査の対象になってございます。例えば培養軟骨であれば7年間の使用成績調査を終えて、それをデータとしてまとめて提供させていただいているということで、さらに言えば、移植手技を伴うような再生医療の場合はやはり先生方の移植手技の統一を目指して、企業側が責任を持って有効性を担保するような移植手技の情報を提供することも必要でございます。そういった観点から、まさに提供後にも多くの活動を企業が実施して、それでその価値を高めていくことは大変重要だと理解しておりますし、FIRM会員にもそういったことを投げかけています。
 まずは上市した直後のクオリティは、十分有効性と安全性をきちんと担保するわけですけれども、その後、不断な情報収集と提供、そして、その価値をさらに高める必要があるだろうと思っています。そういったことが今回の価格の価値算定としてどういうふうに反映させるかはFIRM内でもしっかりと議論しておりますが、先生がおっしゃいましたように、提供してからの活動は大変重要になってまいりますので、こういった情報収集も必要かと思っております。
 御発言の御趣旨と少し違うのかもしれませんが、やはり将来的にはリアルワールドデータとか、従前の方法との比較も必要になってまいります。再生医療はまだ大変狭い領域ですので、一般的な治療方法のリファレンスとして、そのデータが使えるかどうかは分かりませんが、今後はそういった従前の方法とも比較してやっていく必要があるのではないかと思っております。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 では、卸連さん、お願いいたします。
○折本氏(卸連) 御質問ありがとうございます。
 日本ジェネリック製薬協会さんの22日のデータを見ますと、全てのジェネリックメーカーが192社でございましたでしょうか。それで、500品目以上が3社で、50品目未満が百四十数社あったと記憶しておりますが、我々は全てを取引できるわけでもございませんので、国の方針で8割までやるという形で今、79.5&まで来たことはすばらしいことだと思っています。
 そんな中で、我々としては品ぞろえと御提案の中で、それぞれの卸が過去からの取引で非常に親しくさせていただいているメーカーさんを絞り込んで、在庫を全て持つと大変なことになりますので、絞り込みながら提案をして進めておる最中ですが、昨今の需給調整でそのバランスが崩れているのは置いておいて、そういう考え方で推進しているということであります。
 ただ、AG、オーソライズドジェネリックがやはりどうしても診療側は信頼があるものですから、それをお作りになったところが優先的に処方される。ただし、その後、3段階の薬価改定でそれすらも薬価が低減していくので、それがまた混沌としていっているのが現状です。
 お答えになったかどうかは分かりませんが、以上です。
○成川構成員 ありがとうございます。
○遠藤座長 では、関連でお願いいたします。
○眞鍋氏(卸連) 実務ベースで申し上げると、我々は流通業ですので、医薬品の捉え方としては成分名だけではなく、それを製造販売しているメーカーさん、それから、包装単位といえば100錠包装のものから500錠、1,000錠包装のものまでございますので、特に共同開発が始まった以降、先発品1品の特許が切れて、後発医薬品が10社から発売になりますと、極端な話、倉庫の棚面積が10倍必要になりまして、その管理コストも10倍かかるということで、取引の中では完全に成分名だけではなく、メーカー名の、それから、包装の形態や包装の単位、錠数単位までで管理するので、非常な手間になっています。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 よろしゅうございますか。
○成川構成員 はい。
○遠藤座長 ほかにございますか。若干、時間はオーバーしておりますけれども、せっかくの機会ですので、どうしてもという方がいれば。
 それでは、菅原構成員、どうぞ。
○菅原構成員 ありがとうございます。
 まず、FIRMさんに。非常に単純な話なのですけれども、先ほどの御発表の中に多分、今の日本の薬価のつき方が非常に欧米に比べて低くて、十分な利益が出せていない状況だという話がございました。さらにその中で、15枚目だったと思いますが、欧米では上市されているけれども、日本で未上市になっているものが結構出ていますという話がありました。
 ただ、iPSなどの話をすると、日本はかなりいまだに検討している部分もあるので、期待が持てる。これは非常に大事にしなければいけないと思っているのですが、日本で上市しているけれども、海外で、欧米で未上市になっているという逆パターンのものがあるのかどうかについて教えていただけますでしょうか。
○遠藤座長 では、FIRMさん、お願いいたします。
○畠氏(FIRM) 御質問ありがとうございます。
 先ほど申し上げましたように、直近で1品目承認されましたので、17品目ございます。私の理解では、そのうちの約半数は海外未上市でございます。日本発のものは比較的、ベンチャー企業がアカデミアから引き受けた技術シーズが多くありますので、やはりベンチャー企業の体力をもって海外になかなかアプローチしにくい状況がございます。それが理由で、ほぼ半数は海外で未上市というものでございます。
○菅原構成員 だから日本発のベンチャーでは、ベンチャーの資金力等々がないから海外に売りに行けていないことがその状況を生んでいると考えればよろしいのですね。
○畠氏(FIRM) はい。おっしゃるとおりでございます。
○菅原構成員 分かりました。ありがとうございます。
 では、遠藤先生、もう一点よろしいでしょうか。
○遠藤座長 では、お願いします。
○菅原構成員 卸の話で、流通のところなのですけれども、前回、話をさせていただいたことで、様々な1990年代以降の流通改革があって、卸さんも様々な努力をする中で合併・吸収をして卸の大規模化を図られてきた。多分、交渉力を上げていらっしゃったと思うのです。その一方で、購買側、病院側も様々な共同購買組織とか、あるいは価格情報の共有とかが進んできて、お互いにセリング・パワーとバイイング・パワーのバランスが、この間、動いてきたと思うのです。その結果として、今の様々な流通の苦しい状況は非常によく分かるのですが、最終的にはやはり残念ながらまだ一次買差マイナスで、未妥結減算みたいな制度を入れられたとしても、まだ相当程度厳しいものがあるし2%でやっていくのもかなり厳しい卸がある。という話が資料の中の8枚目のスライドにあったと思います。
 これ以上、この調整幅2%を刈り込まれるのは厳しいことも非常によく分かるのですけれども、一方で、利益が下がっているのは分かるとしても、当然、利益が出ているところと出ていないところ、あるいは出ている卸と出ていない卸のばらつきは当然あるはずで、そこの話がこの平均的な全体の卸業の資料だけでは見えてこない。さらに、卸の安定的な供給を図るためには、ある一定程度の利益を確保しなければいけないという話があって、それがもしバイイング・パワー、セリング・パワーのバランスの中でどうしても難しい話であれば、法定マージンのようなものが海外では採用されているので、そういう話に進むのか、ということが前回あったと思うのです。
 要は、流通の安定化を図るため、例えば剤型別とか、どういうものに対してどれだけのマイナスになっていたり、あるいは地域に対してマイナスになっていたり、こういうところでは比較的多くの利益が出ているとか、そういう何かコスト構造の情報はないのでしょうか。ここの部分がよく分からないと流通の適正化のどこにどう手当てしていいのかが具体的に話が進んでいかないような気がするのですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。どのようにお考えかを含め、そういうデータが出るのかどうかも含めてお聞かせ願いたいのです。
○遠藤座長 卸連さん、いかがでしょうか。
○鈴木氏(卸連) 今のお話の中で、一つは卸に価格交渉力があるのかないかという話なのですけれども、私は卸に価格交渉力はあると思っております。また、一般的に地域という意味での卸の特性と、あとは取引先との間で、価格交渉力において、私たちはかなり、相当の時間をかけておりますので、市場における一定の価格形成機能は十分に果たしているのではないかとは思っております。
 また、薬価差自体の問題を考えるときに、では、どのようにしているのかというと、今、流通ガイドラインを通しながら各会社がいろいろと努力して交渉に当たっていることが現実でございます。
○菅原構成員 すみません。例えば今日出していただいたスライドの8枚目で、上場の6社の営業利益とそれ以外、6社以外の卸会社11社という形で、これが6社と11社、株式上場は両方ともしているわけですか。6社以外だから、上場会社も入っているけれども、6社は大手でよろしいですか。
○折本氏(卸連) 大手です。
○菅原構成員 上から6番目ですね。
○折本氏(卸連) はい。
○菅原構成員 それで、この両者の間では、やはり卸の規模が大きくなれば基本的には利益率が上がっていると解釈してよろしいですか。
○眞鍋氏(卸連) 上場している卸は必ずしも上から6つというわけではないので。
○菅原構成員 逆に言うと、やはり取引規模とかが大きくなると、利益がきちんと残る構造になっているのかどうか。価格交渉力の情報が正直よく分からない。
○眞鍋氏(卸連) 私どもも価格交渉力のきちんとした定義がない中で、それがあるのかないのかと問われてもなかなかお答えしづらいです。
○菅原構成員 では、今回、この株式会社で上場しているものと上場しないものとで分けて2つお示しされた理由は一体、何なのでしょうか。
○眞鍋氏(卸連) 株式上場している会社につきましては、有価証券等報告書も全て公開になっておりますので、非常に情報が得やすい。非上場のところからどういうふうに情報を集めるかについては、片方で独禁法上の問題があって、これらの数字が独り歩きして何かの指標になっては業界としてはまずいということであえて分けたのだと思います。
○折本氏(卸連) いや、よろしいですか。
 中医協の意見陳述の席上で、全国卸、大手卸は分かるけれども、地域の卸はどうなのだという御質問についてお作りした表です。大手卸6社と、上場している前提で大手という言い方をしておりますが、それと地域卸はこういう実態で、先ほど小黒先生から御質問のあった、これを集計したのが先ほどのデータですから、0.35%という数字になりました。
 ただ、今の御指摘ですと、当連合会の構成員事業会社45社ございますが、いわゆる売上総利益、粗利を見ましても若干ずつ違うということは、そのエリアあるいは全国であっても価格交渉の結果によって違いがある、あるいは仕入れによっても違いがあると思います。さらに、販管費は、平均は出ますが、やはりばらばらです。ということは、経営努力がどうなのか、私の口からは言えませんが、赤字を続けている会社もないわけではありません。
 したがって、それぞれの経営状態で、地域だから赤字だと限らず、これはそのとき、極端にコロナ禍で受診抑制が入ったときでしたから、売上げが低下したことは、その中で、やはり耐久できなかった卸がありこの数字ですが、そんな状況だと認識しています。
○遠藤座長 どうもありがとうございます。
 大体時間が来ておりますが、どうしてもという方はいらっしゃいますか。よろしいですか。
 井上構成員、どうぞ。
○井上構成員 井上でございます。
 シンプルな質問で恐縮なのですが、FIRMさんに質問なのですけれども、先ほど研究開発サイクルが再生医療に回していけないところは価格の問題だというお話があったのですが、一方で価格だけなのかというのがシンプルな質問で、要は産業構造であるとか、先ほども大学とかバイオベンチャーが一つの担い手になっているといっても、例えば海外と比較したときに、同じ用語を使っても全く規模感とか資金規模等が違って、結局、リスクを連続して取れないようなものがボトルネックになっているのではないかという感じもするのですが、その辺の価格だけなのかというのが一つの疑問としてございます。
 もう一つは卸売業連合会さんへの質問で、先ほどのように、特に後発医療で非常に取引先が多くて、管理コストに非常に多大なコストをかけているというお話だったのですが、こうしたものに対して、より集約化というか、それだけの非常に細かく散らばっている製造元に対して何らかの働きかけというか、もう少し集約的なものはされていかないのか。その辺がなぜばらばらになったままの状態なのか。そこはなぜ、それが温存されているのかという、極めてシンプルな質問なのですが、その2つでございます。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 当検討会は産業構造についても議論するということでありますので、極めて重要な、基礎的な御質問だと思います。
 では、FIRMさんからどうぞ。
○畠氏(FIRM) 井上先生、御質問ありがとうございます。
 御質問ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりでございます。
 実は、この再生医療等製品は今、上市後にほぼ全例、使用成績調査の対象になってございます。例えば培養軟骨であれば7年間の使用成績調査を終えて、それをデータとしてまとめて提供させていただいているということで、さらに言えば、移植手技を伴うような再生医療の場合はやはり先生方の移植手技の統一を目指して、企業側が責任を持って有効性を担保するような移植手技の情報を提供することも必要でございます。そういった観点から、まさに提供後にも多くの活動を企業が実施して、それでその価値を高めていくことは大変重要だと理解しておりますし、FIRM会員にもそういったことを投げかけています。
 まずは上市した直後のクオリティは、十分有効性と安全性をきちんと担保するわけですけれども、その後、不断な情報収集と提供、そして、その価値をさらに高める必要があるだろうと思っています。そういったことが今回の価格の価値算定としてどういうふうに反映させるかはFIRM内でもしっかりと議論しておりますが、先生がおっしゃいましたように、提供してからの活動は大変重要になってまいりますので、こういった情報収集も必要かと思っております。
 御発言の御趣旨と少し違うのかもしれませんが、やはり将来的にはリアルワールドデータとか、従前の方法との比較も必要になってまいります。再生医療はまだ大変狭い領域ですので、一般的な治療方法のリファレンスとして、そのデータが使えるかどうかは分かりませんが、今後はそういった従前の方法とも比較してやっていく必要があるのではないかと思っております。
 いかがでしょうか。
○遠藤座長 では、関連で、加納参考人、どうぞ。
○加納氏(FIRM) すみません。追加でございます。
 今、畠が申し上げたとおりなのですけれども、例えば医療環境の整備という意味では、特に今日は厚生労働省様がいらっしゃいますが、やはり薬価以外の制度は非常に重要で、薬機法での課題とか、もしくは生物由来原材料基準のように、どうしても再生・細胞医療とかワクチンに関係したような、日本で少しユニークな制度もございます。こういうものが日本で研究開発をしていく上で少しリスクといいますか、ハードルになっているところもありますので、ビジネス環境の整備だけではなくて、薬価以外の制度設計の課題と環境整備が併せて必要だと我々は理解しております。
 以上です。
○遠藤座長 ありがとうございます。
 では、卸連さん、お願いいたします。
○折本氏(卸連) 御質問ありがとうございます。
 先ほどのとおりでありまして、まず、今、処方箋では、一般名処方でお出しいただければ、いわゆる薬局が銘柄を選べる。ただ、診療側のドクターはいろいろ、メーカーとのつながりやら御自身の処方エビデンスも含めると、銘柄別で出される割合が多いです。したがって、どうしても銘柄が増えていってしまっているのが現状ですから、一般名処方の加算はいろいろ政策的におつけいただいているのですが、その点が改善されていけばと思うのですが、記憶ですと、まだ一般名処方は5割ぐらいしかないのではないかと思っています。それが一つの大きな要因かなと認識しています。
○眞鍋氏(卸連) まず、お尋ねの、なぜ、これだけ後発医薬品の会社が増え、品目が増えたかというと、申請が承認されるからです。なぜ、この状態が続くのかですけれども、我々は流通業なので、成分名で御注文いただくわけでもありませんので、メーカーの商品名の何錠包装を納品せよという御注文を承るわけですので、これは我々からこちらの製品にしてくださいということはできませんので、もしくは一部の取引を集約していくことは、同業者それぞれ個社のお考えではあるかもしれませんが、基本的には御注文いただいたものを安定供給するところでありますので、市場における製品数が増えていけば、その分、我々の管理コスト、工数も増えていく現状でございます。
○井上構成員 その部分が安定供給を阻害していることはないのですか。
○眞鍋氏(卸連) その部分が、同じ工場で製造された医薬品であっても銘柄が異なることがあって、そのどちらかに出荷調整が入った場合には全体に玉突きで影響が波及していくことがありますので、望むらくはひとつのラインからは一銘柄で出ていくような方向性が進んでいけば我々にとっては望ましいかなと思っています。
○井上構成員 ありがとうございました。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 まだ御質問はあるかと思いますけれども、予定していた時間を少しオーバーしておりますので、本日はこのぐらいにさせていただければと思います。
 参考人の皆様、本当に長時間ありがとうございました。大変貴重な御意見だと思いますので、今後、我々の議論の中で大変重要に、参考にさせていただきたいと思います。
 それでは、事務局、何かありますか。
○山本ベンチャー等支援戦略室長 次回、第3回検討会につきましては、10月12日14時から開催予定でございます。詳細につきましては、厚生労働省事務局よりメール等にて御連絡させていただきます。また、本日の検討会の議事録は後日、厚生労働省のウェブサイトに掲載予定としております。
 事務局からの連絡事項は以上でございます。
○遠藤座長 ありがとうございました。
 それでは、皆様、どうもありがとうございます。これにて終了したいと思います。